JP2023057907A - 鋼板およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】直接焼入れ焼戻しを利用する省プロセスで製造することを前提として、極低温靭性および脆性亀裂発生抑制性能に優れる高強度鋼板について提供する。【解決手段】質量%で、C:0.01%以上0.15%以下、Si:0.01%以上0.50%以下、Mn:0.05%以上0.20%未満、Ni:6.0%以上7.5%以下、Cr:0.01%以上1.00%以下、Mo:0.01%以上0.50%以下、P:0.03%以下、S:0.005%以下、N:0.0010%以上0.0080%以下およびAl:0.008%以上0.100%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、鋼板の表面から板厚方向に板厚の1/4の深さ位置における残留オーステナイトの量が1.7%未満である、鋼板とする。【選択図】なし

Description

本発明は、鋼板に関し、特に、幅広い板厚範囲に亘って優れた極低温靭性を安定的に確保できる、極低温下の用途に適する厚鋼板およびその製造方法に関する。本発明の鋼板は、例えば、船舶用および陸上用の液化ガス貯蔵用タンクなどの、極低温環境下で使用される構造物に好適に用いることができる。
液化ガス貯蔵用タンクなどの構造物に、熱間圧延された鋼板が用いられる際には、使用環境が極低温となるため、鋼板の強度のみならず、極低温下における靱性(極低温靭性)に優れていることが要求される。例えば、液化天然ガスの貯蔵用タンクに熱間圧延された鋼板が使用される場合には、液化天然ガスの沸点である-164℃以下の極低温下で優れた靱性を確保する必要がある。鋼材の極低温靱性が劣ると、極低温貯蔵用構造物としての安全性を維持できなくなるおそれがあるため、適用される鋼板に対する極低温靱性の向上に対する要求は高い。この要求に対して、従来は、7%Ni、又は9%Ni鋼板が使用されてきた。
7%Ni鋼板について、例えば、特許文献1に提案されている。
特許文献1では、Ni:5.0超~10.0%未満と所定量のC、Si、Mn、Alとを含有する、極低温用厚鋼板が開示されている。そして、特許文献1に開示の厚鋼板では、板厚6~50mmに亘り、単位面積当たりの吸収エネルギーvE-196の平均値が1.25J/mm2以上である。
特開2011-219848号公報
本発明者らが、Ni:6.0~7.5%程度の高Ni鋼の厚鋼板(以下、7%Ni鋼板ともいう)について鋭意調査した結果、生産性向上を目的として、圧延後に直接焼入れ焼戻しを行って製造した場合に、シャルピー試験等における吸収エネルギーの低下や脆性破壊の発生リスクが上昇することが判明した。しかしながら、特許文献1では、これらの問題、特に脆性破壊の発生については何ら検討されていない。
本発明は上記の事情に鑑みなされたものであり、直接焼入れ焼戻しを利用する省プロセスで製造することを前提として、極低温靭性および脆性亀裂発生抑制性能に優れる高強度鋼板について提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために、7%Ni鋼板の成分組成および組織に関して鋭意研究を行ってところ、以下の知見を得た。すなわち、
(a)上記した吸収エネルギーの低下は、Mnの濃化域と希薄域との形成により、発生する破面に垂直で圧延面に平行な割れ(ここでは、セパレーションとも呼ぶ)の発生に起因すること。
(b)上記した脆性亀裂発生は、Mn濃化域や、特にそこで生成しやすい不安定なオーステナイト(以下、γとも示す)に由来すること。
(c)吸収エネルギーを安定して高めるには、Mnを0.20%未満に制限し、バンド状に生成するMn濃化域の濃度を下げ、Mn偏析バンド起因のセパレーションの発生を低減すること。
(d)脆性亀裂発生を低減するには、低温域でのシャルピー吸収エネルギーを確保することに加えて、Mn量を制限し、バンド状に生成するMn濃化域の濃度を下げつつ、その発生原因となるγの生成を抑制すること。
本発明は、上記知見に基づき完成されたものであり、その要旨は以下のとおりである。
[1]質量%で、
C:0.01%以上0.15%以下、
Si:0.01%以上0.50%以下、
Mn:0.05%以上0.20%未満、
Ni:6.0%以上7.5%以下、
Cr:0.01%以上1.00%以下、
Mo:0.01%以上0.50%以下、
P:0.03%以下、
S:0.005%以下、
N:0.0010%以上0.0080%以下および
Al:0.008%以上0.100%以下
を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、
鋼板の表面から板厚方向に板厚の1/4の深さ位置における残留オーステナイトの量が1.7%未満である、鋼板。
[2]前記成分組成は、さらに、質量%で、
Cu:0.40%以下、
Nb:0.05%以下、
V:0.05%以下、
Ti:0.03%以下および
B:0.0030%以下
から選択される1または2以上を含有する、前記[1]に記載の鋼板。
[3]前記成分組成が、さらに、質量%で、
Ca:0.007%以下、
REM:0.010%以下および
Mg:0.070%以下
から選択される1または2以上を含有する、前記[1]または[2]に記載の鋼板。
[4] 前記[1]から[3]のいずれかに記載の成分組成を有する、鋼素材に、870℃以下の累積圧下率が15~75%および最終圧延終了温度が鋼板表面温度で830~700℃である熱間圧延を行って鋼板とした後、該鋼板に、該鋼板の表面から板厚方向に板厚の1/4の深さ位置における温度で600℃以下300℃以上の温度域における平均冷却速度が3℃/s以上および冷却終了温度が300℃以下である、直接焼入れを行って、550℃以上Ac点未満で焼き戻す、鋼板の表面から板厚方向に板厚の1/4の深さ位置における残留オーステナイトの量が1.7%未満である、鋼板の製造方法。
本発明によれば、極低温靭性と脆性亀裂発生抑制能に優れる鋼板を、高い生産性の下に提供することができる。本発明の鋼板を、液化ガス貯蔵用タンク、例えば、LNGタンクや液化COタンクなどの、低温、極低温環境で使用される鋼構造物に供することにより、該鋼構造物の安全性を向上させることができ、産業上格段の効果をもたらす。
以下、本発明の実施形態について具体的に説明する。なお、以下の説明は、本発明の好適な実施形態を示すものであって、本発明はこれに限定されない。
[成分組成]
本発明の鋼板は、所定の成分組成を有する。また、本発明の鋼板の製造に用いる鋼素材も、上記所定の成分組成を有することが好ましい。以下、この成分組成に含まれる各元素について説明する。なお、特に断らない限り、本明細書において、各元素の含有量の単位としての「%」は「質量%」を意味する。
C:0.01%以上0.15%以下
Cは、鋼板の強度を向上させる効果を有する元素である。この効果を得るために、C含有量は0.01%以上とする。好ましくは、0.03%以上である。一方、C含有量が0.15%を超えると、鋼板の極低温靭性が低下する。そのため、C含有量は0.15%以下とする。好ましくは、0.12%以下である。
Si:0.01%以上0.50%以下
Siは、鋼板の強度向上に寄与する元素であり、脱酸剤としての作用を有する元素でもある。これらの効果を発現させるために、Si含有量は0.01%以上とする。好ましくは、0.03%以上である。一方、Si含有量が過剰に高くなると、靭性が低下する。そのため、Si含有量は0.50%以下とする。好ましくは、0.30%以下である。
Mn:0.05%以上0.20%未満
Mnは、鋼の焼き入れ性を高め、鋼板の高強度化に有効な元素である。この効果を得るため、Mnは0.05%以上で添加する。好ましくは、0.10%以上である。一方、Mnを0.20%以上で含有する場合、局所的にオーステナイトが生成する確率が上がり、吸収エネルギー等が低下する場合があるので、0.20%未満に制限する。
Ni:6.0%以上7.5%以下
Niは、鋼板の極低温靭性の向上に極めて有効な元素である。そのためには、Ni含有量を6.0%以上とする。好ましくは、6.5%以上である。さらに好ましくは、7.0%以上である。一方で、Niは高価な元素であるため、その含有量が高くなるにつれて鋼板コストが高騰する。したがって、本発明においては、Ni含有量を7.5%以下とする。
Cr:0.01%以上1.00%以下
Crは、極低温靭性を大きく損なうことなく鋼板の強度を向上させることができる元素である。上記の効果を得るには、Cr含有量を0.01%以上とする。好ましくは、0.30%以上である。しかし、Cr含有量が1.00%を超えると、鋼板の極低温靭性が低下する。そのため、Cr含有量は1.00%以下とする。好ましくは、0.80%以下である。
Mo:0.01%以上0.50%以下
Moは、Crと同様に、極低温靭性を大きく損なうことなく鋼板の強度を向上させることができる元素である。そのためには、Mo含有量を0.01%以上とする。好ましくは、0.10%超である。一方、Mo含有量が0.50%を超えると、極低温靭性がかえって低下する。そのため、Mo含有量は0.50%以下とする。好ましくは、0.30%以下である。より好ましくは、0.25%以下である。
P:0.03%以下
Pは、不可避的不純物であり、鋼板の極低温靭性に悪影響を及ぼす有害な元素である。例えば、鋼板を溶接して溶接構造物とした際に健全な母材および溶接継手を得るためには、Pの含有量を可能な限り低減することが好ましい。そのため、P含有量は0.03%以下に抑制する。また、極低温靭性の観点からは、P含有量は低ければ低いほどよいため、下限は特に限定されず、0%であってもよいが、その場合にも不可避不純物として含有することは許容される。一方、過度の低減はコスト増の原因となるため、コストの観点からは、P含有量の下限を0.001%とすることが好ましい。
S:0.005%以下
Sは、鋼中でMnSを形成し極低温靭性を著しく劣化させるため、0.005%を上限とし、可能なかぎり低減することが望ましい。S含有量は、好ましくは0.002%以下とする。一方、S含有量は低ければ低いほどよいため、下限は特に限定されず、0%であってもよいが、その場合にも不可避不純物として含有することは許容される。
N:0.0010%以上0.0080%以下
Nは、鋼中で析出物を形成し、その含有量が0.0080%を超えると、母材の靭性低下の原因となる。但し、Nは、AlNを形成することにより母材の細粒化に寄与する元素でもあり、このような効果はN含有量を0.0010%以上とすることにより得られる。したがって、N含有量は0.0010%以上0.0080%以下とする。N含有量は、好ましくは0.0020%以上である。好ましくは、0.0060%以下である。
Al:0.008%以上0.100%以下
Alは、脱酸剤に含まれる元素である。Al含有量が0.008%未満では脱酸剤としての効果が乏しい。また、Alは、AlNを形成することにより母材の細粒化に寄与する元素でもある。そのため、Al含有量を0.008%以上とする。好ましくは、0.020%以上とする。一方、Al含有量が0.100%を超えると、鋼の清浄性が損なわれ、靭性、特に極低温でのシャルピー吸収エネルギーが低下する。そのため、Al含有量は、0.100%以下とする。好ましくは、0.050%以下とする。
本発明の一実施形態における成分組成は、上記した所定量の元素に加え、残部がFe及び不可避不純物からなるものとすることができる。
また、本発明の他の実施形態においては、上記成分組成が、任意に、Cu、Nb、V、TiおよびBから選択される1または2以上を、好ましくは以下に記す量でさらに含有することができる。
Cu:0.40%以下
Cuは、焼入れ性向上により鋼板の強度を高める効果を有する元素である。しかし、Cu含有量が0.40%を超えると、鋼板の極低温靭性が低下することに加え、鋳造後の鋼(スラブ)表面の性状が悪化する。したがって、Cuを添加する場合、Cu含有量を0.40%以下とすることが好ましい。より好ましくは、0.30%以下とする。一方、Cu含有量の下限は特に限定されないが、上記の効果を得るには、Cu含有量を0.10%以上とすることが好ましい。
Nb:0.05%以下
Nbは、析出強化により鋼板の強度を高める有効な元素である。しかし、Nb含有量が過剰に高くなると、鋼板の極低温靭性が低下する。そのため、Nbを添加する場合、Nb含有量を0.05%以下とすることが好ましい。より好ましくは、0.03%以下とする。一方、Nb含有量の下限は特に限定されないが、上記の効果を得るには、Nb含有量を0.010%以上とすることが好ましい。
V:0.05%以下
Vは、Nb同様、析出強化により鋼板の強度を高める有効な元素である。しかし、V含有量が過剰に高くなると、鋼板の極低温靭性が低下する。そのため、Vを添加する場合、V含有量を0.05%以下とすることが好ましい。より好ましくは、0.04%以下とする。一方、V含有量の下限は特に限定されないが、上記の効果を得るには、V含有量を0.010%以上とすることが好ましい。
Ti:0.03%以下
Tiは、鋼板を溶接して溶接構造物とする際、母材の機械的特性を低下させることなく溶接部の靭性を高める効果を有する元素である。そのためには、0.003%以上で添加することが好ましい。一方、0.03%を超えると、かえって靭性を低下させることになるため、Tiは0.03%以下の範囲で含有させることが好ましい。
B:0.0030%以下
Bは、微量添加で焼入れ性を高める元素である。この効果を有効に発揮させるために、Bを0.0003%以上で含有させることが好ましい。一方、Bの含有量が0.0030%を超えると、靭性が劣化する。このため、Bを含有させる場合は、その含有量を0.0030%以下とすることが好ましい。
また、本発明の他の実施形態においては、上記成分組成が、任意に、Ca、REMおよびMgから選択される1または2以上を、好ましくは以下に記す量でさらに含有することができる。
Ca:0.007%以下
Caは、鋼中の介在物の形態を制御することで鋼板の極低温靭性を向上させる効果を有する元素である。しかし、Caが過剰になると、鋼の清浄性を損なって極低温でのシャルピー吸収エネルギー(以下、シャルピー靭性ともいう)を低下させる。そのため、Caを添加する場合、Ca含有量を0.007%以下とすることが好ましい。より好ましくは、0.004%以下とする。一方、Ca含有量の下限は特に限定されないが、上記の効果を得るには、0.001%以上とすることが好ましい。
REM:0.010%以下
REM(希土類金属)は、Ca同様、鋼中の介在物の形態を制御することで鋼板の極低温靭性を向上させる効果を有する元素である。しかし、REMが過剰になると、鋼の清浄性を損ないシャルピー靭性が低下する。そのため、REMを添加する場合、REM含有量を0.010%以下とすることが好ましい。より好ましくは、0.008%以下とする。一方、REM含有量の下限は特に限定されないが、上記の効果を得るには、REM含有量を0.001%以上とすることが好ましい。
ここで、REMとは、ランタノイドの15元素にYおよびScを合わせた17元素の総称であり、これらの元素を単独でまたは組み合わせて含有させることができる。なお、REMの含有量はこれらの元素の合計含有量を意味する。
Mg:0.070%以下
Mgは、CaやREM同様、鋼中の介在物の形態を制御することで、鋼板の極低温靭性を向上させる作用を有する元素である。しかし、Mgが過剰になると、鋼の清浄性を損ない、シャルピー靭性が低下する。そのため、Mgを添加する場合、Mg含有量を0.070%以下とすることが好ましい。より好ましくは、0.004%以下とする。一方、Mg含有量の下限は特に限定されないが、上記の効果を得るにはMg含有量を0.001%以上とすることが好ましい。
[ミクロ組織]
本発明の鋼板は、該鋼板の表面から板厚方向に板厚tの1/4の深さ位置(以下、1/4tともいう)における、残留オーステナイト(以下、γとも示す)量が1.7%未満である組織を有する。すなわち、残留γ量が1.7%以上であると、脆性亀裂が発生しやすくなる。
また、鋼板の組織は、マルテンサイトとベイナイトとを主体とした組織、具体的には、ベイナイト及びマルテンサイトの合計が面積率で98.3%以上であることが好ましい。上記のとおり、ベイナイト+マルテンサイトを主体とした組織であれば、優れた極低温靭性を確保しつつ、十分な強度をも得やすいからである。なお、ベイナイトとマルテンサイトとの比率は、任意で問題ない。
鋼板の板厚は特に限定されず、任意の厚さとすることができる。例えば、6mm以上50mm以下とすることが好ましい。
[機械的特性]
(引張強さ)
鋼板の引張強さの下限は、特に限定する必要はないが、下限を690MPaとすることが好ましい。より好ましくは、720MPa以上とする。一方、引張強さの上限についても特に限定する必要はないが、上限を930MPaとすることが好ましい。より好ましくは、900MPa以下とする。
なお、引張強さは、後述する実施例に記載した方法で測定することができる。
(極低温靱性)
鋼板の靱性値は、特に限定する必要はないが、-196℃におけるシャルピー吸収エネルギー(vE-196℃)が、フルサイズシャルピー衝撃試験において200J以上であることが好ましい。一方、350J以下であることが好ましい。より好ましくは、280J以下である。また、ハーフサイズシャルピー衝撃試験においては、vE-196℃が100J以上であることが好ましい。一方、上限は、200J未満である。より好ましくは、150J以下である。
(脆性亀裂発生抑性能)
鋼板の脆性亀裂発生抑性能としては、CTOD試験において、急激な荷重低下が発生することなく、最大荷重点を迎えることが好ましい。
[製造方法]
次に、本発明の鋼板を製造する方法について説明する。なお、以下の説明においては、特に断らない限り、温度は板厚中央の温度を指すものとする。板厚中央の温度は、例えば、放射温度計で測定した鋼板の表面温度から、伝熱計算により求めることができる。
すなわち、下記(1)~(4)の工程を順次行うことにより、本発明の鋼板を好適に製造することができる。
(1)鋼素材の加熱
(2)熱間圧延
(3)焼入れ(加速冷却)
(4)焼戻し
(1)鋼素材の加熱
まず、上述した成分組成を有する鋼素材を、900℃以上1200℃以下の温度に加熱することが好ましい。鋼素材の製造方法は、とくに限定されないが、例えば、上述した成分組成を有する溶鋼を常法により溶製し、鋳造することにより製造できる。溶製は、転炉、電気炉、誘導炉等、任意の方法により行うことができる。また、鋳造は、生産性の観点から連続鋳造法で行うことが好ましいが、造塊-分解圧延法により行うこともできる。鋼素材としては、例えば、鋼スラブを用いることができる。
ここで、鋼素材の加熱は、鋳造などの方法によって得た鋼素材を一旦冷却した後に行ってもよいし、または、得られた鋼素材を冷却することなく直接、加熱に供してもよい。
鋼素材の加熱温度が900℃未満であると、鋼素材の変形抵抗が高いため、後続の熱間圧延における圧延機への負荷が増大し、熱間圧延を行うことが困難となる、おそれがある。そのため、鋼素材の加熱温度は900℃以上とすることが好ましい。一方、鋼素材の加熱温度が1200℃より高いと、鋼の酸化が顕著となり、酸化による酸化膜を除去することによるロスが増大する結果、歩留まりが低下する、おそれがある。そのため、鋼素材の加熱温度は1200℃以下とすることが好ましい。
(2)熱間圧延
[圧下率:870℃以下の累積圧下率が15~75%]
熱間圧延において、870℃以下のオーステナイト未再結晶温度域での、累積圧下率が15%未満であると、組織の微細化が十分におこらず、靭性が低下する。一方、累積圧下率が75%を超えると、下記の仕上げ温度での圧延が困難になる。そのため、870℃以下の累積圧下率を15~75%とする。好ましくは、30~70%である。
[最終圧延終了温度:700~830℃]
熱間圧延において、最終圧延終了温度が700℃未満であると、集合組織起因のセパレーションが発生しやすく、靭性が低下する。一方、最終圧延終了温度が830℃を超えると、未再結晶域での十分な圧下が困難となり、微細な組織が得られず、強度が低下する。なお、熱延鋼板の最終板厚は特に限定されないが、上述したように、6mm以上50mm以下とすることが好ましい。
(3)焼入れ(加速冷却)
上記熱間圧延後の熱延鋼板に直接、焼入れを行う。この直接焼入れは、鋼板の1/4tの位置における温度で600℃以下300℃以上の温度域における平均冷却速度が3℃/s以上であることが肝要である。
すなわち、直接焼入れにおいて、上記の平均冷却速度が3℃/s未満であると、所望の変態組織が得難く、十分な強度および靭性を得ることが困難となる。一方、平均冷却速度の上限は特に限定されないが、平均冷却速度が200℃/sよりも高いと、鋼板内の各位置における温度制御が困難となり、板幅方向および圧延方向に材質のばらつきが出やすくなる。その結果、引張特性および靭性などの材料特性にばらつきが生じやすくなる。そのため、平均冷却速度は200℃/s以下とすることが好ましい。
また、直接焼入れにおいて、冷却終了温度が、(1/4)tにおける温度で300℃よりも高いと、不安定な残留γが生成しやすい。従って、冷却終了温度は、(1/4)tにおける温度で300℃以下とする。このような条件で加速冷却をすることにより、熱延鋼板が良好に焼入れされる。
直接焼入れにおける冷却処理は、特に限定されることなく任意の方法で行うことができる。例えば、空冷および水冷の一方または両方を用いることができる。水冷としては、水を用いた任意の冷却方法(例えば、スプレー冷却、ミスト冷却、ラミナー冷却など)を用いることができる。
(4)焼戻し
次いで、焼入れ後の熱延鋼板に対し、焼戻しを施す。焼戻し温度は、550℃以上Ac点未満とする。焼戻し温度が550℃未満では、焼戻しが不十分でシャルピー靭性が低下する。また、焼戻し温度がAc点以上になると、強度低下や、不安定なγが生成し、脆性亀裂発生抑制能が低下する。
なお、Ac点は、下記(1)式により求めることができる。
C1点(℃)=750.8-26.6×C+17.6×Si-11.6×Mn-22.9×Cu-23×Ni+24.1×Cr+22.5×Mo-39.7×V-5.7×Ti +232.4×Nb-169.4×Al ・・・(1)
ただし、上記(1)式中の元素記号は各元素の含有量(質量%)を表し、当該元素が含有されていない場合は0とする。
焼き戻し工程における加熱には、加熱温度を上記の通り制御できる方法であれば、任意の加熱方法を用いることができる。加熱方法の一例としては、炉加熱が挙げられる。前記炉加熱には、特に限定されることなく、一般的な熱処理炉を用いることができる。
なお、焼き戻し温度に到達した後は、焼き戻し温度で任意の時間保持した後に任意の冷却を開始してもよい。焼き戻し温度での保持を行う場合、保持時間は特に限定されないが、5分以上とすることが好ましい。
以下に述べる手順で鋼板を製造し、その特性を評価した。
まず、表1に示す成分組成を有する溶鋼を転炉で溶製し、連続鋳造法によって鋼素材としての鋼スラブ(厚さ:200mm)を製造した。なお、上述した(1)式によって求めたAC1点(℃)を表1に併記する。
Figure 2023057907000001
次に、表2に示した条件に従って、得られた鋼スラブを加熱し、熱間圧延して、各板厚(最終板厚)を有する熱延鋼板としたのち、焼入れ、そして焼戻しを施して製品鋼板とした。
かくして得られた製品鋼板のそれぞれについて、ミクロ組織、残留γ量、引張強さ(TS)、および-196℃におけるシャルピー吸収エネルギー(vE-196℃)、脆性亀裂発生抑制能(CTOD試験)を、以下の手法に従って評価した。その評価結果を、表2に併記する。
[ミクロ組織]
各鋼板から、1/4tの位置が観察位置となるように、ミクロ組織観察用の試験片を採取した。この試験片を、圧延方向と垂直な断面が観察面となるよう樹脂に埋め、鏡面研磨した。次いで、ナイタール腐食を実施した後、倍率2000、10000倍の走査型電子顕微鏡で観察して組織の画像を撮影した。得られた画像を解析して、ミクロ組織を同定した。
[深冷処理後の残留γ量]
各鋼板の1/4tの位置から板面に平行にX線回折用試験片を5枚採取し、液体窒素に30分浸漬後、1/4tの位置が測定面となるよう、試験片に研削および化学研磨を施し、X線回折に供した。対称反射X線回折パターンに現れるα-Feの(200)、(211)面、γ-Feの(200)、(220)、(311)面の回折強度を求め、γ-Feの体積率を算出し、5枚の試験片の平均値を求め、残留γ量(体積率)とした。
(引張強さ)
鋼板の1/4tの位置から、JIS4号引張試験片を採取した。この引張試験片を用い、JIS Z 2241の規定に準拠して引張試験を実施して、鋼板の引張強さ(TS)を評価した。引張強さが690MPa以上であれば、高強度であり合格とした。
(極低温靭性)
鋼板の1/4tの位置から、JIS Z 2202の規定に準拠してVノッチ試験片を採取した。このVノッチ試験片を用い、JIS Z 2242の規定に準拠してシャルピー衝撃試験を実施し、-196℃におけるシャルピー吸収エネルギー(vE-196℃)を求めた。シャルピー吸収エネルギーは、鋼板の極低温靭性の指標と見なすことができる。シャルピー衝撃試験は、各鋼板の圧延方向の先端側、後端側および中央付近において、圧延方向に沿って3本の試験片を採取し、各試験片について測定を行った。個々の測定結果と平均値を表2に示す。このフルサイズのシャルピー衝撃試験において、各試験片のvE-196℃が200J以上であればシャルピー靭性に優れるものと評価し合格とした。
(脆性破壊発生抑制能)
板厚が15mmの鋼板については板厚tの1/2の深さ位置(1/2t)から、それ以外の鋼板では1/4tの位置からISO 12135に準じた10×10×55mmの試験片を採取し、ISO 12135に準拠して実施した。試験温度は-165℃とした。試験にて不安定破壊(脆性破壊)しなかったものを合格とした。
Figure 2023057907000002

Claims (4)

  1. 質量%で、
    C:0.01%以上0.15%以下、
    Si:0.01%以上0.50%以下、
    Mn:0.05%以上0.20%未満、
    Ni:6.0%以上7.5%以下、
    Cr:0.01%以上1.00%以下、
    Mo:0.01%以上0.50%以下、
    P:0.03%以下、
    S:0.005%以下、
    N:0.0010%以上0.0080%以下および
    Al:0.008%以上0.100%以下
    を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、
    鋼板の表面から板厚方向に板厚の1/4の深さ位置における残留オーステナイトの量が1.7%未満である、鋼板。
  2. 前記成分組成は、さらに、質量%で、
    Cu:0.40%以下、
    Nb:0.05%以下、
    V:0.05%以下、
    Ti:0.03%以下および
    B:0.0030%以下
    から選択される1または2以上を含有する、請求項1に記載の鋼板。
  3. 前記成分組成が、さらに、質量%で、
    Ca:0.007%以下、
    REM:0.010%以下および
    Mg:0.070%以下
    から選択される1または2以上を含有する、請求項1または2に記載の鋼板。
  4. 請求項1から3のいずれかに記載の成分組成を有する、鋼素材に、870℃以下の累積圧下率が15~75%および最終圧延終了温度が鋼板表面温度で830~700℃である熱間圧延を行って鋼板とした後、該鋼板に、該鋼板の表面から板厚方向に板厚の1/4の深さ位置における温度で600℃以下300℃以上の温度域における平均冷却速度が3℃/s以上および冷却終了温度が300℃以下である、焼入れを行って、550℃以上Ac点未満の温度域に焼戻す、鋼板の表面から板厚方向に板厚の1/4の深さ位置における残留オーステナイトの量が1.7%未満である、鋼板の製造方法。

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