JP2023055801A - 血液画分からのGlu-プラスミノーゲンの製造および使用 - Google Patents

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Abstract

【課題】臓器不全を有する患者を治療するための組成物を提供する。【解決手段】臓器不全、血栓事象、動脈閉塞疾患、微小循環、播種性血管内凝固(DIC)、およびこれらの2つもしくはそれ以上の組合せからなる群から選択される障害を患っているかまたは発症するリスクがある患者の治療における使用のための、Glu-プラスミノーゲンを含む組成物を提供する。【選択図】なし

Description

本発明は、血漿またはGlu-プラスミノーゲンを含む血漿画分の陰イオン交換クロマトグラフィーを含む、Glu-プラスミノーゲンを単離する方法に関する。さらには、本発明は、本発明の方法から得られ得るGlu-プラスミノーゲンならびに臓器不全、血栓事象、動脈閉塞疾患、微小循環、播種性血管内凝固(DIC)、およびこれらの2つもしくはそれ以上の組合せからなる群から選択される障害を患っているかまたは発症するリスクがある患者を治療する方法におけるその使用に関する。本発明によるプラスミノーゲンはまた、一般に後天性プラスミノーゲン欠乏症を患っている患者を治療するために使用することができる。したがって、それらの患者は、臓器不全(例えば、患者の腎臓、心臓、脳、肝臓、肺、筋肉、排出腺、内分泌腺、目、骨などにおける臓器不全)を発症するリスクがある患者であり得る。
臓器不全は、重篤な生命を脅かす病的状態である。多くの場合、多臓器不全は、敗血症、多発性外傷および/またはウイルス疾患により引き起こされ、ショック症状に繋がり、組織因子の放出および凝固プロセスの終了を開始させる。多発外傷性ショックおよび手術は、組織損傷、悪性腫瘍に繋がって転移の解放に繋がることがあり、敗血症の場合、白血球が増加する。各機序は組織因子の増進を開始させることがあり、フィブリンクロットの形成に関連し得る。線維素溶解により凝固亢進の均衡を取ることができなければ、この事象は頻繁に多臓器不全に繋がる。死体腎臓移植後の線維素溶解の障害およびプロテインCの増加がSeitzらにより教示されている[非特許文献1]。
多臓器不全を有する患者は、可能な限り迅速な好適な治療戦略を発見するために様々な異なる医薬を用いて治療することができる。
敗血症に起因する多臓器不全を有する患者は、通常、抗生物質を用いて血栓症予防と共に治療される。一部の場合には、患者はまた、臓器特異的治療、例えば、腎不全のための透析、多臓器欠陥(例えば、虫垂)の手術、通気療法および異なる細菌のための抗感染療法および全身性血管効果を呈する血管関連薬物(アドレナリン、ノルアドレナリンのようなカテコールアミン)、血行動態安定化、および活性化プロテインC(場合により組換え)および免疫グロブリン(例えば、IgGおよびIgM)により治療される。
そのような治療は、重篤な望ましくない副作用を抱えている。したがって、天然プロテアーゼ阻害剤による血栓効果の治療が検討された。血栓効果に対する現行の標準治療は、天然プロテアーゼ阻害剤を使用することにより線維素溶解を改善させない。アンチトロンビン-III(主にF.Xaおよびトロンビンを阻害する)のような天然プロテアーゼ阻害剤の追加は、既存のフィブリンクロットはそのような天然プロテアーゼ阻害剤を用いる治療により影響されないという欠陥を有する。線維素溶解を開始させることができず、多臓器不全に繋がる。
血栓症の治療は、通常、薬物により行われる。静脈血栓の外科的除去は特殊な場合のために留保される。血栓の拡大を予防するために、抗凝固阻害が求められる。最初に、ヘパリン調製物または第Xa因子阻害剤が使用される。クロットの成長が停止すると、身体は損傷の浄化を開始することができる。クロットが破壊され、静脈の自由な流れを再び得ようとする。これには数週から数ヶ月かかり、静脈系のより多くの部分が罹患している程、時間は長くなる。クロットの破壊および静脈の再生において、血液の凝固性を増加させる物質が放出される。この期間中、新たな血栓症のリスクが特に高い。したがって、さらな
る抗凝固薬は多くの場合に回避される。次いで、フェンプロクモン、ワルファリンまたはエチルビスクマセタット(ethylbiscoumacetat)のような4-ヒドロキシクマリンを約3~6ヶ月間使用することができる。クマリンの使用は、血栓症を予防するが出血しやすさも増加させるので、典型的に、定期的な血液検査および特に注意することを必要とする。とりわけ、抗凝固療法に起因する出血のこのリスクは、日常の臨床プラクティスにおいて未だに解決されていない問題である。
一般にプラスミノーゲンの精製方法が文献に記載されている(特許文献1を参照)。
しかしながら、特に、得られるプラスミノーゲンは安定でなく、またLys-プラスミノーゲンの画分を含有することから、これらの方法は満足のいくものではない。他の方法は、かなり不良な回収率を示し、Glu-プラスミン、Glu-プラスミノーゲンおよびLys-プラスミノーゲンを明確に識別しない(特許文献2;特許文献3;非特許文献2を参照)。
血液凝固の均衡は、2つの阻害因子、アンチトロンビンIIIおよびヘパリン補因子IIにより取られる。形成されたフィブリンクロットは、線維素溶解系の活性化によってのみ除去される。線維素溶解系の活性化は、プラスミン活性化に依存する。ヒト血漿は、活性化のいくつもの形態でプラスミノーゲンを含有し、それはGlu-プラスミノーゲン(ネイティブ)から開始し、Lys-プラスミノーゲン(わずかに活性化)であり、またその活性化形態であるプラスミンを含有する。健常個体におけるuPA、tPAを通じたネイティブGlu-プラスミノーゲンの活性化は鍵となる機序である(非特許文献3)。
ストレプトキナーゼまたはウロキナーゼは、異なる血栓形成事象において血栓溶解を達成するために治療的状況において使用される(非特許文献4;非特許文献5)。線維素溶解は、プラスミノーゲン(PLG)の活性化に起因して開始され、PLGからプラスミンへの切断に繋がる[非特許文献6]。それにより、3つの異なる活性化の機序が公知である[非特許文献7]。プラスミノーゲンは、内皮細胞およびフィブリンクロットに対して高い結合親和性を有する。組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)の追加の結合は、活性化およびプラスミン形成に繋がる。最後の機序は、細胞表面上のプラスミノーゲンの結合により説明され、プラスミノーゲンはtPAによりプラスミンに活性化される[非特許文献3]。
活性化されたプラスミンは、線維素溶解系における鍵となる酵素である。したがって、プラスミンは、フィブリンクロットマトリックスに結合している限り制御阻害因子アルファ-2-アンチプラスミン(A2AP)により阻害されないが、放出されたプラスミンは即座に阻害される。遊離のプラスミンは0.1秒の非常に短い半減期を有する。Glu-プラスミノーゲンおよびアルファ-2-アンチプラスミン(A2AP)の半減期は50時間である。対照的に、Lys78-プラスミノーゲンはわずか20時間の半減期を有する[非特許文献7]。プラスミンは、トリプシンより高い選択性でリシンおよびアルギニン残基のカルボキシル側において優先的な切断を呈する。それは、重合したフィブリンを可溶性生成物に変換させる[非特許文献8]。
中間分子Lys-プラスミノーゲンは、典型的に、ヒト身体中でフィブリンクロットの時点においてのみ存在する。Lys-プラスミノーゲンは、典型的に、Glu-プラスミノーゲンからLys-プラスミノーゲンへの変換後にプラスミンに直接的に変換される。それゆえ、プラスミノーゲンの活性化前の形態であるLys-プラスミノーゲンは、典型的に、ヒト身体中で循環しない。
ヒト身体において、減少したA2AP(アルファ-2-アンチプラスミン)(70~8
0%)および100%増加したPLGの比を測定することができる。ヒト血清中のPLG濃度は約0.2g/Lであり、プラスミノーゲン基準活性は0.75~1.60U/mLの範囲内である[非特許文献9]。PLGの分子量は92kDaである[非特許文献10]。ある特定の病的状態の下で、A2AP>PLG(1.26の平均比)は非可逆的な反発に繋がる。プラスミノーゲンの欠乏は、特に微小血管系において、フィブリンクロットの望ましくない持続の危険に繋がる。
実施例のセクションに示されるように、疾患の異なる状態において、患者は後天性プラスミノーゲン欠乏症を示すことを立証することができた。
一部の場合には、増加した濃度のアルファ-2-アンチプラスミンは、場合による使用可能な量のプラスミノーゲンを阻害する。しかし他の場合には、アルファ-2-アンチプラスミン濃度は、線維素溶解の減少に影響を有しない。これらの患者は既にほとんどの量のプラスミノーゲンを使い果たしている。結果として生じるプラスミノーゲンの欠乏は、再生産の欠如に起因してヒト身体により均衡を取ることができない。凝固および線維素溶解系の理にかなった均衡は凝固亢進へと移行する。これはまた、組織プラスミノーゲン活性化因子の投与が30%の卒中患者においてのみ改善を示し得る理由である。
要約すると、先行する研究は、一般にプラスミノーゲンを含む組成物の投与は、血液中のプラスミノーゲンの異常に低い(全体)レベルを患っている患者の身体状態を改善できることを示している。プラスミノーゲンレベルの減少は、このタンパク質の消費の増加により引き起こすことができる。例えば、臓器不全を有する患者は、血液中のかなり低いレベルのプラスミノーゲンを示す。Glu-プラスミノーゲンは、活性の特定の領域を知ることなくプラスミノーゲン欠乏症のオーファンドラッグステータスについて試験されている。
オーファンドラッグステータスは、遺伝性のプラスミノーゲン欠乏症についてのみ到達された。これらの患者は、興味深いことに、健常状態において凝固亢進の増加を有しない。この適応症のために、プラスミノーゲンは主に、身体全体にわたる粘膜上の線維性堆積物の形成に主に関する重篤な臨床症状を予防するために使用されるが、主に血栓事象には使用されない。
原理的に、治療としてGlu-プラスミノーゲンを使用する、髄膜炎菌に起因する複数の皮膚壊死を含む多臓器不全を有する患者の回復は、バイオ医薬品としての高い潜在能力を説明する。複数の皮膚壊死(ウォーターハウス・フリードリヒセン症候群)からの4歳の少年の回復のデータ[非特許文献11]。髄膜炎菌患者のデータは、排尿の増加により見ることができるGlu-プラスミノーゲン治療による回復を説明する。
プラスミノーゲン治療の23日後に患者は生存し、集中治療から解放されることができた。播種性血管内凝固(DIC)もまた非特許文献12に記載されている。
驚くべきことに、Glu-プラスミノーゲンは成熟形態のLys-プラスミノーゲンまたはプラスミンよりも有意に高い望ましい活性を有することが発見された。しかしながら、その乏しい入手可能性により、Glu-プラスミノーゲンの実用可能性は未だに限られている。分別方法など、Glu-プラスミノーゲンを単離するための当該技術分野において公知の満足のいく方法はほとんどない。
したがって、特に、再現性のある処理を用いて大規模かつ大量に、Glu-プラスミノーゲンを取得および単離するための効率的な方法が望ましい。
上記に鑑みて、Glu-プラスミノーゲンを取得および単離するための効率的な方法に対する満たされていない必要性が未だに存在する。精製されたGlu-プラスミノーゲンはまた、臓器不全を患っているかまたは臓器不全を発症するリスクがある患者の治療のような患者の治療においておよび血液画分からそのような化合物を得るためのさらなる展望を可能とする。
Glu-プラスミノーゲンは、ヒト血漿中の天然循環アイソフォームである。Glu-プラスミノーゲンは、異なる単離および精製方法に起因してLys-プラスミノーゲンに切断されることがある。血栓性疾患である遺伝性のプラスミノーゲン欠乏症は1982年に調査検討された[非特許文献13]。最初に、多くの研究者はLys-プラスミノーゲン注射を用いてこれらの患者を治療することを試みたが、それは出血のような非常に大きい副作用を結果としてもたらした。患者は、鼠径部血腫、陥入および肉眼的血尿を発症した[非特許文献14]。Lys-プラスミノーゲン形態は別のコンホメーションを有し、天然に存在するGlu-プラスミノーゲンよりも高い親和性を上皮細胞に対して有する。親和性の増加は、Lys-プラスミノーゲンの非特異的結合に繋がる。結合分子はプラスミンに直接的に変換され、これもまた上皮細胞を切断する。有害効果は、遺伝性のプラスミノーゲン欠乏症の治療のよい影響より大きかった。無作為かつ不明確な治療機会は、Lys-プラスミノーゲンの産生不良に繋がる。
初期の実験は、プラスミンの静脈注射は出血の形態で高度に有害な効果を結果としてもたらすことを示した。プラスミンは、例えば手術中に局所的に、臨床現場において血栓事象の低減のためにほとんど使用されなかった(非特許文献15;非特許文献16)。しかしながら、プラスミンの直接注射を用いて微小血栓事象を溶解させることはできない。枝状の微小凝固は、Glu-プラスミノーゲンの静脈注射を用いてのみ達することができる。Glu-プラスミノーゲンがフィブリンクロットの微小凝固に達する場合、Glu-プラスミノーゲンは臨床現場において活性化され、プラスミンは血栓を消散させる。
Glu-プラスミノーゲンの残りをLys-プラスミノーゲンに、そして最後にプラスミンに変換させるために最小量のLys-プラスミノーゲンで充分である。さらに、数分子がLys-プラスミノーゲンに変換された時に、理にかなった自己活性化機序に起因して、Glu-プラスミノーゲンの収率は劇的に低減される。したがって、最良かつ理にかなった精製機構の正しい選択はかなりの影響力を有し得る。
英国特許第1305504号 国際公開第2002/095019号パンフレット 米国特許第5288489号
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驚くべきことに、血漿および血漿画分、特に脱クリオ血漿からGlu-プラスミノーゲンを容易に得ることができること、およびGlu-プラスミノーゲンは、臓器不全を患っているかまたは臓器不全を発症するリスクがある患者を治療するための効果的な医薬物質として働き得ることが行った実験において発見された。
したがって、本発明の第1の態様は、Glu-プラスミノーゲンを単離する方法であって、以下の工程:
(i)血漿またはGlu-プラスミノーゲンを含む血漿画分を提供する工程;
(ii)血漿または血漿画分を、陽イオン基を含む樹脂に基づく陰イオン交換体と接触させる工程;
(iii)血漿または血漿画分をローディングした工程(ii)から得られた陰イオン交換体を、陰イオン交換体の樹脂の陽イオン基と競合する陽イオンを含まない第1の緩衝液B1を用いて洗浄する工程;
(iv)工程(iii)の洗浄された陰イオン交換体から、陰イオン交換体の樹脂の陽イオン基と競合する陽イオンを含む第2の緩衝液B2を用いてGlu-プラスミノーゲンを溶出させ、それにより、緩衝液B2およびGlu-プラスミノーゲンを含む溶液を得る工程;
(v)場合により、工程(iv)から得られた溶液のpHを所望の範囲内のpHに調整する工程;
(vi)場合により、工程(iv)、(v)または(vii)のいずれかから得られた溶液に、Glu-プラスミノーゲンがプラスミンまたはLys-プラスミノーゲンに成熟することを防止する1つまたはそれ以上の安定化剤を加えることにより、Glu-プラスミノーゲンを安定化させる工程;
(vii)場合により、工程(iv)~(vi)のいずれかからの溶液を1つまたはそれ以上の抗ウイルス処理に供する工程;および
(viii)場合により、工程(iv)または(vii)のいずれかから得られたGlu-プラスミノーゲンを含む溶液を乾燥または凍結乾燥させる工程
を含む、方法に関する。
この方法は、既存の血漿分別方法とは異なる血漿画分から比較的高収率のかなり純粋なGlu-プラスミノーゲン(典型的に、全てのポリペプチド成分の90%(w/w)より高い純度を有する)を得ることを可能とする。当該技術分野において公知の方法と比較して、本発明の方法は、高い全体的なタンパク質純度と共に、増加したタンパク質収率を得ることおよびGlu-プラスミノーゲン活性化(Lys-プラスミノーゲンまたはプラスミンへの活性化)を最小化することを可能とする。
本発明の方法は、既存の血漿分別方法と一体化させることができる。開始血漿中間物としては、血漿、脱クリオ血漿が挙げられ、捕捉されたGlu-プラスミノーゲンの後の通過画分を直接的にコーン法に流すことができる。さらには、コーン法の後のペーストI+II+III(すなわち、I~III)またはペーストI+III(そしてまた、それぞれ、画分I+II+IIIまたは画分I+IIII)の結果として生じた廃棄物画分を使用することができる。
例えば、ペーストI、ペーストI+III、ペーストI+II+IIIおよびいくつもの中間物のようなGlu-プラスミノーゲンを含有する任意のおよび各コーン画分を使用することができる。最も好ましくは、既存の生成物(例えば、IgG、アルブミン)が方法により影響されない画分が使用される。主生成物の精製後、この廃棄物画分は通常廃棄される。課題となるのは、Glu-プラスミノーゲンの形態を保ち、許容されるタンパク質収率を維持することである。これは一般に、高収率、高安定性の生成物を伴い、コーンまたはキストラー-ニッチマンにより定義される典型的な血漿分別方法の標準的な方法への最小の介入を伴う、有益な方法を見出すための主な課題である。
本発明の方法は、当該技術分野における血漿分画手順において廃棄物画分と考えられる画分などの様々なプラスミン画分からGlu-プラスミノーゲンを単離することを可能とする。
本明細書で使用される場合、「単離する」は、組成物中の単離されたGlu-プラスミノーゲンの含有量を増加させることとして最も広い意味で「精製する」と交換可能に理解することができる。それは必ずしも純粋ではない。しかしながら、好ましくは、方法の生成物は、総タンパク質重量に基づいて、少なくとも25%(w/w)のGlu-プラスミノーゲンを含む。より好ましくは、方法の生成物は、総タンパク質重量に基づいて、少なくとも50%(w/w)、よりいっそう好ましくは少なくとも70%(w/w)、よりいっそう好ましくは少なくとも80%(w/w)、特に少なくとも90%(w/w)のGlu-プラスミノーゲンを含む。
Glu-プラスミノーゲン含有サンプルの純度は、典型的に、本発明の方法を実行すると増加する。純度は、さらなる精製工程を使用することでさらに増加させることができる。生成物の仕様は、Glu-プラスミノーゲンが高純度に精製されることを意味する。不純物(例えば、使用される血漿中、使用される血漿画分中、および生成物中に残存するもの)は、例えば、IgG、IgM、アルブミンおよび/または他の血漿タンパク質を含み得る。好ましくは、活性化プロテアーゼは、本発明の方法により(本質的に)除去される。好ましくは、最終生成物中のLys-プラスミノーゲンの含有量はかなり低く(例えば、総タンパク質重量に基づいて、0.5%未満、好ましくは0.1%未満、より好ましくは0.05%未満、特に0.01%未満)、特に、(本質的に)検出可能でない。
本発明の方法により得られるGlu-プラスミノーゲンはまた、Glu-プラスミノーゲン形態において安定化させることができる(すなわち、例えば、(本質的に)Lys-プラスミノーゲン形態に変換しない)。Glu-プラスミノーゲンからLys-プラスミノーゲンへの最小の変換は生成物を不安定化させ得る。最終生成物中の(主な)不純物は
最も好ましくはアルブミンであり、これもまたより高い安定性に繋がり得る。
好ましい実施形態では、Glu-プラスミノーゲンは、最終生成物中で少なくとも95%またはそれより高い純度を有する。
好ましい実施形態では、本発明の方法は、本発明の方法の工程(v)~(viii)のいずれかから得られた溶液のダイアフィルトレーションの工程、好ましくは、工程(v)から得られた溶液のダイアフィルトレーションのさらなる工程をさらに含み、特に、前記さらなる工程は、グリシン緩衝液中へのダイアフィルトレーションである。この工程は、Glu-プラスミノーゲン生成物の高い安定性に達するために使用することができる。そのようなさらなる工程の生成物は、工程(v)~(viii)のいずれか、特に、工程(vi)~(viii)のいずれかにさらに供される溶液であり得る。
本発明の方法により得られるGlu-プラスミノーゲン生成物の純度および安定性は、驚くべきことに、先行技術のそれと比較して有益である。
介入の方法により得られ得る精製されたGlu-プラスミノーゲンは、好ましくは、(例えば、グリシン緩衝液中に)ダイアフィルトレーションすることができる。この追加の工程は、タンパク質分解活性を有さず、凝集物を有さず、断片を有さず、高いGlu-プラスミノーゲン回収を有する特に高度に安定なGlu-プラスミノーゲン生成物を実証した。
「タンパク質」、「ポリペプチド」および「ペプチド」という用語は、主にアミノ酸残基から構成され、アミド結合を介して互いに連続的に連結された少なくとも20アミノ酸残基を含む任意の化学的実体として最も広い意味で本発明の全体を通じて交換可能に理解することができる。本発明の意味においてタンパク質は、1つもしくはそれ以上の翻訳後修飾に供することもできるし、供さないこともでき、かつ/または1つもしくはそれ以上の非アミノ酸部分を共役することもできるし、共役させないこともできることが理解される。タンパク質の末端は、場合により、例えば、アミド化、アセチル化、メチル化、アシル化のような当該技術分野において公知の任意の手段によりキャッピングすることができる。
翻訳後修飾は当該技術分野において周知であり、脂質化、リン酸化、硫酸化、グリコシル化、切断、酸化、還元、脱カルボキシル化、アセチル化、アミド化、脱アミド、ジスルフィド結合形成、アミノ酸付加、補因子付加(例えば、ビオチン化、ヘム付加、エイコサノイド付加、ステロイド付加)および金属イオン、非金属イオン、ペプチドまたは小分子の錯化および鉄-硫化物クラスターの付加であり得るがこれらに限定されない。さらに、場合により、補因子、特に、環状グアニジン一リン酸(cGMP)であるが、場合により、例えば、ATP、ADP、NAD、NADH+H、NADP、NADPH+H、金属イオン、陰イオン、脂質などでもある補因子を、これらの補因子の生物学的影響にかかわらず、タンパク質に結合させることができる。
Glu-プラスミノーゲンの文脈において、特にグリコシル化は役割を果たし得る。本発明の方法の利点は、Glu-プラスミノーゲンの2つのグリコシル化パターンが、精製された生成物中に観察可能であり得ることである。
本発明の意味におけるGlu-プラスミノーゲンは、目的の任意の種のGlu-プラスミノーゲンであり得る。好ましくは、Glu-プラスミノーゲンは、ヒトまたは哺乳動物起源のものであり、特にヒトGlu-プラスミノーゲンである。Glu-プラスミノーゲン(すなわち、ネイティブのインタクトなヒトプラスミノーゲン)は、24個ものジスル
フィド結合を有する291アミノ酸の糖タンパク質である。
Glu-プラスミノーゲンは、単一のN-結合型シアル酸付加二分岐グリカンを含有する。2つのO-グリカンは、末端のGalにおいてα-2-3シアル酸付加されたGal
β-1-3GalNAcコアを有する。追加のジシアル酸付加形態は、GalNAcへのα-2-6連結を有する第2のシアル酸残基を有する。モノおよびジシアル酸付加形態は、ヒトプラスミノーゲンにおいて80:20のモル比で生じる。ヒトプラスミノーゲン活性化因子のための最適な条件は37℃、pH7.4である[Wohl,R.C.;Summaria,L.;Robbins,K.C.、「Kinetics of activation of human plasminogen by different
activator species at pH 7.4 and 37 degrees C.」、The Journal of Biological Chemistry、1980年、S.2005~2013頁]。血漿中のPLGの濃度(2.2μM)は、血漿および間質液中の受容体の50%占有より大きい。PLG受容体は細胞表面上に豊富に存在し(37,000部位/血小板->10部位/内皮細胞)、単一のクラスの分子に限定されない。プラスミンは83kDaの分子量を有する[Robbins,K.C.;Boreisha,I.G.;Arzadon,L.;Summaria,L.、「Physical and chemical properties of the NH2-terminal glutamic acid and lysine forms of human plasminogen and their derived plasmins with an NH2-terminal lysine heavy (A) chain.」、The Journal of Biological Chemistry、1975年、S.4044~4047頁;Barlow,G.H.;Summaria,L.;Robbins,K.C.、「Molecular weight studies on human plasminogen and plasmin at the microgram level.」、The Journal of Biological Chemistry、1969年、S.1138~1141頁]。遊離のプラスミンは0.1秒の半減期を有し、これは、対応する阻害因子アルファ-2-アンチプラスミン(A2AP)が2.6日の半減期を有することとは対照的である。
周知の通り、Glu-プラスミノーゲンを切断し、それにより、Lys-プラスミノーゲン(典型的にGlu-プラスミノーゲンのアミノ酸部分Lys77のN末端での切断)、Glu-プラスミン(典型的にGlu-プラスミノーゲンのアミノ酸部分Arg561とVal562との間の切断)および(Lys-)プラスミン(典型的にGlu-プラスミノーゲンのアミノ酸部分Lys77のN末端、アミノ酸部分Arg561とVal562との間の切断)に酵素的に成熟させることができる。
Glu-プラスミノーゲンのアミノ酸部分Lys77のN末端での切断は、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPa)により促進させることができる。Glu-プラスミノーゲンのアミノ酸部分Arg561とVal562との間の切断は、プラスミンにより自己触媒的に促進させることができる。
血漿(blood plasma)(「血漿」(plasma)、「血漿」(plasm)または「血漿」(blood plasm)などとしても表される)は、任意の供給源から得ることができる。例えば、それは、細胞が除去された血液保存物から得ることができる。血漿はまた、様々な供給者から市販されている。
本発明、特にその工程(i)および(ii)の文脈において、「血漿画分」という用語は、Glu-プラスミノーゲンを含む血漿から分離された任意の部分として最も広い意味
において理解することができる。血漿から血漿画分を調製するためのいくつもの経路が当業者に公知である。1つの一般的に公知の例は、冷凍解凍サイクルおよび溶液中のエタノールの濃度を徐々に増加させることに基づくコーン法(Cohn process)(コーン法(Cohn method)としても表される)である。
工程(iv)から得られた溶液のpHを所望の範囲内のpHに調整する工程(v)は、工程(iv)から得られた溶液のpHを4.5~10.3の範囲内のpHに調整するものであり得る。
例えば、工程(iv)から得られた溶液のpHを所望の範囲内のpHに調整する工程(v)は、工程(iv)から得られた溶液のpHを7~8、4.5~5.5、5.5~6.5、6.5~7.3、7.3~8.0、または8.0~10.3の範囲内のpHに調整するものであり得る。
好ましい実施形態では、工程(v)は、工程(iv)から得られた溶液のpHを7~8または4.5~5.5の範囲内、特に7~8の範囲内のpHに調整するものである。これは、生理学的範囲内または生理学的範囲の近くの範囲である。
代替的な好ましい実施形態では、工程(v)は、工程(iv)から得られた溶液のpHを4.5~5.5、5.5~6.5、6.5~7.3、7.3~8.0、または8.0~10.3の範囲内のpHに調整するものである。そのようなpH値は、Glu-プラスミノーゲンおよび場合により他の成分を安定化させ得る。
任意の溶液を場合により濾過することができる。
手順の工程(ii)~(viii)のそれぞれを場合により繰り返すことができることが理解されるであろう。
したがって、本発明の好ましい実施形態は、以下の工程:
(i)血漿またはGlu-プラスミノーゲンを含む血漿画分を提供する工程;
(ii)血漿または血漿画分を、陽イオン基を含む樹脂に基づく陰イオン交換体と接触させる工程;
(iii)血漿または血漿画分をローディングした工程(ii)から得られた陰イオン交換体を、陰イオン交換体の樹脂の陽イオン基と競合する陽イオンを含まない第1の緩衝液B1を用いて洗浄する工程;
(iv)工程(iii)の洗浄された陰イオン交換体から、陰イオン交換体の樹脂の陽イオン基と競合する陽イオンを含む第2の緩衝液B2を用いてGlu-プラスミノーゲンを溶出させ、それにより、緩衝液B2およびGlu-プラスミノーゲンを含む溶液を得る工程;
(v)場合により、工程(iv)から得られた溶液のpHを所望の範囲内のpHに調整する工程;
(vi)工程(iv)、(v)または(vii)のいずれかから得られた溶液に、Glu-プラスミノーゲンがプラスミンまたはLys-プラスミノーゲンに成熟することを防止する1つまたはそれ以上の安定化剤を加えることにより、Glu-プラスミノーゲンを安定化させる工程;
(vii)工程(iv)~(vi)のいずれかからの溶液を1つまたはそれ以上の抗ウイルス処理に供する工程であって、特に、前記抗ウイルス処理が:
(vii-I)1つまたはそれ以上の界面活性剤、好ましくは、Tween-20、Tween-80およびTriton-X-100からなる群から選択される1つまたはそれ以上の界面活性剤、ならびにリン酸エステル、特にトリ-n-ブチル-ホスフェート
のような1つまたはそれ以上の他の抗ウイルス剤を加えること;および
(vii-II)工程(vii-I)の溶液を除去すること
である、前記工程;
(ii*)工程(vii)から得られた溶液を、陽イオン基を含む樹脂に基づく陰イオン交換体と接触させる工程;
(iii*)血漿または血漿画分をローディングした工程(ii*)から得られた陰イオン交換体を、陰イオン交換体の樹脂の陽イオン基と競合する陽イオンを含まない第1の緩衝液B1を用いて洗浄する工程;
(iv*)工程(iii)の洗浄された陰イオン交換体から、陰イオン交換体の樹脂の陽イオン基と競合する陽イオンを含む第2の緩衝液B2を用いてGlu-プラスミノーゲンを溶出させ、それにより、緩衝液B2およびGlu-プラスミノーゲンを含む溶液を得る工程;
(vii)工程(iv)~(vi)のいずれかからの溶液を1つまたはそれ以上の抗ウイルス処理に供する工程であって、特に、前記抗ウイルス処理が:
(vii-III*)限外濾過、特にナノ濾過
である、前記工程;
(v*)場合により、工程(vii*)から得られた溶液のpHを所望の範囲内のpH(上記の通り、1つの好ましい実施形態では、例えば、7~8または4.5~5.5の範囲内、特に、7~8の範囲内のpH)に調整する工程;
(vi*)場合により、工程(v*)から得られた溶液に、Glu-プラスミノーゲンがプラスミンまたはLys-プラスミノーゲンに成熟することを防止する1つまたはそれ以上の安定化剤を加えることにより、Glu-プラスミノーゲンを安定化させる工程であって、特に、前記安定化剤が、アプロチニン、アルファ-2-アンチプラスミン(A2AP)、D-フェニルアラニル-L-プロリル-アルギニンクロロメチルケトン、小分子安定化剤、およびこれらの組合せからなる群から選択される、前記工程;および
(viii)場合により、特に凍結乾燥により、工程(vii*)、(v*)または(vi*)のいずれかから得られたGlu-プラスミノーゲンを含む溶液を乾燥または凍結乾燥させる工程
を含む方法に関する。
工程(vii-I)の溶液を除去するサブ工程(vii-II)は、任意の好適な緩衝液を用いて洗浄することにより行うことができる。例示的には、例えば、pH5.75の25mMの酢酸緩衝液のような、10~250mMの酢酸塩および5.4~7.4の範囲内のpHの酢酸緩衝液を使用することができる。
好ましい実施形態では、血漿画分は:
(a)典型的に、冷凍およびその後に解凍に供された血漿の上清から得られた脱クリオ血漿;
(b)コーン法もしくはキストラー-ニッチマン法のペーストI+II+IIIもしくはI+IIIの廃棄物画分またはこれらの画分の2つもしくは3つ全ての組合せ;および
(c)コーン法もしくはキストラー-ニッチマン法のペーストI+II+IIIもしくはペーストI+IIIまたはGlu-プラスミノーゲンを含有するこれらのいずれかの画分もしくは廃棄物画分
からなる群から選択される。
より好ましい実施形態では、血漿画分は:
(a)典型的に、冷凍およびその後に解凍に供された血漿の上清から得られた脱クリオ血漿;および
(b)コーン法もしくはキストラー-ニッチマン法のペーストI+II+IIIもしくはI+IIIの廃棄物画分またはこれらの画分の2つもしくは3つ全ての組合せ
からなる群から選択される。
好ましい実施形態では、血漿画分は:
(a)典型的に、冷凍およびその後に解凍に供された血漿の上清から得られた脱クリオ血漿;および
(b)コーン法のペーストI+II+IIIもしくはペーストI+IIIの廃棄物画分またはこれらの画分の2つもしくは3つ全ての組合せ
からなる群から選択される。
コーン法のペーストI+II+III(すなわち、I~III)またはペーストI+IIIの廃棄物画分は、典型的に、画分I+II+III(すなわち、I~III)またはI+IIIのペースト相である。
特に好ましい実施形態では、本発明の方法は、Glu-プラスミノーゲンを単離する方法であって、以下の工程:
(i)Glu-プラスミノーゲンを含む脱クリオ血漿(その亜画分など)を提供する工程;
(ii)脱クリオ血漿を、陽イオン基を含む樹脂に基づく陰イオン交換体と接触させる工程;
(iii)脱クリオ血漿をローディングした工程(ii)から得られた陰イオン交換体を、陰イオン交換体の樹脂の陽イオン基と競合する陽イオンを含まない第1の緩衝液B1を用いて洗浄する工程;
(iv)工程(iii)の洗浄された陰イオン交換体から、陰イオン交換体の樹脂の陽イオン基と競合する陽イオンを含む第2の緩衝液B2を用いてGlu-プラスミノーゲンを溶出させ、それにより、緩衝液B2およびGlu-プラスミノーゲンを含む溶液を得る工程;
(v)場合により、工程(iv)から得られた溶液のpHを所望の範囲内のpHに調整する工程;
(vi)場合により、工程(iv)、(v)または(vii)のいずれかから得られた溶液に、Glu-プラスミノーゲンがプラスミンまたはLys-プラスミノーゲンに成熟することを防止する1つまたはそれ以上の安定化剤を加えることにより、Glu-プラスミノーゲンを安定化させる工程;
(vii)場合により、工程(iv)~(vi)のいずれかからの溶液を1つまたはそれ以上の抗ウイルス処理に供する工程;および
(viii)場合により、工程(iv)または(vii)のいずれかから得られたGlu-プラスミノーゲンを含む溶液を乾燥または凍結乾燥させる工程
を含む、方法である。
脱クリオ血漿(cryo-poor plasma)は、当該技術分野において理解されるものとして最も広い意味において理解することができる。「脱クリオ血漿」(cryo poor plasma)、「クリオ上清」、「クリオ沈殿枯渇物」という用語をこれと交換可能に使用することができる。それは、典型的に、クリオ沈殿が除去された血漿、したがって冷凍およびその後に解凍に供された血漿の上清として理解される。
好ましい実施形態では、本発明の方法の工程(i)は、Glu-プラスミノーゲンを含む血漿画分を提供することであり、前記血漿画分は、ペーストI+IIIおよび/もしくはペーストI+II+IIIからのものであるか、またはカプリル酸および場合によりカルシウムトリホスフェート処理後のペーストI+IIIおよび/もしくはペーストI+II+IIIからの廃棄物ペーストである。
好ましい実施形態では、本発明の方法の工程(i)は、Glu-プラスミノーゲンを含む血漿画分を提供することであり、前記血漿画分は、カプリル酸および場合によりカルシウムトリホスフェート処理後のペーストI+IIIおよび/またはペーストI+II+IIIからの沈殿物である。
代替的な好ましい実施形態では、本発明の方法の工程(i)は、Glu-プラスミノーゲンを含む血漿画分を提供することであり、前記血漿画分は、カプリル酸および、場合により、カルシウムトリホスフェート処理後のペーストI+IIIおよび/またはペーストI+II+IIIからの上清である。
ペーストI+IIIおよびペーストI+II+IIIはまた、以前に冷凍解凍サイクルに供されたサンプル(すなわち、脱クリオ血漿)から得ることができることが理解されるであろう。
さらには、ペーストI+IIIからおよび/またはI~IIIからも、ならびに、場合により、カプリル酸およびカルシウムトリホスフェート処理後の結果として生じた廃棄物画分からGlu-プラスミノーゲンを精製することができる。画分I+II+IIIは、主生成物IgGの精製のための方法から得ることができる。先行する工程において、ペースト懸濁液を酢酸緩衝液(10mM~250mM、pH5.0~6.0)中に溶解させることができる。
その後、カプリル酸およびカルシウムトリホスフェートを加えることができ、深層濾過工程において除去することができる。濾液は、IgGのさらなる精製工程のために使用することができ、濾過ケーク(廃棄物画分)は、場合により、再び洗浄することができる。個々の分別方法に応じた特定の洗浄工程に起因してGlu-プラスミノーゲンを溶出させることができる。pH値を調整することができる。次いで、上記される本発明の方法を実行することができ、したがって、Glu-プラスミノーゲンを精製することができる。
ペーストI+IIIおよび/またはペースト懸濁液I+II+IIIから、Glu-プラスミノーゲンを直接的に精製することもできる。Glu-プラスミノーゲンの収率は、血漿濃度(例えば、約80~100μg/mL、一例では、90μg/mLなど)と比較して、最小限に減少し得る(例えば、約60~80μg/mL、一例では、73μg/mLなど)。例示的には、減少は、0.5~0.9倍、好ましくは0.6~0.8倍、特に0.70~0.75倍の血漿濃度が得られるようなものであり得る。Glu-プラスミノーゲン濃度は、多くの場合に30μg/mL未満である廃棄物画分における濃度より高いものであり得る。したがって、廃棄物画分と比較して、Glu-プラスミノーゲン濃度は、少なくとも1.1倍、好ましくは少なくとも1.3倍、より好ましくは少なくとも1.7倍、よりいっそう好ましくは少なくとも2倍、特に少なくとも2.5倍増加し得る。しかしながら、廃棄物画分を使用する大きな利点は、IgGのようなタンパク質生成物のための現行の製造手順に影響することなく、そうでなければ廃棄されるタンパク質を追加的に使用することであり得る。それと共に、新規の精製手順が新たなタンパク質生成物のために得られる。一般に、Glu-プラスミノーゲンは、ペーストI+III、画分I+II+IIおよび画分I+II+IIIの廃棄物画分から単離することができる。濃度は、各個々のコーン法またはキストラー-ニッチマン法とは異なり得る。
原理的に、陰イオン交換体は、タンパク質、特にGlu-プラスミノーゲンの精製のために好適な当該技術分野において公知の任意の陰イオン交換体であり得る。
典型的に、それは、カラム、特に、固相として樹脂を有するクロマトグラフィーカラムである。最も典型的には、樹脂はビーズ(主にマイクロメートル範囲内)を形成する。
そのようなビーズは、1~1000μm、好ましくは10~500μm、より好ましくは20~200μm、よりいっそう好ましくは50~150μm、よりいっそう好ましくは60~120μm、特に70~100μmの範囲内の質量平均の粒子の(本質的に)球状のビーズであり得る。
あるいは、静止したフィルターおよび一体構造の担体を使用することもできる。例えば、シリカ、セラミックス、多糖またはこれらの2つもしくはそれ以上の組合せのような任意の固相を使用することができる。陰イオン交換体の樹脂は、典型的に、陰イオン交換を可能とするためにその表面上に陽イオン基またはその塩を有する。本発明の文脈において、そのような陽イオン基は、Glu-プラスミノーゲンを回復不能に破壊することなくGlu-プラスミノーゲンとの陰イオン交換を可能とする任意の陽イオン基であり得る。好ましい樹脂は、高い結合能力、頑強な材料およびより高い流速を使用できる能力を有する。好ましくは、陰イオン交換体は、Glu-プラスミノーゲンを(本質的に)修飾せず、特に、Lys-プラスミノーゲンへの変換に繋がらない。さらには、タンパク質分解活性は、好ましくは、陰イオン交換体の使用に起因して増加しない。
好ましい実施形態では、陰イオン交換体の樹脂は、アミノ基またはその塩、好ましくは、第一級アミノ基またはその塩を有する。
好ましい実施形態では、陰イオン交換体の樹脂は、アミノ基またはその塩、好ましくは、第一級アミノ基またはその塩を有し、より好ましくは、構造部分-R-NHまたは-R-NH +A(式中、Rは、20個以下の炭素原子の有機スペーサーであり、好ましくは、分岐または非分岐のC~C10-(ヘテロ)アルキレン残基、分岐または非分岐のC~C10-(ヘテロ)アルケニレン残基、分岐または非分岐のC~C10-(ヘテロ)アルキニレン残基、C~C10-(ヘテロ)シクロアルキレン残基、C~C10-(ヘテロ)芳香性残基からなる群から選択され、これらの残基のいずれも、場合により、上述の残基の1つまたはそれ以上により置換することができ、Aは陰イオン性対イオンであり、特に、陰イオン交換体はリシル部分を有する)を有する。
より好ましい実施形態では、陰イオン交換体の樹脂は、構造部分-R-NHまたは-R-NH +A(式中、RはC~C10-アルキレン残基であり、Aは陰イオン性対イオンである)を有する。特に好ましい実施形態では、陰イオン交換体はリシル部分を有する。リシル部分は、L-リシルまたはD-リシル部分、特にL-リシル部分であり得る。
好ましくは、本発明の方法はまた、Glu-プラスミノーゲンのタンパク質分解活性を低減させる方法である。
陰イオン交換体は、任意の結合能力を有し得る。好ましい実施形態では、陰イオン交換体は、樹脂の排液1mL当たり0.1mgより多くのプラスミノーゲン、好ましくは樹脂の排液1mL当たり0.2mgより多くのプラスミノーゲン、より好ましくは樹脂の排液1mL当たり0.5mgより多くのプラスミノーゲン、よりいっそう好ましくは樹脂の排液1mL当たり1.0mgより多くのプラスミノーゲン、特に樹脂の排液1mL当たり1.5mgより多くのプラスミノーゲンの結合能力を有する。
使用される樹脂は、特に、セラミックビーズに基づく場合、高い圧縮性を有し得る。したがって、好ましい実施形態では、陰イオン交換体の固相は、セラミックスに基づく。例えば、セラミックビーズに結合したリシン部分は、陰イオン交換体として使用することができる。高密度のリガンド(例えば、リシン部分に基づく)を使用する場合、カラムの迅
速なパッキングを達成することができる。これは、数分以内に達成することができる。
例えば、Lysine Hyper-D Affinity Chromatography Sorbent(Pall、USAから市販されている)を陰イオン交換体樹脂として使用することができる。例えばHyper-D樹脂はかなり剛性であり、圧力の増加または樹脂の縮小もしくは膨潤を伴わずに高い流速の使用を可能とする。さらには、そのような樹脂の特徴は、高い結合能力に起因して高い生産性に繋がり得る。好ましくは、Glu-プラスミノーゲンを溶出するときの困難を回避するためおよびタンパク質分解活性化機構を回避するために、結合能力は高過ぎないものである。
陰イオン交換体はまた、英国特許第1305504号、国際公開第2002/095019号パンフレットまたはBoiら、Journal of Membrane Science、2015年、475巻:71~79頁のいずれかにおいて一般にプラスミンおよびプラスミノーゲンの文脈において開示されるようなものであり得る。
代替的な好ましい実施形態では、陰イオン交換体の固相は、多糖または多糖の組合せに基づく。より好ましい実施形態では、陰イオン交換体の固相は、セファロースに基づく。例えば、セファロースビーズに結合したリシン部分を陰イオン交換体として使用することができる。セファロースは、典型的に、部分架橋アガロースに基づく。それは、約1~10%の架橋アガロース、好ましくは2~5%の架橋アガロース、特に約4%の架橋アガロースを含有し得る。例えば、ECH-Lysine Sepharose 4 Fast
Flow(GE Healthcare、UK)を陰イオン交換体樹脂として使用することができる。この樹脂は架橋された4%のアガロースに基づき、したがって、大きいサンプル体積の迅速な処理を可能とする。
任意の流速を使用することができる。例えば、10~5000cm/h、好ましくは20~1000cm/h、より好ましくは50~500cm/h、特に少なくとも200cm/hの流速を使用することができる。
工程(i)において、フィード体積の血漿または血漿画分がカラムにフィードされる。好ましい実施形態では、工程(i)において、5~50カラム体積(CV)、好ましくは8~25CV、より好ましくは10~22CV、よりいっそう好ましくは15~21CV、特に(約)20CVの血漿または血漿画分がフィード液として使用される。
好ましくは、Glu-プラスミノーゲンと陰イオン交換体との接触時間はかなり短い。1つの好ましい実施形態では、Glu-プラスミノーゲンと陰イオン交換体との接触時間は、1~60分、好ましくは2~45分、より好ましくは3~30分、よりいっそう好ましくは5~20分、よりいっそう好ましくは7~15分、特に約10分である。この接触時間はまた、Glu-プラスミノーゲンの分子がカラムを通過するために必要な時間として定義することができる。
接触時間に基づいて、特に5~25cmのカラム高さを使用する場合に、本発明の方法において使用される(線)流速は、好ましくは10cm/h~100cm/hの範囲内、より好ましくは20cm/h~80cm/hの範囲内、よりいっそう好ましくは30cm/h~50cm/hの範囲内、特に41cm/h~46cm/hの範囲内であり得る。
対イオンAは、この目的のために好適な任意の陰イオンであり得ることが理解されるであろう。典型的に、対イオンは500Da未満の分子量を有する。好ましくは、対イオンAは薬学的に許容されるものである。必ずしもそうではないが好ましくは、対イオンAは、塩化物、リン酸、リン酸水素、リン酸二水素、硫酸、ヒドロキシル、炭酸、およ
び炭酸水素からなる群から選択される。対イオンAは、典型的に、カラムがフラッシュされる時に使用される緩衝液中に含まれるようなものである。対イオンAは、例えば、Glu-プラスミノーゲンの陰イオン基との、陰イオンの迅速な交換を可能とするために、-R-NH3に強固に結合しないようなものであるべきである。
好ましい実施形態では、本発明の方法は、工程(ii)の血漿または血漿画分を、陽イオン基を含む樹脂に基づく陰イオン交換体と接触させることの前の追加の工程:
(o)pH6~8の範囲内、特にpH6.5~pH7.4の範囲内のpHを有する緩衝液を用いて陰イオン交換体を平衡化する工程
を含む。
緩衝液B1および/または緩衝液B2の緩衝剤は、任意の濃度において使用することができる。好ましくは、緩衝液B1および/または緩衝液B2の各々の緩衝剤の濃度は、互いから独立してそれぞれ、0.1mM~1Mの範囲内、好ましくは1mM~0.5Mの範囲内、特に0.01~0.1Mの範囲内である。緩衝液B1およびB2の両方における緩衝剤は、任意の濃度において使用することができる。好ましくは、緩衝液B1およびB2の両方における緩衝剤の濃度は、互いから独立してそれぞれ、0.1mM~1Mの範囲内、好ましくは1M~0.5Mの範囲内、特に0.01~0.1Mの範囲内である。同等の濃度および/またはpH値をB1およびB2において使用できる場合であっても、両方の緩衝液は、その同じまたは異なる緩衝剤および場合によるさらなる成分を含むことができることが理解されるであろう。
緩衝液B1および/または緩衝液B2の緩衝剤は、任意の電導度を有し得る。好ましくは、緩衝液B1および/または緩衝液B2の電導度は、互いから独立してそれぞれ、500mS/cm未満、好ましくは200mS/cm未満、より好ましくは100mS/cm未満、よりいっそう好ましくは0.1~50mS/cmの範囲内、よりいっそう好ましくは0.2~20mS/cmの範囲内、よりいっそう好ましくは0.5~15mS/cmの範囲内、よりいっそう好ましくは1~10mS/cmの範囲内、特に約5mS/cmである。
例示的には、pH6.6のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)をこの平衡化工程のために使用することができる。特に好ましい実施形態では、pH6.6の0.05Mのリン酸緩衝液をこの平衡化工程のために使用することができる。
緩衝液B1およびB2のpHは、互いから独立してそれぞれ、Glu-プラスミノーゲンについて許容される範囲内、すなわち、特に、そのアミド結合を破壊しない範囲内において自由に選択することができる。使用される緩衝液のpHは、選択されるカラムの樹脂に適合させることができることが理解されるであろう。特に、第一級アミノ基を含む樹脂が使用される場合、pHは、好ましくは、塩基性範囲内である。
好ましい実施形態では、第1の緩衝液B1は、7.1~11.5のpH、好ましくは8.5~11のpH、特に10~11のpHを有する。別の好ましい実施形態では、第2の緩衝液B2は、7.1~11.5のpH、好ましくは8.5~11のpH、特に10~11のpHを有する。したがって、好ましい実施形態では、第1の緩衝液B1および/または第2の緩衝液B2は、7.1~11.5のpH、好ましくは8.5~11のpH、特に10~11のpHを有する塩基性緩衝液である。緩衝液B1およびB2のpHは、同じまたは異なるものであり得る。好ましくは、緩衝液B1およびB2のpHの差異は、ΔpH2未満、より好ましくはΔpH1未満、よりいっそう好ましくはΔpH0.5未満、特にΔpH0.3以下またはそれに(本質的に)等しいものであり得る。この工程はまた、好ましくは、(高度に精製された)Glu-プラスミノーゲン生成物を溶出させるためおよ
び80%より高い収率を達成するために有益である。
したがって、好ましい実施形態では、方法は、血漿または血漿画分中のGlu-プラスミノーゲンの開始量の80%より高い、好ましくは85%より高い、特に90%より高いGlu-プラスミノーゲンの収率を達成した。
必ずしもそうではないが好ましくは、緩衝液B1およびB2の組成は、(陰イオン交換体の樹脂の陽イオン基と競合する陽イオンの存在以外、)両方の緩衝液中で(本質的に)同一である。好ましくは、緩衝液B1は、0.01~0.1M(好ましくは0.03~0.07M、特に0.05M)の酢酸ナトリウムを含む。例示的には、緩衝液B1は、0.01~0.1M(好ましくは、0.03~0.07M、特に0.05M)の酢酸ナトリウムおよび0.01~0.1M(好ましくは0.03~0.07M、特に0.05M)のグリシンを含むことができ、8.5~11の範囲内のpH(好ましくは10~11の範囲内のpH、特にpH10.3)に調整することができる。
好ましくは、緩衝液B2は、0.01~0.1M(好ましくは0.03~0.07M、特に0.05M)の酢酸ナトリウムを含む。例示的には、緩衝液B2は、0.01~0.1M(好ましくは0.03~0.07M、特に0.05M)の酢酸ナトリウムおよび0.01~0.1M(好ましくは0.03~0.07M、特に0.05M)のグリシンおよび0.01~0.05M(好ましくは0.02~0.03M、特に0.025M)のリシンを含むことができ、8.5~11の範囲内のpH(好ましくは10~11の範囲内のpH、特にpH10.5)に調整することができる。
上記の通り、第2の緩衝液B2は、陰イオン交換体の陽イオン基と競合する陽イオン(競合物陽イオンCC)を含む。これは、原理的に、Glu-プラスミノーゲンとのイオン性相互作用について陰イオン交換体の樹脂の陽イオン部分との競合を可能とする任意の陽イオンであり得る。
好ましい実施形態では、陰イオン交換体の樹脂との特に有益な競合を可能とするために、緩衝液B2において使用される競合物陽イオンCCは、陰イオン交換体の樹脂のような類似の化学的および物理化学的特性を有する。したがって、当業者は、好ましくは、緩衝液B2において使用される競合物陽イオンCCを、使用される樹脂に適合させる。
したがって、上記に鑑みて、好ましい実施形態では、第2の緩衝液B2は、陰イオン交換体の陽イオン基と競合する陽イオンとして、可溶性のアミンまたはその塩、好ましくは、第1級C~C10-アミンまたはその塩、特に、リシンまたはその塩を含む。陽イオン(例えば、リシンまたはその塩のような陽イオン競合物)の濃度は、方法の抽出物に適合させることができる。
好ましい実施形態では、陽イオン(例えば、リシンまたはその塩のような陽イオン競合物)の濃度は、0.001mol/L~1.0mol/Lの範囲内、好ましくは0.01mol/L~0.1mol/Lの範囲内、より好ましくは0.01mol/L~0.15mol/Lの範囲内、よりいっそう好ましくは0.01mol/L~0.05mol/Lの範囲内、よりいっそう好ましくは0.02mol/L~0.04mol/Lの範囲内、特に(約)0.025mol/L(すなわち、25mmol/L)である。
工程(iv)から得られた溶液のpHを所望の範囲内(例えば、7~8)のpHに調整する工程(工程(v))は、任意の手段により実行することができる。
場合により、pHは、クエン酸の添加により調整される。例示的には、7.5のpHを
得ることができる。あるいは、酸性の酸の添加によりpHを5.0~6.0または6.0~7.5に適合させることができる。
工程(vi)の安定化剤は、Glu-プラスミノーゲンがプラスミンまたはLys-プラスミノーゲンに成熟することを防止する任意の化学的実体であり得る。好ましくは、安定化剤は、変換されたプラスミン分子を(直ちに)捕捉して、これらの分子がさらなるプラスミノーゲン分子を活性化させることを回避させる。好ましくは、安定化剤は、Glu-プラスミノーゲン生成物の非経口投与の後にヒト身体中で負の効果を有しない。特に、安定化剤は毒性でなく、特に好ましくは、薬学的に許容されるものである。
好ましい実施形態では、工程(vi)の安定化剤は天然の安定化剤である。したがって、安定化剤は、合成起源のものではない。特に、Glu-プラスミノーゲンを安定化させることが当該技術分野において公知の全ての安定化剤は、本発明の状況において好適である。
好ましい実施形態では、工程(vi)の安定化剤は、アプロチニン、アルファ-2-アンチプラスミン(A2AP)、D-フェニルアラニル-L-プロリル-アルギニンクロロメチルケトン、小分子安定化剤、およびこれらの組合せからなる群から選択される。より好ましい実施形態では、工程(vi)の安定化剤は、アプロチニン、アルファ-2-アンチプラスミン、D-フェニルアラニル-L-プロリル-アルギニンクロロメチルケトン、およびこれらの組合せからなる群から選択される。あるいはまたはさらに、セルピン、グリセリン、および/もしくは1つもしくはそれ以上の炭水化物またはこれらの誘導体もまた安定化剤として使用することができる。炭水化物は、例えば、単糖(例えば、グルコース、フルクトース、フコース、キシロース、アラビノース、マンノース、ガラクトース、ソルボース)、二糖(例えば、スクロース、マルトース、セロビオース、ラクトース、キシロビオース、ツラノース、トレハロース、メリビオース)、三糖(例えば、メレジトース、ラフィノース)、ならびにオリゴ糖および多糖(例えば、デキストラン、デンプン、セルロース、アガロース)からなる群から選択することができる。使用される炭水化物はまた、HawkeおよびLea(Biochem.J.、1953年6月;54巻(3号):475~9頁)においてリポビテリンIIIの安定化についておよびZimmermann(J.Bacteriol.、1962年、84巻:1297~1302頁)において凍結乾燥時の生物の安定化について記載されているように選択および使用することができる。炭水化物誘導体は、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC、ヒプロメロース)、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルデンプン、ヒドロキシエチルデンプン、またはこれらの2つもしくはそれ以上の組合せのような、例えば、そのアシル化(例えば、アセチル化、メチル化)または硫酸化形態であり得る。
任意の濃度の安定化剤を使用することができる。この濃度は、プラスミンまたはLys-プラスミノーゲンへの成熟を回避するために好適なものであるべきである。
例えば、(場合により組換えの)アプロチニンを0.1~50μg/mLの濃度範囲内、特に0.5~35μg/mLの濃度範囲内で使用することができる。
例えば、(場合により組換えの)アプロチニンは、30μg/mL、6μg/mL、2μg/mLまたは0.6μg/mLの濃度において使用することができる。好ましくは、(場合により組換えの)アプロチニンは、Glu-プラスミノーゲン1μg当たり1ng~1μg、より好ましくはGlu-プラスミノーゲン1μg当たり10ng~0.75μg、特にGlu-プラスミノーゲン1μg当たり0.016μg~0.48μgの濃度範囲内で使用することができる。
例えば、ヒトアルブミンは、0.1μg/mL~100mg/mLの濃度範囲内、好ましくは1μg/mL~50mg/mLの濃度範囲内、より好ましくは5μg/mL~20mg/mLの濃度範囲内、特に0.01~10mg/mLの濃度範囲内で使用することができる。好ましくは、アルブミンは、Glu-プラスミノーゲン1μg当たり1ng~1μgの濃度範囲内、より好ましくはGlu-プラスミノーゲン1μg当たり10ng~25μgの濃度範囲内、特にGlu-プラスミノーゲン1μg当たり0.2μg~15μgの濃度範囲内で使用することができる。
pHおよび緩衝液の組成は、安定な中間Glu-プラスミノーゲン生成物に影響を及ぼし得る。
好ましい実施形態では、追加の工程において、Glu-プラスミノーゲン生成物をさらなる緩衝液中にダイアフィルトレーションすることができる。好ましくは、このさらなる緩衝液は、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、グリシン緩衝液、およびこれらの2つまたはそれ以上の組合せからなる群から選択することができる。より好ましくは、このさらなる緩衝液は、pH6.6~8.0の0.005~0.1Mのリン酸緩衝液、pH7.0~7.4の0.005~0.1Mのクエン酸緩衝液、およびpH4.5~5.5の0.01~0.1Mのグリシン緩衝液、ならびにこれらの2つまたはそれ以上の組合せからなる群から選択することができる。
本発明の精製方法は、驚くべきことに、他の精製方法と比較してより高い安定性を有するGlu-プラスミノーゲン生成物に繋がる。
上記に説明したように、工程(iv)~(vi)のいずれかから得られた溶液を抗ウイルス処理に供することができる。血液から得られた製造物においてウイルス汚染物が懸念されるので、これは医薬の状況において精製されたGlu-プラスミノーゲンの使用可能性を向上させ得る。これは、当該技術分野において公知の任意の抗ウイルス処理であり得る。
好ましい実施形態では、工程(iv)~(vi)のいずれかから得られた溶液は、工程(vii)の抗ウイルス処理に供され、抗ウイルス処理は:
(vii-a)1つまたはそれ以上の界面活性剤、好ましくは、Tween-20、Tween-80およびTriton-X-100からなる群から選択される1つまたはそれ以上の界面活性剤を加えること;
(vii-b)リン酸エステル、特にトリ-n-ブチル-ホスフェート(TnBP)のような1つまたはそれ以上の他の抗ウイルス剤を加えること;
(vii-c)限外濾過、特にナノ濾過;ならびに
(vii-d)上述の2つまたはそれ以上の組合せ
からなる群から選択される。
1つまたはそれ以上の界面活性剤(そしてまた、溶媒界面活性剤(SD))を加えた後(工程vii-a)、そのような界面活性剤は、好ましくは、例えば、特定のSD除去用樹脂により、および/または陰イオン交換体により除去される。好ましくは、界面活性剤を除去する方法は、Glu-プラスミノーゲンに(本質的に)影響を有さず、Glu-プラスミノーゲンにいかなる修飾も導入しない。好ましくは、界面活性剤は、ウイルスの除去の第2の工程が行われる前に(本質的に)除去(例えば、捕捉)される。
例示的には、0.1~5%(w/v)、好ましくは0.5~1.5%(w/v)、特に1%(w/v)のTween-20を使用することができる。例示的には、0.1~0.
5%(w/v)、好ましくは0.2~0.4%(w/v)、特に0.3%(w/v)のTnBPを使用することができる。例示的には、0.1~5%(w/v)のTween-20と0.1~0.5%(w/v)のTnBPとの組合せを使用することができる。特に、1%(w/v)のTween-20と0.3%(w/v)のTnBPとの組合せを使用することができる。
上記の任意の抗ウイルス処理に追加してまたはそれの代替として、工程(iv)~(vii)のいずれかから得られた溶液または工程(viii)から得られた固体形態は、UV光により照射し、それにより(本質的に)滅菌することができる。好ましい実施形態では、ナノ濾過法が追加の抗ウイルス除去工程のために使用される。
非常に好ましい実施形態では、方法は、以下の工程:
(i)血漿またはGlu-プラスミノーゲンを含む血漿画分を提供する工程;
(ii)血漿または血漿画分を、構造部分-R-NHまたは-R-NH +A(式中、RはC~C10-アルキレン残基であり、Aは陰イオン性対イオン、特にリシル残基である)を有する樹脂に基づく陰イオン交換体と接触させる工程;
(iii)血漿または血漿画分をローディングした工程(ii)から得られた陰イオン交換体を、陰イオン交換体の樹脂の陽イオン基と競合する陽イオンを含まない8.5~11のpHを有する第1の緩衝液B1を用いて洗浄する工程;
(iv)工程(iii)の洗浄された陰イオン交換体から、陰イオン交換体のアミノ基と競合する、第1級C~C10-アミンまたはその塩、特に、リシンまたはその塩を含む8.5~11のpHの第2の緩衝液B2を用いてGlu-プラスミノーゲンを溶出させ、それにより、Glu-プラスミノーゲンを含む溶液を得る工程;
(v)工程(iv)から得られた溶液のpHを所望のpH範囲(例えば、7~8または4.5~5.5の範囲内、特に、7~8の範囲内のpH)に調整する工程;
(vi)工程(iv)、(v)または(vii)のいずれかから得られた溶液に、Glu-プラスミノーゲンがプラスミンまたはLys-プラスミノーゲンに成熟することを防止する1つまたはそれ以上の安定化剤を加えることにより、Glu-プラスミノーゲンを安定化させる工程であって、特に、前記安定化剤が、アプロチニン、アルファ-2-アンチプラスミン、D-フェニルアラニル-L-プロリル-アルギニンクロロメチルケトン、小分子安定化剤、およびこれらの組合せからなる群から選択される、工程;ならびに
(vii)工程(iv)~(vi)のいずれかからの溶液を抗ウイルス処理に供する工程であって、特に、前記抗ウイルス処理が:
(vii-I)1つまたはそれ以上の界面活性剤、好ましくは、Tween-20、Tween-80およびTriton-X-100からなる群から選択される1つまたはそれ以上の界面活性剤、ならびにリン酸エステル、特にトリ-n-ブチル-ホスフェートのような1つまたはそれ以上の他の抗ウイルス剤を加えること;
(vii-II)工程(vii-I)の溶液を除去し、それにより、1つまたはそれ以上の界面活性剤(そしてまた、溶媒界面活性剤(SD))を除去すること;および
(vii-III)限外濾過、特にナノ濾過を行うこと;ならびに
(viii)場合により、工程(iv)または(vii)のいずれかから得られたGlu-プラスミノーゲンを含む溶液を乾燥または凍結乾燥、特に凍結乾燥させる工程
を含む。
好ましくは、緩衝液B1およびB2は、特に、濃度および/または電導度に関して、上記および実施例のセクションに定義されるものである。
さらに、1つまたはそれ以上の安定化剤の含有量および緩衝液の濃度は、上記および実施例のセクションにおいて使用されるものであり得る。
場合により、工程(ii)~(iv)は、工程(v)~(vii)のいずれかから得られた任意の溶液を用いて繰り返すことができる。本明細書において、上記に説明したものと同じ条件、または他の条件を使用することができる。また、全ての他の工程を繰り返すことができる。これは、例示的に以下の通りに実行することができる:
特に好ましい実施形態では、方法は、以下の工程:
(i)血漿またはGlu-プラスミノーゲンを含む血漿画分を提供する工程;
(ii)血漿または血漿画分を、構造部分-R-NHまたは-R-NH +A(式中、RはC~C10-アルキレン残基であり、Aは陰イオン性対イオン、特にリシル残基である)を有する樹脂に基づく陰イオン交換体と接触させる工程;
(iii)血漿または血漿画分をローディングした工程(ii)から得られた陰イオン交換体を、陰イオン交換体の樹脂の陽イオン基と競合する陽イオンを含まない8.5~11のpHを有する第1の緩衝液B1を用いて洗浄する工程;
(iv)工程(iii)の洗浄された陰イオン交換体から、陰イオン交換体のアミノ基と競合する、第1級C~C10-アミンまたはその塩、特に、リシンまたはその塩を含む8.5~11のpHの第2の緩衝液B2を用いてGlu-プラスミノーゲンを溶出させ、それにより、Glu-プラスミノーゲンを含む溶液を得る工程;
(v)工程(iv)から得られた溶液のpHを所望の範囲内のpHに調整する工程;
(vi)工程(iv)、(v)または(vii)のいずれかから得られた溶液に、Glu-プラスミノーゲンがプラスミンまたはLys-プラスミノーゲンに成熟することを防止する1つまたはそれ以上の安定化剤を加えることにより、Glu-プラスミノーゲンを安定化させる工程であって、特に、前記安定化剤が、アプロチニン、アルファ-2-アンチプラスミン、D-フェニルアラニル-L-プロリル-アルギニンクロロメチルケトン、小分子安定化剤、およびこれらの組合せからなる群から選択される、工程;ならびに
(vii)工程(vi)の溶液を抗ウイルス処理に供する工程であって、特に、前記抗ウイルス処理が:
(vii-I)1つまたはそれ以上の界面活性剤、好ましくは、Tween-20、Tween-80およびTriton-X-100からなる群から選択される1つまたはそれ以上の界面活性剤、ならびにリン酸エステル、特にトリ-n-ブチル-ホスフェートのような1つまたはそれ以上の他の抗ウイルス剤を加えること;および
(vii-II)工程(vii-I)の溶液を除去すること
である、工程;ならびに
(ii*)工程(vii)から得られた溶液を、構造部分-R-NHまたは-R-NH +A(式中、RはC~C10-アルキレン残基であり、Aは陰イオン性対イオン、特にリシル残基である)を有する樹脂に基づく陰イオン交換体と接触させる工程;
(iii*)血漿または血漿画分をローディングした工程(ii*)から得られた陰イオン交換体を、陰イオン交換体の樹脂の陽イオン基と競合する陽イオンを含まない8.5~11のpHを有する第1の緩衝液B1を用いて洗浄する工程;
(iv*)工程(iii*)の洗浄された陰イオン交換体から、陰イオン交換体のアミノ基と競合する、第1級C~C10-アミンまたはその塩、特に、リシンまたはその塩を含む8.5~11のpHの第2の緩衝液B2を用いてGlu-プラスミノーゲンを溶出させ、それにより、Glu-プラスミノーゲンを含む溶液を得る工程;
(vii*)工程(iv)~(vi)のいずれかからの溶液を抗ウイルス処理に供する工程であって、特に、前記抗ウイルス処理が:
(vii-III*)限外濾過、特にナノ濾過を行うこと
である、工程;ならびに
(v*)場合により、工程(vii*)から得られた溶液のpHを所望のpH範囲(例えば、7~8または4.5~5.5の範囲内、特に、7~8の範囲内のpH)に調整する工程;
(vi*)場合により、工程(v*)から得られた溶液に、Glu-プラスミノーゲンが
プラスミンまたはLys-プラスミノーゲンに成熟することを防止する1つまたはそれ以上の安定化剤を加えることにより、Glu-プラスミノーゲンを安定化させる工程であって、特に、前記安定化剤が、アプロチニン、アルファ-2-アンチプラスミン、D-フェニルアラニル-L-プロリル-アルギニンクロロメチルケトン、小分子安定化剤、およびこれらの組合せからなる群から選択される、工程;ならびに
(viii)場合により、工程(vii*)、(v*)または(vi*)のいずれかから得られたGlu-プラスミノーゲンを含む溶液を乾燥または凍結乾燥、特に凍結乾燥させる工程
を含む。
好ましくは、それぞれ現れる緩衝液B1およびB2は、特に、濃度および/または電導度に関して、上記に定義されるものである。
特に好ましい実施形態では、本発明の方法は、以下の工程:
(i)以下:
(a)典型的に、冷凍およびその後に解凍に供された血漿の上清から得られた脱クリオ血漿;および
(b)コーン法もしくはキストラー-ニッチマン法のペーストI+II+III(そしてまた、I~III)もしくはI+IIIの廃棄物画分またはこれらの画分の2つまたは3つ全ての組合せ
からなる群から選択されるGlu-プラスミノーゲンを含む血漿画分、
特に、コーン法またはキストラー-ニッチマン法のペーストI+IIIまたはペーストI+II+IIIの廃棄物画分;
(ii)血漿または血漿画分を、構造部分-R-NHまたは-R-NH +A(式中、RはC~C10-アルキレン残基であり、Aは陰イオン性対イオン、特にリシル残基である)を有する樹脂に基づく陰イオン交換体と接触させる工程;
(iii)血漿または血漿画分をローディングした工程(ii)から得られた陰イオン交換体を、0.01~0.1Mの濃度の8.5~11のpHを有する第1の緩衝液B1を用いて洗浄する工程であって、前記第1の緩衝液B1が、陰イオン交換体の樹脂の陽イオン基と競合する陽イオンを含まない、工程;
(iv)工程(iii)の洗浄された陰イオン交換体から、0.01~0.1Mの濃度の8.5~11のpHの第2の緩衝液B2を用いてGlu-プラスミノーゲンを溶出させ、それにより、Glu-プラスミノーゲンを含む溶液を得る工程であって、前記第2の緩衝液B2が、陰イオン交換体のアミノ基と競合する第1級C~C10-アミンまたはその塩、特に、リシンまたはその塩を含む、工程;
(v)工程(iv)から得られた溶液のpHを所望の範囲内のpHに調整する工程;
(vi)工程(iv)、(v)または(vii)のいずれかから得られた溶液に、Glu-プラスミノーゲンがプラスミンまたはLys-プラスミノーゲンに成熟することを防止する1つまたはそれ以上の安定化剤を加えることにより、Glu-プラスミノーゲンを安定化させる工程であって、特に、前記安定化剤が、アプロチニン、アルファ-2-アンチプラスミン、D-フェニルアラニル-L-プロリル-アルギニンクロロメチルケトン、小分子安定化剤、およびこれらの組合せからなる群から選択される、工程;および
(vii)場合により、工程(vi)の溶液を抗ウイルス処理に供する工程
を含む。
好ましい実施形態では、陰イオン交換体は、Glu-プラスミノーゲンを溶出させる工程(iv)を実行した後に再生させることができる。これは、陰イオン交換体をNaOHまたはKOH含有水溶液と接触させることにより達成することができる。例示的には、0.2~1.5MのNaOH、より好ましくは0.5~1MのNaOHの範囲内のNaOHをこの目的のために使用することができる。最も好ましくは、0.1MのNaOHおよび
0.1MのHClを使用することができる。これは例えば、個々の陰イオン交換体の長期寿命をサポートし得る。
本発明の方法から得られ得る(および得られた)Glu-プラスミノーゲンは特に純粋であり、特に患者を治療する状況において、いくつもの応用のために良好に使用できることが理解されるであろう。
したがって、本発明のさらなる態様は、本発明の方法から得られ得る(得られた)Glu-プラスミノーゲンに関する。
上記の方法の文脈において提供される定義および/または好ましい実施形態は、適宜変更の上で、本発明によるGlu-プラスミノーゲンに適用されることが理解されるであろう。
精製された天然に存在するタンパク質Glu-PLGは、ヒト身体中のプラスミノーゲンと同じ物理化学的および生物学的特性を有する。in vivoでの物理化学的および生物学的特性を本明細書においてより詳細に説明する。
本発明の方法から得られ得る(得られた)Glu-プラスミノーゲンはまた、製造することができ、そしてまた場合により、冷凍、急速冷凍または凍結乾燥された状態で貯蔵することができ、次いで、例えば、-35℃、-80℃または液体窒素中のような凝固点より低い任意の温度で貯蔵することができる。
好ましい実施形態では、本発明によるGlu-プラスミノーゲンは凍結乾燥される(freeze-dried;lyophilizedとも表される)。凍結乾燥粉末はまた、周囲温度において貯蔵することができる。
凍結乾燥工程では、Glu-プラスミノーゲンを安定化させ、保護する1つまたはそれ以上の剤が存在し得る。これは、上記される1つもしくはそれ以上の炭水化物またはその誘導体としての安定化剤であり得る。例えば、炭水化物もしくはその誘導体および/またはグリセリンが存在し得る。
炭水化物は、例えば、単糖(例えば、グルコース、フルクトース、フコース、キシロース、アラビノース、マンノース、ガラクトース、ソルボース)、二糖(例えば、スクロース、マルトース、セロビオース、ラクトース、キシロビオース、ツラノース、トレハロース、メリビオース)、三糖(例えば、メレジトース、ラフィノース)、およびオリゴ-および多糖(例えば、デキストラン、デンプン、セルロース、アガロース)からなる群から選択することができる。使用される炭水化物はまた、HawkeおよびLea(Biochem.J.、1953年6月;54巻(3号):475~9頁)においてリポビテリンIIIの安定化についておよびZimmermann(J.Bacteriol.、1962年、84巻:1297~1302頁)において凍結乾燥時の生物の安定化について記載されているように選択および使用することができる。炭水化物誘導体は、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC、ヒプロメロース)、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルデンプン、ヒドロキシエチルデンプン、またはこれらの2つもしくはそれ以上の組合せのような、例えば、そのアシル化(例えば、アセチル化、メチル化)または硫酸化形態であり得る。
上記に説明したように、本発明の方法は、並外れた高純度においてGlu-プラスミノーゲンを得ることを可能とした。
したがって、本発明のさらなる態様は、総タンパク質質量に基づいて、少なくとも80%(w/w)のGlu-プラスミノーゲンを含むタンパク質組成物に関する。
好ましい実施形態では、タンパク質組成物は、総タンパク質質量に基づいて、少なくとも85%(w/w)、より好ましくは少なくとも90%(w/w)またはさらには少なくとも95%(w/w)のGlu-プラスミノーゲンを含む。
典型的に、そのようなタンパク質組成物は、特に高い安定性および有意に低減されたタンパク質分解活性を有し、特に、タンパク質分解活性を(本質的に)有しない。
Glu-プラスミノーゲンの両方のグリコシル化形態をそのような高度に精製されたタンパク質組成物において同定することができる。好ましくは、主な不純物はアルブミンである。より好ましくは、アルブミンは、(本質的に)唯一の不純物である。上述したように、アルブミンは、Glu-プラスミノーゲンに対する安定化効果を有し得る。したがって、場合により、微量のアルブミンをタンパク質組成物中に意図的に存在させることができる。これは、その好ましい濃度など、上記により詳細に記載されている。
好ましい実施形態では、この組成物中に含まれるGlu-プラスミノーゲンは、本発明の方法から得られる。
タンパク質組成物は、上記の方法およびGlu-プラスミノーゲンの文脈において説明したように、溶液、懸濁液、エマルションまたは乾燥形態であり得る。特に、タンパク質組成物は凍結乾燥粉末である。
上記に説明したように、タンパク質組成物は、特に、凍結乾燥粉末または溶液である場合、場合により、例えば、上記される1つまたはそれ以上の糖および/または安定化剤のような1つまたはそれ以上の安定化剤を含むことができる。含有量範囲は上記に提供される。
そのようなタンパク質は、典型的に、純粋な乾燥タンパク質としてではなく、医薬組成物中で投与されることが当業者に公知である。
したがって、さらなる態様では、本発明はまた、Glu-プラスミノーゲンおよび少なくとも1つの薬学的に許容される担体を含む医薬組成物に関する。
上記の方法またはGlu-プラスミノーゲンの文脈において提供される定義および/または好ましい実施形態は、適宜変更の上で、本発明による医薬組成物に適用されることが理解されるであろう。「医薬組成物」および「医薬配合物」という用語は、交換可能に理解することができる。
好ましい実施形態では、本発明の医薬組成物中に含まれるGlu-プラスミノーゲンは、本発明の方法により得られるGlu-プラスミノーゲンである。
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」、「薬学的に許容される賦形剤」、「担体」および「賦形剤」という用語は、Glu-プラスミノーゲンの薬理学的許容性をサポートし得る任意の物質として最も広い意味において交換可能に理解することができる。
好ましい医薬組成物は、初回通過効果を回避する投与経路を可能とする。より好ましくは、医薬組成物は、患者への注射による投与のために好適(例えば、静脈内(i.v.)
、動脈内(i.a.)、腹腔内(i.p.)、筋肉内(i.m.)、および皮下(s.c.)注射からなる群から選択される投与経路のために好適)であるように調製される。あるいはまたはさらに、医薬組成物はまた、例えば、経鼻または経皮投与のような他の投与経路のために好適なものであり得る。
すぐ使用できる医薬組成物は、好ましくは、液体配合物、特に注射用ポーションである。貯蔵形態はまた、液体であり得るが、乾燥形態(例えば、乾燥または凍結乾燥Glu-プラスミノーゲンを含む粉末のような粉末)またはペーストもしくはシロップなどでもあり得る。場合により、乾燥形態、ペーストまたはシロップは、患者への投与の前に溶解または乳化させることができる。
薬学的に許容される担体は、例示的に、水性緩衝液、生理食塩水、水、ジメチルスルホキシド(DMSO)、エタノール、植物油、パラフィン油またはこれらの2つもしくはそれ以上の組合せからなるリストから選択することができる。さらには、薬学的に許容される担体は、場合により、1つもしくはそれ以上の界面活性剤、1つもしくはそれ以上の気泡剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS))、1つもしくはそれ以上の着色剤(例えば、食品着色料)、1つもしくはそれ以上のビタミン、1つもしくはそれ以上の塩(例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、亜鉛の塩)、1つもしくはそれ以上の保湿剤(例えば、ソルビトール、グリセリン、マンニトール、プロピレングリコール、ポリデキストロース)、1つもしくはそれ以上の酵素、1つもしくはそれ以上の保存剤(例えば、安息香酸、メチルパラベン)、1つもしくはそれ以上の酸化防止剤、1つもしくはそれ以上の薬草および植物抽出物、1つもしくはそれ以上の安定化剤、1つもしくはそれ以上のキレート剤(例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA))、ならびに/または1つもしくはそれ以上の取込みメディエーター(例えば、ポリエチレンイミン(PEI)、細胞透過ペプチド(CPP)、タンパク質形質導入ドメイン(PTD)、抗菌性ペプチド、など)を含有することができる。
本発明はまた、本発明の医薬組成物の投薬単位に関する。例示的には、本発明は、単回用量容器または複数剤形に関し得る。
上記に指し示したように、Glu-プラスミノーゲン、特に、医薬組成物中に含まれるGlu-プラスミノーゲンは、製薬の状況において非常に良好に使用することができる。
したがって、さらなる態様では、本発明はまた、臓器不全、血栓事象、動脈閉塞疾患、微小循環、播種性血管内凝固(DIC)、およびこれらの2つもしくはそれ以上の組合せからなる群から選択される障害、特に臓器不全を患っているかまたは発症するリスクがある患者を治療する方法における使用のためのGlu-プラスミノーゲンに関する。
好ましい実施形態では、障害は臓器不全または血栓事象である。
プラスミノーゲンは、直接的な治療機会として使用することができる。現在使用されているtPA(組織プラスミノーゲン活性化因子)またはuPA(ウロキナーゼ)は、少なくとも正常なプラスミノーゲンレベルを必要とする間接的な療法として使用される。tPAは、プラスミノーゲンをプラスミンへと活性化させ得る。これは、連続する追加の組織損傷を引き起こし得る既に形成された血栓を溶解させるために使用することができる。それらの場合における低いプラスミノーゲンレベルは、in-vivoでのGlu-プラスミノーゲンタンパク質の消費により引き起こされることがある。患者は、多くの場合、危険な48時間の間に血漿中に低濃度のプラスミノーゲンを有することが発見された。Glu-プラスミノーゲンの注射後、プラスミノーゲンの総レベルは経時的に増加した。さらに、プラスミノーゲンの測定だけでなく、アルファ-2-アンチプラスミンの量もまた決
定的なものであり得る。増加した量のアルファ-2-アンチプラスミンは、利用可能なプラスミノーゲン分子を阻害し得る。また、この場合、Glu-プラスミノーゲンの注射は、高濃度のアルファ-2-アンチプラスミンの均衡を取ることがあり、危険な48時間の状態内において改善に繋がり得る。
したがって、より好ましい態様では、本発明はまた、臓器不全を患っているかまたは臓器不全を発症するリスクがある患者を治療する方法における使用のためのGlu-プラスミノーゲンに関する。
上記の方法および/または医薬組成物の文脈において提供される定義および好ましい実施形態は、適宜変更の上で、本発明による使用のためのGlu-プラスミノーゲンに適用されることが理解されるであろう。
換言すれば、本発明はまた、臓器不全、血栓事象、動脈閉塞疾患、微小循環、播種性血管内凝固(DIC)、およびこれらの2つもしくはそれ以上の組合せからなる群から選択される障害、特に臓器不全を患っているかまたは発症するリスクがある患者を治療する方法であって、それを必要とする対象へのGlu-プラスミノーゲンの投与を含む、方法に関する。
臓器不全、特に多臓器不全は、感染症、敗血症、(微小)循環障害(例えば、鬱血、アテローム性動脈硬化症など)、毒性事象、移植、損傷、およびこれらの2つまたはそれ以上の組合せからなる群から選択される状態により引き起こされることがある。血栓事象は、深静脈血栓症および慢性血栓塞栓性肺高血圧症からなる群から選択することができる。動脈閉塞疾患は、心筋梗塞、脳梗塞、腎梗塞、もしくは肝梗塞に関連するかまたはこれらにより引き起こされるものであり得る。
好ましい実施形態では、臓器不全は、腎臓、心臓、肺、脳および静脈からなる群から選択される臓器の不全である。好ましい実施形態では、臓器不全は、腎不全、好ましくは急性腎不全(AKI)であり、これは例示的には急性腎損傷である。
したがって、さらなる態様では、本発明はまた、臓器不全、血栓事象、動脈閉塞疾患、微小循環、播種性血管内凝固(DIC)、およびこれらの2つもしくはそれ以上の組合せからなる群から選択される障害、特に臓器不全を患っているかまたは発症するリスクがある患者を治療する方法における使用のためのGlu-プラスミノーゲンであって、前記方法が、前記患者への使用のためのGlu-プラスミノーゲンの投与を含む、Glu-プラスミノーゲンに関する。
好ましい実施形態では、臓器不全、血栓事象、動脈閉塞疾患、微小循環、播種性血管内凝固(DIC)、およびこれらの2つまたはそれ以上の組合せからなる群から選択される障害を発症するリスクは、先天性または好ましくは後天性のプラスミノーゲン欠乏症により引き起こされる。
したがって、より好ましい実施形態では、臓器不全または血栓事象を発症するリスクは、後天性プラスミノーゲン欠乏症により引き起こされる。代替的な好ましい実施形態では、臓器不全、血栓事象、動脈閉塞疾患、微小循環、播種性血管内凝固(DIC)、およびこれらの2つまたはそれ以上の組合せからなる群から選択される障害を発症するリスクは、微小凝固障害(micro-coagulation disorder)により引き起こされる。
したがって、より好ましい実施形態では、臓器不全または血栓事象を発症するリスクは
、微小凝固障害により引き起こされる。
好ましい実施形態では、患者は、深静脈血栓症および/もしくは肺塞栓症を患っているかまたは発症するリスクがある。
したがって、好ましい実施形態では、本発明はまた、深静脈血栓症を患っているかまたはそのリスクがある患者を治療する方法における使用のためのGlu-プラスミノーゲンに関する。
したがって、好ましい実施形態では、本発明はまた、肺塞栓症を患っているかまたはそのリスクがある患者を治療する方法における使用のためのGlu-プラスミノーゲンに関する。
好ましい実施形態では、臓器不全、血栓事象、動脈閉塞疾患、微小循環、播種性血管内凝固(DIC)、およびこれらの2つまたはそれ以上の組合せからなる群から選択される障害を発症するリスクは、プラスミン阻害物質の後天性の増加により引き起こされ、特に、プラスミン阻害物質はアルファ-2-アンチプラスミン(A2AP)である。
したがって、より好ましい実施形態では、臓器不全または血栓事象を発症するリスクは、プラスミン阻害物質の後天性の増加により引き起こされ、特に、プラスミン阻害物質はアルファ-2-アンチプラスミンである。
好ましい実施形態では、障害は、個々の臓器における、臓器不全、深静脈血栓症、慢性または急性臓器塞栓症、臓器梗塞(特に、心梗塞、腎梗塞、肝梗塞、肺梗塞、または脳梗塞)、急性移植拒絶のような線維素溶解系の局所的なまたは生成された不均衡を引き起こす急性または慢性炎症、凝固亢進、播種性血管内凝固(DIC)、および血栓事象からなる群から選択され、特に、臓器は、心臓、肺および静脈からなる群から選択される。
好ましい実施形態では、患者は、プラスミノーゲンを欠乏している。プラスミノーゲン欠乏症は、先天性または後天性プラスミノーゲン欠乏症であり得る。
プラスミノーゲン欠乏症は、後天性プラスミノーゲン欠乏症、および/または、好ましくは、微小血栓性、血栓性および深静脈の血栓事象における、逸脱した凝固/線維素溶解の均衡であり得る。しかし、外傷、大規模な上皮の破壊または急性もしくは慢性炎症もまた、後天性プラスミノーゲン欠乏症および/または逸脱した凝固/線維素溶解の均衡を結果としてもたらし得る。したがって、患者におけるプラスミノーゲンおよびアルファ-2-アンチプラスミン(A2AP)レベルは、好ましくは、臓器不全の適応と共に提出された時に、初期の血液検査において測定することができる。プラスミノーゲンレベルの低減またはアルファ-2-アンチプラスミン阻害物質の比の増加は、凝固および線維素溶解系の不均衡の指標として使用することができる。系は、Glu-プラスミノーゲンの投与に起因して非常に感受性であり、系の均衡を取ることができ、凝固亢進を回避することができる。
本発明の文脈において使用される場合、「患者」という用語は、任意の生物、好ましくは任意の動物、より好ましくは、ヒト、特に人間などの哺乳動物として最も広い意味において理解することができる。Glu-プラスミノーゲンは、望ましくない免疫原性の副反応を回避するために、典型的に、治療される患者と同じ種のものであることが理解されるであろう。
本明細書で使用される「患っている」という用語は、臓器不全、血栓事象、動脈閉塞疾
患、微小循環、播種性血管内凝固(DIC)、およびこれらの2つまたはそれ以上の組合せからなる群から選択される障害、特に臓器不全に関連する病的状態を患者が発症したこと、すなわち、そのような障害が患者において存在することとして最も広い意味において理解することができる。好ましい実施形態では、本明細書で使用される「患っている」という用語は、臓器不全に関連する病的状態を患者が発症したこと、すなわち、臓器不全が患者において存在することとして最も広い意味において理解することができる。
障害を患っている患者は、必ずしもそうではないが場合により、例えば、酸塩基平衡異常(例えば、呼吸性アルカローシスまたは乳酸アシドーシス)、乏尿(さらには無尿)、高血糖症、インスリン要求性の増加、頻呼吸、低炭酸ガス血症、低酸素血症、肝臓機能障害、血液学的異常、窒素血症、凝固異常、および虚血性大腸炎からなる群から選択される症状のうちの1つまたはそれ以上のような医学的症状を有する。
「発症するリスクがある」という用語は、臓器不全、血栓事象、動脈閉塞疾患、微小循環、播種性血管内凝固(DIC)、およびこれらの2つまたはそれ以上の組合せからなる群から選択される障害、特に臓器不全に関連する障害を有するある特定のリスクを患者が有することを意味する。この文脈において、好ましくは、患者は、翌週(すなわち、7日)以内の集団全体において存在する、臓器不全、血栓事象、動脈閉塞疾患、微小循環、播種性血管内凝固(DIC)、およびこれらの2つまたはそれ以上の組合せからなる群から選択される障害、特に臓器不全を発症する平均リスクと比較してより高いリスクを有する。より好ましくは、リスクは、少なくとも5倍増加しており、よりいっそう好ましくは、リスクは少なくとも10倍増加しており、よりいっそう好ましくは、リスクは少なくとも100倍増加しており、よりいっそう好ましくは、リスクは少なくとも1000倍増加している。
好ましい実施形態では、本発明は、臓器不全、血栓事象、動脈閉塞疾患、微小循環、播種性血管内凝固(DIC)、およびこれらの2つまたはそれ以上の組合せからなる群から選択される障害、特に臓器不全を患っている患者を治療する方法における使用のためのGlu-プラスミノーゲンに関する。
好ましくは、投与は、全身投与(例えば、静脈内(i.v.)、動脈内(i.a.)、腹腔内(i.p.)、筋肉内(i.m.)、皮下(s.c.)、経皮、経鼻)である。あるいは、投与はまた、局所投与(例えば、髄腔内または硝子体内)であり得る。好ましくは、投与は、全身投与、特に静脈注射である。
非常に好ましい実施形態では、障害は、臓器不全、深静脈血栓症(DVT)、および塞栓症(例えば、慢性または急性臓器塞栓症)からなる群から選択される。DVTは、最も一般的には脚における、深静脈における血餅の形成である。合併症としては、肺に移動するクロットの剥離の結果としての肺塞栓症、および血栓後症候群を挙げることができる。リスク因子としては、最近の手術、がん、外傷、運動不足、肥満症、喫煙、ホルモン産児制限、妊娠および出産後の期間、抗リン脂質症候群、ならびにある特定の遺伝学的条件が挙げられる[E.Previtali、P.Bucciarelli、S.M.Passamonti、I.Martinelli、「Risk factors for venous and arterial thrombosis」、Blood transfusion = Transfusione del sangue、9巻(2011年)120~138頁;J.Stone、P.Hangge、「Deep vein thrombosis:pathogenesis,diagnosis,and medical management」、Cardiovascular diagnosis and therapy、7巻(2017年)S276-284頁]。遺伝学的因子としては、アンチトロンビン、プロテインC、およびプロテインSの欠乏、ならびに第
V因子ライデン突然変異が挙げられる[J.Stone、P.Hangge、「Deep
vein thrombosis:pathogenesis,diagnosis,and medical management」、Cardiovascular diagnosis and therapy、7巻(2017年)S276-s284頁]。基礎となる機序は、典型的に、血流速度の減少、クロットの傾向の増加、および血管壁への損傷の何らかの組合せを伴う。
凝固亢進(播種性血管内凝固:DICまで)または血栓もしくは微小血栓の形成もしくはクロット溶解の遅延を伴う低線維素溶解の状況を臨床的に結果としてもたらす任意の他の状態[AA Sharp Thrombus Dissolution、J.Clin.Path.、22巻(1969年)369頁]は、プラスミン置換を指し示し得る。また、線維素溶解系の不均衡((促進性)酵素プラスミノーゲンに対する阻害因子の過剰:1.25より大きいアルファ-2-アンチプラスミン[mg/mL]/プラスミノーゲン[mg/mL]の比)を指し示すものとしてとることができる。したがって、検出された先天性もしくは後天性プラスミノーゲン欠乏症、または、腎臓、肺、心臓、脳の差し迫った臓器不全を示唆するかもしくは塞栓事象もしくは静脈血栓症のリスクを示唆する臨床症状と組み合わさった過剰な阻害因子の検出のいずれかは、Glu-プラスミノーゲン投与を結果として指し示し得る。
通常、組み合わさって血栓症を引き起こすいくつもの要因が存在する。これらは、遺伝性要因および外的要因の両方であり得る[E.Previtali、P.Bucciarelli、S.M.Passamonti、I.Martinelli、「Risk factors for venous and arterial thrombosis」、Blood transfusion = Transfusione del sangue、9巻(2011年)120~138頁;M.A.Islam、S.S.Khandker、F.Alam、M.A.Kamal、S.H.Gan、「Genetic risk factors in thrombotic primary antiphospholipid syndrome:A systematic review with bioinformatic analyses」、Autoimmunity reviews(2018年)]。
静脈血栓の発症の原因は、未だに妥当なフィルヒョーの三因子に従う:
1.血液組成の変化
2.血流速度の低減(鬱血)
3.内部血管壁(内皮)への損傷
血栓症のリスク因子は、特に喫煙と組み合わさった経口避妊薬(「ピル」)、身体不活動、病気における特に長期の寝たきり、肥満症、脱水(脱水症)、がん、過去の血栓症、妊娠である。深静脈血栓症により最も一般的に影響されるのは脚である。次いで言われるのは、大腿または下腿の静脈血栓症である。両方の腓腹、膝窩および大腿が罹患している場合、マルチレベル血栓症(multi-level thrombosis)と呼ばれる。骨盤静脈血栓症の頻度はより低いが、血管のサイズおよび肺塞栓症のより高いリスクから、より危険である。骨盤静脈血栓症の恐れは妊婦にあり、子宮の圧迫の欠如に起因して出産後にクロットが溶解して肺塞栓症に繋がることがあり、これは致死性のことがある。血栓症自体およびDVTの別の合併症は、特に、播種性血管内凝固(DIC)である。
それは、例えば、感染性傷害(敗血症など)および非感染性傷害(外傷など)に起因する凝固の血管内活性化の特徴を有する後天性症候群の古典的な例である。DICの基礎となる機序は、組織因子依存性の凝固の炎症性サイトカインにより開始される活性化、抗凝固経路の不充分な制御および線維素溶解のプラスミノーゲン活性化因子阻害因子1媒介性
の抑制により媒介される。少数を挙げれば、外傷、肝臓疾患、臓器破壊(重症膵炎)および悪性腫瘍のようないくつもの臨床的合併症が、DICに関連する[S.Gando、M.Levi、C.H.Toh、「Disseminated intravascular coagulation」、Nature reviews.Disease primers、2巻(2016年)16037頁]。
投与頻度は、個々の患者に適合させることができる。先ず、プラスミノーゲンおよびアルファ-2-アンチプラスミンの量が好ましくは測定される。これは、常用の分析により行うことができる。投与は、1回、2回、もしくはより多くまたは連続的に(例えば、点滴を介して)行うことができる。例示的には、投与は、1日3回、1日2回、もしくは2日毎またはより少ない頻度で行うことができる。
好ましい実施形態では、患者は:
(a)患者の血液中に見出されるアルファ-2-アンチプラスミン対プラスミノーゲン(好ましくはGlu-プラスミノーゲン)の比が、同じ種の集団全体において見出される平均の比と比較して少なくとも1.1倍高いこと;および/または
(b)患者の血液中のプラスミノーゲン(好ましくはGlu-プラスミノーゲン)のレベルが、同じ種の集団全体において見出される平均のレベルと比較して少なくとも1%(mol/mol)低いこと
を特徴とする。
好ましくは、患者の血液中に見出されるアルファ-2-アンチプラスミン対プラスミノーゲン(好ましくはGlu-プラスミノーゲン)の比は、同じ種の集団全体において見出される平均の比と比較して、少なくとも1.15倍高い、より好ましくは少なくとも1.2倍高い、特に少なくとも1.25倍高い。該比は、臓器不全、血栓事象、動脈閉塞疾患、微小循環、播種性血管内凝固(DIC)、およびこれらの2つまたはそれ以上の組合せからなる群から選択される重篤な障害、特に臓器不全を有する患者において平均で1.26倍高いことが実験的に見出されている。
好ましくは、患者の血液中のプラスミノーゲン(好ましくはGlu-プラスミノーゲン)のレベルは、同じ種の集団全体において見出される平均のレベルと比較して、少なくとも2%(mol/mol)低い、より好ましくは少なくとも5%(mol/mol)低い、特に少なくとも10%(mol/mol)低い。
Glu-プラスミノーゲンのレベルの減少は、凝固および線維素溶解の不均衡に繋がり得る。大きい量のA2APおよびPLGの不均衡は、線維素溶解活性を遮断し、凝固の均衡が取れなくなる。特に、臓器不全、血栓事象、動脈閉塞疾患、微小循環、播種性血管内凝固(DIC)、およびこれらの2つまたはそれ以上の組合せからなる群から選択される障害、特に臓器不全を有する患者は、血液中のアルファ-2-アンチプラスミン(A2AP)対Glu-プラスミノーゲン(PLG)の高い比を示すことが見出された。Glu-プラスミノーゲンの適用は、したがって、現行の「標準治療」処置と組み合わせて患者にとって「時間を買う」(すなわち、患者を安定化させる)ために使用することができる。(時間を買うことの)1つの典型的な例は、場合により、有望な「標準治療」処置を同定しながら、患者の生存および最も重要な臓器機能を少なくとも48時間維持することである。
場合により、特に、患者が上記臨床症状の1つまたはそれ以上を示す場合、Glu-プラスミノーゲンの投与に加えて患者を治療することができる。
例示的には、患者を血行動態の予防措置および/または人工呼吸に供することができる
。本治療は、患者の死亡を有意に低減させることができ、標準治療の改善を可能とする。
急性腎不全の場合の現行の治療選択肢は、ヘパリンのような抗凝固剤を用いる追加の治療である。ヘパリンの追加は、さらなる凝固の阻害に繋がり得る。ヒト化プラスミノーゲンは、典型的に、凝固に対して(本質的に)影響を有しないが、既に構築されたクロットの開始において影響を有する。ヘパリンの結合はプラスミン活性を増加させ得ることが公知である。しかしながら、(有意な)薬物動態薬物相互作用は抗凝固剤を用いる治療と本発明の(ヒト/ヒト化)Glu-プラスミノーゲンを用いる治療との間で起こらないことが想定される。
好ましい実施形態では、敗血症に起因する多臓器不全を有する患者はまた、抗生物質、血栓症予防、腎不全のための透析のような臓器特異的治療、多臓器欠陥の手術、通気療法およびあらゆる細菌のための抗感染療法、全身性血管効果を呈する血管関連薬物(アドレナリンまたはノルアドレナリンのようなカテコールアミン)、血行動態安定化、活性化プロテインC(場合により組換え)および免疫グロブリン(例えば、IgGおよびIgM)、ならびにアンチトロンビン-III(主にF.Xaおよびトロンビンを阻害し得る)のような天然プロテアーゼ阻害剤の追加からなる群から選択される手段を用いて(追加的に)治療することができる。
臓器不全は、臓器の任意の重篤な機能障害として最も広い意味において理解することができる。好ましくは、本発明の意味では、臓器不全は、臓器の機能障害を補う外的な臨床的介入なしでは正常なホメオスタシスを維持できないような程度まで臓器がその期待される機能を行わなくなった状態である。
Glu-プラスミノーゲン(Glu-PLG)の投与によりA2APの量の増加の均衡を取ることができることが驚くべきことに発見された[Seitz,R.;Karges,H.E.;Wolf,M.;Egbring,R.、「Reduced fibrinolytic capacity and its restoration by plasminogen substitution in acute renal failure.」、International journal of tissue
reactions、1989年、S.39~46頁]。これは、臓器不全の後退を可能とし、これらの患者の死亡を低減させることが発見された。さらに、異なる疾患が複数の皮膚壊死(ウォーターハウス・フリードリヒセン症候群)として非可逆的な血液凝固に関与し、敗血症および肝炎ならびに死体腎臓移植を有するさらなる患者はまた、PLGおよびA2APの相対的な濃度が移植片の生存のために有益であることを示した。
好ましい実施形態では、臓器不全は、個々の臓器における病理学的急性腎不全、急性移植拒絶、凝固亢進、播種性血管内凝固(DIC)、および血栓事象であるかまたはこれらに関連するものであり、特に、臓器は、心臓、肺および静脈からなる群から選択される。
好ましい実施形態では、臓器不全を患っているかもしくは臓器不全を発症するリスクがある患者を治療する方法において使用されるGlu-プラスミノーゲンは、本明細書に説明される本発明の方法から得られるか、または本発明の医薬組成物の部分を形成する。
好ましい実施形態では、臓器不全を患っているかまたは臓器不全を発症するリスクがある患者を治療する方法において使用されるGlu-プラスミノーゲンは、本発明の意味における医薬組成物の形態で投与される。したがって、換言すれば、本発明はまた、臓器不全、血栓事象、動脈閉塞疾患、微小循環、播種性血管内凝固(DIC)、およびこれらの2つもしくはそれ以上の組合せからなる群から選択される障害、特に臓器不全を患っているかまたは発症するリスクがある患者を治療する方法における使用のための本発明の医薬
組成物(Glu-プラスミノーゲンおよび少なくとも1つの薬学的に許容される担体を含む)に関する。
さらなる治療工程を実行することができる。凝固亢進状態における現行の治療選択肢は、ビタミンKアンタゴニスト、ヘパリン、またはF.Xa阻害剤の投与である。これは、新たなクロットの形成および既存のクロットの長期残存を予防する予防的処置としてとられる必要がある。血栓の溶解は、tPA(組織プラスミノーゲン活性化因子)またはuPA(ウロキナーゼ)のいずれかにより誘導することができる。両方の療法は、限られた数の患者においてのみ効果的である。後天性プラスミノーゲン欠乏症を患っている患者は効能を示さないようである。
この欠乏が検出されたら、プラスミノーゲン置換が指し示される[Stoll G.:「Molecular mechanisms of thrombus formation in ischemic stroke:novel insights and targets for treatment」、Blood、2008年、112巻:3555~3562頁;doi:https://doi.org/10.1182/blood-2008-04-144758]。同著者は、急性血栓塞栓性卒中における主要な治療目標は、閉塞した脳内血管の再疎通を迅速に達成することであることを発見した。永久的な血管閉塞の場合、完全な梗塞が不可避的に発症する。現在、早期の静脈内または動脈内血栓溶解が唯一の確立された治療選択肢である[The National
Institute of Neurological Disorders and
Stroke rt-PA Stroke Study Group.、「Tissue plasminogen activator for acute ischemic stroke.」、N Engl J Med、1995年;333巻:1581~1588頁、Choi JH、Bateman BT、Mangla Sら、「Endovascular recanalization therapy in acute ischemic stroke.」、Stroke、2006年;37巻:419~424頁]。後の適用による重篤な脳内出血のリスクのため症状発症の3~6時間後までという限られた時間ウインドウに起因して、この治療に適している患者は10%未満である[Adams H,Adams R、del Zoppo G、Goldstein
LB.、「Guidelines for the early management of patients with ischemic stroke.、Stroke、2005年;36巻:916~921頁]。新規のプラスミノーゲン活性化因子である組換えデスモテプラーゼの使用により9時間まで治療ウインドウを延長させる試みは失敗した[「Desmoteplase in Acute Ischemic Stroke-2.」、[アクセス日:2018年2月23日]http://www.strokecenter.org/trials/TrialDetail.aspx?tid=515.]。分かっていない理由により、血栓溶解治療は、一部の症例では血管閉塞性クロットの溶解に繋がるが、他の症例ではそうではない。
以下の実施例および特許請求の範囲は、本明細書に記載され、権利を主張される本発明の説明のための実施形態を提供することを意図したものである。これらの実施例は、本発明の主題の範囲に対する限定を提供することを何ら意図するものではない。
Glu-プラスミノーゲン調製物の製造方法
Glu-プラスミノーゲンの精製方法
Glu-プラスミノーゲンの単離のために、血漿、脱クリオ血漿、コーン/キストラー-ニッチマン(KN)法からの画分または場合により4-PCC(プロトロンビン複合体濃縮物)法からの通過画分溶出液を使用することができる。使用可能な方法は以下の通り
に要約することができる:
1.血漿または脱クリオ血漿
2.場合により:4-PCC複合体の捕捉
3.Glu-プラスミノーゲンの単離および安定化
4.1回目のウイルス不活性化(溶媒/界面活性剤(SD)処理)
5.SDの除去
6.Glu-プラスミノーゲン複合体の最終の精製
7.2回目のウイルス不活性化(限外/ナノ濾過)
8.配合(限外濾過(ナノ濾過)、安定化、冷凍、乾燥)
9.Glu-プラスミノーゲン生成物の取得
この方法では、工程2は、次世代4-PCC生成物に繋がり得る。工程3の画分をコーン/KN(キストラー-ニッチマン)法に導入することができる。
工程1~3は、プラスミノーゲン捕捉工程と表すことができる。工程4および5は、SD処理/ウイルス除去と表すことができる。工程6および7は、最終のプラスミノーゲン精製と表すことができる。
本明細書に記載される方法は以下を提供する(一般のコメント):
現代のクロマトグラフィー技術(認可された製造方法において既に使用されている新たな樹脂およびビーズ構造物)の使用により、最大の再使用可能性と共に消毒標準物質(1MのNaOH)を扱うことができる。
リシン修飾ゲルをGlu-プラスミノーゲンの単離方法のために使用した。しかし、他の天然または合成アミノ酸、異なるスペーサーを有する遊離アミノ基を含有する天然および合成化合物のような、遊離アミノ基を含有する他のゲルも使用可能である。
方法は、最小の調節上の努力および脱クリオ血漿ストリームの変更を用いて、確立された分別方法に一体化させることができる。コーン/KN(キストラー-ニッチマン)法におけるいかなる変更もなく、IgG、アルブミンおよび他のタンパク質の単離のために脱クリオ血漿ストリームを直接的に使用した。
現代のクロマトグラフィー工程および樹脂に起因するプラスミノーゲンの最小化された活性化のため、捕捉工程によりGlu-プラスミノーゲンのより高い収率が達成される。
以下のGlu-プラスミノーゲンの収率(工程の収率/全体の収率)が得られた[%(w/w)]:
1.血漿(100/100)
2.脱クリオ血漿(90/90)
3.Glu-プラスミノーゲンの単離および安定化(80/72)
4.1回目のウイルス不活性化(溶媒/界面活性剤(SD)処理)(98/71)
5.SDの除去(95/67)
6.Glu-プラスミノーゲン複合体の最終の精製(95/64)
7.2回目のウイルス不活性化(限外/ナノ濾過)(98/62)
8.配合(限外濾過、安定化、冷凍、乾燥)(90/56)
9.Glu-プラスミノーゲン生成物の取得、全体的な収率:56%(w/w)
単離の直後に、クエン酸を用いてGlu-プラスミノーゲンのpHをpH7.5に変化させ、アプロチニンまたはアルファ-2-アンチプラスミン(A2AP)のような安定化剤を加えた。
脱クリオ血漿/血漿画分からのGlu-プラスミノーゲンの単離方法-方法の工程
捕捉工程:ヒト血漿または脱クリオ血漿をリシンゲル(9CVのローディング量を使用)に直接的に捕捉した。未加工のGlu-プラスミノーゲンを単離し、安定化させた(実施例1.1を参照)。
SD処理/1回目のウイルス除去:未加工のGlu-プラスミノーゲンに1%のTween-20および0.3%のTnBPを加えた。使用した条件:22℃、2時間および穏やかな振とうを伴う処理。
SDの除去:陰イオン交換体、Fractogel M TMEA、MerckにSD溶液(1:10(クエン酸緩衝液10mM、pH7.6)に希釈)を注入し(ゲル:pH5.75の酢酸緩衝液25mMを含むEQ)、全てのSD試薬をそれらの仕様の下で洗浄した。0.5MのNaClを含むpH5.75の酢酸緩衝液25mMを用いてGlu-プラスミノーゲンを溶出させた。
最終の精製:捕捉工程と同じ工程。
Glu-プラスミノーゲンの単離方法-コーン/KN法から得られたペーストI~III廃棄物画分から
コーン/KN法から得られた廃棄物画分ペーストI+II+III(すなわち、I~III)またはペーストI+IIIをGlu-プラスミノーゲンの単離のために使用することができる。
1.コーン/KN(キストラー-ニッチマン)法からのペーストI+II+III(すなわち、I~III)またはペーストI+IIIの取得
2.解凍、希釈、pH調整、濾過
3.Glu-プラスミノーゲンの単離
4.安定化
5.Glu-プラスミノーゲン生成物の取得
本明細書において、工程2~4はまた、Glu-プラスミノーゲン捕捉工程を指すものとして考えることができる。
実験データ
アッセイ方法
Glu-プラスミノーゲン生成物の検出
検出は以下の通りに行った(データ示さず):プラスミノーゲンの色素産生アッセイ検出 Siemens Healthcare diagnostic Inc.Newark、DE 19714 U.S.A、Berichrom Plasminogen。
TECHNOZYMGlu Glu-plasminogen ELISA Kit 96T(参照:TC12040 Technoclone GmbH、オーストリア)TechnozymによるGlu-プラスミノーゲンの検出:TC Glu-プラスミノーゲン試験は、Lys-プラスミノーゲンではなくGlu-プラスミノーゲンの量を決定するための固相酵素イムノアッセイである。アッセイでは、0.06~0.5μg/mLの範囲内のGlu-プラスミノーゲンを測定した。正常血漿レベルは60~250μg/mLであった。アッセイ間およびアッセイ内のばらつきはそれぞれ10%未満および5%未満であった。
96ウェルプレートをモノクローナル抗プラスミノーゲン抗体を用いて予めコーティングし、1%のウシ血清アルブミン(BSA)を用いて遮断し、凍結乾燥した。(TC-Code GX))。サンプルおよび標準物(凍結乾燥した正常血漿(TC-Code BJ))を、安定化タンパク質;0.05%のプロクリン;および青色色素を含有するインキュベーション緩衝液(PBS;pH7.3)を用いて希釈した。標準曲線は、0.5μg/mL、0.25μg/mL、0.125μg/mL、0.063μg/mLおよび0.0μg/mLのGlu-プラスミノーゲン濃度を含有した。
0.1mLの希釈サンプル/標準物を別々のウェル中にピペッティングした。標準物/サンプルを2連で実行することが推奨される。プラスチック箔を用いてプレートに蓋をし、4℃で終夜インキュベートした。3.ウェルに洗浄緩衝液0.25mL(界面活性剤;0.01%のメルチオレートを含有する濃縮液(予備希釈1+11.5)(PBS;pH7.3))を加えることにより(必要とされる)ストリップを再構成し、内容物を外に出した。洗浄緩衝液を用いてストリップをさらに4回洗浄した。吸収紙上にストリップを出し、ウェルが完全に乾燥するのを確実にした。好ましくはマルチチャンネルピペットを用いて、希釈POX抗プラスミノーゲン抗体0.1mLを全てのウェルに加えた。プレートに蓋をし、37℃で1時間インキュベートした。前述の通りに5回洗浄した。TMB基質0.1mLを全てのウェルにピペッティングした。室温で15分間インキュベートした。停止溶液0.1mLを全てのウェルにピペッティングした。450nmでの吸光度を測定した(利用可能であれば620nmの参照フィルターを用いる)。停止溶液の添加後1時間以内に吸光度を読み取った。標準曲線のグラフを構築した。曲線上の各サンプルの吸光度を突き止め、水平軸から対応する値を読み取った。サンプルの希釈係数を掛けることを忘れないようにした。
SDS-PAGE
Glu-プラスミノーゲンの純度を決定するために、追加のCoomassie染色と共にSDS-PAGEを使用した。BioRad Mini-Protean TGX Stain free gel 4~20%(商品番号:456-9093)をPrecision Plus Protein Standards all blue(BioRad 商品番号:161-0373)、Glu-plasminogen standard(Coachrom 商品記号:HPGG)およびLys-plasminogen Standard(Coachrom 商品記号:HPGL)と組み合わせて使用した。Bio Safe TM Coomassie G-250 Stain(BioRad 商品番号:161-0786)を用いてタンパク質を染色した。蒸留HOを用いてバックグラウンドを脱染色した。
Bradford法-総タンパク質の決定
Quick Start(商標)Bradfordタンパク質アッセイは、溶液中のタンパク質の濃度を決定するための簡便かつ的確な手順である。アッセイは、すぐに使用できる1×濃度の色素試薬を供給する(BioRad:商品番号500-0205)。タンパク質濃度は1工程で決定される。Quick Start Bradfordタンパク質アッセイキットは、ウシ血清アルブミン標準セットを与える(BioRad:商品番号500-0206)。サンプルおよび予め希釈した標準濃度(0.125、0.25、0.5、0.75、1.0、1.5、および2.0mg/ml)から5μLをF底ポリプロピレン96ウェルプレート(Eppendorf:ロット:G171297G)に加えた。最後に、Dye Reagent 250μLを各ウェルに加えた。ウェルを混合し、96ウェルプレートを37℃で5分間(最大60分)インキュベートした。分光光度計を使用して37℃で595nmでの吸収キネティクスを測定し;曲線上の各サンプルの吸光度を突き止め、水平軸から対応する値を読み取った。
分子サイズの分布をGlu-プラスミノーゲン生成物のHPLCサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により分析した。
(実施例1.4、1.6において使用したように)Glu-プラスミノーゲン調製物中の凝集物のパーセンテージを決定するために以下の方法を利用することができる。
試験溶液:100μLの注入容量を用いて約1g/Lで非希釈のサンプルを注入した。参照溶液としてGlu-プラスミノーゲン(例えば、Coachrom HPPG)を使用した。標準溶液はBio-Rad(ゲル濾過標準物、商品番号151-1901)のものであった。
Tosoh Bioscience TSK-Gel G4000 SWXLの固定相と共にカラム(サイズ:長さ=30mm、直径=7.8mm)を使用した。移動相として、1リットルの水中に溶解したリン酸水素二ナトリウム二水和物4.873g、リン酸二水素ナトリウム一水和物1.741g、塩化ナトリウム11.688gおよびアジ化ナトリウム50mgを含有する緩衝液を生成させた。流速は0.5ml/分であった。
検出は280nmにおいて分光光度的に実行した。得られたクロマトグラムを参照溶液と比較した。以下のスキームにしたがってクロマトグラムを統合し、ピークを同定した:・ポリマー(>1200kD)、10~13分
・タンパク質 高分子量(150~900kD)、13~22分
・Glu-プラスミノーゲン(92kDa):22~24分
・アルブミン(66kD)、25~27分
・断片(<100kD)、26~40分
タンパク質分解活性の決定
発色基質(特に、少なくとも1つのセリンプロテアーゼに対して感受性のもの)およびGlu-プラスミノーゲン調製物のサンプル(通常、アッセイの線形範囲を満たすように緩衝液中に希釈した)を37℃で混合し、分光光度計を使用して吸収キネティクスをモニターすることによりタンパク質分解活性を評価した。サンプルのタンパク質分解活性は、式C(U/L)=S×ΔE/分×F(C=タンパク質分解活性;S=発色基質の特定の吸着変化に関する変換係数;およびF=希釈係数)を使用することにより初期吸収(減光E)の差異(ΔE/分)から算出した。基質の使用は製造者の説明書に従った。タンパク質分解活性は、特に、以下の工程を介して評価することができた:
(a)基質S-2288(Chromogenix)25mgを注射用水7.2mL中に溶解させた;
(b)アッセイの線形範囲を満たすようにGlu-プラスミノーゲン調製物のサンプルを緩衝液(100mMのトリス-HCl pH8.4、106mMのNaCl)中に希釈し、温度を37℃に調整した;
(c)等量(例えば、100μl)の希釈したGlu-プラスミノーゲン調製物および溶解させた基質を混合した;
(d)分光光度計を使用して37℃で1~3分間405nmにおいて吸収キネティクスを測定した;
(e)式C(U/L)=313×ΔE/分×F(C=タンパク質分解活性、F=希釈係数)を使用することにより初期吸収の差異(ΔE/分)からサンプルのタンパク質分解活性を算出した。
この方法の定量限界は8U/Lであり、Glu-プラスミノーゲン調製物のサンプルを使用するとタンパク質分解活性は検出不可能であった。そのため、最終生成物中のタンパク質分解活性のレベルは8U/L未満であることが分かった。
実験的実施例1-Glu-プラスミノーゲンの単離方法
材料および方法
クロマトグラフィー実験は、Bio-Rad NGC Chromatographyシステムと共に1cmの内径、5cmのベッド高さのクロマトグラフィーカラム(Gotec Labortechnic)を使用して行った。5分の接触時間でpH6.6のPBS緩衝液(5×)を用いてカラム(Lysine Hyper D Resin)を平衡化した。次いで、脱クリオ血漿/通過画分PCCを5分の接触時間でローディングした。
ローディング後の洗浄は、pH10.3の0.05Mの酢酸Na/0.05Mのグリシン緩衝液を用いて行い、ベースライン吸光度とした。
次いで、5分の接触時間でpH10.3の0.05Mの酢酸Na/0.05Mのグリシン緩衝液/0.025Mのリシンを用いてカラムを溶出し、0.5Mの水酸化ナトリウムを用いて再生させた。比濁分析によりローディング、非結合、および溶出画分を分析してIgGおよびアルブミン含有量を決定した。SDS PAGEを実行して純度を決定した。ELISAを実行してプラスミノーゲン含有量を決定した。
結果
プラスミノーゲンは、4-PCC生成物の通過画分から84%の収率(回収84%)で単離された。
Figure 2023055801000001
総タンパク質
通過画分の総タンパク質(TP)収率は誤差範囲内で定量的であった。プラスミノーゲン捕捉画分は1.0g/LのTP含有量を示し、非常に純粋な生成物を実証した。アルブミン、IgGのカラムとの相互作用がないことにより、100%の通過画分が結果としてもたらされた。溶出されたGlu-プラスミノーゲンは非常に低い総タンパク質濃度を有し、最小化された不純物を結果としてもたらした。
Figure 2023055801000002
アルブミン
通過画分中のアルブミン含有量は104%であった(誤差範囲内で定量的)。
Figure 2023055801000003
IgG
通過画分中のIgG含有量は99.5%であった(誤差範囲内で定量的)。
Figure 2023055801000004
実験的実施例1.1-脱クリオ血漿からのGlu-プラスミノーゲンの単離方法
実施例1に記載の方法を用いて脱クリオ血漿からGlu-プラスミノーゲンを精製することができた。接触時間として10分を使用した。脱クリオ血漿のローディング量は8CVであった(脱クリオ血漿40mL)。溶出されたGlu-プラスミノーゲンでは実施例1と同等の収率が得られた。収率は76%であり、Glu-プラスミノーゲンの回収は85%であった。
生成物の仕様およびGlu-プラスミノーゲンの投与
精製された天然に存在するタンパク質Glu-プラスミノーゲンは、いくつもの日において複数の機会のために使用される。
プラスミノーゲン調製物の標的純度は90%以上であり、最良にはLys-プラスミノーゲンを含有せずにGlu-プラスミノーゲンを排他的に含有する。不活性化Glu-プラスミノーゲン分子の活性化は、Lys-プラスミノーゲンにより開始させることができる。Lys-プラスミノーゲンは既に酵素切断されており、プラスミンへのより迅速な活性化プロセスのために開いたコンホメーションを有する。したがって、Lys-プラスミノーゲンは、非特異的活性化およびその後の強い有害効果のため、ヒト身体への応用のために使用できない。クロマトグラフィー樹脂およびSD処理の最新技術の使用は、全体的な方法の間のプラスミノーゲンの最小の損失および不活性化Glu-プラスミノーゲンの高い収率を結果としてもたらした。Glu-プラスミノーゲンからLys-プラスミノーゲンへの潜在的な活性化の均衡は、活性化プロセス(Lys-プラスミノーゲンおよびプラスミン)を捕捉するアプロチニンにより取られた。さらに、天然の阻害因子A2APおよびpPackのようないくつもの阻害剤を、不活性化Glu-プラスミノーゲン生成物の安定化について試験した。
実験的実施例2-PCC通過画分からのGlu-プラスミノーゲンの捕捉工程についての緩衝液および樹脂の比較
1回目のGlu-プラスミノーゲン捕捉工程についての2つの異なる樹脂の有効性を決定するための試験を行った。Resin Lysine Hyper D(Pall)およびECH - Lysine Sepharose TM 4 Fast Flow(GE Healthcare)を分析した。フィードストリーム通過画分Pro Thrombin Complex(PCC)からGlu-プラスミノーゲンを精製した。このフィード液は、IgM 0.8g/L、IgG 8.83g/L、アルブミン32.49g/L、総タンパク質(TP)57g/LおよびGlu-プラスミノーゲン74μg/mLを含有した。カラムクロマトグラフィーは、Biorad NGCクロマトグラフィーシステムを使用してoeGotecカラム(直径1cm、高さ:20cm)を用いて行った。
4~5mLのカラム体積(CV)を有するカラムを使用した。7分または8分の一定の接触時間を各実験アプローチに適用した。フィード液は0.5~0.6ml/分の流速でカラムを通過した。フィード液のローディング量は10CVで一定であった。
0.05Mのリン酸緩衝液(pH6.6)(方法1)または0.01Mのクエン酸三Na/1mMのCaCl/0.12MのNaCl(pH7.0)(方法2)または0.1Mのリン酸緩衝液(pH7.4)(方法3)を用いてカラムを平衡化した(4CV)。純粋な通過画分PCC(pH7.3、13.5mS/cm)はカラムを通過した。洗浄緩衝液として、0.05Mの酢酸/0.05Mのグリシン(pH10.3)(方法1)または0.01Mのクエン酸三Na/1mMのCaCl/0.12MのNaCl(pH7.0)(方法2)または0.1Mのリン酸緩衝液(pH7.4)(方法3)を使用した。通過画分を瓶に回収し、-35℃で冷凍した。Glu-プラスミノーゲンの溶出のために、0.05Mの酢酸/0.05Mのグリシン/0.025Mのリシン(pH10.3)(方法1)、0.05Mのトリス/0.025Mのリシン/1MのNaCl(pH9.0)(方法2)または0.1Mのリン酸緩衝液/0.2Mのε-アミノカプロン酸(pH7.4)(方法3)のいずれかを使用した。CIP洗浄プログラムとして、0.1MのNaOH(4CV)、0.1MのHCl(4CV)を使用し、カラムを20%のエタノールで貯蔵した。最終のGlu-プラスミノーゲン生成物を-35℃で冷凍した。Glu-plasminogen ELISA Technozymを使用してGlu-プラスミノーゲン濃度を決定した。免疫グロブリン濃度を比濁分析により分析した。アルブミン濃度を多色エンドポイント決定により決定し、TPをブラッドフォード法により決定した。
結果は、異なる樹脂および異なる緩衝液条件の使用は結果の変動に繋がることを指し示した。目的は、最初にGlu-プラスミノーゲンを結合させ、次いでGlu-プラスミノーゲンを高い収率で溶出させることである。他のタンパク質は100%通過するべきである。この通過画分は大抵、他の方法におけるさらなる精製のために使用される。結果は、両方の樹脂の使用によりIgGおよびアルブミンは100%通過することを指し示した。IgM分子は、異なる緩衝液条件に応じてカラムと相互作用した。最良の通過画分の結果は、両方の樹脂と共に方法1の使用により達成することができた(表1)。
Figure 2023055801000005
Glu-プラスミノーゲンの収率は、3つの方法と組み合わせた樹脂Lysine Hyper Dの使用により変動した。Glu-プラスミノーゲンの最も高い収率は方法1により達成することができた。プラスミノーゲンの収率は90%であり、回収(Glu-プラスミノーゲンの収率+通過画分中のGlu-プラスミノーゲン)はそれぞれ約95%であった。樹脂ECH-Lysine Sepharoseの意図した適用は、3つの方法のそれぞれについて同等のGlu-プラスミノーゲンの収率を結果としてもたらした。
Lysine Hyper D ResinおよびLysine Sepharose
Resinを用いる方法1の使用は、他の方法2および3と比較してGlu-プラスミノーゲン調製物のより高い純度を結果としてもたらした。
Figure 2023055801000006
実験的実施例3-10mMの酢酸緩衝液および25CVまでのローディング量を用いるGlu-プラスミノーゲンの精製
この実施例は、1回目のGlu-プラスミノーゲン捕捉工程における樹脂ECH - Lysine Sepharose TM 4 Fast Flow(GE Healthcare)の結合能力を決定するために行った。Glu-プラスミノーゲンをフィードストリーム通過画分プロトロンビン複合体(PCC)から精製した。このフィード液は、IgM 0.8g/L、IgG 8.83g/L、アルブミン32.49g/L、総タンパク質(TP)57g/LおよびGlu-プラスミノーゲン74μg/mLを含有した。カラムクロマトグラフィーは、Biorad NGCクロマトグラフィーシステムを使用してoeGotecカラム(直径1cm、高さ:20cm)を用いて行った。
5.02mLのカラム体積(CV)を有するカラムを使用し、7.8分の一定の接触時間を用いてクロマトグラフィー精製を行った。フィード液は、0.64ml/分の流速でカラムを通過した。フィード液のローディング量は最大25CVであった。
0.05Mのリン酸緩衝液(pH6.6)(方法1)を用いてカラムを平衡化した(4CV)。純粋な通過画分PCC(pH7.3、13.5mS/cm)はカラムを通過した。0.01Mの酢酸/0.05Mのグリシン(pH10)を洗浄緩衝液として使用した。通過画分および洗浄画分を瓶に回収し、-35℃で冷凍した。緩衝液0.01Mの酢酸/0.05Mのグリシン/0.025Mのリシン(pH10.3)を使用してGlu-プラスミノーゲンを溶出させた。より酸性または中性のpH値は、Glu-プラスミノーゲンの収率の低減を結果としてもたらした。CIPプログラムのために0.1MのNaOH(4CV)、0.1MのHCl(4CV)を使用し、カラムを20%のエタノール中に貯蔵した。
溶出したGlu-プラスミノーゲン生成物のpH値を1Mの酢酸を用いてpH5.0に調整した。添加物なしで安定なGlu-プラスミノーゲンを製造するため、生成物を0.32Mのグリシン緩衝液中にダイアフィルトレーションし(Pallの10kDa遠心分離デバイス番号MCP010C41)、-35℃で冷凍した。Glu-plasminogen ELISA Technozymを使用してGlu-プラスミノーゲン濃度を決定した。免疫グロブリン濃度を比濁分析により分析した。アルブミン濃度を多色エンドポイント決定により決定し、TPをブラッドフォード法により決定した。
この実施例は、洗浄およびGlu-プラスミノーゲンの溶出のために0.01Mの酢酸緩衝液と共にECH-Lysine Sepharoseを使用する利点を実証した。樹脂は、記載した条件下でフィード液の25CVを超える高いローディング量および93%の高いGlu-プラスミノーゲンの収率を与えた。ECH-Lysine Sepharoseは、樹脂1mL当たり最低1.85mgのプラスミノーゲンの高い結合能力と共に使用することができた。特に、Glu-プラスミノーゲン生成物の純度は極めて高く、90%より高かった。Coomassie染色SDS-PAGEにより不純物としてアルブミンのみが10%未満で検出された。しかしながら、アルブミンの存在は追加の安定化効果を与えた(表3)。
Figure 2023055801000007
実験的実施例4 画分I+II+IIIおよび結果として得られる廃棄物画分からのGlu-プラスミノーゲンの捕捉
ヒト血漿の冷エタノール分別を起源とする画分I+II+III(140g)を760mLの緩衝液(0.1Mの酢酸緩衝液(pH5.05))中に懸濁した。懸濁液の温度が22℃に達した後、懸濁液を15~30分間混合した。懸濁液中、73μg/mLのGlu-プラスミノーゲン濃度が測定された。深層濾過または遠心分離による濾過後、実施例3にしたがって結果として得られる濾液/上清からGlu-プラスミノーゲンを精製することができた。
第2の選択肢として、室温でオクタン酸(使用した画分I+II+III 1kg当たり0.110kg)を加えることにより懸濁液をさらに処理し、振動ミキサー(Vibromixer(登録商標)、サイズ4)を使用してタンパク質溶液を80分間さらに混合した。30分にわたってオクタン酸をゆっくり加えた。画分I+II+IIIの約0.015倍量のリン酸三カルシウム(CaPO)を加え、タンパク質溶液を15~30分間さらに混合した。濾過助剤Celpure(登録商標)P100(タンパク質溶液1kg当たり4.3~5.7g)を懸濁液に加え、15分間インキュベートした。さらに、濾過助剤Harbolite(登録商標)900(タンパク質溶液1kg当たり10g
)を懸濁液に加え、15分間インキュベートした。
深層濾過により沈殿物を濾液から分離させた。濾液は、出発懸濁液の80%のIgG、IgMおよびアルブミンを含有し、Glu-プラスミノーゲンは検出できなかった。しかしながら、タンパク質が濾過ケーク(廃棄物画分)中に残存し、これは通常除去および廃棄されるが、新たなタンパク質(Glu-プラスミノーゲン)を再生させる高い潜在能力を有しているように思われた。いくつもの洗浄工程による沈殿物(濾過ケーク)からのGlu-プラスミノーゲンの単離に約28μg/mLの濃度で成功し、出発材料から38%の収率を結果として得た。廃棄物画分である濾過ケークは通常廃棄されるので、収率は、廃棄物画分のリサイクリングにより実際に天然Glu-プラスミノーゲンを得ることができるという事実に従属する。したがって、コーン/KN法の他の廃棄物画分もまた、Glu-プラスミノーゲンの単離およびさらなる精製のために使用することができる。
濾過ケークから単離されたGlu-プラスミノーゲンをさらに精製することができた:Glu-プラスミノーゲン溶液をpH6.6の0.05Mのリン酸緩衝液中に希釈した。最終のGlu-プラスミノーゲン捕捉工程を実施例3にしたがって行った。
一般に、Glu-プラスミノーゲンは、各画分I+II+IIIおよび結果として生じた廃棄物画分から単離することができた。Glu-プラスミノーゲン濃度は、各個々のコーン法またはキストラー-ニッチマン法とは異なった。
実験的実施例5 Glu-プラスミノーゲン調製物の純度
Glu-プラスミノーゲン生成物を選択的なアフィニティークロマトグラフィーにより精製した。リシン残基は高親和性を有するが、不純物もまた捕捉することができた。さらには、Glu-プラスミノーゲンの精製方法は凝集物または断片を生成することができた。Glu-プラスミノーゲンは、凝集物または断片の存在なしに高純度を有するべきである。実施例2により精製されたGlu-プラスミノーゲン生成物のSEC分析を表4に示す。異なる方法は類似の結果を示した。Lysine Hyper Dを用いて方法2により精製されたGlu-プラスミノーゲン生成物のみが高分子量の分子を示した。他のGlu-プラスミノーゲン生成物は断片および凝集物を含有しなかった。Glu-プラスミノーゲン生成物中のアルブミン含有量の変動は10~20%で最小であった。
Figure 2023055801000008
実験的実施例6-精製されたGlu-プラスミノーゲン生成物の残存タンパク質分解活性の決定
実施例2にしたがってGlu-プラスミノーゲンの精製を行った。前述の精製方法により精製したGlu-プラスミノーゲン生成物(例えば、c:250μg/mL)のサンプル中のタンパク質分解活性を製造者の説明書にしたがって発色基質S-2288(Chromogenix)を使用して決定した。基質S-2288(Chromogenix)25mgを注射用水7.2mL中に溶解させた。アッセイの線形範囲を満たすようにサンプルを緩衝液(100mMのトリス/HCl pH8.4、106mMのNaCl)中に希釈し、緩衝液100μLをサンプル100μLと混合した(混合および37℃への温度調整)。予備希釈したサンプル100μLを96ウェルプレート中で発色基質溶液100μLと混合した。分光光度計を使用して37℃で405nm(1~3分)において吸収キネティクスを測定した。式C(U/L)=313×ΔE/分×F(C=タンパク質分解活性、F=希釈係数)を使用することにより初期吸収の差異(ΔE/分)からサンプルのタンパク質分解活性を算出した。
Figure 2023055801000009
精製したGlu-プラスミノーゲン生成物は、精製方法に応じて異なるタンパク質分解活性レベルを示した。一部のサンプルでは、緩衝液条件または樹脂の特徴に起因してタンパク質分解活性の増加を決定することができた。異なる精製方法を比較するために、Glu-プラスミノーゲン濃度は各サンプル中で類似であった。ECH-Lysine-Sepharoseの使用により精製されたGlu-プラスミノーゲン生成物はタンパク質分解活性を有しなかった。
この結果は、精製方法はGlu-プラスミノーゲンを活性化させず、また他の汚染性プロテアーゼを精製しないことを指し示す。
Lysine Hyper D樹脂を用いる生成後、より高いタンパク質分解活性が測定され、これは異なる緩衝液条件の使用と共に変化した。Lysine Hyper Dカラムをアプロチニンで飽和させることにより、生成されるGlu-プラスミノーゲン調製物のタンパク質分解活性は最小化された。さらには、0.32Mのグリシン緩衝液中へのダイアフィルトレーション後にタンパク質分解活性は劇的に低減された。
実験的実施例7-液体Glu-プラスミノーゲン生成物を用いる貯蔵安定性試験
実施例2および3にしたがって調製したGlu-プラスミノーゲン生成物を48時間にわたって37℃でインキュベートし、その後にSDS-PAGEにしたがって分解生成物(例えば、Lys-プラスミノーゲン)の存在について分析した。さらには、48時間のインキュベーション後のGlu-プラスミノーゲンの残存含有量をGlu-プラスミノーゲンELISAにより決定した。
Coomassie染色SDS-PAGEによれば、調製物中のGlu-プラスミノーゲンの安定性は、精製のために使用されるクロマトグラフィー樹脂の他に、Glu-プラスミノーゲンの溶出および貯蔵のために使用される緩衝液に依存した。方法1を使用してリシン-セファロースで生成され、0.32Mのグリシン緩衝液(pH4.3)中にダイアフィルトレーションされた調製物のGlu-プラスミノーゲン含有量は、37℃で48時間にわたって一定のままであった。Lys-プラスミノーゲンへの分解はサンプル中に検出できなかった。実施例2にしたがって調製された他のGlu-プラスミノーゲン生成物の一部では、Glu-プラスミノーゲンの分解プロセスが見られた。
この傾向はまた、Glu-プラスミノーゲンELISAを使用して異なるGlu-プラ
スミノーゲン調製物の37℃での48時間後の残存Glu-プラスミノーゲン含有量を測定することにより観察することができた(表6)。時点t=0での各サンプルのGlu-プラスミノーゲン濃度を100%と定義した。
Figure 2023055801000010
一般に、Glu-プラスミノーゲン生成物は、Lysine Hyper Dとは対照的にECH-Lysine Sepharoseにより精製された場合により高い安定性を示すことを観察することができた。しかしながら、精製のために使用した樹脂と独立して、酢酸緩衝液を用いて溶出されたGlu-プラスミノーゲン生成物は、グリシン緩衝液中へのダイアフィルトレーションによりさらに安定化させることができ、その後に類似の高い安定性を示した。安定性解析は、方法1の緩衝液条件の使用は高度に安定な精製されたGlu-プラスミノーゲン生成物を結果としてもたらすことを指し示した。
37℃で48時間のこの調製物のインキュベーション後に、生成物は、Glu-プラスミノーゲン調製物の安定性を示す仕様の範囲内のままであった:SDS-PAGEによる分解生成物(例えば、Lys-プラスミノーゲン)の存在、高速サイズ排除クロマトグラフィー(HPSEC)を用いて測定される凝集物および断片含有量、タンパク質分解活性(PA)ならびにGlu-プラスミノーゲンELISAによる48時間のインキュベーション後のGlu-プラスミノーゲンの残存含有量の決定(表7を参照)。
呈色、乳光、pH値のような他のパラメーターもまた決定され、試験期間全体にわたって変化しないままであった。
続けた安定性研究において、96時間後にも調製物は同じ安定性プロファイルを示し、Glu-プラスミノーゲン生成物の安定性は、緩衝液組成、使用されるクロマトグラフィー樹脂、pH値および電導度に依存するという仮説が裏付けられた。
さらに、37℃での48時間にわたる第2の安定性研究において、組換えアプロチニン(Glu-プラスミノーゲン1μg当たり組換えアプロチニン0.019μg)の追加は、使用した貯蔵緩衝液と独立して、Glu-プラスミノーゲン生成物の安定性をさらに増加させることが実証された。
Figure 2023055801000011
実験的実施例8-作用様式の研究
急性腎不全患者の新たな診断研究は、A2APとPLGとの比の有意な増加がUniversity Hospital of Mannheimにおける対照集団(55人の患者)および患者(25人の患者)において検出されたことを実証する。
敗血症患者の死後の研究により、腎臓、肝臓、肺、腸、副腎および脳などの多くの臓器における微小血管血栓、ならびに臓器損傷の程度は血栓の量に関係することが実証された。臓器不全の解析のために、敗血症の動物モデルを使用して、凝固を阻害しまたは線維素溶解を促進する療法が臓器不全および死亡を低減させることが実証された。
しかしながら、これらの敗血症モデルの使用は、線維素溶解の明確な開始の明確でない解析に繋がる。プラスミノーゲンの機構を複雑な疾患モデルにおいて定義することができない。
前臨床実験における4つの可能性がある作用様式(MoA)モデルによりGlu-プラスミノーゲンの治療可能性を定義することができる。
疑問であったのは、Glu-プラスミノーゲンが線維素溶解を開始させることができるのかどうか、およびタンパク質と阻害因子との均衡を安定化させるのかどうかということであった。いずれのMoAが好適であるのかが証明された。
2.1.マウスモデルにおける大静脈の完全閉塞(ミュンヘン大学Anders教授)
仮説(先行する実験により発見された)
Glu-プラスミノーゲンの静脈注射は、線維素溶解へと均衡をシフトさせて既存の静脈血栓を解消させる可能性を有する。
概要
方法:3日間、深静脈血栓を構築した。
解析:研究のエンドポイント→クロットサイズの測定
Figure 2023055801000012
材料および方法
in vivo実験
7~8週齢の雄C57BL/6NマウスをCharles River Laboratories、スルツフェルト、ドイツから入手した。それらを、食料および水に自由にアクセスできる標準的な住居条件下で維持した。全ての動物にIVC結紮手術を行い、手術後72時間にわたりモニターした。試験の最後に頸部脱臼により全てのマウスを屠殺した。全ての動物実験は、欧州動物福祉保護法にしたがって、地方自治体(Regierung von Oberbayern)による承認(登録番号:55.2-1-54-2532-54-2017)の下で行った。
Figure 2023055801000013
Figure 2023055801000014
動物の受入れ、順応およびモニタリング
有資格者が受入れ時に各動物を検査した。良好な健康状態であり試験動物として好適であると判断された動物を少なくとも1週間隔離した。
順応および試験の生物学的段階の間、全般的外見および挙動の変化について動物を1日1回観察した。
群化および処置
マウスを無作為化し、2つの群に割り当てた。ビヒクル/PBS群(n=12)およびGlu-プラスミノーゲン群(群当たりn=9)。
手術
全ての外科的処置は無菌の指定された区画内で実行した。手術の前に各動物に麻酔100μlを注射し、動物を5~10分間37℃の飼育室に入れて熟睡させた。10分後に動物を取り出し、予熱(40℃)した加熱プレートに置いて、手術中の動物の体温を維持させた。1~2cmの腹部切開を開き、下大静脈(IVC)の位置を確かめた。7-0(8.0mm0mm 3/8 c8c)ポリプロピレン単繊維非吸収性縫合糸(Prolene#8735H、Ethicon、ノルダーシュテット、ドイツ)を使用してIVCを結紮した(100%の狭窄)。結紮の成功後、腹部切開を閉じ、200μLのアンタゴニストおよびブプレノルフィンを注射し、再び37℃の飼育室に戻し、任意の手術合併症についてさらに1時間モニターした。
治療スケジュール
Figure 2023055801000015
屠殺
全ての動物を動物施設に戻し、モニターし、ブプレノルフィン200μlを12時間毎に注射した。全ての動物のストレス状態を規定のスコアシートに記録した(表2)。手術の72時間後に全ての動物を頸部脱臼法を用いて屠殺した。IVCを切除し、血栓クロットの重量を測定して記録した。
所見
死亡および臨床徴候
任意の異常な臨床徴候および死亡のような重篤な有害事象について動物を1日2回観察した。
血栓形成および解消
屠殺時に血栓形成(対照動物)および解消(処置動物)について個々の動物を評価した。各個々の動物の血栓重量を記録し、薬物の効能について評価した。
結果
死亡
対照群において2匹の動物およびGlu-プラスミノーゲン群において1匹の動物が手術合併症に起因して死亡した。
血栓形成および解消
全てのビヒクル/PBS処置群の動物は有意な量の血栓クロットを発生させたが、ほぼ全てのGlu-プラスミノーゲン処置群の動物はクロットを示さなかったか、またはクロットの最大の解消を示した(表1および図1~5)。
考察および結論
本発明にしたがって生成されたGlu-プラスミノーゲンは、驚くべきことに、高く優れた線維素溶解活性を有する。したがって、本発明による生成物は、既存の血栓を解消させるという仮説を立てた。
仮説を試験するために、マウスモデルの静脈血栓症におけるIVCの100%の狭窄を使用した。ビヒクルを注射した対照マウスは、狭窄の72時間後に血栓クロット形成の発生を示した。ビヒクルマウスの血栓重量と比較して、Glu-プラスミノーゲン群の動物は、Glu-プラスミノーゲン抽出物の投与後に血栓を有しないか、または血栓重量が有意に低減された。したがって、Glu-プラスミノーゲンの注射は、負の効果に繋がらず、凝固と線維素溶解との不均衡を線維素溶解活性の増加へとシフトさせた。両方の群において、手術合併症に起因する死亡が観察された。
したがって、開発したGlu-プラスミノーゲンは、この実験の静脈血栓症モデルにおいて線維素溶解活性を開始させる能力を有すると我々は結論付けた。
Figure 2023055801000016
両方の群における血栓重量の代表的なグラフ。血栓重量をグラム単位で測定した。データは平均±SEMを表す。p<0.0001(n=10のビヒクル群;n=8の処置群)。これらのデータは、Glu-プラスミノーゲンの注射後の既に構築された血栓の高度に有意(****)な低減を表す。
実験的実施例8.1.マウスモデルにおける腎臓の一時的な単一の虚血-再潅流
方法:腎臓管の虚血-壊死
解析:糸球体濾過量(1日目および30日目)、デルタ腎臓重量(30日目)、腎線維症の寸法(30日目)。ミュンヘン大学Anders教授
Figure 2023055801000017
実験的実施例8.2.マウスモデルにおける腎臓移植
方法:腎臓組織の壊死および毛細血管における微小クロット形成に起因する腎臓拒絶の解析
解析:糸球体濾過量(1日目および30日目)、デルタ腎臓重量(30日目)、腎線維症の寸法(30日目)およびクロット形成。コンタクト中。
Figure 2023055801000018
実験的実施例8.3.マウスモデルにおける移植片対宿主病(GvHD)
方法:フォンウィルブランド因子活性化および多量体栓球凝集に起因してGvHDに繋がる骨髄移植
解析:研究のエンドポイント→寿命がより長いが否か。
Figure 2023055801000019
実験的実施例9.Glu-プラスミノーゲンの適応機会
30年前の刊行物において、アルファ-2-アンチプラスミン(A2AP)とプラスミノーゲン(PLG)との比の増加が死体腎臓移植された患者において検出されたことが報告されている。
さらには、プラスミノーゲンの投与は、敗血症患者の身体状態を改善させることが示された。
大きい量のアルファ-2-アンチプラスミンおよびプラスミノーゲンの不均衡は線維素溶解活性を停止させ、凝固の均衡が取られない。急性腎不全患者の新たな診断研究において、対照集団(55人の患者)と患者(25人の患者)との間で有意な比が検出されることが示された。
未加工のデータ:急性腎不全患者におけるPLGおよびA2APの測定値
対照集団(55人の健常血液ドナー)における正常範囲:
PLG:82.7%~144.5%
A2AP:96.9%~118.9%
比:0.80~1.26
25人の急性腎不全患者の非統計正規分布の結果
1.25人の患者のうち12人(48%)が82.67%未満のPLG
2.25人の患者のうち14人(56%)が96%未満のA2AP
3.25人の患者のうち6人(24%)が1.26より高い比(A2AP/PLG)
4.25人の患者のうち4人(16%)が1.26より高い比および82%未満のPLG
Figure 2023055801000020
急性腎不全の研究は、異なるパラメーター(丸めた値)において患者(急性腎不全を患っている患者)と対照群(NP、健常個体)との間の有意差を結果としてもたらした:
Figure 2023055801000021
急性腎不全(AKI)患者の続けた解析は、有意な後天性プラスミノーゲン欠乏症を結果としてもたらした。
研究の概要-急性腎不全(AKI)
アルファ-2-アンチプラスミン(A2AP)およびGlu-プラスミノーゲン(PLG)の測定
77人の急性腎不全患者(AKI)
53人の対照集団(CP)
t検定-マン・ホイットニー解析の結果:
AKI患者における有意(**)な後天性プラスミノーゲン欠乏症
AKI患者における有意(**)な後天性アルファ-2-アンチプラスミン欠乏症
比(A2AP/PLG)の有意差なし
結論:
急性腎不全(AKI)患者は、高いパーセンテージで後天性プラスミノーゲン欠乏症、すなわち、Glu-プラスミノーゲン置換療法の適応症を有した。
Figure 2023055801000022
Figure 2023055801000023
Figure 2023055801000024
実験的実施例9.1 適応症 播種性血管内凝固(DIC)
試験の概要-DIC:
アルファ-2-アンチプラスミン(A2AP)、Glu-プラスミノーゲン(PLG)、D-ダイマーの測定
21人のDIC患者
53人の対照集団
マン・ホイットニー解析の結果:
DIC患者における有意(**)な後天性プラスミノーゲン欠乏症
DIC患者において後天性アルファ-2-アンチプラスミン欠乏症なし
比(A2AP/PLG)の有意(***)な差
結論:
DIC患者は、高いパーセンテージで後天性プラスミノーゲン欠乏症、すなわち、Glu-プラスミノーゲン置換療法の適応症を有した。
Figure 2023055801000025
Figure 2023055801000026
Figure 2023055801000027
実験的実施例9.2 適応症 敗血症
試験の概要-敗血症:
アルファ-2-アンチプラスミン(A2AP)、Glu-プラスミノーゲン(PLG)、PCTPの測定
9人の患者
53人の対照集団
t検定-マン・ホイットニー解析の結果:
敗血症患者における有意(*)な後天性プラスミノーゲン欠乏症
敗血症患者において後天性アルファ-2-アンチプラスミン欠乏症なし
比(A2AP/PLG)の有意差なし
結論:
敗血症患者は、高いパーセンテージで後天性プラスミノーゲン欠乏症、すなわち、Glu-プラスミノーゲン置換療法の適応症を有した。
Figure 2023055801000028
Figure 2023055801000029
Figure 2023055801000030
全体的な結論:
後天性プラスミノーゲン欠乏症は高度に複雑な疾患であり、リスクのある患者がプラスミノーゲンおよび/またはアルファ-2-アンチプラスミンについて試験されていないという事実に起因して現在診断が不充分である。リスクのあるこれらの患者の試験は、Glu-プラスミノーゲン置換療法の適応症を結果としてもたらし得る。また、疾患の経過内
の両方のパラメーターの試験は、Glu-プラスミノーゲンの適応症を結果としてもたらすはずである。
最後に、本願発明の好ましい実施形態を以下に列挙する:
1. Glu-プラスミノーゲンを単離する方法であって、以下の工程:
(i)血漿またはGlu-プラスミノーゲンを含む血漿画分を提供する工程;
(ii)血漿または血漿画分を、陽イオン基を含む樹脂に基づく陰イオン交換体と接触させる工程;
(iii)血漿または血漿画分をローディングした工程(ii)から得られた陰イオン交換体を、陰イオン交換体の樹脂の陽イオン基と競合する陽イオンを含まない第1の緩衝液B1を用いて洗浄する工程;
(iv)工程(iii)の洗浄された陰イオン交換体から、陰イオン交換体の樹脂の陽イオン基と競合する陽イオンを含む第2の緩衝液B2を用いてGlu-プラスミノーゲンを溶出させ、それにより、緩衝液B2およびGlu-プラスミノーゲンを含む溶液を得る工程;
(v)場合により、工程(iv)から得られた溶液のpHを所望の範囲内のpHに調整する工程;
(vi)場合により、工程(iv)、(v)または(vii)のいずれかから得られた溶液に、Glu-プラスミノーゲンがプラスミンまたはLys-プラスミノーゲンに成熟することを防止する1つまたはそれ以上の安定化剤を加えることにより、Glu-プラスミノーゲンを安定化させる工程;
(vii)場合により、工程(iv)~(vi)のいずれかからの溶液を1つまたはそれ以上の抗ウイルス処理に供する工程;および
(viii)場合により、工程(iv)または(vii)のいずれかから得られたGlu-プラスミノーゲンを含む溶液を乾燥または凍結乾燥させる工程
を含む、前記方法。
2. 血漿画分は:
(a)典型的に、冷凍およびその後に解凍に供された血漿の上清から得られた脱クリオ血漿;
(b)コーン法もしくはキストラー-ニッチマン法のペーストI+II+IIIもしくはI+IIIの廃棄物画分またはこれらの画分の2つもしくは3つ全ての組合せ;および
(c)コーン法もしくはキストラー-ニッチマン法のペーストI+II+IIIもしくはペーストI+IIIまたはGlu-プラスミノーゲンを含有するこれらのいずれかの画分もしくは廃棄物画分
からなる群から選択される、項目1に記載の方法。
3. 陰イオン交換体の樹脂は、アミノ基またはその塩、好ましくは、第一級アミノ基またはその塩を有し、より好ましくは、構造部分-R-NH2または-R-NH3 ++A-(式中、RはC1~C10-アルキレン残基であり、A-は陰イオン性対イオンである)を有し、特に、陰イオン交換体はリシル部分を有する、項目1または2に記載の方法。
4. 第1の緩衝液B1および/または第2の緩衝液B2は、7.1~11.5のpH、好ましくは8.5~11のpH、特に10~11のpHを有する塩基性緩衝液である、項目1~3のいずれか1項に記載の方法。
5. 第2の緩衝液B2は、陰イオン交換体の陽イオン基と競合する陽イオンとして、可溶性のアミンまたはその塩、好ましくは、第1級C1~C10-アミンまたはその塩、特に、リシンまたはその塩を含む、項目1~4のいずれか1項に記載の方法。
6. 工程(vi)の安定化剤は、アプロチニン、アルファ-2-アンチプラスミン、D-フェニルアラニル-L-プロリル-アルギニンクロロメチルケトン、小分子安定化剤、およびこれらの組合せからなる群から選択される、項目1~5のいずれか1項に記載の方法。
7. 工程(iv)~(vi)のいずれかから得られた溶液は、工程(vii)の抗ウイ
ルス処理に供され、抗ウイルス処理は:
(vii-a)1つまたはそれ以上の界面活性剤、好ましくは、Tween-20、Tween-80およびTriton-X-100からなる群から選択される1つまたはそれ以上の界面活性剤を加えること;
(vii-b)リン酸エステル、特にトリ-n-ブチル-ホスフェートのような1つまたはそれ以上の他の抗ウイルス剤を加えること;
(vii-c)限外濾過、特にナノ濾過;および
(vii-d)上述のものの2つまたはそれ以上の組合せ
からなる群から選択される、項目1~6のいずれか1項に記載の方法。
8. 以下の工程:
(i)血漿またはGlu-プラスミノーゲンを含む血漿画分を提供する工程;
(ii)血漿または血漿画分を、構造部分-R-NH2または-R-NH3++A-(式中、RはC1~C10-アルキレン残基であり、A-は陰イオン性対イオン、特にリシル残基である)を有する樹脂に基づく陰イオン交換体と接触させる工程;
(iii)血漿または血漿画分をローディングした工程(ii)から得られた陰イオン交換体を、陰イオン交換体の樹脂の陽イオン基と競合する陽イオンを含まない8.5~11のpHを有する第1の緩衝液B1を用いて洗浄する工程;
(iv)工程(iii)の洗浄された陰イオン交換体から、陰イオン交換体のアミノ基と競合する、第1級C1~C10-アミンまたはその塩、特に、リシンまたはその塩を含む8.5~11のpHの第2の緩衝液B2を用いてGlu-プラスミノーゲンを溶出させ、それにより、Glu-プラスミノーゲンを含む溶液を得る工程;
(v)工程(iv)から得られた溶液のpHを7~8または4.5~5.5の範囲内、特に7~8の範囲内のpHに調整する工程;
(vi)工程(iv)、(v)または(vii)のいずれかから得られた溶液に、Glu-プラスミノーゲンがプラスミンまたはLys-プラスミノーゲンに成熟することを防止する1つまたはそれ以上の安定化剤を加えることにより、Glu-プラスミノーゲンを安定化させる工程であって、特に、前記安定化剤は、アプロチニン、アルファ-2-アンチプラスミン、D-フェニルアラニル-L-プロリル-アルギニンクロロメチルケトン、小分子安定化剤、およびこれらの組合せからなる群から選択される、工程;ならびに
(vii)工程(iv)~(vi)のいずれかからの溶液を抗ウイルス処理に供する工程であって、特に、前記抗ウイルス処理は:
(vii-I)1つまたはそれ以上の界面活性剤、好ましくは、Tween-20、Tween-80およびTriton-X-100からなる群から選択される1つまたはそれ以上の界面活性剤、ならびにリン酸エステル、特にトリ-n-ブチル-ホスフェートのような1つまたはそれ以上の他の抗ウイルス剤を加えること;
(vii-II)工程(vii-I)の溶液を除去すること;ならびに
(vii-III)限外濾過、特にナノ濾過
である、工程;ならびに
(viii)場合により、工程(iv)または(vii)のいずれかから得られたGlu-プラスミノーゲンを含む溶液を乾燥または凍結乾燥、特に凍結乾燥させる工程
を含む、項目1~7のいずれか1項に記載の方法。
9. 以下の工程:
(i)以下:
(a)典型的に、冷凍およびその後に解凍に供された血漿の上清から得られた脱クリオ血漿;および
(b)コーン法もしくはキストラー-ニッチマン法のペーストI+II+IIIもしくはI+IIIの廃棄物画分またはこれらの画分の2つもしくは3つ全ての組合せ、
特に、コーン法またはキストラー-ニッチマン法のペーストI+II+IIIまたはI+IIIの廃棄物画分
からなる群から選択されるGlu-プラスミノーゲンを含む血漿画分;
(ii)血漿または血漿画分を、構造部分-R-NH2または-R-NH3 ++A-(式中、Rは上記に定義される通りであり、特に、RはC1~C10-アルキレン残基であり、A-は陰イオン性対イオン、特にリシル残基である)を有する樹脂に基づく陰イオン交換体と接触させる工程;
(iii)血漿または血漿画分をローディングした工程(ii)から得られた陰イオン交換体を、0.01~0.1Mの濃度の8.5~11のpHを有する第1の緩衝液B1を用いて洗浄する工程であって、前記第1の緩衝液B1は、陰イオン交換体の樹脂の陽イオン基と競合する陽イオンを含まない、工程;
(iv)工程(iii)の洗浄された陰イオン交換体から、0.01~0.1Mの濃度の8.5~11のpHの第2の緩衝液B2を用いてGlu-プラスミノーゲンを溶出させ、それにより、Glu-プラスミノーゲンを含む溶液を得る工程であって、前記第2の緩衝液B2は、陰イオン交換体のアミノ基と競合する、第1級C1~C10-アミンまたはその塩、特に、リシンまたはその塩を含む、工程;
(v)工程(iv)から得られた溶液のpHを所望の範囲内のpHに調整する工程;
(vi)場合により、工程(iv)、(v)または(vii)のいずれかから得られた溶液に、Glu-プラスミノーゲンがプラスミンまたはLys-プラスミノーゲンに成熟することを防止する1つまたはそれ以上の安定化剤を加えることにより、Glu-プラスミノーゲンを安定化させる工程であって、特に、前記安定化剤は、アプロチニン、アルファ-2-アンチプラスミン、D-フェニルアラニル-L-プロリル-アルギニンクロロメチルケトン、小分子安定化剤、およびこれらの組合せからなる群から選択される、工程;および
(vii)場合により、工程(vi)の溶液を抗ウイルス処理に供する工程
を含む、項目1~8のいずれか1項に記載の方法。
10. 項目1~9のいずれか1項に記載の方法から得られ得るGlu-プラスミノーゲン。
11. 総ポリペプチド質量に基づいて、少なくとも80%(w/w)のGlu-プラスミノーゲンを含み、特に、Glu-プラスミノーゲンは、項目1~9のいずれか1項に記載の方法から得られ得るものである、タンパク質組成物。
12. Glu-プラスミノーゲン、好ましくは、項目10に記載のGlu-プラスミノーゲン、および少なくとも1つの薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物。
13. 臓器不全、血栓事象、動脈閉塞疾患、微小循環、播種性血管内凝固(DIC)、およびこれらの2つもしくはそれ以上の組合せからなる群から選択される障害を患っているかまたは発症するリスクがある患者を治療する方法における使用のためのGlu-プラスミノーゲンであって、特に、前記障害は臓器不全である、Glu-プラスミノーゲン。14. 患者は:
(a)患者の血液中に見出されるアルファ-2-アンチプラスミン対Glu-プラスミノーゲンの比が、同じ種の集団全体において見出される平均の比と比較して少なくとも1.1倍高いこと;および/または
(b)患者の血液中のGlu-プラスミノーゲンのレベルが、同じ種の集団全体において見出される平均のレベルと比較して少なくとも1%(mol/mol)低いこと
を特徴とする、項目13に記載の使用のためのGlu-プラスミノーゲン。
15. 臓器不全は、個々の臓器における病理学的急性腎不全、急性移植拒絶、凝固亢進、播種性血管内凝固(DIC)、および血栓事象であるかまたはそれに関連するものであり、特に、臓器は、心臓、肺および静脈からなる群から選択される、項目13または14に記載の使用のためのGlu-プラスミノーゲン。
16. 前記Glu-プラスミノーゲンは、項目10に記載のGlu-プラスミノーゲンであり、および/または項目12に記載の医薬組成物の部分を形成する、項目13~15のいずれか1項に記載の使用のためのGlu-プラスミノーゲン。
17. 臓器不全または血栓事象を発症するリスクは、後天性プラスミノーゲン欠乏症により引き起こされる、項目13~16のいずれか1項に記載の使用のためのGlu-プラ
スミノーゲン。
18. 臓器不全または血栓事象のリスクは、微小凝固障害により引き起こされる、項目13~17のいずれか1項に記載の使用のためのGlu-プラスミノーゲン。
19. 患者は、深静脈血栓症および/もしくは肺塞栓症を患っているかまたは発症するリスクがある、項目13~18のいずれか1項に記載の使用のためのGlu-プラスミノーゲン。
20. 臓器不全または血栓事象を発症するリスクは、プラスミン阻害物質の後天性の増加により引き起こされ、特に、プラスミン阻害物質はアルファ-2-アンチプラスミンである、項目13~19のいずれか1項に記載の使用のためのGlu-プラスミノーゲン。21. 障害は、個々の臓器における、臓器不全、深静脈血栓症、慢性または急性臓器塞栓症、臓器梗塞、急性移植拒絶のような線維素溶解系の局所的なまたは生成された不均衡を引き起こす急性または慢性炎症、凝固亢進、播種性血管内凝固(DIC)、および血栓事象からなる群から選択され、特に、臓器は、心臓、肺および静脈からなる群から選択される、項目13~20のいずれか1項に記載の使用のためのGlu-プラスミノーゲン。

Claims (21)

  1. Glu-プラスミノーゲンを単離する方法であって、以下の工程:
    (i)血漿またはGlu-プラスミノーゲンを含む血漿画分を提供する工程;
    (ii)血漿または血漿画分を、陽イオン基を含む樹脂に基づく陰イオン交換体と接触させる工程;
    (iii)血漿または血漿画分をローディングした工程(ii)から得られた陰イオン交換体を、陰イオン交換体の樹脂の陽イオン基と競合する陽イオンを含まない第1の緩衝液B1を用いて洗浄する工程;
    (iv)工程(iii)の洗浄された陰イオン交換体から、陰イオン交換体の樹脂の陽イオン基と競合する陽イオンを含む第2の緩衝液B2を用いてGlu-プラスミノーゲンを溶出させ、それにより、緩衝液B2およびGlu-プラスミノーゲンを含む溶液を得る工程;
    (v)場合により、工程(iv)から得られた溶液のpHを所望の範囲内のpHに調整する工程;
    (vi)場合により、工程(iv)、(v)または(vii)のいずれかから得られた溶液に、Glu-プラスミノーゲンがプラスミンまたはLys-プラスミノーゲンに成熟することを防止する1つまたはそれ以上の安定化剤を加えることにより、Glu-プラスミノーゲンを安定化させる工程;
    (vii)場合により、工程(iv)~(vi)のいずれかからの溶液を1つまたはそれ以上の抗ウイルス処理に供する工程;および
    (viii)場合により、工程(iv)または(vii)のいずれかから得られたGlu-プラスミノーゲンを含む溶液を乾燥または凍結乾燥させる工程
    を含む、前記方法。
  2. 血漿画分は:
    (a)典型的に、冷凍およびその後に解凍に供された血漿の上清から得られた脱クリオ血漿;
    (b)コーン法もしくはキストラー-ニッチマン法のペーストI+II+IIIもしくはI+IIIの廃棄物画分またはこれらの画分の2つもしくは3つ全ての組合せ;および
    (c)コーン法もしくはキストラー-ニッチマン法のペーストI+II+IIIもしくはペーストI+IIIまたはGlu-プラスミノーゲンを含有するこれらのいずれかの画分もしくは廃棄物画分
    からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
  3. 陰イオン交換体の樹脂は、アミノ基またはその塩、好ましくは、第一級アミノ基またはその塩を有し、より好ましくは、構造部分-R-NHまたは-R-NH +A(式中、RはC~C10-アルキレン残基であり、Aは陰イオン性対イオンである)を有し、特に、陰イオン交換体はリシル部分を有する、請求項1または2に記載の方法。
  4. 第1の緩衝液B1および/または第2の緩衝液B2は、7.1~11.5のpH、好ましくは8.5~11のpH、特に10~11のpHを有する塩基性緩衝液である、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 第2の緩衝液B2は、陰イオン交換体の陽イオン基と競合する陽イオンとして、可溶性のアミンまたはその塩、好ましくは、第1級C~C10-アミンまたはその塩、特に、リシンまたはその塩を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 工程(vi)の安定化剤は、アプロチニン、アルファ-2-アンチプラスミン、D-フェニルアラニル-L-プロリル-アルギニンクロロメチルケトン、小分子安定化剤、およ
    びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
  7. 工程(iv)~(vi)のいずれかから得られた溶液は、工程(vii)の抗ウイルス処理に供され、抗ウイルス処理は:
    (vii-a)1つまたはそれ以上の界面活性剤、好ましくは、Tween-20、Tween-80およびTriton-X-100からなる群から選択される1つまたはそれ以上の界面活性剤を加えること;
    (vii-b)リン酸エステル、特にトリ-n-ブチル-ホスフェートのような1つまたはそれ以上の他の抗ウイルス剤を加えること;
    (vii-c)限外濾過、特にナノ濾過;および
    (vii-d)上述のものの2つまたはそれ以上の組合せ
    からなる群から選択される、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
  8. 以下の工程:
    (i)血漿またはGlu-プラスミノーゲンを含む血漿画分を提供する工程;
    (ii)血漿または血漿画分を、構造部分-R-NHまたは-R-NH++A(式中、RはC~C10-アルキレン残基であり、Aは陰イオン性対イオン、特にリシル残基である)を有する樹脂に基づく陰イオン交換体と接触させる工程;
    (iii)血漿または血漿画分をローディングした工程(ii)から得られた陰イオン交換体を、陰イオン交換体の樹脂の陽イオン基と競合する陽イオンを含まない8.5~11のpHを有する第1の緩衝液B1を用いて洗浄する工程;
    (iv)工程(iii)の洗浄された陰イオン交換体から、陰イオン交換体のアミノ基と競合する、第1級C~C10-アミンまたはその塩、特に、リシンまたはその塩を含む8.5~11のpHの第2の緩衝液B2を用いてGlu-プラスミノーゲンを溶出させ、それにより、Glu-プラスミノーゲンを含む溶液を得る工程;
    (v)工程(iv)から得られた溶液のpHを7~8または4.5~5.5の範囲内、特に7~8の範囲内のpHに調整する工程;
    (vi)工程(iv)、(v)または(vii)のいずれかから得られた溶液に、Glu-プラスミノーゲンがプラスミンまたはLys-プラスミノーゲンに成熟することを防止する1つまたはそれ以上の安定化剤を加えることにより、Glu-プラスミノーゲンを安定化させる工程であって、特に、前記安定化剤は、アプロチニン、アルファ-2-アンチプラスミン、D-フェニルアラニル-L-プロリル-アルギニンクロロメチルケトン、小分子安定化剤、およびこれらの組合せからなる群から選択される、工程;ならびに
    (vii)工程(iv)~(vi)のいずれかからの溶液を抗ウイルス処理に供する工程であって、特に、前記抗ウイルス処理は:
    (vii-I)1つまたはそれ以上の界面活性剤、好ましくは、Tween-20、Tween-80およびTriton-X-100からなる群から選択される1つまたはそれ以上の界面活性剤、ならびにリン酸エステル、特にトリ-n-ブチル-ホスフェートのような1つまたはそれ以上の他の抗ウイルス剤を加えること;
    (vii-II)工程(vii-I)の溶液を除去すること;ならびに
    (vii-III)限外濾過、特にナノ濾過
    である、工程;ならびに
    (viii)場合により、工程(iv)または(vii)のいずれかから得られたGlu-プラスミノーゲンを含む溶液を乾燥または凍結乾燥、特に凍結乾燥させる工程
    を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
  9. 以下の工程:
    (i)以下:
    (a)典型的に、冷凍およびその後に解凍に供された血漿の上清から得られた脱クリオ
    血漿;および
    (b)コーン法もしくはキストラー-ニッチマン法のペーストI+II+IIIもしくはI+IIIの廃棄物画分またはこれらの画分の2つもしくは3つ全ての組合せ、
    特に、コーン法またはキストラー-ニッチマン法のペーストI+II+IIIまたはI+IIIの廃棄物画分
    からなる群から選択されるGlu-プラスミノーゲンを含む血漿画分;
    (ii)血漿または血漿画分を、構造部分-R-NHまたは-R-NH +A(式中、Rは上記に定義される通りであり、特に、RはC~C10-アルキレン残基であり、Aは陰イオン性対イオン、特にリシル残基である)を有する樹脂に基づく陰イオン交換体と接触させる工程;
    (iii)血漿または血漿画分をローディングした工程(ii)から得られた陰イオン交換体を、0.01~0.1Mの濃度の8.5~11のpHを有する第1の緩衝液B1を用いて洗浄する工程であって、前記第1の緩衝液B1は、陰イオン交換体の樹脂の陽イオン基と競合する陽イオンを含まない、工程;
    (iv)工程(iii)の洗浄された陰イオン交換体から、0.01~0.1Mの濃度の8.5~11のpHの第2の緩衝液B2を用いてGlu-プラスミノーゲンを溶出させ、それにより、Glu-プラスミノーゲンを含む溶液を得る工程であって、前記第2の緩衝液B2は、陰イオン交換体のアミノ基と競合する、第1級C~C10-アミンまたはその塩、特に、リシンまたはその塩を含む、工程;
    (v)工程(iv)から得られた溶液のpHを所望の範囲内のpHに調整する工程;
    (vi)場合により、工程(iv)、(v)または(vii)のいずれかから得られた溶液に、Glu-プラスミノーゲンがプラスミンまたはLys-プラスミノーゲンに成熟することを防止する1つまたはそれ以上の安定化剤を加えることにより、Glu-プラスミノーゲンを安定化させる工程であって、特に、前記安定化剤は、アプロチニン、アルファ-2-アンチプラスミン、D-フェニルアラニル-L-プロリル-アルギニンクロロメチルケトン、小分子安定化剤、およびこれらの組合せからなる群から選択される、工程;および
    (vii)場合により、工程(vi)の溶液を抗ウイルス処理に供する工程
    を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
  10. 請求項1~9のいずれか1項に記載の方法から得られ得るGlu-プラスミノーゲン。
  11. 総ポリペプチド質量に基づいて、少なくとも80%(w/w)のGlu-プラスミノーゲンを含み、特に、Glu-プラスミノーゲンは、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法から得られ得るものである、タンパク質組成物。
  12. Glu-プラスミノーゲン、好ましくは、請求項10に記載のGlu-プラスミノーゲン、および少なくとも1つの薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物。
  13. 臓器不全、血栓事象、動脈閉塞疾患、微小循環、播種性血管内凝固(DIC)、およびこれらの2つもしくはそれ以上の組合せからなる群から選択される障害を患っているかまたは発症するリスクがある患者を治療する方法における使用のためのGlu-プラスミノーゲンであって、特に、前記障害は臓器不全である、Glu-プラスミノーゲン。
  14. 患者は:
    (a)患者の血液中に見出されるアルファ-2-アンチプラスミン対Glu-プラスミノーゲンの比が、同じ種の集団全体において見出される平均の比と比較して少なくとも1.1倍高いこと;および/または
    (b)患者の血液中のGlu-プラスミノーゲンのレベルが、同じ種の集団全体において見出される平均のレベルと比較して少なくとも1%(mol/mol)低いこと
    を特徴とする、請求項13に記載の使用のためのGlu-プラスミノーゲン。
  15. 臓器不全は、個々の臓器における病理学的急性腎不全、急性移植拒絶、凝固亢進、播種性血管内凝固(DIC)、および血栓事象であるかまたはそれに関連するものであり、特に、臓器は、心臓、肺および静脈からなる群から選択される、請求項13または14に記載の使用のためのGlu-プラスミノーゲン。
  16. 前記Glu-プラスミノーゲンは、請求項10に記載のGlu-プラスミノーゲンであり、および/または請求項12に記載の医薬組成物の部分を形成する、請求項13~15のいずれか1項に記載の使用のためのGlu-プラスミノーゲン。
  17. 臓器不全または血栓事象を発症するリスクは、後天性プラスミノーゲン欠乏症により引き起こされる、請求項13~16のいずれか1項に記載の使用のためのGlu-プラスミノーゲン。
  18. 臓器不全または血栓事象のリスクは、微小凝固障害により引き起こされる、請求項13~17のいずれか1項に記載の使用のためのGlu-プラスミノーゲン。
  19. 患者は、深静脈血栓症および/もしくは肺塞栓症を患っているかまたは発症するリスクがある、請求項13~18のいずれか1項に記載の使用のためのGlu-プラスミノーゲン。
  20. 臓器不全または血栓事象を発症するリスクは、プラスミン阻害物質の後天性の増加により引き起こされ、特に、プラスミン阻害物質はアルファ-2-アンチプラスミンである、請求項13~19のいずれか1項に記載の使用のためのGlu-プラスミノーゲン。
  21. 障害は、個々の臓器における、臓器不全、深静脈血栓症、慢性または急性臓器塞栓症、臓器梗塞、急性移植拒絶のような線維素溶解系の局所的なまたは生成された不均衡を引き起こす急性または慢性炎症、凝固亢進、播種性血管内凝固(DIC)、および血栓事象からなる群から選択され、特に、臓器は、心臓、肺および静脈からなる群から選択される、請求項13~20のいずれか1項に記載の使用のためのGlu-プラスミノーゲン。
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