JP2023055060A - 内接噛合遊星歯車装置及びロボット用関節装置 - Google Patents

内接噛合遊星歯車装置及びロボット用関節装置 Download PDF

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Abstract

【課題】内ピンの回転時に生じる損失を低減しやすい内接噛合遊星歯車装置及びロボット用関節装置を提供する。【解決手段】内接噛合遊星歯車装置1Aは、軸受け部材6Aと、内歯歯車2と、遊星歯車3と、複数の内ピン4と、複数組の転がり軸受け41,42と、循環路170と、を備える。複数の内ピン4は、遊星歯車3に形成された複数の遊嵌孔32にそれぞれ挿入された状態で、遊嵌孔32内を公転しながら内歯歯車2に対して相対的に回転する。複数組の転がり軸受け41,42は、遊星歯車3に対して回転軸Ax1に平行な方向の両側において、複数の内ピン4の各々を保持する。循環路170は、転がり軸受け41,42における転動体402の軌道404、及び遊嵌孔32の内周面と内ピン4との隙間を含む。内接噛合遊星歯車装置1Aでは、循環路170を通して潤滑剤を循環させる。【選択図】図21

Description

本開示は、一般に内接噛合遊星歯車装置及びロボット用関節装置に関し、より詳細には、内歯を有する内歯歯車の内側に外歯を有する遊星歯車が配置される内接噛合遊星歯車装置及びロボット用関節装置に関する。
関連技術として、遊星歯車(外歯歯車)が入力軸の回転と共に揺動回転し、遊星歯車の外周に設けられたトロコイド歯形の外歯と内歯歯車の内歯との噛合を生じさせる内接噛合遊星歯車装置(構造)が知られている(例えば、特許文献1参照)。関連技術に係る内接噛合遊星歯車装置では、遊星歯車の外歯と内歯歯車の内歯(外ピン)との噛合によって、入力軸の回転が遊星歯車の減速された回転(自転)となって取り出される。
この内接噛合遊星歯車装置において、遊星歯車の遊嵌孔(内ピン孔)を貫通する内ピンは、ブッシュを介して出力軸のフランジ部に回転自在に組込まれている。これにより、遊星歯車の回転は、遊嵌孔と内ピンとの隙間によりその揺動成分が吸収され、自転成分のみが内ピンを介して出力軸に伝達される。
特開平05-044790号公報
上記関連技術の構成では、出力軸(フランジ部)がブッシュを介して内ピンを回転可能に保持しているが、内ピンの回転時に出力軸(フランジ部)と内ピンとの間に摩擦が生じ、当該摩擦が動力伝達における損失となり得る。特に、長期的に内接噛合遊星歯車装置が使用される場合には、例えば、潤滑剤の劣化等に起因して摩擦による損失が大きくなり、内接噛合遊星歯車装置の長寿命化の妨げにもなり得る。
本開示の目的は、内ピンの回転時に生じる損失を低減しやすい内接合遊星歯車装置及びロボット用関節装置を提供することにある。
本開示の一態様に係る内接噛合遊星歯車装置は、軸受け部材と、内歯歯車と、遊星歯車と、複数の内ピンと、複数組の転がり軸受けと、循環路と、を備える。前記軸受け部材は、外輪及び前記外輪の内側に配置される内輪を有し、前記内輪が前記外輪に対して回転軸を中心に相対的に回転可能に支持される。前記内歯歯車は、内歯を有し前記外輪に固定される。前記遊星歯車は、前記内歯に部分的に噛み合う外歯を有する。前記複数の内ピンは、前記遊星歯車に形成された複数の遊嵌孔にそれぞれ挿入された状態で、前記遊嵌孔内を公転しながら前記内歯歯車に対して相対的に回転する。前記複数組の転がり軸受けは、前記遊星歯車に対して前記回転軸に平行な方向の両側において、前記複数の内ピンの各々を保持する。前記循環路は、前記転がり軸受けにおける転動体の軌道、及び前記遊嵌孔の内周面と前記内ピンとの隙間を含む。前記内接噛合遊星歯車装置では、前記循環路を通して潤滑剤を循環させる。
本開示の一態様に係るロボット用関節装置は、前記内接噛合遊星歯車装置と、前記外輪に固定される第1部材と、前記内輪に固定される第2部材と、を備える。
本開示によれば、内ピンの回転時に生じる損失を低減しやすい内接噛合遊星歯車装置及びロボット用関節装置を提供することができる。
図1は、基本構成に係る内接噛合遊星歯車装置を含むアクチュエータの概略構成を示す斜視図である。 図2は、同上の内接噛合遊星歯車装置を回転軸の出力側から見た概略の分解斜視図である。 図3は、同上の内接噛合遊星歯車装置の概略断面図である。 図4は、同上の内接噛合遊星歯車装置を示す、図3のA1-A1線断面図である。 図5Aは、同上の内接噛合遊星歯車装置の遊星歯車を単体で示す斜視図である。 図5Bは、同上の内接噛合遊星歯車装置の遊星歯車を単体で示す正面図である。 図6Aは、同上の内接噛合遊星歯車装置の軸受け部材を単体で示す斜視図である。 図6Bは、同上の内接噛合遊星歯車装置の軸受け部材を単体で示す正面図である。 図7Aは、同上の内接噛合遊星歯車装置の偏心軸を単体で示す斜視図である。 図7Bは、同上の内接噛合遊星歯車装置の偏心軸を単体で示す正面図である。 図8Aは、同上の内接噛合遊星歯車装置の支持体を単体で示す斜視図である。 図8Bは、同上の内接噛合遊星歯車装置の支持体を単体で示す正面図である。 図9は、同上の内接噛合遊星歯車装置を示す、図3の領域Z1の拡大図である。 図10は、同上の内接噛合遊星歯車装置を示す、図3のB1-B1線断面図である。 図11は、実施形態1に係る内接噛合遊星歯車装置の概略断面図である。 図12は、同上の内接噛合遊星歯車装置を示す、図13のB1-A1線断面図である。 図13は、同上の内接噛合遊星歯車装置を回転軸の入力側から見た側面図である。 図14は、同上の内接噛合遊星歯車装置を回転軸の出力側から見た側面図である。 図15は、同上の内接噛合遊星歯車装置において、カバー体及びオイルシールを取り外した状態を示す概略断面図である。 図16は、同上の内接噛合遊星歯車装置において、カバー体及びオイルシールを取り外した状態を示す、回転軸の入力側から見た側面図である。 図17は、同上の内接噛合遊星歯車装置において、カバー体及びオイルシールを取り外した状態を示す、回転軸の出力側から見た側面図である。 図18は、同上の内接噛合遊星歯車装置を示す、図11のA1-A1線断面図である。 図19は、同上の内接噛合遊星歯車装置を示す、図11のB1-B1線断面図である。 図20は、同上の内接噛合遊星歯車装置における、転がり軸受けの配置を示す説明図である。 図21は、同上の内接噛合遊星歯車装置における、潤滑剤の循環路を示す概略断面図である。 図22は、同上の内接噛合遊星歯車装置における、第3領域に着目した場合の潤滑剤の流れを模式的に表す説明図である。 図23は、同上の内接噛合遊星歯車装置における、ポンプ機能により循環路を潤滑剤が循環する様子を表す模式図である。 図24は、同上の内接噛合遊星歯車装置における、第3領域付近を拡大した概略断面図である。 図25は、同上の内接噛合遊星歯車装置における内ピンの交換手順を示す概略説明図である。 図26は、同上の内接噛合遊星歯車装置における転動体の交換手順を示す概略説明図である。 図27は、同上の内接噛合遊星歯車装置を用いたロボット用関節装置を示す概略断面図である。 図28は、同上の内接噛合遊星歯車装置と変形例に係る内接噛合遊星歯車装置とを比較するための概略断面図である。 図29は、実施形態2に係る内接噛合遊星歯車装置の概略断面図である。
(基本構成)
(1)概要
以下、本基本構成に係る内接噛合遊星歯車装置1の概要について、図1~図3を参照して説明する。本開示で参照する図面は、いずれも模式的な図であり、図中の各構成要素の大きさ及び厚さそれぞれの比が、必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。例えば、図1~図3における、内歯21及び外歯31の歯形、寸法及び歯数等は、いずれも説明のために模式的に表しているに過ぎず、図示されている形状に限定する趣旨ではない。
本基本構成に係る内接噛合遊星歯車装置1(以下、単に「歯車装置1」ともいう)は、内歯歯車2と、遊星歯車3と、複数の内ピン4と、を備える歯車装置である。この歯車装置1では、環状の内歯歯車2の内側に遊星歯車3が配置され、さらに、遊星歯車3の内側には偏心体軸受け5が配置される。偏心体軸受け5は、偏心体内輪51及び偏心体外輪52を有し、偏心体内輪51の中心C1(図3参照)からずれた回転軸Ax1(図3参照)まわりで偏心体内輪51が回転(偏心運動)することによって、遊星歯車3を揺動させる。偏心体内輪51は、例えば、偏心体内輪51に挿入される偏心軸7が回転することにより、回転軸Ax1まわりで回転(偏心運動)する。また、内接噛合遊星歯車装置1は、外輪62及び内輪61を有する軸受け部材6を更に備える。内輪61は、外輪62の内側に配置され、外輪62に対して相対的に回転可能に支持される。
内歯歯車2は、内歯21を有し、外輪62に固定される。特に、本基本構成では、内歯歯車2は、環状の歯車本体22と、複数の外ピン23と、を有する。複数の外ピン23は、自転可能な状態で歯車本体22の内周面221に保持され、内歯21を構成する。遊星歯車3は、内歯21に部分的に噛み合う外歯31を有する。つまり、内歯歯車2の内側で遊星歯車3は内歯歯車2に対して内接し、外歯31の一部が内歯21の一部に噛み合った状態となる。この状態で、偏心軸7が回転すると遊星歯車3が揺動して、内歯21と外歯31との噛み合い位置が内歯歯車2の円周方向に移動し、遊星歯車3と内歯歯車2との歯数差に応じた相対回転が両歯車(内歯歯車2及び遊星歯車3)の間に発生する。ここで、内歯歯車2が固定されているとすれば、両歯車の相対回転に伴って、遊星歯車3が回転(自転)することになる。その結果、遊星歯車3からは、両歯車の歯数差に応じて、比較的高い減速比で減速された回転出力が得られる。
この種の歯車装置1は、遊星歯車3の自転成分相当の回転を、例えば、軸受け部材6の内輪61と一体化された出力軸の回転として取り出すように使用される。これにより、歯車装置1は、偏心軸7を入力側とし、出力軸を出力側として、比較的高い減速比の歯車装置として機能する。そこで、本基本構成に係る歯車装置1では、遊星歯車3の自転成分相当の回転を、軸受け部材6の内輪61に伝達するべく、複数の内ピン4にて、遊星歯車3と内輪61とを連結する。複数の内ピン4は、遊星歯車3に形成された複数の遊嵌孔32にそれぞれ挿入された状態で、それぞれ遊嵌孔32内を公転しながら内歯歯車2に対して相対的に回転する。つまり、遊嵌孔32は、内ピン4よりも大きな直径を有し、内ピン4は、遊嵌孔32に挿入された状態で遊嵌孔32内を公転するように移動可能である。そして、遊星歯車3の揺動成分、つまり遊星歯車3の公転成分は、遊星歯車3の遊嵌孔32と内ピン4との遊嵌によって吸収される。言い換えれば、複数の内ピン4がそれぞれ複数の遊嵌孔32内を公転するように移動することで、遊星歯車3の揺動成分が吸収される。したがって、軸受け部材6の内輪61には、複数の内ピン4により、遊星歯車3の揺動成分(公転成分)を除いた、遊星歯車3の回転(自転成分)が伝達されることになる。
ところで、この種の歯車装置1では、遊星歯車3の遊嵌孔32内を内ピン4が公転しながら、遊星歯車3の回転が複数の内ピン4に伝達されるので、第1関連技術として、内ピン4に装着されて内ピン4を軸に回転可能な内ローラを用いることが知られている。つまり、第1関連技術においては、内ピン4は、内輪61(又は内輪61と一体化されたキャリア)に対して圧入された状態で保持されており、遊嵌孔32内を内ピン4が公転する際に、内ピン4は遊嵌孔32の内周面321に対して摺動する。そこで、第1関連技術としては、遊嵌孔32の内周面321と内ピン4との間の摩擦抵抗による損失を低減するために、内ローラが用いられる。ただし、第1関連技術のように内ローラを備える構成であれば、遊嵌孔32は、内ローラ付きの内ピン4が公転可能な径を有する必要があり、遊嵌孔32の小型化が困難である。遊嵌孔32の小型化が困難であると、遊星歯車3の小型化(特に小径化)の妨げとなって、ひいては歯車装置1全体の小型化の妨げとなる。本基本構成に係る歯車装置1は、以下の構成により、小型化しやすい内接噛合遊星歯車装置1を提供可能とする。
すなわち、本基本構成に係る歯車装置1は、図1~図3に示すように、軸受け部材6と、内歯歯車2と、遊星歯車3と、複数の内ピン4と、を備える。軸受け部材6は、外輪62及び外輪62の内側に配置される内輪61を有する。内輪61は外輪62に対して相対的に回転可能に支持される。内歯歯車2は、内歯21を有し外輪62に固定される。遊星歯車3は、内歯21に部分的に噛み合う外歯31を有する。複数の内ピン4は、遊星歯車3に形成された複数の遊嵌孔32にそれぞれ挿入された状態で、遊嵌孔32内を公転しながら内歯歯車2に対して相対的に回転する。ここで、複数の内ピン4の各々は、自転可能な状態で内輪61に保持されている。さらに、複数の内ピン4の各々は、少なくとも一部が軸受け部材6の軸方向において軸受け部材6と同じ位置に配置される。
この態様によれば、複数の内ピン4の各々は、自転可能な状態で内輪61に保持されるので、遊嵌孔32内を内ピン4が公転する際に、内ピン4自体が自転可能である。そのため、内ピン4に装着されて内ピン4を軸に回転可能な内ローラを用いなくとも、遊嵌孔32の内周面321と内ピン4との間の摩擦抵抗による損失を低減できる。したがって、本基本構成に係る歯車装置1では、内ローラが必須でなく、小型化しやすいという利点がある。しかも、複数の内ピン4の各々は、少なくとも一部が軸受け部材6の軸方向において軸受け部材6と同じ位置に配置されるので、軸受け部材6の軸方向における歯車装置1の寸法を小さく抑えることができる。つまり、軸受け部材6の軸方向に、軸受け部材6と内ピン4とが並ぶ(対向する)構成に比べて、本基本構成に係る歯車装置1では、軸方向における歯車装置1の寸法を小さくでき、歯車装置1の更なる小型化(薄型化)に貢献可能である。
さらに、上記第1関連技術と遊星歯車3の寸法が同じであれば、上記第1関連技術に比較して、例えば、内ピン4の数(本数)を増やして回転の伝達をスムーズにしたり、内ピン4を太くして強度を向上させたりすることも可能である。
また、この種の歯車装置1では、遊星歯車3の遊嵌孔32内を内ピン4が公転する必要があるので、第2関連技術として、複数の内ピン4は、内輪61(又は内輪61と一体化されたキャリア)のみで保持されることがある。第2関連技術によれば、複数の内ピン4の芯出しの精度向上が困難であって、芯出し不良により、振動の発生、及び伝達効率の低下等の不具合につながる可能性がある。つまり、複数の内ピン4は、それぞれ遊嵌孔32内を公転しながら内歯歯車2に対して相対的に回転することで、遊星歯車3の自転成分を、軸受け部材6の内輪61に伝達する。このとき、複数の内ピン4の芯出しの精度が不十分で、複数の内ピン4の回転軸が内輪61の回転軸に対してずれたり傾いたりしていると、芯出し不良の状態となり、振動の発生、及び伝達効率の低下等の不具合につながり得る。本基本構成に係る歯車装置1は、以下の構成により、複数の内ピン4の芯出し不良に起因した不具合が生じにくい内接噛合遊星歯車装置1を提供可能とする。
すなわち、本基本構成に係る歯車装置1は、図1~図3に示すように、内歯歯車2と、遊星歯車3と、複数の内ピン4と、支持体8と、を備える。内歯歯車2は、環状の歯車本体22と、複数の外ピン23と、を有する。複数の外ピン23は、自転可能な状態で歯車本体22の内周面221に保持され内歯21を構成する。遊星歯車3は、内歯21に部分的に噛み合う外歯31を有する。複数の内ピン4は、遊星歯車3に形成された複数の遊嵌孔32にそれぞれ挿入された状態で、遊嵌孔32内を公転しながら歯車本体22に対して相対的に回転する。支持体8は、環状であって複数の内ピン4を支持する。ここで、支持体8は、外周面81を複数の外ピン23に接触させることにより位置規制されている。
この態様によれば、複数の内ピン4は、環状の支持体8にて支持されているので、複数の内ピン4が支持体8にて束ねられ、複数の内ピン4の相対的なずれ及び傾きが抑制される。しかも、支持体8の外周面81は複数の外ピン23に接触し、これにより支持体8の位置規制がされている。要するに、複数の外ピン23によって支持体8の芯出しが行われ、結果的に、支持体8に支持されている複数の内ピン4についても、複数の外ピン23にて芯出しが行われる。したがって、本基本構成に係る歯車装置1によれば、複数の内ピン4の芯出しの精度向上を図りやすく、複数の内ピン4の芯出し不良に起因した不具合が生じにくい、という利点がある。
また、本基本構成に係る歯車装置1は、図1に示すように、駆動源101と共に、アクチュエータ100を構成する。言い換えれば、本基本構成に係るアクチュエータ100は、歯車装置1と、駆動源101と、を備えている。駆動源101は、遊星歯車3を揺動させるための駆動力を発生する。具体的には、駆動源101は、回転軸Ax1を中心として偏心軸7を回転させることにより、遊星歯車3を揺動させる。
(2)定義
本開示でいう「環状」は、少なくとも平面視において、内側に囲まれた空間(領域)を形成する輪(わ)のような形状を意味し、平面視において真円とある円形状(円環状)に限らず、例えば、楕円形状及び多角形状等であってもよい。さらに、例えば、カップ状のように底部を有する形状であっても、その周壁が環状であれば、「環状」に含まれる。
本開示でいう「遊嵌」は、遊び(隙間)をもった状態に嵌められることを意味し、遊嵌孔32は内ピン4が遊嵌される孔である。つまり、内ピン4は、遊嵌孔32の内周面321との間に、空間的な余裕(隙間)を確保した状態で遊嵌孔32に挿入される。言い換えれば、内ピン4のうち、少なくとも遊嵌孔32に挿入される部位の径は、遊嵌孔32の径よりも小さい(細い)。そのため、内ピン4は、遊嵌孔32に挿入された状態で、遊嵌孔32内を移動可能、つまり遊嵌孔32の中心に対して相対的に移動可能である。よって、内ピン4は、遊嵌孔32内を公転可能となる。ただし、遊嵌孔32の内周面321と内ピン4との間には、空洞としての隙間が確保されることは必須ではなく、例えば、この隙間に液体等の流体が充填されていてもよい。
本開示でいう「公転」は、ある物体が、この物体の中心(重心)を通る中心軸以外の回転軸まわりを周回することを意味し、ある物体が公転すると、この物体の中心は回転軸を中心とする公転軌道に沿って移動することになる。したがって、例えば、ある物体の中心(重心)を通る中心軸と平行な偏心軸を中心に、この物体が回転する場合には、この物体は、偏心軸を回転軸として公転していることになる。一例として、内ピン4は、遊嵌孔32の中心を通る回転軸まわりを周回するようにして、遊嵌孔32内を公転する。
また、本開示では、回転軸Ax1の一方側(図3の左側)を「入力側」といい、回転軸Ax1の他方側(図3の右側)を「出力側」という場合がある。図3の例では、回転軸Ax1の「入力側」から回転体(偏心体内輪51)に回転が与えられ、回転軸Ax1の「出力側」から複数の内ピン4(内輪61)の回転が取り出される。ただし、「入力側」及び「出力側」は、説明のために付しているラベルに過ぎず、歯車装置1から見た、入力及び出力の位置関係を限定する趣旨ではない。
本開示でいう「回転軸」は、回転体の回転運動の中心となる仮想的な軸(直線)を意味する。つまり、回転軸Ax1は、実体を伴わない仮想軸である。偏心体内輪51は、回転軸Ax1を中心として回転運動を行う。
本開示でいう「内歯」及び「外歯」は、それぞれ単体の「歯」ではなく、複数の「歯」の集合(群)を意味する。つまり、内歯歯車2の内歯21は、内歯歯車2(歯車本体22)の内周面221に配置された複数の歯の集合からなる。同様に、遊星歯車3の外歯31は、遊星歯車3の外周面に配置された複数の歯の集合からなる。
(3)構成
以下、本基本構成に係る内接噛合遊星歯車装置1の詳細な構成について、図1~図8Bを参照して説明する。
図1は、歯車装置1を含むアクチュエータ100の概略構成を示す斜視図である。図1では、駆動源101を模式的に示している。図2は、歯車装置1を回転軸Ax1の出力側から見た概略の分解斜視図である。図3は、歯車装置1の概略断面図である。図4は図3のA1-A1線断面図である。ただし、図4では、偏心軸7以外の部品については、断面であってもハッチングを省略している。さらに、図4では、歯車本体22の内周面221の図示を省略している。図5A及び図5Bは、遊星歯車3を単体で示す斜視図及び正面図である。図6A及び図6Bは、軸受け部材6を単体で示す斜視図及び正面図である。図7A及び図7Bは、偏心軸7を単体で示す斜視図及び正面図である。図8A及び図8Bは、支持体8を単体で示す斜視図及び正面図である。
(3.1)全体構成
本基本構成に係る歯車装置1は、図1~図3に示すように、内歯歯車2と、遊星歯車3と、複数の内ピン4と、偏心体軸受け5と、軸受け部材6と、偏心軸7と、支持体8と、を備えている。また、本基本構成では、歯車装置1は、第1ベアリング91、第2ベアリング92及びケース10を更に備えている。本基本構成では、歯車装置1の構成要素である内歯歯車2、遊星歯車3、複数の内ピン4、偏心体軸受け5、軸受け部材6、偏心軸7及び支持体8等の材質は、ステンレス、鋳鉄、機械構造用炭素鋼、クロムモリブデン鋼、リン青銅又はアルミ青銅等の金属である。ここでいう金属は、窒化処理等の表面処理が施された金属を含む。
また、本基本構成では、歯車装置1の一例として、トロコイド系歯形を用いた内接式遊星歯車装置を例示する。つまり、本基本構成に係る歯車装置1は、トロコイド系曲線歯形を有する内接式の遊星歯車3を備えている。
また、本基本構成では一例として、歯車装置1は、内歯歯車2の歯車本体22が、軸受け部材6の外輪62と共に、ケース10等の固定部材に固定された状態で使用される。これにより、内歯歯車2と遊星歯車3との相対回転に伴って、固定部材(ケース10等)に対して、遊星歯車3が相対的に回転することになる。
さらに、本基本構成では、歯車装置1をアクチュエータ100に用いる場合に、偏心軸7に入力としての回転力が加わることで、軸受け部材6の内輪61と一体化された出力軸から出力としての回転力が取り出される。つまり、歯車装置1は、偏心軸7の回転を入力回転とし、内輪61と一体化された出力軸の回転を出力回転として動作する。これにより、歯車装置1では、入力回転に対して、比較的高い減速比にて減速された出力回転が得られることになる。
駆動源101は、モータ(電動機)等の動力の発生源である。駆動源101で発生した動力は、歯車装置1における偏心軸7に伝達される。具体的には、駆動源101は入力軸を介して偏心軸7につながっており、駆動源101で発生した動力は入力軸を介して偏心軸7に伝達される。これにより、駆動源101は、偏心軸7を回転させることが可能である。
さらに、本基本構成に係る歯車装置1では、図3に示すように、入力側の回転軸Ax1と、出力側の回転軸Ax1とは、同一直線上にある。言い換えれば、入力側の回転軸Ax1と、出力側の回転軸Ax1とは、同軸である。ここで、入力側の回転軸Ax1は、入力回転が与えられる偏心軸7の回転中心であって、出力側の回転軸Ax1は、出力回転を生じる内輪61(及び出力軸)の回転中心である。つまり、歯車装置1では、同軸上において、入力回転に対して、比較的高い減速比にて減速された出力回転が得られることになる。
内歯歯車2は、図4に示すように、内歯21を有する環状の部品である。本基本構成では、内歯歯車2は、少なくとも内周面が平面視において真円となる、円環状を有している。円環状の内歯歯車2の内周面には、内歯21が、内歯歯車2の円周方向に沿って形成されている。内歯21を構成する複数の歯は、全て同一形状であって、内歯歯車2の内周面における円周方向の全域に、等ピッチで設けられている。つまり、内歯21のピッチ円は、平面視において真円となる。内歯21のピッチ円の中心は、回転軸Ax1上にある。また、内歯歯車2は、回転軸Ax1の方向に所定の厚みを有している。内歯21の歯筋は、いずれも回転軸Ax1と平行である。内歯21の歯筋方向の寸法は、内歯歯車2の厚み方向よりもやや小さい。
ここで、内歯歯車2は、上述したように、環状(円環状)の歯車本体22と、複数の外ピン23と、を有している。複数の外ピン23は、自転可能な状態で歯車本体22の内周面221に保持され、内歯21を構成する。言い換えれば、複数の外ピン23は、それぞれ内歯21を構成する複数の歯として機能する。具体的には、歯車本体22の内周面221には、図2に示すように、円周方向の全域に複数の溝が形成されている。複数の溝は、全て同一形状であって、等ピッチで設けられている。複数の溝は、いずれも回転軸Ax1と平行であって、歯車本体22の厚み方向の全長にわたって形成されている。複数の外ピン23は、複数の溝に嵌るようにして、歯車本体22に組み合わされている。複数の外ピン23の各々は、溝内において自転可能な状態で保持される。また、歯車本体22は、(外輪62と共に)ケース10に固定される。そのため、歯車本体22には、固定用の複数の固定孔222が形成されている。
遊星歯車3は、図4に示すように、外歯31を有する環状の部品である。本基本構成では、遊星歯車3は、少なくとも外周面が平面視において真円となる、円環状を有している。円環状の遊星歯車3の外周面には、外歯31が、遊星歯車3の円周方向に沿って形成されている。外歯31を構成する複数の歯は、全て同一形状であって、遊星歯車3の外周面における円周方向の全域に、等ピッチで設けられている。つまり、外歯31のピッチ円は、平面視において真円となる。外歯31のピッチ円の中心C1は、回転軸Ax1から距離ΔL(図4参照)だけずれた位置にある。また、遊星歯車3は、回転軸Ax1の方向に所定の厚みを有している。外歯31は、いずれも遊星歯車3の厚み方向の全長にわたって形成されている。外歯31の歯筋は、いずれも回転軸Ax1と平行である。遊星歯車3においては、内歯歯車2とは異なり、外歯31が遊星歯車3の本体と1つの金属部材にて一体に形成されている。
ここで、遊星歯車3に対しては、偏心体軸受け5及び偏心軸7が組み合わされる。つまり、遊星歯車3には、円形状に開口する開口部33が形成されている。開口部33は、遊星歯車3を厚み方向に沿って貫通する孔である。平面視において、開口部33の中心と遊星歯車3の中心とは一致しており、開口部33の内周面(遊星歯車3の内周面)と外歯31のピッチ円とは同心円となる。遊星歯車3の開口部33には、偏心体軸受け5が収容される。さらに、偏心体軸受け5(の偏心体内輪51)に偏心軸7が挿入されることで、偏心体軸受け5及び偏心軸7が遊星歯車3に組み合わされる。遊星歯車3に偏心体軸受け5及び偏心軸7が組み合わされた状態で、偏心軸7が回転すると、遊星歯車3は回転軸Ax1まわりで揺動する。
このように構成される遊星歯車3は、内歯歯車2の内側に配置される。平面視において、遊星歯車3は内歯歯車2に比べて一回り小さく形成されており、遊星歯車3は、内歯歯車2と組み合わされた状態で、内歯歯車2の内側で揺動可能となる。ここで、遊星歯車3の外周面には外歯31が形成され、内歯歯車2の内周面には内歯21が形成されている。そのため、内歯歯車2の内側に遊星歯車3が配置された状態では、外歯31と内歯21とは、互いに対向することになる。
さらに、外歯31のピッチ円は、内歯21のピッチ円よりも一回り小さい。そして、遊星歯車3が内歯歯車2に内接した状態で、外歯31のピッチ円の中心C1は、内歯21のピッチ円の中心(回転軸Ax1)から距離ΔL(図4参照)だけずれた位置にある。そのため、外歯31との内歯21とは、少なくとも一部が隙間を介して対向することになり、円周方向の全体が互いに噛み合うことはない。ただし、遊星歯車3は、内歯歯車2の内側において回転軸Ax1まわりで揺動(公転)するので、外歯31と内歯21とが部分的に噛み合うことになる。つまり、遊星歯車3が回転軸Ax1まわりを揺動することで、図4に示すように、外歯31を構成する複数の歯のうちの一部の歯が、内歯21を構成する複数の歯のうちの一部の歯に噛み合うことになる。結果的に、歯車装置1では、外歯31の一部を内歯21の一部に噛み合わせることが可能となる。
ここで、内歯歯車2における内歯21の歯数は、遊星歯車3の外歯31の歯数よりもN(Nは正の整数)だけ多い。本基本構成では一例として、Nが「1」であって、遊星歯車3の(外歯31の)歯数は、内歯歯車2の(内歯21の)歯数よりも「1」多い。このような遊星歯車3と内歯歯車2との歯数差は、歯車装置1での入力回転に対する出力回転の減速比を規定する。
また、本基本構成では一例として、遊星歯車3の厚みは、内歯歯車2における歯車本体22の厚みよりも小さい。さらに、外歯31の歯筋方向(回転軸Ax1に平行な方向)の寸法は、内歯21の歯筋方向(回転軸Ax1に平行な方向)の寸法よりも小さい。言い換えれば、回転軸Ax1に平行な方向においては、内歯21の歯筋の範囲内に、外歯31が収まることになる。
本基本構成では、上述したように、遊星歯車3の自転成分相当の回転が、軸受け部材6の内輪61と一体化された出力軸の回転(出力回転)として取り出される。そのため、遊星歯車3は、複数の内ピン4にて内輪61と連結される。遊星歯車3には、図5A及び図5Bに示すように、複数の内ピン4を挿入するための複数の遊嵌孔32が形成されている。遊嵌孔32は内ピン4と同数だけ設けられており、本基本構成では一例として、遊嵌孔32及び内ピン4は、18個ずつ設けられている。複数の遊嵌孔32の各々は、円形状に開口しており、遊星歯車3を厚み方向に沿って貫通する孔である。複数(ここでは18個)の遊嵌孔32は、開口部33と同心の仮想円上に、円周方向に等間隔で配置されている。
複数の内ピン4は、遊星歯車3と軸受け部材6の内輪61とを連結する部品である。複数の内ピン4の各々は、円柱状に形成されている。複数の内ピン4の直径及び長さは、複数の内ピン4において共通である。内ピン4の直径は、遊嵌孔32の直径よりも一回り小さい。これにより、内ピン4は、遊嵌孔32の内周面321との間に、空間的な余裕(隙間)を確保した状態で遊嵌孔32に挿入される(図4参照)。
軸受け部材6は、外輪62及び内輪61を有し、歯車装置1の出力を外輪62に対する内輪61の回転として取り出すための部品である。軸受け部材6は、外輪62及び内輪61に加えて、複数の転動体63(図3参照)と、を有している。
外輪62及び内輪61は、図6A及び図6Bに示すように、いずれも環状の部品である。外輪62及び内輪61は、いずれも平面視で真円となる、円環状を有している。内輪61は、外輪62よりも一回り小さく、外輪62の内側に配置される。ここで、外輪62の内径は内輪61の外径よりも大きいため、外輪62の内周面と内輪61の外周面との間には隙間が生じる。
内輪61は、複数の内ピン4がそれぞれ挿入される複数の保持孔611を有している。保持孔611は内ピン4と同数だけ設けられており、本基本構成では一例として、保持孔611は18個設けられている。複数の保持孔611の各々は、図6A及び図6Bに示すように、円形状に開口しており、内輪61を厚み方向に沿って貫通する孔である。複数(ここでは18個)の保持孔611は、内輪61の外周と同心の仮想円上に、円周方向に等間隔で配置されている。保持孔611の直径は、内ピン4の直径以上であって、遊嵌孔32の直径よりも小さい。
さらに、内輪61は出力軸と一体化され、内輪61の回転が出力軸の回転として取り出される。そのため、内輪61には、出力軸を取り付けるための複数の出力側取付穴612(図2参照)が形成されている。本基本構成では、複数の出力側取付穴612は、複数の保持孔611よりも内側であって、内輪61の外周と同心の仮想円上に配置されている。
外輪62は、内歯歯車2の歯車本体22と共に、ケース10等の固定部材に固定される。そのため、外輪62には、固定用の複数の透孔621が形成されている。具体的には、図3に示すように、外輪62は、ケース10との間に歯車本体22を挟んだ状態で、透孔621及び歯車本体22の固定孔222を通る固定用のねじ(ボルト)60にて、ケース10に対して固定されている。
複数の転動体63は、外輪62と内輪61との間の隙間に配置されている。複数の転動体63は、外輪62の円周方向に並べて配置されている。複数の転動体63は、全て同一形状の金属部品であって、外輪62の円周方向の全域に、等ピッチで設けられている。
本基本構成では一例として、軸受け部材6は、クロスローラベアリングである。つまり、軸受け部材6は、転動体63として円筒状のコロを有している。そして、円筒状の転動体63の軸は、回転軸Ax1に直交する平面に対して45度の傾きを有し、かつ内輪61の外周に対して直交する。さらに、内輪61の円周方向において互いに隣接する一対の転動体63は、互いに軸方向が直交する向きに配置されている。このようなクロスローラベアリングからなる軸受け部材6では、ラジアル方向の荷重、スラスト方向(回転軸Ax1に沿う方向)の荷重、及び回転軸Ax1に対する曲げ力(曲げモーメント荷重)のいずれをも受けやすくなる。しかも、1つの軸受け部材6によって、これら3種類の荷重に耐えることができ、必要な剛性を確保することができる。
偏心軸7は、図7A及び図7Bに示すように、円筒状の部品である。偏心軸7は、軸心部71と、偏心部72と、を有している。軸心部71は、少なくとも外周面が平面視において真円となる、円筒状を有している。軸心部71の中心(中心軸)は、回転軸Ax1と一致する。偏心部72は、少なくとも外周面が平面視において真円となる、円盤状を有している。偏心部72の中心(中心軸)は、回転軸Ax1からずれた中心C1と一致する。ここで、回転軸Ax1と中心C1との間の距離ΔL(図7B参照)は、軸心部71に対する偏心部72の偏心量となる。偏心部72は、軸心部71の長手方向(軸方向)の中央部において、軸心部71の外周面から全周にわたって突出するフランジ形状をなす。上述した構成によれば、偏心軸7は、回転軸Ax1を中心に軸心部71が回転(自転)することで、偏心部72が偏心運動することになる。
本基本構成では、軸心部71及び偏心部72は1つの金属部材にて一体に形成されており、これにより、シームレスな偏心軸7が実現される。このような形状の偏心軸7は、偏心体軸受け5と共に遊星歯車3に組み合わされる。そのため、遊星歯車3に偏心体軸受け5及び偏心軸7が組み合わされた状態で偏心軸7が回転すると、遊星歯車3は、回転軸Ax1まわりで揺動する。
さらに、偏心軸7は、軸心部71を軸方向(長手方向)に貫通する貫通孔73を有している。貫通孔73は、軸心部71における軸方向の両端面に円形状に開口している。貫通孔73の中心(中心軸)は、回転軸Ax1と一致する。貫通孔73には、例えば、電源線及び信号線等のケーブル類を通すことが可能である。
また、本基本構成では、駆動源101から、偏心軸7に入力としての回転力が加えられる。そのため、偏心軸7には、駆動源101につながる入力軸を取り付けるための複数の入力側取付穴74(図7A及び図7B参照)が形成されている。本基本構成では、複数の入力側取付穴74は、軸心部71の軸方向に一端面における貫通孔73の周囲であって、貫通孔73と同心の仮想円上に配置されている。
偏心体軸受け5は、偏心体外輪52及び偏心体内輪51を有し、偏心軸7の回転のうちの自転成分を吸収し、偏心軸7の自転成分を除いた偏心軸7の回転、つまり偏心軸7の揺動成分(公転成分)のみを遊星歯車3に伝達するための部品である。偏心体軸受け5は、偏心体外輪52及び偏心体内輪51に加えて、複数の転動体53(図3参照)を有している。
偏心体外輪52及び偏心体内輪51は、いずれも環状の部品である。偏心体外輪52及び偏心体内輪51は、いずれも平面視で真円となる、円環状を有している。偏心体内輪51は、偏心体外輪52よりも一回り小さく、偏心体外輪52の内側に配置される。ここで、偏心体外輪52の内径は偏心体内輪51の外径よりも大きいため、偏心体外輪52の内周面と偏心体内輪51の外周面との間には隙間が生じる。
複数の転動体53は、偏心体外輪52と偏心体内輪51との間の隙間に配置されている。複数の転動体53は、偏心体外輪52の円周方向に並べて配置されている。複数の転動体53は、全て同一形状の金属部品であって、偏心体外輪52の円周方向の全域に、等ピッチで設けられている。本基本構成では一例として、偏心体軸受け5は、転動体53としてボールを用いた深溝玉軸受けからなる。
ここで、偏心体内輪51の内径は、偏心軸7における偏心部72の外径と一致する。偏心体軸受け5は、偏心体内輪51に偏心軸7の偏心部72が挿入された状態で、偏心軸7と組み合わされる。また、偏心体外輪52の外径は、遊星歯車3における開口部33の内径(直径)と一致する。偏心体軸受け5は、遊星歯車3の開口部33に偏心体外輪52が嵌め込まれた状態で、遊星歯車3と組み合わされる。言い換えれば、遊星歯車3の開口部33には、偏心軸7の偏心部72に装着された状態の偏心体軸受け5が収容される。
また、本基本構成では一例として、偏心体軸受け5における偏心体内輪51の幅方向(回転軸Ax1に平行な方向)の寸法は、偏心軸7の偏心部72の厚みと略同一である。偏心体外輪52の幅方向(回転軸Ax1に平行な方向)の寸法は、偏心体内輪51の幅方向の寸法に比べてやや小さい。さらに、偏心体外輪52の幅方向の寸法は、遊星歯車3の厚みに比べて大きい。そのため、回転軸Ax1に平行な方向においては、偏心体軸受け5の範囲内に、遊星歯車3が収まることになる。一方で、偏心体外輪52の幅方向の寸法は、内歯21の歯筋方向(回転軸Ax1に平行な方向)の寸法よりも小さい。そのため、回転軸Ax1に平行な方向においては、内歯歯車2の範囲内に、偏心体軸受け5が収まることになる。
偏心体軸受け5及び偏心軸7が遊星歯車3に組み合わされた状態で、偏心軸7が回転すると、偏心体軸受け5においては、偏心体内輪51の中心C1からずれた回転軸Ax1まわりで偏心体内輪51が回転(偏心運動)する。このとき、偏心軸7の自転成分は偏心体軸受け5で吸収される。したがって、遊星歯車3には、偏心体軸受け5により、偏心軸7の自転成分を除いた偏心軸7の回転、つまり偏心軸7の揺動成分(公転成分)のみが伝達されることになる。よって、遊星歯車3に偏心体軸受け5及び偏心軸7が組み合わされた状態で偏心軸7が回転すると、遊星歯車3は、回転軸Ax1まわりで揺動する。
支持体8は、図8A及び図8Bに示すように、環状に形成され、複数の内ピン4を支持する部品である。支持体8は、複数の内ピン4がそれぞれ挿入される複数の支持孔82を有している。支持孔82は内ピン4と同数だけ設けられており、本基本構成では一例として、支持孔82は18個設けられている。複数の支持孔82の各々は、図8A及び図8Bに示すように、円形状に開口しており、支持体8を厚み方向に沿って貫通する孔である。複数(ここでは18個)の支持孔82は、支持体8の外周面81と同心の仮想円上に、円周方向に等間隔で配置されている。支持孔82の直径は、内ピン4の直径以上であって、遊嵌孔32の直径よりも小さい。本基本構成では一例として、支持孔82の直径は、内輪61に形成されている保持孔611の直径と等しい。
支持体8は、図3に示すように、回転軸Ax1の一方側(入力側)から遊星歯車3に対向するように配置される。そして、複数の支持孔82に複数の内ピン4が挿入されることで、支持体8は、複数の内ピン4を束ねるように機能する。さらに、支持体8は、外周面81を複数の外ピン23に接触させることにより位置規制されている。これにより、複数の外ピン23によって支持体8の芯出しが行われ、結果的に、支持体8に支持されている複数の内ピン4についても、複数の外ピン23にて芯出しが行われる。支持体8については、「(3.3)支持体」の欄で詳しく説明する。
第1ベアリング91及び第2ベアリング92は、それぞれ偏心軸7の軸心部71に装着される。具体的には、第1ベアリング91及び第2ベアリング92は、図3に示すように、回転軸Ax1に平行な方向において偏心部72を挟むように、軸心部71における偏心部72の両側に装着される。第1ベアリング91は、偏心部72から見て、回転軸Ax1の入力側に配置される。第2ベアリング92は、偏心部72から見て、回転軸Ax1の出力側に配置される。第1ベアリング91は、ケース10に対して偏心軸7を回転可能に保持する。第2ベアリング92は、軸受け部材6の内輪61に対して偏心軸7を回転可能に保持する。これにより、偏心軸7の軸心部71は、回転軸Ax1に平行な方向における偏心部72の両側の2箇所において、回転可能に保持されることになる。
ケース10は、円筒状であって、回転軸Ax1の出力側に、フランジ部11を有している。フランジ部11には、ケース10自体を固定するための複数の設置孔111が形成されている。また、ケース10における回転軸Ax1の出力側の端面には、軸受け孔12が形成されている。軸受け孔12は、円形状に開口している。軸受け孔12内に第1ベアリング91が嵌め込まれることにより、ケース10に対して第1ベアリング91が取り付けられる。
また、ケース10における回転軸Ax1の出力側の端面であって、軸受け孔12の周囲には、複数のねじ穴13が形成されている。複数のねじ穴13は、内歯歯車2の歯車本体22及び軸受け部材6の外輪62をケース10に固定するために用いられる。具体的には、固定用のねじ60が、外輪62の透孔621及び歯車本体22の固定孔222を通して、ねじ穴13に締め付けられることにより、歯車本体22及び外輪62がケース10に対して固定される。
また、本基本構成に係る歯車装置1は、図3に示すように、複数のオイルシール14,15,16等を更に備えている。オイルシール14は、偏心軸7における回転軸Ax1の入力側の端部に装着され、ケース10と偏心軸7(軸心部71)との間の隙間を塞いでいる。オイルシール15は、偏心軸7における回転軸Ax1の出力側の端部に装着され、内輪61と偏心軸7(軸心部71)との間の隙間を塞いでいる。オイルシール16は、軸受け部材6における回転軸Ax1の出力側の端面に装着され、内輪61と外輪62との間の隙間を塞いでいる。これら複数のオイルシール14,15,16で密閉された空間は、潤滑剤保持空間17(図9参照)を構成する。潤滑剤保持空間17は、軸受け部材6の内輪61と外輪62との間の空間を含む。さらに、潤滑剤保持空間17内には、複数の外ピン23、遊星歯車3、偏心体軸受け5、支持体8、第1ベアリング91及び第2ベアリング92等が収容される。
そして、潤滑剤保持空間17には、潤滑剤が注入されている。潤滑剤は液体であって、潤滑剤保持空間内17を流動可能である。そのため、歯車装置1の使用時においては、例えば、複数の外ピン23からなる内歯21と遊星歯車3の外歯31との噛み合い部位には、潤滑剤が入り込む。本開示でいう「液体」は、液状又はゲル状の物質を含む。ここでいう「ゲル状」は、液体と固体との中間の性質を有する状態を意味し、液相と固相との2つの相からなるコロイド(colloid)の状態を含む。例えば、分散媒が液相であって、分散質が液相であるエマルション(emulsion)、分散質が固相であるサスペンション(suspension)等の、ゲル(gel)又はゾル(sol)と呼ばれる状態が「ゲル状」に含まれる。また、分散媒が固相であって、分散質が液相である状態も、「ゲル状」に含まれる。本基本構成では一例として、潤滑剤は、液状の潤滑油(オイル)である。
上述した構成の歯車装置1では、偏心軸7に入力としての回転力が加えられて、偏心軸7が回転軸Ax1を中心に回転することで、遊星歯車3は、回転軸Ax1まわりで揺動(公転)する。このとき、遊星歯車3は、内歯歯車2の内側で内歯歯車2に対して内接し、外歯31の一部が内歯21の一部に噛み合った状態で揺動するので、内歯21と外歯31との噛み合い位置が内歯歯車2の円周方向に移動する。これにより、遊星歯車3と内歯歯車2との歯数差に応じた相対回転が両歯車(内歯歯車2及び遊星歯車3)の間に発生する。そして、軸受け部材6の内輪61には、複数の内ピン4により、遊星歯車3の揺動成分(公転成分)を除いた、遊星歯車3の回転(自転成分)が伝達される。その結果、内輪61に一体化された出力軸からは、両歯車の歯数差に応じて、比較的高い減速比で減速された回転出力が得られることになる。
ところで、本実施形態に係る歯車装置1においては、上述したように、内歯歯車2と遊星歯車3との歯数差は、歯車装置1での入力回転に対する出力回転の減速比を規定することになる。つまり、内歯歯車2の歯数を「V1」、遊星歯車3の歯数を「V2」とした場合、減速比R1は、下記式1で表される。
R1=V2/(V1-V2)・・・(式1)
要するに、内歯歯車2と遊星歯車3との歯数差(V1-V2)が小さいほど、減速比R1は大きくなる。一例として、内歯歯車2の歯数V1が「52」、遊星歯車3の歯数V2が「51」、その歯数差(V1-V2)が「1」であるので、上記式1より、減速比R1は「51」となる。この場合、回転軸Ax1の入力側から見て、偏心軸7が回転軸Ax1を中心に時計回りに1周(360度)回転すると、内輪61は回転軸Ax1を中心に歯数差「1」の分(つまり約7.06度)だけ反時計回りに回転する。
本基本構成に係る歯車装置1によれば、このように高い減速比R1が、1段の歯車(内歯歯車2及び遊星歯車3)の組み合わせで実現可能である。
また、歯車装置1は、少なくとも、内歯歯車2と、遊星歯車3と、複数の内ピン4と、軸受け部材6と、支持体8と、を備えていればよく、例えば、スプラインブッシュ等を構成要素として更に備えていてもよい。
ところで、本基本構成に係る歯車装置1のように、高速回転側となる入力回転が偏心運動を伴う場合、高速回転する回転体の重量バランスがとれていないと、振動等につながる可能性があるため、カウンタウェイト等を用いて重量バランスをとることがある。すなわち、偏心体内輪51及び偏心体内輪51と共に回転する部材(偏心軸7)の少なくとも一方からなる回転体が高速で偏心運動することから、当該回転体の回転軸Ax1に対する重量バランスをとることが好ましい。本基本構成では、図3及び図4に示すように、偏心軸7における偏心部72の一部に、空隙75を設けることによって、回転軸Ax1に対する回転体の重量バランスをとる。
要するに、本基本構成では、カウンタウェイト等を付加するのではなく、回転体(ここでは偏心軸7)の一部を肉抜きすることで軽量化し、これによって回転軸Ax1に対する回転体の重量バランスをとっている。すなわち、本基本構成に係る歯車装置1は、遊星歯車3に形成された開口部33に収容され、遊星歯車3を揺動させる偏心体軸受け5を備えている。偏心体軸受け5は、偏心体外輪52及び偏心体外輪52の内側に配置される偏心体内輪51を有する。偏心体内輪51及び偏心体内輪51と共に回転する部材の少なくとも一方からなる回転体は、偏心体内輪51の回転軸Ax1から見て、偏心体外輪52の中心C1側の一部に空隙75を有する。本基本構成では、偏心軸7が「偏心体内輪51と共に回転する部材」であって、「回転体」に相当する。したがって、偏心軸7の偏心部72に形成された空隙75が、回転体の空隙75に相当する。この空隙75は、図3及び図4に示すように、回転軸Ax1から見て中心C1側の位置にあるので、偏心軸7の重量バランスを、回転軸Ax1から周方向に均等に近づけるように作用する。
より詳細には、空隙75は、偏心体内輪51の回転軸Ax1に沿って回転体を貫通する貫通孔73の内周面に形成された凹部を含む。つまり、本基本構成では、回転体は偏心軸7であるので、偏心軸7を回転軸Ax1に沿って貫通する貫通孔73の内周面に形成された凹部が、空隙75として機能する。このように、貫通孔73の内周面に形成された凹部を空隙75として利用することで、外観上の変更を伴わずに、回転体の重量バランスをとることが可能となる。
(3.2)内ピンの自転構造
次に、本基本構成に係る歯車装置1の内ピン4の自転構造について、図9を参照して、より詳細に説明する。図9は、図3の領域Z1の拡大図である。
まず前提として、複数の内ピン4は、上述したように、遊星歯車3と軸受け部材6の内輪61とを連結する部品である。具体的には、内ピン4の長手方向の一端部(本基本構成では回転軸Ax1の入力側の端部)は、遊星歯車3の遊嵌孔32に挿入され、内ピン4の長手方向の他端部(本基本構成では回転軸Ax1の出力側の端部)は、内輪61の保持孔611に挿入されている。
ここで、内ピン4の直径は、遊嵌孔32の直径よりも一回り小さいので、内ピン4と遊嵌孔32の内周面321との間には隙間が確保され、内ピン4は、遊嵌孔32内を移動可能、つまり遊嵌孔32の中心に対して相対的に移動可能である。一方、保持孔611の直径は、内ピン4の直径以上ではあるものの、遊嵌孔32の直径よりも小さい。本基本構成では、保持孔611の直径は、内ピン4の直径と略同一であって、内ピン4の直径よりも僅かに大きい。そのため、内ピン4は、保持孔611内での移動が規制、つまり保持孔611の中心に対する相対的な移動が禁止される。したがって、内ピン4は、遊星歯車3においては遊嵌孔32内を公転可能な状態で保持され、内輪61に対しては保持孔611内を公転不能な状態で保持される。これにより、遊星歯車3の揺動成分、つまり遊星歯車3の公転成分は、遊嵌孔32と内ピン4との遊嵌によって吸収され、内輪61には、複数の内ピン4により、遊星歯車3の揺動成分(公転成分)を除いた、遊星歯車3の回転(自転成分)が伝達される。
ところで、本基本構成では、内ピン4の直径が保持孔611よりも僅かに大きいことで、内ピン4は、保持孔611に挿入された状態において、保持孔611内での公転は禁止されるものの、保持孔611内での自転は可能である。つまり、内ピン4は、保持孔611に挿入された状態でも、保持孔611に圧入される訳ではないので、保持孔611内で自転可能である。このように、本基本構成に係る歯車装置1では、複数の内ピン4の各々は、自転可能な状態で内輪61に保持されるので、遊嵌孔32内を内ピン4が公転する際に、内ピン4自体が自転可能である。
要するに、本基本構成においては、内ピン4は、遊星歯車3に対しては遊嵌孔32内での公転及び自転の両方が可能な状態で保持され、内輪61に対しては保持孔611内での自転のみが可能な状態で保持される。つまり、複数の内ピン4は、各々の自転が拘束されない状態(自転可能な状態)で、回転軸Ax1を中心に回転(公転)可能であって、かつ複数の遊嵌孔32内で公転可能である。したがって、複数の内ピン4にて遊星歯車3の回転(自転成分)を内輪61に伝達するに際しては、内ピン4は、遊嵌孔32内で公転及び自転をしつつ、保持孔611内で自転することができる。そのため、遊嵌孔32内を内ピン4が公転する際に、内ピン4は、自転可能な状態にあるので、遊嵌孔32の内周面321に対して転動することになる。言い換えれば、内ピン4は、遊嵌孔32の内周面321上を転がるようにして遊嵌孔32内で公転するので、遊嵌孔32の内周面321と内ピン4との間の摩擦抵抗による損失が生じにくい。
このように、本基本構成に係る構成では、そもそも遊嵌孔32の内周面321と内ピン4との間の摩擦抵抗による損失が生じにくいので、内ローラを省略することが可能である。そこで、本基本構成では、複数の内ピン4の各々は、遊嵌孔32の内周面321に直接的に接触する構成を採用する。つまり、本基本構成では、内ローラが装着されていない状態の内ピン4を遊嵌孔32に挿入し、内ピン4が直接的に遊嵌孔32の内周面321に接触する構成とする。これにより、内ローラを省略できて、遊嵌孔32の径を比較的小さく抑えることができるので、遊星歯車3の小型化(特に小径化)が可能となり、歯車装置1全体としても小型化を図りやすくなる。遊星歯車3の寸法を一定とするのであれば、上記第1関連技術に比較して、例えば、内ピン4の数(本数)を増やして回転の伝達をスムーズにしたり、内ピン4を太くして強度を向上させたりすることも可能である。さらに、内ローラの分だけ部品点数を少なく抑えることができ、歯車装置1の低コスト化にもつながる。
また、本基本構成に係る歯車装置1では、複数の内ピン4の各々は、少なくとも一部が軸受け部材6の軸方向において軸受け部材6と同じ位置に配置されている。つまり、図9に示すように、回転軸Ax1に平行な方向においては、内ピン4は、その少なくとも一部が軸受け部材6と同じ位置に配置されている。言い換えれば、回転軸Ax1に平行な方向における軸受け部材6の両端面間には、内ピン4の少なくとも一部が位置する。さらに言い換えれば、複数の内ピン4の各々は、少なくとも一部が軸受け部材6の外輪62の内側に配置されることになる。本基本構成では、内ピン4のうち、回転軸Ax1の出力側の端部は、回転軸Ax1に平行な方向において、軸受け部材6と同じ位置にある。要するに、内ピン4のうちの回転軸Ax1の出力側の端部は、軸受け部材6の内輪61に形成された保持孔611に挿入されているので、少なくとも当該端部は、軸受け部材6の軸方向において軸受け部材6と同じ位置に配置されることになる。
このように、複数の内ピン4の各々の少なくとも一部が、軸受け部材6の軸方向において軸受け部材6と同じ位置に配置されることで、回転軸Ax1に平行な方向における歯車装置1の寸法を小さく抑えることができる。つまり、軸受け部材6の軸方向に、軸受け部材6と内ピン4とが並ぶ(対向する)構成に比べて、本基本構成に係る歯車装置1では、回転軸Ax1に平行な方向における歯車装置1の寸法を小さくでき、歯車装置1の更なる小型化(薄型化)に貢献可能である。
ここで、保持孔611における、回転軸Ax1の出力側の開口面は、例えば、内輪61と一体化される出力軸等に閉塞される。これにより、回転軸Ax1の出力側(図9の右側)への内ピン4の移動に関しては、内輪61と一体化される出力軸等で規制される。
また、本基本構成では、内輪61に対する内ピン4の自転が円滑になされるように、以下の構成を採用している。すなわち、内輪61に形成された保持孔611の内周面と内ピン4との間に、潤滑剤(潤滑油)を介在させることにより、内ピン4の自転を円滑にしている。特に本基本構成では、内輪61と外輪62との間には潤滑剤が注入される潤滑剤保持空間17が存在するので、潤滑剤保持空間17内の潤滑剤を利用して、内ピン4の自転の円滑化を図る。
本基本構成では、図9に示すように、内輪61は、複数の内ピン4がそれぞれ挿入される複数の保持孔611と、複数の連結路64と、を有している。複数の連結路64は、内輪61と外輪62との間の潤滑剤保持空間17と複数の保持孔611との間をつなぐ。具体的には、内輪61には、保持孔611の内周面の一部であって転動体63に対応する部位から、ラジアル方向に延びる連結路64が形成されている。連結路64は、内輪61における外輪62との対向面における転動体63を収容する凹部(溝)の底面と、保持孔611の内周面との間を貫通する孔である。言い換えれば、連結路64の潤滑剤保持空間17側の開口面は、軸受け部材6の転動体63に臨む(対向する)位置に配置されている。このような連結路64を介して、潤滑剤保持空間17と保持孔611とが空間的につながる。
上述した構成によれば、連結路64にて潤滑剤保持空間17と保持孔611とが連結されるので、潤滑剤保持空間17内の潤滑剤が連結路64を通して保持孔611に供給されるようになる。つまり、軸受け部材6が動作して転動体63が回転すると、転動体63がポンプとして機能して、潤滑剤保持空間17内の潤滑剤を、連結路64経由で保持孔611に送り込むことが可能である。特に、連結路64の潤滑剤保持空間17側の開口面が、軸受け部材6の転動体63に臨む(対向する)位置にあることで、転動体63の回転時に、転動体63がポンプとして効率的に作用する。その結果、保持孔611の内周面と内ピン4との間には潤滑剤が介在し、内輪61に対する内ピン4の自転の円滑化を図ることができる。
(3.3)支持体
次に、本基本構成に係る歯車装置1の支持体8の構成について、図10を参照して、より詳細に説明する。図10は図3のB1-B1線断面図である。ただし、図10では、支持体8以外の部品については、断面であってもハッチングを省略している。また、図10では、内歯歯車2及び支持体8のみを図示し、その他の部品(内ピン4等)の図示を省略する。さらに、図10では、歯車本体22の内周面221の図示を省略している。
まず前提として、支持体8は、上述したように、複数の内ピン4を支持する部品である。つまり、支持体8は、複数の内ピン4を束ねることにより、遊星歯車3の回転(自転成分)を内輪61に伝達する際の、複数の内ピン4にかかる荷重を分散する。具合的には、複数の内ピン4がそれぞれ挿入される複数の支持孔82を有している。本基本構成では一例として、支持孔82の直径は、内輪61に形成されている保持孔611の直径と等しい。そのため、支持体8は、複数の内ピン4の各々が自転可能な状態で、複数の内ピン4を支持する。つまり、複数の内ピン4の各々は、軸受け部材6の内輪61と支持体8とのいずれに対しても、自転可能な状態で保持されている。
このように、支持体8は、周方向及び径方向の両方について、複数の内ピン4の支持体8に対する位置決めを行う。つまり、内ピン4は、支持体8の支持孔82に挿入されることで、回転軸Ax1に直交する平面内での全方向に対する移動が規制される。そのため、内ピン4は、支持体8にて、周方向だけでなく径方向(ラジアル方向)についても位置決めされることになる。
ここで、支持体8は、少なくとも外周面81が平面視において真円となる、円環状を有している。そして、支持体8は、外周面81を、内歯歯車2における複数の外ピン23に接触させることにより位置規制されている。複数の外ピン23は、内歯歯車2の内歯21を構成するので、言い換えれば、支持体8は、外周面81を内歯21に接触させることにより位置規制される。ここで、支持体8の外周面81の直径は、内歯歯車2における内歯21の先端を通る仮想円(歯先円)の直径と同一である。そのため、複数の外ピン23は、全て支持体8の外周面81に接触する。よって、支持体8が複数の外ピン23にて位置規制された状態では、支持体8の中心は、内歯歯車2の中心(回転軸Ax1)と重なるように位置規制される。これにより、支持体8の芯出しが行われ、結果的に、支持体8に支持されている複数の内ピン4についても、複数の外ピン23にて芯出しが行われる。
また、複数の内ピン4は、回転軸Ax1を中心に回転(公転)することで、遊星歯車3の回転(自転成分)を内輪61に伝達する。そのため、複数の内ピン4を支持する支持体8は、複数の内ピン4及び内輪61と共に、回転軸Ax1を中心に回転する。このとき、支持体8は複数の外ピン23にて芯出しがされているので、支持体8の中心が回転軸Ax1上に維持された状態で、支持体8は円滑に回転する。しかも、支持体8は、その外周面81が複数の外ピン23に接触した状態で回転するので、支持体8の回転に伴って、複数の外ピン23の各々は回転(自転)する。よって、支持体8は、内歯歯車2と共にニードルベアリング(針状ころ軸受け)を構成し、円滑に回転する。
すなわち、支持体8の外周面81は、複数の外ピン23に接した状態で複数の内ピン4と一緒に歯車本体22に対して相対的に回転する。そのため、内歯歯車2の歯車本体22を「外輪」、支持体8を「内輪」とみなせば、両者の間に介在する複数の外ピン23は「転動体(コロ)」として機能する。このように、支持体8は、内歯歯車2(歯車本体22及び複数の外ピン23)と共に、ニードルベアリングを構成することとなり、円滑な回転が可能となる。
さらに、支持体8は、歯車本体22との間に複数の外ピン23を挟んでいるので、支持体8は、歯車本体22の内周面221から離れる向きの外ピン23の移動を抑制する「ストッパ」としても機能する。つまり、複数の外ピン23は、支持体8の外周面81と歯車本体22の内周面221との間で挟まれることになり、歯車本体22の内周面221からの浮きが抑制される。要するに、本基本構成では、複数の外ピン23の各々は、支持体8の外周面81に接触することで、歯車本体22から離れる向きの移動が規制されている。
ところで、本基本構成では、図9に示すように、支持体8は、遊星歯車3を挟んで、軸受け部材6の内輪61と反対側に位置する。つまり、支持体8、遊星歯車3及び内輪61は、回転軸Ax1に平行な方向に並べて配置されている。本基本構成では一例として、支持体8は、遊星歯車3から見て回転軸Ax1の入力側に位置し、内輪61は、遊星歯車3から見て回転軸Ax1の出力側に位置する。そして、支持体8は、内輪61と共に、内ピン4の長手方向(回転軸Ax1に平行な方向)の両端部を支持し、内ピン4の長手方向の中央部が、遊星歯車3の遊嵌孔32に挿通される。要するに、本基本構成に係る歯車装置1は、外輪62及び外輪62の内側に配置される内輪61を有し、内輪61が外輪62に対して相対的に回転可能に支持される軸受け部材6を備えている。そして、歯車本体22は、外輪62に固定される。ここで、遊星歯車3は、支持体8の軸方向において支持体8と内輪61との間に位置する。
この構成によれば、支持体8及び内輪61は、内ピン4の長手方向の両端部を支持するので、内ピン4の傾きが生じにくい。特に、複数の内ピン4にかかる回転軸Ax1に対する曲げ力(曲げモーメント荷重)をも受けやすくなる。また、本基本構成では、回転軸Ax1と平行な方向において、支持体8は、遊星歯車3とケース10との間に挟まれている。これにより、支持体8は、回転軸Ax1の入力側(図9の左側)への移動がケース10にて規制される。支持体8の支持孔82を貫通して、支持体8から回転軸Ax1の入力側へ突出する内ピン4についても、回転軸Ax1の入力側(図9の左側)への移動はケース10にて規制される。
本基本構成ではさらに、支持体8及び内輪61は、複数の外ピン23の両端部に接触する。つまり、図9に示すように、支持体8は、外ピン23の長手方向(回転軸Ax1に平行な方向)の一端部(回転軸Ax1の入力側の端部)に接触する。内輪61は、外ピン23の長手方向(回転軸Ax1に平行な方向)の他端部(回転軸Ax1の出力側の端部)に接触する。この構成によれば、支持体8及び内輪61は、外ピン23の長手方向の両端部で芯出しされるので、内ピン4の傾きが生じにくい。特に、複数の内ピン4にかかる回転軸Ax1に対する曲げ力(曲げモーメント荷重)をも受けやすくなる。
また、複数の外ピン23は、支持体8の厚み以上の長さを有する。言い換えれば、回転軸Ax1に平行な方向においては、内歯21の歯筋の範囲内に、支持体8が収まることになる。これにより、支持体8の外周面81は、内歯21の歯筋方向(回転軸Ax1に平行な方向)の全長にわたり複数の外ピン23に接触することになる。したがって、支持体8の外周面81が部分的に摩耗する「片減り」のような不具合が生じにくい。
また、本基本構成では、支持体8の外周面81は、支持体8の外周面81に隣接する一表面に比べて表面粗さが小さい。つまり、支持体8における軸方向(厚み方向)の両端面に比べて、外周面81の表面粗さは小さい。本開示でいう「表面粗さ」は、物体の表面の粗さの程度を意味し、値が小さい程、表面の凹凸が小さく(少なく)、滑らかである。本基本構成では一例として、表面粗さは算術平均粗さ(Ra)であることとする。例えば、研磨等の処理により、外周面81は、支持体8における外周面81以外の面に比べて、表面粗さが小さくされている。この構成では、支持体8の回転がより円滑になる。
また、本基本構成では、支持体8の外周面81の硬度は、複数の外ピン23の周面より低く、歯車本体22の内周面221より高い。本開示でいう「硬度」は、物体の硬さの程度を意味し、金属の硬度は、例えば、鋼球を一定の圧力で押しつけてできるくぼみの大小で表される。具体的には、金属の硬度の一例として、ロックウェル硬さ(HRC)、ブリネル硬さ(HB)、ビッカース硬さ(HV)又はショア硬さ(Hs)等がある。金属部品の硬度を高める(硬くする)手段としては、例えば、合金化又は熱処理等がある。本基本構成では一例として、浸炭焼き入れ等の処理により、支持体8の外周面81の硬度が高められている。この構成では、支持体8の回転によっても摩耗粉等が生じにくく、支持体8の円滑な回転を長期にわたって維持しやすい。
(4)適用例
次に、本基本構成に係る歯車装置1及びアクチュエータ100の適用例について、説明する。
本基本構成に係る歯車装置1及びアクチュエータ100は、例えば、水平多関節ロボット、いわゆるスカラ(SCARA:Selective Compliance Assembly Robot Arm)型ロボットのようなロボットに適用される。
また、本基本構成に係る歯車装置1及びアクチュエータ100の適用例は、上述したような水平多関節ロボットに限らず、例えば、水平多関節ロボット以外の産業用ロボット、又は産業用以外のロボット等であってもよい。水平多関節ロボット以外の産業用ロボットには、一例として、垂直多関節型ロボット又はパラレルリンク型ロボット等がある。産業用以外のロボットには、一例として、家庭用ロボット、介護用ロボット又は医療用ロボット等がある。
(実施形態1)
<概要>
本実施形態に係る内接噛合遊星歯車装置1A(以下、単に「歯車装置1A」ともいう)は、図11~図17等に示すように、主として内ピン4周辺の構造、及び入力軸(偏心軸7)周辺の構造が、基本構成に係る歯車装置1と相違する。以下、基本構成と同様の構成については、共通の符号を付して適宜説明を省略する。
図11は、歯車装置1Aの概略断面図である。図12は、歯車装置1Aにおいて、後述のブッシュ70を取り外した状態の概略断面図である。図13は、歯車装置1Aを回転軸Ax1の入力側(図11の左側)から見た側面図である。図11は図13のA1-A1線断面図に相当し、図12は図13のB1-A1線断面図に相当する。図14は、歯車装置1Aを回転軸Ax1の出力側(図11の右側)から見た側面図である。図13及び図14においては、それぞれのZ1-Z1線断面の拡大図を吹き出し内に示している。図15は、図12と同様の断面図(図13のB1-A1線断面図に相当)において、後述のカバー体163,164及びオイルシール14,15を取り外した状態の概略断面図である。図16は、カバー体163,164及びオイルシール14,15を取り外した状態の歯車装置1Aを回転軸Ax1の入力側(図15の左側)から見た側面図である。図17は、カバー体163,164及びオイルシール14,15を取り外した状態の歯車装置1Aを回転軸Ax1の出力側(図15の右側)から見た側面図である。
本実施形態に係る歯車装置1Aは、基本構成との1つ目の主な相違点として、複数の内ピン4を支持する構造(支持構造40)が、内ピン4の両端部を転がり軸受け41,42にて保持する構造である。つまり、歯車装置1Aは、遊星歯車3に対して回転軸Ax1に平行な方向の両側において、複数の内ピン4の各々を保持する複数組の転がり軸受け41,42を備える。複数の内ピン4の各々は、自転可能な状態で各組の転がり軸受け41,42に保持されている。ここで、複数の内ピン4は、遊星歯車3に形成された複数の遊嵌孔32にそれぞれ挿入された状態で、遊嵌孔32内を公転しながら内歯歯車2に対して回転軸Ax1を中心に相対的に回転する。
また、本実施形態に係る歯車装置1Aの基本構成との2つ目の主な相違点として、内ピン4の潤滑状態を改善するための構造を採用している。具体的に、歯車装置1Aは、転がり軸受け41,42における転動体402(図20参照)の軌道404(図20参照)、及び遊嵌孔32の内周面321と内ピン4との隙間を含む循環路170(図21参照)を備える。歯車装置1Aは、循環路170を通して潤滑剤を循環させる。つまり、本実施形態では、循環路170を設けて潤滑剤を循環させることにより、内ピン4の潤滑状態を改善している。
また、本実施形態に係る歯車装置1Aは、基本構成との3つ目の主な相違点として、少なくとも軸受け部材6Aと内歯歯車2と遊星歯車3とが組み合わされた状態で、複数の内ピン4の各々を取外し可能に構成されている。つまり、歯車装置1Aは、内ピン用経路Sp1(図15参照)を備える。内ピン用経路Sp1は、複数の内ピン4に対して回転軸Ax1に平行な方向の少なくとも一方側に位置し、軸受け部材6Aと内歯歯車2と遊星歯車3とが組み合わされた状態で、複数の内ピン4の各々を取外し可能とする。さらに、複数の内ピン4は、回転軸Ax1に平行な方向から見て(軸受け部材6Aの)内輪61の内側に配置される。
そして、転がり軸受け41,42の転動体402(図20参照)についても、内ピン4と同様に、少なくとも軸受け部材6Aと内歯歯車2と遊星歯車3とが組み合わされた状態で、取外し可能に構成されている。具体的には、転がり軸受け41,42の転動体402は、回転軸Ax1に平行な方向において、(軸受け部材6Aの)外輪62に対して遊星歯車3とは反対側に取外し可能である。
また、本実施形態に係る歯車装置1Aの基本構成との4つ目の主な相違点として、入力軸としての偏心軸7に対して相手部材を固定するための固定構造701がブッシュ70に設けられている。つまり、歯車装置1Aは、遊星歯車3を偏心揺動させる入力軸(偏心軸7)と、ブッシュ70と、を備える。ブッシュ70は、相手部材を固定するための固定構造701を有し、入力軸(偏心軸7)に結合されて入力軸(偏心軸7)と共に回転する。
要するに、本実施形態に係る歯車装置1Aは、基本構成との主な相違点として、内ピン4周辺の構造、特に内ピン4の支持構造40(転がり軸受け41,42)に関する工夫と、内ピン4の潤滑状態を改善するための工夫と、内ピン4を取外し可能とする工夫と、を新たに採用している。さらに、歯車装置1Aは、基本構成との主な相違点として、入力軸(偏心軸7)周辺の構造、特にブッシュ70に関する工夫を新たに採用している。ここで、転がり軸受け41,42は、軸受け部材6Aの内輪61に固定されており、内ピン4は、転がり軸受け41,42を介して軸受け部材6Aの内輪61に保持されることになる。したがって、本実施形態に係る歯車装置1Aにおいても、複数の内ピン4の各々が自転可能な状態で内輪61に保持される点については、基本構成と同様である。
<その他の相違点>
本実施形態に係る歯車装置1Aにおいては、上述した主な相違点(内ピン4周辺の構造及び入力軸周辺の構造)の他にも、以下に説明するように、基本構成に対して複数の相違点がある。
他の1つ目の相違点として、本実施形態に係る歯車装置1Aは、軸受け部材6Aが第1軸受け部材601A及び第2軸受け部材602Aを含む。第1軸受け部材601A及び第2軸受け部材602Aは、それぞれアンギュラ玉軸受けからなり、内輪61、外輪62及び複数の転動体63を有している。第1軸受け部材601Aの内輪61及び第2軸受け部材602Aの内輪61は、いずれもその外周面が平面視において回転軸Ax1を中心とする真円となる、円環状を有している。具体的には、図11に示すように、遊星歯車3から見て回転軸Ax1の入力側(図11の左側)には第1軸受け部材601Aが配置され、遊星歯車3から見て回転軸Ax1の出力側(図11の右側)には第2軸受け部材602Aが配置される。軸受け部材6Aは、第1軸受け部材601A及び第2軸受け部材602Aにて、ラジアル方向の荷重、スラスト方向(回転軸Ax1に沿う方向)の荷重、及び回転軸Ax1に対する曲げ力(曲げモーメント荷重)のいずれに対しても耐え得るように構成される。
ここで、第1軸受け部材601A及び第2軸受け部材602Aは、遊星歯車3に対して回転軸Ax1に平行な方向の両側に、回転軸Ax1に平行な方向において互いに反対向きで配置される。つまり、軸受け部材6Aは、複数(ここでは2つ)のアンギュラ玉軸受けを組み合わせた「組合せアンギュラ玉軸受け」である。ここでは一例として、第1軸受け部材601A及び第2軸受け部材602Aは、それぞれの内輪61が互いに近づく向きのスラスト方向(回転軸Ax1に沿う方向)の荷重を受ける「背面組合せタイプ」である。さらに、歯車装置1Aにおいては、第1軸受け部材601A及び第2軸受け部材602Aは、それぞれの内輪61を互いに近づける向きに締め付けることにより、内輪61に対して適正な予圧が作用する状態で組み合わされる。本開示でいう「予圧」は、予め圧力が作用することにより常に内部応力が作用している状態にすることを意味し、いわゆるプリロード(preload)である。すなわち、本実施形態に係る歯車装置1Aでは、第1軸受け部材601A及び第2軸受け部材602Aの各々において、外輪62には、回転軸Ax1に平行な方向の外側から転動体63が押し付けられている。
他の2つ目の相違点として、本実施形態に係る歯車装置1Aは、図11に示すように、キャリアフランジ18及び出力フランジ19を備えている。キャリアフランジ18及び出力フランジ19は、遊星歯車3に対して回転軸Ax1に平行な方向の両側に配置され、遊星歯車3のキャリア孔34(図12参照)を通して、互いに結合されている。具体的には、図11に示すように、遊星歯車3から見て回転軸Ax1の入力側(図11の左側)にはキャリアフランジ18が配置され、遊星歯車3から見て回転軸Ax1の出力側(図11の右側)には出力フランジ19が配置される。軸受け部材6A(第1軸受け部材601A及び第2軸受け部材602Aの各々の)の内輪61は、キャリアフランジ18及び出力フランジ19に対して固定されている。本実施形態では一例として、第1軸受け部材601Aの内輪61は、キャリアフランジ18とシームレスに一体化されている。同様に、第2軸受け部材602Aの内輪61は、出力フランジ19とシームレスに一体化されている。
出力フランジ19は、出力フランジ19の一表面から回転軸Ax1の入力側に向けて突出する複数(一例として6つ)のキャリアピン191(図12参照)を有している。これら複数のキャリアピン191は、遊星歯車3に形成されている複数(一例として6つ)のキャリア孔34をそれぞれ貫通し、その先端がキャリアフランジ18に対してキャリアボルト181(図12参照)にて固定される。ここで、キャリアピン191の直径は、キャリア孔34の直径よりも一回り小さく、キャリアピン191とキャリア孔34の内周面との間には隙間が確保され、キャリアピン191は、キャリア孔34内を移動可能、つまりキャリア孔34の中心に対して相対的に移動可能である。しかも、キャリアピン191とキャリア孔34の内周面との隙間は、内ピン4と遊嵌孔32の内周面321との隙間に比べて大きく、内ピン4が遊嵌孔32内を公転する際にキャリアピン191がキャリア孔34の内周面に接触することはない。また、出力フランジ19におけるキャリアピン191とは反対側の表面には、出力フランジ19自体を固定するための複数のフランジボルト孔192(図17参照)が形成されている。
ここで、内ピン4は、その両端部が、軸受け部材6Aの内輪61に直接的に保持されるのではなく、内輪61と一体化されたキャリアフランジ18及び出力フランジ19に(転がり軸受け41,42を介して)保持される。つまり、複数の内ピン4は、キャリアフランジ18及び出力フランジ19に保持されることにより、間接的に、軸受け部材6Aの内輪61に保持される。
これにより、歯車装置1Aは、遊星歯車3の自転成分相当の回転を、軸受け部材6Aの内輪61と一体化されたキャリアフランジ18及び出力フランジ19の回転として取り出すように使用される。すなわち、基本構成では、遊星歯車3と内歯歯車2との間の相対的な回転は、遊星歯車3に複数の内ピン4にて連結された内輪61から、遊星歯車3の自転成分として取り出される。これに対して、本実施形態では、遊星歯車3と内歯歯車2との間の相対的な回転は、内輪61と一体化されたキャリアフランジ18及び出力フランジ19から取り出される。本実施形態では一例として、歯車装置1Aは、軸受け部材6Aの外輪62が固定部材であるケースに固定された状態で使用される。すなわち、遊星歯車3は複数の内ピン4にて回転部材であるキャリアフランジ18及び出力フランジ19と連結され、歯車本体22は固定部材に固定されるため、遊星歯車3と内歯歯車2との間の相対的な回転は、回転部材(キャリアフランジ18及び出力フランジ19)から取り出される。言い換えれば、本実施形態では、歯車本体22に対して複数の内ピン4が相対的に回転する際、キャリアフランジ18及び出力フランジ19の回転力を出力として取り出すように構成されている。
他の3つ目の相違点として、本実施形態では、ケース10が内歯歯車2の歯車本体22とシームレスに一体化されている。つまり、基本構成では、内歯歯車2の歯車本体22が、軸受け部材6の外輪62と共に、ケース10に固定された状態で使用される。これに対して、本実施形態では、回転軸Ax1に平行な方向において、固定部材である歯車本体22とケース10とはシームレスに連続して設けられる。
より詳細には、ケース10は、円筒状であって、歯車装置1Aの外郭を構成する。本実施形態では、円筒状のケース10の中心軸は、回転軸Ax1と一致するように構成されている。つまり、ケース10は、少なくとも外周面が、平面視において(回転軸Ax1方向の一方から見て)回転軸Ax1を中心とする真円となる。ケース10は、回転軸Ax1方向の両端面が開口する円筒状に形成されている。ここで、ケース10には、内歯歯車2の歯車本体22がシームレスに一体化されており、ケース10及び歯車本体22は、1部品として扱われる。そのため、ケース10の内周面は、歯車本体22の内周面221を含んでいる。さらに、ケース10には、軸受け部材6Aの外輪62が固定されている。つまり、ケース10の内周面における歯車本体22から見て回転軸Ax1の入力側(図11の左側)には、第1軸受け部材601Aの外輪62が嵌め込まれることにより固定される。一方、ケース10の内周面における歯車本体22から見て回転軸Ax1の出力側(図11の右側)には、第2軸受け部材602Aの外輪62が嵌め込まれることにより固定される。
さらに、ケース10における回転軸Ax1の入力側(図11の左側)の端面は、キャリアフランジ18によって閉塞され、ケース10における回転軸Ax1の出力側(図11の右側)の端面は、出力フランジ19によって閉塞される。そのため、図11及び図12に示すように、ケース10、キャリアフランジ18及び出力フランジ19で囲まれた空間内に、遊星歯車3、複数の内ピン4、複数の外ピン23、及び偏心体軸受け5等の部品が収容される。ここで、オイルシール161は、キャリアフランジ18とケース10との間の隙間を塞ぎ、オイルシール162は、出力フランジ19とケース10との間の隙間を塞ぐ。複数のオイルシール14,15,161,162で密閉された空間は、基本構成と同様に潤滑剤保持空間17(図11参照)を構成する。ケース10における回転軸Ax1に平行な方向の両端面には、ケース10自体を固定するための複数の設置孔111が形成されている。
他の4つ目の相違点として、本実施形態に係る歯車装置1Aは、複数の遊星歯車3を備えている。具体的には、歯車装置1Aは、第1遊星歯車301と第2遊星歯車302との2つの遊星歯車3を備えている。2つの遊星歯車3は、回転軸Ax1に平行な方向において(支持リング8Aを挟んで)対向するように配置されている。つまり、遊星歯車3は、回転軸Ax1に平行な方向に並ぶ第1遊星歯車301及び第2遊星歯車302を含む。
これら2つの遊星歯車3(第1遊星歯車301及び第2遊星歯車302)は、回転軸Ax1まわりで180度の位相差をもって配置される。図11の例では、第1遊星歯車301及び第2遊星歯車302のうち、回転軸Ax1の入力側(図11の左側)に位置する第1遊星歯車301の中心C1が、回転軸Ax1に対して図の上方にずれた(偏った)状態にある。一方、回転軸Ax1の出力側(図11の右側)に位置する第2遊星歯車302の中心C2は、回転軸Ax1に対して図の下方にずれた(偏った)状態にある。このように、複数の遊星歯車3が、回転軸Ax1を中心とする周方向において均等に配置されることで、複数の遊星歯車3間での重量バランスをとることが可能である。本実施形態に係る歯車装置1Aでは、このように複数の遊星歯車3間で重量バランスをとるので、偏心軸7の空隙75(図3参照)は省略されている。
より詳細には、偏心軸7は、1つの軸心部71に対して、2つの偏心部72を有している。これら2つの偏心部72の中心(中心軸)は、それぞれ回転軸Ax1からずれた中心C1,C2と一致する。また、第1遊星歯車301及び第2遊星歯車302の形状自体は共通である。そして、第1遊星歯車301の開口部33には、中心C1を中心とする偏心部72に装着された状態の偏心体軸受け5が収容される。第2遊星歯車302の開口部33には、中心C2を中心とする偏心部72に装着された状態の偏心体軸受け5が収容される。ここで、回転軸Ax1と中心C1との間の距離ΔL1は、回転軸Ax1に対する第1遊星歯車301の偏心量となり、回転軸Ax1と中心C2との間の距離ΔL2は、回転軸Ax1に対する第2遊星歯車302の偏心量となる。
図18及び図19に、ある時点における第1遊星歯車301及び第2遊星歯車302の状態を示す。図18は、図11のA1-A1線断面図であって、第1遊星歯車301を示す。図19は、図11のB1-B1線断面図であって、第2遊星歯車302を示す。ただし、図18及び図19では、保持器54の図示を省略し、かつ断面であってもハッチングを省略している。図18及び図19に示すように、第1遊星歯車301と第2遊星歯車302とでは、その中心C1,C2が回転軸Ax1に対して180度回転対称に位置する。本実施形態では、偏心量ΔL1と偏心量ΔL2とでは、回転軸Ax1から見た向きが反対であるが、その絶対値は同じである。上述した構成によれば、軸心部71が回転軸Ax1を中心に回転(自転)することにより、第1遊星歯車301及び第2遊星歯車302は、回転軸Ax1まわりで180度の位相差をもって、回転軸Ax1まわりで回転(偏心運動)する。
他の5つ目の相違点として、本実施形態では、図11に示すように、偏心体軸受け5は、基本構成で説明したような深溝玉軸受けに代えて、コロ軸受けからなる。つまり、本実施形態に係る歯車装置1Aでは、偏心体軸受け5は、転動体53として円柱状(円筒状)のコロを用いている。さらに、本実施形態では、偏心体内輪51(図3参照)及び偏心体外輪52(図3参照)が省略されている。そのため、遊星歯車3(の開口部33)の内周面が偏心体外輪52の代わりに複数の転動体53の転動面となり、偏心部72の外周面が偏心体内輪51の代わりに複数の転動体53の転動面となる。本実施形態では、偏心体軸受け5は、保持器(リテーナ)54を有しており、複数の転動体53は、それぞれ自転可能な状態で保持器54にて保持される。保持器54は、複数の転動体53を、偏心部72の円周方向において等ピッチで保持する。さらに、保持器54は、遊星歯車3及び偏心軸7に対して固定されておらず、遊星歯車3及び偏心軸7の各々に対して相対的に回転可能である。これにより、保持器54の回転に伴って、保持器54にて保持されている複数の転動体53は、偏心部72の円周方向へ移動する。
他の6つ目の相違点として、本実施形態に係る歯車装置1Aは、図11に示すように、支持体8に代えて、支持リング8Aを備えている。支持リング8Aは、第1遊星歯車301と第2遊星歯車302との2つの遊星歯車3の間に配置されている。支持リング8Aは、少なくとも外周面が平面視において真円となる、円環状を有している。そして、支持リング8Aは、外周面を、内歯歯車2における複数の外ピン23に接触させることにより位置規制されている。複数の外ピン23は、内歯歯車2の内歯21を構成するので、言い換えれば、支持リング8Aは、外周面を内歯21に接触させることにより位置規制される。ここで、支持リング8Aの外周面の直径は、内歯歯車2における内歯21の先端を通る仮想円(歯先円)の直径と同一である。そのため、複数の外ピン23は、全て支持リング8Aの外周面に接触する。よって、支持リング8Aが複数の外ピン23にて位置規制された状態では、支持リング8Aの中心は、内歯歯車2の中心(回転軸Ax1)と重なるように位置規制される。
ここで、支持リング8Aは、第1遊星歯車301と第2遊星歯車302とに挟まれており、遊星歯車3の回転(自転)に伴って回転軸Ax1を中心に回転する。このとき、支持リング8Aは、その外周面が複数の外ピン23に接触した状態で回転するので、支持リング8Aの回転に伴って、複数の外ピン23の各々は回転(自転)する。よって、支持リング8Aは、内歯歯車2と共にニードルベアリング(針状ころ軸受け)を構成し、円滑に回転する。すなわち、内歯歯車2の歯車本体22を「外輪」、支持リング8Aを「内輪」とみなせば、両者の間に介在する複数の外ピン23は「転動体(コロ)」として機能する。このように、支持リング8Aは、内歯歯車2(歯車本体22及び複数の外ピン23)と共に、ニードルベアリングを構成することとなり、円滑な回転が可能となる。さらに、支持リング8Aは、歯車本体22との間に複数の外ピン23を挟んでいるので、支持リング8Aは、歯車本体22の内周面221から離れる向きの外ピン23の移動を抑制する「ストッパ」としても機能する。
他の7つ目の相違点として、本実施形態に係る歯車装置1Aは、図11に示すように、スペーサ55を備えている。スペーサ55は、内側軸受け部材である第1ベアリング91及び第2ベアリング92と、偏心体軸受け5との間に配置される。具体的には、スペーサ55は、第1ベアリング91と第1遊星歯車301側の偏心体軸受け5との間、及び第2ベアリング92と第2遊星歯車302側の偏心体軸受け5との間に、それぞれは配置される。スペーサ55は、少なくとも内周面が平面視において真円となる、円環状を有している。スペーサ55は、偏心体軸受け5の「押さえ」として機能し、回転軸Ax1に平行な方向への偏心体軸受け5(特に保持器54)の移動を規制する。
ここで、スペーサ55は、第1ベアリング91及び第2ベアリング92に対して、その外輪との間に隙間を確保する。したがって、第1ベアリング91及び第2ベアリング92においては、その外輪はスペーサ55に接することなく、その内輪のみがスペーサ55に接触する。一方で、軸受け部材6Aである第1軸受け部材601A及び第2軸受け部材602Aは、遊星歯車3との間に隙間を確保する。したがって、第1軸受け部材601A及び第2軸受け部材602Aは遊星歯車3に接することない。
他の8つ目の相違点として、本実施形態に係る歯車装置1Aは、内歯歯車2に対する複数の内ピン4の非回転時において、各内ピン4に遊星歯車3から予圧が作用するように構成されている。つまり、歯車装置1Aにおいては、内歯歯車2に対する複数の内ピン4の非回転時において、複数の内ピン4の各々には、複数の遊嵌孔32の各々の内周面321が押し付けられることで予圧が作用する。ここで、歯車装置1Aは、予圧が作用する状態を維持するように、支持構造40(転がり軸受け41,42)にて複数の内ピン4の各々を支持する。支持構造40は、予圧によって複数の内ピン4の各々に生じるモーメントを打ち消すように、複数の内ピン4の各々を支持する。
この構成によれば、本実施形態に係る歯車装置1Aでは、内ピン4は、常に、遊嵌孔32の内周面321の一部において遊星歯車3と接触することになり、内ピン4と遊星歯車3とが離れた状態が生じにくくなる。そのため、歯車装置1Aが駆動すれば、内ピン4は、遊嵌孔32の内周面321に押し付けられた状態で、遊嵌孔32内を公転する。一般的に、組立公差等を考慮して、歯車装置が組み立てられた状態で、歯車装置の非駆動時には、遊嵌孔の内周面と内ピンとの間に隙間が確保されるところ、本実施形態に係る歯車装置1Aは、敢えて当該隙間をなくすように構成されている。そのため、本実施形態に係る歯車装置1Aによれば、少なくとも遊嵌孔32の内周面321と内ピン4との間の隙間によるバックラッシュ(バックラッシ)を低減又は無くすことができ、角度伝達誤差を小さく抑えやすい。特に、高い減速比の歯車装置1Aでは、僅かな隙間によるバックラッシュであっても、入力側(偏心軸7)の回転に対する出力側(出力フランジ19)の回転の誤差、つまり角度伝達誤差が大きくなるので、バックラッシュを低減又は無くすことの効果は大きい。
また、上述した点以外にも、例えば、内歯歯車2及び遊星歯車3の歯数、減速比、遊嵌孔32及び内ピン4の数、並びに、各部の具体的形状及び寸法等についても、本実施形態と基本構成とでは適宜相違する。例えば、遊嵌孔32及び内ピン4は、基本構成では18個ずつ設けられているのに対して、本実施形態では一例として6個ずつ設けられている。
<内ピン周辺の構造>
次に、本実施形態に係る歯車装置1Aにおける、内ピン4周辺の構造に関して、図11~図20を参照して詳しく説明する。
まず前提として、本実施形態に係る歯車装置1Aでは、遊星歯車3の偏心運動に伴って、内ピン4は遊嵌孔32内を移動(公転)する。このときの内ピン4の移動量は、回転軸Ax1に直交する直線方向(例えば、図11の上下方向)において、偏心量ΔL1(=ΔL2)の2倍である。つまり、遊嵌孔32の直径Diは、理想的には、内ピン4の直径diを用いて「Di=di+2ΔL1」で表される。そのため、内ピン4は、遊嵌孔32の内周面321との間に、空間的な余裕(隙間)を確保した状態で遊嵌孔32に挿入される。しかし、内ピン4の直径di及び遊嵌孔32の直径Diは、いずれも設計値(理想値)通りにすることは難しく、公差の範囲で微妙にばらつくことになる。例えば、内ピン4の直径diが設計値より小さいと、遊嵌孔32の内周面321と内ピン4との間の隙間が大きくなり、この隙間によるバックラッシュ(バックラッシ)が生じて、角度伝達誤差が大きくなる。反対に、内ピン4の直径diが設計値より大きいと、遊嵌孔32の内周面321と内ピン4との間の隙間が小さくなり、偏心軸7を回転させるのに必要なトルク(入力トルク)が大きくなり、歯車装置1Aでの損失が大きくなる。
ここにおいて、本実施形態では、上述したように、複数の内ピン4の各々は、少なくとも軸受け部材6Aと内歯歯車2と遊星歯車3とが組み合わされた状態で、内ピン用経路Sp1を通して、取外し可能である。つまり、歯車装置1Aにおいては、少なくとも軸受け部材6Aと内歯歯車2と遊星歯車3とをばらす(分解する)ことなく、複数の内ピン4の各々を取り外すことが可能である。ここで、内ピン用通路Sp1は、複数の内ピン4に対して回転軸Ax1に平行な方向の少なくとも一方側に位置するので、内ピン4は、回転軸Ax1に平行な方向に沿って移動させるようにして、内ピン用通路Sp1を通して取り外されることになる。
言い換えれば、複数の内ピン4に対して回転軸Ax1に平行な方向の少なくとも一方側は内ピン用通路Sp1を通して開放可能であるので、この開放された部位(内ピン用通路Sp1)を通して、複数の内ピン4の各々を取り外すことが可能である。そして、内ピン4を取り外すことで、内ピン4の交換等が可能となる。すなわち、内ピン4を取り外した後で、別の内ピン4、又はメンテナンス(研磨又は清掃等)後の同一の内ピン4を組み直すことにより、少なくとも軸受け部材6Aと内歯歯車2と遊星歯車3とが組み合わされた状態で、内ピン4の交換等が可能となる。組み直される内ピン4についても、取外し時と同様に、内ピン用通路Sp1を通して挿入されることになる。
要するに、上記構成によれば、本実施形態に係る歯車装置1Aでは、少なくとも軸受け部材6Aと内歯歯車2と遊星歯車3とをばらすことなく、内ピン4の交換等が可能になる。そのため、例えば、内ピン4の直径diが設計値より小さい場合、直径のより大きな内ピン4に交換することで、少なくとも遊嵌孔32の内周面321と内ピン4との間の隙間によるバックラッシュを低減又は無くすことができ、角度伝達誤差を小さく抑えやすい。反対に、内ピン4の直径diが設計値より大きい場合には、直径のより小さな内ピン4に交換することで、偏心軸7を回転させるのに必要な入力トルクを小さく抑えることができ、歯車装置1Aでの損失を小さく抑えやすい。特に、高い減速比の歯車装置1Aでは、僅かな隙間によるバックラッシュであっても、入力側(偏心軸7)の回転に対する出力側(出力フランジ19)の回転の誤差、つまり角度伝達誤差が大きくなるので、バックラッシュを低減又は無くすことの効果は大きい。
さらに、本実施形態の構成によれば、歯車装置1Aが停止している状態から回転し始める始動時の角度伝達誤差を小さくできることから、歯車装置1Aとしての始動特性を大幅に改善でき、歯車装置1Aの始動時又は回転方向の切替時の応答性が大幅に向上する。その結果、例えば、ロボット分野のように、停止、始動、又は回転方向の切替が頻繁に行われ、かつ角度伝達誤差に対する要求が厳しい分野においても、歯車装置1Aによれば十分な特性を発揮できる。
しかも、本実施形態では、複数の内ピン4の各々は、自転可能な状態で内輪61に保持されている。ただし、各内ピン4は、厳密には、内輪61に直接的に保持されるのではなく、内輪61と一体化されたキャリアフランジ18及び出力フランジ19に(転がり軸受け41,42を介して)保持されることで、軸受け部材6Aの内輪61に間接的に保持されている。このように、内ピン4が自転可能に保持される構成によれば、遊嵌孔32の内周面321と内ピン4との間の隙間が小さく、内ピン4が遊嵌孔32の内周面321に押し付けられた状態で遊嵌孔32内を公転するにしても、内ピン4は、遊嵌孔32の内周面321に対して転動することになる。言い換えれば、内ピン4は、遊嵌孔32の内周面321上を転がるようにして遊嵌孔32内で公転するので、遊嵌孔32の内周面321と内ピン4との間の摩擦抵抗による損失が生じにくい。
さらに、複数の内ピン4は、回転軸Ax1に平行な方向から見て(軸受け部材6Aの)内輪61の内側に配置されている。つまり、複数の内ピン4は、軸受け部材6A(第1軸受け部材601A及び第2軸受け部材602A)の内側に配置される。このように軸受け部材6Aの内側に複数の内ピン4が配置されるので、軸受け部材6Aの内側において内ピン用通路Sp1を確保するだけで、内ピン4の取り外しが可能となる。具体的には、軸受け部材6Aの内側のキャリアフランジ18及び出力フランジ19には、複数の内ピン4が挿入される孔が形成されているところ、この孔の回転軸Ax1に平行な方向の少なくとも一方を開放することで、内ピン用通路Sp1が実現可能である。この構成によれば、径方向(回転軸Ax1に直交する方向)における歯車装置1Aの寸法の増大を抑えることができる。
また、本実施形態に係る歯車装置1Aでは、図15に示すように、内ピン用経路Sp1は、複数の内ピン4に対して回転軸Ax1に平行な方向の両側に位置する。つまり、複数の内ピン4から見て、回転軸Ax1の入力側(図15の左側)、及び回転軸Ax1の出力側(図15の右側)の両方が、内ピン用経路Sp1によって開放可能である。そのため、複数の内ピン4の各々は、回転軸Ax1の入力側及び出力側のいずれからでも取外し可能となる。さらに、回転軸Ax1に平行な方向の一方から既存の内ピン4を押すようにして、回転軸Ax1に平行な方向の他方から内ピン4を取り外すことも可能となる。そのため、内ピン4を交換する際には、例えば、回転軸Ax1の入力側から、新たな内ピン4で既存の内ピン4を押すようにして、回転軸Ax1の出力側から既存の内ピン4を取り外すと同時に、新たな内ピン4を挿入することができる。
また、本実施形態では、内ピン用経路Sp1は、常に開放されているのではなく、少なくとも歯車装置1Aの使用時においては、カバー体163,164によって覆われている。カバー体163,164は、例えば、キャリアフランジ18及び出力フランジ19に対して、取外し可能に取り付けられる。具体的には、カバー体163は、キャリアフランジ18に対して取外し可能に取り付けられ、キャリアフランジ18に取り付けられた状態では回転軸Ax1の入力側の内ピン用経路Sp1を覆う。カバー体164は、出力フランジ19に対して取外し可能に取り付けられ、出力フランジ19に取り付けられた状態では回転軸Ax1の出力側の内ピン用経路Sp1を覆う。
要するに、本実施形態に係る歯車装置1Aは、カバー体163,164を更に備える。カバー体163,164は、内ピン用経路Sp1を覆う第1位置と、内ピン用経路Sp1を露出させる第2位置との間を移動可能である。本実施形態では、カバー体163,164がキャリアフランジ18及び出力フランジ19に取り付けられた状態(図11及び図12の状態)が「第1位置」に相当し、キャリアフランジ18及び出力フランジ19から取り外された状態(図15の状態)が「第2位置」に相当する。カバー体163,164は、第1位置と第2位置との間で移動可能であればよく、キャリアフランジ18及び出力フランジ19から取外し可能であることは必須ではない。
また、カバー体163,164は、第1位置で複数の内ピン4に対応する複数の内ピン用経路Sp1をまとめて覆う。つまり、本実施形態では一例として、内ピン4は6本設けられているため、内ピン用経路Sp1についても、回転軸Ax1の入力側及び出力側のそれぞれにおいて6つずつ設けられている。カバー体163は、回転軸Ax1の入力側における6つの内ピン用経路Sp1を、1つずつ個別に覆うのではなく、一括して覆うように構成されている。同様に、カバー体164は、回転軸Ax1の出力側における6つの内ピン用経路Sp1を、1つずつ個別に覆うのではなく、一括して覆うように構成されている。そのため、カバー体163が取り外されると、図16に示すように、回転軸Ax1の入力側における6つの内ピン用経路Sp1が露出し、カバー体164が取り外されると、図17に示すように、回転軸Ax1の出力側における6つの内ピン用経路Sp1が露出する。
具体的には、カバー体163,164はいずれも、外周面及び内周面が平面視において真円となる、円環状を有している。そして、カバー体163,164は、外周面を、キャリアフランジ18及び出力フランジ19に接触させることにより位置規制されている。つまり、キャリアフランジ18及び出力フランジ19は、それぞれ回転軸Ax1に平行な方向の外側に向けて開放される窪みを有している。カバー体163,164は、これらの窪みに嵌め込まれるようにして、キャリアフランジ18及び出力フランジ19に取り付けられる。さらに、カバー体163,164の内側には、オイルシール14,15が嵌め込まれる。つまり、カバー体163,164は、それぞれ内周面をオイルシール14,15の外周面に接触させるようして、オイルシール14,15と組み合わされる。そのため、回転軸Ax1に平行な方向から見たときのオイルシール14,15の位置は、カバー体163,164によって規制されることになる。
本実施形態では一例として、カバー体163,164は、図13及び図14に示すように、複数本(一例として6本)の取付ねじ160によってキャリアフランジ18及び出力フランジ19に取り付けられる。つまり、カバー体163は、キャリアフランジ18の窪みに嵌め込まれた状態で、6本の取付ねじ160がキャリアフランジ18のねじ穴183(図16参照)に締め付けられることにより、キャリアフランジ18に固定される。カバー体164は、出力フランジ19の窪みに嵌め込まれた状態で、6本の取付ねじ160が出力フランジ19のねじ穴193(図17参照)に締め付けられることにより、出力フランジ19に固定される。カバー体163,164の材質は、他の部品と同様に、ステンレス、鋳鉄、機械構造用炭素鋼、クロムモリブデン鋼、リン青銅又はアルミ青銅等の金属である。
カバー体163には、図13に示すように、開口孔165が形成されている。開口孔165は、カバー体163がキャリアフランジ18に取り付けられた状態でキャリアボルト181に対応する各位置に設けられている。本実施形態では、キャリアボルト181が6本あるので、開口孔165も6つ設けられている。開口孔165は、キャリアボルト181の頭部を逃す逃し孔として機能する。また、カバー体164には、図14に示すように、開口孔166が形成されている。開口孔166は、カバー体164が出力フランジ19に取り付けられた状態でフランジボルト孔192に対応する各位置に設けられている。本実施形態では、フランジボルト孔192が6つあるので、開口孔166も6つ設けられている。開口孔166は、フランジボルト孔192を露出させる透孔として機能する。
このように、本実施形態では、カバー体163をキャリアフランジ18に取り付けるための取付ねじ160は、キャリアフランジ18を出力フランジ19に固定するためのキャリアボルト181とは別に設けられている。そのため、キャリアボルト181にてキャリアフランジ18を出力フランジ19に固定したままで、取付ねじ160を外すことでキャリアフランジ18からカバー体163を取り外すことが可能である。ただし、この構成に限らず、キャリアフランジ18を出力フランジ19に固定するためのキャリアボルト181が、キャリアフランジ18へのカバー体163の取り付けに兼用されてもよい。この場合、取付ねじ160は省略され、キャリアボルト181によって、キャリアフランジ18を出力フランジ19に固定され、かつカバー体163がキャリアフランジ18に取り付けられることになる。
また、本実施形態では、カバー体163,164と内輪61とを相対的に位置決めする位置決め構造を更に備える。一例として、位置決め構造は、凸部167(図15参照)及び凹部184,194(図16及び図17参照)からなる。具体的には、カバー体163,164におけるキャリアフランジ18及び出力フランジ19との対向面には、それぞれ凸部167が設けられている。キャリアフランジ18及び出力フランジ19におけるカバー体163,164との対向面(つまり、窪みの底面)であって、凸部167に対応する位置にはそれぞれ凹部184,194が設けられている。カバー体163は、凸部167をキャリアフランジ18の凹部184に嵌め込むようにキャリアフランジ18と組み合わされることにより、キャリアフランジ18と一体化されている第1軸受け部材601Aの内輪61に対して、相対的に位置決めされる。同様に、カバー体164は、凸部167を出力フランジ19の凹部194に嵌め込むように出力フランジ19と組み合わされることにより、出力フランジ19と一体化されている第2軸受け部材602Aの内輪61に対して、相対的に位置決めされる。
このような位置決め構造があることにより、内輪61に対するカバー体163,164の相対的な位置を精度よく決めることが可能である。つまり、回転軸Ax1に平行な方向から見たときに、カバー体163,164の位置を精度よく規定することができる。本実施形態では特に、回転軸Ax1に平行な方向から見たときのオイルシール14,15の位置は、カバー体163,164によって規制されているので、カバー体163,164の位置精度が向上することで、オイルシール14,15の芯出し不良が抑制される。その結果、オイルシール14,15で密閉された潤滑剤保持空間17からの潤滑剤の漏れを抑制しやすい。
また、位置決め構造は、回転軸Ax1を中心とする回転方向におけるカバー体163,164と内輪61との相対位置を一意に決めることが好ましい。これにより、カバー体163,164は、軸受け部材6Aの内輪61に対して、回転軸Ax1を対称軸とした場合に、非回転対称、つまり360度回転対称に組み合わされることになる。本実施形態では一例として、図16に示すように、キャリアフランジ18の凹部184が、回転軸Ax1の入力側から見て、回転軸Ax1を対称軸として非回転対称となる位置に複数(ここでは2つ)設けられている。同様に、図17に示すように、出力フランジ19の凹部194が、回転軸Ax1の出力側から見て、回転軸Ax1を対称軸として非回転対称となる位置に複数(ここでは2つ)設けられている。その結果、内輪61に対するカバー体163,164の相対的な位置精度がより向上する。
また、本実施形態では、複数の内ピン4の各々は、回転軸Ax1に平行な方向において、少なくとも一部が軸受け部材6Aと同じ位置で(軸受け部材6Aの)内輪61に保持されている。すなわち、内ピン4を保持(支持)する支持構造40としての複数組の転がり軸受け41,42は、図15に示すように、回転軸Ax1に平行な方向において、第1軸受け部材601A及び第2軸受け部材602Aと少なくとも一部が重複する位置にある。つまり、回転軸Ax1に平行な方向において、転がり軸受け41の少なくとも一部は第1軸受け部材601Aと同じ位置にあり、転がり軸受け42の少なくとも一部は第2軸受け部材602Aと同じ位置にある。特に、本実施形態では、第1軸受け部材601A及び第2軸受け部材602Aの各々の幅方向(回転軸Ax1に平行な方向)の寸法は、転がり軸受け41,42の各々の幅方向の寸法と略同一である。そのため、回転軸Ax1に平行な方向においては、転がり軸受け41,42の各々の範囲内に、第1軸受け部材601A及び第2軸受け部材602Aの各々が略収まることになる。言い換えれば、転がり軸受け41,42の各々の外側に、第1軸受け部材601A及び第2軸受け部材602Aの各々が配置される。
このように、本実施形態では、歯車装置1Aに元々設けられている軸受け部材6A(第1軸受け部材601A及び第2軸受け部材602A)の内側のスペースを、内ピン4を指示する支持構造40の設置スペースとして利用する。したがって、支持構造40を設けたことによる、回転軸Ax1に平行な方向における歯車装置1Aの寸法の増大を抑えることができる。
特に本実施形態では、支持構造40(転がり軸受け41,42)は、内側軸受け部材(第1ベアリング91及び第2ベアリング92)の外側であって、軸受け部材6A(第1軸受け部材601A及び第2軸受け部材602A)の内側に配置される。言い換えれば、転がり軸受け41,42は、内側軸受け部材(第1ベアリング91及び第2ベアリング92)と、軸受け部材6A(第1軸受け部材601A及び第2軸受け部材602A)との間のスペースを利用して配置される。したがって、転がり軸受け41,42を設けたことによる、径方向(回転軸Ax1に直交する方向)における歯車装置1Aの寸法の増大も抑えることができる。
また、内ピン用経路Sp1は、潤滑剤を保持する潤滑剤保持空間17に連通している。具体的には、内ピン用経路Sp1は、キャリアフランジ18及び出力フランジ19における内ピン4の挿入用の孔を通して、潤滑剤保持空間17につながっている。この構成によれば、内ピン4の交換等に際して、内ピン用経路Sp1から潤滑剤保持空間17に潤滑剤を補充することが可能となる。
ところで、本実施形態では、一対の転がり軸受け41,42は、内ピン4の長手方向の両端部を、内ピン4が自転可能な状態で保持する。ここで、各転がり軸受け41,42は、図20に示すように、保持器(リテーナ)401及び複数の転動体402を有している。各転がり軸受け41,42の外輪403は、キャリアフランジ18及び出力フランジ19が兼ねている。具体的には、キャリアフランジ18及び出力フランジ19における内ピン4の挿入用の孔の内周面が、各転がり軸受け41,42の外輪403として機能する。外輪403は、平面視で真円状であって、外輪403の内径は内ピン4の径(外径)よりも一回り大きいため、外輪403と内ピン4の外周面との間には隙間が生じる。複数の転動体402は、外輪403と内ピン4との間の隙間に配置されている。複数の転動体402は、外輪403の円周方向に並べて配置されている。複数の転動体402は、全て同一形状の金属部品であって、外輪403の円周方向の全域に、等ピッチで設けられている。保持器401は、複数の転動体402を、外輪403の円周方向において等ピッチで保持する。
本実施形態では一例として、各転がり軸受け41,42は、ニードルベアリング(針状ころ軸受け)である。つまり、各転がり軸受け41,42は、転動体402として円筒状のコロを有している。そして、円筒状の転動体402の軸は、いずれも回転軸Ax1に平行に配置される。本実施形態では、各転がり軸受け41,42は、内輪を有しておらず、内ピン4が内輪として機能する。そのため、各転がり軸受け41,42によれば、複数の転動体402が転動することにより、外輪403に対して内ピン4が回転し、各転がり軸受け41,42は内ピン4を自転可能に保持することができる。
この構成によれば、内ピン4が自転可能となり、そもそも遊嵌孔32の内周面321と内ピン4との間の摩擦抵抗による損失が生じにくいので、内ローラを省略することが可能である。そのため、本実施形態では、内ローラが装着されていない状態の内ピン4を遊嵌孔32に挿入し、内ピン4が直接的に遊嵌孔32の内周面321に接触する構成とする。これにより、内ローラを省略できて、遊嵌孔32の径を比較的小さく抑えることができるので、遊星歯車3の小型化(特に小径化)が可能となり、歯車装置1A全体としても小型化を図りやすくなる。しかも、各内ピン4は、一対の転がり軸受け41,42にて保持される。したがって、内ピン4が回転する際に、内ピン4とキャリアフランジ18及び出力フランジ19との間の摩擦抵抗による損失が生じにくい。
一方、回転軸Ax1に平行な方向から見た複数組の転がり軸受け41,42の配置については、基本的には、複数の内ピン4の配置と同様である。すなわち、図18及び図19に示すように、回転軸Ax1に平行な方向から見て、複数の内ピン4の各々の中心を通る仮想円VC1を設定した場合、複数組の転がり軸受け41,42は、この仮想円VC1上に配置される。本実施形態では特に、図20に示すように、回転軸Ax1に平行な方向から見て、複数組の転がり軸受け41,42は回転軸Ax1周りの円周方向において等間隔で配置されている。図20では、転がり軸受け41の配置を示すが、転がり軸受け42の配置も同様である。また、図20では、断面であってもハッチングを適宜省略している。
すなわち、複数組の転がり軸受け41,42は、仮想円VC1上に、仮想円VC1の円周方向に等間隔で配置されている。つまり、回転軸Ax1に平行な方向から見て、仮想円VC1は、複数の転がり軸受け41(又は42)の各々の中心を通り、かつ隣接する2つの転がり軸受け41(又は42)間の仮想円VC1上での距離は、複数の転がり軸受け41(又は42)で均一となる。この配置によれば、複数組の転がり軸受け41,42にて複数の内ピン4を保持しつつ、歯車装置1Aの駆動時において、複数の内ピン4に掛かる力を均等に分散できる。
さらに、本実施形態では、図20に示すように、回転軸Ax1に平行な方向から見て、複数組の転がり軸受け41,42の中心を通る仮想円VC1の中心は回転軸Ax1と一致する。言い換えれば、仮想円VC1の中心は、内歯歯車2の歯車本体22の中心、又は内歯21のピッチ円の中心等と同じく、回転軸Ax1上にある。この構成によれば、内歯歯車2の歯車本体22の中心と、内歯歯車2に対する複数の内ピン4の回転中心とが、回転軸Ax1上に精度よく維持されやすくなる。その結果、歯車装置1Aでは、芯出し不良に起因した振動の発生、及び伝達効率の低下等の不具合が生じにくい、という利点がある。
次に、内歯歯車2に対する複数の内ピン4の非回転時、つまり歯車装置1Aの非駆動時において、内ピン4に作用する力(予圧)について、より詳細に説明する。各内ピン4は、その両端部が一対の転がり軸受け41,42にて保持されている。各転がり軸受け41,42は、複数の転動体402を各内ピン4の外周面に押し付けた状態を維持する。結果的に、各転がり軸受け41,42から内ピン4に対して作用する「予圧」が維持される。
上述したような予圧は、内ピン4と複数の転動体402との間に設けられた負の隙間(マイナス隙間)によって実現される。本開示でいう「負の隙間」は、いわゆる「しめしろ」であって、二者間の設計通りの組立によれば両者が互いに重複する(押し付けられる)関係をいう。つまり、内ピン4と転がり軸受け41,42との組立に際して、内ピン4と複数の転動体402との間に正の隙間が生じないように、当該隙間が0以下とされることで、内ピン4に対して複数の転動体402が押し付けられた状態が実現される。その結果、内ピン4と転がり軸受け41,42とを組み合わせた状態では、内ピン4に対して複数の転動体402から予圧が作用する。
本実施形態では一例として、外輪403の内径と内ピン4の径(直径)と差は、転動体402の径(直径)の2倍以下である。これにより、内ピン4と転動体402との間には0以上の負の隙間(しめしろ)が生じる。一例として、転がり軸受け41,42に対する内ピン4の嵌め合い公差は、「k6」以上であることが好ましく、「p6」であることがより好ましい。要するに、複数組の転がり軸受け41,42の各々は、複数の転動体402を有する。複数の内ピン4の各々には、複数の転動体402が押し付けられることで予圧が作用する。
本実施形態では、複数(ここでは6つ)の内ピン4に対して、転がり軸受け41,42に対して、一律に負の隙間が設定されている。そのため、複数の内ピン4の全てに対して、転がり軸受け41,42の両方から内ピン側予圧が作用する。ただし、この構成は歯車装置1Aに必須の構成ではなく、複数の内ピン4の一部に対しては、内ピン側予圧が作用しなくてもよい。
また、本実施形態では、内ピン4に対して、転がり軸受け41,42からだけでなく、遊星歯車3からも予圧が作用する。つまり、内ピン4と遊嵌孔32の内周面321との間に設けられた負の隙間(マイナス隙間)によって、遊星歯車3からも内ピン4に予圧が作用する。
以上説明したように内ピン4に対して「予圧」を作用させる構成によれば、内ピン4と、転がり軸受け41,42又は遊星歯車3との間の隙間を小さく又は無くして、当該隙間による内ピン4のがたつきを抑制することができる。結果的に、本実施形態に係る歯車装置1Aによれば、内ピン4と転がり軸受け41,42又は遊星歯車3との間の隙間によるバックラッシュ(バックラッシ)を低減又は無くすことができ、角度伝達誤差を小さく抑えやすい。
<内ピンの潤滑状態を改善するための構造>
次に、本実施形態に係る歯車装置1Aにおける、内ピン4の潤滑状態を改善するための構造に関して、図21~図24を参照して詳しく説明する。
前提として、特に上述したような負の隙間(マイナス隙間)によって内ピン4に予圧を作用させる構成では、特に、内ピン4において予圧が作用する部位における潤滑不良が生じやすい。潤滑不良が生じると、内ピン4の回転時に、転がり軸受け41,42、又は内ピン4と遊嵌孔32の内周面321との間において摩擦が生じ、当該摩擦が動力伝達における損失となり得る。さらに、長期的に歯車装置1Aが使用される場合には、例えば、潤滑剤の劣化等に起因して摩擦による損失が大きくなり、歯車装置1Aの長寿命化の妨げにもなり得る。そこで、本実施形態に係る歯車装置1Aでは、内ピン4の潤滑状態を改善するための構造を採用することにより、内ピン4の回転時に生じる損失を低減しやすい歯車装置1Aを実現する。
本実施形態に係る歯車装置1Aは、図21に示すように、内ピン4の潤滑状態を改善するための構造として、転がり軸受け41,42における転動体402の軌道404、及び遊嵌孔32の内周面321と内ピン4との隙間を含む循環路170を備えている。そして、歯車装置1Aでは、この循環路170に潤滑剤を循環させることにより、内ピン4の潤滑状態を改善している。図21等では、潤滑剤が循環路170を流れる(循環する)様子を破線矢印で概念的に表している。
ここで、転がり軸受け41,42における転動体402の軌道404は、転動体402が移動(転動)する経路を意味し、各転がり軸受け41,42の外輪403と内輪との間の隙間が軌道404に相当する。本実施形態では、上述したように、外輪403はキャリアフランジ18又は出力フランジ19が兼ねており、また内ピン4が内輪として機能するので、キャリアフランジ18又は出力フランジ19と内ピン4との間の隙間が、転動体402の軌道404を構成する。言い換えれば、内ピン4の外周面に沿って、内ピン4の中心軸を中心とする円環状の軌道404が形成されることになる。このような軌道404に加えて、遊嵌孔32の内周面321と内ピン4との隙間を含む潤滑剤の経路が、循環路170に相当する。
本実施形態では、循環路170は潤滑剤が注入される潤滑剤保持空間17内に形成されている。このような循環路170が形成されることにより、少なくとも転動体402の軌道404、及び遊嵌孔32の内周面321と内ピン4との隙間を通して、潤滑剤が循環することになるので、内ピン4の潤滑状態が改善される。すなわち、上述したような負の隙間によって内ピン4に予圧を作用させる構成でありながらも潤滑剤を積極的に循環させることで、内ピン4周辺においては、潤滑剤が不足又は枯渇する「潤滑剤切れ」が生じにくく、常に一定量以上の潤滑剤が供給されることになる。しかも、潤滑剤が定位置に停滞する構成に比べると、循環路170を通して潤滑剤が循環することで、内ピン4において予圧が作用する部位においても、随時、潤滑剤の入れ替えが行われることになり、潤滑剤の劣化を抑えることが可能である。
よって、内ピン4において予圧が作用する部位においても、潤滑状態が改善され、潤滑不良が生じにくくなって、内ピン4の回転時に、転がり軸受け41,42、又は内ピン4と遊嵌孔32の内周面321との間における摩擦が低減される。そのため、長期的に歯車装置1Aが使用される場合においても、摩擦による損失を低減でき、歯車装置1Aの長寿命化を図りやすくなる。結果的に、本実施形態に係る歯車装置1Aでは、内ピン4の回転時に生じる損失を低減しやすい、という利点がある。要するに、本実施形態に係る歯車装置1Aは、特に長期間の使用に際しても信頼性の低下が生じにくいため、ひいては、歯車装置1Aの伝達効率の改善、長寿命化、及び高性能化にもつながる。
より詳しく説明すると、本実施形態では、図22に示すように、潤滑剤は、(遊嵌孔32の内周面321と内ピン4との)隙間の収縮により、回転軸Ax1に平行な方向において遊星歯車3から離れる向きに押し出される。図22は、第1領域R1~第4領域R4のうち第3領域R3に着目した場合の潤滑剤の流れを模式的に表す説明図である。
すなわち、偏心軸7が回転することによって遊星歯車3が揺動すると、内ピン4は、遊星歯車3に形成された遊嵌孔32に挿入された状態で、遊嵌孔32内を公転するように移動する。このように、内ピン4が遊嵌孔32内を公転する際、遊嵌孔32の内周面321と内ピン4との隙間は膨張と収縮とを繰り返す。つまり、内ピン4から見て回転軸Ax1側(図22では上方側)に存在する遊嵌孔32の内周面321と内ピン4との隙間に着目すると、内ピン4の公転に伴って、図22の左側に示す状態から図22の右側に示すように収縮(圧縮)されることになる。同様に、内ピン4から見て回転軸Ax1とは反対側(図22では下方側)に存在する遊嵌孔32の内周面321と内ピン4との隙間に着目すると、内ピン4の公転に伴って、図22の右側に示す状態から図22の左側に示すように収縮(圧縮)されることになる。内ピン4の公転に伴って、図22の左側に示す状態と右側に示す状態とを交互に繰り返すので、遊嵌孔32の内周面321と内ピン4との隙間は膨張と収縮とを繰り返すことになる。
そして、当該隙間が収縮する際には、当該隙間に入り込んでいる潤滑剤は、回転軸Ax1に平行な方向において当該隙間から遊星歯車3から離れる向きに押し出される。このように、遊嵌孔32内を公転する内ピン4は、ベーンポンプのような容積型のポンプを構成し、十分な圧力でもって潤滑剤を隙間外に押し出すので、循環路170を潤滑剤が循環しやすくなる。図23は、内ピン4が遊嵌孔32内を公転することによって生じるポンプ機能172により、循環路170を潤滑剤が循環する様子を表す模式図である。このように、循環路170中にポンプ機能172が存在することで、潤滑剤はある程度の流量をもって循環路170を循環し、内ピン4の潤滑状態の改善を図ることができる。
特に、本実施形態では、図22のように、偏心軸7の回転時に遠心力によって回転軸Ax1から離れる向きに移動する潤滑剤が、遊嵌孔32の内周面321と内ピン4との隙間付近に到達しやすい。つまり、高い減速比の歯車装置1Aでは、入力軸となる偏心軸7は高速回転するので、潤滑剤には偏心軸7から比較的大きな遠心力が作用し、潤滑剤が偏心軸7の周囲にある内ピン4へと到達しやすい。このようにして遊嵌孔32の内周面321と内ピン4との隙間付近に到達した潤滑剤が、上述したようなポンプ機能172によって押し出されることにより、潤滑剤は循環路170を循環しやすくなる。
また、本実施形態に係る歯車装置1Aは、複数の内ピン4に対して回転軸に平行な方向の少なくとも一方側に位置するカバー体163,164を備えている。ここで、図21及び図22に示すように、カバー体163,164には、循環路170の一部を形成する溝部171が形成されている。溝部171は、カバー体163,164における転がり軸受け41,42との対向面に設けられている。溝部171により、カバー体163,164と転がり軸受け41,42との隙間が拡大され、潤滑剤が通るだけの隙間がカバー体163,164と転がり軸受け41,42との間に確保されることになる。本実施形態では一例として、溝部171は、円環状に形成されたカバー体163,164の内周側に設けられている。このような溝部171が形成されることで、比較的簡単な構成で、循環路170を設けることが可能となる。
また、本実施形態では、溝部171は、カバー体163,164の周方向の全周にわたって連続するように形成されている。これにより、溝部171は、回転軸Ax1の入力側から見て円環状となる。このような溝部171が形成されることにより、循環路170は、複数の内ピン4間で連通している。すなわち、溝部171は、カバー体163における複数(本実施形態では6本)の内ピン4との対向部位を結ぶように円環状に形成されているため、回転軸Ax1の入力側において、循環路170は、溝部171を通して複数の内ピン4間で連通することになる。同様に、溝部171は、カバー体164における複数(本実施形態では6本)の内ピン4との対向部位を結ぶように円環状に形成されているため、回転軸Ax1の出力側において、循環路170は、溝部171を通して複数の内ピン4間で連通することになる。このように、複数の内ピン4間で連通する循環路170が形成されることにより、潤滑剤を、より広範囲で循環させることができ、内ピン4の潤滑状態の更なる改善を図ることが可能である。
また、本実施形態では、循環路170は、潤滑剤を主として一方向に循環させる。すなわち、図21~図23等に示すように、循環路170を流れる潤滑剤の向きは一方向に固定されており、当該一方向に潤滑剤は流れることになる。潤滑剤の流れる向きは、例えば、上述したように偏心軸7の回転時に潤滑剤に作用する遠心力の向き、及び内ピン4が遊嵌孔32内を公転することによって生じるポンプ機能172により潤滑剤が押し出される向き等によって決定される。本実施形態では一例として、図21に示すように、第1領域R1では、潤滑剤は転がり軸受け41を含む循環路170を反時計回りに循環し、第2領域R2では、潤滑剤は転がり軸受け42を含む循環路170を反時計回りに循環する。一方、図21に示すように、第3領域R3では、潤滑剤は転がり軸受け41を含む循環路170を時計回りに循環し、第4領域R4では、潤滑剤は転がり軸受け42を含む循環路170を反時計回りに循環する。これにより、循環路170内での潤滑剤の流れがスムーズになり、潤滑剤の停滞が生じにくいため、内ピン4の潤滑状態の更なる改善を図ることが可能である。
ここで、図23に示すように、循環路170の内周面の少なくとも一部には、潤滑剤の流れる方向を規制する方向規制部173が設けられている。すなわち、循環路170における潤滑剤の循環方向は、図23に示すような方向規制部173でも規制される。方向規制部173は、例えば、外輪403の内周面、又はカバー体163,164の溝部171の表面等、循環路170の内周面の少なくとも一部に形成されていればよく、循環路170の内周面の全体に方向規制部173が形成されていてもよい。方向規制部173は、一例として、レーザ加工等により、循環路170の内周面の少なくとも一部に、流体力学的に方向制御する機能を付与することによって実現される。このような方向規制部173が設けられることにより、循環路170内での潤滑剤の流れがスムーズになり、潤滑剤の停滞が生じにくいため、内ピン4の潤滑状態の更なる改善を図ることが可能である。
また、本実施形態では、図21に示すように、回転軸Ax1を含む断面は、回転軸Ax1に対して一方側となる第1ブロックB1及び他方側となる第2ブロックB2に区分される。さらに、第1ブロックB1は遊星歯車3に対して一方側となる第1領域R1及び他方側となる第2領域R2に区分され、第2ブロックB2は遊星歯車3に対して上記一方側となる第3領域R3及び上記他方側となる第4領域R4に区分される。第1領域R1、第2領域R2、第3領域R3及び第4領域R4の全てに循環路170が設けられている。要するに、図21に示すような回転軸Ax1を含む断面は、回転軸Ax1及び遊星歯車3によって、第1領域R1~第4領域R4の4つの領域に区分される。図21では、第1領域R1及び第2領域R2を含む第1ブロックB1は、回転軸Ax1の上方側であって、第3領域R3及び第4領域R4を含む第2ブロックB2は、回転軸Ax1の下方側である。さらに、第1領域R1及び第3領域R3は、遊星歯車3に対して左方側の領域であって、第2領域R2及び第4領域R4は、遊星歯車3に対して右方側の領域である。
このように区分される第1領域R1~第4領域R4の全てに、循環路170が形成されることにより、歯車装置1Aの中での循環路170の偏りが抑制される。言い換えれば、循環路170は、歯車装置1Aの全体に張り巡らされることになり、歯車装置1Aの全体において、内ピン4の潤滑状態の改善を図ることが可能である。
ここで、本実施形態では、循環路170は、第1領域R1及び第3領域R3間で潤滑剤を循環させ、第2領域R2及び第4領域R4間で潤滑剤を循環させる(図28参照)。すなわち、本実施形態では、上述したように循環路170の一部を形成する溝部171が、カバー体163,164の周方向の全周にわたって連続するように形成されることにより、循環路170は、複数の内ピン4間で連通している。これにより、潤滑剤は、回転軸Ax1の両側に位置する第1領域R1及び第3領域R3間で循環し、同様に、回転軸Ax1の両側に位置する第2領域R2及び第4領域R4間でも循環する。これにより、歯車装置1Aの全体において、内ピン4の潤滑状態の改善を図ることが可能である。
また、図24に示すように、カバー体163,164と内ピン4との少なくとも一方には、循環路170に連通しており潤滑剤を保持する凹部174が形成されている。本実施形態では一例として、凹部174は、内ピン4におけるカバー体163,164との対向面の中央部に設けられている。凹部174により、カバー体163,164と内ピン4との隙間が拡大され、潤滑剤を保持するだけの隙間がカバー体163,164と凹部174との間に確保されることになる。このように形成される隙間が潤滑剤を保持することで、循環路170中の潤滑剤が減少した場合等には、循環路170に潤滑剤を供給することができ、潤滑剤切れの発生を抑制しやすくなる。
<入力軸周辺の構造>
次に、本実施形態に係る歯車装置1Aにおける、入力軸(偏心軸7)周辺の構造に関して詳しく説明する。
本実施形態では、上述したように、歯車装置1Aは、遊星歯車3を偏心揺動させる入力軸(偏心軸7)に結合され、入力軸(偏心軸7)と共に回転するブッシュ70を備える。ブッシュ70は、相手部材を固定するための固定構造701を有する。
上記構成によれば、本実施形態に係る歯車装置1Aでは、偏心軸7等の入力軸に、直接的に相手部材を固定するのではなく、入力軸に結合されるブッシュ70を介して、相手部材が固定されることになる。したがって、入力軸の端面に直接的に相手部材を固定する場合に比べて、入力軸(偏心軸7の軸心部71)の外径を小さくすることができる。その結果、小型化しやすい歯車装置1Aを提供可能である。特に、高い減速比の歯車装置1Aでは、相手部材から入力軸に入力される回転が高速であることもあり、入力軸と相手部材との間の結合は比較的強固にすることが求められる。本実施形態の構成によれば、相手部材は、ブッシュ70の固定構造701に固定されるので、入力軸の外径を大きくすることなく、比較的強固に入力軸と結合可能である。
具体的には、ブッシュ70は、少なくとも内周面が平面視において真円となる、円筒状を有している。ブッシュ70の中心(中心軸)は、回転軸Ax1と一致する。ブッシュ70のうち回転軸Ax1の出力側の端部は、内径が拡径された挿入口702(図12参照)を構成する。挿入口702の内径は、偏心軸7の軸心部71の外径と略同一である。これにより、偏心軸7の軸心部71における回転軸Ax1の入力側の端部を、挿入口702に嵌め込むようにして、ブッシュ70を偏心軸7に結合可能である。すなわち、本実施形態では、ブッシュ70は、挿入口702を有し、挿入口702に入力軸(偏心軸7)の一部が挿入された状態で入力軸に結合される。ブッシュ70の材質は、他の部品と同様に、ステンレス、鋳鉄、機械構造用炭素鋼、クロムモリブデン鋼、リン青銅又はアルミ青銅等の金属である。
また、挿入口702に偏心軸7の一部が挿入(嵌入)された状態では、圧入によってブッシュ70と偏心軸7とが結合される。さらに、ブッシュ70は、少なくとも接着により入力軸に結合される。具体的には、ブッシュ70は、挿入口702の内周面に塗布された接着剤により偏心軸7に強固に結合される。要するに、本実施形態では、ブッシュ70は、圧入及び接着の両方で入力軸(偏心軸7)に結合されている。これにより、ブッシュ70と偏心軸7との間の強固な結合が実現される。
さらに、ブッシュ70の外径は、少なくとも偏心軸7の軸心部71の外径よりも大きい。そのため、ブッシュ70が偏心軸7に結合された状態では、偏心軸7における回転軸Ax1の入力側の端部においては、ブッシュ70がフランジ状に突出することになる。ここで、ブッシュ70は、内側軸受け部材である第1ベアリング91から見て、回転軸Ax1の入力側に位置する。これにより、内側軸受け部材である第1ベアリング91は、回転軸Ax1に平行な方向において、偏心部72とブッシュ70とで挟まれた位置に位置する。よって、ブッシュ70は、第1ベアリング91の「押さえ」として機能し、回転軸Ax1に平行な方向への内側軸受け部材(第1ベアリング91)の移動を規制する。要するに、本実施形態に係る歯車装置1Aは、入力軸(偏心軸7)を内輪61に対して(間接的に)回転可能に保持する内側軸受け部材(第1ベアリング91)を備える。ブッシュ70は回転軸Ax1に平行な方向の一方側への内側軸受け部材(第1ベアリング91)の移動を規制する。
さらに、本実施形態では、入力軸(偏心軸7)及びブッシュ70は、回転軸Ax1に沿って貫通する貫通孔73を有する。つまり、貫通孔73は、偏心軸7の軸心部71からブッシュ70にわたって、回転軸Ax1に沿って貫通する。ここで、相手部材を固定するための固定構造701はブッシュ70に設けられているので、偏心軸7の外径が同一であれば、ブッシュ70が無い場合に比べて貫通孔73の径を大きく確保しやすい。つまり、偏心軸7自体に固定構造を設ける必要がないので、偏心軸7(の軸心部71)については、薄肉化を図りやすく、結果的に、貫通孔73を大きくしやすい。
本実施形態では一例として、固定構造701は、ねじ穴からなる。つまり、固定構造701としてのねじ穴に対して、相手部材をねじ止めすることにより、ブッシュ70に対して相手部材を固定することが可能である。ここで、固定構造701(ねじ穴)は、ブッシュ70における回転軸Ax1の入力側を向いた端面に設けられている。固定構造701としてのねじ穴は、複数(ここでは6つ)設けられており(図13参照)、相手部材を複数本のねじにて固定可能とする。このような固定構造701を用いて相手部材を固定すると、相手部材は、ブッシュ70に対して回転軸Ax1の入力側に固定されることになる。すなわち、固定構造701は、ブッシュ70に対して回転軸Ax1に平行な方向の一方側に相手部材を固定可能に構成されている。
また、本実施形態では、固定構造701は、回転軸Ax1に平行な方向において入力軸と少なくとも一部が同じ位置にある。すなわち、相手部材を固定するための固定構造701は、図15に示すように、回転軸Ax1に平行な方向において、入力軸(偏心軸7)と少なくとも一部が重複する位置にある。その結果、固定構造701を比較的大きくとりながらも、回転軸Ax1に平行な方向における歯車装置1Aの寸法の増大を抑えることができる。
さらに、本実施形態では、内ピン用経路Sp1が設けられているところ、内ピン用経路Sp1は、偏心軸7にブッシュ70が結合されたままの状態でも、内ピン4を取外し可能とする。つまり、歯車装置1Aは、複数の内ピン4に対して回転軸Ax1に平行な方向の少なくとも一方側に位置し、入力軸(偏心軸7)とブッシュ70とが組み合わされた状態で、複数の内ピン4の各々を取外し可能とする内ピン用経路Sp1を備える。よって、歯車装置1Aにおいては、入力軸(偏心軸7)にブッシュ70が結合された後でも、複数の内ピン4の各々を取り外すことが可能である。
<内ピン等の交換方法>
次に、本実施形態に係る歯車装置1Aにおける、内ピン4及び転がり軸受け41,42の転動体402の交換方法について、図25及び図26を参照して説明する。ここでは一例として、歯車装置1Aの製造工程において、歯車装置1Aの性能(バックラッシュ及び入力トルク等)を調節する目的で、作業者が、内ピン4及び転がり軸受け41,42等を交換する場合について説明する。
内ピン4及び転動体402のいずれの交換に際しても、作業者は、取付ねじ160を外して、カバー体163,164及びオイルシール14,15をキャリアフランジ18及び出力フランジ19から取り外す(図15参照)。カバー体163,164が取り外されることにより、内ピン用経路Sp1が露出する。
内ピン4の交換に際し、作業者は、図25に示すように、新たな内ピン4Aを、例えば、回転軸Ax1の入力側の内ピン用経路Sp1からキャリアフランジ18に押し込む。このとき、新たな内ピン4Aに押された既存の内ピン4は、回転軸Ax1の出力側に押し出される。そして、新たな内ピン4Aが完全に挿入された状態では、既存の内ピン4は取り外されることになる。この方法では、転がり軸受け41,42の各々には、常に新たな内ピン4Aと既存の内ピン4との少なくとも一方が挿入されているため、転がり軸受け41,42の複数の転動体402は内ピン4,4Aによって脱落が防止される。
さらに、上記の方法では、内ピン4は1本ずつ交換可能であるので、内ピン4を1本交換する度に、歯車装置1Aを試験的に駆動し、性能(バックラッシュ及び入力トルク等)を確認することが可能である。これにより、例えば、不具合のある内ピン4を特定しやすく、歯車装置1Aの性能を所望の性能に調節しやすい、という利点がある。
また、転動体402の交換に際し、作業者は、図26に示すように、例えば、回転軸Ax1の出力側の内ピン用経路Sp1から既存の転動体402を抜き取る。このとき、転動体402を抜き取る手段として、一例として、磁石等の治具が適宜用いられる。そして、作業者は、新たな転動体402を、回転軸Ax1の出力側の内ピン用経路Sp1から挿入する。
さらに、上記の方法では、転動体402は1本ずつ交換可能であるので、転動体402を1本交換する度に、歯車装置1Aを試験的に駆動し、性能(バックラッシュ及び入力トルク等)を確認することが可能である。これにより、例えば、不具合のある転動体402を特定しやすく、歯車装置1Aの性能を所望の性能に調節しやすい、という利点がある。
内ピン4及び転動体402のいずれの交換に際しても、作業者は、交換完了後には、カバー体163,164及びオイルシール14,15をキャリアフランジ18及び出力フランジ19に取り付ける。カバー体163,164が取り付けられることにより、内ピン用経路Sp1が塞がれる。
ただし、図25に例示する方法は一例に過ぎず、作業者は、新たな内ピン4Aを、例えば、回転軸Ax1の出力側の内ピン用経路Sp1から出力フランジ19に押し込んでもよい。さらに、内ピン4の交換に際しても、作業者は、転動体402と同様に、内ピン4を一旦抜き去ってから、新たな内ピン4Aに交換してもよい。また、内ピン4及び転動体402を同時に交換してもよい。
さらに、内ピン4及び転がり軸受け41,42等の交換作業は、歯車装置1Aの製造工程に限らず、例えば、歯車装置1Aの使用期間におけるメンテナンス作業等において実施されてもよい。すなわち、本実施形態に係る歯車装置1Aのメンテナンス方法は、軸受け部材6Aと内歯歯車2と遊星歯車3とが組み合わされた状態で、複数の内ピン4に対して回転軸Ax1に平行な方向の少なくとも一方側から、複数の内ピン4の少なくとも1つを交換する工程を有する。また、本実施形態に係る歯車装置1Aの製造方法は、軸受け部材6Aと内歯歯車2と遊星歯車3とが組み合わされた状態で、回転軸Ax1に平行な方向の少なくとも一方側から、複数の内ピン4を挿入する工程を有する。
<適用例>
本実施形態に係る歯車装置1Aは、図27に示すように、第1部材201及び第2部材202と共に、ロボット用関節装置200を構成する。言い換えれば、本実施形態に係るロボット用関節装置200は、歯車装置1Aと、第1部材201と、第2部材202と、を備える。第1部材201は、外輪62に固定される。第2部材202は、内輪61に固定される。図27は、ロボット用関節装置200の概略断面図である。
本実施形態では一例として、第1部材201は、ケース10に形成された複数の設置孔111に対して固定されることにより、軸受け部材6Aの外輪62に対して間接的に固定される。第2部材202は、キャリアフランジ18に対して固定されることにより、軸受け部材6Aの内輪61に対して間接的に固定される。
このように構成されるロボット用関節装置200は、第1部材201と第2部材202とが、回転軸Ax1を中心に相対的に回転することにより、関節装置として機能する。ここで、歯車装置1Aの偏心軸7を、駆動源101(図1参照)としての第1モータ203にて駆動することによって、第1部材201と第2部材202とは相対的に回転する。このとき、駆動源101で発生する回転(入力回転)が、歯車装置1Aにおいて比較的高い減速比にて減速され、第1部材201又は第2部材202を比較的高トルクで駆動する。つまり、歯車装置1Aにて連結された第1部材201と第2部材202とは、回転軸Ax1を中心に屈伸動作が可能となる。
より詳細には、第1モータ203の出力軸には、第1プーリP1が固定されている。第1プーリP1には、タイミングベルトT1を介して、第2プーリP2が接続されている。ここで、第2プーリP2は、相手部材として、ブッシュ70の固定構造701に固定される。つまり、第1モータ203が駆動すると、その回転は、第1プーリP1、タイミングベルトT1及び第2プーリP2を介して、入力軸としての偏心軸7に伝達される。
また、ロボット用関節装置200は、第2モータ204を更に備えている。第2モータ204の出力軸には、第3プーリP3が固定されている。第3プーリP3には、タイミングベルトT2を介して、第4プーリP4が接続されている。ここで、第4プーリP4は、シャフト205に固定されている。シャフト205は、貫通孔73を通してブッシュ70及び偏心軸7を貫通する。シャフト205における第4プーリP4とは反対側の端部には、第5プーリP5が固定されている。これにより、第2モータ204が駆動すると、その回転は、第3プーリP3、タイミングベルトT2、第4プーリP4及びシャフト205を介して、第5プーリP5に伝達される。
ロボット用関節装置200は、例えば、水平多関節ロボット(スカラ型ロボット)のようなロボットに用いられる。さらに、ロボット用関節装置200は、水平多関節ロボットに限らず、例えば、水平多関節ロボット以外の産業用ロボット、又は産業用以外のロボット等に用いられてもよい。また、本実施形態に係る歯車装置1Aは、ロボット用関節装置200に限らず、例えば、インホイールモータ等の車輪装置として、無人搬送車(AGV:Automated Guided Vehicle)等の車両に用いられてもよい。
<変形例>
実施形態1は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。実施形態1は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。また、本開示で参照する図面は、いずれも模式的な図であり、図中の各構成要素の大きさ及び厚さそれぞれの比が、必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。以下、実施形態1の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
実施形態1では、遊星歯車3が2つのタイプの歯車装置1Aを例示したが、歯車装置1Aは、遊星歯車3を3つ以上備えていてもよい。例えば、歯車装置1Aが遊星歯車3を3つ備える場合、これら3つの遊星歯車3は、回転軸Ax1まわりで120度の位相差をもって配置されることが好ましい。また、歯車装置1Aは遊星歯車3を1つのみ備えていてもよい。あるいは、歯車装置1Aが遊星歯車3を3つ備える場合、これら3つの遊星歯車3のうち2つの遊星歯車3が同位相であって、残り1つの遊星歯車3が回転軸Ax1まわりで180度の位相差をもって配置されてもよい。
また、内ピン用経路Sp1は、複数の内ピン4に対して回転軸Ax1に平行な方向の少なくとも一方側にあればよく、両側に位置することは必須ではない。また、カバー体163,164は必須ではなく、適宜省略可能である。さらに、カバー体163,164が第1位置で複数の内ピン4に対応する複数の内ピン用経路Sp1をまとめて覆うことは必須ではなく、各内ピン4に対して個別にカバー体163,164が設けられてもよい。また、内ピン用経路Sp1が潤滑剤保持空間17に連通することも必須ではなく、内ピン用経路Sp1が潤滑剤保持空間17と分離されていてもよい。
また、ブッシュ70が挿入口702を有することは必須ではなく、挿入口702は適宜省略可能である。さらに、ブッシュ70が接着により入力軸(偏心軸7)に結合されることも必須ではなく、例えば圧入のみで結合されてもよい。また、ブッシュ70が回転軸Ax1に平行な方向の一方側への内側軸受け部材(第1ベアリング91)の移動を規制することは、必須の構成ではない。さらに、入力軸(偏心軸7)及びブッシュ70の貫通孔73も必須ではない。また、固定構造701が回転軸Ax1に平行な方向において入力軸と少なくとも一部が同じ位置にあることは必須ではない。
また、回転軸Ax1に平行な方向から見て、複数組の転がり軸受け41,42は回転軸Ax1周りの円周方向において等間隔で配置されていなくてもよい。さらに、回転軸Ax1に平行な方向から見て、複数組の転がり軸受け41,42の中心を通る仮想円VC1の中心は回転軸Ax1と一致しなくてもよい。
また、実施形態1で説明した内ピン4の数、及び外ピン23の数(内歯21の歯数)、及び外歯31の歯数等は、一例に過ぎず、適宜変更可能である。
また、軸受け部材6Aは、基本構成と同様にクロスローラベアリングであってもよいし、深溝玉軸受等であってもよい。ただし、軸受け部材6Aは、例えば、4点接触玉軸受け等のように、ラジアル方向の荷重、スラスト方向(回転軸Ax1に沿う方向)の荷重、及び回転軸Ax1に対する曲げ力(曲げモーメント荷重)のいずれに対しても耐え得ることが好ましい。
また、偏心体軸受け5は、コロ軸受けに限らず、例えば、深溝玉軸受け、又はアンギュラ玉軸受等であってもよい。
また、歯車装置1Aの各構成要素の材質は、金属に限らず、例えば、エンジニアリングプラスチック等の樹脂であってもよい。
また、歯車装置1Aは、軸受け部材6の内輪61と外輪62との間の相対的な回転を出力として取り出すことができればよく、内輪61(キャリアフランジ18及び出力フランジ19)の回転力が出力として取り出される構成に限らない。例えば、内輪61に対して相対的に回転する外輪62(ケース10)の回転力が出力として取り出されてもよい。
また、潤滑剤は、潤滑油(オイル)等の液状の物質に限らず、グリス等のゲル状の物質であってもよい。
また、歯車装置1Aは内ローラを備えていてもよい。つまり、歯車装置1Aにおいて、複数の内ピン4の各々が、遊嵌孔32の内周面321に直接的に接触することは必須ではなく、複数の内ピン4の各々と遊嵌孔32との間に内ローラが介在してもよい。この場合、内ローラは、内ピン4に装着されて内ピン4を軸に回転可能となる。
また、支持リング8Aは、歯車装置1Aにおいて必須ではなく、支持リング8Aが適宜省略されてもよいし、基本構成で説明した支持体8が支持リング8Aに代えて用いられてもよい。
また、歯車装置1Aは、内ピン4の支持構造40(転がり軸受け41,42)についての工夫と、内ピン4の潤滑状態を改善するための工夫と、内ピン4を取外し可能とする工夫と、ブッシュ70に関する工夫と、の少なくとも一つを採用していればよく、これら全てを採用することは必須ではない。すなわち、歯車装置1Aは、例えば、内ピン4を取外し可能とする工夫及びブッシュ70に関する工夫を採用しなくてもよい。
さらに、歯車装置1Aは、内ピン4の潤滑状態を改善するための工夫を採用すればよいので、その他の構成については、基本構成から適宜省略又は変更可能である。例えば、複数の内ピン4の各々は、軸受け部材6Aの軸方向において軸受け部材6Aと同じ位置に配置されなくてもよい。
また、ブッシュ70が結合される入力軸は、回転時に遊星歯車3を偏心揺動させる構成であればよく、偏心軸7のように軸心部71及び偏心部72を一体に有する構成に限らない。例えば、ブッシュ70が結合される入力軸は、偏心部72とは別体に構成された軸心部71であってもよく、この場合、ブッシュ70が結合される入力軸(軸心部71)に対して、偏心部72が取り付けられることになる。
また、カバー体163,164と内輪61とを相対的に位置決めする位置決め構造は、回転軸Ax1を中心とする回転方向におけるカバー体163,164と内輪61との相対位置を一意に決める構成に限らない。位置決め構造は、例えば、カバー体163,164を、軸受け部材6Aの内輪61に対して、回転軸Ax1を対称軸とした場合に回転対称に位置決め可能であってもよい。さらに、位置決め構造は、凸部167及び凹部184,194に限らず、例えば、キャリアフランジ18及び出力フランジ19に対するカバー体163,164の嵌め合い公差により実現されてもよい。さらに、位置決め構造は必須の構成ではなく、適宜省略可能である。
また、ブッシュ70に設けられている固定構造701はねじ穴に限らず、例えば、スタッドボルト又は接着面等であってもよい。
また、カバー体163,164とキャリアフランジ18及び出力フランジ19との間は、例えば、O(オー)リング等により封止されていてもよい。これにより、潤滑剤保持空間17の密閉性を高めることが可能である。
また、凹部174は、カバー体163,164と内ピン4との少なくとも一方に形成されていればよく、カバー体163,164における内ピン4との対向面に形成されていてもよいし、カバー体163,164と内ピン4との両方に形成されていてもよい。
また、循環路170が第1領域R1及び第3領域R3間で潤滑剤を循環させ、第2領域R2及び第4領域R4間で潤滑剤を循環させることは必須の構成ではない。すなわち、図28に示すように、実施形態1に係る歯車装置1Aとは異なり、第1領域R1及び第3領域R3間で循環路170が分断され、かつ第2領域R2及び第4領域R4間でも循環路170が分断された構成の歯車装置1Bであってもよい。変形例に係る歯車装置1Bでは、循環路170は、第1領域R1、第2領域R2、第3領域R3及び第4領域R4の各々で個別に潤滑剤を循環させる。この構成によれば、潤滑剤が循環する循環路170の経路長を短く抑えることができるので、潤滑剤を効率的に循環させることができる。
(実施形態2)
本実施形態に係る歯車装置1C,1Dは、図29に示すように、循環路170が、第1領域R1、第2領域R2、第3領域R3及び第4領域R4の全てを通して潤滑剤を循環させる点で、実施形態1に係る歯車装置1Aと相違する。以下、実施形態1と同様の構成については、共通の符号を付して適宜説明を省略する。
すなわち、実施形態1に係る歯車装置1Aでは、第1領域R1及び第2領域R2間で循環路170が分断され、かつ第3領域R2及び第4領域R4間でも循環路170が分断されているため、第1領域R1、第2領域R2、第3領域R3及び第4領域R4の全てを通して潤滑剤が循環する構成ではない。これに対して、本実施形態では、第1領域R1、第2領域R2、第3領域R3及び第4領域R4の循環路170を連通させることにより、第1領域R1、第2領域R2、第3領域R3及び第4領域R4の全てを通して潤滑剤が循環する構成とする。
図29では、本実施形態に係る2つの態様の歯車装置1C,1Dを示している。図29の左側の歯車装置1Cでは、循環路170は、第1領域R1、第2領域R2、第4領域R4、第3領域R3の順で潤滑剤を循環させる。すなわち、図29に示す断面上において、潤滑剤は、第1領域R1から第2領域R2に移動し、第2領域R2から第4領域R4に移動し、第4領域R4から第3領域R3に移動し、第3領域R3から第1領域R1に移動することで、時計回りに第1領域R1~第4領域R4の4つの領域を循環する。この構成によれば、潤滑剤は、歯車装置1Cの全体を循環するので、内ピン4の潤滑状態の更なる改善が期待できる。
図29の右側の歯車装置1Dでは、循環路170は、第1領域R1、第4領域R4、第2領域R2、第3領域R3の順で潤滑剤を循環させる。すなわち、図29に示す断面上において、潤滑剤は、第1領域R1から第4領域R4に移動し、第4領域R4から第2領域R2に移動し、第2領域R2から第3領域R3に移動し、第3領域R3から第1領域R1に移動することで、第1領域R1~第4領域R4の4つの領域を循環する。この構成によれば、潤滑剤は、歯車装置1Cの全体を循環するので、内ピン4の潤滑状態の更なる改善が期待できる。
実施形態2の構成は、実施形態1で説明した種々の構成(変形例を含む)と適宜組み合わせて採用可能である。
(まとめ)
以上説明したように、第1の態様に係る内接噛合遊星歯車装置(1,1A~1D)は、軸受け部材(6,6A)と、内歯歯車(2)と、遊星歯車(3)と、複数の内ピン(4)と、複数組の転がり軸受け(41,42)と、循環路(170)と、を備える。軸受け部材(6,6A)は、外輪(62)及び外輪(62)の内側に配置される内輪(61)を有し、内輪(61)が外輪(62)に対して回転軸(Ax1)を中心に相対的に回転可能に支持される。内歯歯車(2)は、内歯(21)を有し外輪(62)に固定される。遊星歯車(3)は、内歯(21)に部分的に噛み合う外歯(31)を有する。複数の内ピン(4)は、遊星歯車(3)に形成された複数の遊嵌孔(32)にそれぞれ挿入された状態で、遊嵌孔(32)内を公転しながら内歯歯車(2)に対して相対的に回転する。複数組の転がり軸受け(41,42)は、遊星歯車(3)に対して回転軸(Ax1)に平行な方向の両側において、複数の内ピン(4)の各々を保持する。循環路(170)は、転がり軸受け(41,42)における転動体(402)の軌道(404)、及び遊嵌孔(32)の内周面(321)と内ピン(4)との隙間を含む。内接噛合遊星歯車装置(1,1A~1D)では、循環路(170)を通して潤滑剤を循環させる。
この態様によれば、少なくとも転動体(402)の軌道(404)、及び遊嵌孔(32)の内周面(321)と内ピン(4)との隙間を通して、潤滑剤が循環することになるので、内ピン(4)の潤滑状態が改善される。すなわち、潤滑剤を積極的に循環させることで、内ピン(4)周辺においては、潤滑剤が不足又は枯渇する「潤滑剤切れ」が生じにくく、常に一定量以上の潤滑剤が供給されることになる。しかも、潤滑剤が定位置に停滞する構成に比べると、循環路(170)を通して潤滑剤が循環することで、随時、潤滑剤の入れ替えが行われることになり、潤滑剤の劣化を抑えることが可能である。結果的に、内ピン(4)の回転時に生じる損失を低減しやすい、という利点がある。
第2の態様に係る内接噛合遊星歯車装置(1,1A~1D)では、第1の態様において、潤滑剤は、隙間の収縮により、回転軸(Ax1)に平行な方向において遊星歯車(3)から離れる向きに押し出される。
この態様によれば、潤滑剤がポンプ機能によって押し出されることになり、潤滑剤は循環路(170)を循環しやすくなる。
第3の態様に係る内接噛合遊星歯車装置(1,1A~1D)では、第1又は2の態様において、循環路(170)は、潤滑剤を主として一方向に循環させる。
この態様によれば、循環路(170)内での潤滑剤の流れがスムーズになり、潤滑剤の停滞が生じにくいため、内ピン(4)の潤滑状態の更なる改善を図ることが可能である。
第4の態様に係る内接噛合遊星歯車装置(1,1A~1D)では、第3の態様において、循環路(170)の内周面の少なくとも一部には、潤滑剤の流れる方向を規制する方向規制部(173)が設けられている。
この態様によれば、循環路(170)内での潤滑剤の流れがスムーズになり、潤滑剤の停滞が生じにくいため、内ピン(4)の潤滑状態の更なる改善を図ることが可能である。
第5の態様に係る内接噛合遊星歯車装置(1,1A~1D)では、第1~4のいずれかの態様において、循環路(170)は、複数の内ピン(4)間で連通している。
この態様によれば、潤滑剤を、より広範囲で循環させることができ、内ピン(4)の潤滑状態の更なる改善を図ることが可能である。
第6の態様に係る内接噛合遊星歯車装置(1,1A~1D)は、第1~5のいずれかの態様において、内ピン用経路(Sp1)を更に備える。内ピン用経路(Sp1)は、複数の内ピン(4)に対して回転軸(Ax1)に平行な方向の少なくとも一方側に位置し、軸受け部材(6,6A)と内歯歯車(2)と遊星歯車(3)とが組み合わされた状態で、複数の内ピン(4)の各々を取外し可能とする。
この態様によれば、少なくとも軸受け部材(6,6A)と内歯歯車(2)と遊星歯車(3)とをばらすことなく、内ピン(4)の交換等が可能になる。そのため、例えば、内ピン(4)の直径が設計値より小さい場合、直径のより大きな内ピン(4)に交換することで、少なくとも遊嵌孔(32)の内周面(321)と内ピン(4)との間の隙間によるバックラッシュを低減又は無くすことができ、角度伝達誤差を小さく抑えやすい。結果的に、角度伝達誤差を小さく抑えやすい内接噛合遊星歯車装置(1,1A~1D)を提供することができる。
第7の態様に係る内接噛合遊星歯車装置(1,1A~1D)では、第1~6のいずれかの態様において、回転軸(Ax1)を含む断面は、回転軸(Ax1)に対して一方側となる第1ブロック(B1)及び他方側となる第2ブロック(B2)に区分される。第1ブロック(B1)は遊星歯車に対して一方側となる第1領域(R1)及び他方側となる第2領域(R2)に区分され、第2ブロック(B2)は遊星歯車に対して一方側となる第3領域(R3)及び他方側となる第4領域(R4)に区分される。第1領域(R1)、第2領域(R2)、第3領域(R3)及び第4領域(R4)の全てに循環路(170)が設けられている。
この態様によれば、循環路(170)は、内接噛合遊星歯車装置(1,1A~1D)の全体に張り巡らされることになり、内接噛合遊星歯車装置(1,1A~1D)の全体において、内ピン(4)の潤滑状態の改善を図ることが可能である。
第8の態様に係る内接噛合遊星歯車装置(1,1A~1D)では、第7の態様において、循環路(170)は、第1領域(R1)、第2領域(R2)、第3領域(R3)及び第4領域(R4)の各々で個別に潤滑剤を循環させる。
この態様によれば、潤滑剤が循環する循環路(170)の経路長を短く抑えることができるので、潤滑剤を効率的に循環させることができる。
第9の態様に係る内接噛合遊星歯車装置(1,1A~1D)では、第7の態様において、循環路(170)は、第1領域(R1)及び第3領域(R3)間で潤滑剤を循環させ、第2領域(R2)及び第4領域(R4)間で潤滑剤を循環させる。
この態様によれば、潤滑剤は、回転軸(Ax1)を含む断面上において、回転軸(Ax1)を挟む両方の領域間で循環するので、内ピン4の潤滑状態の更なる改善が期待できる。
第10の態様に係る内接噛合遊星歯車装置(1,1A~1D)では、第7の態様において、循環路(170)は、第1領域(R1)、第2領域(R2)、第3領域(R3)及び第4領域(R4)の全てを通して潤滑剤を循環させる。
この態様によれば、潤滑剤は、内接噛合遊星歯車装置(1,1A~1D)の全体を循環するので、内ピン(4)の潤滑状態の更なる改善が期待できる。
第11の態様に係る内接噛合遊星歯車装置(1,1A~1D)では、第10の態様において、循環路(170)は、第1領域(R1)、第2領域(R2)、第4領域(R4)、第3領域(R3)の順で潤滑剤を循環させる。
この態様によれば、潤滑剤は、内接噛合遊星歯車装置(1,1A~1D)の全体を循環するので、内ピン(4)の潤滑状態の更なる改善が期待できる。
第12の態様に係る内接噛合遊星歯車装置(1,1A~1D)では、第10の態様において、循環路(170)は、第1領域(R1)、第4領域(R4)、第2領域(R2)、第3領域(R3)の順で潤滑剤を循環させる。
この態様によれば、潤滑剤は、内接噛合遊星歯車装置(1,1A~1D)の全体を循環するので、内ピン(4)の潤滑状態の更なる改善が期待できる。
第13の態様に係る内接噛合遊星歯車装置(1,1A~1D)は、第1~12のいずれかの態様において、複数の内ピン(4)に対して回転軸(Ax1)に平行な方向の少なくとも一方側に位置するカバー体(163,164)を更に備え、カバー体(163,164)には、循環路(170)の一部を形成する溝部(171)が形成されている。
この態様によれば、比較的簡単な構成で、循環路(170)を設けることが可能となる。
第14の態様に係る内接噛合遊星歯車装置(1,1A~1D)では、第13の態様において、カバー体(163,164)と内ピン(4)との少なくとも一方には、循環路(170)に連通しており潤滑剤を保持する凹部(174)が形成されている。
この態様によれば、循環路(170)中の潤滑剤が減少した場合等には、凹部(174)に保持されている潤滑剤を循環路(170)に供給することができ、潤滑剤切れの発生を抑制しやすくなる。
第15の態様に係るロボット用関節装置(200)は、第1~14のいずれかの態様に係る内接噛合遊星歯車装置(1,1A~1D)と、外輪(62)に固定される第1部材(201)と、内輪(61)に固定される第2部材(202)と、を備える。
この態様によれば、内ピン(4)の回転時に生じる損失を低減しやすいロボット用関節装置(200)を提供することができる。
第2~14の態様に係る構成については、内接噛合遊星歯車装置(1,1A~1D)に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。
1,1A,1B,1C,1D 内接噛合遊星歯車装置
2 内歯歯車
3 遊星歯車
4 内ピン
6,6A 軸受け部材
21 内歯
31 外歯
32 遊嵌孔
41,42 転がり軸受け
61 内輪
62 外輪
163,164 カバー体
170 循環路
171 溝部
173 方向規制部
174 凹部
200 ロボット用関節装置
201 第1部材
202 第2部材
321 (遊嵌孔の)内周面
402 転動体
404 軌道
Ax1 回転軸
B1 第1ブロック
B2 第2ブロック
R1 第1領域
R2 第2領域
R3 第3領域
R4 第4領域
Sp1 内ピン用経路

Claims (15)

  1. 外輪及び前記外輪の内側に配置される内輪を有し、前記内輪が前記外輪に対して回転軸を中心に相対的に回転可能に支持される軸受け部材と、
    内歯を有し前記外輪に固定される内歯歯車と、
    前記内歯に部分的に噛み合う外歯を有する遊星歯車と、
    前記遊星歯車に形成された複数の遊嵌孔にそれぞれ挿入された状態で、前記遊嵌孔内を公転しながら前記内歯歯車に対して相対的に回転する複数の内ピンと、
    前記遊星歯車に対して前記回転軸に平行な方向の両側において、前記複数の内ピンの各々を保持する複数組の転がり軸受けと、
    前記転がり軸受けにおける転動体の軌道、及び前記遊嵌孔の内周面と前記内ピンとの隙間を含む循環路と、を備え、
    前記循環路を通して潤滑剤を循環させる、
    内接噛合遊星歯車装置。
  2. 前記潤滑剤は、前記隙間の収縮により、前記回転軸に平行な方向において前記遊星歯車から離れる向きに押し出される、
    請求項1に記載の内接噛合遊星歯車装置。
  3. 前記循環路は、前記潤滑剤を主として一方向に循環させる、
    請求項1又は2に記載の内接噛合遊星歯車装置。
  4. 前記循環路の内周面の少なくとも一部には、前記潤滑剤の流れる方向を規制する方向規制部が設けられている、
    請求項3に記載の内接噛合遊星歯車装置。
  5. 前記循環路は、前記複数の内ピン間で連通している、
    請求項1~4のいずれか1項に記載の内接噛合遊星歯車装置。
  6. 前記複数の内ピンに対して前記回転軸に平行な方向の少なくとも一方側に位置し、前記軸受け部材と前記内歯歯車と前記遊星歯車とが組み合わされた状態で、前記複数の内ピンの各々を取外し可能とする内ピン用経路を更に備える、
    請求項1~5のいずれか1項に記載の内接噛合遊星歯車装置。
  7. 前記回転軸を含む断面は、前記回転軸に対して一方側となる第1ブロック及び他方側となる第2ブロックに区分され、かつ前記第1ブロックは前記遊星歯車に対して一方側となる第1領域及び他方側となる第2領域に区分され、前記第2ブロックは前記遊星歯車に対して前記一方側となる第3領域及び前記他方側となる第4領域に区分され、
    前記第1領域、前記第2領域、前記第3領域及び前記第4領域の全てに前記循環路が設けられている、
    請求項1~6のいずれか1項に記載の内接噛合遊星歯車装置。
  8. 前記循環路は、前記第1領域、前記第2領域、前記第3領域及び前記第4領域の各々で個別に前記潤滑剤を循環させる、
    請求項7に記載の内接噛合遊星歯車装置。
  9. 前記循環路は、前記第1領域及び前記第3領域間で前記潤滑剤を循環させ、前記第2領域及び前記第4領域間で前記潤滑剤を循環させる、
    請求項7に記載の内接噛合遊星歯車装置。
  10. 前記循環路は、前記第1領域、前記第2領域、前記第3領域及び前記第4領域の全てを通して前記潤滑剤を循環させる、
    請求項7に記載の内接噛合遊星歯車装置。
  11. 前記循環路は、前記第1領域、前記第2領域、前記第4領域、前記第3領域の順で前記潤滑剤を循環させる、
    請求項10に記載の内接噛合遊星歯車装置。
  12. 前記循環路は、前記第1領域、前記第4領域、前記第2領域、前記第3領域の順で前記潤滑剤を循環させる、
    請求項10に記載の内接噛合遊星歯車装置。
  13. 前記複数の内ピンに対して前記回転軸に平行な方向の少なくとも一方側に位置するカバー体を更に備え、
    前記カバー体には、前記循環路の一部を形成する溝部が形成されている、
    請求項1~12のいずれか1項に記載の内接噛合遊星歯車装置。
  14. 前記カバー体と前記内ピンとの少なくとも一方には、前記循環路に連通しており前記潤滑剤を保持する凹部が形成されている、
    請求項13に記載の内接噛合遊星歯車装置。
  15. 請求項1~14のいずれか1項に記載の内接噛合遊星歯車装置と、
    前記外輪に固定される第1部材と、
    前記内輪に固定される第2部材と、を備える、
    ロボット用関節装置。
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