JP2023050644A - セルロースナノファイバー水懸濁液の製造方法 - Google Patents

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裕亮 多田
Hiroaki Tada
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Abstract

【課題】セルロースナノファイバーの粉末を用いて、ゲル粒の残留が少ないセルロースナノファイバー水懸濁液を効率よく製造することができる方法を提供する。【解決手段】セルロースナノファイバーを含む粉末を、増粘性を有する物質の水溶液中で懸濁させる。増粘性を有する物質の水溶液を懸濁の媒体として用いることにより、水懸濁液の25℃、せん断速度1560(1/s)のせん断粘度を、0.25Pa・s以上とする。【選択図】なし

Description

本発明は、セルロースナノファイバーの水懸濁液の製造方法に関する。より詳細には、セルロースナノファイバーの粉末を用い、ゲル粒の残留が少ない水懸濁液を効率よく製造することができる方法を提供する。
セルロースナノファイバーは、水系媒体での分散性に優れている約3nm~数百nm程度の繊維径を有する微細繊維であり、食品、化粧品、医療品又は塗料等の粘度の保持、食品原料生地の強化、水分の保持、食品安定性向上、低カロリー添加物又は乳化安定化助剤としての利用が期待されている。しかし、水に分散している状態(湿潤状態)のセルロースナノファイバーを乾燥させて乾燥固形物とした場合には、通常、微細セルロース繊維の繊維間に水素結合が形成されるため、この乾燥固形物に水を加えて再分散させようとしても、均一に再分散させることは一般的には難しい。このため、セルロースナノファイバーは水に分散している状態(湿潤状態)で製造され、通常、乾燥させずに湿潤状態のままで各種用途に使用されている。
しかしながら、この湿潤状態のセルロースナノファイバーを安定に保つためには、セルロースナノファイバーに対して数倍~数百倍の質量の水が必要であり、保存スペースの確保、保存及び輸送コストの増大等、種々の問題点がある。
上記の問題点に対し、本出願人は、アニオン変性セルロースナノファイバーに対し、水溶性高分子を5~300質量%含有させて乾燥固形物とすることにより、セルロースナノファイバー乾燥固形物の再分散性を向上させる方法(特許文献1)、また、セルロースナノファイバーと溶媒との混合物を真空乾燥装置を用いて乾燥することにより、セルロースナノファイバー乾燥固形物の再分散性を向上させる方法(特許文献2)を提案した。
国際公開第2015/107995号 国際公開第2019/189318号
特許文献1及び2に記載の方法は、再分散性のよいセルロースナノファイバー乾燥固形物を製造するのに有効な方法であるが、セルロースナノファイバーの乾燥固形物を用いて、さらにゲル粒の少ない水分散液/懸濁液を、効率よく製造することができる新たな方法を開発することは望ましい。
本発明は、セルロースナノファイバーの粉末を用いて、水懸濁液を製造する際に、ゲル粒の残留が少ない水懸濁液を効率よく製造することができる新たな方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意検討した結果、セルロースナノファイバーの粉末を用いて水懸濁液を製造する際に、媒体として、増粘性を有する物質を水に溶解することにより製造した高せん断粘度の水溶液を用い、この水溶液中でセルロースナノファイバーの粉末を懸濁させることにより、低い回転数の撹拌機を用いた場合であっても、よりゲル粒の残留が少ない水懸濁液を製造することができることを見出した。高せん断粘度の水溶液を媒体として得られた水懸濁液は、高いせん断粘度を有している。水懸濁液のせん断粘度が、25℃、せん断速度1560(1/s)で測定した時に0.25Pa・s以上となる際に上述の効果が確認された。本発明は、以下を含む。
[1]セルロースナノファイバーを含む粉末を、増粘性を有する物質の水溶液中で懸濁させることを含むセルロースナノファイバー水懸濁液の製造方法であって、25℃、せん断速度1560(1/s)で測定した時の水懸濁液のせん断粘度が0.25Pa・s以上である、セルロースナノファイバー水懸濁液の製造方法。
[2]セルロースナノファイバーが、アニオン変性セルロースナノファイバーである、[1]に記載のセルロースナノファイバー水懸濁液の製造方法。
[3]アニオン変性セルロースナノファイバーが、カルボキシアルキル基を有するセルロースナノファイバーまたはカルボキシル基を有するセルロースナノファイバーである、[2]に記載のセルロースナノファイバー水懸濁液の製造方法。
[4]アニオン変性セルロースナノファイバーが、カルボキシメチル基を有するセルロースナノファイバーであり、0.01~0.50の範囲内のカルボキシメチル置換度を有する、[3]に記載のセルロースナノファイバー水懸濁液の製造方法。
[5]セルロースナノファイバーを含む粉末が、カルボキシメチルセルロースをさらに含む、[1]~[4]のいずれか一項に記載のセルロースナノファイバー水懸濁液の製造方法。
[6]前記増粘性を有する物質が、ショ糖であり、前記水溶液におけるショ糖の濃度が、60質量%以上である、[1]~[5]のいずれか一項に記載のセルロースナノファイバー水懸濁液の製造方法。
[7]前記増粘性を有する物質が、デキストリンであり、前記水溶液におけるデキストリンの濃度が、50質量%以上である、[1]~[5]のいずれか一項に記載のセルロースナノファイバー水懸濁液の製造方法。
[8]前記増粘性を有する物質が、タマリンドシードガムまたはカルボキシメチルセルロースであり、前記水溶液における前記増粘性を有する物質の濃度が、1.5質量%以上である、[1]~[5]のいずれか一項に記載のセルロースナノファイバー水懸濁液の製造方法。
[9]前記増粘性を有する物質が、カルボキシビニルポリマーであり、前記水溶液におけるカルボキシビニルポリマーの濃度が、0.5質量%以上である、[1]~[5]のいずれか一項に記載のセルロースナノファイバー水懸濁液の製造方法。
本発明により、セルロースナノファイバーの粉末を用いて、ゲル粒の残留の少ない水懸濁液を効率よく製造することができるようになる。より詳細には、懸濁時に低い回転数の撹拌機を用いた場合でも、セルロースナノファイバーの粉末由来のゲル粒の残留を低減させることが可能となる。低い回転数の撹拌機でも良好に懸濁できることにより、高回転数の撹拌機等の設備を持たない工場などにおいてもゲル粒が少ない懸濁液を製造することが可能となる。また、高回転数の撹拌機を用いる場合、液跳ねを起こして歩留まりが低下することがあるが、低回転数の撹拌機を用いることでそのような歩留まりの低下を抑制することができる。
また、撹拌機を用いずに、泡だて器や撹拌棒などを用いて手で撹拌を行う場合でも、本発明を用いると、本発明を用いない場合に比べて、ゲル粒の残留がより少ない懸濁液を得やすくなる。
また、本発明により効率よく懸濁させることができるようになるため、懸濁にかかる時間を短縮させることもできると考えられる。
本発明は、セルロースナノファイバー(以下、「CNF」という。)の水懸濁液の製造方法に関する。詳細には、CNFを含む粉末を、増粘性を有する物質の水溶液中で懸濁させることで水懸濁液を製造することを含み、水懸濁液のせん断粘度は、25℃、せん断速度1560(1/s)で測定した時のせん断粘度が0.25Pa・s以上となることを含む、上記方法である。本発明により、低い回転数の撹拌機などを用いた場合でも、ゲル粒の残留が少ないCNF水懸濁液を得ることができる。なお、本発明において、「懸濁」の語と「分散」の語は、特に断りがない限り同じ意味を有することを意図しており、互換可能に用いられる。
(セルロースナノファイバー)
本発明において、セルロースナノファイバー(CNF)は、セルロース原料であるパルプなどがナノメートルレベルの繊維幅まで微細化されたものである。CNFの繊維幅(平均繊維径)は、通常、約3nm~数百nm程度であり、例えば、3~500nm程度である。本発明ではCNFの平均繊維径として3~100nm程度のものを用いることが好ましく、3~20nm程度のものがさらに好ましい。アスペクト比は30以上、好ましくは50以上、さらに好ましくは100以上である。アスペクト比の上限は限定されないが、500以下程度である。
CNFの平均繊維径および平均繊維長は、径が20nm未満の場合は原子間力顕微鏡(AFM)、20nm以上の場合は電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM)を用いて、ランダムに選んだ200本の繊維について解析し、平均を算出することにより、測定することができる。また、アスペクト比は下記の式により算出することができる:
アスペクト比=平均繊維長/平均繊維径。
CNFは、後述するパルプなどのセルロース原料に機械的な力を加えて微細化(解繊)することにより得ることができる。セルロース原料としては、後述するような未変性のセルロースや製紙用のパルプ等を用いてもよいし、製紙用のパルプ等をさらに化学変性させた化学変性セルロースを用いてもよい。化学変性させたセルロースの例としては、これらに限定されないが、セルロース鎖にアニオン性基を導入したアニオン変性セルロースや、カチオン性基を導入したカチオン変性セルロースが挙げられる。これらの中では、アニオン変性セルロースを用いることが好ましい。アニオン変性セルロースを、1μm未満の平均繊維径となるように解繊することにより、アニオン変性CNFを得ることができる。解繊方法は特に限定されず、高速回転式、コロイドミル式、高圧式、ロールミル式、超音波式などの公知の解繊装置を用いればよい。中でも、湿式の高圧または超高圧ホモジナイザを用いることは好ましい。アニオン変性CNFの例としては、カルボキシアルキル基を導入したカルボキシアルキル化CNF、カルボキシル基を導入したカルボキシル化CNF、リン酸系の基を導入したリン酸エステル化CNF、硫酸系の基を導入した硫酸エステル化CNFなどがあげられる。これらの中では、カルボキシアルキル基を有するCNF(カルボキシアルキル化CNF)またはカルボキシル基を有するCNF(カルボキシル化CNF)が好ましい。
(セルロース原料)
CNFの原料となるセルロースとしては、植物、動物(例えばホヤ類)、藻類、微生物(例えば酢酸菌(アセトバクター))、微生物産生物等を起源とするものが知られており、本発明ではそのいずれも使用できる。植物由来のものとしては、例えば、木材、竹、麻、ジュート、ケナフ、農地残廃物、布、パルプ(針葉樹未漂白クラフトパルプ(NUKP)、針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未漂白クラフトパルプ(LUKP)、広葉樹漂白クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹未漂白サルファイトパルプ(NUSP)、針葉樹漂白サルファイトパルプ(NBSP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、再生パルプ、古紙等)が挙げられる。本発明においては、植物または微生物由来のセルロース繊維が好ましく、植物由来のセルロース繊維がより好ましい。セルロース原料は、以下に説明するように化学変性を行ってもよい。上述のセルロース原料またはアニオン変性などの化学変性を行ったセルロース原料(化学変性セルロース)の繊維幅をナノメートルレベルにまで微細化することにより、CNFまたはアニオン変性CNFなどの化学変性CNFを得ることができる。
(カルボキシアルキル基を有するCNF(カルボキシアルキル化CNF))
アニオン変性CNFの一例として、カルボキシアルキル基を有するカルボキシアルキル化CNFを挙げることができる。本明細書においてカルボキシアルキル基とは、-RCOOH(酸型)および-RCOOM(金属塩型)をいう。ここでRはメチレン基、エチレン基等のアルキレン基であり、Mは金属イオンである。中でも、Rがメチレン基であるCM基を有するCM化CNFが最も好ましい。カルボキシアルキル化CNFは、セルロース原料をマーセル化剤で処理した後にカルボキシアルキル化剤で処理してカルボキシアルキル基を導入する公知の方法を用いてカルボキシアルキル化セルロースを得て、次いで解繊することにより得ることができる。
カルボキシアルキル化CNFの無水グルコース単位当たりのカルボキシアルキル置換度は、0.50以下であることが好ましい。また、カルボキシアルキル置換度の下限値は0.01以上が好ましい。操業性を考慮すると当該置換度は0.02以上0.40以下であることが好ましく、0.02以上0.35以下であることが更に好ましく、0.10以上0.35以下であることが更に好ましく、0.15以上0.35以下であることが更に好ましく、0.15以上0.30以下であることが更に好ましい。なお、無水グルコース単位とは、セルロースを構成する個々の無水グルコース(グルコース残基)を意味し、カルボキシアルキル置換度とは、セルロースを構成するグルコース残基中の水酸基(-OH)のうちカルボキシアルキル基(-ORCOOHまたは-ORCOOM)に置換されているものの割合(1つのグルコース残基当たりのカルボキシアルキル基の数)を示す。カルボキシアルキル置換度は、マーセル化剤の量や反応時間等の反応条件をコントロールすることで調整することができる。グルコース単位当たりのCM置換度は、以下の方法で測定することができる:
CM化CNF(絶乾)約2.0gを精秤して、300mL容共栓付き三角フラスコに入れる。メタノール900mLに特級濃硝酸100mLを加えた液100mLを加え、3時間振とうして、塩型のCM化CNFを水素型CM化CNFに変換する。水素型CM化CNF(絶乾)を1.5g~2.0g精秤し、300mL容共栓付き三角フラスコに入れる。80質量%メタノール15mLで水素型CM化CNFを湿潤し、0.1NのNaOHを100mL加え、室温で3時間振とうする。指示薬として、フェノールフタレインを用いて、0.1NのHSOで過剰のNaOHを逆滴定する。CM置換度(DS)を、次式によって算出する:
A=[(100×F’-(0.1NのHSO)(mL)×F)×0.1]/(水素型CM化CNFの絶乾質量(g))
DS=0.162×A/(1-0.058×A)
A:水素型CM化CNFの1gの中和に要する1NのNaOH量(mL)
F:0.1NのHSOのファクター
F’:0.1NのNaOHのファクター
CM基以外のカルボキシアルキル基置換度の測定も、上記と同様の方法で行うことができる。
なお、本明細書において、CM化CNFの調製に用いるアニオン変性セルロースの一種である「CM化セルロース」及びCM化セルロースを解繊して得られた「CM化CNF」は、水に分散した際にも繊維状の形状の少なくとも一部が維持されるものをいう。したがって、「CM化セルロース」及び「CM化CNF」は、水溶性高分子の一種であるカルボキシメチルセルロース(以下、「CMC」という。)とは区別される。「CM化セルロース」の水分散液を電子顕微鏡で観察すると、繊維状の物質を観察することができる。一方、水溶性高分子の一種であるCMCの水分散液を観察しても、繊維状の物質は観察されない。また、「CM化セルロース」及び「CM化CNF」はX線回折で測定した際にセルロースI型結晶のピークを観測することができるが、水溶性高分子のCMCではセルロースI型結晶はみられない。
(カルボキシル基を有するCNF(カルボキシル化CNF))
アニオン性CNFの一例として、カルボキシル基を有するカルボキシル化CNFを挙げることができる。本明細書においてカルボキシル基とは、-COOH(酸型)および-COOM(金属塩型)(式中、Mは金属イオンである)、または-COOをいう。カルボキシル化CNFは、セルロースのピラノース環の水酸基をカルボキシル基に酸化する公知の方法を用いてカルボキシル化セルロースを得て、次いで解繊することにより得ることができる。セルロースの酸化方法としては、例えば、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシラジカル(TEMPO)のようなN-オキシル化合物と、臭化物及び/又はヨウ化物との存在下で、酸化剤を用いてセルロースを水中で酸化する方法や、オゾンを含む気体を酸化剤として用いてセルロース原料と接触させることによりセルロースを酸化する方法を挙げることができる。
カルボキシル化CNFにおけるカルボキシル基の量は、カルボキシル化CNFの絶乾質量に対して、0.4~3.0mmol/gが好ましく、0.6~2.0mmol/gがさらに好ましく、1.0~2.0mmol/gがさらに好ましく、1.1~2.0mmol/gがさらに好ましい。カルボキシル化CNFのカルボキシル基の量は、酸化剤の添加量や反応時間等の反応条件をコントロールすることで調整することができる。カルボキシル基の量は、以下の方法で測定することができる:
カルボキシル化CNFの0.5質量%スラリー(水分散液)60mlを調製し、0.1M塩酸水溶液を加えてpH2.5とした後、0.05Nの水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHが11になるまで電気伝導度を測定し、電気伝導度の変化が緩やかな弱酸の中和段階において消費された水酸化ナトリウム量(a)から、下式を用いて算出する:
カルボキシ基量〔mmol/gカルボキシル化CNF〕=a〔ml〕×0.05/カルボキシル化CNF質量〔g〕。
(リン酸エステル化CNF)
アニオン性CNFの一例として、リン酸エステル化CNFを挙げることができる。リン酸エステル化CNFは、上述したセルロース原料にリン酸系化合物の粉末又は水溶液を混合する、あるいは、セルロース原料のスラリーにリン酸系化合物の水溶液を添加するなどにより、リン酸系化合物由来のリン酸系の基をセルロースに導入してリン酸エステル化セルロースとし、これを解繊することにより得ることができる。リン酸系化合物としては、リン酸、ポリリン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ホスホン酸、ポリホスホン酸あるいはこれらのエステル又は塩が挙げられる。具体的には、例えば、これらに限定されないが、リン酸、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、亜リン酸ナトリウム、亜リン酸カリウム、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム、ピロリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸三カリウム、ピロリン酸カリウム、メタリン酸カリウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ピロリン酸アンモニウム、メタリン酸アンモニウム等が挙げられる。これらの1種、あるいは2種以上を併用してセルロースにリン酸系化合物由来のリン酸系の基を導入することができる。本明細書において、リン酸系化合物由来のリン酸系の基には、リン酸基、亜リン酸基、次亜リン酸基、ピロリン酸基、メタリン酸基、ポリリン酸基、ホスホン酸基、及びポリホスホン酸基が含まれる。リン酸エステル化セルロース及びリン酸エステル化CNFは、セルロースの分子鎖にこれらのリン酸系の基の1種または2種以上が導入されているものを含む。セルロース原料をリン酸系化合物と反応させる際には、反応を均一に進行できかつ上記基の導入の効率が高くなることから前記リン酸系化合物は水溶液として用いることが望ましく、その際、水溶液のpHは、pH3~7が好ましい。また、尿素等の窒素含有化合物を添加してもよい。
リン酸エステル化CNFにおけるグルコース単位当たりのリン酸系の基の置換度(以下、単に「リン酸基置換度」と呼ぶ。)は、0.001以上0.40未満であることが好ましい。グルコース単位当たりのリン酸基置換度は、以下の方法で測定することができる:
固形分量が0.2質量%のリン酸エステル化CNFのスラリーを調製する。スラリーに対し、体積で1/10の強酸性イオン交換樹脂(アンバージェット1024;オルガノ社製、コンディショニング済)を加え、1時間振とう処理を行った後、目開き90μmのメッシュ上に注いで樹脂とスラリーとを分離することにより、水素型リン酸エステル化CNFを得る。次いで、イオン交換樹脂による処理後のスラリーに、0.1Nの水酸化ナトリウム水溶液を、30秒に1回、50μLずつ加えながら、スラリーが示す電気伝導度の値の変化を計測する。計測結果のうち、急激に電気伝導度が低下する領域において必要としたアルカリ量(mmol)を、滴定対象スラリー中の固形分(g)で除すことにより、水素型リン酸エステル化CNF1g当たりのリン酸基量(mmol/g)を算出する。さらに、リン酸エステル化CNFのグルコース単位当たりのリン酸基置換度(DS)を、次式によって算出する:
DS=0.162×A/(1-0.079×A)
A:水素型リン酸エステル化CNFの1gあたりのリン酸基量(mmol/g)。
(硫酸エステル化CNF)
アニオン性CNFの一例として、硫酸エステル化CNFを挙げることができる。硫酸エステル化CNFは、上述したセルロース原料に硫酸系化合物を反応させることにより、硫酸系化合物由来の硫酸系の基をセルロースに導入して硫酸エステル化セルロースとし、これを解繊することにより得ることができる。硫酸系化合物としては、例えば、硫酸、スルファミン酸、クロロスルホン酸、三酸化硫黄、あるいはこれらのエステル又は塩が挙げられる。これらの中では、セルロースの溶解性が小さく、また、酸性度が低いことから、スルファミン酸を用いることが好ましい。
例えば、硫酸系化合物としてスルファミン酸を用いる場合、スルファミン酸の使用量は、セルロース鎖へのアニオン基の導入量を考慮して適宜調整することができる。例えば、セルロース分子中のグルコース単位1mol当たり、好ましくは0.01~50molの量で用いることができ、より好ましくは0.1~3.0molの量で用いることができる。
硫酸エステル化CNFにおけるグルコース単位当たりの硫酸系の基の量(以下、単に「硫酸基量」と呼ぶ。)は、0.1~3.0mmol/gであることが好ましい。グルコース単位当たりの硫酸基量は、以下の方法で測定することができる:
硫酸エステル化CNFの水分散液をエタノール、t-ブタノールの順に溶媒置換した後、凍結乾燥する。得られた試料200mgにエタノール15ml及び水5mlを加え、30分間撹拌する。その後、0.5Nの水酸化ナトリウム水溶液を10ml加え、70℃で30分間撹拌し、さらに30℃で24時間撹拌する。次いで、指示薬としてフェノールフタレインを加え、塩酸で滴定を行い、下式を用いて算出する:
硫酸基量[mmol/g試料]=(5-(0.1×塩酸滴定量[ml]×2))/0.2。
(カチオン変性CNF)
カチオン変性CNFとは、セルロースの分子鎖にカチオン性基が導入されたCNFである。カチオン変性CNFは、セルロースのピラノース環にカチオン性基を導入して得られたカチオン変性セルロースを1μm未満の平均繊維径となるように解繊することにより得ることができる。
カチオン変性セルロースは、前記のカルボキシル化セルロースに、グリシジルトリメチルアンモニウムクロリド、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピルトリアルキルアンモニウムハイドライトまたはそのハロヒドリン型などのカチオン化剤と、触媒である水酸化アルカリ金属(水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)とを、水または炭素数1~4のアルコールの存在下で反応させる公知の方法によって得ることができ、得られたカチオン変性セルロースを解繊することによりカチオン変性CNFを得ることができる。
カチオン変性CNFにおけるグルコース単位当たりのカチオン置換度は0.02~0.50であることが好ましい。カチオン置換度は、反応させるカチオン化剤の添加量、水または炭素数1~4のアルコールの組成比率によって調整できる。グルコース単位当たりのカチオン置換度は、以下の方法で測定することができる:
カチオン変性CNFを乾燥させた後、全窒素分析計(三菱化学社製TN-10)を用いて窒素含有量を測定し、次式によりカチオン置換度(無水グルコース単位1モル当たりの置換基のモル数の平均値)を算出する:
カチオン置換度=(162×N)/(1-151.6×N)
N:窒素含有量。
(CNFを含む粉末)
本発明の製造方法では、上記のCNFを含む粉末を用いてCNFの水懸濁液を製造する。本発明において「粉末」とは、水分量が0~15質量%となるまで乾燥させて得られた乾燥固形物をいう。好ましくは水分量が0~10質量%である。CNFは、このような水分量となるまで乾燥を行うと通常再分散させることが困難になる傾向があるが、本発明の方法により、再分散性が向上し、低い回転数の撹拌機を用いた場合でも残留するゲル粒の量を低減させることができるようになる。粉末における水分量は、粉末を105℃で3時間以上乾燥させた後の質量(絶乾質量)と、乾燥前の質量とを用いて算出することができる。
乾燥固形物である「粉末」の形状は、懸濁のさせやすさを考慮すると、微細で均質な粉状であることが好ましいが、粉の一部が凝集して塊を形成しているような形状であってもよいし、顆粒状であってもよい。
CNFを含む粉末は、例えば、これに限定されないが、上記のCNFを含む分散液を乾燥させることにより製造することができる。乾燥に供する分散液における分散媒は特に限定されないが、水、親水性有機溶媒、疎水性有機溶媒またはこれらの混合溶媒であることが好ましく、水、または水と親水性有機溶媒との混合溶媒がさらに好ましい。乾燥に用いる装置は特に限定されない。例えば、真空ドラム乾燥機、常圧ドラム乾燥機、スプレー乾燥機、熱風乾燥機、温風乾燥機などを用いることができる。
本発明で懸濁に供する「CNFを含む粉末」は、CNFに加えて他の成分を含んでいてもよい。例えば、再分散性の向上のために、水溶性高分子の粉末を含んでいてもよい。水溶性高分子としては、例えば、セルロース誘導体(CMC、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース)、キサンタンガム、キシログルカン、デキストリン、デキストラン、カラギーナン、ローカストビーンガム、アルギン酸、アルギン酸塩、プルラン、デンプン、かたくり粉、クズ粉、加工デンプン(カチオン化デンプン、リン酸化デンプン、リン酸架橋デンプン、リン酸モノエステル化リン酸架橋デンプン、ヒドロキシプロピルデンプン、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン、アセチル化アジピン酸架橋デンプン、アセチル化リン酸架橋デンプン、アセチル化酸化デンプン、オクテニルコハク酸デンプンナトリウム、酢酸デンプン、酸化デンプン)、コーンスターチ、アラビアガム、ジェランガム、ポリデキストロース、ペクチン、キチン、水溶性キチン、キトサン、カゼイン、アルブミン、大豆タンパク溶解物、ペプトン、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸塩、ポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニル、ポリアミノ酸、ポリ乳酸、ポリリンゴ酸、ポリグリセリン、ラテックス、ロジン系サイズ剤、石油樹脂系サイズ剤、尿素樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミド・ポリアミン樹脂、ポリエチレンイミン、ポリアミン、植物ガム、ポリエチレンオキサイド、親水性架橋ポリマー、デンプンポリアクリル酸共重合体、タマリンドガム、グァーガム、コロイダルシリカ、又はこれらの1種以上の混合物が挙げられる。中でも、セルロース誘導体は、CNFとの相溶性の点から好ましく、CMC及びその塩が特に好ましい。CMC及びその塩のような水溶性高分子は、CNFの繊維の間に入り込み、繊維間の距離を広げることで、再分散性を向上させると考えられる。また、デキストリンも上記の水溶性高分子として好ましく用いることができる。
水溶性高分子としてCMCを用いる場合は、CMCのCM置換度は、0.55~1.60の範囲であることが好ましく、0.55~1.10がさらに好ましく、0.65~1.10がさらに好ましい。なお、このようなCM置換度を有するCMCは、水に溶解するため、水中でセルロース由来の繊維の形状を維持しない。上述した通り、水溶性高分子としての「CMC」と、水中で繊維状の形状を維持する「CM化セルロース」とは、区別される。また、「CM化セルロース」を1μm未満の平均繊維径となるように解繊して得た「CM化CNF」も、「CMC」とは区別される。
CNFを含む粉末に水溶性高分子を配合する場合、水溶性高分子の配合量は、CNF(絶乾固形分)に対して、5~300質量であることが好ましく、20~300質量%がさらに好ましく、25~200質量%がさらに好ましく、25~60質量%がさらに好ましい。
その他、CNFを含む粉末は、本発明の効果を阻害しない範囲で、CNFや水溶性高分子以外の成分、例えば微量な金属成分などを含んでいてもよい。
(増粘性を有する物質の水溶液)
本発明の方法では、CNFを含む粉末を、増粘性を有する物質の水溶液中で懸濁させることを含む。増粘性を有する物質の水溶液とは、増粘性を有する物質を水に溶解させることで高いせん断粘度を有する水溶液であり、最終的に得られる水懸濁液の25℃、せん断速度1560(1/s)で測定した時のせん断粘度が0.25Pa・s以上となるようなせん断粘度を有する水溶液である。このような高せん断粘度の水溶液中にCNFを含む粉末を懸濁させることにより、CNFのゲル粒の残留が少ない水懸濁液が得られることを見出した。
本発明に用いることができる増粘性を有する物質は、水に溶解させることが可能であり、水に一定量溶解させることで、せん断速度1560(1/s)において高いせん断粘度を達成することができる物質である。例えば、ショ糖、デキストリン、タマリンドシードガム、CMC、カルボキシビニルポリマー、水あめ(マルトースやマルトトリオースの混合物)、グァーガム、カラギナン、キサンタンガム、ローカストビーンガム、タラガム、カシアガム、グルコマンナン、ジェランガム、ペクチン、サイリウムシードガム、トラガントガム、カラヤガム、アラビアガム、マクロホモプシスガム、ラムザンガム、寒天、アルギン酸類(アルギン酸、アルギン酸塩)、カードラン、プルラン、セルロース誘導体(CMC、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等)、微結晶セルロース、発酵セルロース、ゼラチン、水溶性大豆多糖類、デンプン、加工デンプン、ポリエチレングリコール等を挙げることができる。これらの中では、ショ糖、デキストリン、タマリンドシードガム、CMC、及びカルボキシビニルポリマーが特に好ましい。
水溶液中のこれらの物質の濃度は、特に限定されない。各物質に応じて、最終的に得られる水懸濁液が25℃、せん断速度1560(1/s)において0.25Pa・s以上のせん断粘度を達成することができるような濃度とすればよい。例えば、ショ糖を用いる場合にはショ糖の濃度が60質量%以上の水溶液とすることが好ましい。また、デキストリンを用いる場合にはデキストリンの濃度が50質量%以上の水溶液とすることが好ましい。同様に、タマリンドシードガムまたはCMCの場合には1.5質量%以上の濃度の水溶液が好ましく、カルボキシビニルポリマーの場合には0.5質量%以上の濃度の水溶液が好ましい。
(懸濁)
CNFを含む粉末を、上述の増粘性を有する物質の水溶液中で懸濁させることにより、CNFの水懸濁液を得る。上述した通り、本発明において、「懸濁」の語と「分散」の語は、特に断りがない限り同じ意味を有することを意図しており、互換可能に用いられる。
CNFを含む粉末を上記の水溶液中に懸濁させる際のCNFを含む粉末の懸濁液中での固形分濃度は、特に限定されない。懸濁液中の粉末の固形分濃度が低い方が粉末をより均一に分散させることができると言えるが、懸濁液中の粉末の固形分濃度が高い場合でも、上記の水溶液を用いない場合と比べればゲル粒の残留がより少ない懸濁液を得ることができると言えるから、懸濁液中の粉末の固形分濃度は、用途に応じて適宜設定すればよい。例えば、懸濁液中の粉末の固形分濃度を0.1~10.0質量%程度とすることができ、また、1.0~6.0質量%程度にすることができるが、これらの範囲に限定されない。
懸濁の際には、例えば、ホモミキサー、ホモディスパー、インラインミキサー、ジューサー、工業用粉体吸引連続溶解分散装置、ヘンシェルミキサーなどの撹拌機等を用いることができるが、これらに限定されない。本発明の方法にしたがって、高せん断粘度の水溶液中でCNFを含む粉末を懸濁させると、本発明の方法を用いない場合に比べて、撹拌機の回転数が低い場合でもゲル粒の残留がより少ない懸濁液を得ることができる。例えば、上述のような撹拌機を用いずに、泡だて器や撹拌棒などを用いて手で撹拌を行う場合でも、本発明の方法を用いない場合に比べれば、ゲル粒の残留がより少ない懸濁液を得やすくなるといえる。このように、本発明によって、低回転数の場合でも本発明を用いない場合に比べるとよりゲル粒の少ない懸濁液が得られるという利点が得られる。しかし、高回転数の撹拌機を用いることを除外するものではない。例えば、同じ回転数同士の撹拌で比べれば、本発明の方法では、本発明を用いない場合に比べて、より短い時間でゲル粒の少ない懸濁液を得ることができる可能性がある。したがって、本発明において懸濁に用いる撹拌機の回転数は特に限定されない。例えば、従来は3000rpm以上、または12000rpm以上のような高回転数の撹拌/分散装置を用いて懸濁/分散液を製造していたところ、これに限定されないが、600~800rpm程度の回転数の撹拌機を用いてもゲル粒の少ない水懸濁液を得ることができるようになる。
(CNF水懸濁液)
本発明により得られるCNF水懸濁液は、上述の通り高いせん断粘度の水溶液(増粘性を有する物質の水溶液)を媒体としているので、25℃、せん断速度1560(1/s)で測定した際に、0.25Pa・s以上のせん断粘度を有する。より好ましくは0.30Pa・s以上である。せん断粘度の上限は特に限定されない。懸濁時の撹拌のしやすさを考慮すると、3Pa・s以下程度が好ましいと考えられる。
せん断粘度は、例えば、後述する実施例で記載するように、レオメーター(粘弾性測定装置)を用いて測定することができる。
本発明にしたがって、高せん断粘度の水溶液中でCNFを含む粉末を懸濁して得た水懸濁液は、水中に、粉末由来のCNFと、粉末が水溶性高分子を含む場合は水溶性高分子と、上記の増粘性を有する物質とを少なくとも含む。本発明の効果を阻害しない範囲で、これら以外の他の物質を含んでいてもよい。
本発明にしたがって、高せん断粘度の水溶液中でCNFを含む粉末を懸濁して得た水懸濁液は、本発明の方法を用いないで得た水懸濁液と比べると、CNFのゲル粒の残留がより少なくなる。「ゲル粒」とは、凝集したCNFによるゲル状の粒である。懸濁液中に残留するゲル粒の量は、例えば、特許第6769947号に記載される色材(墨滴など)を用いる方法を用いて評価することができる。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
<せん断粘度の測定>
水懸濁液の温度を25℃に調整し、レオメーター(Anton Paar社製 Physica MCRxx1)を用いて、せん断速度を1×10-3~2×10の範囲内で対数的に上昇させ、5秒間隔で60点粘度を測定した。測定結果のうちのせん断速度1560(1/s)におけるせん断粘度を表に記載した。
<CNF水懸濁液に残留するCNFゲル粒の評価>
水懸濁液中のゲル粒を、墨滴を用いる方法を用いて評価した。この方法は、CNF懸濁液に色材(墨滴)を添加してから光学顕微鏡で観察することにより、目視では判別できない懸濁液中のCNF同士の凝集物(ゲル粒)の有無を、確認しやすくしたものである。評価方法は具体的には以下の通りである:
水懸濁液に、墨滴(株式会社呉竹製、固形分10%)を2滴垂らし、ボルテックスミキサー(IUCHI社製Automatic Lab-mixer HM-10H)の回転数の目盛りを最大に設定して30秒間撹拌した。撹拌後の液を二枚のガラス板に挟み、膜厚が0.15mmになるようにし、光学顕微鏡(KEYENCE社製デジタルマイクロスコープVHX-6000)を用いて倍率100倍で観察し、画像を3か所撮影した。画像内にゲル粒が見られなかったものを「〇」、比較的小さいゲル粒が画像内に2割程度あるいは大きなゲル粒が1割程度観察されたものを「△」、それより多くゲル粒が観察されたものを「×」と評価した。観察箇所でムラがあるなどして、〇、△、×のそれぞれ中間程度のものは、「△~〇」、「×~△」などと表記するようにした。
<実験1>
CM化CNF(CM置換度0.30)に対してCMCが40質量%混合された粉末(水分量7質量%)をCNFを含む粉末として用いた。
600ml容器にイオン交換水150mlをとり、上記の粉末1.5gを加えた。これを3000rpmで60分間撹拌して水懸濁液を得た(参考例1)。また、600rpmで60分間撹拌して水懸濁液を得た(比較例1)。
また、600ml容器にイオン交換水75mlと、表1に示す濃度となるショ糖(三井製糖社製上白糖)とを加え、ホモディスパーで撹拌した。ショ糖が溶解した後、上記の粉末0.75gを加え、600rpmで60分間撹拌して水懸濁液を得た(比較例2、実施例1~3)。得られた参考例、比較例、及び実施例の水懸濁液のせん断速度1560(1/s)におけるせん断粘度(25℃)を上述の方法で測定し、また水懸濁液中に残留するCNFゲル粒を上述の方法で評価した。結果を表1に示す。
Figure 2023050644000001
ショ糖を加えない場合、3000rpmの撹拌ではゲル粒が残留しなかったが(参考例1)、600rpmの撹拌ではゲル粒が多くみられた(比較例1)。これに対し、ショ糖を加えることで、ショ糖の添加量に応じて残留するゲル粒の量が減少した。
<実験2>
ショ糖に代えてタマリンドシードガム((株)自然化粧品研究所)、カルボキシビニルポリマー(岩瀬コスファ社:carbopol(登録商標) 940 Polymer)、CMC(日本製紙:FS350HC)、デキストリン(松谷化学:TK-16)を表2に記載の濃度で用いた以外は実験1と同様にして水懸濁液を得て評価を行った。結果を表2に示す。
Figure 2023050644000002
増粘性を有する物質として、ショ糖以外の物質を用いた場合でも、せん断粘度が0.25Pa・s以上である場合に、ゲル粒の量が減少し、良好に懸濁できることを確認できた。
<実験3>
CNFを含む粉末として、CM化CNF(CM置換度0.15)に対しCMCが40質量%混合された粉末(水分量10質量%)を用い、実験1、2で用いた増粘性を有する物質を表3に記載の濃度で用いた以外は実験1と同様にして水懸濁液を得て評価を行った。結果を表3に示す。
Figure 2023050644000003
実験1の結果と同様に、増粘性を有する物質を加えない場合には、3000rpmの撹拌ではゲル粒が残留しなかったが(参考例2)、600rpmの撹拌ではゲル粒が多くみられた(比較例7)。これに対し、増粘性を有する物質を加えることで水懸濁液のせん断粘度が0.25Pa・s以上となった場合には、実験1、2の結果と同ように、残留するゲル粒の量の減少を確認することができた。

Claims (9)

  1. セルロースナノファイバーを含む粉末を、増粘性を有する物質の水溶液中で懸濁させることを含むセルロースナノファイバー水懸濁液の製造方法であって、25℃、せん断速度1560(1/s)で測定した時の水懸濁液のせん断粘度が0.25Pa・s以上である、セルロースナノファイバー水懸濁液の製造方法。
  2. セルロースナノファイバーが、アニオン変性セルロースナノファイバーである、請求項1に記載のセルロースナノファイバー水懸濁液の製造方法。
  3. アニオン変性セルロースナノファイバーが、カルボキシアルキル基を有するセルロースナノファイバーまたはカルボキシル基を有するセルロースナノファイバーである、請求項2に記載のセルロースナノファイバー水懸濁液の製造方法。
  4. アニオン変性セルロースナノファイバーが、カルボキシメチル基を有するセルロースナノファイバーであり、0.01~0.50の範囲内のカルボキシメチル置換度を有する、請求項3に記載のセルロースナノファイバー水懸濁液の製造方法。
  5. セルロースナノファイバーを含む粉末が、カルボキシメチルセルロースをさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のセルロースナノファイバー水懸濁液の製造方法。
  6. 前記増粘性を有する物質が、ショ糖であり、前記水溶液におけるショ糖の濃度が、60質量%以上である、請求項1~5のいずれか一項に記載のセルロースナノファイバー水懸濁液の製造方法。
  7. 前記増粘性を有する物質が、デキストリンであり、前記水溶液におけるデキストリンの濃度が、50質量%以上である、請求項1~5のいずれか一項に記載のセルロースナノファイバー水懸濁液の製造方法。
  8. 前記増粘性を有する物質が、タマリンドシードガムまたはカルボキシメチルセルロースであり、前記水溶液における前記増粘性を有する物質の濃度が、1.5質量%以上である、請求項1~5のいずれか一項に記載のセルロースナノファイバー水懸濁液の製造方法。
  9. 前記増粘性を有する物質が、カルボキシビニルポリマーであり、前記水溶液におけるカルボキシビニルポリマーの濃度が、0.5質量%以上である、請求項1~5のいずれか一項に記載のセルロースナノファイバー水懸濁液の製造方法。


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