JP2023046034A - 成形構造体 - Google Patents

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博行 十川
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Abstract

【課題】液滴を任意の方向に効率的に移動させることができ、高い液滴排出効果を有し、防曇効果に優れた成形構造体を提供する。【解決手段】基材の表面に複数の溝要素GEを一列に連結してなる溝を有する。溝要素は第1溝領域R1、円錐形状を有する円錐溝領域CR及び断面がV字形状を有する第2溝領域R2からなる。第1溝領域は一端において溝壁面S1Rが円錐溝領域に相似形状で小なる大きさの円錐面に両側から外接し、他端において溝壁面S1Lが円錐溝領域に両側から外接する。第2溝領域は一端において溝壁面S2Rが円錐面に両側から外接し、他端において溝壁面S2Lが円錐溝領域に両側から外接する。第1及び第2溝領域は、円錐溝領域との接続部において円錐溝領域と同一の深さを有し、一端及び他端において円錐面と同一の深さを有する。第1及び第2溝領域、円錐溝領域の形状は所定の条件式を満たす。【選択図】図2

Description

本発明は、成形構造体、特に基材の表面に微細溝が形成された成形構造体に関する。
従来、光学部品などの表面が曇ることを防ぐために、部品表面に防曇コーティングを施すことや、部品表面に水滴を水膜化させるための微細溝を形成することが知られている。
例えば、特許文献1には、スプレーや薄膜の塗布や、電気的な手段に頼ることなく、基材表面の構造だけで、親水性、防曇性、セルフクリーニング性を発現する成形構造体について開示されている。
また、特許文献2には、親水性を有する鏡の表面に水膜として保持可能な許容量を超えた余剰の水を誘導する手段を設けた浴室用鏡について開示されている。
また、非特許文献1には、開口表面の微細溝の形状と、接触角、毛細管流動に関する動力学の研究について開示されている。
特開2009-193002号公報 特開2000-279296号公報
R.R.Rye et al., Capillary Flow in Irregular Surface Grooves,Langmuir 1998, 14, 3937-3943
しかしながら、防曇コーティングでは保水量に限界があり、液滴排出効果も無い。また、毛細管現象を利用した従来の縦溝加工では、水滴のピン止め効果が発現し、液滴が移動しなくなってしまう問題があった。また、液滴が移動しなくなると、視認できるような大きな水滴が形成されるという問題があった。
本発明は上記した点に鑑みてなされたものであり、高い液滴排出効果を有し、防曇効果に優れた光学部品などの成形構造体を提供することを目的とする。また、液滴を任意の方向に効率的に移動させることができる溝構造を有する成形構造体を提供することができる。
本発明の1実施形態による成形構造体は、
基材と、
前記基材の表面に、各々が第1端部及び第2端部を有する複数の溝要素を、1の溝要素の前記第1端部を他の溝要素の前記第2端部に順次接続し、一列に連結してなる少なくとも1つの溝と、を有し、
前記溝要素は、溝壁面が四角形形状で断面がV字形状を有する第1溝領域、溝壁面が円錐形状を有する円錐溝領域及び溝壁面が四角形形状で断面がV字形状を有する第2溝領域からなり、
前記第1溝領域は、一端が前記第1端部であって溝壁面が前記円錐溝領域に相似形状で小なる大きさの円錐面に両側から外接し、他端において溝壁面が前記円錐溝領域に両側から外接し、
前記第2溝領域は、一端が前記第2端部であって溝壁面が前記円錐面に両側から外接し、他端において溝壁面が前記円錐溝領域に両側から外接し、
前記第1溝領域及び前記第2溝領域は、前記円錐溝領域との接続部において前記円錐溝領域と同一の深さを有し、かつ前記第1端部及び前記第2端部において前記円錐面と同一の深さを有し、
前記円錐溝領域の底面の中心から前記第1端部の前記円錐面の底面の中心に向かう方向を第1方向、前記第2端部の前記円錐面の底面の中心から前記円錐溝領域の底面の中心に向かう方向を第2方向とし、
前記第1溝領域の前記第1方向における長さ及び前記第2溝領域の前記第2方向における長さをそれぞれL1,L2とし、
前記基材表面における、前記円錐溝領域の底面の直径及び前記円錐面の底面の直径をそれぞれW1、W2とし、
前記円錐溝領域及び前記円錐面の深さをそれぞれD1,D2としたとき、前記溝要素は、
L1<L2 ・・・式(1)
W1>W2 ・・・式(2)
D1>D2 ・・・式(3)
(D2/W2)>(D1/W1) ・・・式(4)
を満たしている。
静止状態における固体の表面張力、液体の表面張力、及び固体/液体間の界面張力の3つの張力を説明する図である。 溝構造と液滴移動の関係を説明する図である。 本発明の第1の実施形態による溝要素GEの第1溝領域R1、第2溝領域R2及び円錐溝領域CRを模式的に示す斜視図である。 基材11の表面に設けられた溝GRの溝要素GEを、基材11に対して垂直な方向から見たときの上面図である。 図3Aに示す溝要素GEを-y方向から見たときの溝側面を模式的に示す図である。 溝要素GEを-x方向から見たときの溝断面を模式的に示す図である。 第1の実施形態による成形構造体10の上面を模式的に示す上面図である。 成形構造体10の表面に形成された溝GRの一部を拡大して示す部分拡大図である。 第2の実施形態による溝要素GEの第1溝領域R1、第2溝領域R2及び円錐溝領域CRを、基材11に対して垂直な方向から見た(上面視)ときの模式的な上面図である。 第2の実施形態の溝要素GE2と、第1の実施形態の溝要素GE1とを接続した場合の接続形態を示す上面図である。 2つの溝要素GE1が接続された接続形態を示す上面図である。 実施例1(Ex.1)の溝構造22を模式的に示す上面図である。 実施例1の溝構造22にノズルNZから滴下された水滴の変化を溝GRの伸長方向(x方向)及びこれに垂直な方向(y方向)から接触角計のカメラで観察した観察像を示す図である。 実施例1において、水滴滴下後の経過時間LTに対する水滴端部AQ1及びAQ3の接触角の測定結果を示すグラフである。 実施例2(Ex.2)の溝構造22を模式的に示す上面図である。 実施例2の溝構造22にノズルNZから滴下された水滴の変化をカメラで観察した観察像を示す図である。 実施例2において、水滴滴下後の経過時間LTに対する水滴端部AQ1及びAQ3の接触角の測定結果を示すグラフである。 実施例3(Ex.3)の溝構造22を模式的に示す上面図である。 実施例3の溝構造22にノズルNZから滴下された水滴の変化をカメラで観察した観察像を示す図である。 実施例3において、水滴滴下後の経過時間LTに対する水滴端部AQ1及びAQ3の接触角の測定結果を示すグラフである。 実施例4(Ex.4)の溝構造32を模式的に示す上面図である。 第3の実施形態による溝要素GE3の接続形態を模式的に示す上面図である。 溝要素GE3を用いて分岐及び結合された2つの溝GR1,GR2を模式的に示す上面図である。
以下においては、本発明の好適な実施形態について説明するが、これらを適宜改変し、組合せてもよい。また、以下の説明及び添付図面において、実質的に同一又は等価な部分には同一の参照符を付して説明する。
[毛細管現象による微細溝内の液滴移動]
毛細管現象が発生した溝内で液滴は、以下の式により移動の可否が決定される。
Figure 2023046034000002
なお、上記したYoungの式及び拡張したYoungの式において、θは平衡接触角(equilibrium contact angle)である。また、外周長Sは、溝の当該断面における溝の外周の全長又は弧長(arc length)である。
[第1の実施形態]
上記したように、溝内の流体の移動のしやすさについては、溝形状によらず、基材表面における溝幅Wおよび溝の軸に垂直な断面における溝の外周長Sが関係していることがわかっている。
本出願の発明者らは、溝の軸方向でこの移動のしやすさに変化を設けることで移動方向の特定が可能と想定し検討を行った。
(1)構造
図2は、本発明の第1の実施形態による溝要素GEの第1溝領域R1、第2溝領域R2及び円錐溝領域CRを模式的に示す斜視図である。なお、理解の容易さのため、第1溝領域R1、第2溝領域R2及び円錐溝領域CRを分離して図示している。
図3Aは、基材11の表面に設けられた溝GRの溝要素GEを、基材11に対して垂直な方向から見た(上面視)ときの上面図である。図3Bは、図3Aに示す溝要素GEを-y方向から見たときの溝側面を模式的に示す図である。また、図3Cは、溝要素GEを-x方向から見たときの溝断面を模式的に示す図である。
溝要素GEの第1溝領域R1は、四角形形状の溝壁面S1R,S1Lを有し、第2溝領域R2は、四角形形状の溝壁面S2R,S2Lを有している。また、第1溝領域R1及び第2溝領域R2は、図3Cのように断面がV字形状の溝領域として形成されている。
溝要素GEは円錐CGの一部である円錐溝領域CRを有している。なお、円錐CGは、基材11の表面と同一面上に底面を有している。溝要素GEの第1溝領域R1の溝壁面S1R,S1L及び第2溝領域R2の溝壁面S2R,S2Lは、円錐溝領域CRの両側から円錐溝領域CRに外接している。
溝要素GEは、溝要素GEの一方の端部である第1端部GT1及び他方の端部である第2端部GT2を有している。溝要素GEの第1端部GT1において、第1溝領域R1の溝壁面S1R,S1Lは、円錐溝領域CR(円錐CG)に相似形状で円錐溝領域CRよりも小なる大きさの円錐面CN1に両側から外接している。なお、円錐面CN1は、基材11の表面と同一面上に底面を有している。
また、溝要素GEの第2端部GT2において、第2溝領域R2の溝壁面S2R,S2Lは、第1端部GT1における円錐面CN1と同一形状の円錐面CN2に両側から外接している。
なお、1の溝要素GEの第1端部GT1を他の溝要素GEの第2端部GT2に順次接続し、一列に連結してなる溝GRが形成される。従って、以下においては、特に区別する必要がないときには、円錐面CN1及び円錐面CN2を単に円錐面CNと、溝要素GEの第1端部GT1及び第2端部GT2を溝要素GEの端部GTと称する場合がある。
なお、第1の実施形態においては、円錐溝領域CRの底面の中心O1から第1端部GT1の円錐面CN1の底面の中心O2に向かう方向(第1方向)AX1と、第2端部GT2の円錐面CN2の底面の中心O2から円錐溝領域CRの底面の中心O1に向かう方向(第2方向)AX2とは同一方向AXである。
第1溝領域R1及び第2溝領域R2は、円錐溝領域CRとの接続部において円錐溝領域CRと同一の深さD1を有し、かつ第1端部GT1及び第2端部GT2において円錐面CNと同一の深さD2を有している。なお、円錐溝領域CR及び円錐面CNは、直円錐形状を有していることが好ましい。
(2)液滴移動の要件
本願の発明者は、検討及び実験の結果、上記した溝構造を有し、溝要素GEの第1溝領域R1及び第2溝領域R2が所定の形状及び条件を満たすとき、液滴が微細溝内を所定方向に移動することを見出した。この溝要素GEの形状及び条件について、以下に詳細に説明する。
溝内の流体の移動のしやすさについては、上記したように、溝形状によらず、溝幅W及び溝の軸に垂直な断面における溝の外周長Sが関係する。すなわち、第1溝領域R1及び第2溝領域R2が所定の関係を満たすとき、毛細管現象による駆動力DFによって第1溝領域R1から第2溝領域R2へ液滴を移動させることができる。
この液滴移動の条件について以下に具体的に説明する。上記したように、円錐溝領域CRの底面の中心O1から第1端部GT1の円錐面CN1の底面の中心O2に向かう方向を第1方向AX1、第2端部GT2の円錐面CN2の底面の中心O2から円錐溝領域CRの底面の中心O1に向かう方向を第2方向AX2とする。
また、第1溝領域R1の第1方向(AX1)における長さ及び第2溝領域R2の第2方向(AX2)における長さをそれぞれL1,L2とし、基材11の表面における、円錐溝領域CRの底面の直径及び円錐面CNの底面の直径をそれぞれW1、W2とし、円錐溝領域CR及び円錐面CNの深さをそれぞれD1,D2としたとき、溝要素GEは、以下の式
L1<L2 ・・・式(1)
W1>W2 ・・・式(2)
D1>D2 ・・・式(3)
(D2/W2)>(D1/W1) ・・・式(4)
を満たす。
なお、ここで、第1溝領域R1の長さL1は、円錐溝領域CRの底面の中心O1から円錐面CN1の底面の中心O2までの距離であり、第2溝領域R2の長さL2は、円錐面CN1の底面の中心O2から円錐溝領域CRの底面の中心O1までの距離である。
また、L1、L2、W1、W2、D1、D2の数値範囲は、
30μm<W2<W1≦100μm、
30μm<L1<L2≦200μm、及び
60μm<D2<D1≦200μm ・・・式(5)
を満たす範囲であることが好ましい。
本明細書の各実施形態及び各実施例では、L1=40μm、L2=160μm、W1=40μm、W2=80μm、D1=80μm、D2=130μmであるものを用いた。
L1、L2、W1、W2、D1、D2の数値範囲は、好適な範囲として、式(5)の数値範囲を述べたが、それに限らず各パラメータの数値範囲は液滴移動を満たす条件を満たす数値であればよい。
図4Aは、本発明の第1の実施形態による成形構造体10の上面を模式的に示す上面図であり、図4Bは、成形構造体10の表面に形成された溝GRの一部を拡大して示す部分拡大図である。
図4Aに示すように、成形構造体10の基材11の表面11Sには、所定の方向(x方向)に延在する互いに平行な複数の微細な溝GRが形成され、一群の溝構造12が構成されている。当該複数の溝GRはy方向に配列され、z方向(深さ方向)に掘られた溝である。
複数の溝GRはy方向(配列方向)に一定の間隔で配列されていても、あるいは異なる間隔で配列されていてもよい。
図4Bに示すように、溝GRの各々は、隣接する2つの溝要素が所定方向に繰り返し連結又は接続された構造を有する。第1の実施形態の同一構造の溝要素GE1(なお、以下において、特に区別しない場合には単に溝要素GEと称する。)が所定方向(x方向)に連結されている。すなわち、溝要素GE1(1)及びGE1(2)を、同一の軸方向AXに沿って繰り返し直線状に連結することによって溝要素GEが直線状に一列に連結された溝GRを構成することができる。
上記式(1)~(4)を満たすとき、毛細管現象による駆動力DFが発揮されて、溝GR内の液滴は溝要素GE1(1)の第1溝領域R1から隣接する溝要素GE1(2)の第2溝領域R2へ液滴を移動させることができる。つまり、図4Aにおいて、成型構造体10に付着した液滴は毛細管力で右方向(+x方向)に移動することによって排出される。
[第2の実施形態]
図5Aは、本発明の第2の実施形態による溝要素GE2の第1溝領域R1、第2溝領域R2及び円錐溝領域CRを、基材11に対して垂直な方向から見た(上面視)ときの模式的な上面図である。
第2の実施形態の溝要素GE2において、第1溝領域R1の延在方向又は軸方向(第1の方向)AX1は、第2溝領域R2の軸方向(第1の方向)AX2に対して所定の角度θ(0<θ)だけ傾けられている。
図5Bは、第2の実施形態の溝要素GE2と、第1の実施形態の溝要素GE1とが接続された接続形態を示す上面図である。
溝要素GE2の第1溝領域R1の溝壁面S1R、S1L及び溝要素GE1の第2溝領域R2の溝壁面S2R、S2Lが外接する円錐面CNを共通の外接円錐面として、溝要素GE2は、溝要素GE1の第2溝領域R2に接続されている。
図5Aに示す第2の実施形態の溝要素GE2及び溝要素GE1を用いることによって、任意の位置、すなわち円錐溝領域CRの円錐CGの中心O1で折れ曲がった溝GRを構成することができる。当該構成により、基材11の表面11Sに付着した液滴は、駆動力DFの発揮により誘導され、溝要素GE2の第1溝領域R1から隣接する溝要素GE1の第2溝領域R2に移動する。
図5Cは、2つの第1の実施形態の溝要素GE1が接続された接続形態を示す上面図である。
溝要素GE1の第1溝領域R1の溝壁面S1R、S1L及び溝要素GE1の第2溝領域R2の溝壁面S2R、S2Lが外接する円錐面CNを共通の外接円錐面として、溝要素GE2は、溝要素GE1の第2溝領域R2と接続されている。
2つの溝要素GE1を用いることによって、円錐面CNの中心O2で折れ曲がった溝GRを構成することができる。当該構成により、基材11の表面11Sに付着した液滴は、駆動力DFの発揮により誘導され、溝要素GE1の第1溝領域R1から隣接する溝要素GE1の第2溝領域R2に移動する。
図6A及び図6Bを参照して、実施例1(Ex.1)について詳細に説明する。実施例1を構成するサンプルは、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)からなる基板にレーザ加工により溝を形成して作成した。
また、実施例1を構成するサンプルでの水滴の観察は、接触角計(協和界面科学製PCA-11)を用い、いずれも接触角計のノズルNZから2μlの水滴を滴下して行った。
図6Aは、実施例1(Ex.1)の溝構造22を模式的に示す上面図である。実施例1(Ex.1)の溝GRは、第1の実施形態の複数の溝要素GE1が所定の方向(x方向)に直線状に連結された溝部分(直線溝部GL)と、少なくとも1つの溝要素GE1からなる直線状の溝部分とが角度θで接続されて屈曲溝部GBを有するように構成されている。なお、液滴の誘導方向MVを図中、矢印で示している。
なお、直線溝部GLと屈曲溝部GBとの接続部分(屈曲接続部)BCは、図5Bに示したように、第2の実施形態の溝要素GE2及び第1の実施形態の溝要素GE1による接続形態を有している。しかしながら、屈曲接続部BCは、2つの溝要素GE1で構成されていてもよく、あるいは2つの溝要素GE2で構成され、屈曲溝部GBが形成されていてもよい。
溝GRは、x方向に延在する直線溝部GLと少なくとも1つの屈曲溝部GBとを有している。実施例1(Ex.1)の場合では、溝GRは、3つの屈曲接続部BCによって形成された1つの屈曲溝部GBを有している。
屈曲溝部GBは、基材11の表面11Sに垂直な方向から見た場合(上面視)において、V字形状を有している。例えば、屈曲角θは30°であるが、これに限定されない。また、屈曲溝部GBは、y方向に対して対称であるように設けられることが好ましいが、非対称なV字形状を有していてもよい。
基材11の表面11Sにおいて、複数の溝GRが当該所定方向に垂直な方向(y方向)に配され、一群の溝構造22が構成されている。また、一群の溝構造22上に滴下された液滴AQが模式的に示されている。
図6Bは、実施例1(Ex.1)の溝構造22にノズルNZから2μlの水滴を滴下し、滴下された水滴の変化を溝GRの伸長方向(x方向)及びこれに垂直な方向(y方向)から接触角計のカメラで観察した観察像を示している。なお、水滴の滴下後の経過時間LTが1msec(ミリ秒)、10msec、20msec、30msecの像を順次並べて示している。
図6Bに示すように、滴下直後(経過時間LT=1msec)の位置から、時間の経過とともに水滴AQの+x側の水滴端部AQ1が溝方向(+x方向)に向かって移動しており、-x側の水滴端部AQ2には殆ど移動が観察されなかった。一方、y方向においては、水滴端部AQ3及びAQ4には大きな移動は観察されなかった。
図6Cは、実施例1(Ex.1)において、水滴滴下後の経過時間LTに対する水滴端部AQ1及びAQ3の接触角φの測定結果を示すグラフである。なお、複数回の測定結果を示している。
水滴端部AQ1及びAQ3の接触角φは時間の経過とともに低減した。特に、移動方向(+x方向)側の端部である水滴AQ1の接触角が時間の経過とともに大きく低減されることが確認された。
従って、溝構造22によって水滴AQが特定の方向(溝GRの延在方向)に誘導されて移動することが確認された。
図7Aは、実施例2(Ex.2)の溝構造22を模式的に示す上面図である。実施例2(Ex.2)の溝GRは、複数の溝要素GE1が液滴の移動方向(x方向)に直線状に一列に連結された複数の直線溝部GLと、少なくとも1つの溝要素GE1からなる複数の直線状の屈曲溝部GBとが屈曲角θで交互に接続されて構成されている。
直線溝部GLと屈曲溝部GBとの接続部分は、図5Bに示した接続形態を有している。直線溝部GLと屈曲溝部GBとの屈曲角θは45°であるが、これに限定されない。また、屈曲溝部GBは、y方向に対して対称であるように設けられることが好ましいが、非対称なU字形状を有していてもよい。
図7Bは、実施例2(Ex.2)の溝構造22にノズルNZから2μlの水滴を滴下し、滴下された水滴の変化をカメラで観察した観察像を示している。
滴下直後(経過時間LT=1msec)の位置から、時間の経過とともに水滴AQの+x側の水滴端部AQ1が溝方向(+x方向)に向かって移動しており-x側の水滴端部AQ2には殆ど移動が観察されなかった。
一方、y方向においては、-y側の水滴端部AQ4には大きな移動は観察されなかったが、+y側の水滴端部AQ3が+y方向に移動することが確認された。
図7Cは、実施例2(Ex.2)において、水滴滴下後の経過時間LTに対する水滴端部AQ1及びAQ3の接触角φの複数回の測定結果を示すグラフである。
水滴端部AQ1及びAQ3の接触角φは時間の経過とともに低減した。特に、移動方向(+x方向)側の端部である水滴AQ1の接触角が時間の経過とともに大きく低減されることが確認された。
従って、溝構造22によって水滴AQが特定の方向(溝GRの延在方向)に誘導されて移動することが確認された。
図8Aは、実施例3(Ex.3)の溝構造22を模式的に示す上面図である。実施例3(Ex.3)の溝GRは、液滴の移動方向(x方向)に対して屈曲した屈曲溝部GB1及びGB2が溝GRの延在方向(x方向)に対して角度θで交互に接続されて形成されている。
より詳細には、屈曲溝部GB1及びGB2は、複数の溝要素GE1が直線状に連結されて形成されている。屈曲溝部GB1及びGB2の屈曲接続部BCは、図5Bに示した接続形態を有しているが、これに限定されない。図5Cに示した接続形態で接続されていてもよい。角度θは45°であるが、これに限定されない。また、y方向に対して対称な形態であることが好ましいが、非対称な形態を有していてもよい。
図8Bは、実施例3(Ex.3)の溝構造22にノズルNZから2μlの水滴を滴下し、滴下された水滴の変化をカメラで観察した観察像を示している。
滴下直後(経過時間LT=1msec)の位置から、時間の経過とともに水滴AQの+x側の水滴端部AQ1が溝方向(+x方向)に向かって移動しており、また、-x側の水滴端部AQ2には殆ど移動が観察されなかった。
一方、y方向においては、水滴AQの+y側の水滴端部AQ3が溝方向(+y方向)に向かって移動しており、また、-y側の水滴端部AQ4には殆ど移動が観察されなかった。
図8Cは、実施例3(Ex.3)の水滴滴下後の経過時間LTに対する水滴端部AQ1及びAQ3の接触角φの複数回の測定結果を示すグラフである。
水滴端部AQ1及びAQ3の接触角φは時間の経過とともに大きく低減されることが確認された。
従って、溝構造22によって水滴AQが特定の方向(溝GRの延在方向:x方向)及び溝GRの延在方向に垂直な方向(y方向)に誘導されて移動することが確認された。
図9は、実施例4(Ex.4)の溝構造32を模式的に示す上面図である。溝構造32はヒートパイプ等のパイプ31の内壁31Sの表面に形成されている。パイプ31は屈曲した構造を有している。
溝構造32は、複数の溝要素GEがパイプ31の曲がりに沿って曲線状に形成された屈曲溝部GBと、パイプ31の直線部に沿って形成された直線溝部GLとを有している。すなわち、溝構造32は、パイプの伸長方向に沿って延在して形成されている。
より詳細には、屈曲溝部GBにおいて、複数の溝要素GE2が接続されることによって溝GRが曲線状に形成されている。この場合パイプ31の内壁31Sに付着した液滴は、駆動力DFの発揮により、溝要素GE2の第1溝領域R1から隣接する溝要素GE2の第2溝領域R2に移動する。
なお、溝GRは、複数の溝要素GE1、又は、溝要素GE1及び溝要素GE2を接続して構成されていても良い。
本実施形態によれば、基材の形状に応じて溝GRを形成することができ、液滴を任意の方向に移動させることができ、また効率的に液滴を移動させることができる。
[第3の実施形態]
図10Aは、本発明の第3の実施形態による溝要素GE3の接続形態を示す図であり、基材11に対して垂直な方向から見た(上面視)ときの模式的な上面図である。
第3の実施形態の溝要素GE3は、2つ以上の第1溝領域R1を有している。そして、溝要素GE3の2つの第1溝領域R1と、2つの第1の実施形態の溝要素GE1(1)及びGE1(2)とが接続され、分岐接続GJが構成されている。
より具体的には、溝要素GE3の1つの第1溝領域R1の溝壁面S1R、S1L及び溝要素GE1(1)の第2溝領域R2の溝壁面S2R、S2Lが外接する第1の円錐面CN(1)を共通の外接円錐面として、溝要素GE3は溝要素GE1(1)の第2溝領域R2と接続されている。さらに、溝要素GE3の他の第1溝領域R1の溝壁面S1R、S1L及び溝要素GE1(2)の第2溝領域R2の溝壁面S2R、S2Lが外接する第2の円錐面CN(2)を共通の外接円錐面として、溝要素GE3は、溝要素GE1(2)の第2溝領域R2と接続されている。
溝要素GE3と溝要素GE1(1)とは、溝要素GE3の軸方向(x方向)AXに対して角度+θ1(0<θ1)だけ屈曲し、溝要素GE3と溝要素GE1(2)とは、溝要素GE2の軸方向AXに対して角度-θ2(0<θ2)だけ屈曲するように接続されている。
従って、溝要素GE3から分岐された2つの溝要素GE1(1)及びGE1(2)が形成され、分岐接続構造を形成することができる。第3の実施形態に係る構造は、図10Aのような溝構造の分岐接続構造を繰り返し形成することによって、上記各実施例のような直線構造のみを並列して形成した場合よりも、溝要素の存在割合を増加させることができ、さらに高い液滴排出効果を有する。例えば、図10Aのように各溝要素を組み合わせて、格子形状の溝形状を有する成形構造体を形成することができる。
図10Bは、溝要素GE3を用いて分岐及び結合された2つの溝GR1,GR2を模式的に示す上面図である。
より詳細には、溝GRは、溝要素GE3によって2つの溝GR1及びGR2に分岐されている(分岐部GJ1)。2つの溝GR1及びGR2は、分岐部GJ2において1つの溝GRに結合されている。
かかる分岐接続GJを用いることによって、液滴を任意の方向に効率的に移動させることができる溝構造及び成形構造体を提供することができる。
上記において説明した実施形態及び実施例を適宜改変し、又は組み合わせて種々の溝構造を実現することが可能である。
以上、詳細に説明したように、本発明によれば、高い液滴排出効果を有し、防曇効果に優れた光学部品などの成形構造体を提供することができる。また、液滴を任意の方向に効率的に移動させることができる溝構造を有する成形構造体を提供することができる。
10:成形構造体
11:基材
11S:基材表面
12,22,32:溝構造
31:パイプ
31S:パイプの内壁
AQ:水滴
CG:円錐
CN,CN1,CN2:円錐面
CR:円錐溝領域
GB:屈曲溝部
GE1,GE2,GE3:溝要素
GL:直線溝部
GR,GR1,GR2:溝
R1:第1溝領域
R2:第2溝領域

Claims (9)

  1. 基材と、
    前記基材の表面に、各々が第1端部及び第2端部を有する複数の溝要素を、1の溝要素の前記第1端部を他の溝要素の前記第2端部に順次接続し、一列に連結してなる少なくとも1つの溝と、を有し、
    前記溝要素は、溝壁面が四角形形状で断面がV字形状を有する第1溝領域、溝壁面が円錐形状を有する円錐溝領域及び溝壁面が四角形形状で断面がV字形状を有する第2溝領域からなり、
    前記第1溝領域は、一端が前記第1端部であって溝壁面が前記円錐溝領域に相似形状で小なる大きさの円錐面に両側から外接し、他端において溝壁面が前記円錐溝領域に両側から外接し、
    前記第2溝領域は、一端が前記第2端部であって溝壁面が前記円錐面に両側から外接し、他端において溝壁面が前記円錐溝領域に両側から外接し、
    前記第1溝領域及び前記第2溝領域は、前記円錐溝領域との接続部において前記円錐溝領域と同一の深さを有し、かつ前記第1端部及び前記第2端部において前記円錐面と同一の深さを有し、
    前記円錐溝領域の底面の中心から前記第1端部の前記円錐面の底面の中心に向かう方向を第1方向、前記第2端部の前記円錐面の底面の中心から前記円錐溝領域の底面の中心に向かう方向を第2方向とし、
    前記第1溝領域の前記第1方向における長さ及び前記第2溝領域の前記第2方向における長さをそれぞれL1,L2とし、
    前記基材表面における、前記円錐溝領域の底面の直径及び前記円錐面の底面の直径をそれぞれW1、W2とし、
    前記円錐溝領域及び前記円錐面の深さをそれぞれD1,D2としたとき、前記溝要素は、
    L1<L2 ・・・式(1)
    W1>W2 ・・・式(2)
    D1>D2 ・・・式(3)
    (D2/W2)>(D1/W1) ・・・式(4)
    を満たす、成形構造体。
  2. 前記少なくとも1つの溝を構成する前記複数の溝要素の各々において、前記第1溝領域の延在方向と前記第2溝領域の延在方向とが同一方向である、請求項1に記載の成形構造体。
  3. 前記少なくとも1つの溝は、前記溝の溝要素のうち少なくとも1つが、前記第1溝領域の延在方向が前記第2溝領域の延在方向に対して屈曲角θで屈曲した屈曲接続部を有する、請求項1に記載の成形構造体。
  4. 前記少なくとも1つの溝は、前記溝を構成する1の溝要素の前記第1溝領域と、前記1の溝要素に接続された他の溝要素の前記第2溝領域とが互いに屈曲角θで屈曲した屈曲接続部を有する、請求項1に記載の成形構造体。
  5. 前記少なくとも1つの溝は、前記溝の前記溝要素のうち少なくとも1つが2つ以上の前記第1溝領域を有し、前記2つ以上の前記第1溝領域は、それぞれ他の前記溝要素に接続されて分岐・結合構造を有する、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の成形構造体。
  6. 前記基材の表面に互いに平行に配された複数の前記溝からなる溝構造を有する、請求項1ないし5のいずれか一項に記載の成形構造体。
  7. 前記基材の表面に互いに平行に配された複数の前記溝からなる溝構造を有し、
    前記溝は、複数の前記屈曲接続部を有する、請求項3又は4に記載の成形構造体。
  8. 前記基材はパイプであり、前記基材の表面は前記パイプの内壁表面である、請求項1ないし7のいずれか一項に記載の成形構造体。
  9. 前記少なくとも1つの溝は、前記パイプの伸長方向に沿って延在している、請求項8に記載の成形構造体。
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