JP2023038930A - 眼表面薬物滞留化剤およびこれを含む点眼剤、並びに、これらの剤を用いた眼表面薬物滞留方法および眼科疾患治療方法 - Google Patents

眼表面薬物滞留化剤およびこれを含む点眼剤、並びに、これらの剤を用いた眼表面薬物滞留方法および眼科疾患治療方法 Download PDF

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Abstract

【課題】眼表面への薬剤の優れた滞留性向上を可能とする眼表面薬物滞留化剤および該剤を含有する点眼剤を提供すること。【解決手段】3種の異なる構成単位を特定割合で有する共重合体を含む眼表面薬物滞留化剤であれば、眼表面(特に、角膜表面)に対して優れた薬剤滞留化効果を発現し、その薬物の効果や作用を長時間にわたり持続させることが可能となることを見出し、本発明を完成させた。【選択図】なし

Description

本発明は、特定の構造を有する共重合体を含む眼表面薬物滞留化剤および該剤を含有する点眼剤、並びに、これらの剤を用いた眼表面薬物滞留方法および眼科疾患治療方法に関する。
点眼剤は、簡便に使用することができながら、効果の高い治療法である事が知られている。このため、ドライアイや緑内障等の様々な眼科疾患に対して、各種点眼剤が開発され、治療に活用されている。
例えば、ドライアイ治療薬としては、ムコスタ点眼液(ドライアイ治療薬物:レバミピド)が用いられ、また、緑内障治療薬としては、チモプトール点眼液(緑内障治療薬物:チモロールマレイン酸塩)が用いられることもある。これら点眼液を治療に用いる際、通常、1日2~4回程度の点眼が必要とされ、治療期間については、数週間から数年間等と長期間にわたる場合もある。
患者の負担を抑えることを目的として、薬物の効果を持続させることで点眼回数を減らすことのできる点眼剤について開発がなされている。
薬物の効果を持続させるための技術として、点眼剤に増粘剤を配合して高粘度点眼剤とすることで薬物を眼表面へと滞留させる技術(特許文献1)や、点眼剤自体には低粘度でありながら、点眼後に点眼剤が眼表面に存在するイオン濃度/pHを感知して高粘度となり薬物を眼表面へと滞留させる技術(特許文献2)等が開発されている。また、薬理活性成分を複数種配合し、その有効性をより高めることで薬理効果を持続させる技術(特許文献3)等も開発なされている。
しかし、眼科疾患に有効となる薬剤を、眼表面や角膜表面に滞留させ、本来発現すべき効果を長時間にわたって持続させる技術については、いまだ、満足のいく技術は開発できていないのが現状であった。
特開2006-89460号公報 特表2014-525891号公報 特開2021-046394号公報
眼科疾患では、有効成分を眼表面や角膜表面に滞留させ、その効果や作用を長時間にわたり持続させることが可能な点眼剤が求められているのが現状である。
本発明は、眼表面への薬剤の優れた滞留性向上を可能とする眼表面薬物滞留化剤および該剤を含有する点眼剤並びに、これらの剤を用いた眼表面薬物滞留方法および眼科疾患治療方法を提供する。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、3種の異なる構成単位を特定割合で有する共重合体を含む眼表面薬物滞留化剤であれば、眼表面(特に、角膜表面)に対して優れた薬剤滞留化効果を発現し、その薬物の効果や作用を長時間にわたり持続させることが可能となることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、以下の通りである。
1.下記一般式(1a)~(1c)で表される構成単位を含み、重量平均分子量5,000~2,000,000であり、各構成単位の比率[(1a)/(1b)/(1c)]が100/10~400/2~50である共重合体(P)を0.001~1.0 w/v%を含む眼表面薬物滞留化剤。
Figure 2023038930000001
(一般式(1a)中、Rは水素原子又はメチル基を表す。)
Figure 2023038930000002
(一般式(1b)中、Rは水素原子又はメチル基を表す。RおよびRはそれぞれ独立に水素原子、メチル基、エチル基、又は互いに結合したモルホリノ基を表す。)
Figure 2023038930000003
(一般式(1c)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは炭素数12~24の炭化水素基を表す。)
2.前項1に記載の眼表面薬物滞留化剤を含有する点眼剤。
3.眼科疾患治療用点眼剤と併用投与すること特徴とする前項1に記載の眼表面薬物滞留化剤。
4.眼科疾患治療用点眼剤投与後に投与すること特徴とする前項1に記載の眼表面薬物滞留化剤。
5.前記(1b)で表される構成単位がN,N-ジメチルアクリルアミドであり、かつ前記(1c)で表される構成単位がステアリルメタクリレートである、前項1又は3に記載の眼表面薬物滞留化剤。
6.前項5に記載の眼表面薬物滞留化剤並びにレバミピド、ジクアホソルナトリウム若しくはヒアルロン酸ナトリウムを含有するドライアイ治療剤。
7.以下の工程を含む、眼表面薬物滞留方法;
眼科疾患治療用点眼剤、並びに、下記一般式(1a)~(1c)で表される構成単位を含み、重量平均分子量5,000~2,000,000であり、各構成単位の比率[(1a)/(1b)/(1c)]が100/10~400/2~50である共重合体(P)を0.001~1.0 w/v%を含む組成物を、ヒトを含む哺乳類に投与する工程。
Figure 2023038930000004
(一般式(1a)中、Rは水素原子又はメチル基を表す。)
Figure 2023038930000005
(一般式(1b)中、Rは水素原子又はメチル基を表す。RおよびRはそれぞれ独立に水素原子、メチル基、エチル基、又は互いに結合したモルホリノ基を表す。)
Figure 2023038930000006
(一般式(1c)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは炭素数12~24の炭化水素基を表す。)
7.前記組成物は、前記眼科疾患治療用点眼剤投与後に投与する、前項6に記載の眼表面薬物滞留方法。
8.前記眼科疾患治療用点眼剤がレバミピドである、前項6に記載の眼表面薬物滞留方法。
9.前記眼科疾患治療用点眼剤がジクアホソルナトリウムである、前項6に記載の眼表面薬物滞留方法。
10.前記眼科疾患治療用点眼剤がヒアルロン酸ナトリウムである、前項6に記載の眼表面薬物滞留方法。
11.以下の工程を含む、眼科疾患治療方法;
眼科疾患治療用点眼剤、並びに、下記一般式(1a)~(1c)で表される構成単位を含み、重量平均分子量5,000~2,000,000であり、各構成単位の比率[(1a)/(1b)/(1c)]が100/10~400/2~50である共重合体(P)を0.001~1.0 w/v%を含む組成物を、ヒトを含む哺乳類に投与する工程。
Figure 2023038930000007
(一般式(1a)中、Rは水素原子又はメチル基を表す。)
Figure 2023038930000008
(一般式(1b)中、Rは水素原子又はメチル基を表す。RおよびRはそれぞれ独立に水素原子、メチル基、エチル基、又は互いに結合したモルホリノ基を表す。)
Figure 2023038930000009
(一般式(1c)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは炭素数12~24の炭化水素基を表す。)
12.前記組成物は、前記眼科疾患治療用点眼剤投与後に投与する、前項11に記載の眼科疾患治療方法。
13.前記眼科疾患治療用点眼剤はレバミピドであり、かつ前記眼科疾患はドライアイである、前項11の治療方法。
14.前記眼科疾患治療用点眼剤はジクアホソルナトリウムであり、かつ前記眼科疾患はドライアイである、前項11の治療方法。
15.前記眼科疾患治療用点眼剤はヒアルロン酸ナトリウムであり、かつ前記眼科疾患はドライアイである、前項11の治療方法。
16.前記ドライアイが涙液層破壊時間短縮型ドライアイである、前項6に記載のドライアイ治療剤。
本発明の眼表面薬物滞留化剤及び眼表面薬物滞留方法は、有効成分(眼科用薬剤)を眼表面へ滞留させることができることを確認した。さらに、本発明の眼表面薬物滞留化剤は、眼科疾患治療用点眼剤の有効成分の効果や作用を長時間にわたって持続させる効果を有することを確認した。
加えて、本発明の眼科疾患治療方法は、ドライアイを治療できることを確認した。
薬物眼表面滞留性試験結果。点眼後10分後および30分後における、眼表面のレバミピド(REB)濃度を測定した。「REB(左側)」は、眼科用薬剤を含む点眼剤(レバミピド点眼液)にて処理した。「MPCP+REB(中央)」は、本実施例の溶液の点眼液(眼表面薬物滞留化剤)、レバミピド点眼液の順で点眼処理した。「REB+MPCP(右側)」は、レバミピド点眼液、実施例の溶液の点眼液(眼表面薬物滞留化剤)の順で点眼処理した。 ウサギドライアイモデルに対するドライアイ治療効果(Tear Break-UpAreaの測定)。点眼直後(0日:左側)、2日後(中央)および5日後(右側)におけるTear Break-UpAreaを測定した。「REB」は、眼科用薬剤を含む点眼剤(レバミピド点眼液)にて処理した。「MPCP+REB」は、本実施例の溶液の点眼液(眼表面薬物滞留化剤)、レバミピド点眼液の順で点眼処理した。「REB+MPCP」は、レバミピド点眼液、実施例の溶液の点眼液(眼表面薬物滞留化剤)の順で点眼処理した。「PBS」は、生理食塩液点眼直処理をした。なお、ドライアイモデル0日目の数値を100として、算出している。 ウサギドライアイモデルに対するドライアイ治療効果(ムチン量の測定)。点眼直後(0日:左側)、2日後(中央)および5日後(右側)におけるムチン量を測定した。「REB」は、眼科用薬剤を含む点眼剤(レバミピド点眼液)にて処理した。「MPCP+REB」は、本実施例の溶液の点眼液(眼表面薬物滞留化剤)、レバミピド点眼液の順で点眼処理した。「REB+MPCP」は、レバミピド点眼液、実施例の溶液の点眼液(眼表面薬物滞留化剤)の順で点眼処理した。「PBS」は、生理食塩液点眼直処理をした。なお、正常ウサギ(ドライアイモデルではない)の数値を100として、算出している。 温度に変化に伴う粘性変化試験結果。室温である20℃(A)と体温付近である37℃(B)の2点で、各点眼剤の粘性を測定した。「MPCP」は、本実施例の溶液の点眼液(眼表面薬物滞留化剤)を、「DIQ」は眼科用薬剤を含む点眼剤(ジクアホソルナトリウム点眼液)、「HYA」は眼科用薬剤を含む点眼剤(ヒアルロン酸ナトリウム点眼液)を示す。 ウサギドライアイモデルに対するドライアイ治療効果(Tear Break-Up Areaの測定)。DIQ点眼液またはHYA点眼液とMPCP溶液を併用処理した際の眼表面ムチン被覆傷害モデルに対する影響について確認した。AおよびCは点眼2日後におけるTear Film Break-Up Areaを,BおよびDは点眼5日後におけるTear FilmBreak-Up Areaを示す.「Saline」は、生理食塩液にて点眼処理した。「DIQ」はジクアホソルナトリウムを含む点眼剤(ジクアホソルナトリウム点眼液)、「DIQ+MPCP」は、ジクアホソルナトリウム点眼液、本実施例の溶液の点眼液(眼表面薬物滞留化剤)の順で点眼処理した。「HYA」はヒアルロン酸を含む点眼剤(ヒアレイン点眼液)、「HYA+MPCP」は、ヒアレイン点眼液、本実施例の溶液の点眼液(眼表面薬物滞留化剤)の順で点眼処理した。 ウサギドライアイモデルに対するドライアイ治療効果(ムチン量の測定)。DIQ点眼液またはHYA点眼液とMPCP溶液を併用処理した際の涙液中ムチン量を確認した。AおよびCは点眼2日後における涙液中ムチン量を、BおよびDは点眼5日後における涙液中ムチン量を示す。「Saline」は、生理食塩液にて点眼処理した。「DIQ」はジクアホソルナトリウムを含む点眼剤(ジクアホソルナトリウム点眼液)、「DIQ+MPCP」は、ジクアホソルナトリウム点眼液、本実施例の溶液の点眼液(眼表面薬物滞留化剤)の順で点眼処理した。「HYA」はヒアルロン酸を含む点眼剤(ヒアレイン点眼液)、「HYA+MPCP」は、ヒアレイン点眼液、本実施例の溶液の点眼液(眼表面薬物滞留化剤)の順で点眼処理した。
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明の眼表面薬物滞留化剤は、下記一般式(1a)~(1c)で表される構成単位を含み、重量平均分子量が5,000~2,000,000である共重合体(P)を含む。前記共重合体(P)の眼表面薬物滞留化剤での濃度が0.001~1.0 w/v%である。加えて、前記共重合体(P)における前記各構成単位の比率(モル比率)[(1a)/(1b)/(1c)]は、100/10~400/2~50である。
Figure 2023038930000010
上記一般式(1a)中、Rは水素原子又はメチル基を表す。
Figure 2023038930000011
上記一般式(1b)中、Rは水素原子又はメチル基を表す。RおよびRはそれぞれ独立に水素原子、メチル基、エチル基、又は互いに結合したモルホリノ基を表す。
Figure 2023038930000012
上記一般式(1c)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは炭素数12~24の炭化水素基を表す。
本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート又はメタクリレート」を意味し、他の類似用語についても同様である。
本明細書において、好ましい数値範囲(例えば、濃度や重量平均分子量の範囲)を段階的に記載した場合、各下限値および上限値は、それぞれ独立して組み合わせることができる。例えば、「好ましくは10以上、より好ましくは20以上、そして、好ましくは100以下、より好ましくは90以下」という記載において、「好ましい下限値:10」と「より好ましい上限値:90」とを組み合わせて、「10以上90以下」とすることができる。また、例えば、「好ましくは10~100、より好ましくは20~90」という記載においても、同様に「10~90」とすることができる。
<共重合体(P)>
本発明の眼表面薬物滞留化剤に用いられる(含まれる)共重合体(P)は、一般式(1a)~(1c)を構成単位とし、重量平均分子量が5,000~2,000,000である。
〔一般式(1a)で表される構成単位〕
本発明で用いられる共重合体(P)は、下記一般式(1a)で表される構成単位、すなわち、ホスホリルコリン構造を有する構成単位(以下、「PC構成単位」ともいう。)を有する。共重合体(P)がPC構成単位を有することにより、共重合体(P)に薬物の眼表面もしくは角膜表面への優れた滞留作用を付与することができる。
Figure 2023038930000013
上記一般式(1a)中、Rは水素原子又はメチル基を表す。
PC単量体としては、入手性の観点から例えば、2-((メタ)アクリロイルオキシ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ エチルホスフェートが好ましく、さらに下記式(1a’)で表される2-(メタクリロイルオキシ)エチル2-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート(ホスファート)(以下、「2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン」ともいう)が好ましい。
Figure 2023038930000014
〔一般式(1b)で表される構成単位〕
本発明で用いられる共重合体(P)は、下記一般式(1b)で表される構成単位(以下、「アミド構成単位」ともいう。)を有する。共重合体(P)をアミド構成単位によって高分子量化することにより、共重合体(P)の眼表面もしくは角膜表面への滞留性を向上させることができる。
Figure 2023038930000015
一般式(1b)中、Rは水素原子又はメチル基を表す。RおよびRはそれぞれ独立に水素原子、メチル基、エチル基、又は互いに結合したモルホリノ基を表す。
アミド構成単位は、下記一般式(1b’)で表される単量体(以下、「アミド単量体」ともいう。)であり、(メタ)アクリルアミド又は(メタ)アクリルアミド誘導体を共重合することにより得ることができる。
Figure 2023038930000016
上記一般式(1b’)中のR、R、およびRは、それぞれ一般式(1b)中のそれらと同義である。
式(1b’)で表される単量体の具体例としては、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、およびN-アクリロイルモルホリン等が挙げられるが、好ましくはN,N-ジメチルアクリルアミドが好ましい。
共重合体(P)において、PC構成単位(1a)の数とアミド構成単位(1b)の数との比率[(1a)/(1b)]は、PC構成単位の数を100として、100/10~400であり、好ましくは100/30~250、より好ましくは100/50~150、さらに好ましくは100/70~120、よりさらに好ましくは100/80~110、最も好ましくは100/80~100である。
1bが大きすぎる場合には点眼剤を製造する際に必要となる無菌ろ過が困難となるおそれがあり、小さすぎる場合には表面薬物滞留化効果が見込めない。
PC構成単位の数に対するアミド構成単位の数の比が大きすぎる場合、本発明の眼表面薬物滞留化剤を製造する際に行われる無菌ろ過が困難となるおそれがある。一方、当該比が小さすぎる場合、共重合体(P)の高分子量化が不十分となり、共重合体(P)の眼表面もしくは角膜表面への滞留効果が不十分となるおそれがある。
〔一般式(1c)で表される構成単位〕
本発明で用いられる共重合体(P)は、下記一般式(1c)で表される構成単位(以下、「疎水性構成単位」ともいう。)を有する。共重合体(P)が疎水性構成単位を有することにより、共重合体(P)の眼表面もしくは角膜表面に対する接着性を向上させることができると共に、疎水性相互作用による物理架橋ゲル形成能を高め、共重合体(P)が有する薬物の眼表面もしくは角膜表面に対する滞留性をさらに高めることができる。
Figure 2023038930000017
上記一般式(1c)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは炭素数12~24の炭化水素基を表す。
一般式(1c)中のRは炭素数12~24の炭化水素基であり、直鎖状であっても分岐鎖状のいずれでもよいが、直鎖状であることが好ましい。炭素数12~24の炭化水素基は、例えば、ラウリル基、ミリスチル基、セチル基、ステアリル基、オレイル基、およびベヘニル基等が挙げられる。
はこれらの中でも共重合体(P)の眼表面もしくは角膜表面への接着性を向上させる観点から、好ましくは炭素数12~20の炭化水素基であり、より好ましくは炭素数12~18の炭化水素基であり、具体的には、好ましくはラウリル基、およびステアリル基である。
疎水性構成単位は、下記式(1c’)で表される単量体(以下、「疎水性単量体」ともいう。)を重合することにより得ることができる。
Figure 2023038930000018
上記一般式(1c’)中のRおよびRは、それぞれ一般式(1c)中のそれらと同義である。
一般式(1c’)で表される疎水性単量体の具体例としては、ラウリル(メタ)アクリレート、ミリスチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、オレイル(メタ)アクリレート、およびベヘニル(メタ)アクリレート等の直鎖アルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
一般式(1c’)で表される疎水性単量体は、これらの中でも、共重合体(P)の角膜表面への接着性を向上させる観点から、好ましくはラウリル(メタ)アクリレート、ミリスチル(メタ)アクリレート、およびステアリル(メタ)アクリレートであり、より好ましくはラウリルメタクリレート、およびステアリルメタクリレートであり、最も好ましくはステアリルメタクリレートである。
共重合体(P)において、PC構成単位(1a)の数と疎水性構成単位(1c)の数との比率[(1a)/(1c)]は、PC構成単位の数を100として、100/2~50であり、好ましくは100/5~25、最も好ましくは100/8~15である。
1cが小さすぎる場合には表面薬物滞留化効果が十分でなく、大きすぎる場合には共重合体(P) の親水性が低下することで水溶液への溶解度が低下し、表面薬物滞留化剤の製造が難しくなる。
PC構成単位の数に対する疎水性構成単位の数の比が小さすぎる場合、共重合体(P)の眼表面もしくは角膜表面への接着性が不十分となる恐れがある。一方、当該比が大きすぎる場合、共重合体(P)の親水性が低下するため水溶液への溶解性が低下し、眼表面薬物滞留化剤を製造するのが困難になるおそれがある。
共重合体(P)における前記構成単位の比率(モル比)[(1a)/(1b)/(1c)]は、共重合体(P)の薬物の角膜表面に対する接着性に関する観点から、100/10~400/2~50であり、好ましくは100/30~250/5~25、より好ましくは100/50~150/5~25、さらに好ましくは100/70~120/5~25、よりさらに好ましくは100/80~110/7~20、よりさらに好ましくは100/80~100/8~15である。
本発明において用いる共重合体(P)は、PC構成単位、アミド構成単位、および疎水性構成単位をそれぞれ少なくとも1種有していればよく、例えば、他の複数種の構成単位を含んでいてもよい。
〔共重合体(P)の重量平均分子量〕
共重合体(P)の重量平均分子量は、5,000~2,000,000であり、好ましくは10,000以上、より好ましくは20,000以上、さらに好ましくは50,000以上、よりさらに好ましくは700,000以上であり、そして、好ましくは1,800,000以下、より好ましくは1,600,000以下、さらに好ましくは1,500,000以下、よりさらに好ましくは1,300,000以下、よりさらに好ましくは1,100,000以下である。
重量平均分子量が5,000未満の場合、共重合体(P)の眼表面もしくは角膜表面への接着性が不十分となる恐れがあり、薬物の眼表面もしくは角膜表面への滞留作用を見込めない恐れがある。重量平均分子量が2,000,000を超える場合は、粘度が増大して取扱いが困難となるおそれがある。
共重合体(P)の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定による値をいう。具体的には、溶離液としてクロロホルム、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、メタノールおよびこれらの溶媒を組み合わせた液のいずれかを用いて測定したポリエチレングリコール換算の分子量をいう。
〔共重合体(P)の製造方法〕
共重合体(P)は、例えば、国際公開第2013/128633号に記載されている方法に従って前記単量体の共重合を行うことにより調製することができる。加えて、通常はランダム共重合体であるが、各構成単位が規則的に配列された交互共重合体やブロック共重合体であってもよく、一部にグラフト構造を有してもよい。
〔共重合体(P)の濃度〕
本発明の眼表面薬物滞留化剤は、共重合体(P)の濃度が0.001 w/v%以上であり、好ましくは0.002 w/v%以上、より好ましくは0.003 w/v%以上、さらに好ましくは0.005 w/v%以上であり、そして、1.0 w/v%以下であり、好ましくは0.8 w/v%以下、より好ましくは0.6 w/v%以下、さらに好ましくは0.5 w/v%以下である。
共重合体(P)の濃度が0.001 w/v%未満であると、薬物の眼表面もしくは角膜表面への十分な滞留化作用が得られない。1.0 w/v%を超えると、配合量に見合った効果が得られないために経済的に不利である。
なお、本発明において、「w/v%」は、100mlの溶液中のある成分の質量をグラム(g)で表したものである。例えば、「本発明の溶液が1.0 w/v%の共重合体(P)を含有する」とは、100mlの溶液が1.0gの共重合体(P)を含有していることを意味する。
本発明の眼表面薬物滞留化剤は、必要に応じて水を含んでも良い。該水は、通常、医薬品や医療機器の製造に用いられる水を用いることができるが特に限定されない。具体的には、イオン交換水、精製水、滅菌精製水、蒸留水および注射用水等を例示することができる。
〔本発明の眼表面薬物滞留化剤の使用態様〕
本発明の眼表面薬物滞留化剤は、通常の眼科疾患治療用点眼剤と組み合わせて(併用投与して)用いることができる。具体的には、予め公知の眼科疾患治療用点眼剤を点眼し、その後、本発明の眼表面薬物滞留化剤又は該剤を含有する点眼剤を点眼することで、公知の眼科疾患治療用点眼剤に含まれる薬物を眼表面もしくは角膜表面に滞留させ、その薬物の効果・作用を長時間にわたって持続させることができる。
本発明の眼表面薬物滞留化剤又は該剤を含む点眼剤の点眼前に用いる眼科疾患治療用点眼剤には、特に制限は無く、どのような眼科疾患治療用点眼剤を用いることができる。具体的には、薬理活性を有する薬物が配合された点眼剤であり、例えば、抗アレルギー薬、緑内障治療薬、ドライアイ治療薬、抗菌薬、散瞳薬・調節麻痺薬、局所麻酔薬等を配合した点眼剤を用いることができる。
本発明の眼表面薬物滞留化剤と組み合わせることのできる眼科疾患治療用点眼剤として、より具体的には、以下の薬物を配合した点眼剤を挙げられる。
抗アレルギー薬としては、エピナスチン塩酸塩、クロモグリク酸ナトリウム、ペミロラストカリウムが挙げられる。
緑内障治療薬としては、チモロールマレイン酸塩、オミデネパグイソプロピル、カルテオロール塩酸塩、ジピベフリン塩酸塩、ドルゾラミド塩酸塩、ニプラジロール、ブナゾシン塩酸塩、ブリモニジン酒石酸塩、ブリンゾラミド、ベタキソロール塩酸塩、リスパジル塩酸塩水和物が挙げられる。
ドライアイ治療薬としては、レバミピド、ジクアホソルナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウムが挙げられる。
抗菌薬としては、バンコマイシン塩酸塩、トブラマイシンが挙げられる。
散瞳薬・調節麻痺薬としては、アトロピン硫酸塩水和物が挙げられる。
局所麻酔薬としては、オキシブプロカイン塩酸塩が挙げられる。
本発明の眼表面薬物滞留化剤と組み合わせる眼科疾患治療用点眼剤のなかでも、緑内障治療薬もしくはドライアイ治療薬が好ましく、緑内障治療薬としてチモロールマレイン酸塩が好ましく、ドライアイ治療薬としてレバミピド、ジクアホソルナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウムが好ましい。
本発明の眼表面薬物滞留化剤の好ましい併用投与方法(併用投与形態)は、以下を例示することができるが特に限定されない。
〇投与間隔
公知の眼科疾患治療用点眼剤を投与した後に、0.1~60分後、好ましくは0.2~30分後、より好ましくは0.3~20分後に本発明の眼表面薬物滞留化剤を投与する。
〇投与量
本発明の眼表面薬物滞留化剤の投与量は、公知の眼科疾患治療用点眼剤の投与量を100とした場合(有効成分は同じ濃度で規定した場合)、0.05~10,000、好ましくは0.1~10,000、より好ましくは1~6,000である。
本発明の眼表面薬物滞留方法および眼科疾患治療方法における投与方法は、特に限定されない。例えば、公知の眼科疾患治療用点眼剤と本発明の眼表面薬物滞留化剤を、ヒトを含む哺乳類に併用投与すれば、特に限定されない。詳しくは、公知の眼科疾患治療用点眼剤を投与した後に、本発明の眼表面薬物滞留化剤0.01~0.2 mLを、1日あたり1~10回、1~8回、1~6回、1~4回、1~3回(好ましくは、朝、昼、晩)あらゆる角度から目(眼球)に滴下することが好ましい。
治療の対象は、特に限定されないが、ヒトを含む哺乳類であり、好ましくはドライアイ(特に、涙液層破壊時間短縮型ドライアイ)の予防、緩和、改善、または治療が必要な患者を対象とする。
なお、涙液層破壊時間短縮型ドライアイでは、角膜表面上に存在するムチンの機能低下や、絶対的なムチン量の低下等により、角膜表面上への涙液の伸展や涙液の保持能が低下してドライアイ症状となる。すなわち、下記の実施例の結果により、本発明の眼表面薬物滞留化剤、並びに、これらの剤を用いた眼表面薬物滞留方法および眼科疾患治療方法は、涙液層破壊時間短縮型ドライアイの治療に好ましく用いることができる。
〔その他の成分〕
本発明の眼表面薬物滞留化剤は、共重合体(P)以外にさらに必要に応じて以下の添加剤を含有してもよい。
添加剤としては、従来の点眼剤用途等に使用されているものを挙げることができ、例えば、糖類、清涼化剤、無機塩類、有機酸塩、酸、塩基、酸化防止剤、安定化剤、および防腐剤等が挙げられる。
糖類としては、例えば、ブドウ糖、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、およびトレハロース等が挙げられる。
清涼化剤としては、例えば、メントール、およびカンフル等が挙げられる。
無機塩類としては、例えば、塩化ナトリウム、および塩化カリウム等が挙げられる。
有機酸塩としては、例えば、クエン酸ナトリウム等が挙げられる。
酸としては、例えば、リン酸、クエン酸、硫酸、および酢酸等が挙げられる。
塩基としては、例えば、トリスヒドロキシメチルアミノメタン、およびモノエタノールアミン等が挙げられる。
酸化防止剤としては、例えば、酢酸トコフェロール、およびジブチルヒドロキシトルエン等が挙げられる。
安定化剤としては、例えば、エデト酸ナトリウム、およびグリシン等が挙げられる。
防腐剤としては、例えば、塩化ベンザルコニウム、クロルヘキシジングルコン酸塩、ソルビン酸カリウム、および塩酸ポリヘキサニド等が挙げられる。
〔眼表面薬物滞留化剤又は該剤を含む点眼剤の製造方法〕
本発明の眼表面薬物滞留化剤又は該剤を含む点眼剤は、共重合体(P)、水、および必要に応じてその他の成分を混合して攪拌する、一般的な点眼剤の製造方法により製造することができる。必要に応じて、点眼剤は無菌ろ過等の操作を行う。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例の範囲に限定されない。
〔共重合体(P)の調製〕
共重合体(P)は以下に示す共重合体(1)を用いた。共重合体(1)は国際公開第2013/128633号の実施例に記載されている方法によって調製した。
共重合体(1)
PC単量体として式(1a’)で表される2-(メタクリロイルオキシ)エチル2-(トリメチルアンモニオ)エチルホスファート(2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン)、アミド単量体としてN,N-ジメチルアクリルアミド、および疎水性単量体としてステアリルメタクリレートを用いた。
構成単位の構成比率(モル比)[(1a)/(1b)/(1c)]=100/90/10
重量平均分子量:1,000,000
〔共重合体(1)の重量平均分子量〕
共重合体(1)の重量平均分子量は、得られた共重合体5mgをメタノール/クロロホルム混液(80/20)に溶かして試料溶液とし、以下の分析条件で測定した。
カラム:PLgel-mixed-C
標準物質:ポリエチレングリコール
検出器:示差屈折計RI-8020(東ソー(株)製)
重量平均分子量の算出法:分子量計算プログラム(SC-8020用GCPプログラム)
流量:毎分1 mL
注入量:100 μL
カラムオーブン:40℃付近の一定温度
[眼表面への薬物滞留性試験]
以下の手順(参照文献:Development ofSustained-ReleaseOphthalmic Formulation Based on Tranilast SolidNanoparticles. Materials(Basel). 2020 Apr 3;13(7):1675. doi:10.3390/ma13071675.)に従い、眼表面への薬物の滞留性向上効果を確認するために各種の測定を行った。
〇薬物の眼表面での滞留性測定試験
(1)雄性日本白色家兎へ、以下の組み合わせで点眼した。
(I)公知のドライアイ治療薬であるレバミピド点眼液(大塚製薬製)30 μLを1回点眼した。
(II)共重合体(1)を含む溶液30 μL(共重合体(1)を1 w/v%含む水溶液を予め調製し、これを0.1 mLと、生理食塩液(塩化ナトリウム:0.9%、水:残部)とを用いて共重合体(1)を0.1 w/v%含む溶液を調製した。)を1回点眼し、5分後レバミピド点眼液30 μLを1回点眼した。
(III)レバミピド点眼液30 μLを1回点眼し、5分後共重合体(1)を含む溶液30 μLを1回点眼した。
(2)2回目の点眼((I)は1回目の点眼から5分後)から10分後および30分後につき、涙液中のレバミピド濃度を以下の方法で測定した。
〇レバミピド濃度測定試験
調製したREBサンプル(シルメル試験紙にて回収した涙液)をN,N-ジメチルホルムアミドで希釈し、サンプル瓶に入れた(分注量150 μL)。その後、HPLC法にて、以下の条件にて分析を行い、REB濃度を測定した。
移動相:リン酸緩衝液/アセトニトリル=83/17(v/v)
カラム:オクタデシルシリル化シリカゲルを充填したHPLC用カラム
Inertsil ODS-3,GLサイエンス
HPLC装置:LabSolution(島津製作所)
カラム温度:35度
流量:0.25 mL/min
検出器:UV検出器(254 nm)
注入量:10 μL
(ドライアイモデルの作製)
以下の手順でドライアイモデルを作製した。
(1)N-アセチルシステインを生理食塩液(塩化ナトリウム:0.9%、水:残部)で溶かして、10 w/v%溶液を調製した。
(2)(1)にて調製した溶液を使用して、雄性日本白色種家兎へ、1回あたり50 μLを2時間間隔で合計6回点眼投与した。
(3)点眼投与後の翌日、雄性日本白色種家兎のドライアイ状態を確認した後、ドライアイを発症したドライアイモデル(ドライアイモデル0日目)とした。
〇Tear Film Break-Up Areaの算出によるドライアイ治療効果確認
以下の手順でTear File Break-Up Areaを算出した。
(1)実施例3のドライアイモデル(ドライアイモデル0日目)に関し、ドライアイ測定装置(DR-1α、興和)を使用して、ドライアイ状態を測定した(Tear File Break-Up Areaの算出)。
(2)ドライアイ測定後(ドライアイモデル0日目)、以下の条件で5日間(ドライアイモデル1日目~5日目)毎日点眼した。
(I)レバミピド点眼液(大塚製薬製)30 μLを1回点眼した。
(II)共重合体(1)を含む溶液30 μLを1回点眼し、5分後レバミピド点眼液30 μLを1回点眼した。
(III)レバミピド点眼液30 μLを1回点眼し、5分後共重合体(1)を含む溶液30 μLを1回点眼した。
(IV)生理食塩液{生理食塩液(塩化ナトリウム:0.9%、水:残部)(大塚製薬製)}点眼30 μLを1回点眼した。
(3)点眼開始から2日目に、(1)に示す手順にて、ドライアイ状態を測定した。
(4)点眼開始から5日目に、(1)に示す手順にて、ドライアイ状態を測定した。
〇Tear Film Break-Up Areaの算出
ウサギドライアイモデルを作製した時点で、画像を取得した。この取得した画像を、画像処理ソフトImage Jで取り込み、涙液が破断した面積を算出した(初期値)。
ウサギドライアイモデルへ、上記(I)モデル、上記(II)モデル、上記(III)モデルおよび上記(IV)モデルの点眼開始から2日後、5日後に再度、画像を取得した。
この取得した画像をImage Jで取り込み、涙液が破断した面積を算出した(2日後、5日後)。
初期値(ドライアイモデル0日目)の涙液が破断した面積と、2日後もしくは5日後の涙液が破断した面積との比較を行い、これを百分率へと変換して、Tear Film Break-Up Area(%)を算出した。
〇ムチン量測定によるドライアイ治療効果確認
以下の手順に従い、ムチン量測定試験を実施した。
(1)実施例4の実施後(ドライアイ測定後)のドライアイモデルを使用してムチン量を測定した。なお、ドライアイモデル0日目において、シルメル試験紙にて涙液を5分間採取、涙液ムチン測定キット(コスモ・バイオ製)を用いて涙液中に含まれるムチン量を測定し、初期値とした。
(2)2日目および5日目について、再度、ムチン量を測定した。
正常ウサギ(ドライアイモデルではない)のムチン量を100として、0日目(ドライアイモデル作製日)、2日目(点眼開始2日目)、5日目(点眼開始5日目)のMucin level(%)を算出した。
[ドライアイモデルへの薬物投与による眼表面での滞留性の評価およびドライアイ治療の評価]
本発明の眼表面薬物滞留化剤の効果を確認するために、薬物の眼表面での滞留性測定試験およびドライアイ治療効果測定試験を実施した。試験結果を図1から図3に示す。
〇温度に変化に伴う粘性変化
MPCP溶液、ドライアイ治療薬であるジクアホソルナトリウム(DIQ)点眼液0.3%(参天製薬製)、及びドライアイ治療薬であるヒアルロン酸ナトリウム(HYA)点眼液であるヒアレイン(登録商標)点眼液0.1%(参天製薬製)の粘度測定を、音叉振動式粘度計(株式会社エー・アンド・デイ)を用いて実施した。これら粘度は室温である20℃と体温付近である37℃の2点で測定した。
〇Tear Film Break-Up Areaの算出によるドライアイ治療効果確認
実施例4の手順において、レバミピド点眼液の代わりに、DIQ点眼液またはHYA点眼液を使用して試験を実施し、涙液が破断した面積Tear File Break-Up Area(mm2)を算出した。
〇ムチン量測定によるドライアイ治療効果確認
実施例5の手順において、レバミピド点眼液の代わりに、DIQ点眼液またはHYA点眼液を使用して試験を実施し、Mucin level(%)を算出した。
<結果>
〇薬物の眼表面での滞留性測定試験結果
(I)レバミピド点眼液を点眼処理したモデル、(II)本実施例の眼表面薬物滞留化剤の点眼後にレバミピド点眼液を点眼処理したモデル、(III)レバミピド点眼後に本実施例の眼表面薬物滞留化剤を点眼処理したモデルの3種類について、薬物の眼表面での滞留性を比較した。(III)レバミピド点眼後に本実施例の眼表面薬物滞留化剤液を点眼したモデルは、点眼10分後および点眼30分後の角膜表面上におけるレバミピド濃度が高く、最も薬物滞留化効果が高かった(図1)。これにより、本実施例の眼表面薬物滞留化剤は、眼表面(特に、角膜表面)に対して優れた薬剤滞留化効果を提供できることを確認した。
〇ドライアイ治療効果測定試験結果
Tear Film Break-Up Areaの算出結果に関し、レバミピド点眼後に本実施例の眼表面薬物滞留化剤を点眼したモデルはドライアイ傷害率が約20%まで低下した(図2)。これにより、本実施例の眼表面薬物滞留化剤は、十分なドライアイ治療効果および保水効果を提供できることを確認した。
ムチン量測定試験結果に関し、レバミピド点眼後に本実施例の眼表面薬物滞留化剤を点眼したモデルはムチンレベルが140%まで上昇した(図3)。これにより、本実施例の眼表面薬物滞留化剤は、ドライアイを治療できたことを確認した。
〇温度に変化に伴う粘性変化試験結果
いずれの各種溶液においても室温(20℃)に比べ体温付近(37℃)では粘度は低下傾向にあり、MPCP溶液とDIQ点眼液の粘度は同程度であり、HYA点眼液の粘性は他の2剤と比較し高値を示した(図4)。
これにより、本実施例の眼表面薬物滞留化剤は、公知の点眼剤と同様に眼科疾患患者に点眼できることを確認した。
〇ドライアイ治療効果測定試験結果
DIQ点眼液点眼とMPCP溶液を併用処理することで、点眼2日後及び5日後のTear FilmBreak-Up Areaの低下が認められ、HYA点眼液とMPCP溶液を併用処理した際には、点眼2日後のTear Film Break-Up Areaの低下が認められた(図5)。
これにより、本実施例の眼表面薬物滞留化剤は、十分なドライアイ治療効果および保水効果を提供できることを確認した。
〇ムチン量測定によるドライアイ治療効果確認
DIQ点眼液点眼とMPCP溶液を併用処理することで、点眼2日後及び5日後の涙液中ムチン量の増加が認められ、HYA点眼液とMPCP溶液を併用処理した際には、点眼2日後の涙液中ムチン量の増加が認められた(図6)。
これにより、本実施例の眼表面薬物滞留化剤は、ドライアイを治療できたことを確認した。
本発明の眼表面薬物滞留化剤は、眼表面もしくは角膜表面に対して、薬物を十分に滞留させることができ、さらに、薬物の効果の持続性を高めることができる。

Claims (7)

  1. 下記一般式(1a)~(1c)で表される構成単位を含み、重量平均分子量5,000~2,000,000であり、各構成単位の比率[(1a)/(1b)/(1c)]が100/10~400/2~50である共重合体(P)を0.001~1.0 w/v%を含む眼表面薬物滞留化剤。
    Figure 2023038930000019
    (一般式(1a)中、Rは水素原子又はメチル基を表す。)
    Figure 2023038930000020
    (一般式(1b)中、Rは水素原子又はメチル基を表す。RおよびRはそれぞれ独立に水素原子、メチル基、エチル基、又は互いに結合したモルホリノ基を表す。)
    Figure 2023038930000021
    (一般式(1c)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは炭素数12~24の炭化水素基を表す。)
  2. 請求項1に記載の眼表面薬物滞留化剤を含有する点眼剤。
  3. 眼科疾患治療用点眼剤と併用投与すること特徴とする請求項1に記載の眼表面薬物滞留化剤。
  4. 眼科疾患治療用点眼剤投与後に投与すること特徴とする請求項1に記載の眼表面薬物滞留化剤。
  5. 前記(1b)で表される構成単位がN,N-ジメチルアクリルアミドであり、かつ前記(1c)で表される構成単位がステアリルメタクリレートである、請求項1、3又は4に記載の眼表面薬物滞留化剤。
  6. 請求項5に記載の眼表面薬物滞留化剤並びにレバミピド、ジクアホソルナトリウム若しくはヒアルロン酸ナトリウムを含有するドライアイ治療剤。
  7. 前記ドライアイが涙液層破壊時間短縮型ドライアイである、請求項6に記載のドライアイ治療剤。
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