JP2023038757A - マトリックスメタロプロテアーゼで開裂可能なペプチド基質 - Google Patents

マトリックスメタロプロテアーゼで開裂可能なペプチド基質 Download PDF

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Abstract

【課題】種々のプロテアーゼ(例えば、MMP-2、MMP-3及びMMP-9)によって開裂可能なアミノ酸配列を有するペプチドを提供すること。【解決手段】一般式:P2P1P1’P2’で表されるアミノ酸配列を含み、P1はグリシン残基(Gly)であり、P2及びP1’は疎水性アミノ酸残基であり、P2’はアラニン残基(Ala)、トリプトファン残基(Trp)、バリン残基(Val)、アルギニン残基(Arg)又はトレオニン残基(Thr)である、ペプチド。【選択図】なし

Description

本発明は、マトリックスメタロプロテアーゼで開裂可能なペプチド基質に関する。
マトリックスメタロプロテアーゼ(Matrix metallo-proteinase;MMP)は、細胞外マトリックスのリモデリングに機能する酵素群である。構造的・機能的観点から種々のファミリー及びサブファミリーに分類され、種々のMMPが協奏して作用することによって、細胞外基質を構成するほぼすべての成分を分解することが可能である。また、MMPは生理学的・病理学的プロセスに深く関与しており、がん浸潤・転移ではゼラチナーゼ群(MMP-2、MMP-9)の活性化がトリガーとなり、また、自己免疫疾患である関節リウマチでは滑膜増殖時に発現・分泌されるMMP-3がトリガーとなることが知られている。MMPの活性化を素早く検出することは、例えば、こうした疾患の早期発見及び早期治療につながると考えられている。
MMPをターゲットにした材料開発は種々の分野で進められており、細胞移植や創傷被覆材に用いる微小孔性ゲル系(特許文献1)や3次元培養等の細胞担持体(特許文献2)、バイオセンサー(特許文献3)等と多様である。
特許文献1では、ポリ(エチレングリコール)骨格からなるミクロゲル粒子を有した創傷治癒材料について報告されている。上記ミクロゲル粒子間をMMP分解性架橋剤で架橋することによって、構造的支持に必要な機械強度及び組織再生に伴うマトリックス分解性の付与が期待されている。特許文献2では機械的特性及び生化学的特性といった種々のマトリックスパラメータを制御することによって、天然環境下における細胞挙動を再現可能な細胞培養微小環境アレイについて報告されている。特許文献3では、創傷被覆材であってかつ体液、分泌液又は滲出液といったサンプル中のバイオマーカーとなる酵素群(例えばMMP-2)をリアルタイムで検出することが可能なバイオセンサーについて報告されている。上記バイオセンサーでは、2つの電極を使用し、それぞれの電極表面をゼラチン等の天然又は合成基質で被覆し、創傷部位から放出される酵素によって化学的に分解されることで電極表面が露出し、電気抵抗を検出することで創傷治癒過程を把握することが可能である。
特表2017-522113号公報 特表2016-517694号公報 特表2021-502149号公報
しかし、特許文献1~3に記載されるような基質は、1種類のMMPに対して開裂することしか具体的には示されておらず、素早い開裂、ひいては疾患の早期発見を実現するには改良の余地があった。
本発明の目的は、種々のプロテアーゼ(例えば、MMP-2、MMP-3及びMMP-9)によって開裂可能なアミノ酸配列を有するペプチドを提供することにある。
本発明は、例えば、以下の[1]~[14]に示す発明に関する。
[1]一般式:P2P1P1’P2’で表されるアミノ酸配列を含み、P1はグリシン残基(Gly)であり、P2及びP1’は疎水性アミノ酸残基であり、P2’はアラニン残基(Ala)、トリプトファン残基(Trp)、バリン残基(Val)、アルギニン残基(Arg)又はトレオニン残基(Thr)である、ペプチド。
[2]上記アミノ酸配列において、P2はロイシン残基(Leu)又はアラニン残基(Ala)であり、P2がロイシン残基(Leu)である場合、P1’はロイシン残基(Leu)であって、且つ、P2’はアルギニン残基(Arg)であり、P2がアラニン残基(Ala)である場合、P1’はロイシン残基(Leu)又はメチオニン残基(Met)であって、且つ、P2’はアラニン残基(Ala)、トリプトファン残基(Trp)、バリン残基(Val)、アルギニン残基(Arg)又はトレオニン残基(Thr)である、[1]に記載のペプチド。
[3]上記アミノ酸配列が、配列番号1、4、5、9、10又は11で表されるアミノ酸配列である、[1]又は[2]に記載のペプチド。
[4]一般式:P2P1↓P1’P2’で表される、マトリックスメタロプロテアーゼ開裂部位を有するアミノ酸配列を含み、↓は上記マトリックスメタロプロテアーゼ開裂部位であり、P1はグリシン残基(Gly)であり、P2及びP1’は疎水性アミノ酸残基であり、P2’はアラニン残基(Ala)、トリプトファン残基(Trp)、バリン残基(Val)、アルギニン残基(Arg)又はトレオニン残基(Thr)である、マトリックスメタロプロテアーゼに対する応答剤。
[5]上記アミノ酸配列において、P2はロイシン残基(Leu)又はアラニン残基(Ala)であり、P2がロイシン残基(Leu)である場合、P1’はロイシン残基(Leu)であって、且つ、P2’はアルギニン残基(Arg)であり、P2がアラニン残基(Ala)である場合、P1’はロイシン残基(Leu)又はメチオニン残基(Met)であって、且つ、P2’はアラニン残基(Ala)、トリプトファン残基(Trp)、バリン残基(Val)、アルギニン残基(Arg)又はトレオニン残基(Thr)である、[4]に記載の応答剤。
[6]上記アミノ酸配列が、配列番号1、4、5、9、10又は11で表されるアミノ酸配列である、[4]又は[5]に記載の応答剤。
[7]上記マトリックスメタロプロテアーゼがMMP-2、MMP-3及びMMP-9からなる群より選択される少なくとも一種を含有する、[4]~[6]のいずれかに記載の応答剤。
[8]上記マトリックスメタロプロテアーゼがMMP-2であり、上記MMP-2の濃度が0.45nM以上であるMMP-2含有液と反応させた場合に、上記マトリックスメタロプロテアーゼにより開裂される、[4]~[7]のいずれかに記載の応答剤。
[9]上記マトリックスメタロプロテアーゼに対する開裂反応が共鳴エネルギー移動(RET)現象によって観測されることを特徴とする、[4]~[8]のいずれかに記載の応答剤。
[10][1]~[3]のいずれかに記載のペプチドを備える、がんセンサー又はがんマーカ。
[11][1]~[3]のいずれかに記載のペプチドを備える、マトリックスメタロプロテアーゼの定量アッセイキット。
[12][1]~[3]のいずれかに記載のペプチドを備える、ドラッグデリバリーシステム。
[13][1]~[3]のいずれかに記載のペプチドを備える、細胞分離材。
[14][1]~[3]のいずれかに記載のペプチドを備える、3次元細胞培養用基材。
本発明によれば、種々のプロテアーゼ(例えば、MMP-2、MMP-3及びMMP-9)によって開裂可能であり、低濃度のMMP-2でも開裂可能なアミノ酸配列を有するペプチドを提供することができる。本発明のペプチドを用いることで、がんセンサー又はがんマーカ(既存がんマーカの補助、1次検査用)、MMPs定量アッセイキット、DDS(Drug Delivery System)、細胞分離材、細胞分取材、細胞の3次元培養用基材等の提供が期待される。また、本発明のペプチドを用いたがんセンサー等の評価系は、ゼラチン等の天然由来基質を用いた場合と異なり、ロット間差が生じにくいため、安定的な評価品質を有すると考えられる。
MMP-2に対する酵素開裂試験結果。 MMP-3に対する酵素開裂試験結果。 MMP-9に対する酵素開裂試験結果。 MMP-2に対する触媒効率;kcat/Km。 酵素濃度[E]=1.0nMにおけるMMP-2に対する酵素開裂試験結果。 酵素濃度[E]=0.5nMにおけるMMP-2に対する酵素開裂試験結果。 酵素濃度[E]=0.45nMにおけるMMP-2に対する酵素開裂試験結果。
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施の形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その趣旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
本明細書において、「アミノ酸」又は「アミノ酸残基」とは、天然に存在するアミノ酸又は天然に存在しないアミノ酸両者を示す。20種の天然アミノ酸については、アラニンがAla、システインがCys、アスパラギン酸がAsp、グルタミン酸がGlu、フェニルアラニンがPhe、グリシンがGly、ヒスチジンがHis、イソロイシンがIle、リジンがLys、ロイシンがLeu、メチオニンがMet、アスパラギンがAsn、プロリンがPro、グルタミンがGln、アルギニンがArg、セリンがSer、トレオニンがThr、バリンがVal、トリプトファンがTrp、チロシンがTyrと示される。また、上記アミノ酸は立体配置によってD体又はL体に大別されるが、本明細書におけるプロテアーゼ開裂部位を有するアミノ酸配列を構成するアミノ酸残基はL体であることが好ましい。
「ペプチド」及び「タンパク質」は、ペプチド結合により脱水縮合した2つ以上のアミノ酸を含んだ物質を指し、本明細書に記載されるアミノ酸配列は左がN末端に対応し、右はC末端に対応する。
ペプチド及びタンパク質の合成方法に特に限定はなく、有機化学的合成方法でもよく微生物や培養細胞を用いた遺伝子工学的合成方法であってもよい。上記有機化学的合成方法の手法として、特に限定はなくN末アミノ基を9-フルオレニルメチルオキシカルボニル;Fmoc基又はtert-ブトキシカルボニル;Boc基で置換したN末保護アミノ酸によるFmoc/Boc固相又は液相法、上記固相又は液相法によって合成した種々のペプチドセグメントを用いたネイティブケミカルライゲーション法等を用いてもよい。
本明細書において、「プロテアーゼ」は、ペプチド及びタンパク質のペプチド結合の加水分解を触媒する加水分解酵素を指し、「マトリックスメタロプロテアーゼ;MMP」は活性中心に亜鉛イオン(Zn2+)が配位したプロテアーゼを示し、プロテアーゼ濃度は[E]で表される。
本明細書において、「プロテアーゼ開裂部位」及び「↓」とはプロテアーゼに特異的に認識されるアミノ酸配列を有し、活性状態のプロテアーゼが存在する環境下で特異的に認識され加水分解される部位又はドメインを指す。本発明のペプチド及びタンパク質は、上記部位又はドメインを少なくとも一つ以上有しており、また複数のプロテアーゼ開裂部位を有するものであってもよい。プロテアーゼ開裂部位は、2~20アミノ酸残基、3~20アミノ酸残基又は4~15アミノ酸残基で構成されていてよい。酵素開裂するアミノ酸配列を示す場合、アミノ酸残基の開裂部位からN末端側に向かってP1部位、P2部位・・・、開裂部位からC末端側に向かってP1’部位、P2’部位・・・と呼ぶ。公知の通り、開裂部位であるP1及びP1’、開裂部位の隣接残基であるP2及びP2’は種々のプロテアーゼにおける基質特異性及び開裂効率に影響し得る。
開裂反応の観測方法に特に限定はなく、例えば電気化学ポテンシャル、蛍光、化学発光、燐光、吸光度、抗体結合又は質量の変化量によって観測してもよい。上記変化量の観測方法に特に限定はなく、例えばドナー蛍光分子とアクセプター蛍光分子間の双極子-双極子相互作用に基づいて起こる蛍光共鳴エネルギー移動;FRET等を用いてよい。上記FRET現象を起こす分子について、特に限定はなく5-(2-アミノエチルアミノ)-1-ナフタレンスルホン酸;EDANS/4-((-4-(ジメチルアミノ)-フェニル)-アゾ)-安息香酸;DABCYLペア、7-メトキシクマリン-4-酢酸;Mca/2,4-ジニトロフェニル;Dnpペア、7-アミノ-4-カルバモイルメチルクマリン;ACC/Dnpペア、トリプトファン;Trp/5-ジメチルアミノナフタレン-1-スルホン酸;Dancylペア等が例示される。上記FRET現象を起こす分子及びその分子構造を含むユニットはペプチド主鎖に導入されてもよく、ペプチド側鎖に導入されてもよい。
本明細書において「基質」とは、酵素によって反応を触媒される化学物質を指し、本発明のペプチドは、MMPに対する「基質」に該当する。基質濃度は[S]と示される。「基質の反応性」及び「開裂能」は、種々の酵素に対する基質の反応特異性を示す用語として用いられる。基質の反応特異性は、標準的な反応速度論的解析によって数値化でき、公知の方法によれば例えば、基質濃度と反応速度の関係を示す酵素反応曲線又はラインウィーバー=バークプロット等のミカエリス・メンテン式の線形プロットから導出可能である。一般的に、上記基質の反応特異性は触媒効率;kcat/Km値を指標とし、kcatは分子活性と呼ばれる単位時間当たりに酵素1分子が行う酵素回数を示し、Kmはミカエリス定数と呼ばれる最大反応速度Vmaxの半分の速度に達するときの基質濃度を示す。本明細書において、触媒効率は5.0×10-1-1以上が好ましく8.0×10-1-1以上がより好ましく、1.0×10-1-1以上がさらに好ましく、1.2×10-1-1以上が特に好ましい。また、上記手順に従って触媒効率を導出する場合、基質濃度はKm値よりも低値であることが好ましく、30μM以下が好ましく20μM以下がより好ましい。加えて、酵素開裂反応前後における上記変化量を観測する上で、基質濃度は5μM以上が好ましく、10μM以上がより好ましい。同様の理由で、酵素濃度、例えばMMP-2含有液中のMMP-2の濃度は、0.1nM以上とすることができ、0.3nM以上が好ましく、0.6nM以上がより好ましく、1.0nM以上がさらに好ましい。
一般式:P2P1P1’P2’で表されるアミノ酸配列又は一般式:P2P1↓P1’P2’で表されるアミノ酸配列において、P1はグリシン残基(Gly)であり、P2及びP1’は疎水性アミノ酸残基であり、P2’はアラニン残基(Ala)、トリプトファン残基(Trp)、バリン残基(Val)、アルギニン残基(Arg)又はトレオニン残基(Thr)である。一般式:P2P1↓P1’P2’で表されるアミノ酸配列において、↓はマトリックスメタロプロテアーゼ開裂部位である。
疎水性アミノ酸残基としては、Leu、Ala、Met、Ile、Val、Gly、Pro、Trp、Phe等が挙げられる。
一般式:P2P1P1’P2’で表されるアミノ酸配列又は一般式:P2P1↓P1’P2’で表されるアミノ酸配列において、P2はロイシン残基(Leu)又はアラニン残基(Ala)であってよく、P2がロイシン残基(Leu)である場合、P1’はロイシン残基(Leu)であってよく、且つ、P2’はアルギニン残基(Arg)であってよく、P2がアラニン残基(Ala)である場合、P1’はロイシン残基(Leu)又はメチオニン残基(Met)であってよく、且つ、P2’はアラニン残基(Ala)、トリプトファン残基(Trp)、バリン残基(Val)、アルギニン残基(Arg)又はトレオニン残基(Thr)であってよい。
一般式:P2P1P1’P2’又は一般式:P2P1↓P1’P2’で表されるアミノ酸配列の具体例として、配列番号1~11で表されるアミノ酸配列が挙げられる。すなわち、本発明のペプチドは、配列番号1~11で表されるアミノ酸配列からなる群より選択される少なくとも1種を含むものであってもよい。配列番号1~11で表されるアミノ酸配列は、少なくともMMP-2、MMP-3及びMMP-9によって開裂され得る。また、配列番号1~11で表されるアミノ酸配列は、低濃度(0.45nM)のMMP-2を含有する液によっても開裂され得る。配列番号1~11で表されるアミノ酸配列において、開裂部位は、P1及びP1’の間に存在する。本発明のペプチドを開裂し得るMMPは他にも存在し、構造的・機能的観点からコラゲナーゼ群(MMP-1,8,13)、ゼラチナーゼ群(MMP-2,9)、ストロムライシン群(MMP-3,10,11)、細胞膜貫通型MMP(MMP-14;MT1-MMP,MMP-15;MT2-MMP,MMP-16;MT3-MMP,MMP-17;MT4-MMP)等に分類される。上記MMPは単一で作用してもよく、2種類以上のMMPが協奏して作用してもよい。本明細書においては、2種類以上のMMPをまとめて「MMPs」ともいう。
本発明における、一般式:P2P1P1’P2’又は一般式:P2P1↓P1’P2’で表されるアミノ酸配列は、配列番号1,4,5,9,10又は11で表されるアミノ酸配列であることが好ましい。すなわち、本発明のペプチドは、配列番号1で表されるアミノ酸配列、配列番号4で表されるアミノ酸配列、配列番号5で表されるアミノ酸配列、配列番号9で表されるアミノ酸配列、配列番号10で表されるアミノ酸配列及び配列番号11で表されるアミノ酸配列からなる群より選ばれるアミノ酸配列を含むことが好ましい。
本発明のペプチドは、一般式:P2P1P1’P2’又は一般式:P2P1↓P1’P2’で表されるアミノ酸配列を含むものであればよく、一般式:P2P1P1’P2’又は一般式:P2P1↓P1’P2’で表されるアミノ酸配列のN末端及びC末端の少なくとも一方又は両方に更なるアミノ酸配列が付加されていてもよい。付加されるアミノ酸配列に特に制限はない。
本発明のペプチドとしては、例えば、配列番号12~21又は22のアミノ酸を含むペプチドが挙げられる。本発明のペプチドは、配列番号12で表されるアミノ酸配列、配列番号15で表されるアミノ酸配列、配列番号16で表されるアミノ酸配列、配列番号20で表されるアミノ酸配列、配列番号21で表されるアミノ酸配列及び配列番号22で表されるアミノ酸配列からなる群より選ばれるアミノ酸配列を含むことが好ましい。
本発明のペプチドの長さは、40アミノ酸残基以下、30アミノ酸残基以下、20アミノ酸残基以下、10アミノ酸残基以下又は8アミノ酸残基以下とすることができる。ペプチドの長さがこの範囲にあると、3次元細胞培養基材、MMP定量キット等に適用しやすくなる。
ペプチドは、アミノ酸のArg、Asn、Glu、Asp、Gln、Ser、Thr又はLysを含んでいることが好ましい。これらのアミノ酸を含むと、親水性が向上する。ペプチドは、アミノ酸Cys又はLysを含むことが好ましい。これらのアミノ酸を含むと、ペプチドを修飾することが可能である。
本発明のペプチドは、少なくともMMP-2、MMP-3及びMMP-9によって開裂され得るため、プロテアーゼ(例えば、MMP-2、MMP-3及びMMP-9)に対する応答剤として使用することができる。本明細書において、「応答剤」とは、プロテアーゼ(例えば、MMP-2、MMP-3及びMMP-9)により部位特異的に加水分解されて開裂する(プロテアーゼに応答する)ペプチドを意味する。本発明の応答剤は、この開裂反応を利用することで、種々の用途へ応用することができる。
例えばJin C et al., Blood Droplet-Based Cancer Diagnosis via Proteolytic Activity Measurement in Cancer Progression, Theranostics 2017, Vol. 7, Issue 11, 2878-2887、Akifumi Y et al.,Rapid and highly efficient capture and release of cancer cells using polymeric microfibers immobilized with enzyme-cleavable peptides, Acta Biomaterialia, Volume 67, February 2018, Pages 32-41、Ricardo CA et al., Synthetic hydrogels for human intestinal organoid generation and colonic wound repair, Nature Cell Biology 19, 1326-1335 (2017)等に記載されているように、MMP-2、MMP-3又はMMP-9によって開裂されるアミノ酸配列を含むペプチドは、がんセンサー又はがんマーカ(既存がんマーカの補助、1次検査用)、MMPs定量アッセイキット、DDS(Drug Delivery System)、細胞分離材、細胞分取材、細胞の3次元培養用基材等に用いることができる。本発明のペプチドは、MMP-2、MMP-3及びMMP-9によって開裂を受けるため、詳しくは後述するように、がんセンサー又はがんマーカ(既存がんマーカの補助、1次検査用)、MMPs定量アッセイキット、DDS(Drug Delivery System)、細胞分離材・分取、細胞の3次元培養用基材等に用いることができると考えられる。なお、本発明のペプチドを用いたがんセンサー等の評価系は、ゼラチン等の天然由来基質を用いた場合と異なり、ロット間差が生じにくいため、安定的な評価品質を有すると考えられる。
がんは増殖・転移するために、MMP-2及びMMP-9を大量に分泌し、血管の中に浸透し血液の流れに乗って転移することが分かっている。つまり、がんがあるとMMP-2及びMMP-9の血液中の濃度が増加するため、本発明のペプチドは、血液中のMMP-2及びMMP-9のアッセイ・定量化をすることより、がんの1次検査剤として活用可能であると考えられる。これを利用して、本発明のペプチドを用いて、モニタリング用センサーや血糖値や酸素モニタリングなどと組み合わせたセンサーを開発することが可能である(Multiplexed Sensor、センサーのカートリッジ、消耗品)。また、本発明のペプチドは、ストロムライシン群に分類されるMMP-3に対しても開裂能を示すため、がんだけでなく、例えば関節リウマチに対する一次検査剤として使用することもできると考えられる。
本発明のペプチドはまた、MMPsの発現量を定量化するキット(研究用)に応用することが可能である。本発明のペプチドはまた、関連する生理現象及び病態の評価アッセイへの応用も可能である。本発明のペプチドは高感度であるため、低いLOD値(LOD:Limit of Detection、検出下限)を有すると考えられる。よって、低濃度領域のアッセイにおいて、高正確率(High Accuracy)、高感度(High Sensitivity)の結果が期待される。
本発明のペプチドは、MMPsと反応し開裂される特徴を有するため、ADC(Antibody Drug Conjugate)と呼ばれる分野への応用も考えられる(薬物+ペプチドリンカー+抗体)。例えば、下記構造式のような分子設計により、カテプシンという酵素により開裂されるペプチドリンカーを用いたDDS応用材料の開発をすることが可能である。下記構造式において、ペプチドリンカーを本発明のペプチドに変更することで、標的であるがん細胞に到達した後、がん細胞が放出するMMPsによって速やかにペプチドリンカーが開裂され、適切に薬物を放出することができるADCを開発することができると考えられる。
Figure 2023038757000001
本発明のペプチドを、表面改質材、架橋剤、コーティング材等に固定し、これらの材料をカラムに充填することで、細胞の分離材又は分取材として利用することができる。さらに、MMPに応答し開裂される穴(孔隙)を制御できる技術があれば、サイズによる分離又は分取も可能である。
本発明のペプチドは、高分子マトリクスの架橋剤として使うことができるため、MMPを分泌する細胞の3次元培養に応用することが可能である。高分子マトリクスゲルの中に、MMPを分泌する細胞腫を培養すると、細胞から生産されたMMPにより徐々にゲルマトリクスが分解されながら、細胞間の相互作用が強くなり、細胞の塊(スフェロイド)の形成を促進することができる。すなわち、本発明のペプチドは、細胞塊(スフェロイド)形成用、癌スフェロイド3次元培養モデル作製用等の用途に応用することが可能である。
本発明のペプチドは酵素により分解されるため、酵素分解性プラスチックの開発や手術後の縫合糸等への応用も可能であると考えられる。
以下、本発明を実施するための形態を挙げて本発明について詳細に説明するが、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。また本発明の要旨の範囲内で適宜に変更して実施することができる。なお、断りのない限り試薬は市販品を用いた。
<反応溶液、緩衝液等の組成>
・脱保護液:ピペリジン(富士フィルム和光純薬(株)、25vol%)、ジメチルホルムアミド;DMF(富士フィルム和光純薬(株)、75vol%)
・アミノ酸カクテル:N末Fmoc保護アミノ酸(Fmoc-Ala-OH,Fmoc-Gly-OH,Fmoc-Ile-OH,Fmoc-Leu-OH,Fmoc-Pro-OH,Fmoc-Gln(OtBu)-OH,Fmoc-Val-OH及びFmoc-Trp(Boc)-OHはメルク(株)製、Fmoc-Met-OHはシグマ・アルドリッチ社製、Fmoc-Lys(Boc)-OH,Fmoc-Arg(pbf)-OH及びFmoc-Thr(tBu)-OHはChemscene社製を使用、反応点に対して6当量)、シアノ(ヒドロキシイミノ)酢酸エチル;Oxyma pure(商標)(メルク(株)製、反応点に対して6当量)、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(富士フィルム和光純薬(株)、反応点に対して6当量)、2,4,6-トリメチルピリジン(東京化成工業(株)、反応点に対して12当量)、DMF(溶媒量)
・不活性化液:無水酢酸(富士フィルム和光純薬(株)、25vol%)、DMF(75vol%)
・脱樹脂液:トリフルオロ酢酸;TFA(東京化成工業(株)、95mass%)、トリイソプロピルシラン(富士フィルム和光純薬(株)、2.5mass%)、蒸留水(2.5mass%)
・溶離液A:0.1% TFA/蒸留水
・溶離液B:0.1% TFA/アセトニトリル(高速液体クロマトグラフ用、富士フィルム和光純薬(株))
・1.5mM ペプチド溶液:FRET基質、DMSO
・トリス塩酸緩衝液:100mM トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩酸塩、100mM 塩化ナトリウム、10mM 塩化カルシウム(pH 7.5)
・1M 4-アミノフェニル酢酸第二水銀;APMAストック溶液:APMA、ジメチルスルホキシド;DMSO(富士フィルム和光純薬(株))
・1mM APMA反応液:1M APMAストック溶液、トリス塩酸緩衝液
・3.6μM MMP-2溶液:recombinant MMP-2(Biovision Inc.製)、トリス塩酸緩衝液
<Fmocペプチド固相合成>
配列番号12、15、16、20、21又は22で表されるアミノ酸配列を有するペプチド基質、及び、既存のMMP応答配列である配列番号24で表されるアミノ酸配列を有するペプチド基質(Bremer C et al.,In vivo molecular target assessment of matrix metalloproteinase inhibition,Nature medicine,v7,743-748(2001).参照)として、それぞれ、配列番号12、15、16、20、21又は22で表されるアミノ酸配列、及び、配列番号24で表されるアミノ酸配列からなるペプチド基質を、Fmoc固相合成法で合成した。既存のMMP応答配列である配列番号23で表されるアミノ酸配列を有するペプチド基質(特許文献1)としては、配列番号23で表されるアミノ酸配列に対してC末端にDnp基を側鎖に有するLys残基を新たに導入し、合計9残基で構成されるペプチド基質を合成した。上記ペプチド基質はいずれも、Mca基及びDnp基を導入したFRETペプチド基質として合成した(以降、「FRET基質」と示す、表1参照)。マルチ固相合成器(KMS-3、国産化学(株))にエコノパックカラム(20mL、BIO RAD製)をセットし、Rink amide AM resin(100-200mesh、0.7mmol/g、メルク(株))を0.05mmolスケールとなるように秤量した後、ジクロロメタン;DCM(ペプチド合成用グレード、富士フィルム和光純薬(株))2mLを添加し過流攪拌下で12~24時間膨潤した。膨潤液を除液後、脱保護液を2mL添加し樹脂上のFmoc基を脱保護した(2mL×2回、各10分処理)。脱保護液を除液後、DMF及びDCMで洗浄した後にアミノ酸カクテルを添加し、過流攪拌下で2~3時間反応させることで樹脂担体上にアミノ酸をカップリングさせた。反応液の除液後、不活性化液を2mL添加し過流攪拌下で30分間処理することで未反応点をキャッピングした。不活性化液の除液後、DMF及びDCMで洗浄してFmocアミノ酸導入樹脂担体を得た。以降、上記脱保護、カップリング反応、未反応点の不活性化を繰り返し実施することで目的アミノ酸配列を有するペプチド基質を合成した。
<粗精製、LC分離精製>
所定のアミノ酸配列を有するペプチドを合成した後、N末に存在するFmoc基を脱保護し、DMF、DCM及びメタノールで洗浄し、デシケータ内で24時間静置することで乾燥樹脂担体を得た。上記乾燥樹脂担体に冷やした脱樹脂液を2mL添加し過流攪拌下で3~4時間処理することで脱樹脂及び側鎖保護基の脱保護を達成した。ペプチドを含む上澄み液を回収後、さらに上記脱樹脂液を2mL添加して樹脂担体を洗浄した。上記上澄み液及び洗浄液(計4mL)に冷ジエチルエーテルを10倍量添加した後、遠心分離(2,000×g、10分)して沈殿物を回収した。沈殿物は再度冷ジエチルエーテルで洗浄した後、減圧乾燥して粗ポリペプチドを得た。得られた粗ポリペプチドを溶離液Aに溶解した後、溶離液A及び溶離液Bを用いて中圧液体クロマトグラフ(型式:EPCLC-AI-580S、山善(株))によって目的成分を分画し、アセトニトリルを減圧留去した後、凍結乾燥して精製ペプチドを得た。
Figure 2023038757000002
[実施例1:配列番号12、15、16、20、21又は22で表されるアミノ酸配列を有するペプチドのMMP-2開裂検証]
MMP-2開裂検証には、MMP-2 Inhibitor Screening kit(BioVision Inc.製)を使用し、メーカー推奨プロトコルに則って開裂試験を実施した。配列番号12、15、16、20、21又は22で表されるアミノ酸配列を有する精製ペプチドをそれぞれDMSOに溶解させて、6種類の1.5mMペプチド溶液を得た。得られた1.5mMペプチド溶液を、キットに付属するMMP-2 assay bufferでそれぞれ40倍希釈して測定サンプルとした(基質濃度:[S]=37.5μM)。MMP-2を、上記MMP-2 assay bufferに溶解し、MMP-2溶液を得た(酵素濃度:[E]=7μM)。得られたMMP-2溶液を96 well-plate, black(サーモフィッシャー製)に50μL/well添加し、37℃で30分間インキュベートすることでMMP-2を活性化させた。上記プレートに測定サンプルをそれぞれ50μL/well添加し、励起波長:325nm、検出波長:393nmで蛍光測定した(100μL/well、[S]=18.75μM、[E]=3.5μM、37℃、120分)。
蛍光測定を開始してから60分間の結果を図1に示す。図1の横軸は、蛍光測定を開始してからの時間(分)を示し、縦軸は、測定開始時点の蛍光強度値に対する蛍光強度値の変化量(ΔRFU値)を示す。グラフの傾きが大きいほど、反応速度が大きいこと、すなわち開裂能が高いことを示す。図1から明らかなとおり、本評価系において、配列番号12、15、16、20、21又は22で表されるアミノ酸配列を有するペプチド基質は、MMP-2に対して開裂能を有することが示された。
[比較例1:配列番号23、24で表されるアミノ酸配列を有するペプチドのMMP-2開裂検証]
配列番号12、15、16、20、21又は22で表されるアミノ酸配列を有する精製ペプチドに替えて、配列番号23、24で表されるアミノ酸配列を有する精製ペプチドを用いたこと以外は実施例1と同様にして、MMP-2開裂性能を評価した。
本評価系において、配列番号23又は24で表されるアミノ酸配列を有するペプチド基質は、MMP-2に対して開裂能を示したが、実施例1と比較してFRET現象による単位時間当たりの蛍光強度値の変化量(ΔRFU値)が低かった。つまり、配列番号23又は24で表されるアミノ酸配列を有するペプチド基質は、反応速度が遅く、低開裂能であることが示唆された(図1)。
[実施例2:配列番号12、15、16、20、21又は22で表されるアミノ酸配列を有するペプチドのMMP-3開裂検証]
MMP-3開裂検証には、MMP-3 Inhibitor Screening kit(BioVision Inc.製)を使用し、メーカー推奨プロトコルに則って開裂試験を実施した。実施例1と同様にして測定サンプルを得た。MMP-2に替えてMMP-3を用いたこと以外は実施例1と同様にして、MMP-3溶液を得た(酵素濃度:[E]=1.6μM)。得られたMMP-3溶液を96 well-plate, black(サーモフィッシャー製)に50μL/well添加し、37℃で10分間インキュベートすることでMMP-3を活性化させた。上記プレートに測定サンプルをそれぞれ50μL/well添加し、励起波長:325nm、検出波長:393nmで蛍光測定した(100μL/well、[S]=18.75μM、[E]=0.8μM、37℃、120分)。
蛍光測定を開始してから60分間の結果を図2に示す。図2の横軸は、蛍光測定を開始してからの時間(分)を示し、縦軸は測定開始時点の蛍光強度値に対する蛍光強度値の変化量(ΔRFU値)を示す。グラフの傾きが大きいほど、反応速度が大きいこと、すなわち開裂能が高いことを示す。図2から明らかなとおり、本評価系において、配列番号12、15、16、20、21又は22で表されるアミノ酸配列を有するペプチド基質は、MMP-3に対して開裂能を有することが示された。
[比較例2:配列番号23、24で表されるアミノ酸配列を有するペプチドのMMP-3開裂検証]
配列番号12、15、16、20、21又は22で表されるアミノ酸配列を有する精製ペプチドに替えて、配列番号23、24で表されるアミノ酸配列を有する精製ペプチドを用いたこと以外は実施例2と同様にして、MMP-3開裂性能を評価した。
本評価系において、配列番号23又は24で表されるアミノ酸配列を有するペプチド基質は、両者ともにMMP-3に対して開裂能を示さなかった(図2)。
[実施例3:配列番号12、15、16、20、21又は22で表されるアミノ酸配列を有するペプチドのMMP-9開裂検証]
MMP-9開裂検証には、MMP-9 Inhibitor Screening kit(BioVision Inc.製)を使用し、メーカー推奨プロトコルに則って開裂試験を実施した。実施例1と同様にして測定サンプルを得た。MMP-2に替えてMMP-9を用いたこと以外は実施例1と同様にして、MMP-9溶液を得た(酵素濃度:[E]=10.4μM)。得られたMMP-9溶液を96 well-plate, black(サーモフィッシャー製)に50μL/well添加し、37℃で30分間インキュベートすることでMMP-9を活性化させた。上記プレートに測定サンプルをそれぞれ50μL/well添加し、励起波長:325nm、検出波長:393nmで蛍光測定した(100μL/well、[S]=18.75μM、[E]=5.2μM、37℃、120分)。
蛍光測定を開始してから60分間の結果を図3に示す。図3の横軸は、蛍光測定を開始してからの時間(分)を示し、縦軸は測定開始時点の蛍光強度値に対する蛍光強度値の変化量(ΔRFU値)を示す。グラフの傾きが大きいほど、反応速度が大きいこと、すなわち開裂能が高いことを示す。図3から明らかなとおり、本評価系において、配列番号12、15、16、20、21又は22で表されるアミノ酸配列を有する基質は、MMP-9に対して開裂能を有することが示された。
[比較例3:配列番号23、24で表されるアミノ酸配列を有するペプチドのMMP-9開裂検証]
配列番号12、15、16、20、21又は22で表されるアミノ酸配列を有する精製ペプチドに替えて、配列番号23、24で表されるアミノ酸配列を有する精製ペプチドを用いたこと以外は実施例3と同様にして、MMP-9開裂性能を評価した。
本評価系において、配列番号24で表されるアミノ酸配列を有する基質はMMP-9に対して開裂能を有することが確認された。一方で、配列番号23で表されるアミノ酸配列を有する基質はMMP-9に対して開裂能を示さなかった(図3)。
[実施例4:配列番号12、15、16、20、21又は22で表されるアミノ酸配列を有するペプチドに対するMMP-2の酵素活性評価]
3.6μM MMP-2溶液を1mM APMA反応溶液で500倍希釈した後、室温(25℃)で1時間インキュベートすることで、MMP-2を活性化させた。次に、実施例1と同様にして得られた1.5mM ペプチド溶液を、トリス塩酸緩衝液を用いて希釈し、基質濃度が50μM、25μM、12.5μM又は6.25μMとなる測定サンプルを調製した。上記手順で活性化させたMMP-2溶液を96 well-plate, blackに50μL/well添加し、37℃で1時間インキュベートした後に測定サンプルを50μL/well添加し、励起波長:325nm、検出波長:393nmで蛍光測定した(100μL/well、[E]=3.6μM、[S]=25μM、12.5μM、6.25μM又は3.125μM、37℃、120分)。測定値より初期反応速度v(μM min-1)を算出した後、公知であるラインウィーバー=バークプロット(式(1))及び式(2)より触媒効率kcat/Kmを導出した。本明細書において、式(2)における[E]とは初期酵素濃度を指し、[E]と同義で使用した。
1/v=(Km/Vmax)・(1/[S])+(1/Vmax) ―(1)
kcat=Vmax/[E] ―(2)
(v:反応速度(μM・min-1)、Km:ミカエリス・メンテン定数(μM)、Vmax:最大反応速度(μM・min-1)、[S]:基質濃度(μM)、kcat:触媒定数(s-1)、[E]:初期酵素濃度(μM))
配列番号12、15、16、20、21又は22で表されるアミノ酸配列を有するペプチド基質の触媒効率は1.0×10(M-1・s-1)以上であった。特に配列番号15、16又は21で表されるアミノ酸配列を有するペプチド基質は、1.5×10(M-1・s-1)の触媒効率を有しており、後述する比較例4の2~4倍の数値を示した(図4)。
[比較例4:配列番号23、24に対するMMP-2の酵素活性評価]
配列番号12、15、16、20、21又は22で表されるアミノ酸配列を有する精製ペプチドに替えて、配列番号23、24で表されるアミノ酸配列を有する精製ペプチドを用いたこと以外は実施例4と同様にして、MMP-2の酵素活性を評価した。
本評価系において、配列番号23又は24で表されるアミノ酸配列を有するペプチド基質のMMP-2に対する触媒効率は実施例4と比較して低く、低酵素活性であることが確認された(図4)。
[実施例5:配列番号12、15、16、20、21又は22で表されるアミノ酸配列を有するペプチドの、異なるMMP-2濃度における開裂性能評価]
実施例4と同様の方法でMMP-2を活性化させた後、酵素濃度が2.0μM、1.0μM又は0.9μMとなるように、1mM APMA反応液で希釈した。次に、実施例1と同様の方法で得られた1.5mM ペプチド溶液をトリス塩酸緩衝液で60倍希釈し、25μM 測定サンプルを調製した。希釈後に得られたMMP-2溶液を96 well-plate, blackに50μL/well添加し、37℃で1時間インキュベートした。その後、25μM 測定サンプルを50μL/well添加し、励起波長:325nm、検出波長:393nmで蛍光測定した(100μL/well、[E]=1.0nM、0.5nM又は0.45nM、[S]=12.5μM、37℃、60分又は120分)。
結果を図5~7に示す。図5~7の横軸は、蛍光測定を開始してからの時間(分)を示し、縦軸は測定開始時点の蛍光強度値に対する蛍光強度値の変化量(ΔRFU値)を示す。グラフの傾きが大きいほど、反応速度が大きいこと、すなわち開裂能が高いことを示す。図5~7から明らかなとおり、本評価系において、配列番号12、15、16、20、21又は22で表されるアミノ酸配列を有するペプチド基質については、検証したすべての酵素濃度条件([E]=1.0nM、0.5nM又は0.45nM)において開裂進行を確認できた。
[比較例5:配列番号23、24で表されるアミノ酸配列を有するペプチドの、異なるMMP-2濃度における開裂性能評価]
配列番号12、15、16、20、21又は22で表されるアミノ酸配列を有する精製ペプチドに替えて、配列番号23、24で表されるアミノ酸配列を有する精製ペプチドを用いたこと以外は実施例5と同様にして、異なるMMP-2濃度における開裂性能を評価した。
本評価系において、配列番号23又は24で表されるアミノ酸配列を有するペプチド基質は、酵素濃度が1.0nM及び0.5nMである場合に開裂進行を確認できたが、実施例5と比較してFRET現象による単位時間当たりの蛍光強度値の変化量が小さかった(図5,6)。また、酵素濃度0.45nM条件においては開裂進行を確認することができなかった(図7)。

Claims (14)

  1. 一般式:P2P1P1’P2’で表されるアミノ酸配列を含み、
    P1はグリシン残基(Gly)であり、
    P2及びP1’は疎水性アミノ酸残基であり、
    P2’はアラニン残基(Ala)、トリプトファン残基(Trp)、バリン残基(Val)、アルギニン残基(Arg)又はトレオニン残基(Thr)である、ペプチド。
  2. 前記アミノ酸配列において、
    P2はロイシン残基(Leu)又はアラニン残基(Ala)であり、
    P2がロイシン残基(Leu)である場合、P1’はロイシン残基(Leu)であって、且つ、P2’はアルギニン残基(Arg)であり、
    P2がアラニン残基(Ala)である場合、P1’はロイシン残基(Leu)又はメチオニン残基(Met)であって、且つ、P2’はアラニン残基(Ala)、トリプトファン残基(Trp)、バリン残基(Val)、アルギニン残基(Arg)又はトレオニン残基(Thr)である、請求項1に記載のペプチド。
  3. 前記アミノ酸配列が、配列番号1、4、5、9、10又は11で表されるアミノ酸配列である、請求項1又は2に記載のペプチド。
  4. 一般式:P2P1↓P1’P2’で表される、マトリックスメタロプロテアーゼ開裂部位を有するアミノ酸配列を含み、
    ↓は前記マトリックスメタロプロテアーゼ開裂部位であり、
    P1はグリシン残基(Gly)であり、
    P2及びP1’は疎水性アミノ酸残基であり、
    P2’はアラニン残基(Ala)、トリプトファン残基(Trp)、バリン残基(Val)、アルギニン残基(Arg)又はトレオニン残基(Thr)である、マトリックスメタロプロテアーゼに対する応答剤。
  5. 前記アミノ酸配列において、
    P2はロイシン残基(Leu)又はアラニン残基(Ala)であり、
    P2がロイシン残基(Leu)である場合、P1’はロイシン残基(Leu)であって、且つ、P2’はアルギニン残基(Arg)であり、
    P2がアラニン残基(Ala)である場合、P1’はロイシン残基(Leu)又はメチオニン残基(Met)であって、且つ、P2’はアラニン残基(Ala)、トリプトファン残基(Trp)、バリン残基(Val)、アルギニン残基(Arg)又はトレオニン残基(Thr)である、請求項4に記載の応答剤。
  6. 前記アミノ酸配列が、配列番号1、4、5、9、10又は11で表されるアミノ酸配列である、請求項4又は5に記載の応答剤。
  7. 前記マトリックスメタロプロテアーゼがMMP-2、MMP-3及びMMP-9からなる群より選択される少なくとも一種を含有する、請求項4~6のいずれか一項に記載の応答剤。
  8. 前記マトリックスメタロプロテアーゼがMMP-2であり、
    前記MMP-2の濃度が0.45nM以上であるMMP-2含有液と反応させた場合に、前記マトリックスメタロプロテアーゼにより開裂される、請求項4~7のいずれか一項に記載の応答剤。
  9. 前記マトリックスメタロプロテアーゼに対する開裂反応が共鳴エネルギー移動(RET)現象によって観測されることを特徴とする、請求項4~8のいずれか一項に記載の応答剤。
  10. 請求項1~3のいずれか一項に記載のペプチドを備える、がんセンサー又はがんマーカ。
  11. 請求項1~3のいずれか一項に記載のペプチドを備える、マトリックスメタロプロテアーゼの定量アッセイキット。
  12. 請求項1~3のいずれか一項に記載のペプチドを備える、ドラッグデリバリーシステム。
  13. 請求項1~3のいずれか一項に記載のペプチドを備える、細胞分離材。
  14. 請求項1~3のいずれか一項に記載のペプチドを備える、3次元細胞培養用基材。

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