JP2023035969A - 樹脂組成物および成形品 - Google Patents

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睦子 高見
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Abstract

【課題】 難燃性および透明性に優れ、かつ、滞留安定性に優れた樹脂組成物、および、前記樹脂組成物から形成された成形品の提供。【解決手段】 ポリカーボネート樹脂(A)と、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドのアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩(B)と、ジフルオロメタンスルホニル(トリフルオロメタンスルホニル)イミドのアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩(C)とを含む、樹脂組成物。【選択図】 なし

Description

本発明は、樹脂組成物および成形品に関する。特に、ポリカーボネート樹脂を主成分とする樹脂組成物およびその成形品に関する。
ポリカーボネート樹脂は、耐熱性、機械的物性、電気的特性に優れた樹脂であり、例えば自動車材料、電気電子機器材料、住宅材料、その他の工業分野における部品製造用材料等に幅広く利用されている。特に、難燃化されたポリカーボネート樹脂組成物は、コンピューター、ノートブック型パソコン、携帯電話、プリンター、複写機等のOA・情報機器等の部材として好適に使用されている。
ポリカーボネート樹脂に難燃性を付与する手段としては、従来、ハロゲン系難燃剤やリン系難燃剤をポリカーボネート樹脂に配合することがなされてきた。しかしながら、塩素や臭素を含有するハロゲン系難燃剤を配合したポリカーボネート樹脂組成物は、熱安定性の低下を招いたり、成形加工時における成形機のスクリューや成形金型の腐食を招いたりすることがあった。また、リン系難燃剤を配合したポリカーボネート樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂の特徴である高い透明性を阻害したり、耐衝撃性、耐熱性の低下を招いたりするため、その用途が制限されることがあった。
加えて、これらのハロゲン系難燃剤およびリン系難燃剤は、製品の廃棄、回収時に環境汚染を惹起する可能性があるため、近年ではこれらの難燃剤を使用することなく難燃化することが望まれている。
これに対し、パーフルオロアルカンスルホン酸アルカリ金属塩や芳香族スルホン酸ナトリウム等の有機アルカリ金属塩化合物および有機アルカリ土類金属塩化合物に代表される金属塩化合物が、ポリカーボネート樹脂の有用な難燃剤として検討されている。これらの金属塩タイプの難燃剤は、燃焼時にポリカーボネート樹脂の分解を促進することによって、難燃性を達成するものである。しかしながら、これらの難燃剤を用いた場合、難燃性が十分ではなかったり、透明性を阻害してしまったりする場合がある。
一方、特許文献1には、カーボネートポリマーと、(a)高フッ素化メチド、(b)高フッ素化イミド、(c)高フッ素化アミド、およびそれらのいずれかの組合せ、からなる群より選択されたアニオンを含む添加金属塩と、を含む難燃性組成物が開示されている。また、特許文献1には、前記難燃性組成物が透明性にも優れることが記載されている。
国際公開第2002/051925号
しかしながら、上記特許文献1に記載の樹脂組成物は、滞留安定性が劣ることが分かった。滞留安定性が劣ると、成形性が劣ってしまう。
本発明はかかる課題を解決することを目的とするものであって、難燃性および透明性に優れ、かつ、成形性に優れた樹脂組成物、および、前記樹脂組成物から形成された成形品を提供することを目的とする。
上記課題のもと、本発明者が検討を行った結果、金属塩として、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドのアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩と、ジフルオロメタンスルホニル(トリフルオロメタンスルホニル)イミドのアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩とを併用することにより、ポリカーボネート樹脂の難燃性および透明性を向上しつつ、滞留安定性を向上させることを見出し、本発明を完成させるに至った。
具体的には、下記手段により、上記課題は解決された。
<1>ポリカーボネート樹脂(A)と、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドのアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩(B)と、ジフルオロメタンスルホニル(トリフルオロメタンスルホニル)イミドのアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩(C)とを含む、樹脂組成物。
<2>前記ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、前記ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドのアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩(B)0.01~0.50質量部、および、前記ジフルオロメタンスルホニル(トリフルオロメタンスルホニル)イミドのアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩(C)0.000001~0.002000質量部を含む、<1>に記載の樹脂組成物。
<3>前記ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドのアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩(B)、および、前記ジフルオロメタンスルホニル(トリフルオロメタンスルホニル)イミドのアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩(C)が、それぞれ、アルカリ金属塩である、<1>または<2>に記載の樹脂組成物。
<4>前記ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドのアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩(B)、および、前記ジフルオロメタンスルホニル(トリフルオロメタンスルホニル)イミドのアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩(C)が、それぞれ、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩およびセシウム塩の少なくとも1種である、<1>または<2>に記載の樹脂組成物。
<5>前記ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドのアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩(B)と、前記ジフルオロメタンスルホニル(トリフルオロメタンスルホニル)イミドのアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩(C)の質量比率である、(C)/(B)が0.0001~0.0100である、<1>~<4>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<6>前記樹脂組成物を1.5mm厚の試験片に成形し、UL94試験に従った難燃性がV-0以上である、<1>~<5>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<7>前記樹脂組成物を12mm厚の試験片に成形したときのヘイズが5.0%以下である、<1>~<6>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<8>LEDカバー用である、<1>~<7>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<9><1>~<8>のいずれか1つに記載の樹脂組成物のペレット。
<10><1>~<8>のいずれか1つに記載の樹脂組成物から形成された成形品。
<11><9>に記載のペレットから形成された成形品。
<12>LED用カバーである、<9>または<10>に記載の成形品。
本発明により、難燃性および透明性に優れ、かつ、成形性に優れた樹脂組成物、および、前記樹脂組成物から形成された成形品を提供可能になった。
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という)について詳細に説明する。なお、以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明は本実施形態のみに限定されない。
なお、本明細書において「~」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
本明細書において、各種物性値および特性値は、特に述べない限り、23℃におけるものとする。
本明細書で示す規格が年度によって、測定方法等が異なる場合、特に述べない限り、2021年1月1日時点における規格に基づくものとする。
本実施形態の樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂(A)と、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドのアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩(B)と、ジフルオロメタンスルホニル(トリフルオロメタンスルホニル)イミドのアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩(C)とを含むことを特徴とする。このような構成とすることにより、難燃性および透明性に優れ、かつ、成形性に優れた樹脂組成物が得られる。
ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドのアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩(B)(以下、「(B)成分」ということがある)を配合することにより、ポリカーボネート樹脂の難燃性を向上させることができる。しかしながら、(B)成分を配合すると滞留安定性が劣る傾向にある。本実施形態においては、ジフルオロメタンスルホニル(トリフルオロメタンスルホニル)イミドのアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩(C)(以下、「(C)成分」ということがある)を配合することにより、優れた難燃性や透明性を維持しつつ、滞留安定性を改善している。
この理由は、(B)成分のトリフルオロメタン(CF3)が電子求引基であることから、分子の電子密度が下がり、難燃性が向上すると推測される。すなわち、(B)成分は、カチオンを外しやすくなる。このカチオンが燃焼時にポリカーボネート樹脂に攻撃し、ポリカーボネート樹脂を分解するため難燃性を効果的に達成すると推測される。一方、(C)成分のジフルオロメタン(CF2H)はトリフルオロメタン(CF3)よりも電子求引性が劣る為、電子密度が上昇し、系内(樹脂内)のカチオンとの相互作用が強い為、滞留安定性を向上させると推測される。
<ポリカーボネート樹脂(A)>
本実施形態の樹脂組成物が含有するポリカーボネート樹脂(A)は、その種類に制限はなく、また、1種のみを用いてもよく、2種以上を、任意の組み合わせおよび任意の比率で、併用してもよい。
ポリカーボネート樹脂は、一般式:-[-O-X-O-C(=O)-]-で示される炭酸結合を有する基本構造の重合体である。上記式中、Xは、一般には炭化水素であるが、種々の特性付与のためヘテロ原子、ヘテロ結合の導入されたXを用いてもよい。
ポリカーボネート樹脂(A)としては、特には芳香族ポリカーボネート樹脂が好ましい。芳香族ポリカーボネート樹脂とは、炭酸結合に直接結合する炭素がそれぞれ芳香族炭素であるポリカーボネート樹脂をいう。芳香族ポリカーボネートは、各種ポリカーボネートの中でも、耐熱性、機械的物性、電気的特性等の観点から、優れている。
芳香族ポリカーボネート樹脂の具体的な種類に制限はないが、例えば、ジヒドロキシ化合物とカーボネート前駆体とを反応させてなる芳香族ポリカーボネート重合体が挙げられる。この際、ジヒドロキシ化合物およびカーボネート前駆体に加えて、ポリヒドロキシ化合物等を反応させるようにしてもよい。また、二酸化炭素をカーボネート前駆体として、環状エーテルと反応させる方法も用いてもよい。また芳香族ポリカーボネート重合体は、直鎖状でもよく、分岐鎖状でもよい。さらに、芳香族ポリカーボネート重合体は1種の繰り返し単位からなる単独重合体であってもよく、2種以上の繰り返し単位を有する共重合体であってもよい。このとき共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体等、種々の共重合形態を選択することができる。なお、通常、このような芳香族ポリカーボネート重合体は、熱可塑性の樹脂となる。
芳香族ポリカーボネート樹脂の原料となるモノマーのうち、芳香族ジヒドロキシ化合物の例を挙げると、
1,2-ジヒドロキシベンゼン、1,3-ジヒドロキシベンゼン(すなわち、レゾルシノール)、1,4-ジヒドロキシベンゼン等のジヒドロキシベンゼン類;
2,5-ジヒドロキシビフェニル、2,2'-ジヒドロキシビフェニル、4,4'-ジヒドロキシビフェニル等のジヒドロキシビフェニル類;
2,2'-ジヒドロキシ-1,1'-ビナフチル、1,2-ジヒドロキシナフタレン、1,3-ジヒドロキシナフタレン、2,3-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、1,7-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン等のジヒドロキシナフタレン類;
2,2'-ジヒドロキシジフェニルエーテル、3,3'-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4'-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4'-ジヒドロキシ-3,3'-ジメチルジフェニルエーテル、1,4-ビス(3-ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン等のジヒドロキシジアリールエーテル類;
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(すなわち、ビスフェノールA)、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、
α,α'-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1,4-ジイソプロピルベンゼン、
1,3-ビス[2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル]ベンゼン、
ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、
ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキシルメタン、
ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、
ビス(4-ヒドロキシフェニル)(4-プロペニルフェニル)メタン、
ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、
ビス(4-ヒドロキシフェニル)ナフチルメタン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-ナフチルエタン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサン、
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)オクタン、
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)オクタン、
4,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘプタン、
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ノナン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)デカン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ドデカン、
等のビス(ヒドロキシアリール)アルカン類;
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3-ジメチルシクロヘキサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,4-ジメチルシクロヘキサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,5-ジメチルシクロヘキサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3-プロピル-5-メチルシクロヘキサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3-tert-ブチル-シクロヘキサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-tert-ブチル-シクロヘキサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3-フェニルシクロヘキサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-フェニルシクロヘキサン、
等のビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類;
9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、
4,4'-ジヒドロキシジフェニルスルフィド、
4,4'-ジヒドロキシジフェニルスルホキシド等のジヒドロキシジアリールスルホキシド類;
4,4'-ジヒドロキシジフェニルスルホン等のジヒドロキシジアリールスルホン類;
等が挙げられる。
これらの中でもビス(ヒドロキシアリール)アルカン類が好ましく、中でもビス(4-ヒドロキシフェニル)アルカン類が好ましく、特に耐衝撃性、耐熱性の点から2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(すなわち、ビスフェノールA)が好ましい。
なお、芳香族ジヒドロキシ化合物は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
また、脂肪族ポリカーボネート樹脂の原料となるモノマーの例を挙げると、
エタン-1,2-ジオール、プロパン-1,2-ジオール、プロパン-1,3-ジオール、2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジオール、2-メチル-2-プロピルプロパン-1,3-ジオール、ブタン-1,4-ジオール、ペンタン-1,5-ジオール、ヘキサン-1,6-ジオール、デカン-1,10-ジオール等のアルカンジオール類;
シクロペンタン-1,2-ジオール、シクロヘキサン-1,2-ジオール、シクロヘキサン-1,4-ジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、4-(2-ヒドロキシエチル)シクロヘキサノール、2,2,4,4-テトラメチル-シクロブタン-1,3-ジオール等のシクロアルカンジオール類;
エチレングリコール、2,2'-オキシジエタノール(すなわち、ジエチレングリコール)、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、スピログリコール等のグリコール類;
1,2-ベンゼンジメタノール、1,3-ベンゼンジメタノール、1,4-ベンゼンジメタノール、1,4-ベンゼンジエタノール、1,3-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、2,3-ビス(ヒドロキシメチル)ナフタレン、1,6-ビス(ヒドロキシエトキシ)ナフタレン、4,4'-ビフェニルジメタノール、4,4'-ビフェニルジエタノール、1,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ビフェニル、ビスフェノールAビス(2-ヒドロキシエチル)エーテル、ビスフェノールSビス(2-ヒドロキシエチル)エーテル等のアラルキルジオール類;
1,2-エポキシエタン(すなわち、エチレンオキシド)、1,2-エポキシプロパン(すなわち、プロピレンオキシド)、1,2-エポキシシクロペンタン、1,2-エポキシシクロヘキサン、1,4-エポキシシクロヘキサン、1-メチル-1,2-エポキシシクロヘキサン、2,3-エポキシノルボルナン、1,3-エポキシプロパン等の環状エーテル類;等が挙げられる。
ポリカーボネート樹脂の原料となるモノマーのうち、カーボネート前駆体の例を挙げると、カルボニルハライド、カーボネートエステル等が使用される。なお、カーボネート前駆体は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
カルボニルハライドとしては、具体的には例えば、ホスゲン;ジヒドロキシ化合物のビスクロロホルメート体、ジヒドロキシ化合物のモノクロロホルメート体等のハロホルメート等が挙げられる。
カーボネートエステルとしては、具体的には例えば、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート等のジアリールカーボネート類;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のジアルキルカーボネート類;ジヒドロキシ化合物のビスカーボネート体、ジヒドロキシ化合物のモノカーボネート体、環状カーボネート等のジヒドロキシ化合物のカーボネート体等が挙げられる。
ポリカーボネート樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、公知の任意の方法を採用できる。その例を挙げると、界面重合法、溶融エステル交換法、ピリジン法、環状カーボネート化合物の開環重合法、プレポリマーの固相エステル交換法などを挙げることができる。
また、ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)(樹脂組成物が2種以上のポリカーボネート樹脂を含む場合は、その混合物の粘度平均分子量(Mv)は、10,000以上であることが好ましく、より好ましくは12,000以上であり、さらに好ましくは15,000以上である。前記ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)の上限値は、100,000以下であることが好ましく、より好ましくは80,000以下であり、さらには50,000以下であってもよく、35,000以下であってもよい。
本実施形態のポリカーボネート樹脂の第一のブレンド形態は、高分子量のポリカーボネート樹脂と低分子量のポリカーボネート樹脂をブレンドする形態である。高分子量のポリカーボネート樹脂は滴下防止剤の役割を果たし、難燃性をより向上させる傾向にある。また、別途、PTFE等の滴下防止剤を配合しないことにより、ポリカーボネート樹脂が本来的に有する優れた透明性を維持することができる。
高分子量のポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、40,000以上であることが好ましく、より好ましくは50,000以上であり、さらに好ましく55,000以上である。前記ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)の上限値は、100,000以下であることが好ましく、より好ましくは80,000以下であり、さらに好ましくは75,000以下である。一方、低分子量のポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、10,000以上であることが好ましく、より好ましくは12,000以上であり、さらに好ましく14,000以上である。前記ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)の上限値は、25,000以下であることが好ましく、より好ましくは20,000以下であり、さらに好ましくは18,000以下である。
第一のブレンド形態における高分子量のポリカーボネート樹脂と低分子量のポリカーボネート樹脂の質量比率は、高分子量のポリカーボネート樹脂と低分子量のポリカーボネート樹脂の合計を100質量部としたとき、高分子量のポリカーボネート樹脂の割合が15質量部以上であることが好ましく、20質量部以上であることがより好ましく、25質量部以上であることがさらに好ましい。前記下限値以上とすることにより、燃焼時の垂れ落ち抑制効果がより向上する傾向にある。また、前記高分子量のポリカーボネート樹脂の割合は、高分子量のポリカーボネート樹脂と低分子量のポリカーボネート樹脂の合計を100質量部としたとき、90質量部以下であることが好ましく、80質量部以下であることがよりこのましく、75質量部以下であることがさらに好ましい。前記上限値以下とすることにより、流動性・射出成形性がより向上する傾向にある。
本実施形態のポリカーボネート樹脂の第二のブレンド形態は、射出成形材料として用いる場合において、一般的な粘度平均分子量を用い、滴下防止剤を配合する態様である。 第二のブレンド形態におけるポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)(樹脂組成物が2種以上のポリカーボネート樹脂を含む場合は、その混合物の粘度平均分子量(Mv)は、15,000以上であることが好ましく、より好ましくは18,000以上であり、さらに好ましくは20,000以上である。前記ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)の上限値は、40,000以下であることが好ましく、より好ましくは35,000以下であり、さらには30,000以下であってもよく、28,000以下であってもよい。 第二のブレンド形態における滴下防止剤の種類や配合量は、後述する滴下防止剤の所で述べる種類や配合量と同義である。
ここで、粘度平均分子量[Mv]とは、溶媒としてメチレンクロライドを使用し、ウベローデ粘度計を用いて温度20℃での極限粘度[η](単位dl/g)を求め、Schnellの粘度式、すなわち、η=1.23×10-4Mv0.83 から算出される値を意味する。また極限粘度[η]とは、各溶液濃度[C](g/dl)での比粘度[ηsp]を測定し、下記式により算出した値である。
Figure 2023035969000001
ポリカーボネート樹脂の末端水酸基濃度は任意であり、適宜選択して決定すればよいが、通常1,000ppm以下、好ましくは800ppm以下、より好ましくは600ppm以下である。このようにすることで、樹脂組成物の滞留熱安定性および色調をより向上させることができる。また、その下限は、特に溶融エステル交換法で製造されたポリカーボネート樹脂では、通常10ppm以上、好ましくは30ppm以上、より好ましくは40ppm以上である。これにより、分子量の低下を抑制し、樹脂組成物の機械的特性をより向上させることができる。
なお、末端水酸基濃度の単位は、ポリカーボネート樹脂の質量に対する、末端水酸基の質量をppmで表示したものである。その測定方法は、四塩化チタン/酢酸法による比色定量(Macromol.Chem.88 215(1965)に記載の方法)にて行われる。
さらにポリカーボネート樹脂は、バージン原料だけでなく、使用済みの製品から再生されたポリカーボネート樹脂(いわゆるマテリアルリサイクルされたポリカーボネート樹脂)であってもよい。前記の使用済みの製品としては、例えば、光学ディスク等の光記録媒体;導光板;自動車窓ガラス、自動車ヘッドランプレンズ、風防等の車両透明部材;水ボトル等の容器;メガネレンズ;防音壁、ガラス窓、波板等の建築部材などが挙げられる。また、製品の不適合品、スプルー、ランナー等から得られた粉砕品またはそれらを溶融して得たペレット等も使用可能である。
ただし、再生されたポリカーボネート樹脂は、樹脂組成物に含まれるポリカーボネート樹脂のうち、80質量%以下であることが好ましく、なかでも50質量%以下であることがより好ましい。再生されたポリカーボネート樹脂は、熱劣化や経年劣化等の劣化を受けている可能性が高いため、このようなポリカーボネート樹脂を前記の範囲よりも多く用いた場合、色相や機械的物性を低下させる可能性があるためである。
本実施形態の樹脂組成物におけるポリカーボネート樹脂の含有量は、樹脂組成物中、80質量%以上であることが好ましく、85質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましく、95質量%以上であることが一層好ましく、97質量%以上であることがより一層好ましい。また、前記ポリカーボネート樹脂の含有量の上限は、樹脂組成物中、(B)成分と(C)成分以外のすべての成分がポリカーボネート樹脂であることが好ましい。
本実施形態の樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
<(B)成分および(C)成分>
本実施形態の樹脂組成物は、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドのアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩(B)と、ジフルオロメタンスルホニル(トリフルオロメタンスルホニル)イミドのアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩(C)とを含み、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドのアルカリ金属塩と、ジフルオロメタンスルホニル(トリフルオロメタンスルホニル)イミドのアルカリ金属塩を含むことが好ましい。前記(B)成分を含むことにより、樹脂組成物の難燃性を向上させることができ、(C)成分を含むことにより、樹脂組成物の滞留安定性を向上させることができる。さらに、これらの成分を配合しても、透明性を低下させず、ポリカーボネート樹脂が本来的に達成している透明性を維持できる。
上記(B)成分および(C)成分は、それぞれ独立に、アルカリ金属塩および/またはアルカリ金属塩である。アルカリ金属塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、ルビジウム塩、セシウム塩およびフランシウム塩が挙げられ、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩およびセシウム塩の少なくとも1種を含むことが好ましく、リチウム塩、カリウム塩およびセシウム塩からなる群から選択される少なくとも1種であることがより好ましく、リチウム塩および/またはカリウム塩がさらに好ましく、カリウム塩が一層好ましい。また、アルカリ土類金属塩としては、カルシウム塩、ストロンチウム塩、バリウム塩、および、ラジウム塩からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、カルシウム塩、および、バリウム塩からなる群から選択される少なくとも1種であることより好ましい。
本実施形態では、特に、(B)成分として、カリウム塩を用いることにより、難燃性がより向上する傾向にある。また、(C)成分として、カリウム塩を用いることにより、配合量を多くしても、透明性、特に耐湿熱後の透明性に優れる傾向にある。
一方、(C)成分として、リチウム塩を用いることにより、カチオンの攻撃性(反応性)が低いため、湿熱試験後のヘイズを低く保つことが可能になる。
本実施形態において、上記(B)成分および(C)成分は、同じアルカリ金属塩またはアルカリ金属塩であってもよいし、異なるアルカリ金属塩および/またはアルカリ金属塩であってもよいが、同じアルカリ金属塩またはアルカリ金属塩であることが好ましい。また、(B)成分は2種以上のアルカリ金属塩を含んでいてもよく、(C)成分も2種以上のアルカリ金属塩を含んでいてもよい。以下に、アルカリ金属塩の好ましい組み合わせを示す。
(1)(B)成分:リチウム塩、(C)成分:リチウム塩
(2)(B)成分:セシウム塩、(C)成分:セシウム塩
(3)(B)成分:カリウム塩、(C)成分:カリウム塩
(4)(B)成分:リチウム塩、(C)成分:セシウム塩
(5)(B)成分:リチウム塩、(C)成分:カリウム塩
(6)(B)成分:セシウム塩、(C)成分:リチウム塩
(7)(B)成分:カリウム塩、(C)成分:リチウム塩
(8)(B)成分:セシウム塩、(C)成分:カリウム塩
(9)(B)成分:カリウム塩、(C)成分:セシウム塩
(10)上記(1)~(9)の2つのブレンド物
本実施形態において、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドのアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩(B)の含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、0.01質量部以上であることが好ましく、0.02質量部以上であることがより好ましく、0.03質量部以上であることがさらに好ましく、0.05質量部以上であることが一層好ましく、0.06質量部以上であることがより一層好ましい。また、前記(B)成分の含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、0.50質量部以下であることが好ましく、0.30質量部以下であることがより好ましく、0.25質量部以下であることがさらに好ましく、0.15質量部以下であることが一層好ましく、0.10質量部以下であることがより一層好ましい。
本実施形態の樹脂組成物は、(B)成分を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
本実施形態において、ジフルオロメタンスルホニル(トリフルオロメタンスルホニル)イミドのアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩(C)の含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、0.000001質量部以上であることが好ましく、0.000010質量部以上であることがより好ましく、0.000020質量部以上であることがさらに好ましく、0.000050質量部以上であることが一層好ましく、0.000060質量部以上であることがより一層好ましい。また、前記(C)成分の含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、0.002000質量部以下であることが好ましく、0.001000以下であることがより好ましく、0.000700質量部以下であることがさらに好ましく、0.000300質量部以下であることが一層好ましく、0.000200質量部以下であることがより一層好ましく、0.000100質量部以下であることがさらに一層好ましい。
本実施形態の樹脂組成物は、(C)成分を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
本実施形態においては、(B)成分と(C)の質量比率である、(C)/(B)が0.0001以上であることが好ましく、0.0005以上であることがより好ましく、0.0008以上であることがさらに好ましい。前記下限値以上とすることにより、難燃性がより向上する傾向にある。また、前記(C)/(B)は、0.0200以下であることが好ましく、0.0100以下であることがより好ましく、0.0080下であることがさらに好ましく、0.0050以下であることが一層好ましく、0.0025以下であることがより一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、滞留安定性がより向上する傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物は、1種または2種以上の下記式(X)で表される化合物を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。本実施形態の樹脂組成物における式(X)で表される化合物の合計含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、0.000001質量部未満であることが好ましい。
式(X)
Figure 2023035969000002
(式(X)中、Xは水素原子またはフッ素原子を表し、6つのXのうち、少なくとも2つは水素原子である。Yはアルカリ金属またはアルカリ土類金属を表す。Mは、Yがアルカリ金属のときは1であり、Yがアルカリ土類金属のときは2である。)
Mが2のときは、アニオンは1価のアニオンが2つあることを示している。
<その他の成分>
本実施形態の樹脂組成物は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、必要に応じて、上記以外の他成分を含有していてもよい。その他の成分の例を挙げると、各種樹脂添加剤などが挙げられる。
樹脂添加剤としては、例えば、安定剤(熱安定剤、酸化防止剤等)、紫外線吸収剤、帯電防止剤、上記以外の難燃剤、難燃助剤、滴下防止剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤、撥水・溌油剤(界面活性剤)、相溶化剤、キレート剤などが挙げられる。なお、樹脂添加剤は1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせおよび比率で含有されていてもよい。
帯電防止剤としては、特開2016-216534号公報の段落0063~0067の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。また、本実施形態の樹脂組成物は、(B)成分および(C)成分を含むため、帯電防止剤を配合しなくても、帯電防止性能を発揮しうる。
<<紫外線吸収剤>>
紫外線吸収剤としては、例えば、酸化セリウム、酸化亜鉛などの無機紫外線吸収剤;ベンゾトリアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物、サリシレート化合物、シアノアクリレート化合物、トリアジン化合物、オギザニリド化合物、マロン酸エステル化合物、ヒンダードアミン化合物などの有機紫外線吸収剤などが挙げられる。これらの中では有機紫外線吸収剤が好ましく、ベンゾトリアゾール化合物がより好ましい。有機紫外線吸収剤を選択することで、樹脂組成物の透明性や機械物性が良好なものになる。
紫外線吸収剤の具体例としては、特開2016-216534号公報の段落0059~0062の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
本実施形態の樹脂組成物が紫外線吸収剤を含む場合、その含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、通常0.001質量部以上、好ましくは0.005質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上であり、また、通常1質量部以下、好ましくは0.5質量部以下である。
本実施形態の樹脂組成物は、紫外線吸収剤を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
<<安定剤>>
安定剤としては、熱安定剤や酸化防止剤が挙げられる。
安定剤としては、フェノール系安定剤、アミン系安定剤、リン系安定剤、チオエーテル系安定剤などが挙げられる。中でも本実施形態においては、リン系安定剤およびフェノール系安定剤が好ましい。
リン系安定剤としては、公知の任意のものを使用できる。具体例を挙げると、リン酸、ホスホン酸、亜リン酸、ホスフィン酸、ポリリン酸などのリンのオキソ酸;酸性ピロリン酸ナトリウム、酸性ピロリン酸カリウム、酸性ピロリン酸カルシウムなどの酸性ピロリン酸金属塩;リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸セシウム、リン酸亜鉛など第1族または第2B族金属のリン酸塩;有機ホスフェート化合物、有機ホスファイト化合物、有機ホスホナイト化合物などが挙げられるが、有機ホスファイト化合物が特に好ましい。
有機ホスファイト化合物としては、トリフェニルホスファイト、トリス(モノノニルフェニル)ホスファイト、トリス(モノノニル/ジノニル・フェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリステアリルホスファイト、2,2-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)オクチルホスファイト等が挙げられる。
このような、有機ホスファイト化合物としては、具体的には、例えば、ADEKA社製「アデカスタブ(登録商標。以下同じ)1178」、「アデカスタブ2112」、「アデカスタブHP-10」、城北化学工業社製「JP-351」、「JP-360」、「JP-3CP」、BASF社製「イルガフォス(登録商標。以下同じ)168」等が挙げられる。
フェノール系安定剤としては、ヒンダードフェノール系安定剤が好ましく用いられる。ヒンダードフェノール系安定剤の具体例としては、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N'-ヘキサン-1,6-ジイルビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナミド]、2,4-ジメチル-6-(1-メチルペンタデシル)フェノール、ジエチル[[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]メチル]ホスフェート、3,3',3'',5,5',5''-ヘキサ-tert-ブチル-a,a',a''-(メシチレン-2,4,6-トリイル)トリ-p-クレゾール、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)プロピオネート]、ヘキサメチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、2,6-ジ-tert-ブチル-4-(4,6-ビス(オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン-2-イルアミノ)フェノール、2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ペンチルフェニル)エチル]-4,6-ジ-tert-ペンチルフェニルアクリレート等が挙げられる。
なかでも、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートが好ましい。このようなヒンダードフェノール系安定剤としては、具体的には、例えば、BASF社製「Irganox(登録商標。以下同じ)1010」、「Irganox1076」、ADEKA社製「アデカスタブAO-50」、「アデカスタブAO-60」等が挙げられる。
本実施形態の樹脂組成物における安定剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、通常0.001質量部以上、好ましくは0.005質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上であり、また、通常1質量部以下、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.3質量部以下である。安定剤の含有量を前記範囲とすることにより、安定剤の添加効果がより効果的に発揮される。
本実施形態の樹脂組成物は、安定剤を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
<<離型剤>>
本実施形態の樹脂組成物は、離型剤を含んでいてもよい。
離型剤としては、例えば、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸の塩、脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステル、数平均分子量200~15,000の脂肪族炭化水素化合物、ポリシロキサン系シリコーンオイル、ケトンワックス、ライトアマイドなどが挙げられ、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸の塩、脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルが好ましく、脂肪族カルボン酸の塩がより好ましい。
離型剤の詳細は、特開2018-095706号公報の段落0055~0061の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
本実施形態の樹脂組成物が離型剤を含む場合、その含有量は、樹脂組成物中、0.05~3質量%であることが好ましく、0.1~0.8質量%であることがより好ましく、0.2~0.6質量%であることがさらに好ましい。
本実施形態の樹脂組成物は、離型剤を、1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
本実施形態の樹脂組成物は、(B)成分および(C)成分以外の難燃剤を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。本実施形態の樹脂組成物における(B)成分および(C)成分以外の難燃剤の含有量は、樹脂組成物の(B)成分および(C)成分の合計量の10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であることが一層好ましく、1質量%以下であることがより一層好ましい。
本実施形態の樹脂組成物は、滴下防止剤(例えば、ポリテトラフルオロエチレン)を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。滴下防止剤を含まないことにより、得られる樹脂組成物の透明性をより向上させることができる。本実施形態の樹脂組成物における滴下防止剤の含有量は、樹脂組成物の1質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以下であることが一層好ましく、0.01質量%以下であることがより一層好ましい。
<樹脂組成物の物性>
本実施形態の樹脂組成物は難燃性に優れている。
例えば、本実施形態の樹脂組成物を1.5mm厚の試験片に成形し、UL94試験に従った難燃性がV-0を達成することが好ましい。
また、本実施形態の樹脂組成物を1.0mm厚の試験片に成形し、UL94試験に従った難燃性がV-1またはV-0を達成することが好ましく、V-0を達成することがより好ましい。
このような優れた難燃性は、例えば、(B)成分を配合すること等によって達成される。
本実施形態の樹脂組成物は透明性に優れている。
例えば、本実施形態の樹脂組成物を12mm厚の試験片に成形したときのヘイズが5.0%以下であることが好ましく、3.0%以下であることがより好ましく、2.0%以下であることがさらに好ましく、1.5%以下であることが一層好ましく、1.0%以下であることがより一層好ましく、1.0%未満であることがさらに一層好ましく、0.9%以下であることが特に一層好ましい。このような低いヘイズは、例えば、メインの樹脂としてポリカーボネート樹脂を用いたこと、難燃性や滞留安定性を発揮させる成分として、(B)成分および(C)成分を用いたこと、あるいは、添加剤の配合量を少なくすること等によって達成される。前記ヘイズの下限値は0%が理想であるが、0.1%以上が実際的である。
さらに、本実施形態の樹脂組成物は、湿熱後のヘイズが低いことが好ましい。
例えば、本実施形態の樹脂組成物を12mm厚の試験片に成形し、121℃、相対湿度100%の環境下で50時間処理した後のヘイズが35.0%以下であることが好ましく、15.0%以下であることがより好ましく、10.0%以下であることがさらに好ましく、6.0%以下であることが一層好ましく、3.0%以下であることがより一層好ましく、2.5%以下であることがさらに一層好ましく、2.0%以下であることが特に一層好ましい。このような低い耐湿熱処理後のヘイズは、例えば、(B)成分および(C)成分を用いたことによって達成される。前記湿熱処理後のヘイズの上限値は0%が理想であるが、0.1%以上が実際的である。
<樹脂組成物の製造方法>
本実施形態の樹脂組成物の製造方法に制限はなく、公知の樹脂組成物の製造方法を広く採用でき、ポリカーボネート樹脂、(B)成分、および、(C)成分、ならびに、必要に応じて配合されるその他の成分を、例えばタンブラーやヘンシェルミキサーなどの各種混合機を用い予め混合した後、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、単軸混練押出機、二軸混練押出機、ニーダーなどの混合機で溶融混練する方法が挙げられる。なお、溶融混練の温度は特に制限されないが、通常240~320℃の範囲である。
<成形品>
本実施形態の成形品は、本実施形態の樹脂組成物から形成される。上記した樹脂組成物(例えば、ペレット)は、各種の成形法で成形して成形品とされる。成形品の形状としては、特に制限はなく、成形品の用途、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フィルム状、ロッド状、円筒状、環状、円形状、楕円形状、多角形形状、異形品、中空品、枠状、箱状、パネル状、ボタン状のもの等が挙げられる。
成形品を成形する方法としては、特に制限されず、従来公知の成形法を採用でき、例えば、射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法、異形押出法、トランスファー成形法、中空成形法、ガスアシスト中空成形法、ブロー成形法、押出ブロー成形、IMC(インモールドコ-ティング成形)成形法、回転成形法、多層成形法、2色成形法、インサート成形法、サンドイッチ成形法、発泡成形法、加圧成形法等が挙げられる。特に、本実施形態の樹脂組成物は、射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法で得られる成形品に適している。しかしながら、本実施形態の樹脂組成物がこれらで得られた成形品に限定されるものではないことは言うまでもない。
本実施形態の樹脂組成物および成形品は、ポリカーボネート樹脂を含む成形品、特に、難燃性、透明性および滞留安定性が求められる用途に広く用いることができる。
具体的には、電気電子機器/部品、OA機器/部品、情報端末機器/部品、機械部品、家電製品、車輌部品(自動車内外装)、建築部材、各種容器、レジャー用品・雑貨類、照明機器などに好ましく用いられる。
特に、本実施形態の樹脂組成物および成形品は、LED(light emitting diode、発光ダイオード)カバー用に好ましく用いられる。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
実施例で用いた測定機器等が廃番等により入手困難な場合、他の同等の性能を有する機器を用いて測定することができる。
1.原料
以下の原料を用いた。
Figure 2023035969000003
上記B1の構造式は下記の通りである。
Figure 2023035969000004
上記C1の構造式は下記の通りである。
Figure 2023035969000005
2.実施例1~11、比較例1~3
<樹脂ペレットの製造>
表1に記載した各成分を、表3~5に記した割合(全て質量部で表示)となるように配合し、タンブラーミキサーで均一に混合して、混合物を得た。この混合物を、スクリュー径50mmのベント付き単軸押出機(田辺プラスチック社製「VS50-34V」)により、シリンダー温度280℃、スクリュー回転数80rpmで混練し、押出されたストランドを切断してペレットを作製した。
ただし、実施例10および11については、シリンダー温度を300℃とした。
<燃焼試験>
上記で得られた樹脂組成物のペレットについて、射出成形機(住友重機械工業社製「SE50DUZ」)を用い、樹脂温度290℃、金型温度80℃の条件下で射出成形を行い、長さ127mm、幅12.7mm、肉厚1.0mm、および、長さ127mm、幅12.7mm、肉厚1.5mmのUL試験用試験片を得た。
得られたUL試験用試験片を、23℃、相対湿度50%の恒温室の中で48時間調湿し、米国アンダーライターズ・ラボラトリーズ(UL)が定めているUL94試験(機器の部品用プラスチック材料の燃焼試験)に準拠して試験を実施した。
UL94試験とは、鉛直に保持した試験片にバーナーの炎を10秒間接炎した後の残炎時間やドリップ性から難燃性を評価する方法であり、V-0、V-1およびV-2の難燃性を有するためには、以下の表2に示す基準を満たすことが必要となる。
Figure 2023035969000006
結果を下記表3~5に示した。
<ヘイズ>
得られた各樹脂組成物のペレットについて、日本製鋼所社製射出成形機「J85AD」を用い、樹脂温度280℃、金型温度80℃の条件下で射出成形を行い、長さ50×50mm、肉厚12mmのブロック片を試験片として得た。
日本電色工業社製SH7000を用い、上述の方法で得られた試験片のヘイズ(初期Hz、単位:%)を測定した。ヘイズが小さい程、透明性が優れることを意味している。
さらに、得られた長さ50×50mm、肉厚12mmのブロック片を高度加速寿命試験装置(エスペック株式会社製 EHS-221MD)で121℃、相対湿度100%の環境下で50時間処理し、成形後と同様にヘイズ(湿熱50hHz、単位:%)の測定を行った。
結果を下記表3~5に示した。
<Q値>
上記で得られた樹脂組成物ペレットを、120℃で4時間乾燥した後、フローテスタ(島津製作所社製「CFT-500D」)を用い、JIS K7210に従い、以下の条件で、Q値(320℃Q値、単位:cc/s)を測定した。
サンプル量:1~2g、温度:320℃、荷重:160kgf
また、上記で得られた樹脂組成物ペレットを、120℃で4時間乾燥した後、フローテスタ(島津製作所社製「CFT-500D」)を用い、シリンダー内で10分間滞留させた後にQ値(320℃滞留10minQ値、単位:cc/s)を測定した。
サンプル量:1~2g、温度:320℃、荷重:160kgf
結果を下記表3~5に示した。
Figure 2023035969000007
Figure 2023035969000008
Figure 2023035969000009
NRは、NOT-RATED 燃焼等級該当なしを意味する。
上記結果から明らかなとおり、本発明の樹脂組成物は、難燃性、透明性および成形性に優れていた。
特に、上記(B)成分を配合することにより、難燃性が効果的に向上した。
一方、上記(C)成分を配合することにより、滞留安定性が効果的に向上した。例えば、実施例2~5は、(C)成分の配合量のみが異なっているが、(C)成分が増える毎に320℃で10分間滞留させた場合のQ値の上昇をより効果的に抑制していることが把握できる。そのため、成形性に優れた樹脂組成物であることが分かった。
また、(B)成分および(C)成分を配合しても、ヘイズが低く、透明性に優れた樹脂組成物であることが分かった。特に、湿熱後の透明性にも優れている点で有益である。

Claims (12)

  1. ポリカーボネート樹脂(A)と、
    ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドのアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩(B)と、
    ジフルオロメタンスルホニル(トリフルオロメタンスルホニル)イミドのアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩(C)と
    を含む、樹脂組成物。
  2. 前記ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、前記ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドのアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩(B)0.01~0.50質量部、および、前記ジフルオロメタンスルホニル(トリフルオロメタンスルホニル)イミドのアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩(C)0.000001~0.002000質量部を含む、
    請求項1に記載の樹脂組成物。
  3. 前記ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドのアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩(B)、および、前記ジフルオロメタンスルホニル(トリフルオロメタンスルホニル)イミドのアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩(C)が、それぞれ、アルカリ金属塩である、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
  4. 前記ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドのアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩(B)、および、前記ジフルオロメタンスルホニル(トリフルオロメタンスルホニル)イミドのアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩(C)が、それぞれ、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩およびセシウム塩の少なくとも1種である、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
  5. 前記ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドのアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩(B)と、前記ジフルオロメタンスルホニル(トリフルオロメタンスルホニル)イミドのアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩(C)の質量比率である、(C)/(B)が0.0001~0.0100である、
    請求項1または2に記載の樹脂組成物。
  6. 前記樹脂組成物を1.5mm厚の試験片に成形し、UL94試験に従った難燃性がV-0以上である、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
  7. 前記樹脂組成物を12mm厚の試験片に成形したときのヘイズが5.0%以下である、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
  8. LEDカバー用である、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
  9. 請求項1または2に記載の樹脂組成物のペレット。
  10. 請求項1または2に記載の樹脂組成物から形成された成形品。
  11. 請求項9に記載のペレットから形成された成形品。
  12. LED用カバーである、請求項10に記載の成形品。
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