JP2023033010A - 液体分離装置用流路材 - Google Patents

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Abstract

【課題】 流路材に高い圧力がかかったときに潰れにくく、流量の低下が少ない液体分離装置用流路材を提供する。【解決手段】 融点または軟化点の異なる2種類のポリエステル樹脂により構成された熱可塑性芯鞘複合繊維を含むトリコット生地からなる液体分離装置用流路材であって、前記熱可塑性芯鞘複合繊維において、高融点成分は芯部に、低融点成分は鞘部に配されており、前記トリコット生地は、2枚筬の編機でフロント糸とバック糸に前記熱可塑性芯鞘複合繊維を用いて編成されたトリコット編地の前記熱可塑性芯鞘複合繊維同士が互いに接着して剛直化したものであり、そのウエル密度が50~68本/2.54cm、コース密度が50~68本/2.54cmであり、前記トリコット生地を、90℃、7.0MPaで3分間熱プレスしたときの、プレス前後のトリコット生地の厚みの変化割合が14%以下である液体分離装置用流路材。【選択図】 なし

Description

本発明は、各種液体の濃縮や分離に使用する液体分離装置において、原液を受圧する半透膜の裏面側を支持する液体分離装置用流路材に関するものである。
半透膜を利用した液体分離装置としては、一般的にその半透膜を筒状に形成し、その外側から圧力をかけて膜の内側に浸透液を通す流路となる流路材を入れてその流路材の端を中空軸に固定して巻きつけたスパイラル型の液体分離膜モジュールを用いたものが代表的である。このような液体分離膜モジュールでは膜の外側に逆浸透圧以上の高圧の原液を通過させ、膜を通過した透過液は膜の内側を通って取り出される。筒状の分離膜は高圧で外側から加圧されるため、透過液の流路として挿入されている流路材を潰すこととなり、液の流れを悪くするので、一般的には分離膜の内側に外側から加圧されても流路材が潰れないように流路材自体を剛直化させて変形に耐えられるようにしている。このような液体分離膜モジュールはボイラー用水の前処理、排水の再利用、海水の淡水化や超純水などの造水装置として実用化されている。
従来、このような透過水用流路材に用いられるものは織物、編物などの布帛が用いられ、特に表面に微細な溝をもつ構造のものが用いられてきた。これらの布帛は膜を介して原液に加わる圧力によっても変形しないようにエポキシ樹脂やメラミン樹脂などを含浸させて剛直化させていた。その場合、高い圧力でも潰れないようにするため、布帛の重量の半分近くまで樹脂を付着する必要があった。しかし、高純度の透過水を必要とする用途や高温の液体を処理する用途においては含浸樹脂の溶出による問題が生じていた。特に、処理対象とする原液が食品用の液や医療用の液である場合、無菌であることが要求される。そのため膜分離処理の開始前あるいは終了後に雑菌汚染を防ぐために熱水による殺菌を行うため、そのとき流路材に含浸している樹脂の溶出が問題となっていた。
前記問題を解決するため、3枚筬のトリコット編機で低融点成分と高融点成分からなる熱可塑性合成繊維を編成し、そのうち地組織を構成している繊維よりもその繊度が1.2倍以上太い熱可塑性合成繊維で畝の部分を構成した編地を熱処理することで剛直化させた流路材が提案されている(特許文献1)。しかしながら、この流路材は3枚筬を用いて細い繊度の熱可塑性合成繊維と太い繊度の熱可塑性合成繊維を用いるため、生産性が低くコストが高くなるという問題があった。また、流路材の厚さを薄くすることができないという問題もあった。
この特許文献1の問題を解決するため、2枚筬を用いた芯鞘複合繊維で構成されたトリコット編地でバックハーフ組織にする技術(特許文献2)や、総繊度30~90dtexの芯鞘複合繊維で構成されたトリコット編地のウエル密度を35~45本/2.54cm、コース密度を35~55本/2.54cmとする技術(特許文献3)が提案されている。
また、海水3.5質量%濃度の塩化ナトリウムの浸透圧は2.8MPaであるため、逆浸透圧による淡水化においてクロスフロー方式による塩分濃度の上昇を考慮すると少なくとも4~6MPaの圧力をスパイラル型エレメント内に加圧させる必要がある。その場合、膜を塗布している支持体は陥没し、また、透過水用流路材は長時間の加圧によってつぶれて流量低下になる懸念がある。運転条件によっては7.0MPa以上の非常に高い圧力がかかるが、特に7.0MPa以上の条件では、長時間の加圧によってさらに流路材がつぶれやすくなる。
特公平3-66008号公報 特許第3559475号公報 WO2017/131031号公報
しかしながら、特許文献2及び3のいずれも、高圧運転用の流路材に使用する場合は圧力で流路が閉塞して流量が不十分になる欠点がある。
また、前述した3つの先行文献については、いずれも熱可塑性芯鞘複合繊維をシングルトリコットの組織で編み立てし、熱セットを行うことにより、トリコット生地全体を硬化させることで海水淡水化に必要な逆浸透圧で加圧させても流路が閉塞せず、流量低下にならないことが記載されている。しかしながら、いずれも実際の逆浸透圧下での流路の断面積維持について比較および検討されたものはなかった。
つまり、流路材の加圧下の潰れやすさについて検討されたものではなかった。また、常温で加圧後の流路材の厚みについて検査する方法があるが、長時間において加圧する必要があり、複数の検査を行う場合はかなりの手間およびコストがかかる。
また、常温で潰れやすさを検査する場合、流路材に使用されているのは熱可塑性ポリマーで構成された素材のため、加圧をやめたときに元に戻る挙動を示すため、潰れやすさを検証することは困難であった。
従って、流路材に高い圧力がかかったときに最も潰れにくく、流量の低下が少なくなるような流路材の構成および条件を容易に見出すことができていなかった。
本発明は前記問題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、厚さが薄く、流路材に高い圧力がかかったときに潰れにくく、流量の低下が少ない液体分離装置用流路材を提供することにある。
これまでは、実際の逆浸透圧下と同等の条件での流路の断面積維持とそのときの流量について比較および検討されたものはなかった。
本発明者は、長時間において高い圧力で加圧されたときの流路材の潰れ程度を容易に判断する方法を見出した。すなわち、透過水用流路材を構成している樹脂についてその樹脂をガラス転移温度以上の条件で加圧させた後の流路材と加圧前の流路材の厚みを測定することにより、潰れやすさを容易に測定することができるものである。更に、この方法を用いて流路材に高い圧力がかかったときに最も潰れにくく、流量の低下が少なくなるような流路材の構成および条件を見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明の目的は、融点または軟化点の異なる2種類のポリエステル樹脂により構成された熱可塑性芯鞘複合繊維を含有するトリコット生地からなる液体分離装置用流路材であって、前記熱可塑性芯鞘複合繊維において、高融点成分は芯部に、低融点成分は鞘部に配されており、前記トリコット生地は、2枚筬の編機のフロント糸とバック糸とに前記熱可塑性芯鞘複合繊維を用いて編成されたトリコット編地であって、前記熱可塑性芯鞘複合繊維同士が互いに接着して剛直化したトリコット生地であり、前記トリコット生地のウエル密度が50~68本/2.54cm、コース密度が50~68本/2.54cmであり、前記トリコット生地を、90℃、7.0MPaで3分間熱プレスしたときの、プレス前後のトリコット生地の厚みの変化割合が14%以下である液体分離装置用流路材によって達成される。
また、トリコット生地を構成している熱可塑性芯鞘複合繊維のフロント糸とバック糸の総繊度の合計が80~140dtexであり、フロント糸とバック糸のランナー長の差が40cm以下であり、トリコット生地の厚みが0.18~0.26であることが好ましい。
また、トリコットを構成している熱可塑性芯鞘複合繊維において、凸の部分(フロント糸)と地組織の部分(バック糸)の総繊度の差が20dtex以下であることが好ましい。
また、前記トリコット生地を構成しているフロント糸及びバック糸の熱可塑性複合繊維の芯部/鞘部の比率は、容積基準で60/40~80/20であることが好ましい。
また、トリコット生地は、2枚筬のうち1つの筬でシンカーループ部である地組織(バック糸)の部分、もう1つの筬でニードルループ部である凸の部分(フロント糸)を構成してなり、凸の部分と凸の部分の間の部分の幅(溝幅)と凸の部分の幅(畝幅)の比(溝幅/畝幅)が0.4~0.8であることが好ましい。
本発明の液体分離装置用流路材は、厚さが薄く、流路材に高い圧力がかかったときに潰れにくい高い圧縮耐性と、流量の低下が少ない液体分離装置用流路材である。特に7.0MPa以上の高圧条件においても、つぶれにくく流量の低下が少ない。
本発明の液体分離装置用流路材は、融点または軟化点の異なる2種類のポリエステル樹脂により構成された熱可塑性芯鞘複合繊維を含有するトリコット生地からなる。
前記熱可塑性芯鞘複合繊維において、高融点成分は芯部に、低融点成分は鞘部に配されている。両成分の融点差は、好ましくは60℃以上である。なお、本発明においては、融点を持たず軟化点がある場合の軟化点との差も融点差という。
上記低融点成分として好ましいポリエステルとしては、テレフタル酸とエチレングリコールを主成分とし、共重合成分として、酸成分であるシュウ酸、マロン酸、アゼライン酸、アジピン酸、セバチン酸等の脂肪族ジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸類および/またはヘキサヒドロテレフタル酸等の脂環族ジカルボン酸と、ジエチルグリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキサンジオール、パラキシレングリコール、ビスヒドロキシエトキシフェニルプロパン等の脂肪族、脂環族または芳香族系ジオール類のグリコールを1種もしくは2種以上組み合わせたものを所定割合で含有し、所望に応じてパラヒドロキシ安息香酸等のオキシ酸類を50モル%以下の割合で添加した共重合エステルが好適である。
上記のなかでも、特に、テレフタル酸とエチレングリコールにイソフタル酸を添加して共重合させたポリエステルが好適である。そして、このようなイソフタル酸共重合ポリエステルでは、イソフタル酸成分を10~30モル%共重合させたものが、融着固定のしやすさおよび製編性の点から好ましい。なお、上記成分モノマーの共重合比率を変えることにより、所望の軟化点となるよう調整すればよい。
上記高融点成分としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリエチレンテレフタレート等のホモポリエステルが挙げられる。
本発明においては、鞘部の低融点成分としてイソフタル酸共重合ポリエテスルを用い、芯部の高融点成分としてホモポリエステルを用いた芯鞘型複合ポリエステルマルチフィラメントが最適である。また、イソフタル酸と共に、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール等の直鎖脂肪酸ジオールを用いてもよい。なお、上記芯部/鞘部の比率は、容積基準で60/40~80/20に設定することが好ましく、特に68/32~75/25に設定することが好ましい。60/40~80/20であれば、低融点成分である鞘部が薄すぎないため、融着固定する際、鞘部同士が十分に接着することができ、高融点成分である芯部が多いため繊維の強度が十分発揮されて、7.0MPa以上の高い圧力が掛かったときにもその圧力に耐えて潰れにくい。
芯鞘型複合マルチフィラメントにおいて、総繊度は、30~110dtex、構成本数は、10~50本、単糸繊度は1.0~6.2dtexが好ましい。
総繊度が30dtex未満の場合、糸が細すぎてループの上から圧力が掛かったときにその圧力に耐えられずに潰れやすくなり、また総繊度が110dtexを超える場合、生地の厚みが大きく、生地が硬くなり、透過水用流路材に適さない傾向にある。また、総繊度が40~60dtexであることがより好ましい。
本発明におけるトリコット生地は、前記熱可塑性芯鞘複合繊維を2枚筬の編機のフロント糸とバック糸に用いて編成されたトリコット編地において、熱可塑性芯鞘複合繊維同士を互いに接着させて剛直化したものである。
フロント糸とバック糸に用いる熱可塑性芯鞘複合繊維は、芯鞘成分の組成が同一の繊維でも異なる繊維でもよいが、融点または軟化点が同一であることが好適である。
前記トリコット生地のウエル密度は50~68本/2.54cm、コース密度は50~68本/2.54cmであることが好ましい。
ウエル密度が50本/2.54cm以上かつコース密度が50本/2.54cm以上の場合、一定面積におけるニードルループの凸の部分が多く、ループの上から圧力が掛かったときにその圧力に耐えて潰れにくい傾向にある。またウエル密度が68本/2.54cm以下かつコース密度が68本/2.54cm以下の場合、生地の厚みが大きくならず、生地が硬くなりにくく、透過水用流路材に適している。
また、トリコット生地のウエル密度とコース密度の積が、2700以上であることが好ましく、より好ましくは3000以上である。
トリコット生地のウエル密度とコース密度の積が2700未満であるとトリコット生地の一定面積におけるニードルループの凸の部分が少なくなり、ループの上から圧力が掛かったときにその圧力に耐えられずに潰れやすくなる傾向にある。
また、トリコット生地のウエル密度とコース密度の積は、4600以下であることが好ましい。
トリコット生地のウエル密度とコース密度の積が4600を超える場合、生地の厚みが大きく、生地が硬くなり、透過水用流路材に適さなくなる傾向にある。
トリコット生地の編組織としては、ダブルデンビー組織、バックハーフ組織、ハーフトリコット組織等のシングルトリコット編が挙げられ、中でも、ダブルデンビー組織、ハーフトリコット組織が好ましい。
ダブルトリコット編では、生地の厚みが大きく、生地が硬くなり、透過水用流路材に適さない傾向にある。
また、トリコット生地を構成している熱可塑性芯鞘複合繊維のフロント糸とバック糸を合わせた総繊度は80~140dtexであることが好ましい。
トリコット生地を構成している熱可塑性芯鞘複合繊維のフロント糸とバック糸を合わせた総繊度が80dtex未満であると、ニードルループの凸の部分の強度が弱くなり、ループの上から圧力が掛かったときにその圧力に耐えられずに潰れやすくなる傾向にある。また、トリコット生地を構成している熱可塑性芯鞘複合繊維のフロント糸とバック糸を合わせた総繊度が140dtexを超えると、生地の厚みが大きく、生地が硬くなり、透過水用流路材に適さなくなる傾向にある。
トリコット生地のフロント糸とバック糸のランナー長の差は40cm以下であることが好ましい。
トリコット生地のフロント糸とバック糸のランナー長の差が40cmを超えると、シンカーループ部である地組織の部分とニードルループ部である凸の部分のバランスが悪くなり、トリコット生地をヒートセット処理するときに破れたり、目標とする性量に調整することができないことがある。
また、トリコット生地の厚みは0.18~0.26mmであることが好ましい。
トリコット生地の厚みが0.18mm未満であるとトリコット流路材のシンカーループ部である地組織の部分とニードルループ部である凸の部分で構成される空隙が少なく、十分な流量を確保することができない。トリコット生地の厚みが0.26mmを超えると生地の厚みが大きく、生地が硬くなり、透過水用流路材に適さなくなる傾向にある。
トリコット生地を構成している熱可塑性芯鞘複合繊維においてフロント糸とバック糸との総繊度の差が20dtex以下であることが好ましい。
フロント糸とバック糸との総繊度の差が20dtexより大きいと、ニードルループの凸の部分の強度およびシンカーループ部の地組織の強度が弱くなり、ループの上から圧力が掛かったときにその圧力に耐えられずに潰れやすくなる。また、生地の厚みにムラができやすく、透過水用流路材に適さなくなる傾向にある。
なお、フロント糸の総繊度とバック糸の総繊度は、どちらが大きくても構わない。
前記トリコット生地を、90℃、7.0MPaで3分間熱プレスしたとき、圧力印加前と圧力印加後のトリコット生地の厚みの変化割合が14%以下であることが必要である。
トリコット生地を、90℃、7.0MPaで3分間熱プレスしたときの圧力印加前と圧力印加後のトリコット生地の厚みの変化割合が14%を超えるということはニードルループの凸の部分の強度が弱く、ループの上から圧力が掛かったときにその圧力に耐えられずに潰れやすいことを示している。
また、90℃、7.0MPaで3分間熱プレスしたときの圧力印加前と圧力印加後のトリコット生地の厚みの変化割合は、7%以下であることがより好ましい。
また、透過水用流路材を構成している樹脂について、その樹脂をガラス転移温度以上の温度をかけた状態で圧力をかけることにより、圧力により受けた歪みを固定できるものであり、これを利用し、加圧させた後の流路材と加圧前の流路材の厚みを測定することにより、潰れやすさを容易に測定することができる。本発明においては、ポリエステル系樹脂を用いるものであり、ポリエステル系樹脂のガラス転移点は約80℃であることから、90℃で熱プレスする。
本発明におけるトリコット生地は2枚筬を使用し、そのうち1つの筬でシンカーループ部である地組織の部分、もう1つの筬でニードルループ部である凸の部分を構成しているが、凸部と凸部の間の部分の幅(溝幅)と凸の部分の幅(畝幅)の比(溝幅/畝幅)が0.4~0.8であることが好ましい。そのとき溝幅は100~200μmであることが好ましく、110~190であることがより好ましい。畝幅は150~350μmであることが好ましく、240~300μmであることがより好ましい。
ニードルループの凸部と凸部の間の部分の幅(溝幅)と凸の部分の幅(畝幅)の比(溝幅/畝幅)が0.4未満であるとトリコット流路材のシンカーループ部である地組織の部分とニードルループ部である凸の部分で構成される空隙が少なく、十分な流量を確保することができない。ニードルループの凸部と凸部の間の部分の幅(溝幅)と凸の部分の幅(畝幅)の比(溝幅/畝幅)が0.8を超えるとニードルループの凸の部分の強度が弱くなり、ループの上から圧力が掛かったときにその圧力に耐えられずに潰れやすくなる。また、圧力が掛かったときに分離膜が溝に落ち込みやすく、流量が低下する傾向にある。
また溝の高さは80~120μmであることが好ましい。溝の高さが80μm以上であれば十分な流量を確保でき、120μm以下であれば高い圧力が掛かったときに潰れにくい。
上記ニードルループの凸部と凸部の間の部分(溝)の高さ、幅(溝幅)と凸の部分の幅(畝幅)は、編密度、使用する熱可塑性芯鞘複合繊維の総繊度、熱セットの条件により調整し、所望の幅及びその比とすればよい。
本発明に係るトリコット生地は、例えば、下記の方法によって製造する。
熱可塑性芯鞘複合繊維を、2枚筬のトリコット編機のフロント糸とバック糸に用いてトリコット編地を編製する。得られたトリコット編地を熱セットして、熱可塑性芯鞘複合繊維同士を互いに接着させて剛直化し、トリコット生地を得る。トリコット編地のゲージ数は、28以上が好ましい。
また、熱セットは、ピンテンター熱処理機、シリンダー乾燥機などにより行えばよい。
上記トリコット生地は、液体分離装置の透水側流路材として好適に用いることができる。本発明の液体分離装置用流路材は、厚さが薄いにも関わらず流量が十分にあり、特に7.0MPa以上の高圧でも、長時間加圧してもつぶれることなく、流量低下が少ないものである。
以下、本発明について実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明は必ずしもこれに限定されるものではない。なお、本実施例で用いる各種特性の測定方法およびトリコット生地の評価基準は以下の通りである。
(1)トリコット生地の熱プレス前後の厚みの変化割合(%)
卓上型ホットプレス(テクノサプライ(株)製、小型プレスG-12型)を用いて、90℃、7.0MPaで、3分間の条件下でトリコット生地を熱プレスしたときの、加圧前と加圧後のトリコット生地の厚みを測定し、厚みの変化割合を下記の式より算出した。
厚みの変化割合(%)={(加圧前の厚み-加圧後の厚み)/加圧前の厚み}×100
(2)トリコット生地の溝幅(μm)、畝幅(μm)
光学顕微鏡を用いてトリコット生地の平面写真および断面写真を採取して溝幅および畝幅を測定した。
(3)トリコット生地の厚み(mm)
ピーコックダイアルゲージ((株)尾崎製作所製、H-30型、0.01目盛、測定子30mmφ)を用いてトリコット生地の厚みを測定した。
(4)密度(本/2.54cm)
JIS L 1096 8.6.2 編物の密度に従い、トリコット生地の2.54cmの区間のウエル数およびコース数を測定した。
(5)流量低下率
米国特許出願公開第2005/0173333号明細書にも記載のあるH-valueを、公知の方法で測定した。米国特許出願公開第2005/0173333号明細書とは違い、所定の圧力下における流量をH-value(ml/min)として測定した。5.5MPa加圧したときのH-value(ml/min)と、7.0MPa加圧した後に再度5.5MPa加圧したときのH-value(ml/min)から、流量低下率を算出した。
流量低下率が5%以下を◎、5より大きく12%以下を○、12%より大きいものを×と評価した。
[実施例1]
ポリエチレンテレフタレート(融点:260℃)を芯部とし、ポリエチレンテレフタレートの酸成分としてイソフタル酸を25%モル%共重合させて得た低融点共重合ポリエステル(融点:190℃)を鞘部とし、そのときの芯部/鞘部の割合は容積基準で72/28として熱可塑性芯鞘複合繊維(44dtex/24f)を得た。前記複合繊維をフロント糸として、バック糸にも同じ熱可塑性複合繊維を用いて、36ゲージの2枚筬のトリコット編機で、フロント糸のランナー長は112.0cm、バック糸のランナー長は112.0cmでダブルデンビー組織(閉目)に編み立てた。
得られたトリコット編地を200℃に設定したピンテンターで1分間熱セットしてウエル密度が60本/2.54cm、コース密度が60本/2.54cmのトリコット生地の流路材を得た。また、得られたトリコット生地の熱プレス前後の厚みの変化割合(%)は6.4%であった。
[実施例2]
ピンテンターで1分間熱セットした後の加工反のウエル密度を65本/2.54cmとした以外は実施例1と同様にして、流路材を得た。
得られたトリコット生地の熱プレス前後の厚みの変化割合(%)は10.0%であった。
[実施例3]
実施例1と同様の樹脂組合せの熱可塑性芯鞘複合繊維(56dtex/12f)をフロント糸として用い、36ゲージの2枚筬のトリコット編機で、フロント糸のランナー長は127.5cm、バック糸のランナー長は94.0cmでハーフ組織に編成したこと以外は実施例1と同様にして、流路材を得た。
得られたトリコット生地の熱プレス前後の厚みの変化割合(%)は13.5%であった。
[実施例4]
実施例1と同様の樹脂組合せの熱可塑性芯鞘複合繊維(56dtex/48f)をフロント糸として用い、36ゲージの2枚筬のトリコット編機で、フロント糸のランナー長は127.5cm、バック糸のランナー長は94.0cmでハーフ組織に編成したこと以外は実施例1と同様にして、流路材を得た。
得られたトリコット生地の熱プレス前後の厚みの変化割合(%)は8.0%であった。
[比較例1]
実施例1と同様の樹脂組合せの熱可塑性芯鞘複合繊維(56dtex/24f)をフロント糸として用い、36ゲージの2枚筬のトリコット編機で、フロント糸のランナー長は127.5cm、バック糸のランナー長は94.0cmでハーフ組織に編成し、ピンテンターで1分間熱セットした後の加工反のウエル密度を70本/2.54cmとした以外は実施例1と同様にして、流路材を得た。
得られたトリコット生地を熱プレスしたときの処理前後の厚みの変化割合(%)は13.1%であった。
[比較例2]
実施例1と同様の樹脂組合せの熱可塑性芯鞘複合繊維(56dtex/24f)をフロント糸として用い、36ゲージの2枚筬のトリコット編機で、フロント糸のランナー長は94cm、バック糸のランナー長は127.5cmでクインズコート組織に編成したこと以外は実施例1と同様にして、流路材を得た。
得られたトリコット生地を熱プレスしたときの処理前後の厚みの変化割合(%)は15%であった。
Figure 2023033010000001
<結果>
[実施例1~4]
トリコット生地を熱プレスしたときの処理前後の厚みの変化割合(%)は14%以下であり、そのときの流量低下率も12%以下となり、これを流路材として評価したときに高圧条件でも長期間安定して使用できるレベルにあった。
[比較例1~2]
比較例1はトリコット生地を熱プレスしたときの処理前後の厚みの変化割合(%)は14%以下であったが、流路材の厚みが0.26mmより大きいものであった。また、比較例2は厚みの変化割合(%)が14%を超えるものであった。また、そのときの流量低下率が12%を超えており、これを流路材として評価したときに流量が少なく、実使用に耐えられるものではなかった。

Claims (5)

  1. 融点または軟化点の異なる2種類のポリエステル樹脂により構成された熱可塑性芯鞘複合繊維を含むトリコット生地からなる液体分離装置用流路材であって、前記熱可塑性芯鞘複合繊維において、高融点成分は芯部に、低融点成分は鞘部に配されており、前記トリコット生地は、2枚筬の編機でフロント糸とバック糸に前記熱可塑性芯鞘複合繊維を用いて編成されたトリコット編地の前記熱可塑性芯鞘複合繊維同士が互いに接着して剛直化したものであり、そのウエル密度が50~68本/2.54cm、コース密度が50~68本/2.54cmであり、前記トリコット生地を、90℃、7.0MPaで3分間熱プレスしたときの、プレス前後のトリコット生地の厚みの変化割合が14%以下である液体分離装置用流路材。
  2. 前記トリコット生地を構成しているフロント糸の熱可塑性芯鞘複合繊維と、バック糸の熱可塑性芯鞘複合繊維との総繊度の合計が80~140dtexであり、フロント糸とバック糸のランナー長の差が40cm以下であり、前記トリコット生地の厚みが0.18~0.26mmである請求項1記載の液体分離装置用流路材。
  3. 前記トリコット生地を構成しているフロント糸の熱可塑性芯鞘複合繊維と、バック糸の熱可塑性芯鞘複合繊維との総繊度の差が20dtex以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の液体分離装置用流路材。
  4. 前記トリコット生地を構成しているフロント糸及びバック糸の熱可塑性芯鞘複合繊維の芯部/鞘部の比率は、容積基準で60/40~80/20であることを特徴とする請求項1~3いずれか1項に記載の液体分離装置用流路材。
  5. 前記トリコット生地は、2枚筬のうち1つの筬でシンカーループ部である地組織の部分を、もう1つの筬でニードルループ部である凸の部分を構成してなり、凸の部分と凸の部分の間の部分の幅(溝幅)と凸の部分の幅(畝幅)の比(溝幅/畝幅)が0.4~0.8であることを特徴とする請求項1~4いずれか1項に記載の液体分離装置用流路材。
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