JP2023031123A - ホスホリパーゼd、及びコリン型プラズマローゲンの定量方法 - Google Patents

ホスホリパーゼd、及びコリン型プラズマローゲンの定量方法 Download PDF

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【課題】本発明の課題は、コリン型プラズマローゲンに対する新たなホスホリパーゼDを得ることである。【解決手段】(1-1)配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチド;(1-2)配列番号1に記載のアミノ酸配列と少なくとも85%の同一性を有し、かつグリセロール骨格のsn-2位にオレイン酸がエステル結合したコリン型プラズマローゲン分子内のリン酸エステル結合への加水分解活性を有するポリペプチド;(1-3)配列番号1に記載のアミノ酸配列において、1又は数個のアミノ酸が付加、置換、欠失及び/又は挿入されたポリペプチドであって、前記コリン型プラズマローゲン分子内のリン酸エステル結合への加水分解活性を有するポリペプチド;のいずれか記載のポリペプチドを含む、ホスホリパーゼDを調製する。【選択図】図3

Description

本発明はホスホリパーゼDや、コリン型プラズマローゲンの定量方法や、発現ベクターや、前記発現ベクターを含有する形質転換体や、前記形質転換体を培養してホスホリパーゼDを産生する工程を含有する、ホスホリパーゼDの製造方法に関する。
プラズマローゲンは抗酸化作用、イオン輸送、コレステロール排出等の機能を持ったリン脂質の一種である。コリン型プラズマローゲンは哺乳動物において主として心筋、筋肉に多く含まれており、さらに脳にも含まれている。
近年、プラズマローゲンがアルツハイマー型認知症や軽度認知障害(mild cognitive impairment:MCI)の患者の脳において有意に減少していることや(非特許文献1、2参照)、アルツハイマー型認知症患者の血液中のプラズマローゲン濃度が低下していること(非特許文献3、4参照)が開示され、アルツハイマー型認知症とプラズマローゲンとの関係が注目されている。また、sn-2位にオレイン酸がエステル結合したコリン型プラズマローゲンの血中濃度と冠動脈疾患との関連が報告されるなど、コリン型プラズマローゲンと疾患との関係も注目されつつある(非特許文献5参照)。
こうした中、プラズマローゲンの測定に関する研究も進んできた。たとえば、(A)被験血液サンプルに含有される赤血球に含まれるプラズマローゲン量を、高速液体クロマトグラフィーを用いて測定する工程、及び(B)(i)被験血液サンプルに含有される赤血球に含まれるプラズマローゲン量と、(ii)被験血液サンプルを採取した哺乳動物と同一種の健常哺乳動物由来の赤血球に含まれるプラズマローゲン量とを比較する工程を含む、被験血液サンプルが認知症哺乳動物由来であるかを判定するための検査方法(特許文献1参照)が提案されている。
また、ストレプトマイセス・エスピー由来のホスホリパーゼDはリゾホスファチジルコリンやホスファチジルコリンに対する高いホスホリパーゼD活性を有するものの、コリン型プラズマローゲンに対するホスホリパーゼD活性の発見に基づきコリン型プラズマローゲンに作用してコリンを遊離させるホスホリパーゼDとして提案されている(特許文献2参照)。
国際公開第2012/090625号パンフレット 特開2014-082991号公報
Guan Z, et al., J Neuropathol Exp Neurol; 58(7):740-747 (1999) Fujino et al., J Alzheimers Dis Parkinsonism; 2018,8(1) DOI: 10.4172/2161-0460.1000419 Goodenowe DB et al., J Lipid Res Nov;48(11): 2485-2498 (2007) Oma et al., Dement Geriatr Cogn Disord Extra;2:298-303 (2012) Nishimukai et al., Clinica Chimica Acta; 437(1):147-154 (2014)
本発明の課題は、sn-2位にオレイン酸がエステル結合したコリン型プラズマローゲン(以下、「PlsCho(sn-2 C18:1)」ともいう)に対する新たなホスホリパーゼDを得ることである。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ストレプトマイセス グリセオフラバス(Streptomyces griseoflavus)に近縁のストレプトマイセス属A746株由来のホスホリパーゼDが、sn-2位にオレイン酸がエステル結合したコリン型プラズマローゲンに対して基質特異性が高いことを見いだした。また、かかるホスホリパーゼDを用いれば、sn-2位にオレイン酸がエステル結合したコリン型プラズマローゲンを選択的に検出若しくは定量できることを見いだし、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下のとおりのものである。
〔1〕以下の(1-1)~(1-3)のいずれか記載のポリペプチドを含む、ホスホリパーゼD。
(1-1)配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチド;
(1-2)配列番号1に記載のアミノ酸配列と少なくとも85%の同一性を有し、かつグリセロール骨格のsn-2位にオレイン酸がエステル結合したコリン型プラズマローゲン分子内のリン酸エステル結合への加水分解活性を有するポリペプチド;
(1-3)配列番号1に記載のアミノ酸配列において、1又は数個のアミノ酸が付加、置換、欠失及び/又は挿入されたポリペプチドであって、前記コリン型プラズマローゲン分子内のリン酸エステル結合への加水分解活性を有するポリペプチド;
〔2〕sn-2位にオレイン酸がエステル結合したコリン型プラズマローゲン分子内のリン酸エステル結合への加水分解活性を有するホスホリパーゼDであって、以下の(2-1)~(2-4)の性質を有するホスホリパーゼD。
(2-1)sn-2位にオレイン酸がエステル結合したコリン型プラズマローゲン分子内のリン酸エステル結合への加水分解活性を有する;
(2-2)SDS-PAGE分析により測定した分子量が38,000~50,000である;
(2-3)至適温度 pH7.2、2.5分の反応条件下で、40~60℃である;
(2-4)ストレプトマイセス属に属する微生物由来である;
〔3〕ストレプトマイセス グリセオフラバス(Streptomyces griseoflavus)、ストレプトマイセス グリセオルベンス(Streptomyces griseorubens)、又はストレプトマイセス グリセオインカルナタス(Streptomyces griseoincarnatus)に近縁の微生物由来であることを特徴とする、上記〔2〕記載のホスホリパーゼD。
〔4〕sn-2位にオレイン酸がエステル結合したコリン型プラズマローゲンを基質とした場合のリン酸エステル結合への加水分解活性を100とした場合に、sn-2位にアラキドン酸がエステル結合したコリン型プラズマローゲンを基質とした場合の相対活性値が10以下、及びsn-2位にドコサヘキサエン酸がエステル結合したコリン型プラズマローゲンを基質とした場合の相対活性値が10以下であることを特徴とする上記〔1〕~〔3〕のいずれか記載のホスホリパーゼD。
〔5〕試料と上記〔1〕~〔4〕のいずれか記載のホスホリパーゼDとを作用させる工程を含むことを特徴とする、前記試料中のsn-2位にオレイン酸がエステル結合したコリン型プラズマローゲンの定量方法。
〔6〕上記〔1〕記載のホスホリパーゼDをコードするポリヌクレオチドを含有する発現ベクター。
〔7〕上記〔6〕記載の発現ベクターを含有する形質転換体。
〔8〕上記〔7〕記載の形質転換体を培養してホスホリパーゼDを産生する工程を含有する、ホスホリパーゼDの製造方法。
本発明のホスホリパーゼDによりsn-2位にオレイン酸がエステル結合したコリン型プラズマローゲンを加水分解することが可能となる。
実施例2で作製したA746株の16SリボソームDNA約1500塩基対に基づく分子系統樹である。 実施例3において、精製したホスホリパーゼD(DEAE画分)をSDS-PAGE(ドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動)により解析した結果である。 実施例4において、精製したホスホリパーゼD(DEAE画分)を用いてホスホリパーゼD活性を測定した結果を示す図である。sn-2位にオレイン酸がエステル結合したPlsChoを基質とした場合のホスホリパーゼD活性を100とした場合の相対活性で示してある。 実施例4において、精製したホスホリパーゼDの至適温度を調べた結果である。 実施例4において、精製したホスホリパーゼDの至適pHを調べた結果である。 実施例4において、精製したホスホリパーゼDにおけるジスルフィド結合の重要性を調べた結果を示す図である。 実施例4において、精製したホスホリパーゼDにおける金属イオンの要求性を調べた結果を示す図である。 実施例6において、大腸菌で発現させて得られた酵素PlsCho-PLD液をSDS-PAGE分析により測定した結果を示す図である。 実施例6において、大腸菌で発現させて得られた酵素PlsCho-PLD液を、抗ヒスチジンタグ抗体を用いたウエスタンブロット解析した結果を示す図である。 実施例7において、PlsCho(sn-2 C18:1)を基質とするPlsCho-PLD活性の検出結果を示す図である。 実施例8において、基質特異性を調べた結果である。 実施例9において、血漿中のコリン型プラズマローゲンの検出結果を示す図である。
[ホスホリパーゼD]
本発明のホスホリパーゼD-(1)は、
(1-1)配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチド;
(1-2)配列番号1に記載のアミノ酸配列と少なくとも85%の同一性を有し、かつグリセロール骨格のsn-2位にオレイン酸がエステル結合したコリン型プラズマローゲン分子内のリン酸エステル結合への加水分解活性を有するポリペプチド;
(1-3)配列番号1に記載のアミノ酸配列において、1又は数個のアミノ酸が付加、置換、欠失及び/又は挿入されたポリペプチドであって、前記コリン型プラズマローゲン分子内のリン酸エステル結合への加水分解活性を有するポリペプチド;
の(1-1)~(1-3)のいずれか記載のポリペプチドを含むホスホリパーゼDであり、以下、「本件ホスホリパーゼD-(1)」ともいう。
本発明のホスホリパーゼD-(2)は、
(2-1)sn-2位にオレイン酸がエステル結合したコリン型プラズマローゲン分子内のリン酸エステル結合への加水分解活性を有する;
(2-2)SDS-PAGE分析により測定した分子量が38,000~50,000である;
(2-3)至適温度 pH7.2、2.5分の反応条件下で、40~60℃である;
(2-4)ストレプトマイセス属に属する微生物由来である;
の(2-1)~(2-4)の性質を有し、sn-2位にオレイン酸がエステル結合したコリン型プラズマローゲン分子内のリン酸エステル結合への加水分解活性を有するホスホリパーゼDであり、以下、「本件ホスホリパーゼD-(2)」ともいう。
また、上記本件ホスホリパーゼD-(1)及び本件ホスホリパーゼD-(2)を総称して、以下、「本件ホスホリパーゼD」又は「本件PLD」ともいう。
本明細書におけるsn-2位にオレイン酸がエステル結合したコリン型プラズマローゲンは、グリセロリン脂質のサブクラスの一つで、グリセロリン脂質のC1(sn-1)位にアルケニル(ビニルエーテル)結合した炭化水素鎖、C2(sn-2)位にオレイン酸(炭素数18で二重結合が1つ 18:1)のエステル結合を持つアルケニルエーテル型グリセロリン脂質であって、塩基がコリンであるものであればよく、以下の式(I)にその構造を示す。
Figure 2023031123000002
式中、Rは、通常、炭素数1~20の脂肪族炭化水素基で、例えば、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、イコサニル基等が挙げられる。式中、Rは、炭素数18で二重結合が1つの不飽和脂肪酸由来の不飽和脂肪族炭化水素基であり、たとえばオクタデセノイル基である。
本件ホスホリパーゼDは、sn-2位にオレイン酸がエステル結合したコリン型プラズマローゲン分子内のリン酸エステル結合への加水分解活性、具体的には以下の式(II)に示すようにsn-2位にオレイン酸がエステル結合したコリン型プラズマローゲン分子内のsn-3位リン酸エステルを加水分解してアルケニルエーテル脂質とコリンを遊離させる作用を有する酵素である。
Figure 2023031123000003
ホスホリパーゼDがPlsCho(sn-2 C18:1)分子内のリン酸エステルへの加水分解活性を有するか否かは、たとえばPlsCho(sn-2 C18:1)にホスホリパーゼDを作用させて、加水分解により遊離されるコリンを定量することによって行うことができる。コリンの定量については後述する。
上記本件ホスホリパーゼD-(2)は、電気泳動条件等により若干変化し得るが、SDS-PAGE分析により測定した分子量が38,000~50,000、好ましくは42,000~45,000を挙げることができる。また、等電点(Genetyxによる計算値)としては5.2~5.6、好ましくは5.44を挙げることができる。
上記本件ホスホリパーゼD-(2)は、pH7.2、2.5分の反応条件下において、至適温度が40~60℃、好ましくは45℃~55℃を挙げることができる。
上記本件ホスホリパーゼD-(2)は、37℃、2.5分の反応条件下において、至適pHが3.5~4.5、好ましくは5.5~8.0、より好ましくは6.5~7.5を挙げることができる。
上記本件ホスホリパーゼD-(2)は、ストレプトマイセス属に属する微生物由来であり、ストレプトマイセス属に属する微生物としては、ストレプトマイセス グリセオフラバス(Streptomyces griseoflavus)、ストレプトマイセス グリセオルベンス(Streptomyces griseorubens)、又はストレプトマイセス グリセオインカルナタス(Streptomyces griseoincarnatus)に近縁の微生物のほか、ストレプトマイセス アルチオチカス(Streptomyces althioticus)、ストレプトマイセス アルムキスチイ(Streptomyces almquistii)、ストレプトマイセス ヘリオマイシニ(Streptomyces heliomycini)、ストレプトマイセス ビリドクロモゲネス(Streptomyces viridochromogenes)、ストレプトマイセス フラベオラス(Streptomyces flaveolus)、ストレプトマイセス アンボファシエンス(Streptomyces ambofaciens)、ストレプトマイセス アルボグリセオラス(Streptomyces albogriseolus)、ストレプトマイセス ビリドディアスタティカス(Streptomyces viridodiastaticus)、ストレプトマイセス ケリカラー(Streptomyces coelicolor)を挙げることができる。なお、近縁の微生物か否かは、例えば近隣結合法等により系統樹を推定し、分子系統解析を行うことによって判断することができる。
さらに、上記本件ホスホリパーゼD-(2)は、PlsCho(sn-2 C18:1)を基質とし、pH7.2、50℃、2.5分の反応条件下で反応させた場合のリン酸エステル結合への加水分解活性を100とした場合に、sn-2位にアラキドン酸がエステル結合したコリン型プラズマローゲンを基質とした場合の相対活性値が10以下、好ましくは5以下、より好ましくは3以下、sn-2位にドコサヘキサエン酸がエステル結合したコリン型プラズマローゲンを基質とした場合の相対活性値が10以下、好ましくは5以下、より好ましくは3以下であるポリペプチドを好適に挙げることができる。
上記本件ホスホリパーゼD-(2)をストレプトマイセス属に属する微生物から調製する場合には、ストレプトマイセス属に属する微生物を培養し、培養上清を回収した後、公知の酵素精製方法、例えば、硫安沈殿、さらに陰イオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、及び/又はアフィニティークロマトグラフィーを適宜組み合わせて行うことにより精製して調製することができる。
上記本件ホスホリパーゼD-(1)の(1-2)のポリペプチドにおける「配列番号1に記載のアミノ酸配列と少なくとも85%の同一性を有し、かつPlsCho(sn-2 C18:1)分子内のリン酸エステル結合への加水分解活性を有するポリペプチド」としては、配列番号1に記載のアミノ酸配列と少なくとも85%、90%以上、93%以上、95%以上、又は98%以上の同一性を有し、かつPlsCho(sn-2 C18:1)分子内のリン酸エステル結合への加水分解活性を有するポリペプチドを挙げることができる。なお、上記「配列番号1に記載のアミノ酸配列と少なくとも85%の同一性を有し、かつPlsCho(sn-2 C18:1)分子内のリン酸エステル結合への加水分解活性を有するポリペプチド」は、配列番号1における81番目及び258番目のH、83番目及び260番目のK、88番目及び265番目のD、好ましくは81番目~88番目のHRKVLLTD、及び258番目~265番目のHTKIITVDのHxKxxxxDモチーフ(Hはヒスチジン、Kはリジン、Dはアスパラギン酸、Rはアルギニン、Vはバリン、Lはロイシン、Tはスレオニン、xは任意のアミノ酸:HKDモチーフ)においては配列番号1に記載のアミノ酸配列の対応する位置と同一性を維持しているポリペプチドであることが好ましい。なお、上記HKDモチーフは、ホスホリパーゼDにおいて触媒反応に寄与するアミノ酸配列である。
上記本件ホスホリパーゼD-(1)の(1-3)のポリペプチドにおける「1又は数個のアミノ酸が付加、置換、欠失及び/又は挿入されたポリペプチド」とは、例えば1~10個、1~5個、1~3個、1~2個、又は1個の任意の数のアミノ酸が付加、置換、欠失及び/又は挿入されたポリペプチドを挙げることができる。なお、上記「1又は数個のアミノ酸が付加、置換、欠失及び/又は挿入されたポリペプチド」は、配列番号1における81番目及び258番目のH、83番目及び260番目のK、88番目及び265番目のD以外、好ましくは81番目~88番目のHRKVLLTD、及び258番目~265番目のHTKIITVDのHxKxxxxDモチーフ以外における1又は数個のアミノ酸が付加、置換、欠失及び/又は挿入されたポリペプチドであることが好ましい。
上記本件ホスホリパーゼD-(1)の(1-2)のポリペプチド又は(1-3)のポリペプチドとしては、PlsCho(sn-2 C18:1)を基質とし、pH7.2、50℃、2.5分の反応条件下で反応させた場合のリン酸エステル結合への加水分解活性を100とした場合に、sn-2位にアラキドン酸が結合したコリン型プラズマローゲンを基質とした場合の相対活性値が10以下、好ましくは5以下、より好ましくは3以下、sn-2位にドコサヘキサエン酸が結合したコリン型プラズマローゲンを基質とした場合の相対活性値が10以下、好ましくは5以下、より好ましくは3以下であるポリペプチドを好適に挙げることができる。
上記本件ホスホリパーゼDをPlsCho(sn-2 C18:1)と作用させる場合には、Tris-HCl緩衝液、酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液、BisTris-HCl緩衝液、HEPES緩衝液等の緩衝液を用いることが好ましく、作用させる際のpHとしては3.5~4.5、又は5.5~8.0、好ましくは6.5~7.5を挙げることでき、作用させる際の温度としては40~60℃、好ましくは45~55℃を挙げることができる。
(PlsCho(sn-2 C18:1)の定量方法)
本発明の試料中のPlsCho(sn-2 C18:1)の定量方法は、試料と上記ホスホリパーゼDとを作用させる工程を含む、試料中のPlsCho(sn-2 C18:1)の定量方法であればよく、本ホスホリパーゼDの基質特異性によりPlsCho(sn-2 C18:1)を精度よく定量することが可能となる。試料中のPlsCho(sn-2 C18:1)を定量する方法としては、たとえば呈色反応を利用した特開2014-82991号公報の方法を挙げることができる。具体的には、試料(基質)とホスホリパーゼDとを作用させた後、熱失活で酵素反応を停止させ、その後コリンオキシダーゼ、ペルオキシダーゼ、及び呈色試薬を含む溶液を加えて呈色反応させて吸光度を測定する。次に、試料として既知濃度のPlsCho(sn-2 C18:1)を用いて検量線を作成し、測定対象の試料を用いて得られた測定値と検量線を比較してPlsCho(sn-2 C18:1)量を算出することが可能となる。
上記試料としては、被験体から採取された血漿、血清、血液、唾液、髄液、尿、リンパ液、汗等の体液を挙げることができる。血清及び血漿は、被験体から通常の採血方法(例えば、シリンジ採血又は真空採血)で得られる血液を、遠心(例えば、1000×g,5分)して、上清を回収する等の公知の方法により処理することによって得ることができる。採血をする際には、EDTA、フッ化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ヘパリンナトリウム、モノヨード酢酸等の抗凝固剤や解糖阻止剤を用いることもできる。
上記被験体としては、ヒト、イヌ、ネコ、サル、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ等の哺乳動物の他、鳥類、魚類、両生類、ホタテ等の海洋生物、なまこ等の軟体生物、乳酸菌やカビ・酵母に至る各種微生物を挙げることができる。
[発現ベクター]
本発明の発現ベクターは、本件ホスホリパーゼDをコードするポリヌクレオチドを含有する発現ベクター(以下、本件発現ベクターともいう)であればよく、本件ホスホリパーゼDをコードするポリヌクレオチドとしては、配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを挙げることができる。配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドとして、配列番号2に記載の塩基配列又は配列番号2に記載の塩基配列と85%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上同一性を有するポリヌクレオチドを挙げることができる。
発現ベクターの種類としては環状、直鎖状等いかなる形態のものであってもよい。また、使用する宿主細胞に応じて適宜選択でき、プラスミドべクター、ウイルスベクター、ファージを挙げることができ、市販の発現ベクターを用いることができる。プラスミドベクターとしては、例えば、大腸菌を宿主とする場合には、pET24a、pET22b等のpETベクター、pMAL-p5x等のpMALベクター、pGEXベクター、pColdベクター、pFN18、pPAL7、pBR322、pBR325等のpBRベクター、pACYC184ベクター、pUC12、pUC13、pUC18、pUC19、pUC118等のpUCベクター、BluescriptKS+ベクター等を挙げることができ、放線菌を宿主とする場合にはpUC702ベクター、pIJ680ベクター、pIJ702ベクター、pTONa5ベクター、pTONashortベクター、pTipベクター、pNitベクター等を挙げることができる。さらに、グラム陽性菌を宿主とする場合にはpBICベクター、pWH1520ベクター、pMM1522ベクター、pHIS1522ベクター等を挙げることができる。酵母、特にサッカロマイセス セレビジアエを宿主とする場合にはYRp7ベクター、pYC1ベクター、YEp13ベクター等を挙げることができる。
また、かかる発現ベクターにはプロモーターやターミネーター等の制御配列、アフィニティー及び可溶性タグ等のタグ、薬剤耐性遺伝子、レポーター遺伝子等の選択マーカーをコードするポリヌクレオチドを含有していてもよい。さらに、宿主細胞外に分泌しやすくするために分泌シグナルをコードするポリヌクレオチドを含有してもよい。分泌シグナルとしては、配列番号3に示すTat分泌シグナルの他、OmpAシグナル(ペリプラズム移行シグナルとして機能)、pelBシグナル(ペリプラズム移行シグナルとして機能)等を挙げることができる。また、アフィニティー及び可溶性タグとしてはMBPタグ(ペリプラズム移行シグナルとしても機能)、GSTタグ、TFタグ、Haloタグ、Hisタグ、SKIKタグ(Kato et al., J. Biosci. Bioeng. 10.1016/j.jbiosc.2016.12.004 (2017))、Profinity eXact fusionタグ等を挙げることができる。上記アフィニティー及び可溶性タグ等のタグ、薬剤耐性遺伝子、レポーター遺伝子等の選択マーカーをコードするポリヌクレオチドは、上記発現ベクター内において、本件ホスホリパーゼDをコードするポリヌクレオチドの5’末端側又は3’末端側のいずれに配置されていてもよい。
上記ポリヌクレオチドは、ストレプトマイセス属に属する微生物等の天然由来のポリヌクレオチドでも人工合成のポリヌクレオチドでもよく、本件発現ベクターを導入する微生物の種類に応じて適宜選択でき、配列情報は、公知の文献やNCBI(www.ncbi.nlm.nih.gov/guide/)等のデータベースを検索して適宜入手することができる。上記ポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチドの塩基配列の情報に基づき、化学合成する方法や、PCRによって増幅する方法等の公知の技術によって作製することができる。なお、アミノ酸をコードするために選択されるコドンは、用いる宿主細胞の種類に応じて、発現を最適化してもよい。
[形質転換体]
本発明の形質転換体は、上記本件発現ベクターを宿主に含有する形質転換体(以下、「本件形質転換体」ともいう)であればよく、宿主としては、用いる発現ベクターに応じて適宜選択でき、BL21、SHuffle等の大腸菌、ストレプトマイセス リビダンス(Streptomyces lividans)等のストレプトマイセス属に属する放線菌、ロドコッカス エリスロポリス(Rhodococcus erythropolis)L88等の放線菌、バチラス サチリス(Bacillus subtilis)、バチラス メガテリウム(Bacillus megaterium)、ブレビバチルス(Brevibacillus:Bacillus brevis)、コリネバクテリウム グルタミクム(Corynebacterium glutamicum)等のグラム陽性菌、シュードモナス プチダ(Pseudomonas putida)等のグラム陰性菌、サッカロマイセス セレビジアエ(Saccharomyces cerevisiae)、ピキア パストリス(Pichia pastoris)等の酵母、アスペルギルス オリゼー(Aspergillus oryzae)やアスペルギルス ニガー(Aspergillus nigar)等のアスペルギルス(Aspergillus)属の糸状菌を挙げることができる。
本件形質転換体を作製するために本件発現ベクターを宿主に導入する方法としては、公知の方法を用いることができ、コンピテントセル法、リポフェクション法、リン酸カルシウム共沈殿法、リポソーム法等の化学的方法;ウイルスベクターを利用する方法、特異的受容体を利用する方法、細胞融合法等の生物学的方法;エレクトロポレーション法、マイクロインジェクション法、遺伝子銃法、超音波遺伝子導入法等の物理的方法;等の公知の方法を例示することができる。
[ホスホリパーゼDの製造方法]
本発明のホスホリパーゼDの製造方法は、上記本件形質転換体を培養してホスホリパーゼDを産生する工程を含有する、ホスホリパーゼDの製造方法であればよく、かかる方法により、本件ホスホリパーゼDを効率よく産生することができる。培養方法としては宿主細胞の培養に用いられる通常の方法に従って行うことができる。例えば、宿主が大腸菌又は放線菌の場合は、温度条件が10~45℃、好ましくは20~42℃、より好ましくは25~37℃、pH条件がpH5.5~8.5、好ましくはpH6.2~7.5、培養時間が10~80時間、好ましくは10~48時間で、振とう培養又は通気攪拌培養等の好気的条件下若しくは嫌気的条件下で培養することができる。本件ホスホリパーゼDは培養液又は破砕した本件形質転換体から回収することができ、かかる回収する方法としては、公知のタンパク質の回収方法、例えば、遠心分離、次いで、ゲルろ過、イオン交換、アフィニティー等のクロマトグラフィーにより回収する方法を挙げることができる。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの
例示に限定されるものではない。
(PlsCho(sn-2 C18:1)に対して基質特異性が高いホスホリパーゼDを産生する微生物の探索)
本発明者らは、PlsCho(sn-2 C18:1)に対して基質特異性が高いホスホリパーゼD(本明細書において「PlsCho-PLD」ともいう)を産生する微生物としてこれまでの経験に基づいて放線菌に着目して以下の工程により探索を行った。
1)グリセロールストック(-80℃保存)した放線菌株をISP2寒天培地に白金耳で塗抹し、28℃で培養した。
2)生育したコロニーを白金耳で取り、MPD培地(1%(w/v)グルコース、0.75%(w/v)モルトエキス、0.75%(w/v)ペプトン、0.3%(w/v)NaCl、0.1%(w/v)MgSO・7HO:pH7.0)若しくはISP2培地(1%(w/v)モルトエキス、0.4%(w/v)イーストエキス、0.4%(w/v)グルコース:pH7.2)5mLに植菌した。その後、28℃、160spm(strokes per minute)で72時間振とう培養を行った。培養液1mLをMPD培地100mLに接種し、28℃、160rpmで72時間振とう培養を行った。
次に、以下の方法でホスホリパーゼDのコリン型プラズマローゲン分子内のリン酸エステル結合への加水分解活性(ホスホリパーゼD活性)を測定した。
1)培養液を遠心分離(21,600×g、10分、4℃)し、得られた上清を酵素サンプルとした。また、酵素サンプルを100℃、10分で熱失活した熱処理サンプルを熱失活コントロール(ctrl)とした。
2)以下の表1に示す酵素反応液を37℃で5分保温した後、酵素サンプルを5μL加えて、37℃、30分反応させた。なお、表中、PlsChoはsn-2位にオレイン酸がエステル結合したPlsCho(PlsCho(sn-2 C18:1))、Tx100はTritonX-100を意味する。
Figure 2023031123000004
3)以下の表2に示す呈色反応液200μLを加え、37℃で10分保温した。表2中、PODはペルオキシダーゼ、CODはコリンオキシダーゼ、4-AAは4-アミノアンチピリン、TODBはN,N-ビス(4-サルフォブチル)-3-メチルアニリンである。
Figure 2023031123000005
4)呈色後、直ちに200μLを分取し、マイクロプレートリーダー(Thermo Fisher社)により550nmにおける吸光度(A550)を測定した。既知濃度のコリンを用いて作成した検量線から、酵素反応液中のコリン濃度を求めた。また、1分に1μmolのコリンを遊離する酵素量を1Uと定義した。
上記によりsn-2位にオレイン酸がエステル結合したPlsCho(sn-2 C18:1)に対するホスホリパーゼD活性が確認された菌株のうち、活性が高い菌株を対象に基質特異性試験を行った。基質特異性試験では、n-2位にオレイン酸がエステル結合したPlsCho(PlsCho(sn-2 C18:1))(Avanti Polar Lipids社)、sn-2位にC20:4を有するPlsCho(PlsCho(sn-2 C20:4))(Avanti Polar Lipids社)、sn-2位にC22:6を有するPlsCho(PlsCho(sn-2 C22:6))(Avanti Polar Lipids社)の3種類の脂質へのホスホリパーゼD活性を測定した。ホスホリパーゼD活性の活性測定は上記と同様に行った。そのなかで、sn-2位にオレイン酸がエステル結合したPlsCho(sn-2 C18:1)に対して最も高いホスホリパーゼD活性を示す株としてA746株をPlsCho-PLD産生菌として選抜した。
(A746株の分類学上の同定)
実施例1で選抜したA746株の分類学上の同定をした。まず、A746株をISP2培地(日本製薬社)で30℃、72時間培養した。培養後、アクロモペプチダーゼ(和光純薬工業社)を用いてDNAを抽出した。かかる抽出したDNAをPCR法の鋳型として用い、文献(中川恭好、川崎浩子 日本放線菌学会編 東京:日本学会事務センター 88-117(2001))に記載のプライマーを用いてPCRを行い、16SrDNAを約1500bp増幅した。
増幅した16SrDNAの塩基配列をChromasPro 2.1(Technelysium社)により決定した。増幅した前記16SrDNAの塩基配列を、BLAST相同検索を用い、国際塩基配列データベースDDBJ、ENA(EMBL)、GenBankからから得た既知の微生物の16SrDNA塩基配列と比較して、既知の微生物とのDNA相同性の一致の程度を比較した。近隣結合法として知られている文献(Saitou&Nei,1987;Mol.Biol.Evol.4406-425)に記載のClustal W プログラムを用いて、系統樹を作成した。その系統樹を図1に示す。左上の線はスケールバー、系統枝の分岐に位置する数字はブートストラップ値、株名の末尾のTはその種の基準株(Type strain)をそれぞれ示す。
BLAST相同性検索の結果、A746株の16SrDNA部分配列は、ストレプトマイセス グリセオルベンス(Streptomyces griseorubens)の基準株NBRC 12780及びストレプトマイセス グリセオフラバス(Streptomyces griseoflavus)の基準株(NBRC13044)に対して相同率99.8%の相同性を示し、ストレプトマイセス グリセオインカルナタス(Streptomyces griseoincarnatus)の基準株(LMG19316)に対して相同率99.5%の相同性を示した。さらに、ストレプトマイセス アルチオチカス(Streptomyces althioticus)の基準株NRRL_B-3981、ストレプトマイセス アンボファシエンス(Streptomyces ambofaciens)の基準株M27245、ストレプトマイセス フラベオラス(Streptomyces flaveolus)の基準株AB184712、ストレプトマイセス ヘリオマイシニ(Streptomyces heliomycini)の基準株AB184712、及びストレプトマイセス ビリドディアスタティカス(Streptomyces viridodiastaticus)の基準株AB184317に対してそれぞれ相同性99.2%、99.3%、99.3%、99.1%、99.1%を示した。
さらに、簡易形態観察を行ったところ、粉状のコロニーを示し、色調は表面が灰色・裏面が淡黄色を呈した。また、微視的観察の結果からは、気菌糸(菌糸幅1μm)及び連鎖胞子の形成が見られた。
図1の系統樹及び簡易形態観察結果から、A746株はストレプトマイセス(Streptomyces)に属し、もっとも近縁の微生物はストレプトマイセス グリセオルベンス(Streptomyces griseorubens)又はストレプトマイセス グリセオフラバス(Streptomyces griseoflavus)であることが確認された。
(PlsCho-PLDの精製)
A746株が生成するPlsCho-PLDを、以下の方法で精製した。
(1)MPDプレート上のコロニー生育したA746株のコロニーを白金耳で取り、MPD試験管培地5mLに植菌した。30℃、160spmで4日間振とう培養を行った(前培養)。前培養液1mLを、MPDフラスコ培地 100mLに植菌した。30℃、160rpmで4日間振とう培養を行った(本培養)。なお、特に記載しない限り、以下のPlsCho-PLDの精製の工程はすべて氷中又は4℃で行った。
(2)上記で得られたA746株の培養液を、遠心分離機(18,800×g、30分)を用いて、この培養液から培養上清(Cult.sup.)を回収した。
(3)回収した培養上清に1M Tris-HCl(pH8.0)を終濃度20mMになるように加えた後、氷上で70%(w/v)飽和となるように粉末硫酸アンモニウムを添加し、生じた沈殿を遠心分離(18,800×g、30分)により回収した。この沈殿を20mM Tris-HCl緩衝液(pH8.0)で懸濁し粗酵素液(70%sat.AS)を得た。
(4)(3)で得られた粗酵素液を透析した。
(5)(4)で得られた透析内液を、陰イオン交換クロマトグラフィーであるサンプルを供した20mM Tris-HCl緩衝液(pH8.0)で予め平衡化したToyopearl(登録商標)-DEAE650Mカラム(東ソーバイオサイエンス社)にアプライした。同緩衝液でカラムを洗浄した後、20mM Tris-HCl緩衝液(pH8.0)に緩衝液を変更し、NaCl(0Mから1Mまで)のリニアグラジェントにより溶出させ、活性画分(DEAE650M)を得た。
(6)(5)で得られた活性画分(DEAE650M)に終濃度1.5Mとなるように硫安粉末をサンプルに添加した。それを、1.5M硫酸アンモニウムを含む20mM Tris-HCl緩衝液(pH8.0)で予め平衡化したTOYOPEARL PPG-600Mカラム(東ソーバイオサイエンス社)にアプライし、同緩衝液でカラムを洗浄した後、硫酸アンモニウム(1.5Mから0Mまで)のリニアグラジェントにより、活性画分を溶出させ、活性画分(PPG600M)を得た。
(7)(6)で得られた活性画分(PPG600M)を、1.5M硫酸アンモニウムを含む20mM Tris-HCl緩衝液(pH8.0)で予め平衡化したToyopearl Butyl-650Mカラム(東ソーバイオサイエンス社)にアプライし、同緩衝液でカラムを洗浄した後、1% TritonX-100を含む20mM Tris-HCl(pH8.0)で硫酸アンモニウム(1.5Mから0Mまで)のリニアグラジェントにより、活性画分を溶出させ、活性画分(Butyl650M)を得た。
(8)(7)で得られた活性画分(Butyl650M)を、Amicon-100k(Merck Millipore社)でろ過し、ろ液を回収した。
(9)(8)で得られたろ液を30kDa cut-offのAmicon Ultra-4(Amicon-30k:Merck Millipore社)と20mM Tris-HCl(pH8.0)+0.01%(w/v) TritonX-100を使用してサンプルのバッファー交換・濃縮を行った。濃縮サンプルの体積は250μL以下とした。
(10)(9)で得られたサンプルを20mM Tris-HCl(pH8.0)+0.01 % (w/v) TritonX-100で予め平衡化したSuperdex200 Increase 10/300GLカラム(GEヘルスケアバイオサイエンス社)にアプライし、同緩衝液でサイズ排除クロマトグラフィーを行い、活性画分を溶出させ、活性画分(Superdex)を得た。
(11)(10)で得られた活性画分(Superdex)を、1.5M硫酸アンモニウムを含む20mM Tris-HCl緩衝液(pH8.0)で予め平衡化したTSKgel BioAssist Phenyl(東ソー社)にアプライし、同緩衝液でカラムを洗浄した後、硫酸アンモニウム(1.5Mから0Mまで)のリニアグラジェントにより、活性画分を溶出させ、活性画分(TSKPhe)を得た。
各精製工程における収量、収率、ホスホリパーゼD活性等を表3に示す。ホスホリパーゼD活性は実施例1と同様の方法で測定した。上記工程により、精製度(Purification fold)が8014倍、比活性(Specific activity:Sp.act.)が1343倍向上した精製PlsCho-PLDを得た。また、精製したPlsCho-PLD(TSKPhe画分)の分子量をSDS-PAGE(12%(w/v)ポリアクリルアミドゲル)分析により測定した結果を図2に示す。左レーン(M:Marker)は分子量マーカーであり、右レーンは、活性画分(TSKPhe)のバンドを示す。その結果、矢印で示す約90kDa、約43kDa、及び約30kDaの3つのバンドが観察された。
Figure 2023031123000006
(精製したPlsCho-PLDの性質)
精製したPlsCho-PLDの基質特異性、至適温度、至適pHを調べた。
◆PlsCho-PLDの基質特異性
上記で精製したPlsCho-PLDを用いて、以下の表4に示す酵素反応液を用いてpH7.2、50℃で2.5分反応させた以外は実施例1と同様の方法でホスホリパーゼD活性を測定し、基質特異性を調べた。
Figure 2023031123000007
基質としてはsn-2位にオレイン酸がエステル結合したPlsCho(sn-2 C18:1)(Avanti Polar Lipids社)、sn-2位にアラキドン酸がエステル結合したPlsCho(sn-2 C20:4)(Avanti Polar Lipids社)、sn-2位にドコサヘキサエン酸が結合したPlsCho(sn-2 C22:6)(Avanti Polar Lipids社)、スフィンゴミエリン(SM:Sigma Aldrich社)を用いた。PlsCho(sn-2 C18:1)、PlsCho(sn-2 C20:4)、PlsCho(sn-2 C22:6)を式(III)~式(V)に示す。
(1)PlsCho(sn-2 C18:1)
1-(1Z-octadecenyl)-2-oleoyl-sn-glycero-3-phosphocholine
Figure 2023031123000008
(2)PlsCho(sn-2 C20:4)
1-(1Z-octadecenyl)-2-arachidonoyl-sn-glycero-3-phosphocholine
Figure 2023031123000009
(3)PlsCho(sn-2 C22:6)
1-(1Z-octadecenyl)-2-docosahexaenoyl-sn-glycero-3-phosphocholine
Figure 2023031123000010
PlsCho(sn-2 C18:1)を基質とした場合のホスホリパーゼD活性を100とした場合の相対活性を図3に示す。図3の横軸において、PlsCho(sn-2 C18:1)を基質として用いた場合をPlsCho18:1、PlsCho(sn-2 C20:4)を基質とした場合をPlsCho20:4、PlsCho(sn-2 C22:6)を基質として用いた場合をPlsCho22:6で示す。図3から明らかなように、PlsCho(sn-2 C20:4)又はPlsCho(sn-2 C22:6)を基質とした場合の相対活性は検出限界以下であった。同様に、SMにおいても相対活性は検出限界以下であった。したがって、実施例3で精製したA746株が生成するPlsCho-PLDはコリン型プラズマローゲンのなかでもPlsCho(sn-2 C18:1)に特異的であることが明らかとなった。
◆PlsCho(sn-2 C18:1)の至適温度
基質となる0.1% PlsCho(sn-2 18:1)、0.01% TritonX-100、Tris-HCl(pH7.2、各温度)50mMとの溶液に精製したPlsCho-PLDを2(v/v)%となるように加え、合計量50μLとなるように以下の表5に示す反応液を調製した。この反応液を2.5分ほど反応させた。その後、加水分解活性を測定した。結果を図4に示す。図4中、横軸が温度(20,30,37,40,50,60,70℃)、縦軸が50℃で反応させた場合の活性を100とした場合の相対活性を示す。図4から明らかなように精製したPlsCho-PLDは、25℃~65℃で高い加水分解活性を有し、30℃~60℃、好ましくは40~60℃、特に50℃付近で加水分解活性が特に高いことが明らかとなった。
Figure 2023031123000011
◆PlsCho-PLDの至適pH
基質となる0.1% PlsCho(sn-2 C18:1)と、酢酸緩衝液(Acetate:pH4~5)、クエン酸緩衝液(Citric:pH4~6)、BisTris-HCl緩衝液(BisTris:pH6~7)、HEPES緩衝液(HEPES:pH7~8)、Tris-HCl緩衝液(Tris:pH7.2~9)、又はグリシン緩衝液(Glycine:pH9~10)から選ばれる緩衝液(pH4、5、6、7、7.2、8、9、又は10:温度37℃)50mMとの溶液に、精製したPlsCho-PLDを2%(v/v)となるように加え、合計量50μLとなる反応液を調製した。この反応液を各pH条件にて2.5分ほど酵素反応させた。その後の反応は実施例1と同様の方法で行い、酵素活性を測定した。結果を図5に示す。図5中、横軸がpH、縦軸がTris-HCl緩衝液、pH7.2で反応させた場合の活性を100とした場合の相対活性を示す。図5に基づき、精製したPlsCho-PLDは、pH4付近及びpH6~8、特にpH6.5~7.5で加水分解活性が高いことが明らかとなった。
◆ジスルフィド結合の重要性
PlsCho-PLDにおける加水分解活性において、ジスルフィド結合の影響を調べた。
Tris-HCl(pH7.2、50℃)50mMの溶液に精製したPlsCho-PLDを2(v/v)%、1mM阻害剤(還元化剤であるジチオトレイトール:DTT、還元化剤である2-メルカプトエタノール:2ME、システインのチオール基を不可逆的に修飾し、ジスルフィド結合を阻害するヨード酪酸:IAA、セリンプロテアーゼ阻害剤であるフッ化フェニルメチルスルホニル:PMSF、金属キレート剤であるエチレンジアミン四酢酸:EDTA、又は金属キレート剤であるグリコールエーテルジアミン四酢酸:EGTA)となるように加え、合計量49μLとなるように調製した。これを50℃にて5分ほど保温した後、基質となる0.1% PlsCho(sn-2 18:1)/0.001%TritonX-100を加えて50℃にて2.5分ほど酵素反応させ、その後の反応は実施例1と同様の方法で行い、加水分解活性を測定した。結果を図6に示す。図6中、横軸が阻害剤、縦軸が水で反応させた場合の活性を100とした場合の相対活性を示す。図6から明らかなように、システインのチオール基の間で形成されるジスルフィド結合を切断する還元化剤、アルキル化剤で活性が抑制されたことから、本酵素PlsCho-PLDの活性発現におけるジスルフィド結合の重要性が示された。
◆金属イオンの要求性
金属イオン(Ca2+,Mg2+,Mn2+,Zn2+,Co2+,Al3+,Fe2+,Fe3+,Cu2+ 終濃度2mM)と精製した上記PlsCho-PLDを、以下の表6に示す反応液によって50℃にて2.5分ほど酵素反応させ、その後の反応は実施例1と同様の方法で行い、PlsCho-PLDにおける加水分解活性に対する金属イオンの影響を調べた。結果を図7に示す。相対活性は金属イオンを含まない条件でインキュベートした酵素(Free)と比較することによって算出した。また、キレート剤としてEDTA(終濃度2mM)を添加し、金属イオン要求性を評価した。
Figure 2023031123000012
図7から明らかなように、精製したPlsCho-PLDは金属イオン要求性ではない酵素であった。
(PlsCho-PLD遺伝子の探索)
A746株由来PlsCho-PLD遺伝子の探索を以下の方法により行った。
Hiseq(登録商標)2500(Illumina社)を用い、250PE(ペアエンド)によるDe novo解析によりドラフトゲノム解析し、CDSリストを作成した。そのうち、ホスホリパーゼDスーパーファミリーと推定された遺伝子を1つ見出した。
上記解析により、PlsCho-PLDのアミノ酸配列は、配列番号4に記載された387アミノ酸からなる配列であり、Signal Pプログラムによる予測によりN末端側に配列番号3に示す47アミノ酸からなるTat分泌シグナルを含有していると考えられる。したがって,PlsCho-PLDの成熟(活性)型配列は配列番号1に記載された340アミノ酸からなる配列である。なお、GENETYX-MACプログラムによる推定分子量は38568、推定の等電点は5.44であった。この等電点は推定値であり、実測値とは異なる可能性がある。さらに、HKDモチーフ(HxKxxxxD:Hはヒスチジン、Kはリシン、Dはアスパラギン酸、xは任意のアミノ酸)を2カ所(配列番号1に示すアミノ酸配列における81番目~88番目、258番目~265番目)有していた。なお、ゲノム解析した結果、既知ホスホリパーゼDにおけるコンセンサス配列を有する遺伝子産物は配列番号4に記載された387アミノ酸からなる配列の他には見いだせなかった。
(大腸菌によるPlsCho-PLDの発現)
A746株から特願2020-36298号に記載の方法と同様にゲノムDNAを得た。得られたゲノムDNAをテンプレートとして、配列番号5に記載のフォワードプライマーPlsCho-FW1及び配列番号6に記載のリバースプライマーPlsCho-RVを用いてPCRを行い、PlsCho-PLDと推察される遺伝子のTatシグナルを除いた成熟配列のcDNAにおいて、5’末端にNcoIサイトを、3’末端側にHindIIIサイトをコードする塩基配列を付加するように増幅した。得られたPCR副産物をNcoIとHindIIIで消化し、発現ベクターであるpET22bのNcoI-HindIII部位に挿入して、組換えプラスミド(pET22b/PlsCho-PLD)を得た。
かかる組換えプラスミド(pET22b/PlsCho-PLD)をテンプレートとして、配列番号7に記載のフォワードプライマー22bPlCPLDHis.Fw及び配列番号8に記載のリバースプライマー22bPlCPLDHis.Rvを用いて1回目のインバースPCRを行い、C末端にヒスチジンタグを付加したPlsCho-PLD-Hisをコードするポリヌクレオチドを含むプラスミド(pET22b/PlsCho-PLD-His)を作製した。
上記で得られたプラスミド(pET22b/PlsCho-PLD-His)をテンプレートとして、配列番号9に記載のフォワードプライマー22bPlsChoN_delFw.及び配列番号10に記載のリバースプライマー22bPlsChoN_delRv.を用いてインバースPCRを行い、pET22b由来のpelBのシグナル配列をコードする領域のみを欠失させた組換えプラスミド(pET22b/PlsCho-PLD-His:シグナルなし)を作製した。コントロールのプラスミドとして、pET22bを用いた。次に、得られた組換えプラスミド又はコントロールプラスミドpET22bを大腸菌BL21(DE3)に形質転換し、組換え大腸菌を得た。得られた組換え大腸菌を、30μg/mLのアンピシリンを含む100mLのZYM5052培地(Studier, F.W. Protein Expr. Purif. 41, 207-234)で、30℃にて24時間培養した。得られた培養液を遠心分離して菌体を回収した。菌体は20mM TrisHCl緩衝液(pH7.0)で懸濁した後、超音波破砕してそれぞれのプラスミドで形質転換した大腸菌由来の菌溶解液を得た。さらに、それぞれの菌溶解液を14,000rpm、15分で遠心して上清を得て、大腸菌で発現させた酵素PlsCho-PLD液(約0.04U/mL)又はコントロール上清液とした。
上記の大腸菌で発現させた酵素PlsCho-PLDの分子量をSDS-PAGE分析により測定した結果を図8に示す。図8中、左端及び右端はマーカー、「+」は上記大腸菌で発現させた酵素PlsCho-PLD液、「-」は上記コントロール上清液をアプライした場合である。図8に示すように、大腸菌で発現させた酵素PlsCho-PLD液の「+」レーンにおいて約43kDaのバンドが増加しており、発現させたPlsCho-PLDの分子量(ヒスチジンタグを含む)はおよそ43.3kDaであることが明らかとなった。
さらに、上記それぞれの菌溶解液、及び上清(大腸菌で発現させた酵素PlsCho-PLD液又はコントロール上清液)をウエスタンブロット解析した結果を図9に示す。図9中、「+」は組換えプラスミドで大腸菌を形質転換して得られた菌溶解液又はその遠心した上清(大腸菌で発現させた酵素PlsCho-PLD液)、「-」はコントロールプラスミドで大腸菌を形質転換して得られた菌溶解液又はその遠心した上清(コントロール上清)をアプライした場合である。なお、1次抗体としては、His-Tag(D3I1O)XPRabbit mAb(登録商標:Cell Signaling Technology社)を用いた。
図9に示すように、43kDa付近にバンドが検出された。かかる結果からも、PlsCho-PLDの分子量はおよそ43kDaであることが確認された。
(検量線の作成)
実施例6で調製した大腸菌で発現させた酵素PlsCho-PLD液を用いて、PlsCho-PLDの検量線を作成した。なお、PlsCho-PLDの定量は、実施例1に記載のようにPlsChoが加水分解されて得られるコリンを定量することで行った。
(ホスホリパーゼD活性の測定)
以下の方法で蛍光強度を測定することでホスホリパーゼD活性を測定した。
1)実施例6で調製した大腸菌で発現させた酵素PlsCho-PLD液を遠心した後の上清を酵素サンプルとした。
2)PlsCho-PLDを96穴ウェルプレートに分注した。
3)以下の表7に示す蛍光法酵素反応液と酵素サンプルを加え、1分ほど振とうした。
Figure 2023031123000013
4)50℃で60分ほど保温した。
5)反応後、プレートリーダー (BECKMAN COULTER社)を用いて、蛍光光度(EX535nm、EM595nm)を測定した。
なお、基質としては、PlsCho(sn-2 C18:1)5、25、又は50μgを用いた。結果を図10に示す。
図10に示すように、実施例6で調製した大腸菌で発現させた酵素PlsCho-PLD液を用いればPlsCho(sn-2 C18:1)の濃度依存的に蛍光強度が増加していること、及びPlsCho(sn-2 C18:1)の検出ができることが確認された。
(基質特異性)
実施例7では基質としてPlsCho(sn-2 C18:1)を用いたが、さらにPlsCho(sn-2 C20:4)、PlsCho(sn-2 C22:6)及びフォスファチジルコリン(PtdCho)を用いて基質特異性を調べた。実施例6で調製した大腸菌で発現させた酵素PlsCho-PLD液を用いて、実施例7に記載と同様の方法で基質(各10μg)と30分反応させて、PlsCho-PLDの活性を測定した。結果を図11に示す。図中、C18:1、C20:4、及びC22:6はそれぞれPlsCho(sn-2 C18:1)、PlsCho(sn-2 C20:4)及びPlsCho(sn-2 C22:6)を基質とした場合を示す。また、縦軸はC18:1の場合を1とした場合の相対活性を示す。
図11に示すように、実施例6で調製した大腸菌で発現させた酵素PlsCho-PLD液はPlsCho(sn-2 C18:1)に対して極めて基質特異性が高いことが明らかとなった。
(血漿中のコリン型プラズマローゲンの定量)
1.血漿の調製
血清及び血漿は細胞膜ではないため、赤血球や白血球と比べて、これらに含まれるプラズマローゲンは極めて少ない。したがって、血清や血漿中のプラズマローゲン量を測定することはこれまでの技術では困難であった。一方、近年、プラズマローゲンは冠動脈疾患のバイオマーカーとなると考えられており、血清又は血漿中のコリン型プラズマローゲンを定量することは冠動脈疾患等の疾患の発症リスクの判定に重要である。そこで、実施例6で調製した大腸菌で発現させた酵素PlsCho-PLD液を用いて血漿中のコリン型プラズマローゲンの定量が可能かどうかを調べた。
血漿の準備は、特開2016-111929号公報に記載の方法に準じて行った。簡潔に説明すると、ヘパリン入り採血管(テルモ社)を用いて静脈血を採取し、1000×g、5分遠心して、上清(すなわち血漿)を回収した。
(血漿サンプルの調製)
上記で回収した血漿を冷凍保存し、測定前に解凍し50mM Tris-HCl Buffer(pH7.4)で調整した。
(蛍光光度計による分析)
PlsCho(sn-2 C18:1)の代わりに上記血漿サンプルを20、30、又は40μL用いた以外は実施例7と同様の方法で反応させた。結果を図12に示す。
(結果)
図12に示すように血漿サンプルの量に比例して蛍光強度が増加していることが確認された。実施例7及び8の結果と合わせると、実施例6で調製した大腸菌で発現させた酵素PlsCho-PLD液を用いれば血漿中のコリン型プラズマローゲンであるPlsCho(sn-2 C18:1)を特異的に定量できることが確認された。
本発明のホスホリパーゼDを用いれば、PlsCho(sn-2 C18:1)を安価で特異的に検出又は定量可能とするものであり、産業上の有用性は高い。

Claims (8)

  1. 以下の(1-1)~(1-3)のいずれか記載のポリペプチドを含む、ホスホリパーゼD。
    (1-1)配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチド;
    (1-2)配列番号1に記載のアミノ酸配列と少なくとも85%の同一性を有し、かつグリセロール骨格のsn-2位にオレイン酸がエステル結合したコリン型プラズマローゲン分子内のリン酸エステル結合への加水分解活性を有するポリペプチド;
    (1-3)配列番号1に記載のアミノ酸配列において、1又は数個のアミノ酸が付加、置換、欠失及び/又は挿入されたポリペプチドであって、前記コリン型プラズマローゲン分子内のリン酸エステル結合への加水分解活性を有するポリペプチド;
  2. sn-2位にオレイン酸がエステル結合したコリン型プラズマローゲン分子内のリン酸エステル結合への加水分解活性を有するホスホリパーゼDであって、以下の(2-1)~(2-4)の性質を有するホスホリパーゼD。
    (2-1)sn-2位にオレイン酸がエステル結合したコリン型プラズマローゲン分子内のリン酸エステル結合への加水分解活性を有する;
    (2-2)SDS-PAGE分析により測定した分子量が38,000~50,000である;
    (2-3)至適温度 pH7.2、2.5分の反応条件下で、40~60℃である;
    (2-4)ストレプトマイセス属に属する微生物由来である;
  3. ストレプトマイセス グリセオフラバス(Streptomyces griseoflavus)、ストレプトマイセス グリセオルベンス(Streptomyces griseorubens)、又はストレプトマイセス グリセオインカルナタス(Streptomyces griseoincarnatus)に近縁の微生物由来であることを特徴とする、請求項2記載のホスホリパーゼD。
  4. sn-2位にオレイン酸がエステル結合したコリン型プラズマローゲンを基質とした場合のリン酸エステル結合への加水分解活性を100とした場合に、sn-2位にアラキドン酸がエステル結合したコリン型プラズマローゲンを基質とした場合の相対活性値が10以下、及びsn-2位にドコサヘキサエン酸がエステル結合したコリン型プラズマローゲンを基質とした場合の相対活性値が10以下であることを特徴とする請求項1~3のいずれか記載のホスホリパーゼD。
  5. 試料と請求項1~4のいずれか記載のホスホリパーゼDとを作用させる工程を含むことを特徴とする、前記試料中のsn-2位にオレイン酸がエステル結合したコリン型プラズマローゲンの定量方法。
  6. 請求項1記載のホスホリパーゼDをコードするポリヌクレオチドを含有する発現ベクター。
  7. 請求項6記載の発現ベクターを含有する形質転換体。
  8. 請求項7記載の形質転換体を培養してホスホリパーゼDを産生する工程を含有する、ホスホリパーゼDの製造方法。

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