JP2023030479A - オーキシンデグロンシステムのキット、及びその使用 - Google Patents

オーキシンデグロンシステムのキット、及びその使用 Download PDF

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Abstract

【課題】効率良く標的タンパク質の分解制御が可能な、オーキシンデグロンシステムのキットを提供する。【解決手段】本発明のキットは、非植物由来の真核細胞中の標的タンパク質の分解を制御するオーキシンデグロンシステムのキットであって、オーキシン結合部位に変異を有する変異型TIR1ファミリータンパク質をコードする第一の核酸と、前記変異型TIR1ファミリータンパク質に親和性を有するオーキシンアナログと、少なくとも一部のAux/IAAファミリータンパク質を含み、前記変異型TIR1ファミリータンパク質-前記オーキシンアナログ複合体に親和性を有する分解タグをコードする第二の核酸と、を備える。【選択図】なし

Description

本発明は、オーキシンデグロンシステムのキット、及びその使用に関する。具体的には、本発明は、オーキシンデグロンシステムのキット、標的タンパク質の分解方法、標的タンパク質分解誘導剤、及び化合物に関する。
本発明者はこれまでに、オーキシン誘導性デグロン(AID)システムと呼ばれるタンパク質の分解制御技術の開発を行ってきた。このシステムでは、オーキシン応答性ユビキチンリガーゼを構成するTIR1を、酵母や動物細胞等の真核生物由来の細胞に導入し、オーキシンの添加の有無やタイミングを調整することで、分解タグ(植物由来Aux/IAAファミリータンパク質又はその部分タンパク質;デグロンともいう。)を付加した標的タンパク質の分解を制御する。
従来のオーキシンデグロン法を利用すると、オーキシンの添加により、分解タグ(デグロン)を付加した標的タンパク質を迅速に分解することが可能になる。しかしながら、従来のオーキシンデグロン法では、オーキシン非添加時にも標的タンパク質の弱い分解が起きるため、厳密な発現制御に困難があった。また、分解誘導に100μM以上の比較的高濃度のオーキシンが使用されており、特に多細胞動物においてオーキシン自体の毒性影響が懸念されていた。
このような懸念に対し、本発明者は、変異型TIR1と、前記変異型TIR1に親和性を有するオーキシンアナログを組み合わせた、改良型オーキシン誘導性デグロン(AID)システム(AID2システムともいう。)を開発した(特許文献1参照。)。
国際公開第2021/009990号
AID2システムでは標的タンパク質の分解効率が飛躍的に向上したが、一方で卵殻や血液脳関門におけるバリア機能により、オーキシン又はオーキシンアナログの膜透過性が損なわれるという問題があり、この課題に対する改善が求められている。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、効率良くタンパク質の分解制御が可能な、オーキシンデグロンシステムのキット、標的タンパク質の分解方法、標的タンパク質分解誘導剤、及び化合物を提供する。
本発明は、以下の態様を含む。
本発明は以下の態様を含む。
[1]非植物由来の真核細胞中の標的タンパク質の分解を制御するオーキシンデグロンシステムのキットであって、
オーキシン結合部位に変異を有する変異型TIR1ファミリータンパク質をコードする第一の核酸と、
前記変異型TIR1ファミリータンパク質に親和性を有するオーキシンアナログと、
少なくとも一部のAux/IAAファミリータンパク質を含み、前記変異型TIR1ファミリータンパク質-前記オーキシンアナログ複合体に親和性を有する分解タグをコードする第二の核酸と、を備え、
前記変異型TIR1ファミリータンパク質は、以下の(a)~(c)のいずれか一つのアミノ酸配列を含む配列からなり、且つ、オーキシンアナログとの複合体を介して、分解タグと結合して標的タンパク質を分解に導くタンパク質であり、
(a)配列番号1で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号79位がグリシンであるアミノ酸配列、
(b)前記(a)のアミノ酸番号79位以外の部位において、1~数個のアミノ酸が欠失、挿入、置換若しくは付加されたアミノ酸配列、
(c)前記(a)のアミノ酸番号79位以外の部位において、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
前記オーキシンアナログは、下記一般式(I)で表される化合物である、キット。
Figure 2023030479000001
(一般式(I)中、R10は、置換基を有していてもよく、環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換されていてもよい環状の脂肪族炭化水素基、又は、置換基を有していてもよく、環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換されていてもよい芳香族炭化水素基であり、R11は、-O-(CHn1-O-C(=O)R12、-OR12又は-N(R13であり、n1は、1~6の整数であり、R12は、炭素数1~6のアルキル基であり、複数のR13は、独立して水素原子若しくは炭素数1~6のアルキル基である。)
[2]更に、前記第二の核酸の上流又は下流に連結された標的タンパク質をコードする第三の核酸を備える、[1]に記載のキット。
[3]前記変異型TIR1ファミリータンパク質は、シロイヌナズナ由来タンパク質である、[1]又は[2]に記載のキット。
[4]前記変異型TIR1ファミリータンパク質は、AtTIR1の79番目のFが、A、G、又はSに変異しているタンパク質である、[1]~[3]のいずれか一つに記載のキット。
[5]更に、前記第一の核酸を染色体上に有する非植物由来の真核細胞又は非ヒト動物を備える、[1]~[4]のいずれか一つに記載のキット。
[6]前記非植物由来の真核細胞又は非ヒト動物は、更に、少なくとも一部のAux/IAAファミリータンパク質を含み、変異型TIR1ファミリータンパク質-オーキシンアナログ複合体に親和性を有する分解タグをコードする第二の核酸と、前記第二の核酸の上流又は下流に連結された標的タンパク質をコードする第三の核酸と、を含む染色体を有する、[5]に記載のキット。
[7][1]~[6]のいずれか一つに記載のキットを用いる、標的タンパク質の分解方法。
[8]非植物由来の真核細胞中の標的タンパク質の分解を制御するオーキシンデグロンシステムに用いられる標的タンパク質分解誘導剤であって、下記一般式(I)で表される化合物を含有する、標的タンパク質分解誘導剤。
Figure 2023030479000002
(一般式(I)中、R10は、置換基を有していてもよく、環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換されていてもよい環状の脂肪族炭化水素基、又は、置換基を有していてもよく、環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換されていてもよい芳香族炭化水素基であり、R11は、-O-(CHn1-O-C(=O)R12、-OR12又は-N(R13であり、n1は、1~6の整数であり、R12は、炭素数1~6のアルキル基であり、複数のR13は、独立して水素原子若しくは炭素数1~6のアルキル基である。)
[9]下記一般式(I)で表される化合物。
Figure 2023030479000003
(一般式(I)中、R10は、置換基を有していてもよく、環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換されていてもよい環状の脂肪族炭化水素基、又は、置換基を有していてもよく、環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換されていてもよい芳香族炭化水素基であり、R11は、-O-(CHn1-O-C(=O)R12、-OR12又は-N(R13であり、n1は、1~6の整数であり、R12は、炭素数1~6のアルキル基であり、複数のR13は、独立して水素原子若しくは炭素数1~6のアルキル基である。)
本発明のオーキシンデグロンシステムのキットによれば、効率良くタンパク質の分解制御が可能である。
AIDシステム及びAID2システムを評価するための線虫の系統の代表的な画像である。各系統の遺伝子型を左側に示す。全てのスケールバーは、50μmを示す。 各系統におけるGFPシグナルの平均強度の定量化の結果である。エラーバーは、標準偏差を示す。 各遺伝子型のL1幼虫を、リガンド(1mM IAA又は5μM 5-Ph-IAA)又はその溶媒で処理した後、その子孫の数を計測した結果である(n=10)。エラーバーは、標準偏差を示す。 リガンド処理前後の代表的な画像である。各幼虫を1mM IAA(左)又は5μM 5-Ph-IAA(右)で1時間処理した。すべてのスケールバーは、50μmを示す。 リガンドで処理された幼虫における、GFPの平均強度の時間経過を示すグラフである。エラーバーは、標準偏差を示す。 異なる濃度のIAA又は5-Ph-IAAで1世代にわたって処理された各系統の幼虫におけるGFPレベルの定量化の結果である。エラーバーは、標準偏差を示す。 DMSO(上のパネル)又は5μMの5-Ph-IAA(下のパネル)で4時間処理した後のAtTIR1(F79G):: mRubyを発現するYoung Adult期の線虫におけるレポータータンパク質発現の代表的な画像である。スケールバーは、50μmを示す。 5-Ph-IAAで4時間処理したAdult期の線虫のGFPの平均強度の結果である。エラーバーは、標準偏差を示す。 上段:5-Ph-IAAの化学構造である。下段:50μM 5-Ph-IAAで処理した胚(AID::GFP;AtTIR1(F79G)::mRuby)のタイムラプス画像である。スケールバーは、20μmを示す。 50μM 5-Ph-IAAで処理した10個の胚(AID::GFP;AtTIR1(F79G)::mRuby)のGFP強度を示すグラフである。画像は3分間隔で取得された。 50μM 5-Ph-IAAがレポーターの分解を引き起こす効果を示したグラフである。GFP強度は0分と60分で測定された(n=23)。 上段:5-Ph-IAA-AMの化学構造である。下段:50μM 5-Ph-IAAで処理した胚(AID::GFP;AtTIR1(F79G)::mRuby)のタイムラプス画像である。スケールバーは、20μmを示す。 DMSO(n=5)又は50μM 5-Ph-IAA-AM(n=4)で処理した胚(AID::GFP;AtTIR1(F79G)::mRuby)のGFP強度を示すグラフである。画像は3分間隔で取得された。 50μM 5-Ph-IA-AMAがレポーターの分解を引き起こす効果を示したグラフである。GFP強度は0分と60分で測定された(n=24)。
≪オーキシンデグロンシステムのキット≫
本発明のキットは、非植物由来の真核細胞中の標的タンパク質の分解を制御するオーキシンデグロンシステムのキットであって、オーキシン結合部位に変異を有する変異型TIR1ファミリータンパク質をコードする第一の核酸と、前記変異型TIR1ファミリータンパク質に親和性を有するオーキシンアナログと、少なくとも一部のAux/IAAファミリータンパク質を含み、前記変異型TIR1ファミリータンパク質-前記オーキシンアナログ複合体に親和性を有する分解タグをコードする第二の核酸と、を備え、前記変異型TIR1ファミリータンパク質は、以下の(a)~(c)のいずれか一つのアミノ酸配列を含む配列からなり、且つ、オーキシンアナログとの複合体を介して、分解タグと結合して標的タンパク質を分解に導くタンパク質であり、
(a)配列番号1で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号79位がグリシンであるアミノ酸配列、
(b)前記(a)のアミノ酸番号79位以外の部位において、1~数個のアミノ酸が欠失、挿入、置換若しくは付加されたアミノ酸配列、
(c)前記(a)のアミノ酸番号79位以外の部位において、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
前記オーキシンアナログは、下記一般式(I)で表される化合物である。
Figure 2023030479000004
(一般式(I)中、R10は、置換基を有していてもよく、環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換されていてもよい環状の脂肪族炭化水素基、又は、置換基を有していてもよく、環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換されていてもよい芳香族炭化水素基であり、R11は、-O-(CHn1-O-C(=O)R12、-OR12又は-N(R13であり、n1は、1~6の整数であり、R12は、炭素数1~6のアルキル基であり、複数のR13は、独立して水素原子若しくは炭素数1~6のアルキル基である。)
「オーキシンデグロンシステム」とは、本発明者らが開発したタンパク質の分解制御技術であり、植物ホルモンオーキシンによって導入される植物特異的なタンパク質分解系を、非植物由来の真核細胞に応用したシステムである。
具体的に、このシステムは、E3ユビキチン化酵素複合体(SCF複合体)のサブユニットであるF-boxタンパク質としての植物由来TIR1ファミリータンパク質と、植物由来Aux/IAAファミリータンパク質又はその部分配列からなるペプチドで標識された標的タンパク質とを非植物由来の真核細胞に導入することにより、オーキシン受容体であるTIR1ファミリータンパク質が、オーキシン依存的に、Aux/IAAファミリータンパク質又はその部分配列からなるペプチドを認識し、非植物由来の真核細胞におけるユビキチン/プロテアソーム分解系を利用して、標的タンパク質を分解するシステムである。
本発明者らは、係るシステムにおいて、卵殻や血液脳関門におけるバリア機能により、オーキシン又はオーキシンアナログの膜透過性が損なわれるという問題を見出した。係る問題に対して、本発明者らは、オーキシン結合部位に変異を有する変異型TIR1ファミリータンパク質と、前記変異型TIR1ファミリータンパク質に親和性を有するオーキシンアナログであって、膜透過性の改善されたオーキシンアナログと、少なくとも一部のAux/IAAファミリータンパク質を含み、前記変異型TIR1ファミリータンパク質-前記オーキシンアナログ複合体に親和性を有する分解タグの組み合わせを見出した。
本発明によれば、標的タンパク質の分解効率が非常に高いオーキシンデグロンシステムを提供できる。
<第一の核酸>
本発明において、第一の核酸は、オーキシン結合部位に変異を有する変異型TIR1ファミリータンパク質をコードする。
TIR1ファミリータンパク質とは、ユビキチン/プロテアソーム系のタンパク質分解において、E3ユビキチン化酵素複合体(SCF複合体)を形成するサブユニットの一つであるF-boxタンパク質であり、植物特有のタンパク質である。TIR1ファミリータンパク質は、成長ホルモンであるオーキシンの受容体となっており、オーキシンを受容することによって、オーキシン情報伝達系の抑制因子Aux/IAAファミリータンパク質を認識して、標的タンパク質を分解することが知られている。
TIR1ファミリータンパク質をコードする遺伝子としては、植物由来のTIR1ファミリータンパク質をコードする遺伝子であれば、その種類は限定されない。また、由来となる植物の種類も限定されず、例えば、シロイヌナズナ、イネ、ヒャクニチソウ、マツ、シダ、ヒメツリガネゴケ等が挙げられる。TIR1ファミリータンパク質をコードする遺伝子の具体例としては、例えば、TIR1遺伝子、AFB1遺伝子、AFB2遺伝子、AFB3遺伝子、FBX14遺伝子、AFB5遺伝子等が挙げられる。
中でも、シロイヌナズナ由来のTIR1遺伝子である、AtTIR1遺伝子、又はイネ由来OsTIR1が好ましい。係る遺伝子としては、NCBIに登録されているアクセッション番号NM_116163(GeneID:825473)の遺伝子が挙げられ、より具体的には、配列番号2で表される塩基配列からなる遺伝子が挙げられる。
本発明において、変異型TIR1ファミリータンパク質は、オーキシン結合部位に変異を有するものである。係る変異タンパク質は、後述するオーキシンアナログとの親和性を有するものであれば特に限定されないが、AtTIR1の79番目のFが、A、G、又はSに変異しているものが好ましく、Gに変異しているものがより好ましい。
具体的には、変異型TIR1ファミリータンパク質は、以下の(a)~(c)のいずれか一つのアミノ酸配列を含む配列からなり、且つ、オーキシンアナログとの複合体を介して、分解タグと結合して標的タンパク質を分解に導くタンパク質である。
(a)配列番号1で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号79位がグリシンであるアミノ酸配列、
(b)前記(a)のアミノ酸番号79位以外の部位において、1~数個のアミノ酸が欠失、挿入、置換若しくは付加されたアミノ酸配列、
(c)前記(a)のアミノ酸番号79位以外の部位において、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(b)において欠失、挿入、置換若しくは付加されたアミノ酸の数としては、1 ~120個が好ましく、1~60個がより好ましく、1~20個が更に好ましく、1~10個が特に好ましく、1~5個が最も好ましい。
(a)のアミノ酸配列を含む配列からなるタンパク質と機能的に同等であるためには80%以上の同一性を有する。係る同一性としては、85%以上がより好ましく、90%以上が更に好ましく、95%以上が特に好ましく、99%以上が最も好ましい。
AtTIR1のF79Gタンパク質としては、配列番号3で表されるアミノ酸配列からなるものが挙げられる。
変異型TIR1ファミリータンパク質をコードする第一の核酸は、エキソンとイントロンとを含むDNAでもよいし、エキソンからなるcDNAであってもよい。変異型TIR1ファミリータンパク質をコードする第一の核酸は、例えば、ゲノムDNAにおける全長配列又はcDNAにおける全長配列であってもよい。また、変異型TIR1ファミリータンパク質をコードする第一の核酸は、発現したタンパク質が、TIR1として機能する範囲において、ゲノムDNAにおける部分配列又はcDNAにおける部分配列であってもよい。
本明細書において、「TIR1ファミリータンパク質として機能する」とは、例えば、オーキシンアナログの存在下で、分解タグ(Aux/IAAファミリータンパク質の全長又は部分タンパク質)を認識することを意味する。TIR1ファミリータンパク質が分解タグを認識できれば、分解タグで標識化された標的タンパク質を分解できるからである。
本発明のキットにおいて、TIR1ファミリータンパク質をコードする第一の核酸の5’末端に、該第一の核酸の転写を制御するプロモーター配列が作動可能に連結されていることが好ましい。これによって、より確実にTIR1ファミリータンパク質を発現できる。
本明細書において、「作動可能に連結」とは、遺伝子発現制御配列(例えば、プロモーター又は一連の転写因子結合部位)と発現させたい遺伝子(TIR1ファミリータンパク質をコードする第一の核酸)との間の機能的連結を意味する。ここで、「発現制御配列」とは、その発現させたい遺伝子(TIR1ファミリータンパク質をコードする第一の核酸)の転写を指向するものを意味する。
前記プロモーターとしては、特別な限定はなく、例えば、細胞の種類等に応じて適宜決定できる。プロモーターの具体例としては、CMVプロモーター、SV40プロモーター、EF1aプロモーター、RSVプロモーター等が挙げられる。
本発明のキットにおいて、TIR1ファミリータンパク質をコードする第一の核酸及び上流に作動可能に連結されたプロモーター配列は、ベクターに挿入された形であってもよい。
ベクターとしては、発現ベクターであることが好ましい。発現ベクターとしては特に制限されず、宿主細胞に応じた発現ベクターを用いることができる。
ベクターは、TIR1ファミリータンパク質をコードする第一の核酸の5’末端又は3’末端に、ポリアデニル化シグナル、NLS、蛍光タンパク質のマーカー遺伝子等が作動可能に連結されていてもよい。
本発明のキットは、第一の核酸を染色体上に有する非植物由来の真核細胞又は非ヒト動物を備えてもよい。
係る細胞は、第一の核酸をセーフハーバー座位に有することが好ましい。
「セーフハーバー座位」とは、恒常的且つ安定的に発現が行われている遺伝子領域であり、かつ当該領域に本来コードされている遺伝子が欠損又は改変された場合であっても、生命の維持が可能な領域を意味する。CRISPRシステムを用いて、外来DNA(本実施形態においては、TIR1をコードする遺伝子)をセーフハーバー座位に挿入する場合には、近傍にPAM配列を有することが好ましい。セーフハーバー座位としては、例えば、GTP-binding protein 10遺伝子座、Rosa26遺伝子座、beta-Actin遺伝子座、AAVS1(the AAV integration site 1)遺伝子座等が挙げられる。中でも、ヒト由来細胞の場合は外来DNAをAAVS1遺伝子座に挿入することが好ましい。
細胞としては、非植物由来の真核細胞であれば特に限定されず、動物、菌類、原生生物等の細胞があげられる。動物としては、例えば、ヒト、マウス、ラット、ウサギ等の哺乳類、ゼブラフィッシュ、アフリカツメガエル等の魚類や両生類、C.elegansやショウジョウバエ等の無脊椎動物が挙げられる。
また、株化された真核動物由来細胞やES細胞、iPS細胞も挙げられる。真核細胞として具体的には、例えば、株化されたヒト由来細胞、株化されたマウス由来細胞、株化されたニワトリ由来細胞、ヒトES細胞、マウスES細胞、ヒトiPS細胞、マウスiPS細胞等が挙げられる。具体的には、ヒトHCT116細胞、ヒトHT1080細胞、ヒトNALM6細胞、ヒトES細胞、ヒトiPS細胞、マウスES細胞、マウスiPS細胞、ニワトリDT40細胞等が挙げられる。
また、菌類としては、例えば、出芽酵母、分裂酵母等が挙げられる。
第一の核酸を染色体上に有する非ヒト動物は、オーキシンデグロンシステムにより、生体内の標的タンパク質の分解が制御される、遺伝子改変された非ヒト動物である。非ヒト動物としては、例えば、ネコ、イヌ、ウマ、サル、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウサギ、ハムスター、モルモット、ラット、マウス等が挙げられる。中でも、薬剤評価の実績という観点からは、齧歯類が好ましい。齧歯類としては、ハムスター、モルモット、ラット、マウス等が挙げられ、ラット、マウスが好ましい。
<オーキシンアナログ>
本発明において、オーキシンアナログは、下記一般式(I)で表される化合物である。
Figure 2023030479000005
(一般式(I)中、R10は、置換基を有していてもよく、環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換されていてもよい環状の脂肪族炭化水素基、又は、置換基を有していてもよく、環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換されていてもよい芳香族炭化水素基であり、R11は、-O-(CHn1-O-C(=O)R12、-OR12又は-N(R13であり、n1は、1~6の整数であり、R12は、炭素数1~6のアルキル基であり、複数のR13は、独立して水素原子若しくは炭素数1~6のアルキル基である。)
[環状の脂肪族炭化水素基]
10における環状の脂肪族炭化水素基としては、単環式基でも多環式基でもよい。
単環式の脂肪族炭化水素としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、ジメチルシクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基が挙げられる。
多環式の脂環式炭化水素基としては、デカヒドロナフチル基、アダマンチル基、2-アルキルアダマンタン-2-イル基、1-(アダマンタン-1-イル)アルカン-1-イル基、ノルボルニル基、メチルノルボルニル基、イソボルニル基等が挙げられる。
環状の脂肪族炭化水素基は、環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換されていてもよい。ヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。係る複素環としては、ピロリジン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロチオフェン、ピペリジン、テトラヒドロピラン、テトラヒドロチオピラン、ジオキサン、ジオキソラン等が挙げられる。
置換基としては、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、ハロゲン原子、炭素数6~30のアリール基が挙げられる。
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、シクロブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、シクロペンチル基、2,3-ジメチルプロピル基、1-エチルプロピル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、シクロヘキシル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、1,1,2-トリメチルプロピル基、3,3-ジメチルブチル基等が挙げられる。
アルコキシ基としては、-ORのRの部分が、上述した炭素数1~6のアルキル基と同様のものが挙げられる。中でも、炭素数アルコキシ基としては、メトキシ基又はエトキシ基であることが好ましい。
ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。中でも、ハロゲン原子としては、フッ素原子又は塩素原子が好ましい。
アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、ベンジル基、フェネチル基、ビフェニル基、ペンタレニル基、インデニル基、アントラニル基、テトラセニル基、ペンタセニル基、ピレニル基、ペリレニル基、フルオレニル基、フェナントリル基が挙げられる。
[芳香族炭化水素基]
10における芳香族炭化水素基としては、上述した炭素数6~30のアリール基が挙げられる。
芳香族炭化水素基は、環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換されていてもよい。ヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。係る複素環としては、ピロール、フラン、チオフェン、ピリジン、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾール、チアゾール、ピリダジン、ピリミジン、インドール、ベンゾイミダゾール、キノリン、イソキノリン、クロメン、イソクロメン等が挙げられる。
置換基としては、[環状の脂肪族炭化水素基]で挙げたものと同様のものが挙げられる。
一般式(I)で表される化合物のうち、R10が芳香族炭化水素基であるものとして、下記一般式(I-1)で表される化合物が好ましい。
Figure 2023030479000006
(一般式(I-1)中、Rは、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、ハロゲン原子、又は炭素数6~30のアリール基である。nは0~5の整数であり、nが2~5の整数である場合、n個のRは互いに同一でも異なっていてもよい。R11は、-O-(CHn1-O-C(=O)R12、-OR12又は-N(R13であり、n1は、1~6の整数であり、R12は、炭素数1~6のアルキル基であり、複数のR13は、独立して水素原子若しくは炭素数1~6のアルキル基である。)
のハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。中でも、ハロゲン原子としては、フッ素原子又は塩素原子が好ましい。
のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、シクロブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、シクロペンチル基、2,3-ジメチルプロピル基、1-エチルプロピル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、シクロヘキシル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、1,1,2-トリメチルプロピル基、3,3-ジメチルブチル基等が挙げられる。中でも、炭素数1~6のアルキル基としては、メチル基又はエチル基であることが好ましい。
のアルコキシ基としては、-ORのRの部分が、上述した炭素数1~6のアルキル基と同様のものが挙げられる。中でも、炭素数アルコキシ基としては、メトキシ基又はエトキシ基であることが好ましい。
のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、ベンジル基、フェネチル基、ビフェニル基、ペンタレニル基、インデニル基、アントラニル基、テトラセニル基、ペンタセニル基、ピレニル基、ペリレニル基、フルオレニル基、フェナントリル基が挙げられる。
のnは0~5の整数であり、0~3が好ましい。一般式(I-1)で表される化合物として、以下の化合物が挙げられる。
Figure 2023030479000007
(一般式(I-1-1)~(I-1-2)中、R~Rは、それぞれ独立して、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、ハロゲン原子、又は炭素数6~30のアリール基である。R11は、-O-(CHn1-O-C(=O)R12、-OR12又は-N(R13であり、n1は、1~6の整数であり、R12は、炭素数1~6のアルキル基であり、複数のR13は、独立して水素原子若しくは炭素数1~6のアルキル基である。)
一般式(I-1-1)~(I-1-2)における、R~Rは、一般式(I-1)におけるRと同様である。
一般式(I-1)で表される化合物として、以下の化合物も挙げられる。
Figure 2023030479000008
(一般式(I-1-3)~(I-1-8)中、R11は、-O-(CHn1-O-C(=O)R12、-OR12又は-N(R13であり、n1は、1~6の整数であり、R12は、炭素数1~6のアルキル基であり、複数のR13は、独立して水素原子若しくは炭素数1~6のアルキル基である。)
また、R10が芳香族炭化水素基であるものとして、下記式(I-2)~(I-5)で示される化合物が挙げられる。
Figure 2023030479000009
(一般式(I-2)~(I-5)中、R11は、-O-(CHn1-O-C(=O)R12、-OR12又は-N(R13であり、n1は、1~6の整数であり、R12は、炭素数1~6のアルキル基であり、複数のR13は、独立して水素原子若しくは炭素数1~6のアルキル基である。)
また、R10が環状の脂肪族炭化水素基であるものとして、下記一般式(I-6)で示される化合物が挙げられる。
Figure 2023030479000010
(一般式(I-6)中、Rは、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、ハロゲン原子、又は炭素数6~30のアリール基である。mは0~11の整数であり、mが2~11の整数である場合、m個のRは互いに同一でも異なっていてもよい。R11は、-O-(CHn1-O-C(=O)R12、-OR12又は-N(R13であり、n1は、1~6の整数であり、R12は、炭素数1~6のアルキル基であり、複数のR13は、独立して水素原子若しくは炭素数1~6のアルキル基である。)
は、一般式(I-1)で挙げられてものと同様である。mは0~6が好ましく、0~3がより好ましい。
また、R10が環状の脂肪族炭化水素基であるものとして、下記式(I-7)で示される化合物も挙げられる。
Figure 2023030479000011
(一般式(I-7)中、R11は、-O-(CHn1-O-C(=O)R12、-OR12又は-N(R13であり、n1は、1~6の整数であり、R12は、炭素数1~6のアルキル基であり、複数のR13は、独立して水素原子若しくは炭素数1~6のアルキル基である。)
11は、膜透過性に寄与する置換基であり、-O-(CHn1-O-C(=O)R12、-OR12又は-N(R13である。
-O-(CHn1-O-C(=O)R12において、R12は、炭素数1~6のアルキル基であり、Rのアルキル基と同様のものが挙げられ、メチル基又はエチル基が好ましい。
-(CH-O-C(=O)R12において、n1は、1~6の整数であり、1が好ましい。
11が、-O-(CHn1-O-C(=O)R12の場合、以下の化合物が好ましい。
Figure 2023030479000012
11が、-OR12の場合、R12は、炭素数1~6のアルキル基であり、Rのアルキル基と同様のものが挙げられ、メチル基又はエチル基が好ましい。
11が、-OR12の場合、以下の化合物が好ましい。
Figure 2023030479000013
11が、-N(R13の場合、複数のR13は、独立して水素原子若しくは炭素数1~6のアルキル基である。R13のアルキル基としては、Rのアルキル基と同様のものが挙げられ、メチル基又はエチル基が好ましい。
[その他の化合物]
その他の化合物として、下記一般式で表される化合物も挙げられる。
Figure 2023030479000014
(一般式(II-11)~(II-12)中、R~Rは、それぞれ独立して、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、ハロゲン原子、又は炭素数6~30のアリール基である。
中でも下記化合物が好ましい。
Figure 2023030479000015
また、その他の化合物として、下記一般式で表される化合物も挙げられる。
Figure 2023030479000016
<第二の核酸>
本発明において、第二の核酸は、少なくとも一部のAux/IAAファミリータンパク質を含み、変異型TIR1ファミリータンパク質-前記オーキシンアナログ複合体に親和性を有する分解タグをコードする。
Aux/IAAファミリータンパク質をコードする遺伝子としては、植物由来のAux/IAAファミリー遺伝子であれば、その種類について特別な限定はない。Aux/IAAファミリータンパク質をコードする遺伝子の具体例としては、例えば、IAA1遺伝子、IAA2遺伝子、IAA3遺伝子、IAA4遺伝子、IAA5遺伝子、IAA6遺伝子、IAA7遺伝子、IAA8遺伝子、IAA9遺伝子、IAA10遺伝子、IAA11遺伝子、IAA12遺伝子、IAA13遺伝子、IAA14遺伝子、IAA15遺伝子、IAA16遺伝子、IAA17遺伝子、IAA18遺伝子、IAA19遺伝子、IAA20遺伝子、IAA26遺伝子、IAA27遺伝子、IAA28遺伝子、IAA29遺伝子、IAA30遺伝子、IAA31遺伝子、IAA32遺伝子、IAA33遺伝子、IAA34遺伝子等が挙げられる。
本発明のキットは、いずれか一種の前記Aux/IAAファミリータンパク質をコードする遺伝子の全長又は部分配列を有していてもよいし、二種類以上を有していてもよい。例えば、シロイヌナズナ由来のAux/IAAファミリー遺伝子の配列は、TAIR(the Arabidopsis Information Resource)に登録されており、各遺伝子のアクセッションナンバーは、次のとおりである。
IAA1遺伝子(AT4G14560)、IAA2遺伝子(AT3G23030)、IAA3遺伝子(AT1G04240)、IAA4遺伝子(AT5G43700)、IAA5遺伝子(AT1G15580)、IAA6遺伝子(AT1G52830)、IAA7遺伝子(AT3G23050)、IAA8遺伝子(AT2G22670)、IAA9遺伝子(AT5G65670)、IAA10遺伝子(AT1G04100)、IAA11遺伝子(AT4G28640)、IAA12遺伝子(AT1G04550)、IAA13遺伝子(AT2G33310)、IAA14遺伝子(AT4G14550)、IAA15遺伝子(AT1G80390)、IAA16遺伝子(AT3G04730)、IAA17遺伝子(AT1G04250)、IAA18遺伝子(AT1G51950)、IAA19遺伝子(AT3G15540)、IAA20遺伝子(AT2G46990)、IAA26遺伝子(AT3G16500)、IAA27遺伝子(AT4G29080)、IAA28遺伝子(AT5G25890)、IAA29遺伝子(AT4G32280)、IAA30遺伝子(AT3G62100)、IAA31遺伝子(AT3G17600)、IAA32遺伝子(AT2G01200)、IAA33遺伝子(AT5G57420)、IAA34遺伝子(AT1G15050)。
これらの中でも、シロイヌナズナIAA17遺伝子が好ましい。
分解タグは、変異型TIR1ファミリータンパク質-オーキシンアナログ複合体と結合し、標的タンパク質を分解に導くものであれば特に限定されず、Aux/IAAファミリータンパク質のうち、mAIDの全長若しくは部分タンパク質を含むもの、又はAIDの全長若しくは部分タンパク質を含むものが好ましい。
「mAID」とは、「Mini-auxin-inducible degron」の略称であり、Aux/IAAファミリータンパク質の一つであるシロイヌナズナIAA17の部分配列からなるタンパク質である。この部分配列とは、Aux/IAAファミリータンパク質のドメインII領域のN末端側及びC末端側に少なくとも2個ずつのLys残基を含む領域からなる配列、又は、該配列を2個以上連結してなる配列である。このmAIDは標的タンパク質を標識する分解タグとなり得る。例えば、mAIDのアミノ酸配列は、配列番号4で表される。
「AID」は、mAIDとは少し長さの違うIAA17由来の配列からなり、44aaの短いアミノ酸配列からなるタンパク質である。例えば、AIDのアミノ酸配列は、配列番号5で表される。
<第三の核酸>
本発明のキットにおいて、標的タンパク質が定まっている場合には、第二の核酸の上流又は下流に連結された標的タンパク質をコードする第三の核酸を備えていてもよい。第二の核酸は、第三の核酸の5’側又は3’側のどちらに隣接されて配置されてもよい。
第二の核酸と第三の核酸からなる融合核酸は、第一の核酸と同様に、プロモーター配列が作動可能に連結されていることが好ましく、発現ベクターに組み込まれたものであってもよい。
≪標的タンパク質分解方法≫
本発明の標的タンパク質の分解方法は、上述した本発明のキットを用いる方法である。オーキシンデグロンシステムにおいて、上述のキットを用いることで、効率よく標的タンパク質の分解制御が可能である。
例えば、上述のキットを用いて標的タンパク質の分解制御を行う方法としては、以下の方法等が挙げられる。
まず、細胞内において、分解タグで標識された標的タンパク質、及びTIR1ファミリータンパク質を発現させる。分解タグで標識された標的タンパク質、及びTIR1ファミリータンパク質は、定常的に発現していることが好ましい。
次いで、オーキシンアナログを培地に添加する。培地に含まれるオーキシンアナログの濃度は、限定されず、例えば、1μM以上0.1mM未満であり、10nM以上100μM以下であることが好ましい。実施例で後述するように、5-Ph-IAA-AMとAtTIR1(F79G)の組み合わせでは、効率よく標的タンパク質の分解を誘導できる。所定濃度のオーキシンアナログの添加により、細胞内に取り込まれた後、R11が分解を受け、親水性となり、変異型TIR1ファミリータンパク質-オーキシンアナログ複合体が形成され、この複合体が分解タグによって標識された標的タンパク質を認識し、標的タンパク質の分解が誘導される。
また、非ヒト動物を用いる場合には、オーキシンアナログを投与することにより標的タンパク質が分解される。
オーキシンアナログの投与方法としては、特に限定されず、腹腔内投与、静脈内投与、動脈内投与、筋肉内投与、皮内投与、皮下投与、経口投与等が挙げられる。投与量としては、例えば1日あたり0.1mg/kg~100mg/kgが好ましく、0.2mg/kg~50mg/kgがより好ましく、0.5mg/kg~20mg/kgが更に好ましい。投与期間としては、1日~10日が好ましく、3日~7日がより好ましい。
[阻害剤]
また、リガンド未添加時の標的タンパク質の基底分解をより制御するために、TIR1オーキシン受容体拮抗剤を用いてもよい。
TIR1オーキシン受容体拮抗剤としては、下記一般式で表される化合物が挙げられる。
Figure 2023030479000017
(一般式(III)中、R14は、水素原子又は炭素数1~6のアルキル基である。R15a、及びR15bは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は炭素数1~6のアルキル基である。R16は、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、置換基を有していてもよく、環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換されていてもよい環状の脂肪族炭化水素基、又は、置換基を有していてもよく、環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換されていてもよい芳香族炭化水素基である。)
14、R15a、R15b、及びR16のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、シクロブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、シクロペンチル基、2,3-ジメチルプロピル基、1-エチルプロピル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、シクロヘキシル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、1,1,2-トリメチルプロピル基、3,3-ジメチルブチル基等が挙げられる。
16の置換基を有していてもよく、環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換されていてもよい環状の脂肪族炭化水素基としては、R10と同様のものが挙げられ、単環式、又は多環式の脂肪族炭化水素基が好ましく、炭素数1~10のシクロアルキル基、又はアダマンチル基がより好ましく、シクロヘキシル基、又はアダマンチル基が特に好ましい。
16の置換基を有していてもよく、置換基を有していてもよく、環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換されていてもよい芳香族炭化水素基としては、R10と同様のものが挙げられ、炭素数6~30のアリール基が好ましく、フェニル基がより好ましい。
好ましいTIR1オーキシン受容体拮抗剤としては、下記一般式で表される化合物が挙げられる。
Figure 2023030479000018
(一般式(III-1)~(III-2)中、R14は、水素原子又は炭素数1~6のアルキル基である。R15a、及びR15bは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は炭素数1~6のアルキル基である。R17は、炭素数1~6のアルキル基である。)
17のアルキル基としては、R16のアルキル基と同様のものが挙げられる。
好ましいTIR1オーキシン受容体拮抗剤としては、下記式で表される化合物が挙げられる。
Figure 2023030479000019
上記TIR1オーキシン受容体拮抗剤は、TIR1ファミリータンパク質への結合能を要するが、分解誘導ペプチド(特に、mAID)への結合能を有さないものである。これにより、TIR1ファミリータンパク質と、分解誘導ペプチド(特に、mAID)との結合を阻害することができる。
本発明の分解方法において、上記TIR1オーキシン受容体拮抗剤を用いる場合、以下の方法が挙げられる。
まず、真核細胞内において、分解誘導ペプチドで標識された目的タンパク質及びTIR1ファミリータンパク質を、TIR1オーキシン受容体拮抗剤存在下で発現させる。これにより、目的タンパク質の基底分解を抑制することができる。
次いで、TIR1オーキシン受容体拮抗剤を含む培地を、上述したオーキシンアナログを含む培地に交換する。これにより、TIR1オーキシン受容体拮抗剤が除去され、代わりにオーキシンアナログが存在することで、分解誘導ペプチドで標識された目的タンパク質がTIR1ファミリータンパク質により分解される。
本発明の分解方法によれば、オーキシンアナログ特異的に標的タンパク質の分解を誘導できる。
≪化合物≫
本発明の化合物は、下記一般式(I)で表される化合物である。
Figure 2023030479000020
(一般式(I)中、R10は、置換基を有していてもよく、環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換されていてもよい環状の脂肪族炭化水素基、又は、置換基を有していてもよく、環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換されていてもよい芳香族炭化水素基であり、R11は、-O-(CHn1-O-C(=O)R12、-OR12又は-N(R13であり、n1は、1~6の整数であり、R12は、炭素数1~6のアルキル基であり、複数のR13は、独立して水素原子若しくは炭素数1~6のアルキル基である。)
一般式(I)において、R11は、-O-(CHn1-O-C(=O)R12の場合、以下の合成方法が挙げられる。
Figure 2023030479000021
(一般式(V)及び(V-A)中、R10は、置換基を有していてもよく、環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換されていてもよい環状の脂肪族炭化水素基、又は、置換基を有していてもよく、環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換されていてもよい芳香族炭化水素基である。一般式(A)中、Xはハロゲンである。一般式(A)及び(V-A)中、n1は、1~6の整数であり、R12は、炭素数1~6のアルキル基である。)
DMF中の一般式(V)で表される化合物及びトリメチルアミンの溶液に、一般式(A)で表される化合物を滴下して加え、室温で撹拌する。反応混合物を水に加え、EtOAcで抽出し、有機層を洗浄・乾燥し、残渣を精製して、一般式(V-A)で表される化合物が得られる。
一般式(A)中、ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
一般式(V-A)で表される化合物において、好ましい化合物は、<オーキシンアナログ>において挙げたものと同様のものが挙げられる。
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
[5-Ph-IAAの合成]
下記式(VI)で示される化合物(5-Ph-IAAともいう。)を合成した。
Figure 2023030479000022
[線虫(C.elegans)におけるAID2システムの構築]
以下のとおり、本発明に係る分解システム(AID2システムともいう。)を構築した。
オーキシンとの親和性向上のためのD170E及びM473Lの変異を含む、線虫のAtTIR1遺伝子に、F79G変異を導入した。尚、F79G変異は、OsTIR1では、F74Gに相当する。このAtTIR1(F79G)と赤色蛍光タンパク質との融合タンパク質(AtTIR1(F79G):: mRuby)をコードする遺伝子を、CRISPR-Cas9を介したノックインにより、ttTi5605遺伝子座(chromosome II: position 8,420,204)へ挿入した。
AtTIR1(F79G):: mRubyの発現は、eft3277プロモーターにより駆動され、すべての体細胞で遍在する発現を達成した。
AtTIR1(F79G)::mRubyを発現する系統と、GFPレポーターが融合したAID(配列番号5参照。)(AID::GFP)を発現する系統とかけ合わせた。
基底分解のレベルをモニターするために、AtTIR1::mRuby又はAtTIR1(F79G)::mRubyを発現する幼虫のAID::GFPの強度を測定した。
AtTIR1::mRubyを発現する株では、レポーター強度は、導入遺伝子のない親株と比較して73%に減少し、リガンド未添加時の基底分解を示した(図1A及び図1B参照。)。対照的に、レポーター強度は、AtTIR1(F79G)::mRubyを発現する幼虫では、全く影響を受けなかった(図1A及び図1B参照。)。このことは、線虫において、AtTIR1(F79G)の基底分解が、低レベルであることを示した。
次いで、5-Ph-IAAが、線虫に対してIAAより安全であることを確認するため、AID::GFPを発現するL1幼虫を、それぞれ1mM IAA又は5μM 5-Ph-IAAの存在下で、AtTIR1又はAtTIR1(F79G)とともに成長させた。
図2に示す様に、1mM IAAで処理された線虫は、子孫の数が減少することが確認された。対照的に、5μMの5-Ph-IAAで処理された線虫は違いを示さなかった。この結果から、線虫を5μMの5-Ph-IAAで処理する方が1mM IAAで処理するよりも安全であることが確認された。
AtTIR1(F79G)と5-Ph-IAAの組み合わせが、AID::GFPレポーターの分解を誘発できるかどうかをテストするために、1mM IAA又は5μM 5PhIAAを含むプレート上で、AtTIR1又はAtTIR1(F79G)を含む幼虫を処理した。
処理前、レポーターの蛍光強度は、AtTIR1を発現する幼虫よりもAtTIR1(F79G)を発現する幼虫で高かった(図3A及び図3B参照。)。1mM IAAの処理は、AtTIR1を発現する幼虫のレポーターレベルを16.8分の半減期で減少させた。 5μM 5-Ph-IAAの処理により、リガンド濃度が500倍低かったにもかかわらず、AtTIR1(F79G)を発現する幼虫の半減期が、15.5分でレポーターレベルが同様に低下した(図3A及び図3B参照。)。更に、1μM及び10μMの5-Ph-IAAで処理をした結果、半減期はそれぞれ33.6分及び15.1分だった(図3B参照。)。
これらの結果は、5μM 5-Ph-IAAで処理すると、除去速度がほぼ最大に達することを示した。基底分解のレベルが低いため、AtTIR1と1mM IAAを備えた従来のAIDシステムと比較して、AtTIR1(F79G)と5μM 5-Ph-IAAの組み合わせでより鋭い分解を達成できた。
次に、異なる濃度のリガンドを含むプレート上でL1幼虫を成長させた。成虫から生まれた幼虫(第2世代)のAID::GFPレポーターの強度をモニターした。5.0μMの5-Ph-IAAで処理した幼虫のレポーター発現が最も低かったことを観察した(図3C参照。)。さらに、この発現レベルは、1mM IAAで処理されたAtTIR1発現幼虫の発現レベルよりも低かった(p=1.7×10-5)。
推定DC50値(50%分解に必要なリガンド濃度)は、AtTIR1(F79G)と組み合わせた5-Ph-IAA、及びAtTIR1と組み合わせたIAAにおいて、それぞれ4.5nM及び59μMであった。この結果は、5-Ph-IAAを使用するAID2システムは、長時間の処理において、従来のAIDシステムよりも約1,300倍低いリガンド濃度を必要とすることを示している。さらに、成虫におけるAID2システムの有効性をテストした。成虫を5μM 5-Ph-IAAで4時間処理すると、レポーターの喪失が観察された(図3D及び図3E参照。)。これらの結果は、AtTIR1(F79G)と5-Ph-IAAの組み合わせが、リガンド感受性を改善し、線虫の幼虫と成虫における標的タンパク質をさらに急速に除去させることを明確に示した。
[実施例2]
[胚における5-Ph-IAAの効果の検討]
胚における急速な標的の除去は、胚発生におけるタンパク質の役割を分析するのに役立つ。最初に、5-Ph-IAAを使用して胚におけるタンパク質除去の有効性をテストした。AtTIR1(F79G)::mRuby及びAID::GFPを発現する産卵胚を50μM 5-Ph-IAAを含むM9バッファーの液滴に入れ、その後レポーター強度をモニターした(図4A参照。)。
50μM 5-Ph-IAAで処理すると、一部の胚(78%、18/23胚)で蛍光強度が急速に低下することが確認された(図4B及び図4C参照)。また、高濃度の100μMの5-Ph-IAAをテストしたところ、ほぼ同じ結果(80%、16/20)が観察された。
50μM 5-Ph-IAAで分解が誘導されると、レポーターの分解は、15~30分以内に最大に達した(図4A及び図4B参照。)。しかし、処理に反応しなかった胚がいくつかあった(図4A、上部の胚参照。)。これは、C.elegansの胚が卵殻内で発生し、卵殻が、多くの化合物の透過性をブロックするためと考えられる。
卵殻への透過性を改善すべく、アセトキシメチル基を有する5-Ph-IAA-AMを合成した(図4D参照。)。
[5-Ph-IAA AM エステルの合成]
H及び13CNMRスペクトルは、JEOL ECZ400NMR分光計で記録された(JEOL、日本)ケミカルシフトは、インターナルレファレンスとして、TMSからのδ値として示される。ピーク多重度は、Hzで表示される。カラムクロマトグラフィーは、Merckシリカゲル60(230~400メッシュ、Merck、日本)を用いて行った。すべての化学薬品は、東京化成工業ジャパン(東京、日本)から購入した。
Figure 2023030479000023
DMF(10mL)中の5-フェニルインドール-3-酢酸(500mg、2.0mmol)及びトリメチルアミン(402mg、4.0mmol)の溶液に、ブロモメチルアセテート(300mg、2mmol)を滴下して加え、室温で18時間撹拌した。
反応混合物を水(100mL)に加え、EtOAc(50mL×3)で抽出した。有機層を1M HCl、1M NaCO水溶液、ブラインで洗浄し、次にNaSOで乾燥させた。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:EtOAc= 7:3)で精製して、5-フェニルインドール3-酢酸アセトキシメチルエステルを結晶として得た(442mg、収率69%)。
得られた化合物のH-NMR、及び13C-NMRによる分析結果を以下に示す。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ 8.18 (s, 1H), 7.77 (s, 1H), 7.64 (d, J = 8.2 Hz, 2H), 7.44-7.41 (m, 3H), 7.32 (t, J = 9.1 Hz, 2H), 7.09 (s, 1H), 5.76 (s, 2H), 3.84 (s, 2H), 1.97 (s, 3H), 13C-NMR (100 MHz, CDCl3) δ 13C-NMR (101 MHz, CDCl3) δ 170.7, 169.7, 142.4, 135.6, 133.3, 128.6, 127.5, 127.3, 126.4, 124.0, 122.1, 117.2, 111.5, 107.6, 79.4, 31.0, 20.5. TOF-MS m/z 346.1 [M+Na]+
[胚における5-Ph-IAA AM エステルの効果の検討]
AtTIR1(F79G)::mRuby及びAID::GFPを発現する産卵胚を50μM 5-Ph-IAA-AMを含むM9バッファーの液滴に入れ、その後レポーター強度をモニターした(図4D参照。)。DMSOで処理した胚とは対照的に、50μM 5-Ph-IAA-AMが、AID::GFPレポーターの急速な除去を効果的に引き起こしたことが確認された(図4E参照。)。5-Ph-IAAとは対照的に、5-Ph-IAA-AMは、すべての胚において、急速な分解を引き起こした(図4F参照。)。この結果は、5-Ph-IAA-AMが胚のタンパク質を標的とするより優れたリガンドであることを示している。
本発明のオーキシンデグロンシステムによれば、効率良く、標的タンパク質の分解制御が可能である。

Claims (9)

  1. 非植物由来の真核細胞中の標的タンパク質の分解を制御するオーキシンデグロンシステムのキットであって、
    オーキシン結合部位に変異を有する変異型TIR1ファミリータンパク質をコードする第一の核酸と、
    前記変異型TIR1ファミリータンパク質に親和性を有するオーキシンアナログと、
    少なくとも一部のAux/IAAファミリータンパク質を含み、前記変異型TIR1ファミリータンパク質-前記オーキシンアナログ複合体に親和性を有する分解タグをコードする第二の核酸と、を備え、
    前記変異型TIR1ファミリータンパク質は、以下の(a)~(c)のいずれか一つのアミノ酸配列を含む配列からなり、且つ、オーキシンアナログとの複合体を介して、分解タグと結合して標的タンパク質を分解に導くタンパク質であり、
    (a)配列番号1で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号79位がグリシンであるアミノ酸配列、
    (b)前記(a)のアミノ酸番号79位以外の部位において、1~数個のアミノ酸が欠失、挿入、置換若しくは付加されたアミノ酸配列、
    (c)前記(a)のアミノ酸番号79位以外の部位において、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
    前記オーキシンアナログは、下記一般式(I)で表される化合物である、キット。
    Figure 2023030479000024
    (一般式(I)中、R10は、置換基を有していてもよく、環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換されていてもよい環状の脂肪族炭化水素基、又は、置換基を有していてもよく、環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換されていてもよい芳香族炭化水素基であり、R11は、-O-(CHn1-O-C(=O)R12、-OR12又は-N(R13であり、n1は、1~6の整数であり、R12は、炭素数1~6のアルキル基であり、複数のR13は、独立して水素原子若しくは炭素数1~6のアルキル基である。)
  2. 更に、前記第二の核酸の上流又は下流に連結された標的タンパク質をコードする第三の核酸を備える、請求項1に記載のキット。
  3. 前記変異型TIR1ファミリータンパク質は、シロイヌナズナ由来タンパク質である、請求項1又は2に記載のキット。
  4. 前記変異型TIR1ファミリータンパク質は、AtTIR1の79番目のFが、A、G、又はSに変異しているタンパク質である、請求項1~3のいずれか一項に記載のキット。
  5. 更に、前記第一の核酸を染色体上に有する非植物由来の真核細胞又は非ヒト動物を備える、請求項1~4のいずれか一項に記載のキット。
  6. 前記非植物由来の真核細胞又は非ヒト動物は、更に、少なくとも一部のAux/IAAファミリータンパク質を含み、変異型TIR1ファミリータンパク質-オーキシンアナログ複合体に親和性を有する分解タグをコードする第二の核酸と、前記第二の核酸の上流又は下流に連結された標的タンパク質をコードする第三の核酸と、を含む染色体を有する、請求項5に記載のキット。
  7. 請求項1~6のいずれか一項に記載のキットを用いる、標的タンパク質の分解方法。
  8. 非植物由来の真核細胞中の標的タンパク質の分解を制御するオーキシンデグロンシステムに用いられる標的タンパク質分解誘導剤であって、
    下記一般式(I)で表される化合物を含有する、標的タンパク質分解誘導剤。
    Figure 2023030479000025
    (一般式(I)中、R10は、置換基を有していてもよく、環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換されていてもよい環状の脂肪族炭化水素基、又は、置換基を有していてもよく、環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換されていてもよい芳香族炭化水素基であり、R11は、-O-(CHn1-O-C(=O)R12、-OR12又は-N(R13であり、n1は、1~6の整数であり、R12は、炭素数1~6のアルキル基であり、複数のR13は、独立して水素原子若しくは炭素数1~6のアルキル基である。)
  9. 下記一般式(I)で表される化合物。
    Figure 2023030479000026
    (一般式(I)中、R10は、置換基を有していてもよく、環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換されていてもよい環状の脂肪族炭化水素基、又は、置換基を有していてもよく、環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換されていてもよい芳香族炭化水素基であり、R11は、-O-(CHn1-O-C(=O)R12、-OR12又は-N(R13であり、n1は、1~6の整数であり、R12は、炭素数1~6のアルキル基であり、複数のR13は、独立して水素原子若しくは炭素数1~6のアルキル基である。)
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