JP2023029055A - 医療用処置材の製造方法 - Google Patents

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Yoshiyuki Koyama
智子 伊藤
Tomoko Ito
賢一 中村
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Ayaka Kashiwakawa
剛史 長谷川
Takashi Hasegawa
雅弥 久野
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Abstract

【課題】水素結合による物理架橋構造を有し、水分との接触によりハイドロゲルを形成する医療用処置材において、滅菌処理前後の形状変化及び性質変化を抑制しつつ無菌性を保証することができる医療用処置材の製造方法を提供すること。【解決手段】カルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を有する重合体(A)、及びカルボキシル基と水素結合を形成し得る官能基を有するエチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を有する重合体(B)(ただし、重合体(A)を除く)のうち一方の重合体を含むフィルム状固形物を得る工程と、フィルム状固形物と、重合体(A)及び重合体(B)のうち他方の重合体を含む重合体溶液とを接触させた後、乾燥させる工程と、乾燥体を放射線滅菌により滅菌処理する工程と、を含む方法により、水分との接触によりハイドロゲルを形成する医療用処置材を製造する。【選択図】なし

Description

本発明は、医療用処置材の製造方法に関し、より詳細には、水分との接触によりハイドロゲルを形成する医療用処置材の製造方法に関する。
生体組織に接着するハイドロゲルは、癒着防止材や止血材、創傷被覆材等に適用可能であり、従来、種々の検討が行われている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、ポリアクリル酸とポリビニルピロリドンとの水素結合によりハイドロゲルを形成する医療用処置材としてハイドロゲル形成材が提案されている。特許文献1に記載の技術では、ポリアクリル酸及びポリビニルピロリドンのいずれかの水溶液をフィルム状に乾燥させておき、このフィルムに対して他方の水溶液を接触させた後に乾燥することにより、水分の吸収によりハイドロゲルを形成可能な乾燥状態のフィルムやスポンジを得ている。このようにして得られたフィルム及びスポンジは、傷口や止血部位等のような濡れた生体組織上で、血液や組織液等の水分を速やかに吸収して膨潤し、生体組織に接着する機能を持つ。
特開2014-100462号公報
ハイドロゲル形成材を医療用処置材に適用する場合には、ハイドロゲル形成材の無菌性を保証する必要がある。そこで、ハイドロゲル形成材に滅菌処理を行い使用することが考えられる。しかしながら、特許文献1に記載のもののように、水素結合による二成分間の物理架橋構造を有するハイドロゲル形成材は滅菌処理により収縮しやすく、滅菌処理後に形状を維持できないことが懸念される。
また、特許文献1に記載のハイドロゲル形成材は、生理条件下では水分を吸収してハイドロゲルを形成し、その後、徐々に物理架橋を解離させ可溶化する性質を有する。この性質を利用して、上記ハイドロゲル形成材を生体内に留置する用途に適用することが考えられる。またこうした性質は、ハイドロゲル形成材に滅菌処理を施した後も維持されることが求められる。しかしながら、引用文献1に記載のポリアクリル酸とポリビニルピロリドンとを含むハイドロゲル形成材において、滅菌処理前後の形状変化や性質変化を抑制しつつどのようにして無菌性を保証するかに関し、詳細な検討はなされていない。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、水素結合による物理架橋構造を有し、水分との接触によりハイドロゲルを形成する医療用処置材において、滅菌処理前後の形状変化及び性質変化を抑制しつつ無菌性を保証することができる医療用処置材の製造方法を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討し、本発明を完成した。具体的には、本発明によれば以下の手段が提供される。
〔1〕 水分との接触によりハイドロゲルを形成する医療用処置材の製造方法であって、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を有する重合体(A)、及びカルボキシル基と水素結合を形成し得る官能基を有するエチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を有する重合体(B)(ただし、前記重合体(A)を除く)のうち一方の重合体を含むフィルム状固形物を得る工程と、前記フィルム状固形物と、前記重合体(A)及び前記重合体(B)のうち他方の重合体を含む重合体溶液とを接触させた後、乾燥させる工程と、前記乾燥により得られた乾燥体を放射線滅菌により滅菌処理する工程と、を含む、医療用処置材の製造方法。
〔2〕 前記滅菌処理を行った後の前記医療用処置材を37℃のリン酸緩衝液に浸漬した場合における前記医療用処置材の10時間後の溶出率が90%以上である、上記〔1〕の医療用処置材の製造方法。
〔3〕 前記重合体(A)は架橋重合体である、上記〔1〕又は〔2〕の医療用処置材の製造方法。
〔4〕 前記重合体(A)はポリ(メタ)アクリル酸である、上記〔1〕~〔3〕のいずれかの医療用処置材の製造方法。
〔5〕 前記重合体(B)はアミド基を有する、上記〔1〕~〔4〕のいずれかの医療用処置材の製造方法。
〔6〕 前記重合体(B)は、ポリビニルピロリドン及びポリ(メタ)アクリルアミドよりなる群から選択される少なくとも1種である、上記〔1〕~〔5〕のいずれかの医療用処置材の製造方法。
〔7〕 前記放射線滅菌は、ガンマ線滅菌である、上記〔1〕~〔6〕のいずれかの医療用処置材の製造方法。
〔8〕 前記医療用処置材は、止血材として用いられる、上記〔1〕~〔7〕のいずれかの医療用処置材の製造方法。
本発明によれば、水素結合による物理架橋構造を有し、水分との接触によりハイドロゲルを形成する医療用処置材を製造する場合に、滅菌処理前後の形状変化及び性質変化を抑制しつつ無菌性が保証された医療用処置材を得ることができる。
以下、本発明について詳しく説明する。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及び/又はメタクリルを意味する。「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及び/又はメタクリレートを意味する。
《医療用処置材の製造方法》
本発明の製造方法(以下、「本製造方法」ともいう)は、水分との接触によりハイドロゲルを形成する医療用処置材を製造する方法であり、以下の工程1~工程3を含む。
工程1:カルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を有する重合体(A)、及びカルボキシル基と水素結合を形成し得る官能基を有するエチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を有する重合体(B)(ただし、重合体(A)を除く)のうち一方の重合体を含むフィルム状固形物を得る工程
工程2:フィルム状固形物と、重合体(A)及び重合体(B)のうち他方の重合体を含む重合体溶液とを接触させた後、乾燥させる工程
工程3:工程2により得られた乾燥体を放射線滅菌により滅菌処理する工程
本製造方法により得られる医療用処置材は、水分との接触によりハイドロゲルを形成するハイドロゲル形成材である。この医療用処置材は、癒着防止材や止血材、創傷被覆材等に利用可能なハイドロゲル形成用の物品であり、例えばフィルム状、スポンジ状、シート状又は粉末状である。本製造方法により得られる医療用処置材は、重合体(A)が有するカルボキシル基と、重合体(B)が有する官能基Eとの水素結合により架橋構造(より具体的には、物理架橋による架橋構造)を有し、これにより吸水作用を示す。以下では、まず重合体(A)及び重合体(B)について説明し、続いて、本製造方法における各工程の詳細について説明する。
<重合体(A)>
重合体(A)としては、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体(以下、「不飽和単量体(ma)」ともいう)に由来する構造単位を主体とする重合体を好ましく使用できる。不飽和単量体(ma)の具体例としては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、桂皮酸、コハク酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ω-カルボキシ-カプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、β-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、4-カルボキシスチレン等が挙げられる。生体組織に対する接着性をより高くできる点で、不飽和単量体(ma)は、中でも(メタ)アクリル酸を好ましく使用できる。
重合体(A)において、不飽和単量体(ma)に由来する構造単位の含有量は、重合体(A)を構成する全構造単位に対して、40質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、60質量%以上が更に好ましく、70質量%以上がより更に好ましく、80質量%以上が一層好ましく、90質量%以上がより一層好ましい。重合体(A)における不飽和単量体(ma)に由来する構造単位が上記範囲であると、生体組織に対する接着性がより高いハイドロゲルを得ることができる点で好適である。なお、重合体(A)を構成する不飽和単量体(ma)は、1種のみでもよく2種以上でもよい。
生体組織に対する接着性に優れている点において、重合体(A)は中でも、ポリ(メタ)アクリル酸であることが特に好ましい。重合体(A)がポリ(メタ)アクリル酸である場合、重合体(A)は、(メタ)アクリル酸単位を70質量%以上有することが好ましく、80質量%以上有することがより好ましく、90質量%以上有することが更に好ましく、95質量%以上有することがより更に好ましい。
なお、重合体(A)を得る方法は不飽和単量体(ma)を用いる方法に限定されない。例えば、(メタ)アクリル酸エステル単量体を重合した後、加水分解することによって重合体(A)を得てもよい。あるいは、(メタ)アクリルアミド及び(メタ)アクリロニトリル等の窒素含有モノマーを重合した後、強アルカリで処理する方法や、水酸基を有する重合体に酸無水物を反応させる方法等により重合体(A)を得てもよい。
重合体(A)としては、架橋重合体、及び重量平均分子量が180万以上の重合体(以下、「高分子量重合体(AH)」ともいう)の少なくともいずれかを好ましく用いることができる。これらのうち、滅菌処理後の医療用処理材を生理条件下においた場合に重合体(A)と重合体(B)との物理架橋を十分な時間をかけて解離させ、ハイドロゲルを徐々に可溶化させる点、並びに、水分との接触による膨潤性及び生体組織に対する接着性により優れている点で、重合体(A)は架橋重合体であることが特に好ましい。
架橋重合体を製造する方法は特に限定されない。架橋重合体の製造方法としては、例えば以下の方法(1)及び方法(2)が挙げられる。
(1)架橋性官能基を有するエチレン性不飽和単量体(以下、「不飽和単量体(mc)」ともいう)と、不飽和単量体(ma)とを共重合する方法
(2)反応性官能基を有する重合体を合成し、必要に応じて架橋剤を添加して架橋させる方法
これらのうち、操作が簡便であり、かつ架橋の程度を制御しやすい点で、方法(1)によることが好ましい。
不飽和単量体(mc)としては、重合性不飽和基を2個以上有する多官能重合性単量体、及び自己架橋可能な架橋性官能基(例えば、加水分解性シリル基等)を有する自己架橋性単量体等が挙げられる。多官能重合性単量体の具体例としては、多官能(メタ)アクリレート化合物、多官能アルケニル化合物、(メタ)アクリロイル基及びアルケニル基の両方を有する化合物等が挙げられる。架橋性官能基を有するエチレン性不飽和単量体は、これらのうち、均一な架橋構造を得やすい点で多官能アルケニル化合物が好ましい。
多官能アルケニル化合物の具体例としては、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、トリメチロールプロパントリアリルエーテル、ペンタエリスリトールジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、テトラアリルオキシエタン、ポリアリルサッカロース等の多官能アリルエーテル化合物;ジアリルフタレート等の多官能アリル化合物;ジビニルベンゼン等の多官能ビニル化合物;(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸イソプロペニル、(メタ)アクリル酸ブテニル、(メタ)アクリル酸ペンテニル、(メタ)アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル等のアルケニル基含有(メタ)アクリル酸化合物、等を挙げることができる。多官能アルケニル化合物としては、これらの中でも、分子内に複数のアリルエーテル基を有する多官能アリルエーテル化合物が特に好ましい。
また、自己架橋性単量体の具体例としては、加水分解性シリル基含有ビニル単量体等が挙げられる。加水分解性シリル基含有ビニル単量体としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシランン等のビニルシラン類;(メタ)アクリル酸トリメトキシシリルプロピル、(メタ)アクリル酸トリエトキシシリルプロピル、(メタ)アクリル酸メチルジメトキシシリルプロピル等のシリル基含有(メタ)アクリル酸エステル類;トリメトキシシリルプロピルビニルエーテル、トリメトキシシリルウンデカン酸ビニル等が挙げられる。
重合体(A)が構造単位(mc)を含む場合、重合体(A)に含まれる構造単位(mc)の量は、重合体(A)を構成する全構造単位に対して、0.01質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましい。また、重合体(A)に含まれる構造単位(mc)の量は、重合体(A)を構成する全構造単位に対して、5質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましく、1質量%以下が更に好ましい。重合体(A)が含む構造単位(mc)は、1種のみでもよく2種以上でもよい。
なお、重合体(A)は、本発明の効果を損なわない範囲において、不飽和単量体(ma)及び不飽和単量体(mc)とは異なる単量体(以下、「その他の単量体(md)」ともいう)に由来する構造単位を更に有していてもよい。その他の単量体(md)としては、例えば(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸の脂肪族環式エステル、(メタ)アクリル酸の芳香族エステル、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらの具体例としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとして、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル及び(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸の脂肪族環式エステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸tert-ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロドデシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル及び(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル等が挙げられる。(メタ)アクリル酸の芳香族エステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェノキシメチル、(メタ)アクリル酸2-フェノキシエチル及び(メタ)アクリル酸3-フェノキシプロピル等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸メトキシメチル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸n-プロポキシエチル、(メタ)アクリル酸n-ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸エトキシプロピル、(メタ)アクリル酸n-プロポキシプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブトキシプロピル、(メタ)アクリル酸メトキシブチル、(メタ)アクリル酸エトキシブチル、(メタ)アクリル酸n-プロポキシブチル及び(メタ)アクリル酸n-ブトキシブチル等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、及び(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等が挙げられる。ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートとしては、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート及びポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
重合体(A)において、その他の単量体(md)に由来する構造単位の含有量は、重合体(A)を構成する全構造単位に対して、5質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましく、1質量%以下が更に好ましい。重合体(A)を構成するその他の単量体は、1種のみでもよく2種以上でもよい。
重合体(A)として架橋重合体を用いる場合、架橋重合体としては市販品を使用することもできる。このような市販品としては、例えば、商品名で、ジュンロン(登録商標)PW-120、ジュンロンPW-121、ジュンロンPW-312S(以上、東亞合成社製)、Carbopol 934P NF、Carbopol 981、Carbopol Ultrez10、Carbopol Ultrez30(以上、Lubrizol社製)等が挙げられる。
重合体(A)として高分子量重合体(AH)を用いる場合、高分子量重合体(AH)の重量平均分子量(Mw)は、生体組織に対する接着性を十分に高くする観点から、好ましくは180万以上である。また、取り扱い性の観点から、高分子量重合体(AH)のMwは、好ましくは5,000万以下であり、より好ましくは3,000万以下であり、更に好ましくは1,000万以下である。なお、高分子量重合体(AH)の分子量は、カルボキシル基をトリメチルシリルジアゾメタンによりメチル化処理した後、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によりテトラヒドロフラン溶離液を用いて測定されるポリスチレン換算値である。
<重合体(B)>
重合体(B)は、重合体(A)が有するカルボキシル基と水素結合を形成し得る官能基Eを有するエチレン性不飽和単量体に由来する構造単位(以下、「不飽和単量体(mb)」ともいう)を有し、かつ重合体(A)とは異なる重合体である限り、特に限定されない。官能基Eとしては、例えばアミド基、シアノ基、カルボニル基、アミノ基、水酸基等が挙げられる。重合体(B)が有する官能基Eは、1種でもよく2種以上でもよい。
重合体(A)が有するカルボキシル基と、官能基Eとの水素結合の形成によって水膨潤性に優れたハイドロゲル形成材を得ることができる点において、官能基Eは、中でも、アミド基及び/又は水酸基が好ましく、アミド基が特に好ましい。
アミド基を有する重合体(B)は、例えば、アミド基を有するエチレン性不飽和単量体を用いて重合することにより製造することができる。アミド基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-ビニル-2-ピロリドン、1-ビニル-4-メチル-2-ピロリドン等が挙げられる。
重合体(B)において、不飽和単量体(mb)に由来する構造単位の含有量は、重合体(B)を構成する全構造単位に対し、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが更に好ましく、97質量%以上であることがより更に好ましい。
重合体(B)としては、架橋重合体、及び重量平均分子量が1万以上の重合体(以下、「高分子量重合体(BH)」ともいう)の少なくともいずれかを好ましく用いることができる。これらのうち、水分との接触により速やかに吸水してゲル化するとともに、生理条件下では十分な時間をかけて可溶化する医療用処置材を得る観点から、重合体(B)としては高分子量重合体(BH)をより好ましく使用できる。
重合体(B)の種類は特に限定されないが、水分との接触により膨潤性の高いハイドロゲルを形成するスポンジを得る観点から、ポリビニルピロリドン及びポリ(メタ)アクリルアミドよりなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。これらの中でも、構成単量体の重合性に優れ、重合体(B)の製造が容易である点において、重合体(B)は、ポリビニルピロリドン及びポリアクリルアミドの少なくとも1種であることがより好ましい。
ポリビニルピロリドンは、典型的には、N-ビニル-2-ピロリドンからなる重合体である。ただし、本発明の効果を損なわない範囲において、N-ビニル-2-ピロリドンとは異なる単量体に由来する構造単位を含んでいてもよい。N-ビニル-2-ピロリドンとは異なる単量体の具体例としては、重合体(A)を構成していてもよいその他の単量体として例示した化合物等が挙げられる。ポリビニルピロリドンにおいて、N-ビニル-2-ピロリドンとは異なる単量体に由来する構造単位の含有量は、ポリビニルピロリドンを構成する全構造単位に対して、3質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましく、0.5質量%以下が更に好ましい。
また同様に、ポリアクリルアミドは、典型的には、アクリルアミドからなる重合体である。ただし、本発明の効果を損なわない範囲において、アクリルアミドとは異なる単量体に由来する構造単位を含んでいてもよい。アクリルアミドとは異なる単量体の具体例としては、重合体(A)を構成していてもよいその他の単量体として例示した化合物等が挙げられる。ポリアクリルアミドにおいて、アクリルアミドとは異なる単量体に由来する構造単位の含有量は、ポリアクリルアミドを構成する全構造単位に対して、3質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましく、0.5質量%以下が更に好ましい。
ポリメタクリルアミドは、典型的には、メタクリルアミドからなる重合体である。ただし、本発明の効果を損なわない範囲において、メタクリルアミドとは異なる単量体に由来する構造単位を含んでいてもよい。メタクリルアミドとは異なる単量体の具体例としては、重合体(A)を構成していてもよいその他の単量体として例示した化合物等が挙げられる。ポリメタクリルアミドにおいて、メタクリルアミドとは異なる単量体に由来する構造単位の含有量は、ポリメタクリルアミドを構成する全構造単位に対して、3質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましく、0.5質量%以下が更に好ましい。
重合体(B)として高分子量重合体(BH)を用いる場合、高分子量重合体(BH)の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、力学的強度及び増粘効果を確保する観点から、好ましくは1万以上であり、より好ましくは3万以上であり、更に好ましくは5万以上である。また、取り扱い性の観点から、高分子量重合体(BH)のMwは、好ましくは10,000万以下であり、より好ましくは5,000万以下であり、更に好ましくは3,000万以下である。なお、重合体(B)の分子量は、GPCにより測定されるポリスチレン換算値である。
なお、重合体(A)及び重合体(B)を製造するための重合方法は特段制限されるものではない。重合体(A)及び重合体(B)は、例えば、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法、塊状重合等の公知のラジカル重合方法を採用して、単量体を重合することにより得ることができる。溶液重合法による場合、例えば、有機溶剤及び単量体を反応器に仕込み、重合開始剤(例えば、アゾ化合物)を添加して、40~250℃に加熱して重合することにより、目的とする重合体を得ることができる。
次に、本製造方法の各工程について詳細に説明する。
(工程1:準備工程)
本製造方法では、まず、重合体(A)及び重合体(B)のうち一方の重合体(以下、「第1重合体」ともいう)を含むフィルム状固形物を調製する。フィルム状固形物を調製するには、例えば溶液乾燥法、熱プレス法等が挙げられる。これらのうち、気泡の発生を抑制でき、平滑なフィルムを作製できる点で溶液乾燥法が好ましい。溶液乾燥法によりフィルム状固形物を製造する場合、第1重合体を溶媒に溶解してなる重合体溶液(以下、「第1重合体溶液」ともいう)を調製し、次いで、第1重合体溶液を支持体に塗工し、乾燥することが好ましい。なお、フィルム状固形物を構成する第1重合体は、重合体(A)でもよく、重合体(B)でもよい。
第1重合体を溶解する溶媒としては、水のほか、水に溶解可能な有機溶媒と水との混合液、及び水に溶解可能な有機溶媒が挙げられる。水に溶解可能な有機溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、アセトン等が挙げられる。第1重合体を溶解する溶媒としては、これらのうち、水、エタノール、又は水とエタノールとの混合液が好ましい。第1重合体溶液における重合体濃度は、特に限定されないが、例えば0.01~10質量%であり、好ましくは0.1~5質量%である。
支持体上にフィルム状固形物を形成する方法は特段制限されるものではなく、公知の成膜方法を採用することができる。例えば、第1重合体溶液を支持体上に塗工し、好ましくは加熱して溶媒を除去することにより、第1重合体を含むフィルム状固形物を支持体上に形成することができる。加熱処理を行う場合、加熱温度は、例えば50~120℃であり、加熱時間は、例えば0.1~5時間である。また、加熱処理は、減圧下あるいは送風下において実施されてもよい。支持体上に形成されるフィルム状固形物の厚みは、例えば1~5,000μmである。フィルム状固形物の水分含有量は、例えば10質量%以下である。
(工程2:接触及び乾燥工程)
工程2ではまず、支持体上に形成されたフィルム状固形物と、重合体(A)及び重合体(B)のうち第1重合体とは異なる重合体(以下、「第2重合体」ともいう)を溶媒に溶解してなる重合体溶液(以下、「第2重合体溶液」ともいう)とを接触させる。第2重合体を溶解する溶媒としては、第1重合体を溶解する溶媒として例示したものと同様の溶媒が挙げられる。乾燥工程を効率良く行う観点から、中でも水が好ましい。第2重合体溶液における重合体濃度は、例えば0.1~30質量%であり、好ましくは1~20質量%である。
第1重合体を含むフィルム状固形物と第2重合体溶液とを接触させる方法は特に制限されない。フィルム状固形物と第2重合体溶液とを接触させる方法としては、例えば、フィルム状固形物の表面に第2重合体溶液を塗布、滴下又は噴霧する方法、フィルム状固形物を第2重合体溶液に浸漬する方法等が挙げられる。好ましい一態様としては、フィルム状固形物の表面に第2重合体溶液を滴下等することにより、第2重合体溶液からなる液体層をフィルム状固形物上に形成し、所定時間(例えば、10~180分)静置する。液体層の厚みは特に限定されないが、例えば0.1~50,000μmである。これにより、フィルム状固形物中の第1重合体が第2重合体溶液に徐々に溶解し、フィルム状固形物と第2重合体溶液との接触による生成物としてハイドロゲルが形成される。
第1重合体を含むフィルム状固形物と第2重合体溶液とを接触させる場合、フィルム状固形物に対し接触させる第2重合体溶液の量は、得られるハイドロゲルにおいて架橋構造が適度に形成されるように選択することが好ましい。具体的には、重合体(A)が有するカルボキシル基1モルに対し、重合体(B)が有する官能基Eのモル数が、好ましくは0.1~10モル、より好ましくは0.2~8モル、更に好ましくは0.5~2モルとなるように、フィルム状固形物及び第2重合体溶液の量及び重合体濃度を調整することが好ましい。
本製造方法により得られる医療用処置材には、使用する目的等に応じて、重合体(A)及び重合体(B)とは異なる成分(以下、「その他の成分」ともいう)が更に含有されていてもよい。その他の成分としては、例えば、抗菌剤、抗炎症剤、血液凝固剤、抗凝固剤、局所麻酔剤、血管収縮剤及び血管拡張剤等の各種薬剤、並びに重合体(A)及び重合体(B)とは異なる水溶性重合体(C)等が挙げられる。その他の成分としては、1種又は複数種を用いることができる。その他の成分の含有量は、本発明の効果を損なわない範囲において、各成分に応じて適宜選択することができる。
水溶性重合体(C)としては、増粘剤として一般に使用され得る水溶性重合体が挙げられ、具体的には、例えば多糖類等が挙げられる。多糖類としては、例えば、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース誘導体;ヒアルロン酸及びコンドロイチン硫酸等のムコ多糖類;カラギナン、ペクチン、ローカストビーンガム、グアーガム、キサンタンガム及びウェランガム等の水溶性天然高分子多糖類、並びにこれらの塩(例えば、ナトリウム塩)等が挙げられる。水溶性重合体(C)は、中でも、ヒアルロン酸又はその塩が好ましい。水溶性重合体(C)の数平均分子量は、例えば200,000以上である。なお、水溶性重合体(C)の分子量は、GPCにより測定されるポリスチレン換算値である。
医療用処置材として水溶性重合体(C)を含む乾燥体を得る場合、水溶性重合体(C)は、フィルム状固形物が含んでいてもよく、第2重合体溶液が含んでいてもよい。水溶性重合体(C)を第2重合体溶液が含む場合、水溶性重合体(C)を予め第2重合体溶液に配合しておき、水溶性重合体(C)を含む第2重合体溶液をフィルム状固形物と接触させてもよい。あるいは、フィルム状固形物と第2重合体溶液とを接触させた後、水溶性重合体(C)を第2重合体溶液に添加してもよい。得られる医療用処置材において、水分との接触によりハイドロゲルの形成を好適に行わせる観点から、これらのうち、第2重合体溶液が水溶性重合体(C)を含むことが好ましく、水溶性重合体(C)を予め含む第2重合体溶液を調製し、水溶性重合体(C)を含む第2重合体溶液とフィルム状固形物とを接触させることがより好ましい。
水溶性重合体(C)を含む第2重合体溶液をフィルム状固形物と接触させる場合、第2重合体溶液中における水溶性重合体(C)の含有量は、第2重合体の100質量部に対して、0.01~50質量部とすることが好ましく、0.1~20質量部とすることがより好ましく、0.5~15質量部とすることが更に好ましい。
その後、得られたハイドロゲルを乾燥することにより、目的物である乾燥体が得られる。ハイドロゲルを乾燥する方法としては特段の制約はなく、公知の乾燥処理方法を適宜採用することができる。生体組織に対する接着性及び力学的強度に優れたハイドロゲル形成材を得る観点から、中でも、凍結乾燥処理によることが好ましい。
凍結乾燥処理において、凍結温度は、例えば-70℃~-5℃であり、好ましくは-60℃~-5℃である。凍結乾燥処理の処理条件は特に限定されないが、室温減圧下で行うことが好ましい。凍結乾燥処理時の圧力は、例えば50Pa以下であり、好ましくは20Pa以下であり、より好ましくは10Pa以下である。
なお、本明細書において「乾燥」とは、水分が完全に除去された状態のほか、乾燥過程において水分が残存している状態を含む意味である。乾燥処理により得られる乾燥体の水分含有量は、例えば10質量%以下であり、好ましくは5質量%以下である。得られる乾燥体がフィルム状である場合、乾燥体の厚みは、例えば0.1~50,000μmである。これにより、重合体(A)及び重合体(B)のうち一方の重合体を含むフィルム状固形物に対し、他方の重合体を含む溶液が接触されて形成されたハイドロゲルの乾燥体を得ることができる。
(工程3:滅菌工程)
工程3では、上記工程2により得られた乾燥体に放射線を照射し、滅菌処理を施す工程である。本工程の滅菌処理に使用される放射線としては、ガンマ(γ)線、電子線、制動放射線(X線)等が挙げられる。これらのうち、透過力が高く、乾燥体の中心部まで十分に滅菌を行うことができる点において、ガンマ線照射による滅菌(ガンマ線滅菌)を適用することが好ましい。
ガンマ線滅菌とは、放射性同位元素を含む線源からガンマ線を照射することにより滅菌する処理方法である。ガンマ線滅菌における照射条件は、無菌性保証水準(SAL:Sterility Assurance Level)を達成できればよく、特に限定されない。ガンマ線滅菌における照射条件は、例えば吸収線量を10~150kGyとすることができ、好ましくは20~100kGyであり、より好ましくは25~80kGyである。
なお、無菌性保証水準(SAL)は、ISO(国際標準化機構)により定められた滅菌の基準を示す指標である。現在ISOで採用されている無菌性保証水準は10-6以下である。
ここで、重合体(A)の水溶液と重合体(B)の水溶液とを単に混合するものとすると、重合体(A)が有するカルボキシル基と、重合体(B)が有する官能基Eとの水素結合により非常に速やかにハイドロゲルが形成される。しかしながら、このようにして得られるハイドロゲルは、水に対する溶解性及び膨張性が十分でなく、また生体組織に対する接着性に劣る。これに対し、本製造方法によれば、優れた水溶性及び水膨潤性を示すとともに、生体組織に対する接着性が高いハイドロゲル形成材を製造することができる。
得られた医療用処置材において、重合体(A)と重合体(B)との合計量は、力学的強度が高く、かつ水分との接触により生体組織に対する接着性に優れたハイドロゲルを得る観点から、医療用処置材の全量に対し、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上が更に好ましく、95質量%以上がより更に好ましい。
重合体(A)及び重合体(B)の含有量は、重合体(A)100質量部に対して、重合体(B)が20~500質量部となるように調整することが好ましい。重合体(A)及び重合体(B)の含有量が上記範囲であると、力学的強度の改善効果が高く、また生体組織に対して優れた接着性を示すハイドロゲルを形成できる点で好適である。このような観点から、重合体(A)及び重合体(B)の含有量は、重合体(A)100質量部に対して、重合体(B)が30~400質量部となる量とすることがより好ましく、50~300質量部となる量とすることが更に好ましい。
また、医療用処置材が水溶性重合体(C)を含む場合、水溶性重合体(C)の含有量は、重合体(A)及び重合体(B)の合計量100質量部に対して、0.01~50質量部とすることが好ましい。水溶性重合体(C)の含有量を上記範囲とすることにより、ハイドロゲルの保水性を改善することが可能である。こうした観点から、水溶性重合体(C)の含有量は、重合体(A)及び重合体(B)の合計量100質量部に対して、0.1質量部以上がより好ましく、0.5質量部以上が更に好ましい。また、水溶性重合体(C)の含有量の上限については、重合体(A)及び重合体(B)の合計量100質量部に対して、20質量部以下がより好ましく、15質量部以下が更に好ましい。水溶性重合体(C)としては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本製造方法により得られる医療用処置材は、使用前は乾燥した状態の固形物であり、水分と接触すると、吸水して膨潤することによりハイドロゲルとなる。すなわち、当該医療用処置材は、水分との接触前は柔軟性を有する乾燥体であり、水分との接触により乾燥体から膨潤体に変化し、これにより生体組織に対する接着性を示す。ここで、水分としては、水、水に溶解可能な有機溶媒(エタノール等)、体液(血液、唾液、組織液等)、及びこれらの混合液を含む。本製造方法により得られる医療用処置材は生体吸収性を有さず、また生理条件下では重合体(A)と重合体(B)との物理架橋が徐々に解離し、可溶化する。このため、当該医療用処置材は安全性が高く、生体内に留置することも可能である。こうした医療用処置材は、例えば癒着防止材や止血材、創傷被覆材等の各種医療用処置材として特に好適である。
本製造方法により得られる医療用処置材を止血用途や患部を保護する用途に用いる場合、医療用処置材が水分を吸収することにより形成されたハイドロゲルは、適度に長い時間患部に留まるようにするために、体液に対して徐々に可溶化することが好ましい。具体的には、本製造方法により得られるガンマ線滅菌による滅菌処理後の医療用処置材を37℃のリン酸緩衝液に浸漬した場合、当該医療用処置材の溶出率が90%に到達するまでに要する時間は、1時間以上であることが好ましく、3時間以上であることがより好ましく、8時間以上であることが更に好ましく、10時間以上であることがより更に好ましい。
止血効果や患部の保護効果を十分に担保する観点から、放射線滅菌により滅菌処理した後の医療用処置材を37℃のリン酸緩衝液に浸漬した場合において、当該医療用処置材の10時間後の溶出率は90%以上であることが好ましい。
ここで、重合体(A)と重合体(B)との水素結合による物理架橋構造を有する医療用処置材に対し放射線滅菌を行うと、重合体(A)と重合体(B)との間で化学架橋が進行してしまい、生体組織に貼り付ける等した場合に十分に吸水できなかったり、生理条件下において徐々に架橋構造が解離して可溶化する性質を発現できなかったりすることが想定される。そこで、ポリアクリル酸とポリビニルピロリドンとの水素結合によりハイドロゲルが形成される従来の医療用処置材ではガス滅菌を採用することが提案されていた(上記特許文献1参照)。このガス滅菌としては、高圧蒸気滅菌やエチレンオキサイドガス滅菌が知られている。しかしながら、本発明者らが検討したところ、フィルム状又はスポンジ状のハイドロゲル形成材に対し、高圧蒸気滅菌又はエチレンオキサイドガス滅菌を行うとハイドロゲル形成材が収縮してしまい、形状を維持できないことが分かった。
上記検討結果に基づき、本発明者らは更に鋭意検討し、種々の滅菌処理方法の中から、化学架橋が進行するだろうと予測される放射線滅菌による滅菌処理を重合体(A)と重合体(B)との水素結合による物理架橋構造を有する医療用処置材に対して行ったところ、意外にも、滅菌処理後にも生理条件下において徐々に架橋構造が解離して可溶化する性質を発現でき、しかも滅菌処理前後の形状変化及び性質変化が少なく、無菌性が保証された医療用処置材を製造できることが明らかになったものである。
医療用処置材の形状は特に限定されず、例えばフィルム状、スポンジ状、シート状及び粉末状等として用いることができる。また、医療用処置材は、支持体上に保持された状態で提供されてもよく、フィルム等の包装体に包含された状態で提供されてもよい。支持体の形状及び材質は特に限定されないが、例えば、織布や不織布等の布地;ポリスチレンやポリプロピレン、ポリエチレン等の樹脂基材等が挙げられる。重合体(A)及び重合体(B)を用いて得られたフィルム及びスポンジは力学的強度が高く、しかも柔軟性に優れていることから、本発明の医療用処置材は、中でも、ハイドロゲル形成用フィルム又はハイドロゲル形成用スポンジとして好ましく用いることができる。
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。以下において「部」及び「%」は、特に断らない限り「質量部」及び「質量%」をそれぞれ意味する。
下記の実施例1,2及び比較例1,2に記載の方法に従い、ハイドロゲル形成用スポンジをそれぞれ製造した。また、得られた各ハイドロゲル形成用スポンジにつき、以下に示す各評価(無菌性評価、滅菌処理に伴うスポンジの収縮率の測定、及び37℃のリン酸緩衝液に対する溶出性評価)を行った。
[実施例1]
50mm×50mmのポリプロピレン製の基材上に、25mm×7mmの開口部を有するシリコーンゴムシート(厚み10mm)を設置し、1.2%の架橋ポリアクリル酸(東亞合成社製、ジュンロン(登録商標)PW-120、以下「PAA」ともいう)水溶液1.5mLをキャストして70℃で20時間乾燥させ、PAAのフィルムを作製した。次に、PAAのフィルムの表面に、4.6%のポリビニルピロリドン(BASF社製、Kollidon 90F、ポリスチレン換算重量平均分子量32万(ジメチルホルムアミド溶離液)、以下「PVP」ともいう)水溶液0.6mLと0.4%のヒアルロン酸ナトリウム(キューピー社製、ヒアルロンサンHA-LQH、以下「HA」ともいう)水溶液0.9mLの混合溶液を滴下し、60分静置した後、-50℃で凍結した。凍結品を室温減圧(5Pa)下で凍結乾燥することにより、医療用処置材としてハイドロゲル形成用スポンジ(大きさ:25mm×7mm×7mm)を得た。なお、混合比は、PAA:PVP:HA=1:1.53:0.2(質量比)とした。得られたスポンジに、空気雰囲気下で50kGyのガンマ線照射(Nordion社製、JS-8500型)を行い、滅菌処理を行った。滅菌処理後のスポンジにつき、ISO11737-2:2019(ヘルスケア製品の滅菌-微生物学的方法-第2部:滅菌プロセスの定義、バリデーション及び維持において実施する無菌性の試験)に準拠し、無菌性保証基準(10-6以下)を満たすか否かを調べた。また、滅菌処理前後のスポンジのサイズをノギスで測定し、滅菌処理に伴うスポンジの収縮率を測定した。
さらに、得られたハイドロゲル形成用スポンジにつき、37℃のリン酸緩衝液中において溶出率が90%に到達するまでの時間(以下、「溶出率90%到達時間」ともいう)を測定した。測定方法の詳細は以下のとおりである。
(溶出率90%到達時間の測定)
疑似皮膚としてのプロテインレザー(イデアテックス ジャパン社製、プロテインレザーPBZ13001-BK)に綿棒で水を適量塗布し、ハイドロゲル形成用スポンジを接着させて5分静置した。プロテインレザーに接着したハイドロゲル形成用スポンジを測定用試料として複数個準備し、疑似体液である37℃のリン酸緩衝液(0.1mol/L リン酸緩衝液、pH7.2、富士フイルム和光純薬社製)に測定用試料を浸漬した。浸漬開始から1時間ごとに測定用試料を順に取り出し、100℃送風乾燥機で24時間乾燥させ、プロテインレザー上に残存するスポンジの質量を測定した。リン酸緩衝液に浸漬する前の乾燥状態のスポンジの質量(初期質量)に対し、リン酸緩衝液に浸漬し乾燥させた後のスポンジの質量が90%減少するまでに要した時間を溶出率90%到達時間として求めた。また、実施例1では、ガンマ線照射前のハイドロゲル形成用スポンジについても上記と同様の操作を行い、溶出率90%到達時間を測定した。
[実施例2]
架橋ポリアクリル酸を未架橋ポリアクリル酸〔東亞合成社製、ジュリマー(登録商標)AC-10LHPK、重量平均分子量150万〕に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い、ハイドロゲル形成用スポンジを得た。実施例1と同様に評価した結果を表1に示す。なお、実施例2についても、ガンマ線照射前及びガンマ線照射後の各ハイドロゲル形成用スポンジについて溶出率90%到達時間を測定した。
[比較例1]
実施例1と同様の方法によりハイドロゲル形成用スポンジを作製した。得られたハイドロゲル形成用スポンジをオートクレーブ中に投入し、水存在下で121℃×20分間の加熱処理により高圧蒸気滅菌を行った。滅菌処理後のハイドロゲル形成用スポンジにつき、実施例1と同様の操作を行い評価した結果を表1に示す。
[比較例2]
実施例1と同様の方法によりハイドロゲル形成用スポンジを作製した。温度50℃、湿度40%、エチレンオキサイドガス濃度800mg/L、作用時間5時間の条件にて、エチレンオキサイドガス滅菌を行った。滅菌処理後のハイドロゲル形成用スポンジを用いて、実施例1と同様の操作を行い評価した結果を表1に示す。
Figure 2023029055000001
<評価結果>
表1の結果から明らかなように、滅菌処理としてガンマ線滅菌を行った実施例1及び2では、10-6以下の無菌性保証水準(SAL)を達成しつつ、滅菌処理後のスポンジの収縮率を1.0%以下に抑制することができた。また、実施例1及び2のハイドロゲル形成用スポンジは、滅菌処理後もなお、生理条件下において徐々に物理架橋が解離して可溶化し、滅菌処理前の可溶性が維持されていた。これに対し、高圧蒸気滅菌を行った比較例1、及びエチレンオキサイドガス滅菌を行った比較例2では、滅菌工程によりスポンジの収縮率が大きく、実用性に劣っていた。

Claims (8)

  1. 水分との接触によりハイドロゲルを形成する医療用処置材の製造方法であって、
    カルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を有する重合体(A)、及びカルボキシル基と水素結合を形成し得る官能基を有するエチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を有する重合体(B)(ただし、前記重合体(A)を除く)のうち一方の重合体を含むフィルム状固形物を得る工程と、
    前記フィルム状固形物と、前記重合体(A)及び前記重合体(B)のうち他方の重合体を含む重合体溶液とを接触させた後、乾燥させる工程と、
    前記乾燥により得られた乾燥体を放射線滅菌により滅菌処理する工程と、
    を含む、医療用処置材の製造方法。
  2. 前記滅菌処理した後の前記医療用処置材を37℃のリン酸緩衝液に浸漬した場合における前記医療用処置材の10時間後の溶出率が90%以上である、請求項1に記載の医療用処置材の製造方法。
  3. 前記重合体(A)は架橋重合体である、請求項1又は2に記載の医療用処置材の製造方法。
  4. 前記重合体(A)はポリ(メタ)アクリル酸である、請求項1~3のいずれか一項に記載の医療用処置材の製造方法。
  5. 前記重合体(B)はアミド基を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の医療用処置材の製造方法。
  6. 前記重合体(B)は、ポリビニルピロリドン及びポリ(メタ)アクリルアミドよりなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1~5のいずれか一項に記載の医療用処置材の製造方法。
  7. 前記放射線滅菌は、ガンマ線滅菌である、請求項1~6のいずれか一項に記載の医療用処置材の製造方法。
  8. 前記医療用処置材は、止血材として用いられる、請求項1~7のいずれか一項に記載の医療用処置材の製造方法。
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