JP2023026321A - イオン交換膜、膜電極接合体、燃料電池、レドックスフロー二次電池、水電解槽及び有機ハイドライド合成用電解槽 - Google Patents

イオン交換膜、膜電極接合体、燃料電池、レドックスフロー二次電池、水電解槽及び有機ハイドライド合成用電解槽 Download PDF

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Abstract

【課題】機械強度に優れると共に長期にわたり優れたプロトン伝導率を発現できるイオン交換膜、膜電極接合体、燃料電池、レドックスフロー二次電池、水電解槽及び有機ハイドライド合成用電解槽を提供する。
【解決手段】
パーフルオロカーボンスルホン酸ポリマーを含む電解質と、
SiO含有量が99.9質量%以上であるガラス繊維と、
を含む、イオン交換膜。
【選択図】なし

Description

本発明は、イオン交換膜、膜電極接合体、燃料電池、レドックスフロー二次電池、水電解槽及び有機ハイドライド合成用電解槽に関する。
燃料電池は、水素及びメタノールなどの燃料を電気化学的に酸化することによって、電気エネルギーを取り出す発電装置であり、クリーンなエネルギー供給源として注目されている。特に、固体高分子電解質型燃料電池は、他の型の燃料電池と比較して低温で作動することから、自動車代替動力源、家庭用コージェネレーションシステムの電力源に使用されている。
固体高分子電解質型燃料電池の基本構成は、固体高分子電解質膜とその両面に接合された一対のガス拡散電極からなっており、一方の電極に水素を、他方の電極に酸素を供給し、両電極間に外部負荷回路を接続することによって発電させるものである。より具体的には、水素側電極でプロトンと電子が生成し、プロトンは固体高分子電解質膜の内部を移動して酸素側電極に達したあと、酸素と反応して水を生成する。一方、水素側電極から導線を伝って流れ出した電子は、外部負荷回路において電気エネルギーが取り出された後、さらに導線を伝って酸素側電極に達し、前記水生成反応の進行に寄与する。
固体高分子電解質膜に要求される特性としては、イオン伝導性、高い含水性、水分散性、ガスに対する低透過性、燃料電池運転中の強い酸化雰囲気に耐えるための化学的安定性、機械強度などが挙げられる。
固体高分子電解質型燃料電池に使用される固体高分子電解質膜の材質としては、フッ素系イオン交換樹脂が広く用いられており、中でも、主鎖がパーフルオロカーボンで側鎖末端にスルホン酸基を有するデュポン社製の「ナフィオン(登録商標)」が広く用いられている。こうしたフッ素系イオン交換樹脂は、固体高分子電解質材料として概ねバランスのとれた特性を有するが、当該電池の実用化が進むにつれて、さらなる高い耐久性が要求されるようになってきている。
例えば、特許文献1では、質量%で表して、60≦SiO≦75、0.1≦(MgO+CaO)≦20、6≦NaO≦15、9≦(LiO+NaO+KO)≦15、5.1≦ZrO≦9.9の成分を含有するガラス組成物を、固体高分子型燃料電池の固体電解質膜の補強用のガラス繊維として用いることが提案されており、かかるガラス組成物は、高い耐酸性および高い耐水性の両方を兼ね備えるものとされている。
特開2016-204230号公報
本発明者らの検討によれば、特許文献1に記載のガラス組成物をイオン交換膜の補強用のガラス繊維として用いる場合、補強材由来の機械強度は付与され得るものの、ガラス繊維中に有意な量含まれる他の金属成分が溶出しやすく、溶出した金属イオンが膜中のスルホン酸基とイオン交換するものと考えられ、結果としてプロトン伝導性が低下する傾向にある。上記のとおり、機械強度に優れると共に長期にわたり優れたプロトン伝導率を発現できるイオン交換膜を達成する観点から、特許文献1に記載の技術には依然として改善の余地がある。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、機械強度に優れると共に長期にわたり優れたプロトン伝導率を発現できるイオン交換膜、膜電極接合体、燃料電池、レドックスフロー二次電池、水電解槽及び有機ハイドライド合成用電解槽を提供することを目的とする。
本発明者らは、電解質と組み合わせるガラス繊維のSiO含有量を調整することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の態様を包含する。
[1]
パーフルオロカーボンスルホン酸ポリマーを含む電解質と、
SiO含有量が99.9質量%以上であるガラス繊維と、
を含む、イオン交換膜。
[2]
前記ガラス繊維の目付が、3.0~15g/mである、[1]に記載のイオン交換膜。
[3]
前記ガラス繊維の繊維径が、1~10μmである、[1]又は[2]に記載のイオン交換膜。
[4]
前記ガラス繊維のテックス番手が、0.05~10Texである、[1]~[3]のいずれかに記載のイオン交換膜。
[5]
[1]~[4]のいずれかに記載のイオン交換膜と、前記イオン交換膜の少なくとも1面に配される触媒層と、を備える、膜電極接合体。
[6]
[5]に記載の膜電極接合体を備える、燃料電池。
[7]
[1]~[4]のいずれかに記載のイオン交換膜を備える、レドックスフロー二次電池。
[8]
[1]~[4]のいずれかに記載のイオン交換膜を備える、水電解槽。
[9]
[1]~[4]のいずれかに記載のイオン交換膜を備える、有機ハイドライド合成用電解槽。
本発明によれば、機械強度に優れると共に長期にわたり優れたプロトン伝導率を発現できる、イオン交換膜、膜電極接合体、燃料電池、レドックスフロー二次電池、水電解槽及び有機ハイドライド合成用電解槽を提供することができる。
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について、詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
<イオン交換膜>
本実施形態のイオン交換膜は、パーフルオロカーボンスルホン酸ポリマーを含む電解質と、SiO含有量が99.9質量%以上であるガラス繊維と、を含む。本実施形態のイオン交換膜は、このように構成されているため、機械強度に優れると共に長期にわたり優れたプロトン伝導率を発現できる。
[電解質]
本実施形態における電解質は、イオン交換膜中のボイドを抑制する観点から、パーフルオロカーボンスルホン酸ポリマー(以下、「PFSA」ともいう。)を含む。
本実施形態におけるPFSAとしては、特に限定されないが、耐久性と性能の観点から、下記一般式(1)で表されるフッ化ビニルエーテル化合物と下記一般式(2)で表されるフッ化オレフィンモノマーとの共重合体からなるパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂前駆体を加水分解して得られるものが好ましい。
CF=CF-O-(CFCFXO)-(CF-W (1)
(式中、Xは、F又は炭素数1~3のパーフルオロアルキル基であり、nは0~5の整数であり、mは0~12の整数である。ただし、nとmは同時に0にならない。Wは、加水分解によりSOHに転換し得る官能基である。)
CF=CFZ (2)
(式中、Zは、H、Cl、F又は炭素数1~3のパーフルオロアルキル基である。)
加水分解によりSOHに転換しうる官能基としては、特に限定されないが、SOF、SOCl、SOBrが好ましい。また、上記式において、X=CF、W=SOF、Z=Fであるパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂前駆体が好ましく、中でも、n=0、m=1~6の整数、X=CF、W=SOF、Z=Fであるものが、高濃度の溶液が得られる傾向にあるので、さらに好ましい。
上記のようなパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂前駆体は、公知の手段により合成できる。例えば、含フッ素炭化水素などの重合溶剤を使用し、上記フッ化ビニル化合物とフッ化オレフィンのガスを充填溶解して反応させ重合する方法(溶液重合)、含フッ素炭化水素などの溶媒を使用せずフッ化ビニル化合物そのものを重合溶剤として重合する方法(塊状重合)、界面活性剤の水溶液を媒体として、フッ化ビニル化合物とフッ化オレフィンのガスとを充填して反応させ重合する方法(乳化重合)、界面活性剤及びアルコールなどの助乳化剤の水溶液に、フッ化ビニル化合物とフッ化オレフィンのガスを充填乳化して反応させ重合する方法(ミニエマルジョン重合、マイクロエマルジョン重合)及び懸濁安定剤の水溶液にフッ化ビニル化合物とフッ化オレフィンのガスを充填懸濁して反応させ重合する方法(懸濁重合)などが知られているが、本実施形態においてはいずれの重合方法で合成されたものでも使用することができる。
溶液重合の重合溶剤に使用する含フッ素炭化水素としては、例えば、トリクロロトリフルオロエタン、1、1、1、2、3、4、4、5、5、5-デカフロロペンタンなど、「フロン(登録商標)」と総称される化合物群を好適に使用することができる。
上記のようにして作製されたパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂前駆体は、押し出し機を用いてノズル又はダイなどで押し出し成型する。この際の成型方法及び成型体の形状は特に限定されるものではないが、後述の加水分解処理及び酸処理において処理速度を速める観点からは、成型体が0.5cm以下のペレット状であることが好ましい。
上記のようにして成型されたパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂前駆体は、引き続き塩基性反応液体中に浸漬し、加水分解処理を行う。
この加水分解処理に使用する反応液は特に限定されるものではないが、ジメチルアミン、ジエチルアミン、モノメチルアミン、モノエチルアミンなどのアミン化合物の水溶液やアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物の水溶液が好ましく、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムが特に好ましい。アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物の水溶液中の含有量は特に限定されないが、10~30質量%であることが好ましい。上記反応液は、さらにメチルアルコール、エチルアルコール、アセトン及びDMSO等の膨潤性有機化合物を含有することがより好ましい。膨潤性有機化合物の水溶液中の含有量は、1~30質量%であることが好ましい。
加水分解処理における処理温度は溶媒種及び溶媒組成などによって異なるが、高くするほど処理時間を短くできる。しかし、処理温度が高すぎると、パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂前駆体が溶解或いは高度に膨潤し、取り扱いが難しくなるため、20~160℃で行われることが好ましく、より好ましくは40~90℃である。また、より高い伝導度を得る上で、加水分解によりSOHに転換しうる官能基を全て加水分解処理することが好ましいため、処理時間は長いほど好ましい。しかし、処理時間が長すぎると生産性が低下するため、0.1~48hrであることが好ましく、0.2~12hrであることがより好ましい。
パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂前駆体は前記塩基性反応液体中で加水分解処理された後、温水などで十分に水洗され、酸処理される。酸処理に使用する酸は、特に限定されないが、塩酸、硫酸及び硝酸等の鉱酸類や、シュウ酸、酢酸、ギ酸及びトリフルオロ酢酸等の有機酸類が好ましく、これらの酸と水との混合物がより好ましい。また、上記酸は2種以上を併用しても構わない。この酸処理によってパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂前駆体はプロトン化され、SOH体となる。プロトン化することによって得られたPFSAは、プロトン性有機溶媒、水、又は両者の混合溶媒に溶解することが可能となる。
PFSAとしては、-(CF-CF)-で表される繰り返し単位と、-(CF-CF(-O-(CFCFXO)-(CF-SOH))-で表される繰り返し単位(式中、XはF又はCFであり、nは0~5の整数であり、mは0~12の整数である。ただし、nとmは同時に0にならない。)とからなる共重合体であることが特に好ましい。
(イオン当量)
電解質のイオン当量は、高温高加湿下での安定的な運転及び発電能力の観点から、400~1800 geq-1であることが好ましく、より好ましくは500~1600 geq-1であり、更に好ましくは600~1200 geq-1である。上記イオン当量は、後述する実施例に記載の方法に基づいて測定することができ、例えば、電解質の組成を適宜調整すること等により上記した範囲内とすることができる。
(電解質の密度)
電解質の密度は、PFSA中の疎水相と親水相の割合に依存し,疎水相の割合が大きくなるほど大きくなる.したがって,プロトン電導性と機械的強度を高い次元において両立する観点から、1.95~2.18 gcm-3であることが好ましく、より好ましくは1.98~2.15 gcm-3であり、更に好ましくは2.00~2.12 gcm-3である。上記密度は、後述する実施例に記載の方法に基づいて測定することができ、例えば、電解質の組成を適宜調整すること等により上記した範囲内とすることができる。
(電解質の体積分率)
電解質の体積分率は、プロトン電導性の観点からは大きくすべきであるが,一方で膜の機械的強度の観点からは補強材をある一定以上の体積分率にて含有することは避けられない.したがって,両者を高い次元において満足する観点から、80~90 vol%であることが好ましく、より好ましくは85~92 vol%であり、更に好ましくは88~90 vol%である。上記体積分率は、後述する実施例に記載の方法に基づいて測定することができる。
(その他の電解質)
上述した他、本実施形態における電解質は、例えば、炭化水素系プロトン交換樹脂を含んでいてもよい。炭化水素系プロトン交換樹脂としては、特に限定されないが、例えば、特開2006-139934号公報やChem. Rev. 104 (2004) 4587-4612に記載されているような、スルホン化された芳香族系ポリマーやポリベンズイミダゾール等が挙げられる。
[ガラス繊維]
本実施形態におけるガラス繊維は、経時的なプロトン伝導性の低下を防止する観点から、SiO含有量が99.9質量%以上である。この点について、本発明者らは次のように推測している。すなわち、本実施形態におけるガラス繊維は、金属等の他の成分の含有量が0.1質量%以下とされているため、当該金属成分の溶出が有意に抑制される。その結果、金属イオンによるスルホン酸基のイオン交換を抑制できることから、経時的なプロトン伝導性の低下を防止できる。ただし、本実施形態における作用機序を上記に限定する趣旨ではない。
(ガラス繊維の目付)
ガラス繊維の目付は、機械強度及びプロトン伝導性の両立の観点から、3.0g/m~15g/mであることが好ましく、より好ましくは5.0~12g/mであり、更に好ましくは7.0~10g/mである。上記目付が3.0g/m以上である場合、ガラス繊維由来の強度を十分に確保できる傾向にある。また、上記目付が15g/m以下である場合、プロトン伝導性を十分に確保できる傾向にある。上記目付は、後述する実施例に記載の方法に基づいて測定することができ、例えば、用いるガラス繊維の繊維径、縦糸および横糸のフィラメント数、織り方を適宜選択すること等により上記した範囲内とすることができる。
(ガラス繊維の繊維径)
ガラス繊維の繊維径は、機械強度及びプロトン伝導性の両立の観点から、1μm~10μmであることが好ましく、より好ましくは2~8μmであり、更に好ましくは2~6μmである。上記繊維径が1μm以上である場合、イオン交換膜における空隙の体積分率の過度な増大を防止でき、結果としてプロトン伝導率が向上する傾向にある。また、上記繊維径が10μm以下である場合、ガラス繊維由来の強度を十分に確保できる傾向にある。上記繊維径は、後述する実施例に記載の方法に基づいて測定することができる。上記繊維径は、例えば、ガラス繊維束を製造するための紡糸工程における諸条件を適宜調整することにより、上述した範囲とすることができる。
(ガラス繊維のテックス番手)
ガラス繊維のテックス番手(単位:Tex)は、繊維の1000mあたりの質量を、g単位の値として表したものであり、機械強度及びプロトン伝導性の両立の観点から、0.05Tex以上10Tex以下であることが好ましく、より好ましくは0.25Tex以上5Tex以下であり、更に好ましくは0.5Tex以上2.5Tex以下である。上記テックス番手が0.05Te以上である場合、イオン交換膜における空隙の体積分率の過度な増大を防止でき、結果としてプロトン伝導率が向上する傾向にある。また、上記テックス番手が10Tex以下である場合、ガラス繊維由来の強度を十分に確保できる傾向にある。上記テックス番手は、後述する実施例に記載の方法に基づいて測定することができる。上記テックス番手は、例えば、ガラス繊維束を製造するための紡糸工程における諸条件を適宜調整することにより、上述した範囲とすることができる。
(ガラス繊維の密度)
ガラス繊維の密度は、機械強度及びプロトン伝導性の両立の観点から、2.18~2.60 gcm-3であることが好ましく、より好ましくは2.19~2.45 gcm-3であり、更に好ましくは2.20~2.30 gcm-3である。上記密度は、後述する実施例に記載の方法に基づいて測定することができ、例えば、高温高圧処理や中性子線照射等により上記した範囲内とすることができる。
(ガラス繊維の体積分率)
ガラス繊維の体積分率は、プロトン電導性の観点からは小さくすべきであるが,一方で膜の機械的強度の観点からはある一定以上にすることは避けられない.したがって,両者を高い次元において満足する観点から、3~20 vol%であることが好ましく、より好ましくは5~15 vol%であり、更に好ましくは8~12 vol%である。上記体積分率は、後述する実施例に記載の方法に基づいて測定することができる。
(ガラス繊維の形状)
ガラス繊維の形状としては、特に限定されないが、平織、綾織及び朱子織等の織布を好ましく用いることができる。当該織布の厚さとしても、特に限定されないが、5~20μmであることが好ましい。上記厚さは、後述する実施例に記載の方法に基づいて測定することができる。
[イオン交換膜の物性]
(イオン交換膜の目付)
イオン交換膜の目付は、機械強度及びプロトン伝導性の両立の観点から、10g/m~400g/mであることが好ましく、より好ましくは20~300g/mであり、更に好ましくは30~200g/mである。上記目付は、後述する実施例に記載の方法に基づいて測定することができ、例えば、PFSAの厚さや用いるガラス繊維織布を適宜選択すること等により上記した範囲内とすることができる。
(イオン交換膜の密度)
イオン交換膜の密度は、機械強度及びプロトン伝導性の両立の観点から、2.00~2.20gcm-3であることが好ましく、より好ましくは2.03~2.17gcm-3であり、更に好ましくは2.05~2.15gcm-3である。上記密度は、後述する実施例に記載の方法に基づいて測定することができ、例えば、用いるPFSAやガラス繊維織布を適宜選択すること等により上記した範囲内とすることができる。
(空隙の体積分率)
イオン交換膜における空隙の体積分率は、機械強度及びプロトン伝導性の両立の観点から、0.1~2.0 vol%であることが好ましく、より好ましくは0.2~1.5 vol%であり、更に好ましくは0.3~1.0 vol%である。上記体積分率は、後述する実施例に記載の方法に基づいて測定することができ、例えば、ガラス繊維織布に含浸するPFSA溶液の溶媒や用いるガラス繊維を適宜選択すること等により上記した範囲内とすることができる。
(イオン交換膜の厚さ)
イオン交換膜の厚さとしては、特に限定されないが、10~250μmであることが好ましい。上記厚さは、後述する実施例に記載の方法に基づいて測定することができる。
<イオン交換膜の製造方法>
次に、本実施形態のイオン交換膜の製造方法について説明する。本実施形態のイオン交換膜は、ガラス繊維に電解質を含浸させることで得ることができる。
ガラス繊維に電解質を含浸させる方法としては、特に限定されないが、例えば、後述する電解質をガラス繊維に塗工する方法や、電解質を含む溶液(電解質溶液)にガラス繊維を浸漬させた後、乾燥する方法等が挙げられる。例えば、移動しているまたは静置されている細長いキャスティング基材(シート)上に、電解質溶液に由来する被膜を形成し、その溶液上に細長いガラス繊維を接触させ、未完成な複合構造体を作製する。この未完成な複合構造体を熱風循環槽中等で乾燥させる。次に乾燥させた未完成な複合構造体の上に電解質溶液の被膜をさらに形成させ、イオン交換膜を作製する方法が上げられる。電解質溶液とガラス繊維の接触は、乾燥状態で行われても、未乾燥状態または湿潤状態で行われてもよい。また、接触させる場合に、ゴムローラーで圧着させたり、ガラス繊維のテンションをコントロールしながら行ってもよい。さらに、電解質を含むシートを押し出し成形やキャスト成形等で予め成形しておき、このシートをガラス繊維と重ねて熱プレスすることにより充填してもよい。
このようにして作製されたイオン交換膜をそのまま本実施形態のイオン交換膜として用いることもできるが、さらに、電解質の伝導性や機械的強度を向上する目的で、当該電解質膜の少なくとも一方の主面上に、別途電解質を含む層を1層以上積層してもよい。上記の操作に加え、あるいは、当該操作に代えて、イオン交換膜に対し、架橋剤や紫外線、電子線、放射線等を用いて、そこに含まれる化合物同士を架橋してもよい。
上述した処理を経たイオン交換膜も、本実施形態のイオン交換膜として用いることができる。
前述のようにして得られるイオン交換膜には、さらに熱処理が施されることが好ましい。この熱処理によりイオン交換膜中の結晶物部分と電解質部分とが強固に接着され、その結果、機械的強度が安定化され得る。この熱処理の温度は、好ましくは100℃~230℃、より好ましくは110℃~230℃、更に好ましくは120℃~200℃である。熱処理の温度を上記範囲に調整することで、結晶物部分と電解質部分との間の密着力が向上する傾向にある。また、イオン交換膜の含水率や機械強度を高く維持する観点からも上記温度範囲は好適である。熱処理の時間は、熱処理の温度にもよるが、高耐久性を有するイオン交換膜を得る観点から、好ましくは5分間~3時間、より好ましくは10分間~2時間である。
(電解質溶液)
本実施形態のイオン交換膜を製造する際に用いることのできる電解質溶液は、本実施形態における電解質と溶媒と、必要に応じてその他の添加剤とを含むものである。この電解質溶液は、そのまま、あるいはろ過、濃縮等の工程を経た後、ガラス繊維への含浸に用いられる。電解質溶液としては、一種を単独で用いることもできるし、複数種を併用することもできる。
電解質溶液の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、電解質を溶媒に溶解又は分散させた溶液を得た後、必要に応じてその液に添加剤を分散させる。あるいは、まず、電解質を溶融押出し、延伸等の工程を経ることにより電解質と添加剤とを混合し、その混合物を溶媒に溶解又は分散させる。このようにして電解質溶液を得ることができる。
より具体的には、まず、電解質の前駆体となるポリマー(前駆体ポリマー)からなる成形物を塩基性反応液体中に浸漬し、加水分解する。この加水分解処理により、前駆体ポリマーは電解質に変換される。次に、加水分解処理された上記成形物を温水などで十分に水洗し、その後、成形物に酸処理を施す。酸処理に用いられる酸は、特に限定されないが、塩酸、硫酸、硝酸等の鉱酸類やシュウ酸、酢酸、ギ酸、トリフルオロ酢酸等の有機酸類が好ましい。この酸処理によって、前駆体ポリマーはプロトン化され、電解質、例えばパーフルオロカーボンスルホン酸ポリマーが得られる。
上述のように酸処理された上記成形物(電解質を含む成形物)は、電解質を溶解又は懸濁させ得る溶媒(電解質との親和性が良好な溶媒)に溶解又は懸濁される。このような溶媒としては、例えば、水やエタノール、メタノール、n-プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、グリセリンなどのプロトン性有機溶媒や、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドンなどの非プロトン性有機溶媒等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。特に、1種の溶媒を用いる場合、溶媒が水であると好ましい。また、2種以上を組み合わせて用いる場合、水とプロトン性有機溶媒との混合溶媒が好ましい。
電解質を溶媒に溶解又は懸濁する方法としては、特に限定されない。例えば、上記溶媒中にそのまま電解質を溶解又は分散させてもよいが、大気圧下又はオートクレーブ等で密閉加圧した条件のもとで、0~250℃の温度範囲で電解質を溶媒に溶解又は分散するのが好ましい。特に、溶媒として水及びプロトン性有機溶媒を用いる場合、水とプロトン性有機溶媒との混合比は、溶解方法、溶解条件、高分子電解質の種類、総固形分濃度、溶解温度、攪拌速度等に応じて適宜選択できるが、水に対するプロトン性有機溶媒の質量の比は、水1に対してプロトン性有機溶媒0.1~10であると好ましく、より好ましくは水1に対してプロトン性有機溶媒0.1~5である。
なお、電解質溶液には、乳濁液(液体中に液体粒子がコロイド粒子又はそれよりも粗大な粒子として分散して乳状をなすもの)、懸濁液(液体中に固体粒子がコロイド粒子又は顕微鏡で見える程度の粒子として分散したもの)、コロイド状液体(巨大分子が分散した状態)、ミセル状液体(多数の小分子が分子間力で会合してできた親液コロイド分散系)等の1種又は2種以上が含まれる。
また、イオン交換膜の成形方法や用途に応じて、電解質溶液を濃縮したり、ろ過することが可能である。濃縮の方法としては特に限定されないが、例えば、電解質溶液を加熱し、溶媒を蒸発させる方法や、減圧濃縮する方法等がある。電解質溶液を塗工用溶液として用いる場合、電解質溶液の固形分率は、高すぎると粘度が上昇して取り扱い難くなる傾向にあり、一方、低すぎると生産性が低下する傾向にあるため、0.5質量%~50質量%であると好ましい。電解質溶液をろ過する方法としては、特に限定されないが、例えば、フィルターを用いて、加圧ろ過する方法が代表的に挙げられる。上記フィルターには、90%捕集粒子径が電解質溶液に含まれる固体粒子の平均粒子径の10倍~100倍の濾材を用いることが好ましい。この濾材の材質としては紙、金属等が挙げられる。特に濾材が紙の場合は、90%捕集粒子径が上記固体粒子の平均粒子径の10倍~50倍であることが好ましい。金属製フィルターを用いる場合、90%捕集粒子径が上記固体粒子の平均粒子径の50倍~100倍であることが好ましい。当該90%捕集粒子径を平均粒子径の10倍以上に設定することは、送液するときに必要な圧力が高くなりすぎることを抑制したり、フィルターが短期間で閉塞してしまうことを抑制し得る。一方、90%捕集粒子径を平均粒子径の100倍以下に設定することは、フィルムで異物の原因となるような粒子の凝集物や樹脂の未溶解物を良好に除去する観点から好ましい。
<膜電極接合体>
本実施形態のイオン交換膜は、その性能を活かして種々の用途に適用できるが、その一例として、膜電極接合体(以下、「MEA」ともいう。)の構成部材として用いることができる。すなわち、本実施形態の膜電極接合体は、本実施形態のイオン交換膜と、前記イオン交換膜の少なくとも1面に配される触媒層と、を備える。本実施形態の膜電極接合体は、典型的には、本実施形態のイオン交換膜の表面の一方にアノードとして機能し得る触媒層が配されており、他方にカソードとして機能し得る触媒層が配されている。本実施形態の膜電極接合体は、さらに典型的には、触媒層の更に外側に一対のガス拡散層が対向するように配されており、このような構造体もMEAと呼ばれる場合がある。本実施形態のMEAは、本実施形態のイオン交換膜を備えること以外は公知のMEAと同様の構成を有していればよい。
触媒層としては、一般に、触媒金属の微粒子とこれを担持した導電剤とから構成され、必要に応じて撥水剤が含まれ得る。上記触媒としては、水素の酸化反応及び酸素の還元反応を促進する金属であればよく、白金、金、銀、パラジウム、イリジウム、ロジウム、ルテニウム、鉄、コバルト、ニッケル、クロム、タングステン、マンガン、バナジウム、及びこれらの合金からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。これらの中では、主として白金が好ましい。
MEAの製造方法としては、本実施形態のイオン交換膜を用いることを除き、公知の製造方法を採用することができ、例えば、次のような方法が挙げられる。まず、触媒層用バインダーとしてのイオン交換樹脂をアルコールと水との混合溶液に溶解したものに、電極物質となる白金担持カーボンを分散させてペースト状にする。これをPTFEシートに一定量塗布して乾燥させる。次に、PTFEシートの塗布面を向かい合わせにして、その間にイオン交換膜を挟み込み、100℃~200℃で熱プレスにより接合してMEAを得ることができる。触媒層用バインダーは、一般的なイオン交換樹脂を溶媒(アルコールや水等)に溶解したものが用いられるが、本実施形態における電解質溶液を用いることもでき、耐久性の観点から当該電解質溶液が好ましい。
<燃料電池>
本実施形態の膜電極接合体(MEA)は、燃料電池の構成部材とすることができる。すなわち、本実施形態の燃料電池は、本実施形態の膜電極接合体(MEA)を備える。ここで、MEAは、本実施形態のイオン交換膜と、前記イオン交換膜の少なくとも1面に配される触媒層と、を備えるものであってもよいし、場合によっては更に一対のガス拡散電極が触媒層の更に外側に対向した構造を有するMEAであってもよい。
本実施形態の燃料電池は、典型的には、固体高分子電解質型燃料電池であり、本実施形態のMEAが更にバイポーラプレートやバッキングプレート等の一般的な固体高分子電解質型燃料電池に用いられる構成成分と組み合わされて、固体高分子電解質型燃料電池を構成することができる。このような固体高分子電解質型燃料電池は、本実施形態のMEAを採用すること以外は公知のものと同様の構成を有していればよい。
バイポーラプレートとは、その表面に燃料や酸化剤等のガスを流すための溝を形成させたグラファイトと樹脂との複合材料、又は金属製のプレート等を意味する。バイポーラプレートは、電子を外部負荷回路へ伝達する機能の他、燃料や酸化剤を触媒層近傍に供給する流路としての機能を有している。こうしたバイポーラプレートの間に上記MEAを挿入して複数積み重ねることにより、本実施形態に係る固体高分子電解質型燃料電池が製造される。
本実施形態のイオン交換膜は、機械強度に優れると共に長期にわたり優れたプロトン伝導率を発現できるため、固体高分子電解質型燃料電池用の構成部材としてとりわけ好ましく適用できる。
<レドックスフロー二次電池>
本実施形態のイオン交換膜は、その性能を活かして種々の用途に適用できるが、その一例として、レドックスフロー二次電池の構成部材として用いることができる。すなわち、本実施形態のレドックスフロー二次電池は、本実施形態のイオン交換膜を備える。本実施形態のレドックスフロー二次電池の構成としては、本実施形態のイオン交換膜を備える限り特に限定されず、その余は公知のものと同様の構成を有していればよい。かかる構成としては、以下に限定されないが、例えば、国際公開第2020/184455号と同様であってもよく、具体的には、同文献に記載のレドックスフロー電池用電解質膜として本実施形態のイオン交換膜を採用することを除き、同文献に記載の構成を採用することができる。すなわち、本実施形態のレドックスフロー電池は、例えば、炭素電極からなる正極を含む正極セル室と、炭素電極からなる負極を含む負極セル室と、前記正極セル室と前記負極セル室とを隔離分離させる、隔膜としての本実施形態のイオン交換膜と、を含む電解槽を備えるものとすることができる。
<水電解槽>
本実施形態のイオン交換膜は、その性能を活かして種々の用途に適用できるが、その一例として、水電解槽の構成部材として用いることができる。すなわち、本実施形態の水電解槽は、本実施形態のイオン交換膜を備える。本実施形態の水電解槽の構成としては、本実施形態のイオン交換膜を備える限り特に限定されず、その余は公知のものと同様の構成を有していればよい。かかる構成としては、以下に限定されないが、例えば、国際公開第2019/088299号と同様であってもよく、具体的には、同文献に記載の固体高分子電解質膜として本実施形態のイオン交換膜を採用することを除き、同文献に記載の構成を採用することができる。すなわち、本実施形態の水電解槽は、例えば、水素を発生させるための水素極と、酸素を発生させるための酸素極と、前記水素極と電解質水溶液を内包する水素極室と、前記酸素極と電解質水溶液を内容する酸素極室と、前記水素極室と前記酸素極室を隔てる固体高分子電解質膜としての本実施形態のイオン交換膜とを備えるものとすることができる。
<有機ハイドライド合成用電解槽>
本実施形態のイオン交換膜は、その性能を活かして種々の用途に適用できるが、その一例として、有機ハイドライド合成用電解槽の構成部材として用いることができる。すなわち、本実施形態の有機ハイドライド合成用電解槽は、本実施形態のイオン交換膜を備える。本実施形態の有機ハイドライド合成用電解槽の構成としては、本実施形態のイオン交換膜を備える限り特に限定されず、その余は公知のものと同様の構成を有していればよい。かかる構成としては、以下に限定されないが、例えば、特許第6782089号と同様であってもよく、具体的には、同文献に記載の基材膜として本実施形態のイオン交換膜を採用することを除き、同文献に記載の構成を採用することができる。すなわち、本実施形態の有機ハイドライド合成用電解槽は、例えば、触媒層と、非導電性かつ多孔性であり、かつ、前記触媒層と接する基材膜としての本実施形態のイオン交換膜と、を有する膜電極接合体、及び、アノード/カソードを備えるものとすることができる。
以下に、本実施形態を実施例に基づいて更に詳細に説明する。本実施形態はこれらの実施例に限定されるものではない。
[評価方法]
(目付)
ガラス繊維の目付M(g m-2)およびイオン交換膜の目付Mcomp(g m-2)は、それぞれ100×100mmに切り出した試料の質量を面積によって除して求めた。なお、試料はあらかじめ減圧下80℃にて1晩乾燥した。
(密度)
ガラス繊維の密度ρ(g cm-3)、PFSAの密度ρ(g cm-3)及びイオン交換膜の密度ρcomp(g cm-3)は、島津製作所(株)製乾式自動密度計アキュピックII 1345を用いて25℃にて測定した。なお、試料はあらかじめ減圧下80℃にて1晩乾燥した。
(厚さ)
ガラス繊維及びイオン交換膜の厚さはマイクロメータを用いて測定した。
(ガラス繊維のSiO含有率)
ガラス繊維のSiO含有率は、蛍光X線分光法によって検出されるSiがSiOであるとして求めた。蛍光X線分光は(株)リガク製波長分散型蛍光X線分光器ZSX-100E(Rh管球)を用いて測定した。ガラス繊維を直径30mmの円形に切り出し測定に供した。管球電圧および管球電流は、それぞれ55kVおよび70mAとした。
(ガラス繊維の繊維径)
ガラス繊維の繊維径は、倍率10000にて観察した走査型電子顕微鏡像から、任意に選択した10か所の測定値を平均することによって求めた。
(テックス番手)
テックス番手は、繊維の1000mあたりの質量を、g単位の値として表したものであり、以下のようにしてガラス繊維のテックス番手を求めた。寸法100x100mmに切り出したガラス繊維から、光学顕微鏡下の操作によって、経糸および緯糸をそれぞれ取り出した。取り出した長さ100mmの経糸および緯糸の質量から、それぞれのテックス番手を求め、これらの平均値をガラス繊維のテックス番手とした。
(フィラメント数)
ガラス繊維のフィラメント数は、倍率50にて観察した経糸と緯糸の光学顕微鏡像から求めた。いずれのガラス繊維についても、経糸と緯糸のフィラメント数は同じであった。
(パーフルオロカーボンスルホン酸ポリマー(PFSA)のイオン当量EW(g eq-1))
PFSAのEWはポリマー溶液をキャストして作製した膜について測定した。PFSA膜25mgを50mLの飽和NaCl水溶液に加え、25℃にて10min攪拌した。この飽和NaCl水溶液に指示薬としてフェノールフタレインを加え、0.01NのNaOH水溶液を用いて中和滴定した。回収したNa塩型PFSA膜をイオン交換水にて洗浄したのち、減圧乾燥して秤量した。中和に要したNaOHの当量M(mmol)、Na塩型PFSA膜の質量W(mg)から、次式によってイオン当量EW(g eq-1)を求めた。
Figure 2023026321000001
(イオン交換膜中のガラス繊維の体積分率f(vol%))
イオン交換膜中のガラス繊維の体積分率f(vol%)は次式によって求めた。
Figure 2023026321000002
(イオン交換膜中のPFSAの体積分率f(vol%))
イオン交換膜中のPFSAの体積分率f(vol%)は次式によって求めた。
Figure 2023026321000003
(イオン交換膜中の空隙の体積分率f(vol%))
イオン交換膜中の空隙の体積分率f(vol%)は次式によって求めた。
Figure 2023026321000004
(プロトン伝導率)
イオン交換膜のプロトン伝導率はScribner Ass℃iates社製膜抵抗測定システムMTS740を用いて、温度80℃、相対湿度90%、圧力101kPaの加湿空気雰囲気下において測定した。イオン交換膜を寸法20mm×20mmに切り出し、寸法15mm×15mmの炭素繊維ペーパからなる2枚の電極にて圧接した。上記した温度、相対湿度及び圧力下に試験片を0.5hr曝したのち、振幅10mVの交流振幅を、周波数10kHzから10mHzまで対数掃引しながら印加して複素インピーダンスを測定した。周波数1kHzにおける複素インピーダンスの実部の値Z’(ohm)、電極面積A(cm)、ならびにイオン交換膜の初期の厚さt(cm)から、プロトン伝導率σ(S cm-1)を次式によって求めた。
Figure 2023026321000005
別途、試験片を温度80℃、相対湿度90%、圧力101kPaの加湿空気雰囲気下に100時間曝した後のプロトン伝導率を、同様の方法によって求めた。
(引張強度)
イオン交換膜の引張強度は、専用の恒温恒湿槽を備えたインストロン社製万能材料試験機34SC-5に、1kNのロードセルを取り付けて測定した。イオン交換膜を幅10mm×長さ80mmの短冊状に切り出し、厚さを5か所測定して平均値を求めた。短冊状の試験片をゲージ長が50mmとなるよう把持した。恒温恒湿槽の温度および相対湿度を、それぞれ25℃および90%として、その環境に試験片を約30min曝したのち、クロスヘッドを10mm min-1にて移動させて荷重-変位曲線を測定した。破断時の荷重を試験片の初期断面積にて除して引張強度を求めた。
[イオン交換膜の作製]
(実施例1)
SiO含有率99.9質量%、密度2.20(g cm-3)のQガラスからなる繊維径3.8μm、フィラメント数50本、テックス番手1.25Texのガラス繊維束が、目付8.6(g m-2)、厚さ11μmにて平織に製織された織布を補強材として用いた。一方、PFSAには、Sigma-Aldrich社製Nafion溶液(PN 663492)を用いた。溶液の組成はPFSA22質量%、1-プロパノール44質量%、水34質量%であった。PFSAのEWは1100(g eq-1)であった。
成膜は基材とブレードの間隔が制御できるブレードコータを用いて行った。まず、PFSA溶液を、間隔を150μmとしたブレードコータを用いて、基材であるカプトン上に展開した。これを80℃にて加熱乾燥して、厚さおよそ15μmのPFSA層を得た。次に、このPFSA層上にガラス繊維を積層し、さらにその上にPFSA溶液を、間隔250μmのブレードコータにて展開した。これを80℃にて加熱乾燥して、厚さおよそ40μmのPFSAとガラス繊維の積層体を得た。最後に、この積層体を190℃にて20min熱処理したのち、カプトンから剥離することによってイオン交換膜を得た。
(実施例2)
Qガラスからなる繊維径2.8μm、フィラメント数50本、テックス番手0.68Texのガラス繊維が、目付8.3(g m-2)、厚さ12μmにて平織に製織された織布を補強材として用いたこと以外は、実施例1と同様にしてイオン交換膜を作製した。
(実施例3)
Qガラスからなる繊維径4.9μm、フィラメント数50本、テックス番手2.07Texのガラス繊維が、目付9.1(g m-2)、厚さ14μmにて平織に製織された織布を補強材として用いたこと以外は、実施例1と同様にしてイオン交換膜を作製した。
(実施例4)
Qガラスからなる繊維径3.8μm、フィラメント数100本、テックス番手2.49Texのガラス繊維が、目付7.8(g m-2)、厚さ11μmにて平織に製織された織布を補強材として用いたこと以外は、実施例1と同様にしてイオン交換膜を作製した。
(実施例5)
Qガラスからなる繊維径3.8μm、フィラメント数25本、テックス番手0.62Texのガラス繊維が、目付10.5(g m-2)、厚さ14μmにて平織に製織された織布を補強材として用いたこと以外は、実施例1と同様にしてイオン交換膜を作製した。
(実施例6)
Qガラスからなる繊維径3.8μm、フィラメント数50本、テックス番手1.25Texのガラス繊維が、目付9.8(g m-2)、厚さ13μmにて綾織に製織された織布を補強材として用いたこと以外は、実施例1と同様にしてイオン交換膜を作製した。
(実施例7)
Qガラスからなる繊維径3.8μm、フィラメント数50本、テックス番手1.25Texのガラス繊維が、目付7.9(g m-2)、厚さ12μmにて朱子織に製織された織布を補強材として用いたこと以外は、実施例1と同様にしてイオン交換膜を作製した。
(実施例8)
PFSA溶液としてSigma-Aldrich社製Aquivion D79-25BS (PN 802565)を用いたこと、1回目および2回目の塗工時のバーコータの間隔を、それぞれ132μmおよび220μmとしたこと以外は、実施例1と同様にしてイオン交換膜を作製した。なお、PFSA溶液の組成は、PFSA24質量%、水76質量%であった。PFSAポリマーのEWは790(g eq-1)であった。
(比較例1)
SiO含有率54.5質量%のEガラスからなる繊維径4.0μm、フィラメント数50本、テックス番手1.62Texのガラス繊維が、目付8.8(g m-2)、厚さ12μmにて平織に製織された織布を補強材として用いたこと以外は、実施例1と同様にしてイオン交換膜を作製した。
(比較例2)
SiO含有率74.0質量%のDガラスからなる繊維径3.9μm、フィラメント数50本、テックス番手1.26Texのガラス繊維が、目付8.5(g m-2)、厚さ10μmにて平織に製織された織布を補強材に用いたこと以外は、実施例1と同様にしてイオン交換膜を作製した。
実施例及び比較例の詳細及び評価結果を下記の表1に示す。
Figure 2023026321000006

Claims (9)

  1. パーフルオロカーボンスルホン酸ポリマーを含む電解質と、
    SiO含有量が99.9質量%以上であるガラス繊維と、
    を含む、イオン交換膜。
  2. 前記ガラス繊維の目付が、3.0g/m以上15g/m以下である、請求項1に記載のイオン交換膜。
  3. 前記ガラス繊維の繊維径が、1μm以上10μm以下である、請求項1に記載のイオン交換膜。
  4. 前記ガラス繊維のテックス番手が、0.05Tex以上10Tex以下である、請求項1に記載のイオン交換膜。
  5. 請求項1~4のいずれか1項に記載のイオン交換膜と、前記イオン交換膜の少なくとも1面に配される触媒層と、を備える、膜電極接合体。
  6. 請求項5に記載の膜電極接合体を備える、燃料電池。
  7. 請求項1~4のいずれか1項に記載のイオン交換膜を備える、レドックスフロー二次電池。
  8. 請求項1~4のいずれか1項に記載のイオン交換膜を備える、水電解槽。
  9. 請求項1~4のいずれか1項に記載のイオン交換膜を備える、有機ハイドライド合成用電解槽。
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