JP2023025910A - 画像処理方法および細胞の厚さ評価方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】OCT撮像の原理を用いて、薄い細胞についてもその厚さを求めることを可能とする。【解決手段】本発明に係る画像処理方法は、担持体の表面に接着培養された細胞を、担持体の表面と交わる方向を入射方向として観察光を入射させ光コヒーレンストモグラフィにより断層撮像することにより得られる断層画像を取得する工程と、断層画像において入射方向に一列に並ぶ画素からなる画素群の輝度値の積算値に対応する輝度値を有する画素を、入射方向に直交する画像平面に、かつ画素群を入射方向に沿って画像平面に投影した位置に配した合成画像を作成する工程と、合成画像に現れる干渉縞を検出し、その結果に基づき細胞の厚さを導出する工程とを備えている。【選択図】図9
Description
この発明は、接着培養された細胞の断層画像から、細胞の厚さを求める方法に関するものである。
再生医療や生化学の技術分野では、人工的な培養環境下で培養された細胞を撮像して観察、評価を行うことが行われる。細胞等の試料の三次元像を非侵襲的に取得することのできる撮像方式として、試料に低コヒーレント光を入射させ、試料からの拡散反射光と参照光との干渉光を検出することで試料の断層画像を非侵襲的に撮像する、光コヒーレンストモグラフィ(Optical Coherence Tomography;OCT)撮像方式がある。
細胞の培養態様としては種々のものがあるが、その中に、接着培養あるいは平面培養と称されるものがある。これは、例えばシート状または平板状の担持体に、あるいは培養容器の壁面を担持体として、その表面に細胞を付着させた状態で培養するものである。したがって、細胞は担持体の表面に沿って薄く広がるように成長する。特に単層接着培養の場合、細胞自体の厚さが試料の厚さとなる。
このように担持体の表面に沿って薄く広がる試料の撮像に関しては、OCT撮像方式は必ずしも適していない。というのは、例えば特許文献1において本願出願人が指摘しているように、OCT撮像方式の原理上、担持体の表面が強い反射面として作用し、その強い反射光が、近傍にある試料からの微弱な信号光をマスキングしてしまうからである。
このような薄い細胞の厚さ測定などの定量的評価には、例えば共焦点顕微鏡やホログラフィック顕微鏡等が用いられる。これらは高い分解能での三次元観察が可能なものであるが、その反面、深さ方向において観察可能な範囲(観察深度)がごく狭いため、ある程度以上厚い試料については測定が困難である。また、共焦点顕微鏡の場合には、予め試料に蛍光ラベリングを行っておく必要があり、非侵襲的な測定を要する目的には使用することができない。
そのため、原理的に観察深度の大きいOCT撮像方式を用いて試料の厚さを測定することが望まれるが、そのような技術は実用化されるに至っていない。特に、試料が薄い細胞である場合でもその厚さを測定することのできる技術の確立が望まれる。
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、光コヒーレンストモグラフィ撮像の原理を用いて、薄い細胞についてもその厚さを求めることが可能な技術を提供することを目的とする。
この発明の一の態様は、担持体の表面に接着培養された細胞を、前記担持体の前記表面と交わる方向を入射方向として観察光を入射させ光コヒーレンストモグラフィにより断層撮像することにより得られる断層画像を取得する工程と、前記断層画像において前記入射方向に一列に並ぶ画素からなる画素群の輝度値の積算値に対応する輝度値を有する画素を、前記入射方向に直交する画像平面に、かつ前記画素群を前記入射方向に沿って前記画像平面に投影した位置に配した合成画像を作成する工程と、前記合成画像に現れる干渉縞を検出し、その結果に基づき前記細胞の厚さを導出する工程とを備える、画像処理方法である。
また、この発明の他の一の態様は、担持体の表面に接着培養された細胞を、前記担持体の前記表面と交わる方向を入射方向として観察光を入射させ光コヒーレンストモグラフィにより断層撮像する工程と、前記断層画像において前記入射方向に一列に並ぶ画素からなる画素群の輝度値の積算値に対応する輝度値を有する画素を、前記入射方向に直交する画像平面に、かつ前記画素群を前記入射方向に沿って前記画像平面に投影した位置に配した合成画像を作成する工程と、前記合成画像に現れる干渉縞を検出し、その結果に基づき前記細胞の厚さを導出する工程と、前記合成画像に現れる干渉縞を検出し、その結果に基づき前記細胞の厚さを導出する工程とを備える、細胞の厚さ評価方法である。
前記したように、担持体の表面に接着培養された細胞の光コヒーレンストモグラフィ(OCT)画像では、担持体からの反射光により、細胞からの信号光がマスキングされるという現象がある。しかしながら、その一方で、担持体からの反射光に起因する強い信号に、担持体からの反射光と細胞からの反射光とが干渉することで生じる周期的な強弱が現れることに、本願発明者は着目した。すなわち、担持体表面からの反射光と細胞からの反射光とが、その光路長差と光の波長との関係で強め合ったり弱め合ったりする。この光路長差は細胞の厚さに対応したものであるから、このような強弱の変化を検出することができれば、細胞の厚さに関する情報を取得することが可能である。
これを可能とするために、本発明では、細胞が培養されている担持体の表面に交わる方向に観察光を入射させてOCT撮像された断層画像から、観察光の入射方向に沿って一列に並ぶ画素を、入射方向に直交する画像平面に投影した合成画像を作成する。合成画像内の各画素は、その位置に投影された画素各々が有する輝度値の積算値に対応する輝度値を有するものとされる。ここでいう「投影」とは、投影される断層画像内の画素と、合成画像に投影された画素とが、観察光の入射方向に沿って見たときに両者が互いに同じ位置となるような操作を意味するものとする。
詳しくは後述するが、このようにして作成された合成画像では、担持体表面からの反射光と細胞からの反射光との干渉によって生じる干渉縞が、あたかも地形図における等高線のように現れる。すなわち、合成画像に現れる干渉縞が、細胞の高低プロファイルを表すこととなる。そのため、これを検出することで、細胞の厚さを求めることが可能である。
担持体表面からの強い反射光に起因して、特に薄い細胞からの信号を担持体表面からの信号から分離することができない場合がある。そのような場合であっても、担持体表面に対応する信号に細胞からの反射光との干渉に起因する強弱の変化が現れるため、これを検出することで、少なくとも細胞の厚さについては導出可能である。
上記のように、本発明によれば、担持体表面からの強い反射光に対応する信号に現れる、細胞からの反射光との干渉に起因する強弱の変化に基づいて細胞の厚さを導出するので、薄い細胞についてもその厚さを求めることが可能である。
図1は本発明に係る画像処理方法を実行可能な画像処理装置の構成例を示す図である。この画像処理装置1は、例えば培養液中で培養された細胞や組織標本等の試料Sを、光コヒーレンストモグラフィ(Optical Coherence Tomography;OCT)の撮像原理を用いて撮像し、その断層画像を取得するための装置である。得られた断層画像を画像処理することで、試料の一の断面の構造を示す断面画像を作成することができる。また、複数の断面画像から試料の立体像を作成することができる。
以下に説明する本発明の一実施形態は、このような画像処理装置1を用いて、試料容器内で接着培養された細胞の厚さを計測しようとするものである。より具体的には、容器11中に培地Mとともに培養された細胞Cを試料Sとして断層撮像し、その撮像結果を用いて細胞Cの厚さを求める。すなわち、この実施形態は、本発明に係る画像処理方法および細胞の厚さ評価方法の一実施形態に該当するものである。まず、装置の基本構成を説明し、その後で、本実施形態の厚さ評価方法の内容について説明する。
画像処理装置1は保持部10を備えている。保持部10は、内部に被撮像物を担持する試料容器11を、その開口面を上向きにして略水平姿勢に保持する。ここでは、試料容器11として例えばディッシュと呼ばれる平底の透明容器が用いられ、その内部に適宜の培地Mが注入されている。なお、試料容器11としてはこのような構造のものに限定されず任意である。例えば、プレート状部材に多数配列されたウェルと呼ばれる窪みに培地を保持する、いわゆるウェルプレートが用いられてもよい。
被撮像物としても種々のものが利用可能であるが、この実施形態では、試料容器11の底面111に接着培養された細胞Cが被撮像物となる。以下の各図における方向を統一的に示すために、保持部10に保持される試料容器11の近傍において、図1に示すようにXYZ直交座標軸を設定する。ここでXY平面が水平面を表す。また、Z軸が鉛直軸を表し、より詳しくは(-Z)方向が鉛直下向き方向を表している。
保持部10に保持された試料容器11の下方に、撮像ユニット20が配置される。撮像ユニット20には、被撮像物の断層画像を非接触、非破壊(非侵襲)で撮像することが可能なOCT(光コヒーレンストモグラフィ、または光干渉断層撮像)装置が用いられる。詳しくは後述するが、OCT装置である撮像ユニット20は、被撮像物への照明光を発生する光源21と、光ファイバカプラ22と、物体光学系23と、参照光学系24と、分光器25と、光検出器26とを備えている。
また、画像処理装置1はさらに、装置の動作を制御する制御ユニット30と、撮像ユニット20の可動部を駆動する駆動部40とを備えている。制御ユニット30は、CPU(Central Processing Unit)31、A/Dコンバータ32、信号処理部33、3D復元部34、インターフェース(IF)部35、画像メモリ36およびメモリ37を備えている。
CPU31は、所定の制御プログラムを実行することで装置全体の動作を司り、CPU31が実行する制御プログラムや処理中に生成したデータはメモリ37に保存される。A/Dコンバータ32は、撮像ユニット20の光検出器26から受光光量に応じて出力される信号をデジタルデータに変換する。信号処理部33は、A/Dコンバータ32から出力されるデジタルデータに基づき後述する信号処理を行って、被撮像物の断層画像を作成する。3D復元部34は、撮像された複数の断層画像の画像データに基づいて、撮像された細胞集塊の立体像(3D像)を作成する機能を有する。信号処理部33により作成された断層画像の画像データおよび3D復元部34により作成された立体像の画像データは、画像メモリ36により適宜記憶保存される。
インターフェース部35は画像処理装置1と外部との通信を担う。具体的には、インターフェース部35は、外部機器と通信を行うための通信機能と、ユーザからの操作入力を受け付け、また各種の情報をユーザに報知するためのユーザインターフェース機能とを有する。この目的のために、インターフェース部35には、装置の機能選択や動作条件設定などに関する操作入力を受け付け可能な例えばキーボード、マウス、タッチパネルなどの入力デバイス351と、信号処理部33により作成された断層画像や3D復元部34により作成された立体像など各種の処理結果を表示する例えば液晶ディスプレイからなる表示部352とが接続されている。
撮像ユニット20では、例えば発光ダイオードまたはスーパールミネッセントダイオード(SLD)などの発光素子を有する光源21から、広帯域の波長成分を含む低コヒーレンス光ビームが出射される。細胞等の試料を撮像する目的においては、入射光を試料の内部まで到達させるために、例えば近赤外線が用いられることが好ましい。
光源21は光ファイバカプラ22を構成する光ファイバの1つである光ファイバ221に接続されており、光源21から出射される低コヒーレンス光は、光ファイバカプラ22により2つの光ファイバ222,224への光に分岐される。光ファイバ222は物体系光路を構成する。より具体的には、光ファイバ222の端部から出射される光は物体光学系23に入射する。
物体光学系23は、コリメータレンズ231と対物レンズ232とを備えている。光ファイバ222の端部から出射される光はコリメータレンズ231を介して対物レンズ232に入射する。対物レンズ232は、光源21からの光(観察光)を光ビームとして試料に収束させる機能と、試料から出射される反射光を集光して光ファイバカプラ22に向かわせる機能とを有する。図では単一の対物レンズ232が記載されているが、複数の光学素子が組み合わされていてもよい。被撮像物からの反射光は対物レンズ232、コリメータレンズ231を介し信号光として光ファイバ222に入射する。対物レンズ232の光軸は試料容器11の底面111に直交しており、この例では光軸方向は鉛直軸方向と一致している。
駆動部40はCPU31により制御される。すなわち、CPU31は駆動部40に制御指令を与え、これに応じて駆動部40は撮像ユニット20に所定方向への移動を行わせる。より具体的には、駆動部40は、撮像ユニット20を水平方向(XY方向)および鉛直方向(Z方向)に移動させる。撮像ユニット20の水平方向の移動により、撮像範囲が水平方向に変化する。また、撮像ユニット20の鉛直方向の移動により、対物レンズ232の光軸方向における焦点位置が、被撮像物である細胞Cに対し変化する。
光源21から光ファイバカプラ22に入射した光の一部は光ファイバ224を介して参照光学系24に入射する。参照光学系24は、コリメータレンズ241および参照ミラー243を備えており、これらが光ファイバ224とともに参照系光路を構成する。具体的には、光ファイバ224の端部から出射される光がコリメータレンズ241を介して参照ミラー243に入射する。参照ミラー243により反射された光は参照光として光ファイバ224に入射する。
試料の表面もしくは内部の反射面で反射された反射光(信号光)と、参照ミラー243で反射された参照光とは光ファイバカプラ22で混合され光ファイバ226を介して光検出器26に入射する。このとき、信号光と参照光との間で位相差に起因する干渉が生じるが、干渉光の分光スペクトルは反射面の深さにより異なる。つまり、干渉光の分光スペクトルは被撮像物の深さ方向の情報を有している。したがって、干渉光を波長ごとに分光して光量を検出し、検出された干渉信号をフーリエ変換することにより、被撮像物の深さ方向における反射光強度分布を求めることができる。このような原理に基づくOCT撮像技術は、フーリエドメイン(Fourier Domain)OCT(FD-OCT)と称される。
この実施形態の撮像ユニット20は、光ファイバ226から光検出器26に至る干渉光の光路上に分光器25が設けられている。分光器25としては、例えばプリズムを利用したもの、回折格子を利用したもの等を用いることができる。干渉光は分光器25により波長成分ごとに分光されて光検出器26に受光される。
光検出器26が検出した干渉光に応じて光検出器26から出力される干渉信号をフーリエ変換することで、試料のうち、照明光の入射位置における深さ方向、つまりZ方向の反射光強度分布が求められる。試料容器11に入射する光ビームをX方向に走査することで、XZ平面と平行な平面における反射光強度分布が求められ、その結果から当該平面を断面とする試料Sの断層画像を作成することができる。その原理は周知であるため、詳細な説明は省略する。
また、Y方向におけるビーム入射位置を多段階に変更しながら、その都度断層画像の撮像を行うことで、試料をXZ平面と平行な断面で断層撮像した多数の断層画像を得ることができる。Y方向の走査ピッチを小さくすれば、試料の立体構造を把握するのに十分な分解能の画像データを得ることができる。このように、画像処理装置1は、被撮像物である試料SのXZ平面と平行な任意の断面での断層画像を作成する機能と、互いに異なる複数の断層画像から試料Sの三次元像を作成する機能とを有する。
この実施形態において、OCT撮像の被撮像物である試料Sは、試料容器11の底面(より具体的には、培地Mに接する内底面)111に接着培養された細胞Cである。この細胞Cが例えば孤立した細胞であるとき、あるいは単層培養された細胞であるとき、その厚さは数μmないし10μm程度である。このように薄い試料Sが容器底面111に付着した状態では、次に説明するように、細胞Cの鮮明な像が得られない場合がある。
図2は接着培養された細胞を被撮像物としてOCT撮像を行う場合の問題を説明する図である。図2(a)左図に示すように、被撮像物である細胞Cが試料容器11の底面111に付着した状態であるとき、撮像ユニット20から照射される観察光Loは、容器底面111を介して細胞Cに入射する。ここで、試料容器11は例えば透明樹脂製であり、水を主成分とする培地Mや細胞Cとは一般的に屈折率が大きく異なっている。このため、観察光Loは容器底面111と培地Mまたはおよび細胞Cとの界面で反射される。これは正反射光であり、その強度は比較的高い。一方、細胞Cからの反射光は拡散反射光であり、容器底面111からの正反射光に比べれば微弱である。
したがって、図2(a)右図に示すように、撮像ユニット20の光検出器26により受光される反射光の深さ方向(Z方向)の強度分布は、細胞Cが占める範囲よりも、容器底面111の位置において強く現れる。図2(a)は理想的な反射光強度分布を示したものであり、このような強度分布であれば、例えば信号処理によって容器底面111からの反射光と細胞Cからの反射光とを分離することは可能と考えられる。しかしながら、実際に検出される反射光強度分布では、図2(b)に示すように、容器底面111からの反射光に対応するピークが比較的大きな幅を持ち、結果として細胞Cからの反射光をマスキングしてしまう。
その結果、図2(c)に模式的に示すように、得られる断層画像Itでは、容器底面111に対応する位置に明るく幅の広い帯状の像が現れる一方、細胞Cの像はこの帯状の像に紛れてしまう。このように、強い反射面として作用する容器底面111に付着した状態の薄い細胞Cは、OCT撮像の被撮像物としては必ずしも適していないものである。
この実施形態では、細胞Cの像を得る目的ではなくその厚さを評価する目的で、OCT画像が取得される。以下に説明するように、本願発明者の知見によれば、細胞Cの鮮明な像を取得することができないOCT撮像であっても、少なくともその厚さを求める用途には利用可能である。
図3は細胞および容器底面からの光反射を模式的に示す図である。図3(a)に示すように、容器底面111に入射する観察光Loのうち一部は、実線矢印で示すように容器底面111で正反射される。また、点線矢印で示すように、細胞Cに到達した光の一部は細胞Cの表面で反射される。
ここで、入射光の波長λに対し、細胞Cの厚さdがその半分すなわち(λ/2)である位置では、容器底面111で反射される光と細胞Cの表面で反射される光との光路長の差が波長λと等しくなる。そのため、図3(a)右上の波形図に示すように、実線で示される容器底面111からの反射光と点線で示される細胞C表面からの反射光とが同位相で重畳されて撮像ユニット20に受光されることとなる。つまり、2つの光が干渉して互いに強め合うことになる。
一方、細胞Cの厚さdが波長λの(1/2)である位置では、光路長差が(λ/2)となるため、図3(a)右下の波形図に示すように、容器底面111からの反射光(実線)と細胞C表面からの反射光(点線)とが逆位相で重畳されることになる。このとき、2つの光の干渉は互いに弱め合うように作用する。
このような容器底面111からの反射光と細胞C表面からの反射光との干渉は、撮像ユニット20により検出される反射光強度分布にも影響を及ぼす。すなわち、図3(b)に示すように、検出されるのは主として容器底面111からの反射光であり、細胞Cからの反射光は容器底面111からの反射光にマスキングされている。しかしながら、容器底面111の位置から(λ/2)だけ離れた位置では、細胞C表面からの反射光との干渉によって強められることに起因する小さなピークが現れる。また、容器底面111の位置から(λ/4)だけ離れた位置では、細胞C表面からの反射光との干渉によって弱められることに起因する小さなディップが現れる。
より一般的には、細胞Cの厚さdが次式:
d=n・λ/2=2n・λ/4 (n=1,2,3,…) … (式1)
で表される位置では、反射光が強め合うことによるピークが生じる。一方、細胞Cの厚さdが次式:
d=(2n-1)・λ/4 (n=1,2,3,…) … (式2)
で表される位置では、反射光が弱め合うことによるディップが生じる。厚さdが(λ/4)の偶数倍のときにピーク、奇数倍のときにディップが生じるということもできる。細胞Cからの反射光を直接検出することができなくても、干渉により生じるこのようなピークおよびディップを検出することができれば、少なくとも細胞Cの厚さに関する情報を取得することが可能である。
d=n・λ/2=2n・λ/4 (n=1,2,3,…) … (式1)
で表される位置では、反射光が強め合うことによるピークが生じる。一方、細胞Cの厚さdが次式:
d=(2n-1)・λ/4 (n=1,2,3,…) … (式2)
で表される位置では、反射光が弱め合うことによるディップが生じる。厚さdが(λ/4)の偶数倍のときにピーク、奇数倍のときにディップが生じるということもできる。細胞Cからの反射光を直接検出することができなくても、干渉により生じるこのようなピークおよびディップを検出することができれば、少なくとも細胞Cの厚さに関する情報を取得することが可能である。
図4は観察光のスペクトルの例を示す図である。FD-OCT撮像方式では、被撮像物の深さ方向の情報を波長ごとの反射光強度に反映させるために、広帯域の光源を必要とする。この目的のために、光源21として例えばLEDまたはSLDが用いられる。図4は光源スペクトルの一例であり、この例では900nmから1100nmまでの波長成分を広く含んでいる。このようなスペクトルを有する光源21では、上記した波長λとしてその中心波長(1000nm)を用いることができる。
以下、上記の知見に基づいて着想された、本実施形態に係る細胞の厚さ評価方法について説明する。この方法は、容器底面に接着培養された薄い細胞の厚さを、OCT撮像技術により撮像された断層画像を用いた画像処理によって求めようとするものである。まず、その原理について説明する。
図5はOCT撮像の結果から得られる三次元画像データの概念を示す図である。画像処理装置1では、被撮像物に対しZ方向に入射させた光(観察光)LoをX方向に走査しながら撮像を行うことで、XZ平面と平行な一の鉛直断面を表す画像Ivが取得される。図5(a)に示すように、このときの走査方向、すなわちX方向をここでは「主走査方向」と称し符号Dmを付すこととする。1つの断層画像Ivは、X方向およびZ方向に沿って二次元配列された複数の画素(ピクセル)Pにより構成される。1画素分に相当する実空間上のサイズ(以下、「画素サイズ」といい符号Spを付す)は、撮像光学系23の倍率および光検出器26の分解能に依存するが、例えばその最小値を1μmとすることができる。この場合、実効的な分解能としては3μm程度が得られる。
断層画像Iv内の各画素Pの輝度値は、試料Sにおいて当該画素Pに対応する位置に反射率の高い反射面があれば高くなる一方、当該位置における反射率が低ければ低くなる。光を反射するような構造がなければ輝度値は最小となる。このようにして、試料Sの内部構造が断層画像Ivに表現される。
観察光Loの入射位置を、主走査方向Dmに直交する副走査方向Ds(この例ではY方向)に所定の送りピッチPfで変化させながら、その都度断層撮像を行うことで、Y方向に互いに位置の異なる複数の断層画像Ivが得られる。ここで、送りピッチPfを画素サイズSpと同等としておけば、図5(b)に示すように、二次元画像である各断層画像Itの画素Pを、画素サイズが同等な三次元空間における画素(ボクセル)Bとみなすことができる。これにより、複数の断層画像Ivから三次元像を構成することが可能となる。このようにして、被撮像物の三次元構造を表した三次元(three-dimensional;3D)画像データが作成される。
なお、上記方法に代えて、例えば副走査方向Dsにおける送りピッチPfを画素サイズSpよりも大きくして撮像し、そうして得られた複数の断層画像Ivの間をY方向に補間処理することによっても、三次元画像データを作成することが可能である。
こうして得られた三次元画像データから、試料Sの水平断面、つまり、観察光の入射方向であるZ方向に直交するXY方向の断面画像を作成することが可能である。具体的には、図5(c)に示すように、Z方向における位置が同じであるボクセルを一の水平断面に属する画素とみなすことで、種々の深さにおける水平断面画像Ihを作成することができる。このようにして、XZ平面に平行な断層画像Ivと、XY平面に平行な水平断面画像Ihとを相互に変換可能である。
ここでは「水平面」および「水平方向」という語句を用いているが、技術的には、これらは「観察光Loの入射方向に直交する平面」および「当該平面に沿った方向」という概念で一般化することが可能である。本実施形態では試料Sに対する観察光Loの入射方向がZ方向、つまり鉛直方向であることから、これに直交する方向が水平方向となる。しかしながら、観察光の入射方向は鉛直方向とは限らない。その場合には、以下の「水平」の語句は「入射方向に直交する」の意味に読み替えればよい。
本実施形態では、上記のようにして作成可能な複数の断面画像IhをZ方向に互いに重畳したものに相当する合成画像を作成する。後述するように、このようにして作成される合成画像は、被撮像物である細胞Cの厚さに関する情報を可視化したものとなり得る。
図6は断面画像から合成画像を作成する方法を示す図である。被撮像物を水平な断面で切断したときの各断面に相当する複数の断面画像Ih(Ih1,Ih2,Ih3,…)から、互いに対応する、つまりXY平面における座標位置が等しい画素P1,P2,P3,…を抽出し、それらの画素の輝度値を積算した値に相当する輝度値を有する画素Psを、合成画像Is内で上記画素P1等に対応する座標位置に配置する。これを画像内の各位置の画素について行うことにより、合成画像Isを作成することができる。
多数の断層画像Icから抽出される画素の輝度値を積算することで、その積算値が非常に大きな値となってしまうことがあり得る。そこで、数値のオーバーフローを回避するために、例えば各画素の輝度値に対し適宜のレベルシフトを行った上で積算するようにしてもよい。なおレベルシフトは積算後の適宜のタイミングで行われてもよい。
図7は合成画像を作成する他の方法を説明する図である。上記の方法では、XZ平面に平行な複数の断層画像IvをXY平面に平行な複数の水平断面画像Ihに変換し、各水平断面画像内で互いに対応する位置にある画素の輝度値を積算することで、合成画像における同じ位置の画素の輝度値が決定される。
これと同じ結果は、水平断面画像Ihを作成することなく、次のようにすることによっても得ることができる。図7に示すように、Y方向においてある位置を占める1つの断層画像Ivについて、X方向における座標位置が同じである複数の画素からなる画素群を水平な画像平面に投影する。より具体的には、1つの画素群に属する各画素の輝度値を積算し、その積算値を、合成画像IsにおいてX方向およびY方向の位置が同じである画素Psの輝度値とする。この場合にも、積算に際し適宜レベルシフトを施してもよい。
このようにすると、水平方向においてある位置を占める画素群が、水平な画像平面上に、しかも水平方向において同じ位置に投影されることになる。そして、この画像平面に投影された画素の輝度値は、当該画素群に属する各画素の輝度値の積算値に相当する値とされる。したがって、水平断面画像Ihを作成することなく、断層画像Ivから直接合成画像Isを作成したことになる。
次に、このようにして作成される合成画像Isが有する技術的意味について説明する。前記したように、強い正反射面である容器底面111に接着培養された薄い細胞Cは、OCT撮像では鮮明な像を得ることが困難であるが、細胞表面からの反射光が容器底面111からの反射光と干渉することにより、反射光強度分布に変動をもたらす。以下に説明するように、合成画像Isは、このような反射光強度分布における変動分を抽出し可視化する作用を有する。
図8は細胞の形状と合成画像との関係を模式的に示す図である。図8(a)は細胞Cの断面形状の一例を示す断面プロファイルである。また、図8(b)は合成画像Isにおける当該断面の輝度分布の例を示し、図8(c)は合成画像Isの一例を示す。図8(a)は、図8(c)における二点鎖線の位置での断面プロファイルに対応している。
試料容器11の底面111に接着培養された細胞Cの一の垂直断面が、図8(a)に示すプロファイルを有していたとする。前記したように、容器底面111からの強い反射光に起因して、各断層画像Ivには細胞Cの像は明瞭に現れず、容器底面111に対応する明るい帯状の像が支配的である。しかしながら、その中にあっても、細胞Cの表面からの反射光が容器底面111からの反射光と干渉することで、その強度分布に小さな変動をもたらしている。
このような強度の変動がない場合の合成画像Isは、細胞を担持しない容器底面111を撮像したものと実質的に同じであるから、容器底面111の反射率に対応する背景輝度Lbを有する略一様な画像になると考えられる。これに対して、細胞表面からの反射光の影響がある場合には、図8(a)および(b)に示すように、細胞Cの表面の高さが(λ/4)の整数倍である位置で輝度が僅かに上昇する一方、細胞Cの表面の高さが(λ/4)の奇数倍である位置では輝度が僅かに低下する。
このため、図8(c)に示すように、合成画像Isでは、細胞Cの像は現れないものの、その表面の高さが(λ/4)の整数倍である位置では背景より明るい縞が生じ、細胞Cの表面の高さが(λ/4)の奇数倍である位置で背景より暗い縞が生じる。これらの縞は、曲率半径の大きいレンズにおいて生じるニュートンリングと同様の原理によるものであり、容器底面111からの反射光と細胞Cの表面からの反射光との干渉によって生じる干渉縞であるといえる。干渉縞の幅は観察光Loの帯域幅が広いほど広くなる。細胞Cの厚さが大きいと、干渉縞は多重リング状に現れる。
このような干渉縞を地形図における等高線と同様に解釈することで、各位置における細胞Cの表面の高さ、つまり厚さを導出することが可能である。具体的には、略一様な背景から細胞Cの内部に向けてたどったときに最初に現れる暗い縞は、その縞の位置において、容器底面111からみた細胞Cの厚さが約(λ/4)であることを表している。同様に、二番目に現れる明るい縞は、その縞の位置における細胞Cの厚さが約(λ/2)であることを表している。また、それらの縞の間では、細胞Cの厚さが(λ/4)より大きく(λ/2)より小さいといえる。
このように、略一様な背景を基準として、干渉縞により現れる明暗の繰り返し回数を数えてゆくことによって、細胞C内の各位置における厚さを評価することが可能である。明るい縞および暗い縞の両方を数える場合には、厚さの分解能は(λ/4)程度である。また例えば、撮像におけるS/N比(Signal to Noise Ratio)等の都合で明暗いずれかの縞しか検出できないような場合でも、(λ/2)程度の分解能を得ることができる。例えば波長λが1000nm(=1μm)であるときには、厚さの分解能として0.5μmを得ることができる。これは、数μm程度の厚さを有する細胞の厚さを評価する上では十分な分解能であるといえる。
以上が、本実施形態におけるOCT画像から細胞の厚さを求める方法の原理である。容器底面111に接着培養された細胞Cでは、細胞Cの像自体を取得することができなくても、上記したように、その厚さを求めることが可能である。次に、上記原理に基づく細胞の厚さ評価方法の具体的な処理手順について説明する。
図9は本実施形態に係る細胞の厚さ評価方法を示すフローチャートである。また、図10は合成画像の作成方法の一例を示すフローチャートである。この処理は、制御ユニット30に設けられたCPU31が、予め用意された制御プログラムを実行し装置各部に所定の動作を行わせることにより実行される。
最初に、OCT撮像により、複数の断層画像Ivが取得される(ステップS101)。このときの対物レンズ232の焦点位置については細胞C内にあることが望ましいが、その焦点深度に対して細胞Cが十分に薄い場合には、細胞Cが被写界深度内にあればさほど厳密な調整は必要ない。また、参照ミラー243の位置については、焦点位置までの物体系光路長と参照系光路長とが等しくなるように設定される。そして、こうして取得された断層画像Ivから合成画像Isが作成される(ステップS102)。
図10は合成画像の作成方法の一例を示している。ここでは、図6に示した水平断面画像Ihを介して合成画像Isを作成する方法を用いることとする。まず、各断層画像Ivに対しエッジ強調処理が実行される(ステップS201)。容器底面111からの反射光に比べて細胞Cの表面からの反射光は微弱であるから、図3(b)に示したように、干渉によって反射光強度分布に及ぼす影響も軽微である。そこで、断層画像Ivの段階でエッジ強調処理を行っておくことで、このような小さな変動が検出される確率を高めておくことが望ましい。
エッジ強調処理としては、画像処理においてエッジ強調のために用いられる各種のフィルタリング処理を適用することが可能である。例えば分散フィルタ処理、微分フィルタ処理等を好適に適用可能である。
そして、エッジ強調処理後の断層画像Ivから三次元(3D)画像データを作成し(ステップS202)、これから水平断面画像Ihを作成して(ステップS203)、さらに水平断面画像IhをZ方向に重ね合わせることで(ステップS204)、合成画像Isが作成される。これらの具体的な処理方法は、先に原理説明した通りのものである。
図11はエッジ強調処理の効果を示す図である。図11(a)は、エッジ強調処理を行わない断層画像Ivから作成された合成画像Isの例を示している。一方、図11(b)は、同じ断層画像Ivに対しエッジ強調処理として分散フィルタ処理を施して作成された合成画像Isの例を示している。これらの比較から明らかなように、エッジ強調処理を実行することにより、合成画像における縞模様のコントラストが明確になっており、干渉縞の検出容易性が向上していることがわかる。
前記した通り、合成画像Isは、図10に示される処理によらず断層画像Ivから直接作成されてもよい。この場合には、ステップS203を省き、各断層画像Iv内でZ方向に並ぶ画素の積算値を、合成画像Isにおいてこれらの画素に対応する位置の画素の輝度値とすることにより、合成画像Isを作成することができる。撮像時のY方向における送りピッチPfが十分に小さく、例えばY方向への補間による三次元画像データ作成を省略できる場合には、ステップS202も省くことができる。この場合にも、積算の前に予めエッジ強調処理を行っておくことが有効である。
図9に戻って、ステップS102で作成された合成画像Isから干渉縞を検出する(ステップS103)。例えば、略一様な背景輝度Lbと比較して有意に明るい領域および暗い領域を、干渉縞に対応する領域として検出することができる。そして、検出された干渉縞の本数から、細胞Cの厚さが算出される(ステップS104)。
具体的には、図8(c)に示すように多重リング状の干渉縞が検出されれば、背景から細胞内のある位置に向けて順に縞の数を計数し、その数から当該位置における細胞Cの厚さdを算出することができる。例えば、暗い縞と明るい縞との数を共に計数しているときには、その合計本数をNとすると、細胞Cの厚さdは次式:
d=N・λ/4 … (式3)
により表すことができる。また例えば、明るい縞のみを計数している場合には、その本数をNとして次式:
d=N・λ/2 … (式4)
により、細胞Cの厚さdを表すことができる。
d=N・λ/4 … (式3)
により表すことができる。また例えば、明るい縞のみを計数している場合には、その本数をNとして次式:
d=N・λ/2 … (式4)
により、細胞Cの厚さdを表すことができる。
図8(c)に示すように、合成画像Isに現れる干渉縞は完全なリング状であることが理想的である。しかしながら、例えば細胞Cの表面状態により反射光が弱くなるなどの原因で、干渉縞が閉曲線とならない場合があり得る。
図12は干渉縞が閉曲線でない場合を模式的に示す図である。図12(a)に示す断面プロファイルを有する細胞CaのOCT画像から合成画像を作成する場合を考える。このとき、図12(b)に示す合成画像Isaにおいて、干渉縞が完全なリングとして検出することができない場合があり得る。このような場合においても、暗い縞と明るい縞とが交互に現れること、縞同士が交わることがないこと等、干渉縞が有する性質を考慮することで、誤算出をある程度抑制することが可能である。
特に、図のように少なくとも1つの干渉縞が完全なあるいはほぼ完全なリングとして現れている場合には、当該リングの内側に現れる干渉縞と外側にある干渉縞とを明確に区別することができる。また例えば、細胞Caの最大厚さを求める目的であれば、合成画像中に引いた線分を横切る縞の数の最大値から厚さを求めることも可能である。
このように、干渉縞が不完全な形で表れている場合でも、既知の情報を元に、不完全な縞により欠落した情報を補間しつつ、細胞の厚さを算出することが可能である。ただし、ある程度の算出精度の低下は避けられないことがある。
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態における試料Sは、試料容器11の内底面111に接着培養された細胞Cである。この意味において、試料容器11は本発明の「担持体」に相当している。しかしながら、本発明の「担持体」はこのような試料容器に限定されない。
例えば、ガラスまたは樹脂製のシート状部材またはプレート状部材の表面に細胞が接着培養され、このようなシート状部材またはプレート状部材が試料容器に注入された培地に浸漬された試料についても、本発明を適用可能である。この場合には、これらシート状部材またはプレート状部材が本発明の「担持体」に相当することとなる。これらの場合においても、試料容器と同様に、シート状部材またはプレート状部材の表面が強い反射面として作用する。このため、表面に付着した細胞の厚さを評価する際に本発明を有効に適用することが可能である。
また、上記実施形態では、評価対象となる細胞Cが薄く、その表面からの反射光が容器底面111からの正反射光によりほぼ遮蔽されてしまうことが前提となっている。しかしながら、本発明の技術思想に基づく厚さ評価方法は、細胞が厚く、その像が断層画像に現れている場合にも有効なものである。この点において、深さ方向の観察範囲が狭い共焦点顕微鏡やホログラフィック顕微鏡による厚さ評価よりも適用範囲が広いといえる。
ただし、細胞内部の構造体からの反射光が重畳されることで、細胞表面からの反射光に起因する干渉のみを抽出することが難しくなることがあり得る。この意味において、本発明は、薄い細胞からの反射光が担持体表面からの強い反射光に遮蔽されてしまうというOCT撮像方式のデメリットを、むしろメリットとして有効に活用したものであるということができる。
また、上記実施形態は、広範囲の波長成分を含む観察光を用いて波長ごとの干渉の強さから深さ方向の反射光強度分布を求める、いわゆるフーリエドメインOCT撮像装置である。しかしながら、本発明は、これ以外にも例えばタイムドメイン(Time Domain)OCT撮像装置、波長掃引(Swept Source)型OCT撮像装置のように、OCT撮像原理を用いて断層撮像を行う各種の撮像装置に対しても適用可能である。また、OCT撮像装置は、上記実施形態のように光ファイバカプラを用いたもの以外に、例えばビームスプリッタを用いて信号光と参照光との干渉を生じさせるものであってもよい。
また、上記実施形態の制御ユニット30としては、パーソナルコンピューターやワークステーション等の一般的な構成の汎用処理装置を用いることも可能である。すなわち、撮像ユニット20、駆動部40およびこれらの動作させるための最小限の制御機能を有する撮像装置と、上記処理内容を記述した制御プログラムを実行することで制御ユニット30として機能するパーソナルコンピューター等との組み合わせにより、画像処理装置1が構成されてもよい。
また、本発明に係る画像処理方法は、それ自体がOCT撮像機能を有していない画像処理装置においても実行可能である。すなわち、画像処理装置が、例えば外部の撮像装置から画像データを受け取り、または予め適宜の記憶手段に保存されている画像データを取得して、本発明の画像処理方法を実行するようにしてもよい。この場合の画像処理装置としては、一般的なハードウェア構成を有するコンピューター装置を利用可能である。
したがって、本発明に係る画像処理方法は、コンピューター装置が実行すべき処理手順を記述したコンピュータープログラムとして、あるいはこのプログラムを非一時的に記録したコンピューター読み取り可能な記録媒体として具現化されてもよい。
以上、具体的な実施形態を例示して説明してきたように、本発明に係る画像処理方法および細胞の厚さ評価方法は、例えば断層画像から、入射方向に直交し入射方向に互いに位置が異なる複数の断面それぞれにおける細胞の断面画像を作成し、複数の断面画像を重畳して合成画像を作成するように構成されてもよい。観察光の入射方向、つまり深さ方向の各位置での断面画像を重ね合わせることで、干渉に起因して種々の深さで生じる強弱の変化を単一の画像平面に表すことができる。
また例えば、断層画像に対しエッジ強調処理を施し、処理後の画像に基づき合成画像が作成されてもよい。担持体表面からの反射光に比べて細胞表面からの反射光強度が小さい場合、反射光強度分布に現れる強度変動も微弱である。このような変動を強調するような処理を予め行っておくことで、合成画像に現れる干渉縞のコントラストを高めることができ、その検出を容易にすることが可能になる。
ここで、断層画像としては、例えばフーリエドメイン光コヒーレンストモグラフィにより撮像された画像を利用することができる。この撮像方式では、広帯域の観察光を試料に入射させることで、試料の深さ方向の情報を検出光のスペクトルに反映させる。このため、種々の深さからの反射光を同時に検出することが可能である。すなわち、種々の深さの画像を一括取得することができる。現在のFD-OCT撮像における深さ方向の撮像範囲は、評価対象となる細胞の厚さである数μmないし数十μmに対し十分に大きいから、本発明を実施するのに際しては、細胞をその厚さ方向に一括して撮像することが可能である。
また例えば、検出される干渉縞の数と観察光の中心波長とに基づき細胞の厚さを求めるようにしてもよい。細胞の厚さが増えるにつれて干渉縞の数も増えるから、干渉縞の数は細胞の厚さを指標する情報を有している。また、干渉縞は、担持体表面からの反射光と細胞表面からの反射光との光路長差と、観察光の波長との関係によって生じるものであるから、観察光の波長(広帯域の観察光では、例えばその中心波長)も、細胞の厚さを指標する情報を有する。これらを組み合わせることで、実際の細胞の厚さを定量的に評価することが可能となる。
例えば多重リング状の干渉縞が検出された場合には、検出されたリングの数と中心波長との積に基づき細胞の厚さを求めることができる。このような多重リングは地形図における等高線と同様の技術的意義を有するものと解することができる。したがって、リングの数と、リング間の高低差を表す中心波長との積は、細胞の厚さを定量的に表すものとなっている。
より具体的には、例えば周囲より高輝度のリングの数がN、中心波長がλであるとき、干渉の発生原理から、細胞の厚さdを次式:
d=N・λ/2
により表すことが可能である。
d=N・λ/2
により表すことが可能である。
この発明は、試料容器、シート状またはプレート状部材などの担持体の表面に接着培養された細胞の厚さを評価する目的に好適に適用可能であり、例えば病理学や創薬研究等の技術分野に好適である。
1 画像処理装置
11 試料容器(担持体)
20 撮像ユニット
111 容器底面(担持体表面)
C 細胞
Ih 水平断面画像
Iv 断層画像
Is 合成画像
S 試料
11 試料容器(担持体)
20 撮像ユニット
111 容器底面(担持体表面)
C 細胞
Ih 水平断面画像
Iv 断層画像
Is 合成画像
S 試料
Claims (10)
- 担持体の表面に接着培養された細胞を、前記担持体の前記表面と交わる方向を入射方向として観察光を入射させ光コヒーレンストモグラフィにより断層撮像することにより得られる断層画像を取得する工程と、
前記断層画像において前記入射方向に一列に並ぶ画素からなる画素群の輝度値の積算値に対応する輝度値を有する画素を、前記入射方向に直交する画像平面に、かつ前記画素群を前記入射方向に沿って前記画像平面に投影した位置に配した合成画像を作成する工程と、
前記合成画像に現れる干渉縞を検出し、その結果に基づき前記細胞の厚さを導出する工程と
を備える、画像処理方法。 - 前記断層画像から、前記入射方向に直交し前記入射方向に互いに位置が異なる複数の断面それぞれにおける前記細胞の断面画像を作成し、複数の前記断面画像を重畳して前記合成画像を作成する、請求項1に記載の画像処理方法。
- 前記断層画像に対しエッジ強調処理を施し、処理後の画像に基づき前記合成画像を作成する、請求項1または2に記載の画像処理方法。
- 前記断層画像は、フーリエドメイン光コヒーレンストモグラフィにより撮像された画像である、請求項1ないし3のいずれかに記載の細胞の厚さ評価方法。
- 検出される前記干渉縞の数と前記観察光の中心波長とに基づき前記細胞の厚さを求める、請求項1ないし4のいずれかに記載の画像処理方法。
- 多重リング状の前記干渉縞を検出し、リングの数と前記中心波長との積に基づき前記細胞の厚さを求める、請求項5に記載の画像処理方法。
- 周囲より高輝度の前記リングの数をN、前記中心波長をλとするとき、前記細胞の厚さdを次式:
d=N・λ/2
により求める、請求項6に記載の画像処理方法。 - 担持体の表面に接着培養された細胞を、前記担持体の前記表面と交わる方向を入射方向として観察光を入射させ光コヒーレンストモグラフィにより断層撮像する工程と、
前記断層画像において前記入射方向に一列に並ぶ画素からなる画素群の輝度値の積算値に対応する輝度値を有する画素を、前記入射方向に直交する画像平面に、かつ前記画素群を前記入射方向に沿って前記画像平面に投影した位置に配した合成画像を作成する工程と、
前記合成画像に現れる干渉縞を検出し、その結果に基づき前記細胞の厚さを導出する工程と
を備える、細胞の厚さ評価方法。 - フーリエドメイン光コヒーレンストモグラフィにより前記断層撮像を行う、請求項8に記載の細胞の厚さ評価方法。
- 周囲より高輝度で多重リング状の前記干渉縞を検出し、多重化されたリングの数をN、前記観察光の中心波長をλとするとき、前記細胞の厚さdを次式:
d=N・λ/2
により求める、請求項8または9に記載の細胞の厚さ評価方法。
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