JP2023019913A - 樹脂組成物、車両外装材、及び車両外装材の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】低比重を実現可能であって、高い剛性を有し得る樹脂組成物、車両外装材、及び車両外装材の製造方法を提供すること。【解決手段】樹脂組成物は、ベース樹脂と、エラストマーと、フィラーとの混合物を含み、混合物の全量を基準として、ベース樹脂の含有量は、55質量%以上80質量%以下であり、エラストマーの含有量は、5質量%以上25質量%以下であり、フィラーの含有量は、5質量%以上30質量%以下であり、ベース樹脂は、主成分であるポリプロピレンと、高密度ポリエチレンとを含む。【選択図】図1
Description
本開示は、樹脂組成物、車両外装材、及び車両外装材の製造方法に関する。
例えば、下記特許文献1には、ポリプロピレン、アルキルフェノール樹脂、エポキシ基含有エチレン共重合体およびラジカル発生剤を含むポリプロピレン系樹脂組成物が開示される。この樹脂組成物は、比較的安価に形成できることから、例えば、電気・電子部品、電化製品、ハウジング、包装材料、自動車部品など幅広く用いられる。
例えば、下記特許文献2には、ABS樹脂(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂)と、1,2-ブタジエンゴムとを含む材料により成形されるブロー成形品が開示される。このようなブロー成形品は、例えば自動車などの車両外装品に用いられる。
自動車などに用いられる車両外装材に求められる代表的な特性として、剛性、重さなどが挙げられる。一般に、単にポリプロピレン系樹脂組成物を主成分とした成形部材の剛性は、ABS樹脂を主成分とした成形部材の剛性よりも低い傾向がある。このため、剛性向上の観点から、車両外装材の材料として、ポリプロピレン系樹脂組成物よりもABS樹脂系樹脂組成物が用いられることがある。
ここで、ABS樹脂の比重は、ポリプロピレンの比重よりも大きい。車両の燃費の観点から、車両外装材の重さは、小さいほど望ましい。また、ABS樹脂は、一般的に、ポリプロピレンよりも高価である。このため、例えば車両外装材の軽量化及び量産化などの観点から、車両外装材の材料として、ABS樹脂系樹脂組成物よりもポリプロピレン系樹脂組成物が用いられることがある。
上述した内容に鑑みた本開示の一側面の目的は、安価かつ低比重化を実現可能であって、高い剛性を有し得る樹脂組成物、車両外装材、及び車両外装材の製造方法の提供である。
本発明の一側面に係る樹脂組成物は、ベース樹脂と、エラストマーと、フィラーとの混合物を含む。混合物の全量を基準として、ベース樹脂の含有量は、55質量%以上80質量%以下であり、エラストマーの含有量は、5質量%以上25質量%以下であり、フィラーの含有量は、5質量%以上30質量%以下であり、ベース樹脂は、主成分であるポリプロピレンと、高密度ポリエチレンとを含む。
この樹脂組成物によれば、ベース樹脂を主成分とした混合物において、ベース樹脂の主成分は、ポリプロピレンである。これにより、例えばABS樹脂がベース樹脂の主成分である場合と比較して、樹脂組成物を安価に形成できると共に、樹脂組成物の低比重化を実現可能である。加えて、ベース樹脂は、高密度ポリエチレンを含む。これにより、樹脂組成物から形成される成形体の剛性を向上できる。
ベース樹脂の全量を基準として、ポリプロピレンの含有量は、60質量%以上90質量%以下でもよい。この場合、樹脂組成物の低比重化を良好に実現可能であると共に、樹脂組成物から形成される成形体の剛性を良好に確保できる。
エラストマーのガラス転移点は、-40℃以下でもよい。この場合、樹脂組成物から形成される成形体の耐寒衝撃性を向上できる。
フィラーは、タルクと、タルクの少なくとも一部を被覆する被覆材とを有し、被覆材は、ポリオレフィンを含んでもよい。この場合、フィラーはべース樹脂になじみやすくなるので、混合物中におけるフィラーの分散性を向上できる。
ポリオレフィンは、低密度ポリエチレンでもよい。
上記樹脂組成物の常温下における比重は、1.05以下でもよい。この場合、樹脂組成物の低比重化を良好に実現可能である。
上記樹脂組成物は、車両外装材用樹脂組成物でもよい。
上記樹脂組成物のメルトフローレートは、5g/10分未満でもよい。この場合、樹脂組成物が押出成形法および真空成形法に対して好適に用いられる。
本開示の一側面に係る車両外装材の製造方法は、上記樹脂組成物を押出成形によってシート状の成形体に加工する工程と、当該成形体を真空成形によって加工する工程と、を備える。この場合、メルトフローレートが5g/10分未満である上記樹脂組成物を押出成形してシート状の成形体を成形するとき、当該成形体を加熱するときなどに、当該成形体のドローダウン等を抑制できる。これにより、厚さムラが発生しにくい成形体を形成できる。このような成形体を真空成形によって加工することによって、真空成形であっても、安価かつ低比重を実現可能であって、高い剛性を有し得る成形体を形成できる。
本開示の別の一側面に係る車両外装材は、樹脂及びフィラーを含む成形体を有し、常温下において、成形体の比重は1.05以下であり、成形体の曲げ弾性率は1300Mpa以上2500MPa以下である。
この車両外装材によれば、常温下において、成形体の比重は1.05以下であり、成形体の曲げ弾性率は、1300Mpa以上2500MPa以下である。このため、当該成形体は、ABS樹脂を主成分とした成形体と比較して、低比重化を実現しつつ、高い剛性を有することができる。
常温下において、成形体の曲げ弾性率は1400Mpa以上1900MPa以下でもよい。この場合、成形体は、その成形性を維持しつつ、車両外装材として十分な剛性を示すことができる。
常温下において、成形体のシャルピー衝撃値は35kJ/m2以上100kJ/m2以下でもよい。この場合、例えば単にポリプロピレンを主成分とした成形体、及び、ABS樹脂を主成分とした成形体よりも高い耐衝撃性を有する成形体を得ることができる。
低温下において、成形体のシャルピー衝撃値は、10kJ/m2以上65kJ/m2以下でもよい。この場合、例えば単にポリプロピレンを主成分とした成形体、及び、ABS樹脂を主成分とした成形体よりも高い耐寒衝撃性を有する成形体を得ることができる。
成形体の荷重たわみ温度は、90℃以上110℃以下でもよい。この場合、従来のポリプロピレン系樹脂組成物、ならびに、従来のABS系樹脂組成物の成形体よりも高い耐熱性を有する成形体を得ることができる。
190℃における成形体のメルトテンションは、45mN以上でもよい。この場合、成形体の厚みムラが発生しにくくなる。
樹脂は、ポリプロピレン、高密度ポリエチレン、及びエラストマーを含んでもよい。
成形体は、押出成形されたシート状部材の真空成形体でもよい。
本開示の一側面によれば、低比重を実現可能であって、高い剛性を有し得る樹脂組成物、車両外装材、及び車両外装材の製造方法を提供できる。
以下、添付図面を参照して、本開示の一側面の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
(樹脂組成物)
一実施形態に係る樹脂組成物は、例えば、電子部品の筐体、包装材料、車両外装材、車両内装材、車両用部品等に用いられる材料である。特に、車両外装材に用いられる樹脂組成物は、車両外装材用樹脂組成物とも呼称される。一実施形態に係る樹脂組成物から形成される部材(成形体)は、後述するように比較的高い剛性及び耐衝撃性を示す。また、後述するように、一実施形態に係る樹脂組成物は、真空成形性に優れる。一実施形態に係る樹脂組成物は、ベース樹脂と、エラストマーと、フィラーとの混合物を含む。以下では、上記混合物に含まれる各材料を詳細に説明する。
一実施形態に係る樹脂組成物は、例えば、電子部品の筐体、包装材料、車両外装材、車両内装材、車両用部品等に用いられる材料である。特に、車両外装材に用いられる樹脂組成物は、車両外装材用樹脂組成物とも呼称される。一実施形態に係る樹脂組成物から形成される部材(成形体)は、後述するように比較的高い剛性及び耐衝撃性を示す。また、後述するように、一実施形態に係る樹脂組成物は、真空成形性に優れる。一実施形態に係る樹脂組成物は、ベース樹脂と、エラストマーと、フィラーとの混合物を含む。以下では、上記混合物に含まれる各材料を詳細に説明する。
(A)ベース樹脂
ベース樹脂は、混合物の主成分となる材料である。一実施形態では、混合物の全量を基準として、ベース樹脂の含有量は、55質量%以上80質量%以下である。当該含有量は、58質量%以上でもよいし、60質量%以上でもよい。また、上記含有量は、75質量%以下でもよいし、70質量%以下でもよいし、68質量%以下でもよいし、65質量%以下でもよい。ベース樹脂は、ポリプロピレンと、高密度ポリエチレンとを含む。ベース樹脂のメルトフローレート(MFR)は、例えば5g/10分未満である。一実施形態では、ベース樹脂などのMFRは、JIS K7210-1:2014に定められる方法に沿って、測定温度230℃、荷重2.16kgの条件により測定される。ベース樹脂のMFRが低いほど、当該ベース樹脂を含む樹脂組成物は、射出成形法よりも、押出成形法および真空成形法に対して好適になる。MFRの測定器としては、公知の測定器が使用される。ベース樹脂のMFRは、3g/10分以下でもよいし、1g/10分以下でもよいし、0.8g/10分以下でもよいし、0.5g/10分以下でもよい。樹脂組成物が押出成形及び/または真空成形される場合、ベース樹脂のMFRは、1g/10分以下であることが好ましく、0.8g/10分以下であることがより好ましく、0.5g/10分以下であることがさらに好ましい。なお、ベース樹脂などのMFRは、例えばタカラ工業株式会社製のメルトインデクサ(L203)を用いて測定される。
ベース樹脂は、混合物の主成分となる材料である。一実施形態では、混合物の全量を基準として、ベース樹脂の含有量は、55質量%以上80質量%以下である。当該含有量は、58質量%以上でもよいし、60質量%以上でもよい。また、上記含有量は、75質量%以下でもよいし、70質量%以下でもよいし、68質量%以下でもよいし、65質量%以下でもよい。ベース樹脂は、ポリプロピレンと、高密度ポリエチレンとを含む。ベース樹脂のメルトフローレート(MFR)は、例えば5g/10分未満である。一実施形態では、ベース樹脂などのMFRは、JIS K7210-1:2014に定められる方法に沿って、測定温度230℃、荷重2.16kgの条件により測定される。ベース樹脂のMFRが低いほど、当該ベース樹脂を含む樹脂組成物は、射出成形法よりも、押出成形法および真空成形法に対して好適になる。MFRの測定器としては、公知の測定器が使用される。ベース樹脂のMFRは、3g/10分以下でもよいし、1g/10分以下でもよいし、0.8g/10分以下でもよいし、0.5g/10分以下でもよい。樹脂組成物が押出成形及び/または真空成形される場合、ベース樹脂のMFRは、1g/10分以下であることが好ましく、0.8g/10分以下であることがより好ましく、0.5g/10分以下であることがさらに好ましい。なお、ベース樹脂などのMFRは、例えばタカラ工業株式会社製のメルトインデクサ(L203)を用いて測定される。
ここで、一実施形態に係る樹脂組成物は、ABS樹脂を含まない。これにより、樹脂組成物(および混合物)の比重をABS樹脂よりも小さくできるので、当該樹脂組成物の成形体を軽量化できる。常温下(例えば、23℃)における樹脂組成物(および混合物)の比重は、例えば0.93以上1.05以下である。樹脂組成物の比重は、例えば、JIS K 7112:1999もしくはISO 1183:1987に定められる方法に沿って、電子比重計(例えば、アルファーミラージュ株式会社製、EW-120SG)を用いて測定される。
ポリプロピレンは、ベース樹脂の主成分となる重合体である。ベース樹脂の主成分がポリプロピレンであることによって、耐衝撃性等に優れ、かつ、比較的安価な混合物を製造できる。なお、ベース樹脂の全量を基準として、ポリプロピレンの含有量が50質量%より大きい場合、ポリプロピレンは、ベース樹脂の主成分に相当する。一実施形態では、ベース樹脂の全量を基準として、ポリプロピレンの含有量は、60質量%以上90質量%以下である。当該含有量は、65質量%以上でもよいし、70質量%以上でもよい。また、上記含有量は、85質量%以下でもよいし、80質量%以下でもよいし、75質量%以下でもよい。ポリプロピレンが上記範囲内である場合、ベース樹脂がポリプロピレン単体である場合と比較して、より高い耐衝撃性などが得られる。ポリプロピレンのMFRは、例えば5g/10分未満である。ポリプロピレンのMFRは、3g/10分以下でもよいし、1g/10分以下でもよいし、0.8g/10分以下でもよいし、0.5g/10分以下でもよい。
ポリプロピレンは、プロピレンの重合体であるが、これに限られない。一実施形態では、ポリプロピレンは、他のモノマーとの共重合体も含む。すなわち、一実施形態のポリプロピレンは、ホモポリプロピレンに限られず、エチレン-プロピレンブロック共重合体(ブロックポリプロピレン)、エチレン-プロピレンランダム共重合体(ランダムポリプロピレン)、及び、エチレン及びプロピレン以外のα-オレフィンとプロピレンとの共重合体(プロピレン系共重合体)等も含む。α-オレフィンは、例えば、1-ブテン、1-ペンテン、イソブチレン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、3,4-ジメチル-1-ブテン、1-ヘプテン、3-メチル-1-ヘキセンである。
ポリプロピレンは、酸変性ポリプロピレンであってもよい。酸変性ポリプロピレンは、酸性基をポリプロピレンに導入したものである。例えば、無水マレイン酸、カルボン酸、スルホン酸、それらの誘導体等をポリプロピレンに共重合又はグラフト重合させたものが、酸変性ポリプロピレンに相当し得る。
一実施形態においては、ポリプロピレンは、上述したホモポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、プロピレン系共重合体、及び酸変性ポリプロピレンの少なくとも1種を含む。また、ポリプロピレンは、例えば、互いに異なる複数種類のプロピレン系共重合体等を含んでもよい。
高密度ポリエチレン(HDPE)は、例えばJIS K 6922-1:2018により定義されるポリエチレンである。一実施形態の高密度ポリエチレンの密度は、0.942g/cm3以上である。一実施形態では、ベース樹脂の全量を基準として、高密度ポリエチレンの含有量は、10質量%以上40質量%以下である。当該含有量は、15質量%以上でもよいし、20質量%以上でもよいし、25質量%以上でもよい。また、上記含有量は、35質量%以下でもよいし、30質量%以下でもよい。加えて、樹脂組成物の成形体の剛性を向上できる。高密度ポリエチレンのMFRは、例えば5g/10分未満である。高密度ポリエチレンのMFRは、3g/10分以下でもよいし、1g/10分以下でもよいし、0.8g/10分以下でもよいし、0.5g/10分以下でもよいし、0.3g/10分以下でもよい。一実施形態では、ポリプロピレンと高密度ポリエチレンとのそれぞれのMFRは、1g/10分以下であることが好ましく、0.8g/10分以下であることがより好ましく、0.5g/10分以下であることがさらに好ましい。また、ベース樹脂の混練性の観点から、高密度ポリエチレンのMFRは、ポリプロピレンのMFRと同程度値であることが好ましい。
高密度ポリエチレンは、エチレンの重合体であるが、これに限られない。一実施形態では、高密度ポリエチレンは、他のモノマーとの共重合体も含む。すなわち、一実施形態の高密度ポリエチレンは、ホモポリエチレンに限られず、エチレンと、エチレン及びプロピレンを含むα-オレフィンとの共重合体(エチレン系共重合体)等も含む。
(B)エラストマー
エラストマーは、弾性を示すポリマー(ゴム)であり、例えば熱硬化性エラストマー、熱可塑性エラストマーなどである。樹脂組成物にエラストマーが含まれることによって、当該樹脂組成物の成形体の耐衝撃性を向上できる。一実施形態では、混合物の全量を基準として、エラストマーの含有量は、5質量%以上25質量%以下である。この場合、樹脂組成物の成形性を維持しつつ、樹脂組成物の成形体の耐衝撃性を向上できる。エラストマーの含有量は、10質量%以上でもよいし、15質量%以上でよい。エラストマーの含有量は、20質量%以下でもよいし、15質量%以下でよい。エラストマーのMFRは、例えば10g/10分未満である。エラストマーのMFRは、7g/10分以下でもよいし、5g/10分以下でもよいし、3g/10分以下でもよいし、1g/10分以下でもよいし、0.8g/10分以下でもよいし、0.5g/10分以下でもよい。
エラストマーは、弾性を示すポリマー(ゴム)であり、例えば熱硬化性エラストマー、熱可塑性エラストマーなどである。樹脂組成物にエラストマーが含まれることによって、当該樹脂組成物の成形体の耐衝撃性を向上できる。一実施形態では、混合物の全量を基準として、エラストマーの含有量は、5質量%以上25質量%以下である。この場合、樹脂組成物の成形性を維持しつつ、樹脂組成物の成形体の耐衝撃性を向上できる。エラストマーの含有量は、10質量%以上でもよいし、15質量%以上でよい。エラストマーの含有量は、20質量%以下でもよいし、15質量%以下でよい。エラストマーのMFRは、例えば10g/10分未満である。エラストマーのMFRは、7g/10分以下でもよいし、5g/10分以下でもよいし、3g/10分以下でもよいし、1g/10分以下でもよいし、0.8g/10分以下でもよいし、0.5g/10分以下でもよい。
エラストマーは、天然物でもよいし、人工物でもよい。エラストマーは、SBR(スチレン-ブタジエンゴム)、NBR(アクリロニトリル-ブタジエンゴム)、フッ素ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、EPR(エチレン-プロピレンゴム)等のゴムでもよい。エラストマーは、熱可塑性エラストマーとして、EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体)、スチレン系熱可塑性エラストマー、又は、水素が添加されたスチレン系熱可塑性エラストマー(水添スチレン系熱可塑性エラストマー(SBES)でもよい。スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体、スチレン・エチレン・ブタジエン・エチレン共重合体、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体が挙げられる。
低温下(例えば、-30℃)における耐衝撃性(耐寒衝撃性)の観点から、一実施形態に係るエラストマーのガラス転移点は、例えば-40℃以下である。また、ベース樹脂に対する分散性が高いエラストマーほど、エラストマーの性能が良好に発揮される傾向がある。これらの観点から、一実施形態では、エラストマーとして、水添スチレン系熱可塑性エラストマー(SBES)が用いられてもよい。
(C)フィラー
フィラーは、混合物に添加される充填材であり、例えばベース樹脂中に分散する粉末である。一実施形態では、混合物の全量を基準として、フィラーの含有量は、5質量%以上30質量%以下である。当該含有量は、8質量%以上でもよいし、10質量%以上でもよいし、15質量%以上でもよい。また、上記含有量は、25質量%以下でもよいし、20質量%以下でもよいし、18質量%以下でもよいし、15質量%以下でもよい。フィラーは、例えば、ガラス繊維、シリカ、炭酸カルシウム、クレー、タルク、マイカ、酸化チタン、カーボンブラック等の無機材料である。高剛性などの観点から、一実施形態に係るフィラーは、タルクでもよい。フィラーのMFRは、例えば1g/10分未満である。フィラーのMFRは、0.8g/10分以下でもよいし、0.5g/10分以下でもよいし、0.3g/10分以下でもよいし、0.1g/10分以下でもよい。
フィラーは、混合物に添加される充填材であり、例えばベース樹脂中に分散する粉末である。一実施形態では、混合物の全量を基準として、フィラーの含有量は、5質量%以上30質量%以下である。当該含有量は、8質量%以上でもよいし、10質量%以上でもよいし、15質量%以上でもよい。また、上記含有量は、25質量%以下でもよいし、20質量%以下でもよいし、18質量%以下でもよいし、15質量%以下でもよい。フィラーは、例えば、ガラス繊維、シリカ、炭酸カルシウム、クレー、タルク、マイカ、酸化チタン、カーボンブラック等の無機材料である。高剛性などの観点から、一実施形態に係るフィラーは、タルクでもよい。フィラーのMFRは、例えば1g/10分未満である。フィラーのMFRは、0.8g/10分以下でもよいし、0.5g/10分以下でもよいし、0.3g/10分以下でもよいし、0.1g/10分以下でもよい。
ベース樹脂への分散性などの観点から、フィラーは、上記無機材料と、当該無機材料を被覆する被覆材とを有してもよい。被覆材は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンである。被覆材は、低密度ポリエチレンでもよい。この場合、ベース樹脂に対するフィラーの分散性を向上しつつ、樹脂組成物の比重を抑えられる。フィラーの全量を基準として、被覆材の含有量は、例えば20質量%以上40質量%以下である。当該含有量は、24質量%以上でもよいし、28質量%以上でもよい。また、上記含有量は、36質量%以下でもよいし、32質量%以下でもよい。フィラーが被覆材を含む場合、樹脂組成物における樹脂の含有量は、被覆材の含有量も考慮される。
上記(A)~(C)を含む混合物は、例えば溶融混練など公知の方法によって製造される。混合物は、上記(A)~(C)と、添加剤が加えられることによって製造されてもよい。または、上記混合物に添加物が加えられることによって、樹脂組成物が製造されてもよい。あるいは、添加剤が加えられることなく、上記混合物に相当する樹脂組成物が製造されてもよい。添加物は、例えば、可塑剤、粘着付与剤、染料、顔料、酸化防止剤、静電防止剤、接着剤、粘着防止剤、スリップ剤、熱安定剤、光安定剤、発泡剤、着色剤、などを含み得る。
一実施形態では、上記混合物を含む樹脂組成物のMFRは、例えば5g/10分未満である。樹脂組成物のMFRは、3g/10分以下でもよいし、1g/10分以下でもよいし、0.8g/10分以下でもよいし、0.5g/10分以下でもよい。樹脂組成物が押出成形及び/または真空成形される場合、樹脂組成物のMFRは、1g/10分以下であることが好ましく、0.8g/10分以下であることがより好ましく、0.5g/10分以下であることがさらに好ましい。なお、射出成形用の樹脂組成物のMFRは、一般には少なくとも5g/10分以上であり、好ましくは10g/10分以上である。
(成形体)
次に、図1を参照しながら、上記樹脂組成物の成形体の一例について説明する。図1は、実施形態に係る樹脂組成物の成形体を示す模式断面図である。図1に示される成形体1は、上記樹脂組成物から形成されるシート状の部材である。一実施形態では、成形体1は、押出成形されたシート状部材の真空成形体である。常温下における成形体1の比重は、上記樹脂組成物の比重と同一または実質的に同一であり、1.05以下である。成形体1上には、プライマー層、カラーベース層、カバー層等が設けられてもよい。成形体1の厚さは、特に限定されないが、例えば1mm以上5mm以下である。なお、成形体1の比重は、例えば液浸法によって測定される。
次に、図1を参照しながら、上記樹脂組成物の成形体の一例について説明する。図1は、実施形態に係る樹脂組成物の成形体を示す模式断面図である。図1に示される成形体1は、上記樹脂組成物から形成されるシート状の部材である。一実施形態では、成形体1は、押出成形されたシート状部材の真空成形体である。常温下における成形体1の比重は、上記樹脂組成物の比重と同一または実質的に同一であり、1.05以下である。成形体1上には、プライマー層、カラーベース層、カバー層等が設けられてもよい。成形体1の厚さは、特に限定されないが、例えば1mm以上5mm以下である。なお、成形体1の比重は、例えば液浸法によって測定される。
成形体1は、例えば自動車部品等の立体物に貼り付けられる部材でもよい。この場合、成形体1の形状は、上記立体物に沿った形状を有し得る。以下にて、所望の形状を有する成形体1の製造方法の一例を、図2~図4を参照しながら説明する。図2、図3、及び図4(a),(b)のそれぞれは、成形体の製造方法の一例を示す模式図である。
まず、上記樹脂組成物を押出成形によってシート状の成形体1に加工する。例えば、図2に示されるように、押出成形装置100を用いて、樹脂組成物からシート状の成形体1を形成する。この場合、最初に押出成形装置100のホッパ101に樹脂組成物Rを投入する。このとき、樹脂組成物自体を投入してもよいし、上記(A)~(C)を別々または同時に投入してもよい。樹脂組成物、上記(A)等は、固体でもよいし、液体でもよい。続いて、シリンダ102内にて樹脂組成物を加熱溶融すると共に、スクリュー103にて当該樹脂組成物を混連する。続いて、シリンダ102からダイス104を介して押出成形装置100の外部へ樹脂組成物を押し出す。押し出された樹脂組成物は、冷却ロール110によって冷却されると共にシート状に成形される。これにより、シート状の成形体1が形成される。
次に、図3に示されるように、シート状の成形体1を加熱装置200に収容する。このとき、成形体1は、加熱装置200のクランパ201,202によって、水平方向に引っ張られた状態に維持される。続いて、ヒータ203,204によって成形体1を加熱する。これにより、成形体1を加工しやすくする。このとき、成形体1が上記樹脂組成物の成形物であるため、成形体1にドローダウンが発生しにくい。次に、図4(a)に示されるように、加熱された成形体1を真空成形装置300に収容する。そして、真空成形装置300の駆動部301を駆動させることによって、型302を成形体1に押し付ける。これにより、成形体1が伸長する。次に、図4(b)に示されるように、型302と成形体1との間の空気を吸引する。これにより、成形体1は、型302の表面に沿った形状に変形する。以上によって、型302の形状に相当する成形体1が製造される。
一実施形態では、常温下において、成形体1の曲げ弾性率は、1300MPa以上である。曲げ弾性率が1300MPa以上であることにより、成形体1は、従来のポリプロピレン系樹脂組成物の成形体よりも高い剛性を有し得る。常温下において、成形体1の曲げ弾性率は、1400MPa以上でもよいし、1500MPa以上でもよいし、1600MPa以上でもよい。成形体1の製造コスト等の観点から、常温下における成形体1の曲げ弾性率は、例えば2500MPa以下、2200MPa以下、2000MPa以下、1900MPa以下、もしくは1850MPa以下である。成形体1の曲げ弾性率は、JIS K 7171:2016もしくはISO 178:2010に定められる方法に沿って測定される。
成形体1の曲げ弾性率は、上記樹脂組成物から形成される試料の曲げ弾性率、もしくは、成形体1を加工した試料の曲げ弾性率に相当する。前者の場合、成形体1の形成方法と同様の形成方法にて、樹脂組成物から試料が形成されてもよい。後者の場合、成形体1の性能変化の防止の観点から、成形体1は、冷間加工されてもよい。例えば、成形体1から切削されたパーツが、試料に相当する。当該パーツには研磨等がなされてもよい。一方、成形体1を溶融し、かつ、所望の寸法に成形された構造物の曲げ弾性率は、成形体の曲げ弾性率には相当しない。後述するシャルピー衝撃値、荷重たわみ温度、耐高速衝撃性、耐寒高速衝撃性も同様である。曲げ弾性率の測定のためにJIS K 7171:2016に定められる方法が採用される場合、長辺:60mm、短辺:25mm、厚さ:3mmの寸法を有する試料が用いられてもよい。曲げ弾性率の測定として、例えば、株式会社島津製作所製のオートグラフ(AGS-5KNA)等が用いられてもよい。なお、以下にて説明する成形体1の特性のうち、後述するシャルピー衝撃値、荷重たわみ温度、耐高速衝撃性、及び耐寒高速衝撃性を測定するときも、上述した方法のいずれかにて準備される試料が用いられる。
一実施形態では、常温下において、成形体1のシャルピー衝撃値は、35kJ/m2以上である。常温下におけるシャルピー衝撃値が35kJ/m2以上であることにより、成形体1は、従来のABS系樹脂組成物の成形体よりも高い耐衝撃性を有し得る。常温下において、成形体1のシャルピー衝撃値は、40kJ/m2以上でもよいし、50kJ/m2以上でもよいし、60kJ/m2以上でもよい。成形体1の製造コスト等の観点から、常温下における成形体1のシャルピー衝撃値は、例えば100kJ/m2以下、90J/m2以下、80kJ/m2以下、もしくは70kJ/m2以下である。なお、ABS系樹脂組成物は、ABS樹脂を主成分とする樹脂組成物である。
一実施形態では、低温下において、成形体1のシャルピー衝撃値は、10kJ/m2以上である。低温下におけるシャルピー衝撃値が10kJ/m2以上であることにより、成形体1は、従来のポリプロピレン系樹脂組成物、ならびに、従来のABS系樹脂組成物の成形体よりも高い耐寒衝撃性を有し得る。低温下において、成形体1のシャルピー衝撃値は、15kJ/m2以上でもよいし、20kJ/m2以上でもよいし、25kJ/m2以上でもよいし、30kJ/m2以上でもよい。成形体1の製造コスト等の観点から、低温下における成形体1のシャルピー衝撃値は、例えば65kJ/m2以下、50kJ/m2以下、40kJ/m2以下、35kJ/m2以下、もしくは30kJ/m2以下である。
常温下及び低温下のいずれにおいても、成形体1のシャルピー衝撃値は、JIS K 7111-1:2012に定められる方法に沿って測定される。常温下及び低温下のいずれにおいても、成形体1のシャルピー衝撃値は、上記樹脂組成物から形成される試料のシャルピー衝撃値、もしくは、成形体1を加工した試料のシャルピー衝撃値に相当する。シャルピー衝撃値の測定のためにJIS K 7111-1:2012に定められる方法が採用される場合、長辺:80mm、短辺:10mm、厚さ:3mmの寸法を有する試料が用いられてもよい。シャルピー衝撃値の測定として、例えば、株式会社東洋精機製作所の衝撃試験機(DG-UB)等が用いられてもよい。
一実施形態では、成形体1の荷重たわみ温度は、90℃以上である。荷重たわみ温度が90℃以上であることにより、成形体1は、従来のポリプロピレン系樹脂組成物、ならびに、従来のABS系樹脂組成物の成形体よりも高い耐熱性を有し得る。また、例えば図2に示される加熱装置200にて成形体1を加熱する場合など、成形体1は、その自重にて撓みにくくなる。すなわち、加熱された成形体1にドローダウンが発生しにくくなる。このため、成形体1の一部(特に、中央部分)に樹脂組成物が集まりにくい。よって、成形体1の厚さムラが発生しにくくなる。成形体1の製造コスト等の観点から、成形体1の荷重たわみ温度は、例えば100℃以下、98℃以下、もしくは95℃以下である。
成形体1の荷重たわみ温度は、上記樹脂組成物から形成される試料の荷重たわみ温度、もしくは、成形体1を加工した試料の荷重たわみ温度に相当する。成形体1の荷重たわみ温度は、JIS K 7191-2:2015に定められる方法に沿って測定される。例えば、成形体1の荷重たわみ温度は、例えば試料に0.45MPaの荷重をかけつつ加熱し、当該試料の撓みが所定値以上になったときの温度とする。荷重たわみ温度の測定においては、長辺:127mm、短辺:12.7mm、厚さ:3mmの寸法を有する試料が用いられてもよい。荷重たわみ温度の測定として、例えば、株式会社安田精機製作所のヒートデストーションテスター(148-HD)等が用いられてもよい。
一実施形態では、190℃における成形体1のメルトテンションは、45mN以上である。当該メルトテンションが45mN以上であることにより、真空成形による成形体1の製造が良好に実施される。例えば、図4(a),(b)に示されるように成形体1を加工する場合、成形体1の全体が均一に伸びる傾向がある。換言すると、成形体1のメルトテンションが高いほど、加工後の成形体1の厚さムラが生じにくくなる。なお、樹脂組成物のメルトフローレートが低いほど、成形体1のメルトテンションが高い傾向がある。
190℃における成形体1のメルトテンションは、上記樹脂組成物から形成される試料のメルトテンション、もしくは、成形体1を加工した試料のメルトテンションに相当する。例えば以下の方法に沿って測定される。まず、成形体1を粉砕する。続いて、キャピログラフ(株式会社東洋精機製作所製、P-C)に含まれる加熱炉にて粉砕物を溶融する。このとき、加熱炉は、190℃に設定される。続いて、加熱炉に取り付けられるオリフィス(オリフィス径:1.0mm、オリフィス長さ:10.0mm)から押し出される糸状の樹脂を、滑車を経由して引き取り装置にて引き取る。当該引き取り装置は、1.57m/分の速度にて糸状の樹脂を引き取る。そして、引き取り装置が糸状の樹脂を引き取るときに滑車にかかる張力の大きさを、成形体1のメルトテンションとした。
例えば、成形体1が車両外装材に用いられる場合、飛び石などの高速で移動する物体が成形体1に衝突することがある。よって、成形体1が車両外装材に用いられる場合、常温における高速移動物体に対する耐衝撃性(耐高速衝撃性)が考慮されてもよい。加えて、低温下における高速移動物体に対する耐衝撃性(耐寒高速衝撃性)が考慮されてもよい。一実施形態では、成形体1の耐高速衝撃値は、例えば25J以上である。また、成形体1の耐寒高速衝撃値は、例えば30J以上、又は35J以上である。耐高速衝撃値及び耐寒高速衝撃値が上記範囲内であることにより、成形体1は、従来のABS系樹脂組成物の成形体よりも高い耐高速衝撃性を有し得る。成形体1の製造コスト等の観点から、常温下における成形体1の耐高速衝撃値は、例えば40J以下である。なお、成形体1の耐高速衝撃値及び耐寒高速衝撃値は、成形体1を加工した試料の耐高速衝撃値及び耐寒高速衝撃値、もしくは、上記樹脂組成物から形成される試料の耐高速衝撃値及び耐寒高速衝撃値に相当する。
成形体1の耐高速衝撃性及び耐寒高速衝撃性は、JIS K 7211-1:2006に定められる方法に沿って測定される。成形体1の耐高速衝撃性及び耐寒高速衝撃性は、例えば、以下に示す方法に沿って測定される。まず、所定の寸法を有する試料を準備する。次に、試料を高速衝撃試験機(例えば、株式会社島津製作所製「HTM-1」)の試料台に固定する。試験片固定治具の内径は3/2インチとした。ここで、高速衝撃試験機には、ピストンに連動する鉄製の打ち抜き治具(先端:半球形状、径:1/2インチ)が装着される。次に、上記治具が試料を打ち抜くように、上記高速衝撃試験機のピストンを秒速5mにて駆動させる。ここで、試料が打ち抜かれたときの破壊エネルギーを測定する。以上に説明した破壊エネルギーの測定は、常温下(23℃)と、低温下(-30℃)とのそれぞれにおいて実施される。これにより、成形体1の耐高速衝撃性及び耐寒高速衝撃性が得られる。なお、低温下においても、治具に打ち抜かれた試料は、延性破壊される。
以上に説明した一実施形態に係る樹脂組成物と、当該樹脂組成物の成形体との作用効果について、以下にて説明する。まず、上述したように、樹脂組成物の成形体として、剛性、重さ、コストなどの特性が求められることがある。従来では、重さ及びコストを重視する場合にはポリプロピレンが主成分として用いられ、剛性を重視する場合にはABS樹脂が主成分として用いられる。ここで、ポリプロピレンを主成分とした樹脂組成物の成形体において重さ及びコストに加え剛性を重視する場合、例えば、ホモポリプロピレン又は無機フィラーを上記樹脂組成物に多量に含有させることが挙げられる。この場合、成形体の耐衝撃性(特に、耐寒高速衝撃性)が顕著に減少する傾向がある。よって、従来においては、重さ及びコストだけでなく、高い剛性と耐衝撃性の両立は困難であった。
これに対して一実施形態に係る樹脂組成物では、ベース樹脂と、エラストマーと、フィラーとの混合物を含む。この混合物において、ベース樹脂の主成分は、ポリプロピレンである。これにより、例えばABS樹脂が樹脂組成物の主成分である場合と比較して、樹脂組成物を安価に形成できると共に、樹脂組成物の低比重化を実現可能である。このため、例えば樹脂組成物が車両用部品等に用いられる場合、車両のコストダウン及び軽量化に寄与できる。加えて、ベース樹脂は、高密度ポリエチレンを含む。このため、樹脂組成物から形成される成形体1の剛性を向上できる。加えて、ポリプロピレンを主成分とすると共に高密度ポリエチレンを含むベース樹脂、フィラー、ならびに、エラストマーが、上述した含有量の範囲内にて混合されることによって製造される樹脂組成物の成形体1は、以下にも示されるように、低比重でありながら、比較的高い剛性と耐衝撃性(特に、耐寒高速耐衝撃性)とを兼ね揃え得る。
上述した成形体1を例えば車両外装材に用いる場合、常温下において、成形体1の比重は1.05以下である。このため、成形体1は、ABS樹脂を主成分とした成形体と比較して、低比重化を実現できる。加えて、成形体1の曲げ弾性率は、1300Mpa以上2500MPa以下である。このため、成形体1は、従来のポリプロピレン系樹脂組成物を主成分とした成形体と比較して、高い剛性を有することができる。
ここで、量産性、量産コスト等の観点から、樹脂組成物の成形方法として、射出成形法が一般的である。このため、射出成形によって成形される成形物の特性が要求値を満たすための樹脂組成物(射出成形用樹脂組成物)の研究開発は多くなされている。これに対して、射出成形法とは異なる成形法に適した樹脂組成物の研究開発は、射出成形用樹脂組成物と比較してさほど盛んではないと言える。ましてや、射出成形法とは異なる成形法に適した樹脂組成物の成形物であって、低コスト及び低比重だけでなく、高い剛性と耐衝撃性とを両立可能な成形物の研究開発は、ほぼなされていない傾向がある。これに対して、一実施形態に係る樹脂組成物のメルトフローレートは、5g/10分未満でもよい。この場合、上記樹脂組成物の成形方法として、射出成形法よりもむしろ押出成形法及び真空成形法の方が好適である。にもかかわらず、上述したように、上記樹脂組成物の成形体1は、低コストを実現可能であるとともに低比重でありながら、比較的高い剛性と耐衝撃性とを兼ね揃え得る。換言すると、一実施形態に係る樹脂組成物の成形体1は、射出成形にて形成されていないにもかかわらず、樹脂組成物の低コストを実現可能であるとともに低比重でありながら、比較的高い剛性と耐衝撃性とを兼ね揃え得る。
一実施形態では、ベース樹脂の全量を基準として、ポリプロピレンの含有量は、60質量%以上90質量%以下でもよい。この場合、樹脂組成物から形成される成形体1の剛性を良好に確保できる。
一実施形態では、エラストマーのガラス転移点は、-40℃以下でもよい。この場合、例えば-30℃といった低温下においても、エラストマーの弾性が発揮される。このため、樹脂組成物から形成される成形体1の耐寒衝撃性を向上できる。加えて、低温下においても、成形体1が脆くなりにくいので、成形体1に脆性破壊が発生しにくく、延性破壊が発生しやすい。
一実施形態では、フィラーは、タルクと、タルクの少なくとも一部を被覆する被覆材とを有し、被覆材は、ポリオレフィンを含んでもよい。この場合、フィラーはべース樹脂になじみやすくなるので、混合物中におけるフィラーの分散性を向上できる。
一実施形態では、常温下において、成形体1の曲げ弾性率は1400Mpa以上1900MPa以下でもよい。この場合、成形体1は、その成形性を維持しつつ、車両外装材として十分な剛性を示すことができる。
一実施形態では、常温下において、成形体1のシャルピー衝撃値は35kJ/m2以上100kJ/m2以下でもよい。この場合、例えば単にポリプロピレンを主成分とした成形体、及び、ABS樹脂を主成分とした成形体よりも高い耐衝撃性を有する成形体1を得ることができる。
一実施形態では、低温下において、成形体1のシャルピー衝撃値は、10kJ/m2以上65kJ/m2以下でもよい。この場合、例えば単にポリプロピレンを主成分とした成形体、及び、ABS樹脂を主成分とした成形体よりも高い耐寒衝撃性を有する成形体1を得ることができる。
一実施形態では、成形体1の荷重たわみ温度は、90℃以上110℃以下でもよい。この場合、従来のポリプロピレン系樹脂組成物、ならびに、従来のABS系樹脂組成物の成形体よりも高い耐熱性を有する成形体1を得ることができる。
一実施形態では、190℃における成形体1のメルトテンションは、45mN以上でもよい。この場合、成形体1の成形時にドローダウンが好適に発生しにくくなり、成形体1の厚みムラがより発生しにくくなる。
一実施形態では、フィラーとして特にタルクが用いられ、エラストマーとして特にガラス転移点が-40℃以下であるエラストマーが用いられる場合、樹脂組成物の成形体1は、低比重でありながら、比較的高い剛性と耐衝撃性を兼ね揃え得る。
本開示の一側面に係る樹脂組成物、車両外装材、及び車両外装材の製造方法は、上記実施形態に限られない。
1…成形体。
Claims (17)
- ベース樹脂と、エラストマーと、フィラーとの混合物を含み、
前記混合物の全量を基準として、
前記ベース樹脂の含有量は、55質量%以上80質量%以下であり、
前記エラストマーの含有量は、5質量%以上25質量%以下であり、
前記フィラーの含有量は、5質量%以上30質量%以下であり、
前記ベース樹脂は、主成分であるポリプロピレンと、高密度ポリエチレンとを含む、
樹脂組成物。 - 前記ベース樹脂の全量を基準として、前記ポリプロピレンの含有量は、60質量%以上90質量%以下である、請求項1に記載の樹脂組成物。
- 前記エラストマーのガラス転移点は、-40℃以下である、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
- 前記フィラーは、タルクと、前記タルクの少なくとも一部を被覆する被覆材とを有し、
前記被覆材は、ポリオレフィンを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の樹脂組成物。 - 前記ポリオレフィンは、低密度ポリエチレンである、請求項4に記載の樹脂組成物。
- 常温下における前記混合物の比重は、1.05以下である、請求項1~5のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
- 車両外装材用樹脂組成物である、請求項1~6のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
- メルトフローレートは、5g/10分未満である、請求項1~6のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
- 請求項8に記載の樹脂組成物を押出成形によってシート状の成形体に加工する工程と、
前記成形体を真空成形によって加工する工程と、を備える、車両外装材の製造方法。 - 樹脂及びフィラーを含む成形体を有する車両外装材であって、
常温下において、前記成形体の比重は1.05以下であり、前記成形体の曲げ弾性率は1300MPa以上2500MPa以下である、
車両外装材。 - 常温下において、前記成形体の曲げ弾性率は1400MPa以上1900MPa以下である、請求項10に記載の車両外装材。
- 常温下において、前記成形体のシャルピー衝撃値は35kJ/m2以上100kJ/m2以下である、請求項10または11に記載の車両外装材。
- 低温下において、前記成形体のシャルピー衝撃値は、10kJ/m2以上65kJ/m2以下である、請求項10~12のいずれか一項に記載の車両外装材。
- 前記成形体の荷重たわみ温度は、90℃以上110℃以下である、請求項10~13のいずれか一項に記載の車両外装材。
- 190℃における前記成形体のメルトテンションは、45mN以上である、請求項10~14のいずれか一項に記載の車両外装材。
- 前記樹脂は、ポリプロピレン、高密度ポリエチレン、及びエラストマーを含む、請求項10~15のいずれか一項に記載の車両外装材。
- 前記成形体は、押出成形されたシート状部材の真空成形体である、請求項10~16のいずれか一項に記載の車両外装材。
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