JP2023017342A - 木鋼ハイブリッド部材の耐火構造 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、木材と鋼材からなる木鋼ハイブリッド部材の耐火構造に関するものである。
従来、本特許出願人は、鉄骨梁を木材(以下、木質被覆材という。)で耐火被覆した、1時間の耐火性能を有する構造部材である木鋼ハイブリッド梁を開発している(例えば、特許文献1を参照)。この木質被覆材は、火災中に0.7~1.0mm/分で燃え進むが、火災後に燃え止まることで、荷重を支持する鉄骨梁の温度上昇を抑制し、崩壊を防ぐ役割を担っている。
木鋼ハイブリッド梁を実際に施工する場合、予め工場で鉄骨梁に木質被覆材を取り付けた部材を現場に搬入する。ただし、鉄骨梁の継手部については、現場で施工するため、工場で予め木質被覆材を取り付けることができない。したがって、継手部の木質被覆材は現場で取り付ける必要がある。
しかし、現場で継手部の木質被覆材を取り付ける作業は、建方が完了した後に行うので、高所での作業となり、工場で施工するほどの施工精度を出すのは困難である。また、継手部に取り付ける木質被覆材は、乾燥収縮や加工時の誤差等により、寸法の誤差が生じる。これらの要因によって、工場で施工した木質被覆材と現場で施工した木質被覆材の間には隙間が生じる可能性が考えられる。このような隙間が生じた場合、火災時にこの隙間が弱点となり、所定の耐火性能を担保できないおそれがある。
また、従来例の図6に示すように、継手部では梁1同士をプレートとボルト2で接合することが考えられるが、フランジ面3やウェブ面4からボルト頭やねじ部が突き出ているので、この突き出たボルト頭やねじ部の分だけ木質被覆材5の被覆厚さを小さくしなければならない。木質被覆材5の被覆厚さが小さくなると、火災時にこの木質被覆材5が早期に燃え抜け、継手部から燃焼が進行していき、所定の耐火性能を確保できないおそれがある。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、継手部の耐火性能を確保することができる木鋼ハイブリッド部材の耐火構造を提供することを目的とする。
上記した課題を解決するために、本発明に係る木鋼ハイブリッド部材の耐火構造は、鉄骨部材と、この鉄骨部材の表面を被覆する第一の木質被覆材からなる木鋼ハイブリッド部材同士を部材軸方向に突き合わせてボルト接合した継手部を被覆する第二の木質被覆材を備える耐火構造であって、第一の木質被覆材の小口面と、第二の木質被覆材の小口面との間に設けられた第一の無機系の耐火材を有するとともに、第二の木質被覆材の表面のうちボルト接合した部分に対向する面に設けられた第二の無機系の耐火材を有することを特徴とする。
また、本発明に係る他の木鋼ハイブリッド部材の耐火構造は、上述した発明において、第一および第二の無機系の耐火材は、木鋼ハイブリッド部材が取り付けられる施工現場で加工可能な乾式の耐火材であることを特徴とする。
また、本発明に係る他の木鋼ハイブリッド部材の耐火構造は、上述した発明において、第一および第二の木質被覆材の小口面同士があいじゃくり状に配置されることを特徴とする。
本発明に係る木鋼ハイブリッド部材の耐火構造によれば、鉄骨部材と、この鉄骨部材の表面を被覆する第一の木質被覆材からなる木鋼ハイブリッド部材同士を部材軸方向に突き合わせてボルト接合した継手部を被覆する第二の木質被覆材を備える耐火構造であって、第一の木質被覆材の小口面と、第二の木質被覆材の小口面との間に設けられた第一の無機系の耐火材を有するとともに、第二の木質被覆材の表面のうちボルト接合した部分に対向する面に設けられた第二の無機系の耐火材を有するので、火災時に第一の木質被覆材の小口面と第二の木質被覆材の小口面の間の隙間から熱が侵入しても、第一の無機系の耐火材によって木質被覆材が燃焼することを遅らせて、鋼材温度が上昇することを遅延させる。また、第二の木質被覆材の被覆厚さが小さい部分が燃え抜けても第二の無機系の耐火材が継手部の鉄骨部材に直接火炎を受けるのを防ぎ、鋼材温度の上昇を遅らせる。したがって、継手部の耐火性能を確保することができるという効果を奏する。
また、本発明に係る他の木鋼ハイブリッド部材の耐火構造によれば、第一および第二の無機系の耐火材は、木鋼ハイブリッド部材が取り付けられる施工現場で加工可能な乾式の耐火材であるので、施工現場での寸法合わせや施工が容易になるという効果を奏する。
また、本発明に係る他の木鋼ハイブリッド部材の耐火構造によれば、第一および第二の木質被覆材の小口面同士があいじゃくり状に配置されるので、火災時に小口面同士の隙間から熱が侵入した際の鉄骨部材の鋼材温度の上昇を遅らせることができる。また、第二の木質被覆材を第一の木質被覆材に直接ビス等で留め付けることが可能になり、施工性が向上するという効果を奏する。
以下に、本発明に係る木鋼ハイブリッド部材の耐火構造の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
図1(1)~(5)に示すように、本発明の実施の形態に適用される木鋼ハイブリッド部材10は、H形鋼からなる鉄骨梁12(鉄骨部材)と、鉄骨梁12の表面を被覆する木質被覆材14(第一の木質被覆材)からなる木鋼ハイブリッド梁部材である。継手部16においては、鉄骨梁12同士が部材軸方向(水平方向)に突き合わされ、鉄骨梁12のフランジ18とウェブ20同士がプレート22とボルト24で接合されている。継手部16は、木質被覆材26(第二の木質被覆材)で被覆されている。
本実施の形態の耐火構造100は、図1(2)に示すように、木質被覆材14の小口面14Aと、木質被覆材26の小口面26Aとの間に設けられた強化石膏ボード28(第一の無機系の耐火材)を有する。また、木質被覆材26の表面のうちボルト接合した部分に対向する面に積層して設けられた強化石膏ボード30、けい酸カルシウム板32(第二の無機系の耐火材)を有する。
木質被覆材14は、鉄骨梁12の上下左右を被覆する態様で設けられる集成材からなり、例えば1時間の耐火性能を持つヒバやカラマツなどの樹種で形成される。木質被覆材14は、鉄骨梁12に工場で施工される。
木質被覆材26は、継手部16の上下左右を被覆する態様で設けられる集成材(仕上木)からなり、例えば1時間の耐火性能を持つヒバやカラマツなどの樹種で形成される。木質被覆材26は、継手部16に施工現場で施工される。木質被覆材26の内側の表面には、ボルト24およびプレート22を収容するための凹部44が形成されている。凹部44は、ボルト接合した部分に対向する面を有する。
木質被覆材14、26の上面、下面、前後側面は面一に形成される。このため、継手部16では木質被覆材14、26が連続するような見栄えとなる。木質被覆材14、26の小口面14A、26A同士はあいじゃくり状に配置される。これにより、火災時に小口面14A、26Aの隙間から熱が侵入したときに、鉄骨梁12の鋼材温度の上昇を遅延させる一助となり得る。また、現場で施工する木質被覆材26をビス等で留付ける際に、あいじゃくりにすることによって、工場で施工する木質被覆材14側に直接留め付けることができる。
なお、図1(1)、(5)に示すように、木質被覆材14、26は、ラグスクリュー等の固定部材34で鉄骨梁12のウェブ20に固定される。この固定部材34は、板状の頭部36と軸状のねじ部38を有する金属製の棒状体である。ねじ部38は先端が尖っており、外周面にはねじ山が設けられている。固定部材34は、同一断面内でウェブ20の上側と下側とその間に設けた貫通穴40から木質被覆材14、26にねじ込まれている。貫通穴40は埋木42で塞がれている。固定部材34は、図1(1)に示すように、鉄骨梁12が延在する水平方向に所定の間隔で複数配置されるとともに、ねじ込まれる向きが水平方向に互い違いになるように配置されている。
強化石膏ボード28は、木質被覆材14、26の小口面14A、26Aに張り付けられる板状のものである。また、強化石膏ボード30は、木質被覆材26の凹部44に張り付けられる板状のものである。火災時に木質被覆材14、26の小口面14A、26A同士の隙間から熱が侵入しても、強化石膏ボード28によって木質被覆材14、26の燃焼を遅延することができる。これにより鋼材温度が上昇するのを遅延させる。また、ボルト頭・ねじ部によって被覆厚さが小さくなる部分に強化石膏ボード30およびけい酸カルシウム板32を積層して張り付けることで、被覆厚さが小さい木質被覆材26が燃え抜けても、強化石膏ボード30およびけい酸カルシウム板32が継手部16の鉄骨梁12に直接火炎を受けるのを防ぎ、鋼材温度の上昇を遅延させる。
強化石膏ボード28は、図2に示すように、略水平方向を向いた小口面14Aに沿って配置される強化石膏ボード28Aと、この強化石膏ボード28Aの外縁から小口面14Aと直交する方向に延びて木質被覆材14の内部に嵌め込まれる強化石膏ボード28Bで構成される。強化石膏ボード28Bは、隙間から熱が侵入した際に、この強化石膏ボード28Bによって木質被覆材14への燃焼を遅延させるために設けられる。
強化石膏ボード28、30は、厚いほど、木質被覆材14、26側への断熱効果と強化石膏ボードの吸熱効果が向上し、耐火性能が向上する。強化石膏ボード28、30の厚さは例えば15mm程度に設定してもよい。また、けい酸カルシウム板32は例えば6mm程度に設定してもよい。なお、けい酸カルシウム板の代わりに強化石膏ボード等の耐火材にしてもよい。強化石膏ボード28、30やけい酸カルシウム板32の厚さや積層枚数を増やすことで、耐火性能をさらに向上させることが可能である。
木質被覆材14の小口面14Aに強化石膏ボード28を増し張りする場合、図3に示すように、現場で施工する木質被覆材26を留め付けるための木下地48が必要となる。なお、図の例では、木質被覆材14側の小口面14Aに7枚の強化石膏ボード28を、木質被覆材26側の小口面26Aに1枚の強化石膏ボード28を張り付けた場合を示しているが、枚数は図3の例に限定されるものではない。
強化石膏ボード28同士の隙間には隙間充填材を充填するのが望ましい。隙間充填材には、無機系の隙間充填材(例えば炭酸カルシウム系充填材)や耐火目地用シーラントを用いてもよい。また、火災時に熱が侵入した場合に、加熱により発泡して隙間が埋まるようにするために、発泡性耐火被覆材(例えばタイカシート)を設けてもよい。この場合、例えば、図4に示すように、現場施工側の木質被覆材26を取り付ける前に、木質被覆材14の小口面14A、その小口面近傍のウェブ20などに隙間充填材50や発泡性耐火被覆材を張り付けておき、その後、現場施工側の木質被覆材26を取り付けることが望ましい。
本実施の形態によれば、火災時に木質被覆材14、26の小口面同士の間の隙間から熱が侵入しても、強化石膏ボード28によって木質被覆材14、26が燃焼するのを遅らせて、鋼材温度が上昇するのを遅延させる。また、継手部16の木質被覆材26の被覆厚さが小さい部分が燃え抜けても強化石膏ボード30およびけい酸カルシウム板32が継手部16の鉄骨梁12に直接火炎を受けるのを防ぎ、鋼材温度の上昇を遅らせる。したがって、継手部16の耐火性能を確保することができる。
継手部16に強化石膏ボード28、30やけい酸カルシウム板32といった、現場で加工可能な乾式の材料を用いることで、現場での寸法合わせや施工を容易に行うことができる。また、強化石膏ボード28、30の枚数を増やしたり、隙間充填材50を小口面の隙間に充填したりする等の耐火上の対策を追加することで、後述の耐火試験で検証した仕様以上の耐火性能を見込める。
次に、上記の耐火構造の施工方法の一例について説明する。
木質被覆材14の小口面14Aに強化石膏ボード28を張り付ける。また、木質被覆材26の小口面26Aに強化石膏ボード28を張り付けるとともに、木質被覆材26の凹部44に強化石膏ボード30およびけい酸カルシウム板32を張り付ける。
木質被覆材14の小口面14Aに強化石膏ボード28を張り付ける。また、木質被覆材26の小口面26Aに強化石膏ボード28を張り付けるとともに、木質被覆材26の凹部44に強化石膏ボード30およびけい酸カルシウム板32を張り付ける。
次に、木鋼梁の鉄骨梁12同士を部材軸方向に突き合わせて接合し、継手部16を施工する。その後、施工された継手部16の周囲に木質被覆材26を嵌め込む。
以上のように、本実施の形態では、木鋼梁の継手部16の耐火性能を向上させるために、工場で施工する木質被覆材14と現場で施工する木質被覆材26の小口面に強化石膏ボード28を設けるとともに、ボルト頭・ねじ部により被覆厚さが小さくなる部分に強化石膏ボード30とけい酸カルシウム板32を設けている。本実施の形態によれば、以下のような作用効果が得られる。
(1)工場で取り付ける木質被覆材14の小口面と現場で取り付ける木質被覆材26の小口面に強化石膏ボード28を張り付ける。これにより、火災時に木質被覆材14、26の小口面14A、26A同士の隙間から熱が侵入しても、強化石膏ボード28によって木質被覆材14、26の燃焼を遅延することができ、これにより鋼材温度が上昇するのを遅延させる。
(2)現場で取り付ける木質被覆材26において、ボルト頭・ねじ部によって被覆厚さが小さくなる部分には、強化石膏ボード30、けい酸カルシウム板32を張り付ける。継手部16の木質被覆材26の被覆厚さが小さい部分が燃え抜けても強化石膏ボード30およびけい酸カルシウム板32が継手部16の鉄骨梁12に直接火炎を受けるのを防ぎ、鋼材温度の上昇を遅らせる。したがって、継手部16の耐火性能を確保することができる。
<実施例>
次に、本発明の実施例について説明する。なお、以下に述べるのは、1時間の耐火試験で耐火性能を検証した仕様である。耐火試験で検証した木鋼ハイブリッド梁における継手部の外観は図1のとおりである。試験体に使用した鉄骨梁の寸法および鋼種は、BH-1000×150×16×19、全長3770mm(SS400)である。木質被覆材は、ヒバ集成材(対称異等級E95-F270)、一般部の被覆材厚さ80mm、木鋼ハイブリッド梁の断面寸法1167mm×317mmである。継手部の被覆材厚さの最も薄い部分は43.5mmである。
次に、本発明の実施例について説明する。なお、以下に述べるのは、1時間の耐火試験で耐火性能を検証した仕様である。耐火試験で検証した木鋼ハイブリッド梁における継手部の外観は図1のとおりである。試験体に使用した鉄骨梁の寸法および鋼種は、BH-1000×150×16×19、全長3770mm(SS400)である。木質被覆材は、ヒバ集成材(対称異等級E95-F270)、一般部の被覆材厚さ80mm、木鋼ハイブリッド梁の断面寸法1167mm×317mmである。継手部の被覆材厚さの最も薄い部分は43.5mmである。
(木質被覆材の小口面の強化石膏ボード)
工場で施工する木質被覆材と現場で施工する木質被覆材の小口面に強化石膏ボード15mmを1枚ずつ設けた。これにより、木質被覆材の小口面同士の隙間から熱が侵入しても、強化石膏ボードによって、木質被覆材の燃焼を遅延することができる。なお、耐火試験では小口面の強化石膏ボードの厚みを15mmとしたが、15mmよりも厚くしたり、ボードの枚数を増やすことで、木側への断熱効果と石膏ボードの吸熱効果が向上し、耐火性能が向上すると考えられる。
工場で施工する木質被覆材と現場で施工する木質被覆材の小口面に強化石膏ボード15mmを1枚ずつ設けた。これにより、木質被覆材の小口面同士の隙間から熱が侵入しても、強化石膏ボードによって、木質被覆材の燃焼を遅延することができる。なお、耐火試験では小口面の強化石膏ボードの厚みを15mmとしたが、15mmよりも厚くしたり、ボードの枚数を増やすことで、木側への断熱効果と石膏ボードの吸熱効果が向上し、耐火性能が向上すると考えられる。
(小口面と直交する強化石膏ボード)
現場で施工する木質被覆材の小口面には、図2に示すように、小口面と直交する方向に強化石膏ボード15mmを嵌め込んだ。隙間から熱が侵入した際に、この強化石膏ボードによって木質被覆材の燃焼を遅延させるためである。耐火試験体は、小口面と直交する強化石膏ボードを、工場で施工する木質被覆材側に20mm程度入れ込んだ。なお、20mm以上入れ込むことで、小口面と直交する強化石膏ボードの裏側の木質被覆材への燃焼をより長く遅延でき、耐火性能が向上すると考えられる。
現場で施工する木質被覆材の小口面には、図2に示すように、小口面と直交する方向に強化石膏ボード15mmを嵌め込んだ。隙間から熱が侵入した際に、この強化石膏ボードによって木質被覆材の燃焼を遅延させるためである。耐火試験体は、小口面と直交する強化石膏ボードを、工場で施工する木質被覆材側に20mm程度入れ込んだ。なお、20mm以上入れ込むことで、小口面と直交する強化石膏ボードの裏側の木質被覆材への燃焼をより長く遅延でき、耐火性能が向上すると考えられる。
(木質被覆材の小口面のあいじゃくり)
木鋼梁の継手部における木質被覆材の小口面同士をあいじゃくりにした。これにより、火災時に隙間から熱が侵入したときに、鉄骨梁の鋼材温度の上昇を遅延させる一助となり得る。また、現場で施工する木質被覆材をビス等で留付ける際に、あいじゃくりにすることによって、工場で施工する木質被覆材側に直接留め付けることができる。
木鋼梁の継手部における木質被覆材の小口面同士をあいじゃくりにした。これにより、火災時に隙間から熱が侵入したときに、鉄骨梁の鋼材温度の上昇を遅延させる一助となり得る。また、現場で施工する木質被覆材をビス等で留付ける際に、あいじゃくりにすることによって、工場で施工する木質被覆材側に直接留め付けることができる。
(隙間の充填)
試験体には、隙間充填材は施工していない。
試験体には、隙間充填材は施工していない。
(ボルト部・ねじ部により被覆厚さが小さくなる箇所の被覆仕様)
試験体では、現場で施工する木質被覆材側に強化石膏ボード(厚さ15mm)とけい酸カルシウム板(厚さ6mm)を取り付けた。また、鉄骨梁の上下フランジのボルト頭部分には、図1(2)に示すように、ボルト頭の形に切り抜いた強化石膏ボード(厚さ15mm)を取り付けた。図1(1)、(4)に示すように、上下フランジの外側には強化石膏ボード(厚さ15mm)とけい酸カルシウム板(厚さ6mm)を取り付け、それ以外のところは強化石膏ボード(厚さ15mm)を取り付けた。
試験体では、現場で施工する木質被覆材側に強化石膏ボード(厚さ15mm)とけい酸カルシウム板(厚さ6mm)を取り付けた。また、鉄骨梁の上下フランジのボルト頭部分には、図1(2)に示すように、ボルト頭の形に切り抜いた強化石膏ボード(厚さ15mm)を取り付けた。図1(1)、(4)に示すように、上下フランジの外側には強化石膏ボード(厚さ15mm)とけい酸カルシウム板(厚さ6mm)を取り付け、それ以外のところは強化石膏ボード(厚さ15mm)を取り付けた。
(耐火試験結果)
次に、上記の試験体を用いた継手部における1時間の耐火試験の結果について説明する。なお、比較例として、木質被覆材の小口面同士の間に強化石膏ボードを設けず、現場施工する木質被覆材におけるボルトによって被覆厚さが小さくなる部分に強化石膏ボードやけい酸カルシウム板も設けず、木質被覆材のみで継手部を被覆した仕様についても耐火試験を行っている。
次に、上記の試験体を用いた継手部における1時間の耐火試験の結果について説明する。なお、比較例として、木質被覆材の小口面同士の間に強化石膏ボードを設けず、現場施工する木質被覆材におけるボルトによって被覆厚さが小さくなる部分に強化石膏ボードやけい酸カルシウム板も設けず、木質被覆材のみで継手部を被覆した仕様についても耐火試験を行っている。
図5に、耐火試験による各仕様の鋼材温度推移を示す。図5(1)~(5)が本実施例に相当し、(6)~(10)が比較例に相当する。なお、図中の凡例において、T-1~3は継手部(上フランジ接合プレート中央上面)の温度、T-4~6は継手部(下フランジ接合プレート中央下面)の温度である。T-9、10は継手部近傍(上フランジ接合プレート端部近傍)の温度、T-11、12は継手部近傍(下フランジ接合プレート端部近傍)の温度、T-13は継手部近傍(T-9、11間のウェブ面)の温度である。T-14、15は接合プレート端部から100mm離れた第二の木質被覆材の位置(上フランジ上面)の温度(現場で取り付ける木質被覆材側の温度)、T-16、17は接合プレート端部から100mm離れた第二の木質被覆材の位置(下フランジ下面)の温度、T-18は継手部近傍(T-14、16間のウェブ面)の温度である。T-19~21は小口面位置(上フランジ上面)の温度、T-22~24は小口面位置(下フランジ下面)、T-25、26は小口面位置(ウェブ面)の温度である。T-27、28は小口面位置から100mm離れた第一の木質被覆材の位置(上フランジ上面)の温度(工場で取り付ける木質被覆材側の温度)、T-29、30は小口面位置から100mm離れた第一の木質被覆材の位置(下フランジ下面)の温度、T-31は小口面位置から100mm離れた第一の木質被覆材の位置(ウェブ面)の温度である。
比較例では、1時間加熱後、放冷24時間以内に鋼材温度が450℃以上まで達した。特に、工場施工した木質被覆材と現場施工した木質被覆材が取り合う部分(図5(9))の温度上昇が最も早く起こっている。取合い部の隙間から熱気が入り込み、赤熱が継続した結果、発炎まで至り、鋼材温度が450℃を超えたと考えられる。
一方、本実施例では、1時間の加熱後、放冷24時間以内の鋼材の最高温度は255.2℃であり、鋼材の許容温度である450℃を下回った。また、工場施工部と現場施工部が取り合う部分は、1時間の加熱終了まで100℃以下であったことから、小口面の強化石膏ボードによる木質被覆材の燃焼の遅延の効果が見られたと考えられる。さらに、継手部も加熱開始から25時間の間、急激な温度上昇がみられないことから、強化石膏ボードとけい酸カルシウム板を設けたことで鋼材温度の上昇が遅延されたと考えられる。
以上より、継手部における木質被覆材同士の小口面に強化石膏ボードを設けるとともに、ボルト頭・ねじ部により被覆厚さが小さくなる部分に強化石膏ボードやけい酸カルシウム板を設けることで耐火性能が向上することが示せた。
以上説明したように、本発明に係る木鋼ハイブリッド部材の耐火構造によれば、鉄骨部材と、この鉄骨部材の表面を被覆する第一の木質被覆材からなる木鋼ハイブリッド部材同士を部材軸方向に突き合わせてボルト接合した継手部を被覆する第二の木質被覆材を備える耐火構造であって、第一の木質被覆材の小口面と、第二の木質被覆材の小口面との間に設けられた第一の無機系の耐火材を有するとともに、第二の木質被覆材の表面のうちボルト接合した部分に対向する面に設けられた第二の無機系の耐火材を有するので、火災時に第一の木質被覆材の小口面と第二の木質被覆材の小口面の間の隙間から熱が侵入しても、第一の無機系の耐火材によって木質被覆材が燃焼することを遅らせて、鋼材温度が上昇することを遅延させる。また、第二の木質被覆材の被覆厚さが小さい部分が燃え抜けても第二の無機系の耐火材が継手部の鉄骨部材に直接火炎を受けるのを防ぎ、鋼材温度の上昇を遅らせる。したがって、継手部の耐火性能を確保することができるという効果を奏する。
また、本発明に係る他の木鋼ハイブリッド部材の耐火構造によれば、第一および第二の無機系の耐火材は、木鋼ハイブリッド部材が取り付けられる施工現場で加工可能な乾式の耐火材であるので、施工現場での寸法合わせや施工が容易になる。
また、本発明に係る他の木鋼ハイブリッド部材の耐火構造によれば、第一および第二の木質被覆材の小口面同士があいじゃくり状に配置されるので、火災時に小口面同士の隙間から熱が侵入した際の鉄骨部材の鋼材温度の上昇を遅らせることができる。また、第二の木質被覆材を第一の木質被覆材に直接ビス等で留め付けることが可能になり、施工性が向上する。
以上のように、本発明に係る木鋼ハイブリッド部材の耐火構造は、木材と鋼材からなる木鋼ハイブリッド部材に有用であり、特に、継手部の耐火性能を確保するのに適している。
10 木鋼ハイブリッド部材
12 鉄骨梁(鉄骨部材)
14 木質被覆材(第一の木質被覆材)
14A,26A 小口面
16 継手部
18 フランジ
20 ウェブ
22 プレート
24 ボルト
26 木質被覆材(第二の木質被覆材)
28 強化石膏ボード(第一の無機系の耐火材)
30 強化石膏ボード(第二の無機系の耐火材)
32 けい酸カルシウム板(第二の無機系の耐火材)
34 固定部材
36 頭部
38 ねじ部
40 貫通穴
42 埋木
44 凹部
46 ビス
48 木下地
50 隙間充填材
100 木鋼ハイブリッド部材の耐火構造
12 鉄骨梁(鉄骨部材)
14 木質被覆材(第一の木質被覆材)
14A,26A 小口面
16 継手部
18 フランジ
20 ウェブ
22 プレート
24 ボルト
26 木質被覆材(第二の木質被覆材)
28 強化石膏ボード(第一の無機系の耐火材)
30 強化石膏ボード(第二の無機系の耐火材)
32 けい酸カルシウム板(第二の無機系の耐火材)
34 固定部材
36 頭部
38 ねじ部
40 貫通穴
42 埋木
44 凹部
46 ビス
48 木下地
50 隙間充填材
100 木鋼ハイブリッド部材の耐火構造
Claims (3)
- 鉄骨部材と、この鉄骨部材の表面を被覆する第一の木質被覆材からなる木鋼ハイブリッド部材同士を部材軸方向に突き合わせてボルト接合した継手部を被覆する第二の木質被覆材を備える耐火構造であって、
第一の木質被覆材の小口面と、第二の木質被覆材の小口面との間に設けられた第一の無機系の耐火材を有するとともに、第二の木質被覆材の表面のうちボルト接合した部分に対向する面に設けられた第二の無機系の耐火材を有することを特徴とする木鋼ハイブリッド部材の耐火構造。 - 第一および第二の無機系の耐火材は、木鋼ハイブリッド部材が取り付けられる施工現場で加工可能な乾式の耐火材であることを特徴とする請求項1に記載の木鋼ハイブリッド部材の耐火構造。
- 第一および第二の木質被覆材の小口面同士があいじゃくり状に配置されることを特徴とする請求項1または2に記載の木鋼ハイブリッド部材の耐火構造。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2021121557A JP2023017342A (ja) | 2021-07-26 | 2021-07-26 | 木鋼ハイブリッド部材の耐火構造 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2021121557A JP2023017342A (ja) | 2021-07-26 | 2021-07-26 | 木鋼ハイブリッド部材の耐火構造 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2023017342A true JP2023017342A (ja) | 2023-02-07 |
Family
ID=85157590
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2021121557A Pending JP2023017342A (ja) | 2021-07-26 | 2021-07-26 | 木鋼ハイブリッド部材の耐火構造 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2023017342A (ja) |
-
2021
- 2021-07-26 JP JP2021121557A patent/JP2023017342A/ja active Pending
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