JP2023012781A - 抗菌紙およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明の課題は、優れた抗菌紙およびその製法を提供することである。【解決手段】本発明によって、ノニオン系抗菌剤および/または両性イオン系抗菌剤と蛍光染料を含む層を原紙上に有する抗菌紙が提供される。【選択図】なし

Description

本発明は、抗菌紙およびその製造方法に関する。
抗菌性を付与した抗菌紙が知られている。例えば、特許文献1には、抗菌性ゼオライトなどの無機系抗菌剤を外添した紙、特許文献2には抗菌剤を内添した紙が記載されている。また、特許文献3には、グルコン酸クロルヘキシジン水溶液を用いて抗菌紙を製造することが提案されている。
特開平09-003799号公報 特開平09-003800号公報 特開2009-242299号公報
一般に、澱粉などのバインダーを紙表面に塗布して、紙のサイズ性や印刷特性、表面強度などを向上することが行われている。本発明者らは、紙に抗菌性を付与するため抗菌剤を紙に外添塗工することについて検討したところ、蛍光染料などの添加剤を含む塗工液に抗菌剤を配合すると、塗布液に含まれる蛍光染料などと抗菌剤の組み合わせによっては増粘や凝集を生じたりして、外添塗工によって抗菌紙を製造することが難しくなることを見出した。
このような状況に鑑み、本発明の課題は、抗菌剤を塗工することによって優れた抗菌紙を製造する技術を提供することである。
本発明者らは、上記課題について鋭意検討したところ、特定の抗菌剤を使用すると蛍光染料との相溶性が良好であり、塗布液の凝集や沈殿が発生せず、優れた抗菌紙を製造できることを見出した。
本発明は、これに限定されるものでないが、以下の発明を包含する。
[1] ノニオン系抗菌剤および/または両性イオン系抗菌剤と蛍光染料を原紙に塗布することを含む、抗菌紙の製造方法。
[2] 前記抗菌剤と前記蛍光染料を含有する塗布液が原紙に塗布される、[1]に記載の方法。
[3] 前記抗菌剤が界面活性剤を含むものである、[1]または[2]に記載の方法。
[4] 前記蛍光染料が、アニオン性である、[1]~[3]のいずれかに記載の方法。
[5] ノニオン系抗菌剤および/または両性イオン系抗菌剤と蛍光染料を含む層を原紙上に有する抗菌紙。
[6] 前記抗菌剤と前記蛍光染料を含む層が澱粉を含むクリア塗工層である、[5]に記載の抗菌紙。
[7] 前記クリア塗工層にNaClを含む、[6]に記載の抗菌紙。
[8] 顔料塗工層を有していない上質紙である、[5]~[7]のいずれかに記載の抗菌紙。
[9] 前記蛍光染料が、アニオン性である、[5]~[8]のいずれかに記載の抗菌紙。
本発明によれば、優れた抗菌紙およびその製造方法が提供される。また、本発明によって製造した抗菌紙は、蛍光染料と特定の抗菌剤を併用することによって蛍光強度が大きく向上しており、特定の抗菌剤と蛍光染料を併用することによる相乗効果を確認できた。
本発明は、原紙上に抗菌層が設けられた抗菌紙に関する。本発明に係る抗菌紙は、ノニオン系抗菌剤および/または両性イオン系抗菌剤と蛍光染料を含有する抗菌層を原紙上に有しており、原紙上に表面処理液(塗布液)を塗布することによって得られる。
本発明に係る抗菌紙は、抗菌性を有しており、JIS L1902の抗菌試験方法に基づいて測定される抗菌活性値が約3.0以上となる。ただし、抗菌試験は菌の繁殖をどれだけ抑制できるかというものであるところ、そもそも試料に制菌性(殺菌性)がある場合、接種した菌が繁殖せずに抗菌活性値が低くなることがあるため、本発明においては、抗菌試験における接種直後の生菌数が20未満である場合も抗菌性を有しているものとする。
本発明においては、抗菌剤と蛍光染料を含有する層を原紙上に設けるが、例えば、表面処理液の粘度を調整したり、塗布する際の速度を調整したりすることによって、塗布量を調整することができる。すなわち、界面活性剤などを用いて粘度を低くすることによって塗布液が紙の内部まで浸透しやすくしたり、高速で塗布することによって塗布液が紙表面に留まるようにしたりすることが可能である。また、本発明の一つの態様においては、澱粉などの多糖類を紙の表面に塗布することによって、紙の表面強度のみならずこわさも向上させ、さらに、多糖類が適度に紙層内部に浸透することにより層間強度の向上を図ることもできる。
本発明で得られた抗菌紙は、そのまま製品として種々の用途に制限なく使用することができ、例えば、印刷用紙や筆記用紙、書籍用紙、新聞用紙、包装用紙、薄葉紙、顔料塗工紙用原紙、インクジェット記録や感熱記録、ノーカーボン複写、フォーム用紙、コピー用紙などの各種情報記録用紙、それらの原紙などの用途に使用することができる。印刷用紙としての用途を考慮すると、本発明に係る抗菌紙の印刷後光沢は、40%以上が好ましく、50%以上がより好ましく、60%以上がさらに好ましい。10段階評価で4以上は良好、7以上は特に良好である。また、印刷時のトラブル抑制の観点からは、MD方向の層間強度が90gf/15mm以上が好ましく、100gf/15mm以上がより好ましく、110gf/15mm以上がさらに好ましい。
本発明に係る抗菌紙の坪量は特に制限されないが、例えば、25~500g/m、35~300g/m、40~250g/mとすることができる。また、他の態様では、抗菌紙の坪量を、例えば、45~100g/mとしてもよく、50~90g/mや55~80g/mとしてもよい。
本発明に係る抗菌紙は、その比透気度が1.4以上であることが好ましく、3.0以上や5.0以上がより好ましい。また、本発明に係る抗菌紙は、そのCD方向の裂断長が3.0km以上であることが好ましく、4.0km以上や4.5km以上がより好ましい。比透気度や裂断長が低すぎると、抗菌紙の製造において紙切れなどが生じるおそれがある。
本発明に係る抗菌紙の紙中灰分は、適宜設定することができるが、例えば、0.1重量%以上40重量%以下とすることができ、5重量%以上30重量%以下が好ましい。紙中灰分が30重量%より高いと、紙中填料によって繊維間の結合が阻害され、紙の腰や強度が不足する恐れがある。なお、紙中灰分はJIS―P8252に準じて測定される。
一つの態様において本発明に係る抗菌紙は、顔料塗工層を有していない非塗工紙であり、非塗工上質紙であってよい。
原紙
本発明に用いる原紙は、パルプ原料を含んでなる。使用するパルプ原料に特に制限はなく、木材パルプの他に、竹パルプ、リンターパルプ、麻、バガス、ケナフ、エスパルト草、ワラなどの非木材パルプ、レーヨン、アセテートなどの半合成繊維、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステルなどの合成繊維などを使用することができる。具体的には、機械パルプ(MP)、脱墨パルプ(DIP、古紙パルプとも呼ばれる)、広葉樹クラフトパルプ(LKP)、針葉樹クラフトパルプ(NKP)など、紙の抄紙原料として一般的に使用されているものを好適に使用することができ、適宜、これらの1種類または2種類以上を配合して使用される。これらのパルプは、漂白をしない未晒パルプでもよいし、一つまたはいくつかの手段で漂白した晒パルプでもよい。機械パルプとしては、砕木パルプ(GP)、リファイナー砕木パルプ(RGP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、ケミグランドパルプ(CGP)、セミケミカルパルプ(SCP)などが挙げられる。脱墨パルプとしては、上質紙、中質紙、下級紙、新聞紙、チラシ、雑誌などの選別古紙やこれらが混合している無選別古紙や、コピー紙や感熱紙、ノーカーボン紙などを含むオフィス古紙、機密古紙、紙コップなどを原料とする脱墨パルプであれば良く、特に限定はない。また、セルロースナノファイバーやセルロースナノフィブリル、ミクロフィブリルセルロース、微結晶セルロース、セルロースパウダーなどを用いることもできる。本発明において使用する原紙は特に制限は無いが、例えば、コピー用紙、新聞用紙、中質紙、ライナー、中芯原紙などを使用でき、一つの態様において本発明に係る原紙は上質紙であり、原紙のパルプとして化学パルプのみが使用される。
本発明で用いる原紙には、本発明の効果を阻害しない範囲で、種々の内添薬品を添加してよい。内添薬品としては、これに制限されるものではないが、無機薬品として、硫酸バンド(硫酸アルミニウム)、ポリ塩化アルミニウム、硫酸、塩酸、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなど、有機薬品として、ポリアクリルアミド系高分子、ポリビニルアルコール系高分子、酸化澱粉、エステル化澱粉、カチオン化澱粉、その他各種変性澱粉、スチレン―ブタジエン共重合体、ラテックス、酢酸ビニルなどの接着剤;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどのセルロース誘導体;尿素・ホルマリン樹脂、メラミン・ホルマリン樹脂などの内添紙力増強剤;ロジン系サイズ剤、AKD系サイズ剤、ASA系サイズ剤、石油系サイズ剤、中性ロジンサイズ剤などの内添サイズ剤;硫酸バンド、歩留向上剤、歩留助剤、紫外線防止剤、退色防止剤、濾水性向上剤、凝結剤、嵩高剤、pH調整剤、スライムコントロール剤、着色料(染料、顔料)および;クマリン誘導体、ピラゾリン誘導体、スチルベン誘導体、アゾール誘導体などの蛍光染料;などを添加してもよい。更に各種セルロースナノファイバーや微細繊維セルロースを内添薬品とみなして用いても良い。
本発明で用いる原紙は、一般的に使用されている填料を内填することができ、例えば、一または複数の無機系填料や有機系填料を使用することができる。無機系填料としては、例えば、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、石膏、タルク、カオリン、エンジニアードカオリン、焼成カオリン、ホワイトカーボン、非晶質シリカ、デラミネートカオリン、ケイソウ土、炭酸マグネシウム、二酸化チタン、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、製紙スラッジ、脱墨フロスからの再生無機粒子などが挙げられ、有機系填料としては、例えば、尿素ホルマリン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、尿素/ホルマリン樹脂、メラミン系樹脂、スチレン/ブタジエン系共重合体系樹脂、フェノール樹脂、プラスチック中空粒子などが挙げられる。
本発明における原紙は、公知の方法によって抄紙することができる。例えば、上記の原料を混合した紙料を適宜希釈し、必要に応じてスクリーンやクリーナーで異物を除去した後に、抄紙機のヘッドボックスから抄紙ワイヤー上に噴射して、湿紙が形成される。本発明の原紙は、種々の抄紙機、例えば長網式、円網式、円網多筒式、短網式、ツインワイヤー式抄紙機などによって製造することができる。ツインワイヤー抄紙機としては、ギャップフォーマー、オントップフォーマーなどが挙げられる。その他にも、クレセントフォーマー型やヤンキードライヤー式の抄紙機を用いて原紙を製造してもよい。抄紙後のプレス工程や乾燥工程における条件は、適宜調整することができる。
また、原紙を抄紙する条件は、中性抄紙でも酸性抄紙でもよい。具体的には、本発明においては、抄紙時の紙料pHが3.0~9.0であることが好ましく、4.0~8.0であることがより好ましい。
塗布(塗工)
本発明においては、抗菌性を付与するために、ノニオン系抗菌剤および/または両性イオン系抗菌剤と蛍光染料を少なくとも含有する層(抗菌層)を原紙上に設ける。本発明において抗菌層の塗布量(塗工量)は特に限定されないが、例えば、両面で0.1~10g/mの範囲にすることができ、0.5~6.0g/mが好ましく、1.0~3.0g/mがより好ましい。塗布量が過大になると水分の絶対量が多くなることにより、乾燥負荷が増大し、乾燥不良が発生しやすくなる場合がある。
(抗菌剤)
本発明においては原紙上に抗菌剤を塗布するが、抗菌剤としてノニオン系抗菌剤および/または両性イオン系抗菌剤を使用する。ノニオン系抗菌剤および/または両性イオン系抗菌剤は、1つの抗菌剤のみを使用しても2以上の抗菌剤を併用してもよい。本発明において抗菌剤とは、抗菌性を付与できる薬剤を意味し、市販されている抗菌剤や殺菌剤、消毒剤などを使用することができ、例えば、抗菌性だけでなく抗ウイルス性を有する薬剤を抗菌剤として用いることもできる。
好ましい抗菌剤として、界面活性剤系の抗菌剤を挙げることができ、ノニオン系界面活性剤の抗菌剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、両性イオン系界面活性剤の抗菌剤としては、塩化アルキルジアミノエチルグリシン、アルキルポリアミノエチルグリシンなどが挙げられる。界面活性剤系の抗菌剤について、市販商品としては、例えば、アンヒトール20N、エマルゲン106、アモルデンV-500HP、ポエムM-200、ポエムDL-100、マイドール10、マイドール12、Air heal、テゴー51(登録商標)、エルエイジー(登録商標)などが挙げられる。
本発明においては、本発明の効果を損ねない範囲で、有機系抗菌剤や無機系抗菌剤を使用することもでき、有機系抗菌剤と無機系抗菌剤のハイブリッドタイプの抗菌剤を使用することもできる。
有機系抗菌剤としては、例えば、エチレンオキサイド、グルタルアルデヒド、オルトフタルアルデヒド、クレゾール、キトサン、ヒノキチオール、カラシ抽出物、ポピドンヨードなどのヨード系、クロルヘキシジンなどのビグアナイド系、アクリノールなどの色素系、ポリフェノール系やベンズイミダゾール系、フタルイミド系、イソチゾロン系、ピリジン系、ニトリル系抗菌剤などが挙げられる。
無機系抗菌剤としては、例えば、銀系抗菌剤、銅系抗菌剤または亜鉛系抗菌剤などが使用でき、安全性などの観点から銀系抗菌剤が好ましい。銀系抗菌剤としては、銀イオンを担持させた無機化合物であれば特に制限はないが、具体的には、活性炭、活性アルミナ、シリカゲルなどの無機系吸着剤、ゼオライト、ヒドロキシアパタイト、リン酸ジルコニウム、リン酸チタン、チタン酸カリウムなどの無機イオン交換体が挙げられる。銅系抗菌剤としては、銅イオンを担持させた無機化合物であれば特に制限はないが、具体的には、活性炭、活性アルミナ、シリカゲルなどの無機系吸着剤、ゼオライト、ヒドロキシアパタイト、リン酸ジルコニウム、リン酸チタン、チタン酸カリウムなどの無機イオン交換体が挙げられる。亜鉛系抗菌剤としては、亜鉛イオンを担持させた無機化合物であれば特に制限はないが、具体的には、活性炭、活性アルミナ、シリカゲルなどの無機系吸着剤、ゼオライト、ヒドロキシアパタイト、リン酸ジルコニウム、リン酸チタン、チタン酸カリウムなどの無機イオン交換体が挙げられる。ゼオライト系抗菌剤を用いる場合、ゼオライトのイオン交換可能な金属の一部を、銀、銅、亜鉛から選ばれる少なくとも一種の金属で置換して得られる抗菌性ゼオライトなどが好適に使用される。
無機系の抗菌剤について、市販商品としては、例えば、シルバーブレッド、コージーパックエアー、AGアルファ(登録商標)CF-01、AGアルファ(登録商標)CF-04、ノバロン、ケスモン、アレリムーブ、MP-102SVC13、シルバーエース、ゼオミック、Lock-3、イオンピュアなどが挙げられる。
(蛍光染料)
本発明においては、上記の抗菌剤と蛍光染料を併用する。本発明においては、種々の蛍光染料を使用することができ、例えば、4,4'-ジアミノスチルベン-2,2’-ジスルホン酸誘導体、4,4-ビス{2-ソジウムスルファニル-4-ジ(ヒドロキシエチル)アミノ-1,3,5-トリアジニル-(6)-アミノ}スチルベン-2,2-ジスルホン酸ナトリウム、ウンベリフェロン、4,4'-ビス(2-スルホナトスチリル)ビフェニル二ナトリウム、4'-(2-シアノスチリル)-4-スチルベンカルボニトリル、4,4'-ビス(2-ベンゾオキサゾリル)スチルベン、1,2-ビス(5-メチルベンゾオキサゾール-2-イル)エテン、アセナフチレン、1,4-ビス(2-ベンゾオキサゾリル)ナフタレン、4,4'-スチルベンジカルボン酸、4,4'-ビス(5-メチル-2-ベンゾオキサゾリル)スチルベン、2,5-ビス(5-tert-ブチル-2-ベンゾオキサゾリル)チオフェン、o-(クロロメチル)ベンゾニトリル、4,4'-ビス(ジエチルホスホノメチル)ビフェニル、2,5-チオフェンジカルボン酸、4-tert-ブチル-2-ニトロフェノール、2,5-ビス(ベンゾオキサゾール-2-イル)チオフェン、ベンゾオキサゾール誘導体などの蛍光染料が挙げられ、アニオン性の蛍光染料が好ましい。蛍光染料を使用する場合、表面処理液中の固形分濃度で0.01~5.0重量%が好ましく、0.03~1.5重量%がさらに好ましい。
抗菌剤/蛍光染料の重量比は、例えば、0.1~1000とすることができ、1~100が好ましく、2~80や3~60としてもよい。
(接着剤)
本発明においては、澱粉などの多糖類を接着剤(バインダー)として含有する表面塗布液を原紙に塗布することができ、これによって、表面強度や耐水性、印刷適性などを紙に付与することができる。
多糖類を含む接着剤としては、特に限定されないが、澱粉、セルロース、キチン、グリコーゲン、アガロース、ペクチンなどが挙げられる。澱粉については、例えば、トウモロコシ澱粉、タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、米澱粉などの澱粉を好適に使用することができる。
抗菌剤と接着剤を一緒に塗布する場合は、抗菌剤と接着剤の固形分重量比は、例えば、2:1~1:200とすることができ、1:1~1:150が好ましく、1:2~1:100や1:3~1:50としてもよい。
また、本発明においては、公知の方法により各種変性を施した澱粉を使用してもよい。変性方法としては、例えば、α-アミラーゼなどを用いた酵素変性、エステル化、カチオン化、アセチル化、アルデヒド化、ヒドロキシエチル化などの処理を行ってもよい。エステル化としては、酢酸エステル化、リン酸エステル化などの処理があり、エーテル化としてはカルボキシエーテル化、ヒドロキシエーテル化などの処理を行ってもよい。本発明の老化安定性向上効果を高く発現するためには、アセチル化したタピオカ澱粉などを原料として、製紙工場内で変性処理することにより低粘度化させた自家変性澱粉、特に、酸化剤として過硫酸アンモニウム(APS)を加え熱化学変性させたAPS変性澱粉、またはα-アミラーゼを用いて加水分解した酵素変性澱粉を使用することが好ましい。製紙工場内で変性処理を行う自家変性澱粉は、製造現場での粘度の調整が容易であり、かつコスト的にも有利である。
表面処理に使用する接着剤は、少なくとも多糖類を含有すれば特に限定されないが、澱粉以外には、例えば、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、セルロースナノファイバーなどのセルロース誘導体、微細繊維セルロース、グアーガム、キサンタンガム、アラビアガム、デキストリン、アルギン酸、ヒアルロン酸、キシラン、グルコマンナン、カラギーナン、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、カルボキシル変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル化ポリビニルアルコールなどの変性アルコール、ラテックス、スチレン-ブタジエン系共重合体、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル系共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリル酸エステルなどを、単独もしくは2種以上使用してもよい。本発明において、澱粉などの多糖類は、抗菌層中の接着剤に占める割合が50%以上であることが好ましい。より好ましくは80%以上である。50%未満では表面処理液の粘度が低下し、強度やこわさが悪化するなどの弊害が生じる可能性があり、またコストも高くなる。
さらに、本発明の表面処理液(塗布液)には、必要に応じて、塩化ナトリウムなどの塩、分散剤、増粘剤、保水材、消泡剤、耐水化剤、着色剤、導電剤など、各種助剤を適宜使用してもよい。
表面処理液を塗布する装置(コーター)は特に限定されず、公知の装置を使用することができる。コーターとしては、ポンド式のサイズプレス、フィルム転写方式のゲートロールコーターやロットメタリングサイズプレスはもちろん、ブレードコーター、スプレーコーター、カーテンコーターなどを用いることができる。また、カレンダーやスーパーカレンダーなどにおいて、アプリケーターまたはスプレーなどを用いて塗布する、いわゆるカレンダーサイジングを行うこともできる。さらに、ヤンキードライヤーの前で塗布液を噴霧して塗布することもできる。
本発明においては、抗菌剤を含有する層の他に別の層を設けてもよい。すなわち、多糖類と抗菌剤を含有する層の他に、例えば、クリア塗工層や顔料塗工層を設けてもよい。
クリア塗工層を原紙に設けた後は、公知公用の仕上げ装置、例えばスーパーカレンダー、グロスカレンダー、ソフトカレンダー、高温ソフトニップカレンダーなどに通紙して製品仕上げを行ってもよいし、未処理もしくはバイパスしてもよい。
以下、具体的な実施例によって本発明を例証するが、下記の実施例に本発明を限定することを意図するものではない。なお、本明細書において、特にことわらない限り、「部」や「%」は重量基準であり、数値範囲はその端点を含むものとして記載される。
実験1.相溶性の確認
イオン性の異なる抗菌剤を蛍光染料と混合し、両者の相溶性を確認した。具体的には、20ml容のバイアル瓶において、原液の蛍光染料5mlと5%まで希釈した抗菌剤5mlを混合し、蓋をしてから激しく30秒間手で振盪した。
(抗菌剤)
・カチオン系界面活性剤(サニゾールB-50、花王、固形分濃度:50%)
・アニオン系界面活性剤(ネオペレックスG-15、花王、固形分濃度:16%)
・両性イオン系界面活性剤(アンヒトール20N、花王、固形分濃度:35%)
・ノニオン系界面活性剤(エマルゲン106、花王、固形分濃度:94%)
(蛍光染料)
・蛍光染料A(ブランコファーZ-NSP、バイエル、アニオン性、濃度:55%)
・蛍光染料B(サンホワイトBUL-TC、サンライズケミカルアニオン性、濃度:67%)
振盪後、24時間静置し、下記の基準に基づいて目視により相溶性を評価した。
(相溶性の評価基準)
〇(良好):クリアまたは均一な分散状態が維持されている
×(不良):沈殿や凝集が発生し、ペースト状やゲル状になったりする
Figure 2023012781000001
カチオン系抗菌剤と蛍光染料を混合した場合、ゲル状の白色凝集が生じた。また、アニオン系抗菌剤と蛍光染料を混合した場合、白色の凝集や沈殿が発生した。その一方、ノニオン系抗菌剤や両性イオン系抗菌剤と蛍光染料を混合した場合、混合してから24時間経過しても混合液の性状は良好であった。
実験2.抗菌紙の製造と評価
(1)抗菌紙の製造
下記の割合で原材料を混合して塗布液200gを調製した。具体的には、500mL容の容器において、液温を40℃にした水(イオン交換水)と原材料を混合し、スパチュラを用いて3分間撹拌して塗布液を調製した。
Figure 2023012781000002
Figure 2023012781000003
次いで、顔料塗工およびクリア塗工のいずれもされていない上質紙用原紙(坪量:約60g/m、中性紙)の片面に、ワイヤーバーを用いて各塗布液を塗工した後、一昼夜風乾燥を行い、上質紙を作製した。
(2)抗菌紙の評価
作製した上質紙の塗工面について、下記の評価を行った。評価を行う際には、恒温恒湿室(25℃、相対湿度:50%)に一晩静置し、調湿したものを使用した。
(a)抗菌活性
JIS L1902の抗菌試験方法に基づき、2.8cm×2.8cmの上質紙サンプルを試験片とした。黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)を含有する試験液(試験菌濃度:1.0×10~3.0×10CFU/mL)0.2mLを試験片の表面に接種後、37℃で18~24時間培養した。接種直後と培養後に、洗い出し液20mLを加えて試験片から試験菌を洗い出し、洗い出し液中の生菌数を測定し、次式により、抗菌活性値(A)を算出した。なお、対照試料として、洗浄処理した綿布(綿3-1号)を使用した(JIS L0803)。
Figure 2023012781000004
(b)不透明度
白色度分光光度計(CMS-35SPX)を用いて、裏抜けしない程度に枚数を重ねたサンプルを測定した。また、ライトトラップを設置し、サンプル1枚のみを挟んだ場合も同様に測定した。UV-in「Y」の測定値から、下記の式に基づいて不透明度を求めた。
不透明度(%)=UV-in Y(サンプル1枚)÷UV-in Y(サンプル複数枚)
(c)ISO白色度
白色度分光光度計(CMS-35SPX)を用いて測定した。白色度にはUV-inのISO-Bの値を用いて評価した。
(d)色調
色相は、白色度分光光度計(CMS-35SPX)を用いて測定した(C光源、2°視野)。色相にはUV-cutのL*、a*、b*値を用いて評価した。
(e)蛍光強度
白色度分光光度計(CMS-35SPX)を用いて測定した。蛍光強度にはUV-cutのF1の値を用いて評価した。
Figure 2023012781000005
Figure 2023012781000006
カチオン系抗菌剤やアニオン系抗菌剤と蛍光染料を含む塗布液には凝集や沈殿が生じてしまった(サンプルA3~A4、B3~B4)。凝集や沈殿を生じている塗布液をワイヤーバーで塗工したところ、上質紙に抗菌活性を付与することはできたものの、本発明の実施例(サンプルA5~A6、B5~B6)のように蛍光強度を向上させることはできなかった。
一方、本発明に基づいて、両性イオン系抗菌剤またはノニオン系抗菌剤と蛍光染料を含む塗布液を用いた場合、塗布液に凝集や沈殿が生じることはなく、塗布液をスムーズに塗工することができた(サンプルA5~A6、B5~B6)。
また、本発明に基づいて蛍光染料と抗菌剤を併用すると上質紙の蛍光強度が大きく向上しており、蛍光染料と抗菌剤の併用による相乗効果が生じていると考えられた。さらに、本発明によれば、L値が上がり、b値が下がっており、くすみが抑制された、より高白色度の抗菌紙を得ることができた。

Claims (9)

  1. ノニオン系抗菌剤および/または両性イオン系抗菌剤と蛍光染料を原紙に塗布することを含む、抗菌紙の製造方法。
  2. 前記抗菌剤と前記蛍光染料を含有する塗布液が原紙に塗布される、請求項1に記載の方法。
  3. 前記抗菌剤が界面活性剤を含むものである、請求項1または2に記載の方法。
  4. 前記蛍光染料が、アニオン性である、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
  5. ノニオン系抗菌剤および/または両性イオン系抗菌剤と蛍光染料を含む層を原紙上に有する抗菌紙。
  6. 前記抗菌剤と前記蛍光染料を含む層が澱粉を含むクリア塗工層である、請求項5に記載の抗菌紙。
  7. 前記クリア塗工層にNaClを含む、請求項6に記載の抗菌紙。
  8. 顔料塗工層を有していない上質紙である、請求項5~7のいずれかに記載の抗菌紙。
  9. 前記蛍光染料が、アニオン性である、請求項5~8のいずれかに記載の抗菌紙。
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