JP2023010700A - カーボンフリーエネルギ供給システム及びカーボンフリーエネルギ供給方法 - Google Patents

カーボンフリーエネルギ供給システム及びカーボンフリーエネルギ供給方法 Download PDF

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Abstract

【課題】国家さらには地球規模で必要なほぼすべての一次エネルギを代替し得る十分な量のエネルギを再生可能エネルギ資源から生産し、生産したエネルギを低廉で高品質かつ安定に供給先施設へ供給することが可能なシステムを提供する。【解決手段】カーボンフリーエネルギ供給システム10は、全天日射量が豊富な赤道海域に浮体する浮体式洋上太陽光発電プラント100で発電した電力を、エネルギ・キャリアシステム200でエネルギキャリアに変換・貯蔵し、供給先施設それぞれに適したエネルギ形態に変換したカーボンフリーエネルギを24時間365日安定に供給する。浮体式洋上太陽光発電プラント100は、複数の太陽電池パネル110を相互に連結してハニカム構造を構成するとともに、各太陽電池パネル110は浮体として機能し、各太陽電池パネル110のパネル筐体内に注排水することにより所定の水深に潜水・浮上可能である。【選択図】図5

Description

本発明は、再生可能エネルギ(以下、「再エネ」と称することがある)由来のカーボンフリーエネルギを供給するカーボンフリーエネルギ供給システム、カーボンフリーエネルギ供給システムに適用される浮体式洋上太陽光発電プラント(以下、単に「浮体式洋上プラント」と称することがある)及びカーボンフリーエネルギ供給方法に関するものである。
現在、地球規模で温暖化が進んでおり、COを排出しない持続可能なエネルギシステムの構築が急がれている。当該エネルギシステムを実現するためには、次の3つの課題が解決されなければならない。
課題(1)国家はもとより地球規模で必要とされるほぼすべての一次エネルギを代替し得る十分な量の再エネを生産する。
課題(2)生産した再エネを低廉で高品質かつ安定的に需要家へ供給する。
課題(3)大気圏に既に大量に滞留しているCOを計画的に回収し除去する。
課題(3)については、課題(1)及び課題(2)が解決された場合にはカーボンフリー化に従って自然界(森林や海洋)によるCO吸収(18Gt-CO/年)や、大気中からのCOの回収技術の実用化などが期待されている。従って、課題(1)及び課題(2)の解決が急務である。
従来、カーボンフリーエネルギ供給に関連する技術として、太陽光発電装置により発電した電力を用いて水を電気分解することにより水素を発生させ水素利用設備に供給するシステムが知られている(特許文献1)。
また、洋上太陽光発電プラントで発電して海水を電気分解することにより水素を発生させ、その水素を貯蔵しておき、その水素を使用して電力を発生させるシステムが知られている(特許文献2、特許文献3)。
また、太陽光で発電した電力を用いて水素を生成し、その水素を原料としてアンモニアを合成して液化アンモニア(エネルギキャリア)として貯蔵し、液化アンモニア、アンモニアガス、又はアンモニア水をエネルギ消費地に輸送し、エネルギ消費地で液化アンモニアから水素に転換して、燃料電池車に供給したり、燃料電池発電システムに供給したりするシステムが知られている(特許文献4)。
特開2020-58168号公報 特開2012-94363号公報 特許第5754029号公報 特開2016-150890号公報
しかし、上記特許文献1乃至4に記載の技術では、上記課題(1)及び課題(2)を解決することは難しい。これは、上記特許文献1乃至4に記載の技術は、国家さらには地球規模でのエネルギ需要を賄うことができる程の大量の再エネ生産が可能なシステムを構築する上で必須となる大面積の浮体式洋上プラントの実現を前提としていないことによる。
本発明は、国家はもとより地球規模で必要とされるほぼすべての一次エネルギを代替し得る十分な量の再エネを年平均日照量が豊富な海域で生産し、生産した再エネをエネルギキャリアに変換して所定の量を上限に貯蔵することによって、様々な供給先施設へ低廉で高品質なエネルギを安定に供給するカーボンフリーエネルギ供給システム及びその実現を可能とするための浮体式洋上太陽光発電プラントを提供し、ひいては「世界平均気温の上昇幅を産業革命前より2℃未満に抑え、できれば1.5℃より低く抑えたい」とするパリ協定の目標達成の一翼を担うことを課題とする。
前記課題解決のために、本発明の一態様に係るカーボンフリーエネルギ供給システムは、地球規模又は国全体又は一定の地域又は特定の産業におけるエネルギ総需要量のすべて又は一部を再生可能エネルギ資源により発電することにより確保し、得られた電力を供給先施設に適したエネルギ形態に変換して供給するカーボンフリーエネルギ供給システムであって、再生可能エネルギ資源を用いて発電する複数の太陽電池パネルのパネル筐体内への注排水による潜水及び浮上が可能な浮体式洋上太陽光発電プラントを含む一又は複数の発電プラントと、前記発電プラントにより発電された電力を安定化する一又は複数の第一のエネルギ変換装置と、前記第一のエネルギ変換装置から出力された電力を安定に貯蔵可能なエネルギキャリアに変換する一又は複数の第二のエネルギ変換装置と、前記第二のエネルギ変換装置により変換されたエネルギキャリアを所定の量を上限に貯蔵する一又は複数のエネルギキャリア貯蔵装置と、前記第一のエネルギ変換装置、前記第二のエネルギ変換装置、前記エネルギキャリア貯蔵装置の何れかから出力された又は取り出したエネルギを、一又は複数の前記供給先施設それぞれに適したエネルギ形態に変換して供給する一又は複数のエネルギ変換供給装置と、少なくとも前記発電プラント、前記第一のエネルギ変換装置、前記第二のエネルギ変換装置、前記エネルギキャリア貯蔵装置、前記エネルギ変換供給装置、前記供給先施設の一部又はすべてを管理し制御する一又は複数の管理制御装置とを備えたことを特徴とする。
本発明の一態様に係るカーボンフリーエネルギ供給システムは、前記浮体式洋上太陽光発電プラント、前記発電プラント、前記第一のエネルギ変換装置、前記第二のエネルギ変換装置、前記エネルギキャリア貯蔵装置、前記エネルギ変換供給装置、前記管理制御装置及び前記供給先施設の一部又はすべては、TCP/IPベースのパケット通信を行うための論理アドレスが割り当てられ、少なくともパケット送信元の真正性と送信内容の完全性とを受信側で検証するための検証コードが付されたセキュア通信により情報交換を行うことを特徴とする。
本発明の一態様に係るカーボンフリーエネルギ供給システムにおけるエネルギキャリアは、液体アンモニア、メチルシクロヘキサン、液体水素、又は高圧水素ガスの少なくともいずれか一つであることを特徴とする。
本発明の一態様に係るカーボンフリーエネルギ供給システムにおける前記第二のエネルギ変換装置は、前記第一の変換装置から出力された電力により水素を生成する第一のエネルギ変換機能と、前記第一変換機能により得られた水素を前記エネルギキャリアに変換する第二のエネルギ変換機能とを備えたことを特徴とする。
本発明の一態様に係るカーボンフリーエネルギ供給システムにおける前記エネルギ変換供給装置は、前記第一のエネルギ変換装置から出力された電力を所定の直流電力に変換し、前記供給先施設の一つである直流電力系統に供給する機能、前記第一のエネルギ変換装置から出力された電力を所定の交流電力に変換し、前記供給先施設の一つである交流電力系統に供給する機能、前記第二のエネルギ変換装置、又は前記第二のエネルギ変換装置の前記第一のエネルギ変換機能から出力された水素を所定の液体水素に変換し、前記供給先施設の一つである供給先施設に供給する機能、前記第二のエネルギ変換装置、又は前記第二のエネルギ変換装置の前記第一のエネルギ変換機能から出力された水素を所定の圧力に加圧して高圧水素ガスに変換し、前記供給先施設の一つである供給先施設に供給する機能、前記第二のエネルギ変換装置、又は前記第二のエネルギ変換装置の前記第二のエネルギ変換機能から出力されたエネルギキャリアを所定のエネルギキャリアに変換し、前記供給先施設の一つである供給先施設に供給する機能、前記エネルギキャリア貯蔵装置から取り出したエネルギキャリアを用いて所定の直流電力を発電し、前記供給先施設の一つである直流電力系統に供給する機能、前記エネルギキャリア貯蔵装置から取り出したエネルギキャリアを用いて所定の交流電力を発電し、前記供給先施設の一つである交流電力系統に供給する機能、前記エネルギキャリア貯蔵装置から取り出したエネルギキャリアを所定の高圧水素ガスに変換し、前記供給先施設の一つである供給先施設に供給する機能、前記エネルギキャリア貯蔵装置から取り出したエネルギキャリアを所定の液体水素に変換し、前記供給先施設の一つである供給先施設に供給する機能、前記エネルギキャリア貯蔵装置から取り出したエネルギキャリアを所定のエネルギキャリアに変換し、前記供給先施設の一つである供給先施設に供給する機能、前記エネルギキャリア貯蔵装置から取り出したエネルギキャリアを所定の流量と流圧に調整し、前記供給先施設の一つである供給先施設に供給する機能、又は、前記供給先施設に供給するエネルギに余剰があるとき、又は所定の計画に則って、前記第一のエネルギ変換装置に対して、前記第一のエネルギ変換装置が出力する電力の一部又は全てを前記第二のエネルギ変換装置、又は前記第二のエネルギ変換装置の前記第一のエネルギ変換機能へ出力するよう指示する電力出力指示機能の少なくともいずれか一つを備えたことを特徴とする。
本発明の一態様に係るカーボンフリーエネルギ供給システムにおける前記発電プラントは、発電電力の昼夜、天候、時間的変動性や季節的偏在性を平準化し、前記エネルギキャリア貯蔵装置の前記所定の量の上限を下げるように、さらに、他の再生可能エネルギ資源を用いて発電することを特徴とする。
本発明の一態様に係るカーボンフリーエネルギ供給システムにおける前記他の再生可能エネルギ資源を用いて発電する前記発電プラントは、陸上太陽光発電プラント、係留式洋上又は水上太陽光発電プラント、陸上又は洋上風力発電プラント、係留式洋上風力発電プラント、浮体式洋上風力発電プラント、地熱発電プラント、又は中小水力発電プラントの少なくともいずれか一つであることを特徴とする。
本発明の一態様に係るカーボンフリーエネルギ供給システムにおける前記浮体式太陽光発電プラントは、所定の年平均日照量以上の日射量が得られ、所定の水深以上の水深の海域に浮体する発電プラントであって、論理的階層をなすように連結された複数の多角形の太陽電池パネルは、前記論理的階層間をそれぞれ異なる電力路コネクタを介して直列接続、又は絶縁型直列接続、又は並列接続、又は木構造並列接続することにより、所定の直流電力を発電する太陽光発電機能、自己又は隣接する太陽電池パネルに障害が発生したとき、迂回回路を形成するよう未使用の前記電力路コネクタを介して他の前記太陽電池パネルに切り替える制御機能、前記太陽電池パネルのパネル筐体内に注排水することにより、前記浮体式洋上太陽光発電プラントを所定の潜水水深に潜水させ、潜水状態の前記浮体式洋上太陽光発電プラントを浮上させる潜水及び浮上機能、隣接するパネル筐体同士が少なくとも上下方向に互いに揺動可能な機械的連結器、前記電力路コネクタ、信号路コネクタ、圧縮空気管コネクタの一部又は全てを収容する連結器を前記太陽電池パネルの各辺又は一部に備え、隣接太陽電池パネルと相互に連結することによって前記浮体式洋上太陽光発電プラントを形成する連結機能、前記太陽電池パネルの平面視頂点部の一部又は全てに弾性衝撃吸収部材を配置し、不意の衝撃を吸収するとともに、海面の揺らぎによる太陽電池パネルの乗り上げを防ぐ衝撃吸収機能、前記浮体式洋上太陽光発電プラントの現在位置及び方位を測定するための現在位置及び方位測定機能、前記浮体式洋上太陽光発電プラントを所定の位置に停留させ、かつ所定の方位又は方向を保持させるための推進及び操舵機能、夜間又は潜水時に前記浮体式洋上太陽光発電プラントを前記推進及び操舵機能を用いて所定の位置及び方位又は方向に停留維持する非発電時停留維持機能、物理アドレスと、前記論理的階層構造に従って論理アドレスとが付与されたパケットを送信及び受信するパケット通信機能、パケット送信元の真正性と送信内容の完全性とを受信側で検証するための検証コードが付された前記パケットを送信及び受信するセキュア通信機能、前記パネル筐体内に注排水する、及び前記所定の潜水水深に潜水させるための圧縮空気を生成し圧縮空気管及び前記圧縮空気管コネクタを介して他の太陽電池パネルの圧縮空気タンクに供給する圧縮空気生成機能、前記浮体式洋上太陽光発電プラントの周囲に自己の存在を周知するための灯又は電波又は音波の一部又は全てを用いて周知する浮体式灯台機能の少なくともいずれか一つを備えたことを特徴とする。
本発明の一態様に係るカーボンフリーエネルギ供給システムにおける前記浮体式太陽光発電プラントの前記太陽電池パネルは、平面視略正六角形をなし、複数の前記太陽電池パネルにより平面視ハニカム構造を形成するよう連結されることを特徴とする。
本発明の一態様に係るカーボンフリーエネルギ供給システムにおける前記浮体式洋上太陽光発電プラントは、前記太陽電池パネルを所定の海域に輸送してきた運搬船から複数のクレーンで前記太陽電池パネルを洋上に下ろし、前記論理的階層ごとに、該論理的階層の構成要素である太陽電池パネル又は該論理的階層の下位層の太陽電池パネル群を、それぞれ該論理的階層に専用の一又は複数の搬送組立ロボットを用いて、前記太陽電池パネルに付された識別子と前記浮体式洋上太陽光発電プラントの構成情報をもとに、同時並行して組み立て、前記組み立てに当たっては、前記太陽電池パネル内に収納された圧縮空気タンクに予め充填された圧縮乾燥空気を連結器内に噴射することによって海水成分を払拭し、所定の隣接する太陽電池パネルと密着連結することによって建設され、前記搬送組立ロボットは、太陽電池パネルと浮体式洋上太陽光発電プラントに係る少なくとも建設過程、天候、海況、太陽電池パネル相互の位置関係、トラブルを含むセンサ情報及びカメラ情報からなる学習用データを収集し所定の報酬を最大化するようHPC(高性能計算処理能力)環境で機械学習して得られた学習済みデータが実装されることを特徴とする。
本発明の一態様に係るカーボンフリーエネルギ供給システムにおける前記浮体式太陽光発電プラントは、波浪や風浪などにより加わる衝撃力を分散・吸収するハニカム構造をなすよう相互に柔連結され、小集合部、中集合部及び大集合部により構成され、1基当り太陽電池パネルが100万枚設置され、前記小集合部は100枚の太陽電池パネルを直列接続し、前記中集合部は100基の小集合部を絶縁型直列接続し、前記大集合部は100基の中集合部を木構並列接続又は並列接続して構成することを特徴とする。
本発明の一態様に係るカーボンフリーエネルギ供給システムにおいて、前記浮体式洋上太陽光発電プラントにより発電された電力は海底ケーブルにより前記第一のエネルギ変換装置に送電され、夜間又は潜水時の非発電時には前記第一のエネルギ変換装置又は前記エネルギ変換供給装置より前記海底ケーブルを介して前記浮体式洋上太陽光発電プラントは給電されることを特徴とする。
本発明の一態様に係るカーボンフリーエネルギ供給システムにおける前記浮体式洋上太陽光発電プラントは、前記パネル筐体内に注水用のタンク部と圧縮空気タンクを保持すると共に、潜水時に前記浮体式洋上太陽光発電プラントを所定の潜水水深に保つためのフローターを備え、潜水時には、前記タンク部に注水すると共に前記フローターに前記圧縮空気タンク内の圧縮空気を供給して前記フローターを海面上に浮上させることにより所定の潜水水深に前記浮体式洋上太陽光発電プラントを保ち、浮上時には、前記圧縮空気タンク内の圧縮空気を排出させて前記タンク部内の海水を排出させて海面上に浮上させるように構成されていることを特徴とする。
本発明の一態様に係るカーボンフリーエネルギ供給方法は、地球規模又は国全体又は一定の地域又は特定の産業におけるエネルギ総需要量のすべて又は一部を再生可能エネルギ資源により発電することにより確保し、得られた電力を供給先施設に適したエネルギ形態に変換して供給するカーボンフリーエネルギ供給方法であって、再生可能エネルギ資源を用いて発電する複数の太陽電池パネルのパネル筐体内への注排水による潜水及び浮上が可能な浮体式洋上太陽光発電プラントを含む一又は複数の発電プラントにより再生可能エネルギ資源を用いて発電するステップと、一又は複数の第一のエネルギ変換装置により、前記浮体式洋上太陽光発電プラントにより発電された電力を安定化するステップと、一又は複数の第二のエネルギ変換装置により、前記第一のエネルギ変換装置から出力された電力を安定に貯蔵可能なエネルギキャリアに変換するステップと、一又は複数のエネルギキャリア貯蔵装置により、第二のエネルギ変換装置により変換されたエネルギキャリアを所定の量を上限に貯蔵するステップと、一又は複数のエネルギ変換供給装置により、前記第一のエネルギ変換装置、前記第二のエネルギ変換装置、前記エネルギキャリア貯蔵装置の何れかから出力された又は取り出したエネルギを、一又は複数の前記供給先施設それぞれに適したエネルギ形態に変換して供給するステップと、一又は複数の管理制御装置により、少なくとも前記発電プラント、前記第一のエネルギ変換装置、前記第二のエネルギ変換装置、前記エネルギキャリア貯蔵装置、前記エネルギ変換供給装置、前記供給先施設の一部又はすべてを管理し制御するステップと、を備えたことを特徴とする。
本発明の一態様に係るカーボンフリーエネルギ供給方法において、前記浮体式洋上太陽光発電プラントにより発電された電力は海底ケーブルにより前記第一のエネルギ変換装置に送電され、夜間又は潜水時の非発電時には前記第一のエネルギ変換装置又は前記エネルギ変換供給装置より前記海底ケーブルを介して前記浮体式洋上太陽光発電プラントは給電されることを特徴とする。
本発明の一態様に係るカーボンフリーエネルギ供給方法における前記浮体式洋上太陽光発電プラントは、前記パネル筐体内に注水用のタンク部と圧縮空気タンクを保持すると共に、潜水時に前記浮体式洋上太陽光発電プラントを所定の潜水水深に保つためのフローターを備え、潜水時には、前記タンク部に注水すると共に前記フローターに前記圧縮空気タンク内の圧縮空気を供給して前記フローターを海面上に浮上させることにより所定の潜水水深に前記浮体式洋上太陽光発電プラントを保ち、浮上時には、前記圧縮空気タンク内の圧縮空気を排出させて前記タンク部内の海水を排出させて海面上に浮上させるように構成されていることを特徴とする。
本発明の一態様に係るカーボンフリーエネルギ供給方法における前記浮体式洋上太陽光発電プラントは、所定の年平均日照量以上の日射量が得られ、所定の水深以上の水深の海域に浮体する前記浮体式洋上太陽光発電プラントであって、論理的階層をなすように連結された複数の多角形の太陽電池パネルを有し、前記太陽電池パネルにより、前記論理的階層間をそれぞれ異なる電力路コネクタを介して直列接続、又は絶縁型直列接続、又は並列接続、又は木構造並列接続することにより、所定の直流電力を発電するステップ、自己又は隣接する前記太陽電池パネルに障害が発生したとき、迂回回路を形成するよう未使用の前記電力路コネクタを介して他の前記太陽電池パネルに切り替え制御するステップ、前記太陽電池パネルのパネル筐体内に注排水することにより、前記浮体式洋上太陽光発電プラントを所定の潜水水深に潜水させ、潜水状態の前記浮体式洋上太陽光発電プラントを浮上させる潜水及び浮上するステップ、隣接する前記太陽電池パネルのパネル筐体同士が少なくとも上下方向に互いに揺動可能な機械的連結器、前記電力路コネクタ、信号路コネクタ、圧縮空気管コネクタの一部又は全てを収容する連結器を前記太陽電池パネルの各辺又は一部に備え、隣接太陽電池パネルと相互に連結することによって前記浮体式洋上太陽光発電プラントを形成するよう連結するステップ、前記太陽電池パネルの平面視頂点部の一部又は全てに弾性衝撃吸収部材を配置し、不意の衝撃を吸収するとともに、海面の揺らぎによる前記太陽電池パネルの乗り上げを防ぐよう衝撃吸収するステップ、前記浮体式洋上太陽光発電プラントの現在位置及び方位を測定するための現在位置及び方位を測定するステップ、前記浮体式洋上太陽光発電プラントを所定の位置に停留させ、かつ所定の方位又は方向を保持させるための推進及び操舵するステップ、夜間又は潜水時に前記浮体式洋上太陽光発電プラントを前記推進及び操舵機能を用いて所定の位置及び方位又は方向に停留維持するよう非発電時停留を維持するステップ、物理アドレスと、前記論理的階層構造に従って論理アドレスとが付与されたパケットを送信及び受信するパケット通信するステップ、パケット送信元の真正性と送信内容の完全性とを受信側で検証するための検証コードが付された前記パケットを送信及び受信するセキュア通信するステップ、前記パネル筐体内に注排水する、及び前記所定の潜水水深に潜水させるための圧縮空気を生成し圧縮空気管及び前記圧縮空気管コネクタを介して他の太陽電池パネルの圧縮空気タンクに供給する圧縮空気を生成するステップ、前記浮体式洋上太陽光発電プラントの周囲に浮体式灯台を設置し、自己の存在を周知するための灯又は電波又は音波の一部又は全てを用いて周知するステップの少なくともいずれか一つを備えたことを特徴とする。
本発明の一態様に係るカーボンフリーエネルギ供給システムは、COを排出しないものの出力電力が不安定で大量かつ長期間にわたって備蓄できない再エネを、国はもとより地球規模でのエネルギ総需要を賄うに足る量を発電し、エネルギキャリアに変換して例えば半年分を上限に備蓄し、供給先施設に適したエネルギ形態に変換し供給することによって、ほぼすべての一次エネルギをカーボンフリー化する。また、カーボンフリーエネルギ供給システムは、管理制御装置によるきめ細かな管理制御により、365日24時間稼働しエネルギ供給し続ける。
本発明の一態様に係るカーボンフリーエネルギ供給システムは、各構成要素(通信ノード)に対して論理(IP)アドレスを付与することによって、インターネットで広く用いられているTCP/IP技術や資源を利用でき、またパケット送信元の真正性(いわゆる「なりすまし」でないかを確認すること)と送信内容の統合性(「改ざん」がないかを確認すること。「完全性」ともいう)とを受信側で検証するための検証コードが付されたセキュア通信により、例えカーボンフリーエネルギ供給システムに対して不正アクセスなどがあっても侵入され、浮体式洋上プラントを強制的に潜水させるなどサイバーテロ攻撃を防ぐことができる。加えて、通信内容を暗号化すればカーボンフリーエネルギ供給システムの構成情報などを盗み見られないようにしてもよい。ただし、不正アクセスや不適切な制御情報が送られても発見し難くなる。
本発明の一態様に係るカーボンフリーエネルギ供給システムは、安定に貯蔵可能なエネルギキャリアとして、液体アンモニア、メチルシクロヘキサン、液体水素、及び高圧水素ガスを用いることができるが、これらは供給先施設の特性に応じて取捨選択できる。また、これらの中で体積エネルギ密度と質量エネルギ密度が高く、常温で大量かつ長期間にわたって備蓄が可能な液体アンモニア又はメチルシクロヘキサンは、例えば半年分を上限に備蓄することが可能であり、日ごとや季節、異常気象などにより発電電力が大きく変動する再エネを、エネルギ・インフラストラクチャとして利用することを可能にする。
本発明の一態様に係るカーボンフリーエネルギ供給システムは、供給先施設である既設の交流電力系統、送電効率が高いことから欧州などで急速に進んでいる高電圧直流電力系統(HVDC)、火力発電所などにおけるNH専焼発電機やNH混焼発電機、水素火力発電機、2035年の就航を目指している高純度の液体水素を燃料とする航空機が発着する空港に設けられた液体水素貯蔵タンク、大型自動車やバス、トラック向けの水素燃料電池車両に高純度の水素燃料を補給する水素ステーション、NH専焼エンジンで航行する船舶が発着する港湾に設けられたNH貯蔵タンク、全産業のCO排出量の40%を占めている鉄鋼業でコースの代わりに水素を用いた水素還元製鉄を行う高炉など、様々な供給先施設に再エネ由来エネルギを供給先施設それぞれに適したエネルギ形態に変換して効率よく低廉にそして安定に供給することによって、様々な産業でのカーボンフリー化を可能にする。
また、本発明の一態様に係るカーボンフリーエネルギ供給システムは、我が国では最も発電能力が高いと目される浮体式洋上太陽光発電を主体に、他の再エネ資源を用いた発電プラントとの併用により、再エネ資源の多様性を高め、再エネ資源を用いた発電電力の時間的変動性や季節的偏在性を平準化するとともに、エネルギキャリア関連装置(以下、エネルギ・キャリアシステムと呼ぶことがある)の利用効率を高め、エネルギキャリア貯蔵装置の貯蔵量の上限を下げることも可能になり、低廉なエネルギの安定供給を可能にする。
また、本発明の一態様に係る浮体式洋上太陽光発電プラントは、例えば日本であれば排他的経済水域(EEZ)の最南端に位置する沖ノ鳥島や南鳥島付近の海域の年平均日射量は、日本の国土の約1.5倍と多く、日本の一次エネルギ総需要量に相当する発電量を同島周辺のEEZの2%程度の面積で生産でき、しかも例えば±250kVの高電圧直流で海底ケーブル送電すれば送電損失を数%に抑えられることから、カーボンフリーなエネルギをすべて国産化できることになる。
これを南北緯度30度付近以内の赤道海域に国家やEEZ、公海などの枠を超えて展開すれば、世界の総エネルギ需要を未来永劫にわたってカーボンフリー化できることになり、地球温暖化抑止に大きく貢献できる。
また、太陽電池パネルを平面充填(一面に隙間なく並べること)をなすよう平面視略六角形又は平面視略四角形又は平面視略平行四辺形又は平面視略三角形の形状を採用することによって、太陽電池パネルを最も高密度に配置(最稠密配置)することができる。これにより、浮体式洋上太陽光発電プラントの上面すなわち太陽に面する側の面を、最大限、太陽電池パネルの受光面で構成することができる。従って、浮体式洋上太陽光発電プラントの構造上発電効率を最大限高めることができる。
そして、例えば論理的階層の下位層から順に直列接続、絶縁型直列接続そして木構造並列接続又は並列接続を行うことによって、過度の絶縁保護対策を行わずに洋上での高圧直流発電を可能にするとともに、例えば絶縁型直列接続に必要な変圧器をパネル筐体内に収容な容量(約300kVA、重量約1トン)に抑えることができる。さらに、木構造並列接続は、最大約6kAになる大集合部出力電流を海底ケーブルと海底ケーブルを収容する太陽電池パネルのみに限定できるため、太陽電池パネル間の電力路コネクタに流れる電流を減らし、連結器の構造をシンプルにする。
また、太陽電池パネルに障害が発生したとき、未使用の連結器又は電力路コネクタ介して他の太陽電池パネルに切り替える制御機能によって、迂回回路を自動的に形成し、浮体式洋上プラントの太陽光発電機能などを維持継続できる。
そして、50m程度以深の海域に浮体式洋上プラントを浮体させれば、例え東日本大震災クラスの巨大津波が襲来しても、その影響はわずかで、津波によって浮体式洋上プラントが破壊されることはない。
また、荒天時、パネル筐体内に注水して潜水させ、同時にフローターを圧縮空気で膨張させることによって所定の潜水水深(例えば、5~20m)に浮体式洋上プラントを保ち、嵐が去った後、パネル筐体内に圧縮空気を噴射して排水することによって浮体式洋上プラントを浮上させる潜水及び浮上機能は、巨大台風などの影響を微小に抑えることができる。
また、上下方向に揺動可能な機械的連結機能、太陽電池パネルの頂点部の衝撃吸収機能によって、強靭な浮体式洋上太陽光発電プラントを構成できる。
さらに、浮体式洋上プラントの現在位置及び方位測定機能、浮体式洋上プラントの外周にスクリュープロペラなどの推進及び操舵機能及び非発電時停留維持機能を装備することによって、海流や強風などで浮体式洋上プラントが流されることなく、昼夜及び天候を問わず所定の位置に停留させ、かつ所定の方位又は方向を保持できる。
そして、論理的階層構造に沿ってIPアドレスを付与することによって、パケットの転送処理(ルーティング)負荷を軽減し、100万枚の太陽電池パネルからなる浮体式洋上プラント内での効率の良いパケット通信環境を提供する。
本発明の一態様に係る浮体式洋上プラントにおける太陽電池パネルを平面視略正六角形とし、複数の太陽電池パネルを平面視ハニカム構造に連結することにより、波浪や大型海洋生物の衝突などによる不意の衝撃を受けても衝撃力を6方向に分散でき、加えて上下方向に揺動可能な機械的連結機能、太陽電池パネルの頂点部の衝撃吸収機能によって、極めて強靭な浮体式洋上太陽光発電プラントを構成できる。さらに正六角形の各辺に連結器を設けられるため、太陽電池パネルに障害が発生したとき、未使用の連結器又は電力路コネクタなどを介して他の太陽電池パネルに切り替える迂回回路を形成しやすくなり、浮体式洋上プラントの信頼性をより高めることができる。
また、本発明の一態様に係る浮体式洋上太陽光発電プラントは、洋上での建設時、合計100万枚の太陽電池パネルを1分に1枚の割合で浮体式洋上プラントに組み込む(連結する)と、浮体式洋上プラント1基の建設に2年間弱を要し、日本の一次エネルギ総需要を賄う963基の建設に1,800年余かかる。これを複数台の人工知能搭載搬送組立ロボットを用いて同時並行して組立てることによって、1基当たり90日間、963基の建設を9年間程度に短縮することができる。
さらに、洋上での組み立てにおいて細心の注意が必要なことは、±250kVの高電圧電力路を連結器内で連結する際に海水成分が浸潤し、浮体式洋上プラントの運用開始後、深刻な絶縁破壊を起こすことである。所定の海域に運搬し組込もうとする太陽電池パネルのパネル筐体内に設けられた圧縮空気タンクに予め圧縮乾燥空気を充填しておき、連結の際に連結器内を圧縮乾燥空気で海水成分を払拭し密着連結することによって連結器内での絶縁破壊を防止できる。
本発明の一態様に係るカーボンフリーエネルギ供給方法は、COを排出しないものの出力電力が不安定で大量かつ長期間にわたって備蓄できない再エネを、国はもとより地球規模でのエネルギ総需要を賄うに足る量を発電し、エネルギキャリアに変換して例えば半年分を上限に備蓄し、供給先施設に適したエネルギ形態に変換し供給することによって、ほぼすべての一次エネルギをカーボンフリー化する。また、カーボンフリーエネルギ供給システムは、管理制御装置によるきめ細かな管理制御により、365日24時間稼働しエネルギ供給し続ける。
本発明に係るカーボンフリーエネルギ供給システムの一実施形態の科学的根拠となる地球温暖化の電磁スペクトラムメカニズムを示し、(A)は太陽と地球の放射エネルギの波長分布を示す図、(B)は水蒸気ウインドウとCO2のエネルギ吸収波長帯域を示す図である。 本発明に係るカーボンフリーエネルギ供給システムの一実施形態の総エネルギ生産目標値の根拠を示し、(A)は世界の一次エネルギ消費量の推移を示す図、(B)は日本の一次エネルギ消費量の推移を示す図である。 本発明に係るカーボンフリーエネルギ供給システムの一実施形態の目標値と我が国の再生可能エネルギ導入ポテンシャル及びとグリーン成長戦略の目標値との対比を示す図である。 本発明に係るカーボンフリーエネルギ供給システムの一実施形態の日本及び世界を供給先として想定した場合における、浮体式洋上太陽光発電プラントの設置海域の年平均日射量分布を示す図である。 本発明に係るカーボンフリーエネルギ供給システムの一実施形態を示すシステム構成図である。 本発明に係るカーボンフリーエネルギ供給システムの一実施形態で用いるエネルギキャリアの種類とその特性を示す図である。 本発明に係る浮体式洋上太陽光発電プラントの一実施形態の日本を供給先として想定した場合における、設置に適した排他的経済水域を示す図である。 本発明に係る浮体式洋上太陽光発電プラントの一実施形態の設置に適した海域周辺諸島の年平均日照時間を示す図である。 本発明に係る浮体式洋上太陽光発電プラントの一実施形態の構成と性能諸元例を示す図である。 本発明に係る浮体式洋上太陽光発電プラントの一実施形態の要部太陽電池パネルを示し、(A)は要部太陽電池パネルの平面図、(B)は要部太陽電池パネルの断面図である。 本発明に係る浮体式洋上太陽光発電プラントの一実施形態の図6中の連結器を示し、(A)は連結状態の水平断面図、(B)は未連結状態の垂直断面図である。 本発明に係る浮体式洋上太陽光発電プラントの一実施形態を示し、(A)は浮体式洋上太陽光発電プラントの停留制御の説明図、(B)は浮体式洋上太陽光発電プラントの外周部に位置する太陽電池パネルの縦断面図である。 本発明に係る浮体式洋上太陽光発電プラントの一実施形態を示し、浮体式洋上太陽光発電プラントの潜水状態を示す縦断面図である。 本発明に係る浮体式洋上太陽光発電プラントの一実施形態の設置海域の水深の設定の根拠となる、水深と津波の高さ及び津波の伝搬速度との関係を示す図である。 本発明に係る浮体式洋上太陽光発電プラントの一実施形態を示し、浮体式洋上太陽光発電プラントの浮体式灯台の構造を示す縦断面図である。 本発明に係る浮体式洋上太陽光発電プラントの一実施形態を示し、浮体式洋上太陽光発電プラントの電力系の階層構造を示す階層構造図である。 本発明に係る浮体式洋上太陽光発電プラントの一実施形態を示し、浮体式洋上太陽光発電プラントの電力系の結線回路を示す結線回路図である。 本発明に係る浮体式洋上太陽光発電プラントの一実施形態を示し、浮体式洋上太陽光発電プラントの大集合部電力系の木構造並列接続を示す結線回路図である。 本発明に係る浮体式洋上太陽光発電プラントの一実施形態を示し、太陽電池パネル間の直直並列接続と障害パネルの迂回回路を示す概念図である。 本発明に係る浮体式洋上太陽光発電プラントの一実施形態を示し、太陽電池パネルにおける太陽光発電時及び太陽光非発電時の電流の流れを示す概念図である。 本発明に係る浮体式洋上太陽光発電プラントの一実施形態を示し、浮体式洋上太陽光発電プラントの通信系の論理的階層構造を示す階層構造図である。 本発明に係る浮体式洋上太陽光発電プラントの一実施形態を示し、浮体式洋上太陽光発電プラントを複数の搬送組立ロボットを用いた同時並行建設を示す図である。 本発明に係る浮体式洋上太陽光発電プラントの一実施形態の建設に要する工程別組立と総プラント建設見積時間を示す図である。 本発明に係るカーボンフリーエネルギ供給システムの一実施形態の機材コスト、建設・保守・運用等コスト、電力単価、規模の拡大による経済効果などの試算モデルを示す図である。 本発明に係るカーボンフリーエネルギ供給システムの一実施形態による再エネ発電量と電力単価の試算例を示す図である。
[発明の背景]
本発明は、産業革命後に人類が引き起こした地球温暖化という深刻かつ喫緊の課題に対する技術的解決手段を提示しようとするものである。このためには、本発明が科学的根拠はもとより気象や国際法、様々な産業など幅広い分野を踏まえてなされたものであることを、発明の一実施形態の例示に先立って説明する必要がある。以下に、地球温暖化の科学的根拠、地球のエネルギ収支と地球温暖化、世界と日本の一次エネルギの消費動向、一次エネルギの再エネ化の可能性と課題、さらに洋上太陽光発電のポテンシャルについて説明する。
[地球温暖化の科学的根拠]
IPCC(the Intergovernmental Panel on Climate Change)第5次評価報告書(2014年)によれば、1880年から2012年にかけて世界平均気温(平均地表温度)は0.85℃上昇したが、今後、温室効果ガス濃度がさらに上昇し続ければ、2100年には温室効果ガスが最も多くなる最悪の場合(RCP8.5シナリオ)では2.6~4.8℃上昇し、最も少なく抑えられた場合(RCP2.6シナリオ)でも0.3~1.7℃上昇する。
2015年にパリで開催したCOP21(21th Conference of the Parties to the United Nations Convention on Climate Change)で採択されたパリ協定では、世界平均気温の上昇幅を産業革命前より2℃未満に抑え、できれば1.5℃より低く抑える努力目標を各国に課すことになった。そして、2018年に開催されたIPCC COP24では、CO排出量を2030年までに45%削減し、2050年頃には世界の温暖化ガス総排出量をネットゼロを達成する必要があるなど、対策が急務であることが報告された。
Ebru Kirezciらの研究(Nature, Scientific Reports, 10, 11629, 2020)によれば、最悪シナリオ(RCP8.5)の場合、猛烈な暴風雨や高波、高潮などによる沿岸洪水の影響を受ける陸地面積は2100年までに2015年現在より48%増加し、人口の4.1%(2億8700万人)が被害を受け、世界のGDPの20%の資産(14.2兆米ドル)が失われる。さらに現在は100年に1回起きるような猛烈な豪雨や高波、高潮が10年に1回の頻度で発生するなど、沿岸地域に限っても甚大な被害をもたらすとしている。
また、Jorgen Randersらの研究(Nature, Scientific Reports, 10, 18456, 2020)によれば、温室効果ガスの排出を直ちにゼロにできたとしても、地球全体の気温は2500年までに産業革命前に比べ3℃上昇し、海面も3m上昇する。これは、既に放出したCOは数千年にわたって大気圏に留まり、北極域の氷や炭素を含んだ永久凍土の融解が続くためである。気温や水面の上昇を回避するには、1960~1970年にすべての人為起源の温室効果ガスの排出をゼロにしなければならなかった。
地球の生態系や人間社会への壊滅的な影響を抑えるには、温室効果ガスの排出ゼロに向けた取り組みと並行して、大気中からCOを毎年33Gトン(以下、33Gt-CO/年と表記)以上を回収し除去する必要があるとしている。
ところで、日常生活や企業活動で排出されるCOなどの温室効果ガスを削減するよう努力した上で、それでも排出してしまう温室効果ガスを植林などで吸収しようという考え方をカーボン・オフセットと呼び、排出量と吸収量が等しい状態をカーボン・ニュートラル(実質ゼロやネットゼロもほぼ同義)という。また、発電所や製鉄所、石油精製工場、セメント製造工場などで発生する排気ガス中の高濃度COをアルカリ性溶液などに吸収させて排ガスから分離回収し、タンカーやパイプラインで貯留地点に輸送して漏洩が少なく長期間安定貯留できる地層に圧入するCO回収・貯留(CCS)技術や、回収したCOを油田や天然ガス田に圧入して資源(天然ガス)を回収しようとするCO回収・有効利用・貯留(CCUS)技術の実証試験が世界各所で行われている。
しかしながら、前者の植林などでの吸収、すなわち世界の年間排出量32.8Gt-CO/年(2017年)規模を植林などで吸収するには、現在の地球の吸収量18Gt-CO/年規模の吸収能力を持つ広大な植林地を新たに確保する必要がある。一方、後者のCCSやCCUS技術では、COの分離回収・貯留に多大なコストとエネルギを要し、また貯留地層には限りがあることから、将来の持続可能なエネルギシステムへの橋渡しと位置付けられている。加えて上述の大気中から毎年33Gt-CO以上の回収除去を考え合わせると、例え大手企業などが省エネなどに全面的に協力してもカーボンニュートラルの実現は容易ではなく、パリ協定の目標達成に向けた技術に裏付けられた道筋は未だ明らかになっていないと言っても過言ではない。
これは、著名な科学雑誌の社説(Nature, Editorials, 592, 8, 2021)によっても裏付けられる。すなわち、2021年11月に開催されるCOP26国連気候変動会議に先立って、参加国202カ国のうち約124カ国が2050年までにネットゼロ達成を誓約したが、大事なのは目標達成の方法と信頼できる監視体制である。例えば世界中に設立された多くの炭素排出権取引所で商品として炭素排出権を売買することができる。排出量の多い国は、炭素排出権取引により大気中に放出する炭素の総量を実際には減らさなくてもネットゼロを達成したと主張できる。ネットゼロを実現する具体的な方法とその透明性を高めなければ、パリ協定の目標達成はあり得ない。
以上から、ほぼすべてのエネルギをCOを排出しないカーボンフリー化し、持続可能なエネルギシステムを作り上げることが地球温暖化抑制に大きく寄与することになる。このための具体化策は、
(1)ほぼすべての一次エネルギを代替し得る十分な量の再生可能エネルギを生産する。
(2)変動が大きい再エネ起源のエネルギを低廉で高品質かつ安定に供給先施設へ供給する仕組み(システム)を作る。
(3)大気圏に既に大量に滞留しているCOを計画的に回収し除去する。
の3点に集約され、直ちに実行に移されなければならない。
本発明は、(1)と(2)の具体的な実現手段を我が国への適用を例に提示するもので、(3)については(1)(2)によるカーボンフリー化によって自然界(森林や海洋)の吸収(18Gt-CO/年)が期待できるようになるが、さらに破壊された森林への植林や、例えば有機高分子膜などで大気中のCOを捕捉し安価かつ確実に除去する技術の早期実用化が期待される。
[地球のエネルギ収支と地球温暖化]
太陽は383YW(Yotta:1024)のエネルギを放射し、その10億分の1の174PW(Peta:1015)が地球に届き、大気や雲などにより30%は宇宙へ反射され、19%は大気や雲に吸収される。地表には51%の89PWが届き、陸地と海洋を暖める。大気圏内に到達した太陽エネルギは大気や水の循環(風や雨)を発生させ、植物の光合成などを通じて多くの生命活動と再エネの源になる。大気や地表を暖めたエネルギは熱などの形でしばらく大気圏内に留まるが、最終的には遠赤外線としてすべて宇宙へ再放射され、エネルギ収支は均衡する。化石燃料由来のCOやメタンなどの温室効果ガスが、地表から放射された遠赤外線の一部を吸収(RCP8.5では8.5W/m)することによって、エネルギ収支の均衡状態が変わり地球温暖化をもたらす。
これらを電磁スペクトラムの視点から見ると、絶対零度(-273.15℃)ではすべての原子または分子の熱振動が停止するが、これより温度の高い物質はすべて電磁スペクトルとしてエネルギを放射する。高温になるほど電磁スペクトルの波長は短くなり、逆に低温になるほど波長は長くなる。図1Aに示すように、表面温度が5500℃の太陽は、波長0.1μmから3μmまでの近紫外線、可視光線、近赤外線エネルギを放射する。一方、宇宙から実効温度-20℃に見える地球は、波長4μmから60μmの遠赤外線エネルギを放射する。
また、すべての大気ガスは、それぞれ固有の波長帯域でエネルギを吸収する。図1Bに示すように、自然界の温室効果ガスである水蒸気(図中HOで示す)は、広い波長帯域にわたって電磁スペクトラムを強力に吸収する。しかし、水蒸気ウィンドウと呼ばれる7.5μmから19.5μmの波長帯域(図中のwater vapor window)は透過性を有し、同帯域の遠赤外線エネルギを宇宙に逃がすことによって地球を放射冷却する。すなわち、水蒸気ウィンドウが地球のエネルギ収支の均衡状態を保つうえで重要な役割を担っている。
[世界と日本の一次エネルギの消費動向]
図2Aに示すように、世界の一次エネルギ消費量は経済成長とともに年平均2.5%で増加し続けている。特に2000年以降、アジア大洋州地域の新興国での伸びが著しく、先進国(OECD諸国)の世界のエネルギ消費量に占める割合は、1965年の70.5%から2018年には40.9%に低下している。一方、エネルギ種別で見ると、石油消費量は年平均2.5%で増加、石炭も年平均1.9%で増加、天然ガスも年平均3.3%で増加しており、2018年時点で一次エネルギ全体の84.7%を占めている。
残りの非化石エネルギでは、水力6.8%、原子力4.4%、そして再エネは4.0%と微小である。この状態が続けば温室効果ガスの濃度は上昇し続け、地球に壊滅的なダメージを与えることになる。
一方、我が国は図2Bに示すように、第一次/二次石油ショックや東日本大震災を契機に省エネ化が進み、2005年をピークにエネルギ消費は減少傾向にある。ただし、石油消費量は減ったものの、石炭や天然ガスが増え、いぜんとして化石エネルギへの依存度は2017年91.0%と、欧米諸国(米国81.9%、英国78.5%、独80.2%、仏国49.0%)に比べ圧倒的に高い。2020年12月に策定された「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」により、再エネを主力電力化しようとする動きがようやく見え始めたが、後述するように技術面でも海外に比べ周回遅れの状況にある。
以上から、日本では少子高齢化も相俟って今後エネルギ消費量は増えないことを前提に、図2Bに下矢印で示す2018年の一次エネルギ総供給量TPESj(Total Primary Energy Supply in Japan;20EJ/年=5.5PWh/年)を再エネ生産量の目標値として、以下に議論する。
[一次エネルギの再エネ化の可能性と課題]
環境省がゼロカーボンシティ実現や再エネ主力化促進を目的に2009年度から調査を始め2020年3月に発表した「我が国の再生可能エネルギ導入ポテンシャル」では、賦存量(現在の技術水準で利用可能なもの)、導入ポテンシャル(賦存量のうち、種々の制約要因により利用できないものを除いたエネルギ資源量)、及びシナリオ別導入可能量(事業採算性に係る買取価格を設定した場合に具現化が期待される発電量)を推計している。図3は同推計結果(抜粋)とグリーン成長戦略の目標値、及び上記目標値TPESjとの対比を示し、本発明に係るカーボンフリーエネルギ供給システムの一実施形態の総エネルギ生産目標値と、環境省と経済産業省が2020年に発表した「我が国の再生可能エネルギ導入ポテンシャル」と「グリーン成長戦略」の目標値との対比を示す図である。
導入ポテンシャルでは、太陽光と風力の合計発電量はTPESjを上回る7369TWh/年(TPESjの134%)もあるものの、Iの買取価格では計1015TWh/年(TPESjの18%)、IIでは1519TWh/年(同28%)、IIIでも2516TWh/年(同48%)に留まっている。そしてグリーン成長戦略で掲げる2040年の洋上風力発電の目標値は僅か139TWh/年(同2.5%)に過ぎない。しかも我が国の現在の産業用電気代約17円/kWhに対して、洋上風力は約2倍の固定買取価格が設定されている。日本の電気料金は欧米の2倍位高いと言われているが、図3のシナリオで風力発電を主力電源化すれば、日本の電気料金は欧米の4倍位になり、産業界の負担は深刻になり競争力を大きく損なうことになる。
これに対して、欧州の洋上風力発電では風況環境に恵まれ温暖化対策に積極的に取り組んだ結果、2019年時点で洋上風力で2851TWh発電しており、2030年までに19年の約8倍、2050年には25倍に拡張する予定で、既に6円/kWhを切る売電価格で落札された事例もある。
[洋上太陽光発電のポテンシャル]
図3では風力発電は陸上と洋上両方で発電量を推計していたが、太陽光発電については陸上のみである。推計方法が公開されていないため、洋上太陽光発電の導入ポテンシャルなどを同じ方法で推計できないが、以下に公開資料をもとに推計した。
図4は静止気象衛星が収集したデータを用いて1991年から1993年までの3年間の天候や昼夜の変化を含めた地球表面の年平均日射量分布地図である。なお、同図はグレースケールのため、図下部の日射量と色彩との対応関係並びに地球表面の年平均日照量分布を判別することは難しい。下記の引用元URLのカラー年平均日照量分布図を参照されたい。
https://www.ez2c.de/ml/solar_land_area/
確認のため、気象庁が公開している日射量データベース閲覧システムで南鳥島などの年平均全天日射量を検索したところ、ほぼ一致していた。同図によれば、南北緯度30°域付近内の海洋(以下、赤道海域と呼ぶ)及び陸地の大半は、年平均日射量が220W/m以上と高いことが分かる。同図内C1~C6の砂漠に付された黒円(●)は、太陽電池の変換率8%としてそれぞれ3TWの太陽光発電に必要な地表面積(Σ●=91万km)を表したもので、同図右下に記されている年平均18TWe(TWeの「e」は電気の意味)は年間160PWhのエネルギ生産を想定していることを意味する。
この発電量は、図2Aの100万石油換算トン(Mtoe)に換算すると14,000Mtoeとなり、同図下矢印で示す2018年の世界の一次エネルギ消費量(TPESw)に匹敵する。なお、砂漠は強い風によって土壌がとどまり難く岩石が露出し荒涼とした高温地域が多く、高温による性能劣化が著しい太陽光発電には適しておらず、上記分布地図の解説の中でも砂漠での太陽光発電を推奨している訳ではない。
一方、図4から日本国内(同図J)の年平均日射量は130~180W/mであるが、幸い我が国は世界に類を見ない広いEEZを持っており、北回帰線上右側寄りにXを附した楕円内の水域は220~260W/mと高い。
これは、同水域での洋上太陽光発電が高出力で無尽蔵のエネルギポテンシャルを持っていることを意味する。ちなみに、平均日射量240W/m、変換効率16%を想定すると、楕円X内の黒点(●)程度の面積(約2.7万km、周辺EEZの約2%)で洋上太陽光発電を行えば、TPESj相当量のカーボンフリーのエネルギを得ることができる。なお、EEZは、国連海洋法条約にて天然資源と自然エネルギに係る「主権的権利」及び人工島・施設の設置、環境保護・保全、海洋調査に係る「管轄権」を持つと規定されており、EEZ内で洋上太陽光発電を行っても何ら問題はないと考えられる。
さらに、同図において、赤道海域は上述の91万kmを収容する十分過ぎるほどのポテンシャル(海洋面積)があることから、国連海洋法条約などを改正し国家やEEZ、公海などの枠組みを越えて同海域で洋上太陽光発電を行えば、風力発電などとの併用により、今後も増え続けるであろう世界の一次エネルギ需要をすべてカーボンフリーの再エネで賄えることが容易に想像できる。
ちなみに、91万kmの赤道海域での太陽光発電量は、太陽電池モジュールの背面温度を海水温に保てることから砂漠での発電量の約2倍、すなわち2018年の世界一次エネルギ消費量の約2倍に相当し、今後もエネルギ消費量が年平均2.5%の割合で増加し続けても、2050年頃の一次エネルギ需要推定量(2TPESw)まで賄えることになる。それ以降も世界一次エネルギ消費量が増え続けても、十分な再エネ資源ポテンシャルはあるが、海洋を浮体式洋上プラントで覆う面積が巨大になるほど、日照不足になる海洋面積が広大になり、植物プランクトンの減少を招くことになる。これについては、後述の環境アセスメントを踏まえた実施形態の中で説明する。
以下、図面を参照し、本発明のカーボンフリーエネルギ供給システム、及び浮体式洋上太陽光発電プラントの実施形態について説明する。
カーボンフリーエネルギ供給システムの全体構成]
図5に例示するカーボンフリーエネルギ供給システム10は、一又は複数の浮体式洋上太陽光発電プラント100と、一又は複数の第1のエネルギ変換装置210と、一又は複数の第2のエネルギ変換装置220、一又は複数の第3のエネルギ変換装置230、一又は複数のエネルギキャリア貯蔵装置240のうちの一部又は全部と、一又は複数のエネルギ変換供給装置250とからなるエネルギ・キャリアシステム200と、一又は複数の海底ケーブル300と、一又は複数の洋上風力発電プラント等400と、供給先施設500を含むカーボンフリーエネルギ供給システム10を管理制御する一又は複数の管理制御装置700とから構成される。
カーボンフリーエネルギ供給システム10は、一又は複数の洋上風力発電プラント等400など、異なる再エネ資源を用いた一又は複数の発電プラントを併設してもよい。
そして、一又は複数のカーボンフリーエネルギ供給システム10によって、一定の地域、例えば一又は複数の国家さらには地球規模の一次エネルギの総需要を賄うに足る量のエネルギのほぼすべて、または一部を供給する規模を構成できる。
なお、カーボンフリーエネルギ供給システム10は、上記構成に限られるものではない。例えば、カーボンフリーエネルギ供給システム10が鉄鋼業や空港など特定の産業に特化してエネルギ供給する場合には、供給先施設500が第2のエネルギ変換装置220相当装置や、第3のエネルギ変換装置230相当装置、エネルギキャリア貯蔵装置240相当装置の何れか一又は複数を備えているときには、カーボンフリーエネルギ供給システム10は当該装置を省いて構成してもよい。
さらに、例えば供給先施設500が電力系統の場合、第1のエネルギ変換装置210とエネルギ変換供給装置250とを一体の装置として実装し、電力系統で電力動揺(発電所事故などによる停電や電圧低下,周波数低下など)が発生した時、交流電圧制御や有効電力制御、無効電力供給による電力動揺の抑制を行い大規模停電(ブラックアウト)を回避する自励式高圧変電装置として機能させてもよい。
一又は複数の浮体式洋上プラント100は、国又は一定の地域又は特定の産業で必要とされるエネルギ総需要のほぼすべて又は一部を再エネ資源により発電する規模を有して構成してもよい。
各浮体式洋上プラント100で発電された電力は、一又は複数の海底ケーブル300を介してそれぞれ第1のエネルギ変換装置210へ送電される。海底ケーブル300には、センサ情報や制御信号などのパケット通信を行うための光ファイバ及び当該光ファイバ内で減衰する信号を増幅するための増幅器に電力を供給するための小電力送電用ケーブルが含まれていてもよい。
この海底ケーブル300は、高圧直流海底送電ケーブルとして構成され、後述するようにケーブル長1000kmでの高圧直流送電の送電損失は3%程度に抑えることができる。このような性能を有することにより、例えば、後述する日本近海(北回帰線付近の日本のEEZ)に浮体式洋上プラント100を設置して海底ケーブル300を敷設し、日本国へ送電することが可能となる。
第1のエネルギ変換装置210は、複数の浮体式洋上プラント100から海底ケーブル300を介して送電された電力を安定化し、エネルギ変換供給装置250にて、供給先施設500の一つである直流電力系や交流電力系統へそれぞれの規格に合致するようエネルギ変換(変圧やDC/AC変換など)して供給するとともに、余剰電力を第2のエネルギ変換装置220へ送電してもよい。第1のエネルギ変換装置210の具体例として、リチウムイオン電池や鉛蓄電池の充放電により電力変動を安定化する所謂パワーコンディショナを挙げることができる。第1のエネルギ変換装置210のエネルギ変換効率は、95%程度が想定される。
第2のエネルギ変換装置220は、第1のエネルギ変換装置210から送電された電力を利用して水素を生成する。第2のエネルギ変換装置220により生成された水素は、第3のエネルギ変換装置230へ供給される。第2のエネルギ変換装置220の具体例として、直流電力で水や海水などを電気分解して水素を発生させる水素発生装置を挙げることができる。第2のエネルギ変換装置220のエネルギ変換効率は、80%程度が想定される。
第3のエネルギ変換装置230は、第2のエネルギ変換装置220により生成された水素を原料若しくは原料の一部に使用してエネルギキャリアを合成する。エネルギキャリアには、図6に示すように高圧水素ガス(H)や液体水素(LH)、液体アンモニア(NH)、メチルシクロヘキサン(MCH)などがある。長期間にわたる大量備蓄の視点からは、体積エネルギ密度と質量エネルギ密度が高く肥料の原料として長年の実績がある液体アンモニアが適しているが、供給先施設500の特性に応じて、常温常圧で貯蔵可能なMCHや高圧水素ガス、液体水素をエネルギキャリアとして用いてもよい。
第3のエネルギ変換装置230の具体例として、NH合成装置を挙げることができる。NH合成装置のエネルギ変換効率は、90%程度が想定される。図6は、本発明に係るカーボンフリーエネルギ供給システムの一実施形態で用いるエネルギキャリアの種類とその特性を示したものである。
エネルギキャリア貯蔵装置240は、第3のエネルギ変換装置230により合成されたエネルギキャリアを所定の量、例えば半年分程度を上限に貯蔵する。例えば、TPESjの半分をNHで貯蔵する場合は、凡そ694GL分の貯蔵タンクが必要になる。NHはLPG(Liquefied Petroleum Gas)と特性が似ており、LPG貯蔵タンクを改修すればNH貯蔵タンクに転用できる。2017年現在の国内のLPG貯蔵タンクの総容量は150万トン(2.7ML)と微量であるが、カーボンフリーエネルギ供給システム10の導入が進めば、いずれすべてのLNG貯蔵タンク(17GL)や原子力発電所、石油貯蔵タンク(81GL)、石炭集積場などが不要になり、これらの敷地をNH貯蔵タンクに転用すれば、相当量の設置スペースを確保できる。
次に浮体式洋上プラント100の導入フェーズで電力系統へ送電しながら、どの程度の割合でNHに変換しTPESj/2まで貯蔵すれば良いかについて述べる。導入開始から毎年等量dで再エネ発電量を増やし、発電量のα%をNHに変換・貯蔵し、n年後にTPESjの発電量に到達すると同時に備蓄量もTPESj/2に達するものとすると、等差級数の式から、
dn=TPESj
n(n+1)dα/2=TPESj/2=dn/2
が成り立ち、これより、
α=1/(n+1)
を得る。n=1のときα=50%、n=9のときα=10%となる。すなわち、建設開始から9年後に年間発電量がTPESj/2に到達し完成する建設計画の場合、建設期間中は日ごと及び季節の日照量の変動に対応しながら年間生産量(電力量)の10%をエネルギキャリアに変換し備蓄する。完成後は生産量と需要量は平衡状態になり、日ごと及び季節の変動に対応していくことになるが、エネルギ需要が生産量を上回る12月から2月はエネルギキャリア備蓄から需要家へ供給する量が増え、エネルギ生産量が需要量を上回る5月から10月は余剰電力をエネルギキャリアに変換し備蓄する量が増える。異常気象などにより需要と供給のバランスが崩れても、半年分程度の備蓄があれば貯蔵タンク間での融通により対応可能と思われるが、過去及び今後のエネルギ需要の統計データや運用開始後の運用実績データ、風力など他の再エネ資源を用いた再エネ発電の特性や全発電量に占める比率などをもとに適切なエネルギキャリア備蓄量を設定・更新していく必要がある。
エネルギキャリア貯蔵装置240に貯蔵されたエネルギキャリアは、電力系統などの供給先施設500での需要量と浮体式洋上プラント100による生産量との差分に基づいて(生産量が需要量よりも少ないときは、時刻や天候などの変化と、過去の電力需要や生産量データに基づく推定値または予測値に基づいて)取り出され、エネルギ変換供給装置250へパイプライン輸送される。
エネルギ変換供給装置250は、供給先施設500に適したエネルギ形態に変換してエネルギを供給する。
例えば、エネルギ変換供給装置250は、エネルギキャリア貯蔵装置240から取り出したエネルギキャリアを用いて所定の直流電力を発電し、供給先施設500の一つである直流電力系統(HVDC)に送電する。同様に、エネルギ変換供給装置250は、エネルギキャリア貯蔵装置240から取り出したエネルギキャリアを用いて所定の交流電力を発電し、供給先施設500の一つである交流電力系統に送電する。
これらのエネルギ変換供給装置250の具体例として、NH専焼発電機や、ガスタービンと蒸気タービンとを組み合わせ、NHをガスタービンの排熱で分解して水素を取り出し、水素専焼燃焼器で燃焼させることによって熱効率60%超で発電できるコンバインドサイクル発電機(GTCC)などが挙げられる。ちなみに、石炭や石油を燃料に使う最新の火力発電であっても熱効率は40%超、LNGでも50%超である。
また、第1のエネルギ変換装置210から出力された電力を直接エネルギ変換供給装置250に出力し、エネルギ変換供給装置250は所定の直流電力に変換のうえ、供給先施設500の一つである直流電力系統(HVDC)に送電してもよい。同様に、第1のエネルギ変換装置210から直接出力された電力を、エネルギ変換供給装置250は所定の交流電力に変換し、供給先施設500の一つである交流電力系統に送電してもよい。
供給先施設500の電力系統での需要電力より供給電力が上回るときは、その差分を第2のエネルギ変換装置220に出力するよう第1のエネルギ変換装置210に指示してもよい。逆に、需要電力より供給電力が下回るときは、上述したようにエネルギ変換供給装置250はエネルギキャリア貯蔵装置240からエネルギキャリアを取り出して所定の電力に変換(発電)して供給先施設500の電力系統へ供給してもよい。
また、第2のエネルギ変換装置220から出力された高純度の水素を、第3のエネルギ変換装置230でエネルギキャリアである液体水素(-253℃)に変換し、エネルギキャリア貯蔵装置240に貯蔵し、エネルギ変換供給装置250はエネルギキャリア貯蔵装置240から取り出したエネルギキャリア(液体水素)を所定の流量と流圧等に調整し、供給先施設500の一つである例えば液体水素を燃料とする航空機が発着する空港に設けられた液体水素貯蔵タンクに供給してもよい。
液体水素を燃料とする航空機の例として、例えば仏エアバス社が「ZEROe」コンセプトのもと2035年の就航を目指して開発を進めている改良型ガスタービンエンジンを動力源とするジェット旅客機タイプやターボプロップエンジンを動力源とするプロペラ機タイプ、燃料電池駆動の6発モータを動力源とするプロペラ機タイプなどが挙げられる。
液体水素は、同じ重量のジェット燃料に対して4倍のエネルギを取り出せるが、燃料を-253℃に保たなければならないため容器重量とスペースが増える。ただし、高度1万mは-55℃で飛行時間も12時間程度に限られるため、地上ほど冷却性能は要求されない。
また、第2のエネルギ変換装置220から出力された高純度の水素を、直接、エネルギ変換供給装置250に出力し、同装置は所定(-253℃に冷却)の液体水素に変換し、供給先施設500の一つである空港の液体水素貯蔵タンクに供給してもよい。
また、第2のエネルギ変換装置220から出力された高純度の水素を、エネルギ変換供給装置250は所定の圧力に加圧し、供給先施設500の一つである例えば水素ステーションの高圧水素貯蔵タンクにパイプライン輸送若しくはタンクローリ輸送してもよい。なお、今後、タウンカーなどの小型車は電気自動車(EV)が広く用いられるようになろうが、大型乗用車やトラックなどのディーゼル車は水素ガス燃料電池車(FCV)若しくは水素ガスエンジン車に置き換わっていくと目されている。ちなみに、トヨタのMIRAIに搭載の水素ガス燃料電池は、重さ32kgで174馬力を発生し、航続距離は850kmである。これを2台連結すると大型トラック用ディーゼルエンジンに匹敵する馬力を発揮し、3台連結すると大型トレーラーや高速バスなどにも対応でき、重量も1/3程度に軽量化できる。
また、第3のエネルギ変換装置230から出力されたエネルギキャリア(NH)を、エネルギ変換供給装置250は高圧水素ガスや液体水素、MCHなど異なるエネルギキャリアに変換して、供給先施設500に供給してもよい。
また、エネルギ変換供給装置250は、エネルギキャリア貯蔵装置240から取り出したエネルギキャリア(NH)を所定の水素ガスに変換し加圧して、供給先施設500の一つである例えば水素ステーションの高圧水素貯蔵タンクにパイプライン輸送若しくはタンクローリ輸送してもよい。
なお、上述の第2のエネルギ変換装置220から出力された高純度の水素を加圧して水素ステーションに供給する場合との違いは、エネルギキャリア貯蔵装置240からの方が水素ステーションに設置する高圧水素貯蔵タンクの容量を少なくできるが、水素燃料電池に適した高純度の水素ガスを精製する水素精製機能をエネルギ変換供給装置250に付加、又は水素ステーション側の高圧水素貯蔵タンクの前段に付加する必要があり、その分コストがかかる。
また、エネルギ変換供給装置250は、エネルギキャリア貯蔵装置240から取り出したエネルギキャリア(NH)を所定の液体水素に変換し、供給先施設500の一つである空港に設けられた液体水素貯蔵タンクに供給してもよい。なお、前述の第2のエネルギ変換装置220から出力された高純度の水素をエネルギ変換供給装置250で液体水素に変換して液体水素貯蔵タンクに供給する場合との違いは、エネルギキャリア貯蔵装置240からの方が空港に設置する液体水素貯蔵タンクの容量を少なくできるが、水素燃料電池に適した高純度の水素を精製する水素精製機能をエネルギ変換供給装置250に付加する必要があり、その分コストがかかる。
また、エネルギ変換供給装置250は、エネルギキャリア貯蔵装置240から取り出したエネルギキャリアを所定のエネルギキャリアに変換し、供給先施設500に供給してもよい。
また、エネルギ変換供給装置250は、エネルギキャリア貯蔵装置240から取り出したエネルギキャリア(NH)を所定の流量と流圧に調整し、供給先施設500の一つであるNH専焼エンジン船舶が発着する港湾に設けられたNH貯蔵タンクに供給してもよい。
次に、全産業におけるCO排出量の40%(2016年時点)を占めている鉄鋼業におけるゼロカーボンスチールへのカーボンフリーエネルギ供給システムの適用について説明する。鉄鋼業は自動車や産業機械など他の産業の基盤となる基幹産業である。製鉄では鉄鉱石(Fe)と燃料を兼ねた還元剤のコークス(C)を高炉に投入して、複数のプロセスを経て銑鉄が取り出される。これらをひとまとめにした反応式で表すと、
1/2・Fe2O3+C+1/4・O2→Fe+CO2
となり、分子量的に鉄と等量のプロセス由来のCOを排出する。
一方、ゼロカーボンスチールを目指す水素還元製鉄では、コークスの代わりに水素を用いて、
1/2・Fe2O3+3/2・H2→Fe+3/2・H2O
なる反応式にて、COを排出せずに銑鉄を取り出すことができる。しかしながら、水素の製造に必要な現在の産業用電力と石炭のkWh換算価格には約10倍(欧米並み電気代でも数倍)もの開きがあり、産業用電力を用いたゼロカーボンスチールは鉄鋼の高騰を招き、産業全体に大きな影響を与えかねない。現在のコークスの価格とCCS/CCUSコストの合計額程度で水素を供給できれば、鉄鋼業のカーボンフリー化も見えてくる。
その具体化策は、(a)交流電力系統と並行してHVDC直流系統が運用されていれば、直流電力を製鉄所に引き込み第2のエネルギ変換装置220で水素を生成し第3のエネルギ変換装置230でエネルギキャリアの一つである高圧水素ガスに変換(加圧)し、エネルギキャリア貯蔵装置240に備蓄して、エネルギキャリア貯蔵装置240から高圧水素ガスを取り出してエネルギ変換供給装置250で水素ガスの流量と流圧を調整し、供給先施設500の高炉に供給する。
(b)浮体式洋上プラント100からの海底ケーブル300を製鉄所で陸揚し、第1のエネルギ変換装置210と第2のエネルギ変換装置220で水素を生成し、第3のエネルギ変換装置230でエネルギキャリアの高圧水素ガスに変換し、エネルギキャリア貯蔵装置240に備蓄して、エネルギキャリア貯蔵装置240から高圧水素ガスを取り出してエネルギ変換供給装置250で水素ガスの流量と流圧を調整のうえ高炉に供給する。余剰電力が出たときは電力系統へ送電(売電)する。荒天が続き浮体式洋上プラント100からの電力供給量が不足し、製鉄所内のエネルギキャリア貯蔵装置240の備蓄量が一定量を下回ったときは、製鉄所外のNHエネルギキャリア貯蔵装置240からNHをパイプライン輸送させ、高炉の排熱を利用してNHを分解するエネルギ変換供給装置250で水素に変換してから高炉に供給する方法などが考えられる。
そして、水素を得るための水電気分解に必要な電力量の理論値は39.6Wh/g-H)であるが、(a)または(b)における第2のエネルギ変換装置220のエネルギ変換効率を80%とすると、国内銑鉄生産量77.4Mt-Fe(2018年)に必要な還元用水素は4.2Mt-H、還元用水素の生産に必要な電力量は208TWhとなる。これは後述する浮体式洋上プラント36.4基分の発電量に相当する。カーボンフリーエネルギ供給システムの国内外への導入により、直流電力単価が5円/kWhになると仮定すると、還元用水素の製造コストは1.04兆円となり、鉄鋼業界の市場規模16.3兆円(2018年)の約6.4%に相当する。ちなみに、77.4Mt-Feの生産に必要なコークスの輸入コストを約5,860億円(中国産コークス価格:約35,200円/t-coke)、COのCCSコストを約3,780億円(1Mt/年以上の場合、6,186円/t-CO)と仮定すると、合計約0.96兆円となり、還元用水素の製造コストとほぼ同額になる。
浮体式洋上プラント100、第1~第3のエネルギ変換装置210~230、エネルギキャリア貯蔵装置240、エネルギ変換供給装置250、海底ケーブル300、洋上風力発電プラント等400及び供給先施設500の一部又は全部は、一又は複数の管理制御装置700により管理及び制御される。管理制御装置700の詳細は後述する。
以上、カーボンフリーエネルギ供給システム10について、複数の実施形態について説明したが、これらに限定されるものではない。例えば、カーボンフリーエネルギ供給システム10における再エネ源は、図5に示した浮体式洋上太陽光発電プラント100や洋上風力発電プラント等400に加え、図示省略した陸上風力発電プラントや陸上太陽光発電プラント、地熱発電プラント、中小水力発電プラント、等も含まれる。
ここで「再エネ源」とは、太陽・地球物理学的・生物学的な源に由来し、利用する以上の速度で自然界に従って定常的もしくは反復的に補充されるエネルギ資源である。したがって、本発明のカーボンフリーエネルギ供給システム10のように、既成概念にとらわれることなく再エネ源の利用対象を拡大すれば、人類は未来永劫にわたってカーボンフリーのエネルギを無尽蔵かつ安価に、安定して利用することができる。さらに、再エネ資源利用の多様性を高めることは、再エネ由来の発電電力の時間的変動性や季節的偏在性を平準化し、エネルギ・キャリアシステム200の利用効率を高めるとともに、エネルギキャリア貯蔵装置240の貯蔵量の上限半年分(TPESj/2)を例えば4か月分(TPESj/3)に削減することも可能になり、より低廉な持続可能なエネルギの安定供給に繋がる。
また、カーボンフリーエネルギ供給システム10は、上記の各種発電プラントに加え、エネルギ変換装置210~230、エネルギキャリア貯蔵装置240、様々な機能を有し得るエネルギ変換供給装置250、あるいはエネルギ変換装置210とエネルギ変換供給装置250とを一体化した装置、そして液体アンモニアや高圧水素ガスなど複数のエネルギキャリアなどとの組み合わせは、無数に存在し、上記実施の形態には限定されない。供給先施設500の特性に応じて柔軟に組み合わせられる、すなわち選択幅が広いことは、すべての一次エネルギを代替しようとするカーボンフリーエネルギ供給システム10が有しなければならない特徴の一つでもある。
[浮体式洋上太陽光発電プラントの構成]
以下、本発明に係る浮体式洋上プラント100の一適用例として、本発明に係るカーボンフリーエネルギ供給システム10を、カーボンフリーエネルギの供給先を日本国を対象として設置することを想定して詳細に説明する。
この場合、本発明に係るカーボンフリーエネルギ供給システム10において目標となる「エネルギ総需要量」に関しては、前述の図2Bをもとに設定したTPESj(20EJ=5.5PW)を目標値とする。
また、上記目標値を達成するためには、浮体式洋上プラント100の設置場所と年平均日射量分布との関係が重要となるが、前述したように図4から日本国内Jの年平均日射量は130~180W/mであるのに対して、北回帰線付近の日本のEEZ(Xで示す楕円内)における年平均日射量は220~260W/mと高いことから、この海域に浮体式洋上プラント100を設置することにより、高出力の太陽光発電を行うことが可能となる。
図7は日本のEEZを示すもので、年間平均日射量が多い北緯30°以南に広大な海洋があり、保守基地の設置候補となる島も多数存在する。図8は、本発明に係る浮体式洋上太陽光発電プラントの一実施形態の日本を供給先として想定した場合における、設置に適した海域周辺諸島の年平均日照時間を示している。即ち、図8は気象庁が公開している気象データで、特に南鳥島は日照時間率が年間昼夜を通して32%と日本国土の平均より1.5倍位高い。気象データはないが、図4より沖の鳥島はより日照時間率が高いことが予想される。そして、沖ノ鳥島から大隅半島までの直線距離は1,293km、南鳥島から房総半島までは1,813kmあるが、海底ケーブルによる送電損失は4~5%程度と少ない。そして、この2島の200海里以内だけでも86万km余、水深は大半が200m以深で、TPESjの生産に必要な面積の31倍余がEEZ内にある。後述するように浮体式洋上プラント100に浮体式灯台136を設ければ、船舶の航行を妨げることなく安全性を確保できる。今後、周辺海域での気象や海象、漁業、航路などについて詳細な調査を行ったうえで再エネ海域利用法などを改正し、促進区域を選定する必要がある。
図9は、浮体式洋上プラント100の一実施形態の構成と性能諸元例を示したもので、浮体式洋上プラント1基当り太陽電池パネル100万枚をハニカム構造をなすよう柔連結することによって、波浪や風浪などにより複雑に加わる衝撃力を分散・吸収する。論理的三層構造をなし、小集合部は100枚の太陽電池パネルを直列接続し、中集合部は100基の小集合部を絶縁型直列接続し、さらに大集合部は100基の中集合部を木構造並列接続又は並列接続(以下、これらの接続関係を直直並列接続と呼ぶ)して、年平均発電電力652MW/基の浮体式洋上プラント100を構成する。
この発電能力は大型ガスタービン・コンバインドサイクル(GTCC)発電機1基分に相当する。浮体式洋上プラント100は28.1kmの面積を要し、年間5.71TWhの電力量を生産する。図9に示すように、浮体式洋上プラント100だけで全TPESjを賄うとすれば、963基が必要になり延べ面積約2.7万km(四国の約1.4倍)で我が国で必要なすべての一次エネルギ相当量を生産できる。これを陸側のエネルギ・キャリアシステム200に全長1.500km程度の海底ケーブルで送電するが、前述したように直流送電は静電容量損失や誘電体損失などがないため1,000km当りの送電損失は3%と極めて低い。
なお、図9では、240W/mを所定の年平均日射量以上の一つとして用いたが、事業として成り立てば、これより少ない年平均日射量であってもよい。例えば固定価格買取制度のもとでは、より少ない年平均日射量の洋上でも事業は成り立ち、またカーボンフリーエネルギ供給システム10の導入が世界各所に広がれば、後述の規模の経済効果によりシステムコストが下がり、より少ない年平均日射量の洋上でも事業採算は成り立つ。
[太陽電池モジュールの変換効率と発電量]
太陽電池は、シリコン系の単結晶/多結晶/アモルファス、化合物系、多接合型、量子ドット型など、様々な素材や形態が現在も研究開発されており、47%を超えるセル変換効率のものもある。太陽電池セルをモジュール化した変換効率は、配線スペースなどの確保のためセル変換効率より30%弱低くなる。産業用で広く用いられている多結晶シリコンの現在のセル変換効率は20%程度であるが、モジュールに組込むと変換効率は14.3%程度になる。また、変換効率は基準測定条件(25℃)での効率であり、出力温度係数(結晶系では-0.4%/℃)の割合でモジュール背面温度が高くなるほど出力は低下する。
前述の砂漠の変換効率8%は、多結晶シリコンを用い日照時の平均背面温度41℃を想定したことに相当する。これに対して、北回帰線付近の年平均海面水温は26.2℃程度であり、浮体式洋上プラント100における太陽電池モジュールの背面温度を海水温に保てば、変換効率の低下は年平均0.5%程度になる。
そして、太陽電池は変換効率の向上を目指して様々な研究開発が行われており、産業用太陽電池の変換効率は近い将来12%程度向上(セル変換効率22.4%)するものとして、図9に示すように、太陽電池モジュール変換効率μscを16%(モジュール温度25°)とした。
結晶系太陽電池モジュールの製品規格表示を定めたJIS C8918では、測定条件が同じになるよう基準状態(モジュール温度25℃、分光分布AM1.5、基準日射量Estd=1000W/m)を定め、同基準での公称最大出力Pmax(kW)やシステム容量Csys(kW)、年間発電量EEyr(kWh/m/日)を下式により算出することになっている。
Pmaxsc×Ap×Estd
Csys=Pmax×Np
EEyr=Vsys×Eavg×Lf×365days÷Estd
ここに、Apはパネル受光面積(m)、Npはパネル枚数、Estdは年平均日射量(kWh/m/日)、Lfは損失係数である。
また、モジュール温度25℃とは背面温度を25℃の状態で変換効率などを測定することを意味し、陸上では外気温より20~40℃高めになることがあるが、これによる損失は損失係数として計算する。AM1.5とは、太陽光がどれだけ大気を通過してきたかを表す数値で、AM1.5は太陽高度角42°に相当し国内の基準値になっている。基準日射量EstdはAM1.5のときの日射量を1000W/mとしている。ちなみに太陽高度角90°ではAM1.0、日射量は1100W/mになる。
ところで、全天日射量は太陽から直接地上に到達する光(直達日射)の水平面成分と太陽光が大気中の粒子などにより散乱・反射されて地上に届く光(散乱日射)との和であり、全天日射量は全天日射計を水平に設置して測定される。また、国内837地点について29年間(1981~2009年)の平均日射量を閲覧できるNEDO日射量データベース閲覧システムを用いて南鳥島の年平均全天日射量を検索すると、太陽電池を真南に向けて設置したときの年平均全天日射量は最大値234W/m、平均値216W/m、最小値210W/mで、図4の年平均全天日射量とほぼ一致する。そして太陽電池モジュールの平均最適傾斜角(月別最適傾斜角の平均)は20.6°、直達日射成分は約84%、散乱日射成分は約14%である。これより、南鳥島では太陽電池モジュールを真南に向けて傾斜角20.6°で設置すると平均日射量を4%程度高められる。
そして、より赤道に接近した沖ノ鳥島(気象庁の観測対象外)付近での年平均全天日射量Eavgは、図4から240W/m、最適傾斜角は15°と推定される。
また、上述の損失係数Lfは、太陽電池モジュールの温度上昇に伴う出力低下や所謂パワーコンディショナの変換損失、配線や回路での損失、太陽電池パネル受光面の汚れ、太陽電池の経年劣化などが要因になるが、太陽光発電協会の表示ガイドラインではおよそ0.7~0.8になると明示している。これに対して、浮体式洋上プラント100は温度上昇による出力低下が少ない(年平均損失3%程度)こと、清掃ロボットにより太陽電池パネルの受光面を頻繁に清掃(年平均損失1%程度)すること、太陽電池の経年劣化は20年間平均で3%程度見込まれること、海底ケーブル損失は5%程度見込まれることなどから、図9に示すように損失係数Lfは0.85とした。なお、所謂パワーコンディショナはエネルギ・キャリアシステム200内の第1のエネルギ変換装置210で行うため、浮体式洋上プラント100の損失係数の対象要因から除外している。
[太陽電池パネルの構造]
図5、図10A、図12A及び図19に示すように、浮体式洋上プラント100は、平面視略正六角形の複数の太陽電池パネル110を平面視ハニカム構造に連結することにより構成される。
各太陽電池パネル110は、各々浮体物として機能し、パネル筐体112内に注排水することにより所定の潜水水深に潜水・浮上可能である。
図10A及び図10Bに示すように、互いに隣接する太陽電池パネル110は、各片部の寸法Lは3m、幅寸法L1は5.2m、後述の弾性衝撃吸収部材111を介した幅寸法L2は5.7m、厚さ寸法L3は60cm、また、相互に隣接する太陽子電池パネル110との間隔寸法L4は50cmに形成されている。
図10Aに示す各太陽電池パネル110を構成する多数の太陽電池モジュールは、例えば奥行10cmに形成され、約15°の傾斜角で空中に向かうようにして、互いに隣接して配置されている。
また、太陽電池パネル110を構成するパネル筐体112には、面方向において多数の直交する梁材110cが構造材として配設されている。
互いに隣接する太陽電池パネル110は、各太陽電池パネル110の平面視頂点部110aに設けられた弾性衝撃吸収部材111を介して、弾力的に接触しており、太陽電池パネル110同士は相互に上下方向に互いに揺動可能に柔連結されている。
この場合、図10B中の矢印a、bは、互いに隣接する太陽電池パネル110が、海面の波浪等の影響により太陽電池パネル110が相互に揺らいだ場合の力を弾性衝撃吸収部材111がたわむことにより吸収する状態を示している。
図10Aに示すように、互いに隣接する太陽電池パネル110は、各太陽電池パネル110の平面視辺部に設けられた密着型自動連結器(「連結器」と称することもある)117を介して、パネル筐体112同士が機械的に連結されるとともに、パネル筐体112内の電気的要素同士が電気的に接続されている。
密着型自動連結器117は、浮体式洋上プラント100の周辺に配置される太陽電池パネル110Eを除く太陽電池パネル110の各片部にそれぞれ設けられており、太陽電池パネル110ごとに6個設けられ、平面全方位的に隣接する他の太陽電池パネル110と相互に柔連結されている。
図10Bに示すように、太陽電池パネル110のパネル筐体112の上部は反射防止幕のコーティングを施した強化ガラス112Gで覆われ、その下方に多数の太陽電池モジュール113が、傾斜角約15°で敷き詰められている。太陽電池モジュール113には、後述するように最大±2.6kVの対地(海面)電圧が加わる。ガラスは10kV/mm位の高い絶縁耐力を有するが、強化ガラス112G同士の接合部やパネル筐体112との接合部から塩分が浸潤し絶縁破壊を来さないよう、強化ガラス112Gと太陽電池モジュール113との間に透明の絶縁充填剤114を封入し、さらに背面には高熱伝導絶縁樹脂(図示省略)を配置し太陽電池モジュール113の背面温度を海水温に保つようにしてもよい。
パネル筐体112は、その内部に海水Wを注排水し得る構造になっている。パネル筐体112の下部には、圧縮空気を格納する圧縮空気タンク115と、制御回路(図示省略)を収容した回路ボックス116が設けられている。
回路ボックス116内の制御回路は、太陽電池モジュール113で発電した電力を隣接する太陽電池パネル110に送る制御、夜間など発電していないときに浮体式洋上プラント100を維持するために陸側から送電される電力を取り込み隣接する太陽電池パネル110に送る制御、密着型自動連結器117の制御、隣接する太陽電池パネルに障害が発生した場合に他の隣接する太陽電池パネルの電力回路連結器に接続を切り替える制御、後述する浮体式洋上プラント100を管理制御する管理制御装置710との管理制御コマンドのやり取りを行う。
パネル筐体112の下部の、圧縮空気タンク115及び回路ボックス116以外の空間は海水Wを溜めるタンクとして機能する。そして、波浪などによる太陽電池パネル110の傾きによって海水Wが傾斜方向に移動して浮体式洋上プラント100全体のバランスが崩れないよう、パネル筐体112の下部に例えば複数の小穴の開いた間仕切りや開閉式の間仕切りを設ければ、海水Wの移動を抑制できる。
図11A及び図11Bに示すように、密着型自動連結器117は、第1連結体117Aと第2連結体117Bとにより構成される。第1連結体117A及び第2連結体117Bは、同形同寸の筐体118A、118Bを有し、筐体118A、118Bの基端部には太陽電池パネル110と揺動可能に柔連結される自在継手部119A、119Bが設けられており、先端部には、カバー及びパッキンとして機能するシール部材120A、120Bが設けられている。
図11Bに示すように、筐体118A、118Bの内部には、連結ボルト121A、121Bと連結ナット122A、122Bとが、接合方向において幅方向に互い違いになるように、すなわち両筐体118A、118Bの先端部同士を対向させたときに、第1連結体117A側の連結ボルト121Aと第2連結体117B側の連結ナット122Bとが対向するとともに、第2連結体117B側の連結ボルト121Bと第1連結体117A側の連結ナット122Aとが対向するように配置されている。
筐体118A、118Bの内部には、連結ボルト121A、121Bを正逆回転駆動するための駆動機構123A、123Bが設けられており、筐体118A、118Bの先端部同士を突き合わせ、駆動機構123A、123Bにより連結ボルト121A、121Bを正回転させることにより、連結ボルト121A、121Bが連結ナット122A、122Bと螺着締結するように構成されている。これにより、第1連結体117Aと第2連結体117Bとが密着自動連結される。
後述する搬送組立ロボット600によって太陽電池パネル110A、110Bは、例えば海面上1.5m位に持ち上げられた状態で連結作業が行われるが、密着型自動連結器117Aと117Bのシール部材120Aと120Bは、連結直前まで密着型自動連結器117Aと117Bに海水成分が浸潤しないように覆っており、連結の際にカメラのシャッターが開放するように開く(図示省略)と同時に、搬送組立ロボット600によって新たに搬送されてきた太陽電池パネル110Bの圧縮空気タンク115Bに予め充填されていた乾燥圧縮空気が圧縮空気噴射ノズル128Bから噴射され、電力路コネクタ126A、126B及び信号路コネクタ125A、125Bを含む密着型自動連結器117内に塩分が付着残留しないよう海水成分を払拭しながらシール部材120A、120Bを密着させ連結する。この連結作業によって、最大±250kVの直流高圧電流が流れる電力路コネクタ126A、126B及び密着型自動連結器117内での絶縁破壊を防止する。
また、太陽電池パネル110に障害が発生し該太陽電池パネル110Fを取り外すときは、駆動機構123A、123Bが連結ボルト121A、121Bを逆回転させることにより、第1連結体117Aと第2連結体117Bとの連結が自動解除され、同時にシール部材120A、120Bは密閉され、密着型自動連結器117A、11B内には海水成分が浸潤するのを防ぐ。駆動機構123A、123Bの制御は、回路ボックス116内の制御回路が行う。
図11Aに示すように、筐体118A、118Bの内部には、多機能コネクタ124A、124Bが設けられている。両多機能コネクタ124A、124Bは、連結ボルト121A、121Bと連結ナット122A、122Bとが螺着締結することに伴って互いに連結されるように構成されている。
多機能コネクタ124A、124Bは、通信路コネクタ125A、125B、電力路コネクタ126A、126B及び圧縮空気管コネクタ127A、127Bを備えており、連結ボルト121A、121Bと連結ナット122A、122Bとが螺着締結することに伴って、第1連結体117A側の通信路コネクタ125Aと第2連結体117B側の通信路コネクタ125Bとが互いに接続されるとともに、第1連結体117A側の電力路コネクタ126Aと第2連結体117B側の電力路コネクタ126Bとが互いに接続され、同時に、第1連結体117A側の圧縮空気管コネクタ127Aと第2連結体117B側の圧縮空気管コネクタ127Bとが互いに連結されるように構成されている。
図11Bに示すように、筐体118A、118Bからは、それぞれダクト129A、129Bが延設されている。第1連結体117Aのダクト129Aは、第1連結体117Aの自在継手部119Aが連結された太陽電池パネル110Aに接続されている。第2連結体117Bのダクト129Bは、第2連結体117Bの自在継手部119Bが連結された太陽電池パネル110Bに接続されている。
自在継手部119A、119Bを設けることにより、個別の太陽電池パネル110相互の柔連結を可能とし、その結果、特に、波浪、風雨等による上下方向における応力を有効に逃がすことができる。
第1連結体117Aの多機能コネクタ124Aの通信路コネクタ125A、電力路コネクタ126A及び圧縮空気管コネクタ127Aは、第1連結体117Aのダクト129Aを通して、第1連結体117Aの自在継手部119Aが連結された太陽電池パネル110A内の通信路、電力路及び空気管路に接続されている。
第2連結体117Bの多機能コネクタ124Bの通信路コネクタ125B、電力路コネクタ126B及び圧縮空気管コネクタ127Bは、第2連結体117Bのダクト129Bを通して、第2連結体117Bの自在継手部119Bが連結された太陽電池パネル110B内の通信路、電力路及び空気管路に接続若しくは連結されている。
多機能コネクタ124A、124Bの電力路コネクタ126A、126Bは、互いに隣接する太陽電池パネル110の電力路同士を電気的に接続するための電力路の一部を構成する。多機能コネクタ124A、124Bには、図19において後述するように、隣接する太陽電池パネル110に障害が発生した場合に、他の隣接する太陽電池パネル110の電力路に接続を切り替える等の制御を行う制御回路(図示省略)が設けられている。
多機能コネクタ124A、124Bの通信路連結器125A、125Bは、互いに隣接する太陽電池パネル110の通信路同士をパケット通信可能に接続するための通信路の一部を構成し、各種センサへの電気的接続や、制御情報の通信に使用される。
また、多機能コネクタ124A、124Bの圧縮空気管コネクタ127A、127Bは、隣接する電池パネルと連結し、浮体式洋上プラントの運用が開始した後は、太陽電池パネル110のパネル筐体112内から海水Wを排出すると共に、フローター135を膨張させるための圧縮空気を供給する圧縮空気供給路134とも繋がっている。
また、荒天時には、パネル筐体112内へ注水することにより海面下へ潜水するが、浮上する際には圧縮空気タンク115の圧縮空気を使用してパネル筐体112内から海水を排出する必要があり、その圧縮空気タンク115の空気を補充するためにも使用される。
なお、圧縮空気は圧縮空気生成装置(図示省略)を備えた一又は複数の太陽電池パネル110Pよって生成され、圧縮空気管及び圧縮空気管コネクタ127A、127Bを介して各太陽電池パネル110の圧縮空気タンク115に随時補充される。
また、最大±250kVが印加させられる電力路や電力路コネクタ126A、126Bなどは、塩分等による漏電は致命的であることから、例えば60kV/mm以上の絶縁耐力を有するテフロン(登録商標)絶縁膜などの高度な絶縁耐力を有する絶縁体により被覆することが必要となる。
また、本実施の形態に係る浮体式洋上プラント100が海面上に設置された場合には、海流、波浪、台風を含む強風の環境下に置かれることから、浮体式洋上プラント100に作用する引張、圧縮、衝撃力は非常に大きいものと想定されるが、上記のように個々の太陽電池パネル110としても、また全体(後述の「大集合部」)としても平面視六角形状のハニカム構造を構成することから、外部から加わる応力を6方向に分散することが可能となるため、例えば、鉄道車両に装着される「車両連結器」の場合とは異なり、車両を牽引する大きな力の伝達は不要であることから、「車両連結器」に比して構成は簡易なものとなっている。なお、図11A中、符号135は後述のフローターである。
[浮体式洋上プラントの停留]
図12A及び図12Bに示すように、浮体式洋上プラント100の外周部に配置される太陽電池パネル110Eには、推進装置131及び舵装置132が設けられている。すなわち、日本沿岸を定常的に流れる海流である「黒潮」は最高流速7m/秒であり、浮体式洋上プラント100が日本沿岸の海域に設置された場合には「黒潮」の流速や台風など強風の影響を受ける。従って、浮体式洋上プラント100を停留させるためには、このような海流の流速や強風に対向して相殺できる推力を発生させることが必要となる。
このような観点から、本実施の形態に係る浮体式洋上プラント100は、推進装置131により海流に抗し得る推力を得ることが可能であり、その結果、推進装置131及び舵装置132は、潮流、海流、風浪による海面方向に作用する力の影響に抗して浮体式洋上プラント100を所定の位置及び方向に停留させるよう群制御されるように構成されている。
推進装置131としては、本実施の形態にあっては、スクリュープロペラが採用されているが。ウォータージェット方式を採用してもよい。ただし、低速ではスクリュープロペラの方が、ウォータージェットよりもより大きな推力を得ることができる。
例えば、浮体式洋上プラント100全体の制御を司る太陽電池パネル110が他の太陽電池パネル110から送られてきたセンサ情報(海流の流速や流向、風力や風向情報、後述の全地球衛星測位システム(GPS)受信機等143(図15参照)による位置情報、傾斜/揺れ/衝撃情報、水深情報、監視カメラ情報、気温/海水温/海水タンク内温度/太陽電池モジュール背面温度情報など)から浮体式洋上プラント100全体の群制御情報を生成し、推力を発生させる役割を担う太陽電池パネル110E宛に同情報を送信する。
密着型自動連結器117を介して受信した群制御情報に基づいて、それらの太陽電池パネル110Eそれぞれが推進装置131及び舵装置132を駆動し、所定の方向に推力を発生させることにより、潮流、海流、風浪による力に対向する推力を発生させて浮体式洋上プラント100を所定の位置に停留させ、かつ所定の方位又は方向を保持させるものである。なお、所定の方位又は方向に保持させるとは、太陽モジュールの傾斜面が南方向(浮体式洋上プラント100を南半球側に設置した場合は北方向)に向くよう方位制御すること、又は太陽モジュールの傾斜面が太陽光の照射方向に向くよう追尾制御することを意味する。
この場合、図12Aでは、図中左上から右下に向かう潮流や風による力f1に対し、浮体式洋上プラント100の主に左部及び上部外周に配置された複数の太陽電池パネル110Eが、それぞれ推進装置131及び舵装置132を駆動させることにより、それぞれ力f1に相当する推力f2(図中、黒色矢印で示す)を発生させ、浮体式洋上プラント100全体として、潮流や風による力f1に対抗しうる推力Fを発生させることにより、浮体式洋上プラント100を所定の位置に停留させ、かつ所定の方位又は方向を保持させている状態を示す。
図12A中の白抜き矢印が出ている太陽電池パネル110Eは、推進装置131及び舵装置132を駆動していない太陽電池パネル110Eである。
また、図12Aに示すように、浮体式洋上プラント100全体が平面視六角形状に形成されていることから、全体としてハニカム構造を形成しており、推進装置131による推力が発生した場合であっても、推力は浮体式洋上プラント100に分散され、浮体式洋上プラント100の一部に推力が集中して、相互に連結された太陽電池パネル110により構成された浮体式洋上プラント100が崩壊することはない。
なお、図12Aは、浮体式洋上プラント100の外周部に太陽電池パネル110Eを配置する一実施形態を示したもので、100万枚からなる浮体式洋上プラント100の内側の太陽電池パネル110に推進装置131及び舵装置132を設けてもよい。さらに、図12Aでは浮体式洋上プラント100を牽引する方向に推力f2を作用させているが、船舶のように後方から前方へ押す方向に推力f2を作用させてもよい。
[浮体式洋上プラントの荒天時及び津波対策]
台風などの風域で発達する波は、波が重なり合い、沖合では波の峰線を識別できない不規則性を呈し、風域から遠く離れた海域には波長の長い「うねり」が突然襲来する。これらの風の力によって発生する波を波浪と呼び、周期は数秒から10数秒、波長は数10m~数100m、20mの波高になることもある。波のエネルギは波高の2乗に比例するが、波長の1/2の水深では波のエネルギは4%程度に減衰し影響を受けなくなる。
前述したように、太陽電池パネル110は隣接する太陽電池パネル110と相互に柔連結され固定点がないため、波の波長が太陽電池パネル110の長さの2倍のとき、上下方向の揺動は波と共振し、共振が続けば破損する恐れがある。しかし、上述の一実施形態における太陽電池パネル110の長さは5.2~6m、すなわち波浪の波長は太陽電池パネル110の長さの数倍から数10倍長いため共振することはなく、浮体式洋上プラント100は波浪によって数秒から10数秒の周期で上下に揺動する。
しかしながら、巨大台風時には波高や周期、波向が不規則な波も発生するため、波高20m位の砕波状の大波が浮体式洋上プラント100を襲う恐れがある。また、強風に煽られて浮体式洋上プラント100の外周部の一部が反転する恐れもある。これらによる破損を防ぐには、海岸・沿岸環境研究の第一人者の東京大学佐藤愼司名誉教授によれば、最大波高20m相当の水深dに潜水させれば安全であると推測される。ただし、浮体式洋上プラント100の構造とその強度によっては、より浅い潜水水深でも破損を回避できる。巨大台風に遭遇しても破損しない安全潜水水深dは、浮体式洋上プラント100や太陽電池パネル110の構造設計(ハニカム構造など)と大型風洞実験設備を備えた導波水槽実験や実海域での巨大台風下での実測データから導出されるが、本発明では、安全潜水水深d=5~20mを所定の潜水水深とする。
具体的には、図13に示すように、浮体式洋上プラント100は、ほぼすべての太陽電池パネル110のパネル筐体112内に海水Wを注水することにより所定の潜水水深dに潜水可能に構成されている。すなわち、図11A及び図15に示すように、潜水時に太陽電池パネル110の水深dを一定に保つためのフローター135が、ロープ137を介して密着型自動連結器117内のロープ巻取機(図示省略)に繋がれて密着型自動連結器117に装備されている。
従って、海面下dに浮体式洋上プラント100を停止させるために、注水量の制御と共にフローター135が使用されるものである。本実施の形態にあっては、ロープ137の最大長さ寸法は、海面下dに浮体式洋上プラント100を停止させるように形成されている。
従って、潜水時に各太陽電池パネル110に注水が開始され潜水を行う際には、フローター135には圧縮空気供給路134より圧縮空気が注入され、同時にロープ巻取機のロックが外され、図13に示すように、フローター135が海面Sに浮上し、浮体式洋上プラント100を所定の潜水水深dに維持するものである。
浮体式洋上プラント100を浮上させるときは、上記と逆の動作が行われる。すなわち、太陽電池パネル110のパネル筐体112内に圧縮空気を注入して海水Wを排水するとともに、ロープ137を巻き取ってフローター135を密着型自動連結器117内に収容する。
なお、フローター135は、必ずしもすべての太陽電池パネル110に装備する必要はなく、ロープ137同士が絡まないよう安全潜水水深dに応じて複数枚おきに装備してもよい。また、ロープ137に弾性ロープを用いることによって、波浪の激しい動揺を吸収するようにしてもよい。
一方、津波研究の第一人者の東北大学今村文彦教授によれば、津波には2つの速度がある。一つは、図14に示す津波の伝搬速度で水深の平方根に比例する。巨大津波では、水深5,000mで800km/hに、水深10mで36km/hになる。これは水粒子の運動速度ではなく物体に力を与えるものではない。もう一つは水粒子速度で,エネルギは波高の2乗に比例する。水深5,000mでは波高は1m程度で浮体物への負荷は微々たるものである。しかし、水深10mでは9mの高さに、さらに陸地には10mを超える津波が押し寄せ甚大な被害を与える。津波の高さが水深程度になると波が砕けはじめるが、これより十分深い沖(50m以深)であれば、海面は数10分の周期で、数kmから数百kmの波長で上下動を繰り返すが、浮体物にはさしたる力は加わらない。
したがって、我が国のように地震による巨大津波の襲来の恐れがある海域では、浮体式洋上プラント100を水深50m以深の海域に設置すれば、巨大津波の被害を防ぐことができる。過去に巨大津波の襲来記録がない海域では、50m以浅に設置してもよい。
[浮体式洋上プラントの浮体式灯台]
浮体式洋上プラント100の近傍を航行する船舶に対して、その存在を周知することは航行の安全を保障し、船舶の衝突による浮体式洋上プラント100の損壊防止のうえでも重要である。浮体式洋上プラント100の周辺部近くの複数箇所(図示省略)に、図15に示す太陽電池パネル110Tの中央部付近にドーナッツ状の浮体式灯台用開口部142を設け、浮体式灯台136を設ける。浮体式洋上プラント100の浮上時か潜水時かによらず灯部136Aの海面からの高さhは一定になる構造(瓶に水を1/3ほど入れて水に浮かべた状態)に、浮力を有する円筒体136Cと重り136D、ポール136B、灯部136A及びGPS受信機等143が構成されている。灯部136Aは、常時、浮体式洋上プラント100の識別子及び現在位置を含む所定のコードで変調した電波を送信し、夜間は図のようにLEDを所定のコードで変調し発光するようにしてもよい。また船舶などが接近したときは、衝突回避動作を行うよう警報を発するようにしてもよい。なお、灯部136Aの高さh=10m程度あれば、見通し距離は12km、面接にして450kmあり、浮体式洋上プラント100の一辺の長さ5km、面積26kmに対して十分なカバレッジである。
なお、浮体式洋上プラント100の周辺部近くに複数箇所設置した浮体式灯台136の頂上部それぞれにGPS受信機等143を設け、その出力データを統計処理することによって、例え浮体式洋上プラント100が強風に晒されていても、昼夜・荒天・潜水時を問わず現在位置と方位を正確に測定することができる。この測定データを前述の推進装置131及び舵装置132にフィードバックすることによって、浮体式洋上プラント100を所定の位置と方位に保つことが可能になる。
[浮体式洋上プラントの電力系の階層構造]
浮体式洋上プラント100の電力系の階層構造を図16~図19を用いて説明する。図16は、太陽電池パネル110から小集合部SC、中集合部MC、大集合部LC及びエネルギ・キャリアシステム200に至るまでの論理的階層構造の一実施形態を表したもので、各階層での最大電圧、最大電流及び最大出力電力を示している(図9参照)。図17は、浮体式洋上プラント100の具体的な結線回路を示したものである。図18は、中集合部MCを2階層10分岐で木構造並列接続した大集合部LCの一実施形態を表したものである。さらに、図19は、図17の結線回路をハニカム構造をなす太陽電池パネル間の電力路で表したもので、各連結器117には原則1回路分の電力路コネクタ126を搭載すれば、図17の結線が可能なことを示している。
図16に示すように、浮体式洋上プラント100は、100枚の太陽電池パネル110が電気的に直列接続された小集合部SCと、100基の小集合部SCが電気的に双方向絶縁型直列接続された中集合部MCと、100基の中集合部MCが電気的に並列接続された大集合部LCとにより構成されている。なお、双方向絶縁型の「双方向」は太陽光発電時は発電した電力を陸側のエネルギ・キャリアシステム200に送電する場合と、夜間などの非発電時はエネルギ・キャリアシステム200から送電された電力を取り込む場合の両方向の電流に対応できることを意味する。「絶縁型」は小集合部SCと中集合部MSとが電気的に絶縁していること、具体的には中集合部MCの最大電圧は±250kVになるが、小集合部SCは最大電圧±2.6kV、すなわち太陽電池モジュール113には最大電圧±2.6kVになるが、±250kVは印加されないことを意味する。
図16及び図17には、太陽電池パネル110、小集合部SC、中集合部MC及び大集合部LCからなる階層構造により、過度な絶縁保護を施すことなく太陽電池パネル110を直直並列接続したときの最大電圧や最大電流などが示されている。
太陽電池パネル110を構成する多数の太陽電池モジュール113は、対地(海面)に対して絶縁し、小集合部SC内での直列接続と中間電位点の接地(アース)155SCによって、最大電圧を±2.6kVに抑える。小集合部SC内では、最大電流61Aはすべての太陽電池パネル110に流れるが、太陽電池パネル110内では電流は多数の太陽電池モジュール113に分散されるため、一つの太陽電池モジュール113に最大電流61Aが流れることはない。
中集合部MCでは、小集合部SCの出力を小集合部SC内の直列接続とは異なる電力路コネクタ126を用いて双方向絶縁型DC-DC変換器141(図17参照)を搭載した太陽電池パネル110D(図19参照)を介して絶縁型直列接続し、最大電圧は±250kVに昇圧するが、電流は61Aで変わらない。双方向絶縁型DC-DC変換器141は、直流を交流に変換(DC/AC変換)してから絶縁型変圧器により小集合部SCと中集合部MCとを絶縁し、直流に戻す(AC/DC変換)もので、変換効率は96%程度である。絶縁型変圧器の容量は5.2kV×61A=320kVAで、重量は1トン程度である。パネル筐体112の最大浮力は約10トンあり、寸法的にもパネル筐体112内に収容可能である。中集合部MC内の電力路コネクタ126は、小集合部SCとは別の高耐圧の絶縁対策を施す。
そして、大集合部LCの出力は、100基の中集合部MCを並列接続するため、最大出力電圧は中集合部MCと同じ±250kVであるが、最大出力電流は100倍の6.1kAに増える。
ところで、直流2線式電線の電圧降下は、JIS C 3001標準軟銅(導電率97%)の導体抵抗を17.8Ω・mm/kmとすると、次式で算出できる。
E=(35.6×L×I)/(1000×S)
ここに、Eは2線間の電圧降下(V)、Lは電線の長さ(m)、Iは電流(A)、Sは電線(導体)の断面積(mm2)である。
図17及び図19に示すように、中集合部MCの出力電力路153±(±は正極側と負極側両方が該当する意)を太陽電池パネル110N±に収容の合流ノード154N±(正確には、正極側は合流ノード、負極側は分流ノードというべきであるが、これらをまとめて合流ノードという)で2分岐木構造並列接続して海底ケーブル310±に接続した場合、中集合部MC内の電力路152±と153±(L=5,300m、I=61A)及び電力路154±(Lavg=1,700m、Iavg=1.6kA)それぞれをS=30mm2とS=100mm2で接続すると、±250kVに対する電圧降下による最大電力損失は約0.45%、S=100mm2とS=300mm2では約0.15%である。
なお、図17及び図19では、合流ノード154N±の下位層は一層の並列接続になっているが、並列接続によって電流が合流するごとに導体断面積を増やすようにすれば、より少ない導体(銅)量で電力損失を抑えることができる。
一方、図18に示した10分岐2階層をなす木構造並列接続の例では、10基の中集合部MCの出力は、それぞれ電力路152±と153±(Lavg=5,400m、I=61A)を介して合流ノード153N±で束ねられ、さらに10個の合流ノード153N±から電力路154±(Lavg=1,100m、Iavg=610A)を介して合流ノード154N±で束ねられ、海底ケーブル310±に接続されている。
この場合、それぞれS=30mm2とS=100mm2を用いると、最大電力損失は約0.13%に、S=100mm2とS=300mm2では最大電力損失を約0.04%に、すなわち2分岐での損失の約1/4に抑えられることが分かる。
ちなみに、海底ケーブル300の1,000km当たりの電力損失を3%程度に抑えるには、S=14,60mm2(φ=96m)が必要となる。だが、世界の一次エネルギを送電し得る量の銅を確保しようとすると、銅価格のさらなる高騰を招きかねない。Ranga Diasらが研究を進めている水素や炭素、硫黄などのごくありふれた元素を用いた常温(15℃)超伝導体の早期実用化が期待される(Nature, News, 586, 349, 2020)。
図19は、すべての密着型自動連結器117は1回線分の電力路コネクタ126を持つものとして、図17の結線回路に基づく電力路を、それぞれ2×8=16枚の太陽電池パネル110からなる小集合部SCと、それぞれ4基の小集合部SCからなる中集合部MCと、4基の中集合部MCからなる大集合部LCとにより形成されたハニカム構造の浮体式洋上プラント100上に描いたものである。
小集合部SCでは、正極側の8枚の太陽電池パネル110の太陽電池モジュール(図示省略)と負極側の8枚の太陽電池パネル110の太陽電池モジュールがそれぞれ151と151の電力路で一筆書き状に接続され、黒点(●)を附した中間電位点で接地155SCされ、両端は双方向絶縁型DC-DC変換器141を搭載した太陽電池パネル110Dに接続されている。太陽電池パネル110Dは、小集合部SCの直列接続で用いた連結器とは別の連結器を用いて縦方向に隣接する太陽電池パネル110Dと正極側は電力路152を介して絶縁型直列接続され、中集合部接地155MCで折り返されている。そして、負極側は電力路152を介して太陽電池パネル110Dは絶縁型直列接続され、正極側端部は電力路153と154を介して海底ケーブル300の正極側電力路310に、負極側端部は電力路153と154を介して海底ケーブル300の負極側電力路310に接続されている。
中集合部の接地155MCで折り返すのは、図17や図18では154N+や310と、154N-や310が上下に分かれて結線図が描かれているが、図19のハニカム構造上に描かれた電力路結線では、浮体式洋上プラント100の上辺中央に154N+や310と154N-や310を集中配置することによって、浮体式洋上プラント100内での電力路を短くする、あるいは海底ケーブル300±を離れて接続しないようにするためである。
図19は小集合部SCは2×8=16枚の太陽電池パネル110、中集合部MCは4×小集合部SC、大集合部LCは4×中集合部MCと小規模な実施形態例である。100万枚からなる浮体式洋上プラント100の実施形態であっても、小集合部SCは5×20=100枚の太陽電池パネル110、中集合部MCは100×小集合部SC、大集合部LCは100×中集合部MCとし、中集合部MC内の接地155MCで中集合部MCの正極側と負極側を折り返えせば、図19と同様に154±や110N±、310±を上部中央に集中配置させることができる。これによって、浮体式洋上プラント100の海底ケーブル300は、5km超離れて310と310とを収容する必要がなくなる。
なお、図19では、2分岐木構造接続で分岐(合流)数が少ないため、電力路コネクタ126は重複することなく結線できているが、10回線の電力路154±を束ねる太陽電池パネル110N±の電力路コネクタ126は、複数回線分の電力路コネクタを設ける必要がある。木構造を4~8階層に多階層化し、各電力路コネクタ126は1回線分を収容するようにしてもよい。
上記は、本実施の形態に係る太陽電池パネル110により構成される浮体式洋上プラント100の、100のべき乗ベースの小集合部SC、中集合部MC及び大集合部LCからなる論理的階層構造における直直並列接続の一例を示したもので、別の論理的階層ブロックを形成し、各ブロックの最大出力電圧や電流を任意に設定することも可能である。これらは設計上の事項であり、実際には絶縁型直流接続装置や海底ケーブルの容量及びコストなどを勘案して最適設計される。
[障害太陽電池パネルの自動迂回]
各太陽電池パネル110は、6個の密着型自動連結器117を介して相互に接続されているが、各密着型自動連結器117には各1回線分の電力路コネクタ及び信号路コネクタが収容されている。
図19に示すように、稼働中に太陽電池パネル110に障害が発生した場合、当該障害が発生した太陽電池パネル110Fを、他の太陽電池パネル110は自発的に障害の発生を検知し、関連する太陽電池パネル110に障害の発生を通知する。もしくは、当該障害が発生した太陽電池パネル110Fに電気的に接続していた隣接する太陽電池パネル110が障害を検知し、その旨を近隣の太陽電池パネル110に相互に通知する。
上記の通知を契機として、障害が発生した太陽電池パネル110Fに電力を送電していた太陽電池パネル110の制御回路が主導して図19に示すような迂回回路(バイパス回路)BRを決定し、その結果を隣接する太陽電池パネル110に通知し、当該迂回回路BRに切り替えるように構成されている。
この迂回回路BRの決定に際しては、前記回路ボックス116内の制御回路は、電力送電中の密着型自動連結器117を使用せず、別の非稼働中の密着型自動連結器117を介して他の隣接する太陽電池パネル110と相互接続するように判断する。すなわち、個々の太陽電池パネル110には6個の密着型自動連結器117が備えられていることから、障害が発生した場合には、その状態で接続されている2個の密着型自動連結器117以外の密着型自動連結器117を自動的に検索して新たな電力供給路を形成する。
なお、図19の障害太陽電池パネルの例では、図示した太陽電池パネル110の枚数が少なく図が煩雑になることから、図右上部に位置する太陽電池パネル110Fの迂回回路BRのみ記載したが、実際には100万枚の太陽電池パネル110から構成されており、その大半が太陽電池パネル110の太陽電池モジュール113間を直列接続する、すなわち連結器117は2個しか使用しない。このため、双方向絶縁型DC-DC変換器141(図17参照)を搭載した太陽電池パネル110Dのように6個の連結器117中5個の連結器117を使用するものであっても、予め太陽電池パネル110Dの予備となる太陽電池パネル110Drを太陽電池パネル110Dから2~3枚離れたところに設置しておけば、障害が発生しても電力路を太陽電池パネル110Drに迂回させることができる。
以上の障害時の迂回回路への切り替えは、上述のように太陽電池パネル110が自律的に行っても、あるいは後述の管理制御装置710と連携して自律的に行ってもよいが、少なくとも障害が発生し迂回回路に切り替えた旨を、管理制御装置710もしくは管理制御装置700に通知する必要がある。これを受けて管理制御装置700は、障害太陽電池パネル110Fを交換するため、交換用太陽電池パネル110を搭載した搬送組立ロボット610を最寄りの保守基地から出動させる。
[太陽光発電と浮体式洋上プラントへの電力供給]
日照時において太陽電池パネル110が太陽光発電を行った電力は、図20の矢印Aに示す電流の流れに沿って陸側に直流送電するとともに、各太陽電池パネル110の回路ボックス116内に装備された制御回路や各種アクチュエータ、診断回路等に電力供給するように構成されている。
一方、夜間や荒天時であって海面下に潜水している非発電時には、矢印Cの方向(矢印A方向とは反対方向)に沿って、エネルギ・キャリアシステム200から海底ケーブル300を介して浮体式洋上プラント100に直流電流を送電し、太陽電池パネル110の制御回路やアクチュエータの駆動を可能にするように制御されている。この場合、浮体式洋上プラント100は、エネルギ変換供給装置250の供給先施設500として稼働する。
なお、本実施の形態にあっては、図20に示すようにダイオードDが電力供給路に設けられているが、太陽電池G出力側のダイオードD1の代わりに、制御回路が太陽電池の発電状態に応じて遮断機(例えば、IGBT:絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)をオン・オフ制御するように構成してもよい。
[浮体式洋上プラントの通信系の階層構造]
図21は一実施形態のカーボンフリーエネルギ供給システム10における通信系の論理的階層構造が示されている。
カーボンフリーエネルギ供給システム10における通信方式は、TCP/IPベースのパケット通信方式であり、128ビット長のIPv6のアドレス空間の一部が、浮体式洋上プラント100を識別するためのアドレス、大集合部LCを識別するためのアドレス、中集合部MCを識別するためのアドレス、小集合部SCを識別するためのアドレス及び太陽電池パネル110を識別するためのアドレスに階層的に割当てられている。カーボンフリーエネルギ供給システム10の各構成要素には、識別子又は物理アドレス(MACアドレス)と、各構成要素のカーボンフリーエネルギ供給システム10内における階層的位置に基づく論理アドレス(IPアドレス)とが付与されている。
カーボンフリーエネルギ供給システム10において管理制御しなければならない対象(以下、通信ノードと称す)は、1基の浮体式洋上プラント100だけでも、例えば、100万通信ノードとなり、IPv4ではTPESjを賄う合計963基のカーボンフリーエネルギ供給システム10の全ノード(10)を収容することはできない。
ところで、荒天時にほぼすべての通信ノードが、例えば100バイトの通知情報を後述のSNMP-Trapコマンドを使って管理制御装置700宛に一斉に送信すると、総情報量は約200MBであるものの、深刻な輻輳状態を引き起こし通信不能状態に陥りかねない。そこで、本実施形態に係るカーボンフリーエネルギ供給システム10では、TCP/IPベースのパケット通信方式を採用し、128ビット長のIPv6のアドレス空間を、通信ノードの論理的階層構造(木構造)に沿って階層的に割当てることによってアドレス不足を解消している。
IPv6のIFID(Interface Identifier)は通常製造工程で付与されるMACアドレスから生成されるが、転送処理上はランダムに見えるため効率的な処理に適さない。通信ノードが一つのシステム内で大量に存在する場合は、図21下に「IPv6アドレスへのアドレス空間の階層的割り当て例」に示されているようにIFID内で階層的にアドレス空間を定義すれば、経路表のサイズを小さくでき処理負荷も軽減できる。
さらに、本実施形態のカーボンフリーエネルギ供給システム10では、大集合部LC、中集合部MC及び小集合部SCごとに主通信ノードを決めておき、各通信ノードは属する小集合部SCの主通信ノードにパケット(荒天時など、生成事由に従ってはランダム時間後)を送信し、主通信ノードでは必要に応じて集約化のうえ、例えば管理制御装置710宛のものは中集合部MCの主通信ノード、又は大集合部LCの主通信ノードに転送することによって、輻輳を回避し効率よく通信可能とする。
また、例えば管理制御装置710から送信された特定の太陽電池パネル110の連結器117宛の制御情報パケットも、アドレスの階層構造に沿って、主通信ノード間でバケツリレー的に伝達され確実かつ効率よく送信宛に届けられる。
また、カーボンフリーエネルギ供給システムがインターネットに接続しているか否かに関わらず、TCP/IPを使用する限り、サイバー攻撃の脅威は常に存在する。本実施の形態に係る浮体式洋上プラント100の場合には、サイバー攻撃の結果、例えば、強制的に潜水状態にさせられたり、エネルギ・キャリアシステム200も機能不全に至らされる可能性があり、本実施の形態に係るカーボンフリーエネルギ供給システム10は、国家さらには地球規模の電力を供給可能に構成されていることから、国家的あるいは地球規模での危機に至りかねない、という危惧が常に存在する。
そこで、本実施形態に係るカーボンフリーエネルギ供給システム10では、公開鍵暗号や電子署名で用いる公開鍵とその公開鍵の持ち主の対応関係を保証する公開鍵基盤に基づいた、パケット送信元の真正性(いわゆる「なりすまし」でないかを確認すること)と送信内容の統合性(「改ざん」がないかを確認すること。完全性とも呼ぶ)を受信側で検証するための検証コード(デジタル署名)を付加したセキュア通信を採用することにより、サイバー攻撃に対するエネルギ安全保障を担保している。
より厳格には、例えば、各通信ノードは耐タンパー性(機器や装置、ソフトウェアなどが、外部から内部構造や記録されたデータなどの解析、読取、改ざんが難しくなっている状態)のあるセキュリティモジュールTPM(Trusted Platform Module)を内蔵し、TPMが提供するTPM識別用のEK鍵(Endorsement Key)、署名用のAIK鍵(Attestation Identity Key)、暗号化用のSTK鍵(Storage Key)を用いて、各通信ノードのEK公開鍵と、ベンターが提供したディスクイメージ(ハードディスクなどに記録されている先頭から末尾までのデータ)や人工知能であれば機械学習済みデータのハッシュ値を所定の認証局(図示省略)に登録することによって、各通信ノードの真正性と、各通信ノードが生成し送信した管理対象情報や制御情報などの統合性を受信ノード側で検証できるようにしてもよい。
なお、真正性と統合性の検証がカーボンフリーエネルギ供給システム10のセキュリティ安全保障のベースとなるが、真正性と統合性の検証をすり抜けるサイバー攻撃の脅威も存在し得る。これに対する対策については、後述する。
[浮体式洋上プラントの建設]
上記のように構成された一実施形態のカーボンフリーエネルギ供給システム10における浮体式洋上プラント100の組み立て建設作業は、定形作業であり図22に示すように人工知能を搭載した搬送組立ロボット600~630及び搬送組立ロボット管理制御装置760~763とが連携して、同時並行組み立てにより建設される。
すなわち、太陽電池パネル110を大型の運搬船に積み込み、洋上の建設場所へ搬送した後、船の複数のクレーンを使用して太陽電池パネル110を海面上へ下ろす。その後、複数機の太陽電池パネル搬送組立ロボット610を太陽電池パネル搬送組立ロボット管理制御装置761の誘導制御のもとで、各太陽電池パネル110の識別子と予め準備された浮体式洋上プラント100の構成図に従って、同時並行して、多数の太陽電池パネル110を連結して小集合部SCを組み立てる。
組み立てに当たっては、組込もうとする太陽電池パネル110と連結する一又は複数の太陽電池パネル110を搬送組立ロボット610で海面上1.5m位に持ち上げたうえで、搬送組立ロボット610の多軸多次元ローラーコンベア(図示省略)で自動連結器117の位置関係を微調整し、所定の精度内に入ったところで一斉にシール材120を開放すると同時に組込もうとする太陽電池パネル110の圧縮空気タンク115に予め充填しておいた乾燥圧縮空気を圧縮空気噴射ノズル128から噴射し、自動連係器117内及び電力路コネクタ126などに海水成分が付着残留しない状態にしたうえで自動連結器117を密着連結する(図11A、11B)。これらは連結しようとする複数の太陽電池パネル110と搬送組立ロボット610、及び搬送組立ロボット管理制御装置761との連携により自律的に行われる。
その後、搬送組立ロボット管理制御装置762の誘導制御のもとで、小集合部SCを複数の小集合部搬送組立ロボット620により搬送して中集合部を同時並行で組み立て、さらに、搬送組立ロボット管理制御装置763の誘導制御のもとで、中集合部搬送組立ロボット630により搬送して大集合部LCを組み立てる。
なお、これらの組立てにおいても、連結する太陽電池パネル110は搬送組立ロボット620又は630によって海面上1.5m位に持ち上げたうえで、自動連結器117の位置関係を微調整し、所定の精度内に入ったところで一斉にシール材120を開放し乾燥圧縮空気を噴射しながら連結するのは同じである。
なお、海底ケーブル300の敷設も浮体式洋上プラント100そのものの建設と同時並行で行う。建設中及び建設後は海底ケーブル管理制御装置730によって、管理制御される。
このような各構成要素の同時並行組み立て作業により、図23に示すように短期間での浮体式洋上プラント100の建設が可能となる。すなわち、図23は本発明に係る浮体式洋上太陽光発電プラントの一実施形態の建設に要する工程別組立と総プラント建設見積時間を示す。
同図において、小集合部SCの組立てには、合計1000機の太陽電池パネル搬送組立ロボット610を用いて、太陽電池パネル110当たり平均15分で組み立てると、合計100万枚の太陽電池パネル110を、250時間で1万基の小集合部SCに組立てることができる。中集合部MCの組立てには、合計100機の小集合部搬送組立ロボット620を用いて、小集合部SC当たり平均180分で組み立てると、合計10000基の小集合部SCを300時間で、100基の中集合部MCに組立てることができる。さらに、大集合部LCの組立てには、1機の中集合部搬送組立ロボット630により、中集合部MC当たり平均240分で組み立てると、100基の中集合部MCを400時間で1基の大集合部LCに組立てることができる。
そして、前工程の1/4が終了後に次工程を開始する(例えば、小集合部の組み立て工程の1/4経過後に中集合部の組み立てを開始)とすると、浮体式洋上プラント1基当たりの建設延べ時間は538時間になるが、作業時間を10時間/日、作業可能天候率を60%とすると、90日間で建設を終えられることになる。TPESjの発電量確保には、図9に示したように963基を建設する必要があるが、同時建設現場数を26とすると、9.1年間で建設を終えることになる。
この場合、搬送組立ロボット600としては、建設そのものと、建設後の保守(清掃など)のために複数種類の人工知能搭載ロボット610~640が使用される。人工知能は現在の状態を入力すると、過去の経験から未知の事象をごく短時間で判断するもので、自動運転やロボットなどでの実用化が進められている。
すなわち、これらの太陽電池パネル110や浮体式洋上プラント100の様々な状況(建設過程、天候、海況、太陽電池パネル相互の位置関係、トラブルの発生等)における各種のセンサ情報やカメラ情報などの膨大な学習用データを収集しながら報酬(例えば、太陽電池パネル110の組立時間の最小化)を最大化するようにHPC(High Performance Computing)環境で機械学習(深層強化学習)を行い、学習済みデータをロボット600に実装することにより実現することができる。そして、浮体式洋上プラント100の搬送組立ロボット600によるプラント建設おいては、後述の管理制御装置700又は搬送組立ロボット用管理制御装置760の管理制御のもとで行うことにより、搬送組立ロボット600同士が連携若しくは共同して作業を進められるようになるため、より効率よく建設することが可能になる。
また、建設後、運用稼働中に障害が発生した太陽電池パネル110Fの交換作業(図示省略)は、管理制御装置760の管理と制御のもとで、搬送組立ロボット610が自律的に行う。太陽電池パネル搬送組立ロボット用管理制御装置761は、対象となる浮体式洋上プラント100及び同プラント内の太陽電池パネル110Fの真下に、交換用太陽電池パネル110を搭載した搬送組立ロボット610を潜水誘導する。搬送組立ロボット610は、太陽電池パネル110Fの識別子と隣接する太陽電池パネル110の識別子を確認の上、太陽電池パネル110Fと隣接する6枚の太陽電池パネル110、さらにその周囲の12枚の太陽電池パネル110のパネル筐体112内の海水を排水させたうえで、搬送組立ロボット610は太陽電池パネル110Fと隣接6枚の太陽電池パネル110を海面上1.5m位に持ち上げる。太陽電池パネル110Fと隣接太陽電池パネル110とを連結する6個の連結器117を解放させて取り外し、搬送組立ロボット610は補足した太陽電池パネル110Fを多軸多次元ローラーコンベアで横にずらす。
次いで交換用太陽電池パネル110を多軸多次元ローラーコンベアで太陽電池パネル110Fの元の位置に移動させ、連結する隣接太陽電池パネル110との三次元位置関係を微調整しながら隣接太陽電池パネル110と連結させる。連結後、太陽電池パネル110Fを搭載した搬送組立ロボット610を潜水退避させるとともに、排水した筐体112に再び海水を注水し、動作の正常性を搬送組立ロボット管理制御装置761が確認する。その結果を浮体式洋上プラント100全体の管理制御を担う管理制御装置710に報告し、了解を得ることによって一連の交換作業を終了する。これらの作業で搬送組立ロボット610や管理制御装置760等が用いる管理制御コマンドについては後述する。
[浮体式洋上プラントの環境アセスメント]
図9の構成例では、浮体式洋上プラント100当たり28.1kmの面積を要し、これを北緯30°以南のEEZ内海域に分散配置すると2%弱が浮体式洋上プラント100で覆われることになる。浮体式洋上プラント100の下は日照不足となり植物プランクトンの減少は避けられない。それを餌とする魚類や他の生物にも影響を与えかねない。複数年にわたる試験運用を通してどのような影響があるか、また浮体式洋上プラント100の適切な設置方法を見極める必要がある。
浮体式洋上プラント100下の日照不足の対策としては、例えば、(A)隣接する太陽電池パネル110の間隔を図9記載の50cmから5倍の2.5mに広げる、(B)小集合部SC単位(一辺約53m)で停留機能を持たせ、隣接する小集合部SCの間隔を50mに広げる、(C)中集合部MC単位(一辺約530m)で停留機能を持たせ、隣接する中集合部MCの間隔を500mに広げる方法などが考えられる。これらいずれの方法においても、浮体式洋上プラント100の設置海域の太陽光照射面積率を50%程度に高めることができる。なお、(A)の場合、インド洋モルティブに設置された浮体式洋上太陽光発電「SolarSea」での実測データから、海面反射光による5~10%の出力向上が期待できる。
海洋生物生態系の視点から、28.1km程度の面積であれ浮体式洋上プラント100の間を例えば5km以上離せば差したる影響を及ぼさないのか、あるいは(A)~(C)いずれの方法が良いか、また太陽光照射面積率はどの程度まで許容されるかなどを試験運用の中で見極める必要がある。
太陽電池パネル110は、太陽電池モジュール113、パネル筐体112、強化ガラス112G、連結器117、多機能コネクタ124、推進装置131などからなる。構造部材をなすパネル筐体112の厚みを、例えば4mmとしても、全963基の洋上プラントの構造部材は3.7億mにもなり、2019年の産業廃棄物最終処理場の残余容量1.7億mを大きく上回る。構造部材はもとより太陽電池モジュール113を含め、再利用可能なものを使用しなければ、大きな地球環境汚染問題になりかねない。
構造部材に必要な特性として耐塩腐食性、耐候性(紫外線)、再生利用性(ケミカルリサイクルなど)、絶縁性、熱伝導性(太陽電池背面の冷却)、防錆性、強靭性、耐衝撃性、防汚性(海洋生物等の付着防止)、経済性、軽量性などが挙げられる。
ガラス繊維強化プラスチックは、軽量で高い力学特性や化学的安定性を持ち安価なことからバスタブや船体材料などに多用されているが、再利用は難しく現状は埋立廃棄処理されている。
一方、鉄などの金属材料は高電圧に対する絶縁や耐塩腐食処理が必須であり、高い耐候性と耐塩腐食性、海洋生物の付着を防止する防汚塗料でコーティング処理する必要があるが、熱伝導性に優れ太陽電池モジュール113の背面温度を海水温に保つうえで有効である。
ポリエチレン繊維は、解重合(モノマー)してから再重合によるケミカルリサイクル可能な軽くて丈夫な素材で、耐塩腐食性、防錆性、絶縁性、耐候性、耐衝撃性、経済性に優れ、プラスチックの中では熱伝導性は高い(ガラスや水相当)ことから、パネル筐体112の構造材の有力な候補になり得る。
また、渡り鳥が飛来し浮体式洋上プラント100に漂着した木片やプラスチックごみなどをかき集めて巣作りし、繁殖地にする恐れもある。対策として清掃機能を持つ太陽電池パネル清掃ロボット640が、太陽電池パネル110の上面、下面、側面を定期的に清掃し、糞や巣、付着した海洋生物などを除去する方法が考えられる。試験運用を通して渡り鳥などの飛来頻度や清掃ロボットの性能を確認する必要がある。
[管理制御装置によるカーボンフリーエネルギ供給システムの管理と制御]
前述したように、浮体式洋上プラント100、エネルギ・キャリアシステム200、海底ケーブル300、洋上風力発電プラント等400及び供給先施設500、搬送組立ロボット600は、一又は複数の管理制御装置700により管理及び制御される。管理制御装置700による管理制御の具体例として、インターネットの標準規格RFC1157で定義されている簡易ネットワーク管理プロトコルSNMP(Simple Network Management Protocol)の応用が挙げられる。
SNMPでは管理を行うSNMPマネージャと、管理対象となるSNMPエージェントと管理情報ベースMIB(Management Information Base)を基本要素として、構成管理(ネットワーク機器やサーバ、インタフェース、サービスなどの情報をデータベースとして管理する)や性能管理(ネットワーク上のトラフィックやエラーの発生数、パケット損失数などの情報を収集し、ネットワーク全体の性能を管理する)、障害管理(ネットワークや機器での障害発生を検知し、障害処置のための情報を提供する)、課金管理(ネットワーク内の資源の利用状況をユーザごとに記録し管理する)、機密管理(不正なアクセスや侵入の監視と、権限を越えたアクセスを制御する)からなる5つの機能がある。
MIBは、SNMPエージェントが管理対象情報を木構造のオブジェクト識別子OID(Object Identifier)によって、一意な数字で識別し保持する。ポーリング方式とトラップ方式とがあり、前者はSNMPマネージャが要求し、SNMPエージェントが応答を返すもので、情報取得要求(GetRequest)や応答(GetResponse)、設定変更要求(SetRequest)などのコマンドがある。後者は異常検出したSNMPエージェントがSNMPマネージャに通知(SNMP-Trap)するためものである。
例えば、SNMPマネージャがある機器のユニキャストパケットの受信数を取得したいときは、IPアドレスでSNMPエージェントを指定し、木構造のOIDをルート(.)から順に辿ってGetRequest(.1.3.6.1.2.1.2.2.1.11:NULL)で照会すると、当該SNMPエージェントはGetResponse(.1.3.6.1.2.1.2.2.1.11:4937832)で応答を返す。照会対象は同時に複数項目を指定できる。
管理制御装置700~760はそれぞれの管理対象のSNMPマネージャとして機能し、IPアドレスが付与された被管理対象の浮体式洋上プラント100や太陽電池パネル110、第1~第3のエネルギ変換装置210~230などはSNMPエージェントとして機能する。そして拡張MIBはカーボンフリーエネルギ供給システム10の各構成要素(浮体式洋上プラント100や100万枚の太陽電池パネル110、パネル筐体112、太陽電池モジュール113、圧縮空気タンク115、回路ボックス116、密着型自動連結器117、双方向絶縁型DC-DC変換器141、エネルギ変換装置210~230、エネルギ貯蔵装置240、エネルギ変換供給装置250、海底ケーブル300、洋上風力発電プラント等400、供給先施設500、搬送組立ロボット600~630及び各種構成パーツほか)と管理対象情報(日射量、海流の流速/流向、風力/風向、GPSを利用した現在位置/方位情報、傾斜/揺れ/衝撃、潜水水深、監視カメラ画像、気温/海水温/海水タンク内温度/太陽電池モジュール背面温度、連結器内湿度/残留塩分、発電電力[W]、単位時間当たりのエネルギ入出力量/過不足量[W、kg/秒-H.kL/秒-NHほか]、発電量/送電量[Wh]、エネルギキャリアの入出量[kg、kL、kJ、kcal]など)を一意な数字で識別し、それぞれのSNMPエージェントで保持される。
ここで、管理制御装置700はカーボンフリーエネルギ供給システム全体を統括管理制御し、管理制御装置710は浮体式洋上プラント100を、管理制御装置720はエネルギ・キャリアシステム200を、管理制御装置730は海底ケーブル300を、管理制御装置740は洋上風力発電プラント等を、管理制御装置750は供給先施設を、管理制御装置760は搬送組立ロボット600をそれぞれ管理制御する。
例えば、浮体式洋上プラント100の日射量に対する発電電力が減少傾向にあることを検知した管理制御装置710は、GetRequestコマンドを使ってまず大集合部LC、次いで中集合部MC、さらに小集合部SC、太陽電池パネル110へと順に照会し、どの太陽電池パネル110のどの太陽電池モジュールの発電効率が劣化したかを特定する。次に、SetRequestコマンドを使って管理制御装置760に障害が起きた太陽電池パネル110Fの交換を要請する。要請を受けた管理制御装置760は、SetRequestコマンドを使って保守基地から交換用太陽電池パネル110を搭載した搬送組立ロボット610を出動させ、発電効率が劣化した太陽電池パネル110Fを太陽電池パネル110に交換するべく、SetRequestとGetRequestコマンドなどを使って人工知能を搭載した搬送組立ロボット610を管理制御する。
また、供給先施設500の一つである交流電力系統への供給電力が過剰になったことを管理制御装置750がSNMP-Trapによる通知で知ると、管理制御装置720に対してSetRequestコマンドを使って過剰量を伝える。管理制御装置720は、エネルギ変換装置210に対してエネルギ変換装置220へ発電電力を分流させて水素を生成し、エネルギ変換装置230にてエネルギキャリアに変換の上、エネルギキャリア貯蔵装置250に貯蔵するよう指示する。もし管理下のエネルギキャリア貯蔵装置250の貯蔵量が満杯であれば、管理制御装置700にSetRequestコマンドを使って処理を依頼する。依頼を受けた管理制御装置700は管理下の別の管理制御装置720、若しくは連携先の管理制御装置700にGetRequestコマンドを使って照会し、空きのあるエネルギキャリア貯蔵装置250へのパイプライン輸送をSetRequestコマンドを使って指示する。
また、台風が接近し浮体式洋上プラント100に破損する恐れが出てきたときは、管理制御装置700は、SetRequestコマンドを使って当該浮体式洋上プラント100を管理する管理制御装置710に対して潜水を指示し、同時に管理制御装置720にSetRequestコマンドを使って潜水時の対応を指示する。管理制御装置720は、エネルギキャリア貯蔵装置240からエネルギキャリアを取り出して、エネルギ変換供給装置250で直流電力に変換し、海底ケーブル300を介して浮体式洋上プラント100に送電するよう指示する。これらの連携によって、浮体式洋上プラント100の損壊を未然に防ぐとともに、潜水中であってもGPS受信機等143、推進装置131及び舵装置132を稼働させ、所定の位置に停留させ、かつ所定の方位又は方向を保持させることができる。
また、エネルギ・キャリアシステム200が通信ログ記録から不正アクセス(真正性と統合性の検証に失敗したパケットの頻発)を検知すると、SNMP-Trapコマンドを使って管理制御装置720に通信ログ記録を添えてその旨を通知する。管理制御装置720は通信ログ記録から不正アクセス元のIPアドレスや宛先IPアドレス、宛先ポート番号などからなる廃棄要請メッセージを生成し、SetRequestコマンドを使って同メッセージを管理制御装置700に送信する。管理制御装置700は、専用のコマンドを用いて同メッセージを不正アクセス元IPアドレスに向けて送信すると、同メッセージに対応可能な不正アクセス元に最も接近したルータは、以後、該不正アクセスパケットの転送を阻止する。
また、カーボンフリーエネルギ供給システム10では、真正性と統合性の検証がサイバーセキュリティの安全保障のベースとなるが、例えばサプライチェーンの過程でマルウェアが埋め込まれれば、真正性と統合性の検証をすり抜けたサイバー攻撃が仕掛けられることも起こり得る。これに対する対策としては、カーボンフリーエネルギ供給システム10の構成要素の大半はIoT(Internet of Things)機器であることから,ルータなどで通信相手を限定することによって、不正パケット(例えば、C&Cサーバーとの通信など)を阻止するようにしてもよい。これらの不正パケットのルータなどによる阻止の具体例として、特許第6683480号、特許第6737610号、特許第6780838号、特許第6896264号が挙げられる。
以上に述べた複数の事例から、カーボンフリーエネルギ供給システム10は、ひとたび運用に移行すると365日24時間停止することなく稼働し、所定のエネルギ形態で供給先施設500へ供給し続けられることがわかる。なお、管理制御装置700~760には、機械学習した学習済データを実装し、管理制御を行わせるようにしてもよい。また、SNMPをベースに管理制御するとして説明したが、人工知能に適した独自のコマンドやMIB、OIDを定義してもよい。
また、上記コマンドに係るパケットの送受信においては、少なくとも送信元の真正性と送信内容の統合性を受信側で検証するための検証コードが付されて行われることは、前述のとおりである。
カーボンフリーエネルギ供給システムのシステムコスト試算]
「規模の経済」によれば、固定費は研究開発費や製造装置などの減価償却費からなり、一般的に生産量が2倍になればコストは30%程度安くなる。一方、変動費は原材料や人件費などからなるが、原材料は生産が2倍になってもコスト低減は5~10%である。これより、次の知見が得られる。
(i) 発電量を増やすほど規模の経済効果により、発電単価は低下する。
(ii) 生産量が多いものほど研究開発や製造装置に投資して、安い原材料で高性能なものを生産した方が得である。
(iii) 製造や建設に必要な人件費もロボットの導入により固定費化でき、少子高齢化社会の産業に適している。
これらの知見に基づいて浮体式洋上プラント100やエネルギ・キャリアシステム200を開発すれば、固定費の比率を上げ、逆に変動費の比率を下げることになり、規模の経済効果を最大限に活かせることになる。そして用地購入費用が不要、原油やLNGなどの燃料費が不要な洋上での高効率で大量生産が可能な浮体式洋上太陽光発電は、大規模化によって現在の再エネや他の一次エネルギに対して十分なコスト競争力を持つと考えられる。これは、現在の再エネは分散化指向で推進されているが、大規模化の方が経済的に有利なことを意味している。
図24は、現在の部材価格などを参考に試算した初期の浮体式洋上プラント100の機材コスト(2.48兆円/基)とその内訳比率、それに見合うエネルギ・キャリアシステム200の機材コスト、建設・保守・運用等コスト、電力単価、規模の拡大によるの経済効果などの試算モデルを示したものである。
浮体式洋上プラント100では、太陽電池だけで54%を占めており、海底ケーブルは6%程度と少ない。エネルギ・キャリアシステム200は、すでに確立した技術や機材から構成され、太陽電池のような高額機材がないことから、機材コストは浮体式洋上プラント100の半額とした。また建設コストは搬送組立ロボット600の活用を前提に人工知能搭載ロボット関連コストを含め機材総額の10%(3,700億円)とした。これらのコストを耐用年数30年間で除した減価償却費は1,364億円/年である。その他の保守運用コストや営業利益は同図に記載の比率とコストを想定した。これら年ごとにかかるコストを浮体式洋上プラント1基の発電量5.71TWhで除した電力単価は、運用開始初期で33円/kWhになる。
これらをベースとする規模の拡大による経済効果の試算モデルでは、前項の(i)~(iii)に沿って極力固定費比率を高めるものとして、変動費比率及び固定費比率共に50%とし、生産量が2倍に増えたときの変動費の規模の経済効果指数αを0.95~0.9(2倍増で5~10%低下)とし、固定費の同指数βを0.7(同30%低下)とした。
この試算モデルを用いて浮体式洋上プラント100の発電量に対する電力単価を試算した結果を図25に示す。5年間の研究開発と試験運用を経て2026年から導入開始すると、固定費は浮体式洋上プラント100を100基設置した時点で3%以下に低減し、総コストはほぼ変動費で占められるようになる。そして、日本の一次エネルギ量TPESjまで総発電量が増える2035年頃に日本のカーボンフリー化が達成され、電力単価は6.3~10.4円/kWhと現在の欧米並みになる。さらに、2050年の世界の一次エネルギ総需要推定量2TPESj(326PWh)まで発電量を増やせば、世界のカーボンフリー化達成が現実味を帯び、3.2~7.4円/kWhまで電力単価は下がる。
なお、前述した製鉄のようにエネルギ・キャリアシステム200を介さずに浮体式洋上プラント100から直流電力を直接引き込む場合の電力単価は約2/3である。ちなみに、2019年の産業用太陽光発電の売電価格は約14円/kWhであるが、再エネも戦略的な導入を行えば、現在の電気料金を大きく下回る価格でエネルギ供給できる可能性がある。
そして、カーボンフリーエネルギ供給システム10の導入によるカーボンフリー化と並行して、数千年にわたり大気圏に留まるとされている温室効果ガス(COやメタンガスなど)の回収を進めれば、パリ協定の目標「世界平均気温の上昇幅を産業革命前より1.5℃未満に抑えたい」も2100年までに達成できよう。
[作用・効果]
上記のように構成された一実施形態のカーボンフリーエネルギ供給システム10においては、COを排出しないものの出力電力が不安定で大量かつ長期間にわたって備蓄もできない再エネを、国はもとより地球規模でのエネルギ総需要を賄うに足る量を浮体式洋上プラント100により発電し、第1のエネルギ変換装置210、第2のエネルギ変換装置220、第3のエネルギ変換装置230によりエネルギキャリアに変換して、例えば半年分を上限にエネルギキャリア貯蔵装置240にて備蓄し、これらの装置の何れから出力された又は取り出したエネルギを供給先施設500に適したエネルギ形態に変換して供給するエネルギ変換供給装置250とによって、ほぼすべての一次エネルギをカーボンフリー化できる。
また、管理制御装置700~760は互いに連結して管理制御することによって、カーボンフリーエネルギ供給システム10は365日24時間稼働し、エネルギを供給し続けることを可能にする。
また、上記のように構成された一実施形態のカーボンフリーエネルギ供給システム10においては、TCP/IPベースのパケット通信を用い、かつ送信元の真正性と送信内容の統合性を受信側で検証できるようにしたことによって、カーボンフリーエネルギ供給システム10へのサイバー攻撃の余地を与えない、すなわちエネルギ安全保障を担保する。
また、上記のように構成された一実施形態のカーボンフリーエネルギ供給システム10においては、安定に貯蔵可能なエネルギキャリアとして、液体アンモニア、メチルシクロヘキサン、液体水素、及び高圧水素ガスを供給先施設500の特性に応じて取捨選択でき、これらの中で体積エネルギ密度と質量エネルギ密度が高く、常温で大量かつ長期間にわたって備蓄が可能な液体アンモニア又はメチルシクロヘキサンは、例えば半年分を上限に備蓄することが可能であり、日ごとや季節、異常気象などにより発電電力が大きく変動する再エネを、エネルギ・インフラストラクチャとして利用することを可能にする。
また、上記のように構成された一実施形態のカーボンフリーエネルギ供給システム10においては、供給先施設500である交流電力系統、高電圧直流電力系統、火力発電所におけるNH専焼発電機やNH混焼発電機、水素火力発電機、高純度な液体水素が要求される空港の液体水素貯蔵タンク、水素燃料電池車両用の高純度な水素燃料を補給する水素ステーション、NH専焼エンジンで運航する船舶が発着する港湾に設けられたNH貯蔵タンク、水素還元製鉄を行う高炉などへ、再エネ由来エネルギを供給先施設500それぞれに適したエネルギ形態に効率よく変換し、安定かつ低廉に供給するエネルギ変換供給装置250によって、様々な産業でのカーボンフリー化を可能にする。
また、上記のように構成された一実施形態のカーボンフリーエネルギ供給システム10においては、我が国では最も発電能力の高いと目される浮体式洋上太発電プラント100を主体とするものの、他の再エネ資源を用いた発電プラントとの共存により、再エネ資源の多様性を高め、再エネ資源を用いた発電電力の時間的変動性や季節的偏在性を平準化するとともに、エネルギ・キャリアシステム200の利用効率を高め低廉なエネルギの安定供給を可能にする。
また、上記のように構成された一実施形態の浮体式洋上プラント100においては、浮体式洋上プラント100を構成する各太陽電池パネル110自体が浮体として機能し、互いに隣接する太陽電池パネル110は上下方向に互いに揺動可能であるので、津波、波浪、海流、等に耐え得る強靱な構造の浮体式洋上プラント100を実現することができる。
これにより、従来の技術では実現が不可能であった規模の大面積の浮体式洋上プラント100の実現化可能となる。従って、このような大規模、大面積の浮体式洋上プラント100を年平均日照量の多い洋上に一又は複数配置することにより、国家さらには地球規模のエネルギ需要を賄うことができる程の大量の再エネ生産すなわち洋上太陽光発電の実現が可能となる。
洋上においては、津波、波浪、海流の影響を考慮する必要がある。この場合、津波に関しては、その性質上、陸地に近づき水深が浅くなるに従って波高が高くなり影響が大きくなるが、水深が50m以深の深さの沖合であれば、津波が発生した場合でも海面が数十分周期で波長数km~数百kmの上下動を繰り返すのみであり、浮体物により構成される本実施形態に係る浮体式洋上プラント100には大きな影響はない。
また、台風などによって発生する波浪は数10m~数100mの波長を持ち、20mの波高になることもあるが、上記のように構成された一実施形態の浮体式洋上プラント100における太陽電池パネル110の共振波長は、波浪の波長より十分に短く、波浪との共振により破壊されることはない。
さらに、上記のように構成された一実施形態の浮体式洋上プラント100においては、各太陽電池パネル110のパネル筐体112に海水Wを注排水することにより、所定の潜水水深に潜水したり海面に浮上したりすることによって、巨大台風による破壊力が加わることを回避できる。
従って、浮体式洋上プラント100は、海が荒れていない時は海面に浮いた状態で稼働し、荒天時には、各太陽電池パネル110に海水Wを注水することにより、所定の潜水水深に潜水して波浪、風浪による被害を回避できる。
また、海流に関しては、本実施の形態における浮体式洋上プラント100は最高流速7m/秒程度の黒潮や台風などの影響下にあっても、所定の位置に停留させ、かつ所定の方位又は方向を保持させる場合にはこの流速や強風の影響に抗し得る推力が必要となることから、本実施の形態にあっては、GPS受信機等143、推進装置131及び舵装置132が設けられており、黒潮などの流速や強風に対向して所定の方位又は方向を保持させることができるように構成されている。
また、一実施形態の浮体式洋上プラント100によれば、互いに隣接する太陽電池パネル110は、自在継手部119及び各太陽電池パネル110の平面視頂点部110aに設けられた弾性衝撃吸収部材111を介して弾力的に柔連結されているので、互いに隣接する太陽電池パネル110同士の衝突を防止しつつ上下方向への互いの揺動を可能とし、津波、波浪、海流、等に耐え得る柔軟且つ強靱な構造の浮体式洋上プラント100を実現している。
また、一実施形態の浮体式洋上プラント100によれば、太陽電池パネル110は、互いに隣接する太陽電池パネル110は、各太陽電池パネル110の平面視辺部110bに設けられた密着型自動連結器117を介して、パネル筐体112同士が機械的に連結されるとともに、パネル筐体112内の電気的要素同士が電気的に接続される。
また、一実施形態の浮体式洋上プラント100によれば、密着型自動連結器117には、パネル筐体112内から海水Wを排出するための圧縮空気管コネクタ127A、127Bが設けられているので、密着型自動連結器117を介して太陽電池パネル110内に圧縮空気を供給することにより、太陽電池パネル110を潜水状態から浮上させることができるとともに、互いに連結された複数の太陽電池パネル110内に同時に圧縮空気を供給することが可能となる。
また、一実施形態の浮体式洋上プラント100によれば、密着型自動連結器117には、潜水時に太陽電池パネル110の水深を一定に保つためのフローター135が装備されているので、浮体式洋上プラント100を構成する太陽電池パネル110のパネル筐体112内に海水Wを注水して浮体式洋上プラント100を潜水状態にするとともに、圧縮空気供給路134を介してフローター135に圧縮空気を送り膨張させることにより、浮体式洋上プラント100を一定の潜水水深に保つことができる。
また、一実施形態の浮体式洋上プラント100によれば、密着型自動連結器117には、互いに隣接する太陽電池パネル110の電力回路同士を電気的に接続するための電力路コネクタ126A、126Bと、隣接する太陽電池パネル110に障害が発生した場合に、他の隣接する太陽電池パネル110の電力回路に接続を切り替える制御回路が設けられているので、障害の発生した太陽電池パネル110Fを自動的に迂回すなわち、障害の発生していない太陽電池パネル110のみからなる迂回回路BRを自動的に決定し、その結果を障害の発生した太陽電池パネル110Fに隣接する太陽電池パネル110に通知するなどして、電力路を迂回回路BRに切り替え、浮体式洋上プラント100における電力送電を継続できる。
また、一実施形態の浮体式洋上プラント100によれば、密着型自動連結器117には、互いに隣接する太陽電池パネル110の通信回路同士をパケット通信可能に接続するための通信路コネクタ125A、125Bが設けられているので、浮体式洋上プラント100内に、隣接する太陽電池パネル110の通信回路同士を接続してなるパケット通信ネットワークを形成することができる。
また、一実施形態の浮体式洋上プラント100によれば、浮体式洋上プラント100は、電気的に互いに直列接続された複数の太陽電池パネル110からなる小集合部SCと、電気的に互いに絶縁型直列接続された複数の小集合部SCからなる中集合部MCと、電気的に互いに木構造並列接続又は並列接続された複数の中集合部SCからなる大集合部LCと、により構成される。
小集合部SC内での直列接続と中間電位点のアースとによって、太陽電池モジュール113に加わる最大電圧は±2.6kVに抑えることができる。中集合部MC内では小集合部SCを小集合部SC内とは異なる電力路コネクタを介して絶縁型直列接続することにより、±250kVに昇圧するが、この高電圧が太陽電池モジュール113に直接加わることはない。したがって、太陽電池モジュール113や回路ボックス116、電力路コネクタ126A、126Bなどをそれぞれ適切な絶縁材を用いて絶縁保護することによって、太陽電池パネル110全体を過度に絶縁保護することなく電気的に接続することが可能となる。
そして、大集合部LC内では複数の中集合部MCの出力を木構造並列接続することによって、木構造並列接続電力路153、153及び154、154に流れる電流を分散化し、大集合部LCの最大出力電流約6kAを合流ノード54N+、154を収容する太陽電池パネル110と海底ケーブル300のみに限定することができる。その結果、浮体式洋上プラント100全体の銅の使用量を極力減らすことができる。
また、一実施形態のカーボンフリーエネルギ供給システム10によれば、カーボンフリーエネルギ供給システム10における通信方式は、TCP/IPベースのパケット通信方式であり、128ビット長のIPv6のアドレス空間の一部が、浮体式洋上プラント100を識別するためのアドレス、大集合部LCを識別するためのアドレス、中集合部MCを識別するためのアドレス、小集合部SCを識別するためのアドレス及び太陽電池パネル110を識別するためのアドレスに階層的に割当てられているので、複数のカーボンフリーエネルギ供給システム10において、多数の太陽電池パネル110を通信ノードとして有する膨大な通信ノード間での情報交換を可能とする整然とした通信環境を実現できる。
また、一実施形態のカーボンフリーエネルギ供給システム10によれば、カーボンフリーエネルギ供給システム10の各構成要素には、識別子又は物理アドレスと、各構成要素のカーボンフリーエネルギ供給システム10内における階層的位置に基づく論理アドレスとが付与されているので、カーボンフリーエネルギ供給システム10内のルーティングを効率的に処理することが可能となる。
また、一実施形態のカーボンフリーエネルギ供給システム10によれば、各構成要素間の通信は、送信元の真正性とパケットの統合性を検証するための検証コードが付されたパケット通信により行われるので、カーボンフリーエネルギ供給システム10内にセキュアなパケット通信環境を構築することが可能となる。
また、一実施形態の浮体式洋上プラント100によれば、現在位置と方位を取得するためのGPS受信機等143と、浮体式洋上プラント100の外周部に配置される太陽電池パネル110Eには、推進装置131及び舵装置132が設けられているので、潮流や波浪、風浪の影響下においても、浮体式洋上プラント100を所定の位置及び方位に留まるよう制御することが可能となる。浮体式洋上プラント100は、平面視略正六角形の複数の太陽電池パネル110を平面視ハニカム構造に連結することにより構成されるので、推進装置131及び舵装置132による推力が浮体式洋上プラント100全体に分散する。従って、推進装置131及び舵装置132による推力が一部に集中することによる浮体式洋上プラント100の構造の崩れを防止できる。
また、一実施形態の浮体式洋上プラント100によれば、浮体式灯台136を浮体式洋上プラント100の周囲に複数備えているため、浮体式洋上プラント100の近傍を航行する船舶に対してその存在を周知でき、航行の安全を保障し、船舶の衝突による洋上プラントの損壊を防止できる。
また、一実施形態の浮体式洋上プラント100によれば、浮体式洋上プラント100を構成する互いに隣接する太陽電池パネル110のパネル筐体112同士を機械的に連結するとともに、パネル筐体112内の電気的要素同士を電気的に接続するための多機能コネクタ124を密着型自動連結器117に設けたことにより、互いに隣接する太陽電池パネル110同士の連結と接続作業及び解放作業を自動化し得る。これにより、海上における浮体式洋上プラント100の複数の搬送組立ロボット600による組み立てが実現可能となる。
また、不具合の生じた太陽電池パネル110F の交換作業を搬送組立ロボット600により行うことも可能にする。
さらに、洋上での組み立てにおいて細心の注意が必要なことは、±250kVの高電圧電力路を密着型自動連結器177内で連結する際に海水成分が浸潤し、洋上プラントの運用開始後、深刻な絶縁破壊を起こす可能性があることである。所定の海域に運搬し組込もうとする太陽電池パネル110のパネル筐体112内に設けられた圧縮空気タンク115に予め圧縮乾燥空気を充填しておき、連結の際に密着型自動連結器177内及び多機能コネクタ124を圧縮乾燥空気で海水成分を払拭し密着連結することによって、連結器内での絶縁破壊を防止する。
以上のように構成された浮体式洋上プラント100は、小集合部SCを100枚の太陽電池パネル110により構成し、中集合部MCを100基の小集合部により構成し、さらに大集合部LCを100基の中集合部により構成し、全体を100万枚の太陽電池パネル110により形成され、その結果、年平均日射量240W/mの海域にて年平均発電電力として652MW/基の浮体式洋上プラント100が実現される。
この場合、1基の浮体式洋上プラント100の発電能力は、大型ガスタービン・コンバインドサイクル(GTCC)発電機1基分に相当する。この規模で構成した場合、浮体式洋上プラント100は28.1kmの面積となり、年間5.71TWhの電力量を供給することができる。TPESj(日本国の一次エネルギ総消費量)を賄うためには963基の浮体式洋上プラント100が必要となり、延べ面積約2.7万km2(四国の約1.4倍)の規模の浮体式洋上プラント100により日本国において必要なすべての一次エネルギ相当量を生産できることとなる。
この場合、浮体式洋上プラント100から日本国の陸上のエネルギ・キャリアシステム200に全長1500km程度の海底ケーブルにより送電するものであるが、直流電流による送電であることから、静電容量損失や誘電体損失がなく、前述したように1,000kmあたりの送電損失を3%と極めて低く抑えることができる。
従って、本実施の形態に係るカーボンフリーエネルギ供給システム10及び浮体式洋上プラント100により、非常に高効率な、日本国全体さらには南北緯度30°付近以内の海域に展開すれば、世界の1次エネルギ総需要を充たすことができる大規模な電力供給及びエネルギ供給をカーボンフリー化することになり、地球温暖化の抑止効果は絶大である。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されない。例えば、上記実施形態では、太陽電池パネル110は平面視略六角形としているが、太陽電池パネル110を平面充填をなす形状として、平面視略四角形、又は平面視略平行四辺形、又は平面視略三角形を採用してもよい。この場合、太陽電池パネル110を最稠密配置することができる。これにより、浮体式洋上プラント100の上面すなわち太陽に面する側の面を、最大限、太陽電池パネルの受光面で構成することができる。従って、浮体式洋上太陽光発電プラントの構造上発電効率を最大限高めることができる。
さらに、隣接する太陽電池パネル110の間隔を50cmから5倍の2.5mに広げる、あるいは集合部SC単位(一辺約53m)で停留機能を持たせ、隣接する小集合部SCの間隔を50mに広げる、あるいは中集合部MC単位(一辺約530m)で停留機能を持たせ、隣接する中集合部MCの間隔を500mに広げるなどによって、浮体式洋上プラント100設置海域の太陽光照射面積率を50%程度に高めることによって、浮体式洋上プラント100の下の日照不足による植物プランクトンの減少を防ぎ、それを餌とする魚類や他の生物への影響を抑制することができる。
さらに、上記実施の形態にあっては、論理的階層をなすように連結された複数の多角形の太陽電池パネルが、前記論理的階層間をそれぞれ異なる電力路コネクタを介して直列接続、又は絶縁型直列接続、又は並列接続、又は木構造並列接続することにより、所定の直流電力を発電し海底ケーブルを介して送電する太陽光発電機能、自己又は隣接太陽電池パネルに障害が発生したとき、迂回回路を形成するよう未使用の電力路コネクタを介して他の太陽電池パネルに切り替える制御機能、前記太陽電池パネルのパネル筐体内に注排水することにより、前記浮体式洋上太陽光発電プラントを所定の潜水水深に潜水させ、潜水状態の前記浮体式洋上太陽光発電プラントを浮上させる潜水及び浮上機能、隣接するパネル筐体同士が少なくとも上下方向に互いに揺動可能な機械的連結器、前記電力路コネクタ、信号路コネクタ、圧縮空気管コネクタの一部又は全てを収容する連結器を前記太陽電池パネルの各辺又は一部に備え、隣接太陽電池パネルと相互に連結することによって前記浮体式洋上太陽光発電プラントを形成する連結機能、前記太陽電池パネルの平面視頂点部の一部又は全てに弾性衝撃吸収部材を配置し、不意の衝撃を吸収するとともに、海面の揺らぎによる太陽電池パネルの乗り上げを防ぐ衝撃吸収機能、前記浮体式洋上太陽光発電プラントの現在位置及び方位を測定するための現在位置及び方位測定機能、前記浮体式洋上太陽光発電プラントを所定の位置及び方位に停留させるための推進及び操舵機能、夜間又は潜水時に前記海底ケーブルを介して送電された電力を取り込み、前記浮体式洋上太陽光発電プラントを前記推進及び操舵機能を用いて所定の位置及び方位に停留維持する非発電時停留維持機能、物理アドレスと、前記論理的階層構造に従って論理アドレスとが付与されたパケットを送信及び受信するパケット通信機能、パケット送信元の真正性と送信内容の統合性とを受信側で検証するための検証コードが付された前記パケットを送信及び受信するセキュア通信機能、前記パネル筐体内に注排水する、及び前記所定の潜水水深に潜水させるための圧縮空気を生成し圧縮空気管及び前記圧縮空気管コネクタを介して他の太陽電池パネルの圧縮空気タンクに供給する圧縮空気生成機能、前記浮体式洋上太陽光発電プラントの周囲に自己の存在を周知するための灯又は電波又は音波の一部又は全てを用いて周知する浮体式灯台機能を備えている場合を例に説明したが、上記実施の形態に限定されず、本願発明の要旨の範囲内において適宜変形が可能である。
10 カーボンフリーエネルギ供給システム
100 浮体式洋上太陽光発電プラント(浮体式洋上プラント)
110 太陽電池パネル
110a 平面視頂点部
110b 平面視辺部
110c 梁材
110D 絶縁型DC-DC変換器搭載太陽電池パネル
110Dr 予備となる太陽電池パネル
110E 浮体式洋上プラント周辺太陽電池パネル
110F 不具合の生じた太陽電池パネル
110P 圧縮空気生成装置を備えた太陽電池パネル110
110T 浮体式灯台用開口部を持つ太陽電池パネル
111 弾性衝撃吸収部材
112 パネル筐体
112G 強化ガラス
113 太陽電池モジュール
114 透明絶縁充填剤
115 圧縮空気タンク
116 回路ボックス
117 密着型自動連結器(連結器)
118 筐体
119 自在継手部
120 シール部材
121 連結ボルト
122 連結ナット
123 駆動機構
124 多機能コネクタ
125 通信路コネクタ
126 電力路コネクタ
127 圧縮空気管コネクタ
128 圧縮空気噴射ノズル
129 ダクト
131 推進装置
132 舵装置
134 圧縮空気供給路
135 フローター
136 浮体式灯台
136A 灯部
136B ポール
136C 円筒体
136D 重り
137 ロープ
141 双方向絶縁型DC-DC変換器
142 浮体式灯台用開口部
143 全地球衛星測位システム(GPS)受信機等
151、151 小集合部直列接続電力路(+:正極側、-:負極側)
152、152 中集合部直列接続電力路(+:正極側、-:負極側)
153N+、153N- 合流ノード(+:正極側、-:負極側)
154N+、154N- 合流ノード(+:正極側、-:負極側)
155 アース(接地)
155MC 中集合部接地
155SC 小集合部接地
200 エネルギ・キャリアシステム
210 第1のエネルギ変換装置
220 第2のエネルギ変換装置
230 第3のエネルギ変換装置
240 エネルギキャリア貯蔵装置
250 エネルギ変換供給装置
300 海底ケーブル
310 海底ケーブル正極側電力路
310 海底ケーブル負極側電力路
400 洋上風力発電プラント等
500 供給先施設
600 搬送組立ロボット
610 太陽電池パネル搬送組立ロボット
620 小集合部搬送組立ロボット
630 中集合部搬送組立ロボット
640 太陽電池パネル清掃ロボット
700 管理制御装置
710 浮体式洋上プラント用管理制御装置
720 エネルギ・キャリアシステム200用管理制御装置
730 海底ケーブル用管理制御装置
740 洋上風力発電プラント等用管理制御装置
750 供給先施設用管理制御装置
760 搬送組立ロボット用管理制御装置
761 太陽電池パネル搬送組立ロボット用管理制御装置
762 小集合部搬送組立ロボット用管理制御装置
763 中集合部搬送組立ロボット用管理制御装置
BR 迂回回路
C1~C6 砂漠
D、D1 ダイオード
d 浮体式洋上プラントの安全潜水水深
f1 潮流や風による力
f2 推力
F 推力
h 浮体式灯台の海面からの高さ
LC 大集合部
MC 中集合部
SC 小集合部
W 海水
S 海面
J 日本国
x 日本国のEEZ
本発明は、再生可能エネルギ(以下、「再エネ」と称することがある)由来のカーボンフリーエネルギを供給するカーボンフリーエネルギ供給システム、カーボンフリーエネルギ供給システムに適用される浮体式洋上太陽光発電プラント(以下、単に「浮体式洋上プラント」と称することがある)及びカーボンフリーエネルギ供給方法に関するものである。
現在、地球規模で温暖化が進んでおり、COを排出しない持続可能なエネルギシステムの構築が急がれている。当該エネルギシステムを実現するためには、次の3つの課題が解決されなければならない。
課題(1)国家はもとより地球規模で必要とされるほぼすべての一次エネルギを代替し得る十分な量の再エネを生産する。
課題(2)生産した再エネを低廉で高品質かつ安定的に需要家へ供給する。
課題(3)大気圏に既に大量に滞留しているCOを計画的に回収し除去する。
課題(3)については、課題(1)及び課題(2)が解決された場合にはカーボンフリー化に従って自然界(森林や海洋)によるCO吸収(18Gt-CO/年)や、大気中からのCOの回収技術の実用化などが期待されている。従って、課題(1)及び課題(2)の解決が急務である。
従来、カーボンフリーエネルギ供給に関連する技術として、太陽光発電装置により発電した電力を用いて水を電気分解することにより水素を発生させ水素利用設備に供給するシステムが知られている(特許文献1)。
また、洋上太陽光発電プラントで発電して海水を電気分解することにより水素を発生させ、その水素を貯蔵しておき、その水素を使用して電力を発生させるシステムが知られている(特許文献2、特許文献3)。
また、太陽光で発電した電力を用いて水素を生成し、その水素を原料としてアンモニアを合成して液化アンモニア(エネルギキャリア)として貯蔵し、液化アンモニア、アンモニアガス、又はアンモニア水をエネルギ消費地に輸送し、エネルギ消費地で液化アンモニアから水素に転換して、燃料電池車に供給したり、燃料電池発電システムに供給したりするシステムが知られている(特許文献4)。
特開2020-58168号公報 特開2012-94363号公報 特許第5754029号公報 特開2016-150890号公報
しかし、上記特許文献1乃至4に記載の技術では、上記課題(1)及び課題(2)を解決することは難しい。これは、上記特許文献1乃至4に記載の技術は、国家さらには地球規模でのエネルギ需要を賄うことができる程の大量の再エネ生産が可能なシステムを構築する上で必須となる大面積の浮体式洋上プラントの実現を前提としていないことによる。
本発明は、国家はもとより地球規模で必要とされるほぼすべての一次エネルギを代替し得る十分な量の再エネを年平均日照量が豊富な海域で生産し、生産した再エネをエネルギキャリアに変換して所定の量を上限に貯蔵することによって、様々な供給先施設へ低廉で高品質なエネルギを安定に供給するカーボンフリーエネルギ供給システム及びその実現を可能とするための浮体式洋上太陽光発電プラントを提供し、ひいては「世界平均気温の上昇幅を産業革命前より2℃未満に抑え、できれば1.5℃より低く抑えたい」とするパリ協定の目標達成の一翼を担うことを課題とする。
前記課題解決のために、本発明の一態様に係るカーボンフリーエネルギ供給システムは、複数の太陽電池パネルのパネル筐体内への注排水による潜水及び浮上が可能な浮体式洋上太陽光発電プラントを含む一又は複数の再生可能エネルギ資源を用いて発電する発電プラントと、前記発電プラントにより発電された電力を安定化する一又は複数の第一のエネルギ変換装置と、前記第一のエネルギ変換装置から出力された電力を、一又は複数の供給先施設それぞれに適したエネルギ形態に変換して供給する一又は複数のエネルギ変換供給装置とを備えたことを特徴とする。
本発明の一態様に係るカーボンフリーエネルギ供給システムは、前記第一のエネルギ変換装置から出力された電力を安定に貯蔵可能なエネルギキャリアに変換する一又は複数の第二のエネルギ変換装置と、前記エネルギキャリアを所定の量を上限に貯蔵する一又は複数のエネルギキャリア貯蔵装置と、前記第一のエネルギ変換装置、前記第二のエネルギ変換装置、前記エネルギキャリア貯蔵装置の何れかから出力された又は取り出したエネルギを前記供給先施設に供給する前記エネルギ変換供給装置と、少なくとも前記発電プラント、前記第一のエネルギ変換装置、前記第二のエネルギ変換装置、前記エネルギキャリア貯蔵装置、前記エネルギ変換供給装置、前記供給先施設の一部又はすべてを管理し制御する一又は複数の管理制御装置とを備えたことを特徴とする。
本発明の一態様に係るカーボンフリーエネルギ供給システムは、前記浮体式洋上太陽光発電プラント、前記発電プラント、前記第一のエネルギ変換装置、前記第二のエネルギ変換装置、前記エネルギキャリア貯蔵装置、前記エネルギ変換供給装置、前記管理制御装置及び前記供給先施設の一部又はすべては、TCP/IPベースのパケット通信を行うための論理アドレスが割り当てられ、少なくともパケット送信元の真正性と送信内容の完全性とを受信側で検証するための検証コードが付されたセキュア通信により情報交換を行うことを特徴とする。
本発明の一態様に係るカーボンフリーエネルギ供給システムは、前記エネルギキャリアは、液体アンモニア、メチルシクロヘキサン、液体水素、又は高圧水素ガスの少なくともいずれか一つであることを特徴とする。
本発明の一態様に係るカーボンフリーエネルギ供給システムは、前記第二のエネルギ変換装置は、前記第一の変換装置から出力された電力により水素を生成する第一のエネルギ変換機能と、前記第一変換機能により得られた水素を前記エネルギキャリアに変換する第二のエネルギ変換機能とを備えたことを特徴とする。
本発明の一態様に係るカーボンフリーエネルギ供給システムは、前記エネルギ変換供給装置は、前記第一のエネルギ変換装置から出力された電力を所定の直流電力に変換し、前記供給先施設の一つである直流電力系統に供給する機能、前記第一のエネルギ変換装置から出力された電力を所定の交流電力に変換し、前記供給先施設の一つである交流電力系統に供給する機能、前記第二のエネルギ変換装置から、又は前記第二のエネルギ変換装置の前記第一のエネルギ変換機能により出力された水素を所定の液体水素に変換し、前記供給先施設の一つである供給先施設に供給する機能、前記第二のエネルギ変換装置から、又は前記第二のエネルギ変換装置の前記第一のエネルギ変換機能により出力された水素を所定の圧力に加圧して高圧水素ガスに変換し、前記供給先施設の一つである供給先施設に供給する機能、前記第二のエネルギ変換装置から、又は前記第二のエネルギ変換装置の前記第二のエネルギ変換機能により出力されたエネルギキャリアを所定のエネルギキャリアに変換し、前記供給先施設の一つである供給先施設に供給する機能、前記エネルギキャリア貯蔵装置から取り出したエネルギキャリアを用いて所定の直流電力を発電し、前記供給先施設の一つである直流電力系統に供給する機能、前記エネルギキャリア貯蔵装置から取り出したエネルギキャリアを用いて所定の交流電力を発電し、前記供給先施設の一つである交流電力系統に供給する機能、前記エネルギキャリア貯蔵装置から取り出したエネルギキャリアを所定の高圧水素ガスに変換し、前記供給先施設の一つである供給先施設に供給する機能、前記エネルギキャリア貯蔵装置から取り出したエネルギキャリアを所定の液体水素に変換し、前記供給先施設の一つである供給先施設に供給する機能、前記エネルギキャリア貯蔵装置から取り出したエネルギキャリアを所定のエネルギキャリアに変換し、前記供給先施設の一つである供給先施設に供給する機能、前記エネルギキャリア貯蔵装置から取り出したエネルギキャリアを所定の流量と流圧調整し、前記供給先施設の一つである供給先施設に供給する機能、前記供給先施設に供給するエネルギに余剰があるとき、又は所定の計画に則って、前記第一のエネルギ変換装置に対して、前記第一のエネルギ変換装置が出力する電力の一部又は全てを前記第二のエネルギ変換装置、又は前記第二のエネルギ変換装置の前記第一のエネルギ変換機能へ出力するよう指示する電力出力指示機能の少なくともいずれか一つを備えたことを特徴とする。
本発明の一態様に係るカーボンフリーエネルギ供給システムは、前記発電プラントは、発電電力の昼夜、天候、時間的変動性や季節的偏在性を平準化し、前記エネルギキャリア貯蔵装置の前記所定の量の上限を下げるように、さらに、他の再生可能エネルギ資源を用いて発電することを特徴とする。
本発明の一態様に係るカーボンフリーエネルギ供給システムは、前記他の再生可能エネルギ資源を用いて発電する前記発電プラントは、陸上太陽光発電プラント、係留式洋上又は水上太陽光発電プラント、陸上又は洋上風力発電プラント、係留式洋上風力発電プラント、浮体式洋上風力発電プラント、地熱発電プラント、又は水力発電プラントの少なくともいずれか一つであることを特徴とする。
本発明の一態様に係るカーボンフリーエネルギ供給システムは、前記浮体式洋上太陽光発電プラントは、所定の年平均日照量以上の日射量が得られ、所定の水深以上の水深の海域に浮体する発電プラントであって、論理的階層をなすように連結された複数の多角形の前記太陽電池パネルは、平面視略正六角形をなし、複数の前記太陽電池パネルにより平面視ハニカム構造を形成するよう連結する機能、前記論理的階層間をそれぞれ異なる電力路コネクタを介して直列接続、又は絶縁型直列接続、又は並列接続、又は木構造並列接続することにより、所定の直流電力を発電する太陽光発電機能、前記太陽電池パネルの前記パネル筐体内に注排水することにより、前記浮体式洋上太陽光発電プラントを所定の潜水水深に潜水させ、潜水状態の前記浮体式洋上太陽光発電プラントを浮上させる潜水及び浮上機能、隣接する前記パネル筐体同士が少なくとも上下方向に互いに揺動可能な機械的連結器、前記電力路コネクタ、信号路コネクタ、圧縮空気管コネクタの一部又は全てを収容する連結器を前記太陽電池パネルの各辺又は一部に備え、隣接する前記太陽電池パネルと相互に連結することによって前記浮体式洋上太陽光発電プラントを形成する連結機能、自己又は隣接する前記太陽電池パネルに障害が発生したとき、迂回回路を形成するよう未使用の前記電力路コネクタ、前記信号路コネクタ、前記圧縮空気管コネクタの一部又は全てを介して他の前記太陽電池パネルに切り替える制御機能、前記太陽電池パネルの平面視頂点部の一部又は全てに弾性衝撃吸収部材を配置し、不意の衝撃を吸収するとともに、海面の揺らぎによる前記太陽電池パネルの乗り上げを防ぐ衝撃吸収機能、前記浮体式洋上太陽光発電プラントの現在位置及び方位を測定するための現在位置及び方位測定機能、前記浮体式洋上太陽光発電プラントを所定の位置に停留させ、かつ所定の方位又は方向を保持させるための推進及び操舵機能、夜間又は潜水時に前記浮体式洋上太陽光発電プラントを前記推進及び操舵機能を用いて所定の位置及び方位又は方向に停留維持する非発電時停留維持機能、 前記セキュア通信により情報交換を行うセキュア通信機能、前記パネル筐体内に注排水する、及び前記所定の潜水水深に潜水させるための圧縮空気を生成し圧縮空気管及び前記圧縮空気管コネクタを介して他の太陽電池パネルの圧縮空気タンクに供給する圧縮空気生成機能、前記浮体式洋上太陽光発電プラントの周囲に自己の存在を周知するための灯又は電波又は音波の一部又は全てを用いて周知する浮体式灯台機能の少なくともいずれか一つを備えたことを特徴とする。
本発明の一態様に係るカーボンフリーエネルギ供給システムは、前記浮体式洋上太陽光発電プラントは、前記太陽電池パネルを所定の海域に輸送してきた運搬船から複数のクレーンで前記太陽電池パネルを洋上に下ろし、前記論理的階層ごとに、該論理的階層の構成要素である前記太陽電池パネル又は該論理的階層の下位層の太陽電池パネル群を、それぞれ該論理的階層に専用の一又は複数の搬送組立ロボットを用いて、前記太陽電池パネルに付された識別子と前記浮体式洋上太陽光発電プラントの構成情報をもとに、同時並行して組み立て、前記組み立てに当たっては、前記太陽電池パネル内に収納された圧縮空気タンクに予め充填された圧縮乾燥空気を前記連結器内に噴射することによって海水成分を払拭し、所定の隣接する前記太陽電池パネルと密着連結することによって建設され、前記搬送組立ロボットは、前記太陽電池パネルと前記浮体式洋上太陽光発電プラントに係る少なくとも建設過程、天候、海況、太陽電池パネル相互の位置関係、トラブルを含むセンサ情報及びカメラ情報からなる学習用データを収集し所定の報酬を最大化するようHPC(高性能計算処理能力)環境で機械学習して得られた学習済みデータが実装されることを特徴とする。
本発明の一態様に係るカーボンフリーエネルギ供給システムは、前記浮体式洋上太陽光発電プラントは、波浪や風浪などにより加わる衝撃力を分散・吸収するハニカム構造をなすよう相互に柔連結され、小集合部、中集合部及び大集合部により構成され、1基当り前記太陽電池パネルが100万枚設置され、前記小集合部は100枚の前記太陽電池パネルを直列接続し、前記中集合部は100基の前記小集合部を絶縁型直列接続し、前記大集合部は100基の前記中集合部を木構造並列接続又は並列接続して構成することを特徴とする。
本発明の一態様に係るカーボンフリーエネルギ供給システムは、前記浮体式洋上太陽光発電プラントは、発電した電力を海底ケーブルを介して前記第一のエネルギ変換装置に送電し、夜間又は潜水時の非発電時には前記第一のエネルギ変換装置又は前記エネルギ変換供給装置より前記海底ケーブルを介して給電されることを特徴とする。
本発明の一態様に係るカーボンフリーエネルギ供給システムは、前記浮体式洋上太陽光発電プラントは、前記パネル筐体内に注水用のタンク部と圧縮空気タンクを保持すると共に、潜水時に前記浮体式洋上太陽光発電プラントを所定の潜水水深に保つためのフローターを備え、潜水時には、前記タンク部に注水すると共に前記フローターに前記圧縮空気タンク内の圧縮空気を供給して前記フローターを海面上に浮上させることにより所定の潜水水深に前記浮体式洋上太陽光発電プラントを保ち、浮上時には、前記圧縮空気タンク内の圧縮空気を排出させて前記タンク部内の海水を排出させて海面上に浮上させるように構成されていることを特徴とする。
本発明の一態様に係るカーボンフリーエネルギ供給方法は、複数の太陽電池パネルのパネル筐体内への注排水による潜水及び浮上が可能な浮体式洋上太陽光発電プラントを含む一又は複数の発電プラントにより再生可能エネルギ資源を用いて発電するステップと、一又は複数の第一のエネルギ変換装置により、前記発電プラントにより発電された電力を安定化するステップと、一又は複数のエネルギ変換供給装置により、前記第一のエネルギ変換装置から出力された電力を、一又は複数の前記供給先施設それぞれに適したエネルギ形態に変換して供給するステップを備えたことを特徴とする。
本発明の一態様に係るカーボンフリーエネルギ供給方法は、一又は複数の第二のエネルギ変換装置により、前記第一のエネルギ変換装置から出力された電力を安定に貯蔵可能なエネルギキャリアに変換するステップと、一又は複数のエネルギキャリア貯蔵装置により、前記エネルギキャリアを所定の量を上限に貯蔵するステップと、前記エネルギ変換供給装置により、前記第一のエネルギ変換装置、前記第二のエネルギ変換装置、前記エネルギキャリア貯蔵装置の何れかから出力された又は取り出したエネルギを前記供給先施設それぞれに適したエネルギ形態に変換して供給するステップと、一又は複数の管理制御装置により、少なくとも前記発電プラント、前記第一のエネルギ変換装置、前記第二のエネルギ変換装置、前記エネルギキャリア貯蔵装置、前記エネルギ変換供給装置、前記供給先施設の一部又はすべてを管理し制御するステップとを備えたことを特徴とする。
本発明の一態様に係るカーボンフリーエネルギ供給方法は、前記浮体式洋上太陽光発電プラントにより発電された電力を海底ケーブルを介して前記第一のエネルギ変換装置に送電するステップと、夜間又は潜水時の非発電時には前記第一のエネルギ変換装置又は前記エネルギ変換供給装置より前記海底ケーブルを介して給電されるステップとを備えたことを特徴とする。
本発明の一態様に係るカーボンフリーエネルギ供給方法は、前記浮体式洋上太陽光発電プラントは、所定の年平均日照量以上の日射量が得られ、所定の水深以上の水深の海域に浮体する発電プラントであって、複数の多角形の前記太陽電池パネルにより、論理的階層をなすように連結するステップ、複数の平面視略正六角形をなす前記太陽電池パネルにより、平面視ハニカム構造を形成するよう連結するステップ、前記論理的階層間をそれぞれ異なる電力路コネクタを介して直列接続、又は絶縁型直列接続、又は並列接続、又は木構造並列接続することにより、所定の直流電力を発電するステップ、前記太陽電池パネルの前記パネル筐体内に注排水することにより、前記浮体式洋上太陽光発電プラントを所定の潜水水深に潜水させ、潜水状態の前記浮体式洋上太陽光発電プラントを浮上させる潜水及び浮上するステップ、隣接する前記太陽電池パネルの前記パネル筐体同士が少なくとも上下方向に互いに揺動可能な機械的連結器、前記電力路コネクタ、信号路コネクタ、圧縮空気管コネクタの一部又は全てを収容する連結器を前記太陽電池パネルの各辺又は一部に備え、隣接する前記太陽電池パネルと相互に連結することにより、前記浮体式洋上太陽光発電プラントを形成するステップ、自己又は隣接する前記太陽電池パネルに障害が発生したとき、迂回回路を形成するよう未使用の前記電力路コネクタ、前記信号路コネクタ、前記圧縮空気管コネクタの一部又は全てを介して他の前記太陽電池パネルに切り替え制御するステップ、前記太陽電池パネルの平面視頂点部の一部又は全てに弾性衝撃吸収部材を配置し、不意の衝撃を吸収するとともに、海面の揺らぎによる前記太陽電池パネルの乗り上げを防ぐよう衝撃吸収するステップ、前記浮体式洋上太陽光発電プラントの現在位置及び方位を測定するための現在位置及び方位を測定するステップ、前記浮体式洋上太陽光発電プラントを所定の位置に停留させ、かつ所定の方位又は方向を保持させるための推進及び操舵するステップ、夜間又は潜水時に前記浮体式洋上太陽光発電プラントを前記推進及び操舵機能を用いて所定の位置及び方位又は方向に停留維持するよう非発電時停留を維持するステップ、TCP/IPベースのパケット通信を行うための論理アドレスが割り当てられ、少なくともパケット送信元の真正性と送信内容の完全性とを受信側で検証するための検証コードが付されたセキュア通信により情報交換を行うステップ、前記パネル筐体内に注排水する、及び前記所定の潜水水深に潜水させるための圧縮空気を生成し圧縮空気管及び前記圧縮空気管コネクタを介して他の前記太陽電池パネルの圧縮空気タンクに供給する圧縮空気を生成するステップ、前記浮体式洋上太陽光発電プラントの周囲に浮体式灯台を設置し、自己の存在を周知するための灯又は電波又は音波の一部又は全てを用いて周知するステップの少なくともいずれか一つを備えたことを特徴とする。
本発明の一態様に係るカーボンフリーエネルギ供給システムは、COを排出しないものの出力電力が不安定で大量かつ長期間にわたって備蓄できない再エネを、国はもとより地球規模でのエネルギ総需要を賄うに足る量を発電し、エネルギキャリアに変換して例えば半年分を上限に備蓄し、供給先施設に適したエネルギ形態に変換し供給することによって、ほぼすべての一次エネルギをカーボンフリー化する。また、カーボンフリーエネルギ供給システムは、管理制御装置によるきめ細かな管理制御により、365日24時間稼働しエネルギ供給し続ける。
本発明の一態様に係るカーボンフリーエネルギ供給システムは、各構成要素(通信ノード)に対して論理(IP)アドレスを付与することによって、インターネットで広く用いられているTCP/IP技術や資源を利用でき、またパケット送信元の真正性(いわゆる「なりすまし」でないかを確認すること)と送信内容の統合性(「改ざん」がないかを確認すること。「完全性」ともいう)とを受信側で検証するための検証コードが付されたセキュア通信により、例えカーボンフリーエネルギ供給システムに対して不正アクセスなどがあっても侵入され、浮体式洋上プラントを強制的に潜水させるなどサイバーテロ攻撃を防ぐことができる。加えて、通信内容を暗号化すればカーボンフリーエネルギ供給システムの構成情報などを盗み見られないようにしてもよい。ただし、不正アクセスや不適切な制御情報が送られても発見し難くなる。
本発明の一態様に係るカーボンフリーエネルギ供給システムは、安定に貯蔵可能なエネルギキャリアとして、液体アンモニア、メチルシクロヘキサン、液体水素、及び高圧水素ガスを用いることができるが、これらは供給先施設の特性に応じて取捨選択できる。また、これらの中で体積エネルギ密度と質量エネルギ密度が高く、常温で大量かつ長期間にわたって備蓄が可能な液体アンモニア又はメチルシクロヘキサンは、例えば半年分を上限に備蓄することが可能であり、日ごとや季節、異常気象などにより発電電力が大きく変動する再エネを、エネルギ・インフラストラクチャとして利用することを可能にする。
本発明の一態様に係るカーボンフリーエネルギ供給システムは、供給先施設である既設の交流電力系統、送電効率が高いことから欧州などで急速に進んでいる高電圧直流電力系統(HVDC)、火力発電所などにおけるNH専焼発電機やNH混焼発電機、水素火力発電機、2035年の就航を目指している高純度の液体水素を燃料とする航空機が発着する空港に設けられた液体水素貯蔵タンク、大型自動車やバス、トラック向けの水素燃料電池車両に高純度の水素燃料を補給する水素ステーション、NH専焼エンジンで航行する船舶が発着する港湾に設けられたNH貯蔵タンク、全産業のCO排出量の40%を占めている鉄鋼業でコースの代わりに水素を用いた水素還元製鉄を行う高炉など、様々な供給先施設に再エネ由来エネルギを供給先施設それぞれに適したエネルギ形態に変換して効率よく低廉にそして安定に供給することによって、様々な産業でのカーボンフリー化を可能にする。
また、本発明の一態様に係るカーボンフリーエネルギ供給システムは、我が国では最も発電能力が高いと目される浮体式洋上太陽光発電を主体に、他の再エネ資源を用いた発電プラントとの併用により、再エネ資源の多様性を高め、再エネ資源を用いた発電電力の時間的変動性や季節的偏在性を平準化するとともに、エネルギキャリア関連装置(以下、エネルギ・キャリアシステムと呼ぶことがある)の利用効率を高め、エネルギキャリア貯蔵装置の貯蔵量の上限を下げることも可能になり、低廉なエネルギの安定供給を可能にする。
また、本発明の一態様に係る浮体式洋上太陽光発電プラントは、例えば日本であれば排他的経済水域(EEZ)の最南端に位置する沖ノ鳥島や南鳥島付近の海域の年平均日射量は、日本の国土の約1.5倍と多く、日本の一次エネルギ総需要量に相当する発電量を同島周辺のEEZの2%程度の面積で生産でき、しかも例えば±250kVの高電圧直流で海底ケーブル送電すれば送電損失を数%に抑えられることから、カーボンフリーなエネルギをすべて国産化できることになる。
これを南北緯度30度付近以内の赤道海域に国家やEEZ、公海などの枠を超えて展開すれば、世界の総エネルギ需要を未来永劫にわたってカーボンフリー化できることになり、地球温暖化抑止に大きく貢献できる。
また、太陽電池パネルを平面充填(一面に隙間なく並べること)をなすよう平面視略六角形又は平面視略四角形又は平面視略平行四辺形又は平面視略三角形の形状を採用することによって、太陽電池パネルを最も高密度に配置(最稠密配置)することができる。これにより、浮体式洋上太陽光発電プラントの上面すなわち太陽に面する側の面を、最大限、太陽電池パネルの受光面で構成することができる。従って、浮体式洋上太陽光発電プラントの構造上発電効率を最大限高めることができる。
そして、例えば論理的階層の下位層から順に直列接続、絶縁型直列接続そして木構造並列接続又は並列接続を行うことによって、過度の絶縁保護対策を行わずに洋上での高圧直流発電を可能にするとともに、例えば絶縁型直列接続に必要な変圧器をパネル筐体内に収容な容量(約300kVA、重量約1トン)に抑えることができる。さらに、木構造並列接続は、最大約6kAになる大集合部出力電流を海底ケーブルと海底ケーブルを収容する太陽電池パネルのみに限定できるため、太陽電池パネル間の電力路コネクタに流れる電流を減らし、連結器の構造をシンプルにする。
また、太陽電池パネルに障害が発生したとき、未使用の連結器又は電力路コネクタ介して他の太陽電池パネルに切り替える制御機能によって、迂回回路を自動的に形成し、浮体式洋上プラントの太陽光発電機能などを維持継続できる。
そして、50m程度以深の海域に浮体式洋上プラントを浮体させれば、例え東日本大震災クラスの巨大津波が襲来しても、その影響はわずかで、津波によって浮体式洋上プラントが破壊されることはない。
また、荒天時、パネル筐体内に注水して潜水させ、同時にフローターを圧縮空気で膨張させることによって所定の潜水水深(例えば、5~20m)に浮体式洋上プラントを保ち、嵐が去った後、パネル筐体内に圧縮空気を噴射して排水することによって浮体式洋上プラントを浮上させる潜水及び浮上機能は、巨大台風などの影響を微小に抑えることができる。
また、上下方向に揺動可能な機械的連結機能、太陽電池パネルの頂点部の衝撃吸収機能によって、強靭な浮体式洋上太陽光発電プラントを構成できる。
さらに、浮体式洋上プラントの現在位置及び方位測定機能、浮体式洋上プラントの外周にスクリュープロペラなどの推進及び操舵機能及び非発電時停留維持機能を装備することによって、海流や強風などで浮体式洋上プラントが流されることなく、昼夜及び天候を問わず所定の位置に停留させ、かつ所定の方位又は方向を保持できる。
そして、論理的階層構造に沿ってIPアドレスを付与することによって、パケットの転送処理(ルーティング)負荷を軽減し、100万枚の太陽電池パネルからなる浮体式洋上プラント内での効率の良いパケット通信環境を提供する。
本発明の一態様に係る浮体式洋上プラントにおける太陽電池パネルを平面視略正六角形とし、複数の太陽電池パネルを平面視ハニカム構造に連結することにより、波浪や大型海洋生物の衝突などによる不意の衝撃を受けても衝撃力を6方向に分散でき、加えて上下方向に揺動可能な機械的連結機能、太陽電池パネルの頂点部の衝撃吸収機能によって、極めて強靭な浮体式洋上太陽光発電プラントを構成できる。さらに正六角形の各辺に連結器を設けられるため、太陽電池パネルに障害が発生したとき、未使用の連結器又は電力路コネクタなどを介して他の太陽電池パネルに切り替える迂回回路を形成しやすくなり、浮体式洋上プラントの信頼性をより高めることができる。
また、本発明の一態様に係る浮体式洋上太陽光発電プラントは、洋上での建設時、合計100万枚の太陽電池パネルを1分に1枚の割合で浮体式洋上プラントに組み込む(連結する)と、浮体式洋上プラント1基の建設に2年間弱を要し、日本の一次エネルギ総需要を賄う963基の建設に1,800年余かかる。これを複数台の人工知能搭載搬送組立ロボットを用いて同時並行して組立てることによって、1基当たり90日間、963基の建設を9年間程度に短縮することができる。
さらに、洋上での組み立てにおいて細心の注意が必要なことは、±250kVの高電圧電力路を連結器内で連結する際に海水成分が浸潤し、浮体式洋上プラントの運用開始後、深刻な絶縁破壊を起こすことである。所定の海域に運搬し組込もうとする太陽電池パネルのパネル筐体内に設けられた圧縮空気タンクに予め圧縮乾燥空気を充填しておき、連結の際に連結器内を圧縮乾燥空気で海水成分を払拭し密着連結することによって連結器内での絶縁破壊を防止できる。
本発明の一態様に係るカーボンフリーエネルギ供給方法は、COを排出しないものの出力電力が不安定で大量かつ長期間にわたって備蓄できない再エネを、国はもとより地球規模でのエネルギ総需要を賄うに足る量を発電し、エネルギキャリアに変換して例えば半年分を上限に備蓄し、供給先施設に適したエネルギ形態に変換し供給することによって、ほぼすべての一次エネルギをカーボンフリー化する。また、カーボンフリーエネルギ供給システムは、管理制御装置によるきめ細かな管理制御により、365日24時間稼働しエネルギ供給し続ける。
本発明に係るカーボンフリーエネルギ供給システムの一実施形態の科学的根拠となる地球温暖化の電磁スペクトラムメカニズムを示し、(A)は太陽と地球の放射エネルギの波長分布を示す図、(B)は水蒸気ウインドウとCO2のエネルギ吸収波長帯域を示す図である。 本発明に係るカーボンフリーエネルギ供給システムの一実施形態の総エネルギ生産目標値の根拠を示し、(A)は世界の一次エネルギ消費量の推移を示す図、(B)は日本の一次エネルギ消費量の推移を示す図である。 本発明に係るカーボンフリーエネルギ供給システムの一実施形態の目標値と我が国の再生可能エネルギ導入ポテンシャル及びとグリーン成長戦略の目標値との対比を示す図である。 本発明に係るカーボンフリーエネルギ供給システムの一実施形態の日本及び世界を供給先として想定した場合における、浮体式洋上太陽光発電プラントの設置海域の年平均日射量分布を示す図である。 本発明に係るカーボンフリーエネルギ供給システムの一実施形態を示すシステム構成図である。 本発明に係るカーボンフリーエネルギ供給システムの一実施形態で用いるエネルギキャリアの種類とその特性を示す図である。 本発明に係る浮体式洋上太陽光発電プラントの一実施形態の日本を供給先として想定した場合における、設置に適した排他的経済水域を示す図である。 本発明に係る浮体式洋上太陽光発電プラントの一実施形態の設置に適した海域周辺諸島の年平均日照時間を示す図である。 本発明に係る浮体式洋上太陽光発電プラントの一実施形態の構成と性能諸元例を示す図である。 本発明に係る浮体式洋上太陽光発電プラントの一実施形態の要部太陽電池パネルを示し、(A)は要部太陽電池パネルの平面図、(B)は要部太陽電池パネルの断面図である。 本発明に係る浮体式洋上太陽光発電プラントの一実施形態の図6中の連結器を示し、(A)は連結状態の水平断面図、(B)は未連結状態の垂直断面図である。 本発明に係る浮体式洋上太陽光発電プラントの一実施形態を示し、(A)は浮体式洋上太陽光発電プラントの停留制御の説明図、(B)は浮体式洋上太陽光発電プラントの外周部に位置する太陽電池パネルの縦断面図である。 本発明に係る浮体式洋上太陽光発電プラントの一実施形態を示し、浮体式洋上太陽光発電プラントの潜水状態を示す縦断面図である。 本発明に係る浮体式洋上太陽光発電プラントの一実施形態の設置海域の水深の設定の根拠となる、水深と津波の高さ及び津波の伝搬速度との関係を示す図である。 本発明に係る浮体式洋上太陽光発電プラントの一実施形態を示し、浮体式洋上太陽光発電プラントの浮体式灯台の構造を示す縦断面図である。 本発明に係る浮体式洋上太陽光発電プラントの一実施形態を示し、浮体式洋上太陽光発電プラントの電力系の階層構造を示す階層構造図である。 本発明に係る浮体式洋上太陽光発電プラントの一実施形態を示し、浮体式洋上太陽光発電プラントの電力系の結線回路を示す結線回路図である。 本発明に係る浮体式洋上太陽光発電プラントの一実施形態を示し、浮体式洋上太陽光発電プラントの大集合部電力系の木構造並列接続を示す結線回路図である。 本発明に係る浮体式洋上太陽光発電プラントの一実施形態を示し、太陽電池パネル間の直直並列接続と障害パネルの迂回回路を示す概念図である。 本発明に係る浮体式洋上太陽光発電プラントの一実施形態を示し、太陽電池パネルにおける太陽光発電時及び太陽光非発電時の電流の流れを示す概念図である。 本発明に係る浮体式洋上太陽光発電プラントの一実施形態を示し、浮体式洋上太陽光発電プラントの通信系の論理的階層構造を示す階層構造図である。 本発明に係る浮体式洋上太陽光発電プラントの一実施形態を示し、浮体式洋上太陽光発電プラントを複数の搬送組立ロボットを用いた同時並行建設を示す図である。 本発明に係る浮体式洋上太陽光発電プラントの一実施形態の建設に要する工程別組立と総プラント建設見積時間を示す図である。 本発明に係るカーボンフリーエネルギ供給システムの一実施形態の機材コスト、建設・保守・運用等コスト、電力単価、規模の拡大による経済効果などの試算モデルを示す図である。 本発明に係るカーボンフリーエネルギ供給システムの一実施形態による再エネ発電量と電力単価の試算例を示す図である。
[発明の背景]
本発明は、産業革命後に人類が引き起こした地球温暖化という深刻かつ喫緊の課題に対する技術的解決手段を提示しようとするものである。このためには、本発明が科学的根拠はもとより気象や国際法、様々な産業など幅広い分野を踏まえてなされたものであることを、発明の一実施形態の例示に先立って説明する必要がある。以下に、地球温暖化の科学的根拠、地球のエネルギ収支と地球温暖化、世界と日本の一次エネルギの消費動向、一次エネルギの再エネ化の可能性と課題、さらに洋上太陽光発電のポテンシャルについて説明する。
[地球温暖化の科学的根拠]
IPCC(the Intergovernmental Panel on Climate Change)第5次評価報告書(2014年)によれば、1880年から2012年にかけて世界平均気温(平均地表温度)は0.85℃上昇したが、今後、温室効果ガス濃度がさらに上昇し続ければ、2100年には温室効果ガスが最も多くなる最悪の場合(RCP8.5シナリオ)では2.6~4.8℃上昇し、最も少なく抑えられた場合(RCP2.6シナリオ)でも0.3~1.7℃上昇する。
2015年にパリで開催したCOP21(21th Conference of the Parties to the United Nations Convention on Climate Change)で採択されたパリ協定では、世界平均気温の上昇幅を産業革命前より2℃未満に抑え、できれば1.5℃より低く抑える努力目標を各国に課すことになった。そして、2018年に開催されたIPCC COP24では、CO排出量を2030年までに45%削減し、2050年頃には世界の温暖化ガス総排出量をネットゼロを達成する必要があるなど、対策が急務であることが報告された。
Ebru Kirezciらの研究(Nature, Scientific Reports, 10, 11629, 2020)によれば、最悪シナリオ(RCP8.5)の場合、猛烈な暴風雨や高波、高潮などによる沿岸洪水の影響を受ける陸地面積は2100年までに2015年現在より48%増加し、人口の4.1%(2億8700万人)が被害を受け、世界のGDPの20%の資産(14.2兆米ドル)が失われる。さらに現在は100年に1回起きるような猛烈な豪雨や高波、高潮が10年に1回の頻度で発生するなど、沿岸地域に限っても甚大な被害をもたらすとしている。
また、Jorgen Randersらの研究(Nature, Scientific Reports, 10, 18456, 2020)によれば、温室効果ガスの排出を直ちにゼロにできたとしても、地球全体の気温は2500年までに産業革命前に比べ3℃上昇し、海面も3m上昇する。これは、既に放出したCOは数千年にわたって大気圏に留まり、北極域の氷や炭素を含んだ永久凍土の融解が続くためである。気温や水面の上昇を回避するには、1960~1970年にすべての人為起源の温室効果ガスの排出をゼロにしなければならなかった。
地球の生態系や人間社会への壊滅的な影響を抑えるには、温室効果ガスの排出ゼロに向けた取り組みと並行して、大気中からCOを毎年33Gトン(以下、33Gt-CO/年と表記)以上を回収し除去する必要があるとしている。
ところで、日常生活や企業活動で排出されるCOなどの温室効果ガスを削減するよう努力した上で、それでも排出してしまう温室効果ガスを植林などで吸収しようという考え方をカーボン・オフセットと呼び、排出量と吸収量が等しい状態をカーボン・ニュートラル(実質ゼロやネットゼロもほぼ同義)という。また、発電所や製鉄所、石油精製工場、セメント製造工場などで発生する排気ガス中の高濃度COをアルカリ性溶液などに吸収させて排ガスから分離回収し、タンカーやパイプラインで貯留地点に輸送して漏洩が少なく長期間安定貯留できる地層に圧入するCO回収・貯留(CCS)技術や、回収したCOを油田や天然ガス田に圧入して資源(天然ガス)を回収しようとするCO回収・有効利用・貯留(CCUS)技術の実証試験が世界各所で行われている。
しかしながら、前者の植林などでの吸収、すなわち世界の年間排出量32.8Gt-CO/年(2017年)規模を植林などで吸収するには、現在の地球の吸収量18Gt-CO/年規模の吸収能力を持つ広大な植林地を新たに確保する必要がある。一方、後者のCCSやCCUS技術では、COの分離回収・貯留に多大なコストとエネルギを要し、また貯留地層には限りがあることから、将来の持続可能なエネルギシステムへの橋渡しと位置付けられている。加えて上述の大気中から毎年33Gt-CO以上の回収除去を考え合わせると、例え大手企業などが省エネなどに全面的に協力してもカーボンニュートラルの実現は容易ではなく、パリ協定の目標達成に向けた技術に裏付けられた道筋は未だ明らかになっていないと言っても過言ではない。
これは、著名な科学雑誌の社説(Nature, Editorials, 592, 8, 2021)によっても裏付けられる。すなわち、2021年11月に開催されるCOP26国連気候変動会議に先立って、参加国202カ国のうち約124カ国が2050年までにネットゼロ達成を誓約したが、大事なのは目標達成の方法と信頼できる監視体制である。例えば世界中に設立された多くの炭素排出権取引所で商品として炭素排出権を売買することができる。排出量の多い国は、炭素排出権取引により大気中に放出する炭素の総量を実際には減らさなくてもネットゼロを達成したと主張できる。ネットゼロを実現する具体的な方法とその透明性を高めなければ、パリ協定の目標達成はあり得ない。
以上から、ほぼすべてのエネルギをCOを排出しないカーボンフリー化し、持続可能なエネルギシステムを作り上げることが地球温暖化抑制に大きく寄与することになる。このための具体化策は、
(1)ほぼすべての一次エネルギを代替し得る十分な量の再生可能エネルギを生産する。
(2)変動が大きい再エネ起源のエネルギを低廉で高品質かつ安定に供給先施設へ供給する仕組み(システム)を作る。
(3)大気圏に既に大量に滞留しているCOを計画的に回収し除去する。
の3点に集約され、直ちに実行に移されなければならない。
本発明は、(1)と(2)の具体的な実現手段を我が国への適用を例に提示するもので、(3)については(1)(2)によるカーボンフリー化によって自然界(森林や海洋)の吸収(18Gt-CO/年)が期待できるようになるが、さらに破壊された森林への植林や、例えば有機高分子膜などで大気中のCOを捕捉し安価かつ確実に除去する技術の早期実用化が期待される。
[地球のエネルギ収支と地球温暖化]
太陽は383YW(Yotta:1024)のエネルギを放射し、その10億分の1の174PW(Peta:1015)が地球に届き、大気や雲などにより30%は宇宙へ反射され、19%は大気や雲に吸収される。地表には51%の89PWが届き、陸地と海洋を暖める。大気圏内に到達した太陽エネルギは大気や水の循環(風や雨)を発生させ、植物の光合成などを通じて多くの生命活動と再エネの源になる。大気や地表を暖めたエネルギは熱などの形でしばらく大気圏内に留まるが、最終的には遠赤外線としてすべて宇宙へ再放射され、エネルギ収支は均衡する。化石燃料由来のCOやメタンなどの温室効果ガスが、地表から放射された遠赤外線の一部を吸収(RCP8.5では8.5W/m)することによって、エネルギ収支の均衡状態が変わり地球温暖化をもたらす。
これらを電磁スペクトラムの視点から見ると、絶対零度(-273.15℃)ではすべての原子または分子の熱振動が停止するが、これより温度の高い物質はすべて電磁スペクトルとしてエネルギを放射する。高温になるほど電磁スペクトルの波長は短くなり、逆に低温になるほど波長は長くなる。図1Aに示すように、表面温度が5500℃の太陽は、波長0.1μmから3μmまでの近紫外線、可視光線、近赤外線エネルギを放射する。一方、宇宙から実効温度-20℃に見える地球は、波長4μmから60μmの遠赤外線エネルギを放射する。
また、すべての大気ガスは、それぞれ固有の波長帯域でエネルギを吸収する。図1Bに示すように、自然界の温室効果ガスである水蒸気(図中HOで示す)は、広い波長帯域にわたって電磁スペクトラムを強力に吸収する。しかし、水蒸気ウィンドウと呼ばれる7.5μmから19.5μmの波長帯域(図中のwater vapor window)は透過性を有し、同帯域の遠赤外線エネルギを宇宙に逃がすことによって地球を放射冷却する。すなわち、水蒸気ウィンドウが地球のエネルギ収支の均衡状態を保つうえで重要な役割を担っている。
[世界と日本の一次エネルギの消費動向]
図2Aに示すように、世界の一次エネルギ消費量は経済成長とともに年平均2.5%で増加し続けている。特に2000年以降、アジア大洋州地域の新興国での伸びが著しく、先進国(OECD諸国)の世界のエネルギ消費量に占める割合は、1965年の70.5%から2018年には40.9%に低下している。一方、エネルギ種別で見ると、石油消費量は年平均2.5%で増加、石炭も年平均1.9%で増加、天然ガスも年平均3.3%で増加しており、2018年時点で一次エネルギ全体の84.7%を占めている。
残りの非化石エネルギでは、水力6.8%、原子力4.4%、そして再エネは4.0%と微小である。この状態が続けば温室効果ガスの濃度は上昇し続け、地球に壊滅的なダメージを与えることになる。
一方、我が国は図2Bに示すように、第一次/二次石油ショックや東日本大震災を契機に省エネ化が進み、2005年をピークにエネルギ消費は減少傾向にある。ただし、石油消費量は減ったものの、石炭や天然ガスが増え、いぜんとして化石エネルギへの依存度は2017年91.0%と、欧米諸国(米国81.9%、英国78.5%、独80.2%、仏国49.0%)に比べ圧倒的に高い。2020年12月に策定された「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」により、再エネを主力電力化しようとする動きがようやく見え始めたが、後述するように技術面でも海外に比べ周回遅れの状況にある。
以上から、日本では少子高齢化も相俟って今後エネルギ消費量は増えないことを前提に、図2Bに下矢印で示す2018年の一次エネルギ総供給量TPESj(Total Primary Energy Supply in Japan;20EJ/年=5.5PWh/年)を再エネ生産量の目標値として、以下に議論する。
[一次エネルギの再エネ化の可能性と課題]
環境省がゼロカーボンシティ実現や再エネ主力化促進を目的に2009年度から調査を始め2020年3月に発表した「我が国の再生可能エネルギ導入ポテンシャル」では、賦存量(現在の技術水準で利用可能なもの)、導入ポテンシャル(賦存量のうち、種々の制約要因により利用できないものを除いたエネルギ資源量)、及びシナリオ別導入可能量(事業採算性に係る買取価格を設定した場合に具現化が期待される発電量)を推計している。図3は同推計結果(抜粋)とグリーン成長戦略の目標値、及び上記目標値TPESjとの対比を示し、本発明に係るカーボンフリーエネルギ供給システムの一実施形態の総エネルギ生産目標値と、環境省と経済産業省が2020年に発表した「我が国の再生可能エネルギ導入ポテンシャル」と「グリーン成長戦略」の目標値との対比を示す図である。
導入ポテンシャルでは、太陽光と風力の合計発電量はTPESjを上回る7369TWh/年(TPESjの134%)もあるものの、Iの買取価格では計1015TWh/年(TPESjの18%)、IIでは1519TWh/年(同28%)、IIIでも2516TWh/年(同48%)に留まっている。そしてグリーン成長戦略で掲げる2040年の洋上風力発電の目標値は僅か139TWh/年(同2.5%)に過ぎない。しかも我が国の現在の産業用電気代約17円/kWhに対して、洋上風力は約2倍の固定買取価格が設定されている。日本の電気料金は欧米の2倍位高いと言われているが、図3のシナリオで風力発電を主力電源化すれば、日本の電気料金は欧米の4倍位になり、産業界の負担は深刻になり競争力を大きく損なうことになる。
これに対して、欧州の洋上風力発電では風況環境に恵まれ温暖化対策に積極的に取り組んだ結果、2019年時点で洋上風力で2851TWh発電しており、2030年までに19年の約8倍、2050年には25倍に拡張する予定で、既に6円/kWhを切る売電価格で落札された事例もある。
[洋上太陽光発電のポテンシャル]
図3では風力発電は陸上と洋上両方で発電量を推計していたが、太陽光発電については陸上のみである。推計方法が公開されていないため、洋上太陽光発電の導入ポテンシャルなどを同じ方法で推計できないが、以下に公開資料をもとに推計した。
図4は静止気象衛星が収集したデータを用いて1991年から1993年までの3年間の天候や昼夜の変化を含めた地球表面の年平均日射量分布地図である。なお、同図はグレースケールのため、図下部の日射量と色彩との対応関係並びに地球表面の年平均日照量分布を判別することは難しい。下記の引用元URLのカラー年平均日照量分布図を参照されたい。
https://www.ez2c.de/ml/solar_land_area/
確認のため、気象庁が公開している日射量データベース閲覧システムで南鳥島などの年平均全天日射量を検索したところ、ほぼ一致していた。同図によれば、南北緯度30°域付近内の海洋(以下、赤道海域と呼ぶ)及び陸地の大半は、年平均日射量が220W/m以上と高いことが分かる。同図内C1~C6の砂漠に付された黒円(●)は、太陽電池の変換率8%としてそれぞれ3TWの太陽光発電に必要な地表面積(Σ●=91万km)を表したもので、同図右下に記されている年平均18TWe(TWeの「e」は電気の意味)は年間160PWhのエネルギ生産を想定していることを意味する。
この発電量は、図2Aの100万石油換算トン(Mtoe)に換算すると14,000Mtoeとなり、同図下矢印で示す2018年の世界の一次エネルギ消費量(TPESw)に匹敵する。なお、砂漠は強い風によって土壌がとどまり難く岩石が露出し荒涼とした高温地域が多く、高温による性能劣化が著しい太陽光発電には適しておらず、上記分布地図の解説の中でも砂漠での太陽光発電を推奨している訳ではない。
一方、図4から日本国内(同図J)の年平均日射量は130~180W/mであるが、幸い我が国は世界に類を見ない広いEEZを持っており、北回帰線上右側寄りにXを附した楕円内の水域は220~260W/mと高い。
これは、同水域での洋上太陽光発電が高出力で無尽蔵のエネルギポテンシャルを持っていることを意味する。ちなみに、平均日射量240W/m、変換効率16%を想定すると、楕円X内の黒点(●)程度の面積(約2.7万km、周辺EEZの約2%)で洋上太陽光発電を行えば、TPESj相当量のカーボンフリーのエネルギを得ることができる。なお、EEZは、国連海洋法条約にて天然資源と自然エネルギに係る「主権的権利」及び人工島・施設の設置、環境保護・保全、海洋調査に係る「管轄権」を持つと規定されており、EEZ内で洋上太陽光発電を行っても何ら問題はないと考えられる。
さらに、同図において、赤道海域は上述の91万kmを収容する十分過ぎるほどのポテンシャル(海洋面積)があることから、国連海洋法条約などを改正し国家やEEZ、公海などの枠組みを越えて同海域で洋上太陽光発電を行えば、風力発電などとの併用により、今後も増え続けるであろう世界の一次エネルギ需要をすべてカーボンフリーの再エネで賄えることが容易に想像できる。
ちなみに、91万kmの赤道海域での太陽光発電量は、太陽電池モジュールの背面温度を海水温に保てることから砂漠での発電量の約2倍、すなわち2018年の世界一次エネルギ消費量の約2倍に相当し、今後もエネルギ消費量が年平均2.5%の割合で増加し続けても、2050年頃の一次エネルギ需要推定量(2TPESw)まで賄えることになる。それ以降も世界一次エネルギ消費量が増え続けても、十分な再エネ資源ポテンシャルはあるが、海洋を浮体式洋上プラントで覆う面積が巨大になるほど、日照不足になる海洋面積が広大になり、植物プランクトンの減少を招くことになる。これについては、後述の環境アセスメントを踏まえた実施形態の中で説明する。
以下、図面を参照し、本発明のカーボンフリーエネルギ供給システム、及び浮体式洋上太陽光発電プラントの実施形態について説明する。
カーボンフリーエネルギ供給システムの全体構成]
図5に例示するカーボンフリーエネルギ供給システム10は、一又は複数の浮体式洋上太陽光発電プラント100と、一又は複数の第1のエネルギ変換装置210と、一又は複数の第2のエネルギ変換装置220、一又は複数の第3のエネルギ変換装置230、一又は複数のエネルギキャリア貯蔵装置240のうちの一部又は全部と、一又は複数のエネルギ変換供給装置250とからなるエネルギ・キャリアシステム200と、一又は複数の海底ケーブル300と、一又は複数の洋上風力発電プラント等400と、供給先施設500を含むカーボンフリーエネルギ供給システム10を管理制御する一又は複数の管理制御装置700とから構成される。
カーボンフリーエネルギ供給システム10は、一又は複数の洋上風力発電プラント等400など、異なる再エネ資源を用いた一又は複数の発電プラントを併設してもよい。
そして、一又は複数のカーボンフリーエネルギ供給システム10によって、一定の地域、例えば一又は複数の国家さらには地球規模の一次エネルギの総需要を賄うに足る量のエネルギのほぼすべて、または一部を供給する規模を構成できる。
なお、カーボンフリーエネルギ供給システム10は、上記構成に限られるものではない。例えば、カーボンフリーエネルギ供給システム10が鉄鋼業や空港など特定の産業に特化してエネルギ供給する場合には、供給先施設500が第2のエネルギ変換装置220相当装置や、第3のエネルギ変換装置230相当装置、エネルギキャリア貯蔵装置240相当装置の何れか一又は複数を備えているときには、カーボンフリーエネルギ供給システム10は当該装置を省いて構成してもよい。
さらに、例えば供給先施設500が電力系統の場合、第1のエネルギ変換装置210とエネルギ変換供給装置250とを一体の装置として実装し、電力系統で電力動揺(発電所事故などによる停電や電圧低下,周波数低下など)が発生した時、交流電圧制御や有効電力制御、無効電力供給による電力動揺の抑制を行い大規模停電(ブラックアウト)を回避する自励式高圧変電装置として機能させてもよい。
一又は複数の浮体式洋上プラント100は、国又は一定の地域又は特定の産業で必要とされるエネルギ総需要のほぼすべて又は一部を再エネ資源により発電する規模を有して構成してもよい。
各浮体式洋上プラント100で発電された電力は、一又は複数の海底ケーブル300を介してそれぞれ第1のエネルギ変換装置210へ送電される。海底ケーブル300には、センサ情報や制御信号などのパケット通信を行うための光ファイバ及び当該光ファイバ内で減衰する信号を増幅するための増幅器に電力を供給するための小電力送電用ケーブルが含まれていてもよい。
この海底ケーブル300は、高圧直流海底送電ケーブルとして構成され、後述するようにケーブル長1000kmでの高圧直流送電の送電損失は3%程度に抑えることができる。このような性能を有することにより、例えば、後述する日本近海(北回帰線付近の日本のEEZ)に浮体式洋上プラント100を設置して海底ケーブル300を敷設し、日本国へ送電することが可能となる。
第1のエネルギ変換装置210は、複数の浮体式洋上プラント100から海底ケーブル300を介して送電された電力を安定化し、エネルギ変換供給装置250にて、供給先施設500の一つである直流電力系や交流電力系統へそれぞれの規格に合致するようエネルギ変換(変圧やDC/AC変換など)して供給するとともに、余剰電力を第2のエネルギ変換装置220へ送電してもよい。第1のエネルギ変換装置210の具体例として、リチウムイオン電池や鉛蓄電池の充放電により電力変動を安定化する所謂パワーコンディショナを挙げることができる。第1のエネルギ変換装置210のエネルギ変換効率は、95%程度が想定される。
第2のエネルギ変換装置220は、第1のエネルギ変換装置210から送電された電力を利用して水素を生成する。第2のエネルギ変換装置220により生成された水素は、第3のエネルギ変換装置230へ供給される。第2のエネルギ変換装置220の具体例として、直流電力で水や海水などを電気分解して水素を発生させる水素発生装置を挙げることができる。第2のエネルギ変換装置220のエネルギ変換効率は、80%程度が想定される。
第3のエネルギ変換装置230は、第2のエネルギ変換装置220により生成された水素を原料若しくは原料の一部に使用してエネルギキャリアを合成する。エネルギキャリアには、図6に示すように高圧水素ガス(H)や液体水素(LH)、液体アンモニア(NH)、メチルシクロヘキサン(MCH)などがある。長期間にわたる大量備蓄の視点からは、体積エネルギ密度と質量エネルギ密度が高く肥料の原料として長年の実績がある液体アンモニアが適しているが、供給先施設500の特性に応じて、常温常圧で貯蔵可能なMCHや高圧水素ガス、液体水素をエネルギキャリアとして用いてもよい。
第3のエネルギ変換装置230の具体例として、NH合成装置を挙げることができる。NH合成装置のエネルギ変換効率は、90%程度が想定される。図6は、本発明に係るカーボンフリーエネルギ供給システムの一実施形態で用いるエネルギキャリアの種類とその特性を示したものである。
エネルギキャリア貯蔵装置240は、第3のエネルギ変換装置230により合成されたエネルギキャリアを所定の量、例えば半年分程度を上限に貯蔵する。例えば、TPESjの半分をNHで貯蔵する場合は、凡そ694GL分の貯蔵タンクが必要になる。NHはLPG(Liquefied Petroleum Gas)と特性が似ており、LPG貯蔵タンクを改修すればNH貯蔵タンクに転用できる。2017年現在の国内のLPG貯蔵タンクの総容量は150万トン(2.7ML)と微量であるが、カーボンフリーエネルギ供給システム10の導入が進めば、いずれすべてのLNG貯蔵タンク(17GL)や原子力発電所、石油貯蔵タンク(81GL)、石炭集積場などが不要になり、これらの敷地をNH貯蔵タンクに転用すれば、相当量の設置スペースを確保できる。
次に浮体式洋上プラント100の導入フェーズで電力系統へ送電しながら、どの程度の割合でNHに変換しTPESj/2まで貯蔵すれば良いかについて述べる。導入開始から毎年等量dで再エネ発電量を増やし、発電量のα%をNHに変換・貯蔵し、n年後にTPESjの発電量に到達すると同時に備蓄量もTPESj/2に達するものとすると、等差級数の式から、
dn=TPESj
n(n+1)dα/2=TPESj/2=dn/2
が成り立ち、これより、
α=1/(n+1)
を得る。n=1のときα=50%、n=9のときα=10%となる。すなわち、建設開始から9年後に年間発電量がTPESj/2に到達し完成する建設計画の場合、建設期間中は日ごと及び季節の日照量の変動に対応しながら年間生産量(電力量)の10%をエネルギキャリアに変換し備蓄する。完成後は生産量と需要量は平衡状態になり、日ごと及び季節の変動に対応していくことになるが、エネルギ需要が生産量を上回る12月から2月はエネルギキャリア備蓄から需要家へ供給する量が増え、エネルギ生産量が需要量を上回る5月から10月は余剰電力をエネルギキャリアに変換し備蓄する量が増える。異常気象などにより需要と供給のバランスが崩れても、半年分程度の備蓄があれば貯蔵タンク間での融通により対応可能と思われるが、過去及び今後のエネルギ需要の統計データや運用開始後の運用実績データ、風力など他の再エネ資源を用いた再エネ発電の特性や全発電量に占める比率などをもとに適切なエネルギキャリア備蓄量を設定・更新していく必要がある。
エネルギキャリア貯蔵装置240に貯蔵されたエネルギキャリアは、電力系統などの供給先施設500での需要量と浮体式洋上プラント100による生産量との差分に基づいて(生産量が需要量よりも少ないときは、時刻や天候などの変化と、過去の電力需要や生産量データに基づく推定値または予測値に基づいて)取り出され、エネルギ変換供給装置250へパイプライン輸送される。
エネルギ変換供給装置250は、供給先施設500に適したエネルギ形態に変換してエネルギを供給する。
例えば、エネルギ変換供給装置250は、エネルギキャリア貯蔵装置240から取り出したエネルギキャリアを用いて所定の直流電力を発電し、供給先施設500の一つである直流電力系統(HVDC)に送電する。同様に、エネルギ変換供給装置250は、エネルギキャリア貯蔵装置240から取り出したエネルギキャリアを用いて所定の交流電力を発電し、供給先施設500の一つである交流電力系統に送電する。
これらのエネルギ変換供給装置250の具体例として、NH専焼発電機や、ガスタービンと蒸気タービンとを組み合わせ、NHをガスタービンの排熱で分解して水素を取り出し、水素専焼燃焼器で燃焼させることによって熱効率60%超で発電できるコンバインドサイクル発電機(GTCC)などが挙げられる。ちなみに、石炭や石油を燃料に使う最新の火力発電であっても熱効率は40%超、LNGでも50%超である。
また、第1のエネルギ変換装置210から出力された電力を直接エネルギ変換供給装置250に出力し、エネルギ変換供給装置250は所定の直流電力に変換のうえ、供給先施設500の一つである直流電力系統(HVDC)に送電してもよい。同様に、第1のエネルギ変換装置210から直接出力された電力を、エネルギ変換供給装置250は所定の交流電力に変換し、供給先施設500の一つである交流電力系統に送電してもよい。
供給先施設500の電力系統での需要電力より供給電力が上回るときは、その差分を第2のエネルギ変換装置220に出力するよう第1のエネルギ変換装置210に指示してもよい。逆に、需要電力より供給電力が下回るときは、上述したようにエネルギ変換供給装置250はエネルギキャリア貯蔵装置240からエネルギキャリアを取り出して所定の電力に変換(発電)して供給先施設500の電力系統へ供給してもよい。
また、第2のエネルギ変換装置220から出力された高純度の水素を、第3のエネルギ変換装置230でエネルギキャリアである液体水素(-253℃)に変換し、エネルギキャリア貯蔵装置240に貯蔵し、エネルギ変換供給装置250はエネルギキャリア貯蔵装置240から取り出したエネルギキャリア(液体水素)を所定の流量と流圧等に調整し、供給先施設500の一つである例えば液体水素を燃料とする航空機が発着する空港に設けられた液体水素貯蔵タンクに供給してもよい。
液体水素を燃料とする航空機の例として、例えば仏エアバス社が「ZEROe」コンセプトのもと2035年の就航を目指して開発を進めている改良型ガスタービンエンジンを動力源とするジェット旅客機タイプやターボプロップエンジンを動力源とするプロペラ機タイプ、燃料電池駆動の6発モータを動力源とするプロペラ機タイプなどが挙げられる。
液体水素は、同じ重量のジェット燃料に対して4倍のエネルギを取り出せるが、燃料を-253℃に保たなければならないため容器重量とスペースが増える。ただし、高度1万mは-55℃で飛行時間も12時間程度に限られるため、地上ほど冷却性能は要求されない。
また、第2のエネルギ変換装置220から出力された高純度の水素を、直接、エネルギ変換供給装置250に出力し、同装置は所定(-253℃に冷却)の液体水素に変換し、供給先施設500の一つである空港の液体水素貯蔵タンクに供給してもよい。
また、第2のエネルギ変換装置220から出力された高純度の水素を、エネルギ変換供給装置250は所定の圧力に加圧し、供給先施設500の一つである例えば水素ステーションの高圧水素貯蔵タンクにパイプライン輸送若しくはタンクローリ輸送してもよい。なお、今後、タウンカーなどの小型車は電気自動車(EV)が広く用いられるようになろうが、大型乗用車やトラックなどのディーゼル車は水素ガス燃料電池車(FCV)若しくは水素ガスエンジン車に置き換わっていくと目されている。ちなみに、トヨタのMIRAIに搭載の水素ガス燃料電池は、重さ32kgで174馬力を発生し、航続距離は850kmである。これを2台連結すると大型トラック用ディーゼルエンジンに匹敵する馬力を発揮し、3台連結すると大型トレーラーや高速バスなどにも対応でき、重量も1/3程度に軽量化できる。
また、第3のエネルギ変換装置230から出力されたエネルギキャリア(NH)を、エネルギ変換供給装置250は高圧水素ガスや液体水素、MCHなど異なるエネルギキャリアに変換して、供給先施設500に供給してもよい。
また、エネルギ変換供給装置250は、エネルギキャリア貯蔵装置240から取り出したエネルギキャリア(NH)を所定の水素ガスに変換し加圧して、供給先施設500の一つである例えば水素ステーションの高圧水素貯蔵タンクにパイプライン輸送若しくはタンクローリ輸送してもよい。
なお、上述の第2のエネルギ変換装置220から出力された高純度の水素を加圧して水素ステーションに供給する場合との違いは、エネルギキャリア貯蔵装置240からの方が水素ステーションに設置する高圧水素貯蔵タンクの容量を少なくできるが、水素燃料電池に適した高純度の水素ガスを精製する水素精製機能をエネルギ変換供給装置250に付加、又は水素ステーション側の高圧水素貯蔵タンクの前段に付加する必要があり、その分コストがかかる。
また、エネルギ変換供給装置250は、エネルギキャリア貯蔵装置240から取り出したエネルギキャリア(NH)を所定の液体水素に変換し、供給先施設500の一つである空港に設けられた液体水素貯蔵タンクに供給してもよい。なお、前述の第2のエネルギ変換装置220から出力された高純度の水素をエネルギ変換供給装置250で液体水素に変換して液体水素貯蔵タンクに供給する場合との違いは、エネルギキャリア貯蔵装置240からの方が空港に設置する液体水素貯蔵タンクの容量を少なくできるが、水素燃料電池に適した高純度の水素を精製する水素精製機能をエネルギ変換供給装置250に付加する必要があり、その分コストがかかる。
また、エネルギ変換供給装置250は、エネルギキャリア貯蔵装置240から取り出したエネルギキャリアを所定のエネルギキャリアに変換し、供給先施設500に供給してもよい。
また、エネルギ変換供給装置250は、エネルギキャリア貯蔵装置240から取り出したエネルギキャリア(NH)を所定の流量と流圧に調整し、供給先施設500の一つであるNH専焼エンジン船舶が発着する港湾に設けられたNH貯蔵タンクに供給してもよい。
次に、全産業におけるCO排出量の40%(2016年時点)を占めている鉄鋼業におけるゼロカーボンスチールへのカーボンフリーエネルギ供給システムの適用について説明する。鉄鋼業は自動車や産業機械など他の産業の基盤となる基幹産業である。製鉄では鉄鉱石(Fe)と燃料を兼ねた還元剤のコークス(C)を高炉に投入して、複数のプロセスを経て銑鉄が取り出される。これらをひとまとめにした反応式で表すと、
1/2・Fe2O3+C+1/4・O2→Fe+CO2
となり、分子量的に鉄と等量のプロセス由来のCOを排出する。
一方、ゼロカーボンスチールを目指す水素還元製鉄では、コークスの代わりに水素を用いて、
1/2・Fe2O3+3/2・H2→Fe+3/2・H2O
なる反応式にて、COを排出せずに銑鉄を取り出すことができる。しかしながら、水素の製造に必要な現在の産業用電力と石炭のkWh換算価格には約10倍(欧米並み電気代でも数倍)もの開きがあり、産業用電力を用いたゼロカーボンスチールは鉄鋼の高騰を招き、産業全体に大きな影響を与えかねない。現在のコークスの価格とCCS/CCUSコストの合計額程度で水素を供給できれば、鉄鋼業のカーボンフリー化も見えてくる。
その具体化策は、(a)交流電力系統と並行してHVDC直流系統が運用されていれば、直流電力を製鉄所に引き込み第2のエネルギ変換装置220で水素を生成し第3のエネルギ変換装置230でエネルギキャリアの一つである高圧水素ガスに変換(加圧)し、エネルギキャリア貯蔵装置240に備蓄して、エネルギキャリア貯蔵装置240から高圧水素ガスを取り出してエネルギ変換供給装置250で水素ガスの流量と流圧を調整し、供給先施設500の高炉に供給する。
(b)浮体式洋上プラント100からの海底ケーブル300を製鉄所で陸揚し、第1のエネルギ変換装置210と第2のエネルギ変換装置220で水素を生成し、第3のエネルギ変換装置230でエネルギキャリアの高圧水素ガスに変換し、エネルギキャリア貯蔵装置240に備蓄して、エネルギキャリア貯蔵装置240から高圧水素ガスを取り出してエネルギ変換供給装置250で水素ガスの流量と流圧を調整のうえ高炉に供給する。余剰電力が出たときは電力系統へ送電(売電)する。荒天が続き浮体式洋上プラント100からの電力供給量が不足し、製鉄所内のエネルギキャリア貯蔵装置240の備蓄量が一定量を下回ったときは、製鉄所外のNHエネルギキャリア貯蔵装置240からNHをパイプライン輸送させ、高炉の排熱を利用してNHを分解するエネルギ変換供給装置250で水素に変換してから高炉に供給する方法などが考えられる。
そして、水素を得るための水電気分解に必要な電力量の理論値は39.6Wh/g-H)であるが、(a)または(b)における第2のエネルギ変換装置220のエネルギ変換効率を80%とすると、国内銑鉄生産量77.4Mt-Fe(2018年)に必要な還元用水素は4.2Mt-H、還元用水素の生産に必要な電力量は208TWhとなる。これは後述する浮体式洋上プラント36.4基分の発電量に相当する。カーボンフリーエネルギ供給システムの国内外への導入により、直流電力単価が5円/kWhになると仮定すると、還元用水素の製造コストは1.04兆円となり、鉄鋼業界の市場規模16.3兆円(2018年)の約6.4%に相当する。ちなみに、77.4Mt-Feの生産に必要なコークスの輸入コストを約5,860億円(中国産コークス価格:約35,200円/t-coke)、COのCCSコストを約3,780億円(1Mt/年以上の場合、6,186円/t-CO)と仮定すると、合計約0.96兆円となり、還元用水素の製造コストとほぼ同額になる。
浮体式洋上プラント100、第1~第3のエネルギ変換装置210~230、エネルギキャリア貯蔵装置240、エネルギ変換供給装置250、海底ケーブル300、洋上風力発電プラント等400及び供給先施設500の一部又は全部は、一又は複数の管理制御装置700により管理及び制御される。管理制御装置700の詳細は後述する。
以上、カーボンフリーエネルギ供給システム10について、複数の実施形態について説明したが、これらに限定されるものではない。例えば、カーボンフリーエネルギ供給システム10における再エネ源は、図5に示した浮体式洋上太陽光発電プラント100や洋上風力発電プラント等400に加え、図示省略した陸上風力発電プラントや陸上太陽光発電プラント、地熱発電プラント、中小水力発電プラント、等も含まれる。
ここで「再エネ源」とは、太陽・地球物理学的・生物学的な源に由来し、利用する以上の速度で自然界に従って定常的もしくは反復的に補充されるエネルギ資源である。したがって、本発明のカーボンフリーエネルギ供給システム10のように、既成概念にとらわれることなく再エネ源の利用対象を拡大すれば、人類は未来永劫にわたってカーボンフリーのエネルギを無尽蔵かつ安価に、安定して利用することができる。さらに、再エネ資源利用の多様性を高めることは、再エネ由来の発電電力の時間的変動性や季節的偏在性を平準化し、エネルギ・キャリアシステム200の利用効率を高めるとともに、エネルギキャリア貯蔵装置240の貯蔵量の上限半年分(TPESj/2)を例えば4か月分(TPESj/3)に削減することも可能になり、より低廉な持続可能なエネルギの安定供給に繋がる。
また、カーボンフリーエネルギ供給システム10は、上記の各種発電プラントに加え、エネルギ変換装置210~230、エネルギキャリア貯蔵装置240、様々な機能を有し得るエネルギ変換供給装置250、あるいはエネルギ変換装置210とエネルギ変換供給装置250とを一体化した装置、そして液体アンモニアや高圧水素ガスなど複数のエネルギキャリアなどとの組み合わせは、無数に存在し、上記実施の形態には限定されない。供給先施設500の特性に応じて柔軟に組み合わせられる、すなわち選択幅が広いことは、すべての一次エネルギを代替しようとするカーボンフリーエネルギ供給システム10が有しなければならない特徴の一つでもある。
[浮体式洋上太陽光発電プラントの構成]
以下、本発明に係る浮体式洋上プラント100の一適用例として、本発明に係るカーボンフリーエネルギ供給システム10を、カーボンフリーエネルギの供給先を日本国を対象として設置することを想定して詳細に説明する。
この場合、本発明に係るカーボンフリーエネルギ供給システム10において目標となる「エネルギ総需要量」に関しては、前述の図2Bをもとに設定したTPESj(20EJ=5.5PW)を目標値とする。
また、上記目標値を達成するためには、浮体式洋上プラント100の設置場所と年平均日射量分布との関係が重要となるが、前述したように図4から日本国内Jの年平均日射量は130~180W/mであるのに対して、北回帰線付近の日本のEEZ(Xで示す楕円内)における年平均日射量は220~260W/mと高いことから、この海域に浮体式洋上プラント100を設置することにより、高出力の太陽光発電を行うことが可能となる。
図7は日本のEEZを示すもので、年間平均日射量が多い北緯30°以南に広大な海洋があり、保守基地の設置候補となる島も多数存在する。図8は、本発明に係る浮体式洋上太陽光発電プラントの一実施形態の日本を供給先として想定した場合における、設置に適した海域周辺諸島の年平均日照時間を示している。即ち、図8は気象庁が公開している気象データで、特に南鳥島は日照時間率が年間昼夜を通して32%と日本国土の平均より1.5倍位高い。気象データはないが、図4より沖の鳥島はより日照時間率が高いことが予想される。そして、沖ノ鳥島から大隅半島までの直線距離は1,293km、南鳥島から房総半島までは1,813kmあるが、海底ケーブルによる送電損失は4~5%程度と少ない。そして、この2島の200海里以内だけでも86万km余、水深は大半が200m以深で、TPESjの生産に必要な面積の31倍余がEEZ内にある。後述するように浮体式洋上プラント100に浮体式灯台136を設ければ、船舶の航行を妨げることなく安全性を確保できる。今後、周辺海域での気象や海象、漁業、航路などについて詳細な調査を行ったうえで再エネ海域利用法などを改正し、促進区域を選定する必要がある。
図9は、浮体式洋上プラント100の一実施形態の構成と性能諸元例を示したもので、浮体式洋上プラント1基当り太陽電池パネル100万枚をハニカム構造をなすよう柔連結することによって、波浪や風浪などにより複雑に加わる衝撃力を分散・吸収する。論理的三層構造をなし、小集合部は100枚の太陽電池パネルを直列接続し、中集合部は100基の小集合部を絶縁型直列接続し、さらに大集合部は100基の中集合部を木構造並列接続又は並列接続(以下、これらの接続関係を直直並列接続と呼ぶ)して、年平均発電電力652MW/基の浮体式洋上プラント100を構成する。
この発電能力は大型ガスタービン・コンバインドサイクル(GTCC)発電機1基分に相当する。浮体式洋上プラント100は28.1kmの面積を要し、年間5.71TWhの電力量を生産する。図9に示すように、浮体式洋上プラント100だけで全TPESjを賄うとすれば、963基が必要になり延べ面積約2.7万km(四国の約1.4倍)で我が国で必要なすべての一次エネルギ相当量を生産できる。これを陸側のエネルギ・キャリアシステム200に全長1.500km程度の海底ケーブルで送電するが、前述したように直流送電は静電容量損失や誘電体損失などがないため1,000km当りの送電損失は3%と極めて低い。
なお、図9では、240W/mを所定の年平均日射量以上の一つとして用いたが、事業として成り立てば、これより少ない年平均日射量であってもよい。例えば固定価格買取制度のもとでは、より少ない年平均日射量の洋上でも事業は成り立ち、またカーボンフリーエネルギ供給システム10の導入が世界各所に広がれば、後述の規模の経済効果によりシステムコストが下がり、より少ない年平均日射量の洋上でも事業採算は成り立つ。
[太陽電池モジュールの変換効率と発電量]
太陽電池は、シリコン系の単結晶/多結晶/アモルファス、化合物系、多接合型、量子ドット型など、様々な素材や形態が現在も研究開発されており、47%を超えるセル変換効率のものもある。太陽電池セルをモジュール化した変換効率は、配線スペースなどの確保のためセル変換効率より30%弱低くなる。産業用で広く用いられている多結晶シリコンの現在のセル変換効率は20%程度であるが、モジュールに組込むと変換効率は14.3%程度になる。また、変換効率は基準測定条件(25℃)での効率であり、出力温度係数(結晶系では-0.4%/℃)の割合でモジュール背面温度が高くなるほど出力は低下する。
前述の砂漠の変換効率8%は、多結晶シリコンを用い日照時の平均背面温度41℃を想定したことに相当する。これに対して、北回帰線付近の年平均海面水温は26.2℃程度であり、浮体式洋上プラント100における太陽電池モジュールの背面温度を海水温に保てば、変換効率の低下は年平均0.5%程度になる。
そして、太陽電池は変換効率の向上を目指して様々な研究開発が行われており、産業用太陽電池の変換効率は近い将来12%程度向上(セル変換効率22.4%)するものとして、図9に示すように、太陽電池モジュール変換効率μscを16%(モジュール温度25°)とした。
結晶系太陽電池モジュールの製品規格表示を定めたJIS C8918では、測定条件が同じになるよう基準状態(モジュール温度25℃、分光分布AM1.5、基準日射量Estd=1000W/m)を定め、同基準での公称最大出力Pmax(kW)やシステム容量Csys(kW)、年間発電量EEyr(kWh/m/日)を下式により算出することになっている。
Pmaxsc×Ap×Estd
Csys=Pmax×Np
EEyr=Vsys×Eavg×Lf×365days÷Estd
ここに、Apはパネル受光面積(m)、Npはパネル枚数、Estdは年平均日射量(kWh/m/日)、Lfは損失係数である。
また、モジュール温度25℃とは背面温度を25℃の状態で変換効率などを測定することを意味し、陸上では外気温より20~40℃高めになることがあるが、これによる損失は損失係数として計算する。AM1.5とは、太陽光がどれだけ大気を通過してきたかを表す数値で、AM1.5は太陽高度角42°に相当し国内の基準値になっている。基準日射量EstdはAM1.5のときの日射量を1000W/mとしている。ちなみに太陽高度角90°ではAM1.0、日射量は1100W/mになる。
ところで、全天日射量は太陽から直接地上に到達する光(直達日射)の水平面成分と太陽光が大気中の粒子などにより散乱・反射されて地上に届く光(散乱日射)との和であり、全天日射量は全天日射計を水平に設置して測定される。また、国内837地点について29年間(1981~2009年)の平均日射量を閲覧できるNEDO日射量データベース閲覧システムを用いて南鳥島の年平均全天日射量を検索すると、太陽電池を真南に向けて設置したときの年平均全天日射量は最大値234W/m、平均値216W/m、最小値210W/mで、図4の年平均全天日射量とほぼ一致する。そして太陽電池モジュールの平均最適傾斜角(月別最適傾斜角の平均)は20.6°、直達日射成分は約84%、散乱日射成分は約14%である。これより、南鳥島では太陽電池モジュールを真南に向けて傾斜角20.6°で設置すると平均日射量を4%程度高められる。
そして、より赤道に接近した沖ノ鳥島(気象庁の観測対象外)付近での年平均全天日射量Eavgは、図4から240W/m、最適傾斜角は15°と推定される。
また、上述の損失係数Lfは、太陽電池モジュールの温度上昇に伴う出力低下や所謂パワーコンディショナの変換損失、配線や回路での損失、太陽電池パネル受光面の汚れ、太陽電池の経年劣化などが要因になるが、太陽光発電協会の表示ガイドラインではおよそ0.7~0.8になると明示している。これに対して、浮体式洋上プラント100は温度上昇による出力低下が少ない(年平均損失3%程度)こと、清掃ロボットにより太陽電池パネルの受光面を頻繁に清掃(年平均損失1%程度)すること、太陽電池の経年劣化は20年間平均で3%程度見込まれること、海底ケーブル損失は5%程度見込まれることなどから、図9に示すように損失係数Lfは0.85とした。なお、所謂パワーコンディショナはエネルギ・キャリアシステム200内の第1のエネルギ変換装置210で行うため、浮体式洋上プラント100の損失係数の対象要因から除外している。
[太陽電池パネルの構造]
図5、図10A、図12A及び図19に示すように、浮体式洋上プラント100は、平面視略正六角形の複数の太陽電池パネル110を平面視ハニカム構造に連結することにより構成される。
各太陽電池パネル110は、各々浮体物として機能し、パネル筐体112内に注排水することにより所定の潜水水深に潜水・浮上可能である。
図10A及び図10Bに示すように、互いに隣接する太陽電池パネル110は、各片部の寸法Lは3m、幅寸法L1は5.2m、後述の弾性衝撃吸収部材111を介した幅寸法L2は5.7m、厚さ寸法L3は60cm、また、相互に隣接する太陽子電池パネル110との間隔寸法L4は50cmに形成されている。
図10Aに示す各太陽電池パネル110を構成する多数の太陽電池モジュールは、例えば奥行10cmに形成され、約15°の傾斜角で空中に向かうようにして、互いに隣接して配置されている。
また、太陽電池パネル110を構成するパネル筐体112には、面方向において多数の直交する梁材110cが構造材として配設されている。
互いに隣接する太陽電池パネル110は、各太陽電池パネル110の平面視頂点部110aに設けられた弾性衝撃吸収部材111を介して、弾力的に接触しており、太陽電池パネル110同士は相互に上下方向に互いに揺動可能に柔連結されている。
この場合、図10B中の矢印a、bは、互いに隣接する太陽電池パネル110が、海面の波浪等の影響により太陽電池パネル110が相互に揺らいだ場合の力を弾性衝撃吸収部材111がたわむことにより吸収する状態を示している。
図10Aに示すように、互いに隣接する太陽電池パネル110は、各太陽電池パネル110の平面視辺部に設けられた密着型自動連結器(「連結器」と称することもある)117を介して、パネル筐体112同士が機械的に連結されるとともに、パネル筐体112内の電気的要素同士が電気的に接続されている。
密着型自動連結器117は、浮体式洋上プラント100の周辺に配置される太陽電池パネル110Eを除く太陽電池パネル110の各片部にそれぞれ設けられており、太陽電池パネル110ごとに6個設けられ、平面全方位的に隣接する他の太陽電池パネル110と相互に柔連結されている。
図10Bに示すように、太陽電池パネル110のパネル筐体112の上部は反射防止幕のコーティングを施した強化ガラス112Gで覆われ、その下方に多数の太陽電池モジュール113が、傾斜角約15°で敷き詰められている。太陽電池モジュール113には、後述するように最大±2.6kVの対地(海面)電圧が加わる。ガラスは10kV/mm位の高い絶縁耐力を有するが、強化ガラス112G同士の接合部やパネル筐体112との接合部から塩分が浸潤し絶縁破壊を来さないよう、強化ガラス112Gと太陽電池モジュール113との間に透明の絶縁充填剤114を封入し、さらに背面には高熱伝導絶縁樹脂(図示省略)を配置し太陽電池モジュール113の背面温度を海水温に保つようにしてもよい。
パネル筐体112は、その内部に海水Wを注排水し得る構造になっている。パネル筐体112の下部には、圧縮空気を格納する圧縮空気タンク115と、制御回路(図示省略)を収容した回路ボックス116が設けられている。
回路ボックス116内の制御回路は、太陽電池モジュール113で発電した電力を隣接する太陽電池パネル110に送る制御、夜間など発電していないときに浮体式洋上プラント100を維持するために陸側から送電される電力を取り込み隣接する太陽電池パネル110に送る制御、密着型自動連結器117の制御、隣接する太陽電池パネルに障害が発生した場合に他の隣接する太陽電池パネルの電力回路連結器に接続を切り替える制御、後述する浮体式洋上プラント100を管理制御する管理制御装置710との管理制御コマンドのやり取りを行う。
パネル筐体112の下部の、圧縮空気タンク115及び回路ボックス116以外の空間は海水Wを溜めるタンクとして機能する。そして、波浪などによる太陽電池パネル110の傾きによって海水Wが傾斜方向に移動して浮体式洋上プラント100全体のバランスが崩れないよう、パネル筐体112の下部に例えば複数の小穴の開いた間仕切りや開閉式の間仕切りを設ければ、海水Wの移動を抑制できる。
図11A及び図11Bに示すように、密着型自動連結器117は、第1連結体117Aと第2連結体117Bとにより構成される。第1連結体117A及び第2連結体117Bは、同形同寸の筐体118A、118Bを有し、筐体118A、118Bの基端部には太陽電池パネル110と揺動可能に柔連結される自在継手部119A、119Bが設けられており、先端部には、カバー及びパッキンとして機能するシール部材120A、120Bが設けられている。
図11Bに示すように、筐体118A、118Bの内部には、連結ボルト121A、121Bと連結ナット122A、122Bとが、接合方向において幅方向に互い違いになるように、すなわち両筐体118A、118Bの先端部同士を対向させたときに、第1連結体117A側の連結ボルト121Aと第2連結体117B側の連結ナット122Bとが対向するとともに、第2連結体117B側の連結ボルト121Bと第1連結体117A側の連結ナット122Aとが対向するように配置されている。
筐体118A、118Bの内部には、連結ボルト121A、121Bを正逆回転駆動するための駆動機構123A、123Bが設けられており、筐体118A、118Bの先端部同士を突き合わせ、駆動機構123A、123Bにより連結ボルト121A、121Bを正回転させることにより、連結ボルト121A、121Bが連結ナット122A、122Bと螺着締結するように構成されている。これにより、第1連結体117Aと第2連結体117Bとが密着自動連結される。
後述する搬送組立ロボット600によって太陽電池パネル110A、110Bは、例えば海面上1.5m位に持ち上げられた状態で連結作業が行われるが、密着型自動連結器117Aと117Bのシール部材120Aと120Bは、連結直前まで密着型自動連結器117Aと117Bに海水成分が浸潤しないように覆っており、連結の際にカメラのシャッターが開放するように開く(図示省略)と同時に、搬送組立ロボット600によって新たに搬送されてきた太陽電池パネル110Bの圧縮空気タンク115Bに予め充填されていた乾燥圧縮空気が圧縮空気噴射ノズル128Bから噴射され、電力路コネクタ126A、126B及び信号路コネクタ125A、125Bを含む密着型自動連結器117内に塩分が付着残留しないよう海水成分を払拭しながらシール部材120A、120Bを密着させ連結する。この連結作業によって、最大±250kVの直流高圧電流が流れる電力路コネクタ126A、126B及び密着型自動連結器117内での絶縁破壊を防止する。
また、太陽電池パネル110に障害が発生し該太陽電池パネル110Fを取り外すときは、駆動機構123A、123Bが連結ボルト121A、121Bを逆回転させることにより、第1連結体117Aと第2連結体117Bとの連結が自動解除され、同時にシール部材120A、120Bは密閉され、密着型自動連結器117A、11B内には海水成分が浸潤するのを防ぐ。駆動機構123A、123Bの制御は、回路ボックス116内の制御回路が行う。
図11Aに示すように、筐体118A、118Bの内部には、多機能コネクタ124A、124Bが設けられている。両多機能コネクタ124A、124Bは、連結ボルト121A、121Bと連結ナット122A、122Bとが螺着締結することに伴って互いに連結されるように構成されている。
多機能コネクタ124A、124Bは、通信路コネクタ125A、125B、電力路コネクタ126A、126B及び圧縮空気管コネクタ127A、127Bを備えており、連結ボルト121A、121Bと連結ナット122A、122Bとが螺着締結することに伴って、第1連結体117A側の通信路コネクタ125Aと第2連結体117B側の通信路コネクタ125Bとが互いに接続されるとともに、第1連結体117A側の電力路コネクタ126Aと第2連結体117B側の電力路コネクタ126Bとが互いに接続され、同時に、第1連結体117A側の圧縮空気管コネクタ127Aと第2連結体117B側の圧縮空気管コネクタ127Bとが互いに連結されるように構成されている。
図11Bに示すように、筐体118A、118Bからは、それぞれダクト129A、129Bが延設されている。第1連結体117Aのダクト129Aは、第1連結体117Aの自在継手部119Aが連結された太陽電池パネル110Aに接続されている。第2連結体117Bのダクト129Bは、第2連結体117Bの自在継手部119Bが連結された太陽電池パネル110Bに接続されている。
自在継手部119A、119Bを設けることにより、個別の太陽電池パネル110相互の柔連結を可能とし、その結果、特に、波浪、風雨等による上下方向における応力を有効に逃がすことができる。
第1連結体117Aの多機能コネクタ124Aの通信路コネクタ125A、電力路コネクタ126A及び圧縮空気管コネクタ127Aは、第1連結体117Aのダクト129Aを通して、第1連結体117Aの自在継手部119Aが連結された太陽電池パネル110A内の通信路、電力路及び空気管路に接続されている。
第2連結体117Bの多機能コネクタ124Bの通信路コネクタ125B、電力路コネクタ126B及び圧縮空気管コネクタ127Bは、第2連結体117Bのダクト129Bを通して、第2連結体117Bの自在継手部119Bが連結された太陽電池パネル110B内の通信路、電力路及び空気管路に接続若しくは連結されている。
多機能コネクタ124A、124Bの電力路コネクタ126A、126Bは、互いに隣接する太陽電池パネル110の電力路同士を電気的に接続するための電力路の一部を構成する。多機能コネクタ124A、124Bには、図19において後述するように、隣接する太陽電池パネル110に障害が発生した場合に、他の隣接する太陽電池パネル110の電力路に接続を切り替える等の制御を行う制御回路(図示省略)が設けられている。
多機能コネクタ124A、124Bの通信路連結器125A、125Bは、互いに隣接する太陽電池パネル110の通信路同士をパケット通信可能に接続するための通信路の一部を構成し、各種センサへの電気的接続や、制御情報の通信に使用される。
また、多機能コネクタ124A、124Bの圧縮空気管コネクタ127A、127Bは、隣接する電池パネルと連結し、浮体式洋上プラントの運用が開始した後は、太陽電池パネル110のパネル筐体112内から海水Wを排出すると共に、フローター135を膨張させるための圧縮空気を供給する圧縮空気供給路134とも繋がっている。
また、荒天時には、パネル筐体112内へ注水することにより海面下へ潜水するが、浮上する際には圧縮空気タンク115の圧縮空気を使用してパネル筐体112内から海水を排出する必要があり、その圧縮空気タンク115の空気を補充するためにも使用される。
なお、圧縮空気は圧縮空気生成装置(図示省略)を備えた一又は複数の太陽電池パネル110Pよって生成され、圧縮空気管及び圧縮空気管コネクタ127A、127Bを介して各太陽電池パネル110の圧縮空気タンク115に随時補充される。
また、最大±250kVが印加させられる電力路や電力路コネクタ126A、126Bなどは、塩分等による漏電は致命的であることから、例えば60kV/mm以上の絶縁耐力を有するテフロン(登録商標)絶縁膜などの高度な絶縁耐力を有する絶縁体により被覆することが必要となる。
また、本実施の形態に係る浮体式洋上プラント100が海面上に設置された場合には、海流、波浪、台風を含む強風の環境下に置かれることから、浮体式洋上プラント100に作用する引張、圧縮、衝撃力は非常に大きいものと想定されるが、上記のように個々の太陽電池パネル110としても、また全体(後述の「大集合部」)としても平面視六角形状のハニカム構造を構成することから、外部から加わる応力を6方向に分散することが可能となるため、例えば、鉄道車両に装着される「車両連結器」の場合とは異なり、車両を牽引する大きな力の伝達は不要であることから、「車両連結器」に比して構成は簡易なものとなっている。なお、図11A中、符号135は後述のフローターである。
[浮体式洋上プラントの停留]
図12A及び図12Bに示すように、浮体式洋上プラント100の外周部に配置される太陽電池パネル110Eには、推進装置131及び舵装置132が設けられている。すなわち、日本沿岸を定常的に流れる海流である「黒潮」は最高流速7m/秒であり、浮体式洋上プラント100が日本沿岸の海域に設置された場合には「黒潮」の流速や台風など強風の影響を受ける。従って、浮体式洋上プラント100を停留させるためには、このような海流の流速や強風に対向して相殺できる推力を発生させることが必要となる。
このような観点から、本実施の形態に係る浮体式洋上プラント100は、推進装置131により海流に抗し得る推力を得ることが可能であり、その結果、推進装置131及び舵装置132は、潮流、海流、風浪による海面方向に作用する力の影響に抗して浮体式洋上プラント100を所定の位置及び方向に停留させるよう群制御されるように構成されている。
推進装置131としては、本実施の形態にあっては、スクリュープロペラが採用されているが。ウォータージェット方式を採用してもよい。ただし、低速ではスクリュープロペラの方が、ウォータージェットよりもより大きな推力を得ることができる。
例えば、浮体式洋上プラント100全体の制御を司る太陽電池パネル110が他の太陽電池パネル110から送られてきたセンサ情報(海流の流速や流向、風力や風向情報、後述の全地球衛星測位システム(GPS)受信機等143(図15参照)による位置情報、傾斜/揺れ/衝撃情報、水深情報、監視カメラ情報、気温/海水温/海水タンク内温度/太陽電池モジュール背面温度情報など)から浮体式洋上プラント100全体の群制御情報を生成し、推力を発生させる役割を担う太陽電池パネル110E宛に同情報を送信する。
密着型自動連結器117を介して受信した群制御情報に基づいて、それらの太陽電池パネル110Eそれぞれが推進装置131及び舵装置132を駆動し、所定の方向に推力を発生させることにより、潮流、海流、風浪による力に対向する推力を発生させて浮体式洋上プラント100を所定の位置に停留させ、かつ所定の方位又は方向を保持させるものである。なお、所定の方位又は方向に保持させるとは、太陽モジュールの傾斜面が南方向(浮体式洋上プラント100を南半球側に設置した場合は北方向)に向くよう方位制御すること、又は太陽モジュールの傾斜面が太陽光の照射方向に向くよう追尾制御することを意味する。
この場合、図12Aでは、図中左上から右下に向かう潮流や風による力f1に対し、浮体式洋上プラント100の主に左部及び上部外周に配置された複数の太陽電池パネル110Eが、それぞれ推進装置131及び舵装置132を駆動させることにより、それぞれ力f1に相当する推力f2(図中、黒色矢印で示す)を発生させ、浮体式洋上プラント100全体として、潮流や風による力f1に対抗しうる推力Fを発生させることにより、浮体式洋上プラント100を所定の位置に停留させ、かつ所定の方位又は方向を保持させている状態を示す。
図12A中の白抜き矢印が出ている太陽電池パネル110Eは、推進装置131及び舵装置132を駆動していない太陽電池パネル110Eである。
また、図12Aに示すように、浮体式洋上プラント100全体が平面視六角形状に形成されていることから、全体としてハニカム構造を形成しており、推進装置131による推力が発生した場合であっても、推力は浮体式洋上プラント100に分散され、浮体式洋上プラント100の一部に推力が集中して、相互に連結された太陽電池パネル110により構成された浮体式洋上プラント100が崩壊することはない。
なお、図12Aは、浮体式洋上プラント100の外周部に太陽電池パネル110Eを配置する一実施形態を示したもので、100万枚からなる浮体式洋上プラント100の内側の太陽電池パネル110に推進装置131及び舵装置132を設けてもよい。さらに、図12Aでは浮体式洋上プラント100を牽引する方向に推力f2を作用させているが、船舶のように後方から前方へ押す方向に推力f2を作用させてもよい。
[浮体式洋上プラントの荒天時及び津波対策]
台風などの風域で発達する波は、波が重なり合い、沖合では波の峰線を識別できない不規則性を呈し、風域から遠く離れた海域には波長の長い「うねり」が突然襲来する。これらの風の力によって発生する波を波浪と呼び、周期は数秒から10数秒、波長は数10m~数100m、20mの波高になることもある。波のエネルギは波高の2乗に比例するが、波長の1/2の水深では波のエネルギは4%程度に減衰し影響を受けなくなる。
前述したように、太陽電池パネル110は隣接する太陽電池パネル110と相互に柔連結され固定点がないため、波の波長が太陽電池パネル110の長さの2倍のとき、上下方向の揺動は波と共振し、共振が続けば破損する恐れがある。しかし、上述の一実施形態における太陽電池パネル110の長さは5.2~6m、すなわち波浪の波長は太陽電池パネル110の長さの数倍から数10倍長いため共振することはなく、浮体式洋上プラント100は波浪によって数秒から10数秒の周期で上下に揺動する。
しかしながら、巨大台風時には波高や周期、波向が不規則な波も発生するため、波高20m位の砕波状の大波が浮体式洋上プラント100を襲う恐れがある。また、強風に煽られて浮体式洋上プラント100の外周部の一部が反転する恐れもある。これらによる破損を防ぐには、海岸・沿岸環境研究の第一人者の東京大学佐藤愼司名誉教授によれば、最大波高20m相当の水深dに潜水させれば安全であると推測される。ただし、浮体式洋上プラント100の構造とその強度によっては、より浅い潜水水深でも破損を回避できる。巨大台風に遭遇しても破損しない安全潜水水深dは、浮体式洋上プラント100や太陽電池パネル110の構造設計(ハニカム構造など)と大型風洞実験設備を備えた導波水槽実験や実海域での巨大台風下での実測データから導出されるが、本発明では、安全潜水水深d=5~20mを所定の潜水水深とする。
具体的には、図13に示すように、浮体式洋上プラント100は、ほぼすべての太陽電池パネル110のパネル筐体112内に海水Wを注水することにより所定の潜水水深dに潜水可能に構成されている。すなわち、図11A及び図15に示すように、潜水時に太陽電池パネル110の水深dを一定に保つためのフローター135が、ロープ137を介して密着型自動連結器117内のロープ巻取機(図示省略)に繋がれて密着型自動連結器117に装備されている。
従って、海面下dに浮体式洋上プラント100を停止させるために、注水量の制御と共にフローター135が使用されるものである。本実施の形態にあっては、ロープ137の最大長さ寸法は、海面下dに浮体式洋上プラント100を停止させるように形成されている。
従って、潜水時に各太陽電池パネル110に注水が開始され潜水を行う際には、フローター135には圧縮空気供給路134より圧縮空気が注入され、同時にロープ巻取機のロックが外され、図13に示すように、フローター135が海面Sに浮上し、浮体式洋上プラント100を所定の潜水水深dに維持するものである。
浮体式洋上プラント100を浮上させるときは、上記と逆の動作が行われる。すなわち、太陽電池パネル110のパネル筐体112内に圧縮空気を注入して海水Wを排水するとともに、ロープ137を巻き取ってフローター135を密着型自動連結器117内に収容する。
なお、フローター135は、必ずしもすべての太陽電池パネル110に装備する必要はなく、ロープ137同士が絡まないよう安全潜水水深dに応じて複数枚おきに装備してもよい。また、ロープ137に弾性ロープを用いることによって、波浪の激しい動揺を吸収するようにしてもよい。
一方、津波研究の第一人者の東北大学今村文彦教授によれば、津波には2つの速度がある。一つは、図14に示す津波の伝搬速度で水深の平方根に比例する。巨大津波では、水深5,000mで800km/hに、水深10mで36km/hになる。これは水粒子の運動速度ではなく物体に力を与えるものではない。もう一つは水粒子速度で,エネルギは波高の2乗に比例する。水深5,000mでは波高は1m程度で浮体物への負荷は微々たるものである。しかし、水深10mでは9mの高さに、さらに陸地には10mを超える津波が押し寄せ甚大な被害を与える。津波の高さが水深程度になると波が砕けはじめるが、これより十分深い沖(50m以深)であれば、海面は数10分の周期で、数kmから数百kmの波長で上下動を繰り返すが、浮体物にはさしたる力は加わらない。
したがって、我が国のように地震による巨大津波の襲来の恐れがある海域では、浮体式洋上プラント100を水深50m以深の海域に設置すれば、巨大津波の被害を防ぐことができる。過去に巨大津波の襲来記録がない海域では、50m以浅に設置してもよい。
[浮体式洋上プラントの浮体式灯台]
浮体式洋上プラント100の近傍を航行する船舶に対して、その存在を周知することは航行の安全を保障し、船舶の衝突による浮体式洋上プラント100の損壊防止のうえでも重要である。浮体式洋上プラント100の周辺部近くの複数箇所(図示省略)に、図15に示す太陽電池パネル110Tの中央部付近にドーナッツ状の浮体式灯台用開口部142を設け、浮体式灯台136を設ける。浮体式洋上プラント100の浮上時か潜水時かによらず灯部136Aの海面からの高さhは一定になる構造(瓶に水を1/3ほど入れて水に浮かべた状態)に、浮力を有する円筒体136Cと重り136D、ポール136B、灯部136A及びGPS受信機等143が構成されている。灯部136Aは、常時、浮体式洋上プラント100の識別子及び現在位置を含む所定のコードで変調した電波を送信し、夜間は図のようにLEDを所定のコードで変調し発光するようにしてもよい。また船舶などが接近したときは、衝突回避動作を行うよう警報を発するようにしてもよい。なお、灯部136Aの高さh=10m程度あれば、見通し距離は12km、面接にして450kmあり、浮体式洋上プラント100の一辺の長さ5km、面積26kmに対して十分なカバレッジである。
なお、浮体式洋上プラント100の周辺部近くに複数箇所設置した浮体式灯台136の頂上部それぞれにGPS受信機等143を設け、その出力データを統計処理することによって、例え浮体式洋上プラント100が強風に晒されていても、昼夜・荒天・潜水時を問わず現在位置と方位を正確に測定することができる。この測定データを前述の推進装置131及び舵装置132にフィードバックすることによって、浮体式洋上プラント100を所定の位置と方位に保つことが可能になる。
[浮体式洋上プラントの電力系の階層構造]
浮体式洋上プラント100の電力系の階層構造を図16~図19を用いて説明する。図16は、太陽電池パネル110から小集合部SC、中集合部MC、大集合部LC及びエネルギ・キャリアシステム200に至るまでの論理的階層構造の一実施形態を表したもので、各階層での最大電圧、最大電流及び最大出力電力を示している(図9参照)。図17は、浮体式洋上プラント100の具体的な結線回路を示したものである。図18は、中集合部MCを2階層10分岐で木構造並列接続した大集合部LCの一実施形態を表したものである。さらに、図19は、図17の結線回路をハニカム構造をなす太陽電池パネル間の電力路で表したもので、各連結器117には原則1回路分の電力路コネクタ126を搭載すれば、図17の結線が可能なことを示している。
図16に示すように、浮体式洋上プラント100は、100枚の太陽電池パネル110が電気的に直列接続された小集合部SCと、100基の小集合部SCが電気的に双方向絶縁型直列接続された中集合部MCと、100基の中集合部MCが電気的に並列接続された大集合部LCとにより構成されている。なお、双方向絶縁型の「双方向」は太陽光発電時は発電した電力を陸側のエネルギ・キャリアシステム200に送電する場合と、夜間などの非発電時はエネルギ・キャリアシステム200から送電された電力を取り込む場合の両方向の電流に対応できることを意味する。「絶縁型」は小集合部SCと中集合部MSとが電気的に絶縁していること、具体的には中集合部MCの最大電圧は±250kVになるが、小集合部SCは最大電圧±2.6kV、すなわち太陽電池モジュール113には最大電圧±2.6kVになるが、±250kVは印加されないことを意味する。
図16及び図17には、太陽電池パネル110、小集合部SC、中集合部MC及び大集合部LCからなる階層構造により、過度な絶縁保護を施すことなく太陽電池パネル110を直直並列接続したときの最大電圧や最大電流などが示されている。
太陽電池パネル110を構成する多数の太陽電池モジュール113は、対地(海面)に対して絶縁し、小集合部SC内での直列接続と中間電位点の接地(アース)155SCによって、最大電圧を±2.6kVに抑える。小集合部SC内では、最大電流61Aはすべての太陽電池パネル110に流れるが、太陽電池パネル110内では電流は多数の太陽電池モジュール113に分散されるため、一つの太陽電池モジュール113に最大電流61Aが流れることはない。
中集合部MCでは、小集合部SCの出力を小集合部SC内の直列接続とは異なる電力路コネクタ126を用いて双方向絶縁型DC-DC変換器141(図17参照)を搭載した太陽電池パネル110D(図19参照)を介して絶縁型直列接続し、最大電圧は±250kVに昇圧するが、電流は61Aで変わらない。双方向絶縁型DC-DC変換器141は、直流を交流に変換(DC/AC変換)してから絶縁型変圧器により小集合部SCと中集合部MCとを絶縁し、直流に戻す(AC/DC変換)もので、変換効率は96%程度である。絶縁型変圧器の容量は5.2kV×61A=320kVAで、重量は1トン程度である。パネル筐体112の最大浮力は約10トンあり、寸法的にもパネル筐体112内に収容可能である。中集合部MC内の電力路コネクタ126は、小集合部SCとは別の高耐圧の絶縁対策を施す。
そして、大集合部LCの出力は、100基の中集合部MCを並列接続するため、最大出力電圧は中集合部MCと同じ±250kVであるが、最大出力電流は100倍の6.1kAに増える。
ところで、直流2線式電線の電圧降下は、JIS C 3001標準軟銅(導電率97%)の導体抵抗を17.8Ω・mm/kmとすると、次式で算出できる。
E=(35.6×L×I)/(1000×S)
ここに、Eは2線間の電圧降下(V)、Lは電線の長さ(m)、Iは電流(A)、Sは電線(導体)の断面積(mm2)である。
図17及び図19に示すように、中集合部MCの出力電力路153±(±は正極側と負極側両方が該当する意)を太陽電池パネル110N±に収容の合流ノード154N±(正確には、正極側は合流ノード、負極側は分流ノードというべきであるが、これらをまとめて合流ノードという)で2分岐木構造並列接続して海底ケーブル310±に接続した場合、中集合部MC内の電力路152±と153±(L=5,300m、I=61A)及び電力路154±(Lavg=1,700m、Iavg=1.6kA)それぞれをS=30mm2とS=100mm2で接続すると、±250kVに対する電圧降下による最大電力損失は約0.45%、S=100mm2とS=300mm2では約0.15%である。
なお、図17及び図19では、合流ノード154N±の下位層は一層の並列接続になっているが、並列接続によって電流が合流するごとに導体断面積を増やすようにすれば、より少ない導体(銅)量で電力損失を抑えることができる。
一方、図18に示した10分岐2階層をなす木構造並列接続の例では、10基の中集合部MCの出力は、それぞれ電力路152±と153±(Lavg=5,400m、I=61A)を介して合流ノード153N±で束ねられ、さらに10個の合流ノード153N±から電力路154±(Lavg=1,100m、Iavg=610A)を介して合流ノード154N±で束ねられ、海底ケーブル310±に接続されている。
この場合、それぞれS=30mm2とS=100mm2を用いると、最大電力損失は約0.13%に、S=100mm2とS=300mm2では最大電力損失を約0.04%に、すなわち2分岐での損失の約1/4に抑えられることが分かる。
ちなみに、海底ケーブル300の1,000km当たりの電力損失を3%程度に抑えるには、S=14,60mm2(φ=96m)が必要となる。だが、世界の一次エネルギを送電し得る量の銅を確保しようとすると、銅価格のさらなる高騰を招きかねない。Ranga Diasらが研究を進めている水素や炭素、硫黄などのごくありふれた元素を用いた常温(15℃)超伝導体の早期実用化が期待される(Nature, News, 586, 349, 2020)。
図19は、すべての密着型自動連結器117は1回線分の電力路コネクタ126を持つものとして、図17の結線回路に基づく電力路を、それぞれ2×8=16枚の太陽電池パネル110からなる小集合部SCと、それぞれ4基の小集合部SCからなる中集合部MCと、4基の中集合部MCからなる大集合部LCとにより形成されたハニカム構造の浮体式洋上プラント100上に描いたものである。
小集合部SCでは、正極側の8枚の太陽電池パネル110の太陽電池モジュール(図示省略)と負極側の8枚の太陽電池パネル110の太陽電池モジュールがそれぞれ151と151の電力路で一筆書き状に接続され、黒点(●)を附した中間電位点で接地155SCされ、両端は双方向絶縁型DC-DC変換器141を搭載した太陽電池パネル110Dに接続されている。太陽電池パネル110Dは、小集合部SCの直列接続で用いた連結器とは別の連結器を用いて縦方向に隣接する太陽電池パネル110Dと正極側は電力路152を介して絶縁型直列接続され、中集合部接地155MCで折り返されている。そして、負極側は電力路152を介して太陽電池パネル110Dは絶縁型直列接続され、正極側端部は電力路153と154を介して海底ケーブル300の正極側電力路310に、負極側端部は電力路153と154を介して海底ケーブル300の負極側電力路310に接続されている。
中集合部の接地155MCで折り返すのは、図17や図18では154N+や310と、154N-や310が上下に分かれて結線図が描かれているが、図19のハニカム構造上に描かれた電力路結線では、浮体式洋上プラント100の上辺中央に154N+や310と154N-や310を集中配置することによって、浮体式洋上プラント100内での電力路を短くする、あるいは海底ケーブル300±を離れて接続しないようにするためである。
図19は小集合部SCは2×8=16枚の太陽電池パネル110、中集合部MCは4×小集合部SC、大集合部LCは4×中集合部MCと小規模な実施形態例である。100万枚からなる浮体式洋上プラント100の実施形態であっても、小集合部SCは5×20=100枚の太陽電池パネル110、中集合部MCは100×小集合部SC、大集合部LCは100×中集合部MCとし、中集合部MC内の接地155MCで中集合部MCの正極側と負極側を折り返えせば、図19と同様に154±や110N±、310±を上部中央に集中配置させることができる。これによって、浮体式洋上プラント100の海底ケーブル300は、5km超離れて310と310とを収容する必要がなくなる。
なお、図19では、2分岐木構造接続で分岐(合流)数が少ないため、電力路コネクタ126は重複することなく結線できているが、10回線の電力路154±を束ねる太陽電池パネル110N±の電力路コネクタ126は、複数回線分の電力路コネクタを設ける必要がある。木構造を4~8階層に多階層化し、各電力路コネクタ126は1回線分を収容するようにしてもよい。
上記は、本実施の形態に係る太陽電池パネル110により構成される浮体式洋上プラント100の、100のべき乗ベースの小集合部SC、中集合部MC及び大集合部LCからなる論理的階層構造における直直並列接続の一例を示したもので、別の論理的階層ブロックを形成し、各ブロックの最大出力電圧や電流を任意に設定することも可能である。これらは設計上の事項であり、実際には絶縁型直流接続装置や海底ケーブルの容量及びコストなどを勘案して最適設計される。
[障害太陽電池パネルの自動迂回]
各太陽電池パネル110は、6個の密着型自動連結器117を介して相互に接続されているが、各密着型自動連結器117には各1回線分の電力路コネクタ及び信号路コネクタが収容されている。
図19に示すように、稼働中に太陽電池パネル110に障害が発生した場合、当該障害が発生した太陽電池パネル110Fを、他の太陽電池パネル110は自発的に障害の発生を検知し、関連する太陽電池パネル110に障害の発生を通知する。もしくは、当該障害が発生した太陽電池パネル110Fに電気的に接続していた隣接する太陽電池パネル110が障害を検知し、その旨を近隣の太陽電池パネル110に相互に通知する。
上記の通知を契機として、障害が発生した太陽電池パネル110Fに電力を送電していた太陽電池パネル110の制御回路が主導して図19に示すような迂回回路(バイパス回路)BRを決定し、その結果を隣接する太陽電池パネル110に通知し、当該迂回回路BRに切り替えるように構成されている。
この迂回回路BRの決定に際しては、前記回路ボックス116内の制御回路は、電力送電中の密着型自動連結器117を使用せず、別の非稼働中の密着型自動連結器117を介して他の隣接する太陽電池パネル110と相互接続するように判断する。すなわち、個々の太陽電池パネル110には6個の密着型自動連結器117が備えられていることから、障害が発生した場合には、その状態で接続されている2個の密着型自動連結器117以外の密着型自動連結器117を自動的に検索して新たな電力供給路を形成する。
なお、図19の障害太陽電池パネルの例では、図示した太陽電池パネル110の枚数が少なく図が煩雑になることから、図右上部に位置する太陽電池パネル110Fの迂回回路BRのみ記載したが、実際には100万枚の太陽電池パネル110から構成されており、その大半が太陽電池パネル110の太陽電池モジュール113間を直列接続する、すなわち連結器117は2個しか使用しない。このため、双方向絶縁型DC-DC変換器141(図17参照)を搭載した太陽電池パネル110Dのように6個の連結器117中5個の連結器117を使用するものであっても、予め太陽電池パネル110Dの予備となる太陽電池パネル110Drを太陽電池パネル110Dから2~3枚離れたところに設置しておけば、障害が発生しても電力路を太陽電池パネル110Drに迂回させることができる。
以上の障害時の迂回回路への切り替えは、上述のように太陽電池パネル110が自律的に行っても、あるいは後述の管理制御装置710と連携して自律的に行ってもよいが、少なくとも障害が発生し迂回回路に切り替えた旨を、管理制御装置710もしくは管理制御装置700に通知する必要がある。これを受けて管理制御装置700は、障害太陽電池パネル110Fを交換するため、交換用太陽電池パネル110を搭載した搬送組立ロボット610を最寄りの保守基地から出動させる。
[太陽光発電と浮体式洋上プラントへの電力供給]
日照時において太陽電池パネル110が太陽光発電を行った電力は、図20の矢印Aに示す電流の流れに沿って陸側に直流送電するとともに、各太陽電池パネル110の回路ボックス116内に装備された制御回路や各種アクチュエータ、診断回路等に電力供給するように構成されている。
一方、夜間や荒天時であって海面下に潜水している非発電時には、矢印Cの方向(矢印A方向とは反対方向)に沿って、エネルギ・キャリアシステム200から海底ケーブル300を介して浮体式洋上プラント100に直流電流を送電し、太陽電池パネル110の制御回路やアクチュエータの駆動を可能にするように制御されている。この場合、浮体式洋上プラント100は、エネルギ変換供給装置250の供給先施設500として稼働する。
なお、本実施の形態にあっては、図20に示すようにダイオードDが電力供給路に設けられているが、太陽電池G出力側のダイオードD1の代わりに、制御回路が太陽電池の発電状態に応じて遮断機(例えば、IGBT:絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)をオン・オフ制御するように構成してもよい。
[浮体式洋上プラントの通信系の階層構造]
図21は一実施形態のカーボンフリーエネルギ供給システム10における通信系の論理的階層構造が示されている。
カーボンフリーエネルギ供給システム10における通信方式は、TCP/IPベースのパケット通信方式であり、128ビット長のIPv6のアドレス空間の一部が、浮体式洋上プラント100を識別するためのアドレス、大集合部LCを識別するためのアドレス、中集合部MCを識別するためのアドレス、小集合部SCを識別するためのアドレス及び太陽電池パネル110を識別するためのアドレスに階層的に割当てられている。カーボンフリーエネルギ供給システム10の各構成要素には、識別子又は物理アドレス(MACアドレス)と、各構成要素のカーボンフリーエネルギ供給システム10内における階層的位置に基づく論理アドレス(IPアドレス)とが付与されている。
カーボンフリーエネルギ供給システム10において管理制御しなければならない対象(以下、通信ノードと称す)は、1基の浮体式洋上プラント100だけでも、例えば、100万通信ノードとなり、IPv4ではTPESjを賄う合計963基のカーボンフリーエネルギ供給システム10の全ノード(10)を収容することはできない。
ところで、荒天時にほぼすべての通信ノードが、例えば100バイトの通知情報を後述のSNMP-Trapコマンドを使って管理制御装置700宛に一斉に送信すると、総情報量は約200MBであるものの、深刻な輻輳状態を引き起こし通信不能状態に陥りかねない。そこで、本実施形態に係るカーボンフリーエネルギ供給システム10では、TCP/IPベースのパケット通信方式を採用し、128ビット長のIPv6のアドレス空間を、通信ノードの論理的階層構造(木構造)に沿って階層的に割当てることによってアドレス不足を解消している。
IPv6のIFID(Interface Identifier)は通常製造工程で付与されるMACアドレスから生成されるが、転送処理上はランダムに見えるため効率的な処理に適さない。通信ノードが一つのシステム内で大量に存在する場合は、図21下に「IPv6アドレスへのアドレス空間の階層的割り当て例」に示されているようにIFID内で階層的にアドレス空間を定義すれば、経路表のサイズを小さくでき処理負荷も軽減できる。
さらに、本実施形態のカーボンフリーエネルギ供給システム10では、大集合部LC、中集合部MC及び小集合部SCごとに主通信ノードを決めておき、各通信ノードは属する小集合部SCの主通信ノードにパケット(荒天時など、生成事由に従ってはランダム時間後)を送信し、主通信ノードでは必要に応じて集約化のうえ、例えば管理制御装置710宛のものは中集合部MCの主通信ノード、又は大集合部LCの主通信ノードに転送することによって、輻輳を回避し効率よく通信可能とする。
また、例えば管理制御装置710から送信された特定の太陽電池パネル110の連結器117宛の制御情報パケットも、アドレスの階層構造に沿って、主通信ノード間でバケツリレー的に伝達され確実かつ効率よく送信宛に届けられる。
また、カーボンフリーエネルギ供給システムがインターネットに接続しているか否かに関わらず、TCP/IPを使用する限り、サイバー攻撃の脅威は常に存在する。本実施の形態に係る浮体式洋上プラント100の場合には、サイバー攻撃の結果、例えば、強制的に潜水状態にさせられたり、エネルギ・キャリアシステム200も機能不全に至らされる可能性があり、本実施の形態に係るカーボンフリーエネルギ供給システム10は、国家さらには地球規模の電力を供給可能に構成されていることから、国家的あるいは地球規模での危機に至りかねない、という危惧が常に存在する。
そこで、本実施形態に係るカーボンフリーエネルギ供給システム10では、公開鍵暗号や電子署名で用いる公開鍵とその公開鍵の持ち主の対応関係を保証する公開鍵基盤に基づいた、パケット送信元の真正性(いわゆる「なりすまし」でないかを確認すること)と送信内容の統合性(「改ざん」がないかを確認すること。完全性とも呼ぶ)を受信側で検証するための検証コード(デジタル署名)を付加したセキュア通信を採用することにより、サイバー攻撃に対するエネルギ安全保障を担保している。
より厳格には、例えば、各通信ノードは耐タンパー性(機器や装置、ソフトウェアなどが、外部から内部構造や記録されたデータなどの解析、読取、改ざんが難しくなっている状態)のあるセキュリティモジュールTPM(Trusted Platform Module)を内蔵し、TPMが提供するTPM識別用のEK鍵(Endorsement Key)、署名用のAIK鍵(Attestation Identity Key)、暗号化用のSTK鍵(Storage Key)を用いて、各通信ノードのEK公開鍵と、ベンターが提供したディスクイメージ(ハードディスクなどに記録されている先頭から末尾までのデータ)や人工知能であれば機械学習済みデータのハッシュ値を所定の認証局(図示省略)に登録することによって、各通信ノードの真正性と、各通信ノードが生成し送信した管理対象情報や制御情報などの統合性を受信ノード側で検証できるようにしてもよい。
なお、真正性と統合性の検証がカーボンフリーエネルギ供給システム10のセキュリティ安全保障のベースとなるが、真正性と統合性の検証をすり抜けるサイバー攻撃の脅威も存在し得る。これに対する対策については、後述する。
[浮体式洋上プラントの建設]
上記のように構成された一実施形態のカーボンフリーエネルギ供給システム10における浮体式洋上プラント100の組み立て建設作業は、定形作業であり図22に示すように人工知能を搭載した搬送組立ロボット600~630及び搬送組立ロボット管理制御装置760~763とが連携して、同時並行組み立てにより建設される。
すなわち、太陽電池パネル110を大型の運搬船に積み込み、洋上の建設場所へ搬送した後、船の複数のクレーンを使用して太陽電池パネル110を海面上へ下ろす。その後、複数機の太陽電池パネル搬送組立ロボット610を太陽電池パネル搬送組立ロボット管理制御装置761の誘導制御のもとで、各太陽電池パネル110の識別子と予め準備された浮体式洋上プラント100の構成図に従って、同時並行して、多数の太陽電池パネル110を連結して小集合部SCを組み立てる。
組み立てに当たっては、組込もうとする太陽電池パネル110と連結する一又は複数の太陽電池パネル110を搬送組立ロボット610で海面上1.5m位に持ち上げたうえで、搬送組立ロボット610の多軸多次元ローラーコンベア(図示省略)で自動連結器117の位置関係を微調整し、所定の精度内に入ったところで一斉にシール材120を開放すると同時に組込もうとする太陽電池パネル110の圧縮空気タンク115に予め充填しておいた乾燥圧縮空気を圧縮空気噴射ノズル128から噴射し、自動連係器117内及び電力路コネクタ126などに海水成分が付着残留しない状態にしたうえで自動連結器117を密着連結する(図11A、11B)。これらは連結しようとする複数の太陽電池パネル110と搬送組立ロボット610、及び搬送組立ロボット管理制御装置761との連携により自律的に行われる。
その後、搬送組立ロボット管理制御装置762の誘導制御のもとで、小集合部SCを複数の小集合部搬送組立ロボット620により搬送して中集合部を同時並行で組み立て、さらに、搬送組立ロボット管理制御装置763の誘導制御のもとで、中集合部搬送組立ロボット630により搬送して大集合部LCを組み立てる。
なお、これらの組立てにおいても、連結する太陽電池パネル110は搬送組立ロボット620又は630によって海面上1.5m位に持ち上げたうえで、自動連結器117の位置関係を微調整し、所定の精度内に入ったところで一斉にシール材120を開放し乾燥圧縮空気を噴射しながら連結するのは同じである。
なお、海底ケーブル300の敷設も浮体式洋上プラント100そのものの建設と同時並行で行う。建設中及び建設後は海底ケーブル管理制御装置730によって、管理制御される。
このような各構成要素の同時並行組み立て作業により、図23に示すように短期間での浮体式洋上プラント100の建設が可能となる。すなわち、図23は本発明に係る浮体式洋上太陽光発電プラントの一実施形態の建設に要する工程別組立と総プラント建設見積時間を示す。
同図において、小集合部SCの組立てには、合計1000機の太陽電池パネル搬送組立ロボット610を用いて、太陽電池パネル110当たり平均15分で組み立てると、合計100万枚の太陽電池パネル110を、250時間で1万基の小集合部SCに組立てることができる。中集合部MCの組立てには、合計100機の小集合部搬送組立ロボット620を用いて、小集合部SC当たり平均180分で組み立てると、合計10000基の小集合部SCを300時間で、100基の中集合部MCに組立てることができる。さらに、大集合部LCの組立てには、1機の中集合部搬送組立ロボット630により、中集合部MC当たり平均240分で組み立てると、100基の中集合部MCを400時間で1基の大集合部LCに組立てることができる。
そして、前工程の1/4が終了後に次工程を開始する(例えば、小集合部の組み立て工程の1/4経過後に中集合部の組み立てを開始)とすると、浮体式洋上プラント1基当たりの建設延べ時間は538時間になるが、作業時間を10時間/日、作業可能天候率を60%とすると、90日間で建設を終えられることになる。TPESjの発電量確保には、図9に示したように963基を建設する必要があるが、同時建設現場数を26とすると、9.1年間で建設を終えることになる。
この場合、搬送組立ロボット600としては、建設そのものと、建設後の保守(清掃など)のために複数種類の人工知能搭載ロボット610~640が使用される。人工知能は現在の状態を入力すると、過去の経験から未知の事象をごく短時間で判断するもので、自動運転やロボットなどでの実用化が進められている。
すなわち、これらの太陽電池パネル110や浮体式洋上プラント100の様々な状況(建設過程、天候、海況、太陽電池パネル相互の位置関係、トラブルの発生等)における各種のセンサ情報やカメラ情報などの膨大な学習用データを収集しながら報酬(例えば、太陽電池パネル110の組立時間の最小化)を最大化するようにHPC(High Performance Computing)環境で機械学習(深層強化学習)を行い、学習済みデータをロボット600に実装することにより実現することができる。そして、浮体式洋上プラント100の搬送組立ロボット600によるプラント建設おいては、後述の管理制御装置700又は搬送組立ロボット用管理制御装置760の管理制御のもとで行うことにより、搬送組立ロボット600同士が連携若しくは共同して作業を進められるようになるため、より効率よく建設することが可能になる。
また、建設後、運用稼働中に障害が発生した太陽電池パネル110Fの交換作業(図示省略)は、管理制御装置760の管理と制御のもとで、搬送組立ロボット610が自律的に行う。太陽電池パネル搬送組立ロボット用管理制御装置761は、対象となる浮体式洋上プラント100及び同プラント内の太陽電池パネル110Fの真下に、交換用太陽電池パネル110を搭載した搬送組立ロボット610を潜水誘導する。搬送組立ロボット610は、太陽電池パネル110Fの識別子と隣接する太陽電池パネル110の識別子を確認の上、太陽電池パネル110Fと隣接する6枚の太陽電池パネル110、さらにその周囲の12枚の太陽電池パネル110のパネル筐体112内の海水を排水させたうえで、搬送組立ロボット610は太陽電池パネル110Fと隣接6枚の太陽電池パネル110を海面上1.5m位に持ち上げる。太陽電池パネル110Fと隣接太陽電池パネル110とを連結する6個の連結器117を解放させて取り外し、搬送組立ロボット610は補足した太陽電池パネル110Fを多軸多次元ローラーコンベアで横にずらす。
次いで交換用太陽電池パネル110を多軸多次元ローラーコンベアで太陽電池パネル110Fの元の位置に移動させ、連結する隣接太陽電池パネル110との三次元位置関係を微調整しながら隣接太陽電池パネル110と連結させる。連結後、太陽電池パネル110Fを搭載した搬送組立ロボット610を潜水退避させるとともに、排水した筐体112に再び海水を注水し、動作の正常性を搬送組立ロボット管理制御装置761が確認する。その結果を浮体式洋上プラント100全体の管理制御を担う管理制御装置710に報告し、了解を得ることによって一連の交換作業を終了する。これらの作業で搬送組立ロボット610や管理制御装置760等が用いる管理制御コマンドについては後述する。
[浮体式洋上プラントの環境アセスメント]
図9の構成例では、浮体式洋上プラント100当たり28.1kmの面積を要し、これを北緯30°以南のEEZ内海域に分散配置すると2%弱が浮体式洋上プラント100で覆われることになる。浮体式洋上プラント100の下は日照不足となり植物プランクトンの減少は避けられない。それを餌とする魚類や他の生物にも影響を与えかねない。複数年にわたる試験運用を通してどのような影響があるか、また浮体式洋上プラント100の適切な設置方法を見極める必要がある。
浮体式洋上プラント100下の日照不足の対策としては、例えば、(A)隣接する太陽電池パネル110の間隔を図9記載の50cmから5倍の2.5mに広げる、(B)小集合部SC単位(一辺約53m)で停留機能を持たせ、隣接する小集合部SCの間隔を50mに広げる、(C)中集合部MC単位(一辺約530m)で停留機能を持たせ、隣接する中集合部MCの間隔を500mに広げる方法などが考えられる。これらいずれの方法においても、浮体式洋上プラント100の設置海域の太陽光照射面積率を50%程度に高めることができる。なお、(A)の場合、インド洋モルティブに設置された浮体式洋上太陽光発電「SolarSea」での実測データから、海面反射光による5~10%の出力向上が期待できる。
海洋生物生態系の視点から、28.1km程度の面積であれ浮体式洋上プラント100の間を例えば5km以上離せば差したる影響を及ぼさないのか、あるいは(A)~(C)いずれの方法が良いか、また太陽光照射面積率はどの程度まで許容されるかなどを試験運用の中で見極める必要がある。
太陽電池パネル110は、太陽電池モジュール113、パネル筐体112、強化ガラス112G、連結器117、多機能コネクタ124、推進装置131などからなる。構造部材をなすパネル筐体112の厚みを、例えば4mmとしても、全963基の洋上プラントの構造部材は3.7億mにもなり、2019年の産業廃棄物最終処理場の残余容量1.7億mを大きく上回る。構造部材はもとより太陽電池モジュール113を含め、再利用可能なものを使用しなければ、大きな地球環境汚染問題になりかねない。
構造部材に必要な特性として耐塩腐食性、耐候性(紫外線)、再生利用性(ケミカルリサイクルなど)、絶縁性、熱伝導性(太陽電池背面の冷却)、防錆性、強靭性、耐衝撃性、防汚性(海洋生物等の付着防止)、経済性、軽量性などが挙げられる。
ガラス繊維強化プラスチックは、軽量で高い力学特性や化学的安定性を持ち安価なことからバスタブや船体材料などに多用されているが、再利用は難しく現状は埋立廃棄処理されている。
一方、鉄などの金属材料は高電圧に対する絶縁や耐塩腐食処理が必須であり、高い耐候性と耐塩腐食性、海洋生物の付着を防止する防汚塗料でコーティング処理する必要があるが、熱伝導性に優れ太陽電池モジュール113の背面温度を海水温に保つうえで有効である。
ポリエチレン繊維は、解重合(モノマー)してから再重合によるケミカルリサイクル可能な軽くて丈夫な素材で、耐塩腐食性、防錆性、絶縁性、耐候性、耐衝撃性、経済性に優れ、プラスチックの中では熱伝導性は高い(ガラスや水相当)ことから、パネル筐体112の構造材の有力な候補になり得る。
また、渡り鳥が飛来し浮体式洋上プラント100に漂着した木片やプラスチックごみなどをかき集めて巣作りし、繁殖地にする恐れもある。対策として清掃機能を持つ太陽電池パネル清掃ロボット640が、太陽電池パネル110の上面、下面、側面を定期的に清掃し、糞や巣、付着した海洋生物などを除去する方法が考えられる。試験運用を通して渡り鳥などの飛来頻度や清掃ロボットの性能を確認する必要がある。
[管理制御装置によるカーボンフリーエネルギ供給システムの管理と制御]
前述したように、浮体式洋上プラント100、エネルギ・キャリアシステム200、海底ケーブル300、洋上風力発電プラント等400及び供給先施設500、搬送組立ロボット600は、一又は複数の管理制御装置700により管理及び制御される。管理制御装置700による管理制御の具体例として、インターネットの標準規格RFC1157で定義されている簡易ネットワーク管理プロトコルSNMP(Simple Network Management Protocol)の応用が挙げられる。
SNMPでは管理を行うSNMPマネージャと、管理対象となるSNMPエージェントと管理情報ベースMIB(Management Information Base)を基本要素として、構成管理(ネットワーク機器やサーバ、インタフェース、サービスなどの情報をデータベースとして管理する)や性能管理(ネットワーク上のトラフィックやエラーの発生数、パケット損失数などの情報を収集し、ネットワーク全体の性能を管理する)、障害管理(ネットワークや機器での障害発生を検知し、障害処置のための情報を提供する)、課金管理(ネットワーク内の資源の利用状況をユーザごとに記録し管理する)、機密管理(不正なアクセスや侵入の監視と、権限を越えたアクセスを制御する)からなる5つの機能がある。
MIBは、SNMPエージェントが管理対象情報を木構造のオブジェクト識別子OID(Object Identifier)によって、一意な数字で識別し保持する。ポーリング方式とトラップ方式とがあり、前者はSNMPマネージャが要求し、SNMPエージェントが応答を返すもので、情報取得要求(GetRequest)や応答(GetResponse)、設定変更要求(SetRequest)などのコマンドがある。後者は異常検出したSNMPエージェントがSNMPマネージャに通知(SNMP-Trap)するためものである。
例えば、SNMPマネージャがある機器のユニキャストパケットの受信数を取得したいときは、IPアドレスでSNMPエージェントを指定し、木構造のOIDをルート(.)から順に辿ってGetRequest(.1.3.6.1.2.1.2.2.1.11:NULL)で照会すると、当該SNMPエージェントはGetResponse(.1.3.6.1.2.1.2.2.1.11:4937832)で応答を返す。照会対象は同時に複数項目を指定できる。
管理制御装置700~760はそれぞれの管理対象のSNMPマネージャとして機能し、IPアドレスが付与された被管理対象の浮体式洋上プラント100や太陽電池パネル110、第1~第3のエネルギ変換装置210~230などはSNMPエージェントとして機能する。そして拡張MIBはカーボンフリーエネルギ供給システム10の各構成要素(浮体式洋上プラント100や100万枚の太陽電池パネル110、パネル筐体112、太陽電池モジュール113、圧縮空気タンク115、回路ボックス116、密着型自動連結器117、双方向絶縁型DC-DC変換器141、エネルギ変換装置210~230、エネルギ貯蔵装置240、エネルギ変換供給装置250、海底ケーブル300、洋上風力発電プラント等400、供給先施設500、搬送組立ロボット600~630及び各種構成パーツほか)と管理対象情報(日射量、海流の流速/流向、風力/風向、GPSを利用した現在位置/方位情報、傾斜/揺れ/衝撃、潜水水深、監視カメラ画像、気温/海水温/海水タンク内温度/太陽電池モジュール背面温度、連結器内湿度/残留塩分、発電電力[W]、単位時間当たりのエネルギ入出力量/過不足量[W、kg/秒-H.kL/秒-NHほか]、発電量/送電量[Wh]、エネルギキャリアの入出量[kg、kL、kJ、kcal]など)を一意な数字で識別し、それぞれのSNMPエージェントで保持される。
ここで、管理制御装置700はカーボンフリーエネルギ供給システム全体を統括管理制御し、管理制御装置710は浮体式洋上プラント100を、管理制御装置720はエネルギ・キャリアシステム200を、管理制御装置730は海底ケーブル300を、管理制御装置740は洋上風力発電プラント等を、管理制御装置750は供給先施設を、管理制御装置760は搬送組立ロボット600をそれぞれ管理制御する。
例えば、浮体式洋上プラント100の日射量に対する発電電力が減少傾向にあることを検知した管理制御装置710は、GetRequestコマンドを使ってまず大集合部LC、次いで中集合部MC、さらに小集合部SC、太陽電池パネル110へと順に照会し、どの太陽電池パネル110のどの太陽電池モジュールの発電効率が劣化したかを特定する。次に、SetRequestコマンドを使って管理制御装置760に障害が起きた太陽電池パネル110Fの交換を要請する。要請を受けた管理制御装置760は、SetRequestコマンドを使って保守基地から交換用太陽電池パネル110を搭載した搬送組立ロボット610を出動させ、発電効率が劣化した太陽電池パネル110Fを太陽電池パネル110に交換するべく、SetRequestとGetRequestコマンドなどを使って人工知能を搭載した搬送組立ロボット610を管理制御する。
また、供給先施設500の一つである交流電力系統への供給電力が過剰になったことを管理制御装置750がSNMP-Trapによる通知で知ると、管理制御装置720に対してSetRequestコマンドを使って過剰量を伝える。管理制御装置720は、エネルギ変換装置210に対してエネルギ変換装置220へ発電電力を分流させて水素を生成し、エネルギ変換装置230にてエネルギキャリアに変換の上、エネルギキャリア貯蔵装置240に貯蔵するよう指示する。もし管理下のエネルギキャリア貯蔵装置240の貯蔵量が満杯であれば、管理制御装置700にSetRequestコマンドを使って処理を依頼する。依頼を受けた管理制御装置700は管理下の別の管理制御装置720、若しくは連携先の管理制御装置700にGetRequestコマンドを使って照会し、空きのあるエネルギキャリア貯蔵装置240へのパイプライン輸送をSetRequestコマンドを使って指示する。
また、台風が接近し浮体式洋上プラント100に破損する恐れが出てきたときは、管理制御装置700は、SetRequestコマンドを使って当該浮体式洋上プラント100を管理する管理制御装置710に対して潜水を指示し、同時に管理制御装置720にSetRequestコマンドを使って潜水時の対応を指示する。管理制御装置720は、エネルギキャリア貯蔵装置240からエネルギキャリアを取り出して、エネルギ変換供給装置250で直流電力に変換し、海底ケーブル300を介して浮体式洋上プラント100に送電するよう指示する。これらの連携によって、浮体式洋上プラント100の損壊を未然に防ぐとともに、潜水中であってもGPS受信機等143、推進装置131及び舵装置132を稼働させ、所定の位置に停留させ、かつ所定の方位又は方向を保持させることができる。
また、エネルギ・キャリアシステム200が通信ログ記録から不正アクセス(真正性と統合性の検証に失敗したパケットの頻発)を検知すると、SNMP-Trapコマンドを使って管理制御装置720に通信ログ記録を添えてその旨を通知する。管理制御装置720は通信ログ記録から不正アクセス元のIPアドレスや宛先IPアドレス、宛先ポート番号などからなる廃棄要請メッセージを生成し、SetRequestコマンドを使って同メッセージを管理制御装置700に送信する。管理制御装置700は、専用のコマンドを用いて同メッセージを不正アクセス元IPアドレスに向けて送信すると、同メッセージに対応可能な不正アクセス元に最も接近したルータは、以後、該不正アクセスパケットの転送を阻止する。
また、カーボンフリーエネルギ供給システム10では、真正性と統合性の検証がサイバーセキュリティの安全保障のベースとなるが、例えばサプライチェーンの過程でマルウェアが埋め込まれれば、真正性と統合性の検証をすり抜けたサイバー攻撃が仕掛けられることも起こり得る。これに対する対策としては、カーボンフリーエネルギ供給システム10の構成要素の大半はIoT(Internet of Things)機器であることから,ルータなどで通信相手を限定することによって、不正パケット(例えば、C&Cサーバーとの通信など)を阻止するようにしてもよい。これらの不正パケットのルータなどによる阻止の具体例として、特許第6683480号、特許第6737610号、特許第6780838号、特許第6896264号が挙げられる。
以上に述べた複数の事例から、カーボンフリーエネルギ供給システム10は、ひとたび運用に移行すると365日24時間停止することなく稼働し、所定のエネルギ形態で供給先施設500へ供給し続けられることがわかる。なお、管理制御装置700~760には、機械学習した学習済データを実装し、管理制御を行わせるようにしてもよい。また、SNMPをベースに管理制御するとして説明したが、人工知能に適した独自のコマンドやMIB、OIDを定義してもよい。
また、上記コマンドに係るパケットの送受信においては、少なくとも送信元の真正性と送信内容の統合性を受信側で検証するための検証コードが付されて行われることは、前述のとおりである。
カーボンフリーエネルギ供給システムのシステムコスト試算]
「規模の経済」によれば、固定費は研究開発費や製造装置などの減価償却費からなり、一般的に生産量が2倍になればコストは30%程度安くなる。一方、変動費は原材料や人件費などからなるが、原材料は生産が2倍になってもコスト低減は5~10%である。これより、次の知見が得られる。
(i) 発電量を増やすほど規模の経済効果により、発電単価は低下する。
(ii) 生産量が多いものほど研究開発や製造装置に投資して、安い原材料で高性能なものを生産した方が得である。
(iii) 製造や建設に必要な人件費もロボットの導入により固定費化でき、少子高齢化社会の産業に適している。
これらの知見に基づいて浮体式洋上プラント100やエネルギ・キャリアシステム200を開発すれば、固定費の比率を上げ、逆に変動費の比率を下げることになり、規模の経済効果を最大限に活かせることになる。そして用地購入費用が不要、原油やLNGなどの燃料費が不要な洋上での高効率で大量生産が可能な浮体式洋上太陽光発電は、大規模化によって現在の再エネや他の一次エネルギに対して十分なコスト競争力を持つと考えられる。これは、現在の再エネは分散化指向で推進されているが、大規模化の方が経済的に有利なことを意味している。
図24は、現在の部材価格などを参考に試算した初期の浮体式洋上プラント100の機材コスト(2.48兆円/基)とその内訳比率、それに見合うエネルギ・キャリアシステム200の機材コスト、建設・保守・運用等コスト、電力単価、規模の拡大による経済効果などの試算モデルを示したものである。
浮体式洋上プラント100では、太陽電池だけで54%を占めており、海底ケーブルは6%程度と少ない。エネルギ・キャリアシステム200は、すでに確立した技術や機材から構成され、太陽電池のような高額機材がないことから、機材コストは浮体式洋上プラント100の半額とした。また建設コストは搬送組立ロボット600の活用を前提に人工知能搭載ロボット関連コストを含め機材総額の10%(3,700億円)とした。これらのコストを耐用年数30年間で除した減価償却費は1,364億円/年である。その他の保守運用コストや営業利益は同図に記載の比率とコストを想定した。これら年ごとにかかるコストを浮体式洋上プラント1基の発電量5.71TWhで除した電力単価は、運用開始初期で33円/kWhになる。
これらをベースとする規模の拡大による経済効果の試算モデルでは、前項の(i)~(iii)に沿って極力固定費比率を高めるものとして、変動費比率及び固定費比率共に50%とし、生産量が2倍に増えたときの変動費の規模の経済効果指数αを0.95~0.9(2倍増で5~10%低下)とし、固定費の同指数βを0.7(同30%低下)とした。
この試算モデルを用いて浮体式洋上プラント100の発電量に対する電力単価を試算した結果を図25に示す。5年間の研究開発と試験運用を経て2026年から導入開始すると、固定費は浮体式洋上プラント100を100基設置した時点で3%以下に低減し、総コストはほぼ変動費で占められるようになる。そして、日本の一次エネルギ量TPESjまで総発電量が増える2035年頃に日本のカーボンフリー化が達成され、電力単価は6.3~10.4円/kWhと現在の欧米並みになる。さらに、2050年の世界の一次エネルギ総需要推定量2TPESj(326PWh)まで発電量を増やせば、世界のカーボンフリー化達成が現実味を帯び、3.2~7.4円/kWhまで電力単価は下がる。
なお、前述した製鉄のようにエネルギ・キャリアシステム200を介さずに浮体式洋上プラント100から直流電力を直接引き込む場合の電力単価は約2/3である。ちなみに、2019年の産業用太陽光発電の売電価格は約14円/kWhであるが、再エネも戦略的な導入を行えば、現在の電気料金を大きく下回る価格でエネルギ供給できる可能性がある。
そして、カーボンフリーエネルギ供給システム10の導入によるカーボンフリー化と並行して、数千年にわたり大気圏に留まるとされている温室効果ガス(COやメタンガスなど)の回収を進めれば、パリ協定の目標「世界平均気温の上昇幅を産業革命前より1.5℃未満に抑えたい」も2100年までに達成できよう。
[作用・効果]
上記のように構成された一実施形態のカーボンフリーエネルギ供給システム10においては、COを排出しないものの出力電力が不安定で大量かつ長期間にわたって備蓄もできない再エネを、国はもとより地球規模でのエネルギ総需要を賄うに足る量を浮体式洋上プラント100により発電し、第1のエネルギ変換装置210、第2のエネルギ変換装置220、第3のエネルギ変換装置230によりエネルギキャリアに変換して、例えば半年分を上限にエネルギキャリア貯蔵装置240にて備蓄し、これらの装置の何れから出力された又は取り出したエネルギを供給先施設500に適したエネルギ形態に変換して供給するエネルギ変換供給装置250とによって、ほぼすべての一次エネルギをカーボンフリー化できる。
また、管理制御装置700~760は互いに連結して管理制御することによって、カーボンフリーエネルギ供給システム10は365日24時間稼働し、エネルギを供給し続けることを可能にする。
また、上記のように構成された一実施形態のカーボンフリーエネルギ供給システム10においては、TCP/IPベースのパケット通信を用い、かつ送信元の真正性と送信内容の統合性を受信側で検証できるようにしたことによって、カーボンフリーエネルギ供給システム10へのサイバー攻撃の余地を与えない、すなわちエネルギ安全保障を担保する。
また、上記のように構成された一実施形態のカーボンフリーエネルギ供給システム10においては、安定に貯蔵可能なエネルギキャリアとして、液体アンモニア、メチルシクロヘキサン、液体水素、及び高圧水素ガスを供給先施設500の特性に応じて取捨選択でき、これらの中で体積エネルギ密度と質量エネルギ密度が高く、常温で大量かつ長期間にわたって備蓄が可能な液体アンモニア又はメチルシクロヘキサンは、例えば半年分を上限に備蓄することが可能であり、日ごとや季節、異常気象などにより発電電力が大きく変動する再エネを、エネルギ・インフラストラクチャとして利用することを可能にする。
また、上記のように構成された一実施形態のカーボンフリーエネルギ供給システム10においては、供給先施設500である交流電力系統、高電圧直流電力系統、火力発電所におけるNH専焼発電機やNH混焼発電機、水素火力発電機、高純度な液体水素が要求される空港の液体水素貯蔵タンク、水素燃料電池車両用の高純度な水素燃料を補給する水素ステーション、NH専焼エンジンで運航する船舶が発着する港湾に設けられたNH貯蔵タンク、水素還元製鉄を行う高炉などへ、再エネ由来エネルギを供給先施設500それぞれに適したエネルギ形態に効率よく変換し、安定かつ低廉に供給するエネルギ変換供給装置250によって、様々な産業でのカーボンフリー化を可能にする。
また、上記のように構成された一実施形態のカーボンフリーエネルギ供給システム10においては、我が国では最も発電能力の高いと目される浮体式洋上太発電プラント100を主体とするものの、他の再エネ資源を用いた発電プラントとの共存により、再エネ資源の多様性を高め、再エネ資源を用いた発電電力の時間的変動性や季節的偏在性を平準化するとともに、エネルギ・キャリアシステム200の利用効率を高め低廉なエネルギの安定供給を可能にする。
また、上記のように構成された一実施形態の浮体式洋上プラント100においては、浮体式洋上プラント100を構成する各太陽電池パネル110自体が浮体として機能し、互いに隣接する太陽電池パネル110は上下方向に互いに揺動可能であるので、津波、波浪、海流、等に耐え得る強靱な構造の浮体式洋上プラント100を実現することができる。
これにより、従来の技術では実現が不可能であった規模の大面積の浮体式洋上プラント100の実現化可能となる。従って、このような大規模、大面積の浮体式洋上プラント100を年平均日照量の多い洋上に一又は複数配置することにより、国家さらには地球規模のエネルギ需要を賄うことができる程の大量の再エネ生産すなわち洋上太陽光発電の実現が可能となる。
洋上においては、津波、波浪、海流の影響を考慮する必要がある。この場合、津波に関しては、その性質上、陸地に近づき水深が浅くなるに従って波高が高くなり影響が大きくなるが、水深が50m以深の深さの沖合であれば、津波が発生した場合でも海面が数十分周期で波長数km~数百kmの上下動を繰り返すのみであり、浮体物により構成される本実施形態に係る浮体式洋上プラント100には大きな影響はない。
また、台風などによって発生する波浪は数10m~数100mの波長を持ち、20mの波高になることもあるが、上記のように構成された一実施形態の浮体式洋上プラント100における太陽電池パネル110の共振波長は、波浪の波長より十分に短く、波浪との共振により破壊されることはない。
さらに、上記のように構成された一実施形態の浮体式洋上プラント100においては、各太陽電池パネル110のパネル筐体112に海水Wを注排水することにより、所定の潜水水深に潜水したり海面に浮上したりすることによって、巨大台風による破壊力が加わることを回避できる。
従って、浮体式洋上プラント100は、海が荒れていない時は海面に浮いた状態で稼働し、荒天時には、各太陽電池パネル110に海水Wを注水することにより、所定の潜水水深に潜水して波浪、風浪による被害を回避できる。
また、海流に関しては、本実施の形態における浮体式洋上プラント100は最高流速7m/秒程度の黒潮や台風などの影響下にあっても、所定の位置に停留させ、かつ所定の方位又は方向を保持させる場合にはこの流速や強風の影響に抗し得る推力が必要となることから、本実施の形態にあっては、GPS受信機等143、推進装置131及び舵装置132が設けられており、黒潮などの流速や強風に対向して所定の方位又は方向を保持させることができるように構成されている。
また、一実施形態の浮体式洋上プラント100によれば、互いに隣接する太陽電池パネル110は、自在継手部119及び各太陽電池パネル110の平面視頂点部110aに設けられた弾性衝撃吸収部材111を介して弾力的に柔連結されているので、互いに隣接する太陽電池パネル110同士の衝突を防止しつつ上下方向への互いの揺動を可能とし、津波、波浪、海流、等に耐え得る柔軟且つ強靱な構造の浮体式洋上プラント100を実現している。
また、一実施形態の浮体式洋上プラント100によれば、太陽電池パネル110は、互いに隣接する太陽電池パネル110は、各太陽電池パネル110の平面視辺部110bに設けられた密着型自動連結器117を介して、パネル筐体112同士が機械的に連結されるとともに、パネル筐体112内の電気的要素同士が電気的に接続される。
また、一実施形態の浮体式洋上プラント100によれば、密着型自動連結器117には、パネル筐体112内から海水Wを排出するための圧縮空気管コネクタ127A、127Bが設けられているので、密着型自動連結器117を介して太陽電池パネル110内に圧縮空気を供給することにより、太陽電池パネル110を潜水状態から浮上させることができるとともに、互いに連結された複数の太陽電池パネル110内に同時に圧縮空気を供給することが可能となる。
また、一実施形態の浮体式洋上プラント100によれば、密着型自動連結器117には、潜水時に太陽電池パネル110の水深を一定に保つためのフローター135が装備されているので、浮体式洋上プラント100を構成する太陽電池パネル110のパネル筐体112内に海水Wを注水して浮体式洋上プラント100を潜水状態にするとともに、圧縮空気供給路134を介してフローター135に圧縮空気を送り膨張させることにより、浮体式洋上プラント100を一定の潜水水深に保つことができる。
また、一実施形態の浮体式洋上プラント100によれば、密着型自動連結器117には、互いに隣接する太陽電池パネル110の電力回路同士を電気的に接続するための電力路コネクタ126A、126Bと、隣接する太陽電池パネル110に障害が発生した場合に、他の隣接する太陽電池パネル110の電力回路に接続を切り替える制御回路が設けられているので、障害の発生した太陽電池パネル110Fを自動的に迂回すなわち、障害の発生していない太陽電池パネル110のみからなる迂回回路BRを自動的に決定し、その結果を障害の発生した太陽電池パネル110Fに隣接する太陽電池パネル110に通知するなどして、電力路を迂回回路BRに切り替え、浮体式洋上プラント100における電力送電を継続できる。
また、一実施形態の浮体式洋上プラント100によれば、密着型自動連結器117には、互いに隣接する太陽電池パネル110の通信回路同士をパケット通信可能に接続するための通信路コネクタ125A、125Bが設けられているので、浮体式洋上プラント100内に、隣接する太陽電池パネル110の通信回路同士を接続してなるパケット通信ネットワークを形成することができる。
また、一実施形態の浮体式洋上プラント100によれば、浮体式洋上プラント100は、電気的に互いに直列接続された複数の太陽電池パネル110からなる小集合部SCと、電気的に互いに絶縁型直列接続された複数の小集合部SCからなる中集合部MCと、電気的に互いに木構造並列接続又は並列接続された複数の中集合部SCからなる大集合部LCと、により構成される。
小集合部SC内での直列接続と中間電位点のアースとによって、太陽電池モジュール113に加わる最大電圧は±2.6kVに抑えることができる。中集合部MC内では小集合部SCを小集合部SC内とは異なる電力路コネクタを介して絶縁型直列接続することにより、±250kVに昇圧するが、この高電圧が太陽電池モジュール113に直接加わることはない。したがって、太陽電池モジュール113や回路ボックス116、電力路コネクタ126A、126Bなどをそれぞれ適切な絶縁材を用いて絶縁保護することによって、太陽電池パネル110全体を過度に絶縁保護することなく電気的に接続することが可能となる。
そして、大集合部LC内では複数の中集合部MCの出力を木構造並列接続することによって、木構造並列接続電力路153、153及び154、154に流れる電流を分散化し、大集合部LCの最大出力電流約6kAを合流ノード54N+、154を収容する太陽電池パネル110と海底ケーブル300のみに限定することができる。その結果、浮体式洋上プラント100全体の銅の使用量を極力減らすことができる。
また、一実施形態のカーボンフリーエネルギ供給システム10によれば、カーボンフリーエネルギ供給システム10における通信方式は、TCP/IPベースのパケット通信方式であり、128ビット長のIPv6のアドレス空間の一部が、浮体式洋上プラント100を識別するためのアドレス、大集合部LCを識別するためのアドレス、中集合部MCを識別するためのアドレス、小集合部SCを識別するためのアドレス及び太陽電池パネル110を識別するためのアドレスに階層的に割当てられているので、複数のカーボンフリーエネルギ供給システム10において、多数の太陽電池パネル110を通信ノードとして有する膨大な通信ノード間での情報交換を可能とする整然とした通信環境を実現できる。
また、一実施形態のカーボンフリーエネルギ供給システム10によれば、カーボンフリーエネルギ供給システム10の各構成要素には、識別子又は物理アドレスと、各構成要素のカーボンフリーエネルギ供給システム10内における階層的位置に基づく論理アドレスとが付与されているので、カーボンフリーエネルギ供給システム10内のルーティングを効率的に処理することが可能となる。
また、一実施形態のカーボンフリーエネルギ供給システム10によれば、各構成要素間の通信は、送信元の真正性とパケットの統合性を検証するための検証コードが付されたパケット通信により行われるので、カーボンフリーエネルギ供給システム10内にセキュアなパケット通信環境を構築することが可能となる。
また、一実施形態の浮体式洋上プラント100によれば、現在位置と方位を取得するためのGPS受信機等143と、浮体式洋上プラント100の外周部に配置される太陽電池パネル110Eには、推進装置131及び舵装置132が設けられているので、潮流や波浪、風浪の影響下においても、浮体式洋上プラント100を所定の位置及び方位に留まるよう制御することが可能となる。浮体式洋上プラント100は、平面視略正六角形の複数の太陽電池パネル110を平面視ハニカム構造に連結することにより構成されるので、推進装置131及び舵装置132による推力が浮体式洋上プラント100全体に分散する。従って、推進装置131及び舵装置132による推力が一部に集中することによる浮体式洋上プラント100の構造の崩れを防止できる。
また、一実施形態の浮体式洋上プラント100によれば、浮体式灯台136を浮体式洋上プラント100の周囲に複数備えているため、浮体式洋上プラント100の近傍を航行する船舶に対してその存在を周知でき、航行の安全を保障し、船舶の衝突による洋上プラントの損壊を防止できる。
また、一実施形態の浮体式洋上プラント100によれば、浮体式洋上プラント100を構成する互いに隣接する太陽電池パネル110のパネル筐体112同士を機械的に連結するとともに、パネル筐体112内の電気的要素同士を電気的に接続するための多機能コネクタ124を密着型自動連結器117に設けたことにより、互いに隣接する太陽電池パネル110同士の連結と接続作業及び解放作業を自動化し得る。これにより、海上における浮体式洋上プラント100の複数の搬送組立ロボット600による組み立てが実現可能となる。
また、不具合の生じた太陽電池パネル110F の交換作業を搬送組立ロボット600により行うことも可能にする。
さらに、洋上での組み立てにおいて細心の注意が必要なことは、±250kVの高電圧電力路を密着型自動連結器177内で連結する際に海水成分が浸潤し、洋上プラントの運用開始後、深刻な絶縁破壊を起こす可能性があることである。所定の海域に運搬し組込もうとする太陽電池パネル110のパネル筐体112内に設けられた圧縮空気タンク115に予め圧縮乾燥空気を充填しておき、連結の際に密着型自動連結器177内及び多機能コネクタ124を圧縮乾燥空気で海水成分を払拭し密着連結することによって、連結器内での絶縁破壊を防止する。
以上のように構成された浮体式洋上プラント100は、小集合部SCを100枚の太陽電池パネル110により構成し、中集合部MCを100基の小集合部により構成し、さらに大集合部LCを100基の中集合部により構成し、全体を100万枚の太陽電池パネル110により形成され、その結果、年平均日射量240W/mの海域にて年平均発電電力として652MW/基の浮体式洋上プラント100が実現される。
この場合、1基の浮体式洋上プラント100の発電能力は、大型ガスタービン・コンバインドサイクル(GTCC)発電機1基分に相当する。この規模で構成した場合、浮体式洋上プラント100は28.1kmの面積となり、年間5.71TWhの電力量を供給することができる。TPESj(日本国の一次エネルギ総消費量)を賄うためには963基の浮体式洋上プラント100が必要となり、延べ面積約2.7万km2(四国の約1.4倍)の規模の浮体式洋上プラント100により日本国において必要なすべての一次エネルギ相当量を生産できることとなる。
この場合、浮体式洋上プラント100から日本国の陸上のエネルギ・キャリアシステム200に全長1500km程度の海底ケーブルにより送電するものであるが、直流電流による送電であることから、静電容量損失や誘電体損失がなく、前述したように1,000kmあたりの送電損失を3%と極めて低く抑えることができる。
従って、本実施の形態に係るカーボンフリーエネルギ供給システム10及び浮体式洋上プラント100により、非常に高効率な、日本国全体さらには南北緯度30°付近以内の海域に展開すれば、世界の1次エネルギ総需要を充たすことができる大規模な電力供給及びエネルギ供給をカーボンフリー化することになり、地球温暖化の抑止効果は絶大である。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されない。例えば、上記実施形態では、太陽電池パネル110は平面視略六角形としているが、太陽電池パネル110を平面充填をなす形状として、平面視略四角形、又は平面視略平行四辺形、又は平面視略三角形を採用してもよい。この場合、太陽電池パネル110を最稠密配置することができる。
これにより、浮体式洋上プラント100の上面すなわち太陽に面する側の面を、最大限、太陽電池パネルの受光面で構成することができる。従って、浮体式洋上太陽光発電プラントの構造上発電効率を最大限高めることができる。
さらに、隣接する太陽電池パネル110の間隔を50cmから5倍の2.5mに広げる、あるいは集合部SC単位(一辺約53m)で停留機能を持たせ、隣接する小集合部SCの間隔を50mに広げる、あるいは中集合部MC単位(一辺約530m)で停留機能を持たせ、隣接する中集合部MCの間隔を500mに広げるなどによって、浮体式洋上プラント100設置海域の太陽光照射面積率を50%程度に高めることによって、浮体式洋上プラント100の下の日照不足による植物プランクトンの減少を防ぎ、それを餌とする魚類や他の生物への影響を抑制することができる。
さらに、上記実施の形態にあっては、論理的階層をなすように連結された複数の多角形の太陽電池パネルが、前記論理的階層間をそれぞれ異なる電力路コネクタを介して直列接続、又は絶縁型直列接続、又は並列接続、又は木構造並列接続することにより、所定の直流電力を発電し海底ケーブルを介して送電する太陽光発電機能、自己又は隣接太陽電池パネルに障害が発生したとき、迂回回路を形成するよう未使用の電力路コネクタを介して他の太陽電池パネルに切り替える制御機能、前記太陽電池パネルのパネル筐体内に注排水することにより、前記浮体式洋上太陽光発電プラントを所定の潜水水深に潜水させ、潜水状態の前記浮体式洋上太陽光発電プラントを浮上させる潜水及び浮上機能、隣接するパネル筐体同士が少なくとも上下方向に互いに揺動可能な機械的連結器、前記電力路コネクタ、信号路コネクタ、圧縮空気管コネクタの一部又は全てを収容する連結器を前記太陽電池パネルの各辺又は一部に備え、隣接太陽電池パネルと相互に連結することによって前記浮体式洋上太陽光発電プラントを形成する連結機能、前記太陽電池パネルの平面視頂点部の一部又は全てに弾性衝撃吸収部材を配置し、不意の衝撃を吸収するとともに、海面の揺らぎによる太陽電池パネルの乗り上げを防ぐ衝撃吸収機能、前記浮体式洋上太陽光発電プラントの現在位置及び方位を測定するための現在位置及び方位測定機能、前記浮体式洋上太陽光発電プラントを所定の位置及び方位に停留させるための推進及び操舵機能、夜間又は潜水時に前記海底ケーブルを介して送電された電力を取り込み、前記浮体式洋上太陽光発電プラントを前記推進及び操舵機能を用いて所定の位置及び方位に停留維持する非発電時停留維持機能、物理アドレスと、前記論理的階層構造に従って論理アドレスとが付与されたパケットを送信及び受信するパケット通信機能、パケット送信元の真正性と送信内容の統合性とを受信側で検証するための検証コードが付された前記パケットを送信及び受信するセキュア通信機能、前記パネル筐体内に注排水する、及び前記所定の潜水水深に潜水させるための圧縮空気を生成し圧縮空気管及び前記圧縮空気管コネクタを介して他の太陽電池パネルの圧縮空気タンクに供給する圧縮空気生成機能、前記浮体式洋上太陽光発電プラントの周囲に自己の存在を周知するための灯又は電波又は音波の一部又は全てを用いて周知する浮体式灯台機能を備えている場合を例に説明したが、上記実施の形態に限定されず、本願発明の要旨の範囲内において適宜変形が可能である。
10 カーボンフリーエネルギ供給システム
100 浮体式洋上太陽光発電プラント(浮体式洋上プラント)
110 太陽電池パネル
110a 平面視頂点部
110b 平面視辺部
110c 梁材
110D 絶縁型DC-DC変換器搭載太陽電池パネル
110Dr 予備となる太陽電池パネル
110E 浮体式洋上プラント周辺太陽電池パネル
110F 不具合の生じた太陽電池パネル
110P 圧縮空気生成装置を備えた太陽電池パネル110
110T 浮体式灯台用開口部を持つ太陽電池パネル
111 弾性衝撃吸収部材
112 パネル筐体
112G 強化ガラス
113 太陽電池モジュール
114 透明絶縁充填剤
115 圧縮空気タンク
116 回路ボックス
117 密着型自動連結器(連結器)
118 筐体
119 自在継手部
120 シール部材
121 連結ボルト
122 連結ナット
123 駆動機構
124 多機能コネクタ
125 通信路コネクタ
126 電力路コネクタ
127 圧縮空気管コネクタ
128 圧縮空気噴射ノズル
129 ダクト
131 推進装置
132 舵装置
134 圧縮空気供給路
135 フローター
136 浮体式灯台
136A 灯部
136B ポール
136C 円筒体
136D 重り
137 ロープ
141 双方向絶縁型DC-DC変換器
142 浮体式灯台用開口部
143 全地球衛星測位システム(GPS)受信機等
151、151 小集合部直列接続電力路(+:正極側、-:負極側)
152、152 中集合部直列接続電力路(+:正極側、-:負極側)
153N+、153N- 合流ノード(+:正極側、-:負極側)
154N+、154N- 合流ノード(+:正極側、-:負極側)
155 アース(接地)
155MC 中集合部接地
155SC 小集合部接地
200 エネルギ・キャリアシステム
210 第1のエネルギ変換装置
220 第2のエネルギ変換装置
230 第3のエネルギ変換装置
240 エネルギキャリア貯蔵装置
250 エネルギ変換供給装置
300 海底ケーブル
310 海底ケーブル正極側電力路
310 海底ケーブル負極側電力路
400 洋上風力発電プラント等
500 供給先施設
600 搬送組立ロボット
610 太陽電池パネル搬送組立ロボット
620 小集合部搬送組立ロボット
630 中集合部搬送組立ロボット
640 太陽電池パネル清掃ロボット
700 管理制御装置
710 浮体式洋上プラント用管理制御装置
720 エネルギ・キャリアシステム200用管理制御装置
730 海底ケーブル用管理制御装置
740 洋上風力発電プラント等用管理制御装置
750 供給先施設用管理制御装置
760 搬送組立ロボット用管理制御装置
761 太陽電池パネル搬送組立ロボット用管理制御装置
762 小集合部搬送組立ロボット用管理制御装置
763 中集合部搬送組立ロボット用管理制御装置
BR 迂回回路
C1~C6 砂漠
D、D1 ダイオード
d 浮体式洋上プラントの安全潜水水深
f1 潮流や風による力
f2 推力
F 推力
h 浮体式灯台の海面からの高さ
LC 大集合部
MC 中集合部
SC 小集合部
W 海水
S 海面
J 日本国
x 日本国のEEZ

Claims (17)

  1. 地球規模又は国全体又は一定の地域又は特定の産業におけるエネルギ総需要量のすべて又は一部を再生可能エネルギ資源により発電することにより確保し、得られた電力を供給先施設に適したエネルギ形態に変換して供給するカーボンフリーエネルギ供給システムであって、
    再生可能エネルギ資源を用いて発電する複数の太陽電池パネルのパネル筐体内への注排水による潜水及び浮上が可能な浮体式洋上太陽光発電プラントを含む一又は複数の発電プラントと、
    前記発電プラントにより発電された電力を安定化する一又は複数の第一のエネルギ変換装置と、
    前記第一のエネルギ変換装置から出力された電力を安定に貯蔵可能なエネルギキャリアに変換する一又は複数の第二のエネルギ変換装置と、
    前記第二のエネルギ変換装置により変換されたエネルギキャリアを所定の量を上限に貯蔵する一又は複数のエネルギキャリア貯蔵装置と、
    前記第一のエネルギ変換装置、前記第二のエネルギ変換装置、前記エネルギキャリア貯蔵装置の何れかから出力された又は取り出したエネルギを、一又は複数の前記供給先施設それぞれに適したエネルギ形態に変換して供給する一又は複数のエネルギ変換供給装置と、
    少なくとも前記発電プラント、前記第一のエネルギ変換装置、前記第二のエネルギ変換装置、前記エネルギキャリア貯蔵装置、前記エネルギ変換供給装置、前記供給先施設の一部又はすべてを管理し制御する一又は複数の管理制御装置と、
    を備えたことを特徴とするカーボンフリーエネルギ供給システム。
  2. 前記浮体式洋上太陽光発電プラント、前記発電プラント、前記第一のエネルギ変換装置、前記第二のエネルギ変換装置、前記エネルギキャリア貯蔵装置、前記エネルギ変換供給装置、前記管理制御装置及び前記供給先施設の一部又はすべては、TCP/IPベースのパケット通信を行うための論理アドレスが割り当てられ、少なくともパケット送信元の真正性と送信内容の完全性とを受信側で検証するための検証コードが付されたセキュア通信により情報交換を行う、
    ことを特徴とする請求項1記載のカーボンフリーエネルギ供給システム。
  3. 前記エネルギキャリアは、液体アンモニア、メチルシクロヘキサン、液体水素、又は高圧水素ガスの少なくともいずれか一つである、
    ことを特徴とする請求項1又は2記載のカーボンフリーエネルギ供給システム。
  4. 前記第二のエネルギ変換装置は、
    前記第一の変換装置から出力された電力により水素を生成する第一のエネルギ変換機能と、
    前記第一変換機能により得られた水素を前記エネルギキャリアに変換する第二のエネルギ変換機能と、
    を備えたことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のカーボンフリーエネルギ供給システム。
  5. 前記エネルギ変換供給装置は、
    前記第一のエネルギ変換装置から出力された電力を所定の直流電力に変換し、前記供給先施設の一つである直流電力系統に供給する機能、
    前記第一のエネルギ変換装置から出力された電力を所定の交流電力に変換し、前記供給先施設の一つである交流電力系統に供給する機能、
    前記第二のエネルギ変換装置、又は前記第二のエネルギ変換装置の前記第一のエネルギ変換機能から出力された水素を所定の液体水素に変換し、前記供給先施設の一つである供給先施設に供給する機能、
    前記第二のエネルギ変換装置、又は前記第二のエネルギ変換装置の前記第一のエネルギ変換機能から出力された水素を所定の圧力に加圧して高圧水素ガスに変換し、前記供給先施設の一つである供給先施設に供給する機能、
    前記第二のエネルギ変換装置、又は前記第二のエネルギ変換装置の前記第二のエネルギ変換機能から出力されたエネルギキャリアを所定のエネルギキャリアに変換し、前記供給先施設の一つである供給先施設に供給する機能、
    前記エネルギキャリア貯蔵装置から取り出したエネルギキャリアを用いて所定の直流電力を発電し、前記供給先施設の一つである直流電力系統に供給する機能、
    前記エネルギキャリア貯蔵装置から取り出したエネルギキャリアを用いて所定の交流電力を発電し、前記供給先施設の一つである交流電力系統に供給する機能、
    前記エネルギキャリア貯蔵装置から取り出したエネルギキャリアを所定の高圧水素ガスに変換し、前記供給先施設の一つである供給先施設に供給する機能、
    前記エネルギキャリア貯蔵装置から取り出したエネルギキャリアを所定の液体水素に変換し、前記供給先施設の一つである供給先施設に供給する機能、
    前記エネルギキャリア貯蔵装置から取り出したエネルギキャリアを所定のエネルギキャリアに変換し、前記供給先施設の一つである供給先施設に供給する機能、
    前記エネルギキャリア貯蔵装置から取り出したエネルギキャリアを所定の流量と流圧に調整し、前記供給先施設の一つである供給先施設に供給する機能、又は、
    前記供給先施設に供給するエネルギに余剰があるとき、又は所定の計画に則って、前記第一のエネルギ変換装置に対して、前記第一のエネルギ変換装置が出力する電力の一部又は全てを前記第二のエネルギ変換装置、又は前記第二のエネルギ変換装置の前記第一のエネルギ変換機能へ出力するよう指示する電力出力指示機能の少なくともいずれか一つ、
    を備えたことを特徴とする請求項4に記載のカーボンフリーエネルギ供給システム。
  6. 前記発電プラントは、発電電力の昼夜、天候、時間的変動性や季節的偏在性を平準化し、前記エネルギキャリア貯蔵装置の前記所定の量の上限を下げるように、さらに、他の再生可能エネルギ資源を用いて発電する、
    ことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載のカーボンフリーエネルギ供給システム。
  7. 前記他の再生可能エネルギ資源を用いて発電する前記発電プラントは、陸上太陽光発電プラント、係留式洋上又は水上太陽光発電プラント、陸上又は洋上風力発電プラント、係留式洋上風力発電プラント、浮体式洋上風力発電プラント、地熱発電プラント、又は中小水力発電プラントの少なくともいずれか一つである、
    ことを特徴とする請求項6に記載のカーボンフリーエネルギ供給システム。
  8. 前記浮体式洋上太陽光発電プラントは、
    所定の年平均日照量以上の日射量が得られ、所定の水深以上の水深の海域に浮体する発電プラントであって、
    論理的階層をなすように連結された複数の多角形の太陽電池パネルは、
    前記論理的階層間をそれぞれ異なる電力路コネクタを介して直列接続、又は絶縁型直列接続、又は並列接続、又は木構造並列接続することにより、所定の直流電力を発電する太陽光発電機能、
    自己又は隣接する太陽電池パネルに障害が発生したとき、迂回回路を形成するよう未使用の前記電力路コネクタを介して他の前記太陽電池パネルに切り替える制御機能、
    前記太陽電池パネルのパネル筐体内に注排水することにより、前記浮体式洋上太陽光発電プラントを所定の潜水水深に潜水させ、潜水状態の前記浮体式洋上太陽光発電プラントを浮上させる潜水及び浮上機能、
    隣接するパネル筐体同士が少なくとも上下方向に互いに揺動可能な機械的連結器、前記電力路コネクタ、信号路コネクタ、圧縮空気管コネクタの一部又は全てを収容する連結器を前記太陽電池パネルの各辺又は一部に備え、隣接太陽電池パネルと相互に連結することによって前記浮体式洋上太陽光発電プラントを形成する連結機能、
    前記太陽電池パネルの平面視頂点部の一部又は全てに弾性衝撃吸収部材を配置し、不意の衝撃を吸収するとともに、海面の揺らぎによる太陽電池パネルの乗り上げを防ぐ衝撃吸収機能、
    前記浮体式洋上太陽光発電プラントの現在位置及び方位を測定するための現在位置及び方位測定機能、
    前記浮体式洋上太陽光発電プラントを所定の位置に停留させ、かつ所定の方位又は方向を保持させるための推進及び操舵機能、
    夜間又は潜水時に前記浮体式洋上太陽光発電プラントを前記推進及び操舵機能を用いて所定の位置及び方位又は方向に停留維持する非発電時停留維持機能、
    物理アドレスと、前記論理的階層構造に従って論理アドレスとが付与されたパケットを送信及び受信するパケット通信機能、
    パケット送信元の真正性と送信内容の完全性とを受信側で検証するための検証コードが付された前記パケットを送信及び受信するセキュア通信機能、
    前記パネル筐体内に注排水する、及び前記所定の潜水水深に潜水させるための圧縮空気を生成し圧縮空気管及び前記圧縮空気管コネクタを介して他の太陽電池パネルの圧縮空気タンクに供給する圧縮空気生成機能、
    前記浮体式洋上太陽光発電プラントの周囲に自己の存在を周知するための灯又は電波又は音波の一部又は全てを用いて周知する浮体式灯台機能、
    の少なくともいずれか一つを備えたことを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載のカーボンフリーエネルギ供給システム。
  9. 前記太陽電池パネルは、平面視略正六角形をなし、複数の前記太陽電池パネルにより平面視ハニカム構造を形成するよう連結される、
    ことを特徴とする請求項に記載のカーボンフリーエネルギ供給システム。
  10. 前記太陽電池パネルを所定の海域に輸送してきた運搬船から複数のクレーンで前記太陽電池パネルを洋上に下ろし、
    前記論理的階層ごとに、該論理的階層の構成要素である太陽電池パネル又は該論理的階層の下位層の太陽電池パネル群を、それぞれ該論理的階層に専用の一又は複数の搬送組立ロボットを用いて、前記太陽電池パネルに付された識別子と前記浮体式洋上太陽光発電プラントの構成情報をもとに、同時並行して組み立て、
    前記組み立てに当たっては、前記太陽電池パネル内に収納された圧縮空気タンクに予め充填された圧縮乾燥空気を連結器内に噴射することによって海水成分を払拭し、所定の隣接する太陽電池パネルと密着連結することによって建設され、
    前記搬送組立ロボットは、太陽電池パネルと浮体式洋上太陽光発電プラントに係る少なくとも建設過程、天候、海況、太陽電池パネル相互の位置関係、トラブルを含むセンサ情報及びカメラ情報からなる学習用データを収集し所定の報酬を最大化するようHPC(高性能計算処理能力)環境で機械学習して得られた学習済みデータが実装される、
    ことを特徴とする請求項又は請求項に記載のカーボンフリーエネルギ供給システム。
  11. 前記浮体式洋上太陽光発電プラントは、波浪や風浪などにより加わる衝撃力を分散・吸収するハニカム構造をなすよう相互に柔連結され、小集合部、中集合部及び大集合部により構成され、1基当り太陽電池パネルが100万枚設置され、
    前記小集合部は100枚の太陽電池パネルを直列接続し、前記中集合部は100基の小集合部を絶縁型直列接続し、前記大集合部は100基の中集合部を木構造並列接続又は並列接続して構成する、
    ことを特徴とする請求項1~10のいずれか1項に記載のカーボンフリーエネルギ供給システム。
  12. 前記浮体式洋上太陽光発電プラントにより発電された電力は海底ケーブルにより前記エネルギ変換装置に送電され、夜間又は潜水時の非発電時には前記第一のエネルギ変換装置又は前記エネルギ変換供給装置より前記海底ケーブルを介して前記浮体式洋上太陽光発電プラントは給電される、
    ことを特徴とする請求項1~11のいずれか1項に記載のカーボンフリーエネルギ供給システム。
  13. 前記浮体式洋上太陽光発電プラントは、前記パネル筐体内に注水用のタンク部と圧縮空気タンクを保持すると共に、潜水時に前記浮体式洋上太陽光発電プラントを所定の潜水水深に保つためのフローターを備え、
    潜水時には、前記タンク部に注水すると共に前記フローターに前記圧縮空気タンク内の圧縮空気を供給して前記フローターを海面上に浮上させることにより所定の潜水水深に前記浮体式洋上太陽光発電プラントを保ち、
    浮上時には、前記圧縮空気タンク内の圧縮空気を排出させて前記タンク部内の海水を排出させて海面上に浮上させるように構成されていることを特徴とする請求項1記載のカーボンフリーエネルギ供給システム。
  14. 地球規模又は国全体又は一定の地域又は特定の産業におけるエネルギ総需要量のすべて又は一部を再生可能エネルギ資源により発電することにより確保し、得られた電力を供給先施設に適したエネルギ形態に変換して供給するカーボンフリーエネルギ供給方法であって、
    再生可能エネルギ資源を用いて発電する複数の太陽電池パネルのパネル筐体内への注排水による潜水及び浮上が可能な浮体式洋上太陽光発電プラントを含む一又は複数の発電プラントにより再生可能エネルギ資源を用いて発電するステップと、
    一又は複数の第一のエネルギ変換装置により、前記浮体式洋上太陽光発電プラントにより発電された電力を安定化するステップと、
    一又は複数の第二のエネルギ変換装置により、前記第一のエネルギ変換装置から出力された電力を安定に貯蔵可能なエネルギキャリアに変換するステップと、
    一又は複数のエネルギキャリア貯蔵装置により、第二のエネルギ変換装置により変換されたエネルギキャリアを所定の量を上限に貯蔵するステップと、
    一又は複数のエネルギ変換供給装置により、前記第一のエネルギ変換装置、前記第二のエネルギ変換装置、前記エネルギキャリア貯蔵装置の何れかから出力された又は取り出したエネルギを、一又は複数の前記供給先施設それぞれに適したエネルギ形態に変換して供給するステップと、
    一又は複数の管理制御装置により、少なくとも前記発電プラント、前記第一のエネルギ変換装置、前記第二のエネルギ変換装置、前記エネルギキャリア貯蔵装置、前記エネルギ変換供給装置、前記供給先施設の一部又はすべてを管理し制御するステップと、
    を備えたことを特徴とするカーボンフリーエネルギ供給方法。
  15. 前記浮体式洋上太陽光発電プラントにより発電された電力は海底ケーブルにより前記第一のエネルギ変換装置に送電され、夜間又は潜水時の非発電時には第一のエネルギ変換装置又は前記エネルギ変換供給装置より前記海底ケーブルを介して前記浮体式洋上太陽光発電プラントは給電される、ことを特徴とする請求項14に記載のカーボンフリーエネルギ供給方法。
  16. 前記浮体式洋上太陽光発電プラントは、前記パネル筐体内に注水用のタンク部と圧縮空気タンクを保持すると共に、潜水時に前記浮体式洋上太陽光発電プラントを所定の潜水水深に保つためのフローターを備え、
    潜水時には、前記タンク部に注水すると共に前記フローターに前記圧縮空気タンク内の圧縮空気を供給して前記フローターを海面上に浮上させることにより所定の潜水水深に前記浮体式洋上太陽光発電プラントを保ち、
    浮上時には、前記圧縮空気タンク内の圧縮空気を排出させて前記タンク部内の海水を排出させて海面上に浮上させるように構成されていることを特徴とする請求項14記載のカーボンフリーエネルギ供給方法。
  17. 前記浮体式洋上太陽光発電プラントは、
    所定の年平均日照量以上の日射量が得られ、所定の水深以上の水深の海域に浮体する発電プラントであって、
    論理的階層をなすように連結された複数の多角形の太陽電池パネルを有し、前記太陽電池パネルにより、前記論理的階層間をそれぞれ異なる電力路コネクタを介して直列接続、又は絶縁型直列接続、又は並列接続、又は木構造並列接続することにより、所定の直流電力を発電するステップ、
    自己又は隣接する前記太陽電池パネルに障害が発生したとき、迂回回路を形成するよう未使用の前記電力路コネクタを介して他の前記太陽電池パネルに切り替え制御するステップ、
    前記太陽電池パネルのパネル筐体内に注排水することにより、前記浮体式洋上太陽光発電プラントを所定の潜水水深に潜水させ、潜水状態の前記浮体式洋上太陽光発電プラントを浮上させる潜水及び浮上するステップ、
    隣接する前記太陽電池パネルのパネル筐体同士が少なくとも上下方向に互いに揺動可能な機械的連結器、前記電力路コネクタ、信号路コネクタ、圧縮空気管コネクタの一部又は全てを収容する連結器を前記太陽電池パネルの各辺又は一部に備え、隣接太陽電池パネルと相互に連結することによって前記浮体式洋上太陽光発電プラントを形成するよう連結するステップ、
    前記太陽電池パネルの平面視頂点部の一部又は全てに弾性衝撃吸収部材を配置し、不意の衝撃を吸収するとともに、海面の揺らぎによる前記太陽電池パネルの乗り上げを防ぐよう衝撃吸収するステップ、
    前記浮体式洋上太陽光発電プラントの現在位置及び方位を測定するための現在位置及び方位を測定するステップ、前記浮体式洋上太陽光発電プラントを所定の位置に停留させ、かつ所定の方位又は方向を保持させるための推進及び操舵するステップ、
    夜間又は潜水時に前記浮体式洋上太陽光発電プラントを前記推進及び操舵機能を用いて所定の位置及び方位又は方向に停留維持するよう非発電時停留を維持するステップ、
    物理アドレスと、前記論理的階層構造に従って論理アドレスとが付与されたパケットを送信及び受信するパケット通信するステップ、
    パケット送信元の真正性と送信内容の完全性とを受信側で検証するための検証コードが付された前記パケットを送信及び受信するセキュア通信するステップ、
    前記パネル筐体内に注排水する、及び前記所定の潜水水深に潜水させるための圧縮空気を生成し圧縮空気管及び前記圧縮空気管コネクタを介して他の太陽電池パネルの圧縮空気タンクに供給する圧縮空気を生成するステップ、
    前記浮体式洋上太陽光発電プラントの周囲に浮体式灯台を設置し、自己の存在を周知するための灯又は電波又は音波の一部又は全てを用いて周知するステップ、
    の少なくともいずれか一つを備えたことを特徴とする請求項14~16いずれか1項に記載のカーボンフリーエネルギ供給方法。
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