JP2023008589A - 永久電流スイッチ - Google Patents

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佑 末富
Yu Suetomi
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優一 松竹
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Abstract

【課題】ビスマス(Bi)系(高温)超電導線材を用いた実用化レベルの永久電流スイッチを提供する。【解決手段】本発明の永久電流スイッチは、ビスマス系超電導線材と、前記ビスマス系超電導線材の一部を加熱するように前記ビスマス系超電導線材の近傍に設けられたヒーターとを有し、前記ビスマス系超電導線材の前記一部におけるマトリクスとして、前記ビスマス系超電導線材の他の部分におけるマトリクスよりも熱伝導率が低く且つ電気抵抗率が高い材料を有する。【選択図】図5

Description

本発明は、永久電流スイッチに関する。
超電導コイル(超電導磁石)の運転方式には、電源通電方式と永久電流方式とがある。電源通電方式は、超電導コイルに外部電源を接続し、外部電源から超電導コイルに電流を供給し続ける方式である。永久電流方式は、外部電源と並列に永久電流スイッチ(Persistent Current Switch:PCS)を設け、スイッチを開いた状態で外部電源から超電導コイルに電流を供給した後に、永久電流スイッチを閉じて閉ループの電気回路(超電導コイルを含んだ電気回路)を形成する方法である。回路の抵抗をゼロすれば電流は減衰のない永久電流として無限の時間にわたり流れ続ける。図1に示すように、永久電流方式では電源通電方式に比べ優れた点が多い。そのため、永久電流方式は、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置やNMR(Nuclear Magnetic Resonance)装置、磁気浮上式鉄道などで使用される。
例えば、電源通電方式では、次のようなデメリットがある。外部電源から超電導コイルに電流を供給し続ける必要があるため、消費電力が大きい。また、外部電源は室温空間に置かれ、電流リードを介して超電導コイルに電流が供給されるが、同時に熱も侵入するため、超電導コイルを冷やすための冷媒(例えば液体ヘリウム)の消費が多い。停電時に、電源がダウンするので、コイル電流がゼロに減衰する。これは、コイルの安全を損なう場合がある。
一方、永久電流方式では、次のようなメリットがある。超電導コイルと永久電流スイッチとが超電導接合されるため、電気回路(超電導コイルと永久電流スイッチを含んだ電気回路)を冷やしている限り、電気回路の状態を、電気抵抗が0(ゼロ)で電流や磁場が減衰しない(具体的には1~100万年、もしくはそれより長い時定数で減衰する)状態に維持することができる。そのため、外部電源から超電導コイルに電流を供給し続ける必要はなく、コイル励磁時に一時的に電流を供給するだけでよい。外部電源から超電導コイルに電流を供給するのは一時的であるため、消費電力が小さい。また、超電導コイルに電流が供給された後、超電導コイルから外部電源にむけた配線が切り離され、冷媒で冷やされた空間内に電気回路(超電導コイルと永久電流スイッチを含んだ電気回路)の全体が置かれるため、外部からの熱の侵入は少なく、冷媒の消費が少ない。
これまで、永久電流方式は、低温超電導の分野では実用に至っておりNMRやMRIで用いられているが、高温超電導の分野ではほとんど実用に至っていない。永久電流方式には、超電導線材同士の超電導接合の技術と、超電導線材を使った永久電流スイッチの技術が必要である。低温超電導線材の耐磁場特性には限界があるので、低温超電導マグネットは23.5テスラが発生できる磁場の限界であった。一方、高温超電導線材を用いれば、23.5テスラ以上の磁場を容易に生成できる。既に、45.5テスラの磁場を生成した報告もある。NMRにおいては、計測感度や分解能が磁場と共に向上するので、高磁場ほど望ましい。一方、NMRやMRIではこれまで液体ヘリウムや超流動ヘリウムでマグネットを冷却してきたが、高温超電導を用いれば、液体水素温度での運転も可能になる。これは希少資源であるヘリウムの使用が不要になり、従来にないメリットが生まれる。高温超電導線材には希土類系高温超電導線材とビスマス系高温超電導線材とがある。高温超電導NMRやMRIを製作するには、永久電流運転が不可欠である。最近になり、両線材について、超電導接合が実用化され始めた。一方、永久電流スイッチについては、希土類系
高温超電導線材の永久電流スイッチは実用化されているが、ビスマス系高温超電導線材の永久電流スイッチは実用化されていない。
高温超電導線材の一種であるビスマス(Bi)系(高温)超電導線材は、図2(A),2(B)に示すように、Bi2223((Bi,Pb)SrCaCu8+δ)やBi2212(BiSrCaCu)などのBi系酸化物高温超電導体からなるフィラメントが金属のマトリクスに多数(例えば、約120本)埋まった構造を有する。この構造は従来の金属系線材と似ているため、Bi系超電導線材の幅広い応用が期待されている。さらに近年、Bi系超電導線材同士の超電導接合技術が開発された。しかしながら、Bi系超電導線材を用いた永久電流スイッチの作製は非常に困難であり、この意味でBi系超電導コイルの永久電流運転技術は未確立である。本発明は、ビスマス系高温超電導線材の永久電流スイッチ及びその製造方法に関するものである。
永久電流スイッチは超電導線材とヒーターを有し、超電導コイルを永久電流方式で運転する場合には、ヒーターで超電導線材を加熱して、超電導線材(線材中の超電導体)を常電導状態にする(超電導線材に常電導抵抗を発生させる)。この状態は、永久電流スイッチがOFFの状態に対応する。常電導抵抗を発生させるヒーターパワーを、OFFパワーと呼び、常電導抵抗の値をOFF抵抗と呼ぶ。この状態で、外部電源から超電導コイルに電流を供給する。その後、ヒーターによる加熱を切り、超電導線材の温度を下げて超電導状態(超電導線材に常電導抵抗が発生していない状態)に復帰させ、外部電源の電流をゼロに下げ、超電導コイルから取り外す。超電導状態に復帰してからの状態が永久電流スイッチがONの状態であり、超電導コイル電流は永久電流スイッチを介して永久電流状態で流れ続ける。このようにして、超電導コイルを永久電流方式で運転する。永久電流スイッチは、使用する超電導線材の量が少ないこと(すなわち小型)、OFFパワーが小さいこと(すなわち低電力)、OFF抵抗が大きいこと(すなわち電流遮断性が良い)、が求められる。特に、自己インダクタンスの大きなコイル程、大きなOFF抵抗が必要とされる。これは、OFF抵抗が小さいと、外部電源から共有される電流が、永久電流スイッチに一時的に分流してしまい、電流を供給するのに長い時間を要するためである。永久電流回路系に必要なOFF抵抗の値は、回路のインダクタンスや励磁速度により異なるが、一般に1mΩ~1Ωは必要である。
希土類系の高温超電導線材は数ミクロンの超電導薄膜を含む多層構造になっており、一般にマグネットの安全のために銅を全体の表面に数十ミクロンコートする構造になっている。銅をコートしない場合にも、十分な超電導特性を示すので、銅をコートしない線材をと加熱ヒーターを用いて永久電流スイッチの実用化に成功している。
一方、Bi系超電導線材のマトリクスには加熱処理時に酸素が拡散しやすいように、一般的に銀が使用される。マトリクスは、超電導フィラメントが常電導状態になった場合に、電流が迂回して流れる安定化材として機能する。銀の熱伝導率は高いため、図3に示すように、ヒーターでBi系超電導線材を加熱した際に、マトリクス(銀)を介してBi系超電導線材の長手方向に熱が拡散してしまい、Bi系超電導線材を常電導状態にすることが難しい。すなわち、OFFパワーが大きくなってしまう。さらに、Bi系超電導線材を常電導状態にできたとしても、銀の電気抵抗率が低いため、十分大きなOFF抵抗を得ることが難しい。このように、Bi系超電導線材を用いた場合には、性能の良い永久電流スイッチを作り出すことが難しいという課題があり、そのためにBi系高温超電導線材では、超電導スイッチが実用レベルに達していなかった。
永久電流スイッチに関する技術は、例えば、特許文献1,2および非特許文献1,2に開示されている。非特許文献1には、長い線材を無誘導巻きして加熱する技術が開示されている。特許文献1,2および非特許文献2には、はんだなどで接合した電気抵抗率の高
い材料を加熱する技術が開示されている。
特開平11-340533号公報 特開2003-069093号公報
三戸利行ら:「Mini-RT装置の設計・製作」,低温工学 39 182-192(2004) 五十嵐基仁ら:「永久電流高温超電導マグネットの開発-磁気浮上式鉄道への適用性検証-」,低温工学 39 651-659(2004)
しかしながら、非特許文献1に開示の技術では、永久電流スイッチが大型になってしまう。特許文献1,2および非特許文献2に開示の技術では、超電導接合ではなく、常電導材料(はんだ)での接合が行われ、電気抵抗を有する常電導材料を電流が流れるため、十分に長い時定数をともなった永久電流方式の運転が不可能である。
そこで、本発明は、ビスマス(Bi)系(高温)超電導線材を用いた実用化レベルの永久電流スイッチを提供することを目的とする。
本発明の永久電流スイッチは、ビスマス系超電導線材と、前記ビスマス系超電導線材の一部を加熱するように前記ビスマス系超電導線材の近傍に設けられたヒーターとを有し、前記ビスマス系超電導線材の前記一部におけるマトリクスとして、前記ビスマス系超電導線材の他の部分におけるマトリクスよりも熱伝導率が低く且つ電気抵抗率が高い材料を有する。
本発明では、ビスマス(Bi)系(高温)超電導線材のうち、ヒーターが設けられた部分において、マトリクスの熱伝導率が低い。そのため、ヒーターでBi系超電導線材を加熱した際に、Bi系超電導線材の長手方向に熱が拡散しにくく、Bi系超電導線材(ヒーターが設けられた部分)を容易に常電導状態にすることができる。すなわち、OFFパワーを小さくすることができる。また、ヒーターが設けられた部分において、マトリクスの電気抵抗率が高いため、電流を遮断するための大きなOFF抵抗を得ることができる。このように、本発明では、永久電流スイッチがOFFの状態を容易に作り出すことができる。もちろん、ヒーターを切れば、永久電流スイッチがONの状態を作り出すことができる。
一般的に、Bi系超電導線材のマトリクスには銀が使用される。そのため、前記ビスマス系超電導線材の前記他の部分におけるマトリクスは、銀であってもよい。前記ビスマス系超電導線材の前記一部におけるマトリクスは、銀を含んでもよい。マトリクスに含まれる材料は、純粋な銀に限られず、金などの金属を含む合金でもよい。
前記ビスマス系超電導線材の前記一部におけるマトリクスは、錫を含んでもよい。前記ビスマス系超電導線材の前記一部におけるマトリクスは、銀の中にはんだの元素が拡散した材料であってもよい。はんだは、鉛含有はんだであってもよいし、鉛フリーはんだであってもよい。前記はんだは、ビスマスと錫の合金であってもよい。錫の浸食性は高いため、後述の方法で永久電流スイッチを作製する際に、錫を含んだはんだを用いれば、Bi系
超電導線材のマトリクスの中にはんだの元素が拡散しやすくなり、マトリクスを容易に置き換えることができる。ビスマスは抵抗率が高いため、ビスマスを含んだはんだを用いれば容易に大きなOFF抵抗を得ることができる。ヒーターが設けられた部分のマトリクスは、合金や金属間化合物、セラミックスなどのいずれであってもよい。永久電流スイッチは、後述の方法とは異なる方法で作製されてもよい。
本発明の永久電流スイッチの作製方法は、銀のマトリクスを有するビスマス系超電導線材をはんだとともに加熱して、前記ビスマス系超電導線材の前記一部におけるマトリクスの中に前記はんだの元素を拡散させるステップと、前記ビスマス系超電導線材の前記一部にヒーターを設けるステップとを有する。超電導スイッチに用いる超電導線材は直線状または湾曲状でもよい。また、線材をインダクタンスがない無誘導コイルに巻きあげたものでもよい。無誘導コイルにすることでOFF抵抗を大きくできる。
本発明によれば、ビスマス(Bi)系(高温)超電導線材を用いた実用化レベルの永久電流スイッチを提供することができる。
図1は、電源通電方式と永久電流方式の違いを示す図である。 図2(A),2(B)は、Bi系超電導線材の構造の一例を示す図である。 図3は、本発明の課題の一例を示す図である。 図4は、本発明の実施形態に係る永久電流スイッチの作製方法の一例を示すフローチャートである。 図5は、本発明の実施形態に係る永久電流スイッチの構成の一例を示す模式図である。 図6は、本発明の実施形態に係る永久電流スイッチの評価結果の一例を示す図である。 図7は、本発明の実施形態に係る永久電流スイッチの評価結果の一例を示す図である。 図8(A)~8(C)は、本発明の実施形態に係る永久電流回路の一例を示す図であり、図8(D)は従来の回路を示す図である。 図9は、本発明の実施形態に係る永久電流回路におけるコイル中心磁場の時間変化の一例を示す図である。
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。本実施形態では、ビスマス(Bi)系(高温)超電導線材を用いた小型(例えば、長さ10cm以下)の永久電流スイッチを提供する。
(永久電流スイッチの作製)
発明者らは、以下の方法で永久電流スイッチの作製を試みた。図4は、本実施形態に係る永久電流スイッチの作製方法の一例を示すフローチャートである。
まず、ステップS401にて、Bi系超電導線材を用意する。ここで、Bi系超電導線材は、図2(A),2(B)に示すように、Bi2223((Bi,Pb)SrCaCu8+δ)やBi2212(BiSrCaCu)などのBi系酸化物高温超電導体からなるフィラメントがマトリクスに多数(例えば、約120本)埋まった構造を有する。図2(A)は、テープ線としてのBi系超電導線材を示し、図2(B)は、丸線としてのBi系超電導線材を示す。用意するBi系超電導線材は特に限定されないが、発明者らは、フィラメントがBi2223且つマトリクスが銀のテープ線を用意した
。なお、マトリクスに含まれる材料は、銀に限られず、金などの金属を含む合金あってもよい。
次に、ステップS402にて、用意したBi系超電導線材を置換材料とともにホットプレート上で加熱して、Bi系超電導線材の一部(約10cm)におけるマトリクスの中に置換材料の元素を拡散させる。発明者らは、Bi系超電導線材を、Bi90Sn10はんだ(ビスマス(Bi)を90wt%、錫(Sn)を10wt%含む合金)とともに、ホットプレート上で約573K(約300℃)に20分間加熱した。マトリクスの置換性を高めるために錫を含めるとともに、大きな抵抗を得るためにビスマスの割合を多くとった。こうすることで、Bi90Sn10はんだは溶け、Bi系超電導線材の一部は、溶けたBi90Sn10はんだに浸される。そして、Bi系超電導線材のうち、溶けたBi90Sn10はんだに浸された部分で、ビスマスと錫がBi系超電導線材のマトリクス(銀)の中に拡散し、Bi系超電導線材のマトリクスが、銀とビスマスと錫の合金のような材料に変化する。発明者らは、溶けたBi90Sn10はんだにBi系超電導線材のうちの長さ10cm以下の部分が浸されるようにした。
なお、置換材料はBi90Sn10はんだに限られない。置換材料は、Bi90Sn10とは異なる重量比でビスマスや錫を含んでいてもよいし、ビスマスと錫の合金でなくてもよい。置換材料は、鉛含有はんだであってもよいし、鉛フリーはんだであってもよいし、はんだでなくてもよい。置換材料は、用意したBi系超電導線材のマトリクス(銀)よりも熱伝導率が低く且つ電気抵抗率が高い材料であることが好ましい。但し、錫の浸食性は高いため、錫を含んだはんだを置換材料に用いれば、用意したBi系超電導線材のマトリクスの中にはんだの元素が拡散しやすくなり、マトリクスを容易に変更することができる。
次に、ステップS403にて、Bi系超電導線材の一部(マトリクスが変化した部分)を加熱するようにBi系超電導線材の近傍にヒーターを設ける。ヒーターの仕様は特に限定されないが、発明者らは、長さが30cmで電気抵抗が41Ωのヒーター線を、巻き数27ターンでBi系超電導線材の一部に巻きつけた。
図5は、上述の方法で作製された永久電流スイッチ500の構成の一例を示す模式図である。Bi系超電導線材501の一部(ヒーター502が設けられた部分)501aにおけるマトリクスとして、Bi系超電導線材501の他の部分501bにおけるマトリクスよりも熱伝導率が低く且つ電気抵抗率が高い材料が使用されている。
なお、永久電流スイッチの作製方法は、上述の方法に限られない。Bi系超電導線材の一部(ヒーターが設けられた部分)におけるマトリクスとして、Bi系超電導線材の他の部分におけるマトリクスよりも熱伝導率が低く且つ電気抵抗率が高い材料が使用されれば、どのような方法で永久電流スイッチが作製されてもよい。
(永久電流スイッチの評価)
発明者らは、本実施形態に係る永久電流スイッチが好適に動作するか否かを評価した。発明者らは、本実施形態に係る永久電流スイッチを上述の方法で作製するとともに、比較用の永久電流スイッチも作製した。本実施形態に係る永久電流スイッチでは、Bi系超電導線材は、フィラメントがBi2223且つマトリクスが銀のテープ線の一部(長さ10cm以下の部分)におけるマトリクスを、Bi90Sn10はんだを使って変更した線材である。比較用の永久電流スイッチでは、Bi系超電導線材のマトリクスは銀のまま変更されていない。比較用の永久電流スイッチにおけるその他の構成は、本実施形態に係る永久電流スイッチと同じである。
発明者らは、作製した永久電流スイッチを液体窒素(77K)に浸した状態でヒーターに電力を供給して、Bi系超電導線材の電気抵抗を測定した。図6は、そのような実験の結果の一例を示す。図6の横軸は、ヒーターに供給した電力を示し、図6の縦軸は、Bi系超電導線材の電気抵抗を示す。図6から、本実施形態に係る永久電流スイッチでは、比較用の永久電流スイッチに比べ、同じ電力で得られる電気抵抗が高いことがわかる。例えば、10Wの電力をヒーターに供給した場合に、比較用の永久電流スイッチでは1mΩ程度の電気抵抗しか得られなかったが、本実施形態に係る永久電流スイッチでは約3.3mΩ、つまり比較用の永久電流スイッチの約3倍の電気抵抗が得られた。このため、本実施形態に係る永久電流スイッチでは、所望の電気抵抗を、比較用の永久電流スイッチよりも少ない電力で得ることができる。
発明者らは、作製した永久電流スイッチを液体ヘリウム(4.2K)に浸した状態でも同様の実験を行った。図7は、そのような実験の結果の一例を示す。図7の横軸は、ヒーターに供給した電力を示し、図7の縦軸は、Bi系超電導線材の電気抵抗を示す。図7からも、本実施形態に係る永久電流スイッチでは、比較用の永久電流スイッチに比べ、同じ電力で得られる電気抵抗が高いことがわかる。
このように、本実施形態に係る永久電流スイッチでは、ヒーターで加熱することにより高い電気抵抗が容易に得られる。この結果から、次のような知見が得られる。
(1)マトリクスの熱伝導率を局所的に下げることに成功している。
(2)マトリクスの熱伝導率が低いことで、フィラメント(Bi系酸化物高温超電導体)の温度を効率良く上げて、フィラメントを容易に常電導状態にすることができる。つまり、永久電流スイッチに電気抵抗(常電導抵抗)を容易に発生させることができる。
(3)マトリクスの電気抵抗率を局所的に上げることに成功している。
(4)マトリクスの電気抵抗率が高いことで、永久電流スイッチには大きな常電導抵抗が発生し、電流を遮断する(電流の流れを抑制する)ことができる。
上述した(1)~(4)の知見は、永久電流スイッチがOFFの状態(超電導コイルからの電流が永久電流スイッチで遮断される状態)を容易に作り出せることの証拠と言える。もちろん、ヒーターを切れば、永久電流スイッチがONの状態(超電導コイルからの電流が永久電流スイッチを流れる状態)を作り出すことができる。このように、本実施形態に係る永久電流スイッチは好適に動作する。
一方で、比較用の永久電流スイッチでは、ヒーターで加熱しても高い電気抵抗が容易に得られないため、上述した(1)~(4)の知見は得られない。つまり、比較用の永久電流スイッチは、永久電流スイッチがOFFの状態を容易に作り出すことができず、好適に動作しない。
なお、Bi系超電導線材の一部(ヒーターが設けられた部分)におけるマトリクスとして、Bi系超電導線材の他の部分におけるマトリクスよりも熱伝導率が低く且つ電気抵抗率が高い材料を有していれば、永久電流スイッチの構成は特に限定されない。例えば、Bi系超電導線材は丸線であってもよいし、Bi系超電導線材のフィラメントはBi2212などであってもよい。ヒーターが設けられた部分のマトリクスは、合金や金属間化合物、セラミックスなどのいずれであってもよい。
(まとめ)
以上述べたように、本実施形態では、Bi系超電導線材のうち、ヒーターが設けられた部分において、マトリクスの熱伝導率が低い。そのため、ヒーターでBi系超電導線材を加熱した際に、Bi系超電導線材の長手方向に熱が拡散しにくく、Bi系超電導線材(ヒーターが設けられた部分)を容易に常電導状態にすることができる。また、ヒーターが設
けられた部分において、マトリクスの電気抵抗率が高いため、Bi系超電導線材は、常電導状態になると、全体として電気抵抗の高い線材となり、電流を遮断する(電流の流れを抑制する)ことができる。このように、本実施形態では、永久電流スイッチがOFFの状態を容易に作り出すことができる。もちろん、ヒーターを切れば、永久電流スイッチがONの状態を作り出すことができる。さらに、本実施形態では、Bi系超電導線材を長くする必要はない。もしくは、より大きなOFF抵抗を得たい場合に、線材の長さを抑制できる。したがって、本実施形態によれば、Bi系超電導線材を用いた小型(例えば、長さ10cm以下)の永久電流スイッチを提供することができる。
なお、上述の実施形態では、永久電流スイッチのBi系超電導線材が短いもの(長さ10cm以下)についての実験に基づいて記載されているが、より大きいOFF抵抗(例えば10mΩから1Ω)の永久電流スイッチを製作するには、50cmから50mの長さのBi系超電導線材を用いて超電導スイッチを製作すればよい。この場合、OFF抵抗が大きくなると、線材が長くなりすぎて直線状に配置できなくなるので、無誘導コイル(インダクタンスがゼロのコイル)状にBi系高温超電導線材を巻きあげ、ヒーターを配して永久電流スイッチを構成すればよい。
本実施形態に係る永久電流スイッチと、Bi系高温超電導線材の超電導接合技術とを組み合わせれば、Bi系高温超電導コイルの永久電流回路を構成できる。そのような永久電流回路の一例を図8(A)~(C)に示す。図8(A)では、1つのBi系高温超電導コイルと永久電流スイッチとが直列に超電導接合されている。図8(B)では、複数のBi系高温超電導コイルと永久電流スイッチとが直列に超電導接合されている。複数のBi系高温超電導コイルは同心円状に配置されている。図8(C)では、図8(B)と同様の永久電流回路(Bi系高温超電導コイルの永久電流回路)が、低温超電導コイルの永久電流回路と組み合わせて使われている。図8(C)において、Bi系高温超電導コイルと、低温超電導コイルとは、同心円状に配置されている。図8(D)は、図8(C)の回路に似た従来の回路を示す。図8(D)の回路では、低温超電導線材とBi系高温超電導線材の常電導接合により、Bi系高温超電導コイルの永久電流回路と低温超電導コイルの永久電流回路とが互いに接続されている。常電導接合の部分には電気抵抗が発生するため、図8(D)の回路は完全な超電導永久電流回路とはならない。一方で、図8(C)の回路は常電導接合を必要としないため、完全な超電導永久電流回路となる。
発明者らは、図8(A)の回路が永久電流回路として機能することを実験により確認した。一例として、図8(A)の回路での実験結果を、図9に示す。図9の横軸は時間を示し、図9の縦軸はコイル中心磁場(Bi系高温超電導コイルの中心部分の磁場)を示す。図9には、比較のために、回路の抵抗が10-10Ωである場合、回路の抵抗が10-11Ωである場合、および回路の抵抗が10-12Ωである場合のそれぞれについて、コイル中心磁場の減衰を破線で示している。図9から、図8(A)の回路では、コイル中心磁場の減衰が確認されず、回路の抵抗が10-12Ωである場合と同等、もしくはそれ以上に長い時定数が実現できている。このように、図8(A)の回路が永久電流回路として機能することが確認できた。同様に、図8(B),8(C)の回路が永久電流回路として機能することが容易に推定できる。
なお、上述した実施形態はあくまで一例であり、本発明の要旨の範囲内で上述した実施形態を適宜変形したり変更したりすることにより得られる形態も、本発明に含まれる。
500:永久電流スイッチ 501:Bi系超電導線材 502:ヒーター
501a:Bi系超電導線材の一部 501b:Bi系超電導線材の他の部分

Claims (7)

  1. ビスマス系超電導線材と、
    前記ビスマス系超電導線材の一部を加熱するように前記ビスマス系超電導線材の近傍に設けられたヒーターと
    を有し、
    前記ビスマス系超電導線材の前記一部におけるマトリクスとして、前記ビスマス系超電導線材の他の部分におけるマトリクスよりも熱伝導率が低く且つ電気抵抗率が高い材料を有する
    ことを特徴とする永久電流スイッチ。
  2. 前記ビスマス系超電導線材の前記他の部分におけるマトリクスは、銀である
    ことを特徴とする請求項1に記載の永久電流スイッチ。
  3. 前記ビスマス系超電導線材の前記一部におけるマトリクスは、銀を含む
    ことを特徴とする請求項1または2に記載の永久電流スイッチ。
  4. 前記ビスマス系超電導線材の前記一部におけるマトリクスは、錫を含む
    ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の永久電流スイッチ。
  5. 前記ビスマス系超電導線材の前記一部におけるマトリクスは、銀の中にはんだの元素が拡散した材料である
    ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の永久電流スイッチ。
  6. 前記はんだは、ビスマスと錫の合金である
    ことを特徴とする請求項5に記載の永久電流スイッチ。
  7. 銀のマトリクスを有するビスマス系超電導線材をはんだとともに加熱して、前記ビスマス系超電導線材の前記一部におけるマトリクスの中に前記はんだの元素を拡散させるステップと、
    前記ビスマス系超電導線材の前記一部を加熱するように前記ビスマス系超電導線材の近傍にヒーターを設けるステップと
    を有することを特徴とする永久電流スイッチの作製方法。
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