JP2023008334A - ハイブリッド車両の制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】内燃機関の始動制御に伴うショックの発生を抑制しつつ、ショックの発生よりも内燃機関の始動を優先したい状況ではその始動を優先させることによりドライバビリティの低下を抑制できるハイブリッド車両の制御装置を提供する。【解決手段】走行用駆動力源としてのエンジン12及び電動機MGと、動力伝達経路PTのうちエンジン12と電動機MGとの間に配設されたK0クラッチ20と、を備えるハイブリッド車両10の、電子制御装置90は、(a)所定の予め設定された第1始動要求の検知に基づいて実行されるK0クラッチ20を係合させて電動機MGによりエンジン12を始動させる始動制御を、所定の予め設定された遅延要求の検知に基づいて所定期間Td遅延させる遅延制御が実行されている場合において、所定の予め設定された第2始動要求の検知に基づいて遅延制御の実行を中止して始動制御を実行する。【選択図】図1
Description
本発明は、動力伝達経路のうち内燃機関と電動機との間に配設された摩擦係合装置を備えるハイブリッド車両の、制御装置に関する。
動力伝達経路のうち内燃機関と電動機との間に配設された摩擦係合装置を備えるハイブリッド車両において、内燃機関の始動条件が成立した場合、電動機にクランキングトルクを出力させるとともに摩擦係合装置を係合制御させることによって内燃機関を始動させる方法が知られている。例えば、特許文献1に記載のものがそれである。
特許文献1に記載の方法では、電動機を用いて内燃機関を始動させる始動制御と、他の制御(例えば、自動変速機の変速制御や摩擦係合装置の油圧学習制御)と、が同時期になった場合、摩擦係合装置における電動機側の回転軸の回転速度が他の制御によって変動することにより、摩擦係合装置の回転速度の同期が適切なタイミングで行われずショックが発生するおそれがある。そのため、このような場合には、ショックの発生を抑制するために内燃機関の始動制御の実行を遅延させることが考えられる。しかし、ショックの発生の抑制よりも内燃機関の始動を優先したい状況にある場合、内燃機関の始動が遅延することによりドライバビリティが低下してしまうおそれがある。
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、内燃機関の始動制御に伴うショックの発生を抑制しつつ、ショックの発生よりも内燃機関の始動を優先したい状況ではその始動を優先させることによりドライバビリティの低下を抑制できるハイブリッド車両の制御装置を提供することにある。
第1発明の要旨とするところは、走行用駆動力源としての内燃機関及び電動機と、前記内燃機関と駆動輪との間の動力伝達経路のうち前記内燃機関と前記電動機との間に配設された摩擦係合装置と、を備えるハイブリッド車両の、制御装置であって、所定の予め設定された第1始動要求の検知に基づいて実行される前記摩擦係合装置を係合させて前記電動機により前記内燃機関を始動させる始動制御を、所定の予め設定された遅延要求の検知に基づいて所定期間遅延させる遅延制御が実行されている場合において、所定の予め設定された第2始動要求の検知に基づいて前記遅延制御の実行を中止して前記始動制御を実行することにある。
第1発明のハイブリッド車両の制御装置によれば、所定の予め設定された第1始動要求の検知に基づいて実行される前記摩擦係合装置を係合させて前記電動機により前記内燃機関を始動させる始動制御を、所定の予め設定された遅延要求の検知に基づいて所定期間遅延させる遅延制御が実行されている場合において、所定の予め設定された第2始動要求の検知に基づいて前記遅延制御の実行が中止されて前記始動制御が実行される。所定の遅延要求の検知に基づいて電動機を用いて内燃機関を始動させる始動制御を所定期間遅延させる遅延制御が実行されることで内燃機関の始動制御に伴うショックの発生が抑制される。しかし、内燃機関の始動制御を遅延させる遅延制御が実行されている場合において、ショックの発生よりも内燃機関の始動を優先させたい所定の第2始動要求が検知されると、内燃機関の遅延制御の実行が中止されて内燃機関の始動制御が実行される。これにより、内燃機関の始動制御に伴うショックの発生が抑制されつつ、ショックの発生よりも内燃機関の始動を優先したい状況ではその始動が優先させられることによりドライバビリティの低下が抑制される。
第2発明のハイブリッド車両の制御装置によれば、第1発明において、前記ハイブリッド車両には、前記動力伝達経路のうち前記電動機と前記駆動輪との間に配設された自動変速機が更に備えられ、(a)前記第1始動要求が検知されるのは、要求駆動トルクが前記電動機の出力のみで賄える範囲よりも大きい場合、前記内燃機関の暖機が必要である場合、及び前記電動機に対して電力を授受する蓄電装置の充電状態値が所定のエンジン始動閾値未満である場合のいずれかであり、(b)前記遅延要求が検知されるのは、前記摩擦係合装置の油圧学習制御、前記自動変速機の変速制御、及び停車状態における前記摩擦係合装置の作動状態を制御する作動油の流量制御、のいずれかが実行された場合である。これにより、所定の第1始動要求による内燃機関の始動制御と、摩擦係合装置の油圧学習制御や自動変速機の変速制御や作動油の流量制御と、が同時期になるとともに所定の第2始動要求が検知されない場合には、内燃機関の始動制御を遅延させる遅延制御が実行されることで内燃機関の始動制御に伴うショックの発生が抑制される。
第3発明のハイブリッド車両の制御装置によれば、第2発明において、前記第2始動要求が検知されるのは、運転者によるアクセル操作、ブレーキ操作、及びシフト操作のいずれかが実行された場合である。このように、所定の遅延要求により内燃機関の始動制御を遅延させる遅延制御が実行されている場合において、運転者によりアクセル操作、ブレーキ操作、及びシフト操作のいずれかが実行されると所定の第2始動要求が検知され、内燃機関の遅延制御の実行が中止される。これにより、運転者によりアクセル操作、ブレーキ操作、及びシフト操作のいずれかが実行されて内燃機関の始動制御に伴うショックの発生の抑制よりも内燃機関の始動を優先したい状況では、その始動が優先させられることによりドライバビリティの低下が抑制される。
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比及び形状等は必ずしも正確に描かれていない。
本発明の実施例に係る電子制御装置90を備えるハイブリッド車両10(以下、単に「車両10」と記す。)の概略構成図であるとともに、車両10における各種制御のための制御機能の要部を表す機能ブロック図である。
車両10は、走行用駆動力源であるエンジン12及び電動機MGと、エンジン12と駆動輪14との間の動力伝達経路PTに設けられた動力伝達装置16と、を備える。車両10は、ハイブリッド車両である。
エンジン12は、周知の内燃機関である。エンジン12は、後述する電子制御装置90によって、車両10に備えられたスロットルアクチュエータや燃料噴射装置や点火装置等を含むエンジン制御装置50が制御されることによりエンジン12の出力トルクであるエンジントルクTe[Nm]が制御される。なお、エンジン12は、本発明における「内燃機関」に相当する。
動力伝達装置16は、車体に取り付けられる非回転部材であるケース18内において、エンジン12側から順に、ダンパー42、K0クラッチ20、電動機連結軸36、トルクコンバータ22、自動変速機24等を備える。動力伝達装置16は、自動変速機24の出力回転部材である変速機出力軸26に連結されたプロペラシャフト28、プロペラシャフト28に連結されたディファレンシャルギヤ30、ディファレンシャルギヤ30に連結された1対のドライブシャフト32等を備える。
動力伝達装置16は、エンジン12とダンパー42とを連結するエンジン連結軸34を備える。ダンパー42は、エンジン12の脈動を吸収しつつその回転を伝達する周知のダンパー装置、例えば振り子ダンパーである。
K0クラッチ20は、エンジン12と駆動輪14との間の動力伝達経路PTのうちエンジン12と電動機MGとの間に配設されたクラッチである。電動機連結軸36は、K0クラッチ20とトルクコンバータ22とを連結している。K0クラッチ20は、例えば多板式或いは単板式のクラッチにより構成される油圧式の摩擦係合装置である。K0クラッチ20は、油圧制御回路56から供給される調圧された油圧であるK0油圧PRk0[Pa]によりK0クラッチ20の伝達トルク容量(K0クラッチ20の係合力)であるK0トルクTk0[Nm]が変化させられることで、係合状態や解放状態などの作動状態つまり制御状態が切り替えられる。以下、特に区別しない場合には、K0クラッチ20について「係合」には、完全係合と半係合(スリップ係合)とが含まれる。
車両10において、K0クラッチ20が係合状態にある場合は、エンジン12とトルクコンバータ22とがダンパー42及びK0クラッチ20を介して動力伝達可能に連結される。一方、K0クラッチ20が解放状態にある場合は、エンジン12とトルクコンバータ22との間の動力伝達が遮断される。K0クラッチ20は、エンジン12と電動機MGとを断接するクラッチとして機能する。K0クラッチ20が係合状態にある場合には、電動機連結軸36は、その一端がダンパー42を介してエンジン12に連結されることでエンジン12により回転駆動させられる。なお、K0クラッチ20は、本発明における「摩擦係合装置」に相当する。
トルクコンバータ22は、周知のトルクコンバータである。トルクコンバータ22は、電動機連結軸36に連結されたポンプ翼車22aと、自動変速機24の入力回転部材である変速機入力軸38に連結されたタービン翼車22bと、ポンプ翼車22aとタービン翼車22bとを直結するロックアップクラッチ40と、を備える。トルクコンバータ22は、走行用駆動力源(エンジン12、電動機MG)の各々からの走行用駆動力を流体を介して電動機連結軸36から変速機入力軸38へ伝達する流体式伝動装置である。トルクコンバータ22は、K0クラッチ20及びダンパー42を介してエンジン12に連結されている。自動変速機24は、トルクコンバータ22に連結されており、動力伝達経路PTのうちトルクコンバータ22と駆動輪14との間の伝達経路に設けられている。トルクコンバータ22及び自動変速機24は、各々、走行用駆動力源(エンジン12、電動機MG)と駆動輪14との間の動力伝達経路PTの一部を構成している。
電動機MGは、電力から機械的な動力を発生させる電動機としての機能及び機械的な動力から電力を発生させる発電機としての機能を有する回転電気機械であって、所謂モータジェネレータである。電動機MGは、後述するインバータ52を介して車両10に備えられたバッテリ54に接続されている。バッテリ54は、電動機MGに対して電力を授受する蓄電装置である。電動機MGは、後述する電子制御装置90によってインバータ52が制御されることにより、電動機MGの出力トルクである電動機トルクTm[Nm]が制御される。電動機トルクTmは、例えば電動機MGの回転方向がエンジン12の運転時と同じ回転方向である正回転の場合、加速側となる正トルクでは力行トルクであり、減速側となる負トルクでは回生トルクである。前記電力は、特に区別しない場合には電気エネルギーも同意である。前記動力は、特に区別しない場合にはトルクや力も同意である。
電動機MGは、ケース18内において、電動機連結軸36に動力伝達可能に連結されている。つまり、電動機MGは、動力伝達経路PTのうちK0クラッチ20とトルクコンバータ22との間の伝達経路に動力伝達可能に連結されている。見方を換えれば、電動機MGは、K0クラッチ20を介することなくトルクコンバータ22や自動変速機24と動力伝達可能に連結されている。
自動変速機24は、動力伝達経路PTのうち走行用駆動力源(エンジン12及び電動機MG)と駆動輪14との間に配設され、具体的には動力伝達経路PTのうち電動機MGと駆動輪14との間に配設され、例えば不図示の1組又は複数組の遊星歯車装置と、複数の変速用係合装置CBと、を備える、公知の遊星歯車式の自動変速機である。変速用係合装置CBは、例えば公知の油圧式の摩擦係合装置である。変速用係合装置CBは、各々、油圧制御回路56から供給される調圧された油圧であるCB油圧PRcb[Pa]によりそれぞれの伝達トルク容量であるCBトルクTcb[Nm]が変化させられることで、係合状態や解放状態などの制御状態が切り替えられる。
自動変速機24は、例えば変速用係合装置CBのうちの何れかの係合装置の係合によって、変速比(ギヤ比ともいう)γat(=AT入力回転速度Ni[rpm]/AT出力回転速度No[rpm])が異なる複数の変速段(ギヤ段ともいう)のうちの何れかのギヤ段が形成される有段変速機である。自動変速機24は、後述する電子制御装置90によって、運転者のアクセル操作や車速V[km/h]等に応じて、変速用係合装置CBのうちの自動変速機24の変速に関与する係合装置である所定の係合装置の制御状態が切り替えられることで、形成されるギヤ段が切り替えられる。AT入力回転速度Niは、変速機入力軸38の回転速度であり、自動変速機24の入力回転速度である。AT入力回転速度Niは、トルクコンバータ22の出力回転速度であるタービン回転速度Nt[rpm]と同値である。AT入力回転速度Niは、タービン回転速度Ntで表すことができる。AT出力回転速度Noは、変速機出力軸26の回転速度であり、自動変速機24の出力回転速度である。
例えば、自動変速機24の変速制御においては、変速用係合装置CBの何れかの掴み替えにより変速が実行される、すなわち変速用係合装置CBの係合状態と解放状態との切替えにより変速が実行される、所謂クラッチツゥクラッチ変速が実行される。ここで、クラッチツゥクラッチ変速において解放状態から係合状態へ切り替えられる変速用係合装置CBを「係合側係合装置CBcon」といい、クラッチツゥクラッチ変速において係合状態から解放状態へ切り替えられる変速用係合装置CBを「解放側係合装置CBdis」ということとする。また、係合側係合装置CBconの断接状態を制御する油圧アクチュエータに供給されるCB油圧PRcbを「係合側作動油圧Pcon[Pa]」といい、解放側係合装置CBdisの断接状態を制御する油圧アクチュエータに供給されるCB油圧PRcbを「解放側作動油圧Pdis[Pa]」ということとする。
油圧制御回路56は、機械式オイルポンプであるMOP58や電動オイルポンプであるEOP60から圧送されたオイル(作動油OIL)の油圧を元圧として、ケース18内の各部に必要な作動油OILを供給する。例えば、油圧制御回路56内には、K0クラッチ20の断接制御用であるK0用電磁弁SC、及び、自動変速機24の変速制御用である4つの変速用電磁弁SL1~SL4(以下、特に区別しない場合には、「変速用電磁弁SL」と記す。)が設けられている。これらK0用電磁弁SC,変速用電磁弁SLは、例えば周知のリニアソレノイド弁であって、ソレノイドに駆動電流を供給することにより電気エネルギーを駆動力に変換する装置である電磁部と、その電磁部の駆動により作動油OILを調圧して作動油圧を発生させる調圧部と、を備える。
K0用電磁弁SCの駆動電流が制御されることにより、K0クラッチ20の断接状態を制御する油圧アクチュエータに供給される作動油圧が調整されてK0クラッチ20の断接状態が制御される。例えば、K0用電磁弁SCの駆動電流がオフ(駆動電流が流れない状態)とされることでK0クラッチ20が解放状態とされ、K0用電磁弁SCの駆動電流がオン(駆動電流が流れる状態)とされることでK0クラッチ20が係合状態とされる。
変速用電磁弁SLの各駆動電流のオン/オフの組み合わせが制御されることにより、自動変速機24に設けられた変速用係合装置CBの断接状態を制御する各油圧アクチュエータに供給される作動油圧が調整される。これにより、自動変速機24は、ニュートラル状態にされたり所望の変速比γatが形成されたりする。変速用係合装置CBは、ブレーキやクラッチなどの例えば湿式多板型の油圧式摩擦係合装置である。例えば、クラッチツゥクラッチ変速における係合側作動油圧Pcon及び解放側作動油圧Pdisの指示圧は、係合側係合装置CBcon及び解放側係合装置CBdisの係合速度、解放速度、及び係合ショックが許容範囲内となるように、実験的に或いは設計的に予め定められた変速用タイムチャートに従って制御される。
動力伝達装置16において、エンジン12から出力される動力は、K0クラッチ20が係合された場合に、エンジン連結軸34から、K0クラッチ20、電動機連結軸36、トルクコンバータ22、自動変速機24、プロペラシャフト28、ディファレンシャルギヤ30、及びドライブシャフト32等を順次介して駆動輪14へ伝達される。電動機MGから出力される動力は、K0クラッチ20の制御状態にかかわらず、電動機連結軸36から、トルクコンバータ22、自動変速機24、プロペラシャフト28、ディファレンシャルギヤ30、及びドライブシャフト32等を順次介して駆動輪14へ伝達される。
車両10は、MOP58、EOP60、ポンプ用モータ62等を備える。MOP58は、ポンプ翼車22aに連結されており、走行用駆動力源(エンジン12、電動機MG)により回転駆動させられて動力伝達装置16で用いられる作動油OILを吐出する。ポンプ用モータ62は、EOP60を回転駆動するためのEOP専用のモータである。EOP60は、ポンプ用モータ62により回転駆動させられて作動油OILを吐出する。MOP58やEOP60が吐出した作動油OILは、油圧制御回路56へ供給される。油圧制御回路56は、MOP58及び/又はEOP60が吐出した作動油OILを元にして各々調圧した、CB油圧PRcb、K0油圧PRk0などを供給する。
車両10は、電子制御装置90を備える。電子制御装置90は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより車両10の各種制御を実行する。電子制御装置90は、必要に応じてエンジン制御用、電動機制御用、油圧制御用等の各コンピュータを含んで構成される。なお、電子制御装置90は、本発明における「制御装置」に相当する。
電子制御装置90には、車両10に備えられた各種センサ等(例えばエンジン回転速度センサ70、タービン回転速度センサ72、出力回転速度センサ74、電動機回転速度センサ76、アクセル開度センサ78、スロットル弁開度センサ80、バッテリセンサ84など)による検出値に基づく各種信号等(例えばエンジン12の回転速度であるエンジン回転速度Ne[rpm]、AT入力回転速度Niと同値であるタービン回転速度Nt、車速Vに対応するAT出力回転速度No、電動機MGの回転速度である電動機回転速度Nm[rpm]、運転者の加速操作の大きさを表す運転者のアクセル操作量であるアクセル開度θacc[%]、電子スロットル弁の開度であるスロットル弁開度θth[%]、バッテリ54のバッテリ温度THbat[℃]やバッテリ充放電電流Ibat[A]やバッテリ電圧Vbat[V]など)が、それぞれ入力される。
電子制御装置90からは、車両10に備えられた各装置(例えばエンジン制御装置50、インバータ52、油圧制御回路56、ポンプ用モータ62など)に各種指令信号(例えばエンジン12を制御するためのエンジン制御信号Se、電動機MGを制御するための電動機制御信号Sm、変速用係合装置CBを制御するためのCB油圧制御信号ScbやK0クラッチ20を制御するためのK0油圧制御信号Sk0やロックアップクラッチ40を制御するためのLU油圧制御信号Slu、EOP60を制御するためのEOP制御信号Seopなど)が、それぞれ出力される。
電子制御装置90は、ハイブリッド制御手段すなわちハイブリッド制御部92と、クラッチ制御手段すなわちクラッチ制御部94と、変速制御手段すなわち変速制御部96と、遅延可否判定手段すなわち遅延可否判定部98と、を機能的に備える。
ハイブリッド制御部92は、エンジン12の作動を制御するエンジン制御手段すなわちエンジン制御部92aと、インバータ52を介して電動機MGの作動を制御する電動機制御手段すなわち電動機制御部92bと、を機能的に備え、それらの制御機能によりエンジン12及び電動機MGによるハイブリッド駆動制御等を実行する。
ハイブリッド制御部92は、例えば駆動要求量マップにアクセル開度θacc及び車速Vを適用することで、運転者による車両10に対する駆動要求量を算出する。前記駆動要求量マップは、アクセル開度θacc及び車速Vと駆動要求量との間の関係が予め実験的に或いは設計的に求められて記憶されたマップである。前記駆動要求量は、例えば駆動輪14における要求駆動トルクTrdem[Nm]である。要求駆動トルクTrdemは、見方を換えればそのときの車速Vにおける要求駆動パワーPrdem[W]である。前記駆動要求量としては、駆動輪14における要求駆動力Frdem[N]、変速機出力軸26における要求AT出力トルク等を用いることもできる。前記駆動要求量の算出では、車速Vに替えてAT出力回転速度Noなどを用いても良い。
ハイブリッド制御部92は、伝達損失、補機負荷、自動変速機24の変速比γat、バッテリ54の充電可能電力Win[W]や放電可能電力Wout[W]等を考慮して、要求駆動パワーPrdemを実現するように、エンジン12を制御するエンジン制御信号Seと、電動機MGを制御する電動機制御信号Smと、を出力する。エンジン制御信号Seは、例えばそのときのエンジン回転速度NeにおけるエンジントルクTeを出力するエンジン12のパワーであるエンジンパワーPe[W]の指令値である。電動機制御信号Smは、例えばそのときの電動機回転速度Nmにおける電動機トルクTmを出力する電動機MGの消費電力Wm[W]の指令値である。
バッテリ54の充電可能電力Winは、バッテリ54の入力電力の制限を規定する入力可能な最大電力であり、バッテリ54の入力制限を示している。バッテリ54の放電可能電力Woutは、バッテリ54の出力電力の制限を規定する出力可能な最大電力であり、バッテリ54の出力制限を示している。バッテリ54の充電可能電力Winや放電可能電力Woutは、例えばバッテリ温度THbat及びバッテリ54の充電状態値(予め定められた満充電容量に対する実際に蓄電されている充電量の比)SOC[%]に基づいて電子制御装置90により算出される。
ハイブリッド制御部92は、電動機MGの出力のみで要求駆動トルクTrdemを賄える場合には、走行モードをモータ走行(=BEV走行)モードとする。ハイブリッド制御部92は、BEV走行モードでは、K0クラッチ20の解放状態において、走行用駆動力源(エンジン12、電動機MG)のうちの電動機MGのみから走行用駆動力を出力して走行するBEV(Battery Electric Vehicle)走行を行う。一方で、ハイブリッド制御部92は、少なくともエンジン12の出力を用いないと要求駆動トルクTrdemを賄えない場合には、走行モードをエンジン走行モードすなわちハイブリッド走行(=HEV走行)モードとする。ハイブリッド制御部92は、HEV走行モードでは、K0クラッチ20の係合状態において、走行用駆動力源(エンジン12、電動機MG)のうちの少なくともエンジン12から走行用駆動力を出力して走行するエンジン走行すなわちHEV(Hybrid Electric Vehicle)走行を行う。他方で、ハイブリッド制御部92は、電動機MGの出力のみで要求駆動トルクTrdemを賄える場合であっても、バッテリ54の充電状態値SOCが予め定められた所定のエンジン始動閾値未満となる場合やエンジン12等の暖機が必要な場合などには、HEV走行モードを成立させる。エンジン始動閾値は、エンジン12を強制的に始動してバッテリ54を充電する必要がある充電状態値SOCであることを判定するための予め定められた閾値である。このように、ハイブリッド制御部92は、要求駆動トルクTrdem等に基づいて、HEV走行中にエンジン12を自動停止したりそのエンジン停止後にエンジン12を再始動したり、BEV走行中にエンジン12を始動したり、停車状態においてエンジン12を自動停止したりそのエンジン停止後にエンジン12を再始動したりして、BEV走行モードとHEV走行モードとを切り替える。
エンジン制御部92aは、車両10に対する駆動要求量を実現するようにエンジントルクTeを制御する。電動機制御部92bは、車両10に対する駆動要求量を実現するように電動機トルクTmを制御する。具体的には、BEV走行モードにおいては、電動機制御部92bは、要求駆動トルクTrdemを実現するように電動機トルクTmを制御する。HEV走行モードにおいては、エンジン制御部92aは、要求駆動トルクTrdemの全部又は一部を実現するようにエンジントルクTeを制御し、電動機制御部92bは、要求駆動トルクTrdemに対してエンジントルクTeでは不足するトルク分を補うように電動機トルクTmを制御する。
ハイブリッド制御部92は、エンジン12の始動判定を行う第1始動要求判定手段すなわち第1始動要求判定部92cと、エンジン12の始動制御を実行する始動制御手段すなわち始動制御部92dと、を機能的に更に備える。
第1始動要求判定部92cは、所定の予め設定された第1始動要求によりエンジン12の始動が要求されたか否かを判定する。つまり、第1始動要求判定部92cは、第1始動要求の有無を検知する。例えば、バッテリ54の充電状態値SOCがエンジン始動閾値未満である場合に、第1始動要求が検知される。
クラッチ制御部94は、第1始動要求判定部92cによる第1始動要求の検知に基づいてエンジン12の始動制御を実行するようにK0クラッチ20を制御するK0クラッチ油圧制御を実行する。例えば、K0クラッチ油圧制御は、エンジン12をクランキングするためにエンジン回転速度Neを引き上げるトルクであるクランキングトルクTcrをエンジン12側へ伝達するためのK0トルクTk0が得られるように、解放状態のK0クラッチ20を係合状態に向けて制御するためのK0油圧制御信号Sk0を油圧制御回路56へ出力する制御である。「クランキング」とは、電動機MGからクランキングトルクTcr[Nm]を出力させるとともにK0クラッチ20を係合状態とすることで、エンジン12を始動するためにエンジン12に連結されたエンジン連結軸34を回転させることである。K0クラッチ指示圧PRk0_tgtは、K0油圧PRk0の指示圧(目標値)である。例えば、エンジン12の始動制御では、K0クラッチ指示圧PRk0_tgtは、K0クラッチ20の係合速度及び係合ショックが許容範囲内となるように、実験的に或いは設計的に予め定められたK0用タイムチャートに従って制御される。
始動制御部92dは、第1始動要求判定部92cによる第1始動要求の検知に基づいてエンジン12の始動制御を実行するようにエンジン12及び電動機MGを制御する。例えば、始動制御部92dは、クラッチ制御部94によるK0クラッチ20の係合状態への切り替えに合わせて、電動機MGがクランキングトルクTcrを出力するための電動機制御信号Smをインバータ52へ出力する。つまり、始動制御部92dは、エンジン12の始動に際して、クランキングトルクTcrを電動機MGが出力するように電動機MGを制御するための電動機制御信号Smをインバータ52へ出力する。
クラッチ制御部94によるK0クラッチ油圧制御や始動制御部92dによる電動機MGのクランキングトルクTcrの出力制御により、エンジン12のクランキングが実行される。このように、エンジン12の始動制御は、K0クラッチ20を係合させて電動機MGによってエンジン12を始動させる制御である。
始動制御部92dは、第1始動要求判定部92cによる第1始動要求の検知に基づいたK0クラッチ20及び電動機MGによるエンジン12のクランキングに連動して、燃料供給や点火などを開始するためのエンジン制御信号Seをエンジン制御装置50へ出力する。つまり、始動制御部92dは、エンジン12の始動に際して、エンジン12が運転を開始するようにエンジン12を制御するためのエンジン制御信号Seをエンジン制御装置50へ出力する。このように、始動制御部92dは、第1始動要求判定部92cによる第1始動要求の検知に基づいてエンジン12の始動制御を実行する。
始動制御部92dは、例えばBEV走行中におけるエンジン12の始動の際には、BEV走行用の電動機トルクTmつまり要求駆動トルクTrdemを生じさせる電動機トルクTmに加えて、クランキングトルクTcr分の電動機トルクTmを電動機MGから出力させる。
変速制御部96は、例えば予め定められた関係である変速マップを用いて自動変速機24の変速判断を行い、必要に応じて自動変速機24の変速制御を実行するためのCB油圧制御信号Scbを油圧制御回路56へ出力する。前記変速マップは、例えば車速V及び要求駆動トルクTrdemを変数とする二次元座標上に、自動変速機24の変速が判断されるための変速線を有する所定の関係である。前記変速マップでは、車速Vに替えてAT出力回転速度Noなどを用いても良いし、又、要求駆動トルクTrdemに替えて要求駆動力Frdemやアクセル開度θaccやスロットル弁開度θthなどを用いても良い。
自動変速機24の変速フェーズ(変速段階)には、トルク相及びイナーシャ相の各フェーズがある。トルク相とは、自動変速機24の変速期間(変速制御開始から変速制御終了までの期間)のうちで、自動変速機24の出力トルクが変化しているフェーズである。イナーシャ相とは、自動変速機24の変速期間のうちで、自動変速機24における入力側回転部材である変速機入力軸38の回転速度と同値であるタービン回転速度Ntが、理論上の変速前タービン回転速度Nt_pre[rpm](変速前のギヤ段における変速比γat及び車速Vから算出される理論上のタービン回転速度Nt)から理論上の変速後タービン回転速度Nt_post[rpm](変速後のギヤ段における変速比γat及び車速Vから算出される理論上のタービン回転速度Nt)へ変化しているフェーズである。トルク相は、係合側係合装置CBcon及び解放側係合装置CBdisの伝達トルク容量が変化している期間でもある。
BEV走行中において自動変速機24の変速制御が実行されていない期間にエンジン12の始動制御の実行が決定された場合には、上述したように始動制御部92dによりエンジン12の始動制御が実行される。また、BEV走行中において始動制御部92dによるエンジン12の始動制御が実行されていない期間に自動変速機24の変速制御が実行される場合には、上述したように変速制御部96により変速制御が実行される。
ところで、停車状態においてK0クラッチ20の油圧学習制御とエンジン12の始動制御とが同時期に実行されると、K0クラッチ20の一方に連結された電動機MGの回転速度が安定せず油圧学習制御の学習精度が低下してしまうおそれがある。「油圧学習制御」とは、K0クラッチ20のような油圧式の摩擦係合装置を解放状態から係合状態へ切り替える場合における係合速度及び係合ショックが許容範囲内となるように油圧指令値を補正する学習のことである。
遅延可否判定部98は、エンジン12の始動制御の実行について遅延判定を行う遅延要求判定手段すなわち遅延要求判定部98aと、エンジン12の始動判定を行う第2始動要求判定手段すなわち第2始動要求判定部98bと、を機能的に備える。遅延可否判定部98は、遅延要求判定部98aによる判定結果と第2始動要求判定部98bによる判定結果とに基づいて、エンジン12の始動制御の実行を遅延させるか否かの可否について判定する。
遅延要求判定部98aは、K0クラッチ20の油圧学習制御が実行されている場合には、エンジン12の始動制御の実行を遅延させる所定の予め設定された遅延要求があったと判定する。つまり、遅延要求判定部98aは、エンジン12の始動制御を遅延させる遅延要求を検知する。遅延要求判定部98aにより遅延要求が検知された場合、クラッチ制御部94及び始動制御部92dは、第1始動要求の検知に基づいたエンジン12の始動制御を所定期間Td遅延させる遅延制御を実行する。すなわち、クラッチ制御部94及び始動制御部92dは、エンジン12の始動制御よりも遅延要求の検知に基づいた遅延制御を優先して実行する。なお、所定期間Tdは、K0クラッチ20の油圧学習制御における学習精度の低下が許容範囲内となるように電動機回転速度Nmが安定した状態で学習が可能とされるまでの期間であって、例えばK0クラッチ20の油圧学習制御の実行中において、電動機回転速度Nmの変動(変化の大きさ)が所定値未満に安定した定常状態となるまでの期間である。なお、所定値は、電動機回転速度Nmが定常状態であることを判定するために実験的に或いは設計的に予め定められた値であって、例えば零近傍の値である。好適には、所定期間Tdは、電動機回転速度Nmが定常状態であることを確実にするため、電動機回転速度Nmの変動が所定値未満である状態が一定期間継続するまでの期間とされる。
第2始動要求判定部98bは、所定の予め設定された第2始動要求によりエンジン12の始動が要求されたか否かを判定する。つまり、第2始動要求判定部98bは、第2始動要求の有無を検知する。例えば、運転者により不図示のアクセルペダルが踏み戻された状態(θacc=0)から踏み込まれた状態(θacc>0)へ操作されるアクセルオン操作が実行された場合に、第2始動要求が検知される。第1始動要求の検知に基づいて実行されるエンジン12の始動制御を、遅延要求の検知に基づいて所定期間Td遅延させる遅延制御が実行されている場合において、第2始動要求判定部98bは、第2始動要求の検知に基づいて遅延要求判定部98aが検知した遅延要求を解除する。
遅延要求判定部98aにより検知された遅延要求が維持されている場合には、クラッチ制御部94は、K0クラッチ油圧制御を所定期間Td遅延させる遅延制御を実行する。また、始動制御部92dは、クラッチ制御部94によるK0クラッチ油圧制御の遅延制御の実行に合わせて、電動機MGのクランキングトルクTcrの出力制御を遅延させる。これにより、エンジン12の始動制御が所定期間Td遅延させられる。
遅延要求判定部98aにより検知された遅延要求が解除されている場合には、クラッチ制御部94は、K0クラッチ油圧制御の遅延を中止してK0クラッチ油圧制御を実行する。また、始動制御部92dは、クラッチ制御部94によるK0クラッチ油圧制御の実行に合わせて、電動機MGのクランキングトルクTcrの出力制御を実行する。したがって、第2始動要求の検知に基づいて、エンジン12の始動制御の実行を遅延させる遅延制御が中止され、始動制御が実行される。
このように、第1始動要求の検知に基づいて実行されるエンジン12の始動制御を、遅延要求の検知に基づいて所定期間Td遅延させる遅延制御が実行されている場合において、第2始動要求判定部98bにより第2始動要求が検知されると、クラッチ制御部94及び始動制御部92dは、遅延制御の実行を中止して始動制御を実行する。すなわち、第2始動要求の検知に基づいて、遅延制御よりもエンジン12の始動制御が優先して実行される。
図2は、図1に示す電子制御装置90の制御作動を説明するフローチャートの一例である。図2のフローチャートは、繰り返し実行される。
まず、第1始動要求判定部92cの機能に対応するステップ(以下、ステップを省略する)S10において、第1始動要求があったか否かすなわち第1始動要求が検知されたか否かが判定される。S10の判定が肯定された場合は、遅延要求判定部98aの機能に対応するS20において、エンジン12の始動制御以外の制御、例えばK0クラッチ20の油圧学習制御が実行されていることによる遅延要求があったか否かすなわち遅延要求が検知されているか否かが判定される。S10の判定が否定された場合は、リターンとなる。
S20の判定が肯定された場合には、クラッチ制御部94の機能に対応するS30において、K0クラッチ油圧制御の開始時刻が所定期間Tdの範囲内であるか否かが判定される。S20の判定が否定された場合には、S60が実行される。
S30の判定が肯定された場合には、第2始動要求判定部98bの機能に対応するS40において、第2始動要求があったか否かすなわち第2始動要求が検知されたか否かが判定される。S30の判定が否定された場合には、S60が実行される。
S40の判定が肯定された場合には、第2始動要求判定部98bの機能に対応するS50において、S20で検知された遅延要求が解除される。S20の判定が否定された場合、S30の判定が否定された場合、及びS50の実行後に、クラッチ制御部94の機能に対応するS60において、K0クラッチ油圧制御が実行される。これにより、エンジン12の始動制御が実行される。S60の実行後は、リターンとなる。S40の判定が否定された場合には、S30が再度実行される。
図3は、停車状態においてK0クラッチ20の油圧学習制御が実行され、その油圧学習制御の実行中に運転者によりアクセル操作が実行された場合において、図2のフローチャートが実行された場合におけるタイムチャートの一例である。図3の横軸は、時間t[ms]である。
図3(a)は、停車状態においてK0クラッチ20の油圧学習制御の実行によりK0クラッチ油圧制御を所定期間Td遅延させる遅延制御が実行された場合を表し、図3(b)は、運転者によるアクセルオン操作により遅延要求が解除されてK0クラッチ20の油圧学習制御が図3(a)の場合よりも早期に実行された場合を表している。
まず、図3(a)について説明する。
時刻t1以前においては、アクセル開度θaccが零値、エンジン回転速度Neが零値、電動機回転速度Nmが零値であって、車速Vが零値の停車状態である。
時刻t1において、K0クラッチ20の油圧学習制御の実施条件が成立しているか否かを表す学習条件信号がオフ状態からオン状態に切り替えられる。学習条件信号がオン状態の場合には、K0クラッチ20の油圧学習制御の実施条件が成立しており、K0クラッチ20の油圧学習制御が実行される。学習条件信号がオフ状態の場合には、K0クラッチ20の油圧学習制御の実施条件が不成立であり、K0クラッチ20の油圧学習制御が不実行とされる。また、学習条件信号のオフ状態からオン状態への切り替えに基づいて遅延要求が検知されることによりエンジン12の始動制御を遅延させる遅延制御が実行される。すなわち、K0クラッチ油圧制御の開始が後述の時刻t4まで遅延させられる。
時刻t2(>t1)において、第1始動要求が検知される。第1始動要求の検知に基づいて電動機回転速度Nmの目標値である目標電動機回転速度Nm_tgtが上昇させられる。この目標電動機回転速度Nm_tgtの上昇に少し遅れて実際の電動機回転速度Nmも上昇させられる。電動機MGが回転駆動されることでMOP58からオイル(作動油OIL)が油圧制御回路56へ圧送される。
時刻t3(>t2)において、実際の電動機回転速度Nmが安定した定常状態となる。時刻t3から実際の電動機回転速度Nmの定常状態が暫く継続した時刻t4(>t3)において、K0クラッチ油圧制御が開始され、時刻t5(>t4)において、エンジン回転速度Neの上昇が開始され、時刻t6(>t5)において、K0クラッチ20が完全係合状態とされてエンジン回転速度Neと電動機回転速度Nmとが一致する。
次に、図3(b)について説明する。
時刻t2以前までは、図3(a)と同様である。図3(a)においてK0クラッチ油圧制御が開始される時刻t4以前の時刻t10(t2<t10<t4)において、運転者によりアクセルオン操作が実行されることでアクセル開度θaccが上昇し始める。これにより、K0クラッチ20の油圧学習制御の実施条件が不成立となって、学習条件信号がオン状態からオフ状態へ切り替えられる。また、学習条件信号のオン状態からオフ状態への切り替えにより、遅延要求が解除される。遅延要求の解除により、時刻t10においてK0クラッチ油圧制御が開始される。時刻t11(>t10)において、エンジン回転速度Neの上昇が開始され、時刻t12(>t11)において、K0クラッチ20が完全係合状態とされてエンジン回転速度Neと電動機回転速度Nmとが一致する。
本実施例によれば、第1始動要求に基づいて実行されるK0クラッチ20を係合させて電動機MGによってエンジン12を始動させる始動制御を、遅延要求の検知に基づいて所定期間Td遅延させる遅延制御が実行されている場合において、第2始動要求の検知に基づいて遅延制御の実行が中止されて始動制御が実行される。遅延要求の検知に基づいて電動機MGを用いてエンジン12を始動させる始動制御を所定期間Td遅延させる遅延制御が実行されることでエンジン12の始動制御に伴うショックの発生が抑制される。しかし、エンジン12の始動制御を遅延させる遅延制御が実行されている場合において、ショックの発生よりもエンジン12の始動を優先させたい第2始動要求が検知されると、エンジン12の遅延制御の実行が中止されてエンジン12の始動制御が実行される。これにより、エンジン12の始動制御に伴うショックの発生が抑制されつつ、ショックの発生よりもエンジン12の始動を優先したい状況ではその始動が優先させられることによりドライバビリティの低下が抑制される。
本実施例によれば、(a)第1始動要求が検知されるのは、電動機MGに対して電力を授受するバッテリ54の充電状態値SOCがエンジン始動閾値未満である場合であり、(b)遅延要求が検知されるのは、K0クラッチ20の油圧学習制御が実行された場合である。これにより、第1始動要求によるエンジン12の始動制御とK0クラッチ20の油圧学習制御とが同時期になるとともに第2始動要求が検知されない場合には、エンジン12の始動制御を遅延させる遅延制御が実行されることでエンジン12の始動制御に伴うショックの発生が抑制される。
本実施例によれば、第2始動要求が検知されるのは、運転者によるアクセル操作が実行された場合である。このように、遅延要求によりエンジン12の始動制御を遅延させる遅延制御が実行されている場合において、運転者によりアクセル操作が実行されると第2始動要求が検知され、エンジン12の遅延制御の実行が中止される。これにより、運転者によりアクセル操作が実行されてエンジン12の始動制御に伴うショックの発生の抑制よりもエンジン12の始動を優先したい状況では、その始動が優先させられることによりドライバビリティの低下が抑制される。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
前述の実施例では、バッテリ54の充電状態値SOCがエンジン始動閾値未満である場合に第1始動要求が検知され、K0クラッチ20の油圧学習制御が実行されている場合に遅延要求が検知され、運転者により不図示のアクセルペダルが踏み込まれるアクセル操作が実行された場合に第2始動要求が検知される例であったが、本発明はこの態様に限らない。例えば、(a)BEV走行モード時において要求駆動トルクTrdemが電動機MGの出力のみで賄える範囲よりも大きい場合、(b)エンジン12等の暖機が必要である場合、のいずれかである場合に、所定の予め設定された第1始動要求が検知される態様であっても良い。また、例えば(a)自動変速機24の変速制御、(b)停車状態におけるK0クラッチ20の作動状態を制御する作動油OILの流量制御、のいずれかが実行されている場合に、所定の予め設定された遅延要求が検知される態様であっても良い。上記作動油OILの流量制御が実行されている場合における遅延要求とは、停車状態において電動機MGが回転駆動されることによりMOP58が駆動されて作動油OILが循環し始めるが、その循環する作動油OILの流量が所定の流量値以上に安定するまでエンジン12の始動制御を遅延させる要求である。循環する作動油OILの流量が安定する前にエンジン12の始動制御が開始されると、エンジン12の始動制御の実行のためのK0クラッチ油圧制御が不安定な動作となるおそれがあるからである。所定の流量値とは、エンジン12の始動制御の実行のためのK0クラッチ油圧制御が安定な動作となるように、実験的に或いは設計的に予め定められた流量値である。また、例えば(a)運転者によるブレーキ操作が実行された場合、(b)運転者によるシフト操作が実行された場合、のいずれかである場合に、所定の予め設定された第2始動要求が検知される態様であっても良い。
前述の実施例では、自動変速機24は遊星歯車式であったが、本発明における自動変速機24は、常時噛合型平行軸式など他の構成の有段変速機であっても良い。
前述の実施例では、流体式伝動装置としてトルクコンバータ22が用いられたが、本発明はこの態様に限らない。例えば、流体式伝動装置として、トルクコンバータ22に替えて、トルク増幅作用のないフルードカップリングなどの他の流体式伝動装置が用いられても良い。また、流体式伝動装置は、必ずしも備えられている必要はなく、例えば発進用のクラッチに置き換えられても良い。
なお、上述したのはあくまでも本発明の実施例であり、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
10:ハイブリッド車両
12:エンジン(内燃機関)
14:駆動輪
20:K0クラッチ(摩擦係合装置)
24:自動変速機
90:電子制御装置(制御装置)
MG:電動機
PT:動力伝達経路
12:エンジン(内燃機関)
14:駆動輪
20:K0クラッチ(摩擦係合装置)
24:自動変速機
90:電子制御装置(制御装置)
MG:電動機
PT:動力伝達経路
Claims (1)
- 走行用駆動力源としての内燃機関及び電動機と、前記内燃機関と駆動輪との間の動力伝達経路のうち前記内燃機関と前記電動機との間に配設された摩擦係合装置と、を備えるハイブリッド車両の、制御装置であって、
所定の予め設定された第1始動要求の検知に基づいて実行される前記摩擦係合装置を係合させて前記電動機により前記内燃機関を始動させる始動制御を、所定の予め設定された遅延要求の検知に基づいて所定期間遅延させる遅延制御が実行されている場合において、所定の予め設定された第2始動要求の検知に基づいて前記遅延制御の実行を中止して前記始動制御を実行する
ことを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
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Applications Claiming Priority (1)
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- 2021-07-05 JP JP2021111814A patent/JP2023008334A/ja active Pending
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