JP2023004312A - マイクロ波アプリケータ - Google Patents

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泰宜 川崎
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Abstract

【課題】薄型で軽量なマイクロ波アプリケータを提供する。【解決手段】本発明の実施形態に従うマイクロ波アプリケータは、テーパー形状の複数のスロットをワイド面に装荷し、キャビティを内部に形成するスロットアンテナ本体と、前記キャビティの中央部に配置すると共に、前記スロットアンテナ本体と電気的に接続したモード変換器と、マイクロ波の電力を供給する中心導体を備える同軸給電部と、を備えたことを特徴とする。【選択図】図2

Description

本発明の実施形態は、マイクロ波アプリケータに関する。
例えば温熱治療器に用いるマイクロ波アプリケータは、生体組織に刺入して使用するタイプのものと、生体組織に刺入することなく使用するタイプのものがある。生体組織に刺入しないタイプのマイクロ波アプリケータの中には、電磁ホーンアンテナや、導波管スロットアンテナを用いるものがある。さらに、導波管内に水を充填して生体組織の誘電率に近づけることで、波長短縮により小型化したものや、波動インピーダンスの整合をとるものも存在する。
しかしながら、電磁ホーンアンテナを用いたマイクロ波アプリケータは、奥行きが長くなってしまう。また、モノポールアンテナで導波管端部から励振する構造の導波管スロットアンテナを用いた場合、インピーダンス変換器の長さ及び高さがある程度必要になってしまう。さらに、導波管内に水を充填すると、小型化が可能である反面、重量の増加や構造の複雑化などの問題がある。
特表2009-527985号公報
本発明は、このような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、薄型で軽量なマイクロ波アプリケータを提供することにある。
本発明の実施形態に従うマイクロ波アプリケータは、テーパー形状の複数のスロットをワイド面に装荷し、キャビティを内部に形成するスロットアンテナ本体と、前記キャビティの中央部に配置すると共に、前記スロットアンテナ本体と電気的に接続したモード変換器と、マイクロ波の電力を供給する中心導体を備える同軸給電部と、を備えたことを特徴とする。
本発明の実施形態によれば、テーパー形状の複数のスロットをワイド面に装荷し、キャビティを内部に形成するスロットアンテナ本体、及びキャビティの中央部に配置すると共に、スロットアンテナ本体と電気的に接続したモード変換器を採用したことにより、薄型で軽量のマイクロ波アプリケータを提供することが可能となる。
実施形態に従うマイクロ波アプリケータの斜視図である。 実施形態に従うマイクロ波アプリケータの平面図と断面図である。 上記マイクロ波アプリケータのモード変換器の拡大図である。 上記モード変換器の斜視図である。 上記マイクロ波アプリケータのリターンロス特性図である。 上記マイクロ波アプリケータの加温試験装置の構成図である。 上記加温試験の結果を示す特性図である。 上記マイクロ波アプリケータの電界シミュレーションの特性図である。
以下、本発明の実施形態に従うマイクロ波アプリケータについて、添付図面を参照しながら詳述する。なお、各図において、同一構成は同一の符号を付している。
実施形態に従うマイクロ波アプリケータ1は、好ましくは生体組織の温熱治療に用いる。マイクロ波アプリケータ1は、生体組織に刺入しないで温熱治療をすることが可能である。勿論、用途が温熱治療だけに限定されることはなく、マイクロ波を用いた被対象物の加温用として使用することができる。図1~図2は、実施形態に従うマイクロ波アプリケータ1を示す。図1(a)は、マイクロ波アプリケータ1を表側から見た斜視図、図1(b)は、裏側から見た斜視図である。また、図2(a)は、マイクロ波アプリケータ1の平面図、図2(b)は、マイクロ波アプリケータ1の長辺方向の縦断面図である。
図1~図2に示すように、実施形態に従うマイクロ波アプリケータ1は、平面視が長方形の薄型のスロットアンテナ本体10を備える。スロットアンテナ本体10は、表側のワイド面に複数のスロット2を装荷している。スロットアンテナ本体10は、一例として、板状の部材である第1部材10aと、底面側が開口する立体状の部材である第2部材10bによって形成する。第2部材10bは、その四辺(長辺・短辺)に全周に亘って側壁を形成し、底面側が開口するカバー状になっている。そして第1部材10aで第2部材10bの底面側開口を塞ぐことにより、スロットアンテナ本体10の内部に薄型の立方形の空間を形成する。この薄型の立方形の内部空間は、スロットアンテナ本体10のキャビティ11を構成する。
別の言い方をすると、長辺方向に延びる薄型の導波管の両端の開口(短辺の開口)を側壁でショートさせてキャビティ11を構成している。ゆえにスロットアンテナ本体10は、長辺方向に延びる導波管としての機能も有する。キャビティ11は、特に水などの液体を充填しておらず、空気で満たされている。第1部材10aと第2部材10bは、例えばネジなどの固定手段12を用いて一体化する。なお、符号13は、例えばマイクロ波アプリケータ1を固定する際に使用する固定用部材である。符号14は、後述するモード変換器4のコンタクトプレート42の一部が露出する開口穴である。
薄型に形成した立方形のキャビティ11のサイズは、好ましい一例として、平面視の長辺方向を290mm、短辺方向を107mmとする。なお、キャビティ11の長辺方向サイズを280mm~320mmの範囲内、またはアスペクト比を2.54~2.9の範囲内とすることが好ましい。キャビティ11の高さ(すなわち、空間の厚み)は、自由空間波長の10分の1以下とする。好ましい一例は、10mm以下である。但し、キャビティ11のサイズが限定されることはなく、入力するマイクロ波の周波数やインピーダンス整合などの理由によって適宜変更することができる。第1部材10aと第2部材10bは、例えば導電性を有する材質で形成する。導電性を有する材質の一例は、例えばステンレスやアルミニウムなどの金属である。第1部材10a及び第2部材10bの厚みは、例えば1~2mm程度である。
スロット2は、スロットアンテナ本体10の電磁波放射面である表側のワイド面に装荷する。スロット2は、ワイド面に形成したテーパー形状の開口である。より具体的には、特に図2(a)の平面図に示すように、キャビティ11の長辺方向を向く中心軸S1を中心にして、短辺方向に対称に配置した一対の扇状開口同士を、互いの基端部で連通させて一つのスロット2としている。扇状の円弧21の部分は、例えば三角形状や多角形状など他の形状にしてもよい。このようなスロット2は、ボウタイ形状のスロット2とも称される。なお、好ましい配置として、スロット2は、その全長方向の軸線S2がキャビティ11の長辺方向の中心軸S1と例えば直角に交差するように配置する。このとき、オフセットはせずに、スロット2のくびれ22の部分を、キャビティ11の長辺方向の中心軸S1線上に位置させるのが好ましい。
複数のスロット2は、キャビティ11の長辺方向に間隔をあけて配列するようにする。図1~図2の例では、キャビティ11の長辺方向に例えば4個のスロット2を設ける。好ましい一例として、キャビティ11の中央部(後述するモード変換器4を配置する)から長辺方向に対称に夫々配列していく。キャビティ11の中央部寄りに配置した内側のスロット2は、そのくびれ22の中心とキャビティ11の中心との間隔L1が例えば48mmになるように配置する。キャビティ11の端部側に配置した外側のスロット2は、そのくびれ22の中心とキャビティ11の中心との間隔L2が例えば95mmになるように配置する。スロット2のサイズは、好ましい一例として、全長L3を95.5mm、扇状の弦の長さL4を35mm、くびれ22の部分の長さL5を4mmとする。但し、スロット2のサイズや配置は、キャビティ11内のマイクロ波の周波数や後述する加温試験の結果などに応じて適宜調整することができる。
同軸給電部の一例である同軸コネクタ31は、スロットアンテナ本体10の裏面側中央に配置する。すなわち、中央給電方式でスロットアンテナ本体10にマイクロ波の電力を給電する。同軸コネクタ31は、スロットアンテナ本体10の裏面側ワイド面に取り付ける。同軸コネクタ31には、伝送線としての同軸ケーブル32を接続する。同軸ケーブル32の基端側は、例えば半導体発振器などのマイクロ波発生装置(不図示)に接続する。同軸ケーブル32の特性インピーダンスは、例えば50Ωである。なお、本実施形態のマイクロ波アプリケータ1は、後述する給電部-導波管(スロットアンテナ本体10)のモード変換器4を備えたことによって、薄型のスロットアンテナ本体10であってもインピーダンスの整合を取りやすくしている。そのため、インピーダンス整合のためのアンプやフィルターなどは必ずしも必要ではなく、省略することによって部品点数を少なくすることができる。勿論、アンプやフィルターなどを設けた構成であってもよい。
続いて、図3~図4を参照しながら、給電部-導波管(スロットアンテナ本体10)のモード変換器4について説明する。図3は、モード変換器4の拡大図である。図4は、モード変換器4を下方側から見た斜視図である。図3~図4に示すように、モード変換器4は、同軸コネクタ31の中心導体と電気的に接続したコンタクト41とその上部に接続したコンタクトプレート42を備える。キャビティ11内に位置するコンタクト41とコンタクトプレート42は、「モード変換器」を構成する。なお、コンタクト41とコンタクトプレート42は、それぞれ別々の部材でなくともよく、一体化した部材で構成してもよい。
コンタクト41は、好ましい一例として、底部側が円柱状であって上部側が拡径する逆円錐状になっている。コンタクト41は、その円柱状の部分の底部側が、同軸コネクタ31の中心導体と電気的に接続している。コンタクト41は、特に図3に示すように、第1部材10aに形成した開口穴16を通じてキャビティ11の高さ方向(空間の厚み方向)に立設している。コンタクト41と第1部材10aとは開口穴16によって離れており、電気的に接続していない。コンタクトプレート42は、例えば平面視が円形の円柱形プレートである。平面視の形状は、例えば楕円や多角形など他の形状にしてもよい。
コンタクトプレート42は、その上面が第2部材10bに接しており、これによりスロットアンテナ本体10のワイド面の内側面(キャビティ11側の表面)と電気的に接続(すなわちショート)している。この構成により、同軸コネクタ31の中心導体、コンタクト41、コンタクトプレート42、及びスロットアンテナ本体10のワイド面が、電気的に直列に接続する。なお、コンタクトプレート42のサイズは、例えば直径が40mm、厚みが5.2mmである。コンタクト41及びコンタクトプレート42の材質は、例えばアルミニウムやステンレスなどの金属である。なお、特に図1に示すように、コンタクトプレート42は、例えばネジなどの固定手段43を用いてスロットアンテナ本体10に固定する。コンタクトプレート42とコンタクト41は、例えばネジなどの固定手段44を用いて一体化する。
自由空間波長の10分の1以下の薄型のキャビティ11を内部に形成したスロットアンテナ本体10は、導波管として見ると、その高さが波長よりも非常に小さいので裏面側のワイド面から垂直に挿入したプローブではモノポールアンテナとしての動作はできない。また、導波管の表側のワイド面とプローブとの間に隙間があると入力インピーダンスが非常に高くなって、プローブに給電する同軸線路とのインピーダンス整合が難しくなる。この様な問題点の対策として、上述したように、コンタクトプレート42がワイド面と接するようにして電気的にショートさせ、導波管としてのスロットアンテナ本体10と直列に接続させる構造とした。また、薄型の導波管であるため、特性インピーダンスも通常の導波管より小さくなることから、この接続構造の方がインピーダンスの整合を取りやすい。
スロットアンテナ本体10の電磁波放出面であるワイド面には、空間を介してこのワイド面と対向する樹脂板5を配置する。樹脂板5は、図示を省略する支持手段によって支持している。樹脂の材質は、例えばABS(Acrylonitrile Butadiene Styrene)である。ワイド面との隙間は、例えば5~20mmとする。好ましいのは5mmである。
上述した構成のマイクロ波アプリケータ1を用いて温熱治療を実施する場合、樹脂板5の表面を生体組織に当て、図示しないマイクロ波発生装置からのマイクロ波の電力を、同軸ケーブル32及び同軸コネクタ31を介してモード変換器4に給電する。
給電したマイクロ波は、モード変換器4によって、中央から左右に分岐されTEモードでキャビティ11内を伝送させることができる。すなわち、スロットアンテナ本体10が導波管として機能し、末端面までTEモードでマイクロ波が伝送する。このとき、スロット2で不連続になった箇所において電磁波が漏洩し、電磁波放出面であるワイド面に対し鉛直方向に指向性を有するマイクロ波が放射される。その結果、生体組織が加温され、温熱治療をすることが可能となる。マイクロ波アプリケータ1は、上述の構成としたことによって、例えば2.45GHzの周波数で動作することを実現している。
<リターンロス特性>
テーパー状のスロット2は、例えば矩形のスロットと比較して電流が共振状態になりうる波数ベクトルの組み合わせを多数とることができ、広帯域特性を実現することができる利点がある。すなわち電流の共振モードを増やし、アンテナの帯域幅を拡大することができる。図5は、スロットアンテナ本体10のリターンロス特性の実測値の一例を示す。このリターンロス特性は、樹脂板5としてのABS樹脂板をワイド面から5mm離した位置に固定して測定した。図5から明らかなように、VSWR<1.4の条件の下で5%の比帯域幅が得られることを確認している。VSWR<2では12%となる。
<加温試験>
図6は、加温試験として行ったファントム加温試験装置の概略図である。図7は、ファントム加温試験の結果を示す。ファントム加温試験は、図6に示すように、人体等価ファントムとして寒天6を用いた。マイクロ波は、半導体発振器61から出力し、同軸ケーブル32を通じてスロットアンテナ本体10に給電した。同軸ケーブル32の途中にはサーキュレータ62を設け、リターン電力を終端抵抗63に逃がすようにした。また、ディレクショナルカプラー (同軸)64、アッテネータ65、パワーメータ66でリターン電力を測定できるようにした。スロットアンテナ本体10は、寒天6の上面に載置したABS樹脂板(5)から所定の距離だけ離して配置した。この状態でスロットアンテナ本体10から寒天6にマイクロ波を出力100Wで10分間照射し、照射終了後に寒天6の断面をサーモグラフィで撮影した。
図7は、スロットアンテナ本体10をABS樹脂板(5)から5mm離して加温したときのサーモグラフィの撮影結果である。グレイスケールで表したものであるが、白くなっているところの方が温度が高い。図7の結果から、寒天6を加温できていることが分かる。すなわち、上述のスロットアンテナ本体10によれば、生体組織を加温できることを確認した。
図8は、図7のファントム温度分布と、電界シミュレーションによるSAR分布とを比較した結果を示す。図8から明らかなように、SAR分布とファントム温度分布とが対応できていることを確認した。
上述の実施形態によれば、薄型で軽量なマイクロ波アプリケータを提供することが可能である。なお、好ましい一例として、同じ形状のスロット2を装荷した例を説明したが、スロット2は必ずしもすべてテーパー形状でなくてもよい。また、キャビティ11の長辺方向にもスロット2を装荷するようにしてもよい。
本発明の実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
1 マイクロ波アプリケータ
10 スロットアンテナ本体
2 スロット
31 同軸コネクタ
32 同軸ケーブル
4 モード変換器
41 コンタクト
42 コンタクトプレート

Claims (6)

  1. テーパー形状の複数のスロットをワイド面に装荷し、キャビティを内部に形成するスロットアンテナ本体と、
    前記キャビティの中央部に配置すると共に、前記スロットアンテナ本体と電気的に接続したモード変換器と、
    マイクロ波の電力を供給する中心導体を備える同軸給電部と、を備えたことを特徴とするマイクロ波アプリケータ。
  2. 前記モード変換器は、前記ワイド面の前記キャビティ側の表面と電気的に接続した円柱形のプレートを含むことを特徴とする請求項1に記載のマイクロ波アプリケータ。
  3. 前記スロットを装荷した前記ワイド面に対し、空間を介して対向配置した樹脂板をさらに備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載のマイクロ波アプリケータ。
  4. 前記キャビティは、平面視が長方形の立方形状であり、
    前記テーパー形状のスロットは、前記キャビティの長辺方向と交差する方向に沿って形成したボウタイ形状であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のマイクロ波アプリケータ。
  5. 前記複数のスロットは、前記モード変換器を中心として前記キャビティの長辺方向に対称に配列したことを特徴とする請求項4に記載のマイクロ波アプリケータ。
  6. 前記キャビティの高さは、自由空間波長の10分の1以下の薄型に形成されることを特徴とする請求項1~請求項5のいずれか1項に記載のマイクロ波アプリケータ。
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