JP2023004095A - 抗酸化剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】 加熱処理後の死菌体や、その乾燥粉末でも高い抗酸化作用を持ちながら、安全性が高く、広く食品に利用できる乳酸菌を選抜すること。そして、当該乳酸菌を有効成分として含有する抗酸化剤を提供すること。【解決手段】 ラクトコッカス ラクティス サブスピーシーズ ラクティス バイオバラエティ ジアセチラクティス(Lactococcus lactis subsp. lactis biovar. diacetylactis)N7(FERM P-18217)を有効成分として含む抗酸化剤を提供する。上記N7株の死菌体及びその乾燥粉末は、ゼブラフィッシュを用いた評価系においても有意な抗酸化活性を示した。【選択図】なし

Description

本発明は、特定の乳酸菌を有効成分として含有する抗酸化剤に関し、詳しくは、ラクトコッカス ラクティス サブスピーシーズ ラクティス バイオバラエティ ジアセチラクティス N7を有効成分として含む抗酸化剤に関する。
生命活動に伴って産生される活性酸素については、殺菌作用を有する一方、多量に産生されると生体内で過酸化脂質を発生させるなど、疾病や細胞老化の原因となると考えられている。それゆえ、抗酸化作用を有する物質(ビタミンC、カロテノイドなど)がサプリメントなどとして積極的に摂取されている現状がある。
一方、プロバイオティクス(適量摂取により宿主の健康維持に寄与する生きた微生物)として知られる乳酸菌についても、抗酸化作用を有するものが報告されている(例えば、非特許文献1等参照)。乳酸菌は生菌としてはヨーグルトや漬物などの製造に、死菌体としては菓子や飲料などの食品へ添加して使用され、利用範囲が広い安全な微生物である。
本発明者は、ラクトコッカス ラクティス サブスピーシーズ ラクティス バイオバラエティ ジアセチラクティス N7(以下、「N7株」と称することもある。)の機能性について研究を続けており、これまでにコレステロールの低減・除去作用(特許文献1参照)等を報告している。
Japanese Journal of Lactic Acid Bacteria,Vol.29,No.2,p.69-78
特開2002-65203号公報
非特許文献1に記載されたラクトコッカス ラクティス サブスピーシーズ クレモリス H61の抗酸化性のメカニズムの一つは、活性酸素を除去する酵素(スーパーオキシドディスムターゼ:SOD)によるものと考えられる。菌体を加熱処理すると酵素が熱変性し、同活性は低下してしまう。そこで、加熱処理後の死菌体や、その乾燥粉末でも高い抗酸化作用を有する乳酸菌が求められていた。
本発明の課題は、加熱処理後の死菌体や、その乾燥粉末でも高い抗酸化作用を持ちながら、安全性が高く、広く食品に利用できる乳酸菌を選抜することである。そして、当該乳酸菌を有効成分として含有する抗酸化剤を提供することである。
上記課題を解決するべく鋭意検討を重ねた結果、本発明者らは、ラクトコッカス属乳酸菌の中でも、ラクトコッカス ラクティス サブスピーシーズ ラクティス バイオバラエティ ジアセチラクティス N7が、in vitro試験で前述のH61株よりも顕著に高い抗酸化作用(DPPHラジカル消去活性)を持つことを見出した(実施例1参照)。しかも、N7株について加熱処理を行っても、同活性が低下しないことを明らかにした(実施例2参照)。
また、本発明者らは、ゼブラフィッシュを用いた抗酸化機能評価系により、N7株の死菌体及びその乾燥粉末が、生体レベルでも高い抗酸化作用を有することを明らかにし、当該乳酸菌が抗酸化剤としての実用性が極めて高いことを見出した。このようにして本発明は完成されたのである。
すなわち、本発明は、ラクトコッカス ラクティス サブスピーシーズ ラクティス バイオバラエティ ジアセチラクティス(Lactococcus lactis subsp. lactis biovar. diacetylactis)N7を有効成分として含む抗酸化剤を提供する。
ここで、前記N7株は、生菌体若しくは死菌体、又はそれらの乾燥粉末であってもよい。
また、前記抗酸化剤は、食品組成物、飲料、動物用飼料、医薬品、動物用医薬品、化粧品又は医薬部外品の形態であってもよい。
本発明によれば、ラクトコッカス ラクティス サブスピーシーズ ラクティス バイオバラエティ ジアセチラクティス N7を利用した抗酸化剤が提供される。N7株は長年乳製品製造に利用されてきた乳酸菌であり、安心して摂取することができる。また、N7株の抗酸化作用は、加熱死菌体や乾燥粉末においても見られることから、様々な形態の食品に抗酸化剤として利用可能である。
ゼブラフィッシュを用いた抗酸化機能評価系を説明する図である。 過酸化水素処理(2.8 mM H2O2)をしたゼブラフィッシュ稚魚の生残性(縦軸:%)へのN7株死菌体(懸濁液)の添加効果を示すグラフである(N=24以上)。図中の横軸は酸化剤である過酸化水素溶液の処理時間(単位:時間)、縦軸は処理開始時を100とした時の生残性(単位:%)を示す。また、実線は、N7株のOD620=0.125懸濁液又はOD620=0.25懸濁液を前処理した稚魚の結果を示し、破線は、前処理しなかった稚魚の結果を示す。 過酸化水素処理(2.8 mM H2O2)をしたゼブラフィッシュ稚魚の生残性(縦軸:%)へのN7株死菌体(凍結乾燥菌体溶液)の添加効果を示すグラフである(N=24以上)。図中の横軸は酸化剤である過酸化水素溶液の処理時間(単位:時間)、縦軸は処理開始時を100とした時の生残性(単位:%)を示す。また、実線はN7株の250μg/mL溶液、一点破線はN7株の125μg/mL溶液、を前処理した稚魚の結果を示し、点線は前処理しなかった稚魚の結果を示す。
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。
本実施形態に係る抗酸化剤は、ラクトコッカス ラクティス サブスピーシーズ ラクティス バイオバラエティ ジアセチラクティス N7を有効成分として含むことを特徴とする。
N7株は、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許生物寄託センターに受託番号FERM P-18217として寄託されている。本菌株の培養は、乳酸菌の培養の常法に従って、例えばMRS培地やTYG培地などを用いて、通性嫌気の条件下で1~2日間程度培養することにより、行うことができる。
後述するように、N7株はin vitro試験において顕著なDPPHラジカル消去活性を示した。また、N7株の死菌体及びその乾燥粉末についても、ゼブラフィッシュ評価系を用いて生体レベルでの高い抗酸化作用が確認された。N7株は、長い食経験から人体への安全性も問題がなく、抗酸化剤として極めて有用であると考えられる。
本実施形態に係る抗酸化剤は、N7株の菌体(生菌体若しくは死菌体)を有効成分として含む。ここで、N7株の「菌体」は、培養物そのものや、それを常法により濃縮、洗浄、精製、滅菌、pH調整、破砕、粉末化等の処理を行ったものであっても良い。
本実施形態の抗酸化剤は、N7株以外の抗酸化作用を有する成分を含有していてもよいが、N7株は単独でも十分な効果が得られることから、N7株のみを有効成分として含有していることが望ましい。
N7株の「乾燥粉末」としては、特に限定されないが、例えば凍結乾燥粉末、噴霧乾燥粉末、流動層乾燥粉末などが挙げられる。例えば、N7株の培養物から遠心分離等で集菌して得た菌体を生理食塩水等で洗浄し、加熱滅菌処理してから凍結乾燥することで、N7株死菌体乾燥粉末を得ることができる。
本実施形態の抗酸化剤は、食品組成物、飲料、動物用飼料の形態とすることができ、例えば任意の食品組成物、飲料、動物用飼料等に含有させて用いることができる。ここで「動物」としては、例えばゼブラフィッシュ、メダカ、金魚等の魚類;マウス、ラット、モルモット、ハムスター、フェレット、サル、ウシ、ブタ、ヤギ、ヒツジ、ニワトリ、イヌ、ネコ等の哺乳類;インコ等の鳥類;等が挙げられる。
当該抗酸化剤をヒトや動物に摂取させることで、体内で抗酸化作用を発揮させ、過酸化脂質の生成を抑制したり、細胞の損傷を抑制したり、活性酸素の生成を抑制したりするといった効果が期待できる。その他にも、抗酸化剤を添加した食品組成物等そのものの酸化を抑制する効果も得られる。
食品組成物又は飲料の例としては、ヨーグルトなどの乳製品、菓子類、各種加工食品、サプリメント、乳酸菌飲料、清涼飲料水、茶飲料、栄養ドリンク等が挙げられるが、特に限定されない。ヨーグルトの場合、生乳などの原料にN7株を添加し発酵させることにより、N7株を含有する抗酸化用ヨーグルトとすることができる。
食品組成物、飲料又は動物用飼料における有効成分含有量は、摂取形態により異なるが、抗酸化作用が得られるような量とすることができる。具体的には、乾燥菌体粉末として含有する場合には、1日当たりの摂取量が、例えば1mg~1g、好ましくは10mg~100mgとなるような含有量とすることができる。また、生菌体として含有する場合には、1日当たりの摂取量が、例えば10~1012cfu、好ましくは1010~1011cfuとなるような含有量とすることができる。
したがって、例えば1食分を100gとするヨーグルトの場合における含有量は、乾燥菌体粉末として0.001~1質量%(好ましくは0.01~0.1質量%)、生菌体として100g当たり10~1012cfu(好ましくは1010~1011cfu)、とすることができる。
また、本実施形態の抗酸化剤は、医薬品や動物用医薬品、化粧品、医薬部外品の形態とすることもできる。これらは常法に従って製造することができる。
医薬品、動物用医薬品又は医薬部外品として経口投与する場合の剤形としては、例えば錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤、シロップ剤などとすることができる。医薬品、動物用医薬品、化粧品又は医薬部外品を外用剤とする場合には、例えば液体状やジェル状、クリーム状、軟膏などの形態とすることができる。
また、前記医薬品、動物用医薬品、化粧品又は医薬部外品には、製剤上許容される他の成分(例えば、担体、賦形剤、崩壊剤、緩衝剤、乳化剤、懸濁剤、無痛化剤、安定剤、保存剤、防腐剤、生理食塩水など)や、他の薬効成分を含有させることができる。
前記医薬品、動物用医薬品、化粧品又は医薬部外品における有効成分含有量は、形態により異なるが、抗酸化作用が得られるような量とすることができる。具体的には、乾燥菌体粉末として含有する内服剤の場合には、1日当たりの摂取量が、例えば1mg~1g、好ましくは10mg~100mgとなるような含有量とすることができる。生菌体として含有する内服剤の場合には、1日当たりの摂取量が、例えば10~1012cfu、好ましくは1010~1011cfuとなるような含有量とすることができる。外用剤の場合には、例えば乾燥菌体粉末として0.0125質量%以上、好ましくは0.0125質量%~0.025質量%、とすることができる。また、製剤の投与量は、症状、患者の年齢、体重、性別などを考慮して、適宜設定すればよい。
投与方法としては、例えば、対象であるヒト又は動物に対して、有効投与量の前記医薬品又は動物用医薬品を、例えば1回~数回/1日又は1回/2~3日といった投与スケジュールで、経口投与又は非経口投与する方法とすることができる。
N7株は乳製品や漬物など幅広い食品に存在するラクトコッカス ラクティス サブスピーシーズ ラクティスに属する乳酸菌株であり、しかも実際に乳製品の製造に長年使用されてきた実績がある。それゆえ、本実施形態に係る抗酸化剤は、食品、飲料、動物用飼料、医薬品又は動物用医薬品として、長期間にわたり日常的に安心して摂取することができる。
以下に実施例、および比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[実施例1]乳酸菌のDPPHラジカル消去活性の比較
各種のラクトコッカス属乳酸菌について、DPPH(1,1-diphenyl-2-picrylhydrazyl)ラジカル消去活性を比較した。
(1)検体の調製
ラクトコッカス ラクティス サブスピーシーズ ラクティスに属する乳酸菌として、N7株(NITE FERM P-18217)、G50株(NITE FERM P-18415)、527株(MAFF 400103)、を用いた。また、ラクトコッカス ラクティス サブスピーシーズ クレモリスに属する乳酸菌として、H61株(NITE P-92)、ATCC 19257株を用いた。
上記乳酸菌について、常法により一晩培養したMRS培養液を、0.5%(v/v)でMRS培地(Becton Dickinson and Company社製)に接種し、30℃で一晩培養した。この培養物について13000g、10分間の条件で遠心分離を行って集菌し、得られた菌体を水で3回洗浄後、50%(v/v)エタノール水溶液に懸濁して、100mg/mL(湿菌体重量 w/v)の菌体懸濁液を得た。この菌体懸濁液を13000g、10分間の条件で遠心分離を行い、採取した上清を試験検体とした。
(2)DPPHラジカル消去活性の測定
上記で調製した試験検体30μLと用時調製したDPPH反応液90μLを混ぜ、室温で20分間保温した。その後、DPPHの退色の程度を520nmで測定した。ブランク試験では、試験検体の代わりに、50%(v/v)エタノール水溶液を用いた。DPPH反応液は次のようにして調製した。
DPPH反応液の調製方法
1. 400μM DPPH/エタノール
1mgのDPPHを量り取って6.5mLのエタノールで溶解する。
2. 0.2M MES(2-morpholinoethanesulfonic acid)(pH6.0)
8.53gのMESを水に溶かし、NaOH溶液でpH6.0に調整したあと、200mLにする。
3. DPPH反応液の調製
上記1.の400μM DPPH/エタノール、上記2.の0.2M MES、及び50%(v/v)エタノール水溶液を等量ずつ混ぜ、DPPH反応液を調製した。
(3)結果
測定結果を表1に示す。DPPHラジカル消去活性は以下の式により算出した。
Figure 2023004095000001
Figure 2023004095000002

※結果は3連の平均値±標準偏差で表す。
異なる符号間で有意差が認められた(p<0.05)。
表1から、ラクトコッカス属乳酸菌(生菌)の中でもN7株が最も高い抗酸化作用(DPPHラジカル消去活性)を有することが示された。また、非特許文献1に記載されたラクトコッカス ラクティス サブスピーシーズ クレモリス H61と比べて、N7株は2倍以上の抗酸化作用を有することが分かった。
[実施例2]N7株の加熱処理後のDPPHラジカル消去活性
実施例1で生菌の中で最も高い抗酸化活性を示したN7株について、加熱処理後のDPPHラジカル消去活性を、次のようにして測定した。
すなわち、N7株をMRS培地で一晩培養し、得られた培養物を13000g、10分間の条件で遠心分離を行って集菌した。集菌した菌体を水で3回洗浄後、水に懸濁し、100mg/mL(湿菌体重量 w/v)の菌体懸濁液を得た。この菌体懸濁液を95℃で15分間加熱処理し、冷却後、等量の100%エタノールを混合した。得られた混合液を13000g、10分間の条件で遠心分離を行い、採取した上清を試験検体とした。未加熱の菌体も同様に処理し、試験検体とした。
上記のようにして調製した試験検体について、実施例1と同様にDPPHラジカル消去活性を測定した。結果を表2に示す。
Figure 2023004095000003

※結果はDPPHラジカル消去活性(%)について、3連の平均値±標準偏差で表す。
表2から、N7株は加熱処理を行っても抗酸化活性が低下しないことが示された。非特許文献1に記載されたH61株のように、ラクトコッカス属乳酸菌の多くはSODを有することが報告されている。SODは酵素であるため、加熱処理によりラクトコッカス属乳酸菌の抗酸化活性は低下すると考えられていた。このような状況下、N7株が加熱死菌体でも生菌体と同等の高い抗酸化作用を有することは、予想外の発見であった。
[実施例3]ゼブラフィッシュを用いたN7株死菌体の抗酸化機能評価
実施例1,2ではN7株の抗酸化作用を試験管レベル(in vitro)で明らかにした。しかし、in vitroでの結果と生体レベル(in vivo)での結果が一致しないことも多い。そこで、本実施例では、ゼブラフィッシュを用いた抗酸化機能評価系により、N7株の生体レベルでの抗酸化能を測定した。
はじめに、図1を参照してゼブラフィッシュを用いた抗酸化機能評価系について説明する。まず、ゼブラフィッシュ親魚を交配し(1日目夜)、受精卵を採取した(2日目朝)。この受精卵を孵化させ、受精後3日半のゼブラフィッシュ稚魚を準備した(5日目夜)。次に、この受精後3日半稚魚を24穴プレートの各穴に8匹ずついれ、測定対象の乳酸菌(食品成分)の溶液(0.5mL)を添加して、前処理を開始した(5日目夜)。12時間後、乳酸菌溶液を取り除き(前処理終了)、水で洗浄後、酸化剤を添加して酸化剤処理を開始した(6日目朝)。酸化剤には2.8mMの過酸化水素水(0.5mL)を用いた。酸化剤処理は48時間行い、処理開始から12時間おきに生存匹数を数えた。
ゼブラフィッシュを用いた上記評価系の利点は、哺乳動物に比して倫理的問題が小さく、毒性試験や創薬スクリーンに活用できる点である。加えて、受精後2日半で孵化し摂食し始めるので、小さく扱いやすい稚魚の段階で、簡便・迅速・大量に「食」に関連する解析ができる点である。
試験方法は上記(図1)の通りに行った。使用した乳酸菌溶液は、次のようにして調製した。まず、N7株をMRS培地で一晩培養し、得られた培養物を1800g、15分間の条件で遠心分離を行って集菌した。次に、集菌した菌体を生理食塩水で2回洗浄後、水に懸濁し、菌体懸濁液を得た。この菌体懸濁液を121℃で15分間加熱処理して、N7株加熱死菌体の懸濁液(原液)とした。これを水で所定濃度に希釈したものを、乳酸菌溶液として供試した。菌体懸濁液について吸光度計で測定した濃度は、図2に記載した通りである。なお、当該株について、OD620=1.0は、1.5×10cfu/mLに相当する。
結果を図2に示す。図2中、横軸は酸化剤である過酸化水素溶液の処理時間、縦軸は処理開始時を100%とした時のゼブラフィッシュの生残率(%)を示す。生存曲線はカプランマイヤー法で解析し、異なる条件間の有意差はログランク法で検定した。1回の解析につき8匹×3穴で行い、複数回解析したので、いずれの測定もN=24以上のゼブラフィッシュ稚魚を用いた結果となっている。
その結果、前処理しなかった対照の稚魚(点線)では処理開始12時間後で生残率が22.5%まで減少したのに対し、N7株加熱死菌体のOD620=0.125懸濁液及びOD620=0.25懸濁液(いずれも太実線)を前処理した稚魚は、処理開始48時間後でも生残率100%であった。N7株死菌体の懸濁液を前処理した稚魚はいずれの試験区もp値=1.17×10-29となり、対照と比較して過酸化水素に対する致死性が有意に緩和されることがわかった。よって、N7株(死菌)は、酸化剤処理によるゼブラフィッシュの生残性低下を改善できる、生体レベルでの抗酸化作用を有していることが明らかとなった。
[実施例4]ゼブラフィッシュを用いたN7株死菌体凍結乾燥粉末の抗酸化機能評価
本実施例では、ゼブラフィッシュを用いた抗酸化機能評価系により、N7株死菌体の凍結乾燥粉末について、生体レベルでの抗酸化能を測定した。
試験方法は実施例3(図1)の通りに行った。使用した乳酸菌溶液は、実施例3で調製したN7株加熱死菌体の懸濁液(原液)を、凍結乾燥法により粉末化してN7株の凍結乾燥粉末とし、これを所定濃度で水に溶解・懸濁したものを用いた。乳酸菌溶液の濃度は図3に記載した通りである。
結果を図3及び表3に示す。図3中、横軸は酸化剤である過酸化水素溶液の処理時間、縦軸は処理開始時を100%とした時のゼブラフィッシュの生残率(%)を示す。生存曲線の解析法、有意差検定法、解析数、は実施例3(図2)と同様である。また、表3は、各試験区のゼブラフィッシュの生残率(%)を処理時間別に表したものである。
Figure 2023004095000004

※数値はゼブラフィッシュの生残率(%)の平均値。
その結果、N7株凍結乾燥粉末の250μg/mL溶液(太実線)及び125μg/mL溶液(一点破線)を前処理した稚魚は、前処理しなかった対照の稚魚(点線)と比較し、過酸化水素に対する致死性が有意に緩和されることがわかった。汎用性が高い死菌体凍結乾燥粉末の形態であっても、N7株は酸化剤処理によるゼブラフィッシュの生残性低下を改善できる、生体レベルでの抗酸化作用を有していることが明らかとなった。
以上、本発明の実施形態及び実施例を詳述してきたが、上記実施形態及び実施例は本発明の例示にしか過ぎないものであり、本発明は上記実施形態及び実施例の構成にのみ限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、本発明に含まれる。
本発明による乳酸菌N7株を有効成分とする抗酸化剤は、食品や飲料だけでなく、動物用飼料、医薬品、動物用医薬品、化粧品、医薬部外品の製造においても利用が見込まれる。N7株は長年乳製品の製造に利用されてきた乳酸菌であり、安全性が高く、食品として日常的に長期間安心して摂取することができる。

Claims (3)

  1. ラクトコッカス ラクティス サブスピーシーズ ラクティス バイオバラエティ ジアセチラクティス(Lactococcus lactis subsp. lactis biovar. diacetylactis)N7(FERM P-18217)を有効成分として含む抗酸化剤。
  2. 前記N7株が、生菌体若しくは死菌体、又はそれらの乾燥粉末である、請求項1記載の抗酸化剤。
  3. 食品組成物、飲料、動物用飼料、医薬品、動物用医薬品、化粧品又は医薬部外品である、請求項1又は2記載の抗酸化剤。
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