JP2023003266A - 表示システム - Google Patents

Abstract

【課題】風景に溶け込む映像を表示する表示システムを提供する。【解決手段】表示システム１は、ディスプレイ１０と、ディスプレイ１０に表示する映像のデータを取得するように構成された映像取得部２１と、ディスプレイ１０に表示された映像とディスプレイ１０の周囲の風景とを撮影するように構成された映像調整用カメラ６２と、映像調整用カメラ６２が撮影した画像に基づいて、ディスプレイ１０に表示された映像とディスプレイ１０の周囲の風景とが整合するように映像データを調整するための映像調整値を決定するように構成された映像調整値決定部２４と、映像調整値を用いて、映像データを調整してディスプレイ１０に表示させる映像のデータを表示データとして作成するように構成された映像調整部２２と、表示データに基づいて、ディスプレイ１０に映像を表示させる駆動回路２８とを備える。【選択図】図１

Description

本発明は、表示システムに関する。

一般に、液晶ディスプレイ、ＬＥＤディスプレイ、有機ＥＬディスプレイなど、様々な種類のディスプレイが、種々の用途で使われている。このようなディスプレイの中には、屋外で使われる物もある。例えば特許文献１には、表示の見え方に影響する太陽の位置を検知して、太陽の位置に応じて表示輝度を調整する、屋外用情報表示装置について開示されている。

特開２００１－１１７５３６号公報

本発明は、風景に溶け込む映像を表示する表示システムを提供することを目的とする。

本発明の一態様によれば、表示システムは、各々の輝度が調整され得るように構成された複数の発光素子を有するディスプレイと、前記ディスプレイに表示する映像のデータを映像データとして取得するように構成された映像取得部と、前記ディスプレイに表示された映像と前記ディスプレイの周囲の風景とを撮影するように構成された映像調整用カメラと、前記映像調整用カメラが撮影した画像に基づいて、前記ディスプレイに表示された映像と前記ディスプレイの周囲の風景とが整合するように前記映像データを調整するための映像調整値を決定するように構成された映像調整値決定部と、前記映像調整値を用いて、前記映像データを調整して前記ディスプレイに表示させる映像のデータを表示データとして作成するように構成された映像調整部と、前記表示データに基づいて、各々の前記発光素子の発光輝度を調整することで前記ディスプレイに映像を表示させる駆動回路とを備える。

本発明によれば、風景に溶け込む映像を表示する表示システムを提供できる。

図１は、一実施形態に係る表示システムの構成例の概略を示す図である。 図２は、一実施形態に係る表示システムの使用状態の一例を説明するための図であり、現実の風景を模式的に示す図である。 図３は、一実施形態に係る表示システムの日中における使用状態の一例を説明するための図であり、観賞者と建築物群との間にディスプレイが設置された状態を模式的に示す図である。 図４は、一実施形態に係る表示システムの夜間における使用状態の一例を説明するための図であり、観賞者と建築物群との間にディスプレイが設置された状態を模式的に示す図である。 図５Ａは、映像調整前の第２カメラが取得した画像の一部の例を模式的に示す図である。 図５Ｂは、映像調整部で調整された映像がディスプレイに表示された状態で、第２カメラが取得した画像の一部の例を模式的に示す図である。 図６は、制御装置で行われる処理の一例の概略を示すフローチャートである。 図７は、表示システムが用いられる状況の一例を模式的に示す図である。 図８Ａは、観賞者からの視野を模式的に示す図である。 図８Ｂは、左カメラからの視野を模式的に示す図である。 図８Ｃは、右カメラからの視野を模式的に示す図である。 図９は、表示映像の作成方法の一例を説明するための図である。 図１０は、表示システムが用いられる状況の別の例を模式的に示す図である。 図１１は、表示映像の作成方法の別の例を説明するための図である。 図１２は、一変形例に係る駆動回路の構成例の概略を説明するための図である。 図１３は、一変形例に係る表示システムの構成例の概略を示す図である。

［システムの概略］
図１は、本実施形態に係る表示システム１の構成例の概略を示す図である。表示システム１は、観賞者８０が所定の位置からディスプレイ１０の方向を見たときに、ディスプレイ１０自体が風景に溶け込むように見える映像を表示することができるように構成されている。したがって、観賞者８０は、ディスプレイ１０による表示によって、その一部が改変された風景を観賞することができる。

図２乃至４は、本実施形態に係る表示システム１の使用状態の一例を説明するための図である。図２は、観賞者から見た風景９１の一例を模式的に示す図である。図２に示す例では、風景９１の中に建築物群９２が含まれている。図３は、観賞者と建築物群９２との間にディスプレイ１０が設置され、ディスプレイ１０に、建築物群９２の後方の映像を含む、建築物群９２がない場合の風景の映像９４が表示された状態を模式的に示す。図３に示す例では、観賞者は、建築物群９２が存在しない状態の架空の風景９３を見ることができる。

本実施形態の表示システム１は、図３に模式的に示すように昼の明るい場面にも用いられ得るし、図４に模式的に示すように夜の暗い場面にも用いられ得るように構成されている。

［システムの構成］
図１に示すように、表示システム１は、ディスプレイ１０と、ディスプレイ１０による映像の表示を制御するための映像信号を出力する制御装置２０と、制御装置２０が出力した映像信号に基づいてディスプレイ１０を動作させる駆動回路２８とを備える。また、本実施形態では、ディスプレイ１０に表示させる映像は、映像作成装置３０によって作成される。

ディスプレイ１０は、例えば、複数色の発光ダイオード（ＬＥＤ）素子といった発光素子が多数配列されたディスプレイである。各々の発光素子の発光輝度は、駆動回路２８によって調整される。駆動回路２８は、例えば、ＰＷＭ制御により各々の発光素子の発光輝度を調整する。

本実施形態では、ディスプレイ１０に表示される映像は、背景と位置合わせがされた映像であるため、観賞者８０は例えばディスプレイ１０の正面といった特定の方向からディスプレイ１０を含む風景を観賞する必要がある。また、晴れた日中の屋外の高照度の環境でも利用されることを想定すると、ディスプレイ１０は高輝度での映像の表示が要求される。そこで、これに限らないが、ディスプレイ１０は、各々の発光素子から放射された光が適切な観賞者８０の位置にあたる所定の方向に高い指向性を有して出射するように構成されている指向性ディスプレイであることが好ましい。指向性ディスプレイであると、消費電力を抑えつつ高輝度な表示を実現できる。ディスプレイ１０には、例えば、砲弾型ＬＥＤが用いられたり、集光ミラーやコリメータレンズが用いられたりしてもよい。

図３に示すように昼の明るい場面と図４に示すように夜の暗い場面とでは、照度は、例えば数ルクスから数十万ルクスまで、十万倍の幅で変化する。ディスプレイ１０がこれほど広い範囲の階調を有することは困難である。一方で、周囲の照度に応じて所定の階調を低輝度側又は高輝度側にシフトさせることで、明るい場面でも暗い場面でも背景に溶け込むような映像をディスプレイ１０が表示することはできる。

例えば、駆動回路２８において、例えば１２ビットといったＰＷＭ制御による階調を維持したまま、駆動電源の電圧を変化させることで、ＬＥＤといった発光素子に印加する駆動電圧を変更して、表示輝度をシフトさせることができる。また、駆動回路２８における電流制御に用いている抵抗器の抵抗値を変更することで、表示輝度をシフトさせることができる。

本実施形態の図１に示す例では、ディスプレイ１０には、ディスプレイ１０の後ろに隠れて観賞者８０からは現実には見えない風景が表示される。このため、表示システム１は、ディスプレイ１０の後ろ側の風景を撮影するための１つ以上の第１カメラ５１を備える。さらに、図１に示す例では、ディスプレイ１０には、観賞者８０からは建築物群９２の後ろに隠れて現実には見えない風景が表示される。このため、表示システム１は、建築物群９２の後ろ側の風景を撮影するための１つ以上の第２カメラ５２を備える。

第１カメラ５１及び第２カメラ５２は、高輝度の輝点から暗部まで適切に撮影できるように、高いダイナミックレンジで撮影を行う。このため、第１カメラ５１又は第２カメラ５２の各々は、一視点から複数の露出条件での撮影を行う。このため、例えば、第１カメラ５１又は第２カメラ５２の各々は、複数のカメラを含んでいてもよい。例えば、一箇所に複数のカメラが並べられ、これらカメラの各々の感度、絞り又は露光時間などの露出条件が異なるように設定される。このようにして、一視点から同時に複数の露出条件で、すなわち、高いダイナミックレンジで撮影が行われる。得られた複数の画像に基づいて、ハイダイナミックレンジ画像が得られる。

一視点から同時に複数の露出条件で撮影を行うためには、上述のように複数のカメラが並べて配置される代わりに、ハーフミラー又はハーフプリズムといった光学素子を用いた光学系と複数の撮像素子とが用いられてもよい。この場合、同じ視点からの像が、ハーフミラー又はハーフプリズムなどを用いて、複数の撮像素子に導かれる。各々の撮像素子では、互いに異なる露出条件で撮影が行われる。このような場合は、一つの機体に複数のカメラが含まれていると考えられる。得られた複数の画像に基づいて、ハイダイナミックレンジ画像が得られる。

表示システム１は、第１カメラ５１及び第２カメラ５２を用いて撮影された画像を用いて、ディスプレイ１０に表示する映像を作成する映像作成装置３０を備える。映像作成装置３０が作成する映像は、観賞者８０から見て、ディスプレイ１０に表示される映像と背景の現実の風景とが連続的につながって見える映像である。また、映像作成装置３０が作成する映像は、ディスプレイ１０の後ろ側の現実の風景の一部が改変された映像である。

映像作成装置３０は、コンピュータを有する。映像作成装置３０は、座標変換部３１と、ＣＧ生成部３２と、映像作成部３３との機能を有する。第１カメラ５１及び第２カメラ５２で撮影された画像は、観賞者８０の位置から撮影された画像ではない。第１カメラ５１及び第２カメラ５２で撮影された画像は、観賞者８０の位置からはディスプレイ１０や建築物群９２に隠れて見えない場所の画像である。このため、第１カメラ５１及び第２カメラ５２で撮影された画像は、そのまま使うことはできない。座標変換部３１は、観賞者８０とディスプレイ１０との位置関係と、第１カメラ５１及び第２カメラ５２の位置及び撮影方向とに基づいて、第１カメラ５１及び第２カメラ５２で撮影された画像に対して、ディスプレイ１０に表示させる映像が観賞者８０から見た風景として適切になるような座標変換を伴う画像処理を行う。

ディスプレイ１０に表示される映像は、すべてが第１カメラ５１又は第２カメラ５２で撮影された画像に基づかなくてもよい。ディスプレイ１０に表示される映像には、コンピュータグラフィックス（ＣＧ）による映像が含まれていてもよい。ＣＧ生成部３２は、このようなコンピュータグラフィックスを生成する。ＣＧ生成部３２は、例えば、予め用意された情報に基づいて、第１カメラ５１又は第２カメラ５２から死角になる部分の画像を生成してもよい。あるいは、第１カメラ５１又は第２カメラ５２を用いて得られたある画像の例えば周縁部の画像が、ＣＧ生成部３２によって生成されてもよい。すなわち、第１カメラ５１又は第２カメラ５２を用いて得られたある画像と、他の第１カメラ５１若しくは第２カメラ５２を用いて得られた画像又は現実の景色とが滑らかにつながるように、ＣＧ生成部３２は、画像の周縁部に関するコンピュータグラフィックスを生成してもよい。ＣＧ生成部３２は、予め用意された情報に基づいてコンピュータグラフィックスを生成してもよいし、第１カメラ５１又は第２カメラ５２で撮影された画像に基づいてコンピュータグラフィックスを生成してもよい。

映像作成部３３は、座標変換部３１で座標変換された第１カメラ５１又は第２カメラ５２を用いて得られた画像や、ＣＧ生成部３２で生成されたコンピュータグラフィックスに基づいて、ディスプレイ１０に表示させる架空の映像を作成する。映像作成装置３０は、作成した映像を制御装置２０へと出力する。

本実施形態では、ディスプレイ１０が風景の中に溶け込んで見えるように、ディスプレイ１０に表示される映像が調整される。このため、表示システム１は、ディスプレイ１０の周囲の照度を測定するように構成された照度計５５と、ディスプレイ１０の表示面とその周囲の背景とを撮影するように構成された映像調整用カメラ６２を備える。映像調整用カメラ６２は、いくつのカメラによって構成されていてもよい。

制御装置２０は、コンピュータを有する。制御装置２０は、映像取得部２１と、映像調整部２２と、輝度調整値決定部２３と、映像調整値決定部２４との機能を有する。映像取得部２１は、映像作成装置３０が作成した映像のデータを映像データとして取得する。映像調整部２２は、映像取得部２１が取得した映像に所定の調整を施して、ディスプレイ１０に表示させる映像を作成する。映像調整部２２は、作成した映像をディスプレイ１０に表示させるため、その映像を表す信号である表示データを駆動回路２８に出力する。駆動回路２８は、映像調整部２２から入力された表示データに基づいて、ディスプレイ１０に映像を表示させる。

輝度調整値決定部２３は、照度計５５から照度の情報を取得し、上述のようにディスプレイ１０の輝度を変更するための輝度調整値を決定する。輝度調整値決定部２３は、輝度調整値を映像調整部２２に出力する。

映像調整部２２は、輝度調整値決定部２３から取得した輝度調整値に基づいて、ディスプレイ１０の表示輝度を考慮して表示データを調整する。映像調整部２２は、輝度調整値に係る情報を含む表示データを駆動回路２８に出力する。

駆動回路２８は、このような表示データに基づいて、上述のようにして輝度を調整しながらディスプレイ１０に映像を表示させる。その結果、ディスプレイ１０の周囲の照度に応じた映像が、ディスプレイ１０に表示される。

映像調整値決定部２４は、映像調整用カメラ６２が撮影した画像を取得し、この画像に基づいて、ディスプレイ１０に表示させる映像を調整するための映像調整値を決定する。映像調整値決定部２４は、映像調整値を映像調整部２２に出力する。

映像調整部２２は、映像調整値決定部２４から取得した映像調整値に基づいて、ディスプレイ１０に表示する映像を調整し、調整後の表示データを駆動回路２８に出力する。

図５Ａは、映像調整前の映像調整用カメラ６２が取得した画像９５の一部の例を模式的に示す。この例では、左側に示されたディスプレイ１０に表示された映像９６と、右側に示された現実の背景９７とで、明るさ、色味などが異なり一致していない。映像調整値決定部２４は、これらが一致するように、ディスプレイ１０に表示する映像の輝度、色味などを調整するための映像調整値を決定する。

図５Ｂは、映像調整値に基づいて、映像調整部２２で調整された映像がディスプレイ１０に表示された状態の、映像調整用カメラ６２が取得した画像９５の一部の例を模式的に示す。このように、ディスプレイ１０に表示された映像９６と現実の背景９７とで、明るさ、色味などが一致している。その結果、ディスプレイ１０に表示された映像は、風景に溶け込む。

なお、ここでは、輝度調整値決定部２３が照度計５５から取得した照度の情報に基づいて輝度調整値を決定する例を示したが、これに限らない。例えば、輝度調整値決定部２３は、映像調整用カメラ６２等が有する自動露出設定装置によって決定された撮影時の露出条件に係る情報と撮影した画像とを映像調整用カメラ６２から取得し、これらの情報に基づいてディスプレイ１０の周囲の照度を決定し、輝度調整値を決定してもよい。この場合、別途に照度計５５を設ける必要はない。

以上のように、ディスプレイ１０が風景に溶け込むような映像を表示することで、観賞者８０は、ディスプレイ１０に表示された映像によって一部が改変された架空の風景を観賞することができる。

［システムの動作］
図６は、制御装置２０で行われる処理の概略を示すフローチャートである。

ステップＳ１において、映像取得部２１は、ディスプレイ１０に表示する映像を取得する。上述の例では、この映像は、映像作成装置３０が作成した映像である。映像作成装置３０は、上述のとおり、第１カメラ５１及び第２カメラ５２が取得した画像に対して座標変換を施した画像や、その画像、第１カメラ５１及び第２カメラ５２が取得した元の画像又は予め設定された情報などに基づいて作成されたコンピュータグラフィックスや、それらの組み合わせに基づいて、映像を作成する。

ステップＳ２において、輝度調整値決定部２３は、照度計５５の出力に基づいて、輝度調整値を決定する。上述のとおり、輝度調整値決定部２３は、照度計５５の出力の代わりに、映像調整用カメラ６２から取得した露出条件及び撮影画像等に基づいて、輝度調整値を決定してもよい。

ステップＳ３において、映像調整値決定部２４は、映像調整用カメラ６２が撮影した画像に基づいて、輝度、色味などを調整するための映像調整値を決定する。ここで、映像調整値決定部２４は、観賞者８０から見たときにディスプレイ１０に表示される映像がディスプレイ１０の背景に溶け込むような映像になるように、映像調整値を決定する。

ステップＳ４において、映像調整部２２は、ステップＳ１で取得した映像に対して、ステップＳ２で決定した輝度調整値とステップＳ３で決定した映像調整値とに基づく調整を行う。ここで、映像調整部２２は、調整後の映像が、ディスプレイ１０に表示されたときに、観賞者８０から見てディスプレイ１０に表示される映像がディスプレイ１０の背景に溶け込むような映像となるように調整する。

ステップＳ５において、映像調整部２２は、調整した映像及び輝度調整値と関連する情報を含む表示データを、駆動回路２８へと出力する。駆動回路２８によって、表示データに基づく映像がディスプレイ１０に表示される。すなわち、背景に溶け込むような映像がディスプレイ１０に表示される。ここで、ディスプレイ１０に表示される映像は、現実の一部が改変された映像であるので、観賞者８０は、ディスプレイ１０に表示された映像によって現実の一部が改変された風景を観賞することができる。

ディスプレイ１０の表示動作中、上述の処理が繰り返される。

本実施形態によれば、観賞者８０は、現実の一部が改変された興味深い風景を観賞することができる。この風景の改変は、容易に様々に行うことができる。

［変形例］
〈表示システムの用途〉
上述の実施形態では、風景９１に含まれる建築物群９２を消すような映像がディスプレイ１０に表示される例を示したが、表示システム１の使用例はこのようなものに限らない。

ディスプレイ１０には、現実と無関係な映像が表示され、観賞者８０が、現実と無関係に改変された風景を見ることができるように、表示システム１が構成されてもよい。この場合、映像取得部２１が取得する映像は、第１カメラ５１及び第２カメラ５２を用いて映像作成装置３０が作成した映像ではなく、例えば、予め作成された現実とは無関係な映像などであり得る。この映像は、ＣＧ生成部３２で生成されたコンピュータグラフィックスであってもよい。

あるいは、ディスプレイ１０には、現実の風景に架空の物体の映像が合成された映像が表示され、観賞者８０が、架空の物体があたかもそこにあるような風景を見ることができるように、表示システム１が構成されてもよい。この場合、第２カメラ５２は設けられず、第１カメラ５１が、例えば建築物群９２などを含む、ディスプレイ１０の後ろ側の風景を撮影し、映像作成装置３０は、ディスプレイ１０の後ろの風景に架空の物体を合成した映像を作成する。

このように、第１カメラ５１及び第２カメラ５２等の配置、これらカメラで撮影した画像の処理、コンピュータグラフィックスの利用方法などは、ディスプレイ１０に表示する映像などに応じて適宜に設定され得る。

〈カメラの配置及び映像作成の一例〉
図７は、本例に係る状況を模式的に示す図である。観賞者８０がディスプレイ１０の方向を見ている。観賞者８０から見て、ディスプレイ１０の後側には山１６１があり、山１６１の左側には煙突１６２があり、山１６１の右側には建物１６３がある。

観賞者８０の左側には左カメラ１５１が設置され、観賞者８０の右側には右カメラ１５２が設置されている。ここで、左カメラ１５１及び右カメラ１５２は、上述の実施形態の第１カメラ５１として機能する。左カメラ１５１及び右カメラ１５２は、さらに映像調整用カメラ６２の機能も兼ねてもよく、この場合、別途に映像調整用カメラ６２を設ける必要はない。観賞者８０、左カメラ１５１及び右カメラ１５２は異なる位置に存在するため、観賞者８０、左カメラ１５１及び右カメラ１５２の各々からの視野は、互いに異なる。一例を模式的に示すと、観賞者８０からの視野は図８Ａに示すようになり、左カメラ１５１からの視野は図８Ｂに示すようになり、右カメラ１５２からの視野は図８Ｃに示すようになる。このように、手前側に存在するディスプレイ１０によって隠れて見えない領域は、互いに異なる。

この例では、映像作成装置３０は、次のようにしてディスプレイ１０に表示する映像を作成する。図９は、映像の作成方法を説明するための図である。図９（ａ）は、左カメラ１５１による撮影で得られる第１画像１７１を示す。図９（ｂ）は、右カメラ１５２による撮影で得られる第２画像１７２を示す。これら第１画像１７１及び第２画像１７２のうち、ディスプレイ１０が写っていない領域の画像がつなぎ合わされて、図９（ｃ）に示すような第１合成画像１７３が作成される。

ここで、第１画像１７１及び第２画像１７２を用いて、隙間なく第１合成画像１７３が作成される場合もあるが、図９（ｃ）に示すように、第１合成画像１７３には、第１画像１７１においても第２画像１７２においてもディスプレイ１０に隠れている領域１７４が存在する場合がある。このようなとき、この領域１７４を覆うように、図９（ｄ）に示すようなコンピュータグラフィックス１７５が生成される。コンピュータグラフィックス１７５は、現実に即した画像でもよいが、この例では、コンピュータグラフィックス１７５において、山１６１の画像は、現実と異なり噴火している画像である。第１合成画像１７３とコンピュータグラフィックス１７５とが合成されて図９（ｅ）に示すような第２合成画像１７６が生成される。この第２合成画像１７６のうち、観賞者８０から見てディスプレイ１０の位置に対応する領域が、表示映像１７７として切り出される。表示映像１７７が周囲に溶け込むようにディスプレイ１０に表示されることで、観賞者８０は、山１６１が噴火しているような錯覚を得ることができる。

〈カメラの配置及び映像作成の別例〉
図１０は、さらに別の例に係る状況を模式的に示す図である。この例では、観賞者８０の左側には第１左カメラ１５３及び第２左カメラ１５４が設置されている。また、観賞者８０の右側には第１右カメラ１５５及び第２右カメラ１５６が設置されている。

この例では、第１左カメラ１５３及び第２左カメラ１５４はいずれも観賞者８０の左側に配置されているが、異なる位置に配置されているので視差がある。例えば、第１左カメラ１５３は図１１（ａ）に示すような第３画像１８１を取得し、第２左カメラ１５４は図１１（ｂ）に示すような第４画像１８２を取得する。映像作成装置３０は、この第３画像１８１及び第４画像１８２に基づいて、パターンマッチングの技術などを用いて対応する特徴点を特定する。映像作成装置３０は、第１左カメラ１５３及び第２左カメラ１５４間の視差と両画像における対応する特徴点の座標とに基づいて、被写体の現実の各位置の３次元位置を決定する。映像作成装置３０は、これら現実の物の３次元位置に基づいて、図１１（ｃ）に示すような、観賞者８０から見えるはずの景色を表す映像、すなわち、ディスプレイ１０に表示させるべき合成映像１８３を作り出す。図１１（ｃ）には、図１１（ａ）に示す第３画像１８１と図１１（ｂ）に示す第４画像１８２とに基づいて３次元位置が特定され得る、第３画像１８１と第４画像１８２との両方に写っている物に関する合成映像１８３が示されている。

この例では、第１左カメラ１５３及び第２左カメラ１５４のみならず、第１右カメラ１５５及び第２右カメラ１５６を加えた４台のカメラが取得した画像に基づいて、現実の物の各々の３次元位置が特定され、それら情報に基づいて、ディスプレイ１０に表示させる表示映像の全体が合成され得る。

なお、この例では三次元の座標を得る方法を説明したが、表示映像の作成方法は、このような方法に限らない。例えば、第１左カメラ１５３、第２左カメラ１５４、第１右カメラ１５５及び第２右カメラ１５６の４台のカメラが取得した画像に基づいて、補間演算により表示映像の全体が合成されてもよいことは勿論である。これに限らないが、例えば、複数の画像の対応する特徴点が特定され、観賞者８０から見えるはずの景色における当該特徴点の位置が補間演算により特定され、観賞者８０から見えるはずの景色を表す映像が合成されてもよい。

このように、映像作成装置３０は、複数のカメラの視差と複数のカメラで撮影された画像とに基づいて、所定の演算処理により、ディスプレイ１０に表示させる表示映像に係る映像データを作成してもよい。所定の演算処理には、例えば、補間演算による映像の作成や、三次元座標の算出及び三次元座標に基づく映像の作成などといった、各種の演算処理が含まれ得る。

〈ディスプレイの階調について〉
上述の実施形態では、明るい場面でも暗い場面でもディスプレイ１０が背景に溶け込むように、周囲の照度に応じて所定の階調を低輝度側又は高輝度側にシフトさせる例を示したがこれに限らない。ディスプレイ１０の階調が広げられてもよい。

例えば、図１２に示すような駆動回路１２８を用いて、ディスプレイ１０が表示する階調が広げられてもよい。ディスプレイ１０のＬＥＤ１１０を動作させるこの駆動回路１２８は、第１ＰＷＭ信号発生器１４１と、第２ＰＷＭ信号発生器１４２とを備える。映像信号に基づいて第１ＰＷＭ信号発生器１４１から出力されたＰＷＭ信号は、第１抵抗器１４５に直列接続された第１スイッチング素子１４３をスイッチングし、映像信号に基づいて第２ＰＷＭ信号発生器１４２から出力されたＰＷＭ信号は、第２抵抗器１４６に直列接続された第２スイッチング素子１４４をスイッチングする。例えば、第２抵抗器１４６の抵抗値を第１抵抗器１４５の抵抗値の例えば１０００倍にすれば、ＰＷＭ制御信号の同一のパルス幅に対して、第１抵抗器１４５に流れる駆動電流を第２抵抗器１４６に流れる駆動電流の１０００倍にできる。このようにして、ディスプレイ１０のＬＥＤ１１０に流れる電流を同一のパルス幅で１０００倍に変更することができる。

あるいは、ディスプレイ１０が例えば高輝度用ＬＥＤと低輝度用ＬＥＤとを備え、ディスプレイ１０が表示する映像の階調が広げられてもよい。

〈暗い場面での使用について〉
暗い場面でもディスプレイ１０が背景に溶け込むように、例えば夜間にはディスプレイ１０の周囲の風景が照明器具を用いて照らされてもよい。すなわち、例えば図１３に示すように、表示システム１は、ディスプレイ１０の周囲の風景を照らすように構成された照明器具５７を備えていてもよい。制御装置２０は、照明器具５７の動作を調整するように構成された照明調整部２５を備えていてもよい。照明調整部２５は、例えば、輝度調整値決定部２３と協働して、ディスプレイ１０の低輝度領域の表示能力を考慮して動作してもよい。照明調整部２５は、例えば、ディスプレイ１０に表示される映像が周囲の風景に溶け込むようにするために必要な最小限の光量でディスプレイ１０の周囲を照明するように、照明器具５７の動作を調整してもよい。

照明調整部２５は、時刻等に基づいて、照明器具５７の動作を調整してもよい。また、照明調整部２５は、照度計５５が測定したディスプレイ１０の周囲の照度の情報に基づいて、照明器具５７の動作を調整してもよい。また、照明調整部２５は、映像調整用カメラ６２等が有する自動露出設定装置によって決定された撮影時の露出条件に係る情報と撮影した画像とに基づいてディスプレイ１０の周囲の照度を決定し、その情報に基づいて、照明器具５７の動作を調整してもよい。

例えば夜間において、ディスプレイ１０の周囲の風景が照明器具５７を用いて照らされることで、昼と夜とにおける背景の明るさの変化幅を抑えることができる。その結果、ディスプレイ１０の表示が背景に溶け込むようにするために必要なディスプレイ１０の暗い輝度領域に関して、ディスプレイ１０に対する階調の要求が緩和され得る。本変形例は、上述したディスプレイ１０の駆動電圧の変更による表示輝度のシフト又はディスプレイ１０の広階調化と共に適用されてもよいし、これらに代えて適用されてもよい。

〈ディスプレイの指向性について〉
上述の実施形態では、特定の一方向からのみディスプレイ１０に表示された映像を含む風景を観賞できる場合を好ましい一例として挙げて説明したがこれに限らない。例えば、ディスプレイが複数方向の各々から異なる映像が視認され得る構成を有していてもよい。このような表示システム１によれば、これら複数の方向から、ディスプレイ１０に表示された映像を含む風景の観賞が可能になる。

例えば、ディスプレイの正面からは第１の映像が視認でき、当該ディスプレイの６０度右側からは第２の映像が視認でき、当該ディスプレイの６０度左側からは第３の映像が視認できるようにディスプレイが構成されているとする。この場合、第１の映像をディスプレイの正面から見たときに背景と整合する映像とし、第２の映像をディスプレイの６０度右側から見たときに背景と整合する映像とし、第３の映像をディスプレイの６０度左側から見たときに背景と整合する映像とする。その結果、ディスプレイの正面、６０度右側、６０度左側の３か所から観賞者は、ディスプレイに表示された映像によって現実の一部が改変された風景を観賞することができる。

以上、本発明について、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明は、前述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることはいうまでもない。

１ 表示システム
１０ ディスプレイ
２０ 制御装置
２１ 映像取得部
２２ 映像調整部
２３ 輝度調整値決定部
２４ 映像調整値決定部
２５ 照明調整部
２８ 駆動回路
３０ 映像作成装置
３１ 座標変換部
３２ ＣＧ生成部
３３ 映像作成部
５１ 第１カメラ
５２ 第２カメラ
５５ 照度計
５７ 照明器具
６２ 映像調整用カメラ
９１ 現実の風景
９２ 建築物群
９３ 架空の風景
９４ 映像
９５ 第２カメラが取得した画像
９６ ディスプレイに表示された映像
９７ 現実の背景

Claims (15)

1. 各々の輝度が調整され得るように構成された複数の発光素子を有するディスプレイと、
   前記ディスプレイに表示する映像のデータを映像データとして取得するように構成された映像取得部と、
   前記ディスプレイに表示された映像と前記ディスプレイの周囲の風景とを撮影するように構成された映像調整用カメラと、
   前記映像調整用カメラが撮影した画像に基づいて、前記ディスプレイに表示された映像と前記ディスプレイの周囲の風景とが整合するように前記映像データを調整するための映像調整値を決定するように構成された映像調整値決定部と、
   前記映像調整値を用いて、前記映像データを調整して前記ディスプレイに表示させる映像のデータを表示データとして作成するように構成された映像調整部と、
   前記表示データに基づいて、各々の前記発光素子の発光輝度を調整することで前記ディスプレイに映像を表示させる駆動回路と
   を備える表示システム。
2. 前記駆動回路は、前記発光素子に印加する電圧を変更できるように構成されており、かつ、ＰＷＭ制御によって前記発光素子の発光輝度を調整するように構成されている、請求項１に記載の表示システム。
3. 前記映像調整用カメラの露出情報と前記映像調整用カメラが撮影した画像とに基づいて、前記ディスプレイの周囲の照度を特定し、当該照度に基づいて、輝度調整値を決定するように構成された輝度調整値決定部をさらに備え、
   前記駆動回路は、前記輝度調整値に基づいて、前記発光素子に印加する電圧を変更するように構成されている、
   請求項２に記載の表示システム。
4. 前記ディスプレイの周囲の照度を測定するように構成された照度計と、
   前記照度に基づいて、輝度調整値を決定するように構成された輝度調整値決定部と
   をさらに備え、
   前記駆動回路は、前記輝度調整値に基づいて、前記発光素子に印加する電圧を変更するように構成されている、
   請求項２に記載の表示システム。
5. 前記ディスプレイの周囲の照度を測定するように構成された照度計と、
   前記照度に基づいて、輝度調整値を決定するように構成された輝度調整値決定部と
   をさらに備え、
   前記映像調整部は、前記輝度調整値をさらに用いて、前記映像データを調整して前記表示データを作成するように構成されている、
   請求項２に記載の表示システム。
6. 前記ディスプレイの周囲の風景を照らすように構成された照明器具と、
   前記ディスプレイの周囲の明るさに応じて前記照明器具の動作を調整するように構成された照明調整部と
   をさらに備え、
   前記映像調整値決定部は、前記ディスプレイに表示された映像と照明された前記ディスプレイの周囲の風景とが整合するように前記映像データを調整するための前記映像調整値を決定するように構成されている、
   請求項１乃至５の何れかに記載の表示システム。
7. 前記ディスプレイは、放射する光を所定方向に指向させることができるように構成された指向性ディスプレイである、請求項１乃至６の何れかに記載の表示システム。
8. 前記ディスプレイは、放射する光を複数の所定方向に指向させることができるように構成されており、当該複数の所定方向に対して互いに異なる映像を表示するように構成された指向性ディスプレイである、請求項１乃至６の何れかに記載の表示システム。
9. 前記ディスプレイの後ろ側を撮影するように構成されたカメラと、
   前記カメラが撮影した映像に基づいて、前記映像データを作成する映像作成装置と
   をさらに備える請求項１乃至８の何れかに記載の表示システム。
10. 前記カメラは、互いに露出条件が異なる複数のカメラを備え、
    前記映像作成装置は、前記複数のカメラで撮影された画像に基づいて作成されたハイダイナミックレンジ画像に基づいて、前記映像データを作成する、
    請求項９に記載の表示システム。
11. 前記カメラは、異なる位置に設置された複数のカメラを備え、
    前記映像作成装置は、前記複数のカメラで撮影された画像をつなぎ合わせて、前記映像データを作成する、
    請求項９に記載の表示システム。
12. 前記映像作成装置は、さらにコンピュータグラフィックスを活用して前記映像データを作成する、請求項９乃至１１の何れかに記載の表示システム。
13. 前記映像作成装置は、前記複数のカメラで撮影された画像に含まれない部分をコンピュータグラフィックスで補って前記映像データを作成する、請求項１１に記載の表示システム。
14. 前記カメラは、異なる位置に設置された複数のカメラを備え、
    前記映像作成装置は、前記複数のカメラの視差と前記複数のカメラで撮影された画像とに基づいて、所定の演算処理により前記映像データを作成する、
    請求項９に記載の表示システム。
15. コンピュータグラフィックスを用いて前記映像データを作成する映像作成装置をさらに備える請求項１乃至８の何れかに記載の表示システム。
    
    

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