JP2022553553A - 医薬として使用するための(-)-cisテトラヒドロカンナビノール((-)-CIS-THC) - Google Patents

医薬として使用するための(-)-cisテトラヒドロカンナビノール((-)-CIS-THC) Download PDF

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Abstract

本発明は、医薬としての使用のためのテトラヒドロカンナビノール(THC)タイプのカンナビノイド化合物に関する。該THCタイプのカンナビノイドは、主カンナビノイドとしてTHCを産するために育種されてきた大麻植物品種において見出されうる、天然に存在するカンナビノイドである(-)-trans-テトラヒドロカンナビノールの、鏡像異性体である。特定の鏡像異性体(-)-cisテトラヒドロカンナビノールが、天然に存在する(-)-trans-THCとは異なる特性を有することが見出された。カンナビノイド(-)-cis-THCは、主カンナビノイドとしてカンナビジオール(CBD)を産するために育種されてきた特定の大麻植物品種において、低濃度で生じることが見出された。更に、該カンナビノイドは、合成手法によって生成することができる。

Description

本発明は、医薬としての使用のためのテトラヒドロカンナビノール(THC)タイプのカンナビノイド化合物に関する。
該THCタイプのカンナビノイドは、主カンナビノイドとしてTHCを産するために育種されてきた大麻植物品種において見出されうる、天然に存在するカンナビノイドである(-)-trans-テトラヒドロカンナビノールの、鏡像異性体である。特定の鏡像異性体(-)-cisテトラヒドロカンナビノールが、天然に存在する(-)-trans-THCと異なる特性を有することが見出された。
カンナビノイド(-)-cis-THCは、主カンナビノイドとしてカンナビジオール(CBD)を産するために育種されてきた特定の大麻植物品種において、低濃度で生じることが見出された。更に、該カンナビノイドは、合成手法によって生成することができる。
本明細書では、疾患モデルにおける(-)-cis-THCの有効性を実証するデータを開示する。また、(-)-cis-THCの合成方法も説明する。
カンナビノイドは、大麻植物の成分に、又はカンナビノイド受容体CB1若しくはCB2の内在性アゴニスト(エンドカンナビノイド)に、構造的若しくは薬理学的に関連した天然及び合成化合物である。自然界でこれらの化合物を産する方法は、大麻植物による産生方法しかない。大麻は、アサ(Cannabaceae)科の開花植物のうちの一属であり、カンナビス・サティバ(Cannabis sativa)、カンナビス・インディカ(Cannabis indica)、及びカンナビス・ルデラリス(Cannabis ruderalis)(場合によって、カンナビス・サティバの一部とみなされる)の種を含む。
大麻植物は、化合物が高度に複合した混合物を含む。少なくとも568個の特有の分子が同定されている。これらの化合物の中には、カンナビノイド、テルペノイド、糖、脂肪酸、フラボノイド、その他の炭化水素、窒素化合物、及びアミノ酸がある。カンナビノイドに関しては、100個以上の様々なカンナビノイドが同定されている(例えば、Handbook of Cannabis、Roger Pertwee、第1章、3~15頁を参照されたい)。
カンナビノイドは、これだけに限定されるものではないが、アドレナリン受容体、カンナビノイド受容体(CB1及びCB2)、GPR55、GPR3、又はGPR5を含む種々の受容体を介して、その生理学的効果を発揮する。大麻植物中に存在する主要なカンナビノイドは、カンナビノイド酸である、Δ9-テトラヒドロカンナビノール酸(Δ9-THCA)及びカンナビジオール酸(CBDA)であり、それぞれ少量の中性(脱炭酸された)カンナビノイドを含んでいる。更に、大麻は、より低レベルのその他の微量カンナビノイドを含むこともある。「これらの薬効のある植物、及び大麻からのより重量な抽出物の、化学組成、薬理学のプロファイリング、完全な生理学の有効性は、完全には解明されていない」Lewis, M. M.等、ACS Omega、2、6091~6103頁(2017)。
(-)-trans-THCの天然形態の化合物であるテトラヒドロカンナビノール(THC)は、精神賦活性である。(-)-trans-THCの医学的使用としては、化学療法により誘発された悪心及び嘔吐の治療のための使用、並びにHIV/AIDSに関連した食欲不振の治療での使用があり、(-)-trans-THCはまた、多発性硬化症関連痙縮のために承認された治療としてヨーロッパ及びカナダで承認されている、ナビキシモルス(Sativex)の成分でもある。
テトラヒドロカンナビノール分子は、4つの立体異性体:(-)-trans-デルタ-9-テトラヒドロカンナビノール、(+)-trans-デルタ-9-テトラヒドロカンナビノール、(-)-cis-デルタ-9-テトラヒドロカンナビノール、及び(+)-cis-デルタ-9-テトラヒドロカンナビノールで存在することが知られている。図1を参照されたい。
キラル中心があり、したがってそのような立体異性体を形成しうる合成された薬物では、合成によりラセミ混合物が形成されることが多く、これによって(-)及び(+)鏡像異性体の両方が作り出されるため、様々な鏡像異性体の特性を理解することが重要である。
THCの薬理活性は、立体特異的であり、(-)-trans-THC異性体(ドロナビノール)は、アッセイによっては、(+)-trans-THC異性体より6~100倍強力である(Dewey等、1984)。
その他の医薬では、いずれの鏡像異性体も同様の活性を有し、例えば、いずれのイブプロフェン鏡像異性体も抗炎症特性を有する。これらの鏡像異性体のうちの1つが患者に対して毒性又は有害ではないことを確実にすることに注意を払う必要もある。
THCの場合、光学、又は鏡像、(+)及び(-)鏡像異性体を有することに加えて、cis及びtrans異性体と呼ばれる幾何異性体も有する。食品医薬品局(FDA)は、幾何異性体の性質は化学的に異なるため、これらを別々の薬物として処置するべきであると判断している(https://www.fda.gov/regulatory-information/search-fda-guidance-documents/development-new-stereoisomeric-drugs)。
Handbook of Cannabis、Roger Pertwee、第1章、3~15頁 Lewis, M. M.等、ACS Omega、2、6091~6103頁(2017) https://www.fda.gov/regulatory-information/search-fda-guidance-documents/development-new-stereoisomeric-drugs
本発明は、驚くべきことに、化合物(-)-cis-THCが、疾患の動物モデルにおいて治療有効性を示すことが見出されたことを実証するものである。これまで、この化合物が何らかの治療有効性を有することは見出されていなかった。
本発明の第1の態様によると、医薬としての使用のための(-)-cis-テトラヒドロカンナビノール((-)-cis-THC)が提供される。
好ましくは、(-)-cis-THCは、植物抽出物の形態である。より好ましくは、(-)-cis-THCは、大麻の高度に精製された抽出物の形態である。
好ましくは、高度に精製された抽出物は、少なくとも80%(w/w)の(-)-cis-THCを含み、より好ましくは、高度に精製された抽出物は、少なくとも85%(w/w)の(-)-cis-THCを含み、より好ましくは、高度に精製された抽出物は、少なくとも90%(w/w)を含み、より好ましくは、高度に精製された抽出物は、少なくとも95%(w/w)の(-)-cis-THCを含み、更により好ましくは、高度に精製された抽出物は、少なくとも98%(w/w)の(-)-cis-THCを含む。
別法として、(-)-cis-THCは、合成化合物として存在する。
好ましくは、(-)-cis-THCの用量は、100mg/kg/日を超える。より好ましくは、(-)-cis-THCの用量は、250mg/kg/日を超える。より好ましくは、(-)-cis-THCの用量は、500mg/kg/日を超える。より好ましくは、(-)-cis-THCの用量は、750mg/kg/日を超える。より好ましくは、(-)-cis-THCの用量は、1000mg/kg/日を超える。より好ましくは、(-)-cis-THCの用量は、1500mg/kg/日を超える。
別法として、(-)-cis-THCの用量は、100mg/kg/日未満である。より好ましくは、(-)-cis-THCの用量は、50mg/kg/日未満である。より好ましくは、(-)-cis-THCの用量は、20mg/kg/日未満である。より好ましくは、(-)-cis-THCの用量は、10mg/kg/日未満である。より好ましくは、(-)-cis-THCの用量は、5mg/kg/日未満である。より好ましくは、(-)-cis-THCの用量は、1mg/kg/日未満である。より好ましくは、(-)-cis-THCの用量は、0.5mg/kg/日未満である。
本発明の第2の態様によると、(-)-cis-テトラヒドロカンナビノール((-)-cis-THC)及び1つ又は複数の薬学的に許容される医薬品添加物を含む医薬として使用するための組成物が提供される。
本発明の第3の態様によると、てんかんの治療において使用するための(-)-cis-テトラヒドロカンナビノール((-)-cis-THC)が提供される。
本発明の第4の態様によると、(-)-cis-テトラヒドロカンナビノール((-)-cis-THC)の生成方法が提供される。
本発明の実施形態を、添付図面を参照にしながら、以下で更に説明する。
テトラヒドロカンナビノールの4つの立体異性体を示す図である。 スティック描画での、(-)-trans-Δ9-THC(マゼンダ)、(+)-cis-Δ9-THC(ダークピンク)、及び(-)-cis-Δ9-THC(ライトピンク)、及び(+)-cis-Δ9-THC(オーキッド)の最適化されたコンフォメーションの、フェノール環レベルでの重ね合わせ図である。 (-)-trans-THC(パネルA)、(-)-cis-THC(パネルB)、及び(+)-cis-THC(パネルC)との複合体におけるCB1Rの、MDシミュレーションから得た代表的な骨格を示す図である。 (-)-trans-THC(パネルA)、(-)-cis-THC(パネルB)、及び(+)-cis-THC(パネルC)との複合体におけるCB2Rの、MDシミュレーションから得た代表的な骨格を示す図である。 セミ分取カラムでのcis-鏡像異性体の分離を示すHPLCクロマトグラムである。
定義
「カンナビノイド」とは、エンドカンナビノイド、フィトカンナビノイド、及び以下「シントカンナビノイド(syntho-cannabinoids)」とするエンドカンナビノイドでもフィトカンナビノイドでもないカンナビノイドを含む化合物の一群である。
「エンドカンナビノイド」とは、内在性カンナビノイドであり、CB1及びCB2受容体の高親和性リガンドである。
「フィトカンナビノイド」とは、自然界に起源し、大麻植物に見出されうるカンナビノイドである。フィトカンナビノイドは、単離された又は再合成された、植物性原薬を含む抽出物中に存在しうる。
「シントカンナビノイド」とは、内在的に又は大麻植物中に見出されないこれらの化合物である。例としては、WIN 55212及びリモナバンが挙げられる。
「単離されたフィトカンナビノイド」とは、大麻植物から抽出され、二次的及び微量カンナビノイド等の付加的成分、並びに非カンナビノイド画分が全て除去されたような程度まで精製された、フィトカンナビノイドである。
「合成カンナビノイド」とは、化学合成によって生成されたカンナビノイドである。この用語は、単離されたフィトカンナビノイドを、例えばその薬学的に許容される塩を形成することによって、改変することを含む。
「実質的に純粋な」カンナビノイドとは、95%(w/w)を超える純度で存在するカンナビノイドと定義される。より好ましくは、96%(w/w)、97%(w/w)、98%(w/w)、及び99%(w/w)を超える。
「立体異性体」とは、原子組成及び結合は同一であるが、原子の3次元配置が異なる分子である。
「幾何異性体」とは、化学的に区別され、薬理学的に異なる鏡像異性体であり、一般に、キラル技術を用いず容易に分離される。
「ジアステレオ異性体」とは、互いに鏡像ではない、複数のキラル中心を有する薬物の異性体である。
本発明は、特許請求される化合物、(-)-cis-テトラヒドロカンナビノールの、その光学及び幾何異性体と比較して異なる物理化学的特性を実証するデータを提供する。更に、疾患の動物モデルにおける該化合物の有効性を実証するデータを示す。別の態様では、(-)-cis-THC)の合成による生成方法を提供する。
フィトカンナビノイドの異性体のインシリコバーチャルスクリーニング
膜環境における分子ドッキングと分子動力学とを組み合わせた手法を使用することによって、(-)-cis-THCの、CB1及びCB2カンナビノイド受容体への推定上の結合様式を、THCのその他の立体異性体と比較して同定することができた。
方法
コンピューターによる方法
出発リガンドの形状は、Ghemical 2.99.23を用いて構築し、その後、まずTripos 5.2力場パラメーター化を使用して分子力学レベルで、次いでAM1半経験的レベルで、エネルギー極小化(EM)を行い;STO-3G基底系によるハートリー・フォックレベルでGAMESSプログラム4を使用して十分に最適化し;HF/6-31G*/STO-3G一点計算を行って、RESP手順5により部分的原子電荷を導出した。
ドッキング研究は、アゴニストAM11542に複合体化したCB1R(PDB id:5XRA)、及びアンタゴニストAM10257に複合体化したCB2R(PDB id:5ZTY)の結晶構造を使用することによって、AutoDock 4.2分布を用いて実施した。
タンパク質及びリガンドはいずれも、AutoDock Tools(ADT)パッケージバージョン1.5.6rc16により処理して、非極性水素を付加し、ガスタイガー電荷を計算し、回転可能な側鎖結合を選択した。
リガンド結合部位の中央に配置した、0.375Åの間隔の60×70×60点のドッキング評価のためのグリッドを、Autodock 4.2分布に含まれているプログラムAutoGrid 4.2を使用して作成した。
可動残基の様々な組合せを使用することによって、様々なランを実行した。
ラマルク進化を導入した遺伝的アルゴリズム(Lamarckian Genetic Algorithm、LGA)を採用して、ドッキングパラメーターを、最大1500万回のエネルギー計算及び最大37000世代の集団中の100個体として、分子ドッキングを実施し、続いて、Solis-Wets局所探索を300回繰り返した。各計算につき、総計100回のドッキングランを実施した。
本研究で使用した結晶構造中で不明のループは、MODELLER v9.11プログラム7を用いてモデルリングした。
リガンドと受容体との各組合せについての代表的な複合体を、全水素原子の付加によって完成させ、エネルギー極小化した。エネルギー極小化した複合体を、CHARMM-GUIウェブ-インターフェースを使用して、POPC二重層中に埋め込み、次いで、膜環境における分子動力学(MD)シミュレーションを、脂質については脂質14ff、タンパク質についてはff14SB力場、及びリガンドについてはgaffパラメーターを使用して、Amber16パッケージ8のpmemd.cudaモジュールを用いて行った。MD生成ランは、100ランについて実行した。
結果
THC異性体の比較
多環部分のコンフォメーションを比較するために、方法の節に記載のようにして得られたTHC異性体の3D配位を、フェノール環のレベルで重ね合わせ、図2に示した。
(-)-cis-THC異性体は、ジメチル-ピラン部分のレベルで、(-)-trans-THCの足場上に適合し、同じ方向を向くテトラヒドロベンゾメチル環を有することが見出された。
しかしながら、(+)-cis-THC異性体のコンフォメーションは、(-)-trans及び(-)-cis異性体のいずれとも大きく異なっている。
CB1受容体(CB1R)での理論的結合
(-)-trans-THCは、図3Aに示したような既知のCB1R部分的アゴニストであるため、ドッキング研究には、アゴニストに結合したCB1RのX線構造を選択した。
比較のために、THCのcis異性体を、同じX線構造においてドッキングさせた。図3Bは、(-)-cis-THCのドッキングを示し、図3Cは、(+)-cis-THCのドッキングを示す。
(-)-trans-THC及び(-)-cis-THCはいずれも、L型コンフォメーションをとっていたことが見てわかる。ペンチル鎖は、ヘリックスV上のTrp2795.43、π-π、並びにループECL2上のPhe268、Phe3797.35、Phe1893.25、及びPhe1772.64との疎水性相互作用を形成する三環系、並びにSer3837.39との水素結合の方を向いている。
また、ペンチル鎖は、Trp3566.48を有するトグルスイッチの一部であるためCB1R活性化において重要な残基である、Phe2003.36との疎水性相互作用にも関わっている。実際、Trp3566.48とPhe2003.36との間のπ-πスタッキングは、この受容体の不活性型を安定化させている。
(-)-cis-THCは、trans-THCと比べて傾いているテトラヒドロ-メチル-ベンゼン基を除いては、(-)-trans-THCと同じポーズをとっている。
しかしながら、(+)-cis-THCは、三環では逆向きをとっており、ペンチル鎖は、N末端、及びPhe2003.36から遠いPhe1772.64の方を向いている(図3C)。
CB2受容体での理論的結合
(-)-trans-THCのCB2Rへの結合を、図4Aに示す。
比較のために、THCのcis異性体を、同じX線構造においてドッキングさせた。図4Bは、(-)-cis-THCのドッキングを示し、図4Cは、(+)-cis-THCのドッキングを示す。
CB2Rリガンド結合部位内での検討化合物の全体的な配置は、CB1R複合体において既に観察されている配置によく重複している。(-)-trans-THCとCB2との間の相互作用は、主に疎水的で芳香族によるものであり、ECL2由来の残基、並びにヘリックスII、III、V、及びVIを必要とする。THCの三環は、Phe183ECL2との相互作用、並びにPhe1063.25及びPhe942.64との疎水性相互作用を形成するのに対し、ペンチル鎖は、Trp1945.43及びPhe1173.36との疎水性相互作用を形成する。この最後の残基は、Trp2586.48と併せてスイッチトグルの一部である。THCの三環のテルペノイド環のヒドロキシ基は、Ser2857.39とのH結合に関わっている。
CB1Rでの結合と同様に、リガンド結合部位で、(-)-cis-THC異性体は(-)-trans-THCと同様の向きをとるが、(+)-cis-THCは逆である。
結論
分子ドッキングと分子動力学とを組み合わせた手法によって、CB1及びCB2受容体のリガンド結合部位内での(-)-trans-THC、(-)-cis-THC、及び(+)-cis-THC異性体の推定上の結合様式を決定することができた。
この3種類の化合物の、2つの受容体への結合様式は、残基、並びにヘリックス、N末端、及びECL2ループの全体的な配置がどれも2つのサブタイプの間にしっかりと保存されているため、類似している。
THCの2つのcis異性体は、三環の足場のコンフォメーションが互いに大きく異なり、(-)-cis-THCの方がより(-)-trans-THCに類似している。(+)-cis-THCは、どちらの受容体のリガンド結合部位内でも逆の結合様式をとり、この異性体については、異なる機能的プロファイルが予想される。
全般発作のマウス過最大電気ショック発作(MES)モデルにおける(-)-CIS-THCの抗痙攣効果の評価
(-)-cis-THCの有効性を、発作のマウスモデルにおいて、最大電気ショック(MES)試験で試験した。
方法
マウスに、強直後肢痙攣を確実に引き起こすように、定電流ショック発生器(Ugo Basile:タイプ7801)に接続した角膜電極を介してMES(30mA、矩形電流:0.6msパルス幅、0.2s持続時間、50Hz)を与えた。強直痙攣の回数を記録した。
1グループ当たり16匹のマウスを調べた。本試験は盲検で実施した。
試験物質(-)-cis-THCは、4用量(10、50、100、及び150mg/kg)で評価し、MESの60分前に腹腔内に投与し、溶媒対照群(同じ実験条件下で投与)と比較した。
バルプロ酸(陽性対照)を、MESの30分前に、250mg/kgで腹腔内に投与し、参照物質として使用し、溶媒群(MESの60分前に腹腔内に投与)と比較した。
データは、両側のフィッシャーの正確確率検定を使用して、処置群を適切な溶媒対照と比較することによって分析した(p<0.05を有意とみなした)。
結果
Table 1(表1)に、本実験で得られたデータを示す。
陽性対照(バルプロ酸)群では、溶媒と比べて、動物の強直間代性発作の回数で有意な93.8%の変化が観察され、これは、期待される抗痙攣効果を実証するものである。
(-)-cis-THC処置したマウスでは、試験の60分前に、50mg/kg及び150mg/kgの用量を腹腔内投与した結果、強直痙攣は、溶媒対照と比較して、有意ではない25%減少となった。
より低い用量(10mg/kg)では、効果は観察されず、100mg/kg用量では、溶媒と比べて6.3%の変化が認められた。
Figure 2022553553000001
結論
これらのデータは、鏡像異性体(-)-cis-THCが、MESモデルにおいて有意な抗痙攣効果をもたらさなかったことを実証するものである。
ホットプレート法を使用した、マウスにおける(-)-CIS-THCの抗侵害受容能力の評価
(-)-cis-THCの有効性を、疼痛のマウスモデルにおいて、ホットプレート試験で試験した。
方法
マウスは、研究開始に先立ち、7日間の最少馴化期間をとった。ナイーブマウスを、自由摂取できる食物と水を備えたホームケージ内で、処置室に順化させた。
動物は、腹腔内への10ml/kgでの、溶媒、1、15、50、100、125、及び150mg/kgの(-)-cis-THC、又は腹腔内への、10mg/kgのモルヒネ若しくは10ml/kgのモルヒネ溶媒(生理食塩水)のいずれかにより処置した。
動物は、52℃に設定したホットプレート上に載せ、逃避閾値(withdrawal threshold)(前若しくは後ろの足を持ち上げる、なめる、又は逃げようとする、最初の反応)までの時間は、処置の1時間後、又は陽性対照では0.5時間後とした。
動物は、測定後直ちに、スケジュール1の方法によって選別した。
データは、逃避閾値を、溶媒処置群に戻して比較することによって解析した。
結果
Table 2(表2)に、本実験で得られたデータを示す。
陽性対照(モルヒネ)群では、逃避閾値は、溶媒と比較して、有意に上昇し、これは、期待される抗侵害受容効果を実証するものである。
(-)-cis-THC処置したマウスでは、逃避閾値は、用量相関的に上昇した。最も高い150mg/kgの(-)-cis-THC用量で、溶媒と比較した場合の有意差が得られた。
Figure 2022553553000002
結論
これらのデータは、鏡像異性体(-)-cis-THCが、疼痛の動物モデルにおいて有意な抗侵害受容効果をもたらしたことを実証するものである。これらのデータは、THCのこの鏡像異性体の治療効果を実証する初めてのデータである。
(-)-CIS-テトラヒドロカンナビノールの合成による生成方法
先に述べたように、化合物(-)-cis-THCは、カンナビノイド、カンナビジオール(CBD)を主として産する大麻植物により微量カンナビノイドとして産生される。高度に精製されたCBDの抽出物では、THCの総量が調製物中のカンナビノイド総量に対して約0.1%(w/w)未満であると仮定すると、抽出物中に残存している(-)-cis-THCの量は極めて少ない。
CBDを産生する大麻植物から得られた精製抽出物中のTHCは、trans及びcis-THCいずれの幾何異性体としても存在することが既知である。また、trans-THC:cis-THCの比が、抽出物の処理及び精製中に、約3.6:1のtrans-THC:cis-THC比から約0.8:1のtrans-THC:cis-THC比まで変動することも既知である。
更に、精製された調製物中に存在するcis-THCが、光学異性体である(-)-cis-THCと(+)-cis-THCとの混合物として存在することが発見された。(-)-cis-THC:(+)-cis-THCの比は、約9:1((-)-cis-THC:(+)-cis-THC)の範囲である。
自然界で見出される化合物(-)-cis-THCが極めて低レベルであることを考慮して、カンナビノイド(-)-cis-THCをより大量に生成するために使用されうる方法論を、スキーム1として以下に記した合成経路によって詳述する。
化合物は番号付けし、それらのフルネームを経路下のボックス中に記す。
Figure 2022553553000003
Figure 2022553553000004
得られたcis-THCのラセミ体は、HPLCカラムPhenomenex Lux Cellulose 2キラルカラムを使用して、鏡像異性体のキラル分離を使用して分離した。
MeCN/H2O(0.1%HCO2H)の逆相勾配を使用した。
単離された各物質を、旋光度、キラルHPLC、LCMS、及び1H NMRによって分析した。
図5は、HPLCクロマトグラムを示しており、ここで、ピーク2は、99.4%の鏡像体過剰率を有する(+)-cis-THCであることが観察され、一方、ピーク3は、96.8%の鏡像体過剰率を有する(-)-cis-THCとして同定された。

Claims (11)

  1. 医薬としての使用のための(-)-cisテトラヒドロカンナビノール((-)-cis-THC)。
  2. 植物抽出物の形態である、請求項1に記載の使用のための(-)-cis-THC。
  3. 高度に精製された植物抽出物の形態である、請求項2に記載の使用のための(-)-cis-THC。
  4. 少なくとも80%(w/w)の(-)-cis-THCを含む、請求項3に記載の使用のための(-)-cis-THC。
  5. 少なくとも95%(w/w)の(-)-cis-THCを含む、請求項3に記載の使用のための(-)-cis-THC。
  6. 合成化合物の形態である、請求項1に記載の使用のための(-)-cis-THC。
  7. 用量が、100mg/kg/日を超える、請求項1から6のいずれか一項に記載の使用のための(-)-cis-THC。
  8. 用量が、100mg/kg/日未満である、請求項1から7のいずれか一項に記載の使用のための(-)-cis-THC。
  9. (-)-cisテトラヒドロカンナビノール((-)-cis-THC)及び1つ又は複数の薬学的に許容される賦形剤を含む医薬として使用するための組成物。
  10. 疼痛の治療において使用するための(-)-cisテトラヒドロカンナビノール((-)-cis-THC)。
  11. (-)-cisテトラヒドロカンナビノール((-)-cis-THC)の調製方法。
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