JP2022548367A - 眼科障害の処置または防止における使用のための薬剤 - Google Patents

眼科障害の処置または防止における使用のための薬剤 Download PDF

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Abstract

本発明は、哺乳動物対象における眼科障害の処置および/または防止における使用のための非天然ポリペプチドを提供する。ポリペプチドの投与は哺乳動物によってよく忍容される。非天然ポリペプチドは高純度で提供される。

Description

本発明は、視神経および網膜の損傷および/または障害を含む障害を含むがこれらに限らない眼科障害の処置および防止における使用のために好適な薬剤を提供する。
視神経は、視覚メッセージを運搬する百万を超える神経線維の束からなっている。視神経は網膜を脳に連結している。この連結は、細胞レベルで網膜神経節細胞(RCG)を含む。網膜神経節細胞(RGC)は眼の網膜の内表面(神経節細胞層)の近くに位置する一種のニューロンである。RGCはその大きさ、連結、および視覚刺激への応答に関して変化するが、それらは全て、脳の中に延在する長いアクソンを共有している。これらのアクソンが視神経を形成している。
視神経への損傷は視力の喪失を惹起することがある。視力喪失の型およびその重症度は、その損傷がどこで起こったかによる。これは片方または両方の眼に影響することがある。
視神経障害には多くの異なった型があり、以下のものが含まれる。
- 緑内障は、とりわけ米国において失明の主な原因である疾患の群である。緑内障は通常、眼球内の流体圧がゆっくりと上昇し、視神経を損傷する場合に起こる。
- 視神経炎は視神経の炎症である。その原因には、感染および多発性硬化症等の免疫関連病が含まれる。原因が不明なこともある。
- 視神経委縮は視神経への損傷である。その原因には眼球への血流の不足、疾患、傷害、または毒物への曝露もしくは薬物[エタムブトール、イソニアジド、ディジタリス、抗生剤(クロラムフェニコール、スルホンアミド)およびアミオダロン]による誘起が含まれる。
- 視神経頭ドルーゼンは、長期にわたって視神経に蓄積されるタンパク質とカルシウム塩のポケットである。
上で報告した障害の全ては、視神経におけるRGCのアクソンに傷害をもたらし、これが究極的にはこれらの細胞の死に導くことがある。視神経障害の大部分について利用可能な処置はなく、または処置はさらなる視力喪失を防止し得るに過ぎない。したがって、RGCの生存性または機能を増強することは、基礎的なおよび応用への橋渡しの研究の主な目標であり続ける。
今までのところ、眼科障害におけるRCGの喪失に対抗するための真に効果的な処置は市場に導入されていない。したがって、眼科障害、特にRCGの喪失または損傷を含む眼科障害は、今のところ処置が困難であった。したがって今日でもまだ極めて高い医学的必要性がある。
視神経傷害の実験モデルにおける眼球内投与のいくつかの効果は、たとえばMesentier-Louro et al., 2019, Mol. Neurobiol., vol. 56, p. 1056-1069に記載されている。
視神経傷害のラットモデルでは、神経成長因子(NGF)を含む成長因子の逆輸送が低減した結果としての視神経挫滅後2週間以内に、大量のRGCの変性が一般に起こる。最新の技術によれば、組み換えヒトNGF(rhNGF)の硝子体内および点眼による投与は、予防的実験パラダイムによって視神経損傷の直後に投与した場合のみ、成熟ラットにおける視神経挫滅に対抗する可能性がある(Mesentier-Louro et al., 2019, Mol. Neurobiol., vol. 56, p. 1056-1069)。しかしこれはヒトの眼科障害の臨床的状況に類似していない。ヒトの眼科障害の意図された治療については、治療的介入は、視神経への最初の損傷が誘起された後、いくらかの時間遅れの後でのみ生じ得るので、ラットにおける視神経挫滅モデルでのこれらの実験的知見は、ヒトにおける臨床使用に移し換えることができない。特に、ONCの結果として、RCGをさらに損傷する可能性を含むさらなる下流のプロセスが視神経で誘発され得る。rhNGFまたはその他の分子が、RGCのONC損傷の後のステージで投与された場合に治療的に有効であるか否かは不明のままである。したがって、ヒトにおける眼科障害を含むまたはこれに類似した状況で薬剤が投与された場合に治療が有効か否かも、理解されていないままである。
したがって、忍容できないまたはその他の望ましくない副作用等の有害影響を被ることのない、眼の状態、特に視神経に影響する状態の効果的な処置、およびヒトを含む哺乳動物対象への投与のための信頼できかつ許容できる純度の、そのような目的に好適で臨床医に利用可能な治療剤へのニーズが今でも存在する。
本発明の一次的な目的は、痛覚等の望ましくないまたは苦痛のある副作用を伴わない眼科障害の処置または防止を提供することである。臨床医によって容易に使用され投与されることができる治療剤を提供することがさらに望まれる。そのような処置を可能にするために十分な収率および純度で治療活性薬剤を提供することも望まれる。したがって、本発明のさらなる目的には、最新の技術に伴う不利益を排除することが含まれる。本発明の根底にあるこれらのおよびその他のさらなる目的は、従来技術を超えて達成された利点に照らして、以下の詳細な説明から明らかになる。特定の目的には、眼科障害を有する対象を望ましくない副作用なしに処置するための信頼できる方法の提供が含まれる。
本発明は、哺乳動物対象における眼科障害の処置および/または防止における使用のためのポリペプチドを提供し、前記ポリペプチドは、配列番号3のポリペプチドおよび配列番号4のポリペプチドの中から選択される。これらのポリペプチドは、ヒトNGF(配列番号2)のアミノ酸配列の変異によって特徴付けられ、前記変異は傷害活性の低下を伴う。特に、hNGFの100位のアルギニンはグルタミン酸によって置換されている。
特に好ましいポリペプチドは、配列番号4のポリペプチドである。前記ポリペプチドは、少なくとも61位のプロリンの非存在によって、より好ましくは61位のプロリンの別のアミノ酸による置換によって特徴付けられる。配列番号4では、配列番号3の61位のプロリンがセリンによって置換されている。
好ましくは、哺乳動物対象はヒトである。
好ましくは、本発明のポリペプチドの投与は哺乳動物対象においていかなる望ましくない影響の原因にもならない。本発明による処置および/または防止は哺乳動物対象において痛覚過敏症を惹起しないことが特に好ましい。
好ましくは、眼科障害には視神経の損傷および/または障害が含まれる。
好ましくは、眼科障害は網膜神経節細胞の障害によって特徴付けられる。
好ましくは、ポリペプチドは視神経の損傷の後で投与される。
好ましくは、眼科障害は、緑内障、神経栄養性角膜炎、視神経炎、視神経委縮、視神経頭ドルーゼン、および視覚経路神経膠腫からなる群から選択される少なくとも1つを含む。
好ましくは、ポリペプチドは眼への投与のためのものである。より好ましくは、投与は、眼への局所投与および硝子体内投与からなる群から選択され、眼への局所投与が最も好ましい。
好ましくは、ポリペプチドは視神経の損傷の誘起の少なくとも4日後に投与される。
一実施形態では、ポリペプチドは繰り返して投与される。特に好ましい実施形態では、ポリペプチドは少なくとも1日3回、繰り返して投与される。
一実施形態では、ポリペプチドは、たとえば眼科障害の完全な治癒まで、または少なくとも障害の症状の改善が観察されるまで、繰り返して投与される。あるいは、ポリペプチドは3~30日、好ましくは7~14日の期間、繰り返して投与される。投与は前記間隔の完了後に中止してもよい。
好ましくは、用量/各用量は1眼あたり0.3~30μgのポリペプチド、より好ましくは1眼あたり1~10μgのポリペプチド、最も好ましくは1眼あたり5μgのポリペプチドの量を有する。より好ましくは、これらの投薬量は特に眼への局所投与のためのものである。
一実施形態では、ポリペプチドは水性媒体に含まれ、水性媒体が哺乳動物対象に投与される。より好ましくは、ポリペプチドは以下の
a)0.2~20mg/mlの前記ポリペプチド、
b)5~100mMの酢酸ナトリウム緩衝剤、
c)5~100mMのメチオニン、
d)5.0~6.0のpH
を含む組成物中に含まれる。
最も好ましくは、ポリペプチドは以下の
a)2mg/mlの前記ポリペプチド、
b)20mMの酢酸ナトリウム緩衝剤、
c)20mMのメチオニン、
d)5.5のpH
を含む組成物中に含まれる。
一実施形態では、配列番号3のポリペプチドまたは配列番号4のポリペプチドは、生物源から得られる。これには精製、即ち宿主細胞タンパク質等の他のタンパク質を含む他の分子からの分離が含まれ得る。配列番号3のポリペプチドまたは配列番号4のポリペプチドは、(再)折り畳みおよび/またはクロマトグラフィー精製および/またはプロテアーゼ消化を含み、ならびに最終のタンパク質濃度への調節および所望の製剤の調製を含んでもよいプロセスで得てもよい。一実施形態では、ポリペプチドは組み換え発現および精製によって得ることができ、精製は混合モード固定相上での精製を含む。好ましくは、本発明による使用のためのポリペプチドは、ポリペプチドの分解物を実質的に含まず、特にポリペプチドのデスノナ変異体を実質的に含まない。
したがって、本発明はまた、本明細書に記載した治療によるヒトまたは動物の身体の処置の方法における使用のための、本明細書に記載したように組み換え源由来で精製された、配列番号3のポリペプチドおよび配列番号4のポリペプチドを提供する。
本発明は、配列番号3のポリペプチドおよび配列番号4のポリペプチドの中から選択されるポリペプチドを含む組成物をさらに指向し、組成物は5.0~6.0のpH(好ましくはpH5.5)によって特徴付けられ、以下を含む。
a)0.2~20mg/mlの前記ポリペプチド(好ましくは2mg/ml)、
b)5~100mMの酢酸ナトリウム緩衝剤(好ましくは20mM)、
c)5~100mMのメチオニン(好ましくは20mM)。
実施例2Bに記載した改善を含む実施例2によるプロセスの概略。 同上。 同上。 同上。 ポリペプチドの配列。アステリスク():成熟ヒトNGFの61位。十字():成熟ヒトNGFの100位。 A:配列番号1:それぞれのヒトオープンリーディングフレームによってコードされるプレプロヒトNGFの配列。 プレペプチド:アミノ酸1~18位、プロペプチド:アミノ酸19~121位、成熟NGF:アミノ酸122~239位、C末端ジペプチド:アミノ酸240~241位。 ジスルフィド結合(正しく折り畳まれた成熟部分中):アミノ酸136⇔201位、179⇔229位、189⇔231位を連結する。 フリン切断部位(RSKR):アミノ酸118~121位。 B:プレペプチド、プロペプチド、および成熟NGFの図式的概略図。 C:配列番号2:成熟ヒトNGFの配列。 D:配列番号3。 E:配列番号4。 同上。 硝子体内投与の後の配列番号4のポリペプチド(「CHF6467」)の効果。一方向ANOVAおよびそれに続くBonferroniポストホック解析による統計解析。N=6/群。 点眼剤による処置後の配列番号4のポリペプチドの効果。一方向ANOVAおよびそれに続くBonferroniポストホック解析による統計解析。N=3/群(詳細は実施例4を参照)。 C57BL/6マウスにおけるカプサイシン(0.001~0.5nmol)の点眼(5μl/滴/眼)によって生じた用量依存性の眼拭い応答。エラーバーは平均±SEMを示す。1群あたりマウス6~8匹。VehはCPSの媒体である。Vehに対してP<0.05、***P<0.001。一方向ANOVAおよびBonferroniポストホック補正。 C57BL/6マウスにおけるマウスNGF(mNGF)、配列番号2のポリペプチド(「ヒトNGF」)、および配列番号4のポリペプチド(「変異したNGF」)(0.001~0.5nmol)の点眼(5μl/滴/眼)によって生じた用量依存性の眼拭い応答。エラーバーは平均±SEMを示す。1群あたりマウス6~8匹。VehはmNGF、配列番号2のポリペプチド、および配列番号4のポリペプチドの媒体である。Vehに対してP<0.05、***P<0.001。一方向ANOVAおよびBonferroniポストホック補正。
本明細書は全体として特許請求の範囲および図面とともに、具体的なおよび/または好ましい実施形態ならびに本発明の個別の特徴の変形を開示している。本発明は、特に好ましい実施形態として、具体的なおよび/または好ましい実施形態ならびに本発明について本明細書に記載した変形の2つ以上を組み合わせることによって生成される実施形態も意図している。即ち、本開示は、本明細書の中に個別にまたは集合的に引用または指示した実体、化合物、特徴、ステップ、方法、もしくは組成物の全て、ならびに前記実体、化合物、特徴、ステップ、方法、もしくは組成物のあらゆる組合せまたは任意の2つ以上も含む。即ち、本明細書において他に特に述べない限り、または文脈によって他が要求されない限り、単一の実体、化合物、特徴、ステップ、方法、もしくは組成物への言及は、これらの実体、化合物、特徴、ステップ、方法、もしくは組成物の1つおよび複数(即ち1つを超え、たとえば2つ以上、3つ以上、または全て)を包含するとみなすべきである。他に特に述べない限り、または文脈によって他が要求されない限り、本明細書で開示したそれぞれの実施形態、態様、および実施例は、本明細書で開示した他の任意の実施形態、態様、または実施例に適用可能かつこれらと組合せ可能とみなすべきである。
当業者であれば、本明細書に記載した発明は、具体的に記載した変形および改変以外の変形および改変を受け入れることができることが認識されよう。即ち、本開示は、説明および例示の目的のために本明細書で提供した、本明細書に記載した特定の実施形態による範囲に限定されない。機能性または他では等価な実体、化合物、特徴、ステップ、方法、または組成物は、本開示の範囲内である。本開示が本明細書に文字通り記載された実体、化合物、特徴、ステップ、方法、または組成物の全ての変形および改変を含むことは、当業者には明らかであろう。
上記であろうと下記であろうと、本明細書で引用した参考文献のそれぞれ(全ての特許、特許出願、科学的出版物、メーカーの仕様書、使用説明書、プレゼンテーション、その他を含む)は、参照により全体として本明細書に組み込まれる。本明細書における何ものも、本発明が特定の教示に先行する資格がないことを承認するものとして、および/または共通の一般的知識以外の特定の参考文献が当業者によってそれを実施するために十分に明白かつ完全な情報を含むことを承認するものとして、解釈すべきではない。
一般に、他に具体的に定義しない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、当技術(たとえば医学、眼科学、神経学、遺伝学、分子生物学、遺伝子発現、細胞生物学、細胞培養、免疫学、神経生物学、クロマトグラフィー、タンパク質化学、および生化学)における通常のスキルを有する者によって共通に理解されるものと同じ意味を有する。たとえば英語で出版された教科書および総説論文は、典型的には当業者によって共通に理解される意味を定義している。
表現「および/または」、たとえば「Xおよび/またはY」は、「XおよびY」または「XまたはY」のいずれかを意味すると理解すべきであり、「および」の、「または」の、および両方の意味(「および」または「または」)の明確な開示を提供するとみなすべきである。
本明細書で使用される場合、他に特定しない限り、用語「約」、「ca」、および「実質的に」は全て、ほぼまたは近くを意味し、本明細書で説明する数値または範囲の文脈において、引用したまたは特許請求した数値または範囲の好ましくは±10%、より好ましくは±5%を指定する。
他に明示的に特定しない限り、単語「含む(comprise)」または「含む(comprises)」もしくは「含む(comprising)」等の変形は、本書類の文脈では、「含む」によって導入されたリストの要素に加えてさらなる要素が存在してもよいことを示すために使用される。しかし、本発明の特定の実施形態としては、用語「含む」は、さらなる要素が存在しない可能性を包含しており、即ちこの実施形態の目的のためには「含む」は「からなる」の意味を有すると理解すべきである。
他に明示的に特定しない限り、本発明に関する相対的な量の全ての表示は重量/重量ベースで行なわれる。一般名によって特徴付けられる成分の相対的な量の表示は、前記一般名に含まれる全ての特定の変異型または要素の総量を指すことを意味している。一般名によって定義されるある特定の成分がある特定の相対量の中に存在すると特定され、かつこの成分が一般名に含まれる特定の変異型または要素であるとさらに特徴付けられれば、一般名に含まれる他の変異型または要素はさらに存在せず、それにより一般名に含まれる成分の全相対量は特定された相対量を超え、より好ましくは一般名に含まれる他の変異型または要素は全く存在しない。
本明細書に記載した全ての方法およびプロセスは、本明細書において他に指示されない限り、または文脈によって他が明確に指示されない限り、任意の好適な順序で実施することができる。
本明細書で使用される用語「薬剤」は、他に特定しない限り、一般に化合物または組成物、好ましくは組成物を指す。薬剤は、たとえば細胞および/もしくは体組織にまたは環境に作用することによって、生きている生命体および/または生きている生命体由来のもしくは生きている生命体から誘導された細胞への影響を生じることができる。薬剤の物理的状態は特に限定されず、他に特定しない限り、空気中、水中、および/または固体状態であってよい。薬剤の型は他に特定しない限り特に限定されず、したがって薬剤は化学物質および/またはタンパク質もしくは核酸等の生体分子であってよい。本明細書で定義する特定の薬剤は、本発明において有用である。
「有害影響」は、本明細書で使用される場合、対象への薬剤(薬物)の投与に起因する望ましくない有害な影響である。有害影響には、罹患率、死亡率、痛覚過敏症候群、疼痛、体重の変化、酵素のレベル、機能の喪失、または微視的、巨視的、もしくは生理学的なレベルで検出される任意の病的な変化が限定なく含まれる。有害影響は、他の化学物質、食物、または医療手順に対する個体の感受性、たとえば薬物との相互作用の増大または減少を含む可逆的または不可逆的な変化を惹起することがある。
本明細書で使用される場合、用語「クロマトグラフィー」、「クロマトグラフィーの」等は一般に、混合物の分離に適した手法を指し、混合物は、混合物の1つまたは複数の成分を少なくとも部分的に分離する目的で、「固定相」と呼ばれる非液体材料に添加される。この目的のため、固定相が流体に曝露され、および/または混合物が流体に溶解されてもよく、固定相に接触する前記流体は「移動相」とも称される。一般に、本明細書に記載した「クロマトグラフィーによって行なわれる」任意のステップは、「クロマトグラフィーステップ」と同義で称し得る。
本明細書で使用される用語「移動相」は、典型的に当技術で使用される意味を有し、クロマトグラフィーの間に固定相と接触させられる全ての流体、即ち洗浄流体ならびに目的のタンパク質、たとえば本明細書に記載したタンパク質の1つまたは複数を含む流体(混合物)を指すことができる。本発明では、クロマトグラフィーに供される混合物は、本明細書で特定するように、典型的には1つまたは複数のタンパク質、たとえば特に本明細書に記載したタンパク質、たとえば配列番号3または4のポリペプチド、これらのいずれかの前駆体、プロテアーゼ、および/または宿主細胞のタンパク質(HCP)を含む。
「固定相」は、典型的には通常、粒子形態またはゲル形態、たとえばレジンである水不溶性材料であるベースマトリックスを含む。本明細書に記載した実施形態を含む多くの場合に、固定相はベースマトリックスおよびクロマトグラフィーに供される混合物中に含まれる少なくとも1つの成分に結合することができる部分を含む。ベースマトリックスは通常、粒子形態またはゲル形態の、通常は水不溶性の材料である。ベースマトリックスの非限定的な例としては、セファロースおよびアガロース、たとえば高硬度のアガロースがある。
本明細書で使用される「クロマトグラフィーステップ」は、好ましくはタンパク質(本発明の文脈においては、前記タンパク質は最も好ましくは配列番号3または配列番号4のポリペプチドである)である分析すべきおよび/または精製すべき少なくとも1つの化合物を含む液体をクロマトグラフィー材料(好ましくは固定相)に添加し、クロマトグラフィー材料を1つまたは複数の洗浄溶液で適宜洗浄し、前記少なくとも1つの化合物を溶出する動作を指す。その文脈において、説明のため、2つのクロマトグラフィーステップによって特徴付けられるプロセスは、分析すべきおよび/または精製すべき少なくとも1つのそのような化合物を含む液体が上記のように第1のクロマトグラフィー材料に添加され、それからの溶出の後で、少なくとも1つのそのような化合物を含む液体が第2のクロマトグラフィー材料に添加され、上記のようにこれもそれから溶出されるという意味で特徴付けられる。好ましくはクロマトグラフィーにおいて、固定相に添加された混合物中に含まれる少なくとも1つの成分が固定相に結合することが、任意の「クロマトグラフィーステップ」の目的である。そのような化合物は、本明細書に記載した1つまたは複数のタンパク質であってよい。化合物は、たとえば移動相の交換によって、および/または長期にわたる移動相への連続した曝露によって、固定相から回収され得る。
用語「結合する」は、たとえば固定相の結合容量を記載するためにクロマトグラフィーに関して使用する場合、特に限定されないが典型的には非共有結合を指す。即ち典型的には、混合物中に含まれる少なくとも1つの成分、たとえば少なくとも1つのタンパク質は、非共有結合で固定相に結合する。クロマトグラフィーステップは、前記少なくとも1つの成分が結合した固定相の洗浄を含んでもよいが、含むことが好ましい。前記少なくとも1つの成分は少なくとも1つのタンパク質、たとえば本明細書に記載した少なくとも1つのタンパク質であってよい。
本明細書に記載した用語「異種の」は、多種の異なる要素からなるあるものを表現する。
用語「ジスルフィド」および「ジスルフィド結合」は、本発明の文脈において、当技術で共通に使用されている意味の中で使用される。一般に、「ジスルフィド」は、R-S-S-R’の構造を有する官能基を指す。このリンケージは「SS結合」とも呼ばれ、通常、2つのチオール基のカップリングによって誘導される。タンパク質中のジスルフィド結合は、酸化折り畳みのプロセスによってシステイン残基のチオール基の間で形成され、2つのシステイン残基のチオール基の間のそのような特異的ジスルフィド結合は、「ジスルフィド架橋」とも称し得る。特定の理論に縛られることは望まないが、真核細胞では小胞体の管腔(およびミトコンドリアの膜間スペース)の中でジスルフィド架橋が形成されるが、一般にはサイトゾルの中では形成されず、原核細胞に関しては、ジスルフィド架橋はペリプラズム(それぞれの生命体、特にグラム陰性細菌の)で形成され、ジスルフィド架橋は、真核細胞と原核細胞の両方の細胞外環境のタンパク質でも見出すことができることが、当技術で通常理解される。
用語「発現する」、「発現された」、および「発現」、「遺伝子発現」等は、本明細書で使用される場合、機能性遺伝子産物の合成における遺伝子からの情報の使用に関する。遺伝子発現は少なくとも転写を含み、翻訳および翻訳後改変を含むオープンリストから選択してもよい1つまたは複数のさらなる特徴を含んでもよい。宿主細胞中におけるタンパク質の組み換え発現の文脈において、文脈によって他が指示されない限り、この用語は通常、タンパク質が宿主細胞によって(細胞の任意のコンパートメントにおいて、ならびに/または封入体の中に分泌されおよび/もしくは組み込まれて)産生されることを暗示している。
用語「眼の障害」および「眼科障害」は本明細書において相互交換可能に使用され、眼に影響する全ての障害を含む。限定されないが、視神経および/または網膜の損傷および/または機能不全を含む全ての障害は、これらの用語の意味に含まれる。
本明細書で使用する用語「異種の」は、多種の異なる要素または起源からなるあるものを表現する。たとえば、ヒト遺伝子(または非天然ポリペプチド、たとえば本発明のポリペプチドをコードする遺伝子)を含む非ヒト宿主細胞においては、前記遺伝子は細胞に対して「異種」であり、細胞はそれぞれの遺伝子の「異種」発現が可能である。異種遺伝子発現は、「組み換え」とも称し得る。
用語「封入体」は、当技術において典型的に使用される意味を有し、宿主細胞のサイトゾルまたはペリプラズムで見出される凝集または粒子を指すことを意味している。封入体は、典型的にはタンパク質、たとえば特に宿主細胞中で組み換えによって発現されたタンパク質を含む。何ら特定の理論に縛られることを望まないが、組み換え発現の分野では、封入体は典型的には組み換えによって発現されたタンパク質を含むが宿主細胞タンパク質(HCP)、リボソーム成分、またはDNA/RNA断片は比較的少ないことが理解される。何ら特定の理論に縛られることを望まないが、封入体は典型的には少なくとも部分的に、正しく折り畳まれていないタンパク質(ミスフォールドされたタンパク質)、特にミスフォールドされた組み換え発現タンパク質を含むことが理解される。封入体は典型的には適正でない折り畳み形態のタンパク質を含み、即ち本発明の文脈において封入体は典型的には本発明によるポリペプチドおよび/またはその前駆体を適正でない折り畳み形態で含むことが理解される。用語「ミスフォールドされた」は一般に、天然のコンフォメーションではない、即ち適正でない折り畳み形態の、核酸またはポリペプチド等の生体分子を表現する。
「単離された」は、その天然の状態で通常付随する成分を実質的にまたは本質的に含まない材料を意味する。たとえば「単離されたペプチド」または「単離されたタンパク質」は、本明細書で使用される場合、天然に存在する状態でそれを取り囲む組織等の細胞および細胞外の環境から、たとえばそれが発現された宿主細胞等の細胞から精製されたペプチドまたはタンパク質をそれぞれ指す。代替の表現では、「単離されたペプチド」または「単離されたタンパク質」等は、本明細書で使用される場合、その天然の細胞環境から、およびそのペプチドまたはタンパク質が通常存在する環境の他の成分との会合からの、それぞれペプチドまたはタンパク質のインビトロ(in vitro)の単離および/または精製を指す。別の例では、「単離された細胞」は、本明細書で使用される場合、天然に存在する状態でそれを取り巻く組織または細胞コロニー等の細胞および細胞外の環境から精製された細胞、たとえば通常その細胞に隣接する環境から取り出された宿主細胞を指す。単語「単離された」の上記の定義に従えば、「単離する」は、本明細書で使用される場合、「単離された」材料、たとえば単離された細胞または単離されたペプチドもしくはタンパク質を得るための活動を表現する動詞である。
本明細書で使用される用語「多」および「多重」は、多数、即ち2以上の任意の数を意味する。
用語「変異」は、本明細書で使用される場合、生命体、ウイルス、もしくは染色体外DNA、またはその他の遺伝要素のゲノムのヌクレオチド配列の変更を指す。この用語はまた、アミノ酸配列、特に少なくとも1つの(非沈黙)変異を運搬する遺伝子のアミノ酸配列の変異にも拡張される。他に特定しない限り、ヌクレオチド配列の変異は恒久的な変更である。生殖細胞系列中に存在する変異は通常、遺伝し得る。一般に、ヌクレオチド配列の変異は配列に多くの異なる種類の変化をもたらし得る。遺伝子における変異は影響がないこともあり、遺伝子産物を変更させることもあり、遺伝子が適正にまたは完全に機能することを防止することもある。変異は非遺伝子領域に存在することもある。他に特定しない限り、変異を表現するための参照配列として、野生型配列が使用される。即ち、たとえば所与の突然変異体がポリペプチド配列の100位の変異によって特徴付けられると言われた場合には、これは100位において突然変異体が野生型ポリペプチドと同じアミノ酸残基を有していないことを示している。ヌクレオチド配列および/またはアミノ酸配列の変異の特定の型には、欠失、置換、付加、挿入、およびスプライス変異体等の変更が含まれる。ヌクレオチド配列に関する「欠失」は、ヌクレオチド配列中の1つまたは複数のヌクレオチドの非存在を指す。アミノ酸配列に関する「欠失」は、ポリペプチド中の1つまたは複数のアミノ酸残基の非存在を指す。ヌクレオチド配列に関する「付加」は、ヌクレオチド配列中の1つまたは複数のさらなるヌクレオチドの存在を指す。アミノ酸配列に関する「付加」は、関連するポリペプチド中の1つまたは複数のさらなるアミノ酸残基の存在を指す。ヌクレオチド配列に関する「置換」は、ヌクレオチド配列中の1つまたは複数のヌクレオチドの他のヌクレオチドによる置き換えを指す。アミノ酸配列に関する「置換」は、ポリペプチド中の1つまたは複数のアミノ酸残基の他のアミノ酸残基による置き換えを指す。ヌクレオチド配列に対する、たとえばオープンリーディングフレームに対する付加、欠失、および置換は、5’末端でもよく、3’末端でもよく、および/または内部でもよい。ポリペプチドに対する付加、欠失、および置換は、アミノ末端でもよく、カルボキシ末端でもよく、および/または内部でもよい。ヌクレオチド配列および/またはポリペプチド配列に関する「挿入」は、具体的にはそれぞれの配列の内部位置におけるそれぞれ1つもしくは複数のヌクレオチドまたは1つもしくは複数のアミノ酸残基の付加である。用語「スプライス変異体」は、ポリペプチド配列をコードするRNAが、典型的には核酸レベルにおける変異の結果として、それぞれの野生型RNAとは異なってスプライスされて、通常、野生型ポリペプチドとは異なるポリペプチド翻訳産物をもたらすことを表現するために使用される。用語「スプライス変異体」は、それぞれのRNAに関してのみでなく、それぞれの鋳型DNA配列(典型的にはゲノムDNA)に関して、およびそのようなRNAによってコードされるポリペプチドの配列に関して、使用することができる。
用語「突然変異体」は一般に、野生型配列とは異なる核酸配列またはアミノ酸配列を指すことを意図している。したがって、突然変異核酸配列または突然変異アミノ酸配列は、それぞれの野生型配列に関して少なくとも1つの変異を有する。しかし、それぞれのコードされたポリペプチドのレベルでは反映されない核酸配列における多型性(サイレントミューテーション、遺伝子コードの縮重)が存在する場合には、核酸レベルにおける用語「突然変異体」は、突然変異体ポリペプチドをコードする核酸変異体のみを具体的に指す。突然変異体は、単独または組合せで、2つ以上の変異および異なる型の変異を含む、異なる変異の組合せを含むことがある。
用語「神経成長因子」は「NGF」または「ベータNGF」と略称され、当技術における一般的な意味に従って、ある種のニューロンおよびその他の細胞の成長、維持、増殖、および生存の制御に関与する神経栄養因子およびニューロペプチドを表す(たとえばLevi-Montalcini, 2004, Progress in Brain Research, vol. 146, p. 525-527を参照されたい)。文脈によって他が指示されない限り、神経成長因子という用語は野生型NGFのみを表し、配列番号3または4のポリペプチドを含まない。野生型NGFは、生物学的に活性なNGF前駆体から得られる2.5S、26kDaのベータサブユニットである。野生型NGFは、少なくとも2つのクラスの受容体、即ちトロポミオシン受容体キナーゼA(TrkA)および低親和性NGF受容体(LNGFR/p75NTR)と結合する。用語「NGF」は、他に特定しない限り、任意の種、好ましくは哺乳動物種のNGFを指すが、ヒトNGFが常に好ましい。「hNGF」は、本明細書で使用される場合、ヒトNGFを表す。文脈によって他が指示されない限り、用語「NGF」および「hNGF」は野生型NGFを指し、即ちhNGFは野生型NGFを表す。野生型ヒトNGFのアミノ酸配列は配列番号1の121~239位に相当する(図24の灰色)。非ヒトNGFの配列は、たとえば科学文献で囮として配列番号1の121~239位を使用するBLAST等の配列検索を通じて、およびSwissprot等の公共タンパク質データベースで、利用可能である。
用語「NGFムテイン」および「NGFのムテイン」、またはNGFに関して「そのムテイン」は、本明細書において相互交換可能に使用され、本明細書でさらに詳細に述べるように、野生型NGFと比較して少なくとも1つの変異によって特徴付けられるポリペプチドを指す。配列番号3および配列番号4のポリペプチドはNGFのムテインである。好ましくは、NGFのムテインはNGF、特にヒトNGFと80~99.5%の配列同一性を有し、より好ましくは、ムテインはNGF、特にヒトNGFと90~99%の配列同一性を有する。
用語「成熟パート」、「成熟部分」は、NGFに関して用語「ベータNGF」と相互交換可能に使用され、NGFのプロペプチドを含まない(したがって当然ながらプレプロペプチドを含まない)と特徴付けられるNGFのポリペプチドを指す。同様に、用語「成熟パート」も、これらのポリペプチドが同様にプロペプチドを含まない(したがって当然ながらプレプロペプチドを含まない)ので、配列番号3または4のポリペプチドを指すために使用される。好ましくは、成熟パートは野生型NGFのオープンリーディングフレームによってコードされるC末端切断ペプチドも含まない。そのようなC末端切断ペプチドは、ヒトNGFの場合には、2つのアミノ酸残基「RA」(配列番号1の240位および241位)からなる。より詳細には、成熟パートは、限定はされないが、プロテアーゼであるフリンによる(およびNGFまたはそれぞれ配列番号3もしくは4の第1のアミノ酸残基のN末端を正確に直接切断することができる他のプロテアーゼによる)プロNGFの切断によって得ることができる。たとえば、ヒトNGFおよび多くのオルソログのフリン切断部位は、配列R(1文字アミノ酸コード、配列はN末端からC末端へ番号付け。図25のボックス内)からなっていることがよく知られている。成熟NGFでは通常、フリン切断部位もフリン切断部位のN末端のいずれのアミノ酸も存在しない。説明のため、ヒトNGFの成熟パートは配列番号1のアミノ酸122~239位によって表されるポリペプチドからなっている。非ヒトNGFの成熟パートは、たとえば配列検索および/または配列解析によって特定され、ヒトNGFの前記成熟パートが配列アラインメントのために使用される。
用語「ペプチド」および「ポリペプチド」は本明細書において相互交換可能に使用され、ペプチド(アミド)結合によって連結されたアミノ酸の鎖を指し、両方の用語は、限定されないが図2で説明する全てのポリペプチドを含む。
用語「前駆体」は、NGFに関して本明細書で使用される場合、それからNGFがタンパク質分解切断によって得られる任意のペプチド配列を指す。説明のため、プロNGFとプレプロNGFの両方、ならびにそれらの変異体は、NGFの前駆体の典型的な例である。本明細書で使用される用語「前駆体」は、NGFがタンパク質分解切断によってそれから得られる限り、そのC最末端アミノ酸残基がNGFのC最末端残基である前駆体を指し、またNGFのC最末端残基を超えてC末端に延在する前駆体を指す。野生型ヒトプロNGFの天然に存在する前駆体(配列番号1)はC末端ジペプチド(配列番号1のアミノ酸残基240および241、図1の太字)を含むが、本発明においては前駆体が野生型NGFのオープンリーディングフレームによってコードされるC末端切断可能ペプチドを含まないことが好ましい。そのようなC末端切断可能ペプチドは、ヒトNGFの場合には、2つのアミノ酸残基「RA」(配列番号1の240および241)からなっている。
用語「プレペプチド」または「プレ配列」は、本明細書で使用される場合、一般に相互交換可能で、プロペプチドにN末端で直接隣接するNGFのオープンリーディングフレームの一部によってコードされるポリペプチド配列を指す。説明のため、プレペプチドは、配列番号1の残基1から配列番号1の残基18までの範囲の連続した配列を含む配列からなる。非ヒトNGFの前駆体のそれぞれのプレペプチドの配列は、たとえば科学文献で配列番号1の1~18位を囮として使用するBLAST等の配列検索を通じて、およびSwissprot等の公共タンパク質データベースで、利用可能である。プレペプチドのC末端がプロNGFのN末端に直接隣接している、プレペプチドおよびプロNGFからなるポリペプチドまたはタンパク質は、本明細書において「プレプロNGF」と称することができる。
用語「プロペプチド」または「プロ配列」は、本明細書で使用される場合、一般に相互交換可能で、成熟NGFにN末端で直接隣接するNGFのオープンリーディングフレームの一部によって天然にコードされるポリペプチド配列を指すが、このポリペプチド配列はプレペプチドを含まない。説明のため、プロペプチドはNGFの野生型前駆体に含まれる。NGFの前駆体のプロペプチドは、配列番号1の残基19から配列番号1の残基121までの範囲の連続した配列を含む配列からなっている。非ヒトプロNGFのそれぞれのプロペプチドの配列は、たとえば科学文献で配列番号1の19~121位を囮として使用するBLAST等の配列検索を通じて、およびSwissprot等の公共タンパク質データベースで、利用可能である。
「プロNGF」は、本明細書で使用される場合、NGFの成熟部分とそれぞれのプロペプチドの両方を含むが、それぞれのプレペプチドを含まない、ペプチド配列を指す。ヒトプロNGFは、配列番号1の残基19から配列番号1の少なくとも残基239までの範囲の連続した配列を含む配列からなっている。野生型ヒトプロNGFはC末端ジペプチド(配列番号1のアミノ酸残基240および241、図25で太字)を含むが、本発明で得られ、使用されるプロNGFは、野生型NGFのオープンリーディングフレームによってコードされるC末端の切断可能なペプチドを含まないことが好ましい。そのようなC末端の切断可能なペプチドは、ヒトNGFの場合には、2つのアミノ酸残基「RA」(配列番号1の240および241)からなっている。非ヒトプロNGFの配列は、たとえば科学文献で配列番号1の19~239位を囮として使用するBLAST等の配列検索を通じて、およびSwissprot等の公共タンパク質データベースで、利用可能である。
用語「核酸」および「ポリヌクレオチド」は、本明細書において相互交換可能に使用され、cDNA、ゲノムDNA、合成DNA、ならびにヌクレオチドアナログ、リン酸塩アナログ、および/または糖アナログを含むDNA/RNA等価物を含むRNAとDNAの両方を指す。核酸は二本鎖でもよく、一本鎖(即ちセンスストランドまたはアンチセンスストランド)でもよい。ポリヌクレオチドの非限定的な例には、遺伝子、オープンリーディングフレーム、遺伝子断片、エクソン、イントロン、メッセンジャーRNA(mRNA)、トランスファーRNA、リボソーマルRNA、siRNA、ミクロRNA、リボザイム、cDNA、組み換えポリヌクレオチド、分枝ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意の型および配列の核酸プローブの単離された核酸、およびプライマー、ならびに核酸アナログが含まれる。核酸は任意の型の三次元構造を有し得る。
本発明による用語「ペプチド」は、オリゴペプチドおよびポリペプチドを含み、ペプチド結合によって鎖に共有結合で連結された2つ以上、好ましくは3つ以上、好ましくは4つ以上、好ましくは6つ以上、好ましくは8つ以上、好ましくは10個以上、好ましくは13個以上、好ましくは16個以上、好ましくは21個以上で、好ましくは8、10、20、30、40、または50個まで、特に100個のアミノ酸を含む物質を指す。
用語「タンパク質」は、好ましくは大きなペプチド、好ましくは100アミノ酸残基を超えるペプチドを指すが、一般に用語「ペプチド」、「ポリペプチド」、および「タンパク質」は同義語であり、文脈によって他が指示されない限り、本明細書において相互交換可能に使用される。したがって、用語「配列番号4のポリペプチド」と「配列番号4のタンパク質」は同一の意味を有する。
用語「薬学的に許容される」は一般に、使用した投薬量において忍容できない有害影響を惹起することがない薬剤と組み合わせてもよくまた組み合わせることが好ましく、ある物質を対象に投与することができることを表現する。
用語「薬学的に許容される担体」および「薬学的に許容される賦形剤」は、生理学的に適合し、本明細書に記載した対象への投与のために好適な、またはその他そのような投与に干渉しない溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張化剤および吸収遅延剤、その他のうち任意の1つまたは複数を指すために使用される。そのような薬学的に許容される担体の例には、限定されないが、水、食塩水、リン酸塩緩衝食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノール、その他、ならびにそれらの組合せのうち1つまたは複数が含まれる。特に液体医薬組成物の場合には、組成物中に等張化剤、たとえば糖、マンニトール、ソルビトール等のポリアルコール、または塩化ナトリウムを含ませることが好ましい。薬学的に許容される担体は、湿潤化剤もしくは乳化剤、保存剤、または緩衝剤等の補助的物質をさらに含んでもよく、これらは薬剤の保存期間または有効性を増進する。薬学的に許容される担体は、典型的には本発明による組成物中に含まれる。
用語「薬学的に活性な薬剤」は、対象への投与に使用できる薬剤であって、たとえば疾患または障害の症状の改善において有益な薬剤を指す。さらに、「薬学的に活性な薬剤」は、治療有効量で対象に投与した場合に、対象の状態または疾患状態に有益なまたは有利な効果を有し得る。好ましくは、薬学的に活性な薬剤は治癒特性を有し、疾患または障害の1つまたは複数の症状の重症度を改善し、緩和し、軽減し、逆行させ、発症を遅延させ、または低下させるために投与してよい。薬学的に活性な薬剤は予防特性を有し、疾患の発症を遅延させ、またはそのような疾患もしくは病的状態の重症度を低下させるために使用してよい。たとえば、本発明の薬剤は、本明細書において、主張するように、嚢胞性線維症の処置のための薬学的活性成分と考えられる。別の例では、薬学的に活性なタンパク質は、通常はタンパク質を発現しないか、または所望のレベルでは発現しないか、またはタンパク質を誤って発現する細胞または個体を処置するために使用することができる。たとえば、薬学的に活性なタンパク質は、所望のタンパク質を供給することによって、変異を補償するか、または十分に高い発現の欠如を補償することができる。用語「薬学的に活性なペプチドまたはタンパク質」には全体のタンパク質またはポリペプチドが含まれ、その薬学的に活性な断片も指すことができる。これには、ペプチドまたはタンパク質の薬学的に活性なアナログも含まれ得る。
「オープンリーディングフレーム」または「ORF」は、開始コドンで始まり、停止コドンで終わる連続したコドンのストレッチである。
用語「対象」および「患者」は、本明細書で使用される場合、哺乳動物に関する。たとえば、本発明の文脈における哺乳動物は、ヒト、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、ヒツジ、ウシ、ヤギ、ブタ、ウマ等を含むがこれらに限らない家畜、マウス、ラット、ウサギ等を含むがこれらに限らない実験動物、ならびに動物園の動物等の飼育動物である。本明細書で使用される用語「対象」および「患者」は、特にヒトを含む。対象(ヒトまたは動物)は2組の染色体を有する。即ち対象は2倍体である。用語「患者」は、ある状態に罹患している、ある状態に罹患しているリスクがある、ある状態に罹患していた、またはある状態に罹患することが予測される対象を指し、たとえば薬剤の投与による治療の対象となり得る。患者の状態は慢性および/または急性であり得る。したがって、「患者」は治療の対象となる対象として、および/または治療が必要である対象として、表現することができる。
用語「治療」は幅広く理解すべきであり、対象における状態を防止または処置することを目標とする対象の処置を指す。好ましい実施形態では、治療は具体的に対象に対する薬剤の投与を含む。
用語「トリプシン」は、本明細書で使用される場合、一般にEC3.4.21.4として分類されるタンパク質分解酵素を指す。トリプシンは主として、通常いずれかにプロリンが続く場合を除いて、アミノ酸リジンまたはアルギニンのカルボキシル側でペプチド鎖を切断する。理論に縛られることは望まないが、トリプシンはセリンプロテアーゼであり、トリプシンは多くの脊椎動物の消化系で天然に見出され、ここでタンパク質を加水分解することが理解される。本発明では組み換え源由来のトリプシンが好ましい。トリプシンはインビボ(in vivo)ではプロペプチド(「トリプシノーゲン」と称される)とともに形成されるが、用語「トリプシン」は、本明細書で使用される場合、好ましくはプロペプチドを何ら含まない成熟トリプシンを指す。タンパク質分解性切断のためのトリプシンの使用は「トリプシンタンパク質分解」または「トリプシン処理」とも称され、トリプシンによる切断によってもたらされるタンパク質は「トリプシン処理された」と称される。
NGFまたは配列番号3もしくは4のポリペプチドの前駆体の「変異体」は、それぞれ成熟NGF(ベータNGF)の一部でなくまたは配列番号3もしくは4の一部でないアミノ酸配列がNGFの野生型前駆体、たとえば野生型プロNGFまたは野生型プレプロNGFと比較して少なくとも1つの変異によって特徴付けられ、前記少なくとも1つの変異が好ましくは成熟NGF(ベータNGF)のアミノ酸配列のN末端で見出される、ポリペプチドまたはタンパク質を指す。したがって、本明細書で使用される場合、NGF等の前駆体の「変異体」は、プレペプチドおよび/またはプロペプチドが、そのプレペプチドおよび/またはプロペプチドのアミノ酸配列に関する少なくとも1つの変異、たとえば限定されないがWO2013/092776A1および米国特許公開2018/0086805A1に記載されている変異体によって特徴付けられる、ペプチドまたはタンパク質を指す。説明のため、WO2013/092776A1は、(野生型の)フリン切断部位が1つまたは複数の特定の変異のために存在しないプロNGFの「変異体」を記載している。
用語「ベクター」または「クローニングベクター」は一般に、宿主細胞に導入することができる核酸を指す。ベクターの例には、限定されないがプラスミド、ファージ、および宿主細胞に導入することができる他の全ての型の核酸が含まれる。用語「ベクター」は幅広く理解すべきであり、異種発現のためにペプチドまたはタンパク質をコードするベクター(そのようなベクターは転写物の生成のための鋳型として働き得る)およびそうでないベクターを含むことになる。第1の型のベクターは、ベクターが宿主細胞中に存在する場合に発現され得るタンパク質またはペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含むことになる。当業者が選択するベクターの型は特定の場合において当業者が選択する宿主細胞の型によることになるが、大腸菌を含む全ての一般的な宿主細胞のためのクローニングベクターは市販されており、したがって当業者は選択した宿主細胞を完全に考慮して特定のベクターを選択することになる。
用語「野生型」は、本明細書では好ましくは健康な対象において、典型的には天然に見出される遺伝子またはタンパク質を指すために使用される。「野生型」でない遺伝子またはタンパク質は、本明細書では「突然変異体」または「変異した」等と称される。説明のため、配列番号1は野生型ヒトNGFの前駆体のアミノ酸配列を示し、配列番号2は野生型ヒトNGFのアミノ酸配列を示す。
本発明は、相互に関連し、したがって発明者をともに本発明の種々の態様に到達させるいくつかの知見に基づいており、これらを全て、以下に個別に記述する。
本発明による薬剤
本発明は、哺乳動物対象における眼科障害の処置および/または防止のための薬剤を提供する。薬剤は、その薬剤がたとえば疾患または障害の症状の改善において有益である場合に、対象への投与において使用することができる。特に、本発明において有用な薬剤は、配列番号3または配列番号4のポリペプチドである。即ち、本発明は特に、治療における使用のための配列番号3または配列番号4のポリペプチドを提供する。治療は典型的には本明細書で以下に記載するようにヒトまたは動物の身体に前記ポリペプチドを投与することを含む。
本発明によれば、配列番号3および配列番号4のポリペプチドは、薬学的に活性な薬剤として提供される。本発明によって、配列番号3または配列番号4のポリペプチドは医療用途のため、特に哺乳動物対象における眼科障害の処置および/または防止のために提供される。配列番号3または配列番号4のポリペプチドは組み換え源由来のものであってよい。即ち本発明は本明細書に記載したように医療用途のための配列番号3または配列番号4の組み換えポリペプチドも提供する。
本明細書において「配列番号3のポリペプチド」または「配列番号4のポリペプチド」とも称される本発明による薬剤を、ここでより詳細に記述する。用語「配列番号3のポリペプチド」および同様の用語は、本明細書では配列番号3によって定義されるアミノ酸配列を含むポリペプチドおよび/または等価の生物活性を有する薬剤を表す。用語「配列番号4のポリペプチド」および同様の用語は、本明細書では配列番号4によって定義されるアミノ酸配列を含むポリペプチドおよび/または等価の生物活性を有する薬剤を表す。したがって、そのようなポリペプチドの機能的に等価な部分またはアナログも、これらの用語の中に含まれる。ポリペプチドの生物学的に等価な部分の1つの例は、配列番号3のポリペプチドまたは配列番号4のポリペプチドのドメインまたはサブ配列であり、これはこのドメインまたはサブ配列が配列番号3の完全長のポリペプチドもしくは配列番号4の完全長のポリペプチド、あるいはそのようなポリペプチドをコードする遺伝子と実質的に同じ生物活性を発揮することを可能にする結合部位を含む。用語「実質的に同じ生物活性」は、実施例4に記載したアッセイにおいて配列番号3のポリペプチドまたは配列番号4のポリペプチドの少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の活性を有するポリペプチドの等価の部分またはアナログを指す。ポリペプチドの生物学的に等価なアナログの例は、配列番号3のポリペプチドまたは配列番号4のポリペプチドのアミノ酸配列の少なくとも一部を含む融合タンパク質であってよいが、ポリペプチドの同種のアナログであってもよい。また、配列番号3のポリペプチドまたは配列番号4のポリペプチドの特定の生物活性を模倣した完全に合成の分子は、「生物学的に等価なアナログ」を構成し得る。
より好ましくは、用語「配列番号3のポリペプチド」および同様の用語は、本明細書では配列番号3によって定義されるアミノ酸配列を含むポリペプチドを表し、そのような薬剤はとりわけ、配列番号3によって定義されるアミノ酸配列を含む融合タンパク質であってよい。最も好ましくは、用語「配列番号3のポリペプチド」および同様の用語は、本明細書では配列番号3によって定義されるアミノ酸配列からなるポリペプチドを表し、この実施形態では、薬剤は配列番号3によって定義される配列順序で118個のアミノ酸残基からなるポリペプチドからなっている。このおよびその他の実施形態では、ポリペプチドは1つまたは2つまたは3つの内部システイン結合を有してもよく、それによりシステイン(Cys、C)残基は相互に共有結合で連結されて分子内ジスルフィド架橋を形成する。システイン結合は好ましくは野生型ヒトNGFにおけるシステイン結合と等価である。
等しくより好ましくは、用語「配列番号4のポリペプチド」および同様の用語は、本明細書では配列番号4によって定義されるアミノ酸配列を含むポリペプチドを表し、そのような薬剤はとりわけ、配列番号4によって定義されるアミノ酸配列を含む融合タンパク質であってよい。最も好ましくは、用語「配列番号4のポリペプチド」および同様の用語は、本明細書では配列番号4によって定義されるアミノ酸配列からなるポリペプチドを表し、この実施形態では、薬剤は配列番号4によって定義される配列順序で118個のアミノ酸残基からなるポリペプチドからなっている。このおよびその他の実施形態では、ポリペプチドは1つまたは2つまたは3つの内部システイン結合を有してもよく、それによりシステイン(Cys、C)残基は相互に共有結合で連結されて分子内ジスルフィド架橋を形成する。システイン結合は好ましくは野生型ヒトNGFにおけるシステイン結合と等価である。
本発明のポリペプチドは、さらなる翻訳後改変によって特徴付けられてもよい。そのような翻訳後改変は、グリコシル化および/またはホスホリル化を含んでもよい。しかし好ましくは、本発明によるポリペプチドは、グリコシル化および/またはホスホリル化を含まない。まさに、本明細書における実験例が眼の障害の治癒に対する有益な効果および有益な効果と有害影響との比を実証しており、使用したポリペプチドが典型的にはグリコシル化および/またはホスホリル化をもたらさない細菌におけるサイトゾル組み換え発現によって得られたことを考慮すれば、本発明の有益な効果がそのような型の翻訳後改変によらないことはもっともである。したがって、好ましい実施形態では、本発明によるポリペプチドはグリコシル化および/またはホスホリル化によって特徴付けられない。
典型的には、本発明によるポリペプチドは、ポリペプチドが投与される対象によって天然には産生されない非天然ポリペプチドである。このことは投与後の対象における検出性の利点に関連しているのみならず、障害の処置または防止において成功を得るために投与(たとえば本開示に従って調製された組成物等の外部の源からの)は対象に投与することが必要であることを証明している。
好ましくは、本発明によるポリペプチドは単離されたポリペプチドである。より好ましくは、本発明によるポリペプチドは、宿主細胞のタンパク質、分解生成物(たとえばデスノナ変異体等)、およびプロテアーゼ(たとえばトリプシン等)を実質的に含まない。本発明によるポリペプチドが宿主細胞のタンパク質、分解生成物(たとえばデスノナ変異体等)、およびプロテアーゼ(たとえばトリプシン等)を実質的に含まない場合には、これは「純粋なポリペプチド」と称される。好ましくは、本発明によるポリペプチドは、純粋なポリペプチドとして投与される。より好ましくは、配列番号3からなる純粋なポリペプチドおよび/または配列番号4からなる純粋なポリペプチドは、組成物中の全タンパク質に対して90%以上、好ましくは92%以上、より好ましくは93%以上、より好ましくは94%以上、より好ましくは96%以上、より好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上、より好ましくは99.2%以上、より好ましくは99.4%以上、より好ましくは99.6%以上、より好ましくは99.8%以上、より好ましくは99.9%以上の重量パーセンテージを有する。そのような純粋なポリペプチドは、実施例1および2を含む本明細書の開示に基づいて利用可能である。最も好ましくは、本発明による純粋なポリペプチドは、適正製造基準(GMP)に合致する純度グレードを有する。
本明細書の実験、特に実施例4で実証されるように、本発明による薬剤の投与された用量は、個別の実験においていかなる痛覚過敏症候群(疼痛)も誘起しなかった。薬剤は慢性の設定においても、損傷を受けた眼に局所的にかつ繰り返して投与されたので、疼痛がないことは特に注目に値する(詳細は実施例参照)。
本発明によれば、配列番号3または配列番号4のポリペプチドは、それを必要とする対象に有効量で投与してよい。投与の詳細、有効量、およびそれを必要とする対象については、本明細書で以下に述べる。
それぞれ配列番号3および配列番号4からなるポリペプチドは、ヒト神経成長因子(NGF、野生型ヒトNGFまたは野生型NGFとも称する。配列番号2を参照)のアミノ酸配列とは1つまたは2つの位置で異なっている。配列番号2のポリペプチドに関する本発明によるポリペプチドの相違は、本明細書で詳細に開示し、本明細書の実験例によって支持されるように、眼の障害の処置および防止に対する顕著な効果を有し、副作用が存在しない。
神経成長因子(NGF)は、特定のニューロン集団の発達および生存に必要なニューロトロフィンである。NGFはニューロンの増殖およびホメオスタシスを天然に誘発するホモダイマーペプチドである。体内では、NGFは少なくとも2つの型の受容体、即ちトロポミオシン受容体キナーゼA(TrkA)および低親和性NGFニューロトロフィン受容体p75(LNGFR/p75NTR/p75)と結合する。両方ともヒトおよび動物におけるある種の障害に関連しているが、それぞれの作用機序はおそらく異なっている。NGFについてのいくつかの治療応用が提案されてきたが、市場ではほとんど成熟していない。
しかし、過去に想定されてきたNGFの多くの治療応用は市販の治療用NGF製品には成熟しておらず、その1つの理由としては、NGFがニューロンの増殖およびホメオスタシスに対する所望の効果の他に、疼痛に関与していることが考えられる。NGFは、局所的または全身的に投与された場合に、痛覚過敏症を惹起することがある(Lewin et al., 1994, Eur. J. Neurosci., vol. 6, p. 1903-1912; Della Seta et al., 1994, Pharmacol. Biochem. Behav., vol. 49, p. 701; Dyck et al, 1997, Neurology, vol. 48, 501-505; McArthur, et al., 2000, Neurology, vol. 54, p. 1080-1088 ; Svensson et al., 2003, Pain, vol. 104, p. 241-247 ; Ruiz et al., 2004, Brain Res., vol. 1011, p. 1-6)。解決策としてNGFの突然変異体バージョン(「ムテイン」)が開発された。これは痛覚活性の低下を伴い(「無疼痛NGF」)、TrkA受容体と相互作用するNGFのドメインにおける少なくとも1つの変異によって特徴付けられる(WO2008/006893A1、Malerba et al. PLOS One, 2015, vol. 10, e0136425)。しかし、そのようなポリペプチドは今のところ薬学的に許容される純度で公衆に利用可能ではなく、おそらく一般にこの治療分野での成長因子に対する研究についての偏見および一般的な否定的な経験に鑑みても、眼の眼科障害の処置または防止のために提案または開発されてこなかった。
(野生型の)NGFが2つの個別の受容体、則ち(a)ニューロンの生存に導く受容体チロシンキナーゼA(TrkA)および(b)細胞死の制御に関与するp75ニューロトロフィン受容体への結合を通じて標的細胞に影響し(Mesentier-Louro et al., 2017, Int. J. Mol. Sci., vol. 18(98))、それにより野生型NGFを有するポリペプチド配列エレメントが視神経の挫滅の後でアポトーシスの刺激を介して網膜変性を悪化させる効果をも有し得ることが知られている。Mesentier-Louro et al., 2018, Mol. Neurobiol., vol. 56, p. 1056-1069を参照されたい。野生型ヒトNGFの残基R100がNGFのp75への結合に関与していること、およびこの残基の変異がp75の結合に影響していることも知られている。たとえばWO2008/006893A1を参照されたい。野生型NGF、hNGFとは対照的に、本発明のポリペプチドはp75に対してより低い結合親和性を有している(たとえばMalerba et al., 2015, PlosOne, 10(9): e0136425)を参照)。ヒトNGF P61SR100Eは配列番号4のポリペプチドに対応する。ヒトNGFのいくつかの突然変異体(hNGF突然変異体)の中で、突然変異体ヒトNGF P61SR100Eは最も有望な突然変異体と考えられ、突然変異体はとりわけ眼科疾患に好適であると述べられている。しかし、本発明による処置および/または防止の特定の使用はこれらの参考文献によって教示されておらず、これらの参考文献もそれぞれのポリペプチドをヒトにおける医療用途を可能にする十分に高い純度で利用可能にすることには失敗している。したがって、本発明による使用のためのポリペプチドは、本明細書に記載し提供したように、野生型ヒトNGFに対していくつかの予想されなかった利点を提供する。特に、本発明の根底にある実験的知見(実施例参照)は、本発明による薬剤が「無疼痛」であるという事実のみでは説明できない。それは、疼痛を誘起するその能力が、神経が分布している眼の区域、即ち曝露された痛覚受容器によって特徴付けられる区域で実験的に検討されていなかったためである。さらに、本発明による薬剤の投与が神経の強化を惹起している(たとえば実施例3参照)としても、投与は疼痛を伴わない。
本発明によれば、配列番号3または配列番号4のポリペプチドの安定性およびしたがって長期の純度は、本明細書に記載した態様および実施形態によって得られ、および/または改善することができる。したがって、本開示は眼科障害の新たな処置または防止を利用可能にするのみならず、哺乳動物への投与を含む治療用途のために好適な純度グレードで、そのような処置または防止のために好適な薬剤を提供する。本発明の薬剤は、これまでそのように有利な純度グレードで公衆に利用可能ではなかった。
配列番号3または配列番号4のポリペプチドは天然には見出されず、非天然ポリペプチドとも称することができる。即ち、本発明による薬剤は野生型NGFではなく、特に野生型ヒトNGFではない。
好ましくは、本発明による非天然ポリペプチドは高純度で提供される。ポリペプチドは内部ジスルフィド架橋を含んでもよい。ポリペプチドは適正に折り畳まれてもよい。ポリペプチドは水性媒体に可溶でもよい。
本発明は部分的に視神経の損傷または障害の動物モデルによる実験に基づいている(実施例4を参照)。ポリペプチドは、プラセボによって処置した動物と比較して、視神経の損傷および/または障害を含む障害の治癒期間の顕著かつ用量依存的な改善を誘起した。この改善は疼痛に関連する副作用のない用量において明らかであり、したがって最新技術を超えて有益である可能性を実証している。
特に、視神経の損傷および/または障害を含む障害のインビボモデルにおいて生成したデータは、本発明のポリペプチドが無疼痛で、それでもNGF受容体系を標的とする活性を保持しており、それにより眼科障害の処置または防止のための治療手段を提供することを実証した。まさに、本発明のポリペプチドは、適用した部位および全身レベルにおいて野生型NGFの痛覚促進特性を発揮することなしに、視神経の治癒に有利な血管形成および神経の再分布に対する野生型NGFの栄養特性を保持している。
本発明は哺乳動物対象における眼科障害の処置および/または防止における使用のためのポリペプチドを提供し、ポリペプチドは配列番号3のポリペプチドおよび配列番号4のポリペプチドの中から選択される。即ち、本発明は本明細書で述べるように、治療によるヒトまたは動物の身体の処置の方法における使用のための配列番号3または配列番号4のポリペプチドも提供する。
より詳細には、本発明は配列番号3のポリペプチドおよび配列番号4のポリペプチドの特定の治療使用に関連し、特定の治療使用は哺乳動物対象における眼科障害の処置および/または防止である。即ち、本発明は治療によるヒトまたは動物の身体の処置の方法における使用のための、配列番号3のポリペプチドおよび配列番号4のポリペプチドも提供し、前記治療は哺乳動物対象における眼科障害の処置および/または防止を含む。哺乳動物対象は、典型的にはそのような処置の必要性によって特徴付けられる対象である。
配列番号3のポリペプチド、ならびに配列番号4のポリペプチドは、ヒトNGF(hNGF、配列番号2)のアミノ酸配列の変異によって特徴付けられ、前記変異は傷害活性の低下を伴う。特に、hNGFの100位のアルギニンはグルタミン酸によって置換されている。本発明は部分的に、従来技術で知られていた副作用なしに治療効果が達成できるという驚くべき知見に基づいている。
特定の理論に縛られることは望まないが、本発明によるポリペプチドは1つまたは複数のジスルフィド架橋、最も好ましくは3つのジスルフィド架橋を含むことが好ましい。成熟しかつ適正に折り畳まれたヒトNGFは、3つのジスルフィド架橋によって特徴付けられる(連結位置136⇔201、179⇔229、189⇔231。位置番号は配列番号1を指す。Wiesmann et al., 1999, Nature, vol. 401, p. 184-188を参照されたい)。特定の理論に縛られることは望まないが、本発明によるポリペプチドは、等価のジスルフィド架橋を含むことが好ましい(その位置番号は本発明によるポリペプチドを配列番号1および上記Wiesmann et al.のポリペプチドとアラインさせることによって当業者には利用可能である)。
有害影響の存在および非存在の説明
好ましくは、処置および/または防止は、ポリペプチドが投与されているかまたは投与されていた対象に副作用または有害影響を惹起しない。即ち、好ましくは、本発明のポリペプチドの投与は哺乳動物対象においていかなる望ましくない影響の原因にもならない。
この文脈において好ましくは存在しない1つの副作用または有害影響は、痛覚過敏症または疼痛である。本発明による処置および/または防止は哺乳動物対象において痛覚過敏症を惹起しないことが特に好ましい。即ち、好ましくは本発明による薬剤の投与は、いかなる痛覚過敏症候群(疼痛)を誘起しない。
疼痛がないことは、疼痛を伴う参照化合物(たとえば野生型NGF)の投与よりも心地よい(またはあまり心地悪くない)処置を惹起するのみでなく、少なくとも部分的に眼の障害の処置または防止の成功を惹起し、したがって、本発明によるポリペプチドが好ましくは局所的に適用され、より好ましくは眼に局所投与されることを考慮すれば、疼痛がないことは、処置される対象が疼痛を避けるためにポリペプチドを擦ったり、洗浄したり、その他にそれを除去したりするなどの有害な反応なしにポリペプチドの投与を許容し、その結果としてポリペプチドが眼の障害の処置または防止等の治療上有益な効果を発揮することになる。したがって、本発明のポリペプチドに伴う疼痛がないことは、消費者の消極性および規制当局の懸念を克服するために好適となる。換言すれば、疼痛がないことは、疼痛を伴う薬剤と比較して、有益性とリスクの比の顕著な増大を伴っている。
特に、好ましくは処置および/または防止は、哺乳動物対象において痛覚過敏症を惹起しない。一実施形態では、本発明のポリペプチドが投与される対象は、機械的異痛症に罹患しない。より正確には、本発明のポリペプチドが投与される対象において機械的異痛症は誘起されず、したがってポリペプチドが投与される対象は機械的異痛症に罹患しない。
本文脈において好ましくは存在しないさらなる副作用または有害影響は、悪性疾患またはがんである。特に、本発明のポリペプチドの対象への投与は好ましくは異常な細胞増殖を伴わず、さらにより好ましくは、身体の他の部分への浸潤または拡散の可能性のある異常な細胞増殖を伴わない。本発明のポリペプチドの対象への投与は、眼のがんを伴わないことが特に好ましい。
即ち要約すれば、好ましくは本発明のポリペプチドの対象への投与は、悪性疾患および/または疼痛等の有害影響を伴わない。
典型的には、本発明による薬剤の投与は、対象によってよく忍容される。特に好ましくは、本発明によるポリペプチドの投与は、対象における抗薬物抗体の形成を伴わない。まさに、本発明によるポリペプチドのアミノ酸配列は野生型ヒトNGFと1つか2つのアミノ酸の位置でのみ異なるので、ヒトにおける免疫学的忍容性は特に有利であることはもっともであり、本発明のポリペプチドの投与がヒトにおける抗薬物抗体の形成を伴わないことはもっともである。
好ましくは、本発明による投与は以下の、炎症、細胞外マトリックスの堆積、神経の分布、および血管形成のうち1つまたは複数に良い影響を与える。
ポリペプチドの検出可能性
好ましくは、本発明による使用のためのポリペプチドは、内因性(たとえばヒト)NGFに関する特定の薬剤によって選択的に認識され得る。用語「選択的に認識される」および「検出可能な」は、本明細書では相互交換可能に使用され、一般に、生体試料中のタンパク質の、好ましくは分子的手段による特異的同定を指す。
これに関して、本発明によるポリペプチドは、好ましくは抗体またはその他の免疫反応性分子によって検出可能である。
抗体またはその他の免疫反応性分子によって検出可能なタンパク質は、抗原とも称され得る。一部の実施形態では、生体試料は1つまたは複数の特異的抗原を呈する-または呈しない-ことによって特徴付けられる。本発明の文脈においては、対象に投与されたポリペプチドは、好ましくはポリペプチドの投与後に対象から得られた生体試料中で検出可能である。タンパク質の存在を示すための1つの非限定的な方法はウェスタンブロットであるが、他の免疫学的な方法も本発明の文脈に等しく含まれる。抗体またはその他の免疫反応性分子は、それ自体標識され(たとえば蛍光標識され)、またはその目的のために添加される標識された二次抗体またはその他の免疫反応性分子によって認識される。即ち、いくつかの場合には、たとえば標識された二次抗体等でもよい、検出を補助する二次分子も、検出を容易にするために添加される。
本発明によれば、そのレベルが検出限界を超えれば、および/またはそのレベルが試料に添加された抗原特異的抗体による結合を可能にするために十分高ければ、生体試料中に抗原が存在すると言える。本発明によれば、その発現のレベルが検出限界未満であれば、および/またはその発現のレベルが試料に添加された抗原特異的抗体による結合を可能にするには低すぎれば、抗原は細胞上に発現されていないと言える。
抗体またはその他の免疫反応性分子は、細胞上のエピトープを認識し得る。用語「エピトープ」は、抗原等の分子内の抗原決定基、即ち免疫系によって認識され、即ち結合され、たとえば抗体またはその他の免疫反応性分子によって認識される分子の一部または断片を指す。任意の特定の抗原に特異的なエピトープの検出は通常、解析される細胞の上にその特定の抗原が存在していると結論することを可能にする。
一実施形態では、対象、特に本発明によるポリペプチドが投与された対象から得られる試料を、免疫表現型解析によって特徴付けることができる。「免疫表現型解析」は一般に、抗原が存在するか否かを判定するために試料に添加される抗体またはその他の免疫反応性分子等の抗原特異的分子によって、細胞または試料が特徴付けられることを意味する。免疫表現型解析には、フローサイトメトリーを含む種々の方法を使用する細胞選別、ならびに溶解した細胞および溶解した試料についてのウェスタンブロット等の分析方法が含まれる。
本発明では、野生型ヒトNGF等の野生型NGFの存在下においても特異的に検出することができるポリペプチドが特に好ましい。たとえば任意の点変異等のアミノ酸配列の任意の変異がそれぞれの変異していない野生型ポリペプチドの存在下においてもポリペプチドを特異的に検出可能にし、したがって明らかに配列番号3のポリペプチドおよび配列番号4のポリペプチドのそれぞれが野生型ヒトNGFの存在下においても特異的に検出可能であり得るが、野生型ヒトNGFからポリペプチドを識別することができる抗体が利用可能であるポリペプチドは、特に配列番号4のポリペプチドである(WO2008/006893A1)。
即ち、好ましくは、ポリペプチドは少なくとも61位におけるプロリン(参照のためこれは配列番号2の61位に存在する)の非存在、より好ましくは61位のプロリンの別のアミノ酸による置換によって特徴付けられる。特に好ましい実施形態では、61位のプロリンがセリンによって置換されている。この好ましい実施形態では、本発明による使用のためのポリペプチドは、配列番号4のポリペプチドである。このポリペプチドは、少なくとも61位のプロリンの非存在、より好ましくは61位のプロリンの別のアミノ酸による置換によって特徴付けられる。配列番号4では、配列番号3の61位のプロリンがセリンによって置換されている。
眼科障害
本発明によれば、本発明によるポリペプチドは、眼科障害の処置および/または防止における使用のためのものである。そのような使用およびその全ての実施形態のため、配列番号4のポリペプチドが特に好ましい。
眼科障害は、遺伝によるものおよび/または後天的な眼科障害であり得る。
一部の実施形態では、眼科障害は眼の病変であるかまたはこれを含む。一実施形態では、眼の病変は視神経および/または網膜の損傷および/または障害を含む。
「眼科障害」、「損傷」、「障害」、「眼」、「視神経」、「網膜」、およびその他の用語は、本明細書では単数形で使用されるが、本発明は、多数の眼科障害、損傷、障害を有する対象にも、また対象の全ての(両方の)眼、全ての(両方の)視神経、および全ての(両方の)網膜への投与ならびにそれらの処置にも適用することができる。
本発明によって処置または防止されるべき好ましい障害は、視覚経路に関与する疾患である。一般に、視覚経路には網膜、視神経、視交叉、視放線、および後頭皮質が含まれる。即ち、本発明によって処置または防止されるべき好ましい障害は、網膜、視神経、視交叉、視放線、および後頭皮質のうちいずれか1つまたは複数に影響する障害である。視覚経路に沿う損傷は、種々の視野欠損を惹起することがある。そのような視野欠損は、本発明によって処置または防止することができる。したがって、本発明は、部分的なまたは完全な視覚の喪失を含む視野欠損の処置および/または防止も意図している。
視覚障害には、限定されないが眼精疲労、赤眼、夜盲症、弱視、斜視(ストラビスムス)、眼振、色覚異常、ブドウ膜炎、老眼、かすみ目、眼痛、光感受性、飛蚊症、ドライアイ、流涙過剰、白内障、緑内障、網膜障害、結膜炎、角膜障害、眼痛、眼瞼の問題、視力の変化、視力の低下、コンタクトレンズに伴う問題、視神経の損傷および/または視神経の障害に伴う障害、ならびに網膜神経節細胞の損傷および/または障害に伴う障害が含まれる。本発明によるポリペプチドは、それぞれの疾患を処置するために、これらの障害のいずれかに罹患した対象に投与してよい。あるいはまたはさらに、本発明によるポリペプチドは、それぞれの障害を防止するために、これらの障害のいずれかに罹患しているリスクにある対象に投与してよい。本発明は、限定されないが緑内障、神経栄養性角膜炎、視神経炎、視神経委縮、視神経頭ドルーゼン、および視覚経路神経膠腫を含む疾患のリストに適用することもできる。本発明が適用できる視神経ニューパシーには、限定されないが以下の、緑内障、視覚経路神経膠腫、前部虚血性視神経ニューロパシー、外傷後視神経ニューロパシー、脳水腫後視神経委縮、視神経線維のシナプス経由変性、視覚前視交叉経路の圧迫、常染色体優性の視神経委縮、Leber遺伝性視神経ニューロパシー、Wolfram症候群視神経ニューロパシーが含まれる。
限定されないが本発明は以下のリスト、即ち常染色体優性の視神経委縮、Leber遺伝性視神経ニューロパシー、前部虚血性視神経ニューロパシー、外傷性視神経ニューロパシー、視覚経路神経膠腫、神経栄養性角膜炎、角膜潰瘍、緑内障、網膜色素変性症、黄斑変性症、糖尿病性網膜症、網膜神経節細胞機能不全からの1つまたは複数の状態の処置および防止も包含する。
視神経が関与する眼科障害の処置および/または防止における使用のための、本発明によるポリペプチドの使用が特に好ましい。一部の実施形態では、視神経が損傷されまたは冒されている。たとえば実施例4に示すように、本発明のポリペプチドは、本発明の実施形態において投与された場合に、そのような眼科障害に対して直接の治癒効果を有する。即ち、好ましくは、本発明によるポリペプチドの使用によって処置および/または防止されるべき眼科障害には、視神経の損傷および/または障害が含まれる。そのような視神経の損傷および/または障害を有する対象は本明細書に記載されており、本発明ならびに視神経が関与する特定の損傷および/または障害の以下の記述は、文脈によって他が指示されない限り、全てのそのような対象に適用可能である。視神経の損傷および/または障害を含む障害には、限定されないが緑内障、神経栄養性角膜炎、視神経炎、視神経委縮、視神経頭ドルーゼン、および視覚経路神経膠腫が含まれる。本発明は、これら全ての障害、ならびに視神経が関与するその他の障害の処置および/または防止を含む。そのような実施形態では、本発明による薬剤が、視神経の損傷および/または障害を含む障害の処置または防止における使用のために提供される。
網膜が関与する眼科障害の処置および/または防止における使用のための、本発明によるポリペプチドの使用が特に好ましい。一部の実施形態では、網膜が損傷されまたは冒されている。網膜は哺乳動物の眼の組織の最も内側にある光感受性の層である。眼は視覚世界の焦点が合わされた二次元イメージを網膜上に光学的に創成し、網膜がこのイメージを脳への神経刺激に翻訳して視覚認知を創成する。神経網膜はシナプスによって相互に連結されたニューロンのいくつかの層からなっており、色素上皮細胞(光受容体細胞)の外層によって支持されている。好ましくは、眼科障害は網膜の障害によって特徴付けられる。たとえば、障害は神経網膜および/または網膜の上皮細胞の障害によって惹起され得る。好ましい網膜障害には、黄斑変性症(加齢関連または加齢非関連)、網膜症(糖尿病性または非糖尿病性の網膜症)、網膜色素変性症、網膜芽腫、錐体ジストロフィー(CORD)、および網膜の分離(網膜剥離)が含まれる。網膜色素変性症は通常遺伝性であり、夜間の視力および周辺視力の喪失をもたらす。黄斑変性症は黄斑の細胞の死または機能不全による中心視力の喪失によって特徴付けられる。網膜剥離においては、網膜が眼球の後部から分離する。高血圧性網膜症および糖尿病性網膜症はいずれも、網膜に供給し、一部の実施形態では糖尿病によって惹起される小血管の損傷によって特徴付けられる。網膜芽腫は網膜のがんである。一部の実施形態では、視神経は視神経挫滅(ONC、実施例4)および視覚経路神経膠腫のように物理的に損傷されるか冒される。本発明はこれら全てのおよびその他の網膜障害の処置および/または防止を含む。そのような実施形態では、本発明による薬剤は、網膜の損傷および/または障害を含む障害の処置または防止における使用のために提供される。
一部の実施形態では、本発明によるポリペプチドは、ニューロパシーに罹患した対象に投与される。好ましい実施形態では、本発明による薬剤は、ニューロパシー、たとえば特に視神経のニューロパシーに罹患した対象への投与のためのものである。そのような対象は、糖尿病の対象または非糖尿病の対象であってよい。ニューロパシーは局所的または全身的であってよい。一部の実施形態では、本発明による投与は対象におけるニューロパシーを低減することができる。ニューロパシーの低減は局所的または全身的であってよい。一実施形態では、ニューロパシーの低減には、本発明のポリペプチドが投与される眼におけるニューロパシーの低減が含まれる。本発明が適用可能な視神経ニューロパシーには、限定されないが以下の、緑内障、視覚経路神経膠腫、前部虚血性視神経ニューロパシー、外傷後視神経ニューロパシー、脳水腫後視神経委縮、視神経線維のシナプス経由変性、視覚前視交叉経路の圧迫、常染色体優性の視神経委縮、Leber遺伝性視神経ニューロパシー、Wolfram症候群視神経ニューロパシーが含まれる。小児への投与は、それだけに限らないが特に以下の状態、即ち視覚経路神経膠腫および脳水腫後視神経委縮について本発明で明示的に意図されている。
網膜神経節細胞が関与する眼科障害の処置および/または防止における使用のための、本発明によるポリペプチドの使用が特に好ましい。一部の実施形態では、網膜神経節細胞が損傷されまたは冒される。そのような疾患は、たとえばGarcia et al., 2016, Cytokin Groth Fact. Rev., vol. 34, p. 1359-1601およびLevin et al., 2002, Progr. Retin. Eye Res., vol. 21, p. 465-484)によって記述されている。一般に、網膜神経節細胞(RGC)は眼の網膜の内表面(神経節細胞層)の近くに位置する一種のニューロンである。しかし、全ての網膜神経節細胞は、脳の中に延在する長いアクソンも有している。これらのアクソンは視神経、視交叉、および視索を形成している。したがって、視神経が関与する多くの障害は網膜神経節細胞が関与する疾患でもあり、逆もそうである。これらの用語は相互に排他的ではない。同様に、網膜が関与する多くの障害は網膜神経節細胞が関与する疾患でもあり、逆もそうである。これらの用語は相互に排他的ではない。いずれにせよ、本発明の好ましい実施形態では、処置および/または防止すべき眼科障害は、好ましくは網膜神経節細胞の障害によって特徴付けられる。網膜神経節細胞の損傷および/または障害が関与する障害には、限定されないが緑内障、視覚経路神経膠腫、前部虚血性視神経ニューロパシー、外傷後視神経ニューロパシー、脳水腫後視神経委縮、視神経線維のシナプス経由変性、前視覚交叉経路の圧迫、常染色体優性の視神経委縮、Leber遺伝性視神経ニューロパシー、Wolfram症候群視神経ニューロパシーが含まれる。小児への投与は、それだけに限らないが特に以下の状態、即ち視覚経路神経膠腫および脳水腫後視神経委縮について本発明で明示的に意図されている。一部の実施形態では、RCGは視神経挫滅(ONC、実施例4)および視覚経路神経膠腫のように物理的に損傷されるか冒される。本発明はRGCの損傷および/または障害を含むこれら全てのおよびその他の障害の処置および/または防止を含む。そのような実施形態では、本発明による薬剤は、RGCの損傷および/または障害を含む障害の処置または防止における使用のために提供される。
本発明に従って処置および/または防止すべき最も好ましい眼科疾患は、緑内障、視覚経路神経膠腫、前部虚血性視神経ニューロパシー、外傷後視神経ニューロパシー、脳水腫後視神経委縮、視神経線維のシナプス経由変性、前視覚交叉経路の圧迫、常染色体優性の視神経委縮、Leber遺伝性視神経ニューロパシー、Wolfram症候群視神経ニューロパシーからなるリストから選択される。小児への投与は、それだけに限らないが特に以下の状態、即ち視覚経路神経膠腫および脳水腫後視神経委縮について本発明で明示的に意図されている。
本発明による薬剤が特に好適な対象
本発明によれば、配列番号3または配列番号4のポリペプチドは、そのような投与を必要とする対象に投与してよい。そのような投与を必要とする対象は、本明細書に記載した障害に罹患した対象、そのような障害に罹患するリスクのある対象、またはその他そのような障害に苦しむ対象であってよい。薬剤は治療有効量で対象に投与される。治療有効量は本明細書の開示に鑑みて臨床医によって決定することができる。
特に、本発明によるポリペプチドは、哺乳動物対象に投与される。対象は「患者」とも称し得る。最も好ましくは、哺乳動物対象はヒトである。
対象は成人対象、または小児もしくは青年等の非成人対象であってよい。小児への投与は本発明において明示的に意図されている。
本発明は眼科障害に罹患した患者を処置する方法にも関し、本方法は有効量の配列番号3のポリペプチドまたは配列番号4のポリペプチドを患者に投与することを含む。用語「患者」および「対象」は、本明細書に記載したように、特に眼科障害によって特徴付けられる患者/対象に関して本明細書では相互交換可能に使用される。
好ましくは、眼科障害は対象の視神経および/または網膜および/または網膜神経節細胞の損傷および/または障害によって特徴付けられる。そのような損傷および/または障害には、網膜神経節細胞の機能不全および機能の低下が含まれる。視神経および/または網膜および/または網膜神経節細胞の損傷および/または障害によって特徴付けられる障害は、たとえば上に記載しており、文脈によって他が指示されない限り、以下の対象の記載は、そのような対象に対するそのような損傷および/または障害の全てに適用可能である。
本発明の文脈において、用語「防止する」は幅広く理解すべきであり、障害の発症の防止のみならず、障害の進行の防止も含む。特に、視神経の損傷および/または障害を含む障害の文脈においては、用語「防止する」は、視神経の損傷のさらなる進行の防止も含む。
本発明の文脈において、用語「処置する」は幅広く理解すべきであり、限定されないが障害の症状の改善を含む。まさに、眼科障害の改善、たとえば視力の(部分的な)回復またはその他の状態もしくは障害の改善もしくは改良を達成することは本明細書で主張するように本発明の好ましい不可欠な部分であることが好ましく、また本明細書の実験例によって実証されている。まさに、主張した治療効果を実現することが、本発明の機能的技術的特徴である。本明細書の実施例は、前記の機能的技術的な特徴が本発明のポリペプチドの投与の直接の結果として達成可能であることを納得させるものである。換言すれば、本発明者らは、本発明のポリペプチドが眼科障害に罹患した対象における改善を達成する原因であることを特定した。眼科障害は、好ましくは視神経の損傷および/または障害によって特徴付けられる。
本発明は、眼科障害に罹患した対象のサブグループに特に好適である。そのようなサブグループは本明細書に記載している。特定の対象を本明細書に記載したサブグループの1つまたは複数に分類することも可能であり、本明細書に記載したサブグループの1つに分類される対象への本発明によるポリペプチドの投与は、本明細書に記載したサブグループの2つ以上に分類される対象への本発明によるポリペプチドの投与と同様に、本発明に含まれる。
本発明は、視神経の損傷および/または障害の特定の原因に限定されない。視神経の損傷および/または障害の機械的原因は、その非機械的原因と同様に本発明に含まれる。さらに、視神経の損傷および/または障害の糖尿病による原因は、その糖尿病によらない原因と同様に本発明に含まれる。
一部の実施形態では、本発明によるポリペプチドは、手術を受けた対象への投与のためであってもよい。したがって、本発明によるポリペプチドは、眼の1つまたは複数の手術後合併症を処置または防止するために好適である。あるいは、本発明によるポリペプチドは、対象における手術を防止するためにも好適である。たとえば、視覚経路神経膠腫において、視神経は本発明によるポリペプチドの投与によって強化され、それにより手術が不要になりまたはしなくても済むようになり得る。即ち、本発明は非侵襲的投与も提供する。
本発明は、特に糖尿病および非糖尿病の対象における視神経の損傷および/または障害等の眼科障害を処置するために好適である。視神経の損傷および/または障害のさらなる詳細は、本明細書で上に述べている。
眼科障害は糖尿病の対象で起こり得る。そのような眼科障害は、本発明に基づいて処置および/または防止することができる。
一部の実施形態では、本発明のポリペプチドが投与される哺乳動物、好ましくはヒトは、糖尿病に罹患しているか、糖尿病に罹患する素因を有している。それぞれの対象を本明細書では「糖尿病の対象」と称する。
糖尿病は種々の臓器に影響する一般的で衰弱させる疾患である。糖尿病を検出するための方法は、当技術で公知である。糖尿病を検知する方法は一実施形態では本発明の一部ではないが、これらは本発明による眼科障害の処置または防止を容易にし得る。
典型的な実施形態では、糖尿病は1型糖尿病および2型糖尿病の中から選択される。
眼科障害は、糖尿病によって惹起される障害または糖尿病が関与するその他の障害を含んでよい。したがって、本発明は糖尿病に罹患した対象、ならびに糖尿病に罹患していない対象に適用可能である。一部の実施形態では、本発明による薬剤は糖尿病の対象への投与のためである。即ち、本発明によるポリペプチドは、糖尿病の対象の眼に投与してよい。即ち、一実施形態では、本発明によるポリペプチドの使用は、糖尿病の対象の眼への投与を含む。
したがって、本発明は、糖尿病に冒された対象における眼科状態の処置および/または防止を提供する。まさに、本発明によれば、効果的な医療処置は患者がこれらの眼の合併症から回復することを助けるのみならず、患者をより良い生活の質に導き、医療ケアおよび/または費用を低減させることができる。
したがって、本発明は、しばしば眼科障害を処置する効果的な方法を提供することができない現行の処置方法に対する利点を提供する。本発明は、そのような眼科障害の処置および/または防止を提供する。
眼への投与
本発明による処置または防止は、本発明のポリペプチドの投与、好ましくは局所投与によって行なってよい。本発明によれば、対象の眼は本発明のポリペプチドの優先的な投与部位である。一般に、本明細書においてポリペプチドが対象の眼に投与されるという場合には、文脈によって他が指示されない限り、そのような投与は眼の表面上、または眼の中であってよい。
好ましくは、ポリペプチドは眼への投与のためのものである。より好ましくは、投与は眼への局所投与および硝子体内投与からなる群から選択され、眼への局所投与が最も好ましい。
好ましい実施形態では、本発明による薬剤は視神経の損傷および/または障害を含む障害の処置または防止における使用のためのものであり、その目的のため、眼に投与される。本発明によれば、ポリペプチドは視神経の損傷および/または障害の処置または防止のために好適であり、その目的のため、眼に投与される。
本発明は、一方の眼のみに眼科障害を有する対象にも、両方の眼に眼科障害を有する対象にも、限定されない。即ち、用語「眼」および「視神経」は、本開示における単数形または複数形の使用とは独立して、単数および複数の実施形態の全てを明示的に包含する。
一部の実施形態では、投与は病院で行なわれる。一部の実施形態では、処置は病院で行なわれない。たとえば、点眼投与は通常、対象の入院を必要としない。
眼科障害は少なくとも1つの機械的傷害を含んでもよいが相互に排他的ではない。即ち、本発明は機械的傷害の処置または防止も含み、そのような傷害の処置は実際上、防止より有意義である。そのような障害には、視神経の挫滅(ONC)および視神経を冒すその他の障害を含む障害が含まれる。
まとめると、本明細書に詳細を述べたように、本発明によれば、ポリペプチドは、眼科障害に罹患した、または罹患するリスクがある対象の眼に投与される。
別の実施形態では、本発明による薬剤は、眼のがん、たとえば限定されないが視覚経路神経膠腫、および/またはそのようながんに伴う眼の障害の処置または防止のためのものである。
さらなる実施形態では、本発明による薬剤は、対象における遺伝子障害に起因するか対象における遺伝子障害によって影響される眼科障害の処置または防止のためのものである。
投与の経路
本発明は、対象への投与のための異種ポリペプチドを提供する。
好ましくは、ポリペプチドは局所投与のためのものである。即ち好ましくは、本発明のポリペプチドは眼に投与される。一部の実施形態では、ポリペプチドは硝子体内に投与される。一部の実施形態では、ポリペプチドは眼に局所投与される。
より好ましくは、ポリペプチドは眼の表面上に投与される。換言すれば、本発明によるポリペプチドは、好ましくは局所投与され、より好ましくは眼に局所投与される。最も好ましくは、ポリペプチドは対象の結膜に投与される。対象の結膜への投与は、「結膜」投与とも称される。結膜投与は、最も好ましくは点眼投与によって行なわれる。
本発明による投与は、典型的には対象の手術を含まない。一実施形態では、本発明のポリペプチドの投与は、専門的な医療の技能が行なわれることを必要とし、必要とされる専門的なケアおよび技能をもって行なわれたとしても実質的な健康リスクを伴う、身体への実質的な物理的介入に相当する侵襲的なステップを含まずまたはこれを包含しない。対照的に、より典型的な実施形態では、本発明のポリペプチドの投与、特に局所投与は対象に対して一般に安全と考えられ、したがってポリペプチドは、特にヒト対象の場合に、対象自身によって投与してよい。
眼は、投与の前、および/または投与の間、および/または投与の後に、プラスターおよび/または眼の被覆材で覆ってもよい。利用可能な膨大な種類のプラスターおよび/または眼の被覆材は、本発明によって限定されない。即ち、技術的に明らかに不適切な場合を除いて、任意のプラスターおよび/または眼の被覆材を使用してよい。眼を覆うために好適なプラスターおよび/または眼の被覆材が好ましい。一部の実施形態では、本発明によるポリペプチドは、プラスターおよび/または眼の被覆材の適用と同時に投与される。プラスターまたは眼の被覆材は、投与の前に眼の被覆材に適用される水性媒体の形態でもよい本発明のポリペプチドを含んでもよい。
代替のかつより好ましい実施形態では、ポリペプチドは繰り返し投与される。特に好ましい実施形態では、ポリペプチドは1日あたり1~5回、繰り返し投与される。一実施形態では、ポリペプチドは1日あたり1回投与される。一実施形態では、ポリペプチドは1日あたり2回投与される。一実施形態では、ポリペプチドは1日あたり3回投与される(実施例4も参照)。一実施形態では、ポリペプチドは1日あたり4回投与される。一実施形態では、ポリペプチドは1日あたり5回投与される。ポリペプチドはヒト対象に1日あたり2回投与されることが特に好ましい。全ての上記の投与は、本明細書で開示したように、好ましくは数日のコースにわたって繰り返される。たとえば、ポリペプチドは3~30日、好ましくは7~14日の期間、好ましくはこれらの日のそれぞれについて1~5回、繰り返し投与してよい。
好ましくは、本発明による薬剤は、本明細書に記載したように眼に投与する場合、痛覚過敏症候群(疼痛)を惹起しない。即ち、本発明による薬剤は、痛覚過敏症候群(疼痛)を惹起することなく、視神経を含む痛覚線維(神経)と接触し得る。このおよびその他の理由により、本発明は特に視神経が関与する障害の処置および/または防止のために主要な利点を提供する。
投与の時期
一般に、本発明によるポリペプチドは、繰り返しまたは単回投与で投与される。
一実施形態では、ポリペプチドは単回投与で投与される。その実施形態では、ポリペプチドは単回投与で投与され、投与はその単回投与の後で中断される。
代替の実施形態では、ポリペプチドは3~30日、好ましくは7~14日の期間で繰り返し投与される。投与は前記期間の完了後に中断してもよい。
一実施形態では、ポリペプチドは繰り返し投与される。一実施形態では、ポリペプチドは、たとえば眼科障害の完全な治癒まで、または少なくとも障害の症状の改善が観察されるまで、繰り返し投与される。あるいは、ポリペプチドは3~30日、好ましくは7~14日の期間、繰り返し投与される。投与は前記期間の完了後に中断してもよい。特に好ましい実施形態では、ポリペプチドは1日あたり少なくとも3回、繰り返し投与される。
好ましくは、ポリペプチドは視神経の損傷の後で投与される。
好ましくは、ポリペプチドは、RGCの死の程度を最小化するために、視神経の損傷の診断後、できるだけ速やかに投与される。「できるだけ速やか」は、視神経の損傷の診断後、1日またはそれ未満の実施形態を含む。しかし、視神経の損傷が起こった数日後に投与しても、ポリペプチドはまだ神経保護性である。好ましくは、ポリペプチドは視神経の損傷の誘起後、少なくとも3日で投与される。好ましくは、ポリペプチドは視神経の損傷の誘起後、少なくとも4日で投与される。好ましくは、ポリペプチドは視神経の損傷の誘起後、少なくとも5日で投与される。好ましくは、ポリペプチドは視神経の損傷の誘起後、少なくとも6日で投与される。好ましくは、ポリペプチドは視神経の損傷の誘起後、少なくとも7日で投与される。好ましくは、ポリペプチドは視神経の損傷の誘起後、少なくとも8日で投与される。好ましくは、ポリペプチドは視神経の損傷の誘起後、少なくとも9日で投与される。好ましくは、ポリペプチドは視神経の損傷の誘起後、少なくとも10日で投与される。しかし最も好ましくは、ポリペプチドは視神経の損傷の誘起後、少なくとも4日で投与される。これら上記全ての実施形態では、「損傷の誘起後、少なくとも(数)日」は、繰り返し投与の場合には、指定した日数の後で最初の用量が投与されることを意味することを意図している。本明細書の開示と一致して、後に、同じ日に、および/またはその後の日に、さらなる用量を投与してもよい。
用量
本明細書に記載した薬剤および組成物は、有効量で投与される。本発明によれば、「有効量」は、単独でまたはさらなる用量とともに、所望の反応または所望の効果を達成する量または用量である。特定の障害の処置の場合には、所望の反応は、好ましくは疾患の経過の阻害に関連する。これは、疾患の進行の遅延および好ましくは疾患の進行の妨害または逆行を含む。疾患または状態の処置における所望の反応は、前記疾患または前記状態の発症の遅延または発症の防止も含み得る。一部の実施形態では、所望の反応は、障害の症状の局所的および/または全身的に完全な治癒を含む。
本明細書に記載した薬剤または組成物の有効量は、処置すべき状態または障害、障害の重症度、薬剤が投与される対象の個別のパラメーター、たとえば年齢、生理的条件、随伴する状態(存在すれば)、大きさおよび体重、処置の継続期間、付随する治療の種類(存在すれば)、特定の投与経路、および
その他のパラメーターに依存することになる。したがって、本明細書に記載した薬剤の投与用量は種々のそのようなパラメーターに依存し得る。患者の反応が当初の用量では不十分な場合には、より高い用量(または異なる、より局所的な投与経路によって達成された効果的に高い用量)を使用してよい。
本発明によれば、眼の処置および/または防止のためにヒト対象に投与するための治療剤の投与の好適かつ治療に有効な投薬量は、眼の障害の処置および/または防止のためにげっ歯類対象、特にマウスに投与するための治療剤の投与の実験的に決定された好適かつ治療に有効な投薬量に基づいて決定することができる。
動物モデル(実施例4)は、薬理学的応答を確立するため、ならびに処置産生物の毒性の可能性を評価するために役立つ。一部の実施形態では、対象に投与すべき用量は、実施例4または実施例5または実施例6に開示した用量である。
好ましくは、ポリペプチドの用量は処置の開始の際またはその前に決定される。一実施形態では、用量は処置の進行に応じて後の投与のために調節される。代替の実施形態では、用量は後の投与のために調節されず、したがって引き続く用量は当初の用量に対応する。
ポリペプチドは、局所(たとえば)結膜および硝子体内の投与の両方で活性である。局所(最も好ましくは結膜)投与(好ましくは点眼)について具体的に、好ましい用量/各用量は、1眼あたり0.3~30μgのポリペプチド、より好ましくは1眼あたり1~10μgのポリペプチド、最も好ましくは1眼あたり約5μgのポリペプチドの量を有する。最も好ましくは、これらの指示した投薬量は、具体的にヒトの眼への投与のためのものである。
ポリペプチドを得るためのプロセス
一実施形態では、配列番号3のポリペプチドおよび配列番号4のポリペプチドは生物源から得られる。配列番号3のポリペプチドおよび配列番号4のポリペプチドは組み換え発現によって得てもよい。その目的のため、それぞれのポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームが、組み換えタンパク質の源、たとえば宿主細胞またはタンパク質発現のための無細胞系に導入される。まさに、ヒトNGFがインビボで少量しか産生されないこと、マウスのNGFが通常、種々のタンパク質の不均一な混合物として産生されること(WO2000/022119A1を参照)、および本発明のポリペプチドが天然でなく、したがってインビボでは全く産生されないことを考慮すれば、本発明のポリペプチドを産生する最も有意義な可能性は、最新技術における野生型NGFについての等価の示唆に従って組み換え発現によることである(WO2000/022119A1、WO2008/006893A1、Rattenholl et al., Eur. J. Biochem, 2001, vol. 268, p. 3296-3303、米国特許公開2018/0086805A1)。しかし、そのようなポリペプチドを哺乳動物への投与のために十分な純度グレードで得ることは変わらぬ課題であった。本明細書で詳細に開示したように、この課題は本発明によって克服された(実施例1および2も参照)。
好ましくは、本発明によるポリペプチドは、細菌における組み換え発現によって得られる。より好ましくは、本発明によるポリペプチドは、細菌におけるサイトゾル組み換え発現によって得られる。一般に細菌細胞、特に大腸菌は、大量の組み換えタンパク質の組み換え産生が可能であるが、他の多くの組み換え発現遺伝子の場合と同様に、細菌中における組み換えNGFおよび同様のポリペプチドの産生は、生物学的に不活性な翻訳産物をもたらし、これが凝集体(いわゆる封入体(IB))の形態で細胞(サイトゾル)中に蓄積する(WO2000/022119A1、米国特許公開2018/0086805A1)。NGFとは対照的に、プロNGFはかなり不安定で、再折り畳みおよび低い回収率での精製に多くの努力を必要とし、これが細菌中におけるプロNGFを介するNGF産生のプロセスを比較的困難で高価なものにしている。したがって、それぞれのプロ形を介する細菌産生NGFおよび同様の細菌産生ポリペプチドに伴う主要な困難は、組み換えタンパク質の折り畳み、プロセシング、および精製に関係している。これらの困難が今や解決された(実施例1および2を参照)。結果として、配列番号3および配列番号4のポリペプチドは、ヒトを含む哺乳動物への投与のために好適な純度グレードで入手可能になる。
好ましくは、本発明によるポリペプチドは、プロ配列とともに発現される。限定されないが、好適なプロ配列は、典型的には配列番号3または4のポリペプチドのN末端に融合した野生型ヒトNGFのプロ配列(配列番号1のアミノ酸18~121位)である。野生型NGFについては、成熟NGFの一部ではなく、したがってNGFの生物機能には必要でないが、共有結合したプロ配列の存在は、付随して起こる成熟部分(ベータNGF)のジスルフィド結合の形成を伴う封入体からの組み換えNGFの再折り畳みを促進することが示された。即ち、共有結合したプロ配列の存在は、封入体からの成熟NGFのインビトロでの再折り畳みと比較して、再折り畳みの収率および速度に良い影響を及ぼす(Rattenholl et al., Eur. J. Biochem, 2001, vol. 268, p. 3296-3303)。特定の理論に縛られることは望まないが、配列番号3および4のポリペプチドについても同様のことはもっともであり、本明細書で前提とされる。
したがって、本発明によるポリペプチドが封入体の中で産生された場合、正しい折り畳みが必要であり、これは共有結合したプロ配列からの切断と同様に、通常、翻訳後に達成される。折り畳み、切断、および精製の洗練された方法が、特に野生型ヒトNGFについて過去に提案されている。注目すべきことに、NGFに関する公開された研究の大部分は、Rattenhollら (2001, Eur. J. Biochem, vol. 268, p. 3296-3303)によって以前に確立された一般的な再折り畳みレジームを適用している。このオリジナルな研究の中で、タンパク質の再折り畳みに関するいくつかのパラメーター(たとえば温度、再折り畳み時間、再折り畳み反応のpH、アルギニン、グルタチオン、およびタンパク質の濃度)が詳細に検討され、再折り畳みの効率に対するそれらの効果が評価された。Rattenhollらによるプロトコルはプロ形の再天然化に依拠しており、これは溶解性が極めて低く、原核細胞中の組み換え産生の後で封入体から得られ、それによりプロNGFは変性剤の溶液中、変性濃度で可溶化され、変性しないか弱く変性する溶液中に移され、それにより溶解性が維持され、溶解した変性プロNGFは天然のNGFと同様のジスルフィド結合の形成を含む生物学的に活性なコンフォメーションを取ることができ、その後でNGFは精製され、プロ配列はタンパク質分解によって除去される(WO2000/022119A1、Rattenholl et al., Eur. J. Biochem, 2001, vol. 268, p. 3296-3303)。注目すべきことに、この研究の中で、低いタンパク質濃度は、高いタンパク質濃度と比較して、正しく折り畳まれた産生物の高い特異的収率をもたらすことが見出された。例として、再折り畳み反応1リッターあたり約50mgのタンパク質濃度は、正しく折り畳まれたプロNGFの約25%の特異的収率をもたらした一方、この分画は1リッターあたり500mgのタンパク質濃度では10%に低下した。これに基づいて、Rattenhollらは再折り畳み溶液中のタンパク質濃度は極めて低いはずであると示唆している。Rattenhollらによれば、再折り畳み反応1リッターあたり15~20mgの正しく折り畳まれたタンパク質が収率として予想される。しかし、これは数百mgの組み換えタンパク質の精製のためにさえスケールアップ(たとえば実験室スケールを超える)を必要とする。
ヒトプロNGFはプロテアーゼであるフリンのための天然の切断部位(Arg-Ser-Lys-Arg、R)を含み、フリンはインビボでこの部位においてプロNGFを切断するが、フリンは商業的に関連のある純度または量で入手可能ではない。本発明によれば、本発明によるポリペプチドは、たとえば大腸菌中でプロ配列とともに発現された場合、好ましくは商業的に入手可能なプロテアーゼであるトリプシン(EC3.4.21.4)によって切断される。まさに、野生型NGFについては、トリプシンによって満足すべき生物活性を有する成熟NGFが得られ、これは最終的に精製することができることが報告されている(Rattenholl et al., Eur. J. Biochem, 2001, vol. 268, p. 3296-3303)一方、組み換え発現されたプロNGFのトリプシンによるタンパク質分解が他の研究者によって採用されている(たとえばD'Onofrio et al., 2011, PLoS One, vol. 6, e20839)。しかし、ベータNGFを産生するための野生型プロNGFのトリプシンによる切断はいくつかの欠点を伴うことが後に示された。即ち、少量のトリプシンは非効率な切断をもたらす一方、大量のトリプシンは切断の選択性をさらに低下させる。それは、トリプシンはいずれのアルギニンおよびリジン残基(RおよびK残基)のC末端をも切断することができ、それによりトリプシンによるRを含むプロNGFの消化によっていくつかの代替の消化産物が得られ、そのため切断酵素としてトリプシンを使用すると正しく切断されたNGFの収率が極めて低くなり、様々な切断産物を標準的な条件下で経済的に分離できないので、精製および収率の問題が生じるためである。1つの解決策として、プロペプチド中のプロテアーゼ切断部位Rが少なくともヒト野生型プロNGF配列(配列番号1)の101位および103位に対応する位置RおよびKで別のアミノ酸によって置換されたプロNGFの変異体を発現させることが提案された(WO2013/092776A1)。一例では、RおよびKはそれぞれバリン(V)およびアラニン(A)で置き換えられ、元のフリン切断部位RはVに変換されて、トリプシンがRのC末端のみを特異的に切断できる。それぞれのプロNGFのトリプシン媒介切断は、「VSAR法」とも称し得る。WO2013/092776A1は本発明による配列番号3または4のポリペプチドについては触れていないが、VSAR法は当初、プロNGFムテインのある種の変異体に適用可能であると提案されていた。しかし、タンパク質分解の条件は注意深く調整する必要があることが報告されている(WO2018/0086805A1)。本発明に到達するまでの経過において、本発明者らはVSAR技術が以前の示唆とは反対に、満足すべき純度の本発明のポリペプチドの組み換え産生に伴う純度の問題を満足できる程度には解決しないことを見出した。まさに、宿主細胞タンパク質(HCP)由来のみでなく、トリプシン(または切断のために使用されるその他のプロテアーゼ)由来であっても、組み換え発現されたベータNGFまたはそのムテインの精製は、いまだに困難である。言うまでもなく、ポリペプチドの保存の間のタンパク質分解を避け、それにより本発明に従ってポリペプチドを対象に投与する時点でポリペプチドが実質的に純粋で分解していないために、タンパク質分解酵素(トリプシン等)が医薬タンパク質の最終製剤に存在していなことが要求される。本明細書に記載したように、本発明者らはこの課題を解決した。即ち、本発明は配列番号3または4によるポリペプチドを高純度、即ちトリプシンおよび/またはポリペプチドの分解産物が実質的に存在せずに、利用可能とする。NGF(WO2013/092776A1)および配列番号4のポリペプチド(たとえばMalerba et al., 2015, PLOS One, vol. 10, e0136425)の産生のためのある種の方法は既に記載されているが、本開示は驚くべきことに、以前に公開されたプロセスはそれぞれのポリペプチドを高純度で得るためには不十分であることを示している。これらの不十分な点に対する解決策として、本開示は、本明細書に詳細に記載するように、新規なプロセスおよび関連する態様を提供する。
本発明に従ってたとえば宿主細胞中で組み換え発現によって配列番号3のポリペプチドおよび配列番号4のポリペプチドを得るためのプロセスには、精製が含まれ得る。精製は最も広い意味では配列番号3または配列番号4のポリペプチドが宿主細胞タンパク質等の他のタンパク質を含む他の分子から分離されることを意味する。即ち、精製は、宿主細胞タンパク質、プロテアーゼ(たとえばトリプシン)、および/または本発明によるポリペプチドの分解産物等の他のタンパク質を含む1つまたは複数の他の分子からの分離を含み得る。
本発明による配列番号3のポリペプチドおよび配列番号4のポリペプチドの産生のためのプロセスは、好ましくは以下のステップを含む。
(a)配列番号3または配列番号4のポリペプチドの前駆体を得るステップ、
(d)精製。
ステップ(d)における精製は、典型的には混合モード固定相上での精製を含む。即ち、一実施形態では、配列番号3または配列番号4のポリペプチドは組み換え発現および精製によって得られ、精製は混合モード固定相上での精製を含む。用語「混合モード固定相上」は幅広く理解されるべきであり、配列番号3もしくは配列番号4のポリペプチドまたはこれらのいずれかの前駆体を含む混合物が他の分子種とともに、たとえばクロマトグラフィーまたは他の好適なプロセスステップによって、混合モード固定相に曝露されることを意味する。まさに、好ましくは配列番号3もしくは配列番号4のポリペプチドまたはこれらのいずれかの前駆体を含む混合物が他の分子種とともにクロマトグラフィーに供され、したがってステップ(d)における精製は混合モードクロマトグラフィーによる精製を含む。好ましくは、混合モードクロマトグラフィーは、荷電基、好ましくは陰性荷電基、ならびに芳香族基および/または疎水性基を有する固定相の使用を含む。
本発明による精製は、最も広い意味で、配列番号3または配列番号4のポリペプチドが少なくとも部分的に、宿主細胞タンパク質、前駆体、および/または分解産物等の他のタンパク質を含む他の分子種から分離されることを意味する。結果として、少なくとも部分的に精製された配列番号3または配列番号4のポリペプチドが得られる。他の分子種は廃棄しまたは廃棄しなくてよく、好ましくは配列番号3または配列番号4のポリペプチドが得られ、精製の結果として保持される。
好ましくは、混合モードクロマトグラフィーは、荷電基、好ましくは陰性荷電基、ならびに芳香族基および/または疎水性基を有する固定相の使用を含む。
これらのステップのそれぞれはそれ自体、いくつかの作用を含み、簡単のためにこれらもステップと称することができる。説明のため、また以下に詳細を示すように、ステップ(d)は、たとえば2つ以上の固定相上における2つ以上の精製ステップを含み得る。
1つまたは複数のプロセスステップに関連して本明細書で使用する任意の文字または数字、たとえば(a)、(b)、(c)、(d)、(d1)、(d2)は限定するものと理解すべきではなく、むしろ参照のためである。本発明によるプロセスまたは使用における事象の順序は、文字のアルファベット順または数字の数値順によって限定されると理解すべきではない。上記に関わらず、本発明によるプロセスまたは使用における事象の順序は本明細書に記載した順序であることが極めて好ましい。
混合モードクロマトグラフィーのさらなる態様、特に好適な固定相を、以下にやや詳細に記載するが、これらの態様は一般に本発明に適用可能である。即ち特に、ステップ(d2)における混合モードクロマトグラフィーに特に有用であると以下に記載するその全ての実施形態を含む全ての固定相は一般に、本発明による配列番号3のポリペプチドおよび/または配列番号4のポリペプチドの精製に有用であり、ステップ(d1)の捕捉クロマトグラフィーと組み合わせてまたはそれなしに、全ての種類の実施形態において使用することができる。まさに、実施例2Bは、先端技術によるプロトコルの変形において混合モードクロマトグラフィーを使用することによっていくつかの利点が達成できることを記載している。
配列番号3のポリペプチドまたは配列番号4のポリペプチドは、(再)折り畳みおよび/またはクロマトグラフィー精製および/またはプロテアーゼ消化を含み、最終タンパク質濃度への調節および所望の製剤の調製を含んでもよいプロセスによって得てもよい。
即ち、配列番号3または配列番号4のポリペプチドの本明細書に記載したそれを必要とする対象への投与も、本明細書の開示に基づいて当業者に利用可能な配列番号3または配列番号4のポリペプチドの工業的に関連する純度および収率によって可能になる。即ち、本開示は配列番号3または配列番号4のポリペプチドの産生のためのプロセスも記載している。
本発明による配列番号3または配列番号4のポリペプチドの産生のためのプロセスは、好ましくは以下のステップを含む。
(a)たとえば組み換え発現によって配列番号3または配列番号4のポリペプチドの前駆体を得るステップ、
(d)混合モード固定相上での精製を含む精製。
本発明では、配列番号3または配列番号4のポリペプチドの前駆体はステップ
(c)プロテアーゼへの曝露
に供されることも好ましい。
前記曝露は典型的にはステップ(d)の前に行なわれる。
本発明のプロセスは、好ましくはプロテアーゼへの曝露の前にクロマトグラフィー精製が実施されないという点でも特徴付けられる。まさに、本開示(実施例1、2)は、プロテアーゼによる消化が奏功し、宿主細胞から得られた粗分画においても、即ちプロテアーゼへの曝露の前にクロマトグラフィー精製が実施されなくても、効率が良いことを示している。
好ましくは、得るステップ(a)は、配列番号3または配列番号4のポリペプチドの前駆体の発現、好ましくは組み換え発現を含む。より好ましくは、組み換え発現は宿主細胞中である。宿主細胞の培養の後、配列番号3または配列番号4のポリペプチドが細胞培養の分画中で得られる。分画は、タンパク質が実質的に宿主細胞から分泌されない場合に、宿主細胞からなっている。これはたとえば配列番号3または配列番号4のポリペプチドが封入体の中および/またはその他サイトゾルを含む細胞内コンパートメントの中で産生された場合である。好適な宿主細胞は原核細胞および真核細胞の宿主細胞から選択されるが、典型的な実施形態で原核宿主細胞が好ましい。好ましい原核宿主細胞には、大腸菌(E.coli)、好ましくは大腸菌ロゼッタ(DE3)が含まれる。一実施形態では、配列番号3または配列番号4のポリペプチドは、天然のコンフォメーション以外のコンフォメーション、および/または凝集体、最も好ましくは封入体で得られる。その結果、本発明のプロセスは、好ましくは配列番号3または配列番号4のポリペプチドを(再)折り畳みするステップ(b)を含む。好ましくは、ステップ(c)はステップ(b)の後で行なわれる。
好ましくは、ステップ(c)においてプロテアーゼは、配列番号3または配列番号4の(成熟)ポリペプチドが放出されるような様式で配列番号3または配列番号4のポリペプチドを切断することができるプロテアーゼである。特定の実施形態では、前記プロテアーゼはトリプシン、好ましくは組み換え発現されてもよいブタトリプシンである。
好ましくは、精製のステップ(d)は、好ましくは連続した順序で以下のステップを含む。
(d1)捕捉するステップ、
(d2)仕上げステップ。
好ましくは、捕捉するステップ(d1)はクロマトグラフィー、好ましくはカラムクロマトグラフィーによって行なわれる。より好ましくは、前記捕捉するステップ(d1)はカチオン交換クロマトグラフィー固定相または混合モードクロマトグラフィー固定相を使用して行なわれる。さらにより好ましくは、前記捕捉するステップ(d1)は、好ましくはCapto MMCである混合モードクロマトグラフィー固定相を使用して行なわれる。
好ましくは、仕上げのステップ(d2)はクロマトグラフィー、好ましくはカラムクロマトグラフィーによって行なわれる。より好ましくは、前記仕上げのステップはカチオン交換クロマトグラフィー固定相を使用して行なわれる。さらにより好ましくは、前記捕捉のステップ(d1)はSPセファロース、好ましくは小粒径のSPセファロースを使用して行なわれる。SPはスルホプロリルの略語である。
本発明によるプロセスは、最終タンパク質濃度への調節および所望の製剤の調製のさらなるステップを含んでもよい。結果として、本発明による組成物が得られる。
他の表現では、本発明は配列番号3または配列番号4のポリペプチドの調製のための混合モードクロマトグラフィーを提供する。混合モードクロマトグラフィーは、配列番号3または配列番号4のポリペプチドの調製に有用である。好ましい実施形態では、消化の目的のために配列番号3または配列番号4のポリペプチドの前駆体がプロテアーゼに曝露され、プロテアーゼへの曝露に続くステップにおいて混合モードクロマトグラフィーが使用される。好ましい実施形態では、前記プロテアーゼへの曝露の前に配列番号3または配列番号4のポリペプチドのクロマトグラフィー精製は実施されない。
ポリペプチドの純度
本発明のポリペプチドはその天然の状態で通常随伴する成分を実質的にまたは本質的に含まない。本発明のポリペプチドは、投与される前に単離される。一実施形態では、「単離されたポリペプチド」は、天然に存在する状態でそれを取り囲む組織等の細胞および細胞外の環境、たとえばそれが発現された宿主細胞等の細胞から精製されたポリペプチドを指す。別の実施形態では、「単離されたポリペプチド」はそれぞれ、その天然の細胞環境から、およびポリペプチドが通常存在する環境の他の成分との会合からのポリペプチドのインビトロの単離および/または精製を指す。
好ましくは、本発明による使用のための配列番号3または配列番号4のポリペプチドは、実質的に不純物を含まない。そのような有利に純粋な配列番号3または配列番号4のポリペプチドは本明細書に記載したようにして得られる。
本明細書に記載した配列番号3または配列番号4のポリペプチドは、薬学的に活性なペプチドまたはタンパク質とみなされる。
本発明の特に有利な実施形態では、本発明によるポリペプチドは実質的に前記ポリペプチドの分解産物を含まずに得られる。特に本開示は、最新技術の野生型ヒトNGFに関する報告とは逆に、配列番号4の前駆体のトリプシンへの曝露は、精製によってトリプシンが完全に除去されなければ、精製の前または後で、配列番号4のアルギニン(Arg、R)残基9のC末端で前記前駆体を本質的に部分的に切断することを示す(デスノナ変異体、データは示していない)。本発明で提供する特定の精製法によって、本発明によるポリペプチドを、トリプシンおよび/またはデスノナ変異体を実質的に含まずに得ることができる。
好ましくは、上記のようにして得られるポリペプチドは、ポリペプチドの分解産物を実質的に含まない。特に、本開示は本発明のポリペプチドを新たな改善された純度グレードで利用可能にし、ポリペプチドをそのような高純度で投与することが好ましい。好ましくは、本発明による使用のための本発明のポリペプチドは、少なくとも90%の純度グレードによって特徴付けられる。より好ましくは、本発明による使用のための本発明のポリペプチドは、少なくとも91%の純度グレードによって特徴付けられる。より好ましくは、本発明による使用のための本発明のポリペプチドは、少なくとも92%の純度グレードによって特徴付けられる。より好ましくは、本発明による使用のための本発明のポリペプチドは、少なくとも93%の純度グレードによって特徴付けられる。より好ましくは、本発明による使用のための本発明のポリペプチドは、少なくとも94%の純度グレードによって特徴付けられる。より好ましくは、本発明による使用のための本発明のポリペプチドは、少なくとも95%の純度グレードによって特徴付けられる。より好ましくは、本発明による使用のための本発明のポリペプチドは、少なくとも96%の純度グレードによって特徴付けられる。より好ましくは、本発明による使用のための本発明のポリペプチドは、少なくとも97%の純度グレードによって特徴付けられる。より好ましくは、本発明による使用のための本発明のポリペプチドは、少なくとも98%の純度グレードによって特徴付けられる。さらにより好ましくは、本発明による使用のための本発明のポリペプチドは、少なくとも99%の純度グレードによって特徴付けられる。
最も好ましくは、本発明による使用のための本発明のポリペプチドは、99.0%を超える純度グレード、たとえば99.1%を超え、99.2%を超え、99.3%を超え、99.4%を超え、99.5%を超え、99.6%を超え、99.7%を超え、99.8%を超え、99.9%を超える純度グレードによって特徴付けられる。
本明細書において、「純度グレード」は一般に、本発明のポリペプチド以外の生物材料の重量(w)に対する本発明によるポリペプチドの重量(w)パーセンテージを指す。説明のため、一般に、99.0%の純度グレードでは、本発明のポリペプチドは99.0単位(たとえば1.0mg)の相対量(重量)で存在し、本発明のポリペプチド以外の全ての生物材料の重量の合計は1.0単位(たとえば1.0mg)である。本発明のポリペプチド以外のそのような生物材料には、限定されないが宿主細胞タンパク質、核酸、不活化されまたは不活化されていないトリプシン等のプロテアーゼ、本発明のポリペプチドの分解産物、および生物起源のその他の高分子が含まれる。特定の実施形態では、「純度」グレードは、本発明のポリペプチド以外のポリペプチドに対する純度を指す。説明のため、純度グレード99.0%のその実施形態では、本発明のポリペプチドは99.0単位(たとえば1.0mg)の相対量(重量)で存在し、本発明のポリペプチドと同一でない全てのポリペプチドの量の合計は1.0単位(1.0mg)である。本発明のポリペプチドの分解産物は、疑いを避けるため、「本発明のポリペプチドと同一でないポリペプチド」に含まれる。特定の分解産物はデスノナ変異体である(実施例1および2参照)。
特にポリペプチドのデスノナ変異体を実質的に含まない。デスノナ変異体は、ポリペプチドが本明細書に開示した新規な方法で産生されない場合に、本発明のポリペプチドを含むNGFのある種の変異体の産生に伴う本発明のポリペプチドの、以前に特徴解析されていない分解産物である(たとえば実施例1および2参照)。この文脈における「実質的に含まない」は、本発明による使用のための本発明のポリペプチドが、デスノナ変異体に関して、全てデスノナ変異体に対して99.0%を超える純度グレード、たとえば99.1%を超え、99.2%を超え、99.3%を超え、99.4%を超え、99.5%を超え、99.6%を超え、99.7%を超え、99.8%を超え、99.9%を超える純度グレードによって特徴付けられることを意味することを意図している。最も好ましい実施形態では、デスノナ変異体は検出できず、および/または存在しない。
本発明によるポリペプチドは、いずれのプロテアーゼ(トリプシン等)も実質的に含まないことも好ましい。この文脈における「実質的に含まない」は、本発明による使用のための本発明のポリペプチドが、全てのプロテアーゼ(トリプシンを含む)の総量に対して、全てのプロテアーゼ(トリプシンを含む)の総量に対して99.0%を超える純度グレード、たとえば99.1%を超え、99.2%を超え、99.3%を超え、99.4%を超え、99.5%を超え、99.6%を超え、99.7%を超え、99.8%を超え、99.9%を超える純度グレードによって特徴付けられることを意味することを意図している。最も好ましい実施形態では、トリプシンは検出できず、および/または存在しない。
そのような高い純度グレードは、上記の実施形態では、規制当局による許容性の改善を伴い、本発明のポリペプチドを特にヒトを含む哺乳動物対象における使用のための医薬として適格とする。即ち、本発明による純度グレードは、安全かつ信頼性の高い様式でのヒトの眼を含む眼への投与のためのこのポリペプチドの使用を初めて可能にする。プロテアーゼ(トリプシン)に関する高い純度グレードは、特に非凍結状態でのポリペプチドの保存を可能にする。
組成物
以下、本発明のポリペプチドを含む組成物について記述する。そのような組成物はそのまま、ならびに本発明による眼科障害の防止および/または処置における使用の特定の文脈において、本発明の一部である。即ち、本発明はそのような組成物の医療用途と組成物そのものの両方を指向している。
本発明による組成物中に、配列番号3または配列番号4のポリペプチドは、活性成分として含まれている。さらなる成分が含まれてもよい。
一実施形態では、ポリペプチドは水性媒体中に含まれる。前記水性媒体は、哺乳動物対象への投与のためである。
本発明による使用のための特定の水性組成物は、点眼剤としての使用に好適な液体組成物である。一般に、点眼剤は眼科経路で投与するために好適な液体の滴である。用語「点眼剤」は特に限定されず、一般に組成物、典型的には眼に損傷を惹起せずに眼に投与することができる水性液体組成物を指す。一般に点眼剤は、たとえば経口薬または硝子体内注射用の医薬よりも副作用のリスクが少ない。これらのおよびその他の理由により、点眼剤が特に好ましい。
即ち一実施形態では、ポリペプチドは点眼剤としての使用のために好適な組成物中に含まれる。
前記点眼剤は哺乳動物対象への投与のためであることが予測される。点眼剤は本発明の薬剤を投与するための眼科経路における使用のためであることが予測される。好ましくは、点眼剤は眼に局所投与される。
点眼剤を作成するための方法は当技術で既知である。限定されず、説明のためのみであるが、点眼剤を作成するための方法は、WO2016/162812A1に記載されている。
一部の実施形態では、本明細書に記載した配列番号3または配列番号4のポリペプチドは、1つもしくは複数の担体および/または1つもしくは複数の賦形剤をさらに含む点眼組成物等の組成物に含まれる。本明細書で使用される用語「担体」は、活性成分の適用を可能にし、増強し、または容易にするために活性成分と組み合わせられる天然または合成の性質の有機または無機の成分を指す。本明細書で使用される用語「賦形剤」は、本発明の医薬組成物中に存在し、活性成分ではない全ての物質を示すことを意図している。
好ましくは、本発明による組成物は賦形剤として少なくとも水を含む。一部の実施形態では、本発明による組成物は水性媒体を含み、より好ましくは、本発明による組成物は水溶液の形態である。一実施形態では、ポリペプチドは水性媒体中に含まれ、水性媒体が哺乳動物対象に投与される。水性媒体は、たとえば水溶液であってよい。水溶液およびその他のそれぞれの組成物は、一部の実施形態では、水性媒体中におけるNGFの精製から直接得られる。たとえば、本発明による薬剤が精製による生物源から精製によって得られる場合には、それぞれの水性組成物は最後の精製ステップ、たとえば最後のクロマトグラフィーカラムからの溶出(通常、仕上げステップ)および/または濾過から直接得られる。あるいは、それぞれの組成物は、最終のタンパク質濃度への調節および所望の製剤の調製というさらなるステップを通して利用可能である。そのようなさらなるステップには、たとえば本明細書に記載する清澄化もしくは濾過のステップ、および/または1つもしくは複数の賦形剤または1つもしくは複数の担体の添加が含まれる。本発明において有用な例示的な組成物を本明細書に記載するが、限定はされない。
したがって、本明細書に記載した配列番号3または配列番号4のポリペプチドは、組成物中、たとえば医薬組成物中に存在してよい。本明細書に記載した組成物は、好ましくは無菌であり、好ましくは薬学的に活性なペプチドまたはタンパク質として配列番号3または配列番号4のポリペプチドを含み、および本明細書に記述しまたは記述していないさらなる薬剤を含んでもよい。組成物は任意の状態、たとえば液体、凍結、凍結乾燥等であってよい。
本明細書に記載した組成物は、塩、緩衝物質、保存剤、担体、希釈剤、および/または賦形剤を含んでよく、これらの全ては好ましくは薬学的に許容される。用語「薬学的に許容される」は、非毒性であり、および/または医薬組成物の活性成分の作用と相互作用しないものを表す。
本発明における使用のための好適な緩衝物質には、塩の状態の酢酸、塩の状態のクエン酸、塩の状態のホウ酸、および塩の状態のリン酸が含まれる。たとえば、本発明のポリペプチドは、本発明の種々の態様の結果として、4.5~6.5、好ましくは5.0~6.0のpHを有する緩衝液中で得られることが好ましい。一実施形態では、酢酸塩緩衝液がそのような目的のために好適な緩衝剤であり、したがって特に好ましい。即ち、一実施形態では、本発明のポリペプチドは、4.5~6.5、好ましくは5.0~6.0のpHを有する酢酸塩緩衝液中で得られる。特に、酢酸塩はNGFおよびその誘導体をpH5.0~pH5.8のpH範囲内で安定化するための最適な緩衝剤であると考えられる。
NGFおよび同様に本発明によるポリペプチドはメチオニン残基における酸化に敏感であるので、メチオニンが好ましくは製剤中に含まれる。
本発明は、配列番号3のポリペプチドおよび配列番号4のポリペプチドの中から選択されるポリペプチドを含む組成物をさらに指向しており、組成物はpH5.0~6.0のpH(好ましくはpH5.5)によって特徴付けられ、以下を含む。
a)0.2~20mg/mlの前記ポリペプチド(好ましくは2mg/ml)、
b)5~100mMの酢酸ナトリウム緩衝剤(好ましくは20mM)、
c)5~100mMのメチオニン(好ましくは20mM)。
即ち、好ましくは、ポリペプチドは以下を含む組成物中に含まれる。
a)0.2~20mg/mlの本発明のポリペプチド、
b)5~100mMの酢酸ナトリウム緩衝剤、
c)5~100mMのメチオニン、
d)pH5.0~6.0
より好ましいpH範囲は5.0~5.8である。
最も好ましくは、ポリペプチドは以下を含む組成物中に含まれる。
a)2mg/mlの前記ポリペプチド、
b)20mMの酢酸ナトリウム緩衝剤、
c)20mMのメチオニン、
d)pH5.5。
本発明の中の別の好ましい製剤は以下の通りである。
1mg/mlの配列番号3のポリペプチドまたは配列番号4のポリペプチド(好ましい)、
10mMの酢酸ナトリウム緩衝剤、
10mMのメチオニン、
154mMのNaCl、
0.1mg/mLのポリソルベート80、
pH5.5。
これらのおよびその他の製剤が、眼科使用のための薬物製品として好ましく想定される。
上記の組成物は好ましくは点眼剤である。上記の組成物は好ましくは水性組成物である。
本発明による組成物(製剤)は、限定されないが以下の実施形態の1つまたは複数に従って保存してよい。
- 第1の実施形態:上記の製剤を-70℃で凍結保存し(データは示していない)、投与前に解凍することができる。
- 第2の実施形態:上記の製剤を冷蔵庫中、好ましくは+2~+8℃の温度範囲で保存することができる(データは示していない)。
- 第3の実施形態:上記の製剤を乾燥または凍結乾燥に供し、次いでたとえば室温で保存することができる(データは示していない)。これは投与前に再構成することができる。
上記の実施形態の全ては、ドライアイス出荷の使用、解凍および解凍後の再混合の必要性、その他を避けることができるので、たとえば-20℃で凍結することのある種の利点を提供する。そのような実施形態では、本発明による製剤は、特にたとえばオキセルベート(セネゲルミン)等の最新技術の医薬NGF製剤のある種の不便さを克服する。
本発明による投与のための特に好ましい組成物は、実施例3に例示している。
本発明による組成物における使用のための好適な保存剤には当技術で既知のものが含まれ、その中には説明のためであって限定されないがベンジルアルコール、ベンザルコニウムおよびその塩、M-クレゾール、フェノール、クロロブタノール、パラベン、およびチメロサールがある。これらのおよびその他の保存剤を、本発明による組成物中に含ませてもよい。
即ち、本発明は治療用途のため、即ち治療によるヒトまたは動物の身体の処置の方法における使用のための、配列番号3または配列番号4のポリペプチドを提供する。治療には、状態の防止および/または処置が含まれ得る。治療用途のための可能性に鑑みて、前記ポリペプチドは薬学的に活性なタンパク質またはペプチドと称することもできる。
本発明による投与は、抗生剤等の少なくとも1つの抗微生物剤の投与を伴ってもよい。抗微生物剤は、本発明によるポリペプチドを含む組成物の一部であってもよく、あるいは同じもしくは異なる投与経路によって同じもしくは異なる部位に、対象に個別に投与してもよい。
本明細書に記載した配列番号3または配列番号4のポリペプチドは、種々の目的のため、たとえば本明細書に記載した治療応用のために好適である。
以下の実施例および図面は本発明のいくつかの好ましい実施形態を説明することを意図しており、特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲を限定するものと解釈すべきではない。
2つ以上の実施例に共通の材料および方法
他に特定しない限り、以下の実験例は具体的に、野生型ヒトNGFに対するP61S R100Eの置換によって特徴付けられる配列番号4のポリペプチド(「NGF P61S R100E」と命名。Malerba et al. PLOS One, 2015, vol. 10, e0136425、配列番号4)、ならびにそのプロ形その他に関する。配列番号4のポリペプチドは「NGFムテイン」と称してもよいが、本発明により、また実験例、特に実施例4で実証されるように、このタンパク質に特異的な治療好適性が野生型ヒトNGFとは明らかに異なることは留意すべきである。同様に、実施例2に記載したように、配列番号4のポリペプチドの精製は野生型NGFの公開された精製プロトコルとは異なり、本発明による前記ポリペプチドを調製するための特定のプロセスは、特にデスノナ変異体およびトリプシンが存在しない高純度を達成するために好適である。
配列番号4のポリペプチドを、前駆体として組み換えによって発現させた。この目的のため、配列番号4を野生型ヒトNGFのプロペプチド(配列番号1の1~121位)に融合させた。換言すれば、配列番号4のポリペプチドの前駆体は、ヒト野生型NGFの成熟部分におけるP61S R100Eの置換を除いて、ヒト野生型NGFの前駆体(配列番号1)からなっていた(しかし明確にするため、ヒト野生型NGFのポリペプチド配列の一部を形成しない配列番号1のC最末端の2つのアミノ酸を欠く)。発現は大腸菌ロゼッタ(DE3)(株:E.coli Rosetta(DE3)/pET11a-hpro NGF P61S R100E))中、不溶性の封入体の形態で実施した。
Figure 2022548367000002
本明細書に記載したタンパク質およびペプチドのタンパク質パラメーター
関連するタンパク質のタンパク質パラメーターの理論値を、ExPASyのProPram-Toolによって計算した。これはhttp://web.expasy.org/protparamで入手可能である。これらを以下の表2に示す。
Figure 2022548367000003
分析方法
SDS-PAGEおよびウェスタンブロット
SDS-PAGEおよびウェスタンブロットは、標準的な手順を使用して実施した。SDS-PAGEについては、NuPAGE MES操作緩衝液(Thermo Fisher社、製品番号NP0002)中、一定電圧(175V)の還元条件下で、12%Bis-TRIS NuPAGEゲル(Thermo Fisher社、製品番号NP0342BOX)を操作した。ウェスタンブロット用の一次抗体は、Santa Cruz Biotechnology社から購入した(NGF(H-20)sc-548)。結果の例を、たとえば図9Aおよび図10に示す。
分析用CEX-HPLC
CEX-HPLCは、Dionex社のProPac SCX-10を使用して実施した。カラムは50mMのクエン酸緩衝液、pH5.5、1mL/分で操作した。溶出のため、1MのNaCl(B)を添加し、Bを0~100%として50分にわたって線形勾配を実施した。結果の例を図9Bに示す。
SE-HPLC
SE-HPLCは、GE Healthcare社のSuperdex 200 Increase 10/300GLを使用して実施した。カラムはPBS中で操作した。生成物は280nmで検出した。
エンドトキシン、DNA、およびHCP
エンドトキシン、DNA、および宿主細胞タンパク質(HCP)は、標準的なプロトコルに従って決定した。
[実施例1]
前駆体タンパク質としての配列番号4のポリペプチドの発現
産生株
プロNGFをコードする遺伝子を、pET11a発現プラスミドにクローニングした。遺伝子はヒト(H.sapiens)から誘導し、2つの点変異(即ちP61SおよびR100E)をオープンリーディングフレーム中に導入した。続いて化学的に有力なロゼッタ(DE3)細胞を発現プラスミドによって形質転換し、単一のコロニーを選択した(得られた株をE5901-STRAIN(=E.coli Rosetta(DE3)/pET11a-プロNGF P61S R100E NGF RCB C-151101)と命名した)。1.0mLのアリコートを-60℃未満で保存した。
実施例1において、株E5901-STRAINに基づく当初の発酵進行を記載する。
Figure 2022548367000004
増殖培地
発酵のための複合培地
発酵のために使用した複合培地は、49.3g/Lの酵母抽出物、0.61g/LnのMgSO・7HO、0.5g/LのNHCl、14.2g/LのKHPO・3HO、および10g/Lのグルコースからなっていた。この発酵のために使用した供給液は、263g/Lの酵母抽出物および133g/Lのグルコースからなっていた。
Figure 2022548367000005
バッチ相のため、両方の基礎培地に30g/Lのグルコースを添加した。他に述べなければ、供給液はそれぞれのバッチ培地と同じ組成を有していたが、300g/Lのそれぞれの炭素源を含んでいた。
アンピシリンおよびクロラムフェニコールを含むLB寒天培地
LB寒天培地を新たに注いだ。培地は10g/Lのペプトン、5g/Lの酵母抽出物、5g/LのNaCl、および15g/Lの寒天を含んでいた。オートクレーブの後に、培地に100μg/mlのアンピシリンおよび30μg/mlのクロラムフェニコールを添加した。
発酵
他に述べなければ、発酵、この実施例1における発酵は、Sartorius社製のBiostat Bユニットによって制御される1Lの撹拌ガラスバイオリアクター中で実施した。典型的には、pOを30%に制御し、培養温度を37℃に設定して、2Mのリン酸および25%の水酸化アンモニウムを使用してpHを7に制御した。他に述べなければ、F=6g/L/時間およびμ=0.25/時間の指数供給によってバッチ相を追跡した。実際的な理由により、全ての指数供給は2つの直線供給で近似した。典型的には、産生物発現の誘起は1mMのIPTGの添加によって実行し、誘起後は10g/L/時間の定常供給を適用した。Thermo Scientific社のSorvall Evolution RCを使用する遠心分離によって細胞のバイオマスを収穫した。遠心分離器にはSLC-6000ローターが取り付けられており、培養液を8500rpm、4℃で30分、遠心分離した。
バイオマス試料中の産生物の相対的定量
所与の時点で、培養試料を10のOD600まで希釈し、この希釈液の100μLのアリコートからバイオマスをペレットとした。ペレットを150μlの(非還元性)Laemmli緩衝液中に再懸濁し、試料を95℃で5分、煮沸した。それぞれの試料10μlをNovex社の10% Bis-Trisゲルで分析した。電気泳動分離を125V、90分で実施し、ゲルをクーマシーで染色した。脱染したゲルをスキャンし、配列番号4のポリペプチドの前駆体に対応するバンドの存在量をデンシトメトリーによって定量した。使用したバイオマスの変動をさらに補正するため、配列番号4のポリペプチドの前駆体に対応するバンドの強度を、ハウスキーピングタンパク質の強度に正規化した。
誘起後および誘起前の配列番号4のポリペプチドの前駆体に対応するバンドの増加から、相対的な産生物の蓄積を計算した。注目すべきことに、測定した値は比収率を表す(即ち、OD600=10に正規化している)。所与の発酵の絶対的な収率のためには、実際の細胞密度を考慮に含めなければならない(下記参照)。
バイオマス試料中の産生物の絶対的定量
配列番号4のポリペプチドの前駆体の標品を、European Brain Research Institute(EBRI,Rome,Italy)から入手した。標品をLaemmli緩衝液で65μg/mLの濃度に希釈した。記述したタンパク質濃度はEBRIによって定義されたものである。260、520、780、1040、および1300ngの配列番号4のポリペプチドの前駆体の標品を用いて標準曲線を作成した。標準曲線と同じゲル上で試料を分析し、試料の希釈係数を考慮して、所与の時間における産生物の絶対的産生収率を計算した。
実施例1のまとめおよび結論
上記に基づいて、産生株(E5901-STRAIN、上記参照)は、1Lスケールの発酵のために成功裡に使用されたと結論される。様々な培地組成を、細菌の増殖および産生物の発現を促進する能力について評価したが、5g/Lの酵母抽出物を添加した最小培地MMIが、発現収率および得られる細胞密度に関して満足できることが証明された。産生物の形成に関しては、主要な培養を抗生剤ありまたはなしで(アンピシリンおよびクロラムフェニコール、データは示していない)実施した場合に、有意な差は観察されなかった。
実施例1は、工業スケールでポリペプチドを産生するためにスケールアップすることができる。
[実施例2]
CAPTO MMCの実験室スケールの精製、確立
本実施例で使用した配列番号4の前駆体は、実施例1に記載したように封入体で得られた。
最新技術に鑑みた最適化のための出発点
当初は、本発明のポリペプチドの改善された精製のプロセスは、これに反する指示がない状態で、文献で以前に報告されたNGF精製の基礎的な拠り所に従うことが道理であった。しかし、大スケールでの効率的な生産のためには、後日のスケールアップに適した適応を考慮すべきであることも留意された。したがって、Rattenhollら(上記)のWO2013/092776A1およびその他の出版物に基づいて、配列番号4のポリペプチドが同様にトリプシンを使用する非特異的な消化およびそれに続く精製を採用してそのプロ形を介して少なくとも実験室スケールのプロセスで得られることは道理であった。それによって配列番号4の高純度の成熟ポリペプチドが得られることは道理であった。しかし、配列番号4の高純度の成熟ポリペプチドが得られたのは、本実施例で報告した特定の適合化および改変を通してのみである。したがって、配列番号4のポリペプチドのそれを必要とする対象への投与は、本明細書に記載したように、特に配列番号4のポリペプチドが高純度であることに鑑みて可能になる。
Figure 2022548367000006
実施例2Bに記載した改善を含む本実施例による製造プロセスの詳細を、図1のプロセス概要に示す。
他に特定しない限り、分析方法は上記のセクション「分析方法」に記載した通りであった。
[実施例2A]
以前に記載されたプロトコルに基づく精製
配列番号4のポリペプチドの前駆体を発現する大腸菌細胞(「バイオマス」)を、実施例1に記載したように産生し、リゾチームの添加および引き続く氷上での超音波処理によって細胞を溶解した。封入体(「IB」)を(1)宿主細胞から抽出して6%のTriton X100(1.5MのNaCl、60mMのEDTA中)によって洗浄し、(2)6MのグアニジンHCl(「gHCl」)、0.1MのTris-HCl(pH8.0)、1mMのEDTA、100mMの(新鮮な)DTTの中で可溶化した。IBは室温で2時間、可溶化した。その後、37%のHClの添加によってpHを3~4に低下させた。このようにして得られた配列番号4のポリペプチドの前駆体の可溶化された前駆体を含む溶液(「ソルビリゼート」)を、6MのgHCl(pH3~4)に対して透析した。
配列番号4のポリペプチドの前駆体の再折り畳みは、0.1MのTris-HCl、1MのL-アルギニン、5mMのEDTA、0.61g/Lの酸化グルタチオン、および1.53g/Lの還元グルタチオンの中で、pH9.5、+4℃で実施した。そのため、50μgのタンパク質を1時間ごとに1mLの再折り畳み緩衝液に添加した。再折り畳みの後、反応液を50mMのリン酸ナトリウム(pH7.0)に対して透析した。緩衝液を交換する間、顕著な沈殿が生じた。
配列番号4のポリペプチドの前駆体を、連続した順序のカチオン交換クロマトグラフィー(50mMのリン酸ナトリウム、pH7.0で操作し、NaCl勾配で溶出するSP セファロースHP)およびそれに続く疎水性相互作用クロマトグラフィー(50mMのリン酸ナトリウム、1Mの硫酸アンモニウム、pH7.0で操作するフェニルセファロースHP)によって精製した。その後、試料の緩衝液を交換するために50mMのリン酸ナトリウム、pH7.0に対してもう一度透析を行なった(しかしプロセスにおいてはそのような2回目の透析は省略してもよいことに注意されたい)。再び、緩衝液の電導度の低減のプロセスを通して顕著な量の産生物が沈殿した。
このようにして調製した配列番号4のポリペプチドの前駆体を、250mgのプロNGFあたり1mgのトリプシンを添加することによって限定的タンパク質分解に供した。配列番号4のポリペプチドの前駆体のプロテアーゼへの曝露は、2~8℃で14時間とした。
成熟NGFを最終的にカチオン交換(50mMのリン酸ナトリウム、pH7.0で操作し、NaCl勾配で溶出するSPセファロースXL)によって仕上げた。最終的に産生物を0.5~1mg/mLに濃縮し、-65℃未満で凍結した。
[実施例2B]
改善
以下、本発明に到達する経過において実施例2Aと比較して試験し実施した、いくつかの改善について記載する。文脈によって他が指示されない限り、明示的に指示していない全ての詳細は実施例2Aについて上述した通りである。
IBの可溶化の最適化
少量のIB(振盪フラスコ中の培養から例示的に受容した)は可溶化緩衝液(6MのgHCl、0.1MのTris-HCL、pH8、0.1MのEDTA、100mMの(新鮮な)DTT)に容易に溶解することが以前に報告されているが、高い細胞密度の発酵から得られたIBは完全には溶解することができなかった。これは本明細書において前記可溶化緩衝液に2Mの尿素を添加することによって解決することができ、これは可溶化収率を顕著に改善することが分かった(データは示していない)。疑いを避けるため、2Mの尿素は6MのgHClおよびその他の成分に加えて存在していた。
再折り畳みの最適化
当初はRattenhollら(2001, Eur. J. Biochem, vol. 268, p. 3296-3303; Rattenholl, 2001, Dissertation zur Erlangung des akademischen Grades doctor rerum naturalium (Dr. rer. nat.), Martin-Luther-Universitat Halle-Wittenberg (Germany))に基づいて、しかし重要なことに後日のスケール変更(スケールアップ)も考慮して、折り畳み反応液1リッターあたり200~500mgの配列番号4のポリペプチドの前駆体、好ましくは折り畳み反応液1リッターあたり200~300mgの配列番号4のポリペプチドの前駆体で折り畳みを実施することを決定した。これにより、配列番号4のポリペプチドの可溶化された前駆体の比較的良好な収率がもたらされる。特に、再折り畳み反応の体積と比較してそのような増大したNGFの量によって、また再折り畳み反応がグルタチオンおよびアルギニン等の比較的高価な成分を含むという考慮の下に、再折り畳み反応の体積あたり比較的より多くの配列番号4のポリペプチドの前駆体を折り畳むことができることを考慮することが重要であり、それにより再折り畳みが生産スケールでも経済的に実行可能になる。
配列番号4のポリペプチドの前駆体の精製
再折り畳みの後、配列番号4のポリペプチドの前駆体の精製を、かなり高いプロNGFの等電点を利用し、精製のためにカチオン交換固定相(即ちSPセファロース)を採用するアプローチによって行なった。この種類のクロマトグラフィーを運転するため、技術的な理由により再折り畳み緩衝液を低電導度の緩衝液に交換しなければならない。これを行なっている間に、顕著な量の配列番号4のポリペプチドの前駆体が沈殿した(データは示していない)。この観察は、緩衝液中におけるアルギニン濃度の低下に帰せられる。
したがって、捕捉カラムを、再折り畳み反応におけるアルギニンの存在をより忍容し得る異なるカラム(異なる選択性を有するカラム)に置き換えるためのある種の努力を行なった。これを行なう最初の試みにおいて、いくつかの固定相の性能を評価したが、いずれのアプローチも期待できる結果をもたらさなかった(表6参照)。したがって、捕捉カラムに使用する固定相は、以前のプロセスによって定義されたままに保持した。しかし、配列番号4のポリペプチドの前駆体の高い等電点(pI)のため、性能に影響を与えずに運転緩衝液の電導度を(250mMのL-アルギニンの添加によって)増大させることは可能であった。これにより、配列番号4のポリペプチドの再折り畳みされた前駆体をある程度安定化させることができ、沈殿した前駆体の量が低減した(データは示していない)。
Figure 2022548367000007
上記の表:配列番号4のポリペプチドの前駆体の捕捉について試験した代替の選択性およびその評価
混合モードクロマトグラフィーに関して、特定の理論に縛られることは望まないが、配列番号4のポリペプチドの前駆体は混合モードクロマトグラフィーから効率的に溶出しない一方、配列番号4の成熟ポリペプチドは効率的に溶出することが理解される。
成熟NGFを得るためのプロテアーゼ消化
配列番号4のポリペプチドの製造のためにはプロテアーゼ(トリプシン)が必須であり、したがって理想的には選択された特定のトリプシンは以下の基準に合致すべきことは道理である。
1.組み換え源から誘導されること。動物を用いない原材料の証明が、後に要求されるプロセスのGMP適合性のために重要である。
2.トリプシンの副活性が低いこと。注目すべきことに、トリプシンは自己分解を受けることがある。このプロセスはいわゆるプソイドトリプシンをもたらすことがあり、これは幅広い基質スペクトルを有し、キモトリプシン様活性を保有している。自己分解を低減するためにCa2+(たとえば1mMのCaCl2)を添加してもよい。しかし今日では典型的には「改変されたトリプシン」があらゆるプロトコルに適用され、これは厳しい配列特異性を必要とする(たとえばペプチドフィンガープリンティングのため)。この改変されたトリプシンは、典型的にはトリプシンのリジン残基の露出したεアミノ基のアシル化によって得られる。
3.再現性のある産生プロセスを可能にするため、バッチ間の変動が少ないこと。あるいは、選択された酵素は、それぞれのバッチの比活性を記述する証明とともに送達される必要がある。したがって、酵素の必要量は質量よりもむしろ活性に基づいてよい。
広範囲の探索にも関わらず、基準1および2の両方を満たすトリプシンは市場で特定されなかった。基準1の方が重要であることは道理であった。自己分解を低減するために、CaClの添加は十分であろう。結果として、Roche社の組み換え「GMPグレード」のトリプシン(Roche 06369880103、ロット 11534700)をプロセスのための原材料として選択した。ピチア・パストリス(Pichia pastoris)で発現される酵素の配列は、イノシシ(Sus scrofa)から誘導した。その証明によれば、使用したトリプシンバッチは4997U/mg(USPに従って決定)の比活性を有している。
トリプシン処理の前の第2の精製ステップの省略
意図したトリプシン処理のための最適な酵素/基質比の当初のスクリーニング探索の中で、捕捉カラムから得られた配列番号4のポリペプチドの前駆体(上記参照)を使用した。以前に確立されたプロセス(European Brain Research Institute(EBRI)、詳細は公開されていない。Rottenhollら(上記)に基づく)とは対照的に、トリプシン処理の前にさらなる疎水性相互作用クロマトグラフィーを使用しないことを決定した。トリプシン処理の前にそのような第2のカラム精製ステップを省略するという決定は、主として2つの思考の流れに基づいていた。一方では、捕捉カラムの後で得られる産生物はSDS-PAGEによれば既に実質的に純粋であった。他方では、トリプシン処理それ自体が、残存する宿主細胞タンパク質(HCP)の消化によって不純物プロファイルの改善を助ける可能性がある。
表7は、第1ラウンドの中でスクリーニングした条件のマトリックスをまとめている。トリプシン処理の結果は12%のSDS-PAGEで検討した(データは示していない)。結果(データは示していない)は、トリプシン処理によってかなり広い範囲の酵素/基質比(即ち375μgの配列番号4のポリペプチドの前駆体あたり1~5μgのトリプシン)にわたって安定な配列番号4のポリペプチドが再現性良く得られることを示している。消化のタイミングは高度に重要ではない。したがって、反応の停止および反応液を仕上げカラムに負荷するために必要な時間は、明らかに限定されない。反応は調製スケールでは好適にまたは経済的に停止できないので、この知見は特に重要である。
想定されるトリプシン処理のための最適な酵素/基質比をさらに改善するために、いくつかの追加の実験を行ない、1/100~1/200の酵素/基質比(タンパク質重量/タンパク質重量)で、一方では配列番号4のポリペプチドの良好な収率、および他方では少ない量の切断産生物が再現性良く得られることが見出された。利用した条件(即ち、リン酸塩/アルギニン緩衝液(pH7.0)中、2~8℃、および2~6時間のインキュベーション(プロテアーゼへの曝露))下で、消化の質は酵素/基質比に高度には依存しないことを述べなければならない。基礎となる酵素消化は、実験の設定(たとえばバッチ間変動または酵素の保存によるトリプシンの活性の変化、インキュベーションステップ(プロテアーゼへの曝露)の時間および温度、タンパク質濃度の決定における誤差)において軽微に変化する傾向があるので、この知見は特に重要である。さらに、このことは、可能な切断産物をさらに低減するための小スケールでの拡張された精緻な調整が無意味であるように見える理由でもある。「最適の」条件が小スケールで特定されれば、実際上、同じ消化を大きなスケールで繰り返す次の回にわずかに変化した産生物パターンを産生する良い機会がある。
トリプシン処理の後に純粋なポリペプチドを得ることを目的とする仕上げクロマトグラフィー
成熟ポリペプチドの仕上げのためにSPセファロース固定相(注:SPセファロースはカチオン交換固定相である)を採用した、以前に確立されたプロセス(European Brain Research Institute(EBRI)、詳細は公開されていない。Rottenhollら(上記)に基づく)とは対照的に、本明細書では以下の考慮に基づいてより好適な固定相を探索した。SPセファロースカラムに効率的に負荷するために、たとえば緩衝液の交換によって、配列番号4のポリペプチドの前駆体を含む溶液の電導度を低下させる必要がある。しかし、溶液のイオン強度の低下は標的分子の沈殿をもたらすことが知られており(たとえば実施例2A)、したがって低電導度の緩衝液への緩衝液変更は避けるべきである。さらに、カチオン交換固定相は既に配列番号4のポリペプチドの前駆体の捕捉に使用されており、残存する夾雑物のより良い分離を達成するためには直交選択性が好ましい。トリプシン処理反応の精製にSP固定相を使用することに反対する第3かつ最後の論拠は、配列番号4のポリペプチドのおそらく残存している前駆体はこのカラムに結合しており、結合選択性によってではなく、単に溶出の選択性によって、配列番号4の成熟ポリペプチドから分離できることである。
配列番号4の成熟ポリペプチドの精製のためのそのような直交仕上げカラムを確立するため、最初の例では疎水性相互作用(HIC)カラムを使用することを意図した。この固定相は直交選択性を有するために選択されたのみではなく、低電導度の緩衝液への緩衝液交換が必要でないからである。いくつかのHIC固定相および条件(たとえばそれぞれ1Mの(NHSOおよび0.5Mの(NHSOで操作するフェニル-およびブチル-セファロース)の試験にも関わらず、HICに基づく満足すべき仕上げステップは実施できなかった(データは示していない)。
しかし、仕上げステップのためのさらなる実験の設定において、混合モード固定相Capto MMCを試験して成功裡に実施することができた。最適化された条件下で固定相は配列番号4のポリペプチドに可逆的に結合し、産生物はpHを上昇させることによって溶出させることができた(データは示していない)。対照的に、配列番号4のポリペプチドの前駆体は固定相に不可逆的に結合し、移動相として1MのNaOHを使用することによってのみ溶出させることができる(データは示していない)。さらに、トリプシンは同じ条件で操作したカラムに全く結合しないことが示された(データは示していない)。これらの結果は、Capto MMC固定相が配列番号4の成熟ポリペプチドをトリプシンおよび残存する配列番号4のポリペプチドの前駆体から効率的に分離できるという明確な証拠を提供している。
さらなる膜クロマトグラフィーの確立
エンドトキシンおよびDNAをさらに枯渇させるため、追加のアニオン交換膜をプロセスに含めた。一般にかつ共通して知られているように、膜クロマトグラフィーは、分析または精製される成分(本例では配列番号4のポリペプチド)を含む溶液が、通常は荷電している膜を通過するまたは通り抜けることで特徴付けられる。その目的のため、本例ではSTIC膜(Sartorius,Goettingen,Germany)を、図1の指示した場所に組み込んだ。配列番号4のポリペプチドは膜に結合しないことが示され、したがって膜クロマトグラフィーが配列番号4のポリペプチドの精製のために好適であるという概念の証明が提供された。膜クロマトグラフィーを含む全体のプロセスにおける組み込みの説明のため、図1を参照されたい。
実施例2によるプロセスの再現性
プロセスの堅牢性を精査するため、プロセスを5回実施し、得られた分画をその収率および純度に関して解析した。これらの操作を通して、プロセスの詳細の着実な最適化を追求し、最終の最適化されたプロセスの詳細(図1を参照)が確立されるまで、緩衝液の組成、勾配、その他を選定した。結果は、実験室スケールでほぼ50~100mgの配列番号4のポリペプチドが1つの一貫した生産運転から得られることを示している。注目すべきことに、得られた産生物は、SDSアクリルアミドゲル電気泳動およびそれに続くクーマシー染色または銀染色によって、比較的純粋であることが一貫して見出された(夾雑する宿主細胞タンパク質は5%未満、切断されたNGFは微量のみ。データは示していない)。
配列番号4のポリペプチドの前駆体については、SE-HPLCの有意義な方法は確立できなかった。対照的に、配列番号4の成熟ポリペプチドのSE-HPLC分析は単純であり、配列番号4のポリペプチドのモノマー状態に適合するほぼ16kDaの均一な産生物ピークがもたらされた(データは示していない)。
まとめおよび結論
このプロセスのため、配列番号4のポリペプチドの再折り畳みされた前駆体を、SPセファロースFF(「FF」は速い流量、即ち比較的大きな粒子の固定相を意味する)を使用して捕捉し、続いてトリプシンで処理して成熟NGFを得た。この目的のため、再折り畳み反応のためのアルギニンの濃度を1M(先行技術で推奨された)から350mMに低下させた。
配列番号4の成熟ポリペプチドを得るための配列番号4のポリペプチドの前駆体のタンパク質分解切断の制御は、プロセスの最も重要な因子であると考えられる。本明細書では、一方では高い効率での切断を再現性良く促進し、NGFの分解産物の形成を防止する条件を特定した。本明細書における実験データは、かなり広い範囲の酵素/基質比にわたって明らかに堅固な生産プロセスを確立できることを示した。トリプシン処理については、ステップ収率は明らかに良好であり、プロセスのこの段階では顕著な損失は予想されない。得られる産生物パターンは、使用した反応条件(酵素/基質比およびインキュベーション時間(プロテアーゼへの曝露の時間)に関する)には明らかに強く依存しない。注目すべきことに、酵素の仕上げについて良好な収率が予想されても、xグラムの配列番号4の成熟ポリペプチドを送達するために、少なくとも2xグラムの配列番号4のポリペプチドを処理しなければならない。
本実施例による精製は、2つのクロマトグラフィー精製ステップのみからなる無駄のないプロセスである。現存する精製プロセスをさらに最適化し、スケールアップのためにいくつかの態様を採用した(図1参照)。例となる以前使用した細胞破壊法を高圧ホモジナイズによって置き換え、全ての透析ステップを接線流濾過によって置き換えることができた。このようにして確立したプロセスによって、配列番号4のポリペプチドを高純度で送達することができる。
名称を挙げた課題にも関わらず、全体のプロセスによって許容される品質の産生物を送達することができる。特に、このプロセスによって、ポリペプチドの分解物を実質的に含まない、特にポリペプチドのデスノナ変異体を実質的に含まない状態で、配列番号4のポリペプチドが得られる。即ち、このプロセスによって高純度でポリペプチドが得られる。
膜クロマトグラフィーを含む実施例2による改善を組み込んだ完全なプロセスを図式的に図1に示す。
実施例2は、工業的スケールでポリペプチドを生産するためにスケールアップすることができる。
[実施例3]
本発明による製剤の調製
実施例2に従って以前調製した配列番号4のポリペプチドを含む製剤を、Eng et al., 1997, Anal. Chem., vol. 69, p. 4184-4190による示唆を考慮して調製した。
特に、調製した製剤は以下の組成を有している。
2mg/mLの、実施例2に記載したようにして得られた配列番号4によるポリペプチド、
20mMの酢酸ナトリウム緩衝剤、
20mMのメチオニン、
pH5.5。
特に、酢酸塩はNGFおよびその誘導体をpH5.0~pH5.8のpH範囲で安定化させるために好適な緩衝剤であると考えられる。NGFおよびおそらく本発明によるポリペプチドも、メチオニン残基における酸化に敏感であるので、製剤中にメチオニンを含ませている。
以下の実施形態がとりわけ製剤の保存に有効である。
- 第1の実施形態:上記の製剤を-70℃で凍結保存し(データは示していない)、投与前に解凍することができる。
- 第2の実施形態:上記の製剤を冷蔵庫中、好ましくは+2~+8℃の温度範囲で保存することができる(データは示していない)。
- 第3の実施形態:上記の製剤を乾燥または凍結乾燥に供し、次いでたとえば室温で保存することができる(データは示していない)。これは投与前に再構成することができる。
上記の実施形態の全ては、ドライアイス出荷の使用、解凍および解凍後の再混合の必要性、その他を避けることができるので、たとえば-20℃で凍結することのある種の利点を提供する。そのような実施形態では、本発明による製剤は、特にたとえばオキセルベート(セネゲルミン)等の最新技術の医薬NGF製剤のある種の不便さを克服する。
[実施例4]
非ヒト哺乳動物における概念の証明
本実施例の目的は、非ヒト動物における眼科障害の処置および/または防止のための配列番号4のポリペプチドの有効性を検討することである。
本発明は部分的に、動物モデルによる実験に基づいている。
非ヒト動物への配列番号4のポリペプチドの投与の研究を本明細書で報告する。配列番号4のポリペプチドは、実施例1に記載した発現および実施例2に記載した精製によって高純度で得られる。これを実施例3に記載したように製剤化した。
材料および方法
視神経挫滅(PNC)モデル
ラット(Sprague Dawley、雄、180~200g、Charles River社、Italy)を、温度および湿度を制御した動物設備中で飼育した(12時間の暗/明サイクル、飼料および水への自由なアクセス)。行動実験は、静かな温度制御(20~22℃)された部屋で午前9時から午後5時まで、薬物処理の状態について知らされていないオペレーターが実施した。
視神経挫滅(ONC)を実施するため、ケタミンとキシラジンの混合物(それぞれ90mg/kgおよび3mg/kg、腹腔内、i.p.)でラットを麻酔し、眼の周囲における一時的な結膜の切開によって視神経にアクセスした。クロスアクションピンセットを用いて一定の一貫した力を加えることによって、視神経円板から1mmのところで10秒間、左視神経を挫滅させた。全ての手順は左眼について無菌条件下で実施した。ONCは左の実験眼で誘起し、右眼は内部対照とした。手順の前後に手術用顕微鏡で眼の基底部を観察し、網膜血流の一体性を評価した。
最初の実験設定では、ONCの後4、7、および14日目に網膜を切除し、網膜神経節細胞の免疫検出に供して網膜損傷の時間経過を評価した。手を付けず処置していない反対側の右眼を、ONCによって誘起された網膜神経節細胞の喪失の対照として使用した。網膜神経節細胞の集団のほぼ50%が存在していたので、配列番号4のポリペプチドの効果の当初の検討のための最適な時点としてONC後7日目を選択した。
臨床に移し換えることができる可能性がある実験の設定における配列番号4のポリペプチドの効果を検討するため、救助処置スケジュールに従って、ラットを硝子体内注射および点眼剤の適用の後の薬物処置に供した。
・媒体または配列番号4のポリペプチドによる処置:20、2、0.2μg/mlの溶液、体積2μlの硝子体内注射。傷害の後4日目に開始し、7日目まで続ける。
・媒体または配列番号4のポリペプチドによる処置:200μg/mlの溶液、体積25μlの点眼。傷害の後4日目に開始し、7日目まで続ける。1日1回、2回、または3回。
処置後、網膜を切除し、網膜神経節細胞の免疫検出に供して、網膜の損傷および配列番号4のポリペプチドによる様々な処置の効果を定量した。
免疫組織化学
切除した網膜をホルマリン中で24時間、後固定し、パラフィン包埋した。組織学的検査のため、いくつかのホルマリン固定パラフィン包埋切片(5μm)をヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)で染色した。他の切片は、キシレンと低下する量のエタノールとのシリーズ(100%、90%、および70%)中の逐次インキュベーションによって脱パラフィンおよび再水和した。切片を10mMのクエン酸緩衝液(pH6.0)中で5分間マイクロウェーブ処理することによって、抗原を回収した。切片を一次抗体(Brn3a、1:500およびRBPMS 1:500)と湿潤チャンバー中で1時間、インキュベートした。次いで切片を、前希釈したビオチン化抗マウス/ウサギIgG二次抗体またはビオチン化した抗モルモット二次抗体(1:200、#BA-7000、Vector Laboratories社、Burlingame,US)と室温で30分、およびアビジン-ビオチン複合体溶液(#PK-7200,Vectastain Elite ABC-HRP Kit,Vector Laboratories社、Burlingame,US)中、室温で30分、インキュベートした。次いで色素の発色反応のために切片をペルオキシダーゼ基質(#K3468,ImmPACT DAB,Vector Laboratories社、Burlingame,US)に4~6分間移し、蒸留水で濯いでマウンティングした。核はMayerのヘマトキシリンで対比染色した。組織を可視化し、光学顕微鏡Leica DM2500(Leica Microsystems社、Milan,Italy)を使用してデジタルイメージを捕捉した。
低倍率で免疫陽性細胞を選択した後、全細胞、Brn3a+細胞、およびRBPMS+細胞の定量を、高倍率視野(HPF,X400,Leica Microsystem社)における7・104μm2のボックスで行なった。各ラットについて、それぞれの眼ごとに3つの異なる切片を解析した。
データ(平均±SEM)は、一方向ANOVAおよびそれに続くBenferroni補正を用いるポストホック比較を用いて比較した。全ての解析についてGraphPad Prism(バージョン5.00、La Jolla,USA)を用い、P<0.05を統計的有意とみなした。
結果
ONC後4日目に媒体で開始した硝子体内処置に供したラットでは、モデルの設定の間に生成したデータと一致して、網膜神経節細胞の数の約60%の減少が観察された。3つの異なる用量レベル(20、2、0.2μg/mlの溶液、注射体積2μl)で硝子体内投与した配列番号4のポリペプチドは、網膜神経節細胞の損失に対して用量依存性の保護効果を発揮し、これは20μg/mlの溶液の硝子体内注射を受けたラットで統計的有意に達した。この群では、ONCに供した眼における網膜神経節細胞の数は、健康な反対側の眼と同様であった(図3)。
また、ONCおよび傷害後4日目に開始した媒体点眼処置に供したラットの群では、網膜神経節細胞の損失は、モデルの設定相および硝子体内注射後の配列番号4のポリペプチドの効果を評価する実験において定量されたものと重ね合わせ可能であった。3つの異なる処置スケジュール、即ち1日1回、2回、または3回を適用することによって、配列番号4のポリペプチドの点眼剤(200μg/ml)の救助処置効果を検討した。生成したデータは、有効性の傾向が1日1回および2回の投与の後でも明らかであるとしても、1日3回投与された200μg/mlの溶液の有意に高い生物活性を示す(図4)。
結論:視神経の損傷の4日後に与えられた配列番号4のポリペプチドの救助効果は、完全に予期しないものであり、RGCの損失が病因プロセスの一部である場合にはいつでも、この化合物が、傷害、虚血、炎症、代謝、または新生物の理由による視神経およびその他の網膜障害を有する患者の機能回復に有効であり得るという可能性を開くものである。
[実施例5]
マウスにおける眼への投与後の痛覚挙動および顔面異痛症の誘発における配列番号2のポリペプチドと配列番号4のポリペプチドとの比較
本実施例の目的は、非ヒト動物における眼科障害の処置および/または防止のための配列番号4のポリペプチドの有効性を検討することである。
本発明は部分的に、動物モデルによる実験に基づいている。
非ヒト動物への配列番号4のポリペプチドの投与の研究を本明細書で報告する。配列番号4のポリペプチドは、実施例1に記載した発現および実施例2に記載した精製によって高純度で得られる。これを実施例3に記載したように製剤化した。
本実施例の目的
1.本実施例は、眼窩下神経の圧縮(CION)のマウスモデルにおける点眼の後の、配列番号4のポリペプチドと、野生型ヒトNGF(配列番号2のポリペプチド)および野生型マウスNGF(mNGF)との発痛活性を比較することを目的としている。
2.NGFアナログ(配列番号4のポリペプチド)の効果を、配列番号2のポリペプチド、mNGF、および痛覚応答を惹起することが知られている刺激性参照化合物であるカプサイシンと比較して、点眼の後の急性痛覚応答を誘起する能力を測定することによって評価する。以下の用量を試験する。等張の食塩水(NaCl 0.9%)で希釈して0.5、1、5、および10μg/5μl/眼。カプサイシンは0.001~0.5nmol/5μl/眼で試験する。
3.次いで閾値以下の用量の様々な化合物を、眼窩下神経の圧縮(CION)モデルにおける点眼の後の痛覚応答を惹起する能力について試験する。
材料および方法
マウスNGF(マウスNGF、mNGF)
マウスNGFは高純度の天然マウスNGF2.5S(>95%)であり、Bocchini et al., 1969, Pro.c Natl. Acad. Sci. U S A, vol. 64, p. 787-794によって記載された方法に従ってマウスの顎下腺から抽出および精製によって得た。mNGFは、UniProt P01139のポリペプチド配列の残基129~241からなっている。
痛覚のインビボモデル
動物実験は、動物介護手順に関する欧州連合(EU)のガイドラインおよびEU指令2010/63/EUのイタリアの法律(DLgs26/2014)の適用に従って行なう。研究はUniversity of Florenceの研究許可#194/2015-PRの下で実施する。C57BL/6マウス(雄、25~30g、Envigo社、Milan,Italy)を痛覚試験に使用する。動物は、温度および湿度を制御した動物設備中で飼育する(12時間の暗/明サイクル、飼料および水への自由なアクセス)。行動実験は、静かな温度制御(20~22℃)された部屋で午前9時から午後5時まで、薬物処理の状態について知らされていないオペレーターが実施する。
眼窩下神経の圧縮(CION)
CIONは報告されたように(Vos et al., 1994, J. Neurosci., vol. 14, p. 2708-2723; Luiz et al., 2010, Neuropeptides, vol. 44, p. 87-92)、C57BL/6マウスで実施する。簡単に述べると、ケタミン(90mg/kg)とキシラジン(3mg/kg)の混合物の腹腔内(i.p.)注射によってマウスを麻酔し、鼻の側面の左上唇の皮膚に切開を作成し、次いで眼窩下神経の吻端を露出した。次いで、緩く締める2本の結紮糸(#6/0絹縫合糸)を2mmの距離で眼窩下神経の周囲に設ける。シャム手順では、左の眼窩下神経を露出するが結紮しない。硫酸ネオマイシンおよびスルファチアゾール(粉末、それぞれ0.05gおよび9.95g、Boehringer Ingelheim Italia S.p.A,Italy)を創傷に適用し、切開創を縫合する。マウスを追跡し、適切に水分補給し、麻酔から完全に回復するまで制御された温度(37℃)で維持する。全ての実験は手術後10日目に実施する。実験の終了時に、CO2および10~50%のO2の吸入によってマウスを安楽死させる。
マウスにおける眼拭いアッセイ
以前記載されたように(De Petrocellis et al., 2010, Pharmacol. Res., vol. 63, p. 294-299)、急性痛覚応答を誘起するために、試験化合物、即ち配列番号4のポリペプチド、配列番号2のポリペプチド、mNGF(全て0.5、1、5、および10μg/5μl/眼)およびカプサイシン(0.5nmol/5μl/眼)またはそれぞれの媒体(等張食塩水、0.9%のNaClおよび1%のジメチルスルホキシド、DMSO)の点眼(5μl)を使用する。マウスは個別にプレキシグラスチャンバーの中に収容し、刺激前20分、馴化する。薬物を眼に点滴した後の眼を拭う動作の回数を5分の期間について記録し、刺激の指標とみなす。
CIONまたはシャム手順の後10日目に、マウスに閾値以下の用量の配列番号2のポリペプチド、mNGF、および配列番号4のポリペプチド、またはカプサイシンの点眼(5μl/眼)を与え、痛覚応答を測定する。
結果
実施例の最初の部分では、点眼(5μl/滴/眼)によって投与した種々の用量(0.001~0.5nmol)のカプサイシンの、5分の期間における眼拭いの回数として測定した急性痛覚応答を誘起する能力について試験した。カプサイシンは、カプサイシンの点眼(0.001~0.5nmol/5μl/眼)の後で測定した眼拭い応答の増加によって実証されるように、用量依存性の痛覚応答を誘起した(図5)。
次に、様々な用量(0.001~5μg/5μl/眼)のマウスNGF(mNGF)、ヒトNGF(配列番号2のポリペプチド)、および配列番号4のポリペプチドを評価した。全ての化合物は、点眼の後の眼拭いの回数として測定した痛覚応答の用量依存性の増加を誘起した。配列番号2のポリペプチドの適用は、mNGFと比較して、またより重要なことに配列番号2のポリペプチドの変異形と比較した場合に、より強力な痛覚応答の誘起を示した(図6)。
次に、眼窩下神経の圧縮(CION)のモデルにおける閾値以下の用量の様々な化合物の効果を評価した。CIONモデルは、さらなる痛覚刺激への感作を誘起した(Trevisan et al., 2016, Brain, 139 (Pt 5), p.1361-1377)。
CIONまたはシャム手順の10日後、マウスに閾値以下の用量のカプサイシン(0.001nmol/5μl/眼)、mNGF(0.001nmol/5μl/眼)、配列番号2のポリペプチド(0.001nmol/5μl/眼)、および配列番号4のポリペプチド(0.001nmol/5μl/眼)の点眼剤を投与した。眼拭いによる痛覚応答を測定する。
データは、感作したモデル(CIONモデル)で、閾値以下の用量のカプサイシンによって生じた痛覚応答が、CION操作したマウスにおいてシャム操作したマウスよりも強い応答を誘発したことを示した(図7)。CION操作したマウスの眼にmNGFおよび配列番号2のポリペプチドを滴下した場合にも同じ結果が得られた。配列番号4のポリペプチドの点眼では、痛覚応答の増大を誘起することができなかった。
[実施例6]
ヒトにおける眼科障害を処置または防止するための使用
本実施例の目的は、ヒトにおける眼科障害の処置および/または防止のための配列番号4のポリペプチドの有効性をさらに支持することである。
ポリペプチドの好適な投薬量は、本明細書で与えるガイダンスに基づいて当業者によって決定することができる。
本発明者らは、特に局所投与のために、視神経傷害を有するラットにおいて効果的であることが見出された同じ濃度(点眼剤のため、200μg/mL、1日3回)をヒトにおいて使用することを期待している。結膜への投与が最も好ましい。

Claims (20)

  1. 哺乳動物対象における眼科障害の処置および/または防止における使用のための、配列番号3のポリペプチドおよび配列番号4のポリペプチドの中から選択されるポリペプチド。
  2. 前記哺乳動物対象がヒトである、請求項1に記載の使用のためのポリペプチド。
  3. 配列番号4のポリペプチドである、請求項1または2に記載の使用のためのポリペプチド。
  4. 眼に投与するための、請求項1から3のいずれか一項に記載の使用のためのポリペプチド。
  5. 前記投与が眼への局所投与および硝子体内投与からなる群から選択され、局所投与が好ましい、請求項4に記載のポリペプチド。
  6. 繰り返して投与される、請求項1から5のいずれか一項に記載の使用のためのポリペプチド。
  7. 少なくとも1日3回、繰り返して投与される、請求項6に記載の使用のためのポリペプチド。
  8. 3~30日、好ましくは7~14日の期間、繰り返して投与される、請求項6または7に記載の使用のためのポリペプチド。
  9. 前記眼科障害が視神経の損傷および/または障害を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の使用のためのポリペプチド。
  10. 前記眼科障害が網膜神経節細胞の障害によって特徴付けられる、請求項9に記載の使用のためのポリペプチド。
  11. 視神経の損傷に続いて投与される、請求項1から10のいずれか一項に記載の使用のためのポリペプチド。
  12. 視神経の損傷の誘起の少なくとも4日後に投与される、請求項11に記載の使用のためのポリペプチド。
  13. 前記眼科障害が、緑内障、神経栄養性角膜炎、視神経炎、視神経委縮、視神経頭ドルーゼン、および視覚経路神経膠腫からなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の使用のためのポリペプチド。
  14. 用量/各用量が1眼あたり0.3~30μgのポリペプチド、より好ましくは1眼あたり1~10μgのポリペプチド、最も好ましくは1眼あたり5μgのポリペプチドの量を有する、請求項1から13のいずれか一項に記載の使用のためのポリペプチド。
  15. 前記処置および/または防止が、前記哺乳動物対象に痛覚過敏症を惹起しない、請求項1から14のいずれか一項に記載の使用のためのポリペプチド。
  16. 前記ポリペプチドが水性媒体中に含まれ、前記水性媒体が前記哺乳動物対象に投与される、請求項1から15のいずれか一項に記載の使用のためのポリペプチド。
  17. 以下の
    a)0.2~20mg/mlの前記ポリペプチド(好ましくは2mg/ml)、
    b)5~100mMの酢酸ナトリウム緩衝剤(好ましくは20mM)、
    c)5~100mMのメチオニン(好ましくは20mM)、
    d)5.0~6.0のpH(好ましくはpH5.5)
    を含む組成物中に含まれる、請求項16に記載の使用のためのポリペプチド。
  18. 前記ポリペプチドの分解物を実質的に含まず、特に前記ポリペプチドのデスノナ変異体を実質的に含まない、請求項1から17のいずれか一項に記載の使用のためのポリペプチド。
  19. 前記ポリペプチドが組み換え発現および精製によって得られ、前記精製が混合モード固定相上での精製を含む、請求項1から18のいずれか一項に記載の使用のためのポリペプチ
  20. 配列番号3のポリペプチドおよび配列番号4のポリペプチドの中から選択されるポリペプチドを含む組成物であって、pH5.0~6.0のpH(好ましくはpH5.5)によって特徴付けられ、以下の
    a)0.2~20mg/mlの前記ポリペプチド(好ましくは2mg/ml)、
    b)5~100mMの酢酸ナトリウム緩衝剤(好ましくは20mM)、
    c)5~100mMのメチオニン(好ましくは20mM)
    を含む、組成物。
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