3. 1.心臓生理学
心収縮期における正常な心臓Hの左心室LVが、図1に例示されている。左心室LVは、収縮しており、血液は、矢印の方向で三尖(大動脈)弁AVを通って外向きに流れる。僧帽弁は、左心室内の圧力が左心房LA内の圧力よりも高い場合還流を防止する「逆止弁」として構成されていることから、僧帽弁MVを通した血液の還流つまり「逆流」は防止される。僧帽弁MVは、図1に例示されているように、均等に合わさって閉じる自由縁部FEを有する一対の弁尖を含む。弁尖LFの相対する端部は、弁輪ANと呼ばれる環状領域に沿って周囲の心臓構造に取り付けられる。弁尖LFの自由縁部FEは、各々の弁尖LFの下部表面全体にわたって固定された複数の分岐腱を含む腱索CT(以下腱索と呼ぶ)を通して左心室LVの下部部分に固定されている。腱索CTはそれ自体、左心室及び心室中隔IVSの下部部分から上向きに延在する乳頭筋PMに取り付けられている。
心臓内の多くの構造的欠陥が、僧帽弁逆流症をひき起こし得る。逆流は、弁尖が適正に閉鎖せず心室から心房への漏出を可能にする場合に発生する。図2Aに示されているように、前尖及び後尖の自由縁部は通常、接合ラインCに沿って遭遇する。逆流をひき起こす欠陥の一例が図2Bに示されている。ここでは、心臓の拡大によって、僧帽弁輪が拡大した状態になり、心収縮期中に自由縁部FEが遭遇できなくなる。その結果、心室収縮期中に弁を通して血液が漏出できるようにする間隙Gがもたらされる。破断又は伸長した腱索は同様に、腱索を介して不適切な張力が弁尖に伝達されるために、弁尖の脱出もひき起こし得る。他の弁尖は正常な外形を維持している一方で、2つの弁尖が適切に遭遇せず、左心室から左心房への漏れが発生することになる。このような逆流は同様に、適正な閉鎖をもたらすのに充分な程度に左心室が収縮しない虚血性心疾患を患う患者においても発生する可能性がある。
4. 2.総合的概観
本開示対象の主題の態様は、心臓弁逆流、特に僧帽弁逆流症を治療する目的で弁尖などの組織を把持し、これを近置し、定着させるための方法及び装置を提供する。本開示対象の主題の態様は同様に、特に腱索CTなどの解剖学的特徴によって取外しが妨げられる可能性のある部域内で、所望される場合に装置の再位置付け及び取外しを可能にする特徴も提供する。このような取外しにより、外科医は、所望される場合に新しい方法で弁に再度のアプローチが可能になると考えられる。
把持は好ましくは非外傷性であり、多くのメリットを提供する。非外傷性とは、本開示対象の主題の装置及び方法が、弁尖の構造又は機能にいかなる有意な臨床的障害もひき起こすことなく、弁尖に適用されその後取外され得ることを意味する。弁尖及び弁は、本開示対象の主題の適用前と実質的に同じように機能し続ける。したがって、本開示対象の主題を使用して弁尖の一定のわずかな侵入又はへこみが発生してもなお、「非外傷性」の定義を満たし得る。このため、本開示対象の主題の装置は、弁の機能に負の影響を及ぼすことなく、罹患した弁に適用し、所望される場合には、取外し又は再位置付けすることができる。さらにいくつかの事例においては、把持、固定又はその両方の間に弁尖に孔を開けるか又は他の形で恒久的に影響を与えることが必要であるか又は望ましい場合があることが理解される。これらの事例のいくつかにおいては、把持及び固定を単一の装置によって達成し得る。これらの結果を達成するために多くの実施形態が提供されるものの、本明細書では、基本的特徴の総合的概観が提示される。このような特徴は、本開示対象の主題の範囲を限定するように意図されておらず、本出願中で後述する個別の実施形態の説明のための基礎を提供する目的で提示されている。
本開示対象の主題の装置及び方法は、所望される治療部位の近くに位置付けされ標的組織を把持するために使用される介入ツールの使用を利用する。血管内利用分野において、介入ツールは典型的には介入カテーテルである。外科的利用分野では、介入ツールは典型的には介入器具である。好ましい実施形態においては、把持された組織の固定は、インプラントとして残される介入ツールの一部分で把持を維持することにより達成される。本開示対象の主題は、身体全体にわたる組織近置及び固定のためのさまざまな利用分野を有するものの、弁、特に心臓弁、例えば僧帽弁の修復のために極めて適している。図3Aを参照すると、シャフト12などの送達装置及び固定装置14を有する介入ツール10が、心房側から僧帽弁MVに接近し弁尖LFを把持した状態で例示されている。上述のように、僧帽弁は、外科的に又は血管内技術を使用することによって、かつ、心室を通る逆行性アプローチによってか又は心房を通る順行性アプローチによってアクセス可能である。例示を目的として、順行性アプローチが説明される。
固定装置14は、その遠位端部で介入ツール10のシャフト12に対し解放可能に取付けられる。本明細書中で本開示対象の主題の装置を説明する場合、「近位」とは、患者の体外でユーザにより操作されるべき装置の端部に向かう方向を意味するものとし、「遠位」とは、ユーザから離れて、治療部位に位置付けされている装置の作業端部に向かう方向を意味するものとする。僧帽弁に関しては、近位は弁尖の心房側又は上流側を意味し、遠位は弁尖の心室側又は下流側を意味するものとする。
固定装置14は概して、近位要素16(又は把持要素;ここで本明細書中、「近位要素」及び「把持要素」は互換的に使用される)及び遠位要素18(又は固定要素;ここで本明細書中、「遠位要素」及び「固定要素」は互換的に使用される)を含み、これらは、半径方向外向きに突出し、その間に弁尖を捕捉し保定する目的で図示されている通りに弁尖LFの相対する側に位置付け可能である。近位要素16は好ましくは、コバルトクロム、ニチノール又はステンレス鋼で構成され、遠位要素18は好ましくは、コバルトクロム又はステンレス鋼で構成されるが、好適な任意の材料を使用してよい。固定装置14は、結合構造17によってシャフト12に結合可能である。結合構造17は、固定装置14を離脱させ、インプラントとして残留させて、弁尖を接合位置に共に保持することを可能にする。
いくつかの状況において、弁尖LFを捕捉するために近位要素16、遠位要素18又はその両方が展開された後、固定装置14を再位置付け又は取外すことが望まれる場合がある。このような再位置付け又は取外しは、幾つか例を挙げると、より良い弁機能を達成しようとして弁に再接近するため、弁尖上での装置14のさらに最適な位置付けのため、弁尖上のより良い足掛りのため、腱索などの周囲組織から装置14をほどくため、装置14を異なる設計を有する装置と交換するため、又は固定手技を中断するため、といったさまざまな理由から所望される可能性がある。固定装置14の再位置付け又は取外しを容易にするため、遠位要素18は、解放可能であり、腱索、弁尖又は他の組織に絡んだり、これらに干渉したり又は損傷を加えたりすることなく弁から装置14を引抜くのに好適な構成へと任意に反転可能である。図3Bは、遠位要素18が反転位置まで矢印40の方向に可動である反転を例示している。同様にして、近位要素16は、所望される場合には、上昇させることができる。反転位置において、装置14は、所望の配向へと再位置付けされ得、ここで遠位要素はこのとき、図3Aにあるように、弁尖に対抗して把持位置まで復帰し得る。代替的には、固定装置14は、図3Cに示されている通り、弁尖から引抜かれ得る(矢印42で示す)。このような反転は弁尖に対する外傷を低減し、周囲組織との装置の絡み合いをことごとく最小限に抑える。装置14が弁尖を通ってひとたび引抜かれたならば、身体からの取外し又は僧帽弁を通した再挿入に好適な閉鎖位置又は構成まで、近位要素及び遠位要素を移動させることができる。
図4は、弁尖LFとの関係における所望の配向での固定装置14の位置を例示する。これは、心房側からの僧帽弁MVの短軸図であり、したがって、近位要素16は実線で示され、遠位要素18は破線で示されている。近位要素及び遠位要素16、18は、接合ラインCに実質的に直交するように位置付けされている。装置14は、おおよそ接合ラインに沿って逆流場所まで移動させられ得る。弁尖LFは、図4に示されているように、心臓拡張期中、弁尖LFが拡張期勾配の結果としてもたらされる開口部Oにより取囲まれて要素16、18間で所定の位置にとどまるように、所定の場所で保持される。有利にも、弁尖LFは、その近位又は上流側表面が僧帽弁MVを通る血流の方向に平行に垂直配向で互いに対面しているような形で接合される。上流側表面は、互いに接触するように合わされてもよいし、あるいは、わずかに離して保持されてもよいが、好ましくは、上流側表面が接合点において互いに対面する垂直配向に維持される。これは、標準的な外科的ボウタイ修復のダブルオリフィス幾何形状をシミュレートするものである。カラードプラーエコーにより、弁の逆流が低減されたか否が示される。結果としての僧帽弁フローパターンが満足のいくものである場合、弁尖はこの配向で共に固定され得る。結果としてのカラードプラー画像により、僧帽弁逆流症の改善が不充分であることが示された場合、介入ツール10が再位置付けされる。これは、弁尖LFが所定の場所に保持されている最適な結果が生成されるまで反復され得る。
弁尖がひとたび所望の配置で接合されたならば、そのとき固定装置14をシャフト12から離脱させて、弁尖を接合位置で共に保持するためインプラントとして残留させる。先に言及した通り、固定装置14は、結合構造17によってシャフト12に結合される。図5A~5B、6A~6Bは、このような結合構造の例示的実施形態を示している。図5Aは、連接ライン又は噛合表面24において組み合わせられる上部シャフト20及び離脱可能な下部シャフト22を示す。噛合表面24は、組み合わせ及び後の離脱を可能にする又は容易にする任意の形状又は湾曲を有していてよい。ぴったりフィットする外側シース26がシャフト20、22上に位置付けされて、図示されているように噛合表面24を被覆する。図5Bは、上部シャフト20からの下部シャフト22の離脱を例示している。これは、噛合表面24が露出されてシャフト20、22が分離し得るように、外側シース26を引っ込めることによって達成される。
同様にして、図6Aは、噛合表面32においてインターロックされている管状上部シャフト28及び離脱可能な管状下部シャフト30を例示する。ここでもまた、噛合表面32は、インターロック及び後の離脱を可能にする又は容易にする任意の形状又は湾曲を有していてよい。管状上部シャフト28及び管状下部シャフト30は、軸方向チャネルを有する外側部材を形成する。管状シャフト28、30を通して、ぴったりフィットするロッド34又は内側部材が挿入されて、図示されているように噛合表面32を架橋する。以下で説明する図26中にみられるアクチュエータロッド64又は図28A~28Bに例示されているアクチュエータロッド64aなど、固定装置を作動するためにロッド34を使用してもよい。図6Bは、上部シャフト28からの下部シャフト30の離脱を例示している。これは、噛合表面32の上方の位置までロッド34を引っ込めることによって達成され、こうして今度はシャフト28、30が離隔可能になる。結合構造の他の例は、全ての目的のために参照によりそれぞれの全ての内容が本明細書に組込まれている、米国特許第6,752,813号及び米国特許出願公開第2009/0163934号中に記載され例示されている。
好ましい実施形態において、噛合表面24(又は噛合表面32)は、それぞれ下部シャフト22(又は下部シャフト30)上の対応する雌及び雄要素とインターロックする上部シャフト20(又は上部シャフト28)上の雄要素及び雌要素を画定するS字形湾曲部である。典型的には、下部シャフトは、固定装置14の結合メカニズム17である。したがって、選択された噛合表面の形状は好ましくは、結合メカニズム17を通じて、固定装置14に対する圧縮力及び張力の印加を容易にし、それでもなお、固定装置14を上部シャフトから解放しなければならない場合に最小限の干渉しか引き起こさないようにするため、メカニズム19の軸方軸に対して横断方向の少なくともいくつかの噛合表面を提供する。
5.固定装置
A.固定装置の導入及び設置
固定装置14は、送達装置を使用して、弁又は所望される組織に対して送達される。送達装置は、利用分野に応じて剛性か又は可撓性であり得る。血管内での利用分野については、送達装置は、後のセクションで説明する可撓性送達カテーテルを含む。しかしながら典型的には、このようなカテーテルは、近位端部と遠位端部を有するシャフト、及びその遠位端部に対して解放可能に取付けられた固定装置を含む。シャフトは通常細長く可撓性で、血管内導入に好適である。代替的には、送達装置は、心臓壁を貫通する経胸腔外科用の導入用に使用され得る、より短く且つより可撓性の低い介入器具を含み得るが、概して、幾分かの可撓性及び最小限の外形が望ましい。固定装置は、図3Aに例示されている送達装置と解放可能に結合可能である。固定装置は、さまざまな形態を有することができ、そのいくつかの実施形態が本明細書中で説明される。
図7は、固定装置14の別の実施形態を例示する。ここでは、固定装置14は、介入ツール10を形成するためにシャフト12に結合された状態で示されている。固定装置14は結合部材19及び一対の相対する遠位要素18を含む。遠位要素18は、細長いアーム53を含み、各アームは、結合部材19に対して回転連結された近位端部52及び自由端部54を有する。自由端部54は、周囲の組織構造との干渉及びこれらに対する外傷を最小限に抑えるため、丸味のある形状を有する。好ましくは、各自由端部54は、2本の軸を中心とした湾曲を画定し、この軸のうち一方は、アーム53の長手方向軸に直交する軸66である。したがって、係合表面50は、弁尖を把持し保持するのを支援するため、組織と接触する表面部域に対してカップ状の又は凹状の形状を有する。これによりさらに、アーム53を、閉鎖位置においてシャフト12の周りに入れ子にして、装置の外形を最小限に抑えることが可能になる。好ましくは、アーム53は、その長手方向軸66の周りで内向きに少なくとも部分的にカップ状になっているか又は湾曲している。同様に、好ましくは、各々の自由端部54は、軸66又はアーム53の長手方向軸に直交する軸67を中心とした湾曲を画定する。この湾曲は、自由端部54の最遠位部分に沿った背向湾曲である。同様に、自由端部54の長手方向縁部は、外向きに広がっていてよい。背向湾曲及び広がりの両方が、それと係合した組織に対する外傷を最小限に抑える。
僧帽弁の修復に好適な好ましい実施形態において、係合表面50を横断する横方向幅(係合された組織の幅を決定する幅)は、少なくとも約2mm、通常は3~10mm、そして好ましくは約4~6mmである。いくつかの状況においては、より幅広い係合が望まれ、この場合、係合表面50は例えば2cmとさらに大きく、あるいは互いに隣接して多数の固定装置が使用される。アーム53及び係合表面50は、アーム53の長手方向軸に沿って約4~10mm、好ましくは約6~8mmの組織長さを係合させるように構成されている。アーム53はさらに、グリップを増強し移植後の組織内殖を促進するために複数の開口部を含む。
弁尖は、遠位要素18と近位要素16の間に把持される。いくつかの実施形態において、近位要素16は可撓性、弾力性を有し、結合部材19から片持ちになっている。近位要素は好ましくは、遠位要素に向かって弾力的に付勢される。各近位要素16は、組織が全く存在しない場合、遠位要素18の凹面内部で少なくとも部分的に陥凹するように整形され位置付けされる。固定装置14が開放位置にある場合、近位要素16は、図7に例示されているように、各近位要素16がアーム53の近位端部52近くで係合表面50から離隔されかつ、近位要素の自由端部が係合表面50と接触している状態で自由端部54の近くで係合表面50に向って勾配を有するように整形される。近位要素16のこの形状は、可変的な厚みの弁尖又は他の組織に適合する。
近位要素16は、組織上のグリップを増大させるため、複数の開口部63及び波打ち状の側縁部61を含む。近位要素16は任意には、弁尖の把持及び/又は保持を支援するため、摩擦付属物、摩擦特徴部又はグリップ増強用要素を含む。好ましい実施形態において、摩擦付属物は、係合表面50に向かって延在する先細の鋭い先端部を有するかえし60を含む。プロング、巻線、バンド、かえし、溝、チャネル、ボス、表面粗化、焼結、高摩擦パッド、被覆、コーティング、又はこれらの組合せなど、任意の好適な摩擦の付属物を使用できるということが理解されよう。任意には、近位要素及び/又は遠位要素の中には磁石が存在してもよい。磁力による引き付けを起こすため、噛合表面は反対の磁極の材料で作られるか又はこれを含むことになる、ということが理解されよう。例えば、近位要素及び遠位要素は各々、組織のより急速な治癒及び内殖を容易にするべく近位要素と遠位要素の間に組織が恒常な圧縮下で保持されるように、反対の磁極の磁気材料を含むことができる。同様に、遠位要素に向かって近位要素を付勢すること加えて又はその代りに、磁力を用いて遠位要素18に向かって近位要素16を引き付けることもできる。これは、近位要素16の展開を支援することができる。別の例においては、遠位要素18は各々、遠位要素18の間に位置付けされた組織が磁力によってその間に保持されるように、反対の磁極の磁気材料を含む。近位要素の作動は同様に、以下で説明されるものなどの1つ以上の近位要素ライン又はアクチュエータを用いて達成され得る。
近位要素16は、以下で説明するように、移植後のグリップ及び組織内殖を増強させるため、織物又は可撓性材料で被覆され得る。好ましくは、織物又は被覆がかえし又は他の摩擦特徴部と組み合わせて使用される場合、このような特徴部は、このような織物又は他の被覆から突出して、近位要素16が係合する別の組織と接触する。
例示的実施形態において、近位要素16は、開口部63、波打ち状縁部61及びかえし60を創出するスタンピング作業を用いて、ばね様材料の金属シートから形成される。代替的には、近位要素16は、ばね様材料で構成され得、あるいは生体適合性ポリマーから成形され得る。本開示対象の主題において使用され得るいくつかのタイプの摩擦付属物は、それが係合させる組織を恒久的に改変するか又はこの組織に幾分かの外傷をひき起こす可能性があるものの、好ましい実施形態においては、摩擦付属物は非外傷性であり、臨床的に有意な形で組織に損傷を加えたり又は他の影響を及ぼしたりするものではない、ということを指摘しておかなければならない。例えば、かえし60の場合、固定装置14による僧帽弁尖の係合の後、装置が後続する手技の間に取出される場合に、かえし60は、弁尖組織の有意な恒常的瘢痕化又は他の機能障害を全く残さず、したがって非外傷性とみなされるということが実証されている。
固定装置14は同様に、起動装置58も含んでいる。この実施形態において、起動装置58は2つのリンク部材又は脚部68を含み、各脚部68は、リベット継手76において遠位要素18の1つと回転可能な形で連接される第1の端部70及びスタッド74で回転可能な形で連接される第2の端部72を有している。脚部68は、好ましくは剛性又は半剛性金属又はポリマー、例えばElgiloy(登録商標)、コバルトクロム又はステンレス鋼で構成されているが、好適な任意の材料が使用されてよい。例示された実施形態においては、両方の脚部68が、単一のリベット78によってスタッド74にピン連接されているものの、各々の脚部68を別個のリベット又はピンによってスタッド74に個別に取付けてよい、ということが認識され得る。スタッド74は、アクチュエータロッド64(図示せず)と連接可能であり、このアクチュエータロッドはシャフト12を通って延在し、スタッド74、ひいては閉鎖、開放及び反転位置の間で遠位要素18を回転させる脚部68を移動させるべく軸方向に拡張可能かつ引込め可能である。同様に、スタッド74を不動化させることにより、脚部68は所定の場所に保持され、したがって、遠位要素18は所望の位置に保持される。スタッド74は、同様に、以下のセクションでさらに説明される係止用特徴部によって所定の場所に係止されてもよい。
本明細書中で開示されている固定装置14の実施形態のいずれにおいても、弁尖の開閉と共に遠位要素18及び/又は近位要素16が移動又は屈曲できるようにするため閉鎖位置でこれらの要素内に幾分かの可動性又は可撓性を付与することが望ましい可能性がある。これにより、衝撃吸収性が与えられ、これにより、弁尖上への力が低減され、弁尖の引裂又はさらなる外傷の可能性は最小限に抑えられる。このような可動性又は可撓性は、遠位要素18を構築するために適切な厚みの可撓性及び弾力性ある金属又はポリマーを使用することによって付与され得る。同様に、(以下で説明される)固定装置の係止構造は、係止された場合でも近位要素及び遠位要素の一定のわずかな動作を可能にするように可撓性材料で構築され得る。さらに、遠位要素18を閉鎖位置に(内向きに)付勢するものの弁尖が及ぼす力に応答してアームがわずかに開放できるようにするメカニズムによって、遠位要素18は、結合装置19又は起動装置58に連結可能である。例えば、単一の点でピン連接されるのではなくむしろ、これらの構成要素は、アームに対抗する力に応答してピンのわずかな並進運動を可能にしたスロットを通してピン連接され得る。ピン連接された構成要素をスロットの一端部に向かって付勢するためにばねが使用される。
図8A~8B、9A~9B、10A~10B、11A~11B及び図12~14は、治療手技を行なうために身体内部に装置14を導入し設置する際の考えられるさまざまな位置における図7の固定装置14の実施形態を例示している。図8Aは、カテーテル86を通って送達される介入ツール10の一実施形態を例示する。介入ツール10はカテーテルの形をとることができ、同様にしてカテーテル86はガイドカテーテル又はシースの形をとることができる、ということが理解されよう。しかしながら、この例においては、介入ツール10及びカテーテル86なる用語が使用される。介入ツール10は、シャフト12に結合された固定装置14を含み、固定装置14は閉鎖位置で示されている。図8Bは、図8Aの固定装置の類似の実施形態をより大きな図で例示する。閉鎖位置において、遠位要素18の相対する対は、係合表面50が互いに面するように位置付けされている。各々の遠位要素18は、アーム53が共にシャフト12を取り囲み、任意にはシャフトの反対の側で互いに接触するような形でカップ状の又は凹状の形状を有する細長いアーム53を含む。こうして、カテーテル86を通して及び僧帽弁などのあらゆる解剖学的構造を通して容易に通過可能である固定装置14の低い外形が提供される。その上、図8Bはさらに起動装置58を含む。この実施形態において、起動装置58は、各々ベース69に対して可動な形で結合されている2本の脚部68を含む。ベース69は、シャフト12を通って延在し固定装置14を操作するために使用されるアクチュエータロッド64と連接されている。いくつかの実施形態において、アクチュエータロッド64は、起動装置58、詳細にはベース69に直接取付けられる。しかしながらアクチュエータロッド64は、代替的には、それ自体ベース69に取付けられているスタッド74に取付けられてよい。いくつかの実施形態において、スタッド74には、アクチュエータロッド64がねじタイプの作用によりスタッド74に取付けられるようにねじ山が付いている。しかしながら、ロッド64及びスタッド74は、固定装置14をシャフト12から離脱させることができるように解放可能である任意の構造によって接合され得る。アクチュエータロッド及び固定装置とアクチュエータロッドの結合の他の態様が、以下で開示される。
図9A~9Bは、開放位置にある固定装置14を例示している。開放位置において、遠位要素18は、係合表面50が第1の方向に面するように回転させられる。アクチュエータロッド64の作用による結合部材19に対するスタッド74の遠位前進が、遠位要素18に力を加え、遠位要素はこの方向における動作が自由であることから継手76の周りを回転し始める。遠位要素18の半径方向外向きでのこのような回転及び運動は、継手80の周りの脚部68の回転をひき起こし、これにより脚部68は直接わずかに外向きに向けられる。スタッド74は、遠位要素18の所望の離隔に対応する任意の所望の距離まで前進させられてよい。開放位置において、係合表面50は、シャフト12に対して鋭角で配置され、好ましくは互いとの関係において90~180°の角度にある。一実施形態においては、開放位置で、アーム53の自由端部54は、両端部間で、約10~20mm、通常は約12~18mm、そして好ましくは約14~16mmのスパンを有する。
近位要素16は典型的に、アーム53に向かって外向きに付勢されている。近位要素16は、シャフト12に向かって内向きに移動させられ、縫合糸、ワイヤ、ニチノールワイヤ、ロッド、ケーブル、ポリマーの糸又は他の好適な構造の形状にすることができる近位要素ライン90を用いて、シャフト12に接して保持されてよい。さまざまな形で近位要素ライン90を縫通させることによって、近位要素ライン90は、近位要素16と連結されてよい。図9Aに示されているように近位要素16がループ形状を有する場合、ライン90はループを通過し、折り返すことができる。図9Bに示されているように、近位要素16が細長い中実形状を有する場合、ライン90を、要素16内の開口部63の1つ以上に通してもよい。さらに、同じく図9Bに例示されているラインループ48が、近位要素16上に存在し、この中を近位要素ライン90が通り折り返してもよい。このようなラインループ48は、近位要素ライン90上の摩擦を低減するために、又は近位要素16が中実であるか又は近位要素ライン90が中を通って取付けられ得る他のループ又は開口部を備えていない場合に、有用であり得る。近位要素ライン90は、単一のライン90を折返し無く近位要素16に取付けることを可能にし、かつ所望される場合には近位要素16から直接的に単一のライン90を離脱させることを可能にする離脱可能な手段によって、近位要素16に対し取付け可能である。このような離脱可能な手段の例としては、幾つか例を挙げると、フック、スネア、クリップ又は破断可能な継手が含まれる。近位要素ライン90に対して充分な張力を加えることにより、離脱可能な手段を、例えば継手の破断によって近位要素16から離脱させることができる。離脱用の他の装置も使用可能である。同様にして、係止ライン92を類似の離脱可能な手段により、係止構造に着脱することができる。
開放位置において、固定装置14は、近置又は治療すべき組織を係合させることができる。図7~9Bに例示された実施形態は、左心房からの順行性アプローチを用いた、僧帽弁の修復のために適応されている。介入ツール10は、左心房から左心室まで僧帽弁を通って前進させられる。遠位要素18は、接合ラインに直交するように配向され、その後、係合表面50が弁尖の心室表面と接触して弁尖を把持するように位置される。近位要素16は、弁尖が近位要素と遠位要素の間に存在するように弁尖の心房側にとどまる。この実施形態において、近位要素16は、遠位要素18に向けられたかえし60などの摩擦付属物を有する。しかしながら、近位要素16もかえし60もこの時点で弁尖と接触していない。
介入ツール10は、弁尖が所望される場所で適正に接触又は把持されるように固定装置14を再度位置付けするために繰返し操作可能である。再位置付けは、固定装置を開放位置にした状態で達成される。いくつかの事例においては、装置14が開放位置にある状態で逆流をチェックすることもできる。逆流が充分に減少していない場合、装置を再度位置付けし、所望の結果が達成されるまで、逆流を再びチェックすることができる。
固定装置14の再位置付け又は取外しを補助するために、固定装置14を反転させることが所望される場合もある。図10A~10Bは、反転位置にある固定装置14を例示する。結合部材19に対してスタッド74をさらに前進させることにより、遠位要素18は、各アーム53がシャフト12に対して鈍角を形成している状態で、係合表面50が外向きに面し自由端部54が遠位を向くようにさらに回転させられる。アーム53間の角度は好ましくは約270~360°の範囲内にある。スタッド74をさらに前進させると、継手76の周りで遠位要素18が回転させられる。半径方向外向きの遠位要素18のこの回転及び運動は、脚部68が概して互いに平行であるその初期位置に向かって戻されるように継手80を中心として脚部68を回転させることになる。スタッド74を、遠位要素18の所望される反転に対応した任意の所望の距離まで前進させることができる。好ましくは、完全に反転した位置で、自由端部54の両端間のスパンは、約20mm以下、通常は約16mm未満、そして好ましくは約12~14mmである。この例示において、近位要素16は、近位要素ライン90上に張力を加えることによって、シャフト12に接して位置付けされた状態にとどまる。こうして、再位置付けのための比較的大きな空間が要素16、18間に創出され得る。さらに、反転位置は、弁尖に対する外傷を最小限に抑えながら弁を通した固定装置14の引抜きを可能にする。係合表面50が、固定装置を近位に引込めるにつれて組織を変形させるための非外傷性表面を与える。さらに、かえし60には遠位方向に(近位要素16の自由端部から離れるように)わずかに角度が付いており、こうして固定装置が引抜かれている間にかえし60が組織を捕まえるか又は引き裂くリスクが低減されるという点も指摘しておかなければならない。
固定装置14がひとたび弁尖に接して所望の場所に位置付けされたならば、弁尖は次に、近位要素16と遠位要素18の間に捕捉され得る。図11A~11Bは、このような位置における固定装置14を例示する。ここでは、近位要素16は、弁尖を間に保持するように係合表面50に向かって下降させられる。図11Bにおいて、近位要素16は、弁尖の非外傷性グリップを設けるために使用可能であるかえしを含むものとして示されている。代替的には、弁尖に孔を開けてそれらを所定の場所に保持するのをより積極的に支援するために、より大きく、より鋭利に尖ったかえし60又は他の貫入構造を使用することができる。この位置は、図9A~9Bの開放位置と類似しているが、近位要素16はここでは、その間において弁尖組織を圧縮するために近位要素ライン90上の張力を解放することによってアーム53に向かって下降させられる。逆流が充分に低減されていない場合には、任意の時点で近位要素16を上昇させ遠位要素18を調整するか反転させて固定装置14を再度位置付けすることができる。
所望の配置において弁尖が近位要素と遠位要素16、18の間に捕捉された後、遠位要素18は、弁尖をこの位置に保持するために係止され得、あるいは、固定装置14を閉鎖位置に又は閉鎖位置に向かって戻すことができる。このような係止については、後のセクションにおいて説明される。図12は、弁尖(図示せず)が捕捉され接合された閉鎖位置にある固定装置14を例示する。これは、結合部材19に対して近位でスタッド74を引込めることによって達成され、こうして起動装置58の脚部68が遠位要素18に対して上向きの力を加え、今度は遠位要素18が回転させられて係合表面50が再び互いに面することになる。遠位要素18に向かって外向きに付勢される解放された近位要素16は、遠位要素18により同時に内向きに付勢される。このとき、固定装置14は、以下で説明するようにこの閉鎖位置に弁尖を保持するように係止され得る。
図13に示されているように、固定装置14は次にシャフト12から解放され得る。言及された通り、固定装置14は、結合部材19(図17を見ると最も良く分かる)によってシャフト12に対し解放可能に結合可能である。図13は、固定装置14の結合部材19が取付けられるシャフト12の一部分である結合構造を例示する。図示されている通り、近位要素ライン90は、シャフト12からの離脱の後、近位要素16に取付けられた状態にとどまって、固定装置14をカテーテル86と連結された状態に保つためのテザーとして機能することができる。任意には、近位要素ライン90が取出されている間、明確にこの目的のために、シャフト12と固定装置14の間に結合された別個のテザーを使用することが可能である。いずれの場合においても、弁尖又は組織の修復を、心エコー検査法などの非侵襲性の視覚化技術によって観察して、所望の成果を保証することができる。修復を所望しない場合、結合部材19をシャフト12と再連結するためにテザー又は近位要素ライン90を用いて固定装置14を回収することができる。
例示的実施形態においては、近位要素ライン90は、シャフト12を通って延在し、近位要素16を通ってループにされ、シャフト12を通ってその近位端部に戻るように延在する、細長い可撓性の撚糸、ワイヤ、ケーブル、縫合糸又はラインである。離脱が所望される場合、各ラインの一方の端部は、シャフト12の近位端部で解放し、他方の端部を引っ張って、シャフト12を通って遠位でかつ近位要素16を通ってラインの自由端部を引き込み、こうして固定装置を解放することができる。例えば、図15Iに関して本明細書中で説明されているように、例えば、図15Iに関して本明細書中で説明されているように、近位要素ラインの遠位の端部を定着から解放し、送達カテーテルのハンドルを引込めることによってなど、離脱を他の方法で達成することができることが理解される。
図14は、閉鎖位置にある解放された固定装置14を例示する。図示されているように、結合部材19は、介入ツール10のシャフト12から離隔された状態にとどまり、近位要素16は、組織(図示せず)が近位要素16と遠位要素18の間に存在し得るように展開されている。
本開示対象の主題の上述の実施形態は、遠位要素18の開閉のために、押し開き・引き閉じメカニズムを利用しているものの、引き開き・押し閉じメカニズムも同様に可能であるということを理解すべきである。例えば、遠位要素18は、その近位端部において結合部材19ではなくむしろスタッド74に結合されてよく、脚部68は、その近位端部においてスタッド74ではなくむしろ結合部材19に対して結合され得る。この例においては、スタッド74が結合部材19に対して遠位に押された場合、遠位要素18は閉鎖すると考えられ、一方、結合部材19に向かって近位にスタッド74を引くと遠位要素18は開放すると考えられる。
いくつかの状況においては、近位要素と遠位要素の間への弁尖の挿入が不充分であることに起因して、弁尖が固定装置から完全に又は部分的に離脱する可能性がある。したがって、心エコー検査法及び蛍光透視法などの標準的な画像技術を用いて、固定装置内への弁尖の挿入の評価が行なわれる。しかしながら、送達カテーテルに対する近位要素及び遠位要素の角度及び/又は位置に応じて、固定装置内への弁尖の挿入の深さを査定すること又は弁尖と固定装置の近位要素及び遠位要素とを区別することが困難である可能性がある。したがって、遠位要素が相互に変位しているより開放した構成に遠位要素を置いた状態で、視覚化が行なわれることが好ましい。しかしながら、固定装置の現在の多くの実施形態は単に近位要素を約85°の開先角度まで開放することしか可能にしないものであることから、近位要素と遠位要素の間に弁尖をしっかりと把持するためには、遠位要素は約45°と好ましくは60°との間の開先角度まで閉じられなければならない。この構成は術者が弁尖及び固定装置を視覚化しそれらを区別する一助となるものの、遠位要素を90°超の開先角度、さらに好ましくは120°以上までさらに広げることが好ましい。したがって、さらに広げるように近位要素を修正することが望ましいと考えられる。
図15A~15Hは、グリッパプッシャを含むことを主要な相違点として、図7A~14の装置と類似する固定装置の一実施形態を例示している。図15Aは、概して先に説明した固定装置14と同じ形態である固定装置14を例示している。先に説明した特徴に加えて、固定装置14は、グリッパプッシャ81も含んでいる。グリッパプッシャ81は、半径方向外向きに変形して弓なり領域83を結果としてもたらし、この領域83は、それが近位要素16の上部表面と係合するまで拡張する。弓なり領域83は、半径方向外向きに変形し続けるにつれて、さらに近位要素16を押し進め、こうして近位要素は変形させられ遠位要素18の係合表面に向かって外向きに回転させられることになる。こうして、近位要素16は、通常よりもさらに外向きに変形され得、したがって、その間の開先角度がより大きいさらに開放した位置に遠位要素が配置された時点で弁尖は近位要素と遠位要素の間に捕捉され得る。好ましい実施形態において、遠位要素間の開先角度は約90°超、好ましくは約110°超、そしてより好ましくは約120°超である。図15Aの実施形態において、グリッパプッシャ81は、金属、ポリマー又は他のワイヤ様の材料から形成された2つのアームを含む。例示的材料としては、コバルトクロム合金、ステンレス鋼、ニチノールなどが含まれる。グリッパプッシャを製造するために、同様にポリマーを使用することができる。グリッパプッシャ81は、概してグリッパプッシャアームの長手方向軸に平行な軸方向に配向された圧縮力を加えた時点で外向きに弓なりになるように作動され得る。圧縮中、グリッパプッシャは外向きに弓なりになって、弓なり領域83を形成する。他の実施形態においては、グリッパプッシャは、外向きに弓なりになって弓なり領域83を形成するように弾力的に付勢されるばねであってよい。しかしながら、近位要素ライン(ここでは例示せず)が近位要素16を持ち上げるために緊張させられた場合、グリッパプッシャばねは、縮小した外形まで圧潰する。
図15Bは、近位要素16(グリップ要素とも呼ばれる)が遠位要素18(固定要素とも呼ばれる)と係合状態になるようにグリッパプッシャ81が拡張された状態で、以下の図16A~16Cで詳述されているものと実質的に同じである組織内殖のための被覆を有する固定装置14を例示している。弁尖(便宜上図示せず)は、それぞれの間に挟まれている。図15Cは、圧潰構成にあるグリッパプッシャ81を例示する。弓なり領域83は圧潰して、近位要素16をシャフト12に向かって引込めることができるようにし、弁尖(図示せず)を固定装置14から解放できるようにする。グリッパプッシャ83は、近位要素がグリッパプッシャ81と干渉せずに引込むことができるように、近位要素16からオフセットされる。
図15Dは、好ましくは2つのばねアーム99を含むグリッパプッシャ83を強調表示している。各アーム99は、ワイヤから形成されているか、又はシート又は他の在庫材料から機械加工され、この実施形態においては、矩形の横断面を有するが、他の横断面も同様に企図されている。各アーム99の遠位部分91は、固定装置上のボス又は他の取付けメカニズムと係合できる1対のフィンガを形成するノッチ付き領域93を有する。ノッチは、固定装置14が送達カテーテルのシャフト12から離脱されたときにボスから解放され得る。さらに、各アームは、より大きい遠位弓なり領域83及びより小さい近位弓なり領域95を含む2つの弓なり領域つまりピークを含む。より大きい弓なり領域83はより大きな距離、外向きに広がって、近位要素16と係合し、これを遠位要素18と係合するように押す。遠位弓なり領域83が弛緩し近位要素16から離れるように圧潰した場合、又は近位要素を引込めることで圧潰した場合、より小さい近位弓なり領域95は半径方向外向きに拡張する。取付けリング又は結合用カラー97が突出部分318に隣接し(以下で詳述)、シャフト12全体にわたり摺動可能な形で配置され、シャフト12に対するグリッパアーム99の結合を可能にする。図15Eは、近位要素16と係合状態にある遠位弓なり領域83を例示し、同様に固定装置14上のボス94と各アーム99の遠位部分上のノッチ93の係合をも例示している。
送達カテーテルシャフト12に対するグリッパプッシャ83のアライメントの維持を容易にするために追加の構成要素を提供することができる。図15E1は、グリッパプッシャ83を伴う送達カテーテルシャフト12の横断面図を示しており、図15E2は、その側面図を示す。図15E1及び15E2に示されているように、各アーム99はスロット8112を有していてよく、送達カテーテルシャフト12は、送達カテーテルシャフト12に対するグリッパプッシャ83のアライメントを維持するためにスロット8112が跨る1つ以上の突出部1281を有し得る。スロット8112を有するアーム99の領域は、スロット8112を収容するべく、アーム99の残りの部分よりも広い。幅がより広いことにより、送達カテーテルシャフト12に対して不整列状態にならずにアーム99を側方へ押すことも可能となる。図15E3は、送達カテーテルシャフト12の横断面図を示し、図15E4は、その側面図を示す。図15E3及び15E4に示されているように、各アーム99は、1つ以上の内向きに弓なりになった領域8212を有していてよく、送達カテーテルシャフト12は、送達カテーテルシャフト12に対するグリッパプッシャ83のアライメントを維持するために内向き弓なり領域8212を収容する1つ以上のトラフ1282を有していてよい。
図15Fは、2つのアーム99を有するグリッパプッシャ81の上面図を例示する。図15Fは、2つのアーム99が互いにオフセットされ、この例示的実施形態においては、互いに180°離隔したアームの位置付けとは対照的に角度αは約160°であり角度θは約200°である、ということを例示している。シャフトを中心にしてアームを非対称的に位置付けすることにより、一方の側により大きな間隙が創出され、近位要素16は、シャフト12に対抗して引込んだ場合のグリッパプッシャアーム99との衝突を回避することができる。図15Gは、カラー97の上面図であり、図15Hは、グリッパプッシャアーム99の側面図である。アーム99の一方の側の切抜き98がアーム99間の追加の空間を創出し、こうして同様に、近位要素16を引込めるときに近位要素16がグリッパプッシャ83と干渉するのを防ぐ一助ともなり得る。切抜きは、両方のアーム99上にあり、近位要素16のための空間を最大にするため角度θにより表わされるより大きな間隙と面している。
例えば図9A及び9Bを参照して上述のように、近位要素16の作動は、1つ以上の近位要素ライン又はアクチュエータ90を使用することによって達成される。このような作動は、さまざまな方法で実現可能である。例えば、図15Iに示されているように、近位要素アクチュエータ90A及び90Bは、それぞれ近位要素16A及び16Bの半径方向外向きのかつ近位の側に配置されたラインループ48A及び48Bをくぐることが可能になる。近位要素アクチュエータ90A及び90Bの遠位端部は、共に結合された状態で図15Iに示されているシャフト12と結合部材19を取り巻く閉ループ95A及び95Bを含み得る。以上で論述した通り、シャフト12及び結合部材19は解放可能に共に結合され得る。閉ループ95A及び95Bでシャフト12及び結合部材19を取囲むために、閉ループ95A及び95Bは、シャフト12及び結合部材19を共に結合する前に、シャフト12及び/又は結合部材19の真上に設置される。閉ループ95A及び95Bがシャフト12及び結合部材19を取巻く場合、閉ループ95A及び95Bは、近位要素アクチュエータ90A及び90Bの遠位端部をシャフト12及び結合部材19に対して所定の場所に保持し、近位要素アクチュエータ90A及び90Bを引込めることのできる度合を制限する。ラインループ48A及び48B内をくぐらせることによって、近位要素アクチュエータ90A及び90Bは、それぞれ近位要素16A及び16Bに機械的にリンクされる。こうして、図15Jに示されているように、近位要素アクチュエータ90A及び90Bは、方向96に近位に引込められた場合、それぞれ近位要素16A及び16Bを、遠位要素18A及び18Bから離れるように移動させる。同様にして、近位要素アクチュエータ90A及び90Bを遠位に押すことによって、近位要素16A及び16Bは遠位要素18A及び18Bに向かって遠位に移動させられる。
近位要素アクチュエータ90A及び90Bは、近位要素16A及び16Bを、遠位要素18A及び18Bからさまざまな角度及び距離のところへ移動させるように移動可能である。そして、近位要素アクチュエータ90A及び90Bが押したり引いたりされる度合は、遠位要素18に対して近位要素16A及び16Bが有する位置を保つように維持され得る。例えば、図15Kに示されているように、近位要素アクチュエータ90A及び90Bは近位に引っ張られて図示された位置に維持され、近位要素16A及び16Bを遠位要素18との関係において中間位置に維持する。この中間位置は、近位要素16A及び16Bが付勢されて向かう位置と、近位要素16A及び16Bが図15Jにあるように完全に引込められている位置との間にある。図15Nに示されているように、近位要素16A及び16Bがひとたび所望の位置に来たならば、シャフト12及び結合部材19を結合解除して、近位要素アクチュエータ90A及び/又は90Bの近位での引込めが近位要素ラインを近位要素16から結合解除するようにすることができる。こうして、シャフト12、近位要素アクチュエータ90A及び90Bそして他の部品を手術部位から取外しすることができる一方で、固定装置14を所定の場所に残すことが可能である。図15O~15Oに示されているように、固定装置14は典型的に、以下の図16A~16Cで論述したものと実質的に同じ被覆100を含む。
近位要素16A及び16Bの独立した作動を提供することが望ましい場合がある。例えば、図15Lに示されているように、近位要素アクチュエータ90Aは近位に引込められ、遠位要素18Aから離れるように近位要素16Aを回転させ、一方、近位要素アクチュエータ90Bは、遠位に押され、近位要素16Bを遠位要素18Bに向かって回転させる。同様にして、図15Mに示されているように、近位要素アクチュエータ90Aは単独で残されて、近位要素16Aが、付勢されて向かう位置を維持できるようにし、一方近位要素アクチュエータ90Bは近位に引込められて、近位要素16Bを遠位要素18Bから離れるように移動させる。近位要素16A及び16Bのそれぞれの作動を提供することにより、弁尖を近位要素16A及び16B及び遠位要素18A及び18Bによって個別に把持することが可能になる。こうして、固定装置14は、弁尖をより容易にかつさらに最適な場所で接合することができる。例えば、2つの弁尖を同時に把持することとは対照的に、第1の弁尖を所望の位置で把持することができ、このとき、第2の弁尖をさらに最適な位置で把持できるように、固定装置14を再位置付けすることができる。代替的には、個別に作動可能な近位要素アクチュエータをなおも同時に移動させることができることから、所望される場合には弁尖をなおも同時に把持することができる。同様に、弁尖は、把持された後、最初の把持で接合が不良であった場合などには、解放され再び把持され得る。本明細書中では、近位要素の別々の動作又は同時的な動作のために構成されたさまざまな実施形態が記されている。
以上で説明した装置に類似する固定装置の実施形態は、例えば図15Oに示されているように、グリッパプッシャ81及び別々に動作可能な近位要素16A及び16Bの両方を含み得る。グリッパプッシャ81及び別々に動作可能な近位要素16A及び16Bの両方を有することにより、固定装置は、弁尖をより精確にかつより強く把持することなどの上述の利点を多く有することができる。
図15Pは、近位要素アクチュエータ90の遠位端部を示す。近位要素アクチュエータ90は、丸い区分90Rとこの丸い区分90Rから遠位の平担な区分90Fを含む。この近位要素アクチュエータ90が近位要素16をくぐって固定装置14に結合された時点で、近位要素16に面するように平担区分のより平担な部分を位置付けすることができる。したがって、近位要素アクチュエータ90は、近位に前進させられるにつれて、他の方向ではなく近位要素16に向かう方向にそれを偏らせ、近位要素を押す。近位要素アクチュエータ90はさらに、ループ状端部95を含む。図15Pに示されているように、ループ状端部95は、例えばはんだ94を用いて、その遠位端部で平担区分90Fの遠位端部と取付けられた別個のワイヤループを含み得る。
近位要素アクチュエータ90は同様に、他の方法で固定装置14に対し解放可能な形で結合されてもよい。例えば、図15Q及び15Rに示されているように、近位要素アクチュエータ90は、固定装置14に対し解放可能な形で結合されている螺旋状の遠位区分95Lを含む。螺旋状の遠位区分95Lは、シャフト12及び/又は結合メカニズム19を中心にして巻き付けられている。充分な力で近位要素アクチュエータ90を引込めることで、螺旋状遠位区分95Lを変形させ、それを固定装置14から解放することができる。代替的に又は組合せた形で、螺旋状遠位区分95Lは、この螺旋状遠位区分95Lが充分な量の熱を加えることで真直ぐになり、固定装置14から離れるような近位要素アクチュエータ90の近位引込めが容易になるように形状記憶材料を含んでいてよい。
近位要素アクチュエータ90は、縫合糸により固定装置14に対し解放可能な形で結合されてよい。図15S及び15Tに示されているように、近位要素アクチュエータ90は、縫合糸結び目95Sを介して固定装置14に対し解放可能な形で結合されている。各々の近位アクチュエータ90は、別個の縫合糸結び目95Sによって固定装置14に結合され得る。代替的には、単一の縫合糸結び目により固定装置14に対して一対の近位アクチュエータ90を結合してもよい。
近位要素アクチュエータ90は、図15U及び15Vに示されているように、拡大区分90Tを含み得る。拡大区分90Tの直径は、ループライン48の開口部の直径を上回る。近位要素アクチュエータ90が引込められるにつれて、ループライン48は、拡大区分90Tの近位運動を制限する。こうして、ループライン48及び近位要素16上に引張り力が加わり、これにより、近位要素16の作動が容易になる。拡大区分90Tは、近位要素アクチュエータ90上に取付けられたスリーブであってもよい。
近位要素アクチュエータ90は、例えば図15W1~15W2に示されているような取付け装置により近位要素16の半径方向外向きの端部で近位要素16に対し解放可能な形で結合され得る。取付け装置は、図15W1中に斜視図で示されているリング90CR、図15W2に斜視図で示されている短クリップ90CC、又は図15W3~図15W5に斜視図で示されている長クリップ90CLを含み得る。図15W3は、近位要素アクチュエータ90を近位要素16に取付ける長クリップ90CLの斜視図を示す。図15W4及び図15W5は、その前面図と側面図をそれぞれ示す。長クリップ90CLは、近位要素16の長さを横断する一対の脚部90CLLを含み得る。図15W5に示されているように、脚部90CLLは、2列のかえし60の間に配置されている。
上述の取付け装置は、近位要素16の半径方向外向きの端部にラッチするようにばね負荷するか又はこの端部に滑り嵌めするようサイズ決定されていてよい。近位要素アクチュエータ90が引込められるにつれて、取付け装置は、近位要素16に取付けられ続ける。しかしながら、近位要素16がシャフト19に対し実質的に平行になるように回転させられるにつれて、近位要素アクチュエータ90のさらなる近位引込めにより取付け装置を近位要素16の外側端部から解放することができる。取付け装置が偶発的に離脱することがないように近位要素アクチュエータ90を近位に引込めることのできる度合を制限するために、機械的メカニズムを提供することができる。代って、離脱は、近位要素アクチュエータ90を含めた送達装置全体を固定装置14から引込めた時点で初めて発生することになる。
近位要素アクチュエータ90は、2本のラインすなわち、例えば図15X1~15X3に示されているように、起動ライン90AA及び解放ライン90RRを含むことができる。図15X1は、アパーチャ48Aを有する近位要素16の半径方向外側の端部の斜視図を示す。図15X2は、その横断面図を示す。起動ライン90AAは、近位要素16を横断するようにアパーチャ48Aをくぐるループ状端部90AALを有する。解放ライン90RRは、ループ状端部90AALの部分をくぐる。図15X3において、起動ライン90AA及び解放ライン90RRは、近位要素16のループライン48を通って類似の形で位置付けされる。起動ライン90AA及び解放ライン90RRが、図15X1~15X3中に示された配置で位置付けされている間、起動ライン90AAを引込めると、上述の実施形態と同様に、遠位要素18に対して近位要素16が回転させられる。解放ライン90RRを引込めて、もはやループ状端部90AALをくぐらせないようにすると、起動ラインを近位要素16から離れるように引込めることができるようになる。
多くの実施形態において、シャフト12及び結合部材19はL係止メカニズムを介して解放可能に共に結合される。例えば、図15Y1に示されているように、近位要素アクチュエータ90は、平坦な区分90Fから遠位の湾曲したT字形端部90Tを含むことができ、シャフト12はL字形端部12Lを含むことができる。図15Y2の斜視図に示されているように、近位要素アクチュエータ90は、それとシャフト12が結合部材19のチャネル19C内に設置された場合に結合部材19に対し解放可能に結合される。シャフト12がチャネル19Cを通って設置されるにつれて、L字形端部12Lは、それらがアパーチャ19Aに到達するまで内向きに押される。到達した時点で、L字形端部12Lは外向きに延在してアパーチャ19Aの中にフィットし、これによりシャフト12は、図15Y3の横断面図に示されているように、結合部材19に対して所定の場所に係止される。湾曲したT字形遠位端部90Tは、典型的に、シャフト12がチャネル19C内に設置される前に空間19CA内に設置される。図15Y3に示されているように、このとき、湾曲したT字形の遠位端部90Tは、シャフトが内部に設置された時点で、シャフト12のより幅広の部分とチャネル19Cとの間の空間つまりポケット19CAの中に捕捉された状態になる。他のL係止又は他の係止メカニズムは、参照により本明細書中に全内容が組込まれている、2009年2月26日出願の「移植可能な固定装置のための離脱メカニズム」なる名称の同一出願人による米国特許出願第12/393,452号中に記載されている。
近位要素アクチュエータ90の丸いT字形端部90Tは同様に、他の多くの方法でシャフト12及び結合部材19に対して近位要素ライン90を解放可能な形で結合するのを容易にするためにも使用可能である。例えば、図15Z1に示されているように、シャフト12のL字形端部12Lは、少なくとも1つの近位要素ラインスロット12Sを含み得る。図15Z3及び15Z4に示されているように、近位要素アクチュエータ90のT字形端部90Tは、近位要素ラインスロット12L内に摺動させられる。その後、シャフト12は結合部材19内に設置され、これにより同様に近位要素ライン90を所定の場所に係止する。図15Z5に示されているように、結合部材19からシャフト12を取外すことによって、近位要素ライン90をL字形端部12Lの近位要素ラインスロット12Sから外に摺動させることが可能になり、これにより、シャフト12及び結合装置19の両方から近位要素アクチュエータ90が結合解除される。
図15AA1に示されているように、近位要素アクチュエータ90は平坦なT字形端部90TFを含み得る。シャフト12はさらに、シャフト12の遠位部分を取り囲む内側遠位被覆1511及び、内側遠位被覆を取り囲む外側遠位被覆1521を含み得る。内側遠位被覆1511は、典型的に、シャフト12に対して固定された位置にあり、一方外側遠位被覆は、外側遠位被覆1521のサイドチャネル1525を通って設置された内側遠位被覆1511のタブ1515によって確定される範囲で、シャフト12に対して可動である。近位要素アクチュエータ90をシャフト12及び結合ライン19に対して解放可能に結合するために、T字形端部90TFは、内側遠位被覆1511のT字形切り抜き1513内に嵌め込まれ、シャフト12が結合装置19内に設置されると、図15AA2に示されている通り、結合装置19は、内側遠位被覆1511上で外側遠位被覆1521を押して、T字形切り抜き1513ならびにT字形端部90TFが覆われる。これにより、内側遠位被覆1511と外側遠位被覆1521の間に設置されたコイルばね1522が圧縮される。固定装置14がシャフト12から解放されると、外側遠位被覆1521は、コイルばね1522の作用によって遠位に移動してT字形切り抜き1513を露出させ、近位要素アクチュエータを解放する。いくつかの実施形態において、外側遠位被覆1521は、内側遠位カバー1523に対してばね荷重を受け、こうして図15AA1に示されたそれらの相対的位置を維持する傾向をもつことになる。
例えば図15AB1~15AB7に示されているような多様な内側及び外側遠位カラーをシャフト12の遠位部分上に用いて、さまざまな方法により、近位要素アクチュエータ90を固定装置14に対して解放可能に結合することができる。図15AB1は、一対のT字形切り抜き1513及びタブ1514を有する内側遠位カラー1511Aを示す。図15AB3は、チャネル1524を有する外側遠位カラー1521Aを示す。チャネル1524は、例えば図15AB3~15AB5に示されているように、内側遠位カラー1511Aが外側遠位カラー1521A内に摺動させられるにつれてそのタブ1514を介して内側遠位カラー1511Aを誘導する。図15AA1及び15AA2中に示された実施形態の場合のように、近位要素アクチュエータ90をシャフト12及び結合部材19に対して解放可能に結合するために、T字形端部90TFは、内側遠位カラー1511SのT字形切り抜き1513内に嵌め込まれる。シャフト12が結合装置19内に設置されると、結合部材19は、内側遠位カラー1511S上の外側遠位カラー1521Sを押して、図15AB6及び15AB7に示されている通り、T字形切り抜き1513ならびにT字形端部90TFが覆われる。
以下で説明する通り、送達装置又は送達カテーテル300を使用して、上述の通り固定装置を導入し位置付けすることができる。個別に作動可能な近位要素ラインを伴う開示対象主題の実施形態においては、送達カテーテルのハンドル304は典型的に、個別に作動可能な近位要素ラインのための制御メカニズムを含む。例えば、制御メカニズムは、図15AC1中に示されているように平行に設置され、かつ図15AC2中で示されているように本明細書中でさらに説明されている、つまり同軸上に設置され、かつ本明細書中でさらに説明されている一対の別々に作動可能な近位要素ラインハンドル393A及び393Bを含み得る。近位要素ラインハンドル393A及び393Bは、近位要素ライン90A及び90Bに結合され、例えば図71Cに示されているように、送達装置内の共通の又は相互連結用の管腔を共有することができる。近位要素ラインハンドル393A及び393Bを引込める又は前進させることのできる度合を制限して、これにより近位要素アクチュエータ90A及び90Bを引込める又は前進させることのできる度合を制限するために、止め具(stop)を設けてもよい。例えば図15AC3及び15AC4により示され本明細書中でさらに説明されているように、いくつかの実施形態において、近位要素ラインハンドル393を、それに取付けられた回転可能なスイッチ395によって作動させることができる。
B.固定装置上の被覆
固定装置14は任意には、被覆を含む。被覆は、組織の把持を支持することができ、その後組織内殖のための表面を提供し得る。弁尖などの周囲の組織の内殖は、所定の場所に装置14が定着させられるにつれてこの装置に安定性を与え、装置を天然の組織で覆い、こうして免疫学的反応の可能性を削減することができる。被覆は、任意の生体適合性材料、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、綿、ポリウレタン、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、シリコン、又はさまざまなポリマー又は繊維で構成され、例えば、ファブリック、メッシュ、テクスチャードウィーブ、フェルト、ループ状又は多孔性構造などの任意の好適な形態を有することができる。一般に、被覆は、導入器シースを通じた送達又は弁尖又は組織の把持及び接合と干渉しないように低い外形を有する。
図16A~16Cは、装置14がさまざまな位置にある固定装置14上の被覆100を例示する。図16Aは、装置14が開放位置にある間の遠位要素18及び起動装置58を封入する被覆100を示す。こうして、係合表面50は、組織上の外傷を最小限に抑え組織の把持及び保定を支援するために追加的な摩擦を与える被覆100によって覆われている。図16Bは、反転位置にある図16Aの装置14を示す。被覆100は、緩くフィットしており、かつ/又は、可撓性又は弾性を有し、こうして装置14はさまざまな位置に自由に移動できるようになっており、被覆100は、装置14の輪郭に適合しあらゆる位置においてしっかりと取付けられた状態にとどまる。図16Cは、閉鎖位置にある装置14を示す。こうして、固定装置14が閉鎖位置でインプラントとして残される場合、装置14の露出した表面は実質的に被覆100により覆われている。被覆100は、固定装置14の特定の部分を覆う一方で、他の部分を露出したままにする。例えば、幾つか例を挙げると、被覆100は、遠位要素18上にフィットするものの起動装置58にはフィットしないスリーブ、遠位要素18の遠位端部54上にフィットするキャップ又は係合表面50を覆うパッドを含み得る。被覆100は、かえしなどのあらゆる摩擦付属物を露出させておいてもよい、ということが認識され得る。同様に、被覆100は、近位要素16及び/又は固定装置14のいずれかの他の表面を覆うことができる。いずれの場合でも、被覆100は、多数回の導入サイクルそして心臓の内部に移植される場合には心臓周期の存続期間に耐えるための耐久性を有するものでなければならない。
被覆100は、代替的には、固定装置14の表面に対し浸漬、噴霧、コーティング又は他の形で接着させられるポリマー又は他の好適な材料で構成され得る。任意には、ポリマーコーティングは、組織の把持を支援するため及び/又は組織内殖を促進するための細孔又は輪郭を含み得る。
被覆100のいずれも、幾つか例を挙げると、薬剤、抗生物質、抗血栓薬又は抗血小板薬、例えばヘパリン、COUMADIN(登録商標)(ワルファリンナトリウム)を任意に含むことができる。これらの作用物質は例えば、被覆100内に含浸されるか又は被覆上にコーティングされてよい。これらの作用物質は、次に、治療効果を得る目的で把持された組織を取囲む組織及び/又は血流まで送達され得る。
C.固定装置係止構造
先に言及した通り、固定装置14は任意には、特定の位置、例えば開放位置、閉鎖位置又は反転位置又はそれらの間の任意の位置に装置14を係止するための係止構造を含む。係止構造には、装置の係止及び係止解除の両方を可能にする係止解除メカニズムが含まれるということが認識され得る。図17~20は、係止構造106の実施形態を例示する。図17を参照すると、この実施形態において、係止構造106は、結合部材19と起動装置58のベース69の間に配置されている。ベース69は、係止構造106を通って延在するスタッド74に対して固定的に取付けられている。スタッド74は、結合部材19及び介入ツール10のシャフト12を通過するアクチュエータロッド64に対して解放可能な形で取付けられている。ベース69は同様に、それ自体遠位要素18に連結されている起動装置58の脚部68に連結されている。
図17は同様に、この実施形態においては係止構造に跨り係止構造106の下に連接する近位要素16をも例示する。近位要素16は、近位要素ライン90によって支持された状態で示されている。近位要素16は、近位要素ライン90の操作により昇降させられる。さらに、係止構造106の解放ハーネス108と連結された状態で、係止ライン92が示されている。係止ライン92は、以下で説明されるように、係止構造106を係止及び係止解除するために使用される。近位要素ライン90及び係止ライン92は、幾つか例を挙げると、典型的にはワイヤ、ニチノールワイヤ、ケーブル、縫合糸又は撚糸などの任意の好適な材料で構成されていてよい。さらに、近位要素ライン90及び/又は係止ライン92は、コーティング、例えばパリレンを含むことができる。パリレンは、共形的で生体適合性のある蒸着されたピンホールの無い保護フィルムである。パリレンは不活性であり、水分、化学物質及び電荷から保護する。
図18は、図17の係止構造106の前面図を提供する。しかしながら、ここで近位要素16は、両方の近位要素16を通っている単一の近位要素ライン90によって支持されている。この配置においては、両方の要素共、単一の近位要素ライン90の作用によって同時に昇降させられる。近位要素16が別個の近位要素ライン90によって個別に操作されるか又は単一の近位要素ライン90によって一緒に操作されるかのいずれであっても、近位要素ライン90は、直接近位要素内の開口部を通って及び/又は近位要素上の被覆100の一層又は一部分を通って、又は被覆100の上方又は下方の縫合糸ループを通って延在し得る。
図19~20は、それぞれ係止解除位置及び係止位置における係止構造106を示す係止構造106の例示である。図19を参照すると、係止構造106は、転動要素などの1つ以上のくさび留め要素を含む。この実施形態において、転動要素は、スタッド74の反対の側に配置された一対のバーベル110を含み、各バーベルは一対の概して円筒形のキャップ及びそれらの間のシャフトを有する。バーベル110及びスタッド74は好ましくはコバルトクロム又はステンレス鋼で構成されているが、任意の好適な材料を使用することも可能である。バーベル110は、解放ハーネス108のフック形端部112によって操作される。係止ライン92(図17中に例示)によりハーネス108に対して上向きの力が加えられた時点で、フック形端部112は、図19に示されているように、ばね114に対抗してバーベル110を上昇させる。これによって、バーベル110は側壁又は傾斜表面116に沿って引き上げられ、こうしてバーベル110はスタッド74に対するくさび留めから解放される。この位置で、スタッド74は自由に移動できる。こうして、係止ライン92がハーネス108を上昇させた又は持ち上げたとき、係止構造106は、スタッド74が自由に起動装置58ひいては遠位要素18を任意の所望される位置まで移動させることのできる係止解除位置にある。係止ライン92によるハーネス108の解放は、係止構造106を、図20に例示された係止位置へと移行させる。フック形端部112によりバーベル110上の上向きの力を解放することにより、ばね114はバーベル110を下向きに強制し、バーベル110を傾斜表面116とスタッド74の間にくさび留めする。こうしてスタッド74の動作が制限され、スタッドは、それ自体、起動装置58ひいては遠位要素18を所定の場所に係止する。さらに、スタッド74は、バーベル110を収容する1つ以上の溝82又は刻み目を含み得る。これにより、バーベル110を確定された位置に落ち着かせることでより迅速かつ確動的係止を提供し、バーベル110の運動をさらに阻止することで係止用特徴部の安定性を増大させ、かつバーベルが係止位置に達したことの有形標示をユーザに対し提供することができる。さらに、溝82は、遠位要素18の相対的位置、特に遠位要素18間の距離を標示するために使用することができる。例えば、各々の溝82は、遠位要素18間の距離の0.5mm又は1.0mmの減少と一致するように位置付けされ得る。スタッド74が移動させられるにつれて、バーベル110は溝82と接触し、スタッド74が移動させられるにつれて感じられた溝82の数を計数することによって、ユーザは遠位要素18間の距離を決定することができ、弁尖の厚み、幾何形状、離隔距離、血流動態及び他の要因に基づいて所望される接合度を提供することができる。こうして、溝82はユーザに対し触覚フィードバックを提供することができる。
係止構造106は、固定装置14が把持及び再位置付け中に介入ツール10に取付けられている時点では係止解除位置にとどまり、その後インプラントとして残された時点で係止位置を維持することができるようにする。しかしながら、係止構造106は、望まれる場合には固定装置14の設置全体を通して反復的に係止及び係止解除され得る、ということが認識され得る。最終的設置がひとたび決定されたならば、係止ライン92及び近位要素ライン90は取外され、固定装置は残される。
図21、22A~22Bは、係止構造106の別の実施形態を例示している。図21を参照すると、この実施形態において、係止構造106はここでもまた、結合部材19と起動装置58のベース69の間に配置されている。ベース69は、係止構造106を通って延在し、かつ結合部材19及び介入ツール10のシャフト12を通って延在するアクチュエータロッドに連結するスタッド74に連結されている。ベース69は同様に、それ自体遠位要素18に連結されている起動装置58の脚部68にも連結されている。図21は同様に、この実施形態において係止構造106を操作する近位要素16も例示している。係止構造106は、重複部分124a、124bを有する折畳みリーフ構造124を含み、ここで各折畳み構造124は近位要素16に取付けられている。図21及び図22Aにおいて、折畳み構造124は、明確さのため、係止構造106の残りの部分無しで示されている。近位要素16は可撓性で弾力性があり、外向きに付勢されている。折畳みリーフ構造124は、各々の重複部分124a、124b内に孔125(図22B)を含み、スタッド74が図示されている通りに部分124a、124bの孔125を通過するようになっている。係止構造は、折畳みリーフ構造124の端部123が中に固定されるスロットを含む。近位要素16が図21に示されるような非展開位置にある場合、折畳みリーフ構造124は、スタッド74に実質的に直交して存在し、こうして各々の重複部分内の孔125が垂直方向に整列するようになっている。これによりスタッド74は、孔の中を自由に通過でき、係止構造106は係止解除位置にあるものとみなされる。
図22Aに示されているように、近位要素16の展開により、折畳みリーフ構造124は傾動させられて、スタッド74に対し直交しない配向に配置されることになり、孔125はもはや互いに垂直に整列していない。この配置において、スタッド74は、折畳みリーフ構造124の孔に対する摩擦に起因して自由に移動しない。図22Bは、この位置における折畳み構造124の拡大斜視図を提供している。こうして、係止構造106は、係止位置にあるとみなされる。この配置は、固定装置14が把持及び再位置付け中において、係止解除位置を維持し、その後、近位要素16が展開され固定装置14がインプラントとして残される時点では係止位置を維持することを可能にする。しかしながら、所望される場合には、固定装置14の設置の間は、係止構造106を反復的に係止及び係止解除することができるということが認識され得る。
図23、24A~24Bは、係止構造106の別の実施形態を例示する。図22を参照すると、この実施形態において、係止構造106はここでもまた結合部材19と起動装置58のベース69との間に配置される。そして、ベース69は、係止構造106を通って延在し、かつ結合部材19と介入ツール10のシャフトを通って延在するアクチュエータロッドに連結するスタッド74に連結されている。図22はこの実施形態において係止構造106を操作する近位要素16も例示している。係止構造106は、各々近位要素16に取付けられたC字形構造128を含む。C字形構造128は、図24A~24Bに示されているように、スタッド74が各構造128の「C字」を通過するようにスタッド74の周りに引っ掛かる。図示されているように、構造128は互いに交差し、各構造128の「C字」は互いに面している。ばね130がC字形構造を互いに係合するように付勢する。近位要素が図24Aにあるように非展開位置にある場合、C字形構造128は、スタッド74が画定する軸方向に対して更に直交する配向へと促され、こうして各構造128の「C字」をより接近した軸方向アライメントにする。これにより、スタッド74は、各構造128の「C字」を自由に通過できることになる。近位要素16が外向きに展開することで、C字形構造は、スタッド74に対してより角度のついた非直角配向へ動かされ、各構造128の「C字」の側壁がスタッド74とより強く係合するようにさせる。この配置において、スタッド74は、C字形構造128に対する摩擦に起因して自由に移動しない。
D.固定装置の追加の実施形態
他の実施形態においては、近位要素を操作してグリップを増強することが可能である。例えば、近位要素と遠位要素の間に弁尖又は組織を把持するために、近位要素を下降させることができ、その後、近位要素を移動させて弁尖又は組織を固定装置の中に引き込むことができる。別の例では、弁尖又は組織を把持するために、近位要素を個別に下降させることができる。これは、逐次的把持のために有用であり得る。逐次的把持においては、近位要素と遠位要素の間に弁尖又は組織を捕捉するために、1つの近位要素が下降させられる。その後、固定装置は、近位要素及び遠位要素の別のセットの間に別の弁尖又は組織を把持するための位置まで、移動、調整又は操作される。この位置において、次に第2の近位要素が下降させられて、この他の弁尖又は組織部分を把持する。
固定装置の他の例示的実施形態は、各々の全内容が参照により本明細書に完全に組込まれている米国特許第7,563,267号及び7,226,467号の中で開示されている。当業者であれば、開示対象の固定装置のさまざまな特徴を互いに置換すること又は他の開示されている特徴と組合わせることが可能であるということを認識するものである。
6.4.送達装置
A.送達装置の概要
図25は、上述の固定装置を導入し位置付けするために使用可能な送達装置又は送達カテーテル300の一実施形態の斜視図を提供している。送達カテーテル300は、近位端部322及び遠位端部324を有するシャフト302、及び近位端部322に取付けられたハンドル304を含む。身体内の部位への送達のため、典型的には僧帽弁への血管内送達のため、遠位端部324に固定装置(図示せず)を取外し可能な形で結合することができる。したがって、固定装置との結合のための結合構造320が、遠位端部324から延在している。同様に遠位端部324から延在しているのは、アクチュエータロッド64である。アクチュエータロッド64は、固定装置と連結可能であり、典型的には遠位要素を開閉して、固定装置を操作するために作用する。固定装置に対するこのような結合が、図26に例示されている。
図26は、送達カテーテル300の遠位端部324に結合された固定装置14の一実施形態を例示する。シャフト302は、その遠位端部324近くに突出部分318を有する状態で示されている。この実施形態において、突出部分318は、フランジ付き形状を有する。このようなフランジ付き形状は、後出する節で論述されるように、誘導カテーテル又は導入器内に突出部分318が引込められるのを防ぐ。しかしながら、突出部分318は、幾つか例を挙げると、弾丸形状、丸味付き形状、鈍端形状又は尖頭形状を含めた任意の形状を有していてよい、ということが理解されよう。突出部分318から延在しているのは、圧縮コイル326であり、結合構造320及びアクチュエータロッド64はこのコイルを通過している。アクチュエータロッド64は、図示されているように、固定装置14のスタッド74と結合可能である。このような結合は、図27に例示されている。
図27は、送達カテーテル300のシャフト302の一部分及びこのカテーテル300と結合可能である固定装置14を例示する。シャフト302を通過しているのは、アクチュエータロッド64である。この実施形態において、アクチュエータロッド64は、近位末端303及び遠位末端328を含み、その遠位末端328は、コイル330により取り囲まれている。近位末端303は典型的には、幾つか例挙げると、ステンレス鋼、ニチノール又はElgiloy(登録商標)で構成されており、0.025cm(0.010インチ)~0.102cm(0.040インチ)、好ましくは0.051cm(0.020インチ)~0.076cm(0.030インチ)の範囲内、より好ましくは0.064cm(0.025インチ)の直径、及び121.920~182.880cm(48~72インチ)の範囲内の長さを有することができる。遠位末端328は、先細であってもよく、典型的には、幾つか例を挙げると、ステンレス鋼、ニチノール又はElgiloy(登録商標)で構成され、0.028~0.064cm(0.011~0.025インチ)の範囲内の直径及び10.160~30.480cm(4~12インチ)の範囲内の長さを有し得る。このような狭窄により、アクチュエータロッド64の遠位端部324の可撓性は増大する。アクチュエータロッド64はさらに、遠位末端328に取付けられたジョイナ332を含む。ジョイナ332は、固定装置14に対して取外し可能な形で取付け可能である。この実施形態において、ジョイナ332は、固定装置14のスタッド74上の外部ねじ山と噛合する内部ねじ山を有する。前述の通り、スタッド74は、アクチュエータロッド64を用いたスタッド74の前進及び引込めによって遠位要素が操作されるように、遠位要素18と連結されている。同様にして、固定装置14の結合部材19は、カテーテル300の結合構造320と噛合する。こうして、結合部材19及び結合構造320は、図6A~6Bに関連して前述した通りに機能する。
図26に戻って参照すると、固定装置14は同様に、図17~20に関連して前述した通り、解放ハーネス108を含む係止構造を含む。前述の通り、係止構造106を係止し係止解除するために、係止ライン92が解放ハーネス108と連結される。係止ライン92は、送達カテーテル300のシャフト302を通って延在し、後出の節で例示するさまざまな配置において解放ハーネス108と連結し得る。同様にして、近位要素ライン90が、送達カテーテル300のシャフト302を通って延在し、近位要素16と連結する。近位要素16は、前述の通り、近位要素ライン90を操作することによって昇降させられる。近位要素ライン90は、後出の節で例示されるさまざまな配置において近位要素16と連結し得る。
図25に戻って参照すると、シャフト302の近位端部322に取付けられたハンドル304は、結合された固定装置14を操作するため、及び任意には永久移植のために固定装置14を結合解除するために使用される。説明された通り、固定装置14は主として、アクチュエータロッド64、近位要素ライン90及び係止ライン92によって操作される。アクチュエータロッド64は遠位要素18を操作し、近位要素ライン90は近位要素16を操作し、係止ライン92は係止構造を操作する。この実施形態において、アクチュエータロッド64は、遠位要素18を操作するために並進運動(伸長又は引込め)させられ得る。これは、後出の節で説明するアクチュエータロッド制御機構314を用いて達成される。同様に、ねじ山付きスタッド74とねじ山付きジョイナと係合又は係合解除するためにアクチュエータロッド64を回転させることもできる。これは、同様に後出の節で説明されるアクチュエータロッドハンドル316を使用することで達成される。さらに、近位要素ラインハンドル312を用いて、近位要素ライン90を伸長させ、引込め、さまざまな量の張力で負荷を加え、又は除去することができる。そして係止ラインハンドル310を用いて、係止ライン92を伸長させ、引込め、さまざまな張力で負荷を加え、又は除去することができる。これらのハンドル310、312は両方共、後出の節においてより詳細に説明される。アクチュエータロッドハンドル316、アクチュエータロッド制御機構314、近位要素ラインハンドル312及び係止ラインハンドル310は全て、主本体308と接合されており、この主本体の内部で、アクチュエータロッド64、近位要素ライン90及び係止ライン92がシャフト302内へと誘導される。ハンドル304はさらに、主本体308と連結された支持ベース306を含む。主本体308はシャフト302の並進運動を提供するために、支持ベース306に沿って摺動可能である。さらに、主本体308は、シャフトを回転させるために支持ベース306の周りで回転可能である。
図27の実施形態は、有望であるものの、或る種の状況下では、アクチュエータロッド64は、固定装置14の送達中に、特により薄い遠位末端領域328に沿って変形し、これによって、固定装置を弁尖に適正に送達し取付けることがより困難になる可能性がある。例えば、曲がりくねった血管を進んでいる場合、又はより大きい角度、例えば90°以上の角度を通って送達装置の遠位部分を導いている場合、アクチュエータロッド64の遠位先細末端328は、永久歪を有する可能性があり、こうして、歪んだ後に実質的に真直ぐな構成に復帰することができなくなる可能性がある。図28A~28Bは、図27に例示されたアクチュエータロッドの変形実施形態を例示する。この実施形態において、遠位先細末端328は、可撓性ケーブルで置換されている。アクチュエータロッド64aは、概して図27中のアクチュエータロッド64と同じ形状を備える長いシャフト又はマンドレルである。可撓性ケーブル2702が、アクチュエータロッド64aの遠位端部と連結器又はジョイナ2708の近位端部の間に配置される。可撓性ケーブル2702は、可撓性ケーブルに歪が生じる結果とはならずに折曲げ及び屈曲を可能にしながら、トルク、張力及び圧縮を連結器2708に伝達できるようにする。この例示的実施形態においては、アクチュエータロッド64aの遠位部分が、スリーブ2704を用いて可撓性ケーブル2702の近位端部に接合される。スリーブ2704は、可撓性ケーブル及びアクチュエータロッドを収容するため貫通して延在する中央チャネル2718を有する。スリーブ2704は次に、2つの端部を共に固定的に取付けるために圧着、加締又は他の形で直径が削減され得る。変形実施形態においては、2つの端部を共に接合するために、接着剤、溶接、はんだ付け接合部を用いることもできる。同様にして、連結器2708の近位端部が、可撓性ケーブル2702の遠位部分を収容するべくサイズ決定された中央チャネル2718を含み得る。この例示的実施形態において、連結器は、遠位部分2710よりも大きい直径を有する近位部分2716を伴う円筒形状のものである。近位部分2716が可撓性ケーブル上に圧着又は加締された後、連結器の近位及び遠位部分の直径は、図28Bに例示されている通り、同じであり得る。連結器の遠位部分は、図7及び27で前述されたような固定装置14に対し螺合式に取付けられ得るねじ付きチャネル2712を含むことができる。図28Bは、加締により可撓性ケーブル及び連結器と結合された後のアクチュエータロッド64aを例示する。
可撓性ケーブルは好ましくは、90°以上折曲げられた又は歪んだ後でさえ、実質的に真直ぐな又は線形の構成に復帰するように弾力的に付勢される。好ましい実施形態においては、可撓性ケーブルは25cm以下、好ましくは10cm~20cmの長さ、より好ましくは15~20cmの長さを有する。可撓性ケーブルは同様に、好ましくは0.015’’~0.035’’、より好ましくは0.020’’~0.030’’そして公称的には0.025’’の外径を有するが、当業者であれば、他の寸法も同様に使用できるということを認識するものである。アクチュエータロッド64aは概して、図27のアクチュエータロッド64と同じ形態をとる。アクチュエータロッド64a及び可撓性ケーブル2702は、アクチュエータマンドレルの近位端部から可撓性ケーブルの遠位端部まで実質的に1:1のトルク伝達比で少なくとも0.01Nm(0.74インチ-オンス)のトルクを伝達するように構成される。このトルクは、弁が満足のいく形で修復された後、固定装置から連結器2708を螺合式に係合解除するために必要とされる。さらに、アクチュエータロッド64a及び可撓性ケーブル2702は同様に、少なくとも11.12N(2.5ポンド)の圧縮力を固定装置まで遠位に伝達して、その遠位要素を動作させるようにも設計されている。同様に、アクチュエータロッド及び可撓性ケーブルは、実質的な伸張も伸びも無く、少なくとも65.39N(14.7ポンド)の引張力に耐えることができる。この力は、遠位要素を閉じるために固定装置を起動させたときに受けるものである。アクチュエータロッド、可撓性ケーブル、スリーブ及び連結器のためには、さまざまな金属、ポリマー、及び他の材料を使用することができる。しかしながら、好ましい実施形態においては、連結器は、17-4H1150ステンレス鋼から製造され、一方、ケーブルは304Vステンレス鋼を含み、マンドレルは、ウルトラスプリングワイヤ調質度を有する304ステンレス鋼である。
図29A~32Bに例示されているケーブルのようなさまざまな構成の可撓性ケーブルを使用することができる。29A~32Bの可撓性ケーブルは、反時計回り方向で高トルク伝達比を有するように設計された逆巻きの撚合ケーブルである。このケーブルは4層のワイヤを含む。最内側層2802は、図29Aに見られ、共に螺旋巻回された3本のワイヤ2802a、2802b、2802cを含む。図29Bは、ラインA-Aに沿って切り取ったケーブル2802の横断面を例示する。次の層2902は、図30Aに例示されている最内側層2802の周りに巻き付けられた9本の追加のワイヤストランド2904を含む。図30Bは、ラインB-Bに沿って切り取られた横断面である。次の層3002は図31Aに例示され、層2902の周りに巻き付けられた10本のワイヤストランド3006を含み、ラインD-Dに沿って切り取った横断面が図31Bに示されている。最後に、最外側層3102は、図32Aに見られるように層3002の周りに巻き付けられたさらに10本のワイヤ3108を含み、図32B中の横断面はラインD-Dに沿って切り取られたものである。当業者であれば、使用可能なさまざまなストランド材料特性(例えば直径、引張り強度など)及び巻回パターンを認識するものである。
図33A~37Bには、一変形実施形態が例示されている。この実施形態は、ケーブルが巻回された後、引抜き加工されて表面仕上げ及び機械的特性のいくつかが改変されるということを主要な相違点として、前述の実施形態と類似するものである。図33Aは、ラインA-Aに沿って切り取った図33Bの横断面の中に見られるように、共に巻回された3本のワイヤ3204を含む最内側層3202を例示する。図34Aは、最内側層3202の周りに巻き付けられた9本のワイヤ3304を含む次の層3302を示す。図34Bは、ラインB-Bに沿って切り取った横断面を示す。ワイヤの次の層3402は、ラインC-Cに沿って切り取った図35Bの横断面内で例示されているように、先行する層3302の周りに巻き付けられた10本のワイヤ3404を有する状態で、図35A中に示されている。最外側層3502は、図36A中に示され、先行する層3402の周りに巻き付けられた別の10本のワイヤ3504を含み、図36B中の横断面は、ラインD-Dに沿って切り取ったものである。ワイヤの4層のアセンブリは次に、ケーブルの表面仕上げを改変し、仕上ったケーブルアセンブリの材料特性を所望の値まで改変するために、引抜き加工される。図37Aは、仕上ったケーブルアセンブリ3602を例示しており、図37B中の横断面はラインE-Eに沿って切り取ったものである。当業者であれば、他のケーブル構成も使用可能であり、これらは単に例示的実施形態にすぎない、ということを認識するものである。
B.送達カテーテルシャフト
図38Aは、図25の送達カテーテルシャフト302の横断面図を例示する。この実施形態において、シャフト302は、内側管腔348を伴う管形状を有し、編組された積層材料など、可撓性及び耐キンク性を維持しながらフープ強度を提供する材料で構成されている。このような材料は、幾つか例を挙げると、ポリウレタン、ポリエステル、Pebax、Grilamid TR55及びAESNOなどのポリマー中に埋込まれたステンレス鋼の編組補強又はコイル補強ワイヤを含む。さらなる支持及びフープ強度を提供するため、図38A中で例示されているように、シャフト302の管腔348内部に支持コイル346が配置されている。
支持コイル346を通過しているのは、管状ガイド及び円筒形ロッドを含むさまざまな細長い本体である。例えば、管状ガイドの1つのタイプは、シャフト302の近位端部322から遠位端部324まで管腔348を通って延在する圧縮コイル326であり、アクチュエータロッド64は圧縮コイル326を通って延在する。したがって、圧縮コイルは典型的に121.920~152.400cm(48~60インチ)の範囲内の長さ、及び0.051~0.089cm(0.020~0.035インチ)の範囲内の内径を有し、アクチュエータロッド64がその中を通過できるようになっている。アクチュエータロッド64は、圧縮コイル326の内部をこのコイルに対して回転及び並進運動するように操作可能である。圧縮コイル326は、圧縮下で座屈に耐えかつカラム強度を提供しながら、アクチュエータロッド64ひいてはシャフト302の側方可撓性を可能にする。圧縮コイルは、これらの特性を提供するために304Vステンレス鋼で構成されてよい。
シャフト302のための追加の引張り強度を提供し伸びを最小限に抑えるため張力ケーブル344が同様に支持コイル346を通過してよい。張力ケーブル344は、シャフト302の近位端部322から遠位端部324まで管腔348を通って延在する。したがって、張力ケーブル344は典型的には、0.013cm(0.005インチ)~0.025cm(0.010インチ)の範囲内の直径及び121.920~152.400cm(48~60インチ)の範囲内の長さを有する。好ましい実施形態において、張力ケーブル344は、304Vステンレス鋼で構成されている。
さらに、管形状を有する少なくとも1つの係止ラインシャフト341が、存在してよく、このシャフトは、係止ライン管腔340を有し、この管腔を通って係止ライン92が係止ラインハンドル310と係止構造106の間を通る。係止ラインシャフト341は、管腔348を通って、シャフト302の近位端部322から遠位端部324まで延在する。したがって、係止ライン341は典型的に、121.920~152.400cm(48~60インチ)の範囲内の長さ、0.041~0.076cm(0.016~0.030インチ)の範囲内の内径、及び0.046~0.086cm(0.018~0.034インチ)の範囲内の外径を有する。好ましい実施形態において、係止ラインシャフト341は、304Vステンレス鋼コイルで構成されているが、耐キンク性及び圧縮強度を提供する他の構造又は材料を使用することも可能である。
同様にして、近位要素ライン管腔342を有する、管形状を有する少なくとも1つの近位要素ラインシャフト343が存在していてよい。近位要素ライン90は、近位要素ラインハンドル312と近位要素16の間でこの管腔342を通過する。こうして、近位要素ラインシャフト343は、シャフト302の近位端部322から遠位端部324まで、管腔348を通って延在する。したがって、近位要素ラインシャフト343は、典型的に、121.920~152.400cm(48~60インチ)の範囲内の長さ、0.041~0.076cm(0.016~0.030インチ)の範囲内の内径、及び0.046~0.086cm(0.018~0.034インチ)の範囲内の外径を有する。好ましい実施形態において、近位要素ラインシャフト343は、304Vステンレス鋼コイルで構成されているが、耐キンク性及び圧縮強度を提供する他の構造又は材料を使用することも可能である。
この実施形態において、細長い本体(圧縮コイル326に包囲されたアクチュエータロッド64、張力ケーブル344、係止ラインシャフト341、近位要素ラインシャフト343)は各々、支持コイル346内部で内側管腔348内を自由に「浮動し」、シャフト302の近位端部322及び遠位端部324でのみ固定されている。管腔348は、典型的に、使用中、ヘパリン化生理食塩水で満たされフラッシングされる。代替的又は付加的に、管腔348には1つ以上の充填材、例えば可撓性ロッド、ビーズ、押出し型材、ジェル又は他の流体が充填され得る。好ましくは、充填材は、管腔348内部の細長い本体の幾分かの横方向の動作又は偏りを可能にするものの、一部のケースでは、このような動作を制限する場合がある。代替的には、長さの一部又は全部を、押し込み性の向上のために押出し加工された多管腔シャフトとして形成することができる。典型的には、細長い本体は、シャフトの近位端部及び遠位端部で固定され、その間を横方向に及び回転的に自由に移動することができる。細長い本体のこのような運動自由度は、細長い本体がシャフト302の折曲げ及び/又はトルク印加中に自動調整し再位置付けすることから、シャフト302に増大した可撓性を提供する。細長い本体は、近位端部及び遠位端部で固定されなくてよいということが理解されよう。細長い本体は、管腔348内部で横方向に可動であるために、少なくとも1つの場所でシャフト302に対して単純に無拘束である。好ましくは、細長い本体は、遠位部分内で最大の可撓性を提供するため、少なくともカテーテルの遠位部分内、例えば遠位端部324から5~15cmのところで無拘束である。
さらに、付加的な又は代替的な細長い本体を備えることが可能である。例えば、必要な場合又は所望される場合、図38Bに示されているように、追加の近位要素ライン管腔342を画定する追加の近位要素ラインシャフト343を備えることができる。例えば、本明細書中でさらに具体化されているように、4つの近位要素ライン管腔342を画定する4つの近位要素ラインシャフト343を備えることができ、2つの係止ライン要素シャフト341を設けて2つの係止ライン管腔340を画定することができる。既定の横断面外形のシャフトを収容するか又はその内部にフィットするように、多数の細長い本体の寸法又は直径を調整する(例えば削減する)ことができる。例えば2つの追加のサテライト管腔など、追加のサテライト管腔を設けることができる。
しかしながら、代替的シャフト302設計も同様に使用可能であるということが認識され得る。例えば、図39を参照すると、この実施形態において、シャフト302はここでもまた、内側管腔348及びシャフト302の管腔348の内部に配置された支持コイル346を伴う管形状を有する。支持コイル346の内部で内側管腔348を満たしているのは、図示されているように、圧縮コイル326に包囲されたアクチュエータロッド64、張力ケーブル344、係止ラインシャフト341及び近位要素ラインシャフト343を含むさまざまな細長い本体が内部を通過する管腔を有する押出し型材334である。支持コイル346及び細長い本体は、同じ幾何形状を有していてよく、図38Aに関連して前述したものと同じ材料で構成され得る。
代替的には、図40で示されているように、シャフト302は、シャフト302内部で多数の管腔を創出するための内部間仕切り350を含み得る。例えば、間仕上り350は、任意には圧縮コイル326に取り囲まれたアクチュエータロッド64の通過のための中央管腔352を有することができる。さらに、間仕切り350は同様に、係止ライン92の通過のための少なくとも1つの係止ライン管腔340、及び近位要素ライン90の通過のための少なくとも1つの近位要素ライン管腔341をも創出し得る。任意には、間仕切り350によって画定される管腔の各々を、前出の実施形態の場合のようなコイルなどの耐キンク性要素でライニングすることができる。
図40A~40Bは、シャフト302の突出部分318の実施形態を例示する。図40Aにおいて、突出部分318は、先端リング280及び係止リング282を含む。好ましい実施形態においては、エポキシ及びPEBAXが先端リング280と係止リング282の間に被着されて、それらを共に固着する。係止リング282は、先端リング280と噛合するような幾何形状を有しており、こうして2つの間の相対的アライメントを維持している。図40Bは、シャフト302の突出部分318の別の実施形態を例示する。ここでは、先端リング280は、非外傷性がさらに高い先端部を提供しシャフトへのより円滑な遷移を提供するため、軟質先端部284によって覆われている。
C.係止ライン配置
先に言及した通り、係止ライン92が存在する場合、ライン92は、係止ラインハンドル310と係止構造106の間で少なくとも1つの係止ライン管腔340を通過する。係止ライン92は、前述の通り、係止構造106を係止及び係止解除するために、係止構造106の解放ハーネス108と係合する。係止ライン92は、さまざまな配置で解放ハーネス108と係合してよく、その例が図41A~41Cに例示されている。各実施形態において、突出部分318で終結する送達カテーテル300のシャフト302の内部に2つの係止ライン管腔340が存在する。管腔340は、各管腔340が解放ハーネス108に向けられるようにアクチュエータロッド64の交互の側に配置される。
図41Aは、2本の係止ライン92、92’が単一の係止ライン管腔340を通過しアクチュエータロッド64の一方の側で解放ハーネス108を縫通させられている(アクチュエータロッド64は、明確さのため、結合構造などの周囲のハウジング無しで示されている)実施形態を例示している。係止ライン92、92’は次に、各係止ラインがアクチュエータロッド64の反対側を通るように離隔される。その後、係止ライン92、92’は、アクチュエータロッド64の反対の側で解放ハーネス108’を通過し、共に別の単一の係止ライン管腔340’を通過し続ける。この係止ライン配置は、図26で例示されたものと同じ配置である。
図41Bは、1本の係止ライン92が単一の係止ライン管腔340を通過し、アクチュエータロッド64の一方の側で解放ハーネス108を縫通させられ、係止ライン管腔340に戻される実施形態を例示している。同様にして、別の係止ライン92’は、別の単一の係止ライン管腔340’を通過し、アクチュエータロッド64の反対側に位置設定された異なる解放ハーネス108’を縫通させられ、別の単一の係止ライン管腔340’に戻されている。
図41Cは、両方の係止ライン92、92’が単一の係止ライン管腔340を通過する実施形態を例示している。1本の係止ライン92がアクチュエータロッド64の一方の側で解放ハーネス108を縫通させられ、その後アクチュエータロッド64の反対の側で別の係止ライン管腔340’を通過させられる。もう1つの係止ライン92’は、アクチュエータロッド64’のもう一方の側で別の解放ハーネス108’を縫通させられ、その後、先の係止ライン92と共に別の係止ライン管腔340’を通過させられる。
さまざまな係止ライン配置を使用することができ、以上で例示され説明された配置に限定されない、ということが認識され得る。さまざまな配置は、ハーネス108を別個に又は合同で操作できるようにし、さまざまな量の張力を印加することそして固定装置を残留させなければならない場合には係止ラインの取出しに必要とされる力を変動させることを可能にする。例えば、同時に張力を印加するために、1つ又は2つの管腔を通過する単一の係止ラインを両方の解放ハーネスに連結することができる。
D.近位要素ライン配置
先に言及した通り、近位要素ライン90が存在する場合、ライン90は、近位要素ラインハンドル312と少なくとも1つの近位要素16の間で、少なくとも1つの近位要素ライン管腔342を通過する。前述の通り、近位要素ライン90は、近位要素16と係合して要素16を昇降させる。近位要素ライン90は、近位要素16とさまざまな配置で係合でき、その例が図42A~42Bで示されている。各実施形態において、2つの近位要素ライン管腔342は、突出部分318で終結する送達カテーテル300のシャフト302内部に存在している。管腔342は、アクチュエータロッド64の交互の側に配置されており(アクチュエータロッド64は、明確さのため結合構造などのハウジング無しで示されている)、こうして各管腔342が近位要素16に向けられるようになっている。
図42Aは、1本の近位要素ライン90が、単一の近位要素ライン管腔342を通過している実施形態を例示する。近位要素ライン90は、アクチュエータロッド64の一方の側で近位要素16の小穴360を縫通させられ、アクチュエータロッド64上を通り、アクチュエータロッド64のもう一方の側で別の近位要素16’の小穴360’を縫通させられる。近位要素ライン90はその後、別の近位要素ライン管腔342’を通過する。この近位要素ライン配置は、図26に例示されているものと同じ配置である。
図42Bは、1本の近位要素ライン90が、単一の近位要素ライン管腔342を通過し、アクチュエータロッド64の一方の側で近位要素16の小穴360を縫通させられ、近位要素ライン管腔342に戻される。同様にして、別の近位要素ライン90’が、アクチュエータロッド64の反対の側で別の単一の近位要素ライン管腔342’を通過し、別の単一の近位要素ライン管腔342’に戻される。
さまざまな近位要素ライン配置を使用することができ、以上で例示され説明された配置に限定されない、ということが理解されよう。さまざまな配置は、近位要素を別々に又は合同で操作することを可能にし、さまざまな量の張力を適用することを可能にし、固定装置を残留させるべき場合には、近位要素ラインの取外しに必要な力を変動させる。例えば、両方の近位要素を同時に作動するために、シャフト302内の1つ又は2つの管腔を通過する単一の近位要素ラインを使用することができる。別の例として、各近位要素の個別の動作のために、シャフト302内の1つ以上のそれぞれの管腔を通過する2本の近位要素ラインを使用することができる。
E.ハンドルの主本体
図43は、送達カテーテル300のハンドル304の一実施形態を例示する。先に言及した通り、アクチュエータロッドハンドル316、アクチュエータロッド制御機構314、近位要素ラインハンドル312及び係止ラインハンドル310は全て主本体318と連接されている。ハンドル304はさらに、主本体308と連結された支持ベース306を含む。主本体308は、シャフト302の並進運動を提供するため、支持ベース306に沿って摺動可能であり、主本体308は、シャフトを回転させるために、支持ベース306の周りを回転可能である。
図44は、図43に描かれているハンドル304の主本体308の部分的横断面図を提供する。図示されているように、主本体308は、密閉チャンバ370を含み、このチャンバの内部で、アクチュエータロッド64、近位要素ライン90及び係止ライン92がシャフト302内へ誘導される。密閉チャンバ370は、シャフト302の内側管腔348と流体連通状態にあり、典型的に、生理食塩水が満たされ、ヘパリン又はヘパリン化生理食塩水でフラッシングされる。密閉チャンバ370は、その周囲にシール372を有し、漏出及びチャンバ370への空気の導入を防いでいる。チャンバ370内に空気があれば、図43に例示されているように主本体308を通過してチャンバ370内に入る1つ以上のルア374により、チャンバ370から抽気することができる。この実施形態において、ハンドル304は、主本体308の各々の側に1つずつ、このようなルア374を2つ含んでいる(第2のルアは、図43中、隠れて見えないものの、主本体308の裏側に対称的に位置付けされている)。ここで図44を参照すると、密閉チャンバ370は同様に、さまざまな追加のシール、例えば、アクチュエータロッド64が密閉チャンバ370に入る場所でアクチュエータロッド64を取り囲むアクチュエータロッドシール376及びシャフト302が密閉チャンバ370に入る場所でシャフト302を取り囲むシャフトシール378も有している。
F.係止ラインハンドル及び近位要素ラインハンドル
先に言及した通り、係止ラインハンドル310を用いて係止ライン92を、伸長させ、引込め、さまざまな量の張力を印加し、あるいは取出すことが可能である。同様にして、近位要素ライン90は、近位要素ラインハンドル312を用いて近位要素ライン90を伸長させ、引込め、さまざまな量の張力を印加し、あるいは取出すことが可能である。これらのハンドル310、312は両方共、中を通る適切なライン90、92を操作するように同じように設計されていてよい。
図45は、中を通過する係止ライン92を有する係止ラインハンドル310の実施形態を例示している。係止ラインハンドル310は、遠位端部384、近位端部382、及びその間の細長いシャフト383を有する。遠位端部384は、近位端部382がチャンバ370から出て主本体308を超えて延在するように、密閉チャンバ370の内部に位置付け可能である。係止ライン92の自由端部は、ねじ付きナブ390の近くのハンドル310の壁を通過して、近位端部382の近くに配置される。ハンドル310はさらに、ナブ390上に位置付け可能であるキャップ388を含む。キャップ388での内部ねじ切りは、ねじ付きナブ390上のねじ切りと噛合して、キャップ388が、摩擦によってキャップ388とナブ390及び/又はハンドル310の他の部分との間に係止ライン92の自由端部を保持するようになっている。係止ライン92は細長いシャフト383の中央管腔(図示せず)を通過し、密閉チャンバ370(図44に図示)を通って延在し、シャフト302を通って係止構造106まで延在する。
ハンドル310の遠位端部384近くに配置されているのは、少なくとも1つの翼392である。図45の実施形態においては、2つの翼392が存在し、各々の翼392が細長いシャフト383の反対の側に配置されている。翼392は、半径方向外向きに延在し、近位に湾曲して、図示されている通り、一部分が細長いシャフト383と平行になるようにしている。翼392は、代替的には、半径方向に延在しかつ細長いシャフト383に平行な部分を有する中実又は連続した突出部の形状を有していてもよい。翼392は、係止ラインハンドル310を所望の位置に保持するために使用され、以下でさらに説明するように、この係止ラインハンドルが今度はロックを所望の引張荷重下に保持する。ハンドル310は同様に、少なくとも1つの翼392の半径方向延長部分と整列して半径方向外向きに延在する近位端部382の近くのフィンガグリップ386も含んでいる。こうして、ユーザは、主本体308の外側のフィンガグリップ386の配向から、密閉チャンバ370内部の翼392の配向を決定することができる。フィンガグリップ386は、ハンドル310の操作を支援するため人間工学的目的でも役立ち得る。
翼392の細長いシャフト383に平行な部分は、溝又は鋸歯状の縁394を有する。鋸刃状の縁394は、係止ライン92に張力を印加するために用いられる。図45Aに示されているように、係止ラインハンドル310は、密閉チャンバ370の内部に配置された半管400の内部に位置付けされている。半管400は、上半分402と下半分404を含み、各半分402、404は、翼392の鋸刃状の縁394と噛合する溝又は鋸刃状の縁406を有する。こうして、図46Aに示されているように、鋸刃状の縁394、406と噛合するように翼392を回転させた時点で、細長いシャフト383は所定の場所に保持される。同様にして、図46Bに示されているように、翼392が半分402、404の間に配置され鋸刃状の縁394、406が係合解除されるように、翼392を回転させることができる。この位置において、シャフト383を並進運動させて、係止ライン92内に張力を印加するか又は張力を解放することができる。したがって、鋸刃状の縁394、406を係合解除するべくシャフト383を回転させ、シャフト383を並進運動させ、次にシャフト383を回転し戻して鋸刃状の縁394、406を再係合することによって、ライン92内の張力を調整することができる。代替的には、フィンガグリップ386を引張って、係止ライン92に張力を印加することができる。フィンガグリップ386を引張ることで、係止ラインハンドル310は、半管400の内部で並進運動させられる。このような並進運動は、鋸刃状の縁394、406の角度付け及び翼382の可撓性によって達成可能である。しかしながら、鋸刃状の縁394、406の角度付けは、すなわちフィンガグリップ386を押すことにより、反対方向への並進運動を阻止する。したがって、係止ライン92から張力を解放するために、シャフト383は鋸刃状の縁394、406を係合解除するように回転させられて、シャフト383の並進運動が可能になり、その後シャフト383は鋸刃状の縁394、406を再係合するべく回転し戻される。
係止ライン92を取外すためには、ねじ付きナブ390からキャップ388を取外して、係止ライン92の自由端部を露出させる。2つの自由端部を有する1本の係止ライン92が存在する場合、自由端部のうちの一方を連続的に引張ることで、係止ライン92の全長がカテーテル300から引き出される。2本以上の係止ライン92が存在する場合、各々の係止ライン92は2つの自由端部を有することになる。各係止ライン92の自由端部の一方を連続的に引張ることで、各々の係止ライン92の全長が、カテーテル300から引き出される。
近位要素ラインハンドル312は、係止ラインハンドル310に対応する特徴部を有し、図45A、46A~46Bに例示されたものと同じ形で動作するということが認識され得る。同様に、例えばボタン、ばね、レバー及びノブなどの他のメカニズムを係止ライン92及び近位要素ライン90の操作のために使用することができるということも認識され得る。
このような近位要素ラインハンドルは、先に指摘したように、近位要素を別々に又は合同で操作するように構成可能である。例えば、第1の位置と第2の位置の間で第1の近位要素を移動させるために第1の近位要素ラインに結合されこの近位要素ラインを展開させるように作動可能である第1の近位要素ラインハンドルを設けることができ、第1の位置と第2の位置の間で第2の近位要素を移動させるために第2の近位要素ラインに結合されこの近位要素ラインを展開させるように作動可能である第2の近位要素ラインハンドルを設けることができる。第1及び第2の近位要素ラインハンドルは個別に可動であり得る。
例えば、図15AC1に関連して先に指摘したように、第1及び第2の近位要素ラインハンドルを平行に整列させることができる。この点において、図71Aを参照すると、近位要素ライン制御メカニズム1600の近位要素ラインハンドル393A及び393Bは、同時の作動を可能にして、近位要素16A及び16Bが同時に作動させられるように、かつ/又は個別の作動を可能にして近位要素16A及び16Bを別々に移動させることができるように構成され得る。第1及び第2の近位要素ラインハンドルの各々は、例えば少なくとも1つの翼392と整列して半径方向外向きに延在できる近位端部382近くのフィンガグリップ386を含め、上述の近位要素ラインハンドル312の特徴部のいくつか又は全てを含むことができる。
さらに、近位要素ライン制御メカニズム1600は、各々カラー1602に連結された個別の作動が可能な近位要素ラインハンドル393A及び393Bを含むことができる。カラー1602は送達カテーテルのハンドル304に取付けられるように構成され得、こうして、単一の近位要素ラインハンドルを伴うハンドルのために残りのハンドル構成要素を修正することなく、近位要素ライン制御メカニズム1600を取付けることが可能になる。したがって、単一の近位要素ラインハンドルを用いる近位要素ライン制御メカニズムと共に、ハンドル304を使用することができ、本明細書中で具体化されているように、近位要素ライン制御メカニズム1600などのような2つの近位要素ラインハンドルを用いる近位要素ライン制御メカニズムと共にハンドル304を使用することが可能である。
図71A~71C及び72を参照すると、近位要素ラインハンドル393A及び393Bは、エンドキャップ1604A及び1604Bを含むことができる。エンドキャップ1604A及び1604Bの各々は、フィンガグリップ部分、例えば1つ以上の側方凹状部分1606A及び1606B及び/又は1つ以上の頂部凹状部分1608A及び1608Bを含むことができる。エンドキャップ1604A及び1604Bが整列させられている場合、側方凹状部分1606A及び1606Bは、整列するように構成され得る。同様にして、エンドキャップ1604A及び1604Bが整列させられている場合、頂面凹状部分1608A及び1608Bは、整列するように構成され得る。このようにして、側方凹状部分1606A及び1606Bの設置により、組合された側方凹状凹部1606が形成され得る。組合された側方凹状凹部1606は、例えば、術者がピンチアンドプル動作を用いる場合に、近位要素ラインハンドル393A及び393Bの同時の作動を容易にすることができる。凹状凹部は、エンドキャップ1604A及び1604Bの相対する側に形成され得る。同様にして、頂部凹状部分1608A及び1608Bの設置により、一本指でのプッシュ動作による近位要素ラインハンドル393A及び393Bの同時の動作(例えばプッシュ動作)を容易にすることのできる組合された頂部凹状凹部1608を、エンドキャップ1604A及び1604Bの頂部上に形成することができる。
エンドキャップ1604A及び1604Bは、第1及び第2の近位要素ラインハンドル393A及び393Bの同時及び別々の動作を容易にするためにさまざまな形状を有することができる。例えば、図73に示されているように、エンドキャップ1604A及び1604Bは、反対方向に延在するタブとして形成され得る。タブは、術者により同時に又は別個に把持され得、したがって、同時に又は別個に作動可能である。図74A~74Bに示されているように、エンドキャップ1604A及び1604Bは、例えば各々術者の1本以上のそれぞれの指を受入れるようにサイズ決定されたリングとして形成され得る。近位要素ラインハンドルの遠位端部は、本明細書中で説明されるように、ハンドルを所望の位置に係止するために使用可能である翼392などのラチェット特徴部を含むことができる。本明細書中で具体化されるように、制御メカニズム1600は、一方の又は両方の近位要素ラインハンドル393A及び393Bを引張っている間の術者の手を安定化するために親指プレスを含むことができる。
さらに開示対象主題によると、本明細書中で論述されているように、近位要素16A及び16Bの同時の作動をさらに容易にするために、近位要素ラインハンドル393A及び393Bを作動的にリンク又は連結させることが可能である。例えば、限定的にではなく例示を目的として、図75A~75B、76A~76H及び77A~77Bを参照すると、近位要素ラインハンドル393A及び393Bは、第1及び第2の近位要素ラインハンドル393A及び393が個別に作動可能である係止解除位置と、第1及び第2の近位要素ラインハンドル393A及び393Bが同時に作動可能となるように共に結合されている係止位置と、の間において、可動なインターロック1610を含むことができる。インターロック1610は、第1の近位要素ラインハンドル393Aに対して固定的に又は可動な形で結合され、かつ第2の近位要素ラインハンドル393Bに対して解放可能な形で結合され得る。インターロック1610は、例えば、ラッチ1611及び凹部1612を含むことができる。図75A、76A、76C及び76Eに示されているように、係止位置において、ラッチ凹部1612はラッチ1611を収容することができ、こうして、近位要素ラインハンドル393A及び393Bは、同時の作動のために操作可動に連結されるようになっている。図75B、76B、76D及び76Fに示されているように、係止解除位置においては、ラッチ1611を凹部1612から取外すことができ、こうして近位要素ラインハンドル393A及び393Bは協働的に連結されず、個別に作動可能となる。ラッチ1611は、線形的に(例えば図75A~75Bに示されている通り)、回転的に(例えば図76A~76Dに示されている通り)、又は説明されているようにインターロックを係止し係止解除するための任意の好適な動作で移動させられるように構成され得る。限定ではなく例示を目的として、図76C~76Hに示されているように、ラッチ1611及び凹部1612は、相補的なダブテール形状1613を有し得る。ダブテール形状1613は、ラッチ1611が凹部1612と係合した場合に近位要素ラインハンドル393A及び393Bが互いから引き離されるのを制限することができる。ダブテール形状1613は同様に、インターロックが係止位置と係止解除位置の間で切換わるのを防ぐこともできる。ダブテール形状1613は、対称又は非対称であり得る。例えばダブテール形状1613は、テーパを伴って非対称であり得る。例えば、限定ではなく例示を目的として図76Gに示されているように、少なくともラッチ1611のダブテール形状1613は、ラッチ1611の第1の側1611Aで第1の高さ又は厚みを有し、ラッチ1611の第2の側1611Bで第2の高さ又は厚みまで増大することができ、ここで、第2の高さ又は厚みは第1の高さ又は厚みよりも大きい。係止解除条件にあるときにラッチ1611の第1の側1611Aが凹部の方を向いた状態で、非対称形状は、近位要素ラインハンドル393A及び393Bが完全に整列していない場合にラッチと凹部のより容易な係合を可能にすることができる。凹部1612には、相補的な非対称テーパ1613を具備することができる。限定ではなく例示を目的として図76G~76Hに示されているように、ラッチ1611は、ラッチ1611を保持するために近位要素ラインハンドル393Bのエンドキャップ1604B内に具備された戻り止め1617A及び1617Bの中に収容され得るキャッチ1611Cを含むことができる。例えば、戻り止め1617Bは、ラッチ1611を係止位置(図76G)に保持でき、戻り止め1617Aはラッチ1611を係止解除位置(図76H)に保持できる。キャッチ1611Cは、片持ちアーム1611D上に配置され得る。キャッチ1611C及び戻り止め1617A、1617Bは、ユーザが位置を変えたことをユーザに知らせるために、各位置で明確なスナップ感を提供することができ、意図せずに移動しないようにラッチを保つことができる。ラッチ1611の動作を容易にするために係止レバー1614を具備することができる。係止位置と係止解除位置との間でのインターロック1610の作動は、片手又は1本の指ででも行なうことができる。第1の近位要素ラインハンドル393A及び第2の近位要素ラインハンドル393Bのいずれの中にでも、ラッチ1611及び凹部1612のいずれかを配置することができる。
開示対象主題によると、インターロックは、回転運動によってインターロック1610を係止位置(図77A中に示されている通り)と係止解除位置(図77B中に示されている通り)の間で移動させることができるように構成され得る。例えば、図77A~77Bに示されているように、エンドキャップ1604Aの回転は、インターロック1610を係止位置と係止解除位置の間で移動させることができる。したがって、可動ラッチを具備するのではなくむしろ、インターロックをエンドキャップ1604Aに固定的に結合するか又はエンドキャップ1604と一体として形成して、エンドキャップ1604A又は1604Bの一方の回転によってか又は近位要素ラインハンドル393A又は393B全体の回転によってインターロックを係止位置と係止解除位置の間で移動させることができるようにすることが可能である。くぼみ1620がインターロック1610の回転を容易にすることができ、本明細書中で具体化されているように、全体的回転動作を制限するためにリブ1622及び溝1623を具備することができる。
開示対象主題によると、図15AC2を参照して本明細書中で指摘されたように、近位要素ラインハンドルを同軸上に整列させることができる。このような構成は、第1及び第2の近位要素ラインハンドルの同時又は個別の作動ひいてはそれぞれ近位要素の同時の又は個別の作動を可能にすることができる。
本明細書中で指摘されたさまざまな構造及び特徴は、同軸上に整列された第1及び第2の近位要素ラインハンドルででも同様に提供可能である。例えば、限定ではなく例示を目的として図78A~図78Cを参照すると、近位要素ラインハンドルは同軸上に整列された状態で示されている。各近位要素ラインハンドル393A及び393Bは、フィンガグリップ386A及び386Bを含むことができる。近位要素ラインハンドル393A及び393Bは、フィンガグリップ386A及び386Bを整列状態へそして非整列状態へと促すために回転可能であり得る。図78Aは、両方共に上昇位置にある同軸整列した近位要素ラインハンドル393A及び393Bを示す。図78Bは、下降位置にある近位要素ラインハンドル393A及び上昇位置にある近位要素ラインハンドル393Bを示す。図78Cは、両方共に下降位置にある同軸整列した近位要素ラインハンドル393A及び393Bを示す。したがって、近位要素ラインハンドルは、上昇位置から下降位置まで同時に又は個別に作動可能である。
さらに、図45の係止ラインハンドの実施形態に関連して本明細書中で説明されている通り、図79の近位要素ラインハンドルは、少なくとも1つの翼392(例えば図45も参照)と整列した状態で半径方向外向きに延在し得る近位端部382の近くなど、フィンガグリップ386Aが備わった第1の近位要素ラインハンドル393A及び/又は第2の近位要素ラインハンドル393Bを含む。第2の近位要素ラインハンドル393Bは、第1の近位要素ラインハンドル393Aの内部で螺合され得、フィンガグリップ386Bを回転させることによって操作され得る。例えば、本明細書中で説明されている通りのキャップ388を設けることもできる。
さらに開示対象主題によると、インターロック1610は、図80に示されている押しボタン1615によって係止及び係止解除され得る。先に指摘したように、第1及び第2の近位要素ラインハンドルが個別に作動可能である係止解除位置と、第1及び第2の近位要素ラインハンドルが共に作動可能となるように共に結合されている係止位置と、の間において移動するように、インターロックを提供することができる。例えば、インターロックは、本明細書中で説明されているさまざまなラッチ及び凹部構成のいずれかを含むことができる。付加的に又は代替的に、そして限定ではなく例示を目的として図81に示されているように、インターロック1610は、取外し可能な要素、例えば取外し可能な留め金1616であり得る。インターロック1610は、取外し可能な留め金1616がハンドルに結合されている場合に、係止位置にあることができ、インターロック1610は、取外し可能な留め金1616がハンドルから取外されている場合に、係止解除位置にあることができる。取外し可能な要素は留め金に限定されず、例えばピンなど、任意の実用設計であり得る。
図15AC3及び15AC4に関して先に説明した通り、第1及び第2の近位要素ラインハンドルを、回転可能なスイッチにより作動させることができる。限定ではなく例示を目的として図82A~82B及び83A~83Bを参照すると、制御メカニズム1600の近位要素ラインハンドル393A及び393Bは、中心軸1626を中心にして回転的に移動するように構成された第1及び第2の回転可能なスイッチ1624A及び1624Bを含むことができる。回転可能なスイッチ1624Aは、近位要素ライン90Aに連結され得、こうして中心軸1626を中心とした回転可能なスイッチ1624Aの作動が第1及び第2の位置の間の近位要素16Aの運動をひき起こすようになっている。同様にして、回転可能なスイッチ1624Bは、近位要素ライン90Bに連結され得、こうして中心軸1626を中心とした回転可能なスイッチ1624Bの作動が近位要素16Bの運動をひき起こすようになっている。このようにして、近位要素16A及び16Bの位置に関する視覚的キュー(cue)を提供することができる。例えば、スイッチが共に上昇している状態で(例えば図82Aに示されている通り)、回転可能なスイッチ1624A及び1624Bは、上昇位置にある近位要素16A及び16Bに形態が類似し得る。スイッチが押し下げられた状態で(例えば図82Bに示されている通り)、回転可能なスイッチ1624A及び1624Bは、下降位置にある近位要素16A及び16Bに形態が類似し得る。所望される場合、回転可能なスイッチ1624A及び1624Bは、共に遊星ギヤ及び/又はクラッチシステム(図示せず)とリンクされて、近位要素ラインスイッチの作動ひいては近位要素90A及び90Bの同時的な動作を可能にする。
回転可能なスイッチを用いた近位要素ラインの作動のためには、近位要素ライン90A及び90Bを、回転可能なスイッチ1624A及び1624Bに結合されたスプール(図示せず)の周りに巻回させることができる。代替的には、図83A~83Bに示されているように、回転可能なスイッチ1624A及び1624Bは、ギヤアンドラック配置を含むことができる。例えば、回転するスイッチ1624Aは、ギヤ1618Aがラック1619Aと係合しこのラックを軸方向に移動させるようにすることができ、回転するスイッチ1624Bは、ギヤ1618Bがラック1619Bと係合しこのラックを軸方向に移動させるようにすることができる。スイッチ1624A及び1624Bは、近位要素ラインの同じ側(例えば図83Aに示されている通り)又は近位要素ラインの相対する側(例えば図83Bに示されている通り)に配置可能である。
開示対象主題によると、そして限定ではなく例示を目的として図72、76A~76B及び82A~82Bを参照すると、近位要素ラインハンドル393A、393Bの一方又は両方がマーカ、例えば単一の窪みなどの触覚マーカ1628を含むことができる。術者は、触覚マーカを用いて、どちらの近位要素ラインハンドル393A、393Bが、その作動などによって、対応する近位要素16Aを移動させるかを決定し識別することができる。さらに、対応する近位要素16Aに、対応するX線不透過性の又はエコー源性マーカを具備することができる。所望される場合、他方の近位要素ラインハンドル393B及び対応する近位要素16Bには、それぞれ2つの窪み及び2つのX線不透過性又はエコー源性マーカなどのそれぞれのマーカが具備され得る。マーカ1628は、所望される場合、僧帽弁前側の対応する近位要素16A、16Bを制御するためにどの近位要素ラインハンドル393A、393Bを作動させるべきか、及び僧帽弁後側の対応する近位要素16A、16Bを制御するためにどの近位要素ラインハンドル393A、393Bを作動させるべきかを術者が知ることを可能にする。こうして、正しい弁尖の捕捉、代替的には解放を保証することができる。触覚マーカに対して付加的に又は代替的に、マーカは、視覚的マーカとすることができ、限定的にではなく、例えば、近位要素ラインハンドル393A及び393Bは、異なる色であるか、又はその上に配置された色の異なるマーカを有することができる。
このようにして、開示対象の主題によると、近位要素16A、16Bに対して近位要素ラインハンドル393A、393Bを配置するためのさまざまな方法が提供されている。例えば第1のアーム53A及び第1の近位要素16Aをインプラントの第1の側に配置することができ、第2のアーム53A及び第2の近位要素16Bをインプラントの第2の側に配置することができる。このようにして、どの近位要素ラインハンドル393A、393Bがインプラントの各々の側を制御するかを決定することができる。限定ではなく例示を目的として、植込み型固定装置14のエコー輝度を使用することができる。例えば、固定装置14の一方の側を他方の側よりもエコー源性の高い又は低いものにするため、固定装置14の一構成要素又はさまざまな構成要素のエコー源性をより高く又は低くするようにすることが可能である。例えば、近位要素16A、近位要素16A上のカバー及び/又は近位要素ライン90Aにエコー源性材料をコーティングするか又は具備することができる。付加的に又は代替的に、インプラントの一方の側にエコー源性材料を伴うリングを設置し、インプラントの他方の側に、エコー源性がより高い又は低いリングを設置することができる。例えば、リングを、半分ステンレス鋼で、半分プラスチックで作ることが可能である。本明細書中で具体化されているように、例えば術者により近位要素ライン90A、90Bのうちの1つを通って送達される少量の電流は、電気信号がその中を走る間、近位要素ライン90A又は90Bを、もう一方の近位要素ラインよりもエコー源性の高いものにすることができる。術者は、それぞれの近位要素16A、16Bに対応する近位要素ラインハンドル393A、393Bを確認するために試験的な作動を行なうことができる。
限定ではなく例示を目的として、図84及び85を参照すると、近位要素16A、16Bに対して近位要素ラインハンドル393A、393Bを配置するために、可変的蛍光透視を使用することができる。一例として、固定装置14の第1の側は、第2の側の蛍光透視とは異なる蛍光透視を有することができる。例えば、X線不透過性マーカ1629を、アーム53又は近位要素16のうちの1つの上など、固定装置14の一方の側に設置することができる。例えば、X線不透過性マーカの設置には、アーム53又は近位要素16のうちの一方に対する金属バンド(Au、Ptlr、Taなど)の圧着が含まれ得る。マーカは、アーム上(1629A)、アームの先端(1629B)又はアームの周り(1629C)に設置され得る。図84に示されているように、2つの装置アーム又は近位要素のうちの一方の上に設置されたマーカが、クリップ装置上に非対称の基準特徴部を定める。この特徴部は、近位要素ラインハンドルの1つが作動させられている場合にどの近位要素が応答している(移動している)かをユーザが理解するのを助けるという点において有用である。僧帽弁を治療する場合、このX線不透過性マーカは、どちらの近位要素ラインハンドルが前尖又は後尖の把持に対応するかを識別又は記憶する上でユーザの一助となる視覚的キューを(X線画像化の下で)与える。付加的に又は代替的に、例えば図85に示されているように、X線不透過性材料(Au、Ptlr、Taなど)をストランドとして被覆100の一端部へ織り込むことができる。術者は、X線不透過性マーカを含む固定装置の側に対応する触覚マーカ1628を有する近位要素ラインハンドル393A、393Bを確認するために試験的な作動を行なうことができる。
さらに、術者は、左心房内においてひとたび固定装置14が僧帽弁と整列させられた時点で、触覚マーカ1628を有する近位要素ラインハンドル393Aを反復的に作動させることができる。近位要素ラインハンドル393のこの反復的な作動は、対応する近位要素16が、触覚マーカ1628を有する近位要素ラインハンドル393の作動によって上昇、下降する「波動」動作を結果としてもたらすことができる。したがって、術者は、手技の間、僧帽弁のどちらの側(前側又は後ろ側)に「波動する」近位要素が配置されているか、及びどの近位要素ラインハンドル393がその側と結び付けられているかを確認することができる。
本明細書中でさらに開示されているように、かつ限定ではなく例示を目的として図86及び87を参照すると、送達カテーテルシャフト302は、近位端部から遠位端部まで延在する1つ以上の流体導管1660を含むことができる。流体導管の遠位端部は、植込み型固定装置14の第1の側に近接して位置付けされ得る。流体導管1660の近位端部は、近位要素ラインハンドル393と結び付けられ得る。近位要素ラインハンドル393は、例えばルア連結(Luer connection)等を伴う流体口を備え、これにタンク(例えばシリンジ又はプランジャ)を取り付けて流体導管1660を通じてX線不透過性流体1664をフラッシングすることができる。例えば、図86に示されているように、両方の近位要素ラインハンドル393A及び393Bに、それぞれ流体導管1660A及び1660Bを通じてX線不透過性流体をフラッシングするためのシリンジ又はプランジャ1662A及び1662Bを具備することができる。代替的には、各々の近位要素ラインハンドル自体に、X線不透過性流体のタンク及び、それぞれの流体口及び流体導管を通じてX線不透過性流体を流し出すためのプランジャ又はシリンジを具備することができる。例えば、図87に示されているように、X線不透過性流体1664が流体導管1660Aを通してフラッシングされた時点で、流体1664はインプラントの第1の側に向かって誘導され、術者は、例えば目に見える流体1664が排出されている場所に基づいて、第1の近位要素ラインハンドル393Aが僧帽弁のどちらの側(前側又は後ろ側)と結び付けられているかを確認することができる。
本明細書中で説明されているように、単一の近位要素ラインを提供することができ、あるいは、第1及び第2の近位要素ラインを提供することができる。本明細書中で説明されているように、近位要素ラインがシャフト12を通り、近位要素16A、16Bを通って延在でき、シャフト12を通って戻るように延在することができる(例えば図42Aに示されている通り)。代替的には、各々の近位要素ライン90A、90Bは、シャフト12を通って、それぞれの近位要素16A、16Bを通って延在でき、各々は、(例えばそれぞれ管腔342、342’を通って収容された近位要素ライン90、90’を描く図42Bに示されているように)シャフトを通って戻るように延在することができる。代替的には、各々のAライン90A、90Bは、シャフト12を通り、それぞれの近位要素16A、16Bを通って延在でき、その各々はシャフト12及び/又は結合部材19(例えば図15Iに図示された通り)に結合され得る。
開示対象主題によると、第1の近位要素ラインは第1の端部、第2の端部、及び第1の端部と第2の端部の間の中間部分を含むことができる。同様にして、第2の近位要素ラインは、第1の端部、第2の端部及び第1の端部と第2の端部の間の中間部分を含むことができる。近位要素ライン90Aの第1の端部を近位要素ラインハンドル393Aに結合することができ、近位要素ライン90Bの第1の端部を近位要素ラインハンドル393Bに結合することができる。本明細書中で論述されているように、各々の近位要素ラインの一方又は両方の端部を対応する近位要素ラインハンドルに結合するために、さまざまな構成を備えることができる。例えば、図88A~88Bを参照すると、近位要素ラインハンドル393Aは、内部にピン1630が通っている管腔を有することができる。ピンは、第1の半分1632及び第2の半分1634を有することができ、それぞれが、歯1636及び対向する側の半分の対向する歯1636を受けるように構成された相補的歯凹部1638を有する。ピン1630の第1の半分1632及び第2の半分1634は、近位要素ラインハンドル393Aの管腔内に圧入でき、近位要素ライン90A(図示せず)はピン1610の2つの半分1632、1634の間に延在することができる。歯1636は、近位要素ライン90A上の2つの半分1632、1634のグリップ又は「噛み合い」を改善できる。限定ではなく例として、図88Bに示されているように、近位要素ラインハンドル393Aの管腔の横断面は六角形であり得、ピン1610は横断面が円形で、管腔内に挿入されたときに圧縮されるようにサイズ決定され得る。
一代替案としては、限定ではなく例示を目的として図89を参照すると、近位要素ラインハンドル393Aは、中心軸及びねじ1650を内部に伴う管腔を有することができる。ねじ1650Aは、内部にコレット(collet)1652Aを伴う管腔を有することができ、このコレット1652Aはフィンガ1654Aを有する。近位要素ライン90Aは、フィンガ1654Aの内部に形成された凹部を用いて内部に配置され得る。ねじ1650Aを締めると、コレットのフィンガ1654Aは近位要素ライン90A上で締まり、近位要素ライン90Aを把持することができる。この点において、近位要素ライン90Aは、張力が掛かった状態、又は張力が掛けられていない状態で固定され得る。近位要素ライン90Aを緊張状態に設定することは、製造プロセスにとって有利であり得る。近位要素ライン90Bは、類似のコレットシステムを用いて近位要素ラインハンドル393Bに結合可能である。
別の代替案として、限定ではなく例示を目的として図90を参照すると、第1及び第2近位要素ラインハンドル393Aの各々は、中央軸及びラチェット1640を内部に伴う管腔を有することができる。ラチェット1640は、近位要素ラインハンドル393Aの管腔の内部で、1つ以上のラチェット凹部1646と係合できる、1つ以上のラチェットプロング1644を有することができる。本明細書中で具体化されているように、ラチェットは、ターンノブによって、又はねじ回し、六角レンチなどを用いて、一方向に回転可能である。各々の近位要素ライン90Aをラチェット1640の周りに巻き付けることができ、これにより近位要素ライン90Aは近位要素ラインハンドル393Aに結合される。ラチェットプロング1646及びラチェット凹部1646は、反対方向へのラチェット1640の回転運動を抑止又は防止する。各近位要素ラインハンドル393A、393Bの管腔は同様に、コーン部分1648を含むこともできる。近位要素ラインハンドル393Aのコーン部分1648は、近位要素ラインハンドル管腔の中心軸から半径方向外向きにそれぞれの近位要素ライン90Aを誘導することができ、これにより、ターンノブが回転させられるにつれてラチェット1640を中心とする近位要素ライン90Aの巻付けを容易にすることができる。所望される場合、ラチェットを解放するための解放メカニズムを、各近位要素ラインに具備することができる。
G.アクチュエータロッド制御機構及びハンドル
アクチュエータロッド64は、アクチュエータロッド制御機構314及びアクチュエータロッドハンドル316を用いて操作されてよい。図47は、アクチュエータロッド制御機構314及びアクチュエータロッドハンドル316を含むハンドル304の一部分の横断面図を示す。アクチュエータロッドハンドル316は、ハンドル314の近位端部に位置設定されている。アクチュエータロッドハンドル316は、アクチュエータロッド64の近位端部に固定的に取付けられている。アクチュエータロッド64は、図示されているようにホルダ428の内部に配置されているコレット426を通って挿入される。ホルダ428は、アクチュエータロッド制御機構314の内部ねじ山432と噛合する外部ねじ山434を有する。したがって、以下でさらに詳述するように、アクチュエータロッド制御機構314の回転が螺合作用によってホルダ428をアクチュエータロッド制御機構314に沿って並進運動させる。アクチュエータロッド制御機構314は、ハンドル304の主本体308と回転可能に結合され、唇状部430により所定の場所に保持されている。
図47Aを参照すると、アクチュエータロッド制御機構314は、矢印436によって標示されているように、時計回り方向又は反時計回り方向に手動で回転させることができる。アクチュエータロッド制御機構314の回転は、アクチュエータロッド64を並進運動(伸長又は引込め)させて、固定装置14の遠位端部18を操作する。具体的には、アクチュエータロッド制御機構314の回転は、隣接するホルダ428の外部ねじ山434をアクチュエータロッド制御機構314の噛合した内部ねじ山432に沿って並進運動させる。ホルダ428自体の回転は、ホルダ428から突出しハンドル304の主本体308内の溝438の中に入り込む保持ピン424によって阻止される。ホルダ428が並進運動するにつれて、各々の保持ピン424はその対応する溝438に沿って並進運動する。コレット426はホルダ428に取付けられていることから、コレット426は、ホルダ428に沿って並進する。アクチュエータロッド64を同時に並進運動させるために、アクチュエータロッド64はピン422によってコレット426に対し取外し可能に取付けられる。ピン422は、図47に例示されているように、コレット426の周りに部分的に巻付くクリップ形状を含めた任意の好適な形態を有していてよい。こうして、アクチュエータロッド制御機構314の回転は、アクチュエータロッド64の並進運動の微調整ひいては遠位端部18の位置付けの微調整を提供する。
図47Bを参照すると、図示されているピン422の取外しにより、アクチュエータロッドハンドル316及び固定的に取付けられたアクチュエータロッド64をコレット426から係合解除することが可能になる。ひとたび係合解除されると、アクチュエータロッドハンドル316を手で回転させることにより、矢印440により標示されているようにアクチュエータロッド64を回転させることができる。先に説明した通り、アクチュエータロッド64の回転により、固定装置14のねじ付きスタッド74と送達カテーテル300のねじ付きジョイナ332は係合又は係合解除される。これは、送達カテーテル300と固定装置14を取付けたり離脱させたりするためにも使用される。さらに、アクチュエータロッド64が係合解除状態にある場合、アクチュエータロッドハンドル316を引張り、アクチュエータロッド64をハンドル304から引抜くことによって、アクチュエータロッド64を任意に引込め、カテーテル300から任意に取出すことができる。
利用分野、標的部位及び選択されたアプローチに応じて、開示対象主題の装置は、当業者にとって周知の方法で修正されるか又は当該技術分野において公知である他の装置と併せて使用されてもよい。例えば、送達カテーテルは、所望される利用分野のために、長さ、剛性、形状及び操作性が修正されてもよい。同様にして、送達カテーテルに対する固定装置の配向は、逆転されるか又は他の形で変更され得る。起動装置は、交番する方向(押し開き、引き閉じ又は引き開き、押し閉じ)に駆動されるように変更可能である。材料及び設計は例えばより高い可撓性又は剛性を有するべく変更されてよい。また、固定装置構成要素は、異なるサイズ又は形状のものへと改変されてよい。さらに、本開示対象の主題の送達カテーテルを使用して他のタイプの装置、詳細には、幾つか例を挙げると、血管形成術、アテローム切除術、ステント送達、塞栓ろ過及び除去、中隔欠損修復、組織近置及び修復、血管締付け及び結紮、縫合、動脈瘤修復、血管閉塞、及び電気生理学的マッピング及びアブレーションにおいて使用される血管内のかつ低侵襲性の外科装置を送達することも可能である。したがって、本開示対象の主題の送達カテーテルは、高い圧縮、引張及びねじれ強度と共に、高度の可撓性、耐キンク性を有する装置が所望される利用分野のために使用可能である。
H.プッシャハンドル設計
通常は120~180°の角度で首尾よく弁尖を係合し把持した後、アクチュエータロッド64を手で回転させて、固定装置の遠位要素を操作する。これにより、図11Bに示されているように、遠位要素は近位に一定の角度、例えば60°まで移動させられる。しかしながら、図15Bを参照すると、グリッパプッシャ81及び近位要素アクチュエータ90も同様に、遠位要素18間の角度が減少するにつれて引込められる必要がある。図70は、これらの運動を連係させるハンドルの一実施形態を示す。図中に示されているように、図44の近位要素ラインハンドル312には、固定装置のグリッパプッシャ81まで延在するグリッパプッシャアクチュエータ411に連結されたばね式プッシャ取付け具414が付いている。このばね式プッシャ取付け具414は、近位要素ライン90を取り囲むものの、この近位要素ラインとは独立して移動する。ばね413は、グリッパプッシャアクチュエータに対して小さな力をグリッパプッシャ81上に及ぼすことによって、近位要素ライン90上に張力を提供するように機能する。さらに、遠位要素18を閉じるためにアクチュエータロッド64を作動させた場合にグリッパプッシャ81が引込められるように、アクチュエータロッド64にグリッパプッシャアクチュエータワイヤ412が結合される。図70に示されているように、プッシャアクチュエータワイヤ412は、ばね式プッシャ取付け具414と相互作用して、遠位要素18が閉じられたときにばね式プッシャ取付け具414を引込める。一方で、プッシャアクチュエータワイヤ412の遠位端部は、グリッパプッシャ81の遠位運動が遠位要素18の運動とは独立したものとなるように、ばね式プッシャ取付け具414に対して遠位に摺動するように構成されている。これにより、近位要素16と遠位要素18間の離隔が可能となり、弁尖の把持の一助となる。最後に、ばね式プッシャ取付け具414と近位要素ラインハンドル312の間のばね結合に起因して、近位要素アクチュエータ90も同様に、グリッパプッシャアクチュエータ411の引込みと組合わさって引込められる。とりわけ、ばね413を介したばね結合に起因して、近位要素アクチュエータ90は、グリッパプッシャアクチュエータ411よりもさらに遠く移動できる。この追加の移動は、ばね413の拡張を介して可能にされ、近位要素16と遠位要素18の間の角度が減少させられるにつれての近位要素アクチュエータ内の緩みがなくなるように機能する。
7.5.マルチカテーテル誘導システム
A.誘導システムの概要
図48を参照すると、本開示対象の主題のマルチカテーテル誘導システム1の一実施形態が例示されている。システム1は、近位端部1014、遠位端部1016及びその中を通る中央管腔1018を有する外側ガイドカテーテル1000と、近位端部1024、遠位端部1026及びその中を通る中央管腔1028を有する内側ガイドカテーテル1020を含み、内側ガイドカテーテル1020は図示されている通り、外側ガイドカテーテル1000の中央管腔1018の内部で同軸上に位置付けされている。カテーテル1000、1020の遠位端部1016、1026は、それぞれ、典型的には血管腔などの体内管腔を通して、体腔まで通り抜けられるようにサイズ決定されている。したがって、遠位端部1016は好ましくは、おおよそ0.102cm~1.270cm(0.040インチ~0.500インチ)の範囲内、より好ましくは0.330cm~0.813cm(0.130インチ~0.320インチ)の範囲内の外径を有する。中央管腔1018は、内側ガイドカテーテル1020の通過用にサイズ決定され;遠位端部1026は好ましくは、おおよそ0.089cm~0.711cm(0.035インチ~0.280インチ)より好ましくは0.305cm~0.508cm(0.120インチ~0.200インチ)の範囲内の外径を有する。中央管腔1028は、その中をさまざまな装置が通過するようにサイズ決定される。したがって、中央管腔1028は好ましくは、おおよそ0.066cm~1.143cm(0.026インチ~0.450インチ)の範囲内、より好ましくは0.254cm~0.458cm(0.100インチ~0.180)の範囲内の内径を有する。
図48は、任意にはシステム1内に含まれ得る内側ガイドカテーテル1020の内部に位置付けされた介入カテーテル1030を例示しているが、他の介入装置も使用可能である。介入カテーテル1030は、近位端部1034及び遠位端部1036を有し、ここで遠位端部1036に介入ツール1040が位置付けされる。この実施形態において、介入ツール1040は、離脱可能な固定装置又はクリップを含む。任意には、介入カテーテル1030は同様に、図示されている通りの止め具1043を有するノーズピース1042を含むこともできる。止め具1043は、内側ガイドカテーテル1020の中央管腔1028に介入ツール1040が入るのを阻止する。こうして、介入カテーテル1030は、止め具1043が内側ガイドカテーテル1020の遠位端部1026と接触してさらなる引込めを阻止するまで、前進させられ引込められてよい。これにより、一部の手技の間、一定の利点を提供することができる。このような止め具1043を含む実施形態においては、介入カテーテル1030は、外側ガイドカテーテル1000を通した前進のため内側ガイドカテーテル1020内部に予め組込まれており、あるいは、標的組織まで前進するために介入カテーテル1030と内側ガイドカテーテル1020の両方が外側ガイドカテーテル1000内に予め組込まれる、ということが理解され得るであろう。これは、止め具1043が内側ガイドカテーテル1020を通した介入カテーテル1030の前進を阻止するからである。
外側ガイドカテーテル1000及び/又は内側ガイドカテーテル1020は、遠位端部1016、1026を所望の方向に位置付けするため、予め湾曲させられかつ/又は案内装置(steering mechanism)を有しており、その実施形態については以下で詳述する。外側ガイドカテーテル1000の予備湾曲又は案内によって、遠位端部1016は第1の方向に向けられて一次湾曲部を創出し、一方、内側ガイドカテーテル1020の予備湾曲及び/又は案内は、第1の方向とは異なる第2の方向に遠位端部1026を向けて、二次湾曲部を創出する。一次湾曲部と二次湾曲部は、合せて複合湾曲部を形成する。同軸ガイドカテーテル1000、1020を通した介入カテーテル1030の前進により、介入カテーテル1030は、複合湾曲部を通って所望の方向に向かって、通常は介入カテーテル1030がその標的に到達できるようにする方向に誘導される。
外側ガイドカテーテル1000及び内側ガイドカテーテル1020の案内は、1つ以上の案内装置の作動によって達成され得る。案内装置の作動は、典型的には各カテーテル1000、1020と連結されたハンドル上に位置設定されているアクチュエータを用いて達成される。図48に例示されているように、ハンドル1056は、外側ガイドカテーテル1000の近位端部1014に連結され、使用中、患者の体外にとどまる。ハンドル1056は、例えば一次湾曲部を形成するために、外側ガイドカテーテル1000を折曲げるか、弧状にするか又は再整形するのに使用可能である案内アクチュエータ1050を含む。ハンドル1057は、内側ガイドカテーテル1020の近位端部(図示せず)に連結され、任意にはハンドル1056と連接して、図示されている通り、1つのより大きなハンドルを形成することができる。ハンドル1057は、以下の節で説明されるように、例えば二次湾曲部を形成し、角度シータにわたって内側ガイドカテーテル1020の遠位端部1026を移動させるために、内側ガイドカテーテル1020を折曲げるか、弧状にするか又は再整形するのに使用可能である案内アクチュエータ1052を含む。
さらに、係止アクチュエータ1058、1060を使用して、係止メカニズムを作動させカテーテル1000、1020を特定の位置に係止することができる。アクチュエータ1050、1052、1058、1060はボタンとして例示されているが、これらのアクチュエータ及びハンドル1056、1057上に位置設定されているあらゆる追加のアクチュエータは、ノブ、サムホイール、レバー、スイッチ、トグル、センサ又は他の装置を含めた、任意の好適な形態を有することができる。ハンドルの他の実施形態は、後出の節において詳述される。
さらに、ハンドル1056は、カテーテル1000、1020の位置又はアクチュエータ上の力を標示するデータなどの情報の数値的又はグラフィックディスプレイ1061を含むことができる。アクチュエータ1050、1052、1058、1060及び任意の他のボタン又はスクリーンを、両方のカテーテル1000、1020と連結する単一のハンドル上に配置することができる、ということも理解されよう。
B.例示的位置
図49A~49Dは、カテーテル1000、1020が保ち得る位置の例を示す。図49Aを参照すると、外側ガイドカテーテル1000は、一次湾曲部1100を含む位置へと予め湾曲させられかつ/又は、案内され得る。一次湾曲部1100は典型的に、おおよそ0.318cm(0.125インチ)~2.540cm(1.000インチ)の範囲内、好ましくはおおよそ0.635cm(0.250インチ)~1.270cm(0.500インチ)の範囲内の曲率半径1102を有するか、又はおおよそ0°~120°の範囲内の湾曲部を形成する。図示されているように、位置が一次湾曲部1100のみを含む場合、遠位端部16は、単一平面X内に存在する。遠位端部16で中央管腔18の中心を通って横断する軸xが、平面Xの内部に存在する。
図49Bを参照すると、内側ガイドカテーテル1020は、外側ガイドカテーテル1000の中央管腔1018を通って延在する。内側ガイドカテーテル1020は、二次湾曲部1104を含む位置へと予め湾曲させられ、かつ/又は案内され得る。二次湾曲部1104は典型的に、おおよそ0.127cm(0.050インチ)~1.905cm(0.750インチ)の範囲内、好ましくはおおよそ0.318cm(0.125インチ)~0.635cm(0.250インチ)の範囲内の曲率半径10600を有するか、又はおおよそ0°~180°の範囲内の湾曲部を形成する。二次湾曲部1104は、一次湾曲部1100と同じ平面、すなわち平面X内に存在し得、あるいは、図示されている平面Zなどの異なる平面内に存在する可能性もある。この例において、平面Zは平面Xに実質的に直交している。遠位端部1026において内側ガイドカテーテル1020の中央管腔1028の中心を通って横断する軸zは、平面Zの内部に存在する。この例において、軸x及び軸zは互いに実質的に90°の角度にあるが、軸x及び軸zが互いに対して任意の角度にあってよいということが理解されよう。同様に、この例においては、一次湾曲部1100及び二次湾曲部1104は異なる平面内、詳細には実質的に直交する平面内に存在するものの、湾曲部1100、1104は代替的には同じ平面内に存在してもよい。
ここで図49Cを参照すると、内側ガイドカテーテル1020は、遠位端部1026が角度シータ1070にわたり移動できるようにするためにさらに操作され得る。角度シータ1070は、おおよそ-180°~+180°の範囲内、典型的には-90°~+90°の範囲内、場合によっては-60°~+60°、-45°~+45°、-30°~+30°以下の範囲内にある。図示されているように、角度シータ1070は、平面Yの内部に存在する。詳細には、遠位端部1026において中央管腔1028の中心を通って走る軸yは、軸zと角度シータ1070を形成する。この例において、平面Yは平面X及び平面Zの両方に直交する。軸x、y、zは全て、平面X、Y、Zの交差点とも一致する中央管腔1028内部の一点で交差する。
同様にして、図49Dは、軸zの反対側での角度シータ1070にわたる遠位端部1026の移動を例示する。ここでもまた、角度シータ1070は、軸zから、遠位端部1026で中央管腔1016の中心を通って延びる軸yまで測定される。図示されているように、角度シータ1070は、平面Y内に存在する。したがって、一次湾曲部1100、二次湾曲部1104及び角度シータ1070は全て、異なる平面内に、そして任意には直交平面内に存在し得る。しかしながら、一次湾曲部1100、二次湾曲部1104及び角度シータ1070が内部に存在する平面は、互いに従属し合ってよく、したがってこれらのうちのいくつかが同じ平面の内部に存在する可能性も許容されると思われる。
さらに、外側ガイドカテーテル1000は、追加の湾曲部又は形状を提供するように、予備成形されかつ/又は案内可能であってもよい。例えば、図50Aに例示されているように、追加の湾曲部1110が、一次湾曲部1100に近位の外側ガイドカテーテル1000によって形成され得る。この例において、湾曲部1110は、外側ガイドカテーテル1000の遠位端部1016を持上げるか又はこれを上昇させ、これにより今度は、内側ガイドカテーテル1020の遠位端部1026が上昇させられる。このような持上げは、図50Bに例示されている。ここで、システム1は、持上げに先立って破線で図示されており、ここで軸y’は軸zと軸x’の交差点を通過している。湾曲1110の適用後、システム1の遠位部分は軸zの方向に持上げられ、こうして軸x’は軸x’’まで上昇させられ、軸y’は軸y’’まで上昇させられる。これにより、遠位端部1026は所望の高さまで上昇させられる。
図49A~49D及び図50A~50B中に例示されているマルチカテーテル誘導システム1の関節式位置は、僧帽弁にアクセスするために極めて有用である。図51A~51Dは、僧帽弁MVにアクセスするためのシステム1の使用方法を例示する。僧帽弁にアクセスするために、拡張器及びガイドワイヤ上で、大腿静脈内での穿孔から下大静脈を通り右心房内まで外側ガイドカテーテル1000を進ませることができる。図51Aに示されているように、外側ガイドカテーテル1000を、心房中隔S内の窩Fを通って穿刺することができる。外側ガイドカテーテル1000はその後窩Fを通って前進させられ、一次湾曲部1100により折曲げられ、こうして遠位端部1016は僧帽弁MV上へ向けられることになる。ここでもまた、このアプローチは単なる一例として役立つにすぎず、例えば幾つか例を挙げると、頸静脈、大腿動脈、ポートアクセス又は直接アクセスを通してといったような他のアプローチも使用可能である。僧帽弁MV上の遠位端部1016の位置付けは、外側ガイドカテーテル1000を予め湾曲させ、ここで、拡張器及びガイドワイヤが引込められた時点でカテーテル1000がこの位置をとること、及び/又は外側ガイドカテーテル1000を所望の位置まで案内すること、によって達成され得る。この例においては、一次湾曲部1100の形成により、遠位端部1016が、実質的に弁表面に平行である前述の平面Xに対応する一次平面の内部で移動させられる。これにより、遠位端部1016は僧帽弁MVの短軸に沿って横方向に移動させられ、遠位端部1016を弁尖LFの間の開口部O上に心合せすることが可能となる。
図51Bを参照すると、内側ガイドカテーテル1020は、外側ガイドカテーテル1000の中央管腔1018を通って前進させられ、遠位端部1026は、中央管腔1028が標的組織つまり僧帽弁MVに向けられるように位置付けされる。詳細には、中央管腔1028は、弁尖LF間の開口部Oに向かってなど、僧帽弁MVの特定の部域に向けられて、特定の介入手技を行なうことができるようにならなければならない。図51Bでは、前述の平面Zに対応する二次平面内で二次湾曲部1104を含む位置において、内側ガイドカテーテル1020が示されている。二次湾曲部1104の形成により、遠位端部1026は交連Cの間で垂直にかつ角度的に移動させられ、中央管腔1028を僧帽弁MVに向ける。この位置で、中央管腔1028を通過させられる介入装置又はカテーテル1030は、開口部Oに向かってかつ/又はその中を誘導され得る。一次湾曲部1100及び二次湾曲部1104は、弁MVの異なる解剖学的部分及び異なる外科的手技に対応するように変動し得るものの、システム1を適正に位置付けするためにこれら2つの湾曲を超えるようなさらなる調整が所望される場合もある。
図51Cを参照すると、内側ガイドカテーテル1020の遠位端部1026は、角度シータ1070を通して位置付けされ得る。こうして、遠位端部1026は、前述の平面Yに対応するシータ平面を通して垂直にかつ角度的に移動させられる。角度シータ1070を通したいずれかの方向での遠位端部1026の動作は、図51C中において破線で示されている。このような動作は、カテーテル1020の予備湾曲及び/又は案内によって達成可能である。その結果として、中央管腔1028を、二次平面とは異なる平面の内部で僧帽弁MVに向けることができる。このような移動の後、内側ガイドカテーテル1020は、端部1016にある中央管腔1028の開口部が所望の位置に面するような位置に来ることになる。この場合、所望の方向は、僧帽弁の中心に向かい、僧帽弁に直交する方向である。
いくつかの事例において、遠位端部1026を、僧帽弁MVに対して所望の高さに来るように昇降させることが望まれる。これは、追加の湾曲部1110を形成するための外側ガイドカテーテル1000の予備湾曲及び/又は案内によって達成可能である。概して、これは、遠位端部1026を僧帽弁MVの上方に持上げるために用いられ、このような持上げは図50Bに例示されている。
カテーテル1000、1020内の湾曲が、案内装置によって形成される場合、案内装置は、係止特徴部によって、所定の場所に係止され得る。係止は、図48に例示されているように、介入装置又はカテーテル1030が中を通るために、誘導システム1内に追加の剛性及び安定性を与えることができる。介入カテーテル1030は、この場合僧帽弁MVである標的組織に向かって中央管腔1028を通過させられ得る。上述のように開口部O上に遠位端部1026を位置付けすることにより、カテーテル1030は、図51Dに示されているように、所望される場合に、弁尖LF間の開口部Oを通過できるようになる。この時点で、逆流又は他のあらゆる障害を矯正するため、僧帽弁に対して、所望される任意の手技を適用することができる。
C.案内装置
先に説明した通り、湾曲は、予備湾曲、案内又は任意の好適な手段により、カテーテル1000、1020内に形成され得る。予備湾曲には、例えばポリマーの熱硬化又は形状記憶合金の使用などにより、使用に先立ちカテーテル内に特定の湾曲を設定することが関与する。カテーテルは概して可撓性を有することから、ガイドワイヤ、拡張器閉塞具又は他の導入装置上へのカテーテルの装填により、湾曲した領域全体を通してカテーテルは真直ぐになる。カテーテルがひとたび生体構造内に位置付けされたならば、導入装置は取出され、カテーテルは弛緩して、予備湾曲された設定に戻ることができる。
より高度の制御及び可能な湾曲の多様性を提供するために、案内装置を用いて、湾曲を創出しカテーテルを位置付けすることができる。いくつかの実施形態において、案内装置は、カテーテルの壁の内部にケーブル又はプルワイヤを備える。図52Aに示されているように、外側ガイドカテーテル1000は、カテーテル1000の壁の内部の管腔内に摺動可能な形で配置されて、遠位端部1016まで延在するプルワイヤ1120を含むことができる。近位方向でプルワイヤ1120に張力を印加することにより、遠位端部1016は、矢印1122によって示されているプルワイヤ1120の方向に湾曲する。同様にして、図52Bに示されているように、カテーテル1000の反対側に沿ってプルワイヤ1120を設置することで、遠位端部1016は、プルワイヤ1120に張力が加えられた時点で、矢印1124により示されている反対の方向に湾曲できるようになる。したがって、図52Cを参照すると、カテーテル1000の壁の内部にプルワイヤ1120を直径方向に相対して設置することで、遠位端部1016を相対する方向に案内することが可能になる。こうして、湾曲を補正又は調整する手段が提供される。例えば、湾曲を創出するために1つのプルワイヤに対して張力が加えられている場合、直径方向に対して反対側のプルワイヤに張力を印加することで湾曲を少なくすることができる。ここで図52Dを参照すると、追加の相対するプルワイヤ1120’のセットが、図示されているようにカテーテル1000の壁の内部を延在し得る。プルワイヤ1120、1120’のこの組合せにより、矢印1122、1124、1126、1128により例示されている少なくとも4つの方向における遠位端部の湾曲が可能になる。この例においては、プルワイヤ1120が外側ガイドカテーテル1000の一次湾曲部1100を形成し、プルワイヤ1120’は持上げを行う。図52A~52Dが同様に内側ガイドカテーテル1020にも関係するということが理解されよう。例えば、図52Dにおいて、プルワイヤ1120は、内側ガイドカテーテル1020の二次湾曲部1104を形成し、プルワイヤ1120’は角度シータ1070を形成してもよい。
このようなプルワイヤ1120及び/又はプルワイヤ1120’及び結び付けられた管腔は、単一で又は対をなして、対称的又は非対称的に、任意の配置で設置可能であり、任意の数のプルワイヤが存在し得る。これによって、あらゆる方向の、かつさまざまな軸を中心とした湾曲が可能となり得る。プルワイヤ1120、1120’は、幾つか例を挙げると、接着、結束、はんだ付け又は埋め込みなど、任意の好適な方法によりカテーテルの長さに沿って任意の場所で固定され得る。プルワイヤに張力が印加された場合、プルワイヤの取付け点から近位方向に向かって、湾曲が形成する。したがって、湾曲は、プルワイヤの取付け点の場所に応じて、カテーテルの長さ全体にわたって形成され得る。しかしながら、典型的には、プルワイヤは、カテーテルの遠位端部近く、任意には、図52Eに例示されている埋込み型先端リング280に対して取付けられることになる。図示されているように、プルワイヤ1120は、先端リング280内のオリフィス286を通過し、ループ形状を形成し、その後、オリフィス286を通って戻り、カテーテルの壁(図示せず)まで戻るように進む。さらに、プルワイヤを収納する管腔は、図52A~52Dに示されているように真直ぐであってよく、又は湾曲していてもよい。
D.カテーテルの構造
外側ガイドカテーテル1000及び内側ガイドカテーテル1020は、上述の湾曲を創出するための任意の好適な材料又は材料組合せを含み得る同じ又は異なる構造を有することができる。明確にするため、提供されている実施例は、外側ガイドカテーテル1000を参照しているが、このような例を内側ガイドカテーテル1020に適用することも同様に可能であることが認識され得る。
カテーテルが案内可能であるよりもむしろ、あるいは案内可能であることに加えて、予め湾曲されている実施形態において、カテーテル1000は、例えば熱硬化などによって所望の湾曲に硬化可能なポリマー又はコポリマーで構成され得る。同様にして、カテーテル1000は、形状記憶合金で構成されていてよい。
カテーテルが案内可能である実施形態において、カテーテル1000は、カテーテル1000の長さに沿ってか又はさまざまなセグメント内のいずれかで、さまざまな材料のうちの1つ以上で構成され得る。例示的材料としては、ポリウレタン、Pebax、ナイロン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)が含まれる。さらに、カテーテル1000の壁は、金属編組又はコイルなどのさまざまな構造で補強され得る。このような補強は、カテーテル1000の長さに沿って、又はさまざまなセグメント内にあってよい。
例えば、図53Aを参照すると、カテーテル1000は、近位編組補強セグメント1150、コイル補強セグメント1152及び遠位編組補強セグメント1154を含み得る。近位編組補強セグメン1150は、強化されたカラム強度及びトルク伝達を与える。コイル補強セグメント1152は、増大した操作性を与える。遠位編組補強セグメント1154は、操作性とトルク/カラム強度を融合する。別の例では、図53Bを参照すると、外側ガイドカテーテル1000は、近位2重層編組補強セグメント1151及び遠位編組補強セグメント1154を有する。こうして、近位2重層セグメント1151は、図53Cの横断面図に例示されているように、多重管腔管1160(プルワイヤ用の案内用管腔1162、任意には補強用ステンレス鋼コイルに埋込まれている案内用管腔1162の遠位端部及び中央管腔1163を有する)、内側編組補強層1164及び外側編組補強層1166を含む。同様にして、図53Dは、多重管腔管1160及び単一の編組補強層1168を含む遠位編組補強セグメント1154の横断面図を示す。さらなる例において、図53Eを参照すると、内側ガイドカテーテル1020は、近位端部に補強の無い多重管腔管1160、単一編組補強層中間セグメント1170及び単一編組補強層遠位セグメント1171を含む。単一編組補強層セグメント1170、1171の各々は、図53Fの横断面図に例示されているように、多重管腔管1160及び単一の編組補強層1168を有する。しかしながら、セグメント1170、1171は、典型的には遠位端部に向かって減少する異なるデュロメータ(durometer)のポリマーで構成されている。
図53Gは、外側ガイドカテーテル1000の遠位区分の横断面の別の例を例示する。ここで層1130は55D Pebaxを含み、おおよそ0.032cm(0.0125インチ)の厚みを有する。層1131は33ppiの編組を含み、おおよそ0.005cm(0.002インチ)×0.017cm(0.0065インチ)の厚みを有する。層1132は55D Pebaxを含み、おおよそ0.015cm(0.006インチ)の厚みを有する。層1133は33ppiの編組を含み、おおよそ0.005cm(0.002インチ)×0.017cm(0.0065インチ)の厚みを有する。そして最後に、層1134は、ナイロン11を含み、おおよそ0.027cm(0.0105インチ)の直径のプルワイヤ1120のための案内用管腔を含む。中央管腔1163は、装置の通過に充分なサイズのものである。
図53H~53Iは、内側ガイドカテーテル1020の横断面の追加の例を示し、図53Iは、遠位端部の一部分の横断面を示し、図53Iは、遠位端部のさらに遠位の部分の横断面を示す。図53Hを参照すると、層1135は40Dポリマーを含み、おおよそ0.032cm(0.0125インチ)の厚みを有する。層1136は、30ppiの編組を含み、おおよそ0.005cm(0.002インチ)×0.017cm(0.0065インチ)の厚みを有する。層1137は、40Dポリマーを含み、おおよそ0.015cm(0.006インチ)の厚みを有する。層1138は、40Dポリマー層を含み、おおよそ0.009cm(0.0035インチ)の厚みを有する。そして最後に、層1139は55Dライナを含む。さらに、コイル補強された案内用管腔が、直径おおよそ0.027cm(0.0105インチ)のプルワイヤ1120のために含まれている。そして中央管腔1163は、装置を通すのに充分なサイズのものである。図53Iを参照すると、層1140は、40Dポリマーを含み、層1141は35Dポリマーを含み、層1142は編組を含み、層1143はライナを含む。さらに、コイル補強された案内用管腔1144がプルワイヤのために含まれている。そして中央管腔1163は、装置を通すのに充分なサイズのものである。
図54A~54Cは、カテーテルシャフト内に組込むことのできるキーイング特徴部の一実施形態を例示する。キーイング特徴部は、操作能力を支援するために内側ガイドカテーテルと外側ガイドカテーテルの関係を維持するのに用いられる。図54Aに示されているように、内側ガイドカテーテル1020は、半径方向外向きに延在する1つ以上の突出部1400を含む。この例においては、カテーテル1020の外部の周りに等間隔の4つの突出部1400が存在する。同様にして、外側ガイドカテーテル1000は、突出部1400と整列した対応するノッチ1402を含む。したがって、この例において、カテーテル1000は、その中央管腔1018の周りに等間隔の4つのノッチを含む。こうして、内側ガイドカテーテル1020を、外側ガイドカテーテル1000の内部で並進運動させることができるが、外側ガイドカテーテル1000内部での内側ガイドカテーテル1020の回転はキーイング特徴部、すなわちインターロックする突出部1400とノッチ1402によって阻止される。このようなキーイングは、外側ガイドカテーテル1020と外側ガイドカテーテル1000の間の位置の公知の相関関係を維持する一助となる。内側及び外側ガイドカテーテル1020、1000は、異なる方向で湾曲を形成することから、このようなキーイングは、内側及び外側ガイドカテーテル1020、1000内で別個の湾曲によって形成される複合湾曲が予期された複合湾曲であることを保証するために有益である。キーイングは同様に、安定性をも増すことができ、このとき湾曲は所定の位置にとどまり、相互に相殺する可能性は低減される。
図54Bは、図54Aの外側ガイドカテーテル1000の横断面図を例示する。ここでは、カテーテル1000は、中央管腔1018の内側表面に沿ってノッチ付き層1404を含む。ノッチ付き層1404は、任意のサイズ、形状、配置及び数でノッチ1402を含む。任意には、ノッチ付き層1404は、典型的にはプルワイヤ1120の通過のための管腔1406を含むことができる。しかしながら、管腔1406は、代替的に又は付加的に、他の用途に使用することができる。同様に、ノッチ付き層1404は、例えば押出し加工によりカテーテル1000の壁内に組込まれてよく、あるいは、カテーテル1000内部に位置付けされた別個の層であってもよい、ということも認識され得る。さらに、ノッチ付き層1404は、カテーテル1000の全長にわたり延在するか又は、単にカテーテル1000の長さに沿った指定された場所にある小さなストリップを含めた、カテーテル1000の長さの1つ以上の部分にわたり延在していてよい、ということが理解されよう。
図54Cは、図54Aの内側ガイドカテーテル1020の横断面図を例示する。ここで、カテーテル1020は、カテーテル1020の外側表面に沿って突出部1400を含む。突出部1400は、任意のサイズ、形状、配置及び数のものであってよい。突出部1400は、例えば押出し加工などによってカテーテル1020の壁内に組込まれてよく、カテーテル1020の外側表面上の別個の円筒形層内に含まれていてよく、あるいは突出部1400は、カテーテル1020の外側表面に対して個別に接着されていてもよい。さらに、突出部1400は、カテーテル1000の全長にわたり延在するか又は、単にカテーテル1020の長さに沿った指定された場所にある小さなストリップを含めた、カテーテル1020の長さの1つ以上の部分にわたり延在していてよい、ということが認識され得る。
したがって、キーイング特徴部は、カテーテル1000、1020の1つ以上の特定の部分に沿って存在していてよく、あるいは、カテーテル1000、1020の全長に沿って延在していてもよい。同様にして、突出部1400が内側ガイドカテーテル1000の離散的部分に沿って延在する一方で、ノッチ1402は、外側ガイドカテーテル1020の全長に沿って延在していてよく、逆も同様である。ノッチ1402が内側ガイドカテーテル1020の外側表面上に存在する一方で、突出部1400は外側ガイドカテーテル1000の内側表面上に存在していてよい、ということがさらに認識され得る。
代替的に又は付加的に、カテーテル1000の1つ以上の操作可能な部分は、図55Aに例示されている一連の関節連結部材1180を含むことができる。このような関節連結部材1180を含むカテーテルの操作可能な部分の例示的実施形態は、全ての目的のために参照により本明細書に組込まれている米国特許第7,682,319号中に記載されている。図55Bは、遠位端部1016に関節連結部材1180を含む操作可能な部分を有する外側ガイドカテーテル1000を例示する。
簡単に言うと、図55Aを参照すると、各々の関節連結部材1180は、任意の形状、詳細には図示されているような嵌合又は入れ子式を可能にする形状を有していてよい。さらに、各部材1180は、隣接する関節連結部材1180に接して個別に回転可能であることが望まれる。この実施形態では、関節連結部材1180は、嵌合するドーム形リング1184を含む。ドーム形リング1184は各々、ベース1188及びドーム1186を含む。ベース1188及びドーム1186は、ドーム形リング1184が直列に嵌合された時点で中央管腔1190を形成する中空の内部を有する。さらに、ドーム1186は、各々の関節連結部材1180が隣接するドーム形リング1184の内側表面に接して噛合できるようにする。
嵌合するドーム形リング1184は、少なくとも1つのプルワイヤ1120によって連結される。このようなプルワイヤは典型的に、カテーテル1000の長さにわたって、嵌合するドーム形リング1184のうちの少なくとも1つを通って固定点まで延在し、ここでプルワイヤ1120は固定的に取付けられる。プルワイヤ1120に張力を印加することにより、プルワイヤ1120は、取付け点に近位の一連の嵌合するドーム形リング1184を弧状に動かして、湾曲部を形成する。こうして、少なくとも1つのプルワイヤを引張るか又はこれに張力を印加することにより、カテーテル1000はこのプルワイヤ1120の方向に案内されるか又は片寄る。ドーム形リング1184の円周全体にわたりさまざまなプルワイヤ1120を位置付けすることによって、カテーテル1000を任意の数の方向に向けることができる。
同じく図55Aに示されている各々の嵌合するドーム形リング1184は、1つ以上のプルワイヤ管腔1182を含むことができ、これらの管腔をプルワイヤ1120が縫通する。代替的には、プルワイヤ1120は、中央管腔1190を縫通させられてよい。いずれの場合でも、プルワイヤは、所望される湾曲部を形成すべき位置において、カテーテル1000に対し取付けられる。プルワイヤ1120は、幾つか例を挙げると、はんだづけ、接着、結束、溶接又は埋め込み等の任意の好適な方法によって、所定の場所に固定されてよい。このような固定方法は典型的に、使用される材料によって左右される。関節連結部材1180は、ステンレス鋼、さまざまな金属、さまざまなポリマー又はコポリマーを含めた任意の好適な材料で構成されていてよい。同様にして、プルワイヤ1120は、繊維、縫合糸、金属ワイヤ、金属編組、又はポリマー編組などの任意の好適な材料で構成されていてよい。
E.ハンドル
先に言及した通り、ガイドカテーテル1000、1020の操作は、カテーテル1000、1020の近位端部に取付けられるハンドル1056、1057を使用して行われる。図56は、ハンドル1056、1057の好ましい実施形態を例示する。図示されているように、ハンドル1056は、外側ガイドカテーテル1000の近位端部1014に取付けられ、ハンドル1057は、内側ガイドカテーテル1020の近位端部1024に取付けられる。内側ガイドカテーテル1020は、ハンドル1056を通って挿入され、外側ガイドカテーテル1000の内部で同軸上に位置付けされる。この実施形態において、ハンドル1056、1057は、図48に例示されている実施形態中で示されているように共にリンクされていない。このようなハンドル1056、1057は代替的に、外部のコネクティングロッド、バー又はプレートによって、又は追加の外部安定化ベースによって連結されてよい、ということが認識され得る。安定化ベースの一実施形態が、後出の節において説明される。再び図56を参照すると、介入カテーテルがハンドル1057を通って挿入され、内側ガイドカテーテル1020及び外側ガイドカテーテル1000の内部で同軸上に位置付けされている。
各ハンドル1056、1057は、ユーザによる操作のため、ハンドルハウジング1302から出現する2つの案内用ノブ1300a、1300bを含む。案内用ノブ1300aは、ハウジング1302の一辺上に配置され、案内用ノブ1300bはハウジング1302の一面上に配置されている。しかしながら、このような設置は、幾つか例を挙げると、案内装置のタイプ、ハンドルのサイズ及び形状、ハンドル内部の部品のタイプ及び配置、及び人間工学を含めたさまざまな要因に基づいて変動してよいことが認識され得る。
図57は、ハンドルのアセンブリを明らかにするためにハウジング1302の一部分が取外された状態で、図56のハンドル1056、1057を例示する。各々のノブ1300a、1300bは、取付けられたカテーテル内で湾曲を形成するために用いられる案内装置を制御する。各案内装置は、ハードストップギヤアセンブリ1304及び摩擦アセンブリ1306を含む。カテーテルの中に湾曲部を形成するため、ハードストップギヤアセンブリの作用によって、1つ以上のプルワイヤに対して張力が印加される。1つ以上のプルワイヤから張力が解放された時点で、カテーテルは、真直ぐになった位置に戻る。
図58は、明確さのためにハウジング1302が取外されている、ハンドル内部の案内装置を例示する。ここでは、案内用ノブ1300aがハードストップギヤアセンブリ1304及び摩擦アセンブリ(図示せず)に対して取付けられ、案内用ノブ1300bは別個のハードストップギヤアセンブリ1304及び摩擦アセンブリ1306に取付けられている。案内用ノブ1300aは、ベース1308を通過しノブギヤホイール1310内で終結するノブポスト1318に取付けられている。ノブギヤホイール1310は、ハードストップギヤアセンブリ1304を作動させて、1つ以上のプルワイヤ1120に張力を印加する。
ノブギヤホイール1310は、ディスクギヤホイール1312と係合する歯車である。案内用ノブ1300aの回転により、ノブポスト1318及びノブギヤホイール1310が回転させられ、このノブギヤホイールが今度はディスクギヤホイール1312を回転させる。ディスクギヤホイール1312の回転は、この例では外側ガイドカテーテル1000である取付けられたカテーテルを通って延在する1本以上のプルワイヤに対して、張力を印加する。図示されているように、外側ガイドカテーテル1000は、ベース1308を通過し、ここでは、カテーテル1000を通って延在する1本以上のプルワイヤ1120がディスク1314に取付けられている。このような取付けは、図59中で概略的に例示されている。カテーテル1000は、ベース1308を通過している状態で示されている。カテーテル1000内の案内用管腔1162を通過するプルワイヤ1120が、カテーテル1000の壁から出現し、ディスク1314内のアパーチャ1320を通過し、ディスク1314上のアンカーペグ1316に取付けられる。ディスクギヤホイール1312の作用によるディスクポスト1315を中心としたディスク1314の回転(矢印1328によって標示)は、アパーチャ1320を通ってプルワイヤ1120を引張り、回転につれてディスク1314の周りにプルワイヤ1120を巻付けることによってプルワイヤ1120に対し張力を印加する。ディスク1314の追加の回転が、プルワイヤ1120に、増大する張力を印加する。プルワイヤ1120に加えられる張力の量を制限して、カテーテルの湾曲を限定しかつ/又はプルワイヤ1120の破損の可能性を回避するため、ディスク1314の回転は、ディスク1314に取付けられベース1308内に延在するハードストップペグ1322によって制限されてよい。
図60A~60Bは、ハードストップペグ1322がディスク1314の回転を制限するためにどのように使用されるかを例示している。図60A~59Bは、ディスク1314がベース1308上に配置されている上面図を提供する。アンカーペグ1316は、プルワイヤ1120がそれに取付けられている状態で示されている。ディスク1314下でベース1308内に溝1326が形成され、円弧形状を形成する。ハードストップペグ1322は、ディスク1314からベース1308内の溝1326の中へと延在する。ここで、図60Bを参照すると、矢印1330によって標示されているノブポスト1318を中心としてディスク1314の回転は、先に説明した通り、アパーチャ1320を通してプルワイヤ1120を引張り、プルワイヤ1120をディスク1314の周りに巻付ける。ディスク1314が回転するにつれて、ハードストップペグ1322は、図示されているように、溝1326に沿って進む。ディスク1314は、ハードストップペグ1322がハードストップ1324に達するまで回転し続ける。ハードストップ1324は、溝1326内に位置付けされ、ハードストップペグ1322のさらなる通過を阻止する。こうして、ハードストップ1324の位置付けによって360°以下の任意の回転度にディスク1314の回転を制限することができる。
いくつかの事例において、360°超である回転度にディスク1314の回転を制限することが望まれる。これは、ハードストップギヤアセンブリ1304の別の実施形態を用いて達成可能である。ここで図61A~61Bを参照すると、このようなハードストップギヤアセンブリ1304の一部分が示されている。図61Aは、ベース1308及びその中を通って位置付けされたディスクポスト1315を例示する。同様にベース1308内に示されているのは、ノブポスト1318、ノブギヤホイール1310及び摩擦アセンブリ1306が中を通るアパーチャ1334、及びカテーテル1000が中を通る通路1336である。ハードストップギヤアセンブリ1304のこの実施形態において、溝1326も同様にディスクポスト1315を中心として円弧状に存在しているが、溝1326内にはハードストップペグ1322ではなくボール1332が位置付けされている。図61B中に示されているように、溝1326及びボール1332上にディスク1314が位置付けされている。図61Cに例示されているディスク1314は、ベース1308に隣接して位置付けされたその表面内に溝1356を有し、この溝1356は、ベース1308内の溝1326と類似する円弧形状を有する。ボール1332は、ベース1308又はディスク1314に対して固定的に取付けられておらず、したがって、ベース1308内の溝1326及びディスク1314内の溝が形成するチャネルに沿って自由に移動できる。
図62A~62Fは、ボール1332によってディスク1314の回転を360°超の回転度に制限できる方法を例示している。図62A~62Fは、溝1326がディスクポスト1315を中心として円弧形状を有している、ベース1308内の溝1326を例示している。溝1326は、完全な円を形成していない;第1の溝端部1350a及び第2の溝端部1350bが、ボール1332の通過を阻止する壁を形成する。溝端部1350a、1350bは、任意の距離で離隔され、溝1326の長さを任意の量だけ短縮し、かつボール1332の運動ひいてはカテーテルの片寄りを任意の所望の量に調整できるようにすることができる、ということが理解されよう。まず最初に、図62Aを参照すると、ボール1332は、第1の溝端部1350aの近くで溝1326の内部に位置付けされている。ディスク1314は、第1の溝端部1354a及び第2の溝端部1354bを含む整合する溝1352(形状は破線で例示)を有する。ディスク1314は、ボール1332が第2の溝端部1354b近くに来るように、ボール1332上で位置付けされる。
ここで図62Bを参照すると、ボール1332が所定の場所にとどまっている一方で、ディスク1314を回転させることができる。ここでは、ディスク1314は、矢印36000及び溝端部1354a、1354bの位置が標示する通り、90°回転している。ここで図62Cを参照すると、ディスク1314は、ボール1332が所定の場所にとどまっている一方で、ディスク1314をさらに回転させることができる。ここでは、ディスク1314は、矢印36000及び溝端部1354a、1354bの位置が標示する通り、270°回転している。ディスク1314は、矢印36000が標示し図62D中に示されている通り、360°まで回転し続けることができる。ここでは、ディスク1314内の第1の溝端部1354aがボール1332と接触しており、ベース内の溝1326に沿ってボール1332を押す。ここで図62Eを参照すると、ボール1332がディスク1314内の第1の溝端部1354aによってベース1308内の溝1326に沿って押される一方で、ディスク1314をさらに回転させることができる。ここで、ディスク1314は、540°回転したものとして示されている。図62Fを参照すると、ディスク1314は、ボール1332がベース1308の第2の溝端部1350bに到達して急停止するまで回転する。この位置において、ボール1332は、ディスク1314の第1の溝端部1354aとベース1308の第2の溝端部1350bの間に保持され、ディスク1314のさらなる回転は阻止される。したがって、ディスク1314は、この例においておおよそ660°回転させられている。溝端部1350a、1350b及び/又は溝端部1354a、1354bの位置付けによって、任意の最大回転度を設定することができる。さらに、いくつかの実施形態において、2個以上のボール1332を溝1326に加えることによって回転を制限することができ、例えば、移動距離ひいては湾曲を制限するために、2、3、4、5、6、7、8、9、10個以上のボールを使用することが可能である。
図59に例示されているものに類似する形で、1本以上のプルワイヤ1120がディスク1314に取付けられる、ということが認識され得る。したがって、ディスク1314がディスクギヤホイール1312の作用によりディスクポスト1315を中心として回転するにつれて、アパーチャ1320を通ってプルワイヤ1120を引張り、回転につれてディスク1314の周りにプルワイヤ1120を巻付けることによって、プルワイヤ1120に対して張力が印加される。ディスク1314の追加の回転が、プルワイヤ1120に増大する張力を印加する。上述のような回転の制限により、プルワイヤ1120に印加される張力の量が制限されて、カテーテルの湾曲が制限されかつ/又はプルワイヤ1120の破損の可能性が回避される。
言及した通り、各々の案内装置は、少なくとも1つのハードストップギヤアセンブリ1304及び摩擦アセンブリ1306を含む。上述のように、ハードストップギヤアセンブリの作用によって1つ以上のプルワイヤに張力が印加されて、カテーテル内に湾曲部を形成する。張力は摩擦アセンブリによって維持される。図63は、摩擦アセンブリ1306の一実施形態を例示する。摩擦アセンブリ1306は本質的に、案内用ノブ、この例では案内用ノブ1300b、及び結び付けられたノブポスト1318を回転位置に保持する。ここで、ノブ1300b及びポスト1318の回転は、取付けられたノブギヤホイール1310を回転させる。ノブギヤホイール1310は、ハードストップギヤアセンブリ1304を作動させて、1つ以上のプルワイヤ1120に張力を印加する。ノブギヤホイール1310は、ディスクギヤホイール1312と係合する歯車である。案内用ノブ1300bの回転がノブポスト1318及びノブギヤホイール1310を回転させ、このノブギヤホイールが今度はディスクギヤホイール1312を回転させる。ディスクギヤホイール1312の回転は、この例では外側ガイドカテーテル1000である取付けられたカテーテルを通って延在する1本以上のプルワイヤに対し張力を印加する。
案内用ノブ1300b及びノブポスト1318は、摩擦パッド1370が与える摩擦により、回転した位置に保持される。摩擦パッド1370は、ノブポスト1318に取付けられたリング1372とベース1308に取付けられたプレート1374との間に位置付けされる。ノブポスト1318は、ノブ1300bからリング1372、摩擦パッド1370そして次にプレート1374を通って延在する。プレート1374は、ノブポスト1318上のねじ山と噛合する内部ねじ山を有する。ノブポスト1318が回転するにつれて、ポスト1318上のねじ山は、プレート1374上のねじ山を通って前進する。これにより、リング1372はよりプレート1374近くに引込まれ、摩擦パッド1370をその間に圧縮する。摩擦パッド1370は、幾つか例を挙げると、シリコーンゴム、天然ゴム又は合成ゴムなど、望ましい摩擦及び圧縮率特性を有する任意のOリング又はシート材料で構成されてよい。好ましい実施形態では、EPDMゴム製Oリングが使用される。ノブポスト1318の逆回転は、リング1372に対する摩擦パッド1370の摩擦による抵抗を受ける。摩擦パッド1370の圧縮が高くなればなるほど、摩擦による保持は強くなる。したがって、案内用ノブ1300bが回転させられ、プルワイヤ1120に対して加わる張力が強くなるにつれて、リング1372に対し増大する量の摩擦が加わって、ノブ1300bを所定の場所に保持する。
案内ノブ1300bの手作業による逆回転は、プルワイヤ1120上の張力を解放し、リング1372をプレート1374から離れるように引込み、こうして摩擦荷重を削減する。プルワイヤ1120から張力が解放された時点で、カテーテル1000は、真直ぐになった位置に向かって戻される。
各々のハンドル1056、1057は、取付けられたカテーテル内に各々の湾曲部を形成させるための案内装置を含む、ということが認識され得る。したがって、図57に示されているように、ハンドル1056は、外側ガイドカテーテル1000内に一次湾曲部1100を形成するための案内装置、及び追加の湾曲部1110を形成するための案内装置を含む。同様にして、ハンドル1057は、内側ガイドカテーテル1020内に二次湾曲部1104を形成するための案内装置、及び角度シータ1070を形成するための案内装置を含む。
一次湾曲部1100、二次湾曲部1104及び追加の湾曲部1110などのいくつかの湾曲部は各々、典型的に、直線構成及び単一方向での曲線構成の間で曲率が変動する。このような運動は、ハードストップギヤアセンブリ1304と摩擦アセンブリ1306の単一のセットを用いて行ってもよい。しかしながら、図49C~49D中で示されているように、例えば角度シータ1070などの他の湾曲を、二方向で形成してもよい。このような運動は、各々が単一の方向で曲率を制御する、ハードストップギヤアセンブリ1304と摩擦アセンブリ1306の2つのセットを用いて行われる。
図63は、摩擦アセンブリ1306’の追加セットの存在を例示する。カテーテル1000の壁の内部に延在する、図52Dに例示されている反対側のセットなどの1つ以上のプルワイヤ1120’が、ディスク1314に対するプルワイヤ1120の取付けと同じ方法で、ディスク1314’に取付けられている。ディスク1314、1314’は、一方向への案内用ノブ1300bの回転がディスク1314を介してプルワイヤ1120に張力を印加し、反対の方向への案内用ノブ1300bの回転がディスク1314’を介してプルワイヤ1120’に張力を印加するように配置されている。同様にして、摩擦アセンブリ1306’は、ノブポスト1318に取付けられたリング1372’、及びリング1372’とプレート1374の反対側との間に配置された摩擦パッド1370’を有するものとして示されている。したがって、反対方向への案内用ノブ1300bの回転がディスク1314’を介してプルワイヤ1120’に張力を印加するにつれて、摩擦パッド1370’は、リング1372’に張力を印加してノブポスト1318’を所定の場所に保持する。
張力を印加しプルワイヤ1120を所定の場所に保持するためには他のさまざまなメカニズムを使用することができる、ということが認識され得る。代替的に使用可能である例示的メカニズムには、幾つか例を挙げると、クラッチ、ラチェット、レバー、ノブ、ラックとピニオン、及び変形可能なハンドルが含まれる。
F.介入システム
図64は、本開示対象の主題の介入システム3の一実施形態を例示する。本開示対象の主題のマルチカテーテル誘導システム1の一実施形態が、近位端部1014と遠位端部1016を有する外側ガイドカテーテル1000、及び近位端部1024と遠位端部1026を有する内側ガイドカテーテル1020を含み、内側ガイドカテーテル1020が、図示されている通り外側ガイドカテーテル1000の内部で同軸上に位置付けされているものとして示されている。さらに、所定の場所に内側ガイドカテーテル1020を伴って又は伴わずに漏出の無い封止を提供するため、図示されているようにハンドル1056の内部に又はハンドル1056の外側に、止血弁1090が配置されている。この弁1090は同様に、逆出血を阻止し、外側ガイドカテーテル1000を通って内側ガイドカテーテル1020を挿入する場合に空気が導入されるおそれを低減する。止血弁1090の一例が、図64A中に例示されているが、類似の機能を提供するために任意の好適な弁又は止血弁を使用することが可能である。図64Aにおいて、弁1090は、第1の端部1091、第2の端部1092及び中を通る管腔1093を有する。管腔1093の内側壁は、好ましくは端部1091に向かって先細になっており、内側ガイドカテーテル1020上の突出部1400を収容するように構成された複数の先細軸方向チャネルをさらに含み得る。第1の端部1091は、外側ガイドカテーテル1000に取付けられ、第2の端部1092は自由である。ここで再び図64を参照すると、カテーテル1000、1020の遠位端部1016、1026はそれぞれ、典型的には血管腔などの身体管腔を通って、体腔へと通り抜けられるようにサイズ決定されている。
止血弁1090を通した固定装置14の挿入を支援するため、固定装置導入器を使用することができる。例えば、固定装置14が送達カテーテル300及び内側ガイドカテーテル1020上に装填される場合、固定装置14、送達カテーテル300及び内側ガイドカテーテル1020の外側ガイドカテーテル1000を通した挿入には、外側ガイドカテーテル1000上の止血弁1090の中に固定装置14を通すことが関与する。止血弁1090による固定装置14に対するあらゆる損傷を削減するために、固定装置導入器を使用することができる。固定装置導入器1420の一実施形態が、図64Bに例示されている。導入器1420は、装填用本体1422及び挿入エンドピース1424を含む。固定装置14は、装填用本体1422内そして挿入エンドピース1424内へ、おおよそ破線1428の所まで装填される。挿入エンドピース1424は、個別の分割区分1430、この実施形態においては4つの分割区分1430を創出する分割端部を有する。分割区分1430を圧縮することによって、エンドピース1424は、テーパを形成する。このようなテーパは次に止血弁1090を通って挿入され、こうして挿入エンドピース1424は、固定装置14が弁を通るための円滑な通路を創出する。挿入エンドピース1424がひとたび弁1090を通って挿入されたならば、固定装置14及び取付けられた送達カテーテル300と外側ガイドカテーテル1020を次に、固定装置導入器1420を通って前進させることができる。固定装置導入器1420は同様に、装填用本体1422の内部に止血弁を含み、導入器1420を通した逆出血又は漏出をことごとく防止する。
ガイドカテーテル1000、1020の操作は、カテーテル1000、1020の近位端部に取付けられたハンドル1056、1057を用いて達成される。図示されているように、ハンドル1056は、外側ガイドカテーテル1000の近位端部1014に取付けられ、ハンドル1057は、内側ガイドカテーテル1020の近位端部1024に取付けられている。内側ガイドカテーテル1020は、ハンドル1056を通って挿入され、外側ガイドカテーテル1000の内部で同軸上に位置付けされる。
本開示対象の主題の送達カテーテル300の一実施形態は、ハンドル1057を通って挿入され、内側ガイドカテーテル1020及び外側ガイドカテーテル1000の内部で同軸上に位置付けされる。したがって、所定の場所に送達カテーテル300を伴って又は伴わずに漏出の無い封止を提供するため図示されているようにハンドル1057の内部に又はハンドル1057の外側に、止血弁1090が配置されている。弁1090は前述の通りに機能する。送達カテーテル300は、近位端部322と遠位端部324を有するシャフト302、及び近位端部322に取付けられたハンドル304を含む。身体の内部の部位まで送達するために、遠位端部324に対して固定装置14が取外し可能な形で結合される。
外側ガイドカテーテル1000及び/又は内側ガイドカテーテル1020は、遠位端部1016、1026を所望の方向に位置付けするために、予め湾曲させられかつ/又は案内装置を有している。外側ガイドカテーテル1000の予備湾曲又は案内は、遠位端部1016を第1の方向に向けて、一次湾曲部を創出し、一方、内側ガイドカテーテル1020の予備湾曲及び/又は案内は、遠位端部1026を第1の方向とは異なる第2の方向に向けて、二次湾曲部を創出する。一次及び二次湾曲部は合わさって複合湾曲部を形成する。同軸ガイドカテーテル1000、1020を通した送達カテーテル300の前進は、所望される方向に向かって、通常は身体の内部の所望される場所に固定装置14を位置付けすることになる方向に、複合湾曲部を通って送達カテーテル300を誘導する。
図65は、本開示対象の主題の介入システム3の別の実施形態の各部分を例示する。本開示対象の主題のマルチカテーテル誘導システム1のハンドル1056、1057が示されている。各ハンドル1056、1057は、図示されている通り、1組の案内用ノブ1300a、1300bを含む。ガイドカテーテル1000、1020の操作は、カテーテル1000、1020の近位端部に取付けられた案内用ノブ1300a、1300bを用いて達成される。送達カテーテル300のハンドル304も同様に示されており、これには、他の特徴部の中でも、近位要素ラインハンドル312、係止ラインハンドル310、アクチュエータロッド制御機構314及びアクチュエータロッドハンドル316が含まれている。ハンドル304は、ハンドル1057に連結された支持ベース306によって支持されている。
上述のシステム3は本開示対象の主題の範囲を限定するように意図されていない、ということが認識され得る。システム3は、説明された開示対象主題の構成要素のいずれか又は全てを含み得る。さらに、本開示対象の主題のマルチカテーテル誘導システム1は、他の送達カテーテル、介入カテーテル又は他の装置を導入するために使用可能である。同様にして、送達カテーテル300は、他の導入器又は誘導システムを通して導入されてよい。同様に、送達カテーテル300は、内視鏡ステープラ、電気生理学マッピング又はアブレーション、中隔欠損修復装置、心臓弁、環状形成リング他を含めた、身体内部の標的場所に他のタイプの装置を送達するために使用可能である。
さらに、システム3の構成要素の多くは、1つ以上の親水性コーティングを含み得る。親水性コーティングは湿ると滑りやすくなり、別個の潤滑剤の必要性を無くする。したがって、このようなコーティングは、幾つか例を挙げると、近位要素及び遠位要素を含め、マルチカテーテル誘導システム、送達カテーテル及び固定装置上に存在し得る。
さらに、システム3は、図66にその実施形態が例示されている外部安定器ベース1440によって支持され得る。安定器ベース1440は、手技の間の外側ガイド、内側ガイド及び送達カテーテルの相対的位置を維持する。この実施形態において、ベース1440は、テーブル又はベンチトップなどの平坦な表面上又はそれに接した位置付けのための平面的形状を有するプラットフォーム1442を含む。ベース1440はさらに、各々プラットフォーム1442に取付けられ、角度が付いた又は直交した形でプラットフォーム1442から上向きに延在する、一対のハンドルホルダ1444、1448を含む。ハンドルホルダ1444は、図67に例示されているように、外側ガイドカテーテル1000を保持して、ハンドル1056を支持するためのノッチ1446を含む。図67は、外側ガイドカテーテル1000の近位端部1014がノッチ1446内にあるように位置付けされた外側ガイドカテーテル1000に取付けられたハンドル1056を示す。再び図66を参照すると、ハンドルホルダ1448は、トラフ1450及びフック形端部1454を有する細長い部分1452を含む。図68に示されているように、ハンドル1057は、細長い部分1452の上にあり、ハンドル304は、フック形端部1454の上にあり、こうして、内側ガイドカテーテル1020が、ハンドル1057からハンドル1056まで延在し、外側ガイドカテーテル1000内部に続くようになっている。ハンドル304はさらに、図示されているように支持ベースによって支持されている。
安定器ベース1440はさまざまな形態をとることができ、さまざまなタイプ、形状、配置及び数のハンドルに対応するために構造設計の差異を含むことができる。
G.キット
ここで図69を参照すると、本開示対象の主題に係るキット1500は、本開示対象の主題に関連して説明された構成要素のいずれかを含む。キット1500は、上述の構成要素、例えば、ハンドル1056を含む外側ガイドカテーテル1000、ハンドル1057を含む内側ガイドカテーテル1020、送達カテーテル300及び固定装置14のいずれか、ならびに使用説明書(「IFU」)を含み得る。任意には、キットのいずれかにはさらに、上述のいずれかの他のシステム、例えばさまざまな介入ツール1040、又は身体の管腔内への装置の位置付けと結び付けられた構成要素、例えばガイドワイヤ1202、拡張器1206又はニードル1204を含むことができる。使用説明書IFUは、上述の方法のいずれかを記載しており、全てのキット構成要素は通常、密封容器1505又は他の従来の医療装置パッケージング内に一緒に包装されている。通常、患者に対し手技を行なう際に使用されるこれらのキット構成要素は、滅菌され、キット内部に維持される。任意には、より大きなパッケージ内部に別個の密封容器、バッグ、トレイ又は他のパッケージングを提供することができ、その場合、より小さなパックを別個に開封して、構成要素を無菌状態で別個に維持することができる。
以上が、開示対象主題の好ましい実施形態についての完全な説明であるものの、開示対象主題の範囲から逸脱することなくさまざまな変形形態、置換、付加、修正及び等価物が可能である。例えば、上述の実施形態の多くにおいて開示対象主題は、上流側すなわち僧帽弁の場合には心房側からの弁構造への接近という状況下で説明されている。弁の心室側又は下流側からのアプローチ、ならびに心臓壁を貫通する外科的アプローチの使用を含めた、他のアプローチでも同様に以上の実施形態のいずれかを利用できる、ということが理解されなければならない。さらに、開示対象主題は、心臓弁以外のさまざまな他の組織構造の治療において使用可能であり、血管内、内視鏡及び開腹手術を含めた、さまざまな組織近置、取付け、閉鎖、締付け及び結紮の利用分野において有用である。
ここでもまた、明確な理解のために以上の開示対象主題は、図及び実施例により幾分か詳細に説明されてきたものの、さまざまな変形形態、修正及び等価物が使用可能であることは明白であり、以上の説明は、添付のクレームによって定義される本発明の範囲を限定するものとして考えられるべきものではない。