JP2022541507A - 自己集合型ワクチン及びがん治療用併用療法 - Google Patents

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Abstract

本願では、ビオチン結合タンパク質と融合させた熱ショックタンパク質を含む自己集合性医薬組成物を提供し、前記ビオチン結合タンパク質は、ビオチン化成分(例えば、腫瘍細胞、腫瘍抗原、ウイルス又はウイルス抗原)と非共有結合的に結合している。前記自己集合性医薬組成物は、さらに免疫療法(例えば、抗PD-1抗体)を含むことができる。さらに、がんを予防及び/又は治療するため、あるいは免疫応答を誘導するためのこれらの医薬組成物の使用方法も提供する。免疫療法(例えば、抗PD-1抗体)と併用した前記自己集合性医薬組成物の使用方法も提供する。

Description

ワクチンと言えば、一般的には感染症を連想するが、がん治療にも長い歴史がある。免疫療法と同様に、がんワクチンも成功が限られており、広く利用されていない。従来、がんワクチンは腫瘍全体をベースとしており、健康な細胞とがん性細胞の両方からのシグナルを含む可能性があるため、特異性が劣り、総活性が低かった。しかし、DNAシーケンシングの普及に伴い、現在では、腫瘍細胞に特異的に関連し、健康な細胞には存在しない突然変異を同定することが可能になっている。腫瘍特異的突然変異には、腫瘍特異的抗原又は「ネオアンチゲン」として利用できるものもある。これらは、がん性細胞を特異的に標的とするように患者の免疫系を訓練するために使用できる新規免疫標的である。患者から腫瘍を採取し、個別化ワクチンに組み込むことができる標的可能な突然変異を同定するためのパイプラインとアルゴリズムを開発するために、多数の企業が邁進している。しかし、標的の同定は最初に立ち塞がる課題に過ぎない。実際の標的より重要ではないとしても、標的を免疫系に提示する方法もやはり重要である。良好な標的を送達するワクチンであっても、適切な免疫刺激がなければ潜在的な効果を減じる可能性がある。
したがって、どのような腫瘍種にも標的を対応させることができ、特定の抗腫瘍免疫細胞の増大を適切に刺激するワクチンプラットフォームが必要とされている。
本願では、がんの予防及び/又は治療用組成物及び方法を提供する。所定の態様において、本願では、ビオチン結合タンパク質と融合させた熱ショックタンパク質を含む医薬組成物、又はこのような熱ショックタンパク質から本質的に構成される医薬組成物、又はこのような熱ショックタンパク質から構成される医薬組成物を提供し、前記ビオチン結合タンパク質は、ビオチン化ペプチドと非共有結合的に結合しており、前記ペプチドは、(1)MHCクラスI分子と結合し、(2)自己天然配列及び/又は天然マイクロバイオーム配列との相同性が100%未満である。所定の実施形態において、前記ペプチドは、表1(33頁)から選択される1種以上のペプチドである。所定の実施形態において、前記医薬組成物はワクチンである。所定の実施形態において、前記ペプチドは、5~50アミノ酸長(例えば、8~12アミノ酸長)である。
所定の態様において、本願では、対象における卵巣がんの予防及び/又は治療方法として、ビオチン結合タンパク質と融合させた熱ショックタンパク質を含む有効量の医薬組成物を前記対象に投与することを含む方法を提供し、前記ビオチン結合タンパク質は、ビオチン化ペプチドと非共有結合的に結合しており、前記ペプチドは、(1)MHCクラスI分子と結合し、(2)自己天然配列及び/又は天然マイクロバイオーム配列との相同性が100%未満である。所定の実施形態において、前記ペプチドは、表1(33頁)から選択される1種以上のペプチドである。所定の実施形態において、前記ペプチドは、5~50アミノ酸長(例えば、8~12アミノ酸長)である。所定の実施形態において、本願に記載する方法で使用される医薬組成物はワクチンである。所定の実施形態において、前記方法は、卵巣がん(例えば、漿液性又は上皮性乳頭状卵巣がん)の治療方法である。ある種の実施形態では、前記医薬組成物を非共有結合的複合体として前記対象に投与する。
所定の態様において、本願では、(1)ビオチン結合タンパク質と融合させた熱ショックタンパク質と、ここで、前記ビオチン結合タンパク質は、ビオチン化腫瘍細胞若しくはビオチン化腫瘍抗原と非共有結合的に結合されている、(2)免疫療法とを含む、医薬組成物、又はこれらから本質的に構成される医薬組成物、又はこれらから構成される医薬組成物を提供する。所定の実施形態において、前記腫瘍抗原は、MHCクラスI分子と結合する。所定の実施形態において、前記腫瘍抗原は、自己天然配列及び/又は天然マイクロバイオーム配列との相同性が100%未満である。所定の実施形態において、前記腫瘍抗原は、5~50アミノ酸長(例えば、8~12アミノ酸長)である。
所定の態様において、本願では、対象におけるがんの予防及び/又は治療方法として、(1)ビオチン結合タンパク質と融合させた熱ショックタンパク質と、ここで、前記ビオチン結合タンパク質は、ビオチン化腫瘍細胞又はビオチン化腫瘍抗原と非共有結合的に結合されている、(2)免疫療法とを含む、有効量の医薬組成物を前記対象に投与することを含む方法を提供する。所定の実施形態において、前記腫瘍抗原は、MHCクラスI分子と結合する。所定の実施形態において、前記腫瘍抗原は、自己天然配列及び/又は天然マイクロバイオーム配列との相同性が100%未満である。所定の実施形態において、前記腫瘍抗原は、5~50アミノ酸長(例えば、8~12アミノ酸長)である。ある種の実施形態において、前記方法は、がんの治療方法である。所定の実施形態において、本願に記載する医薬組成物におけるビオチン化腫瘍細胞又はビオチン化腫瘍抗原は、予防及び/又は治療しようとするがんと同一種のがんに由来する。例えば、前記がんは、卵巣がん(例えば、漿液性又は上皮性乳頭状卵巣がん)、又はヒトパピローマウイルス(HPV)関連がん(例えば、HPV誘発性子宮頸がん、HPV誘発性肛門がん又はHPV誘発性頭頸部がん)とすることができる。所定の実施形態において、前記がんは、腫瘍産生ウイルス(例えば、ヒトパピローマウイルス(HPV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、エプスタイン・バールウイルス(EBV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、又はヘルペスウイルス)の感染により誘発される。所定の実施形態において、前記方法は、さらに放射線、放射線増感剤、化学療法及び第2の免疫療法から構成される群から選択されるがん療法を含む。前記免疫療法又は前記第2の免疫療法は、独立して免疫チェックポイント阻害剤又は免疫調節剤とすることができる。所定の実施形態において、前記免疫調節剤は、CXCR4/CXCR7アンタゴニスト(例えば、AMD3100)、Jak/stat阻害薬(例えば、ルキソリチニブ)、又は皮膚関連免疫細胞の近赤外レーザー免疫調節である。
所定の態様において、本願では、対象におけるがんの予防及び/又は治療方法として、免疫療法と、ビオチン結合タンパク質と融合させた熱ショックタンパク質を含む有効量の医薬組成物を併用して前記対象に投与することを含む方法を提供し、前記ビオチン結合タンパク質は、ビオチン化腫瘍細胞又はビオチン化腫瘍抗原と非共有結合的に結合している。所定の実施形態において、前記腫瘍抗原は、MHCクラスI分子と結合する。所定の実施形態において、前記腫瘍抗原は、自己天然配列及び/又は天然マイクロバイオーム配列との相同性が100%未満である。所定の実施形態において、前記腫瘍抗原は、5~50アミノ酸長(例えば、8~12アミノ酸長)である。所定の実施形態において、前記方法は、がんの治療方法である。所定の実施形態では、前記免疫療法と前記医薬組成物を同時又は逐次投与する。所定の実施形態では、前記医薬組成物を前記免疫療法の前に投与する。所定の実施形態において、前記医薬組成物におけるビオチン化腫瘍細胞又はビオチン化腫瘍抗原は、予防又は治療しようとするがんと同一種のがんに由来する。例えば、前記がんは、卵巣がん(例えば、漿液性又は上皮性乳頭状卵巣がん)、ヒトパピローマウイルス(HPV)関連がん(例えば、HPV誘発性子宮頸がん、HPV誘発性肛門がん、HPV誘発性口腔がん、HPV誘発性外陰がん、HPV誘発性膣がん、HPV誘発性陰茎がん又はHPV誘発性頭頸部がん)とすることができる。所定の実施形態において、前記がんは、腫瘍産生ウイルス(例えば、HPV、HCV、EBV、HIV又はヘルペスウイルス)の感染により誘発される。所定の実施形態において、前記方法は、さらに放射線、放射線増感剤及び化学療法から構成される群から選択されるがん療法を含む。
所定の実施形態において、前記ビオチン結合タンパク質は、ビオチン化腫瘍細胞と非共有結合的に結合しており、前記ビオチン化腫瘍細胞は、その表面に抗原を発現する。所定の実施形態において、前記腫瘍細胞は、例えば放射線照射により複製不能にされている。所定の実施形態において、前記ビオチン化腫瘍細胞は、ビオチン化肉腫細胞又はビオチン化癌腫細胞であり、例えば、前記ビオチン化腫瘍細胞は、ビオチン化線維肉腫細胞、ビオチン化粘液肉腫細胞、ビオチン化脂肪肉腫細胞、ビオチン化軟骨肉腫細胞、ビオチン化骨原性肉腫細胞、ビオチン化脊索腫細胞、ビオチン化血管肉腫細胞、ビオチン化血管内皮肉腫細胞、ビオチン化リンパ管肉腫細胞、ビオチン化リンパ管内皮肉腫細胞、ビオチン化滑液膜腫細胞、ビオチン化中皮腫細胞、ビオチン化ユーイング腫瘍細胞、ビオチン化平滑筋肉腫細胞、ビオチン化横紋筋肉腫細胞、ビオチン化結腸癌細胞、ビオチン化大腸がん細胞、ビオチン化膵臓がん細胞、ビオチン化乳がん細胞、ビオチン化卵巣がん細胞、ビオチン化前立腺がん細胞、ビオチン化扁平上皮癌細胞、ビオチン化基底細胞癌細胞、ビオチン化腺癌細胞、ビオチン化汗腺癌細胞、ビオチン化脂腺癌細胞、ビオチン化乳頭癌細胞、ビオチン化乳頭腺癌細胞、ビオチン化嚢胞腺癌細胞、ビオチン化髄様癌細胞、ビオチン化気管支原性癌細胞、ビオチン化腎細胞癌細胞、ビオチン化ヘパトーマ細胞、ビオチン化胆道癌細胞、ビオチン化絨毛癌細胞、ビオチン化セミノーマ細胞、ビオチン化胎児性癌細胞、ビオチン化ウィルムス腫瘍細胞、ビオチン化子宮頸がん細胞、ビオチン化精巣腫瘍細胞、ビオチン化肺癌細胞、ビオチン化小細胞肺癌細胞、ビオチン化膀胱癌細胞、ビオチン化上皮性癌細胞、ビオチン化神経膠腫細胞、ビオチン化星細胞腫細胞、ビオチン化髄芽腫細胞、ビオチン化頭蓋咽頭腫細胞、ビオチン化上衣腫細胞、ビオチン化松果体腫細胞、ビオチン化血管芽腫細胞、ビオチン化聴神経腫瘍細胞、ビオチン化乏突起膠腫細胞、ビオチン化髄膜腫細胞、ビオチン化メラノーマ細胞、ビオチン化神経芽腫細胞、ビオチン化網膜芽細胞腫細胞、ビオチン化白血病細胞、ビオチン化真性赤血球増加症細胞、ビオチン化リンパ腫細胞、ビオチン化多発性骨髄腫細胞、ビオチン化ワルデンシュトレームマクログロブリン血症細胞、ビオチン化頭頸部がん細胞、ビオチン化肛門がん細胞又はビオチン化重鎖病細胞である。ある種の実施形態において、前記ビオチン化腫瘍細胞は、ビオチン化卵巣がん細胞(例えば、ビオチン化漿液性又は上皮性乳頭状卵巣がん細胞)である。ある種の実施形態において、前記ビオチン化腫瘍細胞は、ビオチン化ヒトパピローマウイルス(HPV)関連がん細胞(例えば、ビオチン化HPV誘発性子宮頸がん、ビオチン化HPV誘発性肛門がん又はビオチン化HPV誘発性頭頸部がん)である。
所定の実施形態において、前記ビオチン結合タンパク質は、ビオチン化腫瘍抗原と非共有結合的に結合している。前記腫瘍抗原は、腫瘍細胞により過剰発現されるタンパク質又はその免疫原性断片とすることができる。前記腫瘍抗原は、腫瘍細胞で特異的に突然変異しているタンパク質又はその免疫原性断片でもよい。所定の実施形態において、前記腫瘍抗原は、全長又は部分的な不活化腫瘍産生ウイルスを含む。他の実施形態において、前記腫瘍抗原は、腫瘍産生ウイルスに由来するタンパク質又はその免疫原性断片を含む。前記腫瘍産生ウイルスは、例えば、HPV、HCV、EBV、HIV又はヘルペスウイルスとすることができる。所定の実施形態において、前記腫瘍抗原は腫瘍由来ホスホペプチドである。所定の実施形態において、前記腫瘍抗原は、免疫応答を誘発することが可能である。所定の実施形態において、前記腫瘍抗原は、肉腫細胞又は癌腫細胞に由来し、例えば、線維肉腫細胞、粘液肉腫細胞、脂肪肉腫細胞、軟骨肉腫細胞、骨原性肉腫細胞、脊索腫細胞、血管肉腫細胞、血管内皮肉腫細胞、リンパ管肉腫細胞、リンパ管内皮肉腫細胞、滑液膜腫細胞、中皮腫細胞、ユーイング腫瘍細胞、平滑筋肉腫細胞、横紋筋肉腫細胞、結腸癌細胞、大腸がん細胞、膵臓がん細胞、乳がん細胞、卵巣がん細胞、前立腺がん細胞、扁平上皮癌細胞、基底細胞癌細胞、腺癌細胞、汗腺癌細胞、脂腺癌細胞、乳頭癌細胞、乳頭腺癌細胞、嚢胞腺癌細胞、髄様癌細胞、気管支原性癌細胞、腎細胞癌細胞、ヘパトーマ細胞、胆道癌細胞、絨毛癌細胞、セミノーマ細胞、胎児性癌細胞、ウィルムス腫瘍細胞、子宮頸がん細胞、精巣腫瘍細胞、肺癌細胞、小細胞肺癌細胞、膀胱癌細胞、上皮性癌細胞、神経膠腫細胞、星細胞腫細胞、髄芽腫細胞、頭蓋咽頭腫細胞、上衣腫細胞、松果体腫細胞、血管芽腫細胞、聴神経腫瘍細胞、乏突起膠腫細胞、髄膜腫細胞、メラノーマ細胞、神経芽腫細胞、網膜芽細胞腫細胞、白血病細胞、真性赤血球増加症細胞、リンパ腫細胞、多発性骨髄腫細胞、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症細胞、頭頸部がん細胞、肛門がん細胞又は重鎖病細胞に由来する。ある種の実施形態において、前記腫瘍抗原は、卵巣がん細胞(例えば、漿液性又は上皮性乳頭状卵巣がん細胞)に由来する。好ましい実施形態において、前記腫瘍抗原は、表1(33頁)から選択される1種以上のペプチドである。ある種の実施形態において、前記腫瘍抗原は、ヒトパピローマウイルス(HPV)関連がん細胞(例えば、HPV誘発性子宮頸がん、HPV誘発性肛門がん、HPV誘発性口腔がん、HPV誘発性外陰がん、HPV誘発性膣がん、HPV誘発性陰茎がん又はHPV誘発性頭頸部がん)に由来する。
所定の実施形態において、前記免疫療法は、免疫チェックポイントを阻害する。ある種の実施形態において、前記免疫チェックポイントは、CTLA-4、PD-1、VISTA、B7-H2、B7-H3、PD-L1、B7-H4、B7-H6、ICOS、HVEM、PD-L2、CD160、gp49B、PIR-B、KIRファミリー受容体、TIM-1、TIM-3、TIM-4、LAG-3、GITR、4-IBB、OX-40、BTLA、SIRPα(CD47)、CD48、2B4(CD244)、B7.1、B7.2、ILT-2、ILT-4、TIGIT、HHLA2、ブチロフィリン及びA2aRから構成される群から選択される。例えば、前記免疫チェックポイントは、PD1又はPD-L1とすることができる。好ましい実施形態において、前記免疫療法は抗PD-1抗体である。所定の実施形態において、前記免疫療法は、CXCR4/CXCR7アンタゴニスト(例えば、AMD3100)、Jak/stat阻害薬(例えば、ルキソリチニブ)、及び皮膚関連免疫細胞の近赤外レーザー免疫調節から構成される群から選択される免疫調節剤である。
所定の態様において、本願では、対象におけるHPV関連がんの予防及び/又は治療方法として、ビオチン結合タンパク質と融合させた熱ショックタンパク質を含む有効量の医薬組成物を前記対象に投与することを含む方法を提供し、前記ビオチン結合タンパク質は、ビオチン化HPVウイルス又はビオチン化HPVウイルス抗原と非共有結合的に結合している。所定の実施形態において、前記HPVウイルス抗原は、MHCクラスI分子と結合する。所定の実施形態において、前記HPVウイルス抗原は、自己天然配列及び/又は天然マイクロバイオーム配列との相同性が100%未満である。所定の実施形態において、前記HPVウイルス抗原は、5~50アミノ酸長(例えば、8~12アミノ酸長)である。所定の実施形態において、本願に記載する方法で使用される医薬組成物はワクチンである。ある種の実施形態において、前記方法は、HPV関連がん(例えば、頭頸部がん又は肛門がん)の治療方法である。所定の実施形態では、前記医薬組成物を非共有結合的複合体として前記対象に投与する。
所定の態様において、本願では、(1)ビオチン結合タンパク質と融合させた熱ショックタンパク質と、ここで、前記ビオチン結合タンパク質は、ビオチン化HPVウイルス又はビオチン化HPVウイルス抗原と非共有結合的に結合されている、(2)免疫療法とを含む、医薬組成物、又はこれらから本質的に構成される医薬組成物、又はこれらから構成される医薬組成物を提供する。所定の実施形態において、前記HPVウイルス抗原は、MHCクラスI分子と結合する。所定の実施形態において、前記HPVウイルス抗原は、自己天然配列及び/又は天然マイクロバイオーム配列との相同性が100%未満である。所定の実施形態において、前記HPVウイルス抗原は、5~50アミノ酸長(例えば、8~12アミノ酸長)である。
所定の態様において、本願では、対象におけるHPV関連がんの予防及び/又は治療方法として、(1)ビオチン結合タンパク質と融合させた熱ショックタンパク質と、ここで、前記ビオチン結合タンパク質は、ビオチン化HPVウイルス又はビオチン化HPVウイルス抗原と非共有結合的に結合されている、(2)免疫療法とを含む、有効量の医薬組成物を前記対象に投与することを含む方法を提供する。所定の実施形態において、前記HPVウイルス抗原は、MHCクラスI分子と結合する。所定の実施形態において、前記HPVウイルス抗原は、自己天然配列及び/又は天然マイクロバイオーム配列との相同性が100%未満である。所定の実施形態において、前記HPVウイルス抗原は、5~50アミノ酸長(例えば、8~12アミノ酸長)である。ある種の実施形態において、前記方法は、HPV関連がん(例えば、頭頸部がん又は肛門がん)の治療方法である。所定の実施形態において、前記方法は、さらに放射線、放射線増感剤、化学療法及び第2の免疫療法から構成される群から選択されるがん療法を含む。前記免疫療法又は前記第2の免疫療法は、独立して免疫チェックポイント阻害剤又は免疫調節剤とすることができる。所定の実施形態において、前記免疫調節剤は、CXCR4/CXCR7アンタゴニスト(例えば、AMD3100)、Jak/stat阻害薬(例えば、ルキソリチニブ)、又は皮膚関連免疫細胞の近赤外レーザー免疫調節である。
所定の態様において、本願では、対象におけるHPV関連がんの予防及び/又は治療方法として、免疫療法と、ビオチン結合タンパク質と融合させた熱ショックタンパク質を含む有効量の医薬組成物を併用して前記対象に投与することを含む方法を提供し、前記ビオチン結合タンパク質は、ビオチン化HPVウイルス又はビオチン化HPVウイルス抗原と非共有結合的に結合している。所定の実施形態において、前記HPVウイルス抗原は、MHCクラスI分子と結合する。所定の実施形態において、前記HPVウイルス抗原は、自己天然配列及び/又は天然マイクロバイオーム配列との相同性が100%未満である。所定の実施形態において、前記HPVウイルス抗原は、5~50アミノ酸長(例えば、8~12アミノ酸長)である。所定の実施形態において、前記方法は、HPV関連がん(例えば、頭頸部がん又は肛門がん)の治療方法である。所定の実施形態では、前記免疫療法と前記医薬組成物を同時又は逐次投与する。所定の実施形態では、前記医薬組成物を前記免疫療法の前に投与する。所定の実施形態において、前記方法は、さらに放射線、放射線増感剤及び化学療法から構成される群から選択されるがん療法を含む。
所定の実施形態において、前記ビオチン結合タンパク質は、ビオチン化HPVウイルスと非共有結合的に結合しており、前記ビオチン化HPVウイルスは、抗原を発現する。前記HPVウイルスは、全長又は部分的な不活化HPVウイルスとすることができる。他の実施形態において、前記ビオチン結合タンパク質は、ビオチン化HPVウイルス抗原と非共有結合的に結合している。前記ビオチン化HPVウイルス抗原は、ビオチン化E6タンパク質、ビオチン化E7タンパク質、又はそのビオチン化免疫原性断片とすることができる。特定の実施形態において、前記ビオチン化HPVウイルス抗原は、表3から選択される。所定の実施形態において、前記医薬組成物は、HPV関連がん(例えば、頭頸部がん又は肛門がん)に罹患している対象の生存率を上昇させる。
さらに、本開示のいずれかの態様に適用することができる実施形態及び/又は本願に記載する他のいずれかの実施形態と組み合わせることができる実施形態も多数のものがある。例えば、所定の実施形態において、前記ビオチン結合タンパク質は、アビジン、ストレプトアビジン及びニュートラアビジンから構成される群から選択される。所定の実施形態において、前記ビオチン結合タンパク質は、アビジン又はストレプトアビジンと少なくとも80%、85%、90%、95%又は99%一致するアミノ酸配列を有する。
所定の実施形態において、前記熱ショックタンパク質は、哺乳動物熱ショックタンパク質又は細菌熱ショックタンパク質である。ある種の実施形態において、前記熱ショックタンパク質は、hsp70ファミリーのメンバーである。特定の実施形態において、前記熱ショックタンパク質は、MTB-HSP70であるか又はこれに由来する。例えば、前記熱ショックタンパク質は、配列番号1又は配列番号2と少なくとも80%、85%、90%、95%又は99%一致するアミノ酸配列を有することができる。所定の実施形態において、前記医薬組成物はワクチンである。所定の実施形態において、前記医薬組成物は、さらに薬学的に許容される基剤を含む。所定の実施形態において、前記医薬組成物は、がん(例えば、漿液性又は上皮性乳頭状卵巣がん等の卵巣がんや、HPV関連がん)に罹患している対象の生存率を上昇させる。所定の実施形態において、前記医薬組成物は、免疫応答を増強する。所定の実施形態において、前記医薬組成物は、免疫細胞の増殖を亢進する。
所定の態様において、本願では、本願に記載する医薬組成物の製造方法として、熱ショックタンパク質とビオチン化ペプチドの非共有結合的複合体を形成するために十分となるように、ビオチン結合タンパク質と融合させた前記熱ショックタンパク質を前記ビオチン化ペプチドと接触させることを含む方法を提供し、前記ペプチドは、(1)MHCクラスI分子と結合し、(2)自己天然配列及び/又は天然マイクロバイオーム配列との相同性が100%未満である。所定の実施形態において、前記ペプチドは、表1(33頁)から選択される1種以上のペプチドである。
所定の態様において、本願では、対象に免疫応答を誘導する方法として、有効量の本願に記載する医薬組成物を前記対象に投与することを含む方法を提供する。
自己集合性ワクチン(SAV)の模式図を示す。MTB-HSP70は、標的に関係なく全てのSAVに共通する免疫刺激基本ユニットである。特異的ターゲティングペプチド配列(可変ユニットと記した部分)を提供する可変ユニットと結合させるために、MTB-HSP70にアビジンを付加する。 種々の治療を行ったマウスの生存率パーセントを示す。
概要
本発明は少なくとも一部において、熱ショックタンパク質融合体をビオチン化成分(例えば、腫瘍細胞又は腫瘍抗原)と非共有結合的に会合させると、がん(例えば、卵巣がん)をもつマウスの生存率を上昇させる自己集合性ワクチン(SAV)が得られるという発見に基づく。特筆すべき点として、SAVと免疫療法(例えば、抗PD-1抗体)の併用治療は、これらのマウスの生存率の上昇に相乗効果を示した。これらの効果の少なくとも一因は免疫細胞の増殖亢進にある。したがって、SAVを単独で使用するか又は免疫療法と併用してがんを予防及び/又は治療するための組成物及び方法が提供される。
全てのワクチンの大きな課題は開発に要する費用と時間である。新興感染症とがんの場合、標的に合わせてワクチンを個別に設計した後に迅速且つ費用効果的に製造する必要があるため、これらの制約は特に厳しい。この難題に対処するために、ある種の実施形態において、本発明は、免疫応答を誘発するターゲティングモジュールと連結することができる免疫賦活基本ユニットから成るモジュラープラットフォームに関する。このプラットフォームは、当初は感染症を標的として開発されたが、ターゲティングモジュールを種々のがん種にも同様に送達できることが本願で立証された。所定の実施形態において、前記プラットフォームの基本ユニットは、免疫刺激特性を有することが分かっている細菌タンパク質であるMTB-HSP70であり、アビジンを付加するように修飾する。アビジンの付加により、ペプチドと呼ばれるタンパク質サブユニット等の特異的ターゲティングモジュールに基本ユニットを連結することが可能になる(図1参照)。ある種の実施形態において、腫瘍を標的とするために使用されるペプチドは、腫瘍に異常に多量に存在するタンパク質、腫瘍に特有の突然変異、及びがん細胞のホールマークであるタンパク質修飾から選択することができる。免疫系の良好な標的を提供すると予想される標的特異的ペプチドを同定し、そのペプチド鎖の適切な構造を決定し、カスタムペプチドの合成に必要な変異を組み込むために、コンピューターツールを使用することができる。
ある種の実施形態では、これらのカスタムペプチドにビオチンを付加し、アビジンと結合させ、免疫刺激成分とがんターゲティング成分の間に非常に安定した結合を形成する。このアプローチは特別な化学反応又は精製をそれ以上必要とせずに作製できることから、「自己集合性ワクチン」又は「SAV」と名付けられた。従来、SAVアプローチは細菌及びウイルス標的に対して特異的な免疫応答を促進できることが示されている(Leblanc et al.(2014)Human Vaccin.Immunother.10:3022-3038)。他の報告には、MTB-HSP70が腫瘍標的抗体の機能を改善できることも示されている。したがって、腫瘍特異的ワクチンを創製するためにSAV技術を使用することができ、さらに、広範な免疫賦活能を有するアジュバントを任意選択的にビルトインしてもよい。ある種の実施形態において、前記ワクチンは多数の方法で腫瘍を標的とし、好ましい抗腫瘍免疫応答が得られる。
卵巣がんは、この疾患の診断を受ける女性の大多数が後期ステージであるため、アンメットニーズの特に緊急の分野である。大半の女性には、手術と化学療法が初期に有効である。しかし、高い割合の女性が最終的に5年以内に再発する。免疫療法は他のがん種に非常に有望であることが分かっているが、卵巣がんにおける結果は低迷している。免疫療法を取り巻く最近の熱狂に伴い、がんワクチンの開発が再び注目されている。がんの有効な治療法は、手術と化学療法という従来のアプローチと、各患者に合わせて個別に設計されたレジメンとの併用であると思われ、このようなレジメンとしては、標的薬、免疫療法及び個別化ワクチンが挙げられる。
ある種の実施形態において、前記SAVは、腫瘍により過剰発現されることが分かっているタンパク質又はがん細胞で特異的に突然変異しているタンパク質に由来するペプチドを含む。ある種の実施形態において、前記ペプチドは単独で免疫応答を誘発する。
ある種の実施形態において、本発明は、免疫療法剤(例えば、PD-1を標的とする抗体)と併用投与する医薬組成物に関する。感染症又は腫瘍との闘いで消耗した免疫細胞はその表面のPD-1濃度が高くなっていることが多い。抗PD-1抗体は機能が低下しているこれらの免疫細胞の表面に結合し、これらの細胞を再び活発化させることができる。しかし、この治療では体内の抗腫瘍免疫細胞数は増加しない。ある種の実施形態では、(抗がん免疫細胞数を増やすために)腫瘍標的ワクチンを使用し、(それらの機能を回復・維持するために)抗PD-1と併用し、いずれか一方のアプローチ単独で今日までに認められている結果よりも優れた結果が得られる。
定義
分かりやすくするために、本発明を詳細に説明する前に、本明細書、実施例及び特許請求の範囲で利用する所定の用語を以下に定義する。
そうでないことが文脈から明白である場合を除き、単数形の言及は複数形の言及も含む。
本願で使用する「単離型タンパク質」とは、タンパク質が細胞から単離される場合又は組換えDNA技術により生産される場合には、他のタンパク質、細胞材料、分離媒体及び培養培地を実質的に含まないタンパク質を意味し、化学的に合成される場合には、化学的前駆物質又は他の化学物質を実質的に含まないタンパク質を意味する。「単離」若しくは「精製」タンパク質又はその生物学的に活性な部分は、抗体、ポリペプチド、ペプチド又は融合タンパク質の由来元である細胞又は組織資源からの細胞材料又は他の汚染性タンパク質を実質的に含まず、あるいは化学的に合成される場合には、化学的前駆物質又は他の化学物質を実質的に含まない。「細胞材料を実質的に含まない」なる文言は、本発明の組成物がその単離元又は組換え生産原料である細胞の細胞成分から分離されている調製物を含む。1実施形態において、「細胞材料を実質的に含まない」なる文言は、細胞材料の含有量が約30%未満、20%未満、10%未満又は5%未満(乾燥重量)である調製物を含む。抗体、ポリペプチド、ペプチド若しくは融合タンパク質又はその断片(例えば、その生物学的に活性な断片)が組換え生産される場合には、培養培地を実質的に含まないことも好ましく、即ち、培養培地は前記タンパク質調製物の体積の約20%未満であり、約10%未満がより好ましく、約5%未満が最も好ましい。
「約」及び「概数で」とは一般に、測定の種類又は精度を考慮して測定量に許容される誤差の程度を意味する。一般的に、典型的な誤差の程度は記載数値又は数値範囲の20%以内であり、10%以内が好ましく、5%以内がより好ましい。あるいは、特に生体系において、「約」及び「概数で」なる用語は、記載数値の一定倍以内の数値を意味する場合もあり、5倍以内が好ましく、2倍以内がより好ましい。特に指定しない限り、本願に記載する数量は概数であり、即ち、特に明記していない場合には、「約」又は「概数で」なる用語が付いていると推測することができる。
「投与する」なる用語は、薬剤がその目的の機能を実施できるような投与経路を含むものとする。使用することができる生体治療用投与経路の例としては、注入(皮下、静脈内、非経口、腹腔内、髄腔内等)、経口、吸入及び経皮経路が挙げられる。前記注入はボーラス注射でも連続輸液でもよい。投与経路に応じて、薬剤がその目的の機能を実施する能力に悪影響を与える可能性のある天然条件から薬剤を保護するために、選択された材料をコーティングしたり、その内側に配置することができる。薬剤は単独で投与してもよいし、薬学的に許容される基剤と共に投与してもよい。また、インビボでその活性形態に変換されるプロドラッグとして薬剤を投与してもよい。
「非経口」とは経腸及び局所投与以外の投与方式を意味し、通常では注射による方式であり、限定されないが、静脈内注射、筋肉内注射、病巣内注射、動脈内注射、髄腔内注射、関節包内注射、眼窩内注射、心臓内注射、皮内注射、腹腔内注射、経気管注射、皮下注射、表皮下注射、関節内注射、被膜下注射、くも膜下注射、脊髄内注射、胸骨内注射、口腔内、硬膜外、鼻腔内、及び輸液が挙げられる。
本願で使用する「併用投与」又は「併用して投与する」又は「併用投与する」なる用語は、先に投与した薬剤が体内でまだ有効である間に別の薬剤を投与するように2種類以上の異なる薬剤を投与する任意の投与形式を意味する(例えば、前記2種類の薬剤は対象において同時に有効であり、前記2種類の薬剤の相乗効果を生じる場合もある)。例えば、前記異なる薬剤を同一製剤で投与することもできるし、別々の製剤で同時又は逐次投与することもできる。したがって、このような治療を受ける対象は、異なる薬剤の併用効果の恩恵を受けることができる。
「アミノ酸」なる用語は、天然又は合成のいずれであるかに拘わらず、アミノ官能基と酸官能基を併有し、天然アミノ酸のポリマーに含むことができる全分子を包含するものとする。典型的なアミノ酸としては、天然アミノ酸;そのアナログ、誘導体及び同族体;変異体側鎖を有するアミノ酸アナログ;並びに上記のいずれかの全立体異性体が挙げられる。本願では、IUPAC-IUBの推奨に従って天然アミノ酸の名称を略称する。
「抗体」なる用語は、免疫グロブリン又は特異的結合能を維持するその誘導体に加え、免疫グロブリン結合ドメインと相同又はほぼ相同の結合ドメインを有するタンパク質を意味する。「抗体」なる用語は、全長抗体又はその抗原結合断片を含むものとする。これらのタンパク質は、天然資源に由来するものでもよいし、部分的又は完全に合成生産されたものでもよい。抗体はモノクローナル抗体でもポリクローナル抗体でもよい。抗体は、任意の生物種に由来する任意の免疫グロブリンクラスのメンバーとすることができ、ヒト免疫グロブリンクラスIgG、IgM、IgA、IgD及びIgEのいずれかが挙げられる。典型的な実施形態において、本願に記載する方法及び組成物で使用される抗体は、IgGクラスの誘導体である。抗体は人工抗体でもよいし、天然抗体でもよい。
「抗体断片」なる用語は、全長よりも短い抗体の任意の誘導体を意味する。典型的な実施形態において、抗体断片は、全長抗体の特異的結合能の少なくとも有意部分を保持する。抗体断片の例としては、限定されないが、Fab断片、Fab’ 断片、F(ab’)断片、Fc断片、scFv断片、Fv断片、dsFvダイアボディ断片及びFd断片が挙げられる。抗体断片は任意の手段により作製することができる。例えば、抗体断片は、酵素又は化学処理により無傷の抗体を断片化して作製することもできるし、部分的な抗体配列をコードする遺伝子から組換え生産することもできるし、全体又は一部を合成により生産することもできる。抗体断片は、任意選択的に一本鎖抗体断片でもよい。あるいは、前記断片は、複数の分子鎖が例えばジスルフィド結合により相互に連結したものでもよい。前記断片はさらに任意選択的に多分子複合体でもよい。機能的抗体断片は、一般的には少なくとも約50アミノ酸長となり、より一般的には少なくとも約200アミノ酸長となるであろう。
抗体はポリクローナル抗体でもモノクローナル抗体でもよく、異種、同種又は同系のいずれでもよく、あるいはその改変体(例えば、ヒト化、キメラ等)でもよい。抗体は完全ヒト抗体でもよい。本発明の抗体は、バイオマーカーポリペプチド又はその断片と特異的又は実質的に特異的に結合することが好ましい。本願で使用する「モノクローナル抗体」及び「モノクローナル抗体組成物」なる用語は、抗原の特定のエピトープと免疫反応することが可能な1種類のみの抗原結合部位を含む抗体ポリペプチド集団を意味し、「ポリクローナル抗体」及び「ポリクローナル抗体組成物」なる用語は、特定の抗原と相互作用することが可能な複数種類の抗原結合部位を含む抗体ポリペプチド集団を意味する。モノクローナル抗体組成物は、一般的に、この組成物が免疫反応する特定の抗原に対して単一の結合親和性を示す。
抗体は「ヒト化」抗体でもよく、つまり、非ヒト細胞により産生される抗体であるが、ヒト細胞により産生される抗体とより近似するように改変された可変領域と定常領域を有する抗体でもよい。このような抗体は、例えば、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列に存在するアミノ酸を組み込むように非ヒト抗体アミノ酸配列を改変することにより得られる。本発明のヒト化抗体は、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列によりコードされないアミノ酸残基(例えば、ランダム若しくはインビトロ部位特異的突然変異誘発法又はインビボ体細胞突然変異により導入された突然変異)を例えばCDRに含むことができる。本願で使用する「ヒト化抗体」なる用語は、別の哺乳動物種の生殖細胞系列に由来するCDR配列をヒトフレームワーク配列にグラフト化した抗体も含む。
「抗原」とは、本願に記載する組成物により誘導される免疫応答の標的を意味する。抗原はタンパク質抗原とすることができ、全長タンパク質に加え、ウイルス又は対象の感染細胞、外来細胞若しくは腫瘍細胞の表面に提示される前記タンパク質の断片と、前記タンパク質のプロセシングと提示の結果として、例えば典型的なMHCクラスI又はII経路を介して感染細胞、外来細胞又は腫瘍細胞により提示されるペプチドを含むものと理解されたい。このような外来細胞の例としては、細菌、真菌及び原生動物が挙げられる。
所定の実施形態において、前記「抗原」は、MHCクラスI分子(例えば、HLA分子)と結合する。HLAクラスII及びクラスI対立遺伝子に対する抗原の結合能の試験方法は、当技術分野で周知である。例えば、HLA結合は公知アルゴリズム(例えば、EpiMatrixアルゴリズム)を使用して推定することができ、又はScholzen et al.(2019)Frontiers in Immunology 10:1-22に記載されているような標準インビトロHLA結合アッセイ(例えば、競合アッセイ)を使用して試験することができる。結合親和性は競合アッセイを使用してIC50により測定することができる。例えば、HLAクラスII結合アッセイでIC50値が100μM以下のタンパク質又はペプチドを「結合剤」とみなすことができ、試験した結合条件下でIC50値が高過ぎて(>100μM)正確に測定できないか又は用量依存的応答を生じないタンパク質又はペプチドを非結合剤とみなす。HLAクラスI結合アッセイでは、IC50値が1000μM以下のタンパク質又はペプチドを「結合剤」とみなすことができ、試験した結合条件でIC50値が高過ぎて(>1000μM)正確に測定できないか又は用量依存的応答を生じないタンパク質又はペプチドを非結合剤とみなす。
所定の実施形態において、前記「抗原」は自己反応性及び/又はマイクロバイオーム反応性を示さないか又は最低限である。「自己反応性」は、抗原と自己天然配列の配列相同性に基づいて推定することができる。所定の実施形態において、前記抗原は、自己天然配列との相同性が100%未満、99%未満、95%未満、90%未満、85%未満、80%未満、75%未満、70%未満、65%未満、60%未満、55%未満、50%未満、45%未満、40%未満、35%未満、30%未満、25%未満、20%未満、15%未満、10%未満、5%未満、1%未満である配列を有する。「マイクロバイオーム反応性」は、抗原と天然マイクロバイオーム配列の配列相同性に基づいて推定することができる。所定の実施形態において、前記抗原は、天然マイクロバイオーム配列との相同性が100%未満、99%未満、95%未満、90%未満、85%未満、80%未満、75%未満、70%未満、65%未満、60%未満、55%未満、50%未満、45%未満、40%未満、35%未満、30%未満、25%未満、20%未満、15%未満、10%未満、5%未満、1%未満である配列を有する。所定の実施形態では、Scholzen et al.(2019)Frontiers in Immunology 10:1-22に記載されているような公知アルゴリズム(例えば、JanusMatrixアルゴリズム)を使用して相同性解析を実施することができる。所定の実施形態において、前記「抗原」は、約5~約100アミノ酸長、例えば、約5~約90アミノ酸長、約5~約80アミノ酸長、約5~約70アミノ酸長、約5~約60アミノ酸長、約5~約50アミノ酸長、約5~約45アミノ酸長、約5~約40アミノ酸長、約5~約35アミノ酸長、約5~約30アミノ酸長、約5~約25アミノ酸長、約5~約20アミノ酸長、約5~約15アミノ酸長、又は約8~約12アミノ酸のペプチドである。特定の実施形態において、前記「抗原」は、5アミノ酸長、6アミノ酸長、7アミノ酸長、8アミノ酸長、9アミノ酸長、10アミノ酸長、11アミノ酸長、12アミノ酸長、13アミノ酸長、14アミノ酸長、15アミノ酸長、16アミノ酸長、17アミノ酸長、18アミノ酸長、19アミノ酸長、20アミノ酸長、21アミノ酸長、22アミノ酸長、23アミノ酸長、24アミノ酸長、又は25アミノ酸長のペプチドである。細菌抗原の例としては、プロテインA(PrA)、プロテインG(PrG)及びプロテインL(PrL)が挙げられる。腫瘍抗原の例としては、限定されないが、表1(33頁)に列挙したペプチドが挙げられる。ウイルス抗原の例としては、限定されないが、表3(38頁)に列挙したペプチドが挙げられる。
「抗原結合部位」なる用語は、抗原上のエピトープと特異的に結合する抗体の領域を意味する。
「ビオチン結合タンパク質」なる用語は、ビオチンと非共有結合的に結合するタンパク質を意味する。ビオチン結合タンパク質は、夫々本願に記載するような一価、二価又は四価の医薬組成物を形成することが可能な単量体、二量体又は四量体とすることができる。非限定的な例としては、抗ビオチン抗体、アビジン、ストレプトアビジン及びニュートラアビジンが挙げられる。前記アビジンは成熟アビジンを含むこともできるし、NCBIアクセッション番号NP_990651で識別される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%又は99%一致する配列を含むこともできる。前記ストレプトアビジンは、例えばNCBIアクセッション番号AAU48617で識別される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%又は99%一致する配列を含むことができる。「ビオチン結合タンパク質」なる用語は、単量体、二量体又は四量体を形成する野生型アビジン、ストレプトアビジン及びニュートラアビジンとその誘導体を含むものとする。このような誘導体の例は以下に記載し、Laitinen,O.H.(2007),“Brave New(Strept)avidins in Biotechnology,”Trends in Biotechnology 25(6):269-277と、Nordlund,H.R.(2003),“Introduction of histidine residues into avidin subunit interfaces allows pH-dependent regulation of quaternary structure and biotin binding,”FEBS Letters 555:449-454にも記載されており、両文献の内容を特に本願に援用する。
抗原含有ビオチン化成分としての文脈で使用する場合に「腫瘍細胞」なる用語は、腫瘍細胞全体又はその部分を含むものとし、ただし、前記部分は、ビオチン化「腫瘍細胞」を含む医薬組成物を対象に投与したときに免疫系が認識するために接近可能な表面に目的抗原を含む。
「がん」又は「腫瘍」又は「過剰増殖」なる用語は、無制御な増殖、不死化、転移可能性、迅速な成長及び増殖速度、並びに所定の特徴的な形態形質等のがん原因細胞に典型的な特徴を有する細胞の存在を意味する。
がん細胞は腫瘍の形態であることが多いが、このような細胞は動物の体内に単独で存在する場合もあるし、白血病細胞等の非造腫瘍性がん細胞の場合もある。本願で使用する「がん」なる用語は、前悪性がんと悪性がんを含む。がんとしては、限定されないが、B細胞がん(例えば、多発性骨髄腫、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症)、重鎖病(例えば、α鎖病、γ鎖病及びμ鎖病)、良性単クローン性ガンマグロブリン血症、免疫細胞性アミロイドーシス、メラノーマ、乳がん、肺がん、気管支がん、大腸がん、前立腺がん、膵臓がん、胃がん、卵巣がん、膀胱がん、脳又は中枢神経系がん、末梢神経系がん、食道がん、子宮頸がん、子宮又は子宮内膜がん、口腔又は咽頭がん、肝臓がん、腎臓がん、精巣がん、胆道がん、小腸又は虫垂がん、唾液腺がん、甲状腺がん、副腎がん、骨肉腫、軟骨肉腫、造血組織がん等が挙げられる。本発明に含まれる方法に適用可能な種類のがんの他の非限定的な例としては、ヒト肉腫及び癌腫が挙げられ、例えば、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、脊索腫、血管肉腫、血管内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑液膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、大腸がん、膵臓がん、乳がん、卵巣がん、前立腺がん、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、脂腺癌、乳頭癌、乳頭腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支原性癌、腎細胞癌、ヘパトーマ、胆道癌、肝臓がん、絨毛癌、セミノーマ、胎児性癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸がん、骨がん、脳腫瘍、精巣がん、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮性癌、神経膠腫、星細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫瘍、乏突起膠腫、髄膜腫、メラノーマ、神経芽腫、網膜芽細胞腫、白血病(例えば、急性リンパ球性白血病及び急性骨髄球性白血病(骨髄芽球性白血病、前骨髄球性白血病、骨髄単球性白血病、単球性白血病及び赤白血病)、慢性白血病(慢性骨髄球性(顆粒球性)白血病及び慢性リンパ球性白血病))、真性赤血球増加症、リンパ腫(ホジキン病及び非ホジキン病)、多発性骨髄腫、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症及び重鎖病が挙げられる。所定の実施形態において、がんは上皮性であり、限定されないが、膀胱がん、乳がん、子宮頸がん、結腸がん、婦人科がん、腎臓がん、喉頭がん、肺がん、口腔がん、頭頸部がん、卵巣がん、膵臓がん、前立腺がん又は皮膚がんが挙げられる。他の実施形態において、前記がんは、乳がん、前立腺がん、肺がん又は結腸がんである。さらに他の実施形態において、前記上皮性がんは、非小細胞肺がん、非乳頭状腎細胞癌、子宮頸癌、卵巣癌(例えば、漿液性卵巣癌)又は乳癌である。前記上皮性がんは、種々の他の分類法で特徴付けられる場合もあり、限定されないが、漿液性、類内膜、粘液、淡明細胞、ブレンナー又は未分化が挙げられる。
本願で使用する「HPV関連がん」又は「HPV付随がん」なる用語は、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染に付随又は起因する任意種類のがんを意味する。所定のHPV型(例えば、16型、18型、31型及び45型)の持続的感染は中咽頭がん、喉頭がん、外陰がん、膣がん、子宮頸がん、陰茎がん及び肛門がん等のがんに関連付けられている。所定の実施形態において、HPV関連がんとしては、限定されないが、子宮頸がん、頭頸部がん、口腔がん、肛門がん、外陰がん、膣がん、陰茎がん、肺がん及び中咽頭がんが挙げられる。特定の実施形態において、HPV関連がんは、子宮頸がん、頭頸部がん又は肛門がんである。
「含む」及び「含んでいる」なる用語は、包括的で開かれた意味であり、他の要素を含んでいてもよいことを意味する。
本願で使用する「共刺激分子」なる用語は、抗原特異的な初代T細胞刺激剤の刺激作用を増強すること、又は細胞活性化に必要な閾値レベルを上回るように前記刺激剤の活性を上昇させ、ナイーブT細胞の活性化を生じることが可能な任意の分子を含む。このような共刺激分子は、膜局在性受容体タンパク質とすることができる。
「有効量」なる用語は、所望の結果を生じるために十分な医薬組成物の量を意味する。1回以上の投与で有効量の医薬組成物を投与することができる。
本願で使用する「治療有効量」及び「有効量」なる用語は、任意の医療処置に適用可能な妥当なメリット/リスク比で対象の体内の少なくとも細胞亜集団に所望の治療効果を生じるために有効な薬剤の量を意味する。
「人工抗体(engineered antibody)」なる用語は、抗体の重鎖及び/又は軽鎖の可変ドメインに由来する抗原結合部位を含む抗体断片を少なくとも含む組換え分子を意味し、任意選択的に、Igクラス(例えば、IgA、IgD、IgE、IgG、IgM及びIgY)のいずれかに由来する抗体の可変ドメイン及び/又は定常ドメインの全部又は一部を含むことができる。人工抗体の例としては、高機能一本鎖モノクローナル抗体及び高機能モノクローナル抗体が挙げられる。人工抗体の例はPCT/US2007/061554に詳述されており、その開示内容全体を本願に援用する。
「エピトープ」なる用語は、抗体が優先的且つ特異的に結合する抗原の領域を意味する。モノクローナル抗体は、分子科学的に定義することができる分子の単一の特定のエピトープと優先的に結合する。本発明では、多重特異性抗体により複数のエピトープを認識することができる。
「融合タンパク質」とは、少なくとも2種の異なるタンパク質に由来する配列を含むハイブリッドタンパク質を意味する。これらの配列は、同一又は異なる生物のタンパク質に由来することができる。種々の実施形態において、融合タンパク質は、第1のタンパク質に連結された1個以上のアミノ酸配列を含むことができる。2個以上のアミノ酸配列を第1のタンパク質に融合させる場合には、融合配列は同一配列の複数コピーでもよいし、あるいは、異なるアミノ酸配列でもよい。第1のタンパク質を第2のタンパク質のN末端、C末端、又はN末端とC末端に融合させることができる。
「Fab断片」なる用語は、抗原結合部位を含む抗体の断片を意味し、H鎖間のジスルフィド結合のヒンジ領域をN末端側で切断して抗体分子1個から2個のFab断片を生じる酵素であるパパインで抗体を切断することにより生成される。
「F(ab’)断片」なる用語は、2個の抗原結合部位を含む抗体の断片を意味し、H鎖間のジスルフィド結合のヒンジ領域をC末端側で切断する酵素であるペプシンで抗体分子を切断することにより生成される。
「Fc断片」なる用語は、その重鎖の定常ドメインを含む抗体の断片を意味する。
「Fv断片」なる用語は、その重鎖と軽鎖の可変ドメインを含む抗体の断片を意味する。
「遺伝子コンストラクト」とは、ポリペプチドの「コーディング配列」を含むか、又は生物学的に活性なRNA(例えば、アンチセンス、デコイ、リボザイム等)に転写可能な核酸(例えば、ベクター、プラスミド、ウイルスゲノム等)を意味し、細胞(例えば、ある種の実施形態では哺乳動物細胞)にトランスフェクトすることができ、前記コンストラクトをトランスフェクトした細胞で前記コーディング配列の発現を生じることができる。遺伝子コンストラクトは、コーディング配列に機能的に連結された1個以上の調節因子と、イントロン配列、ポリアデニル化部位、複製起点、マーカー遺伝子等を含むことができる。
「宿主細胞」とは、特定のトランスファーベクターを導入することが可能な細胞を意味する。前記細胞は任意選択的に、細胞培養に由来する細胞等のインビトロ細胞、生物に由来する細胞等のエクスビボ細胞、及び生物に存在する細胞等のインビボ細胞から選択される。当然のことながら、このような用語は、特定の対象細胞のみならず、このような細胞の子孫又は潜在的な子孫も意味する。突然変異又は環境影響により後続世代に何らかの変異が生じる場合もあるので、このような子孫は実際には親細胞と同一でない場合があるが、やはり、本願で使用するこの用語の範囲内に含まれる。
「免疫原性」なる用語は、物質が免疫応答を誘発する能力を意味する。「免疫原性組成物」又は「免疫原」とは、免疫応答を誘発する組成物又は物質である。「免疫応答」とは、抗原の存在に対する対象の反応を意味し、抗体産生、免疫発生、抗原過敏反応発生、及び免疫寛容発生のうちの少なくとも1種を含むことができる。特定の実施形態において、「免疫応答」とは抗腫瘍免疫応答を意味する。
「挙げられる」なる用語は、本願では、「挙げられるが、これに限定されない」という意味で使用される。「挙げられる」と「挙げられるが、これに限定されない」とは、同義に使用する。
「リンカー」は当技術分野で周知であり、熱ショックタンパク質とビオチン結合タンパク質のような2個の共有結合性成分を連結する分子又は分子群を意味する。リンカーは、連結分子のみから構成することもできるし、連結分子に加え、前記連結分子と成分の間に一定の距離を空けるためのスペーサー分子を含むこともできる。
「多価抗体」なる用語は、2個以上の抗原認識部位を含む抗体又は人工抗体を意味する。例えば、「二価」抗体は2個の抗原認識部位を有しており、「四価」抗体は4個の抗原認識部位を有する。「単一特異性」、「二重特異性」、「三重特異性」、「四重特異性」等は、多価抗体に存在する(抗原認識部位の数ではなく)異なる抗原認識部位特異性の数を意味する。例えば、「単一特異性」抗体の抗原認識部位は、全てが同一のエピトープと結合する。「二重特異性」抗体は、第1のエピトープと結合する少なくとも1個の抗原認識部位と、第1のエピトープとは異なる第2のエピトープと結合する少なくとも1個の抗原認識部位を有する。「多価単一特異性」抗体は、全てが同一のエピトープと結合する複数の抗原認識部位を有する。「多価二重特異性」抗体は、複数の抗原認識部位を有しており、そのうちの所定数は第1のエピトープと結合し、また、所定数は第1のエピトープとは異なる第2のエピトープと結合する。
本願に記載する自己集合性医薬組成物に関して使用する場合に「多価」なる用語は、2個以上のビオチン化成分と非共有結合的に結合させた熱ショック融合タンパク質を意味する。本願に記載する自己集合性医薬組成物に関して使用する場合に「二価」なる用語は、2個のビオチン化成分(例えば、腫瘍細胞又は腫瘍抗原)と非共有結合的に結合させた熱ショック融合タンパク質を意味する。本願に記載する自己集合性医薬組成物に関して使用する場合に「四価」なる用語は、4個のビオチン化成分(例えば、腫瘍細胞又は腫瘍抗原)と非共有結合的に結合させた熱ショック融合タンパク質を意味する。多価医薬組成物のビオチン化成分(例えば、腫瘍細胞又は腫瘍抗原)は同一成分種でも異なる成分種でもよい。
「核酸」なる用語は、リボヌクレオチド若しくはデオキシヌクレオチドのいずれか一方のヌクレオチドのポリマー形態又はいずれか一方のヌクレオチドの修飾物を意味する。この用語はさらに、ヌクレオチドアナログから形成されるRNA又はDNAのアナログも等価物として含み、記載する実施形態に適用可能な場合には、(センス又はアンチセンス等の)一本鎖及び二本鎖ポリヌクレオチドも含むものと理解されたい。
「患者」又は「対象」又は「宿主」は同義に使用し、各々ヒト又は非ヒト動物のいずれかを意味する。この用語は、ヒト、霊長類、家畜(例えば、ウシ、ブタ)、伴侶動物(例えば、イヌ、ネコ)及びげっ歯類(例えば、マウス、ウサギ及びラット)等の哺乳類を含む。
「薬学的に許容される」なる用語は、本願では、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応又は他の問題若しくは合併症を生じることなく、適正な医学的判断の範囲内でヒト及び動物の組織と接触して使用するのに適しており、妥当なメリット/リスク比に見合う医薬組成物を表すために利用される。
本願で使用する「薬学的に許容される基剤」とは、本願の医薬組成物をある臓器又は生体部分から別の臓器又は生体部分に運搬又は輸送するのに関与する薬学的に許容される材料、組成物又は添加剤(例えば、液体又は固体充填剤、希釈剤、賦形剤、又は溶媒カプセル化材料)を意味する。各基剤は、製剤の他の成分と適合可能であり、患者に無害であるという意味で「許容」されなければならない。薬学的に許容される基剤として利用できる材料の例をいくつか挙げると、(1)ラクトース、グルコース及びスクロース等の糖類;(2)トウモロコシデンプン及びジャガイモデンプン等のデンプン類;(3)カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース及び酢酸セルロース等のセルロースとその誘導体;(4)トラガカント末;(5)麦芽;(6)ゼラチン;(7)タルク;(8)カカオ脂及び坐剤ロウ等の賦形剤;(9)落花生油、綿実油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油及び大豆油等の油類;(10)プロピレングリコール等のグリコール類;(11)グリセリン、ソルビトール、マンニトール及びポリエチレングリコール等のポリオール類;(12)オレイン酸エチル及びラウリン酸エチル等のエステル類;(13)寒天;(14)水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウム等の緩衝剤;(15)アルギン酸;(16)パイロジェンフリー水;(17)等張塩類溶液;(18)リンゲル液;(19)エチルアルコール;(20)pH緩衝液;(21)ポリエステル、ポリカーボネート及び/又はポリ酸無水物;並びに(22)医薬製剤で利用される他の非毒性で適合可能な物質が挙げられる。
そうでないことが文脈から明白である場合を除き、遺伝子発現産物(例えば、コーディング配列によりコードされるようなアミノ酸配列)に言及する場合に、本願では「タンパク質」、「ポリペプチド」及び「ペプチド」を同義に使用する。「タンパク質」は、抗体等の1種以上のタンパク質の会合物を意味する場合もある。「タンパク質」は、タンパク質断片を意味する場合もある。タンパク質は、糖鎖付加タンパク質等の翻訳後修飾タンパク質でもよい。「遺伝子発現産物」とは、遺伝子の全体又は一部の転写の結果として産生される分子を意味する。遺伝子産物としては、遺伝子から転写されたRNA分子と、このような転写産物から翻訳されたタンパク質が挙げられる。タンパク質は、天然の単離型タンパク質でもよいし、組換え産物又は化学合成物でもよい。「タンパク質断片」なる用語は、参照タンパク質自体に比較するとアミノ酸残基を欠失しているが、残りのアミノ酸配列が通常では参照タンパク質のアミノ酸配列と一致するタンパク質を意味する。このような欠失は参照タンパク質のアミノ末端又はカルボキシ末端、あるいはその両方に存在することができる。断片は一般的に、少なくとも約5アミノ酸長、6アミノ酸長、8アミノ酸長、又は10アミノ酸長であり、少なくとも約14アミノ酸長、少なくとも約20アミノ酸長、30アミノ酸長、40アミノ酸長又は50アミノ酸長、少なくとも約75アミノ酸長、又は少なくとも約100アミノ酸長、150アミノ酸長、200アミノ酸長、300アミノ酸長、500アミノ酸長又はそれ以上である。断片はプロテイナーゼを使用してより大きなタンパク質を断片化することにより得ることもできるし、タンパク質をコードするヌクレオチド配列の一部のみを(単独で又は別のタンパク質をコードする核酸配列と融合させて)発現させる等の組換え法により得ることもできる。種々の実施形態において、断片は、酵素活性及び/又は例えば細胞受容体に対する参照タンパク質の相互作用部位を含むことができる。別の実施形態において、断片は免疫原性を有することができる。本願に記載する方法におけるタンパク質の使用を損なうのではなく、強化することができる突然変異を種々の公知技術により前記タンパク質の特定の遺伝子座に導入することができる。断片は、参照タンパク質の生物学的活性の1種以上を維持することができる。
本願で使用する「自己集合性」なる用語は、ビオチン結合タンパク質と融合させた熱ショックタンパク質が本願に記載するようなビオチン化成分と非共有結合的複合体を形成する能力を意味する。このような能力は、ビオチンとビオチン結合タンパク質の非共有結合的会合により付与される。
「一本鎖可変領域断片」又は「scFv」なる用語は、重鎖ドメインと軽鎖ドメインが連結されたFv断片を意味する。1個以上のscFv断片を他の抗体断片(例えば、重鎖又は軽鎖の定常ドメイン)と連結し、1個以上の抗原認識部位を有する抗体コンストラクトを形成することができる。
対象における疾患を「治療する」又は疾患をもつ対象を「治療する」とは、前記疾患の程度を軽減又は予防するように、前記対象に薬学的治療(例えば、薬剤の投与)を行うことを意味する。治療としては、(限定されないが、)医薬組成物等の組成物の投与が挙げられ、病的イベントの開始後に実施することができる。
本願で使用する場合に、病態(例えば、がん)を「予防する」治療薬とは、障害又は病態の発症前に統計サンプルに投与したときに、投与したサンプルの障害又は病態の発生を未投与対照サンプルに比較して低減させる組成物、あるいは、未投与対照サンプルに比較して障害又は病態の1種以上の症状の発症を遅らせるか又はその重篤度を低減させる組成物を意味する。
「ワクチン」なる用語は、目的抗原に対する免疫応答を誘発する医薬組成物を意味する。ワクチンは対象に防御免疫を付与することもできる。
「ベクター」とは、これを連結した別の核酸を輸送することが可能な核酸分子を意味する。好ましいベクターの1例はエピソームであり、即ち、染色体外で複製することが可能な核酸である。好ましいベクターは、これを連結した核酸を自律的に複製及び/又は発現させることが可能なベクターである。遺伝子に機能的に連結されているときにこの遺伝子の発現を生じることが可能なベクターを本願では「発現ベクター」と言う。そのベクター形態では染色体に結合していない環状の二本鎖DNAループを一般に「プラスミド」と言うが、一般に、組換えDNA技術で有用な発現ベクターは「プラスミド」の形態であることが多い。プラスミドは最も広く使用されている形態のベクターであるため、本明細書では、「プラスミド」と「ベクター」を同義に使用する。しかし、当業者に自明の通り、本発明は、同等の機能を果たし、今後、当技術分野で公知となる同等の他の形態の発現ベクターも含むものとする。
「生存」なる用語は、死亡までの生存期間(全生存期間とも言う)(この場合、前記死亡は腫瘍に無関係の原因でもよいし、腫瘍に関連するものでもよい);「無再発生存期間」(この場合、再発なる用語は、局所再発と遠隔再発の両方を含むものとする);無転移生存期間;無病生存期間(この場合、病なる用語は、がんとその関連疾患を含むものとする)の全てを含む。前記生存の期間は所定の起点(例えば、診断時点又は治療開始時点)と終点(例えば、死亡、再発又は転移)に基づいて計算することができる。さらに、化学療法応答性、生存確率、所定期間内の転移確率及び腫瘍再発確率を含むように治療の有効性の基準を拡大することができる。
「相乗効果」なる用語は、2種類以上の抗がん剤(例えば、本願に記載する医薬組成物と免疫療法の併用)の併用効果を意味し、前記抗がん剤/療法単独の別々の効果の総和よりも大きくすることができる。
「ホスホペプチド」なる用語は、免疫応答を誘導することができるリン酸化ペプチドを意味する。前記ペプチドは、セリン、トレオニン又はチロシン残基をリン酸化することができる。所定の実施形態において、前記ホスホペプチドは、がん細胞に由来し、抗腫瘍免疫応答を誘導することができる。
本願で特に定義しない限り、本願で使用する科学技術用語は、当技術分野における通常の知識を有する者に広く理解されている意味とする。一般に、本願に記載する化学、分子生物学、細胞・がん生物学、免疫学、微生物学、薬学、及びタンパク質・核酸化学に関する命名法と技術は、当技術分野で広く使用されている周知のものである。
ビオチン化成分
本願で使用する「ビオチン化成分」なる用語は、ビオチン化タンパク質、ビオチン化細胞又はビオチン化ウイルスを意味する。ビオチン化成分の非限定的な例としては、ビオチン化腫瘍抗原、ビオチン化腫瘍細胞及びビオチン化共刺激分子が挙げられる。前記ビオチン化成分(例えば、腫瘍細胞、腫瘍抗原、ウイルス又はウイルス抗原)を本願に記載するような熱ショックタンパク質融合体と共に対象に投与する。
1実施形態において、前記ビオチン化腫瘍細胞又は腫瘍抗原は、医薬組成物を投与しようとする同一人でも別人でもよい対象に由来する。例えば、免疫応答を誘導することが所望される腫瘍細胞又は腫瘍抗原を対象から単離し、任意選択的にインビトロにて増幅又はクローニングすることができる。その後、当技術分野で公知の方法を使用して前記腫瘍細胞又は腫瘍抗原をインビトロにてビオチン化することができる。ビオチン化した腫瘍細胞又は腫瘍抗原をその後、前記腫瘍細胞又は腫瘍抗原の単離元の同一の対象に、本願に記載する熱ショックタンパク質融合体と共に投与し、こうして個別化ワクチンを開発することができる。あるいは、前記腫瘍細胞又は腫瘍抗原の単離元とは別の対象に、本願に記載する熱ショックタンパク質融合体と共に前記ビオチン化腫瘍細胞又は腫瘍抗原を投与してもよい。後者アプローチは、一般集団に投与する場合のがんに対する一般集団用ワクチンを開発することができる。
どちらのアプローチも従来技術に勝る顕著な利点があり、即ち、特定のがんとの相関と、対象からの単離が可能になる程度まで腫瘍細胞又は腫瘍抗原を同定するだけでよい。これは、配列が不明であるか又は構造すら同定できない抗原を標的とするための新規アプローチである。したがって、本発明は、公知又は未同定で特性決定されていない1種以上の抗原に対する免疫応答を誘導するための医薬組成物の製造を可能にする。個別化ワクチンは、腫瘍細胞又は腫瘍抗原がビオチン化腫瘍細胞又は腫瘍抗原を投与しようとする対象と同一の宿主に由来するため、HLA制約の問題がないという点で従来のワクチンに勝る別の利点もある。
所定の実施形態において、前記腫瘍細胞又は腫瘍抗原は、がん細胞株に由来することができる。
前記腫瘍細胞又は腫瘍抗原は、本願に記載する医薬組成物により予防及び/又は治療するがんと同一種のがんに由来することができる。前記腫瘍細胞又は腫瘍抗原は、本願に記載する医薬組成物により予防及び/又は治療するがんと異なる種類のがんに由来することもできる。前記腫瘍細胞又は腫瘍抗原は、本願に記載する医薬組成物により予防及び/又は治療するがんと同一の遺伝子突然変異を有するがんに由来するもこともできる。前記腫瘍細胞又は腫瘍抗原は、本願に記載する医薬組成物により予防及び/又は治療するがんと異なる遺伝子突然変異を有するがんに由来することもできる。
本願に記載する熱ショック融合タンパク質と共に投与したときに、ビオチン化した腫瘍細胞又は腫瘍抗原が抗腫瘍免疫応答を誘発するように、任意の腫瘍細胞又は腫瘍抗原をビオチン化し、本願に記載する熱ショックタンパク質融合体部分と共に対象に投与することができる。
a.ビオチン化腫瘍細胞
所定の実施形態では、腫瘍細胞をビオチン化し、本願に記載する熱ショックタンパク質融合体と共に投与する。腫瘍細胞は対象から単離することができる。精製腫瘍細胞を取得するための一般的な方法は、外科摘出腫瘍組織、腹水又は癌性胸水等の種々の腫瘍組織から腫瘍細胞を単離・精製する方法である。がん患者又は動物腫瘍モデルに由来する新鮮な生検検体からがん細胞を精製することができる。生検検体は、正常な組織、血液及びがん細胞を含む不均一な細胞集団を含んでいることが多い。精製がん細胞組成物は、生存がん細胞の合計が70%超、75%超、80%超、85%超、90%超、95%超、99%超又はそれ以上、又はその間の任意範囲、又はその間の任意数値であることが好ましい。不均一集団からがん細胞を精製するためには、多数の方法を使用することができる。
1実施形態では、レーザーマイクロダイセクションを使用してがん細胞を単離する。顕微鏡試験用に作製した組織薄切片から目的がん細胞を注意深く切り出すことができる。この方法では、組織切片に薄いプラスチックフィルムを被せ、選択された細胞を含む領域に集光赤外レーザービームパルスを照射する。プラスチックフィルムの小円部を融解させ、その下の細胞と結合させる。捕捉された細胞をさらに分析するために採取する。この技術は腫瘍の種々の部分から細胞を分離・分析するのに適しており、それらの類似する顕著な性質を比較することができる。最近では、下垂体細胞、甲状腺細胞及びカルチノイド腫瘍細胞が不均一に混じり合った分散組織と培養集団に由来する下垂体細胞を分析する目的と、種々の肉腫に存在する単一の細胞を分析する目的で、この技術が使用されている。
別の実施形態では、蛍光活性化セルソーティング(FACS)(フローサイトメトリーとも言う)を使用して異なる細胞集団を選別・解析する。細胞マーカー又は他の特定の目的マーカーを有する細胞に、前記細胞マーカーと結合する抗体又は一般的には抗体混合物をタグ付けする。検出可能な分子、特に他の抗体と結合した他の蛍光色素から区別することができる蛍光色素で異なるマーカーに対する各抗体を標識する。検出された細胞からの蛍光色素と発光スペクトルを励起する光源にタグ付け又は「染色」した細胞流を流し、特定の標識抗体の有無を判定する。異なる蛍光色素の同時検出(当技術分野では、マルチカラー蛍光セルソーティングとも言う)により、異なる細胞マーカーセットを示す細胞を同定し、集団中の他の細胞から単離することができる。他のFACSパラメーターを利用しても、サイズと生存率に基づいて細胞を選択することができ、このようなパラメーターとしては、限定されないが、例えば、側方散乱光(SSC)、前方散乱光(FSC)及び(例えば、ヨウ化プロピジウムによる)生体色素染色が挙げられる。HSC及び近縁系統細胞のFACS選別・解析は当技術分野で周知であり、例えば、米国特許第5,137,809号、5,750,397号、5,840,580号、6,465,249号;Manz et al.(202)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.99:11872-11877;及びAkashi et al.(200)Nature 404:193-197に記載されている。蛍光活性化セルソーティングに関する一般的なガイダンスは、例えば、Shapiro(2003)Practical Flow Cytometry,4th Ed.,Wiley-Liss(2003)や、Ormerod(2000)Flow Cytometry:A Practical Approach,3rd Ed.,Oxford University Pressに記載されている。
有用な細胞集団を単離する別の方法は、特定の細胞表面マーカーと相互作用する抗体又はリガンドを固定化した固体又は不溶性担体を利用する方法である。免疫吸着技術では、抗体を担持した担体(例えば、ビーズカラム、フラスコ、磁性粒子等)に細胞を接触させ、結合していない細胞を除去する。臨床検体中の非常に多数の細胞を直接処理するように、免疫吸着技術を大規模化することができる。適切な担体としては、限定されないが、例えば、プラスチック、セルロース、デキストラン、ポリアクリルアミド、アガロース及び当技術分野で公知の他の材料(例えば、Pharmacia Sepharose 6MBマクロビーズ)が挙げられる。磁性又は常磁性ビーズを含む固体担体を使用する場合には、前記ビーズに結合した細胞を磁気セパレーターにより容易に単離することができる(例えば、Kato and Radbruch(1993)Cytometry 14:384-92参照)。アフィニティークロマトグラフィー細胞分離法は、その選択的リガンドを表面に固定化した担体上に細胞懸濁液を流す方法が一般的である。リガンドは細胞上のその特異的標的分子と相互作用し、マトリックスに捕捉される。カラムのランニングバッファーに溶出剤を加えることにより、結合した細胞を遊離させ、遊離細胞をカラムに通して洗浄し、均一な集団として回収する。当業者に自明の通り、吸着技術は特異的抗体を利用する技術に限定されず、非特異的吸着を使用してもよい。例えば、シリカ吸着は細胞調製物から貪食細胞を取り出す簡単な方法である。この技術の最も一般的な使用の1例は、上皮性がんで高度に発現されることが分かっている細胞表面糖タンパク質であるEpCAMに対する抗体を使用して乳がん、NSC肺がん、前立腺がん及び結腸がん患者に由来する血液から循環腫瘍細胞(CTC)を単離する方法である。
FACS及び大半のバッチ式免疫吸着技術をポジティブ選択法とネガティブ選択法の両方に応用することができる(例えば、米国特許第5,877,299号参照)。ポジティブ選択では、所望の細胞を抗体で標識し、残りの未標識/不要細胞から分離する。ネガティブ選択では、不要細胞を標識して分離する。利用することができる別の型のネガティブ選択は、抗体/補体治療又は免疫毒素を使用して不要細胞を分離する方法である。
さらに別の実施形態では、最新技術の1つであるマイクロフルイディクスを使用してがん細胞を単離する。この方法は、そのサイズに基づいて循環腫瘍細胞(CTC)を血液から単離することができる螺旋型の流路を配置したマイクロ流体チップを使用している。血液試料をデバイスにポンプで注入すると、細胞が流路を高速で流れるにつれて慣性力と遠心力が作用し、小さい細胞は外壁に沿って流れ、CTCを含む大きい細胞は内壁に沿って流れる。研究者らはこのチップ技術を使用して転移性肺がん又は乳がん患者の血液からCTCを単離した。
最近発表された論文(Lin et al.Small(2015)11:4394-4402)によると、増殖の遅い/休眠状態のがん幹細胞を標識・単離するために蛍光ナノダイヤモンド(FND)を使用することができるが、同論文の著者によると、従来の蛍光マーカーを使用してこのような細胞を単離し、長期間追跡することは困難であった。ナノ粒子はDNA損傷を生じたり、細胞成長を損なうことがなく、長期追跡能の点でEdU及びCFSE蛍光ラベルよりも優れると結論付けられている。
当然のことながら、細胞の精製又は単離は上記方法の組み合わせも含む。典型的な組み合わせは、不要細胞と細胞材料のバルクを除去するのに有効な初期工程を含むことができる。第2行程は、担体に固定化した抗体に免疫吸着させることにより、前駆細胞集団の1個以上に共通するマーカーを発現する細胞を単離する工程を含むことができる。所望細胞の実質的に純粋な集団を得るために、異なる細胞種の分解能の高い付加工程(例えば、1組の特異的細胞マーカーに対する抗体を使用したFACSソーティング)を使用してもよい。
所定の他の実施形態において、前記がん細胞は、がん細胞株に由来する。
本発明では、腫瘍細胞を対象に導入又は再導入する前に、前記細胞が複製しなくなって投与する対象に無害となるように処理すべきである。所定の実施形態において、前記腫瘍細胞は複製不能である。ある種の実施形態において、前記腫瘍細胞は、放射線照射(例えば、γ線及び/又はUV線照射)、及び/又は細胞複製を不能にする物質(例えば、細胞膜を破砕する化合物、DNA複製阻害剤、細胞分裂中の紡錘体形成の阻害剤等)の投与により複製不能にされている。所定の実施形態では、亜致死線量の放射線照射を使用することができる。例えば、ビオチン化の前又は後に前記腫瘍細胞に亜致死線量の放射線を照射し、自己集合性ワクチン投与前に細胞増殖を抑制し、新たな新生物病変が生じる危険を減らすことができる。当然のことながら、放射線照射は細胞を複製不能にする方法の1例に過ぎず、がん細胞が抗腫瘍免疫を誘発する能力を維持しながら細胞分裂できなくなるようにする他の方法も本発明に含まれる。
所定の実施形態において、前記腫瘍細胞はその表面に抗原を発現するが、抗原の種類は同定又は特性決定できてもよいし、できなくてもよい。熱ショックタンパク質融合体と共に対象に投与すると、非共有結合的複合体は、腫瘍細胞上の腫瘍抗原に対する免疫応答を誘導する。所定の実施形態において、前記免疫応答は、腫瘍細胞を発現する抗原に対する「細胞傷害性T細胞」応答であるため、前記腫瘍細胞を破壊するために標的とする。
前記腫瘍細胞は、本発明の方法により治療又は予防しようとする種類のがんの細胞とすることができる。このような細胞としては、限定されないが、例えば、ヒト肉腫細胞又は癌腫細胞が挙げられ、例えば、線維肉腫細胞、粘液肉腫細胞、脂肪肉腫細胞、軟骨肉腫細胞、骨原性肉腫細胞、脊索腫細胞、血管肉腫細胞、血管内皮肉腫細胞、リンパ管肉腫細胞、リンパ管内皮肉腫細胞、滑液膜腫細胞、中皮腫細胞、ユーイング腫瘍細胞、平滑筋肉腫細胞、横紋筋肉腫細胞、結腸癌細胞、大腸がん細胞、膵臓がん細胞、乳がん細胞、卵巣がん細胞、前立腺がん細胞、扁平上皮癌細胞、基底細胞癌細胞、腺癌細胞、汗腺癌細胞、脂腺癌細胞、乳頭癌細胞、乳頭腺癌細胞、嚢胞腺癌細胞、髄様癌細胞、気管支原性癌細胞、腎細胞癌細胞、ヘパトーマ細胞、胆道癌細胞、絨毛癌細胞、セミノーマ細胞、胎児性癌細胞、ウィルムス腫瘍細胞、子宮頸がん細胞、精巣腫瘍細胞、肺癌細胞、小細胞肺癌細胞、膀胱癌細胞、上皮性癌細胞、神経膠腫細胞、星細胞腫細胞、髄芽腫細胞、頭蓋咽頭腫細胞、上衣腫細胞、松果体腫細胞、血管芽腫細胞、聴神経腫瘍細胞、乏突起膠腫細胞、髄膜腫細胞、メラノーマ細胞、神経芽腫細胞、網膜芽細胞腫細胞、白血病(例えば、急性リンパ球性白血病及び急性骨髄球性白血病(骨髄芽球性白血病、前骨髄球性白血病、骨髄単球性白血病、単球性白血病及び赤白血病)、慢性白血病(慢性骨髄球性(顆粒球性)白血病及び慢性リンパ球性白血病))細胞、真性赤血球増加症細胞、リンパ腫(ホジキン病及び非ホジキン病)細胞、多発性骨髄腫細胞、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症細胞又は重鎖病細胞である。
所定の実施形態において、前記ビオチン化腫瘍細胞は、ビオチン化卵巣がん細胞(例えば、漿液性又は上皮性乳頭状卵巣がん細胞)である。所定の実施形態において、前記ビオチン化腫瘍細胞は、ビオチン化HPV関連がん細胞(例えば、ヒトパピローマウイルス(HPV)誘発性子宮頸がん細胞、HVP誘発性頭頸部がん細胞又はHVP誘発性肛門がん細胞)である。
b.ビオチン化腫瘍抗原
所定の実施形態では、腫瘍抗原をビオチン化し、本願に記載する熱ショックタンパク質融合体と共に投与する。「抗原」とは、本願に記載する組成物により誘導される免疫応答の標的を意味する。抗原はタンパク質抗原とすることができ、全長タンパク質に加え、ウイルス又は対象の感染細胞、外来細胞若しくは腫瘍細胞の表面に提示される前記タンパク質の断片と、前記タンパク質のプロセシングと提示の結果として、例えば典型的なMHCクラスI又はII経路を介して感染細胞、外来細胞又は腫瘍細胞により提示されるペプチドを含むものと理解されたい。このような外来細胞の例としては、細菌、真菌及び原生動物が挙げられる。
所定の実施形態において、本発明の「腫瘍抗原」は、腫瘍関連タンパク質と、対象に抗腫瘍応答を誘発することが可能な前記腫瘍関連タンパク質の任意の部分又はペプチドを包含する。前記腫瘍抗原は、腫瘍細胞により過剰発現されるタンパク質又はその免疫原性断片とすることができる。前記腫瘍抗原は、腫瘍細胞で特異的に突然変異しているタンパク質又はその免疫原性断片でもよい。ある種の実施形態において、前記腫瘍抗原は腫瘍由来ホスホペプチドである。前記腫瘍抗原は、任意の腫瘍関連タンパク質、前記タンパク質の断片、前記タンパク質の修飾物(例えば、リン酸化タンパク質又はペプチド)、又は免疫応答を誘発することが可能な前記タンパク質の機能的に等価な変異体とすることができる。「機能的に等価な変異体」としては、限定されないが、部分的な配列相同性を有するペプチド、1ヶ所以上の特定の保存的及び/又は非保存的アミノ酸変異を有するペプチド、ペプチドコンジュゲート、キメラタンパク質、融合タンパク質並びにペプチド核酸が挙げられる。
前記腫瘍抗原は、本発明の方法により治療又は予防しようとする種類のがんに関連する抗原とすることができる。所定の実施形態において、前記腫瘍抗原は肉腫又は癌腫に関連しており、例えば、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、脊索腫、血管肉腫、血管内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑液膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、大腸がん、膵臓がん、乳がん、卵巣がん、前立腺がん、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、脂腺癌、乳頭癌、乳頭腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支原性癌、腎細胞癌、ヘパトーマ、胆道癌、絨毛癌、セミノーマ、胎児性癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸がん、精巣腫瘍、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮性癌、神経膠腫、星細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫瘍、乏突起膠腫、髄膜腫、メラノーマ、神経芽腫、網膜芽細胞腫、白血病、真性赤血球増加症、リンパ腫、多発性骨髄腫、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、頭頸部がん、肛門がん又は重鎖病が挙げられる。
ある種の実施形態において、前記腫瘍抗原は、卵巣がん(例えば、漿液性又は上皮性乳頭状卵巣がん)に関連する。所定の実施形態において、前記腫瘍抗原は、HPV関連がんに関連する。ある種の実施形態において、前記腫瘍抗原は、子宮頸がん(例えば、ヒトパピローマウイルス(HPV)誘発性子宮頸がん)に関連する。ある種の実施形態において、前記腫瘍抗原は、頭頸部がん(例えば、HPV誘発性頭頸部がん)に関連する。ある種の実施形態において、前記腫瘍抗原は、肛門がん(例えば、HPV誘発性肛門がん)に関連する。
所定の実施形態において、前記腫瘍抗原は、全長又は部分的な不活化腫瘍産生ウイルスを含む。所定の実施形態において、前記腫瘍抗原は、腫瘍産生ウイルスに由来するタンパク質又はその免疫原性断片を含む。前記腫瘍産生ウイルスは、例えば、HPV、HCV、EBV、HIV又はヘルペスウイルスとすることができる。
ある種の実施形態において、前記腫瘍抗原は、腫瘍関連タンパク質に由来するペプチドである。本願で使用する「ペプチド」なる用語は、天然ペプチド(分解産物又は合成により合成されたペプチド)を意味し、さらに、ペプチドアナログであるペプトイドやセミペプトイド等のペプチドミメティクスも意味し、例えば、生体内にあるときにペプチドの安定性を高めたり、又は免疫原性を高めるように修飾してもよい。このような修飾としては、限定されないが、環化、N末端修飾、C末端修飾、ペプチド結合修飾(限定されないが、例えば、CH-NH、CH-S、CH-S=O、O=C-NH、CH-O、CH-CH、S=C-NH、CH=CH又はCF=CH)、主鎖修飾及び残基修飾が挙げられる。ペプチドミメティック化合物の製造方法は当技術分野で周知であり、Quantitative Drug Design,C.A.Ramsden Gd.,Chapter 17.2,F.Choplin Pergamon Press(1992)に具体的に記載されており、その開示内容全体を本願に援用する。
本願で使用する「タンパク質に由来する」なる用語は、1種以上の特定のタンパク質に由来するペプチドを意味し、さらに、同一又は他の生物種の特定のタンパク質と相同のタンパク質の等価領域に由来する相同ペプチドも意味し、ただし、これらのペプチドは抗腫瘍ワクチンとして有効なものとする。この用語はさらに、特定のタンパク質又はその相同タンパク質のアミノ酸配列に基づいて設計された許容可能なアミノ酸改変体とペプチドミメティクスも意味する。
ある種の実施形態において、腫瘍を標的とするために使用されるペプチドは、腫瘍で異常に多量に存在するタンパク質、腫瘍に特有の突然変異、及びがん細胞のホールマークであるタンパク質修飾から選択することができる。前記ペプチドは、DNAシーケンシング又は文献情報により同定することができる。免疫系の良好な標的を提供すると予想される標的特異的ペプチドを同定し、そのペプチド鎖の適切な構造を決定し、及び/又はカスタムペプチドの合成に必要な変異を組み込むために、コンピューターツールを使用することができる。例えば、前記腫瘍細胞のエクソームDNAシーケンシングにより同定されたネオアンチゲン及び腫瘍関連抗原をアルゴリズム解析により選択することができる。コンピューターアルゴリズム(例えば、EpiMatrixアルゴリズム又はJanusMatrixアルゴリズム)を使用し、前記免疫原性ペプチドをコンピューターにより予測される特異的HLA結合について上位選択することができ、自己反応性、マイクロバイオーム反応性及び/又は免疫抑制活性について下位選択することができる。その開示内容全体を本願に援用するScholzen et al.(2019)Frontiers in Immunology 10:1-22に記載されているような標準ペプチドHLA結合インビトロアッセイで推定ペプチドのHLA結合を試験することもできる。
免疫系の抗腫瘍機能を強化するための重要な基準である免疫応答の誘発について、選択された全ペプチドを試験することができる。例えば、SAVプラットフォームで送達されるがん標的ペプチドに対する免疫応答の強さと特異性を測定することができる。これらの結果を他のペプチドベースアプローチに関する従来の報告と比較し、成績の劣るペプチドを同定することができ、さらに最適化する指針とする。所定の実施形態では、本願に記載する自己集合性ワクチンを使用して単一種の腫瘍関連ペプチドを送達する。所定の実施形態では、前記自己集合性ワクチンを使用して複数の腫瘍関連ペプチドを送達する。ある種の実施形態では、本願に記載する多価自己集合性ワクチンを使用して複数の腫瘍関連ペプチドを送達する。例えば、腫瘍標的の広範な集合を免疫系に提供する根拠として、本願に記載する自己集合性ワクチンを使用してペプチドの完全なレパートリーを送達する。特定の実施形態では、メソテリン又は葉酸受容体αに由来するペプチド等の腫瘍関連抗原に由来するペプチドを、本願に記載するSAVの作製に使用することができる。ある種の実施形態では、Ipo13、Rpl5又はPkp4に由来するペプチド等のネオアンチゲンに由来するペプチドを、本願に記載するSAVの作製に使用することができる。所定の実施形態では、複数種(例えば、2種、3種、4種等)に由来するペプチドをリンカーにより相互に連結し、同一のSAVで単一のペプチドとして使用することができる。典型的な腫瘍抗原のアミノ酸配列を下表1に示す。
Figure 2022541507000001
表1に列挙したいずれかの配列番号のアミノ酸配列とその全長にわたって少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、又はそれ以上の一致度を有するアミノ酸配列を含むポリペプチド分子も表1に含む。このようなポリペプチドは、本願に詳述するような全長ポリペプチドの機能をもつことができる。
ある種の実施形態において、前記腫瘍抗原は、表1に記載のアミノ酸配列の少なくとも5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個又は14個の連続するアミノ酸を含むアミノ酸配列を有する。所定の実施形態において、前記連続するアミノ酸は、表1に記載のアミノ酸配列に一致する。
ある種の実施形態において、前記腫瘍抗原は、表1に記載のアミノ酸配列の少なくとも5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個又は14個の連続するアミノ酸から本質的に構成されるアミノ酸配列を有する。所定の実施形態において、前記連続するアミノ酸は、表1に記載のアミノ酸配列に一致する。
ある種の実施形態において、前記腫瘍抗原は、アミノ酸配列の少なくとも5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個又は14個の連続するアミノ酸から構成されるアミノ酸配列を有する。所定の実施形態において、前記連続するアミノ酸は、表1に記載のアミノ酸配列に一致する。
所定の実施形態において、前記腫瘍抗原は、表1に記載のアミノ酸配列に少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%一致する5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個又は14個の連続するアミノ酸を含むアミノ酸配列を有する。所定の実施形態において、前記連続するアミノ酸は、表1に記載のアミノ酸配列に一致する。
所定の実施形態において、前記腫瘍抗原は、表1に記載のアミノ酸配列に少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%一致する5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個又は14個の連続するアミノ酸から本質的に構成されるアミノ酸配列を有する。所定の実施形態において、前記連続するアミノ酸は、表1に記載のアミノ酸配列に一致する。
所定の実施形態において、前記腫瘍抗原は、表1に記載のアミノ酸配列に少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%一致する5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個又は14個の連続するアミノ酸から構成されるアミノ酸配列を有する。所定の実施形態において、前記連続するアミノ酸は、表1に記載のアミノ酸配列に一致する。
当業者に周知の通り、実質的な配列類似性を有するポリペプチドは、宿主動物に同一又は非常によく似た免疫反応を生じることができる。したがって、所定の実施形態では、前記腫瘍抗原タンパク質の誘導体、等価物、変異体、断片若しくは突然変異体又はその断片も、本願に記載する方法及び組成物に適切に利用できる。
所定の実施形態において、本願では前記腫瘍抗原の変形又は誘導体を提供する。改変ポリペプチドは、例えば保存的置換によりアミノ酸配列が改変されていてもよいが、依然として未改変タンパク質抗原と反応する免疫応答を誘発し、機能的等価物とみなされる。本願で使用する「保存的置換」なる用語は、あるアミノ酸残基が別の生物学的に類似する残基で置換されていることを意味する。同一の保存残基群内のアミノ酸がタンパク質の機能に実質的に影響を与えずに一般的に相互に置換できることは当技術分野で周知である。ある種の実施形態によると、前記腫瘍抗原の誘導体、等価物、変異体又は突然変異体は、前記腫瘍抗原タンパク質又はその断片の配列との相同性が少なくとも85%であるポリペプチドである。所定の実施形態において、前記相同性は少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも98%である。
ある種の実施形態において、前記腫瘍抗原は、組換えDNA技術により生産することができる。例えば、前記腫瘍抗原をコードする核酸分子を発現ベクターにクローニングし、前記発現ベクターを宿主細胞に導入し、前記腫瘍抗原を前記宿主細胞で発現させる。その後、標準タンパク質精製技術を使用して適切な精製スキームにより前記腫瘍抗原を前記細胞から単離することができる。
本願で使用する「ベクター」なる用語は、これを連結した別の核酸を輸送することが可能な核酸分子を意味する。ベクターの1例は、他のDNAセグメントをライゲーションすることができる環状の二本鎖DNAループを意味する「プラスミド」である。別の種類のベクターはウイルスベクターであり、他のDNAセグメントをウイルスゲノムにライゲーションすることができる。ベクターによっては、これらのベクターが導入される宿主細胞において自律複製が可能である(例えば、細菌複製起点を有する細菌ベクターや、哺乳動物エピソーマルベクター)。宿主細胞に導入されると、宿主細胞のゲノムに組込まれ、宿主ゲノムと共に複製されるベクターもある(例えば、哺乳動物非エピソーマルベクター)。さらに、ベクターによっては、これらのベクターが機能的に連結されている遺伝子の発現を駆動することが可能なものもある。このようなベクターを本願では「発現ベクター」と呼ぶ。一般に、組換えDNA技術で有用な発現ベクターはプラスミドの形態であることが多い。プラスミドは最も広く使用されている形態のベクターであるため、本明細書では、「プラスミド」と「ベクター」を同義に使用することができる。しかし、本発明は、同等の機能を果たすウイルスベクター(例えば、複製欠損型レトロウイルス、アデノウイルス及びアデノ随伴ウイルス)等の同等の他の形態の発現ベクターも含むものとする。
「宿主細胞」及び「組換え宿主細胞」なる用語を本願では同義に使用する。当然のことながら、このような用語は、特定の対象細胞のみならず、このような細胞の子孫又は潜在的な子孫も意味する。突然変異又は環境影響により後続世代に何らかの変異が生じる場合もあるので、このような子孫は実際には親細胞と同一でない場合があるが、やはり、本願で使用するこの用語の範囲内に含まれる。宿主細胞は任意の原核細胞又は真核細胞とすることができる。例えば、大腸菌等の細菌細胞、昆虫細胞、酵母又は哺乳動物細胞(例えばFaoヘパトーマ細胞、初代肝細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)又はCOS細胞)で前記腫瘍抗原を発現させることができる。他の適切な宿主細胞も当業者に公知である。
別の変形例では、インビトロ翻訳システムを使用してタンパク質生産を行うことができる。インビトロ翻訳システムは一般に、少なくともRNA分子をタンパク質に翻訳するのに必要な最少成分を含む無細胞抽出液である翻訳システムである。インビトロ翻訳システムは一般的に、少なくともリボソーム、tRNA、開始メチオニンtRNAMet、翻訳に関与するタンパク質又は複合体(例えば、eIF2、eIF3、キャップ結合タンパク質(CBP)と真核生物翻訳開始因子4Fを含むキャップ結合(CB)複合体(eIF4F))を含む。種々のインビトロ翻訳システムが当技術分野で周知であり、市販キットもある。インビトロ翻訳システムの例としては、ウサギ網状赤血球ライセート、ウサギ卵母細胞ライセート、ヒト細胞ライセート、昆虫細胞ライセート及びコムギ胚芽エキス等の真核細胞ライセートが挙げられる。ライセートは、Madison,Wis.に所在のPromega社、La Jolla,Calif.に所在のStratagene社、Arlington Heights,Ill.に所在のAmersham社及びGrand Island,N.Y.に所在のGIBCO/BRL社等の製造業者から市販されている。インビトロ翻訳システムは一般的に、酵素等の高分子、翻訳開始因子、伸長因子、化学試薬及びリボソームを含む。さらに、インビトロ転写システムを使用してもよい。このようなシステムは一般的に、少なくともRNAポリメラーゼホロ酵素、リボヌクレオチド、並びに必要な転写開始因子、伸長因子及び終結因子を含む。インビトロでの転写と翻訳をワンポット反応で連動させ、1種以上の単離DNAからタンパク質を生産することができる。
組換え発現に代えて、標準ペプチド合成技術を使用して腫瘍抗原を化学的に合成することもできる。当技術分野で周知の種々の方法を使用して化学合成を実施することができ、段階的固相合成法、コンホメーションに応じたペプチド断片の再ライゲーション、クローニング又は合成されたペプチドセグメントの酵素的ライゲーション、及び化学的ライゲーションを利用した半合成法が挙げられる。ネイティブケミカルライゲーション法は、2個の未保護ペプチドセグメントの化学選択的反応を利用し、一過性のチオエステル結合中間体を生成する。その後、一過性のチオエステル結合中間体は自発的に転位し、ライゲーション部位に天然ペプチド結合をもつ全長ライゲーション産物が得られる。全長ライゲーション産物は、無細胞合成により生産されたタンパク質と化学的に同一である。許容される場合には、全長ライゲーション産物をリフォールディング及び/又は酸化させ、天然ジスルフィド結合を含むタンパク質分子を形成することができる。(例えば、米国特許第6,184,344号及び6,174,530号;並びにT.W.Muir et al.,Curr.Opin.Biotech.(1993):vol.4,p420;M.Miller,et al.,Science(1989):vol.246,p1149;A.Wlodawer,et al.,Science(1989):vol.245,p616;L.H.Huang,et al.,Biochemistry(1991):vol.30,p7402;M.Sclmolzer,et al.,Int.J.Pept.Prot.Res.(1992):vol.40,p180-193;K.Rajarathnam,et al.,Science(1994):vol.264,p90;R.E.Offord,“Chemical Approaches to Protein Engineering”,in Protein Design and the Development of New therapeutics and Vaccines,J.B.Hook,G.Poste,Eds.,(Plenum Press,New York,1990)pp.253-282;C.J.A.Wallace,et al.,J.Biol.Chem.(1992):vol.267,p3852;L.Abrahmsen,et al.,Biochemistry(1991):vol.30,p4151;T.K.Chang,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1994)91:12544-12548;M.Schnlzer,et al.,Science(1992):vol.,3256,p221;及びK.Akaji,et al.,Chem.Pharm.Bull.(Tokyo)(1985)33:184参照)。
さらに、例えば腫瘍抗原特異的抗体を使用し、標準タンパク質精製技術を使用する適切な精製スキームにより、腫瘍抗原を保持するがん細胞又は組織から天然腫瘍抗原を単離することができる。腫瘍抗原を保持するがん細胞又は組織は、対象から単離することができる。腫瘍細胞又は腫瘍組織の典型的な単離・精製方法については上述した通りである。所定の他の実施形態において、前記腫瘍抗原は、前記腫瘍抗原を保持するがん細胞株から単離することができる。
c.ビオチン化ウイルス又はウイルス抗原
所定の実施形態では、ビオチン化ウイルス又はウイルス抗原を本願に記載するような熱ショックタンパク質融合体と共に対象に投与することができる。前記対象は、腫瘍産生ウイルス(例えば、HPV、HCV、EBV、HIV又はヘルペスウイルス)の感染により誘発されるがんに罹患しているものとすることができる。がんを予防及び/又は治療するために、ビオチン化ウイルス又はウイルス抗原を本願に記載するような熱ショックタンパク質融合体と共に対象に投与することができる。所定の実施形態において、前記がんは、腫瘍産生ウイルス(例えば、HPV、EBV、HIV又はヘルペスウイルス)の感染により誘発される。特定の実施形態において、前記がんは、HPV関連がん(例えば、子宮頸がん、頭頸部がん又は肛門がん)である。
本願に記載するような熱ショックタンパク質融合体と共に投与されるビオチン化ウイルスは、ビオチン化腫瘍産生ウイルス(例えば、HPV、HCV、EBV、HIV又はヘルペスウイルス)を含むことができる。特定の実施形態において、前記ビオチン化ウイルスは、ビオチン化された全長又は部分的な不活化腫瘍産生ウイルス(例えば、HPV、HCV、EBV、HIV又はヘルペスウイルス)である。好ましい実施形態において、前記ビオチン化ウイルスは、免疫応答(例えば、抗腫瘍免疫)を誘導することができる抗原を発現する。
本願に記載するような熱ショックタンパク質融合体と共に投与されるビオチン化ウイルス抗原は、腫瘍産生ウイルス(例えば、HPV、HCV、EBV、HIV又はヘルペスウイルス)に由来するタンパク質又はその免疫原性断片を含むことができる。ビオチン化することができる免疫原性腫瘍抗原の例は、Stevanovic,S.et al.(2017)Science 356:200-205に記載されており、その開示内容全体を本願に援用する。特定の実施形態において、前記ビオチン化ウイルス抗原は、ビオチン化HPVウイルス抗原である。「HPVウイルス抗原」なる用語は、HPVウイルスに由来し、免疫応答(例えば、抗腫瘍免疫)を誘発することが可能なタンパク質、ペプチド又は機能的に等価な断片を意味する。HPVウイルス抗原としては、限定されないが、ウイルスオンコプロテインであるE6及びE7と、その免疫原性断片が挙げられる。E6とE7は、腫瘍進行中に細胞不死化を誘導し、形質転換された表現型を維持するので、治療用ワクチンの開発に使用することができる2種類の主要なウイルスオンコプロテインである。高リスクHPV種の1つであるHPV16に由来するE6のアミノ酸配列は、GenBankデータベースでNP_041325.1として公共入手可能である。HPV16に由来するE7のアミノ酸配列は、GenBankデータベースでNP_041326.1として公共入手可能である。本発明の組成物及び方法で使用される典型的なビオチン化ウイルス抗原を下表3に列挙し、実施例でさらに具体的に説明する。
Figure 2022541507000002
表3に列挙したいずれかの配列番号のアミノ酸配列とその全長にわたって少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、又はそれ以上の一致度を有するアミノ酸配列を含むポリペプチド分子も表3に含む。このようなポリペプチドは、本願に詳述するような全長ポリペプチドの機能をもつことができる。
熱ショックタンパク質融合体
「熱ショックタンパク質」は、「熱ショック遺伝子」又はストレス遺伝子にコードされ、熱ショック、低酸素症、グルコース低下、重金属塩、エネルギー代謝と電子伝達の阻害剤及びタンパク質変性剤等のストレッサー又は所定のベンゾキノンアンサマイシンに(前記遺伝子を含む)生物が接触又は曝露されることにより活性化又は他の方法で検出可能にアップレギュレートされる遺伝子を意味する。Nover,L.,Heat Shock Response,CRC Press,Inc.,Boca Raton,FL(1991)。「熱ショックタンパク質」は、公知ストレス遺伝子ファミリー内の遺伝子によりコードされる相同タンパク質も含むが、このような相同遺伝子自体はストレッサーにより誘導されない。
「熱ショックタンパク質融合体」とは、ビオチン結合タンパク質と連結させた熱ショックタンパク質を意味する。例えば、熱ショックタンパク質をビオチン結合タンパク質のC末端又はN末端に連結し、熱ショックタンパク質融合体を作製することができる。本願に記載するビオチン化成分(例えば、腫瘍細胞又は腫瘍抗原)と共に熱ショックタンパク質融合体を投与すると、目的抗原に対するCD8細胞傷害性T細胞(CTL)応答を含む体液性及び/又は細胞性免疫応答を刺激又は増強することが可能である。
例えば、本発明に従って使用することができる熱ショックタンパク質としては、限定されないが、BiP(grp78とも言う)、Hsp10、Hsp20~30、Hsp60 hsp70、hsc70、gp96(grp94)、hsp60、hsp40、Hsp100~200、Hsp100、Hsp90及びそのファミリーのメンバーが挙げられる。特に好ましい熱ショックタンパク質は、以下に例示するようなBiP、gp96及びhsp70である。特定群の熱ショックタンパク質としては、Hsp90、Hsp70、Hsp60、Hsp20~30が挙げられ、Hsp70とHsp60がさらに好ましい。hsp70ファミリーのメンバーが最も好ましい。
Hsp10の例としては、GroESとCpn10が挙げられる。Hsp10は一般的に、大腸菌と、真核細胞のミトコンドリアと葉緑体に存在する。Hsp10は7員環を形成し、Hsp60オリゴマーと会合する。Hsp10はタンパク質フォールディングにも関与する。
Hsp60の例としては、マイコバクテリウム属細菌に由来するHsp65が挙げられる。細菌Hsp60は、大腸菌に由来するGroEL等のGroELとしても広く知られている。Hsp60は大きなホモオリゴマー複合体を形成し、タンパク質フォールディングに主要な役割を果たすと思われる。真核細胞のミトコンドリアと葉緑体にはHsp60ホモログが存在する。
Hsp70の例としては、哺乳動物細胞に由来するHsp72とHsc73、細菌、特にらい菌(Mycobacterium leprae)、ヒト型結核菌 ×Mycobacterium tuberculosis(MTb))及びウシ型結核菌(Mycobacterium bovis)(例えば、カルメット・ゲラン桿菌(Bacille-Calmette Guerin);本願ではHsp71と言う)等のマイコバクテリウム属細菌に由来するDnaK、大腸菌、酵母及び他の原核生物に由来するDnaK、並びにBiP及びGrp78が挙げられる。Hsp70は、ATP及び折りたたまれていないタンパク質と特異的に結合し、タンパク質のフォールディング及びアンフォールディングと、タンパク質複合体の集合及び解離に関与している。好ましい実施形態において、前記熱ショックタンパク質は、MTb HSP70であるか又はこれに由来する。ヒト型結核菌HSP70及びウシ型結核菌HSP70の全長タンパク質配列を夫々配列番号1及び2として表2に示す。本願に記載する方法に関連して使用される熱ショックタンパク質融合体は、配列番号1又は2と少なくとも80%、85%、90%、95%又は99%一致する配列を含むことができる。
Figure 2022541507000003
Figure 2022541507000004
表2に列挙したいずれかの配列番号のアミノ酸配列とその全長にわたって少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、又はそれ以上の一致度を有するアミノ酸配列を含むポリペプチド分子も表2に含む。このようなポリペプチドは、本願に詳述するような全長ポリペプチドの機能をもつことができる。
Hsp90の例としては、大腸菌のHtpG、酵母のHsp83及びHsc83、並びにヒトのHsp90α、Hsp90β及びGrp94が挙げられる。Hsp90は、一連のタンパク質と結合し、このようなタンパク質は、一般的には、シグナル伝達メカニズムで役割を果たすステロイドホルモン受容体(例えば、グルココルチコイド、エストロゲン、プロゲステロン及びテストステロン受容体)、転写因子及びタンパク質キナーゼ等の細胞調節分子である。Hsp90タンパク質は、他の熱ショックタンパク質を含む多量の大きなタンパク質複合体の形成にも関与する。
Hsp100の例としては、哺乳動物Hsp110、酵母Hsp104、ClpA、ClpB、ClpC、ClpX及びClpYが挙げられる。酵母Hsp104と大腸菌ClpAは六量体粒子を形成し、大腸菌ClpBは四量体粒子を形成し、それらの集合にはアデニンヌクレオチド結合が必要であると思われる。Clpプロテアーゼは、ClpP(タンパク分解サブユニット)とClpAから構成される750kDaヘテロオリゴマーを提供する。ClpB-YはClpAと構造的に近縁であるが、ClpAとは異なり、ClpPと複合体を形成しないようである。
Hsp100~200の例としては、Grp170(グルコース調節タンパク質)が挙げられる。Grp170はプレゴルジ区画のER内腔に存在し、免疫グロブリンのフォールディングとアセンブリに役割を果たすと思われる。
本発明によると、熱ショックタンパク質の天然又は組換え突然変異体を使用することができる。例えば、限定するものではないが、本発明は細胞から分泌し易くするように突然変異させた熱ショックタンパク質の使用を提供する(例えば、KDEL又はそのホモログのように小胞体係留を助長する因子を突然変異又は欠失させたものが挙げられ、このような突然変異体はPCT出願第PCT/US96/13233号(WO97/06685)に記載されており、本願に援用する。)。
特定の実施形態において、本発明の熱ショックタンパク質は、エンテロバクター属細菌、マイコバクテリウム属細菌(特に、らい菌、ヒト型結核菌、マイコバクテリウム・バッカエ(M.vaccae)、スメグマ菌(M.smegmatis)及びウシ型結核菌)、大腸菌、酵母、ショウジョウバエ、脊椎動物、鳥類、ニワトリ、哺乳動物、ラット、マウス、霊長類又はヒトから得られる。
本願で提供される医薬組成物は、個々のアミノ酸残基が酸化又は還元により修飾されていてもよい。さらに、前記熱ショックタンパク質の増強された生物学的活性を維持又はさらに強化するという正味効果をもたらすような種々の置換、欠失又は付加をアミノ酸又は核酸配列に加えてもよい。遺伝コードの縮重により、例えば、同一のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列でも相当の変動がある場合がある。「熱ショックタンパク質」なる用語は、熱ショックタンパク質から得られる熱ショックタンパク質の断片も含むものとし、ただし、このような断片は、目的抗原に対する免疫応答の増強に関与するエピトープを含む。熱ショックタンパク質の断片は、プロテイナーゼを使用することにより得ることもできるし、(単独でもよいし、別のタンパク質をコードする核酸配列と融合させてもよい)ストレスタンパク質をコードするヌクレオチド配列の一部のみを発現させる等の組換え法により得ることもできる。前記熱ショックタンパク質は、免疫系に及ぼすその効果を強化するように種々の公知技術により特定の遺伝子座に導入された突然変異を含むことができる。例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2d Ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989);Drinkwater and Klinedinst Proc.Natl.Acad.Sci.USA 83:3402-3406(1986);Liao and Wise,Gene 88:107-111(1990);Horwitz et al.,Genome 3:112-117(1989)参照。
特定の実施形態では、例えば、熱ショックタンパク質とビオチン結合タンパク質の化学コンジュゲートを含む熱ショックタンパク質融合体において、本発明で使用される熱ショックタンパク質は、単離型熱ショックタンパク質であり、即ち、前記熱ショックタンパク質は、それらの産生元の宿主細胞から選択・分離されている。熱ショックタンパク質が熱ショックタンパク質をビオチン結合タンパク質と融合させた融合体として組換え発現される所定の実施形態において、本発明で使用される熱ショックタンパク質融合体は、単離型熱ショックタンパク質融合体であり、即ち、前記熱ショックタンパク質融合体は、それらの産生元の宿主細胞から選択・分離されている。このような単離は、当技術分野で公知の常套的なタンパク質単離方法を使用して本願に記載するように実施することができる。Maniatis et al.,Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,N.Y.(1982);Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2d Ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989);Deutscher,M.,Guide to Protein Purification Methods Enzymology,vol.182,Academic Press,Inc.,San Diego,Calif.(1990)。熱ショックタンパク質をビオチン結合タンパク質と融合させた融合体の作製方法の例は、さらにPCT公開第WO2009/129502号に記載されており、その開示内容全体を本願に援用する。
自己集合性ワクチン
以下に詳述するように、複数のビオチン化成分(例えば、腫瘍細胞又は腫瘍抗原)を熱ショックタンパク質融合体と共に投与することができる。このようにして、多価医薬組成物を作製し、対象に投与することができる。多価医薬組成物が作製されると、「スーパーチャージド」即ちより強力なワクチン及び治療薬の製造が可能になる。
医薬組成物が多価の場合、投与するビオチン化成分(例えば、腫瘍細胞又は腫瘍抗原)は、本願に記載するビオチン化成分(例えば、腫瘍細胞又は腫瘍抗原)の任意の組合せとすることができる。例えば、同一又は異なる成分種のビオチン化成分(例えば、腫瘍細胞又は腫瘍抗原)を本願に記載するような熱ショックタンパク質融合体と共に投与することができ、ただし、前記ビオチン結合タンパク質、延いては前記熱ショックタンパク質融合体は多価であるか、又は複数のビオチン化成分(例えば、腫瘍細胞又は腫瘍抗原)と結合することが可能である。1例として、野生型ビオチン結合タンパク質であるアビジンは4個のビオチン結合部位を有するため、4個のビオチン化成分(例えば、腫瘍細胞又は腫瘍抗原)と結合することが可能である。この例では、前記4個の部位を4個のビオチン化成分(例えば、腫瘍細胞又は腫瘍抗原)と結合させ、成分種に基づいて本願に記載する1個、2個、3個又は4個の同一のビオチン化成分(例えば、腫瘍細胞又は腫瘍抗原)の任意の可能な順列で前記ビオチン結合成分(例えば、腫瘍細胞又は腫瘍抗原)を混合・適合させることができる。4個の同一のビオチン化成分(例えば、腫瘍細胞又は腫瘍抗原)を4個のビオチン結合部位と結合させることができる。
したがって、第1の成分種のビオチン化腫瘍細胞又は腫瘍抗原4部と、ビオチン結合タンパク質に融合させた熱ショックタンパク質1部を含む医薬組成物を形成するために十分となるように、ビオチン結合タンパク質に融合させた熱ショックタンパク質と共に、有効量の第1の成分種のビオチン化腫瘍細胞又は腫瘍抗原を対象に投与する。あるいは、第1の成分種のビオチン化腫瘍細胞又は腫瘍抗原3部と、第2の成分種のビオチン化腫瘍細胞又は腫瘍抗原1部と、熱ショックタンパク質融合体1部を含む医薬組成物を形成するために十分となるように、ビオチン結合タンパク質に融合させた熱ショックタンパク質と共に、有効量の第1及び第2の成分種のビオチン化腫瘍細胞又は腫瘍抗原を対象に投与してもよい。別の実施形態では、第1の成分種のビオチン化腫瘍細胞又は腫瘍抗原2部と、第2の成分種のビオチン化腫瘍細胞又は腫瘍抗原2部と、熱ショックタンパク質融合体1部を含む医薬組成物を形成するために十分となるように、ビオチン結合タンパク質に融合させた熱ショックタンパク質と共に、有効量の第1及び第2の成分種のビオチン化腫瘍細胞又は腫瘍抗原を対象に投与してもよい。
前記自己集合性医薬組成物が二価である場合には、第1の成分種のビオチン化腫瘍細胞又は腫瘍抗原2部と、熱ショックタンパク質融合体1部を含む医薬組成物を形成するために十分となるように、ビオチン結合タンパク質に融合させた熱ショックタンパク質と共に、有効量の第1の成分種のビオチン化腫瘍細胞又は腫瘍抗原を対象に投与することができる。あるいは、第1の成分種のビオチン化腫瘍細胞又は腫瘍抗原1部と、第2の成分種のビオチン化腫瘍細胞又は腫瘍抗原1部と、熱ショックタンパク質融合体1部を含む医薬組成物を形成するために十分となるように、ビオチン結合タンパク質に融合させた熱ショックタンパク質と共に、有効量の第1及び第2の成分種のビオチン化腫瘍細胞又は腫瘍抗原を対象に投与してもよい。
前記多価医薬組成物は、共刺激分子又はブロッキング基を含むことができる(即ち、ビオチン単独でもよいし、ビオチンを非機能性分子と結合させてもよい)。本発明に関連して投与することができる共刺激分子の例としては、B7-1(CD80)とB7-2(CD86)を含むB7分子、CD28、CD58、LFA-3、CD40、B7-H3、CD137(4-1BB)、及びインターロイキン(例えば、IL-1、IL-2又はIL-12)が挙げられる。1例として、共刺激分子を含むビオチン化成分1部を、i)腫瘍細胞又は腫瘍抗原を含む別のビオチン化成分3部;及びii)ビオチン結合タンパク質に融合させた熱ショックタンパク質1部と共に投与することができる。別の例では、共刺激分子を含むビオチン化成分2部を、i)腫瘍細胞又は腫瘍抗原を含む別のビオチン化成分2部;及びii)ビオチン結合タンパク質に融合させた熱ショックタンパク質1部と共に投与することができる。別の例では、共刺激分子を含むビオチン化成分3部を、i)腫瘍細胞又は腫瘍抗原を含む別のビオチン化成分1部;及びii)ビオチン結合タンパク質に融合させた熱ショックタンパク質1部と共に投与することができる。
アビジン、ストレプトアビジン又はニュートラアビジンとビオチンの非共有結合的相互作用を制御することにより、本願に記載するように、ビオチン化腫瘍細胞又は腫瘍抗原の種々の順列と組み合わせで所望の化学量論的組成の熱ショックタンパク質融合体を得るために、例えば、アビジン、ストレプトアビジン又はニュートラアビジンのpH感受性突然変異体を利用することができる。医薬組成物の所望の原子価を制御するために、野生型又は特定の突然変異体形態のビオチン結合タンパク質(例えば、アビジン)の選択を利用することができる(例えば、単量体、二量体又は四量体形態のアビジン)。一価的又は二価的にビオチンと結合する他のアビジン、ストレプトアビジン又はニュートラアビジン突然変異体タンパク質を含む熱ショック融合タンパク質を利用することにより、一価又は二価ワクチンも同様に作製することができる。アビジン突然変異体の1例を下記実施例のセクションに記載する。pHにより調節可能にビオチンと結合するアビジンのpH感受性点突然変異体の1例はY33Hである。別の突然変異体は、Met96、Val115及びIle117をヒスチジンに置換し、任意選択的にTrp110もヒスチジンで置換したものである。ビオチン-ストレプトアビジン結合を制御するこのようなアプローチは、Laitinen,O.H.(2007),“Brave New(Strept)avidins in Biotechnology,”Trends in Biotechnology 25(6):269-277と、Nordlund,H.R.(2003),“Introduction of histidine residues into avidin subunit interfaces allows pH-dependent regulation of quaternary structure and biotin binding,”FEBS Letters 555:449-454に記載されており、両文献の開示内容を本願に援用する。
自己集合性ワクチンの生産方法
本発明の1実施形態において、組成物は、ビオチン結合タンパク質に融合させた熱ショックタンパク質と、免疫応答が所望される抗原に対する免疫応答の標的であるビオチン化成分(例えば、腫瘍細胞又は腫瘍抗原)の2部分から構成される。ビオチン化抗原又は抗体の生産は周知であり、短時間に実施でき、ワクチン生産能を増強できるので、本発明は大量の医薬組成物(例えば、ワクチン)の迅速で簡単な生産を実現する。本願に記載するように単一種の熱ショックタンパク質融合体を多数の種々のビオチン化成分(例えば、腫瘍細胞又は腫瘍抗原)のいずれと組み合わせても投与することができるため、新たな目的標的抗原が同定される毎に熱ショック融合タンパク質を新たに合成する必要がない。したがって、投与しようとする熱ショックタンパク質融合体が確定し、生産されると、このような生産方法は特に迅速に行われる。
ビオチン結合タンパク質に融合させた熱ショックタンパク質の作製方法は以下の通りである。熱ショックタンパク質は、例えばFlynn et al.,Science 245:385-390(1989)に記載されているように、標準技術を使用して天然資源から作製してもよいし、細菌、酵母又は哺乳動物細胞等の適切な宿主細胞で熱ショックタンパク質をコードする遺伝子コンストラクトを発現させる等の組換え技術を使用して作製してもよい。熱ショックタンパク質とビオチン結合タンパク質を含む融合タンパク質は、組換え手段により生産することができる。例えば、ビオチン結合タンパク質と熱ショックタンパク質のコーディング配列が共通の翻訳読み枠をとり、両方のタンパク質を含む融合タンパク質として発現できるように、前記熱ショックタンパク質をコードする核酸を、前記ビオチン結合タンパク質をコードする核酸配列のいずれかの末端に結合させることができる。所望される発現特徴と宿主細胞の種類に基づいて選択された適切なベクターに、前記結合した配列を挿入する。以下の例では、細菌である大腸菌でのタンパク質発現に適したベクターで前記核酸配列を組み立てる。選択された宿主細胞で発現させた後、常套的な生化学的分離技術又は融合タンパク質のどちらかの部分に対する抗体を使用したイムノアフィニティー法により、融合タンパク質を精製することができる。あるいは、選択されたベクターにより融合タンパク質配列にタグ(例えば、後述する実施例に記載するようなオリゴヒスチジンタグ)を付けてタグ付き融合タンパク質を発現させ、抗体又はタグに対して妥当な高い親和性を有する他の材料を使用したアフィニティー法により精製することができる。Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2d Ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989);Deutscher,M.,Guide to Protein Purification Methods Enzymology,vol.182.Academic Press,Inc.,San Diego,CA(1990)。哺乳動物細胞での発現に適したベクタータグ(例えば、下記ベクターの1種)を使用する場合には、熱ショックタンパク質融合体を哺乳動物細胞から発現させ、精製することができる。あるいは、(融合タンパク質をコードする配列を含む)哺乳動物発現ベクターを対象に投与し、対象の細胞で熱ショックタンパク質融合タンパク質の発現を行ってもよい。熱ショックタンパク質をコードする核酸を化学的に生産した後に、融合タンパク質の生産と精製又は対象への投与に適したベクターに挿入することもできる。さらに、融合タンパク質を化学的に作製することもできる。
融合遺伝子の作製技術は当技術分野で周知である。要は、ライゲーション用の平滑末端又は突出末端、適切な末端とするための制限酵素消化、必要に応じて突出末端の埋込み、不要な連結を避けるためのアルカリホスファターゼ処理、及び酵素ライゲーションを利用し、従来の技術に従って異なるポリペプチド配列をコードする種々のDNA断片の連結を実施する。別の実施形態では、自動DNA合成機を含む従来の技術により融合遺伝子を合成することができる。あるいは、2個の隣接する遺伝子断片間に相補的なオーバーハングを生じるアンカープライマーを使用して遺伝子断片のPCR増幅を実施した後、アニールし、キメラ遺伝子配列を作製してもよい(例えば、Current Protocols in Molecular Biology,eds.Ausubel et al.,John Wiley & Sons:1992参照)。したがって、ビオチン結合タンパク質をコードする遺伝子に熱ショックタンパク質をコードする遺伝子を融合させた融合遺伝子を含む単離型核酸が提供される。
熱ショックタンパク質融合体をコードするヌクレオチド配列を少なくとも1個の調節配列と機能的に連結させたベクターに前記核酸を搭載することができる。当然のことながら、発現ベクターの設計は、形質転換しようとする宿主細胞の選択及び/又は発現させることが所望されるタンパク質の種類等の因子に応じて変えることができる。ベクターのコピー数、前記コピー数を制御する能力、及びベクターによりコードされる他のタンパク質(例えば、抗生物質マーカー)の発現も考慮すべきである。このようなベクターを任意の生物学的に有効な基剤(例えば、キメラポリペプチドをコードする遺伝子材料をエクスビボ又はインビボにて細胞に有効にトランスフェクトすることが可能な任意の製剤又は組成物)に加えて投与することができる。アプローチとしては、組換えレトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス及び単純ヘルペスウイルス1型等のウイルスベクター、又は組換え細菌若しくは真核生物プラスミドへの核酸の挿入が挙げられる。ウイルスベクターを使用して細胞に直接トランスフェクトしてもよいし、例えばカチオン性リポソーム(リポフェクチン)、誘導体化した(例えば、抗体を結合した)ポリリジンコンジュゲート、グラミシジンS、人工ウイルスエンベロープ又は他の同様の細胞内運搬体により、プラスミドDNAを単独で送達してもよい。核酸を直接注入してもよい。あるいは、核酸を細胞に導入し易くするためにリン酸カルシウム沈降法を実施してもよい。
培養で増大させた細胞中で熱ショックタンパク質融合タンパク質を発現及び過剰発現させるため、例えば融合タンパク質を生産するために、上記核酸を使用することができる。
熱ショックタンパク質融合体を発現させるために組換え遺伝子をトランスフェクトした宿主細胞も提供する。前記宿主細胞は、任意の原核細胞又は真核細胞とすることができる。例えば、大腸菌等の細菌細胞、昆虫細胞(バキュロウイルス)、酵母、昆虫、植物又は哺乳動物細胞で熱ショックタンパク質融合体を発現させることができる。前記宿主細胞がヒト細胞である場合には、生きた対象に存在するものでもよいし、そうでなくてもよい。他の適切な宿主細胞も当業者に公知である。さらに、前記ポリペプチドの発現を最適にするように、前記宿主に一般的には存在しないtRNA分子を前記宿主細胞に加えてもよい。前記融合ポリペプチドの発現を最大にするのに適した他の方法も当業者に認識されよう。
細胞培養は宿主細胞、培地及び他の副生物を含む。細胞培養に適した培地は当技術分野で周知である。融合ポリペプチドを含む培地と細胞の混合物から前記融合ポリペプチドを分泌させ、単離することができる。あるいは、融合ポリペプチドを細胞質に保持し、細胞を採取し、溶解させ、タンパク質を単離してもよい。当技術分野で公知のタンパク質精製技術を使用して細胞培養培地、宿主細胞又はその両方から融合ポリペプチドを単離することができ、このような技術としては、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、限外濾過、電気泳動、及び融合体の特定のエピトープに特異的な抗体を用いたイムノアフィニティー精製が挙げられる。
このように、微生物又は真核細胞プロセスによりタンパク質の組換え体を生産するために、熱ショックタンパク質融合体の全部又は一部をコードするヌクレオチド配列を使用することができる。前記配列を発現ベクター等のポリヌクレオチドコンストラクトにライゲーションし、真核生物(酵母、鳥類、昆虫又は哺乳動物)又は原核生物(細菌細胞)の宿主に形質転換又はトランスフェクトする方法が標準的な手法である。本発明に従って微生物学的手段又は組織培養技術により組換え融合ポリペプチドを作製するために、同様の手法又はその変法を利用してもよい。
組換えタンパク質の生産用発現媒体としては、プラスミドと他のベクターが挙げられる。例えば、融合ポリペプチドの発現に適したベクターとしては、大腸菌等の原核細胞での発現用の以下の型のプラスミド、即ち、pBR322由来プラスミド、pEMBL由来プラスミド、pEX由来プラスミド、pBTac由来プラスミド及びpUC由来プラスミドが挙げられる。
別の実施形態では、熱ショックタンパク質融合ポリペプチドをコードする核酸を細菌プロモーター、例えば、嫌気性大腸菌NirBプロモーター、例えばInouye et al.(1985)Nucl.Acids Res.13:3101に記載されている大腸菌リポタンパク質llpプロモーター、サルモネラ属pagCプロモーター(Miller et al.,前出)、赤痢菌属entプロモーター(Schmitt and Payne,J.Bacteriol.173:816(1991))、Tn10上のtetプロモーター(Miller et al.,前出)、又はコレラ菌(Vibrio cholera)のctxプロモーターと機能的に連結する。任意の他のプロモーターも使用することができる。前記細菌プロモーターは構成的プロモーターでも誘導性プロモーターでもよい。典型的な誘導性プロモーターは、鉄により誘導されるプロモーター又は鉄制限条件下で誘導されるプロモーターである。実際に、細菌によっては(例えば、細胞内微生物)、宿主細胞質で鉄制限条件におかれるものがあると考えられている。FepA及びTonBの鉄調節型プロモーターの例は当技術分野で公知であり、例えば、以下の文献、即ち、Headley,V.et al.(1997)Infection & Immunity 65:818;Ochsner,U.A.et al.(1995)Journal of Bacteriology 177:7194;Hunt,M.D.et al.(1994)Journal of Bacteriology 176:3944;Svinarich,D.M.and S.Palchaudhuri.(1992)Journal of Diarrhoeal Diseases Research 10:139;Prince,R.W.et al.(1991)Molecular Microbiology 5:2823;Goldberg,M.B.et al.(1990)Journal of Bacteriology 172:6863;de Lorenzo,V.et al.(1987)Journal of Bacteriology 169:2624;及びHantke,K.(1981)Molecular & General Genetics 182:288に記載されている。
プラスミドは、細菌における核酸の適切な転写に必要な配列、例えば、転写終結シグナルを含むことが好ましい。ベクターはさらに、目的核酸を含む細菌の選択を可能にする因子をコードする配列(例えば、抗生物質耐性を提供するタンパク質をコードする遺伝子)、核酸の増幅に必要な配列(例えば、細菌複製起点)を含むことができる。
別の実施形態では、細胞から融合ポリペプチドが分泌されるように、シグナルペプチド配列を前記コンストラクトに付加する。このようなシグナルペプチドは当技術分野で周知である。
1実施形態では、大腸菌で組換えタンパク質の厳密に調節された高レベルの発現を生じるために、大腸菌RNAポリメラーゼにより認識される強力なファージT5プロモーターをlacオペレーター抑制モジュールと共に使用する。このシステムでは、高濃度のlacリプレッサーの存在下でタンパク質発現が阻止される。
1実施形態では、前記DNAを第1のプロモーターと機能的に連結し、前記細菌はさらに、前記第1のプロモーターからの転写を媒介することが可能な第1のポリメラーゼをコードする第2のDNAを含み、前記第1のポリメラーゼをコードするDNAは、第2のプロモーターと機能的に連結されている。好ましい実施形態において、前記第2のプロモーターは、上記に挙げたもの等の細菌プロモーターである。さらに好ましい実施形態において、夫々前記ポリメラーゼはバクテリオファージポリメラーゼ(例えば、SP6、T3又はT7ポリメラーゼ)であり、前記第1のプロモーターはバクテリオファージプロモーター(例えば、夫々SP6、T3又はT7プロモーター)である。バクテリオファージプロモーターを含むプラスミドと、バクテリオファージポリメラーゼをコードするプラスミドは、例えば、Promega社(Madison,Wis.)やInVitrogen社(San Diego,Calif.)から市販されており、標準組換えDNA技術を使用してバクテリオファージから直接得ることもできる(J.Sambrook,E.Fritsch,T.Maniatis,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Laboratory Press,1989)。バクテリオファージポリメラーゼ及びプロモーターは例えば以下の文献、即ち、Sagawa,H.et al.(1996)Gene 168:37;Cheng,X.et al.(1994)PNAS USA 91:4034;Dubendorff,J.W.and F.W.Studier(1991)Journal of Molecular Biology 219:45;Bujarski,J.J.and P.Kaesberg(1987)Nucleic Acids Research 15:1337;及びStudier,F.W.et al.(1990)Methods in Enzymology 185:60)に詳述されている。発現させようとする熱ショックタンパク質融合体の特定の実施形態に応じてこのようなプラスミドをさらに改変することができる。
別の実施形態において、前記細菌はさらに、前記第2のプロモーターからの転写を媒介することが可能な第2のポリメラーゼをコードするDNAを含み、前記第2のポリメラーゼをコードするDNAは、第3のプロモーターと機能的に連結されている。前記第3のプロモーターは、細菌プロモーターとすることができる。一方、高レベルの転写を得るために、3種以上の異なるポリメラーゼとプロモーターを細菌に導入することもできる。細菌で転写を媒介するために1種以上のポリメラーゼを使用すると、DNAを細菌中で直接細菌プロモーターの制御下に置く場合に比較して細菌中のポリペプチドの量を有意に増やすことができる。採用するシステムの選択は特定用途により異なり、例えば、所望されるタンパク質生産量により異なるであろう。
一般に、融合タンパク質をコードする核酸をトランスフェクション等により宿主細胞に導入し、融合タンパク質の発現を可能にする条件下で前記宿主細胞を培養する。核酸を原核細胞及び真核細胞に導入する方法は当技術分野で周知である。哺乳動物及び原核生物宿主細胞培養に適した培地は当技術分野で周知である。一般に、前記核酸を誘導性プロモーターの制御下に置き、このようなプロモーターは、目的の融合タンパク質をコードする核酸を含む宿主細胞が一定回数分裂すると誘導される。例えば、核酸をβ-ガラクトースオペレーター及びリプレッサーの制御下に置く場合には、細菌宿主細胞がOD600=約0.45~0.60の密度に達したらイソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシド(IPTG)を培養液に加える。次に、培養液をもう暫く増殖させ、タンパク質を合成するための時間を宿主細胞に与える。次に、培養液を一般的には凍結し、タンパク質の単離・精製まで、暫く凍結保存することができる。
原核宿主細胞を使用する場合には、前記宿主細胞は、例えばプラスミドpLysSL(実施例参照)から発現される内部T7リゾチームを発現するプラスミドを含むことができる。このような宿主細胞が溶解すると、リゾチームが遊離し、その後、細菌膜を分解する。
細菌又は他の原核細胞での発現用ベクターに含むことができる他の配列としては、合成リボソーム結合部位、転写読み飛ばしを防ぎ、発現されたタンパク質の安定性を確保するための強力な転写ターミネーター(例えば、ファージλに由来するt及び大腸菌におけるrrnBオペロンに由来するt)、複製起点(例えば、ColE1)、並びにアンピシリン耐性を付与するβ-ラクタマーゼ遺伝子が挙げられる。
他の宿主細胞としては、原核宿主細胞が挙げられる。さらに好ましい宿主細胞は細菌(例えば、大腸菌)である。使用することができる他の細菌としては、シゲラ属菌(Shigella spp.)、サルモネラ属菌(Salmonella spp.)、リステリア属菌(Listeria spp.)、リケッチア属菌(Rickettsia spp.)、エルシニア属菌(Yersinia spp.)、エシェリキア属菌(Escherichia spp.)、クレブシエラ属菌(Klebsiella spp.)、ボルデテラ属菌(Bordetella spp.)、ナイセリア属菌(Neisseria spp.)、エロモナス属菌(Aeromonas spp.)、フランシセラ属菌(Franciesella spp.)、コリネバクテリウム属菌(Corynebacterium spp.)、シトロバクター属菌(Citrobacter spp.)、クラミジア属菌(Chlamydia spp.)、ヘモフィルス属菌(Hemophilus spp.)、ブルセラ属菌(Brucella spp.)、マイコバクテリウム属菌(Mycobacterium spp.)、レジオネラ属菌(Legionella spp.)、ロドコッカス属菌(Rhodococcus spp.)、シュードモナス属菌(Pseudomonas spp.)、ヘリコバクター属菌(Helicobacter spp.)、ビブリオ属菌(Vibrio spp.)、バシラス属菌(Bacillus spp.)、及びエリシペロトリクス属菌(Erysipelothrix spp.)が挙げられる。これらの細菌の大半はAmerican Type Culture Collection(ATCC;10801 University Blvd.,Manassas,VA 20110-2209)から入手することができる。
酵母での組換えタンパク質の発現用ベクターには多数のものが存在する。例えば、YEP24、YIP5、YEP51、YEP52、pYES2及びYRP17は、遺伝子コンストラクトを出芽酵母(S.cerevisiae)に導入するのに有用なクローニング及び発現媒体である(例えば、Broach et al.,(1983)in Experimental Manipulation of Gene Expression,ed.M.Inouye Academic Press,p.83参照)。これらのベクターは、pBR322 oriの存在により大腸菌で複製することができ、酵母2μプラスミドの複製決定基により出芽酵母で複製することができる。さらに、アンピシリン等の薬剤耐性マーカーを使用してもよい。
ある種の実施形態において、哺乳動物発現ベクターは、細菌におけるベクターの増幅を助長するために原核生物配列を含むと共に、真核細胞で発現される1種以上の真核転写ユニットを含む。真核細胞のトランスフェクションに適した哺乳動物発現ベクターの例は、pcDNAI/amp、pcDNAI/neo、pRc/CMV、pSV2gpt、pSV2neo、pSV2-dhfr、pTk2、pRSVneo、pMSG、pSVT7、pko-neo及びpHyg由来ベクターである。これらのベクターのうちには、原核細胞と真核細胞の両者における複製と薬剤耐性選択を助長するために、pBR322等の細菌プラスミドに由来する配列で修飾されたものもある。あるいは、真核細胞におけるタンパク質の一過性発現に、ウシパピローマウイルス(BPV-1)やエプスタイン・バールウイルス(pHEBo、pREP由来及びp205)等のウイルスの誘導体を使用することもできる。プラスミドの作製と宿主生物の形質転換で利用される各種方法は、当技術分野で周知である。原核細胞及び真核細胞の両方に適切な他の発現システムと、一般組換え手順については、Molecular Cloning A Laboratory Manual,2nd Ed.,ed.by Sambrook,Fritsch and Maniatis(Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989)Chapters 16 and 17を参照されたい。場合により、バキュロウイルス発現システムの使用により組換えタンパク質を発現させることが望ましい場合もある。このようなバキュロウイルス発現システムの例としては、pVL由来ベクター(例えば、pVL1392、pVL1393及びpVL941)、pAcUW由来ベクター(例えば、pAcUW1)、及びpBlueBac由来ベクター(例えば、β-galを含むpBlueBac III)が挙げられる。
別の変形例では、インビトロ翻訳システムを使用してタンパク質生産を行うことができる。インビトロ翻訳システムは一般に、少なくともRNA分子をタンパク質に翻訳するのに必要な最少成分を含む無細胞抽出液である翻訳システムである。インビトロ翻訳システムは一般的に、少なくともリボソーム、tRNA、開始メチオニンtRNAMet、翻訳に関与するタンパク質又は複合体(例えば、eIF2、eIF3、キャップ結合タンパク質(CBP)と真核生物翻訳開始因子4Fを含むキャップ結合(CB)複合体(eIF4F))を含む。種々のインビトロ翻訳システムが当技術分野で周知であり、市販キットもある。インビトロ翻訳システムの例としては、ウサギ網状赤血球ライセート、ウサギ卵母細胞ライセート、ヒト細胞ライセート、昆虫細胞ライセート及びコムギ胚芽エキス等の真核細胞ライセートが挙げられる。ライセートは、Madison,Wis.に所在のPromega社、La Jolla,Calif.に所在のStratagene社、Arlington Heights,Ill.に所在のAmersham社及びGrand Island,N.Y.に所在のGIBCO/BRL社等の製造業者から市販されている。インビトロ翻訳システムは一般的に、酵素等の高分子、翻訳開始因子、伸長因子、化学試薬及びリボソームを含む。さらに、インビトロ転写システムを使用してもよい。このようなシステムは一般的に、少なくともRNAポリメラーゼホロ酵素、リボヌクレオチド、並びに必要な転写開始因子、伸長因子及び終結因子を含む。当技術分野で公知の方法を使用してインビトロ翻訳用RNAヌクレオチドを作製することができる。インビトロでの転写と翻訳をワンポット反応で連動させ、1種以上の単離DNAからタンパク質を生産することができる。
タンパク質のカルボキシ末端断片、即ち、短縮型突然変異体の発現が所望される場合には、発現させようとする所望の配列を含むオリゴヌクレオチド断片に開始コドン(ATG)を付加することが必要な場合がある。酵素メチオニンアミノペプチダーゼ(MAP)の使用によりN末端位置のメチオニンを酵素的に切断できることは当技術分野で周知である。MAPは大腸菌(Ben-Bassat et al.,(1987)J.Bacteriol.169:751-757)とネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)からクローニングされており、組換えタンパク質でそのインビトロ活性が立証されている(Miller et al.,(1987)PNAS USA 84:2718-1722)。したがって、N末端メチオニンの除去が所望される場合には、MAPを産生する宿主(例えば、大腸菌又はCM89又は出芽酵母)でこのような組換えタンパク質を発現させることによりインビボで実施することもできるし、精製MAPの使用によりインビトロで実施することもできる(例えば、Millerらの方法)。
植物発現ベクターを使用する場合には、多数のプロモーターのいずれかにより熱ショックタンパク質融合体の発現を駆動することができる。例えば、CaMVの35SRNA及び19SRNAプロモーター(Brisson et al.,1984,Nature,310:511-514)や、TMVのコートタンパク質プロモーター(Takamatsu et al.,1987,EMBO J.,6:307-311)等のウイルスプロモーターを使用してもよいし、あるいは、RUBISCOの小サブユニット(Coruzzi et al.,1994,EMBO J.,3:1671-1680;Broglie et al.,1984,Science,224:838-843)や、熱ショックプロモーター(例えば、ダイズHsp17.5-E又はHsp17.3-B)(Gurley et al.,1986,Mol.Cell.Biol.,6:559-565)等の植物プロモーターを使用してもよい。Tiプラスミド、Riプラスミド、植物ウイルスベクター;直接DNA形質転換;マイクロインジェクション、エレクトロポレーション等を使用してこれらのコンストラクトを植物細胞に導入することができる。このような技術の詳細については、例えば、Weissbach & Weissbach,1988,Methods for Plant Molecular Biology,Academic Press,New York,Section VIII,pp.421-463と、Grierson & Corey,1988,Plant Molecular Biology,2d Ed.,Blackie,London,Ch.7-9を参照されたい。
タンパク質タグ又はタンパク質タグを含む融合タンパク質を発現させるために使用することができる別の発現システムは昆虫システムである。このようなシステムの1例では、外来遺伝子を発現させるためのベクターとしてオートグラファ・カリフォルニカ(Autographa californica)核多角体病ウイルス(AcNPV)を使用する。このウイルスはヨトウガ(Spodoptera frugiperda)細胞中で増殖する。PGHS-2配列をこのウイルスの非必須領域(例えば、ポリヘドリン遺伝子)にクローニングし、AcNPVプロモーター(例えば、ポリヘドリンプロモーター)の制御下に置くことができる。コーディング配列の挿入に成功すると、ポリヘドリン遺伝子が不活化され、非保護組換えウイルス(即ち、ポリヘドリン遺伝子によりコードされるタンパク質コートを欠失するウイルス)が生産されるであろう。次にこれらの組換えウイルスを使用してヨトウガ細胞に感染させ、挿入した遺伝子を発現させる(例えば、Smith et al.,1983,J.Virol.,46:584,Smith,米国特許第4,215,051号参照)。
昆虫システムの特定の1実施形態では、熱ショックタンパク質融合タンパク質をコードするDNAをポリヘドリンプロモーターの下流でpBlueBacIII組換えトランスファーベクター(Invitrogen,San Diego,Calif.)にクローニングし、(San Diego,Calif.に所在のInvitrogen社から市販されているヨトウガ卵巣細胞に由来する)Sf9昆虫細胞にトランスフェクトし、組換えウイルスを作製する。組換えウイルスのプラーク精製後、高力価ウイルスストックを調製し、これを使用してSf9又はHigh Five(TM)(San Diego,Calif.に所在のInvitrogen社から市販されているイラクサギンウワバ ×Trichoplusia ni)卵細胞ホモジネートに由来するBTI-TN-5B1-4細胞)昆虫細胞に感染させ、大量の適切に翻訳後修飾された目的タンパク質を産生させる。
他の実施形態では、熱ショックタンパク質融合体とビオチン結合タンパク質を別々に生産した後、相互に連結する×例えば、非共有結合的に連結する)。例えば、熱ショックタンパク質融合体とビオチン結合タンパク質を別々にインビトロ生産し、精製し、目的タンパク質にタグを連結できるような条件下で混合する。例えば、前記熱ショックタンパク質及び/又は前記ビオチン結合タンパク質は、前記タンパク質が存在することが分かっている資源から取得(単離)することもできるし、細胞培養から生産・採取することもできるし、所望の熱ショックタンパク質融合体をコードする遺伝子をクローニングして発現させることにより生産することもできるし、化学的に合成することもできる。さらに、所望の熱ショックタンパク質融合体をコードする核酸配列を化学的に合成することもできる。タンパク質コンジュゲートのこのような混合物は、個々の融合タンパク質とは異なる性質を有することができる。
リンカー(「リンカー分子」又は「クロスリンカー」とも言う)を使用して熱ショックタンパク質とビオチン結合タンパク質を連結してもよい。リンカーとしては、数分子、通常では2分子の特定の化学基と反応してこれらの分子を連結することが可能な化学物質が挙げられる。公知クロスリンカーの大半はアミン基、カルボキシル基及びスルフヒドリル基と反応する。標的化学基は連結しようとするタンパク質の生物学的活性に関与し得るので、その選択は重要である。例えば、マレイミドはスルフヒドリル基と反応し、Cysを標的に結合させる必要のあるCys含有タンパク質を不活性化することができる。リンカーはホモ官能性(同一型の反応性基を含む)でもよいし、ヘテロ官能性(異なる反応性基を含む)でもよいし、光反応性(照射すると反応性になる基を含む)でもよい。
リンカー分子は、連結した組成物の種々の性質に影響を及ぼす可能性がある。リンカーの長さは、連結工程中の分子フレキシビリティと、連結した分子のその標的(細胞表面分子等)に対する利用性に鑑みて考慮すべきである。因みに、リンカーが長いほど、本発明の組成物の生物学的活性と、その製造し易さは改善されると思われる。標的との最適な反応が得られるように分子を配向させるために、リンカーの幾何学的構成を使用することができる。幾何学的構成がフレキシブルなリンカーは他のタンパク質と結合するので、架橋させたタンパク質のコンホメーションを適応させることができる。他の種々の目的に合わせてリンカーの種類を変えることができる。例えば、MBuSのアリール構造はMBSの芳香族スペーサーよりも免疫原性が低いことが分かっている。さらに、成分分子の物理的性質によりリンカー分子の疎水性と機能性を制御することができる。例えば、ポリマーを構成するモノマー単位の順序によりポリマーリンカーの疎水性を制御することができる(例えば、疎水性モノマーブロックと親水性モノマーブロックを交互に配置したブロックポリマー)。
多種多様な分子リンカーを製造・利用する化学技術が当技術分野で周知であり、分子を連結するのに使用される多くの既製リンカーが、Pierce Chemical Co.、Roche Molecular Biochemicals、United States Biological等の販売業者から市販されている。
作製及び/又は単離した熱ショックタンパク質をビオチン結合タンパク質と融合させ、ビオチン部分とビオチン結合タンパク質の非共有結合的会合を形成するために十分となるように、所望のビオチン化成分と共に対象に投与する。熱ショックタンパク質融合体と1種以上のビオチン化成分(例えば、腫瘍細胞又は腫瘍抗原)を同時又は逐次投与することができる。同時に投与する場合には、熱ショックタンパク質融合体と1種以上のビオチン化成分(例えば、腫瘍細胞又は腫瘍抗原)を混合物として投与してもよいし、非共有結合的複合体として投与してもよい。非共有結合的複合体として投与する場合には、ビオチン結合タンパク質と融合させた熱ショックタンパク質を作製及び/又は単離後にインビトロ又はインビボにて所望のビオチン化成分(例えば、腫瘍細胞又は腫瘍抗原)と非共有結合的に結合させることができる。
非共有結合的複合体は、ビオチン結合タンパク質とビオチンの結合を促進するために十分な条件下で、ビオチン結合タンパク質と融合させた熱ショックタンパク質をビオチン化成分(例えば、腫瘍細胞又は腫瘍抗原)と接触させることにより作製することができ、このような条件は当技術分野で公知である。
種々の熱ショックタンパク質の遺伝子がクローニングされ、配列決定されており、熱ショックタンパク質融合体を得るためにいずれを使用してもよく、限定されないが、gp96(ヒト:Genebankアクセッション番号X15187;Maki et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.87:5658-5562(1990);マウス:Genebankアクセッション番号M16370;Srivastava et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.84:3807-3811(1987))、BiP(マウス:Genebankアクセッション番号U16277;Haas et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.85:2250-2254(1988);ヒト:Genebankアクセッション番号M19645;Ting et al.,DNA 7:275-286(1988))、hsp70(マウス:Genebankアクセッション番号M35021;Hunt et al.,Gene 87:199-204(1990);ヒト:Genebankアクセッション番号M24743;Hunt et al,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.82:6455-6489(1995))、及びhsp40(ヒト:Genebankアクセッション番号D49547;Ohtsuka K.,Biochem.Biophys.Res.Commun.197:235-240(1993))が挙げられる。
ビオチン結合タンパク質と融合させた熱ショックタンパク質をビオチン化成分(例えば、腫瘍細胞又は腫瘍抗原)と非共有結合的に結合させることができる。
熱ショックタンパク質と共に投与する腫瘍細胞又は腫瘍抗原は、当技術分野で公知の手段によりビオチンと結合させることができる。ビオチンと結合させる前に、当技術分野で公知の方法を使用して腫瘍細胞又は腫瘍抗原を作製及び/又は単離することができる。熱ショックタンパク質融合体について本願に記載するとほぼ同様に組換え技術を利用することができる。腫瘍細胞又は腫瘍抗原を作製及び/又は単離後、1分子以上のビオチンを腫瘍細胞又は腫瘍抗原と直接結合させることができる。リンカーを介して間接的にビオチンを腫瘍細胞又は腫瘍抗原と結合させてもよい。ビオチンとビオチン結合タンパク質の相互作用が立体的に可能となるような領域にビオチンを結合させるべきである。Pierce社(Rockford,IL)からビオチン化キット及び試薬を購入し、本願に記載するビオチン化成分を作製するために使用することができる。
多数の異なる抗原の配列をクローニングし、DNA配列解析により特性決定し、本願に記載する組成物に含むことができる。完全又は部分的な細胞性又はウイルス性ゲノム又は抗原を含む細菌ベクターを、例えば、American Tissue Culture Collection(ATCC)等の種々の資源バンクから入手することができる。使用することができるその他の抗原も、この目的のために従来定着している方法により単離・型別することができ、このような方法は当技術分野で周知である。
免疫療法
所定の態様では、本願に記載する自己集合性ワクチンを免疫療法と併用して投与することができる。
「免疫療法」なる用語は、がん等の疾患と闘うために対象の免疫系の特定の部分を使用する任意の治療を意味する。この目的の1種以上の薬剤の投与下又は非投与下で対象自身の免疫系を刺激(又は抑制)する。免疫応答を誘発又は増幅するように設計された免疫療法を「免疫賦活療法」と言う。免疫応答を低下又は抑制するように設計された免疫療法を「免疫抑制療法」と言う。遺伝子改変移植がん細胞に対して免疫系効果があると考えられる薬剤をアッセイし、この薬剤が免疫療法薬であるか否かを調べると共に、所定の遺伝子改変が免疫応答の調節に及ぼす効果について調べることができる。所定の実施形態において、免疫療法はがん細胞特異的である。所定の実施形態において、免疫療法は「非標的」療法とすることができ、この用語は、免疫系細胞と選択的に相互作用しないが、免疫系機能を調節する薬剤の投与を意味する。非標的療法の代表例としては、限定されないが、化学療法、遺伝子療法及び放射線療法が挙げられる。
免疫療法は標的療法の1形態であり、例えばがんワクチン及び/又は感作された抗原提示細胞の使用を含むことができる。例えば、腫瘍溶解性ウイルスは、正常細胞を傷つけずにがん細胞に感染して溶解することができるウイルスであるため、がん治療に潜在的に有用である。腫瘍溶解性ウイルスの複製は腫瘍細胞破壊を助長すると同時に、腫瘍部位に投与量増幅をもたらす。腫瘍溶解性ウイルスは、抗がん遺伝子のベクターとして機能することもでき、抗がん遺伝子を腫瘍部位に特異的に送達することができる。免疫療法は、宿主の短期防御用の受動免疫とすることができ、これは、がん抗原又は疾患抗原に対して予め形成された抗体を投与(例えば、モノクローナル抗体を任意選択的に化学療法剤又は毒素と連結して腫瘍抗原に投与)することにより行われる。例えば、抗VEGF及びmTOR阻害剤は腎細胞癌の治療に有効であることが分かっている。免疫療法は、細胞傷害性リンパ球により認識されるがん細胞株のエピトープの使用に重点をおくこともできる。あるいは、腫瘍又はがんの発生、進行及び/又は病理に関連する生体分子を選択的に調節するために、アンチセンスポリヌクレオチド、リボザイム、RNA干渉分子、三重螺旋ポリヌクレオチド等を使用することもできる。
免疫療法は、宿主の短期防御用の受動免疫とすることができ、これは、がん抗原又は疾患抗原に対して予め形成された抗体を投与(例えば、モノクローナル抗体を任意選択的に化学療法剤又は毒素と連結して腫瘍抗原に投与)することにより行われる。免疫療法は、細胞傷害性リンパ球により認識されるがん細胞株のエピトープの使用に重点をおくこともできる。あるいは、腫瘍又はがんの発生、進行及び/又は病理に関連する生体分子を選択的に調節するために、アンチセンスポリヌクレオチド、リボザイム、RNA干渉分子、三重螺旋ポリヌクレオチド等を使用することもできる。
所定の実施形態において、本願に記載する免疫療法は少なくとも1種の免疫原性化学療法を含む。「免疫原性化学療法」なる用語は、1種以上のダメージ関連分子パターン(DAMP)分子の放出により検出可能な状態である免疫原性細胞死を誘導することが立証されている任意の化学療法を意味し、このような分子としては、限定されないが、カルレチキュリン、ATP及びHMGB1が挙げられる(Kroemer et al.(2013),Annu.Rev.Immunol.,31:51-72)。コンセンサス免疫原性化学療法の特定の代表例としては、特に、5’-フルオロウラシル、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシン)、及び白金製剤(例えば、オキサリプラチン)が挙げられる。
所定の実施形態において、免疫療法は1種以上の免疫チェックポイントの阻害剤を含む。「免疫チェックポイント」なる用語は、抗腫瘍免疫応答をダウンレギュレート又は抑制することにより免疫応答を微調整するCD4+及び/又はCD8+T細胞の細胞表面の分子群を意味する。免疫チェックポイントタンパク質は当技術分野で周知であり、限定されないが、CTLA-4、PD-1、VISTA、B7-H2、B7-H3、PD-L1、B7-H4、B7-H6、ICOS、HVEM、PD-L2、CD160、gp49B、PIR-B、KIRファミリー受容体、TIM-1、TIM-3、TIM-4、LAG-3、GITR、4-IBB、OX-40、BTLA、SIRP、CD47、CD48、2B4(CD244)、B7.1、B7.2、ILT-2、ILT-4、TIGIT、HHLA2、ブチロフィリン、IDO、CD39、CD73及びA2aRが挙げられる(例えば、WO2012/177624参照)。前記用語はさらに、生物学的に活性なタンパク質断片と、全長免疫チェックポイントタンパク質をコードする核酸及びその生物学的に活性なタンパク質断片を含む。所定の実施形態において、前記用語はさらに、本願に提示する相同性に関する記載に従う任意の断片を含む。1実施形態において、前記免疫チェックポイントはPD-1である。
免疫チェックポイントとその配列は当技術分野で周知であり、代表的な実施形態を以下に記載する。例えば、「PD-1」なる用語は、共抑制性受容体として機能する免疫グロブリン遺伝子スーパーファミリーのメンバーを意味し、リガンドとしてPD-L1とPD-L2が知られている。PD-1は、TCR誘導活性化T細胞死の過程でアップレギュレートされる遺伝子について選択するためのサブトラクションクローニングアプローチを使用して従来同定されている。PD-1はPD-L1と結合できることから、CD28/CTLA-4ファミリー分子のメンバーである。CTLA-4と同様に、PD-1は抗CD3に応答してT細胞の表面に迅速に誘導される(Agata et al.25(1996)Int.Immunol.8:765)。一方、CTLA-4と異なり、PD-1は(抗IgMに応答して)B細胞の表面にも誘導される。PD-1は、胸腺細胞と骨髄系細胞のサブセットでも発現される(Agata et al.(1996)前出;Nishimura et al.(1996)Int.Immunol.8:773)。
代表的なヒトPD-1バイオマーカーの核酸配列とアミノ酸配列は、GenBankデータベースでNM_005018.2及びNP_005009.2として公共入手可能である(Ishida et al.(1992)20 EMBO J 11:3887;Shinohara et al.(1994)Genomics 23:704;米国特許第5,698,520号も参照)。PD-1は、免疫グロブリンスーパーファミリードメインを含む細胞外領域と、膜貫通ドメインと、免疫受容体抑制性チロシンモチーフ(ITIM)(Ishida et al.(1992)EMBO J.11:3887;Shinohara et al.(1994)Genomics 23:704;及び米国特許第5,698,520号)及び免疫受容体互換性チロシンモチーフ(ITSM)を含む細胞内領域を有する。これらの特徴は、gp49B、PIR-B及びキラー抑制性受容体(KIR)も含む免疫抑制性受容体と呼ばれるより大きなポリペプチドファミリーの定義でもある(Vivier and Daeron(1997)Immunol.Today 18:286)。これらの受容体のチロシンリン酸化ITIM及びITSMモチーフは、ホスファターゼを含むSH2-ドメインと相互作用し、抑制性シグナルに繋がると考えられていることが多い。これらの免疫抑制性受容体のサブセットはMHCポリペプチドと結合し、例えば、KIR及びCTLA4はB7-1及びB7-2と結合する。MHC遺伝子とB7遺伝子の間には系統関係があることが示唆されている(Henry et al.(1999)Immunol.Today 20(6):285-8)。ヒト以外の生物におけるPD-1オーソログの核酸配列とポリペプチド配列は周知であり、例えば、マウスPD-1(NM_008798.2及びNP_032824.1)、ラットPD-1(NM_001106927.1及びNP_001100397.1)、イヌPD-1(XM_543338.3及びXP_543338.3)、ウシPD-1(NM_001083506.1及びNP_001076975.1)、及びニワトリPD-1(XM_422723.3及びXP_422723.2)が挙げられる。
PD-1ポリペプチドは抑制性受容体であり、抑制性シグナルを免疫細胞に伝達することにより免疫細胞エフェクター機能を抑制することが可能であるか、又は例えば可溶性モノマー形態で存在する場合には(例えば、競合阻害により)免疫細胞の共刺激を促進することが可能である。好ましいPD-1ファミリーメンバーはPD-1と配列が一致し、抗原提示細胞上の1種以上のB7ファミリーメンバー(例えば、B7-1、B7-2)、PD-1リガンド、及び/又は他のポリペプチドと結合する。
「PD-1活性」なる用語は、PD-1ポリペプチドが例えば、抗原提示細胞上の天然PD-1リガンドと結合することにより、活性化免疫細胞において抑制性シグナルを調節する能力を含む。免疫細胞で抑制性シグナルが調節されると、免疫細胞の増殖及び/又は免疫細胞によるサイトカイン分泌が調節される。したがって、「PD-1活性」なる用語は、PD-1ポリペプチドがその天然リガンドと結合する能力、免疫細胞共刺激シグナル又は抑制性シグナルを調節する能力、及び免疫応答を調節する能力を含む。
「PD-1リガンド」なる用語は、PD-1受容体の結合パートナーを意味し、PD-L1(Freeman et al.(2000)J.Exp.Med.192:1027-1034)とPD-L2(Latchman et al.(2001)Nat.Immunol.2:261)の両者を含む。少なくとも2種類のヒトPD-1リガンドポリペプチドが存在する。PD-1リガンドタンパク質は、シグナル配列に加え、IgVドメイン、IgCドメイン、膜貫通ドメイン及び短い細胞質テールを含む。PD-L1(配列データについては、Freeman et al.(2000)参照)とPD-L2(配列データについては、Latchman et al.(2001)Nat.Immunol.2:261参照)は、いずれもB7ファミリーポリペプチドのメンバーである。PD-L1とPD-L2は、いずれも胎盤、脾臓、リンパ節、胸腺及び心臓で発現される。PD-L2は膵臓、肺及び肝臓でも発現され、PD-L1は胎児肝臓でも発現される。どちらのPD-1リガンドも活性化された単球と樹状細胞でアップレギュレートされるが、PD-L1発現のほうが広範囲である。例えば、PD-L1は、マウス造血細胞(例えば、T細胞、B細胞、マクロファージ、樹状細胞(DC)及び骨髄由来マスト細胞)と非造血細胞(例えば、内皮細胞、上皮細胞及び筋細胞)で構成的に発現され、高レベルにアップレギュレートされることが知られており、PD-L2はDC、マクロファージ及び骨髄由来マスト細胞で誘導的に発現される(Butte et al.(2007)Immunity 27:111参照)。
PD-1リガンドは、所定の構造的特徴と機能的特徴が保存されたポリペプチドファミリーを構成する。タンパク質又は核酸分子について使用する場合に「ファミリー」なる用語は、本願に定義するように、共通の構造ドメイン又はモチーフと、十分なアミノ酸又はヌクレオチド配列相同性を有する2個以上のタンパク質又は核酸分子を意味するものとする。このようなファミリーメンバーは天然でも非天然でもよく、同一生物種に由来するものでもよいし、異なる生物種に由来するものでもよい。例えば、ファミリーは、ヒト起源の第1のタンパク質と、ヒト起源の他の異なるタンパク質を含むことができ、あるいは、非ヒト起源のホモログを含むことができる。ファミリーのメンバーはさらに共通の機能的特徴を有することができる。PD-1リガンドはB7ポリペプチドファミリーのメンバーである。本願で使用する「B7ファミリー」又は「B7ポリペプチド」なる用語は、B7ポリペプチド(例えば、B7-1、B7-2、B7h)(Swallow et al.(1999)Immunity 11:423)、及び/又はPD-1リガンド(例えば、PD-L1又はPD-L2)と配列相同性を有する共刺激ポリペプチドを含む。例えば、ヒトB7-1及びB7-2は、NCBIのBLASTプログラムをデフォルトパラメーター(ギャップペナルティをexistence11及びextension1に設定したBlosum62行列)(NCBIウェブサイト参照)で使用して比較した場合に、約26%のアミノ酸配列一致度を有する。B7ファミリーなる用語は、免疫細胞機能を調節することが可能なこれらのポリペプチドの変異体も含む。B7ファミリー分子は、シグナルドメイン、IgVドメイン及びIgCドメインを含む多数の領域が保存されている。IgVドメインとIgCドメインは当技術分野で周知のIgスーパーファミリーメンバードメインである。これらのドメインは、Igフォールドと呼ばれる明確な折り畳みパターンを有する構造単位に対応する。Igフォールドは、各々5~10アミノ酸の逆並行βストランドから構成される2枚のβシートがサンドイッチ状に重なった構造であり、2枚のシート間のジスルフィド結合は、全ドメインではないとしても大半のドメインにおいて保存されている。IgのIgCドメイン、TCR、及びMHC分子は同一型の配列パターンであり、Igスーパーファミリー内のC1セットと呼ばれる。他のIgCドメインは他のセットに属する。IgVドメインも配列パターンが共通しており、Vセットドメインと呼ばれる。IgVドメインはIgCドメインよりも長く、βストランドが1対多い。
好ましいB7ポリペプチドは、共刺激シグナル又は抑制性シグナルを免疫細胞に提供することにより、免疫細胞応答を促進又は抑制することが可能である。例えば、共刺激受容体と結合するB7ファミリーメンバーは、T細胞活性化及び増殖を亢進し、抑制性受容体と結合するB7ファミリーメンバーは、共刺激を抑制する。さらに、同一のB7ファミリーメンバーがT細胞共刺激を増減する場合がある。例えば、PD-1リガンドは、共刺激受容体と結合すると、免疫細胞の共刺激を誘導することができ、例えば、可溶性形態で存在する場合には、免疫細胞共刺激を抑制することができる。PD-1リガンドポリペプチドは、抑制性受容体と結合すると、抑制性シグナルを免疫細胞に伝達することができる。好ましいB7ファミリーメンバーとしては、B7-1、B7-2、B7h、PD-L1又はPD-L2とその可溶性断片又は誘導体が挙げられる。1実施形態において、B7ファミリーメンバーは、免疫細胞上で1種以上の受容体(例えば、CTLA4、CD28、ICOS、PD-1及び/又は他の受容体)と結合し、受容体に応じて、抑制性シグナル又は共刺激シグナルを免疫細胞、好ましくはT細胞に伝達することができる。
共刺激シグナルの調節の結果、免疫細胞のエフェクター機能が調節される。したがって、「PD-1リガンド活性」なる用語は、PD-1リガンドポリペプチドがその天然受容体(例えば、PD-1又はB7-1)と結合する能力、免疫細胞共刺激シグナル又は抑制性シグナルを調節する能力、及び免疫応答を調節する能力を含む。
「PD-L1」なる用語は、特定のPD-1リガンドを意味する。2形態のヒトPD-L1分子が同定されている。一方の形態は天然PD-L1可溶性ポリペプチドであり、即ち、短い親水性ドメインを有しており、膜貫通ドメインがなく、本願ではPD-L1Sと呼ぶ。第2の形態は細胞に会合したポリペプチドであり、即ち、膜貫通ドメインと細胞質ドメインを有しており、本願ではPD-L1Mと呼ぶ。PD-L1Mに関して代表的なヒトPD-L1バイオマーカーの核酸配列とアミノ酸配列は、GenBankデータベースでNM_014143.3及びNP_054862.1として公共入手可能である。PD-L1タンパク質は、シグナル配列に加え、IgVドメインとIgCドメインを含む。さらに、ヒト以外の生物におけるPD-L1オーソログの核酸配列とポリペプチド配列も周知であり、例えば、マウスPD-L1(NM_021893.3及びNP_068693.1)、ラットPD-L1(NM_001191954.1及びNP_001178883.1)、イヌPD-L1(XM_541302.3及びXP_541302.3)、ウシPD-L1(NM_001163412.1及びNP_001156884.1)、及びニワトリPD-L1(XM_424811.3及び XP_424811.3)が挙げられる。
「PD-L2」なる用語は、別の特異的PD-1リガンドを意味する。PD-L2は、樹状細胞、マクロファージ及び骨髄由来マスト細胞を含む種々のAPCで発現されるB7ファミリーメンバーである(Zhong et al.(2007)Eur.J.Immunol.37:2405)。APCで発現されるPD-L2は、PD-1のライゲーションによりT細胞活性化を抑制すると共に、PD-1非依存的メカニズムによりT細胞活性化を共刺激することができる(Shin et al.(2005)J.Exp.Med.201:1531)。さらに、樹状細胞で発現されるPD-L2のライゲーションの結果、樹状細胞サイトカイン発現・生存が増強される(Radhakrishnan et al.(2003)J.Immunol.37:1827;Nguyen et al.(2002)J.Exp.Med.196:1393)。代表的なヒトPD-L2バイオマーカーの核酸配列とアミノ酸配列は当技術分野で周知であり、同じくGenBankデータベースでNM_025239.3及びNP_079515.2として公共入手可能である。PD-L2タンパク質は、共通の構造的要素により特徴付けられる。所定の実施形態において、PD-L2タンパク質は、シグナルペプチドドメイン、膜貫通ドメイン、IgVドメイン、IgCドメイン、細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインの少なくとも1個以上を含む。本願で使用する「シグナル配列」又は「シグナルペプチド」は、このような配列を含むポリペプチドを脂質二重層に導くように機能し、分泌型ポリペプチドと膜結合型ポリペプチドにおいて切断され、多数の疎水性アミノ酸残基を含む約15アミノ酸以上のペプチドを分泌型ポリペプチドと膜結合型ポリペプチドのN末端に含む。例えば、シグナル配列は少なくとも約10~30アミノ酸残基を含み、約15~25アミノ酸残基が好ましく、約18~20アミノ酸残基がより好ましく、約19アミノ酸残基がさらに好ましく、少なくとも約35~65%が疎水性アミノ酸残基(例えば、バリン、ロイシン、イソロイシン又はフェニルアラニン)であり、約38~50%が好ましく、約40~45%がより好ましい。別の実施形態において、天然ヒトPD-L2ポリペプチドのアミノ酸残基220~243と、成熟ポリペプチドのアミノ酸残基201~243は、膜貫通ドメインを含む。本願で使用する「膜貫通ドメイン」なる用語は、細胞膜をまたがる約15アミノ酸残基長のアミノ酸配列を含む。より好ましくは、膜貫通ドメインは少なくとも約20アミノ酸残基、25アミノ酸残基、30アミノ酸残基、35アミノ酸残基、40アミノ酸残基又は45アミノ酸残基を含み、細胞膜をまたがる。膜貫通ドメインは疎水性残基が多く、一般的にαヘリックス構造をとる。好ましい実施形態では、膜貫通ドメインのアミノ酸の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%又はそれ以上が疎水性であり、例えば、ロイシン、イソロイシン、チロシン又はトリプトファンである。膜貫通ドメインは、例えば、Zagotta,W.N.et al.(1996)Annu.Rev.Neurosci.19:235-263に記載されている。さらに別の実施形態において、天然ヒトPD-L2ポリペプチドのアミノ酸残基20~120と、成熟ポリペプチドのアミノ酸残基1~101は、IgVドメインを含む。天然ヒトPD-L2ポリペプチドのアミノ酸残基121~219と、成熟ポリペプチドのアミノ酸残基102~200はIgCドメインを含む。本願で使用するIgVドメイン及びIgCドメインは、当技術分野でIgスーパーファミリーメンバードメインとして認められている。これらのドメインは、Igフォールドと呼ばれる明確な折り畳みパターンを有する構造単位に対応する。Igフォールドは、各々5~10アミノ酸の逆並行βストランドから構成される2枚のβシートがサンドイッチ状に重なった構造であり、2枚のシート間のジスルフィド結合は、全ドメインではないとしても大半のドメインにおいて保存されている。IgのIgCドメイン、TCR、及びMHC分子は同一型の配列パターンであり、Igスーパーファミリー内のC1セットと呼ばれる。他のIgCドメインは他のセットに属する。IgVドメインも配列パターンが共通しており、Vセットドメインと呼ばれる。IgVドメインはIgCドメインよりも長く、ストランドが1対多い。さらに別の実施形態において、天然ヒトPD-L2ポリペプチドのアミノ酸残基1~219と、成熟ポリペプチドのアミノ酸残基1~200は、細胞外ドメインを含む。本願で使用する「細胞外ドメイン」なる用語は、細胞の表面からテールとして延びるN末端アミノ酸を意味する。本発明の細胞外ドメインは、IgVドメインとIgCドメインを含み、シグナルペプチドドメインを含んでいてもよい。さらに別の実施形態において、天然ヒトPD-L2ポリペプチドのアミノ酸残基244~273と、成熟ポリペプチドのアミノ酸残基225~273は、細胞質ドメインを含む。本願で使用する「細胞質ドメイン」なる用語は、細胞の細胞質内にテールとして延びるC末端アミノ酸を意味する。さらに、ヒト以外の生物におけるPD-L2オーソログの核酸配列とポリペプチド配列も周知であり、例えば、マウスPD-L2(NM_021396.2及びNP_067371.1)、ラットPD-L2(NM_001107582.2及びNP_001101052.2)、イヌPD-L2(XM_847012.2及びXP_852105.2)、ウシPD-L2(XM_586846.5及びXP_586846.3)、及びチンパンジーPD-L2(XM_001140776.2及びXP_001140776.1)が挙げられる。
「PD-L2活性」、「PD-L2の生物学的活性」又は「PD-L2の機能的活性」なる用語は、標準技術に従ってインビボ又はインビトロにて測定した場合に、PD-L2タンパク質、ポリペプチド又は核酸分子がPD-L2応答性細胞若しくは組織又はPD-L2ポリペプチド結合パートナーに作用する活性を意味する。1実施形態において、PD-L2活性は、PD-L2結合パートナーとの会合等の直接活性である。本願で使用する「標的分子」又は「結合パートナー」とは、PD-L2を介する機能が達成されるように、PD-L2ポリペプチドが自然に結合又は相互作用する分子である。典型的な1実施形態において、PD-L2標的分子は受容体RGMbである。あるいは、PD-L2活性は、PD-L2ポリペプチドとその天然結合パートナー(即ち、免疫機能又は他の生物学的に重要な機能に関与する生理的に重要な相互作用性高分子)(例えば、RGMb)との相互作用を介する細胞シグナル伝達活性等の間接活性である。PD-L2の生物学的活性については本願に記載する通りである。例えば、本発明のPD-L2ポリペプチドは以下の活性、即ち、1)受容体RGMb、PD-1又は他のPD-L2の天然結合パートナーと結合する及び/又はその活性を調節する、2)細胞内又は細胞間シグナル伝達を調節する、3)免疫細胞(例えば、Tリンパ球)の活性化を調節する、並びに4)生物(例えば、マウス又はヒト)の免疫応答を調節する、という活性の1種以上を有することができる。
「免疫チェックポイント阻害療法」とは、免疫チェックポイント核酸及び/又はタンパク質を阻害する薬剤の使用を意味する。1種以上の免疫チェックポイントの阻害により、抑制性シグナル伝達を阻止又は中和し、がんをより有効に治療するために免疫応答をアップレギュレートすることができる。免疫チェックポイントを阻害するのに有用な典型的な薬剤としては、免疫チェックポイントタンパク質又はその断片と結合及び/又は相互作用することができる抗体、低分子、ペプチド、ペプチドミメティクス、天然リガンド、及び天然リガンドの誘導体と、免疫チェックポイント核酸又はその断片の発現及び/又は活性をダウンレギュレートすることができるRNA干渉、アンチセンス、核酸アプタマー等が挙げられる。免疫応答をアップレギュレートするための典型的な薬剤としては、タンパク質とその天然受容体の相互作用を阻止する1種以上の免疫チェックポイントタンパク質に対する抗体;1種以上の免疫チェックポイントタンパク質の不活性化形態(例えば、ドミナントネガティブポリペプチド);1種以上の免疫チェックポイントタンパク質とその天然受容体の相互作用を阻止する低分子又はペプチド;その天然受容体と結合する融合タンパク質(例えば、抗体又は免疫グロブリンのFc部分と融合させた免疫チェックポイント阻害タンパク質の細胞外部分);免疫チェックポイント核酸の転写又は翻訳を阻止する核酸分子等が挙げられる。このような薬剤は、1種以上の免疫チェックポイントとその天然受容体(例えば、抗体)の相互作用を直接阻止し、抑制性シグナル伝達を防ぎ、免疫応答をアップレギュレートすることができる。あるいは、薬剤によっては、1種以上の免疫チェックポイントタンパク質とその天然受容体の相互作用を間接的に阻止し、抑制性シグナル伝達を防ぎ、免疫応答をアップレギュレートすることができる。例えば、安定化細胞外ドメイン等の可溶型の免疫チェックポイントタンパク質リガンドはその受容体と結合し、間接的にこの受容体の有効濃度を下げて適切なリガンドと結合させることができる。1実施形態では、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、及び/又は抗PD-L2抗体を単独で又は組み合わせて使用し、免疫チェックポイントを阻害する。これらの実施形態は、PD-1経路等の特定の免疫チェックポイントに対する特定の治療法(例えば、PD-1経路阻害療法、別称PD-1経路阻害剤療法)にも適用可能である。
好ましい実施形態において、本発明の組成物及び方法で使用される免疫療法は、PD1又はPD-L1を阻害する薬剤である。このような薬剤としては、限定されないが、低分子阻害剤、CRISPRガイドRNA(gRNA)、RNA干渉剤、アンチセンスオリゴヌクレオチド、ペプチド若しくはペプチドミメティック阻害剤、アプタマー、抗体又はイントラボディが挙げられる。特定の実施形態において、PD1又はPD-L1を阻害する薬剤はPD1又はPD-L1ブロッキング抗体である。本発明で使用することができる典型的な抗PD-1抗体としては、限定されないが、キイトルーダ(Keytruda)(Merck,Inc.)が挙げられる。
所定の実施形態において、本発明の組成物及び方法で使用される免疫療法は、免疫調節剤である。このような薬剤としては、限定されないが、CXCR4/CXCR7アンタゴニスト(例えば、AMD3100)、Jak/stat阻害薬(例えば、ルキソリチニブ)、及び皮膚関連免疫細胞の近赤外レーザー免疫調節が挙げられる。皮膚関連免疫細胞の近赤外レーザー免疫調節の例は、Kimizuka,Y.et al.J.Immun.2018,201(12)3587-3603と、Gelfand,J.et al.FASEB J.2019,33(2),3074-3081に記載されており、その開示内容全体を本願に援用する。
医薬組成物及び投与
所定の実施形態において、本願で提供される医薬組成物は、ビオチン結合タンパク質と融合させた熱ショックタンパク質を含み、前記ビオチン結合タンパク質は、ビオチン化成分(例えば、腫瘍細胞又は腫瘍抗原)と非共有結合的に結合している。所定の実施形態において、前記医薬組成物は、さらに免疫療法(例えば、抗PD-1抗体)を含む。特定の実施形態において、ビオチン化されて前記熱ショックタンパク質融合体と非共有結合的に結合している腫瘍抗原は、表1又は表3から選択されるペプチドである。前記医薬組成物は、さらに薬学的に許容される基剤を含むことができる。
上記のように作製された熱ショックタンパク質融合体とビオチン化成分(例えば、腫瘍細胞又は腫瘍抗原)は、医薬組成物として使用するのに適した純度まで精製することができる。一般に、精製された組成物は、単一成分種が前記組成物中に存在する全成分種の約85%超、存在する全成分種の約85%超、90%超、95%超、99%超又はそれ以上となる。目的成分種をほぼ均一になるまで精製することができ(従来の検出法により組成物中に汚染成分種を検出できない)、前記組成物は、本質的に単一成分種から構成される。当業者は本願の教示に鑑み、例えば、イムノアフィニティークロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー等の標準精製技術を使用して熱ショックタンパク質融合体とビオチン化成分(例えば、腫瘍細胞又は腫瘍抗原)、又はその非共有結合的複合体を精製することができる。タンパク質の純度は、当業者に公知の多数の方法により測定することができ、例えば、末端アミノ酸配列解析、ゲル電気泳動法及び質量分析法が挙げられる。
したがって、上記熱ショックタンパク質融合体とビオチン化成分(例えば、腫瘍細胞又は腫瘍抗原)、又はその非共有結合的複合体を含む医薬組成物が提供される。1態様では、治療有効量の本願に記載する医薬組成物の1種以上を1種以上の薬学的に許容される基剤(添加剤)及び/又は希釈剤と配合した薬学的に許容される組成物が提供される。別の態様において、ある種の実施形態では、前記医薬組成物をそのまま又は薬学的に許容される基剤と混合して投与することができ、さらに他の薬剤と併用投与してもよい。したがって、併用(組み合わせ)療法は、先に投与した薬剤の治療効果が後続薬剤の投与時に完全に消失していないように逐次、同時及び別々に投与すること、即ち併用投与することを含む。
本願に記載するような熱ショックタンパク質融合体とビオチン化成分(例えば、腫瘍細胞又は腫瘍抗原)、又はその非共有結合的複合体は、種々の方法で対象に投与することができる。投与経路としては、全身、末梢、非経口、経腸、局所及び経皮(例えば、遅延放出ポリマー)が挙げられる。任意の他の適切な投与経路も使用することができ、例えば、輸液若しくはボーラス注射、又は上皮若しくは粘膜皮膚内層からの吸収が挙げられる。さらに、本願に記載する組成物は、生物学的に活性な物質(例えば、ミョウバン等のアジュバント)、界面活性剤(例えば、グリセリド)、賦形剤(例えば、ラクトース)、基剤、希釈剤及び添加剤等の他の薬理学的に許容される成分を含有することができ、その存在下又は不在下で投与することができる。さらに、抗原特異的免疫細胞をインビトロにて誘発、増大及び増殖させた後、対象に再導入するために、対象から得られた白血球を刺激する手段として前記組成物をエクスビボにて使用することができる。
ビオチン化腫瘍細胞を含む医薬組成物では、対象体重1kg当たり0.1×10個、0.2×10個、0.3×10個、0.4×10個、0.5×10個、0.6×10個、0.7×10個、0.8×10個、0.9×10個、1.0×10個、5.0×10個、1.0×10個、5.0×10個、1.0×10個、5.0×10個、又はそれ以上、又はその間の任意範囲、又はその間の任意数値の腫瘍細胞を投与することができる。移植細胞数は、所定時間内で所望される生着レベルに基づいて調整することができる。一般に、必要に応じて体重1kg当たり1×10~約1×10個、体重1kg当たり約1×10~約1×10個、又は体重1kg当たり約1×10個以上の細胞を移植することができる。所定の実施形態では、平均サイズのマウスに対して少なくとも合計約0.1×10個、0.5×10個、1.0×10個、2.0×10個、3.0×10個、4.0×10個、又は5.0×10個の細胞の移植が有効である。
一般に当技術分野で公知の方法を使用して投与を行うことができる。細胞を含む医薬組成物は、直接注入又は当技術分野で使用される任意の他の手段により所望の部位に導入することができ、このような手段としては、限定されないが、血管内、脳内、非経口、腹腔内、静脈内、硬膜外、脊髄内、胸骨内、関節内、滑液包内、髄腔内、動脈内、心臓内又は筋肉内投与が挙げられる。
例えば、種々の経路により移植細胞を目的対象に生着させることができる。このような経路としては、限定されないが、静脈内投与、皮下投与、特定組織への投与(例えば、局所移植)、大腿骨髄腔への注入、脾臓への注入、胎児肝臓の腎被膜下投与等が挙げられる。ある種の実施形態では、本発明のがんワクチンを対象に腫瘍内又は皮下注射する。細胞を1回の輸液で投与してもよいし、所望の効果を生じるために十分な所定期間にわたって連続輸液することにより投与してもよい。典型的な移植、生着評価、及び移植細胞のマーカー表現型解析方法は、当技術分野で周知である(例えば、Pearson et al.(2008)Curr.Protoc.Immunol.81:15.21.1-15.21.21;Ito et al.(2002)Blood 100:3175-3182;Traggiai et al.(2004)Science 304:104-107;Ishikawa et al.Blood(2005)106:1565-1573;Shultz et al.(2005)J.Immunol.174:6477-6489;及びHolyoake et al.(1999)Exp.Hematol.27:1418-1427参照)。
さらに、本発明の医薬組成物は、医薬投与に適した生体適合形態で対象に投与又は対象の体外に塗布することができる。「インビボ投与に適した生体適合形態」とは、治療作用が毒性作用を上回るような投与形態を意味する。本願に記載するような医薬組成物の投与は、治療活性量の薬剤を単独で又は薬学的に許容される基剤と共に含む任意の薬理学的形態とすることができる。本願で使用する「治療有効量」なる用語は、妥当なメリット/リスク比で何らかの所望の治療効果(例えば、がん治療)を生じるために有効な薬剤の量を意味する。
本発明の医薬組成物の治療活性量の投与は、必要な投与量と時間で所望の結果を達成するために有効な量として定義される。例えば、薬剤の治療活性量は、個体の疾患状態、年齢、性別及び体重等の因子と、ペプチドが個体に所望の応答を誘発する能力により変動し得る。最適な治療応答が得られるように投与レジメンを調整することができる。例えば、用量を数回に分けて毎日投与してもよいし、治療状況の必要に応じて用量を比例的に減らしてもよい。
個々の薬剤の併用製剤又は同時投与の結果、患者に存在する所望の各調節剤の有効量が一度に得られる。
本願に記載する医薬組成物は、注射(皮下、静脈内等)、経口投与、吸入、経皮塗布又は経直腸投与等の適切な方法で投与することができる。投与経路に応じて、活性剤を不活性化する可能性のある酵素、酸及び他の天然条件の作用から活性剤を保護するための材料を活性剤にコーティングすることができる。例えば、非経口投与以外の経路による医薬組成物の投与には、医薬組成物の不活性化を防ぐための材料を前記医薬組成物にコーティングするか、又は前記医薬組成物と併用投与することが望ましい場合がある。
医薬組成物を適切な基剤、希釈剤又はアジュバントに混合して個体に投与することもできるし、酵素阻害剤と併用投与することもできるし、リポソーム等の適切な基剤に内包して投与することもできる。薬学的に許容される希釈剤としては、塩類溶液及び水性緩衝液が挙げられる。アジュバントはその最も広義の意味で使用し、インターフェロン等の任意の免疫刺激剤を含む。本願で想定されるアジュバントとしては、レゾルシノール、非イオン性界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレンオレイルエーテルやn-ヘキサデシルポリエチレンエーテル)が挙げられる。酵素阻害剤としては、膵臓トリプシン阻害剤、フルオロリン酸ジイソプロピル(DEEP)及びトラシロールが挙げられる。リポソームとしては、W/O/W(水中油中水滴)型エマルションと従来のリポソームが挙げられる(Sterna et al.(1984)J.Neuroimmunol.7:27)。
前記医薬組成物は、非経口又は腹腔内投与することもできる。グリセロール、液状ポリエチレングリコール及びその混液や、油類で分散液を調製することもできる。通常の保存・使用条件下で、微生物の発育を防ぐためにこれらの製剤に保存剤を添加することができる。
注射用に適した医薬組成物としては、滅菌水性溶液(水溶性の場合)又は分散液と、滅菌注射溶液又は分散液の即時調製用滅菌粉末が挙げられる。いずれの場合も、前記組成物は無菌であることが好ましく、易通針性となる程度まで流動性でなければならない。製造・保存条件下で安定性であり、細菌や真菌等の微生物の汚染作用から保護することも好ましい。基剤は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール及び液状ポリエチレングリコール等)、及びその適切な混液を含有する溶媒又は分散媒とすることができる。例えば、レシチン等のコーティングの使用や、分散液の場合には必要な粒子径の維持、及び界面活性剤の使用により、適正な流動性を維持することができる。種々の抗菌剤及び抗真菌剤(例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサール等)により、微生物の作用を防止することができる。多くの場合には、等張化剤(例えば、糖類、マンニトール、ソルビトール等の多価アルコール類、塩化ナトリウム)を組成物に加えることが好ましい。吸収遅延剤(例えば、モノステアリン酸アルミニウムやゼラチン)を組成物に加えることにより、注射用組成物の長期吸収を生じることができる。
滅菌注射溶液は、必要に応じて上記成分の1種又は組合せと共に、必要量の本発明の医薬組成物を適切な溶媒に加えた後に、濾過滅菌することにより、調製することができる。一般に、分散液は、塩基性分散媒と上記成分から選択される必要な他の成分を含有する滅菌溶剤に活性剤を加えることにより調製される。滅菌注射溶液の調製用の滅菌粉末の場合には、好ましい調製方法は真空乾燥法と凍結乾燥法であり、活性剤と他の所望の成分の溶液を予め滅菌濾過しておき、この溶液から粉末を得る。
投与用組成物としては、前記医薬組成物を水性基剤等の薬学的に許容される基剤に溶解した溶液が挙げられる。種々の水性基剤を使用することができ、例えば、緩衝塩類溶液等が挙げられる。これらの溶液は無菌であり、一般に望ましくない物質を含まない。これらの組成物は、従来の周知の滅菌技術により滅菌することができる。前記組成物は、生理的条件に近似させるために必要な薬学的に許容される補助物質(例えば、pH調整・緩衝剤、毒性調整剤等)(例えば、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、乳酸ナトリウム等)を含有することができる。これらの製剤におけるバイオマーカー特異的物質の濃度は広い範囲をとることができ、選択される特定の投与方式と対象の必要に従い、主に流体体積、粘度、体重等に基づいて選択されよう。
前記医薬組成物は、既知濃度の滅菌溶液として提供されるが、凍結乾燥形態で提供し、投与前に滅菌水で再水和してもよい。投与可能な組成物の実際の製造方法は当業者に認識又は理解されるであろうし、Remington’s Pharmaceutical Science,19th ed.,Mack Publishing Company,Easton,Pa.(1995)等の刊行物に詳述されている。
前記医薬組成物が上記のように適切に保護されている場合には、例えば、不活性希釈剤又は同化性食用基剤と共に経口投与することができる。本願で使用する「薬学的に許容される基剤」は、ありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤、抗真菌剤、等張剤、吸収遅延剤等を含む。薬学的活性物質にこのような媒体と添加剤を使用することは、当技術分野で周知である。活性剤に不適合である場合を除き、任意の従来の媒体又は添加剤を医薬組成物で使用することが想定される。補助活性剤も前記組成物に加えることができる。
投与し易く、投与量を均一にするために、非経口組成物を用量単位形態で製剤化すると特に有利である。本願で使用する「用量単位形態」とは、治療しようとする哺乳動物対象に単位用量として適切な物理的に不連続な単位を意味し、各単位は、必要な医薬品基剤と共に所望の治療効果を生じるように計算された所定量の活性剤を含有する。本発明の用量単位形態の仕様は、(a)活性剤の固有の特性と、達成しようとする特定の治療効果、及び(b)個体における過敏症の治療に関してこのような活性剤の配合分野で固有の制約により決定され、直接依存する。
さらに、このようなタンパク質配列をコードする核酸をヒト対象でインビボ発現させることにより、熱ショックタンパク質融合タンパク質を投与することができる。抗原特異的免疫細胞をインビトロにて誘発、増大及び増殖させた後、対象に再導入するために、対象から得られた白血球を刺激する手段として、このような核酸の発現及びビオチン化成分(例えば、腫瘍細胞又は腫瘍抗原)との接触をエクスビボにて行うこともできる。熱ショックタンパク質融合タンパク質の発現を駆動するのに適した発現ベクターは、当技術分野で現在使用されている多種多様なベクターから選択することができる。高レベルの発現を生じることができると共に目的遺伝子を導入するのに有効なベクターが好ましい。例えば、組換えアデノウイルスベクターpJM17(All et al.,Gene Therapy 1:367-84(1994);Berkner K.L.,Biotechniques 6:616-24 1988)、第2世代アデノウイルスベクターDE1/DE4(Wang and Finer,Nature Medicine 2:714-6(1996))、又はアデノ随伴ウイルスベクターAAV/Neo(Muro-Cacho et al.,J.Immunotherapy 11:231-7(1992))を使用することができる。さらに、組換えレトロウイルスベクターMFG(Jaffee et al.,Cancer Res.53:2221-6(1993))又はLN、LNSX、LNCX、LXSN(Miller and Rosman,Biotechniques 7:980-9(1989))を利用することができる。pHSV1(Geller et al.,Proc.Nat’l Acad.Sci.87:8950-4(1990))等の単純ヘルペスウイルスベクターや、MVA(Sutter and Moss.Proc.Nat’l Acad.Sci.89:10847-51(1992))等のワクシニアウイルスベクターも代用できる。
プロモーターと3’配列を含む特定の発現ユニットとしてよく使用されているのは、プラスミドCDNA3(Invitrogen)、プラスミドAH5、pRC/CMV(Invitrogen)、pCMU II(Paabo et al.,EMBO J.5:1921-1927(1986))、pZip-Neo SV(Cepko et al.,Cell 37:1053-1062(1984))及びpSRa(DNAX,Palo Alto,CA)に組み込まれているユニットである。発現ユニット及び/又はベクターへの遺伝子の導入は、Molecular CloningやCurrent Protocols in Molecular Biology(Sambrook,J.,et al.,Molecular Cloning,Cold Spring Harbor Press(1989);Ausubel,F.M.et al.,Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing Associates and Wiley-Interscience(1989))等のマニュアルに記載されているような遺伝子工学技術を使用して実施することができる。得られた発現可能な核酸は、前記核酸を発現可能な形態で細胞に導入することができる任意方法により、ヒト対象の細胞に導入することができ、例えば、上記のようなウイルスベクターの部分として導入したり、裸のプラスミド又は他のDNAとして導入したり、標的化リポソームや赤血球ゴーストに封入して導入することができる(Friedman,T.,Science,244:1275-1281(1989);Rabinovich,N.R.et al.,Science.265:1401-1404(1994))。導入方法としては、組織及び腫瘍への直接注入、リポソームトランスフェクション(Fraley et al.,Nature 370:111-117(1980))、受容体を介したエンドサイトーシス(Zatloukal et al.,Ann.N.Y.Acad.Sci.660:136-153(1992))、及びパーティクルガン法による遺伝子導入(Eisenbraun et al.,DNA & Cell.Biol.12:791-797(1993))が挙げられる。
本発明の組成物における熱ショックタンパク質融合体とビオチン化成分(例えば、腫瘍細胞又は腫瘍抗原)又はその非共有結合的複合体の量は、対象に有効な免疫刺激応答を生じる量である。有効量とは、投与したときに免疫応答を生じるような量である。さらに、対象に投与される熱ショックタンパク質融合体とビオチン化成分又はその非共有結合的複合体の量は、利用される熱ショックタンパク質融合体とビオチン化成分、対象の体格、年齢、体重、一般健康状態、性別及び食生活を含む種々の因子と、その一般的な免疫応答性に応じて変動するであろう。設定される用量範囲の調整と操作は当業者がなし得る範囲内である。例えば、熱ショックタンパク質融合体、ビオチン化成分、又はその非共有結合的複合体の量は、約1マイクログラム~約1グラム、好ましくは約100マイクログラム~約1グラム、約1ミリグラム~約1グラムとすることができる。発現ベクターを含む組成物の有効量は、投与したときに医薬組成物の標的である抗原に対して免疫応答を誘導するような量である。さらに、対象に投与される発現ベクターの量は、発現される熱ショックタンパク質融合体、対象の体格、年齢、体重、一般健康状態、性別及び食生活を含む種々の因子と、その一般的な免疫応答性に応じて変動するであろう。考慮する必要のあるその他の因子は、投与経路と使用するベクターの種類である。例えば、熱ショックタンパク質融合体をコードする核酸を含むウイルスベクターを用いて予防又は治療処置を行う場合には、有効量は体重1kg当たりヘルパーフリー複製欠損性ウイルス10~1012個の範囲となり、体重1kg当たり10~1011個がより好ましく、体重1kg当たり10~1010個が最も好ましいであろう。
対象に免疫応答を誘導するために有効な融合タンパク質とビオチン化成分又はその非共有結合的複合体の有効量の決定は、特に本願に記載する詳細な開示に鑑み、当業者が十分になし得る範囲内である。
有効用量は、先ずインビトロアッセイから推定することができる。例えば、当技術分野で周知の技術を使用して免疫応答を誘導するように動物モデルで用量を処方することができる。当技術分野における通常の知識を有する者であれば、動物データに基づいてヒトへの投与を容易に最適化することができよう。投与量と投与間隔は個別に調整することができる。例えば、ワクチンとして使用する場合には、本発明のタンパク質及び/又は細胞株を1~36週間の間に約1~3回投与することができる。約3~4ヶ月の間隔で3回投与することが好ましく、その後、定期的にブースター接種してもよい。個々の患者に適した代替プロトコールも可能である。適切な用量は、上記のように投与したときに、免疫付与した患者を少なくとも1~2年間病態又は感染から防御するために十分な免疫応答を前記患者に生じることが可能なタンパク質又は細胞株の量である。
前記組成物は、免疫応答を増強するためにさらにアジュバントを含むことができる。また、注入後にこのようなタンパク質のインビボ放出を遅らせるように、前記タンパク質をさらにオイルエマルションに懸濁してもよい。製剤における各成分の最適比は、当業者に周知の技術により決定することができる。
免疫応答を増強するために、種々のアジュバントの任意のものを本発明のワクチンで利用することができる。大半のアジュバントは、抗原を急速な異化から保護するための物質(例えば、水酸化アルミニウムや鉱油)と、免疫応答の特異的又は非特異的刺激剤(例えば、リピドAや百日咳菌(Bortadella pertussis))を含有する。適切なアジュバントは市販されており、例えば、不完全フロイントアジュバント及び完全フロイントアジュバント(Difco Laboratories)と、Merck Adjuvant 65(Merck and Company,Inc.,Rahway,N.J.)が挙げられる。他の適切なアジュバントとしては、ミョウバン、生分解性マイクロスフェア、モノホスホリルリピドA、quil A、SBAS1c、SBAS2(Ling et al.,1997,Vaccine 15:1562-1567)、SBAS7、Al(OH)及びCpGオリゴヌクレオチド(WO96/02555)が挙げられる。
本発明のワクチンにおいて、前記アジュバントはTh1型免疫応答を誘導することができる。適切なアジュバントシステムとしては、例えば、モノホスホリルリピドAが挙げられ、3-O-脱アシル化モノホスホリルリピドA(3D-MPL)とアルミニウム塩の併用が好ましい。強化型システムとしては、モノホスホリルリピドAとサポニン誘導体の併用が挙げられ、特に、WO94/00153に開示されているような3D-MLPとサポニンQS21の併用、又はWO96/33739に開示されているようにQS21をコレステロールで無毒化して反応性症状を弱めた組成物が挙げられる。従来の実験によると、体液性及びTh1型細胞性の両方の免疫応答の誘導において3D-MLPとQS21の併用の明白な相乗効果が立証されている。O/W(水中油滴)型エマルションにQS21、3D-MLP及びトコフェロールを懸濁すると、特に強力なアジュバントが形成されることがWO95/17210に記載されており、製剤に添加することができる。
治療方法
本発明は、がんの危険のある(又はがんに罹患し易い)対象又はがんに罹患している対象を処置する予防的方法と治療的方法を提供する。前記がんは、固形がん又は造血器がんとすることができる。前記がんは、肉腫又は癌腫とすることができ、例えば、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、脊索腫、血管肉腫、血管内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑液膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、大腸がん、膵臓がん、乳がん、卵巣がん、前立腺がん、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、脂腺癌、乳頭癌、乳頭腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支原性癌、腎細胞癌、ヘパトーマ、胆道癌、絨毛癌、セミノーマ、胎児性癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸がん、精巣腫瘍、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮性癌、神経膠腫、星細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫瘍、乏突起膠腫、髄膜腫、メラノーマ、神経芽腫、網膜芽細胞腫、白血病、真性赤血球増加症、リンパ腫、多発性骨髄腫、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、頭頸部がん、肛門がん又は重鎖病が挙げられる。
ある種の実施形態において、前記がんは、漿液性又は上皮性乳頭状卵巣がん等の卵巣がんである。所定の実施形態において、前記がんは、腫瘍産生ウイルス(例えば、HPV、HCV、EBV、HIV又はヘルペスウイルス)の感染により誘発される。ある種の実施形態において、前記がんは、HPV関連がん(例えば、ヒトパピローマウイルス(HPV)誘発性子宮頸がん、HPV誘発性頭頸部がん又はHPV誘発性肛門がん)とすることができる。
1実施形態において、前記がんは、前記ビオチン化腫瘍細胞又は腫瘍抗原と同一のがん種であるか又は同一の遺伝子突然変異を有する。別の実施形態において、前記がんは、前記ビオチン化腫瘍細胞又は腫瘍抗原と異なるがん種であるか又は異なる遺伝子突然変異を有する。
本願に記載する熱ショックタンパク質融合体とビオチン化成分(例えば、腫瘍細胞又は腫瘍抗原)は、対象の抗腫瘍免疫応答を誘導又は増強するために対象に投与することができる。前記熱ショックタンパク質融合体は、単に免疫応答を増強する(即ち、免疫原性組成物として機能する)こともできるし、防御免疫を付与する(即ち、ワクチンとして機能する)こともできる。したがって、本願では、本願に記載する医薬組成物を使用して免疫応答を誘導する方法も提供する。
a.予防的方法
1態様において、本発明は、ビオチン結合タンパク質と融合させた熱ショックタンパク質を含む有効量の医薬組成物を対象に投与することにより、前記対象における卵巣がんを予防する方法を提供し、前記ビオチン結合タンパク質は、ビオチン化ペプチドと非共有結合的に結合しており、前記ペプチドは、表1又は表3から選択される。
別の態様において、本発明は、(1)ビオチン結合タンパク質と融合させた熱ショックタンパク質と、ここで、前記ビオチン結合タンパク質は、ビオチン化腫瘍細胞又はビオチン化腫瘍抗原(例えば、表1又は表3から選択される1種以上のペプチド)と非共有結合的に結合されている、(2)免疫療法(例えば、抗PD-1抗体)とを含む、有効量の医薬組成物を対象に投与することにより、前記対象におけるがん(例えば、卵巣がん、頭頸部がん、肛門がん又は子宮頸がん)を予防する方法を提供する。
さらに別の態様において、本発明は、対象におけるがん(例えば、卵巣がん、頭頸部がん、肛門がん又は子宮頸がん)の予防方法として、免疫療法(例えば、抗PD-1抗体)と、ビオチン結合タンパク質と融合させた熱ショックタンパク質を含む有効量の医薬組成物を併用して前記対象に投与することを含む方法を提供し、ここで、前記ビオチン結合タンパク質は、ビオチン化腫瘍細胞又はビオチン化腫瘍抗原(例えば、表1又は表3から選択される1種以上のペプチド)と非共有結合的に結合されている。
さらに別の態様において、本発明は、対象におけるHPV関連がん(例えば、頭頸部がん又は肛門がん)の予防方法として、ビオチン結合タンパク質と融合させた熱ショックタンパク質を含む有効量の医薬組成物を前記対象に投与することを含み、前記ビオチン結合タンパク質は、ビオチン化HPVウイルス又はビオチン化HPVウイルス抗原と非共有結合的に結合さむれている方法を、提供する。ある種の実施形態において、前記対象は、HPVを有しており、又はHPVに曝露されたことがある。
予防剤(例えば、本願に記載する医薬組成物)の投与は、がんを予防するか又はその進行を遅らせるように、がんの特徴的症状が発現する前に行うことができる。ある種の実施形態において、予防剤(例えば、本願に記載する医薬組成物)の投与は前記対象を再発性がんから防御する。
b.治療的方法
本発明の他の態様は、がんに罹患している対象の治療方法に関する。例えば、1態様において、本発明は、ビオチン結合タンパク質と融合させた熱ショックタンパク質を含む有効量の医薬組成物を対象に投与することにより、前記対象における卵巣がんを治療する方法を提供し、前記ビオチン結合タンパク質は、ビオチン化ペプチドと非共有結合的に結合しており、前記ペプチドは、表1又は表3から選択される。
別の態様において、本発明は、(1)ビオチン結合タンパク質と融合させた熱ショックタンパク質と、ここで、前記ビオチン結合タンパク質は、ビオチン化腫瘍細胞又はビオチン化腫瘍抗原(例えば、表1又は表3から選択される1種以上のペプチド)と非共有結合的に結合されている、(2)免疫療法(例えば、抗PD-1抗体)とを含む有効量の医薬組成物を対象に投与することにより、前記対象におけるがん(例えば、卵巣がん、頭頸部がん、肛門がん又は子宮頸がん)を治療する方法を提供する。
さらに別の態様において、本発明は、対象におけるがん(例えば、卵巣がん、頭頸部がん、肛門がん又は子宮頸がん)の治療方法として、免疫療法(例えば、抗PD-1抗体)と、ビオチン結合タンパク質と融合させた熱ショックタンパク質を含む有効量の医薬組成物を併用して前記対象に投与することを含み、前記ビオチン結合タンパク質は、ビオチン化腫瘍細胞又はビオチン化腫瘍抗原(例えば、表1又は表3から選択される1種以上のペプチド)と非共有結合的に結合されている、方法を提供する。
さらに別の態様において、本発明は、対象におけるHPV関連がん(例えば、頭頸部がん又は肛門がん)の治療方法として、ビオチン結合タンパク質と融合させた熱ショックタンパク質を含む有効量の医薬組成物を前記対象に投与することを含み、前記ビオチン結合タンパク質は、ビオチン化HPVウイルス又はビオチン化HPVウイルス抗原と非共有結合的に結合されている、方法を提供する。
c.併用療法
所定の態様では、本願に記載する自己集合性ワクチンを免疫療法と併用して投与することができる。前記免疫療法と前記自己集合性ワクチンを同時又は逐次投与することができる。例えば、前記自己集合性ワクチンを前記免疫療法の前、それと同時又はその後に投与することができる。
本願に記載する医薬組成物を非標的療法(例えば、化学療法剤、ホルモン、血管新生阻害薬、放射性標識化合物、手術、凍結療法及び/又は放射線療法)と併用して投与することもできる。「非標的療法」なる用語は、選択された生体分子と選択的に相互作用しないが、がんを治療する物質の投与を意味する。非標的療法の代表例としては、限定されないが、化学療法、遺伝子療法及び放射線療法が挙げられる。
1実施形態では、化学療法を使用する。化学療法は化学療法剤の投与を含む。このような化学療法剤としては、限定されないが、以下の化合物群、即ち、白金化合物、細胞傷害性抗生物質、代謝拮抗薬、有糸分裂阻害剤、アルキル化剤、ヒ素化合物、DNAトポイソメラーゼ阻害剤、タキサン、ヌクレオシドアナログ、植物アルカロイド及び毒素、並びにその合成誘導体から選択されるものが挙げられる。典型的な化合物としては、限定されないが、アルキル化剤として、シスプラチン、トレオスルファン及びトロホスファミド;植物アルカロイドとして、ビンブラスチン、パクリタキセル、ドセタキソール;DNAトポイソメラーゼ阻害剤として、テニポシド、クリスナトール及びマイトマイシン;葉酸拮抗薬として、メトトレキサート、ミコフェノール酸及びヒドロキシウレア;ピリミジンアナログとして、5-フルオロウラシル、ドキシフルリジン及びシトシンアラビノシド;プリンアナログとして、メルカプトプリン及びチオグアニン;DNA代謝拮抗薬として、2’-デオキシ-5-フルオロウリジン、アフィジコリングリシネート及びピラゾロイミダゾール;並びに有糸分裂阻害剤として、ハリコンドリン、コルヒチン及びリゾキシンが挙げられる。1種以上の化学療法剤を含む組成物(例えば、FLAG、CHOP)を使用してもよい。FLAGはフルダラビン、シトシンアラビノシド(Ara-C)及びG-CSFを含む。CHOPはシクロホスファミド、ビンクリスチン、ドキソルビシン及びプレドニゾンを含む。化学療法剤の上記の例は例示であり、これらに制限するものではない。例えば、本願に記載する医薬組成物を治療有効用量の化学療法剤と併用して投与することができる。別の実施形態では、前記医薬組成物を化学療法と併用して投与し、化学療法剤の活性と効力を増強させる。Physicians’ Desk Reference(PDR)は、種々のがんの治療に使用されている化学療法剤の投与量を開示している。これらの上記化学療法薬の治療的に有効な投与レジメンと投与量は、治療する特定のがん、疾患の程度及び当技術分野の医師に周知の他の因子により異なり、医師が決定することができる。
別の実施形態では、放射線療法を使用する。放射線療法で使用される放射線は電離放射線とすることができる。放射線療法はガンマ線、X線又は陽子線とすることもできる。放射線療法の例としては、限定されないが、外部照射放射線療法、放射性同位体(I-125、パラジウム、イリジウム)の組織内刺入、ストロンチウム89等の放射性同位体、胸部放射線療法、P32腹腔内放射線療法、及び/又は全腹部・骨盤部放射線療法が挙げられる。放射線療法の一般論については、Hellman,Chapter 16:Principles of Cancer Management:Radiation Therapy,6th edition,2001,DeVita et al.,eds.,J.B.Lippencott Company,Philadelphiaを参照されたい。放射線療法は、放射線を遠隔線源から照射する外部照射放射線療法又は遠隔療法として行うことができる。がん細胞又は腫瘍塊の近くの体内に放射線源を留置する内部照射放射線療法又は小線源療法として放射線治療を行うこともできる。また、ヘマトポルフィリンとその誘導体、ベルテポルフィン(BPD-MA)、フタロシアニン、光増感剤Pc4、デメトキシヒポクレリンA、及び2BA-2-DMHA等の光増感剤の投与を含む光線力学的療法の使用も考えられる。
別の実施形態では、ホルモン療法を使用する。ホルモン療法治療は、例えば、ホルモンアゴニスト、ホルモンアンタゴニスト(例えば、フルタミド、ビカルタミド、タモキシフェン、ラロキシフェン、ロイプロリド酢酸塩(LUPRON)、LH-RHアンタゴニスト)、ホルモン生合成及びプロセシングの阻害剤、ステロイド(例えば、デキサメタゾン、レチノイド、デルトイド、ベタメタゾン、コルチゾール、コルチゾン、プレドニゾン、デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、ミネラロコルチコイド、エストロゲン、テストステロン、プロゲスチン)、ビタミンA誘導体(例えば、オールトランスレチノイン酸(ATRA))、ビタミンD3アナログ、抗ゲスタゲン薬(例えば、ミフェプリストン、オナプリストン)、又は抗アンドロゲン薬(例えば、酢酸シプロテロン)を含むことができる。
別の実施形態では、体組織を(106°Fまでの)高温に曝露する方法である温熱療法を使用する。熱は、細胞を損傷させたり、細胞が生存するために必要な物質を剥奪することにより、腫瘍を収縮させるのに役立つ。温熱療法は、体外及び体内加熱装置を使用した局所、領域及び全身温熱療法とすることができる。温熱療法は殆ど常に他の療法(例えば、放射線療法、化学療法及び生物学的療法)と併用してその効力を増強することを目的とする。局所温熱療法とは、腫瘍等の非常に小さい領域を加熱する方法を意味する。体外の装置から腫瘍に高周波を当て、この領域を体外から加熱することができる。体内加熱を行うためには、数種の滅菌プローブのうちの1種を使用することができ、細い加熱チューブ又は温水を充填した中空チューブ;刺入式マイクロ波アンテナ;及びラジオ波電極が挙げられる。領域温熱療法では、臓器又は四肢を加熱する。加熱しようとする領域の上に磁石と高エネルギーを発生する装置を設置する。灌流と呼ばれる別のアプローチでは、患者の血液の一部を取り出し、加熱した後、加熱しようとする体内の領域にポンプで注入(灌流)する。全身に広がっている転移性がんの治療には全身温熱法を使用する。この方法は、温水ブランケット、加熱ワックス、(電気毛布で使用されているものと同様の)誘導コイル、又は温熱室(大型のインキュベーターのようなもの)を使用して実施することができる。温熱療法は放射線による副作用又は合併症の顕著な増加を生じない。一方、皮膚を直接加熱するため、治療を受けた患者の約半数で不快感又は顕著な局所痛を生じる可能性がある。水疱を生じる場合もあるが、一般に短時間で治癒する。
さらに別の実施形態では、一部のがん種の治療に光線力学的療法(PDT、光放射線療法、光療法又は光化学療法とも言う)を使用する。この方法は、光増感剤と呼ばれる所定の化学物質が特定種の光に曝露された単細胞生物を死滅させることができるという発見に基づく。PDTは、一定の周波数のレーザー光を光増感剤と併用することにより、がん細胞を破壊する。PDTでは、光増感剤を血流に注入し、全身の細胞に吸収させる。光増感剤は、正常細胞よりもがん細胞に長時間留まる。処置したがん細胞をレーザー光に曝露すると、光増感剤は光を吸収し、活性酸素を生成し、処置したがん細胞を破壊する。光増感剤の大部分が健康な細胞から排出されているが、がん細胞にはまだ存在しているときに光曝露を行うように、注意深くタイミングをとる必要がある。PDTで使用されるレーザー光は、光ファイバー(非常に細いガラス糸)により伝送することができる。光ファイバーをがんの近くに配置し、適正な量の光を送達する。肺がんを治療する場合には気管支鏡を通して光ファイバーを肺に導くことができ、食道がんを治療する場合には内視鏡を通して食道に導くことができる。PDTの利点は、健康な組織の損傷を最小限にするという点である。しかし、現在使用されているレーザー光は約3センチ超の組織(1.125インチよりもやや大きい)を通過することができないので、PDTは主に皮膚の表面若しくは直下又は内臓の内壁の腫瘍を治療するために使用されている。光線力学的療法では、治療後6週間以上皮膚と眼が光線に過敏になる。少なくとも6週間は直射日光と強い室内光を避けるように患者に忠告する。患者が屋外に外出しなければならない場合には、サングラスを含めて保護用の衣類を着用する必要がある。PDTの他の一時的な副作用として、特定部位の治療に関連するものがあり、咳、誤飲、腹痛及び呼吸時の痛み又は息切れを挙げることができる。1995年12月に、米国食品医薬品局(FDA)は、閉塞をきたしている食道がんの症状の緩和と、レーザー単独の治療では満足な結果が得られない食道がんに、ポルフィマーナトリウム又はPhotofrin(R)と呼ばれる光増感剤を認可した。1998年1月に、FDAは、通常の肺がん治療が不適切な患者の初期非小細胞肺がんの治療用にポルフィマーナトリウムを認可した。米国国立がん研究所(National Cancer Institute)及び他の機関は、膀胱がん、脳腫瘍、喉頭がん及び口腔がんを含む数種のがんにおける光線力学的療法の使用を評価するための臨床試験(研究試験)を支援している。
さらに別の実施形態では、レーザー療法を使用し、高強度の光でがん細胞を破壊する。この技術は、特に他の治療によりがんを治癒できない場合に、出血や閉塞等のがん症状を緩和するために使用することが多い。腫瘍を収縮又は破壊することによりがんを治療するために使用することもできる。「レーザー」なる用語は、放射線の刺激放出による光増幅を意味する。電球からの光等の通常の光は波長数が多く、全方向に広がる。他方、レーザー光は特定の波長であり、狭いビームに集束する。この種の高強度光は多量のエネルギーを含む。レーザーは非常に強力であり、鋼を切断したり、ダイヤモンドを成形するのに使用することができる。レーザーは、(外科用メスの代わりに)眼球内の損傷した網膜を修復したり、組織に切り込みを入れる等の非常に精密な外科操作に使用することもできる。数種の異なるレーザーが存在するが、医療用に広く使用されているのは以下の3種のみである。まず、炭酸ガス(CO)レーザーが挙げられ、この種のレーザーは深層まで透過せずに皮膚の表面から薄層を除去することができる。この技術は、皮膚の深部まで広がっていない腫瘍と所定の前がん性病態を治療するのに特に有用である。従来の外科用メスによる手術の代用として、COレーザーは皮膚を切開することも可能である。このため、このレーザーは皮膚がんを切除するために使用される。次に、ネオジムドープイットリウムアルミニウムガーネット(Nd:YAG)レーザーが挙げられ、このレーザーからの光は、他の種類のレーザーからの光よりも組織の深部まで透過することができ、血液を急速に凝固させることができる。また、接近しにくい身体部分へも光ファイバーにより伝送することができる。この種のレーザーは咽喉頭がんの治療に使用されることもある。最後にアルゴンレーザーが挙げられ、このレーザーは組織の表層のみを通過できるため、皮膚科及び眼科手術に有用である。また、光線力学的療法(PDT)と呼ばれる処置で腫瘍を治療するために感光色素と共に使用される。レーザーは標準的な外科ツールに勝る以下のいくつかの利点がある。レーザーは外科用メスよりも精密である。周囲の皮膚又は他の組織と殆ど接触しないため、切開部の付近の組織が保護される。レーザーにより生じる熱は手術部位を滅菌するため、感染の危険が減る。レーザーの精密さは切開部を小さくすることができるので、所要手術時間を短縮することができる。レーザー熱が血管を密閉し、出血、腫脹又は瘢痕が減るため、治癒時間が短縮することが多い。レーザー手術は煩雑さを軽減できる。例えば、光ファイバーを使用すると、大きな切開を作らずに体内部分にレーザー光を導くことができる。より多くの処置を外来で実施できるようになる。レーザーは、腫瘍を熱で収縮又は破壊する方法と、がん細胞を破壊する光増感剤と呼ばれる化学物質を活性化させる方法の2通りの方法でがんを治療するために使用することができる。PDTでは、光増感剤をがん細胞に蓄積させ、光により刺激すると、がん細胞を死滅させる反応を生じることができる。COレーザーとNd:YAGレーザーは腫瘍を収縮又は破壊するために使用されている。これらのレーザーは、医師が膀胱等の所定の体内部位を検査するのに利用できるチューブである内視鏡で使用することができる。レーザーによっては、光ファイバーを搭載した軟性内視鏡を通してレーザーからの光を伝送することができる。この結果、医師は手術以外では到達できなかった体内部分を観察・処置できるため、レーザービームを非常に精密に照準することができる。レーザーを低倍率顕微鏡と併用することもでき、医師は治療部位をはっきり見ることができる。他の機器と併用すると、レーザーシステムは極細糸の幅よりも小さい直径200ミクロン程度の切開部位を形成することができる。レーザーは多種のがんの治療に使用されている。レーザー手術は、所定のステージの声門(声帯)がん、子宮頸がん、皮膚がん、肺がん、膣がん、外陰がん及び陰茎がんの標準治療である。がんを破壊するための使用に加え、レーザー手術はがんに起因する症状の緩和を補助するためにも使用される(緩和ケア)。例えば、患者の気管(喉笛)を詰まらせている腫瘍を収縮又は破壊し、呼吸し易くするためにレーザーを使用することができる。大腸がんや肛門がんにおける緩和にレーザーを使用する場合もある。レーザー間質熱療法(LITT)はレーザー治療の最新開発の1つである。LITTは、温熱療法と呼ばれるがん治療法と同じ着想を使用しており、即ち、熱は、細胞を損傷させたり、細胞が生存するために必要な物質を剥奪することにより、腫瘍を収縮させるのに役立つという着想に基づく。この治療法では、レーザーを生体内の間質領域(臓器間の領域)に導く。こうすると、レーザー光は腫瘍の温度を上昇させ、がん細胞を損傷又は破壊する。
上記治療方法及び/又は医薬組成物を他の形態の従来の療法(例えば、当業者に周知の標準がん治療)と併用し、従来の療法の前又は後に順次投与することができる。前記がんワクチンの投与期間及び/又は用量は、特定の自己集合性ワクチン又は特定の併用療法に応じて変動し得る。特定のがん治療剤に適した投与期間は当業者に理解されよう。本発明は、各がん治療剤の最適投与スケジュールの持続評価を想定しており、本発明の方法により決定されるような対象のがんの表現型が最適投与用量及びスケジュールを決定する際の因子となる。
キット
本発明は、ビオチン結合タンパク質と融合させた熱ショックタンパク質を発現又は投与するためのキットを提供する。このようなキットは、ビオチン結合タンパク質と融合させた熱ショックタンパク質をコードする核酸から構成することができる。前記核酸をプラスミド又はベクター(例えば、細菌プラスミド又はウイルスベクター)に搭載することができる。他のキットは、ビオチン結合タンパク質と融合させた熱ショックタンパク質を含む。所定の実施形態において、前記キットは、さらに抗PD-1抗体等の免疫療法を含むことができる。さらに、本発明は、ビオチン結合タンパク質と融合させた熱ショックタンパク質を生産及び/又は精製するためのキットを提供する。本願に記載するキットは、任意選択的に、ビオチン化腫瘍細胞及び/又は腫瘍抗原を含むことができる。ある種の実施形態において、このようなキットは、本願に記載するような腫瘍細胞及び/又は腫瘍抗原と、ビオチン化剤を含むことができる。
本発明は、患者におけるがんの予防及び/又は治療用キットを提供する。例えば、キットは、1種以上の上記医薬組成物と、任意選択的にその使用説明書を含むことができる。さらに他の実施形態において、本発明は、1種以上の医薬組成物と、このような組成物の投与を行うための1種以上の装置を含むキットを提供する。
上記方法を手動、部分自動、又は全自動で実施するようにキットコンポーネントをパッケージングすることができる。キットに関する他の実施形態では、その使用説明書を提供することができる。
以下の実施例では、本発明の他の実施形態について記載する。以下の実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、これらの実施例に発明を制限すると解釈すべきではない。本願の随所に引用する全参考文献、特許及び公開特許出願の内容と図面を本願に援用する。
[実施例1]卵巣がんの治療
a.試験デザイン
卵巣がん患者は疾患進行の後期にあることが多く、腫瘍の突然変異数が少なく、免疫系により容易に検出されない。本試験では、卵巣がんの免疫正常マウスモデルを使用した。ヒト疾患と同様に、ID8モデルは後期ステージ患者に認められるように突然変異数が少なく、播種性腫瘍を繰り返す。従来、抗PD-1治療はID8モデルでは限られた効果しか得られないことが示されている。卵巣がんを標的とするSAVの潜在能力を最大限にするために、ID8特異的SAVを抗PD-1抗体療法と組み合わせた。卵巣がんの治療とID8モデルシステムの利点と課題を踏まえ、前記ワクチンを単独投与したマウスにおける生存率の改善を認めることと、抗PD-1抗体療法の効果を潜在的に強化することを目的とし、このアプローチをSAVがんアプローチの「高難度(high-bar)」試験として選択した。
b.治療と結果
卵巣がんに対するSAVがんワクチンの試験では、腫瘍標的の広範な集合を免疫系に提供する根拠として、突然変異タンパク質(ネオアンチゲン)と、腫瘍に過剰に多量に存在するタンパク質に由来するペプチドを試験した(表1参照)。先ずマウスに卵巣がん細胞を注入し、10日後に、腫瘍標的ペプチドを含むSAVを接種した。ワクチン接種から3日後に抗PD-1抗体の投与を開始し、実験の60日目まで3日毎に投与を続けた。マウスを毎日監視し、最初の4週間は腫瘍成長を毎週測定した。
試験の結果、抗PD-1抗体、SAVがんワクチン又はその両方の併用を投与すると、ペプチド単独又はMAVタンパク質単独を投与した対照群マウスに比較して、いずれの場合も腫瘍をもつマウスの生存期間が延長することが立証された。特筆すべき点として、SAVがんワクチンを単独投与した場合又は前記ワクチンを抗PD-1抗体と併用投与した場合には、抗PD-1抗体を単独投与したマウスに比較して生存率が向上した。SAVがんワクチンと抗PD-1抗体を併用投与したマウスで最も顕著な生存率の改善が認められ、7匹のうちの3匹が100日を超えて生存した。対照的に、抗PD-1抗体を投与したマウスは初期の生存期間は延びたが、同群の全生存期間は、対照群のマウスに比較して改善されなかった。総合すると、SAVと抗PD-1抗体を併用した場合に卵巣がん患者の転帰を改善できることが生存データから明らかである。腫瘍浸潤リンパ球の免疫学的試験では、SAV/抗PD-1抗体を併用投与した場合に全投与群で最高レベルの免疫細胞増殖を生じ、その少なくとも一因は、他の治療を受けたマウスに比較して試験のこの群の生存率が改善した点にあることが判明した。図2参照。
c.結論
本試験では、卵巣がんのID8モデルにおける標的可能なタンパク質と突然変異の存在が確認された。次に、選択した腫瘍標的に由来する候補配列を同定し、ID8腫瘍を標的とするSAVを構築するようにペプチドを設計し、合成した。試験の結果、SAVがんワクチンは単独で有効であり、SAVがんワクチンを免疫療法(例えば、抗PD-1抗体療法)と併用すると相乗効果があることが立証された。十分な統計的検定力を提供すると共に前臨床がんにおけるSAVプラットフォームの有効性の明確な測定値を出すために、より大きなマウス群を使用した。
[実施例2]仮想実施例-前臨床モデルにおける卵巣がんの治療
実施例1に記載した高難度のモデルシステムで有望な結果が得られたことから、SAVがんワクチンの更なる改良・検討が見込まれる。SAVがんプラットフォームはいくつかの方法で改良することができる。第1に、他の抗がん試験で開発されたMAVの変形を使用し、免疫系の刺激を改善する。第2に、SAVプラットフォームで送達されるがん標的ペプチドに対する免疫応答の強さと特異性を測定する。次に、これらの結果を他のペプチドベースのアプローチの従来の報告と比較し、成績が劣るペプチドを同定し、さらに最適化する指針とする。免疫刺激のこの評価は、ホスホペプチドと呼ばれる第2の分類の腫瘍由来ペプチドを含む。上記試験には含まれないが、これらのペプチドも同様に免疫系により認識することができ、腫瘍内の標的数を増大することができる。ID8モデルは初期用量範囲のがん細胞を使用することができる。腫瘍細胞の用量を減らすと、腫瘍の成長が遅くなる。ID8モデルは高難度であったことを考慮し、がん性細胞の量を減らして注入したマウスを評価する。従来の実験では、細胞数を減らすと、腫瘍の成長が遅くなり、全生存期間が延びることが分かっている。このアプローチの利点は、ワクチンが腫瘍と闘う時間が延び、闘いの総負荷が低減するという点にある。最後に、生存率について堅牢な統計を提供するように十分な検定力を確保した改良型SAVがんワクチンの大規模試験を実施し、SAVプラットフォームの性能に関する明確なデータを生成するようにアッセイを行う。
改良を加えた後、治療に応じた免疫機能と腫瘍生物学特徴の変化の堅牢な記述と、十分な統計を提供するために十分な検定力を確保した生存群を含む大規模試験を行う。CyTOFを使用した免疫系の詳細な記述を全試験に含み、従来のフローサイトメトリーでは得られない広範で詳細な評価を提供する。RNAseqを使用して後から取得できるように腫瘍を保管し、腫瘍内のがん細胞と免疫細胞の両方の挙動に関する情報を提供する。保管した腫瘍を利用し、腫瘍における薬物と免疫細胞の分布をマッピングするためにレイヤードイメージング解析を行うこともできる。
[実施例3]仮想実施例-HPV関連がんの治療
免疫療法とワクチン接種に感受性の高いマウスモデルシステムについても検討する。3種類のモデルシステムを評価する。第1のシステムは、多数の十分に検証されたHPVウイルス抗原を提供すると共に婦人科がんの第2位であるヒトパピローマウイルス(HPV)誘発性子宮頸がんのモデルである。HPV関連頭頸部がん及び肛門がんの予防及び/又は治療用としてのSAVの効果も評価する。
HPV16を使用してTC-1モデルを作製する。E6及び/又はE7エピトープを標的とするようにワクチンを設計する。C57マウスとBalb/cマウスは異なるMHC対立遺伝子をもつので、C57マウスとBalb/cマウスのペプチドは異なる(表4参照)。C57BL/6雌性マウスを使用する。文献中のコンセンサス配列からHPVE6及びE7タンパク質に由来するエピトープを選択する(表5参照)。生産のために21st Century社による最適化は不要である。
Figure 2022541507000005
本試験で使用するペプチドは以下の通りである。
E6 QLLRREVYDFAFRDLC(配列番号3)
E7 GQAEPDRAHYNIVTFCCKCD(配列番号4)
Figure 2022541507000006
このリストは文献の引用であり、網羅的な検索には相当しないと思われる。これらは、公共入手可能なMHCエピトープ選択ツールを使用して得られる予測に一致する。これらは、HPVにより駆動される腫瘍モデルの多数の試験で使用されているコンセンサス配列を表す。
使用した配列は、HPV-16により駆動されるヒト腫瘍に適用可能な配列とオーバーラップする。これらの配列は、HPV31型、33型、45型、58型及び73型と約70%の相同性を有する。ヒト試験には別のペプチドセットを使用することができる。例えば、ヒトHLA-DR11対立遺伝子は、HPV16E6アミノ酸(AA)52~62のペプチドと結合するが、HPV16E6AA43~57を使用した。
文献援用
本願中に言及する全刊行物、特許及び特許出願は、個々の刊行物、特許又は特許出願を本願に援用すると個別に明記していると同程度にその開示内容全体を本願に援用する。矛盾する場合には、本願中の定義を含めて本願を優先する。
The Institute for Genomic Research(TIGR)によりワールドワイドウェブ上でtigr.orgにて管理されているもの及び/又はNational Center for Biotechnology Information(NCBI)によりワールドワイドウェブ上でncbi.nlm.nih.govにて管理されているもの等の公共データベース内のエントリーに相関するアクセッション番号を引用する全ポリヌクレオチド配列及びポリペプチド配列も、その開示内容全体を本願に援用する。
等価物
当業者は、常套的に利用されている範囲内の実験を使用して本願に記載する発明の特定の実施形態の多数の等価物を認識するであろうし、あるいは確認することができるであろう。このような等価物も以下の特許請求の範囲に含むものとする。

Claims (187)

  1. ビオチン結合タンパク質と融合させた熱ショックタンパク質を含む医薬組成物であって、前記ビオチン結合タンパク質が、ビオチン化ペプチドと非共有結合的に結合しており、前記ペプチドが、
    (1)MHCクラスI分子と結合し;
    (2)自己天然配列及び/又は天然マイクロバイオーム配列との相同性が100%未満である、前記医薬組成物。
  2. 前記ビオチン結合タンパク質が、アビジン、ストレプトアビジン及びニュートラアビジンから構成される群から選択される、請求項1に記載の医薬組成物。
  3. 前記ビオチン結合タンパク質が、アビジン又はストレプトアビジンに少なくとも80%、85%、90%、95%又は99%一致するアミノ酸配列を有する、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
  4. 前記熱ショックタンパク質が、哺乳動物熱ショックタンパク質又は細菌熱ショックタンパク質である、請求項1~3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
  5. 前記熱ショックタンパク質が、hsp70ファミリーのメンバーである、請求項1~4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
  6. 前記熱ショックタンパク質が、MTB-HSP70であるか又はMTB-HSP70に由来し、任意選択的に、前記熱ショックタンパク質が、配列番号1又は配列番号2に少なくとも80%、85%、90%、95%又は99%一致するアミノ酸配列を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
  7. 前記ペプチドが、5~50アミノ酸長であり、任意選択的に、前記ペプチドが、8~12アミノ酸長である、請求項1~6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
  8. 前記ペプチドが、表1(33頁)から選択される1種以上のペプチドである、請求項1~7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
  9. 薬学的に許容される基剤をさらに含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
  10. 前記医薬組成物が、卵巣がんに罹患している対象の生存率を上昇させる、請求項1~9のいずれか一項に記載の医薬組成物。
  11. 前記卵巣がんが、漿液性又は上皮性乳頭状卵巣がんである、請求項10に記載の医薬組成物。
  12. 前記医薬組成物が、免疫応答を増強する、請求項1~11のいずれか一項に記載の医薬組成物。
  13. 前記医薬組成物が、免疫細胞の増殖を亢進する、請求項1~12のいずれか一項に記載の医薬組成物。
  14. 請求項1~13のいずれか一項に記載の医薬組成物の製造方法であって、熱ショックタンパク質とビオチン化ペプチドの非共有結合的複合体を形成するために十分となるように、ビオチン結合タンパク質と融合させた前記熱ショックタンパク質を前記ビオチン化ペプチドと接触させる工程を含み、前記ペプチドが、
    (1)MHCクラスI分子と結合し;
    (2)自己天然配列及び/又は天然マイクロバイオーム配列との相同性が100%未満である、前記方法。
  15. 対象に免疫応答を誘導する方法であって、有効量の請求項1~13のいずれか一項に記載の医薬組成物を前記対象に投与することを含む、前記方法。
  16. 対象における卵巣がんの予防及び/又は治療方法であって、ビオチン結合タンパク質と融合させた熱ショックタンパク質を含む有効量の医薬組成物を前記対象に投与することを含み、前記ビオチン結合タンパク質が、ビオチン化ペプチドと非共有結合的に結合しており、前記ペプチドが、
    (1)MHCクラスI分子と結合し;
    (2)自己天然配列及び/又は天然マイクロバイオーム配列との相同性が100%未満である、前記方法。
  17. 前記ビオチン結合タンパク質が、アビジン、ストレプトアビジン及びニュートラアビジンから構成される群から選択される、請求項16に記載の方法。
  18. 前記ビオチン結合タンパク質が、アビジン又はストレプトアビジンに少なくとも80%、85%、90%、95%又は99%一致するアミノ酸配列を有する、請求項16又は17に記載の方法。
  19. 前記熱ショックタンパク質が、哺乳動物熱ショックタンパク質又は細菌熱ショックタンパク質である、請求項16~18のいずれか一項に記載の方法。
  20. 前記熱ショックタンパク質が、hsp70ファミリーのメンバーである、請求項16~19のいずれか一項に記載の方法。
  21. 前記熱ショックタンパク質が、MTB-HSP70であるか又はMTB-HSP70に由来し、任意選択的に、前記熱ショックタンパク質が、配列番号1又は配列番号2に少なくとも80%、85%、90%、95%又は99%一致するアミノ酸配列を有する、請求項16~20のいずれか一項に記載の方法。
  22. 前記ペプチドが、5~50アミノ酸長であり、任意選択的に、前記ペプチドが、8~12アミノ酸長である、請求項16~21のいずれか一項に記載の方法。
  23. 前記ペプチドが、表1(33頁)から選択される1種以上のペプチドである、請求項16~22のいずれか一項に記載の方法。
  24. 前記医薬組成物が、薬学的に許容される基剤をさらに含む、請求項16~23のいずれか一項に記載の方法。
  25. 前記医薬組成物が、卵巣がんに罹患している対象の生存率を上昇させる、請求項16~24のいずれか一項に記載の方法。
  26. 前記医薬組成物が、前記対象における免疫応答を増強する、請求項16~25のいずれか一項に記載の方法。
  27. 前記医薬組成物が、免疫細胞の増殖を亢進する、請求項16~26のいずれか一項に記載の方法。
  28. 前記方法が、卵巣がんの治療方法である、請求項16~27のいずれか一項に記載の方法。
  29. 前記卵巣がんが、漿液性又は上皮性乳頭状卵巣がんである、請求項16~28のいずれか一項に記載の方法。
  30. 前記医薬組成物を非共有結合的複合体として前記対象に投与する、請求項16~29のいずれか一項に記載の方法。
  31. (1)ビオチン結合タンパク質と融合させた熱ショックタンパク質と、ここで、前記ビオチン結合タンパク質は、ビオチン化腫瘍細胞又はビオチン化腫瘍抗原と非共有結合的に結合されている;
    (2)免疫療法と
    を含む医薬組成物。
  32. 前記ビオチン結合タンパク質が、アビジン、ストレプトアビジン及びニュートラアビジンから構成される群から選択される、請求項31に記載の医薬組成物。
  33. 前記ビオチン結合タンパク質が、アビジン又はストレプトアビジンに少なくとも80%、85%、90%、95%又は99%一致するアミノ酸配列を有する、請求項30又は31に記載の医薬組成物。
  34. 前記熱ショックタンパク質が、哺乳動物熱ショックタンパク質又は細菌熱ショックタンパク質である、請求項31~33のいずれか一項に記載の医薬組成物。
  35. 前記熱ショックタンパク質が、hsp70ファミリーのメンバーである、請求項31~34のいずれか一項に記載の医薬組成物。
  36. 前記熱ショックタンパク質が、MTB-HSP70であるか又はMTB-HSP70に由来する、請求項31~35のいずれか一項に記載の医薬組成物。
  37. 前記熱ショックタンパク質が、配列番号1又は配列番号2に少なくとも80%、85%、90%、95%又は99%一致するアミノ酸配列を有する、請求項31~36のいずれか一項に記載の医薬組成物。
  38. 前記ビオチン結合タンパク質が、ビオチン化腫瘍細胞と非共有結合的に結合しており、前記ビオチン化腫瘍細胞が、その表面に抗原を発現する、請求項31~37のいずれか一項に記載の医薬組成物。
  39. 前記腫瘍細胞が複製不能である、請求項31~38のいずれか一項に記載の医薬組成物。
  40. 前記腫瘍細胞が、放射線照射により複製不能にされている、請求項31~39のいずれか一項に記載の医薬組成物。
  41. 前記ビオチン化腫瘍細胞が、ビオチン化肉腫細胞又はビオチン化癌腫細胞である、請求項31~40のいずれか一項に記載の医薬組成物。
  42. 前記ビオチン化腫瘍細胞が、ビオチン化線維肉腫細胞、ビオチン化粘液肉腫細胞、ビオチン化脂肪肉腫細胞、ビオチン化軟骨肉腫細胞、ビオチン化骨原性肉腫細胞、ビオチン化脊索腫細胞、ビオチン化血管肉腫細胞、ビオチン化血管内皮肉腫細胞、ビオチン化リンパ管肉腫細胞、ビオチン化リンパ管内皮肉腫細胞、ビオチン化滑液膜腫細胞、ビオチン化中皮腫細胞、ビオチン化ユーイング腫瘍細胞、ビオチン化平滑筋肉腫細胞、ビオチン化横紋筋肉腫細胞、ビオチン化結腸癌細胞、ビオチン化大腸がん細胞、ビオチン化膵臓がん細胞、ビオチン化乳がん細胞、ビオチン化卵巣がん細胞、ビオチン化前立腺がん細胞、ビオチン化扁平上皮癌細胞、ビオチン化基底細胞癌細胞、ビオチン化腺癌細胞、ビオチン化汗腺癌細胞、ビオチン化脂腺癌細胞、ビオチン化乳頭癌細胞、ビオチン化乳頭腺癌細胞、ビオチン化嚢胞腺癌細胞、ビオチン化髄様癌細胞、ビオチン化気管支原性癌細胞、ビオチン化腎細胞癌細胞、ビオチン化ヘパトーマ細胞、ビオチン化胆道癌細胞、ビオチン化絨毛癌細胞、ビオチン化セミノーマ細胞、ビオチン化胎児性癌細胞、ビオチン化ウィルムス腫瘍細胞、ビオチン化子宮頸がん細胞、ビオチン化精巣腫瘍細胞、ビオチン化肺癌細胞、ビオチン化小細胞肺癌細胞、ビオチン化膀胱癌細胞、ビオチン化上皮性癌細胞、ビオチン化神経膠腫細胞、ビオチン化星細胞腫細胞、ビオチン化髄芽腫細胞、ビオチン化頭蓋咽頭腫細胞、ビオチン化上衣腫細胞、ビオチン化松果体腫細胞、ビオチン化血管芽腫細胞、ビオチン化聴神経腫瘍細胞、ビオチン化乏突起膠腫細胞、ビオチン化髄膜腫細胞、ビオチン化メラノーマ細胞、ビオチン化神経芽腫細胞、ビオチン化網膜芽細胞腫細胞、ビオチン化白血病細胞、ビオチン化真性赤血球増加症細胞、ビオチン化リンパ腫細胞、ビオチン化多発性骨髄腫細胞、ビオチン化ワルデンシュトレームマクログロブリン血症細胞、ビオチン化頭頸部がん細胞、ビオチン化肛門がん細胞又はビオチン化重鎖病細胞である、請求項31~41のいずれか一項に記載の医薬組成物。
  43. 前記ビオチン化腫瘍細胞が、ビオチン化卵巣がん細胞であり、任意選択的に、前記ビオチン化卵巣がん細胞が、ビオチン化漿液性又は上皮性乳頭状卵巣がん細胞である、請求項31~42のいずれか一項に記載の医薬組成物。
  44. 前記ビオチン化腫瘍細胞が、ビオチン化HPV関連がん細胞であり、任意選択的に、前記ビオチン化HPV関連がん細胞が、ビオチン化HPV誘発性頭頸部がん細胞、ビオチン化HPV誘発性子宮頸がん細胞、又はビオチン化HPV誘発性肛門がん細胞である、請求項31~42のいずれか一項に記載の医薬組成物。
  45. 前記ビオチン結合タンパク質が、ビオチン化腫瘍抗原と非共有結合的に結合している、請求項31~37のいずれか一項に記載の医薬組成物。
  46. 前記腫瘍抗原が、腫瘍細胞により過剰発現されるタンパク質又はその免疫原性断片である、請求項31~37及び請求項45のいずれか一項に記載の医薬組成物。
  47. 前記腫瘍抗原が、腫瘍細胞で特異的に突然変異しているタンパク質又はその免疫原性断片である、請求項31~37及び請求項45~46のいずれか一項に記載の医薬組成物。
  48. 前記腫瘍抗原が、全長又は部分的な不活化腫瘍産生ウイルスを含み、あるいは、腫瘍産生ウイルスに由来するタンパク質又はその免疫原性断片を含み、任意選択的に、前記腫瘍産生ウイルスが、ヒトパピローマウイルス(HPV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、エプスタイン・バールウイルス(EBV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)又はヘルペスウイルスである、請求項31~37及び請求項45~47のいずれか一項に記載の医薬組成物。
  49. 前記腫瘍抗原が、腫瘍由来ホスホペプチドである、請求項31~37及び請求項45~48のいずれか一項に記載の医薬組成物。
  50. 前記腫瘍抗原が、免疫応答を誘発することが可能である、請求項31~37及び請求項45~49のいずれか一項に記載の医薬組成物。
  51. 前記腫瘍抗原が、肉腫細胞又は癌腫細胞に由来する、請求項31~37及び請求項45~50のいずれか一項に記載の医薬組成物。
  52. 前記腫瘍抗原が、線維肉腫細胞、粘液肉腫細胞、脂肪肉腫細胞、軟骨肉腫細胞、骨原性肉腫細胞、脊索腫細胞、血管肉腫細胞、血管内皮肉腫細胞、リンパ管肉腫細胞、リンパ管内皮肉腫細胞、滑液膜腫細胞、中皮腫細胞、ユーイング腫瘍細胞、平滑筋肉腫細胞、横紋筋肉腫細胞、結腸癌細胞、大腸がん細胞、膵臓がん細胞、乳がん細胞、卵巣がん細胞、前立腺がん細胞、扁平上皮癌細胞、基底細胞癌細胞、腺癌細胞、汗腺癌細胞、脂腺癌細胞、乳頭癌細胞、乳頭腺癌細胞、嚢胞腺癌細胞、髄様癌細胞、気管支原性癌細胞、腎細胞癌細胞、ヘパトーマ細胞、胆道癌細胞、絨毛癌細胞、セミノーマ細胞、胎児性癌細胞、ウィルムス腫瘍細胞、子宮頸がん細胞、精巣腫瘍細胞、肺癌細胞、小細胞肺癌細胞、膀胱癌細胞、上皮性癌細胞、神経膠腫細胞、星細胞腫細胞、髄芽腫細胞、頭蓋咽頭腫細胞、上衣腫細胞、松果体腫細胞、血管芽腫細胞、聴神経腫瘍細胞、乏突起膠腫細胞、髄膜腫細胞、メラノーマ細胞、神経芽腫細胞、網膜芽細胞腫細胞、白血病細胞、真性赤血球増加症細胞、リンパ腫細胞、多発性骨髄腫細胞、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症細胞、頭頸部がん細胞、肛門がん細胞又は重鎖病細胞に由来する、請求項31~37及び請求項45~51のいずれか一項に記載の医薬組成物。
  53. 前記腫瘍抗原が、卵巣がん細胞に由来する、請求項31~37及び請求項45~52のいずれか一項に記載の医薬組成物。
  54. 前記腫瘍抗原が、漿液性又は上皮性乳頭状卵巣がん細胞に由来する、請求項31~37及び請求項45~53のいずれか一項に記載の医薬組成物。
  55. 前記腫瘍抗原が、表1から選択される1種以上のペプチドである、請求項31~37及び請求項45~54のいずれか一項に記載の医薬組成物。
  56. 前記腫瘍抗原が、HPV関連がん細胞に由来し、任意選択的に、前記HPV関連がん細胞が、HPV誘発性頭頸部がん細胞、HPV誘発性子宮頸がん細胞又はHPV誘発性肛門がん細胞である、請求項31~37及び請求項45~52のいずれか一項に記載の医薬組成物。
  57. 前記免疫療法が、免疫チェックポイントを阻害する、請求項31~56のいずれか一項に記載の医薬組成物。
  58. 前記免疫チェックポイントが、CTLA-4、PD-1、VISTA、B7-H2、B7-H3、PD-L1、B7-H4、B7-H6、ICOS、HVEM、PD-L2、CD160、gp49B、PIR-B、KIRファミリー受容体、TIM-1、TIM-3、TIM-4、LAG-3、GITR、4-IBB、OX-40、BTLA、SIRPα(CD47)、CD48、2B4(CD244)、B7.1、B7.2、ILT-2、ILT-4、TIGIT、HHLA2、ブチロフィリン及びA2aRから構成される群から選択され、任意選択的に、前記免疫チェックポイントが、PD1又はPD-L1である、請求項31~57のいずれか一項に記載の医薬組成物。
  59. 前記免疫療法が、抗PD-1抗体である、請求項31~58のいずれか一項に記載の医薬組成物。
  60. 前記免疫療法が、CXCR4/CXCR7アンタゴニスト、Jak/stat阻害薬、及び皮膚関連免疫細胞の近赤外レーザー免疫調節から構成される群から選択される免疫調節剤である、請求項31~56のいずれか一項に記載の医薬組成物。
  61. 薬学的に許容される基剤をさらに含む、請求項31~60のいずれか一項に記載の医薬組成物。
  62. 前記医薬組成物が、がんに罹患している対象の生存率を上昇させる、請求項31~61のいずれか一項に記載の医薬組成物。
  63. 前記医薬組成物が、免疫応答を増強する、請求項31~61のいずれか一項に記載の医薬組成物。
  64. 前記医薬組成物が、免疫細胞の増殖を亢進する、請求項31~62のいずれか一項に記載の医薬組成物。
  65. 対象に免疫応答を誘導する方法であって、有効量の請求項31~64のいずれか一項に記載の医薬組成物を前記対象に投与することを含む、前記方法。
  66. 対象におけるがんの予防及び/又は治療方法であって、有効量の請求項31~64のいずれか一項に記載の医薬組成物を前記対象に投与することを含む、前記方法。
  67. 請求項31~64のいずれか一項に記載の医薬組成物における前記ビオチン化腫瘍細胞又は前記ビオチン化腫瘍抗原が、予防及び/又は治療しようとするがんと同タイプのがんに由来する、請求項66に記載の方法。
  68. 前記方法が、がんの治療方法である、請求項66又は67に記載の方法。
  69. 前記がんが、卵巣がんであり、任意選択的に、前記卵巣がんが、漿液性又は上皮性乳頭状卵巣がんである、請求項66~68のいずれか一項に記載の方法。
  70. 前記がんが、腫瘍産生ウイルスの感染により誘発され、任意選択的に、前記腫瘍産生ウイルスが、ヒトパピローマウイルス(HPV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、エプスタイン・バールウイルス(EBV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)又はヘルペスウイルスである、請求項66~69のいずれか一項に記載の方法。
  71. 前記がんが、HPV関連がんである、請求項66~70のいずれか一項に記載の方法。
  72. 前記HPV関連がんが、HPV誘発性子宮頸がん、HPV誘発性頭頸部がん又はHPV誘発性肛門がんである、請求項71に記載の方法。
  73. 前記方法が、放射線、放射線増感剤、化学療法及び第2の免疫療法から構成される群から選択されるがん療法をさらに含み、任意選択的に、前記第2の免疫療法が、免疫チェックポイント阻害剤であるか、又はCXCR4/CXCR7アンタゴニスト、Jak/stat阻害薬若しくは皮膚関連免疫細胞の近赤外レーザー免疫調節から選択される免疫調節剤である、請求項66~72のいずれか一項に記載の方法。
  74. 対象におけるがんの予防及び/又は治療方法であって、免疫療法と、ビオチン結合タンパク質と融合させた熱ショックタンパク質を含む有効量の医薬組成物を併用して前記対象に投与することを含み、前記ビオチン結合タンパク質は、ビオチン化腫瘍細胞又はビオチン化腫瘍抗原と非共有結合的に結合されている、前記方法。
  75. 前記免疫療法と前記医薬組成物を同時又は逐次投与する、請求項74に記載の方法。
  76. 前記医薬組成物を前記免疫療法の前に投与する、請求項74又は75に記載の方法。
  77. 前記ビオチン結合タンパク質が、アビジン、ストレプトアビジン及びニュートラアビジンから構成される群から選択される、請求項74~76のいずれか一項に記載の方法。
  78. 前記ビオチン結合タンパク質が、アビジン又はストレプトアビジンに少なくとも80%、85%、90%、95%又は99%一致するアミノ酸配列を有する、請求項74~77のいずれか一項に記載の方法。
  79. 前記熱ショックタンパク質が、哺乳動物熱ショックタンパク質又は細菌熱ショックタンパク質である、請求項74~78のいずれか一項に記載の方法。
  80. 前記熱ショックタンパク質が、hsp70ファミリーのメンバーである、請求項74~79のいずれか一項に記載の方法。
  81. 前記熱ショックタンパク質が、MTB-HSP70であるか又はMTB-HSP70に由来する、請求項74~80のいずれか一項に記載の方法。
  82. 前記熱ショックタンパク質が、配列番号1又は配列番号2に少なくとも80%、85%、90%、95%又は99%一致するアミノ酸配列を有する、請求項74~81のいずれか一項に記載の方法。
  83. 前記ビオチン結合タンパク質が、ビオチン化腫瘍細胞と非共有結合的に結合しており、前記ビオチン化腫瘍細胞がその表面に抗原を発現する、請求項74~82のいずれか一項に記載の方法。
  84. 前記腫瘍細胞が複製不能である、請求項74~83のいずれか一項に記載の方法。
  85. 前記腫瘍細胞が、放射線照射により複製不能にされている、請求項74~84のいずれか一項に記載の方法。
  86. 前記ビオチン化腫瘍細胞が、ビオチン化肉腫細胞又はビオチン化癌腫細胞である、請求項74~85のいずれか一項に記載の方法。
  87. 前記ビオチン化腫瘍細胞が、ビオチン化線維肉腫細胞、ビオチン化粘液肉腫細胞、ビオチン化脂肪肉腫細胞、ビオチン化軟骨肉腫細胞、ビオチン化骨原性肉腫細胞、ビオチン化脊索腫細胞、ビオチン化血管肉腫細胞、ビオチン化血管内皮肉腫細胞、ビオチン化リンパ管肉腫細胞、ビオチン化リンパ管内皮肉腫細胞、ビオチン化滑液膜腫細胞、ビオチン化中皮腫細胞、ビオチン化ユーイング腫瘍細胞、ビオチン化平滑筋肉腫細胞、ビオチン化横紋筋肉腫細胞、ビオチン化結腸癌細胞、ビオチン化大腸がん細胞、ビオチン化膵臓がん細胞、ビオチン化乳がん細胞、ビオチン化卵巣がん細胞、ビオチン化前立腺がん細胞、ビオチン化扁平上皮癌細胞、ビオチン化基底細胞癌細胞、ビオチン化腺癌細胞、ビオチン化汗腺癌細胞、ビオチン化脂腺癌細胞、ビオチン化乳頭癌細胞、ビオチン化乳頭腺癌細胞、ビオチン化嚢胞腺癌細胞、ビオチン化髄様癌細胞、ビオチン化気管支原性癌細胞、ビオチン化腎細胞癌細胞、ビオチン化ヘパトーマ細胞、ビオチン化胆道癌細胞、ビオチン化絨毛癌細胞、ビオチン化セミノーマ細胞、ビオチン化胎児性癌細胞、ビオチン化ウィルムス腫瘍細胞、ビオチン化子宮頸がん細胞、ビオチン化精巣腫瘍細胞、ビオチン化肺癌細胞、ビオチン化小細胞肺癌細胞、ビオチン化膀胱癌細胞、ビオチン化上皮性癌細胞、ビオチン化神経膠腫細胞、ビオチン化星細胞腫細胞、ビオチン化髄芽腫細胞、ビオチン化頭蓋咽頭腫細胞、ビオチン化上衣腫細胞、ビオチン化松果体腫細胞、ビオチン化血管芽腫細胞、ビオチン化聴神経腫瘍細胞、ビオチン化乏突起膠腫細胞、ビオチン化髄膜腫細胞、ビオチン化メラノーマ細胞、ビオチン化神経芽腫細胞、ビオチン化網膜芽細胞腫細胞、ビオチン化白血病細胞、ビオチン化真性赤血球増加症細胞、ビオチン化リンパ腫細胞、ビオチン化多発性骨髄腫細胞、ビオチン化ワルデンシュトレームマクログロブリン血症細胞、ビオチン化頭頸部がん細胞、ビオチン化肛門がん細胞又はビオチン化重鎖病細胞である、請求項74~86のいずれか一項に記載の方法。
  88. 前記ビオチン化腫瘍細胞が、ビオチン化卵巣がん細胞であり、任意選択的に、前記ビオチン化卵巣がん細胞が、ビオチン化漿液性又は上皮性乳頭状卵巣がんである、請求項74~87のいずれか一項に記載の方法。
  89. 前記ビオチン化腫瘍細胞が、ビオチン化HPV関連がん細胞であり、任意選択的に、前記HPV関連がん細胞が、HPV誘発性頭頸部がん細胞、HPV誘発性子宮頸がん細胞又はHPV誘発性肛門がん細胞である、請求項74~87のいずれか一項に記載の方法。
  90. 前記ビオチン結合タンパク質が、ビオチン化腫瘍抗原と非共有結合的に結合している、請求項74~82のいずれか一項に記載の方法。
  91. 前記腫瘍抗原が、腫瘍細胞により過剰発現されるタンパク質又はその免疫原性断片である、請求項74~82及び90のいずれか一項に記載の方法。
  92. 前記腫瘍抗原が、腫瘍細胞で特異的に突然変異しているタンパク質又はその免疫原性断片である、請求項74~82及び90~91のいずれか一項に記載の方法。
  93. 前記腫瘍抗原が、全長又は部分的な不活化腫瘍産生ウイルスであり、あるいは、腫瘍産生ウイルスに由来するタンパク質又はその免疫原性断片を含み、任意選択的に、前記腫瘍産生ウイルスが、HPV、HCV、EBV、HIV又はヘルペスウイルスである、請求項74~82及び90~92のいずれか一項に記載の方法。
  94. 前記腫瘍抗原が、腫瘍由来ホスホペプチドである、請求項74~82及び90~93のいずれか一項に記載の方法。
  95. 前記腫瘍抗原が、免疫応答を誘発することが可能である、請求項74~82及び90~94のいずれか一項に記載の方法。
  96. 前記腫瘍抗原が、肉腫細胞又は癌腫細胞に由来する、請求項74~82及び90~95のいずれか一項に記載の方法。
  97. 前記腫瘍抗原が、線維肉腫細胞、粘液肉腫細胞、脂肪肉腫細胞、軟骨肉腫細胞、骨原性肉腫細胞、脊索腫細胞、血管肉腫細胞、血管内皮肉腫細胞、リンパ管肉腫細胞、リンパ管内皮肉腫細胞、滑液膜腫細胞、中皮腫細胞、ユーイング腫瘍細胞、平滑筋肉腫細胞、横紋筋肉腫細胞、結腸癌細胞、大腸がん細胞、膵臓がん細胞、乳がん細胞、卵巣がん細胞、前立腺がん細胞、扁平上皮癌細胞、基底細胞癌細胞、腺癌細胞、汗腺癌細胞、脂腺癌細胞、乳頭癌細胞、乳頭腺癌細胞、嚢胞腺癌細胞、髄様癌細胞、気管支原性癌細胞、腎細胞癌細胞、ヘパトーマ細胞、胆道癌細胞、絨毛癌細胞、セミノーマ細胞、胎児性癌細胞、ウィルムス腫瘍細胞、子宮頸がん細胞、精巣腫瘍細胞、肺癌細胞、小細胞肺癌細胞、膀胱癌細胞、上皮性癌細胞、神経膠腫細胞、星細胞腫細胞、髄芽腫細胞、頭蓋咽頭腫細胞、上衣腫細胞、松果体腫細胞、血管芽腫細胞、聴神経腫瘍細胞、乏突起膠腫細胞、髄膜腫細胞、メラノーマ細胞、神経芽腫細胞、網膜芽細胞腫細胞、白血病細胞、真性赤血球増加症細胞、リンパ腫細胞、多発性骨髄腫細胞、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症細胞、頭頸部がん細胞、肛門がん細胞又は重鎖病細胞に由来する、請求項74~82及び90~96のいずれか一項に記載の方法。
  98. 前記腫瘍抗原が、卵巣がん細胞に由来する、請求項74~82及び90~97のいずれか一項に記載の方法。
  99. 前記腫瘍抗原が、漿液性又は上皮性乳頭状卵巣がん細胞に由来する、請求項74~82及び90~98のいずれか一項に記載の方法。
  100. 前記腫瘍抗原が、表1から選択される1種以上のペプチドである、請求項74~82及び90~99のいずれか一項に記載の方法。
  101. 前記腫瘍抗原が、HPV関連がん細胞に由来し、任意選択的に、前記HPV関連がん細胞が、HPV誘発性頭頸部がん細胞、HPV誘発性子宮頸がん細胞又はHPV誘発性肛門がん細胞である、請求項74~82及び90~97のいずれか一項に記載の方法。
  102. 前記免疫療法が、免疫チェックポイントを阻害する、請求項74~101のいずれか一項に記載の方法。
  103. 前記免疫チェックポイントが、CTLA-4、PD-1、VISTA、B7-H2、B7-H3、PD-L1、B7-H4、B7-H6、ICOS、HVEM、PD-L2、CD160、gp49B、PIR-B、KIRファミリー受容体、TIM-1、TIM-3、TIM-4、LAG-3、GITR、4-IBB、OX-40、BTLA、SIRPα(CD47)、CD48、2B4(CD244)、B7.1、B7.2、ILT-2、ILT-4、TIGIT、HHLA2、ブチロフィリン及びA2aRから構成される群から選択され、任意選択的に、前記免疫チェックポイントが、PD1又はPD-L1である、請求項74~102のいずれか一項に記載の方法。
  104. 前記免疫療法が、抗PD-1抗体である、請求項74~103のいずれか一項に記載の方法。
  105. 前記免疫療法が、CXCR4/CXCR7アンタゴニスト、Jak/stat阻害薬、及び皮膚関連免疫細胞の近赤外レーザー免疫調節から構成される群から選択される免疫調節剤である、請求項74~101のいずれか一項に記載の方法。
  106. 前記医薬組成物が、薬学的に許容される基剤をさらに含む、請求項74~105のいずれか一項に記載の方法。
  107. 前記方法が、がんに罹患している対象の生存率を上昇させる、請求項74~106のいずれか一項に記載の方法。
  108. 前記方法が、免疫応答を増強する、請求項74~107のいずれか一項に記載の方法。
  109. 前記方法が、免疫細胞増殖を亢進する、請求項74~108のいずれか一項に記載の方法。
  110. 前記医薬組成物における前記ビオチン化腫瘍細胞又は前記ビオチン化腫瘍抗原が、予防又は治療しようとするがんと同一種のがんに由来する、請求項74~109のいずれか一項に記載の方法。
  111. 前記方法が、がんの治療方法である、請求項74~110のいずれか一項に記載の方法。
  112. 前記がんが、卵巣がんであり、任意選択的に、前記卵巣がんが、漿液性又は上皮性乳頭状卵巣がんである、請求項74~111のいずれか一項に記載の方法。
  113. 前記がんが、腫瘍産生ウイルスの感染により誘発され、任意選択的に、前記腫瘍産生ウイルスが、HPV、HCV、EBV、HIV又はヘルペスウイルスである、請求項74~111のいずれか一項に記載の方法。
  114. 前記がんが、HPV関連がんである、請求項74~111のいずれか一項に記載の方法。
  115. 前記HPV関連がんが、HPV誘発性子宮頸がん、HPV誘発性頭頸部がん及びHPV誘発性肛門がんである、請求項114に記載の方法。
  116. 前記方法が、放射線、放射線増感剤及び化学療法から構成される群から選択されるがん療法をさらに含む、請求項74~115のいずれか一項に記載の方法。
  117. 対象におけるHPV関連がんの予防及び/又は治療方法であって、ビオチン結合タンパク質と融合させた熱ショックタンパク質を含む有効量の医薬組成物を前記対象に投与することを含み、前記ビオチン結合タンパク質が、ビオチン化HPVウイルス又はビオチン化HPVウイルス抗原と非共有結合的に結合している、前記方法。
  118. 前記ビオチン結合タンパク質が、アビジン、ストレプトアビジン及びニュートラアビジンから構成される群から選択される、請求項117に記載の方法。
  119. 前記ビオチン結合タンパク質が、アビジン又はストレプトアビジンに少なくとも80%、85%、90%、95%又は99%一致するアミノ酸配列を有する、請求項117又は118に記載の方法。
  120. 前記熱ショックタンパク質が、哺乳動物熱ショックタンパク質又は細菌熱ショックタンパク質である、請求項117~119のいずれか一項に記載の方法。
  121. 前記熱ショックタンパク質が、hsp70ファミリーのメンバーである、請求項117~120のいずれか一項に記載の方法。
  122. 前記熱ショックタンパク質が、MTB-HSP70であるか又はMTB-HSP70に由来する、請求項117~121のいずれか一項に記載の方法。
  123. 前記熱ショックタンパク質が、配列番号1又は配列番号2に少なくとも80%、85%、90%、95%又は99%一致するアミノ酸配列を有する、請求項117~122のいずれか一項に記載の方法。
  124. 前記医薬組成物が、ワクチンである、請求項117~123のいずれか一項に記載の方法。
  125. 前記医薬組成物が、薬学的に許容される基剤をさらに含む、請求項117~124のいずれか一項に記載の方法。
  126. 前記医薬組成物が、HPV関連がんに罹患している対象の生存率を上昇させる、請求項117~125のいずれか一項に記載の方法。
  127. 前記医薬組成物が、前記対象における免疫応答を増強する、請求項117~126のいずれか一項に記載の方法。
  128. 前記医薬組成物が、免疫細胞の増殖を亢進する、請求項117~127のいずれか一項に記載の方法。
  129. 前記方法が、HPV関連がんの治療方法である、請求項117~128のいずれか一項に記載の方法。
  130. 前記HPV関連がんが、頭頸部がん又は肛門がんである、請求項117~129のいずれか一項に記載の方法。
  131. 前記ビオチン結合タンパク質が、ビオチン化HPVウイルスと非共有結合的に結合しており、前記ビオチン化HPVウイルスが、抗原を発現する、請求項117~130のいずれか一項に記載の方法。
  132. 前記HPVウイルスが、全長又は部分的な不活化HPVウイルスである、請求項117~131のいずれか一項に記載の方法。
  133. 前記ビオチン結合タンパク質が、ビオチン化HPVウイルス抗原と非共有結合的に結合している、請求項117~130のいずれか一項に記載の方法。
  134. 前記ビオチン化HPVウイルス抗原が、ビオチン化E6タンパク質、ビオチン化E7タンパク質、又はそのビオチン化免疫原性断片である、請求項133に記載の方法。
  135. 前記ビオチン化HPVウイルス抗原が、表3から選択される、請求項133又は134に記載の方法。
  136. 前記医薬組成物を非共有結合的複合体として前記対象に投与する、請求項117~135のいずれか一項に記載の方法。
  137. (1)ビオチン結合タンパク質と融合させた熱ショックタンパク質と、ここで、前記ビオチン結合タンパク質は、ビオチン化HPVウイルス又はビオチン化HPVウイルス抗原と非共有結合的に結合されている;
    (2)免疫療法と
    を含む医薬組成物。
  138. 前記ビオチン結合タンパク質が、アビジン、ストレプトアビジン及びニュートラアビジンから構成される群から選択される、請求項137に記載の医薬組成物。
  139. 前記ビオチン結合タンパク質が、アビジン又はストレプトアビジンに少なくとも80%、85%、90%、95%又は99%一致するアミノ酸配列を有する、請求項137又は138に記載の医薬組成物。
  140. 前記熱ショックタンパク質が、哺乳動物熱ショックタンパク質又は細菌熱ショックタンパク質である、請求項137~139のいずれか一項に記載の医薬組成物。
  141. 前記熱ショックタンパク質が、hsp70ファミリーのメンバーである、請求項137~140のいずれか一項に記載の医薬組成物。
  142. 前記熱ショックタンパク質が、MTB-HSP70であるか又はMTB-HSP70に由来する、請求項137~141のいずれか一項に記載の医薬組成物。
  143. 前記熱ショックタンパク質が、配列番号1又は配列番号2に少なくとも80%、85%、90%、95%又は99%一致するアミノ酸配列を有する、請求項137~142のいずれか一項に記載の医薬組成物。
  144. 前記ビオチン結合タンパク質が、ビオチン化HPVウイルスと非共有結合的に結合しており、前記ビオチン化HPVウイルスが、抗原を発現する、請求項137~143のいずれか一項に記載の医薬組成物。
  145. 前記HPVウイルスが、全長又は部分的な不活化HPVウイルスである、請求項137~144のいずれか一項に記載の医薬組成物。
  146. 前記ビオチン結合タンパク質が、ビオチン化HPVウイルス抗原と非共有結合的に結合している、請求項137~143のいずれか一項に記載の医薬組成物。
  147. 前記ビオチン化HPVウイルス抗原が、ビオチン化E6タンパク質、ビオチン化E7タンパク質又はそのビオチン化免疫原性断片である、請求項146に記載の医薬組成物。
  148. 前記ビオチン化HPVウイルス抗原が、表3から選択される、請求項146又は147に記載の医薬組成物。
  149. 前記免疫療法が、免疫チェックポイントを阻害する、請求項137~148のいずれか一項に記載の医薬組成物。
  150. 前記免疫チェックポイントが、CTLA-4、PD-1、VISTA、B7-H2、B7-H3、PD-L1、B7-H4、B7-H6、ICOS、HVEM、PD-L2、CD160、gp49B、PIR-B、KIRファミリー受容体、TIM-1、TIM-3、TIM-4、LAG-3、GITR、4-IBB、OX-40、BTLA、SIRPα(CD47)、CD48、2B4(CD244)、B7.1、B7.2、ILT-2、ILT-4、TIGIT、HHLA2、ブチロフィリン及びA2aRから構成される群から選択され、任意選択的に、前記免疫チェックポイントが、PD1又はPD-L1である、請求項137~149のいずれか一項に記載の医薬組成物。
  151. 前記免疫療法が、抗PD-1抗体である、請求項137~150のいずれか一項に記載の医薬組成物。
  152. 前記免疫療法が、CXCR4/CXCR7アンタゴニスト、Jak/stat阻害薬、及び皮膚関連免疫細胞の近赤外レーザー免疫調節から構成される群から選択される免疫調節剤である、請求項137~148のいずれか一項に記載の医薬組成物。
  153. 薬学的に許容される基剤をさらに含む、請求項137~152のいずれか一項に記載の医薬組成物。
  154. 前記医薬組成物が、HPV関連がんに罹患している対象の生存率を上昇させる、請求項137~153のいずれか一項に記載の医薬組成物。
  155. 前記HPV関連がんが、頭頸部がん又は肛門がんである、請求項154に記載の医薬組成物。
  156. 前記医薬組成物が、免疫応答を増強する、請求項137~155のいずれか一項に記載の医薬組成物。
  157. 前記医薬組成物が、免疫細胞の増殖を亢進する、請求項137~156のいずれか一項に記載の医薬組成物。
  158. 対象に免疫応答を誘導する方法であって、有効量の請求項137~157のいずれか一項に記載の医薬組成物を前記対象に投与することを含む、前記方法。
  159. 対象におけるHPV関連がんの予防及び/又は治療方法であって、有効量の請求項137~157のいずれか一項に記載の医薬組成物を前記対象に投与することを含む、前記方法。
  160. 前記方法が、HPV関連がんの治療方法である、請求項159に記載の方法。
  161. 前記HPV関連がんが、頭頸部がん又は肛門がんである、請求項159又は160のいずれか一項に記載の方法。
  162. 前記方法が、放射線、放射線増感剤、化学療法及び第2の免疫療法から構成される群から選択されるがん療法をさらに含み、任意選択的に、前記第2の免疫療法が、免疫チェックポイント阻害剤であるか、又はCXCR4/CXCR7アンタゴニスト、Jak/stat阻害薬,若しくは皮膚関連免疫細胞の近赤外レーザー免疫調節から選択される免疫調節剤である、請求項159~161のいずれか一項に記載の方法。
  163. 対象におけるHPV関連がんの予防及び/又は治療方法であって、免疫療法と、ビオチン結合タンパク質と融合させた熱ショックタンパク質を含む有効量の医薬組成物を併用して前記対象に投与することを含み、前記ビオチン結合タンパク質は、ビオチン化HPVウイルス又はビオチン化HPVウイルス抗原と非共有結合的に結合されている、前記方法。
  164. 前記免疫療法と前記医薬組成物を同時又は逐次投与する、請求項163に記載の方法。
  165. 前記医薬組成物を前記免疫療法の前に投与する、請求項163又は164に記載の方法。
  166. 前記ビオチン結合タンパク質が、アビジン、ストレプトアビジン及びニュートラアビジンから構成される群から選択される、請求項163~165のいずれか一項に記載の方法。
  167. 前記ビオチン結合タンパク質が、アビジン又はストレプトアビジンに少なくとも80%、85%、90%、95%又は99%一致するアミノ酸配列を有する、請求項163~166のいずれか一項に記載の方法。
  168. 前記熱ショックタンパク質が、哺乳動物熱ショックタンパク質又は細菌熱ショックタンパク質である、請求項163~167のいずれか一項に記載の方法。
  169. 前記熱ショックタンパク質が、hsp70ファミリーのメンバーである、請求項163~168のいずれか一項に記載の方法。
  170. 前記熱ショックタンパク質が、MTB-HSP70であるか又はMTB-HSP70に由来する、請求項163~169のいずれか一項に記載の方法。
  171. 前記熱ショックタンパク質が、配列番号1又は配列番号2に少なくとも80%、85%、90%、95%又は99%一致するアミノ酸配列を有する、請求項163~170のいずれか一項に記載の方法。
  172. 前記ビオチン結合タンパク質が、ビオチン化HPVウイルスと非共有結合的に結合しており、前記ビオチン化HPVウイルスが、抗原を発現する、請求項163~171のいずれか一項に記載の方法。
  173. 前記HPVウイルスが、全長又は部分的な不活化HPVウイルスである、請求項163~172のいずれか一項に記載の方法。
  174. 前記ビオチン結合タンパク質が、ビオチン化HPVウイルス抗原と非共有結合的に結合している、請求項163~171のいずれか一項に記載の方法。
  175. 前記ビオチン化HPVウイルス抗原が、ビオチン化E6タンパク質、ビオチン化E7タンパク質又はそのビオチン化免疫原性断片である、請求項174に記載の方法。
  176. 前記ビオチン化HPVウイルス抗原が、表3から選択される、請求項174又は175に記載の方法。
  177. 前記免疫療法が、免疫チェックポイントを阻害する、請求項163~176のいずれか一項に記載の方法。
  178. 前記免疫チェックポイントが、CTLA-4、PD-1、VISTA、B7-H2、B7-H3、PD-L1、B7-H4、B7-H6、ICOS、HVEM、PD-L2、CD160、gp49B、PIR-B、KIRファミリー受容体、TIM-1、TIM-3、TIM-4、LAG-3、GITR、4-IBB、OX-40、BTLA、SIRPα(CD47)、CD48、2B4(CD244)、B7.1、B7.2、ILT-2、ILT-4、TIGIT、HHLA2、ブチロフィリン及びA2aRから構成される群から選択され、任意選択的に、前記免疫チェックポイントが、PD1又はPD-L1である、請求項163~177のいずれか一項に記載の方法。
  179. 前記免疫療法が、抗PD-1抗体である、請求項163~178のいずれか一項に記載の方法。
  180. 前記免疫療法が、CXCR4/CXCR7アンタゴニスト、Jak/stat阻害薬、及び皮膚関連免疫細胞の近赤外レーザー免疫調節から構成される群から選択される免疫調節剤である、請求項163~176のいずれか一項に記載の方法。
  181. 薬学的に許容される基剤をさらに含む、請求項163~180のいずれか一項に記載の方法。
  182. 前記医薬組成物が、対象の生存率を上昇させる、請求項163~181のいずれか一項に記載の方法。
  183. 前記医薬組成物が、免疫応答を増強する、請求項163~182のいずれか一項に記載の方法。
  184. 前記医薬組成物が、免疫細胞の増殖を亢進する、請求項163~183のいずれか一項に記載の方法。
  185. 前記方法が、HPV関連がんの治療方法である、請求項163~184のいずれか一項に記載の方法。
  186. 前記HPV関連がんが、頭頸部がん又は肛門がんである、請求項163~185のいずれか一項に記載の方法。
  187. 前記方法が、放射線、放射線増感剤及び化学療法から構成される群から選択されるがん療法をさらに含む、請求項163~186のいずれか一項に記載の方法。
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