図1は、開示される実装形態による、資産をトークン化して管理するためのコンピュータ・アーキテクチャ100を図示している。いくつかの実装形態では、アーキテクチャ100は、クライアント/サーバ・アーキテクチャ、ピアツーピア・アーキテクチャ、及び/又は他のアーキテクチャに従って、1つ又は複数のリモートのコンピューティング・プラットフォームと通信するように構成することができる1つ又は複数のコンピューティング・プラットフォームを含んでもよい。プラットフォームは、1つ又は複数の命令モジュールを含み得る機械可読命令によって構成されてもよい。命令モジュールは、非一時的なメモリに記憶されるコンピュータ・プログラム・モジュールを含んでもよい。
ETFなどの投資ファンドは、本明細書では、開示される実装形態を用いて管理することが可能な資産の実例として用いられる。開示される実装形態に従ってETFファンドを作成して開始するために、発行者は以下を含む複数ステップの処理に従う:(1)IAssetモジュール102(以下で詳細に説明する)の所定の仕様(本明細書では「IAssetToken」仕様と称される)を使用してファンド資産をトークン化する;(2)IAssetモジュール102(以下で詳細に説明する)の所定の仕様(本明細書では「IAssetFund」仕様と称される)を使用してファンド自身をトークン化する;(3)資産管理、列挙、及びネスト化を可能にする新規なトークン・データ構造を使用して、AddAssetRequestファンクション(以下で詳細に説明する)を使用してトークン化された資産をファンドに付加する;(4)所望であれば、IAssetモジュール102(以下で詳細に説明する)のIAssetManagementFungibleインターフェース(以下で詳細に説明する)を使用して非代替性トークンを代替性トークンに付加して、部分所有権及び簡略化された取引をサポートする。開示される実装形態のトークンは、本明細書では時に「IAssetトークン」と称されることに留意されたい。これらの仕様、インターフェース処理ステップ、及びデータ構造のすべては、非中央集権化的なシステムにおけるファンド管理を容易にし、本明細書で詳細に説明される。様々なファンクション及びインターフェースを実装するソース・コードの実例が、本特許出願の明細書の一部であるAppendixに含まれている。
資産レジストリ・モジュール104は、資産を表現するトークンを発行して追跡するスマート・コントラクト、AssetRegistryを含む。これらのトークンは、資産同士の関係を管理して、バリュエーション・ファンクションなどの基本的な資産ファンクションを公開するためのインターフェースを実装する。資産は、AssetClassRegistryモジュール106において追跡することが可能なクラスに割り振られてもよい。本明細書で使用される場合、用語「クラス」は、オブジェクト指向プログラミングの分野では周知であり、オブジェクト(特定のデータ構造)を作成するための「ブループリント」を称することができ、状態の初期値(メンバ変数又は属性)及び挙動の実装(メンバ関数又はメソッド)を与える。
資産クラス割り振りにより、トークンはそのクラスに特有の性質及びファンクションを公開することができる。ContractRegistryモジュール108は、開発者が新しいインターフェース及び実装形態を公表して、クラス内のすべての資産の挙動を高度化又は拡張、例えば、アップグレード)できるようにする。IContractWalletモジュール110は、資産、クラス、又はその資産を介してウォレットの機能性を提供する他の要素を表現する個々のトークンに付加することができるスマート・コントラクトベースの暗号ウォレットを実装して管理する。AttributesRegistryモジュール112、AttestationRegistryモジュール114、UpdatesRegistryモジュール116、及びPolicyEngineモジュール118は、以下で説明される方法で資産(及び他のサービス)によって使用される。
トークンが発行されると、AssetRegistryモジュール104のAssetRegistryスマート・コントラクトは、資産クラスをトークンに割り振り、IContractWalletインターフェースを実装する新しいスマート・コントラクトをデプロイし、それによりウォレットをトークンに関連付ける。結果として、それぞれ作成されたトークンは、その識別子によってトークンにリンクされる一意なウォレット・アドレスを有することになり(図2に示される通り)、割り振られた資産クラスの性質及びファンクションを実装することができる。AssetRegistryモジュール104は、IWalletContractインターフェースを動作させて、ウォレットに関するアクションについてのポリシーを施行する。典型的には、ポリシーは、トークンの所有者のみが、ウォレット・コントラクトを介してアクションを実行できるようにする。ウォレットは、トークン、及び任意選択でEther(ETH)などの暗号通貨の移転又は受け取りの機能性をサポートする。ウォレットは、ERC-20、ERC-721、ERC-1400及び他の標準的なインターフェース・トークンと互換性のあるトークンをサポートすることができる。
IContractWalletモジュール110によって実装されるスマート・コントラクトは、ウォレットを運用して、UpdatesRegistryモジュール116(すべての他のシステム・コンポーネント同様)を介してアップグレード可能性をサポートする。この構造により、変更された又はアップグレードされた挙動を実装する新しいウォレットのスマート・コントラクトの登録が可能となる。トークンの所有者、又は他の被指定者は、新しいウォレットのコントラクトをトークンに割り振るよう選択して、アップグレードされたファンクションを実装することができるか、又は場合によっては、そのような割り振りを拒否してもよい。ContractRegistryモジュール108は、AssetClass(AssetClassレジストリ・モジュール106から)又はAssetインスタンス(AssetRegistryモジュール104から)用にカスタマイズされたファンクションを提供するスマート・コントラクト・インターフェースを記憶する。それぞれのトークンは、属性、ファンクション、及びクラスの実装ロジックへのアクセスを提供するクラスに割り振ってもよい。Asset又はAssetClass所有者(又は被指定者)は、インターフェース・レジストリから実装形態を選ぶことができる。開発者は、所有者の資産についてのカスタム・ロジックを公開するために、所有者が選択できるように、カスタム実装形態を伴う新しいスマート・コントラクトをContractRegistryモジュール108にサブミットすることができる。
スマート・コントラクトは、個々の資産を表現する非代替性トークンの発行を可能にするAssetRegistryモジュール104を実装する分散台帳上にデプロイすることができる。本明細書では、AssetRegistryモジュール104を実装するスマート・コントラクトの物理的なデプロイメントを詳細に説明していないが、そのようなデプロイメントは当業者に十分に理解される従来的な技法を用いることができるためである。
トークン所有者モジュール120は、資産レジストリ104で資産(例えば、非代替性トークンによって表現される)に対して制御を行使するパーティのシステムに関連付けられる。この制御は、資産に対して制御権限を有する代替性又は非代替性トークンを介して割り当てられる権利を通じて直接的又は間接的にウォレットを介して行使されてもよい。
ポリシー・エージェント・モジュール122は、トークンの挙動を統制するポリシーを公表する権限を有するパーティのシステムに関連付けられる。トークン所有者は、公表されたポリシーを指定して、トークンに対して又はトークンを通じて実施される具体的なアクションを統制してもよい。ポリシー施行の詳細は、Compliance Aware Tokenの開示において、開示される。検証エージェント・モジュール124は、属性、つまりシステムにおけるオブジェクトの特性又は性質を作成するパーティのシステムに関連付けられる。検証エージェントは、オブジェクトに関する価値を属性付けるために証明する能力を有する。例えば、法律事務所は、規制ポリシー施行の目的で、ファンド資産が投資会社法(1940Act)ファンドである検証エージェントとして機能することができる。クラス・エージェント・モジュール126は、資産クラス・トークンに対する制御を行使するパーティのシステムに関連付けられる。この制御を使用して、クラス・エージェントは、クラスに関するすべての資産トークンに適用される属性及びインターフェースを選択することができる。認証エージェント・モジュール128は、コントラクト開発者によって公表されるスマート・コントラクト・コードが説明されるようなファンクションを実施すること、セキュアであること、及び欠陥がないことを認証するパーティのシステムに関連付けられる。コントラクト開発者モジュール130は、資産クラスに関するファンクションを実施するために資産トークンによって使用されるスマート・コントラクト・コードを開発するパーティのシステムに関連付けられる。これらのファンクションは、認証エージェントによって認証されると、クラス・エージェントによって追加され、アップグレードされ、又は除去されてもよい。システム開発者モジュール132は、資産レジストリ・モジュール2204又はコントラクト・ウォレット・モジュール110などのシステムのコア要素に更新を公表するように認可されたパーティのシステムに関連付けられる。
本明細書で開示されるモジュールは、単一の処理ユニット又は複数の処理ユニット内部に実装することが可能であり、モジュールのうちの1つ又は複数は他のモジュールから離れて実装してもよいことを諒解されたい。別のモジュールによって提供される機能性の説明は、説明を目的としたものであり、限定的であることを意図されていないが、モジュールのいずれも説明されるものより多い機能性、又は少ない機能性を提供してもよいからである。例えば、モジュールのうちの1つ又は複数は、取り除いてもよく、その機能性の一部又はすべては、モジュールのうちの他のものによって提供されてもよい。
図2は、開示される実装形態による、トークン・データ・レコード(トークン及び関連データ構造)200の概略表現である。資産レジストリ104は、例えば、Ethereum Request for Comment(ERC721)標準インターフェース(又は他の分散台帳で等価なもの)を実装して、非代替性トークンの発行を可能にすることができる。(例えば、https://github.com/ethereum/EIPs/blob/master/EIPS/eip-721.mdを参照)。追加的に、資産レジストリ104は、分散台帳などの非中央集権化された環境における資産管理用のファンクションを容易にする、本明細書で説明される新規なインターフェースを実装する。ファンクションには、資産バリュエーション・ファンクション202、所有権移転ファンクション204、及びデータ管理ファンクション206を含むことができる。以降で詳細に説明される、これらのインターフェース及び関連するデータ構造は、再帰的である可能性がある構造において、複合トークン、つまり他のトークンを含む又は他のトークンにリンクされるトークンの作成を可能にする。この新規な構造は、以降で非常に詳細に説明され、非中央集権化されたコンピュータ・アーキテクチャ上での、ファンドの実装形態、他の資産を含む複合資産を可能にする。
ERC-721のトークン仕様と一致して、資産レジストリ・モジュール104は、非代替性トークンの発行を容易にし、各トークンは一意な資産を表現している。発行されたトークンごとに、資産レジストリ・モジュール104は、資産トークンの一意な識別子、資産クラス・レジストリ・モジュール106からの資産クラス、資産名称及び説明、トークンのウォレット210のアドレス(以降で説明する)、並びに資産に望まれるような他のデータなど、データ208を記録する。資産レジストリ・モジュール104によって記憶されるトークン・データ・レコード200は、非代替性トークンを定義する。トークンには、米国特許出願公開第20190164151(A1)号において開示された方法を用いて追加的な属性及び価値が割り振られてもよい。デジタル・トークンは、IAssetインターフェース・モジュール102のIAssetインターフェースを実装することができ、以降で説明するやり方で非中央集権化されたコンピューティング・プラットフォーム上で資産管理を容易にするファンクション202、204、及び206など、ファンクションのセットを公開する。データ構造200を用いて、任意の価値の資産を「トークン化」することができる。つまり、資産の所有権を反映し、ファンド運用などのスケーラブルな運用をサポートするために必要とされるサポート用本質的な資産管理ファンクションに連結される、分散台帳上の一意なレコードとして発行することができる。以降で詳細に説明されるように、IAssetインターフェース・モジュール102は、資産が次のことをできるようにする具体的なファンクションをサポートする:一貫性のあるデータ及びバリュエーション情報を提示すること;ファンド及び他の資産管理構造に参加すること;資産特有ロジックを実装すること;及び/又はネイティブな資産管理機能で作成されたのではない価値証書を表現する他のトークンをカプセル化すること。
上述のように、また図2及び図3で示されるように、トークン200は暗号ウォレット210に関連付けられる。開示される実装形態にはインターフェース仕様及びデータ構造が含まれ、スマート・コントラクト及び/又は別個のトークンが、暗号ウォレットに関連付けられるようにする、つまり暗号ウォレットを所有できるようにする。この新規な構造は、トークンが他のトークンを所有すること、及び他のトークンをその所有権に追加又はそれから除去することを可能にして、他のトークン又はエンティティに対応するウォレット211と対話することにより、他のエンティティと取引を行うことを可能にする。他のトークンを含んでいる対応するウォレットを所有することにより、トークン・イン・トークン構造を表現しているトークンは、本明細書では「複合トークン」と称する。
資産レジストリ中の非代替性トークンには、資産レジストリ104によって、IAssetWalletFactoryインターフェースを用いてIAssetRegistry.IssueAssetファンクションを実装することにより、発行時にウォレット210が割り振られる(図2)(コード実例についてはAppendix参照)。このインターフェースは、コントラクト・レジストリ108に記憶されるIContractWalletインターフェースを実装するスマート・コントラクトを、一意なトークンIDと関連付けて発行する。このインターフェースを実装するコードの実例は、Appendixで見ることができる。
ウォレット・コントラクトのインターフェースは、IAssetWalletラッパー、つまり、IAssetトークンの所有者又はスマート・コントラクト・ロジックで実装されるような他のパーミッション構造体による使用のため、AssetRegistryスマート・コントラクトを介して利用可能な、付録で公表されるIAssetWalletインターフェース仕様に準拠するファンクションのセットを用いて実行することができる。署名者が、資産レジストリ104によって指定されるように、ファンクションを実行するよう認可されていない場合、例えばスマート・コントラクト・ロジックとして実装される場合、提案される動作(例えば、「トークンを送る」)は、許可されず、よって発生しない。IAssetWalletは、付加されるコードのGetWalletファンクションを介してそのウォレット・アドレスを公開する。このアドレスは、分散台帳上のあらゆるウォレットと同じ方法で、取引の発信元又は目的地として使用することができる。
この構造では、ウォレットをトークンにリンクすることにより、以下のような有用な効果がもたらされる:トークンに対応する資産に代わって、実施されるアクションの完全なトレーサビリティ;ある戦略に基づいて売買する資産管理スマート・コントラクトを通じてアクションを自動化する能力;あるエンティティと取引しているかのように、資産のウォレットとの取引を行う能力;資産ウォレットを介する運用を含め資産運用にロバストなポリシーを挿入する能力(米国特許出願公開第20190164151(A1)号で開示されるようなもの)。
図3に示されるように、トークンに対応するウォレットが他のトークンを所有することが可能な「トークン・イン・トークン」構造により、トークン化された複合資産の作成が可能となる。複合資産の1タイプは、ファンド、他の資産を含む金融資産である。IAssetManagementインターフェースをサポートするIAssetトークンとして発行されると、トークンは資産管理取引をサポートして、ファンド・マネージャによって手動で、又は分散台帳上のスマート・コントラクトベースのアルゴリズムを介して自動的に、ファンド管理戦略の実行を可能にする。このモデルを使用して、複合資産は、トークン化され、暗号通貨、他の資産トークン(単純、又は複合)、又はトークン化された資産の株などの資産を含むこと、追加すること、又は除去することが可能である。
さらには、トークン・イン・トークン構造は、IAssetトークン・インターフェースで資産管理をサポートしていないサード・パーティのトークンを「ラップ」するために使用して、個々の資産としてファンド構造内で管理できるようにすることができる。サード・パーティのトークンをラップすることは、IAssetトークンのウォレットへの単純な移転を通じて達成することができる。これにより、あらゆるトークン又はスマート・コントラクトを資産としてラップ及び処理できるようにして、自動化された資産管理及びファンド運用のための一貫した構造を公開する。これらの技術的な要素が整うと、複雑な自己処理ファンドを迅速に開始することが可能である。例えば、ETF構造では、個々の資産を表現する1つ又は複数の非代替性トークンを、IAssetRegistry.IssueAssetファンクションを使用して資産レジストリ・モジュール104を介して発行することができる(コード実例についてはAppendix参照)。それぞれのトークンは、IAssetインターフェースを実装し、これはIAssetTransferableインターフェースを介して実装された所有権移転ファンクションを用いて基本的なERC721仕様を拡張して、資産管理をサポートし、透明性を向上させ、マーケットプレイスでの資産の購入と販売をサポートする。
図4は、資産所有権の移転ファンクション(図2の204として示される)の処理フロー400を概略的に示している。上述のように、トークンは、ERC721標準インターフェースを実装することができ、このインターフェースは、従来的な所有権及びERC721仕様で定義される移転ファンクションを含む。トークンはまた、米国特許出願公開第20190164151(A1)号で開示されるコンプライアンス意識フレームワークを実装することもできる。本明細書で開示される実装形態は、このフレームワークを、体系立った資産の購入、販売、及びリンクを可能にするためのファンクションで拡張する。
図4の402に示されるように、トークンの売り注文は、パラメータ(uint tokenid.unit purchase Tokenid,float price,uint expires,address buyer,bytes data)external returns(uint orderId)を含むデータ構造に対して演算するcreateSellOrderファンクションを用いて作成することができる。cancelSellOrderファンクションは、order idに対して演算し、Booleanを返す。cancelSellOrderファンクションがFALSEを返すと仮定すると、トークンの買い手は売り注文を受け入れ、acceptSellOrderファンクションが実行される。404に示されるように、cancelSellOrderファンクションがTRUEを返す場合、つまり売り注文がキャンセルされた場合、注文処理は、販売で終了する。
406に示されるように、トークン購入では、createPurchaseOrderファンクションがパラメータを含む(uint tokenid,unit purcllaseTokenid,float price,unit expires,bytes data)データ構造に対して実行され、注文識別情報を(uint orderid)の形式の注文IDとして返す。cancelPurchaseOrderファンクションは、パラメータ(ordertd)に対して実行され、Booleanを返す。戻り値がFALSEである場合、購入は、パラメータ(orderid)に対するacceptPurchaseOrderファンクションの実行によって受け入れることができ、購入がクリアされる。代替的に、408に示されるように、購入はパラメータ(orderid)に対してrejectPurchaseOrderファンクションを実行することによって拒否される。代替的な手法として、売り注文は、purchaseFromファンクションをパラメータ(address_irom,address_to,uint256_tokenId,uint_orderId,bytes data)を含むデータ構造に対して実行することによって、ペイロード中にorderIDを含む資産レジストリ・ウォレットへの支払いを行うことによって実行されてもよい。
上述のように、トークン同士の取引は、個々のトークンに関連付けられるウォレットのおかげで達成される。トークンのウォレット・アドレスは、例えばAppendixにあるコードを実行することによって実装することが可能なIAssetWallet.GetWalletインターフェースを介して取得されてもよい。配分ロジックは、資産によって内部的に、又はインターフェースを使用して外部的に開始されてもよい。
金融市場における透明性という重要な態様は、投資家及び投資予定者が資産のメタデータ、文書、及びサポート・データ・フィードを見る能力である。この情報は、投資家に公正な市場価格に対する彼ら自身のセンスをみがくための手段を与え、同様に、市場における価格を評価する責任をタスクとされたアセット・マネージャなどの仲介のパフォーマンスを評価するメカニズムを提供する。従来的に、そのような情報は、静的なやり方で照合されなければならず、したがってデータの時間ベースのレポーティングは先行技術のシステムでは実用的ではない。開示される実装形態は、資産デュー・ディリジェンス用の包括的なデータ構造を含み、スケーラブルな透明性;RMBSポートフォリオに欠落しているファンクション及び先行技術の他の複雑な資産を提供する。
透明性は、資産の性質又は属性を、作成する、維持する、及び検査する能力を必要とする。資産のタイプは広範にわたるため、それに従って資産の属性はさらに幅広く変化する。広範囲な資産の全体に対するデータ分析をサポートするべく、あらゆる認可されたパーティによって証明された通りにあらゆる資産のあらゆる性質を管理するために、一貫性のあるフレームワークが必要とされる。実装形態は、資産の性質を管理する基本的なメカニズムとして、属性管理(ERC1616)仕様(https://eips.ethereum.org/EIPS/eip-1616)を含む。開示される実装形態はまた、この仕様をCompliance Aware Tokenフレームワーク(米国特許出願公開第20190164151(A1)参照)を介して、これらの属性に基づいてスケーラブルな信用証明及びポリシー施行を含むよう拡張することが可能である。
追加的に、資産デュー・ディリジェンスは、しばしば文書及びデータ管理を必要とする。分散台帳は、文書化及びデータ並びにこのデータにアクセスするためのアクセス可能なフレームワークをサポートするために不変な記録を提供することができるという点で、文書管理に具体的な利点を提供する。実装形態は、文書管理(ERC1643)仕様(https://github.com/ethereum/EIPs/issues/1643)を含む。開示される実装形態はまた、非代替性トークンを使用してサポート・データのスキーマ及び他の特性を説明する非代替性トークンを介して、サポート・データセットをトークン化するためのメカニズムを含む。この仕様は、配分制御及び機密データの監査を実現するための認可トークンの使用を含む、高度なデータ承認技法をサポートする。ポリシーベースのデータ・アクセス及び管理は、米国特許出願公開第20190164151(A1)号によって示される、非中央集権化されたアクセス制御によって示される技法を用いて達成することができる。
アセット・マネージャの1つの最も重要な信託責任は、管理する資産のバリュエーションを評価して公表することである。このことは、マネージャに利用可能な情報に基づいて、アセット・マネージャの価値の理解の記録を投資家に提供するが、この情報は、ほとんどの資産では、評価の時点で投資家によって入手可能な情報を上回っている。図5は、開示される実装形態の資産バリュエーション・ファンクションについて処理フロー500及び関連するデータ構造の実例を図示している。これらのファンクションは、資産バリュエーションの公表及びアクセスのための、一貫性のあるメカニズムを提供する。バリュエーション用の共通インターフェースは、分析ツールの統合を簡略化する。これはまた、異種資産のバリュエーションを容易にし、多様化したファンドの形成を促進する。上述のように、資産トークンはバリュエーション・インターフェースを公開して、投資家が資産価値の現在の評価を見ることを可能にする。ある範囲の既知の会計技法を使用して資産価値を評価することができる。使用される技法は、資産のvalueType属性フィールドで指定される。資産トークンは、価値評価をサポートするために、内部ロジックを有することができる。資産バリュエーション・ファンクションは、Appendixにあるコード実例を実行することによって、実装することができる。
図5に示されるように、リクエスト側(投資家など)は、トークン1に対してgetValuationリクエストを行うことができ、トークン1のバリュエーションはトークン1によって返される。リクエストには、適用されるバリュエーション・モデルが含まれる可能性がある。必要であれば、トークン1によってどのバリュエーション・モデルがサポートされるかを確かめるために、getSupportedValuationModelリクエストを行うことができる。資産バリュエーションを生成するためのロジックは、実装形態及び資産クラスによって変わってもよい。
一実装形態では、バリュエーションは証明として、つまり検証済パーティによって完全な帰属が割り振られた属性値として、資産所有者、マネージャ、又は他の認可されたパーティによって公表される可能性がある。他の実装形態では、バリュエーション・データは、資産 レジストリ・モジュール104(図1)のスマート・コントラクト・コードによって、又は資産クラス・レジストリ・モジュール106(図1)のクラスに割り振られた通りに生成される。このロジックは、価値を評価するために資産のリアルタイム属性、為替価格などの外部のデータのソースに到達するための「オラクル」、又は他のソースを使用することができる。例えば、ローンを表現する資産トークンでは、PARバリュエーションは、ローン・トークンの属性(図1の属性レジストリ・モジュール112で見つかる)、ローンの未払い元本である。ローンによって返済が処理されると、この属性に割り振られた価値は、ローン処理スマート・コントラクトによって変化し、属性は異なる値となる。関連する値をset及びgetするための、属性レジストリ・モジュール112の実装形態及びメカニズムに関する詳細は、米国特許出願公開第20190164151(A1)号に開示されている。
一実装形態では、バリュエーション・タイプ「PAR」へのリクエスト(GetValuation)は、AssetRegistryスマート・コントラクトの実装形態を介して、属性レジストリ・モジュール112(図1)の「PAR」Vaule属性を指すように構成される。この属性は、現在の元本、つまりローンの未払い残高を含み、これがリクエストに応答して返される。いくつかのバリュエーション結果は、バリュエーションを生成するためにデータの複雑なリアルタイム分析を必要とする場合がある。バリュエーションを取得するための別個のメカニズムを図示するために、ローンの純資産価値(NAV:Net Asset Value)計算が、割引キャッシュ・フロー及びローン受け取り側の支払い挙動に基づいて決定されてもよい。具体的には、バリュエーション・タイプ「NAV」に対するバリュエーション・リクエストは、コントラクト・レジストリ・モジュール108(図1)を介してAttributeClass「Loan」に割り振られたスマート・コントラクト・コードを利用して、現在の利率、ローンの利率、及び資産ウォレットで観察することができるキャッシュ・フローに基づく借主の支払い履歴に基づいてローンの純現在価値を計算してもよい。
別の実例として、「MARKET」値は、分散台帳の外部のソースからデータを取得するために一般的に使用される方法である、オラクルを活用してもよい。別個に開示されるように、属性レジストリ・モジュール112は、最新の価値、この場合では資産の現在の為替価格を取得するための命令を含む。明瞭さのためにいくつかの実例を与えたが、実装形態はそれらに限定されない。しかしながら、資産ごとに構成され得るこのデータを取得するための方法を割り振るための手段は、「自己レポーティング資産」、つまり自身のデータ構造内に自身のバリュエーションを計算して公表する手段を含む資産を提供するための新規なメカニズムを提供する。開示される方法は、監査又はレポーティング・システムの、バリュエーション・データのソースの具体的な実装形態への依存性を解消する。これは、多くの異なるバリュエーション・データのソースを含むファンドなど、複雑な資産のバリュエーションを生成するために必要とされる、複雑なシステム統合を解消する。開示される技法なしには、投資家はこのデータを取得するための手段を持たないことが多い。透明性が欠落することの結果として、2008年の世界的な金融危機で実証されたような破滅的な影響を及ぼす可能性がある。
リクエストのデータ構造が、502に示される。重要なことに、複合資産の場合では、トークン1は、子トークンを所有することができるか、及び又は上述のやり方で別のトークンの「ラッパー」として機能することができる。そのような場合、トークン1は、リクエスト側への応答に先立つバリュエーションと類似のやり方で、すべてのそのようなトークン、図5ではトークン2をクエリする必要がある。504で示されるように、トークンが発行されると、トークン発行者ファンクションを通じてバリュエーションをセットすることが可能である。
開示される実装形態はバリュエーション用に共通のインターフェースを公開しているが、上述のように、サポートされる範囲の資産タイプのバリュエーションを計算するために異なる技法を使用することが可能である。ある資産タイプのバリュエーションを計算するための一意なスマート・コントラクト・ロジックは、(https://hackernoon.com/how-to-make-smart-contracts-upgradable-2612e771d5a2)で開示されるような既知のproxy技法を介して参照することができる。例えば、多くの資産はPAR価格、つまりその額面をサポートしている。ほとんどの管理資産は、市場価格、流動性、割引キャッシュ・フロー、又はその内容の他の評価値に基づいて計算されるNAVを有している。資産が定期的に売買される場合、この資産は市場価格と価値を有する。PAR、NAV及び市場価値は、同じ資産でも異なる場合がある。例えば、ローンは、未払い元本に基づいたPAR価格、割引キャッシュ・フロー及び債務不履行の確率に基づいたNAV、並びに資産が容易に売買される場合又は最近購入された場合は市場価値を有する。これらの価値の違いは、資産パフォーマンス、格付けエンティティ、又はそのアセット・マネージャの価値評価における信頼に対する変化する市場認識に対する洞察を与えることができる。
資産バリュエーションは、一度だけ、定期的に、又は継続してほぼリアルタイムに評価されてもよい。データ・フォーマットは、価値評価がどれくらい古いか、及びどれくらいの間隔でそれが有効なままであると期待されるかを知るためのビューワ(例えば、及び所有者又は他の市場関係者)情報を提供する。追加的に、仕様は、バリュエーション履歴の標準化フィードへのリンクを提供することができる。これは、レビュワーに資産の履歴的なパフォーマンスを見るツールを与える。リンクは、データへの直接的なアクセスの代わりに設けられるが、履歴的な分析に必要な記憶、探索、及びインデックス付け用のツールは資産トークンが記憶されるツール(本実装形態では分散台帳)とは異なる可能性があるためである。
開示される実装形態はデータ通信を改善して、それによりマネージャに利用可能な情報と投資家に利用可能な情報とのギャップを埋めることができるが、データのフローは、図1のポリシー・エンジン118においてアーキテクチャによって、例えば設計による決定ギャップを作成するよう制御することができる。例えば、特定の情報に関するデータ・フローの限度は、所望の限度又は投資家の利益になる限度であってもよい。例えば、アセット・マネージャは、「フロント・ランニング」(経済上の利点を得るために、大規模な非公表注文の直前に、ブローカ又はトレーダーが売買を行う慣行)を防止するために、又はその他の方法で投資パフォーマンス若しくは投資技法を保護するために、一般提供からの特定情報を保留したいと思う場合がある。投資家は、パフォーマンスと透明性との間でトレードオフを行うよう選ぶ場合があり、アセット・マネージャは機密性の必要に対してバランスの取れた市場需要に基づく開示を余儀なくされる。
図1に関して上述したように、資産がいったんIAssetモジュール102のIAssetTokenインターフェースを使用してトークン化されると、ETF自己レポーティング・ファンドなどのファンドを開発する際の次のステップは、開示される実装形態によると、IAssetモジュール102のIAssetFundインターフェース構造を使用するファンド・トークンの発行である。この構造は、IAssetToken構造及びファンクションをIAssetManagementインターフェースで拡張する。ファンド・トークンは、資産クラス・レジストリ・モジュール106のIAssetRegistryインターフェースを介して発行されるが(他のトークン同様)、資産クラス・レジストリ・モジュール106からの、このクラス用の値を割り振ることによって、「Fund」に等しいタイプ・パラメータが割り振られる。もちろん、ファンドは他の資産を含むことができる資産である。個々の資産に利用可能な同一のファンクションがファンドに適用される。しかしながら、ファンドは、ファンド内に含まれる資産を管理するために必要なファンクションを提供することによって、IAssetトークンの基本的なロジックを拡張する。
図6に示されるように、開示される実装形態のファンド資産トークン600は、図2の資産トークン200に類似している。しかしながら、ファンド資産管理トークンは、資産管理ファンクション212を含む。資産管理ファンクションは、資産レジストリ・モジュール102のIAssetManagementインターフェースを介して実装され、処理スマート・コントラクトが割り振られ、トークン・ウォレットを利用するため、すべての取引は分散台帳に記録することができ、不変である。このことは記録管理、監査、及びレポーティングを簡略するための透明性を与える。資産管理インターフェースは、一貫性のある取引インフラストラクチャを提供して、それぞれの資産クラス又はファンド管理戦略に特有のロジックの開発を合理化している。このことは、中心部のトークン構造及びインターフェース・フットプリントを変更することなく置換、拡張、又はアップグレード可能な内部ロジックにより実行される新しい資産タイプのための管理戦略のデプロイメントを容易にする。さらには、この実装形態は、共通の資産管理ファンクションを介して広範な資産タイプをサポートし、本実装形態の特性である。
より具体的には、ファンド・トークン600のファンド・トークン仕様は、基本的な資産インターフェースを拡張して、認可されたエンティティがIFundManagement.GetAssetsインターフェースを使用してファンド内のすべての資産を列挙できるようにする。ファンド内の資産を列挙することにより、それぞれがIAssetインターフェースをサポートして、ビューワが含まれる資産の利用可能な情報を掘り下げることが可能となる。例えば、次のファンド管理ファンクション及び関連データ構造を、サポートすることが可能である。
・addAssetRequest(uint tokened,uint purchaseTokenid,float price,uint expires,bytes data)external returns(uintorderid);
・cancelAddAssetRequest(ordered)external returns(bool);
・removeAssetRequest(uint tokened,uint purchaseTokenid,float price,uintexpires,address buyer,bytes date)external returns(uint ordered);
・cancelRemoveAsstRequest(ordered)external returns(bool);
・getAssets()external return(uint[]);//付加された非代替性トークンのアドレスのアレイを返す
・event AssetAdded(uint tokened);
・event AssetRemoved(uint tokened)
それぞれのファンクションの実例は、Appendixに含まれている。ファンド・トークンが発行されると、ファンド作成処理における次のステップは、資産をファンドへ移転することである可能性がある。ファンドは、ゼロから多くの資産まで含む可能性があることに留意されたい。資産は、トークンの資産管理ファンクション、AddAssetRequest及びRemoveAssetRequestを使用して購入される又はファンドから清算される。あらゆるトークン取引と同様、資産管理アクションは分散台帳に記録される。これらのファンクションは資産レジストリによるインターフェースとして公開され、IAssetトークン・ウォレット及び資産所有権移転ファンクションを利用して、図2のトークン200に関して上述したのと類似のやり方で資産取引を実行する。
非代替性ファンド・トークン600は、売買及び他の取引を容易にするために、IAssetManagementFungibleインターフェースを使用してトークン200などの代替性トークンに連結する(つまり、代替性トークンで「ラップ」する)ことができる。あらゆる資産トークンは、IAssetManagementFungibleインターフェースを実装する代替性トークンでラップして、資産の部分所有権を容易にし、株主への配当配分、株主投票、コーポレート・コミュニケーションなどの非代替性トークン用に構築されたコーポレート・ファンクション用のロジックを再使用することができる。IAssetManagementFungible構造を実装するトークンは、ERC20標準(イーサリアム代替性トークン)を拡張する新しいスマート・コントラクト・インターフェース(AddAssetRequest、RemoveAssetRequest)を含む。これらのインターフェースにより、代替性トークン発行者が、IAssetManagementFungibleインターフェース内の定義されたファンクションを使用して非代替性資産トークンを移転することによって、1つ(且つ、1つだけ)の資産トークンを代替性トークン・シェルに/から追加又は除去できるようになる。
代替性トークンの実装形態はまた、インターフェース(IAssetManagementFungible.GetAsset)を含み、認可されたパーティが代替性トークンによって表現される株式の基礎となる資産を検査することを可能にしている。非代替性トークンによって公開される、バリュエーション・ファンクションは、代替性トークンに連結され、株主(代替性トークンの所有者)が基礎となる資産のうち自身の所有割合を容易に計算することを可能にしている。例えば、基礎となる資産のNAVが1,000,000ドルであり、ウォレットがその資産の流通における全株式1000のうち100(10%)を保有している場合、100株式を表現するそのウォレット中の代替性トークンの全NAVは、100,000ドルである。
代替性トークンを、資産及びその管理に特有な非代替性トークンに取り込まれるロジックから分離することによって、実装形態は最大の再使用を容易にして、資産特有コードの開発及び検証を簡略化する。追加的に、この手法は資産構造を保持して、合併、又は税務上の理由、ガバナンスの理由若しくは責任の理由から株式獲得の代わりに資産獲得が所望される獲得手法を容易にする。資産獲得は金融では一般的な技法であり、データ・モデル及び開示される実装形態のアーキテクチャがない場合、実用的なタスクにはならない。リンクされたトークン手法は、為替売買ファンドへの、及び為替売買ファンドからの資産の移転を容易にして、親ファンドから切り離された時の資産の流動性を可能にしているが、証券化のためにファンドによって購入されると便利な管理が可能となる。
図7は、例えばファンド・トークンによって表現されるファンドの部分所有権を可能にする取引のために非代替性資産トークンを代替性トークンでラッピングするためのデータ・モデル700の概略図である。「部分所有権」とは、代替性の資産が細かく分割できるために、2者以上の資産の所有者が存在できるような状況を指す。702に示されるように、基本的なトークンのタイプは「ウォレット」、「代替性の株式」、及び「非代替性の資産」である。704で示されるように、トークンに関連付けられるウォレットは、例えば図1に関して上述したメカニズムを通じて代替性の株式及び/又は非代替性の資産を表現する他のトークンを所有することができる。これにより、非代替性トークンのラッパーの配当配分及びコーポレート・ガバナンス・ファンクションを利用することができるため、資産非代替性トークンの構造及びスマート・コントラクト・コードが簡略化される。ファンド内の株式は、代替性トークンによって表現され、706に示されるように1つ若しくは複数のウォレットによって、又は資産によって所有することができる。代替性トークンにリンクされるスマート・コントラクトは、708に示されるように、ファンド内の代替性資産についての所有権及び管理ファンクションを公開する。ファンクションは、Appendixにも示されているが、以下を含むことができる:
・addAssetRequest(uint tokenId,uint purchaseTokenId,float price,uint expires,bytes data)external returns(uint orderid);
・cancelAddAssetRequest(orderId)external returns(bool);
・rernoveAssetRequest(uint toKenId,uint purchaseTokenId,float price,uint expires,address buyer,bytes data)external returns(uint order1d);
・cancelRernoveAssetRequest(order1d)external returns(bool);
・getAsset() external return(uint);//付加された非代替性トークンのアドレスを返す
・event AssetAdded(unit tokenId);
・event AssetRernoved(unrt toKenId);
例えば、資産は、ローン返済が受け取られると、資産を所有するウォレットを支払う自己処理ローンであってもよい。このウォレットが代替性トークン・スマート・コントラクトによって所有されている場合、これらの売り上げは、代替性トークンの所有者に比例して配分されてもよい。親子トークン構造はまた、代替性トークンにおける確立された取引ロジック及び交換ファンクションの再使用を容易にしつつ、資産特有ファンクションにおける特殊化、この場合ではローン処理を可能にする。上述のように、ファンドは代替性トークン及びリンクされた管理スマート・コントラクトによって定義されるため、ファンドはゼロ(ヌル)資産を有することができる。
IAssetFundトークンは、資産、他のファンドのための資産トークン、他の資産の代替性の株式、又はファンド資産の株式、のうちのいずれかを含んでもよいため、実装形態は、図8に示されるように資産のネスト化をサポートしており、図8はそのようなネスト化のためのデータ・モデルの概略的表現である。ネスト化は、ファンド・オブ・ファンド構造及び大規模なポートフォリオの多様化技法を容易にする。802に示されるように、トークン・ウォレットは、ファンド内の株式を表現する代替性トークンを所有することができ、このファンドは804に示されるように、非代替性の資産を所有する。さらには、804に示されるように、非代替性トークン(例えばファンドを表現する)、代替性トークン、及び他の資産(この実例では、暗号通貨etherなど)が、非代替性トークンによって所有され得る。図1、図2、及び図6に関して上述したウォレット構造及びアーキテクチャは、この再帰的な所有権構造が非中央集権化されたシステムに関連して使用することができるデータ・モデルによって表現できるようにする。
IAssetFundがIAsset構造を拡張してFund管理ファンクションを実装するのと同じ方法で、IAsset構造は他の資産タイプに対して拡張して、トークンの多型性を可能にすることができる。例えば、実装形態は、IAssetLoanトークン、つまり図1の資産クラス・レジストリ・モジュール106からのクラス・タイプLoanを有するIAssetトークンを発行することができる。このクラスは、自己処理ローン、つまり、IAssetウォレット及び割り振られたProcessWaterfallスマート・コントラクト・ロジックを介して内部的に支払いを処理するローンを実装することができる。支払い処理向けのカスタムのスマート・コントラクトは、それらの所有者によってAssignWaterfallProcessインターフェースを用いてローンに割り振ることができる。継承を通じて導出クラスによってファンクションを置き換えられるようにするこの慣行は、オーバーローディングとして知られている。インターフェース構造を使用するオーバーローディングにより、同じファンド内で異なるローン処理戦略の実行が可能となる。
IAsset構造を継承することによって、IAssetLoanトークンは、そのウォレットへの支払いをあらゆる受け入れ通貨で受け取り、そのあらゆる未払い元本への更新を含めて支払いを処理し、手数料を処理して、その売り上げを所有者に渡すことができる。すべての取引及び支払いは、台帳上で検査することができ、透明性及び資産バリュエーションに必要とされるデータを与える。IAssetFundの資産管理ファンクションを使用して、IAssetLoanトークンは、ファンド・トークンに付加されてもよい。ローン・トークンは、証券化されたファンドを作成するための、多くのIAssetLoanトークンのうちの1つであってもよい。ローン支払いは、それぞれのローンによって自動的に処理され、売り上げは親ファンドに渡され、そこでさらに管理手数料、配当配分、及びIAssetFundトークンによって管理されるような他のファンド・ファンクションとして処理することができる。この構造は、完全に透明であり、無期限にスケーリングできる自己処理型の証券化されたローン・プールを作成する。
自己処理、自己処理における自己レポーティング・ローン資産、自己レポーティング・ファンドは、世界的な金融危機の発端となった大規模な証券化ローン(例えば、RMBS)ファンドには存在しない透明性を与える。類似の技法を使用して、あらゆるタイプの資産のファンドを作成することができ、投資家に新しい投資機会の多様なセットへのアクセスを提供する。さらには、上述のデータ・モデル及びアーキテクチャは、より高度化されたファンド管理戦略の自動化を簡略化する。図9は、発行市場及び流通市場における資産管理用の、一般的な取引を伴うファンド管理環境900を概略的に図示している。実装形態は、上で開示されるIAsset及びIAssetFundインターフェースの使用を通じて運用のそれぞれをサポートする。図9のそれぞれの取引を以下で説明する。
資産収入から資本準備金への処理(1):資産プール(リース、債券、債務証書、配当支払い株式など)内の収入を得る資産は、内部的な自動化されたモデル又は外部モデルを使用して収入を処理する。これらの利益は、配分用の資産ウォレットを介して処理され、資産パフォーマンスの完全なトレーサビリティを提供する。ファンド・トークンの所有者が、ProcessWaterfallリクエストを、そのIAssetインターフェースを介して実行すると、ファンドによって所有されるIAssetのそれぞれに対してProcessWaterfallリクエストが呼び出される。このリクエストの結果、ファンドの資産は利益をファンドの資本準備金(IAssetウォレット)に移転する。ファンドは、内部的なウォーターフォール・ロジックを実行してこれらの利益を処理する。ウォーターフォールのロジックは、革新的又は繰返し可能なファンド管理戦略をサポートするための、プラグインのスマート・コントラクトであってもよい。処理が完了すると、ファンドは、トークンの処理ロジックによって定義される通りにトークンの所有者に移転される(これによってトークンの所有者によってさらなる配分ロジックが実行される場合がある)。
ポートフォリオ・ヘッジ/管理手数料の処理(2):典型的には、ファンドのウォーターフォールは、資産管理手数料の支払いを含み、またヘッジ及び保険などのファンド運用向けの他の内部的なサービスを伴ってもよい。これらの手数料は、ウォレット移転ロジックを使用して資本準備金(資産ウォレット)から支払われ、ウォーターフォール・ロジックのスマート・コントラクトを介して実行されてもよい。ファンドの一貫した額面価格を維持するために、これらの支払いは、資産収入又は他のソースへ、資産収入又は他のソースから補充されなければならない。
償却/ターンオーバを補充する処理(3):資産は、所与の期間(残りの価値をゼロとする)で償却される場合がある。償却は、ローンの債務不履行又は資産のアンダーパフォーミングにより生じる。一定の額面価格を維持するために、ウォーターフォールを処理する一部として資本準備金からの資産を使用して、償却は補充されなければならない。「リスクのある」収入の流れ、つまり今後の期間に債務不履行になり得る延滞ローン、又はアンダーパフォーミングの資産をサポートするために、十分な残高が資本準備金に(配分されずに)保たれるべきである。
資産の満了を補充する処理(4):満了する、非流動性資産で構成されるファンドなど、あるタイプのファンドでは、資産から収入が処理されると、資産残存価値(収益力)が減少する。例えば、ローンの元本を減少させる住宅ローンの支払いは、結果として資産の収益力、その残存価値を減少させる。ファンドの一貫した収益力を維持するために、残存部分は、資産の購入を通じて、類似又はより良好な収益力で置き換えられるべきである。収益力が実現されると、結果として資産プールの残存価値が減少し(満了)、一方でファンド資本準備金におけるキャッシュが増加する。資本準備金資産を使用する資産購入は、IAsset CreatePurchaseOrderファンクションを使用する。含まれているファンドへの資産分配から収入をRealizingするための資産購入は、典型的には資産の収入源リスクに比例してポートフォリオの全体的なNAVを増大させる(資本準備金残高の増大が、資産プールのNAVの減少を超える)。すぐに満了する資産(貿易金融)から構成されるポートフォリオでは、所与の期間にかなりの満了を迎える。満了割合が高いほど、ファンドの弾力性が大きくなる(ファンドの弾力性は、基礎となる資産の弾力性に関係する)。
クーポン又は配当配分の処理(5):ファンドは、クーポン収入又はキャッシュ配当を所有者/株主に提供することができる。「キャッシュ」は、あらゆる資産(フィアット、暗号通貨、又は他の資産タイプ)であってもよいが、典型的には、流動的で、ファンドの株とペアで容易に売買され、資産収入と同一の資産タイプである。クーポン配分は、他のファンド支払いより先に優先的に支払われるが、配当配分は、他のウォーターフォール責任が満足された後に残る売り上げから成る。ファンドの安定性を確保するために、クーポン配分は、特に資産収入が揮発性又は不確実性の場合、ファンド資産からの全体的な期待収入未満であるべきである。配分は、ProcessWaterfallメソッドを介して行われる。CAT代替性トークンは、株主配分ファンクションを含む。資産トークンを代替性トークンに付加することによって、ファンド株主への配分は、自動的に大規模に処理することができる。多くのファンドは、クーポン配分又は配当支払いを提供しない。これらの場合では、資産収入は、ファンドの額面価格を上昇させる。
現物株配当の処理(6):ファンドは、キャッシュの配当ではなく、ファンドの株式を使用して配分を支払ってもよい。この戦略は、税務目的又は流動性を向上させるために、一部のファンドで用いられる。資本準備金からのファンドは、配分される株式を購入するために使用されてもよい。これらの株式は、いくつかの戦略を用いて購入することができる:流動的な流通市場から、ファンドNAVにおける発行市場での流動性準備金プール(後述)から、又はファンドNAVと一貫する株式トークンを発行することによって。株式の購入、償還、及び配分モデルの柔軟性により、IAssetFund構造が、ETF、ミューチュアル・ファンド、又はクローズドエンド型のファンドを含むあらゆる既存のファンド管理戦略をサポートすることが可能となる。これはまた、税務又は流動性の恩恵のために、ファンド収益最適化戦略をサポートする。
発行市場購入の処理(7):IAssetFundトークンは、部分所有権を容易にするために、代替性トークンに付加されてもよい。投資家は、代替性トークン・インターフェースによってサポートされるSharePurchaseRequest及びSharePurchaseSwapRequestメソッドを使用して発行市場においてファンド株式を購入又は売却することができる。オープンエンド型のファンド、つまり株式数が基礎となる資産の市場需要に基づいて変わり得るファンドでは、リクエストをサポートするために、株式が発行される(購入)、又は買い戻される(償還)。ファンドの運用モデルに基づいて、株式は、資産又は資産の相当金額(CIL:cash-in-lieu)と引き換えに購入側パーティに渡される。SharePurchaseRequestは、CIL取引である。このタイプの取引では、株式はファンドの権利行使価格、つまりファンドのNAVを株式の総数で割った価格で売却される。SharePurchaseRequestが行われ、NAVが割り振られ、購入者は、注文を遂行するために必要な「キャッシュ」資産を供給することによって、遂行しなければならない。IAssetFundトークンは、キャッシュを受け取り、資産マーケットプレイスからの、又はIAsset CreatePurchaseRequestファンクションを使用して、基礎となるものを購入又は割り振らなければならない。SharePurchaseSwapRequestは、株式購入に使用される資産がファンドの投資テーゼ又はインデックス(ファンドの基礎となる資産に対する株式の割合)と一貫性のある、取引で使用される。
発行市場償還の処理(8):この取引は、発行市場購入取引とは反対である。代替性トークンの株式は、キャッシュ(ShareRedeemRequest)又は基礎となるファンドからの資産(ShareRedeemSwapRequest)と引き換えにファンドに売却される。資本準備金におけるキャッシュに応じて、CreateSellRequestを使用してIAssetFundトークンから資産を清算する必要がある場合がある。
一実装形態は、弾力的な証券化を可能にするために、代替性トークンの一部として流動性リザーバの確立を含む。流動性リザーバは、資本からファンドへの純流入又は流出に基づいて、発行市場取引(又は、別個の実装形態では流通市場限度注文)を価格決定するスマート・コントラクトである。リザーバは、株式のプール及び注文を遂行することができるキャッシュを維持する。価格は、ファンド・マネージャによってセットされた通りの所望の残高からの準備金プール残高の偏差に基づいてNAV付近で調節される。例えば、SharePurchaseRequestの不均衡による資本の著しい流入は、リザーバ内のキャッシュ・プールを増加させるが、利用可能な株式プールは減少させる。価格決定アルゴリズム(ファンド・マネージャ戦略に基づくスマート・コントラクトのプラグイン)は、準備金プール内の株価を上昇させ、償還の見込みを増大させるが、新規購入の需要は低下させる。アルゴリズムは、リザーバを残高に戻す投資家需要の変化に直面すると流動性の価格を調節するように反応する。
資産購入の処理(9):一部のポートフォリオでは、ポートフォリオのマネージャは、資本準備金からのキャッシュを使用して資産を購入する。これらの購入はIAsset CreatePurchaseRequestを使用する。例えば、満了する資産は、資産収入によって補充される資本準備金からのキャッシュで置き換えることが可能である。NAV評価及びヘッジ戦略は、これらの決定が全体的なポートフォリオ・アルファに反映されるため、ポートフォリオ・マネージャの、主要な責任である。
資産清算の処理(10):準備金残高が清算しきい値を下回ると、アクションがトリガされ、資産を売却してポートフォリオの流動性要件を回復するようポートフォリオ・マネージャに要求する。これらのトリガは、スマート・コントラクトを介して定められる場合があり、IAsset CreateSellRequestを通じて実行される。
スワップ処理(11):他のポートフォリオでは、資産はスワップ、つまり収入を得る株式と資産の収益力に対する権利との交換を介してポートフォリオに参加している。いくつかのポートフォリオは、資産を獲得するために両方の技法を使用してもよい。スワップの使用はポートフォリオにさらなる流動性をもたらすため、キャッシュ購入の代わりに、スワップの使用が好まれる。
リザーバ補充処理(13):収入を生み出す資産のファンドに適用される弾力的な証券化モデルでは、株主の持続的な撤退に基づいてリザーバのキャッシュ・レベルが低い場合、キャッシュ配分を使用して、リザーバにおける流動性を回復することができる。このステップにおいて、回復するリザーバ流動性の量は、アルゴリズム的に、リザーバ残高、資本準備金及び市場状況の関数で決定される。著しい流動性の回復が必要とされる場合、満了資産を補充するためのリソースが利用不可能になる場合があり、ポートフォリオの額面価格の減少につながる。収入レベルが清算しきい値を下回ると、これは以下で説明するような資産清算ステップをトリガする。
弾力的なポートフォリオ成長処理(14):持続的な購入注文の不均衡による、NAVを上回る持続的な価格は、リザーバにおけるキャッシュの不均衡を作り出す。この価格がNAVをしきい値で超えると、資産は資本準備金に移転されて、ファンドにさらなる資産を購入してファンドの全体的なNAVの成長を推進してもよい。このモデルを使用して、ファンドのNAVは、認可された関係者の使用又は新規株式の発行しに、弾力的に成長することができる。
弾力的なポートフォリオ低減処理(15):投資家の流動性ニーズは、キャッシュ・プールからの価値の純流出となる場合がある。NAVを下回る価格決定をもたらす持続する不均衡は、ファンドからの資産を清算して、キャッシュ・プールを回復させるために必要なキャッシュを提供する必要性をシグナリングする。ポートフォリオのアンダーパフォーマンスが持続することは、ファンド・マネージャの制御下での資産のパフォーマンスに基づき、ファンド・マネージャの影響をきれいに引き下げた管理下において制御された資産の清算を行うことになる。専門的にはクローズド型のファンドであるが、投資家需要及び資産パフォーマンスに基づく額面価格の弾力的な変動は、オープン型ファンドの望ましい特性を与える。
弾力的な証券化は、非流動性の資産を含むファンドのサイズをきれいに成長及び低減できるようにする処理である。処理は、非流動性資産の為替売買を容易にするためのファンド構造を提供するよう市場のニーズに対処し、ある為替に対する流動性資産売買と、基礎となるファンドにおける非流動性の資産との間に流動性バッファを与えてSEC Rule 22e-4に関する懸念に対処する。
リンクされたIAssetFundとIAsset構造の柔軟性は、一般的且つ高度なファンド管理戦略を実行するメカニズムを提供する。構造により、一般的な資産管理ファンクションを自動化して、革新的なファンド管理戦略を投入しつつ、透明性並びに簡略化された監査及びレポーティングを提供することが可能となる。代替性トークンを非代替性のIAssetFundトークンにリンクすることは、ファンド株式の新しい有用性を実現する。株式は、収入(配当)又は成長のために保持されてもよい;支払いのために移転されてもよい;担保としてエスクローに保持されてもよい;認可された流通市場でUSD、BTC、EUR又は他の証券との交換を通じて現金化されてもよい;及び/又は代理投票を通じてファンド・ガバナンスに参加するために使用されてもよい。
開示される実装形態は、スワップ・メカニズムを介してファンド株式を使用してファンド資産を購入又は資産プールから償還できるようにする。このことは「バッキング」モデルを作成し、トークンの発行及び破壊を使用して、アセットが追加されること、又はファンドから除去されることを可能にしている。追加的に、実装形態は、流動性プールを含み、資本のファンドへの純流入及び流出を管理してもよい。流動性アルゴリズムを適用して、株価を設定して償還を管理するのを支援し、ファンドの株式用の流通市場の形成を容易にすることができる。このモデルは、繰返し可能であり、ほぼあらゆるファンド構造を満たすために使用することができる:貸与、債務証券、売掛金、定期金賠償、ファクタリング、貿易金融、保険、リースなど。
開示される実装形態によって自動化されるファンド構造の一実例として、クローズドエンド型のLending Poolファンドをファンドのスマート・コントラクトを活用して作成することができる。プールは、既存の資産、ウエアハウス・ローン、再担保契約、又は資本形成から繰り入れられる。最初、プールは貸与に必要な資本(フィアット又は暗号通貨)だけを含んでいる。ファンドのスマート・コントラクトのフォーマットを使用して、Poolは、NAV及びPAR価格(プール内のすべての資産のNAVとPAR価格の合計)を公開して、サポート文書及び資産の一覧をリアルタイムに公表する。すべてのファンド取引は、不変な台帳に記録される。プールは、ポートフォリオ・マネージャ、資産マネージャ、及び任意選択で他のサービス(ヘッジ、資産保険など)を有し、ローンは、認可されたエージェント及び自動化された処理を通じて支出されたファンドによって始まる。始まりでは、ローンは、資産としてファンドに追加される。開示される実装形態を使用して、すべての資産(利用可能な貸与資本、売掛金、及び他の資産)は、認可されたパーティによってリアルタイムに閲覧することができる。
ローンは、IAssetスマート・コントラクトを拡張するスマート・コントラクトとしてプールから始まる。このことは、証券化、ファンド運用、及び準拠した移転を容易にする。資産オブジェクトとして、それらはサポート文書、取引履歴、及びリアルタイムの資産NAV&PAR価格を認可された閲覧者に公表する。ローン・トークンは、IAsset構造を活用してローン特性を公表し、独立的な分析及びバリュエーションを可能にする。ローン・トークンは、ERC-20、ERC-721、又は移転を統制するために他のトークンにラップされてもよい。
ローン・トークンに組み込まれるのは、バリュエーション及び支払い処理ロジックである。支払いは、ローンに特有のアドレス(例えば、QRコードで指定される実例)への単純な移転を介して行われる。支払いは、処理されて、売り上げは、ファンドであってもよい資産の所有者に転送される。ローンごとのPAR価格(ローン元本)及びNAV(キャッシュ・フローのリスク調節済NPV)は、それぞれの支払いに伴いリアルタイムで更新される。ローンごとの取引履歴は、不変な台帳に記録され、認可されたユーザによる分析用に利用可能である。
プール支払い処理は、自動化され、透明である。ファンド内の個々のローン資産の返済からの売り上げは、さらなる処理のために、Risk Poolに移転される。リスク・プール処理ロジックは、カスタマイズ可能なスマート・コントラクトを活用して償還、ローン償却、Pool資本補充、管理手数料、及び透明且つ検証可能なウォーターフォールにより配当&クーポン支払いを自動化する。配当及びクーポン支払い、並びに他の配分は、スマート・コントラクトに具体化されるファンド・ロジックを使用して自動的にファンド所有者に移転される。
高度化された流動性及びリスク管理では、資産はポートフォリオから売却されてもよい(又は購入してポートフォリオに入れてもよい)。サポートされる資産取引は、ローン市場を介した購入/販売、償還及びファンド・トークンを使用したスワップを含む。他の取引は、回収及び償却を含む。配当支払いは、暗号通貨、フィアット、又は現物プール・トークンで行うことができる。トークンの発行は、発行市場の提供を通じて、オークション、又は既存利率のトークン化を通じて発生してもよい。株主(トークン保有者)は、クーポン&配当配分を自動的に、株式所有権に比例して受け取る。結果は、配当支払いトークンである。資産に裏付けされるセキュリティ・トークンは、革命的な金融商品である。トークンは、(1)配当を受け取るために保持することができる;(2)支払いとして移転することができる;(3)担保契約としてエスクローに保持されてもよい;及び/又は(4)認可された流通市場におけるフィアット通貨、暗号通貨、又は他の証券との交換を通じて現金化することができる。
弾力的な証券化メカニズムを使用して、トークンの需要の増加は、資本の流入となる(ミューチュアル・ファンドの需要の増加に類似するモデルにおいて)。追加的な資本は、貸与プールPAR価格の拡大につながり、貸与向けにより多くの資産を提供する。このモデルは、無期限に、成長することができる。同様に、アンダーパフォーマンス又は他のファクタによって生じる資本の撤退は、ポートフォリオNAVの制御されたドローダウンをもたらす。このモデルは、繰返し可能であり、ほぼあらゆる証券化ニーズを満たすために使用することができ、貸与、債務証券、売掛金、定期金賠償、ファクタリング、貿易金融、保険、リースなどを含む。
図10は、トークン化された資産に関連するデータを管理するためのデータ記憶及び検索システムを構成するための方法1000を図示している。1002において、クラス定義に従って、デジタル・トークンが作成され、このトークンは一意なトークン識別子を含む。1004において、デジタル・トークンは、資産と関連させて一意なレコードとして資産レジストリのメモリ・デバイスに登録される。1006において、クラス定義に従って、通信インターフェースがデジタル・トークンに関連付けられる。通信インターフェースは、資産レジストリによって実装される通信仕様に準拠することができ、所定のファンクションのセットを公開するように構成される。所定のファンクションは、資産所有権移転ファンクション、資産バリュエーション公表ファンクション、資産属性決定ファンクション、及び資産特有処理ロジックを含むことができる。
1010において、暗号ウォレットをデジタル・トークンに関連付けることができる。ウォレットは、資産レジストリに記録されたトークンのファンクションを行うように構成される。デジタル・トークンが非代替性である場合、1012において代替性のデジタル・トークンを作成することが可能である。1014において、暗号ウォレットを代替性のデジタル・トークンに関連付けることができる。ウォレットは、トークンのファンクションを行うように構成される。1016において、非代替性デジタル・トークンを代替性デジタル・トークンでラップするために、非代替性デジタル・トークンの所有権は、代替性デジタル・トークンに移転することが可能であり、それによって、マルチパーティ配当配分、コーポレート・ガバナンス、及び株式売買などの共有所有権に関連付けられるファンクションを含む非代替性デジタル・トークンによって表現される資産の部分所有権が可能となる。
上述のトークンは、DLTネットワーク内で、及び複数のDLTネットワーク又は他の移転ネットワークの間で、価値を移転するために使用することができる。図11は、開示される実装形態による、変形取引を行うための異質なDLTシステムをインターフェースする方法を図示している。1002において、2つの異なるDLTネットワークなど、少なくとも2つの異種ネットワークにまたがる、所望の/リクエストされるクロス台帳取引を説明する情報が受信される。1004において、マルチネットワークのグラフ構造が読み取られる。グラフ構造は、ネットワークにまたがるブリッジに対応するノードをクロールすることによって作成することが可能である。グラフ構造の各ノードは、関連付けられた属性変数のセットをノード・メタデータとして有することができる。属性変数は、対応するネットワークにネイティブな価値の単位(トークン)、トークンを実装するスマート・コントラクトの識別情報、ブリッジに使用されるウォレット又は口座、ユーザに利用可能な価値ソース、並びにAPI及び他のネットワークへのネットワーク・インターフェースを含むことができる。1006において、ノード巡回アルゴリズムに従ってグラフ構造を巡回して、所望の取引を容易にするブリッジ・ノードを検出することによって取引を成し遂げるために、取引ルーティング情報が生成される。1008において、取引ルーティング情報を使用して選好に基づいてソースによって移転経路が選択され、移転が開始される。所望の移転経路は、リクエストされたクロス台帳取引の適正な実行を確実にする、サブ取引のチェーン化されたセットを含むことができる。1010において、クロス・ネットワーク取引を達成するために、指定されたインターフェースを使用してサブ取引が実行される。サブ取引は、異質なネットワーク上で、文法独立的な実行命令を基礎となる移転ネットワークによって認識される具体的な命令にコンバートするオントロジ・マッピングを使用して実行される。包括的な取引、及びすべてのサブ取引は、サブ取引に関与する台帳とは別個であってもよい台帳に記録することができる。独立的な台帳は、ゼロ知識証明を利用して不変性を実現しつつ取引プライバシーを維持することができる。サブ取引のチェーンは、ソース・ネットワーク、宛先ネットワーク、及びソース・ネットワークと宛先ネットワークとの間の接続として機能する他のネットワークにおける取引を含むことができることに留意されたい。
図12は、図11の方法及び他の変形移転を達成するための、開示される実装形態によるコンピュータ・アーキテクチャを概略的に図示している。アーキテクチャ2000は、取引サービス・バス・モジュール2002、チェーン化移転ハンドラ・モジュール2004、計画サービス・モジュール2006、ブリッジ・サービス・モジュール2008、価格決定及び流動性モジュール2010、独立取引台帳モジュール2012、及びアウト・オブ・バンド移転/補充モジュール2014から成る。アーキテクチャ2000の各モジュールは、必要であればネットワーク化されたコンピューティング環境を通じて他と通信することができる。
本明細書において説明されるモジュールは、単一のコンピュータ処理装置又は複数のコンピュータ処理装置内でコンピュータ実行可能コードとして実装することができる。モジュールのうちの1つ又は複数は、分散アーキテクチャとして他のモジュールから遠隔に実装されてもよい。別のモジュールによって提供される機能性の以下の説明は、説明を目的としたものであり、限定的であることを意図されていないが、モジュールのいずれも説明されるものより多い機能性、又は少ない機能性を提供してもよいからである。例えば、モジュールのうちの1つ又は複数は、取り除いてもよく、その機能性の一部又はすべては、モジュールのうちの他のものによって提供されてもよい。
上述のように、ネットワーク間(クロス台帳)取引などの変形取引の自動化された実行は、価値の移転など、提示されるクロス台帳取引の詳細を指定する取引データ構造を受信したことに応じて、達成される。データ構造は、取引詳細を含むことができ(例えば、ソース、宛先、金額、通貨)、移転を開始する権限を持つパーティにより作成することができる。例えば、取引データ構造は、(TransactionType=Transfer,TransactionCurrency=Ether,Source=[wallet 1 address],Destination=[wallet 2 address])であってもよい。
取引サービス・バス・モジュール2002は、取引データ構造を解析して、グラフに基づいて、指定された取引を実行するために複数のネットワークを巡回するための1つ又は複数の存在可能な経路(予想される価格、手数料、及び取引回数を含む)を決定する。経路決定は、ルート計画サービス・モジュール2006によって決定されたネットワークのモデルに基づいて行われ(以下で詳細に説明されるやり方で)、複数のサブ取引から構成される取引チェーンを含み、各サブ取引はソース及び宛先を有する。経路上で資産変形が必要とされる場合、価格決定及び流動性モジュール2010は、ブリッジ・メタデータに基づいてブリッジ巡回に必要とされるソース資産と宛先資産との比率を指定する(以下で説明する)。チェーン化移転ハンドラ・モジュール2004は、ネットワーク移転、確認、及びブリッジ巡回(以下で説明されるブリッジ・サービス・モジュール2008によって指定される通り)のシーケンスとしてサブ取引(プライバシーを保護するよう所望される場合、ゼロ知識証明を用いて)を実行し、最終的に指定された変形取引の価値移転に作用する。アウト・オブ・バンド移転モジュール2014を使用して、非ネットワーク(手作業の、又は非金融商品の)移転を含むことができる。アウト・オブ・バンド移転モジュール2014を使用して、必要であれば、サブ取引における流動性の消費に基づいて口座リソースをリバランスすることができる。取引記録は、独立取引台帳モジュール2012によって記録することができる。開示される実装形態は、米国特許出願公開第20190164151(A1)号に記載されるコンプライアンス・フレームワークを活用して、クロス台帳取引をセーフガードし、異種ネットワーク上でコンプライアンス検証を行うことができる。
上述のネットワークのモデルは、ソースと宛先との間で価値の移転のために存在可能な経路を識別するよう、様々なネットワーク(クロス台帳取引に参加することを期待され得る)及びブリッジ・ノードをクロールするマルチエージェント・システムを利用してルート計画サービス・モジュール2006によって作成される。ネットワーク間トポロジは、ノードのグラフ構造として記憶することができる。ノード属性変数は、以下でさらに詳細に説明するが、特定のネットワークにネイティブな価値単位(トークン)の説明、巡回方法、ブリッジに使用される口座、手数料及び価格決定方法、並びに関連API及び外部ソースとの通信を目的としたネットワーク・インターフェースを含むことができる。
図13Aは、実装形態による、ルート計画サービス・モジュール2006によって巡回される、ネットワーク間トポロジの単純なグラフ構造3000の抽象化の概略図である。例えば、ネットワーク3002はビットコインのブロックチェーンであり得、ネットワーク3004はイーサリアム・プロトコルのブロックチェーンであり得、及びネットワーク3006はステラ・プロトコルのブロックチェーンであり得る。図13Aには、3つの異種ネットワーク(3002、3004、及び3006)が図示されているが、実装形態には、あらゆる数の、又はあらゆるタイプの異種ネットワークを含むことができる。図13Aでは、各ネットワークが図示されるブリッジ・ノードを有し、各ノードはネットワーク同士の通信を提供するブリッジの一面を表現している。ノードBは、DLTネットワーク3002内のブリッジ・ノードであり、ノードMは、DLTネットワーク3006内のブリッジ・ノードであり、ノードYは、DLTネットワーク3004内のブリッジ・ノードである。各ブリッジ・ノードは、対応するDLTネットワーク内の口座/ウォレットに対応する。ブリッジ・ノードのペア・ブリッジ。例えば、ノードB及びノードMは、DLTネットワーク3002とDLTネットワーク3006との間のブリッジを定義する。各ブリッジ・ノードは、上述の属性変数のセットを示す対応するメタデータ・レコードを有する。さらには、ブリッジ特性データは、ブリッジ・メタデータとして記憶される。図13A中、線で結ばれるブリッジ・ノードの各ペア、及び関連するメタデータ(ノード・メタデータ及びブリッジ特性メタデータ)が、ブリッジを定義する。もちろん、グラフ内にはあらゆる数のノード及びブリッジ・ノードがあってもよく(通常、数千)、図13Aは例示目的のため単純なグラフである。
実例として、メタデータ・レコード3010は、ノードBに関連して記憶され、メタデータ・レコード3012は、ノードMに関連して記憶され、ブリッジ特性メタデータ・レコード3014はノードBとノードMとの接続を定義するよう記憶される。したがって、ブリッジは、グラフ構造3000のメタデータ・レコード3010、3012、及び3014(まとめて「ブリッジ・メタデータ」)によって定義される。ブリッジ・メタデータのさらに詳細なスキーマ3100を、実装形態に従って、図13Bに示す。スキーマ3100は、ウォレット属性3102(ノード・メタデータとしてグラフに記憶することができる)、トークン属性3104(ノード・メタデータとしてグラフに記憶することができる)、データ型属性3106(ブリッジ特性メタデータとしてグラフに記憶することができる)、及びインターフェース3108(価格決定モデル及び他のロジックを含み、ブリッジ特性メタデータとしてグラフに記憶することができる)を含む。図13Aのメタデータ・レコード3010、3012、及び3014は、3つの別個のレコードとして図示されているが、その中のデータは単一のブリッジ・メタデータのレコードに組み合わされてもよく、又はグラフ3000のアーキテクチャに基づいて追加的なレコードに分けられてもよい。開示される実装形態は、メタデータを指定するために標準的なスキーマを使用する。ブリッジは、異種ネットワーク間の接続経路として機能する。グラフは、取引経路が、クロス台帳取引チェーンにおいて(又は、特定の場合では、以下で議論するように台帳内取引において)ブリッジを配置して使用できるようにする。メタデータ・レコード3010、3012、及び3014は、ブリッジ・ファンクションと関連して以下でさらに詳細に議論する。
グラフ3000のデータは、ブリッジ・サービス・モジュール2008によって記憶され、ルート計画サービス・モジュール2006によって巡回される。取引サービス・バス・モジュール2002は、変形取引を成し遂げるために必要とされるサブ取引を含む、最適化された取引ルーティング情報を提供する。ルートを提示されると、ソース口座は、グラフ、並びに取引回数、コンバージョン・レート、及び手数料ロードのうちの1つ又は複数などのユーザ選好に基づいて、チェーン化された取引を開始することができる。チェーン化移転ハンドラ・モジュール2004は、提案されたサブ取引を含む取引実行を管理して、最終的なデリバリーを通じて適正な移転の実行(又はロールバック)を確実にする。ルート計画及び経路最適化を、以下でより詳細に説明する。
取引サービス・バス・モジュール2002は、価値移転の文法独立的なモデル、移転メッセージング規約と関連項目のカタログ、及び様々なネットワークの異質な実装形態を文法独立的なモデルにコンバートするための変換スキーマとして機能する、金融オントロジを実装する。チェーン化移転ハンドラ・モジュール2004は、提示されたサブ取引を文法独立的な命令からネットワーク特有実装形態に変換する取引サービス・バス・モジュール2002を介して異質なネットワーク上でサブ取引を実行する。
金融オントロジは、金融取引に共通の言語を提供する抽象レイヤである。オントロジは、金融システムで遭遇する、サービス、ファンクション、及びオブジェクト向けのインターフェースを定義する。オントロジは、個々のサービス・プロバイダの実装形態同士の様々な違いを分離する相互運用性レイヤを提供し、個々のコンポーネントが緩く連結される柔軟なモジュール型システムを用意する。オントロジにより、個々の金融サービスが共に機能するように設計されていなくても、個々のサービスをより複雑な金融システムにコンポーズすることが可能となる。支払いのチェーン化は、あらゆる移転ネットワークをあらゆる他の移転ネットワークに接続するように設計されているため、共通のサービス定義は、相互接続しているNシステムの複雑性をN階乗(N!)からNに減ずる。したがって、オントロジは、大きな集積物を扱いやすくするように設計される。本技術の標準的なファンクション及びインターフェースを、以下で議論する。
しかしながら、扱いやすさのために基礎となるプロバイダごとに共通の抽象化を開発することは、個々のプロバイダの表現度(つまり、一意のプロバイダによって公開され得る特殊な特徴)を低減させる可能性がある。開示されるフレームワークは、表現度が扱いやすさのために失われないことを保証する2つのメカニズムを有する。まず、「ラッパー」は、具体的なプロバイダ/ネットワークに一意な、又はプロバイダ/ネットワークのサブクラスに一意な特徴を公開することができる。この場合、依存的なクライアントは、実装形態に特有なラッパーで直接的にインターフェースして、これらの一意な特徴を活用してもよい。しかしながら、このことは、クライアントとサービス実装形態との間に直接的な依存性を作り、この依存性はクライアントをサービス実装形態に密に連結してモジュール性及びスケーラビリティを限定する。実装者は、一意な機能性を得るためのトレードオフが、具体的なプロバイダ/ネットワークへの依存度を高める価値があるかどうかを判断することができる。追加的に、オントロジは、ローカルで定義された仕様の追加的なデータを汎用インターフェースで搬送できるようにするデータ構造を含む。中心部のデータ構造は、パーサーがデータを検査し、フォーマットが認識された場合はそれを解析できるようにする、型及びデータ情報を含む仕様を有するOtherDataフィールドを含む。この構造は、システムのすべての部分で使用される構造において追加的なデータを搬送できるよう要求される場合がある、システム同士のポイント・ツー・ポイントの通信を可能にする。結果として、チェーン化移転ハンドラに見られるようなファンクションを協調させることは、具体的な移転プロバイダの一意な特徴を犠牲にすることなく、ファンクションをグローバル範囲で実施することができる。
上述のように、ブリッジ・サーバ・モジュール2008は、論理インターフェースであるブリッジを様々なDLTネットワーク間に設け、それらの間で取引と価値を中継する。ブリッジは、異種の資産及び価値の単位を表現するトークンのタイプを受け入れることができる。ブリッジ・サーバ・モジュール2008は、ブリッジを実装して、モデル及びノード・メタデータに基づいて論理的なクロス台帳接続を作成する。本質的に、ブリッジは、移転挙動を定義するデータ構造である。ブリッジ・サーバ・モジュール2008は、メタデータ・レコード3010、3012、及び3014を読み取り(図13A)、ブリッジ型を判定し、Vostroウォレットを割り振り、Nostroウォレットを割り振り、手数料を識別し、価格決定モデルを決定し、必要であればout-of-band補充を割り振り、以下で説明するやり方で、変形ロジックを識別して付加する。ブリッジ・オペレータ、つまりブリッジでまたがっているネットワーク両方を介して動作する適当なパーミッションを有するエンティティ又はシステム処理は、メタデータ・レコード3014で示されることが可能である。ブリッジ口座は、ソース・ネットワークと宛先ネットワークとをリンクするよう作成されるか、又は割り振られる。ブリッジ内のソース口座は保管口座であることが多く、2wayのブリッジ・サポート用にアクティブであるべきであり、また宛先はアクティブであるべきであり、特定のタイプの移転用にリンクされた発行者を必要とする場合がある。
ブリッジ・サービス・モジュール2008によって、価格発見(ペッグ、フロート、為替)、会計(変換、証書)及び移転(イン・バンド、アウト・オブ・バンド)において、ある範囲のオプションを伴って、様々なクラスのブリッジを作成して記憶することができる。これらのクラスは、共通の相互接続パターンを提供して、ネットワーク間での価値の移動を実行及び記録するための、繰返し可能な処理を容易にする。含まれるブリッジ・クラスは、メタデータ・モデルによって指定される通りに、価格発見、会計及び移転などの分野のオプションからコンポーズされる(例えば、イン・バンドとアウト・オブ・バンドの組み合わせ)。異種ネットワークは、ブリッジを使用して一緒に接続されるため、ブリッジは、ネットワーク間での価値のフローを容易にしており、メタデータによって指定されるように、サービスのための料金を抽出することができる。ブリッジは、ネットワーク間又は価値の単位間に接続を作成し、これは以下を制御することによって異なる送信ネットワーク全体で価値移転を受け取って中継する:
・送信モード:担保契約(参照による)、決済(価値による)、リンケージ、又は売買-変形(資産の変更、分割)
・価格決定:為替、アルゴリズム的、ペッギング
・シンクロニシティ:同期又は非同期(ヘッジ&リスク管理を伴う)
・手数料、資本供給ロジスティックス、及び流動性管理
各ブリッジは、インバウンド口座及びアウトバウンド口座を含む(例えば、図13AのノードB及びノードMに、それぞれ関連付けられる)。口座は、取引チェーンの一部として運用される「システム」パーミッションを有するブリッジ・オペレータによって所有される可能性がある。これらの口座は、ブリッジの作成の間に、ブリッジ・メタデータ中の設定パラメータとして提供される。インバウンド口座及びアウトバウンド口座によってサポートされる価値単位は、ブリッジによってサポートされる接続を定義する。サポートされる接続は、移転ルーティングに必要である。取引がビットコイン台帳(DLTネットワーク3002)から始まり、ステラ・ネットワーク(DLTネットワーク3006)にクロスする図13Aの実例を使用して、ブリッジのインバウンド(Vostro)口座(例えば、図13AのB)は、取引チェーンにおける最初のサブ支払いの宛先口座となる。この口座は、「Active」な口座、つまり「ロールバック」機能が必要とされない限り、動作するのに権限を含む口座である必要はない。ブリッジのアウトバウンド(Nostro)口座(例えば、図13AのM)は、価値をチェーン又は最終宛先に送るために使用される。Nostro口座は、Activeであるべきで、このことは処理スレッドが口座から取引を開始する権限を有するべきであることを意味している。ダーク・プール取引、つまり事前位置付けされた価値での取引では、チェーン化取引を開始することに先立って、インバウンドのブリッジ口座に十分な価値が存在しなければならない。ブリッジは、ブリッジ・サーバ・モジュール2008から、ルート計画及び支払い実行のためにチェーン化移転ハンドラ・モジュールによって使用されるリストにロードすることができる。ブリッジを実行するために使用されるクラスは、設定によって決定される。
所望の宛先価値単位の場合、1つのウォレット型から別のウォレットへの可能なルートのリストは、利用可能なブリッジによって使用されるインバウンド及びアウトバウンドのウォレットについて、ブリッジ・メタデータで示される、サポートされるトークンを評価することによって決定することができる。ルート計画サービス・モジュール2006は、ソースから宛先への経路をマッピングする際、このリストを使用する。例えば、図13Aのグラフ3000は、DLTネットワーク3002とDLTネットワーク3006との間の2つの可能なルートを示している。第1のルートは2で示され、第2のルートは1と3との組み合わせで示されている。
ブリッジ設定の詳細に加え、ブリッジ・クラスの動作可能な属性は、依存性投入の詳細により決定され、ブリッジ・メタデータとして記憶することができる。開示される実装形態におけるブリッジ動作のバリエーションは、メタデータで定義される6つの属性に分けることができる:送信モデル、価格決定モデル、補充モデル、シーケンス、方向、及び手数料。送信モデルは、ブリッジ・ウォレットを介して、どのように台帳を一緒にリンクするかを定義している。5つのタイプの送信モデルを実装することができる:担保契約(Deposit)、決済(Withdrawal)、及び移転(NostroVostro)、Transmute(台帳変化)、及び変形。使用されるモデルは、所望の移転モード、発行/買戻し動作を実施するブリッジ・オペレータの能力、保管ウォレットの利用可能性、及び他のビジネス要件に基づいて決定することができる。
価格決定モデルは、ブリッジによって受け取られるソース・トークンごとに送られる宛先台帳トークンの数の比率を定義している。価格決定モデル実装形態は、Link(1:1)、Peg(固定比率)、Algorithmic(依存性投入のプラグイン)、又はExternal(取引所などのサード・パーティのソースから得る)を含む。補充モデルは、過剰な不均衡フローが起こりリソースを再配置しなければならなくなった時に、アウトバウンドのウォレットを再補給するために使用されるメカニズムを定義する。補充モデルの実装形態は、次を含む:None、Manual、Transfer、及びExchange。ブリッジは、シーケンス(Series/Parallel)及び方向(Unidirectional/Bidirectional)を有し、それらがどのように実行することができるかを示している。
マルチ台帳の発行の場合では、ブリッジは、クロス台帳変異を実装することができる。これは、所有権の公的な記録が移転用に使用されている1つの台帳ではなく別個の台帳にある場合、又は公的な記録が影響を受ける台帳の所有権の記録の合計である場合に使用することができる。変異により、トークンが複数の台帳上で発行できるようになる、及び/又は1つの台帳上で発行されたトークンが別の台帳に「フロー」することができる手段を提供する。トークンが台帳から台帳へ移動すると、流通におけるトークンの総数は一定なままであるが、所有権の記録は台帳から台帳へと移動する。
例えば、台帳から出て行くファンドは、ソース台帳ベース・ウォレットに送られる。この移転はまた、トークンを移動させずにトークンを保留するエスクロー取引であってもよい。等価な数のトークンが、発行者(ウォレット、口座、又はスマート・コントラクト)から宛先台帳上の流通に、又はColdウォレットからプロバイダB上のアウトバウンド・ウォレットに、宛先へのデリバリー用に発行される。デリバリーに成功すると、ソース台帳で呼び出された流通からトークンを除去するIIssuer.Destroyファンクション。
クロス台帳変異を達成するためのサブ取引のチェーンの実例、つまり別の破壊に対応する1つの価値の単位の作成を、図14のフローチャートに図示する。変異取引の実例は、有益な所有権を表現する株式の、1つの台帳から別の台帳への移動である。4002において、プロバイダAを使用して価値がソース・ウォレットからベース(エスクロー)ウォレットに送られる。このウォレットは、ブリッジ・インバウンド・ウォレットである。4004において、トークンは、プロバイダB発行者ウォレットから発行され、プロバイダBのベース・ウォレットに送られる(ブリッジ属性に基づくブリッジ・アウトバウンド・ウォレット)。4006において、プロバイダBのベース・ウォレットは価値をプロバイダBの宛先ウォレットに送る。4008において、取引が完了すると、プロバイダAのベース・ウォレットから等価な数のトークンが破壊される。この処理は、チェーン化移転ハンドラ・モジュール2004が、ソース台帳及び宛先台帳上の取引を検出して属性付けるメカニズム、並びにプロバイダB上でトークンを作成して、プロバイダA上のベース・ウォレットからトークンをバーン(破壊)するメカニズムを有していると仮定していることに留意されたい。これらの権限へのアクセスは、ブリッジ・メタデータによって示すことができる。また、発行者ウォレットを通じて直接トークンを発行してバーンすることによって、ステップ4004から4008をスキップすることが可能である。
場合によっては、トークンに表現される権利をある形式から別の形式にコンバートすることが望ましい場合がある。例えば、コンバーチブル・ノートで表現されるローン権利をエクイティ・ポジションにコンバートすることが望ましい場合がある。この場合、前の変異ファンクションを使用して、固定比率変形(例えば、1株負債=1株出資、又は10株負債=1株出資)を使用することができる。しかしながら、共通の株式における権利を、様々に作用する別個のトークンに分割することが有用な場合があり、一方は投票権利を表現し、他方は収入又はエクイティ売り上げの有益な所有権を表現する。この場合、カスタムの取引変形ブリッジが要求される。インバウンドのウォレットに運ばれるトークンのそれぞれのタイプに対して、2つ以上のタイプの株式が生成され、宛先に運ばれてもよい。Transform取引の基本的なシーケンスは、Transmute取引と同じであるが、ブリッジは、アウトバウンド取引に対して2つ以上のタイプの金融商品を発行するための命令を実行しなければならず、各金融商品を所望の宛先ウォレットに運ばなければならない。反対取引は、権利を新しい複合権利に組み合わせるために行われてもよい(例えば、投票と有益な所有権とを共通株式に組み合わせる)。変形ブリッジは、台帳内ブリッジであることができる。つまり、複数のネットワークにまたがっている必要がない。
交換ブリッジは、Price Discovery又はファンドのMovementが、インライン又はアウト・オブ・バンド(OOB:Out Of Band)で交換を伴う特殊な種類のブリッジである。この場合、ソース取引に要求されるファンド額は、ある交換に対する等価な売買の現在のTotal Volume Price(オーダー・ブックの全体)に依存する。次いで、ファンドは、バッチでインライン補充又はアウト・オブ・バンド補充される。場合によっては、インバウンド移転は、インライン取引用の取引所口座向けであってもよい。この場合、Nostro口座は、やはり取引所にある。Nostro口座は、取引所がプロバイダ・ネットワークを介して利用可能ではないが異なる通貨がサポートされている場合、Vostro口座と同一のプロバイダを使用してもよい。図20及び図21に関して、他のタイプのブリッジを以下で議論する。
開示される実装形態は、「InfinXchange(商標)」としても知られる、インターフェースとDLTのデータ構造取引サービス・バスとをマッピングしてサービングするライブラリを含むインターフェース・アーキテクチャ、取引サービス・バス・モジュール2002、及び従来的な価値移転ネットワーク(例えば、イーサリアム、PayPal、SWIFT)、及び価値移転モデルを含む。上述のように、ブリッジによって要求されるインターフェースは、ブリッジ・メタデータにおいて特定される可能性がある。これらのインターフェースは、変換取引に使用される手順を実行するために必要なファンクションを公開する。InfinXchangeラッパーは、統合のためにハブ・アンド・スポーク・モデルを実装し、それを通じて、チェーン化移転ハンドラ・モジュール2004などの依存的なサービスは、ラップされた移転ネットワーク全体で取引を編成するために必要なインターフェースを一度だけ統合する必要がある。
取引サービス・バス・モジュール2002は、台帳内取引用の共通インターフェースを提供する抽象レイヤとして実装することができる。ソース台帳又は宛先台帳のいずれかとしてクロス台帳取引に参加するために、取引プロバイダを、InfinXchangeラッパー内にラップすることができる。ラッパーは、取引を実行してネットワークのアクティビティに反応するために、基礎となる移転プロバイダと一体化する実行ファイルである。ラッパーは、金融オントロジで定義された通りに共通インターフェースを公開する。これらのインターフェースは、ビジネスと取引プロバイダの具体的な実装形態の詳細からのチェーン化に関連付けられる取引ロジックとを切り離し、取引パターンの広範な再使用を可能にする。
取引プロバイダ/ネットワークは、実装形態及び統合パターンが広範に変化する。例えば、ブロックチェーン・ネットワークは、ノードと対話するクライアントを必要とする一方で、多くの支払いネットワークはAPIを公開する。APIは、REST、SOAP、RPC、及び他のパターンを使用して実装される。企業会計システムは、統合に特定のパターンを持たないリレーショナル・データベースで実行されることが多い。取引サービス・バス・モジュールのライブラリは、基礎となるサービスと対話するために共通パターンを提供するために、これらのスタイルのうちいずれかで実装される取引プロバイダと統合するよう開発することができる。
各プロバイダに接続する取引サービス・バス・モジュールのライブラリが、抽象ファクトリ・パターンを使用してチェーン化移転ハンドラ・モジュール2004に投入されてもよい。抽象ファクトリ・パターンは、共通のテーマを持つ個々のファクトリのグループを、その具象クラスを指定することなくカプセル化するための既知のメカニズムである。例えば、クライアント・ソフトウェアは、抽象ファクトリの具象的な実装形態を作成し、次いでファクトリの一般的なインターフェースを使用してテーマの一部である具象オブジェクトを作成することができる。ファクトリ・パターンは、オブジェクトのセットの実装形態の詳細を、その一般的な使われ方から別個にする。
やはり、接続を定義するインターフェースは金融オントロジにある。プロバイダは初期化されると、サービス・インターフェース用のそのサポート及び呼び出しサービスへのファンクションを公表する。このことは、呼び出しサービスがサービス及び取引プロバイダによってサポートされるメソッドを識別できるようにする。この情報を使用して、呼び出しサービスは、取引タイプをサポートするプロバイダの資格を判断することができる。チェーン化された取引に参加しているあらゆるプロバイダは、IPaymentService抽象化をサポートすべきである。Finance Ontologyから頻繁に使用されるサービスの短いリストを、以下で説明する。
・IPaymentService:すべての価値の移転を実行する。ファンクションには以下が含まれる:取引にかかるコストを推定すること、支払いを実行すること、その完了を検証すること、及びソースから支払いのリストを取得すること
・IWalletReaderService:口座残高(特定のウォレット・アドレスにおける利用可能な価値の額)を識別し、ウォレットについての詳細を取得するために使用される(例えば、サポート通貨、作成日)
・IWalletValidatorService:所有権を主張するエンティティによる所有権を含め、ウォレットが取引に対して資格があるかどうかを判定する。
IPaymentサービス及びIIssuerサービスは、あらゆる支払いシステムの上のレイヤとなり、そのプロバイダを介する移転を実行することができる。すぐ下に見られるのは、インターフェース用の例示的な疑似コード及び関連データ構造である。
複雑なクロス台帳移転に対する取引サービス・バス・モジュール2002の用途を理解するためには、まず、単純な支払いシステムが取引サービス・バス・モジュール2002のコンテキストにおいて、どのような働きをするかを探ることが助けとなる。図15は、単純な移転の実例5000を概略的に図示している。UserX(送る側)が、同一台帳上で、UserY(受け取り側)に価値を送りたがっている(例えば、PayPal移転)。まず、送る側は、ファンクション(IPaymentService.Prepare)受け取り側(アドレスによって)、及び送られる通貨/金額(通常、受け取り側が受け取ると期待される金額で表される)を指定することによって移転を提案する。システムは、提案された支払いの妥当性をチェックし(手数料/ガス代、ポリシー、受け取り側は有効か、ファンドは十分か、を評価する)、所望のデリバリーを実現するために送らなければならない金額に関する1つ又は複数の選択肢によって応答する(多くのシステムでは、利用可能な選択肢は1つだけである)。ある選択肢について移転約定が受け入れ可能であれば、送り側は、署名された取引(ログイン、シークレット、など)の移転を開始する(ステップ1、PaymentService.Submit)。システムは、移転を有効化し(ステップ2、イベントIPaymentService.Initiated)、口座残高を調節する(ソース残高を減少させ、宛先残高を増加させる)ことによって価値を移動しつつ、移転手数料を抽出する(ステップ3)。取引が完了すると、通知が送られる(イベントIPaymentService.Completed)。新しい残高が、ソース・ウォレットと宛先ウォレットに反映される。
開示される実装形態によるチェーン化された取引は、これらの同じファンクションを使用して、開示される実装形態の新規な要素と組み合わせて開始されてもよい。図16は、開示される実装形態によるチェーン化された取引の実例6000(指定された順に達成される複数のサブ取引を含む)を概略的に図示している。図16での実例は、図12のアーキテクチャ2000を使用して取引を達成することができる。チェーン内の個々の台帳移転は、図12のチェーン化移転ハンドラ・モジュール2004によって管理されるアクティビティを協調することを伴う単純な支払いと一貫性のある方法を使用する。
図16に示されるように、送り側は、InfinXchangeインターフェースを使用して移転を提案する(IPaymentService.Prepare)。この実例では、ユーザXは、価値をプロバイダAの口座(例えば、第1のDLTネットワーク)から、プロバイダBにあるユーザYの口座(例えば、第2のDLTネットワーク)に移転したいと思っている。ステップ1において、ルート計画サービス・モジュール2006図12は、ノード・グラフ(図13Aのノード・グラフ3000など)を巡回することによって利用可能な経路を探して、ブリッジ・メタデータに基づいて、ソース・ネットワークと宛先ネットワークとの間の存在可能な経路を提供するブリッジを識別し、移転のレッグごとの手数料を取得する。移転を容易にするために利用可能な0から多くの経路があってもよい。(人工知能を含む様々な技法を使用して、利用可能な選択肢のリストを狭めることができる、又は可能な経路を優先度付けすることができる。経路は、すべての必要なInfinXchangeインターフェース及びブリッジ・メタデータから導出したビジネス・ロジックを含むことができる。
送り側、又は自動化されたアルゴリズムは、所望の経路を選択して、所望の移転を開始することができる(IPaymentService.Submit)。チェーン化移転ハンドラ・モジュール2004は、取引をシステム取引台帳2013(図12)の台帳に書き込み、監査可能性及びシステム障害の結果として回復可能性を保証する。この記録は、ゼロ知識証明技法を使用して不明瞭にして、取引のプライバシーを損なうことなく不変性を実現することができる。チェーン化移転ハンドラ・モジュール2004はまた、イベント(IPaymentService.Initiated)を公表して移転をシグナリングする。チェーン化移転ハンドラ・モジュール2004は、ユーザの署名権限を伝達して、IPaymentService.Submitファンクション(ステップ2)により計画されたルートを使ってソース台帳で子転送を実行し、これには1つ又は複数のブリッジを介する異種ネットワークの巡回を含む。サブ移転の開始の際、この移転は、外部取引台帳内の親取引にリンクされているため、イベントがスローされる(IPaymentService.Initiated)。ソース・ブリッジ口座への移転が完了すると(IPaymentService.Completed)、イベントがスローされて、移転の完了をマークして、ハンドラが取引の次の部分を開始するようシグナリングする。移転は、ブリッジを介して開始される(IBridgeService.Submit)。ブリッジ移転が完了すると(IBridgeService.Completed)、チェーン化移転ハンドラ・モジュール2004は、IPaymentService.Submitを使用してアウトバウンド台帳上で移転を開始して(ステップ4)、価値を宛先口座又はルートに応じてチェーン内の別のレッグに運ぶ。この取引が開始されると、イベントがスローされる(IPaymentService.Initiated)。この取引は、独立取引台帳モジュール2012の外部取引台帳内の親取引にリンクされている。価値は、宛先口座に運ばれ、ステップ5においてイベントがスローされる(IPaymentService.Completed)。チェーン化シーケンスにおける最後のステップとして、すべての取引の完了をシグナリングするイベントがスローされる。すべてのサブ取引が、システム取引台帳2012の台帳に記録される。
代替的には、チェーン化移転は、宛先向けのデリバリー用の命令でブリッジ・ソース口座に価値を運ぶことによって、図16のステップ1及びステップ2をスキップして、外部のシステムから開始することができる。受け取ると、ブリッジ口座はIPaymentService.Completed移転を発行する。チェーン化移転ハンドラ・モジュール2004は、このイベントを読み取り、正当な支払いルートがあるかどうかを判定する。あるルートが利用可能な場合、ブリッジ・ソース口座においてファンドがエスクローに保有された状態でチェーンが開始される。移転が成功すると、これらのファンドは解放される。移転に失敗すると、ファンドはソースに戻されてもよい。ソース台帳がスマート・コントラクトをサポートしている場合、取引を開始することは、オンチェーンのエスクロー方法を活用して、取引の原子性を保証することができる。
図17は、開示される実装形態による、実例の取引チェーン構築処理の概略図である。図示される処理は、図12のアーキテクチャによって達成することができる。取引が取引データ構造内で指定されると、ネットワーク・ノード全体での最適な送信経路を識別するための、InfinXchange(商標)ラッパーと組み合わせたルート計画サービス・モジュール2006。この実例では、指定される取引は「ABCトークンを、ステラDLTシステム上のUserAノードから、リップルDLTシステム上のユーザBノードに移転する」である。価格、及び期待されるデリバリー時間などの、すべての利用可能な選択肢のセットは、取引データ構造によって指定することができる。ステップ1において、ルート計画サービス・モジュール2006は、すべての可能なルート及び利用可能なブリッジを評価して、すべてのノードのグラフ及びブリッジを巡回することによって移転を実行する。可能な取引経路が、関連ネットワークについてのブリッジ・メタデータを読み取ることによって分析され、ソース台帳(この実例ではステラ)と宛先台帳(この実例ではリップル)のプロバイダとトークンとの間のすべての接続を表現するブリッジ・グラフを構築する。ブリッジ・グラフは、識別された接続のブリッジのすべての関連ブリッジ・メタデータを含むことができる。
ルート計画サービス・モジュール2006は、幅優先探索(BFS:Breadth First Search)アルゴリズム(選択されたノードからレイヤ方向にグラフを巡回する、既知のグラフ巡回アルゴリズム)を適用してすべての経路を見つけ、BridgeNodeChainのリスト、つまり取引を達成するための可能な経路のリストを返すことができる。この実例では、2つの可能な経路が識別されている(TransactionChain1、及びTransactionChain2)。ステップ2において、ルート計画サービス・モジュール2006は、取引要件及び条件のリストに基づいて、最終的な取引経路を構築する。例えば、チェーンが、1ABCトークンを宛先ウォレットに運ばなければならない場合、且つ関連する送信手数料の合計が0.1ABCトークンである場合、ソースは1.1ABCトークンを移転しなければならない。最終的な取引経路は、取引手数料、取引確認時間などの、様々な選好及び属性を考慮するように構築することができる。
図13Aを使用して、経路の選択及び取引チェーンをより良好に図示することができる。図13Aでは、Graph3000は、3つのDLTネットワークを有しており、それぞれが少なくとも1つのノードを有していることを思い出されたい。取引は、あるネットワーク内で発生することができる(例えば、A->B、Y->Z)。しかしながら、ネットワーク間をクロスするため、例えば異なるDLTネットワークにあるノード間で取引をするためには、ブリッジを使用しなければならない。ブリッジがないと、例えばノードAとノードZとの間での移転用の経路は存在しない。ネットワーク同士をリンクするために、ブリッジ口座B、M、及びYが作成される。次いでブリッジは、これらの口座をリンクするためにセットアップされる。ブリッジ1を使用して、例えばAとZとの間のルートが存在する(A->B~1~Y->Z)。第2のルートは、サード・パーティのネットワーク(A->B~2~M~3~Y->Z)を通じてリンクすることによって存在する。ルート計画サービス・モジュール2006のルート・プランナは、ネットワーク・グラフを巡回して、潜在的なルートとして、これらのルートを生成する。ユーザ(又は自動化されたサービス)は、選好及び他の属性に基づいて、識別された選択肢の中から最良の移転経路を決定することができる。
図7に戻ると、1つのネットワーク又は台帳から別のネットワーク又は台帳に価値を移動するための能力には、多くの潜在的な経路及びメカニズムが伴う場合がある、又は存在可能な経路がまったくない場合がある。ユーザが支払いデリバリーをリクエストすると、すべての利用可能な選択肢のセット、それらの価格、及び期待されるデリバリー時間が、実質的にリアルタイムに生成されなければならない。図17のステップ2において、ルート計画サービス・モジュール2004は、ソース・ノードから宛先ノードへの経路を提供することができるすべての利用可能なブリッジを評価することによって、すべての可能なルートを集める。
取引サービス・バス
すべての抽象経路が計算されてしまうと、ルート計画サービス・モジュール2006は、抽象経路に基づいて1つ又は複数の取引チェーンを構築する。チェーンを構築するためには、宛先から構築を開始する(デフォルト)、又はソースから構築するという、少なくとも2つの方法がある。宛先からソースに向けて開始する場合、ルート計画サービス・モジュール2006は、宛先条件を固定ポイントとして始める。ソース・ノードを固定パラメータとして開始する場合、ルート計画サービス・モジュール2006は、移転が1ABCで始まった場合に宛先ノードが受け取ることになる価値を決定する。ルート計画サービス・モジュール2006は、ソースから取引リンクを構築し始め、経路を通じてすべての手数料及び交換を累積する。例えば、すべての手数料が0.1ABCトークンである場合、受け取り側は最終的に0.9ABCトークンを得ることになる。次いで、ルート計画サービス・モジュール2006は、例えば以下の規則に基づいて、現実のチェーンへの抽象経路を構築する:
次いで、ルート計画サービス・モジュール2006は、すべての経路チェーンを選択して、重複リンクを取り除くことによって、これらを単一の最終取引チェーンにマージする。図17に示されるように、取引チェーンは、TransactionLink1、TransactionLink2、TransactionLink3、TransactionLink4、及びTransactionLink5を含む。図17のステップ3において、TransactionValidationServiceは、例えば経路中の各リンクのソース・ウォレットが取引をサブミットするのに十分な残高を有しているかどうかをチェックすることによって、及び/又は自己参照チェーン、つまり同一ノードが1つのチェーン内で2回以上発生するチェーンをチェックすることによって、取引経路を実行することができることを検証する。(ポリシー・エンジンは、それぞれの移転ノードにおいて、企業コンプライアンスを検証することができる。例えば、米国特許出願公開第20190164151(A1)号で説明されるシステム及び方法は、企業コンプライアンスを検証するために使用することができる。)それぞれ存在可能な取引チェーンは、手数料及び交換が関与する可能性があり、推定デリバリー時間を有する。提案される移転の価格及びデリバリー時間は、ユーザに提示するために、移転アクションのユーザ承認に先立って計算することができる。
サブ取引のチェーンにおける移転の間、ネットワーク障害が発生する可能性がある、又は移転が完了する前にキャンセルされる(許可されていれば)可能性がある。この場合、ロールバックが必要となる。中間的な手数料がチャージされる、又は交換が行われる事例では、価値の損失なく取引を反対にすることができない場合がある。このような事例では、ユーザは、移転を完了、ロールバックに進めるために移転チェーンを再開始する選択を行使すること、又はその現在の状態の価値を請求することにより取引を見捨てることができる。図18の8002に、(所望の移転取引を達成するための)4つのサブ取引の正常なチェーンが図示されている。4つすべてのサブ取引(8002a、8002b、8002c、及び8002d)が正常である。
しかしながら、ブリッジの構成によっては、取引が失敗すると、システムは、価値を運ぶよう自動的に再開始を行ってもよいか、又は停止してユーザ入力を待機してもよい。図18の8004は、サブ取引8004dが失敗したチェーン化された取引を図示している。設定によっては、失敗すると、チェーンは自動的にロールバック取引を開始する場合がある。ロールバック取引は、ルート内で使用される各ブリッジが、両方向への取引をサポート可能な2wayブリッジである場合にのみ可能である。図18の8006は、ロールバック取引を図示している。8006において、サブ取引8006dは失敗しており、このすべてのサブ取引8006a、8006b、及び8006cは、これらのサブ取引のそれぞれで反対サブ取引を達成することによって「リバース」される。さらには、8008及び8010において示されるように、取引は途中でキャンセルされる可能性がある。取引8008では、サブ取引8008bは実行の前にキャンセルされており、そのためサブ取引8008aがリバースされている。代替的に、8010において、サブ取引8010bが実行の後にキャンセルされており、サブ取引9010a及び8010bの両方がリバースされる。代替的に、取引イニシエータが中間的な台帳を介して価値を受け取る手段を有している場合、8012において示されるように、価値は停止した取引から直接請求されてもよい。反対取引を含め、すべてのサブ取引は、システム取引台帳モジュール2012に記録される。図9A及び図9Bは、組み合わせて、チェーン化移転の状態図9000の実例を図示している。
それぞれ存在可能なルートは、手数料及び交換が関与する可能性があり、推定デリバリー時間を有する。提案される移転の価格は、移転アクションをサポートするためにユーザに提示するよう計算されなければならない。チェーン化移転ハンドラ2004は、Atomicity(原子性)(A)に対する管理可能な代替を提供し、Consistency(一貫性)(C)、Isolation(分離性)(I)、Durability(耐久性)(D)をACID(https://en.wikipedia.org/wiki/ACID_(computer_science) payment delivery参照)に一貫して実現するように設計される。チェーン化移転ハンドラ・モジュール2004は、以下のファンクションを提供することによってクロス台帳支払いを編成する:台帳相互運用性、ルート計画、価格及び手数料発見、取引管理、取引状態、並びにロギング。チェーン化移転ハンドラ・モジュール2004は、ネットワークに対して、以下によって高信頼エンドツーエンド移転を保証する:
・トレーサビリティ及び信頼のために実行される時、提案されるエンドツーエンドの取引及びすべてのサブ取引を、ゼロ知識証明と共に台帳(システム取引台帳2012など)に公表する;
・取引が巡回するそれぞれのネットワークにおいて、移転機能を活用する相互運用性フレームワークを使用して移転をシーケンス化する;
・各取引が正常に実行され(又はロールバックされ)、価値が正常に運ばれることを保証する。
Isolation(I)は、それぞれ個々の台帳取引をより大きなフローのコンポーネントとして分離する共通のIPaymentServiceプラグインを介して実現される。このプラグイン・フレームワークは、異種の台帳にわたって取引を処理するための共通モデルを提供する。取引管理:取引管理は、チェーン化支払いのDurability(D)を用意する。チェーン化移転ハンドラ・モジュール2004は、複雑な支払いシーケンスの各ステップを管理して、故障停止又は支払いネットワークの障害に直面しても、それが実行されることを保証する。このコンポーネントは、並列又は直列の取引を取り扱い、支払い及びブリッジ取引を実行する。
特定の取引の不可逆性(手数料のため)、特定のチェーン化支払いを特徴付ける長期のデリバリー時間フレーム、及び頻繁に変化する市場状況により、Atomicity(A)は、保証することができない。スリッページ(取引の開始とその完了までの、為替レート又は手数料の変化)に備えるために、チェーン化移転ハンドラ・モジュール2004は、著しい変化があった場合、取引を凍結することができ、ユーザが継続する意思に関して検討できるようにする。この点で、取引はロールバックすることができ(手数料は犠牲になる)、価値は、その既存の形式で請求されることができるか、又は(ユーザが変更された約定を受け入れると)取引は完了に進むよう再開始されてもよい。
チェーン化された取引は2つ以上の台帳に関与する可能性があるため、関与する個々の台帳のいずれも、取引のエンドツーエンドのトレーサビリティを含まない。Consistency(C)を保証するために、独立取引台帳モジュール2012によって包括的な台帳が維持され、全体的な取引並びにサブ取引のそれぞれへのリンクが追跡される。チェーン化移転は、ブリッジ構成に依存して直列又は並列に生ずる場合がある。並列な支払いは、高速であるが、インバウンドのデリバリーの時間レイテンシにおけるリスクのため、ロールバックのロック又はヘッジを必要とする場合がある。直列なデリバリーは、スリッページ管理の著しい使用を必要とすることがあり、インバウンドの取引における遅延をサポートするために、アウトバウンドのファンドのロックを必要とする場合がある。
直列で運用される場合、ブリッジは、チェーン化された取引(アウトバウンド)を開始するのに先立って、開始取引(インバウンド)の完了(IPayment.Completeイベント)の検証を待機する。並列で運用される場合、アウトバウンド取引は、インバウンド取引の開始の検証(IPayment.Initiatedイベント)直後に開始することができる。並列の運用では、ブリッジ・オペレータは、インバウンド(及びすべての中間)取引がキャンセル又はロールバックされた場合、デリバリー・リスクを取る。しばしば、ブリッジ・オペレータは、インバウンドのネットワークがキャンセル及びロールバックを許可しない場合に、並列運用だけを許可する。代替的に、ブリッジ・オペレータは、デリバリー・リスクを補償するために高額な手数料の担保又はチャージを必要とする場合がある。直列の運用では、イニシエータは、スリッページ・リスク、つまり、デリバリーの価格の、取引の最初に提示された最初の約定からの変化を経験する可能性がある。例えば、下流のネットワーク手数料又は為替レートは、取引が開始された時から変わっている可能性がある。ブリッジ・オペレータは、価格保証(スリッページがないこと)を提供することができるが、しばしば市場変化又はヘッジ戦略を補償するために手数料を組み入れる。
上述のことから明らかなように、異種ネットワークに対する取引の経路を提供することに加えて、ブリッジは様々な論理的なファンクションを有することができる。預け入れは、ブリッジ・ファンクションの特殊な実例である。これには、預け入れられたファンドを、ユーザの内部口座に運ばれる等価額のトークン(Hypothecated 資産又はIOU)にリンクするPegを伴う。IOUは、他のユーザに移転すること、又は中央集権化された又は非中央集権化された取引所を介して資産と売買することができる。これらのトークンは、反対のフロー、つまり引き出しを使用して、カウンターパーティ口座における価値で償還(決済)することができる。
Counterpartyプールにおける口座残高は、流通における内部トークンの総数と厳密に一致していなければならない。両方の残高は、ユーザに公表されるべきである。一部のネットワークは、トークンの作成と破壊をサポートしているが、他のネットワークは、コールド・ウォレットを介して流通に出入りする動きを必要とする。
図10は、担保契約移転を達成するブリッジ用の運用の実例を概略的に図示している。ステップ1において、価値は外部プロバイダ(例えば、OOB、Cascade、PayPal、イーサリアム)を使用してソース・ウォレットから保管ウォレット(ブリッジ・インバウンド)に送られる。ステップ2において、発行者ウォレットから等価な数のIOU(預け入れ額のデジタル・バージョン)が発行され、ベース・ウォレットに送られる。ステップ3において、ベース・ウォレット(ブリッジ・アウトバウンド)は、IPayment.Transferを定め、価値をインターネット・プロバイダの宛先ウォレットに送る。このパターンは、チェーン化移転ハンドラ・モジュール2004が、ソース台帳上で取引を検出して属性付け、発行者ウォレット及びベース・ウォレットからの取引を実行するための手段を有することを必要とする。この権限へのアクセスは、ブリッジのセットアップ時にグラントすることができる。ステップ2をスキップして、発行者ウォレットから宛先ウォレットに直接送ることができることに留意されたい。
決済は、担保契約移転の逆である。ユーザが価値を台帳から除去し、価値をその元の形態に戻したいと思う場合、決済ブリッジを巡回する移転が開始される。図21は、決済移転を達成するブリッジ用の運用の運用の実例を概略的に図示している。ステップ1において、価値はExternalプロバイダ(例えば、OOB、Cascade、PayPalを使用してソース・ウォレットからベース口座(ブリッジ・インバウンド)に送られる。ステップ2において、保管ウォレット(ブリッジ・アウトバウンド)は、IGateway Paymentを定めて価値を宛先ウォレットに送る。ステップ3において、先行ステップの完了に応答して、等価な数のIOU(決済額のデジタル・バージョン)がベース(エスクロー)ウォレットからバーンされる(つまり、破壊される)。このパターンは、チェーン化移転ハンドラ・モジュール2004が、ソース台帳上で取引を検出して属性付け、保管ウォレットからの取引を実行するための手段を有し、ベース・ウォレットからのトークンをバーンすることを必要とする。この権限へのアクセスは、ブリッジのセットアップの一部としてグラントすることができる。また、取引が失敗した場合にバーンをリバースするための権限が存在すれば、ステップ3をスキップして、ソース・ウォレットから発行者ウォレットに直接受け取ることが可能である。
マルチ台帳発行のために、クロス台帳変異を使用することが可能である。これは、例えば、所有権の公的な記録が移転用に使用されている台帳とは別個である場合、又は公的な記録が影響を受ける台帳の所有権の記録の合計である場合に使用される。上述の具体的な台帳に存在するInfinXchange(商標)の合計メカニズムを用いて、変異により、トークンが複数の台帳上で発行できるようになる、及び/又は1つの台帳上で発行されたトークンが別の台帳に「フロー」できるようにする手段を提供する。トークンが台帳から台帳へ移動すると、流通におけるトークンの総数は一定なままであるが、所有権の記録は台帳から台帳へと移動する。このタイプのブリッジは、引き出しファンクションと預け入れファンクションを連結する。トークンを1つの台帳から同時に除去することによって、トークンは別の台帳の流通に導入され、トークンの総数は一定なままである。台帳から出て行くファンドは、ソース台帳ベース・ウォレットに送られる。この移転はまた、トークンを移動させずにトークンを保留するエスクロー取引であってもよい。等価な数のトークンが、発行者(ウォレット、口座、又はスマート・コントラクト)から宛先台帳上の流通に、又はColdウォレットからプロバイダB上のアウトバウンド・ウォレットに、宛先へのデリバリー用に発行される。デリバリーに成功すると、ソース台帳で呼び出されたIIssuer.Destroyファンクション流通からトークンを除去する。
アウト・オブ・バンド移転モジュール2104は、価値移転経路レッグがシステム内で完全に自動化されない場合に、アウト・オブ・バンド(OOB)処理を提供する。サード・パーティがシグナリングしてデータを申し込み側のシステムに提供し、処理の実行を容易にできるように、インターフェースが設けられる。例えば、ブリッジがネットワーク間でファンドの1wayフローのみをサポートすることができる事例では、ファンドの不均衡が累積し、バランスを回復させるためにOOB取引が必要とされる場合がある。OOBのタイム・ラグ、及びアウトバウンド口座における適正なファンドの事前位置付けを管理することは、制御用にしっかり確立された数学的モデルを伴うロジスティックスの問題である。価格発見は、価格及び流動性モジュール2010(図12)の運用によって容易になる。このモデルは、市場ファンクションを通じて価格を調節し、インバウンドとアウトバウンドとの口座レベルのバランスを維持することが可能である。流動性を補充するために、外部の市場を使用することができる。ダークプールの所有者(資産をプールへ寄付する人)は、プールの使用にリンクした手数料から収入を受け取る。価格及び流動性モジュール2010は、エコシステム、通貨、資産取引所間の流動性を管理するように設計される。価格及び流動性モジュール2010は、マーケット・メイキングのアルゴリズムを適用して流動性を管理する。価格及び流動性モジュール2010は、ダークプールの両側のリソースの残高に基づいて、移転のコストを管理してもよい。これは資本のフローにおける持続的な不一致のコストを押し上げる。AとBとの間のリソース・フローにおける持続する不均衡は、A->Bに動くと価格が上昇し、B->Aでは減少する。不一致が大きいと、モデルの収益が大きくなる。ユーザは、必要なところに流動性をもたらすよう、不一致に「投資」することができる。
通貨の交換が伴う場合、流動性ダークプールを使用して、エコシステム同士、又はエコシステム内の移転を容易にすることもできる。チェーン化されたフローは、価値のあらゆるフローのための経路を提供し、外部の流動性を使用するために、利用可能な通貨の交換を含み、多くのプロバイダに対して繰り返されてもよい。通貨の交換は、価格及び流動性モジュール2010を介して発生することができる。処理は、繰り返され、カウンターパーティの交換口座を使用して流動性を最大化することができる。
上述の技術的なプラットフォーム及びデータ構造は、コンピュータ売買プラットフォームの有効性及びスループットを向上させるために使用することができる。取引効率は、以下のものとして測定することができる:1)取引からもたらされる、価格の変化;2)取引を完了するための時間;又は3)サポートすることができる取引の合計サイズ。価値を、別の形態の価値と交換するリクエストが、ある資産の他の資産に対する著しい価格比率の変化なしに、短期間のうちに満たすことができない場合、市場は、非流動的であると言われる。例えば、図22に図示されるように、投資家は、マーケットプレイス又は取引所から、金(資産B)をUSD(資産A)で購入したい場合がある。マーケットプレイスは、価格決定エンジンによってセットされた価格で、金との交換でUSDを受け入れる。金購入の一定の流入は、結果として、利用可能なUSDが増加して、利用可能な金のプールが対応して減少する。利用可能な金のアウトバウンド口座供給が減少するため、その流動性(あらゆる価格における大量注文をサポートする能力)は低下する。金の需要の増加が続き、交換の価格が変わらない場合、宛先プールにおける金の供給は結果的に不足し、流動性の全体的な損失につながる。
マーケットプレイスにおいて資産の流動性を持続させるためには、いくつかのファクタが必要とされる:資産Aを有しており資産Bの需要がある投資家の利用可能性;マーケットプレイスにおいて需要を満たす資産Bの適切な供給;供給を需要と一致させるための、資産Bの固有な価値に一貫した効果的な価格決定;資産Bが使用を邪魔されずに利用可能となるべく、効果的でタイムリーな所有権移転。より直接的には、流動的な市場は、効率的に価格決定して、供給/需要を一致させ、価値の使用を許可するよう迅速に決済する。
図23は、1ペアの資産同士での流動性をサポートする従来的なシステムの基本的な要素を図示している。システムは:指定された価格(資産Bの単位当たりの資産Aの単位の比)で、資産Aと引き換えにある金額の資産Bをリクエストする手段をサポートすることができる;リクエストに対して資産Bを運ぶ手段を含むことができる(通常は資産のプール);資産Bと引き換えに資産Aのデリバリーを受け入れることができる。任意選択で、システムは:サービスに手数料をチャージし、流動性メカニズムの使用を通じて資産Aの累積を使用して、資産Bの利用可能なプールを補充するためのメカニズムを必要としてもよい。
流動性ファンクションの中心的な恩恵は、資産Aから資産Bへの変換である。ソース及び宛先準備金は、異なる通貨、カウンターパーティ、ネットワーク、資産タイプ、管轄域などであってもよい。流動性サービスの価値は、資産価値を変形(交換)できる容易さ、又は代替的な手段を使用してソースから宛先に移転できる容易さに反比例する。代替的な手段を用いて、資産を、自由に、瞬時に、確実に、便利に、そして劣化することなく動かすことができる場合、流動性ファンクションには有用性はなく、手数料を命じることはできない。代替的な変換が、高額、低速、安全でない、又は不便となる程度が、ファンクションの有用性及び収益性を決定する。
資産価値が、いつも1つの方向にフローし、フロー同士のバランスが取れていない場合、持続的な運用は、フローを持続するためにアウト・オブ・バンドの補充モデルを必要とする。このアウト・オブ・バンド処理のセキュリティ及びコストは、モデルの収益性に影響する。バランスの取れたフロー、つまりソースから宛先に動く価値が反対方向への等価なフローに一致している価値フローは、アウト・オブ・バンドの補充の必要性を回避するため、最も望ましい。システムは、両方の資産の準備金の比率が所望の目標に一致する時、局所平衡にある。
図25は、ある資産トークンを定義するデータ構造を概略的に図示している。図25の資産トークンは、図1~図8に対して上述したトークン構造を使用することができ、これらの図ではトークンはウォレットを所有して、ウォレットは再帰的なやり方でトークンを所有する。実装形態は、資産のペアを含む資産のクラスをトークン化するために、DLT技術を利用することができる。クラス・メンバは、ウォレット2504を所有する非代替性資産トークン2502であることができ、資産のペアのそれぞれの側における資産を表現するトークン2506a及び2506bを保有している。非代替性トークン2502は、代替性トークン25008内に「ラップされる」(例えば、代替性トークンは、上述のIAssetFundインターフェースを実装することができる)。したがって、代替性トークン2508は、基礎となる非代替性資産トークン2502の所有権を表現することができる。代替性トークン2508(「親トークン」)の保有者は、ペアの間に流動性を与えることによって生成される収益を反映する配当を取得してもよい。非代替性トークン2502並びに資産トークン2506a及び2506bは、上述のやり方で、資産レジストリ104(図1参照)に登録することができる。
非代替性トークン2502に類似したトークンは、本明細書において「流動性トークン」と称される。代替性トークン2508などのトークンは、本明細書において「ラップされた流動性トークン」と称され、上述のようなネットワーク化されたコンピューティング・プラットフォーム上に実装された取引所を介して、全体的に又は一部、移転することができる(ラップされた流動性トークン内の株式を売却することによって)。例えば、ラップされた流動性トークンは、図1及び図12に関して上述した技法に類似したやり方で、ネットワーク化された売買プラットフォーム上で取引することができる。
図26に図示されるように、ラップされた流動性トークン(AB)の価格は、基礎となる資産の価値、及び基礎となるソース準備金、つまり「流動性プール」によって作り出される収益に依存する。ペア間の流動性への高い需要は、ペアの流動性トークン保有者へ支払われる配当を増加させ、次いでラップされた流動性トークンへのさらなる需要を作り出す。
資産ペアの流動性トークンの需要の高まりは、エコシステムへの資本の純流入となる。この資本の流入は、流動性プール内で、キャッシュとトークン準備金との間に不均衡を作る。上で開示される弾力的な証券化技法を用いて、資本の流入は、基礎となる資産プールを増加させるために使用することができる。価格決定ファンクションとしてスマート・コントラクト(又は他のアルゴリズム)を使用して、準備金に保有される流動性プール内のキャッシュがしきい値にヒットすると(流動性ファンクションにおける需要の高まりを反映して)、そのキャッシュをより広い基礎となるプールに移動して、償還需要を満たすため、又は流動性ペアに必要な資産を買うために提供することが可能である。ソース準備金内のキャッシュの結果的な増加は、エコシステムの全体的な流動性を高めることを助ける。
図26に示されるように、流動性プールは、流動性トークン用に作成することができる-つまり図23の基礎となる流動性プール及び価格決定ファンクションに類似した配置構成を使用する。この流動性プールは、ポートフォリオの一部であってもよく、流動性を管理するために使用される。これは、資本のシステムへの純流入及び流出を統制する助けとなる。図26に示されるように、流動性トークンを構成するために、非代替性資産トークン(図25の2502)が、上述のように、ソース口座及び宛先口座と共に作成され、価格決定ファンクション及び手数料構造を含む。資産トークンは、代替性トークン(図25の2508)内にラップされ、投資家が流動性資産に投資できるようにしている。弾力的な証券化規則により、投資が資産へ/資産からフローして需要を満足できるようにしている。
流動性を必要とする各ペアは、自分自身の流動性トークンを有しているため、自己バランス型の流動性システムは、資産ペアのエコシステム全体に形成することができる。1つのペアに対する流動性の必要性が低下すると、その配当は下がり、そのペアに対する流動性トークンの投資家需要を低下させる。このことは、そのペア流動性プールからの資本の純流出となる。利回りを求める投資家は、自身の資本を、手数料が市場を上回っている他のペアに投資する。この方法では、資本は流動性に対する最大の需要にフローし、自己バランス型システムをもたらす。流動性トークンは、上述のようにその後代替性トークン内にラップすることが可能な親ファンド・トークンにまとめることができ、ファンドの株式を売却できるようにして、保有者が基礎となるウォレット内の価値の利息及び手数料から生じる収益を所有できるようにしている。
流動性トークンは、ダークプール(私的に組織化されたフォーラム及び取引所)と併せて使用して、例えば、図12に関連して開示されたブリッジ及びプラットフォームを使用して、エコシステム同士での価値の移転を促進及び自動化することができる。チェーン化移転技術と併せて使用され、ブリッジに関連付けられる流動性トークンは、エコシステム同士での価値の移転に資金を提供する手段を提供する。ダークプールは、手数料、マーケット・メイキング、又は両方を通じて価値を生成する。収入生成ポートフォリオとして、これらはサード・パーティによって所有されるか、セキュリティ・トークンとして売買される。ダークプールは、ジャストインタイムのサプライ・チェーン・マネジメント・ソリューションを表現して、より低速で、内部的な補充処理に対して一過性のフローを最適化する。
流動性価格決定ファンクションは、資産、エコシステム、及び取引所同士の流動性を管理する。エンジンは、リソースのバランスを取るために必要な移転のコストを管理する。これは、ユーザにインセンティブを与えて不一致に「投資」して流動性を必要なところで動かすことによって、資産のフローにおける持続的な不一致のコストを押し上げる。流動性価格決定ファンクションの一実装形態は、ソース準備金残高と宛先準備金残高との相対的なバランスを監視して、最近の価格決定履歴に基づいて価格及び価格の変化率を、外部情報に基づいてアンカー値を、補充に関する手数料を、及び動かされている価値の量を、調節する。流動性価格決定ファンクションはまた、市場の状況及びボラティリティに基づいてスプレッド(最小のビッドとアスクの注文価格との差)を決定する。
図24は、価格決定ファンクションを図示している。開示される価格決定ファンクションは、以下を含む、複数のファクタを組み込む:ソース準備金口座と宛先準備金口座との不均衡、現在の市場の状況及びアクティビティ、外部価格決定、資産の額面価格、及び他のファクタ。価格決定アルゴリズムには、スプレッドを広げること、及び他の技法による市場操作に対する保護策を組み入れる。価格決定ファンクションの一実装形態は、取引所に注文を出すことによって価格を管理する。別の実装形態は、流動性リクエストに直接応答して価格をセットするアルゴリズムを通じて価格を直接的に管理する。
リソースがドローダウンすると価格を上昇させる動的な価格決定ファンクションを用いて、流動性エンジンは、市場が平衡に達するまで資産Bの価格を上昇させる(資産Aの観点から)。図24に図示される実例では、資産Bの需要は、資産Bの準備金プールの減少、及び平衡価格の上昇につながる。反対方向への純需要は価格を押し下げる。平衡価格が支配的な市場価格から逸脱する程度が、流動性の価格である。動的な価格ファンクションは、価値のフローに突然の不均衡があっても、準備金リソースが決して不足しないことを保証するように設計される。動的な価格決定ファンクションは、比例-積分-微分(PID:Proportional Integral Derivative)コントローラによって駆動され、持続的な流動性需要に従って価格を動的に調節することができる。
不均衡なフローには、価値をある準備金から別の準備金にOOBで動かす必要がある可能性がある。OOB移転には、ファンドの手作業の移動、取引所の使用、又は上述のようなメインの移転チャネルとは独立した他の移転チャネルが伴う場合がある。しばしば、OOB取引は、長時間のデリバリー時間を伴う場合があり、コストがかかる場合がある。これらの移転の時間及び費用は、従来的なロジスティックス問題のパラメータを定義する-つまり需要の変動性並びに補充する時間及び費用に基づいて、事前位置決めへの価格の金額を決定する。
流動性準備金の運用からの収益は、2つのソースによって生成される:1)取引にかかる手数料、及び2)スプレッド(フローの、逆フローからの交換価格の差)。手数料は、収益を最大化するように調節することができる。手数料が高すぎると、チャネルは使用されず、収益をもたらさない。手数料が低すぎると、機会を損失する場合がある。類似のロジックが、スプレッドに関連付けられるマーケット・メイキング・ファンクションに適用される。
トークン化構造を作成するため、及び資産管理ファンクションを行うために、追加的な代替構造及び機能上の設計が実装されてもよい。したがって、実装形態及び実例が図示され、説明されたが、発明は本明細書に開示された正確な構築及びコンポーネントに限定されないことを理解されたい。添付の特許請求の範囲で定義される本発明の思想及び範囲を逸脱することなく、配置構成、運用、並びに本明細書において開示される方法及び装置の詳細において、様々な修正形態、変更、及び変形形態が成され得る。