JP2022532917A - クロストリジウム・ディフィシルのワクチン組成物 - Google Patents

クロストリジウム・ディフィシルのワクチン組成物 Download PDF

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Abstract

TcdB又はTedAホロトキシンを介してC.ディフィシル感染症(CDI)を処置又は予防するための方法及び組成物。該組成物は、TcdB又はTcdAの中和エピトープの1つ又は組合せに基づく、抗体、ナノボディ(VHH)、単一ドメイン抗体(sdAb)等の免疫原又は結合剤を特徴とする。免疫原がエンドソームpHでTcdBによる細孔形成に必要なコンフォメーション変化を阻害する場合。さらに、免疫原は、被切断結合のCPD切断側への移動、及びCPDに対するGTDの適切な配向を阻害するため、毒素を活性化するのに必要なGTDの切断を阻害する。本発明はまた、CDIの処置のためのワクチン、例えば、TcdB又はTccLAを標的とするワクチンについても記載する。

Description

関連出願への相互参照
この出願は、2019年5月21日に出願された米国仮出願第62/851,040号の利益を主張し、その明細書は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
連邦政府が後援する研究又は開発に関する声明
本発明は、国立衛生研究所によって授与された助成金番号R01AI125704及びR01AI139087、並びに国防総省/国防脅威削減局によって授与された助成金番号HDTRA1-16-C-0009及びHDTRA1-18-1-0035の下で政府の支援を受けてなされた。政府は本発明において一定の権利を有する。
配列表への参照
出願人は、規則13ter.1(a)に基づいて提出されたUCI_19_16_PCT_Sequencing_Listing_ST25と題する添付文物C/ST.25テキストファイルの形式で記録された情報は、提出された国際出願の一部を形成する情報と同一であると主張する。配列表の内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
本発明は、クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)のホロトキシンを中和すること、より具体的には、クロストリジウム・ディフィシル感染症を処置するための治療用組成物及び方法に関する。
クロストリジウム・ディフィシルは、疾病管理予防センター(CDC)によって緊急の抗生物質耐性の脅威の上位3つに分類されており、先進国においてC.ディフィシル感染症(CDI)は、抗生物質関連下痢及び胃腸炎関連死の最も一般的な原因となっている。CDIの病理は、主に2つの相同外毒素、TcdAとTcdBによって媒介され、これらは結腸上皮を標的にして破壊し、下痢と大腸炎を引き起こす。CDIの病因におけるこれら2つの毒素の相対的な役割は完全には理解されていないが、最近の研究では、TcdBはTcdAよりも毒性が高く、宿主の炎症性及び自然免疫応答を誘導するためにより重要であることが示されている。
TcdA(約308kDa)及びTcdB(約270kDa)は、4つの機能ドメイン、すなわちN末端グルコシルトランスフェラーゼドメイン(GTD)、システインプロテアーゼドメイン(CPD)、中央膜貫通送達及び受容体結合ドメイン(Delivery/RBD)、及びC末端結合反復オリゴペプチド(CROP)ドメインを含む(図1A)。毒素がDelivery/RBD及びCROPを介して細胞表面受容体に結合し、エンドサイトーシスを介して細胞に侵入することは広く認められている。エンドソームの酸性化は毒素のコンフォメーション変化を引き起こし、Delivery/RBDに細孔を形成させ、エンドソーム膜を越えてGTD及びCPDを送達する。
サイトゾルでは、CPDは真核生物に特異的なイノシトールヘキサキスホスファート(InsP6、フィチン酸としても知られている)によって活性化され、続いて自己タンパク質分解を受けてGTDを放出する。次にGTDは、Rho、Rac、CDC42等のRhoファミリーの低分子量GTPアーゼをグルコシル化する。Rhoタンパク質のグルコシル化はそれらの機能を阻害し、アクチン細胞骨格の変化、細胞円形化、そして最終的にはアポトーシス細胞死を引き起こす。TcdA及びTcdBのフラグメントについては、多数の構造が報告されており、これらの毒素ドメインの機能について多数の洞察が得られている。しかしながら、個々の文書がホロトキシンの超三次構造内でどのように相互作用するか、ホロトキシンが低pH及びInsP6等の環境及び細胞キュー(これらは中毒をもたらす)に正確に段階的に動的に応答する方法は不明である。
抗TcdB中和抗体(ベズロトクスマブ)は、CDI患者の最大35%が再発し、多くの患者が複数回の処置を必要とする可能性があるため、再発感染の予防として米国食品医薬品局(FDA)によって最近承認された。しかしながら、この抗体はCDIの処置にもCDIの予防にも適応されていない。
本発明の目的は、独立請求項に明記されているように、クロストリジウム・ディフィシルのホロトキシン(すなわち、TcdB又はTcdA)の中和を可能にする治療用組成物及び方法を提供することである。本発明の実施形態は、従属請求項に記載されている。本発明の実施形態は、それらが相互に排他的でない場合、互いに自由に組み合わせることができる。
本発明は、C.ディフィシルの一次ホロトキシン(TcdB又はTcdA)を中和する1つ以上の単離されたポリペプチドを含む治療用組成物を記載する。いくつかの実施形態では、単離されたポリペプチドは、ホロトキシンに結合し、その毒性(機能)を阻害し、それによって該ホロトキシン中和する基で構成される。
さらに、本発明は、C.ディフィシルの一次ホロトキシン(TcdB又はTcdA)を中和する方法を特徴とし得る。いくつかの実施形態では、この方法は、C.ディフィシルのホロトキシン(TcdB又はTcdA)の免疫原を産生し、免疫原を宿主に導入して、免疫原に対する免疫応答を誘発することを含む。別の実施形態では、宿主は、免疫原上のホロトキシン塩基に特異的な抗体を産生する。
さらに、本発明は、C.ディフィシルのホロトキシン(TcdB又はTcdA)に特異的なワクチンを設計及び製造する方法を特徴とし得る。
本発明を任意の理論又はメカニズムに限定することを望まないが、本発明の免疫原は無毒であり、それらを潜在的により安全にするため、本発明のワクチンは(例えば、CDIに対するトキソイドワクチンと比較して)有利である可能性があると考えられ;本発明の免疫原は、E.coliにおいて高収率及び高純度で産生され得、それらを産生、処方、及び保存することをより安価にし(ワクチンの産生は困難である可能性がある);本発明の免疫原は、(トキソイドにおける破壊された抗原構造と比較して)それらの天然の3D構造を保持し、したがって、ワクチンとしての免疫応答を誘発するためにより効率的である可能性があり;本発明の免疫原は小さく、既知の中和エピトープを含み、したがって、免疫原は、中和抗体の産生を誘発するためにより効率的である可能性がある。さらに、これらの免疫原は(ホロトキシン全体と比較して)より小さく、より特異的なTcdBの領域に向けられているため、より良い免疫応答をもたらす可能性がある。本発明は、ホロトキシン全体よりも小さいが、小さい(例えば、15-mer)ペプチドよりも大きいポリペプチド:明確に定義された3D構造を有する中型ペプチドを提供する。
本明細書に記載の任意の特徴又は特徴の組合せは、文脈、本明細書、及び当業者の知識から明らかなように、任意のそのような組合せに含まれる特徴が相互に矛盾しないことを条件として、本発明の範囲内に含まれる。本発明の追加の利点及び態様は、以下の詳細な説明及び特許請求の範囲で明らかである。
本発明の特徴及び利点は、添付の図面に関連して提示される以下の詳細な説明を検討することから明らかになるであろう。
図1Aは、全長TcdBホロトキシンの概略図を示し、TcdB:GTD(赤):CPD(紫);Delivery/RBD(黄色);CROP(青)とおおよそのVHH結合領域のドメイン構成を示す。
図1Bは、TcdBホロトキシンの3D構造の概略図を示している。明確にするため、結晶化を促進するために使用された3つのVHHを省略した(GTD;CPD;Delivery/RBD;CROP)。
図2Aは、短い繰り返し(SR、細い青いバー)及び長い繰り返し(LR、太い黒いバー)の構成を示すCROPドメインの概略図を示す。破線は、4つのCROPユニット(I~IV)の境界を示す。
図2Bは、CROPドメインの拡大図を示すが、TcdBの残りの部分は表面表現である。
図2Cは、4つのCROPユニットの重ね合わせを示す。各CROPユニットのLRは、約132~146°のねじれを引き起こす。
図2Dは、CROPドメインを毒素の残りの部分に接続するヒンジ領域が、TcdBの中心に位置し、GTD、CPD、及びデリバリー/RBDに囲まれていることを示す。 図2Eは、CROPドメインを毒素の残りの部分に接続するヒンジ領域が、TcdBの中心に位置し、GTD、CPD、及びデリバリー/RBDに囲まれていることを示す。
図3Aは、SAXS研究におけるカーブフィット分析を示しており、CROPドメインがpH依存性のコンフォメーション変化を受けることを示す。TcdBホロトキシンの構造に基づく理論的なKratkyプロットは、pH5.0(上のパネル)での実験的な散乱プロファイルとほぼ同じであるが、pH7.4(下のパネル)での散乱プロファイルとは異なる。
図3Bは、XL-MSによって同定された異なるTcdBドメイン間の架橋ペプチドを示す。
図3CはXL-MSの結果を示し、TcdBが中性pHで「閉じた」コンフォメーションをとることができ、CROPドメインの中央部分とC末端先端がDelivery/RBDの約30Å以内に移動することを示唆する。
図3Dは、TcdBホロトキシンの2つの制限構造状態のモデルを示す。GTDに結合した7Fのアクセプター色素及びCROPドメインに結合したB39(星)上のドナー色素(六角形)を示す。
図3Eは、pH5.0(n=498)及びpH7.0(n=594)での色素標識VHHとの複合体におけるTcdBからの平均化されていないFRET効率の母集団ヒストグラムを示す。
図4Aは、TcdBの細孔形成中間状態を示す。5DはDelivery/RBDに結合し、細孔形成領域と直接相互作用する。細孔形成領域をリボンモデルで示し、残りの毒素を表面モデルで示す。
図4Bは、1.0σで輪郭が描かれた細孔形成領域の一部の代表的な2Fo-Fc電子密度マップを示し、これを、最終的な精緻化されたモデルでオーバーレイする。
図4Cは、大きなクロストリジウムグルコシル化毒素(LCGT)ファミリーの種々のメンバー間の細孔形成領域のアミノ酸配列アラインメントを示す。TcdB*、TcdB、及びTcdB2は、それぞれM68株、VPI 10463株、及びBI/NAP1/027株によって生成される。TcdB*及びTcdAの二次構造を、それぞれ上部と下部に示す。目に見える電子密度を持たないTcdBホロトキシンの残基1032-1047を、「x」で示す。
図4Dは、酸性pH(紫)のTcdB及び中性pH(オレンジ)のTcdAが、細孔形成領域において劇的に異なるコンフォメーションを採用することを示す。2つの構造を、Delivery/RBDに基づいて重ね合わせた。
図4Eは、カルセイン色素放出アッセイを示す。TcdB(0~25nM)を、5D又は7Fの存在下又は非存在下で、pH4.6の50mMカルセインをロードしたリポソームで試験した。
図4Fは、膜脱分極アッセイを示す。リポソームを、膜貫通KCl勾配の存在下でバリノマイシンを添加することにより、正の内部電圧で極性化した。膜電位を、電圧感受性蛍光色素ANS(8-アニリノナフタレン-1-スルホン酸)を使用して測定した。3分後、様々な濃度の5D又は7Fを含むTcdBを添加した。データを平均±SEM、n=3として表す。
図5Aは、TcdBの一次配列におけるβフラップ、3ヘリカルバンドル(3-HB)、及びヒンジの位置を示す概略図を示す。
図5Bは、TcdBホロトキシンにおけるアポCPD(灰色のコイル)と、InsP6と結合したCPDフラグメントとの重ね合わせを示す。アポCPDの亜鉛原子は球として表示され、InsP6はスティックモデルである。
図5Cは、βフラップ、3-HB、及びヒンジがTcdBの中心に共局在することを示している。 図5Dは、βフラップ、3-HB、及びヒンジがTcdBの中心に共局在することを示している。
図6は、様々なナノビーズサブユニットワクチンの抗体価を示す。
本発明の化合物、組成物、及び/又は方法が開示及び説明される前に、本発明は特定の合成方法又は特定の組成物に限定されず、したがって、当然変化し得ることを理解されたい。本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、限定することを意図するものではないことも理解されたい。
ここで図1~6を参照すると、本発明は、CDIを潜在的に処置及び予防するために、C.ディフィシルの一次ホロトキシン(すなわち、TcdB及びTcdA)を中和する治療組成物及び方法を特徴とする。さらに、本発明は、C.ディフィシルのホロトキシンのためのワクチンを製造する方法を特徴とする。
本明細書で使用される場合、C.ディフィシル由来のTcdBの配列は、M68株に由来する(WP_003426838.1、以下の表1を参照されたい)。全てのアミノ酸番号はこの配列を参照する。
Figure 2022532917000002

Figure 2022532917000003
表1及び図1Aを参照すると、TcdBホロトキシンは、アミノ酸1~544のN末端グルコシルトランスフェラーゼドメイン(GTD)、アミノ酸545~841のシステインプロテアーゼドメイン(CPD)、アミノ酸842~1834の送達ドメイン/受容体結合ドメイン(Delivery/RBD)、及びアミノ酸1835~2367のC末端結合反復オリゴペプチド(CROP)ドメインを有する。さらに、3つの中和エピトープ:E3(GTDでは、アミノ酸23~63を含む);7F(アミノ酸147~538を包含する切断部位にすぐ横に並置されたGTDのC末端);及び5D(アミノ酸1105~1358を含むDelivery/RBDの一部)がある。中和エピトープに含まれる領域は一次アミノ酸配列では線形ではないが、3Dでクラスター化してエピトープを形成する。
いくつかの実施形態では、本発明は、C.ディフィシルの一次ホロトキシンを中和する1つ以上の単離されたポリペプチドを含む治療用組成物を特徴とする。いくつかの実施形態では、単離されたポリペプチドは、ホロトキシンに結合し、毒性/機能を阻害し、それによって該ホロトキシンを中和する配列を含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチド配列は、結合剤又は他の薬物の免疫原又は標的として使用され得る。
C.ディフィシルTcdBの様々な免疫原を生成した(表2を参照されたい):TcdB-FL(全長TcdB);GTD(アミノ酸1~543、配列番号2)、TD(アミノ酸798~1805、配列は示していない);TD3(アミノ酸1286~1805、配列は示していない);CROP4(アミノ酸2235~2367、配列は示していない);及びTD1(アミノ酸1072~1452、細孔Bエピトープ、配列番号3)。TDは転座ドメインを指す。
以下の表2は、免疫原として、又は結合剤若しくは他の薬物の標的として使用され得るポリペプチド配列の非限定的な例を記載する。
Figure 2022532917000004

Figure 2022532917000005

Figure 2022532917000006

Figure 2022532917000007
ここで表2を参照すると、本発明は、ここに列挙された配列に限定されない、単離されたポリペプチドを特徴とする。配列番号2は、C.ディフィシルのTcdBのアミノ酸1~543を指す。配列番号3は、C.ディフィシルのTcdBのアミノ酸1072~1452を指し、アミノ酸1072~1452は細孔形成に必要な転座ドメインの一部である。配列番号5は、C.ディフィシルのTcdBのアミノ酸1052~1472を指す。配列番号6は、C.ディフィシルのTcdBのアミノ酸1022~1502を指す。配列番号7は、C.ディフィシルのTcdBのアミノ酸1~533を指す。配列番号8は、C.ディフィシルのTcdBのアミノ酸1~593を指す。配列番号9は、C.ディフィシルのTcdBのアミノ酸1~573を指す。配列番号10は、C.ディフィシルのTcdBのアミノ酸1105~1358を指し、5Dエピトープを包含する領域である。配列番号11は、C.ディフィシルのTcdBのアミノ酸23~63を指し、E3エピトープを包含する領域である。配列番号12は、C.ディフィシルのTcdBのアミノ酸147~538を指し、F7エピトープを包含する。配列番号13は、ヒンジ領域に対応するC.ディフィシルのTcdBのアミノ酸1792~1845を指す。配列番号14は、3-HB領域に対応するC.ディフィシルのTcdBのアミノ酸666~841を指す。配列番号15は、ベータフラップ領域に対応するC.ディフィシルのTcdBのアミノ酸741~841を指す。配列番号16は、C.ディフィシルのTcdAのアミノ酸1~541を指す。配列番号17は、C.ディフィシルのTcdAのアミノ酸1073~1452を指す。配列番号18は、C.ディフィシルのTcdAのアミノ酸22~62を指す。配列番号19は、C.ディフィシルのTcdAのアミノ酸146~536を指す。配列番号20は、C.ディフィシルのTcdAのアミノ酸1789~1840を指す。配列番号21は、C.ディフィシルのTcdAのアミノ酸664~842を指す。配列番号22は、C.ディフィシルのTcdAのアミノ酸743~842を指す。
いくつかの実施形態では、ヒンジエピトープは、標的化され得る。本明細書で使用される場合、ヒンジエピトープは、ヒンジ(アミノ酸1792~1834)、3-HB(アミノ酸766-841)、及びβフラップ(アミノ酸742~765)のうちの1つ、2つ、又は3つ全てを含む。これらの3つの構造単位はアミノ酸配列で分離されているが、3Dで共にクラスター化されている。
いくつかの実施形態では、単離されたポリペプチドは、その配列と少なくとも50%同一であるペプチドを含む。いくつかの実施形態では、単離されたポリペプチドは、その配列と少なくとも60%同一であるペプチドを含む。いくつかの実施形態では、単離されたポリペプチドは、その配列と少なくとも75%同一であるペプチドを含む。いくつかの実施形態では、単離されたポリペプチドは、その配列と少なくとも90%同一であるペプチドを含む。いくつかの実施形態では、単離されたポリペプチドは、その配列と少なくとも98%同一であるペプチドを含む。
本発明はまた、本発明による少なくとも1つのポリペプチドを含む免疫原を特徴とする。いくつかの実施形態では、免疫原は、本発明による2つのポリペプチドに特異的な二価免疫原である。いくつかの実施形態では、2つのポリペプチドが混合される。いくつかの実施形態では、2つのポリペプチドは共有結合している。いくつかの実施形態では、免疫原は、本発明による3つのポリペプチドに特異的な三価免疫原である。いくつかの実施形態では、3つのポリペプチドが混合される。いくつかの実施形態では、2つ又は3つのポリペプチドは共有結合している。いくつかの実施形態では、免疫原は、本発明による4つのポリペプチドに特異的な四価免疫原である。いくつかの実施形態では、4つのポリペプチドが混合される。いくつかの実施形態では、2つ、3つ、又は4つのポリペプチドが共有結合している。
いくつかの実施形態では、本発明は、C.ディフィシルの一次ホロトキシンを中和する方法を特徴とする。いくつかの実施形態では、該方法は、C.ディフィシルのホロトキシンの免疫原を産生すること、及び免疫原に対する免疫応答を誘発するように免疫原を宿主に導入することを含み、宿主は、免疫原に基づいてホロトキシンに特異的な抗体を産生する。
本明細書で使用される場合、「免疫原」は、宿主において免疫応答を誘発することができる任意の化合物を指し得る。免疫原の非限定的な例としては、結合剤、VHH又はナノボディと呼ばれる重鎖のみの抗体の抗原結合領域(V)、抗体、抗体フラグメント、小分子又は薬物を挙げることができる。その他の適切な免疫原も検討され得る。本明細書で使用される場合、「宿主」は、マウス又はヒト等であるがこれらに限定されない哺乳動物を指し得る。
いくつかの実施形態では、本発明は、C.ディフィシルのホロトキシンに特異的なワクチンを設計及び製造する方法を特徴とする。いくつかの実施形態では、ワクチンは、上記の表2に列挙された配列のいずれかの免疫原を含み得るが、これに限定されない。特定の実施形態では、ワクチンは、表2に上に列挙された配列に類似した免疫原又はワクチン、例えば切断バージョン、拡大バージョン、又は相同であるものを含む。本発明は、細孔Bエピトープ(配列番号3)を使用する最初のマウスCDIワクチンを提供する。本発明は、マウスワクチンに限定されず、ヒト等の他のワクチンを含む。
本発明はまた、コンビナトリアルケミストリーを使用して3つの異なるTLRアゴニストを一緒に連結して1つのアジュバント複合体を形成する、新規のToll様受容体(TLR)トリアゴニストアジュバントプラットフォームを用いて抗原を製剤化することを記載する。TLRトリアゴニストアジュバントのパネルの免疫調節活性を評価し、それらが、例えば、in vitro及び/又はin vivoで、特有の抗原特異的免疫応答を誘発するかどうかを見出すことができる。上位の候補物質を、効果的なワクチンの生成を支援するために評価してもよい。
本発明はまた、ワクチンの設計及び製造のための戦略を記載する。例えば、本発明は、最適化されたミクロスフェア捕捉システムを使用するワクチン抗原(Ag)捕捉及びin vivo送達プラットフォームを記載する。タグ又は他の化学的架橋剤を使用して、抗原をミクロスフェアに付着させることができる。例えば、Hisタグ付きタンパク質は、in vitro転写翻訳(IVTT)系又はin vivo(E.coli)を使用して、抗原の配列を含むプラスミドから発現される。ストレプトアビジンでコーティングされたミクロスフェアを、トリス-NTAビオチンリンカーと結合し、大腸菌(E.coli)において又はIVTT反応から発現されたタンパク質を捕捉するために使用することができる。得られたAg結合ミクロスフェアは、TLRアゴニストアジュバントの有無にかかわらず直接投与され、抗体放出のダイナミクス及びアイソタイプをモニターする。Agをビーズあたり約200,000の密度でコーティングした。免疫原性の研究により、堅牢で耐久性のあるAg特異的応答が明らかになった。これは、ミクロスフェアへの結合による複雑な混合物からの特定のタンパク質の分離を示し、直接免疫原性試験を高スループットでスケーラブルな様式で実施することができる。本発明は、この特定の方法に限定されず、本発明は、Hisタグに限定されない。
ワクチン製剤を表3に従って製造した。マウスに様々な製剤を注射(SC)した。プライムは0日目であり、ブースト1は14日目であり、1群あたり4匹のマウスがいた。表3及び図6は、測定された中点力価を示す。Agは抗原単独を表し、AVはAddavaxを表し、AV+TLRは、Addavax、CpG、MPLA、TLR2,6を表す。図6は抗体力価を示す。C.ディフィシル TcdBの非毒性セグメントによる免疫化は、マウスで高い抗体レベルを誘導する。抗体レベルは3 log超増加する。免疫応答は、(完全長の毒素である2367アミノ酸と比較して)381アミノ酸の免疫原に対して特異的である。381アミノ酸の免疫原に対して誘導された抗体は、全長毒素にも反応する。
Figure 2022532917000008
本発明はまた、抗体又は結合剤の抗毒素活性を改善するための方法、及び目的の複数のエピトープ(例えば、本明細書の毒素上の複数の中和エピトープ)を同時に標的とするマルチドメイン抗体又は結合剤を開発するための方法を記載する。
本発明は、CDIの処置のために(例えば、薬物、小分子、結合剤等を用いて)TcdBを不活性化するための中和エピトープを標的化することを記載する。本発明はまた、中和エピトープに基づくワクチンの開発について記載する。免疫原又はワクチンは、例えば、その毒性の前提条件である個々のドメインの生物学的機能を阻害することによって、又は細胞を攻撃する前にその不活性化につながる細胞外活性化を促進することによって、ホロトキシンを不活性化することができる。

以下は、本発明の非限定的な例である。当該例は、いかなる方法でも本発明を限定することを意図するものではないことを理解されたい。等価物又は代替物は、本発明の範囲内にある。
方法
C.ディフィシルのM68株によって産生されたTcdBを使用した。TcdBホロトキシン及びそのGTDを前述のように発現させた。4つのVHH(5D、E3、7F、及びB39)、VPI 10463株によって生成されたTcdBのGTD(残基1~542、GTDVPI10463と呼ばれる)、及びTcdBの切断型Delivery/RBD(残基1072~1433)、TcdB1072-1433)、及びTD1(C末端に10×Hisタグを持つ残基1072~1452)をコードする遺伝子を、全てのタンパク質のN末端に6×His/SUMO(サッカロミセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)Smt3p)タグが導入された改変pET28aベクターにクローニングした。TcdBフラグメント(残基1~1805、TcdB1-1805)を、SUMOタグとTcdB1-1805の間に導入されたツインStrepタグ及びC末端の6×Hisタグを持つ改変されたpET22bベクターにクローニングした。全ての変異体を2ステップPCRによって生成し、DNAシーケンシングによって検証した。
5D、E3、7F、B39、GTDVPI10463、TcdB1-1805、TcdB1072-1433、及びTD1を、大腸菌(Escherichia coli)BL21-Star(DE3)(Invitrogen)で発現させた。細菌をカナマイシン又はアンピシリンを含むLB培地で37℃で培養した。OD600が約0.8に達したとき、温度は16℃に低下した。1mM IPTG(イソプロピル-b-D-チオガラクトピラノシド)で発現を誘導し、16℃で一晩継続した。遠心分離により細胞を回収し、使用するまで-80℃で保存した。
Hisタグ付きTcdB、GTD、及びHis-SUMOタグ付き5D、E3、7F、B39、GTDVPI10463、TcdB1-1805、TcdB1072-1433、及びTD1を、50mM Tris、pH8.5、400mM NaCl、及び10mMイミダゾールを含む緩衝液中でNi2+-NTA(ニトリロ三酢酸、Qiagen)アフィニティー樹脂を使用して精製した。タンパク質を高イミダゾールバッファー(50mM Tris、pH8.5、400mM NaCl、及び300mMイミダゾール)で溶出し、20mM Tris、pH8.5、1mM TCEP、及び40mM NaClを含む緩衝液に対して、4℃で透析した。5D、E3、7F、B39、GTDVPI10463、TcdB1072-1433、及びTD1のHis-SUMOタグを、SUMOプロテアーゼによって切断した。これらのタンパク質、並びにTcdBホロトキシン及び未切断型Hisタグを持つGTDを、20mM Tris、pH8.5を含む緩衝液でMonoQイオン交換クロマトグラフィー(GE Healthcare)によってさらに精製し、NaCl勾配で溶出した。TcdB1-1805は、SUMOプロテアーゼで切断された後、ストレプトアビジンレジンを使用してさらに精製した。
TcdB-5D-E3-7F複合体を、精製されたTcdBホロトキシンを3つの精製されたVHHと1:2:2:2のモル比で氷上で2時間混合することによってアセンブルした。次いで、複合体を20mM Tris、pH8.5でのMonoQイオン交換クロマトグラフィー、続いて20mM Tris、pH8.5、1mM TCEP及び40mM NaClでのSuperose 6サイズ排除クロマトグラフィー(SEC;GE Healthcare)によって精製した。GTD-E3、GTDVPI10463-7F、TcdB1072-1433-5D複合体を、精製されたGTD、GTDVPI10463及びTcdB1072-1433をそれぞれE3、7F及び5Dと、1:2のモル比で氷上で2時間混合することによって作製し、続いて、MonoQイオン交換カラム(20mM Tris、pH8.5)及びSuperdex-200増加SEC(20mM Tris、pH8.5、1mM TCEP、及び40mM NaCl)を使用してさらに精製する。全てのタンパク質複合体を約10mg/mlに濃縮し、使用するまで-80℃で保存した。
X線小角散乱(SEC-SAXS)実験と組み合わせたタンデムオンラインサイズ排除クロマトグラフィーを、前述のようにSSRLビームライン4-2で実施した。精製したTcdBホロトキシンをリン酸緩衝生理食塩水(PBS)、pH7.4、5mM DTT、又は20mM酢酸ナトリウム、pH5.0、50mM NaCl、5mM DTTを含むバッファーに交換し、次いで20mg/mlに濃縮した。SEC-SAXSデータを、Superdex-200 Increase PC 3.2/300カラム(GE Healthcare)を使用してpH5.0及び7.4で収集した。
TcdBのDSSO架橋のため、PBS緩衝液(pH7.4)中のTcdBホロトキシン(50μL、10μM)をDSSOと1:100のモル比で室温で1時間反応させた。50倍過剰の重炭酸アンモニウムを10分間添加することにより架橋反応をクエンチし、得られた生成物をFASPプロトコルを使用して酵素消化に供した。簡潔には、架橋タンパク質をMilipore Microcon(商標)Ultracel PL-30(30kDaフィルター)に移し、還元/アルキル化して、前述のようにLys-C/トリプシンで順次消化した。得られた消化物を脱塩し、ペプチドSECによって分画した。架橋ペプチドを含む画分を、その後のMS分析のため収集した。この作業では、3つの生物学的複製を実施した
LC MS分析を、Orbitrap Fusion Lumos(商標)質量分析計と組み合わせたThermo Scientific(商標)Dionex UltiMate 3000システムをオンラインで使用して実施した。50cm×75μmのAcclaim(商標)PepMap(商標)C18カラムを使用して、300nL/分の流速で82分間で1%~25%のACNのグラジエントでペプチドを分離した。DSSO架橋ペプチドの同定を最大化するため、2つの異なるタイプの取得方法を利用した。
TcdBの単一分子FRET分析の場合、VHH-7F及びB39はそれぞれ、標識のためネイティブシステインにアクセスできないようにする埋め込み(buried)ジスルフィド結合を含む。システイン残基を、突然変異誘発によって7FのN末端(-1の位置)又はB39(G42C)の表面に露出したループに導入した。変異型VHHの発現及び精製は、精製中に全てのバッファーで5mM DTTを使用したことを除いて、野生型タンパク質と同様であった。精製された7Fをアクセプター色素(Alexa-647マレイミド)で標識し、B39をドナー色素(Alexa-555マレイミド)で標識した(Thermo Fisher Scientific)。標識効率を、UV-Vis分光法によって90%超であると決定した。精製した5Dを、EZ-Link NHS-PEG4-Biotin(Thermo Fisher Scientific)を使用してpH6.8でビオチン化し、N末端アミンを優先的に標識した。Alexa-647標識7F、Alexa-555標識B39、及びビオチン標識5Dと複合体を形成したTcdBホロトキシンを、Superose 6SECを使用してさらに精製して過剰なVHHを除去した。
ストレプトアビジンを添加する前に、洗浄した石英スライドをビオチン化ウシ血清アルブミンで不動態化し、続いて2%Biolipidure 203と0.2%Biolipidure 206(NOF America Corp.)の混合物で不動態化した。この処置の後、事前に形成されたTcdB-3VHH複合体は、単一分子間の光学分解能を達成するために使用される100pM濃度よりも桁違いに高い濃度においてスライドへの非特異的結合を示さなかった。
このような低タンパク質濃度では、非共有結合したVHHが部分的に解離するため、測定を迅速に行う必要があり、各pH条件で7回の表面処理を繰り返す必要があった。試料を、プリズムベースの全反射照明蛍光顕微鏡を使用して撮像した。試料を、Alexa-647の場合は637nm(Coherent Inc.、カリフォルニア州サンタクララ)のレーザーダイオードで、Alexa-555の場合は532nm(Laser Quantum USA.カリフォルニア州フリーモント)のダイオードポンプ(diode pumped)固体レーザーで励起した。ドナーチャネル用の585/70バンドパスフィルター及びアクセプターチャネル用の670/30バンドパスフィルター(IDEX Health&Science.ニューヨーク州ロチェスター)を有する645nmダイクロイックミラーを備えるOptosplitレシオメトリックイメージスプリッター(Cairn Research Ltd、英国フェイバーシャム)を使用して、ドナーとアクセプターからの発光を分離した。複製された画像を、10Hzのフレームレートで単一のiXon DU-897 EMCCDカメラ(Andor Technologies、英国ベルファスト)に中継した。
複製画像を相互相関させ、ベースラインを超える強度の回折限界スポットの時間トレースを抽出するため、自作のMATLAB(登録商標)スクリプトでデータを処理した。個々の複合体の経時的な蛍光強度のトレースから、単一の時間ステップでベースラインに対して反相関光退色を示した単一のドナー及びアクセプター色素を含む複合体のみを選択した。反相関光退色事象の大きさから、分子ごとのγ正規化を実施することができ、これにより、絶対FRET効率の報告を可能にする。FRET効率を、ガウス関数に適合したヒストグラムに編集した。
FRETの変化が光物理的変化の結果ではないことを確認するために、相対量子収率及び蛍光異方性を、遊離色素、色素標識VHH、及びTcdBと複合体を形成した個々の色素標識VHHについて測定した。全ての測定を、pH7(50mM Hepes、100mM NaCl、pH7)及びpH5(50mM酢酸ナトリウム、100mM NaCl、pH5)でsmFRETと同じ緩衝液を使用して10nMの色素濃度で実施した。
アンサンブル蛍光は、2.0mmの励起スリット及び2.0mmの発光スリットを使用してISS PC1光子計数分光蛍光光度計で記録した。Alexa-555及びAlexa-647で標識されたサンプルを、それぞれ532nm及び637nmで励起した。蛍光に使用される試料の濃度を、同じキュベットを使用した吸光度測定から決定した。発光強度は、発光極大についての20nmウィンドウの合計として採用した。相対量子収率は、強度をpH7での遊離色素の発光に正規化することによって計算した。異方性測定値を、2.0mmの励起スリット及び2.0mmの発光スリットで収集した。発光を、ドナーとアクセプターでそれぞれ567nm及び670nmで記録した。全ての測定を3回行い、平均及び標準誤差として報告した。
動的光散乱(DLS)を、Zetasizer Nano S(Malvern Panalytical)を使用して実施した。TcdBを、室温で200μlの容量のキュベット内のPBSバッファー中0.2mg/mlの濃度でアッセイした。Zetasizerバージョン7.13ソフトウェアを使用してデータを分析した。
カルセイン色素放出アッセイでは、製造業者のプロトコルに従って、Avanti Mini Extruderを使用した押出法によってリポソームを調製した。簡潔には、指定のモル比の脂質(Avanti Polar Lipid)をクロロホルム中で混合し、次いで窒素ガス下で乾燥させ、一晩真空下に置いた。乾燥した脂質を再水和し、5ラウンドの凍結融解サイクルにかけた。単層ベシクルを、Avanti Mini Extruderを製造業者の指示に従って使用し、200nmの細孔膜を通して押し出すことによって調製した。
55%の1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)、15%の1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-L-セリン(DOPS)、及び30%のコレステロール(10mg/ml)を含む乾燥脂質を150mM NaCl、20mM Hepes(pH7.0)、1mM EDTA、50mMカルセインに再懸濁した。遊離カルセイン色素を、脱塩(Zeba)によってカルセインに捕捉されたリポソームから分離した。蛍光は、Spectramax M2eキュベットモジュールで493nmで励起し、525nmで発光して測定した。アッセイでは、リポソームを150mM NaCl、20mM酢酸ナトリウム(pH4.6)、1mM EDTAで希釈して、最終濃度を0.3mMにし、蛍光シグナルが安定するまでインキュベートした。TcdBのみ(0~25nM)、又はTcdB:VHH=1:2のモル比で5D又は7FとプレインキュベートしたTcdBを添加し、蛍光強度を7分間記録した。0.1%Trion X-100を加えることにより反応を停止させた。蛍光変化のパーセンテージを、((F-F開始時)/(F終了時-F開始時))として計算した。カルセイン色素放出の初期速度を、曲線の直線部分の傾きから推定した。実験を独立して3回繰り返した。
膜の脱分極を、いくつかの変更を加えて前述のように測定した。簡潔には、55%DOPC、15%DOPS、30%コレステロールで構成されるリポソームを200mM NaCl、1mM KCl、10mM Hepes(pH7.0)で調製した。トランス陽性の膜電位(+135mV)を作り出すために、リポソームを200mM KCl、1mM NaCl、10mM酢酸ナトリウム(pH4.6)で希釈して、最終濃度を0.1mMにした。膜電位を、12μM ANSを使用してモニターした。バリノマイシンを0秒の時点で添加し、最終濃度を30nMにした。180秒で、100nM TcdBホロトキシンのみ、又は0.02~1μM 5D又は1μM7FとプレインキュベートしたTcdBを添加し、490nmでの蛍光強度を380nmの励起で7分間モニターした。バチルス・アネウリノリティカス(Bacillus anerinolyticus)(Sigma-Aldrich)由来の2μMグラミシジンを添加することにより反応を停止させた。グラミシジンの存在下での最大変化に対する蛍光変化を、((F-F開始時)/(F終了時-F開始時))として計算した。実験を独立して3回繰り返した。
TcdB自己プロセシングアッセイを、25μlの20mM Tris-HCl、pH8.0で実施し、これは、0.4μMのTcdBホロトキシン又はTcdB1-1805、InsP6が、7F(2μM)の有無にかかわらず、指定の濃度で含んだ。反応混合物を37℃で1時間インキュベートし、次にSDS試料緩衝液中で5分間煮沸して、反応をクエンチした。試料を4~20%SDS-PAGEで調べ、TcdBフラグメントをクーマシーブルー染色で視覚化した。
全長TcdBの結晶構造
C.ディフィシルのM68株からの完全長TcdBホロトキシンを、十分に検証されたバシラス・メガテリウム(Bacillus megaterium)系で発現し、高い均一性まで精製した。広範な結晶化スクリーニング及び最適化、並びにシンクロトロンでの多数の結晶の試験の後、TcdBと3つの中和VHH(5D、E3、及び7F)で構成されるヘテロ四量体複合体の結晶に対する最良のX線回折データを3.87Åの分解能で収集した。TcdB-VHH複合体を、エンドソームにおける生理学的に適切なpHであるpH5.2で結晶化した(図1A、図1B、及び表2)。TcdBホロトキシンの完全な構造は、構造の柔軟性が高いために目に見える電子密度がない2つの小さな領域(残基944~949及び1032~1047)を除いて構築された(図1B)。
結晶構造は、TcdBが3つの主要なコンポーネントで構成されていることを示している。GTD(残基1~544)及びCPD(残基545~841)は、広範なドメイン間相互作用を含む中心的な要素を形成する。Delivery/RBD(残基842~1834)は拡張モジュールを形成し、一方の側でGTDとCPDの両方と相互作用し、GTD/CPDから離れた方向を指す。最も顕著な知見は、CPDとDelivery/RBDの接合部から出現し、フックのようにGTDの周りを湾曲するように反対方向に約130Å伸びる細長いCROPドメイン(残基1835~2367)である(図1B)。エンドソームpHでのTcdBの全体的な構成は、CROPがDelivery/RBDと並行して相互作用する、中性pHでのEM研究から得られたTcdB及びTcdAの構造モデルとは異なる。さらに、TcdBの疎水性細孔形成領域(Delivery/RBDの残基957~1129)は、中性pH付近のTcdAフラグメントで見られるものとは異なるコンフォメーションで観察された。これは、中和抗体(5D)によって「凍結」されたエンドソームpHでのTcdBのめったに見られない孔形成中間状態を表している可能性がある。
CROPドメインの特有の構造
TcdBのCROPは、20~23残基の20回の短い反復(SRと呼ばれる)と30残基の4回の長い反復(LRと呼ばれる)を含む2種類の反復配列で構成される(図2A)。各SRは、βヘアピンとそれに続く柔軟なループで構成され、各LRには、前のSRのβヘアピンと一緒にねじれた逆平行βシートを形成する3つのβ鎖がある。CROPの湾曲は、SRで構成されるβ-ソレノイドの真っ直ぐな棒状のセグメントが散在するLRによって中断され、約132~146°のねじれを引き起こすために発生する(図2B、図2C)。構造的に、CROPは4つの同等のユニット(CROP I~IVと呼ばれる)に分割でき、それぞれがSR1-SR2-SR3-LR-SR4-SR5モジュールで構成される(図2C)。CROP I~IVの重ね合わせにより、約0.9~2.6ÅのCα二乗平均平方根偏差(r.m.s.d.)が得られた。
興味深いことに、他の全てのSRと同様に、認識されないSRモジュール(残基1815~1834)がDelivery/RBDのC末端で識別された。この新たなSRは、Delivery/RBDを細長いCROPに接続するため、上流の長いループ及び短いαヘリックスと共に構造的に異なるモジュール(残基1792~1834)(ここでは「ヒンジ」と呼ばれる)を形成する。さらに、ヒンジは、CPDの活性化に重要なCPDの3本鎖βシート(残基742~765、βフラップと呼ばれる)、並びにGTD、CPD、Delivery/RBD、及びCROPに囲まれた隙間にある3ヘリカルバンドル(残基766~841、3-HBと称される)と直接相互作用する(図2D、図2E)。その戦略的な位置のため、このヒンジは、TcdBの4つのドメイン全ての間の構造的通信を仲介するように調製されている。このヒンジの機能的役割は、この領域の欠失が毒性を劇的に減少させたことを示す以前の研究によって裏付けられている。さらに、ヒンジの近くの超可変配列は、高毒性のC.ディフィシル027リボタイプ及び他の低毒性株によって生成されるTcdB変異体によって示される毒性及び抗原性の違いに寄与する可能性がある。
TcdBは中性及び酸性pHで異なる構造を示す
TcdBホロトキシンの構造は酸性pHで成長した結晶に由来するため、その溶液構造を、それぞれpH5.0及びpH7.4のSAXS(SEC-SAXS)と組み合わせたオンラインサイズ排除クロマトグラフィーを使用してさらに調べた。カーブフィット分析は、この結晶構造に基づいて計算された散乱プロファイルがpH5.0での実験的な散乱プロファイルとほぼ同じであることを示し、TcdBの溶液構造がpH5.0での結晶構造に類似していることを示唆している。しかしながら、pH7.4での実験SAXSデータと結晶構造の計算されたプロファイルとの間の散乱プロファイルの中角(中角q)領域での不一致は、TcdBが中性pHで異なるコンフォメーションをとることを示唆している(図3A)。Guinier及びP(r)分析では、pH5.0及び7.4で同様のR値が示されたが、pH5.0(約233.0Å)のDmaxはpH7.4(約205.0Å)よりも長かった。pH5.0でのTcdBのDmaxは、この結晶構造から予測された値(約247Å)に匹敵する。しかしながら、pH7.4でのTcdBホロトキシンの短いDmaxは、GTD、CPD、及びDelivery/RBDで構成されるTcdBコアから予測される値(約203Å)に匹敵する。したがって、pH7.4では、細長いCROPがTcdBコアに向かってスイングし、よりコンパクトなコンフォメーションをとる可能性があることを示唆している。
pH7.4でのCROPのコンフォメーションをよりよく特徴付けるため、XL-MS戦略を用いて、スルホキシドを含むMS切断可能な架橋剤であるDSSO(ジスクシンイミジルスルホキシド)を使用し、TcdBのドメイン間相互作用を決定した。合計で87の架橋が特定されており、pH7.4のTcdBにおける27のドメイン間相互作用と60のドメイン内相互作用を表す。それらの中で、8対、4対及び8対の固有の架橋ペプチドを、それぞれGTDとCPD、GTDとDelivery/RBD、及びCPDとDelivery/RBDの間で特定した(図3B)。XL-MSデータをこの結晶構造にマッピングすると、これらの架橋のほとんど全てが30Åの距離カットオフを満たし、TcdBの結晶構造との良好な相関関係を示した。
興味深いことに、CROPとDelivery/RBDの間で7対の架橋ペプチドが同定され、これは、この結晶構造で測定した場合、90Å~210Åの範囲のCα-Cα距離に対応する。これは、TcdBのCROPが、この結晶構造で観察されるよりも中性pHでDelivery/RBDにはるかに近づく可能性があることを示唆している。具体的には、残基K1965及びK1977の周りのCROPの中央部分、及び残基K2234及びK2249の周りのCROPのC末端先端は、Delivery/RBDの約30Å以内で移動できなければならない(図3C)。この新たなコンフォメーションは、SAXS研究から得られたpH7.4でのTcdBのDmaxと一致し、中性pHでのTcdAの「閉じた」コンフォメーションに類似する。XL-MSは、安定した構造に加えて動的及び一時的な接触の捕捉を可能にするため、TcdBが中性pHで「閉じた」TcdAのようなコンフォメーションで過ごす時間は不明のままである。
CROPのpH依存性の構造的柔軟性
次に、smFRETを使用して、CROPのpH依存性のコンフォメーション変化を調べた。smFRETは、タンパク質構造及びコンフォメーション変化を調べるための確立された方法であり、不均一又は動的な混合物中の個々の種を識別することができる。TcdBには9つのシステイン残基があり、C699はCPD機能に不可欠であるため、毒素を化学的に標識するのではなく、3つのVHH(7F、B39、及び5D)を分子ツールとして使用してTcdBを標識及び捕捉した。具体的には、アクセプター色素(Alexa-647)は、TcdBホロトキシンのコアを標識する7Fの-1位に導入されたシステイン残基に結合した。ドナー色素(Alexa-555)は、CROPs IV(PDBコード:4NC2)に特異的に結合するB39に結合した。TcdBホロトキシンの構造を考えると、2つの色素間の距離は約47Åである。これらの2つの色素標識VHH間のエネルギー移動は、CROPの動きをモニターする(図3D)。アンサンブルFRET研究に基づくTcdBのコンフォメーション変化に影響を与えないビオチン標識5Dを、不動態化された石英顕微鏡スライドへのTcdBの免疫プルダウンに使用した。3つのVHHはTcdBでプレアセンブリされ、複合体をサイズ排除クロマトグラフィーによって精製した。
個々のヘテロ四量体TcdB-VHH複合体の経時的な蛍光強度のトレースから、単一の時間ステップでベースラインに対して反相関光退色を示した単一のドナー及びアクセプター色素を含む複合体のみを選択した。反相関光退色事象の大きさを用いて、分子ごとのγ正規化を実施し、これにより絶対FRET効率の報告を可能にする。FRET効率をヒストグラムに編集し、pH5.0と7.0の両方で単一のFRETピークが明らかになった(図3E)。単一のピークの存在は、100ミリ秒の時間ビニングよりも速い静的構造又は動的平均化と一致し、これは単一のFRETペアでは区別することができない。
pH5.0(0.532±0.015)及びpH7.0(0.484±0.007)で平均FRET効率に統計的に有意な差が観察され、TcdBがpH依存性のコンフォメーション変化を示すという概念を裏付けている(図3E)。pH5.0での色素標識VHH間の平均FRET効率からの単純な計算では、49.9±0.05Åの推定距離が得られ、これは、酸性pH(約47Å)でのTcdBホロトキシンの結晶構造と一致している。同様の結果がpH5.5及びpH5.25で観察された。pH7.0では、平均FRET効率は、標識部位間の距離が51.5±0.05Åに増加することを示唆した。単一のFRETペアは、残りのTcdBに対してCROPを配置するには不十分であり、コンフォメーションダイナミクスの変化は、FRETから距離への単純な変換に影響を与る。見かけの平均FRETのこのわずかな増加は、pH5.0(0.141±0.026)と比較してpH7.0(0.113±0.002)での分布幅の統計的に有意な25%の減少を伴い、これはコンフォメーションダイナミクスの速度の増加と一致している。
これまでのところ、TcdBでは、結晶構造、SAXS、及びsmFRETの研究によって支持される酸性pHでの「開いた」コンフォメーション、並びにSAXS及びXL-MSによって明らかにされた中性pHでの「閉じた」コンフォメーションである2つの制限構造状態が特定されている(図3D)。これらのデータは、CROPが中性pHでTcdBのコアに関連するコンフォメーションの集合をサンプリングする可能性が高く、そのようなタンパク質ダイナミクスはsmFRETの100ミリ秒の積分時間では解明されないことをあわせて示唆している。CROPとTcdBコアの間の安定した接触の欠如、及びDelivery/RBDとCROPを接続するヒンジの潜在的な構造的再配置により、このようなコンフォメーションサンプリングが可能になる。
エンドソームpHでのTcdBの孔形成中間状態
Delivery/RBDは、GTD及びCPDをサイトゾルに送達する細孔を形成するためにエンドソームの酸性化時に放出されると予測される疎水性の細孔形成領域(残基957~1129)を保護するのに役立つ。TcdBの細孔形成活性は、in vitroで観察される細胞壊死にも寄与する。酸性pHでのTcdBホロトキシンと中性pHでのTcdAフラグメントの構造比較により、細孔形成領域の相同C末端部分(TcdBの残基1032~1134及びTcdAの残基1033~1135)に劇的な違いがあることが明らかになった(図4A、図4B)。TcdAでは、この領域は混合α/β構成を採用しており、疎水性残基は、Delivery/RBDのβシートによって主に形成される連続した溝で遮蔽されている(図4C、図4D)。しかしながら、TcdBの酸性コンフォメーションでは、おそらく高い柔軟性のために、残基1032~1047に見られる電子密度はなく、これらの残基がエンドソームpHで毒素コアから展開及び分離したことを示している。さらに、TcdAにおけるα2に相当するTcdB残基がループ状に展開し、TcdAにおけるβ3及びα3の一部に相当するTcdB残基が、TcdAにある元のα3と同じ面積を占める新たなヘリックスへとアセンブルされる。この遷移のため、TcdAにおけるα3のC末端部分に相当するTcdBにおける疎水性残基(残基1084~1094)は、拡張ループとして膨らんだ。興味深いことに、コンフォメーション変化は、TcdBが5Dによって結合されている領域には広がらず、これは、TcdAで観察されたものと同様のコンフォメーションを維持する。
細孔形成領域で観察されたコンフォメーション変化に対する酸性pH及び5Dの寄与をさらに分析するため、pH8.5で5Dと複合体を形成したDelivery/RBDのフラグメントTcdB1072-1433の結晶構造を決定した(表2)。TcdB1072-1433においてpH8.5で観察された細孔形成領域は、TcdAのような中性pHコンフォメーションをとることがわかった。したがって、この知見は、TcdBホロトキシンで観察された細孔形成領域の新規コンフォメーションがエンドソームpHによって誘導される中間状態を表している可能性が高いことを示唆している。
さらに、5DのTcdBへの結合様式はpH8.5と5.2でほぼ同じであり、5Dの3つの相補性決定領域(CDR)全てが関与していることがわかった。5Dの全体的な結合親和性は、細孔形成領域の外側のTcdB残基が関与する広範な極性及び疎水性相互作用によってさらに強化される。したがって、5DはTcdBにおけるβ4-β5のコンフォメーションを修正することができ、これによりβ4-β5-α4モジュールのpHによるコンフォメーション変化が防止される。以前の突然変異誘発研究は、TcdBにおける5D結合部位の周りに導入された突然変異が、細孔形成及び細胞毒性を効果的に阻害し、5Dの標的となるL1107(L1107K)を単独で突然変異させると、毒性が1,000分の1を超えることを示した。これらの知見は、5DがエンドソームpHでのTcdBによる細孔形成に必要なコンフォメーション変化を阻害する可能性が高いことを示唆している。
この仮説を試験するため、5DがTcdBの膜挿入にどのように影響するかを、2つの補完的なアッセイを使用して調べた。カルセインに捕捉されたリポソームを透過性にするTcdBの能力をモニターすることにより、TcdBがタンパク質濃度依存的な様式でpH4.6でのカルセイン放出速度を増加させることがわかった(図4E)。TcdBを5Dとプレインキュベートすると、TcdBによる色素放出の速度が大幅に低下した。対照として、GTDに結合する7Fは、TcdBによって誘導される色素放出に影響を与えなかった。リポソーム中のバリノマイシン誘発膜電位を消散させるためのTcdBに対する5D又は7Fの影響をさらに研究すると、7Fではなく5DがTcdBの膜脱分極する能力を低下させることがわかった(図4F)。
まとめると、これらの知見は、5Dが細孔形成領域が必要なpH誘導性のコンフォメーション変化を完了するのを防ぐことによってTcdBを中和することを示唆する。特に、5Dによって認識される細孔形成領域は、大きなクロストリジウム菌のグルコシル化毒素(LCGT)のファミリー間で高度に保存されており、TcdA及びTcdB、C.ノービイ(C.novyi)α毒素(Tcnα)、C.ソルデリ(C.sordellii)致死及び出血性毒素(TcsL及びTcsH)、並びにパーフリンジェンスC.(C.perfringens)毒素(TpeL)を含む(図4C)。したがって、細孔形成領域のこの部分は、TcdA、TcdB、他のLCGT、又は他の適切な標的を標的とする広域スペクトルワクチン及び抗体の開発のための優れた標的となる。
TcdBの自己プロセシングの調節
細胞侵入時のInsP6によるCPDの活性化は、TcdA及びTcdBの病理を調節する上で重要なステップである。全体として、TcdBホロトキシン及びInsP6結合CPDフラグメント(PDB:3PEE)のapo-CPDの構造は、βフラップ(図5A、図5B)を除いて、非常に類似している(約1.1Åのr.m.s.d.)。apo-CPDの構造を、TcdB(G542SL544)(PDB:3PA8)の切断配列に基づいて、InsP6又はペプチド阻害剤に結合したCPDフラグメントの構造と比較したところ、βフラップが部分的にTcdBホロトキシンのCPDのP1基質ポケットを占有して基質の結合を防ぐことがわかった。CPDフラグメントでは、InsP6は、βフラップの約90°の回転を引き起こし(図5B)、これは、活性部位及び基質ポケットを適切に順序付けることによってCPDを活性化する。しかしながら、TcdBホロトキシンでは、このようなβフラップの回転は不可能であり、そうしないと、後続の3-HBと立体的に衝突するためである(図5D)。
InsP6によるアロステリック調節に加えて、いくつかの研究は、CROPがTcdB自己プロセシング(autoprocessing)にも影響を与えることを示唆した。InsP6誘導性GTD切断の効率は、TcdBホロトキシンと、ヒンジ及びCROP(残基1~1805)のない切断型TcdBとを使用して比較した。InsP6によって誘発されるGTDの切断はTcdB1-1805でははるかに効率的であることがわかり、CROP及びヒンジがTcdBホロトキシンにおいてCPD機能を阻害するのに役立つことが示唆された。さらに、CROPがない場合、ヒンジを運ぶTcdBフラグメント(残基1~1832)は、ヒンジを持たないもの(残基1~1795)よりも弱いInsP6依存性のGTD切断を示した。これらのデータは、ヒンジがTcdB自己プロセシングの調節に関与していることを示唆している。特に、TcdBホロトキシンでは、ヒンジがβフラップ及び3-HBと相互作用し、4つのドメイン全てを接続するTcdBの「心臓」を形成する(図5C、図5D)。βフラップ及び3-HBは、InsP6結合とCPD活性化の間をつなぐのに重要であるため、CROPのpH依存性の動きに関連するヒンジの構造的再配列は、CPD機能の調節に寄与する可能性がある。
VHH 7F及びE3は、GTD上の2つの異なる中和エピトープを明らかにする
7FはGTD切断を阻害するが、CPDと直接相互作用しない。代わりに、7FはGTDのC末端に結合し、切断部位(L544)にすぐに並置される。特に、7FのCDR3は、被切断結合の上流にあるαヘリックス(残基525~539)、及び隣接するαヘリックス(残基137~158)に、広範な極性及び疎水性相互作用で結合する。このような相互作用は、CPD切断部位への被切断結合の移動、及びCPDに対するGTDの適切な配向を妨害し、したがってGTDの切断を阻害する。
E3は、GTDを特異的に標的とすることにより、Rhoのグルコシル化を阻害し、TcdBの細胞変性効果を遮断する。GTDフラグメント又はTcdBホロトキシンを使用して独立して解明された2つの結晶構造では、E3は同様の方法でN末端の4ヘリックスバンドル(残基1~90)に結合する。より具体的には、E3は、GTDの第2及び第3のヘリックス(残基21~64)を、広範な極性及び疎水性相互作用で認識する。GTD-Rho複合体の構造は報告されていないため、E3がGTD-Rhoの相互作用又は触媒作用にどのように影響するかは不明である。相同な4ヘリックスバンドルは、他のLCGTメンバーのグルコシルトランスフェラーゼドメインにも見られ、グルコシルトランスフェラーゼドメインの原形質膜結合に関与している可能性があり、E3がGTDの膜結合を妨げる可能性があることを示唆している。したがって、GTD-E3複合体の構造は、TcdB及び潜在的に他のLCGTメンバーに対抗するための新たな戦略として、これらのメカニズムをさらに検証及び活用するための基盤を築く。
本発明の好ましい実施形態を示し、説明したが、添付の特許請求の範囲を超えない修正を加えることができることは当業者には容易に明らかであろう。したがって、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲によってのみ限定されるべきである。いくつかの実施形態では、この特許出願に提示された図面は、角度、寸法比等を含む縮尺で描かれる。いくつかの実施形態では、図は代表的なものにすぎず、特許請求の範囲は図の寸法によって限定されない。いくつかの実施形態では、「含む」という句を使用する本明細書に記載された発明の説明は、「本質的にからなる」又は「からなる」と説明され得る実施形態を含み、したがって、「本質的にからなる」又は「からなる」という句を使用する本発明の1つ以上の実施形態を請求するための書面による説明要件を満たす。
以下の特許請求の範囲に記載されている参照番号は、この特許出願の審査を容易にするためだけのものであって、例示的なものであり、特許請求の範囲を図面内の対応する参照番号を有する特定の特徴に限定することを意図するものではない。
配列表4 <223>TD1免疫原(アミノ酸1072~1452)+ペプチドリンカー+10×Hisタグ
配列表4 <223>ペプチドリンカー
配列表4 <223>Hisタグ

Claims (31)

  1. クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)のホロトキシンを中和する1つ以上の単離されたポリペプチドを含む組成物であって、前記単離されたポリペプチドは、前記ホロトキシンに結合し、その毒性を阻害する配列からなる群から選択される配列の配列を含む、組成物。
  2. 前記単離されたポリペプチドが、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、又は配列番号22の配列を含む、請求項1に記載の組成物。
  3. 前記ホロトキシンがTcdB又はTcdAである、請求項1に記載の組成物。
  4. 前記単離されたポリペプチド配列が、細胞を攻撃する前にその不活性化をもたらすTcdBの細胞外活性化を促進することによって毒性を阻害するか、又は細孔形成に必要なTcdBにおけるコンフォメーション変化を阻害するか、又はTcdBの活性化を阻害するか、又はRhoグルコシル化を阻害し、それによってTcdBを中和する、請求項1に記載の組成物。
  5. C.ディフィシルのホロトキシンを中和する方法であって、C.ディフィシルのホロトキシンの免疫原を産生すること、及び前記免疫原に対する免疫応答を誘発するように前記免疫原を宿主に導入することを含み、宿主は、前記免疫原に基づく前記ホロトキシンに対して特異的な抗体を産生する、方法。
  6. 前記ホロトキシンがTcdB又はTcdAである、請求項5に記載の方法。
  7. 前記免疫原が、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、又は配列番号22の配列を含む、請求項5に記載の方法。
  8. 前記免疫原が小分子である、請求項5に記載の方法。
  9. 前記免疫原が結合剤である、請求項5に記載の方法。
  10. 前記免疫原が抗体である、請求項5に記載の方法。
  11. 前記免疫原が抗体フラグメントである、請求項5に記載の方法。
  12. 前記免疫原がナノボディである、請求項5に記載の方法。
  13. 前記免疫原が2つのポリペプチドに特異的な二価免疫原である、請求項5に記載の方法。
  14. 前記2つのポリペプチドが混合される、請求項13に記載の方法。
  15. 前記2つのポリペプチドが共有結合している、請求項13に記載の方法。
  16. 免疫原が3つのポリペプチドに特異的な三価免疫原である、請求項5に記載の方法。
  17. 3つのポリペプチドが混合される、請求項16に記載の方法。
  18. 前記2つ又は3つのポリペプチドが共有結合している、請求項16に記載の方法。
  19. 前記免疫原が4つのポリペプチドに特異的な四価免疫原である、請求項5に記載の方法。
  20. 前記4つのポリペプチドが混合されている、請求項19に記載の免疫原。
  21. 前記2つ、3つ、又は4つのポリペプチドが共有結合している、請求項19に記載の免疫原。
  22. ホロトキシンC.ディフィシルに特異的なワクチンを設計及び製造する方法であって、
    a)免疫原の配列を含むプラスミドからタグ付きタンパク質を発現させること、
    b)ミクロスフェア上にタグ付けされたタンパク質を捕捉すること、
    c)免疫応答を生成するために前記結合したミクロスフェアを宿主に投与すること、
    を含む、方法。
  23. 前記ホロトキシンがTcdB又はTcdAである、請求項22に記載の方法。
  24. 前記タグ付けされたタンパク質がHisタグ付きである、請求項22に記載の方法。
  25. 前記タグ付けされたタンパク質がin vitro転写翻訳(IVTT)系によって発現される、請求項22に記載の方法。
  26. 前記タグ付けされたタンパク質が大腸菌(Escherichia coli)においてin vivoで発現される、請求項22に記載の方法。
  27. 前記免疫原が、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、又は配列番号22の配列を含む、請求項22に記載の方法。
  28. 前記免疫原が小分子である、請求項22に記載の方法。
  29. 前記免疫原が抗体である、請求項22に記載の方法。
  30. 前記免疫原が抗体フラグメントである、請求項22に記載の方法。
  31. 前記免疫原がナノボディである、請求項22に記載の方法。
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