JP2022527582A - ケト酸を含む細胞培養培地 - Google Patents

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Abstract

本発明は、アルファケト酸を含む細胞培養培地に関する。イソロイシン、ロイシンおよびバリンのようないくつかのアミノ酸の乏しい可溶性は、それらを夫々のアルファケト酸で置換することにより克服することができる。

Description

本発明は、アルファケト酸を含む細胞培養培地に関する。イソロイシン、ロイシンおよびバリンのようないくつかのアミノ酸の乏しい可溶性は、それらを夫々のアルファケト酸で置換することにより克服することができる。
細胞培養培地は、人工的な環境における細胞の成長を支援し、維持する。
成長が支援される生物のタイプに応じて、細胞培養培地は、構成要素の複雑な混合物、ときには100超の種々の構成要素を含む。
哺乳類の動物、昆虫または植物の細胞の増殖に要求される細胞培養培地は、典型的には、細菌および酵母の成長を支援するための培地よりもはるかに複雑である。
開発された最初の細胞培養培地は、血漿、血清、胚抽出物、または非定義の生物学的抽出物またはペプトンなどの未定義の構成要素からなっていた。よって、大きな進歩は、化学的に定義された培地の開発によりなされた。化学的に定義された培地は、これらに限定されるものではないが、しばしば、アミノ酸、ビタミン、金属塩、酸化防止剤、キレート剤、成長因子、緩衝剤、ホルモン、および当業者に知られている多くの物質を含む。
いくつかの細胞培養培地は、滅菌された水性液体として提案される。液体細胞培養培地の不利な点は、それらの短い貯蔵寿命と輸送および保管の困難性である。結果として、多くの細胞培養培地は、現下、細かく粉砕された乾燥粉末混合物として提案されている。これらは、水および/または水性溶液に溶解する目的のために製造され、溶解した状態では、しばしば、他の補充物と一緒に、前記細胞からのバイオ医薬の成長および/または産生のための実質的な栄養素ベースで細胞を補充するために設計されている。
多くのバイオ医薬産生プラットフォームは、フェドバッチ細胞培養プロトコルに基づく。本目的は、典型的には、増大する市場の要求に応え、製造コストを低下させる、高力価の細胞培養プロセスを開発することである。最大限の産生能力を実現するためには、高性能の組換え細胞株の使用に加えて、細胞培養培地やプロセスパラメータの改善が要求される。
フェドバッチプロセスにおいて、基本培地は初期の成長および産生を支援し、フィード培地は、栄養素の欠乏を防止し、生産フェーズを持続させる。培地は、種々の産生フェーズの間の別個の代謝要件に適応するように選択される。プロセスパラメータ―供給ストラテジーおよび制御パラメータを含む―の設定は、細胞成長およびタンパク質産生に好適な化学的および物理的環境を定義する。
フィード培地の最適化は、フェドバッチプロセスの最適化において主要な側面である。
ほとんどの場合、バイオリアクターにおける組換えタンパク質の希釈を避けるために、フィード培地は高度に濃縮されている。栄養素の制御された添加は、培養物の成長速度、バイアビリティおよび力価に直接影響する。
しかしながら、バッチプロセスや灌流プロセスのような他の細胞培養プロセスにおいても、正確に構成され、かつしばしば高度に濃縮された培地製剤が必要である。とりわけ灌流プロセスにおいて、バイオリアクターにおける培地の定期的な交換は、オペレーターに大容量の液体培地を調製して扱うことを要求する。これらの容量を保管するために必要なフットプリントを削減するためには、培地の濃縮が要求される。
乾燥粉末からの細胞培養培地の調製のための制限因子は、いくつかの構成要素、とくにいくつかのアミノ酸の乏しい可溶性または安定性である。
その結果として、高度に濃縮された液体培地組成物を生成するのに充分に可溶性である、乾燥粉末培地組成物を提供する方法を見出すことが好ましい。
アミノ酸であるイソロイシン、ロイシン、バリン、フェニルアラニンおよびメチオニンの代わりに、夫々のアルファケト酸を、いずれの負の効果もなく、場合によっては、細胞成長や改善された可溶性に正の効果を伴ってさえ、使用できることを見出した。
さらに、それらのケト酸は、液体細胞培養培地製剤を安定化する効果さえ有することも見出された。
1959年にアミノ酸の代謝を扱った論文の中で、いくつかのアミノ酸をそのケト酸で置換することができることが述べられている(Eagle H: Amino acid metabolism in mammalian cell cultures. Science 1959, 130(3373):432-437)。しかしながら、それ以来、ある種のケト酸が高性能の細胞培養においてアミノ酸代替物として使用できること、およびそれらが、いくつかのアミノ酸の可溶性および安定性の問題を克服するのに適していることは、全く注目されていなかった。
本発明は、したがって、4-メチル-2-オキソペンタン酸(ケトLeu)、3-メチル-2-オキソペンタン酸(ケトIle)、アルファ-ケトイソ吉草酸(ケトVal)、フェニルピルビン酸(ケトPhe)およびアルファケトガンマメチルチオ酪酸(ケトMet)、および/またはそれらの誘導体の群のうちの少なくとも1のアルファケト酸を、乾燥粉末または乾燥顆粒細胞培養培地の溶解後に得られる液体培地中で、各ケト酸および/またはそれらの誘導体の濃度が、10mM超、好ましくは20~600mM、最も好ましくは30~300mMとなる量で含む、乾燥粉末または乾燥顆粒細胞培養培地に向けられる。典型的には、各ケト酸は種々の濃度で存在し、ここで、典型的には、4-メチル-2-オキソペンタン酸(ケトLeu)、3-メチル-2-オキソペンタン酸(ケトIle)、アルファ-ケトイソ吉草酸(ケトVal)、フェニルピルビン酸(ケトPhe)および/またはそれらの誘導体は、50mM超のより高い濃度で存在し、ここでアルファケトガンマメチルチオ酪酸(ケトMet)は、典型的には、より低い濃度、典型的には10~30mMで存在する。
好ましい態様において、乾燥粉末または乾燥顆粒細胞培養培地がフィード培地である場合、それは、ケト酸および/または誘導体と比較して、30mol%未満の対応するアミノ酸を含む。それは、2つの化合物のモル比が3:10未満であることを意味する。
別の態様において、乾燥粉末または乾燥顆粒細胞培養フィード培地は、対応するアミノ酸を含まない。
灌流培地または(フェド)バッチ基本培地のような他の培地では、アミノ酸および対応するケト酸および/またはそれらの誘導体の両方を培地製剤中に有することが好ましい場合がある。
別の態様において、乾燥粉末または乾燥顆粒細胞培養培地は、2以上のアルファケト酸および/またはそれらの誘導体を含む。
好ましい態様において、乾燥粉末または乾燥顆粒細胞培養培地は、1以上の上記に列挙したアルファケト酸のナトリウム塩を含む。
好ましい態様において、乾燥粉末または乾燥顆粒細胞培養培地は、4-メチル-2-オキソペンタン酸、3-メチル-2-オキソペンタン酸、アルファ-ケトイソ吉草酸および/またはそれらの塩、好ましくはそれらのナトリウム塩から選択される1以上のアルファケト酸を含む。
本発明は、少なくとも20mM、好ましくは30~600mMの、4-メチル-2-オキソペンタン酸、3-メチル-2-オキソペンタン酸、アルファ-ケトイソ吉草酸および/またはそれらの誘導体から選択される、1以上のアルファケト酸、好ましくは4-メチル-2-オキソペンタン酸および/または3-メチル-2-オキソペンタン酸および/またはアルファ-ケトイソ吉草酸および/またはそれらの誘導体を含む、液体細胞培養培地を安定化するための方法であって、ここでその結果得られる培地は、ケト酸および/またはそれらの誘導体を欠いている、あるいはケト酸および/またはそれらの誘導体が対応するアミノ酸および/またはそれらの誘導体により置換されている、他の点では同じ組成の培地と比較して、4℃にてまたは室温にて90日にわたって保管した場合、少ない色変化および/または少ない沈殿を示す、前記方法に向けられている。
本発明は、アミノ酸であるイソロイシン、ロイシン、バリン、フェニルアラニンおよびメチオニンの1以上を4-メチル-2-オキソペンタン酸、3-メチル-2-オキソペンタン酸、アルファ-ケトイソ吉草酸、フェニルピルビン酸およびアルファケトガンマメチルチオ酪酸および/またはそれらの誘導体の群から選択される対応するケト酸により完全にまたは部分的に置換することにより、定義された組成の乾燥粉末または乾燥顆粒細胞培養培地の可溶性を改善するための方法にさらに向けられている。
好ましい態様において、少なくとも50%、より好ましくは70%、最も好ましくは少なくとも90%(モル比)の夫々のアミノ酸は、対応するアルファケト酸および/またはそれらの誘導体により置換されている。
この場合において、置換することとは、所与の量のアミノ酸の代わりに、少なくとも80mol%、典型的にはほぼ100mol%の対応するケト酸および/またはそれらの誘導体が培地に添加されることを意味する。好ましくは、100~150mol%の対応するケト酸および/またはそれらの誘導体が培地に添加される。
好ましい態様において、方法は、上で説明したようにアミノ酸が置換されている乾燥粉末または乾燥顆粒細胞培養培地を提供すること、および前記培地を溶解することを含み、アミノ酸が置換されていない他の点において同一の組成の培地と比較して、溶解がより速く、および/またはより少ない液体で生じる。
別の好ましい態様において、乾燥粉末または乾燥顆粒培地は、溶解して、8.5以下のpHを有する液体培地を与える。
好ましい態様において、それは溶解して、6.5~8.5、最も好ましくは6.7~7.8のpHを有する液体培地を与える。
一態様において、可溶性が改善された乾燥粉末または乾燥顆粒細胞培養培地は、少なくとも1以上の糖類構成要素、1以上のアミノ酸、1以上のビタミンまたはビタミン前駆体、1以上の塩、1以上の緩衝剤構成要素、1以上の補因子および1以上の核酸構成要素を含む。
別の態様において、可溶性が改善された乾燥粉末または乾燥顆粒細胞培養培地は、溶解して、50~400g/l、好ましくは100~300g/の溶媒に溶解する固体成分を含む液体培地をもたらし、および/または、各ケト酸および/またはその塩の濃度が10mM超、好ましくは30~600mMである。
本発明は、さらに、
a)4-メチル-2-オキソペンタン酸、3-メチル-2-オキソペンタン酸、アルファ-ケトイソ吉草酸、フェニルピルビン酸およびアルファケトガンマメチルチオ酪酸および/またはそれらの誘導体の群のうちの少なくとも1のアルファケト酸を細胞培養培地の他の構成要素と混合すること
b)ステップa)の混合物を粉砕に供すること
による、本発明による乾燥粉末細胞培養培地を生産するための方法に向けられる。
好ましい態様において、ステップb)は、ピンミル、フィッツミルまたはジェットミルで行われる。
別の好ましい態様において、ステップa)からの混合物は、粉砕に先立ち、0℃未満の温度に冷却される。
本発明は、
a)バイオリアクターを提供すること、
b)培養される細胞を、1以上の、アミノ酸であるイソロイシン、ロイシン、バリン、フェニルアラニンおよびメチオニンが、4-メチル-2-オキソペンタン酸、3-メチル-2-オキソペンタン酸、アルファ-ケトイソ吉草酸、フェニルピルビン酸およびアルファケトガンマメチルチオ酪酸、および/またはそれらの誘導体の群から選択される対応するケト酸により部分的または全体的に置換されている液体細胞培養培地と混合すること
c)ステップb)の混合物をインキュベートすること
による、細胞を培養するためのプロセスにさらに向けられる。
好ましい態様において、液体細胞培養培地は、10mM超の濃度で存在する各ケト酸および/またはその誘導体を含む。
本発明はまた、
-細胞および水性細胞培養培地をバイオリアクターに充填すること
-バイオリアクター中で細胞をインキュベートすること
-バイオリアクター中での細胞のインキュベーションの全時間にわたって連続的に、または前記インキュベーション時間内に1回または数回、この場合においてフィード培地である細胞培養培地をバイオリアクターに添加すること
ここで、フィード培地は、pH8.5未満のpHを有し、4-メチル-2-オキソペンタン酸、3-メチル-2-オキソペンタン酸、アルファ-ケトイソ吉草酸、フェニルピルビン酸およびアルファケトガンマメチルチオ酪酸および/またはそれらの誘導体の群からの少なくとも1のアルファケト酸を含む、
による、バイオリアクター中で細胞を培養するためのフェドバッチプロセスにも向けられる。
好ましくは、フィード培地は、少なくとも4-メチル-2-オキソペンタン酸、3-メチル-2-オキソペンタン酸、アルファ-ケトイソ吉草酸および/またはそれらの塩を、各20~600mmol/l、好ましくは20~400mmol/lの濃度で含む。
本発明は、1以上の、アミノ酸であるイソロイシン、ロイシン、バリン、フェニルアラニンおよびメチオニンが、4-メチル-2-オキソペンタン酸、3-メチル-2-オキソペンタン酸、アルファ-ケトイソ吉草酸、フェニルピルビン酸およびアルファケトガンマメチルチオ酪酸、および/またはそれらの誘導体の群から選択される対応するケト酸により部分的または全体的に置換されている、液体細胞培養培地を用いた灌流プロセスにさらに向けられる。
図1は、IleおよびLeuが欠乏したCellvento(登録商標)4Feed製剤(125g/L、pH7.0+/-0.2)におけるIleまたはケトIleの最大可溶性の決定を示す。5NTU未満の濁度を有する溶液を可溶性であるとみなす。 図2は、IleおよびLeuが欠乏したCellvento(登録商標)4Feed製剤(125g/L、pH7.0+/-0.2)におけるLeuまたはケトLeuの最大可溶性の決定を示す。5NTU未満の濁度を有する溶液を、可溶性であるとみなす。図1および2についてのさらなる情報は、例2に見出すことができる。
図3は、pH7.0におけるCellvento(登録商標)4Feedの可溶性限界を示す。濁度は濁度計を使用して測定した。さらなる詳細は例3に見出すことができる。 図4は、IleおよびLeuがケトIleおよびケトLeuによって置き換えられている改変された4Feed製剤の、pH7.0における可溶性限界を示す。濁度は濁度計を使用して測定した。さらなる詳細は例3に見出すことができる。
図5Aは、Leuを含有する対照フィード、およびLeuが欠乏し、かつ等モル濃度のケトLeuで置き換えられている試験フィードの、300~600nmの吸光度のベースライン補正した曲線下面積の経時的な(D0~D90)AUCを示す。図5Bは、イソロイシンを含有する対照フィード、およびileが欠乏し、かつ等モル濃度のケトIeuで置き換えられている試験フィードの、300~600nmの吸光度のベースライン補正した曲線下面積の経時的な(D0~D90)AUCを示す。詳細は例4に見出すことができる。
図6Aは、対照と比較した、ケトLeuを含有するフィードにおいて測定したNH濃度の曲線下面積(D0~D90)を示す。フィードは、3か月間、4℃およびRTで、および光から保護するかまたは光に暴露するかのいずれかで、保管した。図6Bは、対照と比較した、ケトIleを含有するフィードにおいて測定したNH濃度の曲線下面積(D0~D90)を示す。フィードは、3か月間、4℃およびRTで、および光から保護するかまたは光に暴露するかのいずれかで、保管した。詳細は例4に見出すことができる。
図7A:フィード中のLeuおよびIleを夫々ケトLeuまたはケトIleのいずれかで置き換えた17日間のフェドバッチプロセスにわたるVCD。欠乏させた4Feedは陰性対照であり、いずれのLeuまたはIleも含有しない。図7B:フィード中のLeuおよびIleを夫々ケトLeuまたはケトIleのいずれかで置き換えた17日間のフェドバッチプロセスにわたり産生されたIgG。詳細は例5に見出すことができる。
図8:フィード中のLeuおよびIleを夫々ケトLeuまたはケトIleのいずれかで置き換えた17日間のフェドバッチプロセスの平均比生産性。 図9A:フィード中のLeuおよびIleを夫々ケトLeuまたはケトIleのいずれかで置き換えた17日間のフェドバッチプロセスの間のNH産生。図9B:フィード中のLeuおよびIleを夫々ケトLeuまたはケトIleのいずれかで置き換えた17日間のフェドバッチプロセスの間の使用済み培地におけるLeu定量化。 図10A:フィード中のLeuおよびIleを夫々ケトLeuまたはケトIleのいずれかで置き換えた17日間のフェドバッチプロセスの間の使用済み培地におけるIle定量。図10B:フィード中のIleをケトIleで置き換えた17日間のフェドバッチプロセスの間の使用済み培地におけるアロ-Ile定量。
図11:対照プロセス、またはIle/Leuが欠乏し、ケトLeuまたはケトIleのいずれかを補充したフィードを使用したプロセスで産生されたIgG1のグリコシル化。グリコフォーム分布は、APTS標識およびCGE-LIF検出を使用して決定した。
図12A:対照プロセス、またはIle/Leuが欠乏し、ケトLeuまたはケトIleを補充したフィードを使用したプロセスで産生されたIgG1の凝集および断片化。高分子量(HMW)および低分子量(LMW)は、サイズ排除クロマトグラフィーを使用して決定した。図12B:対照プロセス、またはIle/Leuが欠乏し、ケトLeuまたはケトIleのいずれかを補充したフィードを使用したプロセスで産生されたIgG1の電荷バリアント。電荷バリアント分布は、キャピラリー電気泳動CESI 8000上でcIEFを使用して決定した。さらなる詳細は例5に見出すことができる。
図13:対照と比較した、IgG1を発現するCHODG44細胞株のケトLeu含有プロセスの性能。 図14:対照と比較した、IgG1を発現するCHOK1非GS細胞株のケトLeu含有プロセスの性能。さらなる詳細は例6に見出すことができる。
図15A:LeuおよびIleを含有する培地(対照)、またはIleまたはLeuをそれらの等モル濃度のケトIleまたはケトLeuによって置き換えられている培地で培養したCHOK1GS細胞株を用いたバッチ実験。播種密度は0.2百万細胞/mLであり、VCDはVi-CELL XRを使用して測定した。図15B:バッチ実験の間に測定したIgG濃度。IgGは、Cedex Bio HT(Roche)での濁度アッセイを使用して測定した。さらなる詳細は例7に見出すことができる。
図16:より高い播種密度および種々のLeu/ケトLeu比率でのバッチ実験。VCDおよび力価、ならびに使用済み培地中の放出されたロイシンを測定した。さらなる詳細は例7に見出すことができる。 図17:フィードにおけるValのケトValによる置き換え。VCDおよび力価、ならびに使用済み培地中の放出されたValおよびNH濃度を測定した。さらなる詳細は例8に見出すことができる。
図18:フィードにおけるPheのフェニルピルビン酸の、Pheと同じモル濃度(1x)または2倍の濃度(2x)のいずれかによる置き換え。VCDおよび力価、ならびに使用済み培地中の放出されたPhe濃度を測定した。さらなる詳細は例8に見出すことができる。
本発明による細胞培養培地は、細胞のin vitroでの成長を維持および/または支援する構成要素のあらゆる混合物である。それは、複合培地または化学的に定義された培地であり得る。細胞培養培地は、細胞のin vitroでの成長を維持および/または支援するために必要なすべての構成要素を含むことができ、あるいは、さらなる構成要素が個別に添加されるようにいくつかの構成要素のみを含むことができる。本発明による細胞培養培地の例は、細胞のin vitro成長を維持および/または支援するために必要なすべての成分を含む完全な培地、ならびに培地補充物またはフィードである。好ましい態様において、細胞培養培地は、完全培地、灌流培地またはフィード培地である。完全培地はまた、基本培地とも呼ばれ、典型的には6.7~7.8のpHを有する。フィード培地は、好ましくは8.5未満のpHを有する。
典型的には、本発明による細胞培養培地は、バイオリアクター中の細胞の成長を維持および/または支援するために使用される。
フィードまたはフィード培地は、細胞培養における初期成長および産生を支援する基本培地ではなく、栄養素の欠乏を防止し、産生フェーズを維持するために後のステージで添加される細胞培養培地ではなく、産生フェーズを持続させるために後期段階に添加される培地である。フィード培地は、基本培養培地と比較して、より高濃度のいくつかの構成要素を有し得る。例えば、アミノ酸または炭水化物を含む栄養素などの、例えばいくつかの構成要素は、基本培地の濃度の約5X、6X、7X、8X、9X、10X、12X、14X、16X、20X、30X、50X、100X、200X、400X、600X、800X、または約1000Xでフィード培地中に存在してもよい。
哺乳類細胞培養培地は、哺乳類細胞のin vitroでの成長を維持および/またはサポートする構成要素の混合物である。哺乳類細胞の例は、ヒトまたは動物細胞、好ましくはCHO細胞、COS細胞、IVERO細胞、BHK細胞、AK-1細胞、SP2/0細胞、L5.1細胞、ハイブリドーマ細胞またはヒト細胞である。
化学的に定義される細胞培養培地は、化学的に定義されないいかなる物質も含まない細胞培養培地である。これは、培地において使用されるすべての化学物質の化学的組成が、知られていることを意味する。化学的に定義される培地は、いかなる酵母、動物、または植物組織をも含まない;それらは、フィーダー細胞、血清、加水分解物、抽出物、または消化物、または、他の不完全に定義される構成要素を、含まない。化学的に定義されない、または、不完全に定義される化学物質構成要素は、化学的組成および構造が知られていないものであり、変化する組成で存在し、または、インスリン、アルブミンまたはカゼインのようなタンパク質の化学的組成および構造の評価に匹敵する、膨大な実験的な努力によりのみ定義され得る。
粉末状の細胞培養培地または乾燥粉末培地は、典型的に、粉砕プロセスまたは凍結乾燥プロセスから生じる細胞培養培地である。それは、粉末状の細胞培養培地が、顆粒状の、粒子状の培地であり―液体培地でないことを意味する。用語「乾燥粉末」は、用語「粉末」と交換可能に使用してもよい;本明細書に使用されるとき、「乾燥粉末」は、単に、顆粒状の材料の全体的な外観を指しており、別段の指示がない限り、材料が複合体化したまたは凝集した溶媒を完全に含まないことを意味することを意図しない。
乾燥顆粒培地は、湿式または乾式の造粒プロセスから生じる乾燥培地である。好ましくは、それは乾燥粉末培地のローラー圧縮から生じる培地である。本明細書で使用されるとき、乾燥なる用語は、単に、顆粒状の材料の全体的な外観を指しており、別段の指示がない限り、材料が複合体化したまたは凝集した溶媒を完全に含まないことを意味することを意図しない。
本発明による培地を用いて培養される細胞は、細菌細胞のような原核生物細胞、または植物または動物細胞のような真核生物細胞でもよい。細胞は、正常細胞、不死化細胞、異常細胞、形質転換細胞、突然変異細胞、体細胞、生殖細胞、幹細胞、前駆細胞、または胚細胞であることができ、それらのいずれも、確立されまたは形質転換された細胞株であり得、または天然の供給源から得られ得る。
粒子のサイズは、粒子の平均直径を意味する。粒子直径は、レーザー光散乱法(Mastersizer 3000, Malvern)によって決定される。
液体細胞培養培地の色の変化は、好ましくは視覚的にまたは分光学的に決定される。
沈殿は、視覚的にまたは比濁法により決定することができる。
不活性雰囲気は、それぞれのコンテナまたは器具を不活性気体で満たすことによって生成される。適切な不活性気体は、アルゴンまたは好ましくは窒素のような希ガスである。これらの不活性気体は、非反応性であり、望ましくない化学反応が起こることを防ぐ。本発明によるプロセスにおいて、不活性雰囲気の生成は、例えば液体窒素または窒素気体を導入することにより、酸素の濃度が絶対的に10%(v/v)未満に減少されることを意味する。
さまざまなタイプのミルは、当業者に公知である。
遠心衝撃ミルとも呼ばれるピンミルは、高速回転ディスク上の突出したピンが、破断エネルギーを提供するそれによって固体を微粉砕する。
例えばピンミルは、Munson Machinery(USA)、Premium Pulman(India)、またはSturtevant(USA)により販売されている。
ジェットミルは圧縮気体を利用して粒子を加速し、それらをプロセスチャンバー中で互いに衝突させる。ジェットミルは、例えばSturtevant(USA)、またはPMT(Austria)で販売されている。
Fitzpatrick(USA)によって市販されているフィッツミルは、粉砕するための刃をもつローターを使用する。
連続的に実行されるプロセスは、バッチ式では実行されないプロセスである。粉砕するプロセスが連続的に実行される場合、それは、培地成分が永久にかつ着実に、ある時間にわたってミルへ供給されることを意味する。
本発明よる細胞培養培地、とくに完全培地は、典型的には、少なくとも1以上の糖構成要素、1以上のアミノ酸、1以上のビタミンまたはビタミン前駆体、1以上の塩、1以上の緩衝液構成要素、1以上の補因子、および1以上の核酸構成要素を含む。
培地はまた、ピルビン酸ナトリウム、インスリン、植物性タンパク質、脂肪酸および/または脂肪酸誘導体および/またはプルロニック酸および/または化学的に調製される非イオン性界面活性剤等の界面活性構成要素をも含んでもよい。適切な非イオン性界面活性剤の1つの例は、ポロクサマーとも呼ぶ、一級水酸基で終結する二官能基ブロックコポリマー界面活性剤である(例えば商標名pluronic(登録商標)の下でBASF、Germanyから入手できる)。
糖構成要素は、グルコース、ガラクトース、リボース、またはフルクトース(単糖の例)、またはスクロース、ラクトース、またはマルトース(二糖の例)等の、すべて単糖または二糖である。
本発明に従うアミノ酸の例は、チロシン、タンパク質有機アミノ酸、特に必須アミノ酸、ロイシン、イソロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、アルギニン、トレオニン、トリプトファン、およびバリン、ならびにD-アミノ酸等の非タンパク質有機アミノ酸であり、L-アミノ酸が好ましい。
アミノ酸の用語は、ナトリウム塩などのアミノ酸の塩、または夫々の水和物または塩酸塩をさらに含む。
例えば、チロシンは、L-またはD-チロシン、好ましくはL-チロシン、ならびにその塩または水和物または塩酸塩を意味する。
ビタミンの例は、ビタミンA(レチノール、レチナール、各種のレチノイドおよび4つのカロチノイド)、ビタミンB(チアミン)、ビタミンB(リボフラビン)、ビタミンB(ナイアシン、ナイアシンアミド)、ビタミンB(パントテン酸)、ビタミンB(ピリドキシン、ピリドキサミン、ピリドキサール)、ビタミンB(ビオチン)、ビタミンB(葉酸、フォリン酸)、ビタミンB12(シアノコバラミン、ヒドロキシコバラミン、メチルコバラミン)、ビタミンC(アスコルビン酸)、ビタミンD(エルゴカルシフェロール、コレカルシフェロール)、ビタミンE(トコフェロール、トコトリエノール)、およびビタミンK(フィロキノン、メナキノン)である。ビタミン前駆体も包含される。
塩の例は、無機イオン、例えば重炭酸塩、カルシウム、クロライド、マグネシウム、リン酸塩、カリウム、およびナトリウム、または微量元素、例えばCo、Cu、F、Fe、Mn、Mo、Ni、Se、Si、Ni、Bi、V、およびZnを含む構成要素である。例は、硫酸銅(II)五水和物(CuSO・5HO)、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化カルシウム(CaCl・2HO)、塩化カリウム(KCl)、硫酸鉄(II)、クエン酸鉄アンモニウム(FAC)、無水リン酸二水素ナトリウム(NaHPO)、無水硫酸マグネシウム(MgSO)、無水リン酸水素二ナトリウム(NaHPO)、塩化マグネシウム六水和物(MgCl・6HO)、硫酸亜鉛七水和物である。
緩衝液の例は、CO/HCO(炭酸塩)、リン酸塩、HEPES、PIPES、ACES、BES、TES、MOPS、およびTRISである。
補因子の例は、チアミン誘導体、ビオチン、ビタミンC、NAD/NADP、コバラミン、フラビンモノヌクレオチドおよび誘導体、グルタチオン、へムヌクレオチドリン酸および誘導体である。
本発明に従って、核酸構成要素は、シトシン、グアニン、アデニン、チミン、またはウラシルのような核酸塩基、シチジン、ウリジン、アデノシン、グアノシン、およびチミジンのようなヌクレオシド、およびアデノシン一リン酸またはアデノシン二リン酸またはアデノシン三リン酸のようなヌクレオチドである。
フィード培地は、完全培地と比較して、異なる組成を有していてもよい。それらは、典型的には、アミノ酸、微量元素、およびビタミンを含む。それらはまた、糖類構成要素を含んでいてもよいが、ときには生産の理由から糖類構成要素は別々のフィードにおいて添加される。
好適なフィード培地は、例えば、1以上の以下の化合物を含んでいてもよい:
L-アスパラギン一水和物
L-イソロイシン
L-フェニルアラニン
L-グルタミン酸ナトリウム一水和物
L-ロイシン
L-トレオニン
L-リシン一塩酸塩
L-プロリン
L-セリン
L-アルギニン一塩酸塩
L-ヒスチジン一塩酸塩一水和物
L-メチオニン
L-バリン
L-アスパラギン酸一ナトリウム一水和物
L-トリプトファン
塩化コリン
MYO-イノシトール
ニコチンアミド
パントテン酸カルシウム-D(+)
ピリドキシン塩酸塩
チアミン塩化物塩酸塩
微粉化ビタミンB12(シアノコバラミン)
ビオチン
葉酸
リボフラビン
硫酸マグネシウム無水
硫酸銅(II)五水和物
硫酸亜鉛七水和物
1,4-ジアミノブタン二塩酸塩
へプタモリブデン酸アンモニウム四水和物
硫酸カドミウム水和物
塩化マンガン(II)四水和物
塩化ニッケル(II)六水和物
メタケイ酸ナトリウム
メタバナジン酸ナトリウム
塩化スズ(II)二水和物
亜セレン酸ナトリウム(約45%SE)
リン酸二水素ナトリウム一水和物
クエン酸鉄(III)アンモニウム(約18%FE)。
本発明に従って、凍結することは、0℃未満の温度に冷却することを意味する。
灌流プロセスにおいて、細胞培養培地をバイオリアクターに連続的に添加され、ポンプを通して取り出され、一方で細胞は細胞保持デバイスによりバイオリアクター中に保持される。灌流の利点は、(定期的な培地交換に起因して)極めて高い細胞密度に到達する可能性、および生成物をバイオリアクターから毎日取り出すことができ、よって高温、酸化還元電位、または放出された細胞プロテアーゼへの暴露時間が低減するので、極めて壊れやすい組換えタンパク質を生産できる可能性があることである。
灌流細胞培養のためのプロセスは、典型的には、培地入口および収穫物出口を備えたバイオリアクターを含むバイオリアクターシステムで細胞を培養することを含み、ここで
i.細胞培養プロセスの間、連続的にまたは1回もしくは数回、好ましくは連続的に、新しい細胞培養培地が、培地入口を介してバイオリアクターに挿入される
ii.細胞培養プロセスの間、連続的にまたは1回または数回、好ましくは連続的に、収穫物が収穫物出口を介してバイオリアクターから取り出される。収穫物は、典型的には、細胞によって産生された目的生成物、細胞、および液体細胞培養培地を含む。
アミノ酸は、細胞の成長を支援するのに重要であるので、細胞培養培地の必須の構成要素である。加えて、アミノ酸は、哺乳類の細胞培養技術を使用して生産される組換えタンパク質の重要な構成ブロックである。アミノ酸の可溶性は、細胞培養培地およびフィード製剤の濃縮を妨げる制限因子である。そのような濃縮は、次世代の製造プラットフォームを開発するために必須である。とりわけ、インライン希釈を使用するバイオ製造プロセスは、タンクに保管しなければならない細胞培養培地の体積を削減し(=製造フットプリントを削減し)、または一般的にはフェッドバッチプロセスを通して添加するフィードの体積を削減し、よって体積力価(volumetric titer)を高める可能性があるため、高度に濃縮された製剤が要求される。
細胞培養培地中のいくつかのアミノ酸は、それらのケト酸またはそれらの塩で置き換えることができることが見出されている。アミノ酸供給源としてのそれらの使用に加えて、とくにこれらのケト酸のナトリウム塩は、それらの対応するアミノ酸と比較して高い可溶性を示し、したがって高度に濃縮された製剤に使用することができる。可溶性の利点を別にして、ケト酸の使用はまた、既知の毒性および阻害性代謝体である細胞培養中のアンモニアの低減を可能にすることが見出されている。さらにまた、ある種のケト酸の使用は、RTにて保管した場合に、色の変化が少なく、沈殿がない、または遅延する、および副生成物の形成が少ない、または遅延する、より安定した製剤が得られることが証明された。
よって、アミノ酸のケト酸およびそれらの塩は、以下の適用のために細胞培養培地製剤に使用することができる。
・適用1:全体の培地/フィード可溶性を増大させること
・適用2:対応するアミノ酸を置き換え、細胞培養中のアンモニウムイオン/アンモニア製剤を低減させること
・適用3:培地安定性を増大させ、4℃または室温での製剤の保管に起因する色の変化および沈殿を低減させ、フィード保管の間のアンモニアの形成を低減させること
表1は、アミノ酸であるロイシン、イソロイシン、バリン、フェニルアラニンおよびメチオニンならびにそれらの対応するケト酸または対応するケト酸のナトリウム塩を示す。表1から見ることができるように、対応するケト酸の可溶性は、アミノ酸の可溶性よりも高い。
Figure 2022527582000001
表1 アミノ酸およびそれらの夫々のケト酸またはそれらの塩の25℃における水への可溶性。可溶性実験は、赤外線乾燥後、飽和溶液および残存質量決定を使用して行った。
アミノ酸であるロイシン、イソロイシン、バリン、フェニルアラニンおよび/またはメチオニンを部分的にまたは全体的に、対応するケト酸および/またはそれらの誘導体で置換することにより、乾燥粉末または乾燥顆粒細胞培養培地の可溶性を、他の点では同一の細胞培養培地と比較して、細胞培養の性能に負の効果を有することなく改善できることが見出されている。好ましい態様において、ケト酸のナトリウム塩は、それらが典型的に最も高い可溶性を示すために使用される。
好適な誘導体は、金属塩誘導体、ペプチド誘導体、エステル誘導体、およびその他の誘導体である。誘導体はケト酸誘導体であり、対応するアミノ酸と比較して水への高い可溶性を有し、それらは、対応するアミノ酸に細胞内で協働して戻るか、さもなければ細胞のin vitroでの成長を維持および/または支援するその役割において対応するアミノ酸を置換することができる。
金属塩誘導体は、最も好ましい誘導体である。これらは、ナトリウム、カリウム、カルシウム、またはマグネシウム塩のようなケト酸の金属塩であり、好ましくはナトリウム塩である。
ペプチド誘導体は、1つ以上、典型的には1つ、2つまたは3つのアミノ酸が、ペプチド結合を介してケト酸へ連結されている誘導体である。ケトロイシンのこの場合において、ペプチド誘導体の構造式を以下のスキーム1に示す:
Figure 2022527582000002
はアミノ酸側鎖であり、Rはペプチド結合を介して連結した別のアミノ酸である。
エステル誘導体は、ケト酸のカルボン酸がアルキルまたはアリールエステルを形成する誘導体である。最も好ましくは、C1~C4アルキルエステルである。ケト-ロイシンエステル誘導体の例をスキーム2に示す:
Figure 2022527582000003
はアルキルまたはアリールであり、アルキル基は-OHまたはOR
でさらに置換されていてもよく、または例えば、エーテルまたはエステルを形成してもよい。
好適なRの例は、メチル、エチル、イソプロピル、n-プロピル、n-ブチル、tert-ブチル、ベンジルおよび
Figure 2022527582000004
である。
他の誘導体は、スキーム3に示される:
Figure 2022527582000005
ケトロイシンについて示した上の例は、もちろん、4-メチル-2-オキソペンタン酸、3-メチル-2-オキソペンタン酸、アルファ-ケトイソ吉草酸、フェニルピルビン酸およびアルファケトガンマメチルチオ酪酸の群のうちの他のケト酸についても等しくに実現することができる。
本発明は、したがって、4-メチル-2-オキソペンタン酸、3-メチル-2-オキソペンタン酸、アルファ-ケトイソ吉草酸、フェニルピルビン酸およびアルファケトガンマメチルチオ酪酸および/またはそれらの誘導体の群のうちの少なくとも1のアルファケト酸、好ましくは金属塩誘導体、最も好ましくはナトリウム塩を含む、乾燥粉末または乾燥顆粒細胞培養培地に向けられる。好ましい態様において、乾燥粉末または乾燥顆粒細胞培養培地は、4-メチル-2-オキソペンタン酸、3-メチル-2-オキソペンタン酸および/またはアルファ-ケトイソ吉草酸のナトリウム塩、最も好ましくは3つのケト酸すべてのナトリウム塩を含む。
乾燥粉末または乾燥顆粒細胞培養培地中のケト酸の量は、乾燥粉末または乾燥顆粒細胞培養培地の溶解後に得られる液体培地中の各ケト酸および/またはその誘導体の濃度が10mM超、好ましくは20~600mM、最も好ましくは30~300mMとなるようにする。
一態様において、上に定義されるとおりのケト酸を含む乾燥粉末または乾燥顆粒細胞培養培地は、対応するアミノ酸を含まない。別の態様において、上に定義されるとおりのケト酸を含む乾燥粉末または乾燥顆粒細胞培養培地は、50%(mol%)までの対応するアミノ酸を含む。
乾燥粉末または乾燥顆粒培地の使用のために、溶媒、好ましくは水(最も具体的には蒸留水および/または脱イオン水、また精製水また注射用水)または水性緩衝剤が培地に添加され、構成要素は、培地が溶媒に完全に溶解するまでを混合される。
溶媒はまた、生理食塩水、好適なpH範囲(典型的にはpH1.0~pH10.0の間の範囲、好ましくは6.5~8.5の範囲)を提供する可溶性の酸または塩基イオン、安定剤、界面活性剤、保存料、およびアルコールまたは他の極性有機溶媒を含んでいてもよい。
また、細胞培養培地および溶媒の混合物に、pH調整のための緩衝剤物質、ウシ胎仔血清、糖類などの物質をさらに添加することも可能である。その結果得られる液体細胞培養培地を、次いで成長または維持される細胞と接触させる。
より高濃度のロイシン、イソロイシン、バリン、フェニルアラニンおよびメチオニンを含む乾燥粉末または乾燥顆粒培地組成物は、アミノ酸の限定された可溶性に起因して、溶媒と混合した場合、濁りを示す一方で、同じ濃度の対応するケト酸および/またはそれらの誘導体を使用する本発明による細胞培養培地は透明な溶液を与える。これはフィード培地にとくに好適である。
その結果得られる、ケト酸および/またはそれらの誘導体を含む液体培地は、細胞培養において少なくとも同じ性能を示す。アミノ酸は、対応するケト酸および/または誘導体、好ましくはそれらの塩で完全に置換できることが見出されている。それにもかかわらず、アミノ酸を部分的にのみ置換することもまた可能である。この場合、好ましくはアミノ酸の50%(mol%)以上が対応するケト酸および/またはそれらの誘導体によって置換される。
いくつかの場合において、置換されるアミノ酸の量と比較して、ケト酸の量を修正し、とくに大きくすることが有利な場合がある。イソロイシン、ロイシンおよびバリンの置換については、典型的には1:1の置換で充分である一方で、フェニルアラニンおよびメチオニンについては、典型的には、アミノ酸の量と比較してより多くのケト酸を添加することが好ましいことが見出されている。典型的には、1:1.1~1:3(モルベース)の置換が好適である。
好ましくは、アミノ酸であるロイシン、イソロイシン、バリン、フェニルアラニンおよびメチオニンを、対応するケト酸および/またはそれらの誘導体で、とくにケト酸のナトリウム塩で完全に置換することにより、培地の最大可溶性を大きくすることができる。例3に見ることができるように、乾燥粉末培地の可溶性を、例として2倍にすることができる。
上記のようにアミノ酸を置換することによる乾燥粉末または乾燥顆粒培地の可溶性の改善に加えて、ロイシンおよび/またはイソロイシンを対応するケト酸および/またはそれらの塩で置き換えられている培地を使用した場合、細胞培養の比生産性が大きくなることがさらに、予想外に見出された。
ロイシンおよび/またはイソロイシンを対応するケト酸および/またはそれらの塩で置き換えられている培地を使用して生産したIgG1の3つの重大な品質特性は、アミノ酸を使用した対照条件と置換した条件との間に差がないことをさらに示すことができた。3つの重大な品質特性は、グリコシル化パターン、抗体凝集および断片化、ならびに電荷バリアントである。
ケト酸および/またはそれらの誘導体、とくにロイシン、イソロイシンおよびバリンのケト酸および/または塩、好ましくは4-メチル-2-オキソペンタン酸、3-メチル-2-オキソペンタン酸および/またはそれらの塩は、液体細胞培養培地製剤の安定化に好適であることがさらに見出された。
前記構成要素を含む液体培地は、4-メチル-2-オキソペンタン酸、3-メチル-2-オキソペンタン酸および/またはそれらの塩を含まないが、同じ量の対応するアミノ酸を含む培地と比較して、光暴露の有無にかかわらず、室温または4℃のいずれかで3か月にわたり保管した場合、少ない色の変化を示す。これらはまた、沈殿の減少も示した。
この効果は、対応するアミノ酸、例としてイソロイシンおよび/またはロイシンを、対応するケト酸および/またはそれらの誘導体で置換した場合に、到達することができる。これは、ロイシンおよび/またはイソロイシンを含む細胞培養培地製剤に、対応するケト酸、例として4-メチル-2-オキソペンタン酸、3-メチル-2-オキソペンタン酸および/またはそれらの誘導体を添加した場合にも到達することができる。これは、ケト酸および/またはそれらの誘導体が、培地組成に関係なく、培地安定剤として使用できることを意味する。液体製剤中の好適な濃度は、少なくとも20mM、好ましくは30~600mMである。
本発明の粉末細胞培養培地は、好ましくはすべての構成要素を混合し、それらを粉砕することにより生産される。構成要素を混合することは、粉砕することにより乾燥粉末細胞培養培地を生産する当業者に周知である。好ましくは、混合物のすべての部分がほとんど同じ組成を有するように、すべての構成要素は完全に混合される。均質な細胞成長に関して、組成物の均一性がより高いほど、結果として生じる培地の質は、より良好である。
粉砕は、細胞培養培地の製造のために適切なミルのいかなるタイプによっても、実施することができる。典型的な例は、ボールミル、ピンミル、フィッツミル、またはジェットミルである。好ましくは、ピンミル、フィッツミル、またはジェットミル、非常に好ましくは、ピンミルである。
当業者は、かかるミルの実行の仕方を知っている。
約40cmのディスク直径をもつ大規模装置ミルは、例えば、ピンミルの場合には典型的には毎分1~6500回転、好ましくは毎分1~3000回転で実行される。
粉砕は、標準的な粉砕条件の下で行われることができ、10と300μmとの間、もっとも好ましくは、25と120μmとの間の粒子サイズをもつ粉末に、結果としてなる。
粒子のサイズは、粒子の直径を意味する。粒子直径は、レーザー光散乱によって決定される。この技法を使用すると、粒子サイズは体積相当球直径として報告される。
粒子サイズ範囲は、75%以上、好ましくは90%以上の粒子が有する粒子サイズの範囲を与える。これは、粒子サイズが25~120μmの場合、少なくとも75%の粒子が25~120μmの粒子サイズを有することを意味する。
好ましくは、粉砕に供される混合物のすべての構成要素は、乾燥している。これは、それらが水を含む場合、それらは、非結合またはまとまっていない水分子の重量として、10%より多くなく、好ましくは5%より多くなく、最も好ましくは2%より多くない水の結晶を含むだけであることを意味する。
好ましい態様において、粉砕は、不活性雰囲気中で実施される。好ましい不活性保護気体は、窒素である。
さらなる好ましい態様において、混合物のすべての構成要素は、粉砕に先だって凍結される。粉砕に先だつ成分の凍結は、0℃を下回る、およびもっとも好ましくは-20℃を下回る温度まで成分の冷却を確保するいかなる手段によっても、なされることができる。好ましい態様において、凍結は、液体窒素によってなされる。これは、例えばミルへの導入に先立って、成分が貯蔵された容器へ液体窒素を注ぐことによって、成分が、液体窒素で処置されることを意味する。好ましい態様において、容器は、フィーダー(a feeder)である。容器がフィーダーである場合、好ましくは、液体窒素は、成分が導かれるフィーダーのそばに、またはそのそばの近くに導かれる。
典型的には、成分は、2~20秒にわたって液体窒素によって処置される。
好ましくは、成分の冷却は、ミルに入るすべての成分が、0℃を下回る、もっとも好ましくは-20℃を下回る温度であるやり方で、なされる。
好ましい態様において、すべての成分は、混合物がフィーダー、もっとも好ましくはメータリングスクリューフィーダーの中に移された容器の中に置かれる。フィーダーの中で、成分は、時にさらに混合され-フィーダーのタイプに応じ-、および追加で冷却される。凍結された混合物は、ミルの中で粉砕される混合物が、好ましくは0℃を下回る、より好ましくは-20℃を下回る温度を依然として有するように、フィーダーからミルへ移される。
典型的には、混合時間(フィーダー中の成分の混合物の滞流時間を意味する)が、1分間超、好ましくは15と60分との間にある。
メータリングスクリューフィーダー(軽量スネールとも呼ばれる)は、典型的には、1分当たり10~200回転、好ましくは40~60回転の速度で実行される。
典型的には、粉砕する温度は、-50と+30℃との間に保たれる。好ましい態様において、温度は、およそ10℃に保たれる。
粉砕する間の酸素レベルは、好ましくは10%(v/v)未満である。
プロセスは、例えばバッチ毎にまたは連続的に実行されることができる。好ましい態様において、本発明に従うプロセスは、ある時間にわたって、冷却のために成分の混合物をフィーダーに永続的に満たし、そして、フィーダーからの冷却した混合物をミルに永続的に満たすことによって、連続的になされる。
本発明は、
a)バイオリアクターを提供すること
b)好ましくは10mM超の濃度で、4-メチル-2-オキソペンタン酸、3-メチル-2-オキソペンタン酸、アルファ-ケトイソ吉草酸、フェニルピルビン酸およびアルファケトガンマメチルチオ酪酸および/またはそれらの誘導体の群のうちの少なくとも1のアルファケト酸を含む液体細胞培養培地を提供すること
c)培養される細胞を液体細胞培養培地と混合すること
d)ステップb)の混合物をインキュベートすること
による、細胞を培養するためのプロセスにさらに向けられる。
好ましい態様において、細胞は、CHO細胞である。
一態様において、ステップb)において提供される液体細胞培養培地は、アミノ酸であるイソロイシン、ロイシン、バリン、フェニルアラニンおよびメチオニンのうちの1以上が、4-メチル-2-オキソペンタン酸、3-メチル-2-オキソペンタン酸、アルファ-ケトイソ吉草酸、フェニルピルビン酸およびアルファケトガンマメチルチオ酪酸および/またはそれらの誘導体の群から選択される対応するケト酸で部分的にまたは好ましくは完全に置換されている液体細胞培養培地である。
好ましい態様において、ステップb)の液体細胞培養培地は、本発明による乾燥粉末または乾燥顆粒培地を、上記のような溶媒に溶解することによって提供される。
バイオリアクターは、細胞が培養できるいずれかの槽(vessel)、またはタンクである。培養は、典型的には、適切な温度などの適切な条件の下でなされる。当業者は、細胞の成長/培養を、支援または維持するための適切なインキュベーション条件を、知っている。
本発明は、フィード培地の調製に極めて好適であることが見出された。とくにフィード培地に必要な濃度のある種のアミノ酸の利用可能性の制限に起因して、フィード培地の濃度は、可溶性の問題に起因して制限される。
その結果として、必要とされるすべての構成要素を1つのフィード中に高濃度で含むフィード培地が必要とされている。加えて、フィードのpHは細胞培養に負の影響を及ぼさないようにすべきであり、すなわち、液体フィードのpHは8.5未満、好ましくは6.5~7.8であるべきである。
アミノ酸であるイソロイシン、ロイシン、バリン、フェニルアラニンおよびメチオニンを対応するケト酸および/または誘導体、好ましくはそれらの塩で部分的または好ましくは完全に置換することにより、その結果得られる乾燥粉末培地の可溶性が改善されることが見出された。これは、より高濃度の成分を含む液体培地を生産する可能性を提案し、その結果、同じ量の成分をより少量の液体で細胞培養に添加することができ、それにもかかわらず、好ましくは8.5未満である好適なpHである。ケト酸を含む、より高度に濃縮されたフィード培地は、細胞成長および/または生産性ならびに液体培地の安定性にいずれの負の効果もなく、場合によっては、正の効果を伴ってさえ、使用できる。
よって、本発明はまた、粉末培地の形態の、または液体培地の形態において溶解後の、いずれかのフィード培地に向けられる。
その結果得られる液体培地は、4-メチル-2-オキソペンタン酸、3-メチル-2-オキソペンタン酸、アルファ-ケトイソ吉草酸、フェニルピルビン酸およびアルファケトガンマメチルチオ酪酸および/またはそれらの誘導体の群から選択される少なくとも1のケト酸を、10mM超、好ましくは20~600mMの濃度で含み、好ましくは8.5以下のpHを有する。
好ましい態様において、pHは、6.7~8.4である。
本発明はまた、
-細胞および水性細胞培養培地をバイオリアクターに充填すること
-バイオリアクター中で細胞をインキュベートすること
-バイオリアクター中での細胞のインキュベーションの全時間にわたり、連続的に、または前記インキュベーション時間内に1回または数回、この場合においてフィード培地である細胞培養培地をバイオリアクターに添加すること
ここで、フィード培地は、好ましくは、pH8.5未満のpHを有し、4-メチル-2-オキソペンタン酸、3-メチル-2-オキソペンタン酸、アルファ-ケトイソ吉草酸、フェニルピルビン酸およびアルファケトガンマメチルチオ酪酸および/またはそれらの誘導体の群から選択される少なくとも1のケト酸を含む、
による、バイオリアクター中で細胞を培養するためのフェドバッチプロセスに向けられる。
好ましくは、フィード培地は、10mM超、好ましくは20~600mMの濃度で1以上のケト酸および/またはそれらの誘導体を含む。好ましくは、フィード培地は、4-メチル-2-オキソペンタン酸、3-メチル-2-オキソペンタン酸および/またはアルファ-ケトイソ吉草酸および/またはそれらの塩、最も好ましくはナトリウム塩を含む。典型的には、フィード培地は、溶媒に溶解された50~400g/lの固体成分を含む。
好ましい態様において、本発明のプロセスにおいて、インキュベーションの間に連続的に、または前記時間内に1回または数回バイオリアクターに添加されるフィード培地は、常に同じ組成を有する。好ましい態様において、細胞はCHO細胞である。
本発明は、以下の図および例によってさらに例証されるが、しかしながら、これらに限定されるものではない。
上および下で引用されたすべての出願、特許、および刊行物の開示全体は、参照により本明細書に組み込まれる。

以下の例は、本発明の実際的な適用を表す。
例1:ケト酸は、それらの夫々のアミノ酸と比較して、水中で増大した可溶性を有する
5つ例示のアミノ酸の最大可溶性を、夫々のケト酸またはそれらの塩の25℃における水への可溶性を、飽和溶液の調製を通じて比較した。沈降後、溶液を、赤外線を使用して乾燥させ(120℃、120分)、残存質量をg/kgで決定した。
図1に示すように、ケト酸およびそれらの塩の可溶性は、夫々のアミノ酸の水への可溶性と比較して有意に高かった。可溶性の増加がケト酸のナトリウム塩の形態に起因するものであることを除外するために、別の実験をLeu、Leuナトリウム塩およびケトLeuナトリウム塩の可溶性を比較するために行った。水において得られた最大可溶性は、夫々22.1、86.0、および313.7g/kgであり、予想どおり、ナトリウム塩の形成は、Leuの可溶性をすでに増加させるが、ケト酸により得られる可溶性の増加は著しく重要であり、よって塩の形態のみに起因するものではないことが示された。
例2:IleおよびLeuを欠乏させた4Feedにおける、それらの夫々のアミノ酸と比較した場合の、ケト酸の最大可溶性
増大した量のケト酸およびそれらの塩を、IleおよびLeuを欠乏させた細胞培養フィード製剤(Cellvento(登録商標)4Feed, MilliporeSigma)に添加した。同様に、対照として、増大した量のIleとLeuを同じフィード製剤に添加した。このフィード製剤の総濃度は125g/Lであり、pHは7.0+/-0.2であった。小規模実験では、アミノ酸またはケト酸のいずれかの各添加後、フィードを10分間撹拌し、濁度を測定した。実験は室温(25℃)にて行った。
Ile/Leuを欠乏させたCellvento(登録商標)4FeedにおけるIleの最大可溶性はおよそ105mMであった一方で、ケトIleについては試験した最大試験濃度の635mMでも5NTU未満の濁度値で可溶性であったことが見出された(図1を参照のこと)。これは、Ile/Leuを欠乏させた4Feedにおいて、ケトIleは、Ileよりも少なくとも6倍超より可溶性であることを示す。
IleとLeuを欠乏させたCellvento(登録商標)4FeedにおけるLeuの最大可溶性はおよそ90mMであった一方で、ケトLeuについては、最大可溶性濃度(5NTU未満の濁度値)は240mMであったことが見出された(図2を参照のこと)。これは、Ile/Leuを欠乏させた4Feedにおいて、ケトLeuはLeuの2.6倍超可溶性であることを示す。
例3:ケト酸の使用は、中性pHにおける細胞培養培地製剤の濃縮を可能にする。
Cellvento(登録商標)4Feedの最大可溶性は、沈殿が視覚的に検出されるまで、増大する量のフィード乾燥粉末培地を水に溶解することにより決定した。各条件において、フィードを約30分間撹拌し、pHを7.0+/-0.2に調整し、平衡化のために溶液をさらに10分間撹拌した。浸透圧および濁度を測定した(図3を参照のこと)。データは、粒子が懸濁液中で検出され、濁度が5NTUの限界を大きく上回っていることから、この製剤の1.2倍濃縮物はすでに溶解しないことを示す。
IleおよびLeuがCellvento(登録商標)4Feed製剤の濃縮のための第1制限アミノ酸として同定されたため、IleおよびLeuを欠乏させた新しいバックボーンフィードを生産した(4Feed-Ile/Leu)。ケトLeuおよびケトIleの補充の有無にかかわらず、このフィードの最大濃度を、沈殿が視覚的に検出されるまで、増大する量のフィード乾燥粉末培地を水に溶解することにより決定した。各条件について、フィードを約30分間撹拌し、pHを7.0+/-0.2に調整し、平衡化のために溶液をさらに10分間撹拌した。濁度を測定し、5NTUの限界を可溶性であるとみなした。
結果は、Ile/Leu欠乏Cellvento(登録商標)4Feedの最大可溶性がおよそ228g/Lであったことを示す。ケトLeuおよびケトIleを添加した場合、最大可溶性は、36g/L~38g/LのケトLeuおよびケトIleの組み合わせた量(その濃縮物中のIleおよびLeuの理論量に相当するモル比)で補充した欠乏乾燥粉末培地の216g/L~228g/Lで得られ、ケトLeuおよびケトIleの両方を含有する製剤の総濃度の252g/L~266g/Lをもたらした。Cellvento(登録商標)4Feedが130g/Lの濃度を有することを考慮すると、IleおよびLeuをケトIleおよびケトLeuで置き換えた場合、これは、100%の濃度の増大を表す。
データは、懸濁液中に粒子を検出することができず、濁度が5NTU未満であることから、少なくとも2x(265g/L)までその製剤を濃縮することが可能であることを示す(図4を参照のこと)。
例4:LeuおよびIleのケト酸は、細胞培養培地製剤を安定化することができる
IleおよびLeuを含有するフィード(Cellvento(登録商標)4Feed)の安定性を、Ile/Leuを欠乏させ、ケトLeuまたはケトIleのいずれかを補充した同じフィードの安定性と比較した。フィードは標準プロトコルに従って調製した。最終的なpHは7.0+/-0.2であり、フィードを4℃またはRTで光から保護して、または光に暴露して保管した。300nm~600nmの範囲(5nmの間隔)の吸光度を測定することにより、90日間にわたって製剤の色の変化をモニタリングした。吸光度スキャン(300nm~600nm)のベースライン補正した曲線下面積(AUC)の経時的(D0~D90の間)な曲線下面積を算出することにより、条件を比較した。
図5Aに示すように、対照条件のIleおよびLeuを含有するフィードは、温度の増大または光暴露により、色が濃くなった(AUCが350から7000まで増加した)。4℃では、LeuをケトLeuで置き換えた場合、光保護および光暴露条件でAUCは、夫々27%および8%減少した。RTでは、減少はさらにより顕著であり、ケトLeu条件において、AUCは夫々31%(光保護)、37%(光暴露)減少した。これは、LeuのケトLeuによる置き換えが、フィードにおいて経時的に観察される色の変化を有意に減少させることができることを示す。
ケトIleについて得られた結果を図5Bに表す。ケトLeuについてのように、IleをケトIleで置き換えた場合、AUCの減少が観察された。4℃では、光保護および光暴露条件で、AUCは、夫々33%、および68%減少した。RTでは、光保護条件では減少が見られなかったが、光暴露条件において38%の減少が観察され、IleのケトIleによる置き換えが、フィードにおいて経時的に観察される色の変化を有意に減少させることができることを示す。
全体的な我々の結果は、アミノ酸のそれらのケト酸またはそれらの塩による置き換えが、光暴露の有無にかかわらず、4℃またはRTのいずれかで3か月間保管した場合に、色の変化が少ない、安定化をもたらし得る。
加えて、フィードにおいてLeuの代わりにケトLeuを使用した場合、フィードの沈殿が遅延した。沈殿を観察するために、50mLのファルコンチューブを裏返して、チューブの底に沈殿している可能性を確認し、写真を撮影した。4℃ではいずれの条件でも沈殿しなかったが、RT光保護において、対照条件はD49~D70で沈殿した一方で、ケトLeuを含有する条件では沈殿は観察されなかった。光に暴露したRTにおいて沈殿の完全な阻害は観察されなかったが、ケトLeu条件において沈殿が遅延した。対照条件ではD49から沈殿が観察された一方で、ケトLeuの条件ではD70に最初の沈殿が現れた。その後数日間、ケトLeu含有条件において、沈殿物の量および沈殿物の色の濃さが減少し、これは、RT光暴露においてもケトLeu製剤の安定性がわずかに増大したことを示す。
最終的に、ケト酸を含有するフィードの4℃またはRTでの保管の間に形成されるアンモニウムイオンの量は、通常のアミノ酸を含有するフィードと比較した場合、少なかった。安定性試験の全期間にわたるNHの形成を評価できるように、NH濃度のAUCを3か月のタイムフレームについて算出し、条件を比較した。
ケトLeuの結果を図6Aに表し、対照条件と比較した場合、アンモニア形成が少ないことを示す。フィードを4℃で、光保護および光暴露で保管した場合、対照と比較して、ケトLeu条件において、アンモニアは、夫々10%および19%少なく生産された。RTにおいて、同じ傾向が観察され、フィードを光保護および光暴露で3か月保管した場合、アンモニアレベルは、夫々15および5%減少した。
ケトIleについても同様の結果が得られ(図6B)、対照条件と比較した場合、アンモニア形成が少ないことを示す。フィードを4℃で、光保護および光暴露で保管した場合、対照と比較して、ケトIle条件において、アンモニアは、夫々21および24%低く生産された。RTにおいて、同じ傾向が観察され、フィードを光保護および光暴露で3か月保管した場合、アンモニアレベルは、夫々28および25%減少した。
例5:ケトIleおよびケトLeuは、フィード中のそれらの夫々のアミノ酸を置き換えて、比生産性を増大させることができる。IgG1を産生するCHOK1GSクローンによる細胞培養結果。
細胞培養実験に、ヒトIgG1を発現するCHOK1GS懸濁細胞株を使用した。細胞を、30mLの開始培養体積および2x10細胞/mLの播種密度で、50mLのスピンチューブを使用して、Cellvento 4CHO培地(Merck Darmstadt, Germany)中で4重に培養した。インキュベーションを、37℃、5%CO2、80%湿度、および320rpmの撹拌で行った。ケト酸を、それらの夫々のアミノ酸の代わりに、フィード(Ileおよびleuが欠乏した4Feed)に添加した。すべてのフィードのpHは中性(pH7.0+/-0.2)であった。陽性対照は通常のアミノ酸を含有する一方で、陰性対照は、ケト酸を添加することなく、夫々のアミノ酸を欠乏させたフィードを含有する。供給は、3、5、7、10および14日目に、以下のv/v比率(3、3、6、3および3%)で行った。グルコースを毎日定量し、400g/Lのグルコース溶液を使用して6g/Lに調整した。実験は少なくとも3回繰り返した。
生存細胞密度(VCD)およびバイアビリティを、Vi-CELL XR(Beckman Coulter, Fullerton, CA)を用いて評価した。代謝体濃度を、分光光度法および濁度法に基づいて、Cedex Bio HT(Roche Diagnostics, Mannheim, Germany)を使用してモニタリングした。アミノ酸の定量は、AccQ・TagUltra(登録商標)試薬キットを用いて、誘導体化後にUPLCによって行った。誘導体化、クロマトグラフィーおよびデータ解析は、供給者(Waters, Milford, MA)の推奨に従って行った。
1日あたり1細胞あたりの生産性を、補正積分VCDにより力価を除することにより毎日算出し、供給により生ずる希釈を考慮した。全体の比生産性を、力価と補正積分VCDとの間の線形回帰から傾きを算出することによって決定した。
生存細胞密度(図7A)を見ると、両方のケト誘導体は対照と比較してわずかに低い最大VCDを導いたが、11日後に得られた力価(図7B)は対照条件よりもわずかに高く、全体的に高い比生産性を示した(図8)。フィードがLeuおよびIleに欠乏している陰性対照は、7日後に急激に減少したVCD、および最も重要なことに、非常に限られたIgG力価を示し、LeuおよびIleはCHO細胞によるIgG産生を支援するために重要であることを示す。
NHは、フェッドバッチプロセスの過程にわたり産生される望ましくない代謝体である。ケトLeuおよびケトIle条件において17日のフェッドバッチプロセスの間に産生されたNHの量(図9A)は、LeuおよびIleを含有する対照と比較して有意に減少し、アンモニアのかなりの部分がLeuおよびIleの酸化的脱アミノ化から生成すること、またはバイオリアクター培地中のケト酸の存在が、アミノ化によってアミノ酸を生成するためのビルディングブロックとしての遊離NHの利用を促進していることのいずれかを示す。
使用済み培地中のアミノ酸の濃度を決定した。LeuがケトLeuで置き換えられている条件において、使用済み培地中のLeuの濃度(図9B)は陽性対照(LeuおよびIleを含有する)よりもわずかに低いが、時間に伴う進化は、供給日と翌日との間に濃度の増大を示し、LeuがケトLeuから極めて急速に産生され得ることを示す。IleがケトIleで置き換えられている条件(図10A)において、経時的に検出されるIleの濃度は、陽性対照におけるIle濃度よりも有意に低く、ケトIleからIleへの変換が遅いか、培養中にケトIleから別の生成物が形成されていることのいずれかを示す。ケトIle条件と、フィードがIleおよびLeuに欠乏している陰性対照との比較は、それにもかかわらず、そのフェドバッチにおいてケトIleからIleが生産され得ることを示す。加えて、クロマトグラムの慎重な分析は、時間とともに増加する、アロ-Ileに対応する新しいピークの同定を可能にした(図10B)。
対照のフェッドバッチプロセス(IleとLeuを含有するフィード)で生産された抗体の品質を、LeuおよびIleのいずれかを欠乏させ、かつケトLeuまたはケトIleのいずれかで補充したフィードで生産された抗体の品質と比較した。
抗体をプロテインA PhyTips(登録商標)(PhyNexus Inc, San Jose, CA)を使用して、細胞培養上清から精製した。GlykoPrep(登録商標)-plus Rapid N-Glycan Sample Preparation kit with 8-aminopyrene-1,3,6-trisulfonic acid trisodium(APTS)(Prozyme, Hayward, CA)を製造者の指示に従って使用して誘導体化した後、グリコシル化パターンを、レーザー誘起蛍光を用いたキャピラリーゲル電気泳動(CGE-LIF)により分析した。簡単に説明すると、精製した抗体を変性および固定化し、N-Glycanase(登録商標)で消化した後、50℃で60分間APTSで標識することにより、抗体からグリカンを放出させた。残存するAPTSを除去する洗浄ステップの後、LIF検出器(Ex:488nm、Em:520nm)を備えたPharmaceutical Analysis System CESI8000 Plus(Sciex, Washington, USA)を使用してグリカンの相対量を決定した。
分離は、ポリビニルアルコールコーティングしたキャピラリー(全長:50.2cm、内径:50μm)中で行い、炭水化物標識キット(Beckman Coulter, Brea, USA)から炭水化物分離緩衝剤を充填した。キャピラリー表面を、30psiで3分間、分離緩衝剤で最初にリンスした。入口および出口の緩衝剤バイアルを20サイクル毎に交換した。試料を0.5psiで12秒間の圧力注入により導入し、続いて0.2分間の浸漬ステップを行い、キャピラリーチップを洗浄した。最後に、0.17分のランプで逆極性を印可して、20kVで20分間、分離を行った。ピークをそれらの個別の移動時間に従って同定し、以下のパラメータに従って積分した:ピーク幅0.05、閾値10,000、ショルダー感度(shoulder sensitivity)9,999。
抗体凝集および断片化を、TSKgel SuperSW3000カラム(Tosoh Bioscience)を使用してWater AcquityUPLCシステム上でサイズ排除クロマトグラフィーを使用して測定した。移動相は0.05Mリン酸ナトリウム、0.4M過塩素酸ナトリウム、pH6.3であり、流速は0.35mL/分であった。試料濃度は、IgG精製後に保管緩衝剤を使用して1.0mg/mLに調整し、検出は214nmの吸光度を使用して行った。
電荷バリアントを、製造者の指示に従ってcIEFを使用してCapillary Electrophoresis CESI 8000(Beckman Coulter/ Sciex)上で、測定した。試料濃度を、IgG精製後に保管緩衝剤を使用して1.5mg/mLの濃度に調整した。測定に先立ち、試料を種々のpHマーカー、カソード/アノード安定剤、3M尿素cIEFゲル、ファルマライト(Pharmalyte)を含有するマスターミックスと混合した。
グリコシル化(図11)、高分子量種および低分子量種(図12A)、および電荷バリアント(図12B)について得られた結果は、対照条件と、IleおよびLeuをケトIleおよびケトLeuで交換した条件との間に差がないことを示し、アミノ酸交換がこの研究で生産されたIgG1の3つの重要な品質特性に影響を与えないことを示す。
例6:IgG1を産生するCHODG44およびCHOK1クローンを用いた、ケトLeu性能の確認。
種々のバイオプロセスへの本発明の技術の適用性は、他のタイプのCHO細胞:例としてケトLeuについてCHODG44およびCHOK1(非GS)を用いてフェッドバッチ実験を行うことにより実証された。DG44細胞株の結果(図13)は、対照と比較して、ケトLeu条件ではVCDが低く、IgG力価もわずかに低いことを示す。それにもかかわらず、ケトLeuを使用したプロセスでは、全体的な比生産性がわずかに増大した。使用済み培地データは、この細胞株についてもケトLeuの条件でのLeu濃度は対照のLeu濃度とほぼ同様であることを示し、この細胞株においてもケトLeuから非常に急速にLeuが産生され得ることを確認した。
図13:対照と比較した、IgG1を発現するCHODG44細胞株のケトLeu含有プロセスの性能。
図14:対照と比較した、IgG1を発現するCHOK1非GS細胞株のケトLeu含有プロセスの性能。
例7:種々の播種密度および種々のleu/ケトLeu比率を用いたバッチにおける性能
ケトIleおよびとケトLeuを用いた、3つの異なるCHO細胞株により得られた我々のフェッドバッチ使用済み培地の結果は、ケト酸からのIle、アロ-Ile、Leuの形成が非常に急速であることを示す。これは、ケト酸が培養の開始時から容易に利用可能であるため、これらはまた、バッチおよび灌流培地の可溶性を増大するために使用されてもよいことを示す。CHOシステムでこれが適用可能であることを確認するために、細胞培養培地(Cellvento(登録商標)4CHO)において、ケトLeuまたはケトIleを、LeuおよびIleの代替として夫々使用した。該製剤のLeu/Ile欠乏バージョンを生産し、ケトLeu対LeuおよびケトIle対Ileの等モル濃度を使用した(図15)。CHOK1GS細胞株の細胞成長およびバイアビリティを数週間にわたって連続継代実験でモニタリングし、成長がLeuまたはIleの残存量に起因しないことを確認した。0.2百万細胞/mLの播種密度でのバッチ実験を設計し、IgG産生を経時的に測定した。また、使用済み培地中のアミノ酸の定量を使用して、アミノ酸の産生を時間とともに追跡した。
同様の方法において、より高い細胞播種密度でのバッチ実験を、種々の比率のLeu/ケトLeuを含有する培地で行い、より高い細胞密度で開始する場合にどの比率が好ましいかを理解した(図16)。使用した分析法は上記のものと同じである。連続継代の結果は、CHOK1GS細胞が、培養の最初の数日間は成長が観察されず、バイアビリティが大幅に低下したため、IleおよびLeuが欠乏した培地中で成長できないことを示す。対照的に、LeuまたはIleをそれらの対応するケト酸により置き換えた場合、継続的な成長が観察された。全体として、各継代で観察された最大生存細胞密度は、IleおよびLeuを含有する対照条件よりもわずかに低く、対照条件と同等の性能を得るためには少量のLeuとIleが必要とされることを示す。この量は、種々の比率のIle/LeuおよびケトIle/ケトLeuを含有する培地を試験することにより、極めて容易に実験的に決定することができる。
バッチ実験において、性能は、対照条件とケトLeuの条件との間で同等であり、Leuをモル等量のケトLeuで置き換えた場合、CHOK1GS細胞が成長できることを示した(図15A)。その条件において、7日目および10日目に同様の量のIgGが検出された(図15B)。対照的に、IleをケトIleで置き換えた場合、5日目後の成長およびIgG濃度は、わずかに損なわれ、経時的にバッチ条件の対照と同様の成長および力価を得るためには、少量のIleが必要である可能性を示す。この量は、種々の比率のIleおよびケトIleを含有する培地を試験することにより、極めて容易に実験的に決定することができる。代替的に、Ile濃度と比較して、より高いモルのケトIle濃度を試験してもよい。
ケトIleとケトLeuの性能の違いは、使用済み培地中のIle、アロ-IleおよびLeuの形成を見ることにより説明できるかもしれない。34%の初期ケトLeu濃度が3日目にLeuの形態で検出された一方で、21%の初期ケトIle濃度のみが3日目にIleとして検出された。加えて、35%の初期ケトIle濃度が10日目までアロ-Ileの形態で検出された。これは、細胞によるケトLeuのLeuへのアミノ化が、細胞によるIleと同じ程度に使用されない可能性のあるアロ-Ileの付随する形成のために、ケトIleのIleへのアミノ化よりもより効率的であることを示す。
最終的に、より高い細胞密度でのバッチ実験を行い、高い播種密度で開始した場合にケトLeuが容易に利用可能であるかどうか、あるいはこのような条件において成長および生産性を支援するために最低濃度の遊離ロイシンが存在しなければならないかを決定した。この実験では、CHOK1GS細胞株を、0、25、50、75、または100%のケトLeuを含有し、残りをロイシンの形態で添加した培地に0.3、0.6または1.10^6細胞/mLで播種した。
結果は、予想どおり、播種密度の増大に伴う、成長および力価の増大を示す。種々の比率のケトLeu/Leuの間で、最大のVCDは、1.10^6細胞/mLの最も高い播種密度で、100%のケトLeu交換で観察された。0.6.10^6細胞/mlおよび0.3.10^6細胞/mLで細胞を播種した場合、最も高いVCDは、1:1のケトLeu:Leu比率(ケトLeu50%、Leu50%)で観察された。力価について、0.3および1.10^6細胞/mLでの播種では有意な差は見られなかった一方で、0.6.10^6細胞/mLでの播種では、Leu/ケトLeuの比率が高いほどIgG濃度が増大するというわずかな傾向が見られた。この差は有意ではないかもしれない。
例8.FB培養における他のケト酸対それらの夫々のアミノ酸の性能
FB実験において、他のケト酸をそれらの夫々のアミノ酸の代替として試験した。フィード中のValをケトValで置き換えた場合、IleおよびLeuと比較して酷似する挙動が観察された(図17)。実際、陽性対照と比較して、同様のVCDおよび力価が観察された一方で、Valが欠乏したフィードは、7日後に、大幅に減少したVCD、および非常に低い力価を導いた。NH濃度はまた、ケト酸を使用した場合に低くなり、Valについても、夫々のケト酸の利用が、フェッドバッチ培養の間の少ないNHを導き得ることを示す。全体的に、これは、分岐鎖ケト酸のメンバーのようなケトValは、ケトLeuおよびケトIleと同じ挙動を示す可能性が高く、細胞培養中に非常に急速にアミノ化される可能性が高いことを示す。ケトIleおよびケトLeuとの構造的類似性に起因して、全体のフィード濃度およびフィードの安定性に対するケトValの効果は、他の分岐鎖ケト酸と同様である。Valと比較した場合、水への6倍高い可溶性が確認された。
フェニルアラニン(Phe)およびそのケト酸であるフェニルピルビン酸(図18)について、細胞培養においてPheを作るアミノ化反応は、分岐鎖ケト酸で生じるアミノ化反応よりも遅いようである。実際、Pheを等モル濃度のフェニルピルビン酸で置き換えた場合、使用済み培地データは、陰性対照(Pheが欠乏したフィード)と比較して上清中により多くのPheが見出されたものの、形成された量は対照条件と同じ成長および力価を支援するのに充分ではなかったことが明らかになった。5日後、有意に低下したVCDが観察され、20%の力価の最終的な低下が観察された。この結果に続いて、2xのモル等量のPheがフィード中のフェニルピルビン酸の濃度として使用された条件。結果は、フェニルピルビン酸の量の増大は、VCD、力価、および使用済み培地中の酷似する量のPheを回復させることができたことを示す。これらのデータは、Pheもまたそのケト酸で置き換えることができることを確認するが、アミノ化反応の遅いペースに対応するために、濃度の調整が必要であるかもしれない。

Claims (13)

  1. 4-メチル-2-オキソペンタン酸、3-メチル-2-オキソペンタン酸、アルファ-ケトイソ吉草酸、フェニルピルビン酸およびアルファケトガンマメチルチオ酪酸および/またはそれらの誘導体の群のうちの少なくとも1つのアルファケト酸を含む、乾燥粉末または乾燥顆粒細胞培養培地。
  2. 4-メチル-2-オキソペンタン酸、3-メチル-2-オキソペンタン酸、アルファ-ケトイソ吉草酸、フェニルピルビン酸およびアルファケトガンマメチルチオ酪酸および/またはそれらの誘導体の群のうちの1つ以上のアルファケト酸が、アルファケト酸の各々について、乾燥粉末または乾燥顆粒細胞培養培地の溶解後に得られる液体培地の濃度が10mM超となるような量で存在する、請求項1に記載の乾燥粉末または乾燥顆粒細胞培養培地。
  3. 乾燥粉末または乾燥顆粒細胞培養培地が、対応するアミノ酸を含まない、請求項1または2に記載の乾燥粉末または乾燥顆粒細胞培養培地。
  4. 培地が、4-メチル-2-オキソペンタン酸、3-メチル-2-オキソペンタン酸、アルファ-ケトイソ吉草酸、フェニルピルビン酸およびアルファケトガンマメチルチオ酪酸の群のうちの1以上のアルファケト酸のナトリウム塩を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の乾燥粉末または乾燥顆粒細胞培養培地。
  5. 乾燥粉末または乾燥顆粒細胞培養培地が、4-メチル-2-オキソペンタン酸、3-メチル-2-オキソペンタン酸および/またはアルファ-ケトイソ吉草酸から選択されるアルファケト酸のナトリウム塩の1以上を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の乾燥粉末または乾燥顆粒細胞培養培地。
  6. a)4-メチル-2-オキソペンタン酸、3-メチル-2-オキソペンタン酸、アルファ-ケトイソ吉草酸、フェニルピルビン酸およびアルファケトガンマメチルチオ酪酸および/またはそれらの誘導体の群のうちの少なくとも1のアルファケト酸を細胞培養培地の他の構成要素と混合すること、
    b)ステップa)の混合物を粉砕に供すること
    による、請求項1~5のいずれか一項に記載の乾燥粉末細胞培養培地を生産するための方法。
  7. a)バイオリアクターを提供すること
    b)培養される細胞を、請求項1~5のいずれか一項に記載の乾燥粉末または乾燥顆粒培地を溶媒に溶解することにより調製された液体細胞培養培地と混合すること
    c)ステップb)の混合物をインキュベートすること
    による、細胞を培養するためのプロセス。
  8. -細胞および水性細胞培養培地をバイオリアクターに充填すること
    -バイオリアクター中で細胞をインキュベートすること
    -バイオリアクター中での細胞のインキュベーションの全時間にわたって連続的に、または前記インキュベーション時間内に1回または数回、この場合においてフィード培地である細胞培養培地をバイオリアクターに添加すること
    ここで、フィード培地は、請求項1~5のいずれか一項に記載の乾燥粉末または乾燥顆粒培地を溶媒に溶解することによって調製される、
    による、バイオリアクター中で細胞を培養するためのフェドバッチプロセス。
  9. フィード培地が、少なくとも4-メチル-2-オキソペンタン酸、3-メチル-2-オキソペンタン酸、アルファ-ケトイソ吉草酸および/またはそれらの塩を12~600mmol/lの濃度で含む、請求項8に記載のフェドバッチプロセス。
  10. 培地中に少なくとも20mMの4-メチル-2-オキソペンタン酸、3-メチル-2-オキソペンタン酸、アルファ-ケトイソ吉草酸、フェニルピルビン酸および/またはアルファケトガンマメチルチオ酪酸および/またはそれらの誘導体を含む、液体細胞培養培地を安定化するための方法であって、ここでその結果得られる培地は、4-メチル-2-オキソペンタン酸および/または3-メチル-2-オキソペンタン酸および/またはそれらの誘導体を欠いている、あるいは4-メチル-2-オキソペンタン酸および/または3-メチル-2-オキソペンタン酸および/またはそれらの誘導体が対応するアミノ酸および/またはそれらの誘導体により置換されている、他の点では同じ組成の培地と比較して、4℃にてまたは室温にて90日にわたって保管した場合、少ない色変化および/または少ない沈殿を示す、前記方法。
  11. アミノ酸であるイソロイシン、ロイシン、バリン、フェニルアラニンおよびメチオニンの1以上を4-メチル-2-オキソペンタン酸、3-メチル-2-オキソペンタン酸、アルファ-ケトイソ吉草酸、フェニルピルビン酸およびアルファケトガンマメチルチオ酪酸および/またはそれらの誘導体の群から選択される対応するケト酸により完全にまたは部分的に置換することにより、乾燥粉末または乾燥顆粒細胞培養培地の可溶性を改善するための方法。
  12. 夫々のアミノ酸の少なくとも50%(モル比)を対応するアルファケト酸および/またはそれらの誘導体により置換することによる、請求項11に記載の方法。
  13. 元の組成と比較して、夫々のアミノ酸の少なくとも50%(モル比)が対応するアルファケト酸および/またはそれらの誘導体により置換されている乾燥粉末または乾燥顆粒細胞培養培地を提供すること、および溶媒に前記培地を溶解することを含み、アミノ酸が置換されていない、他の点では同一組成である元の組成の培地と比較して、溶解がより速く、および/またはより少ない溶媒で生じる、請求項11または12に記載の方法。
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