JP2022527061A - ヒト化された、オーダーメイドされた、指定された病原体を含まない(非ヒト)ドナーから移植するための、個別化された細胞、組織、及び臓器、ならびにそれらに関連する方法及び製品 - Google Patents

ヒト化された、オーダーメイドされた、指定された病原体を含まない(非ヒト)ドナーから移植するための、個別化された細胞、組織、及び臓器、ならびにそれらに関連する方法及び製品 Download PDF

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Abstract

移植のための、個別化されたヒト化された移植可能な細胞、組織、及び臓器のリポジトリを生成及び保存するための生物学的システムであって、生物学的システムが生物学的に活性及び代謝的に活性であり、生物学的システムが、ヒトレシピエントへの移植のための非ヒト動物における遺伝子再プログラムされた細胞、組織、及び臓器を有し、非ヒト動物が、1つ以上の表面糖鎖エピトープを提示せず、野生型ブタのSLA由来の特定の配列が、ヒトレシピエントのHLA由来のヒト捕捉参照配列に基づいて合成ヌクレオチドで置き換えられている、生物学的システム。【選択図】図33

Description

特許法第30条第2項適用申請有り (その1) ウェブサイトの掲載日 2020年1月14日 ウェブサイトのアドレス https://doi.org/10.1093/jbcr/irz124
関連出願の相互参照
本出願は、2020年2月12日に出願された米国仮特許出願第62/975611号、2020年1月22日に出願された米国仮特許出願第62/964397号、2019年10月4日に出願されたPCT出願第PCT/US2019/054833号、2019年5月15日に出願された米国特許出願第62/848272号、2019年3月25日に出願された米国仮特許出願第62/823455号の優先権を主張し、これらのすべての開示は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
全米臓器分配ネットワーク機構(United Network for Organ Sharing)(「UNOS」)によれば、全米移植待機リストに10分ごとに誰かが加わり、移植を待ちながら死亡する人は一日20人近くに上る。2020年3月現在、米国では約112,385人が救命臓器移植を必要としており、2019年においては、見つかったドナーは約19,000人にすぎず、移植実施件数は約39,000件にすぎなかった(全米臓器分配ネットワーク機構(UNOS)のデータ)。米国における特定臓器に対するニーズは下記の通りである:
Figure 2022527061000002
2014年から2019年までの過去5年間で、平均して約6,400人の候補者が、待機リストに登録されている間に、臓器移植を受けずに死亡した。ほぼ同数の患者は、必要な手術のための移植を受けるには病気が重すぎたため、待望の移植を受けることができなかった。利用可能なドナーとレシピエントのアンメットニーズとの間の相違比率はわずかには改善されてきてはいるものの、この不均衡は今日まで続いており、依然として相当なものであり、供給の不十分さは依然として散々なものである。もちろん、臓器移植を必要としている患者は、ある種から別の種への臓器移植(同種移植)を表すヒトドナーからの臓器を待っている。
同種移植は、安全性、物流、倫理的、法的、制度的、及び文化的な複雑な問題を含む、多くの重大な多面的な問題を提示している。安全性の観点から、ヒトドナーから得られる同種組織は、重大な感染性疾患リスクをはらんでいる。例えば、移植分野の一部の研究者は、「[ヒト]サイトメガロウイルス(CMV)は、臓器移植のレシピエントに影響を及ぼす単一で最も重要な感染性因子であり、これらの患者の少なくとも3分の2は、移植後にCMV感染を有する」と報告している。Denner J(2018)Reduction of the survival time of pig xenotransplants by porcine cytomegalovirus.Virology Journal,15(1):171、Rubin RH(1990)Impact of cytomegalovirus infection on organ transplant recipients.Reviews of Infectious Diseases,12 Suppl 7:S754-766。
組織移植に関する規制には、ドナースクリーニング及び外来性病因物質の検査のための基準、ならびに組織移植物の加工及び分配を規定する厳密な規制が含まれる。同種移植の結果としてウイルスの伝染が生じている。臓器移植及び細胞移植の間には、外来性のレトロウイルス(ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)、ヒトT細胞白血病ウイルス2型(HTLV-2)、及びヒト免疫不全ウイルス(HIV))の伝染がヒト組織によって生じており、こうしたヒト組織は、ウイルス(ヒトサイトメガロウイルスなど)、さらには狂犬病まで有するものもある。臓器の生存度及び死後スクリーニングを巡っては技術的及び時間的な制約が存在するため、完璧に検査を行うことが困難であり、このリスクを排除することはできない。
レシピエントとドナーとの間に免疫学的な相違があることが、一連の合併症及び追加リスクをレシピエント自身にもたらす免疫抑制レジメンを用いることなく移植片生着期間を延ばすことの妨げとなっている。患者が(非自己)ドナー(生存または死亡)から臓器を受け入れる場合、レシピエントの免疫系は、そうした移植物を外来物として認識することになる。この認識が生じると、免疫系の自然プロセスを抑制する薬物療法が同時に利用されない限り、レシピエントの免疫系が動員され、そうした臓器が「拒絶」されることになる。同種皮膚移植片への応答は、先天性免疫系及び適応性免疫系の両方の関与を伴う強力な免疫応答である。Abbas AK,Lichtman AHH,Pillai S(2017)Cellular and Molecular Immunology。
免疫抑制剤の使用に関して、免疫抑制剤は、急性及び慢性拒絶スキーマにおける移植された移植片の生存を延長する。しかしながら、これらは、最も日常的な病原体からの感染に対してさえ患者を脆弱なものとし、生涯にわたって継続的な使用を必要とするが、患者は、感染のリスク、さらにはがんへのリスクが増大することになる。免疫抑制剤は、自然の免疫学的プロセスを鈍化させる可能性がある。残念ながら、これらの薬物は、多くの場合、臓器移植後の生涯の要件であり、それ以外の日常的な病原体に対するレシピエントの感受性を増加させる。こうした薬物は、外来臓器の存在を移植レシピエントが寛容することを可能にする一方で、免疫系が損なわれることと関連して感染性の疾患及び症状のリスクを上昇させるものでもあり、これに伴って、「ヒト同種移植片によって多岐にわたる生物の伝染が生じる可能性がある」。Fishman JA,Greenwald MA,Grossi PA(2012)Transmission of Infection With Human Allografts:Essential Considerations in Donor Screening.Clinical Infectious Diseases,55(5):720-727。
物流的には、臓器提供及び移植手順を成功させるに先立って、多数の因子を考慮しなくてはならない。血液型及び他の医学的要因を提供臓器ごとに評価しなくてはならないだけでなく、各臓器型は、同様に重きを置かねばならない特有の特徴(死後虚血、免疫学的適合性、患者の場所、及び施設の能力など)を示す。
これらの患者、ならびに角膜や膵島細胞などの組織移植からも大きな利益を受けるであろうこれらの統計に含まれていない数百万人の患者にとって、現場の一部は、「同種移植が十分な供給源であることを証明することはない」ことを確認している。Ekser B,Cooper DKC,Tector AJ(2015)The Need for Xenotransplantation as a Source of Organs and Cells for Clinical Transplantation.International journal of surgery(London,England),23(0 0):199-204。
こうした難点はあるものの、ほとんどの末期臓器不全患者にとって臓器移植は紛れもなく好ましい治療であり、この理由の大半は、実行可能な代替法が存在しないことによるものである。一方で、奏功する救命治療介入として臓器移植が出現したものの、この治療介入は、移植に利用可能な臓器の不足と隣り合わせであり、こうして臓器移植が出現したことによって、不幸なことに、誰を生かして誰を死なせるかを決定しなくてはならないというイデオロギー的に頭の痛い立場に医療専門家は立たされている。究極的には、同種移植材料の重大な欠点を最少化すると同時に、そうした同種移植材料をそのように有効なものにする作用機構と同じ作用機構を与えると想定される代替の補助治療選択肢があれば、世界の患者にとって計り知れないほど有益なものとなろう。
より永続的な臓器または他の組織が見つかり、利用される一方で、一般に、応急的な治療に対するものを含めて、臓器及び他の移植組織に対する差し迫ったニーズが存在することがきっかけとなり、応急的異種移植及び/または永続的異種移植のための他の動物を含めて、非ヒト起源の臓器、細胞、及び組織の利用を検討するに至っている。
非ヒト動物の臓器をヒトレシピエントに移植するなどの異種移植は、移植に利用できる臓器の不足を減らす可能性があり、世界中の何千人もの人々を助ける可能性がある。ブタは、そのサイズ及び生理機能がヒトと適合すると考えられることから、ヒトへの異種移植において使用するための臓器、組織、及び/または細胞の潜在的な非ヒト供給源であるとみなされてきた。しかしながら、ヒトまたは他の霊長類への標準的な非修飾ブタ組織を使用した異種移植は、移植された組織の拒絶を伴う。
野生型ブタ臓器は、ヒトへの移植に際し、ヒト免疫系による拒絶を引き起こし、そこでは、自然ヒト抗体がブタ細胞上のエピトープを標的とすることで、移植された臓器、細胞、または組織の拒絶を引き起こし、不全に至らしめる。こうした拒絶反応は、細胞性(リンパ球介在性)拒絶反応または液性(抗体介在性)拒絶反応であり得、こうした拒絶反応には、限定されないが、超急性拒絶反応、急性拒絶反応、慢性拒絶反応(生存期間を限定する血小板減少凝固障害を伴い得る)、及び急性液性異種移植片反応(AHXR)が含まれる。ブタからヒトへの異種移植に関する他の障害には、疾患または寄生虫の種間伝播のリスクが含まれる。
超急性拒絶反応の原因の1つは、ブタ細胞にアルファ-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼ(「アルファ-1,3-GT」)が発現することに起因しており、このアルファ-1,3-GTによってアルファ-1,3-ガラクトースエピトープが合成される。ヒト、類人猿、及び旧世界ザルを除いて、ほとんどの哺乳類がガラクトースアルファ1,3-ガラクトースを含む糖タンパク質をその細胞表面上に保有する(例えば、Galili et al.,“Man, apes, and old world monkeys differ from other mammals in the expression of α-galactosyl epitopes on nucleated cells,”J.Biol.Chem.263:17755-17762(1988)を参照されたい。ヒト、類人猿、及び旧世界ザルでは、天然起源の抗アルファgal抗体が産生されており、この抗体は、ガラクトースアルファ-1,3ガラクトースを有する糖タンパク質及び糖脂質に結合する(例えば、Cooper et al.,“Genetically engineered pigs,”Lancet 342:682-683(1993)を参照のこと)。
したがって、天然型のブタ製品が異種移植に利用される場合、外来性のアルファ-1,3-ガラクトースエピトープに対してヒト抗体が誘導されることになり、通常は超急性拒絶反応が続発する。アルファ-1,3-GTを超えて、ブタ細胞は、ヒト細胞には見られない遺伝子を複数発現する。これらには、Neu5GC、及びβ1,4-N-アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ(B4GALNT2)が含まれるが、これらに限定されない。異種組織を移植する前から、ヒト血液中にはα-Gal、Neu5GC、β1,4-N、及びSda様抗原に対する抗体が存在し、こうした抗体は、移植組織に対する激烈かつ即時型の抗体介在性拒絶反応に関与する。
さらに、ブタ細胞は、クラスI及びクラスII SLAを内皮細胞上に発現する。こうしたSLA交差反応性抗体は、移植されるブタ組織に対する激烈かつ即時型の拒絶反応の一因となる。SLA抗原は、レシピエントのT細胞介在性免疫応答にも関与し得る。ブタSLAには、限定されないが、SLA-1遺伝子座によってコードされる抗原、SLA-2遺伝子座によってコードされる抗原、SLA-3遺伝子座によってコードされる抗原、SLA-4遺伝子座によってコードされる抗原、SLA-5遺伝子座によってコードされる抗原、SLA-6遺伝子座によってコードされる抗原、SLA-8遺伝子座によってコードされる抗原、SLA-9遺伝子座によってコードされる抗原、SLA-11遺伝子座によってコードされる抗原、及びSLA-12遺伝子座によってコードされる抗原が含まれ得る。ブタクラスII SLAには、SLA-DQ遺伝子座によってコードされる抗原及びSLA-DR遺伝子座によってコードされる抗原が含まれる。
他の多くの試みは、他者によって、異種移植製品の供給源としての役割を果たすようにブタを改変するために行われてきたが、そのような試みは、現在のところ奏功したブタモデルをもたらさなかった。そのような商業的、学術的及び他のグループは、介入、遺伝子改変、キメラ作用を通じて免疫寛容性を誘導する努力、導入遺伝子の包含、レシピエントの自然免疫学的応答(複数可)を低減することを目的とした外因性免疫抑制薬の同時使用、及び他のアプローチに焦点を当ててきた。これらのグループは、すべてのレシピエントのために1つの標準化された供給源動物を作成することを目指して、「すべてのサイズに適合する」供給源動物を作成しようと探求してきた。
具体的には、特定のグループは、PERVを含まないトランスジェニックブタを作成し、トランスジェニック骨髄を治療に利用することに焦点を当て(例えば、eGenesis、Inc.PCT/US2018/028539を参照されたい);幹細胞足場を利用してトランスジェニックスイッチを作成することに焦点を当て(例えば、United Therapeutics/Revivicor [US20190111180A1]を参照されたい);キメラ作用を組み合わせて、治療にトランスジェニック骨髄を利用して、患者T細胞を寛容にすることに焦点を当てている(例えば、Columbia University [US20180070564A1を参照されたい)。ヒト免疫系による認識後のこれらの「下流」アプローチは、異種移植での長期使用に適した製品を産生するか、または上記のトランスジェニック及び他の改変を残存するブタを産生することに成功していない。
上記のアプローチとは対照的に、本発明は、第一着手として、ヒト免疫系からの検出を逃れるようにドナーブタ細胞のゲノムを修飾することにより、患者のT細胞及び抗体が外来物質を破壊するためにプライミングされたときに続く免疫カスケードを回避することにより、「患者特有の」解決策を達成する。この「上流」アプローチは、一態様では、動物の免疫機能を犠牲にすることなく、ヒトに移植されたときにドナー動物の細胞、組織、及び臓器に免疫寛容性を付与する最小限の遺伝子改変の特定の組み合わせを通じて達成される。それ故に、本発明は、異種移植の科学を臨床的な現実に変換することに対して長年存在するアンメットニーズに対処する。
この「上流」アプローチは、一態様では、動物の免疫機能を犠牲にすることなく、ヒトに移植されたときにドナー動物の細胞、組織、及び臓器に免疫寛容性を付与する最小限の遺伝子改変の特定の組み合わせを通じて達成される。それ故に、本発明は、異種移植の科学を臨床的な現実に変換することに対して長年存在するアンメットニーズに対処する。
一態様では、本開示は、移植のための個別化された、ヒト化された、移植可能な細胞、組織、及び臓器のリポジトリを生成及び保存するための生物学的システムであって、生物学的システムが、生物学的に活性及び代謝的に活性であり、生物学的システムが、ヒトレシピエントへの移植のために非ヒト動物において遺伝的に再プログラムされた細胞、組織、及び臓器を含む。例えば、非ヒト動物は、遺伝的に再プログラムされたブタから単離された細胞、組織、及び/または臓器の異種移植のための遺伝的に再プログラムされたブタであり、遺伝的に再プログラムされたブタが、野生型ブタの主要組織適合性複合体の複数のエクソン領域中の複数のヌクレオチドを、ヒト捕捉参照配列からの複数の合成ヌクレオチドで置き換えるように再プログラムされている核ゲノムを含む。一態様では、当該遺伝的に再プログラムされたブタの細胞は、α-Gal、Neu5Gc、及びSDから選択される1つ以上の表面糖鎖エピトープを提示しない。さらに、アルファ-1,3ガラクトシルトランスフェラーゼ、シチジン一リン酸-N-アセチルノイラミン酸ヒドロキシラーゼ(CMAH)、及びβ1,4-N-アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼをコードする遺伝子は、遺伝的に再プログラムされたブタが、それらの遺伝子によってコードされる表面糖鎖エピトープの機能的発現を欠くように改変される。いくつかの態様では、再プログラムされたゲノムは、以下:i)ヒト捕捉参照配列のHLA-A、HLA-B、及びHLA-Cのそれぞれのオルソロガスなエクソン領域に由来するヌクレオチドでの、野生型ブタのSLA-1、SLA-2、及びSLA-3のうちの少なくとも1つの、ならびにii)ヒト捕捉参照配列のHLA-E、HLA-F、及びHLA-Gのそれぞれのオルソロガスなエクソン領域に由来するヌクレオチドでの、野生型ブタのSLA-6、SLA-7、及びSLA-8のうちの少なくとも1つの、ならびにiii)ヒト捕捉参照配列のHLA-DR及びHLA-DQのそれぞれのオルソロガスなエクソン領域に由来するヌクレオチドでの、野生型ブタのSLA-DR及びSLA-DQのうちの少なくとも1つの、エクソン領域におけるヌクレオチドの部位特異的変異原性置換を含む。いくつかの態様では、再プログラムされたゲノムは、以下のA~C:
A)再プログラムされたブタ核ゲノムは、ヒト捕捉参照配列からの既知のヒトβ2-ミクログロブリンのオルソロガスなエクソンからのヌクレオチドでの、野生型ブタのβ2-ミクログロブリンのエクソン領域におけるヌクレオチドの部位特異的変異原性置換を含む;
B)再プログラムされたブタ核ゲノムは、ヒト捕捉参照ゲノムによって発現されるベータ2ミクログロブリン糖タンパク質のアミノ酸配列と少なくとも95%同一であるヒト化ベータ2ミクログロブリン(hB2M)ポリペプチド配列であるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む;
C)再プログラムされたブタ核ゲノムは、ブタの内因性β2-ミクログロブリン遺伝子座において、核ゲノムが、ヒトレシピエントのβ2-ミクログロブリンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むように再プログラムされるように、再プログラムされている;のいずれか1つを含む。さらに、いくつかの態様では、再プログラムされたブタ核ゲノムは、遺伝的に再プログラムされたブタが野生型ブタの内因性β2-ミクログロブリンポリペプチドの機能的発現を欠くように再プログラムされている。さらに、再プログラムは、いかなるフレームシフトまたはフレーム破壊も導入しない。
他の態様では、本開示は、アルファ-Gal、Neu5Gc、及びSDから選択される表面糖鎖エピトープの機能的発現を欠き、かつヒト捕捉参照配列のヒト化表現型を発現するように遺伝的に再プログラムされる核ゲノムを含む、遺伝的に再プログラムされたブタを調製する方法であって、
a.ブタ胎児線維芽細胞、ブタ接合体、ブタ誘導多能性幹細胞(IPSC)、またはブタ生殖細胞を得ることと、
b.a)中の当該細胞を、機能的アルファ-1,3ガラクトシルトランスフェラーゼ、シチジン一リン酸-N-アセチルノイラミン酸ヒドロキシラーゼ(CMAH)、及びβ1,4,N-アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼを欠くように遺伝子的に改変することと、
c.i)ヒト捕捉参照配列のHLA-A、HLA-B、及びHLA-Cのそれぞれのオルソロガスなエクソン領域に由来するヌクレオチドでの、野生型ブタのSLA-1、SLA-2、及びSLA-3のうちの少なくとも1つの、ならびにii)ヒト捕捉参照配列のHLA-E、HLA-F、及びHLA-Gのそれぞれのオルソロガスなエクソン領域に由来するヌクレオチドでの、野生型ブタのSLA-6、SLA-7、及びSLA-8のうちの少なくとも1つの、ならびにiii)ヒト捕捉参照配列のHLA-DR及びHLA-DQのそれぞれのオルソロガスなエクソン領域に由来するヌクレオチドでの、野生型ブタのSLA-DR及びSLA-DQのうちの少なくとも1つの、エクソン領域におけるヌクレオチドの部位特異的変異原性置換のために、規則的な間隔でクラスター化した短鎖反復回文配列(CRISPR/Cas)を用いて、b)中の当該細胞を遺伝的に再プログラムすることと、
ここで、野生型ブタのゲノムのイントロン領域は再プログラムされておらず、
再プログラムされたゲノムは、以下のA~C:
A)再プログラムされたブタ核ゲノムは、ヒト捕捉参照配列からの既知のヒトβ2-ミクログロブリンのオルソロガスなエクソンからのヌクレオチドでの、野生型ブタのβ2-ミクログロブリンのエクソン領域におけるヌクレオチドの部位特異的変異原性置換を含む;
B)再プログラムされたブタ核ゲノムは、ヒト捕捉参照ゲノムによって発現されるベータ2ミクログロブリンと少なくとも95%同一であるヒト化ベータ2ミクログロブリン(hB2M)ポリペプチド配列であるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む;
C)再プログラムされたブタ核ゲノムは、遺伝子再プログラムされたブタが、野生型ブタの内因性β2-ミクログロブリンポリペプチドの機能的発現を欠くように再プログラムされており、再プログラムされたブタ核ゲノムは、ブタの内因性β2-ミクログロブリン遺伝子座において、核ゲノムが、ヒトレシピエントのβ2-ミクログロブリンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むように再プログラムされる;の少なくとも1つを含み、
当該再プログラムは、いかなるフレームシフトまたはフレーム破壊も導入しておらず、
d.c)中の遺伝的に再プログラムされた細胞から胚を生成することと、
e.胚を代用ブタに移植し、移植された胚を代用ブタ内で成長させることと、を含む、方法を含む。
別の態様では、本開示は、異種移植のためのドナーブタ組織または臓器を産生する方法であって、当該ドナーブタ組織または臓器の細胞が、レシピエント固有の表面表現型によって特徴付けられるように遺伝的に再プログラムされ、
a.有望なヒト移植レシピエントからDNAを含有する生体試料を得ることと、
b.生体試料の全ゲノム配列決定を行い、ヒト捕捉参照配列を得ることと、
c.ヒト捕捉参照配列を、遺伝子座(i)~(v):
(i)SLA-1、SLA-2、及びSLA-3のうちの少なくとも1つをコードするエクソン領域;
(ii)SLA-6、SLA-7、及びSLA-8のうちの少なくとも1つをコードするエクソン領域;
(iii)SLA-DR及びSLA-DQのうちの少なくとも1つをコードするエクソン領域、
(iv)ベータ2ミクログロブリン(B2M)をコードする1つ以上のエクソン;
(v)SLA-MIC-2遺伝子、ならびにPD-L1、CTLA-4、EPCR、TBM、及びTFPIのうちの少なくとも1つをコードする遺伝子のエクソン領域でドナーブタの野生型ゲノムと比較することと、
d.当該遺伝子座(i)~(v)のうちの1つ以上について10~350塩基対の長さの合成ドナーブタヌクレオチド配列を作成することであって、当該合成ドナーブタヌクレオチド配列が、ブタ遺伝子座(i)~(vi)にそれぞれ対応するオルソロガスな遺伝子座(vi)~(x):
(vi)HLA-A、HLA-B、及びHLA-Cのうちの少なくとも1つをコードするエクソン領域;
(vii)HLA-E、HLA-F、及びHLA-Gのうちの少なくとも1つをコードするエクソン領域;
(viii)HLA-DR及びHLA-DQのうちの少なくとも1つをコードするエクソン領域;
(ix)ヒトベータ2ミクログロブリン(hB2M)をコードする1つ以上のエクソン;
(x)ヒト捕捉参照配列からのMIC-A、MIC-B、PD-L1、CTLA-4、EPCR、TBM、及びTFPIのうちの少なくとも1つをコードするエクソン領域におけるヒト捕捉参照配列と少なくとも95%同一である、作成することと、
e.(i)~(v)のヌクレオチド配列を当該合成ドナーブタヌクレオチド配列で置き換えることと、
f.当該合成ドナーブタヌクレオチド配列を有する遺伝的に再プログラムされたブタから、異種移植のためのブタ組織または臓器を得ることと、を含む、方法を含む。
別の態様では、本開示は、本開示の核ゲノムを含む遺伝的に再プログラムされたブタにおけるオフターゲット編集またはゲノム改変についてスクリーニングする方法であって、
a.ドナーブタ核ゲノムの遺伝的な再プログラムを行う前に、ドナーブタからのDNAを含有する生体試料について全ゲノム配列決定を行い、それによって、第1の全ゲノム配列を取得すること、
b.ドナーブタ核ゲノムの再プログラム後に、全ゲノム配列決定を行って、第2の全ゲノム配列を取得すること、
c.第1の全ゲノム配列及び第2の全ゲノム配列を整列させて、配列アラインメントを取得すること、
d.配列アラインメントを分析して、オフターゲット部位におけるブタのゲノムに対する任意のミスマッチを識別することを含む、方法を含む。
別の態様では、本開示は、野生型ブタMHCクラスIa由来の野生型ブタイントロン領域を有し、SLA-3と、ヒト捕捉参照配列由来のHLA-Cとの間で保存されていないアミノ酸をコードするヒト捕捉参照配列由来のHLA-Cのコドンを用いて野生型ブタのSLA-3をコードするエクソン領域で再プログラムされた、合成ヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様では、野生型ブタのSLA-1及びSLA-2はそれぞれ、終止コドンを含む。
別の態様では、本開示は、野生型ブタMHCクラスIb由来の野生型ブタイントロン領域を有し、SLA-6、SLA-7、及びSLA-8と、ヒト捕捉参照配列由来のHLA-E、HLA-F、及びHLA-Gそれぞれとの間で保存されていないアミノ酸をコードするヒト捕捉参照配列由来のHLA-E、HLA-F、及びHLA-Gそれぞれのコドンを用いて野生型ブタのSLA-6、SLA-7、及びSLA-8をコードするエクソン領域で再プログラムされた、合成ヌクレオチド配列を含む。
別の態様では、本開示は、野生型ブタMHCクラスII由来の野生型ブタイントロン領域を有し、SLA-DQと、ヒト捕捉参照配列由来のHLA-DQそれぞれとの間で保存されていないアミノ酸をコードするヒト捕捉参照配列由来のHLA-DQのコドンをそれぞれ用いて野生型ブタのSLA-DQをコードするエクソン領域で再プログラムされた、合成ヌクレオチド配列であって、野生型ブタのSLA-DRが終止コドンを含む、合成ヌクレオチド配列を含む。
別の態様では、本開示は、野生型ブタベータ2-ミクログロブリン由来の野生型ブタイントロン領域を有し、野生型ブタのベータ2-ミクログロブリンとヒト捕捉参照配列由来のベータ2-ミクログロブリンとの間で保存されていないアミノ酸をコードするヒト捕捉参照配列由来のベータ2-ミクログロブリンのコドンを用いて野生型ブタのベータ2-ミクログロブリンをコードするエクソン領域で再プログラムされた、合成ヌクレオチド配列であって、合成ヌクレオチド配列が、野生型ブタのβ2-ミクログロブリンポリペプチドの機能的発現を欠くように、エクソン領域内に少なくとも1つの終止コドンを含む、合成ヌクレオチド配列を含む。
別の態様では、本開示は、野生型ブタMIC-2由来の野生型ブタイントロン領域を有し、MIC-2と、ヒト捕捉参照配列由来のMIC-AまたはMIC-Bとの間で保存されていないアミノ酸をコードするヒト捕捉参照配列由来のMIC-AまたはMIC-Bのコドンを用いて野生型ブタのMIC-2のエクソン領域で再プログラムされた、合成ヌクレオチド配列を含む。
別の態様では、本開示は、野生型ブタCTLA-4由来の野生型ブタイントロン領域を有し、野生型ブタのCTLA-4と、ヒト捕捉参照配列由来のCTLA-4との間で保存されていないアミノ酸をコードするヒト捕捉参照配列由来のCTLA-4のコドンを用いて野生型ブタのCTLA-4をコードするエクソン領域で再プログラムされた、合成ヌクレオチド配列を含む。
別の態様では、本開示は、野生型ブタPD-L1由来の野生型ブタイントロン領域を有し、野生型ブタのPD-L1と、ヒト捕捉参照配列由来のPD-L1との間で保存されていないアミノ酸をコードするヒト捕捉参照配列由来のPD-L1のコドンを用いて野生型ブタのPD-L1をコードするエクソン領域で再プログラムされた、合成ヌクレオチド配列を含む。
別の態様では、本開示は、野生型ブタEPCR由来の野生型ブタイントロン領域を有し、野生型ブタのEPCRと、ヒト捕捉参照配列由来のEPCRとの間で保存されていないアミノ酸をコードするヒト捕捉参照配列由来のEPCRのコドンを用いて野生型ブタのEPCRをコードするエクソン領域で再プログラムされた、合成ヌクレオチド配列を含む。
別の態様では、本開示は、野生型ブタTBM由来の野生型ブタイントロン領域を有し、野生型ブタのTBMと、ヒト捕捉参照配列由来のTBMとの間で保存されていないアミノ酸をコードするヒト捕捉参照配列由来のTBMのコドンを用いて野生型ブタのTBMをコードするエクソン領域で再プログラムされた、合成ヌクレオチド配列を含む。
別の態様では、本開示は、野生型ブタTFPI由来の野生型ブタイントロン領域を有し、野生型ブタのTFPIと、ヒト捕捉参照配列由来のTFPIとの間で保存されていないアミノ酸をコードするヒト捕捉参照配列由来のTFPIのコドンを用いて野生型ブタのTFPIをコードするエクソン領域で再プログラムされた、合成ヌクレオチド配列を含む。
上記のアプローチとは対照的に、本発明は、第一着手として、ヒト免疫系からの検出を逃れるようにドナーブタ細胞のゲノムを修飾することにより、患者のT細胞及び抗体が外来物質を破壊するためにプライミングされたときに続く免疫カスケードを回避することにより、「患者特有の」解決策を達成する。この「上流」アプローチは、一態様では、中断(例えば、ドナーブタ細胞がその細胞表面上でそのような発現しないように、α1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼ(αGal)、シチジンモノリン酸-N-アセチルノイラミン酸ヒドロキシラーゼ(CMAH)、及び/またはβ1-4N-アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼをノックアウトする)の異なる組み合わせを伴うブタゲノムに対する最小限の修飾、特定の遺伝子(例えば、CTLA-4及びPD-1)の発現の調節、ならびにブタゲノムの特定の切片を、レシピエントヒト捕捉配列に基づいて合成操作された切片で置き換えること(例えば、例えばMHC-I及びMHC-IIなどのブタの発現を調節するために、特定のSLAにおいて)によって達成される。それ故に、本発明は、異種移植の科学を臨床的な現実に変換することに対して長年存在する満たされていないニーズに対処する。
このような修飾は、ドナーの細胞外抗原を選択的に変化させて、移植の受容の可能性を増加させることによって、「非自己」の認識から生じる、原因的、免疫学的相違及び関連する有害な免疫プロセスの程度を低下させる。
ある特定の態様では、本開示は、救命移植片を長く生着させるために、移植手順後に移植レシピエントが外来性の免疫抑制剤(または長期の免疫抑制レジメン)を多くかつ有害に使用する必要のない低免疫原性及び/または免疫寛容性の細胞、組織、及び臓器を創出することに重点を置いている(基礎を置いている)。この手法は、現存及び以前の定説的手法に抗っており、ドナーとレシピエントとの間の生得的かつ不動の相違を許容し、それによって、レシピエントにおいて自然に生じる免疫応答の低減/排除/負の改変を行う方法として使用される介入、遺伝子改変、及び/または外来性の併用免疫抑制剤に焦点を当てる代わりに、基礎的な科学界の定説のうちのその他の領域に着目するという変更(逆行しない場合)を行っている。
ある特定の他の態様では、本開示は、最小限に改変された遺伝的に修飾された非トランスジェニックブタを提供する。例えば、本発明において、天然塩基対を含むドナーブタSLA上に現れる特定の異なる配列を除去し、同じ数の塩基対を含むが、レシピエントのヒト捕捉配列に基づいて再プログラムされた合成配列で置き換える。この最小限の改変は、天然ブタゲノムの他の態様を所定の位置に維持し、例えば、ブタゲノム内に天然に存在するイントロン及び他のコドンを妨げない。
ある特定の他の態様では、本発明は、本明細書で提供されるプロセス及び方法に従って、指定された病原体環境で作成されたそのような及び他の改変を伴うブタを提供する。
ある特定の他の態様では、異種移植のためのかかるブタに由来する製品は、最小限に操作され、生存可能であり、生細胞であり、移植レシピエントとの有機的結合を作製することが可能であり、移植レシピエントの血管形成及び/またはコラーゲン生成の誘導が挙げられるが、これらに限定されない。
ある特定の他の態様では、そのような供給源動物に由来する製品は、凍結を含むがこれに限定されない、そのような製品に特徴的な生存度及び生存細胞を維持する様式で、保存される。
ある特定の他の態様では、そのような製品は、相同的使用のためのものとすることであり、こうした相同的使用は、すなわち、レシピエントの臓器、細胞、及び/または組織を、ドナーのものと同じ基本機能(複数可)を果たす対応臓器、対応細胞、及び/または対応組織を用いて修復、再構築、置き換え、または補充を行うことである(例えば、ヒト皮膚用移植物としてブタ皮膚を使用すること、ヒト腎臓用移植物としてブタ腎臓を使用すること、ヒト肝臓用移植物としてブタ肝臓を使用すること、ヒト神経用移植物としてブタ神経を使用することなど)。
ある特定の他の態様では、本発明の別の目的は、そのような製品が、正常な免疫機能を抑制または妨害する免疫抑制剤または免疫抑制治療の使用を必要としてまたは必要とせずに、異種移植において利用されるようにすることである。
添付の図面は、参照によって本明細書に組み込まれ、本開示の一部をなすものであり、本発明の様々な態様の例示に役立ち、説明と併せることで、関連技術分野の当業者が本明細書に開示の態様を実現及び使用することが可能になるように本発明を説明する上でさらに役立つものである。図面では、同じ参照番号は、同一または機能的に類似の要素を指し示す。
ヒトトロホブラスト細胞及びトロホブラスト細胞の画像を示す。 T細胞受容体(TCR)と結合しているMHCクラスI及びペプチドを模式的に示す。 細胞の表面上のHLAクラスIを模式的に示す。 細胞傷害性T細胞(CD8+)と標的細胞との相互作用を模式的に示す。 細胞傷害性T細胞(CD4+)と標的細胞との相互作用を模式的に示す。 HLA遺伝子の共優性発現及びヒト6番染色体上でのHLA遺伝子の位置を模式的に示す。 ヒトのMHCクラスIアイソタイプ及びMHCクラスIIアイソタイプの血清学的抗原、タンパク質、及びアレルの数を列挙した表である。 細胞の表面上のHLAクラスI及びHLAクラスIIを模式的に示す。 MHCクラスIタンパク質の構造(A)及びMHCクラスIIタンパク質の構造(B)を示す。ペプチド結合領域(PBR)を形成する2つの球状ドメインは原形質膜から最も離れて位置し、青色の影付きで示される。β2-ミクログロブリンを含む2つのIg様ドメインは、灰色の影付きで示される。 HLAゲノム遺伝子座マップを示す。 ヒトのMHCクラスIアイソタイプ及びMHCクラスIIアイソタイプを模式的に示す。 HLAクラスI遺伝子の分子構成の模式図を示す。エクソンは長方形で表され、イントロンは線で表される。 HLAクラスII遺伝子の分子構成の模式図を示す。エクソンは長方形で表され、イントロンは線で表される。 細胞外ブタ細胞発現の「ヒト化」のための複合遺伝子改変設計を示す。 ヒト及びブタの主要組織適合性複合体(MHC)クラスI領域のゲノム構成の比較を示す。ヒト白血球抗原(HLA)クラスIマップは、参照文献[17]から適合され、ブタ白血球抗原(SLA)クラスIマップは、1つの完全に配列決定されたハプロタイプ(Hp-1.1、H01)のみに基づいている[4]。すべての遺伝子がここに示されているわけではなく、スケールはおおよそであることに留意されたい。発現したSLAクラスI遺伝子の数及び位置は、ハプロタイプ間で変動し得る。 ヒト及びブタの主要組織適合性複合体(MHC)クラスII領域のゲノム構成の比較を示す。ヒト白血球抗原(HLA)クラスIIマップは、参照文献[17]から適合され、ブタ白血球抗原(SLA)クラスIIマップは、1つの完全に配列決定されたハプロタイプ(H01)のみに基づいている[4]。すべての遺伝子がここに示されているわけではなく、スケールはおおよそであることに留意されたい。*発現したHLA-DRB遺伝子及び偽遺伝子の数及び位置は、ハプロタイプ間で変動し得る。 SLA複合体の物理的マップを示す。黒色のボックス:MHC関連配列を含む遺伝子座。白色のボックス:MHC関連配列を含まない遺伝子座。染色体の長腕から短腕の方向で、領域は、クラスII(II)、クラスIII(III)、及びクラスI(I)の順序で存在する。 SLA遺伝子の分子構成の模式図を示す。エクソンは、灰色の卵円によって表され、イントロンは、線によって表される。遺伝子長は、Hp-1.1ゲノム配列に見られるものとほぼ同じである。 ペプチド配列の並列ゲノム解析を示す。 SLA-DQAのα1(エクソン2)及びSLA-DQB1のβ1(エクソン2)の位置及び長さを示す。 SLA-DQA及びSLA-DQB1のエクソン及びイントロンのヌクレオチド配列を詳細に示すスプレッドシートを示す。 Sus scrofa(野生イノシシ)のSLA-DQベータ1ドメインを示す。 HLAアレルの命名法を示す。各HLAアレル名は、コロンによって仕切られた最大4組の桁に対応する特有の数を有する。アレル指定の長さは、アレルの配列及びその最も近い関連アレルの配列に依存する。すべてのアレルに少なくとも4桁の名称が付けられ、この4桁は、最初の2組の桁に対応し、これより長い名称は、必要なときにのみ割り当てられる。最初のコロンの前の桁は型を表し、この型は、アロタイプが保有する血清学的抗原に対応することが多い。次の組の桁は、サブタイプの記載に使用され、DNA配列が決定された順序で数が割り当てられる。これら2組の桁の数が異なるアレルは、コードタンパク質のアミノ酸配列を変化させる1つ以上のヌクレオチド置換に差異があるということになる。コード配列中に同義ヌクレオチド置換(サイレント置換または非コード置換とも呼ばれる)が存在することのみによって異なるアレルは、3組目の桁を使用することによって区別される。イントロン中の配列多型のみによって異なるアレル、またはエクソン及びイントロンと隣接する5’非翻訳領域もしくは3’非翻訳領域中の配列多型のみによって異なるアレルは、4組目の桁を使用することによって区別される。 HLA-DQAにおけるエクソン及びイントロンの長さを示す。 レシピエント特異的HLA-DQAと、データベースから取得したHLA-DQAとの間のヌクレオチド配列ライブラリーを示す。 HLA対SLA(DQ-A、エクソン2)との間の完全な相違を識別するヌクレオチド配列ライブラリーを示す。 3人の患者についてのDQ-A1についてのヒト捕捉参照配列を示す。 3人の患者についてのDQ-B1についてのヒト捕捉参照配列を示す。 3人の患者についてのDR-Aについてのヒト捕捉参照配列を示す。 3人の患者についてのDQR-B1についてのヒト捕捉参照配列を示す。 3人の患者についてのヒト捕捉参照配列(DQ-A1)の例を示す。 3人の患者についてのヒト捕捉参照配列(DQ-B1)の例を示す。 3人の患者についてのヒト捕捉参照配列(DR-A)の例を示す。 3人の患者についてのヒト捕捉参照配列(DR-B1)の例を示す。 野生型ヒトベータ-2ミクログロブリンタンパク質と、ヒトB2M遺伝子及びブタB2M遺伝子の概略分子構成を示す。 ヒトB2Mのエクソン2とブタB2Mのエクソン2のアミノ酸配列の比較を示す。 ブタ肺胞マクロファージ(PAM)の表現型分析を示す。細胞を培地中で単独で培養した(対照)、または100ng/mLのIFN-γで72時間活性化した、または30μg/mLのKLHを24時間負荷した。細胞をSLA-DQについて染色し、抗マウスAPCコンジュゲートポリクローナルIgG二次抗体を使用してマーカーを検出する。データは、対数スケールにおいて、カウント(y軸)対蛍光強度(x軸)のヒストグラムとして提示される。活性化細胞についてのSLA-DQについての陽性細胞及び陰性細胞のパーセンテージをヒストグラムに示す。 BrdU ELISAのSI値を示す。7日間のインキュベーション後、3つのヒトCD4+T細胞(A)及びPBMC(B)の、未処理及びIFN-y活性化PAM細胞(15K)に対する増殖応答。 本開示によるヒト化ブタ細胞の概略図を示す。 1×105の精製したヒトCD8+T細胞(A)またはヒトPBMC(B)を、4倍ノックアウトブタ10261または野生型ブタに由来する増加した数の照射(30Gy)ブタPBMCで刺激したグラフを示す。増殖を、5日+16時間後に、3H-チミジン組み込みにより測定した。データは、単一の実験において1つのヒト血液ドナーからの細胞で得られた三連培養物の平均CPM±SEMを表す。同様の応答パターンは、第2の血液ドナーからの応答細胞及び4倍ノックアウトピッグ10262からの刺激用細胞を使用して観察された。4倍ノックアウトブタPBMCで刺激した後、ヒトCD8+T細胞の増殖が減少した。(Fischer,et al.,2019) 本開示によるヒト化ブタ細胞の概略図を示す。 WT128-11及びGal T-KO B-174PBMCを用いて3日間別々に実行されたヒト血漿ドナーの増殖のグラフを示す。 未トランスフェクトの13271細胞の溶解と比較した、2つのドナー(上部パネル:KH;下部パネル:MS)のHLA-E/A2(左カラム)及びHLA-E/B7(右カラム)でトランスフェクトされた13271細胞に対するNK細胞傷害性を示す。結果は、特異的溶解のパーセンテージとして示され、4つの異なるE:T比で得られた。データは、3つの独立した実験を表す。中抜き三角形は、HLA-Eトランスフェクト13271細胞を表し、塗りつぶしダイヤモンドは、未トランスフェクト13271細胞を表す。(Forte,et al.,2005) 血漿の各濃度(希釈)についての細胞毒性%のグラフを示し、その結果をPrismにプロットする。細胞傷害性曲線に基づいて、50%殺傷に必要な希釈(IC50)を決定した。 本発明による供給源動物施設、ならびに対応する指定の病原体を含まない施設、動物、及び群を示す。 本発明による体外式の肝臓フィルター及び回路を示す。 本発明による組み合わせ皮膚製品を示す。 Aは、POD-15時点でのH&Eを示す。表面及び濾胞上皮に壊死を伴うものの組織が生存能を有することが高倍率H&E画像によって示される。Bは、POD-22時点のH&Eを示す。高倍率画像によって、残存自家移植片(アスタリスク)が良好な全生存能を有することが示される。表面被覆組織に壊死は認められず、表面には幾分かの壊死が認められ、自家移植片への浸潤を伴う広範な線維化も併せて認められた(矢印)。 非ヒト霊長類レシピエントにおける全層欠損創傷の処置において応急的創傷閉鎖物として使用したブタ分層皮膚移植片の長期的な進行を示す。左:POD-0、創傷部位2の同じ異種移植片。右:右:POD-30時点での創傷部位2の同じ異種移植製品。 以下についてPOD-30組織像を示す:上部中央:H&E、創傷部位の低電力画像は、完全な上皮被覆を示す。点線は、残存異種移植製品を囲むものである。 Aは、試験過程での4匹すべての対象(2001、2002、2101、2102)の血清中総IgM ELISA(μg/mL)を示すグラフである。Bは、試験過程での4匹すべての対象(2001、2002、2101、2102)の血清中総IgG ELISA(μg/mL)を示すグラフである。 POD-0、POD-7、POD-14、POD-21、及びPOD-30の時点でLuminex23-plexによって測定した可溶性CD40Lの全身濃度を示すグラフである。 POD-0、POD-7、POD-14、POD-21、及びPOD-30の時点でLuminex23-plexによって測定したTGF-アルファの全身濃度を示すグラフである。 POD-0、POD-7、POD-14、POD-21、及びPOD-30の時点でLuminex23-plexによって測定したIL-12/23(p40)の全身濃度を示すグラフである。 本発明による皮膚製品を調製するための方法を示す。 異種移植製品の保管に使用される凍結保存用バイアルを示す。 異種移植製品の搬送プロセスを示す。 環境温度未満の温度(限定されないが、-150℃及び他の温度を含む)で異種移植製品を保管するための二次閉鎖系または二次容器系を示す。 Aは、POD-12時点での創傷部位のブタ分層皮膚移植片を示し、これらの創傷部位は、左から右の方向でそれぞれ創傷部位1、創傷部位2、創傷部位3、及び創傷部位4である。Bは、POD-12(左)及びPOD-14(右)の時点の創傷部位4のブタ分層皮膚移植片を示す。 Aは、MTT還元アッセイによるブタ組織試料の比較を新鮮なものと凍結保存(7年)したものとで行ったグラフであり、統計的に差がないことを示す。Bは、MTT還元アッセイによるブタ組織試料の比較を熱不活化したものと凍結保存(7年)したものとで行ったグラフであり、生成ホルマザンの量に統計的に有意な差があることを示す。 ヒト患者における重度かつ広範囲の部分的及び完全な厚さの火傷の治療のための本開示の異種移植製品の画像を示す。 ヒト患者における重度かつ広範囲の部分的及び完全な厚さの火傷の治療のための本開示の異種移植製品の画像を示す。 ヒト患者における重度かつ広範囲の部分的及び完全な厚さの火傷の治療のための本開示の異種移植製品の画像を示す。 ヒト患者における重度かつ広範囲の部分的及び完全な厚さの火傷の治療のための本開示の異種移植製品の画像を示す。 ヒト患者における重度かつ広範囲の部分的及び完全な厚さの火傷の治療のための本開示の異種移植製品の画像を示す。 ヒト患者における重度かつ広範囲の部分的及び完全な厚さの火傷の治療のための本開示の異種移植製品の画像を示す。 ヒト患者における重度かつ広範囲の部分的及び完全な厚さの火傷の治療のための本開示の異種移植製品の画像を示す。 マイトマイシンCで処理したブタ刺激細胞の存在下におけるヒトリンパ球応答性末梢血単核細胞(PBMC)の増殖応答のグラフを示す。 Xeno-001-00-1患者試料についての、複数の時点、処理前、7日目、16日目、及び30日目における、蛍光強度中央値(MFI)と比較した抗異種性IgM(A)及びIgG(B)抗体結合データを示す。データを、1:2希釈で試験した血漿試料について示す。
本開示の主題の態様は、すべての形態で具体化し得るものであり、これ以後に続く説明は、単に、こうした形態のいくつかを、本開示が包含する主題の具体例として開示することを意図するものにすぎない。したがって、本開示の主題は、そのように説明される形態または態様に限定されないものとする。
別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本発明で使用される方法及び材料を本明細書に記載しているが、当該技術分野で既知の他の適切な方法及び材料を使用することもできる。材料、方法、及び実施例は、例示的のみであり、限定的であることを意図しない。本明細書で言及されるすべての刊行物、特許出願、特許、配列、データベースエントリ、及び他の参考文献は、参照によりその全体が組み込まれる。本発明の他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明及び図面、及び特許請求の範囲から明らかとなるであろう。
「最良整列」または「最適整列」は、以下に記載されるように決定される同一性パーセンテージが最も高い整列を意味する。2つの核酸配列間の配列の比較は、従来、それらを最適に整列させた後にこれらの配列を比較することによって行われ、前述の比較は、類似の配列についての局所領域を特定及び比較するためにセグメントまたは「比較ウィンドウ」によって行われる。比較のために、配列は、手動で、またはアラインメントソフトウェア、例えば、Smith及びWaterman局所相同性アルゴリズム(1981)、Neddleman及びWunsch局所相同性アルゴリズム(1970)、Pearson及びLipman類似性検索方法(1988)、ならびにこれらのアルゴリズムを使用するコンピュータソフトウェア(Wisconsin Genetics Software Package、Genetics Computer Group、575 Science Dr.,Madison,Wis.のGAP、BESTFIT、BLAST P、BLAST N、FASTA、及びTFASTA)を使用することによって最適に整列され得る。いくつかの態様では、最適な整列は、BLOSUM 62マトリックスまたは同様の機能を有するソフトウェアを有するBLASTプログラムを使用して取得される。核酸またはアミノ酸の2つの配列間の「同一性パーセンテージ」は、これら2つの最適にアラインメントされた配列を比較することによって決定され、比較される核酸またはアミノ酸の配列は、これら2つの配列間の最適なアラインメントのために参照配列からの付加または欠失を含み得る。同一性パーセンテージは、ヌクレオチドまたはアミノ酸残基が2つの配列間で同一である位置の数を決定し、この同一の位置の数を比較された位置の総数で割り、得られた結果に100を掛けて、これら2つの配列間の同一性パーセンテージを得ることによって計算される。
本明細書で使用される「保存的」及びその文法的等価物には、類似の化学的特性(例えば、電荷または疎水性)を備えた側鎖R基を有する別のアミノ酸残基によるアミノ酸残基の置換を含む、保存的アミノ酸置換が含まれる。保存的アミノ酸置換は、保存的置換をコードするヌクレオチド変化を導入するようにヌクレオチド配列を修飾することによって達成され得る。概して、保存的アミノ酸置換は、タンパク質の目的の機能的特性、例えば、目的のペプチドを提示するMHC Iの能力を実質的に変化させない。類似の化学的特性を伴う側鎖を有するアミノ酸の基の例としては、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、及びイソロイシン等の脂肪族側鎖、セリン及びトレオニン等の脂肪族-ヒドロキシル側鎖、アスパラギン及びグルタミン等のアミド含有側鎖、フェニルアラニン、チロシン、及びトリプトファン等の芳香族側鎖、リジン、アルギニン、及びヒスチジン等の塩基性側鎖、アスパラギン酸及びグルタミン酸等の酸性側鎖、ならびにシステイン及びメチオニン等の含硫側鎖が挙げられる。保存的アミノ酸置換基として、例えば、バリン/ロイシン/イソロイシン、フェニルアラニン/チロシン、リジン/アルギニン、アラニン/バリン、グルタミン酸塩/アスパラギン酸塩、及びアスパラギン/グルタミンが挙げられる。当業者は、本明細書に記載のヒトまたはヒト化MHC Iポリペプチド及び/またはβ2ミクログロブリンをコードする核酸残基に加えて、遺伝暗号の縮退に起因して、他の核酸配列が本発明のポリペプチド(複数可)をコードし得ることを理解するであろう。したがって、そのゲノム中に保存的アミノ酸置換を伴うMHC I及び/またはβ2ミクログロブリンポリペプチド(複数可)をコードするヌクレオチド配列を含む遺伝的に修飾された非ヒト動物に加えて、遺伝暗号の縮退に起因して本明細書に記載されるものと異なるヌクレオチド配列(複数可)を含む非ヒト動物も提供される。
本明細書で使用される「保存された」及びその文法的等価物は、それぞれ、比較される2つ以上の関連配列の同じ位置で未改変で生じるものである、ポリヌクレオチド配列またはアミノ酸配列のヌクレオチドまたはアミノ酸残基を含む。比較的保存されているヌクレオチドまたはアミノ酸は、配列の他の場所に現れるヌクレオチドまたはアミノ酸よりも関連性の高い配列間で保存されているものである。本明細書において、2つ以上の配列は、互いに100%同一である場合、「完全に保存されている」と言われる。いくつかの実施形態では、2つ以上の配列は、互いに少なくとも70%同一、少なくとも80%同一、少なくとも90%同一、または少なくとも95%同一、ただし100%未満同一である場合、「高度に保存されている」と言われる。いくつかの実施形態では、2つ以上の配列は、互いに少なくとも30%同一、少なくとも40%同一、少なくとも50%同一、少なくとも60%同一、少なくとも70%同一、少なくとも80%同一、少なくとも90%同一、または少なくとも95%同一、ただし100%未満同一である場合、「保存されている」と言われる。いくつかの実施形態では、2つ以上の配列は、互いに約30%同一、約40%同一、約50%同一、約60%同一、約70%同一、約80%同一、約90%同一、約95%同一、約98%同一、または約99%同一である場合、「保存されている」と言われる。
本明細書で使用される「指定の病原体を含まない」という語句は、1つ以上の特定の病原体を含まない動物、動物群、そこから得られる動物製品、及び/または動物施設への言及を含む。好ましくは、そのような「指定の病原体を含まない」動物、動物群、そこから得られる動物製品、及び/または動物施設は、適切な標準的作業手順(SOP)ならびにそのような指定の病原体が存在しないこと及び/または不活化されていることを保証する群飼育及び獣医学的管理の慣行(本明細書に開示及び記載の所定作業、検査、手順、飼育、及び獣医学的管理を含む)を利用しながら、そのような指定の病原体を検査する明確に規定された所定作業を使用して維持される。本明細書で使用される「含まない」などという用語、ならびに同様の用語は、「病原体を含まない」と併用される場合、対象病原体が存在しないか、生存していないか、活性でないか、またはその他の状況で対象病原体の標準的な検査方法もしくは他の検査方法によって検出不可能なことを示すことを意図するものであることがさらに理解されよう。
本明細書で使用する場合、「改変する」、「改変している」、「改変された」及び文法的等価物には、欠失、挿入、サイレンシング、修飾、再プログラム、破壊、変異、再配列、発現増加、ノックイン、ノックアウト、及び/またはいずれかまたはすべての他のそのような修飾またはそれらの任意の組み合わせを含むが、これらに限定されない、遺伝子に対する任意及び/またはすべての修飾が含まれる。
本明細書で使用される「内因性遺伝子座」及びその文法的等価物には、ドナー動物に形質転換される動物に見出される天然の遺伝子座が含まれる。
「機能的」、例えば、機能的ポリペプチドに関して、本明細書で使用される文法的等価物には、天然タンパク質に通常会合する少なくとも1つの生物学的活性を保持するポリペプチドが含まれる。例えば、本発明のいくつかの実施形態では、内因性遺伝子座における置換(例えば、内因性非ヒトMHC I、MHC II、及び/またはβ2ミクログロブリン遺伝子座における置き換え)は、機能的内因性ポリペプチドを発現しない遺伝子座をもたらす。同様に、タンパク質の機能的細胞外ドメインに関して本明細書で使用される「機能的」という用語は、例えば、MHC Iの場合、抗原に結合する能力、T細胞共受容体に結合する能力など、その機能性を保持する細胞外ドメインを指すことができる。本発明のいくつかの実施形態では、内因性MHC遺伝子座での置換は、ヒトMHCの細胞外ドメイン(例えば、機能的細胞外ドメイン)を発現しながら、内因性MHCの細胞外ドメイン(例えば、機能的細胞外ドメイン)を発現しない遺伝子座をもたらす。
本明細書で使用される「遺伝子または分子マーカー」、及びそれらの文法的等価物は、多型遺伝子座、すなわち、多型ヌクレオチド(いわゆる一塩基多型またはSNP)または特定の遺伝子座における多型DNA配列を含む。マーカーは、通常メンデル様式で遺伝され、目的の形質のマッピングに使用され得る、ゲノム内の固定位置を有する測定可能な遺伝的特徴を指す。したがって、遺伝子マーカーは、短いDNA配列、例えば、単一の塩基対変化を囲む配列、すなわち、単一のヌクレオチド多型もしくはSNP、または長いDNA配列、例えば、マイクロサテライトもしくは単純配列反復(SSR)であってもよい。マーカーの性質は、使用される分子分析に依存し、DNA、RNA、またはタンパク質レベルで検出され得る。遺伝子マッピングは、RFLP(制限断片長多型;Botstein et al.(1980),Am J Hum Genet.32:314-331、Tanksley et al.(1989),Bio/Technology 7:257-263)、RAPD[ランダム増幅多型DNA;Williams et al.(1990),NAR 18:6531-6535]、AFLP [増幅断片長多型;Vos et al.(1995)NAR 23:4407-4414]、SSR、またはマイクロサテライト[Tautz et al.1989),NAR 17:6463-6471]を含むが、これらに限定されない。適切なプライマーまたはプローブは、使用されるマッピング方法によって左右される。
本明細書で使用される「改善する」及びその文法的等価物には、当業者に認識される任意の改善が含まれる。例えば、移植の改善は、望ましくない効果または症状の減少、緩和、または軽減を包含し得る超急性拒絶反応を軽減することを意味し得る。いくつかの態様では、臨床的に関連する改善が達成される。
本明細書で使用される「遺伝子座」(遺伝子座の複数形)または「部位」及びそれらの文法的等価物は、例えば、遺伝子、遺伝子マーカーまたはQTLが見出される染色体上の特定の場所(複数可)を含む。
本明細書で使用される「最小限に改変された」及びその文法的等価物には、ドナー動物ゲノム上に現れる天然塩基対の特定の異なる配列を除去及び置き換えること、ならびに、ドナー動物ゲノム内の塩基対の数に正味の変化を伴わず、一方で、例えば、イントロン及びドナー動物ゲノム内に天然に存在する他のコドンを含む、ドナー動物の天然ゲノムの他の態様を妨げることなく、各そのような配列を同じ数の塩基対を含む合成配列で置き換えることを含む、ドナー動物ゲノムの改変を含む。例えば、ドナー動物としてのブタの場合、最小限に改変されたブタは、特定のSLAエクソンを除去または非活性化して、ドナーブタ細胞の細胞外発現またはMHCクラスII、Ia、及び/またはIbの非発現を調節することと、特定のナイーブな天然に存在するブタ細胞SLAエクソンを再プログラムして、ブタ細胞の細胞外発現またはMHCクラスIIの非発現を調節することと、別の方法で操作された配列内またはその付近に存在するブタイントロンを保存または除去しないことと、ブタCTLA4及びPD-1の発現を増加させることと、アルファ-1,3ガラクトシルトランスフェラーゼ、シチジンモノリン酸-N-アセチルニューラミン酸ヒドロキシラーゼ、及びβ1,4-N-アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼを除去または非活性化することと、を含む特定の改変を含むことができる。
本明細書で使用される「最小限に操作された」及びその文法的等価物には、動物及び製品が実質的にそれらの天然の状態にあるように関連する細胞、臓器または組織の最小限の物理的変化を伴う、供給源動物、それらの供給源動物に由来する生物学的製品、ならびに他の生物学的製品の処置が含まれる。
本明細書で使用される「オルソログ」、「オルソロガス」、及びそれらの文法的等価物は、遺伝子またはタンパク質またはQTLと同じ機能を有するが、遺伝子または定量的形質遺伝子座を保有する種が分岐した時点から(すなわち、遺伝子または定量的形質遺伝子座が種によって共通の祖先から進化した時点から)配列において(通常)分岐した、別の種におけるポリヌクレオチドに対応する、ある種に由来するポリヌクレオチドを含む。
本明細書で使用される「定量的形質遺伝子座(QTL)」及びその文法的等価物には、問題の形質の基礎となる遺伝子に密接に連結されている一連のDNA(染色体アーム、染色体領域、ヌクレオチド配列、遺伝子等)が含まれる。「QTLマッピング」は、AFLP、RAPD、RFLP、SNP、SSR等の遺伝子または分子マーカー、可視多型及びアロザイムを使用して、ゲノム上の特定の領域の、目的の形質の遺伝物質への関連性の程度を決定して、ゲノムのマップを作成することを含む。マーカーは必ずしも遺伝子を伴うわけではないため、QTLマッピング結果は、その形質に関与する遺伝子を直接指摘するというよりは、DNAのストレッチと形質との関連性の程度を伴う。関連性の程度が有意かどうかを確認するために、異なる統計的方法が用いられる。分子マーカーは、マーカーと遺伝子または遺伝子座とが、独立した分類から予想されるよりも大きな遺伝的関連性を有する場合、遺伝子または遺伝子座に「連結されている」と言われ、すなわち、マーカーと遺伝子座は、隔離集団においてともに隔離され、同じ染色体上に位置する。「連結」は、マーカーの遺伝子座または遺伝子に対する遺伝的距離(または2つの遺伝子座または2つのマーカーに対する互いの遺伝的距離)を指す。連結が近いほど、マーカーを遺伝子または遺伝子座から分離する組換え事象が起こる可能性が低くなる。遺伝的距離(MAP距離)は、組換え頻度から計算され、センチモルガン(cM)[Kosambi(1944),Ann.Eugenet.12:172-175]で述べられている。
本明細書で使用される「捕捉配列」または「参照配列」及びそれらの文法的等価物は、試料、動物(ヒトを含む)、または集団から得られた、配列決定された、または他の方法で公知になった核酸またはアミノ酸配列を含む。例えば、ヒト患者からの捕捉配列は、「ヒト患者捕捉配列」である。特定のヒト集団からの捕捉配列は、「ヒト集団特異的ヒト捕捉配列」である。ヒトアレル群からの捕捉配列は、「アレル群特異的ヒト捕捉配列」である。
本明細書で使用される「ヒト化」及びその文法的等価物には、内因性非ヒト遺伝子またはアレルのすべてまたは一部が、オルソロガスなヒト遺伝子またはアレルの対応する部分によって置き換えられる実施形態が含まれる。例えば、いくつかの実施形態では、「ヒト化」という用語は、内因性非ヒトMHC遺伝子またはそのアレルもしくは断片のコード領域(例えば、エクソン)を、ヒトMHC遺伝子またはそのアレルもしくは断片の対応する捕捉配列と完全に置き換えることを指し、一方で、非ヒト動物の内因性非コード領域(複数可)(プロモーター、5’及び/または3’非翻訳領域(複数可)、エンハンサー要素など)は置き換えられない。
本明細書で使用される「個別化された(personalized)」または「個別化された(individualized)」、及びそれらの文法的等価物には、個々のヒトレシピエントまたは特定のヒトレシピエント亜集団のニーズまたは特別な状況に適応される非ヒト動物由来の遺伝子、アレル、ゲノム、プロテオーム、細胞、細胞表面、組織、または臓器が含まれる。
本明細書で使用される「免疫遺伝学的な再プログラム」及びそれらの文法的等価物を含む「再プログラム」、「再プログラムされた」は、別個の参照配列に基づいて、ドナー動物における内因性ヌクレオチドのオルソロガスなヌクレオチドでの置き換えまたは置換を指し、ここで、フレームシフト変異は、そのような再プログラムによって導入されない。加えて、再プログラムは、ドナー動物ゲノム中のヌクレオチドの総数の正味の損失もしくは正味の増加をもたらさないか、または別個の参照配列中のヌクレオチドの数の1%以下、2%以下、3%以下、4%以下、5%以下、6%以下、7%以下、8%以下、9%以下、10%以下、12%以下、15%以下、もしくは20%以下に等しいドナー動物ゲノム中のヌクレオチドの総数の正味の損失もしくは正味の増加をもたらす。「再プログラム」の一例では、内因性非ヒトヌクレオチド、コドン、遺伝子またはその断片が、ヒト捕捉配列に基づいて対応する合成ヌクレオチド、コドン、遺伝子またはその断片と置き換えられ、そこでは、ドナー動物配列中の塩基対の総数は、ヒト捕捉配列の塩基対の総数と等しい。
本明細書で使用される「免疫寛容性」及びその文法的等価物は、移植時にレシピエントの免疫系による応答の低下によって許容される臓器、細胞、組織、または他の生物学的製品の特徴を含む。
本明細書で使用される「トランスジェニック」及びその文法的等価物は、遺伝子の相同性、内因性バージョン(ある場合)が全体的または部分的に保持されるように、異なる種からの非天然遺伝子をドナー動物のゲノムの非オルソロガス、非内因性位置に導入するように修飾されたドナー動物ゲノムを含む。本明細書で使用される「導入遺伝子」、「トランスジェニックな」、及び文法的等価物は、本明細書に記載され特許請求されるような再プログラムされたゲノム、ノックアウト、または他の修飾を含まない。例として、「トランスジェニック」ブタには、hCD46(「ヒト膜補助因子タンパク質」または「MCP」)、hCD55(「ヒト減衰加速因子」、「DAF」)、ヒトB2M(ベータ-2-ミクログロブリン)、及び/または他のヒト遺伝子を有するか、またはそれらを発現するものが含まれ、これらは、これらの遺伝子の内因性バージョンの置き換えなしに、ブタゲノム内の非オルソロガス、非内因性の位置にヒト遺伝子配列を挿入することによって達成される。
免疫ゲノム再プログラム化ブタ
本明細書に開示されるように、いくつかのヒトクラスI及び/またはクラスII MHC分子のための免疫寛容性な非ヒト動物細胞、組織及び臓器が提供される。
ヒト免疫応答系は、侵入生物に対する非常に複雑で効率的な防御系である。T細胞は、細胞応答に関与する主要なエフェクター細胞である。抗体が治療薬(TCR)として開発されたように、T細胞の表面上の受容体は、それらに特異性を与えるが、治療薬を開発するためのプラットフォームとして独自の利点を有する。抗体は、血液及び細胞外空間における病原体の認識、または細胞表面上のタンパク質標的に限定されるが、TCRは、細胞表面上のMHC分子によって提示される抗原(細胞内タンパク質に由来する抗原を含む)を認識する。提示された抗原を認識して活性化するT細胞のサブタイプに応じて、TCR及びTCRを保有するT細胞は、様々な免疫応答の制御に関与する。例えば、ヘルパーT細胞は、B細胞の抗体分泌細胞への分化の誘導による体液性免疫応答の調節に関与する。加えて、活性化されたヘルパーT細胞は、細胞傷害性T細胞による細胞媒介性免疫応答を開始する。したがって、TCRは、抗体によって通常見られない標的を特異的に認識し、それらを担持するT細胞を駆動させて、多種多様な免疫応答を開始する。
T細胞は、細胞表面上に発現されたTCRによって細胞表面上に提示された抗原を認識することが理解されるであろう。TCRは、ジスルフィド結合ヘテロ二量体であり、大部分は、α鎖及びβ鎖糖タンパク質からなる。T細胞は、組換えメカニズムを使用して、B細胞で動作する抗体多様性を生成するためのそれらのメカニズムと同様に、その受容体分子に多様性を生成する(Janeway and Travers,Immunobiology 1997)。免疫グロブリン遺伝子と同様に、TCR遺伝子は、T細胞の発達中に再配列するセグメントから構成される。TCRポリペプチドは、可変領域、定常領域、膜貫通領域及び細胞質領域からなる。膜貫通領域はタンパク質を固定し、細胞内領域は受容体が占有されるときにシグナル伝達に関与するが、可変領域は抗原の特異的認識に関与し、定常領域は可変領域結合表面を支持する。TCR α鎖は、可変(V)及び結合(J)セグメントのみによってコードされる可変領域を含有し、β鎖は、さらなる多様性(D)セグメントを含有する。
主要組織適合遺伝子複合体クラスI(MHCI)分子及び主要組織適合遺伝子複合体クラスII(MHCII)分子は、ペプチドを抗原提示細胞表面上にディスプレイしてその後にT細胞に認識されるようにする。図2を参照されたい。ヒト集団内で、古典的なMHCI遺伝子産物及びMHCII遺伝子産物の間のアレルの多様性は、ペプチド結合の差異、胸腺レパートリーバイアス、及び同種移植片拒絶反応の基礎をなしている。MHC分子は、適応免疫のプロセスの中心をなす細胞表面糖タンパク質であり、ペプチドを捕捉し、それを抗原提示細胞(APC)の表面上にディスプレイするように機能する。MHCクラスI(MHCI)分子は、ほとんどの細胞上に発現しており、アミノ酸残基数8~10のサイズを有する内因性に由来するペプチドに結合し、CD8細胞傷害性Tリンパ球(CTL)によって認識される。図3及び図4を参照されたい。一方、MHCクラスII(MHCII)は、特殊なAPC上にのみ存在し、残基数9~22のサイズを有する外因性に由来するペプチドに結合し、CD4ヘルパーT細胞によって認識される。図5を参照されたい。こうした差異は、MHCI分子及びMHCII分子が、T細胞介在性免疫応答の2つの異なる部分に関与することを示しており、MHCI分子は、CD8CTLによる破壊を受けるように進入病原体(ウイルスなど)を標的とし、MHCII分子は、サイトカインベースの炎症性メディエーターを誘導してCD4ヘルパーT細胞活性(B細胞の活性化、成熟、及び抗体産生を含む)を刺激する。いくつかの態様では、本開示の生物学的製品は、CD8+T細胞によって認識されず、抗HLA抗体と結合せず、NK介在性の溶解に抵抗性である。
ヒト白血球抗原(HLA)系またはHLA複合体は、ヒトの主要組織適合遺伝子複合体(MHC)タンパク質をコードする遺伝子複合体である。こうした細胞表面タンパク質は、ヒトにおける免疫系の制御を担う。HLA遺伝子複合体は、染色体6p21内の3Mbpの区間に存在する。図6を参照されたい。HLA遺伝子は、高度に多型性であり、このことは、HLA遺伝子が、異なるアレルを多く有し、これによって、そうしたHLA遺伝子が適応免疫系を微調整することが可能であることを意味する。図7を参照されたい。ある特定の遺伝子によってコードされるタンパク質は、抗原としても知られており、こうして抗原として知られることになったのは、そうした抗原が臓器移植物中の因子として歴史的に発見された結果である。クラスが異なれば、機能が異なる。図8及び図9を参照のこと。
HLAセグメントは、3つの領域(セントロメアからテロメア)、クラスII、クラスIII、及びクラスIに分割される(図10を参照)。古典的なクラスI HLA遺伝子及びクラスII HLA遺伝子は、それぞれクラスI領域及びクラスII領域に含まれている一方で、クラスIII遺伝子座は、免疫系に関与するタンパク質をコードする遺伝子を保有するが、構造的にはMHC分子と関連しない。古典的なHLAクラスI分子は、HLA-A、HLA-B、及びHLA-Cの3種類である。こうした成熟HLAクラスI分子のα鎖のみが、それぞれHLA-A遺伝子、HLA-B遺伝子、及びHLA-C遺伝子によってクラスI HLA遺伝子座内にコードされる。図11を参照されたい。対照的に、β2m遺伝子によってコードされるベータ-2ミクログロブリンβ2m鎖は、第15染色体上に位置する。古典的HLAクラスII分子もまた、3つの型(HLA-DP、HLA-DQ、及びHLA-DR)を有するものであり、それぞれのα鎖及びβ鎖は両方共、一対の隣接遺伝子座によってコードされる。こうした古典的なHLAクラスI遺伝子及びHLAクラスII遺伝子に加えて、ヒトMHC遺伝子座は、広範囲にわたって並んだHLA偽遺伝子ならびに非古典的なMHCI分子及びMHCII分子をコードする遺伝子を含む。HLA偽遺伝子は、遺伝子重複がHLA進化の主な原動力であることを示すものである一方で、非古典的なMHCI分子及びMHCII分子は、αβTCRに抗原を提示する機能とは全く異なる限られた機能を免疫系内で果たすことが多い。
抗原提示タンパク質をコードする遺伝子とは別に、他にも遺伝子が多数存在し(こうした遺伝子の多くが免疫機能に関与する)、HLA複合体上に位置する。ヒト集団におけるHLAの多様性は、疾患防御の一側面であり、結果として、無関係な2個体が、すべての遺伝子座上に同一のHLA分子を有する確率は極めて低い。HLA遺伝子は、歴史的には、HLAが類似する個体の間で臓器移植が成功する能力の結果として同定されている。
クラスI MHC分子は、腫瘍細胞を含むすべての有核細胞上に発現される。これらは、他の細胞のうち、T及びBリンパ球、マクロファージ、樹状細胞及び好中球等に特異的に発現し、CD8+細胞傷害性Tリンパ球(CTL)に対して表面上にペプチド断片(典型的には8~10アミノ酸長)を表示するように機能する。CTLは、独自の膜結合TCRによって認識されるMHC I結合ペプチドを保有する任意の細胞を死滅させることに特化している。細胞が、通常は存在しない細胞タンパク質に由来するペプチド(例えば、ウイルス、腫瘍、または他の非自己由来のもの)を表示する場合、そのようなペプチドは、CTLによって認識され、CTLは活性化され、ペプチドを表示する細胞を死滅させる。
図12に示すように、MHCクラスIタンパク質は、細胞外ドメイン(α、α及びαの3つのドメインを含む)、膜貫通ドメイン、及び細胞質尾部を含む。α及びαドメインは、ペプチド結合性切断を形成し、αはβ2-ミクログロブリンと相互作用する。クラスI分子は、多型α鎖(重鎖と称されることがある)と、一般に多型ではない、β2-ミクログロブリン(軽鎖とも称される)と称されるより小さい鎖と、の2つの鎖からなる。これらの2つの鎖は、細胞表面上で非共有ヘテロ二量体を形成する。α鎖は、3つのドメイン(α1、α2、及びα3)を含む。図12に示すように、α鎖遺伝子のエクソン1はリーダー配列をコードし、エクソン2及び3はα1及びα2ドメインをコードし、エクソン4はα3ドメインをコードし、エクソン5は膜貫通ドメインをコードし、エクソン6及び7は細胞質尾部をコードする。α鎖は、α1及びα2ドメイン(Ig様ドメインに類似する)、続いてβ2-ミクログロブリンに類似するα3ドメインを含むペプチド結合性切断を形成する。
β2ミクログロブリンは、非グリコシル化の12kDaのタンパク質であり、その機能の1つは、MHCクラスI α鎖を安定化することである。α鎖とは異なり、β2ミクログロブリンは膜に及ばない。ヒトβ2ミクログロブリン遺伝子座は、15番染色体上にあり、4つのエクソンと3つのイントロンからなる。β2ミクログロブリンの循環形態は、血清、尿、及び他の体液中に存在し、非共有的にMHC I関連したβ2ミクログロブリンは、生理的条件下で循環するβ2ミクログロブリンと交換することができる。
図13に示すように、MHCクラスIIタンパク質は、細胞外ドメイン(α、α、β1及びβ1の3つのドメインを含む)、膜貫通ドメイン、及び細胞質尾部を含む。Α1及びβ1ドメインは、ペプチド結合性切断を形成し、α及びβ1は膜貫通ドメインと相互作用する。
前述の抗原に加えて、クラスI抗原は、非古典的クラスI抗原と呼ばれる他の抗原、特に抗原HLA-E、HLA-F及びHLA-Gを含み、この後者の抗原は、特に、HLA-Cに加えて、正常なヒト胎盤の絨毛外性トロホブラストによって発現される。
細胞表現型
一般的に図1を参照すると、Dr.Peter Medawarは、「胎児が9ヶ月間母体子宮内に快適に居住するヒト妊娠の成功は、免疫学の理念に反する」と誇らしげに述べた。言い換えると、彼は地球上で最も一般的で成功した移植は妊娠であることに気が付いた。
細胞表面マーカーのトロホブラスト発現は十分に特徴付けられており、そのような表現型をブタ細胞内で保持するために適切かつ必要な場所で複製することにより、重要で所望の細胞機能を得ることができる。文献によれば、絨毛外性トロホブラスト細胞は、HLAクラスIa分子(HLA-C)及びHLAクラスIb分子のすべてを発現する。絨毛外性トロホブラスト細胞上で高度に発現されるHLA-E及びHLA-Gの両方と比較して、HLA-C及びHLA-Fは弱く発現される。例えば、Djurisic et al.,“HLA Class Ib Molecules and Immune Cells in Pregnancy and Preeclampsia,”Frontiers in Immunology,Vol 5,Art.652(2014)を参照されたい。MHC分子に加えて、PD-L1は、正常な妊娠におけるトロホブラスト細胞、特にシンシチオトロホブラスト細胞において上方制御される。HLAクラスII分子はトロホブラスト上に存在せず、母体リンパ球の存在下での胚の生存及び検出を促進し得る。例えば、Veras et al.,“PD-L1 Expression in Human Placentas and gestational Trophoblastic Diseases,”Int.J.Gynecol.Pathol.36(2):146-153(2017)を参照されたい。
本発明は、ヒトトロホブラストの細胞外構成を模倣する免疫寛容性異種移植ブタ細胞の作成方法を提供する。この方法は、特定のSLAエクソンを除去または非活性化して、ブタ細胞の細胞外発現またはMHCクラスII、Ia、及び/またはIbの非発現を調節することと、特定のナイーブな天然に存在するブタ細胞SLAエクソンを再プログラムして、ブタ細胞の細胞外発現またはMHCクラスIIの非発現を調節することと、別の方法で操作された配列内またはその付近に存在するブタイントロンを保存または除去しないことと、ブタCTLA4及びPD-1の発現を増加させることと、アルファ-1,3ガラクトシルトランスフェラーゼ、シチジンモノリン酸-N-アセチルニューラミン酸ヒドロキシラーゼ、及びβ1,4-N-アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼを除去または非活性化することと、を含むがこれらに限定されない。このような発現増大を引き起こすためのかかる除去、再プログラム、及び修飾、ならびにヒトトロホブラストの細胞外構成を模倣する免疫寛容性異種移植ブタ細胞を作成するためのブタゲノムの他の操作された態様は、以下のように記載される。
この満たされていない臨床ニーズに対するかつて/以前の手法は、「万人に有効な(one-size fits all)」古典的な医学的定説に明確に従っている。本発明者らはこれを「下流」手法と称し、この手法では、次々に生じる自然免疫プロセスのすべてに対処することに取り組まなくてはならない。この限定的な見解を採用する代わりに、本発明は、臨床転帰測定を劇的に改善するために「患者固有の」解決策をとる。後者(本発明者らの手法)のことを、本発明者らは、「上流」手法と命名し、この手法は、満たされない科学的労力の集大成が調和のとれた橋渡し的成果となったものである。我々のアプローチの中心的な定理は、既存及び以前の独断的アプローチに対抗するものである。「下流」アプローチは、ドナーとレシピエントとの間の先天的及び不動の差異を受け入れ、レシピエントの自然に生じる免疫学的応答を低減/排除/負の方向に改変させる方法として使用される介入、遺伝子改変、及び/またはそれに伴う外因性免疫抑制薬物に焦点を当てる。対照的に、本発明者らは、意図的に、基本的な科学的ドグマの分野に当てられた焦点を逆転させることを選択する。ドナーとレシピエントとの間の免疫学的不適合性、具体的には(限定されないが)主要組織適合遺伝子複合体(複数可)のそうした不適合を受け入れるのではなく、本発明者らは、供給源におけるこうした触媒抗原を改変し、それによって、ドナーとレシピエントとの間の細胞拒絶反応、組織拒絶反応、及び臓器拒絶反応の原因エフェクターである誘発機構をすべて排除する。このアプローチは、遺伝学、産科学、感染症、腫瘍学、農業、畜産、食品産業、及び他の領域の分野を含むがこれらに限定されない、異種移植の分野を超えて適用される。
本開示は、異種移植のための非トランスジェニックな遺伝的に再プログラムされたブタを作成する際に上記の修飾を実施し、ブタのMHC表面特徴付けはレシピエントのトロホブラストのものを模倣し、異種移植からの免疫応答は著しく低減される。ヒト絨毛外性トロホブラスト細胞は、HLA-C、HLA-E、HLA-F、及びHLA-Gを発現するが、HLA-A、HLA-B、HLA-DQ、及びHLA-DRは発現しない。したがって、本実施形態は、ヒトトロホブラストの固有のMHC表面特徴付けと部位特異的変異原性置換とを組み合わせて、天然ドナーブタのSLA/MHC遺伝子に対するオフターゲット効果を最小限に抑えながら、異種移植に関連する免疫応答を最小限に抑えるか、または除去する。
ヒト免疫応答系は、侵入生物に対する非常に複雑で効率的な防御系である。T細胞は、細胞応答に関与する主要なエフェクター細胞である。抗体が治療薬(TCR)として開発されたように、T細胞の表面上の受容体は、それらに特異性を与えるが、治療薬を開発するためのプラットフォームとして独自の利点を有する。抗体は、血液及び細胞外空間における病原体の認識、または細胞表面上のタンパク質標的に限定されるが、TCRは、細胞表面上のMHC分子によって提示される抗原(細胞内タンパク質に由来する抗原を含む)を認識する。提示された抗原を認識して活性化するT細胞のサブタイプに応じて、TCR及びTCRを保有するT細胞は、様々な免疫応答の制御に関与する。例えば、ヘルパーT細胞は、B細胞の抗体分泌細胞への分化の誘導による体液性免疫応答の調節に関与する。加えて、活性化されたヘルパーT細胞は、細胞傷害性T細胞による細胞媒介性免疫応答を開始する。したがって、TCRは、抗体によって通常見られない標的を特異的に認識し、それらを担持するT細胞を駆動させて、多種多様な免疫応答を開始する。
図2に示すように、T細胞は、細胞表面上に発現されたTCRによって細胞表面上に提示された抗原を認識する。TCRは、ジスルフィド結合ヘテロ二量体であり、大部分は、α鎖及びβ鎖糖タンパク質からなる。T細胞は、組換えメカニズムを使用して、B細胞で動作する抗体多様性を生成するためのそれらのメカニズムと同様に、その受容体分子に多様性を生成する(Janeway and Travers、Immunobiology 1997)。免疫グロブリン遺伝子と同様に、TCR遺伝子は、T細胞の発達中に再配列するセグメントから構成される。TCRポリペプチドは、可変領域、定常領域、膜貫通領域及び細胞質領域からなる。膜貫通領域はタンパク質を固定し、細胞内領域は受容体が占有されるときにシグナル伝達に関与するが、可変領域は抗原の特異的認識に関与し、定常領域は可変領域結合表面を支持する。TCRα鎖は、可変(V)及び結合(J)セグメントのみによってコードされる可変領域を含有し、β鎖は、さらなる多様性(D)セグメントを含有する。
TCRは、自己主要組織適合性複合体(MHC)分子の関連において抗原提示細胞の表面上に提示されるペプチド抗原を認識する。TCRによって認識される2つの異なるタイプのMHC分子は、抗原提示、クラスI MHC及びクラスII MHC分子に関与する。成熟T細胞サブセットは、それらが発現する共受容体分子によって定義される。これらの共受容体は、MHC-抗原複合体の認識及びT細胞の活性化においてTCRと併せて作用する。成熟ヘルパーT細胞は、MHCクラスII分子との関連で抗原を認識し、共受容体CD4を有することによって区別される。細胞傷害性T細胞は、MHCクラスI決定因子の関連で抗原を認識し、CD8共受容体を有することによって区別される。
ヒトでは、MHC分子は、HLA(ヒト白血球抗原(human leukocyte antigen)の頭字語)と称され、染色体6p21.3に位置するHLA領域によってコードされる8,9。HLAセグメントは、3つの領域(クラスII、クラスIII、及びクラスI)(セントロメア側からテロメア側の順で記載)に分かれる。図10を参照のこと。古典的なクラスI HLA遺伝子及びクラスII HLA遺伝子は、それぞれクラスI領域及びクラスII領域に含まれている一方で、クラスIII遺伝子座は、免疫系に関与するタンパク質をコードする遺伝子を保有するが、構造的にはMHC分子と関連しない。古典的なHLAクラスI分子は、HLA-A、HLA-B、及びHLA-Cの3種類である。こうした成熟HLAクラスI分子のα鎖のみが、それぞれHLA-A遺伝子、HLA-B遺伝子、及びHLA-C遺伝子によってクラスI HLA遺伝子座内にコードされる。図11を参照されたい。対照的に、β2m遺伝子によってコードされるベータ-2ミクログロブリンβ2m鎖は、第15染色体上に位置する。古典的HLAクラスII分子もまた、3つの型(HLA-DP、HLA-DQ、及びHLA-DR)を有するものであり、それぞれのα鎖及びβ鎖は両方共、一対の隣接遺伝子座によってコードされる。こうした古典的なHLAクラスI遺伝子及びHLAクラスII遺伝子に加えて、ヒトMHC遺伝子座は、広範囲にわたって並んだHLA偽遺伝子ならびに非古典的なMHCI分子及びMHCII分子をコードする遺伝子を含む。HLA偽遺伝子は、遺伝子重複がHLA進化の主な原動力であることを示すものである一方で、非古典的なMHCI分子及びMHCII分子は、αβTCRに抗原を提示する機能とは全く異なる限られた機能を免疫系内で果たすことが多い。
ヒト白血球抗原(HLA)遺伝子がヒト集団において示す配列多様性は途方もないものである。例えば、HLA-B遺伝子だけも4,000を超えるアレルの存在が知られている。HLA遺伝子の遺伝的多様性においては、異なる抗原の提示効率が異なる様々なアレルが存在し、この遺伝的多様性は、ヒトが曝露される広範な異なる病原体に対する集団レベルの抵抗性が向上するように進化が生じた結果であると考えられる。この遺伝的多様性は、レシピエントの免疫応答が移植後の生着及び生存の結果を左右する最も重要な因子である異種移植の中においては問題になるものでもある。
ヒトにおいて、HLA-A、HLA-B、及びHLA-Cとも称されるクラスI遺伝子は、多型α鎖(重鎖と称されることがある)と、一般に多型ではない、β2-ミクログロブリン(軽鎖とも称される)と称されるより小さい鎖と、の2つの鎖からなる。これらの2つの鎖は、細胞表面上で非共有ヘテロ二量体を形成する。図12に示すように、α鎖は、3つのドメイン(α1、α2、及びα3)を含む。α鎖遺伝子のエクソン1はリーダー配列をコードし、エクソン2及び3はα1及びα2ドメインをコードし、エクソン4はα3ドメインをコードし、エクソン5は膜貫通ドメインをコードし、エクソン6及び7は細胞質尾部をコードする。α鎖は、α1及びα2ドメイン(Ig様ドメインに類似する)、続いてβ2-ミクログロブリンに類似するα3ドメインを含むペプチド結合性切断を形成する。
β2ミクログロブリンは、非グリコシル化の12kDaのタンパク質であり、その機能の1つは、MHCクラスI α鎖を安定化することである。α鎖とは異なり、β2ミクログロブリンは膜に及ばない。ヒトβ2ミクログロブリン遺伝子座は、15番染色体上にあり、4つのエクソン及び3つのイントロンからなる。β2-ミクログロブリン結合タンパク質複合体は、新生児Fc受容体(FcRn)、分化クラスター1(CD1)タンパク質、非古典的な主要組織適合複合体(MHC)、及び周知のMHCクラスI分子を含む様々な免疫系経路において重要な役割を担う。
クラスI MHC分子は、腫瘍細胞を含むすべての有核細胞上に発現される。これらは、他の細胞のうち、T及びBリンパ球、マクロファージ、樹状細胞及び好中球等に特異的に発現し、CD8+細胞傷害性Tリンパ球(CTL)に対して表面上にペプチド断片(典型的には8~10アミノ酸長)を表示するように機能する。CTLは、独自の膜結合TCRによって認識されるMHC I結合ペプチドを保有する任意の細胞を死滅させることに特化している。細胞が、通常は存在しない細胞タンパク質に由来するペプチド(例えば、ウイルス、腫瘍、または他の非自己由来のもの)を表示する場合、そのようなペプチドは、CTLによって認識され、CTLは活性化され、ペプチドを表示する細胞を死滅させる。
MHC遺伝子座は、ゲノム内で最も高い多型を示す。すべてのクラスI及びII MHC遺伝子は、ペプチド断片を提示することができるが、各遺伝子は、異なる結合特性を有するタンパク質を発現し、多型及びアレルバリアントを反映する。任意の所与の個体は、免疫応答の過程で細胞表面上でB細胞及びT細胞に提示することができる独自の範囲のペプチド断片を有する。
前述の抗原に加えて、クラスI抗原は、非古典的クラスI抗原と呼ばれる他の抗原、特に抗原HLA-E、HLA-F及びHLA-Gを含み、この後者の抗原は、特に、HLA-Cに加えて、正常なヒト胎盤の絨毛外性トロホブラストによって発現される。
図13に示すように、MHCクラスIIタンパク質は、細胞外ドメイン(α1、α2、β1、及びβ1の3つのドメインを含む)、膜貫通ドメイン、及び細胞質尾部を含む。α1及びβ1ドメインは、ペプチド結合性切断を形成し、α1及びβ1は膜貫通ドメインと相互作用する。
MHC-Iタンパク質に関して、本開示は、不活性化するか、または必要に応じて、「発見して、置き換える」オルソロガスなSLAタンパク質の機能を、最小限の免疫認識をもたらすHLA類似体とともに保持するかのいずれかである。いくつかの態様では、SLA-1の発現をコードし、その発現に関与する遺伝子をサイレンシングすると、高い問題性のある多型のHLA-A類似体が除去される。同様に、SLA-2に関連する遺伝子の不活性化または完全な除去は、ミスマッチしたHLA-Bタンパク質によってもたらされる負荷を低減するであろう。これは、細胞表面界面において、ヒトレシピエントのT細胞に、HLA-A及びHLA-B陰性細胞として現れるであろう。古典的MHCクラスIタンパク質の最後に関して、参照HLA-C配列を使用してSLA-3をコードする遺伝子のHLA-C部位特異的変異誘発は、そのような差異を有する同種移植を模倣するであろう。HLA-Cの「多型性が低い」性質を考えると、HLA-A及びHLA-Bと比較して、これは、自然界に天然に普及しているHLA-Cのサブクラスに基づく参照置き換え配列によるSLA-3の置き換えることと、ならびに多数の既知の及びそれらの未知のMHC-I依存性プロセスの機能性及び非中断をもたらす最小限であるが必要なレベルの発現を可能にするメカニズムを引き出すことと、によってさらに改善されるであろう。
MHC-Iタンパク質に関して、本開示は、不活性化するか、または必要に応じて、「見つけて置き換える」オルソロガスなSLAタンパク質の機能を、最小限の免疫認識をもたらすHLA類似体とともに保持するかのいずれかである。いくつかの態様では、SLA-1の発現をコードし、その発現に関与する遺伝子をサイレンシングすると、高い問題性のある多型のHLA-A類似体が除去される。同様に、SLA-2に関連する遺伝子の不活性化または完全な除去は、ミスマッチしたHLA-Bタンパク質によってもたらされる負荷を低減するであろう。これは、細胞表面界面において、ヒトレシピエントのT細胞に、HLA-A及びHLA-B陰性細胞として現れるであろう。古典的MHCクラスIタンパク質の最後に関して、参照HLA-C配列を使用してSLA-3をコードする遺伝子のHLA-C部位特異的変異誘発は、そのような差異を有する同種移植を模倣するであろう。HLA-Cの「多型性が低い」性質を考えると、HLA-A及びHLA-Bと比較して、これは、自然界に天然に普及しているHLA-Cのサブクラスに基づく参照置き換え配列によるSLA-3の置き換えることと、ならびに多数の既知の及びそれらの未知のMHC-I依存性プロセスの機能性及び非中断をもたらす最小限であるが必要なレベルの発現を可能にするメカニズムを引き出すことと、によってさらに改善されるであろう。
さらに、HLA-E、F、及びGを含むI-bカテゴリーに含まれる非古典的MHCタンパク質の発現は、胎児の生存及びトロホブラスト(複数可)の相乗的存在の両方にとって極めて重要である。幸いにも、これらは、「古典的な」MHC-Iaの種よりも有意に多型性が低い。これらの発現がなければ、細胞溶解の上方制御の強化は、NK細胞の認識の直接的な結果であり、活性化が観察される。MHC-Ia成分について記載されているのと同一の方法で、HLA類似体を有するオルソロガスなSLAタンパク質を不活性化するか、または必要に応じて「発見して、置き換える(置き換えた)」ことができる。図14は、本開示に含まれる特定の変化を示す。
HLA-Gは、強力な免疫阻害分子及び免疫寛容性分子であり得る。ヒト胎児におけるHLA-G発現は、ヒト胎児が母体免疫応答を回避することを可能にし得る。刺激機能も同種異系のHLA-Gに対する応答も、現在のところ報告されていない。HLA-Gは、非古典的HLAクラスI分子であり得る。それは、遺伝的多様性、発現、構造、及び機能によって、古典的なMHCクラスI分子と異なることができる。HLA-Gは、低いアレル多型によって特徴付けられ得る。HLA-Gの発現は、トロホブラスト細胞、成体胸腺髄質、及び幹細胞に限定され得る。HLA-G遺伝子(HLA-6.0遺伝子)の配列は、GERAGHTY et alにより記載されており(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1987,84,9145-9149):それは、4,396塩基対を含み、HLA-A、HLA-B及びHLA-C遺伝子のイントロン/エクソン構成と相同であるイントロン/エクソン構成を示す。より正確には、この遺伝子は、8つのエクソン及び非翻訳の3’Ut末端を含み、それぞれの対応は、エクソン1:シグナル配列、エクソン2:α1ドメイン、エクソン3:α2ドメイン、エクソン4:α3ドメイン、エクソン5:膜貫通領域、エクソン6:細胞質ドメインI、エクソン7:細胞質ドメインII、エクソン8:細胞質ドメインIII、及び3’非翻訳領域である(GERAGHTY et al.,上記、ELLIS et al.,J.Immunol.,1990,144,731-735)。しかしながら、HLA-G遺伝子は、フレーム内翻訳終結コドンがエクソン6の第2のコドンに位置するという点で他のクラスI遺伝子とは異なり、その結果、このHLA-6.0遺伝子によってコードされるタンパク質の細胞質領域は、HLA-A、HLA-B及びHLA-Cタンパク質の細胞質領域のものよりもかなり短い。
細胞傷害性及びサイトカイン分泌を含むナチュラルキラー(NK)細胞媒介性免疫は、多数の自己及び同種異系細胞に対する生物学的耐性において主要な役割を果たす。標的細胞認識の共通のメカニズムは、細胞表面上の自己MHCクラスIペプチド複合体の欠如または修飾であるようであり、これはウイルス感染細胞、腫瘍細胞及び主要組織適合性MHC非適合性移植細胞の排除をもたらし得る。NK細胞上に発現するIgスーパーファミリーのメンバーであるKIRが最近発見され、クローニングされた。KIRは、多型MHCクラスI分子に特異的であり、リガンド結合時に負のシグナルを生成し、ほとんどのシステムにおいて、NK細胞媒介性細胞傷害性からの標的細胞保護をもたらす。NK細胞自己免疫、すなわち、正常な自己細胞の溶解を防止するために、個体の所与のNK細胞はすべて、少なくとも、自己HLA-A、B、C、またはGアレルの少なくとも1つを認識するKIR上で発現すると考えられる。
本開示によれば、ブタからヒトへの異種移植との状況では、各ヒトレシピエントは、その個人に特有の主要組織適合遺伝子複合体(MHC)(クラスI、クラスII、及び/またはクラスIII)を有し、このMHCは、ドナーブタのMHCとは不適合となる。したがって、ドナーブタ移植片がレシピエントに導入されると、ブタMHC分子自体が抗原として働き、レシピエント由来の免疫応答を誘発することで、移植拒絶反応を引き起こす。
本開示のこの態様(すなわち、厳密に選択したヒトMHCアレルを発現するようにSLA/MHCを再プログラム化すること)によれば、異種移植を目的とするブタの細胞、組織、及び臓器に適用されると、野生型ブタから得られるか、あるいはこの再プログラム化が行われておらず、その他の方法で遺伝的に改変されたブタ(例えば、トランスジェニックブタ、または非特異的な遺伝的改変もしくは異なる遺伝的改変が行われたブタ)から得られる細胞、組織、及び臓器と比較して拒絶反応が低減されることになることが理解されよう。
以前の修飾が組み込まれている場合、母体-胎児共生で見られるような保護的で局所的な免疫応答を生成する追加の細胞外リガンドの挿入または活性化は、軽微な抗原の差異の結果として残り得る有害な細胞媒介性免疫学的機能を最小限に抑えるための追加のステップである。したがって、SLA-MIC2のためのブタリガンドは、ヒト対応物であるMICAを用いてオルソロガス的に再プログラムされる。ヒト主要組織適合性複合体クラスI鎖関連遺伝子A(MICA)は、内皮細胞、樹状細胞、線維芽細胞、上皮細胞、及び多くの腫瘍上で発現される細胞表面糖タンパク質である。これは、ヒト第6番染色体の短腕上に位置し、7つのエクソンからなり、そのうちの5つは、MICA分子の膜貫通領域をコードする。正常状態のMICAタンパク質は、上皮組織において低レベルの発現を有するが、細胞ストレスの様々な刺激に応答して上方制御される。MICAは非古典的なMHCクラスI遺伝子として分類され、NK細胞及びCD8+T細胞の表面上で発現される活性化受容体NKG2Dによって認識されるリガンドとして機能する(atlasgeneticsoncology.org/Genes/MICAID41364ch6p21.html)。
加えて、PD-L1、CTLA-4、及び他のものについてのブタリガンドは、過剰発現され、及び/またはそれ以外の場合、ヒト対応物でオルソロガス的に再プログラムされる。PD-L1は、妊娠、同種移植片、及び自己免疫疾患における適応免疫系を抑制する主要な役割を有する膜貫通タンパク質である。それは、ヒトではCD274遺伝子によってコードされ、9番染色体に位置する。PD-L1は、活性化されたT細胞、B細胞、及び骨髄系細胞に見られる受容体であるPD-1に結合し、活性化または阻害を調節する。特に、PD-L1がT細胞上の受容体PD-1に結合することは、IL-2産生及びT細胞増殖の活性化を阻害する。CTLA4は、免疫応答を下方制御する免疫チェックポイントとしても機能するタンパク質受容体である。それは、CTLA4遺伝子によってコードされ、ヒトでは2番染色体に位置する。それは、構成的には制御性T細胞上で発現するが、活性化されたT細胞では上方制御される。例えば、そのプロモーターの再プログラムに基づいて、CTLA-4及びPD-L1の遺伝子発現が増加する。遺伝子型とCTLA-4またはPD-L1発現との間には関係がある。例えば、Ligers A,et al.CTLA-4 gene expression is influenced by promoter and exon 1 polymorphisms,Genes Immun.2001 May;2(3):145-52では、CTLA4プロモーターの-318位(T(-318))にチミンを保有し、エクソン1の49位にアデニンをホモ接合する個体は、細胞刺激後の細胞表面CTLA-4の発現及び非刺激細胞におけるCTLA-4 mRNAの発現の両方が有意に増加したことが示され、この文献は、あらゆる目的のために、参照によりそのすべてが本明細書に組み込まれる。同様の上方制御は、PD-L1プロモーター再プログラムを使用してPD-L1を過剰発現するために達成することができる。
さらに、図14に示されるように、内皮タンパク質C受容体(EPCR)、トロンボモジュリン(TBM)、組織因子経路阻害剤(TFPI)、及びその他についての抗凝固性ブタリガンドは、ヒト対応物を用いてオルソロガス的に再プログラムされる。内皮タンパク質C受容体は、ヒトの20番染色体に位置するPROCR遺伝子によってコードされる内皮細胞特異的な膜貫通糖タンパク質である。それは、抗凝固性セリンプロテアーゼであるタンパク質Cの活性化を促進し、活性化タンパク質C媒介性細胞保護シグナル伝達において重要な役割を果たす。トロンボモジュリンは、内皮細胞の表面に存在する一体型膜糖タンパク質である。それはTHBD遺伝子によってコードされ、ヒトでは20番染色体に位置する。抗凝固経路におけるタンパク質Cのトロンビン誘導活性化における補助因子として機能することに加えて、それは、C3b不活性化を調節することにも機能する。組織因子経路阻害剤(TFPI)は、第Xa因子を阻害することによって天然の抗凝固剤として機能する糖タンパク質である。それは、ヒトの第2番染色体に位置するTFPI遺伝子によってコードされ、タンパク質構造は3つのタンデムに連結したKunitzドメインからなる。ヒトでは、TFPiの2つの主要なアイソフォーム、TFPIαとTFPIβが存在する。TFPIαは、3つの阻害ドメイン(K1、K2、及びK3)ならびに正に荷電したC末端からなり、TFPIβは、2つの阻害ドメイン(K1及びK2)ならびにC末端からなる。K1及びK2ドメインは、それぞれ第VII因子及び第Xa因子に結合し、阻害することが知られているが、K3の阻害機能は未知である。ある特定の態様では、本開示は、救命したい臓器を長く生着させるために、移植手順後に移植レシピエントが外来性の免疫抑制剤(または長期の免疫抑制レジメン)を多くかつ有害に使用する必要のない低免疫原性及び/または免疫寛容性の細胞、組織、及び臓器を創出することに重点を置いている(基礎を置いている)。
図14に提供される表は、ヒトトロホブラストの細胞外構成を模倣する免疫寛容性の異種移植ブタ細胞を作成するための様々な編集の要約を示す概念的設計を示す。図14に示されるように、HLA-Aはトロホブラスト上で発現されないため、HLA-Aにオルソロガスなブタ遺伝子であるSLA-1は、トロホブラストを模倣するようにサイレンシングされる。図14にさらに示されるように、HLA-Gは、トロホブラストで発現され、NK細胞との相互作用を考慮すると、母体胎児免疫寛容性において重要な役割を有するため、HLA-Gにオルソロガスなブタ遺伝子であるSLA-8は、「ヒト捕捉」参照配列との置き換えによってヒト化される。
したがって、複数の供給源動物を、多くの生物学的特性(限定されないが、ゲノム改変及び/または他の遺伝的に操作された特性を含む)を持たせて利用することで、異種移植から生じるヒトの免疫原性及び/または免疫学的拒絶反応(例えば、急性拒絶反応、超急性拒絶反応、及び慢性拒絶反応)を低減できることが理解されよう。ある特定の態様では、本開示を使用することで、本開示の生物学的製品をヒト患者に移植することによって生じる血栓性微小血管症を低減または回避することができる。ある特定の態様では、本開示を使用することで、本開示の生物学的製品をヒト患者に移植することによって生じる糸球体症を低減または回避することができる。本明細書に示される供給源動物のリストは限定ではなく、本発明は、単独または組み合わせで免疫原性及び/または免疫学的拒絶反応の低減に役立つ1つ以上の改変(遺伝的なもの、またはその他のもの)を有する任意の他の型の供給源動物を包含することがさらに理解されよう。
様々な免疫学的に重要な遺伝子座におけるヒト対ブタゲノム間の保存ヌクレオチド及び非保存ヌクレオチドの同一性を比較するバイオインフォマティック配列解析
ブタ白血球抗原(SLA)とヒト白血球抗原(HLA)との間のMHC差異を再プログラムするために、本開示は、これらの2つの種、例えば、機能に対応する多数の遺伝子との間の高度に保存されたMHC-遺伝子座を使用することを含む。MHCクラスIa、HLA-A、HLA-B、及びHLA-Cは、ブタにおける類似のパートナー(それぞれ、SLA1、2、及び3)を有する。MHCクラスIIにおいては、本開示による免疫遺伝学的な再プログラムの間に利用されるべき多数のマッチも存在する。
図15に例示されるように、MHC遺伝子は、クラスI、クラスII、及びクラスIIIの3つのクラスに分類され、これらのすべては、ヒト第6番染色体にコードされる。MHC遺伝子は、ブタ及びヒトゲノムの中で最も多型な遺伝子であり、MHC多型は、進化的利点を提供する上で重要であると推測され、配列の変化は、細胞傷害性T細胞に対する病原体のより良好な提示を可能にする、ペプチド結合の差異をもたらす。
既知のヒトHLA/MHCまたは個々のレシピエントのシークエンシングされたHLA/MHC配列(複数可)をテンプレートとして利用することで、既知のヒトHLA/MHC配列またはヒトレシピエントのHLA/MHC配列と一致するように(例えば、そうした配列との配列相同性が80%、85%、90%、95%、98%、99%、または100%となるように)ブタ白血球抗原(SLA)/MHC配列を正確な置換で再プログラムすることができる。使用すべき既知のヒトレシピエントHLA/MHC配列が同定されるか、またはヒトレシピエントの遺伝子シークエンシングを実施してHLA/MHC配列が得られると、所望のHLA/MHC配列に基づいてブタの細胞中のSLA/MHC配列に対して3つの再プログラム化を実施することができる。例えば、標的を定めるためのガイドRNA(gRNA)配列を、本開示のブタにいくつか投与することで、ブタの細胞中のSLA/MHC配列がヒトレシピエントのテンプレートHLA/MHC配列によって再プログラム化される。
「MHC I複合体」等という用語は、本明細書で使用される場合、MHC I α鎖ポリペプチドとβ2-ミクログロブリンポリペプチドとの間の複合体を含む。「MHC Iポリペプチド」等という用語は、本明細書で使用される場合、MHC I α鎖ポリペプチド単独を含む。典型的には、用語「ヒトMHC」及び「HLA」は、互換的に使用され得る。
ドナーSLA/MHCを改変してレシピエントHLA/MHCと一致させる目的については、図16及び図17に示されているように、ヒト組織適合遺伝子複合体及びブタ組織適合遺伝子複合体のゲノム構成を比較してマッピングすることが行われている。例えば、かかるSLAからHLAへのマッピングは、Lunney,J.,“Molecular genetics of the swine major histocompatibility complex,the SLA complex,”Developmental and Comparative Immunology 33:362-374(2009)(「Lunney」)を参照されたい)において見出すことができ、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる。さらに、図12及び図13に示すようなHLAの遺伝子座及び様々なHLA遺伝子の概略分子構成を、図17及び図18に示すようなSLAの遺伝子座及び様々なSLA遺伝子の概略分子構成と比較することにより、細胞外及び膜貫通ドメインにおけるエクソンの配置及び数が、HLA MHCとSLA MHCとの間で共通であることが容易に識別される。したがって、当業者なら、本開示を踏まえつつ、Lunneyらのマッピングを参照ツールとして使用して効果的かつ効率的にブタ細胞を遺伝的に再プログラム化する。
ドナーブタのSLA/MHC遺伝子は、置換テンプレートの作成における参照テンプレートとして使用される。本開示の実施において、ブタのSLA/MHC遺伝子は、オンラインアーカイブまたはEnsembl等のデータベース(http://vega.archive.ensembl.org/index.html)を介して取得され得る。図19、図20、図21、及び図22に示すように、SLA-DQA及びSLA-DQB1遺伝子の正確な位置、それぞれの遺伝子(エクソン及びイントロン)の長さ、ならびにSLA-DQA及びSLA-DQB1の正確なヌクレオチド配列をマッピングする。本開示の代替的な態様では、ドナーブタのSLA/MHC遺伝子を配列決定してもよい。本開示の代替的な態様では、ブタの全ゲノムは配列決定され得る。一態様では、参照テンプレートとして使用することができるドナーブタの配列決定されたSLA/MHC遺伝子には、限定されないが、SLA-3、SLA-6、SLA-7、SLA-8、SLA-DQa、SLA-DQb、及びベータ-2ミクログロブリンが含まれる。別の態様では、塩基テンプレートとして使用することができるドナーブタの配列決定されたSLA/MHC遺伝子には、限定されないが、SLA-3、SLA-6、SLA-7、SLA-8、SLA-DQa、SLA-DQb、及びベータ-2ミクログロブリンのエクソン領域が含まれる。いくつかの態様では、他のSLAは改変されず、かつ再プログラムされたSLA領域のイントロン領域は改変されず、それによって、ヒトに移植されたときに免疫寛容性である細胞、組織、及び臓器を提供する最小限に改変された再プログラムされたブタゲノムを産生する。
本発明の一態様によれば、特定の一連の既知ヒトHLA分子を発現するように生物学的に操作されたゲノムを有するドナーブタが提供される。そのようなHLA配列は入手可能であり、例えば、IPD-IMGT/HLAデータベース(ebi.ac.uk/ipd/imgt/hla/にて利用可能)及びinternational ImMunoGeneTics information system(登録商標)(imgt.orgにて利用可能)から利用可能である。図23には、そのような遺伝子の命名法が示される。例えば、HLA-A1,B8,DR17は、コーカサス人種の中で最も一般に見られるHLAハプロタイプであり、その頻度は5%である。したがって、開示の方法は、本明細書で提供される本開示と組み合わせて既知のMHC/HLA配列情報を使用して実施され得る。HLA配列は、オンラインアーカイブまたはEnsembl(vega.archive.ensembl.org/index.html)などのデータベースを通じて入手可能である。図24に示すように、HLA-DQA1遺伝子の正確な位置、それぞれの遺伝子の長さ(エクソン及びイントロン)、及びHLA-DQA1の正確なヌクレオチド配列を得ることができる。
いくつかの態様では、レシピエントのヒト白血球抗原(HLA)遺伝子ならびにMHC(クラスI、クラスII、及び/またはクラスIII)が同定され、マッピングされる。ヒトレシピエントのHLA/MHC配列を把握することは、当該技術分野で知られる任意の数の方法を用いることによって可能であることが理解されよう。例えば、HLA/MHC遺伝子は、通常、標的シークエンシング法(ロングリードシークエンシングまたはロングインサートショートリードシークエンシング)によって型が決定される。慣例的には、HLA型は、2桁分解能(例えば、A*01)で決定されており、この分解能は、血清学的抗原分類とほぼ同じである。より最近では、4桁分解能(例えば、A*01:01)でのHLAの型決定に配列特異的オリゴヌクレオチドプローブ(SSOP)法が使用されており、この分解能によれば、アミノ酸差異を区別可能である。現在のところ、HLAの型を決定するための標的DNAシークエンシングは、他の従来法と比較して最も一般的なHLA型決定手法である。配列ベースの手法では、コード領域及び非コード領域の両方が直接的に決定されるため、それぞれ6桁分解能(例えば、A*01:01:01)及び8桁分解能(例えば、A*01:01:01:01)でのHLA型決定が達成され得る。現存するHLAアレルを新たなアレルまたはヌルアレルと区別する上では、臨床的観点から、最高分解能でHLAの型を決定することが望ましい。かかる配列決定技術は、例えば、Elsner HA,Blasczyk R:(2004)Immunogenetics of HLA null alleles:implications for blood stem cell transplantation.Tissue antigens.64(6):687-695、Erlich RL,et al(2011)Next-generation sequencing for HLA typing of Class I loci.BMC genomics.12:42-10.1186/1471-2164-12-42、Szolek A、et al.(2014)OptiType:Precision HLA typing from next-generation sequencing data.Bioinformatics 30:3310-3316、Nariai N,et al.(2015)HLA-VBSeq:Accurate HLA typing at full resolution from whole-genome sequencing data.BMC Genomics 16:S7、Dilthey AT,et al.(2016)High-accuracy HLA type inference from whole-genome sequencing data using population reference graphs.PLoS Comput Biol 12:e1005151、Xie C.,et al.(2017)Fast and accurate HLA typing from short-read next-generation sequence data with xHLA 114(30)8059-8064に記載されており、これらの各々は参照によりそのすべてが本明細書に組み込まれる。
異種移植片上のMHCクラスI発現の完全な破壊は、動物の生存能に有害な影響を有することが示されている。ある研究では、ブタ細胞上のSLAクラスI発現は、ブタベータ-2-ミクログロブリン遺伝子のエクソン2を標的とすることによって無効化された。産生された子ブタのゲノム配列決定は、B2M遺伝子座における修飾を示し、これは、フレームシフト、未成熟終止コドン、及び最終的な機能的ノックアウトをもたらした。しかし、この研究の子ブタは、予期しない疾患プロセスのために、4週間以上生存せず、そのような破壊的遺伝子組換えが、動物の生存能に悪影響を及ぼし得ることが明らかになった。Sake HJ,Frenszel A,Lucas-Hahn A,et al.Possible detrimental effects of beta-2-microglobulin knockout in pigs.Xenotransplantation.2019;26:e12525。
一態様では、置換テンプレートは、ドナーブタのSLA/MHCのヌクレオチドの部位特異的変異原性置換のために作成され、再プログラムは、天然ドナーブタのSLA/MHCの特定のエクソン領域に任意のフレームシフトまたはフレーム破壊をもたらさない非トランスジェニックな最小限に必要とされる改変を導入する。置換テンプレートのヌクレオチド配列(複数可)は、a)移植レシピエントからDNAを含有する生体試料を入手することと、b)移植レシピエントの試料中のMHCクラスI及びII遺伝子を配列決定することと、c)種々の遺伝子座においてレシピエントのヌクレオチド配列をドナーブタのヌクレオチド配列と比較することと、d)前述の遺伝子座のうちの1つ以上の置換テンプレートを作成することと、によって特定され、置換テンプレートの前述のヌクレオチド配列は、以下にさらに記載されるように、移植レシピエントのヌクレオチド配列と少なくとも95%同一である。
図25A及び図25Bのスプレッドシートは、それぞれ3つの個々のレシピエントのDQ-A及びDQ-Bのエクソンのヒト捕捉参照配列を示す。上述のように、既知のヒトHLA/MHCまたは個々のレシピエントのシークエンシングされたHLA/MHC配列(複数可)をテンプレートとして利用することで、既知のヒトHLA/MHC配列またはヒトレシピエントのHLA/MHC配列と一致するように(例えば、そうした配列との配列相同性が、90%、95%、98%、99%、または100%となるように)ブタ白血球抗原(SLA)/MHC配列を正確な置換で再プログラムすることができる。図25Cに示すように、オンラインデータベースを介して取得された既知のヒトHLA-DQAと、個々のレシピエントの配列決定されたHLA-DQAを、ヌクレオチド配列ライブラリーで比較することができる。図26Dは、オンラインデータベースを介して取得されたブタのSLA-DQAと、既知の及び配列決定されたレシピエントのHLA-DQA1のエクソン2領域の比較を示す。SLA-DQA及びHLA-DQA1の両方のエクソン2領域は、249ヌクレオチドを含有する。図25Dに示すように、SLA-DQA1とHLA-DQA1のエクソン2領域の間のアラインメントされた249ヌクレオチドの11%が完全に相違していることが観察され得る。したがって、本開示は、ヒト及びブタMHC複合体の特定のエクソンにおける非保存ヌクレオチド配列の同定方法を開示する。さらに、既知または配列決定されたヒト捕捉参照テンプレートを使用することにより、部位特異的変異誘発を行うことができ、ここで、SLA遺伝子と既知またはレシピエントのHLA遺伝子の特異的エクソン領域との間の特異的非保存ヌクレオチド配列は、フレームシフトを引き起こすことなく置き換えられる。SLA-DQA1及びSLA-DQB1遺伝子の部位特異的変異誘発を図26A及び図26Bに示し、ここで、レシピエント特異的HLA-DQA1及びHLA-DQB1のエクソン2領域のヌクレオチド配列を使用して、ヒト捕捉置換配列を作成する。したがって、MHC遺伝子のエクソン領域に特異的な合成置換テンプレートの使用は、天然ドナーブタのSLA/MHC遺伝子における任意のフレームシフトまたはフレーム破壊をもたらさない、非トランスジェニックな最小限に改変されたゲノムをもたらす。
上述のように、フレームシフトを引き起こす破壊的遺伝子組換えは、動物の生存能に悪影響を及ぼし得る。したがって、本発明は、MHC遺伝子においてフレームシフトを引き起こすことなく、MHCタンパク質の発現を阻害する方法を開示する。図25E及び図25Fのスプレッドシートは、それぞれ3つの個々のレシピエントのDR-A及びDR-Bのエクソンのヒト捕捉参照配列を示す。図26C及び図26Dに示すように、リーダーエクソン1の最初の3つのヌクレオチド配列を終止コドンに置き換えることにより、フレームシフトを引き起こすことなくDR分子の発現を阻害することができる。具体的には、HLA-DRA及びDRBについて、エクソン1の最初の3つの配列、ATGは、終止コドン、TAAで置き換えられる。したがって、終止コドンがエクソン1の開始部に配置される合成置換テンプレートを使用することによって、本発明は、所望のMHC分子の発現を阻害する方法を提供し、ここで、ゲノムの非トランスジェニックで最小限の改変は、天然ドナーブタのSLA/MHC遺伝子において任意のフレームシフトまたはフレーム破壊をもたらさない。
さらに、MHC-Iタンパク質の各々のヘテロ二量体構造を含むベータ-2-ミクログロブリンタンパク質は、種特異的である。ブタゲノムアセンブリSSC10.2に基づいて、B2Mタンパク質全体をコードする、約45.5kbのセグメント重複が、ブタ1番染色体において同定され、ここで、ブタにおける2つのコピー間の完全に同一のコード配列で同定されたB2M遺伝子の機能的重複が同定された。10種の哺乳動物種におけるB2M重複の系統解析により、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、及びクジラのようなクジラ偶蹄目ではB2M重複の存在が確認されたが、マウス、ネコ、イヌ、ウマ、及びヒトのような非クジラ偶蹄目の種ではB2M重複の存在が確認された。重複ブロックの端部における長鎖散在反復配列(LINE)の密度(39~66%)は、ブタゲノムの平均(20.12%)より2~3倍高いことが見出され、重複事象におけるその役割が示唆された。ブタにおけるB2M mRNA発現レベルは、それぞれ、ヒト及びマウスの12.71倍及び7.57倍(2-ΔΔCt値)であった。クジラ偶蹄目のみのゲノム中に部分的に残存する重複B2M配列の同定は、事象が系統特異的であったことを示す。B2M重複は、ブタにおける比較的多数のMHCクラスI重鎖遺伝子によってコードされるタンパク質と複合体を形成するMHCクラスI軽鎖タンパク質B2Mの利用可能性を増加させることによって、ブタの免疫系に有益であり得る。図27に示すように、MHCクラスI分子に対するB2M分子を観察することができる。さらに、上記及び図27に示されるように、ブタは、B2M遺伝子の重複を有し、ヒトは、1つ有する。したがって、本開示の一実施形態では、ブタB2M遺伝子の第1のコピーは、以前に開示されたように、部位特異的変異誘発を通じて再プログラムされる。図28に示されるように、ブタB2Mのエクソン2のアミノ酸配列は、ヒトのアミノ酸配列と比較され、非保存領域が特定される。加えて、ブタB2M遺伝子の第2のコピーの発現は、以前に開示されたように、終止コドンの使用によって阻害される。したがって、本開示の一実施形態では、遺伝子組換えを含み、ブタB2M遺伝子の第1のコピーは、部位特異的変異誘発を通じて再プログラムされ、第2の重複したB2M遺伝子は発現されず、再プログラムは、B2M遺伝子のフレームシフトをもたらさない。
遺伝子組換えによるヒト化のためのパイロット細胞ブタ株の選択及び特徴付け
一次マクロファージ及び他の抗原提示細胞(APC)は、免疫応答の研究に有用であるが、一次細胞の長期的な使用は、細胞の短い寿命によって制限される。加えて、一次細胞は、細胞が老化に達する前に一度だけ遺伝子操作され、評価されることができる。ブタモデルでは、研究者らは、これらのタイプの研究にブタ大動脈内皮細胞(PAEC)を頻繁に使用してきた。マクロファージまたは代表的なAPCの所望の特徴(MHCクラスI及びII分子ならびにCD80/86の発現)を有する不死化細胞株は、ゲノムの複数の修飾を実施し、同じ遺伝的背景を使用して免疫反応性への影響に対処するのに理想的であろう。生存不死化ブタ細胞株を生成する能力は、異種移植における免疫応答の研究に関連しない線維芽細胞及び上皮細胞株に限定されてきた。
不死化ブタ肺胞マクロファージ(PAM)株は、ブタのLandrace株[Weingartl 2002]から開発され、ATCC[3D4/21、ATCC CRL-2843]を通じて市販されている。細胞株は、ある程度の割合の培地の条件に依存する非特異的エステラーゼ及び食作用を示した。細胞は、血清非含有条件下で、アンカー依存性として、またはコロニー内で成長させることができる。骨髄/単球マーカー(例えば、CD14)を検出した。不死化細胞株の所望の特徴は、MHCクラスI及びIIであった。MHCクラスIは、すべての細胞上で広く発現することが示されたが、MHCクラスII、DR、及びDQにおいて、3D4/21細胞の発現は、最初は低く、18%及び4%であると報告された。PAECは活性化され、DR発現はIFN-γへの曝露によって上方制御され得ることが示されている。3D4/21細胞をIFN-γに曝露し、IFN-γへの曝露の24時間後に、クラスII発現は、DR:29.68%~42.27%に、及びDQ:2.28%~57.36%に、増大した。加えて、CD80/86が細胞表面上で発現され、これらの糖タンパク質は、T細胞活性化及び増殖の第2のシグナルに必須である。PAM細胞、34D/21は、MHCに関連する遺伝子の遺伝子変化が不死化細胞株を使用して記録されることができるということと、表現型にもたらされる変化がフローサイトメトリーを使用して評価されることができ、目的の糖タンパク質の発現または発現の欠如、細胞免疫応答、混合リンパ球応答(MLR)に対処することができるという、ブタAPCの所望の特徴を有する。
細胞性免疫応答を試験するために、一方向のMLRが設定され、そこでは、1つの細胞セットが刺激細胞として識別され、これらはドナー細胞または非修飾もしくは修飾PAM細胞であり、もう1つの細胞セットは応答細胞であり、これらはレシピエントからの細胞であり(これらは、MHC分子の同様の発現を共有するレシピエントからのものであり得る)、修飾PAM細胞である。刺激細胞を薬剤で処理して細胞の増殖を防止し、これは、DNAを共有結合的に架橋し、DNA合成及び細胞増殖を阻害する、放射線またはマイトマイシンCとのインキュベーションのいずれかであり得る。したがって、刺激細胞は、培養物中で増殖しないが、応答細胞は、MHCクラスI及びIIでの相互作用に応答して増殖し、この増殖は、MLRで測定される。刺激因子細胞及び応答因子細胞の両方を含有する細胞培養物を調製し、5~7日間インキュベートし、増殖/活性化を測定する。増殖は、5日または7日の終わりに、増殖時にDNAに組み込まれる放射性チミジン[Htdr]またはBrdU[チミジンの類似体]の量によって測定することができる。
MLRの組み合わせ。応答細胞は、PBMC、CD4+T細胞、CD8+T細胞、またはT細胞の他の亜集団のいずれかであり得る。PBMCは、レシピエント内に存在するすべての免疫細胞を表し、測定された応答は、刺激細胞[未修飾または修飾PAM細胞]への免疫応答をマウントする応答者の能力を反映する。測定された増殖は、それぞれMHCクラスII及びIと相互作用するCD4+及びCD8+T細胞の両方からなる。CD4+T細胞のみを非修飾または修飾PAM細胞に対して使用することは、MHCクラスII糖タンパク質、DR及びDQに対する応答を測定することである。DQに特異的な応答を観察するには、細胞応答が、ヒト抗原提示細胞(APC)によって提示されるブタ抗原の結果とならないように、APCが培養物に存在しないようにされる。並行して、応答者CD8+T細胞を使用して、MHCクラスI糖タンパク質、SLA1及び2に対する免疫応答を評価する。このタイプの分析は、PBMCに見られるように、応答者APCからの免疫応答への寄与を除去する。比較データは、これらのそれぞれの糖タンパク質の遺伝的に定義された応答者の免疫応答への寄与を実証し、PAM細胞に対して行われた遺伝子組換えを反映する。
フローサイトメトリー、遺伝子組換えPAM細胞の表現型分析。遺伝子組換え細胞、例えば、遺伝子組換え動物由来の細胞またはエクスビボで作成された細胞の細胞表現型を分析して、修飾された遺伝子によってコードされる糖タンパク質の発現の変化を測定する。細胞は、目的の糖タンパク質に結合する蛍光標識を有する抗体とともにインキュベートされ、標識された細胞は、フローサイトメトリーを使用して分析される。この分析は、MHCクラスI、クラスII(DR及びDQ)ならびにCD80/86の発現を識別するために、非修飾PAM細胞に対して実施された。修飾PAM細胞の変化は、このデータベースに参照される。PAM細胞内の遺伝子が、HLA C、E、F、及びGに関連するレシピエント特異的配列で修飾されるため、フローサイトメトリーを使用して、SLA3、6、7、及び8についての遺伝子によってコードされる糖タンパク質の発現を特徴付けることもできる。
加えて、このタイプの分析は、ノックアウトされる遺伝子によってコードされる糖タンパク質が発現されないことを確証するためにも使用される。この技術は、混合された表現型を有する細胞のプールから遺伝子組換え細胞を選別するためにも使用することができる。
本開示の生物学的製品から得られる細胞を抗HLA抗体が認識するかどうかを決定するためには、補体依存性細胞傷害(CDC)アッセイが実施され得る。事前に特徴付けられた抗HLAを含む特異的ヒト血清(または対照血清)を添加することによって調製されたアッセイプレートが使用され得る。IFN-γで処理されたドナー細胞が再浮遊され、アッセイプレートに添加され、補体の供給源(例えば、ウサギ血清)とともにインキュベートされる。室温でのインキュベートを少なくとも1時間行った後、アクリジンオレンジ/エチジウムブロマイド溶液が添加される。蛍光顕微鏡で視覚化された死細胞及び生存細胞の数を数え、抗HLA抗体の非存在下で得られる自発性溶解値を差し引き、尺度を用いてスコア付けすることによって細胞傷害性パーセントが決定される。
NK細胞の反応性、細胞傷害性を低下させるための調節。単独でまたは組み合わせて、NK細胞による標的細胞の活性化、認識、及び除去の潜在的なメカニズムは、それらの溶解性顆粒(パーフォリン、グランザイム、及び細胞溶解素)の含有量の放出を誘導する。一例として、NK細胞は、直接的なNK細胞傷害性に繋がる阻害性NK細胞受容体によって、標的細胞上の自己主要組織適合性複合体(MHC)クラスI分子の欠如を認識する。これは異種移植の場合である。NK細胞は、阻害性NK細胞阻害性キラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)、KIR2DL2/2DL3、KIR2DL1、及びKIR3DL1によって認識されるHLA Cによって調節される。NK細胞阻害性受容体、免疫グロブリン様転写産物2(ILT2)は、HLA-Eを認識するMHCクラスI及びCD94-NKG2Aと相互作用する。HLA F及びGは、トロホブラスト上で同様の役割を有する。非修飾PAM細胞に対するレシピエントNK細胞の細胞溶解活性は、ヒトNK細胞を非修飾PAM細胞の接着単層に添加し、4時間培養することによって、インビトロで測定することができる。細胞溶解は、放射性Cr51またはフローサイトメトリーによって測定される発色団の放出によって測定される。それぞれ、HLA C、HLA E、HLA G、またはHLA Fをミラーリングするように改変されたSLA3、6、7、または8を有するPAM細胞を、この細胞傷害性アッセイを使用して評価することができる。
細胞のノックインについては、ゲノム物質を挿入することで所望の配列が細胞ゲノムにノックインされ、この挿入は、例えば、相同組換え修復(HDR)を使用して行われる。クラスII分子の発現を最適化するために、細胞がブタインターフェロンガンマ(IFN-γ)中で72時間インキュベートされ、このIFN-γによって発現が刺激される。次に、標的特異的抗体を使用してフローサイトメトリーによって発現が測定される。フローサイトメトリーでは、抗HLA-C抗体、抗HLA-E抗体、抗HLA-G抗体、もしくは他の抗HLA抗体、またはパン抗HLAクラスI抗体もしくはパン抗HLAクラスII抗体が使用され得る。本開示によれば、ノックイン後に細胞表面HLA発現が確認される。
フローサイトメトリーによって、IFN-γ及びIFN-γ+LPSによる刺激が、ATCC(登録商標)から購入したブタ肺胞マクロファージ(PAM)(3D4/21細胞カタログ番号CRL-2843(商標))の表現型に及ぼす影響を特定する研究を実施した。
PAM細胞をRPMI-1640/10% FBS中で解凍し、3つの異なる培養プレート中で2日間培養した。3日目に、マクロファージ活性化培養培地について、100ng/mLのIFN-γ(プレート1)及び100ng/mLのIFN-γ+10ng/mLのLPS(プレート2)を含有するRPMI-1640/20%のFBS培地で置き換えた。RPMI-1640/20% FBS中の未処理細胞を対照として使用した(プレート3)。24時間インキュベーション後、TrypLE処理を使用して接着細胞をプレートから切り離した。細胞をFACS緩衝液(1×PBS pH=7.4、2mM EDTA、0.5% BSA)中に再懸濁した。細胞数及び生存率を、トリパンブルー排除法によって決定した。合計1×105個の細胞を、マウス抗ブタSLAクラスI、SLAクラスII DR、SLAクラスII DQ抗体で30分間、及びAPCコンジュゲートCD152(CTLA-4)-mulg融合タンパク質(ブタCD80/CD86に結合する)で45分間、4℃で染色した。FACS緩衝液で2回洗浄し、抗体染色細胞を、抗マウスAPCコンジュゲートポリクローナルIgG二次抗体を含有する100μLのFACS緩衝液中に再懸濁した。続いて4℃で30分間インキュベートした。FACS緩衝液を使用して細胞を2回洗浄した。すべての細胞を、200μLのFACS緩衝液に再懸濁させた。試料をNovacyteフローサイトメトリーで取得し、データをNovoExpressを使用して解析した。
分析手順は、NovoExpressフローサイトメトリー分析ソフトウェアに基づく。任意の同等のソフトウェアをデータ分析に使用することができる。使用されるソフトウェアに応じて、分析プレゼンテーションは若干異なる可能性がある。ゲートの名前は異なる場合があり、%の値はわずかに異なっている可能性がある。
図29に示すように、未処理のPAM細胞は、それぞれ99.98%、29.68%、及び2.28%のSLAクラスI、SLAクラスII DR、及びDQ分子発現をもたらす。これらの細胞は、4.81%のCD80/86+であった。IFN-γの存在下で24時間細胞を培養したところ、すべてのSLA分子発現が増加した(99.99% SLAクラスI+蛍光強度の中央値の増加、DR+42.27%、DQ+57.36%)及びCD80/86レベルが増加した(47.38%)。LPSを有するIFN-γ含有細胞は、IFN-γのみで処理した細胞と比較して、類似レベルのSLA分子及びCD80/86発現をもたらした。
PAM細胞をブタIFN-γで24時間処理し、共刺激分子CD80(B7-1)及びCD86(B7-2)に対して高い親和性を有する一次MAb及びフルオレセインコンジュゲート二次抗体及びAPCコンジュゲートCD152で染色した。IFN-γで処理すると、細胞は、非刺激PAM細胞と比較してSLA及びCD80/86共刺激分子発現を増加させた。非刺激細胞は、99.98%のSLAクラスI+、29.68%のDR+2.28DQ+及び4.81%のCD80/86+であったが、IFN-γ刺激細胞は、99.99%のSLAクラスI+、42.27%のDR+、57.36%のDQ+、47.38%のCD80/86+であった。LPSを有するIFN-γ含有細胞は、IFN-γのみで処理した細胞と比較して、類似レベルのSLA分子及びCD80/86発現をもたらした。
基底状態において、マクロファージは、低レベルのSLAクラスII及びCD80/86共刺激分子を発現する。24時間のIFN-γ及びIFN-γ-LPS処置は、SLAクラスII及びCD80/86共刺激分子ならびにSLAクラスI分子の発現を誘導する。延長したインキュベーションは、恐らくこれらの分子の発現をさらに増加させるであろう。
さらに、ヒトPBMC(末梢血単核細胞)、CD8及びCD4陽性T細胞をブタ肺胞マクロファージ(PAM)細胞と共培養したときの、それらの免疫増殖応答性を評価する研究を行った。ヒトドナーPBMCまたはそれらのCD4+T細胞を、未処理、IFN-y活性化及びKLH負荷PAM細胞と7日間共培養した。図30A及び図30Bに示すように、ドナー#11、#50、及び#57から単離した細胞をそれぞれ陽性及び陰性対照として使用して、一元同種及び自己MLR実験を行った。バックグラウンド対照を、マイトマイシンC(X)処理及び未処理のPAM細胞、ならびに各ヒトドナー細胞について行った。増殖応答は、ブロモデオキシウリジン(BrdU)ELISAアッセイを利用して決定される。6日目、BrdU追加が完了した。7日目に、サイトカイン(IFN-y及びIL-2)分析のために培地を収集し、増殖応答を決定した。細胞を、共培養の7日目に、200倍の倍率でオリンパスCK40顕微鏡下で観察した。
図31に示されるように、IFN-γの存在下でのPAM細胞の72時間の培養は、SLAクラスII DQ分子発現を2.55%から95.82%に増加させた。KLH負荷PAM細胞は、未処理細胞と同様のレベルのSLAクラスII DQ分子の発現をもたらした。すべての同種異系対照は、ベースライン値に対して陽性の増殖応答を有し、マイトマイシンC処理PBMC及びPAM細胞は、ベースライン値と比較して減少した増殖応答を有した。図32A及び図32Bに示すように、ヒトPBMC及びCD4+増殖応答は、PAM細胞による異種応答よりも高い同種異系応答をもたらした。3つの異なるヒトCD4+T細胞の増殖応答は、同様の異種応答を示し、PAM細胞SI(刺激指数)値は、15~18.08であった。増殖応答は、PBMCドナー#57からの異種培養で最も高かった(SIw/PAMX、PAM-IFNyX、KLHx=3.12、2.75、及び3.79)。
CRISPR-Cas9遺伝子組換えによる、複数の独立した単一可変ヒト化パイロットブタ細胞株を作成するための遺伝子編集スキーマ
遺伝的改変は、既知のゲノム編集手法を利用して行うことができ、こうした手法は、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、アデノ随伴ウイルス(AAV)介在性の遺伝子編集、及び規則的な間隔でクラスター化した反復回文配列Cas9(CRISPR-Cas9)などである。こうしたプログラム可能なヌクレアーゼは、DNA二本鎖切断(DSB)を標的位置に生成させることが可能であり、このDSBによって細胞の修復機構の上方制御が促進され、これによって非相同末端結合(NHEJ)のエラープローンプロセスまたは相同組換え修復(HDR)のいずれかが生じ、これらのうち、HDRを外来性のドナーDNAテンプレートの組み込みに使用する。CRISPR-Cas9は、遺伝物質の正確な修飾を行うためにも使用され得る。例えば、CRISPR-Cas9を介する遺伝的改変は、Kelton,W.et.al.,“Reprogramming MHC specificity by CRISPR-Cas9-assisted cassette exchange,”Nature,Scientific Reports,7:45775(2017)(「Kelton」)に記載の様式で実施することができ、当該文献の開示内容は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。したがって、本開示は、CRISPR-Cas9を使用することで、アレル全体(例えば、MHC、HLA、SLAなど)の迅速かつ無痕跡の交換を媒介して再プログラム化を行うことを含む。
本開示によれば、CRISPR-Cas9を使用することで、ブタ細胞中の特定の天然遺伝子座に位置するMHCアレル全体の迅速かつ無痕跡の交換が媒介される。2つのgRNAを用いてCas9によるマルチプレックス標的化を行うことで、MHCアレルの隣に一本鎖切断または二本鎖切断が導入され、テンプレートHLA/MHC配列(一本鎖DNAテンプレートまたは二本鎖DNAテンプレートとして提供される)での置き換えが可能になる。
いくつかの態様では、ドナー動物のMHCの多型タンパク質モチーフの発現は、当該技術分野で既知のノックアウト方法によってさらに修飾することができる。例えば、1つ以上の遺伝子をノックアウトすることは、非ヒト動物のゲノムから1つ以上の遺伝子を欠失させることを含み得る。ノックアウトすることは、非ヒト動物から遺伝子配列の全部または一部を除去することも含み得る。ノックアウトすることは、非ヒト動物のゲノム中の遺伝子のすべてまたは一部を1つ以上のヌクレオチドで置き換えることを含むことができることも企図される。1つ以上の遺伝子をノックアウトすることはまた、1つ以上の遺伝子における配列を置換し、それによって1つ以上の遺伝子の発現を妨害することを含むことができる。1つ以上の遺伝子をノックアウトすることはまた、天然ドナーブタのSLA/MHC遺伝子におけるフレームシフトまたはフレーム破壊を伴うことなく、1つ以上の遺伝子における配列を置換し、それによって、1つ以上の遺伝子の発現を妨害することを含むことができる。例えば、配列を置き換えることは、1つ以上の遺伝子の開始において終止コドンを生成することができ、これは非機能的な転写物またはタンパク質をもたらすことができる。例えば、終止コドンが1つ以上の遺伝子内に作成される場合、得られる転写及び/またはタンパク質は、破壊され、サイレンシングされ、非機能性にすることができる。
別の態様では、本発明は、野生型ブタのSLA-DRのエクソン領域における終止コドンのヌクレオチド置換による変化を利用して、SLA-DR、SLA-1、SLA-2の機能的発現を欠く細胞を作成することを含む、レシピエントによる天然細胞媒介性免疫応答(CD8+T細胞)の誘発を回避する。例えば、本発明はTAAを利用する。他の実施形態では、本発明は、TAGを利用する。他の実施形態では、本発明は、TGAを利用する。
一態様では、本発明は、野生型ブタの第2の同一の重複B2-ミクログロブリン遺伝子のエクソン領域における終止コドンの挿入または作成(ヌクレオチド置換による)を利用して、ブタにおけるB2-ミクログロブリンmRNA発現レベルを低下させる。B2-ミクログロブリンが優位な免疫原、具体的には非gal異種抗原であることが理解されるであろう。
一態様では、レシピエントのHLA/MHC遺伝子がシークエンシングされ、レシピエントのHLA/MHC遺伝子に基づいてテンプレートHLA/MHC配列が調製される。別の態様では、本開示のブタを遺伝的に再プログラム化するために、世界保健機関(WHO)データベースから得られる既知のヒトHLA/MHC遺伝子型が使用され得る。
CRISPR-Cas9プラスミドは、例えばポリメラーゼ連鎖反応を使用して調製され、レシピエントのHLA/MHC配列が、テンプレートとしてプラスミドにクローニングされる。ブタ細胞中のSLA/MHC遺伝子座のCRISPR切断部位が同定され、切断部位を標的とするgRNA配列が1つ以上のCRISPR-Cas9プラスミドにクローニングされる。次に、CRISPR-Cas9プラスミドがブタ細胞に投与され、ブタ細胞のMHC遺伝子座においてCRIPSR/Cas9による切断が生じる。
既知のヒトHLA/MHC配列またはレシピエントのシークエンシングされたHLA/MHC遺伝子と一致する1つ以上のテンプレートHLA/MHC配列を用いてブタ細胞中のSLA/MHC遺伝子座が正確に置き換えられる。SLA/MHC再プログラム化ステップの実施後にブタの細胞がシークエンシングされて、ブタ細胞中のSLA/MHC配列の再プログラム化が成功しているかどうかが決定される。HLA/MHC配列が再プログラム化されたブタから得られる1つ以上の細胞、組織、及び/または臓器がヒトレシピエントに移植される。
ドナーSLA/MHCをレシピエントHLA/MHCと一致するように改変すると、既知のヒト遺伝子型または特定のヒトレシピエントのMHC分子と同一または実質的に同一の特定のMHC分子が新しいブタ細胞にて発現するようになる。一態様では、本開示は、ブタのゲノムの特定SLA領域の特定部分のみに限って改変を施すことで、ブタの免疫プロファイルを有効に保つ一方で、ヒトレシピエントへの移植時の生物学的製品の免疫寛容性を、免疫抑制剤の使用が低減または回避され得るように下げることを含む。本開示の態様とは対照的に、先行技術分野の異種移植研究では、免疫抑制剤を使用して拒絶反応に抵抗する必要があった。一態様では、ブタゲノムは、HLA-A、HLA-B、及びDRに対応するブタ遺伝子を破壊、サイレンシングするか、非機能的発現を引き起こすため、ならびにHLA-C、HLA-E、HLA-F、及び/またはHLA-Gの置換により再プログラムするために、再プログラムされる。いくつかの態様では、ブタゲノムは、HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-F、DQ、及びDRに対応するノックアウトブタ遺伝子、ならびにノックインHLA-C、HLA-E、HLA-Gに対応するノックアウトブタ遺伝子に再プログラムされる。いくつかの態様では、ブタゲノムは、HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-F、DQ、及びDRに対応するノックアウトブタ遺伝子、ならびにノックインHLA-C、HLA-E、HLA-G、HLA-F、及びDQに対応するノックアウトブタ遺伝子に再プログラムされる。一態様では、SLA-1;SLA-6、SLA-7、SLA-8;SLA-MIC2;及びSLA-DQA;SLA-DQB1;SLA-DQB2がノックアウトされ、HLA-C;HLA-E;HLA-G;及びHLA-DQがノックインされるようにブタゲノムが再プログラム化される。ある特定の態様では、再プログラム化されたブタゲノムではHLA-C発現が低減される。ヒトの免疫系にとって不可視となるようにブタ細胞を再プログラム化することによって、再プログラム化が未実施であればドナーブタ細胞から発現するブタMHC分子に基づいて再プログラム化未実施時には生じたであろう免疫応答が、この再プログラム化によって最少化または除去されさえする。
ブタ細胞において細胞マーカーの様々な組み合わせを創出及び試験することで、様々な使用を目的とするヒト患者の体によって許容させるための生物学的に再プログラム化されたブタ細胞が調製される。こうした試験については、ATCC(登録商標)(3D4/21)から利用可能なブタ大動脈内皮細胞、線維芽細胞、または形質転換ブタマクロファージ細胞株が使用される。
標的遺伝子に対するガイドRNAを設計及び合成することによって、ノックアウトのみを行った細胞プール及びノックアウト+ノックインを行った細胞プールが生成される。各ガイドRNAは、CRISPR RNA(crRNA)及びトランス活性化RNA(tracrRNA)という2つの要素から構成される。これらの要素は、連結されてシングルガイドRNA(sgRNA)と呼ばれる連続分子を形成するか、またはアニーリングしてツーピースガイド(cr:tracrRNA)を形成し得る。
CRISPR要素(gRNA及びCas9)は、DNA形式、RNA形式、またはリボ核タンパク質(RNP)複合体形式で細胞に送達され得る。DNA形式は、gRNA配列及びCas9配列をプラスミドにクローニングすることを伴い、その後、このプラスミドが細胞に導入される。gRNA及び/またはCas9の永続的な発現が望まれる場合、レンチウイルスを使用して宿主細胞のゲノムにDNAが挿入され得る。ガイドRNAは、酵素的(インビトロ転写を介して)または合成的に生成され得る。合成RNAは、典型的には、IVT由来のRNAと比較して純度が高く、化学的に改変して分解抵抗性にすることができる。Cas9もRNAとして送達され得る。リボ核タンパク質(RNP)形式は、gRNA及びCas9タンパク質からなる。RNPは、事前に一緒に複合体化され、その後に細胞に導入される。この形式は、使用が容易であり、多くの細胞型において高度に有効であることが示されている。
ガイドRNAの設計及び生成後、いくつかの可能なトランスフェクション方法(リポフェクション、電気穿孔、nucleofection、またはマイクロインジェクションなど)のうちの1つによってCRISPR要素が細胞に導入される。細胞培養物へのガイドRNA及びCas9の導入後、これらのガイドRNA及びCas9によって細胞のいくつかの内部の標的部位にDSBが生成される。次に、この切断がNHEJ経路によって修復され、その際、当該プロセス中にヌクレオチドが挿入または欠失(インデル)される可能性がある。NHEJによる各染色体上の標的部位の修復は異なり得るため、各細胞は、異なるインデルセットまたはインデル組み合わせ及び非編集配列を有し得る。
細胞のノックインについては、ゲノム物質を挿入することで所望の配列が細胞ゲノムにノックインされ、この挿入は、例えば、相同組換え修復(HDR)を使用して行われる。
本明細書で提供される供給源動物のゲノムに対する破壊及び改変は、いくつかの方法によって実施できることがさらに理解されよう。こうした方法には、限定されないが、規則的な間隔でクラスター化した短鎖反復回文配列(「CRISPR」)を使用するものが含まれ、この方法を利用すると特定の目的に合うゲノムを有する動物を創出することができる。例えば、Niu et al.,“Inactivation of porcine endogenous retrovirus in pigs using CRISPR-Cas-9,”Science 357:1303-1307(22 September 2017)を参照のこと。そのようなゲノム改変には、限定されないが、本明細書に開示の任意の遺伝的修飾、及び/またはそのような供給源動物から得られる製品のバイオバーデン及び免疫原性を低減して免疫学的拒絶反応が最少化するように設計された任意の他の目的適合型ゲノム改変が含まれ得る。
CRISPR/CRISPR関連タンパク質(Cas)は、元々は微生物適応免疫系として知られていたものであり、最近では哺乳類遺伝子編集に適用されている。CRISPR/Cas系は、外来遺伝要素の侵入をDNA干渉またはRNA干渉を介して防ぐための細菌及び古細菌の適応免疫機構を基礎としている。哺乳類コドン最適化を経て、CRISPR/Casは、DNA/RNAの特定位置を正確に標的とすることに適用されており、哺乳類の細胞及び胚に高度に有効である。最も一般に使用され、集中的に特徴付けられたゲノム編集用CRISPR/Cas系は、Streptococcus pyogenesに由来するII型のCRISPR系であり、この系では、Cas9ヌクレアーゼ及び短いガイドRNA(gRNA)を組み合わせて使用して切断対象の特定のDNA配列が標的とされる。PAM配列(例えば、NGG)のすぐ5’側に位置する標的DNAに相補的な20ヌクレオチドのgRNAがCas9を標的DNAに導き、二本鎖DNAの切断を媒介することでDSBが形成される。したがって、CRISPR/Cas9を使用すれば、任意のN20-NGG部位に対する遺伝子ターゲッティングを達成できる。
したがって、本発明にも包含されるのは、ゲノムがヒトまたはヒト化MHC Iポリペプチド及び/またはβ2ミクログロブリンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む遺伝的に修飾された非ヒト動物であり、ポリペプチド(複数可)は、本明細書に記載のアミノ酸配列(複数可)の保存的アミノ酸置換を含む。
当業者は、本明細書に記載のヒトまたはヒト化MHC Iポリペプチド及び/またはβ2ミクログロブリンをコードする核酸残基に加えて、遺伝暗号の縮退に起因して、他の核酸が本発明のポリペプチド(複数可)をコードし得ることを理解するであろう。したがって、そのゲノム中に保存的アミノ酸置換を伴うMHC I及び/またはβ2ミクログロブリンポリペプチド(複数可)をコードするヌクレオチド配列を含む遺伝的に修飾された非ヒト動物に加えて、遺伝暗号の縮退に起因して本明細書に記載されるものと異なるヌクレオチド配列(複数可)を含む非ヒト動物も提供される。
追加的または代替的な手法では、本開示は、MHC-I(クラスB)分子の抑制作用及び共刺激作用を再プログラム化または活用することを含む。具体的には、本開示は、HLA遺伝子の一部に対応するドナー動物ゲノムの一部を「発見し、置き換える」プロセスを含み、このプロセスは、例えば、HLA-Gが過剰発現するように行われ、可能な場合、HLA-Eに対応する部分は保持し、過剰発現させ、及び/またはHLA-Fに対応する部分を「発見し、置き換える」ことが行われる。本明細書で使用される場合、「発見し、置き換える」という用語は、相同/類似/オルソロガスな保存された遺伝子領域の同定、ならびに遺伝子編集技術を通じて、1つ以上の切片を対応するヒト成分で置き換えることを含む。
別の態様は、HLA-A、-B、-C、-E、-F、及び-Gにおいて発現されるベータ-2ミクログロブリンタンパク質を発見し、置き換えることを含む。サイトカイン媒介性の補体を抑制またはその他の様式で免疫調節する相同的/類似的/オルソロガスな保存された細胞マーカーまたは表面タンパク質は、ドナー-レシピエント細胞界面での全体的な免疫寛容を増強すると想定される。
追加的または代替的な手法では、本発明は、レシピエントによって自然細胞介在性免疫応答が誘発されないようにするために、免疫ゲノム再プログラム化を利用してMHC-I(クラスA)要素を低減または除去する。別の態様では、HLA-A及びHLA-Bのエクソン領域に対応するドナー動物(例えば、ブタ)ゲノム内のエクソン領域は、ドナー動物上で破壊され、サイレンシングされ、またはそれ以外の場合、非機能的に発現される。別の態様では、HLA-A及びHLA-Bのエクソン領域に対応するドナー動物(例えば、ブタ)ゲノム中のエクソン領域が、ドナー動物のゲノムにおいて破壊、サイレンシングされるか、または非機能的に発現され、HLA-Cのエクソン領域に対応するドナー動物(例えば、ブタ)ゲノム中のエクソン領域が調節され得る、例えば、軽減される。一態様では、本開示は、供給源動物のオルソロガスなHLA-Cのサイレンシング、ノックアウト、または発現最少化(こうしたことは、そのような免疫ゲノム再プログラム化を行わない場合に想定されるそのようなものの発現程度と比較したときのものである)を行うことを含む。
さらに、MHC-Iタンパク質の各々のヘテロ二量体構造を含むベータ-2-ミクログロブリンタンパク質は、種特異的である。したがって、本開示の一実施形態では、それは再プログラムされる。その対応物とは対照的に、この普及している構築ブロックタンパク質をコードする遺伝子指令は、MHC遺伝子座に位置しない。したがって、本開示の一実施形態では、遺伝子組換えは、本明細書に記載されるそれぞれの標的に特異的な遺伝子組換えに加えて、遺伝子組換えを含む。
図33は、本開示によるヒト化ブタ細胞の概略図である。そこに示されるように、本開示は、特定のポリペプチドまたは糖タンパク質をコードするエクソンを再プログラムすること、特定のポリペプチドまたは糖タンパク質を再プログラム及び上方制御すること、及び核ゲノムを再プログラムして、特定のポリペプチドまたは糖タンパク質の非機能的発現を有することを含み、これらのすべてが本明細書に詳細に記載される。
ヒト化パイロットブタ細胞株の特徴付け及び免疫学に対する結果としての影響のインビトロ評価
遺伝的に修飾された細胞、例えば、遺伝的に修飾された動物由来の細胞、またはエクスビボで作製された細胞を分析し、選別することができる。ある場合には、遺伝的に修飾された細胞は、フローサイトメトリー、例えば、蛍光活性化細胞選別によって分析及び選別され得る。例えば、目的の遺伝子を発現する遺伝的に修飾された細胞は、その遺伝子によってコードされるポリペプチドを認識する標識(例えば、蛍光標識)に基づくフローサイトメトリーを使用して、他の細胞から検出及び精製することができる。本出願では、未修飾PAM細胞上のSLA-1、SLA-2、SLA-3、SLA-6、SLA-7、SLA-8、SLA-DR、及びSLA-DQの表面発現を、それらの糖タンパク質上のエピトープを対象とする標識抗体を使用して確立する。特定の遺伝子ノックアウト(例えばSLA-1、SLA-2及びSLA-DR)の場合、フローサイトメトリーによる分析を使用して、インターフェロンガンマで細胞をインキュベートした後でも、これらの糖タンパク質の発現の欠如を実証する。SLA-3、SLA-6、SLA-7、SLA-8及びSLA-DQの遺伝子は、細胞表面上に発現される糖タンパク質がそれぞれHLA-C、HLA-E、HLA-F、HLA-G及びHLA-DQ糖タンパク質を反映するように修飾される。したがって、HLAエピトープに特異的な抗体の異なるセットを使用して、修飾遺伝子によってコードされる糖タンパク質の発現を検出し、SLA関連糖タンパク質を対象とする抗体は、修飾PAM細胞の細胞表面に結合しない。
表面糖鎖エピトープをノックアウトすると、糖部分を発現しない細胞株が得られるため、ヒト血清中に見られる天然の事前生成抗体による結合が生じない。このことは、フローサイトメトリー、ならびにヒト血清及び標識型のヤギ抗ヒトIgG抗体もしくはヤギ抗ヒトIgM抗体、または糖に対して特異的な抗体、または標識された糖特異的アイソレクチンを使用して検出される。こうした抗体(アイソレクチン)が最終的な細胞株に結合しないという結果が得られる。遺伝的改変を含まない元の細胞株(WT)が陽性対照とされる。さらに、分子解析によって、そうした遺伝子の変化が実証される。
細胞のノックインについては、ゲノム物質を挿入することで所望の配列が細胞ゲノムにノックインされ、この挿入は、例えば、相同組換え修復(HDR)を使用して行われる。クラスII分子の発現を最適化するために、細胞がブタインターフェロンガンマ(IFN-γ)中で最大72時間インキュベートされ、このIFN-γによって発現が刺激される。次に、標的特異的抗体を使用してフローサイトメトリーによって発現が測定される。フローサイトメトリーでは、抗HLA-C抗体、抗HLA-E抗体、抗HLA-G抗体、もしくは他の抗HLA抗体、またはパン抗HLAクラスI抗体もしくはパン抗HLAクラスII抗体が使用され得る。本開示によれば、ノックイン後に細胞表面HLA発現が確認される。
修飾されたブタ細胞の免疫応答は、混合リンパ球反応(MLR)研究を通じて評価される。応答細胞は、PBMC、CD4+T細胞、CD8+T細胞、またはT細胞の他の亜集団のいずれかであり得る。PBMCは、レシピエント内に存在するすべての免疫細胞を表し、測定された応答は、刺激細胞、例えば、未修飾PAM細胞と修飾PAM細胞の比較、への免疫応答をマウントする応答者の能力を反映する。あるいは、PAECまたは線維芽細胞が使用され得る。測定された増殖は、それぞれMHCクラスII及びIと相互作用するCD4+及びCD8+T細胞の両方からなる。CD4+T細胞のみを非修飾または修飾PAM細胞に対して使用して、MHCクラスII糖タンパク質、DR及びDQに対する応答を測定する。例えば、PAM細胞においてSLA DRがノックアウトされるMLRにおいて、CD4+T細胞増殖応答が減少する;またはSLA-DQ遺伝子が、「レシピエント」[応答者]からの配列を使用することによって修飾されるとき、増殖応答が減少するが、これは、この場合、応答者がDQ糖タンパク質を自己として認識するのに対し、DRノックアウトにおいては、DRが存在しなかったため、シグナルを生成することができなかったためである。
応答者CD8+T細胞を使用して、MHCクラスI糖タンパク質、SLA-1及びSLA-2に対する免疫応答を評価する。1×10の精製したヒトCD8+T細胞(A)またはヒトPBMC(B)を、4倍ノックアウトブタ10261または野生型ブタに由来する増加した数の照射(30Gy)ブタPBMCで刺激した。増殖を、5日+16時間後に、3H-チミジン組み込みにより測定した。データは、単一の実験において1つのヒト血液ドナーからの細胞で得られた三連培養物の平均CPM±SEMを表す。同様の応答パターンは、第2の血液ドナーからの応答細胞及び4倍ノックアウトピッグ10262からの刺激用細胞を使用して観察された。4倍ノックアウトブタPBMCで刺激した後、ヒトCD8+T細胞の増殖が減少した。(Fischer,et al.,Viable pigs after simultaneous inactivation of porcine MHC Class I and three xenoreactive antigen genes GGTA1,CMAH and B4GALNT2,Xenotransplantation,2019)。SLA-1及びSLA-2を発現しない修飾ノックアウトPAM細胞は、CD8+T細胞応答を生成しない。これは、PBMCを応答者として用いた応答とは対照的である。図34を参照されたい。
本開示の生物学的製品から得られる細胞を抗HLA抗体が認識するかどうかを決定するためには、補体依存性細胞傷害(CDC)アッセイが実施され得る。事前に特徴付けられた抗HLAを含む特異的ヒト血漿(または対照血漿)を添加することによって調製されたアッセイプレートが使用され得る。血漿を、カルシウム及びマグネシウムを含むHBSS培地中で1:50から開始して1:36450まで連続的に希釈し、4℃で30分間修飾または非修飾PAM細胞とともにインキュベートし、続いて37℃で1時間、新たに再構築されたベビーウサギ補体とともにインキュベートする。次に、細胞をフルオレセインジアセテート(FDA)及びヨウ化プロピジウム(PI)で15分間染色し、フローサイトメトリーによって分析した。各アッセイについて適切な補償対照を行った。細胞を取得し、ACEA NovoCyte Flow Cytometerで分析した。PAM細胞をインターフェロンガンマで処理して、MHC分子の表面発現を増加させることもできる。
細胞集団を、以下の条件について決定した:
a.死んだ細胞:PI+、FDA-
b.損傷細胞:PI+、FDA+
c.生細胞:PI-、FDA+
おおよその計算を行って、血漿の各濃度(希釈)についての細胞毒性%を決定し、その結果をPrismにプロットした。細胞傷害性曲線に基づいて、50%殺傷に必要な希釈(IC50)を決定した。これは、図36A及び図36BにおけるWTまたはGalTKOブタPBMCに対するヒト血漿を使用して例示され、ここでは、糖タンパク質上のα1,3-ガラクトースを欠く細胞に対して細胞傷害性の低減が同定された。
非修飾及び修飾PAM細胞に対するNK細胞傷害性であって、修飾PAM細胞では、SLA3、SLA6、SLA7、及びSLA8についての遺伝子が、細胞表面上で発現される糖タンパク質が、それぞれHLA C、HLA E、HLA F、及びHLA G糖タンパク質を反映するように修飾される。新たに単離したIL-2活性化ヒトNK細胞の細胞傷害活性を、無血清AIM-V培地中の4時間の51Cr放出アッセイで試験した。標識した非修飾及び修飾PAM細胞を、40:1~5:1の範囲の4つのE:T比のNK細胞の連続2倍希釈で3重で培養する。37℃で4時間インキュベーションした後、アッセイを停止し、51Cr放出をガンマカウンターで分析し、特異的溶解のパーセンテージを計算した。特定の遺伝子マッチした「レシピエント」由来のNK細胞は、未修飾PAM細胞と比較して、修飾PAM細胞の死滅が減少するであろう。NK細胞に対するトランスフェクトPAEC細胞におけるHLA Eによる保護を図34に示す。
ブタリンパ芽球様細胞上でのHLA E発現は、異種ヒトNK細胞傷害性を阻害する。HLA E/A2またはHLA E/B7でそれぞれトランスフェクトされた13271-E/A2または13271-E/B7(塗りつぶしダイヤモンド)、または未トランスフェクト13271細胞(中抜き三角形)に対する、2つのドナー、KH及びMSのNK細胞傷害性。クラスII分子の発現を最適化するために、細胞がブタインターフェロンガンマ(IFN-γ)中で72時間インキュベートされ、このIFN-γによって発現が刺激される。次に、標的特異的抗体を使用してフローサイトメトリーによって発現が測定される。フローサイトメトリーでは、抗HLA-C抗体、抗HLA-E抗体、抗HLA-G抗体、もしくは他の抗HLA抗体、またはパン抗HLAクラスI抗体もしくはパン抗HLAクラスII抗体が使用され得る。本開示によれば、ノックイン後に細胞表面HLA発現が確認される。
複数のCRISPRCas9遺伝子組換えスキーマの直接的な結果としての、相対的なヒト化表現型ならびにCD8+、CD4+、及びナチュラルキラー細胞免疫反応性の結果的な低減を達成するための、単一パイロットブタ細胞株における複数の同時遺伝的修飾。
いくつかの態様では、図33に列挙される表に列挙される修飾を挿入するための、ブタ細胞株における遺伝子修飾。いくつかの態様では、図33に列挙される遺伝子組換えに加えて、3つの優勢なブタ細胞表面グリカン(アルファ-Gal、Neu5Gc、及びSda)は、超急性拒絶現象及び抗体媒介性免疫経路の有害な活性化、すなわち補体カスケードの活性化を低減するために発現されない。このステップにより、非MHC細胞マーカーに関して同種異系「様」細胞の作成が大幅に達成される。
遺伝的に修飾された細胞、例えば、遺伝的に修飾された動物由来の細胞、またはエクスビボで作製された細胞を分析し、選別する。ある場合には、遺伝的に修飾された細胞は、フローサイトメトリー、例えば、蛍光活性化細胞選別によって分析及び選別され得る。例えば、目的の遺伝子を発現する遺伝的に修飾された細胞は、その遺伝子によってコードされるポリペプチドを認識する標識(例えば、蛍光標識)に基づくフローサイトメトリーを使用して、他の細胞から検出及び精製することができる。目的の遺伝子は、数百対ほどの小さなcDNA塩基であってもよく、または空間及び時間において制御された発現を得るために必要なエクソン-イントロンコーディング配列及び調節配列を含む遺伝子座の約100,000対もの大きな塩基であってもよい。好ましくは、組換えDNAセグメントのサイズは、25kb~500kb超である。いずれにせよ、組換えDNAセグメントは、25kbより小さく、500kbより長くてもよい。
既知のヒトMHC遺伝子型または本明細書に具体的に記載されるレシピエントのMHCをドナーブタの細胞、組織、及び臓器が発現するようにすることを、アルファ-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼ、Neu5Gc、及びβ1,4-N-アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ(B4GALNT2)をドナーブタ細胞から除去すること(例えば、「シングルノックアウト」、「ダブルノックアウト」、または「トリプルノックアウト」)と組み合わせると、本開示の厳密なSLA/MHC再プログラム化が行われていないトリプルノックアウトブタと比較して免疫学的拒絶反応が低減された細胞を有するブタが得られることがさらに理解されよう。
修飾されたブタ細胞の免疫応答は、混合リンパ球反応(MLR)研究を通じて評価される。MHC Iaポリペプチドの修飾または非発現の免疫応答への影響は、CD8+T細胞の免疫応答を通じて測定される。MHC Ibポリペプチドの修飾の免疫応答への影響は、NK細胞の免疫応答を通じて測定される。MHC IIポリペプチドの修飾または非発現の免疫応答への影響は、CD4+T細胞の免疫応答を通じて測定される。本明細書におけるMLR研究は、部位特異的変異原置換の有効性を測定するだけでなく、測定値が追加の部位特異的変異原置換が行われるにつれて反復的に測定されるため、個々の修飾の影響を個々に及び全体として評価及び識別する。
細胞のノックインについては、ゲノム物質を挿入することで所望の配列が細胞ゲノムにノックインされ、この挿入は、例えば、相同組換え修復(HDR)を使用して行われる。クラスII分子の発現を最適化するために、細胞がブタインターフェロンガンマ(IFN-γ)中で72時間インキュベートされ、このIFN-γによって発現が刺激される。次に、標的特異的抗体を使用してフローサイトメトリーによって発現が測定される。フローサイトメトリーでは、抗HLA-C抗体、抗HLA-E抗体、抗HLA-G抗体、もしくは他の抗HLA抗体、またはパン抗HLAクラスI抗体もしくはパン抗HLAクラスII抗体が使用され得る。本開示によれば、ノックイン後に細胞表面HLA発現が確認される。
本開示の生物学的製品から得られる細胞を抗HLA抗体が認識するかどうかを決定するためには、補体依存性細胞傷害(CDC)アッセイが実施され得る。事前に特徴付けられた抗HLAを含む特異的ヒト血清(または対照血清)を添加することによって調製されたアッセイプレートが使用され得る。IFN-γで処理されたドナー細胞が再浮遊され、アッセイプレートに添加され、補体の供給源(例えば、ウサギ血清)とともにインキュベートされる。室温でのインキュベートを少なくとも1時間行った後、アクリジンオレンジ/エチジウムブロマイド溶液が添加される。蛍光顕微鏡で視覚化された死細胞及び生存細胞の数を数え、抗HLA抗体の非存在下で得られる自発性溶解値を差し引き、尺度を用いてスコア付けすることによって細胞傷害性パーセントが決定される。
表面糖鎖をノックアウトまたは代替的にサイレンシングすると、糖部分を発現しない細胞株が得られるため、ヒト血清中に見られる天然の事前生成抗体による結合が生じない。このことは、フローサイトメトリー、ならびにヒト血清及び標識型のヤギ抗ヒトIgG抗体もしくはヤギ抗ヒトIgM抗体、または糖に対して特異的な抗体を使用して検出される。こうした抗体が最終的な細胞株に結合しないという結果が得られる。遺伝的改変を含まない元の細胞株(WT)が陽性対照とされる。さらに、分子解析によって、そうした遺伝子の変化が実証される。
CRISPR技術を使用するSLAクラスI分子の発現のノックアウトまたは代替的なサイレンシングでは、得られる細胞株は、上記の糖部分ならびにSLAクラスIの発現を欠く。フローサイトメトリー及び分子遺伝子の分析が実施されることで、表面発現が存在せず、遺伝子レベルで変化が生じたことが実証される。ヒトPBMC及び照射細胞株を用いる混合リンパ球反応(MLR)を使用して細胞反応性が評価される。WT株と比較して、主にCD8+T細胞においてT細胞増殖の減少がある。
SLAクラスII分子、DR及びDQの発現に対する反応性もまた、最小限に抑えられるか、または排除される(ブタDPは存在しない)。分子レベル、細胞表面発現、及びヒトPBMCとのインビトロでの反応性について分析が実施される。得られる細胞株に対する反応性には顕著な下方調節が見られる。
細胞反応性を試験するには、すべての細胞は、ブタIFN-γとともに72時間インキュベートされた後、ヒトCD4+T細胞がブタ細胞株に添加され、7日間培養される。利用可能なリソースに応じて活性化/増殖の形態が判読される。
DQに特異的な応答を観察するには、細胞応答が、ヒト抗原提示細胞(APC)によって提示されるブタ抗原の結果とならないように、APCが培養物に存在しないようにされる。
移植のための細胞、組織、及び臓器のヒト化された、「オーダーメイドされた」、指定病原体を含まない、(非ヒト)ドナーの作成
他の研究者らは、ホモ接合性トランスジェニックブタを開発しようと試みたが、これは、遅いプロセスであり、胎児線維芽細胞における相同組換え、続いて体細胞核移植(SCNT)、次いでヘテロ接合性トランスジェニック動物の繁殖を使用してホモ接合性トランスジェニックブタを得るという伝統的な方法を使用して、3年は必要となる。異種移植のためのそれらのトランスジェニックブタの開発の試みは、多能性幹細胞の欠如によって妨げられており、代わりに、遺伝子操作が行われた細胞として胎児の線維芽細胞に依存する。例えば、α(1,3)ガラクトシルトランスフェラーゼ(GTKO)の任意の機能的発現を欠く最初の生きたブタの産生は、2000年に初めて報告された。そのような先行の試みとは対照的に、本開示は、本明細書に開示されるような非トランスジェニックな再プログラムされたブタを作製するためのより速くかつ根本的に異なるプロセスを提供する。いくつかの態様では、ブタ胎児線維芽細胞は、遺伝子編集を使用して、例えば、正確な再プログラムのためにCRISPR/Casを使用し、遺伝子修飾されたブタ胎児線維芽細胞の核をブタ脱核卵母細胞に移入して、胚を生成し、d)その胚を代理ブタに移入し、移入された胚を、代理ブタ内で遺伝的に修飾されたブタに成長させることによって、再プログラムされる。
試験結果が確認されると、遺伝的に再プログラム化されたブタの交配繁殖が行われ、その結果、上記のアッセイから決定される望ましいヒト細胞改変のうちの1つを各集団が有するいくつかのブタ集団の交配繁殖が行われる。完全に発育後にブタの細胞活性が試験されることで、異種移植後にブタの細胞及び組織の拒絶反応を回避するように所望の形質をブタが発現するかどうかが決定される。その後、望ましいヒト細胞改変のうちの複数を有するようにさらに遺伝的に再プログラム化されたブタの交配繁殖が行われることで、異種移植後にヒト患者の体によって拒絶されることのない細胞及び組織を発現するブタが得られる。
ブタからの誘導多能性幹細胞(iPSC)の生成は、胎児線維芽細胞からの初代細胞の使用を超える機会を提供する。iPSCがほぼ無制限に増殖する能力は、一次体細胞が老化する前に受けることができる細胞分裂の数が限定的であることと対照的であり、恐らく、iPSCは、核移入の前に、いくつかの遺伝子、特に遺伝子ノックアウト及びノックインの指向性の変化に対応するために必要な複数の選択ステップに耐えうることを意味する。iPSCの体細胞にまさる別の利点は、クローニング効率が分化状態及び関連するエピジェネティック状態と逆相関するべきであることが予測されていることである。本開示において提示されるPAM細胞は、形質転換細胞株であるが、遺伝子工学的スキーマは、ブタiPSCに移入することができる。次いで、特異的に遺伝的に修飾されたiPSC株は、体細胞核移動(SCNT)のために利用され、遺伝子修飾されたブタ胎児線維芽細胞の核をブタ脱核卵母細胞に移入して、胚を生成し、その胚を代理ブタに移入し、移入された胚を、代理ブタ内で遺伝的に修飾されたブタに成長させることによって、再プログラムされる。これは、移入された核が特定のゲノムを含有するため、子ブタはホモ接合の子孫を得るために繁殖を経る必要がないという利点がある。ブタの遺伝子型及び表現型は、iPSCと同一である。
遺伝子修飾されたiPSCの特定の集団は、特定の細胞株として凍結保存され、その遺伝的背景に必要なブタの開発のために必要に応じて使用され得る。解凍されたiPSCを培養し、核を脱核卵母細胞に移し、代理ブタへの移植のための胚盤胞/胚を生成する。これにより、患者特有の組織、臓器、または細胞移植に必要なブタを産生するための遺伝的に修飾されたiPSCの生存可能なバンクが作成される。
換言すれば、この満たされていない臨床ニーズに対するかつて/以前の手法は、「万人に有効な(one-size fits all)」古典的な医学的定説に明確に従っている。この限られたアプローチに従う代わりに、本発明者らは、この狭窄した視野を積極的に打ち砕き、現在の技術的進歩及び基本原理を原動力として利用して、臨床転帰尺度が劇的に改善する「患者特異的」解決策を達成する能力を実利的に実証する。前者のことを、本発明者らは「下流」手法と称し、この手法では、次々に生じる自然免疫プロセスのすべてに対処することに取り組まなくてはならない。後者(本発明者らの手法)のことを、本発明者らは、「上流」手法と楽観的に命名し、この手法は、満たされない科学的労力の集大成が調和のとれた橋渡し的成果となったものである。
別の態様では、本出願に記載の遺伝的に修飾された動物を作製する方法であって、a)MHC I特異的エンハンセオソームの構成要素、MHC I結合ペプチドのトランスポーター、及び/またはC3のうちの1つ以上の発現が低下した細胞を得ることと、b)細胞から胚を生成することと、c)胚を遺伝的に修飾した動物内で増殖させることと、を含む方法が本明細書で開示される。ある場合には、細胞は、接合体である。
ある特定の態様では、HLA/MHC配列が再プログラム化されたブタは、少なくとも一世代または少なくとも二世代にわたって、交配繁殖されてから、異種移植において使用される生存組織、生存臓器、及び/または生存細胞の供給源として使用される。ある特定の態様では、CRISPR/Cas9要素は、PERV活性を担う遺伝子(例えば、pol遺伝子)を不活化するためにも利用され、それによって、ブタドナーからPERVが同時に完全除去され得る。
ある特定の態様では、本開示は、SLAが存在せず、HLAを発現する生物学的に再プログラム化されたブタの胚形成及び生児出生を含む。ある特定の態様では、本開示は、SLAが存在せず、HLAを発現する生物学的に再プログラム化されたブタを交配繁殖させて、SLAが存在せず、HLAを発現する後代を創出することを含む。ある特定の態様では、ブタ接合体への細胞質内マイクロインジェクションによってCRISPR/Cas9要素がブタ接合体に注入される。ある特定の態様では、CRISPR/Cas9要素がブタに注入された後、CRISPR/Cas9で遺伝的に改変された当該ブタの選択的交配繁殖が行われる。ある特定の態様では、CRISPR/Cas9要素がドナーブタに注入された後、当該ブタから細胞、組織、接合体、及び/または臓器が収集される。ある特定の態様では、CRISPR/Cas9要素は、遺伝子編集の制御に必要な要素をすべて含み、こうした要素には、米国特許第9,834,791号(Zhang)に記載の自己不活化に利用される制御性gRNA分子が含まれ、当該文献は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
試験結果が確認されると、遺伝的に再プログラム化されたブタの交配繁殖が行われ、その結果、上記のアッセイから決定される望ましいヒト細胞改変のうちの1つを各集団が有するいくつかのブタ集団の交配繁殖が行われる。完全に発育後にブタの細胞活性が試験されることで、異種移植後にブタの細胞及び組織の拒絶反応を回避するように所望の形質をブタが発現するかどうかが決定される。その後、望ましいヒト細胞改変のうちの複数を有するようにさらに遺伝的に再プログラム化されたブタの交配繁殖が行われることで、異種移植後にヒト患者の体によって拒絶されることのない細胞及び組織を発現するブタが得られる。
上記のプロトコールまたはその同様のバリアントはいずれも、医薬製品と関連する様々な文書に記載され得る。こうした文書には、限定されないが、プロトコール、統計解析計画書、治験薬概要書、臨床指針、メディケーションガイド、リスク評価及びメディケーションプログラム、処方情報、ならびに医薬製品と関連し得る他の文書が含まれ得る。そのような文書は、有益となり得るか、または規制当局によって示されるように、細胞、組織、試薬、デバイス、及び/または遺伝物質とともにキットとして物理的に包装され得ることが明確に企図される。
別の態様では、本出願に記載の遺伝的に修飾された動物を作製する方法であって、a)MHC I特異的エンハンセオソームの構成要素、MHC I結合ペプチドのトランスポーター、及び/またはC3のうちの1つ以上の発現が低下した細胞を得ることと、b)細胞から胚を生成することと、c)胚を遺伝的に修飾した動物内で増殖させることと、を含む方法が本明細書で開示される。ある場合には、細胞は、接合体である。
これらのブタの各々から採取した筋肉及び皮膚組織試料を解剖し、線維芽細胞に成長させるために培養した。次に、細胞を回収し、体細胞核移動(SCNT)に使用して、クローンを作製した。30日目に複数の胎児(最大8体)を回収した。胎児を別々に解剖し、150mmの皿にプレートして、胎児線維芽細胞に成長させた。培養全体を通して、胎児細胞株を別々に維持し、各チューブまたは培養容器上に胎児番号で標識した。コンフルエントな場合、細胞を回収し、液体窒素凍結保存のために10%のDMSOを含むFBS中で約100万細胞/mLで凍結した。
別の実施例から追加された:ある特定の態様では、養母に移される前に、ブタの卵母細胞、卵子、接合体、または未分化胚芽細胞にCRISPR/Cas9要素が注入される。
ヒト化された、「オーダーメイドされた」、指摘病原体を含まない、(非ヒト)ドナーからの移植のための細胞、組織、及び臓器の、個別化された、免疫寛容性である細胞、組織、及び臓器ドナーの作成、調達。
供給源動物施設(「SAF」)
図37に関して、閉鎖コロニー(指定の病原体を含まない(「DPF」)閉鎖コロニー(「DPF閉鎖コロニー」)102を含む)ブタを収容、繁殖、維持、管理、及び利用するために使用可能な障壁付き供給源動物所在地(限定されないが、供給源動物施設(「SAF」)100を含む)が示される。本明細書に含まれるように、SAFは、陽圧を有し、特定の隔離障壁条件の下で生物学的封じ込め特徴が有効化される。
本明細書に記載のように、DPF閉鎖コロニー102は、ヒトへの異種移植及び他の治療において使用するための様々な生物学的製品を収集するために維持及び繁殖される供給源動物から構成され、そのような製品は、バイオバーデンが低減されており、異種移植及び他の治療手順から生じる免疫原性を低減するものである。いくつかの態様では、本開示の異種移植製品の免疫原性は、従来のGal-Tノックアウトブタから調製される異種移植製品、従来のトリプルノックアウトブタから調製される異種移植製品、トランスジェニックブタから調製される異種移植製品、野生型動物から調製される異種移植製品、及び/または同種移植片と比較して低い。例えば、実施例1及び実施例2に示されるように、本開示に従って調製した生物学的製品は、シングルノックアウトブタをドナー動物として使用すると、Neu5Gc及びブタB4GALNT2が存在するにもかかわらず、本開示に従って調製した生物学的製品は、同種移植片と比較して免疫原性が低く、血管新生を誘導し、試験期間全体を通じて拒絶反応に抵抗性であったという点において、予想外に高い臨床的利点を与えた。
本明細書にさらに記載されるように、SAF100及びその付属区域(例えば、部屋、特別室、または他の区域)のそれぞれを利用することで、生物学的製品が収集及び/または加工される供給源動物を収容及び維持することができる。SAF100及びその区域は、収集及び/または加工される生物学的製品の汚染、ならびにそのような製品の間の交差汚染が生じる可能性が最小化及び排除されるように設計される。
SAF100内では、いくつかの態様では、利用される動物区域が換気される。例えば、動物区域は、建物の天井から取り入れた新鮮な空気を高性能微粒子(HEPA)フィルターに通して得られた空気で換気されることで、例えば、時間当たり少なくとも10~15倍の空気の入れ替えが行われる。さらに、異種移植製剤加工特別室を含めて、SAF部屋では、1つ以上の層流フード(例えば、Class II Type A2 Laminar Airflow Biosafety Cabinets)が利用されて追加換気が得られることで、交差汚染が最小化または排除される。
いくつかの態様では、利用される区域は、温度も制御及び監視される。例えば、区域は、加温及び冷却が行われて一定範囲内に温度が維持され、こうした範囲は、例えば、実験動物の管理及び使用のための指針(Guide for the Care and Use of Laboratory Animals)によって定められるものである。利用される動物を保持する部屋は、警報機の取り付及び温度の高低の中央での監視も行われ、温度が必要温度を超えるとスタッフが即座に気付くようにされる。
いくつかの態様では、SAF100では、複数のレベルで供給源動物の封じ込めが行われる。例えば、供給源動物の封じ込めは、ステンレス鋼の掛け金によって安全性が担保された囲い及びケージからなる一次レベルの封じ込めによって行われる。二次レベルの封じ込めに関して、機能的に設計された区域(例えば、部屋、特別室、または他の区域)は、掛け金を備えた内部ドア、及び廊下へのアクセスがカードで制御される準備室を有し得る。三次レベルの封じ込めは、外に設置される外周フェンスを含み得る。
SAF全体は、単一の建物内に位置する。主要な入口は、プログラム可能な識別(ID)カードを介して単一のドアを通過するものである。他の外部ドアはすべて、警報機付きであり、鍵がかかったままの状態であり、非常時にのみ使用するためのものである。
セキュリティーもまた、SAF100のセキュリティーを一般に確保し、外部から汚染物質がSAF100に入り、供給源動物に到達するリスクが最少化されるようにSAF100に立ち入る個人を制御するための考慮事項である。したがって、一態様では、SAF100への主要な入口は、プログラム可能な識別(ID)カード118を介して単一のドア116を通過するものである。他の外部ドア120はすべて、警報機付きであり、鍵がかかったままの状態であり、非常時にのみ使用するためのものである。
本明細書に開示のSAF100及びその特徴は、例として示されるものであることが理解されよう。また、様々な特徴を有する他の施設を利用して方法を実施し、本明細書に開示の製品を生産することもできることがさらに理解されよう。
いくつかの態様では、SAF100動物プログラムは、認可及び/または認定され、経験豊富な専門スタッフのチームによって監督、評価、及び運用される。例えば、プログラムは、USDA Animal and Plant Health Inspection Service(認可された動物研究施設として)、National Institute of Health(NIH)Office of Laboratory Animal Welfare(OLAW)(公共の健康及び安全(Public Health and Safety)(PHS)規制の遵守確認が行われる)、Association for Assessment and Accreditation of Laboratory Animal Care(AAALAC)(担当獣医師の指示の下でSAFに収容された供給源動物の獣医学的管理に関して)、ならびに他の連邦規制当局、州規制当局、及び地方規制当局によって登録及び/または認定される。
いくつかの態様では、供給源動物の健康を確保するために、SAF職員及び供給源動物の管理人は、Animal Welfare Act(7 U.S.C.2131以降)に従って適切なInstitutional Animal Care and Use Committeeによって認可され、AAALACによって認定され、Guide for the Care and Use of Laboratory Animalsにおいて示される基準を遵守する動物飼育、組織収集、及び動物屠殺の手順を忠実に守る。
いくつかの態様では、管理人は、本発明に従って扱われる供給源動物の取り扱い及び管理において広い訓練及び経験を有する。例えば、各管理人は、こうした供給源動物の取り扱い及び管理を規定する標準的作業手順を対象とする文書化された訓練プログラムを受け、毎日の健康評価を実施し、必要な任意の動物にも迅速な管理を確実に行き届ける技能を身に付けることになる。さらに、管理人は、本明細書に記載の隔離区域(例えば、部屋、特別室、または他の区域)に立ち入る前の手洗い手順及び更衣手順の訓練を受け、さらに医学的監視プログラムの下に入ることで、スタッフの健康及び供給源動物の健康を確保し得る。
SAFに対する汚染リスクを最少化及び排除するために、SAFに立ち入る職員または訪問者はいずれも、任意の封じ込め区域に立ち入る前にも、職員保護装備を着用するか、または施設専用の衣服及び履物への変更を行う。動物区域への立ち入りを希望する訪問者は、訪問前の少なくとも24時間は、生きたブタと接触を一切行ってはならない、または立ち入り前に施設においてシャワーを浴びなくてはならない。
本明細書に示される手法及び手順は、SAF100内の供給源動物に汚染が及ばないことをどのように確保するかに関する例であることが理解されよう。供給源動物のための環境が指定の病原体を含まないようにするには、数多くの手法を利用できることもさらに理解されよう。
供給源動物
いくつかの態様では、本明細書に記載のように、ブタを供給源動物として利用できる。別段の指定がない限り、本明細書で使用される「ブタ(swine)」、「ブタ(pig)」、及び「ブタ(porcine)」という用語は、性別、サイズ、または品種にかかわらず、同じ種類の動物を指す一般用語である。本発明に従って任意の数の供給源動物が利用され得ることが理解されよう。こうした供給源動物には、限定されないが、ブタ、非ヒト霊長類、サル、ヒツジ、ヤギ、マウス、ウシ、シカ、ウマ、イヌ、ネコ、ラット、ラバ、及び任意の他の哺乳類が含まれる。供給源動物には、任意の他の動物(限定されないが、鳥類、魚類、爬虫類、及び両生類を含む)も含まれ得る。
ブタを含む、本発明の下で供給源動物として機能する任意の動物は、そのようなブタがどのように構成、操作、または他の方法で改変、及び/または維持され得るかにかかわらず、本開示に従って作成、繁殖、増殖、及び/または維持されて、臨床的な異種移植において使用される、またはそのための調製または追求において使用される、動物及び結果として生じる生物学的製品を作成及び維持し得ることがさらに理解されるであろう。
例えば、本開示は、特定の遺伝的特徴、繁殖特徴、及び病原体を含まないプロファイルの特定の組み合わせを有する非ヒト動物、例えば、ブタを含む。かかる動物は、上記及び本明細書に記載のように、1つ以上の細胞外表面糖鎖エピトープを発現しないように、例えば、アルファ-1,3ガラクトシルトランスフェラーゼ、シチジンモノリン酸-N-アセチルノイラミン酸ヒドロキシラーゼ(CMAH)、及びβ1,4-N-アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼをコードする遺伝子が、それらの遺伝子によりコードされている表面糖鎖エピトープが発現しないように破壊されている、生物学的に再プログラムされたゲノムを有するか、ならびに上記及び本明細書に記載のように、MHC-IまたはMHC-IIを発現するように、ならびにPD-1及びCTLA4を調節するように、ブタのSLAに対する他の修飾を有する、免疫遺伝学的に再プログラムされたブタを含んでもよい。本明細書に記載のプロセスに起因して、ブタは、少なくとも以下:
(i)糞便物質中のAscaris種、cryptosporidium種、Echinococcus、Strongyloids sterocolis、及びToxoplasma gondii、
(ii)Leptospira種、Mycoplasma hyopneumoniae、ブタ生殖器呼吸器症候群ウイルス(PRRSV)、仮性狂犬病、伝染性胃腸炎ウイルス(TGE)/ブタ呼吸器コロナウイルス、及び抗体力価でのToxoplasma Gondii、
(iii)ブタインフルエンザ、
(iv)細菌培養によって決定される以下の細菌病原体:Bordetella bronchisceptica、コアグラーゼ陽性ブドウ球菌、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌、家畜関連メチシリン耐性Staphylococcus aureus(LA MRSA)、Microphyton、及びTrichophyton spp.、
(v)ブタサイトメガロウイルス、ならびに
(vi)Brucella suisの人獣共通病原体を含まず、
ブタは、バイオバーデン低減手順に従って飼育及び維持され、この手順は、隔離された閉鎖群中でブタを維持することを含み、隔離された閉鎖群中のすべての他の動物が、前述の人畜共通感染症病原体を含まないことが確認され、ブタは、隔離された閉鎖群の外部のいずれの非ヒト動物及び動物収容施設との接触から隔離されている。
先に示されるように、いくつかの態様では、ブタ供給源動物には、米国特許第7,795,493号(「Phelps」)に開示のブタの特徴を1つ以上有する「ノックアウト」及び/または「ノックイン」ブタを含む、1つ以上の遺伝的修飾の組み合わせを有してもよく、当該文献の開示内容は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。そのようなブタでは、移植時にヒトにおける超急性拒絶反応を担うα-(1,3)ガラクトシルエピトープが活性ではなく、(及び/または破壊されている)。Phelpsでは、ノックアウト/ノックインブタの生産方法が複数開示されており、こうした生産方法には、1つ以上の点変異(例えば、エクソン9の第2塩基のT→G点変異)及び/またはPhelpsの9列目6行目~10列目13行目、21列目53行目~28列目47行目、及び31列目48行目~38列目22行目に開示の遺伝子標的化事象によってアルファ-1,3-GT遺伝子の一方のアレルまたは両方のアレルを不活化することが含まれ、これらは参照により本明細書に組み込まれる。本発明の実施においては、記載の方法を介するそのようなブタの創出、及び/または創出後のそのようなブタ及び後代の利用を行うことができ、こうした利用には、限定されないが、そのようなブタから得られる臓器、組織、及び/または細胞の利用が含まれる。
同様に、他の態様では、ブタ供給源動物には、米国特許第7,547,816号(「Day」)に開示のブタの特徴を1つ以上有する「ノックアウト」及び「ノックイン」ブタが含まれ、当該文献の開示内容は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。そのようなブタにおいても、移植時にヒトにおける超急性拒絶反応を担うα-(1,3)ガラクトシルエピトープが活性ではなく、(及び/または破壊されている)。Dayでは、ノックアウト/ノックインブタの生産方法が複数開示されており、こうした生産方法には、卵母細胞を除核し、この除核卵母細胞を、非機能性アルファ-1,3-GT遺伝子を有するブタ細胞と融合させた後、代理母に移植するものが含まれ、この方法は、Dayの4列目61行目~18列目55行目により完全に記載されており、これは参照により本明細書に組み込まれる。本発明の実施においては、記載の方法を介するそのようなブタの創出、及び/または創出後のそのようなブタ及び後代の利用を行うことができ、こうした利用には、限定されないが、そのようなブタから得られる臓器、組織、及び/または細胞の利用が含まれる。
同様に、他の態様では、ブタ供給源動物には、米国特許第7,547,522号(「Hawley」)に開示のブタの特徴を1つ以上有するGGTAヌル(「ノックアウト」及び「ノックイン」)ブタが含まれ、当該文献の開示内容は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。そのようなブタにおいても、移植時にヒトにおける超急性拒絶反応を担うα-(1,3)ガラクトシルエピトープが活性ではなく、(及び/または破壊されている)。Hawleyに開示されるように、ノックアウト/ノックインブタの生産には、相同組換え手法を利用するもの、卵母細胞を除核した後、非機能性アルファ-1,3-GT遺伝子を有する細胞と融合させ、代理母に移植するものが含まれる(6列目1行目~14列目31行目により完全に開示される)。本発明の実施においては、記載の方法を介するそのようなブタの創出、及び/または創出後のそのようなブタ及び後代の利用を行うことができ、こうした利用には、限定されないが、そのようなブタから得られる臓器、組織、及び/または細胞の利用が含まれる。
さらに他の態様では、ブタ供給源動物には、米国特許第9,883,939号(「Yamada」)に記載のブタの特徴を1つ以上有し、α-(1,3)ガラクトシルエピトープが活性ではなく、(及び/または破壊されている)ブタが含まれ、当該文献の開示内容は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。ある特定の態様では、本開示に従って使用または改変するためのブタ供給源動物には、U.S.2018/0184630(Tector,III)に記載のブタの特徴を1つ以上有するブタが含まれ、当該文献の開示内容は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。本発明の実施においては、記載の方法を介するそのようなブタの創出、及び/または創出後のそのようなブタ及び後代の利用を行うことができ、こうした利用には、限定されないが、そのようなブタから得られる臓器、組織、及び/または細胞の利用が含まれる。
さらに他の態様では、ブタ供給源動物には、米国特許第8,106,251号(Ayares)、同第6,469,229号(Sachs)、同第7,141,716号(Sachs)に開示のブタの特徴を1つ以上有するブタが含まれ、これらの文献の開示内容はそれぞれ、参照によって本明細書に組み込まれる。本発明の実施においては、記載の方法を介するそのようなブタの創出、及び/または創出後のそのようなブタ及び後代の利用を行うことができ、こうした利用には、限定されないが、そのようなブタから得られる臓器、組織、及び/または細胞の利用が含まれる。
いくつかの態様では、ブタは、近交係数が0.50以上である1つ以上の高度近交ブタ群を起源とし得る(こうした高度近交ブタ群のブタが、遺伝的に改変されているか、または遺伝的に改変されていない(すなわち、野生型)かは無関係である)。近交係数が高くなることは、供給源動物から得られる製品が、ブタからヒトへの異種移植において使用するための生物学的特性をより一貫して有し得ることを示す(例えば、一態様では、近交係数は0.80以上である)。動物の近親交配係数は、Mezrich et al.,“Histocompatible Miniature Swine:An Inbred Large-Animal Model,”Transplantation,75(6):904-907(2003)において開示されている。高度近交ブタ群の一例としては、Sachs、et al.,“Transplantation in Miniature Swine.I.Fixation of the Major Histocompatibility Complex,”Transplantation 22:559(1976)に開示されているミニチュアブタからのミニチュアブタ子孫が含まれ、これは、特に臨床移植のために最終的に利用される臓器のための妥当なサイズの一致を有する高度近交系である。本発明の実施においては、記載の方法を介するそのようなブタの創出、及び/または創出後のそのようなブタ及び後代の利用を行うことができ、こうした利用には、限定されないが、そのようなブタから得られる臓器、組織、及び/または細胞の利用が含まれる。
供給源動物には、アルファ-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼ、Neu5Gc、及びβ1,4-N-アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼが活性ではなく、(及び/または破壊されている)ブタ動物(米国特許公開公報第US2017/0311579号(Tector)に開示される)も含まれ得る。本発明の実施においては、記載の方法を介するそのようなブタの創出、及び/または創出後のそのようなブタ及び後代の利用を行うことができ、こうした利用には、限定されないが、そのようなブタから得られる臓器、組織、及び/または細胞の利用が含まれる。
したがって、複数の供給源動物を、多くの生物学的特性(限定されないが、ゲノム改変及び/または他の遺伝的に操作された特性を含む)を持たせて利用することで、異種移植から生じるヒトの免疫原性及び/または免疫学的拒絶反応(例えば、急性拒絶反応、超急性拒絶反応、及び慢性拒絶反応)を低減できることが理解されよう。ある特定の態様では、本開示を使用することで、本開示の生物学的製品をヒト患者に移植することによって生じる血栓性微小血管症を低減または回避することができる。ある特定の態様では、本開示を使用することで、本開示の生物学的製品をヒト患者に移植することによって生じる糸球体症を低減または回避することができる。本明細書に示される供給源動物のリストは限定ではなく、本発明は、単独または組み合わせで免疫原性及び/または免疫学的拒絶反応の低減に役立つ1つ以上の改変(遺伝的なもの、またはその他のもの)を有する任意の他の型の供給源動物を包含することがさらに理解されよう。
いくつかの実施形態では、本発明に従って、本明細書に示され、記載されるように、DPF閉鎖コロニーのα-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼ[Gal-T]ノックアウトブタから早産ブタ胎児及び新生子ブタが子孫として得られる。
そのような早産ブタ胎児及び新生子ブタは、異種移植治療のための細胞、組織、及び臓器の供給源として利用され、こうした異種移植治療には、限定されないが、再生治療または直接移植治療が含まれる。そのような細胞、組織、及び臓器は、本発明に従って新鮮なものとして利用されるか、または凍結保存(例えば、-80℃の範囲の凍結保存)後に利用され得ることが理解されよう。
一態様では、間葉系細胞、多能性細胞、幹細胞、及び/または分化していない他の細胞がそのような早産ブタ胎児から収集され、本明細書に記載のように再生治療及び他の治療に利用され、一方で、そのような未分化細胞は、ブタ胎児ならびに新生子ブタにおいても高い割合でみられ得る。こうした細胞は、妊娠期間のより早期に胎児から得られるため、再生治療の潜在力を高める分化度の低さ及び柔軟性の高さを有する。さらに、こうした細胞は、本明細書に記載に示され、記載されるように、DPF閉鎖コロニーのα-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼ[Gal-T]ノックアウトブタから得ることができるものであり、憎悪性の免疫原性因子、病原性因子、及び/またはヒト免疫系による拒絶反応を引き起こす他の憎悪性因子を有さず、こうした細胞は、ヒトレシピエント内で存続及び分化して、こうした遺伝的ビルディングブロック及び細胞ビルディングブロックを使用するモデル組織の増殖機能を回復させることになる。
例として、そのような細胞を利用することで、異種移植のための当該技術分野で知られる再生細胞治療法によって(例えば、生物学的足場を利用することによって)多くの臓器及び/または組織を生成させることができ、こうして生成させることができる臓器及び/または組織には、限定されないが、皮膚、腎臓、肝臓、脳、副腎、肛門、膀胱、血液、血管、骨、脳、脳、軟骨、耳、食道、眼、腺、歯ぐき、毛、心臓、視床下部、腸、大腸、靱帯、唇、肺、リンパ、リンパ節及びリンパ管、乳腺、口、爪、鼻、卵巣、卵管、膵臓、陰茎、咽頭、下垂体、幽門、直腸、唾液腺、精嚢、骨格筋、皮膚、小腸、平滑筋、脊髄、脾臓、胃、腎上体、歯、腱、精巣、胸腺、甲状腺、舌、扁桃腺、気管、尿管、尿道、子宮、子宮、及び腟、乳輪組織、血液、咽頭扁桃組織、骨組織、褐色脂肪組織、網状組織、軟骨組織、軟骨、海綿組織、軟骨様組織、クロム親和性組織、結合組織、肉様膜様組織、弾性組織、上皮組織、表面被覆組織、脂肪組織、線維硝子組織、線維組織、ギャンジー包帯、ゼラチン様組織、肉芽組織、腸管関連リンパ系組織、ハラー脈管組織、硬性の造血組織、未分化組織、間質組織、被覆組織、島組織、リンパ組織、リンパ系組織、間葉組織、中腎組織、膠様組織、多房性脂肪、筋組織、骨髄組織、軟組織鼻点、腎発生組織、神経組織、結節組織、骨組織、造骨組織、類骨組織、根尖周囲組織、細網組織、網状組織、ゴム状組織、骨格筋組織、平滑筋組織、ならびに皮下組織が含まれる。
したがって、早産ブタ胎児及び新生子ブタは、成体ブタとの比較時のその特徴に基づいて本発明に従って組織、細胞、及び臓器の供給源として利用され得る。
閉鎖コロニー
一般閉鎖コロニー
ここでは図37に関して、一態様では、動物は、外部の影響を受けないように保護されることで、一般閉鎖コロニー128に加えるための候補とみなされ、一般閉鎖コロニー128は、DPF閉鎖コロニー102の繁殖を支援するためにSAF100内に収容されており、DPF閉鎖コロニー102もまた、SAF100内の別の隔離区域152に収容されている。外部の影響を受けないように保護された動物のSAFへの輸送は、潜在的な感染性病原体への曝露が軽減されるように管理される。そのような軽減手法には、限定されないが、クロルヘキシジンを用いて浄化され、他の動物が存在しないバンを使用して輸送の間に滅菌HEPAフィルター付きケージを使用するものが含まれる。
候補動物は、一般閉鎖コロニー128に入場する上での健康状態及び適格性を調べるために最初に検疫される。例えば、いくつかの態様では、外部から入ってくる動物は、SAF内の検疫入場区域130に最初に収容され、完全な健康記録(限定されないが、出生日、ワクチン接種、感染症、及び抗生物質使用歴を含む)、系統、ならびに遺伝子検査の結果が添えられる。こうした動物は、少なくとも7日間、検疫入場区域130に留まり、その間に付属の記録が評価され、他の健康スクリーニング(いくつかの感染性病原体のスクリーニングを含む)の測定値が取られる。
いくつかの態様では、健康状態が良好でないか、疑わしい医学的状態を有するか、またはそのような医学的問題の治療が不可能な動物は、一般閉鎖コロニー128に移ることは認められず、及び/またはその他の様式で検疫区域130から選別排除されることになる。合否判定基準の例としては、限定されないが、(a)その群から発症したことが想定外であり、動物の健康の質に影響を与え得る任意の先天性欠損症を伴って供給源動物が生まれていないこと、(b)供給源動物が、年齢に応じたワクチン接種をすべて受けており、こうしたワクチン接種が、不活化病原体を用いるものであったこと、(c)臨床的介入に加えて、供給源動物の生存期間に生じた任意の感染症が審査されており、そうした感染症及び任意の治療(該当する場合)が動物の健康の質に影響を与えないと決定されたこと、(d)監視検査の結果が審査されており、過去3ヶ月以内に供給源動物が検査されたことが検証されていること(代償を払ってすべての供給源動物が検査され、すべての検査が陰性でなくてはならない)、(e)診療を必要とする任意の様式で動物が損傷を負った場合、審査が実施されており、そうした損傷及び医学的介入(該当する場合)が動物の健康に影響を与えなかったことが確認されていること、及び/または(f)PERV検査が実施され、結果が記録されていること、が挙げられる。
いくつかの態様では、このスクリーニングプロセス及び日程に合格した動物は、検疫入場区域130から出され、SAF100内の一般保持区域132に移されて、現存する一般閉鎖コロニー128への合流または新たに形成される一般閉鎖コロニー128の創出に使用される。一般保持区域132は、DPF隔離区域152内のDPF閉鎖コロニー102に適用される条件と実質的に同様の閉鎖コロニー条件の下に置かれることが理解されよう。
外部の影響を受けないように保護された候補動物は、その子孫を除いては、DPF閉鎖コロニーのメンバーになることは決してないことがさらに理解されよう。一般閉鎖コロニー128動物から得られる子ブタが、本明細書にさらに記載されるようにDPF閉鎖コロニーの創出及び/または繁殖に利用されることになる。
DPF閉鎖コロニー
妊娠雌ブタ及びDPF子ブタ
一態様では、妊娠雌ブタ134(または未経産ブタ)を外部から得るか、または一般閉鎖コロニー128から得ることで、DPF閉鎖コロニー102群を創出及び/またはDPF閉鎖コロニー102群に追加するための子ブタが生産される。例えば、一態様では、雌ブタ134は、分娩までの期間はSAF内の雌ブタ検疫区域136内に置かれ、分娩は、この態様では、潜在的な病原体(ブタサイトメガロウイルス(pCMV)を含む)に子ブタが曝露されないようにするために帝王切開を介して行われる。自然分娩の間に子ブタが雌ブタの腟を通過すると子ブタがpCMVに罹患し得る。子ブタは、本明細書に記載のように帝王切開を介して分娩されることから、そのような罹患が阻止され、本明細書に記載の方法を介して生産される子ブタは、pCMVを含まない。
帝王切開処置の前に、例えば処置の朝、SAF100内の手術室138は、2つの側面を有する滅菌環境下で標準的な手術室プロトコールに従って準備され、この2つの側面は、雌ブタの帝王切開のための側面A140、及び見出され、DPF閉鎖コロニーに追加されるかのいずれかの候補である子ブタ144を受け取るための側面B142である。
雌ブタ134は、家畜銃によって安楽死させるために手術部屋138に移される。この直後に、雌ブタ134は、左側臥位にされ、クロルヘキシジンを用いて腹部及び胴体が広く前処理され、滅菌様式で覆いがかけられる。迅速に側腹切開が行われ、腹筋が裂かれて腹膜へのアクセスが確保される。子宮を露出させ、切開し、二重に固定し、臍帯を分離した後、子ブタ144が取り出される。家畜銃によって安楽死させた後の外科的手順を迅速に遂行することは、子ブタ144の生存に非常に重要である。
出生時には子ブタ144のための感染管理が行われる。子ブタ144は、クロルヘキシジン(または他の滅菌剤(betadineなど))を1%含む温かい滅菌生理食塩水の浴槽溶液中に置かれた後、子ブタ取り扱い者に渡されて、蘇生のための蘇生区域148に移され、復温され、第1用量の初乳による強制飼養が行われる。雌ブタの134屠殺体は、スタッフによって縫合で閉じられ、適切な手順に従って処分される。
その後、子ブタ144は、別の滅菌子ブタ検疫部屋150で検疫された後、指定の病原体を含まない隔離区域(「DPF隔離区域」)152に移されてDPF閉鎖コロニー102の創出またはDPF閉鎖コロニー102への合流に使用される。DPF隔離区域152は、本明細書に記載の交配繁殖、飼育、分娩、収集、及び全体的な扱いに必要な程度に、DPF閉鎖コロニーの扱い及び維持に適した任意のサイズのものであり得ることが理解されよう。
一態様では、DPF閉鎖コロニーを支援するDPF隔離区域152は、アクセスが制限され、陽圧障壁のある隔離特別室であり、広さが約500ftあり、少なくとも9匹の動物(各最大20kg)を支援する動物飼育能力を有し、より大きなSAF100の内部に存在する。本明細書に記載の製品及び方法に応じて、供給源動物の必要数及び製品の需要によって、DPF隔離区域152は、これよりもかなり大きくなる可能性があり、複数の区域(限定されないが、複数の部屋及び特別室を含む)を含み得ることが理解されよう。
いくつかの態様では、子ブタの追跡が実施され、DPF隔離区域152では、指定の病原体を含まない条件の下で子ブタが取り扱われる。例えば、子ブタの取り扱いは、DPF隔離区域152では個人用保護具(「PPE」)(フェイスマスク、手袋、靴カバー、及びヘアネットを含む)を着用して実施される。動物は、他のブタが収容される任意の動物部屋または動物施設にも立ち入っていない清潔な職員によって取り扱われる。追跡を行うために、子ブタは、分娩から3日後に耳切が行われ、手標識されたプラスチック耳タグを用いて離乳時(通常3~5週間)に耳タグが装着される。
DPF隔離区域152内のDPF閉鎖コロニー102で異種移植製品の供給源として育てられる子ブタもいれば、DPF閉鎖コロニー102で成熟することが許され、一般閉鎖コロニー128の繁殖に使用される子ブタもいることが理解されよう。一般閉鎖コロニー128の繁殖の際には、DPF隔離区域152から成熟動物が取り出され、交配繁殖のために一般閉鎖コロニー128に加えられる。DPF隔離区域152はDPFとなるように管理されるため、こうした動物または任意の他の動物が一旦DPF隔離区域152を離れると、そうした動物がDPF隔離区域152に戻されることは決してない。
DPF閉鎖コロニー102内の任意の動物も汚染(例えば、DPF閉鎖コロニー102の外部の動物から得られる血液、血液製品、または組織)に曝露されないようにするために予防措置が講じられる。DPF閉鎖コロニー102の外部の動物から得られる血液、血液製品、または組織に対してDPF閉鎖コロニー102内のいずれかの動物が偶発的に曝露された場合、そうした動物はDPF閉鎖コロニー102から取り除かれ、DPF閉鎖コロニー102に戻されることは決してない。すべての非経口な介入には無菌手法及び滅菌装置が使用され、所定作業(ワクチン接種、薬物または生物製剤での処理、静脈切開、及び生検など)が実施される。DPF隔離区域152へのアクセスは、カードによって、特別な許可及び訓練を受けたスタッフのみに制限される。
本発明の別の態様では、態様によっては、新生子ブタは、DPF隔離区域152内で訓練されたガウン着用スタッフによって取り扱われ、手で飼育されることで、新生子ブタの健康が確保され、そうした新生子ブタが指定の病原体を含まないものとして確実に維持される。
繁殖
DPF閉鎖コロニー102の繁殖は、複数の方法で行われ得る。例えば、本明細書に記載のように、外部または一般閉鎖コロニー128から雌ブタ134が選び取られ、検疫され、帝王切開を介して分娩されるその子ブタ144を与え、得られた子ブタは、蘇生され、滅菌され、検疫され、DPF隔離区域152に入れられ得る。新生仔ブタは、26~30℃または80~85 °Fに維持され得る。いくつかの態様では、ヒートランプは、動物を暖かく保つために使用される。新生子ブタは、SAF内で、滅菌タオル/覆布を底に敷いた中位の滅菌クレートに最初に収容される。
DPF閉鎖コロニー102の繁殖は、他の方法でも行われ得る。例えば、一態様では、DPF閉鎖コロニー102の繁殖は、完全にDPF隔離区域152内で生じるDPF閉鎖コロニー102の動物間の自然交尾を介して行われる。人工授精または自然交尾を伴わない他の交配繁殖手法の結果としても、DPF隔離区域152内のDPF閉鎖コロニー102での妊娠は生じ得ることが理解されよう。
そのような態様では、DPF隔離区域152内のDPF閉鎖コロニー102の妊娠雌ブタ154(または未経産ブタ)が妊娠全体を担い、子ブタは生児経膣分娩を介して分娩され、帝王切開術は不要である。重要なことは、DPF隔離区域152内での自然交尾及び生児経膣分娩から得られる子ブタは、pCMVに感染していないことを含めて、指定の病原体を含まないということである。
生児経膣分娩後、子ブタはすぐに雌ブタから引き離されて、雌ブタが子ブタに害を及ぼさないようにされる。次に、子ブタは、本明細書に記載の方法を用いてDPF隔離区域152内で分娩時からヒトの手によって育てられる。
DPF閉鎖コロニー102または一般閉鎖コロニー128において交配が行われる場合、本明細書に開示のブタの交配繁殖は、典型的には、ホモ接合型同士の交配繁殖である。雌には、妊娠の2週間前及び全妊娠期間、ホルモンが投与される。さらに、DPF閉鎖コロニー102と同様に、一般閉鎖コロニー128の繁殖もまた、一般閉鎖コロニー128の動物間での自然交尾を介して行われ得、人工授精または自然交尾を伴わない他の生殖補助技術(ART)の結果としても生じ得る。
遺伝的に優れた動物から多数の子孫を得るために、または生殖力のない(もしくは低受胎性)動物から子孫を得るために、様々な手法が開発及び洗練されている。こうした手法には、人工授精、配偶子または胚の凍結保存(凍結)、過排卵の誘発、胚移植、インビトロ受精、精子または胚の性決定、核移植、クローニングなどが含まれる。
人工授精(AI)は、遺伝的に優れた雄から子孫を得るために、200年を超える期間、使用されている。精液の凍結保存(凍結)及び保管を行うための方法が改良されたことで、より多くの家畜生産者がAIを利用することが可能になっている。精液の凍結保存と同じ様式で胚凍結を凍結することで、遺伝的に質の高い動物を世界的に商業化することが可能となった。
過排卵及び胚移植:胚移植技術が開発されたことで、生産者が、遺伝的に優れた雌から複数の後代を得ることが可能である。種に応じて、優れた遺伝的メリットを有する雌(胚ドナーとも呼ばれる)から外科的または非外科的な手法によって受精胚を回収することができる。次に、こうした遺伝的に優れた胚は、それよりも遺伝的メリットが少ない雌(胚レシピエントとも呼ばれる)に移植される。ウシ及びウマでは、手術を行わずに受精胚を回収する効率的な手法が存在するが、それぞれの通常の生殖サイクルの間に得られる胚は1つのみ、または場合によっては2つである。ブタ及びヒツジでは、胚は、外科的手法によって回収されなくてはならない。遺伝的に優れた雌から回収され得る胚の数を増やすには、胚ドナーをホルモンレジメンで処理して過排卵または過剰排卵の誘発が行われる。
インビトロ受精:ドナー動物からの胚の採取に代わるものとして、最近では胚をインビトロ(実験室内)で生成させるための方法が開発されている。こうした方法は、インビトロ胚生成とも呼ばれる。生殖力のない雌もしくは高齢の雌の卵巣または通常の胚ドナー(上記のもの)から未熟卵母細胞(雌卵)を得ることができる。卵子(卵)の採取は、卵巣から未熟卵母細胞を吸引するために超音波及びガイド付針を使用する非外科的手法である。卵巣から未熟卵母細胞が取り出されると、そうした未熟卵母細胞は、成熟され、受精され、移植または凍結に適する段階にその発生が進むまで最大で7日間、インビトロで培養される。
1980年代半ば以来、割球(初期胚及び未分化と想定される卵割段階の胚に由来する細胞)または体細胞(線維芽細胞、皮膚、心臓、神経、もしくは他の体細胞)から得られる核を除核卵母細胞(核が取り除かれた未授精の雌卵細胞)に移植するための技術が開発されている。この「核移植」によって、自体が他の動物(トランスジェニック動物、遺伝的に優れた動物、または生産乳汁量が多い動物もしくは他の望ましい形質をいくつか有する動物など)のほぼ同一のコピーである動物コピーが複数得られる。このプロセスは、クローニングとも称される。今日までに、体細胞核移植が使用されてウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウマ、ラバ、ネコ、ウサギ、ラット、及びマウスがクローニングされている。
手法は、クローニング対象となる動物から得られる適切な組織(線維芽細胞)に由来する体細胞を培養することを含む。次に、培養体細胞から得られる核が、同じ種または密接に関連する種の別の個体から得られる除核卵母細胞にマイクロインジェクションによって導入される。理解が未だ進んでいないプロセスを介して、胚の通常発生の誘導に適した遺伝子発現パターンへと、体細胞由来の核が再プログラム化される。インビトロでさらに培養及び発生が行われた後、レシピエント雌に胚が導入され、最終的に生存子孫が誕生する。核移植による動物の繁殖成功率は10パーセント未満であることが多く、多くの因子に依存するものであり、こうした因子には、種、レシピエント卵子の供給源、ドナー核の細胞型、核移植前のドナー細胞の処理、核移植に使用される手法などが含まれる。
最も一般に使用されるARTは、最初のステップとして受精に依存するものである。この卵と精子の結合は、雄親(sire)と雌親(dam)からの遺伝物質の組換えを伴い、しばしば「遺伝子デッキをシャッフルする」と称される。これらの繁殖技術は、DPF閉鎖コロニー内で、DPF隔離領域152内の繁殖ステップとして使用することができるか、または一般閉鎖コロニー内及び/または外部からの雌の繁殖ステップとして、使用することができることが理解されるであろう。
ARTを利用して一般閉鎖コロニーの雌及び/または外部由来の雌を妊娠させる場合、そのような雌から得られる子ブタの分娩は、本明細書に記載のように実施することができ、すなわち、外部または一般閉鎖コロニー128から雌ブタ134が選び取られ、検疫され、帝王切開を介して分娩されるその子ブタ144を与え、得られた子ブタは、蘇生され、滅菌され、検疫され、DPF隔離区域152に入れられ得る。
閉鎖コロニーの維持
指定の病原体には、任意の数の病原体が含まれ得る。こうした病原体には、限定されないが、ウイルス、細菌、真菌、原生動物、寄生生物、及び/またはプリオン(及び/または伝染性海綿状脳症(TSE)と関連する他の病原体)が含まれる。指定の病原体には、限定されないが、いずれか及びすべての人畜共通感染症ウイルス、ならびに下記の科に由来するウイルスが含まれ得る:adenoviridae、anelloviridae、astroviridae、calicivirdae、circoviridae、coronaviridae、parvoviridae、picornaviridae、及びreoviridae。
指定の病原体には、限定されないが、アデノウイルス、アルボウイルス、アルテリウイルス、ウシウイルス性下痢ウイルス、カリシウイルス、カルジオウイルス、サーコウイルス2、サーコウイルス1、コロナウイルス、脳心筋炎ウイルス、エペリスロゾーン、haemophilus suis、ヘルペスウイルス及びヘルペス関連ウイルス、イリドウイルス、コブウイルス、レプトスピリウム(leptospirillum)、リステリア、マイコバクテリアTB、マイコプラズマ、オルソミクソウイルス、パポウイルス(papovirus)、パラインフルエンザウイルス3、パラミクソウイルス、パルボウイルス、パサウイルス-1、ペスチウイルス、ピコビルナウイルス(PBV)、ピコルナウイルス、ブタサーコウイルス様(po-circo様)ウイルス、ブタアストロウイルス、ブタバコウイルス(porcine bacovirus)、ブタボカウイルス-2、ブタボカウイルス-4、ブタエンテロウイルス-9、ブタ流行性下痢ウイルス(PEDV)、ブタポリオウイルス、ブタリンパ球向性ヘルペスウイルス(PLHV)、ブタ糞便関連環状ウイルス(porcine stool associated circular virus)(PoSCV)、ポサウイルス-1、ポックスウイルス、狂犬病関連ウイルス、レオウイルス、ラブドウイルス、リケッチア、サペロウイルス、サポウイルス、staphylococcus hyicus、staphylococcus intermedius、staphylococcus epidermidis、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌、スイポックスウイルス、ブタインフルエンザ、テッシェン(teschen)、トロウイルス、トルクテノサスウイルス-2(TTSuV-2)、伝染性胃腸炎ウイルス、水疱性口内炎ウイルス、及び/またはいずれか及び/またはすべての他のウイルス、細菌、真菌、原生動物、寄生生物、及び/またはプリオン(及び/またはTSEと関連する他の病原体)が含まれ得る。いくつかの態様では、具体的にはブタ群では、ブタの自然条件ではTSEは報告されていないため、TSEの検査は実施されない。他の態様では、本開示の方法の一部としてTSEの検査が実施される。
動物群に対する検査が行われ得る可能性のある病原体は膨大な数に上ることから、異種移植の安全性及び有効性を確保するためにドナー動物に対してどの特定の病原体群を検査すべきか、及びドナー動物集団からどの特定の病原体群を除去すべきかに関する分野における規制指針もしくは基準または理解は存在しない。換言すれば、本開示以前には、検査及び排除すべき有限数の予測可能な病原体が同定されていなかった。
重要なことには、本開示は、異種移植の安全性及び有効性を得る上では排除することが非常に重要であることを本発明者らが同定した特定の病原体群を提供する。この特定の病原体群は、以下の表1に示される。
Figure 2022527061000003
ある特定の態様では、本開示の製品は、本開示で論じられる病原体の複数またはすべてについて抗体力価レベルが検出レベルを下回る動物が供給源となる。ある特定の態様では、本開示の製品が移植される対象は、本開示で論じられる病原体の複数またはすべてについて抗体力価レベルが検出レベルを下回ることが試験され、明らかにされる。
いくつかの態様では、本開示は、18~35(例えば、35、34、33、32、31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、または18)種類以下の病原体からなる特定の病原体群について検査する方法を含み、この特定の病原体群には、表1に記載の病原体のそれぞれが含まれる。いくつかの態様では、本開示は、18~35(例えば、35、34、33、32、31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、または18)種類の病原体を含まないドナー動物を創出すること、維持すること、及び使用することを含み、この特定の病原体群には、表1に記載の病原体のそれぞれが含まれる。
本明細書に記載のように、DPF閉鎖コロニー102内で生児経膣分娩を介して生まれる子ブタは、pCMVに感染していないが、それでもなお、pCMVの検査は継続的に行われる。ブタサイトメガロウイルス(pCMV)及びブタ内因性レトロウイルス(PERV)についての検査は、本明細書に記載のスクリーニング及び維持を行う上で定型的かつ継続的であるべきであり、DPF閉鎖コロニーについても定型的かつ継続的に行われるべきである。本発明のいくつかの態様では、本明細書に記載の供給源動物は、PERV A及びBに対してのみ陽性であり、いくつかは、PERV A、B、及びCに対して陽性である。他の態様では、供給源動物は、(CRISPR及び他の技術の利用を通じて)PERV A、B、及び/またはCを含まない。
PERVに関して、すべてではないにしても、ほとんどのブタは、PERV A及びBに対して陽性であることが知られていることが理解される。PERVは認識されているが、ブタ由来組織による処置からのPERVの伝播の危険性は稀であると予想される。現在のところ、すべてのブタ組織及びすべてのブタ品種において発現するPERV mRNAは8つ存在し、ブタの細胞、組織、及び臓器(膵島を含む)に曝露される前臨床ヒト異種移植試験及び臨床ヒト異種移植試験においてPERVの伝染が実証されたことはない。例えば、Morozov VA,Wynyard S,Matsumoto S,Abalovich A,Denner J,Elliott R,“No PERV transmission during a clinical trial of pig islet cell transplantation,”Virus Res 2017;227:34-40を参照のこと。ヒト感染が生じることはありそうもないが、そうしたことが万一発生したとしても、PERVは、臨床的に一般に使用されるヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤及び非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤に対してインビトロで感受性を有するものである。例えば、Wilhelm M,Fishman JA,Pontikis R,Aubertin AM,Wilhelm FX,“Susceptibility of recombinant porcine endogenous retrovirus reverse transcriptase to nucleoside and non-nucleoside inhibitors,”Cellular & Molecular Life Sciences 2002;59:2184-90、Schuurman,H.,“Regulatory aspects of clinical xenotransplantation,”Int.J.Surg.,23,(2015),pp.312-321を参照のこと。本開示の異種移植製品を使用して得られた実験データから、レシピエントの臓器ではPERV遺伝物質は検出されず、異種移植された臓器からブタのDNA及び細胞がレシピエントの循環に遊走することはないことが示された。
DPF閉鎖コロニー102は、動物が指定の病原体を含まない状態が確実に維持され、動物管理及び健全性の適切な基準がSAF100のすべてのレベル(すなわち、交配繁殖、維持、繁殖)で確実に適用されるように維持される。動物または親が表1のいずれかの病原体について陽性であることが試験で判明した場合、どの動物もDPF閉鎖コロニーへの侵入は許可されない。例えば、本明細書で特定される多数の病原体(限定されないが、pCMV及び他の病原体を含む)を含めて、病原体及び他の生物学的マーカーの検査が継続的に行われる。病原体の遺伝子型判定及び検査を行うために、必要に応じて環境試料及び血液試料が採取される。病原体または他の健康上の懸念について得られる検査結果(複数可)は施設獣医師によって評価され、この施設獣医師によって、追跡検査及び経過観察、ならびに必要に応じて施設または施設内の区域(例えば、部屋、特別室、もしくは他の区域)の検疫が推奨され得る。供給源動物の所定の管理の間に使用される抗微生物剤はいずれも、しっかりとした文書化が継続されることになり、不活化ワクチンは、専用のものが使用される。抗微生物剤の例としては、セファゾリン、バシトラシン、ネオマイシン、及びポリミキシンが含まれる。
いくつかの態様では、供給源動物の所定の健康監視及び病原体(例えば、外来性病因物質)スクリーニングが3ヶ月ごとに実施される。3ヶ月ごとに、一般閉鎖コロニー及びDPF閉鎖コロニーの各動物の血清試料、鼻腔スワブ試料、及び糞便試料が採取され、そのような病原体を検出するための分析検査に供される。家畜銃による安楽死の直後に供給源動物の血清試料、鼻腔スワブ試料、及び糞便試料が検査用に採取され、本明細書に開示のように評価される。こうした評価には、無菌性アッセイを実施し、当該無菌性アッセイにおいて好気性細菌及び嫌気性細菌が増殖しないことを確認すること、マイコプラズマアッセイを実施し、当該マイコプラズマアッセイにおいてマイコプラズマコロニーが形成されないことを確認すること、エンドトキシンアッセイを実施し、当該エンドトキシンアッセイにおいて生物学的製品がエンドトキシンを含まないことを確認すること、MTT還元アッセイを実施し、当該MTT還元アッセイにおいて製品の細胞生存度が少なくとも50%であることを確認すること、フローサイトメトリーを実施し、当該フローサイトメトリーによって判定すると製品がガラクトシル-a-1,3-ガラクトースエピトープを有さないことを確認すること、18~35種類の病原体に特異的な病原体検出アッセイを実施し、製品が、Ascaris種、cryptosporidium種、Echinococcus、Strongyloids sterocolis、Toxoplasma gondii、Brucella suis、Leptospira種、mycoplasma hyopneumoniae、ブタ生殖器呼吸器症候群、仮性狂犬病、staphylococcus種、Microphyton種、Trichophyton種、ブタインフルエンザ、ブタサイトメガロウイルス、アルテリウイルス、コロナウイルス、Bordetella bronchiseptica、及び家畜関連メチシリン耐性Staphylococcus aureusを含まないことを確認すること、のうちの1つ以上が含まれる。
いくつかの態様では、すべてのブタが所定の健康監視を受け、こうした健康監視には、すべての疾病、医療、手順、投与薬物、ワクチン接種、身体検査、施された任意の治療、及び総体的な健康評価の文書化、ならびに動物が立ち上がり、自由に行動することができ、臨床的に正常であると思われることを示す目視の健康検証を伴う給餌時の毎日の観察、ならびに動物飼育記録帳に任意の欠乏を記録して行う動物の見た目、活力、及び食欲に関する観察が含まれる。いくつかの態様では、動物に対して、Mycoplasma Hyopneumoniae、Hemophilus Parasuis、Streptococcus Suis、Pasteurella Multocida、Bordatella Bronchiseptica、及びErysipelothrix Rhusiopathiaeに対するワクチン接種が行われる。6ヶ月齢以上のすべてのブタに対して、Erysipelothrix Rhusiopathiae、Leptospira(Canicola-Grippotyphosa-Hardjo-Icterohaemorrhagiae-Pomona)、インフルエンザ、及びパルボウイルスに対するワクチン接種が行われ得る。ワクチン接種は反復実施される可能性があり、例えば、6ヶ月ごとに実施される。
いくつかの態様では、通常は、清掃及び給餌のための毎日の飼育手順の一部として健康監視を実施することで、ブタ保持区域(例えば、部屋、特別室、または他の区域)に立ち入ることが最小化されることになる。立ち入りに先立って、職員は、個人用保護具(PPE)を着用し、自身の履き物が大量の汚染物(例えば、視認可能な汚れまたは泥)を確実に含まないようにしなくてはらない。次に、職員は、立ち入り前に、使い捨ての靴/長靴を着用することになる。指定の病原体を含まない施設内に収容されていないいずれかの動物と接触した職員は、汚染された場合はPPEを取り換えることになる。用具(シャベル、他の必要な道具)はすべて、外から動物施設に持ち込まれるものであり、かつ必要と判断されれば、クロルヘキシジンに2分以上浸漬されることになる。固形排泄物及び汚れた寝床は取り除かれる。動物保持区域は、希釈されたQuat-PVまたは漂白剤で最低でも2週間に1回衛生化される。
いくつかの態様では、寝床は、照射処理した木くずの寝床を使用して毎日交換される。交換に使用する量は、取り除かれた量とほぼ同じ量である。寝床はすべて、最低でも週に1回の頻度で完全に交換される。健康状態確認、清掃、及び水レベルを含む毎日の活動は動物飼育記録帳において文書化される。適切に標識されたごみ及び生物学的廃棄物は、スタッフによって毎日集められ、焼却される。
子ブタに関して、新生ブタの取り扱い及び管理は、訓練を受けたガウン着用スタッフによって隔離特別室で行われる。補給品、部屋、及びクレートはすべて、子ブタの収容前に衛生化される。クレートの底部には、滅菌された覆布及びタオルが敷かれる。室温は80~85°Fに制御される。動物のクレートは、加熱ランプを使用して85~95°Fに維持される。子ブタは、最初の2週間はずっとクレート中で維持され、その後、子ブタは、照射処理した木くずを敷いた床の上に収容される。クレートは毎日清潔にされ、木くずは毎日交換及び補充される。最初のうちは、子ブタが自力で給餌器から飼料を摂取するようになるまでは、新たに調製される滅菌初乳(ブタ用に調合されたウシ初乳IgG、Sterling Nursemate ASAP、または同等のもの)が、1~2時間ごとに給餌チューブを使用して子ブタに給餌される。初期は、子ブタの体重測定が1日に2回行われ、1日に2回健全性が確認及び記録される。14日目からは、照射処理した子ブタ用穀物(抗生物質非含有餌付け飼料、Blue Seal 813、または同等のもの)がさらに補給された代用乳(Ralco Birthrightまたは同等のもの)が1日に3回子ブタに給餌され始める。給餌ごとの各子ブタの摂食量が記録される。子ブタの分娩から最初の7日以内に、ワクチン接種、遺伝子型判定、耳切、及び誕生時点で既に存在する歯のトリミングが実施される。いくつかの態様では、ワクチンは、不活化病原体を使用するものである。分娩後7日目に、子ブタに対して、Mycoplasma Hyopneumoniae、Hemophilus Parasuis、Streptococcus Suis、Pasteurella Multocida、Bordatella Bronchiseptica、及びErysipelothrix Rhusiopathiaeに対するワクチン接種が行われ、28日齢の時点で追加のワクチン接種が行われる。一態様では、ワクチンは、不活化病原体である。6ヶ月齢以上のすべてのブタに対して、Erysipelothrix Rhusiopathiae、Leptospira(Canicola-Grippotyphosa-Hardjo-Icterohaemorrhagiae-Pomona)、インフルエンザ、及びパルボウイルスに対するワクチン接種が行われる。ワクチン接種は、6ヶ月ごとに反復実施される。
異種移植製品のための供給源動物は、所与のプログラムを扱う者によって適用される標準的な作業手順によって規定される特定の隔離障壁条件の下で陽圧の生物学的封じ込め施設内で維持され、制御された条件の下で特別な管理を受けることで外来性病因物質が減らされる。異種移植のための使用が意図される供給源動物の閉鎖コロニーの健康を確保するために、SAF、職員、及び供給源動物の管理人は、動物飼育、組織収集、及び動物の屠殺の手順を遵守する。供給源動物は、特定の隔離障壁条件の下で陽圧の生物学的封じ込め施設内に収容される。
いくつかの態様では、飼料及び寝床は、ローディングドックに搬送され、輸送され、内部の廊下からスタッフのみがアクセス可能な清浄ケージ洗浄区域に繋がった特定の飼料部屋に搬入保管される。寝床及び飼料はすべて、照射によって滅菌され、袋を二重にして無菌性が保証される。子ブタ及び成熟が進んだ動物に使用される飼料は、特定の製造者による規定の穀物飼料である。この規定の穀物飼料は、ウシタンパク質を全く含まない。水の供給は、施設の滅菌システムを使用するか、または購入滅菌水を滅菌された受け皿に分配することによって行われる。飼料、水、及び他の消耗品の保管及び搬送についての記録がプロトコールに従って維持され、こうした記録には、製造者、バッチ番号、及び他の関連情報が含まれる。
いくつかの態様では、動物の記録は、その動物が異種移植において使用される生存組織、生存臓器、及び/または生存細胞の供給源として使用される前の少なくとも二世代にわたって、供給源動物に与えられる飼料について記載されるように維持される。こうしたものには、供給源、供給業者、及び使用飼料の型(その中身を含む)が含まれる。動物に由来する飼料の使用は禁じられる。2008年に拡大強化された使用禁止飼料に関するFDA規制によって供給源動物として禁止されている動物タンパク質(21 CFR 589.2000)もしくは他のウシ由来物質(21 CFR 589.2001)を含む飼料、あるいは薬物汚染または残留殺虫剤もしくは残留除草剤を著しく含む飼料が供給源動物用として供給源動物に与えられることはない。
いくつかの態様では、十分な品質で精製水が提供されることで、感染性病原体、薬物、殺虫剤、除草剤、及び肥料に動物が不必要に曝露されないようにされる。新生動物には、群認定のために明確に認定された初乳が与えられる。いくつかの態様では、ブタ用に調合されたウシ初乳IgG、Sterling Nursemate ASAP、または同等のものを使用して新生動物への給餌が行われる。
DPF閉鎖コロニーから得られる生物学的製品
生物学的製品
本明細書に記載のように、異種移植のための生物学的製品は、本発明に従って生産及び維持された供給源動物(本明細書に記載のDPF閉鎖コロニー102由来のものを含む)から得られる。そのような生物学的製品には、限定されないが、肝臓、腎臓、皮膚、肺、心臓、膵臓、腸、神経、ならびに他の臓器、細胞、及び/または組織が含まれる。
本開示は、免疫原性が低減され、抗原性が低減され、生存度が上昇し、ミトコンドリア活性が上昇し、具体的に必要な病原体プロファイルを有し、凍結保存に供された異種移植組織の有効期間が予想外に長い異種移植製品の連続製造プロセスを提供する。連続製造プロセスは、超急性拒絶反応、遅延性異種移植片拒絶反応、急性細胞性拒絶反応、慢性拒絶反応、疾患の異種間伝染、寄生生物の異種間伝染、細菌の異種間伝染、真菌の異種間伝染、ウイルスの異種間伝染を回避する上で驚くほどかつ予想外に有効である。連続製造プロセスは、検出可能な病理学的変化を伴わずにドナー動物が正常に生存する閉鎖群を創出する上で驚くほどかつ予想外に有効である。
そのような生物学的製品の収集は、供給源動物の屠殺に始まり、最終製品の生産が完了するまでの連続的かつ自己完結型の分離された単一製造事象として行われる。動物は、家畜銃での安楽死によって安楽死させられ、必要に応じて非通気性滅菌バッグに入れた状態で、供給源動物からの生物学的製品の収集手順が行われることになる手術部屋に運ばれ得る。手術チームのすべてのメンバーが、供給源動物を受け入れる前に完全滅菌手術着を着用(例えば、滅菌着を着用)して、指定の病原体を含まない条件を維持し、場合によっては、手袋を二重に着用して汚染を最小限にとどめるべきであり、外科処理領域及び道具は滅菌される。供給源動物は、無菌様式でバッグ及び容器から取り出される。消毒剤(例えば、クロルヘキシジン)ブラシを用いて手術スタッフによって供給源動物が徹底洗浄され(この洗浄は、例えば、少なくとも1~10分間行われる)、この洗浄では、手術対象となる全動物領域が、そうした領域に定期的にクロルヘキシジンをかけながらくまなく徹底洗浄されることで、確実に洗浄が行きわたるようにされる。開封したBetadineブラシ及び滅菌水すすぎ液を用いて動物の外科処理領域(複数可)が徹底洗浄され(この洗浄は、例えば、1~10分間行われる)、この洗浄によって、手術対象となる全動物領域がくまなく徹底洗浄される。手術については、手術者は、プログラム及び他の基準に従って滅菌着を着用して指定の病原体を含まない条件を維持することになる。異種移植に使用されることになる供給源動物から得られる臓器、細胞、または組織はすべて、動物の屠殺から15時間以内に収集される。
生物学的製品には、限定されないが、本明細書に開示のもの(例えば、具体例に開示もの)、ならびに供給源動物から収集されたいずれか及びすべての他の組織、臓器、及び/または精製されたか、もしくは実質的に純粋な細胞及び細胞株も含まれ得る。いくつかの態様では、本明細書に記載の異種移植に利用される組織には、限定されないが、乳輪組織、血液、咽頭扁桃組織、骨組織、褐色脂肪組織、網状組織、軟骨組織、軟骨、海綿組織、軟骨様組織、クロム親和性組織、結合組織、肉様膜様組織、弾性組織、上皮組織、表面被覆組織、脂肪組織、線維硝子組織、線維組織、ギャンジー包帯、ゼラチン様組織、肉芽組織、腸管関連リンパ系組織、ハラー脈管組織、硬性の造血組織、未分化組織、間質組織、被覆組織、島組織、リンパ組織、リンパ系組織、間葉組織、中腎組織、膠様組織、多房性脂肪、筋組織、骨髄組織、軟組織鼻点、腎発生組織、神経組織、結節組織、骨組織、造骨組織、類骨組織、根尖周囲組織、細網組織、網状組織、ゴム状組織、骨格筋組織、平滑筋組織、及び皮下組織が含まれる。いくつかの態様では、本明細書に記載の異種移植に利用される臓器には、限定されないが、皮膚、腎臓、肝臓、脳、副腎、肛門、膀胱、血液、血管、骨、軟骨、角膜、耳、食道、眼、腺、歯ぐき、毛、心臓、視床下部、腸、大腸、靱帯、唇、肺、リンパ、リンパ節及びリンパ管、乳腺、口、爪、鼻、卵巣、卵管、膵臓、陰茎、咽頭、下垂体、幽門、直腸、唾液腺、精嚢、骨格筋、皮膚、小腸、平滑筋、脊髄、脾臓、胃、腎上体、歯、腱、精巣、胸腺、甲状腺、舌、扁桃腺、気管、尿管、尿道、子宮、ならびに腟が含まれる。
いくつかの態様では、本明細書に記載の異種移植に利用される精製されたか、または実質的に純粋な細胞及び細胞株には、限定されないが、血液細胞、血液前駆細胞、心筋細胞、軟骨細胞、卵丘細胞、内皮細胞、表皮細胞、上皮細胞、線維芽細胞、顆粒膜細胞、造血細胞、ランゲルハンス島細胞、ケラチノサイト、リンパ球(B及びT)、マクロファージ、メラノサイト、単球、単核細胞、神経系細胞、他の筋細胞、膵臓アルファ-1細胞、膵臓アルファ-2細胞、膵臓ベータ細胞、膵臓インスリン分泌細胞、脂肪細胞、上皮細胞、大動脈内皮細胞、大動脈平滑筋細胞、アストロサイト、好塩基球、骨細胞、骨前駆細胞、心筋細胞、軟骨細胞、好酸球、赤血球、線維芽細胞、グリア細胞、肝細胞、ケラチノサイト、クッパー細胞、肝臓星状細胞、リンパ球、微小血管内皮細胞、単球、神経幹細胞、ニューロン、好中球、膵島細胞、上皮小体細胞、耳下腺細胞、血小板、始原幹細胞、シュワン細胞、平滑筋細胞、甲状腺細胞、腫瘍細胞、臍帯静脈内皮細胞、副腎細胞、抗原提示細胞、B細胞、膀胱細胞、頸部細胞、錐体細胞、卵細胞、上皮細胞、生殖細胞、有毛細胞、心臓細胞、腎細胞、ライディッヒ細胞、黄体細胞、マクロファージ、メモリー細胞、筋細胞、卵巣細胞、ペースメーカー細胞、管周細胞、下垂体細胞、形質細胞、前立腺細胞、赤血球、網膜細胞、桿体細胞、セルトリ細胞、体細胞、精子細胞、脾細胞、T細胞、精巣細胞、子宮細胞、腟上皮細胞、白血球、線毛細胞、円柱上皮細胞、ドーパミン作動性細胞、ドーパミン作動性細胞、胚性幹細胞、子宮内膜細胞、線維芽細胞、胎児線維芽細胞、濾胞細胞、杯細胞、角質化上皮細胞、肺細胞、乳腺細胞、粘液細胞、非角質化上皮細胞、骨芽細胞、破骨細胞、骨細胞、及び扁平上皮細胞が含まれる。
臓器は、体内で1つ以上の特定機能を一緒になって発揮する関連細胞群である。生物学的に、皮膚は、体で最も大きく、最も速く増殖する臓器であり、外皮系の主要成分として分類され、外皮系は、「進化した」動物に見られる10個の巨大臓器系のうちの1つである。皮膚は、温度を制御すること、外界に対する動的障壁を与えること、及び感覚受容器の巨大ネットワークを支援するルートとして働くことを含めて、いくつかの非常に重要な役割を果たす。皮膚は、体の生存及び健康に極めて重要ないくつかの機能を果たす。皮膚は、創傷が生じた後の血液喪失を阻止するように治癒し、熱を消散させることによって体温を調節し、寒冷に対する層、吸収、分泌、熱調節、感覚検出及び方向決定、ならびに障壁保護を与えるものとして働く。実際、皮膚の移植が成功することは、他の臓器の移植と相関することが認識されているだけでなく、皮膚移植物の拒絶反応感受性は、他の臓器(例えば、免疫特権を有する臓器(肝臓など))と比較して高いようにも思われ、皮膚移植物は、「前哨移植物」として使用すること(すなわち、同じレシピエントに移植される固形臓器に対する拒絶反応を早期に予測するものとして、ヒトレシピエントに皮膚移植片を使用すること)さえ提案されている。例えば、Ali et al.Transplant Proc.2016 Oct;48(8):2565-2570に報告されているように、何人かの腸管移植レシピエント及び多臓器移植レシピエントにおける腹壁移植の経験によって得られた証拠は、腸管同種移植片において拒絶反応が出現するよりも前に皮膚成分において拒絶反応が顕在化し得、これが「リードタイム」となり、この「リードタイム」の間に腹壁の拒絶反応を治療することで腸管拒絶反応の出現を阻止し得ることを示唆している。
さらに、合衆国法典第42編の274章及び301章では、皮膚が、ヒト臓器のうちのその正式定義の中に明確に収載されており、すなわち、「ヒト臓器は、全米臓器移植法(National Organ Transplant Act)の301章によって取り扱われており、改正を経てはいるが、ヒト(胎児を含む)の腎臓、肝臓、心臓、肺、膵臓、骨髄及び他の造血幹/前駆細胞(それらの採取方法は無関係である)、角膜、眼、骨、皮膚、ならびに腸(食道、胃、小腸、及び/または大腸、または胃腸管の任意の部分を含む)を意味する」。同様に、人体臓器移植条例(HOTO)は、臓器取引を防止し、ドナーとレシピエントの自決権を保護するために国際的に承認された条例である。この世界的な法律は、皮膚-及び外皮系の全セグメントを正式に臓器として列挙し、より広義には、臓器を「完全に除去された場合、身体によって再生することができない組織の構造化された配置からなる人体のあらゆる部分…」と定義している。以下に、移植の正式な医学的定義は次の通りである:「身体の一部分または一個体からの組織の除去、及び特に手術によって別の組織への移植または挿入。」HOTOは、移植を「永続性にかかわらず、移植手術中に臓器を一人から別の人に移すこと」と定義している。
皮膚に関して、移植片は、典型的には、脱細胞化及び/または再構成された均質化真皮シートからなり、この均質化真皮シートは、表在性創傷の応急的な被覆の達成に使用される。そのような移植片は、元の組織構造も保持せず、代謝的な活性も有さず(これらは、通常なら細胞に自然に存在する)、それ故に、血管新生が誘導されず、内部への毛細血管成長または血管間の結合が生じない。結果的に、免疫による拒絶は懸念事項にならないが、こうした皮膚移植片は、こうした移植片の下で完全な宿主被覆組織が増殖することによって拒絶されるのではなく、「はじき出される」のである。したがって、そのような解決策に移植片という用語は正しく当てはまる可能性はあるが、移植物(transplant)を移植片(graft)と区別する主な品質は、複雑性、秩序、及び1つ以上の型の組織の内包が増強されているというものである。本発明の場合、皮膚移植物は、先行技術分野で知られる移植片とは基本的に区別される。例えば、皮膚異種移植物は、患者の元の皮膚と同じ機能を発揮する生存細胞から構成され、この機能は、最終的に免疫介在性に拒絶されるまで発揮される。したがって、この関連では、本開示による皮膚異種移植物は、移植片というよりはむしろ、臓器移植物である。
ブタから生物学的製品を回収するという点において、回収は、ブタを安楽死させ、ブタから生物学的製品を無菌的に取り出すことと、3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)還元アッセイにおいて細胞生存率を50%未満に減少させず、ミトコンドリア活性を50%未満に減少させない滅菌プロセスを使用して回収後に滅菌することを含む、前述の生物学的製品を処理することと、前述の生物学的製品を滅菌容器に保管することと、を含み、非ヒト動物は、非トランスジェニックな再プログラムされたブタから単離された細胞、組織、及び/または臓器の異種移植のための非トランスジェニックな再プログラムされたブタであり、非トランスジェニックな再プログラムされたブタは、野生型ブタの主要組織適合性複合体の複数のエクソン領域にある複数のヌクレオチドを、ヒト捕捉配列に由来する既知の主要組織適合性複合体のオルソロガスなエクソン領域に由来するヌクレオチドで置き換えるように再プログラムされている核ゲノムを含み、この再プログラムは、任意のフレームシフトまたはフレームを導入するものではない。さらなる特定の態様、詳細及び実施例は、以下の開示及び特許請求の範囲において提供され、それらの態様、詳細及び実施例の任意の及びすべての組み合わせは、本開示の態様を構成する。
他の態様では、異種腎臓は遺伝子操作され、再プログラムされ、指定された病原体を含まないブタに由来し、本発明に従って産生され、非ヒト霊長類及びヒトに移植される。非ヒト霊長類及びヒトのそれぞれにおいて少なくとも14ヶ月の生存が観察されると予想される。いくつかの態様では、非ヒト霊長類及びヒトのそれぞれにおいて少なくとも24ヶ月の生存が観察されると予想される。いくつかの態様では、非ヒト霊長類及びヒトのそれぞれにおいて少なくとも36ヶ月の生存が観察されると予想される。いくつかの態様では、非ヒト霊長類及びヒトのそれぞれにおいて少なくとも48ヶ月の生存が観察されると予想される。いくつかの態様では、非ヒト霊長類及びヒトのそれぞれにおいて少なくとも60ヶ月の生存が観察されると予想される。
別の態様では、異種肺は、本発明に従って産生され、非ヒト霊長類及びヒトに移植された、遺伝子操作され、再プログラムされ、指定された病原体を含まないブタに由来する。非ヒト霊長類及びヒトのそれぞれにおいて少なくとも30日の生存が観察されると予想される。いくつかの態様では、非ヒト霊長類及びヒトのそれぞれにおいて少なくとも3ヶ月の生存が観察されると予想される。いくつかの態様では、非ヒト霊長類及びヒトのそれぞれにおいて少なくとも6ヶ月の生存が観察されると予想される。いくつかの態様では、非ヒト霊長類及びヒトのそれぞれにおいて少なくとも12ヶ月の生存が観察されると予想される。いくつかの態様では、非ヒト霊長類及びヒトのそれぞれにおいて少なくとも24ヶ月の生存が観察されると予想される。いくつかの態様では、非ヒト霊長類及びヒトのそれぞれにおいて少なくとも36ヶ月の生存が観察されると予想される。いくつかの態様では、非ヒト霊長類及びヒトのそれぞれにおいて少なくとも48ヶ月の生存が観察されると予想される。いくつかの態様では、非ヒト霊長類及びヒトのそれぞれにおいて少なくとも60ヶ月の生存が観察されると予想される。
別の態様では、異種心臓は、本発明に従って産生され、非ヒト霊長類及びヒトに移植された、遺伝子操作され、再プログラムされ、指定された病原体を含まないブタに由来する。非ヒト霊長類及びヒトのそれぞれにおいて少なくとも20ヶ月の生存が観察されると予想される。いくつかの態様では、非ヒト霊長類及びヒトのそれぞれにおいて少なくとも24ヶ月の生存が観察されると予想される。いくつかの態様では、非ヒト霊長類及びヒトのそれぞれにおいて少なくとも36ヶ月の生存が観察されると予想される。いくつかの態様では、非ヒト霊長類及びヒトのそれぞれにおいて少なくとも48ヶ月の生存が観察されると予想される。いくつかの態様では、非ヒト霊長類及びヒトのそれぞれにおいて少なくとも60ヶ月の生存が観察されると予想される。
別の態様では、異種神経組織は、本発明に従って産生され、非ヒト霊長類及びヒトに移植された、遺伝子操作され、再プログラムされ、指定された病原体を含まないブタに由来する。非ヒト霊長類及びヒトのそれぞれにおいて少なくとも75日の生存が観察されると予想される。いくつかの態様では、非ヒト霊長類及びヒトのそれぞれにおいて少なくとも3ヶ月の生存が観察されると予想される。いくつかの態様では、非ヒト霊長類及びヒトのそれぞれにおいて少なくとも6ヶ月の生存が観察されると予想される。いくつかの態様では、非ヒト霊長類及びヒトのそれぞれにおいて少なくとも12ヶ月の生存が観察されると予想される。いくつかの態様では、非ヒト霊長類及びヒトのそれぞれにおいて少なくとも24ヶ月の生存が観察されると予想される。いくつかの態様では、非ヒト霊長類及びヒトのそれぞれにおいて少なくとも36ヶ月の生存が観察されると予想される。いくつかの態様では、非ヒト霊長類及びヒトのそれぞれにおいて少なくとも48ヶ月の生存が観察されると予想される。いくつかの態様では、非ヒト霊長類及びヒトのそれぞれにおいて少なくとも60ヶ月の生存が観察されると予想される。
別の態様では、異種肝臓は、本発明に従って産生され、非ヒト霊長類及びヒトに移植された、遺伝子操作され、再プログラムされ、指定された病原体を含まないブタに由来する。非ヒト霊長類及びヒトのそれぞれにおいて少なくとも60日の生存が観察されると予想される。いくつかの態様では、非ヒト霊長類及びヒトのそれぞれにおいて少なくとも3ヶ月の生存が観察されると予想される。いくつかの態様では、非ヒト霊長類及びヒトのそれぞれにおいて少なくとも6ヶ月の生存が観察されると予想される。いくつかの態様では、非ヒト霊長類及びヒトのそれぞれにおいて少なくとも12ヶ月の生存が観察されると予想される。いくつかの態様では、非ヒト霊長類及びヒトのそれぞれにおいて少なくとも24ヶ月の生存が観察されると予想される。いくつかの態様では、非ヒト霊長類及びヒトのそれぞれにおいて少なくとも36ヶ月の生存が観察されると予想される。いくつかの態様では、非ヒト霊長類及びヒトのそれぞれにおいて少なくとも48ヶ月の生存が観察されると予想される。いくつかの態様では、非ヒト霊長類及びヒトのそれぞれにおいて少なくとも60ヶ月の生存が観察されると予想される。
いくつかの実施形態では、本発明に従って生成されたブタ肝臓をヒトの体外フィルターとして使用することが開示される。全内容が参照により本明細書に組み込まれる、Levy,et al.,“Liver allotransplantation after extracorporeal hepatic support with transgenic(hCD55/hCD59)porcine livers:Clinical results and lack of pig-to- human transmission of the porcine endogenous retrovirus,”Transplantation,69(2):272-280(2000)(「Levy」)による研究では、遺伝的に修飾されたトランスジェニックなブタ肝臓の全臓器体外灌流が、重大な肝不全のためにヒト肝臓移植を待っている患者を持続させるために提案された。使用されたブタ肝臓は、ヒトCD55(崩壊促進因子)及びヒトCD59についてのトランスジェニックであると報告されたが、その肝臓では、[アルファ]-gal抗体が著しく増加することを抑制することができなかった。
本発明によれば、一態様では、本発明に従って遺伝的に再プログラムされた供給源動物に由来する肝臓が、ヒト移植物が患者に移植されるまで、ヒト患者のための応急的フィルターとして体外灌流に利用される。追加の遺伝的改変を有するブタも利用され得ることが理解されよう。こうした追加の遺伝的改変を有するブタには、本明細書の他の箇所に記載の任意の数の形質について遺伝的に再プログラム化されたブタが含まれる。
一態様では、図38に示されるように、体外式回路では、人工肺(例えば、Minimax Plus(登録商標)中空糸人工肺)、ポンプ(例えば、BP50 Pediatric Bio Pump(登録商標)遠心ポンプを備えたBio-Medicus モデル540 Bio-Console(登録商標))、及び加温器(Bio-Medicus モデル370 BioCal(商標)温度制御器)が利用される。この回路では、ローラーポンプ(例えば、Sarns モデル7000、Sarns、Ann Arbor,MI)も利用されて患者への重力流入の欠如が補われる。灌流される肝臓と患者との切り離しにはブリッジ及びクランプが利用される。
DPF隔離区域内の手術区域において、供給源動物が、全身麻酔(ケタミン、キシラジン、エンフルラン)下に置かれるか、または家畜銃によって安楽死される。次に、指定の病原体を含まない条件の下で供給源動物の肝切除が実施される。
肝臓は、当該技術分野で知られる任意の数の方法で保存された後、体外式フィルターとして使用され得る。こうした方法には、限定されないが、Levyに開示のもの(例えば、「4℃乳酸リンゲル/アルブミン溶液ならびに門脈へのカニューレ挿入(28F Research Medical、モデルSPC-641-28)及び下大静脈へのカニューレ挿入(36F Research Medical、モデルSPC-641-36)」を利用するもの)が含まれる。
総胆管は、任意の数の方法で挿管され得る。こうした方法には、限定されないが、Levyに示されるもの(例えば、「静脈内拡張チューブ(Extension Set 30、Abbott Hospitals,Inc.、Chicago,IL)を用いて、その後の胆汁生成の定量化を可能にするもの」)が含まれる。
供給源動物から得られる肝臓製品は、包装され、ヒトドナー肝臓での現行方式に従う手順が行われる場所に輸送され得る。
肝臓ろ過製品を利用するための手順は、例えば、静脈流入用に患者の内頸静脈に12F小児用動脈カニューレ(例えば、Medtronic DLP、Grand Rapids,MI)を経皮的に挿入し、静脈流出用に患者の大腿静脈に19F大腿動脈カニューレ(例えば、Medtronic Bio-Medicus、Eden Prairie,MN)を経皮的に挿入することによって実施され得る。これらのカニューレは、バイパス回路に連結され、このバイパス回路には、遠心ポンプ(例えば、Bio-Medicus)、熱交換器(Medtronic Bio-Medicus)、人工肺(例えば、Medtronic Cardiopulmonary、Anaheim,CA)、及びローラーポンプ(例えば、Sarns)が組み込まれている。
この回路は、晶質液を用いて開始準備が整えられ、遺伝的に再プログラムされた供給源動物から得られた肝臓が、800ml/分の安定流速で組み込まれるまでの一定時間(例えば、20分)回され、当該肝臓は、晶質液槽において維持され、この晶質液槽には、温かい溶液が時折補充される。
他の態様では、異種膵臓は、本発明に従って産生される、遺伝子操作され、再プログラムされ、指定された病原体を含まないブタに由来し、本発明に従って産生された遺伝的に再プログラムされたブタに由来する異種膵臓は、非ヒト霊長類及びヒトに移植される。非ヒト霊長類及びヒトのそれぞれにおいて少なくとも20ヶ月の生存が観察されると予想される。いくつかの態様では、非ヒト霊長類及びヒトのそれぞれにおいて少なくとも24ヶ月の生存が観察されると予想される。いくつかの態様では、非ヒト霊長類及びヒトのそれぞれにおいて少なくとも36ヶ月の生存が観察されると予想される。いくつかの態様では、非ヒト霊長類及びヒトのそれぞれにおいて少なくとも48ヶ月の生存が観察されると予想される。いくつかの態様では、非ヒト霊長類及びヒトのそれぞれにおいて少なくとも60ヶ月の生存が観察されると予想される。
本開示の主題は、特徴の様々な組み合わせ及び部分的組み合わせを含めて、ある特定の例示の態様を参照してかなり詳細に記載及び提示されているが、当業者なら他の態様ならびにその変形及び改変を容易に理解するであろうし、そうしたものは本開示の範囲に含まれる。さらに、そのような態様、組み合わせ、及び部分的組み合わせの説明は、特許請求の範囲に明示的に記載されるもの以外にも特徴または特徴の組み合わせが請求主題に必要となると伝えることを意図するものではない。したがって、本開示の範囲は、下記の添付の特許請求の範囲の趣旨及び範囲に含まれるすべての改変及び変形を含むものとする。
他の態様では、遺伝子操作され、再プログラムされ、及び指定された病原体を含まないブタに由来する異種皮膚組み合わせ製品は、本発明に従って作製される。
熱傷及び他の病気を治療するための皮膚移植製品によっては、培養された表皮自家移植片(例えば、Epicel(登録商標)というブランド名でVericel Corporationによって生産される製品を参照のこと)が利用される。そのような表皮自家移植片が熱傷(重度熱傷を含む)患者に利用されると、移植される表皮材料に対する拒絶反応が低減されるか、または生じ得ない。これは、この材料が患者自身の皮膚から得られるものであるためである。
しかしながら、そのような製品は、表皮のみに限られており、皮膚の真皮部分を含まない。図39に関して、真皮(典型的には、皮膚の厚みの95%を占める)は、表皮(典型的には皮膚の厚みの5%を占める皮膚の外側部分である)とは大きく異なる機能を発揮するものであることが理解されよう。
表皮自家移植片単独では、真皮の非常に重要な機能を発揮する能力を欠くため、そのような製品は、生存真皮と組み合わせて使用される。損傷によっては、創傷床は、患者自身の真皮の残存部分を含み、この真皮残存部分は、培養された表皮自家移植片を患者に移植する手順において利用する上で理想的な真皮である。しかしながら、熱傷がより重篤な症例によっては、患者自身の真皮がもはや存在しないか、またはもはや生存していない。そうした症例では、表皮自家移植片単独では十分でなくなるため、異なる真皮が必要となる。
一態様では、本発明に従って指定の病原体を含まないα-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼ[Gal-T]ノックアウトブタから得られる真皮組織からなる全層皮膚移植片創傷被覆材が、培養された表皮自家移植片と併せて使用されるか、または組み合わせて使用される。この組み合わせを利用する治療プロセスの1つは下記の通りである。
重度熱傷を有する患者は、損傷から48~72時間以内に手術部屋に運ばれる。患者がケアを受けた後に可能な限り早く生検検体が採取され、培養表皮自家移植片(例えば、Epicel(登録商標)というブランド名でVericel Corporationによって生産される製品を参照のこと)を創出するための既知の手順に従って表皮皮膚細胞が単離され、別に増殖される。
患者の体がどの程度損傷を受けているかに応じて、健康な領域から表皮自家移植片が採取されることで、熱傷領域が治療され、及び/または移植プロセスにおいて使用される表皮自家移植片メッシュが後に創出される。
重度熱傷領域は、本明細書に記載の皮膚製品(例えば、本発明に従って生産される指定の病原体を含まないα-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼ[Gal-T]ノックアウトブタから得られる皮膚製品)で治療される。そのような治療は、十分な自家移植片が患者の長期的な治療に利用されるようになるまでの応急的創傷被覆を行うことを含む。
適切な基質を確保するには、表皮自家移植片の適用に先立って、創傷床をしっかりと清拭することが必要である。創傷床が表皮自家移植片を受け入れる準備が整ったかを確認するために、本明細書に記載の皮膚製品(例えば、本発明に従って生産される指定の病原体を含まないα-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼ[Gal-T]ノックアウトブタから得られる皮膚製品)が適用されて接着が確認される。接着が確認されると、この応急的創傷被覆製品が除去され、いくつかの態様では、メッシュ状自家移植を用いて創傷床が被覆され、この自家移植片メッシュ中のギャップを埋めるために1つ以上の培養表皮自家移植片製品が上に被せられる。
創傷清拭は、機械的創傷清拭、化学的創傷清拭、酵素的創傷清拭、またはそれらの組み合わせを含み得る。機械的創傷清拭は、外科的切除(例えば、健康な組織が見えるまで真皮の薄層を除去するための接線切除、または基礎をなす筋膜に到達するまで真皮の全層を除去するための筋膜上切除)を含み得る。接線切除は、壊死組織とともに除去される生存組織を少なく済ますことができるが、典型的には失血が多くなるものであり、筋膜上切除と比較して生理学的ストレス要因が大きくなり、創傷清拭が「不完全」になる可能性が高くなり、失活組織がそのままいくらか残るものである。筋膜上切除では、失血及び手術時間は最少化されるが、熱傷組織とともに除去される健康な組織の量が多くなることが多い。創傷清拭剤には、外来物質及び壊死組織を除去することによって熱傷を浄化することが可能な薬剤が含まれ得る。そのような薬剤は多く知られている。酵素的創傷清拭では、コラゲナーゼ、または細胞外マトリックスのタンパク質を分解する他のタンパク質分解酵素を用いることで、手術を必要とせずに失活組織を一掃することが可能になり、一方で、好ましくは、健康な組織は実質的にインタクトなまま残る。酵素的創傷清拭は、壊死組織を分解するために創傷表面にタンパク分解酵素及び任意選択で他の外来酵素を適用することを含む。酵素的創傷清拭は、比較的緩徐なプロセスであり、他の局所調製物、浸漬、及び被覆材の反復適用と組み合わせて何週間にもわたって実施され得る。代わりに、複数の酵素製品を使用することで酵素的創傷清拭を迅速に達成することができ、こうした酵素製品は、例えば、パイナップル植物の幹から抽出されるもの(例えば、WO98/053850及びWO2006/0006167に開示もの)ならびに商品名Debrase(登録商標)で市販される製品において提供されるものである。酵素的創傷清拭の手順では、一般に、酵素が利用され、こうした酵素は、ブロメライン系酵素、デブリダーゼ(debridase)、コラゲナーゼ、パパイン系酵素、ストレプトキナーゼ、スティラインズ、フィブリノリジン、デオキシリボヌクレアーゼ、オキアミ系酵素、トリプシン、またはそれらの組み合わせなどである。自己分解性の創傷清拭は、マクロファージ及び内因性タンパク分解活性に起因して創傷に生じる健康な組織由来の壊死組織及び焼痂が選択的に液化、分離、及び消化される自然プロセスを増進することに依存するものである。このことは、密封性、半密封性、または湿潤相互作用性の被覆材を使用することによって達成される。酵素的創傷清拭剤には、ブロメライン高含有酵素製品、他のコラゲナーゼ、または失活組織もしくは創傷壊死組織片を浄化する能力を有する他の酵素製品が含まれる。そのような製品及び方法は、米国特許第8,540,983号、同第8,119,124号、同第7,128,719号、同第7,794,709号、同第8,624,077号、及びUS2009/0010910A1に記載されており、これらの文献はそれぞれ、参照によって本明細書に組み込まれる。
いくつかの態様では、創傷床は、慢性創傷もしくは急性創傷を含むか、または慢性創傷もしくは急性創傷であり得る。慢性創傷には、限定されないが、静脈性下腿潰瘍、褥瘡、及び糖尿病性足部潰瘍が含まれる。急性創傷には、限定されないが、熱傷、外傷、切断創傷、皮膚移植片提供部位、咬創、凍傷、皮膚剥離、及び外科的創傷が含まれる。
真皮が存在しない場合、本発明に従って生産される指定の病原体を含まないα-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼ[Gal-T]ノックアウトブタから得られる皮膚製品が利用される。そのような製品からは表皮が除去され(この除去は、例えば、VERSAJET(商標)Hydrosurgeryシステムを用いてブタの真皮を収集する前に行われる)、その結果、真皮のみが残される。次に、対象ブタ真皮が患者の皮下組織の上に配置され、上記の培養表皮自家移植片プロセスの基質となる。
製品の特長、試験及び治療的使用
いくつかの態様では、本明細書に記載及び開示される異種移植製品は応急的なものであり、すなわち、当該異種移植製品は、異種移植を受ける患者において永続的に使用されるわけではなく、主に急性の病気及び損傷を治療するために利用されるものであり、本発明に従わずに生産される製品と比較して長期利用することができる。本明細書に記載及び開示される製品の態様のいくつかは、永続的またはより永続的なものでもあり得、移植される臓器、組織、及び/または細胞は、有害な拒絶反応を伴うことなく、はるかに長期にわたってヒトレシピエントによって許容されることが理解されよう。
他の態様では、本明細書に記載及び開示される異種移植製品は、生存可能な生存細胞(例えば、活力を有し、生物学的に活性である)製品であり、血管新生プロセスを完了させる能力を有さない最終滅菌された非生存細胞から構成される合成または他の組織ベースの製品とは異なる。さらに、いくつかの態様では、本開示の製品は、失活処理が行われないか、またはグルタルアルデヒドもしくは照射処理で「固定化」されない。
さらに他の態様では、本明細書に記載及び開示される異種移植製品は、行われる処理操作が最小限に留まるものであり(例えば、関連する細胞、臓器、または組織が物理的に改変されない)、その結果、そのような製品は、実質的にその自然状態にある。
特定の態様では、本明細書に記載及び開示される異種移植製品は、非ヒト動物、例えば、非トランスジェニックな遺伝的に再プログラムされたブタから単離された細胞、組織、及び/または臓器を含む非トランスジェニックな遺伝的に再プログラムされたブタから得られ、この非トランスジェニックな遺伝的に再プログラムされたブタは、野生型ブタの主要組織適合性複合体の複数のエクソン領域内の複数のヌクレオチドを、ヒト捕捉配列からの既知のヒト主要組織適合性複合体配列のオルソロガスなエクソン領域からのヌクレオチドで置き換えるように再プログラムされた核ゲノムを含み、前述の遺伝的に再プログラムされたブタの細胞は、1つ以上の表面糖鎖エピトープを提示せず、前述の再プログラムは、任意のフレームシフトまたはフレーム破壊も導入しない。例えば、アルファ-1,3ガラクトシルトランスフェラーゼ、シチジン一リン酸-N-アセチルノイラミン酸ヒドロキシラーゼ(CMAH)、及びβ1,4-N-アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼをコードする遺伝子は、これらの遺伝子によってコードされる表面糖鎖エピトープが発現されないように破壊される。さらなる特定の態様、詳細及び実施例は、以下の開示及び特許請求の範囲において提供され、それらの態様、詳細及び実施例の任意の及びすべての組み合わせは、本開示の態様を構成する。
さらに他の態様では、本明細書に記載及び開示される異種移植製品は、ヒトレシピエントとの有機的な調和をもたらす能力を有し、こうした有機的な調和には、限定されないが、血管新生、コラーゲン増殖(例えば、皮膚に関するもの)、及び/または移植片接着、有機的な調和、もしくはレシピエントによる他の一次的もしくは永続的な許容を誘導する移植レシピエント由来の他の相互作用、との親和性が生じることが含まれる。
さらに他の態様では、本明細書に記載及び開示される異種移植製品は、免疫抑制剤または他の免疫抑制治療を使用することを必要とせずに、またはそれらの使用を少なくとも軽減して、異種移植において利用されて所望の治療結果が達成される。
他の態様では、本明細書に記載及び開示される異種移植製品のいくつか(例えば、皮膚)は、本発明に沿って、凍結保存によって保管されるか、新鮮なまま(凍結を伴うことなく)保管されるか、またはそのような製品を保存する他の方法を介して保管される。保管は、細胞及び組織の生存度を保つ条件及びプロセスを使用することを含む。
いくつかの態様では、保管は、氷上で滅菌等張液(例えば、抗生物質を含むか、または含まない滅菌生理食塩水)を使用するもの、-40℃付近または-80℃付近の温度で凍結保存用液体中で凍結保存するもの、及び当該分野で知られる他の方法、の任意の組み合わせで臓器、組織、または細胞を保管することを含み得る。そのような保管は、一次封じ込め系及び二次封じ込め系において行われ得る。
さらに他の態様では、本明細書に記載及び開示される異種移植製品は、相同的使用のためのものであり、こうした相同的使用は、すなわち、レシピエントの臓器、細胞、及び/または組織を、ドナーのものと同じ基本機能(複数可)を果たす対応臓器、対応細胞、及び/または対応組織を用いて修復、再構築、置き換え、または補充を行うことである(例えば、ヒト腎臓用移植物としてブタ腎臓を使用すること、ヒト肝臓用移植物としてブタ肝臓を使用すること、ヒト皮膚用移植物としてブタ皮膚を使用すること、ヒト神経用移植物としてブタ神経を使用することなど)。
さらに他の態様では、本明細書に記載及び開示される異種移植製品は、バイオバーデンが少ないことで、製品のバイオバーデン及び異種移植時の製品に対するヒトの体の免疫学的拒絶反応の増加に働き得る病原体、抗体、遺伝子マーカー、及び他の特徴が最小化されている。こうした免疫学的拒絶反応には、自然免疫系がPRR及びTLRを介してPAMPを検出し、対象異種移植製品を拒絶するものが含まれ得る。
本明細書に開示及び記載される態様は、本発明が包含する態様の特徴及び/または態様のうちの1つ以上を含む一連の態様または異なる態様を創出するために、任意の数の組み合わせにおいて適用可能であることが理解されよう。
本発明に従ってDPF閉鎖コロニーから得られる製品には多数の治療用途が存在することが理解されよう。例えば、そのような製品は、臓器、細胞、または組織の急性及び/または慢性の疾患、障害、または損傷、ならびに本明細書に開示の製品が利用され得るいずれか及びすべての他の病気を治療するために利用され得る。そのような治療及び/または療法には、そのような製品を(いくつかの態様では応急的に、他の態様では永続的に)利用して、ドナーのものと同じ基本機能(複数可)を果たすヒトレシピエントの対応臓器、対応細胞、及び/または対応組織を修復、再構築、置き換え、または補充することが含まれ得る。
特定の治療用途には、限定されないが、肺移植、肝臓移植、腎臓移植、膵臓移植、心臓移植、神経移植、及び他の完全移植または部分移植が含まれる。皮膚に関して、治療用途には、限定されないが、熱傷、糖尿病性潰瘍、静脈性潰瘍、慢性皮膚状態、ならびに他の皮膚病、皮膚損傷、及び/または皮膚状態(限定されないが、重度かつ広範な深達性の部分層及び全層の損傷、病気、及び/または状態を含む)の治療(例えば、本明細書の実施例2を参照のこと)、総体表面積の30%以上を構成する真皮深層熱傷または全層熱傷を有する成人患者及び小児患者における使用(この使用は、任意選択で、分層自家移植片を併用して行われるか、または患者の創傷/熱傷の重症度及び程度が理由で分層自家移植片が選択肢となり得ない患者については単独で行われる)、本発明に従って得られる肝臓製品を用いる肝不全、創傷、病気、損傷、及び/または状態の治療、末梢神経損傷ならびに他の神経病、神経損傷、及び/または神経状態の治療、ならびにDPF閉鎖コロニーから収集される材料を利用する細胞治療及び他の治療も含まれ、こうした治療には、米国特許第7,795,493号(「Phelps」)に開示の治療的使用が含まれ、こうした治療的使用には、ある特定の障害に対する細胞治療及び/または細胞注入(30列目1行目~31列名9行目に開示のもの)ならびにある特定の障害または病状の治療(31列目10~42行目に開示のもの)が含まれ、当該文献の開示内容は、参照によって本明細書に組み込まれる。
本明細書には治療が具体的に記載されるが、こうした具体的な記載は、本明細書に開示及び記載される製品の治療用途の型をいかなる様式においても限定しないことが理解されよう。こうした治療用途の対象となるものには、下記の臓器、組織、及び/または細胞の急性及び/または慢性の疾患、障害、損傷が含まれる:皮膚、腎臓、肝臓、脳、副腎、肛門、膀胱、血液、血管、骨、脳、脳、軟骨、耳、食道、眼、腺、歯ぐき、毛、心臓、視床下部、腸、大腸、靱帯、唇、肺、リンパ、リンパ節及びリンパ管、乳腺、口、爪、鼻、卵巣、卵管、膵臓、陰茎、咽頭、下垂体、幽門、直腸、唾液腺、精嚢、骨格筋、皮膚、小腸、平滑筋、脊髄、脾臓、胃、腎上体、歯、腱、精巣、胸腺、甲状腺、舌、扁桃腺、気管、尿管、尿道、子宮、子宮、腟、乳輪組織、血液、咽頭扁桃組織、骨組織、褐色脂肪組織、網状組織、軟骨組織、軟骨、海綿組織、軟骨様組織、クロム親和性組織、結合組織、肉様膜様組織、弾性組織、上皮組織、表面被覆組織、脂肪組織、線維硝子組織、線維組織、ギャンジー包帯、ゼラチン様組織、肉芽組織、腸管関連リンパ系組織、ハラー脈管組織、硬性の造血組織、未分化組織、間質組織、被覆組織、島組織、リンパ組織、リンパ系組織、間葉組織、中腎組織、膠様組織、多房性脂肪、筋組織、骨髄組織、軟組織鼻点、腎発生組織、神経組織、結節組織、骨組織、造骨組織、類骨組織、根尖周囲組織、細網組織、網状組織、ゴム状組織、骨格筋組織、平滑筋組織、及び皮下組織;血液細胞、血液前駆細胞、心筋細胞、軟骨細胞、卵丘細胞、内皮細胞、表皮細胞、上皮細胞、線維芽細胞、顆粒膜細胞、造血細胞、ランゲルハンス島細胞、ケラチノサイト、リンパ球(B及びT)、マクロファージ、メラノサイト、単球、単核細胞、神経系細胞、他の筋細胞、膵臓アルファ-1細胞、膵臓アルファ-2細胞、膵臓ベータ細胞、膵臓インスリン分泌細胞、脂肪細胞、上皮細胞、大動脈内皮細胞、大動脈平滑筋細胞、アストロサイト、好塩基球、骨細胞、骨前駆細胞、心筋細胞、軟骨細胞、好酸球、赤血球、線維芽細胞、グリア細胞、肝細胞、ケラチノサイト、クッパー細胞、肝臓星状細胞、リンパ球、微小血管内皮細胞、単球、神経幹細胞、ニューロン、好中球、膵島細胞、上皮小体細胞、耳下腺細胞、血小板、始原幹細胞、シュワン細胞、平滑筋細胞、甲状腺細胞、腫瘍細胞、臍帯静脈内皮細胞、副腎細胞、抗原提示細胞、B細胞、膀胱細胞、頸部細胞、錐体細胞、卵細胞、上皮細胞、生殖細胞、有毛細胞、心臓細胞、腎細胞、ライディッヒ細胞、黄体細胞、マクロファージ、メモリー細胞、筋細胞、卵巣細胞、ペースメーカー細胞、管周細胞、下垂体細胞、形質細胞、前立腺細胞、赤血球、網膜細胞、桿体細胞、セルトリ細胞、体細胞、精子細胞、脾細胞、T細胞、精巣細胞、子宮細胞、腟上皮細胞、白血球、線毛細胞、円柱上皮細胞、ドーパミン作動性細胞、ドーパミン作動性細胞、胚性幹細胞、子宮内膜細胞、線維芽細胞、胎児線維芽細胞、濾胞細胞、杯細胞、角質化上皮細胞、肺細胞、乳腺細胞、粘液細胞、非角質化上皮細胞、骨芽細胞、破骨細胞、骨細胞、ならびに扁平上皮細胞。このリストは、急性及び/または慢性の疾患、障害、損傷、臓器不全または組織不全、ならびに本明細書に開示の製品が利用され得るいずれか及びすべての他の病気を治療するための一連の治療的使用を限定することを、いかなる様式においても意図するものではない。
熱傷(限定されないが、例えば、第II度熱傷及び第III度熱傷を含む)の治療に関して、いくつかの態様では、本発明に従って得られる皮膚製品は、重度かつ広範な深達性の部分層熱傷及び/または全層熱傷を有するヒト患者を治療するために使用される。そのような製品は、使用前にエクスビボで増殖しない最終分化した細胞型を含み、所期の治療期間中に適用部位から遊走することはない。したがって、腫瘍原性が生じる可能性は無視できる。
そのような製品は、創傷床に接着し、熱傷直後期間中に障壁機能を与える。そのような製品は、最終滅菌されていない生存細胞を有することから、レシピエントにおいて移植組織の血管新生を生じさせることが可能である。いくつかの態様では、表皮は、完全にインタクトなままであり、真皮成分は、様々な細胞及び組織の構造的な形態及び秩序が変化することなく維持される。この生理学的構造は、移植材料の生存長期化を支援し、同種移植片と同等以上の顕著な臨床効果を伴って少なくとも応急的な障壁機能を与える。いくつかの態様では、感染の臨床徴候(例えば、疼痛、浮腫、紅斑、温感、体液排出、臭気、または原因不明の発熱)が存在するか、または発生している場合、そうした感染の臨床徴候が、所定の期間(例えば、1日、2日、3日、4日、5日、6日、もしくは7日、1週間、2週間、3週間、もしくは4週間)減少もしくは消失するか、または対象が検査で感染陰性となるまでは、本開示の製品は適用されない。いくつかの態様では、創傷は、浄化され、血管新生が良好に誘導されること、及び滲出がないことが確認される。真皮代用物(死体同種移植片など)も使用される場合、生着同種移植片から表皮層が除去された後に、生着真皮を除去することなく製品が適用される。表皮層は、施設の標準的作業手順に従って採皮機器または他の器具を用いて除去され得る。
臨床診療において通常使用される移植片は、脱細胞化及び/または再構成された均質化真皮シートからなり、この均質化真皮シートは、表在性創傷の応急的な被覆の達成に使用される。そのような従来の移植片は、元の組織構造も保持せず、代謝的な活性も有さず(これらは、通常なら細胞に自然に存在する)、それ故に、血管新生が誘導されず、内部への毛細血管成長または血管間の結合が生じない。対照的に、本明細書に記載の皮膚製品は、そのような移植片とは基本的に区別されるものであり、これは、本開示の製品が、患者の元の皮膚と同じ機能を発揮する生存細胞を含むためであり、すなわち、当該製品は、臓器移植物として働く。皮膚は、ホメオスタシス、温度制御、体液交流、及び感染阻止と関連する非常に重要な役割を追加で果たす。十分な量の皮膚が存在しないと、こうした機能を発揮する能力が損なわれることで、感染及び体液喪失に起因して死亡及び病的状態の発生率が高まり得る。皮膚移植物は、著しい創傷を有する患者にこうした転帰が生じることを阻止するために、注目すべき臨床的利点を伴って確実に使用されており、そうした移植片が応急的または永続的なものであるかは無関係である。したがって、他の提唱移植物とは異なり、免疫抑制剤の使用は軽減されるか、不要となることが想定される。実際、損傷によってあるレベルの免疫機能不全が既に生じている熱傷患者では、そのようなレジメンは禁忌となるであろう。したがって、成型されてシートまたはメッシュ状になった再構成された均質化野生型ブタ真皮からなる従来の「異種移植片」製品(EZ-Derm(商標)またはMedi-Skin(商標)など)と本開示の異種移植製品を混同すべきではない。そのようなブタ異種移植片は、血管新生を誘導せず、主に浅達性熱傷の応急的な被覆にのみに有用である。全く対照的に、本開示の異種移植製品は、代謝的に活性であり、細胞に対する処理操作が最小限に留まっており、こうした細胞が供給源組織と同一の立体構造及び不変の形態を有するものである。
いくつかの態様では、本開示は、ドナー皮膚を異種移植して、同じ動物ドナーから得られる他の臓器の拒絶反応を予測するための検査とすることを含む。ヒトドナー皮膚を使用してそのような予測試験を実施するための技術は、以前に、例えば、Moraes et al.,Transplantation.1989;48(6):951-2、Starzl,et al.,Clinical and Developmental Immunology,vol.2013,Article ID 402980,1-9、Roberto et al.,Shackman et al.,Lancet.1975;2(7934):521-4に記載されている。これらの開示は、あらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。Moraesの報告によれば、この交差適合手順は、早期の腎臓移植拒絶反応を予測する上で高度な正確性を有していた。Shackmanの報告によれば、有望な生存ヒト腎臓ドナーから取り出した皮膚移植片の運命は、同じドナーから得られた腎臓移植の結果とよく相関するものである。本開示によれば、一態様では、本開示は、ヒト患者に皮膚試料を異種移植することで、同じ動物ドナーから異種移植する他の臓器がヒト患者において拒絶されるリスクが存在するかどうかを決定する方法を含む。
本明細書に記載の皮膚移植方法は、皮膚移植片が有用である任意の傷害を治療するために使用することができ、例えば、熱傷、例えば、部分的な厚さまたは切除された完全な厚さの熱傷、例えば、四肢上の分離した皮膚、糖尿病による傷、例えば、治癒していない糖尿病性の足の傷、静脈うっ血性潰瘍を含むが、これらに限定されない、部分的な厚さ及び完全な厚さの傷害を被覆するために使用することができる。
いくつかの態様では、本開示の異種移植製品は、規制上の要件を満たす薬物動態特性及び薬力学特性を有する。そのような特性を特徴付けるには、薬物の吸収、分布、代謝、及び排泄の古典的意義に関する特有の手法が必要である。薬物動態を考慮する目的のための異種移植製品の「吸収」は、異種移植製品に生じる血管新生プロセスによって説明され得る。例えば、術後間もなく、皮膚異種移植製品は、温かくて、柔らかい、及びピンク色として存在し得るが、一方、野生型または伝統的な異種移植片は、非血管化した「白色の移植片」として現れる。いくつかの態様では、移植の分布は、移植部位を超える末梢血中のブタ細胞の存在または不在を実証するためのDNA PCR試験によって確認されるように、移植部位に限定される。
他の態様では、本発明に従って生産される生物学的製品の細胞は、異種移植後に遊走してレシピエントに入り込むこと(レシピエントの循環に入り込むことを含む)はない。このことには、PERVまたはPERVに感染したブタ細胞が遊走してレシピエントに入り込まないことが含まれる。そのような細胞が遊走してレシピエントに入り込まないことの確認は、多くの方法によって実施され得る。こうした方法には、移植部位ならびに灌流が高度に生じる臓器(例えば、肝臓、肺、腎臓、及び脾臓)から得られる末梢血単核球(PBMC)及び試料をDNA-PCR分析することで、末梢血へのブタ細胞(DNA)またはブタレトロウイルス(RNA)成分の遊走がレシピエントにおいて生じなかったことを決定するか、またはその他の様式で実証するものが含まれる。
さらに、異種移植製品の生物学的利用率及び作用機構は、サイズの影響を受けない。異種移植製品の分布は、適用部位に限られる。例えば、皮膚移植物の場合、外傷または熱傷によって初期に創出される創傷床が清拭されたものが適用部位となる。本開示は、適用部位を超えて末梢血、創傷床、脾臓、及び/または腎臓に異種移植製品由来の細胞が分布していないかを検査して検出することを含む。ある特定の態様では、そのような検査では、適用部位を超えて末梢血、創傷床、脾臓、及び/または腎臓に異種移植製品由来の細胞が存在しないことが実証されることになる。そのような検査は、製品の取得元である型の動物に存在する様々な細胞マーカー(例えば、PERV、ブタMHC、及び他のブタDNA配列)を検査するDNA PCRを含み得る。ある特定の態様では、異種移植製品由来の細胞及び核酸は、適用部位に限局して留まる。
異種移植製品の代謝は、生体によってそうした薬物が代謝分解されること(典型的には、特殊な酵素または酵素系を介して生じる)として伝統的には定義されるものであり、前述の自然宿主拒絶現象と一致し得、この自然宿主拒絶現象は、外来性の免疫抑制剤の非存在下で生じるものである。ヒトでの将来の使用が意図されるものと同じ製剤及び同一の適用経路を介して、臨床的に有用な期間中にそのような異種移植製品がたどる免疫拒絶過程は、同種移植片比較物と同様の遅延型のものである。
同様の様式で、異種移植製品の排泄は、抗体介在性の血管損傷に起因してそうした移植物に壊死性の虚血が生じて、組織が最終的に死に至る結果として生じる臨床的な「脱落」現象によってモデル化され、実験的に監視され得る。
本開示の異種移植製品の有効性は、安全性、利用可能性、保管、有効期間、及び分布と併せて実証されており、これによって、現在の標準治療を上回る大きな利点が得られる。
いくつかの態様では、本開示の異種移植製品の「用量」は、単位移植面積当たりの製品中の生存細胞のパーセントとして表される。したがって、いくつかの態様では、本開示の異種移植製品は、医薬品中の活性医薬成分に類似するものとみなすことができる。
本開示の異種細胞、異種組織、または異種臓器の生存度は、以下のことを回避することによって上昇する:本開示の異種細胞、異種組織、または異種臓器の生存度は、以下のことを回避することによって上昇する:(a)異種移植製品への免疫細胞もしくは炎症性細胞の浸潤、または他の関連コンパートメント(血液及び脳脊髄液など)におけるそのような細胞の変化、(b)異種移植製品の線維性被包(例えば、結果的に、機能が損なわれるもの、または異種移植製品が損失するもの)、(c)異種移植製品の壊死、(d)移植片対宿主病(GVHD)、ならびに(e)拒絶応答または炎症応答を弱めることを意図する封入または障壁をインビボで機能させ永続させること。
子ブタから血液試料が採取され、FITC-IB4標識化及びフローサイトメトリーを使用して表現型(血液細胞の細胞表面上でのアルファガラクトースの発現を欠くこと)の検査が行われる。この発育段階において、すべての後代が、出生時に遺伝子型判定を受けることになる。ブタが野生型ガラクトース-α1,3ガラクトーストランスフェラーゼ遺伝子(Gal-T)を有するかどうか、またはGal-Tノックアウト(Gal-T-KO)についてブタがヘテロ接合型もしくはホモ接合型であるかどうかを、耳切時試料またはPBMCから単離されるDNAを使用して決定するためのPCRアッセイは確立されている。ゲノムDNAは、Qiagen DNeasyキットの指示に従ってDNeasyキットを使用してPBMC(または皮膚組織)から単離される。PCRは、ゲノムDNAならびに対照テンプレートDNA(野生型Gal-T(+/+)、ヘテロ接合型Gal-T-KO(+/-)、及びホモ接合型Gal-T-KO(-/-))で実施される。
75-cm2フラスコに入れた培養培地(10%ウシ胎児血清、ならびにグルタミン、ペニシリン、及びストレプトマイシンが添加されたダルベッコ改変イーグル培地)中で維持されたサブコンフルエントの標的細胞(ヒト293(腎臓被覆組織)細胞株及びブタST-IOWA細胞株)とともに皮膚移植片のパンチ生検検体が共培養される。この生検検体は、標的細胞と接触させながら5日間保持された後、培養培地及び残存組織が除去され、必要に応じて継代培養によって標的細胞共培養物が維持される。培養上清中の逆転写酵素(RT)活性の存在によって標的細胞のPERV感染が決定される。伝染アッセイは、陰性とみなされる前に最低でも60日間維持される。
安全性、同一性、純粋性、及び有効性を測定するための製品の特徴付けが実施される。安全性検査には、細菌及び真菌の無菌性、マイコプラズマ、ならびにウイルス物質が含まれる。本開示は、すべての最終異種移植製品の試料(すなわち、細胞もしくは組織、または臓器の生検検体)を、新鮮なものか、またはエクスビボでの培養から得られるものかにかかわらず、必要に応じてさらに検査するために凍結保存すること及び収集保管すること含む。場合によっては、例えば、異種移植製品がインタクトな全臓器である場合、関連代用試料(例えば、隣接組織または対側臓器)が収集保管される。
皮膚に関して、ブタ皮膚の保管及び凍結保存の特徴付けは完全には行われておらず、特に生存度に関しての特徴付けが不完全である。これは、ほとんどのブタ異種移植片が意図的に失活されるか、またはグルタルアルデヒドもしくは照射処理を用いて「固定化」されるためである。そのような情報は、活力のあるブタ皮膚移植片またはブタ皮膚移植物を、応急的及び臨床的に有利な選択肢として使用することを支援する上で必要なものである。
異種移植製品を供給源動物から取り出した直後に移植する手順(全臓器の異種移植など)では、異種移植製品を臨床的に使用する前にその検査結果が利用不可能な場合があり得る。そのような場合、実施可能な検査は、そうした手順の前に行う供給源動物自体の検査がすべてとなり得る。そのような異種移植製品から採取される試料または適切な関連生物学的代用物(例えば、隣接組織もしくは対側臓器)の検査は、本開示に従って実施され得る。微生物学的検査方法は、以下の表2に示される態様を含み得る:
Figure 2022527061000004
Figure 2022527061000005
本開示は、塩化ナトリウム-ペプトン緩衝溶液(pH7.0)またはリン酸緩衝液(pH7.2)を使用して検査懸濁液を調製し、A.brasiliensis sporesを懸濁することを含み、0.05%のポリソルベート80が緩衝液に添加されてもよい。本開示は、2時間以内、または2℃~8℃で保存される場合、24時間以内に懸濁液を使用することを含む。A.brasiliensisまたはB.subtilisの新鮮な栄養細胞懸濁液を調製し、その後に希釈することの代替法としては、安定胞子懸濁液が調製され、その後にこの胞子懸濁液が適切な量で検査播種に使用される。安定胞子懸濁液は、検証期間中は2°~8°で維持され得る。検査条件を検証するために、検査調製物の代わりに選択希釈液を使用して陰性対照が実施される。微生物の増殖が生じてはならない。製品の検査時には、「製品の検査」に記載されるように陰性対照も実施される。陰性対照が失敗した場合は調査が必要である。微生物学的検査は、USP61、USP63、USP71、USP85 EPセクション2.6.13 非滅菌製品の微生物検査(特定微生物の検査)に従って実施することができ、これらはそれぞれ、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
ブタサイトメガロウイルス(PCMV)の検査に関して、供給源動物は、3ヶ月ごとにPCMVについてスクリーニングされる。しかしながら、帝王切開で得られた子ブタが、その後に閉鎖コロニーで一貫して育てられる場合、こうした子ブタはPCMVに感染しない。PCMVの分析は、本明細書の実施例1の試験中に実施し、下記のPCR法を使用してパンチ生検試料中にPCMVが検出されることはなかった。こうした結果は、鼻腔スワブから得られたPCR結果と一致していた。PCMVの検査には定量的リアルタイムPCRが利用される。Stratagene Mx3005Pを使用してリアルタイムPCRによって標的DNA配列を定量化した。各遺伝子標的に対して配列特異的プライマー及びTaqManプローブを生成させた。標的DNA、800nMのプライマー、200nMのTaqManプローブ、20nMのRox参照色素、及び1×Brilliant III Ultra Fast Master Mixを各25uLのPCR反応液に含めた。PCRサイクリング条件は以下の通りであった:95℃5分のサイクルを1回実施後、95℃10秒の変性及び60℃30秒のアニーリング-伸長反応のサイクルを50回実施し、各伸長反応の後にデータを収集。ゲル抽出増幅産物をクローニングしたInvitrogen TOPOプラスミドを段階希釈したものを定量化用標準物質として使用した。標的DNAの検出は、コピー数が10~106となる直線ダイナミックレンジで行われる。PCMV DNAの定量化については、300ngの異種移植片ブタ腎臓DNAをTaqMan PCRにおいて3連で分析した。PCMV DNAポリメラーゼ遺伝子に特異的なプライマー及びプローブは、PLHV-1との交差反応性が存在しないことが示されている。帝王切開で得られたブタを供給源動物として利用し、得られる閉鎖コロニーでの動物飼育を併せて行い、障壁隔離条件を維持することによって、動物がPCMVを含まないものとみなされる。皮膚に関して、(トリプルノックアウトとは対照的に、またはさらに遺伝的に改変されたブタとさえ異なって)シングルノックアウトブタを使用することで実施例1において安全性及び有効性を示す結果が達成されたことは、同種移植片と同等の性能が得られたことを鑑みると、非常に驚くべきことであることに本発明者らは気付いた。
いくつかの態様では、異種移植製品の検査に使用される分析手順には、下記のものも含まれ得る:
a.USP<71>無菌性。適切なようにトリプティックソイブロス(TSB)または液状チオグリコール酸培地(FTM)に試料を移す。静菌作用及び静真菌作用については、Bactillus subtilisの24時間培養物及びCandida albicansの24時間培養物の100コロニー形成単位(CFU)未満の種菌、ならびに胞子数100未満のAspergilius braseiliensisをTSB試料に添加する。FTM試料に対しては、Staphyloccocus aureusの24時間培養物、Pseudomonas aeruginosaの24時間培養物、及びClostridium sporogenesの24時間培養物の100CFU未満の種菌を添加する。増殖が観察されない場合、その製品は静菌性または静真菌性であることが明らかとなり、USP<71>無菌性検査に不合格である。
b.好気性及び嫌気性細菌培養物適切なようにトリプティックソイブロス(TSB)または液状チオグリコール酸培地(FTM)に試料を移す。潜在的な増殖が可能になるように容器をインキュベートする。微生物が増殖したという証拠が見つからない場合、その製品は、USP<71>に記載の無菌性検査に適合すると判断されることになる。
c.マイコプラズマアッセイUSP<63>。100mLのマイコプラズマHayflickブロスに新鮮な試料を添加し、37℃で最大21日間インキュベートする。2~4日後、7~10日後、14日後、及び21日後に試料を継代培養する。次に、プレートを37℃で最大14日間インキュベートし、マイコプラズマコロニーの存在について調べる。非検出の場合、その製品は、USP<63>に適合することが明らかとなり、マイコプラズマを含まない。
d.エンドトキシンUSP<85>。カブトガニ血球抽出物(LAL)検査の阻害/促進について同じロット由来の3つの試料を検査する。試料当たり40mLのWFIを用いて試料を37℃で1時間抽出する。次に、5~50EU/mLの範囲の標準曲線を用いてLALカイネティック比色法において検証済希釈率で試料を検査する。USP<85>に従ってアッセイを実施する。
e.細胞生存率のためのMTTアッセイ。[3-4,5ジメチルチアゾール-2-イル]-2,5ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)代謝についての生化学的アッセイを使用して医薬品の代謝活性を対照組織試料と比較して試験する。新鮮な異種移植製品組織(陽性対照)もしくは異種移植製品組織の熱不活化ディスク(陰性対照)である陽性対照試料及び陰性対照試料、または異種移植製品の検査品を、MTT溶液(0.5mLのDMEM中0.3mg/mL)を含む黄褐色の微量遠心チューブに入れる。これらのディスクをMTTホルマザンで処理し、CO含量5%の空気の雰囲気下、37℃で180±15分間インキュベートする。それらのディスクを取り出すことによって反応を停止し、環境温度で24時間以内のインキュベートを行うか、または4℃で72時間以内の冷蔵を行うことによってホルマザンを抽出する。この間、試料の遮光を行う。抽出完了後に一定分量を取り、550nmでの吸光度を測定し(630nmを参照波長とする)、標準曲線と比較する。
f.細胞外糖鎖エピトープのIB4アッセイ。細胞上にガラクトシル-a-1,3-ガラクトース(アルファ-Gal)エピトープが存在しないことを、蛍光活性化フローサイトメトリーを使用して決定する。蛍光色素標識型イソレクチン-B4(FITC-I-B4)を用いて全血中の白血球を染色し、野生型陽性対照から得た血液及びGal-T-KO供給源動物から得た血液に対する比較を2回行う。第1に、出生時にすべての供給源動物に検査を行う。第2に、供給源動物の屠殺時に採取した全血を用いて同じ検査を実施し、遺伝子ノックアウトの安定性及びアルファ-Galの陰性表現型について検査する。イソレクチンは、野生型ブタ由来の細胞上のエピトープに結合するが、Gal-T-KOブタ由来の細胞に結合は生じない。このアッセイは、遺伝的に操作された供給源動物中にアルファ-galエピトープが存在しないことの確認となる。遺伝子が自発的に再び活性化し、屠殺後にアルファ-Gal部分が再び発現していることはまずあり得ず、予期することは非合理的であるが、仮にアルファ-Gal部分が含まれることになれば、異種移植製品の有効性に悪影響を及ぼし、異種移植製品が野生型ブタ組織と似たものとなり、以前に実証されたように超急性拒絶反応が生じることになる。
g.PERVウイルスアッセイ。PERV polの定量化 Stratagene MX300Pリアルタイムサーモサイクラー(Agilent Technologies)を使用して、50サイクルのPERVポリメラーゼ定量的TaqMan PCRにおいてRT反応液の1:625希釈液10uLを3連で増幅した。「RT酵素なし」の対照RT反応液の1:25希釈液10uLを同様に処理した。PCR条件では、PERV polのフォワードプライマー及びリバースプライマー(最終濃度800nM)及びPERV polのプローブ(最終濃度200nM)を使用した。20nMのROXレポーター色素(600880 Agilent Technologies)及び0.04ユニット/μLのUNGヌクレアーゼ(N8080096、Life Technologies)が添加されたBrilliant III Ultra Fastマスターミックス(600880 Agilent Technologies)を使用した。サイクル条件では、50℃10分のサイクルを1回実施後、95℃10分のサイクルを1回、95℃10秒の後60℃30秒のサイクルを50回実施し、各サイクルの終了時にデータを収集した。PERV polの絶対コピー数、ならびにブタMHC-I核酸及びブタGAPDH核酸の絶対コピー数をインプットcDNAのナノグラム当たりとして測定した。PERV DNA及びPERV RNAの存在について検査は、本明細書に記載のように解凍したパンチ生検試料、及び洗浄した異種移植製品で行う。
h.組織学及び形態学。異種移植製品の試料を、記載の製造プロセス後に、細胞の形態及び秩序を検査するために採取する。視認検査による顕微鏡下での検証を行って異種移植製品組織の細胞の形態及び秩序が正しく、異常細胞浸潤集団が存在しないことを確かめる。
i.出荷アッセイ試料採取方法論。すべての最終異種移植製品ロット単位が創出された時点で、必要な合否判定基準を得るための製造出荷アッセイにおいて使用するために独立かつ無作為に単位を選択する。こうした単位を、様々な研究業者へのロット出荷用として印を付け、必要なcGMP条件に従って様々な分析検査を実施する。
同様に、ヒトでの臨床使用のための検証に先立って、最終異種移植製品はすべて、材料用のドナーブタを選択するための合否判定基準を満たさなくてはならず、こうした合否判定基準には、(i)規定の系統についての医療記録の審査、(ii)フローサイトメトリーでの評価基準によるアルファ-1,3-ガラクトースの検査結果についての医療記録の審査、(iii)すべてのワクチン接種の実施歴についての医療記録の審査、(iv)ブタの生存期間にわたって実施される監視検査についての医療記録の審査、(v)供給源動物の外来性病因物質スクリーニング、(vi)ブタの生存期間にわたる感染についての医療記録の審査、及び(vi)動物の生存期間中に認められた任意の皮膚異常についての医療記録の審査、が含まれる。
最終異種移植製品の管理方針及び分析検査が製造プロセスの終局時に実施された後で、臨床使用に向けての出荷が行われる。必要な分析検査の結果は、異種移植製品医薬品の各ロットに関するマスターバッチ記録とともに維持される異種移植製品医薬品分析証明書(COA)を介して文書化されることになる。
以下の表3は、異種移植製品材料に関して実施される一連の検査のアッセイ及び結果のリストである。
Figure 2022527061000006
別の態様では、種、系統、地理的起源、組織型、及び生じる徴候を含めて、供給源動物に基づいて開発される外来性病因物質管理方針が含められることが理解されよう。細菌、真菌、マイコプラズマ、及びウイルス微生物を含むように、外来性病因物質についての分析検査が実施され、こうした分析検査には、下記のものが含まれる:
j.細菌を含まない状態-細菌学的なスクリーニングを実施することで、ヒトで懸念が生じる可能性がある生物学的病因物質を医薬品が含まないことを確認する。好気性スクリーニング及び嫌気性スクリーニングの両方を実施して無菌性を確かめる。本明細書に記載のように試料を解凍し、適切なようにトリプティックソイブロス(TSB)または液状チオグリコール酸培地(FTM)に移す。潜在的な増殖が可能になるように容器をインキュベートする。微生物が増殖したという証拠が見つからない場合、その製品は、無菌性検査に適合すると判断されることになる。
k.菌類(真菌)を含まない状態-菌類のスクリーニングを実施することで、懸念が生じる可能性がある真菌物質を医薬品が含まないことを確認する。本明細書に記載のように試料を解凍する。解凍後、試料を大豆-カゼイン消化物寒天に移す。潜在的な増殖が可能になるように容器をインキュベートする。真菌が増殖したという証拠が見つからない場合、その製品は、USP<71>に従う無菌性検査に適合すると判断されることになる。
l.マイコプラズマを含まない状態-マイコプラズマのスクリーニングを実施することで、医薬品がマイコプラズマを含まないことを確認する。本明細書に記載のように試料を解凍し、100mLのマイコプラズマブロスに添加し、37℃で最大21日間インキュベートする。2~4日後、7~10日後、14日後、及び21日後に試料を継代培養する。次に、プレートを37℃で最大14日間インキュベートし、マイコプラズマコロニーの存在について調べる。非検出の場合、その製品は、USP<63>に適合することが明らかとなり、マイコプラズマを含まない。
m.エンドトキシンを含まない状態-エンドトキシンのスクリーニングを実施することで、エンドトキシン及び関連懸念物質を医薬品が含まないことを確認する。カブトガニ血球抽出物(LAL)検査の阻害/促進について同じロット由来の3つの試料を検査する。本明細書に記載のように試料を解凍し、試料当たり40mLのWFIを用いて37℃で1時間抽出する。次に、5~50EU/mLの範囲の標準曲線を用いてLALカイネティック比色法において検証済希釈率で試料を検査する。USP<85>に従ってアッセイを実施する。
n.実施ウイルスアッセイ-ウイルスアッセイを実施することで、懸念が生じる可能性のあるウイルス物質を供給源動物が含まないことを確認する(内因性ウイルスの確認)(以下を参照のこと)。これは、共培養、及び特定の潜在性の内因性ウイルス(PERVを含む)のRT-PCR検査を含む。供給源動物に対してインビボアッセイも実施することで、ロット出荷判定基準の重要側面として動物の健康及びウイルス感染の不在を監視する。PERVはブタ組織に固有のものであるという性質を有するため、これによって、結果が陽性であっても、そのような組織を使用することが可能であるとみなされる。しかしながら、このウイルスをロット出荷に際して同定し、特徴付けることで、異種移植製品のレシピエントを監視するための情報を提供する。
o.細胞生存度アッセイ-MTTアッセイを実施することで、異種移植製品中の細胞が生物学的に活性な状態であることを確認する。ミトコンドリア活性のサロゲートマーカーを陽性(新鮮であり、凍結保存されていない)対照及び陰性(熱変性)対照と比較することで生存度の証拠を得る。異種移植製品が所期の臨床機能を与えるには細胞の活性が必要である。このことは、ロット出荷判定基準として必要であり、組織生存度が、新鮮な組織対照比較物が示す代謝活性の50%を下回るべきでないということが現在確立されている。
p.組織学及び形態学。表皮層及び真皮層をヘマトキシリン・エオシン(H&E)切片染色による視認検査によって顕微鏡下での検証を行って異種移植製品組織及び細胞浸潤集団の細胞の形態及び秩序が正しいことが確かめられる。これを実施することで、異種移植製品に存在する細胞の生理学的な外見及び同一性が適切であることを確認する。異種移植製品は、行われた処理操作が最小限に留まるブタの真皮組織層及び表皮組織層から構成される。このことは、ロット出荷判定基準として必要である。表皮層中の下記の細胞層(最表層から最深層への順に記載される)の証拠を検証する:
i.角質層
ii.顆粒層
iii.有棘層
iv.基底層
真皮層中の下記の細胞構造の証拠を検証する:
v.血管(脈管構造の証拠)
vi.神経
vii.各種腺
viii.毛包
ix.コラーゲン
遺伝的に操作された供給源動物は、任意の外来性DNAもゲノムに導入されておらず、用いられる遺伝子改変は、細胞表面抗原を遍在性に発現させる酵素のコードを担う単一の遺伝子のノックアウトのみである。1つ以上の態様における異種移植製品には、導入遺伝子技術(CD-46トランスジェニックコンストラクトまたはCD-55トランスジェニックコンストラクトなど)が組み込まれていないことが理解されよう。
エンドトキシンのスクリーニングを実施することで、エンドトキシン及び関連懸念物質を医薬品が含まないことが確認される。エンドトキシン非含有状態を保証するためのプロトコールは以下の通りである:カブトガニ血球抽出物(LAL)検査の阻害/促進について同じロット由来の3つの試料を検査する。試料を解凍し、抽出し、USP<85>に従って、5~50EU/mLの範囲の標準曲線を用いてLALカイネティック比色法において検証済希釈率で検査する。
MTTアッセイを実施することで、製品中の細胞が生物学的に活性な状態であることが確認される。ミトコンドリア活性のサロゲートマーカーを陽性(新鮮であり、凍結保存されていない)対照及び陰性(熱変性)対照と比較することで生存度の証拠が得られる。製品が所期の臨床機能及び生存度パラメーター(一態様については、50%~100%の範囲のミトコンドリア活性)を与えるには細胞の活性が必要である。
表皮層及び真皮層をヘマトキシリン・エオシン(H&E)切片染色による視認検査によって顕微鏡下での検証を行って異種移植製品組織及び細胞浸潤集団の細胞の形態及び秩序が正しいことが確かめられる。これを実施することで、製品に存在する細胞の生理学的な外見及び同一性が適切であることが確認される。
皮膚異種移植製品については、表皮層中の下記の細胞層(最表層から最深層への順に記載される)の証拠を検証する:角質層;顆粒層;有棘層;基底層。真皮層中の下記の細胞構造の証拠を検証する:血管、血管系の証拠、神経、様々な腺、毛包、コラーゲン。
異種移植製品は、好気性細菌及び嫌気性細菌、真菌、ウイルス、ならびにマイコプラズマを含まない状態が確実に保持されるようにさらに加工され得る。異種移植製品は、収集直後、収集から1秒以内、2秒以内、3秒以内、4秒以内、5秒以内、6秒以内、7秒以内、8秒以内、9秒以内、10秒以内、10秒~1分以内、1分~1時間以内、1時間~15時間以内、または15時間~24時間以内に、適用可能な無菌手法を使用して医薬品加工特別室の層流フード内の滅菌条件の下で滅菌され、この滅菌は、例えば、UV照射または抗微生物剤/抗真菌剤を1つ以上使用して行われる。一態様では、製品は、抗微生物/抗真菌槽(「抗病原体槽」)に入れられ得る。抗病原体槽は、1つ以上の抗細菌剤(例えば、アンピシリン、セフタジジム、ネオマイシン、ストレプトマイシン、クロラムフェニコール、セファロスポリン、ペニシリン、テトラサイクリン、バンコマイシン、及び同様のもの)、1つ以上の抗真菌剤(例えば、アムホテリシン-B、アゾール、イミダゾール、トリアゾール、チアゾール、カンジシジン、ハマイシン、ナタマイシン、ナイスタチン、リモシジン、アリルアミン、エキノキャンディン、及び同様のもの)、及び/または1つ以上の抗ウイルス剤を含み得る。抗病原体槽は、希釈剤として担体または媒体(例えば、RPMI-1640培地)を含み得る。いくつかの態様では、抗病原体槽は、少なくとも2つの抗細菌剤を含み得る。いくつかの態様では、抗病原体槽は、少なくとも2つの抗細菌剤及び少なくとも1つの抗真菌剤を含み得る。いくつかの態様では、抗病原体槽は、少なくとも4つの薬剤を含み得る。いくつかの態様では、抗病原体槽は、4つ以下、5つ以下、6つ以下、7つ以下、8つ以下、9つ以下、または10個以下の薬剤を含み得る。いくつかの態様では、抗病原体槽は、前述のものを任意の組み合わせで含み得る。
製品は、UV光滅菌を使用して滅菌され得る。例えば、製品は、所望の時間(例えば、0.5分間、1分間、1.5分間、2分間、3分間、4分間、5分間、6分間、またはそれを超える時間)、UVランプの下に置かれた後、反対側にひっくり返され、同じか、または異なる時間、反対側にしてUVランプの下に置かれる。所与の試料がUVに曝露される時間は、滅菌対象となる特定の生物学的病因物質または生物学的病因物質の型によって異なり得る(例えば、後に示される表11に示されるように異なる)。例えば、少なくとも100uW/cmのUV-C強度を有するUVランプを使用して、少なくとも2分間~最大で15分間、12分間、10分間、8分間、6分間、5分間、4分間、3分間、または2.5分間、製品を滅菌し、その後にひっくり返してその反対表面が少なくとも2分間~最大で15分間、12分間、10分間、8分間、6分間、5分間、4分間、3分間、または2.5分間、UVランプに曝露されるようにすることで、UV処理製品を得ることができる。UV-C用量は、少なくとも100,000uW秒/cm~最大で800,000uW秒/cm、700,000uW秒/cm、600,000uW秒/cm、500,000uW秒/cm、400,000uW秒/cm、300,000uW秒/cm、または200,000uW秒/cmである。UV-C用量は、少なくとも200,000uW秒/cm~最大で800,000uW秒/cm、700,000W秒/cm、600,000W秒/cm、500,000W秒/cm、400,000W秒/cm、または300,000uW秒/cmである。少なくとも100uW/cmのUV-C強度を有するUVランプを使用して、少なくとも2分間~最大で15分間、12分間、10分間、8分間、6分間、5分間、4分間、3分間、または2.5分間行われる。
製品加工は、供給源動物の屠殺に始まり、最終製品の生産が完了するまでの連続的かつ自己完結型の分離された単一製造事象として行われる。動物は、家畜銃での安楽死によって安楽死させられ、必要に応じて非通気性滅菌バッグに入れた状態で、供給源動物からの生物学的製品の収集手順が行われることになる手術部屋に運ばれ得る。手術チームのすべてのメンバーが、供給源動物を受け入れる前に完全滅菌手術着を着用(例えば、滅菌着を着用)して、指定の病原体を含まない条件を維持し、場合によっては、手袋を二重に着用して汚染を最小限にとどめるべきであり、外科処理領域及び道具は滅菌される。供給源動物は、無菌様式でバッグ及び容器から取り出される。消毒剤(例えば、クロルヘキシジン)ブラシを用いて手術スタッフによって供給源動物が徹底洗浄され(この洗浄は、例えば、少なくとも1~10分間行われる)、この洗浄では、手術対象となる全動物領域が、そうした領域に定期的にクロルヘキシジンをかけながらくまなく徹底洗浄されることで、確実に洗浄が行きわたるようにされる。開封したBetadineブラシ及び滅菌水すすぎ液を用いて動物の外科処理領域(複数可)が徹底洗浄され(この洗浄は、例えば、1~10分間行われる)、この洗浄によって、手術対象となる全動物領域がくまなく徹底洗浄される。
一態様では、皮膚に関して、本発明に従ってブタから得られる真皮組織からなる全層皮膚移植片創傷被覆材は、培養された表皮自家移植片と併せて使用されるか、または培養された表皮自家移植片と組み合わせて使用されることで、本開示による製品となり、この製品は、本開示の方法において使用することができるものである。適切な基質を確保するには、表皮自家移植片の適用に先立って、創傷床をしっかりと清拭することが必要である。創傷床が表皮自家移植片を受け入れる準備が整ったかを確認するために、本明細書に記載の皮膚製品(例えば、本開示の動物に由来する生物学的皮膚製品)が適用されて接着が確認される。接着が確認されると、この応急的創傷被覆製品が除去され、いくつかの態様では、メッシュ状自家移植を用いて創傷床が被覆され、この自家移植片メッシュ中のギャップを埋めるために1つ以上の培養表皮自家移植片製品が上に被せられる。
創傷清拭は、機械的創傷清拭、化学的創傷清拭、酵素的創傷清拭、またはそれらの組み合わせを含み得る。機械的創傷清拭は、外科的切除(例えば、健康な組織が見えるまで真皮の薄層を除去するための接線切除、または基礎をなす筋膜に到達するまで真皮の全層を除去するための筋膜上切除)を含み得る。接線切除は、壊死組織とともに除去される生存組織を少なく済ますことができるが、典型的には失血が多くなるものであり、筋膜上切除と比較して生理学的ストレス要因が大きくなり、創傷清拭が「不完全」になる可能性が高くなり、失活組織がそのままいくらか残るものである。筋膜上切除では、失血及び手術時間は最少化されるが、熱傷組織とともに除去される健康な組織の量が多くなることが多い。創傷清拭剤には、外来物質及び壊死組織を除去することによって熱傷を浄化することが可能な薬剤が含まれ得る。そのような薬剤は多く知られている。酵素的創傷清拭では、コラゲナーゼ、または細胞外マトリックスのタンパク質を分解する他のタンパク質分解酵素を用いることで、手術を必要とせずに失活組織を一掃することが可能になり、一方で、好ましくは、健康な組織は実質的にインタクトなまま残る。酵素的創傷清拭は、壊死組織を分解するために創傷表面にタンパク分解酵素及び任意選択で他の外来酵素を適用することを含む。酵素的創傷清拭は、比較的緩徐なプロセスであり、他の局所調製物、浸漬、及び被覆材の反復適用と組み合わせて何週間にもわたって実施され得る。代わりに、複数の酵素製品を使用することで酵素的創傷清拭を迅速に達成することができ、こうした酵素製品は、例えば、パイナップル植物の幹から抽出されるもの(例えば、WO98/053850及びWO2006/0006167に開示もの)ならびに商品名Debrase(登録商標)で市販される製品において提供されるものである。酵素的創傷清拭の手順では、一般に、酵素が利用され、こうした酵素は、ブロメライン系酵素、デブリダーゼ(debridase)、コラゲナーゼ、パパイン系酵素、ストレプトキナーゼ、スティラインズ、フィブリノリジン、デオキシリボヌクレアーゼ、オキアミ系酵素、トリプシン、またはそれらの組み合わせなどである。自己分解性の創傷清拭は、マクロファージ及び内因性タンパク分解活性に起因して創傷に生じる健康な組織由来の壊死組織及び焼痂が選択的に液化、分離、及び消化される自然プロセスを増進することに依存するものである。このことは、密封性、半密封性、または湿潤相互作用性の被覆材を使用することによって達成される。酵素的創傷清拭剤には、ブロメライン高含有酵素製品、他のコラゲナーゼ、または失活組織もしくは創傷壊死組織片を浄化する能力を有する他の酵素製品が含まれる。酵素的創傷清拭剤には、ブロメライン高含有酵素製品、他のコラゲナーゼ、または失活組織もしくは創傷壊死組織片を浄化する能力を有する他の酵素製品が含まれる。そのような製品及び方法は、米国特許第8,540,983号、同第8,119,124号、同第7,128,719号、同第7,794,709号、同第8,624,077号、及びUS2009/0010910A1に記載されており、これらの文献はそれぞれ、参照によって本明細書に組み込まれる。
いくつかの態様では、創傷床は、慢性創傷もしくは急性創傷を含むか、または慢性創傷もしくは急性創傷であり得る。慢性創傷には、限定されないが、静脈性下腿潰瘍、褥瘡、及び糖尿病性足部潰瘍が含まれる。急性創傷には、限定されないが、熱傷、外傷、切断創傷、皮膚移植片提供部位、咬創、凍傷、皮膚剥離、及び外科的創傷が含まれる。
真皮が存在しない場合、本発明に従って製造された生物学的製品が利用される。そのような製品からは表皮が除去され(この除去は、例えば、VERSAJET(商標)Hydrosurgeryシステムを用いてブタの真皮を収集する前に行われる)、その結果、真皮のみが残される。次に、対象生物学的製品が患者の皮下組織の上に配置され、本明細書に記載の培養表皮自家移植片プロセスの基質となる。
一態様では、本開示に従って得られる肝臓は、ヒト移植物が患者に移植されるまで、ヒト患者のための応急的フィルターとして体外灌流に利用される。DPF隔離区域内の手術区域において、供給源動物が、全身麻酔(ケタミン、キシラジン、エンフルラン)下に置かれるか、または家畜銃によって安楽死される。次に、指定の病原体を含まない条件の下で供給源動物の肝切除が実施される。供給源動物から得られる肝臓製品は、包装され、ヒトドナー肝臓での現行方式に従う手順が行われる場所に輸送され得る。肝臓ろ過製品を利用するための手順は、例えば、静脈流入用にヒト患者の内頸静脈に動脈カニューレを経皮的に挿入し、静脈流出用に患者の大腿静脈に動脈カニューレを経皮的に挿入することによって実施され得る。これらのカニューレは、バイパス回路に連結され、このバイパス回路には、遠心ポンプ、熱交換器、人工肺、及びローラーポンプが組み込まれている。この回路は、晶質液を用いて開始準備が整えられ、本開示による動物に由来する肝臓が安定流速(例えば、600~1000ml/分)で組み込まれるまでの一定時間(例えば、10~30分)回され、当該肝臓は、晶質液槽において維持され、この晶質液槽には、温かい溶液(例えば、30~40℃)が時折補充される。
ブタからヒトへの異種移植との関連では、各ヒトレシピエントは、その個人に特有の主要組織適合遺伝子複合体(MHC)(クラスI、クラスII、及び/またはクラスIII)を有し、このMHCは、ドナーブタのMHCとは不適合となることが理解されよう。したがって、ドナーブタ移植片がレシピエントに導入されると、ブタMHC分子自体がnon-galの異種抗原として働き、レシピエント由来の免疫応答を誘発することで、移植拒絶反応を引き起こすことが理解されよう。
ヒト白血球抗原(HLA)遺伝子がヒト集団において示す配列多様性は途方もないものである。例えば、HLA-B遺伝子だけも4,000を超えるアレルの存在が知られている。HLA遺伝子の遺伝的多様性においては、異なる抗原の提示効率が異なる様々なアレルが存在し、この遺伝的多様性は、ヒトが曝露される広範な異なる病原体に対する集団レベルの抵抗性が向上するように進化が生じた結果であると考えられる。この遺伝的多様性は、レシピエントの免疫応答が移植後の生着及び生存の結果を左右する最も重要な因子である異種移植の中においては問題になるものでもある。
本発明の一態様によれば、特定の一連の既知ヒトHLA分子を発現するように生物学的に操作されたゲノムを有するドナーブタが提供される。そのようなHLA配列は利用可能であり、例えば、IPD-IMGT/HLAデータベース(ebi.ac.uk/ipd/imgt/hla/にて利用可能)及びinternational ImMunoGeneTics information system(登録商標)(imgt.orgにて利用可能)において利用可能である。例えば、HLA-A1,B8,DR17は、コーカサス人種の中で最も一般に見られるHLAハプロタイプであり、その頻度は5%である。したがって、開示の方法は、本明細書で提供される本開示と組み合わせて既知のMHC/HLA配列情報を使用して実施され得る。
いくつかの態様では、レシピエントのヒト白血球抗原(HLA)遺伝子ならびにMHC(クラスI、クラスII、及び/またはクラスIII)が同定され、マッピングされる。ヒトレシピエントのHLA/MHC配列を把握することは、当該技術分野で知られる任意の数の方法を用いることによって可能であることが理解されよう。例えば、HLA/MHC遺伝子は、通常、標的シークエンシング法(ロングリードシークエンシングまたはロングインサートショートリードシークエンシング)によって型が決定される。慣例的には、HLA型は、2桁分解能(例えば、A*01)で決定されており、この分解能は、血清学的抗原分類とほぼ同じである。より最近では、4桁分解能(例えば、A*01:01)でのHLAの型決定に配列特異的オリゴヌクレオチドプローブ(SSOP)法が使用されており、この分解能によれば、アミノ酸差異を区別可能である。現在のところ、HLAの型を決定するための標的DNAシークエンシングは、他の従来法と比較して最も一般的なHLA型決定手法である。配列ベースの手法では、コード領域及び非コード領域の両方が直接的に決定されるため、それぞれ6桁分解能(例えば、A*01:01:01)及び8桁分解能(例えば、A*01:01:01:01)でのHLA型決定が達成され得る。現存するHLAアレルを新たなアレルまたはヌルアレルと区別する上では、臨床的観点から、最高分解能でHLAの型を決定することが望ましい。かかる配列決定技術は、例えば、Elsner HA,Blasczyk R:(2004)Immunogenetics of HLA null alleles:implications for blood stem cell transplantation.Tissue antigens.64(6):687-695、Erlich RL,et al(2011)Next-generation sequencing for HLA typing of Class I loci.BMC genomics.12:42-10.1186/1471-2164-12-42、Szolek A,et al.(2014)OptiType:Precision HLA typing from next-generation sequencing data.Bioinformatics 30:3310-3316、Nariai N,et al.(2015)HLA-VBSeq:Accurate HLA typing at full resolution from whole-genome sequencing data.BMC Genomics 16:S7、Dilthey AT,et al.(2016)High-accuracy HLA type inference from whole-genome sequencing data using population reference graphs.PLoS Comput Biol 12:e1005151,Xie C.,et al.(2017)Fast and accurate HLA typing from short-read next-generation sequence data with xHLA 114(30)8059-8064に記載されており、これらの各々は参照によりそのすべてが本明細書に組み込まれる。
既知のヒトHLA/MHCまたは個々のレシピエントのシークエンシングされたHLA/MHC配列(複数可)をテンプレートとして利用することで、既知のヒトHLA/MHC配列またはヒトレシピエントのHLA/MHC配列と一致するように(例えば、そうした配列との配列相同性が80%、85%、90%、95%、98%、99%、または100%となるように)ブタ白血球抗原(SLA)/MHC配列を改変することができる。使用すべき既知のヒトレシピエントHLA/MHC配列が同定されるか、またはヒトレシピエントの遺伝子シークエンシングを実施してHLA/MHC配列が得られると、所望のHLA/MHC配列に基づいてブタの細胞中のSLA/MHC配列に対して生物学的再プログラム化を実施することができる。例えば、標的を定めるためのガイドRNA(gRNA)配列を、本開示のブタにいくつか投与することで、ブタの細胞中のSLA/MHC配列がヒトレシピエントのテンプレートHLA/MHC配列によって再プログラム化される。
CRISPR-Cas9を使用することで、ブタ細胞中の特定の天然遺伝子座に位置するMHCアレル全体の迅速かつ無痕跡の交換が媒介される。2つのgRNAを用いてCas9によるマルチプレックス標的化を行うことで、MHCアレルの隣に一本鎖切断または二本鎖切断が導入され、テンプレートHLA/MHC配列(一本鎖DNAテンプレートまたは二本鎖DNAテンプレートとして提供される)での置き換えが可能になる。ある特定の態様では、養母に移される前に、ブタの卵母細胞、卵子、接合体、または未分化胚芽細胞にCRISPR/Cas9要素が注入される。
ある特定の態様では、本開示は、SLAが存在せず、HLAを発現する生物学的に再プログラム化されたブタの胚形成及び生児出生を含む。ある特定の態様では、本開示は、SLAが存在せず、HLAを発現する生物学的に再プログラム化されたブタを交配繁殖させて、SLAが存在せず、HLAを発現する後代を創出することを含む。ある特定の態様では、ブタ接合体への細胞質内マイクロインジェクションによってCRISPR/Cas9要素がブタ接合体に注入される。ある特定の態様では、CRISPR/Cas9要素がブタに注入された後、CRISPR/Cas9で遺伝的に改変された当該ブタの選択的交配繁殖が行われる。ある特定の態様では、CRISPR/Cas9要素がドナーブタに注入された後、当該ブタから細胞、組織、接合体、及び/または臓器が収集される。ある特定の態様では、CRISPR/Cas9要素は、遺伝子編集の制御に必要な要素をすべて含み、こうした要素には、米国特許第9,834,791号(Zhang)に記載の自己不活化に利用される制御性gRNA分子が含まれ、当該文献は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
遺伝的改変は、既知のゲノム編集手法を利用して行うことができ、こうした手法は、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、アデノ随伴ウイルス(AAV)介在性の遺伝子編集、及び規則的な間隔でクラスター化した反復回文配列Cas9(CRISPR-Cas9)などである。こうしたプログラム可能なヌクレアーゼは、DNA二本鎖切断(DSB)を標的位置に生成させることが可能であり、このDSBによって細胞の修復機構の上方制御が促進され、これによって非相同末端結合(NHEJ)のエラープローンプロセスまたは相同組換え修復(HDR)のいずれかが生じ、これらのうち、HDRを外来性のドナーDNAテンプレートの組み込みに使用することができる。CRISPR-Cas9を使用することで、細胞中のウイルス感染を除去することもできる。例えば、CRISPR-Cas9を介する遺伝的改変は、Kelton,W.et.al.,“Reprogramming MHC specificity by CRISPR-Cas9-assisted cassette exchange,”Nature,Scientific Reports,7:45775(2017)(「Kelton」)に記載の様式で実施することができ、当該文献の開示内容は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。したがって、本開示は、CRISPR-Cas9を使用することで、アレル全体(例えば、MHC、HLA、SLAなど)の迅速かつ無痕跡の交換を媒介して再プログラム化を行うことを含む。
一態様では、レシピエントのHLA/MHC遺伝子がシークエンシングされ、レシピエントのHLA/MHC遺伝子に基づいてテンプレートHLA/MHC配列が調製される。別の態様では、本開示のブタを遺伝的に再プログラム化するために、WHOデータベースから得られる既知のヒトHLA/MHC遺伝子型が使用され得る。CRISPR-Cas9プラスミドは、例えばポリメラーゼ連鎖反応を使用して調製され、レシピエントのHLA/MHC配列が、テンプレートとしてプラスミドにクローニングされる。ブタ細胞中のSLA/MHC遺伝子座のCRISPR切断部位が同定され、切断部位を標的とするgRNA配列が1つ以上のCRISPR-Cas9プラスミドにクローニングされる。次に、CRISPR-Cas9プラスミドがブタ細胞に投与され、ブタ細胞のMHC遺伝子座においてCRIPSR/Cas9による切断が生じる。
既知のヒトHLA/MHC配列またはレシピエントのシークエンシングされたHLA/MHC遺伝子と一致する1つ以上のテンプレートHLA/MHC配列を用いてブタ細胞中のSLA/MHC遺伝子座が置き換えられる。SLA/MHC再プログラム化ステップの実施後にブタの細胞がシークエンシングされて、ブタ細胞中のHLA/MHC配列の再プログラム化が成功しているかどうかが決定される。HLA/MHC配列が再プログラム化されたブタから得られる1つ以上の細胞、組織、及び/または臓器がヒトレシピエントに移植される。
ある特定の態様では、HLA/MHC配列が再プログラム化されたブタは、少なくとも一世代または少なくとも二世代にわたって、交配繁殖されてから、異種移植において使用される生存組織、生存臓器、及び/または生存細胞の供給源として使用される。ある特定の態様では、CRISPR/Cas9要素は、PERV活性を担う遺伝子(例えば、pol遺伝子)を不活化するためにも利用され、それによって、ブタドナーからPERVが同時に完全除去され得る。
ドナーSLA/MHCを改変してレシピエントHLA/MHCと一致させる目的については、ヒト組織適合遺伝子複合体及びブタ組織適合遺伝子複合体のゲノム構成を比較してマッピングすることが行われている。例えば、かかるSLAからHLAへのマッピングは、Lunney,J.,“Molecular genetics of the swine major histocompatibility complex、the SLA complex,” Developmental and Comparative Immunology 33:362-374(2009)(「Lunney」)を参照されたい)において見出すことができ、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる。したがって、当業者なら、本開示を踏まえつつ、Lunneyらのマッピングを参照ツールとして使用して効果的かつ効率的にブタ細胞を遺伝的に再プログラム化する。
ドナーSLA/MHCをレシピエントHLA/MHCと一致するように改変すると、既知のヒト遺伝子型または特定のヒトレシピエントのMHC分子と同一または実質的に同一の特定のMHC分子がブタ細胞から発現するようになる。一態様では、本開示は、ブタのゲノムの特定SLA領域の特定部分のみに限って改変を施すことで、ブタの免疫プロファイルを有効に保つ一方で、ヒトレシピエントへの移植時の生物学的製品の免疫原性を、免疫抑制剤の使用が低減または回避され得るように下げることを含む。本開示の態様とは対照的に、先行技術分野の異種移植研究では、免疫抑制剤を使用して拒絶反応に抵抗する必要があった。一態様では、ブタゲノムは、HLA-A、HLA-B、HLA-C、及びDRに対応するノックアウトブタ遺伝子、ならびにノックインHLA-C、HLA-E、HLA-Gに対応するノックアウトブタ遺伝子に再プログラムされる。いくつかの態様では、ブタゲノムは、HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-F、DQ、及びDRに対応するノックアウトブタ遺伝子、ならびにノックインHLA-C、HLA-E、HLA-Gに対応するノックアウトブタ遺伝子に再プログラムされる。いくつかの態様では、ブタゲノムは、HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-F、DQ、及びDRに対応するノックアウトブタ遺伝子、ならびにノックインHLA-C、HLA-E、HLA-G、HLA-F、及びDQに対応するノックアウトブタ遺伝子に再プログラムされる。一態様では、SLA-11;SLA-6、SLA-7、SLA-8;SLA-MIC2;及びSLA-DQA;SLA-DQB1;SLA-DQB2がノックアウトされ、HLA-C;HLA-E;HLA-G;及びHLA-DQがノックインされるようにブタゲノムが再プログラム化される。ある特定の態様では、再プログラム化されたブタゲノムではHLA-C発現が低減される。ヒトの免疫系にとって不可視となるようにブタ細胞を再プログラム化することによって、再プログラム化が未実施であればドナーブタ細胞から発現するブタMHC分子に基づいて再プログラム化未実施時には生じたであろう免疫応答が、この再プログラム化によって最少化または除去されさえする。
したがって、この態様(すなわち、厳密に選択したヒトMHCアレルを発現するようにSLA/MHCを再プログラム化すること)が、異種移植を目的とするブタの細胞、組織、及び臓器に適用されると、野生型ブタから得られるか、あるいはこの再プログラム化が行われておらず、その他の方法で遺伝的に改変されたブタ(例えば、トランスジェニックブタ、または非特異的な遺伝的改変もしくは異なる遺伝的改変が行われたブタ)から得られる細胞、組織、及び臓器と比較して拒絶反応が低減されることになることが理解されよう。
既知のヒトMHC遺伝子型または本明細書に具体的に記載されるレシピエントのMHCをドナーブタの細胞、組織、及び臓器が発現するようにすることを、アルファ-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼ、Neu5Gc、及びβ1,4-N-アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ(B4GALNT2)をドナーブタ細胞から除去すること(例えば、「シングルノックアウト」、「ダブルノックアウト」、または「トリプルノックアウト」)と組み合わせると、本開示の厳密なSLA/MHC再プログラム化が行われていないトリプルノックアウトブタと比較して免疫学的拒絶反応が低減された細胞を有するブタが得られることがさらに理解されよう。
本開示による凍結保存及び保管は、本開示に従って生物学的製品を調製し、容器に入れ、凍結媒体を容器に添加し、密封することを含む。例えば、15%ジメチルスルホキシド(DMSO)凍結保護媒体がブタ胎児血清(FPS)またはドナー血清(FPSが利用不可能な場合)と1:1の比で混合され、ろ過(0.45ミクロン)され、使用するまで4℃に冷却される。その後、容器は、速度段階制御型フリーザー中で、毎分1℃の速度で-40℃に冷却された後、-80℃の温度に急速冷却されることによって凍結される。この凍結プロセスの間に細胞内液がDMSOに置き換わる。凍結保護媒体(例えば、CryoStor)は、凍結保存用バイアルの最大内容量(10ml)から異種移植製品の体積を差し引いた値に基づいて、約40~80%または約50~70%の量で使用される。外科的な使用のために凍結保存された生物学的製品を解凍するには、密封バイアルを約37℃の水槽に約0.5~2分間置いてから容器を空け、滅菌手法を使用して製品を取り出した。その後、周囲の残留DMSOを希釈し、全体的に除去し、細胞生存度が失われないようにするために、(例えば、生理食塩水中で)穏やかに撹拌しながら行う1分間の洗浄を3回実施する段階洗浄によって製品が洗浄される。次に、製品は、外科的に使用され得る。
異種移植製品は、無菌性の保持及びそれに対する損傷阻止を確保するための材料、容器、及びプロセスを使用して加工され、保管され、輸送され、及び/またはその他の様式で取り扱われ得ることが理解されよう。いくつかの態様では、異種移植製品を保護するために、滅菌された非接着材料を使用することができ、これによって、例えば、処理操作、保管、または輸送の間に、異種移植製品が支持され、表面への製品の接着が阻止され、及び/または異種移植製品の自己接着が阻止される。異種移植製品が意図せず接着すると、異種移植製品の完全性が破壊され、その治療的生存度が低下する可能性があり得る。滅菌された非接着材料を含めることで、保護及び/または物理的支持が得られ、接着が阻止される。いくつかの態様では、滅菌された非接着材料は、生物学的または化学的に不活性であり、異種移植製品自体の代謝活性または有効性に直接的に影響を与えない。
本開示の態様は、下記の非限定的な項リストによってさらに説明される:
項目1.移植のための個別化された、ヒト化された、移植可能な細胞、組織、及び臓器のリポジトリを生成及び保存するための生物学的システムであって、前記生物学的システムが、生物学的に活性及び代謝的に活性であり、前記生物学的システムが、ヒトレシピエントへの移植のために非ヒト動物において遺伝的に再プログラムされた細胞、組織、及び臓器を含み、
前記非ヒト動物が、前記遺伝的に再プログラムされたブタから単離された細胞、組織、及び/または臓器の異種移植のための遺伝的に再プログラムされたブタであり、前記遺伝的に再プログラムされたブタが、野生型ブタの主要組織適合性複合体の複数のエクソン領域中の複数のヌクレオチドを、ヒト捕捉参照配列からの複数の合成ヌクレオチドで置き換えるように再プログラムされている核ゲノムを含み、
前記遺伝的に再プログラムされたブタの細胞は、アルファ-Gal、Neu5Gc、及びSDから選択される1つ以上の表面糖鎖エピトープを提示せず、
アルファ-1,3ガラクトシルトランスフェラーゼ、シチジン一リン酸-N-アセチルノイラミン酸ヒドロキシラーゼ(CMAH)、及びβ1,4-N-アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼをコードする遺伝子が、前記遺伝的に再プログラムされたブタが、前記遺伝子によってコードされる表面糖鎖エピトープの機能的発現を欠くように改変され、
前記再プログラムされたゲノムは、以下:i)前記ヒト捕捉参照配列のHLA-A、HLA-B、及びHLA-Cのそれぞれのオルソロガスなエクソン領域に由来するヌクレオチドでの、野生型ブタのSLA-1、SLA-2、及びSLA-3のうちの少なくとも1つの、ならびにii)前記ヒト捕捉参照配列のHLA-E、HLA-F、及びHLA-Gのそれぞれのオルソロガスなエクソン領域に由来するヌクレオチドでの、野生型ブタのSLA-6、SLA-7、及びSLA-8のうちの少なくとも1つの、ならびにiii)前記ヒト捕捉参照配列のHLA-DR及びHLA-DQのそれぞれのオルソロガスなエクソン領域に由来するヌクレオチドでの、野生型ブタのSLA-DR及びSLA-DQのうちの少なくとも1つの、エクソン領域におけるヌクレオチドの部位特異的変異原性置換を含み、
前記再プログラムされたゲノムは、以下のA~C:
A)前記再プログラムされたブタ核ゲノムは、前記ヒト捕捉参照配列からの既知のヒトβ2-ミクログロブリンのオルソロガスなエクソンからのヌクレオチドでの、前記野生型ブタのβ2-ミクログロブリンのエクソン領域におけるヌクレオチドの部位特異的変異原性置換を含む;
B)前記再プログラムされたブタ核ゲノムは、前記ヒト捕捉参照ゲノムによって発現されるベータ2ミクログロブリン糖タンパク質のアミノ酸配列と少なくとも95%同一であるヒト化ベータ2ミクログロブリン(hB2M)ポリペプチド配列であるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む;
C)前記再プログラムされたブタ核ゲノムは、前記ブタの内因性β2-ミクログロブリン遺伝子座において、前記核ゲノムが、前記ヒトレシピエントのβ2-ミクログロブリンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むように再プログラムされるように、再プログラムされている;のいずれか1つを含み、
前記再プログラムされたブタ核ゲノムは、前記遺伝的に再プログラムされたブタが前記野生型ブタの内因性β2-ミクログロブリンポリペプチドの機能的発現を欠くように再プログラムされており、
前記再プログラムが、いかなるフレームシフトまたはフレーム破壊も導入しない、生物学的システム。
項目2.前記遺伝的に再プログラムされたブタが、非トランスジェニックである、項目1に記載の生物学的システム。
項目3.前記野生型ブタのゲノムのイントロン領域が再プログラムされない、項目1または項目2に記載の生物学的システム。
項目4.前記遺伝的に再プログラムされたブタが、少なくとも以下:Ascaris種、cryptosporidium種、Echinococcus、Strongyloids sterocolis、Toxoplasma gondii、Brucella suis、Leptospira種、mycoplasma hyopneumoniae、ブタ生殖器呼吸器症候群、仮性狂犬病、staphylococcus種、Microphyton種、Trichophyton種、ブタインフルエンザ、ブタサイトメガロウイルス、アルテリウイルス、コロナウイルス、Bordetella bronchiseptica、及び家畜関連メチシリン耐性Staphylococcus aureus、の病原体を含まない、項目1~3のいずれか1項またはそれらの組み合わせに記載の生物学的システム。
項目5.前記遺伝的に再プログラムされたブタが、バイオバーデン低減手順に従って維持され、前記手順が、隔離された閉鎖群中で前記ブタを維持することを含み、前記隔離された閉鎖群中のすべての他の動物が、前記病原体を含まないことが確認され、前記ブタが、前記隔離された閉鎖群の外部の任意の非ヒト動物及び動物収容施設との接触から隔離される、項目1~4のいずれか1項またはそれらの組み合わせに記載の生物学的システム。
項目6.前記野生型ブタゲノムが、前記ヒト捕捉参照配列を使用して、SLA-MIC-2遺伝子において、及びSLA-3、SLA-6、SLA-7、SLA-8、SLA-DQ、CTLA-4、PD-L1、EPCR、TBM、TFPI、及びベータ-2-ミクログロブリンをコードするエクソン領域において、再プログラムされたヌクレオチドを含み、前記ヒト細胞、組織、または臓器が、ブタベータ-2-ミクログロブリン、SLA-1、SLA-2、及びSLA-DRの機能的発現を欠く、項目1~4のいずれか1項またはそれらの組み合わせに記載の生物学的システム。
項目7.前記野生型ブタゲノムが、CTLA-4プロモーター及びPD-L1プロモーターのうちの1つ以上において再プログラムされたヌクレオチドを含み、前記CTLA-4プロモーター及び前記PD-L1プロモーターのうちの1つ以上が、前記野生型ブタのCTLA-4及びPD-L1の内因性発現と比較して、再プログラムされたCTLA-4及び再プログラムされたPD-L1のうちの1つまたは両方の発現を増加させるように再プログラムされる、項目1~5のいずれか1項またはそれらの組み合わせに記載の生物学的システム。
項目8.前記合成されたヌクレオチドの総数が、前記合成されたヌクレオチドで前記野生型ブタのゲノムを再プログラムした後に、ヌクレオチドの数に正味の損失または正味の利得がないように、前記置換されたヌクレオチドの総数に等しい、項目1~6のいずれか1項またはそれらの組み合わせに記載の生物学的システム。
項目9.前記複数の合成ヌクレオチドによる前記再プログラムが、前記野生型ブタMHC配列と前記ヒト捕捉参照配列との間で保存されるアミノ酸をコードするコドン領域におけるヌクレオチドの置換を含まない、項目1~7のいずれか1項またはそれらの組み合わせに記載の生物学的システム。
項目10.前記再プログラムされたゲノムが、前記ヒト捕捉参照配列由来のオルソロガスなヌクレオチドでの、前記野生型ブタの前記主要組織適合性複合体におけるヌクレオチドの部位特異的変異原性置換を含む、項目1~8のいずれか1項またはそれらの組み合わせに記載の生物学的システム。
項目11.部位特異的変異原性置換が、前記非ヒト動物を産生するために使用される生殖細胞において作製される、項目1~9のいずれか1項またはそれらの組み合わせに記載の生物学的システム。
項目12.前記ヒト捕捉参照配列が、ヒト患者捕捉配列、ヒト集団特異的ヒト捕捉配列、またはアレル群特異的ヒト捕捉配列である、項目1~10のいずれか1項またはそれらの組み合わせに記載の生物学的システム。
項目13.前記再プログラムされたゲノムが、HLA-A捕捉参照配列のオルソロガスなエクソン領域に由来するヌクレオチドでの、前記野生型ブタのSLA-1のエクソン領域におけるヌクレオチドの部位特異的変異原性置換を含む、項目1~11のいずれか1項またはそれらの組み合わせに記載の生物学的システム。
項目14.前記再プログラムされたゲノムが、HLA-B捕捉参照配列のオルソロガスなエクソン領域に由来するヌクレオチドでの、前記野生型ブタのSLA-2のエクソン領域におけるヌクレオチドの部位特異的変異原性置換を含む、項目1~12のいずれか1項またはそれらの組み合わせに記載の生物学的システム。
項目14.前記再プログラムされたゲノムが、HLA-C捕捉参照配列のオルソロガスなエクソン領域に由来するヌクレオチドでの、前記野生型ブタのSLA-3のエクソン領域におけるヌクレオチドの部位特異的変異原性置換を含む、項目1~13のいずれか1項またはそれらの組み合わせに記載の生物学的システム。
項目15.前記再プログラムされたゲノムが、HLA-E捕捉参照配列のオルソロガスなエクソン領域に由来するヌクレオチドでの、前記野生型ブタのSLA-6のエクソン領域におけるヌクレオチドの部位特異的変異原性置換を含む、項目1~14のいずれか1項またはそれらの組み合わせに記載の生物学的システム。
項目16.前記再プログラムされたゲノムが、HLA-F捕捉参照配列のオルソロガスなエクソン領域に由来するヌクレオチドでの、前記野生型ブタのSLA-7のエクソン領域におけるヌクレオチドの部位特異的変異原性置換を含む、項目1~15のいずれか1項またはそれらの組み合わせに記載の生物学的システム。
項目17.前記再プログラムされたゲノムが、HLA-G捕捉参照配列のオルソロガスなエクソン領域に由来するヌクレオチドでの、前記野生型ブタのSLA-8のエクソン領域におけるヌクレオチドの部位特異的変異原性置換を含む、項目1~16のいずれか1項またはそれらの組み合わせに記載の生物学的システム。
項目18.前記再プログラムされたゲノムが、前記野生型ブタのMHCクラスI鎖関連2(MIC-2)のエクソン領域におけるヌクレオチドの部位特異的変異原性置換を含む、項目1~17のいずれか1項またはそれらの組み合わせに記載の生物学的システム。
項目19.前記再プログラムされたゲノムが、SLA-1、SLA-2、SLA-DR、またはそれらの組み合わせの機能的発現を欠く、項目1~18のいずれか1項またはそれらの組み合わせに記載の生物学的システム。
項目20.前記再プログラムされたゲノムが、HLA-DQA1捕捉参照配列のオルソロガスなエクソン領域に由来する、前記野生型ブタのSLA-DQAのエクソン領域におけるヌクレオチドの部位特異的変異原性置換を含む、項目1~19のいずれか1項またはそれらの組み合わせに記載の生物学的システム。
項目21.前記再プログラムされたゲノムが、HLA-DQB1捕捉参照配列のオルソロガスなエクソン領域に由来する、前記野生型ブタのSLA-DQBのエクソン領域におけるヌクレオチドの部位特異的変異原性置換を含む、項目1~20のいずれか1項またはそれらの組み合わせに記載の生物学的システム。
項目22.前記再プログラムされたゲノムが、前記ヒト捕捉参照配列のHLA-DRA1及びSLA-DRB1のオルソロガスなエクソン領域に由来するヌクレオチドでの、前記野生型ブタのSLA-DRA及びSLA-DRB1のエクソン領域におけるヌクレオチドの部位特異的変異原性置換を含むか、または前記再プログラムされたゲノムが、SLA-DRA及びSLA-DRB1の機能的発現を欠く、項目1~21のいずれか1項またはそれらの組み合わせに記載の生物学的システム。
項目23.前記再プログラムされたゲノムが、前記ヒト捕捉参照配列のHLA-DQA1及びHLA-DQB1のオルソロガスなエクソン領域に由来するヌクレオチドでの、前記野生型ブタのSLA-DQA及びSLA-DQB1のエクソン領域におけるヌクレオチドの部位特異的変異原性置換を含む、項目1~22のいずれか1項またはそれらの組み合わせに記載の生物学的システム。
項目24.前記ヌクレオチドの部位特異的変異原性置換が、前記野生型ブタの核ゲノムと既知のヒト配列との間で保存されないコドンにある、項目1~23のいずれか1項またはそれらの組み合わせに記載の生物学的システム。
項目25.前記再プログラムされたゲノムが、既知のヒトB2-ミクログロブリンのオルソロガスなエクソンに由来するヌクレオチドでの、前記野生型ブタのB2-ミクログロブリンのエクソン領域におけるヌクレオチドの部位特異的変異原性置換を含む、項目1~24のいずれか1項またはそれらの組み合わせに記載の生物学的システム。
項目26.前記再プログラムされたブタ核ゲノムが、前記ヒト捕捉参照ゲノムによって発現されるベータ2ミクログロブリン糖タンパク質のアミノ酸配列と少なくとも95%同一であるヒト化ベータ2ミクログロブリン(hB2M)ポリペプチド配列であるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む、項目1~25のいずれか1項またはそれらの組み合わせに記載の生物学的システム。
項目27.前記核ゲノムが、前記遺伝的に再プログラムされたブタが前記野生型ブタの内因性β2-ミクログロブリンポリペプチドの機能的発現を欠くように再プログラムされている、項目1~26のいずれか1項またはそれらの組み合わせに記載の生物学的システム。
項目28.前記核ゲノムが、前記ブタの内因性β2-ミクログロブリン遺伝子座において、前記核ゲノムが、前記ヒト捕捉参照配列のβ2-ミクログロブリンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むように再プログラムされているように、再プログラムされている、項目1~27のいずれか1項またはそれらの組み合わせに記載の生物学的システム。
項目29.前記再プログラムされたゲノムが、SLA-3、SLA-6、SLA-7、SLA-8、及びMIC-2のエクソン領域におけるヌクレオチドの部位特異的変異原性置換を含む、項目1~28のいずれか1項またはそれらの組み合わせに記載の生物学的システム。
項目30.前記再プログラムされたゲノムが、SLA-DQ及びMIC-2のエクソン領域におけるヌクレオチドの部位特異的変異原性置換を含む、項目1~29のいずれか1項またはそれらの組み合わせに記載の生物学的システム。
項目31.前記再プログラムされたゲノムが、SLA-3、SLA-6、SLA-7、SLA-8、SLA-DQ、及びMIC-2におけるヌクレオチドの部位特異的変異原性置換を含む、項目1~30のいずれか1項またはそれらの組み合わせに記載の生物学的システム。
項目32.前記再プログラムされたゲノムが、SLA-DR、SLA-1、及び/またはSLA-2の機能的発現を欠く、項目1~31のいずれか1項またはそれらの組み合わせに記載の生物学的システム。
項目33.前記核ゲノムが、フレームシフト、挿入変異、欠失変異、ミスセンス変異、及びナンセンス変異が存在しない、前記エクソン領域のスカーレス交換を使用して再プログラムされる、項目1~32のいずれか1項またはそれらの組み合わせに記載の生物学的システム。
項目34.前記核ゲノムが、フレームシフト、ナンセンス、またはミスセンス変異を介してタンパク質発現の破壊を引き起こし得る、いかなる正味の挿入、欠失、切断、または他の遺伝子改変も導入せずに再プログラムされる、項目1~33のいずれか1項またはそれらの組み合わせに記載の生物学的システム。
項目35.前記核ゲノムのイントロン領域におけるヌクレオチドが改変されない、項目1~34のいずれか1項またはそれらの組み合わせに記載の生物学的システム。
項目36.前記核ゲノムが、前記再プログラムされたエクソン領域においてホモ接合であるように再プログラムされる、項目1~35のいずれか1項またはそれらの組み合わせに記載の生物学的システム。
項目37.前記核ゲノムが、ポリペプチドの細胞外、表現型表面発現がヒトレシピエントにおいて免疫寛容性であるように再プログラムされる、項目1~36のいずれか1項またはそれらの組み合わせに記載の生物学的システム。
項目38.前記核ゲノムが、CTLA-4プロモーター配列を再プログラムすることによって、細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)の発現が増加するように再プログラムされる、項目1~37のいずれか1項またはそれらの組み合わせに記載の生物学的システム。
項目39.前記再プログラムされたゲノムが、ヒト捕捉参照配列CTLA-4のオルソロガスなエクソン領域に由来するヌクレオチドでの、前記野生型CTLA-4のエクソン領域におけるヌクレオチドの部位特異的変異原性置換を含む、項目1~38のいずれか1項またはそれらの組み合わせに記載の生物学的システム。
項目40.前記再プログラムされた核ゲノムが、前記ヒト捕捉参照ゲノムによって発現されるCTLA-4と少なくとも95%同一であるヒト化CTLA-4ポリペプチド配列であるタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む、項目1~39のいずれか1項またはそれらの組み合わせに記載の生物学的システム。
項目41.前記核ゲノムが、PD-L1プロモーター配列を再プログラムすることによって、プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)の発現が増加するように再プログラムされる、項目1~40のいずれか1項またはそれらの組み合わせに記載の生物学的システム。
項目42.前記再プログラムされたゲノムが、既知のヒトPD-L1のオルソロガスなエクソンに由来するヌクレオチドでの、前記野生型PD-L1のエクソン領域におけるヌクレオチドの部位特異的変異原性置換を含む、項目1~41のいずれか1項またはそれらの組み合わせに記載の生物学的システム。
項目43.前記再プログラムされた核ゲノムが、前記ヒト捕捉参照ゲノムによって発現されるPD-L1と少なくとも95%同一であるヒト化PD-L1ポリペプチド配列であるタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む、項目1~42のいずれか1項またはそれらの組み合わせに記載の生物学的システム。
項目44.項目1~43のいずれか1項またはそれらの組み合わせに記載の生物学的システムから得られた、遺伝的に再プログラムされた、生物学的に活性及び代謝活性な、非ヒト細胞、組織、または臓器。
項目45.前記遺伝的に再プログラムされた、生物学的に活性及び代謝的に活性な非ヒト細胞が、幹細胞、胚性幹細胞、多能性幹細胞、または分化幹細胞である、項目44に記載の、遺伝的に再プログラムされた、生物学的に活性及び代謝的に活性な非ヒト細胞、組織、または臓器。
項目46.前記幹細胞が、造血幹細胞である、項目45に記載の、遺伝的に再プログラムされた、生物学的に活性及び代謝活性な非ヒト細胞、組織、または臓器。
項目47.前記遺伝的に再プログラムされた、生物学的に活性及び代謝的に活性な非ヒト組織が、神経、骨、または皮膚である、項目44に記載の、遺伝的に再プログラムされた、生物学的に活性及び代謝的に活性な非ヒト細胞、組織、または臓器。
項目48.前記遺伝的に再プログラムされた、生物学的に活性及び代謝的に活性な非ヒト臓器が、固形臓器である、項目44に記載の、遺伝的に再プログラムされた、生物学的に活性及び代謝的に活性な非ヒト細胞、組織、または臓器。
項目49.アルファ-Gal、Neu5Gc、及びSDから選択される表面糖鎖エピトープの機能的発現を欠き、かつヒト捕捉参照配列のヒト化表現型を発現するように遺伝的に再プログラムされる核ゲノムを含む、遺伝的に再プログラムされたブタを調製する方法であって、
a.ブタ胎児線維芽細胞、ブタ接合体、ブタ誘導多能性幹細胞(IPSC)、またはブタ生殖細胞を得ることと、
b.a)中の前記細胞を、機能的アルファ-1,3ガラクトシルトランスフェラーゼ、シチジン一リン酸-N-アセチルノイラミン酸ヒドロキシラーゼ(CMAH)、及びβ1,4,N-アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼを欠くように遺伝子的に改変することと、
c.i)前記ヒト捕捉参照配列のHLA-A、HLA-B、及びHLA-Cのそれぞれのオルソロガスなエクソン領域に由来するヌクレオチドでの、野生型ブタのSLA-1、SLA-2、及びSLA-3のうちの少なくとも1つの、ならびにii)前記ヒト捕捉参照配列のHLA-E、HLA-F、及びHLA-Gのそれぞれのオルソロガスなエクソン領域に由来するヌクレオチドでの、野生型ブタのSLA-6、SLA-7、及びSLA-8のうちの少なくとも1つの、ならびにiii)前記ヒト捕捉参照配列のHLA-DR及びHLA-DQのそれぞれのオルソロガスなエクソン領域に由来するヌクレオチドでの、野生型ブタのSLA-DR及びSLA-DQのうちの少なくとも1つの、エクソン領域におけるヌクレオチドの部位特異的変異原性置換のために、規則的な間隔でクラスター化した短鎖反復回文配列(CRISPR/Cas)を用いて、b)中の前記細胞を遺伝的に再プログラムすることと、
ここで、前記野生型ブタのゲノムのイントロン領域は再プログラムされておらず、
前記再プログラムされたゲノムは、以下のA~C:
A)前記再プログラムされたブタ核ゲノムは、前記ヒト捕捉参照配列からの既知のヒトβ2-ミクログロブリンのオルソロガスなエクソンからのヌクレオチドでの、前記野生型ブタのβ2-ミクログロブリンのエクソン領域におけるヌクレオチドの部位特異的変異原性置換を含む;
B)前記再プログラムされたブタ核ゲノムは、前記ヒト捕捉参照ゲノムによって発現されるベータ2ミクログロブリンと少なくとも95%同一であるヒト化ベータ2ミクログロブリン(hB2M)ポリペプチド配列であるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む;
C)前記再プログラムされたブタ核ゲノムは、前記遺伝子再プログラムされたブタが、前記野生型ブタの内因性β2-ミクログロブリンポリペプチドの機能的発現を欠くように再プログラムされ、前記再プログラムされたブタ核ゲノムは、ブタの内因性β2-ミクログロブリン遺伝子座において、前記核ゲノムが、前記ヒトレシピエントのβ2-ミクログロブリンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むように再プログラムされている;の少なくとも1つを含み、
前記再プログラムは、いかなるフレームシフトまたはフレーム破壊も導入しておらず、
d.c)中の前記遺伝的に再プログラムされた細胞から胚を生成することと、
e.前記胚を代用ブタに移植し、前記移植された胚を前記代用ブタ内で成長させることと、を含む、方法。
項目50.ステップ(a)が、前記ヒト捕捉参照配列からの主要組織適合性複合体配列のオルソロガスなエクソン領域からのヌクレオチドでの、野生型ブタの主要な組織適合性複合体の複数のエクソン領域における複数のヌクレオチドの置き換えをさらに含み、前記置き換えが、いかなるフレームシフトまたはフレーム破壊も導入しない、項目49に記載の方法。
項目51.前記置き換えが、前記既知のヒト主要組織適合性複合体配列に由来するオルソロガスなヌクレオチドでの、前記野生型ブタの前記主要組織適合性複合体におけるヌクレオチドの部位特異的変異原性置換を含む、項目49もしくは50またはそれらの組み合わせに記載の方法。
項目52.前記ヒト捕捉参照配列が、ヒト患者捕捉配列、ヒト集団特異的ヒト捕捉配列、またはアレル群特異的ヒト捕捉配列である、項目49~51のいずれか1項またはそれらの組み合わせに記載の方法。
項目53.前記オルソロガスなエクソン領域が、前記野生型ブタの主要組織適合性複合体の1つ以上の多型糖タンパク質である、項目49~52のいずれか1項またはそれらの組み合わせに記載の方法。
項目54.
前記代理ブタに前記胚を埋め込み、前記胚を妊娠させ、帝王切開によって前記代理ブタから子ブタを出産させることと、
少なくとも下記:
(i)糞便物質中のAscaris種、cryptosporidium種、Echinococcus、Strongyloids sterocolis、及びToxoplasma gondii、
(ii)抗体力価を決定することによる、Leptospira種、Mycoplasma hyopneumoniae、ブタ生殖器呼吸器症候群ウイルス(PRRSV)、仮性狂犬病、伝染性胃腸炎ウイルス(TGE)/ブタ呼吸器コロナウイルス、及びToxoplasma Gondii、
(iii)ブタインフルエンザ、
(iv)細菌培養によって決定される以下の細菌病原体:Bordetella bronchisceptica、コアグラーゼ陽性ブドウ球菌、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌、家畜関連メチシリン耐性Staphylococcus aureus(LA MRSA)、Microphyton、及びTrichophyton spp.、
(v)ブタサイトメガロウイルス、ならびに
(vi)Brucella suis、の人畜共通感染症病原体を前記子ブタが含まないことを確認することと、
バイオバーデン低減手順に従って前記子ブタを維持することであって、前記手順が、隔離された閉鎖群中で前記子ブタを維持することを含み、前記隔離された閉鎖群中のすべての他の動物が、前記人畜共通感染症病原体を含まないことが確認され、前記子ブタが、前記隔離された閉鎖群の外部の任意の非ヒト動物及び動物収容施設との接触から隔離される、前記維持することと、をさらに含む、項目49~53のいずれか1項またはそれらの組み合わせに記載の方法。
項目55.前記野生型ブタゲノムが、前記ヒト捕捉参照配列を使用して、SLA-MIC-2遺伝子において、及びSLA-3、SLA-6、SLA-7、SLA-8、SLA-DQ、CTLA-4、PD-L1、EPCR、TBM、TFPI、及びベータ-2-ミクログロブリンをコードするエクソン領域において、再プログラムされたヌクレオチドを含み、前記ヒト細胞、組織、または臓器が、ブタベータ-2-ミクログロブリン、DR、SLA-1、及びSLA-SLA-2の機能的発現を欠く、項目49~54のいずれか1項またはそれらの組み合わせに記載の方法。
項目56.前記野生型ブタゲノムが、CTLA-4プロモーター及びPD-L1プロモーターのうちの49つ以上において再プログラムされたヌクレオチドを含み、前記CTLA-4プロモーター及び前記PD-L1プロモーターのうちの1つ以上が、前記野生型ブタのCTLA-4及びPD-L1の内因性発現と比較して、再プログラムされたCTLA-4及び再プログラムされたPD-L1のうちの1つまたは両方の発現を増加させるように再プログラムされる、項目1~55のいずれか1項またはそれらの組み合わせに記載の方法。
項目57.前記合成されたヌクレオチドの総数が、前記合成されたヌクレオチドで前記野生型ブタのゲノムを再プログラムした後に、ヌクレオチドの数に正味の損失または正味の利得がないように、前記置換されたヌクレオチドの総数に等しい、項目49~56のいずれか1項またはそれらの組み合わせに記載の方法。
項目58.前記複数の合成ヌクレオチドによる前記再プログラムが、前記野生型ブタMHC配列と前記ヒト捕捉参照配列との間で保存されるアミノ酸をコードするコドン領域におけるヌクレオチドの置換を含まない、項目49~57のいずれか1項またはそれらの組み合わせに記載の方法。
項目59.前記再プログラムされたゲノムが、前記ヒト捕捉参照配列由来のオルソロガスなヌクレオチドでの、前記野生型ブタの前記主要組織適合性複合体におけるヌクレオチドの部位特異的変異原性置換を含む、項目49~58のいずれか1項またはそれらの組み合わせに記載の方法。
項目60.部位特異的変異原性置換が、前記非ヒト動物を産生するために使用される生殖細胞において作製される、項目49~59のいずれか1項またはそれらの組み合わせに記載の方法。
項目61.前記ヒト捕捉参照配列が、ヒト患者捕捉配列、ヒト集団特異的ヒト捕捉配列、またはアレル群特異的ヒト捕捉配列である、項目49~60のいずれか1項またはそれらの組み合わせに記載の方法。
項目62.前記再プログラムされたゲノムが、HLA-A捕捉参照配列のオルソロガスなエクソン領域に由来するヌクレオチドでの、前記野生型ブタのSLA-1のエクソン領域におけるヌクレオチドの部位特異的変異原性置換を含む、項目49~61のいずれか1項またはそれらの組み合わせに記載の方法。
項目63.前記再プログラムされたゲノムが、HLA-B捕捉参照配列のオルソロガスなエクソン領域に由来するヌクレオチドでの、前記野生型ブタのSLA-2のエクソン領域におけるヌクレオチドの部位特異的変異原性置換を含む、項目49~62のいずれか1項またはそれらの組み合わせに記載の方法。
項目64.前記再プログラムされたゲノムが、HLA-C捕捉参照配列のオルソロガスなエクソン領域に由来するヌクレオチドでの、前記野生型ブタのSLA-3のエクソン領域におけるヌクレオチドの部位特異的変異原性置換を含む、項目49~63のいずれか1項またはそれらの組み合わせに記載の方法。
項目65.前記再プログラムされたゲノムが、HLA-E捕捉参照配列のオルソロガスなエクソン領域に由来するヌクレオチドでの、前記野生型ブタのSLA-6のエクソン領域におけるヌクレオチドの部位特異的変異原性置換を含む、項目49~64のいずれか1項またはそれらの組み合わせに記載の方法。
項目66.前記再プログラムされたゲノムが、HLA-F捕捉参照配列のオルソロガスなエクソン領域に由来するヌクレオチドでの、前記野生型ブタのSLA-7のエクソン領域におけるヌクレオチドの部位特異的変異原性置換を含む、項目49~65のいずれか1項またはそれらの組み合わせに記載の方法。
項目67.前記再プログラムされたゲノムが、HLA-G捕捉参照配列のオルソロガスなエクソン領域に由来するヌクレオチドでの、前記野生型ブタのSLA-8のエクソン領域におけるヌクレオチドの部位特異的変異原性置換を含む、項目49~66のいずれか1項またはそれらの組み合わせに記載の方法。
項目68.前記再プログラムされたゲノムが、前記野生型ブタのMHCクラスI鎖関連2(MIC-2)のエクソン領域におけるヌクレオチドの部位特異的変異原性置換を含む、項目49~67のいずれか1項またはそれらの組み合わせに記載の方法。
項目69.前記再プログラムされたゲノムが、SLA-1、SLA-2、SLA-DR、またはそれらの組み合わせの機能的発現を欠く、項目49~68のいずれか1項またはそれらの組み合わせに記載の方法。
項目70.前記再プログラムされたゲノムが、HLA-DQA1捕捉参照配列のオルソロガスなエクソン領域に由来する、前記野生型ブタのSLA-DQAのエクソン領域におけるヌクレオチドの部位特異的変異原性置換を含む、項目49~69のいずれか1項またはそれらの組み合わせに記載の方法。
項目71.前記再プログラムされたゲノムが、HLA-DQB1捕捉参照配列のオルソロガスなエクソン領域に由来する、前記野生型ブタのSLA-DQBのエクソン領域におけるヌクレオチドの部位特異的変異原性置換を含む、項目49~70のいずれか1項またはそれらの組み合わせに記載の方法。
項目72.前記再プログラムされたゲノムが、前記ヒト捕捉参照配列のHLA-DRA1及びHLA-DRB1のオルソロガスなエクソン領域に由来するヌクレオチドでの、前記野生型ブタのSLA-DRA及びSLA-DRB1のエクソン領域におけるヌクレオチドの部位特異的変異原性置換を含む、項目49~71のいずれか1項またはそれらの組み合わせに記載の方法。
項目73.前記再プログラムされたゲノムが、前記ヒト捕捉参照配列のHLA-DQA1及びHLA-DQB1のオルソロガスなエクソン領域に由来するヌクレオチドでの、前記野生型ブタのSLA-DQA及びSLA-DQB1のエクソン領域におけるヌクレオチドの部位特異的変異原性置換を含む、項目49~72のいずれか1項またはそれらの組み合わせに記載の方法。
項目74.前記ヌクレオチドの部位特異的変異原性置換が、前記野生型ブタの核ゲノムと前記既知のヒト配列との間で保存されないコドンにある、項目49~73のいずれか1項またはそれらの組み合わせに記載の方法。
項目75.前記再プログラムされたゲノムが、既知のヒトB2-ミクログロブリンのオルソロガスなエクソンに由来するヌクレオチドでの、前記野生型ブタのB2-ミクログロブリンのエクソン領域におけるヌクレオチドの部位特異的変異原性置換を含む、項目49~74のいずれか1項またはそれらの組み合わせに記載の方法。
項目76.前記再プログラムされたブタ核ゲノムが、前記ヒト捕捉参照ゲノムによって発現されるベータ2ミクログロブリン糖タンパク質のアミノ酸配列と少なくとも95%同一であるヒト化ベータ2ミクログロブリン(hB2M)ポリペプチド配列であるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む、項目49~75のいずれか1項またはそれらの組み合わせに記載の方法。
項目77.前記核ゲノムが、前記遺伝的に再プログラムされたブタが前記野生型ブタの内因性β2-ミクログロブリンポリペプチドの機能的発現を欠くように再プログラムされている、項目49~76のいずれか1項またはそれらの組み合わせに記載の方法。
項目78.前記核ゲノムが、前記ブタの内因性β2-ミクログロブリン遺伝子座において、前記核ゲノムが、前記ヒト捕捉参照配列のβ2-ミクログロブリンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むように再プログラムされるように、再プログラムされている、項目49~77のいずれか1項またはそれらの組み合わせに記載の方法。
項目79.前記再プログラムされたゲノムが、SLA-3、SLA-6、SLA-7、SLA-8、及びMIC-2のエクソン領域におけるヌクレオチドの部位特異的変異原性置換を含む、項目49~78のいずれか1項またはそれらの組み合わせに記載の方法。
項目80.前記再プログラムされたゲノムが、SLA-DQ及びMIC-2のエクソン領域におけるヌクレオチドの部位特異的変異原性置換を含む、項目49~79のいずれか1項またはそれらの組み合わせに記載の方法。
項目81.前記再プログラムされたゲノムが、SLA-3、SLA-6、SLA-7、SLA-8、SLA-DQ、及びMIC-2におけるヌクレオチドの部位特異的変異原性置換を含む、項目49~80のいずれか1項またはそれらの組み合わせに記載の方法。
項目82.前記再プログラムされたゲノムが、SLA-DR、SLA-1、及び/またはSLA-2の機能的発現を欠く、項目49~81のいずれか1項またはそれらの組み合わせに記載の方法。
項目83.前記核ゲノムが、フレームシフト、挿入変異、欠失変異、ミスセンス変異、及びナンセンス変異が存在しない、前記エクソン領域のスカーレス交換を使用して再プログラムされる、項目49~82のいずれか1項またはそれらの組み合わせに記載の方法。
項目84.前記核ゲノムが、フレームシフト、ナンセンス、またはミスセンス変異を介してタンパク質発現の破壊を引き起こし得る、いかなる正味の挿入、欠失、切断、または他の遺伝子改変も導入せずに再プログラムされる、項目49~83のいずれか1項またはそれらの組み合わせに記載の方法。
項目85.前記核ゲノムのイントロン領域におけるヌクレオチドが改変されない、項目49~84のいずれか1項またはそれらの組み合わせに記載の方法。
項目86.前記核ゲノムが、前記再プログラムされたエクソン領域においてホモ接合であるように再プログラムされる、項目49~85のいずれか1項またはそれらの組み合わせに記載の方法。
項目87.前記核ゲノムが、ポリペプチドの細胞外、表現型表面発現がヒトレシピエントにおいて免疫寛容性であるように再プログラムされる、項目49~86のいずれか1項またはそれらの組み合わせに記載の方法。
項目88.前記核ゲノムが、CTLA-4プロモーター配列を再プログラムすることによって、細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)の発現が増加するように再プログラムされる、項目49~87のいずれか1項またはそれらの組み合わせに記載の方法。
項目89.前記再プログラムされたゲノムが、ヒト捕捉参照配列CTLA-4のオルソロガスなエクソン領域に由来するヌクレオチドでの、前記野生型CTLA-4のエクソン領域におけるヌクレオチドの部位特異的変異原性置換を含む、項目49~88のいずれか1項またはそれらの組み合わせに記載の方法。
項目90.前記再プログラムされた核ゲノムが、前記ヒト捕捉参照ゲノムによって発現されるCTLA-4と少なくとも95%同一であるヒト化CTLA-4ポリペプチド配列であるタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む、項目49~89のいずれか1項またはそれらの組み合わせに記載の方法。
項目91.前記核ゲノムが、PD-L1プロモーター配列を再プログラムすることによって、プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)の発現が増加するように再プログラムされる、項目49~90のいずれか1項またはそれらの組み合わせに記載の方法。
項目92.前記再プログラムされたゲノムが、既知のヒトPD-L1のオルソロガスなエクソンに由来するヌクレオチドでの、前記野生型PD-L1のエクソン領域におけるヌクレオチドの部位特異的変異原性置換を含む、項目49~91のいずれか1項またはそれらの組み合わせに記載の方法。
項目93.前記再プログラムされた核ゲノムが、前記ヒト捕捉参照ゲノムによって発現されるPD-L1と少なくとも95%同一であるヒト化PD-L1ポリペプチド配列であるタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む、項目49~92のいずれか1項またはそれらの組み合わせに記載の方法。
項目94.レシピエントヒトにおける、異種移植細胞、組織、または臓器に対する少なくとも部分的な免疫寛容を誘導する方法であって、
項目1~48のいずれか1項またはそれらの組み合わせに記載の生物学的システムから得られた非ヒト細胞、組織、または臓器を産生するかまたは得ることであって、前記野生型ブタゲノムが、前記ヒト捕捉参照配列を使用して、SLA-MIC-2遺伝子において、ならびに前記野生型ブタのMHCクラスIa、MHCクラスIb、MHCクラスII、及びベータ-2-ミクログロブリンをコードする1つ以上のエクソン領域において、再プログラムされたヌクレオチドを含み、前記ヒト細胞、組織、または臓器が、ブタベータ-2-ミクログロブリンの機能的発現を欠く、前記産生するかまたは得ることと、
前記非ヒト細胞、組織、または臓器を前記レシピエントヒトに移植することと、を含む、方法。
項目95.異種移植片のナチュラルキラー細胞媒介性拒絶反応を低減する方法であって、
項目1~48のいずれか1項またはそれらの組み合わせに記載の生物学的システムから得られた非ヒト細胞、組織、または臓器を産生するかまたは得ることであって、前記野生型ブタゲノムが、前記ヒト捕捉参照配列を使用して、SLA-MIC-2遺伝子において、ならびに前記野生型ブタのMHCクラスIa、MHCクラスIb、MHCクラスII、及びベータ-2-ミクログロブリンの1つ以上をコードするエクソン領域において、再プログラムされたヌクレオチドを含み、前記ヒト細胞、組織、または臓器が、ブタベータ-2-ミクログロブリンの機能的発現を欠く、前記野生型ブタゲノムが、前記野生型ブタのCTLA-4及びPD-L1の1つ以上をコードするエクソン領域において、再プログラムされたヌクレオチドを含む、前記産生するかまたは得ることと、
前記非ヒト細胞、組織、または臓器を前記レシピエントヒトに移植することと、を含む、前記方法。
項目96.異種移植片の細胞傷害性T細胞リンパ球媒介性拒絶反応を低減する方法であって、
項目1~48のいずれか1項に記載の生物学的システムから得られた非ヒト細胞、組織、または臓器を産生するかまたは得ることであって、前記野生型ブタゲノムが、前記ヒト捕捉参照配列を使用して、SLA-MIC-2遺伝子において、ならびに前記野生型ブタのMHCクラスIa、MHCクラスIb、MHCクラスII、及びベータ-2-ミクログロブリンの1つ以上をコードするエクソン領域において、再プログラムされたヌクレオチドを含み、前記ヒト細胞、組織、または臓器が、ブタベータ-2-ミクログロブリンの機能的発現を欠く、前記野生型ブタゲノムが、前記野生型ブタのCTLA-4及びPD-L1の1つ以上をコードするエクソン領域において、再プログラムされたヌクレオチドを含む、前記産生するかまたは得ることと、
前記非ヒト細胞、組織、または臓器を前記ヒトレシピエントに移植することと、を含む、前記方法。
項目97.レシピエントヒトにおける、異種移植細胞、組織、または臓器に対する凝固性及び/または血栓性虚血を予防または低減する方法であって、
項目1~48のいずれか1項またはそれらの組み合わせに記載の生物学的システムから得られた非ヒト細胞、組織、または臓器を産生するかまたは得ることであって、前記野生型ブタゲノムが、前記ヒト捕捉参照配列を使用して、SLA-MIC-2遺伝子において、ならびに前記野生型ブタのMHCクラスIa、MHCクラスIb、MHCクラスII、及びベータ-2-ミクログロブリンの1つ以上をコードするエクソン領域において、再プログラムされたヌクレオチドを含み、前記ヒト細胞、組織、または臓器が、ブタベータ-2-ミクログロブリンの機能的発現を欠く、前記野生型ブタゲノムが、前記野生型ブタの内皮細胞タンパク質C受容体(EPCR)、トロンボモジュリン(TBM)、及び組織因子経路阻害剤(TFPI)の1つ以上をコードするエクソン領域において、再プログラムされたヌクレオチドを含む、前記産生するかまたは得ることと、
前記非ヒト細胞、組織、または臓器を前記ヒトレシピエントに移植することと、を含む、前記方法。
項目98.異種移植片のMHCクラスIa媒介性拒絶反応を低減する方法であって、
項目1~48のいずれか1項またはそれらの組み合わせに記載の生物学的システムから得られた非ヒト細胞、組織、または臓器を産生するかまたは得ることであって、前記野生型ブタゲノムが、前記ヒト捕捉参照配列を使用して、SLA-MIC-2遺伝子において、ならびにSLA-3及び前記野生型ブタのMHCクラスIb、MHCクラスII、及びベータ-2-ミクログロブリンの1つ以上をコードするエクソン領域において、再プログラムされたヌクレオチドを含み、前記ヒト細胞、組織、または臓器が、ブタベータ-2-ミクログロブリン、SLA-1、及びSLA-2の機能的発現を欠く、前記産生するかまたは得ることと、
前記非ヒト細胞、組織、または臓器を前記レシピエントヒトに移植することと、を含む、前記方法。
項目99.異種移植片のMHCクラスIb媒介性拒絶反応を低減する方法であって、
項目1~48のいずれか1項またはそれらの組み合わせに記載の生物学的システムから得られた非ヒト細胞、組織、または臓器を産生するかまたは得ることであって、前記野生型ブタゲノムが、前記ヒト捕捉参照配列を使用して、SLA-MIC-2遺伝子において、ならびにSLA-6、SLA-7、及びSLA-8、ならびに前記野生型ブタのMHCクラスIa、MHCクラスII、及びベータ-2-ミクログロブリンの1つ以上をコードするエクソン領域において、再プログラムされたヌクレオチドを含み、前記ヒト細胞、組織、または臓器が、ブタベータ-2-ミクログロブリンの機能的発現を欠く、前記産生するかまたは得ることと、
前記非ヒト細胞、組織、または臓器を前記ヒトレシピエントに移植することと、を含む、前記方法。
項目100.異種移植片のMHCクラスII媒介性拒絶反応を低減する方法であって、
項目1~48のいずれか1項またはそれらの組み合わせに記載の生物学的システムから得られた非ヒト細胞、組織、または臓器を産生するかまたは得ることであって、前記野生型ブタゲノムが、前記ヒト捕捉参照配列を使用して、SLA-MIC-2遺伝子において、ならびにSLA-DR及びSLA-DQの少なくとも1つ、ならびに前記野生型ブタのMHCクラスIa、MHCクラスIb、及びベータ-2-ミクログロブリンの1つ以上をコードするエクソン領域において、再プログラムされたヌクレオチドを含み、前記ヒト細胞、組織、または臓器が、ブタベータ-2-ミクログロブリンの機能的発現を欠く、前記産生するかまたは得ることと、
前記非ヒト細胞、組織、または臓器を前記ヒトレシピエントに移植することと、を含む、前記方法。
項目101.異種移植片のアポトーシス細胞媒介性拒絶反応を阻害する方法であって、
項目1~48のいずれか1項に記載の生物学的システムから得られた非ヒト細胞、組織、または臓器を産生するかまたは得ることであって、前記野生型ブタゲノムが、前記ヒト捕捉参照配列を使用して、SLA-MIC-2遺伝子において、ならびに前記野生型ブタのMHCクラスIa、MHCクラスIb、MHCクラスII、及びベータ-2-ミクログロブリンの1つ以上をコードするエクソン領域において、再プログラムされたヌクレオチドを含み、前記ヒト細胞、組織、または臓器が、ブタベータ-2-ミクログロブリンの機能的発現を欠く、前記野生型ブタゲノムが、前記野生型ブタのCTLA-4及びPD-L1の1つ以上をコードするエクソン領域において、再プログラムされたヌクレオチドを含む、前記産生するかまたは得ることと、
前記非ヒト細胞、組織、または臓器を前記ヒトレシピエントに移植することと、を含む、前記方法。
項目102.異種移植のためのドナーブタ組織または臓器を産生する方法であって、前記ドナーブタ組織または臓器の細胞が、
有望なヒト移植レシピエントからDNAを含有する生体試料を得ることと、
前記生体試料の全ゲノム配列決定を行い、ヒト捕捉参照配列を得ることと、
前記ヒト捕捉参照配列を、遺伝子座(i)~(v):
(i)SLA-1、SLA-2、及びSLA-3のうちの少なくとも1つをコードするエクソン領域;
(ii)SLA-6、SLA-7、及びSLA-8のうちの少なくとも1つをコードするエクソン領域;(iii)SLA-DR及びSLA-DQのうちの少なくとも1つをコードするエクソン領域;
(iv)ベータ2ミクログロブリン(B2M)をコードする1つ以上のエクソン;
(v)SLA-MIC-2遺伝子、ならびにPD-L1、CTLA-4、EPCR、TBM、及びTFPIのうちの少なくとも1つをコードする遺伝子のエクソン領域で前記ドナーブタの前記野生型ゲノムと比較することと、
前記遺伝子座(i)~(v)のうちの1つ以上について10~350塩基対の長さの合成ドナーブタヌクレオチド配列を作成することであって、前記合成ドナーブタヌクレオチド配列が、ブタ遺伝子座(i)~(vi)にそれぞれ対応するオルソロガスな遺伝子座(vi)~(x):
(vi)HLA-A、HLA-B、及びHLA-Cのうちの少なくとも1つをコードするエクソン領域;
(vii)HLA-E、HLA-F、及びHLA-Gのうちの少なくとも1つをコードするエクソン領域;
(viii)HLA-DR及びHLA-DQのうちの少なくとも1つをコードするエクソン領域;
(ix)ヒトベータ2ミクログロブリン(hB2M)をコードする1つ以上のエクソン;
(x)前記ヒト捕捉参照配列からのMIC-A、MIC-B、PD-L1、CTLA-4、EPCR、TBM、及びTFPIのうちの少なくとも1つをコードするエクソン領域における前記ヒト捕捉参照配列と少なくとも95%同一である、前記作成することと、
(i)~(v)のヌクレオチド配列を前記合成ドナーブタヌクレオチド配列で置き換えることと、
前記合成ドナーブタヌクレオチド配列を有する遺伝的に再プログラムされたブタから、異種移植のための前記ブタ組織または臓器を得ることと、を含む、方法。
項目103.前記合成ドナーブタヌクレオチド配列を有する前記遺伝的に再プログラムされたブタが、少なくとも以下:
(i)糞便物質中のAscaris種、cryptosporidium種、Echinococcus、Strongyloids sterocolis、及びToxoplasma gondii、
(ii)抗体力価を決定することによる、Leptospira種、Mycoplasma hyopneumoniae、ブタ生殖器呼吸器症候群ウイルス(PRRSV)、仮性狂犬病、伝染性胃腸炎ウイルス(TGE)/ブタ呼吸器コロナウイルス、及びToxoplasma Gondii、
(iii)ブタインフルエンザ、
(iv)細菌培養によって決定される以下の細菌病原体:Bordetella bronchisceptica、コアグラーゼ陽性ブドウ球菌、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌、家畜関連メチシリン耐性Staphylococcus aureus(LA MRSA)、Microphyton、及びTrichophyton spp.、
(v)ブタサイトメガロウイルス、ならびに
(vi)Brucella suis、の人獣共通病原体を含まないことを確認することをさらに含む、項目102に記載の方法。
項目104.バイオバーデン低減手順に従って前記遺伝的に再プログラムされたブタを維持することをさらに含み、前記手順が、隔離された閉鎖群中で前記遺伝的に再プログラムされたブタを維持することを含み、前記隔離された閉鎖群中のすべての他の動物が、前記人獣共通病原体を含まないことが確認され、前記遺伝的に再プログラムされたブタが、前記隔離された閉鎖群の外部の任意の非ヒト動物及び動物収容施設との接触から隔離される、項目102もしくは103またはそれらの組み合わせに記載の方法。
項目105.前記ブタから生物学的製品を収集することをさらに含み、前記収集することが、前記ブタを安楽死させること、及び前記ブタから前記生物学的製品を無菌的に取り出すことをさらに含む、項目102~104のいずれか1項またはそれらの組み合わせに記載の方法。
項目106.3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)還元アッセイによって決定される50%未満の細胞生存度に細胞生存度を低下させない滅菌プロセスを使用する収集後の滅菌を含む前記生物学的製品を加工することをさらに含む、項目102~105のいずれか1項またはそれらの組み合わせに記載の方法。
項目107.細胞生存度を保存する貯蔵条件下で滅菌容器中で前記生物学的製品を貯蔵することをさらに含む、項目102~106のいずれか1項またはそれらの組み合わせに記載の方法。
項目108.項目1~49のいずれか1項またはそれらの組み合わせに記載の核ゲノムを含む、前記遺伝的に再プログラムされたブタにおけるオフターゲット編集またはゲノム改変についてスクリーニングする方法であって、
前記ドナーブタ核ゲノムの遺伝的な再プログラムを行う前に、ドナーブタからのDNAを含有する生体試料について全ゲノム配列決定を行い、それによって、第1の全ゲノム配列を取得すること、
前記ドナーブタ核ゲノムの再プログラム後に、全ゲノム配列決定を行って、第2の全ゲノム配列を取得すること、
前記第1の全ゲノム配列及び前記第2の全ゲノム配列を整列させて、配列アラインメントを取得すること、
前記配列アラインメントを分析して、オフターゲット部位における前記ブタのゲノムに対する任意のミスマッチを識別することを含む、方法。
項目109.野生型ブタMHCクラスIa由来の野生型ブタイントロン領域を有し、SLA-3と、ヒト捕捉参照配列由来のHLA-Cとの間で保存されていないアミノ酸をコードする前記ヒト捕捉参照配列由来のHLA-Cのコドンを用いて前記野生型ブタのSLA-3をコードするエクソン領域で再プログラムされた、合成ヌクレオチド配列。
項目110.前記野生型ブタのSLA-1及びSLA-2がそれぞれ、終止コドンを含む、項目109に記載の合成ヌクレオチド配列。
項目111.野生型ブタMHCクラスIb由来の野生型ブタイントロン領域を有し、SLA-6、SLA-7、及びSLA-8と、ヒト捕捉参照配列由来のHLA-E、HLA-F、及びHLA-Gそれぞれとの間で保存されていないアミノ酸をコードする前記ヒト捕捉参照配列由来の前記HLA-E、HLA-F、及びHLA-Gそれぞれのコドンを用いて前記野生型ブタの前記SLA-6、SLA-7、及びSLA-8をコードするエクソン領域で再プログラムされた、合成ヌクレオチド配列。
項目112.項目109及び111の両方、または項目110及び111の両方に記載の合成ヌクレオチド配列を有する、合成ヌクレオチド配列。
項目113.合成ヌクレオチド配列であって、野生型ブタMHCクラスII由来の野生型ブタイントロン領域を有し、SLA-DQと、ヒト捕捉参照配列由来のHLA-DQそれぞれとの間で保存されていないアミノ酸をコードする前記ヒト捕捉参照配列由来の前記HLA-DQのコドンをそれぞれ用いて前記野生型ブタの前記SLA-DQをコードするエクソン領域で再プログラムされ、前記野生型ブタのSLA-DRが終止コドンを含む、前記合成ヌクレオチド配列。
項目114.項目109及び113の両方、項目110及び113の両方、または項目112及び113の両方に記載の合成ヌクレオチド配列を有する、合成ヌクレオチド配列。
項目115.合成ヌクレオチド配列であって、野生型ブタベータ2-ミクログロブリン由来の野生型ブタイントロン領域を有し、野生型ブタのベータ2-ミクログロブリンと、ヒト捕捉参照配列由来のベータ2-ミクログロブリンとの間で保存されていないアミノ酸をコードする前記ヒト捕捉参照配列由来のベータ2-ミクログロブリンのコドンを用いて前記野生型ブタのベータ2-ミクログロブリンをコードするエクソン領域で再プログラムされ、前記合成ヌクレオチド配列が、前記野生型ブタのベータ2-ミクログロブリンポリペプチドの機能的発現を欠くように、エクソン領域内に少なくとも1つの終止コドンを含む、前記合成ヌクレオチド配列。
項目116.野生型ブタMIC-2由来の野生型ブタイントロン領域を有し、MIC-2と、ヒト捕捉参照配列由来のMIC-AまたはMIC-Bとの間で保存されていないアミノ酸をコードする前記ヒト捕捉参照配列由来の前記MIC-AまたはMIC-Bのコドンを用いて前記野生型ブタのMIC-2のエクソン領域で再プログラムされた、合成ヌクレオチド配列。
項目117.野生型ブタCTLA-4由来の野生型ブタイントロン領域を有し、前記野生型ブタのCTLA-4と、ヒト捕捉参照配列由来のCTLA-4との間で保存されていないアミノ酸をコードする前記ヒト捕捉参照配列由来の前記CTLA-4のコドンを用いて前記野生型ブタのCTLA-4をコードするエクソン領域で再プログラムされた、合成ヌクレオチド配列。
項目118.野生型ブタPD-L1由来の野生型ブタイントロン領域を有し、前記野生型ブタのPD-L1と、ヒト捕捉参照配列由来のPD-L1との間で保存されていないアミノ酸をコードする前記ヒト捕捉参照配列由来の前記PD-L1のコドンを用いて前記野生型ブタのPD-L1をコードするエクソン領域で再プログラムされた、合成ヌクレオチド配列。
項目119.野生型ブタEPCR由来の野生型ブタイントロン領域を有し、前記野生型ブタのEPCRと、ヒト捕捉参照配列由来のEPCRとの間で保存されていないアミノ酸をコードする前記ヒト捕捉参照配列由来の前記EPCRのコドンを用いて前記野生型ブタのEPCRをコードするエクソン領域で再プログラムされた、合成ヌクレオチド配列。
項目120.野生型ブタTBM由来の野生型ブタイントロン領域を有し、前記野生型ブタのTBMと、ヒト捕捉参照配列由来のTBMとの間で保存されていないアミノ酸をコードする前記ヒト捕捉参照配列由来の前記TBMのコドンを用いて前記野生型ブタのTBMをコードするエクソン領域で再プログラムされた、合成ヌクレオチド配列。
項目121.野生型ブタTFPI由来の野生型ブタイントロン領域を有し、前記野生型ブタのTFPIと、ヒト捕捉参照配列由来のTFPIとの間で保存されていないアミノ酸をコードする前記ヒト捕捉参照配列由来の前記TFPIのコドンを用いて前記野生型ブタのTFPIをコードするエクソン領域で再プログラムされた、合成ヌクレオチド配列。
本発明は、下記の実施例においてさらに詳細に説明されるが、こうした実施例は例示のために提供されるものにすぎず、本発明の範囲の限定を意図するものではない。
実施例1
DPF閉鎖コロニー皮膚移植片(サル試験)
本発明に従って生産されたDPF閉鎖コロニーのα-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼ[Gal-T]ノックアウトブタから得られる皮膚移植片は、α-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼ[Gal-T]ノックアウトブタから得られたものであるが、DPF閉鎖コロニーブタから得られたものではない皮膚移植片と比較して、拒絶反応発生までの期間を顕著に長期化させることが発見されている。
α-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼ[Gal-T]ノックアウトブタ(DPF閉鎖コロニー由来ではないもの)をサルに適用したときの拒絶反応発生までの期間を評価している先行試験は多く、そうした先行試験によって、拒絶反応発生までの期間が11~13日の範囲内であることが示されている。例えば、Albritton et al.,Lack of Cross-Sensitization Between alpha-1,3-Galactosyltransferase Knockout Porcine and Allogeneic Skin Grafts Permits Serial Grafting,Transplantation & Volume 97,Number 12,June 27,2014(レシピエントヒヒ上のGal-T-KO皮膚移植片は、12日または13日が経過するまでに完全に拒絶された)、Barone et al.,“Genetically modified porcine split-thickness skin grafts as an alternative to allograft for provision of temporary wound coverage:preliminary characterization,”Burns 41(2015)565-574(レシピエントヒヒ上のGal-T-KO皮膚移植片は、11日が経過するまでに完全に拒絶された)、及びWeiner et al.,Prolonged survival of Gal-T-KO swine skin on baboons,Xenotransplantation,2010,17(2):147-152(ヒヒ上のGal-T-KO異種分層皮膚移植片は、11日が経過するまでに完全に拒絶された)を参照のこと。
本発明は、品質が一貫せず、利用可能性が不確実であり、かつ限定されるという固有の不利益を伴うことなく、その同種移植片比較物と比較して同等か、驚くほど良好な性能を与えるものであることが非臨床試験において示されている。すなわち、驚くべきことに、少なくとも試験No.1によって、本発明に従って生産されたDPF閉鎖コロニーのα-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼ[Gal-T]ノックアウトブタから得られた皮膚移植片が、同種移植片よりも良好な性質を示したことが示されている。
出願人が最近行った2つの試験(以下に示される試験No.1及び試験No.2)では、本発明に従って生産されたDPF閉鎖コロニーのα-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼ[Gal-T]ノックアウトブタから得られる皮膚移植片をサルに適用すると、拒絶反応発生までの期間が顕著に長期化すること(試験2では30日を超えた)が実証されている。この実施例の遺伝的に操作された供給源動物には、任意の外来性DNAもゲノムに導入されておらず、用いた遺伝子改変は、細胞表面抗原を遍在性に発現させる酵素のコードを担う単一の遺伝子のノックアウトのみである。この実施例の異種移植製品には、導入遺伝子技術(CD-46トランスジェニックコンストラクトまたはCD-55トランスジェニックコンストラクトなど)が組み込まれていない。
試験No.1
この試験では、全層皮膚損傷の実験モデルであるカニクイザル(Macaca fascicularis)に対して、自家移植片を配置する前にDPF閉鎖コロニーのα-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼ[Gal-T]ノックアウトブタ異種移植製品材料を応急的な創傷用移植片として配置し、同種移植片と比較してこの材料を評価した。
プライマリーエンドポイントには、移植片及びレシピエントにおけるブタ内因性レトロウイルス(PERV)のスクリーニング、ならびに異種移植製品及び同種移植片に対する拒絶反応の評価、及びこれらの移植片が最終的な自家移植片生着に与える潜在的な影響を含めた。セカンダリーエンドポイントには、剖検時に採取する腎臓、脾臓、肝臓、肺、移植片、及び創傷床組織の微生物学的分析及び組織病理学的分析を含めた。
この試験では、4匹のカニクイザルを使用した。0日目に、約2~3cm×2~3cmの大きさの全層創傷床を各動物の背部に4つ創出した。
最初に、異種皮膚(異種移植製品)、分層Gal-T-トランスジェニックブタ異種移植製品材料、または同種皮膚(同種移植片)(分層同種移植片材料)のいずれかを用いて0日目に創傷を処置した。
試験15日目に、異種移植製品及び同種移植片を除去し、分層自家皮膚移植片(自家移植片)によって置き換え、その後、試験22日目まで動物を生存させた(例外として、動物1001及び動物1004は瀕死であったため屠殺した)。
異種移植製品または同種移植片で処置し、12日目または15日目に除去したカニクイザルモデルの全層創傷床の顕微鏡評価(図40A)、及び22日目まで生存させたカニクイザルモデルの全層創傷床の顕微鏡評価(図40B)では、異種移植製品または同種移植片のいずれにおいても急性組織拒絶反応が生じた証拠は存在せず、同種移植片試験品と比較すると異種移植製品試験品では全体的に同等~若干良好な性能が得られ、異種移植製品試験品または同種移植片試験品のいずれで事前処置しても、その後の自家移植片の性能は平均~良好であることが実証された。異種移植製品の生存期間が顕著なものであったことから、これを受けて後続試験(試験No.2)を実施した。
試験No.2
この試験の目的は、カニクイザル(macaca fascicularis)においてDPF閉鎖コロニーのα-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼ[Gal-T]ノックアウトブタ異種移植製品材料の安全性及び免疫原性を評価することした。
プライマリーエンドポイントには、移植片の配置前及び配置後のブタ内因性レトロウイルス(PERV)のスクリーニング、ならびに異種移植製品に対する拒絶反応の評価を含めた。
この試験では、4匹のカニクイザルを使用した。0日目に、9cmの全層創傷床を各動物の背部に2つ創出した。
真皮組織層及び表皮組織層からなる分層Gal-T-ノックアウトブタ異種移植片材料を用いて創傷を処置した。
図41は、非ヒト霊長類レシピエントにおける全層欠損創傷の処置において応急的創傷閉鎖物として使用したブタ分層皮膚移植片の長期的な進行を示す。左:POD-0、創傷部位2の異種移植片。右:POD-30、創傷部位2の同じ異種移植片。図42は、以下についてPOD-30組織像を示す:上部中央:H&E、創傷部位の低電力画像は、完全な上皮被覆を示す。点線は、残存異種移植片組織を囲むものである。左下:大きな挿入ボックスの高倍率H&E画像。点線の右下側は、異種移植片の真皮成分であり、白抜きの矢印によって異種移植片真皮マトリックスが示される。点線の左側は、宿主真皮(黒色の矢印)及び宿主真皮マトリックスである。軽度の炎症が存在しており、この炎症は、異種移植片試験品に反応したものあると解釈される。右下:大きな挿入ボックスの低倍率H&E画像。点線は、異種移植片試験品(点線の下側)及び新たなコラーゲン組織(点線の上側)との間の接合境界を大まかに示し、この画像の上部にはインタクトな被覆組織が存在する。異種移植片に反応した軽度の炎症(白抜きの矢印)が観察される。
図43Aは、試験過程での4匹すべての対象(2001、2002、2101、2102)の血清中総IgM ELISA(μg/mL)を示すグラフである。図43Bは、試験過程での4匹すべての対象(2001、2002、2101、2102)の血清中総IgG ELISA(μg/mL)を示すグラフである。いくつかの態様では、本開示の製品が移植された対象が有する血清中のIgMレベル及びIgGレベルは、各20,000μg/ml未満になる。いくつかの態様では、本開示の製品が移植された対象が有する血清中のIgMレベル及び/またはIgGレベルは、移植前に測定された血清中のIgMレベル及びIgGレベルと比較して、低いか、または10%未満、5%未満、3%未満、もしくは1%未満の上昇に留まる。いくつかの態様では、特許請求される方法では、本開示の製品が移植された対象での免疫反応性の発生率は5%未満、3%未満、または1%未満となり得る。
図44Aは、POD-0、POD-7、POD-14、POD-21、及びPOD-30の時点でLuminex23-plexによって測定した可溶性CD40Lの全身濃度を示すグラフである。図44Bは、POD-0、POD-7、POD-14、POD-21、及びPOD-30の時点でLuminex23-plexによって測定したTGF-アルファの全身濃度を示すグラフである。図44Cは、POD-0、POD-7、POD-14、POD-21、及びPOD-30の時点でLuminex23-plexによって測定したIL-12/23(p40)の全身濃度を示すグラフである。
30日または31日が経過した時点で動物を屠殺し、創傷部位を採取し、10%中性緩衝ホルマリン(NBF)または改変ダビッドソン溶液(精巣及び精巣上体用)中で固定化した。30日または31日が経過した時点で動物を屠殺したが、これは試験設計が理由であり、比較目的のためであり、本開示の異種移植製品は、この実施例で使用した試験期間よりも長く拒絶反応に抵抗する能力を有することに留意されたい。
異種移植片を用いて処置し、30日目または31日目に屠殺したカニクイザルモデルにおける全層創傷床の顕微鏡評価では、宿主組織及び異種移植片組織によって欠損創傷が良好に埋まることが実証された。
特別な(ブタ特異的)ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)及び逆転写酵素PCR(RT-PCR)を用いて試料を検査することによって、特定の術後間隔でブタ内因性レトロウイルス(PERV)及びブタサイトメガロウイルス(PCMV)のスクリーニングを別々に実施した。ブタ異種移植片、レシピエントの溶解PBMC、レシピエント創傷床、及び高度灌流臓器(剖検時にレシピエントから得たもの)を、遊走ブタ細胞の存在について評価した。検査はすべて、DNA及びRNAならびにアッセイ性能についての内部標準を用いて3連で実施した。剖検時に採取した腎臓、脾臓、肝臓、肺、異種移植片、同種移植片、創傷床組織の微生物学的(細菌、真菌、ウイルス)アッセイ及び組織病理学的分析、ならびに末梢血の分析を実施することで、異種移植片関連免疫原性バイオマーカーについて検査した。DNA PCRを実施して、本開示の製品で処理したカニクイザルモデルからのPBMCにおけるブタ細胞遊走について、以下の試料について試験した:(A)(3)全厚(異種移植片)創傷床、(B)(3)全厚(同種移植片)創傷床、(C)(2)脾臓試料、及び(D)(2)腎臓試料。宿主に対して細胞遊走または人畜共通感染症伝染が全身性に生じた証拠は存在しなかった。PERVの存在は、創傷床に残留するブタ細胞に起因するものであり、このことは、ブタMHC対照を用いて検証した。本発明者らの結果は、移植片から移植片レシピエントの循環へとブタのDNA及び細胞が遊走したということはなく、同様に、PERVまたはPERV感染ブタ細胞が創傷床を超えて遊走することもなかったことを示唆している。
以下の表4は、ブタ細胞の遊走及び伝染の分析を示す:
Figure 2022527061000007
Figure 2022527061000008
Figure 2022527061000009
試験中のすべての異種移植片の一般的な外観は、ピンク色で、触覚的に温かく、創傷床に付着していた。表皮溶解(軽度から中等度)は、POD-14の外科医によって最初に指摘されたが、真皮は付着していた。POD-21での評価では、創傷床が再顆粒化しており、再上皮化の兆候があったことが明らかになり、その結果、POD-30までに創傷の20%~100%が再上皮化されていた。(表5)これらの皮膚異種移植の臨床過程において、異種移植組織の脱落化及び創傷床の暴露はなかった。
ヘマトキシリン及びエオジン(H&E)-POD-30で得られた残留皮膚異種移植物を含有する調製された切片、ならびに下層の創傷床を、盲検化された病理学者によって顕微鏡的に評価した。H&E染色は、最小から中程度の炎症反応を示した。治療部位8箇所中4箇所で上皮の潰瘍があった。創傷部位での応答は、新規コラーゲンの可変層に囲まれた成熟皮膚コラーゲンネットワークで創傷欠損部を充填することを特徴とした。この成熟コラーゲンネットワークは、創傷部位に接する宿主真皮とは異なる外観であり、異種移植真皮であると解釈された。皮膚異種移植を、体系的な病理学的コンポーネントスコアリング及びBanff分類47を使用して評価した。Banff分類は、異種移植拒絶反応を分類するのに有用であり、それをコンポーネントスコアアプローチによって補完して、拒絶反応の診断のためのより包括的な臨床閾値のアレイを提供する。POD-30についてのこの評価の結果及びBanffグレードを表5に示す。複合組織同種移植片についてのBanff2007ワーキング分類は、表皮アポトーシス、表皮浸潤、及び血管周囲/皮膚浸潤のレベルに基づいている48。Banffグレードは、II(中等度)からIV(壊死性急性拒絶反応)の範囲であり、ほとんどがグレードIII(重度)を示していた。
Figure 2022527061000010
細胞媒介性免疫応答の評価として、初期創傷治癒プロセスに特徴的な、または異種細胞に対する免疫応答において予想される合計23の炎症性及び抗炎症性サイトカインを測定した。アッセイした23のサイトカイン/ケモカインのうちの12種:TNF-α、IFN-γ、TGF-β、G-CSF、GM-CSF、IL-1-β、IL-4、IL-5、IL-10、IL-13、IL-17、IL-18、及びMIP-1-αは、研究期間を通じて一貫して検出レベル未満であった。VEGFは、3つの個々の時点でのみ検出レベルを上回り、MIP-1-ベータのレベルは、1回のみ識別可能であった(データ提示なし)。研究の期間にわたって検出された9つのサイトカイン/ケモカインを表6に列挙する。表に示されるすべてのサイトカイン/ケモカインは、試料採取の最初の日であるPOD-7でバックグラウンドを上回って増加することが観察された。IL-2、IL-8、MCP-1及びTGF-αは、POD-7でピークに達し、経時的に減少した。IL-15及びIL-12/23(p40)は、POD-14でピークに達し、一方、sCD40L、IL-1ra及びIL-6は、POD-21で上昇したピークを有した。概して、すべての因子は、POD-30で上昇したままであるsCD40Lを除き、POD-30までに正常に戻ることを示した。興味深いことに、IL-12/23(p40)のレベルは、POD-14上で顕著に上昇するまでほとんど存在せず、研究の残りの部分にわたって濃度を徐々に低下させた。
Figure 2022527061000011
皮膚移植後の異種異系に対する抗体の産生を評価するために、GalT-KOドナーからの末梢血単核細胞(PBMC)標的へのレシピエント血清IgM及びIgGの結合をフローサイトメトリーによって測定した。血清IgM及びIgG抗体レベルを、移植前及びPOD-30で解析した。表7において、相対的平均蛍光強度(MFI)及び結合の倍率増加を、各レシピエントについて要約する。抗異種IgM及びIgGの増加がすべての動物において検出された。移植前(POD-0)と移植後(POD-30)との間で、IgM抗ブタ抗体は1.4倍~4.9倍まで増加し、IgG抗ブタ抗体は28.7倍~70.8倍まで増加した。これらの結果は、非Gal異種抗原に対する体液応答を示す。
Figure 2022527061000012
未感作の皮膚異種移植物をPERVコピー数について分析し、予想通り、各細胞にはPERV A(32±1)、B(9±0.1)、C(16±0.1)のコピーが含まれていた。4人のレシピエントからの血清を循環PERVの存在について評価した。すべての試料はPERV polに対して陰性であり、検出限界を下回ることが見出された。4人のレシピエントの各々から得られたPBMC試料もまた、PERV及びマイクロキメリズム(すなわち、循環するブタ細胞の存在)について試験され、すべての時点で陰性であることが分かった。試験終了時(POD-30)に採取した組織をPERV発現について評価し、再び陰性であることが判明した。動物2102からの創傷床は、PERVの存在及びマイクロキメリズムについて陰性であった。(表8)他の動物については、一方または両方の創傷部位が陽性であった。これは、創傷床が異種移植片と直接接触していることに起因しており、驚くことではない。移植片と関連付けられていないいくつかのブタ細胞は、研究の終了時の除去プロセスで脱落したか、または取り残された可能性があることが予想される。これは、PERVシグナルをブタ細胞汚染に帰着させるマイクロキメラアッセイで達成された陽性値によって確認される。総じて、これらの結果は、PERV伝達の証拠をもたらさず、以前の研究と一致した。
実施例2
下記の実施例は、本発明に従って生産される遺伝的に再プログラムされたブタから皮膚を収集及び加工するプロセスを説明するものであり、この皮膚はヒト移植のための異種皮膚製品として使用される。こうした態様のいくつかでは、異種移植製品は、特別な遺伝的に再プログラムされた指定の病原体を含まない(DPF)供給源動物に由来する最終滅菌されていない活力あるブタ細胞を含む真皮組織層及び表皮組織層からなる分層移植片からなる。
一態様では、遺伝子組換え供給源動物は、本開示に記載される任意の遺伝的に再プログラムされた動物である。1つの非限定的な態様では、この実施例の遺伝的に操作された供給源動物は、いずれの外来性DNAもゲノムに導入されておらず、遺伝子修飾は、細胞表面抗原を遍在性に発現させる酵素のコードを担う単一の遺伝子のノックアウトを含む。この実施例の異種移植製品には、導入遺伝子技術(CD-46トランスジェニックコンストラクトまたはCD-55トランスジェニックコンストラクトなど)が組み込まれていない。
本明細書に開示のプロセス及び手法は例にすぎず、本発明の範囲を限定するものではない。この実施例は異種移植皮膚製品を対象とするものであるが、手法全体のうちの下記のプロセス及び態様におけるステップのいくつかは、他の臓器または組織(限定されないが、腎臓、肺、肝臓、膵臓、神経、心臓、腸、及び他の臓器または組織を含む)にも適用可能であることが完全に理解されよう。皮膚以外の他の臓器または組織の収集及び加工と関連付けて、この実施例に開示のプロセス及び方法に対する改変(1つ以上のプロセスステップまたは方法ステップの追加または除外を含む)を実施できることがさらに理解されよう。この理解は、他の臓器及び組織が有する物理的特徴が異なることになるため、そのような他の臓器または組織の収集ステップ及び加工ステップが、ある特定の実際的な方法ではこの実施例とは異なることになるという事実に部分的には基づくものである(例えば、腎臓、心臓、肝臓、肺、または他の全臓器は、細断され、ナイロンメッシュによって補強された凍結保存用バイアル内に包装されることはない)。一方で、当該技術分野で知られる手法を利用するこの実施例のプロセスステップまたは方法ステップの1つ以上を、そのような臓器または組織のそれぞれに適するように追加または除外することが可能であることがさらに理解されよう(例えば、収集された腎臓、心臓、肝臓、肺、または他の全臓器は、いくつかの態様では、収集後に病原体を除去するために、本明細書に記載のように抗病原体槽に入れられるか、またはUV光に曝露され、1つ以上の閉鎖系に入れられることになる。例えば、そのような1つ以上の閉鎖系には、限定されないが、第1の閉鎖系(例えば、臓器を包むための最初の閉鎖物として不活性物質を利用することで、臓器の近くに存在する他の物質と臓器が接触または接着しないようにするもの)及び/または第2の閉鎖系(例えば、臓器及び第1の閉鎖系(第1の閉鎖系が利用される場合)を含む安全な滅菌外部容器)が含まれ得る。そのような閉鎖系(複数可)内のそのような臓器は、全臓器として臨床現場に輸送されるように構成され、臨床現場での本明細書に記載の移植のための無菌性及び細胞生存度を維持するための温度、無菌性、及び他の条件で保管、保護、及び輸送される。
動物の準備
皮膚製品加工は、供給源動物の屠殺に始まり、最終製品の生産が完了するまでの連続的かつ自己完結型の分離された単一製造事象として行われる。
遺伝的に再プログラムされた供給源動物から得られる異種皮膚移植片が受け入れられ、その際の由来元のブタは、DPF隔離区域とは別のセクションで家畜銃による安楽死を行って安楽死させてから間もないものである。供給源動物は、プラスチック容器内に入った非通気性滅菌バッグに入れられ、このプラスチック容器が、DPF隔離区域に運び込まれ、供給源動物から皮膚を収集するための手順が行われることになる手術部屋に置かれる。手術チームのすべてのメンバーが、供給源動物を受け入れる前に完全滅菌手術着を着用(滅菌着を着用)して、指定の病原体を含まない条件を維持し、場合によっては、手袋を二重に着用して汚染を最小限にとどめるべきである。
除染前(例えば、二酸化塩素ガス処理の24時間前)及び手順を行う前に、供給源動物からの皮膚の収集に必要な材料を揃えて手術区域の準備が行われる。手術前に、採皮機器(電気的な皮膚収集デバイス(例えば、ExsurcoによるAmalgatome))の電源及び延長コードが滅菌され、手術区域に設置される。二酸化塩素ガス処理の間に部屋に存在しない材料(したがって未滅菌の材料)はいずれも、部屋に持ち込む前に70%のエタノールまたはイソプロパノールがスプレーされることになる。
供給源動物は、無菌様式でバッグ及び容器から取り出される。例えば、バッグ及び容器から供給源動物を取り出すヒトは、滅菌手袋及び/または滅菌デバイスを使用して取り出しに役立て、汚染が最少化するようにする。クロルヘキシジンブラシを用いて手術スタッフによって供給源動物が少なくとも2分間徹底洗浄され、この洗浄では、手術対象となる全動物領域が、そうした領域に定期的にクロルヘキシジンをかけながらくまなく徹底洗浄されることで、確実に洗浄が行きわたるようにされる。
供給源動物は、右の横腹及び背が手術台側になり、左の横腹及び背が露出するように置かれる。露出表面が徹底洗浄されて外科処理境界がはっきりと視認可能なようにされ、タオル鉗子で固定された滅菌覆布によって限定される。その後、開封したBetadineブラシ及び滅菌水すすぎ液を用いて供給源動物が約2分間徹底洗浄され、この洗浄によって、手術対象となる全動物領域がくまなく徹底洗浄される。
このクロルヘキシジン及びBetadineの混合物が約2分間供給源動物に付着することになり、その後、スタッフ(指定の病原体を含まない条件を維持するために滅菌着を着用したスタッフ)が滅菌水及び滅菌ガーゼを用いて供給源動物をすすぎ、乾燥させることになる。膜に影響を与えたり、細胞を分解することが想定される別の要素を持ち込んだりしないように供給源動物の毛が除去される。除毛は、屠殺直後に、指定の病原体を含まない環境中で滅菌クリッパー及び/または滅菌西洋剃刀を使用して実施され、クロルヘキシジンの泡を利用して清潔な刃で行われる。スタッフは、クリッパー及び/または西洋剃刀(滅菌槽に入れて滑るようにしたもの)を使用して、皮膚を傷つけないように気を配りながら手術部位に残存する毛をすべて除去することになる。この手順は、右側が露出するように供給源動物をひっくり返して左の横腹を下にすることによって繰り返されることになる(徹底洗浄から除毛まで)。供給源動物は、滅菌水ですすがれ、滅菌タオルで乾燥され、70%のエタノールがスプレーされることになる。供給源動物は、執刀者によって目視検証されることで、徹底洗浄範囲が適切であることが確かめられることになる。滅菌徹底洗浄及び最終除毛が終わると、供給源動物は、皮膚収集の準備ができた状態となる。
皮膚の収集
手術者は、プログラム及び他の基準に従って滅菌着を着用して指定の病原体を含まない条件を維持することになる。異種移植に使用されることになる供給源動物から得られる組織はすべて、動物の屠殺から15時間以内に収集される。
一態様では、供給源動物は、その側面を下にして手術台に寝かされる。この態様では、収集は、採皮用円形刃(例えば、Amalgatome(登録商標)SD)を利用して実施される。スタッフが動物を適所に固定しながら、執刀者が、最も適切な幅(例えば、1インチ、2インチ、3インチ、または4インチ)を決定し、そうした円形採皮機器を使用して、選択した厚み(例えば、0.50mm、0.55mm、0.62mm)で分層皮膚移植片のストリップを切り取る。
別の例として、皮膚移植片の厚みは、問題の治療ニーズに応じて0.01mm~4mmの範囲であり得る。いくつかの態様では、当該技術分野で知られる代替の収集手順及び移植手順を用いて全層移植片を収集利用することも可能であることも理解されよう。移植片のサイズは、1cm~1000cm(または約1ft)である。利用される用途及び収集手法ならびに供給源動物のサイズに応じて移植片サイズを大きくすることも可能であることが理解されよう。すべての態様について、治療目的及び/または他の目的のための目下の作業の用途及びニーズに応じて他の深度も利用可能であることが理解されよう。
別の態様では、皮膚の収集は、最初に動物から皮弁を外科的に切り取り、その後、この皮弁を、手術台上に設置した収集板(例えば、金属、プラスチック、または他の適切な材料でできた頑丈な板)に真皮側を下にして置くことを含む。この態様では、皮弁と収集板との間に滅菌詰め物材料が加えられることで、採皮デバイスが適切に機能する上で適した弾力性を得ることができる。次に、皮弁は、スチール鉗子を用いて収集板にしっかりと固定される。皮膚がしっかりと突っ張るまで、これらの鉗子とは反対側の皮弁位置に湾曲タオル鉗子が利用される。執刀者は、採皮機器での最も適した厚みを選択し、収集条件に従って調整することになる。執刀者は、固定された皮弁に対して採皮機器を使用し、その間、採皮機器の進行に沿って助手が張りを維持することになる。第2助手が皮弁の張りを支援することもあり得、さらに、鼠歯型鉗子を使用して、採皮機器から出る移植片製品を引っ張ることも行い得る。
移植片は所望のサイズに整えられる。例として、サイズは、5cm×5cmで総表面積25cm及び約0.55mmの均一な厚さ;5cm×15cmで総表面積75cm及び約0.55mmの均一な厚さ;8cm×7.5cmで総表面積60cm及び約0.55mmの均一な厚さ;8cm×15cmで総表面積120cm及び約0.55mmの均一な厚さである。カスタマイズ可能なサイズ(すなわち、幅、厚み、及び長さ)が患者ニーズに応じて創出され得る(異種移植手順において使用するために、より大きな皮膚シートが回収され得ることを含む)ことがさらに理解されよう。
異種移植製品は、好気性細菌及び嫌気性細菌、真菌、ならびにマイコプラズマを含まないようにさらに加工される。異種移植製品は、収集直後、収集から1秒以内、2秒以内、3秒以内、4秒以内、5秒以内、6秒以内、7秒以内、8秒以内、9秒以内、10秒以内、10秒~1分以内、1分~1時間以内、1時間~15時間以内、または15時間~24時間以内に、適用可能な無菌手法を使用して医薬品加工特別室の層流フード内の滅菌条件の下で、抗微生物/抗真菌槽(「抗病原体槽」)に入れられる。皮膚製品に関して、これは、皮膚製品が適切な用量サイズ及び形に整えられた後(例えば、所望のサイズ(複数可)の正方形、長方形、または他の形に整えられた後)に行われ得る。
抗病原体槽は、異種移植製品及びアンピシリン、セフタジジム、バンコマイシン、アムホテリシン-Bを含み、これらの薬物は、滅菌容器に入ったものが以下の表5に概略されるように希釈され、以下の表6に概略されるようにRPMI-1640培地に添加されたものである。一態様では、当該ボトルから培地が約10mL除去された後に上記の物品が添加される。
Figure 2022527061000013
Figure 2022527061000014
この実施例は、異種移植皮膚製品を対象とするものであるが、他の臓器(限定されないが、腎臓、肺、心臓、肝臓、膵臓、及び他の臓器を含む)も本発明に従って抗病原体槽に浸漬され得ることが理解されよう。薬物及び他の化学物質の組み合わせの量、ならびにそのような抗病原体槽に曝露される時間は、本発明に従って、そのような曝露が細胞生存度及びミトコンドリア活性に与える影響が最小化して所望の抗病原体効果と、異種移植製品の処理操作の最小化との両方が達成されるように決定される。
抗病原体槽を介して病原体を除去することの代替として、または抗病原体槽を介して病原体を除去することに加えて、紫外線を利用するプロセス及び系によって製品が指定の病原体を含まないようにされる。この態様では、手術者は、施設の基準に従って滅菌着を着用して指定の病原体を含まない条件を維持する。手術者は、紫外線及び紫外線レーザーから目を保護するための保護眼鏡を着用する。
紫外線レーザーランプが層流フード内に設置される。互いに上に積み重なった2つの容器蓋の上にランプの四隅のそれぞれが配置され、すなわち、四組の蓋がランプの支持に使用されるか、またはフードの機能面上の一時位置もしくは固定位置にランプを配置することが可能な他の支持物品がランプの支持に使用される。ランプ球(全部でチューブ型電球2つ)からフードの床までの距離は約1.5インチである。フードの内部全体がアルコール(例えば、エタノールまたはイソプロパノール)でスプレーされる。ランプがつけられ、手術者は、ランプの仕様、電球の数、ならびに電球と異種移植製品との間の距離に基づいて、所望の曝露量が得られる時間の計算を実施する。
手術者は、2つの槽中溶液(一方はクロルヘキシジンであり、もう一方はアルコールである)を2つの別々のボウルに注ぎ入れ、これら2つのボウルをフード下に置く。
新たに滅菌された凍結保存用バイアルのパッケージがフード下に置かれる。凍結保存用バイアルキャップが開けられ、クロルヘキシジン槽に入れられる。次に、各凍結保存用バイアル(キャップなし)が上下逆に反転され、クロルヘキシジン槽に開放状態で各1分間沈められ、その後、立てて置かれて風乾される。その後、滅菌ガーゼを利用してクロルヘキシジン及びアルコールで各凍結保存用バイアルの外側が拭かれる。凍結保存用バイアルキャップがクロルヘキシジン槽から取り出され、滅菌ガーゼ上に置かれる。各バイアルの開口端をアルコール槽に各1分間沈めた後、傍らにおいて風乾させた。
外科処理部屋において収集/獲得段階から得られて間もない異種移植製品が、一方通行の入り口を介して製品加工部屋に移され、層流フードに入れられる。滅菌領域に入れるものはすべて、手術者の手に渡る前に70%のエタノールでしっかりと拭かれる。手術者は、層流フード内のすべての必要材料を利用できることになる:異種移植製品(滅菌容器中)、凍結保存用バイアル、10mLシリンジ及び針、段階制御型フリーザー用保持ラック、ならびに切断済ナイロンメッシュ。一度に加工する製品を1サイズのもののみにすることで、最終的なバイアルに対する適切な管理が確保される。手術者は、層流フードに座って作業する際には滅菌・無菌手法を遵守する。
UV光滅菌を使用する場合、所望の時間(例えば、2分以上)製品がUVランプの下に置かれた後、もう一方の側にひっくり返され、反対側が曝露されるようにして同じ時間(例えば、2分以上)UVランプの下に置かれる。所与の試料がUVに曝露される時間は、滅菌対象となる特定の生物学的病因物質または生物学的病因物質の型によって変わり、例えば、以下の表7に示される通りである:
Figure 2022527061000015
他の全臓器に関して、製品収量は、典型的には、所与の供給源動物が、それぞれのそのような全臓器をいくつ有し得るかに依存することになる(例えば、肝臓1つ、肺2つ、腎臓2つ、心臓1つ、膵臓1つなど)。
この実施例は異種移植皮膚製品を対象とするものであるが、本発明に従って他の臓器(限定されないが、腎臓、心臓、肺、肝臓、膵臓、及び他の臓器を含む)を紫外線に曝露し、指定の病原体を含まないようできることも理解されよう。UVの曝露用量、強度、及びそのような紫外線への曝露時間は、本発明に従って、そのような曝露が細胞生存度及びミトコンドリア活性に与える影響が最小化して所望の抗病原体効果と、異種移植製品の処理操作の最小化との両方が達成されるように決定される。
製造プロセス
一般的なもの
供給源動物は、連続的な製造事象を介して無菌異種移植製品に加工される。供給源動物と関連する製品の製造にはいくつかの項目が伴い、こうした項目には、限定されないが、下記のものが含まれる:
a)供給源動物の管理及び飼育(本明細書に記載のように、ある特定のワクチン接種を行うこと、系統記録を注意深く維持及び解析すること、適切な動物飼育を実施すること、ならびに隔離障壁条件の下で動物を維持することを含む)、
b)製品の製造(本明細書に記載のように、供給源動物を安楽死させてから対象製品に加工して収集することを含む)、
c)供給源動物の分析検査(本明細書に記載のように、外来性病因物質のスクリーニング(寄生虫アッセイ、細菌アッセイ、及びウイルスアッセイを含む)を行うことを含む)、
d)供給源動物の分析検査(本明細書に記載のように、供給源動物がアルファ-1,3-ガラクトトランスフェラーゼノックアウト体であるか、または所与の用途に望ましい他の特徴を有することを確認することを含む)、ならびに
e)供給源動物の分析検査(本明細書に記載のように、内因性ウイルス(PERV)のウイルスアッセイを行うことを含む)。
得られる製品の製造及び出荷検査にもいくつかの項目が伴い、こうした項目には、限定されないが、下記のものが含まれる:
a)製品の製造(本明細書に記載のように、医薬品を加工すること、医薬品を保管すること、及び医薬品を出荷することを含む)、
b)医薬品の分析検査(本明細書に記載のように、生存度検査(例えば、MTTアッセイによるもの)を行うことを含む)、
c)無菌性検査(本明細書に記載のように、好気性細菌培養、嫌気性細菌培養、真菌培養、マイコプラズマアッセイ、エンドトキシン検査、USP<71>を行うことを含む)、
d)外来性病因物質検査(本明細書に記載のように、PCRアッセイ(例えば、内因性ウイルス(PERV)を対象とするもの)を行うことを含む)、ならびに
e)医薬品の分析検査(本明細書に記載のように、組織学的検査を行うことを含む)。
皮膚については、各動物からの製品収量は、各動物のサイズによって変わり得る。例として、動物によっては、3,000~6,000cmの製品収量を与え得る。一態様では、単一の供給源動物から連続プロセスで収集されるものが、1回のバッチで得られる皮膚製品となる。異種移植製品のバッチに関する説明は表8に示され、異種移植製品のバッチ組成は、表9に示される。
Figure 2022527061000016
Figure 2022527061000017
Figure 2022527061000018
優良試験所規範(「GLP」)条件の下で事前ロット検査が実施されることで、プロセス無菌性が一貫して確実に維持される。最終製品の無菌性の保証は、材料の出荷及び臨床使用の前に判定される。ヒトでの臨床使用のための検証に先立って、異種移植製品はすべて、本明細書に記載のものを含めて、ある特定の合否判定基準を満たすことになる。最終医薬品の管理方針及び分析検査が製造プロセスの終局時に実施された後で、臨床使用に向けての出荷が行われる。必要な分析検査の結果は、異種移植製品の各ロットに関するマスターバッチ記録とともに維持される医薬品分析証明書(COA)を介して文書化されることになる。
肺、肝臓、脾臓、脊髄、脳、腎臓、及び皮膚の組織試料を確保することによって供給源動物の試料収集保管物が得られ、維持される。こうした組織は、検査用収集保管物としての供給源動物組織を得るために採取され、潜在的な将来の検査に向けて保管される。供給源動物組織及び体液の収集保管試料は、試料の保存に適するようにマイナス(-)70℃以下で保管されることになる。他の態様では、固定化試料が室温で維持され得る。ホルマリン固定化及びパラフィン包埋用、ならびに凍結保存用として、生存細胞、生存組織、または生存臓器の獲得時に適切な組織試料が供給源動物から採取されることになる。0.5cc分量のクエン酸抗凝固処理血漿またはEDTA抗凝固処理血漿が少なくとも10個、一定分量の生存白血球(1×107個/一定分量)(核酸及びタンパク質を後に単離するためのもの、または共培養もしくは他の組織培養アッセイのための生存細胞の供給源として使用するためのもの)が5個、凍結保存されることになる。
収集後の製品の加工
既に収集され、処理操作が最小限に留められた異種移植皮膚製品(この時点で皮膚完全性を有しており、真皮組織層及び表皮組織層に施された処理操作が最小限に留まり、それらの組織層に標準的な細胞形態及び細胞秩序が伴うもの)が、クラス10,000(IS0-7)製品加工部屋として設計された、外科処理特別室のものを上回る陽圧を有する別の隣接部屋に運びこまれる。
この手術部屋は、手術作業手順に従ってセットアップされることになり、手術職員は、ヒュームフード作業用のTyvexスーツを着用することになる。必要な場合、助手もTyvexスーツを着用することになる。更衣及び着衣は無菌手法を用いて行われる。手袋及び袖は、必要に応じてアルコールがスプレーされることになる。ABSL-2層流フードは、二酸化塩素ガスによる滅菌プロセスを経て事前に滅菌されており、アルコール(例えば、70%のエタノール)がスプレーされることになり、層流排出が開始されることになる。無菌手法を利用するにあたって、外科用器具、凍結保存用バイアル、cryotray、フラスコ、シリンジ、針、追加の容器、及びすべての加工機器は、事前にオートクレーブで滅菌されてから、層流フード内に置かれることになる。外部包装は、手術者に渡る前にアルコールでスプレーされる。
本明細書に記載のように、手術に先立って、ナイロンメッシュ移植片用基材が、用量レベルに適したサイズの正方形に切断され、オートクレーブ可能な袋に入れて密封され、蒸気によって滅菌されることになる。次に、袋の外部が70%のエタノールで滅菌され、ヒュームフード内に置かれることになる。10mLの凍結保存用バイアルの外部パッケージが70%のエタノールで除染され、ヒュームフード内に置かれることになる。滅菌されたオートクレーブ済外科用器具パッケージが、70%のエタノールでスプレーされ、手術者に渡されることになる。
滅菌されたシリンジ及び針が、70%のエタノールでスプレーされてから、手術者に渡されることになる。ブタドナーから収集されて間もない移植組織がフードに移されることになる。滅菌領域に入れるものはすべて、手術者の手に渡る前に70%のエタノールでしっかりと拭かれる。手術者は、ヒュームフード内ですべての必要な材料にアクセスできる:移植片(滅菌容器内)、凍結バイアル、10mLのシリンジ及びニードル、ラック付きフェーズフリーザー、及びカットナイロンメッシュ。手術者は、ヒュームフードに座って作業する際には滅菌・無菌手法を遵守することになる。
図45に関して、各凍結保存用バイアルの滅菌及びラベル付けを事前に行うことで、加工時間が低減されるとともに、凍結保存前に材料がDMSOに不必要に曝露されることが低減されることになる。各異種移植製品を入れたパン、及び抗生物質を含む室温のRPMI 1640組織培養培地(例えば、抗病原体槽)が層流フード下に置かれる。製品を30分以上抗病原体槽に浸漬することで、異種移植製品を滅菌した。
一態様では、UV光滅菌を使用する場合、上記のようにUVランプを使用して凍結保存用バイアルが滅菌される。製品が各バイアルに入れられた後、各新たなバイアルに各新たなキャップが被せられ、しっかりとねじ込まれる。各バイアルがランプの下に置かれ、バイアルの外側が望ましくまんべんなく光に曝露されるように定期的に転がされる。内部が事前に滅菌されており、ねじ山部及びキャップを含めて、アルコール及びクロルヘキシジンで外部が手術者によって滅菌されたガラス瓶の内部にバイアルが入れられる。バイアルは、アルコールでしっかりと拭かれ、ガラス瓶に入れらる。ガラス瓶の外側には、フードの外部からアルコールがたっぷりとかけられる。フード下で、手術者は、ガラス瓶の蓋を浸漬させ、瓶の開口端をアルコールに沈め、瓶のねじ山部を含めて瓶の外部をアルコール(及び任意選択のクロルヘキシジン)で拭く。バイアルは、ガーゼを利用してアルコールで拭かれ、器具を用いて各ガラス瓶の内部に入れられる。次に、ガラス瓶の蓋がしっかりと締められ、瓶が助手に手渡される。こうしたプロセスを通じて、助手は、頻繁かつ定期的に手術者の手袋及び腕をアルコールでスプレーする。
この実施例では、異種移植皮膚製品は、滅菌ハサミを用いて外科処理特別室中で切断成形され、外科用メス10番で整えられたものであり、滅菌ステンレス鋼定規で再測定されて技術的な仕様及び寸法が適合しているかどうか検証されることになる。異種移植皮膚製品の目視検証が行われて、亀裂、裂け目、目に見える異常、または厚みの過剰さもしくは不十分さがないことが確かめられる。
層流フード下で、手術者は、鉗子を使用して抗病原体槽から単一の異種移植皮膚製品を取り出し、凍結保存用バイアルに合うように事前に切断されたナイロンメッシュ片の上に、真皮側がメッシュと接触するようにして(例えば、真皮側を下にして)ナイロンメッシュの中央にくるように置き、これには製品ごとに1分を要することになる(各製品に要する時間は前後し得、最大で5分を要することが理解されよう)。滅菌ナイロンメッシュ包装コンポーネントは、とりわけ、異種移植製品を支持し、巻く時に異種移植製品が自己接着することを阻止するために利用されることが理解されよう。
滅菌ナイロンメッシュ包装コンポーネントは、滅菌ナイロンメッシュ包装コンポーネント上に異種移植製品を配置し、滅菌ナイロンメッシュ包装コンポーネントの二次元表面領域(すなわち、厚みを含めない長さ及び幅)の中に異種移植製品を合わせることを可能にすると想定される任意の寸法のものであり得る(例えば、異種移植製品の二次元領域寸法は、滅菌ナイロンメッシュ包装コンポーネントの二次元領域寸法未満であると想定される)ことがさらに理解されよう。
滅菌ナイロンメッシュ包装コンポーネントの寸法は、異種移植製品のサイズ及び用量に見合うサイズにされると想定されることがさらに理解されよう。例えば、凍結保護媒体を7ml利用して凍結保存用バイアルに5cm×5cmの異種移植皮膚製品(25cm)(7.5グラム)を入れる場合、当該異種移植皮膚製品に合うように滅菌ナイロンメッシュ包装コンポーネントは8cm×7.5cm(60cm)とされる。凍結保護媒体を5ml利用して凍結保存用バイアルに5cm×15cmの異種移植皮膚製品(75cm)(22.5グラム)を入れる場合、当該異種移植皮膚製品に合うように滅菌ナイロンメッシュ包装コンポーネントの寸法は8cm×22.5cm(180cm)とされることがさらに理解されよう。
包装の間に異種移植皮膚製品の表皮領域または真皮領域が意図せず接着すると、異種移植皮膚製品の完全性が破壊され、その治療的生存度が潜在的に低下し得る。滅菌ナイロンメッシュ包装コンポーネントを含めることは、内部での物理的支持を与えて自己接着を阻止することを意図するものである。滅菌ナイロンメッシュ包装コンポーネントは、生物学的または化学的に不活性であり、異種移植皮膚製品自体の代謝活性または有効性に直接的に影響を与えない。
本明細書の実施例1に記載のサル試験を含めて、多くの実験の過程で、この滅菌ナイロンメッシュ包装コンポーネントを使用することで、異種移植製品との望ましくない有害反応が生じるか、または最終異種移植製品が分解及び汚染されてレシピエントに有害な反応もしくは転帰が生じるということが観察されたことはない。滅菌ナイロンメッシュ包装コンポーネントは、移植手順では使用されない。凍結保存及び解凍の後、ならびに異種移植製品の使用前には、滅菌ナイロンメッシュ包装コンポーネントは廃棄される。このように、所与の用途について、特定の材料及び関連仕様の選択を注意深く行った。Medifab 100ミクロンナイロンメッシュ(パーツ番号03-100/32-Medifab)は、cGMP基準に準拠して製造されるものであり、その物理的特徴及びヒト臨床使用認証済の認容性から、このナイロンメッシュを選択した。
層流フード下で、手術者は、次に、異種移植製品及びナイロンメッシュ包装コンポーネントから構成されるこの複合物をきつく巻き、凍結保存用バイアル(例えば、10mlバイアル)内にこの複合物を入れ、これには製品ごとに1分を要することになる(各製品に要する時間は前後し得、最大で5分を要することが理解されよう)。この態様では、メッシュ材料が巻き付けられることで、得られる円柱の鉛直高が8cmとなり、10ml凍結保存用バイアル(例えば、長さ10cm及び直径17mm)内に一様に確実に合うようになり、完了時には、ねじ込み密封キャップでメッシュ材料がしっかりと固定され得る。メッシュ材料は、この保護性メッシュ材料が異種移植製品の外側になり、巻き付けが完了すると異種移植材料の露出がないか、または異種移植材料が視認不可能となり、異種移植材料が完全に当該保護挿入物の中に完全に巻き込まれるように配向される。滅菌ナイロンメッシュ包装コンポーネントの固有の引張特性及び材料特性は均一であり、この材料の非弾力性または剛性によってそれが広がって凍結保存用バイアルの容量が満たされる。したがって、最初の「巻物密度」にかかわらず、この材料は均一に緩まり、それ故に標準化されることになる。
層流フード下で、手術者は、次に、滅菌シリンジを使用して十分な滅菌凍結保護媒体(例えば、5~7mlのジメチルスルホキシド(DMSO)5%含有媒体(Cryostor CS5、BioLife Solutions)を吸い上げて皮膚製品巻物が完全に浸るまで凍結保存用バイアルを満たすことで、異種移植皮膚材料、メッシュ基材、及び凍結保護媒体の複合物が10mlの充填線と確実にぴったりと重なるようにし、これには製品ごとに1分を要することになる(各製品に要する時間は前後し得、最大で5分を要することが理解されよう)。
層流フード下で、手術者は、ねじ込みキャップを用いて凍結保存用バイアルを密封することになる。中身及びラベル情報の同一性が手術者によって確認される。ラベルは予め用意され、製品を含める凍結保存用バイアルの外部に製品加工前に適用される。
本明細書に記載の異種移植製品及び包装コンポーネントの調製物は、治療用量の形態であり得ることが理解されよう。例えば、異種移植医薬品は、下記のものからなる:
q.異種移植分層皮膚原体
r.以下を含む一次容器閉鎖系
ねじ込み密封キャップを備えた滅菌された透明な凍結保存用10mlポリプロピレンバイアルである、一次包装コンポーネント
ii.滅菌ナイロンメッシュ包装コンポーネント
iii.凍結保護媒体包装コンポーネントを含む一次容器閉鎖系
異種移植製品の指定用量は、cm当たり活力ある代謝的に活性なブタ異種移植原体300mgであり、このブタ異種移植原体は、0.55mmという一定の厚みを有する。製剤の例としては、下記のものが挙げられる:
s.用量強度1:0.55mmの均一な厚みを有し、重量が約7.5グラムの25cmの分層皮膚移植片。
t.用量強度2:0.55mmの均一な厚みを有し、重量が約22.5グラムの75cmの分層皮膚移植片。
異種移植医薬品一次包装コンポーネントの一例は、ねじ込み密封キャップを備えた滅菌された透明な凍結保存用10mlポリプロピレンバイアルである。例えば、Simport Scientificによって製造されるSimport Cryovial,T310(10-ml)が挙げられる。この製品は、BPA非含有、重金属非含有、かつラテックス非含有の医療グレード樹脂から構成され、USPクラスVIリミットを満たす。
異種移植医薬品製造プロセスの間にはナイロンメッシュ包装コンポーネントが利用される。調製される異種移植医薬品は、下記の寸法に予め整えられた滅菌ナイロンメッシュ包装コンポーネント(例えば、Medifab 100ミクロンナイロンメッシュ)上に配置される:
u.用量強度1:幅7.5cm×高さ8cm、総面積60cm
v.用量強度2:幅22.5cm×高さ8cm、総面積180cm
薬物製造プロセスの間には凍結保護媒体包装コンポーネントも利用される。異種移植医薬品は、凍結保存前に下記の体積の凍結保護媒体包装コンポーネントに浸される:
w.用量強度1:7mlのCryostor CS5(5%のDMSO含有)。
x.用量強度2:5mlのCryostor CS5(5%のDMSO含有)。
凍結保護媒体の飽和状態の保証に関して、指定量のCryoStor CS5媒体(用量強度に従う)が、層流フード(ISO-5、FED STD 209E クラス100条件)の下で10mlシリンジを介して垂直位置の凍結保存用バイアル(図46に示される型の凍結保存用バイアルなど)に適用される。凍結保護媒体によって空間(複数可)が満たされ、垂直配向の凍結保存用バイアルの底部から始まって最高位の充填ラインに向かう充填プロセスが重力によって確保される。製造者によって境界設定された10ml充填線に到達するまで体積量の添加が行われる。この様式でのバイアル充填によって気泡の除去も促進される。完了時点でねじ込みキャップによる密封が行われる。飽和状態及び充填状態の目視検証及び物理的検証が達成され、中身の異種移植製品が内部でずれようがないことが確かめられる。
凍結保存
製品材料は、上記のように製品を含む凍結保存用バイアルを含む適切なフリーザーラックに配置された後、認証済Q-A管理速度段階制御型フリーザーに入れられることになる。認証済Q-A管理速度段階制御型フリーザーを使用することで、以下の1つの標準化された速度制御凍結プロセスを介して製品全体が凍結保存される:
y.4℃から始まり、-40℃の温度が達成されるまで、内部チャンバー及び試料温度プローブによって毎分1℃の速度で温度が下がることになる。
z.速度制御下で温度が-40℃に到達した時点で、速度制御型フリーザー試料温度プローブによって-40℃から-80℃に温度が急速に低下することになる。
aa.次に、GLP認証済-80℃フリーザーに材料が移され、使用されるまで保管される。
室温から-80℃に至るにはバッチ回当たり40分を要する(この時間は前後し得、最大で2時間を要することが理解されよう)。いくつかの態様では、浸透性の凍結保護物質(DMSOなど)を使用することで、形態及び組織構造が保護され、新鮮な皮膚のものと同等の代謝活性レベルが保持され得る。いくつかの態様では、凍結保存は、グリセロール、ゲンタマイシン、ナイスタチン、L-グルタミン、及び他の処理溶液のうちの1つ以上を代替的または付加的に含み得る。いくつかの態様では、β-ラクタム系抗生物質は使用されない。
凍結保護媒体包装コンポーネントを含めることは、異種移植製品に必要な凍結解凍サイクルの間の細胞生存を支援することを意図するものである。包装の間に異種移植製品の凍結保護媒体包装コンポーネントを含めることを行わないと、異種移植製品の完全性が破壊されるか、または凍結保存プロセスが妨害される可能性があり、異種移植製品生存度が低下して合否判定基準を下回る可能性があり得る。凍結保護媒体を含めずに異種移植製品を凍結保存すると、異種移植製品に含まれる生物学的に活性な細胞が破壊される。この凍結プロセスの間には、氷の結晶が急速に形成され、細胞膜及びミトコンドリアオルガネラ障壁が破壊されることが起こる。ジメチル-スルホキシド成分を使用すれば、当該成分が細胞内液を置き換えるように働く。したがって、凍結保護媒体を使用することで、そのような氷晶が形成されることが低減され、さらには、細胞生存度に負の影響を与え、ひいては医薬品の有効性にも負の影響が及ぶと想定される総細胞体積の急速かつ破壊的な膨張が生じることも低減される。
本明細書の実施例1に記載のサル試験を含めて、多くの実験の過程で、この凍結保護媒体包装コンポーネントを使用することで、異種移植製品との望ましくない有害反応が生じるか、または最終異種移植製品が分解及び汚染されてレシピエントに有害な反応もしくは転帰が生じるということが観察されたことはない。このように、特定の材料及び関連仕様の選択は、ヒトでの臨床使用が意図される異種移植製品に必要な適切な基準を満たすように行った。これには、DMSOレベルが最小かつ無影響のものである凍結保護媒体、すなわち、追加の異種移植材料(ブタ血清)を製剤に含める必要なく良好に性能を発揮すると想定されるものを同定することが含まれる。凍結保護媒体包装コンポーネントは、移植手順では使用されない。解凍時、及び治療的使用のための異種移植の使用(医薬品としての使用を含む)の前には、凍結保護媒体包装コンポーネントは廃棄される。CryoStor CS5は、cGMP基準に準拠して製造されるものであり、CryoStor CS5を選択した理由は、それがヒト臨床使用認証済の認容性を有するためである。
臨床現場への搬送
臨床現場への製品の搬送は、-80℃保管条件で異種移植皮膚製品材料が維持されるように実施されることになる。搬送容器の一例は、EXP-6 Standard Dry Vapor Shipperであり、この搬送容器は、下記の詳細な規格を有する:
・動的保持期間 10日
・保持温度 -150℃以下
・コア技術 乾燥蒸気液体窒素
・検体チャンバー 直径2.8インチ(71mm)
・深さ 11.5インチ(292mm)
・空重量 9.7lb/4.4kg
・充填時重量 18.3lb/8.3kg
・国内容積重量 21.07lb/9.56kg
・国際容積重量 24.87lb/11.28kg
・外装箱 12インチ×12インチ×22インチ
・(305×305×559mm)
搬送プロセスの態様は、図47にも示されており、こうした態様には、限定されないが、(1)凍結保存での保管を行うこと、(2)凍結保存での保管の間、異種移植製品を、本明細書に記載の凍結保存用バイアル及び媒体に入れておくこと、(3)凍結保存用バイアルを乾燥蒸気搬送容器(または二次閉鎖系)に入れること、(4)搬送業者を介して容器及びバイアルを搬送すること、(5)搬送先で異種移植製品を管理及び監視すること(マイナス(-)150℃以下で少なくとも10日間継続され得る)、(6)異種移植製品が入った本明細書に記載の凍結保存用バイアル及び媒体を容器/二次閉鎖系から取り出すこと、(7)異種移植製品が入った本明細書に記載の凍結保存用バイアル及び媒体を、-80℃での保管を行う現場にあるフリーザーに入れること、が含まれる。
臨床現場での準備
一態様では、医薬品は、凍結保存された異種移植製品として臨床現場に到着する。異種移植製品は、使用前に、37℃の水槽中で解凍し、バイアルから取り出し、3つで1組の室温の滅菌0.9%生理食塩水槽中で洗浄しなくてはならない。
解凍プロセスにつては、滅菌装置及び無菌手法が使用される:
a)3つの滅菌された外科用500mLボウルのそれぞれに生理食塩水200mLを調製する。
b)皮膚製品を含む未開封の凍結保存用バイアルを、温度が約25℃の水槽中に入れる。いくつかの実施形態では、温度は、約37℃である。
c)解凍されたDMSO中に異種移植皮膚製品組織が懸濁される不要な曝露時間が可能な限り最少化するように注意を払いながら、約5分間または凍結保存用バイアル内で組織が動くようになるまで、槽中で穏やかに旋回させる。
d)凍結保存用バイアルを開け、滅菌鉗子を使用して組織及びメッシュを手早く取り出して生理食塩水のボウルに移す。
e)滅菌鉗子を使用して組織が確実に生理食塩水中に15秒間完全に沈むようにし、この間、生理食塩水に触れる範囲が最大化するように穏やかに旋回させることによって撹拌する。皮膚異種移植皮膚製品材料から基礎支持メッシュ材料を分離することになる。必要に応じて第2の滅菌鉗子対を分離に使用する。メッシュはボウル中に残すか、または廃棄してよい。
f)滅菌鉗子を使用して第2のボウル洗浄液に皮膚を移す。完全に沈め、15秒間穏やかに旋回させる。これは、段階希釈または「すすぎ」である。
g)滅菌鉗子を使用して第3の生理食塩水洗浄液に皮膚を移して前のステップを繰り返す。皮膚を完全に沈め、約15秒間穏やかに旋回させる。
h)すすぎプロセスの全時間を60秒以内に収まるようにして、解凍されたDMSO中に製品が懸濁される不要な曝露時間を最少化することで、製品の有効性を最大化することになる。
i)この時点で、組織は解凍され、すすがれており、適用の準備が整う。生理食塩水中に入れて使用するまで約25℃で保ち、この保持の時間が2時間を超えないようにする。
完了後、解凍及びすすぎのプロセスが完了し、異種移植製品を創傷部位に配置する準備が整う。生理食塩水中での連続洗浄によって、解凍時に十分な希釈溶媒が与えられることで、残留凍結保護物質(5%DMSO溶液、CryoStor CS5)が除去され、細胞内液レベルが正常なホメオスタシス条件に置き換わる。無影響レベルのDMSOを含む凍結保護媒体をそのように希釈及び使用することで、解凍後に異種移植皮膚製品材料上に残る残留DMSOは最小限となり、そのいずれも目に見える影響を及ぼさず、臨床的に意味を持つ可能性は極めて低いという想定が確実なものとなる。このプロセスによって、代謝的に活性な細胞の量が最大限に保持され、それによって、異種移植製品の有効性が最大化されることも確実となる。
解凍の例。下記のものは、異種移植製品の解凍手順の一例である。以下のように、滅菌された手袋を着用した手術者がいるバイオセーフティキャビネットで解凍することができる:(i)3つの500mLの外科用ボウルのそれぞれに生理食塩水200mLを調製する。(ii)クロルヘキシジンで水槽を拭いて清潔にしてから70%のエタノールを水槽にスプレーすることによって水槽の準備を整える。(iii)エタノールの乾燥後に滅菌水溶液を水槽に加え、37℃+/-2℃に温める。(iv)異種移植医薬品は二重バッグに入っており、これを未開封のまま37℃の水槽に入れる。(v)約5分間または凍結保存用バイアル内で組織が動くようになるまで穏やかに旋回させる。(vi)解凍されたDMSO中に組織が浸かる時間を可能な限り最少化する。(vii)バッグの外側をエタノールでスプレーし、外側のバッグからバイアルを取り出し、70%のエタノールで異種移植医薬品凍結保存用バイアルをスプレーしてから、Biosafety Cabinet内に入れる。(viii)凍結保存用バイアルの蓋を外し、鉗子を使用して組織及びメッシュを手早く取り出して生理食塩水のボウルに移す。(ix)鉗子を使用して確実に組織が生理食塩水中に60秒間完全に沈むようにし、この間、生理食塩水に触れる範囲が最大化するように穏やかに旋回させることによって撹拌する。(x)皮膚からメッシュを分離し、必要に応じて第2の鉗子対を分離に使用することになる。(xi)メッシュはボウル中に残すか、または廃棄してよい。(xii)鉗子を使用して皮膚を第2のボウル洗浄液に移す。(xiii)完全に沈め、60秒間穏やかに旋回させる。(xiv)鉗子を使用して皮膚を第3のボウル洗浄液に移し、完全に沈め、60秒間穏やかに旋回させる。この時点で組織は解凍され、適用の準備が整う。滅菌された受け皿中で滅菌生理食塩水を用いて組織の湿潤に保つ。
不活性なナイロンメッシュ基材及び異種移植皮膚製品を巻くプロセスを行うことで、異種移植製品の「巻物密度」が均一となる。メッシュ材料はすべて、所与の用途のための所定の寸法に沿って均一な寸法に切断され、同じ材料ロットから得られるため、特定ロット内で製造される皮膚製品の単位のすべてについて均一な材料特性が得られる。
ナイロンメッシュ挿入物の固有の引張特性及び材料特性は均一であり、この材料の非弾力性または剛性によってそれが広がって一次容器閉鎖系(凍結保存用バイアル)の容量が満たされる。したがって、最初の「巻物密度」にかかわらず、この材料は均一に緩まり、それ故に標準化されることになる。
ABSL-2層流フード内のクラス100,ISO5条件の下で、指定量のCryoStor CS5媒体(用量強度に従う)が、10mlシリンジを用いて垂直位置の凍結保存用バイアルに適用される。
凍結保護媒体によって空間(複数可)が満たされ、垂直配向の凍結保存用バイアルの底部から始まって最高位の充填ラインに向かう充填プロセスが重力によって確保される。製造者によって境界設定された10ml充填線に到達するまで体積量の添加が行われる。この様式でのバイアル充填によって気泡の除去も促進される。
完了時点でねじ込みキャップによる密封が行われる。飽和状態及び充填状態の視覚的保証及び物理的保証は、皮膚製品を振ってみて中身が内部でずれようがないことを確かめることによって達成される。凍結保存用バイアルの態様は図46にも示され、示される態様には、とりわけ、容量10ml、サイズ17mm×84mm、キャップの取り外しが容易な垂直の切り込み、シリコーンワッシャー、すべての温度で密封を確保する同じ膨張係数を有する同じポリプロピレン材料からできたキャップ及びチューブ、1と1/4回転のねじ設計、厚い壁、大きな白色の書き込み領域、及び中身を使い切ることが容易に可能な丸底が含まれ得る。
二次閉鎖系の態様は図48に示され、示される態様には、とりわけ、Tyvek-1073B医療グレード構成、幅5インチ×高さ12インチ、ケーン15本または凍結保存用バイアル箱2個を保管する容量、保持温度-150℃以下、乾燥蒸気液体窒素の利用、通常の搬送条件の下でのIATA評価による動的保持期間10日、検体チャンバーの直径2.8インチ(71mm)、検体チャンバーの深さ11.5インチ(292mm)、空重量9.7lb/4.4kg、充填時重量18.3lb/8.3kg、国内容積重量21.07lb/9.56kg、国際容積重量24.87lb/11.28kg、外装箱寸法12インチ×12インチ×22インチが含まれる。
加工に伴う製品の機械的処理操作は最小限のものにすぎないため、製品中に不純物が追加混入または外部から混入して存在することはないと見込まれ、この閉鎖プロセスの間に他の化学的または生物学的な病因物質が持ち込まれることはない。製品製造プロセスに供給源動物を使用する上で必要な合否判定基準検査は本明細書に記載のように実施され、医薬品COAを介して文書化される。最終製品は、本明細書に記載のようにウイルス性の外来性病因物質について評価される。
有効期間に関して、異種移植製品(一実施形態では、有効期間は6ヶ月である)が記載のように連続保管されると、-80℃で連続保管された場合、最大で少なくとも7年という有効期間の長期安定性(細胞生存度)が支援される。異種移植製品が連続的に凍結保存された場合、少なくとも7年という有効期間が得られる。表10は、異種移植製品が検査されることになる時点の安定性を示す。
Figure 2022527061000019
一態様によれば、以下の表11にある項目は、分析及び出荷の証明書において利用可能な項目である。
Figure 2022527061000020
実施例3
ブタ皮膚は、ヒト皮膚と基本特性を共有しており、重度熱傷の応急的に被覆するためのヒト死体皮膚移植片の潜在的代替物となる。ブタ移植片での凍結保存を延長した場合の移植片生存度、移植片生着、及び障壁機能に対する影響を、MHC適合性の皮膚移植モデル及びMHCクラスII不適合性の皮膚移植モデルを使用する試験において調べた。
細胞生存度の評価はホルマザン-MTTを使用して行い、移植片の生物学的特性は、ブタレシピエントに対する移植によって評価した。インビボでの臨床的評価、組織学的分析、及び形態学的分析を補完するために、一連のMTT還元アッセイを実施して、凍結保存及び長期保管後のブタ移植片の残存生存度を評価した。MTTはミトコンドリアによってホルマザン代謝物に還元され、このホルマザン代謝物は、紫色として観察することができる。この現象を利用すると、分光光度計によって測定される光学濃度値の変化を解析するか、または標準曲線に対して生成ホルマザンの量を当てはめることで、実験試料ならびに陽性対象及び陰性対照との間の細胞生存度の差次的な評価を得ることができる。MHC適合性に基づいて各2匹の動物を含むコホートを2つ(全部でN=4)を創出し、各ブタに4つ移植片を移植した。1つは自家移植片であり、3つはMHCプロファイルが同一の同種移植片である。移植片生着、接着、及び移植片拒絶までの時間について移植片を臨床的に評価した。拒絶反応については、Banffグレード分類尺度による組織学的な評価も行った。
保管期間のみに基づいて、その他の点では同等の材料の間での直接的な比較を行うことで、他のすべての因子を一定に保ちながら有意義な生存期間差異が得られる。並行して、同一の様式で保存され、保管期間が15分または7年である同等の移植片の間でインビボでの比較評価が実施される。臨床的な肉眼的評価及び写真を、独立した組織学的評価と併用することで、凍結状態にある期間の長さと関連して移植片の生存にいずれかの認識可能な差異が存在するかどうかが決定される。並行して、MTT還元アッセイによって移植片生存度を定量化してインビトロで別に評価することで、凍結保存後及び様々な保管期間の細胞の代謝活性が特徴付けられる。さらに、標準的な組織学的(H&E)染色を使用して組織形態学的分析を独立して行うことで、こうしたプロセスが構造レベルで移植材料に観察可能な変化を生じさせるかどうかに関する証拠が得られる。この試験では、そのような期間を通じて連続保管された材料を、関連する外科的記録及び標準化された施設プロトコールと併せて有利に使用した。さらに、凍結保存プロトコール及び解凍プロトコール、試薬、ならびに用いる方法に関して、比較群の間での処理方法及びプロトコールを標準化し、等しく適用した。まとめると、これによって、保管期間をその他の影響を排除して並行評価することが可能になり、知見をモデル化もしくは推定するか、または規範的な予測方法をその他の様式で使用する必要性が軽減された。さらに、この同種皮膚移植モデルでは、MHC適合性のドナー-レシピエントペア及びMHCクラスII不適合性のドナー-レシピエントペアを使用して内部標準として役立てることで、7年前に得た組織が同一性を有することに加えて、外科的記録及び文書化が正確であることも確認された。さらに、同種移植片が同等の挙動を示したことは、保管期間の結果として移植片の抗原性が変化しなかったことも実証している。
技術的な不備はなく、すべての移植片がそのそれぞれの創傷床に接着し、血管新生を再誘導した。コホート1(MHC適合性のドナー-レシピエントペア)では、すべての移植片が接着を保ち、手術後経過日数(POD)12時点では一様に健康な見た目を有していたが(図49A)、POD-14時点では、壊死の徴候、紅斑の進行、及び接着の減少の徴候が観察された(図49B)。コホート1での6つの移植片の臨床的評価から、POD-14~18時点で拒絶反応が生じることが示された。コホート2(MHCクラスII不適合性)では、同種移植片は、POD-4を過ぎても自家移植片と同等の見た目を有していた。しかしながら、POD-8までには、すべての同種移植片が軽度の紅斑を示し、拒絶反応に沿っており、POD-10までには完全に拒絶されたものとみなされた。新鮮な皮膚移植片、保存して間もない皮膚移植片、及び長期的に保存された皮膚移植片の間で、存続期間、接着の質、または細胞生存度の間に統計的に有意な差は観察されなかった。これらの凍結保存された材料は、統計的に述べれば、生存していたも同然であり、この知見は、7年を経たすべての移植片が創傷床に接着し、生存性を持続させたことから、インビボで実験的に証明されたものである。そのような生存性は、同種移植片の活力がなければ示されようもないものである。本発明を限定するものではないが、本発明のための凍結保存期間には、例えば、約7年までの任意の長さの期間が含まれ得ることが理解されよう。
材料及び方法:
この試験は、Center for Transplantation SciencesにおいてIACUCが認可したプロトコール(2005N000279,改正69)に従い、U.S.Department of Agriculture’s(USDA)Animal Welfare Act(9 CFRのパート1、パート2、及びパート3)、Guide for the Care and Use of Laboratory Animals、ならびにすべての州の現地の法律及び規制を遵守して実施した。試験プロトコール、外科的手順、及び動物管理指針は、常任IACUC委員会による審査及び監視を独立して受けたものである。
この実験では、全部で8匹のブタを使用し、これらのブタはすべて、Sachs-NIHの近交系ミニチュアブタコロニーのメンバーである。手術時点で、すべてのブタが総体重10~20kg、月齢2~4ヶ月であった。この実験の間の任意の時点においても免疫抑制レジメン(複数可)は使用しなかった。コホート1には動物24074及び動物24075を割り付け、MHC適合性ドナー-レシピエントペアとした。コホート2には動物24043及び動物24070を割り付け、MHCクラスII不適合性のドナー-レシピエントペアとした。これとは別に、インビトロの一連のMTT分析用として、野生型Gottingenミニチュアブタを5匹追加し、これらのミニチュアブタから陽性対照及び陰性対照としての組織を得た。
telazol(チレタミンHCl及びゾラゼパムHCl、Zoetis Inc.、Kalamazoo,MI)を2mg/kgで筋肉内注射してブタドナーに麻酔をかけ、経口気管内挿管を行うために、これらの麻酔ブタドナーを手術部屋に運び入れ2%のイソフルラン及び酸素を使用して麻酔を維持した。酢酸クロルヘキシジン(NolvasanR Surgical Scrub,Fort Dodge Animal Health,Fort Dodge,IA)及びポビドン-ヨウ素,10%(Betadine Solution,Purdue Products,L.P.,Stamford,CT)を用いて手術前に皮膚表面を消毒した。次に、これらの動物を横たわらせ、背の右側が露出するようにした。深度を0.056cm(0.022インチ)に設定して空気駆動式Zimmer採皮機器(Medfix Solution,Inc.,Tucson,AZ)を使用して、各動物の肩甲骨と最下位肋骨の下縁との間から約25cm(表面積)の分層皮膚移植片を収集した。
皮膚移植片の収集後、凍結保存し、限定期間での保管を意図する移植片については、標準化された施設プロトコールを移植片に適用し、これらの移植片を-80℃で15分維持してから解凍した。長期的に凍結保存する移植片は、7年超の期間、-80℃で連続保管しておいたものである。移植片はすべて、事前に約25cmのサイズにしたものであり、これらの移植片を、層流フード下で、構造支持を得るための滅菌ナイロンメッシュ基材の上に置き、巻いて、ねじ込み密封凍結保存用バイアルに入れた。すべての移植片を調製した時点で、約5mLの凍結媒体をバイアルに添加し、密封した。凍結媒体の調製は、プロトコールに従って、15%のジメチルスルホキシド(DMSO)凍結保護媒体(Lonza BioWhittaker)をブタ胎児血清(FPS)またはドナー血清(FPSが利用不可能な場合)と1:1の比で混合し、ろ過(0.45ミクロン)し、使用するまで4℃に冷却することによって行った。次に、速度段階制御型フリーザー中で、毎分1℃の速度で-40℃に冷却した後、-80℃の温度に急速冷却することによってバイアルを凍結し、その後、これらのバイアルを、期間を限定して保管する対照群の試験品については15分間保持し、長期期間の凍結保存を受ける試験群の実験移植片の場合は7年超の期間保持した。この凍結プロセスの間に細胞内液がDMSOに置き換わる。凍結保護媒体(例えば、CryoStor)は、凍結保存用バイアルの最大内容量(10ml)から異種移植製品の体積を差し引いた値に基づいて、約40~80%または約50~70%の量で使用される。
外科的使用のための移植片を解凍するために、密封されたバイアルを37℃の水槽中に約1分間置き、その後にバイアルを開け、滅菌手法使用して凍結移植片を取り出した。次に、生理食塩水中で穏やかに撹拌しながら行う1分間の洗浄を3回実施する段階洗浄に移植片を供して、周囲の残留DMSOを希釈し、全体的に除去し、細胞生存度が失われないようにした。次に、移植片を外科用領域に運び、生着に向けて25℃の生理食塩水中に入れた状態とした。
別々ではあるが、同一の2つの外科的事象を連続して実施した。全外科的計画には、全部で4匹(n=4)のドナー-レシピエントブタを含め、2つの実験コホート(コホート1及びコホート2)のそれぞれにつき2匹の動物を用いた。これらのドナー-レシピエントブタは、既に記載したようにSLA構成に基づいて意図的にペアにしたものである。全部で、4つの技術的対照及び12個(n=12)の実験移植片を移植した後、観察した。
直線(尾側から頭側)の向きで、動物の右側背部に沿って深達性の部分欠損を各動物に4つ創出し、この向きでこれらの部分欠損を、それぞれ1~4とした。深達性の部分欠損創傷は、最初に分層移植片収集を行った後、採皮機器を追加で通過させることによって外科的に導入した。得られた創傷床は、視認可能な壊死組織片が存在せず、一様なものあり、独立した点状の出血を示した。これらの欠損は繋がったものではなく、採皮機器を1回で連続して通過させて創出したものではない。代わりに、4つの創傷が、隔絶されてはいるが、全サイズ、深度、及び解剖学的位置に関して等しいものとして創出されるように注意を払った。
解凍後から移植まで、15(サイズ)刃を使用してすべての分層皮膚移植片に穴を開けることで、血清腫または血腫が形成されないようにした。調製した創傷床上に移植片試験品を独立して配置し、移植片対創傷床の様式で3-0ナイロン縫合糸での単純な結節縫合を行って適切な位置で移植片試験品を一様に縫合した。移植片を囲んで間隔が均等になるように移植片当たり約16箇所の固定を施し、得られる結び目が創傷境界に位置するようにし、移植片物品には位置しないようにした。この手法によって、最小限ではあるが、適切な張りが残存し、均一なものとなるようにした。このことは、移植片対創傷接着が最適なものとなり、血腫が最小化し、移植片生存性が最適なものとなる上で必要なことである。
創傷部位1(最も尾側)には、分層自家移植片を配置し、技術的対照とした。この自家移植片試験品は、創傷床創出の間に収集した後、すべての実験移植片と同時に同じ凍結解凍プロセスに供し、限定期間(-80℃で15分)で識別される対照移植片と同じ期間、同一の凍結保存状態で保持した。創傷部位2には、そのそれぞれのコホートペアメイトから得られた分層同種移植片を縫合配置した。この移植片は、限定期間(-80℃で15分)の凍結保存に供した試験品を代表するものとした。創傷部位3には、野生型ドナーから得られた分層同種移植片を配置した。この分層同種移植片は、創傷部位2の移植片と一致する同一のSLAを有し、凍結保存状態での「延長」保管(-80℃で7年超)に供したものであり、これを、この条件に供した分層移植片を代表するものとした。創傷部位4(最も頭側)には、遺伝的に操作されたノックアウトドナーから得られた分層同種移植片を配置した。この分層同種移植片は、遺伝的に操作されたドナー動物から得たものであり、創傷部位2の移植片と一致する同一のSLAを有し、凍結保存状態(-80℃)での7年超の「延長」曝露に同じく供したものであり、これを、この条件に供した分層移植片を代表するものとした。
Xeroformワセリンガーゼ(Medtronic)、Telfa(商標)非接着被覆材(Covidien,Minneapolis,MN)、及び滅菌ガーゼからなる圧迫被覆材の覆いを、Tegaderm(商標)(3M,St.Paul,MN)のシートを複数枚重ねて使用して適所かつ乾燥状態に維持した。次に、レシピエントにコットンのジャケットを着せ、移植片が妨げを受けることを減らした。POD-2時点で移植片被覆材を除去し、その後は毎日交換した。手術後フォローアップ期間は全部で20日とした。発声、頻呼吸、食欲喪失、ならびに振る舞い、行動、及び運動性の変化を含めて、疼痛の徴候について動物を監視した。手術後の痛みを抑えるために経皮フェンタニルパッチを適用した。縫合糸はすべて、POD-7までに抜糸した。
アッセイ方法を検証し、分層皮膚ブタ皮膚の試験品に特異的な境界条件を確立するために、新鮮な試料(n=5、5)及び熱変性試料(n=5、5)に対して2つの独立したアッセイシリーズを実施した。新鮮な試料での(幾何)平均生成ホルマザン量は、それぞれ0.221±0.022mg/mL及び0.300±0.035mg/mLであった。対照的に、熱変性試料による(幾何)平均生成ホルマザン量は、それぞれ0.094±0.020mg/mL及び0.105±0.009mg/mLであった。これらの差は、両方の場合で統計的に有意であった(p<0.05)。
4匹すべてのブタレシピエントが外科的手順を許容し、インシデントを伴うことなく完全に回復した。16個(n=16)すべての移植片が、技術的合併症が生じた証拠を伴わずに血管新生を再誘導し、根底の創傷床に一様に接着した(すなわち、「良好な生着」)。手術後観察期間を通じて、機械的妨害が原因で移植片が失われることも、移植片が創傷感染の臨床徴候のいずれかを示すこともなかった。創傷部位1の自家移植片は4つ(n=4)すべてが永続的に治癒し、試験終了時には周囲組織と見分けがつかなくなり、皮膚移植、凍結保存、及び解凍手法についての技術的対照として働いた。
コホート1では、6つ(n=6)すべての同種移植片が根底の創傷床に同等に接着し、手術後経過日数(POD)2及びPOD4の時点で血管新生及び灌流と合致する臨床徴候を一様に示した。一方で、期間を延長して凍結保存した同種移植片が示した色のコントラスト(減少)は目立つものであった。これらの移植片の4つすべてが、自家移植片及び創傷部位2の同種移植片と比較して淡い見た目を有していた。この見た目は、POD-6時点までには両方の動物の移植片のすべてで完全に解消された。6つ(n=6)すべての同種移植片において、POD-8時点までに表在表皮の軽度の脱落が生じたが、POD-12時点での検証では、移植片は、生存状態を保ち、接着し、その他の点でも健康な見た目を有していた。動物24074では、創傷部位2及び創傷部位3の移植片が、POD-14時点までに壊死の初期徴候、紅斑の進行、及び接着の喪失を示し、POD-18時点で最終的に拒絶されるまで、免疫介在性の拒絶反応の徴候を増加性に示した。一方で、創傷部位4(最も頭側)の同種移植片は同様に存続することはなく、代わりに、POD-14時点でこの移植片はかなり濃くなり、完全な壊死の徴候を示し、この時点で完全に拒絶されたものと臨床的に評価された。POD-12時点での生存度からPOD-14までに完全剥離に至った移植片4のこの急速な損失は、創傷部位2及び創傷部位3とは似ておらず、異なるものであり、顕著なものであった。動物24075上の移植片については、すべての移植片がPOD-14時点で拒絶された。
コホート2では、動物は、コホート1のものと同様の状態でPOD-4を通過し、互いに等価であった。全体的に見て、臨床徴候は、コホート1の軽度不適合性移植片と同等に進行したが、ペースは加速的であった。延長凍結保存に供した移植片は、凍結保存しなかった移植片と比較してPOD-2及びPOD-4の時点で淡い見た目を有し、すべての移植片がPOD-6までに灌流及び血管新生の証拠を増加性に示した。POD-8までには、動物24043の同種移植片の3つすべてが、明らかな拒絶徴候を示し、完全に拒絶されたものとみなされた。動物24070では、3つすべての同種移植片が、明らかな拒絶徴候を示し、POD-10までに完全に拒絶されたものとみなされた。一方で、同種移植片はすべて、遺伝子的特徴及び保管の長さとは無関係に、同じ割合で生存した。
限定期間または延長期間の凍結保存に供した移植片に関して、創傷部位2及び創傷部位3の同種移植片比較物の100%(n=4中4)が、移植片生存期間の臨床的評価に関して同一であった。創傷部位2と創傷部位4との比較は一致的であったが(n=3)、例外として、動物24074の創傷部位4の同種移植片は、POD-14(n=1)まで生存し、そのカウンターパートよりも臨床的に4日早く拒絶されたことが決定された。
全体的に見て、組織学的評価は、臨床的評価を密接に反映していた。手術後、自家移植片を含めて、すべての移植片が、POD-2及びPOD-4の時点での初期観察の間に急性炎症の初期徴候を示し、この徴候は、時間とともに後に解消された。コホート2の同種移植片はすべて、コホート1のものと比較して、免疫介在性の拒絶反応に向かう加速的な進行を一様に示した。
最終的に、コホート1の6つ(n=6)の同種移植片のすべて、及びコホート2の動物24043の3つ(n=3)の同種移植片が、独立した肉眼的な臨床的評価と一致して組織学的及び顕微鏡的な拒絶徴候を独立して示した。唯一の例外は、動物24070に移植した3つの同種移植片であり、POD-10時点で各移植片に付いたBanffスコアは(4中の)4であったが、これら3つの同種移植片は、POD-12に至るまでは正式に拒絶されたとみなされず、POD-12時点でのこの拒絶は、POD-10で割り当てられた対応臨床指定と比較して1評価期間(2日)遅いものであった。
限定期間または延長期間の凍結保存に供した移植片に関して、創傷部位2及び創傷部位3の同種移植片比較物の100%(n=4中4)が、移植片生存期間の組織学的評価に関して同一であった。創傷部位2と創傷部位4との比較は一致的であったが(n=3)、例外として、動物24074の創傷部位4の同種移植片は、手術後14日間生存し(n=1)、そのカウンターパートよりも組織学的に4日早く拒絶されたことが決定された。
MTT及びニュートラルレッド染色手法を、任意の検査時にも適用したが、これらの手法はいずれも、組織学的評価及び顕微鏡評価には有効とはみなされなかった。一方で、標準的なヘマトキシリン・エオシン染色では、熱変性検体の組織破壊が観察可能であることが実証された。
全体的に見て、ランダム切片を用いる線形混合効果モデルを使用すると、創傷部位3の移植片の平均生存期間は、創傷部位2の同種移植片を0.00下回るもの(95% CI:-1.10、1.10日)であった。創傷部位4における移植片の平均生存期間は、創傷部位2における同種移植を2.00下回るもの(95% CI:1.10、3.10日)であった。組織学的評価からは、肉眼的に移植片を評価した場合と比較して生存期間が平均で0.5日長いことが見出されるが、これは統計的に区別不可能なものである(p=0.28)。8つの実験移植片のうちの7つは、それらの比較物と同等の様態の経過をたどった。インビボ実験では、短期保管を行った移植片と長期保管を行った移植片との間に統計的な差異は示されなかった。動物24074上の創傷部位4の移植片は、その比較物と比較して4日早く完全に拒絶されたと評価され、この移植片は例外であったが、移植片の性能及び生存性を、2群の間で区別することは不可能であった。
以前の刊行物に記載されるように、凍結保存した移植片の見た目は、初期の吸水期及び血管新生期には著しく淡かった。このコントラストは、すべての動物の創傷部位3及び創傷部位4の移植片で際立って明白であった。最終的に、移植片は完全に回復し、根底の創傷床に同程度に接着した。
実証された生存度は、3つの独立した評価方法にわたって一様に証拠付けられた。MTTアッセイの統計解析は、凍結保存した検体と新鮮な検体との間に有意差は存在しなかったことを示すが(図50A)新鮮な検体及び凍結保存した検体と熱変性検体との間では有意差が観察された(図50B)。このことは、凍結保存した材料が、統計的に述べれば、生存していたも同然であることを広く示唆している。この結果は、7年を経たすべての移植片が創傷床に接着し、生存性を持続させたというインビボの結果において実証され、このようなことは、移植片の活力がなければ示されようもないことである。
MTT還元アッセイに関して、そのようなアッセイから得られる絶対値の間には、検体間及びコホート間で実質的な変動が存在した。実際、ホルマザン生成の絶対値は、凍結保存しなかった試料から得られたものよりも実際に高いことがあったが、凍結によって細胞活性が増進した可能性は低い。
ブタ皮膚を数年間(例えば、1年間、3年間、5年間、7年間、またはそれを超える年数)凍結保存することが可能であり、こうしたブタ皮膚は、細胞生存度を保持し、同じ手順を使用して加工及び保管した野生型ブタ皮膚と比較すると、遺伝的改変(Gal-T-KO)が代謝安定性に影響を及ぼすことはなかった。
さらに、この同種皮膚移植モデルにおいてMHC適合性ドナー-レシピエントペア及びMHCクラスII不適合性ドナー-レシピエントペアを使用することは、同種皮膚移植片の生存に対する長期凍結保存(7年)の影響を比較するための内部標準として役立った。長期凍結保存後の細胞生存度データは、インビボでの皮膚の生存によって裏付けられる。このことから、移植片の遺伝的差異(野生型とGal-T-KOとの対比)が移植片の生存に影響を及ぼさなかったことも実証された。
移植片生着及び全生存は、保管期間の長さに逆比例するであろうということが仮説であった。換言すれば、移植片の凍結期間が長くなれば、そうした移植片が生存し、保存期間が短い比較移植片を再現する可能性は低くなるであろうと予想された。驚くべきことに、こうした試験によって、相当の期間(本開示の場合は7年)ブタ組織を凍結保存することが可能であり、こうしたブタ組織は、十分な細胞生存度を保持することが明らかとなった。さらに、同一に加工した野生型皮膚と比較すると、遺伝的改変(Gal-T-KO)が代謝活性に影響を及ぼすことはなかった。最後に、こうした結果は、MTT還元アッセイが正確かつ有用な診断方法を確実に提供し得るものであり、ブタ皮膚移植片生存度の評価に適用可能なものであることを裏付けるものである。
この試験の有望な結果は、ブタ皮膚を、物流的に適した期間、凍結保存及び保管することが実現可能であり得ることを示すものであり、本発明者らの発見は、現在の業界慣行、及びヒト死体組織についてAmerican Association for Tissue Banksが確立した複数年「有効期間」指針と合致するものである。
さらに、こうしたデータは、十分な生存度を有するブタ異種移植製品を保存及び保管する拡張可能かつ臨床的に有用な方法が開示され、活力のあるブタ異種移植製品を有効に保管及び分配することが可能であることを示している。
実施例4
製品加工
一般的なもの
本開示の異種移植製品を、下記の手順に従って加工した。
職員
手術者は、施設の基準に従って滅菌着を着用して指定の病原体を含まない条件を維持した。手術者は、紫外線及び紫外線レーザーから目を保護するための保護眼鏡を着用した。
層流フードの準備及び製品加工
紫外線レーザーランプ(モデル番号)を層流フード内に設置した。互いに上に積み重なった2つの容器蓋の上にランプの四隅のそれぞれを配置し、すなわち、四組の蓋をランプの支持に使用した。ランプ球(全部でチューブ型電球2つ)からフードの床までの距離は約1.5インチであった。フードの内部全体をアルコール(例えば、エタノールまたはイソプロパノール)でスプレーした。ランプをつけ、手術者は、ランプの仕様、電球の数、ならびに電球と異種移植製品との間の距離に基づいて、所望の曝露量が得られる時間の計算を実施した。
手術者は、2つの槽中溶液(一方はクロルヘキシジンであり、もう一方はアルコールである)を2つの別々のボウルに注ぎ入れ、これら2つのボウルをフード下に置いた。
新たに滅菌したバイアルのパッケージをフード下に置いた。バイアルキャップを開け、クロルヘキシジン槽に入れた。次に、各バイアル(キャップなし)を上下逆に反転し、クロルヘキシジン槽に開放状態で各1分間沈め、その後、立てて置いて風乾させた。その後、滅菌ガーゼを利用してクロルヘキシジン及びアルコールで各バイアルの外側を拭いた。バイアルキャップをクロルヘキシジン槽から取り出し、滅菌ガーゼ上に置いた。各バイアルの開口端をアルコール槽に各1分間沈めた後、傍らにおいて風乾させた。
実施例2に従って調製したメッシュ基材を有する異種移植製品「46番製品」(5×15cm)を、その元のバイアルから取り出し、手術者は、元のバイアルを空のボウルに入れた。手術者は、開封した滅菌済器具パッケージの紙側に46番製品を置いた。手術者は、46番製品を広げ、ランプの下に46番製品を2分間置き、その後、46番製品をもう一方の側にひっくり返し、メッシュ基材を除去し、46番製品をランプの下に置いて反対側を2分間曝露させた。この作業は同じ紙の上で行った。所与の試料がUV光に曝露される時間は、滅菌対象となる特定の生物学的病因物質または生物学的病因物質の型によって変わり得、例えば、以下の表12に示される通りである:
Figure 2022527061000021
次に、「46番製品」を取り出し、半分に切断した。各半分を手で巻き、上で説明したように滅菌した新たなバイアルに入れた。各新たなバイアルに各新たなキャップを被せ、しっかりとねじ込んだ。各バイアルをランプの下に置き、バイアルの外側が望ましくまんべんなく光に曝露されるように定期的に転がした。内側が事前に滅菌されており、ねじ山部及びキャップを含めて、アルコール及びクロルヘキシジンで手術者が外部を滅菌したガラス瓶の中にバイアルを入れた。
下記の異種移植製品についても同様のプロセスを実施したが、例外として、異種移植製品をランプの下に入れる前に滅菌紙の上に置く代わりに、製品からメッシュは除去せず、皮膚側を上にして製品をランプの下に2分間置いた後、各製品の下部の最初の半分をランプと相対するように折り返して製品を2分間保持し、その後、各製品の下部の残り半分をランプと相対するように折り返して各製品の残り半分を2分間保持した。製品のいくつかは、より小さな切片に切断し、光に曝露し、この曝露時間は、製品によっては2分超としたが、決して2分未満にはならないようにした。
製品40番(5×15cm)、製品63番(10×15cm)、製品69番(10×15cm)、及び製品25番については上記のプロセスを適用し、製品69番及び製品25番については、もっぱら器具を使用して転がし、手術者はそれらの製品を直接的には取り扱わなかった。46番と同様に、手術者は、各バイアルにキャップをしっかりとねじ込んだ後、各バイアルをランプの下に置き、ランプから発せられる光への曝露がまんべんなく生じるように転がした。その後、ランプの下からバイアルを取り出し、アルコールでしっかりと拭いてからガラス瓶に入れた。
4つのガラス瓶をバイアルセットのそれぞれの保管に利用した。手術者に手渡す前には、助手がスプレーボトルを介してガラス瓶の外部にアルコールをたっぷりとかけるようにした。助手から手術者へのガラス瓶の手渡しは、助手が各瓶の下部を持ち、フードの外側でガラス瓶を手術者に手渡すことによって行った。手術者は、助手からガラス瓶を受け取った後、フード下でガラス瓶の蓋をアルコールに浸漬し、ビンの開口端をアルコールに沈め、瓶のねじ山部を含めてビンの外部をアルコールで拭いた。
ガーゼを利用してアルコールでバイアルを拭き、器具を用いて各ガラス瓶の内部に入れた。次に、ガラス瓶の蓋をしっかりと締め、助手に瓶を手渡した。こうしたプロセスを通じて、助手が、頻繁かつ定期的に手術者の手袋及び腕をアルコールでスプレーするようにした。
その後、手順の終了時に製品を段階制御型フリーザーに入れた。
実施例5
ヒト患者における重度かつ広範囲の部分的及び完全な厚さの火傷の治療のための本開示の異種移植製品のヒト評価において、以下の結果を得た:
患者は、混合した深度の、炎により誘発された火傷を呈し、図51Aに示すように、具体的には右側外側腋窩(上縁)から第6右側外側肋骨(下縁)までの、(解剖学的な)右側上部胴体に14%の全身表面積(TBSA)欠損をもたらした。
外科医は、ヒト死亡ドナー(HDD)同種移植片及び本開示の異種移植産物を用いて、患部の創傷領域の一部を一時的に移植した。創傷領域の残りの領域は、陰圧創傷療法(NPWT)で被覆した。図51Bに具体的に示されるように、患者は、1:1.5の比率で網目状にした約150cmのHDD同種移植片と、1:1の比率で網目状にした25cmの本開示の異種移植製品とを手術中に受けた。
両方の一時的な創傷閉鎖包帯は隣接して配置されたが、直接接触しておらず、組織(複数可)の周囲にホッチキスで固定され、NPWTで覆われた。
POD-5での第1の創傷包帯交換時の臨床的な目視検査では、図51Cに示されるようにHDD同種移植片及び本開示の異種移植産物はともに、下層の創傷床に完全に付着しており、区別できないことが観察された。
患者は有害事象を発現せず、重篤な有害事象は観察または報告されなかった。
通常の臨床標準の治療に従って、HDD同種移植片及び本開示の異種移植製品の両方を、第1の創傷包帯交換時に除去した。機械的除去後、下層の創傷床は等しく灌流され(目に見える点状出血を伴う)、それ以外は図51Dに示すように等価であるように見えた。
HDD同種移植片のための創傷床に隣接する本開示の異種移植製品の創傷床のPOD-5クローズアップ画像を図51Eに示す。
除去後のPOD-5において、治療の臨床基準に従って、図51Fに示すように、患者から得られた自己(自家)移植片(自己分層皮膚移植片)による生着を介して、患部全体が確定的な創傷閉鎖を受けた。
プロトコールに従って、感染症、免疫応答、及び長期評価のための血液試料、ならびに術前、術中、及び術後の写真を得た。
(最初の手術からの)POD-14において、創傷包帯交換時の臨床観察は、図51Gに示されるように、任意の位置において創傷治癒速度または質において識別可能な差異を示さなかった。
プロトコールに従って、感染症、免疫応答、及び長期評価のための血液試料、ならびに術前、術中、及び術後の写真を得た。
定量的RT-PCRによるPERVの検出のための試験を、ベースライン血液試料(25mL)、第1の包帯変更(21mL)、及び2週間血液試料(23mL)に対して行った。結果は以下の通りであった。
PERVは、PBMCから単離されたRNAまたはDNA、及び血漿から単離されたRNAのいずれにおいてもqPCRによって検出されなかった。PBMCから単離したRNAには、ブタmtCOII遺伝子に指向したqPCRによって決定されるようなブタ細胞の証拠は見出されなかった。
Figure 2022527061000022
さらに、マイトマイシンCで処理したブタ刺激細胞(アルファ-ガラクトシルトランスフェラーゼノックアウト(KO)ブタB173)の存在下でのヒトリンパ球応答性末梢血単核細胞(PBMC)の増殖応答を経時的に評価するための研究を実施する。PBMC試料は、ブタ皮膚移植片の移植前及び移植後の両方で、治験委託者試験XT-001に登録した患者から採取した。ブタ皮膚移植片は、遺伝的に修飾されたアルファ-ガラクトシルトランスフェラーゼノックアウト(KO)ブタから得た。
患者のPBMC試料は、予めフィコール勾配遠心分離により調製され、凍結保存された。皮膚ドナーブタ(B173)からの全血は、予めXeno Diagnostics(XD)に出荷され、PBMCは、フィコール勾配遠心分離により単離され、凍結保存された。MLRを設定する前日、試料を37℃で解凍し、洗浄し、10%のFBS/RPMI中で一晩保管した。ブタPBMCをマイトマイシンCで処理し(刺激剤)、等数の試験ヒトPBMC(応答者)と混合した。MLRを、6日目にBrdUを添加して7日間インキュベートした。7日目にBrdU ELISAを実行し、増殖を測定した。
図52に示すように、皮膚移植片患者XT-001から得られたPBMCは、アルファ-Gal KOブタ173 PBMC(皮膚移植片と同じ供給源)と共培養したときに、陽性異種MLR PBMC混合リンパ球応答(MLR)を生成した。異種増殖応答は、9月4日目~9月19日までの試料採取日の培養で最も高かった。対照的に、10月3日の試料採取日からの異種増殖応答は減少し、自己MLR応答レベルに近かった。全体的に、試験されたすべての期間におけるKOブタ173による異種反応は、ヒトIRB11同種異系比較物よりも少なかった。
さらに、アルファ-ガラクトシルトランスフェラーゼノックアウト(KO)ブタから得られたブタ末梢血単核細胞(PBMC)へのヒト血漿抗ブタIgM及びIgG結合のレベルを経時的に測定する研究を実施する。血漿試料は、ブタ皮膚移植片の移植前及び移植後の両方で、治験委託者試験XT-001に登録した患者から採取した。ブタ皮膚移植片は、遺伝的に修飾されたアルファ-ガラクトシルトランスフェラーゼノックアウト(KO)ブタから得た。
この研究では、血漿試料を56℃の乾燥熱浴中で30分間解離させた。試料を冷却し、FACS結合/洗浄媒体中で連続希釈した。次いで、希釈した血漿試料をKOブタPBMCとともにインキュベートし、続いて二次抗体(PE-ヤギ抗ヒトIgG及びFITC-ヤギ抗ヒトIgM)とともにインキュベートした。適切な補填、蛍光マイナスワン(FMO)、及びブランク限界(LOB)対照を同じアッセイにおいて実行した。細胞を取得し、ACEA NovoCyte Flow Cytometerで分析した。抗ブタIgM及びIgGの結合を、蛍光強度中央値(MFI)及び以下のように得られた相対的MFIを使用して評価した:相対的MFI=実際のMFI値/LOB(血漿の不在下でのみ二次抗体を使用して得られるMFI)。
ヒト血漿IgM及びIgG結合は、移植前及び移植後を含む4つの時点(7日目、16日目、30日目)において測定された。1:2及び1:10希釈での、すべての実際の試験試料は、LOB値よりも高いMFI値が示された。図53に示されるように、抗異種IgM及びIgGレベルの増加は、相対的に中央値の蛍光強度の増加によって示されるように、16日目及び30日目に既存のレベルを上回って得られた。7AADによって決定されたアッセイ後の細胞生存率の平均値は、92.82%であった。細胞を生細胞上でのみゲート化して、ブタPBMCに対するIgM及びIgG結合を決定した。

Claims (121)

  1. 移植のための個別化された、ヒト化された、移植可能な細胞、組織、及び臓器のリポジトリを生成及び保存するための生物学的システムであって、前記生物学的システムが、生物学的に活性及び代謝的に活性であり、前記生物学的システムが、ヒトレシピエントへの移植のために非ヒト動物において遺伝的に再プログラムされた細胞、組織、及び臓器を含み、
    前記非ヒト動物が、遺伝的に再プログラムされたブタから単離された細胞、組織、及び/または臓器の異種移植のための前記遺伝的に再プログラムされたブタであり、前記遺伝的に再プログラムされたブタが、野生型ブタの主要組織適合性複合体の複数のエクソン領域中の複数のヌクレオチドを、ヒト捕捉参照配列からの複数の合成ヌクレオチドで置き換えるように再プログラムされている核ゲノムを含み、
    前記遺伝的に再プログラムされたブタの細胞が、アルファ-Gal、Neu5Gc、及びSDから選択される1つ以上の表面糖鎖エピトープを提示せず、
    アルファ-1,3ガラクトシルトランスフェラーゼ、シチジン一リン酸-N-アセチルノイラミン酸ヒドロキシラーゼ(CMAH)、及びβ1,4-N-アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼをコードする遺伝子が、前記遺伝的に再プログラムされたブタが、前記遺伝子によってコードされる表面糖鎖エピトープの機能的発現を欠くように改変され、
    前記再プログラムされたゲノムが、以下:i)前記ヒト捕捉参照配列のHLA-A、HLA-B、及びHLA-Cのそれぞれのオルソロガスなエクソン領域に由来するヌクレオチドでの、野生型ブタのSLA-1、SLA-2、及びSLA-3のうちの少なくとも1つ、ならびにii)前記ヒト捕捉参照配列のHLA-E、HLA-F、及びHLA-Gのそれぞれのオルソロガスなエクソン領域に由来するヌクレオチドでの、野生型ブタのSLA-6、SLA-7、及びSLA-8のうちの少なくとも1つ、ならびにiii)前記ヒト捕捉参照配列のHLA-DR及びHLA-DQのそれぞれのオルソロガスなエクソン領域に由来するヌクレオチドでの、野生型ブタのSLA-DR及びSLA-DQのうちの少なくとも1つの、エクソン領域におけるヌクレオチドの部位特異的変異原性置換を含み、
    前記再プログラムされたゲノムが、以下のA~C:
    A)再プログラムされたブタ核ゲノムは、前記ヒト捕捉参照配列からの既知のヒトβ2-ミクログロブリンのオルソロガスなエクソンからのヌクレオチドでの、前記野生型ブタのβ2-ミクログロブリンのエクソン領域におけるヌクレオチドの部位特異的変異原性置換を含む;
    B)前記再プログラムされたブタ核ゲノムは、前記ヒト捕捉参照ゲノムによって発現されるベータ2ミクログロブリン糖タンパク質のアミノ酸配列と少なくとも95%同一であるヒト化ベータ2ミクログロブリン(hB2M)ポリペプチド配列であるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む;
    C)前記再プログラムされたブタ核ゲノムは、前記ブタの内因性β2-ミクログロブリン遺伝子座において、前記核ゲノムが、前記ヒトレシピエントのβ2-ミクログロブリンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むように再プログラムされているように、再プログラムされている;のうちの少なくとも1つを含み、
    前記再プログラムされたブタ核ゲノムは、前記遺伝的に再プログラムされたブタが前記野生型ブタの内因性β2-ミクログロブリンポリペプチドの機能的発現を欠くように再プログラムされており、
    前記再プログラムが、いかなるフレームシフトまたはフレーム破壊も導入しない、前記生物学的システム。
  2. 前記遺伝的に再プログラムされたブタが、非トランスジェニックである、請求項1に記載の生物学的システム。
    前記野生型ブタのゲノムのイントロン領域が、再プログラムされていない、請求項1または請求項2に記載の生物学的システム。
  3. 前記遺伝的に再プログラムされたブタが、少なくとも以下:Ascaris種、cryptosporidium種、Echinococcus、Strongyloids sterocolis、Toxoplasma gondii、Brucella suis、Leptospira種、mycoplasma hyopneumoniae、ブタ生殖器呼吸器症候群、仮性狂犬病、staphylococcus種、Microphyton種、Trichophyton種、ブタインフルエンザ、ブタサイトメガロウイルス、アルテリウイルス、コロナウイルス、Bordetella bronchiseptica、及び家畜関連メチシリン耐性Staphylococcus aureusの病原体を含まない、請求項1~3のいずれか1項に記載の生物学的システム。
  4. 前記遺伝的に再プログラムされたブタが、バイオバーデン低減手順に従って維持され、前記手順が、隔離された閉鎖群中で前記ブタを維持することを含み、前記隔離された閉鎖群中のすべての他の動物が、前記病原体を含まないことが確認され、前記ブタが、前記隔離された閉鎖群の外部の任意の非ヒト動物及び動物収容施設との接触から隔離される、請求項1~4のいずれか1項に記載の生物学的システム。
  5. 前記野生型ブタゲノムが、前記ヒト捕捉参照配列を使用して、SLA-MIC-2遺伝子において、かつSLA-3、SLA-6、SLA-7、SLA-8、SLA-DQ、CTLA-4、PD-L1、EPCR、TBM、TFPI、及びベータ-2-ミクログロブリンをコードするエクソン領域において、再プログラムされたヌクレオチドを含み、前記ヒト細胞、組織、または臓器が、ブタベータ-2-ミクログロブリン、SLA-1、SLA-2、及びSLA-DRの機能的発現を欠く、請求項1~4のいずれか1項に記載の生物学的システム。
  6. 前記野生型ブタゲノムが、CTLA-4プロモーター及びPD-L1プロモーターのうちの1つ以上において再プログラムされたヌクレオチドを含み、前記CTLA-4プロモーター及び前記PD-L1プロモーターのうちの1つ以上が、前記野生型ブタのCTLA-4及びPD-L1の内因性発現と比較して、再プログラムされたCTLA-4及び再プログラムされたPD-L1のうちの1つまたは両方の発現を増加させるように再プログラムされる、請求項1~5のいずれか1項に記載の生物学的システム。
  7. 前記合成されたヌクレオチドの総数が、前記合成されたヌクレオチドで前記野生型ブタの前記ゲノムを再プログラムした後に、ヌクレオチドの数に正味の損失または正味の利得がないように、前記置換されたヌクレオチドの総数に等しい、請求項1~6のいずれか1項に記載の生物学的システム。
  8. 前記複数の合成ヌクレオチドによる前記再プログラムが、前記野生型ブタMHC配列と前記ヒト捕捉参照配列との間で保存されるアミノ酸をコードするコドン領域におけるヌクレオチドの置換を含まない、請求項1~7のいずれか1項に記載の生物学的システム。
  9. 前記再プログラムされたゲノムが、前記ヒト捕捉参照配列由来のオルソロガスなヌクレオチドでの、前記野生型ブタの前記主要組織適合性複合体におけるヌクレオチドの部位特異的変異原性置換を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の生物学的システム。
  10. 部位特異的変異原性置換が、前記非ヒト動物を産生するために使用される生殖細胞において作製される、請求項1~9のいずれか1項に記載の生物学的システム。
  11. 前記ヒト捕捉参照配列が、ヒト患者捕捉配列、ヒト集団特異的ヒト捕捉配列、またはアレル群特異的ヒト捕捉配列である、請求項1~10のいずれか1項に記載の生物学的システム。
  12. 前記再プログラムされたゲノムが、HLA-A捕捉参照配列のオルソロガスなエクソン領域に由来するヌクレオチドでの、前記野生型ブタのSLA-1のエクソン領域におけるヌクレオチドの部位特異的変異原性置換を含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の生物学的システム。
  13. 前記再プログラムされたゲノムが、HLA-B捕捉参照配列のオルソロガスなエクソン領域に由来するヌクレオチドでの、前記野生型ブタのSLA-2のエクソン領域におけるヌクレオチドの部位特異的変異原性置換を含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の生物学的システム。
  14. 前記再プログラムされたゲノムが、HLA-C捕捉参照配列のオルソロガスなエクソン領域に由来するヌクレオチドでの、前記野生型ブタのSLA-3のエクソン領域におけるヌクレオチドの部位特異的変異原性置換を含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の生物学的システム。
  15. 前記再プログラムされたゲノムが、HLA-E捕捉参照配列のオルソロガスなエクソン領域に由来するヌクレオチドでの、前記野生型ブタのSLA-6のエクソン領域におけるヌクレオチドの部位特異的変異原性置換を含む、請求項1~14のいずれか1項に記載の生物学的システム。
  16. 前記再プログラムされたゲノムが、HLA-F捕捉参照配列のオルソロガスなエクソン領域に由来するヌクレオチドでの、前記野生型ブタのSLA-7のエクソン領域におけるヌクレオチドの部位特異的変異原性置換を含む、請求項1~15のいずれか1項に記載の生物学的システム。
  17. 前記再プログラムされたゲノムが、HLA-G捕捉参照配列のオルソロガスなエクソン領域に由来するヌクレオチドでの、前記野生型ブタのSLA-8のエクソン領域におけるヌクレオチドの部位特異的変異原性置換を含む、請求項1~16のいずれか1項に記載の生物学的システム。
  18. 前記再プログラムされたゲノムが、前記野生型ブタのMHCクラスI鎖関連2(MIC-2)のエクソン領域におけるヌクレオチドの部位特異的変異原性置換を含む、請求項1~17のいずれか1項に記載の生物学的システム。
  19. 前記再プログラムされたゲノムが、SLA-1、SLA-2、SLA-DR、またはそれらの組み合わせの機能的発現を欠く、請求項1~18のいずれか1項に記載の生物学的システム。
  20. 前記再プログラムされたゲノムが、HLA-DQA1捕捉参照配列のオルソロガスなエクソン領域に由来する、前記野生型ブタのSLA-DQAのエクソン領域におけるヌクレオチドの部位特異的変異原性置換を含む、請求項1~19のいずれか1項に記載の生物学的システム。
  21. 前記再プログラムされたゲノムが、HLA-DQB1捕捉参照配列のオルソロガスなエクソン領域に由来する、前記野生型ブタのSLA-DQBのエクソン領域におけるヌクレオチドの部位特異的変異原性置換を含む、請求項1~20のいずれか1項に記載の生物学的システム。
  22. 前記再プログラムされたゲノムが、前記ヒト捕捉参照配列のHLA-DRA1及びSLA-DRB1のオルソロガスなエクソン領域に由来するヌクレオチドでの、前記野生型ブタのSLA-DRA及びSLA-DRB1のエクソン領域におけるヌクレオチドの部位特異的変異原性置換を含むか、または前記再プログラムされたゲノムが、SLA-DRA及びSLA-DRB1の機能的発現を欠く、請求項1~21のいずれか1項に記載の生物学的システム。
  23. 前記再プログラムされたゲノムが、前記ヒト捕捉参照配列のHLA-DQA1及びHLA-DQB1のオルソロガスなエクソン領域に由来するヌクレオチドでの、前記野生型ブタのSLA-DQA及びSLA-DQB1のエクソン領域におけるヌクレオチドの部位特異的変異原性置換を含む、請求項1~22のいずれか1項に記載の生物学的システム。
  24. 前記ヌクレオチドの部位特異的変異原性置換が、前記野生型ブタの核ゲノムと既知のヒト配列との間で保存されないコドンにある、請求項1~23のいずれか1項に記載の生物学的システム。
  25. 前記再プログラムされたゲノムが、既知のヒトB2-ミクログロブリンのオルソロガスなエクソンに由来するヌクレオチドでの、前記野生型ブタのB2-ミクログロブリンのエクソン領域におけるヌクレオチドの部位特異的変異原性置換を含む、請求項1~24のいずれか1項に記載の生物学的システム。
  26. 前記再プログラムされたブタ核ゲノムが、前記ヒト捕捉参照ゲノムによって発現されるベータ2ミクログロブリン糖タンパク質のアミノ酸配列と少なくとも95%同一であるヒト化ベータ2ミクログロブリン(hB2M)ポリペプチド配列であるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む、請求項1~25のいずれか1項に記載の生物学的システム。
  27. 前記核ゲノムが、前記遺伝的に再プログラムされたブタが前記野生型ブタの内因性β2-ミクログロブリンポリペプチドの機能的発現を欠くように再プログラムされている、請求項1~26のいずれか1項に記載の生物学的システム。
  28. 前記核ゲノムが、前記ブタの内因性β2-ミクログロブリン遺伝子座において、前記核ゲノムが、前記ヒト捕捉参照配列のβ2-ミクログロブリンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むように再プログラムされているように、再プログラムされている、請求項1~27のいずれか1項に記載の生物学的システム。
  29. 前記再プログラムされたゲノムが、SLA-3、SLA-6、SLA-7、SLA-8、及びMIC-2のエクソン領域におけるヌクレオチドの部位特異的変異原性置換を含む、請求項1~28のいずれか1項に記載の生物学的システム。
  30. 前記再プログラムされたゲノムが、SLA-DQ及びMIC-2のエクソン領域におけるヌクレオチドの部位特異的変異原性置換を含む、請求項1~29のいずれか1項に記載の生物学的システム。
  31. 前記再プログラムされたゲノムが、SLA-3、SLA-6、SLA-7、SLA-8、SLA-DQ、及びMIC-2におけるヌクレオチドの部位特異的変異原性置換を含む、請求項1~30のいずれか1項に記載の生物学的システム。
  32. 前記再プログラムされたゲノムが、SLA-DR、SLA-1、及び/またはSLA-2の機能的発現を欠く、請求項1~31のいずれか1項に記載の生物学的システム。
  33. 前記核ゲノムが、前記エクソン領域のスカーレス交換を使用して再プログラムされ、フレームシフト、挿入変異、欠失変異、ミスセンス変異、及びナンセンス変異が存在しない、請求項1~32のいずれか1項に記載の生物学的システム。
  34. 前記核ゲノムが、フレームシフト、ナンセンス、またはミスセンス変異を介してタンパク質発現の破壊を引き起こし得る、いかなる正味の挿入、欠失、切断、または他の遺伝子改変も導入せずに再プログラムされる、請求項1~33のいずれか1項に記載の生物学的システム。
  35. 前記核ゲノムのイントロン領域におけるヌクレオチドが改変されない、請求項1~34のいずれか1項に記載の生物学的システム。
  36. 前記核ゲノムが、前記再プログラムされたエクソン領域においてホモ接合であるように再プログラムされる、請求項1~35のいずれか1項に記載の生物学的システム。
  37. 前記核ゲノムが、ポリペプチドの細胞外、表現型表面発現がヒトレシピエントにおいて免疫寛容性であるように再プログラムされる、請求項1~36のいずれか1項に記載の生物学的システム。
  38. 前記核ゲノムが、CTLA-4プロモーター配列を再プログラムすることによって、細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)の発現が増加するように再プログラムされる、請求項1~37のいずれか1項に記載の生物学的システム。
  39. 前記再プログラムされたゲノムが、ヒト捕捉参照配列CTLA-4のオルソロガスなエクソン領域に由来するヌクレオチドでの、前記野生型CTLA-4のエクソン領域におけるヌクレオチドの部位特異的変異原性置換を含む、請求項1~38のいずれか1項に記載の生物学的システム。
  40. 前記再プログラムされた核ゲノムが、前記ヒト捕捉参照ゲノムによって発現されるCTLA-4と少なくとも95%同一であるヒト化CTLA-4ポリペプチド配列であるタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む、請求項1~39のいずれか1項に記載の生物学的システム。
  41. 前記核ゲノムが、PD-L1プロモーター配列を再プログラムすることによって、プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)の発現が増加するように再プログラムされる、請求項1~40のいずれか1項に記載の生物学的システム。
  42. 前記再プログラムされたゲノムが、既知のヒトPD-L1のオルソロガスなエクソンに由来するヌクレオチドでの、前記野生型PD-L1のエクソン領域におけるヌクレオチドの部位特異的変異原性置換を含む、請求項1~41のいずれか1項に記載の生物学的システム。
  43. 前記再プログラムされた核ゲノムが、前記ヒト捕捉参照ゲノムによって発現されるPD-L1と少なくとも95%同一であるヒト化PD-L1ポリペプチド配列であるタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む、請求項1~42のいずれか1項に記載の生物学的システム。
  44. 請求項1~43のいずれか1項に記載の生物学的システムから得られた、遺伝的に再プログラムされた、生物学的に活性及び代謝活性な、非ヒト細胞、組織、または器官。
  45. 前記遺伝的に再プログラムされた、生物学的に活性及び代謝的に活性な非ヒト細胞が、幹細胞、胚性幹細胞、多能性幹細胞、または分化幹細胞である、請求項44に記載の、遺伝的に再プログラムされた、生物学的に活性及び代謝的に活性な非ヒト細胞、組織、または臓器。
  46. 前記幹細胞が、造血幹細胞である、請求項45に記載の、遺伝的に再プログラムされた、生物学的に活性及び代謝活性な非ヒト細胞、組織、または臓器。
  47. 前記遺伝的に再プログラムされた、生物学的に活性及び代謝的に活性な非ヒト組織が、神経、骨、または皮膚である、請求項44に記載の、遺伝的に再プログラムされた、生物学的に活性及び代謝的に活性な非ヒト細胞、組織、または臓器。
  48. 前記遺伝的に再プログラムされた、生物学的に活性及び代謝的に活性な非ヒト臓器が、固形臓器である、請求項44に記載の、遺伝的に再プログラムされた、生物学的に活性及び代謝的に活性な非ヒト細胞、組織、または臓器。
  49. アルファ-Gal、Neu5Gc、及びSDから選択される表面糖鎖エピトープの機能的発現を欠き、かつヒト捕捉参照配列のヒト化表現型を発現するように遺伝的に再プログラムされる核ゲノムを含む、遺伝的に再プログラムされたブタを調製する方法であって、
    f.ブタ胎児線維芽細胞、ブタ接合体、ブタ誘導多能性幹細胞(IPSC)、またはブタ生殖細胞を得ることと、
    g.a)中の前記細胞を、機能的アルファ-1,3ガラクトシルトランスフェラーゼ、シチジン一リン酸-N-アセチルノイラミン酸ヒドロキシラーゼ(CMAH)、及びβ1,4,N-アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼを欠くように遺伝子的に改変することと、
    h.i)前記ヒト捕捉参照配列のHLA-A、HLA-B、及びHLA-Cのそれぞれのオルソロガスなエクソン領域に由来するヌクレオチドでの、野生型ブタのSLA-1、SLA-2、及びSLA-3のうちの少なくとも1つの、ならびにii)前記ヒト捕捉参照配列のHLA-E、HLA-F、及びHLA-Gのそれぞれのオルソロガスなエクソン領域に由来するヌクレオチドでの、野生型ブタのSLA-6、SLA-7、及びSLA-8のうちの少なくとも1つの、ならびにiii)前記ヒト捕捉参照配列のHLA-DR及びHLA-DQのそれぞれのオルソロガスなエクソン領域に由来するヌクレオチドでの、野生型ブタのSLA-DR及びSLA-DQのうちの少なくとも1つの、エクソン領域におけるヌクレオチドの部位特異的変異原性置換のために、規則的な間隔でクラスター化した短鎖反復回文配列(CRISPR/Cas)を用いて、b)中の前記細胞を遺伝的に再プログラムすることと、
    ここで、前記野生型ブタのゲノムのイントロン領域は再プログラムされておらず、
    前記再プログラムされたゲノムは、以下のA~C:
    A)前記再プログラムされたブタ核ゲノムは、前記ヒト捕捉参照配列からの既知のヒトβ2-ミクログロブリンのオルソロガスなエクソンからのヌクレオチドでの、前記野生型ブタのβ2-ミクログロブリンのエクソン領域におけるヌクレオチドの部位特異的変異原性置換を含む;
    B)前記再プログラムされたブタ核ゲノムは、前記ヒト捕捉参照ゲノムによって発現されるベータ2ミクログロブリンと少なくとも95%同一であるヒト化ベータ2ミクログロブリン(hB2M)ポリペプチド配列であるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む;
    C)前記再プログラムされたブタ核ゲノムは、前記遺伝的に再プログラムされたブタが、前記野生型ブタの内因性β2-ミクログロブリンポリペプチドの機能的発現を欠くように再プログラムされ、前記再プログラムされたブタ核ゲノムは、ブタの内因性β2-ミクログロブリン遺伝子座において、前記核ゲノムが、前記ヒトレシピエントのβ2-ミクログロブリンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むように再プログラムされている;の少なくとも1つを含み、
    前記再プログラムは、いかなるフレームシフトまたはフレーム破壊も導入しておらず、
    i.c)中の前記遺伝的に再プログラムされた細胞から胚を生成することと、
    j.前記胚を代用ブタに移植し、前記移植された胚を前記代用ブタ内で成長させることと、を含む、前記方法。
  50. ステップ(a)が、前記ヒト捕捉参照配列からの主要な組織適合性複合体配列のオルソロガスなエクソン領域からのヌクレオチドでの、野生型ブタの主要な組織適合性複合体の複数のエクソン領域における複数のヌクレオチドの置き換えをさらに含み、前記置き換えが、いかなるフレームシフトまたはフレーム破壊も導入しない、請求項49に記載の方法。
  51. 前記置き換えが、前記既知のヒト主要組織適合性複合体配列に由来するオルソロガスなヌクレオチドでの、前記野生型ブタの前記主要組織適合性複合体におけるヌクレオチドの部位特異的変異原性置換を含む、請求項49または50に記載の方法。
  52. 前記ヒト捕捉参照配列が、ヒト患者捕捉配列、ヒト集団特異的ヒト捕捉配列、またはアレル群特異的ヒト捕捉配列である、請求項49~51のいずれか1項に記載の方法。
  53. 前記オルソロガスなエクソン領域が、前記野生型ブタの主要組織適合性複合体の1つ以上の多型糖タンパク質である、請求項49~52のいずれか1項に記載の方法。
  54. A)前記代理ブタに前記胚を埋め込み、前記胚を妊娠させ、帝王切開によって前記代理ブタから子ブタを出産させることと、
    B)少なくとも下記:
    (i)糞便物質中のAscaris種、cryptosporidium種、Echinococcus、Strongyloids sterocolis、及びToxoplasma gondii、
    (ii)抗体力価を決定することによる、Leptospira種、Mycoplasma hyopneumoniae、ブタ生殖器呼吸器症候群ウイルス(PRRSV)、仮性狂犬病、伝染性胃腸炎ウイルス(TGE)/ブタ呼吸器コロナウイルス、及びToxoplasma Gondii、
    (iii)ブタインフルエンザ、
    (iv)細菌培養によって決定される以下の細菌病原体:Bordetella bronchisceptica、コアグラーゼ陽性ブドウ球菌、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌、家畜関連メチシリン耐性Staphylococcus aureus(LA MRSA)、Microphyton、及びTrichophyton spp.、
    (v)ブタサイトメガロウイルス、ならびに
    (vi)Brucella suis、の人畜共通感染症病原体を前記子ブタが含まないことを確認することと、
    C)バイオバーデン低減手順に従って前記子ブタを維持することであって、前記手順が、隔離された閉鎖群中で前記子ブタを維持することを含み、前記隔離された閉鎖群中のすべての他の動物が、前記人畜共通感染症病原体を含まないことが確認され、前記子ブタが、前記隔離された閉鎖群の外部の任意の非ヒト動物及び動物収容施設との接触から隔離される、前記維持することと、をさらに含む、請求項49~53のいずれか1項に記載の方法。
  55. 前記野生型ブタゲノムが、前記ヒト捕捉参照配列を使用して、SLA-MIC-2遺伝子において、かつSLA-3、SLA-6、SLA-7、SLA-8、SLA-DQ、CTLA-4、PD-L1、EPCR、TBM、TFPI、及びベータ-2-ミクログロブリンをコードするエクソン領域において、再プログラムされたヌクレオチドを含み、前記ヒト細胞、組織、または臓器が、ブタベータ-2-ミクログロブリン、SLA-DR、SLA-1、及びSLA-2の機能的発現を欠く、請求項49~54のいずれか1項に記載の方法。
  56. 前記野生型ブタゲノムが、CTLA-4プロモーター及びPD-L1プロモーターのうちの1つ以上において再プログラムされたヌクレオチドを含み、前記CTLA-4プロモーター及び前記PD-L1プロモーターのうちの1つ以上が、前記野生型ブタのCTLA-4及びPD-L1の内因性発現と比較して、再プログラムされたCTLA-4及び再プログラムされたPD-L1のうちの1つまたは両方の発現を増加させるように再プログラムされる、請求項49~55のいずれか1項に記載の方法。
  57. 前記合成されたヌクレオチドの総数が、前記合成されたヌクレオチドで前記野生型ブタのゲノムを再プログラムした後に、ヌクレオチドの数に正味の損失または正味の利得がないように、前記置換されたヌクレオチドの総数に等しい、請求項49~56のいずれか1項に記載の方法。
  58. 前記複数の合成ヌクレオチドによる前記再プログラムが、前記野生型ブタMHC配列と前記ヒト捕捉参照配列との間で保存されるアミノ酸をコードするコドン領域におけるヌクレオチドの置換を含まない、請求項49~57のいずれか1項に記載の方法。
  59. 前記再プログラムされたゲノムが、前記ヒト捕捉参照配列由来のオルソロガスなヌクレオチドでの、前記野生型ブタの前記主要組織適合性複合体におけるヌクレオチドの部位特異的変異原性置換を含む、請求項49~58のいずれか1項に記載の方法。
  60. 部位特異的変異原性置換が、前記非ヒト動物を産生するために使用される生殖細胞において作製される、請求項49~59のいずれか1項に記載の方法。
  61. 前記ヒト捕捉参照配列が、ヒト患者捕捉配列、ヒト集団特異的ヒト捕捉配列、またはアレル群特異的ヒト捕捉配列である、請求項49~60のいずれか1項に記載の方法。
  62. 前記再プログラムされたゲノムが、HLA-A捕捉参照配列のオルソロガスなエクソン領域に由来するヌクレオチドでの、前記野生型ブタのSLA-1のエクソン領域におけるヌクレオチドの部位特異的変異原性置換を含む、請求項49~61のいずれか1項に記載の方法。
  63. 前記再プログラムされたゲノムが、HLA-B捕捉参照配列のオルソロガスなエクソン領域に由来するヌクレオチドでの、前記野生型ブタのSLA-2のエクソン領域におけるヌクレオチドの部位特異的変異原性置換を含む、請求項49~62のいずれか1項に記載の方法。
  64. 前記再プログラムされたゲノムが、前記野生型ブタのSLA-3のエクソン領域におけるヌクレオチドの部位特異的変異原性置換と、HLA-C捕捉参照配列のオルソロガスなエクソン領域に由来するヌクレオチドとを含む、請求項49~63のいずれか1項に記載の方法。
  65. 前記再プログラムされたゲノムが、前記野生型ブタのSLA-6のエクソン領域におけるヌクレオチドの部位特異的変異原性置換と、HLA-E捕捉参照配列のオルソロガスなエクソン領域に由来するヌクレオチドとを含む、請求項49~64のいずれか1項に記載の方法。
  66. 前記再プログラムされたゲノムが、前記野生型ブタのSLA-7のエクソン領域におけるヌクレオチドの部位特異的変異原性置換と、HLA-F捕捉参照配列のオルソロガスなエクソン領域に由来するヌクレオチドとを含む、請求項49~65のいずれか1項に記載の方法。
  67. 前記再プログラムされたゲノムが、前記野生型ブタのSLA-8のエクソン領域におけるヌクレオチドの部位特異的変異原性置換と、HLA-G捕捉参照配列のオルソロガスなエクソン領域に由来するヌクレオチドとを含む、請求項49~66のいずれか1項に記載の方法。
  68. 前記再プログラムされたゲノムが、前記野生型ブタのMHCクラスI鎖関連2(MIC-2)のエクソン領域におけるヌクレオチドの部位特異的変異原性置換を含む、請求項49~67のいずれか1項に記載の方法。
  69. 前記再プログラムされたゲノムが、SLA-1、SLA-2、SLA-DR、またはそれらの組み合わせの機能的発現を欠く、請求項49~68のいずれか1項に記載の方法。
  70. 前記再プログラムされたゲノムが、HLA-DQA1捕捉参照配列のオルソロガスなエクソン領域に由来する、前記野生型ブタのSLA-DQAのエクソン領域におけるヌクレオチドの部位特異的変異原性置換を含む、請求項49~69のいずれか1項に記載の方法。
  71. 前記再プログラムされたゲノムが、HLA-DQB1捕捉参照配列のオルソロガスなエクソン領域に由来する、前記野生型ブタのSLA-DQBのエクソン領域におけるヌクレオチドの部位特異的変異原性置換を含む、請求項49~70のいずれか1項に記載の方法。
  72. 前記再プログラムされたゲノムが、前記ヒト捕捉参照配列のHLA-DRA1及びHLA-DRB1のオルソロガスなエクソン領域に由来するヌクレオチドでの、前記野生型ブタのSLA-DRA及びSLA-DRB1のエクソン領域におけるヌクレオチドの部位特異的変異原性置換を含む、請求項49~71のいずれか1項に記載の方法。
  73. 前記再プログラムされたゲノムが、前記ヒト捕捉参照配列のHLA-DQA1及びHLA-DQB1のオルソロガスなエクソン領域に由来するヌクレオチドでの、前記野生型ブタのSLA-DQA及びSLA-DQB1のエクソン領域におけるヌクレオチドの部位特異的変異原性置換を含む、請求項49~72のいずれか1項に記載の方法。
  74. 前記ヌクレオチドの部位特異的変異原性置換が、前記野生型ブタの核ゲノムと前記既知のヒト配列との間で保存されないコドンにある、請求項49~73のいずれか1項に記載の方法。
  75. 前記再プログラムされたゲノムが、既知のヒトB2-ミクログロブリンのオルソロガスなエクソンに由来するヌクレオチドでの、前記野生型ブタのB2-ミクログロブリンのエクソン領域におけるヌクレオチドの部位特異的変異原性置換を含む、請求項49~74のいずれか1項に記載の方法。
  76. 前記再プログラムされたブタ核ゲノムが、前記ヒト捕捉参照ゲノムによって発現されるベータ2ミクログロブリン糖タンパク質のアミノ酸配列と少なくとも95%同一であるヒト化ベータ2ミクログロブリン(hB2M)ポリペプチド配列であるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む、請求項49~75のいずれか1項に記載の方法。
  77. 前記核ゲノムが、前記遺伝的に再プログラムされたブタが前記野生型ブタの内因性β2-ミクログロブリンポリペプチドの機能的発現を欠くように再プログラムされている、請求項49~76のいずれか1項に記載の方法。
  78. 前記核ゲノムが、前記ブタの内因性β2-ミクログロブリン遺伝子座において、前記核ゲノムが、前記ヒト捕捉参照配列のβ2-ミクログロブリンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むように再プログラムされるように、再プログラムされている、請求項49~77のいずれか1項に記載の方法。
  79. 前記再プログラムされたゲノムが、SLA-3、SLA-6、SLA-7、SLA-8、及びMIC-2のエクソン領域におけるヌクレオチドの部位特異的変異原性置換を含む、請求項49~78のいずれか1項に記載の方法。
  80. 前記再プログラムされたゲノムが、SLA-DQ及びMIC-2のエクソン領域におけるヌクレオチドの部位特異的変異原性置換を含む、請求項49~79のいずれか1項に記載の方法。
  81. 前記再プログラムされたゲノムが、SLA-3、SLA-6、SLA-7、SLA-8、SLA-DQ、及びMIC-2におけるヌクレオチドの部位特異的変異原性置換を含む、請求項49~80のいずれか1項に記載の方法。
  82. 前記再プログラムされたゲノムが、SLA-DR、SLA-1、及び/またはSLA-2の機能的発現を欠く、請求項49~81のいずれか1項に記載の方法。
  83. 前記核ゲノムが、フレームシフト、挿入変異、欠失変異、ミスセンス変異、及びナンセンス変異が存在しない、前記エクソン領域のスカーレス交換を使用して再プログラムされる、請求項49~82のいずれか1項に記載の方法。
  84. 前記核ゲノムが、フレームシフト、ナンセンス、またはミスセンス変異を介してタンパク質発現の破壊を引き起こし得る、いかなる正味の挿入、欠失、切断、または他の遺伝子改変も導入せずに再プログラムされる、請求項49~83のいずれか1項に記載の方法。
  85. 前記核ゲノムのイントロン領域におけるヌクレオチドが改変されない、請求項49~84のいずれか1項に記載の方法。
  86. 前記核ゲノムが、前記再プログラムされたエクソン領域においてホモ接合であるように再プログラムされる、請求項49~85のいずれか1項に記載の方法。
  87. 前記核ゲノムが、ポリペプチドの細胞外、表現型表面発現がヒトレシピエントにおいて免疫寛容性であるように再プログラムされる、請求項49~86のいずれか1項に記載の方法。
  88. 前記核ゲノムが、CTLA-4プロモーター配列を再プログラムすることによって、細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)の発現が増加するように再プログラムされる、請求項49~87のいずれか1項に記載の方法。
  89. 前記再プログラムされたゲノムが、ヒト捕捉参照配列CTLA-4のオルソロガスなエクソン領域に由来するヌクレオチドでの、前記野生型CTLA-4のエクソン領域におけるヌクレオチドの部位特異的変異原性置換を含む、請求項49~88のいずれか1項に記載の方法。
  90. 前記再プログラムされた核ゲノムが、前記ヒト捕捉参照ゲノムによって発現されるCTLA-4と少なくとも95%同一であるヒト化CTLA-4ポリペプチド配列であるタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む、請求項49~89のいずれか1項に記載の方法。
  91. 前記核ゲノムが、PD-L1プロモーター配列を再プログラムすることによって、プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)の発現が増加するように再プログラムされる、請求項49~90のいずれか1項に記載の方法。
  92. 前記再プログラムされたゲノムが、既知のヒトPD-L1のオルソロガスなエクソンに由来するヌクレオチドでの、前記野生型PD-L1のエクソン領域におけるヌクレオチドの部位特異的変異原性置換を含む、請求項49~91のいずれか1項に記載の方法。
  93. 前記再プログラムされた核ゲノムが、前記ヒト捕捉参照ゲノムによって発現されるPD-L1と少なくとも95%同一であるヒト化PD-L1ポリペプチド配列であるタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む、請求項49~92のいずれか1項に記載の方法。
  94. レシピエントヒトにおける、異種移植細胞、組織、または臓器に対する少なくとも部分的な免疫寛容を誘導する方法であって、
    a.請求項1~48のいずれか1項に記載の生物学的システムから得られた非ヒト細胞、組織、または臓器を産生するかまたは得ることであって、前記野生型ブタゲノムが、前記ヒト捕捉参照配列を使用して、SLA-MIC-2遺伝子において、かつ前記野生型ブタのMHCクラスIa、MHCクラスIb、MHCクラスII、及びベータ-2-ミクログロブリンをコードする1つ以上のエクソン領域において、再プログラムされたヌクレオチドを含み、前記ヒト細胞、組織、または臓器が、ブタベータ-2-ミクログロブリンの機能的発現を欠く、前記産生するかまたは得ることと、
    b.前記非ヒト細胞、組織、または臓器を前記レシピエントヒトに移植することと、を含む、前記方法。
  95. 異種移植片のナチュラルキラー細胞媒介性拒絶反応を低減する方法であって、
    a.請求項1~48のいずれか1項に記載の生物学的システムから得られた非ヒト細胞、組織、または臓器を産生するかまたは得ることであって、前記野生型ブタゲノムが、前記ヒト捕捉参照配列を使用して、SLA-MIC-2遺伝子において、かつ前記野生型ブタのMHCクラスIa、MHCクラスIb、MHCクラスII、及びベータ-2-ミクログロブリンのうちの1つ以上をコードするエクソン領域において、再プログラムされたヌクレオチドを含み、前記ヒト細胞、組織、または臓器が、ブタベータ2-ミクログロブリンの機能的発現を欠き、前記野生型ブタゲノムが、前記野生型ブタのCTLA-4及びPD-L1のうちの1つ以上をコードするエクソン領域において、再プログラムされたヌクレオチドを含む、前記産生するかまたは得ることと、
    b.前記非ヒト細胞、組織、または臓器を前記レシピエントヒトに移植することと、を含む、前記方法。
  96. 異種移植片の細胞傷害性T細胞リンパ球媒介性拒絶反応を低減する方法であって、
    a.請求項1~48のいずれか1項に記載の生物学的システムから得られた非ヒト細胞、組織、または臓器を産生するかまたは得ることであって、前記野生型ブタゲノムが、前記ヒト捕捉参照配列を使用して、SLA-MIC-2遺伝子において、かつ前記野生型ブタのMHCクラスIa、MHCクラスIb、MHCクラスII、及びベータ-2-ミクログロブリンのうちの1つ以上をコードするエクソン領域において、再プログラムされたヌクレオチドを含み、前記ヒト細胞、組織、または臓器が、ブタベータ2-ミクログロブリンの機能的発現を欠き、前記野生型ブタゲノムが、前記野生型ブタのCTLA-4及びPD-L1のうちの1つ以上をコードするエクソン領域において、再プログラムされたヌクレオチドを含む、前記産生するかまたは得ることと、
    b.前記非ヒト細胞、組織、または臓器を前記レシピエントヒトに移植することと、を含む、前記方法。
  97. レシピエントヒトにおける、異種移植細胞、組織、または臓器に対する凝固性及び/または血栓性虚血を予防または低減する方法であって、
    a.請求項1~48のいずれか1項に記載の生物学的システムから得られた非ヒト細胞、組織、または臓器を産生するかまたは得ることであって、前記野生型ブタゲノムが、前記ヒト捕捉参照配列を使用して、SLA-MIC-2遺伝子において、かつ前記野生型ブタのMHCクラスIa、MHCクラスIb、MHCクラスII、及びベータ-2-ミクログロブリンのうちの1つ以上をコードするエクソン領域において、再プログラムされたヌクレオチドを含み、前記ヒト細胞、組織、または臓器が、ブタベータ2-ミクログロブリンの機能的発現を欠き、前記野生型ブタゲノムが、前記野生型ブタの内皮細胞タンパク質C受容体(EPCR)、トロンボモジュリン(TBM)、及び組織因子経路阻害剤(TFPI)のうちの1つ以上をコードするエクソン領域において、再プログラムされたヌクレオチドを含む、前記産生するかまたは得ることと、
    b.前記非ヒト細胞、組織、または臓器を前記レシピエントヒトに移植することと、を含む、前記方法。
  98. 異種移植片のMHCクラスIa媒介性拒絶反応を低減する方法であって、
    a.請求項1~48のいずれか1項に記載の生物学的システムから得られた非ヒト細胞、組織、または臓器を産生するかまたは得ることであって、前記野生型ブタゲノムが、前記ヒト捕捉参照配列を使用して、SLA-MIC-2遺伝子において、かつSLA-3及び前記野生型ブタのMHCクラスIb、MHCクラスII、及びベータ-2-ミクログロブリンのうちの1つ以上をコードするエクソン領域において、再プログラムされたヌクレオチドを含み、前記ヒト細胞、組織、または臓器が、ブタベータ-2-ミクログロブリン、SLA-1、及びSLA-2の機能的発現を欠く、前記産生するかまたは得ることと、
    b.前記非ヒト細胞、組織、または臓器を前記レシピエントヒトに移植することと、を含む、前記方法。
  99. 異種移植片のMHCクラスIb媒介性拒絶反応を低減する方法であって、
    a.請求項1~48のいずれか1項に記載の生物学的システムから得られた非ヒト細胞、組織、または臓器を産生するかまたは得ることであって、前記野生型ブタゲノムが、前記ヒト捕捉参照配列を使用して、SLA-MIC-2遺伝子において、かつSLA-6、SLA-7、及びSLA-8、ならびに前記野生型ブタのMHCクラスIa、MHCクラスII、及びベータ-2-ミクログロブリンのうちの1つ以上をコードするエクソン領域において、再プログラムされたヌクレオチドを含み、前記ヒト細胞、組織、または臓器が、ブタベータ-2-ミクログロブリンの機能的発現を欠く、前記産生するかまたは得ることと、
    b.前記非ヒト細胞、組織、または臓器を前記レシピエントヒトに移植することと、を含む、前記方法。
  100. 異種移植片のMHCクラスII媒介性拒絶反応を低減する方法であって、
    a.請求項1~48のいずれか1項に記載の生物学的システムから得られた非ヒト細胞、組織、または臓器を産生するかまたは得ることであって、前記野生型ブタゲノムが、前記ヒト捕捉参照配列を使用して、SLA-MIC-2遺伝子において、かつSLA-DR及びSLA-DQの少なくとも1つ、ならびに前記野生型ブタのMHCクラスIa、MHCクラスIb、及びベータ-2-ミクログロブリンのうちの1つ以上をコードするエクソン領域において、再プログラムされたヌクレオチドを含み、前記ヒト細胞、組織、または臓器が、ブタベータ-2-ミクログロブリンの機能的発現を欠く、前記産生するかまたは得ることと、
    b.前記非ヒト細胞、組織、または臓器を前記レシピエントヒトに移植することと、を含む、前記方法。
  101. 異種移植片のアポトーシス細胞媒介性拒絶反応を阻害する方法であって、
    a.請求項1~48のいずれか1項に記載の生物学的システムから得られた非ヒト細胞、組織、または臓器を産生するかまたは得ることであって、前記野生型ブタゲノムが、前記ヒト捕捉参照配列を使用して、SLA-MIC-2遺伝子において、かつ前記野生型ブタのMHCクラスIa、MHCクラスIb、MHCクラスII、及びベータ-2-ミクログロブリンのうちの1つ以上をコードするエクソン領域において、再プログラムされたヌクレオチドを含み、前記ヒト細胞、組織、または臓器が、ブタベータ2-ミクログロブリンの機能的発現を欠き、前記野生型ブタゲノムが、前記野生型ブタのCTLA-4及びPD-L1のうちの1つ以上をコードするエクソン領域において、再プログラムされたヌクレオチドを含む、前記産生するかまたは得ることと、
    b.前記非ヒト細胞、組織、または臓器を前記レシピエントヒトに移植することと、を含む、前記方法。
  102. 異種移植のためのドナーブタ組織または臓器を産生する方法であって、前記ドナーブタ組織または臓器の細胞が、
    a.有望なヒト移植レシピエントからDNAを含有する生体試料を得ることと、
    b.前記生体試料の全ゲノム配列決定を行って、ヒト捕捉参照配列を得ることと、
    c.前記ヒト捕捉参照配列を、遺伝子座(i)~(v):
    (i)SLA-1、SLA-2、及びSLA-3のうちの少なくとも1つをコードするエクソン領域;
    (ii)SLA-6、SLA-7、及びSLA-8のうちの少なくとも1つをコードするエクソン領域;
    (iii)SLA-DR及びSLA-DQのうちの少なくとも1つをコードするエクソン領域;
    (iv)ベータ2ミクログロブリン(B2M)をコードする1つ以上のエクソン;
    (v)SLA-MIC-2遺伝子、ならびにPD-L1、CTLA-4、EPCR、TBM、及びTFPIのうちの少なくとも1つをコードする遺伝子のエクソン領域で前記ドナーブタの前記野生型ゲノムと比較することと、
    d.前記遺伝子座(i)~(v)のうちの1つ以上について10~350塩基対の長さの合成ドナーブタヌクレオチド配列を作成することであって、前記合成ドナーブタヌクレオチド配列が、ブタ遺伝子座(i)~(vi)にそれぞれ対応するオルソロガスな遺伝子座(vi)~(x):
    (vi)HLA-A、HLA-B、及びHLA-Cのうちの少なくとも1つをコードするエクソン領域;
    (vii)HLA-E、HLA-F、及びHLA-Gのうちの少なくとも1つをコードするエクソン領域;
    (viii)HLA-DR及びHLA-DQのうちの少なくとも1つをコードするエクソン領域;
    (ix)ヒトベータ2ミクログロブリン(hB2M)をコードする1つ以上のエクソン;
    (x)前記ヒト捕捉参照配列からのMIC-A、MIC-B、PD-L1、CTLA-4、EPCR、TBM、及びTFPIのうちの少なくとも1つをコードするエクソン領域における前記ヒト捕捉参照配列と少なくとも95%同一である、前記作成することと、
    e.(i)~(v)のヌクレオチド配列を前記合成ドナーブタヌクレオチド配列で置き換えることと、
    f.前記合成ドナーブタヌクレオチド配列を有する遺伝的に再プログラムされたブタから、異種移植のための前記ブタ組織または臓器を得ることと、を含む、レシピエント特異的表面表現型によって特徴付けられるように遺伝的に再プログラムされる、前記方法。
  103. 前記合成ドナーブタヌクレオチド配列を有する前記遺伝的に再プログラムされたブタが、少なくとも以下:
    (i)糞便物質中のAscaris種、cryptosporidium種、Echinococcus、Strongyloids sterocolis、及びToxoplasma gondii、
    (ii)抗体力価を決定することによる、Leptospira種、Mycoplasma hyopneumoniae、ブタ生殖器呼吸器症候群ウイルス(PRRSV)、仮性狂犬病、伝染性胃腸炎ウイルス(TGE)/ブタ呼吸器コロナウイルス、及びToxoplasma Gondii、
    (iii)ブタインフルエンザ、
    (iv)細菌培養によって決定される以下の細菌病原体:Bordetella bronchisceptica、コアグラーゼ陽性ブドウ球菌、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌、家畜関連メチシリン耐性Staphylococcus aureus(LA MRSA)、Microphyton、及びTrichophyton spp.、
    (v)ブタサイトメガロウイルス、ならびに
    (vi)Brucella suis、の人獣共通病原体を含まないことを確認することをさらに含む、請求項102に記載の方法。
  104. バイオバーデン低減手順に従って前記遺伝的に再プログラムされたブタを維持することをさらに含み、前記手順が、隔離された閉鎖群中で前記遺伝的に再プログラムされたブタを維持することを含み、前記隔離された閉鎖群中のすべての他の動物が、前記人獣共通病原体を含まないことが確認され、前記遺伝的に再プログラムされたブタが、前記隔離された閉鎖群の外部の任意の非ヒト動物及び動物収容施設との接触から隔離される、請求項102または103に記載の方法。
  105. 前記ブタから生物学的製品を収集することをさらに含み、前記収集することが、前記ブタを安楽死させること、及び前記ブタから前記生物学的製品を無菌的に取り出すことをさらに含む、請求項102~104のいずれか1項に記載の方法。
  106. 3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)還元アッセイによって決定される50%未満の細胞生存度に細胞生存度を低下させない滅菌プロセスを使用する収集後の滅菌を含む前記生物学的製品を加工することをさらに含む、請求項102~105のいずれか1項に記載の方法。
  107. 細胞生存度を保存する貯蔵条件下で滅菌容器中で前記生物学的製品を貯蔵することをさらに含む、請求項102~106のいずれか1項に記載の方法。
  108. 請求項1~49のいずれか1項に記載の核ゲノムを含む、前記遺伝的に再プログラムされたブタにおけるオフターゲット編集またはゲノム改変についてスクリーニングする方法であって、
    e.前記ドナーブタ核ゲノムの遺伝的な再プログラムを行う前に、ドナーブタからのDNAを含有する生体試料について全ゲノム配列決定を行い、それによって、第1の全ゲノム配列を取得すること、
    f.前記ドナーブタ核ゲノムの再プログラム後に、全ゲノム配列決定を行って、第2の全ゲノム配列を取得すること、
    g.前記第1の全ゲノム配列及び前記第2の全ゲノム配列を整列させて、配列アラインメントを取得すること、
    h.前記配列アラインメントを分析して、オフターゲット部位における前記ブタのゲノムに対する任意のミスマッチを識別することを含む、前記方法。
  109. 野生型ブタMHCクラスIa由来の野生型ブタイントロン領域を有し、SLA-3と、ヒト捕捉参照配列由来のHLA-Cとの間で保存されていないアミノ酸をコードする前記ヒト捕捉参照配列由来のHLA-Cのコドンを用いて前記野生型ブタのSLA-3をコードするエクソン領域で再プログラムされた、合成ヌクレオチド配列。
  110. 前記野生型ブタのSLA-1及びSLA-2がそれぞれ、終止コドンを含む、請求項109に記載の合成ヌクレオチド配列。
  111. 野生型ブタMHCクラスIb由来の野生型ブタイントロン領域を有し、SLA-6、SLA-7、及びSLA-8と、ヒト捕捉参照配列由来のHLA-E、HLA-F、及びHLA-Gそれぞれとの間で保存されていないアミノ酸をコードする前記ヒト捕捉参照配列由来の前記HLA-E、HLA-F、及びHLA-Gそれぞれのコドンを用いて前記野生型ブタの前記SLA-6、SLA-7、及びSLA-8をコードするエクソン領域で再プログラムされた、合成ヌクレオチド配列。
  112. 請求項109及び111の両方、または請求項110及び111の両方に記載の合成ヌクレオチド配列を有する、合成ヌクレオチド配列。
  113. 合成ヌクレオチド配列であって、野生型ブタMHCクラスII由来の野生型ブタイントロン領域を有し、SLA-DQと、ヒト捕捉参照配列由来のHLA-DQそれぞれとの間で保存されていないアミノ酸をコードする前記ヒト捕捉参照配列由来の前記HLA-DQのコドンをそれぞれ用いて前記野生型ブタの前記SLA-DQをコードするエクソン領域で再プログラムされ、前記野生型ブタのSLA-DRが終止コドンを含む、前記合成ヌクレオチド配列。
  114. 請求項109及び113の両方、請求項110及び113の両方、または請求項112及び113の両方に記載の合成ヌクレオチド配列を有する、合成ヌクレオチド配列。
  115. 合成ヌクレオチド配列であって、野生型ブタベータ2-ミクログロブリン由来の野生型ブタイントロン領域を有し、野生型ブタのベータ2-ミクログロブリンと、ヒト捕捉参照配列由来のベータ2-ミクログロブリンとの間で保存されていないアミノ酸をコードする前記ヒト捕捉参照配列由来のベータ2-ミクログロブリンのコドンを用いて前記野生型ブタのベータ2-ミクログロブリンをコードするエクソン領域で再プログラムされ、前記合成ヌクレオチド配列が、前記野生型ブタのβ2-ミクログロブリンポリペプチドの機能的発現を欠くように、エクソン領域内に少なくとも1つの終止コドンを含む、前記合成ヌクレオチド配列。
  116. 野生型ブタMIC-2由来の野生型ブタイントロン領域を有し、MIC-2と、ヒト捕捉参照配列由来のMIC-AまたはMIC-Bとの間で保存されていないアミノ酸をコードする前記ヒト捕捉参照配列由来の前記MIC-AまたはMIC-Bのコドンを用いて前記野生型ブタのMIC-2のエクソン領域で再プログラムされた、合成ヌクレオチド配列。
  117. 野生型ブタCTLA-4由来の野生型ブタイントロン領域を有し、前記野生型ブタのCTLA-4と、ヒト捕捉参照配列由来のCTLA-4との間で保存されていないアミノ酸をコードする前記ヒト捕捉参照配列由来の前記CTLA-4のコドンを用いて前記野生型ブタのCTLA-4をコードするエクソン領域で再プログラムされた、合成ヌクレオチド配列。
  118. 野生型ブタPD-L1由来の野生型ブタイントロン領域を有し、前記野生型ブタのPD-L1と、ヒト捕捉参照配列由来のPD-L1との間で保存されていないアミノ酸をコードする前記ヒト捕捉参照配列由来の前記PD-L1のコドンを用いて前記野生型ブタのPD-L1をコードするエクソン領域で再プログラムされた、合成ヌクレオチド配列。
  119. 野生型ブタEPCR由来の野生型ブタイントロン領域を有し、前記野生型ブタのEPCRと、ヒト捕捉参照配列由来のEPCRとの間で保存されていないアミノ酸をコードする前記ヒト捕捉参照配列由来の前記EPCRのコドンを用いて前記野生型ブタのEPCRをコードするエクソン領域で再プログラムされた、合成ヌクレオチド配列。
  120. 野生型ブタTBM由来の野生型ブタイントロン領域を有し、前記野生型ブタのTBMと、ヒト捕捉参照配列由来のTBMとの間で保存されていないアミノ酸をコードする前記ヒト捕捉参照配列由来の前記TBMのコドンを用いて前記野生型ブタのTBMをコードするエクソン領域で再プログラムされた、合成ヌクレオチド配列。
  121. 野生型ブタTFPI由来の野生型ブタイントロン領域を有し、前記野生型ブタのTFPIと、ヒト捕捉参照配列由来のTFPIとの間で保存されていないアミノ酸をコードする前記ヒト捕捉参照配列由来の前記TFPIのコドンを用いて前記野生型ブタのTFPIをコードするエクソン領域で再プログラムされた、合成ヌクレオチド配列。
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