JP2022525160A - ペプチドタグパートナーとの自発的イソペプチド結合形成速度を高めたポリペプチド及びその使用 - Google Patents

ペプチドタグパートナーとの自発的イソペプチド結合形成速度を高めたポリペプチド及びその使用 Download PDF

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Abstract

本発明は、2部式リンカーの1部を形成するポリペプチドであって、2部式リンカーにおいて、2部式リンカーの第2の部分であるペプチドタグとのイソペプチド結合を自発的に形成するポリペプチドに関する。該ポリペプチドをコードする核酸分子、前記核酸分子を含むベクター、並びに前記ベクター及び前記核酸分子を含む宿主細胞もまた提供される。前記2部式リンカー(すなわち、ペプチドタグ及びポリペプチド結合パートナー)及び/又は核酸分子/ベクターを含むキットもまた提供される。ポリペプチド(結合パートナー)を作製する方法及び本発明のポリペプチドの使用もまた提供される。

Description

本発明に至る研究は、European Union's Seventh Framework Programme(FP7/2007-2013)/ERC贈与契約第615945号に基づき、European Research Councilから資金提供を受けた。
本発明は、2部式リンカーの1部を形成するポリペプチドであって、2部式リンカーにおいて、2部式リンカーの第2の部分であるペプチドタグとのイソペプチド結合を自発的に形成するポリペプチド(タンパク質)に関する。詳細には、この2部式リンカーは、本発明のポリペプチドとペプチドタグとの間のイソペプチド結合の自発的形成を可能にする条件下で接触させると共有結合を介してコンジュゲートされうる、ペプチドタグとポリペプチド結合パートナーの同族対とみなすことができる。ポリペプチドをコードする核酸分子、前記核酸分子を含むベクター、並びに前記ベクター及び核酸分子を含む宿主細胞もまた提供される。前記2部式リンカー(すなわち、ペプチドタグ及びポリペプチド結合パートナー)を含むキット、及び/又は核酸分子/ベクターもまた提供される。ポリペプチド(結合パートナー)を作製する方法及び本発明のポリペプチドの使用もまた提供される。
細胞機能は、厖大な数の可逆的非共有結合によるタンパク質-タンパク質相互作用に依存しており、複合体におけるタンパク質の厳密な配置が細胞機能に影響し、細胞機能を決定している。よって、共有結合によるタンパク質-タンパク質相互作用を改変する能力は、基礎研究、合成生物学、及びバイオテクノロジーのための様々な新たな好機もたらしうる。特に、いわゆる「融合タンパク質」を形成する2つ以上のタンパク質のコンジュゲーションは、有用な特性を有する分子をもたらすことがある。例えば、1種類のタンパク質のクラスター化は、例えばワクチンの抗原構造の反復等、生体信号を大幅に増強させることが多い。様々な活性を有するタンパク質のクラスター化も、例えば酵素による基質のチャネリング等、向上した活性を有する複合体をもたらしうる。
典型的には、共有結合によるタンパク質相互作用は、ジスルフィド結合によって媒介されるが、ジスルフィドは可逆的であり、細胞コンパートメントの縮小には不適当であり、タンパク質フォールディングを妨害しうる。ペプチドタグは、サイズが小さいためタンパク質機能を混乱させることが最少に抑えられることから、タンパク質の分析及び改変に便利なツールである。ペプチドタグは、遺伝子によるコード化は容易であり、また、サイズが小さいことによって、その他の相互作用と干渉することによる破壊、生合成の費用、及び免疫原性の導入が抑えられる。しかしながら、ペプチドタグとそれらのペプチド又はポリペプチド結合パートナーとの間の相互作用が高親和性であることはめったになく、このことが、安定な複合体の形成という点において、それらの有用性を限定している。
自発的にイソペプチド結合形成することができるタンパク質(いわゆる「イソペプチドタンパク質」)は、相互に共有結合し、不可逆的相互作用をもたらす、ペプチドタグ/ポリペプチド結合パートナーの対(すなわち2部式リンカー)を開発するために有利に使用されてきた(例えば、WO2011/098772、WO2016/193746、及びWO2018/197854を参照されたい。これらはすべて参照により本明細書に組み込まれている。)。この点に関して、自発的にイソペプチド結合を形成することができるタンパク質は、ペプチドタグ及びペプチドタグに対するポリペプチド結合パートナーを得るために、別々の断片として発現させてもよく、この2つの断片は、イソペプチド結合形成によって共有結合的に再構成することができ、これによって、ペプチドタグ及びそのポリペプチド結合パートナーに融合された分子又は成分を連結させる。ペプチドタグとそのポリペプチド結合パートナーとによって形成されたイソペプチド結合は、非共有結合的相互作用が速やかに解離すると考えられる条件下、例えば長期間(例えば週単位)を通して、高温(少なくとも95℃まで)下で、強い力の下で、又は過酷な化学的処理(例えば、pH2~11、有機溶媒、界面活性剤、又は変性剤)を伴う条件下で、安定である。
イソペプチド結合は、カルボキシル/カルボキサミド基とアミノ基との間で形成されたアミド結合であり、アミド結合では、カルボキシル基又はアミノ基の少なくとも1つが、タンパク質主鎖(タンパク質の骨格)の外側にある。そのような結合は、典型的な生物学的条件下では化学的に不可逆であり、ほとんどのプロテアーゼに対し抵抗性がある。イソペプチド結合は、実質的に共有結合によるものであるため、最も強いと測定されたタンパク質相互作用のうちの一部は、イソペプチド結合によってもたらされている。
手短に述べると、2部式リンカー、すなわち、ペプチドタグ及びそのポリペプチド結合パートナー(いわゆるペプチドタグ/結合パートナー対)は、自発的にイソペプチド結合を形成することができるタンパク質(イソペプチドタンパク質)から誘導することができ、該タンパク質のドメインを個別に発現させて、イソペプチド結合に関与する残基の1つ(例えば、アスパラギン酸又はアスパラギン)を含むペプチドタグ、並びにイソペプチド結合に関与するもう一方の残基(例えば、リジン)及びイソペプチド結合形成に必要な少なくとも1つの別の残基(例えば、グルタミン酸)を含むペプチド又はポリペプチド結合パートナー(又は「キャッチャー」)を産生させることができる。ペプチドタグと結合パートナーとを混合すると、その結果、タグと結合パートナーとの間で自発的にイソペプチド結合が形成される。よって、ペプチドタグ及び結合パートナーを、様々な分子又は成分、例えばタンパク質に別々に融合することによって、前記分子又は成分を、ペプチドタグと結合パートナーとの間で形成されたイソペプチド結合を介して共に共有結合的に連結させること、すなわち、ペプチドタグ及び結合パートナーに融合された分子又は成分間でのリンカーの形成が可能となる。
SpyTag/SpyCatcherと名づけたペプチドタグ/結合パートナー対(2部式リンカー)が、ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)FbaBタンパク質のCnaB2ドメインから得られており(Zakeri等、2012、Proc Natl Acad Sci USA 109、E690~E697)、生体材料(Botyanszki等、2015、Biotechnology and bioengineering 112、2016~2024;Chen等、2014、Proc Natl Acad Sci U S A 108、11399~11404)、次世代シーケンシング(Stranges等、2016、Proc Natl Acad Sci U S A 113、E6749~E6756)、酵素安定化(Schoene等、2016、Scientific Reports 6、21151)、及びワクチン開発(Brune等、2016、Scientific Reports 6、19234;Thrane等、2016、Journal of Nanobiotechnology 14、30)を含む、多様な用途で使用されている。SpyTagとSpyCatcherとの間のイソペプチド結合形成速度は、精製された成分を用いた場合は満足のいくものである一方で、細胞での発現レベルではその速度は限定的である。したがって、SpyTag並びSpyCatcherペプチド及びポリペプチドの改変型である、反応速度が改善されたSpyTag002及びSpyCatcher002(Keeble等、2017 Angew Chem Int Ed Engl. 56巻(52):16521~16525頁)が開発され(WO2018/197854、参照により本明細書に組み込まれている)、特に細菌細胞の発現レベルで、低濃度で効率的な反応を可能にした。しかしながら、その反応速度は、拡散律速タンパク質-タンパク質相互作用より更に遅く、反応開始は105~106M-1s-1となった。
SpyTag/SpyCatcher技術は、数多く適用されているにもかかわらず、その適用は、主に精製されたタンパク質に対して又は細菌細胞中での適用のいずれかであり(Keeble及びHowarth、2019、Methods Enzymol. 617、443~461;Banerjee及びHowarth、2018、Curr Opin Biotechnol. 51、16~23)、哺乳動物細胞に関するものははるかに少ない。哺乳動物のタンパク質は、例えば、翻訳後修飾が存在するため、発現には厳密な細胞型が必要とされることが多く、低レベルしか発現させることができないことが多い。したがって、2部式ペプチドリンカーであって、哺乳動物細胞においてその有用性を容易にする、拡散律速タンパク質-タンパク質相互作用の範囲での反応速度を有する2部式ペプチドリンカーが必要である。
WO2011/098772 WO2016/193746 WO2018/197854 WO2018/189517
Zakeri等、2012、Proc Natl Acad Sci U S A 109、E690~E697 Botyanszki等、2015、Biotechnology and bioengineering 112、2016~2024 Chen等、2014、Proc Natl Acad Sci U S A 108、11399~11404 Stranges等、2016、Proc Natl Acad Sci U S A 113、E6749~E6756 Schoene等、2016、Scientific Reports 6、21151 Brune等、2016、Scientific Reports 6、19234 Thrane等、2016、Journal of Nanobiotechnology 14、30 Keeble等、2017 Angew Chem Int Ed Engl. 56巻(52):1652~16525頁 Keeble及びHowarth、2019、Methods Enzymol. 617、443~461 Banerjee及びHowarth、2018、Curr Opin Biotechnol. 51、16~23 Li等、2014、J Mol Biol.;426(2):309~317 Willis及びChin、Nat Chem. 2018;10(8):831~837
ここで、本発明者らは、驚くべきことに、SpyCatcher002ポリペプチドのアミノ酸配列(配列番号7)を改変すること(すなわち変異させること)によって、特に、ポリペプチドC末端に非保存的置換を導入することによって、SpyCatcher002ポリペプチドの反応速度が桁違いに(すなわち、拡散律速タンパク質-タンパク質相互作用の範囲に)上昇されうると断定した。よって、本発明の改変されたSpyCatcherポリペプチド(SpyCatcher003と名づけた)は、オリジナルのSpyCatcherポリペプチド(配列番号8)より2桁を超えて速い反応速度を有する。とりわけ、また予想外にも、反応速度の上昇をもたらすこの改変は、ポリペプチド(結合パートナー)の熱安定性等の別の望ましい性質に、悪影響を与えることがない。
よって、有利には、本発明の変異体キャッチャー(SpyCatcher003、配列番号1)は、低濃度のペプチド及びポリペプチド結合パートナーでも利用可能であるという有用性において、例えばインビボで、その同族のペプチドタグ、例えばSpyTag003と共に(すなわち、2部式リンカーとして)使用されうる。本発明の変異体キャッチャー(ポリペプチド)はまた、高い感度及び/又は速度を必要とする分析用アッセイにおいて、例えば、ペプチドタグ(例えば、SpyTag003)がエピトープタグとして使用されるウェスタンブロットにおいて、特に有用であり得る。本発明の変異体キャッチャー(ポリペプチド)の速度定数の改良もまた、タグ及び/又はキャッチャーが、反応を緩徐化する可能性がある分子又は成分(例えば、巨大タンパク質)に融合される反応において、またタグ及び/又はキャッチャーに融合された分子又は成分がワクチン構築のためのウイルス様粒子形成等において立体障害を生じる反応において、有利である。更に、反応速度の改良に必要な改変は、SpyCatcherに関連したその他の有用な性質、すなわち、熱安定性、pH値及び温度範囲全般にわたる且つ界面活性剤が存在する場合を含む多様な緩衝液中での反応、並びに、哺乳動物細胞上での効率的な表面提示等、大腸菌及び哺乳動物細胞における効率的な発現に、影響を与えない。
いかなる理論にも拘泥するものではないが、SpyCatcher003ポリペプチド(配列番号1)をもたらす、SpyCatcher002ポリペプチド(配列番号7)への5つの改変は、ポリペプチドを安定化する(例えばポリペプチド内のループを強固にする)、SpyTagペプチド、具体的にはSpyTag003(配列番号3)との静電的相互作用を改善するように機能すると仮定される。SpyCatcher002のアミノ酸配列(配列番号7)と比べた本発明のポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)(配列番号1、すなわちSpyCatcherポリペプチドバリアント)における各置換が、個別にポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)の活性を向上させうることが企図される。
更に、SpyCatcherポリペプチドが、その活性に有意に影響を与えることなく、そのN末端及びC末端でトランケートすることができることを考慮すると(Li等、2014、J Mol Biol.;426(2):309~317)、本明細書において例示したポリペプチド(すなわち、配列番号1)は、該ポリペプチドの活性を有意に低下させることなく、N末端及び/又はC末端でトランケートされうることが企図される。具体的には、配列番号1は、N末端では21個のアミノ酸まで(例えば、5、10、15、又は20個のアミノ酸)を、且つC末端では9個のアミノ酸まで(例えば、1、2、3、4、又は5、6、7、8、若しくは9個のアミノ酸)を、好ましくは5個のアミノ酸までを、トランケートされていてもよい。好ましい実施形態において、本明細書において例証されたポリペプチド(すなわち、配列番号1)は、N末端でのみトランケートされる。
よって、一態様において、本発明は、したがって、ポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)であって、
i)配列番号1に記載のアミノ酸配列、又は
ii)配列番号2に記載のアミノ酸配列を含む(i)の一部、
iii)配列番号1に記載の配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する(例えば、配列番号1に記載の配列に少なくとも85、90、95、96、97、98、又は99%同一である)アミノ酸配列であり、31位のリジン、77位のグルタミン酸、並びに以下:
1)91位のグルタミン酸、
2)103位のアスパラギン酸、及び
3)108位のグルタミン酸
のうちの1つ又は複数を含み、これらの指定のアミノ酸残基が、配列番号1における位置に相当する位置にある、前記アミノ酸配列、又は
iv)配列番号2に記載の配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する(例えば、配列番号2に記載の配列に少なくとも85、90、95、96、97、98、又は99%同一である)アミノ酸配列を含む(iii)の一部であり、10位のリジン、56位のグルタミン酸、並びに以下:
1)70位のグルタミン酸、
2)82位のアスパラギン酸、及び
3)87位のグルタミン酸
のうちの1つ又は複数を含み、これらの指定のアミノ酸残基が、配列番号2における位置に相当する位置にある、前記アミノ酸配列
を含み、
前記ポリペプチドが、配列番号3に記載のアミノ酸配列を含むペプチドと自発的にイソペプチド結合を形成することができ、前記イソペプチド結合が、配列番号3の10位のアスパラギン酸残基と配列番号1の31位又は配列番号2の10位のリジン残基との間で形成する、ポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)を提供する。
本発明の好ましい一実施形態においては、該ポリペプチドは、
i)配列番号1に記載のアミノ酸配列、又は
ii)配列番号2に記載のアミノ酸配列を含む(i)の一部、
iii)配列番号1に記載の配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する(例えば、配列番号1に記載の配列に少なくとも85、90、95、96、97、98、又は99%同一である)アミノ酸配列であり、31位のリジン、77位のグルタミン酸、並びに以下:
1)89位のプロリン、
2)91位のグルタミン酸、
3)97位のアスパラギン酸、
4)103位のアスパラギン酸、及び
5)108位のグルタミン酸
のうちの3つ以上を含み、これらの指定のアミノ酸残基が、配列番号1における位置に相当する位置にある、前記アミノ酸配列、又は
iv)配列番号2に記載の配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する(例えば、配列番号2に記載の配列に少なくとも85、90、95、96、97、98、又は99%同一である)アミノ酸配列を含む(iii)の一部であり、前記アミノ酸配列が、10位のリジン、56位のグルタミン酸、並びに以下:
1)68位のプロリン、
2)70位のグルタミン酸、
3)76位のアスパラギン酸、
4)82位のアスパラギン酸、及び
5)87位のグルタミン酸
のうちの3つ以上を含み、これらの指定のアミノ酸残基が、配列番号2における位置に相当する位置にある、前記アミノ酸配列、
を含み、
前記ポリペプチドは、配列番号3に記載のアミノ酸配列を含むペプチドと自発的にイソペプチド結合を形成することができ、前記イソペプチド結合は、配列番号3の10位のアスパラギン酸残基と配列番号1の31位又は配列番号2の10位のリジン残基との間で形成する。
一部の実施形態において、3つのアミノ酸は、1)及び2)と、3)~5)のいずれか1つとである。ただし、3つ以上のアミノ酸のあらゆる組合せが本明細書において企図され、例えば、3)、4)、及び5)、2)、4)、及び5)、1)、3)、及び5)、2)、3)、及び4)、1)~4)、2)~5)等である。特に好ましい一実施形態において、上記のアミノ酸の5つすべてが本発明のバリアントポリペプチド中に存在する。
本発明のポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)バリアント(すなわち、ポリペプチド及びそれらの部分に関連した配列同一物)が、上記で指定の残基を全く含有していない実施形態において、指定の位置において、該バリアントは、SpyCatcher002ポリペプチド(配列番号7)に相当する位置にアミノ酸残基を含有することが好ましい。相当する位置は、ポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)バリアントのアミノ酸配列を、例えばBLASTPアルゴリズムを使用して、配列番号7と比較することによって、容易に決定することができる。
よって、例として、本発明のポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)が、配列番号1に記載の配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む実施形態では、91位(又は相当する位置)の残基がグルタミン酸でない場合、該残基はスレオニンであることが好ましい。同様に、103位(又は相当する位置)の残基がアスパラギン酸でない場合、該残基はアスパラギンであることが好ましい。108位(又は相当する位置)の残基がグルタミン酸でない場合、該残基はリジンであることが好ましい。89位(又は相当する位置)の残基がプロリンでない場合、該残基はアラニンであることが好ましい。97位(又は相当する位置)の残基がアスパラギン酸でない場合、該残基はグルタミンであることが好ましい。これは、下記に指定のその他の残基に対しても適用する。
一部の実施形態において、本発明のポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)バリアントは、例えば、1~50、1~45、1~40、1~35、1~30、1~25、1~20、1~15、1~10、1~8、1~6、1~5、1~4個、例えば1、2、若しくは3個のアミノ酸置換、挿入、及び/又は欠失、好ましくは1~23、1~20、1~15、1~10、1~8、1~6、1~5、1~4個、例えば1、2、若しくは3個のアミノ酸置換によって、及び/又は1~30、1~25、1~20、1~15、1~10、1~8、1~6、1~5、1~4個、例えば1、2、若しくは3個のアミノ酸欠失によって、配列番号1と異なっていてもよい。下記で論じるように、一部の実施形態において、欠失はN末端及び/又はC末端にあること、すなわちトランケーション、好ましくはN末端トランケーションであることが好ましく、これによって、上記で定義した配列番号1のポリペプチド部分、例えば配列番号2を作出する。
一部の実施形態において、例示したポリペプチド(配列番号1)に対する本発明のポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)中に存在するあらゆる変異は、保存的アミノ酸置換であり得る。保存的アミノ酸置換とは、ポリペプチドの物理化学的性質を保持する別のアミノ酸によるアミノ酸の置換えを指す(例えば、DはEによって、又は逆もまた同様に置き換えることができ、NはQによって、又はL若しくはI又はVによって、又は逆もまた同様に置き換えることができる)。よって、一般的には、置換するアミノ酸は、置換されるアミノ酸と、例えば疎水性、親水性、電気陰性度、大型の側鎖等の類似の性質を有する。天然L-アミノ酸の異性体、例えばD-アミノ酸を組み込んでもよい。
よって、一部の実施形態において、本発明のポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)バリアントは、上記及び更には下記に指定の残基のすべて(すなわち、配列番号7と比較した、配列番号1中の変異のすべて)を含まない。本明細書において指定した位置、特に下記に指定した位置では、該バリアントは、SpyCatcher002ペプチド(配列番号7)に相当する位置でのアミノ酸残基の保存的置換を含有しうる。よって、例えば、13位(又は相当する位置)の残基がプロリン又はグルタミンではない場合、該残基はアスパラギンであることが好ましい。
したがって、一部の実施形態において、本発明のポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)は、配列番号1に記載の配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでいてもよく、前記アミノ酸配列は、31位のリジン、77位のグルタミン酸、以下:
1)89位のプロリン、
2)91位のグルタミン酸、
3)97位のアスパラギン酸、
4)103位のアスパラギン酸、及び
5)108位のグルタミン酸
のうちのいずれか3つ以上(好ましくは4又は5つ)、並びに以下:
6)2位のスレオニン、
7)13位のプロリン、
8)37位のアルギニン、
9)62位のヒスチジン、
10)105位のグルタミン酸、及び
11)113位のスレオニン
のうちのいずれか1つ又は複数(好ましくは2、3、4、5、又は6つ)
を含み、これらの指定のアミノ酸残基は、配列番号1における位置に相当する位置にある。
本発明のポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)変異体(すなわちバリアント)の2位(配列番号1及び配列番号7の番号付けに基づく)のアスパラギン酸残基の存在によって、望まない副反応の形成、すなわち、ポリペプチドがイソペプチド結合を介してコンジュゲートされた、ポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)二量体の形成が生じる可能性がある。2位にスレオニン又はアラニンが存在することによって、望まない副反応が排除され、ポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)とその同族のペプチドタグとの反応速度が更に改善される可能性がある。よって、一部の実施形態において、本発明のポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)は、配列番号1に記載の配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでいてもよく、前記アミノ酸配列は、2位のスレオニン、31位のリジン、77位のグルタミン酸、以下:
1)89位のプロリン、
2)91位のグルタミン酸、
3)97位のアスパラギン酸、
4)103位のアスパラギン酸、及び
5)108位のグルタミン酸
のうちのいずれか3つ以上(好ましくは4又は5つ)、並びに以下:
6)13位のプロリン、
7)37位のアルギニン、
8)62位のヒスチジン、
9)105位のグルタミン酸、及び
10)113位のスレオニン
のうちのいずれか1つ又は複数(好ましくは2、3、4、又は5つ)
を含み、これらの指定のアミノ酸残基は、配列番号1における位置と等しい位置にある。
本発明のポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)は、上記で定義した1)~5)に列記したアミノ酸残基からの少なくとも3つのアミノ酸残基(好ましくは4又は5つすべて)、並びに少なくとも1つ(例えば、6)~11)及び6)~10)のリスト中の上記で指定のアミノ酸残基のうちの2、3、4、5、又は6つ)、例えば、6)及び7)、6)及び8)、6)及び9)、6)及び10)、6)及び11)、7)及び8)、7)及び9)、7)及び10)、7)及び11)等、6)、7)及び8)、6)、8)、及び9)、6)、8)、及び10)等を含む、上記で定義した指定のアミノ酸残基の任意の組合せを含みうることが企図される。ただし、特に好ましい組合せの一部としては、以下:
a) 1)2位のスレオニン、
2)13位のプロリン、
3)31位のリジン、
4)37位のアルギニン、
5)62位のヒスチジン、
6)77位のグルタミン酸、
7)91位のグルタミン酸、
8)103位のアスパラギン酸、
9)105位のグルタミン酸、
10)108位のグルタミン酸、及び
11)113位のスレオニン、
b) 1)2位のスレオニン、
2)13位のプロリン、
3)31位のリジン、
4)37位のアルギニン、
5)62位のヒスチジン、
6)77位のグルタミン酸、
7)89位のプロリン、
8)91位のグルタミン酸、
9)103位のアスパラギン酸、
10)105位のグルタミン酸、
11)108位のグルタミン酸、及び
12)113位のスレオニン、並びに
c) 1)2位のスレオニン、
2)13位のプロリン、
3)31位のリジン、
4)37位のアルギニン、
5)62位のヒスチジン、
6)77位のグルタミン酸、
7)89位のプロリン、
8)91位のグルタミン酸、
9)97位のアスパラギン酸、
10)103位のアスパラギン酸、
11)105位のグルタミン酸、
12)108位のグルタミン酸、及び
13)113位のスレオニン
が挙げられ、これらの指定のアミノ酸残基は、配列番号1における位置に相当する位置にある。
別の一部の実施形態において、上記で定義したポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)バリアントはまた、9位のグリシン及び/又は19位のスレオニンも含んでもよい。
よって、本発明のポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)は、具体的には、例示の配列番号1に記載の配列に対して少なくとも80%同一であり得、より具体的には、配列番号1に少なくとも85、90、95、96、97、98、又は99%同一であり、該ポリペプチドバリアントは、31位(又は相当する位置) のリジン、77位(又は相当する位置)のグルタミン酸、並びに以下:
1)2位のスレオニン、
2)9位のグリシン、
3)13位のプロリン、
4)19位のスレオニン、
5)37位のアルギニン、
6)62位のヒスチジン、
7)89位のプロリン、
8)91位のグルタミン酸、
9)97位のアスパラギン酸、
10)103位のアスパラギン酸、
11)105位のグルタミン酸、
12)108位のグルタミン酸、及び
13)113位のスレオニン
のすべてを含み、これらの指定のアミノ酸残基は、配列番号1における位置に相当する位置にある。
また別の一部の実施形態において、上記で定義したポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)バリアントはまた、以下:
1)34位のグルタミン酸、
2)50位のセリン、
3)69位のチロシン又はセリン(好ましくはセリン)、
4)83位のグリシン、及び
5)86位のバリン
のうちの1つ又は複数(好ましくはすべて)を含んでいてもよく、これらの指定のアミノ酸残基は、配列番号1における位置に相当する位置にある。
よって、本発明のポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)は、具体的には、例示の配列番号1に記載の配列に対して少なくとも80%同一であり得、より具体的には、配列番号1に少なくとも85、90、95、96、97、98、又は99%同一であり、該ポリペプチドバリアントは、31位(又は相当する位置) のリジン、77位(又は相当する位置)のグルタミン酸、並びに以下:
1)2位のスレオニン、
2)9位のグリシン、
3)13位のプロリン、
4)19位のスレオニン、
5)34位のグルタミン酸、
6)37位のアルギニン、
7)50位のセリン、
8)62位のヒスチジン、
9)69位のチロシン、
10)83位のグリシン、
11)86位のバリン、
12)89位のプロリン、
13)91位のグルタミン酸、
14)97位のアスパラギン酸、
15)103位のアスパラギン酸、
16)105位のグルタミン酸、
17)108位のグルタミン酸、及び
18)113位のスレオニン
のすべてを含み、これらの指定のアミノ酸残基は、配列番号1における位置に相当する位置にある。
上述のように、一部の好ましい実施形態において、本発明のポリペプチドバリアントは、配列番号1に対するアミノ酸置換を含む。よって、更にまた別の一部の実施形態において、上記で定義したポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)バリアント(例えば、上記で定義した残基1~11、1~12、1~13、又は1~18を有するバリアント)はまた、配列番号1に対して、以下の置換:
1)52位でのリジンのグルタミンによる置換(すなわち52位のグルタミン)、
2)63位でのバリンのアスパラギン酸による置換(すなわち63位のアスパラギン酸)、
3)69位でのチロシンのセリンによる置換(すなわち69位のセリン)、
4)88位でのスレオニンのロイシンによる置換(すなわち88位のロイシン)、及び
5)96位でのグルタミン酸のプロリンによる置換(すなわち96位のプロリン)
のうちの1つ又は複数(すなわち2、3、4、又は5つ)を含んでいてもよく、これらの指定のアミノ酸残基は、配列番号1における位置に相当する位置にある。
よって、一部の実施形態において、本発明のポリペプチドバリアントは、上記のリストの1)~8)及び10)~18)で指定した残基を含有していてもよく、69位のチロシン残基は、セリンで置換されている。このポリペプチドバリアントは、上記に指定のその他の置換のうちの1つ又は複数を更に含んでいてもよい。
本発明のポリペプチドバリアントは、配列番号1に対するアミノ酸欠失を含んでいてもよい。N末端の欠失が好ましくはあるが、一部の実施形態において、本発明のポリペプチドバリアントは、配列番号1の17位に相当する位置での欠失、すなわち配列番号1の17位のメチオニンの欠失を含んでいてもよい。
特に好ましい実施形態において、本発明のポリペプチドバリアントは、配列番号1の14~16位及び/又は85~89位に相当する位置に、アミノ酸欠失を含まない。
本明細書において使用される「リンカー」という用語は、好ましくは共有結合、例えばイソペプチド結合によって、2つの分子又は成分を共に連結させる、すなわちコンジュゲート又は接続させるように機能する分子を指す。よって、本発明のポリペプチド及びそのペプチドタグは、2部式リンカーとみなしてもよく、第1の部分、すなわちポリペプチドと、第2の部分、すなわちペプチドタグとの間のイソペプチド結合の形成が、リンカーを再構成し、これによって、リンカーの前記第1の部分及び第2の部分に融合又はコンジュゲートされた分子又は成分を接続する。言い換えると、本発明のポリペプチド及びそのペプチドタグは、リンカーとして機能する同族対、すなわちペプチドタグとポリペプチドの同族対、又はペプチドタグと結合パートナーの同族対とみなされうる。これらの用語は、本説明を通して互換的に使用される。
「同族の」という用語は、共に機能する成分を指す。よって、本発明の関連において、同族対は、自発的に共に反応してイソペプチド結合を形成する、ペプチドタグ及び本発明のポリペプチドを指す。よって、イソペプチド結合の自発的な形成を可能にする条件下で、効率的に共に反応して前記イソペプチド結合を形成するペプチドタグ及びポリペプチドを含む2部式リンカーはまた、「相補的対」、すなわちペプチドタグとポリペプチドとの相補的対とも呼ぶことができる。
よって、同族のペプチドタグは、本発明のポリペプチドと自発的に反応してイソペプチド結合を形成する、SpyTagペプチド又はそのバリアント(例えば、配列番号3~6のうちの1つに記載のアミノ酸配列を含むペプチド)を指す。一部の実施形態において、同族のペプチドタグは、配列番号3~5のうちの1つに記載のアミノ酸配列に少なくとも80%(例えば少なくとも85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%)配列同一性を有するアミノ酸配列を含むペプチドであってもよく、配列番号1に記載のアミノ酸配列を含むポリペプチドと、例えば、同族のペプチドタグ中のアスパラギン酸(すなわち、配列番号3の10位、配列番号4の8位又は配列番号5の7位に相当する位置のアスパラギン酸)と配列番号1の31位のリジン残基との間で、自発的にイソペプチド結合を形成することができる。
一部の実施形態において、該ペプチドタグは、配列番号6に記載のアミノ酸配列を含み、
(i)1位のXが、アルギニンであるか又はアミノ酸が存在せず、
(ii)2位のXが、グリシンであるか又はアミノ酸が存在せず、
(iii)5位のXが、ヒスチジン又はスレオニンであり、好ましくはヒスチジンであり、
(iv)11位のXが、アラニン、グリシン、又はバリンであり、好ましくはアラニンであり、
(v)14位のXが、アルギニン又はリジンであり、好ましくはアルギニンであり、
1位のXにアミノ酸が存在しない場合、2位のXにアミノ酸は存在せず、
前記ペプチドは、配列番号1に記載のアミノ酸配列を含むポリペプチドと自発的にイソペプチド結合を形成することができ、前記イソペプチド結合は、配列番号6の10位のアスパラギン酸残基と配列番号1の31位のリジン残基との間で形成する。
よって、一部の好ましい実施形態において、該ペプチドタグは、配列番号3、4、又は5に記載のアミノ酸配列を含むか又はそれらからなる。
よって、本発明は、ペプチド(ペプチドタグ)及びポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)を含む2部式リンカーであって、
a)前記ポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)が、上記で定義したアミノ酸配列(すなわち配列番号1又はそのバリアント)を含み、
b)前記ペプチド(ペプチドタグ)が、上記で定義したアミノ酸配列(例えば配列番号3、4、5、又は6に記載のアミノ酸配列)を含み、
前記ペプチド(ペプチドタグ)とポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)とが、ペプチドタグ中の(例えば配列番号4の8位の、配列番号5の7位又は配列番号3若しくは6の10位の)アスパラギン酸残基と配列番号1の31位のリジン残基との間で、自発的にイソペプチド結合を形成することができる、
2部式リンカーを更に提供する。
本発明のポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)(配列番号1)の31位のリジン残基は、前記ペプチドタグとポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)との間のイソペプチド結合の形成に好適である下記に説明した条件を含む様々な条件下で、配列番号4の8位、配列番号5の7位、又は配列番号3若しくは6の10位のアスパラギン酸残基と自発的にイソペプチド結合を形成する。下記の実施例から、本発明のポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)は、様々な条件下で活性であり、様々なペプチドタグ(具体的には配列番号3~5)と反応することができることが明らかである。
例えば、該ポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)は、EDTA含有又は非含有の、リン緩衝生理食塩水(PBS)、4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)、HEPES緩衝生理食塩水(HBS)、及びTris緩衝生理食塩水(TBS)を含む、様々な緩衝液中で活性である(すなわち、本明細書に記載したようなペプチドタグと自発的にイソペプチド結合を形成することができる)。該ポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)は、約3.0~8.0のpHで、例えば、4.0~7.0、5.0~7.0、例えば、約5.5~6.5等のpHで、広範囲にわたる温度で、例えば、0~40℃、例えば、1、2、3、4、5、10、12、15、18、20、22、25、28、30、35、又は37℃、好ましくは、約25~35℃、例えば約25℃で活性である。本発明のポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)はまた、例えば、約1%(v/v)までの濃度のTween 20及びTriton X-100等の、一般的に使用される界面活性剤の存在下、並びに尿素の存在下、例えば、約3Mまでの濃度の尿素の存在下でも、活性である。当業者ならば、その他の好適な条件を容易に決定することができるであろう。
よって、一部の実施形態において、本発明のポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)と同族のペプチドタグ(例えば、配列番号3~6、好ましくは3~5に記載のアミノ酸配列を含む又はそれらからなるペプチド)との間のイソペプチド結合の形成に好適である条件には、該ペプチドタグと本発明のポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)とを接触させることによって、前記ペプチドタグとポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)との間の、具体的には、配列番号3又は6の10位のアスパラギン酸残基(又は相当する位置、例えば、配列番号5の7位若しくは配列番号4の8位)と配列番号1の31位のリジン残基(又は相当する位置)との間の、イソペプチド結合の自発的な形成が得られる、あらゆる条件が含まれる。例えば、前記ペプチドタグとポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)とを、緩衝条件下、例えば、緩衝液中で、又はPBS等の緩衝液で平衡化されている固相(例えばカラム)上で接触させることである。接触させる工程は、pH3.0~8.0等の、例えば、4.0~7.0の任意の好適なpH、pH4.2、4.4、4.6、4.8、5.0、5.2、5.4、5.6、5.8、6.0、6.2、6.4、6.6、6.8、又は7.0等において可能である。追加的に又はその代わりに、接触させる工程は、任意の好適な温度、約0~40℃等、例えば、約1~39、2~38、3~37、4~36、5~35、6~34、7~33、8~32、9~31、又は10~30℃、例えば、約10、12、15、18、20、22、25、28、30、33、35、若しくは37℃、好ましくは、約25~35℃、例えば約25℃において可能である。
一部の実施形態において、ペプチドタグと本発明のポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)を、「イソペプチド結合の自発的な形成を可能にする条件下で」接触させることは、化学的シャペロン、例えば、ペプチドタグとポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)との反応性を増強又は改良する分子の存在下で、該ペプチドタグとポリペプチドとを接触させることを含む。一部の実施形態において、化学的シャペロンは、TMAO(トリメチルアミンN-オキシド)である。一部の実施形態において、化学的シャペロン、例えばTMAOは、反応物中に、少なくとも約0.2M、例えば、少なくとも0.3、0.4、0.5、1.0、1.5、2.0、又は2.5M、例えば、約0.2~3.0M、0.5~2.0M、1.0~1.5Mの濃度で存在する。
上述のように、本明細書に記載のペプチドタグと本発明のポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)との間のイソペプチド結合の形成は、自発的である。この点に関して、ポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)は、該ペプチドタグ及びポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)中のそれぞれアスパラギン酸とリジン残基との間のイソペプチド結合の形成を、容易にする、例えば、誘導、促進、又は触媒する、77位(又は、配列番号1の番号付けに基づき相当する位置)のグルタミン酸を含む。
本明細書において使用される「自発的」という用語は、タンパク質中で、又はペプチド若しくはタンパク質の間で(例えば2つのペプチド又はペプチドとタンパク質、すなわち、ペプチドタグと本発明のポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)との間で)、その他の媒介物(例えば酵素触媒)が存在することなく、且つ/又はタンパク質若しくはペプチドの化学的修飾なく、例えば、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)を使用する自然の化学的連結又は化学的結合によることなく形成することができるイソペプチド結合を指す。よって、C末端チオエステルを有するペプチド又はタンパク質を修飾するネイティブな化学的連結は行われない。
よって、自発的なイソペプチド結合は、本明細書において定義したペプチドタグと本発明のポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)との間で、該ペプチドタグ及び/又は本発明のポリペプチド単独で且つそれらの化学的修飾なく形成することができる。したがって、自発的なイソペプチド結合は、酵素又はその他の外因性物質の非存在下、且つ該ペプチドタグ及び/又は本発明のポリペプチドの化学的修飾なく、自発的に形成しうる。
自発的なイソペプチド結合は、該ペプチドタグと本発明のポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)との接触後、ほぼ直ぐに、例えば1、2、3、4、5、10、15、20、25、又は30分以内に、又は1、2、4、8、12、16、20、又は24時間以内に、形成しうる。
イソペプチド形成の速度は、ペプチドタグ及びポリペプチド反応物の濃度、並びに反応の条件、例えば、温度に依存することとなる。一部の実施形態において、例えば、反応物がそれぞれ約25℃の反応温度で約10μMの濃度で存在する場合、自発的なイソペプチド結合形成は、約1分以内で反応物の約90%以上を完了させうる。一部の実施形態において、例えば、反応物がそれぞれ約25℃の反応温度で約100nMの濃度で存在する場合、自発的なイソペプチド結合形成は、約1分以内で反応物の約50%以上を完了させうる。一部の実施形態において、例えば、反応物がそれぞれ約25℃の反応温度で約10nMの濃度で存在する場合、自発的なイソペプチド結合形成は、約1分以内で反応物の約10%以上を完了させうる。
その代わりに、一部の実施形態において、例えば、反応物がそれぞれ約25℃の反応温度で約100nMの濃度で存在する場合、自発的なイソペプチド結合形成は、約5分以内で反応物の約90%以上を完了させうる。一部の実施形態において、例えば、反応物がそれぞれ約25℃の反応温度で約10nMの濃度で存在する場合、自発的なイソペプチド結合形成は、約15分以内で反応物の約90%以上を完了させうる。
上記で定義した反応速度を決定するために使用される、その他の反応条件、例えば、緩衝液、pH等は、本明細書において定義したあらゆる条件であり得る。一部の実施形態において、反応条件は、実施例で使用された反応条件である。例えば、一部の実施形態において、自発的なイソペプチド結合形成は、約7.0のpHのコハク酸-リン酸-グリシン緩衝液中で、特に、pH7.0の12.5mMコハク酸、43.75mM NaH2PO4、43.75mMグリシンを含む緩衝液中で、上記に明記した量で完了する。
本発明のポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)は、配列番号1に記載の例示のポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)に構造的に似ている、ポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)の変異型(すなわち、本明細書では相同体、バリアント、又は誘導体と呼ばれる)を包含する。本発明のポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)バリアントは、ペプチドタグ結合パートナー(キャッチャー)として機能しうるものであり、すなわち、上記で定義した好適な条件下で、本明細書において定義したペプチドタグの10位(又は相当する位置)のアスパラギン酸と該ポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)バリアントの31位(又は相当する位置)のリジンとの間で、イソペプチド結合を自発的に形成することができる。
ポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)バリアントが、配列番号1に対する変異、例えば、欠失又は挿入を含む場合、上記に指定した残基が、バリアントポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)配列に相当するアミノ酸位置に存在する。一部の実施形態において、本発明のポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)バリアント中の欠失は、N末端及び/又はC末端トランケーションではなく、特に、C末端トランケーションではない。
しかしながら、上述のように、本明細書で例示のポリペプチド(すなわち配列番号1)が、ポリペプチドの活性を有意に低下させることなく、N末端及び/又はC末端においてトランケートされうることが企図される。具体的には、配列番号1は、N末端では21個のアミノ酸まで(例えば、5、10、15、又は20個のアミノ酸)、且つ/又はC末端では9個のアミノ酸まで(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、又は9個のアミノ酸)、好ましくは5個のアミノ酸以下が、トランケートされうる。よって、本明細書において使用されるバリアントという用語には、例示のポリペプチドのトランケーションバリアントが含まれる。その代わりに、本発明は、例示のポリペプチドの一部分を提供するものとみなされてもよく、前記部分は、上記で論じたように、配列番号2に記載のアミノ酸配列又はそのバリアントを含む。
本明細書において言及される場合、「部分」は、少なくとも1つの配列番号2に記載のアミノ酸配列、すなわち、配列番号2に記載のアミノ酸配列を含有する(該配列が由来する)配列番号1の少なくとも83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、100、105、110個の、又は更に多いアミノ酸を含む。よって、前記部分は、配列の中央部分又はN末端若しくはC末端部分から得てもよい。好ましくは、前記部分は中央部分から得られ、すなわち、前記部分は、上記で定義した、N末端及び/又はC末端トランケーション、好ましくはN末端トランケーションを含む。とりわけ、本明細書において記された「部分」とは、本発明のポリペプチドであり、したがって、本明細書で言及した、(相当する領域と比較して)同一な条件及び機能的等価条件を満たすものである。
一部の実施形態において、本発明のポリペプチドと使用するためのペプチドタグは、本明細書に記載の配列のバリアントであってもよく、例えば、上記で定義したような、例えば、1~5個、1~4個、例えば1、2~3個のアミノ酸置換、挿入、及び/又は欠失、好ましくは置換によって、配列番号3~6と異なっていてもよい。一部の実施形態において、本発明のポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)バリアントは、上記で定義した配列番号1と異なっていてもよい。ただし、ペプチド及びポリペプチドバリアントは、それらの機能活性、すなわち、それぞれそれらの同族の結合パートナー及びペプチドとのイソペプチド結合を自発的に形成するそれらの能力を保持していなければならない。
配列同一性は、当技術分野において既知の任意の好適な手段によって、例えば、可変パムファクター(variable pamfactor)を用いるFASTA pep-cmp、並びに12.0に設定されたギャップ生成ペナルティー及び4.0に設定されたギャップ伸長ペナルティー、並びに2アミノ酸のウィンドウを使用するSWISS-PROTタンパク質配列データバンクを使用して決定されうる。アミノ酸配列相同性を決定するその他のプログラムとしては、University of WisconsinによるGenetics Computer Group(GCG)バージョン10ソフトウエアパッケージのBestFitプログラムがある。このプログラムは、以下のデフォルト値を用いるスミス-ウォーターマンのローカルホモロジーアルゴリズムを使用する。Gap生成ペナルティー =8、Gap伸長ペナルティー=2、平均マッチ=2.912、平均ミスマッチ=-2.003。
好ましくは、前記比較は、配列全長にわたって行われるが、より小さいウィンドウの比較、例えば100個未満、80個未満、又は50個未満の連続するアミノ酸にわたって行ってもよい。
好ましくは、ペプチドタグ及びポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)バリアント(例えば、配列同一性に関連したバリアント)は、それぞれ配列番号3~5又は配列番号1若しくは2に記載の配列を有するペプチドタグ及びポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)と機能的に等しい。本明細書において言及される場合、「機能的等価物」とは、本明細書において定義のペプチドタグ及び上記で論じた本発明のポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)のバリアントであって、親分子(すなわち、該バリアントが配列相同性を示す分子)と比較して、それぞれのパートナーとのイソペプチド結合の自発的形成における有効性に幾分かの低減(例えば、より低い発現量、より低い反応速度、又は限定された範囲の反応条件(例えば、10~30℃等のより狭い温度範囲)での活性)を示してもよいが、好ましくは、同程度有効又はより有効であるバリアントを指す。
配列番号3~5のうちの1つに記載のアミノ酸配列を含むか又はそれからなるペプチドタグの活性と「等しい」活性を有する変異体又はバリアントペプチドタグは、配列番号3~5のうちの1つに記載のアミノ酸配列を含むか又はそれからなるペプチドタグの活性に類似の(すなわち、匹敵する)活性、すなわち、該ペプチドタグの実用適用に有意な影響を与えないような、例えば、実験誤差の許容範囲内であるような活性を有しうる。よって、等しいペプチドタグ活性とは、変異体又はバリアントペプチドタグが、同じ条件下で、配列番号3~5のうちの1つに記載のアミノ酸配列を含むか又はそれからなるペプチドタグと類似の反応速度(すなわち、下記で論じるような速度定数)及び/又は収量で、ポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー、例えば、配列番号1又は2に記載のアミノ酸配列を含むか又はそれからなる)と、イソペプチド結合を自発的に形成することができることを意味する。
同様に、配列番号1又は2(好ましくは配列番号1)に記載のアミノ酸配列を含むか又はそれからなるポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)の活性に「等しい」活性を有する本発明の変異体又はバリアントポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)は、配列番号1又は2(好ましくは配列番号1)に記載のアミノ酸配列を含むか又はそれからなるポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)の活性に類似の(すなわち匹敵する)活性、すなわち、該ポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)の実用適用に有意な影響を与えないような、例えば、実験過誤の許容範囲内であるような活性を有しうる。よって、等しいポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)活性とは、本発明の変異体又はバリアントポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)が、同じ条件下で、配列番号1又は2(好ましくは配列番号1)に記載のアミノ酸配列を含むか又はそれからなるポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)と類似の反応速度(すなわち、下記で論じるような速度定数)及び/又は収量で、ペプチドタグ(例えば、配列番号3~6のうちの1つに記載のアミノ酸配列を含むか又はそれからなる)と、イソペプチド結合を自発的に形成することができることを意味する。
同じ反応条件下で、例えば、上記に例示したような、温度、基質(すなわち、ペプチドタグ又はポリペプチド配列)及びそれらの濃度、緩衝液、塩等の条件下で測定された、様々なペプチドタグ及びポリペプチドの活性(例えば、それぞれ、配列番号3対変異体、及び配列番号1対変異体)を容易に比較して、それぞれペプチドタグ及びポリペプチドに対する活性がより高いか、より低いか、又は等しいかどうかを判断することができる。
特に、本明細書において定義のペプチドタグバリアント及び本発明のポリペプチドバリアントは、それぞれ配列番号3~5又は配列番号1若しくは2に記載の配列を有するペプチドタグ及びポリペプチドと等しい速度定数を有する。速度定数とは、所与の温度での反応(イソペプチド結合の形成)の速度を、反応物の濃度の生成物(すなわち、本発明のペプチドタグ及びポリペプチドの濃度の生成物)に関連付ける比例係数を指す。
よって、本明細書において開示されたバリアント(例えば変異体)ペプチドタグの活性、例えば速度定数は、配列番号3~5のうちの1つに記載のアミノ酸配列を含むか又はそれからなるペプチドタグの活性、例えば速度定数の、少なくとも60%、例えば、少なくとも70、75、80、85、又は90%、配列番号3~5のうちの1つに記載のアミノ酸配列を含むか又はそれからなるペプチドタグの活性の少なくとも91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%等であってもよい。その代わりに、変異体ペプチドタグの活性、例えば速度定数は、配列番号3~5のうちの1つに記載のアミノ酸配列を含むか又はそれからなるペプチドタグの活性、例えば速度定数より、わずか40%低いだけであり得、例えば、配列番号3~5のうちの1つに記載のアミノ酸配列を含むか又はそれからなるペプチドタグの活性、例えば速度定数より、わずか35、30、25、又は20%低く、配列番号3~5のうちの1つに記載のアミノ酸配列を含むか又はそれからなるペプチドタグの活性、例えば速度定数より、わずか10、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1%低いだけであり得る。
同様に、本発明のバリアントポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)の活性、例えば速度定数は、配列番号1又は2に記載のアミノ酸配列を含むか又はそれからなるポリペプチドの活性、例えば、速度定数の少なくとも60%、例えば、少なくとも70、75、80、85、又は90%、配列番号1又は2に記載のアミノ酸配列を含むか又はそれからなるポリペプチドの活性、例えば速度定数の少なくとも91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%等であってもよい。その代わりに、該バリアントポリペプチドの活性は、配列番号1又は2に記載のアミノ酸配列を含むか又はそれからなるポリペプチドの活性、例えば速度定数より、わずか40%低いだけであり得、例えば、配列番号1又は2に記載のアミノ酸配列を含むか又はそれからなるポリペプチドの活性、例えば速度定数より、わずか35、30、25、又は20%低く、配列番号1又は2に記載のアミノ酸配列を含むか又はそれからなるポリペプチドの活性、例えば速度定数より、わずか10、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1%低いだけであり得る。
とりわけ、本明細書において開示されたペプチドタグと本発明のポリペプチドとの反応の速度定数は、該ペプチドタグ及び/又はポリペプチドが大分子又は成分(例えばタンパク質)に融合される場合は、実施例に記載の値より低い可能性があり、単離されたペプチドタグ及びポリペプチドよりゆっくりと拡散する。更に、該ペプチドタグ及び/又はポリペプチドが融合されている分子又は成分が、反応に対して立体障害を生じると、速度定数は低下する可能性がある。したがって、本明細書において開示されたペプチドタグバリアントと本発明のポリペプチドバリアントとの反応の速度定数を測定する場合、測定は、単離されたペプチドタグ及びポリペプチド、すなわちその他の分子又は成分に融合又はコンジュゲートされていないペプチドタグ及びポリペプチドを使用して行うことが好ましい。
しかしながら、実施例に示すように、多くの場合、ポリペプチドに融合されているペプチドタグを使用して、本発明のポリペプチドバリアントの反応の速度定数を測定するのが簡便である。よって、ポリペプチドに融合されているペプチドタグを使用して、様々なポリペプチドバリアントの速度定数を測定し比較する場合、ペプチドタグに融合されたポリペプチドは、すべての反応において、同じサイズ、好ましくは同じ配列であることが好ましい。
大分子若しくは成分への融合及び/又は立体障害はまた、その他のペプチドタグ及びポリペプチド、例えば、SpyTag、SpyTag002、SpyCatcher、及びSpyCatcher002の速度定数にも影響を与えることが明らかであろう。よって、本発明のポリペプチドの速度定数の改善は、本発明のポリペプチド及びその同族のペプチドタグを、低濃度で使用する場合だけでなく、高濃度で使用する場合(例えば、大分子又は成分に融合される場合)でも、有利であり得る。
反応速度及び速度定数は、当技術分野において既知の、また実施例及びWO2018/197854(参照により本明細書に組み込まれている)に記載されているような、任意の好適な手段によって評価することができる。例えば、反応速度は、(i)すべての非共有結合的相互作用を破壊すると考えられるSDSの煮沸若しくはその他の強力な変性処理の後、SDS-PAGE上の反応生成物の移動度を評価することによって、又は(ii)質量分析によって、モニターしてもよい。
よって、任意の改変又は改変の組合せを、配列番号1に対して行って、本発明のバリアントポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)を作出してもよい。ただし、該バリアントポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)は、上記で定義したように、配列番号1の31位に相当する位置にリジン残基、並びに配列番号1の77位に相当する位置にグルタミン酸残基、並びに91、103、及び108位に相当する位置に少なくとも1つ(好ましくは2又は3つ)のその他のアミノ酸残基、場合によって、89及び97位に相当する位置に1つ又は両方のアミノ酸残基、別の場合では、配列番号1の2、9、13、19、37、62、105、及び113位に相当する位置に1つ又は複数(好ましくは2、3、4、5、6、7、又は8つ)のアミノ酸残基、並びに、別の場合では、配列番号1の34、50、69、83、及び86位に相当する位置に1つ又は複数(好ましくは2、3、4、又は5つ)のアミノ酸残基を含み、上記で定義した機能的特性を保持し、すなわち、配列番号3~5のうちの1つに記載のアミノ酸配列を含むか又はそれからなるペプチドタグとイソペプチド結合を自発的に形成することができるポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)をもたらし、場合によって、配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)と比較して、等しい又はより高い収量、反応速度、例えば、速度定数、温度、及び/又は緩衝液の範囲を有する。
一部の実施形態において、本発明のバリアントポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)は、上記で指定した残基、及び以下の置換:K52Q、V63D、Y69S、T88L、及びE96P(配列番号1と比較して)のうちの1つ又は複数(2、3、4、又は5つ)を含み、上記で定義した機能的特性を保持し、すなわち、配列番号3~5のうちの1つに記載のアミノ酸配列を含むか又はそれからなるペプチドタグとのイソペプチド結合を自発的に形成することができるポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)をもたらし、場合によって、配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)と比較して、等しい又はより高い収量、反応速度、例えば、速度定数、温度、及び/又は緩衝液の範囲を有する。
別の一部の実施形態において、本発明のバリアントポリペプチドは、上記で指定した残基、場合によって、上記で指定した置換及び配列番号1の17位のメチオニンの欠失を含み、上記で定義した機能的特性を保持し、すなわち、配列番号3~5のうちの1つに記載のアミノ酸配列を含むか又はそれからなるペプチドタグとのイソペプチド結合を自発的に形成することができるポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)をもたらし、場合によって、配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)と比較して、等しい又はより高い収量、反応速度、例えば、速度定数、温度、及び/又は緩衝液の範囲を有する。
その代わりに、任意の改変又は改変の組合せ(好ましくは置換)を、配列番号2に対して行って、本発明のバリアントポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)を作出してもよい。ただし、該バリアントポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)は、上記で定義したように、配列番号2の10位に相当する位置にリジン残基、及び配列番号2の56位と等しい位置にグルタミン酸残基、並びに70、82、及び87位に相当する位置に少なくとも1つ(好ましくは2又は3つ)のその他のアミノ酸残基、場合によって68及び76位に相当する位置に1つ又は両方のアミノ酸残基(複数可)、別の場合では、配列番号2の16、41、84、及び92位に相当する位置に1つ又は複数(好ましくは2、3、又は4つ)のアミノ酸残基、並び、別の場合では、配列番号2の13、29、48、62、及び65位に相当する位置に1つ又は複数(好ましくは2、3、4、又は5つ)のアミノ酸残基を含み、上記で定義した機能的特性を保持し、すなわち、配列番号3~5のうちの1つに記載のアミノ酸配列を含むか又はそれからなるペプチドタグとのイソペプチド結合を自発的に形成することができるポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)をもたらし、場合によって、配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)と比較して、等しい又はより高い収量、反応速度、例えば、速度定数、温度、及び/又は緩衝液の範囲を有する。
一部の実施形態において、本発明のトランケートされたバリアントポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)は、上記で指定した残基、及び以下の置換:K31Q、V42D、Y48S、T67L、及びE75P(配列番号2と比較して)のうちの1つ又は複数(2、3、4、又は5つ)を含み、上記で定義した機能的特性を保持し、すなわち、配列番号3~5のうちの1つに記載のアミノ酸配列を含むか又はそれからなるペプチドタグとのイソペプチド結合を自発的に形成することができるポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)をもたらし、場合によって、配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)と比較して、等しい又はより高い収量、反応速度、例えば、速度定数、温度、及び/又は緩衝液の範囲を有する。
本明細書において開示されたペプチドタグにおける相当する位置は、好ましくは配列番号3又は6のアミノ酸を参照することによって決定される。本発明のポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)における相当する位置は、配列番号1又は2のアミノ酸を参照することによって決定される。相同な又は対応する位置は、例えば、BLASTアルゴリズムを使用して、配列間の相同性又は同一性に基づき、ホモログ(変異体、バリアント、又は誘導体)ペプチドタグの配列と配列番号3又は6の配列とを、又はホモログ(変異体、バリアント、又は誘導体)ポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)の配列と配列番号1又は2の配列とを整列させることによって、容易に推定することができる。
本明細書において使用される「タグ」及び「ペプチドタグ」という用語は、一般に、ペプチド又はオリゴペプチドを指す。
本明細書において使用される「ペプチドタグ結合パートナー」、「結合パートナー」、又は「キャッチャー」という用語は、一般に、ポリペプチド又はタンパク質を指す。
この点に関して、ペプチドが意味するサイズの境界に関して、基準となる定義はない。典型的には、ペプチドは、2~39個のアミノ酸を含むものとみなされうる。したがって、ポリペプチドは、少なくとも40個のアミノ酸、好ましくは少なくとも50、60、70、80、90、100、又は110個のアミノ酸を含むものとみなされうる。
よって、好ましい実施形態において、本明細書において定義したペプチドタグは、少なくとも12個のアミノ酸、例えば、12~39個のアミノ酸を含むものとみなすことができ、例えば、13~35、14~34、15~33、16~31、17~30アミノ酸長等であり、例えば、該ペプチドタグは、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20個のアミノ酸を含むか又はそれらからなっていてもよい。
本明細書において定義した本発明のポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー、結合パートナー、又は「キャッチャー」)は、少なくとも80個のアミノ酸、例えば、80~150個のアミノ酸を含むものとみなすことができ、例えば、80~140、80~130、80~120アミノ酸長等であり、例えば、該ポリペプチドは、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、又は120個のアミノ酸を含むか又はそれらからなっていてもよい。
上記で論じたように、2部式リンカー(例えば、タグとキャッチャーとのシステム又は対、すなわち同族対)は、多数の有用性を有し、本発明のポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)及びその同族のペプチドタグ(例えば、配列番号3~6)は、イソペプチド結合を介して2つの分子又は成分をコンジュゲート(すなわち接合又は連結)させるという特別な有用性を見出している。例えば、該ペプチドタグ及びポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)を、目的の分子又は成分に別々にコンジュゲート又は融合させた後、該ペプチドタグとポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)との間のイソペプチド結合の自発的な形成を可能にするのに好適な条件下で共に接触させ、これによって、イソペプチド結合を介して、目的の分子又は成分を接合(すなわち連結又はコンジュゲート)させることができる。
よって、一部の実施形態において、本発明は、イソペプチド結合を介して2つの分子又は成分をコンジュゲートさせるための、本明細書において定義したペプチド(ペプチドタグ)とポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)との対の使用を提供するものと理解されてもよく、
イソペプチド結合を介してコンジュゲートされる前記分子又は成分は、
a)本明細書において定義した、本発明のポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)を含む(例えば、それにコンジュゲート又は融合された)第1の分子又は成分、及び
b)本明細書において定義した、ペプチド(ペプチドタグ)を含む(例えば、それにコンジュゲート又は融合された)第2の分子又は成分
を含む。
上記のペプチドタグとポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)の対(すなわち2部式リンカー)の使用は、上記のような、前記ペプチドタグとポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)との間のイソペプチド結合の自発的な形成を可能にする(例えば、促進する又は容易にする)のに好適な条件下で、前記第1の分子と第2の分子とを接触させることを含むことは明白であろう。
その代わりに、本発明は、イソペプチド結合を介して2つの分子又は成分をコンジュゲートする方法であって、
a)本明細書において定義した、本発明のポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)を含む(例えば、それにコンジュゲート又は融合された)第1の分子又は成分を用意することと、
b)本明細書において定義した、ペプチド(ペプチドタグ)を含む(例えば、それにコンジュゲート又は融合された)第2の分子又は成分を用意することと、
c)上記のような、該ペプチドとポリペプチドとの間のイソペプチド結合の自発的な形成を可能にする(例えば、促進する又は容易にする)条件下で、前記第1の分子又は成分と第2の分子又は成分とを接触させ、これによって、イソペプチド結合を介して前記第1の分子又は成分を前記第2の分子又は成分にコンジュゲートして複合体を形成することと
を含む方法を提供する。
複合体を形成するために2つ以上の分子又は成分を連結することに関して、本発明の関連において「コンジュゲートすること」又は「連結すること」という用語は、前記分子又は成分、例えばタンパク質を、共有結合を介して、特に、前記分子又は成分、例えばタンパク質に組み込まれている又は融合されているペプチドタグとポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)との間で形成するイソペプチド結合を介して、接合させること又はコンジュゲートすることを指す(例えば、ペプチドタグ及びポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)は、共にコンジュゲートされる又は連結されるべきタンパク質のドメインを形成していてもよい)。
上述のように、一部の実施形態において、本明細書において開示されたペプチドタグ及び/又は本発明のポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)は、その他の分子又はその他の成分若しくは実体に融合又はコンジュゲートされている。そのような分子又は成分(すなわち実体)は、核酸分子、タンパク質(例えば、抗体又はその抗原結合フラグメント)、ペプチド、低分子有機化合物、フルオロフォア、金属-リガンド複合体、多糖、ナノ粒子、2D単層(例えば、グラフェン)、ナノチューブ、ポリマー、細胞、ウイルス、ウイルス様粒子、又はこれらの任意の組合せであってもよい。一部の実施形態において、該ペプチドタグ及び/又はポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)が融合又はコンジュゲートされる成分又は実体は、下記に定義するような固体支持体、すなわち固体基質又は固相である。
よって、その代わりに、本発明は、本発明のペプチドタグ及び/又はポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)に融合又はコンジュゲートされた、核酸分子、タンパク質(例えば、抗体又はその抗原結合フラグメント)、ペプチド、低分子有機化合物、フルオロフォア、金属-リガンド複合体、多糖、ナノ粒子、2D単層(例えばグラフェン)、ナノチューブ、ポリマー、細胞、ウイルス、ウイルス様粒子、若しくはそれらの任意の組合せ、又は固体支持体を提供する。
細胞は、原核細胞であっても真核細胞であってもよい。一部の実施形態において、細胞は、原核細胞、例えば、細菌細胞である。一部の実施形態において、細胞は、動物細胞等の真核細胞、例えば、ヒト細胞である。
一部の実施形態において、該ペプチドタグ及び/又はポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)は、治療的又は予防的効果を有する化合物又は分子、例えば、抗生物質、抗ウイルス剤、ワクチン、抗腫瘍薬、例えば、放射性化合物若しくは同位体、サイトカイン、毒素、遺伝子をコードするオリゴヌクレオチド及び核酸、又は核酸ワクチンに、コンジュゲート又は融合されていてもよい。
一部の実施形態において、該ペプチドタグ及び/又はポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)は、標識、例えば、放射標識、蛍光標識、発光標識、発色団標識、並びに基質、及び検出可能な基質を生成させる酵素、例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、ルシフェラーゼ、又はアルカリホスファターゼに、コンジュゲート又は融合されていてもよい。この検出は、ウエスタンブロッティング/イムノブロッティング、組織化学、酵素結合免疫吸着測定(ELISA)、又はフローサイトメトリー(FACS)フォーマットを含む、抗体が慣習的に使用される非常に多くの測定法において適用されうる。磁気共鳴画像法のための標識、陽電子放出断層撮影プローブ、及び中性子捕獲療法のためのホウ素10もまた、ペプチドタグ及び/又は本発明のポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)にコンジュゲートすることができる。特に、該ペプチドタグ及び/又はポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)は、別のペプチド、例えばHisタグを用いて融合されても作出されてもよく、且つ/又は、例えば、マルトース結合タンパク質に融合させることによって組換えタンパク質の発現を増強する目的を有する別のタンパク質を用いて融合されても作出されてもよい。
一部の実施形態において、本発明のポリペプチド中にシステイン残基を導入して、該ポリペプチドを、別の分子又は成分に、例えば、蛍光標識又は固体基質等の標識に結合させることが有用であり得る。例えば、システイン残基の導入によって、該ポリペプチドを別の分子又は成分に、例えば、マレイミド官能基を含有する蛍光標識等の標識に、結合させることができると考えられる。
一部の特定の実施形態において、上記で定義したポリペプチドバリアントは、配列番号1の49若しくは55位に相当する位置(好ましくは49位に相当する位置)、又は配列番号2の28若しくは34位(好ましくは28位に相当する位置)に、システインを追加的に含んでいてもよい。よって、一部の実施形態において、本発明のポリペプチドは、配列番号12又は13に記載のアミノ酸配列を含む。
特に有用な実施形態において、該ペプチドタグ及び/又はポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)は、別のペプチド又はポリペプチドと融合又はコンジュゲートされる。例えば、該ペプチドタグ及び/又はポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)は、下記で論じるような組換え技術を使用して別のペプチド又はポリペプチドの一部として、すなわち、組換え又は合成タンパク質若しくはポリペプチドとして作出してもよい。ペプチド又はポリペプチドが別のペプチド又はポリペプチドに融合又はコンジュゲートされている実施形態では、ペプチド又はポリペプチドは、本発明のペプチドタグ又はポリペプチド由来であるペプチド又はポリペプチドではない(例えば、ペプチド又はポリペプチドは、イソペプチドタンパク質、すなわち本発明のポリペプチド由来であるイソペプチドタンパク質(ストレプトコッカス・ピオゲネスFbaBタンパク質のCnaB2ドメイン)ではない)。
本明細書において開示されたペプチドタグ及び/又は本発明のポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)は、任意のタンパク質又はポリペプチドにも融合することができることが明らかとなろう。タンパク質は、任意の好適な供給源から誘導されるか又は任意の好適な供給源から得てもよい。例えば、タンパク質は、インビトロで翻訳されても、又は生体試料及び臨床試料から、例えば、生物(真核生物、原核生物)の任意の細胞若しくは組織試料又はそれら由来の任意の体液若しくは調製物、並びに、例えば、細胞培養、細胞製剤、細胞溶解物等の試料から精製されてもよい。タンパク質は、環境試料から、例えば精製されて誘導されるか又は得てもよく、環境試料には、例えば、土壌及び水試料又は食品試料も含まれる。試料は、新たに調製されていてもよく、又は試料は、例えば保存のために任意の簡便な方法で前処置されていてもよい。
上述のように、好ましい一実施形態において、本明細書において開示されたペプチドタグ及び/又は本発明のポリペプチドに融合されたペプチド又はタンパク質は、遺伝子組換えによって作出されていてもよく、よって前記組換えタンパク質をコードする核酸分子は、任意の好適な供給源、例えば、あらゆる原核又は真核細胞、ウイルス、バクテリオファージ、マイコプラズマ、原形質体、及び細胞小器官を含む任意のウイルス性又は細胞性物質から誘導されても又はそれらから得てもよい。よって、そのような生物学的材料は、あらゆるタイプの哺乳動物細胞及び非哺乳動物細胞、植物細胞、ラン藻類を含む藻類、真菌、細菌、原生動物、ウイルス等を含みうる。一部の実施形態において、タンパク質は、合成タンパク質であってもよい。例えば、本明細書において開示されたペプチド及びポリペプチド(タンパク質)は、固相ペプチド合成等の化学合成によって作出してもよい。
組換え又は合成タンパク質内での該ペプチドタグ及び/又はポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)の位置は、特に重要ではない。よって、一部の実施形態において、該ペプチドタグ及び/又はポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)は、組換え又は合成ポリペプチドのN末端又はC末端に配置してもよい。一部の実施形態において、該ペプチドタグ及び/又はポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)は、組換え又は合成ポリペプチド中の内部に配置してもよい。よって、一部の実施形態において、該ペプチドタグ及び/又はポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)は、組換え又は合成ポリペプチドのN末端ドメイン、C末端ドメイン、又は内部ドメインとみなされうる。
一部の好ましい実施形態において、該ポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)は、好ましくは、組換え又は合成ポリペプチドのN末端又はC末端に配置される。よって、一部の実施形態において、該ポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)は、組換え又は合成ポリペプチドのN末端又はC末端ドメインとみなされうる。
一部の実施形態において、ペプチドタグ及び/又はポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)と連結又はコンジュゲートされるべきペプチド又はポリペプチドの間に、1つ又は複数のスペーサー、例えば、ペプチドスペーサーを含むことが有効であり得る。よって、ペプチド、オリゴペプチド、又はポリペプチドと、ペプチドタグ及び/又はポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)は、直接相互に連結されていてもよく、又は1つ若しくは複数のスペーサー配列を使って間接的に連結されていてもよい。よって、スペーサー配列は、組換え又は合成ポリペプチドの、別々の2つ以上の部分に間を置くか又はそれらを分離させることができる。一部の実施形態において、スペーサーは、該ペプチドタグ及び/又はポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)に対してN末端又はC末端であってもよい。一部の実施形態において、スペーサーは、該ペプチドタグ及び/又はポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)に両側にあってもよい。
スペーサー配列の厳密な性質は重要ではなく、長さ及び/又は配列は多様であってよく、例えば、1~40個、より具体的には、2~20、1~15、1~12、1~10、1~8、又は1~6個の残基、例えば、6、7、8、9、10個、又はそれより多い残基を有しうる。代表的な例として、スペーサー配列は、存在する場合、1~15、1~12、1~10、1~8、又は1~6個等の残基を有しうる。残基の性質は重要ではなく、残基は、例えば、中性アミノ酸又は脂肪族アミノ酸等の任意のアミノ酸であってもよく、その代わりに、残基は、疎水性又は極性若しくは荷電アミノ酸、又は構造形成アミノ酸、例えばプロリンであってもよい。一部の好ましい実施形態において、リンカーは、セリン及び/又はグリシンリッチ配列である。
よって、スペーサー配列の例としては、そのような残基のうちの1つ又は複数から構成される任意の、1つのアミノ酸残基、例えば、S、G、L、V、P、R、H、M、A、若しくはE、又は1つの、ジ-、トリ-、テトラ-、ペンタ-、若しくはヘキサ-ペプチドが挙げられる。
よって、一部の実施形態において、本発明は、上記で定義したような本発明のポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)を含む組換え又は合成ポリペプチド、すなわち、本発明のポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)に融合されたペプチド又はポリペプチド(例えば、異種のペプチド又はポリペプチド、すなわち、通常は本発明のポリペプチドと結合されていない、例えば様々な生物由来の、ペプチド又はポリペプチド)を含む組換え又は合成ポリペプチドを提供する。組換え又は合成ポリペプチドは、場合によって、上記で定義したようなスペーサーを含む。
本発明の組換え又は合成ポリペプチドはまた、その精製(例えば、下記で論じる本発明の方法及び使用で用いる前の)を容易にする、精製部分又はタグを含んでいてもよい。任意の好適な精製部分又はタグは、ポリペプチドに組み込まれていてもよく、そのような部分は、当技術分野では公知である。例えば、一部の実施形態において、組換え又は合成ポリペプチドは、ペプチド精製タグ又は部分、例えばHis-タグ又はC-タグ配列を含んでいてもよい。そのような精製部分又はタグは、ポリペプチド内の任意の位置に組み込まれていてもよい。一部の好ましい実施形態において、精製部分は、ポリペプチドのN末端若しくはC末端に、又はN末端若しくはC末端方向を向いて(すなわち5、10、15、20アミノ酸以内に)位置する。
上述のように、本発明の利点は、ペプチド又はポリペプチド中に組み込まれる2部式リンカーのペプチドタグ及び/又はポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)(例えば、本発明の組換え又は合成ポリペプチド)が完全に遺伝子でコード化されうるという事実から生ずる。よって、更なる態様において、本発明は、ポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)又は上記で定義したような組換え若しくは合成ポリペプチドをコードする、核酸分子を提供する。
一部の実施形態において、核酸分子は、宿主細胞中での発現のためにコドン最適化されている。よって、一部の実施形態において、核酸分子は、大腸菌(E. coli)等の細菌細胞中での発現のために、例えば、配列番号9に記載のヌクレオチド配列のように、コドン最適化されている。一部の実施形態において、核酸分子は、ヒト細胞、例えば、HEK細胞等の哺乳動物細胞中での発現のために、例えば、配列番号10に記載のヌクレオチド配列のように、コドン最適化されている。
一部の実施形態において、上記で定義したポリペプチド結合パートナーをコードする核酸分子は、配列番号9又は10に記載のヌクレオチド配列、又は配列番号9又は10に記載の配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。
好ましくは、上記の核酸分子は、比較される配列に対して、少なくとも85、90、95、96、97、98、99、又は100%同一である。
核酸配列同一性は、例えば、6ヌクレオチドのウィンドウで、デフォルト値及び可変パムファクター、並びに12.0に設定したギャップ生成ペナルティー及び4.0に設定したギャップ伸長ペナルティーを用いた、GCGパッケージを使用するFASTA Searchsによって決定することができる。好ましくは、前記比較は、配列の全長にわたって行われるが、比較のより小さいウィンドウ、例えば600、500、400、300、200、100、又は50個未満の連続するヌクレオチドにわたって行ってもよい。
本発明の核酸分子は、リボヌクレオチド及び/又はデオキシリボヌクレオチド、並びにワトソン-クリック型の又は類似の塩基対相互作用に関与することができる合成残基、例えば合成ヌクレオチドからなっていてもよい。好ましくは、核酸分子は、DNA又はRNAである。
上記の核酸分子は、発現制御配列、又はそのような組換えDNA分子を含有する組換えDNAクローニング媒体若しくはベクターに、作動可能に連結されていてもよい。これによって、遺伝子産物としての本発明のペプチド及びポリペプチドの細胞による発現が可能となり、この発現は、目的の細胞中に導入された遺伝子によって誘導される。遺伝子発現は、目的の細胞中で活性なプロモーターから誘導されるものであり、ゲノムへの組込み又は独立した複製又は一過的トランスフェクション/発現用の、直鎖又は環状核酸(例えばDNA)ベクターの任意の形態で挿入されてもよい。好適な形質転換又はトランスフェクション技術は、文献に詳しく記載されている。その代わりに、裸の核酸(例えば、DNA又はRNAであり、1つ又は複数の合成残基、例えば、塩基アナログが含まれうる)分子を、細胞に直接導入して、本発明のポリペプチドを産生させてもよい。その代わりに、インビトロでの転写によって核酸をmRNAに変換させてもよく、インビトロでの翻訳によって関連するタンパク質を生成させてもよい。
適切な発現ベクターは、例えば、本発明の核酸分子とマッチするリーディングフレームにおいて連結された、翻訳制御エレメント(例えば、開始及び終止コドン、リボソーム結合部位)及び転写制御エレメント(例えば、プロモーター-オペレーター領域、終止配列)等の適切な制御配列を含む。適切なベクターには、プラスミド及びウイルス(バクテリオファージ及び真核生物のウイルスの両方を含む)が含まれうる。好適なウイルスベクターとしては、バキュロウイルス、更にはアデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レンチウイルス、ヘルペス、及びワクシニア/poxウイルスが挙げられる。その他の多くのウイルスベクターが、当技術分野において示されている。好適なベクターの例として、pGEX-KG、pEF-ネオ、及びpEF-HA等の、細菌及び哺乳動物の発現ベクターが挙げられる。
上述のように、本発明の組換え又は合成ポリペプチドは、追加の配列(例えば、ポリペプチドの精製を容易にするペプチド/ポリペプチドタグ)を含んでもよく、よって、発現させると融合タンパク質を産生するように、核酸分子を、追加のペプチド又はポリペプチド、例えばHis-タグ、マルトース結合タンパク質等をコードするDNAと都合よく融合させてもよい。
よって、更なる態様として、本発明は、ベクター、好ましくは上記で定義したような核酸分子を含む発現ベクターを提供する。
その他の本発明の態様には、本発明に従って組換え核酸分子を調製する方法であって、本発明のポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)をコードする本発明の核酸分子をベクター核酸中に挿入することを含む方法が含まれる。
本発明の核酸分子、好ましくはベクター中に含有された核酸分子は、任意の適切な手段によって細胞に導入されうる。好適な形質転換又はトランスフェクション技術は、文献に詳しく記載されている。非常に多くの技術が公知であり、これらを用いて、そのようなベクターを発現用の原核細胞又は真核細胞中に導入してもよい。このために好ましい宿主細胞には、昆虫細胞株、酵母、哺乳動物細胞株、又はBL21(DE3)株等の大腸菌がある。本発明はまた、核酸分子、特に上記で定義したようなベクターを含有する、形質転換又はトランスフェクトされた原核生物若しくは真核生物の宿主細胞に拡大する。
よって、別の態様において、上記のような核酸分子及び/又はベクターを含有する組換え宿主細胞を提供する。
「組換え体」とは、宿主細胞中に導入された核酸分子及び/又はベクターを意味する。宿主細胞は、核酸分子の内在性コピーを天然に含有することもあれば含有していないこともあるが、核酸分子及び/若しくはベクターの外来性コピー又は更なる内在性コピーが導入されているという点において、宿主細胞は組換え体である。
本発明の更なる態様は、上記に定義した本発明のポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)又は組換えポリペプチドを調製する方法であって、前記ポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)をコードする上記で定義したような核酸分子が発現される条件下で、前記核酸分子を含有する宿主細胞を培養すること、及びこのように産生された前記分子(ポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー))を回収することを含む方法を提供する。発現されたポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)によって、本発明の更なる態様が形づくられる。
一部の実施形態において、本明細書において開示されたペプチドタグ及び/又は、本発明の、若しくは本発明の方法及び使用において使用されるポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)は合成により生成してもよく、例えば、アミノ酸若しくはより小さい合成ペプチドの連結によって、又はより簡便には、上述の前記ポリペプチドをコードする核酸分子の組換え体の発現によって、合成してもよい。
本発明の核酸分子は、当技術分野において既知の任意の好適な手段によって合成により生成されてもよい。
よって、本明細書において開示されたペプチドタグ及び/又は本発明のポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)は、単離されたか、精製されたか、組換え体か、又は合成された、ペプチドタグ又はポリペプチドであり得る。
「ポリペプチド」という用語は、本明細書において「タンパク質」という用語と互換的に使用される。上述のように、ポリペプチド又はタンパク質という用語は、典型的には、少なくとも40個の連続したアミノ酸残基、例えば少なくとも50、60、70、80、90、100、150個のアミノ酸、例えば40~1000、50~900、60~800、70~700、80~600、90~500、100~400個のアミノ酸等を含む任意のアミノ酸配列を含む。
同様に、本発明の核酸分子は、単離されたか、精製されたか、組換え体か、又は合成された核酸分子であってもよい。
よって、その代わりに、本発明のポリペプチド及び核酸分子は、好ましくは非天然の、すなわち天然には存在しない分子である。
本明細書では、標準的なアミノ酸命名法が使用される。よって、アミノ酸残基の略さない名称は、1文字のコード又は3文字の略語と互換的に使用してもよい。例えば、リジンをK又はLysに置き換えることができ、イソロイシンをI又はIleに置き換えること等ができる。更に、アスパラギン酸(aspartate)及びアスパラギン酸(aspartic acid)、並びにグルタミン酸(glutamate)及びグルタミン酸(glutamic acid)という用語は、本明細書では互換的に使用され、それぞれ、Asp若しくはD、又はGlu若しくはEと置き換えることができる。
本明細書において開示されたペプチドタグ及び本発明の、また本発明において使用されるポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)は、組換えによって作出することができ、これは本発明の好ましい一実施形態であることが想定される一方で、本明細書において開示されたペプチドタグ及び本発明のポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)は、その他の手段によって、タンパク質又はその他の実体、例えば上記で定義したような分子又は成分に、コンジュゲートされてもよいことが明らかとなろう。言い換えると、該ペプチドタグ又はポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)と、その他の分子、成分、又は実体、例えばタンパク質とは、任意の好適な手段によって、例えば組換えによって、別々に作出され、その後、コンジュゲート(連結)されて、本発明の方法及び使用において使用されうる、ペプチドタグとその他の成分とのコンジュゲート、又はポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)とその他の成分とのコンジュゲートを、形成することができる。例えば、本明細書において開示されたペプチドタグ及び/又は本発明のポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)は、上記のように合成によって又は組換えによって作出され、別の成分、例えばタンパク質に、非ペプチドリンカー又はスペーサー、例えば、化学的リンカー又はスペーサーを介して、コンジュゲートされうる。
よって、一部の実施形態において、該ペプチドタグ及び/又はポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)とその他の成分、例えばタンパク質とは、結合によって直接的に又は連結基によって間接的に共に連結されうる。連結基が使用される場合、そのような基は、連結基によって該ペプチドタグ又はポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)とその他の実体、例えばタンパク質との共有結合が提供されるように選択されうる。目的の連結基は、他方の実体の性質、例えばタンパク質の性質に応じて様々であってもよい。連結基は、存在する場合、多くの実施形態において生物学的に不活性である。
多くの連結基が当業者に公知であり、本発明において使用することができる。代表的な実施形態において、連結基は、一般的には少なくとも約50ダルトン、通常は少なくとも約100ダルトンであり、1000ダルトン程度又はそれより大きく、例えば、連結基がスペーサーを含有する場合は1000000ダルトンに及ぶこともあるが、一般的には約500ダルトンを超えず、通常は約300ダルトンを超えない。一般的には、そのようなリンカーは、ペプチドタグ又は結合パートナーとその他の分子又は成分、例えばタンパク質とを共有結合させることができる反応官能性を有するいずれかの末端で末端部をなすスペーサー基を含むこととなる。
目的のスペーサー基には、脂肪族及び不飽和炭化水素鎖、酸素(ポリエチレングリコール等のエーテル)又は窒素(ポリアミン)等のヘテロ原子を含有するスペーサー、ペプチド、炭水化物、ヘテロ原子を含有する可能性がある環式系又は非環式系が含まれうる。スペーサー基はまた、金属イオンの存在が2つ以上のリガンドを配位させて錯体を形成するような金属に結合する、リガンドから構成されていてもよい。具体的なスペーサー要素としては、1,4-ジアミノヘキサン、キシリレンジアミン、テレフタル酸、3,6-ジオキサオクタン二酸、エチレンジアミン-N,N-二酢酸、1,1'-エチレンビス(5-オキソ-3-ピロリジンカルボン酸)、4,4'-エチレンジピペリジン、オリゴエチレングリコール、及びポリエチレングリコールが挙げられる。潜在的な反応性官能基としては、求核官能基(アミン、アルコール、チオール、ヒドラジド)、求電子官能基(アルデヒド、エステル、ビニルケトン、エポキシド、イソシアナート、マレイミド)、環化付加反応、ジスルフィド結合の形成、又は金属への結合が可能な官能基が挙げられる。具体的な例としては、一級及び二級アミン、ヒドロキサム酸、N-ヒドロキシスクシンイミジルエステル、N-ヒドロキシスクシンイミジルカルボナート、オキシカルボニルイミダゾール、ニトロフェニルエステル、トリフルオロエチルエステル、グリシジルエーテル、ビニルスルホン、及びマレイミドが挙げられる。ペプチドタグ/ポリペプチド結合パートナーコンジュゲートにおいて使用することができる具体的なリンカー基としては、ヘテロ官能性化合物、例えば、アジドベンゾイルヒドラジド、N-[4-(p-アジドサリチルアミノ)ブチル]-3'-[2'-ピリジルジチオ]プロピオンアミド)、ビス-スルホスクシニミジルスベラート、ジメチルアジピミダート、ジスクシンイミジルタートラート、N-マレイミドブチリルオキシスクシンイミドエステル、N-ヒドロキシスルホスクシンイミジル-4-アジドベンゾアート、N-スクシンイミジル[4-アジドフェニル]-1,3'-ジチオプロピオナート、N-スクシンイミジル[4-ヨードアセチル]アミノベンゾアート、グルタルアルデヒド、並びにスクシンイミジル-4-[N-マレイミドメチル]シクロヘキサン-1-カルボキシラート、3-(2-ピリジルジチオ)プロピオン酸N
-ヒドロキシスクシンイミドエステル(SPDP)、4-(N-マレイミドメチル)-シクロヘキサン-1-カルボン酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(SMCC)等が挙げられる。例えば、スペーサーは、アルキンと反応するアジド、又はトランス-シクロオクテン若しくはノルボルネンと反応するテトラジンを用いて形成されてもいてよい。
一部の実施形態において、該ペプチドタグ及び/又はポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)中の1つ又は複数の残基を改変して、これらの分子のコンジュゲーションを容易にすること、並びに/又は該ペプチドタグ及び/若しくはポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)の安定性を改良することが有効であり得る。よって、一部の実施形態において、本明細書において開示されたペプチドタグ又は本発明の、又は本発明において使用されるポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)は、非天然の又は非標準的なアミノ酸を含んでいてもよい。
一部の実施形態において、本明細書において開示されたペプチドタグ又は本発明の、又は本発明において使用されるポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)は、1つ又は複数、例えば、少なくとも1、2、3、4、5個、例えば10、15、20個、又は更に多い、非従来型の、すなわち、標準的な遺伝暗号によってコードされていない側鎖を有するアミノ酸である、本明細書では「非コードアミノ酸」と名づけたアミノ酸を含んでいてもよい。そのようなアミノ酸は、当技術分野ではよく知られており、オルニチン若しくはタウリン等の代謝過程を通して形成されるアミノ酸、及び/又は9H-フルオレン-9-イルメトキシカルボニル(Fmoc)、(tert)ブチルオキシカルボニル(-(B)utyl (o)xy (c)arbonyl (Boc))、2,2,5,7,8-ペンタメチルクロマン-6-スルホニル(Pmc)保護アミノ酸、若しくはベンジルオキシ-カルボニル(Z)基を有するアミノ酸等の人為的に改変されたアミノ酸から選択されうる。
ペプチドタグ又は本発明の、及び本発明において使用されるポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)中で使用することができる、非標準的アミノ酸又は構造類似体アミノ酸の例としては、Dアミノ酸、アミドアイソスター(N-メチルアミド、レトロ-インバースアミド、チオアミド、チオエステル、ホスホネート、ケトメチレン、ヒドロキシメチレン、フルオロビニル、(E)-ビニル、メチレンアミノ、メチレンチオ、又はアルカン等)、L-Nメチルアミノ酸、D-aメチルアミノ酸、D-N-メチルアミノ酸がある。本明細書において開示されたペプチドタグ及び/又は本発明の、及び本発明において使用されるポリペプチド中で使用することができる別の非標準的なアミノ酸は、いずれも参照により本明細書に組み込まれているWillis及びChin、Nat Chem. 2018;10(8):831~837、WO2018/189517及びWO2018/197854のTable 1(表1)で開示されている。
一部の実施形態において、本明細書において開示されたペプチドタグ及び/又は本発明のポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)を固体基質(すなわち固相又は固体支持体)に融合又はコンジュゲートすることは有効であり得、これは任意の簡便な方法で達成されうることが明らかとなろう。よって、固定化の手法又は手段及び固体支持体は、当技術分野において公知の、また文献に記載されている、任意の数の固定化手段及び固体支持体から、選択肢に応じて選択されうる。よって、該ペプチドタグ及び/又はポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)は、例えば、該ペプチドタグ又はポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)のドメイン又は部分を介して(例えば、化学的に架橋されて)、支持体に直接的に結合されてもよい。一部の実施形態において、該ペプチドタグ又はポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)は、リンカー基を使って又は介在する結合基によって(例えば、ビオチン-ストレプトアビジン相互作用によって)、間接的に結合されてもよい。よって、該ペプチドタグ又はポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)は、固体支持体に、共有結合的に又は非共有結合的に連結されうる。連結は、可逆的(例えば切断可能な)連結であっても不可逆的連結であってもよい。よって、一部の実施形態において、連結は、酵素的に、化学的に、又は光によって切断されてもよく、例えば、連結は感光性連結であってもよい。
よって、一部の実施形態において、ペプチドタグ又はポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)には、支持体上で実現される固定化の手段(例えば、結合パートナー、すなわち同族の結合パートナー、例えば、ストレプトアビジン又は抗体に結合可能な親和性の結合パートナー、例えば、ビオチン又はハプテン)が付与されうる。一部の実施形態において、該ペプチドタグ又はポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)と固体支持体との間の相互作用は、洗浄工程が可能になるよう十分に確固としたものでなければならず、すなわち該ペプチドタグ又はポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)と固体支持体との間の相互作用は、洗浄工程によって破壊されない(有意に破壊されない)。例えば、各洗浄工程によって、該ペプチドタグ又はポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)の5%未満、好ましくは、4、3、2、1、0.5、又は0.1%未満が固相から除去又は溶出されることが好ましい。
固体支持体(相又は基質)は、固定化、分離等のために一般に広く使用又は提案されている、公知の支持体又はマトリックスのうちのいずれかであってもよい。これらは、粒子(例えば、磁性、常磁性、又は非磁性であり得るビーズ)、薄層、ゲル、フィルター、膜、繊維、キャピラリー、スライド、アレイ若しくはマイクロタイターストリップ、チューブ、プレート、又はウェル等の形態をとっていてもよい。
該支持体は、ガラス、シリカ、ラテックス、又は高分子物質、例えばアガロース(例えばセファロース)等の多糖高分子物質から作られていてもよい。本発明のポリペプチドの結合のために広面積を呈する物質が好適である。そのような支持体は、不均整面を有していてもよく、例えば、粒子、繊維、織布、焼結物、又は篩等の、例えば、多孔性又は粒状であってもよい。粒状物質、例えばビーズは、結合容量が大きいため、特に高分子ビーズは有用である。
好都合には、本発明に従って使用される粒状固体支持体は、球状ビーズを含むものとする。ビーズのサイズは重要ではないが、例えば、少なくとも約1μmオーダーの直径、また好ましくは、少なくとも約2μm、5μm、10μm、又は20μmであり、好ましくは、約500μmを超えない、例えば約100μmを超えない最大直径を有しうる。
単分散粒子は、サイズが実質的に均一(例えば、直径の標準偏差が5%未満であるサイズ)であり、反応のきわめて均一な再現性を提供するという利点を有する。代表的な単分散高分子粒子は、米国特許第4336173A号に記載の技術によって作製することができる。
しかしながら、操作及び分離を助けるためには、磁気ビーズが有利である。本明細書において使用される「磁性(磁気)」という用語は、支持体が、磁場に置かれると付与される磁気モーメントを有することができ、よって、支持体が該磁場の作用下で置換可能であることを意味する。言い換えると、磁性粒子を含む支持体は磁気凝集によって容易に取り出され得、これによって、イソペプチド結合形成工程後の、迅速、単純、且つ効率的な粒子分離法が実現される。
一部の実施形態において、固体支持体は、樹脂、例えば、アミロース樹脂である。
更なる実施形態において、本発明は、キット、特に、本発明のプロセス及び使用において使用される、すなわち、イソペプチド結合を介して2つの分子又は成分をコンジュゲートするためのキットを提供するものであり、そこで、複合体中の分子又は成分のうちの2つはイソペプチド結合を介してコンジュゲートされ、前記キットは、
(a)場合によって分子又は成分、例えばタンパク質にコンジュゲート又は融合された、上記で定義したようなポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)、例えば上記で定義したようなポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)を含む組換え若しくは合成ポリペプチド等、及び
(b)場合によって分子又は成分、例えばタンパク質にコンジュゲート又は融合された、上記で定義したようなペプチド(ペプチドタグ)、及び/又は
(c)(a)で定義したようなポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)をコードする、核酸分子、特にベクター、並びに
(d)(b)で定義したようなペプチドタグをコードする、核酸分子、特にベクター
を含む。
本明細書において開示されたペプチドタグ及び本発明のポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)が広範囲の有用性を有することは明白であろう。その代わりに、本明細書において開示されたペプチドタグ及び本発明のポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)は、様々な産業において用いることが可能である。
例えば、一部の実施形態において、本明細書において開示されたペプチドタグ及び本発明のポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)は、特定のタンパク質に蛍光又はその他の生物物理学的プローブ若しくは標識を標的化するという有用性を見出しうる。この点に関して、上記で論じたように、目的のタンパク質は、改変されてペプチドタグ(例えば、配列番号3~6のうちの1つ)を組み込むことができ、蛍光又はその他の生物物理学的プローブ若しくは標識は、ポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー、例えば、配列番号1又は2)に融合又はコンジュゲートされうる。改変されたタンパク質とプローブ又は標識は、ペプチドタグとポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)との間のイソペプチド結合の自発的形成を可能にする好適な条件下で共に接触させることができ、これによって、タンパク質にイソペプチド結合を介して標識又はプローブ標識することができる。例えば、標識された本発明のポリペプチドは、抗体フリーのウェスタンブロット、すなわち、標識された抗体を分離する必要なく、標識されたポリペプチドを使用してSpyTagペプチド含有ポリペプチド(例えば、配列番号3~6のうちの1つに記載のアミノ酸配列を有するペプチド)を検出するウェスタンブロットにおいて有用性を見出しうる。
一部の実施形態において、本明細書において開示されたペプチドタグ及び本発明のポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)は、プロテオミクスのためのタンパク質固定化において有用性を見出しうる。この点に関して、目的のタンパク質は、改変されてペプチドタグ(例えば、配列番号3~6のうちの1つ)を組み込むことができ、固体基質は、ポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー、例えば、配列番号1又は2)に融合又はコンジュゲートされうる。改変されたタンパク質及び固体基質は、ペプチドタグとポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)との間のイソペプチド結合の自発的形成を可能にする好適な条件下で共に接触させることができ、これによって、イソペプチド結合を介して、タンパク質を固体基質上に固定化することができる。本明細書において開示されたペプチドタグ及び本発明の本発明のポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)は、複数のタンパク質を固相/基質上に同時に固定化するのに使用されうること、すなわち、複合的な反応において使用されうることは明白であろう。
また別の実施形態において、本明細書において開示されたペプチドタグ及び本発明のポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)は、ワクチン接種のための、ウイルス様粒子、ウイルス、細菌、又は多量体化用足場への、抗原のコンジュゲーションにおいて有用性を見出しうる。例えば、本発明のポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)(例えば、配列番号1又は2)を表面に提示するウイルス様粒子、ウイルス、又は細菌の作製によって、ペプチドタグ(例えば、配列番号3~6のうちの1つ)を含む抗原の、それらの表面へのイソペプチド結合を介するコンジュゲーションが容易となると考えられる。この点に関して、抗原の多量体化によって、免疫応答を大幅に増強させることができる。よって、一部の実施形態において、本発明のポリペプチドに融合された分子又は成分は、ウイルスカプシドタンパク質であり、且つ/又はペプチドタグに融合された分子又は成分は、抗原、例えば、感染、自己免疫疾患、アレルギー、又はがん等の、特定の疾患と関連した抗原である。
他の実施形態において、本明細書において開示されたペプチドタグ及び本発明のポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)を使用して、例えば、ペプチドタグ及び結合パートナーを酵素の各末端に融合させることによって、酵素を環化させ、続いて、該ペプチドタグとポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)との間のイソペプチド結合を自発的に形成させることができる。この点に関して、酵素の環状化は、酵素復元力を高めることが明らかにされている。
特に、酵素又は酵素重合体(融合タンパク質)の環状化は、酵素重合体中のタンパク質又はタンパク質ユニットの熱安定性を改善することができる。この点に関して、酵素は多くのプロセスにおいて有益なツールであるが、不安定であり、回復させることが難しい。酵素高分子は、温度、pH、及び有機溶媒に対してより高い安定性を有しており、工業プロセスにおいて酵素重合体の使用の要望が高まっている。しかしながら、酵素重合体の生成には、一般的にグルタルアルデヒド非特異的反応が使用され、これは、潜在的に有用な多くの酵素を損傷又は変性させる(すなわち、それらの活性を低下させる)こととなる。本明細書において開示されたペプチドタグ及び本発明のポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)を使用するイソペプチド結合を介する鎖(重合体)中へのタンパク質の部位特異的な連結は、診断又は動物飼料に添加される酵素等において、酵素復元力を高めると予想される。特に好ましい実施形態において、上記で論じたように、酵素は環状化によって安定化されうる。
WO2016/193746に記載されているように、本明細書において開示されたペプチドタグ及び本発明のポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)を使用して、複数の酵素を、代謝効率を促進する経路の中に結びつけることができた。この点に関して、多くの場合、酵素は細胞内の経路において協力して機能しており、従来、複数の酵素を細胞外で(インビトロで)共に連結することは難しいとされていた。よって、本明細書において開示されたペプチドタグ及び本発明のポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)を使用して、酵素を結合又はコンジュゲートして融合タンパク質を作出し、したがって多段階の酵素経路の活性を増強することができ、これらは、様々な産業転換において、また診断のために有用となり得た。
本明細書において開示されたペプチドタグ及び本発明のポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)はまた、抗体重合体の作製においても有用性を見出すものである。この点に関して、抗体は、最も重要なクラスの医薬の1つであり、多くの場合、表面に結合されて使用される。しかしながら、抗原は試料に混じっており、したがって前記試料中で前記抗原を捕捉するには、表面の近くでは効率が悪い。抗体の鎖を伸長することによって、捕捉効率が改善することが予測される。これは、特に、現在、早期のがん診断を可能にする最も有望な方法の1つである循環腫瘍細胞の単離において、有益となる。
また別の実施形態において、本明細書において開示されたペプチドタグ及び本発明のポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)は、細胞シグナル伝達の活性化のための薬剤の作製において有用性を見出しうる。この点に関して、細胞機能を活性化する最も有効な方法の多くは、タンパク質リガンドを介するものである。しかしながら、事実上、タンパク質リガンドは通常は単独で作用せず、その他のシグナル伝達分子と特異的に結びついて作用することとなる。よって、本明細書において開示されたペプチドタグ及び本発明のポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)によって、目的に合わせた融合タンパク質(すなわち、タンパク質の一団)の生成が可能となり、これによって、細胞のシグナル伝達の最適な活性化をもたらすことができた。これらの融合タンパク質(タンパク質の一団)を適用して、細胞生存、分裂、又は分化を制御することができる可能性がある。
更に別の実施形態において、本明細書において開示されたペプチドタグ及び本発明のポリペプチド(ペプチドタグ結合パートナー)は、真核細胞、例えば、ニューロン、幹細胞の増殖のためのヒドロゲルの生成、生体材料の調製、色素又は酵素での抗体機能の付与、及び環状化による酵素の安定化において有用性を見出しうる。
次に、本発明を、以下の非限定的実施例において、以下の図面を参照にしながら、更に詳しく説明する。
(A)10nM、(B)100nM、及び(C)10μMにおける、SpyTag/SpyCatcher対の反応速度を示すグラフである。指定の濃度のSpyTag-sfGFPバリアントは、同量のSpyCatcherバリアントと共に、25℃で、示した時間インキュベートした(平均±1s.d.、n=3)。 SpyTag003と反応するSpyCatcher003の速度定数の定量化のグラフを示す図である。10nM SpyTag003-MBPを10nM SpyCatcher003-sfGFPと反応させた(平均±1s.d.、n=3)。最良適合線、相関係数、及び導出された二次速度定数の式を示す。 ポリペプチドの様々な混合物の生成物を示す、クマシー染色したSDS-PAGEゲルの写真を示す図である。SDS-PAGEゲルは、SpyTag003及びSpyCatcher003が、高収率及び99%の達成率にまで反応したことを示している。SpyCatcher003とSpyTag003-MBPとを、どちらかの成分を2倍過剰として、1.5時間インキュベートした。 SpyCatcher003の示差走査熱量測定を示すグラフである。融解温度(Tm)及び半値全幅(FWHM)を示す。 SpyCatcher003とSpyTag003 DA(配列番号11)との相互作用のITCを示すプロットである。 (A)細胞表面構築物の模式図モデルを示す図である。(B)SpyCatcher、SpyCatcher003、又はSpyCatcher003 EAを有するHEK細胞のフローサイトメトリーから得られたプロットを示すグラフである。mycタグに対する抗体を用いて表面発現を染色して、フローサイトメトリーを行った。(C)SpyCatcher、SpyCatcher003、又はSpyCatcher003 EAを有するHEK細胞のフローサイトメトリーから得られたプロットを示すグラフである。SpyTag003-mKate2と共にインキュベートし、染色して、フローサイトメトリーを行った。(D)表面反応性の定量化を示すグラフである。(C)に記載のフローサイトメトリーによって分析した、細胞に対するSpyTag003-染色の経時変化(平均±1s.d.、n=3)。 ウエスタンブロッティングによって得られたニトロセルロース膜の写真を示す図である。ドロソフィラ・メラノガスター(Drosophila melanogaster)、大腸菌、ヒトExpi293細胞、又はサッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)からの細胞溶解物を、SpyCatcher003-680(左)及びローディング対照である抗GAPDH(二次抗体を用いて異なる蛍光波長で検出した;中央)と同時にブロットした。これら2つのシグナルを融合したものを右に示す。+レーンには、陽性対照として3pmol SpyTag003-MBPaを、溶解物中に添加した。
(実施例1)
拡散律速のタンパク質結合の創出:SpyTag003/SpyCatcher003
拡散律速に向かって移動する反応性を更なる段階に変えるという目標のもと、合理的設計を用いて、SpyTag/SpyCatcherの相互作用の電荷相補性及び水素結合能を改善した。
WO2018/197854では、SpyCatcher002(配列番号7)の97位のグルタミン残基のアスパラギン酸による置換によって、SpyTagペプチドとの反応速度が高められたポリペプチドが得られたことが既に示されている。この位置のアスパラギン酸は、リジン108との静電的相互作用を形成する可能性があり、これによって、SpyCatcherバリアントの2つのループ間の相互作用の安定性を高めると仮定した。
しかしながら、予想外に、108位のリジンをグルタミン酸によって非保存的置換すると、SpyCatcherバリアントの反応速度が更に改善されたことが見出された。この置換は、SpyTag003(配列番号3)のC末端のアルギニン及びリジンとの範囲の長い相互作用を改善する可能性があると仮定した。
SpyCatcher002の91位のスレオニンのグルタミン酸による更なる非保存的置換、及びSpyCatcher002の103位のアスパラギンのアスパラギン酸による別の置換も、SpyCatcherバリアントの反応速度を高めるように機能した。これらの変異は、SpyTag002(配列番号4)ペプチド及びSpyTag003(配列番号3)ペプチド上の正に荷電した残基の増加を補完しており、SpyTagドッキングに事前に方向づけされたSpyCatcherの立体配座を作る可能性があり、これによって反応速度が高められると仮定した。
SpyCatcher002(配列番号7)89位のアラニン残基のプロリンによる置換もまた、該ポリペプチドとSpyTagペプチドとの反応速度を改善することが既に示されている(WO2018/197854を参照されたい)。
下記に示すように、SpyCatcher002(配列番号7)に対するこれらの5つの置換、すなわち、A89P、T91E、Q97D、N103D、及びK108Eは、合わせて、SpyCatcherバリアント(本明細書ではSpyCatcher003、配列番号1として知られる)の反応速度を桁違いに改善する。
(実施例2)
SpyTag003とSpyCatcher003の反応速度の検証
イソペプチド結合形成の速度を、SpyCatcher003(配列番号1)をスーパーフォルダーGFP(sfGFP)のN末端に融合すること、及びSpyTag003-MBPとの反応によって分析した。sfGFPへの融合によって、クマシー染色には低すぎたタンパク質濃度(10nM)での、蛍光による反応のモニターが可能となった。10nM(図1A)、100nM(図1B)、及び10μM(図1C)でのSpyTag003/SpyCatcher003の反応は、以前の生成、すなわち、SpyTag/SpyCatcher(配列番号5/8)及びSpyTag002/SpyCatcher002(配列番号4/7)の生成よりも実質的に速く行われた。この改善された反応性は、最も低い被験濃度(10nM)で最も顕著であり、SpyTag003/SpyCatcher003(配列番号3/1)反応は約20分で完了し、約20分とは、SpyTag/SpyCatcher反応が行われた最少の時間である。SpyTag003/SpyCatcher003の二次速度定数(図2)は、5.5±0.6×105M-1s-1で、SpyTag/SpyCatcherについて以前に示された1.4×103M-1s-1(Zakeri等、2012、Proc Natl Acad Sci U S A 109、E690~E697)より桁違いに速く、SpyTag002/SpyCatcher002の2.0×104M-1s-1(Keeble等、2017、上記)より桁違いに速かった。反応種のサイズを考慮すると、003対のイソペプチド形成の速度はここで、拡散律速タンパク質-タンパク質相互作用の開始速度として記載されている105~106M-1s-1の範囲にある。
003対は、以前のSpyTag/SpyCatcher生成との後ろ方向の適合性もなお保持しており(下記Tables 1(表1)及びTable 2(表2))、この分析によって、Tag及びCatcherの両方における変化が反応速度の改善に寄与したことも示された。
Figure 2022525160000001
SpyCatcher003-sfGFPの、MBPに連結されたSpyTag003及び前のバージョンとの反応における速度定数(平均±1s.d.、n=3)。
Figure 2022525160000002
SpyTag003-MBPの、sfGFPに連結されたSpyTag003及び以前のバージョンとの反応における速度定数(平均±1s.d.、n=3)。
これらのタンパク質と副反応がないことは、どちらの003タンパク質も、過剰量のパートナーと一緒にインキュベートした場合、反応が>95%まで完了したことを示したSDS-PAGEによって確証された(図3)。
(実施例3)
SpyTag003/SpyCatcher003対の生物物理学的特徴付け
エレクトロスプレーイオン化質量分析によって、SpyTag003とSpyCatcher003との間のイソペプチド結合が、成分部分の分子量の合計と比べて18Da減少していることが確証された。示差走査熱量測定(図4)では、SpyCatcher003は48.2℃の熱安定性(Tm)を有し、SpyCatcher(48.5℃)及びSpyCatcher002(49.9℃)の既報値に近かったことが示された。したがって、SpyCatcher002のSpyCatcher003への変更に使用された5つの変異の存在による安定性に対する影響はわずかであった。Tmの軽微な低下にもかかわらず、ピークの半値全幅(FWHM)(10.5℃)は、SpyCatcher(16℃)又はSpyCatcher002(12℃)より小さく(Keeble等、2017、上記)、これは、同時に作動するタンパク質のアンフォールディングがより多いことを示している。
等温滴定熱量測定(ITC)を用いて、SpyTag003がSpyCatcher003と相互作用した際に生じる最初の非共有結合複合体の親和性を評価した。これは、SpyTag003の反応性アスパラギン酸をアラニンへ変異させてSpyTag003 DA-MBPを創出することによって達成され、SpyTag/SpyCatcherについて以前使用された手法である(Zakeri等、2012、上記)。SpyTag DA-MBPとSpyCatcherとについて以前示された比較的弱い結合(Kd=200μM)とは対照的に(Zakeri等、2012、上記)、SpyTag003 DA-MBPのSpyCatcher003への結合は、ITCによって測定できないほど強固であり(図5)、Kdが10nMより強固であったことを示している。
(実施例4)
哺乳動物細胞表面における迅速且つ特異的な反応
哺乳動物細胞に対するSpyTag003/SpyCatcher003対の速度及び特異性は、トランスフェリン受容体-sfGFP融合を使用した、ヒト細胞の原形質膜上での提示によって調べた(図6A)。構築物の表面提示は、mycタグに対して染色して、フローサイトメトリーによって確認した(図6B)。この分析から、SpyCatcher及びSpyCatcher003、並びに非反応性対照であるSpyCatcher003 EA(置換E77Aを含む)の膜発現が、類似のレベルであることが明らかとなった。SpyTag融合タンパク質との反応は、低濃度(20nM)の、表面提示されたSpyCatcherに対するSpyTag-mKate2、又は表面提示されたSpyCatcher003に対するSpyTag003-mKate2を使用して試験した。SpyTag/SpyCatcherでは、細胞の分画の大部分は非反応性対照とオーバーラップした一方で、SpyTag003/SpyCatcher003では、大部分の細胞は、SpyCatcher003 EAで染色しているバックグラウンドから明らかに除かれた(図6C)。この染色の速度論の追跡によって、元のSpyTag/SpyCatcherと比べて、003対による染色が実質的に速いことが示された(図6D)。
SpyTag003/SpyCatcher003反応の特異性についての対照として、SpyCatcher003 E77A変異体を上記と同じ条件下で分析した。この変異では、イソペプチド結合形成を触媒するグルタミン酸を欠失させており、よってSpyTag構築物との反応が妨げられる(Zakeri等、2012、上記)。SpyCatcher003EAは野生型と類似のレベルで発現していたものの(図6B)、mKate2蛍光の急速な増加は観察されておらず(図6C及び図6D)、SpyTag003/SpyCatcher003の特異的反応が生じていることが確認された。
(実施例5)
SpyCatcher003のウエスタンブロッティングへの適用
SpyTag003:SpyCatcher003相互作用の特異性を更に試験するために、様々な一般的なモデル生物由来の溶解物に対してウエスタンブロッティングを使用した。SpyCatcher003S49Cは、近赤外線フルオロフォアDyLight680に連結させたマレイミドを使用して部位特異的に標識した。ウエスタンブロッティングは、大腸菌、ヒト細胞(Expi293細胞株)、サッカロマイセス・セレビシエ、及びドロソフィラ・メラノガスター由来の細胞溶解物に対して行った。陽性対照として、これらの細胞溶解物それぞれに、低量(3pmol)のSpyTag003-融合物を添加した。それぞれの種について、SpyTag003-融合の効率的な認識及び内在性細胞タンパク質との最低限の交差反応性が観察された(図7)。抗グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(α-GAPDH)ローディング対照は、GADPHに対しては種間で結合は幾分示差的であったが、SpyTag003-融合物を用いた場合又は用いなかった場合の染色は等しいことが示された(図7)。
方法
プラスミド及びクローニング
PCRベースのクローニング及び部位特異的変異導入は、Q5ハイフィデリティポリメラーゼ(NEB社)又はKODポリメラーゼ(EMD Millipore社)及びギブソンアセンブリーを使用する標準的な方法によって行った。すべての構築物の同一性を、サンガーのシーケンシング法によって確認した。pDEST14-SpyCatcher(GenBank JQ478411、Addgene社製プラスミドID 35044)、pET28a-SpyTag-MBP(Addgene社製プラスミドID 35050)、pDEST14 SpyCatcher002(GenBank MF974388、Addgene社製プラスミドID 102827)、pET28a SpyTag002-MBP(GenBank MF974389、Addgene社製プラスミドID 102831)、pJ404-SpyCatcher-sfGFP、及びpJ404-SpyCatcher002-sfGFPがこれまでに説明されている(Zakeri等、2012、上記;Keeble等、2017、上記)。pDEST14 SpyCatcher003は、以下の変異:A89P、T91E、Q97D、N103D、及びK108Eを組み込んでpDEST14 SpyCatcher002(Keeble等、2017、上記)から誘導した。pJ404-SpyCatcher003-sfGFPは、pJ404-SpyCatcher002中のSpyCatcher002に代えてSpyCatcher003を組み込むことによって誘導した(Keeble等、2017、上記)。pDEST14-SpyCatcher003 S49Cは、マレイミド-色素での標識を可能にする、セリンのシステインへの変異を含んでいる。pET28a-SpyTag003-MBPは、T3H変異を行うことによって、またSpyTag002のN末端にArg-Glyの対を挿入することによって、pET28a-SpyTag002から誘導した。pET28a-SpyTag003 DA-MBPは、反応性アスパラギン酸のアラニンへの変異によって、pET28a-SpyTag003-MBPから誘導した(RGVPHIVMVAAYKRYK、配列番号11)。
SpyCatcherタンパク質の哺乳動物膜発現は、pENTR4-TfR-sfGFP-mycタグ-SpyCatcher(ここでは、TfRは、C20及びA23変異を組み込んでいるトランスフェリン受容体膜貫通ドメインである)、pENTR4-TfR-sfGFP-mycタグ-SpyCatcher003、pENTR4-TfR-sfGFP-mycタグ-SpyCatcher003 E77A(ここでは、変異によってSpyTagとのイソペプチド結合形成が妨げられている)、及びpENTR4-TfR-sfGFP-mycタグ-SpyCatcher003-CnaB2(ここでは、SpyCatcher003のC末端を、先祖のCnaB2ドメインにみられるように、SpyTag配列を用いて伸長させて分子内イソペプチド結合形成を可能にしている)を用いて行った。pET28-SpyTag003-mKate2は、SpyTag003-リンカー-mKate2-リンカー-His6の構成を有する。pET28-SpyTag-mKate2は、SpyTag003に代わりにSpyTagを含む同じ配列を有する。pET28-SpyTag003-sfGFP及びpET28-SpyTag003-mClover3は、SpyTag003-リンカー-蛍光タンパク質-リンカー-His6の構成を有する。pET28-SpyTag003 DA-mClover3は、反応性アスパラギン酸のアラニンへの変異によって、pET28a-SpyTag003-mClover3から誘導した。pET28-polyTag-MBPは、His10-リンカー-HAタグ-リンカー-mycタグ-リンカー-スポットタグ-リンカー-SpyTag003-リンカー-MBPの構成を有する。
細菌タンパク質の発現及びNi-NTAによる精製
pDEST14-SpyCatcher003及びpDEST14-SpyCatcher003 S49Cを、ケミカルコンピテント大腸菌C41 DE3(University of Oxford、Anthony Wattsより寄贈)に形質転換したのに対し、その他の構築物はすべて、大腸菌BL21(DE3)RIPL(Agilent社)に形質転換した。シングルコロニーをかき取って、100μg/mLアンピシリン(pDEST14及びpJ404)又は50μg/mLカナマイシン(pET28a)のいずれかを含有する10mlのLBに入れ、200rpmで振盪させながら、37℃で一晩、増殖させた。超収量(ultra-yield)バッフル付きフラスコ(Thomson Instrument Company社)中の0.8%(w/v)グルコース及び適切な抗生物質を補充した1LのLBに、飽和した一晩培養物の1/100希釈物を接種し、37℃で、200rpmで振盪しながら増殖させた。OD600が0.5~0.6に達した後、この培養物に0.42mM IPTGを接種し、30℃で、200rpmで振盪させながら、4~5時間インキュベートした。pET28a-SpyTag003-mKate2については、シングルコロニーをかき取って、50μg/mLカナマイシンを補充した、微量元素を含む1Lの自己誘導培地(Formedia社)中に入れ、30℃で24時間、200rpmで振盪させながら増殖させた。細胞を回収し、混合プロテアーゼ阻害剤(cOmpleteミニEDTA-フリープロテアーゼ阻害剤カクテル、Roche社)及び1mMフェニルメチルスルホニルフルオライド(PMSF)を含有する1×Ni-NTA緩衝液(50mM Tris-HCl、300mM NaCl、pH7.8)中で超音波処理によって溶解した。細胞溶解物は、30,000gで25分間遠心分離した後、標準手法を用いて、Ni-NTA樹脂(Qiagen社)を使用して精製した。溶出後、タンパク質を、PBS(137mM NaCl、2.7mM KCl、10mM Na2HPO4、1.8mM KH2PO4、pH7.5)中で、3.5kDa分子量カットオフSpectra/Por透析チューブ(Spectrum Labs社)を使用して、緩衝液を3回変えて、透析した。タンパク質濃度は、ExPASy ProtParamからの吸光係数を使用して、OD280から決定した。
イソペプチド結合形成測定法
反応は、コハク酸-リン酸-グリシン緩衝液(12.5mMコハク酸、43.75mM NaH2PO4、43.75mMグリシン;pHはNaOHを使用して7.0に調整)中で、pH7.0及び25℃で行った(Keeble等、2017、上記)。反応の分析は、180VでXCell SureLockシステム(Thermo Fisher Scientific社)を使用して、16%ポリアクリルアミドゲルのSDS-PAGEを使用して行った。フルオロ・イメージアナライザーFLA-3000(FujiFilm社)及びImageGaugeバージョン5.21ソフトウエアを使用して、バンドを定量化した。
濃度依存性速度の測定には(図1A及び図2)、SpyCatcher-sfGFP、SpyCatcher002-sfGFP、及びSpyCatcher003-sfGFPを、SpyTag-MBP、SpyTag002-MBP、及びSpyTag003-MBPと反応させた。sfGFP融合物は、10nMほどの低濃度で反応を行わせるために使用した。Bio-Rad社製C1000サーマルサイクラー内で、6×SDSローディングバッファー[0.23M Tris HCl pH6.8、24%(v/v)グリセロール、120μMプロモフェノールブルー、0.23M SDS]を付加した後、50℃で5分間、反応をクエンチして、sfGFPの蛍光を維持した。イソペプチド生成物の形成率(%)は、共有結合複合体のバンドの強度を、レーン中のすべてのバンドの強度で割り、100を掛けることによって算出した。様々な時点でばらつきのあるsfGFPの光退色を補正するために、SpyCatcher-バリアント-sfGFPのバンドの相対的強度の低下をモニターすることによって共有結合複合体形成の二次速度定数を決定して、未反応のSpyCatcher-バリアント-sfGFPの濃度に変更を与えた。反応曲線の線形部分の間の時点を分析した。1/[SpyCatcherバリアント]を時間に対してプロットし、Excel(Microsoft社)及びOrigin 2015(OriginLab Corporation社)を使用して、線形回帰分析によって分析した。実験は3回繰り返して行い、データは平均±1標準偏差とする。
SpyCatcher003とSpyTag003-MBPとの反応の完了までの測定には(図5)、実験は、2μMの一方のパートナーと2μM又は4μMのもう一方のパートナーとを用いて、pH7.0のコハク酸-リン酸-グリシン緩衝液中で、25℃で1.5時間行った。
等温滴定熱量測定
実験は、pH7.4のPBS中で、20℃で、Microcal PEAQ-ITC熱量計(Malvern社)を使用して行った。20μm SpyCatcher003を細胞中で使用し、シリンジで210μm SpyTag003-DA-MBPを20回の注入によって滴定した。分析は、1:1結合モデルを使用して、MicroCal PEAQ-ITC分析ソフトウエアバージョン1.1.0.1262を使用して行った。
示差走査熱量測定
実験は、pH7.5のPBS中の30μM SpyCatcher、SpyCatcher002、又はSpyCatcher003を用いて、MicroCal PEAQ-DSC(Malvern社)上で実施した。熱転移は、3気圧で、3℃/分のスキャン速度で、20℃から100℃までモニターした。データは、マイクロCal PEAQ-DSC分析ソフトウエアバージョン1.22を使用して分析した。緩衝液(PBS、pH7.5)ブランクを実験試料から減じ、濃度及び液量を補正し、次いでベースラインを減じた。続いて、MicroCal PEAQ-DSC分析ソフトウエアバージョン1.22及びOrigin 2015(OriginLab Corporation社)を使用して、観察された転移を2状態のモデルに適合させて、融解温度(Tm)及び半値全幅を得た。
質量分析
30μM SpyCatcher003を、60μM SpyTag003ペプチド(配列番号3、>95%純度でInsight Biotechnology社により合成された固相)と、pH7.0のSPG緩衝液中で、1時間25℃で反応させた。この反応物を、3.5kDaカットオフSpectra/Por透析チューブ(Spectrum labs社)を使用して、pH7.5の10mM酢酸アンモニウムに対して透析した後、分析した。
Agilent社製RapidFire 365プラットフォームは、Agilent社製6550 Accurate-Mass Quadrupole Time-of-Flight(Q-TOF)質量分析計に連結した。このシステムを使用して、噴流式エレクトロスプレーイオン源(Agilent社)を用いて、陽イオンモードで、インタクトなタンパク質の質量分析を行った。384ウェルポリプロピレンプレート(Greiner社)上で、50μL容量中10μmの試料を調製し、1%(v/v)ギ酸に酸性化した。試料を、RapidFireサンプリングプラットフォームを使用して、真空下で0.4秒間吸引した。試料を、C4固相抽出カートリッジ上に載せた。試料は、0.1%(v/v)ギ酸を用いて、1.5ml/分の流量で、5.5秒間洗浄した後、85%(v/v)アセトニトリル及び0.1%(v/v)ギ酸を含有する脱イオン水で、1.25ml/分で、5.5秒間溶出した。次いで、カートリッジを、脱イオン水で0.5秒間平衡化した。イオン化供給源のための窒素乾燥ガスは、225℃で、13L/分で操作した。噴流式シースガスは350℃で12L/分の流量とし、ノズル電圧は1,500Vとした。データは、Mass Hunter Qualitative Analysisソフトウエアバージョン7.0を使用して分析した。タンパク質イオン化データは、最大エントロピーアルゴリズムを使用して逆重畳積分した。予想質量は、N末端のホルミルメチオニンの切断に基づき、ExPASy ProtParamから得た。
SpyCatcherの哺乳動物細胞発現
TfR-sfGFP-mycタグ-SpyCatcherバリアントを、50U/mLペニシリン/ストレプトマイシン(Thermo Fisher Scientific社)を補充したExpi293発現培地(Thermo Fisher Scientific社)中で培養したExpi293HEK細胞(Thermo Fisher Scientific社)の懸濁液中で発現させた。細胞は、37℃、7%CO2の、110~125rpmで回転する加湿したMultitron Cellインキュベーター(Infors HT社)中で増殖させた。3.0×106細胞/mLの密度の細胞を、1μgのプラスミドDNA当たり2.7μLのExpiFectamine 293試薬を用いてトランスフェストした。ExpiFectamineトランスフェクションエンハンサー(Thermo Fisher Scientific社)を、トランスフェクションの16~22時間後に加えた。細胞を48時間増殖させ、次いで分析した。
フローサイトメトリー
細胞は、300g、4℃での3分間の遠心分離によって、FACS緩衝液[PBS pH7.5、1mM EDTA、1%ウシ血清アルブミン、0.1%(w/v)アジ化ナトリウム]で2回洗浄した。細胞を抗myc-AlexaFluor 647抗体(Invitrogen社)で標識するために、0.5~1×106細胞を、5μg/mLの濃度の該抗体と、氷上で20分間、FACS緩衝液中で反応させ、次いで、細胞をFACS緩衝液で2回洗浄した。20nMSpyTagバリアント-mKate2構築物は、0.5~1×106細胞と、氷上で2mlのFACS緩衝液中で反応させ、10μM SpyCatcher003によって反応時間を止め、次いで、細胞をFACS緩衝液で2回洗浄した。細胞は、DAPI染色を使用して生細胞に対しゲーティングして、BD Fortessa X20で分析した。データは、FlowJoバージョン9.0を使用して分析した。実験は3回繰り返し行い、データは平均±1標準偏差とする。
フルオロフォアコンジュゲーション
以下の工程は、暗所にて行った。DyLight-マレイミド及びDyLight-NHSエステル(以降、まとめてDyLightと呼ぶ)は、無水DMSO中に10μg/μLの最終濃度まで溶解し、試料は一定分量に分け、使用するまで-80℃で保存した。SpyCatcher003-S49Cを、関連するDyLightと、Tris(DyLight-マレイミド、pH8.5)又はPBS(DyLight-NHSエステル、pH7.5)のいずれかの緩衝液中で、タンパク質の標識が確実に最大となるよう色素:タンパク質を10倍モル過剰としてインキュベートした。完全に混合するように試料を速やかにピペッティングし、その後、室温で4時間、混転させた。インキュベーションに続き、凝集物を除去するために、16,000gで5分間、試料を遠心分離した。膨潤させたSephadex G-25樹脂(800μL)をBio-Rad社製Poly-Prepカラムに加え、残留する保存用エタノールを除去するために4mlのPBSで洗浄した。PBSを排水し、試料をカラムに加えて、コンジュゲートしていない色素を除去した。更に1mlのPBSをカラム上部に加え、300μL画分を回収した。画分1及び画分2をプールし、4℃のPBS中で、3×3時間、透析した。
コンジュゲーション効率は、Nanodrop分光光度計及び次式を利用して決定した。
Figure 2022525160000003
εprotein=タンパク質モル吸光係数
CF=補正率(下記のThermo Fisher Dyeの情報ページでみられる、DyLight 680=0.128の場合)
Figure 2022525160000004
ウエスタンブロッティング
形質転換されていない大腸菌Turbo細胞(NEB社)を、8時間増殖させ、沈殿させ、cOmpleteミニEDTAフリープロテアーゼ阻害剤カクテル(Roche社)及び1mM PMSFの存在下でpH7.4のPBSに再懸濁した。1.5×107ヒトExpi293細胞は、沈殿させ、5ml溶解緩衝液[cOmpleteミニEDTA-フリープロテアーゼ阻害剤カクテル(Roche社)及び1mM PMSFの存在下、150mM NaCl、50mM Tris-HCl pH7.5、1%(v/v)Triton X-100、1mM EDTA]に溶解した。S.セレビシエ株K699は、University of Oxford、Nasmyth研究室から厚意により寄贈された。ドロソフィラ・メラノガスター試料は、GenLysate(G-Biosciences社)とした。溶解物は一定分量に分け、使用するまで-80℃で保存した。ウェスタンブロットによる試験のために、3pmol SpyTag003-MBPaを、選択した細胞溶解物試料中に添加した。試料を6×SDSローディングバッファーと混合し、Bio-Rad社製C1000サーマルサイクラー内で、99℃で3分間、加熱した。弱い抗GAPDH認識を相殺するために10μgを載せたD.メラノガスター以外は、レーン当たり5μgの細胞溶解物を載せた。
<<SunFlarePataid>>
タンパク質試料と細胞溶解物とを、200VでのXCell SureLockシステム(Thermo Fisher社)を使用して、16%SDS-PAGEによって分離した。35Vで90分間、XCell IIウェスタンブロットモジュール(Thermo Fisher社)を使用して、試料を、転写バッファー[10%(v/v)MeOH、25mM Tris塩基、192mMグリシン]中で、濾紙(Fisherbrand社;FB59025)の間で、平衡化したニトロセルロース膜(Bio-Rad社;162-0112)に転写した。膜は、0.05%(v/v)Tween-20を含むpH7.4のPBS(PBST)で調製した5%(w/v)スキムミルクで、最低1時間、ブロッキングした。次いで、膜は、5%(w/v)スキムミルクを含むPBST中で、13nM SpyCatcher003-680及び1:500の抗GAPDH-DyLight 800(Thermo Fisher社)を用いて、25℃で、2時間、プローブした。膜は、光から保護しながら、最低でも、PBSTで3×30分間、pH7.4のPBSで1×30分間、洗浄し、MilliQ H2Oでリンスした。ウェスタンブロットはLi-Cor Odyssey Fcを使用して画像化し、画像分析は、Image Studio Lite 5.2(Li-Cor社)を使用して行った。

Claims (22)

  1. i)配列番号1に記載のアミノ酸配列、又は
    ii)配列番号2に記載のアミノ酸配列を含む(i)の一部、
    iii)配列番号1に記載の配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列であって、31位のリジン、77位のグルタミン酸、並びに以下:
    1)91位のグルタミン酸、
    2)103位のアスパラギン酸、及び
    3)108位のグルタミン酸
    のうちの1つ又は複数を含み、これらの指定のアミノ酸残基が、配列番号1における位置に相当する位置にある、前記アミノ酸配列、又は
    iv)配列番号2に記載の配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む(iii)の一部であり、10位のリジン、56位のグルタミン酸、並びに以下:
    1)70位のグルタミン酸、
    2)82位のアスパラギン酸、及び
    3)87位のグルタミン酸
    のうちの1つ又は複数を含み、これらの指定のアミノ酸残基が、配列番号2における位置に相当する位置にある、前記アミノ酸配列
    を含み、
    前記ポリペプチドが、配列番号3に記載のアミノ酸配列を含むペプチドとのイソペプチド結合を自発的に形成することができ、前記イソペプチド結合が、配列番号3の10位のアスパラギン酸残基と配列番号1の31位又は配列番号2の10位のリジン残基との間で形成する、ポリペプチド。
  2. 配列番号1に記載の配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、前記アミノ酸配列が、31位のリジン、77位のグルタミン酸、並びに以下:
    1)91位のグルタミン酸、
    2)103位のアスパラギン酸、及び
    3)108位のグルタミン酸
    のすべてを含み、これらの指定のアミノ酸残基が、配列番号1における位置に相当する位置にある、請求項1に記載のポリペプチド。
  3. 配列番号1に記載の配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、前記アミノ酸配列が、31位のリジン、77位のグルタミン酸、並びに以下:
    1)89位のプロリン、
    2)91位のグルタミン酸、
    3)97位のアスパラギン酸、
    4)103位のアスパラギン酸、及び
    5)108位のグルタミン酸
    のすべてを含み、これらの指定のアミノ酸残基が、配列番号1における位置に相当する位置にある、請求項1又は2に記載のポリペプチド。
  4. 配列番号1に記載の配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、前記アミノ酸配列が、31位のリジン、77位のグルタミン酸、並びに以下:
    1)2位のスレオニン、
    2)13位のプロリン、
    3)37位のアルギニン、
    4)62位のヒスチジン、
    5)105位のグルタミン酸、及び
    6)113位のスレオニン
    のうちの1つ又は複数を含み、これらの指定のアミノ酸残基が、配列番号1における位置に相当する位置にある、請求項1から3のいずれか一項に記載のポリペプチド。
  5. 配列番号1に記載の配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、前記アミノ酸配列が、31位のリジン、77位のグルタミン酸、並びに以下:
    1)2位のスレオニン、
    2)13位のプロリン、
    3)37位のアルギニン、
    4)62位のヒスチジン、
    5)89位のプロリン、
    6)97位のアスパラギン酸、
    7)105位のグルタミン酸、及び
    8)113位のスレオニン
    のすべてを含み、これらの指定のアミノ酸残基が、配列番号1における位置に相当する位置にある、請求項1から4のいずれか一項に記載のポリペプチド。
  6. 配列番号1に記載の配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、前記アミノ酸配列が、31位のリジン、77位のグルタミン酸、並びに以下:
    1)2位のスレオニン、
    2)13位のプロリン、
    3)37位のアルギニン、
    4)62位のヒスチジン、
    5)89位のプロリン、
    6)97位のアスパラギン酸、
    7)105位のグルタミン酸、及び
    8)113位のスレオニン
    のすべて、並びに以下:
    9)91位のグルタミン酸、
    10)103位のアスパラギン酸、及び
    11)108位のグルタミン酸
    のうちの2つ以上を含み、これらの指定のアミノ酸残基が、配列番号1における位置に相当する位置にある、請求項1から5のいずれか一項に記載のポリペプチド。
  7. 配列番号1に記載の配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、前記アミノ酸配列が、31位のリジン、77位のグルタミン酸、並びに以下:
    1)2位のスレオニン、
    2)13位のプロリン、
    3)37位のアルギニン、
    4)62位のヒスチジン、
    5)89位のプロリン、
    6)97位のアスパラギン酸、
    7)105位のグルタミン酸、並びに
    8)113位のスレオニン、
    9)91位のグルタミン酸、
    10)103位のアスパラギン酸、及び
    11)108位のグルタミン酸
    のすべてを含み、これらの指定のアミノ酸残基が、配列番号1における位置に相当する位置にある、請求項1から6のいずれか一項に記載のポリペプチド。
  8. 以下:
    1)9位のグリシン、及び
    2)19位のスレオニン
    のうちの1つ又は両方を含み、これらの指定のアミノ酸残基が、配列番号1における位置に相当する位置にある、請求項1から7のいずれか一項に記載のポリペプチド。
  9. 以下:
    1)34位のグルタミン酸、
    2)50位のセリン、
    3)69位のチロシン、
    4)83位のグリシン、及び
    5)86位のバリン
    のうちの1つ又は複数を含み、これらの指定のアミノ酸残基が、配列番号1における位置に相当する位置にある、請求項1から8のいずれか一項に記載のポリペプチド。
  10. 以下の置換:
    1)52位でのリジンのグルタミンによる置換、
    2)63位でのバリンのアスパラギン酸による置換、
    3)69位でのチロシンのセリンによる置換、
    4)88位でのスレオニンのロイシンによる置換、及び
    5)96位でのグルタミン酸のプロリンによる置換
    のうちの1つ又は複数を含み、これらの指定のアミノ酸残基が、配列番号1における位置に相当する位置にある、請求項1から9のいずれか一項に記載のポリペプチド。
  11. 核酸分子、タンパク質、ペプチド、低分子有機化合物、フルオロフォア、金属-リガンド複合体、多糖、ナノ粒子、2D単層(例えばグラフェン)、ナノチューブ、ポリマー、細胞、ウイルス、ウイルス様粒子、又はそれらの組合せにコンジュゲートされている、請求項1から10のいずれか一項に記載のポリペプチド。
  12. 固体基質上に固定化されている、請求項1から10のいずれか一項に記載のポリペプチド。
  13. 請求項1から10のいずれか一項に規定のポリペプチドに連結されたペプチド又はポリペプチドを含む、組換え又は合成ポリペプチド。
  14. 請求項1から8のいずれか一項に規定のポリペプチド又は請求項13に記載の組換え又は合成ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む、核酸分子。
  15. 請求項14に記載の核酸分子を含む、ベクター。
  16. 請求項14に記載の核酸又は請求項15に記載のベクターを含む、細胞。
  17. 請求項1から10のいずれか一項に記載のポリペプチド又は請求項13に記載の組換えポリペプチドを産生又は発現させる方法であって、
    a)宿主細胞を請求項15に規定のベクターで形質転換する又はトランスフェクトする工程、
    b)該ポリペプチドの発現を可能にする条件下で宿主細胞を培養する工程、及び、場合によって、
    c)該ポリペプチドを単離する工程
    を含む方法。
  18. イソペプチド結合を介して2つの分子又は成分をコンジュゲートさせるための、請求項1から12のいずれか一項に規定のポリペプチドの使用であって、
    イソペプチド結合を介してコンジュゲートされる前記分子又は成分が、
    a)請求項1から12のいずれか一項に記載のポリペプチドを含む第1の分子又は成分と、
    b)以下:
    (1)配列番号5に記載のアミノ酸配列を含むペプチド、及び
    (2)配列番号6に記載のアミノ酸配列を含むペプチド
    から選択されるペプチドを含む第2の分子又は成分と
    を含み、
    (i)1位のXが、アルギニンであるか又はアミノ酸が存在せず、
    (ii)2位のXが、グリシンであるか又はアミノ酸が存在せず、
    (iii)5位のXが、ヒスチジン又はスレオニンであり、好ましくはヒスチジンであり、
    (iv)11位のXが、アラニン、グリシン、又はバリンであり、好ましくはアラニンであり、
    (v)14位のXは、アルギニン又はリジンであり、好ましくはアルギニンであり、
    1位のXにアミノ酸が存在しない場合、2位のXにアミノ酸は存在せず、
    前記ペプチドが、配列番号1に記載のアミノ酸配列を含むポリペプチドとのイソペプチド結合を自発的に形成することができ、前記イソペプチド結合が、配列番号6の10位のアスパラギン酸残基と配列番号1の31位のリジン残基との間で形成する、使用。
  19. 2つの分子又は成分を、イソペプチド結合を介してコンジュゲートする方法であって、
    a)請求項1から12のいずれか一項に記載のポリペプチドを含む第1の分子又は成分を用意する工程、
    b)以下:
    (1)配列番号5に記載のアミノ酸配列を含むペプチド、及び
    (2)配列番号6に記載のアミノ酸配列を含むペプチド
    から選択されるペプチドを含む第2の分子又は成分を用意する工程であって、
    (i)1位のXは、アルギニンであるか又はアミノ酸が存在せず、
    (ii)2位のXは、グリシンであるか又はアミノ酸が存在せず、
    (iii)5位のXは、ヒスチジン又はスレオニンであり、好ましくはヒスチジンであり、
    (iv)11位のXは、アラニン、グリシン、又はバリンであり、好ましくはアラニンであり、
    (v)14位のXは、アルギニン又はリジンであり、好ましくはアルギニンであり、
    1位のXにアミノ酸が存在しない場合、2位のXにアミノ酸は存在せず、
    前記ペプチドは、配列番号1に記載のアミノ酸配列を含むポリペプチドとイソペプチド結合を自発的に形成することができ、前記イソペプチド結合は、配列番号6の10位のアスパラギン酸残基と配列番号1の31位のリジン残基との間で形成する、工程
    c)該ポリペプチドと該ペプチドとの間のイソペプチド結合の自発的な形成を可能にする条件下で、前記第1の分子又は成分と前記第2の分子又は成分とを接触させ、これによって、前記第1の分子又は成分を、イソペプチド結合を介して前記第2の分子又は成分にコンジュゲートして複合体を形成する工程
    を含む方法。
  20. キット、好ましくは請求項18に記載の使用又は請求項19に記載の方法において使用されるキットであって、
    (a)場合によって分子又は成分にコンジュゲート又は融合された、請求項1から12のいずれか一項に記載のポリペプチド、並びに
    (b)以下:
    (1)配列番号5に記載のアミノ酸配列を含むペプチド、及び
    (2)配列番号6に記載のアミノ酸配列を含むペプチド
    から選択されるペプチドであって、
    (i)1位のXは、アルギニンであるか又はアミノ酸が存在せず、
    (ii)2位のXは、グリシンであるか又はアミノ酸が存在せず、
    (iii)5位のXは、ヒスチジン又はスレオニンであり、好ましくはヒスチジンであり、
    (iv)11位のXは、アラニン、グリシン、又はバリンであり、好ましくはアラニンであり、
    (v)14位のXは、アルギニン又はリジンであり、好ましくはアルギニンであり、
    1位のXにアミノ酸が存在しない場合、2位のXにアミノ酸は存在せず、
    前記ペプチドが、配列番号1に記載のアミノ酸配列を含むポリペプチドとのイソペプチド結合を自発的に形成することができ、前記イソペプチド結合が、配列番号6の10位のアスパラギン酸残基と配列番号1の31位のリジン残基との間で形成し、場合によって分子又は成分にコンジュゲート又は融合されている、ペプチド、及び/又は
    (c)(a)に規定のポリペプチドをコードする核酸分子、特にベクター、並びに
    (d)(b)に規定のペプチドをコードする核酸分子、特にベクター
    を含むキット。
  21. (2)のペプチドが、以下:
    1)5位のヒスチジン、
    2)11位のアラニン、及び
    3)14位のアルギニン
    のうちの1つ又は複数を含み、これらの指定のアミノ酸残基が、配列番号6における位置に相当する位置にある、請求項18に記載の使用、請求項19に記載の方法、又は請求項20に記載のキット。
  22. (2)のペプチドが、配列番号3又は4に記載のアミノ酸配列を含む、請求項18若しくは21に記載の使用、請求項19若しくは21に記載の方法、又は請求項20若しくは21に記載のキット。
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