JP2022520129A - 修飾されたヘモグロビン分子およびその使用 - Google Patents

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Abstract

弛緩した状態のヘモグロビン等のグロビンを含む組成物が記載されている。弛緩した状態(R状態)のグロビン分子は、一酸化炭素および酸素に対して、緊張した状態(T状態)のグロビン分子よりも高い結合親和性を有する。弛緩した状態のヘモグロビンは、例えば、2,3-ジホスホグリセレートを実質的に含まないヘモグロビン、またはβ-Asp94、β-His146およびα-Lys40の間の一方もしくは両方の塩橋を阻害するように共有結合で修飾されたβ-Cys93を含むヘモグロビンであり得る。一酸化炭素中毒を処置するため等、これらの組成物を使用するための方法、これらの組成物を産生するための方法も開示されている。

Description

関連出願の相互参照
本願は、その全体を参照により本明細書に組み込む、2019年4月2日に出願された米国特許仮出願第62/828,269号の利益を主張するものである。
政府支援に関する記載
本発明は、国立衛生研究所(National Institutes of Health)から支給された助成金番号HL098032;HL007563;HL110849;HL103455;HL136857およびHL125886による政府支援の下でなされた。政府は、本発明に一定の権利を有する。
分野
本開示は、2,3-ジホスホグリセレート(diphosphoglyerate)を含まないヘモグロビンおよび/または共有結合で修飾されたβ-Cys93残基を含むヘモグロビン等、弛緩した状態のグロビンを含む組成物に関する。本開示はさらに、一酸化炭素ヘモグロビン血症を処置する方法、および修飾されたβ-Cys93残基を含むヘモグロビンを産生するためのプロセスに関する。
一酸化炭素への吸入曝露は、環境中毒の主原因を表す。個体は、住宅火災、屋内で使用された発電機もしくは屋外バーベキューグリルの使用、または閉鎖空間における自殺企図の際等の種々の状況下で、空気中の一酸化炭素に曝露され得る。一酸化炭素は、細胞におけるヘモグロビンおよび血液タンパク質、特に、伝達系呼吸鎖の酵素に結合する。ヘモグロビンおよび他の血液タンパク質に結合された一酸化炭素の蓄積は、酸化的リン酸化のための酸素送達および酸素利用を損なう。これにより、最終的に、脳および心臓等の生命維持に重要な臓器に対する重篤な低酸素性および虚血性傷害がもたらされる。その血液中に5~10%を超える炭素一酸化炭素ヘモグロビンを蓄積する個体と共に、慢性低レベル中毒を有する個体は、脳傷害および神経認知機能障害のリスクがある。非常に高い一酸化炭素ヘモグロビンレベルを有する患者は典型的に、不可逆的脳傷害、呼吸不全、心血管虚脱および/または死亡に至る。
標準動脈および静脈血液ガス解析ならびにco-オキシメトリにより一酸化炭素中毒を迅速に診断する方法の利用可能性にもかかわらず、また、一酸化炭素中毒のリスク因子の認知にもかかわらず、この毒性曝露に利用できる解毒薬は存在しない。現在の治療法は、フェースマスクによって100%酸素を与えることであり、可能であれば、患者を高圧酸素に曝露することである。高圧酸素療法は、ヘモグロビンおよび組織からの一酸化炭素の放出速度を増加させ、一酸化炭素の自然なクリアランスを加速させる。しかし、この治療法は、一酸化炭素クリアランス速度において僅かな効果しか持たず、高圧酸素設備の複雑さに基づき、この治療法は、野外で利用できず、多くの場合、著しい処置の遅延および運送費を伴う。よって、一酸化炭素ヘモグロビン血症としても公知の一酸化炭素中毒を処置するための、有効で、迅速かつ容易に利用できる治療法の必要がある。
一酸化炭素(CO)に結合し、COを血流におけるCOに侵されたヘモグロビンおよびミトコンドリアにおけるCOに侵されたチトクロムcオキシダーゼから除去し、これにより、COスカベンジャーとして機能する、単離された修飾されたグロビン分子が本明細書に記載されている。修飾されたグロビン分子を産生する方法、血液または組織におけるヘモグロビンから一酸化炭素を除去する方法、組織におけるミトコンドリアから一酸化炭素を除去する方法、および修飾されたグロビン分子により一酸化炭素中毒(「一酸化炭素ヘモグロビン血症」としても公知)を処置するための方法も記載されている。
弛緩した状態のグロビンを含む組成物が本明細書に提供される。一部の実施形態では、グロビンは、ミオグロビンまたはヘモグロビンである。一部の例では、ヘモグロビンは、2,3-ジホスホグリセレートを実質的に含まない。一部の例では、グロビンは、修飾されたミオグロビンまたはヘモグロビンである。特定の例では、グロビンは、β-Asp94、β-Hys146およびα-Lys40の間の一方または両方の塩橋を阻害するように共有結合で修飾されたβ-Cys93を含む修飾されたヘモグロビンである。β-Asp94、β-His146およびα-Lys40の間の一方または両方の塩橋を阻害するように共有結合で修飾されたβ-Cys93を含む単離されたヘモグロビン分子が、さらに提供される。
対象における一酸化炭素ヘモグロビン血症を処置する方法も提供される。一部の実施形態では、本方法は、一酸化炭素ヘモグロビン血症を有する対象を選択するステップと、治療有効量の本明細書に開示されている組成物または単離されたヘモグロビンを対象に投与するステップとを含む。
血液または動物組織におけるヘモグロビンから一酸化炭素を除去する方法がさらに提供される。一部の実施形態では、本方法は、血液または動物組織を、本明細書に開示されている組成物または単離されたヘモグロビンと接触させるステップを含む。
本明細書に開示されている修飾されたグロビン分子を産生する方法も提供される。一部の実施形態では、本方法は、全血、濃厚赤血球またはこれらの組合せからヘモグロビンを単離するステップと、式I~Vのうちいずれか1種または複数を満たす構造を有する反応物等の反応物とヘモグロビンを反応させて、ジスルフィド架橋を破壊し、β-Cys93において共有結合で修飾されたヘモグロビンを形成するステップと、β-Cys93において共有結合で修飾されたヘモグロビンを単離するステップとを含む。
本開示の前述および他の目的および特色は、添付の図面を参照しつつ進む次のいくつかの実施形態の詳細な説明から、より明らかになるであろう。
図1は、修飾されたヘモグロビン(Hb)分子を描写する。β-Asp94およびβ-His146の間ならびにβ-His146およびα-Lys40の間の重要な塩橋の形成は、T状態の生成に役立つ。(上に収載するR’での)β-Cys93の修飾は、これらの塩橋を中断し、これにより、ライゲーションされていないHb(すなわち、OまたはCOが結合されていない)であってもR状態を維持することを可能にする。この形態(破線のボックス)は、より緊密なCO結合およびより効率的なスカベンジングを可能にする。この表示には描写されていないが、各サブユニットは、それぞれCOに結合するための1個のヘムを含有する。
図2は、治療的処置中のヘモグロビン-CO種の減衰を示すグラフである。Rose et al. (Am J Respir Crit Care Med 195(5): 596-606, 2017)から得た、室内気(320分間)、100%常圧酸素(74分間)および100%高圧酸素(HBO;20分間)におけるHbCOの半減期値。
図3は、中等度CO中毒のマウスモデルにおけるヘモグロビンから組換えニューログロビンへのCOのin vivo結合を示すグラフである。
図4は、剥離(stripped)Hb(StHb)の添加により逆転される、COによって阻害されるミトコンドリア呼吸のチャートである。
図5は、脱酸素化グロビン分子の調製のための方法のステップのフローダイヤグラムである。
図6は、一酸化炭素中毒を処置するための2,3-DPGを含まない特異的に修飾されたヘモグロビンの使用のための方法のステップのフローダイヤグラムである。
図7は、新鮮マウス単離ヘモグロビン、市販のヘモグロビン(Sigma Aldrich)、剥離ヘモグロビン、およびNaCl、亜ジチオン酸塩でさらに処置してG25分離カラムを通した剥離ヘモグロビンのヘモグロビン濃度に対する2,3-DPGレベルを示すグラフである。
図8A~図8Cは、経時的な、StHbおよびNEMHbと組み合わせた一酸化炭素飽和赤血球細胞(RBC)(COに結合したRBC被包ヘモグロビン(HbCO)の量によって表される)のin vitro研究の結果を示すグラフ一式である。(図8A~図8B)RBCペレットから単離されたRBC被包Hbによって(図8A)および上清のCOに結合された指定のヘモグロビン分子を測定することによって(図8B)表される通り、NEMHbは、StHbよりも有効にCOに結合する。(図8C)ある一定期間後の平衡状態において、RBC被包ヘモグロビンのHbCOレベルは、さらに修飾された2,3-DPG低下ヘモグロビンにおいてより低い。
図9Aは、CO中毒動物におけるCOへのStHb、NEM-Hbおよびミオグロビン(Mb)の結合を示すグラフである。StHbおよびNEM-Hbは、Mbと比較して、有意により大きいレベルのCO結合を示す。図9Bは、PBS、StHb、NEM-HbおよびMbの注入後のHbCOの低下を示すグラフである。NEM-HbおよびStHb注入は、対照PBSよりも有意に有効に、かつミオグロビンと同様に、HbCOレベルを低下させる。
図10は、重篤CO中毒に曝露されたマウスが、低血圧を発症し、死亡することを示す。PBSにおいて、このモデルにおける100%死亡率が見られる。ミオグロビン(Mb)、NEM-Hbおよび剥離ヘモグロビン(StHb)は、心血管虚脱および低血圧を逆転する。
図11は、最大40分間重篤CO中毒に曝露されたマウスのカプラン・マイヤー生存解析を示す。PBS処置動物において、このモデルにおける0%生存が見られる。対照的に、Mb、NEM-HbまたはStHbの投与は、生存を増加させる。
図12は、経時的な、CO中毒のマウスモデルにおけるHbCOからヘモグロビン、ミオグロビンおよびNEM-HbへのCOのin vivo結合を示すグラフである。
図13は、血液タンパク質またはPBSの注入直後のHbCOの低下を実証するグラフである。HbCOは、PBSと比べて、StHb、NEM-HbおよびMbの注入によって有意に低下した。
図14は、マウスにおけるMb、StHbおよびNEM-Hbの添加により逆転される、血圧に対する中等度CO中毒の影響を示すグラフである。
図15は、ミトコンドリア呼吸研究のためのセットアップのフローダイヤグラムである。ADP/コハク酸塩の添加後に、ミトコンドリアが所望のO濃度まで呼吸し、次いで系が再酸素化され、ミトコンドリアが再度所望のレベルのOまで呼吸する。次に、COが注入され、系が再酸素化され、呼吸速度が比較される。0%Oまで呼吸した後に、剥離ヘモグロビンが注入され、系が再酸素化され、速度が比較される。
図16A~図16Cは、ミトコンドリア呼吸に対するCOの影響および剥離ヘモグロビンによるこれらの影響の逆転を示すグラフである。(図16A)CO曝露とそれに続くオキシ-剥離Hb処置実験のためのセットアップを実証するクラーク(Clark)電極チャンバーの代表的生データ。(図16B)CO曝露のみの実験のためのセットアップを実証するクラーク電極チャンバーの代表的生データ。(図16C)初期再酸素化ステップ速度と比較した呼吸速度。
図17は、生理食塩水対照(NS);4000mg/kgアルブミン対照;100mM N-アセチルシステイン(NAC)対照;4mM NEM-Hb + 40mM NAC(1600mg/kg NEM-Hb、常用量);4mM剥離Hb + 40mM NAC(1600mg/kg剥離Hb、常用量);10mM NEM-Hb + 100mM NAC(4000mg/kg NEM-Hb、中用量);10mM剥離Hb + 100mM NAC(4000mg/kg剥離Hb、中用量)による処置後のマウスにおける血液化学を示すグラフ一式である。
配列表
添付の配列表に収載されている核酸(nucleic)およびアミノ酸配列は、連邦規則集第37巻(37 C.F.R.)1.822に定義される通り、ヌクレオチド塩基については標準文字略語を、アミノ酸については3文字コードを使用して示されている。各核酸配列の一方の鎖のみが示されているが、相補鎖は、表示されている鎖のいずれかの参照によって含まれると理解されている。配列表は、参照により本明細書に組み込む、21.5KBの2020年3月27日に作成されたASCIIテキストファイルとして提出される。添付の配列表には、次のものが収載される:
配列番号1および2は、それぞれヒトヘモグロビンアルファおよびベータサブユニットのアミノ酸配列である。
配列番号3および4は、それぞれイヌヘモグロビンアルファおよびベータサブユニットのアミノ酸配列である。
配列番号5および6は、それぞれブタヘモグロビンアルファおよびベータサブユニットのアミノ酸配列である。
配列番号7および8は、それぞれウマヘモグロビンアルファおよびベータサブユニットのアミノ酸配列である。
配列番号9および10は、それぞれウシヘモグロビンアルファおよびベータサブユニットのアミノ酸配列である。
配列番号11および12は、それぞれマウスヘモグロビンアルファおよびベータサブユニットのアミノ酸配列である。
配列番号13および14は、それぞれネコヘモグロビンアルファおよびベータサブユニットのアミノ酸配列である。
配列番号15および16は、それぞれアカゲザルヘモグロビンアルファおよびベータサブユニットのアミノ酸配列である。
配列番号17は、ヒトヘモグロビンの核酸配列である。
いくつかの実施形態の詳細な説明
一酸化炭素に結合し、一酸化炭素を血流におけるヘモグロビンおよびミトコンドリアにおけるチトクロムcオキシダーゼから除去することにより一酸化炭素スカベンジャーとして機能する、単離された修飾されたグロビン分子が本明細書に開示されている。修飾されたグロビン分子を産生する方法、および修飾されたグロビン分子により一酸化炭素中毒を処置するための方法も開示されている。局所的に上昇したレベルの一酸化窒素(NO)に関係するCO中毒の構成成分が存在するため、開示されている分子は、疾患のこの側面も処置する(Thom et al., Toxicol Appl Pharmacol 1994;128:105-110;Thom et al., Chem Res. Toxicol 1997;10:1023-1031;Rose et al., Am J Respir Crit Care Med 2017;195(5):596-606)。本明細書に開示されているデータは、これらの薬剤(2,3-DPGを含まない特異的に修飾されたヘモグロビン)を、例えば、血液または組織におけるヘモグロビンから一酸化炭素を除去し、組織におけるミトコンドリアから一酸化炭素を除去する方法、および一酸化炭素ヘモグロビン血症を処置する方法において使用することができることを実証する。
ミオグロビンおよびヘモグロビンは、ヘムに永続的に結合される1個のヒスチジンのみを有する五配位ヘムタンパク質である。ミオグロビンは、Oの60倍である、COに対する親和性を有する(Nelson LS, Lewin NA, Howland MA, Hoffman RS, Goldfrank LR, Flomenbaum NE. (2011). ”Carbon Monoxide”. Goldfrank’s Toxicologic Emergencies (9th ed.). New York: McGraw-Hill. pp. 1658-1670)。ヘム基由来の鉄原子の反応は、次の通りに描写することができる:
Figure 2022520129000002
(式中、konおよびkoffは、それぞれCO結合および解離の速度定数である)。
COの存在下で還元型Hbは、CO結合のためのリザーバーとして作用することになるため、非CO結合Hbは、COに対する追加的な標的として作用することができる。修飾されたグロビン分子は、天然に存在する化合物と同様の様式で作用するであろう。その上、これらの薬剤は、酸素と既に結合した状態で与え、COを拘束しつつ、組織への酸素送達を増加させることができる。
2,3-DPGの濃度の増加が、酸素親和性を減少させ、逆もまた同じとなるように、組織へのヘモグロビン酸素放出は、赤血球2,3-ジホスホグリセレート(2,3-DPG)によって制御される。クエン酸デキストロース(acid-citrate-dextrose)溶液中に貯蔵された血液の酸素親和性増加は、貯蔵中に発生する2,3-DPGの濃度の減少が原因であることが示された。
2,3-DPGは、緊張したデオキシ型のヘモグロビンを安定化し、そのため酸素親和性を低下させる。弛緩したオキシヘモグロビンの中心の空洞は、より小さく、したがって2,3-DPGを収容することができない。2,3-DPGはまた、オキシおよびデオキシヘモグロビンの両方の8本の鎖のN末端アミノ基に非特異的に結合する。
Hb四量体は、2種のコンフォメーション、「弛緩した」状態(R状態)および「緊張した」状態(T状態)で存在する(図1)。T状態のコンフォメーションは、酸素に対するより低い親和性を有し、これは酸素送達を可能にする;R状態は、酸素に対するより高い親和性を有し、肺内で四量体への結合を可能にする。
弛緩した状態のヘモグロビンまたはミオグロビン等のグロビンを含む組成物であって、グロビンの少なくとも85%が弛緩した状態である、組成物が本明細書に開示されている。
一部の実施形態では、グロビンは、ヘモグロビンである。具体的な非限定的な例では、ヘモグロビンは、2,3-DPGを実質的に含まない。具体的な非限定的な例では、ヘモグロビンは、(1)β-Asp94およびβ-Hys146;ならびに(2)β-Hys146およびα-Lys40の間の一方または両方の塩橋を阻害するように共有結合で修飾されたβ-Cys93を含む。これらの分子を産生するための方法も開示されている。
さらなる実施形態では、弛緩した状態のグロビン分子およびその組成物を使用する方法が開示されている。
I.略語
2,3-DPG 2,3-ジホスホグリセレート
CO 一酸化炭素
Hb ヘモグロビン
HbCO 一酸化炭素ヘモグロビン
Mb ミオグロビン
NEMHb N-エチルマレイミドヘモグロビン
NO 一酸化窒素
StHb 剥離ヘモグロビン
II.用語
特に断りのない限り、技術用語は、従来の用法に従って使用される。分子生物学における一般的な用語の定義は、Benjamin Lewin, Genes V, published by Oxford University Press, 1994 (ISBN 0-19-854287-9);Kendrew et al. (eds.), The Encyclopedia of Molecular Biology, published by Blackwell Science Ltd., 1994 (ISBN 0-632-02182-9);およびRobert A. Meyers (ed.), Molecular Biology and Biotechnology: a Comprehensive Desk Reference, published by VCH Publishers, Inc., 1995 (ISBN 1-56081-569-8)に見出すことができる。
他に説明がなければ、本明細書で使用されているあらゆる技術および科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されているものと同じ意義を有する。単数形の用語「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、文脈がそれ以外のことを明らかに指し示さない限り、複数の指示対象を含む。「AまたはBを含むこと(Comprising A or B)」は、A、またはB、またはAおよびBを含むことを意味する。核酸またはポリペプチドに対して定められたあらゆる塩基サイズまたはアミノ酸サイズ、およびあらゆる分子量または分子質量値は、近似値であり、説明のために提示されていることをさらに理解されたい。本明細書に記載されているものと同様のまたは均等な方法および材料を、本開示の実施または試験において使用することができるが、適した方法および材料について後述する。本明細書で言及されているあらゆる刊行物、特許出願、特許および他の参考文献は、それらの全体を参照により本明細書に組み込む。矛盾が生じる場合、用語の説明を含む本明細書が優先されるものとする。加えて、材料、方法および実施例は、単に説明目的であり、限定を意図するものではない。用語「約」は、他に記述がなければ、5パーセント以内を意味する。
本明細書におけるある特定の官能基の用語は、記号「-」を含み、これは、定義されている官能基が、それが結合される化合物の表面にまたはその中に結合する仕方を示すために使用される。また、破線の結合(すなわち、「---」)は、本明細書に記載されているある特定の式において使用される場合、必要に応じた結合(すなわち、存在しても存在しなくてもよい結合)を指し示す。当業者であれば、下に提示する定義、ならびに本明細書に含まれる化合物および式が、容認できない置換パターン(例えば、5個の異なる基で置換されたメチル、その他)を含むことを意図するものではないことを認識するであろう。かかる容認できない置換パターンは、当業者によって容易に認識される。本明細書に開示されている式および化合物において、官能基または他の原子が説明されていない場合は常に、水素原子が存在して、いずれかの形式に従った(formal)原子価要件を満たす(が、必ずしも説明されていなくてもよい)。例えば、
Figure 2022520129000003
として描かれるフェニル環は、「1つの(a)」炭素以外のフェニル環の各炭素原子に結合した水素原子を(かかる水素原子が説明されていない場合であっても)含む。本明細書に開示されているおよび/または上に定義されているいずれかの官能基は、本明細書に他に指示がなければ、置換されていても置換されていなくてもよい。
本開示の様々な実施形態の概説を容易にするために、具体的な用語に関する次の説明を提示する:
ハロゲン化アシル:-C(O)X(式中、Xは、Br、F、IまたはCl等のハロゲンである)。
投与:いずれか有効な経路によって治療剤(例えば、修飾されたグロビン等の酸素担体)等の薬剤を対象に提供するまたは与えること。例示的な投与経路は、注射または注入(皮下、筋肉内、皮内、腹腔内、髄腔内、静脈内、脳室内、線条体内、頭蓋内および脊髄内等)、経口、管内、舌下、直腸、経皮、鼻腔内、腟および吸入経路を含むがこれらに限定されない。
アルデヒド:-C(O)H。
脂肪族:1~25個の炭素原子(C1~25)または1~10個の炭素原子(C1~10)等、少なくとも1個の炭素原子~50個の炭素原子(C1~50)を有する炭化水素基であり、これは、アルカン(またはアルキル)、アルケン(またはアルケニル)、アルキン(またはアルキニル)を含み、これらの環式バージョンを含み、直鎖および分枝鎖配置ならびにあらゆる立体および位置異性体も同様にさらに含む。
脂肪族-芳香族:本明細書に開示されている化合物にカップリングされているまたはカップリングすることができる芳香族基であって、脂肪族基を介してカップリングされているまたはカップリングされるようになる芳香族基。
脂肪族-アリール:本明細書に開示されている化合物にカップリングされているまたはカップリングすることができるアリール基であって、脂肪族基を介してカップリングされているまたはカップリングされるようになるアリール基。
脂肪族-ヘテロアリール:本明細書に開示されている化合物にカップリングされているまたはカップリングすることができるヘテロアリール基であって、脂肪族基を介してカップリングされているまたはカップリングされるようになるヘテロアリール基。
アルケニル:2~25個の炭素原子(C2~25)または2~10個の炭素原子(C2~10)等、少なくとも2個の炭素原子~50個の炭素原子(C2~50)、および少なくとも1個の炭素-炭素二重結合を有する不飽和一価炭化水素であって、親アルケンの1個の炭素原子からの1個の水素原子の除去に由来し得る不飽和一価炭化水素。アルケニル基は、分枝状、直鎖、環式(例えば、シクロアルケニル)、シスまたはトランス(例えば、EまたはZ)であり得る。
アルコキシ:-O-アルキル、-O-アルケニル、-O-アルキニル等、-O-脂肪族;例示的な実施形態は、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、t-ブトキシ、sec-ブトキシ、n-ペントキシ(かかる基の脂肪族構成成分のいずれかは、二重もしくは三重結合を含んでいなくてよい、または1個もしくは複数の二重および/もしくは三重結合を含んでいてよい)を含むがこれらに限定されない。
アルキル:1~25個の炭素原子(C1~25)または1~10個の炭素原子(C1~10)等、少なくとも1個の炭素原子~50個の炭素原子(C1~50)を有する飽和一価炭化水素であって、親化合物(例えば、アルカン)の1個の炭素原子からの1個の水素原子の除去に由来し得る飽和一価炭化水素。アルキル基は、分枝状、直鎖または環式(例えば、シクロアルキル)であり得る。
アルキニル:2~25個の炭素原子(C2~25)または2~10個の炭素原子(C2~10)等、少なくとも2個の炭素原子~50個の炭素原子(C2~50)、および少なくとも1個の炭素-炭素三重結合を有する不飽和一価炭化水素であって、親アルキンの1個の炭素原子からの1個の水素原子の除去に由来し得る不飽和一価炭化水素。アルキニル基は、分枝状、直鎖または環式(例えば、シクロアルキニル)であり得る。
解毒薬:毒の影響を中和または相殺する薬剤。
アミド:-C(O)NRまたは-NRC(O)R(式中、RおよびRのそれぞれは独立して、水素、脂肪族、ヘテロ脂肪族、ハロ脂肪族、ハロヘテロ脂肪族、芳香族または有機官能基から選択される)。
アミノ:-NR(式中、RおよびRのそれぞれは独立して、水素、脂肪族、ヘテロ脂肪族、ハロ脂肪族、ハロヘテロ脂肪族、芳香族または有機官能基から選択される)。
芳香族:他に指定がなければ、単環(例えば、フェニル)、または少なくとも1個の環が芳香族である複数の縮合環(例えば、ナフチル、インドリルまたはピラゾロピリジニル)を有する5~15個の環原子の、環式の共役基または部分;すなわち、少なくとも1個の環および必要に応じて複数の縮合環は、連続的な非局在化π-電子系を有する。典型的には、面外(out of plane)π-電子の数は、ヒュッケル法に対応する(4n+2)。親構造への結合点は典型的に、縮合環系の芳香族部分を介する。例えば、
Figure 2022520129000004
。しかし、ある特定の例では、本開示の文脈または表現は、結合点が、縮合環系の非芳香族部分を介することを指し示すことができる。例えば、
Figure 2022520129000005
。芳香族基または部分は、アリール基または部分に等、環に炭素原子のみを含むことができる、またはヘテロアリール基または部分に等、1個または複数の環炭素原子、および孤立電子対の電子を含む1個または複数の環ヘテロ原子(例えば、S、O、N、PまたはSi)を含むことができる。芳香族基は、脂肪族、ヘテロ脂肪族、ハロ脂肪族、ハロヘテロ脂肪族、芳香族または有機官能基等、水素以外の1個または複数の基で置換されていてよい。
アリール:単環または複数の縮合環を有する、5~10個の炭素原子(C~C10)等、少なくとも5個の炭素原子~15個の炭素原子(C~C15)を含む芳香族炭素環式基であり、本明細書に開示されている化合物の残っている位置への結合点が、芳香族炭素環式基の原子を介することを条件として、この縮合環は、芳香族であってもそうでなくてもよい。アリール基は、脂肪族、ヘテロ脂肪族、ハロ脂肪族、ハロヘテロ脂肪族、芳香族または有機官能基等、水素以外の1個または複数の基で置換されていてよい。
アロキシ:-O-芳香族。
アゾ:-N=NR(式中、Rは、水素、脂肪族、ヘテロ脂肪族、ハロ脂肪族、ハロヘテロ脂肪族、芳香族または有機官能基である)。
カルバメート:-OC(O)NR(式中、RおよびRのそれぞれは独立して、水素、脂肪族、ヘテロ脂肪族、ハロ脂肪族、ハロヘテロ脂肪族、芳香族または有機官能基から選択される)。
カルボキシル:-C(O)OH。
カルボキシレート:-C(O)Oまたはその塩であり、カルボキシレート基の負電荷は、M対イオンとバランスを取ることができ、Mは、K、Na、Li等のアルカリイオン;N(R(式中、Rは、H、脂肪族、ヘテロ脂肪族、ハロ脂肪族、ハロヘテロ脂肪族または芳香族である)等のアンモニウムイオン;または[Ca2+0.5、[Mg2+0.5または[Ba2+0.5等のアルカリ土類イオンであり得る。
シアノ:-CN。
一酸化炭素(CO):十分に高い濃度で遭遇するとヒトおよび動物にとって毒性がある無色、無臭および無味のガス。COはまた、正常な動物代謝においても低レベルで産生される。
一酸化炭素ヘモグロビン(HbCOまたはCO-Hb):COが吸入されるまたは正常な代謝において産生されると赤血球細胞において形成する、一酸化炭素(CO)およびヘモグロビン(Hb)の安定した複合体。
一酸化炭素ヘモグロビン血症または一酸化炭素中毒:血液中の過剰量の一酸化炭素の存在に起因する状態。典型的には、100百万分率(ppm)またはそれよりも高いCOへの曝露は、一酸化炭素ヘモグロビン血症を引き起こすのに十分である。軽度急性CO中毒の症状は、意識朦朧、錯乱、頭痛、回転性めまいおよびインフルエンザ様効果を含む;より大規模な曝露は、中枢神経系および心臓の著しい毒性を、さらには死亡をもたらし得る。急性中毒に続いて、長期後遺症が発生することが多い。一酸化炭素は、妊婦の胎児における重篤な効果を有することもできる。低レベルの一酸化炭素への慢性曝露は、うつ、錯乱および記憶喪失をもたらし得る。一酸化炭素は主に、ヘモグロビンと組み合わせて血液中に一酸化炭素ヘモグロビン(HbCO)を形成することにより、ヒトにおける有害効果を引き起こす。これは、ヘモグロビンへの酸素結合を防止し、血液の酸素運搬能力を低下させ、低酸素をもたらす。その上、ミオグロビンおよびミトコンドリアチトクロムcオキシダーゼは、有害に影響されると考えられる。一酸化炭素ヘモグロビンは、ヘモグロビンに復帰することができるが、HbCO複合体は相当に安定しているため、回復に時間がかかる。CO中毒のための現在の処置方法は、100%酸素を投与するまたは高圧酸素療法を提供するステップを含む。
接触:直接的な物理的会合での設置;固体および液体形態の両方を含む。in vivo方法の文脈において使用される場合、「接触」は、投与も含む。
シアン化物中毒:シアン化水素ガスおよびシアン化物塩等、シアン化物の一部の形態への曝露に起因する中毒の1種。シアン化物中毒は、住宅火災による煙の吸入、金属研磨、特定の殺虫剤およびある特定の種子(リンゴ種子等)への曝露から発生し得る。シアン化物中毒の初期症状は、頭痛、めまい、速い心拍、息切れおよび嘔吐を含む。より後期の症状は、てんかん発作、ゆっくりした心拍、低い血圧、意識喪失および心停止を含む。
サイトグロビン:あらゆる組織において遍在性に発現されるグロビン分子。サイトグロビンは、組織を通した酸素の拡散を容易にして、亜硝酸塩を一酸化窒素に還元すること、ならびに低酸素性条件および酸化的ストレス条件下で細胞保護的役割を果たすことが報告された六配位(hexacoordinate)ヘモグロビンである。
ジスルフィド:-SSR(式中、Rは、水素、脂肪族、ヘテロ脂肪族、ハロ脂肪族、ハロヘテロ脂肪族、芳香族または有機官能基から選択される)。
ジチオカルボン酸:-C(S)SR(式中、Rは、水素、脂肪族、ヘテロ脂肪族、ハロ脂肪族、ハロヘテロ脂肪族、芳香族または有機官能基から選択される)。
エステル:-C(O)ORまたは-OC(O)R(式中、Rは、脂肪族、ヘテロ脂肪族、ハロ脂肪族、ハロヘテロ脂肪族、芳香族または有機官能基から選択される)。
エーテル:-脂肪族-O-脂肪族、-脂肪族-O-芳香族、-芳香族-O-脂肪族または-芳香族-O-芳香族。
グロビン:酸素の結合および/または輸送に関与するヘム含有タンパク質。グロビンは、例えば、ヘモグロビン、ミオグロビン、ニューログロビンおよびサイトグロビンを含む。グロビン分子は、例えば、ヒト、ウシまたは他の生体に起源を持つヘモグロビン(Hb);濃縮赤血球細胞;および例えば、ヒト、ウシまたは他の生体に起源を持つミオグロビンを含む。
ハロ(またはハロゲン化物もしくはハロゲン):フルオロ、クロロ、ブロモまたはヨード。
ハロ脂肪族:1~10個の水素原子等の1個または複数の水素原子が独立してフルオロ、ブロモ、クロロまたはヨード等のハロゲン原子に置き換えられた、脂肪族基。
ハロ脂肪族-アリール:本明細書に開示されている化合物にカップリングされているまたはカップリングすることができるアリール基であって、ハロ脂肪族基を介してカップリングされているまたはカップリングされるようになるアリール基。
ハロ脂肪族-ヘテロアリール:本明細書に開示されている化合物にカップリングされているまたはカップリングすることができるヘテロアリール基であって、ハロ脂肪族基を介してカップリングされているまたはカップリングされるようになるヘテロアリール基。
ハロアルキル:1~10個の水素原子等の1個または複数の水素原子が独立してフルオロ、ブロモ、クロロまたはヨード等のハロゲン原子に置き換えられた、アルキル基。独立した実施形態では、ハロアルキルは、CX基(式中、各Xは独立して、フルオロ、ブロモ、クロロまたはヨードから選択することができる)であり得る。
ヘモシアニン:一部の無脊椎動物の全身に酸素を輸送するタンパク質の1種。ヘモシアニンは、単一の酸素分子に可逆的に結合する2個の銅原子を含有する金属タンパク質である。ヘモシアニンは、Mollusca門およびArthropoda門のみに見出される。
ヘモグロビン(Hb):脊椎動物および他の動物の赤血球細胞における鉄含有酸素輸送金属タンパク質。ヒトにおいて、ヘモグロビン分子は、4個の球状タンパク質サブユニットのアセンブリである。各サブユニットは、非タンパク質ヘム基と緊密に会合したタンパク質鎖で構成される。各タンパク質鎖は、グロビンフォールド配置となるよう一体に接続された1組のアルファ-ヘリックス構造セグメントへと並び、この配置は、他のヘム/グロビンタンパク質において使用される同じフォールディングモチーフであるため、このように呼ばれる。このフォールディングパターンは、ヘム基に強く結合するポケットを含有する。本開示の文脈において、「緊張した状態」のヘモグロビン等のグロビンは、「T状態」のグロビンであり、「弛緩した状態」のヘモグロビン等のグロビンは、R状態のグロビンである(図1を参照)。β-Asp94およびβ-His146の間ならびにβ-His146およびα-Lys40の間の塩橋は、ヘモグロビンのT状態の生成に役立つ。特定の反応物(NEM等)によるβ-Cys93の修飾が、これらの塩橋を破壊し、HbをR状態に変換することが本明細書に開示されている。R状態のHbは、T状態のHbと比較して、酸素およびCOに対する増加した親和性を保有する。本明細書で使用される場合、「剥離ヘモグロビン」または「StHb」は、2,3-DPGを欠如するまたは実質的に欠如するヘモグロビンを指す。StHbは、R状態でも見出される。
ヘテロ脂肪族:基の中に、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、ホウ素、セレン、リン(phosphorous)およびこれらの酸化型から選択することができるがこれらに限定されない、1~15個のヘテロ原子または1~5個のヘテロ原子等、少なくとも1個のヘテロ原子~20個のヘテロ原子を含む脂肪族基。アルコキシ、エーテル、アミノ、ジスルフィド、ペルオキシおよびチオエーテル基は、ヘテロ脂肪族の例示的な(ただし非限定的な)例である。一部の実施形態では、フルオロフォアは、ヘテロ脂肪族基が複素環基である場合等、ヘテロ脂肪族基として本明細書に記載されることもある。
ヘテロ脂肪族-アリール:本明細書に開示されている化合物にカップリングされているまたはカップリングすることができるアリール基であって、ヘテロ脂肪族基を介してカップリングされているまたはカップリングされるようになるアリール基。
ヘテロアリール:環の中に、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、ホウ素、セレン、リンおよびこれらの酸化型から選択することができるがこれらに限定されない、1~4個のヘテロ原子等、少なくとも1個のヘテロ原子~6個のヘテロ原子を含むアリール基。かかるヘテロアリール基は、単環または複数の縮合環を有することができ、結合点が芳香族ヘテロアリール基の原子を介することを条件として、縮合環は、芳香族であってもそうでなくてもよく、および/またはヘテロ原子を含有する。ヘテロアリール基は、脂肪族、ヘテロ脂肪族、ハロ脂肪族、ハロヘテロ脂肪族、芳香族または有機官能基等、水素以外の1個または複数の基で置換されていてよい。一部の実施形態では、フルオロフォアは、ヘテロアリール基として本明細書に記載されることもある。
ヘテロ原子:酸素、窒素、硫黄、ケイ素、ホウ素、セレンまたはリン等(ただしこれらに限定されない)、炭素または水素以外の原子。原子価制約が許容しない場合等、特定の開示されている実施形態では、ヘテロ原子は、ハロゲン原子を含まない。
異種:異種タンパク質またはポリペプチドは、異なる供給源または種に由来するタンパク質またはポリペプチドを指す。
硫化水素中毒:硫化水素(HS)への過剰曝露に起因する中毒の1種。HSは、ミトコンドリアチトクロム酵素における鉄に結合し、細胞呼吸を妨げる。より低い濃度のHSへの曝露は、眼刺激、咽頭炎、咳嗽、悪心、息切れ、肺水腫、疲労、食欲不振、頭痛、易刺激性、記憶障害およびめまいを引き起こし得る。より高いレベルの曝露は、即時虚脱、呼吸不能および死亡を引き起こし得る。
単離された:「単離された」生物学的構成成分(グロビン、核酸分子、タンパク質または細胞等)は、他の染色体および染色体外DNAおよびRNA、タンパク質ならびに細胞等、構成成分が天然に存在する生物の細胞、血液もしくは組織または生物それ自体における他の生物学的構成成分から実質的に分離または精製されている。「単離された」核酸分子およびグロビン等のタンパク質は、標準精製方法によって精製されたものを含む。この用語は、宿主細胞における組換え発現によって調製された核酸分子およびグロビン等のタンパク質、ならびに化学合成された核酸分子およびグロビン等のタンパク質も包括する。
ケトン:-C(O)R(式中、Rは、脂肪族、ヘテロ脂肪族、ハロ脂肪族、ハロヘテロ脂肪族、芳香族または有機官能基から選択される)。
メトヘモグロビン:ヘム構成成分における鉄が、二価鉄(+2)から三価鉄(+3)状態へと酸化された、酸化型のヘモグロビン。この状態は、ヘモグロビン分子を、酸素を組織に有効に輸送し放出することができなくする。正常では、総ヘモグロビンの約1%がメトヘモグロビン型で存在する。
ミオグロビン(Mb):タンパク質のグロビンファミリーのメンバー。ミオグロビンは、全ての脊椎動物およびほぼ全ての哺乳動物の筋肉組織に見出される鉄および酸素結合タンパク質である。ヒトにおいて、ミオグロビンは、筋肉傷害後の血流にのみ見出される。ヘモグロビンとは異なり、ミオグロビンは、酸素に対する1個の結合部位のみを含有する(タンパク質の1個のヘム基において)が、酸素に対するその親和性は、酸素に対するヘモグロビンの親和性よりも優れている。
ニューログロビン(Ngb):タンパク質のグロビンファミリーのメンバー。ニューログロビンの生理的機能は、現在不明であるが、低酸素性または虚血性条件下で保護をもたらすと考えられる。ニューログロビンは、中枢および末梢神経系、脳脊髄液、網膜ならびに内分泌組織において発現される。
有機官能基:脂肪族、ヘテロ脂肪族、芳香族、ハロ脂肪族および/もしくはハロヘテロ脂肪族基のいずれかの組合せによって提供され得る、またはアルデヒド;アロキシ;ハロゲン化アシル;ハロゲン;ニトロ;シアノ;アジド;カルボキシル(またはカルボキシレート);アミド;ケトン;カーボネート;イミン;アゾ;カルバメート;ヒドロキシル;チオール;スルホニル(またはスルホネート(sulfonate));オキシム;エステル;チオシアネート;チオケトン;チオカルボン酸;チオエステル;ジチオカルボン酸もしくはエステル;ホスホネート;ホスフェート;シリルエーテル;スルフィニル;チアル;もしくはこれらの組合せから選択され得るがこれらに限定されない、官能基。
酸化剤:別の物質から電子を受容する(物質を「酸化する」とも称される)ことができる物質。酸化剤は、化学反応において電子を獲得し、還元される。酸化剤は、「電子受容体」としても公知である。
オキシム:-CR=NOH(式中、Rは、水素、脂肪族、ヘテロ脂肪族、ハロ脂肪族、ハロヘテロ脂肪族、芳香族または有機官能基である)。
酸素担体:身体内で酸素に結合、輸送および放出することができる分子または化合物。酸素担体は、ヘモグロビン、ミオグロビンおよびヘモシアニン等の天然タンパク質、ならびにヘモグロビンに基づく酸素担体(HBOC)、パーフルオロカーボン(PFC)、リポソーム被包ヘモグロビンおよびポルフィリン金属錯体を含む人工酸素担体を含む。
ペプチドまたはポリペプチド:アミド結合を介して一体に連接されたモノマーがアミノ酸残基であるポリマー。アミノ酸がアルファ-アミノ酸である場合、L-光学異性体またはD-光学異性体のいずれが使用されてもよいが、L-異性体が好まれる。用語「ペプチド」、「ポリペプチド」または「タンパク質」は、本明細書で使用される場合、いずれかのアミノ酸配列を包含し、修飾されたグロビンタンパク質を含む修飾された配列を含むことを意図する。用語「ペプチド」および「ポリペプチド」は、天然に存在するタンパク質と共に、組換えまたは合成により産生されたものを網羅することを特に意図する。ペプチドは、カルバミル化(例えば、アミンへの-CO付加)、アルキル化(例えば、アルキルアミン形成をもたらすメチル化)または有機カルバメート化(carbamation)(カルバメートをもたらす保護基でのアミン基の官能基化等であり、保護基は、tert-ブトキシカルボニル(carbony)(BOC)またはフルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)であり得るがこれらに限定されない)、カルバモイル化(例えば、-C(O)NH基の付加)またはこれらの組合せ等、共通末端アミノ酸修飾を含むことができる。
保存的アミノ酸置換は、それがなされる際に、元のタンパク質の特性への干渉が最少となる置換である、すなわち、かかる置換によって、タンパク質の構造および特に機能は保存され、著しく変化されない。保存的置換の例を下に示す。
Figure 2022520129000006
保存的置換は一般に、(a)例えば、シートもしくはヘリックスコンフォメーションとしての、置換の区域におけるポリペプチド骨格の構造、(b)標的部位における分子の電荷もしくは疎水性、または(c)側鎖のかさを維持する。
タンパク質特性に最も大きい変化を生ずることが一般に予想される置換が非保存的となるであろう、例えば、(a)親水性残基、例えば、セリンもしくはスレオニンが、疎水性残基、例えば、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、バリンもしくはアラニンに代えて(またはこれによって)置換される;(b)システインもしくはプロリンが、いずれか他の残基に代えて(またはこれによって)置換される;(c)正の電荷を有する側鎖を有する残基、例えば、リシン、アルギニンもしくはヒスチジンが、負の電荷を有する残基、例えば、グルタミンもしくはアスパラギン酸に代えて(またはこれによって)置換される;または(d)かさばった側鎖を有する残基、例えば、フェニルアラニンが、側鎖を持たない残基、例えば、グリシンに代えて(またはこれによって)置換される、変化が挙げられる。
ペルオキシ:-O-OR(式中、Rは、水素、脂肪族、ヘテロ脂肪族、ハロ脂肪族、ハロヘテロ脂肪族、芳香族または有機官能基である)。
薬学的に許容される担体:有用な薬学的に許容される担体は従来技術である。Remington: The Science and Practice of Pharmacy, The University of the Sciences in Philadelphia, Editor, Lippincott, Williams, & Wilkins, Philadelphia, PA, 21st Edition (2005)は、本明細書に開示されているグロビン分子および他の組成物の医薬品送達に適した組成物および製剤について記載する。一般に、担体の性質は、用いられている特定の投与機序に依存するであろう。例えば、非経口製剤は通常、水、生理的食塩水、平衡塩類溶液、デキストロース水、グリセロールその他等、薬学的にかつ生理的に許容される流体を含む注射用流体をビヒクルとして含む。固体組成物(粉末、丸剤、錠剤またはカプセル形態等)のため、従来の無毒性固体担体は、例えば、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプンまたはステアリン酸マグネシウムを含むことができる。生物学的に中性の担体に加えて、投与されるべき医薬組成物は、湿潤剤または乳化剤、保存剤およびpH緩衝剤その他、例えば、酢酸ナトリウムまたはソルビタンモノラウレート等、微量の無毒性補助的物質を含有することができる。
ホスフェート:-O-P(O)(OR(式中、各Rは独立して、水素、脂肪族、ヘテロ脂肪族、ハロ脂肪族、ハロヘテロ脂肪族、芳香族もしくは有機官能基である;または1個もしくは複数のR基は存在せず、したがってホスフェート基は、対イオン、Mによってバランスを取ることができる少なくとも1個の負電荷を有し、各Mは独立して、K、Na、Li等のアルカリイオン;N(R(式中、Rは、H、脂肪族、ヘテロ脂肪族、ハロ脂肪族、ハロヘテロ脂肪族または芳香族である)等のアンモニウムイオン;もしくは[Ca2+0.5、[Mg2+0.5もしくは[Ba2+0.5等のアルカリ土類イオンであり得る)。
ホスホネート:-P(O)(OR(式中、各Rは独立して、水素、脂肪族、ヘテロ脂肪族、ハロ脂肪族、ハロヘテロ脂肪族、芳香族もしくは有機官能基である;または1個もしくは複数のR基は存在せず、したがってホスフェート基は、対イオン、Mによってバランスを取ることができる少なくとも1個の負電荷を有し、各Mは独立して、K、Na、Li等のアルカリイオン;N(R(式中、Rは、H、脂肪族、ヘテロ脂肪族、ハロ脂肪族、ハロヘテロ脂肪族または芳香族である)等のアンモニウムイオン;もしくは[Ca2+0.5、[Mg2+0.5もしくは[Ba2+0.5等のアルカリ土類イオンであり得る)。
ポルフィリン:ヘモグロビン、クロロフィルおよびある特定の酵素における金属結合補因子として機能する、4個のピロール環を含有する有機化合物。
組換え:組換え核酸またはタンパク質は、天然に存在しない配列を有する、または配列の2個の元々分離されていたセグメントの人工的な組合せによって作製された配列を有する核酸またはタンパク質である。この人工的な組合せは、多くの場合、化学合成によってまたは核酸の単離されたセグメントの人工操作、例えば、遺伝子操作技法によって達成される。組換えという用語は、天然核酸分子またはタンパク質の部分の付加、置換または欠失によって変更された核酸およびタンパク質を含む。
還元剤:レドックス化学反応において別の化学的種に奪われて電子を失う(または「供与する」)元素または化合物。還元剤は典型的に、そのより低い可能な酸化状態の1種にあり、電子供与体として公知である。還元剤は、レドックス反応において電子を失うため、酸化される。例示的な還元剤は、亜ジチオン酸ナトリウム、アスコルビン酸、N-アセチルシステイン、メチレンブルー、グルタチオン、チトクロムb5/b5-レダクターゼ、ヒドララジン、土類金属、ギ酸および亜硫酸塩化合物を含むがこれらに限定されない。
配列同一性/類似性:2種もしくはそれよりも多い核酸配列または2種もしくはそれよりも多いアミノ酸配列の間の同一性は、配列間の同一性または類似性の観点から表現される。配列同一性は、パーセンテージ同一性の観点から測定することができる;パーセンテージが高いほど、配列はより同一となる。配列類似性は、パーセンテージ類似性(これは、保存的アミノ酸置換を考慮に入れる)の観点から測定することができる;パーセンテージが高いほど、配列はより類似となる。核酸またはアミノ酸配列のホモログまたはオルソログは、標準方法を使用して整列された場合に、相対的に高い程度の配列同一性/類似性を保有する。この相同性は、オルソロガスタンパク質またはcDNAが、より遠縁関係にある種(ヒトおよびC.elegans配列等)と比較して、より近縁関係にある種(ヒトおよびマウス配列等)に由来する場合に、より有意となる。
比較のための配列整列方法は、当技術分野で周知である。様々なプログラムおよび整列アルゴリズムは、Smith & Waterman, Adv. Appl. Math. 2:482, 1981;Needleman & Wunsch, J. Mol. Biol. 48:443, 1970;Pearson & Lipman, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:2444, 1988;Higgins & Sharp, Gene, 73:237-44, 1988;Higgins & Sharp, CABIOS 5:151-3, 1989;Corpet et al., Nuc. Acids Res. 16:10881-90, 1988;Huang et al. Computer Appls. in the Biosciences 8, 155-65, 1992;およびPearson et al., Meth. Mol. Bio. 24:307-31, 1994に記載されている。Altschul et al., J. Mol. Biol. 215:403-10, 1990は、配列整列方法および相同性計算について詳細な考察を発表する。
NCBI基本的局所アライメント検索ツール(Basic Local Alignment Search Tool)(BLAST)(Altschul et al., J. Mol. Biol. 215:403-10, 1990)は、配列解析プログラムblastp、blastn、blastx、tblastnおよびtblastxと接続した使用のための、アメリカ国立生物工学情報センター(National Center for Biological Information)(NCBI)およびインターネット上を含むいくつかの供給源から入手することができる。追加的な情報は、NCBIウェブサイトに見出すことができる。
シリルエーテル:-OSiR(式中、RおよびRのそれぞれは独立して、水素、脂肪族、ヘテロ脂肪族、ハロ脂肪族、ハロヘテロ脂肪族、芳香族または有機官能基から選択される)。
対象:脊椎動物生物を含む生きている多細胞生物であり、ヒトおよび非ヒト哺乳動物の両方を含むカテゴリーである。
2,3-ジホスホグリセレートを実質的に含まない:仮に存在するとしても、ごく微量の構成成分または不純物として2,3-ジホスホグリセレートを含有する、単離された修飾されたグロビン分子(単離された修飾されたヘモグロビン等)。一般に、この用語は、0.1%未満、0.01%未満または本質的に0%の2,3-ジホスホグリセレート等、1%未満の2,3-ジホスホグリセレートを含有することを指す。
スルフィニル:-S(O)R(式中、Rは、水素、脂肪族、ヘテロ脂肪族、ハロ脂肪族、ハロヘテロ脂肪族、芳香族または有機官能基から選択される)。特定の開示されている実施形態では、スルフィニル基は、構造-S(O)R(式中、Rは、OH基である)を有するスルフィン酸;または構造-S(O)R(式中、Rは、脱プロトン化されたOH基であり、脱プロトン化酸素原子の負電荷は、M対イオンとバランスを取ることができ、Mは、K、Na、Li等のアルカリイオン;N(R(式中、Rは、H、脂肪族、ヘテロ脂肪族、ハロ脂肪族、ハロヘテロ脂肪族または芳香族である)等のアンモニウムイオン;または[Ca2+0.5、[Mg2+0.5もしくは[Ba2+0.5等のアルカリ土類イオンであり得る)を有するスルフィネート(sulfinate)であり得る。さらに一部の追加的な実施形態では、スルフィニル基は、スルフェン酸(-S(O)H)またはその共役塩基であり得る。
スルホニル:-SO(式中、Rは、水素、脂肪族、ヘテロ脂肪族、ハロ脂肪族、ハロヘテロ脂肪族、芳香族または有機官能基から選択される)。特定の開示されている実施形態では、スルホニル基は、構造-S(O)(式中、Rは、OH基である)を有するスルホン酸;または構造-S(O)(式中、Rは、脱プロトン化されたOH基であり、脱プロトン化酸素原子の負電荷は、M対イオンとバランスを取ることができ、Mは、K、Na、Li等のアルカリイオン;N(R(式中、Rは、H、脂肪族、ヘテロ脂肪族、ハロ脂肪族、ハロヘテロ脂肪族または芳香族である)等のアンモニウムイオン;または[Ca2+0.5、[Mg2+0.5もしくは[Ba2+0.5等のアルカリ土類イオンであり得る)を有するスルホネートであり得る。
スルホンアミド:-SONRまたは-N(R)SO(式中、RおよびRのそれぞれは独立して、水素、脂肪族、ヘテロ脂肪族、ハロ脂肪族、ハロヘテロ脂肪族、芳香族または有機官能基から選択される)。
スルホネート:-SO (式中、スルホネート基の負電荷は、M対イオンとバランスを取ることができ、Mは、K、Na、Li等のアルカリイオン;N(R(式中、Rは、H、脂肪族、ヘテロ脂肪族、ハロ脂肪族、ハロヘテロ脂肪族または芳香族である)等のアンモニウムイオン;または[Ca2+0.5、[Mg2+0.5もしくは[Ba2+0.5等のアルカリ土類イオンであり得る)。
合成:研究室で人工的な手段によって産生されること、例えば、合成ポリペプチドは、研究室で化学合成することができる。
治療上許容される塩:水または油に可溶性または分散性であり、本明細書に定義されている通り治療上許容される、本明細書に開示されている化合物の塩または双性イオン形態。塩は、遊離塩基の形態の適切な化合物を適した酸と反応させることにより、化合物の最終単離および精製の際に、または別々に調製することができる。代表的な酸付加塩は、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、L-アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホネート(ベシレート)、重硫酸塩、酪酸塩、カンホレート(camphorate)、カンフルスルホネート(camphorsulfonate)、クエン酸塩、ジグルコネート(digluconate)、ギ酸塩、フマル酸塩、ゲンチシン酸塩、グルタル酸塩、グリセロホスフェート、グリコール酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、馬尿酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホネート(イセチオン酸塩)、乳酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、DL-マンデル酸塩、メシチレンスルホネート、メタンスルホネート、ナフチレンスルホネート、ニコチン酸塩、2-ナフタレンスルホネート、シュウ酸塩、パモ酸塩、ペクチネート(pectinate)、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩(proprionate)、ホスホネート、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ピログルタミン酸塩、コハク酸塩、スルホネート、酒石酸塩、L-酒石酸塩、トリクロロ酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、ホスフェート、グルタミン酸塩、重炭酸塩、パラ-トルエンスルホネート(p-トシレート)およびウンデカン酸塩を含む。また、本明細書に開示されている化合物における塩基性基は、塩化、臭化およびヨウ化メチル、エチル、プロピルおよびブチル;硫酸ジメチル、ジエチル、ジブチルおよびジアミル;塩化、臭化およびヨウ化デシル、ラウリル、ミリスチルおよびステリル;ならびに臭化ベンジルおよびフェネチルにより四級化され得る。治療上許容される付加塩の形成に用いることができる酸の例は、塩酸、臭化水素酸、硫酸およびリン酸等の無機酸、ならびにシュウ酸、マレイン酸、コハク酸およびクエン酸等の有機酸を含む。塩は、アルカリ金属またはアルカリ土類イオンによる化合物の配位によって形成される場合もある。したがって、本発明は、本明細書に開示されている化合物のナトリウム、カリウム、マグネシウムおよびカルシウム塩その他を企図する。
治療有効量:処置されている対象における所望の効果の達成に十分な化合物または組成物、例えば、修飾されたグロビンの含量。例えば、これは、血液または組織における一酸化炭素のスカベンジング、血液におけるHbCOのレベルの低下、および/または一酸化炭素中毒に関連する1種もしくは複数の徴候もしくは症状の低下に必要な量であり得る。一部の例では、治療有効量は、血液におけるHbCOのレベルの、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%または少なくとも95%の低下に必要な量である。開示されている修飾されたヘモグロビン分子は、広い投薬量範囲にわたって有効であり、例えば、1日当たりの投薬量は、通常は、0.001~2000mg/kgの範囲、より一般的には、0.01~1000mg/kgの範囲内に納まるであろう。しかし、投与される有効量が、医師によって、処置されるべき状態、投与されるべき化合物の選択および選択される投与経路を含む関連する状況に照らして決定され、したがって、上述の投薬量範囲が、限定を意図するものではないことが理解されるであろう。化合物の治療有効量は典型的に、生理的に耐容できる賦形剤組成物において投与される場合、有効な全身性濃度または組織における局所的濃度の達成に十分となるような量である。
チアル:-C(S)H。
チオカルボン酸:-C(O)SHまたは-C(S)OH。
チオシアネート:-S-CNまたは-N=C=S。
チオエステルまたはチオノエステル:-C(O)SRまたは-C(S)OR(式中、Rは、水素、脂肪族、ヘテロ脂肪族、ハロ脂肪族、ハロヘテロ脂肪族、芳香族または有機官能基から選択される)。
チオエーテル:-S-アルキル、-S-アルケニル、-S-アルキニル、-S-アリールもしくは-S-ヘテロアリール等、-S-脂肪族もしくは-S-芳香族;または-脂肪族-S-脂肪族、-脂肪族-S-芳香族、-芳香族-S-脂肪族もしくは-芳香族-S-芳香族。
チオケトン:-C(S)R(式中、Rは、水素、脂肪族、ヘテロ脂肪族、ハロ脂肪族、ハロヘテロ脂肪族、芳香族または有機官能基から選択される)。
III.修飾されたグロビン分子およびその組成物
修飾されたグロビン分子およびかかる分子を含む組成物が本明細書に開示されている。一部の実施形態では、ミオグロビンまたはヘモグロビン等のグロビンを含む組成物が開示されており、グロビンの少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%または少なくとも約99%は、弛緩した状態(R状態)である。修飾されたグロビン分子は、ヒトまたは獣医学的な種等、いずれかの哺乳動物種に由来し得る。ヘモグロビンまたはミオグロビン等の修飾されたグロビン分子は、ヒト、ウシ、イヌまたはブタのものであり得、血液から単離することができる。
緊張した(T)および弛緩した(R)状態のヘモグロビンの生化学的特性を下に提示する。
Figure 2022520129000007
一部の実施形態では、組成物は、ヘモグロビンを含み、ヘモグロビンは、2,3-ジホスホグリセレート(2,3-DPG)を実質的に含まない。一部の実施形態では、Hbは、0.1%未満、0.01%未満または本質的に0%の2,3-DPG等、1%未満の2,3-DPGを有する。一部の実施形態では、組成物は、0.1%未満、0.01%未満または本質的に0%の2,3-DPGを含む。
脊椎動物におけるヘモグロビンのアミノ酸配列は、高度に保存されている(参照により本明細書に組み込むVitturi et al., Free Radic Biol Med 55:119-129, 2013)。ヘモグロビンのβ-93システイン(β93Cys)残基は、例えば、ヒトおよびイヌにおいて同様の機能を有する(参照により本明細書に組み込むAcharya et al., Biochem J 405: 503-511, 2007)。ヒトアルファサブユニットのアミノ酸配列は、GENBANK(登録商標)受託番号NP_0005049.1(配列番号1)に開示されており、ヒトベータサブユニットは、GENBANK(登録商標)受託番号CAG38767.1(配列番号2)に開示されている。DNA配列は、GENBANK受託番号DQ659148.1(配列番号17)に開示されている。ヒトおよび種々の異なる種由来のヘモグロビンアルファおよびベータサブユニットのアミノ酸配列は、下に提示されており、配列番号1~16として本明細書に示されている。ヘモグロビンのアルファおよびベータサブユニットの成熟型は、N末端メチオニン残基を欠如し、この残基は、タンパク質合成後に除去されて、成熟型を産生する。Lys40、Cys93、Asp94およびHis146について本明細書に使用されるナンバリングは、タンパク質の成熟型における位置を指す。例えば、Lys40は、配列番号1(ヒトヘモグロビンアルファサブユニットの未成熟型)において41位に存在するが、プロセシング後に、リシンは、40位に存在するであろう。
Figure 2022520129000008
Figure 2022520129000009
Figure 2022520129000010
Figure 2022520129000011
Figure 2022520129000012
Figure 2022520129000013
β-Asp94およびβ-His146の間ならびにβ-His146およびα-Lys40の間の塩橋が、ヘモグロビン(Hb)のT状態の生成に役立つことが本明細書に開示されている。NEM、N-アセチルシステイン、システイン、グルタチオン、3-メルカプト-1,2,3-トリアゾール、2-メルカプト-ピリジルまたは同様の分子による等が挙げられるがこれらに限定されない、Hbのβ-Cys93残基の共有結合修飾は、これらの塩橋を中断し、HbのR状態を安定化することによりOおよびCOに対する親和性を増加させる。下に開示する方法のいずれかを使用して、本組成物中に含まれ得る共有結合で修飾されたHbを調製することができる。
他の実施形態では、修飾されたヘモグロビンは、哺乳動物の血液から単離されたまたは合成により産生されたヘモグロビン等の単離されたヘモグロビンを、本明細書に開示されているいずれか適した反応物と反応させることにより産生される。ジスルフィド結合切断、アルキル化(例えば、メチル化または他のアルキル含有基の付加)、チオール-エン反応(または、β-Cys93残基のチオール基が、ラジカル開始剤または他の触媒と組み合わせたアルケン含有化合物と反応させられる、アルケンヒドロチオール化、これは「クリック」ケミストリー反応の実施形態として当業者に公知である)、S-ニトロソ化(一酸化窒素基が、β-Cys93残基のチオール基に共有結合される)またはこれらのいずれかの組合せ等、いずれか適した反応条件を使用して、Hbおよび反応物を組み合わせることができる。
一部の実施形態では、修飾されたヘモグロビンは、図1に説明されている構造を有する修飾されたヘモグロビン(「R状態Hb」の描写を参照)をもたらすように、本明細書に記載されている反応物により修飾することができる。反応物は、炭素-硫黄結合形成または硫黄-硫黄結合形成を介して、Cys93チオール部分に共有結合で結合されるようになることができる;Cys93-S-R’(式中、R’は下記の通りである):
Figure 2022520129000014
修飾されたヘモグロビンは、β-Cys93またはβ-Asp94塩橋パートナーβ-His146またはその他方の塩橋パートナーα-Lys40の修飾または除去をもたらす、組換え由来のヘモグロビンであり得る。さらなる実施形態では、修飾されたヘモグロビンは、塩橋を防止するような、β-Asp94、α-Lys40(カルバミル化またはカルバモイル化等)および/またはβ-His146残基の修飾を含み、この塩橋は、さもなければ、修飾されたβ-Cys93によって中断されるであろう。かかる実施形態では、β-Cys93は、中断を容易にするために、塩橋に関与する必要はない(すなわち、塩橋に結合されるまたは塩橋といずれかの静電相互作用を形成する必要はない)。さらなる実施形態では、α-Ala88残基は、それぞれT状態を不安定化する、α-Tyr140、β-Pro36およびβ-Trp37の間の水素結合の破壊、またはα-His89への新たな水素結合をもたらす、Cys88またはSer88等、極性またはプロトン性アミノ酸に修飾することができる。
その上、剥離ヘモグロビンへの亜鉛の添加、またはこれらの修飾されたヘモグロビン分子のいずれかへの亜鉛の添加は、酸素に対するそれらの親和性をさらに増加させるように機能することができる(Rifkind et al., Biochemistry 1977 Oct 4;16(20):4438-43)。
追加的な実施形態では、ネイティブヘモグロビンよりも有効に一酸化炭素中毒を処置する分子が開示されている。これらの2,3-DPGを含まない特異的に修飾されたヘモグロビンは、赤血球細胞被包Hb、およびミトコンドリアにおける複合体IV等のヘム含有タンパク質由来のCOに優先的に結合する。R型のヘモグロビンは、T状態よりも緊密なCO結合およびより効率的なCOスカベンジングを可能にする。ヒト赤血球細胞に見出される赤血球2,3-DPGは、HbのT-状態を安定化する。R状態Hbをもたらす、2,3-DPGを欠如する剥離ヘモグロビン(StHb)は、酸素およびCOに対する増加した親和性を保有する。β-Cys93において修飾されたヒト、ウシ、ブタ、ウマまたはイヌヘモグロビン等が挙げられるがこれらに限定されない、開示されているヘモグロビンを同様に使用することができる。一部の実施形態では、β-Cys93は、本明細書に開示されている反応物のうちいずれか1種または複数により、共有結合で修飾される。一部のかかる実施形態では、ヘモグロビンは、
Figure 2022520129000015
(式中、
各Xは独立して、酸素、硫黄、NRまたはCRR’から選択され、各RおよびR’は独立して、水素、脂肪族、ヘテロ脂肪族、ハロ脂肪族、ハロヘテロ脂肪族、芳香族またはこれらの組合せであり;
は、水素、脂肪族、ヘテロ脂肪族、ハロ脂肪族、ハロヘテロ脂肪族、芳香族またはこれらの組合せであり;
A、B、CおよびDのそれぞれは独立して、C、CR、N、NRまたはOであり、RおよびRのそれぞれは独立して、水素、脂肪族、ヘテロ脂肪族、ハロ脂肪族、ハロヘテロ脂肪族、芳香族またはこれらの組合せであり;
A’は、N、CRまたはCHであり;
各Rは独立して、脂肪族、ヘテロ脂肪族、芳香族、有機官能基またはこれらのいずれかの組合せであり;
mは、0~5の範囲の整数であり;
、RおよびRのそれぞれは独立して、水素、脂肪族、ヘテロ脂肪族、ハロ脂肪族、ハロヘテロ脂肪族、芳香族またはこれらの組合せであり;
点線は、図示されている酸素原子およびR基の間の必要に応じた結合を指し示し;
pは、1または0であり得、pが0の場合、窒素原子は、他のR基と同じまたは異なり得る第2のR基にさらに結合され;
各Rは独立して、水素、脂肪族、ヘテロ脂肪族、ハロ脂肪族、ハロヘテロ脂肪族、芳香族またはこれらの組合せであり;
各Rは独立して、水素、脂肪族、ヘテロ脂肪族、ハロ脂肪族、ハロヘテロ脂肪族、芳香族またはこれらの組合せであり;
Cys93は、ヘモグロビンのβ-Cys93である)
から選択される構造を有することができる。
特定の開示されている実施形態では、β-Cys93は、
Figure 2022520129000016
(式中、Cys93は、ヘモグロビンのβ-Cys93である)
から選択される構造を有するように共有結合で修飾される。
一部の実施形態では、ヘモグロビンは、官能基化されたアミン部分を含む末端アミノ酸を含むことができる。一部の実施形態では、官能基化されたアミン部分は、カルバミル化され(例えば、アミンへの-CO付加)、アルキル化され(例えば、アルキルアミン形成をもたらすメチル化)、カルバメート化により保護され(カルバメートをもたらす保護基でのアミン基の官能基化等であり、保護基は、tert-ブトキシカルボニル(BOC)またはフルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)であり得るがこれらに限定されない)、カルバモイル化され(例えば、-C(O)NH基の付加)、またはこれらの組合せであってもよい。
後述する方法を使用して調製された修飾されたヘモグロビンのうち1種または複数が、限定することなく、組成物中に含まれてよい。
一部の実施形態では、その1種または複数の薬学的に許容される担体および必要に応じて1種または複数の他の治療成分と共に、本明細書に開示されている修飾されたヘモグロビンまたはその誘導体等の1種または複数の修飾されたグロビンを含む医薬組成物が開示されている。賦形剤(複数可)/担体(複数可)は、製剤の他の成分と適合性であり、そのレシピエントにとって有害ではないという意味において「許容され」なければならない。医薬組成物の適正な製剤は、選択された投与経路に依存する。当技術分野で適切かつ理解される通り、周知技法および賦形剤のいずれかを使用することができる。一部の実施形態では、組成物は、次の賦形剤のうち1種または複数を含む:N-アセチルシステイン、クエン酸ナトリウム、グリシン、ヒスチジン、グルタミン酸、ソルビトール、マルトース、マンニトール、トレハロース、ラクトース、グルコース、ラフィノース、デキストロース、デキストラン、フィコール、ゼラチン、ヒドロキシエチルデンプン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ベンジルアルコール、クロロブタノール、m-クレゾール、ミリスチルガンマ-塩化ピコリニウム(picolinium chloride)、パラベンメチル、パラベンプロピル、2-フェノキシエタノール(penoxythanol)、フェニル硝酸第2水銀、チメロサール、アセトン重亜硫酸ナトリウム、アルゴン、パルミチン酸アスコルビル、アスコルビン酸塩(ナトリウム/酸)、重亜硫酸ナトリウム、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、システイン/システイネート(cysteinate)HCl、亜ジチオン酸ナトリウム(Naハイドロサルファイト、Naスルホキシル酸)、ゲンチシン酸、ゲンチシン酸エタノールアミン、グルタミン酸ナトリウム、グルタチオン、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、メタ重亜硫酸カリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、メチオニン、モノチオグリセロール(チオグリセロール)、窒素、プロピル没食子酸塩、亜硫酸ナトリウム、トコフェロールアルファ、アルファトコフェロール水素コハク酸塩(hydrogen succinate)およびチオグリコール酸ナトリウム。本開示は、参照により本明細書に組み込むPramanick et al., Pharma Times 45(3): 65-77, 2013に開示されているいずれかを含む他の賦形剤も企図する。
本明細書に開示されている医薬組成物は、当技術分野で公知のいずれかの様式で、例えば、従来の混合、溶解、造粒、糖衣錠(dragee)作製、研和(levigating)、乳化、カプセル被包、封入または圧縮プロセスを用いて製造することができる。一部の実施形態では、本明細書における実施形態に従った使用のための医薬組成物は、1種または複数の生理的に許容される担体を使用した従来の様式で製剤化することができる。組成物は、薬学技術分野で周知の様式で調製することができ、局所的または全身性処置が所望であるか、および処置されるべき区域に依存して種々の経路によって投与することができる。
組成物は、非経口(皮下、皮内、筋肉内、静脈内、関節内および髄内を含む)または腹腔内投与に適した組成物を含むが、最も適した経路は、例えば、レシピエントの状態および障害に依存することができる。非経口投与は、静脈内、動脈内、皮下、腹腔内、筋肉内もしくは注射もしくは注入;または頭蓋内、例えば、髄腔内もしくは脳室内投与を含む。非経口投与は、単一ボーラス用量の形態であり得る、または例えば、継続的灌流ポンプによることができる。一部の実施形態では、投与は、静脈内である。
従来の薬学的担体、水性、増粘剤その他が必要となるまたは望ましくなることができる。一部の実施形態では、化合物は、薬学的に許容される希釈剤、フィラー、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、界面活性剤、疎水性ビヒクル、水溶性ビヒクル、乳化剤、緩衝液、保水剤、可溶化剤、保存剤その他と共に、かかる医薬組成物中に含有され得る。当業者は、ガイダンスのために様々な薬理学的参考文献を参照することができる。例えば、Modern Pharmaceutics, 5th Edition, Banker & Rhodes, CRC Press (2009);およびGoodman & Gilman’s The Pharmaceutical Basis of Therapeutics, 13th Edition, McGraw Hill, New York (2018)を参考にすることができる。組成物は、単位剤形で簡便に提示することができ、薬学技術分野で周知の方法のいずれかによって調製することができる。典型的には、これらの方法は、本明細書に開示されている修飾されたグロビン分子、1種または複数のアクセサリー成分を構成する担体を会合させるステップを含む。一般に、組成物は、活性成分を液体担体と均一かつ密接に会合させ、次いで必要であれば、産物を所望の組成物へと成形することにより調製される。
修飾されたヘモグロビン等の修飾されたグロビンは、注射による非経口投与のために製剤化することができる。注射のための組成物は、単位剤形で、例えば、アンプルまたは複数用量容器内に、添加された保存剤と共に提示することができる。医薬組成物は、油性または水性ビヒクルにおける懸濁物、溶液またはエマルション等の形態を取ることができ、懸濁剤、安定化剤および/または分散剤等の製剤用作用物質(formulatory agent)を含有することができる。組成物は、単位用量または複数用量容器、例えば、封止されたアンプルおよびバイアル内に提示することができ、使用直前に滅菌液体担体、例えば、生理食塩水または滅菌パイロジェンフリー水の添加のみを要求する、粉末形態でまたはフリーズドライ(凍結乾燥)状態で貯蔵することができる。即席注射溶液および懸濁物は、以前に記載された種類の滅菌粉末、顆粒および錠剤から調製することができる。
非経口投与のための医薬組成物は、抗酸化剤、緩衝液、静菌薬および組成物を意図されるレシピエントの血液と等張性にする溶質を含有することができる活性化合物の水性および非水性(油性)滅菌注射溶液;ならびに懸濁剤および増粘剤を含むことができる水性および非水性滅菌懸濁物を含む。適した親油性溶媒またはビヒクルは、ゴマ油等の脂肪油、またはオレイン酸エチルもしくはトリグリセリド等の合成脂肪酸エステル、またはリポソームを含む。水性注射懸濁物は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトールまたはデキストラン等、懸濁物の粘性を増加させる物質を含有することができる。必要に応じて、懸濁物は、適した安定剤または化合物の溶解度を増加させる薬剤を含有して、高度に濃縮された溶液の調製を可能にすることもできる。一般に、医薬組成物中には有効用量が含まれる。
特に上に言及されている成分に加えて、上に記載されている医薬組成物は、医薬組成物の種類に関連を有する技術分野において従来のものである他の薬剤を含むことができることを理解されたい。
一部の実施形態では、医薬組成物は、約0.01%~約50%の本明細書に開示されている修飾されたヘモグロビン等の修飾されたグロビンを含むことができる。一部の実施形態では、1種または複数の修飾されたグロビンは、約0.01%~約50%、約0.01%~約45%、約0.01%~約40%、約0.01%~約30%、約0.01%~約20%、約0.01%~約10%、約0.01%~約5%、約0.05%~約50%、約0.05%~約45%、約0.05%~約40%、約0.05%~約30%、約0.05%~約20%、約0.05%~約10%、約0.1%~約50%、約0.1%~約45%、約0.1%~約40%、約0.1%~約30%、約0.1%~約20%、約0.1%~約10%、約0.1%~約5%、約0.5%~約50%、約0.5%~約45%、約0.5%~約40%、約0.5%~約30%、約0.5%~約20%、約0.5%~約10%、約0.5%~約5%、約1%~約50%、約1%~約45%、約1%~約40%、約1%~約35%、約1%~約30%、約1%~約25%、約1%~約20%、約1%~約15%、約1%~約10%、約1%~約5%、約5%~約45%、約5%~約40%、約5%~約35%、約5%~約30%、約5%~約25%、約5%~約20%、約5%~約15%、約5%~約10%、約10%~約45%、約10%~約40%、約10%~約35%、約10%~約30%、約10%~約25%、約10%~約20%、約10%~約15%、またはこれらの範囲のうち1つの内の値の量である。具体例は、約0.01%、約0.05%、約0.1%、約0.25%、約0.5%、約0.75%、約1%、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、またはこれらの値のうちいずれか2つの間の範囲を含むことができる。前述は全て、医薬組成物の重量パーセンテージを表す。
修飾されたヘモグロビン等の単離された、修飾されたグロビンは、広い投薬量範囲にわたって有効であり得、一般に、治療有効量で投与することができる。しかし、実際に投与される化合物の量は通常、医師によって、処置されるべき状態、選択される投与経路、投与される実際の化合物、個々の対象の年齢、体重および応答、対象の症状の重症度その他を含む関連する状況に従って決定されるであろうことが理解されるであろう。
一部の実施形態では、修飾されたヘモグロビン等の修飾されたグロビンは、治療有効量で存在する。一部の実施形態では、治療有効量は、約0.1g~約1000g、約0.1g~約900g、約0.1g~約800g、約0.1g~約700g、約0.1g~約600g、約0.1g~約500g、約0.1g~約400g、約0.1g~約300g、約0.1g~約200g、約0.1g~約100g、1g~100g、10g~100g、50g~100g、50g~200g、またはこれらの値のうちいずれか2つの間の範囲であり得る。特に非限定的な一例では、50~100gが、成人対象等に投与される。
患者に投与される修飾されたヘモグロビン等の修飾されたグロビンの量は、投与されているもの、予防法または治療法等の投与の目的、患者の状態、投与の様式その他に依存して変動するであろう。治療適用において、組成物は、疾患およびその合併症の症状の治癒または少なくとも部分的な抑止に十分な量で、疾患を既に患っている患者に投与することができる。
一部の実施形態では、対象に投与される医薬組成物は、上に記載されている医薬組成物の形態であり得る。一部の実施形態では、これらの組成物は、従来の滅菌技法によって滅菌することができる、または滅菌濾過することができる。水性溶液は、そのままでの使用のために包装することができる、または凍結乾燥することができ、凍結乾燥された調製物は、投与に先立ち滅菌水性担体と組み合わされる。一部の実施形態では、単離された修飾されたグロビン分子調製物のpHは、約3~約11、約5~約9、約5.5~約6.5または約5.5~約7.5である。前述の賦形剤、担体または安定剤のいくつかの使用が、薬学的な塩の形成をもたらすであろうことが理解されるであろう。
本明細書における一部の実施形態は、本明細書に開示されている2,3-ジホスホグリセレートを実質的に含まない修飾されたグロビン分子と、薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物を対象にする。本明細書における一部の実施形態は、本明細書に開示されている2,3-ジホスホグリセレートを実質的に含まない修飾されたヘモグロビンと、薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物を対象にする。一部の実施形態は、2,3-ジホスホグリセレートを実質的に含まない修飾されたグロビン分子と、薬学的に許容される担体とを含み、還元剤をさらに含む医薬組成物を対象にする。ある特定の実施形態では、還元剤は、アスコルビン酸、N-アセチルシステイン、亜ジチオン酸ナトリウム、メチレンブルー、グルタチオン、B5/B5-レダクターゼ/NADHまたはこれらの組合せである。
ある特定の実施形態では、修飾されたヘモグロビン等の修飾されたグロビン分子または医薬組成物を、酸素を含まない環境で産生および維持することにより、医薬組成物を脱酸素化することができる。
IV.修飾されたヘモグロビンおよび調製方法
治療的使用のために単離された修飾されたヘモグロビンを調製する方法の実施形態が本明細書に開示されている。一部の実施形態では、本方法は、全血、濃厚赤血球またはこれらの組合せを得るステップと、全血、濃厚赤血球またはこれらの組合せからヘモグロビン分子を単離するステップとを含む。一部の実施形態では、単離されたヘモグロビン分子は、合成により産生することができる。
一部の実施形態では、本方法は、単離されたヘモグロビンを、Hbヘモグロビンのβ-Cys93残基と化学結合を形成してR状態Hbをもたらすように構成された反応物と反応させるステップを含む。特定の開示されている実施形態では、反応物は、Hbのβ-Cys93残基と化学結合を形成して、これにより、β-Asp94およびβ-His146の間および/またはβ-His146およびα-Lys40の間の1個または複数の塩橋を破壊することができる。一部の実施形態では、反応物は、Hbのβ-Cys93残基と反応して、反応物の少なくとも一部分およびHbのシステイン部分の間に、チオエステル基、チオエーテル基、ジスルフィド基、スルフェネート(sulfenate)基、スルフィネート基、スルホネート基、サルフェート(sulfate)基またはニトロソチオール基(「-SNO」)をもたらす。一部の実施形態では、β-Cys93残基のチオメタル(thiometal)結合をもたらす有機金属反応を使用することができる。ジスルフィド結合切断、アルキル化(例えば、メチル化または他のアルキル含有基の付加)、チオール-エン反応(または、β-Cys93残基のチオール基が、ラジカル開始剤または他の触媒と組み合わせたアルケン含有化合物と反応させられる、アルケンヒドロチオール化、これは「クリック」ケミストリー反応の実施形態として当業者に公知である)、S-ニトロソ化(一酸化窒素基が、β-Cys93残基のチオール基に共有結合される)またはこれらのいずれかの組合せ等、いずれか適した反応条件を使用して、Hbおよび反応物を組み合わせることができる。
一部の実施形態では、反応物は、少なくとも1個のチオール基、少なくとも1個のジスルフィド結合、またはHbのβ-Cys93残基の硫黄原子と共有結合を形成することができる硫黄反応性官能基を含む化学化合物である。一部の実施形態では、硫黄反応性官能基は、炭素-炭素二重結合、炭素-ハロゲン化物結合(例えば、-CRI、-CRBr、-CRF、-CRCl(式中、各Rは独立して、水素、脂肪族、ヘテロ脂肪族、ハロ脂肪族、ハロヘテロ脂肪族、芳香族またはこれらの組合せである))、一酸化窒素基、またはメチル化剤等、Hbのβ-Cys93残基との反応後に炭素-硫黄結合をもたらすことができる他の基である。一部の実施形態では、硫黄反応性官能基は、炭素-炭素二重結合または-CRI基(各Rは独立して、水素、脂肪族、ヘテロ脂肪族、ハロ脂肪族、ハロヘテロ脂肪族、芳香族またはこれらの組合せである)である。特定の開示されている実施形態では、反応物は、ヨードアセトアミド、または下の式のうちいずれか1種もしくは複数を満たす構造を有する化学化合物である。
一部の実施形態では、反応物は、式Iを満たす構造を有する化学化合物である。
Figure 2022520129000017
式Iを参照すると、各Xは独立して、酸素、硫黄、NRまたはCRR’ から選択することができ、各RおよびR’は独立して、水素、脂肪族、ヘテロ脂肪族、ハロ脂肪族、ハロヘテロ脂肪族、芳香族またはこれらの組合せであり;Rは、水素、脂肪族、ヘテロ脂肪族、ハロ脂肪族、ハロヘテロ脂肪族、芳香族またはこれらの組合せである。特定の開示されている実施形態では、各Xは独立して、酸素であり、Rは、アルキル、アルケニルまたはアルキニル等の脂肪族である。
一部の実施形態では、式Iを満たす構造を有する反応物は、下の式IAまたはIBのうち1種または複数を満たす構造を有することもできる。
Figure 2022520129000018
式IAを参照すると、Rは、式Iについて上に列挙されている通りであり得る。一部の実施形態では、Rは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシルその他等のアルキルである。式IBを参照すると、nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10等、1~10または1~5等、1~20の範囲の整数であり得る。特定の開示されている実施形態では、nは、1である。例示的な実施形態では、反応物は、N-エチルマレイミドである。
一部の実施形態では、反応物は、下の式IIを満たす構造を有することができる。
Figure 2022520129000019
式IIを参照すると、A、B、CおよびDのそれぞれは独立して、C、CR、N、NRまたはOであり得、RおよびRのそれぞれは独立して、水素、脂肪族、ヘテロ脂肪族、ハロ脂肪族、ハロヘテロ脂肪族、芳香族またはこれらの組合せであり;pは、1または0であり得る。pが0の場合、残っている硫黄原子は、水素原子にさらに結合される。特定の開示されている実施形態では、A、B、CおよびDのうち少なくとも2つはNであり、A、B、CおよびDのうち1つはCRであり、A、B、CおよびDのうち1つはNRであり、RおよびRのそれぞれは独立して、水素または脂肪族(例えば、アルキル、アルケニルまたはアルキニル等)である。一部の実施形態では、A、B、CおよびDのそれぞれは、ジアゾール、トリアゾール、テトラゾール、オキサゾール、イソキサゾールまたは他の5員の複素環芳香族基(heteraromatic group)をもたらすように選択することができる。
一部の実施形態では、式IIを満たす構造を有する反応物は、下の式IIA~IIDのうち1種または複数を満たす構造を有することもできる。
Figure 2022520129000020
式IIA~IIDを参照すると、RおよびRのそれぞれは独立して、水素、脂肪族、ヘテロ脂肪族、ハロ脂肪族、ハロヘテロ脂肪族、芳香族またはこれらの組合せであり得る。特定の開示されている実施形態では、各RおよびRは独立して、水素である。例示的な実施形態では、反応物は、4-4’-ジ(1,2,3-トリアゾール)ジスルフィド水和物または3-メルカプト-1,2,3-トリアゾールである。
さらに追加的な実施形態では、反応物は、下の式IIIを満たす構造を有することができる。
Figure 2022520129000021
式IIIを参照すると、各A’は独立して、N、CRまたはCHであり得;各Rは独立して、脂肪族、ヘテロ脂肪族、芳香族、有機官能基またはこれらのいずれかの組合せであり得;mは、0、1、2、3、4または5等、0~4または0~3または0~2等、0~5の範囲の整数であり得;pは、1または0であり得る。pが0の場合、残っている硫黄原子は、水素原子にさらに結合される。
一部の実施形態では、式IIIを満たす構造を有する反応物は、下の式IIIA~IIIDのうち1種または複数を満たす構造を有することもできる。
Figure 2022520129000022
式IIIA~IIIDを参照すると、各Rは独立して、脂肪族、ヘテロ脂肪族、芳香族、有機官能基またはこれらのいずれかの組合せから選択することができる。式IIIBおよびIIIDにおいて、点線は、Rが存在し、図示されている炭素原子に結合され得るような、またはRが存在せず、水素原子が、対応する原子に結合されるような、必要に応じた結合を表す。式IIIAおよびIIICの特定の開示されている実施形態では、mは、0であり;式IIIBおよびIIIDの特定の開示されている実施形態では、R基は存在しない。例示的な実施形態では、反応物は、2,2’-ジチオピリジンまたは2-メルカプト-ピリジルである。
さらに追加的な実施形態では、反応物は、下の式IVを満たす構造を有することができる。
Figure 2022520129000023
式IVを参照すると、R、RおよびRのそれぞれは独立して、水素、脂肪族、ヘテロ脂肪族、ハロ脂肪族、ハロヘテロ脂肪族、芳香族またはこれらの組合せであり得;pは、1または0であり得;点線は、図示されている酸素原子およびR基の間の必要に応じた結合を指し示す。pが0の場合、図示されている窒素原子は、他のR基と同じまたは異なり得る第2のR基にさらに結合される。両方のエナンチオマーが企図される。
一部の実施形態では、式IVを満たす構造を有する反応物は、下の式IVA~IVCのうち1種または複数を満たす構造を有することもできる。
Figure 2022520129000024
式IVAを参照すると、RおよびRは、式IVについて上に記載されている通りであり得る。一部の実施形態では、Rは、水素または脂肪族(例えば、メチル、エチル、プロピルまたはブチル等、アルキル)であり;Rは、CHである。式IVBを参照すると、RおよびRは、式IVについて上に記載されている通りであり得る。式IVBの特定の実施形態では、RおよびRのそれぞれは、水素である。式IVCを参照すると、RおよびRは、式IVについて上に記載されている通りであり得、nは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10等、0~10または1~5等、0~20の範囲の整数であり得る。式IVCの特定の開示されている実施形態では、Rは、水素または脂肪族(例えば、メチル、エチル、プロピルまたはブチル等、アルキル)であり;Rは、水素であり;nは、0である。上の式について、ある1つの特定のエナンチオマーが図示されている(L-エナンチオマー)が、本開示によって他のエナンチオマー(D-エナンチオマー)も企図される。例示的な実施形態では、反応物は、アセチルシステインまたはシステインである。
さらに追加的な実施形態では、反応物は、下の式Vを満たす構造を有することができる。
Figure 2022520129000025
式Vを参照すると、各Rは独立して、水素、脂肪族、ヘテロ脂肪族、ハロ脂肪族、ハロヘテロ脂肪族、芳香族またはこれらの組合せであり得;各Rは独立して、水素、脂肪族、ヘテロ脂肪族、ハロ脂肪族、ハロヘテロ脂肪族、芳香族またはこれらの組合せであり得;pは、1または0であり得る。pが0の場合、残っている硫黄原子は、水素原子にさらに結合される。あらゆる可能な立体異性体が企図される。
一部の実施形態では、式Vを満たす構造を有する反応物は、下の式VAおよびVBのうち1種または複数を満たす構造を有することもできる。
Figure 2022520129000026
式VAおよびVBを参照すると、各RおよびRは独立して、式Vについて上に列挙されている通りであり得る。特定の実施形態では、各Rは独立して、水素または脂肪族(例えば、メチル、エチル、プロピルまたはブチル等、アルキル)であり;各Rは独立して、水素または脂肪族(例えば、メチル、エチル、プロピルまたはブチル等、アルキル)である。特定の実施形態では、全てのRおよびR基は、水素である。特定の立体異性体が図示されているが、あらゆる他の可能な立体異性体が企図される。例示的な実施形態では、反応物は、グルタチオンまたはジグルタチオンである。
上述の反応物のうちいずれか1種または複数をHbと反応させて、Hbおよび反応物の間に共有結合を形成することができる。したがって、Hbは、反応物と共有結合で結合されるようになって、共有結合で修飾されたHbをもたらす。これらの共有結合で修飾されたHbを含む組成物が本明細書に開示されている。
一部の実施形態は、処置されたヘモグロビンを濾過して、過剰な反応物を除去し、濾過されたヘモグロビンを形成するステップをさらに含む。一部の実施形態は、濾過されたヘモグロビンを還元剤と反応させて、修飾されたヘモグロビンを形成するステップをさらに含む。一部の実施形態は、カラム濾過または他の手段による還元剤の除去、溶液における還元剤の対保持(versus retention)をさらに含む。一部の実施形態は、修飾されたヘモグロビンを酸素を含まない環境に配置するステップをさらに含む。
治療的使用のために修飾されたヘモグロビンを調製する方法が本明細書に開示されている。一部の実施形態では、本方法は、全血、濃厚赤血球またはこれらの組合せを得るステップと、全血、濃厚赤血球またはこれらの組合せからヘモグロビン分子を単離するステップとを含む。一部の実施形態では、ヘモグロビン分子は、合成により産生することができる。
一部の実施形態では、本方法は、ヘモグロビンを、2,2’-ジチオピリジン/4-4’-ジ(1,2,3-トリアゾール)ジスルフィド水和物、N-エチルマレイミド、N-アセチルシステイン、システイン、グルタチオン、3-メルカプト-1,2,3-トリアゾール、2-メルカプト-ピリジル、同様の反応物またはこれらのいずれかの組合せから選択される反応物と反応させて、ジスルフィド架橋を破壊し、共有結合で修飾された処置されたヘモグロビンを形成するステップを含む。一部の実施形態は、処置された単離されたヘモグロビンを濾過して、過剰な反応物を除去し、濾過された単離されたヘモグロビンを形成するステップをさらに含む。一部の実施形態は、濾過された単離されたヘモグロビンを還元剤と反応させて、単離された修飾されたヘモグロビンを形成するステップをさらに含む。一部の実施形態は、カラム濾過または他の手段による還元剤の除去、溶液における還元剤の対保持をさらに含む。一部の実施形態は、単離された修飾されたヘモグロビンを酸素を含まない環境に配置するステップをさらに含む。
治療的使用のために修飾されたヘモグロビンを調製する方法の一部の実施形態では、全血、濃厚赤血球またはこれらの組合せは、ヒト、ウシ、ウマまたはブタ起源のものである。
一部の実施形態では、天然に存在するヘモグロビンは、細胞をばらばらになるように破壊し、ヘモグロビン分子を分離して取り出し単離することにより、全血または濃厚赤血球(ヒト、ウシ、ウマまたはブタ供給源由来)から単離される。このプロセスは、ヘモグロビン溶液から2,3-DPGを除去する。ヘモグロビン分子は、2,2’-ジチオジピリジン(2-DPS、220.31g/mol)で処置され、2-メルカプトピリジルHb(2MP-Hb)を創出する。2MP-Hbは、G25カラムを用いてゲル濾過して、過剰な2-DPSを除去し、PBSで希釈する。次に、2MP-Hbを、PBSに溶解した過剰なチオール修飾剤と反応させる。次に、修飾されたHb分子を濃縮する。あるいは、トリアゾール修飾のため、4,4’-ジ(1,2,3-トリアゾール)ジスルフィド水和物(4-DTD)、MW:ほぼ236g/mol、二水和物につき)は、2-DPSと同じ様式で、4-トリアゾリル(triazoyl)Hb(4-MTri-Hb)を生じる。次にこれは、トリアゾール溶液と組み合わされる。あるいは、NEM分子を、剥離Hb分子と直接的に反応させて、NEM-Hbを創出することができる。この分子は、還元され、還元型に維持される必要があるであろう。これは、G25ゲル分離カラム等のプロセスによる除去ありまたはなしで、還元剤を添加することにより達成することができる。次に、この還元分子は、追加的な還元剤ありまたはなしで、還元型で維持することができる。この分子は、機械的、電子的または光活性方法により還元することもできる。
V.一酸化炭素ヘモグロビン血症を処置する方法
対象における一酸化炭素ヘモグロビン血症を処置するための方法が提供される。本方法は、一酸化炭素ヘモグロビン血症を有する対象を選択するステップと、その還元型の本明細書に開示されている修飾されたヘモグロビン等の修飾されたグロビンを含む組成物を治療有効量で対象に投与するステップとを含む。
血液または動物組織におけるヘモグロビンから一酸化炭素を除去する方法も本明細書に提供される。本方法は、対象の血液または組織を、その還元型の本明細書に開示されている修飾されたヘモグロビン等の修飾されたグロビン分子、または本明細書に開示されている修飾されたヘモグロビン等の修飾されたグロビンを含む医薬組成物と接触させるステップを含む。
一部の実施形態では、本方法は、in vivo方法であり、血液または動物組織を、修飾されたヘモグロビン等の修飾されたグロビン分子と接触させるステップは、治療有効量の修飾されたヘモグロビン等の修飾されたグロビン分子を含む組成物を対象に投与するステップを含む。一部の例では、本方法は、修飾されたヘモグロビン等の修飾されたグロビン分子を含む組成物を対象に投与するステップに先立ち、一酸化炭素ヘモグロビン血症を有する対象を選択するステップをさらに含む。一部の例では、一酸化炭素ヘモグロビン血症を有する選択された対象は、その血液中に、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%または少なくとも50%の一酸化炭素ヘモグロビンを有する。特定の非限定的な例では、グロビンタンパク質は、ヒトヘモグロビン、ヒトミオグロビン、ヒトニューログロビンまたはヒトサイトグロビン等、ヒトグロビンタンパク質である。他の非限定的な例では、グロビンタンパク質は、ウシグロビンタンパク質またはウマグロビンタンパク質等、非ヒト動物に由来する。
他の実施形態では、血液または動物組織におけるヘモグロビンから一酸化炭素を除去する方法は、in vitro方法である。
一部の実施形態では、ミオグロビンまたはヘモグロビン等のグロビンを含む組成物が利用され、グロビンの少なくとも約85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%が、弛緩した状態である。一部の実施形態では、組成物は、ヘモグロビンを含み、ヘモグロビンは、2,3-DPGを実質的に含まない。一部の実施形態では、これは、0.1%未満、0.01%未満または本質的に0%の2,3-DPG等、1%未満の2,3-DOGを含む。利用される組成物は、本明細書に開示されている修飾されたヘモグロビン等、本明細書に開示されているいずれかの修飾されたグロビンを含むことができる。ヘモグロビン等の修飾されたグロビンは、ヒトおよび獣医学的な種等のいずれかの哺乳動物種に由来し得る。ヘモグロビンまたはミオグロビン等の修飾されたグロビン分子は、ヒト、ウシ、イヌ、ウマまたはブタのものであり得る。
修飾されたグロビンが還元型であると考慮されるためには、組成物中に含まれる修飾されたグロビンの100%が還元されている必要はない。一部の実施形態では、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%等、組成物中の修飾されたグロビンの少なくとも70%が還元されている。特定の実施形態では、組成物中の修飾されたグロビンの75~100%、80~100%、85~100%、90~100%または95~100%が還元されている。
一部の実施形態では、組成物は、還元剤をさらに含む。還元剤は、ヒト対象等の対象に安全に投与することができるいずれかの還元剤(例えば、最小のおよび/または耐容できる毒性を有する薬剤)であり得る。一部の例では、還元剤は、亜ジチオン酸ナトリウム、アスコルビン酸、N-アセチルシステイン、メチレンブルー、グルタチオン、チトクロムb5/b5-レダクターゼ、ヒドララジンまたはこれらのいずれかの組合せを含む。一部の実施形態では、本方法は、組成物に第2の還元剤を添加するステップをさらに含む。多くの事例では、第2の還元剤は、ヒト等によって生理的に安全に耐容される、最低有効濃度(修飾されたグロビンをその還元型で維持するための)である濃度で、組成物に添加される。一部の例では、組成物中の還元剤の濃度は、約50μM~約50mM、約100μM~約25mM、約250μM~約10mM、約500μM~約5mMまたは約750μM~約1mM等、約10μM~約100mMである。特定の例では、組成物中の還元剤の濃度は、約1.0mM以下、約1.5mM以下、約2.0mM以下または約2.5mM以下である。
一部の実施形態では、修飾されたグロビンは、ヘモグロビンである。他の例では、修飾されたグロビンは、ミオグロビンである。さらに他の例では、修飾されたグロビンは、ニューログロビンまたはサイトグロビンである。特定の非限定的な例では、グロビンタンパク質は、ヒトヘモグロビン、ヒトミオグロビン、ヒトニューログロビンまたはヒトサイトグロビン等、ヒトグロビンタンパク質である。他の非限定的な例では、グロビンは、ウシグロビンタンパク質またはウマグロビンタンパク質等、非ヒト動物に由来する。
血液または動物組織におけるヘモグロビンから一酸化炭素を除去するための方法の一部の実施形態では、組成物は、還元剤をさらに含む。還元剤は、ヒト対象等の対象に安全に投与することができるいずれかの還元剤(例えば、最小のおよび/または耐容できる毒性を有する薬剤)であり得る。一部の例では、還元剤は、亜ジチオン酸ナトリウム、アスコルビン酸、N-アセチルシステイン、メチレンブルー、グルタチオン、チトクロムb5/b5-レダクターゼ、ヒドララジンまたはこれらのいずれかの組合せを含む。
具体的な非限定的な例では、本明細書に開示されている修飾されたグロビン分子、または本明細書に開示されている単離された修飾されたグロビン分子を含有する医薬組成物は、1日当たり0.1g~300gの用量で投与される。
VI.シアン化物中毒を処置する方法
シアン化物は、チトクロムcオキシダーゼにおけるヘムa3中心に結合することにより、ミトコンドリア呼吸のCO媒介性阻害と同様の様式で、ミトコンドリア呼吸を阻害することが公知である。還元型に部分的に結合するが、シアン化物は、酸化状態のチトクロムcオキシダーゼ(電子伝達系の複合体IV)に最も強く結合する(Leavesley et al., Toxicol Sci 101(1):101-111, 2008)。還元状態でCOをスカベンジングする酸素担体の能力と同様に、酸化剤により媒介された酸化状態の酸素担体は、シアン化物をスカベンジングすることができる。よって、赤血球細胞の内側に位置するシアノ-ヘモグロビン、および身体内の他のヘム含有タンパク質(チトクロムcオキシダーゼ等)からシアン化物を除去するための天然および人工の酸素担体の使用が、本明細書で企図される。
対象におけるシアン化物中毒を処置する方法が本明細書に提供される。一部の実施形態では、本方法は、シアン化物中毒を有する対象を選択するステップと、その酸化型の修飾されたヘモグロビン等の開示されている修飾されたグロビンを対象に投与するステップとを含む。
血液または動物組織におけるヘム含有タンパク質からシアン化物を除去する方法も本明細書に提供される。本方法は、血液または動物組織を、その酸化型の修飾されたグロビンを含む組成物と接触させるステップを含む。一部の実施形態では、ヘム含有タンパク質は、ヘモグロビンまたはチトクロムcオキシダーゼである。
一部の実施形態では、本方法は、in vivo方法であり、血液または動物組織を、修飾されたグロビンを含む組成物と接触させるステップは、治療有効量の組成物を対象に投与するステップを含む。一部の例では、本方法は、組成物を対象に投与するステップに先立ち、シアン化物中毒を有する対象を選択するステップをさらに含む。
他の実施形態では、血液または動物組織におけるヘム含有タンパク質からシアン化物を除去する方法は、in vitro方法である。
一部の実施形態では、ミオグロビンまたはヘモグロビン等のグロビンを含む組成物が利用され、グロビンの少なくとも約85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%が、弛緩した状態である。一部の実施形態では、組成物は、ヘモグロビンを含み、ヘモグロビンは、2,3-ジホスホグリセレートを実質的に含まない。一部の実施形態では、これは、0.1%未満、0.01%未満または本質的に0%の2,3-ジホスホグリセレート等、1%未満の2,3-ジホスホグリセレートを含む。組成物は、本明細書に開示されている修飾されたヘモグロビン等、本明細書に開示されているいずれかの修飾されたグロビンを含むことができる。ヘモグロビン等の修飾されたグロビンは、ヒトおよび獣医学的な種等のいずれかの哺乳動物種に由来し得る。ヘモグロビンまたはミオグロビン等の修飾されたグロビン分子は、ヒト、ウシ、イヌ、ウマまたはブタのものであり得る。
酸化型と考慮されるために、組成物中の修飾されたグロビンの100%が酸化されている必要はない。一部の実施形態では、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%等、修飾されたグロビンの少なくとも70%が酸化されている。特定の実施形態では、組成物中の修飾されたグロビンの75~100%、80~100%、85~100%、90~100%または95~100%が酸化されている。
一部の実施形態では、酸化剤をさらに含む組成物が使用される。酸化剤は、ヒト対象等の対象に安全に投与することができるいずれかの酸化剤(例えば、最小のおよび/または耐容できる毒性を有する薬剤)であり得る。一部の例では、酸化剤は、酸素含有ガス混合物、酸素含有液体混合物、フェリシアン化物塩(フェリシアン化カリウム等)またはこれらのいずれかの組合せを含む。一部の実施形態では、本方法は、第2の酸化剤を組成物に添加するステップをさらに含む。多くの事例では、第2の酸化剤は、ヒト等によって生理的に安全に耐容される、最低有効濃度(修飾されたグロビンをその酸化型で維持するための)である濃度で、組成物に添加される。一部の例では、組成物中の酸化剤の濃度は、約50μM~約50mM、約100μM~約25mM、約250μM~約10mM、約500μM~約5mMまたは約750μM~約1mM等、約10μM~約100mMである。特定の例では、組成物中の酸化剤の濃度は、約1.0mM以下、約1.5mM以下、約2.0mM以下または約2.5mM以下である。
血液または動物組織におけるヘム含有タンパク質からシアン化物を除去するための方法の一部の実施形態では、組成物は、酸化剤をさらに含む。酸化剤は、ヒト対象等の対象に安全に投与することができるいずれかの酸化剤(例えば、最小のおよび/または耐容できる毒性を有する薬剤)であり得る。一部の例では、酸化剤は、酸素含有ガス混合物、酸素含有液体混合物、フェリシアン化物塩(フェリシアン化カリウム等)またはこれらのいずれかの組合せを含む。
血液または動物組織におけるヘム含有タンパク質からシアン化物を除去するための方法の一部の実施形態では、組成物は、本明細書に開示されている修飾されたグロビンタンパク質を含む。一部の例では、修飾されたグロビンタンパク質は、修飾されたヘモグロビンである。他の例では、修飾されたグロビンタンパク質は、修飾されたミオグロビンである。他の非限定的な例では、グロビンタンパク質は、ウシグロビンタンパク質またはウマグロビンタンパク質等、非ヒト動物に由来する。
具体的な非限定的な例では、本明細書に開示されている修飾されたグロビン分子、または本明細書に開示されている単離された修飾されたグロビン分子を含有する医薬組成物は、1日当たり0.1g~300gの用量で投与される。
VII.硫化水素(HS)中毒を処置する方法
硫化水素は、ミトコンドリア呼吸のCO媒介性阻害と同様の様式で、ミトコンドリア呼吸を阻害することが公知である。HSは、還元型のチトクロムcオキシダーゼ(電子伝達系の複合体IV)に最も強く結合する(Nicholls et al., Biochem Soc Trans 41(5):1312-1316, 2013)。還元状態でCOをスカベンジングする酸素担体の能力と同様に、還元剤により媒介された還元状態の酸素担体は、HSをスカベンジングすることができる。よって、赤血球細胞の内側に位置するヘモグロビン、および身体内の他のヘム含有タンパク質(チトクロムcオキシダーゼ等)からHSを除去するための開示されている組成物の使用が、本明細書で企図される。
対象における硫化水素(HS)中毒を処置する方法が本明細書に提供される。一部の実施形態では、本方法は、HS中毒を有する対象を選択するステップと、その還元型の本明細書に開示されている修飾されたグロビンタンパク質を含む組成物を治療有効量で対象に投与するステップとを含む。
血液または動物組織におけるヘム含有タンパク質からHSを除去する方法も本明細書に提供される。本方法は、血液または動物組織を、本明細書に開示されている組成物と接触させるステップを含む。一部の実施形態では、組成物は、修飾されたヘモグロビンまたはミオグロビン等の修飾されたグロビンタンパク質を含む。
一部の実施形態では、本方法は、in vivo方法であり、血液または動物組織を、修飾されたグロビンを含む組成物と接触させるステップは、治療有効量の組成物を対象に投与するステップを含む。一部の例では、本方法は、組成物を対象に投与するステップに先立ち、HS中毒を有する対象を選択するステップをさらに含む。
他の実施形態では、血液または動物組織におけるヘム含有タンパク質からHSを除去する方法は、in vitro方法である。
一部の実施形態では、修飾されたミオグロビンまたはヘモグロビン等の修飾されたグロビンを含む組成物が利用され、組成物中のグロビンの少なくとも約85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%が、弛緩した状態である。一部の実施形態では、組成物は、ヘモグロビンを含み、ヘモグロビンは、2,3-ジホスホグリセレートを実質的に含まない。一部の実施形態では、これは、0.1%未満、0.01%未満または本質的に0%の2,3-ジホスホグリセレート等、1%未満の2,3-ジホスホグリセレートを含む。利用される組成物は、本明細書に開示されている修飾されたヘモグロビン等、本明細書に開示されているいずれかの修飾されたグロビンを含むことができる。ヘモグロビン等の修飾されたグロビンは、ヒトおよび獣医学的な種等のいずれかの哺乳動物種に由来し得る。ヘモグロビンまたはミオグロビン等の修飾されたグロビン分子は、ヒト、ウシ、イヌ、ウマまたはブタのものであり得る。
修飾されたグロビンが還元型であると考慮されるためには、組成物中に含まれる修飾されたグロビンの100%が還元されている必要はない。一部の実施形態では、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%等、組成物中の修飾されたグロビンの少なくとも70%が還元されている。特定の実施形態では、組成物中の修飾されたグロビンの75~100%、80~100%、85~100%、90~100%または95~100%が還元されている。
一部の実施形態では、組成物は、還元剤をさらに含む。還元剤は、ヒト対象等の対象に安全に投与することができるいずれかの還元剤(例えば、最小のおよび/または耐容できる毒性を有する薬剤)であり得る。一部の例では、還元剤は、亜ジチオン酸ナトリウム、アスコルビン酸、N-アセチルシステイン、メチレンブルー、グルタチオン、チトクロムb5/b5-レダクターゼ、ヒドララジンまたはこれらのいずれかの組合せを含む。一部の実施形態では、本方法は、組成物に第2の還元剤を添加するステップをさらに含む。多くの事例では、第2の還元剤は、ヒト等によって生理的に安全に耐容される、最低有効濃度(修飾されたグロビンをその還元型で維持するための)である濃度で、組成物に添加される。一部の例では、組成物中の還元剤の濃度は、約50μM~約50mM、約100μM~約25mM、約250μM~約10mM、約500μM~約5mMまたは約750μM~約1mM等、約10μM~約100mMである。特定の例では、組成物中の還元剤の濃度は、約1.0mM以下、約1.5mM以下、約2.0mM以下または約2.5mM以下である。
一部の実施形態では、投与される組成物は、修飾されたグロビンタンパク質を含む。一部の例では、修飾されたグロビンタンパク質は、本明細書に開示されている修飾されたヘモグロビンまたはミオグロビンである。さらに他の例では、グロビンタンパク質は、ニューログロビンまたはサイトグロビンを含む。特定の非限定的な例では、修飾されたグロビンタンパク質は、ヒトヘモグロビン、ヒトミオグロビン、ヒトニューログロビンまたはヒトサイトグロビン等、ヒトグロビンタンパク質である。他の非限定的な例では、グロビンタンパク質は、イヌ、ブタ、ウシまたはウマの修飾されたグロビン等、非ヒト動物に由来する。
具体的な非限定的な例では、本明細書に開示されている修飾されたグロビン分子、または本明細書に開示されている単離された修飾されたグロビン分子を含有する医薬組成物は、1日当たり0.1g~300gの用量で投与される。
VIII.具体的な実施形態
実施形態1. 弛緩した状態のグロビンを含む組成物であって、前記グロビンの少なくとも85%が、前記弛緩した状態である、組成物。
実施形態2. 前記グロビンが、ミオグロビンまたはヘモグロビンである、実施形態1に記載の組成物。
実施形態3. 前記グロビンが、ヘモグロビンである、実施形態1または実施形態2に記載の組成物。
実施形態4. 前記ヘモグロビンが、2,3-ジホスホグリセレートを実質的に含まない、実施形態3に記載の組成物。
実施形態5. 前記ヘモグロビンが、β-Asp94、β-His146およびα-Lys40の間の一方または両方の塩橋を阻害するように共有結合で修飾されたβ-Cys93を含む、実施形態2~4のいずれか1つに記載の組成物。
実施形態6. 前記β-Cys93が、次式:
Figure 2022520129000027
(式中、
各Xは独立して、酸素、硫黄、NRまたはCRR’から選択され、各RおよびR’は独立して、水素、脂肪族、ヘテロ脂肪族、ハロ脂肪族、ハロヘテロ脂肪族、芳香族またはこれらの組合せであり;
は、水素、脂肪族、ヘテロ脂肪族、ハロ脂肪族、ハロヘテロ脂肪族、芳香族またはこれらの組合せであり;
A、B、CおよびDのそれぞれは独立して、C、CR、N、NRまたはOであり、RおよびRのそれぞれは独立して、水素、脂肪族、ヘテロ脂肪族、ハロ脂肪族、ハロヘテロ脂肪族、芳香族またはこれらの組合せであり;
A’は、N、CRまたはCHであり;
各Rは独立して、脂肪族、ヘテロ脂肪族、芳香族、有機官能基またはこれらのいずれかの組合せであり;
mは、0~5の範囲の整数であり;
、RおよびRのそれぞれは独立して、水素、脂肪族、ヘテロ脂肪族、ハロ脂肪族、ハロヘテロ脂肪族、芳香族またはこれらの組合せであり;
点線は、図示されている酸素原子および前記R基の間の必要に応じた結合を指し示し;
pは、1または0であり得、pが0の場合、窒素原子は、他のR基と同じまたは異なり得る第2のR基にさらに結合され;
各Rは独立して、水素、脂肪族、ヘテロ脂肪族、ハロ脂肪族、ハロヘテロ脂肪族、芳香族またはこれらの組合せであり;
各Rは独立して、水素、脂肪族、ヘテロ脂肪族、ハロ脂肪族、ハロヘテロ脂肪族、芳香族またはこれらの組合せであり;
前記Cys93は、前記ヘモグロビンの前記β-Cys93である)
のうちいずれか1種または複数を満たす構造を有するように共有結合で修飾されている、実施形態5に記載の組成物。
実施形態7. 前記β-Cys93が、
Figure 2022520129000028
(式中、前記Cys93は、前記ヘモグロビンの前記β-Cys93である)
から選択される構造を有するように共有結合で修飾されている、実施形態5または実施形態6に記載の組成物。
実施形態8. 前記ヘモグロビンが、官能基化されたアミン基を含む末端アミノ酸を含み、前記官能基化されたアミン基が、カルバミル化されるか、1個もしくは複数のアルキル基でアルキル化されるか、カルバモイル化されるか、1個もしくは複数の保護基を含むか、またはこれらの組合せである、実施形態2~7のいずれか1つに記載の組成物。
実施形態9. 前記グロビンが、哺乳動物グロビンである、実施形態1~8のいずれか1つに記載の組成物。
実施形態10. 前記哺乳動物グロビンが、ヒト、ウシ、イヌ、ウマまたはブタグロビンである、実施形態9に記載の組成物。
実施形態11. 薬学的に許容される担体をさらに含む、実施形態1~10のいずれか1つに記載の組成物。
実施形態12. 還元剤をさらに含む、実施形態11に記載の組成物。
実施形態13. 前記還元剤が、アスコルビン酸、N-アセチルシステイン、亜ジチオン酸ナトリウム、メチレンブルー、グルタチオン、B5/B5-レダクターゼ/NADHまたはこれらの組合せである、実施形態12に記載の組成物。
実施形態14. 脱酸素化されている、実施形態1~13のいずれか1つに記載の組成物。
実施形態15. β-Asp94、β-His146およびα-Lys40の間の一方または両方の塩橋を阻害するように共有結合で修飾されたβ-Cys93を含む、単離されたヘモグロビン。
実施形態16. 前記β-Cys93が、次式:
Figure 2022520129000029
(式中、
各Xは独立して、酸素、硫黄、NRまたはCRR’から選択され、各RおよびR’は独立して、水素、脂肪族、ヘテロ脂肪族、ハロ脂肪族、ハロヘテロ脂肪族、芳香族またはこれらの組合せであり;
は、水素、脂肪族、ヘテロ脂肪族、ハロ脂肪族、ハロヘテロ脂肪族、芳香族またはこれらの組合せであり;
A、B、CおよびDのそれぞれは独立して、C、CR、N、NRまたはOであり、RおよびRのそれぞれは独立して、水素、脂肪族、ヘテロ脂肪族、ハロ脂肪族、ハロヘテロ脂肪族、芳香族またはこれらの組合せであり;
A’は、N、CRまたはCHであり;
各Rは独立して、脂肪族、ヘテロ脂肪族、芳香族、有機官能基またはこれらのいずれかの組合せであり;
mは、0~5の範囲の整数であり;
、RおよびRのそれぞれは独立して、水素、脂肪族、ヘテロ脂肪族、ハロ脂肪族、ハロヘテロ脂肪族、芳香族またはこれらの組合せであり;
点線は、図示されている酸素原子および前記R基の間の必要に応じた結合を指し示し;
pは、1または0であり得、pが0の場合、窒素原子は、他のR基と同じまたは異なり得る第2のR基にさらに結合され;
各Rは独立して、水素、脂肪族、ヘテロ脂肪族、ハロ脂肪族、ハロヘテロ脂肪族、芳香族またはこれらの組合せであり;
各Rは独立して、水素、脂肪族、ヘテロ脂肪族、ハロ脂肪族、ハロヘテロ脂肪族、芳香族またはこれらの組合せであり;
前記Cys93は、前記ヘモグロビンの前記β-Cys93である)
のうちいずれか1種または複数を満たす構造を有するように共有結合で修飾されている、実施形態15に記載の単離されたヘモグロビン。
実施形態17. 前記β-Cys93が、
Figure 2022520129000030
Figure 2022520129000031
(式中、前記Cys93は、前記ヘモグロビンの前記β-Cys93である)
から選択される構造を有するように共有結合で修飾されている、実施形態15または実施形態16に記載の単離されたヘモグロビン。
実施形態18. 前記ヘモグロビンが、官能基化されたアミン基を含む末端アミノ酸を含み、前記官能基化されたアミン基が、カルバミル化されるか、1個もしくは複数のアルキル基でアルキル化されるか、カルバモイル化されるか、1個もしくは複数の保護基を含むか、またはこれらの組合せである、実施形態15~17のいずれか1つに記載の単離されたヘモグロビン。
実施形態19. 前記ヘモグロビンが、哺乳動物ヘモグロビンである、実施形態15~18のいずれか1つに記載の単離されたヘモグロビン。
実施形態20. 前記哺乳動物ヘモグロビンが、ヒト、ウシ、イヌ、ウマまたはブタグロビンである、実施形態19に記載の単離されたヘモグロビン。
実施形態21. 対象における一酸化炭素ヘモグロビン血症を処置する方法であって、
一酸化炭素ヘモグロビン血症を有する対象を選択するステップと、
治療有効量の実施形態1~14のいずれか1つに記載の組成物を前記対象に投与するステップと
を含む、方法。
実施形態22. 血液または動物組織におけるヘモグロビンから一酸化炭素を除去する方法であって、前記血液または動物組織を実施形態1~14のいずれか1つに記載の組成物と接触させ、これにより、前記血液または動物組織におけるヘモグロビンから一酸化炭素を除去するステップを含む、方法。
実施形態23. 前記血液または動物組織が、対象中にあり、前記血液または動物組織を前記組成物と接触させるステップが、治療有効量の前記組成物を対象に投与するステップを含む、実施形態22に記載の方法。
実施形態24. 前記対象が、ヒトであり、前記グロビンが、ヒトミオグロビンまたはヒトヘモグロビンである、実施形態21~23のいずれか1つに記載の方法。
実施形態25. 前記組成物を前記対象に投与するステップに先立ち、一酸化炭素ヘモグロビン血症を有する対象を選択するステップを含む、実施形態22~24のいずれか1つに記載の方法。
実施形態26. 前記対象が、その血液中に、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%または少なくとも50%の一酸化炭素ヘモグロビンを有する、実施形態21および23~25のいずれか1つに記載の方法。
実施形態27. 前記組成物が、静脈内または筋肉内投与される、実施形態21および23~26のいずれか1つに記載の方法。
実施形態28. 前記組成物が、静脈内注入、腹腔内注射または筋肉内注射によって投与される、実施形態21および23~27のいずれか1つに記載の方法。
実施形態29. 治療的使用のために単離された修飾されたヘモグロビンを調製する方法であって、
全血、濃厚赤血球またはこれらの組合せからヘモグロビンを単離するステップと、
式I~Vのうちいずれか1種または複数を満たす構造を有する反応物と前記ヘモグロビンを反応させて、1個または複数のジスルフィド架橋を破壊し、β-Cys93において共有結合で修飾されたヘモグロビンを形成するステップと、
β-Cys93において共有結合で修飾された前記ヘモグロビンを単離するステップと
を含み、式I~Vが、
Figure 2022520129000032
(式中、
各Xは独立して、酸素、硫黄、NRまたはCRR’から選択され、各RおよびR’は独立して、水素、脂肪族、ヘテロ脂肪族、ハロ脂肪族、ハロヘテロ脂肪族、芳香族またはこれらの組合せであり;
は、水素、脂肪族、ヘテロ脂肪族、ハロ脂肪族、ハロヘテロ脂肪族、芳香族またはこれらの組合せであり;
A、B、CおよびDのそれぞれは独立して、C、CR、N、NRまたはOであり、RおよびRのそれぞれは独立して、水素、脂肪族、ヘテロ脂肪族、ハロ脂肪族、ハロヘテロ脂肪族、芳香族またはこれらの組合せであり;
A’は、N、CRまたはCHであり;
各Rは独立して、脂肪族、ヘテロ脂肪族、芳香族、有機官能基またはこれらのいずれかの組合せであり;
mは、0~5の範囲の整数であり;
、RおよびRのそれぞれは独立して、水素、脂肪族、ヘテロ脂肪族、ハロ脂肪族、ハロヘテロ脂肪族、芳香族またはこれらの組合せであり;
点線は、図示されている酸素原子および前記R基の間の必要に応じた結合を指し示し;
各pは、1または0であり、式IVについて、pが0の場合、窒素原子は、他のR基と同じまたは異なり得る第2のR基にさらに結合され;
各Rは独立して、水素、脂肪族、ヘテロ脂肪族、ハロ脂肪族、ハロヘテロ脂肪族、芳香族またはこれらの組合せであり;
各Rは独立して、水素、脂肪族、ヘテロ脂肪族、ハロ脂肪族、ハロヘテロ脂肪族、芳香族またはこれらの組合せであり;
前記Cys93は、前記ヘモグロビンの前記β-Cys93である)
である、方法。
実施形態30. 前記反応物が、2,2’-ジチオピリジン、4-4’-ジ(1,2,3-トリアゾール)ジスルフィド水和物、N-エチルマレイミド、N-アセチルシステイン、システイン、グルタチオン、3-メルカプト-1,2,3-トリアゾール、2-メルカプト-ピリジルまたはこれらのいずれかの組合せから選択される、実施形態29に記載の方法。
実施形態31. β-Cys93において共有結合で修飾された前記ヘモグロビンを還元剤と反応させるステップをさらに含む、実施形態29または30に記載の方法。
実施形態32. β-Cys93において共有結合で修飾された前記ヘモグロビンを酸素を含まない環境に配置するステップをさらに含む、実施形態29~31のいずれか1つに記載の方法。
実施形態33. 前記全血または濃厚赤血球が、ヒト、ブタ、イヌ、ウマまたはウシのものである、実施形態29~32のいずれか1つに記載の方法。
次の実施例は、ある特定の、特定の特色および/または実施形態を説明するために提供される。これらの実施例は、本開示を、記載されている特定の特色または実施形態に限定するものと解釈されるべきではない。
(実施例1)
COスカベンジングは、in vivoでCO中毒マウスにおけるCO-Hbを迅速に除去する
マウスを、1500ppm COガスを有する空気に平均50分間曝露し、CO-Hbレベルを64%+/-1%に増加させた。曝露に先立ち、血圧モニタリング、血液サンプリング、および組換えニューログロビン(rNgb)(別の種類のCOスカベンジンググロビンタンパク質)またはPBS(対照)の注入のために、マウスは、大腿動脈および静脈カテーテル設置を外科的に装着した。Harvard注入ポンプを使用して、250μLの8~12mM rNgbまたはPBSを4分間以内で注入した。注入の直後および5分毎に、CO-Hbの測定のために5μLの血液を収集した。正常空気に戻してから5分後に、CO-Hbレベルは、PBSを受けた群における13.3%に対して、rNgbを受けた群において平均32.8%下落した(図3)。60分後に、マウスを屠殺し、膀胱は、mM濃度のrNgbを含有した。rNgbは、in vivoでCOキレート剤として作用し、CO-Hbレベルを急速に低下させ、腎臓を通して濾過されることが示された。
(実施例2)
CO誘導性ミトコンドリア阻害を逆転するCOスカベンジング剤の能力の測定
クラーク型酸素電極呼吸測定系において、COガス曝露の前後にミトコンドリア呼吸を測定した。還元型ヘモグロビンおよびミオグロビンの両方の注入の効果が実証された。正常ラットにおける新鮮な肝臓を収集し、分画遠心分離によりミトコンドリアを単離した。肝臓組織のため、正常ラットにおける新鮮な肝臓を収集し、次いでホモジナイズした。結果として生じるミトコンドリアおよび肝臓組織をクラーク型電極気密反応チャンバーに入れ、次いで基質(コハク酸塩(ミトコンドリア)またはリンゴ酸塩およびピルビン酸塩(肝臓)およびADP)を添加した(図15)。次に、ミトコンドリアは、0%酸素まで呼吸し、次いで、室内気のピペッティングによる注射で系を再酸素化した。ミトコンドリアは、再び所望のO濃度に下がるまで呼吸した。この時点で、ガス形態または飽和PBS溶液のいずれかにおいてCOを添加した。次に、系を再酸素化し、0%に下がるまで呼吸が発生した。これらの呼吸速度をCO曝露前と比較した。最初の再酸素化ステップの理由は、その機能を損傷し得る、ある程度の低酸素を経験したミトコンドリアの速度をより等しく比較するためである。これが完了した後に、COスカベンジング剤を添加し、系を再酸素化し、この最終呼吸速度を、CO前およびCO後呼吸の両方と比較した。
(実施例3)
剥離ヘモグロビンおよびNEM-Hbによる赤血球細胞被包HbCOからのin vitro COスカベンジング
赤血球細胞から血液タンパク質へのCO移行は、25℃における亜ジチオン酸塩の存在による嫌気的条件における、遊離StHbおよびNEMHbとCO飽和赤血球細胞(100%HbCO状態Hbによる)とのインキュベーションによって開始された(図8Aおよび図8B)。CO-赤血球細胞におけるヘムのヘム血液タンパク質に対する比は、1:1であった。赤血球細胞におけるHbCOからデオキシHbへの変換の半減期は、PBS対照についての200分間を超える半減期から、StHbおよびNEMHbにおいてそれぞれ71.35秒間および50.25秒間へと減少した。血液タンパク質分子は、最終的にHbCO複合体との平衡状態に達し、そこで、HbCOからデオキシHbへの変換半減期は、正常レベルに戻った。平衡状態におけるHbCOのこのポイントは、剥離Hbについて22.2%およびNEMHbについて16.5%であった(図8C)。in vitro研究は、血液タンパク質が、CO-赤血球細胞からCOを除去することができることを実証した。その上、これらのデータは、これらの特異的に修飾された剥離ヘモグロビン分子について優れたスカベンジングを示す。
(実施例4)
重篤CO中毒マウスモデルにおいて血行動態虚脱を逆転し生存を改善する、2,3-DPGを含まない特異的に修飾されたヘモグロビン分子の能力
心血管および死亡率エンドポイントのモデルを確立するために、気管に挿管され、換気され、麻酔されたマウスを、21%酸素および1.5%イソフルランを有する30,000ppm(3%)COガスに3分20秒間曝露した。マウスに、頸静脈(薬物の注入のため)および頸動脈(血圧および心拍モニタリングのため)カテーテル設置を外科的に装着する。概念実証モデルにおいて、曝露後に10mL/kgのPBSを注入した群において、100%死亡率が見出された(図11)。NEMHbおよびStHb(およびより少ない程度まで、Mb)は、MAPを部分的に回復した一方、対照群における全動物において持続的低血圧および最終的に死亡が見られた(図10および図11)。
頸静脈カテーテルを通して、分光法を使用してHbCOレベルをサンプリングした。3分20秒間のCO曝露の直後に、HbCOレベルは、平均して93~97%であった。血漿の血液タンパク質濃度は、それぞれStHbおよびNEMHbについて、69.9±10.6および74.1±4.6%のCO結合比率で、2.0±0.3、2.1±0.6および1.6±0.2mMに達し、血液タンパク質の間に差は見出されなかった(図9A~図9B)。
血液タンパク質は、注入直後に、PBS対照における6.4±2.2%と比較して、StHb、NEMHbおよびMbにおいてそれぞれ16.9±2.1%、17.2±3.3%、17.9±5.0%と有意にHbCOを減少させた(P<0.0001)(図9)。生存は、PBSにおけるゼロから、StHb、NEMHbおよびMbによるそれぞれ62.5%、66.7%および44.4%へと増加した(P<0.0001)(図11)。
(実施例5)
中等度CO中毒マウスモデルにおいて血圧の減少を逆転しHbCOに結合する、2,3-DPGを含まない特異的に修飾されたヘモグロビン分子の能力
より軽度のCO中毒状態における血液タンパク質の効果をさらに理解するために、より軽度のCO中毒モデルを確立した。体温を37℃に維持して試験を実行し、CO吸入持続時間を重篤モデルにおける4.5分間から1.5分間へと短縮した。このモデルにおいて、StHb(n=11)、NEMHb(n=12)、Mb(n=3)およびPBS(n=7)を比較した。HbCOは、73.0±2.5%のレベルまで増加し(群間に差はない、p>0.05)、低血圧を誘導し、観察において死亡率は見出されなかった。血液タンパク質の間で血漿(plasm)濃度(それぞれStHb、NEMHbおよびMbについて、1.3±0.2mM、1.3±0.3mMおよび1.1±0.0mM、P>0.05)およびCO結合比率(それぞれStHb、NEMHbおよびMbについて、61.0±3.3%、58.1±3.5%および*Mb-HbCO%*、P>0.05)に差はなかった(図12)。血液タンパク質は、対照としてのPBSにおける6.1±2.2%と比較して、StHb、NEMHbおよびMbにおいてそれぞれ11.8±1.4%、15.0±1.4%、12.7±0.5%と有意にHbCOを減少させた(P<0.0001)(図13)。NEMHbおよびStHbの両方が、MAPを回復し、これをそれぞれ89.5mmHgおよび89.2mmHgの中毒前ベースラインレベルに維持した(p<0.05)。対照群において持続的低血圧が見られたが、MAPは、86.0mmHgから21.6mmHgへと減少した(図14)。
(実施例6)
健康なマウスにおける特異的に修飾された2,3-DPGヘモグロビン分子の安全性の測定
マウスに、10mL/kgの体積で10mMの薬剤(または対照としてPBS)を注入する。手順を次に示す:
吸入麻酔:マウスを、マスク経由で、導入のために4%イソフルランに曝露し、次いで、外科手術および薬物注入の持続時間にわたり1.5~2.0%イソフルランにおいて維持する。
静脈内カテーテル手順:クロルヘキシジンによる外科手術の際のごしごし洗い、続いて70%アルコールを尾に適用し、これを3回反復する。23g尾静脈カテーテル(Braintree Scientific、Inc.)を生理食塩水でプライミングし、1mlシリンジに接続する。尾の中央の外側または背側尾静脈の上に2~3mmの皮膚切開を入れ、0.5cmの深さまで静脈内にカテーテルを挿入し、血管に保定する。
薬物投与手順:薬物は、植え込まれた尾静脈カテーテルを介して、ゆっくりした静脈内注入(ポンプによる30分間の経過)によって投与する。ゆっくりした静脈内注入の最大体積は、マウスにつき25ml/kgである(Diehl, Karl-Heinz, Robin Hull, David Morton, Rudolf Pfister, Yvon Rabemampianina, David Smith, Jean-Marc Vidal, and Cor Van De Vorstenbosch. ”A good practice guide to the administration of substances and removal of blood, including routes and volumes.” Journal of Applied Toxicology: An International Journal 21, no. 1 (2001): 15-23.))。マウスは、注入期間中1.5~2.0%イソフルラン下にあり、不快感を回避する。
回復:注入が完了したら、カテーテルを除去する。静脈を結紮して、出血を防止する。リドカインおよびブピバカインの混合物を1滴、切開に配置し、6-0外科用糸による縫合によって3mm切開を閉じる。存在する場合、気管チューブを抜き出し、イソフルランから回復のために温かいチャンバーへとマウスを取り出し、麻酔から回復したらケージに戻す。
観察および剖検:活動、毎日の体重および営巣活動(nesting activity)についてマウスを48時間観察する。48時間目に、マウスを屠殺し、研究のために血液を収集する。
(実施例7)
ミトコンドリアCO毒性を逆転するヘモグロビンの能力
CO中毒は、患者に長期的な影響を有し、理論の1つによると、ミトコンドリアの中毒は、電子伝達系の複合体IVの阻害により活性酸素種(ROS)増加の生成をもたらす。CO曝露によってもたらされた阻害の量を測定し、これを呼吸速度により定量化するためのモデルを開発した。クラーク電極において、最大呼吸を誘導するために基質であるコハク酸塩およびADPの添加により、ラット肝臓由来の単離されたミトコンドリアの酸素呼吸を測定した。次に、室内気によりチャンバーを再酸素化して、ベースライン呼吸速度を得た。チャンバーをCO飽和PBSに曝露し、次いで低酸素性状態におよそ60秒間維持して、チトクロムcオキシダーゼへのCOの結合を誘導し、系を再酸素化した。これは、観察されたよりゆっくりした呼吸速度を誘導する。CO飽和PBSが、2回の再酸素化にわたり、単離されたミトコンドリアにおけるミトコンドリア呼吸の減少を誘導する(図16B)ことが実証された。最後の再酸素化ステップに先立つオキシ-剥離Hbによる処置は、ベースライン速度(初期再酸素化)付近まで、ミトコンドリアの呼吸速度を回復する(図16A)。図16Cに概要データを示す。CO曝露なしの再酸素化のみおよびCO曝露なしのオキシ-剥離Hb処置も含む場合、二元配置ANOVAにより、最終再酸素化ステップのための呼吸におけるCOおよびオキシ-剥離Hbの間の相互作用は、高度に有意であった(p=0.0002)。
(実施例8)
ヘモグロビンに基づく分子は、気体リガンドスカベンジング分子として作用することができる
一酸化窒素は、ミトコンドリア呼吸を阻害し、全体として呼吸をほぼ停止することが公知である。これは、ミトコンドリア呼吸のCO阻害と同様の様式でなされる。ヘモグロビンは、NOをスカベンジングし、呼吸の阻害を逆転することができる。単離されたラット肝臓ミトコンドリアを、クラーク電極反応チャンバー内に配置した。最大呼吸のためにコハク酸塩および次いでADPを添加した。次に、ミトコンドリアを、NO供与体であるProli-NONOateに曝露した。これにより、ミトコンドリア呼吸が停止した。ヘモグロビンの添加により、NOのスカベンジングにより呼吸が再開した(図4)。スカベンジング剤によるCOの結合は、同様の様式で働く(図15および図16A~図16C)。
まとめると、これらの結果は、COスカベンジング剤が、マウスモデルにおいてin vitroおよびin vivoの両方で、赤血球細胞の内側に位置するカルボキシル化ヘモグロビンからCOを除去することができることを指し示す。加えて、ヘモグロビンは、そのNOのスカベンジングおよびNO誘導性阻害の逆転によって実証される通り、ミトコンドリア呼吸のためのスカベンジング剤として作用することができる。
(実施例9)
例示的な合成方法
一部の実施形態では、全血または濃厚赤血球からのヘモグロビンの単離は、次の手順に従って実行することができる:
1. バッグから、対になる黒色キャップ50mL Eppendorfチューブ(例えば、4、6または8個のチューブ)内に10mLを収集する。
2. 50mL(10mL prbc + 40mL PBS)の総体積となるように5×PBSで希釈する。
3. 2000gで10分間、最大加速(Allegra(登録商標)X-15R遠心分離機)4℃にてスピンする。
4. 上清(血漿)を除去する。
5. 同じチューブに40mL PBSを添加する。
6. 上下に穏やかに混合する(ほぼ5回)。
7. 2000gで10分間、最大加速(Allegra(登録商標)X-15R遠心分離機)4℃にてスピンする。
8. 上清に色が残らなくなるまで、ステップ4~7を少なくとも5回反復する。
9. 上清(血漿)を除去する。
10. 同じチューブに40mL PBSを添加する。
11. 上下に穏やかに混合する(ほぼ5回)。
12. 4000gで10分間、最大加速(Allegra(登録商標)X-15R遠心分離機)4℃にてスピンする。
13. 上清に色が残らなくなるまで、ステップ9~12を3~5回反復する。
14. 上清を除去する。
15. 30mLの脱イオン水をペレットに添加する。
16. 穏やかに上下に動かすことにより徹底的に混合する。
17. 1時間4℃でインキュベートする。
18. 混合物をOak Ridge遠心分離チューブ、PSF、サイズ50mLに入れる。
19. 全チューブを等重量となるように釣り合わせる。
20. ローターJA17における13000RPMで30分間、最大加速、4℃(Avanti J-E遠心分離機)にてスピンする。
21. 上清を除去し、各チューブにおいて50mL Eppendorf(青色キャップ)内に配置する。
一部の実施形態では、単離されたヘモグロビンは、次の修飾プロトコールに従って修飾することができる:
1)pH7.4のリン酸緩衝食塩水(PBS)における1~5mM剥離ヘモグロビン(Hb)に、氷上で1~1.5時間、ほぼ7.5当量(最大37.5mM)のいずれかの2,2’-ジチオジピリジン(2-DPS、220.31g/mol)を添加する。
例えば、エタノール(EtOH)において2-DPSの500mM(55mg、500μL)ストック溶液を調製した。この溶液は、-20°で凍結することができる。100μLの10mM剥離Hbを190μLのPBSで希釈した。10μLの2-DPSストックを添加し、Hb溶液を穏やかにボルテックスし、1~1.5時間氷上に置き、2-メルカプトピリジルHb(2MP-Hb)を生成した。
2)低温室(ほぼ4℃)でG25カラムにより2MP-Hbをゲル濾過する。新たな濃度は、カラムの体積および元の濃度から見積もることができる。
例えば、300μLにおける3.34mMの2MP-Hb(1μmol)を、低温室でPBS飽和G25カラムに通し、これを収集後に、最終体積1700μL(ほぼ580μM Hb)まで希釈した。
3)2MP-Hbを、PBSに溶解したおよそ20倍過剰な(還元型)チオール修飾剤と共に4℃の冷蔵庫で一晩インキュベートする。先ず還元型チオールの適切なストック溶液を作製する(例えば、100mM)。
i.還元型グルタチオン、GSH:307.32g/mol、これはGS-Hbを生じる。
ii.還元型N-アセチル-システイン、NAC:163.2g/mol、これはNAC-HBを生じる。
iii.還元型システイン、Cys:121.16g/mol、これはCysS-Hbを生じる。
例えば、30.7mgの還元型グルタチオン(0.1mmol)を1mLのPBSに溶解し、100mM溶液を生成し、氷上に維持した。20倍過剰(20×580μMまたは11.6mM)を達成するために、197.2μLの100mM GSHを1.7mLの2MP-Hbに添加した。
4)4mL 10Kカットオフセントリコン(centricon)(または必要であれば、15mLセントリコンにおける最大50Kカットオフ)を使用して、修飾されたHbを濃縮する。4000RPMで10分間遠心分離することにより、新たなセントリコンを先ずナノピュア(nanopure)水で洗浄する。G25カラム(複数可)を使用することができる体積まで、修飾されたHbを濃縮する(4000RPM、ほぼ15分間、4℃)。低温室でG25を使用して、残っている過剰な還元型チオール修飾剤を除去する。凍結する、またはチオール修飾試験に進んで、チオール化の程度を決定する。
一部の実施形態では、単離されたヘモグロビンは、次の修飾プロトコールに従って修飾することができる:4,4’-ジ(1,2,3-トリアゾール)ジスルフィド水和物(4-DTD)、MW:ほぼ236g/mol、二水和物につき)は、10倍への過剰の増加を除いて2-DPSと同じ様式で行う。ステップ2に進むが、次いで手順を完了する。4-MTri-Hbを得る。11.8mgの4-DTDを500μLの50/50 HO/EtOH混合物に溶解し(超音波処理が要求されるであろうが、ゆっくり溶解するであろう)、100mM溶液を生成する。次に、200μLのTAzSを100μLの10mM剥離Hbと組み合わせ、穏やかにボルテックスし、1.5時間氷の上に置いた。
一部の実施形態では、単離されたヘモグロビンは、次の修飾プロトコールに従って修飾することができる:
修飾処理のための単離されたヘモグロビン調製
1. 300mL Falcon滅菌細胞培養フラスコ内で単離されたヘモグロビンを一緒に混合する。
2. 少量の混合された産物をサンプリングして、分光測定法でヘム濃度を決定する。
a. 通常濃度->2.5~4mM
単離されたヘモグロビン中間産物のための許容されるエンドポイント
分光測定法によるヘモグロビン濃度>1.5mM
メトヘモグロビン<5%;オキシヘモグロビン>95%
NEM修飾調製
1. 単離されたヘモグロビンを除去し、3:1NEM:測定ヘム濃度に十分な空間を持って、新たなEppendorf50mLチューブに入れる。例えば、3mMヘモグロビンである場合、小体積の高濃度NEMと混合して、9mM終末濃度NEMを得る。1mLのPBSでNEMの粉末を溶解する。
a. NEMの溶液を添加する場合、100mMの可溶化NEMを超えないこと。
2. 揺動機上のEppendorfチューブ内で室温で1時間インキュベートする。
3. 15mLのこの混合物を50mL濃縮器カラム(Amicon ultra 15~50KDa)にロードする。
4. 4000g最大アクセルで4℃にて30分間スピンする。
5. 流出液を空にし、収集器内にほぼ5mLの材料を収集する。
6. 全NEM-Hbをピペッティングにより取り出して50mlコニカルチューブ(青色キャップ)に入れ、次いで、カラムによる精製に進む。
7. ヘッドスペースにPBSが残らないように、カラムの浄化を確実にする。
a. カラムは、使用前にPBS 20mlで少なくとも3回浄化するべきである。新たなカラムのため、貯蔵用流体を廃棄し、各回PBS 20mlで少なくとも4回洗浄する。
8. 250~300μLの剥離HbおよびNEM混合物を一度に取り出し、G25 Sephadexカラムにロードする。
9. ヘモグロビン混合物をフィルターの直下に通過させて、ヘモグロビン混合物を表面に残さない。
10. さらに300μL(総計600μL)の剥離HbおよびNEM混合物を一度に添加し、G25 Sephadexカラムにロードする。
11. ヘモグロビン混合物をフィルターの直下に通過させて、ヘモグロビン混合物を表面に残さない。
12. 0.3mLのPBSを添加し、これをカラム表面に通過させる。
13. 全部で3回反復する。
14. 5mLのPBSを添加する。
15. カラムから赤色が溶出されたら、流出液の収集を開始する。
16. 濃いピンクのときに収集を開始する。
17. 深紅色が終わったら、収集を停止する。
18. 全NEM-Hbが収集されたら、50mL濃縮器カラム(Amicon ultra 15~50KDa)内に混合物全体を配置する。
19. 4000g(Allegra(登録商標)X-15R遠心分離機)最大アクセルで4℃にて30分間スピンする。
20. 流出液を空にする。
21. 上部の収集器内にはほぼ1mLのNEM-Hbがあるはずであり、生理食塩水で15mLまで充填する。
22. 遠心分離機に再度ロードする。
23. 4000g(Allegra(登録商標)X-15R遠心分離機)最大アクセルで4℃にて30分間スピンする。
24. ステップ16~19をさらに3回反復する(4種の総NS+NEM-Hb濃度)。
25. 分光測定法によりNEM-Hbの濃度を、また、レドックス状態をチェックする。
26. 目標のために濃度を調整する。
27. -80℃でアリコートを貯蔵する(Eppendorfマイクロチューブ内に0.85mL)。
28. 注射30分以内に氷上で解凍する。
一部の実施形態では、単離されたヘモグロビンは、次の還元プロセスに従って還元することができる:
グロビン分子をCOに容易に結合させるために、鉄は、酸化Fe3+型ではなく還元Fe2+型でなければならない。酸化型は、COと相互作用せず、無効となるであろう。この還元プロセスは、アスコルビン酸、N-アセチルシステイン、亜ジチオン酸ナトリウム、メチレンブルー、グルタチオンまたはB5/B5-レダクターゼ/NADH等の還元剤の添加により行われる。
(実施例10)
例示的な生物学的試験
ヘモグロビン分子と混合した一酸化炭素飽和赤血球細胞の動態:1000gで5~10分間の遠心分離によって50~100μLの血液をPBSで5~7回洗浄することにより赤血球を得た。洗浄された赤血球を1~2mlのPBSに希釈し、アルゴンガスの流れを最大1時間通すことにより、氷上でゆっくり撹拌しつつ脱酸素化した。嫌気的実験のため、アルゴンを短時間通し、Hbに対して過剰な亜ジチオン酸ナトリウムを赤血球に添加した。少なくとも4:1の比で脱酸素化赤血球溶液を希釈することにより、カルボキシル化赤血球被包Hbを得た。脱気した隔壁キャップの15mL遠心分離チューブにおける5分間1000gの遠心分離によって、脱気したPBS(嫌気的実験のために5~10mM亜ジチオン酸塩を含有)で赤血球を2回洗浄することにより、過剰なCOを除去した。洗浄後に、最終濃度100~200μMとなるように赤血球を再懸濁し、これは嫌気的実験のために過剰な亜ジチオン酸ナトリウムを有する。記載されている通りに剥離HbおよびNEM-Hbを調製した。一部の実験では、反応開始後に、Hbから赤血球を分離して、吸光度スペクトルを測定した。この場合、反応温度は、Isotemp撹拌ホットプレートおよびウォーターバス組合せ(Fisher Scientific)により調節した。赤血球被包HbCOおよび酸素化または脱酸素化剥離HbまたはNEM-Hbは、別々のガラスバイアルにおいて25または37℃に平衡化した。最終濃度40μMの両方のタンパク質について赤血球溶液に剥離HbまたはNEM-Hbを注射することにより反応を開始した。均等な体積のPBS(亜ジチオン酸塩ありまたはなし)をカルボキシル化赤血球の対照試料に注射した。定期的に、0.5mlの反応および対照試料を採取し、1.5mL μ-遠心分離チューブにおいて30~60秒間5000gで遠心分離した。剥離HbまたはNEM-Hbを含有する上清を除去し(好気的実験において5mM亜ジチオン酸ナトリウムを添加して、タンパク質の自己酸化を防止した)、氷上で貯蔵した。0.5%NP40のPBS中溶液(嫌気的実験のため常に、好気的実験のため時には5mM亜ジチオン酸ナトリウムを含有)を赤血球ペレットに添加して、細胞を溶解した。1cm経路長キュベットにおいてCary 50分光光度計により、溶解された赤血球溶液におけるHb吸光度を測定した。このサイクルを各回1.5~5分間で6回反復し、Hbの6つの吸光度測定値を得た。対照および反応試料を継続的に撹拌した。反応においてヘモグロビンの吸光度が測定された時間を、剥離HbまたはNEM-Hbの注射後から遠心分離の開始15または30秒後まで(それぞれ30または60秒間の遠心分離持続時間について)に経過した時間であると仮定した。最後の(6回目の)時点が測定された後に、反応および対照混合物の貯蔵した上清試料の吸光度も同様に記録した。一部の実験では、Hbから赤血球は分離されず、その代わりに、Cary 100分光光度計のIntegrating Sphereアタッチメントにより混合物全体の吸光度が記録された。このセットアップは、赤血球によって散乱された光を収集し、これにより、スペクトルデコンボリューションに十分に正確な吸光度スペクトルを提供する。これらの実験の手順は、カルボキシル化赤血球の調製後に、Cary 50において剥離HbまたはNEM-Hbを純粋HbCOと混合するための手順と同じであった。
最小二乗デコンボリューション:酸化(met)、脱酸素化(デオキシ)、酸素化(O)およびカルボキシル化(CO)型のヘモグロビン(Hb)およびミオグロビン(Mb)の標準参照スペクトルを得た。タンパク質を氷上で解凍した後に、過剰なフェリシアン化カリウムと混合し、Econo-Pac 10DG脱塩カラム(Bio-Rad Laboratories、Hercules、CA)に通すことにより、酸化型のスペクトルを得た。酸化型に過剰な亜ジチオン酸ナトリウムを添加した後に、脱酸素化種のスペクトルを記録した。好気的条件下で脱酸素化種を脱塩カラムに通した直後に、酸素化型のスペクトルを記録した。脱酸素化種をCO飽和緩衝液と1:4の比で混合した後に、カルボキシル化型のスペクトルを測定した。全標準スペクトルは、Cary 50分光光度計において20、25および37℃で収集した。Microsoft Excelにおいて最小二乗適合ルーチンにより実験スペクトルのデコンボリューションを行った。動態実験の吸光度の変化は大きくないため、デコンボリューションの精度を確認するために、Hbおよび剥離HbまたはNEM-Hb濃度が互いに等しくなるという制約ありまたはなしで、HbおよびMbの両方で構成された全スペクトルは、450および700nm、490および650nm、ならびに510および600nmの間で常に適合した。同じ目的のため、波長軸に沿って水平にスペクトルをシフトし得るパラメーターが、時には適合に含まれた。Hbおよび剥離HbまたはNEM-Hbのカルボキシル化および脱酸素化標準を使用して、嫌気的実験の吸光度スペクトルをデコンボリューションした。酸化、カルボキシル化および酸素化型のHbおよびMbの標準を使用して、好気的実験の吸光度スペクトルをデコンボリューションした。剥離HbまたはNEM-HbからHbが分離され、後に亜ジチオン酸塩が、好気的実験における赤血球にまたは嫌気的実験における上清のいずれかに添加された、赤血球実験のため、酸素化および酸化型の代わりにデコンボリューションにおいて脱酸素化標準を使用した。Stopped-Flow分光計により収集されたスペクトルおよび時には、HP8453によるスペクトルをデコンボリューションする前に、区分的立方エルミート補間(piecewise cubic hermite interpolation)を用いてMatlab(登録商標)ののinterp1関数を使用して、Cary 50分光光度計によって使用された波長と同じ波長に吸光度値を再マッピングした。
(実施例11)
NEM-HbおよびStHbによる処置後の血液化学
本実施例は、修飾されたグロビンタンパク質による処置後の動物における血液化学を評価するための研究について記載する。
生理食塩水(対照);4000mg/kgアルブミン(対照);100mM N-アセチルシステイン(NAC)(対照);4mM NEM-Hb + 40mM NAC(1600mg/kg NEM-Hb、常用量);4mM剥離Hb + 40mM NAC(1600mg/kg剥離Hb、常用量);10mM NEM-Hb + 100mM NAC(4000mg/kg NEM-Hb、中用量);または10mM剥離Hb + 100mM NAC(4000mg/kg剥離Hb、中用量)のいずれかでマウスを処置した。処置後に、AST、ALT、LDL、尿素およびクレアチニンのレベルについて、マウス由来の血漿試料を評価した(図17)。
全ての事例で、StHbおよびNEM-Hbの注入は、AST、ALT、LDL、尿素およびクレアチニンの値を有意に変更しなかった。報告された値は、正常範囲内にある。この結果は、指し示された濃度におけるStHbおよびNAM-Hbの注入が、肝臓毒性も腎臓毒性も誘導しなかったことを指し示す。
(実施例12)
COに対する修飾されたヘモグロビンタンパク質の親和性
COに対するStHbおよびNEM-Hbの全体的な親和性を決定した(表2)。R状態Hbの値は、Cooper et al. (Biochim Biophys Acta 1411(2-3): 290-309, 1999)から得た。
Figure 2022520129000033
決定されたパラメーターは、ネイティブHbと比較して、COに対するSt-HbおよびNEM-Hbのより高い親和性を指し示し(St-Hbについては1.45倍高く、NEM-Hbについては1.83倍高い)、COが、修飾されたヘモグロビンに優先的に結合するであろうことを指し示す。
(実施例13)
様々な賦形剤を使用したStHbおよびNEM-Hbの安定性
本実施例は、異なる賦形剤の存在下におけるStHbおよびNEM-Hbの安定性を試験するための研究について記載する。結果を下の表3A~3Dに示す。
全アッセイを100%還元試料(100%オキシHb、+2酸化状態のヘム鉄)により開始した。酸化型(metHb、+3酸化状態のヘム鉄)は、COに対して不活性である;よって、製剤の目標は、貯蔵期間後に最高量のオキシHbを達成することである。示されている値は、3種の試料の平均±標準偏差である。公表されている方法を使用したUV-可視分光測定法およびスペクトルデコンボリューションによって、オキシHbおよびメトHbのパーセンテージを決定した(Azarov et al., Sci Transl Med 8(368): 368ra173, 2016; Huang et al., J Clin Invest 115(8): 2099-2107, 2005)。
表3A~3Dに示す通り、1ヶ月間の貯蔵後に活性型のStHbまたはNEM-Hbの95%超を維持することができるいくつかの製剤が同定された。
Figure 2022520129000034
Figure 2022520129000035
Figure 2022520129000036
Figure 2022520129000037
開示されている主題の原理が適用され得る多くの可能な実施形態を考慮して、説明されている実施形態は、本開示の単なる好まれる例であることを認識するべきであり、本開示の範囲の限定として解釈するべきではない。むしろ、本開示の範囲は、次の特許請求の範囲によって定義される。したがって、本発明者らは、これらの特許請求の範囲および趣旨の内に納まる全てを主張する。

Claims (33)

  1. 弛緩した状態のグロビンを含む組成物であって、前記グロビンの少なくとも85%が、前記弛緩した状態である、組成物。
  2. 前記グロビンが、ミオグロビンまたはヘモグロビンである、請求項1に記載の組成物。
  3. 前記グロビンが、ヘモグロビンである、請求項2に記載の組成物。
  4. 前記ヘモグロビンが、2,3-ジホスホグリセレートを実質的に含まない、請求項3に記載の組成物。
  5. 前記ヘモグロビンが、β-Asp94、β-His146およびα-Lys40の間の一方または両方の塩橋を阻害するように共有結合で修飾されたβ-Cys93を含む、請求項3に記載の組成物。
  6. 前記β-Cys93が、次式:
    Figure 2022520129000038
    (式中、
    各Xは独立して、酸素、硫黄、NRまたはCRR’から選択され、各RおよびR’は独立して、水素、脂肪族、ヘテロ脂肪族、ハロ脂肪族、ハロヘテロ脂肪族、芳香族またはこれらの組合せであり;
    は、水素、脂肪族、ヘテロ脂肪族、ハロ脂肪族、ハロヘテロ脂肪族、芳香族またはこれらの組合せであり;
    A、B、CおよびDのそれぞれは独立して、C、CR、N、NRまたはOであり、RおよびRのそれぞれは独立して、水素、脂肪族、ヘテロ脂肪族、ハロ脂肪族、ハロヘテロ脂肪族、芳香族またはこれらの組合せであり;
    A’は、N、CRまたはCHであり;
    各Rは独立して、脂肪族、ヘテロ脂肪族、芳香族、有機官能基またはこれらのいずれかの組合せであり;
    mは、0~5の範囲の整数であり;
    、RおよびRのそれぞれは独立して、水素、脂肪族、ヘテロ脂肪族、ハロ脂肪族、ハロヘテロ脂肪族、芳香族またはこれらの組合せであり;
    点線は、図示されている酸素原子および前記R基の間の必要に応じた結合を指し示し;
    pは、1または0であり得、pが0の場合、窒素原子は、他のR基と同じまたは異なり得る第2のR基にさらに結合され;
    各Rは独立して、水素、脂肪族、ヘテロ脂肪族、ハロ脂肪族、ハロヘテロ脂肪族、芳香族またはこれらの組合せであり;
    各Rは独立して、水素、脂肪族、ヘテロ脂肪族、ハロ脂肪族、ハロヘテロ脂肪族、芳香族またはこれらの組合せであり;
    前記Cys93は、前記ヘモグロビンの前記β-Cys93である)
    のうちいずれか1種または複数を満たす構造を有するように共有結合で修飾されている、請求項5に記載の組成物。
  7. 前記β-Cys93が、
    Figure 2022520129000039
    (式中、前記Cys93は、前記ヘモグロビンの前記β-Cys93である)
    から選択される構造を有するように共有結合で修飾されている、請求項5に記載の組成物。
  8. 前記ヘモグロビンが、官能基化されたアミン基を含む末端アミノ酸を含み、前記官能基化されたアミン基が、カルバミル化されるか、1個もしくは複数のアルキル基でアルキル化されるか、カルバモイル化されるか、1個もしくは複数の保護基を含むか、またはこれらの組合せである、請求項3に記載の組成物。
  9. 前記グロビンが、哺乳動物グロビンである、請求項1に記載の組成物。
  10. 前記哺乳動物グロビンが、ヒト、ウシ、イヌ、ウマまたはブタグロビンである、請求項9に記載の組成物。
  11. 薬学的に許容される担体をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
  12. 還元剤をさらに含む、請求項11に記載の組成物。
  13. 前記還元剤が、アスコルビン酸、N-アセチルシステイン、亜ジチオン酸ナトリウム、メチレンブルー、グルタチオン、B5/B5-レダクターゼ/NADHまたはこれらの組合せである、請求項12に記載の組成物。
  14. 脱酸素化されている、請求項1に記載の組成物。
  15. β-Asp94、β-His146およびα-Lys40の間の一方または両方の塩橋を阻害するように共有結合で修飾されたβ-Cys93を含む、単離されたヘモグロビン。
  16. 前記β-Cys93が、次式:
    Figure 2022520129000040
    Figure 2022520129000041
    (式中、
    各Xは独立して、酸素、硫黄、NRまたはCRR’から選択され、各RおよびR’は独立して、水素、脂肪族、ヘテロ脂肪族、ハロ脂肪族、ハロヘテロ脂肪族、芳香族またはこれらの組合せであり;
    は、水素、脂肪族、ヘテロ脂肪族、ハロ脂肪族、ハロヘテロ脂肪族、芳香族またはこれらの組合せであり;
    A、B、CおよびDのそれぞれは独立して、C、CR、N、NRまたはOであり、RおよびRのそれぞれは独立して、水素、脂肪族、ヘテロ脂肪族、ハロ脂肪族、ハロヘテロ脂肪族、芳香族またはこれらの組合せであり;
    A’は、N、CRまたはCHであり;
    各Rは独立して、脂肪族、ヘテロ脂肪族、芳香族、有機官能基またはこれらのいずれかの組合せであり;
    mは、0~5の範囲の整数であり;
    、RおよびRのそれぞれは独立して、水素、脂肪族、ヘテロ脂肪族、ハロ脂肪族、ハロヘテロ脂肪族、芳香族またはこれらの組合せであり;
    点線は、図示されている酸素原子および前記R基の間の必要に応じた結合を指し示し;
    pは、1または0であり得、pが0の場合、窒素原子は、他のR基と同じまたは異なり得る第2のR基にさらに結合され;
    各Rは独立して、水素、脂肪族、ヘテロ脂肪族、ハロ脂肪族、ハロヘテロ脂肪族、芳香族またはこれらの組合せであり;
    各Rは独立して、水素、脂肪族、ヘテロ脂肪族、ハロ脂肪族、ハロヘテロ脂肪族、芳香族またはこれらの組合せであり;
    前記Cys93は、前記ヘモグロビンの前記β-Cys93である)
    のうちいずれか1種または複数を満たす構造を有するように共有結合で修飾されている、請求項15に記載の単離されたヘモグロビン。
  17. 前記β-Cys93が、
    Figure 2022520129000042
    (式中、前記Cys93は、前記ヘモグロビンの前記β-Cys93である)
    から選択される構造を有するように共有結合で修飾されている、請求項15に記載の単離されたヘモグロビン。
  18. 前記ヘモグロビンが、官能基化されたアミン基を含む末端アミノ酸を含み、前記官能基化されたアミン基が、カルバミル化されるか、1個もしくは複数のアルキル基でアルキル化されるか、カルバモイル化されるか、1個もしくは複数の保護基を含むか、またはこれらの組合せである、請求項15に記載の単離されたヘモグロビン。
  19. 前記ヘモグロビンが、哺乳動物ヘモグロビンである、請求項15に記載の単離されたヘモグロビン。
  20. 前記哺乳動物ヘモグロビンが、ヒト、ウシ、イヌ、ウマまたはブタグロビンである、請求項19に記載の単離されたヘモグロビン。
  21. 血液または動物組織におけるヘモグロビンから一酸化炭素を除去する方法であって、前記血液または動物組織を請求項1に記載の組成物と接触させ、これにより、前記血液または動物組織におけるヘモグロビンから一酸化炭素を除去するステップを含む、方法。
  22. 前記血液または動物組織が、対象中にあり、前記血液または動物組織を前記組成物と接触させるステップが、治療有効量の前記組成物を対象に投与するステップを含む、請求項21に記載の方法。
  23. 前記組成物を前記対象に投与するステップに先立ち、一酸化炭素ヘモグロビン血症を有する対象を選択するステップを含む、請求項22に記載の方法。
  24. 対象における一酸化炭素ヘモグロビン血症を処置する方法であって、
    一酸化炭素ヘモグロビン血症を有する対象を選択するステップと、
    治療有効量の請求項1に記載の組成物を前記対象に投与するステップと
    を含む、方法。
  25. 前記対象が、ヒトであり、前記グロビンが、ヒトミオグロビンまたはヒトヘモグロビンである、請求項24に記載の方法。
  26. 前記対象が、その血液中に、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%または少なくとも50%の一酸化炭素ヘモグロビンを有する、請求項24に記載の方法。
  27. 前記組成物が、静脈内または筋肉内投与される、請求項24に記載の方法。
  28. 前記組成物が、静脈内注入、腹腔内注射または筋肉内注射によって投与される、請求項27に記載の方法。
  29. 治療的使用のために単離された修飾されたヘモグロビンを調製する方法であって、
    全血、濃厚赤血球またはこれらの組合せからヘモグロビンを単離するステップと、
    式I~Vのうちいずれか1種または複数を満たす構造を有する反応物と前記ヘモグロビンを反応させて、1個または複数のジスルフィド架橋を破壊し、β-Cys93において共有結合で修飾されたヘモグロビンを形成するステップと、
    β-Cys93において共有結合で修飾された前記ヘモグロビンを単離するステップと
    を含み、式I~Vが、
    Figure 2022520129000043
    Figure 2022520129000044
    (式中、
    各Xは独立して、酸素、硫黄、NRまたはCRR’から選択され、各RおよびR’は独立して、水素、脂肪族、ヘテロ脂肪族、ハロ脂肪族、ハロヘテロ脂肪族、芳香族またはこれらの組合せであり;
    は、水素、脂肪族、ヘテロ脂肪族、ハロ脂肪族、ハロヘテロ脂肪族、芳香族またはこれらの組合せであり;
    A、B、CおよびDのそれぞれは独立して、C、CR、N、NRまたはOであり、RおよびRのそれぞれは独立して、水素、脂肪族、ヘテロ脂肪族、ハロ脂肪族、ハロヘテロ脂肪族、芳香族またはこれらの組合せであり;
    A’は、N、CRまたはCHであり;
    各Rは独立して、脂肪族、ヘテロ脂肪族、芳香族、有機官能基またはこれらのいずれかの組合せであり;
    mは、0~5の範囲の整数であり;
    、RおよびRのそれぞれは独立して、水素、脂肪族、ヘテロ脂肪族、ハロ脂肪族、ハロヘテロ脂肪族、芳香族またはこれらの組合せであり;
    点線は、図示されている酸素原子および前記R基の間の必要に応じた結合を指し示し;
    各pは、1または0であり、式IVについて、pが0の場合、窒素原子は、他のR基と同じまたは異なり得る第2のR基にさらに結合され;
    各Rは独立して、水素、脂肪族、ヘテロ脂肪族、ハロ脂肪族、ハロヘテロ脂肪族、芳香族またはこれらの組合せであり;
    各Rは独立して、水素、脂肪族、ヘテロ脂肪族、ハロ脂肪族、ハロヘテロ脂肪族、芳香族またはこれらの組合せであり;
    前記Cys93は、前記ヘモグロビンの前記β-Cys93である)
    である、方法。
  30. 前記反応物が、2,2’-ジチオピリジン、4-4’-ジ(1,2,3-トリアゾール)ジスルフィド水和物、N-エチルマレイミド、N-アセチルシステイン、システイン、グルタチオン、3-メルカプト-1,2,3-トリアゾール、2-メルカプト-ピリジルまたはこれらのいずれかの組合せから選択される、請求項29に記載の方法。
  31. β-Cys93において共有結合で修飾された前記ヘモグロビンを還元剤と反応させるステップをさらに含む、請求項29に記載の方法。
  32. β-Cys93において共有結合で修飾された前記ヘモグロビンを酸素を含まない環境に配置するステップをさらに含む、請求項29に記載の方法。
  33. 前記全血または濃厚赤血球が、ヒト、ブタ、イヌ、ウマまたはウシのものである、請求項29に記載の方法。
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