(図面の簡単な説明)
図1は、本発明の原理に従って構成された、ロボット遠隔マニピュレータを有する例示的な遠隔作動手術ロボットシステムを示す。
図2Aは、本発明の原理に従って構成された例示的なマスターコンソールを示す。
図2Bは、本発明の原理に従って構成された例示的なディスプレイを示す。
図2Cは、本発明の原理に従って構成された別の例示的なマスターコンソールを示す。
図3Aは、座位構成にある図2Aのマスターコンソールを示し、図3B及び図3Cは、立位構成にある図2Aのマスターコンソールを示す。
図4は、本発明の原理に従って構成された例示的なマスターコンソールハンドルを示す。
図5Aは、本発明の原理に従って構成された例示的なハンドルグリップを示す。
図5B及び図5Cは、本発明の原理に従った、図4Aのマスターコンソールハンドルに取り外し可能に結合している図5Aのハンドルグリップを示す。
図5D~図5Fは、本発明の原理に従った、クリップアタッチメントを介してマスターコンソールハンドルに取り外し可能に結合している例示的なハンドルグリップを示す。
図5Gは、本発明の原理に従った、マスターコンソールハンドルに結合された例示的な滅菌ドレープキャップを示す。
図6は、本発明の原理に従った、ねじアタッチメントを介してマスターコンソールハンドルに取り外し可能に結合している例示的なハンドルグリップを示す。
図7A~図7Cは、本発明の原理に従った、図5Aのハンドルグリップの作動工程を示す。
図7D及び図7Eは、マスターコンソールハンドルに結合された図5Aのハンドルグリップの断面図である。
図8Aは、本発明の原理に従って構成された別の例示的なマスターコンソールハンドルを示す。
図8B及び図8Cは、本発明の原理に従った、図8Aのマスターコンソールハンドルのハンドルグリップの動きを示す。
図8D及び図8Eは、図8Aのマスターコンソールハンドルの内部図である。
図8F及び図8Gは、本発明の原理に従った例示的な滅菌ドレープインターフェイスを示す。
図9A~図9Cは、本発明の原理に従った、図8Aのマスターコンソールハンドルと取り外し可能に結合している図8Aのハンドルグリップを示す。
図9D~図9Fは、本発明の原理に従った、図8Aのマスターコンソールハンドルに結合されていない図8Aのハンドルグリップを示す。
図10A~図10Cは、本発明の原理に従って構成されたさらに別の例示的なマスターコンソールハンドルを示す。
図11A及び図11Bは、本発明の原理に従って構成された例示的なスレーブコンソールを示す。
図12は、本発明の原理に従って構成された左スレーブコンソールを示す。
図13Aは、遠隔作動手術ロボットシステムの例示的な制御装置を示す。
図13Bは、遠隔作動手術ロボットシステムの別の例示的な制御装置を示す。
図14A~図14Eは、本発明の原理に従ったスレーブコンソールのScaraの動きを示す。
図15A~図15Cは、本発明の原理に従ったスレーブコンソールの垂直調整を示す。
図16は、本発明の原理に従った、ホーム構成にあるスレーブコンソールを示す。
図17A~図17Dは、スレーブコンソールの0度の角度付けの際の前方構成におけるスレーブコンソールに結合された例示的な並進器具インターフェイスの動きを示す。
図18A~図18Dは、図17A~図17Dの前方手術作業空間を例示する。
図18Eは、図18A~図18Dのスレーブコンソールの前方手術作業空間の背面図である。
図19A~図19Cは、スレーブコンソールの20度の角度付けの際の前方構成におけるスレーブコンソールに結合された例示的な器具の前方手術作業空間を示す。
図20A~図20Cは、スレーブコンソールの40度の角度付けの際の前方構成におけるスレーブコンソールに結合された例示的な器具の前方手術作業空間を示す。
図21A~図21Jは、本発明の原理に従った、前方構成と反転構成との間のスレーブコンソールの反転を示す。
図21K及び図21Lはそれぞれ、本発明の原理に従った、前方構成及び反転構成の際のマスターコンソールの概略図及びスレーブコンソールの概略図である。
図22A~図22Cはそれぞれ、スレーブコンソールの0度、20度、及び40度の角度付けの際の反転構成におけるスレーブコンソールに結合された例示的な並進器具インターフェイスを示す。
図23A~図23Cは、図22A~図22Cの反転手術作業空間を例示する。
図24A~図24Dは、本発明の原理に従った、統合腹腔鏡手術用のスレーブコンソールの調整を示す。
図25は、本発明の原理に従った、図1の遠隔作動手術ロボットシステムの使用を例示するフローチャートである。
図26は、本発明の原理に従った、図25の外科医コンソールの配置工程を例示するフローチャートである。
図27は、本発明の原理に従った、図25の準備工程を例示するフローチャートである。
図28は、本発明の原理に従った、図25の器具の準備工程を例示するフローチャートである。
図29は、本発明の原理に従った、図25の操作の準備工程を例示するフローチャートである。
図30は、本発明の原理に従った、図25の操作工程を例示するフローチャートである。
図31A及び図31Bは、本発明の原理に従って構成された、ハイブリッド遠隔マニピュレータを有する例示的な遠隔作動手術ロボットシステムを示す。
図32A及び図32Bは、図31A及び図31Bの手術ロボットシステムの部分組立分解斜視図を示す。
図33は、本発明の原理に従って構成された例示的な機械的伝動システムの部分的に組立分解された上面図を示す。
図34A及び図34Bは、本発明の原理に従って構成された例示的なマスターユニットの側面斜視図を示す。
図34C及び図34Dは、図34A及び図34Bに描かれたマスターユニットと共に使用するのに適したハンドルの代替の実施態様を示す。
図35A及び図35Bは、本発明の原理に従って構成された例示的なスレーブユニットの側面斜視図を示す。
図36A及び図36Bはそれぞれ、例示的なスレーブハブの端部断面図及び側面内部斜視図を示す。
図36C及び図36Dはそれぞれ、本発明の原理に従って構成されたスレーブ器具の斜視側面図及びエンドエフェクタの詳細な内部図である。
図36Eは、例示的なエンドエフェクタの代替の実施態様の詳細図である。
図37は、選択されたエンドエフェクタの運動学を識別するための例示的な方法工程を例示するフローチャートを示す。
図38は、本発明の遠隔作動手術ロボットシステムの代替の例示的な実施態様を示す。
図39は、図38の遠隔作動手術ロボットシステムのマスターユニットの内部側面斜視図を示す。
図40A及び図40Bは、図38の遠隔作動手術ロボットシステムのスレーブユニットの前方斜視図及び後方斜視図である。
図40C及び図40Dは、本発明の原理に従って構成された別の例示的な切開ポインタを示す。
図41A及び図41Bは、本発明の手術ロボットシステムでの使用に適した制御システムの代替の概略図である。
図42A及び図42Bは、本発明の原理に従って構成された遠隔マニュピレータの代替の実施態様の側面斜視図である。
図43は、本発明の原理に従って構成された別の例示的なマスターコンソールを示す。
(詳細な説明)
本発明の原理に従って構成された、低侵襲外科処置又は他の応用で使用できる、ロボット遠隔マニピュレータを有する遠隔作動手術ロボットシステム及び統合腹腔鏡手術について本明細書で説明する。手術ロボットシステムは、縫合及び切開などの時間のかかる困難な手術作業にロボット工学の有用性を提供し、使用者、例えば外科医が、血管の封止及びステープル留めなどの短時間の特殊な手術作業のために統合腹腔鏡手術に効率的に切り替えることを可能にする。十分に関節運動する器具は、複雑な手術作業を単純にし、手の動きの再現により精度が向上する。使用者は、外科医の集中力及び能力を向上させるために、リラックスした人間工学的作業姿勢で座る又は立つことができる。
図1を参照すると、ロボット遠隔マニピュレータを有する例示的な遠隔作動手術ロボットシステム10が示されている。手術ロボットシステム10は、例えば電気ケーブルを介してスレーブコンソール50に電気的かつ動作可能に結合されたマスターコンソール20を含む。以下にさらに詳細に説明されるように、手術ロボットシステム10は、スレーブコンソール50に結合された複数のアクチュエータ、例えば、好ましくはモータが、プロセッサ駆動制御システムを介してマスターコンソール20で加えられる動きに応答してスレーブコンソール50のエンドエフェクタにマクロな並進運動を加えるマクロ同期状態と、スレーブコンソール50に結合された複数のアクチュエータ、例えば、好ましくはモータが、プロセッサ駆動制御システムを介してマスターコンソール20のハンドルで加えられる動きに応答してスレーブコンソール50のエンドエフェクタにミクロな動きを加えるミクロ同期状態とを有する。
制御システムは、マスターコンソール20の右マスター遠隔マニピュレータ22a及び左マスター遠隔マニピュレータ22bに動作可能に結合されたマスター制御装置2、並びにスレーブコンソール50の右スレーブ遠隔マニピュレータ51a及び左スレーブ遠隔マニピュレータ51bに動作可能に結合されたスレーブ制御装置4a及び4bをそれぞれ備えることができる。例えば、マスター制御装置2は、その1つ又は複数のプロセッサによって実行されるとマスターコンソール20の操作を可能にする命令が格納された非一時的なコンピュータ可読媒体、例えばメモリを備えることができる。同様に、スレーブ制御装置4a、4bはそれぞれ、それらのそれぞれの1つ又は複数のプロセッサによって実行されるとスレーブコンソール50の操作を可能にする命令が格納された非一時的なコンピュータ可読媒体、例えばメモリを備えることができる。マスター制御装置2は、ケーブル(例示されている)などの通信リンクを介して、又は無線通信部品を介してスレーブ制御装置4a及びスレーブ制御装置4bに動作可能に結合されている。
マスター制御装置2は、マスターコンソール20の1つ又は複数のセンサに動作可能に結合することができ、スレーブ制御装置4a、4bは、スレーブコンソール50の1つ又は複数のアクチュエータに動作可能に結合することができ、このため、マスター制御装置2は、マスターコンソール20の1つ又は複数のセンサによってマスターコンソール20で加えられた動きを示す信号を受信し、そしてそこに格納された命令を実行してスレーブコンソール50の1つ又は複数のアクチュエータを作動させるために必要な座標変換を行い、そこに格納された命令を実行するそれぞれのスレーブ制御装置4a、4bに処理された信号を送信して、この処理された信号に基づいてスレーブコンソール50をマスターコンソール20の動きに対応するように動かすことができる。例えば、1つ又は複数のアクチュエータは、1つ又は複数のモータを備えることができる。別法では、マスター制御装置2は、マスターコンソール20の1つ又は複数のセンサから信号を受信し、その信号を処理し、この処理された信号を、それぞれのスレーブ制御装置4a、4bに送信し、該スレーブ制御装置4a、4bが、そこに格納された命令を実行して該処理された信号に基づいて座標変換を行い、そして命令を実行してスレーブコンソール50の1つ又は複数のアクチュエータを作動させて、該変換された処理信号に基づいてマスターコンソール20の動きに対応するようにスレーブコンソール50を動かすことができる。好ましくは、スレーブコンソール50のスレーブリンク及びスレーブジョイントは、以下にさらに詳細に説明されるように、エンドエフェクタ/器具先端部が、手術ロボットシステム10の動作中に遠隔運動中心から逸脱することなく、マスターコンソール20のハンドルで加えられる動きを再現するように動く。従って、並進自由度、例えば左/右、上方/下方、内側/外側、関節自由度、例えばピッチとヨー、作動自由度、例えば開/閉、及び回転自由度、例えば回内回外運動は、以下にさらに詳細に説明されるように、センサ、アクチュエータ、及び制御システムを介して電気機械的に再現される。
本発明の一態様によると、スレーブコンソール50のスレーブリンク及びジョイントは、マスターコンソール20のハンドルで加えられる動きを手術器具がスケーリングされた度合いで再現するように、該マスターコンソール20のハンドルで加えられる動きに応答するように動くことができる。例えば、マスター制御装置2は、マスターコンソール20の1つ又は複数のセンサから信号を受信し、該信号を処理し、該処理された信号をそれぞれのスレーブ制御装置4a、4bに送信し、該スレーブ制御装置4a、4bが、そこに格納された命令を実行して、該処理された信号に基づいて座標変換を行って対応するスケーリングされた動きを示す信号を生成し、そして命令を実行して、スレーブコンソール50の1つ又は複数のアクチュエータを作動させて、変換されてスケーリングされた処理信号に基づいてマスターコンソール20の動きに対応するスケーリングされた方法でスレーブコンソール50を動かすことができる。従って、外科医は、例えば30度のミクロなロール運動をマスターコンソール20のハンドルに加え、このため、スレーブコンソール50のアクチュエータが該スレーブコンソール50の手術器具に、スケーリングされた度合、例えば60度でミクロなロール運動を行わせることができ、それによって該マスターコンソール20での動きに応答して、スレーブコンソール50によってスケーリングされた比率(例えば、1:2)の動きが起こる。好ましくは、ミクロなスケーリングは、ハンドルで生じるミクロな動きよりも大きなミクロな動きをエンドエフェクタにもたらす。マクロな自由度、例えば並進のそれぞれ、並びにミクロな自由度、例えば、関節運動、作動、及び回転のそれぞれは、スレーブコンソール50での割り当てられた自由度の対応する動きが、外科医によってマスターコンソール20で加えられる動きと比較して選択的にスケーリングされるように独立にスケーリングすることができる。例えば、回転のミクロな自由度は、第1のスケール(1:2)でマスターとスレーブとの間で対応するスケーリングされた動きを有するようにプログラムすることができ、作動及び/又は関節運動のミクロな自由度は、第1のスケールとは異なる第2のスケール(2:3)でマスターとスレーブとの間で対応するスケーリングされた動きを有するようにプログラムすることができる。第3のスケールは、第3のミクロな自由度に使用することができる。当業者には理解されるように、スケール比は、例えば、3:1、2.5:1、2:1、1.5:1、1:1.5、1:2、1:2.5、又は1:3であり得、自由度によって異なり得る。有利なことに、ミクロなスケーリングが、ハンドルでよりもエンドエフェクタでより大きなスケーリングされた動きを必要とする場合、外科医は、スレーブコンソール50の手術器具が所望の大きな動きを達成するためにマスターコンソール20のハンドルに大きな動きを加えなくてもよい。これにより、外科医の手/手首/腕への負担を軽減した、ロボット手術(例えば、縫合)のより効率的な側面が可能になる。
マスターコンソール20は、使用者、例えば外科医が位置し得る手術室内、及び外科手術を受けている患者が位置し得るスレーブコンソール50に近接して、例えば無菌ゾーンに配置することができるため、該使用者は、必要に応じて、外科手術中にマスターコンソール20とスレーブコンソール50との間を素早く移動して腹腔鏡手術を手動で行うことができる。従って、スレーブコンソール50は、以下にさらに詳細に説明されるように、外科医が患者の手術部位にアクセスすることを可能にする構成に効率的に後退するように設計されている。マスターコンソール20は、無菌ドレープで覆うことができ、かつ外科手術間に取り外して滅菌することができる取り外し可能なハンドルを備えることができ、このため、該ハンドルは、外科手術中に無菌であり、該ハンドルと外科医の手との間に物理的な障壁がなく、これにより該外科医による制御及び性能が向上する。取り外し可能なハンドルは、回路、センサ、又は電気的に結合されたボタンなどの電子器具を備えずに純粋に機械的にすることができ、このため、該取り外し可能なハンドルは、外科手術間で容易に滅菌可能である。このようにして、マスターコンソールは、手術中に無菌であり得るが、外科医がロボットのハンドルとの直接接触から得られる触覚フィードバックを有することを可能にする。
図1に例示されているように、マスターコンソール20は、右マスター遠隔マニピュレータ22a及び左マスター遠隔マニピュレータ22bを備える。右マスター遠隔マニピュレータ22a及び左マスター遠隔マニピュレータ22bは、外科医がマスターコンソール20にいるときに右マスター遠隔マニピュレータ22aを該外科医の右手によって操作することができ、かつ左マスター遠隔マニピュレータ22bを該外科医の左手によって操作することができるように単一マスターコンソール上に配置することができる。従って、マスターコンソール20は、手術室内での移動のための車輪、及び、例えば保管中又は外科手術中の外科医による使用中に、遠隔マニピュレータを所定の位置にロックするために作動させることができる車輪ロックを備えることができる。加えて、右マスター遠隔マニピュレータ22a及び左マスター遠隔マニピュレータ22bは、例えば外科医の右手及び左手によって、同時に、かつ他方に対して独立に操作することができる。好ましくは、手術ロボットシステム10は、外科処置での使用のために最適化される。
図1にさらに例示されているように、スレーブコンソール50は、右マスター遠隔マニピュレータ22aに動作可能に結合された右スレーブ遠隔マニピュレータ51a、及び左マスター遠隔マニピュレータ22bに動作可能に結合された左スレーブ遠隔マニピュレータ51bを備える。右及び左スレーブ遠隔マニピュレータ51a及び51bは、右スレーブ遠隔マニピュレータ51aを外科手術を受けている患者の右側に配置することができ、かつ左スレーブ遠隔マニピュレータを該患者の左側に配置できるように別々のコンソールに配置することができる。従って、右及び左スレーブ遠隔マニピュレータ51a及び51bはそれぞれ、手術室内での移動のための車輪、及び、例えば保管中に所定の位置に又は手術中に患者の近くに遠隔マニピュレータをロックするために作動させることができるフロアロックを備えることができる。加えて、右及び左スレーブ遠隔マニピュレータ51a及び51bはそれぞれ、手術室内で遠隔マニピュレータを押したり引いたりするためのプルバーを備えることができる。
さらに、カメラシステムを手術ロボットシステム10で使用することができる。例えば、スレーブコンソール50に位置するアシスタントによって操作されるカメラ、例えば内視鏡は、スレーブコンソール50で操作することができ、かつ/又は所定の位置に保持することができる。従って、カメラシステムは、外科処置中に外科医が容易に観察可能な位置でマスターコンソール20に取り付けられたディスプレイ21を備えることができる。ディスプレイ21は、手術ロボットシステム10に関する状態情報を表示し、かつ/又は内視鏡カメラによって捕捉された手術部位を外科医にリアルタイムで表示することができる。
ここで図2Aを参照すると、例示的なマスターコンソール20が示されている。上述のように、マスターコンソール20は、右マスター遠隔マニピュレータ22a及び左マスター遠隔マニピュレータ22bを備える。左マスター遠隔マニピュレータ22bは、例示されているように右マスター遠隔マニピュレータ22aの構造的鏡像型とすることができるため、右マスター遠隔マニピュレータ22aの以下の説明は、左マスター遠隔マニピュレータ22bにも当てはまる。
マスター遠隔マニピュレータ22aは、複数のマスタージョイント、例えば、第1のマスタージョイント25、第2のマスタージョイント27、第3のマスタージョイント29、第4のマスタージョイント31、及び第5のマスタージョイント34によって相互に連結された複数のマスターリンク、例えば、第1のマスターリンク26、第2のマスターリンク28、第3のマスターリンク30、及び第4のマスターリンク、例えば、誘導マスターリンク32を備える。図1に示されているように、ハンドル部分35は、ジョイント34を介してマスター遠隔マニピュレータ22aに連結され、かつマスター遠隔マニピュレータ22aを操作するための複数のハンドルジョイントによって相互に連結された複数のハンドルリンクを備える。加えて、マスター遠隔マニピュレータ22aは、伸縮ベース23a及び23bを有するベース部と、該伸縮ベース23a及び23bの上に固定されたベースキャップ24とを備える。リンク26は、ジョイント25を介してベースキャップ24に回転可能に結合されている。従って、リンク26、従って該リンク26の遠位側のすべてのマスタージョイント及びリンクは、ジョイント25で軸δ1を中心にベースキャップ24に対して回転することができる。図1に示されているように、リンク28、従って該リンク28の遠位側のすべてのマスタージョイント及びリンクは、ジョイント27で軸δ2を中心にリンク26に対して回転することができ、リンク30、従って該リンク30の遠位側のすべてのマスタージョイント及びリンクは、ジョイント29で軸δ3を中心にリンク28に対して回転することができ、誘導マスターリンク32、従って該誘導マスターリンク32の遠位側のすべてのマスタージョイント及びリンクは、ジョイント31で軸δ4を中心にリンク30に対して回転することができる。
マスターコンソール20は、マスター遠隔マニピュレータ22a内に配置された複数のセンサを備え、このため、任意のマスターリンク及びジョイントに加えられるあらゆる動きを検知して制御システムに送信することができ、次いで、該制御システムが命令を実行して、図12を参照して以下にさらに詳細に説明されるように、スレーブコンソール50に結合された1つ又は複数のアクチュエータに、スレーブ遠隔マニピュレータ51aの対応するスレーブリンク及びジョイントで動きを再現させる。
引き続き図2Aを参照すると、マスター遠隔マニピュレータ22aは、機械的制限部33を備え、該機械的制限部33は、リンク26内に開口部を備え、該開口部は、誘導マスターリンク32をそこに通して配置することを可能にするサイズ及び形状であり、これにより、該マスター遠隔マニピュレータ22aのそのピボット点を中心とする動きを制限する。例えば、機械的制限部33は、マスター遠隔マニピュレータ22aが作動されたときに、誘導マスターリンク32が長手方向軸δ5に沿って並進することを保証する。加えて、機械的制限部33により、誘導マスターリンク32が、互いに垂直な軸δ1及びδ6を中心に回転することができ、該誘導マスターリンク32の向きとは無関係に、固定ピボット点Pで長手方向軸δ5と交差する平面を形成する。結果として、スレーブ遠隔マニピュレータは、対応する動きを生成し、これにより、例えば、トロカールが患者の腹部に入る患者の固定切開点で、マスター遠隔マニピュレータのピボット点を事実上維持する。
手術ロボットシステム10が、遠隔の運動中心Vが患者の切開部と整合するように配置されると、ハンドル部分35に加えられる並進運動が、患者の体内に配置されたエンドエフェクタによって再現される。エンドエフェクタは、ハンドル部分35に加えられる動きを再現するため、この構成は、ハンドルとエンドエフェクタとの間の支点効果を有利に排除する。
加えて、マスターコンソール20は、例えばベースキャップ24に結合されたアーム支持体12を備えることができ、該アーム支持体12は、マスターコンソール20の操作中に外科医がアーム支持体にその腕を休ませることができるようなサイズ及び形状である。従って、アーム支持体12は、マスター遠隔マニピュレータ22aの操作中は静止したままである。マスターコンソール20は、以下にさらに詳細に説明されるように、作動されると手術ロボットシステム10のマクロ同期及び/又はミクロ同期を防止するクラッチ11、例えばフットペダルをさらに備えることができる。従って、マスターコンソール20は、マクロなクラッチング及びミクロなクラッチングを可能にする。
ここで図2Bを参照すると、ディスプレイ21が示されている。ディスプレイ21は、テキストを含まない単純な設計を有することができ、可視グラフィック要素及びLED、例えば白色、黄色、及び赤色の光のみを利用する。例えば、白色光は、構成要素が適切に機能していることを伝達し、黄色光は、外科医が不適切な動作を行ったことを伝達し、赤色光は、構成要素にエラーがあることを伝達する。図2Bに示されているように、ディスプレイ21は、スレーブコンソール50の様々な構成要素及びその状態をグラフィック表示する。アイコン21aは、システムの起動に対応し、アイコン21bは、システムの警告に対応し、アイコン21hは、作業限界に達していることに対応し、そしてアイコン21jは、スレーブコンソール50のそれぞれのスレーブ遠隔マニピュレータが前方手術作業空間又は反転手術作業空間にあるか否かに対応し、これらのアイコンはすべて、照明されていない場合は目に見えないようにすることができ、他のすべてのアイコンは、照明されていない場合でも目に見えるグラフィック要素を有する。アイコン21cは、スレーブコンソール50のホーミング、例えばホーム構成に対応し、アイコン21dは、器具82の状態に対応し、アイコン21eは、変換器具インターフェイス81の無菌インターフェイスに対応し、アイコン21fは、マクロ同期に対応し、アイコン21gは、ミクロ同期に対応し、アイコン21iは、スレーブコンソール50の車輪がロックされているか又はロック解除されているかに対応し、これらのすべての機能は、以下にさらに詳細に説明する。当業者には理解されるように、ディスプレイ21は、外科医に情報を伝達することができる当技術分野で公知の任意のディスプレイとすることができる。
図2Cは、図2Aに示されるものと同様の別の例示的なマスターコンソールを示すが、図2Cのマスターコンソール20が、追加のクラッチ11'、例えば追加のフットペダルをさらに備えている点が異なる。このようにして、さらなる詳細を以下に説明するように、クラッチ11の作動が、マスター/スレーブが、(例えば、マクロな動きのために)あるタイプの同期化/非同期化の間で移行することを可能にし、クラッチ11'の作動が、マスター/スレーブが、(例えば、ミクロな動きのため、ミクロな動きとマクロな動きの両方のために)別のタイプの同期化/非同期化の間で移行することを可能にする。このため、独立に作動可能なマクロなクラッチングとミクロなクラッチングが可能になる。別法で、又はこれに加えて、クラッチ11及び/又はクラッチ11'での異なる所定の作動パターン(例えば、所定の時間内でのペダルの複数回の押下と所定の時間内でのペダルの1回の押下)を、独立に作動可能なマクロなクラッチング及びミクロなクラッチングに使用することができる。
ここで図3A~図3Cを参照すると、マスターコンソール20は、伸縮ベース23a及び23bを介して、座位構成と立位構成との間で調整することができる。例えば、図3Aに例示されているように、マスターコンソール20は、伸縮ベース23a及び23bが垂直高さD1を有するように座位構成に調整することができる。この座位構成では、外科医は、マスターコンソール20の操作中に座っていることができる。図3B及び図3Cに例示されているように、マスターコンソール20は、伸縮ベース23a及び23bが垂直高さD2を有するように立位構成に調整することができる。この構成では、外科医は、マスターコンソール20の操作中は立っていることができる。加えて、伸縮ベース23a及び23bの垂直高さは、マスターコンソール20、例えばマスターリンク26に配置されたアクチュエータを介して調整することができる。例えば、アクチュエータは、作動されると伸縮ベース23a及び23bの垂直高さを増加させる上昇ボタン又は減少させる下降ボタンを備えることができる。当業者には理解されるように、伸縮ベース23a及び23bの垂直高さは、外科医の要求通りにD1とD2との間の任意の垂直高さに調整することができる。
ここで図4を参照すると、マスターコンソールハンドル部分35が示されている。マスターコンソールハンドル部分35は、複数のハンドルジョイント、例えばハンドルジョイント37及びハンドルジョイント39によって相互に連結された複数のハンドルリンク、例えばハンドルリンク36及びハンドルリンク38を備える。図4に例示されているように、ハンドルリンク36は、ジョイント34を介して誘導マスターリンク32に回転可能に結合され、従って、軸δ7を中心に該誘導マスターリンク32に対して回転することができる。加えて、ハンドルリンク38は、ハンドルジョイント37を介してハンドルリンク36に回転可能に結合され、従って、軸δ8を中心に該ハンドルリンク36に対して回転することができる。さらに、ハンドルグリップ40は、ジョイント39でマスターコンソールハンドル部分35に取り外し可能に結合することができ、このため、ハンドルグリップ40は、軸δ9を中心にハンドルリンク37に対して回転することができる。図4に示されているように、ハンドルグリップ40は、外科医の指、例えば親指及び人差し指に係合するためのフィンガーストラップ41を備えることができる。
ハンドル部分35の内側/外側への動きにより、誘導マスターリンク32が長手方向軸δ5に沿って内側/外側に動き、この動きが、マスター遠隔マニピュレータ22aに結合された1つ又は複数のセンサによって検知され、制御システムに伝達され、次いで、該制御システムが命令を実行して、スレーブ遠隔マニピュレータ51aに結合された1つ又は複数のアクチュエータにより、対応するスレーブリンクに仮想長手方向軸ω9に沿った内側/外側への動きを再現させる。同様に、ハンドル部分35の上方/下方への動きは、誘導マスターリンクを長手方向軸δ6に沿って上方/下方に動かし、この動きが、マスター遠隔マニピュレータ22aに結合された1つ又は複数のセンサによって検知され、制御システムに伝達され、次いで、該制御システムが命令を実行して、スレーブ遠隔マニピュレータ51aに結合された1つ又は複数のアクチュエータにより、対応するスレーブリンクに仮想長手方向軸ω10を中心とする上方/下方への動きを再現させる。最後に、ハンドル部分35の左/右への動きにより、誘導マスターリンクが長手方向軸δ1に沿って左/右に動かし、この動きが、マスター遠隔マニピュレータ22aに結合された1つ又は複数のセンサによって検知され、制御システムに伝達され、次いで、該制御システムが命令を実行して、スレーブ遠隔マニピュレータ51aに結合された1つ又は複数のアクチュエータにより、対応するスレーブリンクに仮想長手方向軸ω5を中心とする左/右への動きを再現させる。
引き続き図4を参照すると、マスター遠隔マニピュレータ22aのハンドル部分35で加えられる動きにより、関節自由度、例えばピッチとヨー、作動自由度、例えば開/閉、及び回転自由度、例えば回内回外運動が、センサ、アクチュエータ、及び制御システムを介して電気機械的に行われる。マスター遠隔マニピュレータ22aは、好ましくは、ハンドル部分35の動きを検出するためにハンドル部分35に結合された1つ又は複数のセンサを備える。理解されるように、センサは、角度及び位置を測定することで回転を測定するために一側に磁石を他側にセンサを備える磁気ベースの回転センサなどの、回転運動を検出するように設計された任意のセンサであり得る。センサは、該センサによって測定された回転を示す信号を生成し、該信号をスレーブコンソール50に結合された1つ又は複数のアクチュエータに送信するための制御システムに結合され、該スレーブコンソール50は、ハンドル部分35に加えられる動きをエンドエフェクタで再現することができる。例えば、電気ケーブルを、ハンドル部分35から制御システム、例えば、制御電子器具を含むユニットまで延ばすことができ、追加の電気ケーブルを、該制御システムから、スレーブコンソール50に結合された1つ又は複数のアクチュエータまで延ばすことができる。
図5Aに例示されているように、ハンドルグリップ40は、開放構成に向かって付勢されているトリガ41a、41bを備える。従って、トリガ41a、41bを作動させて、制御システムを介して送信される信号を生成することができ、該制御システムが命令を実行して、スレーブコンソール50に結合されたアクチュエータにエンドエフェクタを開/閉させる。
図4に戻って参照すると、ハンドルグリップ40は、ハンドル軸δ9を中心に回転可能であり得、このため、該ハンドルグリップ40の回転が、制御システムを介して信号を生成して送信するセンサによって検出され、該制御システムが命令を実行して、スレーブコンソール50に結合されたアクチュエータにエンドエフェクタを回内回外運動自由度で回転させる。
ハンドル部分35はまた、ハンドル軸δ8を中心に回転可能であり、このため、ハンドル軸δ8を中心とする回転が、制御システムを介して信号を生成及び送信するセンサによって検出され、該制御システムが命令を実行して、スレーブコンソール50に結合されたアクチュエータに、エンドエフェクタをヨー自由度で回転させる。加えて、ハンドル部分35は、ハンドル軸δ7を中心に回転可能であり得、このため、ハンドル軸δ7を中心とするハンドル部分35の回転が、制御システムを介して信号を生成及び送信するセンサによって検出され、該制御システムが命令を実行して、スレーブコンソール50に結合されたアクチュエータに、エンドエフェクタをピッチ自由度で回転させる。
図5B及び図5Cに例示されているように、ハンドルグリップ40は、ジョイント39を介してマスター遠隔マニピュレータ22aのハンドル部分35に取り外し可能に結合することができる。従って、ハンドルグリップ40は、滅菌するために手術間に取り外し、手術直前にマスター遠隔マニピュレータ22aに再び連結することができる。従って、手術ロボットシステム10の操作中、マスターコンソール20全体を無菌ドレープで覆うことができるため、ハンドルグリップ40は無菌となり、該無菌ドレープの外側でマスターコンソール20に連結することができる。これにより、外科医が、ハンドルグリップ40との間に物理的な障壁なしに該ハンドルグリップ40に直接接触することができ、これにより、触覚フィードバック及び全体の性能が向上する。
ここで図5D~図5Fを参照すると、ハンドルグリップ40は、クリップアタッチメントを介してマスターコンソール20のハンドル部分35に取り外し可能に結合することができる。図5D~図5Fに示されているように、アタッチメントに予荷重をかけて固定バックラッシュをなくすために、ばね43を、ハンドル部分35のジョイント39及びハンドルグリップ40のクリップ部分42に連結することができる。
図5Gに示されているように、滅菌ドレープキャップ13は、本発明の原理に従って、マスターコンソールハンドル部分35に取り外し可能に結合することができる。上記のように、マスターコンソール20は、外科手術中に滅菌ドレープ14で覆うことができ、しかも、外科医がロボットのハンドルとの直接接触により利用可能な触覚フィードバックを有することを可能にする。滅菌ドレープインターフェイス14は、該滅菌ドレープインターフェイス14内の開口部14bを画定する滅菌ドレープリング14a、及び該滅菌ドレープリング14aに結合された滅菌ドレープ14cを備える。ハンドルグリップがマスターコンソール20に取り付けられていない間、例えば、滅菌及び/又は洗浄中に、滅菌ドレープキャップ13を滅菌ドレープリング14a及びマスターコンソールハンドル部分35に一時的に結合して、臨床医によるマスターコンソールハンドルインターフェイスの内部との偶発的な接触を回避することができる。例えば、滅菌ドレープキャップ13をマスターコンソールハンドル部分35に取り付けて、限定されるものではないが、磁石のシステム、摩擦力、ベルクロ表面、一致する形状、フックなどを含む当技術分野で公知の方法によって所定の位置に保持することができる。ハンドルグリップをマスターコンソールハンドル部分35に結合する準備ができたら、滅菌ドレープキャップ13を取り外して廃棄してもよい。滅菌ドレープリング14aは、好ましくは、剛性材料、例えば金属から形成され、かつハンドルグリップがマスターコンソール20に結合されたときに該マスターコンソール(例えば、マスターコンソールハンドル部分35における)と該ハンドルグリップとの間に挟まれるように設計される。これにより、取り外し可能なハンドルを使用した滅菌ドレープ14cがマスターコンソールに確実に結合される。加えて、滅菌ドレープインターフェイス14は、さらなる外科手術の滅菌のためにハンドルグリップが取り外されると、マスターコンソールから容易に取り外すことができる。滅菌ドレープインターフェイス14の開口部14bにより、滅菌ドレープ14cに妨げられることなく、外科医による作動に応答してハンドルの構成要素を該滅菌ドレープインターフェイス14の開口部14bを介してマスターコンソールの中に移動させることができる。これにより、取り外し可能なハンドルとマスターコンソールとの間の相互作用が可能になると共に、無菌手術が保証される。
本発明の別の態様によると、図6に示されているように、ハンドルグリップ40'は、ねじアタッチメントを介してマスターコンソール20のハンドル部分35'に取り外し可能に結合することができる。図6に示されているように、雌ねじ部分44aを有するハンドルグリップ40'のねじ部分42'は、ハンドル部分35'のジョイント39'の雄ねじ部分44bに螺合することができ、このため、該ハンドルグリップ40'が該ハンドル部分35'にねじ留めされる。
ここで、図7A~図7Cを参照すると、ハンドルグリップ40の作動工程が示されている。図7B及び図7Cに例示されているように、ハンドルグリップ40は、その中心管腔内に配置された格納式ピストン45を備える。格納式ピストン45は、コネクタ46aを介してハンドルグリップ40のトリガ41aに機械的に結合され、コネクタ46bを介して該ハンドルグリップ40のトリガ41bに機械的に結合されている。図7Aに示されているように、トリガ41a、41bが弛緩状態にある、例えば、開放構成に付勢されているときは、格納式ピストン45は、完全にハンドルグリップ40の中心管腔内にある。図7B及び図7Cに示されているように、ハンドルグリップ40が作動されると、例えば、トリガ41a、41bが互いに向かって押されると、コネクタ46a、46bにより、格納式ピストン45がハンドルグリップ40の中心管腔から突き出る。ハンドルグリップ40の中心管腔を越えた格納式ピストン45の動きは、ハンドル部分35内のセンサによって検知することができる。
例えば、図7D及び図7Eに示されているように、ハンドルグリップ40がハンドル部分35に取り外し可能に結合される部位に隣接したマスターコンソールの部分は、ハンドル部分35での動きを検知するための1つ又は複数のセンサ47を備えることができる。従って、1つ又は複数のセンサ47は、格納式ピストン45の動きを示す信号を制御システムに送信することができ、該制御システムが命令を実行して、1つ又は複数のアクチュエータにより、エンドエフェクタを動かすことができる。センサ47が格納式ピストン45の動きを検知しないと、制御システムがアクチュエータによりエンドエフェクタを動かす命令をしないため、これがフェイルセーフとして機能し得る。例えば、ハンドグリップ40のトリガ41a、41bが弛緩した状態のときは、トリガ41a、41bの小さな偶発的な動きを考慮して、トリガ41a、41bが外科医によって意図的に作動されるまで動きが検知されない。従って、格納式ピストン45がハンドルグリップ40の中心管腔を越えて突き出るためには、トリガ41a、41bは少なくとも予め指定された程度まで作動されなければならないであろう。加えて、図7D及び図7Eに例示されているように、ハンドル部分35は、格納式ピストン45を押して、コネクタ46a、46bを介してトリガ41a、41bを開放構成に付勢するためのばね48を備えることができる。
ここで図8A~図8Gを参照すると、別の例示的なハンドルグリップが示されている。ハンドルグリップ71は、(例えば、マスターコンソールハンドル部分35と可動外側フランジとの間に滅菌ドレープリング14aを挟んで構成要素を一緒にクリップすることによって)滅菌ドレープインターフェイス14でマスターコンソールハンドル部分35に結合されるように構成されている。ハンドルグリップ71は、開放構成に付勢されているトリガ72a及び72bを備える。例えば、図8Bに示されているように、臨床医がトリガ72a、72bに力を加えていないと、例えば、150~160度、又は好ましくは155度離れるように、該トリガ72a、72bを付勢することができる。臨床医がトリガ72a、72bを解放すると常に、該トリガ72a、72bは所定の開放構成に戻る。トリガ72a、72bは、トリガ41a、41bを参照して上記説明されたようにばねを介して開放構成に付勢することができる。ハンドルグリップ40と同様に、ハンドルグリップ71のトリガ72a、72bは、制御システムが命令を実行して1つ又は複数のアクチュエータによって手術器具を動かす前に、互いに第1の所定の角度になるように押す必要があり得る。例えば、図8Cに示されているように、アクチュエータは、トリガ71a、72bが、第1の所定の角度以内、例えば、90度以下の開きとなるように該トリガ72a、72bが押されるまでは、複数のスレーブリンク及びスレーブジョイント又はエンドエフェクタによる動きを引き起こさない。これは、トリガ72a、72bが外科医によって意図的に作動されるまで、該トリガ72a、72bの小さな偶発的な動きがエンドエフェクタによって再現されるのを防止するフェイルセーフとして機能し得る。例えば、トリガ72a、72bは、複数のスレーブリンク及びスレーブジョイントが複数のマスターリンク及びマスタージョイントのうちの少なくとも1つの動きに応答して動く前に、90度以内(又は別の設定角度)の開きとなるように押されなければならない。トリガ72a、72bが外科医によって解放されると、スレーブコンソールは、マスターコンソールでの動きに応答して動きを停止する。このようにして、外科医は、スレーブリンク又はジョイントのいずれでも対応する動きを引き起こすことなく、複数のマスターリンク及びマスタージョイントを異なる望ましい構成に再調整することができる。これにより、外科医は、スレーブコンソールを動かすことなく、マスターコンソールをより快適な位置に再調整することが可能となる。トリガ72a、72bが第1の所定の角度以下に再調整されると、制御装置は、ハンドルでの動きに応答して、スレーブコンソールで対応する動きを引き起こす。ハンドルグリップ71は、トリガから外科医の掌の方向に延びた掌延長部72cをさらに含み、このため、該外科医の掌が、人間工学的な目的で外科手術を行う間に該掌延長部72cに接触することができる。
加えて、制御装置は、外科医が所定の方法(例えば、トリガ72a、72bが第1の所定の角度以下で互いに向かって移動する)でハンドルを掴まない限り、スレーブコンソールで動きを引き起こさず、また制御装置は、外科医が第2の所定の方法でハンドルを掴まない限り、エンドエフェクタでミクロな動きを引き起こさない。例えば、第2の所定の方法は、トリガ72a、72bを、互いに向かって第2の所定の角度(例えば、30度開いている)以下に移動させることであり得、該第2の所定の角度は、第1の所定の角度よりも小さい。このようにして、スレーブコンソールは、第1の作動パターン(例えば、トリガ72a、72bが第1の所定の角度以下に互いに向かって動かされる)が制御装置によってハンドルで検知されない限り、ハンドル/マスターコンソールでの動きに応答して動かず、エンドエフェクタは、第2の作動パターン(例えば、トリガ72a、72bが第2の所定の角度以下に互いに向かって動かされる)が制御装置によってハンドルで検知されない限り、開閉しない。
ここで、図8D及び図8Eを参照すると、ハンドルグリップ71の内部構成要素が示されている。図8D及び図8Eに示されているように、ハンドルグリップ71は、同軸引き戻し管74に結合された解放グリップ76を有し、このため、該解放グリップ76の引き戻しにより該引き戻し管74がllを引き戻す。引き戻し管74は、いくつかのフック73に対応するいくつかの開口部75を有し、このため、解放グリップ76及び引き戻し管74が弛緩状態にあるときは、フック73のそれぞれは、開口部75のそれぞれから突き出ている。例えば、ハンドルグリップ71は、1つ、2つ、3つ、又は4つのフックを有し得る。フック73は、例えば、ハンドルグリップ71がマスターコンソールに結合される方向から離れる方向に角度が付いた表面を有し、このため、引き戻し管74が解放グリップ76を介して引き戻されると、開口部75の縁がフック73の角度が付いた表面上を移動して、該フック73が該引き戻し管74の中心軸に向かって半径方向内側に曲がる。解放グリップ76が解放されると、該解放グリップ76と引き戻し管74の両方がそれらの弛緩状態に戻り、開口部75がフック73と再整列して該フック73が開口部75から突き出る。
マスターコンソールハンドル部分35は、角度方向制限部80bを備え、該角度方向制限部80bは、引き戻し管74を特定の回転方向で該角度方向制限部80bの管腔内に挿入できるように、ハンドルグリップ71の角度方向制限部80aに対応する形状を有する。図8Eに示されているように、角度方向制限部80bは、その内面に1つ又は複数の溝77を備え、該溝77は、フック73に対応する形状を有し、このため、引き戻し管が角度方向制限部80bの管腔内に挿入されて、該フック73が開口部75から突き出ると、該フック73は、該溝77と係合する。フック73の数に対応する数の溝を設けてもよいし、又は溝77が、角度方向制限部80bの内面に沿って円周方向に完全に延びてもよい。さらに、ハンドルグリップ71は、予荷重スペーサ86の管腔内に適合し、マスターコンソールの作動ロッド79と相互作用するようなサイズの作動ロッド78を備えることができる。例えば、作動ロッド79は、予荷重スペーサ86内で所定の距離まで延びて、上記のようにトリガ72a、72bを開放構成に付勢するためのハンドルグリップ71の作動ロブ78を押すことができる。
予荷重スペーサ86は、ハンドルグリップ71がマスターコンソールハンドル部分35に係合すると該予荷重スペーサが該ハンドルグリップ71を押すように予荷重ばね85に結合することができる。従って、フック73が溝77と係合すると、予荷重スペーサ86は、ハンドルグリップ71を押して該フック73を該溝77内に維持し、バックラッシュをなくす。具体的には、ハンドルグリップ71が係合すると、フック73の後縁が溝77の後縁に押し付けられて、該ハンドルグリップ71のマスターコンソールハンドル部分35に対する横方向の動きを防止する。
図8Fに示されているように、解放グリップ76は、ハンドルグリップ71をマスターコンソールハンドル部分35に結合するとき及び該マスターコンソールハンドル部分35から取り外すときに、臨床医による解放グリップ76の引き戻しを容易にするためのテクスチャ表面を有し得る。図8F及び図8Gに示されているように、解放グリップ76は、ハンドルグリップ71がマスターコンソールハンドル部分35と係合したときに該ハンドルグリップ71が依然として自由に回転できるように、滅菌ドレープインターフェイス14と係合する。図8Fに示されているように、滅菌ドレープ14cが結合された滅菌ドレープインターフェイス14の滅菌ドレープリング14aは、マスターコンソールハンドル部分35にスナップ式に取り付けられ、このため、該滅菌ドレープ14cが、動作中のマスターコンソールの無菌性を維持する。
ここで、図9A~図9Cを参照すると、ハンドルグリップ71をマスターコンソールに結合する工程が示されている。図9Aは、フック73が引き戻し管74の開口部75から突き出ている、弛緩状態のハンドルグリップ71の解放グリップ76を示す。図9Bは、引き戻し管74が角度方向制限部80bの管腔内に挿入できるように開口部75の縁がフック73を半径方向内側に移動させたときの解放グリップ76の引き戻しを例示する。引き戻し管74が角度方向制限部80bの管腔内に完全に挿入されると、解放グリップ76は、図9Cに示されているように解放されて、フック73が引き戻し管74の開口部75から突き出て、弛緩状態で溝77と係合することができる。図9Cは、マスターコンソールハンドル部分35に結合されたハンドルグリップ71を示した。
ここで、図9D~図9Fを参照すると、ハンドルグリップ71をマスターコンソールから取り外す工程が示されている。図9Dは、開口部75の縁がフック73を半径方向内側に移動させて溝77から外れるように引き戻されている解放グリップ76を示す。図9Eに示されているように、外れると、ハンドルグリップ71をマスターコンソールから取り外すことができる。ハンドルグリップ71がマスターコンソールから取り外されると、解放グリップ71は、解放されてその弛緩状態に戻ることができ、フック73が引き戻し管74の開口部75から突き出る。
本発明の別の態様によると、図10A~図10Cに例示されているように、ハンドルグリップ40''は、マスター遠隔マニピュレータ22aのハンドル部分35に取り外し可能に結合することができる。例えば、ハンドルグリップ40''は、所望の手術作業を行うためにハンドル及びトリガ49を含むピストル形状を有し得る。当業者には理解されるように、様々な形状のハンドルグリップをマスター遠隔マニピュレータに取り外し可能に結合して、スレーブ遠隔マニピュレータのエンドエフェクタに所望の動きをさせることができる。従って、ハンドルグリップは、統合された識別子要素、例えばRFIDタグを有することができ、このため、制御システムは、識別子要素を検出し、ハンドルグリップが手術ロボットシステム10での使用を許可されているか否かを確認する。
ここで図11A及び図11Bを参照すると、スレーブコンソール50が示されている。図11Aに示されているように、スレーブコンソール50は、右スレーブ遠隔マニピュレータ51a及び左スレーブ遠隔マニピュレータ51bを備える。左スレーブ遠隔マニピュレータ51bは、例示されているように右スレーブ遠隔マニピュレータ51aの構造的鏡像型であり得るため、右スレーブ遠隔マニピュレータ51aの以下の説明は、左スレーブ遠隔マニピュレータ51bにも当てはまる。
図12に例示されているように、スレーブ遠隔マニピュレータ51aは、複数のスレーブジョイント、例えば第1のスレーブジョイント、例えば近位Scaraジョイント54、第2のスレーブジョイント、例えば中央Scaraジョイント56、第3のスレーブジョイント、例えば遠位Scaraジョイント58、第4のスレーブジョイント、例えば角度付けジョイント60、第5のスレーブジョイント、例えばアルファジョイント62、第6のスレーブジョイント、例えばベータジョイント64、第7のスレーブジョイント、例えばガンマジョイント66、及び第8のスレーブジョイント、例えばシータジョイント68によって相互に連結された複数のスレーブリンク、例えば第1のスレーブリンク55、第2のスレーブリンク57、第3のスレーブリンク59、第4のスレーブリンク、例えば角度付けリンク61、第5のスレーブリンク63、第6のスレーブリンク65、第7のスレーブリンク67、及び第8のスレーブリンク、例えばスレーブハブ69を備える。図12に示されているように、並進器具インターフェイス81は、シータジョイント68を介してスレーブ遠隔マニピュレータ51aに結合されている。
並進器具インターフェイス81は、その全内容が引用により本明細書中に組み込まれている、本出願の譲受人に譲渡されたChassotの米国特許出願公開第2018/0353252号に記載されているように構成することができる。例えば、並進器具インターフェイス81は、スレーブハブ69及び手術器具を備える。図11Bに示されているように、スレーブハブ69は、スレーブ遠隔マニピュレータ51aのリンク67に取り付けることができる。手術器具は、そのシャフトの遠位端部に配設されたエンドエフェクタを備え、かつスレーブハブ69に結合することができる。例えば、エンドエフェクタは、スレーブハブ69に取り外し可能に結合することができる。無菌インターフェイスを、スレーブハブ69と手術器具の間に配置することができる。加えて、並進器具インターフェイス81は、スレーブハブ69内に配置された1つ又は複数のアクチュエータからエンドエフェクタの構成要素まで延びた並進伝動システムを備える。例えば、エンドエフェクタは、並進器具インターフェイス81の並進伝動システムに結合された複数のエンドエフェクタジョイントによって相互に連結された複数のエンドエフェクタリンクを備え、このため、1つ又は複数のアクチュエータによる並進伝動システムの作動により、複数のエンドエフェクタのリンク及びジョイントを介してエンドエフェクタが動く。
加えて、スレーブ遠隔マニピュレータ51aは、調整可能な支柱を有するベース部分52、及び該調整可能な支柱の上に固定されたスレーブ支持体53を備える。リンク55は、近位Scaraジョイント54を介してスレーブ支持体53に回転可能に結合されている。従って、リンク55、従って該リンク55の遠位側のすべてのスレーブジョイント及びリンクは、近位Scaraジョイント54の軸ω1を中心にスレーブ支持体53に対して回転することができる。図12に示されているように、リンク57、従って該リンク57の遠位側のすべてのスレーブジョイント及びリンクは、中央Scaraジョイント56の軸ω2を中心にリンク55に対して回転することができ、リンク59、従って該リンク59の遠位側のすべてのスレーブジョイント及びリンクは、遠位Scaraジョイント58の軸ω3を中心にリンク57に対して回転することができ、角度付けリンク61、従って該角度付けリンク61の遠位側のすべてのスレーブジョイント及びリンクは、角度付けジョイント60の軸ω4を中心にリンク59に対して回転することができ、リンク63、従って該リンク63の遠位側のすべてのスレーブジョイント及びリンクは、アルファジョイント62のアルファ軸ω5を中心に角度付けリンク61に対して回転することができ、リンク65、従って該リンク65の遠位側のすべてのスレーブジョイント及びリンクは、ベータジョイント64のベータ軸ω6を中心にリンク63に対して回転することができ、リンク67、従ってリンク該67の遠位側のすべてのスレーブジョイント及びリンクは、ガンマジョイント66のガンマ軸ω7を中心にリンク65に対して回転することができ、スレーブハブ69、従って並進器具インターフェイス81が該スレーブハブ69に結合されたときの並進器具インターフェイス81は、シータジョイント68のシータ軸ω8を中心にリンク67に対して回転することができる。
スレーブ支持体53と一体化した支柱は、該支柱の伸長及び引き戻しを可能にし、これにより地面に対するスレーブ支持体53の遠位側のすべてのリンクの高さを調整するアクチュエータ、例えば、電気モータを備える。別法では、スレーブ支持体53と一体化した支柱の代わりに、スレーブ支持体53は、カウンターウェイトに基づくカウンターバランスシステムを有する機械的線形誘導システム、及び垂直移動を防止するための電気ブレーキを備えることができる。従って、電気ブレーキが解除されると、スレーブ支持体53の遠位側のすべてのリンクの垂直高さを地面に対して調整することができる。近位Scaraジョイント54、中央Scaraジョイント56、及び遠位Scaraジョイント58はそれぞれ、それぞれのブレーキが係合しているときは対応するジョイントの動きを防止することができ、それぞれのブレーキが解除されているときはそれぞれのジョイントの手動での動きを可能にする電気ブレーキを備える。角度付けジョイント60は、リンク59を中心とするリンク61の角度位置の調整を可能にするアクチュエータ、例えば電磁モータを備える。アルファジョイント62、ベータジョイント64、ガンマジョイント66、及びシータジョイント68はそれぞれ、専用の電磁モータとブレーキの対に連結され、このため、制御システムが、それぞれのモータに位置コマンドを出すことによって各ジョイントの角度位置を調整し、それぞれのブレーキを作動させることによってジョイントのすべての動きを停止させることができる。
当業者には理解されるように、スレーブコンソール50は、複数のセンサを備えることができ、マスターコンソール20は、複数のアクチュエータを備えることができ、このため、スレーブコンソール50で加えられる動きが、マスターコンソール20で加えられるべき動きを引き起こすことができ、これにより触覚フィードバックを提供する。
ここで図13Aを参照すると、制御装置70が示されている。制御装置70は、遠隔制御装置、又は手術ロボットシステム10の制御システムに動作可能に結合されたグラフィカルユーザインターフェイス、又は左及び右の遠隔マニピュレータ51a及び51bにそれぞれ組み込まれた一連のアクチュエータであり得る。従って、制御装置70は、複数のアクチュエータ、例えば、ボタン、又はタッチスクリーンインターフェイスを備えることができ、それによって、使用者は、タッチにより複数の選択肢を選択することができる。例えば、制御装置70は、以下のコマンドの少なくとも1つを選択するための選択肢を使用者に提供することができる:Scaraブレーキの係合及び解除70a、停止位置構成70b、前進ギアから後退ギア又は後退ギアから前進ギアへの反転70c、スレーブコンソールの垂直調整70d、垂直支柱ブレーキの解除70e、腹腔鏡手術構成70f、ホーム構成70g、及び前方角度付けの増減70h。制御装置70は、一方又は両方のスレーブ制御装置及び/又はマスター制御装置に動作可能に結合されている。図13Aに示されているように、制御装置70は、スレーブコンソール自体のリンクに統合することができる。例えば、制御装置70は、使用者の入力に応答するそのスレーブ遠隔マニピュレータの特定の機能を制御するために左スレーブ遠隔マニピュレータ51bの第3のスレーブリンク59'に統合され、かつ同じ機能を有する第2の制御装置は、使用者の入力に応答するそのスレーブ遠隔マニピュレータ、例えば右スレーブ遠隔マニピュレータ51aの特定の機能を制御するために、スレーブリンク(例えば、第3のスレーブリンク)に統合される。
例えば、使用者がScaraブレーキの係合及び解除70aインターフェイスを作動させると、制御装置は、Scaraブレーキを係合から解除に、又はその逆に変化させる。使用者が停止位置構成70bインターフェイスを作動させると、制御装置は、スレーブ遠隔マニピュレータを輸送及び保管に適した位置に移動させる。使用者が前進ギアから後退ギアへ、又は後退ギアから前進ギア70cに反転させると、制御装置は、スレーブ遠隔マニピュレータを前方手術作業空間と反転手術作業空間との間で移動させる。使用者がスレーブコンソールの垂直調整70dを作動させると、制御装置は、スレーブ遠隔マニピュレータの垂直調整を行わせる。使用者が垂直支柱ブレーキ解除70eを作動させると、制御装置は、垂直支柱ブレーキを係合から解除に変化させてスレーブ遠隔マニピュレータの垂直調整を防止する、又はその逆に変化させて該スレーブ遠隔マニピュレータの垂直調整を可能にする。使用者が腹腔鏡手術構成70f、ホーム構成70gを作動させると、制御装置は、スレーブハブを外科手術を受けている患者から遠ざかるように移動させ、このため、外科医が、マスターコンソールから該患者の手術部位に迅速かつ安全に移動して患者の腹腔鏡手術を手動で行えるようにすることができる。使用者が前方角度付けの増減70hを作動させると、制御装置は、スレーブ遠隔マニピュレータの前方角度の調整をさせる。制御装置70での使用者の入力に応答して、それぞれのスレーブ制御装置は、そこに格納された命令を実行して、該使用者によって入力された以下で説明されるコマンド(複数可)を実行する。各スレーブコンソールは、それ自体の専用制御装置70を備えてもよいし、又は両方のスレーブコンソール用の共用制御装置70を使用してもよい。
ここで図13Bを参照すると、制御装置70'が示されている。制御装置70'は、制御装置70と同様に構成されているが、該制御装置70'は、スレーブコンソールとは別個の遠隔制御装置であり、有線又は無線接続によって電力供給される点が異なる。従って、制御装置70'は、臨床医及び/又は操作者の便宜のために、スレーブコンソールから離れた距離で取り外して操作することができる。
例えば、図14A~図14Eに例示されているように、制御装置70は、使用者が近位Scaraジョイント54、中央Scaraジョイント56、及び遠位Scaraジョイント56のブレーキを解除することを可能にすることができ、このため、外科医は、スレーブ遠隔マニピュレータのスレーブ支持体53が固定されたまま、該近位Scaraジョイント54の遠位側のスレーブアームリンクを掴んで保持し、そして押す/引くことによってスレーブアームを手動で水平に再配置することができる。具体的には、Scaraが動く際に、スレーブ遠隔マニピュレータのスレーブ支持体53が固定されたまま、かつスレーブリンク59の遠位側のスレーブジョイント及びリンクが該スレーブリンク59に対して固定されたまま、スレーブリンク55、57、59が、ジョイント54、56、58の軸ω1、ω2、ω3を中心に動くことができる。従って、使用者は、スレーブ遠隔マニピュレータ、例えばスレーブハブ69の遠位端部を、外科手術を受けている患者に対して所望の位置に調整することができる。
図15A~図15Cに例示されているように、制御装置70は、使用者がスレーブコンソールのコマンドの垂直調整を選択することを可能にすることができ、それによって制御システムが命令を実行して、スレーブ支持体53の支柱に結合されたアクチュエータ、例えば、モータを伸長又は後退させる。具体的には、スレーブ遠隔マニピュレータの垂直調整中に、スレーブ遠隔マニピュレータのスレーブリンク55とベース部分52の上面との間の相対距離を調整することができる。例えば、図15Aに例示されているように、スレーブ遠隔マニピュレータのスレーブリンク55とベース部分52の上面との間の垂直距離はH1であり、図15Bに示されているように、該スレーブ遠隔マニピュレータのスレーブリンク55とスレーブベース部分52の上面との間の垂直距離はH2であり、図15Cに示されているように、該スレーブ遠隔マニピュレータのスレーブリンク55とベース部分52の上面との間の垂直距離はH3である。従って、使用者は、スレーブ遠隔マニピュレータのスレーブリンク55とベース部分52の上面との間の相対距離を、外科手術を受けている患者に対して所望の高さに調整することができる。スレーブコンソールが、カウンターウェイトに基づいたカウンターバランスシステムを有する機械的線形誘導スシステムを備える実施態様では、制御装置70は、使用者がスレーブコンソールのコマンドの垂直調整を選択することを可能にすることができ、それによって制御システムが、機械的カウンターバランス線形誘導システムを上下に移動できるように支柱の電気ブレーキを解除させる命令を実行し、これにより、スレーブ遠隔マニピュレータのスレーブリンク55とベース部分52の上面との間の相対距離を、外科手術を受けている患者に対して所望の高さに調整することができる。
図16に例示されているように、制御装置70は、使用者がホーム構成コマンドを選択することを可能にすることができ、それによって制御システムが命令を実行して、ベータジョイント64、ガンマジョイント66、及びシータジョイント68に結合されたアクチュエータにスレーブリンク及びジョイントを後退位置に移動させて、スレーブ遠隔マニピュレータのスレーブハブ69が、外科手術を受けている患者の体内のトロカール内の並進器具インターフェイス81のシャフトを位置決めするために所望の位置に来るようにする。ホーム位置では、スレーブハブ69が、器具82がスレーブハブ69に挿入されてそこに結合されるように患者の体内のトロカールに対して配置され、このため、器具先端部84が該トロカール内をスライドするが通過しないため、外科医が、内視鏡を使用した該トロカールの遠位端部の監視を必要とすることなく安全に器具を挿入することができる。
加えて、制御装置70は、使用者が角度付けコマンドを選択することを可能にすることができ、それによって制御システムが命令を実行して、角度付けジョイント60に結合されたアクチュエータに、角度付けジョイント60の軸ω4を中心とした角度付けリンク61の角度付けをスレーブ遠隔マニピュレータ51aのベース52に対して所望の角度付け角度、例えば0度~45度に調整させる。具体的には、角度付けコマンドが実行されると、スレーブリンク59及びその近位側のすべてのスレーブリンク及びジョイント並びにスレーブ遠隔マニピュレータのベース部分52が固定されたまま、角度付けリンク61、従って該角度付けリンク61の遠位側のすべてのスレーブリンク及びジョイントが、角度付けジョイント60の軸ω4を中心に回転する。スレーブ遠隔マニピュレータの角度付け角度を調整することにより、該スレーブ遠隔マニピュレータの手術作業空間の角度が調整されるため、並進器具インターフェイス81を介した外科医による患者へのアクセスが容易になる。
例えば、図17A~図17Dは、スレーブコンソールの0度の角度付けの際の、スレーブ遠隔マニピュレータ51aに結合された並進器具インターフェイス81の動きを例示する。図17A~図17Dに示されているように、角度付けリンク61、従って角度付け軸ω5は、スレーブ遠隔マニピュレータ51aのベース52の長手方向軸と平行であり、かつ地面に垂直である。スレーブ遠隔マニピュレータ51aの操作中に、制御システムは、スレーブコンソール20に結合されたアクチュエータに、角度付けリンク61の遠位側のスレーブリンク及びジョイントを動かす命令のみを実行する。従って、図18A~図18Dに示されているように、スレーブ遠隔マニピュレータ51aの並進器具インターフェイス81は、前方手術作業空間FSW、例えば、スレーブコンソールの0度の角度付けの際に並進器具インターフェイス81が前方構成で到達できる範囲を有する。図18Eは、図18A~図18Dのスレーブコンソールの前方手術作業空間FSWの背面図である。
図19A~図19Cは、スレーブコンソールの20度の角度付けの際のスレーブ遠隔マニピュレータ51aに結合された並進器具インターフェイス81の動きを例示する。図19Aに示されているように、角度付けリンク61、従って角度付け軸ω5は、スレーブ遠隔マニピュレータ51aのベース52の長手方向軸に対して20度の角度に調整されている。スレーブ遠隔マニピュレータ51aの操作中に、制御システムは、スレーブコンソール20に結合されたアクチュエータに、角度付けリンク61の遠位側のスレーブリンク及びジョイントを動かす命令のみを実行する。従って、図19Bに示されているように、スレーブ遠隔マニピュレータ51aの並進器具インターフェイス81は、前方手術作業空間FSW、例えば、スレーブコンソールの20度の角度付けの際に並進器具インターフェイス81が前方構成で到達できる範囲を有する。図19Cは、スレーブコンソールの20度の角度付けの際の図19Bのスレーブコンソールの前方手術作業空間FSWの背面図である。
図20A~図20Cは、スレーブコンソールの40度の角度付けの際のスレーブ遠隔マニピュレータ51aに結合された並進器具インターフェイス81の動きを例示する。図20Aに示されているように、角度付けリンク61、従って角度付け軸ω5は、スレーブ遠隔マニピュレータ51aのベース52の長手方向軸に対して40度の角度に調整されている。スレーブ遠隔マニピュレータ51aの操作中に、制御システムは、スレーブコンソール20に結合されたアクチュエータに、角度付けリンク61の遠位側のスレーブリンク及びジョイントを動かす命令のみを実行する。従って、図20Bに示されているように、スレーブ遠隔マニピュレータ51aの並進器具インターフェイス81は、前方手術作業空間FSW、例えば、スレーブコンソールの40度の角度付けの際に並進器具インターフェイス81が前方構成で到達できる範囲を有する。図20Cは、スレーブコンソールの40度の角度付けの際の図19Bのスレーブコンソールの前方手術作業空間FSWの背面図である。
図21A~図21Jに例示されているように、制御装置70は、使用者が反転コマンドを選択することを可能にすることができ、それによって制御システムが命令を実行して、スレーブコンソールに結合された複数のアクチュエータに、スレーブ遠隔マニピュレータ51aを前方手術作業空間と反転手術作業空間との間で移動させる。例えば、制御システムは、スレーブコンソールに結合された複数のアクチュエータに、スレーブ遠隔マニピュレータ51aを前方手術作業空間から反転手術作業空間に、及びその逆に反転させることができる。具体的には、反転コマンドの実行中に、リンク65、従って該リンク65の遠位側のすべてのスレーブリンク及びスレーブジョイントが、スレーブ遠隔マニピュレータ51aのベータジョイント64を中心に回転する。加えて、リンク65がベータジョイント64を中心に回転すると、スレーブ遠隔マニピュレータ51aが反転手術作業空間構成になるまで、リンク67がガンマジョイント66でリンク65に対して回転し、スレーブハブ69がシータジョイント68を中心にリンク67に対して回転する。図22B~図22Hに例示されているように、並進器具インターフェイス81が患者を負傷させないようにするために、該並進器具インターフェイス81は、反転コマンドの実行前にスレーブハブ69から取り外される。スレーブ遠隔マニピュレータ51aは、そのロックを解除して該スレーブ遠隔マニピュレータ51aを手術室を移動させる必要も、Scaraブレーキ解除コマンド及び垂直調整のスレーブコンソールコマンドを実行する必要もなく、並進器具インターフェイス81を取り外して反転コマンドを実行するだけで前方手術作業空間と反転手術作業空間との間で反転させることができるため、使用者は、多くの時間を節約でき、別の手術作業空間で患者の手術を速やかに継続することができる。
ここで図21K及び図21Lを参照すると、それぞれ前方手術作業空間及び反転手術作業空間を有するマスターコンソール及びスレーブコンソールの概略図が示されている。図21Kに示されているように、スレーブコンソール50の遠隔マニピュレータが前方手術作業空間を有する場合、マスターコンソール20のマスター制御装置2は、右マスター遠隔マニピュレータ22aが右スレーブ遠隔マニピュレータ51aと通信し、左マスター遠隔マニピュレータ22bが左スレーブ遠隔マニピュレータ51bと通信するようにプログラムされている。従って、マスター制御装置2は、マスターコンソール20の1つ又は複数のセンサによって右マスター遠隔マニピュレータ22aで加えられた動きを示す信号を受信し、そこに格納された命令を実行して、スレーブコンソール50の1つ又は複数のアクチュエータを作動させるために必要な座標変換を行い、そこに格納された命令を実行するそれぞれのスレーブ制御装置4aに処理された信号を送信して、該処理された信号に基づいて右マスター遠隔マニピュレータ22aの動きに対応するように右スレーブ遠隔マニピュレータ51aを動かすことができる。同様に、マスター制御装置2は、マスターコンソール20の1つ又は複数のセンサによって左マスター遠隔マニピュレータ22bで加えられた動きを示す信号を受信し、そしてそこに格納された命令を実行して、スレーブコンソール50の1つ又は複数のアクチュエータを作動させるために必要な座標変換を行い、そこに格納された命令を実行するそれぞれのスレーブ制御装置4bに処理された信号を送信して、該処理された信号に基づいて左マスター遠隔マニピュレータ22bの動きに対応するように左スレーブ遠隔マニピュレータ51bを動かすことができる。
図21Lに示されているように、スレーブコンソール50の遠隔マニピュレータが反転手術作業空間を有する場合、マスターコンソール20のマスター制御装置2は、スイッチボードとして機能し、右マスター遠隔マニピュレータ22aが左スレーブ遠隔マニピュレータ51bと通信し、左マスター遠隔マニピュレータ22bが右スレーブ遠隔マニピュレータ51aと通信するようにプログラムされている。これは、マスターコンソール20に位置して、ディスプレイ21を介して手術部位を見ている外科医が、「右」スレーブ遠隔マニピュレータ(反転手術作業空間における左スレーブ遠隔マニピュレータ51b)として該外科医に見えるものを右マスター遠隔マニピュレータ22aで操作できるようにし、かつ「左」スレーブ遠隔マニピュレータ(反転手術作業空間における右スレーブ遠隔マニピュレータ51a)として該外科医に見えるものを左マスター遠隔マニピュレータ22aで操作できるようにするために必要である。従って、マスター制御装置2は、マスターコンソール20の1つ又は複数のセンサによって右マスター遠隔マニピュレータ22aで加えられた動きを示す信号を受信し、そこに格納された命令を実行して、スレーブコンソール50の1つ又は複数のアクチュエータを作動させるために必要な座標変換を行い、処理された信号をそこに格納された命令を実行するそれぞれのスレーブ制御装置4bに送信して、該処理された信号に基づいて右マスター遠隔マニピュレータ22aの動きに対応するように左スレーブ遠隔マニピュレータ51bを動かすことができる。同様に、マスター制御装置2は、マスターコンソール20の1つ又は複数のセンサによって左マスター遠隔マニピュレータ22bで加えられた動きを示す信号を受信し、そこに格納された命令を実行して、スレーブコンソール50の1つ又は複数のアクチュエータを作動させるために必要な座標変換を行い、処理された信号をそこに格納された命令を実行するそれぞれのスレーブ制御装置4aに送信して、該処理された信号に基づいて左マスター遠隔マニピュレータ22bの動きに対応するように右スレーブ遠隔マニピュレータ51aを動かすことができる。
従って、前方手術作業空間構成では、マスター制御装置2は、右スレーブ制御装置4aと通信して、右マスター遠隔マニピュレータ22aにおける動きに応答して右スレーブ遠隔マニピュレータ51aを動かし、かつ該マスター制御装置2は、左スレーブ制御装置4bと通信して、左マスター遠隔マニピュレータ22bにおける動きに応答して左スレーブ遠隔マニピュレータ51bを動かす。さらに、反転手術作業空間構成では、マスター制御装置2は、左スレーブ制御装置4bと通信して、右マスター遠隔マニピュレータ22aにおける動きに応答して左スレーブ遠隔マニピュレータ51bを動かし、かつ該マスター制御装置2は、右スレーブ制御装置4aと通信して、左マスター遠隔マニピュレータ22bにおける動きに応答して右スレーブ遠隔マニピュレータ51aを動かす。
図22Aは、スレーブコンソールの0度の角度付けの際の反転構成におけるスレーブ遠隔マニピュレータ51aを例示し、図22Bは、スレーブコンソールの20度の角度付けの際の反転構成におけるスレーブ遠隔マニピュレータ51aを例示し、図22Cは、スレーブコンソールの40度の角度付けの際の反転構成におけるスレーブ遠隔マニピュレータ51aを例示する。加えて、図23A~図23Cに示されているように、スレーブ遠隔マニピュレータ51aの並進器具インターフェイス81は、反転手術作業空間RSW、例えば、スレーブコンソールの0度の角度付け、20度の角度付け、及び40度の角度付けそれぞれの際に並進器具インターフェイス81が反転構成で到達できる範囲を有する。
図24A~図24Dに例示されているように、制御装置70は、使用者が腹腔鏡手術構成コマンドを選択することを可能にすることができ、それによって制御システムが命令を実行して、スレーブコンソールに結合された複数のアクチュエータに、スレーブハブ69を、複数のスレーブリンクがマスターコンソールのハンドルで加えられる動きに応答して動かし、それによって手術器具を移動させてロボット手術を行う手術モードから、スレーブハブ69が外科手術を受けている患者から離れて位置し、このため、外科医が、迅速かつ安全にマスターコンソール20から患者の手術部位に移動して、該患者に対して腹腔鏡手術作業を手動で行うことを可能にする腹腔鏡モードに移行させるようにする。従って、腹腔鏡モードでは、スレーブハブ69の近位にある複数のスレーブリンクが患者から引き離され、スレーブコンソール50のベース52が静止したままで手術部位を露出させ、外科医が、複数のスレーブリンク及びスレーブハブ69に妨げられることなく手術部位で非ロボット手術を行うことができる。具体的には、腹腔鏡手術構成コマンドの実行により、角度付けリンク61、従ってスレーブ遠隔マニピュレータ51aのベース52を含む該角度付けリンク61の近位側のすべてのスレーブリンク及びジョイントが固定されたまま、リンク63、従って該リンク63の遠位側のすべてのスレーブリンク及びジョイントが、図24Dに示されているようにスレーブハブ69が患者に背を向けるまで、ジョイント62のアルファ軸ω5を中心に回転する。
従って、好ましい実施態様では、スレーブコンソールの少なくとも1つのリンク(例えば、角度付けリンク61及び/又はリンク63)の長手方向軸が、手術モード及び腹腔鏡モードの両方において遠隔運動中心と整合したままであり、モード間をシームレスに行き来することができる。例えば、アルファ軸ω5は、手術モードから腹腔鏡モードへの移行の間、スレーブコンソール50の遠隔運動中心と整合したままであり得る。有利なことに、これにより、外科医は、手術モードに戻るときに、角度付けリンク61及びアルファ軸ω5をスレーブコンソール50の遠隔運動中心、従って患者の体の切開点に再整合させなくても、該スレーブコンソール50を手術モードと腹腔鏡モードとの間で移動させることができる。本発明の別の態様によると、腹腔鏡手術構成コマンドの作動時に、該スレーブコンソール50の遠位側のスレーブリンクを、スレーブコンソール50のベース52が静止したままでアルファ軸ω5以外の軸を中心に患者から引き離して手術部位を露出させることができ、このため、アルファ軸ω5は、手術モードから腹腔鏡モードに移行する間はスレーブコンソール50の遠隔運動中心と整合しない状態を維持する。例えば、スレーブコンソール50の遠位側のスレーブリンクは、該スレーブコンソール50のベース52が静止したまま、例えば、軸ω4、軸ω3、軸ω2、又は軸ω1を中心に回転させて手術部位を露出させることができる。
加えて、制御システムは、並進器具インターフェイス81がスレーブハブ69に結合されていないと該制御システムが決定しない限り、腹腔鏡手術構成コマンドを作動できないように、該並進器具インターフェイス81がスレーブコンソール50の該スレーブハブ69から、従って患者の手術部位から取り外されているか否かを決定する命令を実行する。従って、スレーブコンソールを手術モードから腹腔鏡モードに移行するためには、腹腔鏡手術構成コマンドの作動の前に、使用者が並進器具インターフェイス81をスレーブハブ69から取り外す必要がある。
ここで図25~図30を参照すると、制御システムを介して手術ロボットシステム10を使用するための例示的な方法90が示されている。当業者には理解されるように、本明細書で説明される方法の工程は、使用者の入力に応答して1つ又は複数のメモリ構成要素に格納された命令を実行する制御システムの(例えば、マスター制御装置、第1のスレーブ制御装置、及び/又は第2のスレーブ制御装置における)1つ又は複数のプロセッサによって実行することができる。図25に示されているように、工程91で、システム10に電源を入れる。工程92で、図27にさらに例示されているように、スレーブコンソール50を、外科手術を受けている患者に対する手術の準備のために準備し、図26にさらに例示されているように、工程93で、マスターコンソール20を、手術中に外科医の所望の構成に配置する。
例えば、図26は、マスターコンソール20を外科医の所望の構成に配置する工程93を例示する。マスターコンソール20は、車輪がロック解除されているときはそのベースにある車輪によって手術室を移動させることができる。手術室内の所望の位置に到達したら、車輪ロックを作動させて、マスターコンソール20を所定の位置に維持する。図26に示されているように、工程93Aで、マスター遠隔マニピュレータは固定されており、伸縮ベース23a、23bは初期高さを有する。次いで、マスターコンソール20に動作可能に結合された制御装置、例えばボタンを作動させて、工程93Bでマスターコンソール20が外科医の所望の高さになるまで、伸縮ベース23a、23bの高さを調整する、例えば、伸縮ベース23a、23bの高さを増減することができる。例えば、マスターコンソール20を調整して、マスターコンソール20の操作中に外科医が座っていることができる座位構成にする、又はマスターコンソール20の操作中に外科医が立っていることができる立位構成にすることができる。従って、例えば保管目的のために、制御装置を作動させてマスターコンソール20を初期高さに戻すことができる。
ここで図27を参照すると、スレーブコンソール50の準備の工程92が示されている。図27に示されているように、工程92Aで、スレーブコンソール50を患者に対して所望の位置まで手術室を移動させることができるように、スレーブ遠隔マニピュレータの車輪ロックを解除する。車輪ロックは、患者が負傷しないようにするために、器具82がスレーブハブ69に挿入されていないときにのみ解除することができる。複数のスレーブ遠隔マニピュレータを使用することができるため、各スレーブ遠隔マニピュレータが工程92Aの間に配置される。スレーブコンソール50が、外科手術を受けている患者に隣接した手術室内の所望の位置にある場合、工程92Bで、該スレーブコンソール50が車輪により手術室でそれ以上移動しないように、該スレーブコンソール50のその車輪をロックする。従って、スレーブコンソール50を異なる所望の位置に移動させる必要がある場合、工程92Aで、車輪ロックを再び解除することができる。
工程92Cでは、Scaraブレーキ解除コマンドは実行されておらず、スレーブコンソール50のScaraブレーキは解除されていない。工程92Dで、Scaraブレーキ解除コマンドを使用者が実行して、スレーブ遠隔マニピュレータの遠位端部、例えばリンク59の遠位側のスレーブリンクを、外科手術を受けている患者に対して所望の位置に配置することができる。具体的には、Scaraブレーキ解除コマンドが実行されると、スレーブ遠隔マニピュレータのスレーブ支持体53が固定されたまま、かつスレーブリンク59の遠位側のスレーブジョイント及びリンクがスレーブリンク59に対して固定されたまま、スレーブリンク55、57、59が、ジョイント54、56、58の軸ω1、ω2、ω3を中心に回転することが可能になる。スレーブ遠隔マニピュレータの遠位端部が患者に対して所望の位置にあると、工程92Cで、Scaraブレーキ解除コマンドの実行が終了する。加えて、図15A~図15Cを参照して上で説明されたように、スレーブ遠隔マニピュレータの垂直高さは、該スレーブ遠隔マニピュレータの遠位端部が患者の体内のトロカールに対して所望の高さに来るように調整することができる。Scaraブレーキ解除コマンドは、患者が負傷しないようにするためにスレーブハブ69に器具82が存在しない場合にのみ有効にすることができる。
図27を再び参照すると、工程92Eで、スレーブ遠隔マニピュレータの角度付けリンク61が、スレーブリンク59に対して固定されている。例えば、スレーブ遠隔マニピュレータは、最初は0度の角度付け角度を有し得る。工程92Fで、角度付けコマンドを実行して、角度付けジョイント60の軸ω4を中心とする角度付けリンク61の角度付けを所望の角度付け角度、例えば、スレーブ遠隔マニピュレータ51aのベース52に対して0~45度に調整することができる。具体的には、角度付けコマンドの実行時に、スレーブリンク59及びスレーブリンク59の近位側のすべてのスレーブリンク及びジョイント、並びにスレーブ遠隔マニピュレータのベース部分52が固定されたまま、角度付けリンク61、従って該角度付けリンク61の遠位側のすべてのスレーブリンク及びジョイントが、角度付けジョイント60の軸ω4を中心に回転する。スレーブ遠隔マニピュレータの所望の角度の角度付けが達成されると、スレーブ遠隔マニピュレータの角度付けリンク61がスレーブリンク59に対して固定されるように、工程92Eで角度付けコマンドの実行が終了する。角度付けコマンドは、1つが角度付けを増加させるボタン、もう1つが角度付けを減少させるボタンの2つのボタンを有し得る。
工程92Gで、スレーブ遠隔マニピュレータは、前方手術作業空間を有するか、あるいは、工程92Hで、該スレーブ遠隔マニピュレータは、反転手術作業空間を有する。工程92G及び工程92Hの両方の間、器具82がスレーブハブ69内にあってはならない。工程92Gで、スレーブ遠隔マニピュレータが前方手術作業空間を有し、使用者が反転手術作業空間を望む場合、反転コマンドを実行して、スレーブ遠隔マニピュレータ51aを前方手術作業空間から反転手術作業空間に反転させることができる。具体的には、反転コマンドの実行時に、リンク65、従って該リンク65の遠位側のすべてのスレーブリンク及びスレーブジョイントが、スレーブ遠隔マニピュレータ51aのベータジョイント64を中心に回転する。加えて、リンク65がベータジョイント64を中心に回転するため、スレーブ遠隔マニピュレータ51aが反転手術作業空間構成になるまで、リンク67が、ガンマジョイント66でリンク65に対して回転し、スレーブハブ69が、シータジョイント68でリンク67に対して回転する。同様に、工程92Hで、スレーブ遠隔マニピュレータが反転手術作業空間を有し、使用者が前方手術作業空間を望む場合、反転コマンドを実行して、スレーブ遠隔マニピュレータ51aを前方手術作業空間から反転手術作業空間に反転させることができる。
工程92Iでは、並進器具インターフェイス81は、スレーブ遠隔マニピュレータのスレーブハブ69に結合されていない。工程92Jで、一時的切開ポインタをスレーブ遠隔マニピュレータに取り外し可能に結合することができる。例えば、一時的切開ポインタは、軸ω5上の所定の点に位置する仮想遠隔運動中心Vを指すようにスレーブ遠隔マニピュレータに取り外し可能に結合され、このため、仮想遠隔運動中心Vが、外科切開点と一致することになり得、患者の外傷が減少し、手術の美容上の結果が向上する。一時的切開ポインタは、必要に応じて、並進器具インターフェイス81の装着の前に取り外すことができる。準備工程92の間、器具82は、スレーブ遠隔マニピュレータのスレーブハブ69に結合するべきではない。従って、器具82がスレーブ遠隔マニピュレータのスレーブハブ69に結合されている場合、工程92Kで、制御システムは、並進器具インターフェイス81が取り外されるまではさらなる動作を防止する。
工程92Lで、スレーブ遠隔マニピュレータのリンク61の遠位側のスレーブリンク及びジョイントは任意の位置にあり得る。従って、工程92Mで、ホーム構成コマンドを実行して、スレーブ遠隔マニピュレータのスレーブハブ69が外科手術を受けている患者の体内のトロカール内の器具先端部84を位置決めするために所望の位置に来るようにスレーブリンク及びジョイントを後退位置に移動させることができる。工程92Nで、スレーブ遠隔マニピュレータはホーム位置にあり、スレーブハブ69は、器具82をスレーブハブ69を介して挿入して結合できるように患者の体内のトロカールに対して配置され、器具先端部84は、該トロカール内をスライドするが、該トロカールを通過しない。
工程92Oで、腹腔鏡手術構成コマンドを実行して、スレーブハブ69を外科手術を受けている患者から遠ざけることができ、このため、外科医が、マスターコンソール20から該患者の手術部位に迅速かつ安全に移動して、該患者に対して腹腔鏡手術作業を手動で行うことができる。具体的には、腹腔鏡手術構成コマンドの実行時に、スレーブハブ69が患者から背を向けるまで、角度付けリンク61、従ってスレーブ遠隔マニピュレータ51aのベース52を含む角度付けリンク61の近位側のすべてのスレーブリンク及びジョイントが固定されたまま、リンク63、従って該リンク63の遠位側のすべてのスレーブリンク及びジョイントが、ジョイント62のアルファ軸ω5を中心に回転する。工程92Pでは、スレーブハブ69は後退位置にある。
工程92Qでは、並進器具インターフェイス81の無菌インターフェイスは、スレーブ遠隔マニピュレータのスレーブハブ69に結合されていない。工程92Rで、無菌インターフェイスがスレーブハブに結合され、制御システムが、例えば無菌インターフェイスに組み込まれたRFIDタグを読み取ることによって、無菌インターフェイスが識別されたか否かを判断する。無菌インターフェイスが識別されない場合、工程92Sで、制御システムは、該無菌インターフェイスが工程92Qでスレーブハブ69から取り外されるまで該無菌インターフェイスの取り外しを待つ。無菌インターフェイスが識別された場合、工程92Tで、該無菌インターフェイスは正常に装着される。
工程92Uで、停止位置コマンドを実行して、スレーブ遠隔マニピュレータ51bを輸送及び保管に適した位置に移動させることができる。具体的には、停止位置コマンドの実行時に、スレーブ支持体53の垂直支柱が最小の高さまで引き戻し、Scaraブレーキが解除されてScaraアームが折りたたみ位置に折りたたまれ、角度付けが0度の角度付けに戻り、そしてジョイント62の遠位側のジョイントが移動してスレーブアームがコンパクトな位置に折りたたまれる。工程92の後に、必要に応じて、手術ロボットシステム10の電源を切ることができる。
工程92の後で手術ロボットシステム10の電源が切られていない場合、工程94で、制御システムが、無菌インターフェイスが正常に装着されているか否か、及びフロアロックが作動しているか否かを判断する。無菌インターフェイスが正常に設置されていないか、又はフロアロックが解除されていると判断された場合、手術ロボットシステム10は、上記を修正するために準備工程92に戻らなければならない。工程94で無菌インターフェイスが正常に装着され、かつフロアロックが作動していると判断された場合、手術ロボットシステム10は、工程95に進むことができる。
工程95では、図28に示されているように、手術ロボットシステムは器具82の準備ができている。例えば、工程95Aで、スレーブコンソール50の制御システムは、器具82がスレーブ遠隔マニピュレータのスレーブハブ69に結合されるまで該器具82を待つ。従って、器具82が選択されて、スレーブハブ69内に挿入される。器具がスレーブハブから絶対に脱落しないようにするために、使用者は、該器具の近位端部を回転させることによって該器具をスレーブハブ69に機械的にロックすることができる。スレーブハブ69は、器具がロックされているか否かを検出する一体型センサを有する。工程95Bで、スレーブハブ69内に配置されたセンサは、選択された器具、例えば選択された器具の識別情報を有するRFIDタグに組み込まれた識別子要素を読み出す。工程95Cで、制御システムは、RFIDタグの検出に基づいて、選択された器具が許可されているか否かを判断する。選択された器具が許可されていない場合、工程95Dで、制御システムは、該選択された器具が取り外されるまで待機する。許可されていない器具が取り外されると、工程95Dから工程95Aに戻る。工程95Eで、選択された器具が許可されたものであり、かつスレーブ遠隔マニピュレータのスレーブハブ69内にロックされている場合、方法90は工程96に進むことができる。工程95のいかなる時点でも、無菌インターフェイスが取り外される、フロアロックが解除される、反転コマンドが実行される、Scaraブレーキ解除コマンドが実行される、ホーム構成コマンドが実行される、又は切開ポインタが挿入されると、方法90は準備工程92に戻ることができる。
工程96では、手術ロボットシステム10は、操作の準備ができている。図29に示されているように、工程96Aで、制御システムは、器具82がスレーブ遠隔マニピュレータのスレーブハブ69に結合されているかを確認する。工程96Bで、制御システムは、外科医がハンドル部分35のハンドルグリップ40を掴むと検出する。図9A及び図9Bに示されているように、ハンドル内のセンサは、外科医がハンドルを掴んだことを検出することができる。工程96Cで、クラッチ11を作動させて、工程97Aに示されているようにマクロ同期のために制御システムを準備する。
図30に示されているように、手術ロボットシステム10を直ちに操作することができる。例えば、工程97Aで、手術ロボットシステム10は、マクロ同期状態にあるが、ミクロ同期状態にはない。マクロ同期状態では、マスターコンソール20で加えられたマクロな並進運動が検知されて制御システムに送信され、該制御システムが、スレーブコンソール50に結合されたアクチュエータに命令して、器具先端部84のマクロな動き(すなわち、上方/下方、左/右、内側/外側)がマスターコンソール20におけるハンドルのマクロな動きに対応するように、対応するスレーブリンク及びジョイントを移動させる。しかしながら、マクロ非同期状態では、制御システムは、マスターコンソール20で加えられるマクロな動きを、スレーブコンソール50では対応するように引き起こさない。例えば、マクロ非同期状態では、マスターコンソール20でのマクロな動きは、意図的であろうとなかろうと、マスターコンソール20のマスターリンクが動くことを可能にするが、スレーブコンソール50ではいかなる対応する動きももたらされない。
ミクロ同期状態では、マスターコンソール20のハンドル部分35で加えられたミクロな動きが検知されて制御システムに送信され、該制御システムが、スレーブコンソール50に結合されたアクチュエータに命令して、器具先端部84を、該マスターコンソール20のハンドル部分35で加えられたミクロな動きに対応するように移動させる。しかしながら、ミクロ非同期状態では、制御システムは、マスターコンソール20/ハンドル部分35で加えられたミクロな動きを、対応するようにスレーブコンソール50/エンドエフェクタで引き起こさない。従って、工程97Aで、マクロな並進運動は再現されるが、ミクロな動きは同期されない。工程97Bで、クラッチ11を作動させて手術ロボットシステム10をマクロ非同期状態に移行させることができ、マクロな並進運動をマスターコンソール20によって防止することができ、従って、スレーブコンソール50によって再現されない。例えば、クラッチ11は、踏まれると手術ロボットシステム10をマクロ非同期状態に維持するフットペダルとすることができる。クラッチ11が解放されると、工程97Aで、手術ロボットシステム10がマクロ同期状態に戻る。従って、例えば、外科医は、マクロ同期状態でハンドル部分35にマクロな動きを加えることができ、例えば、該ハンドル部分35を内側/外側に動かし、それによって手術器具に内側/外側の動きを引き起こし、次いで、クラッチ11を作動させて、手術システムをマクロ同期状態からマクロ非同期状態に移行させ、該ハンドル部分をその元の位置に戻す又は別のより快適な位置に移動させ、これにより、該手術器具のマクロな動きが起きることはなく、該クラッチ11を解放して、該手術システムをマクロ非同期状態からマクロ同期状態に移行させ、続いて、追加のマクロな動きを該ハンドル部分35に加え、これにより、対応するマクロな動きが該手術器具で起きる。有利なことに、これにより、外科医が、スレーブコンソール50を所望の位置に維持したまま、快適さのためにマスターコンソール20を再調整することができる。さらなる例では、クラッチ11の作動により、手術システムが、マクロな動き及びミクロな動きの両方について同期状態と非同期状態との間で移行する。
加えて、制御システムは、該制御システムが作動パターンを検出しない限り、ハンドル部分35におけるミクロな動きがエンドエフェクタによって再現されないように、ハンドル部分35によって作動パターンを検出するようにプログラムすることができる。例えば、作動パターンは、ハンドルグリップ40の迅速な二重作動を含み得る。従って、工程97Cで使用者がハンドルグリップ40を繰り返し2回押すと、制御システムが作動パターンを検出し、手術ロボットシステム10がミクロ同期状態になり、ハンドル部分35でのミクロな動きがエンドエフェクタによって再現されることになる。ミクロ非同期状態からミクロ同期状態に移行すると、制御システムが命令を実行して、器具先端部84のミクロな位置が、器具シャフト82に対して、マスター遠隔マニピュレータ22aの対応するリンク32に対するハンドル部分35の空間的定位と同じ空間的定位を有するようにする。工程97Dで、例えば、エンドエフェクタが手術の目標位置にあり、かつ外科医が手術作業を行うために手術ロボットシステム10を使用することができる場合、手術ロボットシステム10は、十分にマクロ同期状態及びミクロ同期状態の両方にある。クラッチ11の作動時、工程97Eで、手術ロボットシステム10はミクロ同期状態にあるが、マクロ同期状態にない。
図2Cに示されているように、本発明の別の態様によると、マスターコンソール20は、手術ロボットシステム10をマクロ同期状態及び/又はミクロ同期状態にするためにクラッチ11と併せて使用するための第2のクラッチ11'を有し得る。例えば、クラッチ11の作動により、手術ロボットシステム10を、マクロ同期状態とマクロ非同期状態との間で移行させることができ、クラッチ11'の作動により、該手術ロボットシステム10を、ミクロ同期状態とミクロ非同期状態との間で移行させることができる。従って、例えば、外科医は、マクロ同期状態でハンドル部分35にミクロな動きを加える、例えば、ハンドル部分35を回転させることができ、それによって手術器具にロール運動を引き起こし、次いで、クラッチ11'を作動させて、手術システムをミクロ同期状態からミクロ非同期状態に移行させ、ハンドル部分をその元の位置に戻す又は別のより快適な位置に移動させ、これにより、該手術システムがマクロ同期状態である場合、該手術器具のミクロな動きは起きないが、該手術器具のマクロな動きを起こすことができ、クラッチ11'を解放して、該手術システムをミクロ非同期状態からミクロ同期状態に移行させ、続いて、該ハンドル部分35に追加のミクロな動きを加え、これにより、対応するミクロな動きが該手術器具で起きる。有利なことに、これにより、外科医は、スレーブコンソール50を所望の位置に維持したまま、快適さのためにマスターコンソール20を再調整することができる。
外科医は、手術ロボットシステム10のマクロ同期状態、マクロ非同期状態、ミクロ同期状態、及びミクロ非同期状態の任意の組み合わせを選択的に選択することができる。本発明のさらに別の態様によると、クラッチ11の作動により、手術ロボットシステム10をマクロ同期状態と非同期状態との間及びミクロ同期状態と非同期状態の間の両方で移行させることができるが;クラッチ11'の作動では、該手術ロボットシステム10をミクロ同期状態とミクロ非同期状態との間で移行させるだけである。別法では、クラッチ11の作動により、手術ロボットシステム10を、マクロ同期状態と非同期状態との間及びミクロ同期状態と非同期状態の間の両方で移行させることができるが、クラッチ11'の作動では、該手術ロボットシステム10をマクロ非同期状態とマクロ同期状態との間で移行させるだけである。
本発明の別の態様によると、本発明の原理に従って構成された、低侵襲外科処置又は他の用途で使用することができる、ハイブリッド遠隔マニピュレータを有する遠隔作動手術ロボットシステムが本明細書で説明される。
図31A及び図31Bを参照すると、ハイブリッド遠隔マニピュレータを有する例示的な遠隔作動手術ロボットシステム100が示されている。手術ロボットシステム100は、例示的に、可動カート101の上部に取り付けられ、該可動カート101には、手術室内での移動及び輸送を容易にするためにハイブリッド遠隔マニピュレータも取り付けることができる。手術ロボットシステム100は、外科医が該システム100を操作するために位置し得るマスター領域400、及び外科手術を受ける患者が配置され得る無菌ゾーンに近接した遠隔スレーブ領域500を備える。図31Bに示されているように、手術を行う外科医は、好ましくは、マスター領域400にすぐにアクセスできる状態で座るが、別の外科医又は助手は、患者の上に位置するスレーブ領域500の近傍に位置し得る。図31A及び図31Bの実施態様では、マスター領域400は、スレーブ領域500に隣接して横方向に位置する。加えて、カメラシステム102は、手術ロボットシステム100と共に使用することができ、例えば、スレーブ領域500に位置するアシスタントによって操作される内視鏡を操作し、かつ/又は図31Bに示されている位置に保持することができる。カメラシステム102はまた、該カメラ102によって捕捉された手術部位をリアルタイムで外科医に表示するためのディスプレイ103を含み得る。ディスプレイ103は、マスター領域400に、又は外科処置中に外科医が容易に観察可能なマスター領域400に近接した任意の場所に取り付けることができる。
再び図31Aを参照すると、システム100は、外科医の左手で操作される左ハイブリッド遠隔マニピュレータ104、及び外科医の右手で操作される右ハイブリッド遠隔マニピュレータ105を含む、2つのハイブリッド遠隔マニピュレータ104及び105を備える。ハイブリッド遠隔マニピュレータ104及び105は、例えば外科医の左手及び右手によって、他方の手と同時かつ独立に操作することができる。好ましくは、遠隔操作される遠隔作動手術ロボットシステム100は、外科処置での使用に最適化される。
各ハイブリッド遠隔マニピュレータは、マスタースレーブ構成への入力を提供し、複数の剛性スレーブリンク及びスレーブジョイントからなるスレーブユニットは、複数の剛性マスターリンク及びマスタージョイントからなるマスターユニットによって運動学的に駆動される。例えば、左ハイブリッド遠隔マニピュレータ104は、マスターユニット401及び対応するスレーブユニット501を備え、右ハイブリッド遠隔マニピュレータ105は、マスターユニット402及び対応するスレーブユニット502を備える。マスターユニット401及び402は、システム100のマスター領域400内に配設されている一方、スレーブユニット501及び502は、システム100のスレーブ領域500内にある。好ましくは、スレーブユニット501及び502はそれぞれ、以下でさらに詳細に説明されるように、装置の操作中に遠隔運動中心から逸脱することなく、マスターユニット401及び402の対応する部分の動きを模倣する。
引き続き図31Aを参照すると、エンドエフェクタ107を有する遠隔操作手術器具106、例えば並進器具インターフェイスが、スレーブユニット501の遠位端部に結合され、ハンドルが、該ハンドルに加えられる動きがプロセッサ駆動制御システムを介してエンドエフェクタ107の対応するミクロな動きを誘導するようにマスターユニット401の遠位端部に結合されている。例えば、制御システムは、ハンドルに結合された1つ又は複数のセンサによって該ハンドルで加えられる動きを示す信号を受信し、エンドエフェクタ107に動作可能に結合された1つ又は複数のアクチュエータを作動させるために必要な座標変換を行い、該エンドエフェクタの対応する動きを再現することができる。並進器具インターフェイスのスレーブ器具106は、スレーブユニット501に取り外し可能に取り付けられ、該スレーブユニット501によって操作することができ、このため、並進自由度、例えば、左/右、上方/下方、内側/外側が直接的な機械的結合によって得られるが、関節自由度、例えばピッチとヨー、作動自由度、例えば開/閉、及び回転自由度、例えば回内回外運動は、以下でさらに詳細に説明されるように、センサ、アクチュエータ、及び制御システムを介して電気機械的に再現される。
ここで図32A及び図32Bを参照すると、ハイブリッド遠隔マニピュレータを有する例示的な遠隔作動手術ロボットシステム100の機構が示され、図31に示されている外部カバーは、分かりやすくするために省略されている。図32A及び図32Bでは、機械式伝動装置300は、スレーブユニット501をマスターユニット401に直接結合するように配置され、このため、マスターユニット401の複数のマスタージョイントに加えられるマクロな並進運動が、スレーブユニット501の複数のスレーブジョイントの対応するそれぞれのジョイントによって再現される。同様に、機械式伝動装置300はまた、スレーブユニット502をマスターユニット402に直接結合し、このため、マスターユニット402の複数のマスタージョイントに加えられるマクロな並進運動が、スレーブユニット502の複数のスレーブジョイントの対応するそれぞれのジョイントによって再現される。伝動装置300は、スレーブユニット501及び502の4自由度のうちの1自由度を制御するために、1つ又は複数のプーリによってマスターユニット401から該スレーブユニット501まで経路指定された1本又は複数本のケーブル301、及び1つ又は複数のプーリによってマスターユニット402から該スレーブユニット502まで経路指定された1本又は複数本のケーブル303を例示的に備える。マスターユニット401の機械的制限部200は、運動の自由度をなくすことによりマスターユニット401の動きを制限し、これにより、3つの並進自由度、例えば左/右、上方/下方、内側/外側の動きを制限する。
例えば、1本又は複数本のケーブル301は、マスターユニット401に結合されたプーリP1で始まり、プーリP2、P3、P4、P5、P6、張力システム302、プーリP7を通り、そしてスレーブユニット501に結合されたプーリP8の周りを回り、そしてプーリP7、張力システム302、プーリP6、P5、P4、P3、P2を介して戻り、そしてプーリP1で終了する1つ又は複数の閉ループを形成することができる。従って、プーリP1の時計回り又は反時計回りの回転により、1本又は複数本のケーブル301のうちの1本のケーブルがプーリP8を回転させ、これにより、スレーブユニット501が4自由度のうちの1自由度で作動される。しかしながら、マスターユニット401の機械的制限部200は、動きの1自由度をなくすことによってマスターユニット401の動きを制限し、これにより、スレーブユニット501の動きを3つの並進自由度、例えば左/右、上方/下方、内側/外側に制限する。プーリP1、P2、P3、P4、P5、P6、P7、及びP8のそれぞれは、マスターユニット401によるスレーブユニット501の作動可能な動きの自由度数に対応するいくつかの個々のプーリを含み得る。同様に、1本又は複数本のケーブル301は、マスターユニット401によるスレーブユニット501の作動可能な動きの自由度数に対応するいくつかのケーブルの閉ループを含み得る。
同様に、1本又は複数本のケーブル303は、マスターユニット402に結合されたプーリP9で始まり、張力システム304、プーリP10、P11、P12、P13、P14を通り、そしてスレーブユニット502に結合されたプーリP15の周りを回り、そしてプーリP14、P13、P12、P11、P10、張力システム304を通って戻り、そしてプーリP9で終了する1つ又は複数の対応する閉ループを形成することができる。このようにして、プーリP9の時計回り又は反時計回りの回転により、1本又は複数本のケーブル303のうちの1本のケーブルがプーリP15を回転させることができ、これにより、スレーブユニット502が4自由度のうちの1自由度で作動される。マスターユニット402の機械的制限部201(図32Aを参照)は、同様に、動きの自由度をなくすことによってマスターユニット402の動きを制限し、これにより、スレーブユニット502の動きを3つの並進自由度、例えば左/右、上方/下方、内側/外側に制限する。プーリP9、P10、P11、P12、P13、P14、及びP15のそれぞれは、マスターユニット402によるスレーブユニット502の作動可能な動きの自由度数に対応するいくつかの個々のプーリを含み得る。同様に、1本又は複数本のケーブル303は、マスターユニット402によるスレーブユニット502の作動可能な動きの自由度数に対応するいくつかのケーブルの閉ループを含み得る。
当業者には理解されるように、プーリP1とP8との間でケーブル301を経路指定するために利用されるプーリP2~P7の数、及びプーリP9とP15との間でケーブル303を経路指定するために利用されるプーリP10~P14の数はそれぞれ、右及び左ハイブリッド遠隔マニピュレータの構造によって決まる。
ここで図33を参照すると、機械式伝動装置300の1本又は複数本のケーブル301が張力システム302を通り、かつ1本又は複数本のケーブル303が張力システム304を通っている。張力システム302は、ケーブル301に所定の張力を加えるように設計され、張力システム304は、ケーブル303に所定の張力を加えるように設計されている。例えば、張力システム302は、張力リンク305を介してプーリP17に結合されたプーリP16、及び張力リンク306を介してプーリP19に結合されたプーリP18を含み得る。張力リンク305は、軸307を通る垂直軸を中心に張力リンク306に対して調整可能かつ回転可能に結合され、このため、所定の張力がプーリP16、P17、P18、及びP19によってケーブル301に加えられる。加えて、張力システム302を使用して機械式伝動装置300を較正することができ、これにより、対応するマスタージョイント及びスレーブジョイントの角度が確実に同一となる。張力システム304は、張力システム302と構造が同一であってもよい。
また、図33では、右ハイブリッド遠隔マニピュレータの機械式伝動装置のプーリP11、P12、及びP13は、スレーブリンク309を介して位置決めシステム310に回転可能に結合されたスレーブリンク308に結合されている。位置決めシステム310は、例えば、スレーブユニット502のスレーブユニット501に対する単一平面に沿った動きを制限する油圧装置であり得る。例えば、プーリP8の位置を固定することができ、このため、P15の位置が、水平面(x方向及びy方向)に沿ってP8に対して移動可能である。
ここで図34A及び図34Bを参照すると、システム100の例示的なマスターユニットの構成要素が示されている。マスターユニット401はそれぞれ、構造がマスターユニット402と同一であるため、マスターユニット401の以下の説明は、マスターユニット402にも当てはまる。
マスターユニット401は、複数のマスタージョイントによって相互に連結された複数のマスターリンク、例えば、第1のマスターリンク405a、第2のマスターリンク405b、第3のマスターリンク405c、及び第4のマスターリンク、例えば誘導マスターリンク404を備える。ハンドル403は、誘導マスターリンク404、例えばマスターロッドを介してマスターユニット401の遠位端部に連結され、ハイブリッド遠隔マニピュレータを操作するための複数のハンドルジョイントによって相互に連結された複数のハンドルリンクを備える。例えば、ハンドル403に加えられるマクロな並進運動は、複数のマスターリンクを介して複数のマスタージョイントの対応する動きを引き起こし、この動きが、機械式伝動装置300を介してスレーブユニット501の対応するスレーブジョイントに伝達され、これにより、マクロな並進運動がスレーブユニット501で再現される。ハンドル403の並進運動により、誘導マスターリンク404が、第1のマスターリンク405a、第2のマスターリンク405b、及び第3のマスターリンク405cを介してこの運動をプーリP1に伝達し、これにより、スレーブユニット501が、機械式伝動装置300を介して並進運動を模倣する。第1のマスターリンク405a、第2のマスターリンク405b、第3のマスターリンク405c、及び誘導マスターリンク404は、例えば、1つ又は複数のプーリ407によって経路指定された1つ又は複数の歯付きベルト406を含む伝動システムを介してプーリP1に結合されている。別法では、プーリP1とマスターユニット501の複数のマスターリンク及びジョイントとを結合する伝動システムは、ケーブルとプーリのシステム、及び/又は剛性伝達リンクを含み得る。
図34A及び図34Bでは、マスターユニット401の機械的制限部408は、誘導マスターリンク404上をスライドするスリーブに旋回可能に結合されたヨークを備え、該スリーブは、患者の切開点、例えばトロカールが患者の腹部を通過する点と整合する遠隔運動中心に一致するスレーブユニット501の遠位端部の動きを制限する。例えば、機械的制限部408は、ハイブリッド遠隔マニピュレータが作動すると、マスターユニット401の誘導マスターリンク404が長手方向軸θ1に沿って並進することを確実にし、このため、図35A及び図35Bに示されているように、スレーブユニット501の対応するスレーブリンク、例えば、スレーブユニット501の遠位端部に結合された並進器具インターフェイスも同様に、遠隔操作の近傍の誘導マスターリンク404の長手方向軸θ1に平行な仮想軸θ4に沿って並進する。加えて、機械的制限部408は、誘導マスターリンク404が、互いに垂直な第2の軸θ2及び第3の軸θ3を中心に回転することを可能にする。引き続き図34A及び図34Bを参照すると、軸θ3は、プーリP1の軸と同軸である。誘導マスターリンク404の長手方向軸θ1と第2の軸θ2によって画定される平面は、マスターリンク404の向きとは無関係に静止単一点409で第3の軸θ3と交差する。この構成により、スレーブユニット501の対応するスレーブリンクが、互いに垂直な第5の仮想軸θ5及び第6の仮想軸θ6を中心に回転することが可能になる。対応するスレーブリンクの長手方向軸θ4と第5の仮想軸θ5と第6の仮想軸θ6は常に、患者の切開部の近傍の仮想静止単一点509、例えば、遠隔運動中心で互いに交差する。
手術ロボットシステム100が、遠隔運動中心509が患者の切開部と整列するように配置されると、ハンドル403に加えられる並進運動は、患者の体内に配置されたエンドエフェクタによって再現される。エンドエフェクタは、ハンドル403に加えられる動きを完全に再現するため、この配置は、ハンドルとエンドエフェクタとの間の支点効果を有利に排除し、器具が常に遠隔運動中心を通過することを保証する。既に知られている手術ロボットでは、患者の切開部を通過するときに手術器具の動きの固定点を維持するためには複雑な制御電子器具が必要であるが、本発明のシステムでは、機械的制限部408が、器具が常に遠隔運動中心509を通過することを保証する、マスターユニット401とスレーブユニット501との間での並進運動の再現を実現する。
図34A及び図34Bの実施態様のハンドル403の内側/外側への動きにより、第1のマスターリンク405a、第2のマスターリンク405b、第3のマスターリンク405c、及び誘導マスターリンク404が、該誘導マスターリンク404の長手方向軸θ1に沿って内側/外側に動く。この動きは、複数のマスターリンクを介してプーリP1に伝達され、これにより、スレーブユニット501が、機械式伝動装置300並びに複数のスレーブリンク、ジョイント、及びタイミングベルトを介して長手方向軸θ4に沿った内側/外側への動きを再現する。同様に、ハンドル403の上方/下方への動きにより、第1のマスターリンク405a、第2のマスターリンク405b、第3のマスターリンク405c、及び誘導マスターリンク404が第2の軸θ2を中心に上方/下方に回転する。この動きは、複数のマスターリンクを介してプーリP1に伝達され、これにより、スレーブユニット501が、機械式伝動装置300並びに複数のスレーブリンク、ジョイント、及びタイミングベルトを介して第5の軸θ5を中心とする上方/下方への動きを再現する。最後に、ハンドル403の左/右への動きにより、第1のマスターリンク405a、第2のマスターリンク405b、第3のマスターリンク405c、及び誘導マスターリンク404が第3の軸θ3を中心に左/右に回転する。この動きは、複数のマスターリンクを介してプーリP1に伝達され、これにより、スレーブユニット501が、機械式伝動装置300並びに複数のスレーブリンク、ジョイント、及びタイミングベルトを介して第6の軸θ6を中心とする左/右への動きを再現する。
引き続き図34A及び図34Bを参照すると、マスターユニット401のハンドル403で加えられる動きは、センサ、モータ、及び制御システムを介して電気機械的に関節自由度、例えばピッチとヨー、作動自由度、例えば開/閉、及び回転自由度、例えば回内回外運動を引き起こす。マスターユニット401は、好ましくは、ハンドル403の動きを検出するために回路基板411を介してハンドル403に結合された1つ又は複数のセンサ410を備える。理解されるように、センサ410は、回転運動を検出するように設計された任意のセンサ、例えば、角度と位置を測定することによって回転を測定するために一側に磁石及び反対側にセンサを含む磁気式回転センサであり得る。回路基板411は、センサ410によって測定された回転を示す信号を生成し、該信号をスレーブユニット501に結合された1つ又は複数のモータに送信するために制御システムに結合され、該スレーブユニット501は、ハンドル403に加えられる動きをエンドエフェクタで再現することができる。例えば、電気ケーブルを、ハンドル403から制御システム、例えば制御電子機器を含むユニットまで延ばすことができ、追加の電気ケーブルを、制御システムから、スレーブユニット501に結合された1つ又は複数のモータまで延ばすことができる。
ハンドル403のトリガ412の作動により、制御システムを介して、スレーブユニット501に結合されたモータに送信される信号が生成され、これにより、該スレーブユニット501に結合された並進器具インターフェイスの並進伝動システムが作動され、次に、該並進器具インターフェイスのエンドエフェクタが作動されて開く/閉じる。
ハンドル403はまた、外科医が容易に握れるように設計された、外科医の手首をマスターユニット401と整合させるボール413を備えることができる。ボール413は、ハンドル軸θ7を中心に回転可能であり得、このため、該ボール413の回転が、信号を生成し、該信号をスレーブユニット501に結合されたモータに制御システムを介して送信するセンサによって検出される。スレーブユニットにおける制御システムから受信した信号により、スレーブユニット501に結合された並進器具インターフェイスが回転し、従って、該並進器具インターフェイスのエンドエフェクタが回内回外運動自由度で回転する。
ハンドル403はまた、ハンドル軸θ8を中心に回転可能であり、このため、ハンドル軸θ8を中心とする回転がセンサによって検出され、該センサは、信号を生成し、該信号を制御システムを介してスレーブユニット501のモータに送信する。この信号により、スレーブユニット501に結合された並進器具インターフェイスの並進伝動システムが作動し、これにより、該並進器具インターフェイスのエンドエフェクタがヨー自由度で動く。加えて、ハンドル403は、ハンドル軸θ9を中心に回転可能であり得、このため、ハンドル軸θ9を中心とするハンドル403の回転がセンサによって検出され、該センサが、信号を生成し、該信号を制御システムを介してスレーブユニット501のモータに送信する。この信号により、スレーブユニット501に結合された並進器具インターフェイスの並進伝動システムが作動し、これにより、並進器具インターフェイスのエンドエフェクタがピッチ自由度で動く。
ここで図34C及び図34Dを参照すると、マスターユニット401のハンドルの代替実施態様が示されている。図34Cでは、ハンドル403'は、ハンドル軸θ7、ハンドル軸θ8、及びハンドル軸θ9を中心に回転可能であり、このため、該ハンドル軸を中心とするハンドル403'の回転が1つ又は複数のセンサ410によって検出され、該センサ410は、信号を生成し、該信号を制御システムを介してスレーブユニット501のモータに送信する。この信号により、スレーブユニット501に結合された並進器具インターフェイスの並進伝動システムが作動し、これにより、該並進器具インターフェイスのエンドエフェクタが、回内回外運動自由度、ヨー自由度、及びピッチ自由度それぞれで動く。
同様に、図34Dのハンドル403''は、ハンドル軸θ7、ハンドル軸θ8、及びハンドル軸θ9を中心に回転可能であり、このため、該ハンドル軸を中心とするハンドル403''の回転が、1つ又は複数のセンサ410によって検出され、該センサ410は、信号を生成し、該信号を制御システムを介してスレーブユニット501に結合された1つ又は複数のモータに送信する。この信号により、スレーブユニット501に結合された並進器具インターフェイスの並進伝動システムが作動し、これにより、該並進器具インターフェイスのエンドエフェクタが、回内回外運動自由度、ヨー自由度、及びピッチ自由度それぞれで動く。
ここで図35A及び図35Bを参照すると、システム100の例示的なスレーブユニットが示されている。スレーブユニット501はそれぞれ、スレーブユニット502と構造が同一であるため、該スレーブユニット501の以下の説明は、該スレーブユニット502にも当てはまる。
上記のように、マスターユニット401は、複数のマスタージョイントによって相互に連結された複数のマスターリンクを備える。スレーブユニット501は、複数のスレーブジョイントによって相互に連結された対応する複数のスレーブリンク、例えば、第1のスレーブリンク505a、第2のスレーブリンク505b、第3のスレーブリンク505c、及び第4のスレーブリンク、例えば並進器具インターフェイス503を備え、このため、該スレーブユニット501の複数のスレーブリンク及び対応する複数のスレーブジョイントによって直接的な機械結合が形成され、これは、マスターユニット401の対応する複数のマスターリンク及び対応する複数のマスタージョイントによって形成される動力学的モデルと同一である。例えば、ハイブリッド遠隔マニピュレータの操作中は、第1のスレーブリンク505aは常に、第1のマスターリンク405aに対して平行を維持し、第2のスレーブリンク505bは常に、第2のマスターリンク405bに対して平行を維持し、第3のスレーブリンク505cは常に、第3のマスターリンク405cに対して平行を維持し、そして並進器具インターフェイス503は常に、誘導マスターリンク404に対して平行を維持する。従って、マスターユニット401の複数のマスタージョイントに加えられるマクロな各並進運動は、機械式伝動装置300及び複数のスレーブリンクを介して、スレーブユニット501の複数のスレーブジョイントの対応するそれぞれのジョイントによって再現される。
図35A及び図35Bでは、並進器具インターフェイス503は、スレーブユニット501の遠位端部504に結合されている。ハンドル403の並進運動は、機械式伝動装置300を介してプーリP9に伝達される。より具体的には、ハンドル403の並進運動の開始により、プーリP9が、第1のスレーブリンク505a、第2のスレーブリンク505b、第3のスレーブリンク505c、及び並進器具インターフェイス503を介して運動をエンドエフェクタ512に伝達し、これにより、スレーブユニット501が並進運動を再現する。第1のスレーブリンク505a、第2のスレーブリンク505b、第3のスレーブリンク505c、及び並進器具インターフェイス503は、例えば、1つ又は複数のプーリ507を介して経路指定された1つ又は複数のタイミングベルト506を含む伝動システムを介してプーリP9に結合されている。従って、P9の4つのプーリのそれぞれは、第1のスレーブリンク505a、第2のスレーブリンク505b、第3のスレーブリンク505c、及び並進器具インターフェイス503に動作可能に結合され、これらの動きを制御する。別法では、スレーブユニット501のプーリP9と複数のスレーブリンクとスレーブジョイントを結合する伝動システムは、ケーブルとプーリのシステム、及び/又は剛性伝達リンクを含み得る。
マスターユニット401の機械的制限部408は、ハイブリッド遠隔マニピュレータが操作されているときに、第1のスレーブリンク505a、第2のスレーブリンク505b、第3のスレーブリンク505c、及び並進器具インターフェイス503が常に、仮想静止点509を中心に回転することを保証する。例えば、スレーブユニット501に結合された並進器具インターフェイス503のエンドエフェクタ512は常に、遠隔操作の近傍のマスターリンク404の長手方向軸θ1に対応する長手方向軸θ4に沿って並進する。加えて、機械的制限部408は、互いに垂直な第5の仮想軸θ5及び第6の仮想軸θ6を中心とするエンドエフェクタ512の回転を可能にする。スレーブユニット501に結合された並進器具インターフェイス503の長手方向軸θ4、第5の仮想軸θ5、及び第6の仮想軸θ6は常に、遠隔操作の近傍の仮想静止単一点509で互いに交差する。低侵襲外科処置の間、仮想静止点509は外科切開点と整合し、患者の外傷が減少し、手術の美容上の結果が向上する。
内側/外側方向へのハンドル403の動きにより、スレーブユニット501に結合されたエンドエフェクタ512が、機械式伝動装置300及びスレーブユニット501のプーリP9と複数のスレーブリンクとスレーブジョイントを連結する伝動システムを介して、長手方向軸θ4を中心とする内側/外側への動きを再現する。ハンドル403の上方/下方への動きにより、スレーブユニット501に結合されたエンドエフェクタ512が、機械式伝動装置300及びスレーブユニット501のプーリP9と複数のスレーブリンクとスレーブジョイントを連結する伝動システムを介して、長手方向軸θ5を中心とする上方/下方への動きを再現する。ハンドル403の左/右への動きにより、スレーブユニット501に結合されたエンドエフェクタ512が、機械式伝動装置300及びスレーブユニット501のプーリP9と複数のスレーブリンクとスレーブジョイントを連結する伝動システムを介して、長手方向軸θ6を中心とする左/右への動きを再現する。
加えて、マスターユニット401のハンドル403で加えられる動きは、センサ、モータ、及び制御システムを介して電気機械的に並進器具インターフェイス503のエンドエフェクタの関節自由度、例えばピッチとヨー、作動自由度、例えば開/閉、及び回転自由度、例えば回内回外運動をもたらす。並進器具インターフェイス503は、その全内容が引用により本明細書中に組み込まれている、本出願の譲受人に譲渡されたChassotの米国特許出願公開第2018/0353252号に記載されているように構成することができる。例えば、並進器具インターフェイス503は、スレーブハブ510及び手術器具511を備える。スレーブハブ510は、スレーブユニット501の遠位端部504に固定することができる。手術器具511は、そのシャフトの遠位端部に配設されたエンドエフェクタ512を備え、かつスレーブハブ510に取り外し可能に結合することができる。無菌インターフェイスを、スレーブハブ510と手術器具511との間に配置することができる。加えて、並進器具インターフェイス503は、スレーブハブ510内に配置された1つ又は複数のモータからエンドエフェクタ512の構成要素まで延びた並進伝動システムを備える。例えば、エンドエフェクタ512は、並進器具インターフェイス503の並進伝動システムに結合された複数のエンドエフェクタジョイントによって相互連結された複数のエンドエフェクタリンクを含み、このため、1つ又は複数のモータによる並進伝動システムの作動により、エンドエフェクタ512が、複数のエンドエフェクタのリンク及びジョイントを介して動く。
スレーブハブ510の構成要素及び動作に関するさらなる詳細は、図36A及び図36Bを参照して説明する。スレーブユニット501に固定された並進器具インターフェイス503のスレーブハブ510は、回路基板602を介して制御システムに、例えば電気配線によって動作可能に結合された1つ又は複数のモータ、例えば、第1のモータ601a、第2のモータ601b、第3のモータ601c、及び第4のモータ601dを備える。モータ601a~601dは、ハンドル403に結合された1つ又は複数のセンサ410によって測定された動きを示す信号を受け取り、ハンドル403を作動させる。これらの信号は、制御システムによって処理され、次に、並進器具インターフェイス503を作動させるモータに信号を提供し、これにより、ハンドル403でのこれらの入力に対応するミクロな動きを再現する。第1のモータ601a、第2のモータ601b、及び第3のモータ601cは、エンドエフェクタ512を開/閉自由度、ピッチ自由度、及びヨー自由度で作動させるために並進器具インターフェイス503の並進伝動システム603に直接結合されている。並進伝動システム603は、複数の伝動要素、例えばケーブル及び/又は親ねじを備え、該複数の伝動要素のそれぞれは、エンドエフェクタを開/閉自由度、ピッチ自由度、及びヨー自由度で動かすために、一方の端部で第1のモータ601a、第2のモータ601b、及び第3のモータ601cに結合され、反対側の端部で第1、第2、及び第3のエンドエフェクタのリンクに結合されている。並進伝動システム603は、複数の親ねじ及び/又はケーブルの閉ループを備えることができる。第4のモータ601dは、回内回外運動タイミングベルト513を介してスレーブ器具503を回転させる。当業者には理解されるように、スレーブハブ510は、モータ601a~601dの任意の組み合わせ、例えば、非関節式器具が使用される場合、エンドエフェクタ512を開/閉自由度で作動させるための1つ又は複数のモータ、及びエンドエフェクタ512を回内回外運動自由度で回転させるためのモータのみを備えることができる。
回路基板602はまた、並進器具インターフェイス503の望ましくない動きを検出し、そのような望ましくない動きに抵抗するために第1のモータ601a、第2のモータ601b、第3のモータ601c、及び第4のモータ601dと電気的に通信するように設計された1つ又は複数のセンサを備えることができる。
本発明の一態様によると、制御システムは、並進器具インターフェイス503のエンドエフェクタ512の運動学を、図36Cに示されている識別子要素516、例えば、該器具に組み込まれたRFIDトークンを読み出すことによって識別することができ、該RFIDトークンは、該器具の運動学的構成に関する情報を含む。特に、制御システムは、識別子要素516から読み取られた情報に基づいて、エンドエフェクタ要素を作動させるために異なって動作する(例えば、同時に時計回り、又は一方を時計回り、他方を反時計回りに回転させる)ように並進器具インターフェイス503とインターフェイスする1つ又は複数のモータの動作を構成することができる。例えば、図36Dには、平行-直列器具運動学を有する鉗子型エンドエフェクタが示されている。この構成では、第1のモータ601aがエンドエフェクタ512'の第1のリンクを外側/内側に動かすように、第1のモータ601aを、並進伝動システムの伝動要素514aを介してエンドエフェクタ512'の第1のリンク、例えば第1のブレードに動作可能に結合することがでる。第2のモータ601bがエンドエフェクタ512'の第2のリンクを外側/内側に動かすように、第2のモータ601bを、並進伝動システムの伝動要素514bを介してエンドエフェクタ512'の第2のリンク、例えば第2のブレードに動作可能に結合することができる。従って、制御システムは、第1のモータ601aに命令してエンドエフェクタ512'の第1のリンクを伝動要素514aを介して外側に動かし、同時に第2のモータ601bに命令してエンドエフェクタ512'の第2のリンクを伝動要素514bを介して外側に動かすことができ、これにより、ハンドル403のトリガ412の作動に基づいてエンドエフェクタ512'が開く。逆に、制御システムは、第1のモータ601aに命令してエンドエフェクタ512'の第1のリンクを伝動要素514aを介して内側に動かし、同時に第2のモータ601bに命令してエンドエフェクタ512'の第2のリンクを伝動要素514bを介して内側に動かすことができ、これにより、ハンドル403のトリガ412の作動に基づいてエンドエフェクタ512'が閉じる。従って、第1のモータ601a及び第2のモータ601bにより、エンドエフェクタ512'を開/閉自由度で動かすことができる。
制御システムは、第1のモータ601aに命令してエンドエフェクタ512'の第1のリンクを伝動要素514aを介して外側に動かし、同時に第2のモータ601bに命令してエンドエフェクタ512'の第2のリンクを伝動要素514bを介して内側に動かし、これにより、エンドエフェクタ512'を、ハンドル軸θ9を中心とするハンドル403の回転に基づいて上方にピッチさせることができる。逆に、制御システムは、第1のモータ601aに命令してエンドエフェクタ512'の第1のリンクを伝動要素514aを介して内側に動かし、同時に第2のモータ601bに命令してエンドエフェクタ512'の第2のリンクを伝動要素514bを介して外側に動かし、これにより、エンドエフェクタ512'を、ハンドル軸θ9を中心とするハンドル403の回転に基づいて下方にピッチさせることができる。従って、第1のモータ601a及び第2のモータ601bにより、エンドエフェクタ512'をピッチ自由度で動かすことができる。
第3のモータ601cが、ハンドル軸θ8を中心とするハンドル403の回転に基づいてエンドエフェクタ512'をヨー自由度で動かすように、第3のモータ601cを、並進伝動システムの伝動要素514cを介してエンドエフェクタ512'の第3のリンクに動作可能に結合することができる。第4のモータ601dが、ハンドル403のボール413の回転に基づいて第1のモータ601a、第2のモータ601b、第3のモータ601c、及び手術器具511、従ってエンドエフェクタ512'を回内回外運動の自由度で回転させるように、第4のモータ601dを、回転可能な回内回外運動タイミングベルト513を介して第1のモータ601a、第2のモータ601b、第3のモータ601c、及び手術器具511に動作可能に結合することができる。
ここで図36Eを参照すると、直列-直列器具運動学を有するエンドエフェクタが示されている。例えば、第1のモータ601aが、ハンドル403のトリガ412の作動に基づいてエンドエフェクタ512''を開/閉自由度で動かすように、第1のモータ601aを、並進伝動システムの伝動要素515aを介して該エンドエフェクタ512''の第1のリンクに動作可能に結合することができる。第2のモータ601bが、ハンドル軸θ9を中心とするハンドル403の回転に基づいてエンドエフェクタ512''をピッチ自由度で動かすように、該第2のモータ601bを、並進伝動システムの伝動要素515bを介して該エンドエフェクタ512''の第2のリンクに動作可能に結合することができる。第3のモータ601cが、ハンドル軸θ8を中心とするハンドル403の回転に基づいてエンドエフェクタ512''をヨー自由度で動かすように、第3のモータ601cを、並進伝動システムの伝動要素515cを介して該エンドエフェクタ512''の第3のリンクに動作可能に結合することができる。第4のモータ601dが、第1のモータ601a、第2のモータ601b、第3のモータ601c、及び手術器具511、従ってエンドエフェクタ512''を、ハンドル403のボール413の回転に基づいて回内回外運動自由度で回転させるように、第4のモータ601dを、回転可能な回内回外運動タイミングベルト513を介して該第1のモータ601a、該第2のモータ601b、該第3のモータ601c、及び該手術器具511に動作可能に結合することができる。
本発明の一態様によると、制御システムは、図37に列挙された方法工程700で概説されるように、器具に組み込まれた識別子要素516、例えば、RFIDトークンに格納された情報を読み取って、並進器具インターフェイス503のエンドエフェクタ512の運動学を識別することができる。工程701で、使用者が、ハイブリッド遠隔マニピュレータで使用するべきエンドエフェクタを有する手術器具を選択する。例えば、手術器具は、図36Dに示されている並列-直列器具運動学又は図36Eに示されている直列-直列器具運動学を有するエンドエフェクタを有し得る。次いで、手術器具をハイブリッド遠隔マニュピレータのスレーブユニットに結合することができる。工程702で、制御システムは、選択されたエンドエフェクタの運動学的構成についての情報を検出する。例えば、制御システムは、選択されたエンドエフェクタの運動学的構成、例えば、該選択されたエンドエフェクタが並列-直列器具運動学を有するか又は直列-直列器具運動学を有するかに関する情報を含む、手術器具511に組み込まれたRFIDトークンを読み取ることができる。RFIDトークンは、例えば、スレーブハブに配置され、制御システムに動作可能に結合されたリーダによってスキャンされ得る識別情報を含む誘導的に読み取られるミクロなチップであり得る。別法では、識別子要素516の機能は、例えば、スレーブハブによって読み取られる、手術器具511に配置されるバーコード、QRコード、Datamatrix、Aztecコード、又はSemacodeなどの光学タグによって提供することができる。手術器具がハイブリッド遠隔マニピュレータのスレーブユニットに未結合の場合、工程702の後に、手術器具を、ハイブリッド遠隔マニピュレータのスレーブユニットに結合することができる。
工程703で、制御システムが、工程702で検出された情報に基づいて選択されたエンドエフェクタの運動学を識別して、どのタイプのエンドエフェクタがハイブリッド遠隔マニピュレータのスレーブユニットに結合されているかを決定する。工程704で、制御システムが、ハイブリッド遠隔マニピュレータが適切に作動され得るように、選択されたエンドエフェクタの識別情報に基づいてそのパラメータを調整する。例えば、エンドエフェクタが並列-直列器具運動学を有する場合、制御システムは、上述のように、第1のモータ601a及び第2のモータ601bに命令して、第1及び第2のエンドエフェクのタリンクを同時に作動させて、エンドエフェクタを開/閉自由度及びピッチ自由度で動かすパラメータを有する。エンドエフェクタが直列-直列器具運動学を有する場合、制御システムは、上述のように、第1のモータ601aに命令してエンドエフェクタを開/閉自由度で作動させ、そして第2のモータ601bに命令して該エンドエフェクタをピッチ自由度で作動させるパラメータを有する。
図38を参照すると、すべての自由度が電気機械的に制御される遠隔作動手術ロボットシステムの代替の例示的な実施態様が示されている。例えば、内側/外側、上方/下方、左/右、ヨー、ピッチ、開/閉、及び回内回外運動の7つの自由度すべてが、センサのシステム、モータ、及び制御システムを介して電気機械的に制御されるが、システム800は、マスターユニットに上記の機械的制限要素を維持し、これにより、スレーブユニットで単一仮想静止点、例えば遠隔運動中心を形成する。従って、システム800は、スレーブユニット1001を切開部に整合させるために座標変換及び複雑な制御システムを必要としない。機械的制限部及び対応する遠隔運動中心が、この設計が一般的なロボットアームを使用する場合よりもはるかに単純で安全であることを保障する。
ここで図39を参照すると、マスターユニット901は、図34A及び図34Bのマスターユニット401と同様に構成されているが、プーリP1に結合された機械式伝動装置の複数のケーブル及びプーリの代わりに、マスターユニット901が、該プーリP1の4つのプーリのそれぞれに作動可能に結合された1つ又は複数のセンサ、例えば、センサ902a、センサ902b、センサ902c、及びセンサ902dを備える点が異なる。センサ902a~902dは、複数のマスターリンク、ジョイント、及びケーブルを介してマスターユニット901のハンドル903に加えられる動きに応答して、プーリP1の角度及び位置を測定することによって回転運動を測定する。4つのセンサのそれぞれは、プーリP1の4つのプーリのそれぞれを介してマスターユニット901のジョイントの動きを測定し、これにより、4つの自由度におけるマスターユニット901の動きを測定する。しかしながら、機械的制限部は、1自由度の動きをなくすことによってマスターユニット901の動きを制限し、これにより、スレーブユニット1001の動きが、3自由度の動き、例えば、内側/外側、上方/下方、及び左/右となる。
ハンドル903は、図34A及び図34Bのハンドル403と同様に構成されている。例えば、ハンドル903は、該ハンドル903で加えられるミクロな動きを1つ又は複数のセンサ410、及びスレーブユニット1001のエンドエフェクタに結合された1つ又は複数のモータを介して該スレーブユニット1001のエンドエフェクタに伝達して、該エンドエフェクタを開/閉、ピッチ、ヨー、及び回内回外運動の自由度で動かすことができるように、該1つ又は複数のセンサ410及び回路基板411を備える。
マクロな動きの伝達に関して、センサ902a、センサ902b、センサ902c、及びセンサ902dは、それぞれのセンサによって測定されたプーリP1の回転を示す信号を生成し、この信号を、制御システムを介してスレーブユニット1001に結合された1つ又は複数のモータに送信し、これにより、マスターユニット901に結合されたハンドル903で加えられるマクロな並進運動を再現する。例えば、電気ケーブルを、マスターユニット901から制御システム、例えば、制御電子器具を含むユニットまで延ばすことができ、追加の電気ケーブルを、該制御システムから、スレーブユニット1001に結合された1つ又は複数のモータまで延ばすことができる。
図40A及び図40Bを参照すると、スレーブユニット1001は、図35A及び図35Bのスレーブユニット501と同様に構成されている。例えば、スレーブユニット1001は、ハンドル903で加えられるミクロな動きを、1つ又は複数のセンサ410、並びに第1のモータ601a、第2のモータ601b、第3のモータ601c、及び第4のモータ601dを介してスレーブユニット1001のエンドエフェクタに伝達して、該エンドエフェクタを開/閉、ピッチ、ヨーイ、及び回内回外運動の自由度で動かすことができるように、該スレーブユニット1001のエンドエフェクタに動作可能に結合された該第1のモータ601a、該第2のモータ601b、該第3のモータ601c、及び該第4のモータ601dを備える。スレーブユニット1001は、プーリP8に結合された機械式伝動装置の複数のケーブル及びプーリの代わりに、1つ又は複数のモータ、例えば、プーリP8の4つのプーリのそれぞれに動作可能に結合された第1のモータ1002a、第2のモータ1002b、第3のモータ1002c、及び第4のモータ1002dを備えるという点でスレーブユニット501とは異なる。1つ又は複数のモータは、マスターユニット901のハンドル903に加えられる動きに応答してセンサ902a、センサ902b、センサ902c、及びセンサ902dによって測定されたプーリP1の回転を示す信号を受信するための回路基板に結合され、これにより、プーリP8が作動して、複数のスレーブリンク、ジョイント、タイミングベルト、及び/又はケーブルとプーリのシステムを介してスレーブユニット1001において該マスターユニット901に結合された該ハンドル903に加えられるマクロな並進運動を再現する。例えば、プーリP8並びに複数のスレーブジョイント、タイミングベルト、及び/又はケーブルとプーリのシステムを介して、第1のモータ1002aが、第1のスレーブリンク505aに動作可能に結合されて、その動きを制御し、第2のモータ1002bが、第2のスレーブリンク505bに動作可能に結合されて、その動きを制御し、第3のモータ1002cが、第3のスレーブリンク505cに動作可能に結合されて、その動きを制御し、第4のモータ1002dが、並進器具インターフェイス503に動作可能に結合されて、その動きを制御する。
マスターユニット901の機械的制限部が、マスターユニット901の動きを3自由度、例えば、内側/外側、上方/下方、及び左/右の動きに制限するため、第1のモータ1002a、第2のモータ1002b、第3のモータ1002c、及び第4のモータ1002dそれぞれによるスレーブユニット1001の第1のスレーブリンク505a、第2のスレーブリンク505b、第3のスレーブリンク505c、及び並進器具インターフェイス503の動きが、3自由度、例えば、仮想静止点1005、例えば遠隔運動中心を中心とする内側/外側、上方/下方、及び左/右への動きに制限される。
スレーブユニット1001は、仮想静止点1005が外科切開点と一致し、患者の外傷が減少し、手術の美容上の結果が向上され得るように、マスターユニット1001における機械的制限部によって形成される仮想静止点1005、例えば遠隔運動中心を指す一時的切開ポインタ1004を備えることができる。一時的切開ポインタ1004は、該一時的切開ポインタ1004が仮想静止点1005を指すようにスレーブユニット1001のジョイントに取り外し可能に結合され、手術ロボットシステム800の動作の前に取り外すことができる。
ここで、図40C及び図40Dを参照すると、図1~図30に示され、本明細書で説明されるシステムと共に利用される切開ポインタの代替の例示的な実施態様が示されている。切開ポインタ1004と同様に、切開ポインタ1004'は、該一時的切開ポインタ1004が仮想運動中心、例えば仮想静止点1005を指し、それによって手術器具の遠隔運動中心を識別するように、スレーブユニット1001のジョイント(例えば、上記のリンク63の遠位端部)に取り外し可能に結合することができる。例えば、切開点1004'は、限定されるものではないが、磁石、摩擦力、ベルクロ表面、一致する形状、フックなどを含む構造を使用してスレーブコンソールに取り外し可能に結合することができる。切開ポインタ1004'は、フェライトス系テンレス鋼から形成することができ、例示的に、スレーブコンソールの対応する表面(例えば、スレーブユニット1001のジョイントのレセプタクル)と磁気的に結合するための磁気ヘッド1006を切開ポインタの近位端部に備える。
図40Cに示されているように、磁気ヘッド1006は、その中心が切開ポインタ1004'の遠位先端部と整合された凸状球面を有し得る。従って、スレーブユニット1001のジョイントのレセプタクルは、切開ポインタ1004'の凸状球面と係合するための対応する凹状球面を有し得る。当業者には理解されるように、切開ポインタ1004'の磁気ヘッド1006は、凹状球面を有し得、スレーブユニット1001のジョイントのレセプタクルは、凸状球面を有し得る。切開ポインタ1004'は、スレーブユニット1001に取り付けられる滅菌ドレープの有無にかかわらず機能し得る。図40Eは、切開ポインタ1004'の遠位先端部が患者の体壁、例えば、そこを中心に器具が回転する仮想静止点1005と整合するようにトロカール1007内に挿入された該切開ポインタ1004'を示す。切開ポインタ1004'は、手術器具が挿入された後、手術ロボットシステムの操作の前にスレーブユニット1001のジョイントのレセプタクルから取り外すことができる。
本発明の一態様によると、切開ポインタ1004'は、スレーブユニット1001のジョイント、例えばリンク63で取り外し可能に結合することができ、臨床医は、該切開ポインタ1004'の遠位先端部が患者の体の所望の位置、例えば患者の体の切開部位と整合して、そこを指すまで、該スレーブユニット1001のジョイント、従って、隣接する複数のスレーブリンク及びスレーブジョイントを移動させることができる。スレーブユニット1001のジョイント及び切開ポインタ1004'が所望の位置を指したら、臨床医は、スレーブユニット1001のジョイントの整合に基づいて、制御システムを介して所望の位置を仮想静止点1005として設定することができる。従って、手術ロボットシステムの操作中のスレーブコンソールによる手術器具のすべての動きは常に、図43を参照して以下にさらに詳細に説明するように、たとえマスターコンソールでの機械的制限がなくても、仮想静止点1005を中心に回転する。このようにして、システムの制御装置は、トロカールを介した安全な外科手術のために、手術器具が仮想静止点1005から離れる並進運動が絶対に引き起こさないようにする。整合されたリンク(例えば、リンク63)は、好ましくは、手術器具の動きが仮想静止点を中心に制限されるように、外科手術中は常に手術部位(例えば、トロカールを通る開口部)を指す。
従って、システムの制御装置は、手術器具の動きが仮想静止点1005を中心に制限されて、外科手術中にリンク63(及びその長手方向軸ω5)と切開部位との整合が維持されるように、該リンク63と患者の体の手術部位の所望の位置との整合に基づいて仮想静止点1005を設定する命令を実行することができる。
ここで図41A及び図41Bを参照すると、手術ロボットシステムの制御システムの代替の実施態様が示されている。システム100と統合することができる図41Aの制御システム1100は、制御システム1100のプロセッサ1102によって実行されるとハイブリッド遠隔マニピュレータの操作を可能にする命令が格納された非一時的なコンピュータ可読媒体、例えばメモリ1101を含む。加えて、制御システム1100は、無線で又は電気ケーブルを使用してスレーブユニット501の識別子要素リーダ517と通信することができ、従って、メモリ1101は、識別子要素516から読み取られたエンドエフェクタの運動学的構成の識別情報を格納することができ、このため、命令が、プロセッサ1102によって実行されると、開/閉及びピッチの自由度でエンドエフェクタを制御するためのモータを選択されたエンドエフェクタの種類に応じて動かす。制御システム1100は、無線で又は電気ケーブルを使用してマスターユニット401の回路基板に電気的に結合され、従って、ハンドル403で加えられたミクロな動きを示す信号を受信するための1つ又は複数のセンサ410に結合されている。加えて、制御システム1100は、無線で又は電気ケーブルを使用してスレーブユニット501の回路基板に電気的に結合され、従って、エンドエフェクタのミクロな動きを、例えば、開/閉、ピッチ、ヨー、及び回内回外運動の自由度で行わせるための第1のモータ601a、第2のモータ601b、第3のモータ601c、及び第4のモータ601dに結合されている。
システム800と統合することができる図41Bの制御システム1110は、該制御システム1110のプロセッサ1112によって実行されるとハイブリッド遠隔マニピュレータの操作を可能にする命令が格納された非一時的なコンピュータ可読媒体、例えばメモリ1111を含む。加えて、制御システム1110は、無線で又は電気ケーブルを使用してスレーブユニット1001の識別子要素リーダ517と通信することができ、メモリ1111が、識別子要素516から読み取られたエンドエフェクタの運動学的構成の識別情報を格納することができ、このため、命令が、プロセッサ1112によって実行されると、開/閉及びピッチの自由度でエンドエフェクタを制御するためのモータを選択されたエンドエフェクタの種類に応じて動かす。制御システム1110は、無線で又は電気ケーブルを使用してマスターユニット901の回路基板に電気的に結合され、従って、ハンドル903で加えられたミクロな動きを示す信号を受信するための1つ又は複数のセンサ410、並びにハンドル903で加えられたマクロな動きを示す信号を受信するためのセンサ902a、センサ902b、センサ902c、及びセンサ902dに結合されている。加えて、制御システム1110は、無線で又は電気ケーブルを使用してスレーブユニット1001の回路基板に電気的に結合され、従って、エンドエフェクタのミクロな動きを、例えば、開/閉、ピッチ、ヨー、及び回内回外運動の自由度で作動させるための第1のモータ601a、第2のモータ601b、第3のモータ601c、及び第4のモータ601dに結合され、かつ該エンドエフェクタのマクロな動きを、例えば、内側/外側、上方/下方、及び左/右の自由度で作動させるための第1のモータ1002a、第2のモータ1002b、第3のモータ1002c、及び第4のモータ1002dに結合されている。
ここで図42A及び図42Bを参照すると、本発明の原理の代替の応用を、代替の遠隔マニピュレータの設計に適用することができる。例えば、図42Aに示されているBeiraの米国特許第9,696,700号に記載されているように構成された遠隔マニピュレータは、エンドエフェクタのミクロな動き、例えば、開/閉、ピッチ、ヨー、回内回外運動の自由度を電気機械的に制御するためのハンドル及び並進器具インターフェイスを備えるように変更することができる一方、該エンドエフェクタのマクロな並進運動、例えば、上方/下方、内側/外側、及び左/右の自由度は、機械的伝動システムによって機械的に制御される。遠隔作動手術ロボットシステム1200は、スレーブユニット1202に機械的に直接結合されたマスターユニット1201、該マスターユニット1201に結合されたハンドル1203、スレーブユニット1202に結合された並進器具インターフェイス1204、及び機械的制限部1205を含む。ハンドル1203は、図34A及び図34Bのハンドル403と同様に構成することができ、並進器具インターフェイス1204もまた、図35A及び図35Bの並進器具インターフェイス503と同様に構成することができる。例えば、ハンドル1203は、そこで加えられたミクロな動きを、1つ又は複数のセンサ、及びスレーブユニット1202のエンドエフェクタに結合された1つ又は複数のモータを介して並進器具インターフェイス1204のエンドエフェクタに伝達して、該エンドエフェクタを開/閉、ピッチ、ヨー、及び回内回外運動の自由度で動かすことができるように、1つ又は複数のセンサを備える。従って、ハンドル1201で加えられるマクロな併進運動は、機械的制限部1203により、3自由度、例えば、内側/外側、上方/下方、及び左/右の自由度で並進器具インターフェイス1204によって再現される。別法では、遠隔作動手術ロボットシステム1200は、電気機械的に作動される7自由度を有し得る。
図42Bを参照すると、代替の遠隔マニピュレータが示されている。例えば、Beiraの米国特許公開第2017/0245954号に記載されているように構成された遠隔マニピュレータは、エンドエフェクタのミクロな動き、例えば、開/閉、ピッチ、ヨー、回内回外運動の自由度を電気機械的に制御するためのハンドル及び並進器具インターフェイスを備えるように変更することができる一方、該エンドエフェクタのマクロな並進運動、例えば、上方/下方、内側/外側、及び左/右の自由度は、機械的伝動システムによって機械的に制御される。遠隔作動手術ロボットシステム1210は、スレーブユニット1212に機械的に結合されたマスターユニット1211、該マスターユニット1211に結合されたハンドル1213、該スレーブユニット1212に結合された並進器具インターフェイス1214、及び機械的制限部1215を含む。ハンドル1213は、図34A及び図34Bのハンドル403と同様に構成され、並進器具インターフェイス1214は、図35A及び図35Bの並進器具インターフェイス503と同様に構成されている。例えば、ハンドル1213は、そこで加えられるミクロな動きを、1つ又は複数のセンサ、及びスレーブユニット1212のエンドエフェクタに結合された1つ又は複数のモータを介して並進器具インターフェイス1214のエンドエフェクタに伝達して、該エンドエフェクタを開/閉、ピッチ、ヨー、及び回内回外運動の自由度で動かすことができるように、1つ又は複数のセンサを備える。従って、ハンドル1213で加えられるマクロな並進運動は、機械的制限部1213により、3自由度、例えば、内側/外側、上方/下方、及び左/右の自由度で並進器具インターフェイス1214のエンドエフェクタによって再現される。別法では、遠隔作動手術ロボットシステム1210は、電気機械的に作動される7自由度を有し得る。
ここで図43を参照すると、本発明の原理に従って構成された別の例示的なマスターコンソールが示されている。マスターコンソール20'は、図2Aのマスターコンソール20と同様に構成されているが、該マスターコンソール20'のマスター遠隔マニピュレータが、上記のように複数のマスターリンクの少なくとも1つのマスターリンクの動きを制限するように設計された機械的制限部を備えていない点が異なる。例えば、マスターコンソール20'のマスター遠隔マニピュレーターは、該マスター遠隔マニピュレーターの垂直高さを調整するための伸縮ベース1008及び1009を有するベース部分と、該伸縮ベース1008及び1009上に固定され、ジョイント25を介してリンク26に回転可能に結合されているベースキャップ1010とを備える。
図2Aのマスターコンソール20とは異なり、マスターコンソール20'のマスター遠隔マニピュレータは、ジョイント1013を介してリンク1012に結合されたリンク1014と、リンク1015を介してリンク1014に結合され、ジョイント1017を介してハンドル部分1018にさらに結合されたリンク1016とを備える。図43に示されているように、リンク1014も1016もリンク1012を通過していない。代わりに、仮想静止点、例えば遠隔運動中心が、図40C~図40Eを参照して上記説明されたように制御システムによって設定されると、外科医によってマスター遠隔マニピュレータに加えられる動きが、仮想静止点に関して対応する方法で、スレーブコンソールのスレーブリンク及びスレーブジョイントによってもたらされる。
有利なことに、マスターコンソール20は、外科医が、ハンドル部分1018のハンドルグリップに(他の手術ロボットのように下から上又は水平にではなく)上から下に近づくことを可能にする。加えて、マスターコンソール20は、マスターアームのベースがマスターコンソール20の中心支柱の領域の前ではなく外科医の体の側方に配置されるように、該外科医の腕と同じ向きを共有する。マスターコンソール20の滅菌マスターアームがこの構成では地面から離れて配置されているため、該マスターコンソール20の無菌性が手術システムの使用中によりよく維持される。さらに、この構成は、外科医コンソールの深さを減らし、それによって貴重な手術室の床面積を確保する。
さらに、図43に示されているように、マスターコンソール20'は、マスターアームブレーキ解放ボタン1019及び高さ調整ボタン1020を備えることができる。例えば、マスターアームブレーキ解放ボタン1019の作動は、マスター遠隔マニピュレータが外科医の使用に望ましい構成になるまで、使用者が複数のマスターリンク及びマスタージョイントを再調整することを可能にし、高さ調整ボタン1020の作動は、使用者が、伸縮ベース1008及び1009を介してマスター遠隔マニピュレータの垂直高さ、例えば上又は下へ調整することを可能にする。
本発明の様々な例示的な実施態様を上で説明したが、本発明から逸脱することなく、様々な変更及び修正を本発明の範囲で行うことができることは当業者には明らかであろう。添付の特許請求の範囲は、本発明の真の範囲内にあるそのようなすべての変更及び修正を含むことを意図している。