JP2022504294A - 固定化された生物学的実体 - Google Patents

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Abstract

特に、抗凝固表面であって、その表面がそれに複数のヘパリンの断片を共有結合しており、ここで、該断片が5~18糖単位からなり、かつ該複数の断片の少なくとも一部が多糖配列Aを含み、この表面がATによるFIIa及びFXaの阻害を触媒する、抗凝固表面が提供される。
【選択図】なし

Description

(発明の分野)
本発明は、それに複数のヘパリンの断片を共有結合している表面、そのような表面を含む固体物体、及びそのような表面を調製するプロセスに関する。特に、本発明は、それに複数のヘパリンの断片を共有結合している表面に関するものであり、ここで、該表面は、ATによるFIIa及びFXaの阻害を触媒する。
(発明の背景)
医療デバイスが体内に埋め込まれるか又は体液と接触するとき、いくつかの異なる反応が始まり、そのうちのいくつかは、炎症をもたらし、いくつかは、デバイス表面と接触した血液の凝固をもたらす。これらの深刻な有害作用に対抗するために、よく知られた抗凝固化合物であるヘパリンが、抗血栓作用をもたらすために、医療デバイスが体内に埋め込まれる前に、又はそれがその体液と接触するときに、昔から患者に全身投与されている。
医療デバイスを非血栓形成性にするための最もうまく行くプロセスの1つは、該デバイスの修飾された表面へのヘパリンの共有結合である。一般的な方法及びその改良は、欧州特許: EP-B-0086186号、EP-B-0086187号、EP-B-0495820号、及びUS 6,461,665号(引用により本明細書中に組み込まれる)に記載されている。
これらの特許には、第一に、例えば、末端アルデヒド基の形成をもたらす、亜硝酸分解を用いる、ヘパリン多糖鎖の選択的切断による表面修飾基材の調製が記載されている。第二に、一級アミノ基を担持する1以上の表面修飾層を医療デバイスの表面に導入すること、及びその後、多糖鎖上のアルデヒド基を該表面修飾層上のアミノ基と反応させ、その後、中間体シッフ塩基を還元して、安定な二級アミン結合を形成させること。
第IIa因子(トロンビンとしても知られる「FIIa」)及び第Xa因子(「FXa」)は、その全てが一緒に作用して、血液と接触した表面で血栓の形成をもたらす、いくつかの凝固因子のうちの2つである。アンチトロンビン(アンチトロンビンIII、「ATIII」、又は「AT」としても知られる)は、最も重大な内在性凝固阻害因子である。これは、FIIa、FXa、及び他の凝固因子の作用を中和し、したがって、血液凝固を制限又は限定する。アンチトロンビン(AT)によるFIIa及びFXaなどの活性化された凝固因子の阻害を触媒するヘパリンの能力は、活性配列(本明細書においては、「活性五糖配列」又は「五糖配列A」とも称される)と呼ばれる、図1に示された特定の五糖構造に依存する。ATは、ヘパリンの活性配列に結合し、凝固因子の阻害を加速するATの立体構造変化をもたらす。しかしながら、ヘパリンによって触媒される阻害メカニズムは、FIIaとFXaの間で異なる。ATによるFXaの阻害は、活性配列を含有する、五糖(5糖単位)以上のサイズのヘパリン断片によって触媒される。しかしながら、ATとFIIaが三重架橋複合体中の同じヘパリン鎖に結合するのに必要とされるので(Petitou, M.及びvan Boeckel C.A.A.の文献、Angew. Chem. Int. Ed. 2004, 43, 3118-3133)、FIIaの阻害のメカニズムは、検出可能な阻害を達成するために、最低18糖単位のサイズのヘパリン断片を必要とする(Lane D.A.らの文献、Biochem J(1984) 218, 725-732)。しかしながら、18糖単位の断片によって達成される阻害のレベルは、それでも非常に低い。FIIaの実質的な阻害を達成するために、次に、断片は、18よりも多い糖単位を含有しなければならない。したがって、従来技術では、活性配列を含有するが、18以下の糖単位を含むヘパリン断片は、FXaに対する阻害能力を有するが、FIIaに対する阻害能力が低いか又は存在しないということが教示されている。
WO 91/15252号には、ポリマーの骨格へのヘパリンに由来するオリゴ糖の組込みが開示されており、ここで、該ポリマーは、その後、表面に塗布することができる。この手法は、ヘパリン断片が表面に共有結合又は接合される、本発明の手法とは異なっている。
(発明の概要)
本発明者らは、驚くことに、溶液中でのATによるFIIaの阻害を触媒する能力を欠くヘパリンの断片が、表面に固定化されたときに、この同じ反応を触媒することができるということを発見した。固定化された断片は、それが相乗的に作用して、溶液中でかなり長い分子を必要とすることを達成することを可能にし得る様式で組織化される。
本発明の一態様によれば、その表面がそれに複数のヘパリンの断片を共有結合している抗凝固表面が提供され、ここで、該断片は、5~18糖単位からなり、該複数の断片の少なくとも一部は、多糖配列A:
Figure 2022504294000001
(式中、R=Ac又はSO3 -である)
を含み、
この表面は、ATによるFIIa及びFXaの阻害を触媒する(以後、「本発明による表面」又は「本発明の表面」)。
本発明の表面は、少なくともいくつかの実施態様において、以下の利点のうちの1つ又は複数を有し得る。
(i)FIIaの阻害;
(ii)FXaの阻害;
(iii)固定化されたときのヘパリン断片の抗凝固活性の増加;
(iv)生産しやすさの増大;
(v)固体物体をコーティングする好適性の増大;
(vi)埋め込みの好適性の増大;
(vii)安定性の増大;
(viii)ヘパリンの断片の利用;
(ix)非動物由来材料の利用;
(x)生体適合性、例えば、血液適合性の増大;
(xi)血液接触性能の増大
さらに、本発明の実施態様の少なくとも一部は、以下の利点のうちの1つ又は複数を有し得る。
(a)合成的に実現可能なサイズ、すなわち、18糖単位未満のヘパリン断片をFIIa阻害性及びFXa阻害性コーティングで利用することができる;
(b)FIIaとFxaの両方を阻害する抗凝固コーティングを非動物由来ヘパリン断片から得ることができる;
(c)FIIaに対する増強された阻害活性を有するコーティングを得ることができる;
(d)合成源由来の固定化されたヘパリン断片は、存在する多糖配列Aの量を制御し、かつ正確に定量することにより、より明確な作用メカニズム又はより予測可能な活性を有するコーティングを産生することができる;
(e)例えば、評価方法Jを用いて決定したとき、ヘパリン活性などの高い抗凝固実体活性を有するコーティングを得ることができる;
(f)その共有結合的結合のために、ヘパリン断片を浸出させず、それゆえ、長期間、活性状態を維持する抗凝固コーティングを得ることができる;
(g)例えば、評価方法Iを用いて決定したとき、一様な分布を有し、かつ比較的滑らかであるヘパリン断片のコーティングを得ることができる。
(図面の簡単な説明)
ヘパリンの活性配列(A) ヘパリンナトリウムからのオリゴ糖画分の調製の略図 表面に固定化されている、亜硝酸分解から得られたヘパリンの断片 合成的に製造された抗凝固薬のフォンダパリヌクスナトリウム/Arixtra(登録商標) 還元末端で合成的に組み込まれたリンカーを有する五糖の逆合成スキーム 固定化を可能にする官能基を含有する還元末端のC1位置にリンカーを有する合成五糖 単離されたオリゴ糖画分の分析的クロマトグラフィー コーティングされたPVCのトルイジンブルー染色 非還元末端で合成的に組み込まれたリンカーを有する五糖の逆合成スキーム
(本発明の詳細な説明)
(ヘパリン及びその断片)
ヘパリンは、グリコサミノグリカンファミリーの炭水化物のメンバーであり、様々に硫酸化された反復二糖単位からなる。ヘパリン及びその断片は、交互のヘキスロン酸及びD-グルコサミン単位から構成される。ヘキスロン酸単位は、D-グルクロン酸及びL-イズロン酸からなる。これらは、それぞれ、グルコサミン単位にβ-及びα-(1,4)結合している。L-イズロン酸残基の大部分は、2-位でO-硫酸化されている。D-グルコサミン単位は、N-硫酸化され、6-位でO-硫酸化され、かつヘキスロン酸残基にα-(1,4)-結合している。ある種のD-グルコサミン単位は、3-位でもO-硫酸化される。
ヘパリンの抗凝固活性は、主に、図1のAT結合配列に依存しており、これは、病院で利用されるヘパリンを構成するヘパリン鎖の約3分の1にしか存在しない。
ヘパリンの断片は、全長ヘパリン(ネイティブヘパリン)又はヘパリンの任意のバリアントに由来することができる。断片が由来し得るヘパリンの特に好適なバリアントとしては、ヘパリンのアルカリ金属又はアルカリ土類金属塩(例えば、ナトリウムヘパリン(例えば、HepsalもしくはPularin)、カリウムヘパリン(例えば、Clarin)、リチウムヘパリン、カルシウムヘパリン(例えば、Calciparine)、又はマグネシウムヘパリン(例えば、Cutheparine))、低分子量ヘパリン(例えば、アルデパリンナトリウム、チンザパリン、又はダルテパリン)、ヘパラン硫酸、ヘパリン類似物質、ヘパリンに基づく化合物、疎水性対イオンを有するヘパリン、アンチトロンビン媒介性のFXa阻害が可能な合成ヘパリン組成物、ヘパリン由来の少なくとも活性五糖配列を含む合成ヘパリン誘導体(例えば、Petitouらの文献、Biochimie, 2003, 85(1-2):83-9を参照)、例えば、穏やかな亜硝酸分解(引用により完全に本明細書中に組み込まれる、US4,613,665A号)又は過ヨウ素酸酸化(引用により完全に本明細書中に組み込まれる、US6,653,457B1号)によって修飾されたヘパリンが挙げられる。
いくつかの実施態様において、ヘパリンの断片は全て、活性五糖配列を含有する。他の実施態様において、ヘパリンの断片のごく一部だけが活性五糖配列を含有する。断片化法によって産生されるヘパリン断片の場合、比較的低い割合の活性五糖配列が存在し得る。好適には、ヘパリンの断片の少なくとも1%、より好適には、少なくとも5%、より好適には、少なくとも10%、より好適には、少なくとも15%、より好適には、少なくとも20%、より好適には、少なくとも30%が活性五糖配列を含有する。合成手段によって産生されるヘパリン断片の場合、より高い割合の活性五糖配列が存在し得る。好適には、ヘパリンの断片の少なくとも60%、より好適には、少なくとも70%、より好適には、少なくとも80%、より好適には、少なくとも90%、より好適には、少なくとも95%、より好適には、少なくとも99%が活性五糖配列を含有する。
そのような実施態様において、活性配列を含有する断片の濃度は、例えば、AT結合親和性カラムでの精製によって増加し得る。
いくつかの実施態様において、ヘパリンの断片は、構造が均一であり(すなわち、ヘパリンの断片は、実質的に同一、より好適には、同一であり)、全てが多糖配列Aを含む。他の実施態様において、ヘパリンの断片は、構造が不均一である(すなわち、ヘパリンの断片は、混合物中に含まれ、ここで、該混合物は、少なくとも2つの異なるヘパリンの断片を含む)。ヘパリンの断片の構造が不均一である場合、一実施態様において、ヘパリンの断片のごく一部だけが上記のような活性五糖配列を含有する。より好適な実施態様において、ヘパリンの断片は構造が不均一であり、全てが多糖配列Aを含有する。
ヘパリンの断片は、当技術分野で公知の技法を用いて産生することができる。好適には、該断片は、ネイティブヘパリンの分解(例えば、断片化)を含むプロセスによって産生されるネイティブヘパリンの断片である。下記の実施例に示されているように、ヘパリンの断片は、ネイティブヘパリンの部分的な亜硝酸切断と、任意にそれに続く、ゲルクロマトグラフィーによる断片化によって調製することができる。
或いは、ヘパリンの断片は、合成的に産生することができる。合成的産生は、化学的酵素的又は有機化学的方法、例えば、実施例に詳述されている方法によって達成することができる。
本発明によれば、該断片は、5~18糖単位からなる。好適には、該断片は、少なくとも6糖単位、より好適には、少なくとも7、より好適には、少なくとも8糖単位からなる。好適には、該断片は、17糖単位以下、より好適には、16糖単位以下、より好適には、15糖単位以下、より好適には、14糖単位以下、より好適には、13糖単位以下、より好適には、12糖単位以下、より好適には、11糖単位以下、より好適には、10糖単位以下、より好適には、9糖単位以下、より好適には、8糖単位以下からなる。一実施態様において、該断片は、5糖単位からなる。一実施態様において、該断片は、5~18、例えば、5~17、例えば、5~16、例えば、5~15、例えば、5~10、例えば、5~8糖単位からなる。別の実施態様において、該断片は、6~18、例えば、6~17、例えば、6~16、例えば、6~15、例えば、6~10、例えば、6~8糖単位からなる。
ヘパリンの断片は、亜硝酸切断によって産生することができる。実際、八糖は、亜硝酸切断によって産生される場合、機能的な活性配列を含有することができる最も短い断片であるが(Thunberg L.らの文献、FEBS Letters 117(1980), 203-206)、それは、遊離の末端アルデヒド基を形成させるためのジアゾ化による分解が4つのD-グルコサミン単位のうちの1つを消費するからである。残りのD-グルコサミンは、それらが正しい硫酸化パターンを有する場合、活性AT結合配列の一部となる。図1を参照されたい。実際、八糖断片のごく一部だけが活性配列を含有するが、それは、それが作られるヘパリンの大部分が活性配列を欠いているからである。
(ヘパリン断片の固定化)
ヘパリンの断片は、当技術分野で公知の技法を用いて、表面に共有結合させることができる。下記の実施例に示されているように、ヘパリンの断片は、例えば、還元アミノ化を介して、ポリアミンの最外層を有する表面に結合させることができる(例えば、EP0086186A1号及びEP0495820B1号におけるLarmらの文献を参照)。ヘパリンの断片は、表面に共有結合させることができ、それゆえ、ヘパリンの断片は、表面からそれほど溶出することも浸出することもない。
好適には、ヘパリンの断片は、単一点結合、より好適には、末端点結合している。より好適には、ヘパリンの断片は、その還元末端を介して表面に共有結合しており、より好適には、ヘパリンの断片は、その還元末端の位置C1を介して表面に共有結合している。図6を参照されたい。末端点結合、特に、還元末端点結合の利点は、ヘパリンの断片中の別の場所での結合と比較したときのアンチトロンビン相互作用部位の利用可能性が強化されるために、ヘパリンの断片の生物活性が最大化されるということである。
代表的な末端点結合プロセスは、一級アミノ基を含有する様々なタイプの基材へのオリゴマー又はポリマー有機物質の共有結合のためのプロセスを開示しているEP0086186B1号(Larmの文献;引用により完全に本明細書中に組み込まれる)に記載されている。カップリングされることになる物質(これは、ヘパリンであってもよい)は、ジアゾ化による分解に供されて、遊離の末端アルデヒド基を有する物質断片を形成する。その後、この物質断片を、そのアルデヒド基を介して、該物質のアミノ基と反応させて、シッフ塩基を形成させ、その後、これを(還元によって)二級アミンに変換する。
WO 91/15252号には、ポリマーの骨格へのヘパリンに由来するオリゴ糖の組込みが開示されており、ここで、該ポリマーは、その後、表面に塗布することができる。この手法は、ヘパリン断片が表面に共有結合又は接合される、本発明の手法とは異なっている(WO 91/15252号の5ページ、第2段落を参照)。
好適には、本発明の表面は、ヘパリンの断片が共有結合しているペンダント官能基を含む。好適には、ヘパリンの断片は、(好適には、修飾された還元末端残基を介して)、表面に共有結合又は接合される。
好適には、ヘパリンの断片は、表面に組み込まれない。好適には、ヘパリンの断片は、ポリマー骨格(特に、アクリルアミドを含むポリマー骨格)に組み込まれない。好適には、表面は、コポリマー(特に、ヘパリンの断片を含むコポリマー、より特には、ヘパリン及びアクリルアミドの断片を含むコポリマー)を含まない。好適には、本発明の表面は、ポリマー骨格へのヘパリンの断片の組込みによって産生されない。好適には、表面は、WO 91/15252号に開示されているポリマーではない。
本発明の表面の抗血栓特性は、ヘパリン断片密度の増大によって増強することができる。特に、FIIaの阻害(例えば、評価方法Hによって決定される)は、ヘパリン密度の増大によって増強することができる。したがって、好適には、本発明による表面は、好適には、評価方法Hに従って測定される、少なくとも1μg/cm2、例えば、少なくとも2μg/cm2、少なくとも4μg/cm2、少なくとも5μg/cm2、又は少なくとも6μg/cm2のヘパリン断片濃度を有する。
一実施態様において、表面に複数のヘパリンの断片を共有結合させることを含む抗凝固表面を作製する方法が提供され、ここで、該断片は、5~18糖単位からなり、かつ該複数の断片の少なくとも一部は、多糖配列A:
Figure 2022504294000002
(式中、R=Ac又はSO3 -である)
を含み、
この表面は、FIIa及びFXaの阻害を触媒する。
好適には、表面は、固体表面である。
一実施態様において、表面に複数のヘパリンの断片を共有結合させることにより得られる抗凝固表面が提供され、ここで、該断片は、5~18糖単位からなり、かつ該複数の断片の少なくとも一部は、多糖配列A:
Figure 2022504294000003
(式中、R=Ac又はSO3 -である)
を含み、
この表面は、ATによるFIIa及びFXaの阻害を触媒する。
好適には、表面は、固体表面である。
(リンカー及びスペーサー)
(リンカー)
一実施態様において、ヘパリンの断片は、リンカーを介して、表面に共有結合させることができる。リンカーは、表面へのヘパリンの断片の共有結合を容易にする。
好適には、リンカーは、ヘパリン断片のヘパリン活性(すなわち、AT結合)を妨害しない。
一実施態様において、リンカーは、任意に置換されており、かつ鎖の1以上の炭素原子が、酸素、硫黄、及び窒素から選択されるヘテロ原子によって置換され得るアルキレン鎖からなる。一実施態様において、リンカーは、水素、酸素、炭素、硫黄、及び窒素から選択される原子からなる。一実施態様において、リンカーは、分岐又は非分岐C1-15アルキレン鎖からなり、ここで、任意に1以上の炭素(例えば、1、2、又は3個の炭素、好適には、1又は2個、特に、1個)は、O、N、又はS、特に、O又はNから選択されるヘテロ原子によって置換されており、ここで、該鎖は、オキソ、ハロゲン、アリール基、ヘテロアリール基、カルボシクリル基、又はヘテロシクリル基から独立に選択される1以上の基(例えば、1~3個、例えば、2個の基)によって任意に置換されている。本明細書で使用されるアルキレンは、直鎖又は分岐鎖アルキレン、例えば、限定されないが、メチレン、エチレン、プロピレン、イソ-プロピレン、ブチレン、及びtert-ブチレンを指す。一実施態様において、アルキレンは、直鎖アルキレンを指す。
本明細書で使用されるように、「アルキレン鎖」は、他の基に対する2つの結合点を有する炭素原子の飽和鎖を意味する。したがって、例えば、エチレンは、部分-CH2CH2-を意味する。
一実施態様において、リンカーは、二級アミンを含む。二級アミンを介してヘパリン部分をポリマーに共有結合させるための代表的な手順は、EP0086186B1号(引用により完全に本明細書中に組み込まれる)に記載されている。
一実施態様において、リンカーは、二級アミドを含む。したがって、N-スクシンイミジル 3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)又は1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド(EDC)を必要とするアミド化反応を介してヘパリン部分を表面に共有結合させるためのさらに代表的な手順は、WO2012/123384A1号(引用により完全に本明細書中に組み込まれる)に詳述されている。同じ手順をヘパリンの断片に適用することができる。
一実施態様において、リンカーは、1,2,3-トリアゾールを含む。1,2,3-トリアゾール結合を介してヘパリン部分をポリマーに共有結合させるための代表的な手順は、WO2010/029189A2号(引用により完全に本明細書中に組み込まれる、Carmeda ABの文献)に記載されている。同じ手順をヘパリン断片に適用することができる。この文書には、ポリイミンのアジド又はアルキン官能化;アルキン及びアジド官能化ヘパリン(ネイティブヘパリンと亜硝酸分解ヘパリンの両方)の調製;及び1,2,3-トリアゾールリンカーを介して誘導体化ヘパリンを誘導体化ポリマーに連結するための反応が記載されている。
一実施態様において、リンカーは、チオエーテルを含む。チオエーテル結合を介してヘパリン部分をポリマーに共有結合させるための代表的な手順は、WO2011/110684A1号(引用により完全に本明細書中に組み込まれる、Carmeda ABらの文献)に記載されている。同じ手順をヘパリン断片に適用することができる。
一実施態様において、複数のヘパリンの断片は、チオエーテル又は1,2,3-トリアゾールを介して表面に共有結合されない。一実施態様において、複数のヘパリンの断片は、チオエーテルを含むリンカー又は1,2,3-トリアゾールを含むリンカーを介して表面に共有結合されない。
リンカーは、ヘパリン断片の還元又は非還元末端、好適には、還元末端に結合させることができる。好適には、リンカーは、ヘパリン断片に単一点結合しており、より好適には、末端点結合している。より好適には、リンカーは、ヘパリン断片の還元末端を介してヘパリン断片に結合しており、より好適には、リンカーは、ヘパリン断片の還元末端の位置C1を介してヘパリン断片に結合している。そのような実施態様において、リンカーは、好適には、ヘパリン断片の合成時に組み込まれることができる。そのような実施態様において、リンカー構造及びヘパリン断片への結合点は、合成で利用される反応条件と適合性である。
一実施態様において、リンカーは、14~200、好適には、14~100Daの分子量を有する。一実施態様において、リンカーは、10~103Å、より好適には、20~102Å、より好適には、30~100Åの長さを有する。一実施態様において、リンカーは、3~50個の原子、好適には、6~36個の原子、好適には、9~30個の原子、好適には、12~22個の原子、好適には、約19個の原子からなる。
一実施態様において、ヘパリンの断片は、リンカーを介して表面に共有結合しており、かつリンカーは、式(I)
(I) (CH2)nNHCO(CH2)m
(式中、nは1~20であり、mは1~20である)
を含む。
より好適には、nは、2~15、より好適には、3~9、より好適には、4~6、より好適には、5である。好適には、mは、2~10、より好適には、3~5、より好適には、4である。
下の表1は、共有結合性リンカーが形成される官能基及び使用される反応の種類とともに、ヘパリンの断片を表面に結合させるのに好適なリンカーの例を提供している。例えば、参考文献(引用により完全に本明細書中に組み込まれる、ISBN: 978-0-12-370501-3, Bioconjugate Techniques、第2版、2008)を参照されたい。しかしながら、ラジカルカップリング反応も想定することができる。
Figure 2022504294000004
表1:例示的なリンカー
各々のリンカーについて、官能性末端基の一方は表面上にあり、もう一方はヘパリン断片上にある。原理的に、どちらの様式も可能である、すなわち、表1を参照して、官能基1及び2が、それぞれ、表面上及びヘパリン断片上にあってもよいし、又はそれぞれ、ヘパリン断片上及び表面上にあってもよい。
例示的な化学反応が以下で論じられている:
(-C-NH-C-結合)
還元アミノ化:還元アルキル化としても知られる還元アミノ化は、中間体イミン(シッフ塩基)を介するカルボニル基からアミンリンカーへの変換を伴うアミノ化の形態である。カルボニル基は、最も一般的には、ケトン又はアルデヒドである。
Figure 2022504294000005
(-C-NH-CHR-CHR-C(=O)-結合)
マイケル付加:マイケル反応又はマイケル付加は、α,β不飽和カルボニル化合物へのカルバニオン又は別の求核剤(例えば、一級アミンもしくはチオール)の求核付加である。これは、より大きいクラスの共役付加に属する。これは、穏やかなC-C結合の形成のための最も有用な方法のうちの1つである。
(-C-S-C-結合)
チオ-ブロモ:チオエーテル結合は、通常、チオールのアルキル化によって調製される。チオールは、臭化物化合物と反応して、チオエーテル結合を生成させることができる。そのような反応は、通常、塩基の存在下で実施され、これにより、チオールがより求核性のチオレートに変換される。
チオール-エン及びチオール-イン:或いは、チオエーテル結合は、チオール基を含有する第一の化合物とアルケン又はアルキン基を含有する第二の化合物との反応によって調製することができる。第一の化合物及び第二の化合物は、必要に応じて、各々表面及びヘパリン断片であることができる。
好適には、反応は、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩、又はその代わりに、ジチオスレイトールもしくは水素化ホウ素ナトリウムなどの還元剤の存在下で起こり、酸化による2つのチオール基の望ましくないカップリングを回避するか、又は該カップリングの効果を覆す。
一実施態様において、反応は、ラジカル開始剤を用いて開始される。ラジカル開始剤の例は、4,4'-アゾビス(4-シアノバレリアン酸)である。さらなる例は、過硫酸カリウム、2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、1,2-ビス(2-(4,5-ジヒドロ-1H-イミダゾール-2-イル)プロパン-2-イル)ジアゼンジヒドロクロリド、2,2'-(ジアゼン-1,2-ジイル)ビス(2-メチル-1-(ピロリジン-1-イル)プロパン-1-イミン)ジヒドロクロリド、3,3'-((ジアゼン-1,2-ジイルビス(1-イミノ-2-メチルプロパン-2,1-ジイル))ビス(アザンジイル))ジプロパン酸四水和物、ベンゾフェノン、及びベンゾフェノンの誘導体、例えば、4-(トリメチルアンモニウムメチル)ベンゾフェノンクロリドである。さらなる例は、過硫酸アンモニウムである。
別の実施態様において、反応は、ラジカル開始剤を用いて開始されない。その代わりに、より高いpH(例えば、pH 8~11)の条件が使用される。このタイプの反応は、活性化アルケン又はアルキンがチオールとの反応に使用される場合、より好適である。
チオール基を含有する第一の化合物とアルキン基を含有する第二の化合物の間の反応は、次の通りに表すことができる:
Figure 2022504294000006
(式中、Ra及びRbのうちの一方は表面であり、Ra及びRbのうちのもう一方はヘパリン断片である)。
リンカーを含有するアルケンが形成される場合、この化合物は、例えば、チオール又はアミンとのさらなる化学的変換を受けることができる。第二の化合物がアルケンで誘導体化される場合、一実施態様において、活性化アルケンが使用される。好適な活性化アルケンの例は、マレイミド誘導体である。
チオール基を含有する第一の化合物とマレイミド基を含有する第二の化合物の間の反応は、次の通りに表すことができる:
Figure 2022504294000007
(式中、Ra及びRbのうちの一方は表面であり、Ra及びRbのうちのもう一方はヘパリン断片である)。反応は、通常、還元剤としてのトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩及びラジカル開始剤としての4,4'-アゾビス(4-シアノバレリアン酸)の存在下、かつ酸性条件下で実施される。
(トリアゾール結合(CuAACカップリング))
アジド-アルキン: 1,2,3-トリアゾール結合は、アルキンとアジド化合物の反応によって調製することができる。リンカーを形成させるための反応は、ヘパリン断片又は表面上のアルキン基と該ヘパリン断片又は該表面のもう一方の上のアジド基との間のものであることができる。この反応を実施するための方法は、WO 2010/029189号(引用により完全に本明細書中に組み込まれる)に記載されている方法と同様である。
アジド基とアルキン基の間の反応は、高温(T>60℃)で又は金属触媒、例えば、銅、例えば、Cu(I)触媒の存在下で、ヒュスゲン付加環化(1,2,3-トリアゾールを形成させるためのアジド及び末端アルキンの1,3-双極子付加環化)で従来使用されている反応条件を用いて実施することができる。Cu(I)触媒は、望ましい場合、例えば、アスコルビン酸ナトリウムを用いる、例えば、対応するCu(II)化合物の還元によって、その場で産生することができる。反応は、望ましい場合、フロー条件下で実施することもできる。
CuAAC反応は、例えば、約5~80℃の温度で、好ましくは、約室温で実施することができる。反応で使用されるpHは、約2~12、好ましくは、約4~9、及び最も好ましくは、約7であることができる。好適な溶媒としては、アジド又はアルキンに結合した実体が溶けるもの、例えば、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、及び好ましくは、水又は水と上記の1つの混合物が挙げられる。表面に対する該実体の割合は、所望の密度の実体を表面に提供するように調整することができる。
(-C(=O)-N-結合)
アミド化:アミドは、一般に、カルボン酸とアミンの反応によって形成される。カルボン酸及びカルボン酸誘導体は、通常、カルボニル二重結合を破壊し、四面体中間体を形成するカルボニルへの攻撃を通じて、多くの化学的変換を受けることができる。チオール、アルコール、及びアミンは全て、求核剤としての役割を果たすことが知られている。アミドは、生理的条件下では、エステルよりも反応性が低い。
活性化酸を用いるアミド化:活性化酸(基本的には、優れた脱離基を有するエステル、例えば、NHS-活性化酸)は、アミンと反応して、通常のカルボン酸であれば、単に塩を形成するであろう条件下で、アミドリンカーを形成することができる。
(-C-S-S-CH2-CH2-C(=O)-N-結合)
SPDP試薬を用いるカップリング: N-スクシンイミジル 3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)及びその類似体は、ジスルフィド含有結合を生じさせる独特のアミン及びチオール反応性ヘテロ二機能性結合形成試薬の群に属する。
還元アミノ化、マイケル付加、チオ-ブロモ反応、NHS活性化酸を用いるアミド化、SPDP試薬を用いるカップリング、CuAAC、及びチオール-エンカップリングは全て、安全なカップリング条件及び高収率のリンカー形成を提供するのに好適である。
上で詳述されたグループ分けは、単に例示を目的としたものであり、当然ながら、別の又は異なる官能基を利用してもよい。例えば、アミン基は、二級炭素上に配置されてもよく、又は図示されている脂肪族鎖は、芳香族基によって置換されてもよい。
(フリーラジカル開始反応)
上で簡潔に言及されているように、表面の官能性末端基は、フリーラジカル開始反応によって形成されたリンカーによって、ヘパリン断片にカップリングすることができる。ラジカルは、例えば、熱、光分解(例えば、ノリッシュI型及び/もしくはノリッシュII型反応)、イオン化、酸化、プラズマ、又は電気化学反応によって作り出すことができる。例えば、遊離一級アミン基を有する表面がベンゾフェノンで処理されるとき、例えば、フリーラジカル開始反応(例えば、アルケンとの反応)に関与し得る炭素又は酸素ラジカルなどのラジカルが作り出される。
一実施態様において、リンカーは、二級アミン結合を含む。特に、リンカーは、-NH-基を含むことができ;別の実施態様において、リンカーは、アミド結合を含む。特に、リンカーは、-NH-C(O)-基を含むことができ;別の実施態様において、リンカーは、チオエーテル結合を含む。別の実施態様において、リンカーは、1,2,3-トリアゾール結合を含む。「チオエーテル結合」という用語は、硫黄と2つの炭素原子の間の接続を指す。この接続は、「スルフィド」と呼ばれることもある。硫黄は、2つの飽和炭素原子に結合していてもよく(すなわち、-C-S-C-)、又はこれは、飽和及び不飽和炭素原子に結合していてもよい(すなわち、-C-S-C=-)。「チオール」という用語は、-S-H部分を指す。「二級アミン結合」という用語は、NH基と2つの炭素原子の間の接続、すなわち、-C-NH-C-を指す。「アミド結合」という用語は、-C-C(O)NH-C-というタイプの2つの炭素原子間の接続を指す。
一実施態様において、ヘパリン断片と表面の官能性末端基の間のリンカーは、非分岐リンカーである。リンカーは、生体分解性又は非生体分解性であることができるが、より好適には、コーティングされたデバイスが、長期間、非血栓形成性となるために、非生体分解性である。
多数のリンカーが存在する場合、そのうちの一部又は全てが異なるタイプのものであることが可能である。一実施態様において、リンカーは全て、同じタイプのものである。
ヘパリンの断片を、直接(すなわち、リンカーなしで)表面に結合させることができる。したがって、一実施態様において、ヘパリンの断片は、任意のリンカーを介して、表面に共有結合していない。
表面への共有結合は、活性五糖配列を破壊してはいけない。好適には、共有結合は、活性五糖配列を妨害しない。5糖単位からなるヘパリンの断片の場合、五糖中の全ての糖単位がAT結合に必要不可欠であるので、固定化は、活性配列が破壊されないように達成されなければならない。実際、それゆえ、固定化によって活性配列が破壊されないように、還元末端点又は非還元末端点のいずれかで五糖断片と併せてリンカーを使用することが好ましい。したがって、一実施態様において、複数のヘパリンの断片が任意の五糖を含む場合、これらの五糖は、リンカーを介して表面に共有結合している。好適には、五糖は、合成的に産生された五糖であり、リンカーは、その合成時に構造に組み込まれる。好適には、リンカーは、末端糖に、好ましくは、還元末端糖及び例えば、C1位に組み込まれる。
ヘパリンの様々な断片は、直接的に又は本明細書で論じられているリンカーを含むリンカーを介して、表面に固定化することができる。しかしながら、いくつかの状況において、これは、ヘパリン断片上の好適な結合点が遮断されている場合、実際に可能ではない場合がある。この例は、ヘパリンの活性配列を含有する五糖フォンダパリヌクス(合成的に調製されたヘパリン断片、図4)である。ネイティブヘパリンにおいて、合成末端点修飾が可能である構造中の唯一の位置は、還元末端中のアノマー炭素である。フォンダパリヌクスにおいて、このアノマー中心は、メチル基で修飾されており、還元末端の反応性アルデヒド基を保護し、さらなる修飾を効果的に遮断する。したがって、フォンダパリヌクスは、固定化のための好適なヘパリン断片ではない。
合成的に由来するヘパリン断片を固定化することに関する利点は、あらゆるヘパリン断片がATとの相互作用を媒介する活性部位を潜在的に含有することができるということである。本発明者らは、固定化がより短いヘパリン断片の短所(すなわち、溶液中にあるとき、FIIaを阻害することができないということ)を克服することができることを示したので、活性配列Aを含有する合成的に得られるヘパリン断片を表面に固定化することは魅力的である。
下記の実施例は、リンカーで置換されたヘパリンの活性配列を含有する五糖の合成を含む。フォンダパリヌクスと同様に、この合成五糖は、溶液中でFXaを阻害する能力を保持した。図5は、ビルディングブロック(A~E)を含む逆合成スキームを示しており、このビルディングブロックをカップリングして、リンカーを有する五糖を形成させた。リンカーは、還元末端にうまく組み込まれ、活性配列Aを破壊することなく、表面への末端点結合を可能にする。
一実施態様において、抗凝固表面を作製する方法であって、表面に複数のヘパリンの断片を共有結合させることを含む、方法が提供され、ここで、該断片は、5~18糖単位からなり、かつ該複数の断片の少なくとも一部は、多糖配列A:
Figure 2022504294000008
(式中、R=Ac又はSO3 -である)
を含み、
この表面は、FIIa及びFXaの阻害を触媒し、
ここで、該ヘパリンの断片は、リンカーを介して表面に共有結合している。
一実施態様において、ヘパリンの断片及びそれに結合したリンカーを同時に合成し、その後、リンカーを有するヘパリンの断片を表面に共有結合させる。一実施態様において、この方法によって得られる抗凝固表面が提供される。一実施態様において、この方法によって得られる抗凝固表面が提供される。
(スペーサー)
表面の官能性末端基とヘパリン断片の間の共有結合は、直接的なものであってもよく、又は上で論じられたリンカーを介するものであってもよい。しかしながら、任意に、リンカーは、スペーサーによって、表面から隔てられていてもよい。したがって、「リンカー」の節における表面に結合しているリンカーに関する上記の全ての実施態様は、スペーサーに結合しているリンカー及び/又は表面に結合しているスペーサーに等しく適用することができる。
利用される場合、スペーサーの目的は、通常、表面とヘパリン断片の間隔を顕著に増大させることである。例えば、スペーサーの分子量は、50~106Da、典型的には、100~106Da、例えば、100~104Daであることができる。スペーサーの長さは、例えば、10~103Åであることができる。好適には、スペーサーは、直鎖である。
一実施態様において、スペーサーは、任意に置換され、かつ鎖の1以上の炭素原子が、酸素、硫黄、及び窒素から選択されるヘテロ原子によって置換され得るアルキレン鎖からなる。一実施態様において、スペーサーは、水素、酸素、炭素、硫黄、及び窒素から選択される原子からなる。一実施態様において、スペーサーは、分岐又は非分岐C1-15アルキレン鎖からなり、ここで、任意に、1以上の炭素(例えば、1、2、又は3個の炭素、好適には、1又は2個、特に1個)は、O、N、又はS、特に、O又はNから選択されるヘテロ原子によって置換されており、ここで、該鎖は、オキソ、ハロゲン、アリール基、ヘテロアリール基、カルボシクリル基、又はヘテロシクリル基から独立に選択される1以上の基(例えば、1~3個、例えば、2個の基)によって任意に置換されている。本明細書で使用されるアルキレンは、限定されないが、メチレン、エチレン、プロピレン、イソ-プロピレン、ブチレン、及びtert-ブチレンなどの直鎖又は分岐鎖アルキレンを指す。一実施態様において、アルキレンは、直鎖アルキレンを指す。
スペーサーは、好適には、一方の末端でヘパリン断片(又はリンカー)に接続し、もう一方の末端で表面に共有結合することができる官能基を含む。
一実施態様において、スペーサーは、一方の末端でヘパリン断片(又はリンカー)に接続し、もう一方の末端で表面に共有結合することができる官能基とどちらかの末端で置換されている直鎖アルキル鎖からなる。
いくつかの実施態様において、スペーサーは、親水性であり、例えば、それは、PEG鎖を含み得る。一態様において、表面の官能性末端基とヘパリン断片の間の共有結合的接続は、3つの部分-表面の官能性末端基とリンカーの間の「スペーサーA」、リンカー、及びリンカーとヘパリン断片の間の「スペーサーB」を有するとみなされ得る。一実施態様において、スペーサーAの分子量は、50~103Daである。別の実施態様において、スペーサーBの分子量は、50~103Daである。一実施態様において、スペーサーAは、1以上の芳香環を含む。別の実施態様において、スペーサーAは、芳香環を含まない。一実施態様において、スペーサーBは、1以上の芳香環を含む。別の実施態様において、スペーサーBは、芳香環を含まない。一実施態様において、スペーサーAは、親水性である。別の実施態様において、スペーサーBは、親水性である。一実施態様において、スペーサーAは、PEG鎖を含む。別の実施態様において、スペーサーBは、PEG鎖を含む。一実施態様において、スペーサーAとBは両方とも、親水性であり、例えば、これらは各々、PEG鎖を含む。本明細書で使用されるように、PEG鎖は、典型的には、100~106Daの重量のエチレンオキシドの重合によって得ることができるポリマー鎖を指す。別の態様において、共有結合的接続は、1以上のトリアゾール環を含み得る。
スペーサーが存在する場合、それは、約10~103Åの直鎖スペーサーであることができる。一実施態様において、スペーサーは、14~200、好適には、14~100Daの分子量を有する。一実施態様において、スペーサーは、3~50個の原子、好適には、6~36個の原子、好適には、9~30個の原子、好適には、12~22個の原子、好適には、約19個の原子からなる。
PEG鎖(又は他の親水性ポリマー)を含むスペーサーを有することの具体的な利点は、表面に滑らかな性質を提供することである。
スペーサーは、生体分解性又は非生体分解性であることができるが、より好適には、コーティングされたデバイスが、長期間、非血栓形成性となる(すなわち、コーティングされたデバイスが維持された非血栓形成性を有する)ために、非生体分解性である。
リンカーで置換された五糖は、基本的には、EP0086186A1号及びEP0495820B1号(引用により完全に本明細書中に組み込まれる)におけるLarmらの文献に記載されているように、還元アミノ化を介するポリアミンの最外層への固定化を可能にするアルデヒドで置換されたスペーサーと反応させることができる。図6を参照されたい。
スペーサーは、様々な手段によってリンカー及び/又は表面に結合していてもよい。一実施態様において、スペーサーは、二級アミンを含む。二級アミンを介してヘパリン部分をポリマーに共有結合させるための代表的な手順は、EP0086186B1号(引用により完全に本明細書中に組み込まれる)に記載されている。一実施態様において、スペーサーは、二級アミドを含む。一実施態様において、スペーサーは、1,2,3-トリアゾールを含む。一実施態様において、スペーサーは、チオエーテルを含む。一実施態様において、複数のヘパリンの断片は、チオエーテルを含むスペーサー又は1,2,3-トリアゾールを含むスペーサーを介して、表面に共有結合していない。
スペーサーは、ヘパリン断片の還元又は非還元末端、好適には、還元末端に結合させることができる。好適には、スペーサーは、ヘパリン断片に単一点結合しており、より好適には、末端点結合している。より好適には、スペーサーは、ヘパリン断片の還元末端を介してヘパリン断片に結合しており、より好適には、スペーサーは、ヘパリン断片の還元末端の位置C1を介してヘパリン断片に結合している。
上の表1に提供されている例示的なリンカーは、スペーサーをリンカー及び/又は表面に結合させるのに好適なスペーサーの例も表している。この表の各々のスペーサーについて、官能性末端基のうちの一方が表面及び/又はリンカー上にあり、もう一方がスペーサー上にある。下の表1に提供されている例示的な化学反応も、スペーサーをリンカー及び/又は表面に結合させる際に適用することができる。
(抗凝固特性)
上で論じられているように、本発明者らは、驚くことに、ATによるFXaの阻害を触媒することができるが、溶液中でのATによるFIIaの阻害を触媒する能力を欠くヘパリン由来オリゴ糖(すなわち、ヘパリン断片)の調製物が、表面に固定化されたときに、両方の反応を触媒することができるということを発見した。したがって、そのような調製物が本発明による表面に固定化されたとき、該表面は、抗凝固特性を獲得する。
理論に束縛されることを望むものではないが、固定化されたオリゴ糖は、それが相乗的に及び/又は互いに緊密に接触し、それにより、オリゴ糖間の「架橋」を形成することにより作用して、結合及びAT媒介性のFIIa阻害を許容することを可能にし得る様式で組織化されると考えられる。そのような活性は、一見、溶液中でかなり長い分子を必要とするように思われる。この概念は、様々なヘパリンの断片について、下の実施例で示される。特に、ヘパリンの八糖断片が調製され、表面に共有結合されている。さらに、リンカーで置換されたヘパリンの活性配列を含有する五糖が合成されている(フォンダパリヌクスのように、溶液中のFXaを阻害するが、溶液中のFIIaを阻害しない能力を有する)。ヘパリン断片は、本発明による表面に共有結合している場合、驚くことに、FXaとFIIaの両方を阻害することができることが示されている。
ヘパリン断片を含む本発明の表面がFXaを阻害するという理由で抗凝固性であるだけでなく、その抗凝固特性が、それがFIIaを阻害することもできることによって増強されるということに留意することは重要である。表面の抗凝固特性は、様々な手段によって評価することができる。本発明の例示的な表面の抗凝固特性は、実施例で提供されている評価方法を用いて示される。
一実施態様において、本発明による表面が提供され、ここで、該表面は、評価方法Gに従って測定したとき、FIIa活性を、少なくとも10%、より好適には、少なくとも20%、より好適には、少なくとも30%、より好適には、少なくとも40%、より好適には、少なくとも50%、より好適には、少なくとも60%、より好適には、少なくとも70%、より好適には、少なくとも80%、より好適には、少なくとも90%、又はより好適には、少なくとも95%阻害する。
好適には、本発明の表面は、ATによるFIIaの阻害を触媒する際に使用するためのものである。
一実施態様において、表面がそれに複数のヘパリンの断片を共有結合している抗凝固表面の使用が提供され、ここで、該断片は、5~18糖単位からなり、かつ該複数の断片少なくとも一部は、ATによるFIIaの阻害を触媒するための多糖配列A
(式中、R=Ac又はSO3 -である)
を含む。
一実施態様において、表面がそれに複数のヘパリンの断片を共有結合している抗凝固表面が提供され、ここで、該断片は、5~18糖単位からなり、かつ該複数の断片少なくとも一部は、ATによるFIIaの阻害を触媒する際に使用するための多糖配列A
(式中、R=Ac又はSO3 -である)
を含む。
一実施態様において、表面のFIIa阻害活性を増大させる際に使用するための複数のヘパリンの断片を含む組成物が提供され、ここで、該複数のヘパリンの断片は、該表面に共有結合しており、かつ該断片は、5~18糖単位からなり、かつ該複数の断片の少なくとも一部は、多糖配列A
(式中、R=Ac又はSO3 -である)
を含む。
一実施態様において、表面のFIIa阻害活性を増大させるための複数のヘパリンの断片を含む組成物の使用が提供され、ここで、該複数のヘパリンの断片は、該表面に共有結合しており、かつ該断片は、5~18糖単位からなり、かつ該複数の断片の少なくとも一部は、多糖配列A
(式中、R=Ac又はSO3 -である)
を含む。
一実施態様において、本発明による表面が提供され、ここで、該表面は、評価方法Fに従って測定したとき、FXa活性を、少なくとも10%、より好適には、少なくとも20%、より好適には、少なくとも30%、より好適には、少なくとも40%、より好適には、少なくとも50%、より好適には、少なくとも60%、より好適には、少なくとも70%、より好適には、少なくとも80%、より好適には、少なくとも90%、又はより好適には、少なくとも95%阻害する。
好適には、本発明による表面に結合されることになるヘパリンの断片は、それが表面に結合させられる前に(すなわち、それが溶液中にあるときに)、FXa阻害活性を有する。したがって、好適には、ヘパリンの断片は、評価方法Cに従って測定したとき、固定化の前に、少なくとも1IU/mg、より好適には、5IU/mg、より好適には、10IU/mg、より好適には、15IU/mg、より好適には、>100IU/mgのFXa阻害活性を有する。
本発明に従って固定化されるヘパリンの断片は、ATに結合する能力(pmol AT/表面単位として表される)を有し、該能力は、「ヘパリン活性」と称されることもある。したがって、本発明による表面は、評価方法Jに従って測定したとき、ATの結合のための少なくとも0.1pmol/表面cm2、好適には、少なくとも1pmol/表面cm2、好適には、少なくとも2pmol/表面cm2のヘパリン活性を有し得る。
(表面)
任意の表面は、それに本発明による複数のヘパリンの断片を共有結合させることができる。好適には、該表面は、ヘパリン断片(又はそれに結合したリンカーもしくはスペーサー)の還元末端と反応させられるアミン、チオール、又はヒドロキシ基などの官能基を含む。
ある実施態様において、表面をコーティングすることができ、かつヘパリンの断片をコーティングに共有結合させることができる。コーティングは、好適には、アニオン及び/もしくはカチオンポリマー、並びに/又は例えば、ポリドーパミンもしくはフッ素含有ポリマーのような、非荷電ポリマーを含むことができる。
本発明のある実施態様において、表面(本明細書において、「抗凝固表面」とも呼ばれる)は、抗凝固実体(ヘパリンの断片)の固定化によって、凝固応答の直接的な薬理学的阻害を示すことができる。本発明のある実施態様において、抗凝固表面は、血液と接触したときに、血栓症、溶血、血小板、白血球、及び補体活性化、並びに/又は他の血液関連有害事象などの、臨床的に重要な大きな有害反応を引き起こさない。
(固体物体)
一実施態様において、本発明による表面を含む固体物体が提供される。任意の固体物体は、本発明による表面(本明細書において、「抗凝固表面」とも呼ばれる)で潜在的にコーティングすることができるが、そのようなコーティングは、医療デバイス、分析デバイス、分離デバイス、及び膜を含む他の産業用品に特に有用である。最も好適には、固体物体は、医療デバイスである。表面は、固体物体上のコーティング又は固体物体それ自体の表面を指すこともできる。
一実施態様において、固体物体は、医療デバイスである。固体物体が医療デバイスである場合、それは、好適には、抗凝固性医療デバイスである。したがって、一実施態様において、固体物体は、抗凝固性医療デバイスである。本明細書で使用されるように、「医療デバイス」という用語は、体内又は体外デバイスを指すが、より好適には、体内医療デバイスを指す。
体内医療デバイスは、通常治療効果をもたらすために、生体構造内で、例えば、血管系又は他の体の内腔、空間、もしくは体腔内で使用されるデバイスである。体内デバイスは、長期間又は一時的に使用されるものであり得る。長期間使用されるデバイス、例えば、ステント又はステント-グラフトは、それを送達する直接的な外科的処置の後に、一部又は全部が生体構造に留置される。一時的又は短期間使用するためのデバイスには、治療領域に一過性に挿入される(すなわち、挿入され、その後、同じ外科的処置で除去される)もの、例えば、医療用バルーンが含まれる。一実施態様において、固体物体は、体内医療デバイスである。
恒久的な又は一時的な体内医療デバイスであることができる体内医療デバイスの例としては、二股ステント、バルーン拡張型ステント、自己拡張型ステント、神経血管ステント、及び分流ステントを含むステント、二股ステント-グラフトを含むステント-グラフト、血管グラフト及び二股グラフトを含むグラフト、引き込み式シース、例えば、介入性診断及び治療用シース、大口径及び標準口径の血管内送達シース、止血制御あり及びなし並びにステアリングあり又はなしの動脈イントロデューサーシース、マイクロイントロデューサーシース、透析アクセスシース、ガイディングシース、及び経皮シースを含むシース、拡張器、閉鎖栓、例えば、血管閉鎖栓、塞栓性フィルター、塞栓除去デバイス、カテーテル、人工血管、血液内在性モニタリングデバイス、人工心臓弁を含む弁、ペースメーカー電極、ガイドワイヤー、心臓リード、心肺バイパス回路、カニューレ、プラグ、薬物送達デバイス、バルーン、組織パッチデバイス、血液ポンプ、パッチ、ライン、例えば、長期注入ライン又は動脈ライン、留置ワイヤー、連続的くも膜下注入用のデバイス、栄養チューブ、CNSシャント、例えば、脳室胸膜シャント、脳室心房(VA)シャント、脳室腹腔(VP)シャント、脳室心房シャント、門脈体循環シャント、及び腹水用のシャントが挙げられる。
カテーテルの例としては、マイクロカテーテル、中心静脈カテーテル、末梢静脈内カテーテル、血液透析カテーテル、心臓内又は末梢静脈及び動脈内での血管造影法、血管形成術、又は超音波処置に有用な埋め込み式静脈カテーテル、トンネル型静脈カテーテル、冠状動脈カテーテルを含む被覆カテーテルなどのカテーテル、分光分析又はイメージング能力を含有するカテーテル、肝動脈注入カテーテル、CVC(中心静脈カテーテル)、末梢静脈内カテーテル、末梢挿入型中心静脈カテーテル(PICライン)、フローダイレクトバルーンが先端に付いた肺動脈カテーテル、完全非経口栄養カテーテル、長期間存在するカテーテル(例えば、長期間存在する胃腸カテーテル及び長期間存在する泌尿生殖器カテーテル)、腹膜透析カテーテル、CPBカテーテル(心肺バイパス)、尿路カテーテル、及びマイクロカテーテル(例えば、頭蓋内用途用)が挙げられるが、これらに限定されない。
一実施態様において、固体物体は、ステント、ステント-グラフト、シース、拡張器、閉鎖栓、弁、塞栓性フィルター、塞栓除去デバイス、カテーテル、人工血管、血液内在性モニタリングデバイス、弁、ペースメーカー電極、ガイドワイヤー、心臓リード、心肺バイパス回路、カニューレ、プラグ、薬物送達デバイス、バルーン、組織パッチデバイス、血液ポンプ、パッチ、ライン、留置ワイヤー、連続的くも膜下注入用のデバイス、栄養チューブ、及びシャントからなる群から選択される体内医療デバイスである。具体的な実施態様において、固体物体は、ステント又はステント-グラフトである。
一実施態様において、該体内医療デバイスは、神経、末梢、心臓、整形外科、皮膚、又は婦人科用途で使用することができる。一実施態様において、該ステントは、心臓、末梢、又は神経用途で使用することができる。一実施態様において、該ステント-グラフトは、心臓、末梢、又は神経用途で使用することができる。一実施態様において、該シースは、頸動脈、腎臓、経橈骨、経中隔、小児、又はマイクロ用途で使用することができる。
体外医療デバイスの例は、血液治療デバイス及び輸血デバイスである。一実施態様において、該体内医療デバイスは、神経、末梢、心臓、整形外科、皮膚、又は婦人科用途で使用することができる。一実施態様において、体外医療デバイスは、酸素供給器である。別の実施態様において、体外医療デバイスは、ウイルス、細菌、敗血症を引き起こす炎症促進性サイトカイン、及び毒素を除去することができるフィルターである。
膜は、例えば、血液透析膜であることができる。
分析デバイスは、例えば、クロマトグラフィーなどの分析プロセス又は免疫学的アッセイ、反応性化学、もしくは触媒作用を実施するための固体支持体であることができる。そのようなデバイスの例としては、スライド、ビーズ、ウェルプレート、及び膜が挙げられる。
分離デバイスは、例えば、タンパク質精製、親和性クロマトグラフィー、又はイオン交換などの分離プロセスを実施するための固体支持体であることができる。そのようなデバイスの例としては、フィルター及びカラムが挙げられる。
固体物体は、とりわけ、金属、合成もしくは天然の有機もしくは無機ポリマー、セラミック材料、タンパク質に基づく材料、もしくは多糖に基づく材料を含むか、又はこれらで形成されることができる。
好適な金属としては、チタン、ステンレス鋼、高窒素ステンレス鋼、コバルト、クロム、ニッケル、タンタル、ニオブ、金、銀、ロジウム、亜鉛、白金、ルビジウム、銅、及びマグネシウムなどの生体適合性金属、並びにこれらの組合せ(合金)が挙げられるが、これらに限定されない。好適な合金としては、コバルト-クロム合金、例えば、L-605、MP35N、Elgiloy、ニッケル-チタン合金(例えば、Nitinol)を含むチタン合金、タンタル合金、ニオブ合金(例えば、Nb-1%Zr)、及びその他が挙げられる。一実施態様において、該生体適合性金属は、ニッケル-チタン合金、例えば、Nitinolである。
合成又は天然の有機又は無機ポリマーとしては、ポリオレフィン、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート及びポリブチレンテレフタレート)、ポリエステルエーテル、ポリエステルエラストマーコポリマー(例えば、HYTREL(登録商標)の商品名でWilmington, Del.のDuPontから入手可能なものなど)、フッ素含有ポリマー、塩素含有ポリマー(例えば、ポリ塩化ビニル(PVC))、ブロックコポリマーエラストマー(例えば、スチレン末端ブロック、及びブタジエン、イソプレン、エチレン/ブチレン、エチレン/プロペンから形成される中間ブロックを有するコポリマーなど)、ブロックコポリマー(例えば、スチレン系ブロックコポリマー、例えば、アクリロニトリル-スチレン及びアクリロニトリル-ブタジエン-スチレンブロックコポリマー、又はブロックコポリマー(この場合、ブロックコポリマーがポリエステル又はポリアミドの硬質セグメントとポリエーテルの軟質セグメントで構成されている特定のブロックコポリマー熱可塑性エラストマー)、ポリウレタン、ポリアミド(例えば、ナイロン12、ナイロン11、ナイロン9、ナイロン6/9、及びナイロン6/6)、ポリエーテルブロックアミド(例えば、PEBAX(登録商標))、ポリエーテルエステルアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンオキシド、ポリエーテル、シリコーン、ポリカーボネート、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ゴム、シリコーンゴム、ポリヒドロキシ酸、ポリアリルアミン、ポリアリルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ(メチル)メタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリ(ビニルアセテート)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリオキシメチレン、ポリカーボネート、フェノール類、アミノ-エポキシ樹脂、セルロース系プラスチック、及びゴム状プラスチック、生体吸収性のもの(例えば、ポリ(D,L-ラクチド)及びポリグリコリド、並びにこれらのコポリマー及びこれらのコポリマー)、これらの誘導体、並びにこれらの混合物が挙げられる。これらの材料の組合せを架橋あり及びなしで利用することができる。これらのクラスのいくつかは、熱硬化性樹脂としても、熱可塑性ポリマーとしても利用可能である。本明細書で使用されるように、「コポリマー」という用語は、2以上のモノマー、例えば、2、3、4、5個などなどから形成される任意のポリマーを指すために使用されるものとする。
フッ素化ポリマー(フッ素含有ポリマー)としては、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ素化エチレン-プロピレン(FEP)、パーフルオロカーボンコポリマー(例えば、テトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル(TFE/PAVE)コポリマー及びテトラフルオロエチレン(TFE)とパーフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)のコポリマー)などのフルオロポリマー、並びにポリマー鎖間の架橋あり及びなしの上記のものの組合せが挙げられる。
一実施態様において、固体物体は、ポリエーテル-ブロック-アミド、例えば、PEBAX(登録商標)を含む。別の実施態様において、固体物体は、塩素含有ポリマー(例えば、PVC)又はフッ素含有ポリマー(例えば、ePTFE)を含む。
ポリマー基材は、フィラー及び/又は着色料と任意にブレンドすることができる。したがって、好適な基材としては、有色材料、例えば、有色ポリマー材料が挙げられる。
セラミック基材としては、酸化シリコーン、酸化アルミニウム、アルミナ、シリカ、ヒドロキシアパピタイト(hydroxyapapitite)、ガラス、酸化カルシウム、ポリシラノール、及び酸化リンを挙げることができるが、これらに限定されない。
タンパク質に基づく材料としては、絹及び羊毛が挙げられる。多糖に基づく材料としては、アガロース及びアルギネートが挙げられる。
(カチオン及びアニオンポリマー)
好適には、表面は、1以上のカチオン及び/又はアニオンポリマーの層を含む。好適には、ヘパリンの断片は、好適には、リンカーを介して、カチオンポリマーの最外層に結合している。一実施態様において、表面が交互積層(layer by layer)コーティングを含み、外側のコーティング層が、ヘパリンの断片が共有結合しているカチオンポリマーである、固体物体が提供される。好適には、交互積層コーティングは、カチオンポリマーとアニオンポリマーの交互の層である。より好適には、カチオンポリマー層は、カチオンポリマー性アミンの層であり、かつ/又はアニオンポリマー層は、硫酸デキストランの層である。
カチオンポリマーは、直鎖ポリマーであり得るが、より一般的には、超分岐ポリマーなどの分岐ポリマーである。一実施態様において、分岐ポリマーは、コア部分などの明確な特徴を有する一貫性のある分岐構造を有する。別の実施態様において、分岐ポリマーは、コア部分などの明確な特徴を欠く一貫性のある又はランダムに分岐した構造を有する。「コア部分」は、分岐ポリマーの樹状分岐構造が発出する分岐ポリマー分子中に(典型的には、中心に)存在し得る基である。
一実施態様において、カチオンポリマーは、分岐カチオンポリマーである。カチオンポリマーは、任意に架橋されている。一実施態様において、カチオンポリマーは、一級/二級アミン基を含む。一実施態様において、カチオンポリマーは、好適には、二官能性アルデヒドで任意に架橋されているポリアミンである。カチオンポリマー(例えば、ポリアミン)は、好適には、5kDa~3,000kDa、例えば、5kDa~2,000kDa、5kDa~1,500kDa、5kDa~1,000kDa、5kDa~800kDa、5kDa~500kDa、5kDa~300kDa、5kDa~200kDa、又は800kDa~3,000kDaの分子量を有する。カチオンポリマー(例えば、ポリアミン)は、好適には、少なくとも5kDa、例えば、少なくとも10kDa、例えば、少なくとも25kDa、例えば、少なくとも50、例えば、少なくとも60、例えば、少なくとも70kDaの分子量を有する。カチオンポリマー(例えば、ポリアミン)は、好適には、2000kDa以下、例えば、1500kDa以下、例えば、1300kDa以下、例えば、1200kDa以下、例えば、1100kDa以下、例えば、1000kDa以下の分子量を有する。カチオンポリマー(例えば、ポリアミン)が架橋される場合、それは、好適には、クロトンアルデヒド及び/又はグルタルアルデヒドなどのアルデヒドクロスリンカーを用いて架橋される。一実施態様において、カチオンポリマーは、ポリアルキレンイミン、例えば、ポリエチレンイミンである。
好適には、ヘパリンの断片は、カチオンポリマーの最外層に共有結合している。
カチオンポリマーは、固体物体の表面をカチオンポリマーとアニオンポリマーの層で交互に処理することにより形成されるカチオンポリマーとアニオンポリマーの交互積層コーティングの部分を形成することができる。二重層は、カチオンポリマーとアニオンポリマーの1つの層として本明細書で定義される。交互積層コーティングにおいて、カチオンポリマーを、通常、アニオンポリマーの前に塗布する、すなわち、固体物体の表面を、通常、カチオンポリマー(工程i)の第一の層で最初に処理し、該第一の層の上に、アニオンポリマーの第一の層を塗布する(工程ii)。必要とされる二重層の数に応じて、カチオンポリマーとアニオンポリマーのさらなる層を塗布することができる(工程iii)。カチオンポリマーとアニオンポリマーの最後の(これは、第一のものでもあり得る)二重層が完成したら、その後、カチオンポリマーの層を塗布する(工程iv)。その後、ヘパリン断片をカチオンポリマーの層に共有結合させるために、カチオンポリマーのこの層(すなわち、最外層)をヘパリン断片で処理する。したがって、カチオンポリマーの外側のコーティング層は、ヘパリンの断片を「含む」と言うことができる。交互積層コーティングにおいて、最内層は、カチオンポリマーの層であり、最外層は、ヘパリンの断片が共有結合しているカチオンポリマーの外側のコーティング層である。
一実施態様において、工程iのカチオンポリマーは、任意に架橋されているポリアミンである。一実施態様において、工程ivのカチオンポリマーは、任意に架橋されているポリアミンである。一実施態様において、工程iのカチオンポリマーは、工程ivのカチオンポリマーと同じである。
WO2012/123384A1号(引用により完全に本明細書中に組み込まれる、Gore Enterprise Holdings社らの文献)には、抗凝固実体、特に、ヘパリンを有する複数の超分岐ポリマー分子を含むコーティングを有するデバイスが開示されている。そのような超分岐ポリマー分子は、カチオンポリマーの最外層で利用することができる、すなわち、そのような超分岐ポリマーは、工程ivのカチオンポリマーとして使用し、その後、工程vでヘパリンの断片を有するように修飾することができる。
本発明に好適なアニオンポリマーは、-COOH、-SO3H、及び-PO3H2からなる群由来の脱プロトン化官能基を保有する。したがって、一実施態様において、アニオンポリマーは、-CO2 -、-SO3 -、-PO3H-、及び-PO3 2-から選択される基を含むポリマーである。
アニオンポリマーは、好適には、アニオン性のグリコサミノグリカン又は多糖である。ポリマーのアニオン性の特徴は、通常、ポリマー鎖に沿うカルボン酸又は硫酸基に由来する。したがって、一実施態様において、アニオンポリマーは、カルボン酸及び/又は硫酸基を有するグリコサミノグリカン又は多糖、特に、カルボン酸及び/又は硫酸基を有するグリコサミノグリカンである。アニオンポリマーは、分岐又は非分岐であり得る。一実施態様において、アニオンポリマーは、任意に架橋されている。
一実施態様において、アニオンポリマーは、硫酸デキストラン、ヒアルロン酸、ポリ(2-アクリルアミド-2-メチル-1-プロパンスルホン酸)、ポリ(2-アクリルアミド-2-メチル-1-プロパンスルホン酸-コ-アクリロニトリル)アクリロニトリル、ポリ(アクリル酸)、ポリアネトールスルホン酸、ポリ(ナトリウム 4-スチレンスルホネート)、ポリ(4-スチレンスルホン酸-コ-マレイン酸)、ポリ(ビニルスルフェート)、ポリビニルスルホン酸、及びこれらの塩からなる群から選択される。好適には、アニオンポリマーは、硫酸デキストランである。硫酸デキストランは、無水グルコースの硫酸化ポリマーである。硫酸化の程度及びその結果として、硫酸デキストランの硫黄含有量は、様々に異なり得る。
一実施態様において、アニオンポリマーは、550kDa~10,000kDa、例えば、650kDa~10,000kDa、例えば、750kDa~10,000kDa、例えば、1,000kDa~10,000kDaの総分子量を有することを特徴とする。一実施態様において、アニオンポリマーは、650kDa~1,000kDa、例えば、750kDa~1,000kDaの総分子量を有することを特徴とする。一実施態様において、アニオンポリマーは、1,000kDa~4,500kDa、例えば、2,000kDa~4,500kDaの総分子量を有することを特徴とする。一実施態様において、アニオンポリマーは、4,500kDa~7,000kDaの総分子量を有することを特徴とする。一実施態様において、アニオンポリマーは、7,000kDa~10,000kDaの総分子量を有することを特徴とする。一実施態様において、アニオンポリマーは、1,000kDa超、例えば、2,000kDa超、例えば、3,000kDa超、例えば、3,500kDa超の総分子量を有することを特徴とする。好適には、アニオンポリマーは、7,000kDa未満、例えば、6,000kDa未満、例えば、5,000kDa未満、例えば、4,500kDa未満の総分子量を有することを特徴とする。好適には、アニオンポリマーの総分子量は、評価方法Kに従って測定される。
一実施態様において、アニオンポリマーは、1μeq/g~7μeq/g、例えば、2μeq/g~4μeq/g、又はその代わりに、>4μeq/g~7μeq/g、例えば、>5μeq/g~7μeq/gの溶液電荷密度を有することを特徴とする。好適には、アニオンポリマーの溶液電荷密度は、評価方法Lに従って測定される。
いくつかの実施態様において、カチオン及び/又はアニオンポリマー中の硫黄含有量は、10%~25重量%であり、例えば、硫黄含有量は、15%~20重量%である。
交互積層コーティングは、1以上のコーティング二重層、例えば、2以上、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、8以上、9以上、又は10以上のコーティング二重層を含むことができる。
通常、コーティング層は、約10nm~約1000nm、例えば、約10nm~約800nm、例えば、約10mM~約500nm、約10nm~約400nm、約10nm~約300nm、約10nm~約200nm、又は約10nm~約100nmの平均総厚みを有する。コーティング厚みは、深さプロファイリングを伴うX線光電子分光法を使用することによるか、又は散逸を伴う水晶振動子マイクロバランスを使用することにより、好適なコーティング厚み分析装置又はゲージを用いて測定することができる。
一実施態様において、表面は、積層コーティングを含まない。
一実施態様において、表面は、外側のコーティング層が分子量14~1,000Daのコア部分及び少なくとも80:1の総分子量対コア部分分子量の比を有することを特徴とする複数のカチオン性超分岐ポリマー分子を含む積層コーティングを含まない。
一実施態様において、表面は、外側のコーティング層が、(i)分子量14~1,000Daのコア部分、(ii)1,500~1,000,000Daの総分子量、(iii)少なくとも80:1(例えば、少なくとも100:1)の総分子量対コア部分分子量の比、及び(iv)官能性末端基(ここで、該官能性末端基の1つ又は複数は、それに共有結合した抗凝固実体を有する)を有することを特徴とする複数のカチオン性超分岐ポリマー分子を含む積層コーティングを含まない。
(治療方法)
本発明による表面は、薬物療法において有用である。本発明の一態様において、ヒト又は動物の体内の組織を治療する際に使用するための本発明による固体物体(特に、ステント、グラフト、又はステント-グラフトなどの医療デバイス)が提供される。治療されることになる組織は、任意の体腔、空間、又は中空器官通路、例えば、血管、尿路、腸管、鼻腔、神経鞘、椎間領域、骨空洞、食道、子宮内空間、膵管及び胆汁管、直腸、並びに埋め込まれた血管グラフト、ステント、補綴、又は他のタイプの医療用インプラントを有する過去に介入を受けた体の空間を含む。本発明のまた別の態様において、本発明による固体物体(特に、ステント、グラフト、又はステント-グラフトなどの医療デバイス)は、脳内の動脈瘤を治療するように配置することができる。
本発明による固体物体(特に、ステント、グラフト、又はステント-グラフトなどの医療デバイス)は、閉塞した体の通路に対する開存性を回復させるための拡張デバイスとして、通路もしくは空間を遮断し又は埋める手段を選択的に送達するための閉塞デバイスとして、及びカテーテルのような経腔器具のセンタリング機構として、血管からの塞栓及び血栓などの障害物の除去に有用であり得る。
一実施態様において、ヒト体内の血管の狭窄症又は再狭窄の予防又は治療において使用するための本発明による固体物体(特に、ステント、グラフト、又はステント-グラフトなどの医療デバイス)が提供される。別の実施態様において、以前に配置された溶出コンストラクトが機能しなくなったヒト体内の血管の狭窄症又は再狭窄の予防又は治療において使用するための本発明による固体物体(特に、ステント、グラフト、又はステント-グラフトなどの医療デバイス)が提供される。別の実施態様において、本発明による固体物体(特に、ステント、グラフト、又はステント-グラフトなどの医療デバイス)を、動静脈アクセス部位、例えば、腎透析時に使用される部位を確立又は維持するために使用することができる。さらなる実施態様において、本発明による固体物体(特に、ステント、グラフト、又はステント-グラフト、例えば、血管グラフトなどの医療デバイス)を、妨害物又は血管狭窄の領域周辺の血流を変えるために使用することができる。別の実施態様において、本発明による固体物体(特に、ステント、グラフト、又はステント-グラフトなどの医療デバイス)を、罹患血管の領域に対する開存性を回復させるために又は動脈瘤を排除するために配置することができる。また別の実施態様において、本発明による固体物体(特に、ステント、グラフト、又はステント-グラフトなどの医療デバイス)を、血管形成術後の罹患血管を補強するために配置することができる。また別の実施態様において、本発明による固体物体(特に、ステント、グラフト、又はステント-グラフトなどの医療デバイス)を、バルーン支援又はコイル支援処置を用いて、脳に配置することができる。
一実施態様において、本発明による固体物体(特に、医療デバイス)を、末梢動脈の閉塞性疾患を有する患者における経皮的血管形成術(PTA)に使用することができる。
本発明の別の態様において、狭窄又は再狭窄の予防又は治療のための方法であって、ヒト又は動物の体内の血管に、本発明による固体物体(特に、医療デバイス)を埋め込むことを含む、方法が提供される。
(略語)
Ac アセチル
ACN アセトニトリル
Ac2O 無水酢酸
AcOH 酢酸
AgOTf 銀トリフレート
AT、ATIII アンチトロンビンIII
BAIB ビス(アセトキシ)ヨードベンゼン
BDMA ベンズアルデヒドジメチルアセタール
Bn ベンジル
Bu ブチル
Bz ベンゾイル
Cbz カルボキシベンジル
CNS 中枢神経系
COSY 相関スペクトル法
CPB 心肺バイパス
Cq 四級炭素
CSA (+/-)-10-カンファースルホン酸
CVC 中心静脈カテーテル
Da ダルトン
DBU 1,8-ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデカ-7-エン
DMF ジメチルホルムアミド
DMAPA ジメチルアミノプロピルアミン
EDC 1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド
EDA エチレンジアミン
Et エチル
Et2O ジエチルエーテル
EtOAc 酢酸エチル
EtOH エタノール
Eq 当量
FEP フッ素化エチレン-プロピレン
FIIa 凝固因子IIa、トロンビン
FXa 凝固因子Xa
GPC ゲル浸透クロマトグラフィー
HMBC 異核多結合相関分光法
HSQC 異核種単一量子コヒーレンス法
HRMS 高分解能マススペクトロメトリー
HSA ヒト血清アルブミン
HSEt エタンチオール
HSPh チオフェノール
M モル濃度
MBTH 3-メチル-2-ベンゾチアゾリノンヒドラゾン塩酸塩
Me メチル
Ms メシル
NIS N-ヨードスクシンイミド
NMR 核磁気共鳴
OTCA トリクロロアセトイミデート
OTf トリフレート、トリフルオロメタンスルホネート
PAVE パーフルオロアルキルビニルエーテル
PES-Na ポリエチレン硫酸ナトリウム
Ph. Eur. 欧州薬局方
Phth フタル酸
PTA 経皮的血管形成術
PMVE パーフルオロメチルビニルエーテル
PPM 百万分率
PTFE ポリテトラフルオロエチレン
PVC ポリ塩化ビニル
Rf 遅延係数
rt 室温
SPDP N-スクシンイミジル 3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート
TBDMS tert-ブチルジメチルシリル
TBSOTf tert-ブチルジメチルシリルトリフレート
TEA トリエチルアミン
TEMPO (2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-イル)オキシル
TFE テトラフルオロエチレン
THF テトラヒドロフラン
TLC 薄層クロマトグラフィー
TMB 3,3',5,5'-テトラメチルベンジジン
TMS トリメチルシリル
TMSOTf トリメチルシリルトリフレート
Tol トルエン
Tris トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、緩衝溶液
p-TsOH パラ-トルエンスルホン酸
USP 米国薬局方
VA 脳室心房
VP 脳室腹腔
(条項)
本発明のさらなる実施態様を説明する条項は、次の通りである:
1.抗凝固表面であって、その表面がそれに複数のヘパリンの断片を共有結合しており、ここで、該断片が5~18糖単位からなり、かつ該複数の断片の少なくとも一部が多糖配列A:
Figure 2022504294000009
(式中、R=Ac又はSO3 -である)
を含み、
この表面がATによるFIIa及びFXaの阻害を触媒する、前記抗凝固表面。
2.評価方法Gに従って測定したとき、前記表面がFIIa活性を少なくとも50%阻害する、条項1記載の表面。
3.前記ヘパリンの断片の構造が不均一である、条項1又は2のいずれか記載の表面。
4.前記ヘパリンの断片の構造が均一であり、かつ全てが多糖配列Aを含む、条項1又は2のいずれか記載の表面。
5.前記ヘパリンの断片がネイティブヘパリンを分解することを含むプロセスによって産生されるネイティブヘパリンの断片である、条項1~4のいずれか一項記載の表面。
6.前記ヘパリンの断片が合成によって産生される、条項1~4のいずれか一項記載の表面。
7.前記ヘパリンの断片がリンカーを介して前記表面に共有結合している、条項1~6のいずれか一項記載の表面。
8.前記ヘパリンの断片が単一点結合している、条項1~7のいずれか一項記載の表面。
9.前記ヘパリンの断片が末端点結合している、条項8記載の表面。
10.前記ヘパリンの断片がその還元末端を介して前記表面に共有結合している、条項9記載の表面。
11.評価方法Jに従って好適に測定される、ATの結合のための少なくとも1pmol/表面cm2、例えば、少なくとも2pmol/表面cm2、少なくとも3pmol/表面cm2、少なくとも4pmol/表面cm2、又は少なくとも5pmol/表面cm2のヘパリン活性を有する、条項1~10のいずれか一項記載の表面。
12.評価方法Hに従って好適に測定される、少なくとも1μg/cm2、例えば、少なくとも2μg/cm2、少なくとも4μg/cm2、少なくとも5μg/cm2、又は少なくとも6μg/cm2のヘパリン濃度を有する、条項1~11のいずれか一項記載の表面。
13.前記ヘパリンの断片が少なくとも6糖単位からなる、条項1~12のいずれか一項記載の表面。
14.前記ヘパリンの断片が14糖単位以下からなる、条項1~13のいずれか一項記載の表面。
15.前記リンカーが、式(I)
(I) (CH2)nNHCO(CH2)m
(式中、nは1~20であり、かつmは1~20である)
を含む、条項7記載の表面。
(実施例)
(一般的な手順)
(評価方法)
反応混合物を下の評価方法C~Gで調製する場合、酵素溶液(FXa及びFIIa)は、インキュベーションの開始直前に、一貫して最後に添加した。
(評価方法A:ヘパリン断片画分の分子量決定)
ヘパリン断片画分の分子量を、基本的にはUSP<209>低分子量ヘパリン分子量決定に従って、連続する2本のSuperdexカラム(S-75及びS-200)からなるシステムでの分析的ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって決定する。ピーク位置を、標準品の最遅延ピークが二糖である分子量較正用の低分子量ヘパリンの第2国際標準品(NIBSC、UK)の溶出プロファイルに基づいて同定する。
(評価方法B:ヘパリン断片濃度決定)
溶液中の単離されたヘパリン断片の量を、ヘパリン標準曲線に関連するカルバゾールアッセイによってウロン酸含有量を解析することにより推定する(Bitter, T.; Muir, H.M.の文献、Anal.Biochem.,1962,(4), 330-334)。
(評価方法C:国際標準品と比較した、溶液中のヘパリン断片の抗FXa活性決定)
ヘパリン断片の抗凝固活性を抗FXaアッセイで決定する。この方法は、基本的には未分画及び低分子量ヘパリンのためのUSP<208>抗FXa及び抗FIIaアッセイに従って、ヘパリンの抗FXa活性を測定する。この方法は、インビトロでのFXaのアンチトロンビン阻害を加速するヘパリンの能力に基づいており、その場合、残存FXa活性は、発色性FXa基質(CS 11(65))を用いて検出される。IU/mg(国際単位/mg)として表される結果を、低分子量ヘパリンの第2国際標準品に対して、平行線モデルを用いて計算する。
(評価方法D:溶液中のヘパリン断片の抗FXa活性の決定)
ヘパリン断片(0.2mg/mlの最終濃度)、AT(0.03IU/mL)、FXa(0.5μg/mL)、Tris(17mM、pH 7.4)、NaCl(60mM)、HSA(1mg/mL))、及びPEG-6000(2mg/mL)を含有する反応混合物を、基本的には方法Cの通りに、室温で、0、5、10、20、及び30分の時間間隔でインキュベートし、250μlの反応混合物を氷上の試験チューブに移す。その後、150μlのインキュベートされた溶液を150μlの発色性FXa基質(CS 11(65)、0.5mM)を含有するマイクロタイタープレート中のウェルに移すことにより、残存FXa活性を決定する。405nmでの吸光度をプレートリーダー中で速度論的に2分間記録すると、mOD/分(平均光学密度/分)としてのFXa活性が得られる。
(評価方法E:溶液中のヘパリン断片の抗FIIa活性の決定)
AT(0.02IU/mL)、FIIa(2.5IU/ml)、Tris(17mM、pH 7.4)、NaCl(60mM)、HSA(1mg/mL))、及びPEG-6000(2mg/mL)を含有する溶液中のヘパリン断片(0.2mg/ml)を含有する反応混合物を、基本的には方法Cの通りに、室温で、0、5、10、20、及び30分の時間間隔でインキュベートする。反応混合物を氷上の試験チューブに移す。その後、インキュベートされた溶液を発色性FIIa基質(CS 11(38)、0.25mMの最終濃度)を含有するマイクロタイタープレート中のウェルに移すことにより、残存FIIa活性を決定する。405nmでの吸光度をプレートリーダー中で速度論的に2分間記録すると、mOD/分(平均光学密度/分)としてのFIIa活性が得られる。
(評価方法F:固定化されたヘパリン断片の抗FXa活性の決定)
ループを、数本のチュービング(16.5cm、内径2mmの短いPEチュービングを用いて両端を接続するのに必要とされる1.5cmを含む)から調製する。AT(0.03IU/mL)、FXa(0.5μg/mL)、Tris(17mM、pH 7.4)、NaCl(60mM)、HSA(1mg/mL))、及びPEG-6000(2mg/mL)を含有する反応混合物のアリコート(1.5mL)をループに移し、10分間循環させる。インキュベーションの終了時に、反応混合物を氷浴中の試験チューブに移し、150μlのインキュベートされた溶液をマイクロタイタープレート中のウェルに移し、150μlのFXa基質(0.5mM)と混合する。その後、基本的には評価方法Dと同様に、残存FXa活性を決定する。陰性対照として、同じ反応混合物をコーティングされていないPVCチュービングの試験チューブ又はループ中でインキュベートする。結果をコーティングされていないPVCに対して正規化し、結果をFXaの%阻害として表す。
(評価方法G:固定化されたヘパリン断片の抗FIIa活性の決定)
ループ(15cm)を、数本のチュービング(16.5cm、内径2mmの短いPEチュービングを用いて両端を接続するのに必要とされる1.5cmを含む)から調製する。AT(0.02IU/mL)、FIIa(2.5IU/mL)、Tris(17mM、pH 7.4)、NaCl(60mM)、HSA(1mg/mL))、及びPEG-6000(2mg/mL)を含有する反応混合物のアリコートをループに移し、10分間循環させる。インキュベーションの終了時に、反応混合物(250μl)を氷浴中の試験チューブに移す。その後、基本的には評価方法Eと同様に、残存FIIa活性を決定する。陰性対照として、同じ反応混合物をコーティングされていないPVCチュービングの試験チューブ又はループ中でインキュベートした。結果をコーティングされていないPVCに対して正規化し、結果をFIIaの%阻害として表す。
(評価方法H:表面に固定化されたヘパリン断片(ヘパリン密度)の定量)
表面に固定化されたヘパリンの定量を、ヘパリンの完全分解と、それに続く、溶液中に放出された反応産物の比色測定により実施する。ヘパリン表面を過剰な亜硝酸ナトリウムと酸性条件下で反応させることにより、分解を達成する。分解産物、主に、二糖を、基本的には、引用により完全に本明細書中に組み込まれるSmith R.L.及びGilkerson Eの文献(1979), Anal Biochem 98, 478-480に記載されている通りに、MBTH(3-メチル-2-ベンゾチアゾリノンヒドラジン塩酸塩)との反応で比色定量する。
(評価方法I:トルイジンブルー染色試験(ヘパリン分布))
トルイジンブルー染色溶液を用いて、ヘパリン分布を評価する。200mgのトルイジンブルーを1Lの水に溶解させることにより、この溶液を調製する。試料を染色溶液に2分間供した後、徹底的に水ですすぐ。青色/青紫色の染色は、負電荷を有するヘパリン分子が外側のコーティング層に均一に分布していることを示す。
(評価方法J:ヘパリン活性試験(固定化されたヘパリンの機能性))
ヘパリン断片コーティングを含む本発明のプロセスに従ってコーティングされた固体物体については、該固体物体のヘパリン活性を、「様々なフロー条件下での固定化されたヘパリンへのアンチトロンビンの結合(A binding of antithrombin to immobilized heparin under varying flow conditions)」(引用により完全に本明細書中に組み込まれる、Artif. Organs 1991; 15:281-491)所収のPascheらの文献、並びに「トロンビン及び発色性基質H-D-Phe-Pip-Arg-pNAを用いる血漿ヘパリンのアッセイ(Assay of plasmaheparin using thrombin and the chromogenic substrate H-D-Phe-Pip-Arg-pNA)」(S-2238)(引用により完全に本明細書中に組み込まれる、Thromb. Res. 1978; 13:285-288所収のLarsen M. Lらの文献に記載されている通りに、ATに結合するヘパリンの能力(ability)又は能力(capacity)を測定することにより測定することができる。洗浄した試料を過剰なアンチトロンビンとともに溶液中でインキュベートして、ヘパリン表面の全ての利用可能なアンチトロンビン結合部位を飽和させる。非特異的に吸着したアンチトロンビンを、塩溶液を用いてすすぎ落とす。その後、固定化されたヘパリンに特異的に結合したアンチトロンビンを高濃度のヘパリンの溶液とともにインキュベートすることにより放出させる。最後に、ヘパリン表面から放出されたアンチトロンビンを、発色性トロンビン基質に基づくトロンビン阻害アッセイで測定する。結果を、デバイスの見掛けの平方センチメートル当たりの結合したATのピコモル(pmol AT/固体物体表面cm2)として表す。見掛けの固体物体表面積は、複数の被覆表面も、多孔質材料から構成される固体物体の多孔性も考慮に入れない。固体物体の表面が多孔性である場合、表面積に対する多孔性の効果は、これらの計算のために考慮されない。例えば、管状グラフトの内部表面を含む基材材料に固定化されたヘパリンを含む円筒形管状ePTFE血管グラフト(多孔質材料で作られているもの)の見掛けの表面積は、任意の円筒形状の場合と同様に、2πrLとして計算し:ここで、rは、グラフト内半径であり; Lは、軸長であり;かつπは、数字のパイである。この方法を用いて、AT結合活性を有する任意の抗凝固実体の活性を測定することができる。
(評価方法K:溶液中の硫酸デキストランの分子量(アニオンポリマーの分子量))
硫酸デキストラン試料の分子量の決定をゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)機器で実施する。硫酸デキストラン試料を水系溶出媒体に溶解させ、1,000Da~100,000Da(セファロースカラム)又は100,000Da~2,000,000Da(セファクリルカラム)の分子量範囲に好適なGPC機器で分析する。適当な分子量の硫酸デキストラン標準品を用いて、較正曲線の精度を検証する。硫酸デキストランなどのポリマーは、分散分子である、すなわち、様々な分子量平均を伴って記載することができる分子量の分布を有する。一般的に報告される値は、重量平均分子量(Mw)である。GPC技法を用いるポリマーの分子量の決定に関する理論を説明している、Odian G.の文献、重合の原理(Principles of Polymerization)、第3版、第1.4節、分子量(Molecular weight)、p.24(引用により完全に本明細書中に組み込まれる)を参照されたい。硫酸デキストラン以外のアニオンポリマーの分子量は、この方法を用いて決定することができる。
(評価方法L:溶液中の硫酸デキストランの溶液電荷密度(アニオンポリマーの溶液電荷密度))
電荷密度の定量的決定を、高分子電解質溶液(0.001M)(ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド(ポリ-Dadmac)及びポリエチレン硫酸ナトリウム(PES-Na))の滴定により、Mutek粒子電荷検出器で実施する。試料を0.06g/Lの濃度まで水に溶解させる(許容最大粘度6000mPas)。全ての試料溶液について、pHを3に調整する。試料溶液当たり10mLを各々の測定で添加し、その後、適当な高分子電解質溶液を3秒当たり1単位の間隔で滴定する。S. Farrisらの文献、誘電率滴定による高分子電解質多糖の電荷密度定量:分析化学実験(Charge Density Quantification of Polyelectrolyte Polysaccharides by Conductometric Titration: An Analytical Chemistry Experiment)、J. Chem. Educ., 2012, 89(1), pp 121-124(引用により完全に本明細書中に組み込まれる)を参照されたい。硫酸デキストラン以外のアニオンポリマーの溶液電荷密度は、この方法を用いて決定することができる。
(予備的な実施例及び試験)
(末端点結合リンカーが組み込まれた合成五糖の調製)
(一般的な手順)
別途特記されない限り、反応は、窒素の不活性雰囲気下、オーブン乾燥したガラス製品中で、磁気撹拌しながら、空気及び湿気を厳格に排除して実施した。N2フラッシュしたステンレス製のカニューレ又はプラスチックシリンジを用いて、空気及び湿気に感受性のある試薬を移した。酸素を含まない窒素は、BOCガスから入手した。真空中での蒸発は、内蔵型バキュームポンプを有するBuchiロータリーエバポレーターでの揮発性物質の除去を指す。シリカゲルクロマトグラフィーは、Davisil LC60A SiO2(40~63μm)シリカゲルを用いて実施した。反応は全て、薄層クロマトグラフィー(TLC)によりモニタリングした。TLCは、シリカゲル60 F254が予めコーティングされたMerck DC-Alufolienプレート上で実施した。これらは、UV光(254nm)蛍光クエンチングを用いて並びに/又は8%H2SO4浸漬(ストック溶液: 8mLの濃H2SO4、92mLのEtOH)及び/もしくはニンヒドリン浸漬(ストック溶液: 0.3gのニンヒドリン、3mLのAcOH、100mLのEtOH)で炭化することにより可視化した。
(材料)
2つの二糖中間体I.63及びI.66は、Heparin Building Blocksから購入した。他の合成用化学物質は全て、商業的供給業者(Acros、Carbosynth Ltd、Fischer Scientific Ltd、Merck、Sigma-Aldrich Corp、及びVWR)から購入し、それ以上精製することなく使用した。無水CH2Cl2、Et2O、及びTHF反応溶媒は、PureSolv-EN(商標)溶媒精製システムから得た。他の無水溶媒は全て、AcroSeal(登録商標)ボトルでSigma-Aldrichから購入されたまま使用した。
(機器)
1H NMRスペクトルは、400MHz Varian-Inovaスペクトロメーター、500MHz Varian-Inovaスペクトロメーター、又は600MHz Varian-Inovaスペクトロメーターで記録した。13C NMRスペクトルは、400MHz Varian-Inovaスペクトロメーター(101MHz)、500MHz Varian-Inovaスペクトロメーター(126MHz)、又は600MHz Varian-Inovaスペクトロメーター(151MHz)で記録した。化学シフト(δ)は、百万分率(ppm)で記録した。1H NMRスペクトルは、残存溶媒ピークCDCl3(δ=7.26ppm); CD3OD(δ=3.31ppm); D2O(δ=4.79ppm);又は内部TMS(δ=0.00ppm)に対して標準化した。13C NMRスペクトルは、残存溶媒ピークCDCl3(δ=77.16ppm);又はCD3OD(δ=49.00ppm)に対して標準化した。13C NMRは全て、1Hデカップリングされる。NMRデータは全て、次のように表される:化学シフト(δppm)、多重度(s=一重線、d=二重線、t=三重線、q=四重線、dd=二重の二重線、m=多重線)、ヘルツ(Hz)単位の結合定数、積分。帰属は、等核(1H-1H)(COSY)及び異核(1H-13C)(HSQC、HMBC)二次元相関分光法により支援された。高分解能マススペクトロメトリー(HRMS)実験は、ポジティブモード又はネガティブモードのいずれかでエレクトロスプレーイオン化(ESI)を用いて、Waters micromass LCT LC-Tof機器で記録した。
(実施例1:末端点結合リンカーが還元及び非還元末端に組み込まれた合成五糖の合成)
(実施例1.1: 5-アミノペンチル 2-デオキシ-2-スルファミド-6-O-スルホ-α-D-グルコピラノシル-(1→4)-β-D-グルコピラノシルウロン酸-(1→4)-2-デオキシ-2-スルファミド-3,6-ジ-O-スルホ-α-D-グルコピラノシル-(1→4)-2-O-スルホ-α-L-イドピラノシルウロン酸-(1→4)-2-デオキシ-2-スルファミド-6-O-スルホ-β-D-グルコピラノシド)
Figure 2022504294000010
この分子の合成経路の概略は、図5に示されている。
(i)単糖ビルディングブロックBの合成
Figure 2022504294000011
スキーム1。試薬及び条件:中間体I.9の合成。a)EtSH、BF3・Et2O、無水CH2Cl2、0℃→rt、1,5時間、90%; b)CH3ONa、CH3OH、rt、1時間、定量的; c)PhCH(OMe)2、CSA、無水CH3CN、rt、一晩、75%; d)BnBr、NaH、DMF、0℃→rt、2時間、80%; e)AcOH 70%、80℃、1,5時間、90%; f)TEMPO、BAIB、CH2Cl2/H2O 3:1、rt、1時間、65%; g)(CH3)3SiCHN2、無水CH3OH/トルエン1/1、0℃、5分、90%; h)ClCH2COCl、無水ピリジン、無水CH2Cl2、0℃、15分、90%; i)Br2、無水CH2Cl2、0℃→rt、45分、暗所、90%;
(エチル4,6-O-ベンジリデン-1-チオ-β-D-グルコピラノシド、中間体I.3)
Figure 2022504294000012
市販の1,2,3,4,6-ペンタ-O-アセチル-β-D-グルコピラノース(I.1、20.0g、0.05mol、1当量)を無水CH2Cl2(100mL、0.5M)に溶解させ、エタンチオール(5.4mL、0.075mol、1.5当量)を窒素雰囲気下で添加した。溶液を0℃に冷却し、三フッ化ホウ素エーテレート(12.3mL、0.1mol、2当量)をゆっくりと添加して、反応液を室温に到達させた。1時間後、TLC(シクロヘキサン/酢酸エチル1:1)により、出発材料から生成物への完全な変換が示された。反応液を氷上に置き、TEAでクエンチした。溶媒を蒸発させ、粗製物を、シクロヘキサン/酢酸エチル(80/20→60/40)を用いるフラッシュクロマトグラフィーにより精製すると、中間体I.2(18.8g、0.048mol、96%)が白色の固形物として得られた(Rf(シクロヘキサン/酢酸エチル6:4) 0.48。1H NMRは、文献J. Am. Chem. Soc., 2013, 135(45), 16895-16903と一致している)。
中間体I.2をメタノール(100mL、0.5M)に溶解させ、ナトリウムメトキシド粉末(0.5g、0.01mol、0.2当量)を添加した。反応液を室温で一晩撹拌した(TLCシクロヘキサン/酢酸エチル1:1;ジクロロメタン/メタノール8:2)。その後、反応液を酸性樹脂DOWEX H+で中和し、濾過し、濃縮した。得られた脱保護糖(10.7g、0.048mol、1当量)を無水DMF(100mL、0.5M)に溶解させ、ベンズアルデヒドジメチルアセタール(14.3mL、0.096mol、2当量)及びカンファー-10-スルホン酸(5.6g、0.024mol、0.5当量)を添加した。反応液を50℃で一晩撹拌し、その後、氷上に置き、TEAでpH 7までクエンチした。溶媒を減圧下で蒸発させ、粗製物を、シクロヘキサン/酢酸エチル(50/50→30/70)を用いるフラッシュクロマトグラフィーにより精製すると、中間体I.3(12.6g、0.04mol、84%)が白色の固形物として得られた(Rf(シクロヘキサン/酢酸エチル1:1) 0.35。
Figure 2022504294000013
文献Carbohydrate Research, 1992, 225, 229 - 245と一致している。
(エチル 2,3-ジ-O-ベンジル-4,6-O-1-チオ-β-D-グルコピラノシド、中間体I.5)
Figure 2022504294000014
中間体I.3(4.28g、13.7mmol、1当量)の無水DMF溶液を0℃に冷却し、NaH(油中60%、1.64g、68.5mmol、5当量)を添加した。懸濁液を0℃で10分間撹拌し、その後、臭化ベンジル(6.3mL、54.8mmol、4当量)を添加した。反応液を室温で1時間撹拌した。TLC(シクロヘキサン/酢酸エチル1:1)により、出発材料から生成物への完全な変換が示された。反応液を氷上に置き、メタノール(~15mL)及び水(~30mL)でクエンチした。全体をEtOAc(250mL)で希釈し、抽出した。有機層を水(2×200mL)で洗浄し、MgSO4上で乾燥させ、蒸発させた。残渣をEtOHに溶解させ、得られた沈殿である中間体I.4(5.96g、12.1mmol、88%)を濾過し、それ以上精製することなく、次の工程で使用した(Rf(シクロヘキサン/酢酸エチル9:1) 0.35。1H NMRは、文献Carbohydrate Research, 1992, 225, 229 - 245と一致している)。
中間体I.4(2.4g、4.8mmol、1当量)の70%水性AcOH(25mL)溶液を80℃で4時間還流させた(TLCシクロヘキサン/酢酸エチル7:3)。この溶液を濃縮し、得られた残渣を、シクロヘキサン/酢酸エチル(90/10→20/80)を用いる自動フラッシュクロマトグラフィーにより精製すると、中間体I.5(1.6g、3.9mmol、81%)が得られた(Rf(シクロヘキサン/酢酸エチル4:6) 0.46。
Figure 2022504294000015
文献Journal of Organic Chemistry, 2013, 78(9), 4319 - 4328と一致している。
(メチル(エチル 2,3-ジ-O-ベンジル-1-チオ-β-D-グルコピラノシド)ウロネート、中間体I.7)
Figure 2022504294000016
激しく撹拌した中間体I.5(1.6g、3.9mmol、1当量)の2:1のCH2Cl2/H2O(30mL)溶液に、TEMPO(0.2g、0.78mmol、0.2当量)及びBAIB(3.1g、9.7mmol、2.5当量)を添加した。TLC(CH2Cl2/CH3OH 9:1+1%AcOH)により、出発材料からより低い泳動スポットへの完全な変換が示されるまで(~45分)、撹拌させておいた。10mlのNa2S2O3溶液(H2O中10%)の添加により、反応混合物をクエンチした。水性相を1M HClでpH 2まで酸性化し、その後、混合物をCH2Cl2で2回抽出した。合わせた有機層をMgSO4上で乾燥させ、濾過し、濃縮した。シクロヘキサン/酢酸エチル(1:1+1%AcOH)を用いるフラッシュカラムクロマトグラフィーにより、純粋なグルクロン酸I.6(1.04g、2.48mmol、63%)が白色の泡状物として得られた(Rf(シクロヘキサン/酢酸エチル(1:1+1%AcOH) 0.52。1H NMRは、文献Organic Letters, 2004, vol. 6, 13, 2165 - 2168と一致している)。
中間体I.6(1.03g、2.4mmol、1当量)を1:1の無水メタノール/無水トルエン(12mL、0.2M)に溶解させ、溶液を0℃に冷却した。ジエチルエーテル-トリメチルシリルジアゾメタン-(1.5mL、2.9mmol、1.2当量)中の2M Me3SiCHN2を添加した。5分後、TLC分析(シクロヘキサン/酢酸エチル1:1+1%AcOH)により、生成物の形成が示された。反応液を酢酸の添加によりクエンチし、蒸発させた。得られた残渣を、80/20のシクロヘキサン/酢酸エチルを用いる自動フラッシュクロマトグラフィーにより精製すると、中間体I.7(0.945g、2.2mmol、90%)が無色の油状物として得られた(Rf(シクロヘキサン/酢酸エチル6:4) 0.48。
Figure 2022504294000017
文献Organic Letters, 2004, vol. 6, 13, 2165 - 2168と一致している。
(メチル(2,3-ジ-O-ベンジル-4-O-クロロアセチル-α-D-グルコピラノシルブロミド)ウロネート、中間体I.9)
Figure 2022504294000018
中間体I.7(0.800g、1.85mmol、1当量)の無水CH2Cl2(18mL、0.1M)溶液を0℃に冷却し、無水ピリジン(3.0mL、37.0mmol、20当量)及びクロロアセチルクロリド(0.3mL、3.7mmol、2当量)を添加した。反応液を0℃で10分間撹拌し、その後、TLC(シクロヘキサン/酢酸エチル6:4)により、出発材料から生成物への完全な変換が示された。反応液をCH2Cl2で希釈し、1M HCl、飽和水性NaHCO3、及びブラインで洗浄した。有機相をMgSO4上で乾燥させ、濾過し、蒸発させた。粗製物を、8:2のシクロヘキサン/酢酸エチルを用いるフラッシュクロマトグラフィーにより精製すると、純粋な中間体I.8(0.860g、1.68mmol、91%)が白色の固形物として得られた(Rf(シクロヘキサン/酢酸エチル8:2) 0.38。1H NMR及び13C NMRは、文献Carbohydrate Research, 2003, 338, 23, 2605 - 2609と一致している)。
中間体I.8(860mg、1.68mmol、1当量)の無水CH2Cl2(17mL、0.1M)溶液に、臭素(0.095mL、1.85mmol、1.1当量)を添加した。反応液を、暗所、室温で1時間撹拌し、その後、シクロヘキセンでクエンチし、真空下で蒸発させた。粗製物を、8:2のシクロヘキサン/酢酸エチルを用いるフラッシュクロマトグラフィーにより精製すると、純粋な中間体I.9(822mg、1.55mmol、92%)が油状物として得られた(Rf(シクロヘキサン/酢酸エチル8:2) 0.39。
Figure 2022504294000019
ESI-MS: C23H25BrClO7[M]の計算値: 527.05、実測値550.60[M+Na+])。
(ii)単糖ビルディングブロックCの合成
Figure 2022504294000020
スキーム2。試薬及び条件:中間体I.16の合成。a)CH3OH/H2O/TEA 10:10:1、rt、1,5時間、定量的; b)工程I:ビス(トリブチルスタンニル)オキシド、無水CH3CN、分子篩3Å、80℃、3時間、工程II:ヨウ素、rt、1時間、65%; c)NaN3、DMF/H2O 9:1、120℃、一晩、70%; d)TBDMSCl、イミダゾール、DMF、rt、一晩、65%; e)Ac2O、Py、rt、一晩, 90%; f)70%AcOH、80℃、一晩、75%。
(1,6-アンヒドロ-2-デオキシ-2-ヨード-β-D-グルコース、中間体I.12)
Figure 2022504294000021
市販のトリ-O-アセチル-D-グルカール(I.10、25.0g、91.8mmol、1当量)の10:10:1のCH3OH/H2O/TEA(210mL)溶液を室温で2時間撹拌した。TLC(CH2Cl2/CH3OH 9:1)により、出発材料から中間体I.11への完全な変換が示された。溶液を真空下で濃縮し、Schlenckで一晩乾燥させた。この粗製物を、それ以上精製することなく、次の工程でそのまま使用した。
中間体I.11を、N2下、還流無水アセトニトリル中で3時間、ビス-トリ-n-ブチルスズオキシド(37.4mL、73.4mmol、0.8当量)及び新たに活性化された粉末状の3Å分子篩で処理した。混合物を5℃に冷却し、ヨウ素(35g、137.7mmol、1.5当量)を添加し、混合物を室温で2時間撹拌した(TLC CH2Cl2/CH3OH 9:1)。混合物をセライトに通して濾過し、溶媒を濃縮した。飽和水性Na2S2O3及びシクロヘキサン(1:1、300mL)を粗製物に添加し、二相混合物を一晩撹拌した。水性相を酢酸エチル(500mL×3)で抽出した。有機層をMgSO4上で乾燥させ、濾過し、濃縮した。トルエン/アセトン(95/5→60/40)を用いるクロマトグラフィーによる精製により、I.12(11.7g、43.0mmol、58%)が白色の固形物として得られた(Rf(トルエン/アセトン7:3) 0.42。
Figure 2022504294000022
文献Macromolecules 2002, 35, 3402-3412と一致している。
(1,6-アンヒドロ-2-アジド-2-デオキシ-4-O-(tert-ブチルジメチルシリル)-β-D-グルコース、中間体I.14)
Figure 2022504294000023
中間体I.12(4.0g、15.0mmol、1当量)をDMF/H2O 9:1(30mL、0.5M)に溶解させ、アジ化ナトリウム(3.9g、60.0mmol、4当量)を添加した。反応液を120℃で4時間撹拌した。TLC(トルエン/アセトン7:3)により、出発材料から生成物への完全な変換が示された。溶媒を蒸発させ、残渣をトルエン/アセトン(95/5→60/40)を用いるクロマトグラフィーにより精製すると、I.13(2.18g、11.6mmol、78%)が白色の固形物として得られた(Rf(トルエン/アセトン7:3) 0.39。
Figure 2022504294000024
文献Tetrahedron Letters, 2001, 42, 6487-6489と一致している。
中間体I.13(2.07g、11.1mmol、1当量)のDMF(20mL、0.5M)溶液に、イミダゾール(2.0g、13.3mmol、1.2当量)及びtert-ブチルジメチルシリルクロリド(1.5g、22.2mmol、2当量)を添加した。室温で一晩撹拌した後、溶媒を真空中で蒸発させ、粗製物を、シクロヘキサン/酢酸エチル(95/5→60/40)を用いるクロマトグラフィーにより精製すると、中間体I.14(2.25g、7.4mmol、67%)が無色の油状物として得られた(Rf(シクロヘキサン/酢酸エチル7:3) 0.4。
Figure 2022504294000025
(1,6-アンヒドロ-3-O-アセチル-2-アジド-2-デオキシ-β-D-グルコース、中間体I.16)
Figure 2022504294000026
中間体I.14(7.29g、24.2mmol、1当量)をピリジン(100mL、025M)に溶解させ、無水酢酸(22mL、10当量)を添加した。反応液を室温で一晩撹拌し、その後、余分な無水酢酸をメタノールでクエンチし、混合物を蒸発させた。粗製物を、シクロヘキサン/酢酸エチル(95/5→60/40)を用いるクロマトグラフィーにより精製すると、中間体I.15(7.68g、22.3mmol、92%)が白色の固形物として得られた(Rf(シクロヘキサン/酢酸エチル7:3) 0.44。1H NMR及び13C NMRは、文献J. Org. Chem. 1997, 62, 992-998と一致している)。
中間体I.15(3.0g、8.7mmol、1当量)を70%水性酢酸(120mL)に溶解させ、80℃で一晩加熱した。TLC(シクロヘキサン/酢酸エチル6:4)により、出発材料から生成物への完全な変換が示された。溶媒を蒸発させ、粗製物を、シクロヘキサン/酢酸エチル(95/5→60/40)を用いる自動クロマトグラフィーにより精製すると、中間体I.16(1.58g、6.9mmol、80%)が油状物として得られた(Rf(シクロヘキサン/酢酸エチル4:6) 0.35。
Figure 2022504294000027
ESI-MS: C8H11N3O5[M]の計算値: 229.07、実測値251.23[M+Na+]; 479.90[2M+Na+]は、1H NMR及び13C NMRは、文献J. Org. Chem. 1997, 62, 992-998と一致している)。
(iii)単糖ビルディングブロックAの合成
Figure 2022504294000028
スキーム3。試薬及び条件:中間体I.20の合成。a)BnBr、NaH、DMF、0℃→rt、1時間、85%; b)Ac2O、TBSOTf、0℃、10'、85%; c)EDA、AcOH、THF、rt、一晩、75%; d)Cl3CCN、DBU、無水CH2Cl2、3時間、rt、85%。
(1,6-O-ジアセチル-2-アジド-3,4-ジ-O-ベンジル-2-デオキシ-グルコピラノシド、中間体I.18)
Figure 2022504294000029
中間体I.13(500mg、2.7mmol、1当量)を無水DMF(13.5mL、0.2M)に溶解させ、溶液を0℃に冷却した。NaH(324mg、13.5mmol、5当量)を添加し、次いで、10分後に、BnBr(1.3mL、10.8mmol、4当量)を添加した。30分後、TLC(シクロヘキサン/酢酸エチル4:6)により、生成物の形成が示された。反応液をメタノール及び水でクエンチした。混合物を分液漏斗に注ぎ入れ、CH2Cl2(×3)で抽出した。回収した有機相をMgSO4上で乾燥させ、蒸発させた。粗製物を、シクロヘキサン/酢酸エチル(95/5→70/30)を用いる自動クロマトグラフィーにより精製すると、中間体I.17(846mg、2.3mmol、85%)が油状物として得られた(Rf(シクロヘキサン/酢酸エチル3:7) 0.55。
Figure 2022504294000030
中間体I.17(846mg、2.3mmol、1当量)を無水酢酸(5mL、0.5M)に溶解させ、溶液を0℃に冷却した。TBSOTfを添加し、反応液を10分後にTLC(シクロヘキサン/酢酸エチル8:2)でチェックすると、生成物の形成が示された。反応液をTEAでクエンチし、真空中で濃縮した。粗製物を、シクロヘキサン/酢酸エチル(90:10→60:40)を用いる自動フラッシュクロマトグラフィーにより精製すると、α/β混合物中の中間体I.18(930mg、2.0mmol、87%)が白色の泡状物として得られた(Rf(シクロヘキサン/酢酸エチル8:2) 0.35。
Figure 2022504294000031
ESI-MS: C24H27N3O7[M]の計算値: 469.18、実測値492.04[M+Na+]; 961.22[2M+Na+])。
(6-O-アセチル-2-アジド-3,4-ジ-O-ベンジル-2-デオキシ-α-D-グルコピラノシルトリクロロアセトイミデート、中間体I.20)
Figure 2022504294000032
中間体I.18(400mg、0.85mmol、1当量)をTHF(8.5mL、0.1M)に溶解させ、エチレジアミン(ethylediamine)(87μl、1.3mmol、1.5当量)及び酢酸(74μl、1.3mmol、1.5当量)を添加した。反応液を室温で一晩撹拌し、その後、これをCH2Cl2で希釈し、1M HClで洗浄した。水性相をCH2Cl2で2回抽出した。合わせた有機層を水性飽和NaHCO3及びブラインで洗浄し、MgSO4上で乾燥させ、蒸発させた。粗製物を自動クロマトグラフィー(シクロヘキサン/酢酸エチル85/15→40/60)により精製すると、中間体I.19(347mg、0.81mmol、95%)が白色のろうとして得られた(Rf(シクロヘキサン/酢酸エチル6:4) 0.40。
Figure 2022504294000033
トリクロロアセトニトリル(0.812mL、8.1mmol、10当量)及びDBU(24μL、0.162mmol、0.2当量)を中間体I.19(347mg、0.81mmol、1当量)の無水CH2Cl2(8mL、0.1M)溶液に添加し、反応混合物を、Ar下、室温で2時間撹拌した。濃縮後、残渣を、シクロヘキサン/酢酸エチル(8:2+1%TEA)で溶出させるフラッシュクロマトグラフィーにより精製すると、I.20(439mg、95%)が90%αアノマーとして得られた(Rf(シクロヘキサン/酢酸エチル6:4) 0.52。
Figure 2022504294000034
文献Carbohydrate Research 2003, 338, 1369-1379と一致している。
(iv)単糖ビルディングブロックDの合成
Figure 2022504294000035
スキーム4 試薬及び条件:中間体I.32の合成。a- NaH、BnBr、THF、0℃→rt、b)2時間; H2O/AcOH、40℃、一晩、79%(2工程); c)MsCl、ピリジン、0→4℃、一晩、98%; d)KOAc、18-クラウン-6、MeCN、92℃、24時間、89%; e)CH2Cl2tBuOK、tBuOH、0℃、一晩、89%; f)ジオキサン、2M H2SO4、100℃、一晩、45%; g)ピリジン、Ac2O、0℃→rt、一晩 91%の27; h)TMSOTf、CH2Cl2、Ac2O、0℃、20分、87%; i)BF3・Et2O、HSPh、CH2Cl2、0℃→rt、4時間、90%; j)MeOH、NaOMe、rt、一晩、92%; k)CSA、DMF、ナフチルジメチルアセタール、60℃、一晩、84%; l)BzCl、ピリジン、0℃→rt 一晩、89%。
(3-O-ベンジル-1,2-O-イソプロピリデン-α-D-グルコフラノース、中間体I.22)
Figure 2022504294000036
市販のジアセトングルコースI.21(20g、76.84mmol、1当量)を無水THF(150mL)に溶解させ、0℃に冷却した。60%NaH(5.1g、126.8mmol、1.65当量)を添加し、混合物を30分間撹拌した。その後、BnBr(13.7mL、115.3mmol、14mLの無水DMF中1.5当量)をゆっくりと添加し、混合物を温めてrtに戻し、2時間撹拌すると、TLCにより、残存する出発材料が示されなかった。混合物を0℃に冷却し、MeOH(264mL、6500mmol、85当量)をゆっくりと添加して、反応液をクエンチし、氷上でさらに10分間撹拌した。溶媒を濃縮し、得られた残渣をCH2Cl2に溶解させ、H2O及びブラインで順次洗浄した。水性抽出物を追加のCH2Cl2で再抽出した。合わせた有機層をブラインで洗浄し、その後、MgSO4上で乾燥させ、濾過し、濃縮すると、黄色のシロップが得られ、これを、それ以上精製することなく、そのまま使用した。粗製物をH2O:AcOH溶液(96mL 1:1 v/v)に溶解させ、45℃で4.5時間撹拌し、その後、50℃まで1時間加熱した。変換がまだ完了していなかったので、追加の48mL H2Oを添加し、反応液を40℃で一晩撹拌した。その後、飽和水性K2CO3溶液の慎重な添加により、反応液を中和し、分液漏斗に移し、CH2Cl2で3回抽出した。合わせた有機をブラインで2回洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、濾過し、濃縮すると、黄色のシロップが得られ、これをカラムクロマトグラフィー(Tol/EtOAc 8~66%)により精製すると、中間体I.22(黄色のシロップとしての18.33g(59.06mmol、2工程で77%))が得られた(Rf:(Tol/EtOAc 2:1 v/v) 0.15。
Figure 2022504294000037
(3-O-ベンジル-1,2-O-イソプロピリデン-5,6-ジ-O-メタンスルホニル-α-D-グルコフラノース、中間体I.23)
Figure 2022504294000038
中間体I.22(18.33g、58.97mmol、1当量)を無水ピリジン(88mL)に溶解させ、0℃に冷却し、その温度で5分間撹拌した後、MsCl(11mL、141.53mmol、2.4当量)をゆっくりと添加した。混合物をその温度で30分間撹拌し、その後、4℃に温め、一晩撹拌した。翌日、追加のMsCl(2mL、25.88mmol、0.44当量)を添加し、4℃で2時間撹拌して、反応液を維持し、その後、H2O(500mL、50℃)に注ぐと、沈殿の形成がもたらされた。混合物をrtに冷却しておき、一晩静置した。固形物を濾過により回収し、H2Oで洗浄し、その後、トルエンとともに2回共蒸発させ、乾燥させると、中間体I.23(26.2g、58.68mmol、98%)が白色の固形物として得られた(Rf:(シクロヘキサン/EtOAc、3:2 v/v) 0.31。
Figure 2022504294000039
(6-O-アセチル-3-O-ベンジル-1,2-O-イソプロピリデン-5-O-メタンスルホニル-α-D-グルコフラノース、中間体I.24)
Figure 2022504294000040
中間体I.23(19.7g、42.23mmol、1当量)、無水KOAc(41.44g、422.3mmol、10当量)、及び18-クラウン-6(1.11g、4.22mmol、0.1当量)をMeCN(350mL)に溶解させ、92℃で24時間加熱すると、TLCにより、出発材料の消費が示された。反応混合物を冷却してrtに戻し、濾過し、追加のMeCNですすいだ。濾液を濃縮し、得られた残渣をCH2Cl2に溶解させ、水で2回洗浄した。合わせた水性抽出物を追加のCH2Cl2で抽出し、合わせた有機層をMgSO4上で乾燥させ、濾過し、濃縮した。得られた固形物をEtOHから再結晶化すると、結晶が得られ、これを濾過により単離し、冷EtOHで3回洗浄すると、中間体I.24(16.1g、37.4mmol、89%)が白色の結晶として得られた(Rf: 0.61(シクロヘキサン/EtOAc、3:2 v/v)
Figure 2022504294000041
(5,6-アンヒドロ-1,2-O-イソプロピリデン-3-O-ベンジル-β-L-イドフラノース、中間体1.25)
Figure 2022504294000042
中間体I.24(16.1g、37.43mmol、1当量)を無水CH2Cl2(170mL)に溶解させ、無水tBuOK(8.4g、74.86mmol、2当量)及びtBuOH(80.5mL、842.18mmol、22.5当量)を0℃で添加し、混合物をその温度で一晩撹拌した。翌日、追加の無水tBuOK(1.5g、13.34mmol、0.36当量)を添加し、反応液をさらに4時間撹拌した後、H2O及びCH2Cl2で希釈し、円錐フラスコに移した。AcOHをゆっくりと添加して、混合物を慎重に中和した。その後、層を分離し、水性層をCH2Cl2で1回抽出した。合わせた有機層をブラインで1回洗浄し、MgSO4上で乾燥させ、濾過し、濃縮した。得られた褐色の油状物を、シクロヘキサン/EtOAc(3:2)でシリカの短いプラグを通すクロマトグラフィーにより精製すると、中間体I.25(9.76g(33.39mmol、89%)が黄色のシロップとして得られた(Rf:(シクロヘキサン/EtOAc、3:2 v/v) 0.6。
Figure 2022504294000043
(2,4-ジ-O-アセチル-1,6-アンヒドロ-3-O-ベンジル-β-L-イドピラノース、中間体I.27)
Figure 2022504294000044
中間体I.25(8.5g、29.1mmol、1当量)を1,4-ジオキサン:2M H2SO4の溶液(36mL、1:1(v/v)に溶解させ、100℃で一晩還流させた。翌日、反応液を冷却してrtにまで戻し、飽和水性Ba(OH)2・8H2Oの添加により中和し、固形物を濾過により除去し、H2O及びEtOAcで洗浄した。層を分離し、水性層をEtOAcでさらに3回抽出し、合わせた有機層をH2Oで1回洗浄し、MgSO4上で乾燥させ、濾過し、濃縮した。得られた残渣をからEtOHから再結晶化すると、中間体I.26が黄色の固形物として得られた。母液をフラッシュクロマトグラフィー(シクロヘキサン/EtOAc 10~80%)により精製すると、追加のI.26が黄色の固形物が得られ、合計3.3g(13.1mmol、45%)が得られた(Rf: 0.17(シクロヘキサン/EtOAc、3:2 v/v)。1H NMR及び13C NMRは、文献Carbohydr. Res. 2008, 343(4), 596-606と一致している。中間体I.26(2.87g、11.38mmol、1当量)を無水ピリジン(23mL)に溶解させ、氷上で冷却した。Ac2O(15mL)をゆっくりと添加し、反応液を温めてrtに戻し、一晩撹拌した。翌日、反応液を氷上に戻し、H2O(30mL)でクエンチし、CH2Cl2(120mL)で希釈した。その後、これを、2M HCl、飽和水性NaHCO3、H2O、及びブラインで順次洗浄した。有機層をMgSO4上で乾燥させ、濾過し、濃縮し、残渣をフラッシュクロマトグラフィー(シクロヘキサン/EtOAc 8~66%)により精製すると、中間体I.27(3.47g、10.3mmol、91%)が黄色の固形物として得られた(Rf:(シクロヘキサン/EtOAc、3:2 v/v) 0.37。
Figure 2022504294000045
(フェニル 2,4,6-トリ-O-アセチル-3-O-ベンジル-1-チオ-α-L-イドピラノシド、中間体I.29)
Figure 2022504294000046
中間体I.27(300mg、0.89mmol、1当量)を無水CH2Cl2(5mL)に溶解させ、氷上に置いた。次に、Ac2O(2mL)を添加し、その後、TMSOTf(15μL、0.083mmol、0.09当量)をN2下で添加した。反応液を氷上で5分間撹拌した後、温めてrtに戻した。20分後、TLCにより、出発材料の消費及び2つの新しいスポットRf 0.40及び0.33(Tol:EtOAc、2:1 v/v)の形成が示され、反応液をNEt3の添加によりクエンチした。溶媒を除去し、得られたシロップをフラッシュクロマトグラフィー(Tol/EtOAc 8~66%)により精製すると、テトラアセテートI.28のアノマー混合物(340mg、0.78mmol、87%)が得られ、これを、それ以上特徴解析することなく使用した。
中間体I.28(333mg、0.76mmol、1当量)を無水CH2Cl2(7mL)に溶解させ、氷上に置いた。HSPh(90μL、0.84mmol、1.1当量)を添加し、混合物を5分間撹拌した後、BF3・Et2O(0.28mL、2.28mmol、3当量)を添加した。反応混合物を温めてrtにまで戻しておき、3時間撹拌した後、追加のBF3・Et2O(0.15mL、1.22mmol、1.6当量)をrtで添加した。終了したら、反応液を氷上に置き、5mLの飽和水性NaHCO3でクエンチし、層を分離した。有機層をH2Oで洗浄し、MgSO4上で乾燥させ、濾過し、濃縮した。得られた残渣をフラッシュクロマトグラフィー(Tol/EtOAc 5~40%)により精製するとI.29(335mg、0.69mmol、90%)がややオレンジ色のシロップとして得られた(Rf: 0.67(Tol/EtOAc、2:1 v/v)
Figure 2022504294000047
(フェニル 3-O-ベンジル-1-チオ-α-L-イドピラノシド、中間体I.30)
Figure 2022504294000048
中間体I.29(890mg、1.82mmol、1当量)を無水MeOH(9mL)に溶解させ、新たに調製したNaOMeを添加し、混合物をrtで一晩撹拌した。翌日、DOWEX 50 WX8酸樹脂を添加して、反応液をクエンチし、濾過し、追加のMeOHで洗浄した。濾液を濃縮すると、I.30(606mg、1.67mmol、92%)が黄色の泡状物として得られた。
Figure 2022504294000049
(フェニル 2-O-ベンゾイル-3-O-ベンジル-4,6-O-(1-ナフチル)メチリデン-1-チオ-α-L-イドピラノシド、中間体I.32)
Figure 2022504294000050
中間体I.30(1.55g、4.38mmol、1当量)を20mLの無水CH2Cl2に溶解させ、フラスコをホイルで覆って、光を遮断した。その後、ZnI2(2.78g、17.5mmol、2当量、遮光しながら8時間乾燥させたもの)、次いで、TMSSPh(2.5mL、13.1mmol、3当量)を室温で添加した。反応液を一晩撹拌した。翌日、TLCにより、出発材料が消失し、2つの新しいスポットが出現したことが示された。反応混合物をセライトのパッドに通して濾過し、濾液が透明になるまで、該パッドをCH2Cl2で洗浄した。H2O(5mL)及び1,4ジオキサン(5mL)中の9M HCl(15mL)を濾液に添加し、TLCにより、高い方のスポットの消失が示されるまで、混合物を室温で激しく撹拌した。層を分離し、有機層を、2M HCl、飽和水性NaHCO3溶液、及びH2Oで洗浄した。その後、これをMgSO4上で乾燥させ、濾過し、濃縮し、得られたシロップを、4:1→1:1(シクロヘキサン/EtOAc)を用いるカラムクロマトグラフィーにより精製すると、中間体I.31(1.56g、3.34mmol、75%)が白色の泡状物として得られた(1H NMRは、文献J. Org. Chem. 2013, 78(14), 6911-6934と一致している)。
中間体I.31(390mg、0.84mmol、1当量)を2.5mLの無水DMFに溶解させ、カンファースルホン酸(136mg、0.59mmol、0.7当量)及びベンズアルデヒドジメチルアセタール(0.4mL、2.51mmol、3当量)を添加し、その後、混合物を60℃に加熱し、一晩撹拌した。翌日、反応液を冷却して室温に戻し、氷上に置いた後、NEt3でクエンチした。溶媒を真空中で除去し、粗製物をシクロヘキサンとともに2回共蒸発させた。粗製物を4:1→2:1のシクロヘキサン/酢酸エチルで精製すると、中間体I.32(360mg、0.65mmol、78%)が白色の泡状物として得られた。
Figure 2022504294000051
文献Carbohydr. Res. 2008, 343(4), 596-606と一致している。
(v)単糖ビルディングブロックEの合成
Figure 2022504294000052
スキーム5 試薬及び条件:中間体I.41の合成。a)MeOH/H2O、NaOH、NaHCO3、無水フタル酸、rt、3時間; b)ピリジン、Ac2O、0℃→rt、一晩、47%(2工程); c)HSEt、TMSOTf、Cl CH2CH2Cl、0→rt→40℃、5時間、86%;d)MeOH、NaOMe、rt、一晩; e)CSA、ベンズアルデヒドジメチルアセタール、DMF、60℃、一晩、77%(2工程); f)NH2CH2CH2NH2、EtOH、80℃、2時間、95%; g)MeOH、THF、K2CO3、Cu(II)SO4・5 H2O、0℃→rt、1H-イミダゾール-1-スルホニルアジド塩酸塩、5時間、87%; h)NaH、BnBr、DMF、0℃→rt、3.5時間、91%; i)無水MeOH/CH2Cl2、CSA、rt、5時間、92%; j)CH2Cl2、ピリジン、BzCl、-50℃、2時間、88%; j)
(エチル 3,4,6-トリ-O-アセチル-2-デオキシ-2-フタルイミド-1-チオ-β-D-グルコピラノシド、中間体I.35)
Figure 2022504294000053
市販のI.33(20g、92.8mmol、1当量)を120mLの1:2 v/v MeOH:H2O溶液に溶解させ、これに、NaOHペレット(4.3g、107.59mmol、1.16当量)を添加し、ペレットが完全に溶解するまで、rtで撹拌した。その後、無水フタル酸(15.93g、107.59mmol、1.16当量、アセトンに溶解させたもの)を混合物に添加し、3時間撹拌した後、追加の無水フタル酸(6.18g、41.74mmol、0.45当量)及びNaH CO3(15.58g、185.5mmol、2当量)を添加した。その後、溶液を4M HClでpH 1まで酸性化し、溶媒の容量を半分に減らした。混合物をrtで一晩静置しておくと、沈殿の形成がもたらされた。反応容器を氷浴で1時間冷却して、さらなる沈殿を助けた後、濾過して、白色の固形物を回収した。該固形物を冷蒸留水及び冷EtOHで2回洗浄した。その後、得られた固形物を真空下で乾燥させ、その後、ピリジン(200mL)に懸濁させ、氷上で冷却した。Ac2O(180mL)を、30分かけて滴下漏斗に通して、ゆっくりと添加し、全て添加した後、反応混合物を温めてゆっくりとrtに戻しておき、一晩撹拌した。トルエンで繰り返し共蒸発させることにより、溶媒を除去し、得られた残渣をCH2Cl2に溶解させ、2M HCl、飽和水性NaHCO3、H2O、及びブラインで順次洗浄した。有機層をMgSO4上で乾燥させ、濾過し、濃縮し、得られた残渣をEtOHで希釈し、一晩撹拌すると、生成物が白色の固形物として沈殿した。該固形物を濾過により単離し、冷EtOHで洗浄し、真空下で乾燥させると、中間体I.34(20.8g、43.56mmol、47%)が白色の固形物として得られた(Rf: 0.26(シクロヘキサン/EtOAc、3:2 v/v)。1H NMR及び13C NMRは、文献Synlett 2008, 2008(10), 1483-1486と一致している)。
中間体I.34(21.5g、45.03mmol、1当量)を220mLの無水ClCH2CH2Clに溶解させ、氷上に置いた。HSEt(8.12mL、112.58mmol、2.5当量)を添加し、混合物を5分間撹拌した後、TMSOTf(12.1mL、67.55mmol、1.5当量)を添加し、氷上で30分間撹拌し、その後、温めてrtに戻した。30分後、混合物を40℃に加熱し、4時間後、出発材料はもはやTLCで見えなかった。反応混合物を冷却してrtに戻し、氷上に置き、NEt3(18.8mL、135.1mmol、3当量)でクエンチした。溶媒を蒸発させ、得られた残渣をEtOAcに溶解させ、H2O、飽和水性NaHCO3、及びブラインで洗浄した。有機層をMgSO4上で乾燥させ、濾過し、濃縮すると、黄色のシロップが得られ、これをフラッシュクロマトグラフィー(Tol/EtOAc 5~40%)により精製すると、中間体I.35(18.5g、38.58mmol、86%)が白色の泡状物として得られた(Rf: 0.24(Tol/EtOAc、6:1 v/v)
Figure 2022504294000054
文献Carbohydr. Res. 1985, 139, 105-113と一致している。
(エチル 2-アミノ-4,6-O-ベンジリデン-2-デオキシ-1-チオ-β-D-グルコピラノシド、中間体I.37)
Figure 2022504294000055
中間体I.35(18.3g、39.32mmol、1当量)を無水MeOH(180mL)に懸濁させ、新たに調製したNaOMeをrtで添加し、混合物を一晩撹拌した。その後、反応液を、DOWEX 50WX8酸樹脂の添加により、pH 7に達するまでクエンチし、その後、混合物を濾過し、MeOHで洗浄した。得られた濾液を濃縮し、トルエンとともに1回共蒸発させた。粗材料を一晩乾燥させた後、無水DMF(140mL)に溶解させた。その後、ベンズアルデヒドジメチルアセタール(17.7mL、117.96mmol、3当量)及びCSA(6.39g、27.52mmol、0.7当量)を添加し、混合物を60℃で加熱し、一晩撹拌した。翌日、混合物をrtに冷却し、氷上に置き、NEt3(16.4ml、117.96mL、3当量)でクエンチした。溶媒を真空中で除去し、得られた残渣をシクロヘキサンとともに2回共蒸発させた。その後、得られたシロップをフラッシュクロマトグラフィー(Tol/EtOAc 5~40%)により精製すると、中間体I.36(13.4g、30.4mmol、77%)が白色の泡状物として得られた(Rf: 0.37(Tol/EtOAc、4:1 v/v)。1H NMR及び13C NMRは、文献European J. Org. Chem. 2009, 2009(7), 997-1008と一致している)。
中間体I.36(4.2g、9.51mmol、1当量)をEtOH(100mL)に懸濁させ、エチレンジアミン(24mL、380.4mmol、40当量)を添加し、混合物を80℃で2時間撹拌すると、TLCにより、出発材料は、それ以上示されなかった。該混合物を冷却してrtに戻し、溶媒を真空中で除去し、得られた黄色の残渣をMeCNとともに2回及びトルエンとともに1回共蒸発させた。残渣をカラムクロマトグラフィー(100 CH2Cl2→95:5 CH2Cl2/MeOH)により精製すると、中間体I.37(2.8g、8.99mmol、95%)が白色の固形物として得られた(Rf: 0.10(EtOAc)
Figure 2022504294000056
文献Tetrahedron, 1997, 53(52), 17727-17734と一致している。
(エチル 2-アジド-3-O-ベンジル-4,6-O-ベンジリデン-2-デオキシ-1-チオ-β-D-グルコピラノシド、中間体I.39)
Figure 2022504294000057
中間体I.37(3.53g、11.34mmol、1当量)を無水THF(11mL)及び無水MeOH(43mL)に溶解させた後、無水Cu(II).SO4 .5 H2O(11mg、0.05mmol、0.01当量)、無水K2CO3(1.02g、7.23mmol、1.5当量)、及び1H-イミダゾール-1-スルホニルアジド塩酸塩(1.21g、5.78mmol、1.2当量、Org.Lett., 2007, 9(19), 3797-3800に記載されている方法により調製されたもの)を、N2下、rtで添加した。混合物を5時間撹拌すると、TLCにより、出発材料は、それ以上示されなかった。反応混合物をCH2Cl2(50mL)で希釈し、H2O(30mL)で2回洗浄した。有機層をMgSO4上で乾燥させ、濾過し、濃縮すると、淡黄色の固形物が得られた。これをフラッシュクロマトグラフィー(Tol/EtOAc 3~28%)により精製すると、中間体I.38(3.33g、9.87mmol、87%)が白色の固形物として得られた(Rf: 0.42(Tol/EtOAc、6:1 v/v)、1H NMR及び13C NMRは、文献Tetrahedron 1997,53(52),17727-17734と一致している)。
中間体I.38(4.2g、12.45mmol、1当量)を無水DMF(18.6mL)に溶解させ、氷上で冷却した。60%NaH(鉱油中)(1.25g、31.13mmol、2.5当量)をN2下で添加し、混合物を氷上で30分間撹拌した。その後、BnBr(3.7mL、31.13mmol、2.5当量)をゆっくりと添加し、氷上で5分間撹拌した後、反応液を温めて、室温に戻しておいた。3時間40分後、出発材料がTLCでそれ以上見られなくなると、反応液を氷上に置き、MeOH(10.1mL、249mmol、20当量)の添加により、慎重にクエンチした。溶媒を真空中で除去し、残渣をトルエンとともに3回共蒸発させた。残渣をEtOAc(150mL)に溶解させ、H2O(180mL)で2回洗浄した。合わせた水性層を追加のEtOAcで再抽出した。合わせた有機層をMgSO4上で乾燥させ、濾過し、濃縮し、得られた残渣をフラッシュクロマトグラフィー(シクロヘキサン/EtOAc 3~28%)により精製すると、I.39(4.85g、11.35mmol、91%)が白色の固形物として得られた(Rf: 0.31(シクロヘキサン/EtOAc、6:1 v/v)
Figure 2022504294000058
文献Tetrahedron 1997, 53(52), 17727-17734と一致している。
(エチル 2-アジド-6-O-ベンゾイル-3-O-ベンジル-2-デオキシ-チオ-β-D-グルコピラノシド、中間体I.41)
Figure 2022504294000059
中間体I.39(1.07g、2.5mmol、1当量)をrtで無水MeOH:CH2Cl2(24mL、8:1 v/v)に溶解させ、完全に溶解したら、CSA(407mg、1.75mmol、0.7当量)をN2下で添加した。4時間20分後、追加のCSA(58mg、0.25mmol、0.1当量)をrtで添加した。30分後、氷上で冷却しながら、反応液をNEt3の添加によりクエンチした。溶媒を濃縮し、得られたシロップをフラッシュクロマトグラフィー(シクロヘキサン/EtOAc 8~66%)により精製すると、中間体I.40(786mg、2.32mmol、92%)が透明なシロップとして得られた(Rf: 0.20(シクロヘキサン/EtOAc、2:1 v/v) 1H NMR及び13C NMRは、文献Angew. Chemie - Int. Ed. 2017, 56(9), 2312-2317と一致している)。
中間体I.40(775mg、2.28mmol、1当量)を無水CH2Cl2(3.6mL)に溶解させ、無水ピリジン(0.7mL)を添加した後、混合物を-50℃に冷却した。この温度で5分間撹拌したら、BzCl(260μL、2.28mmol、1当量)をN2下で添加し、その後、-50℃で撹拌し続けた。1.5時間後、追加の50μL(0.4mmol、0.18当量)BzClを添加し、20分後、反応液を水及びCH2Cl2の添加によりクエンチした。その後、混合物を、2M HCl、飽和水性NaHCO3、H2O、及びブラインで順次洗浄した。有機層をNa2SO4上で乾燥させ、濾過し、濃縮した。得られた残渣をフラッシュクロマトグラフィー(シクロヘキサン/EtOAc 8~66%)により精製すると、I.41(887mg、2.00mmol、88%)が白色の固形物として得られた(Rf: 0.53(シクロヘキサン/EtOAc 2:1 v/v)
Figure 2022504294000060
HR-MS C22H25N3O5NaS[M+Na]+の計算値: 466.1413 実測値: 466.1396)。
(vi)リンカーを有する単糖Eの合成
Figure 2022504294000061
スキーム6 試薬及び条件:中間体I.43の合成。NIS、TMSOTf、CH2Cl2、-35℃、30分。86%(α/β比1:4)。
(N-ベンジル-N-ベンジルオキシカルボニル-5-アミノペンタノール、中間体I.42)
Figure 2022504294000062
市販の5-アミノ-ペンタン-1-オール(5.31g、51.47mmol、1当量)を80mLの無水EtOHに溶解させ、ベンズアルデヒド(5.4mL、53.01mmol、1.1当量)を添加した。溶媒を、50℃で3時間かけて、ロータリーエバポレーターでゆっくりと除去した。追加の80mLの無水EtOHを添加し、溶媒がそれ以上凝縮しなくなるまで、混合物を濃縮した。その後、残渣をトルエンとともに減圧下で2回共蒸発させ、その後、70mLのMeOHに溶解させ、0℃に冷却した。その後、NaBH4(2.3g、60.74mmol、1.2当量)を小分けしてゆっくりと添加し、次に添加まで、ガスの発生が止まるようにした。全てのNaBH4を添加したら、反応液を室温に温め、2時間撹拌した。これを氷上に戻し、AcOH(5.3mL、92.65mmol、1.8当量)をゆっくりと添加して、残りのNaBH4をクエンチした。H2O(75mL)中のK2CO3(12.1g、87.5mmol、1.7当量)を添加し、混合物を室温で一晩撹拌した。翌日、該混合物を100mLのEt2Oで希釈し、層を分離した。水性層をEt2Oでもう1回抽出した。合わせた有機層を約半分の容量まで濃縮した。130mLの飽和水性NaHCO3溶液を添加し、二相混合物を0℃に冷却した。その後、CbzCl(7.3mL、51.5mmol、1.1当量)をゆっくりと添加し、混合物を、室温にゆっくりと温めて、一晩撹拌した。翌日、該混合物を200mLのEt2Oで希釈し、層を分離した。その後、有機層を、1M HCl、H2O、及びブラインで順次洗浄した。MgSO4上で乾燥させ、濾過した後、濾液を濃縮し、粗材料を、3:1→1:1のシクロヘキサン/酢酸エチルを用いるカラムクロマトグラフィーにより精製すると、10.64gの中間体I.42が透明なシロップ(32.5mmol、3工程かけて63%)として得られた。
Figure 2022504294000063
文献Org. Lett. 2013, 15(9), 2270-2273と一致している)。
(N-ベンゾキシカルボニル-N-ベンジル-5-アミノ-ペンタニル 2-アジド-6-O-ベンゾイル-3-O-ベンジル-2-デオキシ-β-D-グルコピラノシド、中間体I.43-β)
Figure 2022504294000064
(N-ベンジル-N-カルボキシベンジル-ペンタニル 2-アジド-6-O-ベンゾイル-3-O-ベンジル-2-デオキシ-α-D-グルコピラノース、中間体I.43-α)
Figure 2022504294000065
中間体I.41(1.21g、mmol、1当量)及び中間体I.42(1.79g、mmol、2当量)をトルエンと一緒に共蒸発させ、真空下で1時間乾燥させた後、40mLの無水CH2Cl2に溶解させた。混合物を-40℃に冷却し、反応容器をホイルで包んで、光を遮断した。その後、NIS(1.3当量、遮光しながら、真空下で乾燥させたもの)、次いで、TMSOTf(0.1当量)を添加した。反応液を暗所で撹拌し、45分間徐々に温めると、TLC(1:1 v/vのペンタン/Et2O)により、残りのチオグリコシドが示されなかった。反応液を固形K2CO3及び20mLの水性10%Na2S2O3溶液の添加によりクエンチした。混合物を分液漏斗に移し、無色になるまで振盪させた。100mLのEt2Oを添加し、水性層を除去した。有機層を水及びブラインで洗浄し、その後、MgSO4上で乾燥させ、濾過した。濾液を濃縮し、得られた粗シロップを、自動フラッシュクロマトグラフィー(12~100%ペンタン/Et2O)を用いて精製すると、最初に中間体I.43-αという物質(340mg、0.48mmol、17%)が溶出し、その後、中間体I.43-βという物質(1.2g、1.69mmol、69%)が透明なシロップとして溶出した。
βアノマーの情報; Rf=0.27(1/1 v/vのペンタン/Et2O)、HRMS C40H45N4O8[M+H]+の計算値: 709.3237、実測値709.3204
Figure 2022504294000066
αアノマーの情報;(Rf: 0.28(1:1 v/vのペンタン/Et2O)、[α]D+51.6(c=1、DMSO)
Figure 2022504294000067
HR-MS C40H45N4O8[M+H]+の計算値: 709.3237 実測値709.3204)
(vii)二糖ビルディングブロックBCの合成
Figure 2022504294000068
スキーム7、試薬及び条件:中間体I.46の合成 a)Ag2CO3、分子篩4Å、無水CH2Cl2、暗所、b)Ac2O、TBSOTf、0℃、10分、70%; b)チオウレア、THF/EtOH 1:1、80℃、3時間 75%
(メチル 2,3-ジ-O-ベンジル-4-O-クロロアセチル-β-D-グルコピラノシル-ウロネート-(1→4)-3-O-アセチル-1,6-アンヒドロ-2-アジド-2-デオキシ-β-D-グルコピラノース、中間体I.44)
Figure 2022504294000069
Ag2CO3を用いる方法:
中間体I.9(537mg、1.0mmol、1当量)、中間体I.16(930mg、4.0mmol、4.0当量)、及び新たに活性化した4Å分子篩(560mg)の無水CH2Cl2(6mL)溶液を、暗所、N2雰囲気下、rtで30分間撹拌し、その後、Ag2CO3(560mg、2.0mmol、2当量)を添加した。混合物を6日間撹拌し、その後、TLC分析により、供与体から生成物(トルエン/アセトン8:2)への完全な変換が示された。反応混合物をセライトに通して濾過した。濾液を真空中で濃縮し、自動フラッシュクロマトグラフィー(トルエン/アセトン92/8~75/25)により精製すると、中間体I.44(343mg、0.5mmol、βアノマーだけで50%)が白色の固形物として得られた。
Ag2CO3/AgOTfを用いる方法:
供与体1.9(444mg、0.84mmol、1.5当量)及び受容体I.16(130mg、0.56mmol、1.0当量)をSchlenckラインで一晩乾燥させた。4Å分子篩及び無水CH2Cl2(10mL)を添加し、混合物を、N2雰囲気下、暗所、rtで1時間撹拌した。Ag2CO3(309mg、1.12mmol、2当量)及びAgOTf(144mg、0.56mmol、1当量)を添加し、反応液を30分間撹拌した(TLC シクロヘキサン/酢酸エチル1:1)。反応液をTEAでクエンチし、セライトに通して濾過した。濾液を真空中で濃縮し、シクロヘキサン/酢酸エチル6:4を用いるフラッシュクロマトグラフィーにより精製すると、中間体I.44(178mg、0.26mmol、βアノマーだけで47%)が白色の固形物として得られた(Rf(トルエン/アセトン1:1) 0.33。
Figure 2022504294000070
HR-MS: C31H35ClN3O12Na[M+Na+]の計算値: 699.1807、実測値699.1807)。
(メチル 2,3-ジ-O-ベンジル-4-O-クロロアセチル-β-D-グルコピラノシル-ウロネート-(1→4)-1,3,6-トリ-O-アセチル-2-アジド-2-デオキシ-D-グルコピラノース、中間体I.45)
Figure 2022504294000071
中間体I.44(324mg、0.48mmol、1当量)の無水酢酸(5mL、0.1M)溶液を0℃に冷却し、TBSOTf(10μL、0.048mmol、0.1当量)を添加した。15分後、TLC(シクロヘキサン/酢酸エチル4:6)により、生成物の形成が示された。反応液をTEAでクエンチし、溶媒を真空下で蒸発させた。粗製物をクロマトグラフィー(シクロヘキサン/酢酸エチル80/20~40/60)により精製すると、I.45がα/β混合物80/20の白色の泡状物(272mg、0.35mmol、73%)として得られた(Rf(シクロヘキサン/酢酸エチル4:6) 0.65
Figure 2022504294000072
HR-MS: C35H40ClN3O15Na[M+Na+]の計算値: 800.2046、実測値800.2023)。
(メチル 2,3-ジ-O-ベンジル-β-D-グルコピラノシル-ウロネート-(1→4)-2-アジド-1,3,6-トリ-O-アセチル-2-デオキシ--α/β-D-グルコピラノース、中間体I.46)
Figure 2022504294000073
中間体I.45(195mg、0.25mmol、1当量)のTHF/EtOH 1:1(2.5mL、0.1M)溶液に、チオウレア(75mg、1.0mmol、4当量)を添加した。反応液を80℃で3時間撹拌し、その後、TLC(シクロヘキサン/酢酸エチル1:1)により、出発材料から生成物への完全な変換が示された。反応液を蒸発させ、粗製物をCH2Cl2に溶解させ、水で洗浄した。有機相をMgSO4上で乾燥させ、濾過し、蒸発させた。粗製物をクロマトグラフィー(シクロヘキサン/酢酸エチル7:3→6:4)により精製すると、中間体I.46がα/β混合物80/20の白色の固形物(140mg、0.20mmol、80%)として得られた(Rf:(シクロヘキサン/酢酸エチル1:1) 0.43。
Figure 2022504294000074
HR-MS: C33H39N3O14Na[M+Na+]の計算値: 724.2330、実測値724.2307)。
(viii)二糖ビルディングブロックDEの合成
Figure 2022504294000075
スキーム8、試薬及び条件: I.49の合成 a)NIS、AgOTf、CH2Cl2、-40℃、80分; b) HSEt、p-TsOH・H2O、CH2Cl2、2工程かけて70%; c)TEMPO/BAIB、CH2Cl2/H2O 2:1 v/v、rt、6時間; d)TMSCHN2、Tol/MeOH(1:1 v/v)、0℃、20分、2工程かけて50%。
(N-ベンジル-N-カルボキシベンジル-5-アミノペンタニル 2-O-ベンゾイル-3-O-ベンジル-4-α-L-イドピラノシル-(1→4)-2-アジド-6-O-ベンゾイル-3-O-ベンジル-2-デオキシ-β-D-グルコピラノシド中間体I.48)
Figure 2022504294000076
中間体I.32(650mg、0.92mmol、1当量)を中間体I.43-β(650mg、1.17mmol、1.3当量)の存在下でトルエンとともに共蒸発させ、撹拌子及び1.02gの4ÅMSを用いて真空下で2時間乾燥させた後、無水CH2Cl2を添加した。混合物を室温で45分間撹拌した後、-40℃に冷却した。その後、先に遮光しながら真空下で乾燥させたNIS(290mg、1.29mmol、1.4当量)を添加し、次いで、触媒量のAgOTf(使用前に遮光しながら真空下で乾燥させたもの)を添加した。反応液を撹拌し、TLCにより、供与体がもはや存在せず、新しいスポットがRf=0.7(Tol/EtOAc、8/2 v/v)で形成するまで、徐々に温めた。反応液をNEt3の添加によりクエンチし、混合物をセライトのパッドに通して濾過し、濾液が透明になるまで希釈した。溶媒を濃縮下で除去し、残りの粗製物をカラムクロマトグラフィー(2~20%Tol/EtOAc)により精製し、生成物を含有する画分を合わせ、濃縮すると、中間体I.47が白色の泡状物として得られた。
粗二糖I.47(900mg、0.78mmol、1当量)を、p-TsOH・H2O(22mg、0.1当量)の存在下、真空下で乾燥させた後、5mLの無水CH2Cl2に溶解させた。その後、HSEt(0.6mL、7.8mmol、10当量)を室温で添加し、TLC(3/2 v/vのシクロヘキサン/酢酸エチル)により、より低いスポットへの大きな変換が示されるまで、反応液を撹拌した。反応液を氷上に置き、NEt3を添加して、クエンチした。溶媒を除去し、粗シロップをカラムクロマトグラフィー(シクロヘキサン/EtOAc 7/3→6/4)により精製すると、中間体I.48(701mg、0.66mmol、2工程で72%)が白色の泡状物として得られた(Rf=0.35(3/2 v/vのシクロヘキサン/EtOAc) HRMS C60H64N4O14Na[M+Na]+の計算値: 1087.4317 実測値1087.4357
Figure 2022504294000077
(N-ベンジル-N-ベンジルオキシカルボニル-ペンタニル(メチル(2-O-ベンゾイル-3-O-ベンジル-α-L-イドピラノシル)ウロネート)-(1→4)-2-アジド-6-O-ベンゾイル-3-O-ベンジル-2-デオキシ-β-D-グルコピラノシド、中間体I.49)
Figure 2022504294000078
中間体I.48(340mg、0.19mmol、1当量)を激しく撹拌しながらCH2Cl2/H2O(3mL、2:1 v/v)に溶解させた。その後、TEMPO(10mg、0.06mmol、0.2当量)を添加し、次いで、BAIB(258mg、0.8mmol、2.5当量)を添加した。反応液を6時間撹拌した後、10mLの水性10%Na2S2O3溶液でクエンチし、さらに15分間撹拌した。混合物をCH2Cl2で希釈し、分液漏斗に移した。有機層を片側にやり、水性層を1M HClで酸性化した。水性層をCH2Cl2でさらに3回抽出した。合わせた有機層をMgSO4上で乾燥させ、濾過し、濃縮した。粗残渣を精製して、2:1のシクロヘキサン/酢酸エチル→2:1のシクロヘキサン/酢酸エチル+1%AcOH→1:1のシクロヘキサン/酢酸エチル+1%AcOHでカルボン酸を単離した。カルボン酸を含有する画分を合わせ、濃縮し、残渣をトルエンとともに2回共蒸発させて、残りの微量の酸を除去した後、真空下で2時間乾燥させると、中間体酸(190mg、0.17mmol)が得られた。
残渣を1mLの無水MeOH/無水トルエン(1:1 v/v)に溶解させ、氷上で冷却した。その後、TMSCHN2(2M Et2O溶液、0.1mL、0.19mmol、1.1当量)を滴加した。反応液を20分間撹拌した後、もはやガスが発生せず、かつ溶液の色が薄くなるまで、AcOHを滴加した。反応液を追加のトルエンで希釈し、溶媒を真空中で除去し、粗製物をトルエンとともにさらに3回共蒸発させた。粗製物を、カラムクロマトグラフィー(3:1→2:1のシクロヘキサン/酢酸エチル)を用いて精製すると、中間体I.49が白色の泡状物(180mg、0.16mmol、2工程かけて50%)として得られた(Rf=0.28(2/1 v/vのシクロヘキサン/EtOAc) HRMS: C61H64N4O15Na[M+Na]+の計算値: 1115.4266。実測値1115.4231
Figure 2022504294000079
(ix)三糖ビルディングブロックABCの合成
Figure 2022504294000080
スキーム9。試薬及び条件:中間体I.52の合成 a)TBSOTf、無水トルエン、4Å m.s; -20℃、1,5時間、85%; b)EDA、AcOH、THF、40℃、一晩、70%; c)Cl3CCN、K2CO3、無水CH2Cl2、一晩、rt、定量的
(6-O-アセチル-2-アジド-3,4-ジ-O-ベンジル-2-デオキシ-α-D-グルコピラノシル-(1→4)-O-(メチル 2,3-ジ-O-ベンジル-β-D-グルコピラノシルウロネート)-(1→4)-2-アジド-1,3,6-トリアセチル-2-デオキシ-α/β-D-グルコピラノース、中間体I.50)
Figure 2022504294000081
無水トルエン(4mL)中のトリクロロアセトイミデートI.20(230mg、0.40mmol、1.5当量)、中間体I.46(190mg、0.27mmol、1当量)、及び新たに活性化した4Å分子篩(125mg)の混合物を、N2雰囲気下、室温で30分間撹拌した。溶液を-20℃に冷却し、TBSOTf(31μL、0.135mmol、0.5当量)を滴加した。得られた溶液を1時間30分間撹拌して、室温を達成し、その後、TEAを添加して、反応液をクエンチした。混合物全体をセライトに通して濾過し、真空中で蒸発させた。粗製物を自動フラッシュクロマトグラフィー(シクロヘハン(cyclohehane)/酢酸エチル80/20~60/40)により精製すると、三糖I.50(257mg、0.23mmol、85%)が白色の泡状物として得られた(Rf(シクロヘキサン/酢酸エチル7:3) 0.55
Figure 2022504294000082
HR-MS: C55H62N6O19Na[M+Na+]の計算値: 1133.3967、実測値1133.3967)。
(6-O-アセチル-2-アジド-3,4-ジ-O-ベンジル-2-デオキシ-α-D-グルコピラノシル-(1→4)-(メチル 2,3-ジ-O-ベンジル-β-D-グルコピラノシルウロネート)-(1→4)-2-アジド-3,6-ジアセチル-2-デオキシ-α/β-D-グルコピラノース、中間体I.51)
Figure 2022504294000083
三糖I.50(108mg、0.097mmol、1当量)をTHF(0.1M)に溶解させ、エチレジアミン(ethylediamine)(7.7μl、0.116mmol、1.2当量)及び酢酸(6.6μl、0.116mmol、1.2当量)を添加した。反応液を40℃で一晩撹拌し、その後、これをCH2Cl2で希釈し、1M HClで洗浄した。水性相をCH2Cl2で2回抽出した。合わせた有機層を水性飽和NaHCO3及びブラインで洗浄し、MgSO4上で乾燥させ、蒸発させた。粗製物を自動クロマトグラフィー(シクロヘキサン/酢酸エチル80/20→40/60)により精製すると、α/β混合物中の中間体I.51(73mg、0.068mmol、70%)が白色の泡状物として得られた(Rf(シクロヘキサン/酢酸エチル6:4) 0.34
Figure 2022504294000084
(6-O-アセチル-2-アジド-3,4-ジ-O-ベンジル-2-デオキシ-α-D-グルコピラノシル-(1→4)-メチル 2,3-ジ-O-ベンジル-β-D-グルコピラノシルウロネート-(1→4)-3,6-ジ-O-アセチル-2-アジド-2-デオキシ-α/β-D-グルコピラノシルトリクロロアセトイミデート、中間体I.52)
Figure 2022504294000085
トリクロロアセトニトリル(0.460mL、1.6mmol、10当量)をN2雰囲気下で中間体1.51(170mg、0.16mmol、1当量)及びK2CO3(110mg、0.80mmol、5当量)の無水CH2Cl2(8mL、0.1M)溶液に添加した。混合物を室温で一晩撹拌し、その後、セライトパッドで濾過し、真空中で蒸発させた。α/β混合物として得られた生成物の中間体1.52を、それ以上精製することなく、次のグリコシル化工程でそのまま使用した(TLC分析 シクロヘキサン/酢酸エチル6:4 ESI-MS: C55H60Cl3N7O18[M]の計算値: 1211.31、実測値1235.58)。
(x)リンカーを有する保護された五糖の合成
Figure 2022504294000086
スキーム10。試薬及び条件:中間体I.53の合成 a)無水トルエン中の0.1M TfOH、分子篩4Å、無水トルエン、-40℃;
(N-(ベンジル)-ベンジルオキシカルボニル-5-アミノペンチル 6-O-アセチル-2-アジド-3,4-ジ-O-ベンジル-2-デオキシ-α-D-グルコピラノシル-(1→4)-メチル 2,3-ジ-O-ベンジル-β-D-グルコピラノシルウロネート-(1→4)-3,6-ジ-O-アセチル-2-アジド-2-デオキシ-α-D-グルコピラノシル-(1→4)-メチル 2-O-ベンゾイル-3-O-ベンジル-α-L-イドピラノシルウロネート-(1→4)-2-アジド-6-O-ベンゾイル-3-ベンジル-2-デオキシ-β-D-グルコピラノシド、中間体I.53)
Figure 2022504294000087
無水トルエン(2mL)中の中間体I.52(85mg、0.07mmol、1.5当量)、中間体I.49(50mg、0.046mmol、1当量)、及び新たに活性化した4Å分子篩(65mg)の混合物を、N2雰囲気下、室温で30分間撹拌した。溶液を-40℃に冷却し、無水トルエン(0.230mL、0.023mmol、0.5当量)中の0.1M TfOHを滴加した。得られた溶液を1時間撹拌し、その間に、温度が5℃に上昇し、TEAを添加して、反応液をクエンチした。混合物全体をセライトに通して濾過し、減圧下で濃縮すると、粗生成物が得られ、これをカラムクロマトグラフィー(トルエン/アセトン98/2~96/4)により精製すると、中間体I.53(45mg、0.02mmol、56%)が白色の固形物として得られた(Rf(トルエン/アセトン9:1) 0.51
Figure 2022504294000088
(xi)リンカーを有する五糖の合成
Figure 2022504294000089
スキーム11。試薬及び条件:実施例1.1の合成 a)H2O中の5M NaOH、CH3OH、CH2Cl2、rt、80%; b)SO3・NMe3、DMF、MW 100℃、c)i. THF中の1M PMe3、H2O中の1M NaOH、THF、rt; ii. SO3・Py、Py、TEA、rt; d)H2、Pd/C、Pd(OH)2、EtOH/H2O。
(N-(ベンジル)-ベンジルオキシカルボニル-5-アミノペンチル 2-アジド-3,4-ジ-O-ベンジル-2-デオキシ-α-D-グルコピラノシル-(1→4)-2,3-ジ-O-ベンジル-β-D-グルコピラノシルウロン酸-(1→4)-2-アジド-2-デオキシ-α-D-グルコピラノシル-(1→4)-3-O-ベンジル-α-L-イドピラノシルウロン酸-(1→4)-2-アジド-3-ベンジル-2-デオキシ-β-D-グルコピラノシド、中間体I.54)
Figure 2022504294000090
中間体I.53(32mg、0.015mmol、1当量)をメタノール/ジクロロメタン(1mL/0.73mL)の混合物に溶解させ、0.35mLのH2O中の5M NaOHを滴加した。反応液を室温で一晩撹拌し、その後、CH2Cl2で希釈し、1M HClで洗浄した。水性相をCH2Cl2で2回抽出した。合わせた有機相をMgSO4上で乾燥させ、真空中で蒸発させた。粗製物をCH2Cl2/CH3OH 1:1で溶解させ、Sephadex LH-20の上に重層し、これを同じ溶離液混合物で溶出させた。画分を3分毎に自動コレクターにより回収した。生成物を含有する画分を真空下で蒸発させると、中間体I.54が白色の固形物(22.5mg、0.012mmol、80%)として得られた(Rf(ジクロロメタン/メタノール9:1) 0.40
Figure 2022504294000091
ESI-MS: C92H102N10O27 2-[M]の計算値: 1778.69、実測値1778.44)。
(N-(ベンジル)-ベンジルオキシカルボニル-5-アミノペンチル 2-アジド-3,4-ジ-O-ベンジル-2-デオキシ-6-O-スルホ-α-D-グルコピラノシル-(1→4)-2,3-ジ-O-ベンジル-β-D-グルコピラノシルウロン酸-(1→4)-2-アジド-2-デオキシ-3,6-ジ-O-スルホ-α-D-グルコピラノシル-(1→4)-3-O-ベンジル-2-O-スルホ-α-L-イドピラノシルウロン酸-(1→4)-2-アジド-3-ベンジル-2-デオキシ-6-O-スルホ-β-D-グルコピラノシド、中間体I.55)
Figure 2022504294000092
中間体I.54(19mg、0.01mmol、1当量)を無水DMF(1mL)に溶解させ、先にSchlenckで乾燥させたSO3・NMe3(42mg、0.30mmol、30当量)と一緒にマイクロ波バイアルに入れた。反応を、マイクロ波反応器中、100℃で2時間実施した。その後、反応液をTEAでクエンチし、22μm孔フィルターに通して濾過し、Sephadex LH-20の上に重層し、これをCH2Cl2/CH3OH(1:1)で溶出させると、中間体I.55のトリエチルアミン塩がやや黄色の固形物(25mg)として得られた(Rf(ジクロロメタン/メタノール/水酸化アンモニウム(7:3:1) 0.34)
Figure 2022504294000093
(N-(ベンジル)-ベンジルオキシカルボニル-5-アミノペンチル 3,4-ジ-O-ベンジル-2-デオキシ-2-スルファミド-6-O-スルホ-α-D-グルコピラノシル-(1→4)-2,3-ジ-O-ベンジル-β-D-グルコピラノシルウロン酸-(1→4)-2-デオキシ-2-スルファミド-3,6-ジ-O-スルホ-α-D-グルコピラノシル-(1→4)-3-O-ベンジル-2-O-スルホ-α-L-イドピラノシルウロン酸-(1→4)-3-ベンジル-2-デオキシ-2-スルファミド-6-O-スルホ-β-D-グルコピラノシド、中間体I.56)
Figure 2022504294000094
中間体I.55(21mg、0.01mmol、1当量)をTHF(0.5mL)に溶解させ、H2O(0.24mL、0.24mmol、24当量)中の1M NaOHで処理した。THF(0.30mL、0.30mmol、30当量)中の1M PMe3を添加し、反応液を室温で一晩撹拌した。反応液を1M HClでクエンチし、蒸発させた。粗製物をCH2Cl2/CH3OH 1:1混合物に溶解させ、Sephadex LH-20の上に重層し、これを同じ溶離液混合物で溶出させた。生成物を含有する画分を真空下で蒸発させた。得られたアミノ誘導体を無水ピリジン及びTEAに溶解させ、SO3・Py(43mg、0.27mmol、30当量)を4回に分けて添加した。反応液を撹拌しながら一晩放置し、その後、これをCH2Cl2/CH3OH 1:1混合物で希釈し、Sephadex LH-20の上に重層し、これを同じ溶離液混合物で溶出させると、中間体I.56が、トリエチルアミン塩(24mg)として得られた(Rf(ジクロロメタン/メタノール/水酸化アンモニウム7:3:1.2) 0.31)
(5-アミノペンチル 2-デオキシ-2-スルファミド-6-O-スルホ-α-D-グルコピラノシル-(1→4)-β-D-グルコピラノシルウロン酸-(1→4)-2-デオキシ-2-スルファミド-3,6-ジ-O-スルホ-α-D-グルコピラノシル-(1→4)-2-O-スルホ-α-L-イドピラノシルウロン酸-(1→4)-2-デオキシ-2-スルファミド-6-O-スルホ-β-D-グルコピラノシド(実施例1.1))
Figure 2022504294000095
EtOH/H2O 1:1(1mL)に溶解させた中間体I.56(29mg、0.012mmol、1当量)をPd/C(30mg)及びPd(OH)2(30mg)の存在下で水素化した。反応を、水素化装置リアクター中、25バールの圧力で48時間実施した。懸濁液を22μm孔フィルターに通して濾過し、濃縮した。粗製物を水に溶解させ、DOWEX Na+とともに1時間撹拌し、濾過後、溶媒を蒸発させた。粗製物を逆相(H2O/ACN 9:1)により精製した。フリーズドライの後、実施例1.1が白色の固形物(14mg、0.009mmol、75%)として得られた(Rf(酢酸エチル/メタノール/水4:3:3) 0.32
Figure 2022504294000096
(実施例1.2、5-アミノペンチル 2-デオキシ-2-スルファミド-6-O-スルホ-α-D-グルコピラノシル-(1→4)-β-D-グルコピラノシルウロン酸-(1→4)-2-デオキシ-2-スルファミド-3,6-ジ-O-スルホ-α-D-グルコピラノシル-(1→4)-2-O-スルホ-α-L-イドピラノシルウロン酸-(1→4)-2-デオキシ-2-スルファミド-6-O-スルホ-α-D-グルコピラノシド)
Figure 2022504294000097
実施例1.2は、実施例1.1の調製と同じ合成経路を利用するが、I.43-βをI.43-αと置き換えて得られた。
Figure 2022504294000098
(実施例1.3:メチル4-O-(5'-アミノペンタニル)-2-デオキシ-2-スルファミド-6-O-スルホ-α-D-グルコピラノシル-(1→4)-β-D-グルコピラノシルウロン酸-(1→4)-2-デオキシ-2-スルファミド-3,6-ジ-O-スルホ-α-D-グルコピラノシル-(1→4)-2-O-スルホ-α-L-イドピラノシルウロン酸-(1→4)-2-デオキシ-2-スルファミド-6-O-スルホ-α-D-グルコピラノシド)
Figure 2022504294000099
この分子の合成経路の概要は、図9に示されている。
(i)非還元末端にリンカーを有するビルディングブロックの合成
Figure 2022504294000100
スキーム12 試薬及び条件:中間体I.61の合成 a)TiCl4、CH2Cl2、0℃、45分。75%。b)NaH、(28)、DMF、0℃~rt、一晩、68%; c)TBSOTf、Ac2O、0℃、20分、78%。d)DMAPA、THF、rt、3時間、78%、e)K2CO3、トリクロルアセトニトリル(Trichloracetonitrile)、CH2Cl2、rt。
(1,6-アンヒドロ-2-アジド-3-O-ベンジル-2-デオキシ-β-D-グルコピラノース、中間体I.57)
Figure 2022504294000101
中間体I.17(1.22g、3.32mmol、1当量)を45mLの無水CH2Cl2に溶解させ、氷上に置いた。その後、TiCl4(360μL、3.32mmol、1当量)をゆっくりと添加した。反応液を氷上で45分間撹拌すると、TLC(シクロヘキサン/EtOAc 2:1 v/v)により、出発材料の消失が示された。反応液を氷水の混合物に注ぎ入れ、それを15分間撹拌することにより、それをクエンチした。層を分離し、水性層をCH2Cl2で抽出した。合わせた有機層をMgSO4上で乾燥させ、濾過し、濃縮し、得られたシロップを(シクロヘキサン/EtOAc 8~66%)を用いて精製すると、中間体I.57がやや黄色のシロップ720mg(2.6mmol、78%)として得られた。
Figure 2022504294000102
文献J. Org. Chem. 1989, 54(6), 1346-1353と一致している)。
(N-ベンジル-N-ベンジルオキシカルボニル-5-ブロモ-アミノペンタン、中間体I.58)
Figure 2022504294000103
中間体I.42(580mg、1.77mmol、1当量)を18mLの無水CH2Cl2に溶解させ、反応フラスコをアルミニウムホイルで覆って、光を遮断した後、氷上で冷却した。その後、NBS(470mg、2.66mmol、1.5当量)及びPPh3(700mg、8.07mmol、1.5当量)を1回で添加し、反応液を1時間撹拌すると、TLC(9:1 v/vシクロヘキサン/EtOAc)により、出発材料の完全な変換が示された。混合物を遮光しながら濃縮し、その後、粗材料を、9:1→7:3シクロヘキサン/EtOAcを用いるカラムクロマトグラフィーにより精製すると、中間体I.43がやや黄色のシロップ600mg(1.54mmol、87%)として得られた。
Figure 2022504294000104
文献J. ACS Cent. Sci. 2017, 3(3), 224-231と一致している。
(1,6-アンヒドロ-4-O-(5'-N-ベンジル-N'-カルボキシベンジル-ペンタニル)-2-アジド-3-O-ベンジル-2-デオキシ-β-D-グルコピラノース、中間体I.59)
Figure 2022504294000105
中間体I.57(147mg、0.53mmol、1当量)を2mLの無水DMFに溶解させ、氷上で冷却した後、NaH(鉱油中60%、53mg、1.33mmol、2.5当量)を添加した。45分間撹拌した後、フラスコをアルミニウムホイルで覆って、光を遮断し、2mLの無水DMFに溶解させた臭化物リンカーI.58(320mg、0.82mmol、1.5当量)を含有する溶液を混合物に滴加した。反応液を室温に温め、一晩撹拌した。翌日、反応液を氷上で冷却し、H2Oでクエンチした。混合物をCH2Cl2で2回抽出し、合わせた有機相をMgSO4上で乾燥させ、濾過し、濃縮した。得られた粗製物を、フラッシュクロマトグラフィー(シクロヘキサンシクロヘキサン/EtOAc 8~50%)を用いて精製すると、中間体I.59が透明な油状物(210mg、0.36mmol、68%)として得られた(Rf=0.2(シクロヘキサン/EtOAc、4/1 v/v) HRMS: C33H38N4O6Na:の計算値: 609.2689[M+Na]+;実測値: 609.2678
Figure 2022504294000106
(1,6-ジ-O-アセチル-4-O-(5'-N-ベンジル-N'-カルボキシベンジル-ペンタニル)-2-アジド-3-O-ベンジル-2-デオキシ-α/β-D-グルコピラノース、中間体I.60)
Figure 2022504294000107
中間体I.59(180mg、0.31mmol、1当量)をAc2O(3mL)に溶解させ、氷上に置いた。その後、TBSOTf(7.1μL、0.03mmol、0.1当量)を添加し、反応液を15分間撹拌した後、0.1mLのNEt3でクエンチし、その後、MeOH(4mL)をゆっくりと添加した。混合物を氷上で15分間撹拌した後、トルエンで希釈し、溶媒を蒸発させた。粗製物をトルエンとともにさらに3回共蒸発させた後、粗製物をカラムに充填し、5:1→2:1のシクロヘキサン/EtOAcで精製すると、中間体I.60が透明な油状物(177mg、0.26mmol、83%、アノマーの分離不可能な混合物、~α/β 2:1として得られた(Rf=0.4(シクロヘキサン/EtOAc、3/1 v/v) HRMS: C37H44N4O9Naの計算値: 711.3006[M+Na]+;実測値: 711.3023 選択されたαアノマーのピーク:
Figure 2022504294000108
(6-O-アセチル-4-O-(5'-N-ベンジル-N'-カルボキシベンジル-ペンタニル)-2-アジド-3-O-ベンジル-2-デオキシ-α/β-D-グルコピラノース、中間体I.61)
Figure 2022504294000109
中間体I.60(750mg、1.09mmol、1当量)を11mLの無水THFに溶解させ、DMAPA(0.7mL、5.45mmol、5当量)を室温で添加した。TLC分析により、残存するSMが見られないことが示されるまで、反応液を撹拌した。反応液をCH2Cl2で希釈し、1M HClで洗浄した。水性層をCH2Cl2で再抽出し、合わせた有機層をMgSO4上で乾燥させ、濾過し、濃縮した。粗製物を、3:1→2:1のシクロヘキサン/EtOAcを用いて精製すると、中間体I.61が透明な油状物(568mg、0.88mmol、81%、アノマーの分離不可能な混合物)として得られた(Rf=0.19(シクロヘキサン/EtOAc 2/1 v/v) HRMS: C35H42N4O8Naの計算値: 669.2900[M+Na]+; 実測値: 669.2911
Figure 2022504294000110
(6-O-アセチル-4-O-(5'-N-ベンジル-N'-カルボキシベンジル-ペンタニル)-2-アジド-3-O-ベンジル-2-デオキシ-α/β-D-グルコピラノース、中間体I.62)
Figure 2022504294000111
中間体I.61(135mg、0.21mmol、1当量)を、真空下、K2CO3(160mg、1.16mmol、5.5当量)の存在下で2時間乾燥させた後、2mLの無水CH2Cl2を添加した。トリクロロアセトニトリル(0.2mL、1.99mmol、10当量)を室温で添加し、反応液をN2下で一晩撹拌し続けた。翌日、混合物をセライトのパッドに通し、濾液を濃縮し(rotovap水浴温度<25℃)、粗中間体I.62を、それ以上分析することなく、すぐに使用した。
(ii)非還元末端にリンカーを有する三糖中間体の合成
Figure 2022504294000112
スキーム13 試薬及び条件:中間体I.64の合成 b)TBSOTf、トルエン、-25℃、1.5時間
(6-O-アセチル-4-O-(5'N-ベンジル-5'N-カルボキシベンジル-ペンタニル)-2-アジド-3-O-ベンジル-2-デオキシ-α-D-グルコピラノシル-(1→4)-メチル-2,3-ジ-O-ベンジル-β-D-グルコピラノシルウロネート-(1→4)-1,6-アンヒドロ-2-アジド-3-O-アセチル-2-デオキシ-β-D-グルコピラノース、中間体I.64)
Figure 2022504294000113
粗TCA中間体(I.62、1.5当量)及び市販の二糖I.63(100mg、0.14mmol、1当量)を、真空下、340mgの4ÅMSの存在下で6時間一緒に乾燥させた後、5mLの無水トルエンを添加した。混合物を室温で45分間撹拌した後、-25℃に冷却した。その後、TBSOTf(18.4μL、0.07mmol、0.5当量)を添加し、供与体がもはやTLCで見られなくなるまで、反応液をゆっくりと撹拌し、温めた。反応液をNEt3の添加によりクエンチし、混合物をセライトのパッドに通した。該パッドを、濾液が透明になるまでCH2Cl2で洗浄し、その後、これを濃縮した。粗残渣を、7/3→6/4のシクロヘキサン/EtOAcを用いて精製すると、中間体I.64が黄色の泡状物として得られた。生成物が、残存グリコシル化不純物である可能性が高い夾雑物とともに、三糖として共溶出した(Rf=0.29(3/2 v/vのシクロヘキサン/EtOAc) HRMS: C64H73N7O18Naの計算値: 1250.4910。実測値: 1250.4895。選択された主生成物のピーク:
Figure 2022504294000114
Figure 2022504294000115
スキーム14 試薬及び条件:中間体I.67の合成 a)TBSOTf、Ac2O、0℃、30分、76%。b)DMAPA、THF、rt. 71%、c)K2CO3、トリクロルアセトニトリル(Trichloracetonitrile)、CH2Cl2、rt.一晩、d)無水トルエン中の0.1M TfOH、分子篩、4Å、無水トルエン、-40℃ ゆっくりと室温に温める。
(6-O-アセチル-2-アジド-3-O-ベンジル-4-O-(5'-ベンジル-5'-ベンジルオキシカルボニル-アミノペンタニル)-2-デオキシ-α-D-グルコピラノシル-(1→4)-O-(メチル 2,3-ジ-O-ベンジル-β-D-グルコピラノシルウロネート)-(1→4)-3,6-ジ-O-アセチル-2-アジド-2-デオキシ-α/β-D-グルコピラノラクトール中間体I.65)
Figure 2022504294000116
中間体I.64(175mg、0.14mmol、1当量)をAc2O(1.5mL)に溶解させ、氷上に置いた。その後、TBSOTf(4.6μL、0.01mmol、0.1当量)を添加した。反応液を30分間撹拌すると、TLC(cHex/EtOAc 3/2 v/v)により、出発材料が残存していないことが示された。その後、0.2mLのNEt3を添加し、その後、MeOHを添加した。混合物をトルエンで希釈し、溶媒を真空中で除去した。粗製物を追加のトルエンとともに2回共蒸発させた。得られた粗シロップをカラムクロマトグラフィー(cHex/EtOAc 7:3→3:2 v/v)で精製すると、6-O-アセチル-2-アジド-3-O-ベンジル-4-O-(5'-ベンジル-5'-ベンジルオキシカルボニル-アミノペンタニル)-2-デオキシ-α-D-グルコピラノシル-(1→4)-O-(メチル 2,3-ジ-O-ベンジル-β-D-グルコピラノシルウロネート)-(1→4)-1,3,6-トリ-O-アセチル-2-アジド-2-デオキシ-α/β-D-グルコピラノースが白色の泡状物(143mg、0.11mmol、76%、アノマーの混合物)として得られた。Rf=0.64(3/2 cHex/EtOAc v/v)
HRMS C68H79N7NaO21の計算値: 1352.5227[M+Na]+。実測値: 1352.5277
Figure 2022504294000117
単離された中間体(121mg、0.10mmol、1当量)を1mLの無水THFに溶解させた。その後、DMAPA(38μL、0.3mmol、3当量)を室温で添加した。TLCにより、出発材料(cHex/EtOAc 3/2 v/v)が残存していないことが示されるまで、反応液を撹拌した。反応液をCH2Cl2で希釈し、1M HClで洗浄した。水性層をCH2Cl2で再度抽出した。合わせた有機層をMgSO4上で乾燥させ、濾過し、濾液を濃縮した。その後、粗シロップをカラムクロマトグラフィー(cHex/EtOAc、7:3→3:2 v/v)で精製すると、6-O-アセチル-2-アジド-3-O-ベンジル-4-O-(5'-ベンジル-5'-ベンジルオキシカルボニル-アミノペンタニル)-2-デオキシ-α-D-グルコピラノシル-(1→4)-O-(メチル 2,3-ジ-O-ベンジル-β-D-グルコピラノシルウロネート)-(1→4)-3,6-ジ-O-アセチル-2-アジド-2-デオキシ-α/β-D-グルコピラノラクトールが白色の泡状物(91mg、0.07mmol、71%)として得られた。
Rf=0.29(2/1 cHex/EtOAc v/v)
HRMS C66H77N7NaO20の計算値: 1310.5121[M+Na+]。実測値: 1310.5137
粗製物(110mg、0.085mmol、1当量)をK2CO3(118mg、0.85mmol、10当量)で3時間乾燥させた後、1mLの無水CH2Cl2を添加した。その後、トリクロロアセトニトリル(90μL、0.85mmol、10当量)を添加し、反応液を室温で一晩撹拌した。翌日、混合物をセライトのパッドに通して濾過した。濾液をロータリーエバポレーター(水浴温度<25℃)で濃縮し、中間体の粗材料I.65を単離した。
Rf=0.68(3/2 cHex/EtOAc+1%NEt3 v/v/v)
HRMS C68H77Cl3N8Na20の計算値: 1453.4217[M+Na+] 実測値: 1453.4269
Figure 2022504294000118
(メチル 6-O-アセチル-2-アジド-3-O-ベンジル-4-O-(5'-ベンジル-5'-ベンジルオキシカルボニル-アミノペンタニル)-2-デオキシ-α-D-グルコピラノシル-(1→4)-O-(メチル 2,3-ジ-O-ベンジル-β-D-グルコピラノシルウロネート)-(1→4)-3,6-ジ-O-アセチル-2-アジド-2-デオキシ-α-グルコピラノシル-(1→4)-(メチル 2-O-ベンゾイル-3-O-ベンジル-α-L-イドピラノシルウロネート)-(1→4)-2-アジド-6-O-ベンゾイル-3-O-ベンジル-2-デオキシ-α-D-グルコピラノシド、中間体I.67)
Figure 2022504294000119
中間体I.65(100mg、0.075mmol、1.5当量)を市販のI.66(40mg、0.05mmol、1当量)及び90mgの4ÅMSの存在下で乾燥させた。その後、無水トルエンを添加し、混合物を室温で1時間撹拌した。その後、該混合物を-40℃に冷却した。その後、TBSOTf(0.1M無水トルエン溶液)をゆっくりと添加した。反応液をゆっくりと撹拌し、室温に温めた。TLCにより、供与体が残存していないことが示され、反応液をNEt3の添加によりクエンチした。混合物をセライトのパッドに通し、CH2Cl2で洗浄した。溶媒を除去し、粗製物をCH2Cl2に溶解させ、1M HCl、飽和水性NaHCO3、及びブラインで洗浄した。有機層をMgSO4上で乾燥させ、濾過し、濾液を濃縮した。粗シロップを、カラムクロマトグラフィー(Tol/Ace 100/0→85/15 v/v)を用いて精製すると、中間体I.67(11mg、0.005mmol、10%)が得られた。
Rf 0.35(9/1 Tol/Ace v/v)
[α]D +47.5(c=1、CHCl3)
Figure 2022504294000120
MALDI TOF C108H118N10NaO32の計算値: 2089.7806.[M+Na]+ 実測値: 2089.7584
次に、スキーム11に示されている脱保護、還元、及び硫酸化工程を使用すると、中間体I.67から実施例1.3に変換された。
(実施例2:ヘパリンの脱重合によるヘパリン断片画分の調製)
(実施例2.1~2.3:ヘパリンの脱重合とその後の分画によって調製されたヘパリン断片画分)
主に八糖単位(オクタ)のサイズのオリゴ糖を、ネイティブヘパリンの部分亜硝酸切断とその後のゲルクロマトグラフィーによる分画により調製した。亜硝酸切断により産生される八糖は、機能的な活性配列を含有することができる最も短い断片である(Thunberg L.らの文献、FEBS Letters 117(1980), 203-206)。
ヘパリンの脱重合:一晩撹拌することにより、10gのヘパリンナトリウムを36mlの水に溶解させた。0.30gのNaNO2をヘパリン溶液に添加し、溶解させておいた。4M HClの添加により、この溶液をpH 2.5に酸性化した。室温で2時間の総反応時間の後、4M NaOHの添加により、溶液を中和した。
分解混合物を、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により、分子サイズに基づいて分離し、その場合、3mlの部分を2.5ml/分の流速でカラム(HiLoad 26/600 Superdex 30pg、移動相0.15M NaCl)に適用した。回収された画分(3ml)を、基本的には、Smith R.L.及びGilkerson Eの文献(1979), Anal Biochem 98, 478-480に記載されているようなMBTH反応により、アルデヒドについて分析した。八糖の溶出位置に集中している幅広いピークを回収した。いくつかの予備的操作からの合わせたオリゴ糖溶出画分を蒸発によって18mlの容量にまで濃縮し、同じカラムで再クロマトグラフィー処理した。再クロマトグラフィー操作した全てのものについて、十糖(2.3)、八糖(2.2)、及び六糖断片(2.1)に相当する3つの画分を回収し、プールした。
回収された画分2.1~2.3を評価方法Aにより分析した(図7を参照)。「ヘキサ」画分は、六糖に相当するメジャーピークと八糖に相当するショルダーからなる。「オクタ」画分は、六糖に相当するショルダーを伴う八糖に相当するメジャーピークと十糖に相当するマイナーピークからなる。「デカ」画分は、八糖に相当するショルダーを伴う十糖に相当するメジャーピークと十二糖に相当するマイナーショルダーからなる。
ヘパリン断片画分の濃度(表2参照)を評価方法Bにより決定した。
Figure 2022504294000121
表2 オリゴ糖画分の濃度の分析
(実施例3:溶液中のヘパリン断片画分の抗FXa活性の決定)
抗FXa活性を、実施例1.2(α)、1.1(β)、2.1、2.2、及び2.3に関して、評価方法Cにより決定した(表3参照)。試験されたヘパリン断片は全て溶液中のものであり、表面に固定化されていなかった。
Figure 2022504294000122
表3 ヘパリン断片の抗FXa活性。比較として、ヘパリンAPI(ヘパリンナトリウム活性医薬成分)の抗FXa活性は、~200IU/mg(薬局方(USP, Ph. Eur.)による)。
予想された通り、ヘパリン(約200IU/mgの抗FXa活性を有する)からオリゴ糖への脱重合は、抗FXa活性をかなり低下させた。八糖は、ヘパリンから亜硝酸によって誘導される、機能的活性配列を含有することができる最小の断片であるので(Thunberg L.らの文献、FEBS Letters 117(1980), 203-206)、六糖画分の抗FXa活性は、おそらくは、その画分中のいくつかのより大きい断片(八糖)の存在によってもたらされる。合成された五糖化合物は、ネイティブヘパリンよりも高い抗FXa活性を有していた。これは、これらの化合物中に存在する高い割合の活性配列によるものであると考えられる。
(実施例4:抗FXa活性;溶液中の実施例2.2(八糖画分)の効果)
八糖画分の抗FXa活性(実施例2.2)を評価方法Dに従って分析した。0、5、10、20、及び30分後、各々の混合物由来の試料(2×250μl)を氷上の試験チューブに移した。八糖画分を添加していないインキュベーション混合物を対照として使用した。結果は、下の表4に示されており;八糖が溶液中でFxaを阻害する能力を有することを示している。
(実施例5:抗FIIa活性;溶液中の実施例2.2(八糖画分)の効果)
八糖画分の抗FIIa活性(実施例2.2)を評価方法Eに従って分析した。八糖画分を添加していないインキュベーション混合物を対照として使用した。0、5、10、20、及び30分後、各々の混合物由来の2連の試料(250μl)を氷上の試験チューブに移した。インキュベーション期間の最後に、FIIa基質(最終濃度0.25mM)を添加することにより、残存FIIa活性を測定した。酵素活性は、八糖画分の存在下及び非存在下で、同じ割合で低下し、試験された濃度の八糖がAT媒介性のFIIa阻害に対する触媒効果を有さないことを示した。下の表4を参照されたい。
Figure 2022504294000123
表4 ATの存在下でのFXa及FIIaの阻害に対する溶液中の実施例2.2(八糖)の効果。対照は、八糖を含まないインキュベーション混合物である。ND=未決定。*八糖の添加直前に分析された、**八糖の添加直後に分析された
したがって、八糖画分は、溶液中にあるとき、AT媒介性のFIIa阻害に対する明白な触媒効果を示さないことに注目することができる。
(実施例6:表面の交互積層コーティングへのヘパリン断片の固定化)
(一般的なコーティングプロセス)
PVCチュービングの一部の内腔表面を、基本的には、EP0086186A1号、EP0495820B1号、及びEP0086187A1号(全て引用により完全に本明細書中に組み込まれる)中のLarmらの文献に記載されている方法を用いて、カチオンポリマーとアニオンポリマーの交互積層コーティングでコーティングした。具体的には、チュービングの内腔表面をイソプロパノール及び酸化剤でまず浄化した。コーティング二重層を、カチオンポリマー(ポリアミン、水中0.05g/L)とアニオンポリマー(硫酸デキストラン、水中0.1g/L)の交互吸着によって作り上げた。ポリアミンを二官能性アルデヒド(クロトンアルデヒド)で架橋した。
アニオンポリマーは、評価方法Kに従って測定したとき、4000kDaのMWを有し、かつ評価方法Lに従って測定したとき、高電荷密度(6.2μeq/g)を有する硫酸デキストランである。硫酸デキストランを高塩濃度の溶液(NaCl、1.7M)中に添加した。
(実施例6.1:八糖の固定化)
PVCチュービング(I.D. 3mm)を、上記の一般的な手順に従って、84mlの0.05M NaClで希釈した16mlの「オクタ」画分(実施例2.2)でコーティングし、その後、オクタ画分を、基本的には、EP0086186A1号及びEP0495820B1号中のLarmらの文献に記載されている通りに、還元アミノ化を介してポリアミンの最外層に固定化した。
(実施例6.2:ヘパリン(陽性対照)の固定化)
PVCチュービング(I.D. 3mm)を、上記の一般的な手順に従って、EP0086186号及びUS 6,461,665号に記載されている通りに調製されたヘパリンでコーティングした。ヘパリンは、平均ヘパリン鎖長が18糖単位よりも大きく、それゆえ、溶液中でFXaとFIIaの両方を阻害する能力を有する分散分子量分布を有する。ヘパリンを、上で実施例6.1について実施された通りに、還元アミノ化を介して、PVCチュービング上のポリアミンの最外層に結合させた。
(実施例6.3:リンカーを有する合成五糖の固定化、実施例1.1)
実施例1.1を、市販の6,6-ジメトキシヘキサン酸のN-ヒドロキシスクシンイミドエステルと反応させ、その後、Pozsgayの文献、J. Org. Chem., 63(17), 1998, 5983-5999に記載されている手順に従って脱保護する。アルデヒド官能化スペーサーを、上記の一般的な手順に従って、表面に結合させることができる。図6を参照されたい。
(実施例7:表面の別の交互積層コーティングへのヘパリン断片の固定化)
(一般的なコーティングプロセス)
以下のプロセスは、基本的には、実施例6に記載されているものと同様であった。今回の場合、使用されるカチオンポリマーは、Epomin P-1050(Nippon Shokubai, 70kDa)であり、使用されるアニオンポリマーは、評価方法Lに従って測定したとき、低電荷密度(3μeq/g)を有する硫酸デキストラン(Tdb Consultancy)であった。硫酸デキストランは、0.25又は0.5Mのいずれかの塩濃度で適用した。
(実施例7.1:八糖の固定化)
PVCチュービング(I.D. 3 mm)を上記の一般的な手順に従ってコーティングし、その場合、硫酸デキストランを0.25MのNaCl濃度で適用した。その後、八糖画分(実施例2.2)を、実施例6.1に記載されている通りに、還元アミノ化を介してポリアミンの最外層に固定化した。
(実施例7.2:より高い塩濃度を用いる八糖の固定化)
PVCチュービング(I.D. 3 mm)を上の実施例7.1に記載されている一般的な手順に従ってコーティングし、その場合、硫酸デキストランを0.50MのNaCl濃度で適用した。
(実施例8:ヘパリン断片でコーティングされたPVCチュービングのトルイジン染色による評価)
実施例6.1、7.1、及び7.2に従ってコーティングされたPVCチュービングを、評価方法Iに示されているトルイジンブルー染色試験に供した。強い青色/青紫色をチュービングの内腔表面で観察し、これにより、広範囲に及ぶヘパリン断片の共有結合が示された。試験されたチュービングについて観察された均一な染色は、一様なコーティングの形成を示している。図8を参照されたい。
(実施例9:ヘパリン断片でコーティングされたPVCチュービングのヘパリン密度の評価)
実施例6.1、6,2、7.1、及び7.2のヘパリン密度を評価方法Hにより決定した。結果は、下の表5に示されている。
(実施例10:ヘパリン断片でコーティングされたPVCチュービングのヘパリン活性の評価)
実施例6.1、7.1、及び7.2に記載されている八糖コーティングされた表面のヘパリン活性を評価方法Jにより決定し;ヘパリンコーティングされたPVCチュービング(実施例6.2)を陽性対照として利用した。実施例6.2のヘパリン活性(pmol AT/cm2)を100%活性とみなし、他のコーティングされた表面の活性をこれとの対比で表した。結果は、下の表5に示されている。
Figure 2022504294000124
表5 実施例6及び7に記載されている八糖コーティング表面の評価
八糖コーティング(実施例6.1、7.1、及び7.2)並びにヘパリンコーティング(実施例6.2)のヘパリン密度値は同様であるが、八糖コーティングのAT結合能(ヘパリン活性;「HA」)は、ヘパリンコーティングと比較して低かった。しかしながら、これは、溶液中の八糖画分によって示される比較的低い抗FXa活性を考慮すると、予想されることである(表3の実施例2.2)。したがって、八糖断片は、固定化後に、そのAT結合能を実質的に保持するように思われる。
(実施例11:ヘパリン断片でコーティングされたPVCチュービングの抗FXa活性の評価)
実施例6.1に従ってコーティングされたPVCチュービングの抗FXa活性を、実施例6.2を陽性対照として用いて、評価方法Fに従って評価した。結果は、下の表6に示されている。
Figure 2022504294000125
表6 八糖コーティングされた及びコーティングされていないチュービングのループ+試験チューブ対照におけるFXaの阻害。コーティングされていないPVC及び試験チューブ対照と対照的に、コーティングされた表面はFXaの急速な阻害を触媒した。
表6から、様々な実施例が予想された通りに機能を果たしたということを理解することができる。八糖コーティングされた表面は、FXaの阻害を触媒するのに効果があった-それゆえ、この性質は、八糖が固定化されているか又は溶液中にあるかにかかわらず、維持される(実施例5、表4を参照)。コーティングされていない単なるPVCループ対照及び試験チューブ対照は、FXaの阻害を触媒するのに効果がなかった。
また、予想された通り、実質的に18糖単位よりも大きい平均ヘパリン鎖長を有するヘパリンコーティングされた陽性対照(実施例6.2)は、固定化されたとき、FXaを効果的に阻害することができた(残存FXa活性1.4mOD/分、FXa活性の阻害99%)。
(実施例12:ヘパリン断片でコーティングされたPVCチュービングの抗FIIa活性の評価)
実施例6.1、6.2、7.1、及び7.2に従ってコーティングされたPVCチュービングのループを評価方法Gに従って評価した。陽性対照として、同じ反応混合物をヘパリンでコーティングされたPVCチュービング中でインキュベートした(実施例6.2、ここで、平均ヘパリン鎖長は、18糖単位よりも実質的に大きく、それゆえ、このコーティングは、溶液中でFXaとFIIaの両方を阻害すると考えられる)。結果は、表7に示されている。
Figure 2022504294000126
表7 八糖コーティングされた及びコーティングされていないチューブのループ+試験チューブ対照におけるFIIaの阻害。結果は、コーティングされていないPVCチュービングに対して正規化されている。
結果は、溶液中でのATによるFIIaの阻害を触媒する能力を欠く、これらヘパリンの断片が、驚くことに、表面に固定化されたときに、この同じ反応を触媒することができるということを示している。固定化された断片は、それが相乗的に作用して、溶液中でかなり長い分子を必要とすることを達成することを可能にし得る様式で組織化される。
この効果は、全ての八糖コーティングされた実施例(6.1、7.1、7.2)で見ることができるが、実施例6.1で使用されたコーティングは、実施例7.1及び7.2と比較して、より高い阻害を示す。
予想された通り、実質的に18糖単位よりも大きい平均ヘパリン鎖長を有する、ヘパリンコーティングされた陽性対照(実施例6.2)は、固定化されたとき、FIIaを効果的に阻害することができた(残存FIIa活性1.4mOD/分、FIIa活性の阻害99%)。
本明細書及び以下の特許請求の範囲の全体を通して、文脈上別の解釈を必要とする場合を除き、「含む(comprise)」という単語、並びに「含む(comprises)」及び「含む(comprising)」などの変化形は、記述された整数、工程、整数の群、又は工程の群の包含を意味するが、任意の他の整数、工程、整数の群、又は工程の群の排除を意味しないことが理解されるであろう。
本明細書中で言及されている特許及び特許出願は全て、引用により完全に組み込まれる。

Claims (32)

  1. 抗凝固表面であって、その表面がそれに複数のヘパリンの断片を共有結合しており、ここで、該断片が5~18糖単位からなり、かつ該複数の断片の少なくとも一部が多糖配列A:
    Figure 2022504294000127
    (式中、R=Ac又はSO3 -である)
    を含み、
    この表面がATによるFIIa及びFXaの阻害を触媒する、前記抗凝固表面。
  2. 評価方法Gに従って測定したとき、前記表面がFIIa活性を少なくとも50%阻害する、請求項1記載の表面。
  3. 評価方法Fに従って測定したとき、前記表面がFXa活性を少なくとも50%阻害する、請求項1又は2のいずれか記載の表面。
  4. 前記ヘパリンの断片の構造が不均一である、請求項1~3のいずれか一項記載の表面。
  5. 前記ヘパリンの断片の構造が均一であり、かつ全てが多糖配列Aを含む、請求項1~3のいずれか一項記載の表面。
  6. 前記ヘパリンの断片が、ネイティブヘパリンを分解することを含むプロセスによって産生されるネイティブヘパリンの断片である、請求項1~5のいずれか一項記載の表面。
  7. 前記ヘパリンの断片が合成によって産生される、請求項1~5のいずれか一項記載の表面。
  8. 前記ヘパリンの断片がリンカーを介して前記表面に共有結合している、請求項1~7のいずれか一項記載の表面。
  9. 前記リンカーがチオエーテル又は1,2,3-トリアゾールを含む、請求項8記載の表面。
  10. スペーサーが前記リンカーと前記表面の間に位置付けられる、請求項8又は9のいずれか記載の表面。
  11. 前記ヘパリンの断片が単一点結合している、請求項1~10のいずれか一項記載の表面。
  12. 前記ヘパリンの断片が末端点結合している、請求項11記載の表面。
  13. 前記ヘパリンの断片がその還元末端を介して前記表面に共有結合している、請求項12記載の表面。
  14. 前記ヘパリンの断片がその還元末端の位置C1を介して前記表面に共有結合している、請求項13記載の表面。
  15. 前記表面が前記ヘパリン断片の還元末端と反応するアミン基を含む、請求項13又は14のいずれか記載の表面。
  16. 評価方法Jに従って好適に測定したとき、ATの結合のための少なくとも1pmol/表面cm2、例えば、少なくとも2pmol/表面cm2、少なくとも3pmol/表面cm2、少なくとも4pmol/表面cm2、又は少なくとも5pmol/表面cm2のヘパリン活性を有する、請求項1~15のいずれか一項記載の表面。
  17. 評価方法Hに従って好適に測定したとき、少なくとも1μg/cm2、例えば、少なくとも2μg/cm2、少なくとも4μg/cm2、少なくとも5μg/cm2、又は少なくとも6μg/cm2のヘパリン濃度を有する、請求項1~16のいずれか一項記載の表面。
  18. 前記ヘパリンの断片が少なくとも6糖単位からなる、請求項1~17のいずれか一項記載の表面。
  19. 前記ヘパリンの断片が16糖単位以下からなる、請求項1~18のいずれか一項記載の表面。
  20. 前記ヘパリンの断片が14糖単位以下からなる、請求項19記載の表面。
  21. 前記ヘパリンの断片が10糖単位以下からなる、請求項20記載の表面。
  22. 前記ヘパリンの断片が5糖単位からなる、請求項1~17のいずれか一項記載の表面。
  23. 前記ヘパリンの断片が、チオエーテルを含むリンカー又は1,2,3-トリアゾールを含むリンカーを介して、前記表面に共有結合しない、請求項1~9又は11~22のいずれか一項記載の表面。
  24. 前記ヘパリンの断片が任意のリンカーを介して前記表面に共有結合しない、請求項23記載の表面。
  25. 前記ヘパリンの断片がリンカーを介して前記表面に共有結合しており、かつ該リンカーが、式(I)
    (II) (CH2)nNHCO(CH2)m
    (式中、nは1~20であり、mは1~20である)
    を含む、請求項1~9又は11~24のいずれか一項記載の表面。
  26. nが5であり、かつmが4である、請求項25記載の表面。
  27. 請求項1~26のいずれか一項記載の表面を含む固体物体。
  28. 前記表面が層コーティングによる層を含み、外側コーティング層が、前記ヘパリンの断片が共有結合しているカチオンポリマーである、請求項27記載の固体物体。
  29. 前記層コーティングによる層がカチオンポリマーとアニオンポリマーの交互層である、請求項28記載の固体物体。
  30. 前記カチオンポリマー層がカチオンポリマー性アミンの層である、請求項28又は29のいずれか記載の固体物体。
  31. 前記アニオンポリマー層が硫酸デキストランの層である、請求項29又は30のいずれか記載の固体物体。
  32. 医療デバイスである、請求項27~31のいずれか一項記載の固体物体。
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