JP2022190285A - 溶接構造物およびNi合金の肉盛溶接方法 - Google Patents

溶接構造物およびNi合金の肉盛溶接方法 Download PDF

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Abstract

【課題】従来の非消耗型TIG溶接よりも作業効率を向上した消耗型電極式を採用しつつ、従来のTIG溶接と同等の溶接品質を実現する溶接構造物およびNi合金の肉盛溶接方法を提供することを目的とする。【解決手段】本発明の溶接構造物は、低合金鋼または炭素鋼の被溶接部材にNi基合金を肉盛溶接した溶接構造物において、希釈率が2.5~10%であり、熱影響部の硬化域の幅が1.2~1.6mmであることを特徴とする溶接構造物。【選択図】図2

Description

本発明は、溶接構造物およびNi合金の肉盛溶接方法に関する。
原子力発電プラントや火力発電プラントには、高級な厚板部材からなる大型容器、大型構造物、大口配管等が多く使用されている。中でも、原子力発電用の原子炉の圧力容器では、高温高圧水及び放射線発生の過酷な環境下で使用され、かつ高い信頼性が要求されるため、低合金鋼製の圧力内表面に耐食性及び耐熱性等に優れたSUS304系、SUS316系等のステンレス鋼、インコネル等ニッケル量の高いニッケル合金等からなる肉盛溶接が使用されている。
しかし、これらの肉盛溶接部材には使用環境により経年劣化を生じ応力腐食割れが生じる場合がある。上述した大型の構造物を現場で補修溶接を行った場合は、補修溶接後の熱処理の実施が困難である。高能率で高品質な溶接金属部及び熱影響部を得るために、合理的で高信頼性・高能率な溶接技術が求められている。
例えば、特許文献1には、補修方法としては、母材表層部をグラインダー等によって削り取って割れや欠陥の部位を機械的に除去し、その表面にTIG溶接等を用いて新たな金属を肉盛り溶接して、その後、機械的に面一に加工する補修溶接方法が採用されている。
また、特許文献2には、特許文献1と同様にTIG溶接テンパービード溶接に関するもので、残層の溶接ビードの最初のパスと最後のパスの形成時に、溶接トーチを、最初のパスと最後のパスの幅方向内側に傾斜させながら走査して前記溶接ビードを形成することが開示されている。
また、特許文献3には、原子炉内構造物の補修方法として、690系合金のワイヤ組成を用いたYAGレーザ溶接を用いることと、第1の溶接部の終端部側は開先加工により除去されることが開示されている。
特開2011-245505号公報 特開2013-146753号公報 特開2012-98120号公報
上述した特許文献1および特許文献2は非消耗電極式の溶接であり、特許文献3はレーザ溶接である。大型低合金鋼・高張力鋼構造物の補修溶接工法として、熱処理不要で非消耗型電極式のTIGテンパービード溶接(以下、「TIG溶接」と称する。)がよく採用される。しかしながら、TIG溶接は作業効率が低く、工数が多くかかるため、高効率の溶接工法が望まれる。一方、この高効率の溶接工法では、低合金鋼・高張力鋼の溶接熱影響部において、良好な靭性を有することが要求される。
そこで、本発明は、従来の非消耗型TIG溶接よりも作業効率を向上した消耗型電極式を採用しつつ、従来のTIG溶接と同等の溶接品質を実現する溶接構造物およびNi合金の肉盛溶接方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するための本発明の一態様は、低合金鋼または炭素鋼の被溶接部材にNi基合金を肉盛溶接した溶接構造物において、希釈率が2.5~10%であり、熱影響部の硬化域の幅が1.2~1.6mmであることを特徴とする溶接構造物である。
また、本発明の他の態様は、低合金鋼または炭素鋼の被溶接部材にNi基合金を100%不活性ガスおよび消耗型電極を用いて肉盛溶接するNi合金の肉盛溶接方法において、溶接速度:200mm/min~300mm/min、溶接電流:200A以上、ワイヤ送給速度:8.7m/min以上とし、前記Ni合金の積層高さ:1.0mm~3.0mm、消耗型電極のウィビング幅:10mm~15mm、ウィビングの周波数:2HZ~3HZ、溶接ビードのセンタからのオフセット量:12mm~20mm、ビード端部停止:0.05s~0.1sとすることを特徴とするNi合金の肉盛溶接方法である。
本発明のより具体的な構成は、特許請求の範囲に記載される。
本発明によれば、従来のTIG溶接よりも作業効率を向上した消耗型電極式を採用しつつ、従来のTIG溶接と同等の溶接品質を実現する溶接構造物およびNi合金の肉盛溶接方法を提供できる。
上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
実施例1の溶接構造物(肉盛溶接ビード)の断面観察写真の一例 実施例2のNi合金の肉盛溶接方法を示す模式図 実施例2において2層目溶接ビード2-2を施工した後のHAZ部の硬さ分布を示すグラフ 図3AのA-B付近の断面観察写真 実施例3のNi合金の肉盛溶接方法を示す模式図 実施例4のNi合金の肉盛溶接方法を示す模式図 実施例5のNi合金の肉盛溶接方法を示す模式図 従来の溶接構造物(肉盛溶接ビード)の断面観察写真の一例
以下、本発明について、図面を用いて詳細に説明する。
本実施例では、被溶接部材1に低合金鋼を用い、Ni基合金を消耗電極肉盛溶接した溶接構造物について説明する。図1は本発明の溶接構造物(肉盛溶接ビード)の断面観察写真の一例である。図1に示すように、本実施例の溶接構造物は、低合金鋼の被溶接部材1の平板部材の表面にNi基合金の消耗型電極肉盛溶接ビード2が形成され、両者の境界にHAZ(Heat-Affected Zone、熱影響部)3が観察される。
消耗型電極肉盛溶接において、後続の溶接の入熱により焼き戻し域を得るために、積層高さを1.0mm~3.0mmの範囲とし、消耗型電極をウィビングしながら溶接を行った。良好な溶接ビード2のビード形状を得るために、溶接条件は、溶接速度:300mm/min、溶接電流:200A以上、ワイヤ送給速度:8.7m/min以上とした。
また、ウィビング幅は、10mm以下となる場合は、ビード幅が狭くなり、積層高さは3mm以上となるが、後続の溶接の入熱により焼き戻し域が得られない。一方、ウィビング幅が15mm以上となる場合は、肉盛層の表層に穴等溶接欠陥が生じるため、ウィビング幅は10~15mmの範囲とした。
ビード端部停止時間を0sとする場合は、溶接ビード2の中心部が一番高くなり、半円に近い形状となりやすい。一方、ビード端部停止時間を0.1s以上となると、端部への入熱量が大きくなり、端部の溶け込みは大きくなるため、端部停止時間7を0.05~0.1sとした。
ウィビングの周波数を3HZ以上とする場合は、ビード中央部の通過速度は大きくなり、中央部への入熱量が少なくなり、中央部に未溶融部が形成しやすいため、ウィビングの周波数は3HZ以下とすることが好ましい。一方、ウィビングの周波数を1HZとする場合は、積層高さは3mm以上の凸形状のビードになりやすいため、ウィビングの周波数を2~3HZとすることが好ましい。
図1に示すビードのわきに同じ施工条件で溶接を行う場合は、積層高さ4が均一になるように、溶接ビード2のセンタからオフセット量12を12mm~20mmとする。
本実施例では、上述した溶接条件により、溶接用シールドガスを100%不活性ガスArガスとし、良好な外観および内部に欠陥がない、低合金鋼の被溶接部材の希釈率15を2.5%~10%およびHAZ3の幅を1.2~1.6mmとする溶接構造物が得られた。この希釈率は、従来の消耗型電極肉盛溶接において得られない値である。
図7は従来の従来の溶接構造物(肉盛溶接ビード)の断面観察写真の一例である。また、下記表1に、本実施例の消耗型電極肉盛溶接(MIG)の溶着速度と従来の非消耗型電極肉盛溶接(TIG)の溶着速度を示す。
Figure 2022190285000002
表1に示す通り、本実施例の消耗型電極肉盛溶接(MIG)の溶着速度は非消耗型電極肉盛溶接(TIG)の溶着速度の22~27倍である。図7に示すように、本実施例よりも溶着速度の遅い従来の非消耗型電極肉盛溶接で溶接した溶接構造物は、被溶接部材71の上にNi基合金の非消耗型電極肉盛溶接ビード72が形成され、両者の境界にHAZ73が観察されるが、図1と比較してHAZ73の境界の形状はいびつであり、溶接品質も劣ると考えられる。
[特許文献1~3との相違点]
上述した特許文献1では、TIG溶接において1層目の溶接により溶接ビードB1を形成したときには、溶接熱により母材に硬化域H1が形成される。2層目の溶接によりビードB2を形成したときには、溶接熱により発生する焼き戻し域S2により、硬化域H1の下部域が焼き戻されて、硬化域H1は硬化域H2へと領域が縮小する。3層目の溶接により溶接ビードB3を形成したときには、溶接熱により発生する焼き戻し域S3により、硬化域H2が焼き戻されて、硬化域H2が消失するとしている。消耗型電極肉盛溶接工法については全く記載されていない。
一方、作業効率を低下させることなく、溶接速度及び溶接ワイヤ供給量を、常に一定としつつ、硬化域を焼き戻し処理した領域の機械的性能について硬化域を軟化させるとともに、靭性は焼鈍炉により熱処理したもの以上にまで向上させるとしているが、TIG溶接ワイヤ供給量については全く記載されていない。最大のワイヤの供給速度は明確に記載されていないが、TIG溶接の上限入熱量9kJ/cmとして設定したことから、この工法において最大のワイヤの供給速度は1m/min~2m/minであると考えられる。
また、特許文献2では、溶接母材上に形成した初層の溶接ビードの上に残層の溶接ビードを重ね溶接し、前記初層の溶接ビードを形成した時に前記溶接母材に生じた熱影響部を、前記残層の溶接ビードの重ね溶接時における溶接熱によって焼き戻すようにした溶接方法であって、前記残層の溶接ビードの最初のパスと最後のパスの形成時に、溶接トーチを、前記最初のパスと前記最後のパスの幅方向内側に傾斜させながら走査して前記溶接ビードを形成することにより、前記最初のパスと前記最後のパスの幅方向内側と外側とで前記溶接母材に対する溶接熱の加わり方に差を生じさせ、前記溶接熱の加わり方が大きい側を前記初層の溶接ビードの幅方向外縁部の領域に重ねるようにして前記外縁部の領域に熱を加えながら前記残層の溶接ビードを形成し、前記残層の溶接ビードの形成時における前記溶接トーチを傾斜することで残層の溶接ビードの各層における最初のパスおよび最後のパスを溶接する際に、それぞれ溶接ビードの幅方向の外側に熱が掛りやすくなり、初層の溶接ビードを形成した時に溶接母材に生じた熱影響部を確実に焼き戻すことができることを特徴とする溶接方法としている。
溶接形態は必ずしもTIGでなくてもよく、他種の放電溶接であってもよいとしているが、消耗型電極肉盛溶接工法については明確に記載されていない。消耗型電極肉盛溶接工法では、溶接ビードの溶け込みの深さ及び溶接ワイヤの送給速度がTIG溶接より大きい、積層高さも大きいとされている。一般に通常の溶接条件では初層ビードの溶接熱影響部の硬化域に溶接積層の厚さおよび積層数が制御可能なTIG溶接のようなテンパービード効果が得られないと考えられる。
また、特許文献3では、原子炉炉内構造物の補修予定箇所に開先加工部1を形成する第1のステップと、前記開先加工部1の一方の端部を含む所定範囲の炉内構造物表面に対し平坦部側から溶接ワイヤを供給して第1の溶接を実施し第1溶接部2を形成する第2のステップと、開先加工部1側の第1溶接部2を除去する第3のステップと、前記開先加工部1と除去後の第1溶接部2に対しワイヤを供給する第2の溶接を前記第1の溶接とは逆方向に実施し第2溶接部3を形成する第4のステップと、第3以降の溶接を前記第2溶接部3の上部でかつ前記除去後の第1溶接部2から出ないように実施し、複数層からなる溶接部4を形成する第5のステップと、前記第5ステップで形成された溶接層の表面を削り取る第6のステップとを有するとしている。波長1.06μm、出力0.5~4.0kWのYAGレーザを用い、加工速度0.1~5m/minで溶接を実施した。また、ワイヤとして直径0.4~1.0mmの690系合金を用い、その供給速度は0.5~8m/minであるが開示されているが、消耗型電極肉盛溶接工法については全く記載されていない。
また、上記特許文献1に示されているTIGテンパービード溶接及び特許文献3に示されているレーザテンパービード溶接工法において、ワイヤ送給装置とワイヤ制御装置は必要であり、溶接ヘッドは大きくなり、狭隘部へ適用は困難である。また、溶接金属の肉盛量が少なく、実用的には1層当たりのワイヤの肉盛量は更なる高い肉盛効率が求められる。
また、上記特許文献1に示されているTIGテンパービード溶接及び特許文献3に示されているレーザテンパービード溶接工法において、初層の溶接ビードを形成した時に溶接母材に生じた熱影響部について、トーチの傾斜角度の変更及びビードの研削を実施するので、施工工数が大きくかかると考えられる。
本実施例では、原子力発電用の原子炉に使用される圧力容器の低合金鋼の母材からなる円筒部材であり、圧力容器の内面においては、低合金鋼と低合金鋼の上に肉盛溶接されたオーステナイト系ステンレス鋼溶接金属組成からなる円筒部材を被溶接部材とする。
図2は実施例2のNi合金の肉盛溶接方法を示す模式図である。図2に示すように、低合金鋼の被溶接部材1の表面に行われる肉盛溶接2において、Ni基合金(52合金系)を用い、消耗型電極肉盛溶接工法による1層目の溶接により溶接ビード2-1を形成したときには、溶接熱により母材に形成された熱影響部の硬化域の幅を小さく抑えるため、希釈率を2.5%~10%とした。このようにすることで、硬化域の幅を1.2mm~1.6mmに減少することができた。溶接条件は、溶接速度17を300mm/min、溶接電流16を200A以上、ワイヤ送給速度を8.7m/min以上とした。
2層目の溶接により溶接ビード2-2を形成したときには、1層目の溶接ビード2-1に形成された硬化域が焼き戻されるため、2層目溶接ビード2-2の溶接電流の範囲を200A~250Aとし、積層高さを2.0mm~3.0mmとし、1層目溶接ビード2-1肉盛層の表層の凹凸の影響がないように、溶け込みが1mm以上になるような条件を採用した。溶接速度を200mm/min~300mm/min、ワイヤ送給速度を8.7m/min~10.5mm/min以上とした。
図3Aは実施例2において2層目溶接ビード2-2を施工した後のHAZ部の硬さ分布を示すグラフであり、図3Bは図3AのA-B付近の断面観察写真である。溶接ビード2-2の端部の溶け込みがやや深くなったため、硬さは400HVを超過する場所があるが、その他の硬さは350HV以下であることが確認された。
3層目溶接ビード2-3以降の溶接条件は2層目の溶接条件と同一である。3層目の溶接ビード2-3を形成したときには、溶接の入熱により発生する焼き戻し域により、上記1層目の溶接ビード2-1に形成された硬化域が完全に焼き戻され、HAZの硬さは350Hv以下であると考えられる。
本実施例では、溶接用シールドガスを100%不活性ガスArガスとし、良好な外観および内部に欠陥がない、低合金鋼の被溶接部材の希釈率15を2.5%~10%とする肉盛溶接金属が得られた。
図4は肉盛溶接されたオーステナイト系ステンレス鋼溶接金属部におけるNi基合金の消耗型電極肉盛溶接を示す模式図である。被溶接部材である低合金鋼1-1の上に肉盛溶接されたオーステナイト系ステンレス鋼1-2の溶接金属部から応力腐食割れが発生した後に、ステンレス鋼の肉盛溶接部の補修溶接することを想定している。被溶接部材1-1の表面の欠陥を除去し、開先角度45°の溝開先を設け、Ni基合金の消耗型電極肉盛溶接工法による1層目の溶接により溶接ビード2-1を形成したときには、溶接熱により母材に形成された熱影響部3の硬化域の幅14は小さく抑えるため、希釈率15を2.5%~10%とした。硬化域の幅を1.2mm~1.6mmに減少することができた。
2層目の溶接により溶接ビード2-2を形成したときには、1層目の溶接ビード2-1に形成された硬化域が焼き戻されるため、2層目溶接ビード2-2の溶接電流16の範囲を200A~250Aとし、積層高さを2.0mm~3.0mmとし、1層目溶接ビード2-1肉盛層の表層の凹凸の影響がないように、溶け込みが1mm以上になるような条件を採用した。
3層目溶接ビード2-3以降の溶接条件は2層目の溶接条件と同一である。開先内の溶接は最低3層を行う。溶接の入熱により発生する焼き戻し域により、上記1層目の溶接ビード2-1に形成された硬化域が完全に焼き戻され、HAZ3の硬化域はテンパーされ、後熱処理不要の良好溶接部が得られた。
図5は実施例4のNi合金の肉盛溶接方法を示す模式図である。本実施例では、低合金鋼の被溶接部材1の上に肉盛溶接されたオーステナイト系ステンレス鋼溶接金属部から応力腐食割れが発生した後に、その割れを除去しないでそのまま封止肉盛溶接を行うことを想定している。ステンレス鋼の部溶接材1の表面に行われる肉盛溶接2において、Ni基合金(52合金系)を用い、消耗型電極肉盛溶接工法による1層目の溶接により溶接ビード2-1を形成したときには、低合金鋼のように溶接ビード2-1の熱影響部3に硬化域が生じないため、溶け込みが1mm以上になるような条件を採用する。
2層目以降の溶接ビードを形成したときには、溶接電流の範囲を200A~250Aとし、積層高さを2.0~3.0mmとし、1層目溶接ビード2-1肉盛層の表層の凹凸の影響がないように、溶け込みが1mm以上になるような条件を採用する。
本実施例によれば、溶接用シールドガスを100%不活性ガスArガスとし、良好な外観および内部に欠陥がない肉盛溶接金属が得られる。
また、ステンレス鋼のNi基合金肉盛溶接部の補修溶接は気中でも水中でも行われることができる。水中補修溶接において、溶接トーチの廻りの空間において水を排除し、局部の空間を形成し、前記消耗型電極肉盛溶接工法による溶接ビードを形成することができる。
図6は実施例4のNi合金の肉盛溶接方法を示す模式図である。本実施例では、低合金鋼のNi基合金の消耗型と非消耗型電極複合による肉盛溶接例を示す。低合金鋼の被溶接部材1の表面に行われる肉盛溶接2において、Ni基合金9(52合金系)を用い、消耗型電極肉盛溶接工法による1層目の溶接により溶接ビード2-1を形成したときには、溶接熱により母材に形成された熱影響部3の硬化域の幅14は小さく抑えるため、希釈率を2.5%~10%とした。硬化域の幅を1.2mm~1.6mmに減少することができた。
2層目の溶接により溶接ビードを形成したときには、1層目の溶接ビード2-1に形成された硬化域が焼き戻されるため、2層目溶接ビードの溶接電流の範囲を200A~250Aとし、積層高さを2.0mm~3.0mmとし、1層目溶接ビード肉盛層の表層の凹凸の影響がないように、溶け込みが1mm以上になるような条件を採用した。
3層目溶接ビード以降の溶接条件は2層目の溶接条件と同一である。3層目の溶接ビードを形成したときには、溶接の入熱により発生する焼き戻し域により、上記1層目の溶接ビードに形成された硬化域が完全に焼き戻され、HAZ3の硬化域はテンパーされ、硬さは350Hv以下になる。
溶接用シールドガス13を100%不活性ガスArガスとし、良好な外観および内部に欠陥がない、低合金鋼の被溶接部材1の希釈率15を2.5%~10%とする肉盛溶接金属が得られた。
消耗型電極肉盛溶接後、溶接金属2の端部において、非消耗型電極肉盛溶接を行う。消耗型電極肉盛溶接ビードの寸法を10mm以上とするとともに1層目から6層以上の溶接は2パスで構成され、溶接金属の積上角度23を20°以下とする。消耗型電極溶接ビード21の熱影響部の硬さは233HV~336HVの範囲で350HV以下であることが確認されたため、溶接後の熱処理は不要とする。
以上、説明したように、本発明によれば、従来のTIG溶接よりも作業効率を向上した消耗型電極式肉盛溶接を採用しつつ、従来のTIG溶接と同等の溶接品質を実現する溶接構造物およびNi合金の肉盛溶接方法を提供できることが示された。
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
1…被溶接部材、1-1…低合金鋼、1-2…ステンレス鋼、2…肉盛溶接ビード、3…HAZ、4…積層高さ、6…ビード幅、9…Ni基合金の溶接ワイヤ、10…溶接トーチ、11…溶接方向、21…消耗型電極肉盛溶接部、22…消耗型電極肉盛溶接ビードの寸法、23…端部の溶接金属の積上角度。

Claims (7)

  1. 低合金鋼または炭素鋼の被溶接部材にNi基合金を肉盛溶接した溶接構造物において、希釈率が2.5~10%であり、熱影響部の硬化域の幅が1.2~1.6mmであることを特徴とする溶接構造物。
  2. 低合金鋼または炭素鋼の被溶接部材にNi基合金を100%不活性ガスおよび消耗型電極を用いて肉盛溶接するNi合金の肉盛溶接方法において、
    溶接速度:200mm/min~300mm/min、溶接電流:200A以上、ワイヤ送給速度:8.7m/min以上とし、前記Ni合金の積層高さ:1.0mm~3.0mm、消耗型電極のウィビング幅:10mm~15mm、ウィビングの周波数:2HZ~3HZ、溶接ビードのセンタからのオフセット量:12mm~20mm、ビード端部停止:0.05s~0.1sとすることを特徴とするNi合金の肉盛溶接方法。
  3. 前記被溶接部材は、ステンレス金属が肉盛溶接された低合金鋼であり、
    前記被溶接部材表面の欠陥を除去し、溝開先を設ける溝加工工程と、低合金鋼の溶接の希釈率を2.5%~10%、熱影響部の硬化域の幅を1.2~1.6mmとする複数パスで構成される1層目の溶接工程と、
    前記1層目の溶接工程の終了後に溶け込みを1mm、積層高さを2.0~3.0mmとする2層目以降の溶接工程と、を有し、
    溶着速度が5~6kg/hであることを特徴とする請求項2に記載のNi合金の肉盛溶接方法。
  4. 前記低合金鋼または炭素鋼の希釈率15を2.5%~10%、硬化域の幅14を1.2~1.6mmとする複数パスで構成される1層目の溶接工程と、前記1層目の溶接工程の終了後に溶け込みを1mm、積層高さを2.0~3.0mmとする2層目以降の溶接工程と、を有することを特徴とする請求項2または3に記載のNi合金の肉盛溶接方法。
  5. 前記消耗型電極肉盛溶接後、溶接金属の端部において、非消耗型電極肉盛溶接を行い、
    溶接ビードの寸法22を5mm以上とするとともに6層以上の溶接が2パスで構成され、溶接金属の積上角度23を20°以下とすることを特徴とする請求項2または3に記載のNi合金の肉盛溶接方法。
  6. 溶接ビードの溶け込みを1mm、積層高さを2.0~3.0mmとすることを特徴とする請求項2または3に記載のNi合金の肉盛溶接方法。
  7. 溶接トーチの廻りの空間において水を排除し、局部の空間を形成することを特徴とする請求項2または3に記載のNi合金の肉盛溶接方法。
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