JP2022189533A - 電波散乱装置及び電波散乱部材 - Google Patents
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Abstract
【課題】複数の電波散乱部を備える電波散乱装置において、複数の電波散乱部間において位相を補正しない場合に比べ、散乱ビーム幅を広くできる電波散乱装置及び電波散乱部材を提供する。
【解決手段】入射した電波を散乱して電波を不感地帯に照射する電波散乱装置20であって、入射ビームを予め定められた第1の散乱角で散乱させる複数のセル#11~#1jが配列された第1の電波散乱部U1と、入射ビームを予め定められた第2の散乱角で散乱させる複数のセル#11~#1jが配列された第2の電波散乱部U2と、を備える。第1の電波散乱部と第2の電波散乱部とは、隣接して配置され、第1の電波散乱部と第2の電波散乱部との間は、入射ビームを予め定められた散乱角に設定する位相差に設定されている。
【選択図】図6
【解決手段】入射した電波を散乱して電波を不感地帯に照射する電波散乱装置20であって、入射ビームを予め定められた第1の散乱角で散乱させる複数のセル#11~#1jが配列された第1の電波散乱部U1と、入射ビームを予め定められた第2の散乱角で散乱させる複数のセル#11~#1jが配列された第2の電波散乱部U2と、を備える。第1の電波散乱部と第2の電波散乱部とは、隣接して配置され、第1の電波散乱部と第2の電波散乱部との間は、入射ビームを予め定められた散乱角に設定する位相差に設定されている。
【選択図】図6
Description
本発明は、電波散乱装置及び電波散乱部材に関する。
準ミリ波帯やミリ波帯の電波のように波長が短くなると、電波の直進性が強くなるため、電波の透過に対して障壁となるビルなどの障壁物が存在すると、障壁物で遮られた部分が電波の不感地帯となる。不感地帯の解消には、入射した電波を散乱して電波を不感地帯に照射する電波散乱装置を用いることが有効である。
特許文献1には、少なくとも第1及び第2の配列群を含み、第1の配列群は第1の素子配列を複数個含み、第2の配列群は第2の素子配列を複数個含み、第1及び第2の素子配列の各々は、所定の方向に整列した複数の素子を含み、複数の素子の内の2つの素子各々が反射する電波の位相差は、2つの素子の間隔と素子による反射角に対する三角関数の値との積に比例し、第1の配列群による反射角は第2の配列群による反射角と異なるマルチビームリフレクトアレイが記載されている。
ところで、電波散乱装置には、散乱ビームにより不感地帯をより広く覆うことが求められる。つまり、電波散乱装置は、散乱ビーム幅が広いことがよい。
本発明は、複数の電波散乱部を備える電波散乱装置において、複数の電波散乱部間において位相を補正しない場合に比べ、散乱ビーム幅を広くできる電波散乱装置などを提供することを目的とする。
本発明は、複数の電波散乱部を備える電波散乱装置において、複数の電波散乱部間において位相を補正しない場合に比べ、散乱ビーム幅を広くできる電波散乱装置などを提供することを目的とする。
本発明が適用される電波散乱装置は、入射ビームを予め定められた第1の散乱角で散乱させる複数のセルが配列された第1の電波散乱部と、入射ビームを予め定められた第2の散乱角で散乱させる複数のセルが配列された第2の電波散乱部と、を備え、第1の電波散乱部と第2の電波散乱部とは、隣接して配置され、第1の電波散乱部と第2の電波散乱部との間は、入射ビームを予め定められた散乱角に設定する位相差に設定されている。
このような電波散乱装置において、第1の散乱角で散乱される第1の散乱ビームと、第2の散乱角で散乱される第2の散乱ビームとは、第1の電波散乱部側又は第2の電波散乱部側に投影した場合、第1の電波散乱部と第2の電波散乱部との間と交差することを特徴とすることができる。
ここで、第1の散乱角と第2の散乱角とは同じであることを特徴とすることができる。
また、第1の散乱角と第2の散乱角とが異なることを特徴とすることができる。
ここで、第1の散乱角と第2の散乱角とは同じであることを特徴とすることができる。
また、第1の散乱角と第2の散乱角とが異なることを特徴とすることができる。
そして、第1の電波散乱部と第2の電波散乱部との間は、第1の電波散乱部の第1の散乱角と第2の電波散乱部の第2の散乱角とのいずれか一方、又は第1の散乱角と第2の散乱角との間の角度の散乱角となる位相差に設定されていることを特徴とすることができる。
また、本発明が適用される電波散乱装置は、入射ビームを予め定められた第3の散乱角で散乱する複数のセルが配列された第3の電波散乱部を備え、第3の電波散乱部は、第2の電波散乱部に隣接して設けられ、第2の電波散乱部と第3の電波散乱部との間は、入射ビームを予め定められた散乱角に設定する位相差に設定され、第1の散乱角で散乱される第1の散乱ビームと、第2の散乱角で散乱される第2の散乱ビームと、第3の散乱角で散乱される第3の散乱ビームとは、第1の電波散乱部側、第2の電波散乱部側又は第3の電波散乱部に投影した場合、第1の電波散乱部と第2の電波散乱部との間及び第2の電波散乱部と第3の電波散乱部との間と交差することを特徴とすることができる。
そして、第1の電波散乱部の第1の散乱角、第2の電波散乱部の第2の散乱角、及び第3の電波散乱部の第3の散乱角は、この順で大きく、又は小さくなるように設定されていることを特徴とすることができる。
そして、第1の電波散乱部の第1の散乱角、第2の電波散乱部の第2の散乱角、及び第3の電波散乱部の第3の散乱角は、この順で大きく、又は小さくなるように設定されていることを特徴とすることができる。
他の観点から捉えると、電波散乱部材は、入射ビームを予め定められた散乱角で散乱する複数のセルが配列された電波散乱部材であって、入射ビームを予め定められた他の散乱角で散乱する複数のセルが配列され、電波散乱部材と組み合わせて用いられる他の電波散乱部材との間が予め定められた散乱角に設定する位相差である。
本発明によれば、複数の電波散乱部間において位相を補正しない場合に比べ、散乱ビーム幅を広くできる電波散乱装置が提供できる。
以下に、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
準ミリ波帯やミリ波帯の電波のように波長が短くなると、電波の直進性が強くなる。このため、ビルなどの電波の透過に対して障壁となる障壁物があると、障壁物で遮られた部分は、電波が届きにくい不感地帯になる。不感地帯を解消するために、電波散乱装置により電波を散乱させて、散乱ビームを不感地帯に照射することが行われる。
準ミリ波帯やミリ波帯の電波のように波長が短くなると、電波の直進性が強くなる。このため、ビルなどの電波の透過に対して障壁となる障壁物があると、障壁物で遮られた部分は、電波が届きにくい不感地帯になる。不感地帯を解消するために、電波散乱装置により電波を散乱させて、散乱ビームを不感地帯に照射することが行われる。
(電波散乱装置10)
電波散乱装置10の概要を説明する。
図1は、電波散乱装置10により不感地帯を解消する概念を説明する図である。図1(a)は、ビル3が障壁物となって生じる不感地帯を複数の電波散乱装置10により解消する場合を説明する図、図1(b)は、電波散乱装置10による散乱方向を説明する図である。
電波散乱装置10の概要を説明する。
図1は、電波散乱装置10により不感地帯を解消する概念を説明する図である。図1(a)は、ビル3が障壁物となって生じる不感地帯を複数の電波散乱装置10により解消する場合を説明する図、図1(b)は、電波散乱装置10による散乱方向を説明する図である。
図1(a)に示すように、地表1上に3つのビル3(区別する場合は、ビル3a、3b、3c)が並列して設けられている。ビル3aの屋上に電波を送受信する基地局アンテナ2が設けられている。図1(a)では、基地局アンテナ2は、地表1に垂直に配置された複数のアンテナ(放射素子)で構成されたアレイアンテナとして図示されている。そして、ビル3cの屋上に電波散乱装置10(区別する場合には、電波散乱装置10a、10b、10c)が設けられている。電波散乱装置10は、基地局アンテナ2が見通せる位置に設けられている。つまり、基地局アンテナ2が、準ミリ波帯やミリ波帯のように波長が短い電波を送受信する場合であっても、基地局アンテナ2からの電波は、直接電波散乱装置10に入射する。
まず、ビル3cの屋上に電波散乱装置10が設けられていないとする。基地局アンテナ2が、準ミリ波帯やミリ波帯のように波長が短い電波を送受信する場合、ビル3bが電波の透過に対する障壁物となる。このため、基地局アンテナ2から送信された電波は、直接には、ビル3bとビル3cとの間の地表1上に届かない。つまり、ビル3bとビル3cとの間の地表1の部分は、不感地帯となる。
ここで、ビル3cの屋上に電波散乱装置10を設けると、基地局アンテナ2からの電波は、電波散乱装置10により散乱され、散乱ビームがビル3bとビル3cとの間の不感地帯に照射される。電波散乱装置10を設けることで、電波散乱装置10が設けられない場合に発生するビル3bとビル3cとの間の不感地帯が解消される。
図1(b)では、基地局アンテナ2は、放射素子がマトリクス状に配列されたアレイアンテナとして示されている。ここでは、基地局アンテナ2と携帯端末4との間で電波を送受信する。図1(b)に示すように、基地局アンテナ2と携帯端末4との間には、電波の透過に対して障壁となるビル3が存在する。このため、基地局アンテナ2から携帯端末4の方向に直線的に入射するように進む入射ビーム11aは、ビル3が障壁物となって、携帯端末4に届かない(届かないことを“X”で示す)。
一方、基地局アンテナ2から入射する入射ビーム11bが電波散乱装置10で散乱されると、散乱によって生成された散乱ビーム12aが携帯端末4に届く。ここでは、電波散乱装置10には入射ビーム11bが入射角αで入射し、入射角αと異なる散乱角θで散乱ビーム12aが出射する(α≠θ)。なお、電波散乱装置10が鏡面反射する場合には、散乱ビーム12bは、反射角αで出射する。電波散乱装置10が鏡面反射する場合には、図1(b)に破線で示す方向に散乱ビーム12bが生じる。このため、電波は、携帯端末4に届かない。このように、電波散乱装置10が入射角αと異なる散乱角θで電波を散乱するように設定すると、電波散乱装置10の設計が容易になる。
本明細書では、電波を散乱させて出射することから、電波散乱装置と表記するが、電波を反射させて出射するとして、電波反射装置としてもよい。また、電波散乱装置により散乱されることから散乱ビームと表記するが、反射ビームとしてもよい。また、電波散乱装置の垂線方向に対する散乱ビームが出射する角度を散乱角、又は散乱角度と表記するが、反射角、又は反射角度としてもよい。
図2は、電波散乱装置10で散乱させた散乱ビーム12の一例を示す図である。図2(a)は、V偏波を示す図、図2(b)は、H偏波を示す図、図2(c)は、図2(a)、(b)の電波散乱装置10を4倍の面積にした電波散乱装置10′でのV偏波を示す図である。なお、図2(a)、(b)、(c)では、紙面の上側に斜視図を示し、紙面の下側に散乱ビーム12の強度を極座標で示す。斜視図において、図示するようにx方向、y方向及びz方向を設定する。これについては、後述する。極座標において、紙面に対して、右方向が-x方向、左方向が+x方向、上方向が+z方向である。なお、散乱ビームの強度は、シミュレーションによって求めた。
ここでは、電波散乱装置10は、平面形状が長手方向と短手方向とを有する四角形であって、後述するセル#(後述する図4参照)がマトリクス状に配列されたメタサーフェスである。ここで、四角形の長手方向をx方向とし、短手方向をy方向とし、四角形に垂直な方向をz方向とする。図示するように、z軸からx軸に向かう角度をη、z軸からy軸に向かう角度をζとする。ここでは、電波散乱装置10に入射する入射ビーム(図1(b)における入射ビーム11bに相当)は、角度ηを0度、角度ζを20度に設定されている。つまり、入射ビームは、yz面にあって、z軸からy軸側に20度傾いている。一方、散乱ビーム12は、角度ηを45度、角度ζを0度に設定に設定されている。つまり、散乱ビーム12は、xz面において、z軸からx軸側に45度傾いている。また、電波は、28GHzである。なお、V偏波は、y方向に電界が振動する偏波であり、H偏波は、x方向に電界が振動する偏波である。
図2(a)に示すように、V偏波は、xz面において45度(角度η=45度、角度ζ=0度)方向に散乱ビーム12が発生している。そして、散乱ビーム幅は、8度である。同様に、図2(b)に示すように、H偏波は、xz面において45度(角度η=45度、角度ζ=0度)方向に散乱ビーム12が発生している。そして、散乱ビーム12の幅は、8度である。つまり、電波散乱装置10は、V偏波とH偏波とに対して同様な散乱特性を有している。ここでの散乱ビーム12の幅は、-3dBにおける幅である。なお、電波散乱装置10は、V偏波とH偏波とに対して異なる散乱特性を有するようにしてもよい。
図2(c)に示す電波散乱装置10′は、図2(a)、(b)に示した電波散乱装置10を4個配列して構成されている。つまり、面積が4倍となっている。なお、電波散乱装置10′を構成する4個の電波散乱装置10間においては、後述する位相の補正を行っていない。図2(c)に示す電波散乱装置10′では、散乱ビーム12′におけるV偏波のピーク強度は、図2(a)に示した電波散乱装置10の散乱ビーム12のピーク強度より大きい。しかし、散乱ビーム12′の散乱ビーム幅は、4度であって、図2(a)に示した電波散乱装置10の散乱ビーム12の散乱ビーム幅(8度)に比べ狭くなっている。つまり、電波散乱装置10の面積を大きくすると、散乱ビーム幅は逆に狭くなる。
以上説明したように、電波散乱装置10は、電波散乱装置10′のように面積を広げても、散乱ビーム幅は広くならない。よって、より広く不感地帯を解消しようとすると、図1(a)に示したように、散乱ビーム幅が狭くならない間隔で複数の電波散乱装置10を配置されている。
[第1の実施の形態]
次に、第1の実施の形態が適用される電波散乱装置20を説明する。
図3は、第1の実施の形態が適用される電波散乱装置20の一例を説明する図である。図3において、紙面の右方向をx方向、紙面の上方向をy方向、紙面の表面方向をz方向とする。
次に、第1の実施の形態が適用される電波散乱装置20を説明する。
図3は、第1の実施の形態が適用される電波散乱装置20の一例を説明する図である。図3において、紙面の右方向をx方向、紙面の上方向をy方向、紙面の表面方向をz方向とする。
第1の実施の形態が適用される電波散乱装置20は、複数の電波散乱部Uを備えている。ここでは、電波散乱装置20は、電波散乱部Uをx方向にn個、y方向にm個備えている。m、nは、1以上の整数(自然数)である。つまり、電波散乱装置20は、m×n個の電波散乱部Uを備えている。各電波散乱部Uを区別する場合には、Umnと表記する(m、n=1、2、3、…)。ここで、x方向の配列を行、y方向の配列を列と表記する。なお、電波散乱装置20は、x方向に複数の電波散乱部Uを一行備えていてもよく(m=1、n>1)、y方向に複数の電波散乱部Uを一列備えていてもよい(m>1、n=1)。また、電波散乱装置10はx方向にn個、y方向にm個備えているとしたが、x方向に配列された電波散乱部Uの数が行ごとに異なっていてもよく、y方向に配列された電波散乱部Uの数が列ごとに異なっていてもよい。
電波散乱部Umnは、セル#をx方向にj個、y方向にi個備えている。i、jは、1以上の整数(自然数)である。つまり、セル#は、i×j個のセル#を備えている。各セル#を区別する場合には、セル#(i,j)mn(i、j=1、2、3、…、m、n=1、2、3、…)と表記する。なお、各電波散乱部Uが備えるセル#の数は、同じであってもよく、異なっていてもよい。また、電波散乱部Uは、x方向に複数のセル#を一行備えてもよく((i)mn=1、(j)mn>1)、y方向に複数のセル#を一列備えてもよい((i)mn>1、(j)mn=1)。ここでは、電波散乱部Umnが備えるセル#は、x方向にj個、y方向にi個としたが、x方向に配列されたセル#の数が行ごとに異なってもよく、y方向に配列されたセル#の数が列ごとに異なってもよい。
電波散乱装置20を構成する複数の電波散乱部Uは、一つの平面上に配置されている。なお、複数の電波散乱部Uは、互いに交差する平面上に設けられていてもよい。また、複数の電波散乱部Uは、曲面上に設けられていてもよい。
また、電波散乱部Uの各セル#は、一つの平面上に配置されている。なお、電波散乱部Uの各セル#は、交差する平面上又は曲面上に設けられていてもよい。
また、電波散乱部Uの各セル#は、一つの平面上に配置されている。なお、電波散乱部Uの各セル#は、交差する平面上又は曲面上に設けられていてもよい。
(セル#)
図4は、電波散乱部Uを構成するセル#の一例を説明する図である。図4(a)は、平面図、図4(b)は、断面図、図4(c)は、パラメータとその値である。図4(a)において、紙面の右方向をx方向、紙面の上方向をy方向、紙面の表方向をz方向とする。図4(b)において、紙面の右方向をx方向、紙面の上方向をz方向、紙面の裏方向をy方向とする。x方向、y方向、z方向は、図3と同じ方向である。
図4は、電波散乱部Uを構成するセル#の一例を説明する図である。図4(a)は、平面図、図4(b)は、断面図、図4(c)は、パラメータとその値である。図4(a)において、紙面の右方向をx方向、紙面の上方向をy方向、紙面の表方向をz方向とする。図4(b)において、紙面の右方向をx方向、紙面の上方向をz方向、紙面の裏方向をy方向とする。x方向、y方向、z方向は、図3と同じ方向である。
図4(a)に示すように、セル#は、平面形状が一辺長Dの正方形である。そして、電波散乱部Uにおいて、セル#は、一辺長Dをピッチとしてx方向及びy方向に配列されている。以下では、セル#は、ピッチDで配列されているとして説明する。例えば、図4(c)に示すように、周波数28GHzにおいて、一辺長D(ピッチD)は、5mmに設定されている。5mmは、周波数28GHzの波長λの0.467に対応する(0.467λ)。一辺長D(ピッチD)は、周波数などによって設定されればよく、他の値であってもよい。
図4(b)に示すように、セル#は、基板101と、基板101の表面側(+z方向側)に設けられた十字ダイポールの表面電極102と、基板101の裏面側(-z方向側)の全面に設けられた接地電極103とを備えている。接地電極103は、接地電位(GND)に設定される。
基板101は、誘電体基板であって、例えば、図4(c)に示すように、比誘電率εrが3.0で厚さtが1.3mmである。比誘電率εr、厚さtは、他の値であってもよい。表面電極102及び接地電極103は、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)などの導電性材料で構成されるとよい。
表面電極102である十字ダイポールは、全体の長さがl、十字部分の幅がWである。例えば、図4(c)に示すように、幅Wは、1mmである。隣接する十字ダイポールにおいて、長さlを異ならせることにより、後述する図5で説明する位相差φを設けている。長さlが1.0mmから5.0mmの範囲において、278度の位相差φが得られる。なお、幅Wは、他の値であってもよい。ここでは、幅Wを固定して、長さlを異ならせて位相差φを得たが、長さlを固定して、幅Wを異ならせて位相差φを得てもよい。位相差を位相と表記することがある。
接地電極103は、隣接するセル#間において連続している。つまり、電波散乱部Uは、表面側及び裏面側にそれぞれ導電性材料からなる導電体層が設けられた基板101を用い、表面側(+z方向側)の導電体層を形状の異なる複数の表面電極102(十字ダイポール)に加工して構成される。
ここでは、セル#の表面電極102は、十字ダイポールであるとして説明したが、他の形状であってもよい。セル#の表面電極102の平面形状は、例えば、四角形、円形、リング状などの他の形状であってよい。また、表面電極102と接地電極103とがビアで接続された、所謂マッシュルーム構造であってもよい。
図5は、電波散乱部Uにおいて、散乱角θを設定する方法を説明する図である。図5において、紙面の右方向がx方向、紙面の上方向がz方向である。図5では、図3に示した電波散乱部Uにおける1行目のセル#を示している。なお、電波散乱部Uを区別するmnの添え字の記載を省略している。なお、設定する散乱角θは、散乱ビームの強度が最大となる角度である。
セル#(1,j)は、x方向にピッチDで配列されている。そして、セル#の配列に対して垂直方向(-z方向)から電波が入射し、xz面内において散乱ビーム22がz軸からx軸側に向かって角度θ傾いた方向に散乱されるとする。図2(a)に示したz軸からx軸に向かう角度ηが角度θの場合に相当する。なお、散乱ビーム22の角度θを散乱角θと表記する。この場合、各セル#間の位相差がφになるように設定すればよい。つまり、セル#(1,1)の位相が0、セル#(1,2)の位相が-φ、セル#(1,3)の位相が-2φ、セル#(1,4)の位相が-3φ、セル#(1,j)の位相が-(j-1)φとすればよい。
散乱角θを得るために設定される各セル#間の位相差φは、
φ=k・D・sinθ (1)
で表される。なお、kは、波数で2π/λである。ここで、λは、波長である。
つまり、隣接するセル#間において、式(1)で設定される位相差φが生じるようにセル#を設定する。図4に示したセル#では、表面電極102である十字ダイポールの長さlを異ならせることで、隣接するセル#間において位相差φが設定される。
φ=k・D・sinθ (1)
で表される。なお、kは、波数で2π/λである。ここで、λは、波長である。
つまり、隣接するセル#間において、式(1)で設定される位相差φが生じるようにセル#を設定する。図4に示したセル#では、表面電極102である十字ダイポールの長さlを異ならせることで、隣接するセル#間において位相差φが設定される。
なお、図5では、x方向に配列されたセル#で説明したが、y方向に配列されたセル#に対しても位相差が設定できる。また、x方向とy方向とでセル#間の位相差を設定すると、xz面以外の方向に散乱角θを設定できる。ここでは、セル#の配列に対して、垂直に電波が入射する場合を説明したが、セル#の配列に斜めに電波が入射する場合についても、同様な方法により位相差φを設定すればよい。
このように、予め設定された位相差でセル#を配列して散乱角θを設定した電波散乱部Uは、リフレクトアレイと呼ばれることがある。また、複数の電波散乱部Uを備える電波散乱装置20をリフレクトアレイと呼んでもよい。
以下実施例に基づいて、第1の実施の形態が適用される電波散乱装置20を説明する。
図6は、第1の実施の形態が適用される電波散乱装置20の実施例を説明する図である。図6(a)は、電波散乱部Uの配列、図6(b)は、セル#に設定された位相、図6(c)は、散乱特性である。図6(b)において、横軸は電波散乱部Uのセル#、縦軸はセル#に設定された位相である。図6(c)において、横軸は角度(度)、縦軸はピーク強度で正規化された散乱ビームの強度(dB)である。なお、散乱特性は、シミュレーションによって求めた。他の散乱特性も同様である。以下では、図6(a)に示す電波散乱装置20の実施例を第1の実施の形態が適用される電波散乱装置20と表記する。
図6は、第1の実施の形態が適用される電波散乱装置20の実施例を説明する図である。図6(a)は、電波散乱部Uの配列、図6(b)は、セル#に設定された位相、図6(c)は、散乱特性である。図6(b)において、横軸は電波散乱部Uのセル#、縦軸はセル#に設定された位相である。図6(c)において、横軸は角度(度)、縦軸はピーク強度で正規化された散乱ビームの強度(dB)である。なお、散乱特性は、シミュレーションによって求めた。他の散乱特性も同様である。以下では、図6(a)に示す電波散乱装置20の実施例を第1の実施の形態が適用される電波散乱装置20と表記する。
電波散乱装置20は、図3において、x方向に配列された3個の電波散乱部U(電波散乱部U11、U12、U13)で構成されている(図6(a))。つまり、図3において、m=1、n=3の場合である。電波散乱装置20は、一行に配列された3個の電波散乱部Uで構成されている。そこで、電波散乱部U11、U12、U13を、電波散乱部U1、U2、U3と表記する。また、各電波散乱部Uのセル#についても、#(i,j)1、#(i,j)2、#(i,j)3と表記する。そして、図6(c)に示す角度(度)は、電波散乱装置20に垂直な方向(z軸)からx軸に対する角度であって、図2(a)に示した角度ηに対応する。電波散乱部U1が第1の電波散乱部の一例、電波散乱部U2が第2の電波散乱部の一例、電波散乱部U3が第3の電波散乱部の一例である。なお、電波散乱部U1、U2、U3は、電波散乱部材の一例である。
各電波散乱部Uは、x方向に20個、y方向に10個配列されたセル#を備えている。つまり、図3において、i=10、j=20である。そして、電波散乱装置20は、x方向の長さL1が300mm、y方向の長さL2が50mmである。
電波散乱部Uには、電波散乱装置20に対して垂直(-z方向)に電波が入射する。そして、各電波散乱部Uは、図6(b)に示すように、各セル#の位相がxz面において散乱角θが+45度(θ=45度)になるように設定されている(図5参照)。さらに、電波散乱部U間において散乱角θが+45度となるように、位相が設定されている。つまり、電波散乱部U1の+x方向側の端部に位置するセル#(1,20)1と、電波散乱部U2の-x方向側の端部に位置するセル#(1,1)2との間の位相差φが、散乱角θが45度になるように設定されている。同様に、電波散乱部U2の+x方向側の端部に位置するセル#(1,20)2と、電波散乱部U3の-x方向側の端部に位置するセル#(1,1)3との間の位相差φが、散乱角θが+45度になるように設定されている。つまり、図6(b)に示すように、電波散乱装置20は、電波散乱部U1~U3のすべてのセル#において位相が連続的に変化するように設定されている。なお、電波を垂直に入射させ、xz面において散乱角θを+45度に設定する場合には、y方向に配列されたセル#間において位相差を設けることを要しないが、他の場合には、y方向に配列されたセル#間において位相差を設ければよい。
ここでは、電波散乱部U間において、位相差を設定することを、位相を補正すると表記する。ここで、電波散乱部U1の+45度の散乱角θが第1の散乱角の一例、電波散乱部U1からの散乱ビームが第1の散乱ビームの一例であり、電波散乱部U2の+45度の散乱角θが第2の散乱角の一例、電波散乱部U2からの散乱ビームが第2の散乱ビームの一例、電波散乱部U3の+45度の散乱角θが第3の散乱角の一例、電波散乱部U3からの散乱ビームが第2の散乱ビームの一例である。
図6(c)に示すように、第1の実施の形態が適用される電波散乱装置20は、設定した45度の散乱角θに近い43度をピークとする散乱ビームが得られている。そして、強度-10dBでの散乱ビーム幅は、4.5度である。以下では、散乱ビーム幅は、便宜的に強度-10dBでの値で説明する。なお、他の強度で比較してもよい。
図7は、比較例として示す第1の実施の形態が適用されない電波散乱装置20′を説明する図である。図7(a)は、電波散乱部Uの配列、図7(b)は、セル#に設定された位相、図7(c)は、散乱特性である。図7(b)、図7(c)における横軸、縦軸は、図6(b)、(c)と同様である。
図7(a)に示す第1の実施の形態が適用されない電波散乱装置20′は、図6(a)に示した第1の実施の形態が適用される電波散乱装置20と同様に、x方向に配列された3個の電波散乱部U(電波散乱部U1~U3)で構成されている。電波散乱装置20′の他の構成は、電波散乱装置20と同様である。
電波散乱部Uには、電波散乱部Uに対して垂直(-z方向)に電波が入射する。そして、各電波散乱部Uは、図7(b)に示すように、各セル#の位相がxz面において散乱角θが+45度(θ=45度)になるように設定されている(図5参照)。しかし、電波散乱部U間において位相の補正を行っていない。したがって、図7(b)に示すように、電波散乱部U1、U2、U3の内部では、各セル#間において位相が連続的に変化するが、電波散乱部U間、つまり電波散乱部U1と電波散乱部U2との間、及び電波散乱部U2と電波散乱部U3との間において、位相が不連続に変化する。
図7(c)に示すように、第1の実施の形態が適用されない電波散乱装置20′は、角度+42度、+44度、+48度をそれぞれピークとする散乱ビームを生じる。なお、設定した+45度の散乱角θに近い+44度の散乱ビームは、強度が他の散乱ビームに比べ小さく、且つ強度-10dBでの散乱ビーム幅が1.5度と狭い。つまり、第1の実施の形態が適用される電波散乱装置20のように、電波散乱部U間において位相を補正することにより、設定した散乱角θに近い散乱ビームの幅が広くなる。
ここでは、電波散乱部U1、U2、U3からの反射ビームは、xz面内にあるとしたが、必ずしもxz面内になくてもよい。電波散乱部U1、U2、U3からの反射ビームは、xz面から±y方向にずれた面内にあってもよい。他の場合も同様である。
[第2の実施の形態]
次に、第2の実施の形態が適用される電波散乱装置30を説明する。なお、第2の実施の形態が適用される電波散乱装置30は、図3に示したと同様の構成を有している。この部分の説明は省略する。
図8は、第2の実施の形態が適用される電波散乱装置30の実施例を説明する図である。図8(a)は、電波散乱部Uの配列、図8(b)は、セル#に設定された位相、図8(c)は、散乱特性である。図8(b)、(c)における横軸、縦軸は、図6(b)、(c)と同様である。
次に、第2の実施の形態が適用される電波散乱装置30を説明する。なお、第2の実施の形態が適用される電波散乱装置30は、図3に示したと同様の構成を有している。この部分の説明は省略する。
図8は、第2の実施の形態が適用される電波散乱装置30の実施例を説明する図である。図8(a)は、電波散乱部Uの配列、図8(b)は、セル#に設定された位相、図8(c)は、散乱特性である。図8(b)、(c)における横軸、縦軸は、図6(b)、(c)と同様である。
第2の実施の形態が適用される電波散乱装置30は、図6(a)に示した第1の実施の形態が適用される電波散乱装置20と同様に、x方向に配列された3個の電波散乱部U(電波散乱部U1~U3)で構成されている(図8(a))。電波散乱装置30の他の構成は、電波散乱装置20と同様である。以下では、図8(a)に示す電波散乱装置30の実施例を第2の実施の形態が適用される電波散乱装置30と表記する。
電波散乱部Uには、電波散乱部Uに対して垂直(-z方向)に電波が入射する。そして、図8(b)に示すように、電波散乱部U1は、各セル#の位相がxz面において散乱角θが+35度(θ=35度)になるように設定され、電波散乱部U2は、各セル#の位相がxz面において散乱角θが+45度(θ=45度)になるように設定され、電波散乱部U3は、各セル#の位相がxz面において散乱角θが+55度(θ=55度)になるように設定されている。さらに、電波散乱部U間における位相が、電波散乱部U2と同じく、散乱角θが+45度になるように設定されている。つまり、電波散乱部U1の+x方向側の端部に位置するセル#(1,20)1と、電波散乱部U2の-x方向側の端部に位置するセル#(1,1)2との間の位相差φが、散乱角θが+45度になるように設定されている。同様に、電波散乱部U2の+x方向側の端部に位置するセル#(1,20)2と、電波散乱部U3の-x方向側の端部に位置するセル#(1,1)3との間の位相差φが、散乱角θが+45度になるように設定されている。その他のセル#についても、電波散乱部Uの+x方向側の端部に位置するセル#と、この電波散乱部Uに隣接する電波散乱部Uの-x方向側の端部に位置するセル#との間の位相差φが、散乱角θが+45度になるように設定されている。つまり、図8(b)に示すように、電波散乱装置30は、電波散乱部U1~U3のすべてのセル#において位相が連続的に変化するように設定されている。
ここで、電波散乱部U1の+35度の散乱角θが第1の散乱角の他の一例、電波散乱部U1からの散乱ビームが第1の散乱ビームの他の一例であり、電波散乱部U2の+45度の散乱角θが第2の散乱角の他の一例、電波散乱部U2からの散乱ビームが第2の散乱ビームの一例、電波散乱部U3の+55度の散乱角θが第3の散乱角の他の一例、電波散乱部U3からの散乱ビームが第3の散乱ビームの他の一例である。
図8(c)に示すように、第2の実施の形態が適用される電波散乱装置30は、電波散乱部U1に設定した+35度の散乱角θより小さい29度から、電波散乱部U3に設定した+55度の散乱角θより大きい58.5度の範囲において、強度が大きい散乱ビームが得られている。そして、この範囲において、散乱ビームの強度の変化が少ない。つまり、電波散乱部U1、電波散乱部U2、電波散乱部U3からの散乱ビームが重ね合わされている。これにより、強度-10dBでの散乱ビーム幅として、29.5度が得られる。この散乱ビーム幅は、図6(c)に示した第1の実施の形態が適用される電波散乱装置20の散乱ビーム幅に比べ広い。よって、電波散乱装置30を用いると、電波が届く領域が広がり、電波が届きにくい不感地帯がより解消されやすい。
図9は、比較例として示す第2の実施の形態が適用されない電波散乱装置30′を説明する図である。図9(a)は、電波散乱部Uの配列、図9(b)は、セル#に設定された位相、図9(c)は、散乱特性である。図9(b)、(c)における横軸、縦軸は、図6(b)、(c)と同様である。
図9(a)に示す第2の実施の形態が適用されない電波散乱装置30′は、図8(a)に示した第2の実施の形態が適用される電波散乱装置30と同様に、x方向に配列された3個の電波散乱部U(電波散乱部U1~U3)で構成されている。電波散乱装置30′の他の構成は、電波散乱装置20と同様である。
電波散乱部Uには、電波散乱部Uに対して垂直(-z方向)に電波が入射する。そして、図9(b)に示すように、電波散乱部U1は、各セル#の位相がxz面において散乱角θが+35度(θ=35度)になるように設定され、電波散乱部U2は、各セル#の位相がxz面において散乱角θが+45度(θ=45度)になるように設定され、電波散乱部U3は、各セル#の位相がxz面において散乱角θが+55度(θ=55度)になるように設定されている(図5参照)。しかし、電波散乱部U間において位相の補正を行っていない。したがって、図9(b)に示すように、電波散乱部U1、U2、U3の内部では、各セル#間において位相が連続的に変化するが、電波散乱部U間、つまり電波散乱部U1と電波散乱部U2との間、及び電波散乱部U2と電波散乱部U3との間において、位相が不連続に変化する。
図9(c)に示すように、第2の実施の形態が適用されない電波散乱装置30′は、図8(c)に示した第2の実施の形態が適用される電波散乱装置30と同様に、電波散乱部U1に設定した+35度の散乱角θより小さい30度から、電波散乱部U3に設定した+55度の散乱角θより大きい60度の範囲において、散乱ビームが得られている。しかし、30度から60度に向かって散乱ビームの強度が小さくなるとともに、50度近傍では、散乱ビームの強度がディップ状に小さくなっている。したがって、第2の実施の形態が適用されない電波散乱装置30′の散乱ビーム幅は、図8(c)に示した第2の実施の形態が適用される電波散乱装置30に比べ小さい。
以上説明したように、第2の実施の形態が適用される電波散乱装置30で説明したように、複数の電波散乱部U間において散乱角θを異ならせるとともに、隣接する電波散乱部U間において位相を補正することにより、散乱ビームの幅が広くなる。
図10は、第2の実施の形態が適用される電波散乱装置30の変形例である電波散乱装置40を説明する図である。図10(a)は、電波散乱部Uの配列、図10(b)は、セル#に設定された位相、図10(c)は、散乱特性である。図10(b)、(c)における横軸、縦軸は、図6(b)、(c)と同様である。
電波散乱装置40は、図8(a)に示した第2の実施の形態が適用される電波散乱装置30と同様に、x方向に配列された3個の電波散乱部U(電波散乱部U1~U3)で構成されている(図10(a))。電波散乱装置40の他の構成は、電波散乱装置30と同様である。以下では、図10(a)に示す電波散乱装置30の変形例を第2の実施の形態が適用される電波散乱装置40と表記する。
電波散乱部Uには、電波散乱部Uに対して垂直(-z方向)に電波が入射する。そして、図10(b)に示すように、電波散乱部U1は、各セル#の位相がxz面において散乱角θが+15度(θ=15度)になるように設定され、電波散乱部U2は、各セル#の位相がxz面において散乱角θが+25度(θ=25度)になるように設定され、電波散乱部U3は、各セル#の位相がxz面において散乱角θが+35度(θ=35度)になるように設定されている。さらに、電波散乱部U間における位相が、電波散乱部U2と同じく、散乱角θが+25度になるように設定されている。つまり、電波散乱部U1の+x方向側の端部に位置するセル#(1,20)1と、電波散乱部U2の-x方向側の端部に位置するセル#(1,1)2との間の位相差φが、散乱角θが+25度になるように設定されている。同様に、電波散乱部U2の+x方向側の端部に位置するセル#(1,20)2と、電波散乱部U3の-x方向側の端部に位置するセル#(1,1)3との間の位相差φが、散乱角θが+25度になるように設定されている。その他のセル#についても、電波散乱部Uの+x方向側の端部に位置するセル#と、この電波散乱部Uに隣接する電波散乱部Uの-x方向側の端部に位置するセル#との間の位相差φが、散乱角θが+25度になるように設定されている。つまり、図10(b)に示すように、電波散乱装置40は、電波散乱部U1~U3のすべてのセル#において位相が連続的に変化するように設定されている。
図10(c)に示すように、電波散乱装置40は、電波散乱部U1に設定した+15度の散乱角θより小さい14度から、電波散乱部U3に設定した+35度の散乱角θより大きい39度の範囲において、強度が大きい散乱ビームが得られる。つまり、電波散乱部U1、電波散乱部U2、電波散乱部U3からの散乱ビームが重ね合わされている。これにより、強度-10dBでの散乱ビーム幅としては、25度が得られる。この散乱ビーム幅は、図8(c)に示した電波散乱装置30と同様に広い。よって、電波散乱装置40を用いると、電波が届く領域が広がり、電波が届きにくい不感地帯がより解消されやすい。
図11は、第2の実施の形態が適用される電波散乱装置30の他の変形例である電波散乱装置50を説明する図である。図11(a)は、電波散乱部Uの配列、図11(b)は、セル#に設定された位相、図11(c)は、散乱特性である。図11(b)、(c)における横軸、縦軸は、図6(b)、(c)と同様である。
電波散乱装置50は、図8(a)に示した第2の実施の形態が適用される電波散乱装置30と同様に、x方向に配列された3個の電波散乱部U(電波散乱部U1~U3)で構成されている(図11(a))。電波散乱装置50の他の構成は、電波散乱装置30と同様である。以下では、図11(a)に示す電波散乱装置30の他の変形例を第2の実施の形態が適用される電波散乱装置50と表記する。
電波散乱部Uには、電波散乱部Uに対して垂直(-z方向)に電波が入射する。そして、図11(b)に示すように、電波散乱部U1は、各セル#の位相がxz面において散乱角θが+25度(θ=25度)になるように設定され、電波散乱部U2は、各セル#の位相がxz面において散乱角θが+35度(θ=35度)になるように設定され、電波散乱部U3は、各セル#の位相がxz面において散乱角θが+45度(θ=45度)になるように設定されている。さらに、電波散乱部U間における位相が、電波散乱部U2と同じく、散乱角θが+35度になるように設定されている。つまり、電波散乱部U1の+x方向側の端部に位置するセル#(1,20)1と、電波散乱部U2の-x方向側の端部に位置するセル#(1,1)2との間の位相差φが、散乱角θが+35度になるように設定されている。同様に、電波散乱部U2の+x方向側の端部に位置するセル#(1,20)2と、電波散乱部U3の-x方向側の端部に位置するセル#(1,1)3との間の位相差φが、散乱角θが+35度になるように設定されている。その他のセル#についても、電波散乱部Uの+x方向側の端部に位置するセル#と、この電波散乱部Uに隣接する電波散乱部Uの-x方向側の端部に位置するセル#との間の位相差φが、散乱角θが+35度になるように設定されている。つまり、図11(b)に示すように、電波散乱装置50は、電波散乱部U1~U3のすべてのセル#において位相が連続的に変化するように設定されている。
図11(c)に示すように、電波散乱装置50は、電波散乱部U1に設定した+25度の散乱角θより小さい21度から、電波散乱部U3に設定した+45度の散乱角θより大きい48度の範囲において、強度が大きい散乱ビームが得られる。つまり、電波散乱部U1、電波散乱部U2、電波散乱部U3からの散乱ビームが重ね合わされている。これにより、強度-10dBでの散乱ビーム幅として、27度が得られる。この散乱ビーム幅は、図8(c)に示した電波散乱装置30と同様に広い。よって、電波散乱装置50を用いると、電波が届く領域が広がり、電波が届きにくい不感地帯がより解消されやすい。
第2の実施の形態が適用される電波散乱装置(電波散乱装置30、40、50)では、電波散乱装置を構成する各電波散乱部Uが異なる散乱角θとなるように設定されるとともに、電波散乱部U間の位相が補正されている。これにより、電波散乱装置により、広い散乱ビーム幅が得られる。
第2の実施の形態が適用される電波散乱装置(電波散乱装置30、40、50)では、電波散乱部Uがx方向に3個配列されているとしたが、図3に示したように、3個を超える個数としてもよい。3個を超える個数の電波散乱部Uを用いる場合、各電波散乱部Uの散乱角θを異なるように設定するとともに、隣接する電波散乱部U間において位相の補正を行うことで、電波散乱部Uが3個の場合より、強度が大きい散乱ビームが広い角度範囲において得られる。つまり、3個を超える個数の電波散乱部Uを用いると、散乱ビーム幅が大きくなる。
第2の実施の形態が適用される電波散乱装置(電波散乱装置30、40、50)では、電波散乱装置の各電波散乱部Uの散乱角θを、散乱ビームが電波散乱装置に投影される線に沿う方向(x方向)に異ならせた。電波散乱装置の各電波散乱部Uの散乱角θは、散乱ビームが電波散乱装置に投影される線に沿う方向に異ならせることがよい。もし、散乱ビームが電波散乱装置に投影される線に沿う方向に直交する方向に異ならせると、強度が大きい散乱ビームの方向が直交する方向において異なることになり、散乱ビーム幅は広がらない。そして、散乱ビームが電波散乱装置に投影される線に沿う方向において、徐々に散乱角が大きくなる、又は徐々に散乱角が小さくなるように設定することがよい。
第2の実施の形態が適用される電波散乱装置(電波散乱装置30、40、50)では、隣接する電波散乱部U(電波散乱部U1、U2、U3)の散乱角θを10度間隔で徐々に大きくなるように異ならせた。そして、隣接する電波散乱部U間における位相差φは、中央に位置する電波散乱部U2の散乱角θになるように設定されていた。隣接する電波散乱部U間における位相差φは、中央に位置する電波散乱部Uの散乱角θになるように設定されることを要しない。例えば、電波散乱部U1と電波散乱部U2との間における位相差φは、電波散乱部U1の散乱角θになるように設定されてもよい。そして、電波散乱部U2と電波散乱部U3との間における位相差φは、電波散乱部U3の散乱角θになるように設定されてもよい。つまり、隣接する電波散乱部U間における位相差φは、隣接する電波散乱部Uのいずれか一方の散乱角θになるように設定されてもよい。また、隣接する電波散乱部U間における位相差φは、隣接する電波散乱部Uの平均値の散乱角θなど、隣接する電波散乱部Uの2つの散乱角θの中間の散乱角θになるように設定されてもよい。つまり、電波散乱部U間の位相差φは、電波散乱部U間の位相の変化が急激に生じないように設定されるのがよい。もし、隣接する電波散乱部Uにおける位相差φが隣接する電波散乱部Uの2つの散乱角θの中間の散乱角θと異なる散乱角θに設定されると、図9(b)に示したように、電波散乱部U間において位相が急激に変化し、散乱ビームが乱れるおそれがある。
また、隣接する電波散乱部U(電波散乱部U1、U2、U3)の散乱角θの間隔を10度としたが、散乱角θの間隔を大きくしすぎると、強度の大きい散乱ビームが角度に対して離散的に生じてしまう。なお、第2の実施の形態が適用される電波散乱装置では、強度-10dBにおいて、隣接する電波散乱部Uの散乱角θの間隔を18度としても、散乱ビームが離散的になりにくい。よって、散乱角θの間隔を18度以下とすることがよい。ただし、散乱角θの間隔は、電波散乱部U間の距離など電波散乱装置の構成に依存する。よって、電波散乱装置の構成によっては、散乱角θの間隔が18度を超える値に設定されてもよい。なお、散乱角θの間隔が0度の場合が、第1の実施の形態が適用される電波散乱装置20である。
第1の実施の形態及び第2の実施の形態では、xz面において幅の広い(広角)の散乱ビームが得られることを説明した。各電波散乱部U間、及び/又は各電波散乱部U内のセル#間の位相差を同じ設計方法を適用して設定すれば、どの入射方向に対しても、任意の散乱方向に広角の散乱ビームが実現できる。
第1の実施の形態及び第2の実施の形態で示したように、電波散乱装置を複数の電波散乱部Uを組み合わせて構成できる。このため、大きな電波散乱装置を設置する場合に比べ、電波散乱装置の組み立て及び設置が容易になる。
電波散乱装置を構成する電波散乱部Uを組み合わせることで、必要とする散乱ビーム幅が得られる。つまり、複数種類の電波散乱部Uを予め規格化して用意し、必要とする散乱ビーム幅に合わせて散乱角θが異なる電波散乱部Uを組み合わせればよい。つまり、要求に応じて電波散乱装置を作成することを要しない。
さらに、本発明の趣旨に反しない限りにおいて様々な変形を行っても構わない。
1…地表、2…基地局アンテナ、3、3a、3b、3c…ビル、4…携帯端末、10、10a、10b、10c、10′、20、20′、30、30′、40、50…電波散乱装置、11、11a、11b…入射ビーム、12、12′、12a、12b、22…散乱ビーム、101…基板、102…表面電極、103…接地電極、θ…散乱角、φ…位相差、U…電波散乱部、#…セル
Claims (8)
- 入射ビームを予め定められた第1の散乱角で散乱させる複数のセルが配列された第1の電波散乱部と、
前記入射ビームを予め定められた第2の散乱角で散乱させる複数のセルが配列された第2の電波散乱部と、を備え、
前記第1の電波散乱部と前記第2の電波散乱部とは、隣接して配置され、当該第1の電波散乱部と当該第2の電波散乱部との間は、前記入射ビームを予め定められた散乱角に設定する位相差に設定されている電波散乱装置。 - 前記第1の散乱角で散乱される第1の散乱ビームと、前記第2の散乱角で散乱される第2の散乱ビームとは、前記第1の電波散乱部側又は前記第2の電波散乱部側に投影した場合、当該第1の電波散乱部と当該第2の電波散乱部との間と交差することを特徴とする請求項1に記載の電波散乱装置。
- 前記第1の散乱角と前記第2の散乱角とは同じであることを特徴とする請求項2に記載の電波散乱装置。
- 前記第1の散乱角と前記第2の散乱角とが異なることを特徴とする請求項2に記載の電波散乱装置。
- 前記第1の電波散乱部と前記第2の電波散乱部との間は、当該第1の電波散乱部の前記第1の散乱角と当該第2の電波散乱部の前記第2の散乱角とのいずれか一方、又は当該第1の散乱角と当該第2の散乱角との間の角度の散乱角となる位相差に設定されていることを特徴とする請求項4に記載の電波散乱装置。
- 入射ビームを予め定められた第3の散乱角で散乱する複数のセルが配列された第3の電波散乱部を備え、
前記第3の電波散乱部は、前記第2の電波散乱部に隣接して設けられ、当該第2の電波散乱部と当該第3の電波散乱部との間は、前記入射ビームを予め定められた散乱角に設定する位相差に設定され、
前記第1の散乱角で散乱される第1の散乱ビームと、前記第2の散乱角で散乱される第2の散乱ビームと、前記第3の散乱角で散乱される第3の散乱ビームとは、前記第1の電波散乱部側、前記第2の電波散乱部側又は前記第3の電波散乱部に投影した場合、当該第1の電波散乱部と当該第2の電波散乱部との間及び当該第2の電波散乱部と当該第3の電波散乱部との間と交差することを特徴とする請求項1に記載の電波散乱装置。 - 前記第1の電波散乱部の前記第1の散乱角、前記第2の電波散乱部の前記第2の散乱角、及び前記第3の電波散乱部の前記第3の散乱角は、この順で大きく、又は小さくなるように設定されていることを特徴とする請求項6に記載の電波散乱装置。
- 入射ビームを予め定められた散乱角で散乱する複数のセルが配列された電波散乱部材であって、
前記入射ビームを予め定められた他の散乱角で散乱する複数のセルが配列され、前記電波散乱部材と組み合わせて用いられる他の電波散乱部材との間が予め定められた散乱角に設定する位相差である
電波散乱部材。
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