JP2022177665A - 湿式摩擦材、および湿式摩擦材を有する湿式摩擦板 - Google Patents
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Abstract
【課題】自動変速機内の湿式クラッチ或いは湿式ブレーキに用いられる湿式摩擦材であって、湿式摩擦材自体の耐久性の向上が図られると共に、相手側プレートの耐久性も向上させることが可能な湿式摩擦材、および当該湿式摩擦材を有する湿式摩擦板を提供すること。【解決手段】繊維基材と充填剤とを用いて形成された基材ペーパーと、基材ペーパーを硬化させるための結合材とを含む湿式摩擦材であって、繊維基材または充填剤は、無極性材料を含むことを特徴とする。【選択図】図2
Description
本発明は、自動車等の自動変速機に組み込まれる湿式クラッチ或いは湿式ブレーキに用いられる湿式摩擦材、および当該湿式摩擦材を有する湿式摩擦板に関する。
自動車等の駆動装置のひとつである自動変速機の構成部品として、湿式クラッチ或いは湿式ブレーキで使用される湿式摩擦板がある。近年、自動車の動力の変化において電動化への適用要求がある。電動化の動力として、例えば電動モータを用いた場合、従来の動力と比較すると、高速回転の環境となる場合がある。このような高速回転の環境下においては、湿式クラッチ或いは湿式ブレーキの湿式摩擦板に関しては、湿式摩擦板に使用される湿式摩擦材の過大な蓄熱が懸念されると共に、相手プレートに関しては、湿式摩擦材の蓄熱による熱変形等の懸念がある。このように高速回転の環境下では、熱負荷によって湿式摩擦板および相手側プレートの耐久性が低下する懸念がある。
特許文献1には、耐久性(耐へたり性)を向上させることができる湿式摩擦材が開示されている。
しかしながら、特許文献1には湿式摩擦材自体の耐久性向上は示されているが、相手プレートおよび相手プレートを含めた周辺部品への耐久性についての言及はない。高速回転の環境下においては、相手プレートを含む摩擦係合装置の構成部品群全体の耐久性の向上が必要である。
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、自動変速機内の湿式クラッチ或いは湿式ブレーキに用いられる湿式摩擦材であって、湿式摩擦材自体の耐久性の向上が図られると共に、相手側プレートの耐久性も向上させることが可能な湿式摩擦材、および当該湿式摩擦材を有する湿式摩擦板を提供することを課題とする。
上記課題を解決するために、本発明に係る湿式摩擦材は、
繊維基材と充填剤とを用いて形成された基材ペーパーと、
前記基材ペーパーを硬化させるための結合材とを含む湿式摩擦材であって、前記繊維基材または前記充填剤は、無極性材料を含むことを特徴とする。
繊維基材と充填剤とを用いて形成された基材ペーパーと、
前記基材ペーパーを硬化させるための結合材とを含む湿式摩擦材であって、前記繊維基材または前記充填剤は、無極性材料を含むことを特徴とする。
本発明によれば、自動変速機内の湿式クラッチ或いは湿式ブレーキに用いられる湿式摩擦材であって、湿式摩擦材自体の耐久性の向上が図られると共に、相手側プレートの耐久性も向上させることが可能な湿式摩擦材、および当該湿式摩擦材を有する湿式摩擦板を提供することができる。
以下、本発明の実施形態に係る湿式摩擦材および当該湿式摩擦材を有する湿式摩擦板について説明する。
本実施形態の湿式摩擦材および湿式摩擦板は、車両等の自動変速機内の湿式摩擦係合装置すなわち湿式多板クラッチ或いは湿式多板ブレーキに用いられるものである。以下の説明においては、湿式摩擦材および湿式摩擦板を、それぞれ「摩擦材」および「摩擦板」と略記する場合がある。また、本明細書において軸方向は湿式摩擦係合装置の軸方向とし、湿式摩擦係合装置の軸線と直交する方向を径方向とする。摩擦材および摩擦板に係る方向は、摩擦材および摩擦板が湿式摩擦係合装置に組み付けられた状態における軸方向、径方向、および周方向とする。
本実施形態の湿式摩擦材および湿式摩擦板は、車両等の自動変速機内の湿式摩擦係合装置すなわち湿式多板クラッチ或いは湿式多板ブレーキに用いられるものである。以下の説明においては、湿式摩擦材および湿式摩擦板を、それぞれ「摩擦材」および「摩擦板」と略記する場合がある。また、本明細書において軸方向は湿式摩擦係合装置の軸方向とし、湿式摩擦係合装置の軸線と直交する方向を径方向とする。摩擦材および摩擦板に係る方向は、摩擦材および摩擦板が湿式摩擦係合装置に組み付けられた状態における軸方向、径方向、および周方向とする。
図1は、本実施形態に係る湿式摩擦材および湿式摩擦板を用いた湿式摩擦係合装置の例である湿式多板クラッチの軸方向に沿った部分断面図である。
湿式多板クラッチ1は、軸方向の一方の端部で開放した略円筒状のハウジング2と、ハウジング2の内周側にハウジング2と同心に配置され、ハウジング2と相対回転可能なハブ3とを備えている。ハウジング2の内周面に設けられたスプライン4には、環状のセパレータプレート5が軸方向に移動可能に複数嵌合されている。セパレータプレート5はスプライン4に嵌合するスプライン部8を備えている。ハブ3の外周面に設けられたスプライン6には、環状の湿式摩擦板7が軸方向に移動可能に複数嵌合されている。湿式摩擦板7はスプライン6に嵌合するスプライン部9を備えている。摩擦板7とセパレータプレート5とは軸方向に交互に配置されている。
湿式多板クラッチ1は、軸方向の一方の端部で開放した略円筒状のハウジング2と、ハウジング2の内周側にハウジング2と同心に配置され、ハウジング2と相対回転可能なハブ3とを備えている。ハウジング2の内周面に設けられたスプライン4には、環状のセパレータプレート5が軸方向に移動可能に複数嵌合されている。セパレータプレート5はスプライン4に嵌合するスプライン部8を備えている。ハブ3の外周面に設けられたスプライン6には、環状の湿式摩擦板7が軸方向に移動可能に複数嵌合されている。湿式摩擦板7はスプライン6に嵌合するスプライン部9を備えている。摩擦板7とセパレータプレート5とは軸方向に交互に配置されている。
摩擦板7は、その軸方向の両面に所定の摩擦係数を有する湿式摩擦材19が接着剤により固定されている。なお、湿式摩擦材19は、摩擦板7の片面のみに設けることもできる。セパレータプレート5は摩擦板7の摩擦係合相手部材である。また、実施形態の摩擦板7におけるスプライン部9はハウジング2の内径側に設けてあるが、ハブ3の外径側に設けることも可能である。この場合、組み合わせであるセパレータプレート5のスプライン部8は内径側に設けることになる。
湿式多板クラッチ1はさらに、セパレータプレート5と摩擦板7とを軸方向に押圧し締結させるピストン10と、ハウジング2の内周側部分に設けられ、セパレータプレート5および摩擦板7を軸方向の一端で固定状態に保持するためのエンドプレート11と、エンドプレート11をハウジング2の内周側部分に保持するための止め輪12とを備えている。また、ハブ3には径方向に貫通した潤滑油供給口15が設けられ、この潤滑油供給口15を介して湿式多板クラッチ1の内径側から外径側へと潤滑油が供給されている。
ピストン10は、ハウジング2の閉口端側の内側面において、該内周面に対して軸方向摺動自在に配置されている。ピストン10の外周面とハウジング2の内周面との間にはOリング13が介装されている。ピストン10の内周面と、ハウジング2の内筒部(不図示)の外周面との間にもシール部材(不図示)が介装され、これによりハウジング2の閉口端側の内周面とピストン10との間に油密状態の油圧室14が画成される。
このように構成された湿式多板クラッチ1は、次のように係合すなわち締結および解除をする。図1の状態は、クラッチ解除状態を示しており、セパレータプレート5と摩擦板7とはそれぞれ離れている。クラッチ解除状態では、不図示のリターンスプリングの付勢力により、ピストン10はクラッチハウジング2の閉口端に当接している。
この状態で湿式多板クラッチ1を係合させるには、油圧室14に油圧を供給する。油圧の上昇に伴い、図示しないリターンスプリングの付勢力に抗して、ピストン10は、図1において右方に移動し、セパレータプレート5と摩擦板7とを密着させる。これにより湿式多板クラッチ1が係合される。
湿式多板クラッチ1の係合後、湿式多板クラッチ1を再度解除するには、油圧室14の油圧を解除する。油圧が解除されると、ピストン10は図示しないリターンスプリングの付勢力により、ハウジング2の閉口端に当接する位置まで移動する。すなわち、湿式多板クラッチ1が解除される。
図2は本実施形態に係る湿式摩擦材19を用いた湿式摩擦板7を模式的に示す正面図である。
本実施形態に係る湿式摩擦材19および湿式摩擦板7の製法は次のとおりである。すなわち摩擦材19は、繊維基材に充填剤や摩擦調整剤を配合したものを抄紙して基材ペーパーを作製し、得られた基材ペーパーに結合材として、例えば熱硬化性樹脂等を含浸させ、硬化させることにより造られる。摩擦板7は、上記製法によって造られた摩擦材19を所定の形状に打ち抜き、芯金である金属製の円環状のコアプレート17に接着することにより造られる。
本実施形態に係る湿式摩擦材19および湿式摩擦板7の製法は次のとおりである。すなわち摩擦材19は、繊維基材に充填剤や摩擦調整剤を配合したものを抄紙して基材ペーパーを作製し、得られた基材ペーパーに結合材として、例えば熱硬化性樹脂等を含浸させ、硬化させることにより造られる。摩擦板7は、上記製法によって造られた摩擦材19を所定の形状に打ち抜き、芯金である金属製の円環状のコアプレート17に接着することにより造られる。
繊維基材としては、天然パルプ繊維、有機合成繊維、無機化合物を含む繊維の一種又は複数を用いることができる。
充填剤、摩擦調整剤としては、例えば、珪藻土等の無機化合物、合成ゴム等の有機化合物の一種又は複数を用いることができる。
本実施形態の湿式摩擦材19は、アラミド繊維、カーボン系材料であるカーボン繊維等を用いて繊維基材を構成し、該繊維基材を構成する繊維として更に、または繊維基材に配合される充填剤として、無極性材料であるオレフィンポリマーを配合している。ここで、本実施形態の湿式摩擦材19に配合されるオレフィンポリマーは、融点が摂氏200℃以上のものを用いている。
したがって本実施形態の湿式摩擦材19は、アラミド繊維、カーボン繊維等を用いて作られた繊維基材に、繊維基材を構成する繊維として、または充填剤としてオレフィンポリマーを配合したものを抄紙して得られた基材ペーパーに、結合材として例えば熱硬化性樹脂等を含浸させ、硬化させることにより得られる。
また、本実施形態に係る湿式摩擦板7は、上記の製法によって造られた湿式摩擦材19を所定の形状に打ち抜き、熱プレスによって、接着剤を塗布した基板であるコアプレート17と一体化することにより造られる。
本実施形態の湿式摩擦材19は、上述したように、繊維基材を構成する繊維として、または繊維基材に配合する充填剤として、融点が摂氏200℃以上のオレフィンポリマーを配合している。これにより、本実施形態の湿式摩擦材19は、耐熱性に優れ、耐久性の向上を図ることができる。したがって摩擦材19が過剰に蓄熱することを防止でき、摩擦材19の蓄熱による相手側プレートの焼き付き、熱変形等を防止することができる。このように、本実施形態の湿式摩擦材19によれば、相手側プレートの耐久性を向上させることができ、相手側プレートを含む摩擦係合装置の構成部品群全体の耐久性の向上を図ることができる。なお、繊維基材または充填剤に配合するオレフィンポリマーの融点が摂氏200℃未満である場合には、オレフィンポリマーが溶融してしまい、湿式摩擦材の耐熱性が低下してしまうため好ましくない。
(実施例)
以下、本実施形態に係る湿式摩擦材の実施例と、当該実施例および比較例を用いた評価について説明する。なお、以下の評価は、本実施形態に係る湿式摩擦材を湿式クラッチとして用いた場合の評価であるが、本実施形態に係る湿式摩擦材を湿式ブレーキとして用いても同様である。
以下、本実施形態に係る湿式摩擦材の実施例と、当該実施例および比較例を用いた評価について説明する。なお、以下の評価は、本実施形態に係る湿式摩擦材を湿式クラッチとして用いた場合の評価であるが、本実施形態に係る湿式摩擦材を湿式ブレーキとして用いても同様である。
上述した製法によって、実施例1および実施例2に係る湿式摩擦材と、従来の成分配合の比較例1および比較例2に係る湿式摩擦材を得た。表1に実施例1および比較例1に係る湿式摩擦材のそれぞれの成分の構成比を示し、表2に実施例2および比較例2に係る湿式摩擦材のそれぞれの成分の構成比を示す。なお、構成比は重量の割合を示している。表1に示すように、実施例1に係る湿式摩擦材は、充填剤としてオレフィンポリマー粒子を含み、且つ充填剤として従来より用いられている珪藻土を含んでいない。一方、比較例1に係る湿式摩擦材は、オレフィンポリマー粒子を含まず、従来と同様に珪藻土を含んでいる。なお、実施例1に係る湿式摩擦材に配合されているオレフィンポリマー粒子の融点は、摂氏200℃以上である。また、表2に示すように、実施例2に係る湿式摩擦材は、繊維基材を構成する繊維としてオレフィンポリマー繊維を含む。実施例2に係る湿式摩擦材に配合されているオレフィンポリマー繊維の融点は、摂氏200℃以上である。一方、比較例2に係る湿式摩擦材はオレフィンポリマー繊維を含まず、従来と同様にアラミド繊維を含んでいる。尚、比較例2、実施例2の充填剤成分(グラファイト)はあくまでも例であり限定するものではない。
次に、実施例および比較例に係る湿式摩擦材を用いたヒートスポット評価について説明する。なお、以下のヒートスポット評価の説明は、上記の実施例1および比較例1についてのものであるが、実施例2および比較例2についてのヒートスポット評価の結果は、実施例1および比較例1と同様の結果であったため、ここでの記載を省略する。
ヒートスポット評価は、実施例1に係る湿式摩擦材を接着した湿式摩擦板と相手側プレートとを交互に並べて多板結合とした状態で試験機に組み込み、表3に示す評価条件にて湿式摩擦板と相手側プレートとの係合、解放のサイクルを所定回数実施し、相手側プレートを冷却した後、目視にて相手側プレートの焼き付き状況すなわちヒートスポットの有無を確認した。湿式摩擦板と相手側プレートとの係合、解放のサイクルは、係合、解放を1サイクルとして、9サイクルまで実施した。比較例1に係る湿式摩擦材についても同様に実施した。
ヒートスポット評価は、実施例1に係る湿式摩擦材を接着した湿式摩擦板と相手側プレートとを交互に並べて多板結合とした状態で試験機に組み込み、表3に示す評価条件にて湿式摩擦板と相手側プレートとの係合、解放のサイクルを所定回数実施し、相手側プレートを冷却した後、目視にて相手側プレートの焼き付き状況すなわちヒートスポットの有無を確認した。湿式摩擦板と相手側プレートとの係合、解放のサイクルは、係合、解放を1サイクルとして、9サイクルまで実施した。比較例1に係る湿式摩擦材についても同様に実施した。
図3は、相手側プレートの焼き付き状況を示す図であり、図3(a)は比較例1に係る湿式摩擦材の相手側プレートの表面の部分を示し、図3(b)は実施例1に係る湿式摩擦材の相手側プレートの表面の部分を示している。なお、図3(a)、(b)に示す相手側プレートは、全体の形状が環状の部材である。
図3(a)に示すように、比較例1に係る湿式摩擦材の相手側プレートの表面にはヒートスポット20の発生が数点認められる。これに対し、図3(b)に示す実施例1に係る湿式摩擦材の相手側プレートの表面には、ヒートスポット20の発生が認められない。
図3(a)に示すように、比較例1に係る湿式摩擦材の相手側プレートの表面にはヒートスポット20の発生が数点認められる。これに対し、図3(b)に示す実施例1に係る湿式摩擦材の相手側プレートの表面には、ヒートスポット20の発生が認められない。
ヒートスポットは、回転摺動によって、瞬間的に鋼材材料の変態点まで過大な熱負荷が掛かることにより発生する。図3(b)に示すように、実施例1に係る湿式摩擦材の相手側プレートにヒートスポット20の発生が認められないことは、実施例に係る湿式摩擦材は、回転摺動による湿式摩擦材自体の昇温および相手側プレートの昇温を抑制していることを示している。これより、実施例1に係る湿式摩擦材は、湿式摩擦材自体の耐久性の向上が図られると共に、相手側プレートとの係合、解放による蓄熱が抑制され、蓄熱による相手側プレートへの焼き付き、熱変形等の影響を抑制する効果が認められる。
以上説明したように、本実施形態によれば、自動変速機内の湿式クラッチ或いは湿式ブレーキに用いられる湿式摩擦材であって、湿式摩擦材自体の耐久性の向上が図られると共に、相手側プレートの耐久性も向上させることが可能な湿式摩擦材、および当該湿式摩擦材を有する湿式摩擦板を提供することができる。
1 湿式多板クラッチ
2 ハウジング
3 ハブ
5 セパレータプレート
7 湿式摩擦板
10 ピストン
14 油圧室
17 コアプレート
19 湿式摩擦材
20 ヒートスポット
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Claims (4)
- 繊維基材と充填剤とを用いて形成された基材ペーパーと、
前記基材ペーパーを硬化させるための結合材とを含む湿式摩擦材であって、
前記繊維基材または前記充填剤は、無極性材料を含むことを特徴とする湿式摩擦材。 - 前記無極性材料は、オレフィンポリマーであることを特徴とする請求項1に記載の湿式摩擦材。
- 前記オレフィンポリマーの融点は、摂氏200℃以上であることを特徴とする請求項2に記載の湿式摩擦材。
- 請求項1から3の何れか一項に記載の湿式摩擦材を有することを特徴とする湿式摩擦板。
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JP2021084083A JP2022177665A (ja) | 2021-05-18 | 2021-05-18 | 湿式摩擦材、および湿式摩擦材を有する湿式摩擦板 |
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