JP2022171816A - 患者における転移性癌の有効な治療のための組合せ - Google Patents

患者における転移性癌の有効な治療のための組合せ Download PDF

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Abstract

【課題】患者における転移性癌の有効な治療のための組合せを提供すること。【解決手段】過酸化水素由来の溶血を予防するための医薬であって、該医薬は、エタノールを含み、該予防は、患者にエタノールを静脈内投与することを含み、該エタノールは、約0.5g~約40gの用量で投与される、医薬。【選択図】なし

Description

関連出願の相互参照
本出願は、2015年12月7日に出願された米国仮特許出願第62/263,880号明細書の利益を主張する。上記出願の教示全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
本発明は、患者における転移性癌の有効な治療のための組合せに関する。
併用化学療法は、あるタイプの転移性癌、例えば、小児白血病、リンパ腫、および精巣癌について高い治癒率を与えてきた。しかしながら、最も一般的なタイプの転移性癌は、現在のところ治癒不能である。一部の転移性癌の5年生存率は、およそ以下のとおりである:子宮頸癌16%、結腸直腸癌12.5%、子宮癌16%、食道癌3.5%、腎臓癌12.3%、肝臓癌/胆道癌3%、肺癌/気管支癌3.9%、黒色腫16.1%、卵巣癌27.3%、膵臓癌2%、胃癌3.9%、膀胱癌5.4%、乳癌24.3%。以下の参照文献はこの事項に関し、参照により全体として本明細書に組み込まれる:非特許文献1;非特許文献2,National Cancer Institute.Bethesda,MD)。数十年の研究および数千億ドルにもかかわらず、多くのタイプの癌についてU.S.National Cancer Instituteにより報告された年齢調整癌死亡率は、1975~2010年までの35年の期間にわたり降下を示さなかった。同一の期間の間、National Library of Medicineは2,143,002本の癌についての科学論文を目録に収載し、そのうち112,429本は転移性癌の治療に関連し、1950年代以降、転移性癌についての臨床試験に関して公開された22,300本を超える医学論文および科学報告書ならびに併用癌療法に関して公開された152,000本を超える科学論文が存在している。この実に大量の科学的試行にもかかわらず、ほとんどのタイプの転移性癌を有する患者において完全寛解(CR)、すなわち、全ての検出可能な癌の不存在を得ることは、可能でなかった。一般に、CRを得るためには癌細胞負荷の99%または2-log低減が必要とされる。転移性癌を有する患者は、その体内全体にわたり分布している数百億個の癌細胞を有し得;2logだけの腫瘍細胞負荷の減少は患者において依然として数百万~数十億個の生存癌細胞を残し;経時的にそれらの癌細胞は増殖し、進行性疾患を引き起こし得る。例えば、最も有効な化学療法であるフォルフィリノックスを使用する膵臓癌におけるCR率は、0.6%にすぎない。技術水準の治療法ニボルマブとイピリムマブにより治療された転移性黒色腫を有する患者において、CR率は9.6%であった。BRAF阻害剤ベムラフェニブにより治療された黒色腫を有する患者におけるCR率は、1%であった。類似のCRの低い率は、ほとんどのタイプの転移性癌について見られる。持続的長期CRは、ほとんどのタイプの転移性疾患を有する患者において、いっそう希少である。以下の参照文献はこの事項に関連し、参照により全体として本明細書に組み込まれる:非特許文献3;非特許文献4;非特許文献5。抗癌薬の多数の異なる組合せを用いる数千の臨床試験が存在しているが、ほとんどの薬物レジメンが転移性癌を有する患者において高い割合のCRを与えず、ほとんどのタイプの転移性癌についての治癒は極めて希少である。さらに、併用化学療法を用いて高い率において現在のところ治癒可能な数タイプの癌は、一般に、1つまたは複数の特定の化学療法薬に対する過敏性を付与する特性を特徴とする。高いCR率を可能とする方法の開発を成功させることなく莫大な試行、資源および時間が費され、米国では依然として毎年580,000を超える人々が転移性癌により死亡している。目下、患者において高いCR率または持続的長期CRを与え得るほとんどのタイプの転移性癌に有効な治療の方法は存在しない。したがって、転移性癌または難治性癌を有する患者において高い割合のCRS、特に長期持続的CRを達成し得る癌療法を開発することが必要とされている。
特許文献1は、骨髄幹細胞注入と同時のメルファラン、BCNUおよび酸化還元サイクリング剤による治療を含む転移性癌の有効な治療の方法を記載している。以下の参照文献はこの事項に関連し、参照により全体として本明細書に組み込まれる:特許文献1、Methods for the Effective Treatment of Metastatic Cancer。
インビトロでは、反応性酸素種を生成する1つまたは複数の酸化還元サイクリング剤と細胞をインキュベートすることにより、細胞GSHレベルを大幅に減少させること(および結果的にDNA架橋薬、例えば、メルファランに対する感受性を増加させること)は容易である。多くの研究は、アスコルビン酸が遷移金属触媒自動酸化を受けて過酸化水素を産生することを実証している。インビトロでは、アスコルビン酸および過酸化水素がGSHを枯渇させ、酸化ストレスを誘導し、細胞を殺滅し得る。Riordanは、特許文献2(Therapeutic method for the treatment of cancer)において、癌の治療のための高用量静脈内アスコルビン酸の使用を教示している。しかしながら、複数の臨床試験は、患者における高用量アスコルビン酸の抗癌活性を実証し得ず、アスコルビン酸は、転移性癌を有する患者において高い完全寛解率を得る根拠を提供しなかった。過酸化水素の生物学的活性は、細胞当たりの用量または細胞内液1リットル当たりの用量の関数である。インビトロでのアスコルビン酸または過酸化水素への細胞の曝露は、インビボで達成され得るものよりも数千倍高い細胞当たりの用量をもたらし得る。過酸化水素はグルタチオンペルオキシダーゼにより細胞中で急速に分解され;このプロセスにおいて、GSHはGSSGに酸化される。しかしながら、今度は、GSSGが還元剤としてのNADPHを用いてグルタチオンレダクターゼによりGSHに還元されて戻る。GSSGについての細胞の還元能は、極めて高用量のアスコルビン酸からでもインビボで生成され得るH2O2のフラックスを大幅に超過する。これは、複数の臨床試験において観察されたアスコルビン酸の抗癌活性の不存在を部分的に説明する。以下の参照文献はこの事項に関連し、参照により全体として本明細書に組み込まれる:非特許文献6;非特許文献7;非特許文献8;非特許文献9;非特許文献10。
腫瘍中への薬物の送達は、多数の因子、例として、不十分な血管化、増加した間質液圧、および腫瘍からの増加した間質腫瘍液の流動により減弱される。したがって、患者への酸化還元サイクリング薬の静脈内投与は、一般に、腫瘍中よりも正常組織中でより高い薬物レベルおよび大きい生物学的効果をもたらす。したがって、静脈内投与される酸化還元サイクリング剤によるGSH枯渇および得られるメルファランに対する感作は、一般に、腫瘍よりも正常組織中でより大きい。
酸素の存在下で、ヒドロキソコバラミンはアスコルビン酸の自動酸化を触媒する。インビトロでは、ヒドロキソコバラミンおよびアスコルビン酸の組合せは過酸化水素を生成し、GSHレベルを低下させ、細胞毒性である。このプロセスは、Co(III)およびCo(II)酸化状態の間のコバルトの酸化還元サイクルを含み、アスコルビン酸塩は還元剤として機能し、酸素が酸化剤として機能する。アスコルビン酸は、アスコルビン酸フリーラジカル、および最終的にはデヒドロアスコルビン酸(DHA)に酸化される。以下の参照文献はこの事項に関連し、参照により全体として本明細書に組み込まれる:非特許文献11;非特許文献12;非特許文献13;非特許文献14。
アスコルビン酸およびヒドロキソコバラミンのそれぞれは細胞外液中に分布し、腫瘍細胞により優先的に取り込まれない。したがって、当業者は、静脈内アスコルビン酸およびヒドロキソコバラミンの組合せが正常組織に対して腫瘍細胞中でGSHを選択的に枯渇させないことを予測する。当業者は、この組合せがメルファランに対して正常組織および腫瘍組織を同等に感作すること、ならびに腫瘍細胞殺滅のいかなる増加も正常細胞に対する増加した毒性により相殺され、それが安全に投与することができるメルファランの用量を制限することを予測する。
動物モデルにおいて、DHAおよびヒドロキソコバラミンの組合せは強力な抗癌効果を付与したが、アスコルビン酸およびヒドロキソコバラミンの組合せは無効であった。ヒドロキソコバラミンおよびアスコルビン酸による抗癌活性の初回報告は後続の刊行物において補正され、投与前にDHAに既に分解したアスコルビン酸の使用に起因すると考えられた。P388リンパ性白血病のマウスモデルにおいて、アスコルビン酸およびヒドロキソコバラミンの組合せは程度および持続期間が制限される抗癌活性を有し;生存期間は約7日間だけ延長されたにすぎなかった。以下の参照文献はこの事項に関連し、参照により全体として本明細書に組み込まれる:非特許文献15(Appendix A参照)。DHAは血液中で不安定であり、血管内で数秒以内に2,3-ジケトグロン酸(2,3-DKG)に分解する。以下の参照文献はこの事項に関連し、参照により全体として本明細書に組み込まれる:非特許文献16;非特許文献15(Appendix A参照);非特許文献17;非特許文献18。
アスコルビン酸単独は、腫瘍中で酸化ストレスを誘導するための手段として提案されている。高用量アスコルビン酸の投与は、腫瘍および皮下組織から得られた微小透析液中でアスコルビン酸フリーラジカルおよび過酸化水素を生成することが示された。しかしながら、微小透析液中で計測される過酸化水素のレベルは、細胞外液からの過酸化水素および微小透析チューブ中で生成された過酸化水素の両方を反映する。微小透析チューブ中での過酸化水素産生は、顕著であり得た。それというのも、流速は低速であり、アスコルビン酸レベルは高く、10,000~30,000分子量の血清因子がアスコルビン酸の自動酸化を触媒するためである。この血清因子は、透析膜の分子量カットオフが20,000であった場合、微小透析濃縮物中で顕著なレベルにおいて存在し得た。さらに、皮下細胞外液からの微小透析物中で検出されるアスコルビン酸フリーラジカルのレベルは、腫瘍細胞外液からのものよりも顕著に高かった。アスコルビン酸フリーラジカルはDHAおよびアスコルビン酸への急速な不均化を受けるため、これは、皮下細胞外液中で生成されるDHAのレベルが腫瘍細胞外液中で生成されるものよりも高かったことを強く示唆する。データは、アスコルビン酸が腫瘍細胞外液および正常組織からの細胞外液からの微小透析物中で自動酸化を受けることを示す。腫瘍の細胞外環境が、アスコルビン酸の自動酸化を触媒し得る正常組織と比較して高いレベルの遷移金属を含有し得ることは仮定されたが、実証されなかった。そうであるとしても、腫瘍中でのアスコルビン酸の自動酸化の速度は低速である。過分極アスコルビン酸を静脈内注入されたマウスは、腫瘍中で検出可能なDHAを実証しなかった。対照的に、マウスへの過分極DHAの注入後、過分極アスコルビン酸は腫瘍中で直ちに検出された。さらに、既に考察されるとおり、アスコルビン酸の自動酸化からの過酸化水素産生の速度は、過酸化水素を解毒する組織の能力よりも大幅に低い。以下の参照文献はこの事項に関連し、参照により全体として本明細書に組み込まれる:非特許文献19;非特許文献20;非特許文献19;非特許文献21;非特許文献22。
(触媒を用いない組織中での自動酸化の速度と比較して)急速なアスコルビン酸の自動酸化をもたらす濃度における正常組織の細胞外液および腫瘍の細胞外液への等しい濃度における酸化還元触媒、例えば、ヒドロキソコバラミンの添加の結果を考慮されたい。結果は、正常組織および腫瘍組織からの細胞外液中での本質的に等しい速度のアスコルビン酸の自動酸化である。それというのも、内因性触媒の寄与が、ヒドロキソコバラミンの触媒活性と比較してわずかであるためである。したがって、当業者は、腫瘍および正常組織により等しく取り込まれる触媒、例えば、ヒドロキソコバラミンの投与が、腫瘍中のGSHの選択的枯渇のための根拠を提供しないことを予測する。当業者は、腫瘍細胞中のGSHの選択的枯渇が不存在であり、メルファランの毒性は正常組織および腫瘍細胞中の両方で増加すること、ならびに正常組織に対する増加した毒性が患者への用量低減を要求し、それはGSH枯渇剤による腫瘍細胞に対する細胞毒性のいかなる増加も相殺することを予測する。例えば、L-ブチオニン-SR-スルホキシミン(BSO)は正常組織および腫瘍組織中の両方でGSHを枯渇させ、患者においてBSOは、正常骨髄に対するメルファランの毒性を増加させる。別の例はミソニダゾールであり、それは全身投与時に腫瘍および正常組織中の両方でGSHを非選択的に枯渇させる。ミソニダゾールおよびナイトロジェンマスタードの組合せは、増加したDNA架橋ならびに正常組織および腫瘍組織の両方に対する増加した毒性をもたらし、最大毒性増加は正常組織中で見られる。DNA修復を非選択的に阻害する薬物との組合せで投与されるDNA損傷薬による正常組織および腫瘍の両方に対する毒性の向上が、一般に発生する。例えば、それは、O6-ベンジルグアニンおよびポリ(アデノシン二リン酸[ADP]-リボース)ポリメラーゼ(PARP)阻害剤との組合せでDNA損傷剤を用いると見られる。以下の参照文献はこの事項に関連し、参照により全体として本明細書に組み込まれる:非特許文献23;非特許文献24;非特許文献25;非特許文献26;非特許文献27。
本明細書に記載のとおり、アスコルビン酸およびヒドロキソコバラミンの投与が腫瘍への過酸化水素およびDHAの選択的送達ならびに腫瘍細胞中でのGSHの選択的枯渇をもたらすという予測外の結果が発見された。アスコルビン酸およびヒドロキソコバラミンの送達が腫瘍および正常組織中で等しいという事実にかかわらず、腫瘍細胞へのDHAの用量は、ほとんどの正常組織よりも約3~12倍大きく、腫瘍細胞への過酸化水素の用量は、20倍ほども大きい。驚くべきことに、DHAおよび過酸化水素の予測外の優先的な送達は、腫瘍の特徴である増加した間質液圧、間質液、および不十分な血管分布から生じる。これは予測外である。それというのも、腫瘍中の増加した間質液圧および不十分な腫瘍血管分布は薬物の腫瘍取り込みに対する周知の障壁であるためである。以下の参照文献はこの事項に関連し、参照により全体として本明細書に組み込まれる:非特許文献28;非特許文献29;非特許文献30。
国際公開第2014/066400号パンフレット 米国特許第5,639,787号明細書
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本発明の課題は、患者における転移性癌の有効な治療のための組合せを提供することである。
本発明は、転移性癌を治療して高い割合の完全寛解(CR)および特に長期持続的CRを達成する有効な方法に関する。本発明は、転移性癌の治療および有効な治療(以下に定義)の方法であって、メルファラン、BNCU、ヒドロキソコバラミン、アスコルビン酸、および任意選択によりエタノールを含む薬物のセットの投与ならびに骨髄幹細胞注入を含む方法を含む。本発明はまた、DNA損傷剤に対して腫瘍細胞を感作する方法であって、グルタチオンレダクターゼの阻害剤と同時のヒドロキソコバラミンおよびアスコルビン酸の投与を含む方法に関する。本発明はまた、腫瘍に薬物を選択的に送達する方法であって、2つの化合物、薬剤1および薬剤2の全身投与を含み;両方の化合物は全身投与後に細胞外空間中に分布し、薬剤1および薬剤2は細胞外空間中で自発的に反応して薬物1、薬物2、...、薬物Nと称される1つ以上の薬物を直接または間接的に生成し;前記薬物は細胞内空間および/または間質腔内で所望の薬理学的効果を付与し;前記薬物は血管内空間中で急速に崩壊され、または解毒される方法に関する。
第1の態様において、本発明は、対象における転移性癌または難治性転移性癌の治療の方法であって、1,3-ビス(2-クロロエチル)-1-ニトロソウレア、メルファラン、ヒドロキソコバラミン、およびアスコルビン酸、または上記のいずれかの薬学的に許容可能な塩の組合せを同時にまたは6時間の期間以内に投与することを含み;メルファラン用量は20~200mg/m2の範囲である方法に関する。一実施形態において、1,3-ビス(2-クロロエチル)-1-ニトロソウレアを50~400mg/m2の用量範囲において投与し;メルファランを20~200mg/m2の用量において投与し;ヒドロキソコバラミンを25~20,000mg/m2の用量において投与し、アスコルビン酸を1グラム~150グラムの用量において投与する。別の実施形態において、1,3-ビス(2-クロロエチル)-1-ニトロソウレアを75~300mg/m2の投与範囲において投与し;メルファランを50~200mg/m2の用量において投与し;ヒドロキソコバラミンを400mg~800mg/m2の用量において投与し、アスコルビン酸を5グラム~40グラムの用量において投与する。さらなる実施形態において、1,3-ビス(2-クロロエチル)-1-ニトロソウレアを150mg/m2の用量において投与し;メルファランを70~140mg/m2の用量において投与し;ヒドロキソコバラミンを580mg/m2の用量において投与し、アスコルビン酸を5グラム~25グラムの用量において投与する。一実施形態において、本発明は、500mg~40グラムの用量におけるエタノールの全身投与をさらに含む。別の実施形態において、本発明は、骨髄幹細胞移植療法をさらに含む。さらなる実施形態において、転移性癌は、DNA修復、および/または相同組換え、および/またはDNA架橋修復に関与する遺伝子中の遺伝性生殖系列突然変異を有する対象に存在する。一実施形態において、転移性癌は、以下の遺伝子の1つ以上:ATR、BARD1、BLM、BRCA1、BRCA2、BRIP1(FANCJ、BACH1)、EME1、ERCC1、ERCC4、FAN1、FANCA、FANCB、FANCC、FANCD1、FANCD2、FANCE、FANCF、FANCG、FANCI、FANCJ、FANCL、FANCM、FANCN、FANCO、FANCP、FANCQ、FANCQ、FANCR、FANCS、FANCT、HELQ、MEN1、MUS81、NBN(NBS1)、PALB2、RAD50、RAD51(FANCR)、RAD51C(FANCO)、RAD51D、REV1、SLX4(FANCP)、UBE2T(FANCT)、USP1、WDR48、XPF、XRCC2、XRCC3、またはDNA架橋修復、相同組換え、またはDNA修復に関与する他の遺伝子中の遺伝性生殖系列突然変異を有する患者に存在する。別の実施形態において、転移性癌は、BRCA1および/またはBRCA2中の遺伝性生殖系列突然変異を有する対象に存在する。さらなる実施形態において、転移性癌は、膵臓癌、卵巣癌、乳癌、および前立腺癌から選択される。
第2の態様において、本発明は、インビボでDNA損傷剤に対して癌細胞を感作する方法であって、DNA損傷剤、グルタチオンレダクターゼ阻害剤、ヒドロキソコバラミン、およびアスコルビン酸、または上記のいずれかの薬学的に許容可能な塩の投与を含む方法に関する。
第3の態様において、本発明は、癌を治療する方法であって、1,3-ビス(2-クロロエチル)-1-ニトロソウレア、ヒドロキソコバラミン、およびアスコルビン酸、または上記のいずれかの薬学的に許容可能な塩の投与を含む方法に関する。
第4の態様において、本発明は、癌の治療のための固形癌への薬物の選択的送達の方法であって、
a.薬剤1および薬剤2と称される2つの化合物を選択すること(薬剤1および薬剤2は酵素でなく、前記薬剤は全身投与後に細胞外空間中に分布し、自発的に反応して1つ以上の薬物を直接または間接的に生成し;前記薬物は血管内コンパートメントから急速に分解され、崩壊され、またはそうでなければ排泄もしくは解毒され;前記薬物は間質液から急速に流出し、細胞内液に流入し;前記薬物は癌治療結果を付与する)
b.薬剤1および薬剤2を全身投与すること
を含む方法。
第5の態様において、本発明は、対象における転移性癌または難治性転移性癌の有効な治療において使用される医薬組成物のセットであって、治療有効用量の1,3-ビス(2-クロロエチル)-1-ニトロソウレア、メルファラン、ヒドロキソコバラミン、およびアスコルビン酸、または上記のいずれかの薬学的に許容可能な塩を含む医薬組成物のセットに関する。
第6の態様において、本発明は、対象における転移性癌または難治性転移性癌の治療のための医薬組成物の使用であって、治療有効用量の1,3-ビス(2-クロロエチル)-1-ニトロソウレア、メルファラン、ヒドロキソコバラミンおよびアスコルビン酸の組合せを含み、メルファラン用量は20~200mg/m2の範囲である使用に関する。
第7の態様において、本発明は、過酸化水素を生成する薬剤により治療される対象における溶血および/またはメトヘモグロビン形成の予防の方法に関し、治療有効用量のエタノールの全身投与を含む。
即ち、本発明の要旨は、
〔1〕過酸化水素由来の溶血を予防するための医薬であって、該医薬は、エタノールを含み、該予防は、患者にエタノールを静脈内投与することを含み、該エタノールは、約0.5g~約40gの用量で投与される、医薬、
〔2〕過酸化水素由来のメトヘモグロビン血症を予防するための医薬であって、該医薬は、エタノールを含み、該予防は、患者にエタノールを静脈内投与することを含み、該エタノールは、約0.5g~約40gの用量で投与される、医薬
に関する。
本発明により、患者における転移性癌の有効な治療のための組合せが提供され得る。
本発明は、転移性癌、例として、難治性転移性癌の治療および有効な治療(以下に定義)の方法に関する。
本発明の例示的実施形態の説明は、以下のとおりである。
定義
獲得薬物耐性:臨床的に達成可能なレベルにおける薬物による破壊または不活性化を免れる癌細胞の集団の能力を指し、最初に薬物感受性である集団において前記感受性の欠落が生じ、または展開する。
アナログ:実質的に同一の機能を有することに関する、顕著な構造的類似性を有する化合物または部分を指す。
同種:別の個体に由来する組織または細胞を指す。
適切に選択された患者:治療に良好な候補である患者および利益を受ける可能性が高い患者を指す。例えば、重篤な基礎医学的病態(例えば、心疾患、肝疾患、腎疾患、重度の栄養失調)を有する虚弱高齢患者は、一般に、良好な候補でない。治療を生存する可能性が低いこのような進行性転移性疾患を有する患者は、良好な候補でない。脳への広範な転移性疾患を有する患者は、良好な候補でない。患者の適切な選択の方法は、当業者に周知である。
約:薬物用量および薬物用量の範囲を指す場合にプラスまたはマイナス25%を指す。
曲線下面積(AUC):インビトロまたはインビボでの薬物についての薬物濃度-時間曲線の積分を指し;AUCは、総薬物曝露量の尺度である。
アスコルビン酸フリーラジカル:アスコルビン酸の1つの電子酸化から形成されるラジカルを指す。以下の参照文献はこの事項に関連し、参照により全体として本明細書に組み込まれる:Du J,et al.,Ascorbic acid:chemistry,biology and the treatment of cancer,Biochim Biophys Acta.,2012 Dec,1826(2):443-57。
アスコルビン酸:L-アスコルビン酸およびアスコルビン酸が水または水溶液中で溶解している場合にアスコルビン酸と平衡である分子種を指す。アスコルビン酸は、それぞれ4.2のpKaおよび11.6のpKaを有する2つのイオン化可能なヒドロキシル基を有する。生理学的pHにおいて、アスコルビン酸モノアニオンが主な形態であるが、少量のアスコルビン酸ジアニオンも存在し;両方ともアスコルビン酸との平衡である種である。アスコルビン酸は、L-アスコルビン酸の薬理学的に許容可能な塩、アスコルビン酸モノナトリウムも指す。アスコルビン酸は、DHAもアスコルビン酸フリーラジカルも指さない。アスコルビン酸の用量は全ての薬物がL-アスコルビン酸の形態であることを想定してL-アスコルビン酸の含有率に基づく。以下の参照文献はこの事項に関連し、全体として本明細書に組み込まれる:Du J,et al.,Ascorbic acid:chemistry,biology and the treatment of cancer,Biochim Biophys Acta,2012 Dec,1826(2):443-57。
AUC-:1 クローン形成細胞生存の1-log低減を与えるために必要とされる薬物AUCを指す。
自己:同一個体に由来する組織または細胞を指す。
BCNU:1,3-ビス(2-クロロエチル)-1-ニトロソウレア(CAS番号154-93-8)としても公知の薬物カルムスチンを指す。BCNUは、酸化ストレスの存在下で細胞GSHレベルを維持するために重要なグルタチオンレダクターゼを阻害する。グルタチオンレダクターゼは、GSSGのGSHへのNADPHにより還元を触媒する。BCNUは、DNA架橋剤でもある。
骨髄幹細胞または造血幹細胞:正常骨髄を再構成し、全ての正常な骨髄細胞系統を生じさせ得る多能性細胞を指し;これらの細胞は、典型的にはCD34+細胞であり、骨髄吸引液、末梢血、および臍帯血から単離することができ、自己または同種細胞であり得る。本出願の目的のために、骨髄幹細胞を生じさせ得る細胞も「骨髄幹細胞」であるとみなされる。
骨髄幹細胞注入、骨髄幹細胞移植療法、および幹細胞注入:骨髄機能の回復を速めるための骨髄幹細胞の静脈内投与のプロセスを指す。
BRCA関係癌およびBRCA関連癌:遺伝性BRCA突然変異の背景で生じる癌を指す。
ブチオニンスルホキシミン(BSO):GSH合成における律速酵素のガンマ-グルタミルシステインシンテターゼの選択的阻害剤を指す。
癌:悪性挙動により定義される疾患を指す。悪性細胞(すなわち、悪性挙動に関与する細胞)のみが癌の臨床疾患を持続し得る。
クローン形成生存:増幅し、細胞のコロニーを形成する細胞の能力を指す。
クローン形成生存率:コロニー形成アッセイにおいて細胞のコロニーを生じさせ得る細胞の率として計算されるクローン形成生存の尺度を指し、クローン形成生存の確率にも等しい。
併用療法:それぞれの治療化合物を異なる時点において投与する様式での治療化合物(例えば、薬剤または薬物)の投与、ならびに同時または実質的に同時様式でのそれらの治療剤、または治療剤の少なくとも2つの投与を指す。同時投与は、例えば、対象に、それぞれの治療剤の固定比を有する単一カプセル剤を投与することにより、もしくは治療剤のそれぞれについての複数の単一カプセル剤を投与することにより達成することができ、またはそれぞれの治療剤の実質的に同時の投与は、任意の適切な経路、例として、経口経路、静脈内経路、筋肉内経路、もしくは粘膜組織を介する直接吸収により行うことができる。治療剤は、同一経路により、または異なる経路により投与することができる。例えば、選択される組合せの第1の治療剤は静脈内注射により投与することができる一方、組合せの他の治療剤は経口投与することができる。あるいは、例えば、全ての治療剤は経口投与することができ、または全ての治療剤は静脈内注射により投与することができる。治療剤は、交互に投与することもできる。本発明において挙げられる併用療法は、疾患または癌の治療において相乗効果をもたらし得る。併用療法は、他の生物学的に活性な成分および非薬物療法(例えば、外科処置または放射線治療)とのさらなる組合せでの上記の治療剤の投与も指す。組換え療法が非薬物治療を含む場合、非薬物治療は、治療剤および非薬物治療の組合せの相互作用からの有益な効果が達成される限り、任意の好適な時点において実施することができる。例えば、適切な場合、有益な効果は、非薬物治療が治療剤の投与から一時的に、可能性として数日またはさらには数週間だけ除外される場合、依然として達成される。
完全寛解(CR):典型的には、CTスキャン、MRIまたは他のイメージングもしくは検出技術により決定される全ての検出可能な癌の不存在を指す。以下の参照文献はこの事項に関連し、全体として本明細書に組み込まれる:Eisenhauer EA,et al.,New response evaluation criteria in solid tumours:revised RECIST guideline(version 1.1),Eur J Cancer,2009 Jan,45(2):228-47。RECIST指針は腫瘍塊の存在と癌の存在とを、および腫瘍塊の減少と抗癌効力とを同一視することに留意すべきである。腫瘍塊は細胞毒性抗癌薬および癌細胞を殺滅する治療法についての正確な計量基準である一方、それは必ずしも細胞を殺滅させずに細胞増殖についての潜在性を永久的に停止させる抗癌薬についての正確な計量基準でない。例えば、ビゼレシン(bizelesin)はこの様式で作用する。定義によれば、例えば、増殖せず、増殖し得ない細胞集団(すなわち、腫瘍塊)は、前記細胞集団が生存したままであっても悪性挙動を示し得ず、癌性でない。
現在の確立された治療法:対象を治療するために使用される既存のレジメンを指す。
デヒドロアスコルビン酸(DHA)は、アスコルビン酸の酸化型;(5R)-5-[(1S)-1,2-ジヒドロキシエチル]オキソラン-2,3,4-トリオンを指す。
誘導体:対応する化合物または部分からさらに改変または官能化された化合物または部分を指す。
解毒:自発的または細胞代謝プロセスによる薬物の細胞毒性を減少または停止させるプロセスを指す。例えば、GSHとアルキル化剤との酵素的または自発的求核反応は、アルキル化剤の解毒をもたらす。
2,3-ジケトグロン酸:DHAの分解産物である(4R,5S)-4,5,6-トリヒドロキシ-2,3-ジオキソヘキサン酸を指す(CAS番号3409-57-2)。
細胞外液中に分布する:薬物の分布の容積が、本質的に体内の細胞外液空間であることを意味する。
DNA鎖間架橋剤:鎖分離を妨げるほどの十分な親和性でDNA二重らせんのDNA鎖を一緒に結合させ、それによってDNA合成を損なう薬物または化学薬剤を指す。一般に、例外もあるが、前記結合親和性は、架橋剤とDNA鎖との間で形成される共有結合から生じる。DNA架橋剤の例は、参照により全体として本明細書に組み込まれる以下のものに提供される:Rajski SR,et al.,DNA Cross-Linking Agents as Antitumor Drugs.,Chem Rev.,1998 Dec 17,98(8):2723-2796。
用量修正係数(dose modification factor):以下の式:[第2の薬物「X」を用いずにクローン形成細胞生存の1-log低減を与える薬物濃度]/[薬物「X」を用いて1-log低減を与える薬物濃度]を指す。例えば、薬物はメルファランであり得、薬物「X」はBSOであり得る。
持続的完全寛解(長期CRとも称される):長時間持続するCR;または化学療法停止から少なくとも1年間持続するCR;または0.5X超の期間持続するCRを指し、Xは、現在の確立された治療法により治療される同一タイプおよびステージの癌を有し、CRを有し得ない同等患者の全生存期間の中央値である。例えば、CRを有さない患者における現在の確立された治療法による特定のタイプおよびステージの癌についての全生存期間の中央値が18ヵ月であった場合、この背景で持続的CRとみなすことができるCRのためには9ヵ月の持続期間を超過しなければならない。
転移性癌の有効な治療または癌の有効な治療:適切に選択される患者において、高い割合または高い確率の以下の1つ以上:CR、持続的長期CR;長期の無病生存期間、長期の全生存期間、長期の疾患特異的生存期間、長期の相対生存期間、長期の無病生存期間、および見かけ上の治癒を与え;一般に、患者の生活の質を維持または改善する治療または方法を指す。Food and Drug Administration(FDA)によるブレークスルーセラピー指定の付与は有効性の裏付けになる証拠を提供し;しかしながら、プラセボ、長期の全生存期間または無進行生存期間よりも数ヵ月だけ統計的に優れ、FDA承認を受けた治療は、本発明者らの定義によれば、有効な治療とは考えられない。同様に、高い割合(例えば、80%)の短期(例えば、数ヵ月の持続期間)CRを与える治療は、有効な治療とは考えられない。
求電子性DNA架橋剤:DNA上の求核部位と反応するDNA架橋剤を指し;例えば、二官能性アルキル化剤メルファランは、DNA上の2つの求核中心:グアニンのN-7およびアデニンのN-3と反応する求電子性DNA架橋剤である。
酵素:化学反応を触媒するタンパク質を指す。
細胞外液:体内の細胞の外側に留まる体液を指し;対応する空間は細胞外空間と称される。本出願の目的のため、細胞外液は、血漿および間質液とみなすことができる。
DNA修復のファンコニ/BRCA経路:相同組換えおよびDNA鎖間架橋の修復に関与する細胞機序、タンパク質、およびプロセスを指す。以下の参照文献はこの事項に関連し、参照により全体として本明細書に組み込まれる:Kim H,et al.,Regulation of DNA cross-link repair by the Fanconi anemia/BRCA pathway,Genes Dev.,2012 Jul 1,26(13):1393-408;Moldovan GL,How the Fanconi anemia pathway guards the genome,Annu Rev Genet.,2009,43:223-49。
グルタチオン(GSH):システインのアミン基とグルタミン酸側鎖のカルボキシル基との間のガンマペプチド結合を有し、システインはペプチド結合によりグリシンに付着しているトリペプチドを指す。GSHは、主要な細胞内チオール化合物であり:それは重要な酸化防止剤であり、反応性求電子試薬、例えば、アルキル化剤の細胞内解毒における重要な作用物質である。
グルタチオンペルオキシダーゼ:過酸化水素の水への変換およびGSHのGSSGへの変換を触媒する酵素を指す。
グルタチオンレダクターゼ(GR):GSSGのGSHへの還元を触媒する酵素を指し;NADPHが還元剤として使用される。
グルタチオンジスルフィド(GSSG):2つのGSH分子をジスルフィド結合により結合することにより形成される化合物を指し;「酸化型GSH」とも称される。
グルタチオン化:グルタチオンとタンパク質の低pKaシステイニル残基との間の混合ジスルフィドの形成を指す。以下の参照文献はこの事項に関連し、参照により全体として本明細書に組み込まれる:Dalle-Donne I,et al.,S-glutathionylation in protein redox regulation,Free Radic Biol Med.,2007 Sep 15,43(6):883-98。
高い割合(または確率)の完全応答:特定のタイプおよびステージの癌のための現在の確立された治療を用いて得られる割合(または確率)の少なくとも約2倍である割合(または確率)のCRを指し、用語「特定のタイプ」の癌は、組織学的タイプ(すなわち、漿液性卵巣癌)だけでなく、他の臨床関連適格特性、例えば、白金耐性も指し得;あるいは、約50%を超過する割合を指す。用語「高い確率の完全応答」は、単一患者を扱う場合に好ましいが、そうでなければ、用語「高い割合」および「高い確率」は、本質的に互換可能である。
相同組換え:DNA鎖間架橋の除去および修復、ならびにDNA二本鎖分解の修復をもたらすDNA修復プロセスを指す。以下の参照文献はこの事項に関連し、参照により全体として本明細書に組み込まれる:Kim H,et al.,Regulation of DNA cross-link repair by the Fanconi anemia/BRCA pathway,Genes Dev.,2012 Jul 1,26(13):1393-408;Moldovan GL,How the Fanconi anemia pathway guards the genome,Annu Rev Genet.,2009,43:223-49。
~が挙げられる(include)(ならびに、例として(including)およびこの語の他の形態):限定なしで、~が挙げられる(include)(または、例として(including)、など)、または「限定されるものではないが、~が挙げられる」と解釈されたい。
グルタチオンレダクターゼの阻害剤:GR活性を阻害し、または自発的にもしくは代謝活性化後にGR活性を阻害する化学種を生成する薬物または薬剤を指す。
間質液または間質水:細胞の外側に局在する血管外液を指す。
間質腔:間質液により占有される空間を指す。
細胞内水または液:細胞の内側に局在する水または液を指す。
細胞内GSSG/2GSH還元電位:細胞内条件下でのGSHの還元活性の尺度を提供する計量基準を指し;それは、ネルンストの式におけるΔEにより与えられる:ΔE=Eph-RT/2F ln[GSH]^2/[GSSG]、式中、Ephは細胞内pHに調整されたE0(標準状態条件下での還元電位)であり;Rは気体定数であり、Fはファラデー定数であり、Tは温度であり、[GSH]はグルタチオン濃度であり、[GSSG]は細胞内局在におけるグルタチオンジスルフィド濃度である。pH7.0において、Eph=約-240mVであり、37℃において、ΔE=約-240-30.8log[GSH]^2/[GSSG](mV)である。以下の参照文献はこの事項に関連し、参照により全体として本明細書に組み込まれる:Schafer FQ,et al.,Redox environment of the cell as viewed through the redox state of the glutathione disulfide/glutathione couple,Free Radic Biol Med.,2001 Jun 1,30(11):1191-212。
間質液圧:間質液により付与される圧力を指す。以下の参照文献はこの事項に関連し、参照により全体として本明細書に組み込まれる:Guyton AC,A concept of negative interstitial pressure based on pressures in implanted perforated capsules,Circ Res.,1963 Apr,12:399-414。
自然薬物耐性:臨床的に達成可能なレベルにおける薬物による破壊または不活性化を免れる癌細胞の集団の能力を指し、前記感受性の欠落は薬物曝露前に顕在化している。
不可逆的阻害剤:酵素を永久的に不活性化させる薬剤を指し;一般に、これは、酵素活性に不可欠な部位における酵素の共有結合修飾により生じる。
液性癌:骨髄またはリンパ組織に由来する癌を指し;例としては、白血病、リンパ腫、および骨髄腫が挙げられる。
細胞生存のlog低減:治療を生存するクローン形成癌細胞の率の負の対数であり;すなわち、それぞれのlog低減は、生存するクローン形成癌細胞の数を10分の9だけ低減させる。例えば、1-log低減は治療がクローン形成細胞生存の90%の減少をもたらすことを意味し、2-log低減はクローン形成細胞生存の99%の減少に対応し、3-log低減はクローン形成細胞生存の99.9%の減少に対応する、などである。
悪性挙動:体内の異常な状況または背景における増殖および侵襲を指し、侵襲は、新たな空間中への細胞の拡大であり、それは局所的または遠隔的(すなわち、転移性)であり得、既存の組織アーキテクチャーのリモデリングまたは破壊および細胞の代謝要求を支持するためのインフラストラクチャーの作出を伴い;侵襲の機序は、微小環境中の悪性細胞および/または非悪性細胞により実行され得る。悪性挙動は、癌の決定的な特性である。
悪性細胞:悪性挙動を発現し、または発現し得る癌細胞を指し;癌を有する患者における全ての腫瘍細胞が悪性腫瘍ではなく;癌を有する患者における多くの腫瘍細胞は行き詰まりであり、増幅し得ず、悪性挙動に関与し得ず、悪性細胞でない。
メルファラン(CAS番号148-82-3):DNAを架橋し、それによって癌細胞クローン形成生存を阻害する二官能性アルキル化剤である。
転移性癌:起源の局所組織部位を越えて体内の遠隔部位に拡散した癌;すなわち、非局在癌を指す。微小転移性癌は、小サイズの転移性病変のため、慣用のイメージング技術により検出可能でない転移性癌である。
mg/m2およびグラム/m2:体表面積1平方メートル当たりの用量を指す。体表面積を計算する方法は、当業者に周知である。mg/m2またはグラム/m2で表現される用量は、体重または当業者に周知の他の計量基準に基づきほぼ同等または類似の用量に変換することができ;用量がmg/kgまたは他のそのような計量基準で表現される本発明の実施形態は、本発明の範囲内である。
NADPH:ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP)の還元型を指す。
ナイトロジェンマスタードアナログ:2つ以上のクロロエチルアミン基を含有する化合物もしくはそのアナログ;インビボもしくはインビトロでクロロエチルアミン基を有する化合物に転換し得る化合物;またはアジリジニル基を形成し得る化合物を指す。クロロエチルアミンはCl-の排除で分子内求核反応を受け、アジリジニル基を形成する。
ネオアジュバント背景:原発腫瘍の外科的切除前の化学療法薬または治療法の施与を指す。
非相同末端結合(NHEJ):誤りがちな修復をもたらす二本鎖DNA分解の修復のプロセスを指す。この事項に関連する以下の参照文献が、参照により全体として本明細書に組み込まれる:Mladenov E,et al.,Induction and repair of DNA double strand breaks:the increasing spectrum of non-homologous end joining pathways,Mutat Res.,2011 Jun 3,711(1-2):61-72。
非難治性転移性癌:現在の確立された治療法により有効に治療することができるタイプの転移性癌を指し;例としては、ほとんどであり全てというわけではないが、精巣癌、小児急性リンパ性白血病、ホジキンリンパ腫、甲状腺濾胞癌、および当業者に周知の他の癌が挙げられる。
ヌクレオチド除去修復(NER):バルキーな改変を有するヌクレオチドを除去し、損傷を修復するDNA修復プロセスを指す。この事項に関連する以下の参照文献が、参照により全体として本明細書に組み込まれる:Kamileri I,et al.,Nucleotide excision repair:new tricks with old bricks,Trends Genet.,2012 Nov,28(11):566-73。
酸化ストレス:反応性酸素種のレベルが正常、生理学的または許容可能なレベル内のそれらの反応性化学種を維持する細胞の能力を超過する場合に存在する条件を指し;酸化ストレスは、一般に、細胞内GSSG/2GSH還元電位の増加および生体分子に対する酸化損傷に関係する。以下の参照文献はこの事項に関連し、全体として本明細書に組み込まれる:Karihtala P,et al.,Reactive oxygen species and antioxidant mechanisms in human tissues and their relation to malignancies,APMIS.,2007 Feb,115(2):81-103。酸化ストレスを計測するいくつかの方法は、Halliwell B,et al.,Measuring reactive species and oxidative damage in vivo and in cell culture:how should you do it and what do the results mean? Br J Pharmacol.,2004 May,142(2):231-55に概説されている。
薬理学的効果:対象に対して、または対象中の細胞に対して薬物により付与される作用を指し;例えば、細胞GSHの減少、または細胞毒性が薬理学的効果である。
細胞増殖についての潜在性:増殖する細胞の能力;または細胞のコロニーを形成する能力により計測されるクローン形成生存を指す。細胞増殖についての潜在性は細胞増殖と異なり:全ての悪性細胞は、定義によれば、細胞増殖についての潜在性を常に有するが、ほとんどの悪性細胞は、ほとんどの時間、増殖に活性的に関与しない。それというのも、細胞増殖は一時的であるためである。
クローン形成生存の確率:クローン形成生存率を指す。
プロドラッグは、インビボまたはインビトロで自発的に、または代謝もしくは酵素活性の結果として親薬物に転換することができる薬物の誘導体を指す。
反応性酸素種(ROS):反応性酸素関連種、例えば、スーパーオキシド(O2-)、過酸化水素(H2O2)、ヒドロキシラジカル(OH・)、ペルオキシラジカル(ROO・)、一酸化酸素(NO・)、および過酸化亜硝酸アニオン(ONOO-)を指す。以下の参照文献はこの事項に関連し、全体として本明細書に組み込まれる:Valko M,et al.,Free radicals,metals and antioxidants in oxidative stress-induced cancer;Chem Biol Interact.,2006 Mar 10,160(1):1-40。
酸化還元サイクリング:ある化合物が還元され、次いでその産物が分子酸素との反応により酸化される一連の化学反応を指し;触媒サイクルは何度も繰り返し、大量の還元剤および大量の酸素を消費し得る。例えば、キノンは、種々の細胞酵素により、NADHまたはNADPHからの1つの電子移動により還元されてセミキノンラジカルを与えることができ、それは酸素と反応し得てキノンを再生し、スーパーオキシドを与える。酸化還元サイクルは、大量のスーパーオキシドおよび他の反応性酸素種を生成することにより細胞中で酸化ストレスを引き起こす。酸化還元サイクルは、式1および2の反復サイクルとして表すことができる:式1:E+R→R-+E+
式2:R-+O2→R+O2-;式中、Eは電子供与体であり、E+はEの酸化型であり、R-はフリーラジカルである。
酸化還元サイクリング剤(または薬):酸化還元サイクリングに関与する化合物を指し;この用語は、酸化/還元状態の変化を反復的に受けるサイクリング化学種の還元および/または酸化型を指し得;それは、酸化還元サイクリング剤を自発的または代謝プロセスにより生成し得る化合物を指すためにも使用される。
難治性転移性癌:治療法に適切に応答し得なかった転移性癌;または既存の治療法に一般に、非応答性であることが公知であり、現在の確立された治療法により有効に治療することができないタイプの転移性癌を指す。例えば、転移性精巣癌は高度に治癒可能であり、一般に難治性転移性癌でなく;対照的に、膵臓癌、黒色腫、および白金耐性卵巣癌は難治性転移性癌である。患者は、治療時に、必ず難治性転移性癌を有するとみなされる必要がある。癌のタイプが特定の薬物に十分応答しないことが公知である場合、癌は、その特定の薬物が無効であるとみなされる。例えば、膵臓癌は、BCNU、メルファラン、および高用量アスコルビン酸が無効である。以下の参照文献はこの事項に関連し、参照により全体として本明細書に組み込まれる:Kovach JS,et al.,Proceedings:A controlled study of combined 1,3-bis-(2-chloroethyl)-1-nitrosourea and 5-fluorouracil therapy for advanced gastric and pancreatic cancer,Cancer.,1974 Feb,33(2):563-7;Smith DB,et al.,Phase II evaluation of melphalan in adenocarcinoma of the pancreas,Cancer Treat Rep.,1985 Jul-Aug,69(7-8):917-8;Monti DA,et al.,Phase I evaluation of intravenous ascorbic acid in combination with gemcitabine and erlotinib in patients with metastatic pancreatic cancer,PLoS One,2012,7(1)。
癌細胞をDNA架橋剤またはDNA損傷剤に感作する:薬剤に対する癌細胞の感受性を増加させることを意味し、それは、前記薬剤が癌クローン形成生存のかなり大きい阻害を引き起こすことをもたらし、癌細胞クローン形成生存の1-log低減を与えるために必要とさされるAUCまたは薬剤の用量が少なくとも3分の1に減少し;感作の程度は、用量修正係数(DMF)により計測される。
(規定の病態を)治療するためのレジメンにおいて使用される薬物(例えば、薬剤または組成物)のセット:1つ以上の薬物を指し;セットが薬物#1、薬物#2、薬物#3および薬物#4を含む場合、用語「(規定の疾患を)治療するためのレジメンにおいて使用される薬物のセットは、
(規定の疾患を)治療するためのレジメンにおいて使用される薬物#1、(規定の疾患を)治療するためのレジメンにおいて使用される薬物#2、(規定の疾患を)治療するためのレジメンにおいて使用される薬物#3、および(規定の疾患を)治療するためのレジメンにおいて使用される薬物#4
を意味し、レジメンは、薬物#1、薬物#2、薬物#3、および薬物#4の組合せの使用を含む。薬物のセットは、前記薬物を含むキットも指す。
固形癌または固形腫瘍:固形組織に由来する癌を指し;例としては、膵臓癌、結腸癌、肺癌、および卵巣癌が挙げられる。
対象:治療または予防が必要とされる哺乳動物、例えば、ヒト、コンパニオンアニマル(例えば、イヌ、ネコなど)、家畜(例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ヤギなど)、および実験動物(例えば、ラット、マウス、モルモットなど)を指す。典型的には、対象は、規定の治療が必要とされるヒトである。
腫瘍への薬物の選択的送達:対象への1つ以上の薬剤の全身投与ならびに正常組織中の薬物レベルよりも高い、腫瘍および/または腫瘍細胞の細胞内液中の薬物レベルの達成を指し、腫瘍への薬物の送達の増加の尺度は、腫瘍中の前記薬物の所望の薬理学的効果を優先的に誘発するために十分なものである。
腫瘍(または腫瘍細胞)中の選択的(効果):正常組織中の尺度よりも大きい、腫瘍(または腫瘍細胞)中の効果の尺度の達成を指し、腫瘍(または腫瘍細胞)中の効果の増加の尺度は、腫瘍(または腫瘍細胞)中の所望の薬理学的効果を優先的に誘発するために十分なものである。
相乗作用または相乗効果:化合物を単独で使用した場合に検出することができる効果の合計よりも尺度が大きい(すなわち、適切な対照条件に対して統計的に有意な様式で)検出可能な効果を指し:すなわち、組合せの効果は、それぞれの構成成分の予測される相加効果よりも大きい。相乗効果は、単一薬剤としての化合物または他の治療剤のいずれかの投与により達成することができない効果であり得る。相乗効果としては、腫瘍サイズを低減させ、腫瘍成長を阻害し、または対象の生存を増加させることによる癌を治療する効果を挙げることができる。相乗効果としては、癌細胞生存性を低減させ、癌細胞死を誘導し、または癌細胞成長を阻害し、もしくは遅延させることを挙げることもできる。
全身投与:血液循環により体内で薬物分布をもたらす薬物の投与を指し;それとしては、薬物投与の静脈内(IV)、動脈内、腹腔内、および経口経路が挙げられる。好ましい経路は、IVである。
治療有効用量:有益な治療効果を与える用量を指す。
チオレート:チオールの負荷電コンジュゲート塩基;脱プロトン化チオールイオン。細胞中で、タンパク質チオレート含有率は、主に約7以下のpKaを有するシステインチオール基の含有率により決定される。
治療:疾患または病態に関して患者に有益な効果を提供する治療法を指す。
USP:米国薬局方協会(USP)薬物規格を指す。
均等物
当業者は、単なる定型的実験を使用して、本明細書に記載の本発明、材料、方法、および構成成分の多くの均等物を認識し得、または確認することができる。このような均等物は、本特許の特許請求の範囲の範囲内であるものとする。本発明を特にその好ましい実施形態を参照して示し、記載した一方、本発明の範囲から逸脱せずに形態および詳細の種々の変更をその中で行うことができることが当業者により理解される。
実施形態E1
実施形態E1は、固形癌への薬物の選択的送達の、および癌の治療のための薬理学的効果を達成する方法である。本方法は、
a.薬剤1および薬剤2と称される2つの化合物を選択すること;(前記薬剤は酵素でなく、前記薬剤は全身投与後に細胞外空間中に分布し、薬剤1および薬剤2は細胞外空間中で自発的に反応して薬物1、薬物2、...薬物Nと称される1つ以上の薬物を直接または間接的に生成し;前記薬物は血管内コンパートメントから急速に分解され、崩壊され、またはそうでなければ排泄もしくは解毒され;前記薬物は間質液から急速に流出し、細胞内液に流入し;前記薬物は薬理学的効果および治療効果を付与する)
b.腫瘍中の所望の薬理学的効果および治療を達成するために十分な用量において薬剤1および薬剤2を全身投与すること
c.任意選択によりエタノールを投与すること
d.任意選択によりグルタチオンレダクターゼ阻害剤を投与すること
e.任意選択によりDNA損傷剤を投与すること
f.任意選択により骨髄幹細胞を投与すること
を含む。
実施形態Ee1
本発明の実施形態Ee1は、癌の治療のための薬理学的効果を達成するための固形癌への薬物の選択的送達のための治療レジメンにおいて使用される薬物のセットであって、薬剤1および薬剤2を含み;前記薬剤は酵素でなく:
a.前記薬剤は全身投与後に細胞外空間中に分布し、薬剤1および薬剤2は細胞外空間中で自発的に反応して薬物1、薬物2、...薬物Nと称される1つ以上の薬物を直接または間接的に生成し;前記薬物は血管内コンパートメントから急速に分解され、崩壊され、またはそうでなければ排泄もしくは解毒され;前記薬物は間質液から急速に流出し、細胞内液に流入し;前記薬物は所望の薬理学的効果および治療効果を付与し;
b.レジメンは、腫瘍中の薬理学的および治療効果を得るために十分な用量の薬剤1および薬剤2の全身投与を含み;
c.レジメンは、任意選択によりエタノールを投与することを含み;
d.レジメンは、任意選択によりグルタチオンレダクターゼ阻害剤を投与することを含み;
e.レジメンは、任意選択によりDNA損傷剤を投与することを含み;
f.レジメンは、任意選択により骨髄幹細胞を投与することを含む
薬物のセットである。
E1およびEe1において、用語「急速に」は、薬物1の排泄または取り込みの速度が、薬物1の産生の速度よりも少なくとも2倍速いことを意味する。用語「細胞外空間中で反応して1つ以上の薬物を直接または間接的に生成する」は、薬剤1および薬剤2の存在下で、薬物が形成されることを意味する。
実施形態E1およびEe1は、液性癌を除き(例えば、白血病を除き)リストAに与えられる癌のタイプに当てはまる。
薬理学的効果
E1およびEe1において、薬理学的効果としては、以下の1つ以上:腫瘍中の酸化ストレスの選択的誘導、腫瘍中のグルタチオンの選択的枯渇、腫瘍中の細胞内GSSG/2GSH還元電位の選択的増加、腫瘍細胞ATP産生の選択的阻害、腫瘍細胞中の解糖の選択的阻害、DNA損傷剤に対する腫瘍細胞の選択的感作、DNA架橋剤に対する腫瘍細胞の選択的感作、腫瘍細胞成長の選択的阻害、および腫瘍細胞に対する選択的細胞毒性が挙げられる。
投与方式
好ましい実施形態において、投与経路は血管内であり、好ましい経路は静脈内(IV)である。薬剤1および薬剤2は、動脈内、腹腔内または経口で与えることもできる。薬剤1および薬剤2のプロドラッグを用いることもでき、それは本発明の範囲内である。
酸化還元サイクリング触媒としての薬剤1
E1およびEe1の好ましい実施形態において、薬剤1は、薬剤2および酸素の存在下で酸化還元サイクリングを受ける。このサイクルプロセスにおいて、薬剤1は薬剤2により還元され、次いで薬剤1の還元型は、酸素への電子移動により酸化される。正味の結果は、薬剤1が薬剤2の酸化用触媒として機能し、過酸化水素が直接または間接的に産生されることである。薬剤1として用いることができる多数の酸化還元サイクリング触媒が当業者に公知である。
以下の参照文献はこの事項に関連し、参照により全体として本明細書に組み込まれる:Vlasova EA,et al.,Kinetics and mechanism of the Co(II)-assisted oxidation of L-ascorbic acid by dioxygen and nitrite in aqueous solution,Dalton Trans.,2009 Dec 21,(47):10541-9。
酸化還元サイクリング触媒、薬剤1としてのヒドロキソコバラミン
好ましい実施形態において、薬剤1は、ヒドロキソコバラミンである。ヒドロキソコバラミンのCo(III)原子は、還元剤および酸素の存在下でCo(III)状態とCo(II)状態との間をサイクルさせる。コバルト原子または別の遷移金属原子が酸化還元サイクリングを受け得る多数のヒドロキソコバラミンアナログが、当業者に公知である。これらは、本発明の範囲内である。ヒドロキソコバラミンのアナログ、誘導体、プロドラッグ、および薬理学的に許容可能な塩の例としては、酢酸ヒドロキソコバラミン(CAS番号22465-48-1)、ヒドロキソコバラミン塩酸塩、ビタミンB12r、ジアクアコブ(III)イナミド(diaquacob(III)inamide)(CAS番号15259-55-9);メチルアクアコビナミド(CAS番号15653-35-7)、アデノシルアクアコブ(III)イナミド(adenosylaquacob(III)inamide)(CAS番号89302-86-3)、およびシアノアクアコブ(III)イナミド(cyanoaquacob(III)inamide)(CAS番号13963-62-7)が挙げられる。以下の参照文献はこの事項に関連し、参照により全体として本明細書に組み込まれる:Solovieva ME,et al.,Vitamin B12b enhances the cytotoxicity of dithiothreitol,Free Radic Biol Med.,2008 May 15,44(10):1846-56;Hackman,RA,Electron transfer reactions of macrocyclic compounds of cobalt,1978,Thesis Submitted to Iowa State University;Jacobsen,DW,et al.,Catalysis of thiol oxidation by cobalamins and cobinamides:reaction products and kinetics,Biochemistry,1984,23(9):2017-25。
還元剤としての薬剤2
E1およびEe1の好ましい実施形態において、薬剤2は、薬剤1を還元し得る還元剤である。2つ以上の還元剤を同時に使用することもできる。薬剤1がヒドロキソコバラミンである場合、還元剤は、アスコルビン酸、D-アスコルビン酸(CAS番号89-65-6)、またはDおよびLアスコルビン酸のラセミ混合物;またはチオール、例えば、システイン、n-アセチルシステイン、グルタチオン、2-スルファニルエタンスルホン酸ナトリウム(メスナ)、または6,8-ジメルカプトオクタン酸(ジヒドロリポ酸)、またはそれらの薬理学的に許容可能な塩もしくはプロドラッグであり得る。広範な他の化合物が、ヒドロキソコバラミンの存在下で自動酸化を受け得、過酸化水素の産生を伴う。当業者は、同様の様式で挙動する他の化合物を認識し;これらは本発明の範囲内である。チオールの全身投与の方法は、当業者に周知である。
アスコルビン酸としての薬剤2
好ましい実施形態において、薬剤2は、アスコルビン酸、またはそのプロドラッグ、誘導体もしくはアナログである。還元剤として機能し得る多数のアスコルビン酸の薬理学的に許容可能な塩、プロドラッグ、誘導体およびアナログが当業者に周知であり、本発明の範囲内である。
薬物1としてのDHAおよび薬物2としての過酸化水素
好ましい実施形態において、薬剤1および薬剤2は、反応して過酸化水素、アスコルビン酸フリーラジカルおよび/またはデヒドロアスコルビン酸(DHA)ならびに2,3-ジケトグロン酸(2,3-DKG)を生成する。アスコルビン酸フリーラジカルは、アスコルビン酸およびDHAへの急速な不均化を受ける。過酸化水素は、直接または間接的に、例えば、スーパーオキシドの不均化により生成することができる。過酸化水素、DHAおよび2,3-DKGは、癌細胞中の有用な選択的薬理学的効果、例として、GSHの枯渇、細胞内GSSG/2GSH還元電位の増加、腫瘍細胞ATP産生の阻害、解糖の阻害、DNA損傷剤に対する腫瘍細胞の感作、DNA架橋剤に対する腫瘍細胞の感作、有糸分裂の阻害、および細胞毒性を媒介し得る。
ヒドロキソコバラミンおよびアスコルビン酸
E1およびEe1の好ましい実施形態において、薬剤1はヒドロキソコバラミンであり、薬剤2はアスコルビン酸であり、薬物1は過酸化水素であり、薬物2はDHAである。2,3-DKGはDHAの崩壊からも生じ、有用な薬理学的効果を付与し得る。ヒドロキソコバラミンおよびアスコルビン酸の誘導体、アナログまたはプロドラッグを使用することもでき、それらは本発明の範囲内である。
ヒドロキソコバラミンおよびアスコルビン酸の反応
ヒドロキソコバラミンは、アスコルビン酸の酸化用触媒として作用する。ヒドロキソコバラミンは、アスコルビン酸および酸素の存在下で酸化還元サイクリングを受ける。このサイクルプロセスにおいて、ヒドロキソコバラミンはアスコルビン酸により還元され、次いでヒドロキソコバラミンの還元型は酸素への電子移動により酸化される。正味の結果は、ヒドロキソコバラミンがアスコルビン酸の酸化用触媒として機能し、過酸化水素およびDHAが産生されることである。インビトロでは、ヒドロキソコバラミンおよびアスコルビン酸の組合せは、過酸化水素を生成し、GSHレベルを低下させ、細胞毒性である。以下の参照文献はこの事項に関連し、参照により全体として本明細書に組み込まれる:Akatov VS,et al.,Combined vitamins Bl2b and C induce the glutathione depletion and the death of epidermoid human larynx carcinoma cells HEp-2,Biosci Rep.,2000 Oct,20(5):411-7;Solovieva ME,et al.,Vitamin B12b increases the cytotoxicity of short-time exposure to ascorbic acid,inducing oxidative burst and iron-dependent DNA damage,Eur J Pharmacol.,2007 Jul 2,566(1-3):206-14;Nazhat NB,et al.,Destruction of vitamin B12 by reaction with ascorbate:The role of hydrogen peroxide and the oxidation state of cobalt,J.Inorg.Biochem.,1989 Jun,36(2):75-81;Ahmad I,et al.,Effect of ascorbic acid on the degradation of cyanocobalamin and hydroxocobalamin in aqueous solution:a kinetic study,AAPS PharmSciTech.,2014 Oct,15(5):1324-33。
ヒドロキソコバラミン用量およびタイミング
E1およびEe1の好ましい実施形態におけるヒドロキソコバラミンの用量は、約50~40,000mgのヒドロキソコバラミンの範囲である。好ましい実施形態において、ヒドロキソコバラミン用量は、約50mg、100mg、250mg、500mg、ならびに1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、および40グラムである。ヒドロキソコバラミンの静脈内投与の方法は、当業者に周知である。ヒドロキソコバラミンおよびアスコルビン酸の両方を同時にまたは本質的に同時に与えることができる。あるいは、ヒドロキソコバラミンは、アスコルビン酸の数時間前に与えることができる。それというのも、ヒドロキソコバラミンは約26~31時間の血漿半減期を有するためである。好ましい実施形態において、ヒドロキソコバラミンは、約1、2、5、10、15、20、25、30、45、および60分間にわたり与える。好ましい実施形態において、ヒドロキソコバラミンをアスコルビン酸の投与直前の約10~15分間にわたり与え、アスコルビン酸を約30~60分間の期間にわたり与える。ヒドロキソコバラミンは、現在のところ、シアニド中毒の治療のために静脈内で使用される。以下の参照文献はこの事項に関連し、参照により全体として本明細書に組み込まれる:Prescribing information for Cyanokit。
アスコルビン酸用量および投与
E1およびEe1の好ましい実施形態におけるアスコルビン酸の用量は、約0.5グラム~150グラムの範囲である。E1およびEe1の好ましい実施形態において、アスコルビン酸の用量は、約0.5、1、2、5、10、15、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100、125、および150グラムである。アスコルビン酸の静脈内投与の方法は、当業者に公知である。アスコルビン酸は、約5~360分間にわたり静脈内で与える。好ましい実施形態において、アスコルビン酸は、約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、70、80、90、100、120、140、160、180、および360分間にわたり与える。静脈内アスコルビン酸は、複数の臨床試験において使用されてきた。以下の参照文献はこの事項に関連し、参照により全体として本明細書に組み込まれる:Monti DA,et al.,Phase I evaluation of intravenous ascorbic acid in combination with gemcitabine and erlotinib in patients with metastatic pancreatic cancer,PLoS One.,2012,7(1);Wilson MK,et al.,Review of high-dose intravenous vitamin C as an anticancer agent,Asia Pac J Clin Oncol.,2014 Mar,10(1):22-37;Stephenson CM,et al.,Phase I clinical trial to evaluate the safety,tolerability,and pharmacokinetics of high-dose intravenous ascorbic acid in patients with advanced cancer,Cancer Chemother Pharmacol.,2013 Jul,72(1):139-46;Hoffer LJ,et al.,Phase I clinical trial of i.v.ascorbic acid in advanced malignancy,Ann Oncol.,2008 Nov,19(11):1969-74;Welsh JL,et al.,Pharmacological ascorbate with gemcitabine for the control of metastatic and node-positive pancreatic cancer(PACMAN):results from a phase I clinical trial,Cancer Chemother Pharmacol.,2013 Mar,71(3):765-75。
薬理学的効果
ヒドロキソコバラミンおよびアスコルビン酸の両方は、全身投与後に細胞外液コンパートメント中に急速に分布する。酸素の存在下で、ヒドロキソコバラミンおよびアスコルビン酸は反応して過酸化水素およびDHAを生成する。過酸化水素およびDHAは、両方とも血管内コンパートメントから急速にクリアランスされ、間質液を急速に流出し、細胞内液に流入する。DHAおよび過酸化水素の薬理学的効果としては、腫瘍中の酸化ストレスの選択的誘導、腫瘍中のグルタチオンの選択的枯渇、腫瘍中の細胞内GSSG/2GSH還元電位の選択的増加、腫瘍細胞ATP産生の選択的阻害、腫瘍細胞中の解糖の選択的阻害、DNA損傷剤に対する腫瘍細胞の選択的感作、DNA架橋剤に対する腫瘍細胞の選択的感作、および腫瘍細胞に対する選択的細胞毒性が挙げられる。これらの効果は、GSSGをGSHに還元する酵素GRの阻害により増加させることができる。
GR阻害剤
E1およびEe1の好ましい実施形態において、GR阻害剤を薬剤1および薬剤2の投与前、または投与と同時に投与する。2つ以上のGR阻害剤を同時に使用することができる。Ee1の実施形態において、GR阻害剤を薬物のセットに含める。GR阻害剤は、腫瘍グルタチオンレダクターゼを阻害するために十分な用量において、好ましくは、薬剤1および薬剤2の投与前、または投与と同時に全身で与える。GRを阻害し、使用することができる広範な化合物が公知であり;それらとしては、BCNU、2-クロロエチルイソシアネート;シクロヘキシルイソシアネート;N,N’-ビス(トランス-4-ヒドロキシシクロヘキシル)-N’-ニトロソウレア;2,4-ジヒドロキシベンジルアミン;2-アセチルアミノ-3-[4-(2-アセチルアミノ-2-カルボキシエチルスルファニルチオカルボニルアミノ)-フェニルチオカルバモイルスルファニル]プロピオン酸(2-AAPA);1-(2-クロロエチル)-3-シクロヘキシル-1-ニトロソウレア(CCNU);ヒドロキシメチルアシルフルベン(HMAF);4,5-ジクロロ-N-オクチルイソチアゾール-3-オン(DCOIT);[1-フェニル-2,5-ジ(2-ピリジル)-ホスホール}AuCl];S-(N-[2-クロロエチル]カルバモイル)グルタチオン;S-(N-メチルカルバモイル)グルタチオン;N-アルキマレイミド(alkymaleimide);S-(N-[2-クロロエチル]カルバモイル)システイン;およびイソシアネートが挙げられる。当業者は、GRを阻害する多数の好適な化合物に精通する。前記化合物の使用は、本発明の範囲内である。以下の参照文献はこの事項に関連し、参照により全体として本明細書に組み込まれる:Babson JR,et al.,Inactivation of glutathione reductase by 2-chloroethyl nitrosourea-derived isocyanates,Biochem Biophys Res Commun.,1978 Jul 28,83(2):754-62;Karplus PA,et al.,Inhibition of human glutathione reductase by the nitrosourea drugs 1,3-bis(2-chloroethyl)-1-nitrosourea and 1-(2-chloroethyl)-3-(2-hydroxyethyl)-1-nitrosourea.A crystallographic analysis,Eur J Biochem.,1988 Jan 15,171(1-2):193-8;Chresta CM,et al.,Depletion of cellular glutathione by N,N’-bis(trans-4-hydroxycyclohexyl)-N’- nitrosourea as a determinant of sensitivity of K562 human leukemia cells to 4-hydroperoxycyclophosphamide,Cancer Res.,1990 Jul 1,50(13):4067-71;FitzGerald GB,et al.,2,4-Dihydroxybenzylamine:a specific inhibitor of glutathione reductase,Biochem Pharmacol.,1991 Jan 15,41(2):185-90;Seefeldt T,et al.,Characterization of a novel dithiocarbamate glutathione reductase inhibitor and its use as a tool to modulate intracellular glutathione,J Biol Chem.,2009 Jan 30,284(5):2729-37;Liu X,et al.,Profiling patterns of glutathione reductase inhibition by the natural product illudin S and its acylfulvene analogues,Mol Biosyst.,2009 Sep,5(9):1013-24;Arning J,et al.,Structure-activity relationships for the impact of selected isothiazol-3-one biocides on glutathione metabolism and glutathione reductase of the human liver cell line Hep G2,Toxicology.,2008 Apr 18,246(2-3):203-12;Deponte M,et al.,Mechanistic studies on a novel,highly potent gold-phosphole inhibitor of human glutathione reductase,J Biol Chem.,2005 May 27,280(21):20628-37;Jochheim CM,et al.,Selective and irreversible inhibition of glutathione reductase in vitro by carbamate thioester conjugates of methyl isocyanate,Biochem Pharmacol.,1994 Mar 29,47(7):1197-206;Dubler RE,et al.,Simultaneous inactivation of the catalytic activities of yeast glutathione reductase by N-alkylmaleimides,Biochim Biophys Acta.,1981 May 14,659(1):70-85;Kassahun K,et al.,Effect of carbamate thioester derivatives of methyl- and 2-chloroethyl isocyanate on glutathione levels and glutathione reductase activity in isolated rat hepatocytes,Biochem Pharmacol.,1994 Aug 3,48(3):587-94。
BCNU
好ましい実施形態において、GR阻害剤はBCNUである。好ましい実施形態において、BCNU用量は、約50~400mg/m2である。好ましい実施形態において、BCNU用量は、約50、75、100、125、150、175、200、225、250、275、300、325、350、375、および400mg/m2である。BCNUの静脈内投与の方法は、当業者に周知である。BCNUは、一般に、約3mg以下/m2/分において投与する。以下の参照文献はこの事項に関連し、参照により全体として本明細書に組み込まれる:Carmustine infusion reactions are more common with rapid administration;Janson B,et al.,Support Care Cancer.,2012 Oct,20(10):2531-5。
エタノール
E1およびEe1の好ましい実施形態において、エタノールを経口または静脈内投与して薬剤1および薬剤2の反応から生成される過酸化水素によるカタラーゼの不活性化を予防する。赤血球カタラーゼの活性が減弱される場合、過酸化水素は、溶血およびメトヘモグロビン血症を引き起こし得る。Ee1の実施形態において、エタノールは薬物のセットに含める。好ましい実施形態において、エタノール用量は、約0.5~40グラムである。好ましい実施形態において、エタノール用量は、約0.5、1、2、4、6、8、10、12、15、20、25、30、35、および40グラムである。静脈内で与える場合、エタノールは、用量に応じて約30分間~6時間にわたり与える。エタノール投与のタイミングは、過酸化水素への曝露の間、エタノールが血液中に存在するように薬剤2の投与前または投与と同時である。エタノールの静脈内投与の方法は、当業者に周知である。以下の参照文献はこの事項に関連し、参照により全体として本明細書に組み込まれる:FDA prescribing information for 5% Alcohol in 5% Dextrose Injection,USP。エタノールは、薬物の1つ以上のための共溶媒として使用することもできる。
DNA損傷剤
本発明の方法および治療レジメンは、広範なDNA損傷剤、例として、化学および物理的DNA損傷剤に対して腫瘍細胞を感作するために使用することができる。2つ以上のDNA損傷剤を同一の治療において使用することができる。DNA損傷剤の規定の化学的性質は、本発明の作用機序に重要でない。DNA損傷剤は当業者に周知であり、それとしては、作用物質、例えば、放射線、熱、超音波、ならびにDNA塩基損傷、DNA一本鎖分解、DNA二本鎖分解、およびDNA架橋を誘導する薬物が挙げられる。本発明により使用することができる好適なDNA損傷剤としては、三酸化ヒ素、ベンダムスチン、Bexxar、ブレオマイシン、ブスルファン、カペシタビン、カルボプラチン、カルムスチン、クロラムブシル、シスプラチン、クロファラビン、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デシタビン、ドキソルビシン、エピルビシン、エトポシド、フルダラビン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、イダルビシン、イホスファミド、イリノテカン、ロムスチン、メクロレタミン、メルファラン、メルカプトプリン、マイトマイシンC、オラパリブ、オキサリプラチン、パルボシクリブ、プロカルバジン、二塩化ラジウム223、テモゾロミド、チオグアニン、チオテパ、トポテカン、トラベクテジン、およびビンクリスチンが挙げられる。当業者は多数のDNA損傷剤を認識および精通し;本発明の方法による前記薬剤の使用は本発明の範囲内である。本方法において用いられる前記DNA損傷剤の用量は、一般に、特定の臨床背景(例えば、幹細胞注入の背景)における癌の治療において典型的に使用されるものの50~100%である。
DNA架橋剤
E1およびEe1の好ましい実施形態において、DNA損傷剤はDNA架橋薬である。DNA架橋剤としては、ベンダムスチン、ビゼレシン、ブスルファン、ブスルファン、カルボプラチン、カルボプラチン、カルムスチン、クロラムブシル、シスプラチン、シスプラチン、シクロホスファミド、イホスファミド、ロムスチン、メクロレタミン、メルファラン、マイトマイシンc、ネダプラチン、オキサリプラチン、オキサリプラチン、ピコプラチン、サトラプラチン、チオテパが挙げられる。これらの架橋剤のアナログ、誘導体、およびプロドラッグも本発明の範囲内である。追加の好適なDNA架橋剤は、参照により全体として本明細書に組み込まれる以下の参照文献に記載されている:Rajski SR,et al.,DNA Cross-Linking Agents as Antitumor Drugs,Chem Rev.,1998 Dec 17,98(8):2723-2796。前記DNA架橋薬を投与する技術は、当業者に周知である。以下の参照文献はこの事項に関連し、参照により全体として本明細書に組み込まれる:Pazdur R,et al.,A Multidisciplinary Approach.Medical,Surgical and Radiation Oncology-13th ed.,2010,Publisher:Matthews Medical Books。当業者は、多数のDNA架橋剤を認識および精通し;本発明の方法による前記薬剤の使用は本発明の範囲内である。本方法において用いられる前記薬剤の用量は、一般に、特定の臨床背景(例えば、幹細胞注入の背景)における癌の治療において典型的に使用されるものの30~100%である。
メルファラン
好ましい実施形態において、DNA架橋薬は、約10mg/m2~200mg/m2の用量範囲のメルファランである。好ましい実施形態において、メルファラン用量は、約10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、および200mg/m2である。メルファランの静脈内投与の方法は、当業者に周知である。メルファランは、約5~60分間の期間にわたり投与する。メルファランは、薬剤1および薬剤2の直前、それらと同時に、または直後のいずれかで投与する。
骨髄幹細胞注入
好ましい実施形態において、骨髄幹細胞を注入してDNA損傷薬からの骨髄毒性を回復させる。幹細胞注入は、一般に、メルファラン用量が約50mg/m2を超過し、もしくはBCNU用量が約200mg/m2を超過する場合または患者が薬物治療後に長期の骨髄抑制を有し、もしくは有すると予測される場合に与える。幹細胞は、化学療法薬(すなわち、DNA損傷薬)の投与前に回収し、精製および保存する。骨髄幹細胞は、好ましくは、化学療法薬の1~2日後に注入し;しかしながら、幹細胞は、後の時点において投与することができる。精製された自己骨髄幹細胞が強く好ましく;しかしながら、同種骨髄幹細胞を用いることもできる。造血幹細胞回収、精製、保存および移植または注入の技術は、当業者に周知である。CD34+造血細胞が濃縮され、循環腫瘍細胞が枯渇した精製幹細胞調製物の使用が好ましい。以下の参照文献はこの事項に関連し、参照により全体として本明細書に組み込まれる:Mapara MY,et al.,Exp Hematol.,1999 Jan,27(1):169-75;Mohr M,et al.,Clin Cancer Res.,1999 May,5(5):1035-40;Cellular,Tissue and Gene Therapies Advisory Committee,Meeting Date of September 23,2011,CliniMACS(登録商標)CD34 Reagent System,Briefing Package,HUD #04-0146,HDE #BH110018,U.S.Food and Drug Administration。
腫瘍への選択的薬物送達の機序
薬剤1および薬剤2が薬物1を腫瘍に選択的に送達する機序は、予測外である。それというのも、腫瘍選択性についての根拠が存在しないと考えられるためであり:両方の薬剤は、全身投与後に血管外液全体にわたり本質的に均等に分布し、さらに薬物1を形成する反応の速度は、腫瘍および正常組織中の両方で細胞外空間全体にわたり本質的に等しい。したがって、薬物送達における腫瘍選択性についての根拠が存在しないことが考えられる。しかしながら、薬剤1、薬剤2、および薬物1の系は、最大20倍の増加した腫瘍への薬物送達を与え得る予測外の薬物動態特性を有する。これは特に予測外である。それというのも、腫瘍が、一般に、腫瘍中への薬物送達に対する障壁として機能する、正常組織と比較して減少した血流および増加した間質液圧を有するためである。本発明は、腫瘍への薬物送達に対するこれらの周知の「障壁」を活用して腫瘍への薬物送達を逆説的に向上させる。
実施形態E1の1つの作用機序は、以下のとおりである:通常、間質液圧は、大気圧に対して約-3~-6mmHgである。腫瘍中で、間質液圧は顕著に高い。腫瘍の増加した間質液圧は、(細胞外液中の膠質浸透圧を増加させる)腸内空間中へのアルブミンの溢出を可能とする漏出毛細血管、リンパ流の減少または不存在、(腫瘍中のより高い毛細血管血圧をもたらし得る)腫瘍血流の機能不全、および腫瘍微小環境内での浸透圧的に活性な物質、例えば、ヒアルロン酸の産生の増加に起因する。間質液圧が0を超えて増加する場合、間質液量の大きい増加が存在する。したがって、腫瘍は、正常組織と比較して間質液量の大きい増加を特徴とする。間質液量と細胞内液量との比は、正常組織中よりも腫瘍中でかなり大きく:典型的には、ほとんどの正常組織中よりも腫瘍中で約3~12倍大きい。以下の参照文献はこの事項に関連し、参照により全体として本明細書に組み込まれる:Munson JM,et al.,Interstitial fluid flow in cancer:implications for disease progression and treatment,Cancer Manag Res.,2014 Aug 19,6:317-28;Baronzio G,et al.,Overview of Methods for Overcoming Hindrance to Drug Delivery to Tumors,with Special Attention to Tumor Interstitial Fluid.,Front Oncol.,2015 Jul 23,5:165;Less JR,et al.,Interstitial hypertension in human breast and colorectal tumors,Cancer Res.,1992 Nov 15,52(22):6371-4;Nathanson SD,et al.,Interstitial fluid pressure in breast cancer,benign breast conditions,and breast parenchyma,Ann Surg Oncol.,1994 Jul,1(4):333-8;Guyton AC,Interstitial Fluid Pressure.II.Pressure-Volume Curves of Interstitial Space,Circ Res.,1965 May,16:452-60;Gullino PM,et al.,The Interstitial Water Space of Tumors,Cancer Res.,1965 Jun,25:727-31;O’Connor SW,et al.,Accessibility of circulating immunoglobulin G to the extravascular compartment of solid rat tumors,Cancer Res.,1984 Sep,44(9):3719-23;Boucher Y,et al.,Tumor angiogenesis and interstitial hypertension,Cancer Res.,1996 Sep 15,56(18):4264-6。
薬剤1および薬剤2の静脈内または全身投与後、血漿と間質液との間で薬剤の濃度の急速な平衡化が存在する。分布相が完了した後、血漿と間質液との間の薬剤1または薬剤2の正味のフラックスが実質的に存在しない(血漿からの薬剤1および薬剤2の腎排泄により生成される勾配から生じるものを除く)。薬剤1および薬剤2の腎クリアランスの速度が薬物1の産生速度と比較して小さい場合、その効果は小さい。薬物1の産生速度が血漿および間質液中の両方で本質的に等しいため、血漿と間質液との間の薬物1のいずれの正味のフラックスも、それぞれのコンパートメント中の排泄速度の差から生じる濃度勾配のみから生じる。薬物1は、血管内コンパートメント中で急速に崩壊され、間質液から細胞内水中に急速に取り込まれるため、血漿および間質液中の両方の薬物1の絶対濃度は低く、血漿と間質液との間のいずれの濃度勾配の絶対尺度も低い。血漿と間質液との間の顕著な濃度勾配が不存在であるため、間質液中の薬物1は、主に、それが形成される微小環境中の細胞内空間中に取り込まれる。この場合、特定部位における細胞により受容される薬物1の用量は、その部位における間質液と細胞内液の比に依存する。この比は腫瘍中でかなり高いため、腫瘍細胞は、正常組織中の細胞よりも対応して大きい用量の薬物1を受容する。(同じことは、薬物2に当てはまる)。
ある状況において、薬物1は、間質液中よりも血管内空間中でかなり早く崩壊する。さらに、ある状況において、間質液からの血管内空間中への薬物1の拡散または取り込みは、細胞内空間中への薬物1の取り込みよりもかなり速いことがある。例えば、これは、薬物1が、血管内空間中で急速に分解される過酸化水素である場合である。律速段階は、カタラーゼにより分解される赤血球中への過酸化水素の拡散である。血管内空間中の過酸化水素は、カタラーゼにより急速に破壊され:半減期は約50ミリ秒である。対照的に、腫瘍中の膵臓癌細胞による過酸化水素分解の半減期は、約1.4秒である。この推定値は、インビトロでの膵臓癌細胞による過酸化水素消費の既知速度からのインビボ細胞密度への外挿に基づく。血管内コンパートメント中への間質液からの過酸化水素の流出速度は、間質液1ml当たりの毛細血管の表面積および間質液1ml当たりの赤血球の容積(毛細血管中)の関数であり、その両方は、腫瘍中よりも正常組織中でかなり高い。例えば、ラット線維肉腫中のRBC容積と間質液量との比は約.0047であり;この比は、ラット肺中で約66倍高く、ラット腎臓中で40倍高く、心臓中で約32倍高い。間質液1ml当たりの毛細血管表面積も、ほとんどの正常組織中よりも腫瘍中でかなり小さい。多くの正常組織中で、赤血球容積/間質液量の比および毛細血管表面積/間質液量の比が高いため、ほぼ全ての過酸化水素が血管内空間中で消費され、正常組織の細胞内空間に送達される過酸化水素の用量は、腫瘍の細胞内空間に送達されるものと比較して極めて小さい。
以下の参照文献はこの事項に関連し、参照により全体として本明細書に組み込まれる:Wagner BA,et al.,An Assay for the Rate of Removal of Extracellular Hydrogen Peroxide by Cells,Redox Biol.,2013,1(1):210-217;O’Connor SW,et al.,Accessibility of circulating immunoglobulin G to the extravascular compartment of solid rat tumors,Cancer Res.,1984 Sep,44(9):3719-23;Dobson GP,et al.,Intracellular,interstitial and plasma spaces in the rat myocardium in vivo,J Mol Cell Cardiol.,1997 Dec,29(12):3357-63;Jain RK,Transport of molecules across tumor vasculature,Cancer Metastasis Rev.,1987,6(4):559-93。
DHAの作用機序
ヒドロキソコバラミンにより触媒されるアスコルビン酸の酸化は、DHAを生成する。DHAは細胞により急速に取り込まれ、アスコルビン酸に還元され;このプロセスにおいて、2つのGSH分子がGSSGに酸化される。DHAは癌細胞上で高度に過剰発現されるGLUTトランスポーターにより細胞中に輸送される。DHAおよびその分解産物2,3-DKGは高度に求電子性であり、癌細胞中の有用な薬理学的効果、例えば、有糸分裂の阻害、細胞内GSHの枯渇、腫瘍細胞中の細胞内GSSG/2GSH還元電位の増加、解糖の阻害、ATPの枯渇、および腫瘍細胞の殺滅を媒介し得る。以下の参照文献はこの事項に関連し、参照により全体として本明細書に組み込まれる:Spielholz C,et al.,Increased facilitated transport of dehydroascorbic acid without changes in sodium-dependent ascorbate transport in human melanoma cells,Cancer Res.,1997 Jun 15,57(12):2529-37;Barron CC,et al.,Facilitative glucose transporters:Implications for cancer detection,prognosis and treatment;Metab.Clin.Exp.,2016 Feb,65(2):124-39;Gambhir SS,et al.,A tabulated summary of the FDG PET literature,J Nucl Med.,2001 May,42(5 Suppl):1S-93S;Poydock ME,et al.,Mitogenic inhibition and effect on survival of mice bearing L1210 leukemia using a combination of dehydroascorbic acid and hydroxycobalamin,Am J Clin Oncol.,1985 Jun,8(3):266-9;Yun J, et al.,Vitamin C selectively kills KRAS and BRAF mutant colorectal cancer cells by targeting GAPDH,Science,2015 Dec 11,350(6266):1391-6。
過酸化水素の作用機序
遷移金属の存在下の過酸化水素は、DNAおよび細胞構成成分を損傷させ得る反応性酸素種を生成する。過酸化水素は酸化ストレスも誘導し、細胞内GSHを枯渇させ、腫瘍細胞中の細胞内GSSG/2GSH還元電位を増加させ、解糖を阻害し、ATPを枯渇させ、DNA損傷剤に対して細胞を感作し、細胞毒性を引き起こし得る。これらの効果は高い細胞内レベルのアスコルビン酸により増加し、それは細胞中の遊離鉄レベルを上昇させる。GRの阻害も過酸化水素の効果を増加させる。以下の参照文献はこの事項に関連し、参照により全体として本明細書に組み込まれる:Nakamura J,et al.,Micromolar concentrations of hydrogen peroxide induce oxidative DNA lesions more efficiently than millimolar concentrations in mammalian cells,Nucleic Acids Res.,2003,Mar 15,31(6):1790-5;Byrnes RW,Evidence for involvement of multiple iron species in DNA single-strand scission by H2O2 in HL-60 cells,Free Radic Biol Med.,1996,20(3):399-406;Nathan CF, et al.,Antitumor effects of hydrogen peroxide in vivo,J Exp Med.,1981 Nov 1,154(5):1539-53;Kurz T,et al.,Lysosomal redox-active iron is important for oxidative stress-induced DNA damage,Ann N Y Acad Sci.,2004 Jun,1019:285-8;LaCagnin LB,et al.,Metabolic changes in alveolar type II cells after exposure to hydrogen peroxide,Am J Physiol.,1990 Aug,259(2 Pt 1):L57-65;Colussi C,et al.,H2O2-induced block of glycolysis as an active ADP-ribosylation reaction protecting cells from apoptosis,FASEB J.,2000 Nov,14(14):2266-76;Duarte TL,et al.,Vitamin C modulation of H2O2-induced damage and iron homeostasis in human cells,Free Radic Biol Med.,2007 Oct 15,43(8):1165-75;Nathan CF,et al.,Tumor cell anti-oxidant defenses.Inhibition of the glutathione redox cycle enhances macrophage-mediated cytolysis,J Exp Med.,1981 Apr 1,153(4):766-82;Jahngen-Hodge J, et al.,Regulation of ubiquitin-conjugating enzymes by glutathione following oxidative stress,J Biol Chem.,1997 Nov 7,272(45):28218-26。
グルタチオンレダクターゼ阻害の作用機序
細胞中のGSHの濃度は、典型的には、0.5~10mMの範囲である。GSHが酸化される場合、形成されるGSSGはグルタチオンレダクターゼにより急速に還元されてGSHに戻る。細胞は、GSSGを還元する強力な能力を有する。例えば、インビトロでのGSSGについての肝細胞の還元能は、間質液1リットル当たり約250mモル/時間である。細胞内GSHレベルを抑制するため、GSSGについての細胞還元能を超過する速度においてGSHを酸化することが必要である。これは、一般に、膨大で実現困難な酸化剤の量を要求する。グルタチオンレダクターゼ阻害剤の添加はGSSGの還元を防止し、それによって低レベルの酸化剤、過酸化水素による細胞内GSHレベルの減少を可能とする。以下の参照文献はこの事項に関連し、参照により全体として本明細書に組み込まれる:Tribble DL,et al.,Oxygen dependence of oxidative stress.Rate of NADPH supply for maintaining the GSH pool during hypoxia,Biochem Pharmacol.,1990 Feb 15,39(4):729-36。
リストA:治療することができる癌のタイプ
本発明の方法および治療レジメンおよび実施形態により治療することができる転移性癌としては、以下のものが挙げられる:転移性癌、難治性転移性癌、BRCA1関連転移性癌(遺伝性突然変異)、BRCA2関連転移性癌(遺伝性突然変異)、PALB2関連転移性癌(遺伝性突然変異)、遺伝性BRCA/ファンコニ経路突然変異の背景における転移性癌、後天性BRCA/ファンコニ経路突然変異の背景における転移性癌、BRCA2関連膵臓癌(遺伝性突然変異)、BRCA2関連前立腺癌(遺伝性突然変異)、BRCA2関連卵巣癌(遺伝性突然変異)、BRCA2関連乳癌(遺伝性突然変異)、BRCA2関連卵管癌(遺伝性突然変異)、BRCA1関連膵臓癌(遺伝性突然変異)、BRCA1関連前立腺癌(遺伝性突然変異)、BRCA1関連卵巣癌(遺伝性突然変異)、BRCA1関連卵管癌(遺伝性突然変異)、BRCA1関連乳癌(遺伝性突然変異)、PALB2関連膵臓癌(遺伝性突然変異)、PALB2関連前立腺癌(遺伝性突然変異)、PALB2関連卵巣癌(遺伝性突然変異)、PALB2関連卵管癌(遺伝性突然変異)、PALB2関連乳癌(遺伝性突然変異)、乳癌(乳管腺癌)、RAD50関連乳癌(遺伝性突然変異)、DNA架橋修復、相同組換え、および/またはDNA修復に関与する1つまたは複数の遺伝子中の遺伝性生殖系列突然変異または後天性体細胞突然変異を有する患者において生じる癌、乳癌(小葉腺癌)、乳癌(肉腫)、乳癌(トリプルネガティブ)、乳癌(炎症性)、乳癌(パジェット癌)、前立腺癌(腺癌)、膵臓癌(腺癌、ステージI~IV)、卵巣癌(漿液性癌)、卵巣癌(類内膜癌(endometroid))、卵巣癌(明細胞癌)、卵巣癌(粘液性癌)、腺癌、基底細胞癌、胆管癌、膀胱癌、気管支癌、カルチノイド腫瘍、子宮頸癌(扁平上皮癌)、子宮頸癌(腺癌)、結腸直腸癌、結腸癌、十二指腸癌、子宮内膜癌、類内膜子宮内膜癌(endometroid endometrial cancer)、食道癌、食道癌(扁平上皮細胞)、食道癌(腺癌)、ユーイング肉腫、卵管癌、眼メラノーマ、骨の悪性線維性組織球腫、骨肉腫、胆嚢癌、胃癌、消化管カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍(GIST)、胚細胞腫瘍、頭頸部癌、肝細胞癌、下咽頭癌、悪性島細胞腫、腎細胞癌、咽頭癌、口唇癌および口腔癌、平滑筋肉腫、リンパ腫、白血病、T細胞白血病、B細胞リンパ腫、B細胞白血病、急性骨髄性白血病、骨髄腫、非ホジキンリンパ腫、肺癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、肺癌(腺癌)、肺癌(大細胞)、肺癌(扁平上皮細胞)、黒色腫、メルケル細胞癌、中皮腫、鼻腔および副鼻腔癌、鼻咽腔癌、神経内分泌癌、口腔癌、口腔咽頭癌、膵臓神経内分泌腫瘍、副鼻腔および鼻腔癌、副甲状腺癌、陰茎癌、咽頭癌、褐色細胞腫、直腸癌、腎細胞癌、腎明細胞癌、腎嫌色素性細胞癌、腎乳頭癌、腎盂および尿管、移行細胞癌、唾液腺癌、肉腫、扁平上皮細胞癌、横紋筋肉腫、小腸癌、軟部組織肉腫、原発不明の扁平上皮性頸部癌、精巣癌、甲状腺癌(乳頭癌、濾胞癌、髄様癌、および未分化癌)、腎盂および尿管の移行細胞癌、尿道癌、子宮癌、未分化癌、子宮内膜子宮肉腫(endometrial uterine sarcoma)、膣癌、および外陰癌。本発明の癌治療法は、ATR、BARD1、BLM、BRCA1、BRCA2、BRIP1(FANCJ、BACH1)、EME1、ERCC1、ERCC4、FAN1、FANCA、FANCB、FANCC、FANCD1、FANCD2、FANCE、FANCF、FANCG、FANCI、FANCJ、FANCL、FANCM、FANCN、FANCO、FANCP、FANCQ、FANCQ、FANCR、FANCS、FANCT、HELQ、MEN1、MUS81、NBN(NBS1)、PALB2、RAD50、RAD51(FANCR)、RAD51C(FANCO)、RAD51D、REV1、SLX4(FANCP)、UBE2T(FANCT)、USP1、WDR48、XPF、XRCC2、XRCC3、またはDNA架橋修復、相同組換え、もしくはDNA修復に関与する他の遺伝子中の遺伝性生殖系列突然変異または後天性体細胞突然変異を有する患者において生じる癌を治療するために使用することができるが、それらの治療に限定されるものではない。
上記遺伝子名は、当業者に周知のHUGOヒトゲノム命名系に基づく。上記遺伝子中の遺伝性または後天性突然変異を有する癌細胞は、DNA損傷剤、特にDNA架橋剤に対する増加した感受性を有する。このような遺伝性および体細胞腫瘍突然変異を同定する方法は、当業者に周知である。全てが本発明の範囲内である転移性癌のより詳細な説明は、以下の参照文献に提供される:Holland-Frei Cancer Medicine,6th edition,Edited by Kufe DW,et al.,BC Decker Inc.,Hamilton,Ontario。
DNA損傷剤に対する感作機序
DNA架橋剤に対する細胞の感作への本発明の適用可能性は、特定の架橋剤にかかわらず、求電子剤のGSH媒介解毒の共通の機序およびDNA鎖間架橋の修復に関与する共通の機序に起因する。以下の参照文献はこの事項に関連し、参照により全体として本明細書に組み込まれる:Rajski SR,et al.,Chem Rev.,1998 Dec 17,98(8):2723-2796。DNA損傷剤に対する腫瘍細胞の感作への本発明の適用可能性は、一般に、細胞内GSH還元電位の増加により阻害されるDNA修復の複数の機序の結果である。これは、重大な相乗作用をもたらし:本発明の薬物組合せの抗腫瘍活性は、個々の薬物の相加的抗腫瘍活性よりも大きい。
DNA-薬物モノアダクトおよびDNA鎖間架橋の修復に要求される複数のステップは、酸化還元感受性であり、細胞内GSSG/2GSH還元電位の増加により阻害される。これは、BCNUおよびアドリアマイシンについて見られる酸化ストレスにより誘導されるメルファランに対する重大な過敏性を説明する。以下の参照文献はこの事項に関連し、参照により全体として本明細書に組み込まれる:Jevtovic-Todorovic V,et al.,J Cancer Res Clin Oncol.,1991, 117(4):313-20;Jevtovic-Todorovic V,et al.,Biochem Pharmacol.,1992 Oct6,44(7):1383-93。
酸化ストレスおよび細胞内GSSG/2GSH還元電位の増加は、種々の機序、例として、タンパク質のS-グルタチオン化、分子間ジスルフィド形成、分子内ジスルフィド形成により、および重要なタンパク質チオールを酸化するROSのレベルの増加を引き起こすROSの解毒の損害によりDNA修復に関与するタンパク質を阻害し得る。さらに、これは細胞エネルギー産生を減弱させ得る。細胞内GSSG/2GSH還元電位の増加は、数千の酸化還元感受性タンパク質に影響する細胞代謝の全体的変化をもたらす。酸化還元感受性タンパク質は、DNA修復の全ての主要な経路に要求される。
酵素MGMTは、DNA中のグアニン塩基からの薬物アダクトの除去を触媒することによりBCNUを解毒する。MGMTは、酸化条件下でグルタチオン化および阻害される活性部位システインに依存性である酸化還元感受性酵素である。以下の参照文献はこの事項に関連し、参照により全体として本明細書に組み込まれる:Niture SK,et al.,Human MGMT is a prime target for inactivation by oxidative stress,mediated by glutathionylation and oxidation of the active-site cysteine145,Proc.Am.Assoc.Cancer Res.,2005,46:857。
ユビキチン化、SUMO化、およびnedd化は、DNA修復の複数の経路における複数のステップ、例として、ヌクレオチド除去修復(NER)、相同組換え(HR)、一本鎖アニーリング(SSA)、非相同末端結合(NHEJ)、代替NHEJ、および損傷乗り越えDNA合成に重要である。ユビキチン化、SUMO化、およびnedd化の酵素的経路における複数のステップは、酸化還元感受性であり、活性部位のグルタチオン化および酸化により阻害される活性部位システインに依存性である。以下の参照文献はこの事項に関連し、参照により全体として本明細書に組み込まれる:Bossis G,et al.,Regulation of SUMOylation by reversible oxidation of SUMO conjugating enzymes,Mol Cell.,2006 Feb 3,21(3):349-57;Kumar A,et al.,The bacterial fermentation product butyrate influences epithelial signaling via reactive oxygen species-mediated changes in cullin-1 neddylation,J Immunol.,2009 Jan 1,182(1):538-46;Jahngen-Hodge J,et al.,Regulation of ubiquitin-conjugating enzymes by glutathione following oxidative stress,J Biol Chem.,1997 Nov 7,272(45):28218-26;Obin M,et al.,Redox regulation of ubiquitin-conjugating enzymes:mechanistic insights using the thiol-specific oxidant diamide,FASEB J.,1998 May,12(7):561-9;Nouspikel T,Multiple roles of ubiquitination in the control of nucleotide excision repair,Mech Ageing Dev.,2011 Aug,132(8-9):355-65;Ramadan K,et al.,Degradation-linked ubiquitin signal and proteasome are integral components of DNA double strand break repair:New perspectives for anti-cancer therapy,FEBS Lett.,2011 Sep 16,585(18):2868-75;Bekker-Jensen S,et al.,The ubiquitin-and SUMO-dependent signaling response to DNA double-strand breaks,FEBS Lett.,2011,Sep 16,585(18):2914-9;Kee Y,et al.,Inhibition of the Nedd8 system sensitizes cells to DNA interstrand cross-linking agents,Mol Cancer Res.,2012 Mar,10(3):369-77;Cukras S,et al.,Inactivating UBE2M impacts the DNA damage response and genome integrity involving multiple cullin ligases,PLoS One.,2014 Jul 15,9(7):e101844;Al-Hakim A,The ubiquitous role of ubiquitin in the DNA damage response,DNA Repair(Amst),2010 Dec 10,9(12):1229-40。
Kuタンパク質は、DNA二本鎖分解のNHEJ修復に要求され、酸化還元感受性である。酸化ストレスは、DNA依存性タンパク質キナーゼ(DNA-PKcs)も阻害し、二本鎖分解におけるDNA-PKcspのThr2609の局在化を阻害し、修復を損傷させる。以下の参照文献はこの事項に関連し、参照により全体として本明細書に組み込まれる:Zhang WW,Biochem J.,1993 Aug 1,293(Pt3):769-74;Mladenov E,et al.,Induction and repair of DNA double strand breaks:the increasing spectrum of non-homologous end joining pathways,Mutat Res.,2011 Jun 3,711(1-2):61-72;Bacsi A,et al.,Modulation of DNA-dependent protein kinase activity in chlorambucil-treated cells,Free Radic Biol Med.,2005 Dec 15,39(12):1650-9;Boldogh I,et al.,Reduced DNA double strand breaks in chlorambucil resistant cells are related to high DNA-PKcs activity and low oxidative stress,Toxicology,2003 Nov 15,193(1-2):137-52。
トポイソメラーゼIIは、DNA巻き戻しに関与し、DNA修復の複数のステップに関与し、酸化還元感受性である。以下の参照文献はこの事項に関連し、参照により全体として本明細書に組み込まれる:Li TK,et al.,Activation of topoisomerase II-mediated excision of chromosomal DNA loops during oxidative stress,Genes Dev.,1999 Jun 15, 13(12):1553-60;Wang H,et al.,Stimulation of topoisomerase II-mediated DNA damage via a mechanism involving protein thiolation,Biochemistry,2001 Mar 20,40(11):3316-23,Kawiak A,et al.,Induction of apoptosis by plumbagin through reactive oxygen species-mediated inhibition of topoisomerase II,Toxicol Appl Pharmacol.,2007 Sep 15,223(3):267-76;Pu QQ,et al.,Induction of alkylator(melphalan)resistance in HL60 cells is accompanied by increased levels of topoisomerase II expression and function,Mol Pharmacol.,1999 Jul,56(1):147-53。
XPAは、NERに要求され、XPA欠損はメルファランに対して細胞を感作する。XPAは、酸化還元感受性である。以下の参照文献はこの事項に関連し、参照により全体として本明細書に組み込まれる:Smirnova J,et al.,Quantitative electrospray ionization mass spectrometry of zinc finger oxidation:the reaction of XPA zinc finger with H2O2,Anal Biochem.,2007 Oct 15,369(2):226-31;Smirnova J,et al.,Reaction of the XPA zinc finger with S-nitrosoglutathione,Chem Res Toxicol.,2008 Feb,21(2):386-92。
RPAは、全ての主要なDNA修復経路に要求され、酸化還元感受性である。以下の参照文献はこの事項に関連し、参照により全体として本明細書に組み込まれる:Zou Y,et al.,Functions of human replication protein A(RPA):from DNA replication to DNA damage and stress responses,J Cell Physiol,2006 Aug,208(2):267-73;Park JS,et al.,Zinc finger of replication protein A,a non-DNA binding element,regulates its DNA binding activity through redox,J Biol Chem.,1999 Oct 8,274(41):29075-80;Wang M,et al.,Role of zinc-finger motif in redox regulation of human replication protein A,Antioxid Redox Signal.,2001 Aug,3(4):657-69;Cooper AJ,et al.,Reversible and irreversible protein glutathionylation:biological and clinical aspects,Expert Opin Drug Metab Toxicol,2011 Jul,7(7):891-910,Epub 2011 May 11。
デユビキチナーゼ(DUB)は、DNA修復の複数の経路に重要であり、酸化還元感受性である。以下の参照文献はこの事項に関連し、参照により全体として本明細書に組み込まれる:Lee JG,et al.,Reversible inactivation of deubiquitinases by reactive oxygen species in vitro and in cells,Nat Commun.2013,4:1568;Jacq X,et al.,Deubiquitylating enzymes and DNA damage response pathways,Cell Biochem Biophys.,2013 Sep,67(1):25-43;Oestergaard VH,et al.,Deubiquitination of FANCD2 is required for DNA crosslink repair,Mol Cell.,2007 Dec 14,28(5):798。
XRCC3は、HRの複数のステップに不可欠であり;XRCC3欠損は、DNA架橋剤に対する極端な過敏性を特徴とする。このタンパク質は、酸化還元感受性であり、求電子性チオール反応性薬剤およびグルタチオン化による修飾を受けやすい複数のシステイン基を有する。以下の参照文献はこの事項に関連し、参照により全体として本明細書に組み込まれる:Nikolova T,et al.,Chloroethylnitrosourea-induced cell death and genotoxicity:cell cycle dependence and the role of DNA double-strand breaks,HR and NHEJ.,Cell Cycle.,2012 Jul 15,11(14):2606-19;Pierre-Marie G,et al.,Oxidative Stress in Mammalian Cells Impinges on the Cysteines Redox State of Human XRCC3 Protein and on Its Cellular Localization,PLoS One.,2013,8(10):e75751。
リボヌクレオチドレダクターゼ(RNR)は、重要なシステイン基を有し、DNA損傷修復に関与する酸化還元感受性酵素である。以下の参照文献はこの事項に関連し、参照により全体として本明細書に組み込まれる:Holmgren A,et al.,The use of thiols by ribonucleotide reductase,Free Radic Biol Med.,2010 Dec 1,49(11):1617-28。
ヒト脱プリン/脱ピリミジン(AP)エンドヌクレアーゼ1(APE1)は、DNA塩基除去修復経路における重要な役割を担う酸化還元感受性酵素である。以下の参照文献はこの事項に関連し、参照により全体として本明細書に組み込まれる:Kim YJ,et al.,S-glutathionylation of cysteine 99 in the APE1 protein impairs abasic endonuclease activity,J Mol Biol.,2011 Dec 2,414(3):313-26。
ATPは、DNA修復における複数のステップに要求される。ATP産生に関与する複数の重要な酵素は酸化還元感受性であり、酸化ストレスにより阻害される。アコニターゼは、クレブス回路におけるエネルギー産生に関与する酸化還元感受性酵素である。グリセルアルデヒド3リン酸デヒドロゲナーゼは、解糖によるATP産生に不可欠な酸化還元感受性酵素である。ミトコンドリアカルニチン/アシルカルニチン担体(CAC)は酸化還元感受性であり:これは、前立腺癌細胞のための重要なATP源であるミトコンドリア中へのアシルカルニチンの輸送および脂肪酸のβ-酸化に要求される。α-ケトグルタル酸デヒドロゲナーゼ(KGDH)は、クレブス回路におけるエネルギー生成に重要な酸化還元感受性酵素である。イソクエン酸デヒドロゲナーゼは、クレブス回路における酸化還元感受性酵素である。以下の参照文献はこの事項に関連し、参照により全体として本明細書に組み込まれる:Lushchak OV,et al.,Aconitase post-translational modification as a key in linkage between Krebs cycle,iron homeostasis,redox signaling,and metabolism of reactive oxygen species,Redox Rep.,2014 Jan,19(1):8-15;Brodie AE,et al.,Cellular recovery of glyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase activity and thiol status after exposure to hydroperoxides,Arch Biochem Biophys.,1990 Jan,276(1):212-8;Brodie AE,et al.,Reversible oxidation of glyceraldehyde 3-phosphate dehydrogenase thiols in human lung carcinoma cells by hydrogen peroxide,Biochem Biophys Res Commun.,1987 Oct 14,148(1):120-5;Giangregorio N,et al.,Glutathione controls the redox state of the mitochondrial carnitine/acylcarnitine carrier Cys residues by glutathionylation,Biochim Biophys Acta.,2013 Nov,1830(11):5299-304;Liu Y,Fatty acid oxidation is a dominant bioenergetic pathway in prostate cancer,Prostate Cancer Prostatic Dis.,2006,9(3):230-4;McLain AL,et al.,Glutathionylation of α-ketoglutarate dehydrogenase:the chemical nature and relative susceptibility of the cofactor lipoic acid to modification,Free Radic Biol Med.,2013 Aug,61:161-9;Kil IS,et al.,Regulation of mitochondrial NADP+-dependent isocitrate dehydrogenase activity by glutathionylation,J Biol Chem.,2005 Mar 18,280(11):10846-54。
タンパク質チロシンホスファターゼ(PTP)は、DNA修復の複数の経路に関与し、酸化還元感受性酵素である。以下の参照文献はこの事項に関連し、参照により全体として本明細書に組み込まれる:Sohn J,et al.,Catalytic and chemical competence of regulation of cdc25 phosphatase by oxidation/reduction,Biochemistry.,2003 Sep 2,42(34):10060-70。
上記列記のものに加え、DNA損傷の修復に重要であり、酸化ストレスにより阻害され、本発明により、例として、BCNU、ヒドロキソコバラミン、およびアスコルビン酸の組合せにより腫瘍中で阻害される多くの他の酸化還元感受性酵素およびタンパク質が存在する。
エタノールによるカタラーゼ保護の機序
エタノールの役割は、赤血球カタラーゼの不活性化を防止することである。グルタチオンレダクターゼ阻害の背景における過酸化水素の血管内分解は、赤血球カタラーゼの酵素的活性に依存性である。カタラーゼは、多数の形態で存在し得る。過酸化水素は、カタラーゼの静止形態(すなわち、鉄含有カタラーゼ(ferricatalase))のヘム鉄を、1つの水分子を作出するプロセスにおいて化合物Iと称されるポルフィリンラジカルを有するオキシフェリル基に酸化する。次いで、化合物Iは、過酸化水素の別分子を酸化し、カタラーゼの鉄含有カタラーゼ形態を再生し、このプロセスにおいて、1つの酸素分子および別の水分子を作出する。正味の結果は、2つの過酸化水素分子がカタラーゼにより1つの分子酸素の分子および2つの水分子に変換されることである。しかしながら、化合物Iは、単一電子により、カタラーゼの不活性形態である化合物IIに還元することもできる。NADPHはカタラーゼに結合し、化合物IIの形成を阻害する。グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ(G6PD)欠損は、一般的な遺伝性遺伝障害であり、NADPH産生を損傷させ、化合物IIの蓄積およびカタラーゼ阻害をもたらし得る。これは、酸化ストレスの条件下で溶血またはメトヘモグロビン血症をもたらし得る。後天性G6PD欠損またはNADPH産生の損傷は、同一の結果をもたらす。低濃度のエタノールは、化合物Iを鉄含有カタラーゼに変換することによりカタラーゼの不活性化を予防し得;このプロセスにおいて、エタノールはアセトアルデヒドに酸化される。以下の参照文献はこの事項に関連し、参照により全体として本明細書に組み込まれる:Kirkman HN,et al.,Mammalian catalase:a venerable enzyme with new mysteries,Trends Biochem Sci.,2007 Jan,32(1):44-50;Kirkman HN,et al.,The function of catalase-bound NADPH,J Biol Chem.,1987 Jan 15, 262(2):660-6;Kirkman HN,et al.,Mechanisms of protection of catalase by NADPH.Kinetics and stoichiometry,J Biol Chem.,1999 May 14,274(20):13908-14。
カタラーゼ対象を保護する方法
本発明の範囲は、過酸化水素を生成する酸化薬または酸化剤により治療される対象においてカタラーゼ機能の損失を予防する方法ならびに酸化剤誘導性溶血および/またはメトヘモグロビン形成を予防する方法であって、エタノールの全身投与を含む方法を含む。エタノールは、酸化剤への曝露前またはその間に投与する。エタノールの用量は、約500mg~40グラムの範囲である。エタノールは、経口または静脈内で与えることができる。好ましい実施形態において、エタノールの用量は、約3~6グラム/m2であり、約1時間にわたり静脈内で与える。薬物は、より長期間の一定静脈内注入として与えることもできる。
実施形態E2
本発明はまた、転移性癌および難治性転移性癌の治療および有効な治療の方法に関する。実施形態E2と称される方法は、以下:
a.メルファランの投与;および
b.BCNUの投与;および
c.ヒドロキソコバラミンの投与;および
d.アスコルビン酸の投与;および
e.任意選択によりエタノールを投与すること;および
f.任意選択により骨髄幹細胞を投与すること
を含む。
実施形態Ee2
本発明の実施形態Ee2は、転移性癌および難治性転移性癌の治療および有効な治療のためのレジメンにおいて使用される薬物のセットである。薬物のセットは、
a.メルファラン;および
b.BCNU;および
c.ヒドロキソコバラミン;および
d.アスコルビン酸;および
e.任意選択によりエタノール
を含む。
治療レジメンは、
a.メルファランの投与;および
b.BCNUの投与;および
c.ヒドロキソコバラミンの投与;および
d.アスコルビン酸の投与;および
e.任意選択によりエタノールを投与すること;および
f.任意選択により骨髄幹細胞を投与すること
を含む。
治療することができる癌
実施形態E2およびEe2により治療することができる癌は、リストAに記載のとおりである。
骨髄幹細胞注入
好ましい実施形態において、骨髄幹細胞を注入して骨髄毒性を回復させる。幹細胞注入は、一般に、メルファラン用量が約50mg/m2を超過し、もしくはBCNU用量が約200mg/m2を超過する場合または患者が薬物治療後に長期の骨髄抑制を有し、もしくは有すると予測される場合に与える。(これは、BCNUおよび/またはメルファランを使用する本発明の全ての実施形態に当てはまる)。幹細胞は、化学療法薬(例えば、メルファラン)の投与前に回収し、精製および保存する。骨髄幹細胞は、好ましくは、化学療法薬の1~2日後に注入する。しかしながら、幹細胞は、後の時点において投与することができる。精製された自己骨髄幹細胞が強く好ましい。しかしながら、同種骨髄幹細胞を用いることもできる。CD34+造血細胞が濃縮され、循環腫瘍細胞が枯渇した精製幹細胞調製物の使用が好ましい。非精製骨髄幹細胞を使用することもできる。
メルファラン投薬および投与
E2およびEe2の好ましい実施形態において、メルファランは、約25~50mg/m2、50~75mg/m2、75~100mg/m2、100~150mg/m2、および10~200mg/m2の用量範囲である。好ましい実施形態において、メルファラン用量は、約5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、および200mg/m2である。メルファランは、約5~60分間の期間にわたりIV投与するが、メルファランが投与前にIV溶液中で崩壊されないようなステップを採用する場合、より長い時間を用いることができる。メルファランは、BCNU、ヒドロキソコバラミン、およびアスコルビン酸の直前に、それと同時に、またはその直後に投与する。好ましい実施形態において、メルファラン、BCNU、ヒドロキソコバラミン、およびアスコルビン酸は全て、6時間、5時間、4時間、3時間、2時間、および1時間の期間以内に投与する。
BCNU投薬および投与
E2およびEe2の好ましい実施形態において、BCNU用量は、約50~400mg/m2、50~75mg/m2、75~125mg/m2、125~200mg/m2、および200~400mg/m2である。好ましい実施形態において、BCNU用量は、約50、75、100、125、150、175、200、225、250、275、300、325、350、375、および400mg/m2である。BCNUは、約3mg/m2/分の速度においてIV投与する。BCNUは、メルファランの前、それと同時、またはその直後に投与することができる。BCNUは、好ましくは、アスコルビン酸の前に投与する。
エタノール投薬および投与
E2およびEe2の実施形態において、エタノール用量は、約0.5~40グラム、500mg~3グラム/m2、3~6グラム/m2、および6~12グラム/m2の範囲である。好ましい実施形態において、エタノール用量は、約0.5、1、2、4、6、8、10、12、15、20、25、30、35、および40グラムである。エタノールは、経口またはIVで与えることができる。静脈内で与える場合、エタノールは、用量に応じて約30分間~6時間にわたり与える。エタノール投与のタイミングは、アスコルビン酸曝露および過酸化水素形成時の間にエタノールが血液中に存在するようにアスコルビン酸の投与前またはそれと同時である。好ましい実施形態において、エタノールは、アスコルビン酸投与の1時間の期間以内にBCNU投与の時点において与える。
ヒドロキソコバラミン投薬および投与
E2およびEe2の好ましい実施形態において、ヒドロキソコバラミン用量は、約50~40,000mg、50~500mg、500~1000mg、1~3グラムおよび3~10グラムの範囲である。他の好ましい実施形態において、ヒドロキソコバラミン用量は、約50mg、100mg、250mg、500mg、ならびに1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、および20グラムである。他の好ましい実施形態において、ヒドロキソコバラミン用量は、約25~10,000mg/m2、25~250mg/m2、250~500mg/m2、0.5~1.5グラム/m2、および1.5~5グラム/m2の範囲である。他の好ましい実施形態において、ヒドロキソコバラミン用量は、約25mg/m2、50mg/m2、125mg/m2、250mg/mg、および0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、および10グラム/m2である。ヒドロキソコバラミンは、約5~60分間にわたりIV投与する。ヒドロキソコバラミンおよびアスコルビン酸の両方は、同時または本質的に同時に与えることができる。あるいは、ヒドロキソコバラミンは、アスコルビン酸の数時間前に与えることができる。それというのも、ヒドロキソコバラミンは約26~31時間の血漿半減期を有するためである。好ましい実施形態において、ヒドロキソコバラミンは、アスコルビン酸の投与直前の約10~15分間にわたり与え、アスコルビン酸は約30~60分間の期間にわたり与える。
アスコルビン酸投薬および投与
E2およびEe2の好ましい実施形態において、IVアスコルビン酸用量は、約1~3グラム/m2、3~6グラム/m2、6~12グラム/m2、12~25グラム/m2、および0.5~90グラム/m2の範囲である。好ましい実施形態において、アスコルビン酸の用量は、約0.5、1、2、5、10、15、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100、125、および150グラムである。アスコルビン酸は、約5~360分間にわたり静脈内で与える。好ましい実施形態において、アスコルビン酸は、約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、70、80、90、100、120、140、160、180、および360分間にわたり与える。
薬物投与のタイミング
E2およびEe2の好ましい実施形態において、メルファラン、BCNU、エタノール、ヒドロキソコバラミン、およびアスコルビン酸は全て、約6時間の期間以内に投与する。薬物は、その期間内に分割用量として与えることもできる。好ましい実施形態において、期間は、骨髄幹細胞注入の約60、90、120、150、180、210、240、300、または360分、2日前である(すなわち、-2日目、0日目は幹細胞注入日である)。
実施形態を識別するために使用される命名法
スペースの簡易性および経済性のため、規定の用量の複数の薬物および規定のタイプの転移性癌を指す実施形態が、下記の命名ルールを用いて独自に規定される:
I.「En」は、実施形態番号nに記載の癌を治療する方法を指す。例えば、E2は、実施形態E2の方法を指す。
II.「Een」は、実施形態Eenに記載の薬物のセットを指す。例えば、Ee2は、実施形態Ee2に記載の薬物のセットを指す。
III.「EnS」および「EenS」は、幹細胞を注入する実施形態EnおよびEenを指す。「S」接尾辞の欠落は、幹細胞を注入しないことを意味しないことに留意されたい。
IV.「En(ABCDFTUM)」および「Een(ABCDFTUM)」は、それぞれ、実施形態EnおよびEenを指し、
a)メルファランの用量を「A」の値により与え、
b)BCNUの用量を「B」により与え、
c)エタノールの用量を「C」により与え、
d)ヒドロキソコバラミンの用量を「D」により与え、
e)アスコルビン酸の用量を「F」により与え、
f)癌のタイプを下記の「TUM」により与える。
V.「A」、「B」、「C」、「D」、「F」、「T」、「U」および「M」は、0、1、2、3、または4に等しい数字である。
VI.「ABCDFTUM」は、ベース5(base5)における数字である。ベース5は、個々の数字または桁が位置ナンバリング系の0、1、2、3および4に限定される数学系である。対照的に、ベース10(base10)は、個々の数字1、2、3、4、5、6、7、8、および9を用いる標準的なナンバリング系である。ベース5における計数は、当業者に周知である。以下の参照文献はこの事項に関連し、参照により全体として本明細書に組み込まれる:Oxford Users’Guide to Mathematics Edited by Eberhard Zeidler,Oxford University Press,Oxford,UK.Page 227。
VII.「A」は、メルファランのおよその用量を指し、A=0は、メルファラン用量が25~50mg/m2であることを意味し、A=1は、50~75mg/m2を意味し、A=2は、75~100mg/m2を意味し、A=3は、100~150mg/m2を意味し、A=4は、10~200mg/m2を意味する。
VIII.「B」は、BCNUのおよその用量を指し;B=0は、用量が50~75mg/m2であることを意味し、B=1は、75~125mg/m2を意味し、B=2は、125~200mg/m2を意味し、B=3は、200~400mg/m2を意味し、B=4は、50~400mg/m2を意味する。
IX.「C」は、エタノールのおよその用量を指し;C=0は、エタノールなしを意味し、C=1は、エタノールの用量が500mg~3グラム/m2であることを意味し、C=2は、3~6グラム/m2を意味し、C=3は、6~12グラム/m2を意味し、C=4は、500mg~40グラム/m2を意味する。
X.「D」は、ヒドロキソコバラミンのおよその用量を指し;D=0は、用量が25~250mg/m2であることを意味し;D=1は、250~500mg/m2を意味し、D=2は、0.5~1.5グラム/m2を意味し;D=3は、1.5~5グラム/m2を意味し、D=4は、25~20,000mg/m2のヒドロキソコバラミンを意味する。
XI.「F」は、アスコルビン酸のおよその用量を指し;F=0は、用量が1~3グラム/m2であることを意味し、F=1は、3~6グラム/m2を意味し、F=2は、6~12グラム/m2を意味し、F=3は、12~25グラム/m2を意味し、F=4は、0.5~90グラム/m2を意味する。
XII.「TUM」は、転移性癌または腫瘍のタイプを指し、TUMが以下に列記される値を有する場合、本実施形態により治療することができる転移性癌タイプは、以下に示すとおりである。
TUM=000 転移性癌
TUM=001 難治性転移性癌
TUM=002 BRCA1関連転移性癌(遺伝性突然変異)
TUM=003 BRCA2関連転移性癌(遺伝性突然変異)
TUM=004 PALB2関連転移性癌(遺伝性突然変異)
TUM=010 遺伝性BRCA/ファンコニ経路突然変異の背景における転移性癌
TUM=011 遺伝性BRCA/ファンコニ経路突然変異の後天性腫瘍細胞突然変異の背景における転移性癌
TUM=012 BRCA2関連膵臓癌(遺伝性突然変異)
TUM=013 BRCA2関連前立腺癌(遺伝性突然変異)
TUM=014 BRCA2関連卵巣癌(遺伝性突然変異)
TUM=020 BRCA2関連卵管癌(遺伝性突然変異)
TUM=021 BRCA2関連乳癌(遺伝性突然変異)
TUM=022 BRCA1関連膵臓癌(遺伝性突然変異)
TUM=023 BRCA1関連前立腺癌(遺伝性突然変異)
TUM=024 BRCA1関連卵巣癌(遺伝性突然変異)
TUM=030 BRCA1関連卵管癌(遺伝性突然変異)
TUM=031 BRCA1関連乳癌(遺伝性突然変異)
TUM=032 PALB2関連膵臓癌(遺伝性突然変異)
TUM=033 PALB2関連前立腺癌(遺伝性突然変異)
TUM=034 PALB2関連卵巣癌(遺伝性突然変異)
TUM=040 PALB2関連卵管癌(遺伝性突然変異)
TUM=041 PALB2関連乳癌(遺伝性突然変異)
TUM=042 乳癌(乳管腺癌)
TUM=043 RAD50関連乳癌(遺伝性突然変異)
TUM=044 DNA架橋修復、相同組換え、またはDNA修復に関与するの遺伝子中の遺伝性生殖系列突然変異または後天性体細胞突然変異を有する患者において生じる癌
TUM=100 乳癌(小葉腺癌)
TUM=101 乳癌(肉腫)
TUM=102 乳癌(トリプルネガティブ)
TUM=103 乳癌(炎症性)
TUM=104 乳癌(パジェット癌)
TUM=110 前立腺癌(腺癌)
TUM=111 膵臓癌(腺癌、ステージI~IV)
TUM=112 卵巣癌(漿液性癌)
TUM=113 卵巣癌(類内膜癌)
TUM=114 卵巣癌(明細胞癌)
TUM=120 卵巣癌(粘液性癌)
TUM=121 腺癌
TUM=122 基底細胞癌
TUM=123 胆管癌
TUM=124 膀胱癌
TUM=130 気管支癌
TUM=131 カルチノイド腫瘍
TUM=132 子宮頸癌(扁平上皮癌)
TUM=133 子宮頸癌(腺癌)
TUM=134 結腸直腸癌
TUM=140 結腸癌
TUM=141 十二指腸癌
TUM=142 子宮内膜癌
TUM=143 類内膜子宮内膜癌
TUM=144 食道癌
TUM=200 食道癌(扁平上皮細胞)
TUM=201 食道癌(腺癌)
TUM=202 ユーイング肉腫
TUM=203 卵管癌
TUM=204 眼メラノーマ
TUM=210 骨の悪性線維性組織球腫
TUM=211 骨肉腫
TUM=212 胆嚢癌
TUM=213 胃癌
TUM=214 消化管カルチノイド腫瘍
TUM=220 消化管間質腫瘍(GIST)
TUM=221 胚細胞腫瘍
TUM=222 頭頸部癌
TUM=223 肝細胞癌
TUM=224 下咽頭癌
TUM=230 悪性島細胞腫
TUM=231 膵臓神経内分泌腫瘍
TUM=232 腎細胞癌
TUM=233 咽頭癌
TUM=234 口唇癌および口腔癌
TUM=240 平滑筋肉腫
TUM=241 リンパ腫
TUM=242 白血病
TUM=243 T細胞白血病
TUM=244 B細胞リンパ腫
TUM=300 B細胞白血病
TUM=301 急性骨髄性白血病
TUM=302 骨髄腫
TUM=303 非ホジキンリンパ腫
TUM=304 肺癌
TUM=310 非小細胞肺癌
TUM=311 小細胞肺癌
TUM=312 肺癌(腺癌)
TUM=313 肺癌(大細胞)
TUM=314 肺癌(扁平上皮細胞)
TUM=320 黒色腫
TUM=321 メルケル細胞癌
TUM=322 中皮腫
TUM=323 鼻腔および副鼻腔癌
TUM=324 鼻咽腔癌
TUM=330 神経内分泌癌
TUM=331 口腔癌
TUM=332 口腔咽頭癌
TUM=333 膵臓神経内分泌腫瘍
TUM=334 副鼻腔および鼻腔癌
TUM=340 副甲状腺癌
TUM=341 陰茎癌
TUM=342 咽頭癌
TUM=343 褐色細胞腫
TUM=344 直腸癌
TUM=400 腎細胞癌
TUM=401 腎明細胞癌
TUM=402 腎嫌色素性細胞癌
TUM=403 腎乳頭癌
TUM=404 腎盂および尿管
TUM=410 移行細胞癌
TUM=411 唾液腺癌
TUM=412 肉腫
TUM=413 扁平上皮細胞癌
TUM=414 骨肉腫
TUM=420 横紋筋肉腫
TUM=421 メルケル細胞癌
TUM=422 小腸癌
TUM=423 軟部組織肉腫
TUM=424 扁平上皮細胞癌
TUM=430 原発不明の扁平上皮性頸部癌
TUM=431 精巣癌
TUM=432 甲状腺癌(乳頭癌、濾胞癌、髄様癌、および未分化癌)
TUM=433 腎盂および尿管の移行細胞癌
TUM=434 尿道癌
TUM=440 子宮癌
TUM=441 未分化癌
TUM=442 子宮内膜子宮肉腫
TUM=443 膣癌
TUM=444 外陰癌
命名法の使用例
a)E2(12212012)は、ABCDFTUM=12212012(A=1、B=2、C=2、D=1およびF=2、ならびにTUM=012を意味する)が、メルファラン用量(A=1)が50~75mg/m2であり、BCNU用量(B=2)が125~200mg/m2であり、エタノール用量(C=2)が3~6グラム/m2であり、ヒドロキソコバラミン用量(D=1)が250~500mg/m2であり、アスコルビン酸用量(F=2)が6~12グラム/m2であり、転移性癌(TUM=012)が遺伝性BRCA2突然変異の背景における膵臓癌であるE2の実施形態を意味する、実施形態E2を指す。
b)E2S(12212012)は、幹細胞を注入する上記実施形態E2(12212012)を指す。
c)Ee2(12222013)は、ABCDFTUM=12222013(A=1、B=2、C=2、D=2およびF=2、ならびにTUM=013を意味する)が、メルファラン用量(A=1)が50~75mg/m2であり、BCNU用量(B=2)が125~200mg/m2であり、エタノール用量(C=2)が3~6グラム/m2であり、ヒドロキソコバラミン用量(D=2)が0.5~1.5グラム/m2であり、アスコルビン酸用量(F=2)が6~12グラム/m2であり、転移性癌(TUM=013)が遺伝性BRCA2突然変異の背景における前立腺癌であるEe2の実施形態を意味する、実施形態Ee2を指す。
d)Ee2S(12222013)は、幹細胞を注入する上記実施形態Ee2(12222013)を指す。
E2およびE2Sの追加の実施形態
上記命名法を使用すると、E2およびE2Sの一部の追加の実施形態は、E2(ABCDFTUM)およびE2S(ABCDFTUM)であり、ABCDFTUM=00000000、00000001、00000002、00000003、00000004、00000010、00000011、00000012、...、44444444である。スペースを節約するため、配列中の全ての介在番号を表すために省略を使用する。換言すると、ベース5において連続してABCDFTUM=00000000~44444444である。したがって、E2の一部の実施形態のリストは、E2(00000000)、E2(00000001)、E2(00000002)、E2(00000003)、E2(00000004)、E2(00000010)、E2(00000011)、E2(00000012)、E2(00000013)、E2(00000014)、E2(00000020)、...、E2(44444444)である。同様に、E2Sの一部の実施形態のリストは、E2S(00000000)、E2S(00000001)、E2S(00000002)、E2S(00000003)、E2S(00000004)、E2S(00000010)、E2S(00000011)、E2S(00000012)、E2S(00000013)、E2S(00000014)、E2S(00000020)、...、E2S(44444444)である。
Ee2およびEe2Sの追加の実施形態
Ee2の一部の実施形態のリストは、Ee2(00000000)、Ee2(00000001)、Ee2(00000002)、Ee2(00000003)、Ee2(00000004)、Ee2(00000010)、Ee2(00000011)、Ee2(00000012)、Ee2(00000013)、Ee2(00000014)、Ee2(00000020)、...、Ee2(44444444)である。Ee2Sの一部の実施形態のリストは、Ee2S(00000000)、Ee2S(00000001)、Ee2S(00000002)、Ee2S(00000003)、Ee2S(00000004)、Ee2S(00000010)、Ee2S(00000011)、Ee2S(00000012)、Ee2S(00000013)、Ee2S(00000014)、Ee2S(00000020)、...、Ee2S(44444444)である。
実施形態E3(治療)
E3は、対象における転移性癌の治療の方法であって、1,3-ビス(2-クロロエチル)-1-ニトロソウレア、メルファラン、ヒドロキソコバラミンおよびアスコルビン酸の組合せを同時にまたは6時間の期間以内に投与すること、ならびに任意選択によりエタノールを投与すること、ならびに任意選択により幹細胞を投与することを含む方法である。
実施形態Ee3(治療)
Ee3は、転移性癌の治療のためのレジメンにおいて使用される1,3-ビス(2-クロロエチル)-1-ニトロソウレア、メルファラン、ヒドロキソコバラミン、およびアスコルビン酸を含む薬物のセットまたはキットであって、レジメンは、薬物を同時にまたは6時間の期間以内に投与すること、および任意選択によりエタノールを投与すること、および任意選択により幹細胞を投与することを含む薬物のセットまたはキットである。
E3、E3S、Ee3およびEe3Sの追加の実施形態
E3の一部の実施形態のリストは、E3(00000000)、E3(00000001)、E3(00000002)、E3(00000003)、E3(00000004)、E3(00000010)、E3(00000011)、E3(00000012)、E3(00000013)、E3(00000014)、E3(00000020)、...、E3(44444444)である。E3Sの一部の実施形態のリストは、E3S(00000000)、E3S(00000001)、E3S(00000002)、E3S(00000003)、E3S(00000004)、E3S(00000010)、E3S(00000011)、E3S(00000012)、E3S(00000013)、E3S(00000014)、E3S(00000020)、...、E3S(44444444)である。Ee3の一部の実施形態のリストは、Ee3(00000000)、Ee3(00000001)、Ee3(00000002)、Ee3(00000003)、Ee3(00000004)、Ee3(00000010)、Ee3(00000011)、Ee3(00000012)、Ee3(00000013)、Ee3(00000014)、Ee3(00000020)、...、Ee3(44444444)である。Ee3Sの一部の実施形態のリストは、Ee3S(00000000)、Ee3S(00000001)、Ee3S(00000002)、Ee3S(00000003)、Ee3S(00000004)、Ee3S(00000010)、Ee3S(00000011)、Ee3S(00000012)、Ee3S(00000013)、Ee3S(00000014)、Ee3S(00000020)、...、Ee3S(44444444)である。
実施形態E4(有効な治療)
E4は、対象における転移性癌の有効な治療の方法であって、1,3-ビス(2-クロロエチル)-1-ニトロソウレア、メルファラン、ヒドロキソコバラミン、およびアスコルビン酸の組合せを同時にまたは6時間の期間以内に投与すること、ならびに任意選択によりエタノールを投与すること、ならびに任意選択により幹細胞を投与することを含む方法である。
実施形態Ee4(有効な治療)
Ee4は、転移性癌の有効な治療のためのレジメンにおいて使用される1,3-ビス(2-クロロエチル)-1-ニトロソウレア、メルファラン、ヒドロキソコバラミン、およびアスコルビン酸からなる薬物のセットまたはキットであって、レジメンは、薬物を同時にまたは6時間の期間以内に投与すること、および任意選択によりエタノールを投与すること、および任意選択により幹細胞を投与することを含む薬物のセットまたはキットである。
E4、E4S、Ee4およびEe4Sの追加の実施形態
E4の一部の実施形態のリストは、E4(00000000)、E4(00000001)、E4(00000002)、E4(00000003)、E4(00000004)、E4(00000010)、E4(00000011)、E4(00000012)、E4(00000013)、E4(00000014)、E4(00000020)、...、E4(44444444)である。E4Sの一部の実施形態のリストは、E4S(00000000)、E4S(00000001)、E4S(00000002)、E4S(00000003)、E4S(00000004)、E4S(00000010)、E4S(00000011)、E4S(00000012)、E4S(00000013)、E4S(00000014)、E4S(00000020)、...、E4S(44444444)である。Ee4の一部の実施形態のリストは、Ee4(00000000)、Ee4(00000001)、Ee4(00000002)、Ee4(00000003)、Ee4(00000004)、Ee4(00000010)、Ee4(00000011)、Ee4(00000012)、Ee4(00000013)、Ee4(00000014)、Ee4(00000020)、...、Ee4(44444444)である。Ee4Sの一部の実施形態のリストは、Ee4S(00000000)、Ee4S(00000001)、Ee4S(00000002)、Ee4S(00000003)、Ee4S(00000004)、Ee4S(00000010)、Ee4S(00000011)、Ee4S(00000012)、Ee4S(00000013)、Ee4S(00000014)、Ee4S(00000020)、...、Ee4S(44444444)である。
実施形態E5(有効な治療、難治性転移性癌)
E5は、対象における難治性転移性癌の有効な治療の方法であって、1,3-ビス(2-クロロエチル)-1-ニトロソウレア、メルファラン、ヒドロキソコバラミン、およびアスコルビン酸の組合せを同時にまたは6時間の期間以内に投与すること、ならびに任意選択によりエタノールを投与すること、ならびに任意選択により幹細胞を投与することを含む方法である。
実施形態Ee5(有効な治療、難治性転移性癌)
Ee5は、難治性転移性癌の有効な治療のためのレジメンにおいて使用される1,3-ビス(2-クロロエチル)-1-ニトロソウレア、メルファラン、ヒドロキソコバラミン、およびアスコルビン酸を含む薬物のセットまたはキットであって、レジメンは、薬物を同時にまたは6時間の期間以内に投与すること、および任意選択によりエタノールを投与すること、および任意選択により幹細胞を投与することを含む薬物のセットまたはキットである。
E5、E5S、Ee5およびEe5Sの追加の実施形態
E5の一部の実施形態のリストは、E5(00000000)、E5(00000001)、E5(00000002)、E5(00000003)、E5(00000004)、E5(00000010)、E5(00000011)、E5(00000012)、E5(00000013)、E5(00000014)、E5(00000020)、...、E5(44444444)である。E5Sの一部の実施形態のリストは、E5S(00000000)、E5S(00000001)、E5S(00000002)、E5S(00000003)、E5S(00000004)、E5S(00000010)、E5S(00000011)、E5S(00000012)、E5S(00000013)、E5S(00000014)、E5S(00000020)、...、E5S(44444444)である。Ee5の一部の実施形態のリストは、Ee5(00000000)、Ee5(00000001)、Ee5(00000002)、Ee5(00000003)、Ee5(00000004)、Ee5(00000010)、Ee5(00000011)、Ee5(00000012)、Ee5(00000013)、Ee5(00000014)、Ee5(00000020)、...、Ee5(44444444)である。Ee5Sの一部の実施形態のリストは、Ee5S(00000000)、Ee5S(00000001)、Ee5S(00000002)、Ee5S(00000003)、Ee5S(00000004)、Ee5S(00000010)、Ee5S(00000011)、Ee5S(00000012)、Ee5S(00000013)、Ee5S(00000014)、Ee5S(00000020)、...、Ee5S(44444444)である。
E1~E5およびEe1~Ee5の一部の好ましい実施形態
E1およびEe1、ならびにE2SおよびEe2S、ならびにE3SおよびEe3S、ならびにE4SおよびEe4S、ならびにE5SおよびEe5Sの一部の好ましい実施形態において、薬物用量は以下に挙げられるとおりである:
i.メルファラン75~100mg/m2、BCNU125~200mg/m2、エタノール3~6グラム/m2、ヒドロキソコバラミン0.5~1.5グラム/m2、およびアスコルビン酸3~6グラム/m2。
ii.メルファラン75~100mg/m2、BCNU125~200mg/m2、エタノール3~6グラム/m2、ヒドロキソコバラミン0.5~1.5グラム/m2、およびアスコルビン酸6~12グラム/m2。
iii.メルファラン75~100mg/m2、BCNU125~200mg/m2、エタノール3~6グラム/m2、ヒドロキソコバラミン0.5~1.5グラム/m2、およびアスコルビン酸12~25グラム/m2。
iv.メルファラン75~100mg/m2、BCNU75~125mg/m2、エタノール3~6グラム/m2、ヒドロキソコバラミン0.5~1.5グラム/m2、およびアスコルビン酸3~6グラム/m2。
v.メルファラン75~100mg/m2、BCNU75~125mg/m2、エタノール3~6グラム/m2、ヒドロキソコバラミン0.5~1.5グラム/m2、およびアスコルビン酸6~12グラム/m2。
vi.メルファラン75~100mg/m2、BCNU75~125mg/m2、エタノール3~6グラム/m2、ヒドロキソコバラミン0.5~1.5グラム/m2、およびアスコルビン酸12~25グラム/m2。
vii.メルファラン50~75mg/m2、BCNU125~200mg/m2、エタノール3~6グラム/m2、ヒドロキソコバラミン0.5~1.5グラム/m2、およびアスコルビン酸3~6グラム/m2。
viii.メルファラン50~75mg/m2、BCNU125~200mg/m2、エタノール3~6グラム/m2、ヒドロキソコバラミン0.5~1.5グラム/m2、およびアスコルビン酸6~12グラム/m2。
ix.メルファラン50~75mg/m2、BCNU125~200mg/m2、エタノール3~6グラム/m2、ヒドロキソコバラミン0.5~1.5グラム/m2、およびアスコルビン酸12~25グラム/m2。
x.メルファラン50~75mg/m2、BCNU75~125mg/m2、エタノール3~6グラム/m2、ヒドロキソコバラミン0.5~1.5グラム/m2、およびアスコルビン酸3~6グラム/m2。
xi.メルファラン50~75mg/m2、BCNU75~125mg/m2、エタノール3~6グラム/m2、ヒドロキソコバラミン0.5~1.5グラム/m2、およびアスコルビン酸6~12グラム/m2。
xii.メルファラン50~75mg/m2、BCNU75~125mg/m2、エタノール3~6グラム/m2、ヒドロキソコバラミン0.5~1.5グラム/m2、およびアスコルビン酸12~25グラム/m2。
xiii.メルファラン100~150mg/m2、BCNU125~200mg/m2、エタノール3~6グラム/m2、ヒドロキソコバラミン0.5~1.5グラム/m2、およびアスコルビン酸3~6グラム/m2。
xiv.メルファラン100~150mg/m2、BCNU125~200mg/m2、エタノール3~6グラム/m2、ヒドロキソコバラミン0.5~1.5グラム/m2、およびアスコルビン酸6~12グラム/m2。
xv.メルファラン100~150mg/m2、BCNU125~200mg/m2、エタノール3~6グラム/m2、ヒドロキソコバラミン0.5~1.5グラム/m2、およびアスコルビン酸12~25グラム/m2。
xvi.メルファラン100~150mg/m2、BCNU75~125mg/m2、エタノール3~6グラム/m2、ヒドロキソコバラミン0.5~1.5グラム/m2、およびアスコルビン酸3~6グラム/m2。
xvii.メルファラン100~150mg/m2、BCNU75~125mg/m2、エタノール3~6グラム/m2、ヒドロキソコバラミン0.5~1.5グラム/m2、およびアスコルビン酸6~12グラム/m2。
xviii.メルファラン100~150mg/m2、BCNU75~125mg/m2、エタノール3~6グラム/m2、ヒドロキソコバラミン0.5~1.5グラム/m2、およびアスコルビン酸12~25グラム/m2。
xix.メルファラン150~200mg/m2、BCNU125~200mg/m2、エタノール3~6グラム/m2、ヒドロキソコバラミン0.5~1.5グラム/m2、およびアスコルビン酸3~6グラム/m2。
xx.メルファラン150~200mg/m2、BCNU125~200mg/m2、エタノール3~6グラム/m2、ヒドロキソコバラミン0.5~1.5グラム/m2、およびアスコルビン酸6~12グラム/m2。
xxi.メルファラン150~200mg/m2、BCNU125~200mg/m2、エタノール3~6グラム/m2、ヒドロキソコバラミン0.5~1.5グラム/m2、およびアスコルビン酸12~25グラム/m2。
xxii.メルファラン150~200mg/m2、BCNU75~125mg/m2、エタノール3~6グラム/m2、ヒドロキソコバラミン0.5~1.5グラム/m2、およびアスコルビン酸3~6グラム/m2。
xxiii.メルファラン150~200mg/m2、BCNU75~125mg/m2、エタノール3~6グラム/m2、ヒドロキソコバラミン0.5~1.5グラム/m2、およびアスコルビン酸6~12グラム/m2。
xxiv.メルファラン150~200mg/m2、BCNU75~125mg/m2、エタノール3~6グラム/m2、ヒドロキソコバラミン0.5~1.5グラム/m2、およびアスコルビン酸12~25グラム/m2。
上記実施形態の一部の好ましい実施形態において、癌は、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、または前立腺癌である。上記の実施形態の一部の好ましい実施形態において、癌は、遺伝性BRCA1および/またはBRCA2性突然変異を有する対象に存在する。
実施形態E6
E6は、対象における転移性癌または難治性転移性癌の治療の方法であって、1,3-ビス(2-クロロエチル)-1-ニトロソウレア、メルファラン、ヒドロキソコバラミン、およびアスコルビン酸の組合せを同時にまたは6時間の期間以内に投与することを含み;メルファラン用量は20~200mg/m2の範囲である方法である。
E6の好ましい実施形態において、1,3-ビス(2-クロロエチル)-1-ニトロソウレアを50~400mg/m2の用量範囲において投与し;メルファランを20~200mg/m2の用量において投与し;ヒドロキソコバラミンを25~20,000mg/m2の用量において投与し;アスコルビン酸を1グラム~150グラムの用量において投与する。
E6の好ましい実施形態において、1,3-ビス(2-クロロエチル)-1-ニトロソウレアを75~300mg/m2の用量範囲において投与し;メルファランを50~200mg/m2の用量において投与し;ヒドロキソコバラミンを400mg~800mg/m2の用量において投与し;アスコルビン酸を5グラム~40グラムの用量において投与する。
E6の好ましい実施形態において、1,3-ビス(2-クロロエチル)-1-ニトロソウレアを150mg/m2の用量において投与し;メルファランを70~140mg/m2の用量において投与し;ヒドロキソコバラミンを580mg/m2の用量において投与し;アスコルビン酸を5グラム~25グラムの用量において投与する。
上記E6実施形態の好ましい実施形態において、本方法は、エタノールを500mg~40グラムの用量において全身投与することをさらに含む。
上記E6実施形態の好ましい実施形態において、本方法は、骨髄幹細胞移植療法をさらに含む。
上記E6実施形態の好ましい実施形態において、本方法は、DNA修復、および/または相同組換え、およびまたはDNA架橋修復に関与する遺伝子中の遺伝性生殖系列突然変異を有する対象における転移性癌のための治療のものである。
上記E6実施形態の好ましい実施形態において、本方法は、以下の遺伝子の1つ以上:ATR、BARD1、BLM、BRCA1、BRCA2、BRIP1(FANCJ、BACH1)、EME1、ERCC1、ERCC4、FAN1、FANCA、FANCB、FANCC、FANCD1、FANCD2、FANCE、FANCF、FANCG、FANCI、FANCJ、FANCL、FANCM、FANCN、FANCO、FANCP、FANCQ、FANCQ、FANCR、FANCS、FANCT、HELQ、MEN1、MUS81、NBN(NBS1)、PALB2、RAD50、RAD51(FANCR)、RAD51C(FANCO)、RAD51D、REV1、SLX4(FANCP)、UBE2T(FANCT)、USP1、WDR48、XPF、XRCC2、およびXRCC3の遺伝性生殖系列突然変異を有する対象における転移性癌のための治療のものである。
上記E6実施形態の好ましい実施形態において、本方法は、BRCA1および/またはBRCA2中の遺伝性生殖系列突然変異を有する対象における転移性癌のための治療のものである。
上記E6実施形態の好ましい実施形態において、本方法は、以下のタイプの癌の1つ以上:膵臓癌、卵巣癌、乳癌、および前立腺癌を有する対象における転移性癌のための治療のものである。
実施形態E7
E7は、インビボでDNA損傷剤に対して癌細胞を感作する方法であって、DNA損傷剤、グルタチオンレダクターゼ阻害剤、ヒドロキソコバラミン、およびアスコルビン酸の投与を含む方法である。E7の好ましい実施形態において、グルタチオン阻害剤は、1,3-ビス(2-クロロエチル)-1-ニトロソウレアである。
実施形態E8
E8は、癌を治療する方法であって、1,3-ビス(2-クロロエチル)-1-ニトロソウレア、ヒドロキソコバラミン、およびアスコルビン酸の投与を含む方法である。
実施形態E9
実施形態E9は、癌の治療のための固形癌への1つ以上の薬物の選択的送達の方法であって、
a.薬剤1および薬剤2と称される2つの化合物を選択すること(薬剤1および薬剤2は酵素でなく、前記薬剤は全身投与後に細胞外空間中に分布し、自発的に反応して1つ以上の薬物を直接または間接的に生成し;前記薬物は血管内コンパートメントから急速に分解され、崩壊され、またはそうでなければ排泄もしくは解毒され;前記薬物は間質液から急速に流出し、細胞内液に流入し;前記薬物は癌治療結果を付与する)
b.薬剤1および薬剤2を全身投与すること
を含む方法。
E9の好ましい実施形態において、薬剤1はヒドロキソコバラミンであり、薬剤2はアスコルビン酸であり、薬物は過酸化水素またはデヒドロアスコルビン酸、または2,3-ジケトグロン酸である。
実施形態E10
実施形態E10は、対象における転移性癌または難治性転移性癌の有効な治療において使用される医薬組成物のセットまたはキットであって、治療有効用量の1,3-ビス(2-クロロエチル)-1-ニトロソウレア、メルファラン、ヒドロキソコバラミン、およびアスコルビン酸の組合せを含む医薬組成物のセットまたはキットである。
実施形態E11
実施形態E11は、対象における転移性癌または難治性転移性癌の治療のための医薬組成物の使用であって、治療有効用量の1,3-ビス(2-クロロエチル)-1-ニトロソウレア、メルファラン、ヒドロキソコバラミンおよびアスコルビン酸の組合せを含み、メルファラン用量は20~200mg/m2の範囲である使用を含む。
活性成分の代替形態
本明細書に記載の方法および組成物において、活性成分(例えば、薬物)の任意の好適な形態、例えば、塩形態、またはプロドラッグまたは活性代謝産物を使用することができることが認識され;これらの形態は、本発明の範囲内である。
メルファラン配合物
好ましいメルファラン配合物は、5mg/mlのメルファランと等価のメルファラン塩酸塩、2mg/mlのポビドン、20mg/mlのクエン酸ナトリウム、6.0mlのプロピレングリコール、0.52mlの96%エタノール、および10mlの容量を与えるための水を含み、次いでそれを静脈内注射、USPのための0.9%の塩化ナトリウムにより希釈して0.45mg/mL以下のメルファラン濃度を与える。
BCNU配合物
好ましいBCNU配合物は、静脈内注射、USPのための3mlの96%エタノールおよび27mlの水中で溶解している100mgのBCNUを含み、それを0.9%の塩化ナトリウム注射液、USPにより約0.6mg/mlのBCNU濃度にさらに希釈する。
ヒドロキソコバラミン配合物
好ましい配合物は、25mg/ml以下の濃度において静脈内注射、USPのための0.9%の塩化ナトリウム中で溶解しているヒドロキソコバラミンを含む。
アスコルビン酸配合物
アスコルビン酸の好ましい配合物は、アスコルビン酸および等モル量の水酸化ナトリウムを含み、pHは約5~7に調整されており(水酸化ナトリウムまたは重炭酸ナトリウムにより)、それを静脈内注射、USPのための水中で希釈して25mg/mlのアスコルビン酸の最終濃度を与え、それは約280mOsm/Lのオスモル濃度と等張である。他の好ましい配合物において、溶液は、最大80mg/mlの範囲のアスコルビン酸濃度で、より濃縮することができる。高張液は中心IVラインにより与える必要がある。
配合物、投与技術、および剤形
ある実施形態において、本明細書に記載の医薬組成物は、経口投与に好適な形態として、錠剤として、カプセル剤として、カシェ剤として、ピル剤として、トローチ剤として、散剤として、または顆粒剤として配合する。本発明の一部の実施形態において、医薬組成物は、徐放配合物、液剤、液体、もしくは懸濁液として;無菌溶液、懸濁液もしくはエマルジョンとして非経口注射のため;軟膏剤、クリーム剤、ローション剤、噴霧剤、フォーム剤、ゲル剤、もしくはパスタ剤として局所投与のため;または坐剤もしくはペッサリー剤として直腸もしくは経膣投与のために配合する。ある実施形態において、医薬組成物は、正確な投与量の単回投与に好適な単位剤形で配合する。ある態様において、医薬組成物は、慣用の医薬担体または賦形剤および活性成分としての本明細書に記載の薬剤を含む。さらに、他の薬剤または医薬剤、担体、補助剤などを含める。例示的な非経口投与形態としては、無菌水溶液、例えば、水性プロピレングリコールまたはデキストロース溶液中の活性剤の液剤または懸濁液が挙げられる。このような剤形は、任意選択により緩衝化する。好適な医薬担体としては、不活性希釈剤または増量剤、水、および種々の有機溶媒が挙げられる。医薬組成物は、任意選択により、追加の成分、例えば、着香剤、結合剤、賦形剤などを含有する。例えば、具体的な実施形態において、種々の賦形剤、例えば、クエン酸を含有する錠剤を種々の崩壊剤と一緒に用いる。さらに、滑沢剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、およびタルクを任意選択により使用する。他の試薬、例えば、阻害剤、界面活性剤または可溶化剤、可塑剤、安定剤、増粘剤、または皮膜形成剤も任意選択により添加する。ある実施形態において、類似タイプの固体組成物を軟または硬充填ゼラチンカプセル剤中で用いる。ある実施形態において、本明細書に記載の医薬組成物および/または配合物は、ラクトースまたは乳糖または高分子量ポリエチレングリコールを含む。経口投与のために水性懸濁液またはエリキシル剤が望まれる場合、1つまたは複数の活性成分を、種々の甘味剤もしくは着香剤、着色剤、もしくは色素、または乳化剤もしくは懸濁化剤と、希釈剤、例えば、水、エタノール、プロピレングリコール、グリセリン、またはそれらの組合せと一緒に任意選択により組み合わせる。当業者は、例えば、Goodman and Gilman,The Pharmacological Basis of Therapeutics(current edition),McGraw-Hill;およびRemington’s,Pharmaceutical Sciences(current edition),Mack Publishing Co.,Easton,Paに考察されるとおり、本発明の薬剤および方法により用いることができる配合物および投与技術に精通する。非経口投与のための配合物としては、酸化防止剤、緩衝剤、殺虫剤、静菌剤および配合物を目的レシピエントの血液と等張にする溶質を含有し得る活性剤の水性および非水性(油性)無菌注射溶液;ならびに懸濁化剤または増粘剤を任意選択により含む水性および非水性無菌懸濁液が挙げられる。このような配合物において使用される好適な等張ビヒクルの例としては、塩化ナトリウム注射液、リンゲル液、または乳酸リンゲル注射液が挙げられる。好適な親油性溶媒またはビヒクルとしては、脂肪油、例えば、ゴマ油、もしくは合成脂肪酸エステル、例えば、オレイン酸エチルもしくはトリグリセリドが挙げられ;またはリポソームもしくは薬剤を血液構成成分もしくは1つ以上の器官に標的化するために他の微粒子系を使用することができる。溶液中の1つまたは複数の活性成分の濃度は、目的の使用法に依存して変動する。本発明とともに使用される賦形剤の非限定的な例としては、水、生理食塩水、デキストロース、グリセロール、またはエタノールが挙げられる。注射可能な組成物は、少量の非毒性補助物質、例えば、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤、安定剤、溶解度向上剤、または他のそのような薬剤、例えば、酢酸ナトリウム、モノラウリン酸ソルビタン、オレイン酸トリエタノールアミンまたはシクロデキストリンを任意選択により含む。酸性または塩基性基を有する薬物は、薬理学的に許容可能な塩として配合物中で投与することができ;例えば、メルファランはメルファラン塩酸塩として投与することができ、アスコルビン酸はアスコルビン酸ナトリウムとして投与することができる。任意選択により使用される薬学的に許容可能な担体の例としては、水性ビヒクル、非水性ビヒクル、抗菌剤、等張剤、緩衝剤、酸化防止剤、局所麻酔薬、懸濁化剤および分散剤、乳化剤、封鎖剤またはキレート剤、ならびに他の薬学的に許容可能な物質が挙げられる。
追加の治療剤
本明細書に記載の方法および組成物は、癌の治療のための、または症状の緩和のための追加の治療剤および薬物をさらに含み得る。
抗嘔吐薬
本方法において用いられる薬物組合せは、悪心および嘔吐を引き起こす高い潜在性を有する。これらの副作用を制御する有効な方法は当業者に公知であり、本方法とともに用いられる。一般に、患者は、デキサメタゾンおよびセロトニンアンタゴニストにより前治療される。好適なプロトコルは、当業者に公知である。以下の参照文献はこの事項に関連する:Guideline update for MASCC and ESMO in the prevention of chemotherapy- and radiotherapy-induced nausea and vomiting:results of the Perugia consensus conference.Roila F;et al;ESMO/MASCC Guidelines Working Group,Ann Oncol.,2010 May,21 Suppl 5:v232-43.
実施例1
遺伝性BRCA2突然変異を有する転移性膵臓癌を有する患者を、以下のプロトコルにより治療する:
1.治療および幹細胞療法を妨げる基礎医学病態を除外するように患者をスクリーニングし;このような病態としては、重篤な感染性または心臓、腎臓、肝臓、代謝神経、血液、または肺疾患が挙げられる。さらに、治療および幹細胞療法を妨げる薬物禁忌について患者をスクリーニングする。
幹細胞動員、回収、精製、および保存:
2.アフェレーシス開始予定前の少なくとも4日間毎朝、およびアフェレーシスを受けながら毎日、Neupogen10マイクログラム/kgにより皮下で治療する。Neupogenを使用する技術は、FDA承認パッケージラベルに記載されている。
3.十分なCD34+細胞を2~3回の幹細胞注入のためのアフェレーシスにより回収し、それを保管する(すなわち、約2×10^6個超の細胞/kg/注入)。
4.必要であれば、幹細胞動員および収量を増加させるためにプレリキサフォルを使用することができる。この薬物を使用する技術は、プレリキサフォルFDA承認パッケージラベルに記載されている。
5.CliniMacs(商標)技術を使用してCD34+幹細胞を精製し、使用するまで冷凍保存する。
薬物処理:(マイナス2日目)
6.IV水分補給および化学療法前の抗嘔吐薬前投薬
7.デキサメタゾン、12mg IV、化学療法30分前
8.パロノセトロン(Aloxi)0.25mg IV、化学療法30分前
9.アプレピタント(EMEND)125mg経口、化学療法1時間前
10.メルファラン:90mg/m2 IV、t=0分において開始して中心ラインにより15分間
11.BCNU150mg/m2 IVおよびエタノール3.5グラム/m2、中心ラインによりt=15分において開始して50分間
12.ヒドロキソコバラミン、525mg/m2 IV、BCNU注入の完了直後15分間
13.アスコルビン酸:5800mg/m2、t=70分において開始して30分間
14.24時間のIV水分補給、約2~3リットル/m2/日
幹細胞注入前日:(マイナス1日目)
15.デキサメタゾン8mg PO
16.アプレピタント80mg PO
幹細胞注入:(0日目)
17.デキサメタゾン8mg PO
18.アプレピタント80mg PO
19.幹細胞注入、中心ラインによる少なくとも2×106個のCD34+細胞/kg IV
支持療法:
20.ペグフィルグラスチム6mg皮下、+2日目
21.幹細胞移植後の慣用の支持療法、必要であれば、血小板輸血、RBC輸血、および予防的抗生物質(例えば、Cipro)、予防的アシクロビルおよび他の支持療法を含める。
次回の治療サイクル:
22.ステップ6~21を、メルファラン、BCNU、エタノール、ヒドロキソコバラミン、アスコルビン酸および幹細胞注入の合計2~3回の治療単位で約4~8週間で繰り返す。
実施例2
実施例2において、治療は実施例1に記載のとおりであるが、メルファランを70mg/m2の用量において投与し、アスコルビン酸用量は45分間にわたる11,600mg/m2である。
実施例3
実施例3において、治療は実施例1に記載のとおりであり、患者は、遺伝性BRCA2突然変異の背景における転移性前立腺癌を有する。しかしながら、メルファランを110mg/m2の用量において投与する。
実施例4
実施例3において、治療は実施例1に記載のとおりであるが、BCNU用量を100mg/m2の用量において投与する。
実施例5
実施例5において、治療は実施例1に記載のとおりであるが、患者は膵臓癌を有し、BRCA突然変異を有さない。
上記実施例における同一の方法は、広範な転移性BRCA関連およびBRCA非依存性癌、例として、限定されるものではないが、膵臓癌、前立腺癌、ステージIV乳癌、白金耐性卵巣癌、および本出願のリストAに挙げられる他のタイプの癌を有する患者に使用することができる。
本明細書において引用される全ての特許、公開出願、および参照文献の教示は、参照により全体として組み込まれる。本発明を特にその実施例の実施形態を参照して示し、記載した一方、添付の特許請求の範囲により包含される本発明の範囲から逸脱せずに形態および詳細の種々の変更をその中で行うことができることが当業者により理解される。
本発明の態様として、以下のものが挙げられる。
[1]対象における転移性癌または難治性転移性癌の治療の方法であって、1,3-ビス(2-クロロエチル)-1-ニトロソウレア、メルファラン、ヒドロキソコバラミン、およびアスコルビン酸、または上記のいずれかの薬学的に許容可能な塩の組合せを同時にまたは6時間の期間以内に投与することを含み;前記メルファラン用量は、20~200mg/m2の範囲である方法。
[2]1,3-ビス(2-クロロエチル)-1-ニトロソウレアを50~400mg/m2の用量範囲において投与し;前記メルファランを20~200mg/m2の用量において投与し;前記ヒドロキソコバラミンを25~20,000mg/m2の用量において投与し、前記アスコルビン酸を1グラム~150グラムの用量において投与する、[1]に記載の方法。
[3]前記1,3-ビス(2-クロロエチル)-1-ニトロソウレアを75~300mg/m2の投与範囲において投与し;前記メルファランを50~200mg/m2の用量において投与し;前記ヒドロキソコバラミンを400mg~800mg/m2の用量において投与し、前記アスコルビン酸を5グラム~40グラムの用量において投与する、[2]に記載の方法。
[4]前記1,3-ビス(2-クロロエチル)-1-ニトロソウレアを150mg/m2の用量において投与し;前記メルファランを70~140mg/m2の用量において投与し;前記ヒドロキソコバラミンを580mg/m2の用量において投与し、前記アスコルビン酸を5グラム~25グラムの用量において投与する、[2]に記載の方法。
[5]500mg~40グラムの用量におけるエタノールの全身投与をさらに含む、[1]~[4]の何れか一項に記載の方法。
[6]骨髄幹細胞移植療法をさらに含む、[1]~[5]の何れか一項に記載の方法。
[7]前記転移性癌が、DNA修復、および/または相同組換え、およびまたはDNA架橋修復に関与する遺伝子中の遺伝性生殖系列突然変異を有する対象に存在する、[1]~[6]の何れか一項に記載の方法。
[8]前記転移性癌が、以下の遺伝子の1つ以上:ATR、BARD1、BLM、BRCA1、BRCA2、BRIP1(FANCJ、BACH1)、EME1、ERCC1、ERCC4、FAN1、FANCA、FANCB、FANCC、FANCD1、FANCD2、FANCE、FANCF、FANCG、FANCI、FANCJ、FANCL、FANCM、FANCN、FANCO、FANCP、FANCQ、FANCQ、FANCR、FANCS、FANCT、HELQ、MEN1、MUS81、NBN(NBS1)、PALB2、RAD50、RAD51(FANCR)、RAD51C(FANCO)、RAD51D、REV1、SLX4(FANCP)、UBE2T(FANCT)、USP1、WDR48、XPF、XRCC2、およびXRCC3の遺伝性生殖系列突然変異を有する患者に存在する、[1]~[7]の何れか一項に記載の方法。
[9]前記転移性癌が、BRCA1および/またはBRCA2中の遺伝性生殖系列突然変異を有する対象に存在する、[1]~[8]の何れか一項に記載の方法。
[10]前記転移性癌が、膵臓癌、卵巣癌、乳癌、および前立腺癌から選択される、[1]~[9]の何れか一項に記載の方法。
[11]インビボでDNA損傷剤に対して癌細胞を感作する方法であって、前記DNA損傷剤、グルタチオンレダクターゼ阻害剤、ヒドロキソコバラミン、およびアスコルビン酸、または上記のいずれかの薬学的に許容可能な塩の投与を含む方法。
[12]癌を治療する方法であって、1,3-ビス(2-クロロエチル)-1-ニトロソウレア、ヒドロキソコバラミン、およびアスコルビン酸、または上記のいずれかの薬学的に許容可能な塩の投与を含む方法。
[13]癌の治療のための固形癌への1つ以上の薬物の選択的送達の方法であって、
a.薬剤1および薬剤2と称される2つの化合物を選択することであって、薬剤1および薬剤2は酵素でなく、前記薬剤は全身投与後に細胞外空間中に分布し、自発的に反応して1つ以上の薬物を直接または間接的に生成し;前記薬物は血管内コンパートメントから急速に分解され、崩壊され、またはそうでなければ排泄もしくは解毒され;前記薬物は間質液から急速に流出し、細胞内液に流入し;前記薬物は癌治療結果を付与する選択することと、
b.薬剤1および薬剤2を全身投与すること
を含む方法。
[14]対象における転移性癌または難治性転移性癌の有効な治療において使用される医薬組成物のセットであって、治療有効用量の1,3-ビス(2-クロロエチル)-1-ニトロソウレア、メルファラン、ヒドロキソコバラミン、およびアスコルビン酸、または上記のいずれかの薬学的に許容可能な塩の組合せを含む医薬組成物のセット。
[15]対象における転移性癌または難治性転移性癌の治療のための医薬組成物の使用であって、治療有効用量の1,3-ビス(2-クロロエチル)-1-ニトロソウレア、メルファラン、ヒドロキソコバラミンおよびアスコルビン酸の組合せを含み、前記メルファラン用量は20~200mg/m2の範囲である使用。

Claims (2)

  1. 過酸化水素由来の溶血を予防するための医薬であって、該医薬は、エタノールを含み、該予防は、患者にエタノールを静脈内投与することを含み、該エタノールは、約0.5g~約40gの用量で投与される、医薬。
  2. 過酸化水素由来のメトヘモグロビン血症を予防するための医薬であって、該医薬は、エタノールを含み、該予防は、患者にエタノールを静脈内投与することを含み、該エタノールは、約0.5g~約40gの用量で投与される、医薬。
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