JP2022171066A - 果物及び/又はカット野菜の保存方法、及び、果物及び/又はカット野菜入密封容器。 - Google Patents

果物及び/又はカット野菜の保存方法、及び、果物及び/又はカット野菜入密封容器。 Download PDF

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Abstract

【課題】果物及び/又はカット野菜上の生菌の繁殖を抑制し、果物及び/又はカット野菜の切断部等の変色を防止して、包装した状態での保存期間を伸ばすこと。【解決手段】 下記A及びBの工程を有する果物及び/又はカット野菜の保存方法。A.果物及び/又はカットされた野菜を加温された殺菌剤水溶液で処理する工程B.酸素濃度が10.0容量%以下、及び/又は、二酸化炭素濃度が10.0容量%以上の雰囲気となる容器中で、果物及び/又はカットされた野菜を保存する工程【選択図】図1

Description

本発明は果物及び/又はカット野菜の保存方法、及び、果物及び/又はカット野菜入密封容器に関する。
カット野菜等の需要は増大しており、それに伴い消費者は購入にあたり鮮度等の品質を重視するようになっている。果物も同様に、消費者は購入にあたって、呈味と共に外観からみた鮮度を重視している。
しかし、保存時には、カット野菜はカットしない野菜と比較して、カット操作により代謝機能が活発になるため、呼吸等の生理活性によって生じる、保蔵中の質量や内容成分の減少、更に褐変といった外観の劣化、組織の軟化等の品質の悪化が急激に進行する。例えば、セロリは切断面の褐変や茎に穴が開いてしまう「ス」が入る品質劣化が非常に早く進む。また褐変やPAL活性は、特にレタスやセロリ等の本来ポリフェノール含量が少ない野菜にて発生しやすい。更に果物においても、例えば果梗や果梗枝等の枝から切り離した部分の変色や軟化、葉が付いている果物であれば葉の変色や軟化等が発生しやすい。
そのため、例えばカット野菜の品質保持技術として、MA包装やヒートショック、紫外線照射等があり、これらの技術は効果的であることが知られている。
しかしながら、これらの品質保持技術はそれぞれが単独で使用される手段として検討されており、複数種の手段を組み合わせることを検討していない。今後もカット野菜等の需要が拡大し、それに伴い更に高品質化への要求が高まることを考慮すると、既存の品質保持技術を組み合わせることによる効果を検証することが重要である。
そして、特許文献1に記載のように、非加熱でカット野菜を殺菌処理する工程と、カット野菜を合成樹脂シートから構成された、特定の酸素透過量や貫通孔を有する包装材により包装して包装体を形成する工程と、その包装体内のガスを酸素濃度が1~10%、かつ二酸化炭素濃度が3~30%になるように置換する工程を含むカット野菜の鮮度保持方法は公知である。
また、特許文献2に記載のように、カット野菜をオゾン水に接触させて前記カット野菜を殺菌する殺菌工程と、前記殺菌工程において殺菌されたカット野菜を、40℃ ~60℃の温水に接触させてヒートショック処理を行うヒートショック工程と、前記ヒートショック工程においてヒートショック処理されたカット野菜を包装材によって包装してパック野菜を得る包装工程と、前記パック野菜を0℃~7℃の温度環境下で保存する保存工程を含むパック野菜の生産方法は公知である。更に、このときのヒートショック工程は、強い酸化力のオゾン水による殺菌によるダメージを回復させる機能を有することは公知である。
特許文献3に記載のように、特定の水溶液で、特定の殺菌温度と殺菌時間を満たすように、70℃以下の殺菌温度でホールキャベツを殺菌し、次いでホールキャベツをカットし、更にカット後殺菌工程として、温度30℃の次亜塩素酸ナトリウム水溶液で殺菌処理し、任意の包装容器に詰めることは公知である。
特許第6826681号公報 特開2016-86719号公報 特開2020-188707号公報
上記の各方法により果物及び野菜を処理しても、十分に生菌の繁殖を抑制できず、得られたカット野菜で徐々に細菌が繁殖する。加えて、特に果物やカット野菜の切断部等が褐色化等の変色も防止できなかった。
その結果、例えば包装されたカット野菜は冷蔵によっても5日程度までしか保存できなかった。
本発明はこのような事情を考慮して、果物及び/又はカット野菜上の生菌の繁殖を抑制し、果物及び/又はカット野菜の切断部等の変色を防止して、包装した状態での保存期間を伸ばすことを課題とする。
本発明者は、果物及び/又はカット野菜を特定の2種の処理に付すことにより、上記の課題を解決することを見出して以下の本発明を完成させた。
1.下記A及びBの工程を有する果物及び/又はカット野菜の保存方法。
A.果物及び/又はカットされた野菜を加温された殺菌剤水溶液で処理する工程
B.酸素濃度が10.0容量%以下、及び/又は、二酸化炭素濃度が10.0容量%以上の雰囲気となる容器中で、果物及び/又はカットされた野菜を保存する工程
2.Aの工程が、40~50℃の酸素系殺菌剤水溶液又は40~50℃の次亜塩素酸塩水溶液で処理する工程である1に記載の果物及び/又はカット野菜の保存方法。
3.Bの工程が、酸素濃度が5.0~10.0容量%、及び/又は、二酸化炭素濃度が10.0~15.0容量%の雰囲気中で、果物及び/又はカット野菜を保存する工程である1又は2に記載のカット野菜の保存方法。
4.Bの酸素濃度が5.0~10.0容量%、及び/又は、二酸化炭素濃度が10.0~15.0容量%の雰囲気中で、果物及び/又はカット野菜を保存する工程が、密封容器中にカット野菜を入れ、密封容器内をこの雰囲気で満たす3に記載のカット野菜の保存方法。
5.加温された殺菌剤水溶液で処理された果物及び/又はカット野菜を、
内部が、酸素濃度が10.0容量%以下、及び/又は、二酸化炭素濃度が10.0容量%以上の雰囲気で満たされた密封容器内に収納されてなる、果物及び/又はカット野菜入密封容器。
本発明によれば、保存時における果物及びカット野菜の生菌の繁殖抑制、果物及びカット野菜の質量変化の最小化、呼吸活性抑制、変色抑制、PAL活性抑制、総ポリフェノール増加抑制、及び果物及び/又はカット野菜のかたさ維持のうちの1つ以上の点において効果を有する。
カットレタスの処理例を示す図 一般生菌数の変化を示す図 質量変化率の変化を示す図 袋内COガス濃度の変化を示す図 褐変割合の変化を示す図 色相角の変化を示す図 酵素活性の変化を示す図 総ポリフェノール量の変化を示す図 彩度の変化を示す図 カットセロリの処理例を示す図 一般生菌数の変化を示す図 袋内COガス濃度の変化を示す図 酵素活性の変化を示す図 総ポリフェノール量の変化を示す図 一般生菌数の変化を示す図 質量変化率の変化を示す図 色差の変化を示す図 破断応力の変化を示す図
<果物>
本発明における果物は、通常果物として流通するものである。
例として、みかん、レモン、オレンジ等の柑橘類、リンゴ、ナシ、ビワ等の仁科類、さくらんぼ、梅、モモ、あんず等の核果類、イチゴ、スイカ、メロン等の果菜類、ブドウ、バナナ、パイナップル等の漿果類が挙げられる。中でも柑橘類、さくらんぼ、スイカ、メロン、ブドウ等の比較的硬い皮や厚い皮を有するもの、保存により果梗や果梗枝が劣化しやすいものが好ましい。本発明の果物としては、カットされていてもされていなくても良いが、加熱による調理や保存処理、又は冷凍処理された履歴がなく、植物の細胞が活動しているものである。
<カット野菜>
本発明におけるカット野菜にされる野菜として、葉菜、茎菜、果菜、根菜、花菜等が挙げられる。
例として、キャベツ、レタス、白菜、サラダ菜、パセリ、ミツバ、クレソン、グリーンリーフ、サニーレタス、トレビス、ホウレン草、ミズナ、小松菜、春菊、シソ、等から選ばれる1種以上の葉菜、及び/又は、長ねぎ、九条ねぎ、セロリ、アサツキ、もやし、カイワレダイコン、アスパラガス、フキ、等から選ばれる1種以上の茎菜、及び/又は、ピーマン、キュウリ、トマト、オクラ、パプリカ、アボカド、パパイヤ等から選ばれる1種以上の果菜、及び/又は、大根、人参、ゴボウ、カブ、サツマイモ、じゃがいも、ナガイモ、玉ねぎ、ミョウガ、エシャロット、里芋等から選ばれる1種以上の根菜、ブロッコリー、カリフラワー等から選ばれる1種以上の花菜等が挙げられる。本発明の野菜としては、流通時間や温度の適用範囲を広げる観点から、キャベツ、レタス、白菜、サラダ菜、セロリ、グリーンリーフ、サニーレタス、ホウレン草、ミズナ、小松菜、春菊、及び玉ねぎから選ばれる1種以上の葉茎菜や、ピーマン、キュウリ、トマト等から選ばれる1種以上の果菜が好ましい。そして、加熱による調理や保存処理、又は冷凍処理された履歴がなく、植物の細胞が活動しているものである。
これらの野菜は、露地栽培、ハウス栽培、水耕栽培等の任意の環境で栽培されたもので良く、カット野菜は生食用及び加熱調理用等のいずれでも良い。
上記の野菜をカットする方法及びカットの大きさや形状は特に限定されない。生食用や加熱調理用として、喫食に適するように、野菜毎に公知の大きさに、野菜毎に公知の手段でカットされたもので良い。
カット野菜は、可食部以外の部位が除去されたものである。そのため、根、芯、表皮、ヘタ、種、花等の部位、及びその他の部分の、可食部以外の部位、又は、可食部であってもカット野菜として製品内に入らない方が良い外側の葉や端部等の部位は、カット前からカット後の適切な時期に除去しても良い。このような処理を行って、カット野菜を購入した消費者が特に処理すること無く調理等に使用できる状態にしても良い。
またカットされる前のいずれかの段階で洗浄することもできるが、カット後で本発明の処理を行う前に洗浄しても良い。
そして、本発明中のカット野菜は、1種類のカット野菜でも良く、2種以上のカット野菜でも良い。
なおこれらの野菜のカット部は特に、酵素の作用により褐変等の変色を受けやすく、放置すればするほど、ますます変色が進展する。この変色は、チロシン、クロロゲン酸、カテキン等のフェノール類がポリフェノールオキシダーゼの作用で酸化し、キノンを生じ、最終的にメラニンを生じる反応による。
また、カット野菜は湿潤しているので、本来は微生物が増殖しやすいものである。
<A.果物及びカットされた野菜を殺菌剤水溶液で処理する工程>
(殺菌剤水溶液)
本発明において使用される殺菌剤水溶液は、酸素系殺菌剤水溶液、中でも過炭酸ナトリウム水溶液や、次亜塩素酸塩水溶液、中でも次亜塩素酸ナトリウム水溶液や次亜塩素酸カリウム水溶液である。そして、次亜塩素酸ナトリウム水溶液は、固体の次亜塩素酸ナトリウムを水に溶解したり、食塩水を電解したりして得た水溶液も採用できる。
殺菌剤水溶液中の酸素系殺菌剤の濃度としては、質量ベースで、100~500ppmが好ましい。150ppm以上がより好ましく、200ppm以上が更に好ましい。また450ppm以下がより好ましく、400ppm以下が更に好ましい。100ppm未満であると処理の目的を達成できない可能性があり、500ppmを超えると処理による果物及びカット野菜の損傷が大きくなる可能性がある。
次亜塩素酸塩水溶液中の次亜塩素酸塩の濃度としては、有効塩素濃度として、10~300ppmが好ましい。なお、以下、次亜塩素酸の濃度は有効塩素濃度を示す。50ppm以上がより好ましく、80ppm以上が更に好ましい。また250ppm以下がより好ましく、220ppm以下が更に好ましく、200ppm以下が最も好ましい。10ppm未満であると処理の目的を達成できない可能性があり、300ppmを超えると処理による果物及びカット野菜の損傷が大きくなる可能性がある。なお、有効塩素濃度は、市販のデジタル吸光光度計(HI771, Handheld Colorimeter Chlorine UHR, Hanna Instruments)で測定した。
また、次亜塩素酸塩水溶液はpHが5.5以上の微酸性から塩基性であることが好ましいく、5.8以上より好ましい。またpHが9.0以下であることが好ましく、8.0以下がより好ましく、7.0以下が更に好ましい。pHが5.5未満であると、塩素ガスが発生しやすくなったり、9.0を超えると、殺菌効果が低下しやすくなったりする可能性が高くなる。
次亜塩素酸塩水溶液のpHを調整するために、塩酸、リン酸等の無機酸、クエン酸、乳酸、酢酸、グルコン酸、フマル酸、アジピン酸、リンゴ酸及び酒石酸等の有機酸、及びこれらのナトリウム塩やカリウム塩、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、から選ばれた1種以上を次亜塩素酸塩水溶液に添加して調整できる。中でもクエン酸、乳酸、酢酸及びフマル酸やその塩を添加することが好ましい。
(殺菌剤水溶液の温度及び処理時間)
本発明において、殺菌剤水溶液で処理するには、殺菌剤水溶液を加温した条件での処理が必要である。
このように加温した殺菌剤水溶液により果物及び/又はカット野菜を処理することにより、殺菌剤水溶液により処理を行うと同時にヒートショックによる処理を行うことができる。
この殺菌剤水溶液により処理する際の加温温度は、40℃以上が好ましく、42℃以上がより好ましく、44℃以上が更に好ましい。また60℃以下が好ましく、55℃以下がより好ましく、52℃以下が更に好ましく、50℃以下が最も好ましい。40℃未満では十分なヒートショックを行えず、60℃を超えると果物及び/又はカット野菜を加熱してしまう可能性がある。
殺菌剤水溶液による処理時間は、30~300秒が好ましい。30秒未満であると十分な処理ができない可能性があり、300秒を超えると過剰に処理をする可能性がある。
殺菌剤水溶液を加温して処理を行うことと、次いで、特定の雰囲気中で、果物及び/又はカットされた野菜を保存することを組み合わせることにより、保存中の果物及び/又はカット野菜の呼吸活性、PAL(フェニルアラニンアンモニアリアーゼ)活性、及びポリフェノール生成の抑制、果物及び/又はカット野菜の褐変抑制、かたさの維持等、の1種以上を達成できる。
なお、殺菌剤水溶液により処理する際の加温温度が40℃~50℃のとき、その処理時間は40~120秒が好ましい。
(殺菌剤水溶液による処理操作)
殺菌剤水溶液によって果物及び/又はカット野菜を処理する際には、処理液の温度管理可能な公知の手段を使用できる。
例えば、加温した殺菌剤水溶液を入れた容器内に果物及び/又はカット野菜を順次投入して浸漬する手段や、ベルトコンベア上を移動する果物及び/又はカット野菜の、全部又は一部分に対して加温した殺菌剤水溶液を噴霧する手段等の処理装置を採用できる。
(加温した殺菌剤水溶液で処理する工程の後処理)
本発明の方法において、A.果物及び/又はカットされた野菜を加温した殺菌剤水溶液で処理する工程の後処理として、洗浄処理を行うことが好ましい。
この洗浄処理は、専ら、加温した殺菌剤水溶液により昇温した果物及び/又はカット野菜の温度を冷却することと、果物及び/又はカット野菜に付着している加温した殺菌剤やその他の成分を除去することを目的した処理である。
<B.酸素濃度が10.0容量%以下、及び/又は、二酸化炭素濃度が10.0容量%以上の雰囲気となる容器中で、果物及び/又はカットされた野菜を保存する工程>
(容器)
本発明における容器はガスバリア性が高い容器であることが、果物及び/又はカット野菜を入れて密閉し、一定の雰囲気下で保存するには必要である。
その容器の材料及び構造等は、十分なガスバリア性を有するのであれば特に限定されず、金属、ガラス、及び樹脂から選択して使用される。アルミニウム層を有する積層フィルムから形成された包装袋であっても良い。
ただし、果物及びカット野菜用としては、樹脂フィルムから形成されることが一般的である。
ヒートシール性のフィルムにより包装袋を作成する場合には、例えば、内側より熱可塑性樹脂からなるシーラント層、脱酸素剤を配合しても良い熱可塑性樹脂組成物からなる中間層や印刷層や金属層等を必要に応じて有し、及びガスバリア性物質からなるバリア層を含むガスバリア性フィルムを採用できる。又はこのようなガスバリア性フィルムを、ガスバリア性のトレーの蓋部にヒートシールして内部に収納した果物及び/又はカット野菜を保存するようにしても良い。
また本来ガスバリア性を有するナイロンからなる袋を採用しても良い。
そのシーラント層の樹脂としては、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、メタロセン触媒によるポリエチレン等の各種ポリエチレン類、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、エチレン-アクリル酸メチル共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体、プロピレンホモポリマー、プロピレン-エチレンブロック共重合体、プロピレン-エチレンランダム共重合体、メタロセン触媒によるポリプロピレン等の各種ポリプロピレン類、ポリメチルペンテン、熱可塑性エラストマー等が挙げられ、これらを単独で、又は組み合わせて使用することができる。
シーラント層には、酸化チタン等の着色顔料、酸化防止剤、スリップ剤、帯電防止剤、安定剤等の添加剤、炭酸カルシウム、クレー、マイカ、シリカ等の充填剤、消臭剤等を添加しても良い。
またシーラント層の層厚は10~100μmが好ましい。
バリア層は、包装容器とした場合に容器外部から侵入する酸素を遮断する層であり、例えば、アルミ箔等の金属箔、ポリ塩化ビニリデン、エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロンMXD6、ポリエチレンテレフタレート等のガスバリア性樹脂等が挙げられる。
容器の形状は特に限定されず、易開封性包装袋、吊り下げ手段を有する包装袋、自立性包装袋、フレーバー保持性に優れたプラスチック多層容器等の公知の形状のものを採用できる。
本発明の果物及び/又はカットされた野菜を保存する工程や、果物及び/又はカット野菜入密封容器は、上記の容器内に果物及び/又はカット野菜を入れた後、容器内部で特定の雰囲気下で保存される。
果物及び/又はカット野菜を容器内に密封する方法としては、上記容器内に果物及び/又はカット野菜を投入した後、容器内部の雰囲気をB.酸素濃度が10.0容量%以下、及び/又は二酸化炭素濃度が10.0容量%以上の雰囲気になるような混合気体により置換する。このとき、酸素濃度は好ましくは9.0容量%以下、更に好ましくは8.0容量%以下であり、二酸化炭素濃度は好ましくは12.0容量%以上、更に好ましくは13.0容量%以上である。
容器内の雰囲気を置換する方法としては、公知の手段を採用できるが、容器内に果物及び/又はカット野菜を入れた後に、混合気体を噴出するノズルを挿入し、必要に応じて一旦容器内を脱気した後、容器内に所定の混合気体を吹き込んで雰囲気を置換した後に容器を密封する方法を採用できる。
その後、速やかにヒートシール処理等することにより、容器を密封して果物及び/又はカット野菜入密封容器を得ることができる。
そして、本発明中のB.酸素濃度が10.0容量%以下、及び/又は、二酸化炭素濃度が10.0容量%以上の雰囲気となる密封容器中で、果物及び/又はカットされた野菜を保存する工程は、保存開始から、容器が開封されるまでの期間継続する。その期間としては、果物及び/又はカット野菜を販売するために店頭に陳列されている期間を包含する。
<カットレタス(次亜塩素酸ナトリウム水溶液による処理工程を含む場合)>
(カットレタスの調製)
市販の結球レタス(長野県産)の外葉を2,3枚取り除いた後、表面を水道水の流水で洗浄した。その後、葉の上部と下部を包丁によって取り除き、カット処理して切片の大きさが 約3×4cmのカットレタスを得た。
(実験条件)
[次亜塩素酸ナトリウム水溶液による処理]
次亜塩素酸ナトリウム水溶液(濃度100 ppm)をにクエン酸を添加して微酸性(pH6.0)にした。この次亜塩素酸ナトリウム水溶液を、常温(20℃)のものと温水(45℃)のもの2種を準備した。
カットレタスを2種の次亜塩素酸ナトリウム水溶液それぞれの中に120秒間浸漬した。その後水道水の流水で120秒洗浄し、サラダスピナーで脱水し、試料表面の水分をキムタオルを軽く当てて除去した。
[保存(保蔵)]
次亜塩素酸ナトリウム水溶液により処理したカットレタスを、洗浄した透明プラスチック製フードトレー(190×123×40mm)上に約30g秤量し、ガスバリア性のナイロンポリ袋(酸素透過度8.3ml/(m/day/MPa)、水蒸気透過度10.1(g/(m・day))(200×300mm、ナイロンポリ バリアTLタイプ、福助工業株式会社)に入れた.続けて真空脱気ガス充填シーラ(V-301G、富士インパルス社)を用いて袋内の空気を十分に脱気した後、約500mLの乾燥気体又は調整空気を充填し密封した。乾燥気体は、O濃度20.9%、CO濃度0.04%、N濃度79.06%であり、調整空気はO濃度6.5%、CO濃度13.0%、N濃度80.5%であった。ガス封入後の試料を5℃に設定したインキュベータ(MIR-153、 Sanyo)内に移し、暗条件下で保蔵した。保蔵期間は最長8日間とし、保蔵0、2、4、6、8日後に各測定を行った。
(カットレタスの保存例(次亜塩素酸ナトリウム溶液を使用の場合))
本発明と比較例の保存方法を図1に示す。
図1の下から2段目の左に記載のControl(以下「C」という。)は、カットレタスを常温(20℃)の次亜塩素酸ナトリウム溶液で処理し、乾燥空気を充填した密閉容器内で保存した例である。
その右のHTは、次亜塩素酸ナトリウム溶液での処理を45℃の次亜塩素酸ナトリウム溶液にした他はCと同じようにして保存した例である。
更にその右のMAは、乾燥空気ではなく、調整空気を充填した密閉容器内で保存した他はCと同じようにして保存した例である。
最後に最も右のHT+MAは実施例であり、カットレタスを加温(45℃)の次亜塩素酸ナトリウム溶液で処理し、調整空気を充填した密閉容器内で保存した例である。
それぞれ、各保存期間(0日、2日、4日、6日、8日)保存した。
[評価方法]
(一般生菌数)
各保蔵期間経過後のカットレタス10gを90mLの滅菌リン酸緩衝生理食塩水に浸し、ストマッカー(E-Mix primo、ASONE)を用いてストマック処理を行ない、これを試料原液とした。試料原液は混入する推定菌数に応じて希釈倍率を調製した後、希釈液1mLを標準寒天培地(日水製薬)約15 mLと混釈し、クールインキュベータ(A0601-2V、 Panasonic)の中で35 ℃で48±3時間培養した。培養後、培地上に形成されたコロニー数を計測し、カットレタス1g当たりのコロニー形成数(APC、 log10CFU/g)として表した。なお、測定に関わるすべての操作はクリーンベンチ(HCB-900UVG、 ASONE)内で行った。
(質量変化)
保蔵開始前及び各保蔵期間経過後に、電子天秤により質量を計測した。なお、カットレタス(以下必要に応じて「試料」という)表面に水滴がついている場合は、キムワイプで丁寧にふきとった。以下の式により、質量変化率を算出した。
質量変化率W(%)=(保蔵後の試料質量 (g))/保蔵前の試料質量 (g)×100
(袋内COガス濃度)
保蔵後のナイロンポリ袋内CO濃度は、食品ガス置換包装用赤外吸収式O&O/CO計(Check Point2、 Dansensor)を用いて測定した。測定範囲はそれぞれ0.1~100.0%である。
赤外吸収式のセンサの温度による誤差を解消するため、測定前に約20℃の雰囲気に保蔵後のナイロンポリ袋を20分間放置し、袋内の温度にばらつきがないようにした。
(色彩、撮影)
各保蔵期間経過後に試料をナイロンポリ袋から取り出した後、撮影台上に静置し、デジタルカメラ(D5600、 Nikon)を用いて、露出時間1/125秒、絞り値3.5、焦点距離100mm、ISO感度100、保存形式をJPG、画像サイズ4000×6000、解像度300dpiとなるように撮影した。撮影台の背景には黒のアクリルパネルを用いた。撮影台の光源には蛍光灯(EFD25EN / 20H、Panasonic)と白色LEDパネル(MLP-LSK2478A3、 武蔵電機)を用いた。
(褐変割合)
各保蔵期間経過後に上記条件で撮影した試料画像を、画像処理ソフト(Photoshop CC、 Adobe)を用いて試料の色彩を評価した。各条件の各保蔵期間後の試料画像中の褐変部位を目視で確認し、色域選択ツールを用いて褐変部位のみが自動で選択されるよう調節した。その際に作成した色域選択データを用いてプリセットを作成し、全ての試料画像に対して作成したプリセットデータを適用することで、褐変部位の選択範囲を作成した。その後、解析ツールを用いて褐変部位の総ピクセル面積を計測した。また、クイック選択ツール及び自動選択ツールを用いて、試料全体が選択されるよう選択範囲を作成し、同様に試料全体の総ピクセル面積を計測した。以下の式により、褐変割合を算出した。
褐変割合Br(%)=褐変部位面積/試料全体の面積×100
(色相角及び彩度)
各保蔵期間経過後に上記条件で撮影した試料画像を、画像処理ソフト(Photoshop CC、 Adobe)を用いて試料の色彩を評価した。画像中の試料全体をクイック選択ツール及び自動選択ツールを用いて選択し、ぼかしツールを用いて試料全体の色彩値を平均化し、カラーピッカーを用いて試料画像のL*、 a*、 b*値を記録した。以下の式により、色相角(H°)を算出し、褐変程度を評価した。更に彩度Cを算出し、変色程度を評価した。
色相角H°=tan-1(b*/a*)
彩度C=√((a*)2+(b*)2)
(酵素(PAL(フェニルアラニンアンモニアリアーゼ))活性)
ポリフェノール合成の鍵酵素であるPAL(フェニルアラニンアンモニアリアーゼ)の活性を評価した。4gの試料に5mMの2-メルカプトエタノールと3%(w/v)のポリビニルポリピロリドンを含む50mMのホウ酸緩衝液(pH8.5)を16mL加え、ホモジナイザ(NS-52K、 マイクロテック・ニチオン)を用いて均質化(10000rpm、60秒)した。その後、4重に重ねたガーゼでろ過し、4℃、遠心力が14000×gで30分間遠心分離し、その上清を粗酵素抽出液とした。
粗酵素抽出液1mLを、20mMのL-フェニルアラニン1mLと2mLのホウ酸緩衝液(pH8.5)の混合液に加え、40℃で2時間インキュベートした。インキュベート後6Mの塩酸を0.1mL加え反応を止めた後、分光光度計(V-630BIO、 日本分光)を用い、290nmでの吸光度の増加を測定した.1時間当たりに1μmolの桂皮酸が生成される活性を1unitとして試料中に含まれるタンパク質1mg当たりの酵素活性を算出した。
なお、酵素反応時以外の一連の操作は氷冷下で行った。
このように、粗酵素液を用いて一定の条件下でPALの活性を測定しているため、PALの活性を直接調べていない。よって、このPAL活性はカットレタス中の活性を持つPALの量、すなわちPALの発現量を示す。
(総ポリフェノール量)
約2mmに細断した試料4gに10mLのメタノールを加え、ホモジナイザ(NS-52K、 マイクロテック・ニチオン)で均質化(10000 rpm、90秒)したものをろ紙(定量濾紙、ASONE)でろ過し抽出を行い、これを抽出液とした。
総ポリフェノール量の測定は、吸光度測定法とFolin-Ciocalteu 法の二種類を用いた。
吸光度測定法は、分光光度計(V-630BIO、日本分光(株))を用いて抽出液の320 nmにおける吸光度(クロロゲン酸の最大吸光度)を測定した。
Folin-Ciocalteu 法は没食子酸検量線を作成して測定を行った。抽出液はアスコルビン酸の影響を排除するために、70℃で1時間インキュベートした後、測定に供した。試験管に抽出液0.5mLと10%(v/v)フェノール試薬2.5mLを入れた後、10%炭酸ナトリウム2.0mLを加え、混和後室温で1時間放置した。その後、波長765nmにおける溶液の吸光度を分光光度計(V-630BIO、日本分光(株))により求め、試料の新鮮重1g当たりの総ポリフェノール量を算出した。
得られたデータは、統計ソフトR-3.4.2を用いてTukey HSD法による有意差検定を行った。有意水準は5%未満(p<0.05)とした。
<カットレタス(過炭酸ナトリウムによる処理工程を含む場合)>
(カットレタスの調製)
市販のパック詰カットレタス(カット後2日経過)から取り出したカットレタスを水道水の流水で洗浄した。図1における次亜塩素酸ナトリウム水溶液に代えて過炭酸ナトリウム水溶液を採用して、C、HT、MA及びHT+MAの場合の保蔵のカットレタスを調製した。
(彩度)
上記の試料画像の処理と同じ処理方法でL*a*b*画像に変換し、彩度を算出、評価した。
<結果>
(一般生菌数)
図2に、記載の各例によるカットレタスの保蔵中の一般生菌数の変化を示す。保蔵2日後において、加温次亜塩素酸ナトリウム水溶液による処理を施したHT、HT+MAはC、MAと比較して菌数の増加傾向が小さかった。また、殺菌処理直後の保蔵0日後においても加温次亜塩素酸ナトリウム水溶液による処理を施したHTはCと比較して菌数が少ない傾向がみられた。また6日後までは、HT+MAが生菌数が少なかった。8日目はMAの方が生菌数が少ないものの、HT+MAも他の2例よりも生菌数が少なかった。これらを総合すると、HT+MAは菌数の増加抑制効果を有する。
(質量変化)
図3に各例による質量変化率の変化を示す。加温次亜塩素酸ナトリウム水溶液による処理を施したHT、HT+MAは、Cに対して、多少ではあるものの質量減少率が小さいものであり、加温次亜塩素酸ナトリウム水溶液による処理が質量変化を小さくする効果があることがわかる。
(袋内COガス濃度)
図4に袋内COガス濃度の変化を示す。この変化はカットレタスの見かけの呼吸速度を示す。各例の線形近似式から傾きを算出するとC=0.487、HT=0.499、MA=0.391、HT+MA=0.321となり、HT+MAやMAはCやHTとりも傾きが小さく呼吸活性が抑制された。中でもMAよりもHT+MAのほうがより傾きが小さく、更に呼吸活性を抑制できた。
(褐変割合)
図5に各例による褐変割合の変化を示す。
MAとHT+MAはCと比較して保蔵4日後以降、HTと比較しても保蔵6日後、8日後で有意に褐変割合の増加を抑制した。また、HT+MAは保蔵期間を通してMAとの間に差がなかった。
(色相角及び彩度)
加温次亜塩素酸ナトリウム水溶液による処理を採用した図6によれば、色相角においても、MAとHT+MAは、CとHTよりも良い結果であった。更に、MAよりもHT+MAが優れた結果であり、変色を抑制できた。
また過炭酸ナトリウム水溶液による処理を採用した図9に示す彩度の変化によると、HT+MAは、特に保蔵後7日目(カット後9日目)に至るまで、ほぼ一定の値を維持したが、MA、C及びHTは保蔵後7日目において低下して、C、HT及びMAはいずれも同程度の彩度となった。
(酵素(PAL(フェニルアラニンアンモニアリアーゼ))活性)
図7に、酵素(PAL(フェニルアラニンアンモニアリアーゼ))活性の変化を示す。
HT+MAによると、他の例よりも明らかに優れた結果を得た。CとHとMAはいずれも同程度であり、いずれの処理条件でも大差はないところ、HT+MAによって極めて優れた結果になった。
特に、Cを基準にして、加温次亜塩素酸ナトリウム水溶液による処理を採用した点で変更したHTでは、8日目において活性がCと同程度になり、同じくCを基準にして、調整空気を充填した密閉容器内で保存した点で変更したMAは8日目において活性が高くなってしまった。ところが、HTとMAを併用したHT+MAは、上記HTとMAの中間の結果ではなく、全く異なる傾向の、Cを基準にして活性を大幅に抑制できた。
(総ポリフェノール量)
図8に、吸光度測定法による総ポリフェノール量の変化を示す。
図8からみて、他の条件による例は全て総ポリフェノール量が増加傾向にあるが、HT+MAによれば、全期間にわたり、総ポリフェノール量がほとんど変化しなかった。これはHT+MAによると、変色の程度が小さいことを示す。
(カットレタスに関する総合評価)
HT+MAによる効果に大小はあるものの、一般生菌数の抑制、呼吸活性の抑制、PAL活性の抑制、ポリフェノール類の蓄積の抑制、特にPAL活性やポリフェノール類の蓄積の抑制に対して組み合わせ効果を有する。
<カットセロリ>
(カットセロリの調製)
市販のセロリ(長野県産)の全体を水道水の流水で洗浄した。その後、葉と基底部を包丁によって取り除き、枝分かれをしていない葉柄を得た。その葉柄を厚さ約5mmにスライス処理してカットセロリを得た。
(実験条件)
[次亜塩素酸ナトリウム水溶液による処理]
次亜塩素酸ナトリウム水溶液(濃度100ppm)にクエン酸を添加して微酸性(pH6.0)にした。この次亜塩素酸ナトリウム水溶液を、常温(20℃)のものと温水(50℃)のものの2種を準備した。
カットセロリを次亜塩素酸ナトリウム水溶液中に90秒間浸漬した。その後水道水の流水で120秒洗浄し、サラダスピナーで脱水し、試料表面の水分をキムタオルを軽く当てて除去した。
[保存(保蔵)]
次亜塩素酸ナトリウム水溶液により処理したカットセロリを、洗浄した透明プラスチック製フードトレー(190×123×40mm)上に約30g秤量し、ガスバリア性のナイロンポリ袋(酸素透過度8.3ml/(m/d/MPa)、水蒸気透過度10.1(g/(m・d))(200×300mm、ナイロンポリ バリアTLタイプ、福助工業株式会社)に入れた.続けて真空脱気ガス充填シーラ(V-301G、富士インパルス社)を用いて袋内の空気を十分に脱気した後、約500mLの乾燥気体を充填し密封した。乾燥気体としては、乾燥空気(O濃度20.9%、CO濃度0.04%、N濃度79.06%)又は、調整空気(O濃度9.0%、CO濃度13.0%、N濃度78.0%)を使用した。ガス封入後の試料を5℃に設定したインキュベータ(MIR-153、 Sanyo)内に移し、暗条件下で保蔵した。保蔵期間は9日間とし、保蔵0、2、4、6、9日後に各測定を行った。
(カットセロリの保存例)
本発明と比較例の保存方法を図10に示す。
図10の下から2段目の左に記載のControl(以下「C」という。)は、カットセロリを常温(20℃)の次亜塩素酸ナトリウム溶液で処理し、乾燥空気を充填した密閉容器内で保存した例である。
その右のHTは、次亜塩素酸ナトリウム溶液での処理を50℃の次亜塩素酸ナトリウム溶液にした他はControl(C)と同じようにして保存した例である。
更にその右のMAは、乾燥空気ではなく、調整空気を充填した密閉容器内で保存した他はControl(C)と同じようにして保存した例である。
最後に最も右のHT+MAは実施例であり、カットセロリを加温(50℃)の次亜塩素酸ナトリウム溶液で処理し、調整空気を充填した密閉容器内で保存した例である。
[評価方法]
(一般生菌数)
各保蔵期間経過後のカットセロリ10gを90mLの滅菌リン酸緩衝生理食塩水に浸し、ストマッカー(E-Mix primo、 ASONE)を用いてストマック処理を行った。これを試料原液とした。試料原液は混入する推定菌数に応じて希釈倍率を調製した後、この希釈液1mLをMC-Media Pad ACplus(JNC)に添加し、クールインキュベータ(A0601-2V、 Panasonic)の中で35℃で48±3時間培養した。培養後、培地上に形成されたコロニー数を計測し、カットセロリ1g当たりのコロニー形成数(APC、 log10CFU/g)として表した。なお、測定に関わるすべての操作はクリーンベンチ(HCB-900UVG、ASONE)内で行った。
(質量変化、袋内COガス濃度、酵素(PAL活性)、総ポリフェノール量)
質量変化、袋内COガス濃度、酵素(PAL活性)、及び総ポリフェノール量の評価はカットレタスの評価と同じ方法で行った。
(色彩、撮影)
撮影条件を、露出時間1/100秒、絞り値3.5、焦点距離24mm、ISO感度100、保存形式をJPG、画像サイズ4000×6000、解像度300dpiとなるように撮影した以外は、カットレタスの撮影条件と同条件で撮影した。
<結果>
(一般生菌数)
図11にカットセロリの保蔵中の一般生菌数の変化を示す。保蔵3日後において、加温次亜塩素酸ナトリウム水溶液による処理を施したHT、HT+MAはC、MAと比較して菌数の増加傾向が小さかった。中でも、HT+MAが生菌数は少なかった。6日目以降はHT+MAよりもMAの方が生菌数は少ないものの、HT+MAも他の2例よりも生菌数が少なかった。これらを総合すると、HT+MAは菌数の増加抑制効果を有する。
(袋内COガス濃度)
図12に袋内COガス濃度の変化を示す。この変化はカットセロリの見かけの呼吸速度を示す。各例の線形近似式から傾きを算出するとC=0.302、HT=0.337、MA=0.272、HT+MA=0.256となり、HT+MAやMAはCやHTとりも傾きが小さく呼吸活性が抑制された。中でもMAよりもHT+MAのほうがより傾きは小さく、更に呼吸活性を抑制できた。
(酵素(PAL(フェニルアラニンアンモニアリアーゼ))活性)
図13に、酵素(PAL(フェニルアラニンアンモニアリアーゼ))活性の結果を示す。
HT+MA及びHTによると、他の例よりも明らかに優れた結果を得た。CとMAはいずれも活性が高いものであった。
この結果によれば、6日以降において、Cを基準にしてMA単独では活性を高めてしまう。一方HT単独では、活性を低く抑制できるが、仮にHTとMAを併用した場合には、HT単独とMA単独の中間の活性を有すると予測されるところ、HT+MAでは、MAによる活性を高めてしまうことを防止し、HTと同程度の活性に抑制できるという優れた効果を発揮した。
(総ポリフェノール量)
図14にFolin-Ciocalteu法による総ポリフェノール量の変化を示す。
図14からみて、6日目以降、特に9日目では、特にHT+MAのみが総ポリフェノール量が低下した。特に9日目において、HT及びMAそれぞれ単独では、特にMAがCと同程度であり、HTがCよりも若干低い程度に過ぎないが、MA+HTによれば、HT単独及びMA単独に対して明らかに低い。この結果により、MA+HTによれば、他の例よりも変色の程度が小さいことがわかる。
(カットセロリに関する総合評価)
HT+MAによる効果に大小はあるものの、一般生菌数の抑制、呼吸活性の抑制、PAL活性の抑制、ポリフェノール類の蓄積の抑制、特にPAL活性やポリフェノール類の蓄積の抑制を同時に行える点において組み合わせ効果を有する。
<カットピーマン>
(カットピーマンの調製)
高知県の生産元から入手した。ピーマンは熟度により呼吸速度やかたさなどが変化する恐れがあるため、品質が一定になるように収穫日が揃っているものを利用した。収穫から実験に供試までの期間は3~4日であった。その期間、産地の高知県から実験場所の千葉県までは冷蔵輸送した。
ピーマンの上部と下部を切り落とし、水道水で胎座と種子を取り除いた。残った部分を市販の包丁を用いて2~3cm四方になるように切り分け、このカットピーマンを実験の試料とした。
なお、かたさを測定するためのピーマンは、供試する際、上部と下部を切り落とし、水道水で胎座と種子を取り除いた。残った部分を市販の包丁を用いて4等分になるように切り分けた。
(実験条件)
[次亜塩素酸ナトリウム水溶液による処理]
次亜塩素酸ナトリウム水溶液(濃度100ppm)にクエン酸を添加して微酸性(pH6.0)にした。この次亜塩素酸ナトリウム水溶液を、常温(20℃)のものと温水(45℃)のもの2種に分けて準備した。
カットピーマンをこれら2種それぞれの次亜塩素酸ナトリウム水溶液中に180秒間浸漬した。その後水道水の流水で120秒洗浄し、サラダスピナーで脱水し、試料表面にキムタオルを軽く当てて、表面の水分を除去した。
[保存(保蔵)]
次亜塩素酸ナトリウム水溶液により処理したカットピーマンを、洗浄した透明プラスチック製フードトレー(190×123×40mm)上に約30gずつ果肉表面が上になるように静置し、ガスバリア性のナイロンポリ袋(酸素透過度8.3mL/(m/d/MPa)、水蒸気透過度10.1(g/(m・d))(200×300mm、ナイロンポリ バリアTLタイプ、福助工業株式会社)に入れた.続けて真空脱気ガス充填シーラ(V-301G、富士インパルス社)を用いて袋内の空気を十分に脱気した後、約500mLの乾燥気体を充填し密封した。乾燥気体としては、乾燥空気(O濃度20%、CO濃度0.1%、N濃度79.9%)又は、調整空気(O濃度5.0%、CO濃度15.0%、N濃度80.0%)を使用した。
以下のC(Control)は、カットピーマンを室温(20℃)の次亜塩素酸ナトリウム水溶液で処理し、乾燥空気を充填して密封したものである。
HTは、次亜塩素酸ナトリウム溶液での処理を45℃の次亜塩素酸ナトリウム溶液にした他はCと同じようにして保存した例である。
更にMAは、乾燥空気ではなく、調整空気を充填した密閉容器内で保存した他はCと同じようにして保存した例である。
最後にHT+MAは実施例であり、カットピーマンを加温(45℃)の次亜塩素酸ナトリウム溶液で処理し、調整空気を充填した密閉容器内で保存した例である。
ガス封入後の試料を10℃に設定したインキュベータ(MIR-153、 Sanyo)内に移し、暗条件下で保蔵した。保蔵期間は8日間又は11日間とし、保蔵0、3、5、7日後、場合により11日後に各測定を行った。
[評価方法]
(一般生菌数)
各保蔵期間経過後のカットピーマン10gを90mLの滅菌リン酸緩衝生理食塩水に浸し、ストマッカー(E-Mixprimo、ASONE)を用いてストマック処理を行った。これを試料原液とした。試料原液を10倍から最大10000000倍までに希釈した後、この希釈液1mLをシート培地(ACplus、JNC)を用いて15℃で48±3時間培養した。培養後、培地上に形成されたコロニー数を計測し、カットピーマン1g当たりのコロニー形成数(APC、log10CFU/g)として表した。なお、測定に関わるすべての操作はクリーンベンチ(HCB-900UVG、ASONE)内で行った。
(質量変化)
質量は保蔵開始前及び各保蔵期間経過後に、電子天秤により計測した。なお、カットピーマン(以下必要に応じて「試料」という)試料表面に水滴がついている場合は、キムワイプで丁寧にふきとった。以下の式により、質量変化率を算出した。
質量変化率W(%)=(保蔵後の試料質量(g))/保蔵前の試料質量(g)×100
(色彩変化、撮影)
撮影条件を、露出時間1/100秒、絞り値3.5、焦点距離24mm、ISO感度100、保存形式をJPG、画像サイズ4000×6000、解像度300dpiとなるように撮影した以外は、カットレタスの撮影条件と同条件で撮影した。得られた画像は画像処理ソフト(Photoshop2020、Adobe)を用いて果肉の色彩変化を評価した。
(色差)
保蔵前及び保蔵期間経過後の画像は画像処理ソフトを用いてL*値、a*値、b*値を得た後に下記式より色差ΔEを算出した.
ΔE=√((ΔL*)+(Δa*)+(Δb*)
ΔL*:保蔵開始前と保蔵後の試料のL*値の差
Δa*:保蔵開始前と保蔵後の試料のa*値の差
Δb*:保蔵開始前と保蔵後の試料のb*値の差
(かたさ)
各保蔵条件におけるカットピーマンのかたさはクリープメータ(RE2-3305B、山電)を用いて測定し、破断強度解析ソフト(BAS-3305 Ver.2.0、山電)を用いて評価した。荷重感度はロードセル200N、アンプ倍率1倍とした。測定パラメータは格納ピッチ0.1s、測定ひずみ90.00%、プランジャー速度1.0mm/sとした。時間経過ごとの応力及びひずみの測定はHEIGHT DATAのゼロ点設定の後に行った。なお、測定部位は1つの試料から5列×2行の計10か所とした。プランジャー(φ3mm)を試料表面に対して垂直に押し付けて、破断するときの応力とひずみを測定した。
<結果>
(一般生菌数)
図15に各保蔵条件における日数ごとの一般生菌数の変化を示す。縦軸は一般生菌数(log10CFU/g)、横軸は保蔵日数(日)を示す.HT+MAは保蔵7日間を通して他の処理よりも一般生菌数の増殖を抑制できている。そして、例えば7日後において、Cよりも生菌数が多いHTの条件を、Cよりも生菌数が少ないMAと組み合わせると、意外にも、HT+MAはMAよりも、より生菌数が少なかった。
(質量変化)
図16の質量変化率の変化を示す図からわかるように、7日後において、HT及びMAのそれぞれの質量変化よりも、HT+MAの方が質量変化率が少なかった。
(色差)
図17の色差の変化を示す図からわかるように、7日目において、CとHTの色差の値は同程度であり、これにより、7日目にはHTはCに対して特に効果を発揮しないといえる。
しかしながら、このような効果がないといえるHTであっても、MAと組み合わせてHT+MAにすることにより、MAよりも色差を小さくすることができる効果を有する。
(かたさ)
図18に破断応力の変化を示す。縦軸は応力(N)、横軸は日数を示す。7日目において、HT+MAは他の例に対して明らかに高いものであった。このため、HT+MAによれば、他の例よりも歯ごたえが強く維持できているといえる。
(カットピーマンに関する総合評価)
HT+MAによる効果に大小はあるものの、一般生菌数の抑制、呼吸活性の抑制、色彩の変化の抑制、及び特にかたさ向上を同時に行える点において組み合わせ効果を有する。
上記の実施例は、野菜に関する実験であったが、同様に保存につれて、一部分でも変色は軟化する果物に対しても同様の効果を発揮する。

Claims (5)

  1. 下記A及びBの工程を有する果物及び/又はカット野菜の保存方法。
    A.果物及び/又はカットされた野菜を加温された殺菌剤水溶液で処理する工程
    B.酸素濃度が10.0容量%以下、及び/又は、二酸化炭素濃度が10.0容量%以上の雰囲気となる容器中で、果物及び/又はカットされた野菜を保存する工程
  2. Aの工程が、40~50℃の酸素系殺菌剤水溶液又は40~50℃の次亜塩素酸塩水溶液で処理する工程である請求項1に記載の果物及び/又はカット野菜の保存方法。
  3. Bの工程が、酸素濃度が5.0~10.0容量%、及び/又は、二酸化炭素濃度が10.0~15.0容量%の雰囲気中で、果物及び/又はカット野菜を保存する工程である請求項1又は2に記載のカット野菜の保存方法。
  4. Bの酸素濃度が5.0~10.0容量%、及び/又は、二酸化炭素濃度が10.0~15.0容量%の雰囲気中で、果物及び/又はカット野菜を保存する工程が、密封容器中にカット野菜を入れ、密封容器内をこの雰囲気で満たす請求項3に記載のカット野菜の保存方法。
  5. 加温された殺菌剤水溶液で処理された果物及び/又はカット野菜を、
    内部が、酸素濃度が10.0容量%以下、及び/又は、二酸化炭素濃度が10.0容量%以上の雰囲気で満たされた密封容器内に収納されてなる、果物及び/又はカット野菜入密封容器。
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