JP2022171052A - 音響誘導システム - Google Patents
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Abstract
【課題】 目標の観測精度を高めて会合確率の向上を図った音響誘導システムを提供すること。【解決手段】 実施形態によれば、音響誘導システムは、誘導推進装置と、アクティブソーナー装置と、誘導統制装置とを具備する。誘導推進装置は、潜航体に搭載され、当該潜航体を水中の目標に向け誘導する。アクティブソーナー装置は、ソーナー信号を用いて目標の位置情報を取得する。誘導統制装置は、位置情報に基づいて到来予測計算を行う。誘導統制装置は、誘導計算部を備える。誘導計算部は、潜航体の発出前に、到来予測計算の結果を誘導推進装置に与える。アクティブソーナー装置は、音響誘導部を備える。音響誘導部は、潜航体の発出後に、ソーナー信号とは異なる音響通信信号により誘導推進装置に誘導指示を与える。【選択図】 図1
Description
本発明の実施形態は、音響誘導システムに関する。
水中を移動する目標に、誘導推進装置を備えた潜航体を会合させるための誘導システムが知られている。この種の誘導システムは、目標の位置情報を取得するセンサ、潜航体、および潜航体を誘導するための誘導計算機を備える。水中における目標情報を取得するセンサは、音を利用するソーナーが主流である。
ソーナーは、先ず、第1フェーズで目標を探知し、続く第2フェーズで目標に追随する。誘導計算機は、目標の位置情報等の追随情報をもとに目標位置の未来予測値を算出し、潜航体はその位置に向けて発出される。潜航体は目標を捉えるセンサを備え、目標に向かって推進する。
アクティブソーナー装置で目標の観測精度(測距、測角値)を高めるためには、ソーナー開口を大きくする必要がある。つまり、ビーム幅を狭くして開口利得と測角精度を上げたい。また、全周囲から到来する目標を捉えるために、水平方向に全周性を得たいという潜在的要求がある。しかしながら、海面に浮かぶ船舶に搭載されるという制限から、ソーナー装置で目標の観測精度を高めることには技術的な困難があった。
既存のソーナー装置の多くは、船底に装着する必要から、コンフォーマルアレイまたは、シリンドリカルアレイとしており、方位方向または仰角方向の何れかの測角精度が犠牲になる。また、水中の音波は仰角方向に屈折するため、測角精度に対しバイアス誤差が大きくなる。そして、装着される船体からのエンジン音等の不要音波により、ソーナーの探知距離及び観測精度が劣化するという困難もある。これらは、誘導システムにおいて、目標の位置情報の精度が劣化するため、誘導する潜航体を目標に会合させることが困難になることを意味する。
そこで、目的は、目標の観測精度を高めて会合確率の向上を図った音響誘導システムを提供することにある。
実施形態によれば、音響誘導システムは、誘導推進装置と、アクティブソーナー装置と、誘導統制装置とを具備する。誘導推進装置は、潜航体に搭載され、当該潜航体を水中の目標に向け誘導する。アクティブソーナー装置は、ソーナー信号を用いて目標の位置情報を取得する。誘導統制装置は、位置情報に基づいて到来予測計算を行う。誘導統制装置は、誘導計算部を備える。誘導計算部は、潜航体の発出前に、到来予測計算の結果を誘導推進装置に与える。アクティブソーナー装置は、音響誘導部を備える。音響誘導部は、潜航体の発出後に、ソーナー信号とは異なる音響通信信号により誘導推進装置に誘導指示を与える。
図1は、実施形態に係わる音響誘導システムの一例を示す図である。このシステムは、無人船1に搭載されるアクティブソーナー装置3および誘導統制装置4と、無人船2から発出される潜航体5とを具備する。潜航体5は、自らを水中の目標に向け誘導する誘導推進装置を備える。なお、無人船1,2は無人であることが好ましいが、人が搭乗することを排除するものではない。
図1において、アクティブソーナー装置3は、ソーナー信号を用いて目標10の位置情報を取得する。すなわち、アクティブソーナー装置3は、決められたビームスケジュールで方位方向、仰角方向にソーナービームを走査しながら全周を捜索し、目標10を探知する。目標10を探知すると、アクティブソーナー装置3は、捜索ビームとは独立に、専用ビームを一定間隔で目標10に向けながら目標10の位置情報(測距値、測角値)を取得する。専用の送信ペンシルビーム/受信ペンシルビームとすることにより、パルス幅、ヒット数を捜索時よりも大きくすることで、目標エコーのS/Nを上昇させ誘導に必要な観測精度(測距、測角値)を得ることができる。LPRF(Low-Pulse-Repetision-Frequency)のパルス繰り返し周期で運用することにより、目標10の距離情報と、角度情報を高精度に得ることができる。
誘導統制装置4は、取得された目標10の位置情報に基づいて誘導計算を行う(到来予測計算)。誘導計算により会合点予測点が算出される。誘導統制装置4は、無人船2との間に電波通信リンクを形成し、会合点予測点を含む発出指示を無人船2に電波で送信する。これを受けて無人船2は、目標10に向けて潜航体5を発出する。
発出された潜航体5は、会合点に向かって推進する(初期誘導)。アクティブソーナー装置3は、目標10を追随しながら時分割で潜航体5の方向にソーナービームを指向させて、潜航体5と水中音響通信を行う。また、アクティブソーナー装置3は、この音響通信により潜航体5の位置情報を取得する。
時間の経過と共に、目標10と潜航体5の位置情報は絶えず更新される。目標10と潜航体5との会合点がずれることが判明すると、誘導統制装置4は、音響通信で潜航体5の誘導推進装置に航路変更指示を与え、会合点に誘導推進装置を誘導する(中期誘導)。潜航体5は、後述する音響シーカの視野ないし探知距離で目標を探知可能な位置に達すると、ソーナーシーカ信号を送信する。HPRF(High Pulse Repetision Frequency)のパルス繰り返し周期で運用することにより、潜航体5は目標10を探知すると、ドップラ情報、角度情報を高精度に得ることが可能となり、その方向に自らを操舵する(終末誘導)。
図2は、潜航体5の一例を示すブロック図である。潜航体5は、誘導推進装置51、動力装置52、および操舵装置53を備える。誘導推進装置51は、目標10を検出し、目標10に潜航体5を誘導するための操舵信号を操舵装置53に出力する。酸化剤を用いた動力装置52は、水中に潜航体5を推進させるための推進機構である。動力装置52は、燃料と酸化剤とを搭載し、酸化剤により燃料を燃焼させて推進力を得ている。これにより潜航体5は、空気の無い水中においても推進することができる。操舵機構としての操舵装置53は、誘導推進装置51から与えられる操舵信号に基づき潜航体5の姿勢および向きを制御して、潜航体5を目標10に誘導する。操舵装置53は、姿勢制御を行いながら音響シーカのビーム指向方向を空間安定させ、目標方向に操舵して推進させる。
誘導推進装置51は、音響シーカ51a、慣性計測部51b、および、プロセッサ51cを備える。音響シーカ51aは例えばアクティブソーナーシーカであり、音波を目標10に照射し、目標10からの反射音に基づいて潜航体5を目標10へと誘導する。また、音響シーカ51aは、アクティブソーナー装置3と音響通信信号により双方向に音波で通信する。
自己位置情報取得装置としての慣性計測部51bは、潜航体5の角速度、加速度等を観測する。そして、慣性計測部51bは、所定の座標系における潜航体5の位置、速度、姿勢角等を取得する。取得された潜航体5の位置、速度、姿勢角等の情報(自己位置情報)は、音響シーカ51aから発出される音波によってアクティブソーナー装置3に伝送される。
プロセッサ51cは、例えばCPU(Central Processing Unit)等の演算回路であり、メモリに記憶されたプログラムを実行するコンピュータである。プロセッサ51cは、音波の波形生成や制御、受信エコーに含まれる目標10の検出、および目標諸元の推定などの処理を実施する。これらの処理に基づき、プロセッサ51cは、目標10に向け推進するための操舵信号を操舵装置53に出力する。
図3は、アクティブソーナー装置3の、無人船1への取付形態の一例を示す図である。実施形態のアクティブソーナー装置3は、例えば円柱状のソーナードーム31の中に艤装される、4面の平面アレイ32を備える。ソーナードーム31は、アーム11を介して無人船1に取り付けられる。ここで、アーム11は1本でも複数本でも構わない。さらに、電源や制御信号等を伝送するケーブルをアーム11に沿わせて配線するとよい。あるいは、アーム11を中空構造とし、中空部分にケーブルを配線してもよい。
図3(a)のように、無人船1が移動する場合は、アーム11を水平に上げることで、ソーナードーム31を海面から上げる。運用時には、図3(b)のようにアーム11を下げることでソーナードーム31を海中に沈降させる。
図4は、アクティブソーナー装置3の一例を示す機能ブロック図である。アクティブソーナー装置3は、トランスデューサをアレイ配列した4つの平面アレイ(トランスデューサアレイ)を備える。各平面アレイは、それぞれN個のサブアレイ33を具備する。サブアレイは、複数のトランスデューサおよび遅延器を備える。平面アレイを複数備えることで全周捜索、および全周追随を可能する。なお、1つの平面アレイを方位方向に機械的に360°回転させてもよい。複数のトランスデューサは個別にオン/オフすることができ、その数に応じて受信ビーム幅、仰角の受信ビーム幅を制御することができる。つまり、トランスデューサのオン数を増やすほどに、狭いビームを形成することができる。
サブアレイ33(#1~#N)に対し、送信回路36から送受切替器34を介して送信信号(#1~#N)が入力される。一方、サブアレイ33(#1~#N)から、送受切替器34を介して受信信号(#1~#N)が受信回路37に出力される。送受切替器34は、送信期間と受信期間とを時分割で切り替える。ソーナー信号のビームを方位、仰角に走査するため、ソーナー制御回路41は、ビーム指向情報を走査制御回路35に与える。走査制御回路35は、ビーム指向情報に基づいて、各トランスデューサの遅延器に設定する遅延制御を行う。
アクティブソーナー装置3は、方位方向、仰角方向にビームを走査しながら目標を捜索し、目標10にソーナーの送信信号がヒットすると、反射した目標エコーが戻ってくる。ビーム形成回路38は、目標エコーの受信信号のΣビーム(和ビーム)、ΔAZビーム(方位差ビーム)及び、ΔELビーム(仰角差ビーム)を形成し、信号処理回路39に入力する。信号処理回路39は、Σビームにパルス圧出処理、積分処理等を施し、S/Nを改善した後、目標検出処理を行う。目標検出と並行して、信号処理回路39はΔAZ,ΔELについても同様の処理を実施し、測角処理を行う。
このように、目標の検出に係わる情報は、初探知の目標情報として追随制御回路40に入力され、追随処理に移行する。追随処理では、入力された目標情報から予測(カルマンフィルタ、またはα、β、γフィルタ)により、目標移動予測を行い、追随情報が算出される。目標移動予測の結果を用いて、予測方向にペンシルビームを指向させることでS/N日を向上させることができる。
追随情報はソーナー制御回路41に入力される。ソーナー制御回路41は、目標移動予測の方向に送信/受信ビームを指向するように、送受信制御を実施する。この動作を一定周期で繰り返すことにより、目標追随が継続される。
ここで、誘導統制装置4のソーナー制御回路41は、補正処理部41a、および音響誘導部41bを備える。補正処理部41aは、記憶部42に記憶された鉛直音速プロファイル42aに基づいて、目標の位置情報に関する深度方向の測角値を補正する。音響誘導部41bは、潜航体5の発出後に、ソーナー信号とは異なる上記音響通信信号により潜航体5の誘導推進装置51に誘導指示を与える。
図5および図6は、位相モノパルス測角方式について説明するための図である。図5に示されるように、DBF(Digital Beam Forming)における位相モノパルス測角では、平面アレイ開口を4分割((1)~(4))し、それぞれの開口のサブアレイ出力をビーム合成した結果にステアリングベクトルW(複素ウェイト)を乗算する。これにより、走査制御回路35(図4)による遅延制御と併せて、受信ビーム指向制御が実施される。
図6、および式(1)に示されるように、全てのサブアレイ出力の和がΣビームであり、左右の開口のサブアレイ出力の差がΔAZビーム、上下の開口のサブアレイ出力の差がΔELビームである。誤差電圧はΣビーム/Δビームで求められ、予め記憶させた測角カーブ(Sカーブ)から測角値が求められる。
図7は、鉛直音速プロファイルと、水中における音波の屈折について示す図である。図7(a)は、音波の相対屈折率を深度に対してプロットしたグラフであり、図7(b)は、水中における音速を深度に対してプロットしたグラフである。これらの図に示されるように、鉛直音速プロファイルは深度に対して異なる特性を示すので、音波の進行方向はEL方向に多重屈折する。このような現象により、音波によるEL方向の測角値に誤差を生じる。
鉛直音速プロファイルは、海域によって異なる。そこで、誘導統制装置4は、水域(海域)ごとに予め用意された鉛直音速プロファイル42aを記憶部42(図4)に記憶し、自らの属する海域、または目標10の存在する海域に応じて適切な鉛直音速プロファイルを読み出して使用する。
図8は、深度方向に対する屈折補正について説明するための図である。アクティブソーナー装置は、目標エコーの時間差から目標までの距離(スラントレンジ)を算出し、位相モノパルス測角により目標の深度を算出する。
次に、アクティブソーナー装置3は、目標の深度の算出値と、海域毎にモデル化されたの鉛直音速プロファイルとに基づいて、EL方向の測角値を補正する。すなわち、例えば深度100m毎の屈折率モデル、および、得られた深度から式(2)に基づいて総屈折率を算出し、位相モノパルスで得られた測角値に総屈折率を乗算する。
なお、鉛直音速プロファイル42aに対応する、深度毎の屈折率モデルは、海域毎に複数の種類を予めアクティブソーナー装置3の記憶部42に記憶し、アクティブソーナー装置3の運用される海域ごとに切り替えて用いられる。
上記の手順をまとめると以下のようになる。
・目標の見かけの深度を、目標までのスラントレンジと測角値に基づいて求める。
・見かけの深度に対し、図8に示される屈折率モデルを適用する。
・見かけの深度から式(2)により総屈折率を計算する。
・測角値および総屈折率に基づいて、補正後の測角値を求める。
・補正後の測角値に基づいて、補正後の目標までのスラントレンジを求める。
・目標の見かけの深度を、目標までのスラントレンジと測角値に基づいて求める。
・見かけの深度に対し、図8に示される屈折率モデルを適用する。
・見かけの深度から式(2)により総屈折率を計算する。
・測角値および総屈折率に基づいて、補正後の測角値を求める。
・補正後の測角値に基づいて、補正後の目標までのスラントレンジを求める。
図9は、誘導統制装置4の一例を示す機能ブロック図である。誘導統制装置4は、無人船1内のインタフェース6を介して、アクティブソーナー装置3から目標情報(位置、速度)を取得する。この目標情報は、記憶部49に目標情報49aとして記憶されるとともに、会合計算部60の誘導用平滑計算部43に渡される。誘導用平滑計算部43は、目標情報に基づいて目標平滑位置・速度を求め、予測会合点算出部44、およびSSKP算出部45に渡す。会合計算部60は、潜航体5の発出前に、到来予測計算の結果を潜航体5の誘導推進装置51に与える、誘導計算部として機能する。
予測会合点算出部44は、目標平滑位置・速度に基づいて予測会合点を算出し、SSKP算出部45、予測シーカ起動点算出部46に渡す。SSKP算出部45は、SSKPを発出制御部47に与える。予測シーカ起動点算出部46は、予測会合点に基づいて予測シーカ起動点を算出し、出力する。
上記算出された予測会合点、予測シーカ起動点、および発出制御部47からの発出指示信号から、発出角算出/中期誘導算出部48は、電波通信リンクを介して無人船2に発出指令(発出角、中期誘導指示、シーカ起動点)を通知する。この発出指令に基づく発出指示が発出前の潜航体5に与えられると、潜航体5は発出する。
図10は、アクティブソーナー装置3と潜航体5との近距離での音響通信について説明するための図である。アクティブソーナー装置3は、潜航体5との距離の長短に応じて、つまり互いに近距離にあるか、遠距離にあるかに応じてトランスデューサーのオン/オフ制御を行う。なお、アクティブソーナー装置から潜航体5への通信方向をアップリンク、その逆方向をダウンリンクと称する。
図10に示されるように、近距離では、アクティブソーナー装置3は平面アレイ32のトランスデューサのうち少数のものだけをオンし、送信ファンビーム83を形成してアップリンク送信を行う。潜航体5は、アクティブソーナー装置3からのアップリンク信号に応じて、自身の位置情報を通信周期毎にダウンリンクで伝送する。ダウンリンクにおいては、アクティブソーナー装置3はDBFマルチビームにより受信ビーム84を形成し、送信ビーム幅に整合させて、ビーム形成数を可変する。
図11は、アクティブソーナー装置3と潜航体5との遠距離での音響通信について説明するための図である。図11に示されるように、遠距離では、アクティブソーナー装置3は平面アレイ32の全てのトランスデューサをオンし、アップリンク/ダウンリンクのいずれにおいてもペンシルビーム(送信ペンシルビーム85、受信ペンシルビーム86)を形成し、音響通信による送受信を行う。このようにアクティブソーナー装置3は、距離に応じてビーム幅を可変させながら通信を行う。通信変調方式には例えば、FSK(Frequency Shift Keying)を適用できる。
誘導統制装置4は、目標情報(測距、測角値)と潜航体5の位置情報、および音響通信到来方向をアクティブソーナー装置3から取得し、目標10と潜航体5の会合予測計算をフィードバックする。また、誘導統制装置4は、目標10の到来予測計算値、または潜航体5の航路が会合点から外れた場合、潜航体5の進行方向の補正計算を行う。さらに、補正情報をアクティブソーナー装置3と潜航体5との音響通信により、潜航体5の進行方向を補正する。
図12は、誘導統制装置4の一例を示す機能ブロック図である。図12を参照して、誘導統制装置4の屈折補正による誘導再計算について説明する。誘導統制装置4による誘導再計算に先立ち、アクティブソーナー装置3は、潜航体5の位置情報と、受信ビーム(Σ、ΔEL)とに基づいて、補正後の測角値と、位置情報から得れる測角値とを比較し、これら2つの測角値の差分を算出する。
誘導統制装置4は、無人船1内のインタフェース6を介して、アクティブソーナー装置3からこの差分情報を屈折情報として取得する。誘導統制装置4は、過去に収集した目標情報49aを記憶部49から読み出し、過去の目標情報を再生し、目標情報再生データを重回帰予測部61に渡す。
重回帰予測部61は、屈折情報に基づく重回帰予測計算により過去の目標情報を補正し、補正目標情報を得る。この補正目標情報は、誘導用平滑計算部43に渡されて誘導用平滑処理を施され、補正目標平滑位置・速度が算出される。この補正目標平滑位置・速度は予測会合点算出部44に渡され、補正された予測会合点(補正予測会合点)、および目標予測位置(補正目標予測位置)が算出される。補正目標予測位置は、予測シーカ起動点算出部46に渡され、予測シーカ起動点の補正値(補正予測シーカ起動点)が算出される。すなわち、過去に戻って誘導計算をやり直し、予測会合点、予測シーカ起動点を再計算して、補正値を得る。補正された予測会合点、および予測シーカ起動点は、補正中期誘導算出部50からアクティブソーナー装置3を介して、音響通信により補正情報として潜航体5の誘導推進装置51に伝送される。
図13は、鉛直速度プロファイルの重回帰について説明するための図である。潜航体5を介して取得されるデータは、目標10の航路の深度と比べると一部分でしかない。そこで、例えば重回帰による機械学習により、取得できていない深度データを推定する。
重回帰処理には、例えば、LASSO回帰を適用することができる。与えられたデータは、例えば式(3)で表現することができる。
式(3)における重み係数wi、切片bを最適化するためには、式(4)を最小とするwiを求ればよい。
このようにして推定した鉛直音速プロファイルと、想定した鉛直音速プロファイルモデルとを用いて、深度対音速の差分を求めることができる。
以上述べたように、実施形態の音響誘導システムは、アクティブソーナー装置3で全周目標を捜索し、探知/追随することにより、屈折影響を受けた観測値を取得する。次に、モデル化した鉛直音速プロファイルを用いて観測値に屈折補正を施し、残留屈折影響を許容した誘導計算を誘導統制装置4が行い、その方向に潜航体5を発出する。発出後、誘導推進装置51とアクティブソーナー装置3との間で水中音響通信を実施し、目標10の観測と時分割で潜航体5の位置情報を取得して、重回帰演算により鉛直(仰角)方向の屈折率を算出する。この屈折率を目標10の測角値に反映すると共に、会合させるための誘導計算にフィードバックして、潜航体5に航路補正を指示することにより、会合確率を向上させることができる。詳しくは、以下の(1)~(8)のとおりである。
(1) アクティブソーナー装置3を円柱上のソーナードーム31内に搭載し、1面の平面フェーズドアレイを360度回転させるか、または4面の平面フェーズドアレイとすることで、方位/仰角のビーム幅を狭め、かつ、全周性を確保する。また、円柱ソーナードームは無人船1の船首または船尾にアーム11を介して取り付け、アーム11を駆動することにより、海面から上昇または海水に沈降可能にする。アクティブソーナー装置3の運用時は沈降させる。また、無人船1を電動モータ推進とすれば、不要音を低減することができる。さらに、無人船1を停船状態で運用することも好ましい。
(2) 次に、アクティブソーナー装置3の平面フェーズドアレイ開口面分割による複数送信ファンビーム形成と受信DBFマルチビーム形成にて、全周捜索を速やかに実施しながら、目標10を探知する。
(3) 目標10が探知されると、捜索とは独立に専用ビームにて、観測時間(パルスヒット数、パルス幅)を増加させて追随を行い、目標エコーのS/Nを高くし、観測精度(測距、測角)のランダム誤差を向上させる。また、この際、モデル化した鉛直(仰角)方向の音速プロファイルに従った屈折補正を行うことにより、バイアス誤差を補正する。
(4) 誘導統制装置4は、向上した観測精度から目標10の到来方向予測を算出し、その方向に潜航体5を発出する。
(5) アクティブソーナー装置3はフェーズドアレイを用いた音響通信により、潜航体5から位置情報を受信し、同時に音響通信波到来方向を位相モノパルス方式または振幅モノパルス方式にて測角する。
(6) アクティブソーナー装置3または誘導統制装置4は、上記位置情報と音響通信到来方向の測角値とから屈折影響の補正を目標に反映して、会合予測計算を行う。また、必要に応じて、アクティブソーナー装置3から音響通信により誘導情報を潜航体5に送り、軌道修正する。
(7) 潜航体5はアクティブソーナーシーカ(音響シーカ51a)を具備し、シーカ視野角に目標が入る時点で音響シーカ51aを起動させ、角度情報を基に比例航法にて、目標に会合させる。
(8) また、潜航体5の音響シーカ51aはパッシブソーナーシーカでもよい。この場合、アクティブソーナー装置3が送信する音波の目標からの反射エコーにより角度情報を得て、潜航体5を目標10に会合させても構わない。
つまり、実施形態の音響誘導システムは、アクティブソーナー装置3で全周を速やかに捜索し、目標10の探知、追随を行うことで得られる目標の位置情報の精度向上を実現する。そして、高精度な位置情報を基に、誘導統制装置4にて誘導計算を行い、目標10の位置情報のバイアス誤差を許容して、潜航体5を目標に会合させることが可能になる。これらのことから、実施形態によれば、目標の観測精度を高めて会合確率の向上を図った音響誘導システムを提供することが可能となる。
なお、この発明は上記実施の形態に限定されるものではない。例えば無人船1に潜航体5の発出機構を搭載し、一隻の無人船に全ての装置を備えるようにしても良い。
実施形態を説明したが、この実施形態は例として提示するものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
実施形態を説明したが、この実施形態は例として提示するものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
1,2…無人船、3…アクティブソーナー装置、4…誘導統制装置、5…潜航体、6…インタフェース、10…目標、11…アーム、31…ソーナードーム、32…平面アレイ、33…サブアレイ、34…送受切替器、35…走査制御回路、36…送信回路、37…受信回路、38…ビーム形成回路、39…信号処理回路、40…追随制御回路、41…ソーナー制御回路、41a…補正処理部、41b…音響誘導部、42…記憶部、42a…鉛直音速プロファイル、43…誘導用平滑計算部、44…予測会合点算出部、45…SSKP算出部、46…予測シーカ起動点算出部、47…発出制御部、48…発出角算出/中期誘導算出部、49…記憶部、49a…目標情報、50…補正中期誘導算出部、51…誘導推進装置、51a…音響シーカ、51b…慣性計測部、51c…プロセッサ、52…動力装置、53…操舵装置、60…会合計算部、61…重回帰予測部、83…送信ファンビーム、84…受信ビーム。
Claims (9)
- 潜航体に搭載され、当該潜航体を水中の目標に向け誘導する誘導推進装置と、
ソーナー信号を用いて前記目標の位置情報を取得するアクティブソーナー装置と、
前記位置情報に基づいて到来予測計算を行う誘導統制装置とを具備し、
前記誘導統制装置は、
前記潜航体の発出前に、前記到来予測計算の結果を前記誘導推進装置に与える誘導計算部を備え、
前記アクティブソーナー装置は、
前記潜航体の発出後に、前記ソーナー信号とは異なる音響通信信号により前記誘導推進装置に誘導指示を与える音響誘導部を備える、音響誘導システム。 - 前記アクティブソーナー装置は、
水域ごとに予め用意された鉛直音速プロファイルを記憶する記憶部と、
前記鉛直音速プロファイルに基づいて、前記位置情報に関する深度方向の測角値を補正する補正処理部をさらに備える、請求項1に記載の音響誘導システム。 - 前記誘導推進装置は、目標方向から到来する音波に基づいて前記潜航体を当該目標へと誘導する音響シーカを備える、請求項1または2のいずれかに記載の音響誘導システム。
- 前記音響シーカは、前記アクティブソーナー装置から送信された前記ソーナー信号の前記目標からの反射音に基づいて前記潜航体を当該目標へと誘導するパッシブソーナーシーカである、請求項3に記載の音響誘導システム。
- 前記音響シーカは、音波を前記目標に照射し、当該目標からの反射音に基づいて前記潜航体を当該目標へと誘導するアクティブソーナーシーカである、請求項3に記載の音響誘導システム。
- 前記誘導推進装置は、
前記潜航体の自己位置情報を取得する自己位置情報取得装置と、
前記音響シーカは、前記自己位置情報を前記アクティブソーナー装置に音波で伝送する、請求項3に記載の音響誘導システム。 - 前記誘導計算部は、前記目標と前記潜航体との会合点を予測する予測会合点算出部をさらに備える、請求項1に記載の音響誘導システム。
- 前記アクティブソーナー装置を搭載する第1船と、
前記潜航体を発出する第2船と、
前記アクティブソーナー装置と前記第2船との間に電波通信リンクを形成する電波通信手段とをさらに具備する、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の音響誘導システム。 - 前記第1船および前記第2船の少なくともいずれか一方は、無人船である、請求項8に記載の音響誘導システム。
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