JP2022169070A - 量子鍵配送装置、量子鍵配送システムおよび量子鍵配送方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】受信者が光変調器を用いる能動的選択測定系を備えた量子鍵配送システムにおいて、偏波制御装置を用いることなく秘密鍵を生成する量子鍵配送装置を提供する。【解決手段】本発明による量子鍵配送装置は、共通鍵暗号通信のための秘密鍵を供給する量子鍵配送装置であって、送信者の装置が、光源から送出された信号光のパルス列に対して位相差を0とπまたはπ/2と3π/2に変調する位相変調器と、位相変調器の出力に接続され、変調された信号光を2分岐するハーフミラーと、分岐された一方の経路に付与された偏波変換手段と、分岐された他方の経路と偏波変換手段の出力とに接続された偏波ビームスプリッターであって、信号光のパルス列をパルス間隔の半分の時間だけずらして合波することにより、奇数番目のパルスと偶数番目のパルスの偏波状態が、交互に直行した等間隔のパルス列が出力される偏波ビームスプリッターとを備えたことを特徴とする。【選択図】図5
Description
本発明は、2者の通信における暗号化システムに関し、より詳細には、秘密鍵を配信するための量子鍵配送装置、量子鍵配送システムおよび量子鍵配送方法に関する。
量子鍵配送(Quantum Key Distribution: 以下、QKDという)は、2者の通信において通信内容を隠匿する暗号技術の一つであり、量子力学の原理を利用して、共通鍵暗号通信のための秘密鍵を離れた2者に安全に供給するシステムである。QKDの代表的なプロトコルとして、位相エンコードBB84が知られている(例えば、非特許文献1参照)。以下に、本発明に関連する従来技術として、このプロトコルについて説明する。
位相エンコードBB84方式では、送信者は位相差が{0, π/2, π, 3π/2}のいずれかである2連続光パルスを、平均光子数が1未満の微小エネルギーで送出する。光子は光エネルギーの最小単位であるため、このような微小エネルギーの光状態の測定は1回しか行うことはできず、1回の測定では、位相差0とπ、またはπ/2と3π/2、は確定的に識別できる一方、4つの位相値は確率的にしか識別することができない。
上記2連続パルスは、光ファイバーを介して受信者に到達する。受信者はこれを、{0, π}を確定的に識別する測定系、または{π/2, 3π/2}を確定的に識別する測定系、のいずれかで測定する。送信者が付与した位相差が0またはπであり、受信者が前者の測定系で測定した場合には、受信者は確定的に位相差を測定することができる。一方、後者の測定系を用いた場合は確定的な結果を得ることはできない。同様に、送信者が付与した位相差がπ/2または3π/2であり、受信者が{π/2, 3π/2}を確定的に識別する測定系で測定した場合には、受信者は確定的に位相差を測定することができるが、{0, π}を確定的に識別する測定系を用いた場合は確定的な結果を得ることはできない。
上記信号送受信を複数回行った後、送信者は各パルス対に付与した位相差が{0, π}であったか{π/2, 3π/2}であったか、を通知する。一方、受信者は各パルス対の測定系が{0, π}識別系であったか{π/2, 3π/2}であったか、を通知する。前述の通り、送信位相差が{0, π}かつ測定系が{0, π}識別系、または送信位相差が{π/2, 3π/2}かつ測定系が{π/2, 3π/2}識別系、であった場合は、送信者の位相値と受信者の測定結果は一致する。そこで、位相差0またはπ/2をビット「0」、πまたは3π/2をビット「1」とすることにより、送受信者は同一のビット値を得ることになる。これを秘密鍵ビットとする。上記以外、すなわち確定的な測定結果が得られない場合は、その信号送受信結果は廃棄する。上記プロトコルの実装においては、受信者が{0, π}識別系と{π/2, 3π/2}識別系を無作為に選択して受信パルス対の位相差を測定することが要となる。
図1に、従来技術における、受信者の能動的選択測定系の構成例を示す。能動的選択測定系は、伝送路の出力に接続された偏波制御装置15と、偏波制御装置15の出力接続された位相変調器11と、位相変調器11の出力に接続されたマッハツェンダー干渉計(Mach-Zehnder干渉計:以下、MZ干渉計12という)と、MZ干渉計12の出力にそれぞれ接続された光子検出器13,14と、から構成されている。位相変調器11により、受信パルス対の位相差に0またはπ/2の位相を付加する。位相変調されたパルス対は、2経路の伝搬位相差が2πの整数倍(=0)に設定された1パルス遅延MZ干渉計12に入力され、各々の出力端子に接続された光子検出器13,14において光子検出される。MZ干渉計12の出力段では、長経路を経た第1パルスと短経路を経た第2パルスが重なり合って干渉し合い、その位相差に応じて光子が検出される。
図1に、従来技術における、受信者の能動的選択測定系の構成例を示す。能動的選択測定系は、伝送路の出力に接続された偏波制御装置15と、偏波制御装置15の出力接続された位相変調器11と、位相変調器11の出力に接続されたマッハツェンダー干渉計(Mach-Zehnder干渉計:以下、MZ干渉計12という)と、MZ干渉計12の出力にそれぞれ接続された光子検出器13,14と、から構成されている。位相変調器11により、受信パルス対の位相差に0またはπ/2の位相を付加する。位相変調されたパルス対は、2経路の伝搬位相差が2πの整数倍(=0)に設定された1パルス遅延MZ干渉計12に入力され、各々の出力端子に接続された光子検出器13,14において光子検出される。MZ干渉計12の出力段では、長経路を経た第1パルスと短経路を経た第2パルスが重なり合って干渉し合い、その位相差に応じて光子が検出される。
図3に、伝搬位相差0のMZ干渉計における入力位相差と光子検出確率との関係を示す。光子検出確率は入力位相差に対して正弦波状となる。また、2つの光子検出器13,14での検出確率は相補的、すなわち、両者の和は1(エネルギー保存)となっている。この光子検出特性において、入力位相差が0のときは光子検出器13で検出確率は0、πのときは光子検出器13での検出確率は0、である。したがって、入力位相差が0またはπのいずれかである場合は、光子検出器14で光子検出されれば位相差0、光子検出器14で光子検出されれば位相差π、であることが確定的に判別できる。一方、入力位相差がπ/2または3π/2のときは、2つの光子検出器13,14のどちらでも光子を検出し得るので、どちらの位相差であるか識別することができない。
図1に示した能動的選択測定系において、位相変調器11により付加された位相が0であれば、受信パルス対の位相差がそのままMZ干渉計12への入力位相差となる。従って、受信パルス対の位相差が0またはπであれば両者を確定的に識別できる。すなわち、位相変調器11での印加位相が0のときには、能動的選択測定系は{0, π}識別系となる。一方、位相変調器11で付与された位相がπ/2のときには、MZ干渉計12への入力の位相差は、受信パルス対の位相差がπ/2シフトした値、すなわち、受信位相差{π/2, 3π/2}がそれぞれ{0, π}となってMZ干渉計12に入力される。従って、位相変調器11での印加位相がπ/2のときには、能動的選択測定系は{π/2, 3π/2}識別系となる。そこで受信者は、位相変調器で付加する位相を0またはπ/2のいずれかとすることにより、{0, π}識別系または{π/2, 3π/2}識別系を選択して受信光子対を測定することと等価の動作を得る。以上が、能動的選択測定系の構成及び動作原理である(例えば、特許文献1参照)。
図2に、従来技術における、受信者の受動的選択測定系の構成を示す。受動的選択測定系は、ビームスプリッター21により分岐された伝送路の出力にそれぞれ接続されたMZ干渉計22,23と、各々のMZ干渉計22,23の出力にそれぞれ接続された光子検出器24-27から構成されている。伝送路から受信して光子対は2分岐されてそれぞれのMZ干渉計22,23に入力される。一方のMZ干渉計22の伝搬位相差は0、他方のMZ干渉計23の伝搬位相差はπ/2、とする。上述のように、位相差0のMZ干渉計22は{0, π}識別系として機能する。
図4に、位相差π/2のMZ干渉計23における光子検出確率を示す。こちらの検出特性は、図2に示した位相差0のMZ干渉計12の特性に対して、π/2シフトした正弦波状であり、このため、入力位相差がπ/2または3π/2のときに光子検出器26または光子検出器27で確定的に光子検出される。すなわち、位相差π/2のMZ干渉計は{π/2, 3π/2}識別系として機能する。
図4に、位相差π/2のMZ干渉計23における光子検出確率を示す。こちらの検出特性は、図2に示した位相差0のMZ干渉計12の特性に対して、π/2シフトした正弦波状であり、このため、入力位相差がπ/2または3π/2のときに光子検出器26または光子検出器27で確定的に光子検出される。すなわち、位相差π/2のMZ干渉計は{π/2, 3π/2}識別系として機能する。
受信者は、受信パルス対を2分岐して、一方を位相差0のMZ干渉計22へ、他方を位相差π/2のMZ干渉計23へ、入力している。ここで、受信パルス対の光子数は1未満であるので、光子検出されるのは2つの干渉計のどちらか一方であり、両者でともに光子検出されることはない。前者で光子検出されれば{0, π}識別系で受信光子対を測定したことと等価であり、後者で光子検出されれば{π/2, 3π/2}識別系で測定したことと等価である。どちらで検出されるかは完全にランダムである。すなわち、図3の構成を用いると、2つの識別系をランダムに選択して受信光子対を測定することと等価となる。以上が、受動的選択測定系の構成及び動作原理である(例えば、特許文献2参照)。
K.Inoue, "Quantum key distribution technologies", IEEE Journal of Selected Topics in Quantum Electronics, 12(4), 888-896(2006)
上記のように、位相エンコードBB84プロトコルの実装にあたっては、受信者は能動的選択測定系または受動的選択測定系を用いて受信光子対を測定することになる。しかし、これらの測定系には以下の課題が挙げられる。
能動的選択測定系では、ファイバー伝送されてきたパルス対に位相変調器により0またはπ/2の位相を付与している。しかし、一般に、位相変調器には偏波依存性があることが知られている。すなわち、特定の偏波状態の入力光でなければ、効率よく位相変調されない。そのため、位相変調器モジュールには、入力段に変調効率のよい偏波光成分のみを透過させる偏光子が備えられていることが多い。一方、ファイバー伝搬してきた光の偏波状態は定まっておらず、時間的にランダムに変動する。但し、変動の時間オーダーはパルス間隔に比べて十分遅い。このようなパルス対に対して所定の位相変調を加えるためには、位相変調器11の前段で受信光の偏波状態を所定の状態に制御する必要がある。そのため、能動的選択測定系では、偏波制御装置15を備える必要があり、装置構成が煩雑になる。
一方、受動的選択測定系は、上記偏波制御装置が不要であるように構成されている。しかし、そのために、MZ干渉計と光子検出器を2セット備える必要があるため、装置構成が大規模化・煩雑化する。加えて、光子検出器は高価であり、高コストの要因ともなる。また、光子検出器の数が多いため、検出器の雑音(ダークカウント)によるビット誤り率が大きく、量子鍵配送システムの性能劣化要因となる。
本発明は上記事情に鑑み、位相エンコードBB84方式の量子鍵配送システムにおける受信者の装置構成において、能動的選択測定系を用いながら、偏波制御装置を備えることなく、偏波無依存で秘密鍵を供給する量子鍵配送装置を提供することを目的とする。
この目的を達成するため、本発明は、共通鍵暗号通信のための秘密鍵を供給する量子鍵配送装置であって、光源から送出された信号光のパルス列に対して位相差を0とπまたはπ/2と3π/2に変調する位相変調器と、前記位相変調器の出力に接続され、変調された信号光を2分岐するハーフミラーと、分岐された一方の経路に付与された偏波変換手段と、分岐された他方の経路と前記偏波変換手段の出力とに接続された偏波ビームスプリッターであって、前記信号光のパルス列をパルス間隔の半分の時間だけずらして合波することにより、奇数番目のパルスと偶数番目のパルスの偏波状態が、交互に直行した等間隔のパルス列が出力される偏波ビームスプリッターとを備えたことを特徴とする量子鍵配送装置を提供する。
本発明によれば、受信者が位相変調器を用いる能動的選択測定系を備えた量子鍵配送システムにおいて、偏波制御装置を用いることなく秘密鍵を供給する量子鍵配送装置および量子鍵配送方法を提供することが可能となる。
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について、詳細に説明する。本実施形態における受信者の装置構成は、図1に示す能動的選択測定系を基本としている。しかし、直交偏波合成の効果を利用し、送信者の装置構成が偏波状態に依らず常に一定の確率で光子が検出されるような信号光を送出することにより、受信者の装置構成において偏波制御装置を不要にするという点で、従来技術とは異なる。
(第1の実施形態)
図5に本発明における第1の実施形態の送信者の装置構成を示す。本実施形態における送信者の装置は、レーザー光源51と、レーザー光源51の出力に接続された強度変調器52と、強度変調器52の出力に接続された位相変調器53と、位相変調器53から出力された信号光を2分岐するハーフミラー54と、分岐した信号光の両方の伝送路に接続される偏波ビームスプリッター(Polarization Beam splitter:以下、PBS55という)と、PBS55の出力に接続された減衰器56から構成される。
まず、レーザー光源51から出力された信号光を強度変調器52によって連続パルスとし、位相変調器53により、その位相差を0またはπ/2またはπまたは3π/2とする。通常、レーザー光源51から出力された光は横直線(Horizontal:以下、Hという)偏波状態であることから、この連続パルスの信号光は、H偏波状態となっている。次に、位相変調された信号光のパルス対をハーフミラー54で2分岐し、一方の経路の信号光の偏波状態を縦直線(Vertical:以下、Vという)偏波状態に変換する。このような偏波変換手段は、光経路を偏波保持ファイバーとし、その偏波軸を90°捩って接続することや半波長版を使用することにより、実装可能である。2分岐された信号光のパルス対は、パルス間隔時間τの半分の時間τ/2だけずらされて、PBS55により合波される。これにより、PBS55からは、偏波状態がH-V-H-Vである等間隔の4連続パルスが出力される。PBS55から出力される信号光は、減衰器56によって光子数1未満まで減衰された後、ファイバー伝送路へ送出される。
図5に本発明における第1の実施形態の送信者の装置構成を示す。本実施形態における送信者の装置は、レーザー光源51と、レーザー光源51の出力に接続された強度変調器52と、強度変調器52の出力に接続された位相変調器53と、位相変調器53から出力された信号光を2分岐するハーフミラー54と、分岐した信号光の両方の伝送路に接続される偏波ビームスプリッター(Polarization Beam splitter:以下、PBS55という)と、PBS55の出力に接続された減衰器56から構成される。
まず、レーザー光源51から出力された信号光を強度変調器52によって連続パルスとし、位相変調器53により、その位相差を0またはπ/2またはπまたは3π/2とする。通常、レーザー光源51から出力された光は横直線(Horizontal:以下、Hという)偏波状態であることから、この連続パルスの信号光は、H偏波状態となっている。次に、位相変調された信号光のパルス対をハーフミラー54で2分岐し、一方の経路の信号光の偏波状態を縦直線(Vertical:以下、Vという)偏波状態に変換する。このような偏波変換手段は、光経路を偏波保持ファイバーとし、その偏波軸を90°捩って接続することや半波長版を使用することにより、実装可能である。2分岐された信号光のパルス対は、パルス間隔時間τの半分の時間τ/2だけずらされて、PBS55により合波される。これにより、PBS55からは、偏波状態がH-V-H-Vである等間隔の4連続パルスが出力される。PBS55から出力される信号光は、減衰器56によって光子数1未満まで減衰された後、ファイバー伝送路へ送出される。
送信者から送出された信号光は、ファイバー伝送路を経て、偏波制御装置を備えない能動的選択測定系の受信者に到達する。ファイバー伝搬においては、偏波状態自体は変動するが、直交性は保たれる。従って、受信した4連続パルスを有する信号光において、第1パルスと第3パルスの偏波状態、および第2パルスと第4パルスの偏波状態は必ず直交している。
このような偏波状態の信号光が、能動的選択測定系の位相変調器11に入力されると、特定の偏波成分、例えばH偏波成分のみに位相変調がかかり、それと直交する成分は変調器モジュール入力段の偏光子により除外されるが、奇数番目パルスと偶数番目パルスの偏波状態は直交しているので、どちらかの2パルスには必ず位相変調がかかる。例えば、奇数番目パルスがH偏波/偶数番目パルスがV偏波だと、後者は偏光子で全て除去されるが、前者は完全に位相変調され、出力される。あるいは、奇数番目パルスが右廻り円偏波/偶数番目パルスが左廻り円偏波の場合、両者ともにH偏波に射影された成分(すなわち半分の強度分)が位相変調されて出力される。すなわち、4パルス全体でみると、入力偏波状態に依らず、常に入力信号光の半分の成分が位相変調されて出力されることになる。
位相変調器11からの出力光は遅延MZ干渉計12に入力される。ここで、MZ干渉計12の遅延時間は、送信者において2分岐される前のパルス間隔τに等しいものとする。すると、MZ干渉計12の出力段では、奇数番目の2パルス同士及び偶数番目の2パルス同士が重なり合う。重なり合う2パルスは同じ偏波状態なので、互いに干渉し、その位相差に応じて光子検出される。
本形態により信号光を送受信した後、送信者と受信者は、従来技術と同様に秘密鍵ビットを生成する。
以上述べた通り、本実施例形態の受信者の装置構成では、送信者での直交偏波合成の効果により、伝送信号光の偏波状態に依らず、常に一定の確率で光子が検出される。従って、能動的選択測定系が偏波制御装置を備えることなく、偏波無依存で秘密鍵を供給する量子鍵配送装置を提供できる。
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、偏波状態が交互に直交した4連続パルスを送受信することにより能動的選択測定系を偏波無依存化したが、第2の実施形態によれば、これを連続パルス列に拡張しても、同様に秘密鍵を供給することができる。
第1の実施形態では、偏波状態が交互に直交した4連続パルスを送受信することにより能動的選択測定系を偏波無依存化したが、第2の実施形態によれば、これを連続パルス列に拡張しても、同様に秘密鍵を供給することができる。
図6に本発明における第2の実施形態の送信者の装置構成を示す。本実施形態における送信者の装置は、コヒーレントパルス光源61と、コヒーレントパルス光源61の出力に接続された位相変調器62と、位相変調器62から出力された信号光を2分岐するハーフミラー63と、分岐した信号光の両方の伝送路に接続されるPBS64と、PBS55の出力に接続された減衰器65から構成される。第2の実施形態では、第1の実施形態でレーザー光源からの光を強度変調することにより光2連続パルスを有する信号光を生成した部分を、まとめてコヒーレントパルス光源61としている。このコヒーレントパルス光源61からH偏波状態で時間間隔τの連続パルス列を有する信号光出力し、位相変調器62により信号光における隣接パルス間の位相差を0またはπ/2またはπまたは3π/2とする。次に、この位相変調されたパルス列を有する信号光をハーフミラー63で2分岐し、一方の経路の信号光をV偏波状態に変換する。その後、2分岐した両者の信号光を(m + 1/2)τの時間差をつけて(但し、mは整数)、PBS64にて合波する。これにより、偏波状態が交互に直交した時間間隔τ/2の連続パルス列を有する信号光が出力される。この信号光を、減衰器65によって平均光子数を1未満まで減衰させ、ファイバー伝送路へ送出する。
受信者は、ファイバー伝送路を経て送られてきた信号光を、第1の実施形態と同様に、偏波制御装置を備えない能動的選択測定系により測定する。MZ干渉計12の遅延時間も第1の実施形態と同様にτとする。これにより、奇数番目の隣接パルス及び偶数番目の隣接パルスが干渉し、その位相差に応じて光子が検出される。ここで、MZ干渉計12の前の位相変調器11の偏波依存性のため、信号光における奇数番目パルスからの光子検出確率及び偶数番目パルスからの光子検出確率は、受信時の偏波状態に応じ、それぞれ揺らいでいる。しかし、両者は直交偏波関係にあるため、全体の光子検出確率は常に一定である。パルス列送受信後、送信者及び受信者は、従来技術と同様の手順により、秘密鍵を供給する。
以上述べたように、本発明における第2の実施例の受信者の装置構成でも、送信者の装置による直交偏波合成の効果により、受信信号光の偏波状態に依らず常に一定の確率で光子が検出される。従って、能動的選択測定系が偏波制御装置を備えることなく、偏波無依存で秘密鍵を供給する量子鍵配送装置を提供できる。
従来よりも受信者の装置構成が簡便な量子暗号装置および量子鍵配送方法として、光通信システムへの適用が見込まれる。
11,53,62…位相変調器、12,22,23…MZ干渉計,13,14,24,25,26,27…光子検出器、15…偏波制御装置、21…ビームスプリッター、51…レーザー光源、52…強度変調器、54,63…ハーフミラー、55,64…PBS、56,65…減衰器、61…コヒーレントパルス光源、71…送信者の装置、72…信号光、73…伝送路、74…受信者の装置
Claims (6)
- 共通鍵暗号通信のための秘密鍵を供給する量子鍵配送装置であって、
光源から送出された信号光のパルス列に対して位相差を0とπまたはπ/2と3π/2に変調する第1の位相変調器と、
前記第1の位相変調器の出力に接続され、変調された信号光を2分岐するハーフミラーと、
分岐された一方の経路に付与された偏波変換手段と、
分岐された他方の経路と前記偏波変換手段の出力とに接続された偏波ビームスプリッターであって、前記信号光のパルス列をパルス間隔の半分の時間だけずらして合波することにより、奇数番目のパルスと偶数番目のパルスの偏波状態が、交互に直行した等間隔のパルス列が出力される偏波ビームスプリッターと
を備えたことを特徴とする量子鍵配送装置。 - 請求項1に記載の量子鍵配送装置であって、
前記信号光のパルス列に0またはπ/2の位相を付加する第2の位相変調器と、
前記第2の位相変調器から出力された前記信号光を分岐し、2経路の伝搬位相差が2πの整数倍に設定されたマッハツェンダー干渉計と、
前記マッハツェンダー干渉計の出力に接続された光子検出器とを備えた受信装置に、
伝送路を介して接続される
量子鍵配送装置。 - 請求項1または2に記載の量子鍵配送装置であって、
前記光源は、
レーザー光源と、
前記レーザー光源からの連続光を等間隔のパルス列に変調する強度変調器と
を含むことを特徴とする量子鍵配送装置。 - 請求項1または2に記載の量子鍵配送装置であって、
前記光源は、コヒーレントパルス光源であることを特徴とする量子鍵配送装置。 - 共通鍵暗号通信のための秘密鍵を供給する量子鍵配送システムであって、
送信者の装置が、
光源から送出された信号光のパルス列に対して位相差を0とπまたはπ/2と3π/2に変調する第1の位相変調器と、
前記第1の位相変調器の出力に接続され、変調された前記信号光を2分岐するハーフミラーと、
分岐された一方の経路に付与された偏波変換手段と、
分岐された他方の経路と前記偏波変換手段の出力とに接続された偏波ビームスプリッターであって、前記信号光のパルス列をパルス間隔の半分の時間だけずらして合波することにより、奇数番目のパルスと偶数番目のパルスの偏波状態が、交互に直行した等間隔のパルス列が出力される偏波ビームスプリッターと
を備え、
受信者の装置が、
前記信号光のパルス列に0またはπ/2の位相を付加する第2の位相変調器と、
前記第2の位相変調器から出力された前記信号光を分岐し、2経路の伝搬位相差が2πの整数倍に設定されたマッハツェンダー干渉計と、
前記マッハツェンダー干渉計の出力に接続された光子検出器と
を備え、
前記受信者の装置が伝送路を介して接続される量子鍵配送システム。 - 共通鍵暗号通信のための秘密鍵を供給する量子鍵配送方法であって、
送信者が信号光を送出する工程が、
連続パルスとした前記信号光における隣接パルスの位相差を0またはπ/2またはπまたは3π/2に位相変調する工程と、
前記位相変調された前記信号光を2分岐し、一方の光の偏波状態を縦直線偏波状態に変換することにより、奇数番目のパルスと偶数番目のパルスの偏波状態が交互に直行させた等間隔の連続パルスとする工程と、
前記2分岐された前記信号光のパルスの位相をパルス間隔時間の半分の時間だけずらした上で合波する工程と、
前記合波された前記信号光の光子数を1未満まで減衰する工程と、
前記減衰された前記信号光を、ファイバー伝送路を介して、受信者に伝送する工程と、
を備え
前記伝送された前記信号光を、受信者が受信する工程が、
前記信号光の連続パルスにおける前記奇数番目のパルスの位相差、および前記偶数番目のパルスの位相差に、0またはπ/2の位相を付与する工程と、
位相が付与された前記連続パルスを、2経路の伝搬時間差が前記連続パルスの時間間隔の2倍、かつ伝搬位相差が0である遅延マッハツェンダー干渉計に入力する工程と、
前記遅延マッハツェンダー干渉計の2つの出力端子においてそれぞれ光子を検出する工程と、
を備えた量子鍵配送方法。
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JP2021074872A JP2022169070A (ja) | 2021-04-27 | 2021-04-27 | 量子鍵配送装置、量子鍵配送システムおよび量子鍵配送方法 |
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