JP2022165899A - 融合体 - Google Patents

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Akira Nukazuka
真菜 浅野
Mana Asano
渓 早川
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一彦 加納
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Abstract

【課題】被検出物質が他の物質に接近している場合でも、分析感度が低下し難い融合体を提供すること。【解決手段】融合体7は、被検出物質1と結合する活性を有する結合物質9と、前記結合物質に融合し、観測可能な現象を生じる標識体11と、を備える。前記結合物質は、低分子タンパク質製剤、又は核酸アプタマーである。前記標識体は、例えば、酵素を含む。前記酵素は、例えば、水素を産生する代謝、水素を消費する代謝、又は、水素を吸収する代謝を誘発する。【選択図】図1

Description

本開示は融合体に関する。
バイオテクノロジー、ヘルスケア等の技術分野において、試料中の被検出物質を分析する分析方法が用いられる。分析方法として、酵素結合免疫吸着法(Enzyme-Linked ImmunoSorbent Assay,ELISA)が知られている。被検出物質はタンパク質等である。
酵素結合免疫吸着法では、免疫グロブリンと標識体との融合体を、被検出物質に結合させる。非特許文献1に融合体が記載されている。免疫グロブリンとして、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体等がある。
Biosensors and Bioelectronics 117 (2018) 175-182
試料中において、被検出物質が他の物質に接近している場合がある。例えば、複数の被検出物質が複合体を形成している場合や、細胞膜等の外殻上に被検出物質が高密度に存在する場合、被検出物質は、隣の被検出物質に接近している。また、被検出物質が細胞膜等の外殻上に存在し、かつ被検出物質の近傍に他の巨大物質が存在する場合、被検出物質は、他の巨大物質に接近している。
免疫グロブリンのサイズは大きい。そのため、被検出物質が他の物質に接近している場合、免疫グロブリンを含む融合体は、他の物質からの干渉を受け、被検出物質に結合できないことがある。その結果、被検出物質の分析感度が低下する。
本開示の1つの局面では、被検出物質が他の物質に接近している場合でも、分析感度が低下し難い融合体を提供することが好ましい。
本開示の1つの局面は、被検出物質(1)と結合する活性を有する結合物質(9)と、前記結合物質に融合し、観測可能な現象を生じる標識体(11)と、を備え、前記結合物質は、低分子タンパク質製剤、又は核酸アプタマーである融合体(7)である。
本開示の1つの局面である融合体が備える結合物質は、低分子タンパク質製剤、又は核酸アプタマーである。そのため、本開示の1つの局面である融合体のサイズは、免疫グロブリンを含む融合体に比べて小さい。よって、被検出物質が他の物質に接近している場合でも、本開示の1つの局面である融合体は、他の物質からの干渉を受け難く、被検出物質に結合し易い。その結果、本開示の1つの局面である融合体を用いれば、被検出物質の分析感度を向上させることができる。
融合体の構成、及び被検出物質の分析方法を表す説明図である。 融合体を合成する工程のフローを表す説明図である。 アルカリフォスファターゼの酵素活性により生じる代謝を表す説明図である。 分析方法のフローを表す説明図である。 吸光度の測定結果を表す説明図である。 分析方法のフローを表す説明図である。 pHの記録結果を表す説明図である。 標識体の機能の発現を確認するための試験におけるフローを表す説明図である。 pHの記録結果を表す説明図である。
本開示の例示的な実施形態について図面を参照しながら説明する。
1.融合体
(1-1)融合体の構成
融合体は、結合物質を備える。結合物質は、被検出物質と結合する活性(以下では結合活性とする)を有する。結合物質は、標識体と融合した状態でも、結合活性を有する。
結合物質は、低分子タンパク質製剤、又は核酸アプタマーである。低分子タンパク質製剤を構成するアミノ酸の数は、例えば、5以上200以下である。アミノ酸の数が200以下である場合、被検出物質が他の物質に接近していても、融合体は、他の物質からの干渉を受け難く、被検出物質に結合し易い。低分子タンパク質製剤は、例えば、アミノ酸から成る単位が複数連結したものであってもよい。各単位のアミノ酸の数は、5以上200以下であることが好ましい。各単位のアミノ酸の数が200以下である場合、被検出物質が他の物質に接近していても、融合体は、他の物質からの干渉を受け難く、被検出物質に結合し易い。
低分子タンパク質製剤として、例えば、フラグメント抗体、一本鎖抗体、ディアボディ(Diabody)、ナノボディ(Nanobody)、VHH、ペプチドアプタマー等が挙げられる。低分子タンパク質製剤は、例えば、モノクローナル抗体及びポリクローナル抗体のいずれでもない。
核酸アプタマーの塩基数は、例えば、10以上100以下である。塩基数が100以下である場合、被検出物質が他の物質に接近していても、融合体は、他の物質からの干渉を受け難く、被検出物質に結合し易い。
核酸アプタマーは、例えば、核酸から成る単位が複数連結したものであってもよい。各単位の塩基数は、10以上100以下であることが好ましい。各単位の塩基数が100以下である場合、被検出物質が他の物質に接近していても、融合体は、他の物質からの干渉を受け難く、被検出物質に結合し易い。
核酸アプタマーとして、例えば、DNAアプタマー、RNAアプタマーが挙げられる。結合物質は、例えば、インビトロプロセスにより化学的に合成できる。
結合物質は、例えば、抗体と抗原の間で生じるタイプの分子間相互作用により、被検出物質と結合する。抗体と抗原の間で生じるタイプの分子間相互作用による結合として、例えば、水素結合、静電気的相補性による結合、疎水性接触による結合、立体接合等が挙げられる。
融合体は、標識体を備える。標識体は、結合物質に融合している。標識体は、何らかの機能を発現する。標識体が機能を発現した場合、観測可能な現象が生じる。観測可能な現象として、例えば、イオンの生産、消費、又は吸収等が挙げられる。イオンとして、例えば、水素イオン、カリウムイオン、ナトリウムイオン、カルシウムイオン、リチウムイオン、アンモニウムイオン、塩化物イオン等が挙げられる。観測可能な現象として、例えば、酸化還元、発色、蛍光、発光、燐光、吸熱、発熱、又は沈殿等が挙げられる。生じた現象を、例えばその場で観測することで、標識体を検出することができる。また、融合体が被検出物質に結合している場合、標識体を検出することで、被検出物質を間接的に検出することができる。
標識体として、例えば、磁気標識、蛍光標識、酵素、DNAザイム、RNAザイム、化学発光プローブ、ナノ粒子等から成る群から選択される1以上が挙げられる。ナノ粒子として、例えば、金属粒子、非金属粒子、色素粒子、顔料粒子、電気化学的活性種、半導体ナノ結晶、量子ドットフルオロフォア等から成る群から選択される1以上が挙げられる。
酵素は、例えば、基質を出発物質とする代謝を誘発する活性(以下では酵素活性とする)を有する。代謝として、例えば、イオンを産生する代謝、イオンを消費する代謝、イオンを吸収する代謝、特定の波長の光を吸収する物質を生成する代謝等がある。イオンとして、例えば、水素イオン、カリウムイオン、ナトリウムイオン、カルシウムイオン、リチウムイオン、アンモニウムイオン、塩化物イオン等が挙げられる。
イオンを産生する代謝、イオンを消費する代謝、又は、イオンを吸収する代謝が生じると、溶液におけるイオン濃度が変化する。特定の波長の光を吸収する物質が生成すると、溶液が発色又は発光する。酵素活性は、酵素が発現する機能に対応する。溶液におけるイオン濃度の変化、及び、溶液の発色又は発光は、酵素活性により生じる観測可能な現象に対応する。
酵素として、例えば、1,3-プロパンジオールデヒドロゲナーゼ、15-ヒドロキシプロスタグランジンデヒドロゲナーゼ、1H-ピロール-2-カルボニル-[ペプチジル担体タンパク質]クロリナーゼ、2,4-ジクロロベンゾイル-CoAレダクターゼ、2,5-ジオキソ吉草酸デヒドロゲナーゼ、2-アミノベンゼンスルホン酸2,3-ジオキシゲナーゼ、2-イミノブタノエート/ 2-イミノプロパノエートデアミナーゼ、2-エン酸レダクターゼ、2'-デヒドロカナマイシンレダクターゼ、3,4-ジヒドロキシフェニルアラニン還元性デアミナーゼ、3α-ヒドロキシステロイド3-デヒドロゲナーゼ、3-アミノブチリル-CoAアンモニアリアーゼ、3-オキソ-5α-ステロイド4-デヒドロゲナーゼ、3-オキソステロイド-1-デヒドロゲナーゼ、3-クロロ-D-アラニンデヒドロクロリナーゼ、4-クロロフェニル酢酸3,4-ジオキシゲナーゼ、4-クロロベンゾイル-CoAデハロゲナーゼ、4-クロロ安息香酸デハロゲナーゼ、4-トリメチルアンモニオブチルアルデヒドデヒドロゲナーゼ、4-メチルアミノブタノエートオキシダーゼ、4-メチレングルタミン酸-アンモニアリガーゼ、5-ホスホオキシ-L-リジンホスホリアーゼ、7,8-ジデメチル-8-ヒドロキシ-5-デアザリボフラビンシンターゼ、7-カルボキシ-7-デアザグアニンシンターゼ、7-クロロ-L-トリプトファン6-ハロゲナーゼ、7-シアノ-7-デアザグアニンシンターゼ、AMPデアミナーゼ、CTPシンターゼ、DDT-デヒドロクロリナーゼ、dTDP-4-アミノ-4,6-ジデオキシ-D-グルコースアンモニアリアーゼ、D-アラビノース-1-デヒドロゲナーゼ、D-アルギニンデヒドロゲナーゼ、D-キシロースレダクターゼ、D-グルコサミネート-6-リン酸アンモニアリアーゼ、D-セリンアンモニアリアーゼ、D-乳酸デヒドロゲナーゼ、GDP-4-デヒドロ-6-デオキシ-α-D-マンノース3-デヒドラターゼ、GMPシンターゼ、L-2-アミノ-4-クロロペント-4-エノエートデヒドロクロリナーゼ、L-シスチンβ-リアーゼ、L-システインデスルフィダーゼ、L-システイン酸スルホリアーゼ、L-セリンアンモニアリアーゼ、L-トリプトファンアンモニアリアーゼ、L-リジンシクロデアミナーゼ、N1-アセチルポリアミンオキシダーゼ、N8-アセチルスペルミジンオキシダーゼ、NAD +-ジフタミドADP-リボシルトランスフェラーゼ、NAD +シンターゼ、NAD +-二窒素レダクターゼADP-D-リボシルトランスフェラーゼ、N-スクシンラルギニンジヒドロラーゼ、S-(ヒドロキシメチル)ミコチオールデヒドロゲナーゼ、S-カルボキシメチルシステインシンターゼ、UDP-2-アセトアミド-2,6-β-L-アラビノ-ヘキシル-4-オースレダクターゼ、UDP-N-アセチル-2-アミノ-2-デオキシグルクロネートデヒドロゲナーゼ、UDP-N-アセチル-D-マンノサミンデヒドロゲナーゼ、UDP-N-アセチル-α-D-キノボサミンデヒドロゲナーゼ、UDP-N-アセチルグルコサミン3-デヒドロゲナーゼ、UDP-N-アセチルグルコサミン6-デヒドロゲナーゼ、UDP-グルクロン酸デヒドロゲナーゼ、β-アラニル-CoAアンモニアリアーゼ、β-ウレイドプロピオナーゼ、β-ラクタマーゼ、γ-ブチロベタインジオキシゲナーゼ、アスパラギニル-tRNAシンターゼ、アスパラギンシンターゼ、アスパラギン酸アンモニアリアーゼ、アスパラギン酸-アンモニアリガーゼ、アスパラギン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ、アスパラギン酸デヒドロゲナーゼ、アデニリル硫酸塩-アンモニアアデニリルトランスフェラーゼ、アデノシルクロリドシンターゼ、アトラジンクロロヒドロラーゼ、アミノメチルトランスフェラーゼ、アラニンデヒドロゲナーゼ、アラントイン酸デイミナーゼ、アルカリフォスファターゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ、アルデヒドデヒドロゲナーゼ、アンモニアキナーゼ、アンモニアモノオキシゲナーゼ、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ、イミダゾールグリセロール-リン酸シンターゼ、ウリカーゼ、ウレアーゼ、ウレイドグリコレートアミドヒドロラーゼ、ウロン酸デヒドロゲナーゼ、エタノールアミンアンモニアリアーゼ、エリスロ-3-ヒドロキシ-L-アスパラギン酸アンモニアリアーゼ、オクトパミンデヒドラターゼ、オルニチンシクロデアミナーゼ、ガラクトースデヒドロゲナーゼ、カルバメートキナーゼ、カルバモイル-セリンアンモニアリアーゼ、カルバモイルリン酸シンターゼ、カルボニルレダクターゼ、ギ酸デヒドロゲナーゼ、グリシンレダクターゼ、グリセロール-3-リン酸デヒドロゲナーゼ、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ、グルコースオキシダーゼ、グルコースデヒドロゲナーゼ、グルコキナーゼ、グルコサミネートアンモニアリアーゼ、グルコサミン-6-リン酸デアミナーゼ、グルタミニル-tRNAシンターゼ、グルタミンシンテターゼ、グルタミン酸シンターゼ、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ、クロトノベテニル-CoAヒドラターゼ、クロライドペルオキシダーゼ、コプロポルフィリノーゲンデヒドロゲナーゼ、コリンオキシダーゼ、コリンモノオキシゲナーゼ、コレステロールオキシダーゼ、ジアセチルレダクターゼ、ジアミノピメリン酸デヒドロゲナーゼ、ジアミノプロピオン酸アンモニアリアーゼ、シキミ酸デヒドロゲナーゼ、シクロヘキサン-1,2-ジオールデヒドロゲナーゼ、ジクロロクロモピロレートシンターゼ、ジクロロメタンデハロゲナーゼ、シスタチオニンγ-リアーゼ、システイン-S-コンジュゲートβ-リアーゼ、ジヒドロリポイルデヒドロゲナーゼ、ジフチン-アンモニアリガーゼ、シンナモイル-補酵素A-レダクターゼ、スクシニルグルタミン酸-セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ、スタキドリンN-デメチラーゼ、スレオ-3-ヒドロキシ-D-アスパラギン酸アンモニアリアーゼ、スレオ-3-ヒドロキシ-L-アスパラギン酸アンモニアリアーゼ、スレオニンアンモニアリアーゼ、セリン硫酸アンモニアリアーゼ、チオレドキシンジスルフィドレダクターゼ、チロシンアンモニアリアーゼ、チロシンフェノールリアーゼ、テトラクロロエテン還元デハロゲナーゼ、テトラサイクリン7-ハロゲナーゼ、トリプトファナーゼ、トリプトファン5-ハロゲナーゼ、トリプトファン6-ハロゲナーゼ、トリプトファン7-ハロゲナーゼ、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸-デヒドロゲナーゼ、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸-ヘムタンパク質レダクターゼ、ニトロゲナーゼ、バナジウム依存性ニトロゲナーゼ、ハパリンドール型アルカロイドクロリナーゼ、ヒスチジンアンモニアリアーゼ、ヒドラジンシンターゼ、ヒドラジンデヒドロゲナーゼ、ヒドロキシメチルビランシンターゼ、ヒドロキシルアミンレダクターゼ、ピリドキサール5'-リン酸シンターゼ、ヒ酸レダクターゼ、フェニルアラニン/チロシンアンモニアリアーゼ、フェニルアラニン2-モノオキシゲナーゼ、フェニルアラニンアンモニアリアーゼ、フェレドキシン-ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドりん酸レダクターゼ、フェレドキシン-亜硝酸還元酵素、フマル酸レダクターゼ、プロトポルフィリノーゲンオキシダーゼ、ベタインアルデヒドデヒドロゲナーゼ、ベタインレダクターゼ、ペルオキシダーゼ、ホモシステインデスルフヒドラーゼ、ホモスペルミジンシンターゼ、ホルムイミドイルテトラヒドロ葉酸シクロデアミナーゼ、ミエロペルオキシダーゼ、メタノールデヒドロゲナーゼ、メタンモノオキシゲナーゼ、メチオニンγ-リアーゼ、メチルアスパラギン酸アンモニアリアーゼ、メチルアミンデヒドロゲナーゼ、メチレンジ尿素デアミナーゼ、ラクトアルデヒドデヒドロゲナーゼ、リボース-5-リン酸-アンモニアリガーゼ、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ルブレドキシン-ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドりん酸レダクターゼ、亜塩素酸塩O2-リアーゼ、亜硝酸レダクターゼ、亜硫酸デヒドロゲナーゼ、塩化物ペルオキシダーゼ、塩素酸レダクターゼ、脂質IIイソグルタミニルシンターゼ、炭酸アンヒドラーゼ、及び非特異的ポリアミンオキシダーゼから成る群から選択される1以上が挙げられる。
例えば、標識体と結合物質とは、それぞれ化学置換基又は核酸結合タンパク質を備える。例えば、標識体が備える化学置換基又は核酸結合タンパク質と、結合物質が備える化学置換基又は核酸結合タンパク質とが結合することにより、標識体は結合物質に融合している。
標識体が備える化学置換基として、例えば、ビオチン、一級アミン、アジド、アルキン、ジベンゾシクロオクチン、ビシクロノニン、2´-O-プロパルギル、2´-O-プロパルギル、チオール、アビジン、ストレプトアビジン、ニュートラアビジン、N-ヒドロキシスクシンイミド、マレイミド、及び5-ハロウラシル等から成る群から選択される1以上が挙げられる。5-ハロウラシルとして、例えば、5-ヨードウラシル、5-ブロモウラシル等が挙げられる。5-ハロウラシルは、UV架橋が可能な化学置換基である。
標識体が備える核酸結合タンパク質として、例えば、ジンクフィンガー、CRISPR等から成る群から選択される1以上が挙げられる。
結合物質が備える化学置換基として、例えば、ビオチン、一級アミン、アジド、アルキン、ジベンゾシクロオクチン、ビシクロノニン、2´-O-プロパルギル、2´-O-プロパルギル、チオール、アビジン、ストレプトアビジン、ニュートラアビジン、N-ヒドロキシスクシンイミド、マレイミド、及び5-ハロウラシル等から成る群から選択される1以上が挙げられる。5-ハロウラシルとして、例えば、5-ヨードウラシル、5-ブロモウラシル等が挙げられる。5-ハロウラシルは、UV架橋が可能な化学置換基である。
結合物質が備える核酸結合タンパク質として、例えば、ジンクフィンガー、CRISPR等から成る群から選択される1以上が挙げられる。
標識体が備える化学置換基と、結合物質が備える化学置換基とは異なる。例えば、標識体が備える化学置換基がビオチンである場合、結合物質が備える化学置換基は、アビジン、ストレプトアビジン、又はニュートラアビジンである。
被検出物質として、例えば、タンパク質、糖、脂質、核酸、低分子化合物、抗原、細胞、ウイルス等が挙げられる。抗原として、例えば、細胞やウイルスが提示する抗原、又は、細胞やウイルスが含む抗原等が挙げられる。細胞やウイルスが提示する抗原、又は、細胞やウイルスが含む抗原として、例えば、新型コロナウイルスSARS-CoV-2におけるRBD領域(以下ではRBDとする)等が挙げられる。ウイルスとして、例えば、新型コロナウイルスSARS-CoV-2等が挙げられる。
(1-2)融合体が奏する効果
本開示の融合体は以下の効果を奏する。
(1A)複数の被検出物質が複合体を形成している場合がある。複合体として、例えば、二量体、三量体、四量体等が挙げられる。1つの複合体において、それぞれの被検出物質は、他の被検出物質に接近している。
融合体のサイズが小さいため、融合体が1つの被検出物質に近づくとき、他の被検出物質からの干渉を受けにくい。そのため、融合体は、複合体を形成している被検出物質のそれぞれに結合することができる。その結果、本開示の融合体を用いれば、被検出物質の分析感度を向上させることができる。
生体中のタンパク質は、複合体を形成していることが多い。生体中のタンパク質として、例えば、膜タンパク質、外殻タンパク質等が挙げられる。膜タンパク質として、例えば、受容体タンパク質等が挙げられる。外殻タンパク質として、例えば、ウイルスのスパイクタンパク質等が挙げられる。本開示の融合体を用いれば、生体中のタンパク質が複合体を形成している場合でも、生体中のタンパク質の分析感度を向上させることができる。
(1B)複数の被検出物質が、例えば細胞膜等の外殻上に、高密度に存在する場合がある。この場合、それぞれの被検出物質は、隣の被検出物質に非常に接近している。
融合体のサイズが小さいため、融合体が1つの被検出物質に近づくとき、他の被検出物質からの干渉を受けにくい。そのため、融合体は、高密度に存在する被検出物質のそれぞれに結合することができる。その結果、本開示の融合体を用いれば、被検出物質の分析感度を向上させることができる。
生体中のタンパク質は、細胞膜の外殻上に、高密度に存在することが多い。生体中のタンパク質として、前記(1A)で挙げたタンパク質がある。本開示の融合体を用いれば、生体中のタンパク質が細胞膜の外殻上に高密度に存在する場合でも、生体中のタンパク質の分析感度を向上させることができる。
(1C)被検出物質が、例えば細胞膜等の外殻上に存在し、かつ被検出物質の近傍に他の巨大物質が存在する場合がある。
融合体のサイズが小さいため、融合体が被検出物質に近づくとき、他の巨大物質からの干渉を受けにくい。そのため、融合体は、他の巨大物質の近傍に存在する被検出物質に結合することができる。その結果、本開示の融合体を用いれば、被検出物質の分析感度を向上させることができる。
生体中のタンパク質は、細胞膜等の外殻上に存在し、かつタンパク質の近傍に他の巨大物質が存在することが多い。生体中のタンパク質として、前記(1A)で挙げたタンパク質がある。本開示の融合体を用いれば、生体中のタンパク質の近傍に他の巨大物質が存在する場合でも、生体中のタンパク質の分析感度を向上させることができる。
(1D)突然変異等の原因により、被検出物質のエピトープが変化することがある。被検出物質のエピトープが変化した場合、現状の結合物質は、結合活性を失う場合がある。特に、被検出物質がインフルエンザウイルスやコロナウイルス等のRNAウイルスが発現するタンパク質である場合、突然変異が高頻度に起こり、エピトープが高頻度に変化する。
本開示の融合体が備える結合物質は、例えば、インビトロプロセスによって化学的に合成できる。結合物質をインビトロプロセスによって化学的に合成できる場合、エピトープが変化した被検出物質に対して結合活性を有する結合物質を、モノクローナル抗体やポリクローナル抗体を新たに合成し直す場合に比べて、容易に開発することができる。
2.被検出物質の分析方法
(2-1)被検出物質の分析方法の手順
被検出物質の分析方法は、例えば、以下の手順で実施することができる。
(i)図1の(1)に示すように、被検出物質1を用意する。被検出物質1は、例えば、溶液3の中に存在する。被検出物質1と溶液3とは試料5を構成する。
(ii)次に、図1の(2)に示すように、融合体7の少なくとも一部と、被検出物質1とを結合させる処理を行う。例えば、溶液3の中で、融合体7と被検出物質1とを共存させることで、融合体7の少なくとも一部と、被検出物質1とを結合させる。
融合体7は、結合物質9と、標識体11とを備える。融合体7は、前記「1.融合体」の項で説明したものである。少なくとも一部の融合体7が備える結合物質9と、被検出物質1とが結合し、結合体が形成される。
(iii)次に、融合体7のうち、結合物質9が被検出物質1と結合していない融合体7を除去する。
(iv)次に、融合体7が備える標識体11の機能を発現させる。標識体11の機能が発現することにより、観測可能な現象が生じる。標識体11の機能として、例えば、酵素活性、化学発光、蛍光の発生等が挙げられる。
酵素活性は、例えば、図1の(3)に示すように、基質13を出発物質とする代謝を誘発する。基質13を出発物質とする代謝は、生成物15を生成する。生成物15は、例えば、水素イオンを含む。あるいは、生成物15は、水素イオンを消費する。よって、基質13を出発物質とする代謝は、例えば、水素イオンを産生するか、水素イオンを消費する。水素イオンを産生するか、水素イオンを消費する代謝が生じると、溶液3における水素イオン濃度が変化する。水素イオン濃度の変化は、標識体11の機能が発現することで生じる、観測可能な現象に対応する。
生成物15は、例えば、特定の波長の光を吸収する。その結果、融合体7を含む溶液3は発色する。溶液3の発色は、標識体11の機能が発現することで生じる、観測可能な現象に対応する。
(v)次に、標識体11を検出する。融合体7は被検出物質1に結合しているので、標識体11を検出することは、被検出物質1を検出することに等しい。
標識体11を検出するために、標識体11の機能が発現することで生じる現象を観測する。現象を観測できれば、標識体11を検出できたことになる。
例えば、標識体が生じる現象が水素イオン、カリウムイオン、ナトリウムイオン、カルシウムイオン、リチウムイオン、アンモニウムイオン、又は塩化物イオンの生産、消費、又は吸収である場合、例えば、pH計測機、イオンセンサ、又はイオン感応性電界効果トランジスタを用いて現象を検出することができる。
標識体が生じる現象が発色、発光、蛍光、又は燐光である場合、例えば、受光デバイスを用いて現象を検出することができる。標識体が生じる現象が吸熱、又は発熱である場合、例えば、熱分析機を用いて現象を検出することができる。
標識体が生じる現象が酸化還元である場合、例えば、電位計測機、イオンセンサ、又はイオン感応性電界効果トランジスタを用いて現象を検出することができる。標識体が生じる現象が沈殿である場合、例えば、質量分析機、吸光光度計、又は分光光度計を用いて現象を検出することができる。
例えば、標識体11の機能が、水素イオンを産生するか、水素イオンを消費する代謝を誘発する酵素活性である場合、図1の(3)に示す計測機17を用いて、水素イオン濃度の変化量を計測する。水素イオン濃度の変化があれば、標識体11を検出できたことになる。
また、標識体11の機能が、溶液の発色を生じさせる酵素活性である場合、計測機17を用いて、発色の程度を計測する。発色があれば、標識体11を検出できたことになる。
また、標識体11の機能が、化学発光又は蛍光の発生である場合、計測機17を用いて、光量を計測する。化学発光又は蛍光の発生を観測できれば、標識体11を検出できたことになる。
(2-2)被検出物質の分析方法が奏する効果
本開示の被検出物質の分析方法は、前記(1A)~(1D)の効果を奏し、さらに以下の効果を奏する。
(2A)本開示の被検出物質の分析方法によれば、簡単に、且つ高感度に試料中の被検出物質の濃度を計測することができる。
(2B)標識体の機能が、溶液の発色を生じさせる酵素活性である場合、溶液の発色により、被検出物質を検出することができる。
本開示の被検出物質の分析方法によれば、被検出物質と結合した融合体のみが、溶液の発色を生じさせる。そのため、被検出物質の濃度が高いほど、溶液の発色が強くなる。よって、本開示の被検出物質の分析方法によれば、溶液の発色の強さに基づき、被検出物質の濃度を定量することができる。
(2C)標識体の機能が、水素イオンを産生するか、水素イオンを消費するか、イオンを吸収する代謝を誘発する酵素活性である場合、溶液における水素イオン濃度の変化により、被検出物質を検出することができる。
本開示の被検出物質の分析方法によれば、被検出物質と結合した融合体のみが、水素イオンを産生するか、水素イオンを消費するか、イオンを吸収する代謝を誘発する。そのため、被検出物質の濃度が高いほど、溶液における水素イオン濃度の変化量が大きくなる。よって、本開示の被検出物質の分析方法によれば、溶液における水素イオン濃度の変化量に基づき、被検出物質の濃度を定量することができる。
3.実施例
(3-1)融合体の合成
配列番号1の塩基配列を有するDNAアプタマー(以下では未修飾DNAアプタマーとする)を、インビトロプロセスにより化学的に合成した。未修飾DNAアプタマーの塩基配列は、「5’-CAGCACCGAC CTTGTGCTTT GGGAGTGCTG GTCCAAGGGC GTTAATGGAC A-3’」であった。未修飾DNAアプタマーは、Anal. Chem. 2020, 92, 9895-9900(以下では文献1とする)に記載されている。
なお、文献1の記載によると、未修飾DNAアプタマーは、新型コロナウイルスSARS-CoV-2のスパイク糖タンパク質におけるRBDを被検出物質とするDNAアプタマーである。次に、未修飾DNAアプタマーの5’末端を、C6スペーサーを介して、ビオチンで化学修飾した。
以上の工程により、DNAアプタマーが得られた。DNAアプタマーは結合物質に対応する。DNAアプタマーをリン酸緩衝液(以下では1xPBS/Tとする)に溶解し、DNAアプタマー溶液を製造した。DNAアプタマー溶液におけるDNAアプタマーの濃度は、10μmol/lであった。
1xPBS/Tは、界面活性剤Tween20を0.05%(v/v)含んでいた。また、1xPBS/Tは、137mmol/lのNaClと、8.1mmol/lのNaHPOと、2.7mmol/lのKClと、1.47mmol/lのKHPOとを含んでいた。
標識体として、ストレプトアビジン-アルカリフォスファターゼ結合体(Thermofisher Scientific社、製品番号S921)を用意した。この標識体は酵素である。ストレプトアビジン-アルカリフォスファターゼ結合体は、アルカリフォスファターゼを、ストレプトアビジンで修飾することで得られる。ストレプトアビジンは、標識体を修飾する化学置換基である。標識体を、1xPBS/Tに溶解し、標識体溶液を製造した。標識体溶液における標識体の濃度は、20μmol/lであった。
100μLのDNAアプタマー溶液と、5μLの標識体溶液とを混合し、室温で1時間静置した。このとき、ビオチン-ストレプトアビジンの相互作用により、DNAアプタマーと標識体とが融合し、融合体が合成された。
次に、融合体を精製し、回収した。具体的には、限外濾過フィルターを用いて、標識体と融合しなかったDNAアプタマーを融合体から分離し、融合体を回収した。融合体を合成する工程のフローを図2に示す。
なお、結合物質は、前記のDNAアプタマー以外の結合物質であってもよい。結合物質は、例えば、低分子タンパク質製剤、又は、RNAアプタマーであってもよい。低分子タンパク質製剤として、例えば、フラグメント抗体、一本鎖抗体、ディアボディ(Diabody)、ナノボディ(Nanobody)、VHH、ペプチドアプタマー等が挙げられる。
また、DNAアプタマーの塩基配列は、配列番号1の塩基配列以外の塩基配列であってもよい。DNAアプタマーの塩基配列は、分析したい被検出物質に応じて選定できる。
また、結合物質と標識体との融合は、ビオチン-ストレプトアビジンの相互作用に基づく融合以外の融合であってもよい。また、核酸アプタマーを結合物質として使用する場合、核酸アプタマーにおける5’末端以外の末端が標識体と融合してもよい。
また、低分子タンパク質製剤を結合物質として使用する場合、低分子タンパク質製剤におけるN末端が標識体と融合してもよいし、C末端が標識体と融合してもよい。
(3-2)被検出物質の分析方法の実施
被検出物質として、Spike S1-His Recombinant Protein(Sinobiological社、製品番号40591-V08H)を用意した。この被検出物質を、以下ではS1とする。S1のアミノ酸配列はRBDを含む。
S1を0.1M炭酸緩衝液に溶解し、S1-A溶液と、S1-B溶液とを製造した。S1-A溶液におけるS1の濃度は5μg/mLであった。S1-B溶液におけるS1の濃度は1μg/mLであった。0.1M炭酸緩衝液のpHは9.6に調整されていた。
また、陰性コントロールの被検出物質として、α-アミラーゼ(Lee Biosolutions社、製品番号120-17)を用意した。α-アミラーゼを0.1M炭酸緩衝液に溶解し、α-アミラーゼ溶液を製造した。α-アミラーゼ溶液におけるα-アミラーゼの濃度は5μg/mLであった。
なお、S1-A溶液、S1-B溶液、及びα-アミラーゼ溶液の製造に使用する緩衝液は、前記の0.1M炭酸緩衝液以外の緩衝液であってもよい。緩衝液として、例えば、1xPBS/T、1xPBS、1xTBS/T、1xTBS等の一般的に用いられる緩衝液が挙げられる。
次に、ELISA用96穴プレートHタイプ(住友ベークライト社、製品番号MS-8896F)の一部のELISAウェルに、100μLのS1-A溶液を滴下し、4℃で一晩静置した。S1-A溶液を滴下したELISAウェルを、以下では、S1-Aウェルとする。このとき、S1はS1-Aウェルに固着した。
また、S1-Aウェル以外のELISAウェルの一部に、100μLのS1-B溶液を滴下し、4℃で一晩静置した。S1-B溶液を滴下したELISAウェルを、以下では、S1-Bウェルとする。このとき、S1はS1-Bウェルに固着した。
また、S1-Aウェル及びS1-BウェルのいずれでもないELISAウェルに、100μLのα-アミラーゼ溶液を滴下し、4℃で一晩静置した。α-アミラーゼ溶液を滴下したELISAウェルを、以下では、α-アミラーゼウェルとする。このとき、α-アミラーゼはα-アミラーゼウェルに固着した。
次に、S1-Aウェル、S1-Bウェル、及びα-アミラーゼウェルを、それぞれ、200μLの1xPBS/Tで洗浄した。洗浄は3回行った。
次に、ウシ血清由来アルブミン(富士フイルム和光純薬社、製品番号013-15104)を、1xPBS/Tで溶解し、BSA溶液を製造した。ウシ血清由来アルブミンを、以下ではBSAとする。BSA溶液におけるBSAの濃度は3%(w/v)であった。
次に、S1-Aウェル、S1-Bウェル、及びα-アミラーゼウェルのそれぞれに、200μLのBSA溶液を滴下し、常温で2時間静置した。このとき、ブロッキングが行われた。
次に、S1-Aウェル、S1-Bウェル、及びα-アミラーゼウェルを、それぞれ、200μLの1xPBS/Tで洗浄した。洗浄は3回行った。
次に、S1-Aウェル、S1-Bウェル、及びα-アミラーゼウェルのそれぞれに、50μLの融合体溶液を滴下し、常温で1時間静置した。融合体溶液は、前記「(3-1)融合体の合成」において合成した融合体を含む溶液である。このとき、S1-Aウェル、及びS1-Bウェルにおいて、融合体の一部と、S1とが結合した。
次に、S1-Aウェル、S1-Bウェル、及びα-アミラーゼウェルを、それぞれ、200μLの1xPBS/Tで洗浄した。洗浄は3回行った。このとき、被検出物質と結合していない融合体が除去された。
リン酸4-ニトロフェニル二ナトリウム六水和物(東京化成工業、製品番号N0241)を用意した。リン酸4-ニトロフェニル二ナトリウム六水和物を、以下ではpNPPとする。pNPPは、アルカリフォスファターゼが誘発する代謝の基質である。
次に、pNPPを、炭酸緩衝液と硫酸マグネシウムとを含む溶液に溶解し、pNPP溶液を製造した。pNPP溶液におけるpNPPの濃度は10mmol/lであった。炭酸緩衝液と硫酸マグネシウムとを含む溶液は、1mmol/lの炭酸緩衝液と、1mmol/lの硫酸マグネシウムとを含んでいた。炭酸緩衝液と硫酸マグネシウムとを含む溶液のpHは、9.6となるように調整されていた。
なお、pNPPを溶解する溶液は、炭酸緩衝液と硫酸マグネシウムとを含む溶液以外の溶液であってもよい。pNPPを溶解する溶液として、例えば、トリス緩衝液、リン酸緩衝液、グッドバッファー等が挙げられる。グッドバッファーとして、例えば、MES、Bis-Tris、ADA、PIPES、ACES、MOPSO、BES、MOPS、TES、HEPES、DIPSO、TAPSO、POPSO、HEPPSO、EPPS、Tricine、Bicine、TAPS、CHES、CAPSO、CAPS等が挙げられる。
pNPPを溶解する溶液のpHは、9.6以外の値であってもよい。pNPPを溶解する溶液は、弱アルカリ性の溶液であることが好ましい。pNPPを溶解する溶液のpHは、8以上11以下であることが好ましい。pNPPを溶解する溶液が弱アルカリ性の溶液である場合、pNPPを基質とする代謝に由来するpHの変化が大きくなる。pNPPを溶解する溶液のpHが8以上11以下である場合、pNPPを基質とする代謝に由来するpHの変化が大きくなる。
次に、S1-Aウェル、S1-Bウェル、及びα-アミラーゼウェルのそれぞれに、100μLのpNPP溶液を滴下し、37℃で10分間静置した。このとき、S1-Aウェル、及びS1-Bウェルにおいて、図3に示すように、融合体が備えるアルカリフォスファターゼの酵素活性により、pNPPを基質とする代謝が誘発され、pNPPからリン酸基が分離した。
その結果、S1-Aウェル、及びS1-Bウェルにおいて、無機リン酸と、p-ニトロフェノールとが生成した。p-ニトロフェノールの吸収極大波長は405nmである。そのため、p-ニトロフェノールを含む溶液は黄色に発色した。また、生成した無機リン酸は、溶液中において電離し、水素イオンを放出した。そのため、溶液のpHが低下した。
次に、S1-Aウェル、S1-Bウェル、及びα-アミラーゼウェルのそれぞれに、終濃度0.5mol/lのエチレンジアミン四酢酸を5μL滴下した。このとき、アルカリフォスファターゼによる代謝が停止した。
次に、S1-Aウェル、S1-Bウェル、及びα-アミラーゼウェルのそれぞれにおいて、マイクロプレートリーダ―を用い、405nmの波長の光における吸光度を測定した。また、ブランクにおいても、同様に吸光度を測定した。
以上の工程フローを図4に示す。吸光度の測定結果を図5に示す。図5における「S1 5μg/mL」は、S1-Aウェルに対応する。図5における「S1 1μg/mL」は、S1-Bウェルに対応する。図5における「α-アミラーゼ 5μg/mL」は、α-アミラーゼウェルに対応する。図5に示すように、S1-Aウェル、及びS1-Bウェルのみにおいて、発色が認められた。
吸光度の測定結果は、以下のことを示す。融合体が備えるアルカリフォスファターゼは、DNAアプタマーと融合した状態でも、pNPPを基質とする代謝を誘発する酵素活性を有していた。また、融合体が備えるDNAアプタマーは、標識体と融合した状態でも、S1に対する結合活性を有していた。また、融合体が備えるDNAアプタマーは、α-アミラーゼに対する結合活性を有していなかった。
(3-3)被検出物質の分析方法の実施
被検出物質として、新型コロナウイルスSARS-CoV-2(以下ではSARS-Co-V2とする)を用意した。SARS-CoV-2を1xPBS/Tに懸濁させることで、5種類の懸濁液を製造した。5種類の懸濁液は、懸濁液に含まれるSARS-CoV-2のコピー数のみにおいて相違する。5種類の懸濁液におけるSARS-CoV-2のコピー数は、それぞれ、定量PCR換算で、懸濁液1μLあたり10の1乗、10の2乗、10の3乗、10の4乗、10の5乗であった。以下の工程は、5種類の懸濁液のそれぞれについて行った。
次に、25μLの懸濁液に、25μLの融合体溶液を滴下し、常温で10分間静置した。融合体溶液は、前記「(3-1)融合体の合成」において合成した融合体を含む溶液である。融合体溶液における融合体の濃度は10nmol/lであった。このとき、一部の融合体と、被検出物質とが結合した。
次に、静置後の懸濁液の全量を、ナノセップ遠心ろ過デバイス分画分子量300K(PALL社、製品番号OD300C34)に滴下し、高速遠心分離を行った。高速遠心分離により、被検出物質と結合した融合体を回収し、被検出物質と結合しなかった融合体を分離した。
次に、ナノセップ遠心ろ過デバイス分画分子量300Kを、1xPBS/Tで3回洗浄した。このとき、SARS-CoV-2と結合していない融合体が除去された。
次に、pNPPを、炭酸緩衝液と硫酸マグネシウムとを含む溶液に溶解し、pNPP溶液を製造した。pNPP溶液におけるpNPPの濃度は10mmol/lであった。炭酸緩衝液と硫酸マグネシウムとを含む溶液は、1mmol/lの炭酸緩衝液と、1mmol/lの硫酸マグネシウムとを含んでいた。炭酸緩衝液と硫酸マグネシウムとを含む溶液のpHは、9.6となるように調整されていた。
次に、pNPP溶液を、ナノセップ遠心ろ過デバイス分画分子量300Kへ滴下し、37℃で10分間静置した。このとき、図3に示すように、アルカリフォスファターゼの酵素活性により、pNPPを基質とする代謝が誘発され、pNPPからリン酸基が分離した。その結果、無機リン酸とp-ニトロフェノールとが生成した。p-ニトロフェノールの吸収極大波長は405nmである。そのため、p-ニトロフェノールを含む溶液は黄色に発色した。また、生成した無機リン酸は、溶液中において電離し、水素イオンを放出した。そのため、溶液のpHが低下した。
次に、ナノセップ遠心ろ過デバイス分画分子量300K内の溶液を、pHメータに滴下した。pHメータは、コンパクトpHメータ LAQUAtwin(堀場製作所、製品番号pH-33B)であった。pHメータに滴下した溶液のpHを記録した。以上の工程のフローを図6に示す。pHの記録結果を図7に示す。図7における「コピー数」は、懸濁液におけるSARS-CoV-2の1μL当たりのコピー数を意味する。
図7に示すように、懸濁液におけるSARS-CoV-2のコピー数が多いほど、pHの変化量が大きかった。pHの変化量とは、ブランクに対するpHの変化量を意味する。
pHの記録結果は、以下のことを示す。融合体が備えるDNAアプタマーは、標識体と融合した状態でも、SARS-CoV-2に対し結合活性を有していた。また、融合体が備えるアルカリフォスファターゼは、DNAアプタマーと融合した状態でも、pNPPを基質とする代謝を誘発する酵素活性を有していた。また、pNPPを基質とする代謝により生成される無機リン酸が溶液中において電離し、水素イオンを放出した。その結果、溶液のpHが低下した。また、懸濁液におけるSARS-CoV-2のコピー数が10の3乗以上である場合、pHの変化量が一層大きかった。
なお、被検出物質と結合しなかった融合体を除去するために、ナノセップ遠心ろ過デバイス分画分子量300K以外の遠心ろ過デバイスを使用してもよい。遠心ろ過デバイスは、例えば、ナノセップ遠心ろ過デバイス分画分子量300Kと同等の分子量カットオフ値を有する。
また、被検出物質と結合しなかった融合体を除去する方法は、遠心ろ過以外の方法であってもよい。被検出物質と結合しなかった融合体を除去する方法として、例えば、ELISAプレートや磁性体ビーズを利用したサンドイッチ方式の除去方法、ろ紙又はゲルを利用したろ過クロマトグラフィーによる除去方法、ゲル等の担体に抗体を担持したアフィニティークロマトグラフィーによる除去方法等が挙げられる。
また、pNPPを溶解する溶液は、炭酸緩衝液と硫酸マグネシウムとを含む溶液以外の溶液であってもよい。pNPPを溶解する溶液として、例えば、トリス緩衝液、リン酸緩衝液、グッドバッファー等が挙げられる。グッドバッファーとして、例えば、MES、Bis-Tris、ADA、PIPES、ACES、MOPSO、BES、MOPS、TES、HEPES、DIPSO、TAPSO、POPSO、HEPPSO、EPPS、Tricine、Bicine、TAPS、CHES、CAPSO、CAPS等が挙げられる。
また、pNPPを溶解する溶液のpHは、9.6以外の値であってもよい。pNPPを溶解する溶液は、弱アルカリ性の溶液であることが好ましい。pNPPを溶解する溶液のpHは、8以上11以下であることが好ましい。pNPPを溶解する溶液が弱アルカリ性の溶液である場合、pNPPを基質とする代謝に由来するpHの変化が大きくなる。pNPPを溶解する溶液のpHが8以上11以下である場合、pNPPを基質とする代謝に由来するpHの変化が大きくなる。
(3-4)標識体の機能の発現を確認するための試験
融合体にpNPP溶液を添加することで、3種類の融合体-pNPP溶液を製造した。融合体は前記「(3-1)融合体の合成」で合成したものである。pNPP溶液は、前記「(3-2)被検出物質の分析方法の実施」で製造したものである。
3種類の融合体-pNPP溶液は、融合体の濃度のみにおいて相違する。3種類の融合体-pNPP溶液における融合体の濃度は、それぞれ、1pmol/l、10pmol/l、100pmol/lであった。
3種類の融合体-pNPP溶液では、それぞれ、融合体が備えるアルカリフォスファターゼにより、pNPPを基質とする代謝が生じた。以下の工程は、3種類の融合体-pNPP溶液のそれぞれについて行った。
融合体-pNPP溶液の製造直後に、融合体-pNPP溶液をpHメータに滴下した。pHメータは、コンパクトpHメータ LAQUAtwin(堀場製作所、製品番号pH-33B)であった。
滴下から10分後、滴下から20分後、及び滴下から30分後に、それぞれ、融合体-pNPP溶液のpHを記録した。以上の工程のフローを図8に示す。pHの記録結果を図9に示す。図9における「融合体終濃度」は、融合体-pNPP溶液における融合体の濃度を意味する。
図9に示すように、融合体-pNPP溶液における融合体の濃度が高いほど、pHの変化量が大きかった。pHの変化量とは、滴下直後のpHに対するpHの変化量である。
pHの記録結果は、以下のことを示す。融合体が備えるアルカリフォスファターゼは、DNAアプタマーと融合した状態でも、pNPPを基質とする代謝を誘発する酵素活性を有する。また、pNPPを基質とする代謝により生成される無機リン酸が溶液中において電離し、水素イオンを放出する。その結果、溶液のpHが低下する。
4.他の実施形態
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
(4-1)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。
(4-2)上述した融合体の他、当該融合体を構成要素とする部材、融合体の製造方法、被検出物質の分析方法等、種々の形態で本開示を実現することもできる。
1…被検出物質、3…溶液、5…試料、7…融合体、9…結合物質、11…標識体、13…基質、15…生成物、17…計測機
pNPPを溶解する溶液のpHは、9.6以外の値であってもよい。pNPPを溶解する溶液は、ルカリ性の溶液であることが好ましい
また、pNPPを溶解する溶液のpHは、9.6以外の値であってもよい。pNPPを溶解する溶液は、ルカリ性の溶液であることが好ましい

Claims (6)

  1. 被検出物質(1)と結合する活性を有する結合物質(9)と、
    前記結合物質に融合し、観測可能な現象を生じる標識体(11)と、
    を備え、
    前記結合物質は、低分子タンパク質製剤、又は核酸アプタマーである、
    融合体(7)。
  2. 請求項1に記載の融合体であって、
    前記被検出物質は、タンパク質、糖、核酸、低分子化合物、又は脂質である、
    融合体。
  3. 請求項1又は2に記載の融合体であって、
    前記標識体は、酵素、DNAザイム、RNAザイム、磁気標識、蛍光標識、化学発光プローブ、及びナノ粒子から成る群から選択される1以上である、
    融合体。
  4. 請求項1~3のいずれか1項に記載の融合体であって、
    前記現象は、水素イオン、カリウムイオン、ナトリウムイオン、カルシウムイオン、リチウムイオン、アンモニウムイオン、又は塩化物イオンの生産、消費、又は吸収、若しくは、発色、蛍光、発光、燐光、吸熱、発熱、酸化還元、又は沈殿から成る群から選択される1以上である、
    融合体。
  5. 請求項1~4のいずれか1項に記載の融合体であって、
    前記標識体は、水素イオン、カリウムイオン、ナトリウムイオン、カルシウムイオン、リチウムイオン、アンモニウムイオン、及び塩化物イオンから成る群から選択される1以上のイオンの生産、消費、又は吸収を誘発する酵素である、
    融合体。
  6. 請求項1~5のいずれか1項に記載の融合体であって、
    前記結合物質と前記標識体とは、それぞれ、化学置換基又は核酸結合タンパク質を備え、
    前記結合物質が備える前記化学置換基又は前記核酸結合タンパク質と、前記標識体が備える前記化学置換基又は前記核酸結合タンパク質とが結合することにより、前記結合物質と前記標識体とが融合しており、
    前記化学置換基は、ビオチン、一級アミン、アジド、アルキン、ジベンゾシクロオクチン、ビシクロノニン、2´-O-プロパルギル、2´-O-プロパルギル、チオール、アビジン、ストレプトアビジン、ニュートラアビジン、N-ヒドロキシスクシンイミド、マレイミド、及び5-ハロウラシルから成る群から選択される1以上であり、
    前記核酸結合タンパク質は、ジンクフィンガー、及びCRISPRから成る群から選択される1以上である、
    融合体。
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