JP2022160787A - フッ化物イオン電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】フッ化物イオンをキャリアとして充放電することができる新規な活物質を備えたフッ化物イオン電池を提供する。【解決手段】本開示のフッ化物イオン電池は、正極活物質を有する正極と、Zintl相化合物を負極活物質として有する負極と、正極と負極との間に介在しフッ化物イオンを伝導するイオン伝導媒体と、を備える。あるいは、本開示のフッ化物イオン電池は、フルオロカーボンを正極活物質として有する正極と、負極活物質を有する負極と、正極と負極との間に介在しフッ化物イオンを伝導するイオン伝導媒体と、を備える。【選択図】図1
Description
本明細書では、フッ化物イオン電池を開示する。
従来、フッ化物イオン電池としては、例えば、正極-負極が、TiF4-Mn、AlF3-Mn、CoF3-Li、AlF4-Li、Fe3-Li、BiF3-Na、CuF2-Na、FeF3-Na及びFeF3-Mgが提案されている(例えば、非特許文献1など参照)。また、PbF2を活物質とし、トリフェニルボロキシンを陰イオン受容体として用いたフッ化物シャトルバッテリが提案されている(例えば、非特許文献2など参照)。また、正極にCFx(0.3<x<1.0)の部分フッ素化炭素質材料を用いたCFxとLiの一次電池である電気化学セルが提案されている(例えば、特許文献1など参照)。
J. Fluorine Chem., 182, 76-90 (2016).
Mater. Chem. Phys., 226, 1-5(2019)
しかしながら、上述した非特許文献1,2のように、酸化還元電位が貴な金属はフッ化反応が起こりにくい一方、酸化還元電位が卑な金属はフッ化反応が起こりやすいが、反応性が高いため取り扱いが困難であった。また、特許文献1の電気化学セルは、活物質としてCFxを用いているが、CFxとLiの一次電池しか具体的には検討されていなかった。
本開示は、このような課題に鑑みなされたものであり、フッ化物イオンをキャリアとして充放電することができる新規な活物質を備えたフッ化物イオン電池を提供することを主目的とする。
上述した目的を達成するために鋭意研究したところ、本発明者らは、第2族元素と第13~15族の元素によって構成されるZintl相化合物を用いると、フッ化物イオンをキャリアイオンとして充放電する電池の活物質として有用であることを見いだし、本明細書で開示する発明を完成するに至った。
即ち、本明細書で開示するフッ化物イオン電池は、
正極活物質を有する正極と、
Zintl相化合物を負極活物質として有する負極と、
前記正極と前記負極との間に介在しフッ化物イオンを伝導するイオン伝導媒体と、
を備えたものである。
正極活物質を有する正極と、
Zintl相化合物を負極活物質として有する負極と、
前記正極と前記負極との間に介在しフッ化物イオンを伝導するイオン伝導媒体と、
を備えたものである。
あるいは、本明細書で開示するフッ化物イオン電池は、
フルオロカーボンを正極活物質として有する正極と、
負極活物質を有する負極と、
前記正極と前記負極との間に介在しフッ化物イオンを伝導するイオン伝導媒体と、
を備えたものである。
フルオロカーボンを正極活物質として有する正極と、
負極活物質を有する負極と、
前記正極と前記負極との間に介在しフッ化物イオンを伝導するイオン伝導媒体と、
を備えたものである。
本開示は、フッ化物イオンをキャリアとして充放電することができる新規な活物質を備えたフッ化物イオン電池を提供することができる。このような効果が得られる理由は、例えば、以下のように推察される。Zintl相化合物は、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属からなるカチオンと、第13、14、15族の後遷移金属元素などのアニオンで構成されている。このZintl相化合物は、新たに、フッ化物イオンを吸蔵放出することができることが明らかとなったものである。CaやBa、Naなどは単体では反応性が非常に高いため取り扱いに注意を要するが、Zintl相は大気中での取り扱い可能な化合物も多い。更に、Caのフッ化反応(Ca+2F-=CaF2+2e-)の酸化還元電位は約-2.8V(vs.SHE)、Baのフッ化反応(Ba+2F-=BaF2+2e-)の酸化還元電位は約-2.9V(vs.SHE)、及びNaのフッ化反応(Na+F-=NaF+e-)の酸化還元電位は約-2.7V(vs.SHE)と非常に卑であるため、負極に用いると高いエネルギー密度が実現可能となる。また、フルオロカーボンのフッ化反応(2CF+2e-=2C+2F-)の酸化還元電位は、約1.8V(vs.SHE)と非常に貴であるため、正極に用いると高いエネルギー密度が実現可能となる。このように構成されたフッ化物イオン電池は、現行のLiイオン二次電池と比較し、高いエネルギー密度が実現可能となり、有用であるものと推察される。
(フッ化物イオン電池)
本実施形態で開示するフッ化物イオン電池は、正極活物質を有する正極と、負極活物質を有する負極と、正極と負極との間に介在しフッ化物イオンを伝導するイオン伝導媒体と、を備える。このフッ化物イオン電池では、負極がZintl相化合物を負極活物質として有するか、正極がフルオロカーボンを正極活物質として有するか、のうちいずれかである。このフッ化物イオン電池は、負極がZintl相化合物を負極活物質として有し、正極がフルオロカーボンを正極活物質として有することが好ましい。このフッ化物イオン電池では、正負極がフッ化物イオンをキャリアとするフッ化物イオン電池を構成する。
本実施形態で開示するフッ化物イオン電池は、正極活物質を有する正極と、負極活物質を有する負極と、正極と負極との間に介在しフッ化物イオンを伝導するイオン伝導媒体と、を備える。このフッ化物イオン電池では、負極がZintl相化合物を負極活物質として有するか、正極がフルオロカーボンを正極活物質として有するか、のうちいずれかである。このフッ化物イオン電池は、負極がZintl相化合物を負極活物質として有し、正極がフルオロカーボンを正極活物質として有することが好ましい。このフッ化物イオン電池では、正負極がフッ化物イオンをキャリアとするフッ化物イオン電池を構成する。
正極は、キャリアイオンを吸蔵放出するものが好ましく、キャパシタのようにキャリアイオンを吸着、吸着解除するものとしてもよいし、イオン二次電池のようにキャリアイオンを挿入、脱離するものとしてもよい。正極は、例えば、正極活物質としてフルオロカーボンを有することが好ましい。フルオロカーボンは、炭素とフッ素とを含むものとすればよく、例えば、フッ化黒鉛や、フッ化炭素などが挙げられる。この正極活物質は、例えば、CFx(0<x≦6)としてもよい。この場合、正極は、キャリアイオンとしてフッ化物イオンを吸蔵放出する。
あるいは、負極活物質がZintl相化合物であるときには、正極活物質は、金属フッ化物を形成する金属としてもよいし、キャリアイオンを吸着、吸着解除するものとしてもよい。この正極活物質としては、例えば、Au、Pt、S、Ag、Fe、Co、Ni、Cu、Cr、Mo、W、V、Sb、Bi、Sn、In、Ce及びPbのうち1以上の元素を含むものとしてもよい。この正極活物質は、例えば、Sn、In、Ce及びPbのうち1以上の金属及びその合金であるものとしてもよい。この正極活物質は、例えば、上記1以上の元素を含むフッ化物を含むものとしてもよい。
この正極は、正極活物質と、必要に応じて導電材や結着材を混合した正極合材を集電体に形成したものとしてもよい。正極は、正極合材を集電体に塗布乾燥したものとしてもよいし、正極合材を集電体に圧着するものとしてもよいし、正極活物質を集電体に蒸着させるものとしてもよい。正極に用いられる導電材は、正極の電池性能に悪影響を及ぼさない電子伝導性材料であれば特に限定されず、例えば、天然黒鉛(鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛)や人造黒鉛などの黒鉛、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンウィスカ、ニードルコークス、炭素繊維、金属(銅、ニッケル、アルミニウム、銀、金など)などの1種又は2種以上を混合したものを用いることができる。これらの中で、導電材としては、電子伝導性及び塗工性の観点より、カーボンブラック及びアセチレンブラックが好ましい。結着材は、活物質粒子及び導電材粒子を繋ぎ止める役割を果たすものであり、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、或いはポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)ゴム、スルホン化EPDMゴム、天然ブチルゴム(NBR)等を単独で、あるいは2種以上の混合物として用いることができる。また、水系バインダーであるセルロース系やスチレンブタジエンゴム(SBR)の水分散体等を用いることもできる。正極活物質、導電材、結着材を分散させる溶剤としては、例えばN-メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、アクリル酸メチル、ジエチレントリアミン、N,N-ジメチルアミノプロピルアミン、エチレンオキシド、テトラヒドロフランなどの有機溶剤を用いることができる。また、水に分散剤、増粘剤等を加え、SBRなどのラテックスで活物質をスラリー化してもよい。増粘剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロースなどの多糖類を単独で、あるいは2種以上の混合物として用いることができる。導電材と結着材との比率は、導電材100質量部に対し、結着材が3~25質量部であればよい。塗布方法としては、例えば、アプリケータロールなどのローラコーティング、スクリーンコーティング、ドクターブレイド方式、スピンコーティング、バーコータなどが挙げられ、これらのいずれかを用いて任意の厚さ・形状とすることができる。集電体は、導電体であり、正極活物質に対して酸化還元電位が貴であれば特に限定されず、例えば、アルミニウム、チタン、ステンレス鋼、ニッケル、鉄、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラス、貴金属などのほか、接着性、導電性及び耐酸化性向上の目的で、アルミニウムや銅などの表面をカーボン、ニッケル、チタンや銀などで処理したものを用いることができる。これらについては、表面を酸化処理することも可能である。集電体の形状については、箔状、フィルム状、シート状、ネット状、パンチ又はエキスパンドされたもの、ラス体、多孔質体、発泡体、繊維群の形成体などが挙げられる。集電体の厚さは、例えば1~500μmのものが用いられる。
負極は、キャリアイオンを吸蔵放出するものが好ましく、キャパシタのようにキャリアイオンを吸着、吸着解除するものとしてもよいし、イオン二次電池のようにキャリアイオンを挿入、脱離するものとしてもよい。負極は、負極活物質として、Zintl相化合物を含むものとすることが好ましい。この場合、負極は、フッ化物イオンを吸蔵放出する。このZintl相化合物は、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属からなるカチオンと、第13、14、15族の後遷移金属元素などのアニオンで構成され、例えば、CaSi2、CaGe2、CaAl2、BaSi2及びNaSiなどが挙げられる。このうち、負極活物質としては、CaSi2、CaGe2及びCaAl2のうち1以上が好ましい。あるいは、負極をキャパシタの構成にする場合は、キャリアイオンを吸着可能なものであれば特に限定されず、例えば、貴金属板としてもよい。負極は、例えば、Pt、Au、Agなどのうち1以上としてもよい。
この負極は、負極活物質と、必要に応じて導電材や結着材を混合した負極合材を負極集電体に形成したものとしてもよい。負極は、負極合材を負極集電体に塗布乾燥したものとしてもよいし、負極合材を負極集電体に圧着するものとしてもよいし、負極活物質を負極集電体に蒸着させるものとしてもよい。負極に用いられる導電材、結着材、溶剤などは、正極で例示したものを適宜用いることができる。また、負極に用いられる集電体は、導電体であり、負極活物質に対して酸化還元電位が卑であれば特に限定されず、正極で説明したものを適宜用いることができる。
イオン伝導媒体は、正極と負極との間に介在し、キャリアイオンを伝導するものである。このイオン伝導媒体は、例えば、支持塩を含む電解液としてもよい。支持塩は、例えば、フッ化物イオン電池の利用温度域で溶媒に溶解し、フッ化物イオンを含む化合物が挙げられ、例えば、アルキルアンモニウムフッ化物塩などが好ましい。アルキルアンモニウムイオンは、電極に吸着することによって、キャリアとして利用することもできる。この支持塩は、例えば、式(1)に示すアルキルアンモニウムフッ化物塩としてもよい。式(1)において、R1~R4は、炭化水素基であり、それぞれ2以上が同じであってもよいし、それぞれが異なるものとしてもよい。この炭化水素基は、例えば、直鎖あるいは分岐鎖を有する鎖状のアルキル基としてもよい。この炭化水素基は、炭素数が6以下としてもよいし、炭素数が4以下としてもよいし、置換基を有してもよい。置換基としては、例えば、アルキル基やフルオロ基などが挙げられる。この支持塩は、テトラメチルアンモニウムフルオリド、テトラエチルアンモニウムフルオリド、テトラプロピルアンモニウムフルオリド、テトラブチルアンモニウムフルオリド、などが挙げられる。このうち、例えば、式(2)に示すテトラエチルアンモニウムフルオリド(TEAF)が好ましい。
イオン伝導媒体に含まれる溶媒としては、支持塩を溶解するものとすれば特に限定されないが、例えば、カーボネート系溶媒、エステル系溶媒及びエーテル系溶媒のうち1以上などが挙げられる。カーボネート系溶媒としては、例えばエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネートなどの環状カーボネートや、例えばジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネートなどの鎖状カーボネートのうち1以上が挙げられる。エステル系溶媒としては、γ-ブチロラクトンやγ-バレロラクトンなどの環状エステルや、酢酸メチル、酢酸エチルなど鎖状エステルのうち1以上が挙げられる。エーテル系溶媒としては、例えば、対称型炭化水素鎖状エーテルや対称型フッ素含有鎖状エーテル、環状エーテルやフッ素含有環状エーテルなどが挙げられる。このエーテル系溶媒としては、例えばテトラヒドロフランや2-メチルテトラヒドロフランなどの環状エーテルや、ジメトキシエタンやグライム系化合物などの鎖状エーテルなどのうち1以上が挙げられる。グライム系化合物としては、例えばジエチレングリコールジエチルエーテルや、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテルなどが挙げられる。この非水系溶媒としては、例えば、式(3)~(6)の化合物が好ましい。この化合物としては、例えば、ビス(トリフルオロエチルエチル)エーテル(BTFE)、プロピレンカーボネート(PC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、テトラグライム(TGym:G4)、トリグライム、ジグライムなどが挙げられる。電解液の支持塩濃度は、例えば、0.1mol/L以上5mol/L以下であることが望ましい。この範囲では、電解液のイオン伝導性が比較的高く好ましい。電解液のフッ化物塩濃度は、例えば、0.01mol/L以上、1mol/L以下であることが望ましい。この範囲では,フッ化物イオンの活量が十分に得られる。
あるいは、イオン伝導媒体は、フッ化物イオンを伝導するものとすれば特に限定されず、例えば、固体電解質であるものとしてもよい。このような固体電解質としては、例えば、少なくともLaを含むフッ化物が挙げられ、LaF3などとしてもよい。
本開示のフッ化物イオン電池は、負極と正極との間にセパレータを備えていてもよい。このセパレータは、正極と負極との直接的な接触を防ぐ部材であり、キャリアイオンを通過するものである。セパレータとしては、フッ化物イオン電池の使用範囲に耐えうる組成であれば特に限定されないが、例えば、ポリプロピレン製不織布やポリフェニレンスルフィド製不織布などの高分子不織布、ポリエチレンやポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂の薄い微多孔体が挙げられる。あるいは、濾紙をセパレータとして用いてもよい。これらは単独で用いてもよいし、複数を混合して用いてもよい。
フッ化物イオン電池の形状は、特に限定されないが、例えばコイン型、ボタン型、シート型、積層型、円筒型、偏平型、角型などが挙げられる。図1は、フッ化物イオン電池10の一例を示す模式図である。このフッ化物イオン電池10は、正極17と、負極18と、イオン伝導媒体16とを備えている。正極17は、正極集電体11と、正極集電体11上に形成された正極活物質12とを有している。負極18は、負極集電体14と、負極集電体14上に形成された負極活物質15とを有している。また、正極17と負極18との間にはセパレータ19が配設されている。イオン伝導媒体16は、正極17と負極18との間に介在し、フッ化物イオンを伝導するものである。イオン伝導媒体16には、フッ化物イオンを含む支持塩と、支持塩を溶解する溶媒とを含む電解液としてもよい。そして、正極17には、正極活物質として、フルオロカーボンを含むものとしてもよい。負極18には、負極活物質としてZintl相化合物を含むものとしてもよい。
以上詳述したフッ化物イオン電池では、フッ化物イオンをキャリアとして充放電することができる新規な活物質を備えたフッ化物イオン電池を提供することができる。このような効果が得られる理由は、例えば、以下のように推察される。Zintl相化合物は、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属からなるカチオンと、第13、14、15族の後遷移金属元素などのアニオンで構成されている。このZintl相化合物は、新たに、フッ化物イオンを吸蔵放出することができることが明らかとなったものである。CaやBa、Naなどは単体では反応性が非常に高いため取り扱いに注意を要するが、Zintl相は大気中での取り扱い可能な化合物も多く、化学的により安定で取り扱いしやすい。更に、Caのフッ化反応(Ca+2F-=CaF2+2e-)の酸化還元電位は約-2.8V(vs.SHE)、Baのフッ化反応(Ba+2F-=BaF2+2e-)の酸化還元電位は約-2.9V(vs.SHE)、及びNaのフッ化反応(Na+F-=NaF+e-)の酸化還元電位は約-2.7V(vs.SHE)と非常に卑であるため、負極に用いると高いエネルギー密度が実現可能となる。また、フルオロカーボンのフッ化反応(2CF+2e-=2C+2F-)の酸化還元電位は、約1.8V(vs.SHE)と非常に貴であるため、正極に用いると高いエネルギー密度が実現可能となる。このように構成されたフッ化物イオン電池は、現行のLiイオン二次電池と比較し、高いエネルギー密度が実現可能となり、有用であるものと推察される。
なお、本開示は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
以下には、本明細書で開示する電解液を具体的に作製した例を実験例として説明する。なお、実験例1~6が実施例に相当する。
[実験例1~6]
正極として用いるCF電極は、以下のように作製した。まず、平均組成がCF1のフッ化黒鉛を活物質とし、これを70質量%、導電材としてカーボンブラックを25質量%、結着材としてPTFEを5質量%の割合で混錬した。この混錬体を厚さ200μmに押し伸ばし、直径14mmに切り出し、これをCF電極とした。Sn(厚さ0.1mm)、Pb(厚さ0.2mm)、Zn(厚さ0.1mm)、の板を直径16mmに切り出し、負極とした。また、Zintl相であるCaSi2、CaGe2、CaAl2を活物質として用いた負極を作製した。Zintl相化合物を粉砕し、これを85質量%、導電助剤としてカーボンブラックを10質量%、結着材としてPTFEを5質量%の割合で混錬し、この混錬体を厚さ200μmに押し伸ばしたのち、直径14mmに切り出し、負極とした。電解液は、支持塩をテトラエチルアンモニウムフルオリド(Tetraethlyammonium fluoride;TEAF)とし、溶媒をプロピレンカーボネート(Propylene carbonate;PC)とした0.5M-TEAF/PCとした。または、電解液は、支持塩をTEAFとし、溶媒をビス(2,2,2-トリフルオロエチル)エーテル(Bis(2,2,2-trifluoroethyl)Ether:BTFE)とした0.2M-TEAF/BTFEとした。CF電極を正極とし、負極をSn電極、Pb電極、Zn電極、CaSi2電極、CaGe2電極、CaAl2電極としたものをそれぞれ、実験例1~6とした。セパレータとしてポリエチレン性多孔質フィルムを用い、加圧式セルを用いてセル組みを行った。各電池の構成を表1に示した。
正極として用いるCF電極は、以下のように作製した。まず、平均組成がCF1のフッ化黒鉛を活物質とし、これを70質量%、導電材としてカーボンブラックを25質量%、結着材としてPTFEを5質量%の割合で混錬した。この混錬体を厚さ200μmに押し伸ばし、直径14mmに切り出し、これをCF電極とした。Sn(厚さ0.1mm)、Pb(厚さ0.2mm)、Zn(厚さ0.1mm)、の板を直径16mmに切り出し、負極とした。また、Zintl相であるCaSi2、CaGe2、CaAl2を活物質として用いた負極を作製した。Zintl相化合物を粉砕し、これを85質量%、導電助剤としてカーボンブラックを10質量%、結着材としてPTFEを5質量%の割合で混錬し、この混錬体を厚さ200μmに押し伸ばしたのち、直径14mmに切り出し、負極とした。電解液は、支持塩をテトラエチルアンモニウムフルオリド(Tetraethlyammonium fluoride;TEAF)とし、溶媒をプロピレンカーボネート(Propylene carbonate;PC)とした0.5M-TEAF/PCとした。または、電解液は、支持塩をTEAFとし、溶媒をビス(2,2,2-トリフルオロエチル)エーテル(Bis(2,2,2-trifluoroethyl)Ether:BTFE)とした0.2M-TEAF/BTFEとした。CF電極を正極とし、負極をSn電極、Pb電極、Zn電極、CaSi2電極、CaGe2電極、CaAl2電極としたものをそれぞれ、実験例1~6とした。セパレータとしてポリエチレン性多孔質フィルムを用い、加圧式セルを用いてセル組みを行った。各電池の構成を表1に示した。
(充放電特性評価)
アスカ電子の充放電装置を用い、25℃の環境下で組んだセルの充放電特性評価を電流値0.02mAで行った。
アスカ電子の充放電装置を用い、25℃の環境下で組んだセルの充放電特性評価を電流値0.02mAで行った。
(XRD分析)
上記放電後の負極金属をXRD装置(リガク社製Ultima IV)を用いてXRDスペクトルを測定した。X線をCuKα線とし、電圧40kV、電流40mA、スキャンレート10゜/分の測定条件で行った。
上記放電後の負極金属をXRD装置(リガク社製Ultima IV)を用いてXRDスペクトルを測定した。X線をCuKα線とし、電圧40kV、電流40mA、スキャンレート10゜/分の測定条件で行った。
(ラマン分析)
ラマン分光光度計(日本分光社製NRS-3300)を用いてラマンスペクトルの測定を行った。ANDOR製のDUBV-120CCDを用い、励起波長は532nmとした。
ラマン分光光度計(日本分光社製NRS-3300)を用いてラマンスペクトルの測定を行った。ANDOR製のDUBV-120CCDを用い、励起波長は532nmとした。
(SEM観察)
走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ製SU3500、15kV)を用いてSEMによる組織観察予備EDX分析を行った。
走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ製SU3500、15kV)を用いてSEMによる組織観察予備EDX分析を行った。
(結果と考察)
図2は、CF電極を正極、Sn電極を負極とし、0.5M-TEAF/PC電解液を用いた実験例1のフッ化物イオン電池の充放電測定結果である。実験例1では、充放電電流を0.02mA、放電の下限電位を0.2V、充電の上限電位を1.4Vとし、図2では、横軸をSn負極の面積当たりの放電容量で示した。図2に示すように、実験例1では、放電時に起電力が発生し、かつ、充放電可能であった。また、実験例1では、0.6~0.8mAh/cm2を境とする2段階のプラトーな領域を持つ放電曲線であった。
図2は、CF電極を正極、Sn電極を負極とし、0.5M-TEAF/PC電解液を用いた実験例1のフッ化物イオン電池の充放電測定結果である。実験例1では、充放電電流を0.02mA、放電の下限電位を0.2V、充電の上限電位を1.4Vとし、図2では、横軸をSn負極の面積当たりの放電容量で示した。図2に示すように、実験例1では、放電時に起電力が発生し、かつ、充放電可能であった。また、実験例1では、0.6~0.8mAh/cm2を境とする2段階のプラトーな領域を持つ放電曲線であった。
放電反応を調べるため、0.5V及び0.2Vまで放電させたSn負極のXRD分析及びSEM観察、CF正極のXRD分析を行った。図3は、実験例1放電前、0.5V放電後、0.2V放電後のSn負極のXRDスペクトルである。図4は、実験例1の0.2Vまで放電後のSn負極の2θ=24~30°の範囲のXRDスペクトルの拡大図である。図3に示すように、0.5Vまで放電後のSn負極は放電前のSn金属と同じパターンを示すのに対し、0.2Vまで放電後のSn負極は、Sn金属のピーク以外にSnF2のピーク、及びSnF4のピークが確認された。図5は、実験例1のSn負極のSEM観察結果であり、図5Aが放電前のSn負極、図5Bが0.5Vまで放電後のSn負極 、図5Cが0.2Vまで放電後のSn負極である。図5Aに示すように、Sn負極は使用前にろ紙に挟んでプレスしているため、ろ紙の繊維の跡が付いているが、表面は滑らかであった。一方、0.5Vまで放電すると、表面は滑らかではなくなり、直径2~5μmの結晶粒が確認された。EDX分析の結果、この結晶粒の組成はC:15at%、O:13at%、F:7at%、Sn:65at%となり、低フッ素濃度のSnFx化合物の形成が確認された。0.2Vまで放電したサンプルでは、図5Cに示すように、全面がSnF2で覆われていた。以上の実験例1のXRD及びSEM分析結果から、放電反応によってSnのフッ化が進行し、0.5Vまでの一段目のプラトー領域では低F濃度のSnFx化合物が形成され、二段目の0.2Vのプラトー領域では、SnF2及びSnF4が形成されることが確認された。
同様に、実験例1のCF正極での変化を確認するために、0.5V及び0.2Vまで放電させたCF正極のXRD分析を行った。図6は、実験例1のCF正極の放電前後のXRDスペクトルである。図6に示すように、放電の進行と共にCFのピークが減少し、グラファイトの002の位置のブロードなピークが増加していることから、CFが脱フッ化し、アモルファスカーボンが形成されていることが確認された。以上から、CF-0.5M-TEAF/PC-Snセルを放電させると、CFが脱フッ化し、Snがフッ化することが確認された。
フッ化物イオン電池の正極としてのCF電極の理論容量は、864mAh/gである。放電によるCF構造の変化を解析するために、導電助剤であるカーボンブラックを含有しないCF電極を作製した。このCF電極は、CFを87質量%、結着材PTFEを13質量%含むものとし、理論容量に近い820mAh/g放電させたあとのCF電極のラマン及びXRD分析を行った。図7は、820mAh/g放電前後のCF正極のラマンスペクトルである。図8は、820mAh/g放電前後のCF正極のXRDスペクトルである。図7に示すように、820mAh/g放電後は、シャープなG、Dピークが検出されており、脱フッ化反応による炭素化が進行していることが確認された。また、図8に示すXRDパターンでは、放電前は13°付近にある活物質CFの001ピークが放電後は非常に弱くなっており、25°付近に黒鉛の002ピークに相当するブロードなピークが新たに検出された。この002ピークは非常にブロードなため、アモルファスカーボン構造であると考えられた。この結果より、放電時にはCFからFが脱離し、アモルファスカーボンになる放電反応(CF+e-→C+F-)が起きていると考えられた。
次に、CF電極を正極、Pb電極を負極とし、0.5M-TEAF/PC電解液を用いた実験例2について検討した。図9は、実験例2の充放電測定結果である。図10は、実験例2のPb負極の放電前後のXRDスペクトルである。図9に示すように、Pb負極を用いた場合も、0.5V以上の起電力が得られ、放電後のPb電極上にはPbF2の形成が確認された。以上から、実験例2では、放電によってCFが脱フッ化し、Pbがフッ化されることが確認された。
次に、CF電極を正極、Zn電極を負極とし、0.2M-TEAF/BTFE電解液を用いた実験例3について検討した。図11は、実験例3の充放電測定結果である。図11に示すように、Zn負極を用いた場合、放電電位は0.2V以下と低いものの、起電力が得られることがわかった。以上から、実験例3においても、実験例1、2と同様に、放電によってCFが脱フッ化し、Znがフッ化されるものと視察された。
CF電極を正極、Zintl相化合物を活物質として作製した電極を負極とし、0.5M-TEAF/PC電解液を用いた実験例4~6の充放電測定結果を検討した。図12は、CaSi2負極を有する実験例4の充放電曲線である。図13は、CaGe2負極を有する実験例5の充放電曲線である。図14は、CaAl2負極を有する実験例6の充放電曲線である。実験例4~6のセル共に、放電初期は1.0V以上の起電力が得られた。Zintl相化合物は、フッ化物イオンをキャリアとする蓄電デバイスにおいて、フッ化物イオンの吸蔵放出を行うことが可能であり、有用であることが明らかとなった。
なお、本開示は上述した実験例に何ら限定されることはなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の態様で実験し得ることはいうまでもない。
本明細書で開示するフッ化物イオン電池は、エネルギー産業、例えば電池産業の分野に利用可能である。
10 フッ化物イオン電池、11 集電体、12 正極活物質層、14 集電体、15負極活物質層、16 イオン伝導媒体、17 正極、18 負極、19 セパレータ。
Claims (6)
- 正極活物質を有する正極と、
Zintl相化合物を負極活物質として有する負極と、
前記正極と前記負極との間に介在しフッ化物イオンを伝導するイオン伝導媒体と、
を備えたフッ化物イオン電池。 - 前記負極は、CaSi2、CaGe2、CaAl2、BaSi2及びNaSiのうち1以上を前記負極活物質として有する、請求項1に記載のフッ化物イオン電池。
- 前記正極は、前記正極活物質としてフルオロカーボンを有する、請求項1又は2に記載のフッ化物イオン電池。
- フルオロカーボンを正極活物質として有する正極と、
負極活物質を有する負極と、
前記正極と前記負極との間に介在しフッ化物イオンを伝導するイオン伝導媒体と、
を備えたフッ化物イオン電池。 - 前記正極は、前記正極活物質としてフッ化黒鉛を有する、請求項3又は4に記載のフッ化物イオン電池。
- 前記イオン伝導媒体は、アルキルアンモニウムフッ化物塩を支持塩として含む非水電解液である、請求項1~5のいずれか1項に記載のフッ化物イオン電池。
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