JP2022155033A - めっき鋼線、被覆めっき鋼線、金網及び落石防護工 - Google Patents

めっき鋼線、被覆めっき鋼線、金網及び落石防護工 Download PDF

Info

Publication number
JP2022155033A
JP2022155033A JP2021058350A JP2021058350A JP2022155033A JP 2022155033 A JP2022155033 A JP 2022155033A JP 2021058350 A JP2021058350 A JP 2021058350A JP 2021058350 A JP2021058350 A JP 2021058350A JP 2022155033 A JP2022155033 A JP 2022155033A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
less
steel wire
plated steel
wire
pearlite
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2021058350A
Other languages
English (en)
Inventor
昌 坂本
Akira Sakamoto
誠 小坂
Makoto Kosaka
敏之 真鍋
Toshiyuki Manabe
真治 妙中
Shinji Myonaka
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Steel Corp
Original Assignee
Nippon Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Steel Corp filed Critical Nippon Steel Corp
Priority to JP2021058350A priority Critical patent/JP2022155033A/ja
Publication of JP2022155033A publication Critical patent/JP2022155033A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Heat Treatment Of Steel (AREA)

Abstract

【課題】高い吸収エネルギー性能を有するめっき鋼線及び被覆めっき鋼線、並びに落石受け止め時の吸収エネルギーが高く、かつ落石受け止め時の金網の張り出し量が小さい金網及び落石防護工を提供する。【解決手段】所定の鋼組成を有し、縦断面の中心領域における金属組織が、組織全体に対するフェライト及びパーライトの合計の面積率が90.0%以上、かつ組織全体に対するパーライトの面積率が47.5%以上であり、組織全体に対するフェライト及びパーライトの合計の面積率が100%未満である場合の残部がセメンタイト及びベイナイトの少なくとも一方からなり、引張試験を行ったときに、引張強さが850~2000MPaであり、均一伸びが4.0~8.0%である、めっき鋼線。それを用いた金網及び落石防護工。【選択図】なし

Description

本開示は、めっき鋼線、被覆めっき鋼線、金網及び落石防護工に関する。
山間地では、道路への落石による災害を防ぐため、落石防護工が設置されている。落石防護工の例として、待ち受け型落石防護ネットや地山斜面を固定するワイヤネット式落石防護工がある。これらの落石防護工の部材として金網があり、この金網に使用される素材は、炭素(C)を殆ど含まない鋼組成の線材を伸線、焼鈍、亜鉛(Zn)めっきした亜鉛めっき鋼線が一般的に使用される。
落石防護工の金網の素材に要求される特性は、落石の落下エネルギーを吸収するための高いエネルギー吸収性能である。また、道路近傍等で設置される落石防護工の場合は、落石を受け止めた際、金網が道路側に張り出すと通行人や走行中の車両に衝突する可能性があるため、少ない伸びで高い吸収エネルギーを有する鋼線が望ましい。
このほかに、都市部などでも、飛来物から防護するため、金網が使用されるが、同様の能力が求められる。
落石防護工においては、構造の改善によって吸収エネルギーを向上させる方法が提案されている。また、落石防護工を構成する金網の機械的性質の向上による落石防護工の吸収エネルギー向上が提案されている。例えば、特許文献1および特許文献2には、金網の素材として用いるワイヤの引張強さを従来より高くすることで、吸収エネルギーが大きく、落石受け止め時の張り出し量が小さい、軽量な防護工が開示されている。
特表2001-522422 特開2019-190183号公報
落石防護工の金網には、高い吸収エネルギーを有する鋼線が求められる。一般的に吸収エネルギーを高めるためには、鋼線の引張強さもしくは伸びを高める方法がある。しかし、鋼線の引張強さが過剰に上昇すると、延性が低下して吸収エネルギーが低下する。また、鋼線の伸びが過剰に大きいと、落石防護工が落下物を受け止めた際、金網の張り出し量が大きくなるという課題がある。
本開示は、高い吸収エネルギー性能を有するめっき鋼線及び被覆めっき鋼線、並びに落石受け止め時の吸収エネルギーが大きく、かつ、落石受け止め時の金網の張り出し量が小さい金網及び落石防護工を提供することを目的とする。
上記目的は、以下の手段により達成される。
<1> 鋼線の表面にめっき層を備えためっき鋼線であって、
前記鋼線の鋼組成が、質量%で、
C:0.30~1.20%、
Si:0.10~1.50%、
Mn:0.10~1.00%、
P:0.030%以下、
S:0.030%以下、
N:0.0150%以下、及び
O:0.0070%以下
を含み、残部がFe及び不純物からなり、
前記鋼線の半径をRとしたとき、前記鋼線の長手方向と平行であり、かつ前記鋼線の中心軸を含む断面において前記中心軸からの距離が0.2×R以上0.8×R以内の中心領域に観察される金属組織が、前記金属組織全体に対するフェライト及びパーライトの合計の面積率が90.0%以上、かつ前記金属組織全体に対する前記パーライトの面積率が47.5%以上であり、前記金属組織全体に対する前記フェライト及びパーライトの合計の面積率が100%未満である場合の残部がセメンタイト及びベイナイトの少なくとも一方からなり、
引張試験を行ったときに、引張強さが850~2000MPaであり、均一伸びが4.0~8.0%である、
めっき鋼線。
<2> 前記鋼組成が、前記Feの一部に代えて、質量%で、
Cr:1.50%以下、
B:0.0050%以下、
Ti:0.040%以下、
Mo:0.40%以下、
V:0.30%以下、
Cu:0.50%以下、
Al:0.080%以下、
Ni:0.50%以下、及び
Nb:0.10%以下、
からなる群から選択される1種以上を含む、<1>に記載のめっき鋼線。
<3> 前記鋼組成が、前記Feの一部に代えて、質量%で、
Mg:0.010%以下、
Zr:0.010%以下、
Sb:0.015%以下、
W:0.010%以下、
REM(原子番号57から71までの元素):0.005%以下、
Hf:0.005%以下、
Ta:0.050%以下、
Ca:0.005%以下、
Sn:0.050%以下、
Bi:0.050%以下、
Te:0.050%以下、
Zn:0.050%以下、及び
Co:0.10%以下
からなる群から選択される1種以上を含む、<1>又は<2>に記載のめっき鋼線。
<4> 前記引張試験を行ったときの破断伸びが5.0%~10.0%であり、
ねじり試験を行ったときの破断までのねじり回数が25回以上である、<1>~<3>のいずれか1つに記載のめっき鋼線。
<5> 前記鋼線の半径をRとしたとき、前記鋼線の前記断面において前記鋼線の表面からの深さがR/2の位置に観察される金属組織において、電子線後方散乱回折(EBSD)により体心立方晶と同定される結晶粒の粒径が5μm以下であり、かつ前記結晶粒の前記鋼線の長手方向と平行な方向の粒径Xと前記長手方向と垂直な方向の粒径Yとの粒径比X/Yが2.0未満である前記結晶粒の面積率が、前記金属組織全体に対して10%以下であり、
前記引張試験を行ったときの降伏比が70.0~90.0%である、
<1>~<4>のいずれか1つに記載のめっき鋼線。
<6> 前記鋼線の半径をRとしたとき、前記鋼線の前記断面において前記鋼線の表面からの深さがR/2の位置に観察される金属組織において、電子線後方散乱回折(EBSD)により体心立方晶と同定される結晶粒の前記鋼線の長手方向と平行な方向の粒径Xと前記長手方向と垂直な方向の粒径Yとの粒径比X/Yが2.0~10.0であり、かつ前記パーライトを構成するラメラセメンタイトのセメンタイトの長さが0.1μm以下であるパーライトの面積率が、前記金属組織全体に対して20.0%以下である、<1>~<5>のいずれか1つに記載のめっき鋼線。
<7> 金網用である<1>~<6>のいずれか1つに記載のめっき鋼線。
<8> <1>~<7>のいずれか1つに記載のめっき鋼線の表面に樹脂被覆又は塗装が施された被覆めっき鋼線。
<9> <1>~<7>のいずれか1つに記載のめっき鋼線又は<8>に記載の被覆めっき鋼線を製網してなる金網。
<10> 前記金網が屈曲点及び溶接点の少なくとも一方を含み、1箇所以上の前記屈曲点又は前記溶接点を含む前記めっき鋼線又は前記被覆めっき鋼線を取り出して引張試験を行ったとき、引張強さが800~2000MPaであり、最大引張荷重の半分の荷重から最大荷重点までの伸びが3.5~7.0%である、<9>に記載の金網。
<11> 前記めっき鋼線の線径の5.0~12.0倍の厚さを有するひし形金網である、<9>又は<10>に記載の金網。
<12> <9>~<11>のいずれか1つに記載の金網を含む落石防護工。
本開示によれば、高い吸収エネルギー性能を有するめっき鋼線及び被覆めっき鋼線、並びに落石受け止め時において、吸収するエネルギーが大きく、かつ、落石を受け止めた際の金網の張り出し量が小さい金網及び落石防護工を提供することができる。
鋼線の縦断面において金属組織を観察する中心領域を示す概略図である。 ラメラセメンタイトの面積率を測定する場合の交点及び交点近傍を説明する図である。 鋼線の縦断面において体心立方晶の結晶粒の形状を測定する位置を説明する概略図である。 体心立方晶の結晶粒の粒径比X/Yを示す概略図である。 ひし形金網の一例を示す正面図である。 ひし形金網の一例を示す側面図である。 金網から採取した屈曲点を含むめっき鋼線の引張試験を説明する概略図である。 金網から採取した屈曲点を含むめっき鋼線の伸びを測定する引張試験を行った場合のチャック間ストロークと荷重との関係を示す模式図である。
以下、本開示の一例である実施形態について詳しく説明する。
なお、本明細書中において、化学組成の各元素の含有量の「%」表示は、「質量%」を意味する。
化学組成の各元素の含有量を「量」と表記することがある。例えば、Cの含有量は、C量と表記することがある。
「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。ただし、「~」の前後に記載される数値に「超え」又は「未満」が付されている場合の数値範囲は、これら数値を下限値又は上限値として含まない範囲を意味する。
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階的な数値範囲の上限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は実施例に示されている数値に置き換えてもよく、ある段階的な数値範囲の下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の下限値又は実施例の数値に置き換えてもよい。また、上限値又は下限値を実施例に示されている値に置き換えてもよい。
また、本明細書において、めっき層が設けられていない伸線加工ままの鋼材、及びめっき鋼線においてめっき層を除く鋼材部分は「鋼線」と称し、鋼線の外周面に一種類の金属もしくは合金からなるめっき層、または二種類以上の金属もしくは合金が積層するめっき層が設けられている状態のものは「めっき鋼線」と称する。
「中心軸」とは、鋼線の軸方向(長手方向)と直交する断面(横断面)の中心点を通り、軸方向に延びる仮想線を意味する。
「工程」との用語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
<めっき鋼線>
本開示に係るめっき鋼線は、鋼線の表面にめっき層を備えためっき鋼線であって、鋼線の鋼組成が、質量%で、
C:0.30~1.20%、
Si:0.10~1.50%、
Mn:0.10~1.00%、
P:0.030%以下、
S:0.030%以下、
N:0.0150%以下、及び
O:0.0070%以下
を含み、残部がFe及び不純物からなり、
前記鋼線の半径をRとしたとき、前記鋼線の長手方向と平行であり、かつ前記鋼線の中心軸を含む断面において前記中心軸からの距離が0.2×R以上0.8×R以内の中心領域に観察される金属組織が、前記金属組織全体に対するフェライト及びパーライトの合計の面積率が90.0%以上、かつ前記金属組織全体に対する前記パーライトの面積率が47.5%以上であり、前記金属組織全体に対する前記フェライト及びパーライトの合計の面積率が100%未満である場合の残部がセメンタイト及びベイナイトの少なくとも一方からなり、
引張試験を行ったときに、引張強さが850~2000MPaであり、均一伸びが4.0~8.0%である。
[鋼組成]
本開示に係るめっき鋼線における鋼線の鋼組成(「めっき鋼線の鋼組成」、「鋼線の鋼組成」又は単に「鋼組成」と称する場合がある。)について説明する。
本開示に係るめっき鋼線の鋼組成は、基本成分(必須成分)として、質量%で、
C:0.30~1.20%、
Si:0.10~0.50%、
Mn:0.10~1.00%、
P:0.030%以下、
S:0.030%以下、
N:0.0150%以下、及び
O:0.0070%以下
を含み、残部がFeを主体とする。ここで「Feを主体とする」とは、前記基本成分以外の残部がFe及び不純物であるか、Fe、不純物、及び任意成分であることを意味する。
(C:0.30%~1.20%)
C(炭素)は、鋼線の必要強度を付与するために必須の元素である。C含有量が0.30%未満では鋼線の引張強さの低下を招き、吸収エネルギー能が低下する。そのため、C含有量を0.30%以上とする。一方、C含有量が1.20%を超えると、鋼線の引張強さが過度に高くなり、製網性が低下するほか、また、均一伸びや製網後の延性が低下することで、落石受け止め時の吸収エネルギーが低下する。そのため、C含有量の上限は1.20%とする。C含有量は、好ましくは、0.50%以上1.00%以下であり、より好ましくは0.60%以上0.90%以下である。
(Si:0.10~1.50%)
Si(珪素)は、鋼の脱酸に有効な元素である他、初析セメンタイトの生成を抑制する効果やフェライトを強化する効果が得られる。これらの効果を発揮させるためには、Siを0.10%以上含有することが必要である。しかしながら、Siを過剰に含有すると、これらの効果が飽和するため、Si含有量の上限は1.50%に定める。Si含有量は、好ましくは0.15%以上1.00%以下である。
(Mn:0.10~1.00%)
Mn(マンガン)は、脱酸及び脱硫に有用である他、オーステナイトからの初析セメンタイトや粒界フェライトの変態を遅延させる効果があり、本開示における鋼線を得るための伸線加工前の線材の組織をパーライト主体にするために有用な元素である。このような作用を発揮させるには、Mn含有量は0.10%以上とすることが必要であり、好ましくは0.20%以上であり、さらに好ましくは0.40%以上である。一方、Mnは、過剰に含有しても上記効果が飽和する他、偏析により加工性を低下させてしまう可能性がある。そのため、Mn含有量の上限は1.00%であり、好ましくは0.80%以下であり、より好ましくは0.60%以下である。
(P:0.030%以下)
P(リン)は、粒界に偏析して鋼を脆化させる不純物元素であるため、含有量の上限を0.030%に限定する。好ましくは0.020%以下、さらに好ましくは0.010%以下である。
なお、P量が少ないほど好ましいが、脱Pコストを低減する観点から、P量の下限は0.003%であってもよく、0.005%であってもよい。
(S:0.030%以下)
S(硫黄)は、粒界に偏析して鋼を脆化させる不純物元素であるため、含有量の上限を0.030%に限定する。好ましくは0.020%以下、さらに好ましくは0.010%以下である。
なお、S量が少ないほど好ましいが、脱Sコストを低減する観点から、S量の下限は0.003%であってもよく、0.005%であってもよい。
(N:0.0150%以下)
N(窒素)は、フェライト素地に固溶して鋼を脆化させる不純物元素であり、上限を0.0150%に限定する。N量は、好ましくは0.0080%以下、さらに好ましくは0.0050%以下である。
なお、N量の下限は限定されないが、脱Nコストを低減する観点から、N量の下限は0.0010%であってもよく、0.0020%であってもよい。
(O:0.0070%以下)
O(酸素)は鋼線の酸化物系介在物量に関わる不純物元素である。O含有量を0.0070%以下にすることで、粗大酸化物に起因する鋼線の吸収エネルギー能の低下を抑制することができる。好ましくは0.0050%以下、さらに好ましくは0.0040%以下である。
なお、O量の下限は限定されないが、脱Oコストを低減する観点から、O量の下限は0.0005%であってもよく、0.0010%であってもよい。
本開示における鋼線は、前記元素を鋼の基本成分とし、残部はFe(鉄)を主体とするものである。ここで「Feを主体とする」とは、前記鋼の基本成分以外の残部が、Fe及び不純物であるか、Fe、不純物、及び任意成分であることを意味する。すなわち、本開示における鋼線は、鋼組成が、前記基本成分、Fe及び不純物から構成されていてもよいし、Feの一部に代えて、更に強度、製網性等の向上を目的として、以下の様な選択的許容含有元素(任意元素)を1種又は2種以上、積極的に含有してもよい。ただし、以下の任意元素は必須ではなく、含有しなくても(すなわち、含有量が0%であっても)、本開示に係るめっき鋼線の効果は得られる。
なお、不純物とは、鋼線を工業的に製造する際に、原料としての鉱石、スクラップ、又は製造環境などから混入されるものであって、本開示に係るめっき鋼線に悪影響を与えない(すなわち、効果を妨げない)範囲で許容されるものを意味する。
(Al:0.080%以下)
Al(アルミ)は必須成分ではないが、製鋼時の脱酸元素として有用であるので含有してもよい。Alを含有した場合、AlNを析出し、フェライト素地を微細化する効果がある。しかし、Alを0.080%を超えて過剰に含有すると、粗大なAl介在物を生成して延性を低下させる場合がある。したがって、Alを含有する場合の上限値は0.080%とする。より好ましくは0.050%以下であり、さらに好ましくは0.030%以下である。Al含有量の下限は特に限定されないが、Alを脱酸元素として積極的に活用する場合は、0.005%以上が好ましく、より好ましくは0.010%以上である。
なお、Alを脱酸元素として活用しない場合は、Alは不純物として含まれる範囲内とし、Al量の上限は0.010%未満であってもよい。
(Cr:1.50%以下)
Cr(クロム)は、Mnと同様にオーステナイトからの初析セメンタイトや粒界フェライトの変態を遅延させる効果があり、本開示における鋼線を得るための伸線加工前の圧延線材においてパーライト主体の組織を得るために有用な元素である。また、Crは、セメンタイトを安定化するため、焼鈍時の球状化を適度に補助する効果が見込める。しかし、Crを1.50%超含有すると、これら効果が飽和する他、焼入れ性が高くなり、熱間圧延時の冷却過程でベイナイト、マルテンサイト等の過冷組織が発生し易くなることや変態完了までの時間が長時間となり、生産性の低下や設備コストの増加につながる。Cr含有量は、好ましくは0.05%以上0.30%以下であり、さらに好ましくは0.10%以上0.25%以下である。
(B:0.0050%以下)
B(ホウ素)は、微量の含有で結晶粒界の強度を強化し、粒界フェライトの析出を抑制する。しかし、Bを0.0050%超含有すると、Fe23(CB)等の炭化物を形成し、粒界の結合を阻害する要因になる。したがって、Bを含有させる場合、B含有量は、0.0050%以下とすることが好ましい。B含有量は、より好ましくは0.0005~0.0030%、さらに好ましくは0.0008~0.0020%である。
(Ti:0.040%以下)
Ti(チタン)は、鋼中でTiNを形成してNを固定し、ひずみ時効を予防する効果がある。しかし、Tiを0.040%超含有すると、鋼中に粗大なTiNを形成して材質に悪影響を及ぼすおそれがある。したがって、Tiは0.040%以下の含有が効果的である。Ti含有量は、より好ましくは0.005~0.030%、さらに好ましくは0.008~0.020%である。
(Mo:0.40%以下)
Mo(モリブデン)は適量の含有で、焼入れ性を向上させてフェライト分率を低減させると共に、上述のBの粒界強化を促進する効果がある。しかし、Moは、0.40%超では鋼の焼入れ性が高くなり過ぎて、熱間圧延時の冷却過程で、鋼中にマルテンサイト等の過冷組織が形成され、伸線加工性に悪影響を与える。したがって、Moは0.40%以下の含有が効果的である。Mo含有量は、より好ましくは0.05~0.20%、さらに好ましくは0.07~0.10%である。
(V:0.30%以下)
V(バナジウム)は、フェライトの強度を上げる効果があるが、0.30%を超えて含有すると脆化する。したがって、Vを含有させる場合、Vの含有量の上限値は0.30%とするのが効果的である。V含有量は、より好ましくは0.05~0.30%、さらに好ましくは0.07~0.15%である。
(Cu:0.50%以下)
Cu(銅)は、フェライトに固溶して鋼を強化する効果があるが、0.50%を超えて含有すると、鋳片加熱時に結晶粒界に濃化して鋼を脆化させる。したがって、Cuを含有する場合、Cu含有量の上限値は0.50%とするのが効果的である。Cu含有量は、より好ましくは0.02~0.30%、さらに好ましくは0.03~0.20%である。
(Ni:0.50%以下)
Ni(ニッケル)は、固溶強化の効果があるが、0.50%でその効果が飽和する傾向がある。したがって、Niを含有する場合の上限値は0.50%とするのが効果的である。Ni含有量は、より好ましくは0.01~0.30%、さらに好ましくは0.03~0.20%である。
(Nb:0.10%以下)
Nb(ニオブ)は、微細な炭化物として鋼中に析出し、フェライトを強化する効果があるが、含有量が0.10%を超えると鋼を脆化させる。したがって、Nb含有量の上限値は0.10%とするのが効果的である。Nb含有量は、より好ましくは0.02~0.07%、さらに好ましくは0.03~0.05%である。
(残部:Fe及び不純物)
本開示における鋼線は、前述の基本成分及び任意元素からなるものであるが、化学組成の残部は、Fe及び不純物からなる。ここで、不純物とは、鋼の原料として利用される鉱石、スクラップ、又は製造過程の環境等から混入する元素を意味する。
[鋼線の金属組織]
次に、本開示に係るめっき鋼線における鋼線の金属組織について説明する。
本発明者らは、前記のC量が0.30%以上の鋼材を用いて、冷間伸線の加工量及び焼鈍条件を変えた種々の鋼線を製造し、鋼線の組織と機械的特性の関係について詳細に検討した結果、以下の知見を得た。
金網への製網性を有しつつ、かつ高いエネルギー吸収能を有する鋼線を得るためには、前記成分の鋼を用いて特にフェライト及びパーライトの面積率を制御することが有効であり、好ましくはフェライト粒径の形状やラメラセメンタイトの形態を制御することで目的とするより好ましい性能が得られる。
本開示に係るめっき鋼線は、圧延線材を素材として、伸線-めっきの工程を経て製造される。本開示における鋼線の金属組織は、フェライト及びパーライトから構成されていることが好ましく、さらにセメンタイト及び/又はベイナイトを含んでもよい。
なお、上記「フェライト」は、パーライトやベイナイトに含まれるフェライト相は除外される。
また、上記「セメンタイト」は、パーライトやベイナイトに含まれるセメンタイト相以外のセメンタイトのことを意味する。例えば、伸線加工前の線材に存在する初析セメンタイトに由来して鋼線に残存するセメンタイトなどがある。
本開示における「パーライト」とは、セメンタイトとフェライトとの層状組織(ラメラ組織)である。「ベイナイト」は、ラメラパーライト及びフェライトマトリクス中に球状セメンタイトが分散した組織のいずれにも属さない、通常のフェライトより転位を多く含むフェライトとセメンタイトとの混合組織である。
図1は、めっき鋼線の縦断面において金属組織を観察する中心領域を示している。なお、図1においてめっき層は省略されている。本開示に係るめっき鋼線は、鋼線10の半径をRとしたとき、鋼線10の長手方向に平行であり、かつ中心軸Cを通る断面(縦断面)において、中心軸Cからの距離が0.2×R以上0.8×R以内の中心領域12に観察される金属組織について説明する。
(中心領域の組織)
鋼線10の長手方向に平行であり、かつ中心軸Cを通る断面(縦断面)の中心領域12において、組織全体に対するフェライト及びパーライトの合計の面積率が90.0%以上である。フェライト及びパーライトの合計面積率が90.0%未満では、鋼線の伸びやねじり特性が低くなり、エネルギー吸収能が低くなる。組織全体に対するフェライト及びパーライトの合計面積率は、好ましくは95.0%以上であり、より好ましくは97.0%以上である。
また、中心領域12における金属組織は、組織全体に対するフェライト及びパーライトの合計の面積率が100%未満である場合は、残部がセメンタイト及びベイナイトの少なくとも一方からなる。残部としてセメンタイト及び/又はベイナイトが存在する場合、これらの組織の面積率は10%以下である。
また、組織全体に対するパーライトの面積率は47.5%以上である。パーライトの面積率が47.5%以上であることで、引張強さが上昇し、金網の吸収エネルギーが大きくなり、かつ、落石受け止め時の金網の張り出し量が小さくなる。組織全体に対するパーライトの面積率は好ましくは50%以上であり、より好ましくは60.0%以上であり、さらに好ましくは80.0%以上である。
(体心立方晶である結晶粒の形状)
本開示における鋼線において、体心立方晶である結晶粒の粒径は、塑性変形能(延性)と強度を高レベルでバランスさせるために、制御することが好ましい(本開示において、体心立方晶である結晶粒をbcc粒と称する)。
bcc粒は、めっき時の加熱による再結晶で粗大になると、引張強さが低下する、また、微細な再結晶bcc粒が増えると、降伏比が上昇し、製網性が低下する。そのため、鋼線の長手方向と平行な断面(縦断面)において、bcc粒の粒径が5μm以下であり、かつbcc粒の鋼線の長手方向と平行な方向の粒径Xと長手方向と垂直な方向の粒径Yとの粒径比X/Yが2.0未満である微細なフェライトの面積率が組織全体の10%以下であることが好ましい。
bcc粒の粒径比X/Yが2.0未満では、前記再結晶が進行しており、引張強さが低下するほか、伸びが大きく、落石受け止め時の金網張り出し量が大きくなる。一方、bcc粒径比が10.0超では、bcc粒内の歪量が大きく、めっき鋼線の伸びが不足し、落石受け止め時の吸収エネルギーが低下する。そのため、bcc粒の粒径比は好ましくは2.0~10.0であり、より好ましくは3.0~8.0である。
一方、bcc粒の粒径が5μm以下、かつ粒径比が2.0未満の微細な再結晶bcc粒は、面積率が組織全体の10%超であれば、降伏強度が上昇する。このようなbcc粒の面積率は10%以下であれば、前記吸収エネルギー、および、落石受け止め時の金網張り出し量に及ぼす影響は小さい。
(ラメラセメンタイトの形態)
パーライトを構成するラメラセメンタイトにおいて、めっき工程での加熱で、セメンタイトが分断されると、引張強さの不足やねじり特性の低下が発生する。そのため、パーライトのラメラセメンタイトにおいて、セメンタイトの長さが0.1μm以下になっているパーライトの領域が、組織全体の20.0%以下であることが好ましい。より好ましくは、10.0%以下である。なお、本開示において、パーライトを構成するラメラセメンタイトの長さが0.1μm以下である場合、「分断ラメラセメンタイト」と称する場合がある。
(金属組織の測定方法)
鋼線の金属組織の観察、及び組織の面積率の測定は、以下のように行うことができる。
鋼線の長手方向に平行な断面(縦断面)を観察できるように、亜鉛めっき鋼線を切断、樹脂埋めした後、研磨紙およびアルミナ砥粒で研磨し、鏡面仕上げする。この鏡面仕上げ部分を常温(25℃)の3%ピクラール溶液で5秒腐食後、直ちにアルコール洗浄して観察試料とする。腐食後にフェライトと炭化物(セメンタイト)との境界が不鮮明な場合には、再度5秒の腐食を追加してもよい。
(フェライト及びパーライトの面積率の測定)
電界放射型走査電子顕微鏡(FE-SEM)を用いて、前記観察試料を観察、撮影する。撮影は鋼線の中心軸を通る線上で、中心から0.2×R、0.4×R、0.6×R、0.8×R(Rは鋼線の半径)の位置を中心として、倍率2000倍で、少なくとも60μm×60μmの範囲を各2視野、合計8視野について行う。撮影したSEM写真に10μm間隔で縦横にそれぞれ5本の直線を格子状に引き、交点が25点となるように区画する。続いて、各交点の組織を判別し、フェライトとパーライトの面積率を測定する。同様の作業を各写真で実施する。つまり、合計200点の交点で測定する。例えば、フェライトの面積率(%)は、(フェライトと判断された交点総数/200)×100である。同じく、パーライトの面積率(%)は、(パーライトと判断された交点総数/200)×100である。
(分断ラメラセメンタイトの面積率の測定)
電界放射型走査電子顕微鏡(FE-SEM)を用いて、前記観察試料の腐食部分を観察、撮影する。撮影は鋼線の中心軸を通る線上で、中心軸から0.2×R、0.4×R、0.6×R、0.8×R(Rは鋼線の半径)の位置を中心として、倍率5000倍で、少なくとも12μm×12μmの範囲を各2視野、合計8視野について行う。
撮影したSEM写真を用いて、2μm間隔で縦横にそれぞれ5本の直線を格子状に引き、交点が25点となるように区画する。そこで、各交点上もしくは近傍にあるセメンタイトの長さを測定し、セメンタイトの長さが0.1μm以下のものの個数を測定する。なお、交点の近傍にセメンタイトがない場合、そこは、セメンタイトがないものとし、母数のみに加えるものとする。ここで、「交点の近傍」とは、図2に示すように、対象となる交点aを中心とする1辺2μmの正方形内の領域Aを意味する。すなわち、領域Aに存在するセメンタイトのうち交点aから最も近いセメンタイトの長さ(両端部間の直線距離)が0.1μm以下である場合は、その交点aのセメンタイトの長さは0.1μm以下と判断する。領域Aにセメンタイトが存在しない場合は、その交点aはセメンタイトが存在しない交点とする。
そして、8視野におけるセメンタイトの長さが0.1μm以下である交点の総数を、観察視野の交点の総数200で除して長さが0.1μm以下のセメンタイト(分断ラメラセメンタイト)の面積率とする。
(体心立方晶である結晶粒の形態の測定)
鋼線の金属組織において、bcc粒、すなわち体心立方晶である結晶粒の粒径、粒径比、面積率を求めるには、鋼線の中心軸を含む縦断面を樹脂埋め込みしてアルミナ研磨した後、コロイダルシリカを用いて研磨したのち、電子線後方散乱回折(EBSD)測定に供する。なお、研磨は電解研磨でもよい。
測定する場所は、図3に示すように、鋼線10の半径をRとしたとき、鋼線10の長手方向に平行な縦断面において鋼線10の表面(外周面)からの深さR/2の線上を中心とした視野で撮影する。なお、場所による組織のばらつきを抑えるため、前記深さR/2の線上において5箇所を撮影範囲が重複しないように撮影を行う。測定は、倍率500倍で撮影し、撮影した領域を0.4μm/stepでbcc結晶方位データマップを採取し、結晶方位差15°以内でかつ10ピクセル以上連結されているものを同じbcc粒とし、粒の境界を求める。bcc粒の形状(粒径及び粒径比)を評価するための各箇所での測定領域(面積)は、測定視野面積43200μm(鋼線の径方向180μm×鋼線の長さ方向240μm)とする。
前記の方法でbcc粒界を規定、現出させたのち、bcc結晶粒界をトレースした線図において、20μm間隔で縦横にそれぞれ8本の直線を引き、各交点のbcc粒の粒径及び粒径比を求める。図4は、bcc粒16の粒径比を説明する図面である。本測定では、各交点におけるbcc粒16の伸線方向の長さXをbcc粒径とし、伸線方向の長さXを分子に、伸線方向とは垂直方向(すなわち、径方向)の長さYを分母として粒径比X/Yを求める。なお、伸線加工歪が小さく、最大径が伸線方向でない場合は、ほぼ粒径比は1となるか、もしくは1未満(すなわち、鋼線の伸線方向の長さX<鋼線の径方向の長さY)となるbcc粒が存在し得るが、そのような粒径比が1以下となるbcc粒が存在してもよい。
また、同じ粒内に複数の交点がある場合は、1点のみで測定し、同一の粒内にある他の交点では測定しないものとする。
このような方法により、各観察領域における64箇所の交点のうちbcc粒径が5μm以下であり、かつbcc粒の鋼線の長手方向と平行な方向の粒径と長手方向と垂直な方向の粒径との粒径比が2.0未満のbcc粒(本開示において「微細bcc粒」と称する場合がある。)が存在する交点の数を、当該観察領域の交点の総数64で除して微細bcc粒の面積率を求める。5箇所の観察領域についてそれぞれ微細bcc粒の面積率を算出し、算術平均した値をその鋼線の微細bcc粒の面積率とすることができる。
本開示における鋼線は、めっきが施される。すなわち、本開示に係るめっき鋼線は、前記鋼線の表面を被覆するめっき層を有する。
めっき種は、例えば、亜鉛めっき及び亜鉛合金めっき(以下、亜鉛系めっき)のほか、スズめっき、アルミめっきなどであってよい。
めっき方法としては、溶融めっき、電気めっきの何れでも適用できる。
落石防護工に用いられる金網としては、一般に亜鉛系めっきが用いられている。以下に、亜鉛系めっきについて説明する。
亜鉛系めっきの付着量は特に限定されないが、めっきの付着量が30g/m未満となると、犠牲防食作用が不十分となる可能性があるため、30g/m以上の層厚が好ましい。一方、めっきの付着量を400g/m超と増加させても、安定的な生産が困難で不経済となるため、400g/m以下としてもよい。したがって、めっきの付着量は30g/m以上400g/m以下の範囲が望ましい。
亜鉛系めっきはZnを主体とするめっきであり、他の成分を含んだ合金めっきであってもよい。他の成分とは、例えばAlやMgである。Al量の好ましい範囲は0~25%であり、Mg量の好ましい範囲は0~3%である。
また、本開示に係るめっき鋼線は、めっき鋼線の表面に樹脂被覆又は塗装を施した被覆めっき鋼線としてもよい。
[機械的特性]
本開示に係るめっき鋼線の機械的性質は、引張強さが850~2000MPaであり、引張試験時の均一伸びが4.0~8.0%である。このような機械的性質を有することで、製網性に優れ、金網に用いた場合に落石を受け止めた際の張り出し量を小さくすることが可能となる。
また、本開示に係るめっき鋼線の機械的性質は、好ましくは、引張試験における破断伸びが5.0~10.0%であり、降伏比が70.0~90.0%である。さらに、本開示に係るめっき鋼線の機械的性質は、好ましくは、ねじり試験でデラミネーションがなく、破断までの回転数が25回転以上である。
以下、各機械的特性及び測定方法について説明する。
(引張強さ)
本開示に係るめっき鋼線は、引張強さが850~2000MPaである。引張強さが850MPa未満では、強度が低いため、吸収エネルギーを大きくするには、伸びが必要となり、金網での落石防護の際、落石を受け止めた時の張り出し量が大きくなる。一方、引張強さが2000MPa超では、脆化が進行し、金網での吸収エネルギー能が低下する。引張強さは、好ましくは900~1800MPaであり、より好ましくは1000~1600MPaである。
(均一伸び)
本開示に係るめっき鋼線は、引張試験における均一伸びが4.0~8.0%である。均一伸びが4.0%以上であれば、吸収エネルギー能が高くなる。一方で、破断伸びが8.0%以下であれば、金網での落石防護の際、落石を受け止めた時の張り出し量が小さくなる。より好ましくは4.2%以上、7.0%以下である。なお、均一伸びは鋼線における転位の影響が大きいと考えられる。
本開示に係るめっき鋼線の伸びは後述の引張試験にて、試験片を設置した後、チャック間において2カ所以上で印を付与し、引張試験時はその印の位置関係をカメラで撮影しながら、印部の移動状況を測定する。均一伸びは、引張前から引張試験時の最大荷重点までの変位から計算する伸びであり、下記式によって算出される。
均一伸び(%)=(D2-D1)/D1×100
D1:引張前の2つの印の間隔
D2:引張試験時の最大荷重点における2つの印の間隔
(破断伸び)
本開示に係るめっき鋼線は、引張試験における破断伸びが5.0~10.0%であることが好ましい。破断伸びが5.0%以上であれば、吸収エネルギー能が高くなる。一方で、破断伸びが10.0%以下であれば、金網での落石防護の際、落石を受け止めた時の張り出し量が小さくなる。破断伸びは、より好ましくは5.2%以上、9.0%以下である。
破断伸びも後述の引張試験にて、試験片を設置した後、チャック間において2カ所以上で印を付与し、引張試験時はその印の位置関係をカメラで撮影して求める。破断伸びは引張前から引張試験時、破断した際の変位から計算する伸びである。
(降伏比)
本開示に係るめっき鋼線は、引張試験における降伏比が70.0~90.0%であることが好ましい。降伏比が70.0%以上であれば、小さい荷重で変形し難く、伸びが抑制されるため、本開示に係るめっき鋼線を製網した金網が落石を受け止めた時の張り出し量が小さくなる。一方、降伏比が90.0%以下であれば、塑性変形時の負荷が小さく、製網時の加工性が良くなるほか、衝撃時の吸収エネルギーが向上する。降伏比は、より好ましくは75.0%~85.0%である。なお、降伏比(%)は、降伏強さ/引張強さ×100(%)で算出される値であり、降伏強さは0.2%耐力とする。
(ねじり回数)
本開示におけるめっき鋼線は、ねじり試験において、破断まで縦割れが発生することなく、ねじり回数が25回以上であることが好ましい。縦割れすることなく破断するまでのねじり回数が25回以上であれば、金網時の吸収エネルギーの低下が効果的に抑制できる。ねじり試験において、縦割れすることなく破断するまでのねじり回数は好ましくは28回以上であり、さらに好ましくは30回以上である。一方で、破断までのねじり回数に上限はないが、60回程度が上限と考えられる。
(機械的特性の測定方法)
本開示に係るめっき鋼線のねじり回数以外の上記機械的特性は、引張試験によって求めることができる。
測定対象である鋼線から非定常部を除いて、長さ200mmのサンプルを採取し、引張試験に供する。引張試験はチャック間100mm、ひずみ速度10/s、伸びを測定するための印の間隔は80mmで実施する。同様の試験を3回行い、その平均を各測定値とする。なお、引張試験時の破断部が伸びを計測するための印付与の領域外である場合、その試験結果は含めず、再度測定を行う。
引張強さ、均一伸び、破断伸び、降伏比も上記引張試験により求める。
(ねじり試験方法)
本開示に係るめっき鋼線の上記機械的特性の測定において、ねじり試験はJIS G 3548:2011に記載されている方法で実施する。具体的には、測定対象である鋼線から非定常部を除いて、鋼線の直径の100倍のつかみ間隔が得られる長さのサンプルを採取し、試験に供する。サンプルを、表面に疵をつけないようロールなどで真直にした後、サンプルの両端を鋼線の直径の100倍の間隔でつかみ、サンプルに引張強さの1%の荷重を付与し、サンプルを緊張しながら一方を同一方向に破断するまで回転する。そして、破断した際の回転数を破断までのねじり回転数とする。縦割れの有無については、破断後の破面を観察し、破断面において、線軸に直角な割れの有無で判断を行う。なお、破断箇所が複数発生した場合、全ての破断面を観察し、縦割れがない破断面が1つ以上あれば、「縦割れせずに破断した」と判断する。
<金網>
本開示に係る金網は、前述した本開示に係るめっき鋼線を製網した金網である。なお、めっき鋼線の表面に塗料又は樹脂被覆を施した後述する被覆めっき鋼線を用いて製網した金網でもよい。
図5は、本開示に係る金網の網目の一例を示している。本開示に係る金網は例えば図5に示すようなひし形の網目、すなわち、ひし形金網が好ましいが、溶接金網やリング金網でもよい。図6は、図5に示すようなひし形の網目を有する金網を矢印Eの方向から見た図である。金網30を構成するめっき鋼線20の線径は2.0~5.0mmであり、ひし形金網30の厚さtがめっき鋼線20の線径の5.0~12.0倍以下であることが好ましい。
めっき鋼線20の線径が2.0mm未満では、落石衝突時の吸収エネルギーが低下する一方で、5.0mm超では、金網の重量が重くなり、作業性が低下する。金網30の厚さtが、亜鉛めっき鋼線20の線径の5.0倍以上とすることで、金網30の吸収エネルギーが上昇する。しかし、金網30の厚さがめっき鋼線20の線径の12.0倍超では、金網30の重量の増加及び運搬時のスペースの増大により、作業性が低下する。
[金網の機械的特性]
本開示に係るめっき鋼線及び被覆めっき鋼線を用いて製網した後、金網から1箇所以上の屈曲点又は溶接点を含む鋼線を取り出して引張試験に供したとき、その引張強さが800~2000MPaであり、最大引張荷重の半分の荷重から最大荷重点までの伸びが3.5~7.0%であることが好ましい。このような機械的性質を有することで、金網は落石を受け止めた際の吸収エネルギーが大きく、張り出し量を小さくすることが可能となる。
めっき鋼線を用いて製網する際、ひし形金網などであれば、曲げられた屈曲を含み、溶接金網などであれば溶接部を含む。これらの点は、破壊の起点となり得るため、素材となるめっき鋼線より機械的特性が低下する可能性がある。一方で、機械的特性が大きく低下する場合、落石受け止め時の吸収エネルギー能の低下につながるため、上記特性を有することが好ましい。
(金網の引張強さ)
本開示における製網後のめっき鋼線の引張強さは800~2000MPaとすることが好ましい。製網後の鋼線の引張強さが800MPa未満では、強度が低いため、落石防護工が落石を受け止めた時の吸収エネルギー能が低下する、もしくは吸収エネルギー能を大きくするには伸びが必要となり、落石防護工が落石を受け止めた時の張り出し量が大きくなる傾向がある。一方、引張強さが2000MPa超では、脆化が進行し、金網での吸収エネルギー能を確保することが難しくなる傾向がある。より好ましくは、850MPa以上、1800MPa以下であり、さらに好ましくは900MPa以上、1600MPa以下である。
(金網の伸び)
本開示に係る金網に製網後のめっき鋼線の伸びは3.5%~7.0%であることが好ましい。製網後のめっき鋼線の伸びが3.5%以上であれば、延性の低下によって落石防護工が落石を受け止めた時の吸収エネルギー能が低下することが抑制される。一方、製網後のめっき鋼線の伸びが7.0%以下であれば、落石防護工が落石を受け止めた時の張り出し量を小さくすることができる。製網後のめっき鋼線の伸びは、より好ましくは3.7%以上、6.5%以下である。
(金網の機械的特性の測定方法)
本開示に係る金網の上記機械的特性は、引張試験によって求めることができる。
(金網を構成するめっき鋼線の引張強さの測定)
図7は、金網を構成するめっき鋼線の機械的特性を引張試験によって測定する方法を示す概略図である。測定対象である金網から端部を除いて、1箇所以上の屈曲点又は溶接点を含む亜鉛めっき鋼線20を採取し(図7(A))、両端部を真直ぐに矯正し(図7(B)、両端部をチャック40でつかんで引張試験に供する(図7(C))。引張試験はひずみ速度10/sで実施する。破断時の最大負荷強度を引張強さとする。
(金網を構成するめっき鋼線の伸びの測定)
製網後のめっき鋼線の伸びについては、製網時の曲げなどによる影響を除外するため、引張試験時、評価材を真直した後、破断までの変化量で測定を実施する。図8は、引張試験におけるチャック間ストロークと荷重との関係を示す模式図である。本開示では、負荷荷重とチャック部の移動による応力‐歪曲線において、最大負荷中の半分の負荷がかかった点を始点とし、その後、最大負荷荷重の半分の負荷の点から破断に至るまでのチャックの変動距離を伸びた量とし、始点時のチャック間距離で除した値を製網後の鋼線の伸びとした。同様の試験を3回行い、その平均を各測定値とする。なお、引張試験時の破断部がチャック内などチャック間以外である場合、その試験結果は含めず、再度測定を行う。
<めっき鋼線の製造方法>
次に、本開示に係るめっき鋼線の製造方法について説明する。なお、以下に説明する製造方法は一例であり、以下の手順及び方法で限定するものではなく、本開示に係るめっき鋼線の構成を実現できる方法であれば、如何なる方法を採用してもよい。
本開示に係るめっき鋼線は、鋼の組成を上述した鋼組成に調整した鋼を鋼片とし、これを熱間圧延等で線材にした後、上述した金属組織及び機械的特性が得られる条件で伸線加工及びめっきを施すことにより得ることができる。
[線材の製造]
線材の製造条件は、例えば、前記成分の鋼を鋳造し、鋳造片を分塊圧延にて、線材圧延に適した大きさの鋼片(ビレットと呼ばれる線材圧延前の鋼片)を製造し、熱間圧延に供する。
線材の圧延に際しては、前記鋼片を950~1150℃に加熱し、仕上圧延開始温度を800℃以上950℃以下に制御する。線材の圧延温度は放射温度計により測定されたものであり、鋼材の表面温度を意味する。
線材の組織は、共析鋼以上のC量を有する線材では、パーライトを主体とし、共析鋼未満のC量を有する線材ではフェライト-パーライト組織を主体とすることが望ましい。また、パーライトの面積率が高い方が望ましく、C量が0.7%未満である線材は、パーライトの面積率が(C量:質量%+0.2)×100%以上であることが望ましい。また、共析鋼以上のC量を有する線材においては、パーライトの面積率が90%以上であることが望ましく、その他、初析セメンタイト、ベイナイトやマルテンサイトの合計面積率は10%以下が望ましい。
これらの組織を得るためには、圧延線材の仕上げ圧延開始温度を800℃以上にし、かつ、仕上げ圧延後(リング状に巻取り後)から650℃までの平均冷却速度を5.0℃/s以上にする。その後、650~550℃までの冷却速度を3.0~10.0℃/sにすることが好ましい。650~550℃までの冷却速度が10.0℃/s超では、過冷組織が生成し、3.0℃/s未満ではセメンタイトの分断などが進行し、十分な引張強さが得られない。
[伸線加工]
上記線材を、乾式伸線にて所定の線径まで伸線を行う。その際、1パスの減面率は30%以下とし、合計での歪量は真歪で0.4~2.0の範囲であることが好ましい。1パスの減面率が30%超では、伸線時に断線する可能性が高くなる。また、伸線加工での合計真歪が0.4未満では、その後の焼鈍時に、好ましい性状のbcc粒が得られにくく、引張強さが低下し、吸収エネルギー能もしくは張り出し量が低下する。一方、伸線加工での合計真歪が2.0超では、伸線後の鋼線の引張強さが大きく、めっき後でも本開示の好ましい機械的特性や組織が得られ難い。伸線の合計の歪量は、より好ましくは、真歪0.5~1.6の範囲である。
なお、真歪は、-2×ln(伸線材の線径/線材の線径)の計算式から算出することができる。「ln」は自然対数である。
本開示における鋼組成を有し、製造条件を上記のように調整することにより、鋼線の金属組織及び機械的特性を本開示の範囲内とすることができる。
[めっき]
一例として、めっきが亜鉛めっきである場合、亜鉛めっきは、通常の工業的な方法で行うことができる。例えば、伸線時の潤滑剤を除去し、酸洗により表面を活性化する。次いで、フラックスを塗布した後、溶融亜鉛めっきを行う。亜鉛めっきの温度やめっき浴の浸漬時間で、亜鉛めっき鋼線の機械的特性や組織を制御する。めっき浴の温度は好ましくは450~490℃であり、浸漬時間は20~60sである。
(被覆めっき鋼線)
本開示に係るめっき鋼線は、めっきの表面にさらに、塗装や樹脂被覆などを施した被覆めっき鋼線としてもよい。
被覆する塗料や樹脂は特段限定されず、用途に応じて選択することができる。例えば、金網用として用いる場合は、公知の金網用めっき鋼線の被覆材料として適用される塗料又は樹脂を用いることができる。
なお、被覆めっき鋼線の場合、前記の製網後のめっき鋼線の機械的特性は、塗装や樹脂被覆状態での引張試験で測定してよいが、めっき鋼線の引張強さなどを測定する際は、芯材となるめっき鋼線の線径に基づいて測定するものとする。
<用途>
本開示に係るめっき鋼線及び被覆めっき鋼線の用途は特に限定されないが、例えば、本開示に係るめっき鋼線又は被覆めっき鋼線を用いて製網した金網を落石防護工用の金網として使用すれば、落石を受け止めたときに、伸びが少なく、かつ高い吸収エネルギー性能を有し、金網が道路側に張り出すことが抑制される。
また、本開示に係るめっき鋼線及び被覆めっき鋼線は、落石防護工や飛来物の防止用途の金網に好適であるが、それに限定されるものではない。本開示に係るめっき鋼線及び被覆めっき鋼線は、例えば、橋梁用ワイヤ、コンクリートの補強ワイヤ、高速道路や橋桁の落下防止として使用されるガードワイヤなどの素材として使用することができる。
以下、本開示に係るめっき鋼線等について、亜鉛めっき鋼線の実施例を挙げてより具体的に説明する。なお、本開示は、もとより下記の実施例に限定されるものではなく、前記及び後記の趣旨に適合し得る範囲で変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本開示の技術的範囲に含まれるものである。
[溶融亜鉛めっき鋼線の製造及び評価]
(線材の製造)
実施例、比較例とも、熱間圧延は、まず、ビレットを1000~1100℃まで加熱した後、圧延し、リング状に巻取った。仕上圧延開始温度、リング状に巻取り後650℃までの冷却速度(冷却速度A1)、650℃から550℃までの冷却速度(冷却速度A2)を表2A、表2Bに示す値にて熱間圧延を行った。
(伸線加工)
前記のように得られた線材を用いて、表2A、表2Bに示す条件にて、伸線加工(乾式伸線)及び熱処理を行い、鋼線を得た。なお、乾式伸線は、前処理として、酸洗もしくはベンディングでスケール除去を行い、石灰皮膜処理を行った後、1パス当たりの減面率12~30%で伸線を行った。鋼線の線径を表2A、表2Bに示す。
(亜鉛めっき)
鋼線の表面の清浄(スケールや潤滑剤の除去)および活性化するため、50℃の湯および60℃、17%塩酸で溶解除去、水洗後、フラックスである塩化アンモニウム、塩化亜鉛の混合溶液に通材し、フラックスを塗布した。塗布したフラックスを乾燥させた後、溶融亜鉛中に通材し、引き上げて、溶融亜鉛めっき鋼線を製造した。なお、亜鉛系の合金めっきは、亜鉛めっき後、合金めっきに浸漬させることで製造した。その場合の浸漬時間はそれぞれの浸漬した時間の合計を測定した。
前記のようにして得た亜鉛めっき鋼線の組織評価及び引張試験を実施した。金属組織及び機械的特性は、前述した方法によって測定した。
[金網の評価]
次に、金網のエネルギー吸収能の評価方法について述べる。
まず、前記の溶融亜鉛系めっき鋼線を、大きさ3m×3m、目合い50mm×50mmのひし型金網に製網した。
上記のようにして製作した金網を四方のうち対となる二辺に沿った両面を固定フレームに所定の間隔でボルトで固定し、残った二辺はロープを網目に通した後、ロープ端部を固定フレームに固定した後、直径0.7m、重さ1.6tの球状の錘を種々の高さから落下させた。そして、落錘により金網を貫通しない最大の高さから、金網が吸収できるエネルギー(kJ)として算出し、そのエネルギーを金網に使用した亜鉛めっき鋼線の断面積で除した値で金網の吸収エネルギー(kJ/mm)を評価した。張り出し量(張り出し距離)は、前記の落錘が金網を貫通しない最大高さの際の金網の初期位置から最終位置の移動距離の値とする。
高エネルギー吸収金網の判定基準として前記の金網の吸収エネルギー(kJ/mm)が4.5kJ/mm以上とした。また、張り出し量は1350mm以下であることを良好とする。
表1A、表1Bに鋼組成を、表2A、表2Bに熱間圧延条件及び線材の組織評価並びに伸線加工及びめっき条件を、表3A、表3Bに鋼線の組織評価、並びに亜鉛めっき鋼線及び金網の機械的特性を示す。
表2A、表2Bに記載の冷却速度A1、冷却速度A2及び式(A)は下記のように定義する。
冷却速度A1:仕上げ圧延後(巻取り後)650℃までの平均冷却速度
冷却速度A2:650℃から550℃までの平均冷却速度
T:めっき浴の温度(℃)
S:めっき浴の浸漬時間(秒)
Figure 2022155033000001
Figure 2022155033000002
Figure 2022155033000003
Figure 2022155033000004
Figure 2022155033000005
Figure 2022155033000006
水準A1~A40は、いずれも本開示の実施例であり、金網として、高いエネルギー吸収能を得つつ、張り出し量も抑制できている。
B1は、現行の通常亜鉛めっき線に使用される鋼組成であり、C量が低く、引張強さが低いため、吸収エネルギーが低い例である。
B2は、C量が過剰であるため、均一伸びや破断伸びが低下し、ねじり試験において縦割れが発生し、吸収エネルギーが低下した例である。
B3は、めっき鋼線の引張強さが弱いため、吸収エネルギーが低下した例である。
B4、B5は伸線後、めっき前に750℃ 80S保持で焼鈍を行ったサンプルである。引張強さの低下や均一伸びの上昇により、吸収エネルギーの低下や張り出し量が大きくなった例である。
B6は、鋼線の引張強さが過剰に大きくなり、均一伸びが得られず、吸収エネルギーが低下した例である。
B7、8、9はめっき鋼線の均一伸びが低いため、吸収エネルギーが低下した例である。これらのめっき鋼線において均一伸びが低い理由は定かでないが、製造条件が適切でなく、鋼線の転位が影響していると考えられる。B7はめっき浴の浸漬時間が短く、B8はめっき浴の温度が低いため、めっき浴による組織の回復が少なく転位密度が異なると推測される。また、B9は伸線加工歪が大き過ぎて転位密度が異なると推測される。
また、B3、B4は均一伸びやねじり特性が低下したため、製網時に断線が発生した。

Claims (12)

  1. 鋼線の表面にめっき層を備えためっき鋼線であって、
    前記鋼線の鋼組成が、質量%で、
    C:0.30~1.20%、
    Si:0.10~1.50%、
    Mn:0.10~1.00%、
    P:0.030%以下、
    S:0.030%以下、
    N:0.0150%以下、及び
    O:0.0070%以下
    を含み、残部がFe及び不純物からなり、
    前記鋼線の半径をRとしたとき、前記鋼線の長手方向と平行であり、かつ前記鋼線の中心軸を含む断面において前記中心軸からの距離が0.2×R以上0.8×R以内の中心領域に観察される金属組織が、前記金属組織全体に対するフェライト及びパーライトの合計の面積率が90.0%以上、かつ前記金属組織全体に対する前記パーライトの面積率が47.5%以上であり、前記金属組織全体に対する前記フェライト及びパーライトの合計の面積率が100%未満である場合の残部がセメンタイト及びベイナイトの少なくとも一方からなり、
    引張試験を行ったときに、引張強さが850~2000MPaであり、均一伸びが4.0~8.0%である、
    めっき鋼線。
  2. 前記鋼組成が、前記Feの一部に代えて、質量%で、
    Cr:1.50%以下、
    B:0.0050%以下、
    Ti:0.040%以下、
    Mo:0.40%以下、
    V:0.30%以下、
    Cu:0.50%以下、
    Al:0.080%以下、
    Ni:0.50%以下、及び
    Nb:0.10%以下、
    からなる群から選択される1種以上を含む、請求項1に記載のめっき鋼線。
  3. 前記鋼組成が、前記Feの一部に代えて、質量%で、
    Mg:0.010%以下、
    Zr:0.010%以下、
    Sb:0.015%以下、
    W:0.010%以下、
    REM(原子番号57から71までの元素):0.005%以下、
    Hf:0.005%以下、
    Ta:0.050%以下、
    Ca:0.005%以下、
    Sn:0.050%以下、
    Bi:0.050%以下、
    Te:0.050%以下、
    Zn:0.050%以下、及び
    Co:0.10%以下
    からなる群から選択される1種以上を含む、請求項1又は請求項2に記載のめっき鋼線。
  4. 前記引張試験を行ったときの破断伸びが5.0%~10.0%であり、
    ねじり試験を行ったときの破断までのねじり回数が25回以上である、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のめっき鋼線。
  5. 前記鋼線の半径をRとしたとき、前記鋼線の前記断面において前記鋼線の表面からの深さがR/2の位置に観察される金属組織において、電子線後方散乱回折(EBSD)により体心立方晶と同定される結晶粒の粒径が5μm以下であり、かつ前記結晶粒の前記鋼線の長手方向と平行な方向の粒径Xと前記長手方向と垂直な方向の粒径Yとの粒径比X/Yが2.0未満である前記結晶粒の面積率が、前記金属組織全体に対して10%以下であり、
    前記引張試験を行ったときの降伏比が70.0~90.0%である、
    請求項1~請求項4のいずれか1項に記載のめっき鋼線。
  6. 前記鋼線の半径をRとしたとき、前記鋼線の前記断面において前記鋼線の表面からの深さがR/2の位置に観察される金属組織において、電子線後方散乱回折(EBSD)により体心立方晶と同定される結晶粒の前記鋼線の長手方向と平行な方向の粒径Xと前記長手方向と垂直な方向の粒径Yとの粒径比X/Yが2.0~10.0であり、かつ前記パーライトを構成するラメラセメンタイトのセメンタイトの長さが0.1μm以下であるパーライトの面積率が、前記金属組織全体に対して20.0%以下である、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載のめっき鋼線。
  7. 金網用である請求項1~請求項6のいずれか1項に記載のめっき鋼線。
  8. 請求項1~請求項7のいずれか1項に記載のめっき鋼線の表面に樹脂被覆又は塗装が施された被覆めっき鋼線。
  9. 請求項1~請求項7のいずれか1項に記載のめっき鋼線又は請求項8に記載の被覆めっき鋼線を製網してなる金網。
  10. 前記金網が屈曲点及び溶接点の少なくとも一方を含み、1箇所以上の前記屈曲点又は前記溶接点を含む前記めっき鋼線又は前記被覆めっき鋼線を取り出して引張試験を行ったとき、引張強さが800~2000MPaであり、最大引張荷重の半分の荷重から最大荷重点までの伸びが3.5~7.0%である、請求項9に記載の金網。
  11. 前記めっき鋼線の線径の5.0~12.0倍の厚さを有するひし形金網である、請求項9又は請求項10に記載の金網。
  12. 請求項9~請求項11のいずれか1項に記載の金網を含む落石防護工。
JP2021058350A 2021-03-30 2021-03-30 めっき鋼線、被覆めっき鋼線、金網及び落石防護工 Pending JP2022155033A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2021058350A JP2022155033A (ja) 2021-03-30 2021-03-30 めっき鋼線、被覆めっき鋼線、金網及び落石防護工

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2021058350A JP2022155033A (ja) 2021-03-30 2021-03-30 めっき鋼線、被覆めっき鋼線、金網及び落石防護工

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2022155033A true JP2022155033A (ja) 2022-10-13

Family

ID=83557742

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2021058350A Pending JP2022155033A (ja) 2021-03-30 2021-03-30 めっき鋼線、被覆めっき鋼線、金網及び落石防護工

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2022155033A (ja)

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6264507B2 (ja) 高強度亜鉛めっき鋼板及びその製造方法
JP5169839B2 (ja) 捻回特性に優れるpws用めっき鋼線及びその製造方法
JP4842408B2 (ja) 線材、鋼線、及び線材の製造方法
JP4782246B2 (ja) 耐食性と疲労特性に優れた橋梁用高強度Zn−Alめっき鋼線及びその製造方法
JP5310968B1 (ja) 高強度溶融亜鉛めっき鋼板及びその製造方法
US10526671B2 (en) Cold-rolled steel sheet and process for manufacturing same
JP5098444B2 (ja) 高延性の直接パテンティング線材の製造方法
JP6477978B1 (ja) ホットスタンプ成形体
JP6477980B1 (ja) ホットスタンプ成形体
RU2566705C2 (ru) Горячегальванизированный холоднокатаный стальной лист и способ его получения
JP5699764B2 (ja) 合金化溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法
US20220282351A1 (en) Steel sheet
JP3737354B2 (ja) 捻回特性に優れた伸線加工用線材およびその製造方法
JP2007016319A (ja) 高張力溶融亜鉛めっき鋼板とその製造方法
JP6460287B1 (ja) ホットスタンプ用鋼板
JP7226548B2 (ja) 線材
JP2006063360A (ja) 高張力溶融亜鉛めっき鋼板とその製造方法
JP5630002B2 (ja) 引張強さが1500MPa以上の高強度鋼板およびその製造方法
JP2022155033A (ja) めっき鋼線、被覆めっき鋼線、金網及び落石防護工
EP4148150A1 (en) Hot rolled steel sheet and method for producing same
JP2022022879A (ja) 鋼線及び金網
JP7469642B2 (ja) 高強度鋼線
JP2020180330A (ja) 鋼線及びアルミ被覆鋼線
JP7469706B2 (ja) 高強度鋼板
WO2023191027A1 (ja) めっき鋼線

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20231120