JP2022153679A - 飲料用硫黄化合物除去剤、並びに、前記飲料用硫黄化合物除去剤を用いた飲料用硫黄化合物除去部材、飲料から硫黄化合物を除去する方法及び硫黄化合物が除去された飲料の製造方法 - Google Patents

飲料用硫黄化合物除去剤、並びに、前記飲料用硫黄化合物除去剤を用いた飲料用硫黄化合物除去部材、飲料から硫黄化合物を除去する方法及び硫黄化合物が除去された飲料の製造方法 Download PDF

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智 吉野
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Abstract

【課題】飲料に含まれる硫黄化合物の除去選択性に優れる、飲料用硫黄化合物除去剤を安価に提供する。【解決手段】本発明は、マイケル受容体ユニット又は/及びホスフィンユニットを固定化した担体を含む、飲料用硫黄化合物除去剤、前記飲料用硫黄化合物除去剤を用いた飲料用硫黄化合物除去部材、前記飲料用硫黄化合物除去剤を用いた、飲料から硫黄化合物を除去する方法、並びに、前記飲料用硫黄化合物除去剤を用いた、硫黄化合物が除去された飲料の製造方法に関する。【選択図】なし

Description

本発明は、飲料用硫黄化合物除去剤、並びに、前記飲料用硫黄化合物除去剤を用いた飲料用硫黄化合物除去部材、飲料から硫黄化合物を除去する方法及び硫黄化合物が除去された飲料の製造方法に関する。
近年の食のグローバル化に伴い、食品の輸送又は貯蔵の長期化により不快な香り(オフフレーバー)成分の発生が食品本来の風味を損なうために問題となっている。また、風味を向上させた新製品の開発においてもオフフレーバー成分の積極的除去が期待されている。例えば、飲料に含まれるオフフレーバーの原因成分として、ポリスルフィド類やチオール類などの硫黄化合物があり、特に、ジメチルトリスルフィド(DMTS)等のポリスルフィド類は、清酒の劣化臭である老香の主要な成分として知られている(例えば、特許文献3参照)。また、チオール類は、ビールの長期保存中、日光や蛍光灯などを照射されることにより生じる日光臭の主要な成分である。
この飲料に含まれる不快な香りの原因となる硫黄化合物を低減する方法として、様々な方法が試みられている。例えば、特許文献1には、活性炭を用いて硫黄化合物を吸着除去することが記載されている。特許文献2には、銀を担持させたゼオライトを用いて、オフフレーバー成分である硫黄化合物を除去することが報告されている。また、特許文献3には、金ナノ粒子を担持させたシリカを用いて、硫黄化合物を除去することが報告されている。
特開平3-187374号公報 国際公開第2015/098762号 特開2016-163880号公報
しかしながら、特許文献1に開示された方法では、活性炭には吸着選択性がないため、硫黄化合物の他に、旨味成分等の飲料にとって有益な成分までも吸着してしまう問題がある。また、特許文献2及び3に開示された方法では、貴金属を使用するため、コストの問題がある。
そこで、本発明の目的は、飲料に含まれる硫黄化合物の除去選択性に優れる、飲料用硫黄化合物除去剤を安価に提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成するためにマイケル受容体ユニット又は/及びホスフィンユニットを固定化した担体が、飲料に含まれる硫黄化合物の除去選択性に優れることを見出し、本発明に至った。
本発明は、以下の[1]~[15]を含む発明に関する。
[1]マイケル受容体ユニット又は/及びホスフィンユニットを固定化した担体を含む、飲料用硫黄化合物除去剤。
[2]前記マイケル受容体ユニットは、マレイミド骨格を含む、[1]の飲料用硫黄化合物除去剤。
[3]前記ホスフィンユニットは、少なくとも1つの炭化水素基を含む、[1]又は[2]の飲料用硫黄化合物除去剤。
[4]前記担体の基材が、ケイ素含有化合物、金属酸化物、粘土、合成ポリマー及び天然ポリマーからなる群より選択される少なくとも一種である、[1]~[3]のいずれかの飲料用硫黄化合物除去剤。
[5]マイケル受容体ユニットを固定化した担体及びホスフィンユニットを固定化した担体を含む、[1]~[4]のいずれかの飲料用硫黄化合物除去剤。
[6][1]~[5]のいずれかの飲料用硫黄化合物除去剤を充填してなるカートリッジ。
[7][5]の飲料用硫黄化合物除去剤を2段式で充填するカートリッジであって、第1段目にホスフィンユニットを固定化した担体を含む飲料用硫黄化合物除去剤を充填し、第2段目にマイケル受容体ユニットを固定化した担体を含む飲料用硫黄化合物除去剤を充填してなる、カートリッジ。
[8]飲料用硫黄化合物除去装置であって、原料タンクと、精製タンクと、ポンプと、[6]又は[7]のカートリッジと、ラインチューブとを備え、原料タンク、ポンプ、カートリッジ、精製タンクの順番、又は原料タンク、カートリッジ、ポンプ、精製タンクの順番にラインチューブで連結されている、飲料用硫黄化合物除去装置。
[9]飲料から硫黄化合物を除去する方法であって、[6]又は[7]のカートリッジに飲料を通液させる工程と、カートリッジ内で硫黄化合物を分解又は/及び吸着させる工程とを含む、飲料から硫黄化合物を除去する方法。
[10]硫黄化合物が除去された飲料の製造方法であって、[6]又は[7]のカートリッジに飲料を通液させる工程と、カートリッジ内で硫黄化合物を分解又は/及び吸着させる工程とを含む、硫黄化合物が除去された飲料の製造方法。
[11][1]~[5]のいずれかの飲料用硫黄化合物除去剤を用いた飲料用硫黄化合物除去部材。
[12]飲料から硫黄化合物を除去する方法であって、[1]~[5]のいずれかの飲料用硫黄化合物除去剤と飲料とを通液させる工程と、飲料用硫黄化合物除去剤内で硫黄化合物を分解又は/及び吸着させる工程とを含む、飲料から硫黄化合物を除去する方法。
[13]硫黄化合物が除去された飲料の製造方法であって、[1]~[5]のいずれかの飲料用硫黄化合物除去剤と飲料とを通液させる工程と、飲料用硫黄化合物除去剤内で硫黄化合物を分解又は/及び吸着させる工程とを含む、硫黄化合物が除去された飲料の製造方法。
[14]飲料から硫黄化合物を除去する方法であって、[11]の飲料用硫黄化合物除去部材と飲料とを接触させる工程と、飲料用硫黄化合物除去部材内で硫黄化合物を分解又は/及び吸着させる工程とを含む、飲料から硫黄化合物を除去する方法。
[15]硫黄化合物が除去された飲料の製造方法であって、[11]の飲料用硫黄化合物除去部材と飲料とを接触させる工程と、飲料用硫黄化合物除去部材内で硫黄化合物を分解又は/及び吸着させる工程とを含む、硫黄化合物が除去された飲料の製造方法。
本発明によれば、飲料中の硫黄化合物の除去選択性に優れる、飲料用硫黄化合物除去剤を安価に提供することができる。さらに、この飲料用硫黄化合物除去剤を用いたカートリッジ又はこれを具備した飲料用硫黄化合物除去装置を用いて処理した飲料は、良好な風味が期待される。
図1は、飲料用硫黄化合物除去剤を2段式で充填するカートリッジの例を示す図である。 図2は、飲料用硫黄化合物除去装置の例を示す図である。 図3は、飲料用硫黄化合物除去装置の更なる例を示す図である。
[飲料用硫黄化合物除去剤]
飲料用硫黄化合物除去剤とは、飲料中の悪臭や不味成分とされる臭気(オフフレーバー)の原因となる硫黄化合物を除去する剤であり、マイケル受容体ユニット又は/及びホスフィンユニットを固定化した担体を含む。
≪マイケル受容体ユニットを固定化した担体≫
マイケル受容体ユニットを固定化した担体とは、有機化学反応の分野において、いわゆる、マイケル付加反応によりチオール化合物と結合する受容体部位を含有する担体であり、マイケル受容体ユニットはチオール化合物の吸着剤として機能する。マイケル受容体ユニットを固定化した担体は、マイケル受容体ユニット含有前駆体が担体の基材と反応し、マイケル受容体ユニットが固定化された担体であるか、マイケル受容体ユニットを形成する前駆体(以下、「マイケル受容体ユニット形成体」ともいう。)が担体の基材と反応し、マイケル受容体ユニットが固定化された担体である。
(マイケル受容体ユニット含有前駆体)
マイケル受容体含有前駆体は、マイケル受容体ユニット、担体と反応し得る官能基及びこれらの連結基の3つの部位から構成される。このようなマイケル受容体含有前駆体としては下記一般式(1)で示される化合物が挙げられる。
Figure 2022153679000001

(式中、
Mは、マイケル受容体ユニットであり、
Zは、単結合又は2価の連結基であり、
Xは、担体の基材と反応し得る官能基を表す。)
<式(1)中のM;マイケル受容体ユニット>
式(1)中のMはマイケル受容体ユニットを示す。マイケル受容体ユニットとは、いわゆる有機合成反応におけるマイケル反応受容体を有する化学構造ユニットである。式(1)中のMとして、具体的には以下のような骨格が挙げられる。
Figure 2022153679000002

(上記各式において、破線が付いた結合は、式(1)中のZとの結合を表す。式(M4)及び式(M5)における破線が付いた結合は、式(M4)及び式(M5)における環状骨格中の任意の位置の炭素原子と式(1)中のZとの結合を表す。式(M2)、式(M5)及び式(M6)におけるR、R及びR基は、水素原子又は炭素数1から6のアルキル基を表し、互いに同一又はそれぞれ異なっていてもよい。式(M5)におけるnは、R及びR基を有するメチレン基(-CR-)の数を表し、1又は2である。式(M3)におけるRからR基は、水素原子、ハロゲン原子又は炭素数1から6のアルキル基を表し、互いに同一又はそれぞれ異なっていてもよい。式(M6)におけるR基は、カルボン酸基(COOH基)又は(炭素数1から6のアルキル)エステル基を表し、式(M6)における波線は、二重結合の配置がシス又はトランスであることを表す。)
ここで「炭素数1~6のアルキル基」とは、メチル基、エチル基等の炭素数1から6の直鎖状アルキル基;イソプロピル基、イソブチル基等の炭素数3から6の分岐鎖状アルキル基;シクロプロピル基、シクロペンチル基等の炭素数3から6の環状アルキル基を表す。よって、式(M6)のR基における「(炭素数1から6のアルキル)エステル基」とは、例えば、メチルエステル、エチルエステル等の炭素数1から6の直鎖状アルキルエステル;イソプロピルエステル、イソブチルエステル等の炭素数3から6の分岐鎖状アルキルエステル;シクロプロピルエステル、シクロペンチルエステル等の炭素数3から6の環状アルキルエステルを表す。また、式(M6)におけるR基が炭素数1から6のアルキル基である場合、アルキルアミノ基、アミノアルキルアミノ基等の1若しくは2以上の第一級アミノ基若しくは第二級アミノ基を含むアルキル基で置換されたアミノ基、第一級アミノ基(NH基)又は式(M1)の構造で置換されていてもよい。また、式(M6)は、R基に関して、下記に表す式(M6-c)のシス体であってもよく、下記に表す式(M6-t)のトランスのいずれであってもよいが、シス体であることが好ましい。
Figure 2022153679000003
上記式(M1)から式(M6)のうち、硫黄化合物との反応性の観点から、好ましくは式(M1)及び下記に表す式(M3-1)、式(M4-1)、式(M6-1)であり、より好ましくは式(M1)、下記に表す式(M3-1)である。
Figure 2022153679000004

(上記各式において、破線が付いた結合は、式(1)中のZとの結合を表す)
マイケル受容体ユニットは、マレイミド骨格を有するマイケル受容体ユニットを含むことが好ましい。このようなマレイミド骨格を有するマイケル受容体ユニットとしては、式(M1)で示される基が挙げられる。
<式(1)中のZ:連結基>
式(1)中のZは、式(1)中のMとXをつなぐ基を表し、単結合又は2価の連結基である。ここで2価の連結基としては、具体的には、炭素数1~12のアルキレン基及び以下のような基が挙げられる。
Figure 2022153679000005

(上記各式において、破線が付いた結合は、式(1)中のMとの結合を表し、波線が付いた結合は、式(1)中のXとの結合を表す。式(Z1)から式(Z6)におけるm及びlは、メチレン基(-CH-)の数を表し、1から6の整数である。式(Z5)におけるkは、オキシ基(=O)の数を表し、0又は1である。式(Z3)におけるRは、水素原子又は炭素数1から6のアルキル基を表す。)
上記式(Z3)のRにおける炭素数1から6のアルキル基とは、メチル基、エチル基等の炭素数1から6の直鎖状アルキル基;イソプロピル基、イソブチル基等の炭素数3から6の分岐鎖状アルキル基;シクロプロピル基、シクロペンチル基等の炭素数3から6の環状アルキル基を表す。
式(1)中のZとしては、硫黄化合物との反応性及び飲料への親和性の観点から、好ましくは炭素数1~12のアルキレン基、式(Z1)及び式(Z4)である。
<式(1)中のX:担体の基材と反応し得る官能基>
式(1)中のXは、担体の基材と反応し得る官能基であり、例えば、ヒドロキシ基(OH基)、カルボン酸基(COOH基)、第一級アミノ基(NH基)、アジド基(N基)、アルキニル基が挙げられる。
前記アルキニル基とは、直鎖状又は分岐状である、分子構造内に三重結合を有する1価の基である。アルキニル基の炭素原子数は、2~20であることが好ましく、2~8であることがより好ましく、2~4であることが特に好ましい。アルキニル基の具体例としては、エチニル基又はプロパルギル基等が挙げられる。
<マイケル受容体含有前駆体の好ましい態様>
マイケル受容体含有前駆体は、以下に示す化学構造のものが好ましい。
Figure 2022153679000006
(上記各式において、式(1-1)及び式(1-3)におけるpは、メチレン基(-CH-)の数を表し、1から6の整数である。式(1-2)及び式(1-4)におけるm及びlは、前記式(Z1)から式(Z6)に記載のメチレン基の数と同義であり、1から6の整数である。)
マイケル受容体含有前駆体は、より好ましくは下記に表す式(1-1a)、式(1-2a)、式(1-3a)又は式(1-4a)で示される化合物であり、特に好ましくは下記に表す式(1-1a)又は式(1-3a)で示される化合物である。
Figure 2022153679000007
マイケル受容体含有前駆体は、1種又は2種以上の組み合わせで担体に担持されていてもよい。
(マイケル受容体ユニットを形成する前駆体)
マイケル受容体ユニットを形成する前駆体(「マイケル受容体ユニット形成体」ともいう。)としては、無水マレイン酸、マレイン酸又はフマル酸が挙げられる。
無水マレイン酸又はマレイン酸は、第一級アミノ基(-NH)と反応することによって上記に表す式(M1)で示されるマレイミド基を形成し、第二級アミノ基(-NH-)と反応することによって下記に表す式(M6-2)で示される構造を形成する。また、フマル酸は、第一級アミノ基(-NH)と反応することによって下記に表す式(M6-3)で示される構造を形成し、第二級アミノ基(-NH-)と反応することによって下記に表す式(M6-4)で示される構造を形成する。ここで、式(M6-2)及び式(M6-4)中破線が付いた結合は、第二級アミノ基の窒素原子が結合するH以外の基への結合を表す。即ち、式(M6-2)で示される構造は、NH基から水素原子を除いた式(M6-1)で示される構造に相当する。また、式(M6-3)で示される構造は、R基が水素原子であり、R基がカルボン酸基である、式(M6-t)で示される構造に相当する。そして、式(M6-4)で示される構造は、NH基から水素原子を除いた式(M6-3)で示される構造に相当する。
Figure 2022153679000008
マイケル受容体ユニット形成体は、1種又は2種以上の組み合わせであってもよい。
≪ホスフィンユニットを固定化した担体≫
ホスフィンユニットを固定化した担体とは、ホスフィンユニット含有前駆体と担体の基材とが反応して結合した、ホスフィンユニットが固定化された担体である。ホスフィンユニットは、硫黄化合物としてのポリスルフィド化合物をチオール化合物へと分解することができる機能を示す化学構造部位を有する。
(ホスフィンユニット含有前駆体)
ホスフィンユニット含有前駆体は、3価のリンを有するホスフィン含有ユニット、担体と反応し得る官能基及びこれらの連結基の3つの部位から構成される。このようなホスフィンユニット含有前駆体としては下記一般式(2)で示される化合物が挙げられる。
Figure 2022153679000009

(式中、
Qは、ホスフィンユニットであり、
Lは、単結合又は2価の炭化水素基であり、
Yは、担体の基材と反応し得る官能基を表す。)
<式(2)中のQ;ホスフィンユニット>
式(2)中のQはホスフィンユニットを示す。ホスフィンユニットとは、硫黄化合物としてのポリスルフィド化合物をチオール化合物へと分解することができる機能を示す化学構造部位である。
式(2)中のQとして、好ましくは以下のような骨格が挙げられる。
Figure 2022153679000010

(上記式(Q1)において、破線が付いた結合は、式(2)中のLとの結合を表す。R及びR10は、それぞれ互いに独立して、水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を示す。)
前記式(Q1)における「炭素数1~6のアルキル基」とは、メチル基、エチル基等の炭素数1から6の直鎖状アルキル基;イソプロピル基、イソブチル基等の炭素数3から6の分岐鎖状アルキル基;シクロプロピル基、シクロペンチル基等の炭素数3から6の環状アルキル基を表す。
上記式(Q1)としては、下記に表す式(P1)、式(P2)、式(P3)が好ましい。
Figure 2022153679000011

(上記各式において、破線が付いた結合は、式(2)中のLとの結合を表し、nはメチレン基(-CH-)の数を表し、1~5である。)
上記式(P1)から式(P3)のうち、硫黄化合物との反応性の観点から、好ましくは下記に表す式(P1-1)、式(P3-1)であり;より好ましくは下記に表す式(P1-1)である。
Figure 2022153679000012

(上記各式において、破線が付いた結合は、式(2)中のLとの結合を表す。)
ホスフィンユニットは、少なくとも1つの炭化水素基を有するホスフィンユニットを含むことが好ましい。このようなこのようなホスフィンユニットとしては、R及びR10の一方又は両方が、炭素数1~6のアルキル基である、式(Q1)で示される基が挙げられる。
<式(2)中のL:連結基>
式(2)中のLは、式(2)中のQとYをつなぐ基を表し、単結合又は2価の連結基である。ここで2価の連結基としては、具体的には、炭素数1~12のアルキレン基、及び以下のような基が挙げられる。
Figure 2022153679000013

(上記各式において、破線が付いた結合は、式(2)中のQとの結合を表し、波線が付いた結合は、式(2)中のYとの結合を表す。式(L1)から式(L6)におけるr及びsは、メチレン基の数を表し、1から6の整数である。式(L5)におけるtは、オキシ基の数を表し、0又は1である。式(L3)におけるR11は、水素原子又は炭素数1から6のアルキル基を表す。)
上記式(L3)のR11における炭素数1から6のアルキル基とは、メチル基、エチル基等の炭素数1から6の直鎖状アルキル基;イソプロピル基、イソブチル基等の炭素数3から6の分岐鎖状アルキル基;シクロプロピル基、シクロペンチル基等の炭素数3から6の環状アルキル基を表す。
式(2)中のLは、硫黄化合物との反応性及び飲料への親和性の観点から、好ましくは炭素数1~12のアルキレン基、式(L1)及び式(L4)である。
<式(2)中のY:担体の基材と反応し得る官能基>
式(2)中のYは、担体の基材と反応し得る官能基であり、例えば、ヒドロキシ基(OH基)、カルボン酸基(COOH基)、第一級アミノ基(NH基)、アジド基(N基)、アルキニル基が挙げられる。
前記アルキニル基とは、直鎖状又は分岐状である、分子構造内に三重結合を有する1価の基である。アルキニル基の炭素原子数は、2~20であることが好ましく、2~8であることがより好ましく、2~4であることが特に好ましい。アルキニル基の具体例としては、エチニル基又はプロパルギル基等が挙げられる。
<ホスフィン含有前駆体の好ましい態様>
ホスフィン含有前駆体は、以下に示す化学構造のものが好ましい。
Figure 2022153679000014
(上記各式において、R及びR10は、前記式(Q1)に記載のもの同義であり、水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を示す。式(2-1)及び式(2-2)におけるqは、メチレン基(-CH-)の数を表し、1から6の整数である。式(2-3)及び式(2-4)におけるr及びsは、前記式(L1)から式(L6)に記載のメチレン基(-CH-)の数と同義であり、1から6の整数である。)
ホスフィンユニット含有前駆体は、より好ましくは下記に表す式(2-1a)、式(2-2a)、式(2-3a)又は式(2-4a)で示される化合物であり;特に好ましくは下記に表す式(2-2a)又は式(2-3a)で示される化合物である。
Figure 2022153679000015

(上記各式において、R及びR10は、前記式(Q1)に記載のものと同義であり、水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を示す。)
なお、ホスフィンユニット含有前駆体は、例えば、塩酸塩等の無機酸塩、酢酸塩等の有機酸塩のような塩の形態であってもよい。
ホスフィン含有前駆体は、1種又は2種以上の組み合わせで担体に担持されていてもよい。
≪担体≫
飲料用硫黄化合物除去剤に使用される担体とは、マイケル受容体ユニットが基材に固定化された担体又は/及びホスフィンユニットが基材に固定化された担体を表す。ここで「固定化」とは、担体の基材が有する結合基とマイケル受容体ユニット又は/及びホスフィンユニットとが化学的に結合していることを意味する。従って、飲料用硫黄化合物除去剤においては、マイケル受容体ユニット及びホスフィンユニットが物理的に脱落することがほとんどない。
担体の基材は、マイケル受容体ユニット又は/及びホスフィンユニットを固定化できる結合基を有していれば、特に限定されない。
担体の基材としては、例えば、表面修飾されていてもよいケイ素含有材料、表面修飾されていてもよい金属酸化物、表面修飾されていてもよい粘土、表面修飾されていてもよい合成ポリマー及び表面修飾されていてもよい天然ポリマーが挙げられる。担体の基材は、1種又は2種以上の組み合わせであってもよい。
ケイ素含有材料としては、シリカ、アルミノケイ酸塩(例えば、アルミニウム含有メソポーラスシリカ等のシリカアルミナ)等が挙げられる。
金属酸化物における金属としては、チタン、ジルコニウム、鉄、コバルト、アルミニウム、セリウム、マンガン、亜鉛、ニッケル、マグネシウム、タングステン等が挙げられる。
粘土としては、モンモリロナイト、モンモリロナイトを含む粘土(例えば、ベントナイト、酸性白土、活性白土)、珪藻土等が挙げられる。
合成ポリマーとしては、ポリビニルピロリドン、ポリスチレン等が挙げられる。
天然ポリマーとしては、炭水化物、たんぱく質、その他の天然ポリマー等が挙げられる。炭水化物としては、糖類が挙げられ、デンプン、アガロース、アルギン酸ナトリウム、カラギナン、セルロース、キトサン等が挙げられる。たんぱく質としては、コラーゲン、グルテン、オボアルブミン等が挙げられる。その他の天然ポリマーとしては、タンニン(例えば、柿タンニン)等が挙げられる。天然ポリマーは、小麦粉、卵白、寒天、ゼラチン、微小繊維状セルロースの形態であってもよい。
表面修飾としては、マイケル受容体ユニット又は/及びホスフィンユニットを基材へ固定化することができるものであれば特に限定されない。このような担体の基材への表面修飾としては、炭素数1から6のアミノアルキル基、炭素数2から12のアミノアルキルアミノアルキル基等の1又は2以上の第一級アミノ基又は第二級アミノ基を含むアルキル基又は炭素数1から6のヒドロキシアルキル基での表面修飾が挙げられる。ここで、1又は2以上の第一級アミノ基又は第二級アミノ基を含むアルキル基としては、アミノプロピル基、3-(2-アミノエチルアミノ)-プロピル基、ポリエチレンイミンの炭素原子から水素原子を除去した基、ポリビニルアミンの炭素原子から水素原子を除去した基、ポリプロピルアミンの炭素原子から水素原子を除去した基等が挙げられる。基材における表面修飾は、硫黄化合物の除去性により優れる観点から、炭素数が大きいものが好ましい。また、基材における表面修飾がアミノ基を有する場合は、硫黄化合物の除去性により優れる観点から、1以上の第一級アミノ基及び1以上の第二級アミノ基を有することが好ましい。
担体の基材は、好ましくは食品衛生法、酒税法等で認められている担体の基材から選択される。担体の基材は、より好ましくは、例えば、表面修飾されていても良いシリカ、アルミノケイ酸塩、チタニア、ジルコニア、ベントナイト、活性白土、珪藻土、モンモリロナイト、寒天、アガロース、ゼラチン、アルギン酸ナトリウム、カラギナン、微小繊維状セルロース、小麦粉、グルテン、卵白、タンニン、キトサン、ポリビニルピロリドン及びポリスチレンが挙げられる。飲料に対する親和性(親水性)に優れ、より安価である観点から、更に好ましくは、表面修飾されていても良いシリカ又は微小繊維状セルロースであり、特に好ましくは、表面修飾されていないシリカ、炭素数1から6のアミノアルキル基で表面修飾されたシリカ、炭素数1から6のヒドロキシアルキル基で表面修飾されたシリカである。ここで、炭素数1から6のアミノアルキル基として、好ましくはアミノエチル基、アミノプロピル基等の直鎖状のアミノアルキル基である。
(結合基)
担体の基材が有する結合基は、マイケル受容体含有前駆体、マイケル受容体形成体又は/及びホスフィン含有前駆体と反応し、担体にマイケル受容体ユニット又は/及びホスフィンユニットをほとんど脱落させることなく固定化できるものであれば特に限定されない。担体が有する結合基として、例えば、水酸基(OH基)、カルボン酸基(COOH基)、第一級アミノ基(NH基)、第二級アミノ基(-NH-基)等が挙げられる。従って、担体は、結合基として、例えば、水酸基(OH基)、カルボン酸基(COOH基)、第一級アミノ基(NH基)、第二級アミノ基(-NH-基)等を有する担体である。ここで、担体の基材と結合基とは、連結基が存在していてもよい。このような連結基としては、式(1)において前記したとおりである。また、第二級アミノ基にはアルキレン基又はアルキル基等の脂肪族炭素原子が結合していることが好ましい。そして、マイケル受容体含有前駆体、マイケル受容体形成体又は/及びホスフィン含有前駆体の種類に応じて、適宜設定できる。
マイケル受容体含有前駆体又は/及びホスフィン含有前駆体が用いられる場合は、マイケル受容体含有前駆体又は/及びホスフィン含有前駆体と反応性の面から、担体の基材が有する結合基は、好ましくは、水酸基(OH基)、カルボン酸基(COOH基)、第一級アミノ基(NH基)又は第二級アミノ基(-NH-基)である。ここで、担体と反応する成分がマイケル受容体含有前駆体及び/又はマイケル受容体形成体である場合は、担体にはマイケル受容体が固定化され、又は/及び担体と反応する成分がホスフィン含有前駆体である場合は、担体にはホスフィン含有ユニットが固定化される。
また、マイケル受容体形成体が用いられる場合は、担体が有する結合基として、第一級アミノ基(NH基)又は第二級アミノ基(-NH-基)が挙げられる。ここで、マイケル受容体形成体と、第一級アミノ基(NH基)又は第二級アミノ基(-NH-基)である結合基とが用いられる場合に得られるマイケル受容体ユニットの構造としては、前記したとおりである。ここで、担体が有する結合基が第一級アミノ基(NH基)及び第二級アミノ基(-NH-基)の組み合わせである場合、上記に表す式(M1)のマイケル受容体ユニット及び上記に表す式(M6-2)のマイケル受容体ユニットを固定化した担体、又は、上記に表す式(M6-3)のマイケル受容体ユニット及び上記に表す式(M6-4)のマイケル受容体ユニットを固定化した担体が得られる。このような場合は、1個以上の第二級アミノ基で中断されたアミノアルキル基を有する基材を用いることで得られる。
マイケル受容体ユニット又は/及びホスフィンユニットを固定化できる結合基を有する担体は、市販品を用いることができる。また、表面修飾されていない担体の基材がシリカ(Si-OH基を有する)である場合は、例えば、シランカップリング剤(例えば、アミノプロピルトリメトキシシラン等)を用いることで、マイケル受容体ユニット又は/及びホスフィンユニットを基材へ固定化することができる。ちなみに、このような担体への担持方法としては、例えば、特表2010-538806号公報に記載された方法が挙げられる。
なお、飲料用硫黄化合物除去剤において、担体には、マイケル受容体含有前駆体、マイケル受容体形成体又は/及びホスフィン含有前駆体と未反応である結合基が存在していてもよい。
(各前駆体又は形成体との反応点の量)
担体の基材におけるマイケル受容体含有前駆体、マイケル受容体形成体又は/及びホスフィン含有前駆体との反応点の個数(モル数/g)は反応を阻害しない量であれば特に制限されないが、好ましくは0.03~3.0mmol/g、より好ましくは0.5~1.5mmol/gである。前記反応点の個数は、例えば、市販品であれば記載されている。市販品以外の物は適宜分析する。
担体の基材の平均粒径は、10~5000μmであることが好ましく、50~200μmであることが特に好ましい。担体の基材の平均粒径が、50μm以上であると、取り扱い性に優れる。担体の基材の平均粒径が、200μm以下であると、飲料との接触面積が増加するため、硫黄化合物の除去効率が高まる。平均粒径は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置で測定することができる。
(固定化量)
飲料用硫黄化合物除去剤における、マイケル受容体ユニット又は/及びホスフィンユニット(マイケル受容体含有前駆体、マイケル受容体形成体及びホスフィン含有前駆体)の固定化量(担持量)は、所望の活量(即ち、飲料用硫黄化合物除去剤の重量に対する硫黄化合物の除去量)を有する飲料用硫黄化合物除去剤が得られる量であれば、特に限定されない。飲料用硫黄化合物除去剤における、マイケル受容体ユニット及びホスフィン含有ユニットの固定化量は、飲料用硫黄化合物除去剤1gに対して、好ましくは0.01~1.0mmol、より好ましくは0.1~0.5mmolである。ここで、マイケル受容体ユニット1モル中のマイケル付加反応に寄与する不飽和結合が1モルである場合、又は、ホスフィンユニット1モル中の3価リン原子が1モルである場合、前記固定化量は、飲料用硫黄化合物除去剤の活量に相当する。
(飲料用硫黄化合物除去剤の好ましい態様)
飲料用硫黄化合物除去剤において、マイケル受容体含有担体及びホスフィン含有担体は、1種又は2種以上の組み合わせで使用してもよい。飲料用硫黄化合物除去剤は、マイケル受容体ユニットを固定化した担体及びホスフィンユニットを固定化した担体を含むものが好ましい。また、飲料用硫黄化合物除去剤の担体は、マイケル受容体ユニット及びホスフィンユニットの両方が同一の担体に固定化されたものであってもよい。
(飲料用硫黄化合物除去剤の作用機構)
飲料用硫黄化合物除去剤は、ホスフィンユニットが飲料中のポリスルフィド化合物をチオール化合物に分解し、マイケル受容体ユニットが飲料中のチオール化合物を吸着する工程を通して、飲料に含まれる悪臭や不味成分とされる臭気の原因となる硫黄化合物を選択的に除去できる。ここで「除去」とは、飲料中に含まれるポリスルフィド化合物の少なくとも一部の除去及びチオール化合物の少なくとも一部の除去の少なくとも一方を意味する。
飲料用硫黄化合物除去剤は、処理される飲料に含まれる悪臭や不味成分とされる臭気(オフフレーバー)の原因となる硫黄化合物(ポリスルフィド類又は/及びチオール類)を除去する一方で、高級アルコール類、フーゼル類、エステル類等の旨味成分を飲料中に残すことができるため、優れた除去選択性が期待される。
[飲料用硫黄化合物除去剤の製造方法]
飲料用硫黄化合物除去剤の製造方法は、マイケル受容体含有前駆体、マイケル受容体形成体又は/及びホスフィン含有前駆体が担体と反応し、マイケル受容体ユニット又は/及びホスフィンユニットが固定化された担体が得られる方法であれば特に限定されない。
飲料用硫黄化合物除去剤の製造方法は、より詳しくは、担体と、前記式(1)で表されるマイケル受容体含有前駆体、マイケル受容体形成体又は/及び前記式(2)で表されるホスフィン含有前駆体とを反応させて、反応生成物を得る反応工程と得られた反応生成物を後処理して、飲料用硫黄化合物除去剤を得る精製工程と含む方法が挙げられる。
<反応工程>
本工程における反応とは、マイケル受容体含有前駆体、マイケル受容体形成体又は/及びホスフィン含有前駆体と担体との間に化学的な結合が形成される方法であれば、特に限定されない。マイケル受容体含有前駆体又は/及びホスフィン含有前駆体と担体との間に化学的な結合が形成される組合せとしては、例えば、担体側のアミノ基と前記前駆体側の水酸基又はカルボキシル基との組合せ、担体側のアジド基と前記前駆体側のアルキニル基との組合せ等が挙げられ、反応のしやすさ及び操作の簡便さから、好ましくは担体側のアミノ基と前記前駆体側の水酸基又はカルボキシル基との組合せによる反応が好ましい。また、マイケル受容体形成体と担体との間に化学的な結合が形成される組合せとしては、マイケル受容体形成体と担体中の第一級アミノ基又は第二級アミノ基の窒素原子との組合せが挙げられる。
なお、マイケル受容体含有前駆体又は/及びホスフィン含有前駆体と、担体との間に形成される化学的な結合の数は、少なくとも1であり、マイケル受容体含有前駆体又は/及びホスフィン含有前駆体が有する、担体と反応し得る官能基の数に応じて増加する。例えば、ホスフィンユニットがトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィンであり、担体と反応し得る官能基がカルボキシル基である場合は、ホスフィンユニットと、担体との間に化学的な結合の数は、1、2又は3であることができる。また、マイケル受容体形成体によって形成されるマイケル受容体の数は、少なくとも1であり、担体が有する第一級アミノ基又は第二級アミノ基の数に応じて変動し得る。例えば、担体が3-(2-アミノエチルアミノ)プロピル基を有し、マイケル受容体形成体が無水マレイン酸である場合は、マイケル受容体形成体によって形成されるマイケル受容体の数が1若しくは2である担体又はその混合物が得られ得る。
担体と、マイケル受容体含有前駆体又は/及びホスフィン含有前駆体との反応は、縮合剤又は縮合剤と縮合添加剤との組合せの存在下で行うことができる。縮合剤を用いることによって、担体とマイケル受容体含有前駆体又は/及びホスフィン含有前駆体との反応を効率的に進めることができる。
縮合剤としては、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC・HCl)、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド、O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸塩(HBTU)、O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸塩(HATU)、((((1-シアノ-2-エトキシ-2-オキソエチリデン)アミノ)オキシ)-4-モルホリノメチレン)ジメチルアンモニウムヘキサフルオロリン酸塩(COMU)等が挙げられる。また、縮合添加剤として、3,4-ジヒドロキシ-3-ヒドロキシ-4-オキソ-1,2,3-ベンゾトリアジン、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBT)、N-ヒドロキシスクシンイミド、N-ヒドロキシ-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボキシイミド等が挙げられる。縮合剤及び縮合添加剤は、それぞれ、1種又は2種以上の組合せであってもよい。
担体と、マイケル受容体含有前駆体、マイケル受容体形成体又は/及びホスフィン含有前駆体との反応は、溶媒の存在下で行うことができる。溶媒としては、反応の促進の観点から、マイケル受容体ユニット又は/及びホスフィンユニットを溶解させるが、担体を分散させるような溶媒であることが好ましい。このような溶媒としては、水;メタノール、エタノール等のアルコール系溶媒;N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン等のアミド系溶媒;シクロペンチルメチルエーテル、t-ブチルメチルエーテル等のエーテル系溶媒;酢酸、プロピオン酸等のカルボン酸系溶媒が挙げられ、担体、マイケル受容体ユニット若しくはマイケル受容体形成体、及びホスフィンユニットの種類に応じて適宜選択できる。
また、担体と、マイケル受容体含有前駆体又は/及びホスフィン含有前駆体との反応は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン等の塩基の存在下で行うことができる。
マイケル受容体含有前駆体、マイケル受容体形成体又は/及びホスフィン含有前駆体の使用量は、前記した飲料用硫黄化合物除去剤における担体及びマイケル受容体含有前駆体、マイケル受容体形成体又は/及びホスフィン含有前駆体の含有量になるような量であることが好ましい。担体、マイケル受容体含有前駆体、マイケル受容体形成体又は/及びホスフィン含有前駆体の反応量及び官能基の使用量を調整することにより、所望の硫黄化合物の除去活性(活量)を有する飲料用硫黄化合物除去剤を製造することができる。
縮合剤、縮合添加剤、溶媒及び塩基の使用量は、所望の飲料用硫黄化合物除去剤が得られるような範囲で適宜設定することができる。
マイケル受容体含有前駆体又は/及びホスフィン含有前駆体と、担体との反応における反応温度は、特に限定されないが、10~70℃であることが好ましく、20~50℃であることが特に好ましい。マイケル受容体含有前駆体、マイケル受容体形成体又は/及びホスフィン含有前駆体と、担体との反応における反応時間は、特に限定されないが、0.5~24時間であることが好ましい。
マイケル受容体形成体と、担体との反応における反応温度は、特に限定されないが、10~120℃であることが好ましく、100~120℃であることが特に好ましい。マイケル受容体形成体と、担体との反応における反応時間は、特に限定されないが、0.5~24時間であることが好ましい。
反応工程によって、マイケル受容体ユニット又は/及びホスフィンユニットが固定化された担体を含む、反応生成物が得られる。
この他に、担体へのマイケル受容体ユニット又は/及びホスフィンユニットの固定化の方法としては、特開2018-38号公報に記載された方法、特開2006-169369号公報に記載されたアミノ基又はカルボキシル基を末端基とし、これを出発反応点としたアミド化反応を利用する方法が挙げられる。
<精製工程>
精製工程における後処理とは、反応工程で得られた反応生成物に残存する原料等を除去する処理である。精製工程における後処理の方法としては、リンス、乾燥等が挙げられ、これらを組み合わせて適用することができる。
リンスは、特に限定されないが、前記した溶媒を用いて反応生成物をリンスすることが好ましい。リンスが前記した溶媒を用いて行われる場合、未反応のマイケル受容体含有前駆体、マイケル受容体形成体又は/及びホスフィン含有前駆体を効率的に除去することができる。これにより、得られる飲料用硫黄化合物除去剤においては、マイケル受容体ユニット及びホスフィンユニットが物理的に脱落することをより抑制できる。なお、飲料用硫黄化合物除去剤は、所望の飲料用硫黄化合物除去剤が得られるような範囲で、未反応のマイケル受容体含有前駆体、マイケル受容体形成体又は/及びホスフィン含有前駆体が付着していてもよい。また、飲料用硫黄化合物除去剤は、所望の飲料用硫黄化合物除去剤が得られるような範囲で、未反応の結合基が存在していてもよい。
乾燥は、常圧又は減圧下で行うことができる。乾燥温度は、特に限定されないが、10℃~70℃であることが好ましい。乾燥時間は、特に限定されないが、30分~10時間であることが好ましい。
上記精製工程によって、飲料用硫黄化合物除去剤が得られる。
[飲料用硫黄化合物除去剤の使用方法]
飲料用硫黄化合物除去剤は、飲料から硫黄化合物を除去する方法に用いることができる。飲料用硫黄化合物除去剤を用いた飲料から硫黄化合物を除去する方法としては、飲料用硫黄化合物除去剤に飲料を通液させる工程と、飲料用硫黄化合物除去剤によって、硫黄化合物を分解又は/及び吸着させる工程とを含む方法が挙げられる。
飲料用硫黄化合物除去剤に飲料を通液させる方法は、飲料用硫黄化合物除去剤と飲料とが接触する限り特に限定されない。具体的には、飲料用硫黄化合物除去剤を任意の容器内に充填し、飲料を前記容器内に充填して、飲料用硫黄化合物除去剤と飲料とを接触させる方法が挙げられる。前記方法により、飲料用硫黄化合物除去剤に含まれる化合物に応じて、硫黄化合物の分解又は/及び吸着が行われ、飲料に含まれる硫黄化合物が除去される。また、飲料用硫黄化合物除去剤を用いた飲料から硫黄化合物を除去する方法は、飲料用硫黄化合物除去剤によって、硫黄化合物を分解又は/及び吸着させる工程の後に、飲料用硫黄化合物除去剤をろ過により除去する後処理工程を含んでいてもよい。
ここで、飲料用硫黄化合物除去剤の形状は、飲料用硫黄化合物除去剤と飲料とが接触できるものであれば任意であり、担体の基材が有する形状のままで用いてもよく、板状、顆粒状、ペレット状、錠剤等の任意の形状に成形又は製剤化された形態で用いてもよい。ここで、板状の厚みは特に限定されず、フィルム状、シート状、箔状のいずれであってもよい。また、飲料用硫黄化合物除去剤は、更なる部材と組み合わせることができる。これにより、飲料用硫黄化合物除去剤を用いた飲料用硫黄化合物除去部材とすることができる。
[飲料用硫黄化合物除去剤を用いた飲料用硫黄化合物除去部材]
飲料用硫黄化合物除去剤を用いた飲料用硫黄化合物除去部材(以下、単に「飲料用硫黄化合物除去部材」ともいう。)は、飲料用硫黄化合物除去剤及び更なる部材を含む。
更なる部材としては、特に限定されず、飲料の製造、精製、保存又は輸送等のために通常用いられる材料から適宜選択される。また、飲料用硫黄化合物除去部材の形状は、任意であり、粉状、繊維状、中空状(筒状、容器状)、板状等の形状が挙げられ、飲料の製造、精製、保存又は輸送等の目的に応じて適宜選択される。
このような飲料用硫黄化合物除去部材としては、飲料用硫黄化合物除去剤を織布又は不織布に含浸させたもの、飲料用硫黄化合物除去剤を含む樹脂組成物としたものをフィルム状又は板状に成形したもの、飲料用硫黄化合物除去剤を容器内に充填したもの、飲料用硫黄化合物除去剤を含む樹脂組成物であるコーティング剤を配管の内壁、容器の内壁、又は容器部材(例えば、撹拌羽)にコーティングしたもの等が挙げられる。よって、硫黄化合物除去部材の具体例としては、板状又は筒状のろ過シート(ろ紙、ろ過板)、カートリッジ(カートリッジフィルター)、織布フィルター、不織布フィルター、容器、撹拌羽根、配管等が挙げられる。
(カートリッジ)
飲料用硫黄化合物除去剤を用いたカートリッジは、前記飲料用硫黄化合物除去剤を充填してなる。カートリッジは、飲料から硫黄化合物除去する機能を有するものである。カートリッジを通過した飲料は製品として取得される。カートリッジにおける飲料用硫黄化合物除去剤吸着剤の充填方法は、特に制限されず、目的に応じて適宜設定できる。
カートリッジは、1種又は2種以上のカートリッジの組み合わせであってもよい。2種以上のカートリッジの組み合わせである場合、直列又は並列に設置してもよい。
カートリッジは、マイケル受容体ユニット含有担体及びホスフィンユニット含有担体を含む飲料用硫黄化合物除去剤を2段式で充填するカートリッジであって、第1段目にホスフィンユニットを固定化した担体を含む飲料用硫黄化合物除去剤吸着剤を充填し、第2段目にマイケル受容体ユニットを固定化した担体を含む飲料用硫黄化合物除去剤吸着剤を充填してなるカートリッジであることが好ましい。ここで、第1段目とは、飲料が最初に通過する領域を意味し、第2段目とは、第1段目を通過した飲料が通過する領域を意味する。図1に、前記好ましい2段式のカートリッジを示す。1が1段目の除去剤が充填された領域であり、2が2段目の除去剤が充填された領域であり、矢印が飲料の通過する方向を示す。
このような、2段式のカートリッジであると、第1段目において、ポリスルフィド化合物がチオール化合物に分解されて除去され、第2段目において、チオール化合物(ポリスルフィド化合物の分解物及び第1段目を通過する前の原料飲料に含まれるチオール化合物)が吸着されることから、より効率的に硫黄化合物を除去することができる。
<カートリッジを含む飲料用硫黄化合物除去装置>
カートリッジを含む飲料用硫黄化合物除去装置(以下、単に「除去装置」ともいう。)は、原料タンクと、精製タンクと、ポンプと、前記したカートリッジと、ラインチューブとを備え、原料タンク、ポンプ、カートリッジ、精製タンクの順番又は原料タンク、カートリッジ、ポンプ、精製タンクの順番にラインチューブで連結されている。
原料タンクは、カートリッジに接触する前の飲料が貯蔵される。ポンプは、原料タンクに貯蔵された飲料をカートリッジに送出する。精製タンクは、カートリッジに接触した後の飲料が貯蔵される。ラインチューブは、除去装置において、原料タンク、ポンプ、カートリッジ、精製タンクの間を接続する管であり、飲料が通過する。飲料は製造された後に原料タンクに収納される。そして、ポンプを作動させることによって、原料タンクに収納された飲料は、カートリッジに送出される。ポンプ及びカートリッジの順番は、順不同である。カートリッジを通過した飲料は製品として精製タンクに貯蔵される。
図2及び図3に、除去装置の例を示す。3が原料タンクであり、4がポンプであり、5がカートリッジであり、6が精製タンクであり、7、8及び9がラインチューブであり、7、8及び9における矢印が飲料の通過する方向を示す。
除去装置は、ワンパス式であっても、循環式であってもよい。即ち、カートリッジを通過した飲料は、精製タンクに貯蔵されてもよく、再度原料タンクに戻されてもよい。図2及び図3において、除去装置がワンパス式の場合、カートリッジを通過した飲料は、ラインチューブ8を通過して、精製タンク6に貯蔵され、飲用に供される。除去装置が循環式の場合、カートリッジを通過した飲料は、ラインチューブ9を通過して、原料タンク1に戻され、再度カートリッジ5を通過する。そして、飲料が所望の硫黄化合物の含有量になった時に、ラインチューブ8により、精製タンク6に貯蔵される。
(ろ過シート)
ろ過シートは、飲料用硫黄化合物除去剤と、紙、織布、不織布等の材料と組み合わせた部材である。ろ過シートは、組み合わせられる材料の形態に応じて、ろ紙又はろ過板と呼ばれる。ろ過シートは、具体的には、飲料用硫黄化合物除去剤と、疎水性繊維と、任意としての親水性繊維とを含むろ過シートが挙げられる。
疎水性繊維としては、ポリオレフィン系、ポリエステル系、アクリル系の疎水性繊維等が挙げられ、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエステル繊維等の疎水性かつ親油性の繊維が好ましい。親水性繊維としては、天然セルロース繊維、レーヨン繊維、ポリビニルアルコール繊維等が挙げられ、天然セルロース繊維が好ましく、精製リンターパルプ又は晒クラフトパルプ等の精製木材パルプ等で、α-セルロース分が90%以上である天然セルロース繊維であることが特に好ましい。疎水性繊維又は親水性繊維の繊維形状は、特に限定されず、得られるろ過シートの性質に応じて、適宜選択できる。
ろ過シートは、乾式法又は湿式法で製造できる。ろ過シートの性質の均一性、製造効率の観点から、ろ過シートは湿式法で製造することが好ましい。湿式法によるろ過シートの製造方法としては、例えば、水を含むビーター中に親水性繊維を添加、分散する工程、ビーターの刃を下して所定の叩解度に調整後、飲料用硫黄化合物除去剤を加えて、混合する工程、予め解繊した疎水性繊維を添加して、混合して抄紙原料とする工程、及び、抄紙原料を用いて常法により抄紙、乾燥して所望のろ過シートを得る工程を含む方法が挙げられる。湿式法によるろ過シートの製造方法において、疎水性繊維の分散性を良くするために、界面活性剤等の抄紙用分散剤を加えてもよい。ろ過シートにおける飲料用硫黄化合物除去剤、疎水性繊維及び親水性繊維の含有量は特に限定されず、所望の硫黄化合物の除去性能に応じて適宜設定できる。
また、ろ過シートは、例えば特開平3-42008号公報に記載の方法により製造することができる。
(撹拌羽根、配管、容器等)
撹拌羽根としては、飲料製造用タンクに用いられる撹拌羽根の翼表面に、飲料用硫黄化合物除去剤を含むコーティング剤を用いて、飲料用硫黄化合物除去剤を含むコーティングを備えたものや、撹拌羽根に、飲料用硫黄化合物除去剤と織布又は不織布とを組み合わせたろ過シートで包んだものが挙げられる。
配管としては、飲料製造用配管に用いられる配管の内壁に、飲料用硫黄化合物除去剤を含むコーティング剤を用いて、飲料用硫黄化合物除去剤を含むコーティングを備えたものが挙げられる。
容器としては、飲料製造用に用いられる容器又は飲料用容器の内壁に、飲料用硫黄化合物除去剤を含むコーティング剤を用いて、飲料用硫黄化合物除去剤を含むコーティングを備えたものが挙げられる。また、飲料用容器材料(例えば、飲料容器用の樹脂又は紙等)に、飲料用硫黄化合物除去剤を添加剤として練りこむことにより、前記飲料用容器材料に硫黄化合物除去性を付与することができる。
この他に、飲料用容器の蓋の飲料と接する側に、板状の除去部材を貼り付けることや、飲料用容器の蓋にろ過穴を設け、その中に飲料用硫黄化合物除去剤を格納することも可能である。このような蓋を用いることで、容器の保存又は輸送中に飲料と除去剤とは、接触することができる。
また、硫黄化合物除去部材は、前記した以外に、例えば特開2001-334120号公報、特開2009―39905号公報又は特開2011-56509号公報に記載されたような、無機粒子を繊維、樹脂又は樹脂フィルムに組み込む方法と類似の方法により製造してもよい。
[飲料用硫黄化合物除去部材の使用方法]
飲料用硫黄化合物除去部材は、飲料から硫黄化合物を除去する方法に用いることができる。飲料から硫黄化合物を除去する方法としては、硫黄化合物除去部材に飲料を接触させる工程と、硫黄化合物除去部材内で、硫黄化合物を分解又は/及び吸着させる工程とを含む方法が挙げられる。硫黄化合物除去部材に飲料を接触させる方法は、硫黄化合物除去部材の種類に応じて適宜選択できる。
硫黄化合物除去部材が、飲料用硫黄化合物除去剤を充填してなるカートリッジである場合の、飲料から硫黄化合物を除去する方法としては、前記したカートリッジに飲料を通液させる工程と、カートリッジ内で硫黄化合物を分解又は/及び吸着させる工程とを含む方法が挙げられる。ここで、飲料用硫黄化合物除去剤、カートリッジ、通液する飲料の量等は、好ましい態様を含め、前記した通りである。
また、飲料用硫黄化合物除去部材が、飲料用硫黄化合物除去剤を含むろ過シートである場合の、飲料から硫黄化合物を除去する方法としては、前記したろ過シートに飲料を通液させる工程と、ろ過シート内で硫黄化合物を分解又は/及び吸着させる工程とを含む方法が挙げられる。ここで、飲料用硫黄化合物除去剤、ろ過シート、通液する飲料の量等は、好ましい態様を含め、前記した通りである。
[硫黄化合物が除去された飲料の製造方法]
飲料用硫黄化合物除去剤は、硫黄化合物が除去された飲料の製造方法に用いることができる。硫黄化合物が除去された飲料の製造方法としては、飲料用硫黄化合物除去剤に飲料を通液させる工程と、飲料用硫黄化合物除去剤内で硫黄化合物を分解又は/及び吸着させる工程とを含む方法が挙げられる。
飲料用硫黄化合物除去部材は、硫黄化合物が除去された飲料の製造方法に用いることができる。硫黄化合物が除去された飲料の製造方法としては、前記飲料用硫黄化合物除去部材に飲料を接触させる工程と、前記飲料用硫黄化合物除去部材内で硫黄化合物を分解又は/及び吸着させる工程とを含む方法が挙げられる。
ここで、飲料用硫黄化合物除去部材が飲料用硫黄化合物除去剤を充填してなるカートリッジである場合の、硫黄化合物が除去された飲料の製造方法としては、前記したカートリッジに飲料を通液させる工程と、カートリッジ内で硫黄化合物を分解又は/及び吸着させる工程とを含む方法が挙げられる。
また、飲料用硫黄化合物除去部材が飲料用硫黄化合物除去剤を含むろ過シートである場合の、硫黄化合物が除去された飲料の製造方法としては、前記したろ過シートに飲料を通液させる工程と、ろ過シート内で硫黄化合物を分解又は/及び吸着させる工程とを含む方法が挙げられる。
<飲料>
飲料用硫黄化合物除去剤が適用される飲料としては、アルコール飲料及び非アルコール飲料が挙げられる。アルコール飲料としては、酒類、例えば、蒸留酒、醸造酒及び混成酒などが挙げられる。蒸留酒としては、ウイスキー、ブランデー、ジン、ウォッカ、テキーラ、ラム、白酒、アラック、焼酎等が挙げられる。醸造酒としては、清酒、ビール、ワイン、紹興酒等が挙げられる。混成酒としては、リキュール、梅酒、酒精強化ワイン等が挙げられる。非アルコール飲料としては、野菜ジュース、果物ジュース、コーヒー、紅茶、日本茶、麦茶、中国茶、炭酸飲料等が挙げられる。
<硫黄化合物>
飲料用硫黄化合物除去剤によって除去される硫黄化合物は、飲料用で悪臭や不味成分とされる臭気(オフフレーバー)の原因となる成分であり、ポリスルフィド化合物又は/及びチオール化合物が挙げられる。ポリスルフィド化合物は、ジメチルジスルファイド(DMDS)及びジメチルトリスルファイド(DMTS)等が挙げられる。チオール化合物は、分子中に、1つ又は2つ以上のメルカプト基(SH基)を有する化合物であり、例えば、硫化水素(腐卵臭)、メタンチオール(メチルメルカプタン:腐敗タマネギ臭又は腐敗キャベツ臭)、エタンチオール(エチルメルカプタン:沢庵臭)、n-プロピルメルカプタン(腐敗タマネギ臭)、アリルチオール(ゴム臭焦げ臭)等炭素数1から4のアルキルチオール、フラン-2-イルメタンチオール(フルフリルメルカプタン)、1-メルカプト-3-メチル-2-ブテン等が挙げられる。これらの化合物のうち、特に、メタンチオール(メチルメルカプタン)、エタンチオール(エチルメルカプタン)、フラン-2-イルメタンチオール(フルフリルメルカプタン)に対して、飲料用硫黄化合物除去剤による除去効果が高い。
以下に実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
合成例1-1:ホスフィンユニット(ホスフィンユニット含有前駆体:TCEP塩酸塩)を固定化したシリカの製造
窒素雰囲気下においてトリスカルボキシエチルホスフィン塩酸塩(TCEP・HCl)1.90gをN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)260mLに溶解し、ジアミンシリカ(株式会社ディーピーエス製MSLB100N2)10.0gを添加した。次いで、ジイソプロピルエチルアミン1.72gを加えた後、O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸塩(HBTU)2.47gを溶解したDMF25mLを滴下した。室温(25℃)で3時間撹拌した後、ろ過により溶媒を除去し、DMF50mLの後、エタノール50mLでリンスした。60℃で1時間減圧乾燥し、式(P1-1)で示されるホスフィンユニットを固定化したシリカを得た。
合成例1-2:ホスフィンユニット(ホスフィンユニット含有前駆体:TCEP塩酸塩)を固定化したシリカの製造
窒素雰囲気下においてアミノプロピルシリカ(富士シリシア化学株式会社製NHシリカ)10.0gにN-ヒドロキシスクシンイミド0.25g、窒素バブリングを施した蒸留水50mL、トリスカルボキシエチルホスフィン塩酸塩(TCEP・HCl)0.57g及びトリエチルアミン0.22gを添加した。この懸濁液を撹拌しながら1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC・HCl)0.43gを溶解した窒素バブリングを施した蒸留水10mLを4分かけて滴下した。室温(20℃)で2時間撹拌した後、ろ過により溶媒を除去し、蒸留水10mLの後、エタノール50mLでリンスした。60℃で4時間減圧乾燥し、式(P1-1)で示されるホスフィンユニットを固定化したシリカを得た。
合成例2-1:マイケル受容体ユニット(マイケル受容体ユニット含有前駆体:4-マレイミド酪酸)を固定化したシリカの製造
4-マレイミド酪酸3.56gをエタノール250mLに溶解し、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC・HCl)3.76gを添加した。次いで、ジアミンシリカ(株式会社ディーピーエス製MSLB100N2)5.0gを添加した。室温(25℃)で17時間撹拌した後、ろ過により溶媒を除去し、エタノール100mLでリンスした。60℃で6時間減圧乾燥し、式(M1)で示されるマイケル受容体ユニットを固定化したシリカを得た。
合成例2-2:マイケル受容体ユニット(マイケル受容体ユニット含有前駆体:4-マレイミド酪酸)を固定化したシリカの製造
アミノプロピルシリカ(富士シリシア化学株式会社製NHシリカ)10.0gに4-マレイミド酪酸0.37g、N-ヒドロキシスクシンイミド0.25g、エタノール50mL及びトリエチルアミン0.22g添加した。この懸濁液を撹拌しながら1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC・HCl)0.43gを溶解したエタノール10mLを25分かけて滴下した。室温(20℃)で2時間撹拌した後、ろ過により溶媒を除去し、エタノール40mLでリンスした。60℃で4時間減圧乾燥し、式(M1)で示されるマイケル受容体ユニットを固定化したシリカを得た。
<硫黄化合物除去剤の除去選択性>
(各化合物の濃度測定)
島津製作所製GC-2010Plusを用い、ピーク面積から、各化合物の濃度を求めた。
実施例1:ホスフィンユニットを固定化したシリカによるポリスルフィド化合物(DMTS)の除去選択性
合成例1-1で得たホスフィンユニットを固定化したシリカ0.048gを充填したカートリッジ(Swagelok製SS-400-6-1、SS-100-R-4及び濾紙(直径4mm)より構成される。以下の実施例、比較例で充填物を変更し、同様の構成のカートリッジを使用した。)に、10mg/LのDMTS溶液(溶媒EtOH/HO=16/84(v/v))50mLを流速1.0mL/分で通液させた。カートリッジから流出した溶液中のポリスルフィド化合物の濃度を調べるために、最後の1.0mL(通液量49-50mL)に、3mMのN-エチルマレイミド溶液0.1mLを添加し、GCにて分析した。溶液中のメチルメルカプタン(チオール化合物)はN-エチルマレイミド誘導体として検出した。また、計算によるチオール化合物(メチルメルカプタン)の残存率は80%であった。なお、硫化水素誘導体は検出されなかった。
また、合成例1-1で得たホスフィンユニットを固定化したシリカ0.063gを充填したカートリッジに、10mg/Lのカプロン酸エチル溶液(溶媒EtOH/HO=16/84(v/v))50mLを流速1.0mL/分で通液させた。カートリッジから流出した溶液中のカプロン酸エチルの濃度を調べるために、最後の1.0mL(通液量49-50mL)をGCにて分析した。
実施例2:マイケル受容体ユニットを固定化したシリカによるチオール化合物(フルフリルメルカプタン)の除去選択性
合成例2-1で得たマイケル受容体ユニットを固定化したシリカ0.065gを充填したカートリッジに、10mg/Lのフルフリルメルカプタン溶液(溶媒EtOH/HO=16/84(v/v))50mLを流速1.0mL/分で通液させた。カートリッジから流出した溶液中のチオール化合物の濃度を調べるために、最後の1.0mL(通液量49-50mL)をGCにて分析した。
また、合成例2-1で得たマイケル受容体ユニットを固定化したシリカ0.061gを充填したカートリッジに、10mg/Lのカプロン酸エチル溶液(溶媒EtOH/HO=16/84(v/v))50mLを流速1.0mL/分で通液させた。カートリッジから流出した溶液中のカプロン酸エチルの濃度を調べるために、最後の1.0mL(通液量49-50mL)をGCにて分析した。
実施例3:ホスフィンユニットを固定化したシリカ及びマイケル受容体ユニットを固定化したシリカによるポリスルフィド化合物(DMTS)の除去性
カートリッジの1段目に、合成例1-1で得たホスフィンユニットを固定化したシリカ0.056gを充填し、カートリッジの2段目に、合成例2-1で得たマイケル受容体を固定化したシリカ0.048gを充填したカートリッジを作製した。次に、そのカートリッジを用いて、合成例1-1で得たホスフィンユニットを固定化したシリカが充填された1段目から、10mg/LのDMTS溶液(溶媒EtOH/HO=16/84(v/v))50mLを流速1.0mL/分で通液させた。カートリッジから流出した溶液中のポリスルフィド化合物の濃度を調べるために、最後の1.0mL(通液量49-50mL)に、3mMのN-エチルマレイミド溶液0.1mLを添加し、GCにて分析した。なお、メチルメルカプタン及び硫化水素のN-エチルマレイミド誘導体は検出されなかった。
比較例1:活性炭によるポリスルフィド化合物(DMTS)の除去選択性
市販の活性炭(川北化学株式会社製くじゃく活性炭特製SE)0.066gを充填したカートリッジに、10mg/LのDMTS溶液(溶媒EtOH/HO=16/84(v/v))45mLを流速1.0mL/分で通液させ、カートリッジから流出した溶液中のポリスルフィド化合物の濃度を調べるために、最後の1.0m(通液量44-45mL)LをGCにて分析した。
また、活性炭(川北化学株式会社製くじゃく活性炭特製SE)0.041gを充填したカートリッジに、10mg/Lのカプロン酸エチル溶液(溶媒EtOH/HO=16/84(v/v))40mLを流速1.0mL/分で通液させた。カートリッジから流出した溶液中のカプロン酸エチルの濃度を調べるために、最後の1.0mL(通液量39-40mL)をGCにて分析した。
結果を表1に示す。カートリッジから流出した溶液中の各化合物の残存率(%)は、以下の数式(1)より求めた。
Figure 2022153679000016
なお、実施例1のチオール化合物の残存率(%)は、カートリッジに通液させる前の溶液中のポリスルフィド化合物濃度(mg/L)を基準としてポリスルフィド化合物が分解して生成するチオール化合物の濃度を計算し、カートリッジから流出した溶液中のチオール化合物の濃度から算出した。
Figure 2022153679000017
表1より、実施例の飲料用硫黄化合物除去剤は、ホスフィンユニットによる硫黄化合物の分解又は/及びマイケル受容体ユニットによる硫黄化合物の吸着により、飲料中の硫黄化合物の除去選択性に優れている。また、実施例の飲料用硫黄化合物除去剤は、安価に製造することができる。
実施例1より、飲料用硫黄化合物除去剤が、ホスフィンユニットが固定化された担体を含む場合、硫黄化合物であるポリスルフィド化合物を分解する一方で、旨味成分であるカプロン酸エチルを除去(分解又は吸着)しないことから、硫黄化合物の除去の選択性に優れていることが確認された。ちなみに、ポリスルフィド化合物の分解により生じるチオール化合物は、ポリスルフィド化合物より、悪臭や不味成分とされる臭気の原因となりにくいと言われている。
また、実施例2より、飲料用硫黄化合物除去剤が、マイケル受容体ユニットが固定化された担体を含む場合、硫黄化合物であるチオール化合物を吸着する一方で、旨味成分であるカプロン酸エチルを除去(分解又は吸着)しないことから、硫黄化合物の除去選択性に優れていることが確認された。
さらに、実施例3より、飲料用硫黄化合物除去剤が、ホスフィン含有担体、マイケル受容体含有担体の順で飲料を処理した場合、まずポリスルフィド化合物を分解し、次いで前記分解により生じたチオール化合物を含む飲料中のすべてのチオール化合物をより効果的に吸着できる。すなわち、このような飲料用硫黄化合物除去剤は、硫黄化合物の除去性がより優れていると考えられる。
合成例3:マイケル受容体ユニット(マイケル受容体ユニット形成体:無水マレイン酸)を固定化したシリカの製造
アミノプロピルシリカ(富士シリシア化学株式会社製NHシリカ)10.0gに無水マレイン酸3.20g及び酢酸50mLを添加した。この懸濁液を室温(20℃)で2時間撹拌した後、6時間加熱還流した。ろ過により溶媒を除去し、エタノール100mLでリンスした。60℃で一晩減圧乾燥し、式(M1)で示されるマイケル受容体ユニットを固定化したシリカを得た。
合成例4:マイケル受容体ユニット(マイケル受容体ユニット形成体:無水マレイン酸)を固定化したシリカの製造
3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルシリカ(富士シリシア化学株式会社製ジアミンシリカ)10.0gに無水マレイン酸1.78g及び酢酸50mLを添加した。この懸濁液を室温(20℃)で1時間撹拌した後、3時間加熱還流した。ろ過により溶媒を除去し、エタノールでリンスした。60℃で一晩減圧乾燥し、式(M1)で示されるマイケル受容体ユニット及び/又は式(M6-2)で示されるマイケル受容体ユニットを固定化したシリカを得た。
実施例4:マイケル受容体ユニットを固定化したシリカによるチオール化合物(フルフリルメルカプタン)の除去性
合成例2-1で得たマイケル受容体ユニットを固定化したシリカ0.55gを充填したカートリッジ(Swagelok製SS-810-6-2、SS-200-R-3及び濾紙(直径9mm)より構成した。以下の実施例で充填物を変更し、同様の構成のカートリッジを使用した。)に、10mg/Lのフルフリルメルカプタン溶液(溶媒EtOH/HO=16/84(v/v))300mLを流速10mL/分で通液させた。カートリッジから流出した溶液中のチオール化合物の濃度を調べるために、最後の1.0mL(通液量299-300mL)をGCにて分析した。
実施例5:マイケル受容体ユニットを固定化したシリカによるチオール化合物(フルフリルメルカプタン)の除去性
合成例3で得たマイケル受容体ユニットを固定化したシリカ0.58gを充填したカートリッジに、10mg/Lのフルフリルメルカプタンを添加したモデル溶液(溶媒EtOH/HO=16/84(v/v))300mLを流速10mL/分で通液させた。カートリッジから流出した溶液中のチオール化合物の濃度を調べるために、最後の1.0mL(通液量299-300mL)をGCにて分析した。
実施例6:マイケル受容体ユニットを固定化したシリカによるチオール化合物(フルフリルメルカプタン)の除去性
合成例4で得たマイケル受容体ユニットを固定化したシリカ0.59gを充填したカートリッジに、10mg/Lのフルフリルメルカプタン溶液(溶媒EtOH/HO=16/84(v/v))300mLを流速10mL/分で通液させた。カートリッジから流出した溶液中のチオール化合物の濃度を調べるために、最後の1.0mL(通液量299-300mL)をGCにて分析した。
Figure 2022153679000018
表2より、実施例の飲料用硫黄化合物除去剤が、マイケル受容体ユニットが固定化された担体を含む場合、硫黄化合物であるチオールを吸着することが確認された。また、実施例5、6の飲料用硫黄化合物除去剤は、安価に製造することができる。
実施例5及び6の比較より、担体の基材における表面修飾として、アミノアルキル基を用いた場合に比べて、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピル基を用いた場合に、硫黄化合物であるチオールの吸着性が高く、実施例4におおよそ匹敵することが確認された。すなわち、基材における表面修飾として、炭素数が大きいことにより、硫黄化合物の除去性がより優れていると考えられる。
実施例7:ホスフィンユニットを固定化したシリカによるポリスルフィド化合物(DMTS)の除去選択性
合成例1-2で得たホスフィンユニットを固定化したシリカ0.50gをセライト(主成分は珪藻土である。)5.0gと混合し、これを桐山ロート(直径40mm、容量50mL、濾紙を使用)に敷き詰めることで板状のろ過シートを作製した。次に、10mg/LのDMTSを添加したモデル溶液(溶媒EtOH/HO=16/84(v/v))100mLを、吸引ろ過により、ろ過シートに通液させた。ろ過シートから流出した溶液中のポリスルフィド化合物の濃度を調べるために、通液量20-100mLを採取し、GCにて分析した。
また、合成例1-2で得たホスフィンユニットを固定化したシリカ0.50g及びセライト5.0gから、前記と同様な方法によってろ過シートを作製した。次に、10mg/Lのカプロン酸エチル溶液(溶媒EtOH/HO=16/84(v/v))100mLをろ過シートに通液させた。ろ過シートから流出した溶液中のカプロン酸エチルの濃度を調べるために、通液量20-100mLを採取し、GCにて分析した。
実施例8:マイケル受容体ユニットを固定化したシリカによるチオール化合物(フルフリルメルカプタン)の除去選択性
合成例2-2で得たマイケル受容体ユニットを固定化したシリカ0.5g及びセライト5.0gから実施例7と同様な方法によってろ過シートを作製した。次に、10mg/Lのフルフリルメルカプタン溶液(溶媒EtOH/HO=16/84(v/v))100mLを、吸引ろ過により、ろ過シートに通液させた。ろ過シートから流出した溶液中のフルフリルメルカプタンの濃度を調べるために、通液量20-100mLを採取し、GCにて分析した。
また、合成例2-2で得たマイケル受容体ユニットを固定化したシリカ0.5g及びセライト5.0gから実施例7と同様な方法によってろ過シートを作製した。次に、10mg/Lのカプロン酸エチル溶液(溶媒EtOH/HO=16/84(v/v))100mLをろ過シートに通液させた。ろ過シートから流出した溶液中のカプロン酸エチルの濃度を調べるために、通液量20-100mLを採取し、GCにて分析した。
実施例9:マイケル受容体ユニットを固定化したシリカによるチオール化合物(フルフリルメルカプタン)の除去選択性
合成例4で得たマイケル受容体ユニットを固定化したシリカ0.5g及びセライト5.0gから実施例7と同様な方法によってろ過シートを作製した。次に、10mg/Lのフルフリルメルカプタン溶液(溶媒EtOH/HO=16/84(v/v))100mLを、吸引ろ過により、ろ過シートに通液させた。ろ過シートから流出した溶液中のフルフリルメルカプタンの濃度を調べるために、通液量20-100mLを採取し、GCにて分析した。
また、合成例4で得たマイケル受容体ユニットを固定化したシリカ0.5g及びセライト5.0gから実施例7と同様な方法によってろ過シートを作製した。次に、10mg/Lのカプロン酸エチル溶液(溶媒EtOH/HO=16/84(v/v))100mLをろ過シートに通液させた。ろ過シートから流出した溶液中のカプロン酸エチルの濃度を調べるために、通液量20-100mLを採取し、GCにて分析した。
比較例2:活性炭によるポリスルフィド化合物(DMTS)の除去選択性
市販の活性炭(川北化学株式会社製くじゃく活性炭特製SE)0.5g及びセライト5.0gから実施例7と同様な方法によってろ過シートを作製した。次に、10mg/LのDMTS溶液(溶媒EtOH/HO=16/84(v/v))100mLをろ過シートに通液させた。ろ過シートから流出した溶液中のDMTSの濃度を調べるために、通液量20-100mLを採取し、GCにて分析した。
また、活性炭0.50g及びセライト5.0gから実施例7と同様な方法によってろ過シートを作製した。次に、10mg/Lのカプロン酸エチル溶液(溶媒EtOH/HO=16/84(v/v))100mLをろ過シートに通液させた。ろ過シートから流出した溶液中のカプロン酸エチルの濃度を調べるために、通液量20-100mLを採取し、GCにて分析した。
比較例3:セライトのみを用いたろ過シートによる、ポリスルフィド化合物(DMTS)及びチオール化合物(フルフリルメルカプタン)の除去選択性
セライト5.0gを桐山ロート(直径40mm、容量50mL、濾紙を使用)に敷き詰めることで板状のろ過シートを作製した。次に、10mg/LのDMTS溶液(溶媒EtOH/HO=16/84(v/v))100mLを、吸引ろ過により、ろ過シートに通液させた。ろ過シートから流出した溶液中のポリスルフィド化合物の濃度を調べるために、通液量20-100mLを採取し、GCにて分析した。
セライト5.0gから、前記と同様な方法によってろ過シートを作製した。次に、10mg/Lのカプロン酸エチル溶液(溶媒EtOH/HO=16/84(v/v))100mLを、吸引ろ過により、ろ過シートに通液させた。ろ過シートから流出した溶液中のカプロン酸エチルの濃度を調べるために、通液量20-100mLを採取し、GCにて分析した。
セライト5.0gから、前記と同様な方法によってろ過シートを作製した。次に、10mg/Lのフルフリルメルカプタン溶液(溶媒EtOH/HO=16/84(v/v))100mLを、吸引ろ過により、ろ過シートに通液させた。ろ過シートから流出した溶液中のフルフリルメルカプタンの濃度を調べるために、通液量20-100mLを採取し、GCにて分析した。
Figure 2022153679000019
表3より、実施例の飲料用硫黄化合物除去剤が、ろ過シートの形状であっても、ホスフィンユニットが固定化された担体を含む場合、硫黄化合物であるポリスルフィドを吸着し、マイケル受容体ユニットが固定化された担体を含む場合、硫黄化合物であるチオールを吸着することが確認された。
また、表1の実施例3より、飲料用硫黄化合物除去剤が、ホスフィンユニット含有担体、マイケル受容体ユニット含有担体の順で飲料を処理した場合、まずポリスルフィド化合物を分解し、次いで前記分解により生じたチオール化合物を含む飲料中のすべてのチオール化合物をより効果的に吸着できることから、飲料用硫黄化合物除去剤が、ろ過シートの形状であっても、ホスフィンユニット、マイケル受容体ユニットの順で飲料を処理した場合、まずポリスルフィド化合物を分解し、次いで前記分解により生じたチオール化合物を含む飲料中のすべてのチオール化合物をより効果的に吸着できると考えることができる。
また、表3より、実施例の飲料用硫黄化合物除去剤が、ホスフィンユニット又はマイケル受容体ユニットが固定化された担体を含む場合、旨味成分であるカプロン酸エチルの残存率は、比較例3(対照実験であるセライトのみの場合)の残存率と同等であることが確認された。実施例の飲料用硫黄化合物除去剤が、ろ過シートの形状であっても、硫黄化合物であるポリスルフィド化合物又はチオール化合物を吸着する一方で、旨味成分であるカプロン酸エチルを除去(分解又は吸着)しないことから、硫黄化合物の除去選択性に優れていることが確認された。
1:1段目の飲料用硫黄化合物除去剤
2:2段目の飲料用硫黄化合物除去剤
3:原料タンク
4:ポンプ
5:カートリッジ
6:貯蔵タンク
7、8、9:ラインチューブ

Claims (15)

  1. マイケル受容体ユニット又は/及びホスフィンユニットを固定化した担体を含む、飲料用硫黄化合物除去剤。
  2. 前記マイケル受容体ユニットは、マレイミド骨格を含む、請求項1に記載の飲料用硫黄化合物除去剤。
  3. 前記ホスフィンユニットは、少なくとも1つの炭化水素基を有するホスフィンを含む、請求項1又は2に記載の飲料用硫黄化合物除去剤。
  4. 前記担体の基材が、ケイ素含有化合物、金属酸化物、粘土、合成ポリマー及び天然ポリマーからなる群より選択される少なくとも一種である、請求項1~3のいずれか一項に記載の飲料用硫黄化合物除去剤。
  5. マイケル受容体ユニットを固定化した担体及びホスフィンユニットを固定化した担体を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の飲料用硫黄化合物除去剤。
  6. 請求項1~5のいずれか一項に記載の飲料用硫黄化合物除去剤を充填してなるカートリッジ。
  7. 請求項5に記載の飲料用硫黄化合物除去剤を2段式で充填するカートリッジであって、第1段目にホスフィンユニットを固定化した担体を含む飲料用硫黄化合物除去剤を充填し、第2段目にマイケル受容体ユニットを固定化した担体を含む飲料用硫黄化合物除去剤を充填してなる、カートリッジ。
  8. 飲料用硫黄化合物除去装置であって、原料タンクと、精製タンクと、ポンプと、請求項6又は7に記載のカートリッジと、ラインチューブとを備え、原料タンク、ポンプ、カートリッジ、精製タンクの順番、又は原料タンク、カートリッジ、ポンプ、精製タンクの順番にラインチューブで連結されている、飲料用硫黄化合物除去装置。
  9. 飲料から硫黄化合物を除去する方法であって、請求項6又は7に記載のカートリッジに飲料を通液させる工程と、カートリッジ内で硫黄化合物を分解又は/及び吸着させる工程とを含む、飲料から硫黄化合物を除去する方法。
  10. 硫黄化合物が除去された飲料の製造方法であって、請求項6又は7に記載のカートリッジに飲料を通液させる工程と、カートリッジ内で硫黄化合物を分解又は/及び吸着させる工程とを含む、硫黄化合物が除去された飲料の製造方法。
  11. 請求項1~5のいずれか一項に記載の飲料用硫黄化合物除去剤を用いた飲料用硫黄化合物除去部材。
  12. 飲料から硫黄化合物を除去する方法であって、請求項1~5のいずれか一項に記載の飲料用硫黄化合物除去剤と飲料とを通液させる工程と、飲料用硫黄化合物除去剤内で硫黄化合物を分解又は/及び吸着させる工程とを含む、飲料から硫黄化合物を除去する方法。
  13. 硫黄化合物が除去された飲料の製造方法であって、請求項1~5のいずれか一項に記載の飲料用硫黄化合物除去剤と飲料とを通液させる工程と、飲料用硫黄化合物除去剤内で硫黄化合物を分解又は/及び吸着させる工程とを含む、硫黄化合物が除去された飲料の製造方法。
  14. 飲料から硫黄化合物を除去する方法であって、請求項11に記載の飲料用硫黄化合物除去部材と飲料とを接触させる工程と、飲料用硫黄化合物除去部材内で硫黄化合物を分解又は/及び吸着させる工程とを含む、飲料から硫黄化合物を除去する方法。
  15. 硫黄化合物が除去された飲料の製造方法であって、請求項11に記載の飲料用硫黄化合物除去部材に飲料を接触させる工程と、飲料用硫黄化合物除去部材内で硫黄化合物を分解又は/及び吸着させる工程とを含む、硫黄化合物が除去された飲料の製造方法。
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