JP2022150852A - 多層二軸延伸フィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、良好な耐熱性と良好なシール外観とを兼ね備え、良好な透明性を有し、良好な延伸性を有し、且つ、デラミ(層間剥離)し難いフィルムを提供することを目的とする。【解決手段】A層とB層とが積層されてなる多層二軸延伸フィルムであって、A層が、DSCで測定した融点(Tm)が200℃~250℃の範囲にある特定の4-メチル-1-ペンテン系重合体(A1)と、DSCで測定した融点(Tm)が観察されないか100℃~199℃の範囲にある特定の4-メチル-1-ペンテン共重合体(A2)とを含む樹脂組成物から構成され、前記A層において4-メチル-1-ペンテン系重合体(A1)の含有量が、A層の全質量に対して40質量%以上85質量%以下であり、前記4-メチル-1-ペンテン共重合体(A2)の含有量がA層の全質量に対して15質量%以上60質量%以下である、多層二軸延伸フィルム。【選択図】なし

Description

本発明は、多層二軸延伸フィルム、より詳しくは、包装用フィルム等に有用な多層二軸延伸フィルムに関する。
建材用や光学用の樹脂製品、金属製品、ガラス製品等は表面に表面保護フィルムを貼り付け、輸送、保管や加工による表面の傷や異物混入を防ぐのが一般的である。表面保護フィルムには、柔軟性、機械特性等の性質のほか、保護対象、保護目的、使用環境等に応じて種々の特性が求められる。このため様々な観点から表面保護フィルムの開発が進められている。例えば、ポリエチレン成分を主体とした表面保護フィルム(特許文献1)や、ポリプロピレン成分を主体とした4-メチル-1-ペンテンと1-デセンとのオリゴマーを含む樹脂組成物の表面保護フィルムが検討されている(特許文献2)。
二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、軽量性、熱的安定性及び機械特性に優れているので包装用、工業用材料フィルムとして広く用いられている。しかし、二軸延伸ポリプロピレンフィルムを包装用フィルムとして用いる場合、ヒートシールを行ったときに収縮しやすい傾向があり、更なる改良が要望されていた。
耐熱性に優れたフィルムを得るために、ポリメチルペンテン重合体を用いる試みが種々なされてきた。例えば、特許文献3は、互いに融点の異なる2種類のポリメチルペンテン重合体を用い、フィルムや中空成形体等の広い用途に用いることを開示している。ただし、特許文献3には、多層二軸延伸フィルムは具体的な形では示されておらず、特に、多層二軸延伸フィルムとしたときの、ヒートシール時のシール外観についての検討は開示されていない。
ポリプロピレンにポリメチルペンテン重合体を組み合わせる試みも種々なされてきた。しかしながら、ポリメチルペンテンの含有量を増やすことで二軸延伸性が悪化すること、および、多層フィルムとした場合にデラミ(層間剥離)することが知られている。この問題点を克服するための試みも種々なされている。
例えば、特許文献4には、ポリメチルペンテンとポリプロピレンとを含む基材層と、ポリプロピレンを含むシール層とを含む多層二軸延伸フィルムが開示されており、この多層二軸延伸フィルムにつき、デラミを抑制することができたこと、および、良好な離型性を有することも開示されている。ただ、特許文献4では、多層二軸延伸フィルムについて、ヒートシール時のシール外観についての検討はなされていない。
また、特許文献5には、互いに融点の異なる2種類のポリメチルペンテン重合体を含む基材層と、ポリプロピレンを含むシール層とを含む多層二軸延伸フィルムが開示されている。ただ、特許文献5に記載の基材層は、融点のより低いポリメチルペンテン重合体を主成分としている。また、特許文献5では、多層二軸延伸フィルムについて、ヒートシール時のシール外観についての検討はなされていない。
特開2006-116769号公報 特開2010-275340号公報 国際公開第2013/099876号 特開2018-144351号公報 特開2019-001139号公報
本発明は、良好な耐熱性と良好なシール外観とを兼ね備え、良好な透明性を有し、良好な延伸性を有し、且つ、デラミ(層間剥離)し難いフィルムを提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、互いに融点の異なる複数の特定の4-メチル-1-ペンテン系重合体を含む層を有する多層二軸延伸フィルムが上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、次の[1]~[9]に関する。
[1]
A層とB層とが積層されてなる多層二軸延伸フィルムであって、
A層が4-メチル-1-ペンテン系重合体(A1)と4-メチル-1-ペンテン共重合体(A2)とを含む樹脂組成物から構成され、
前記A層において4-メチル-1-ペンテン系重合体(A1)の含有量が、A層の全質量に対して40質量%以上85質量%以下であり、前記4-メチル-1-ペンテン共重合体(A2)の含有量がA層の全質量に対して15質量%以上60質量%以下であり、
かつ前記4-メチル-1-ペンテン系重合体(A1)が下記要件(A1-I)~(A1-III)を満たし、前記4-メチル-1-ペンテン共重合体(A2)が下記要件(A2-I)~(A2-III)を満たす、多層二軸延伸フィルム:
(A1-I)4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位(P1)の含有率が90~100モル%であり、炭素原子数2~20のα-オレフィン(4-メチル-1-ペンテンを除く)から導かれる構成単位(Q1)の含有率が0モル%~10モル%である。
(A1-II)DSCで測定した融点(Tm)が200℃~250℃の範囲にある。
(A1-III)135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]が0.5~5.0dl/gである。
(A2-I)4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位(P2)の含有率が65モル%以上96モル%未満であり、炭素原子数2~20のα-オレフィン(4-メチル-1-ペンテンを除く)から導かれる構成単位(Q2)の含有率が4モル%を超え35モル%以下である。
(A2-II)DSCで測定した融点(Tm)が観察されないか100℃~199℃の範囲にある。
(A2-III)135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]が0.5~5.0dl/gである。
[2]
下記式Aで求められる換算含有率Yの値が、3.0モル%~11.0モル%である、前記[1]に記載の多層二軸延伸フィルム:
Y=(XQ1×W1+XQ2×W2)/(W1+W2+WO)・・・式A
前記式A中、
1は、前記A層を構成する前記樹脂組成物における、前記4-メチル-1-ペンテン系重合体(A1)の含有質量;
2は、前記A層を構成する前記樹脂組成物における、前記4-メチル-1-ペンテン系共重合体(A2)の含有質量;
Oは、前記A層を構成する前記樹脂組成物における、前記4-メチル-1-ペンテン系重合体(A1)にも前記4-メチル-1-ペンテン共重合体(A2)にも該当しない樹脂の合計の含有質量;
Q1は、前記4-メチル-1-ペンテン系重合体(A1)における前記構成単位(Q1)の含有率(モル%);および、
Q2は、前記4-メチル-1-ペンテン系共重合体(A2)における前記構成単位(Q2)の含有率(モル%)である。
[3]
前記構成単位(Q2)が炭素原子数2~4のα-オレフィンに由来する構成単位である前記[1]または[2]に記載の多層二軸延伸フィルム。
[4]
前記B層が、ポリプロピレン(B)を含む前記[1]~[3]のいずれかに記載の多層二軸延伸フィルム。
[5]
前記B層が、2以上の層からなる前記[4]に記載の多層二軸延伸フィルム。
[6]
前記2以上の層が、同一の構成を有する前記[5]に記載の多層二軸延伸フィルム。
[7]
前記2以上の層が、第1の層と、前記A層から見て前記第1の層とは反対側にある第2の層とを含み、前記第1の層を構成するポリプロピレン(B)が、前記第2の層を構成するポリプロピレン(B)の融点以上である前記[5]に記載の多層二軸延伸フィルム。
[8]
A層/B層からなる層構成を含む前記[1]~[7]のいずれかに記載の多層二軸延伸フィルム。
[9]
包装用フィルムである、前記[1]~[8]のいずれかに記載の多層二軸延伸フィルム。
本発明によれば、良好な耐熱性と良好なシール外観とを兼ね備え、良好な透明性を有し、良好な延伸性を有し、且つ、二軸延伸時にデラミ(層間剥離)し難いフィルムを提供することができる。
以下、本発明の具体的な実施形態について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
ここで、本明細書において、「重合体」なる表現は、別途の記載がない限り、単独重合体および共重合体を包括する意味で用いられる。
また、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
また、本明細書において、あるモノマーXについて「Xに由来する構成単位」というときは、当該モノマーXに対応する構成単位を意味し、例えば、モノマーXの構造をRPQC=CRRSとすると、「Xに由来する構成単位」は、―CRPQ-CRRS―で表される構造を有することになる。例えば、「4-メチル-1-ペンテンに由来する構成単位」というときは、4-メチル-1-ペンテンに対応する構成単位(すなわち、-CH2-CH(-CH2CH(CH32)-で表される構成単位)を意味する。また、「プロピレンに由来する構成単位」というときは、プロピレンに対応する構成単位(すなわち、-CH2-CH(-CH3)-で表される構成単位)を意味する。
また、本明細書において、組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する複数の物質の合計量を意味する。
本発明の多層二軸延伸フィルムはA層とB層とが積層されてなり、A層が、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A1)と、当該4-メチル-1-ペンテン系重合体(A1)(以下、単に重合体(A1)ともいう)とは融点の異なる4-メチル-1-ペンテン共重合体(A2)(以下、単に共重合体(A2)ともいう)とを含む樹脂組成物から構成されている。すなわち、本発明の多層二軸延伸フィルムは、
4-メチル-1-ペンテン系重合体(A1)と、当該4-メチル-1-ペンテン系重合体(A1)とは融点の異なる4-メチル-1-ペンテン共重合体(A2)とを含む樹脂組成物から構成されているA層と、
B層と
を含んでいる。
以下、A層とB層を詳説し、次いで層構成、フィルム製造方法について述べる。
≪A層≫
本発明の多層二軸延伸フィルムにおいて、A層は耐熱層として機能する。
A層は、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A1)と、当該4-メチル-1-ペンテン系重合体(A1)とは融点の異なる4-メチル-1-ペンテン共重合体(A2)を含む。A層において4-メチル-1-ペンテン系重合体(A1)の含有量が、A層の全質量に対して40質量%以上85質量%以下であり、前記4-メチル-1-ペンテン共重合体(A2)の含有量がA層の全質量に対して15質量%以上60質量%以下である。前記4-メチル-1-ペンテン系重合体(A1)の含有量は、A層の全質量に対して好ましくは50~85質量%、より好ましくは60~85質量%、さらに好ましくは70~85質量%である。また、前記4-メチル-1-ペンテン共重合体(A2)の含有量は、A層の全質量に対して好ましくは15~50質量%、より好ましくは15~40質量%、さらに好ましくは15~30質量%である。上記範囲にあると、A層中に4-メチル-1-ペンテン系重合体(A1)を微分散させることが可能となる。また、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A1)の含有量が上記下限値以上であることで、A層の耐熱性が優れる。4-メチル-1-ペンテン共重合体(A2)の含有量が上記下限値以上であることで、層間強度に優れデラミし難くなる。一方、4-メチル-1-ペンテン共重合体(A2)の含有量が上記上限値以下であることで、得られる多層二軸延伸フィルムにおいて、耐熱性に優れ、ヒートシール後の外観も良好となる。
また、後述するように、重合体(A1)と共重合体(A2)とがいずれも4-メチル-1-ペンテンに由来する構成単位を特定量以上含有することにより、重合体(A1)と共重合体(A2)との相溶性が優れ、得られるフィルムのグロスが優れると考えられる。
〔4-メチル-1-ペンテン系重合体(A1)〕
以下、A層を構成する成分である4-メチル-1-ペンテン系重合体(A1)について説明する。4-メチル-1-ペンテン系重合体(A1)は下記要件(A1-I)~(A1-III)を満たす。
<要件(A1-I)>
4-メチル-1-ペンテン系重合体(A1)は、4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位(P1)(以下、本明細書において、単に「構成単位(P1)」と呼ばれる場合もある。)を90モル%~100モル%含む。また、炭素原子数2~20のオレフィン(4-メチル-1-ペンテンを除く)から導かれる構成単位(Q1)(以下、本明細書において、単に「構成単位(Q1)」と呼ばれる場合もある。)を0モル%~10モル%の割合で含む。なお、炭素原子数2~20のオレフィンとしては、1種類に限定されることなく、2種以上を組み合わせてもよい。
言い換えると、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A1)中の前記構成単位(P1)の含有率(以下、「XP1」と呼ばれる場合がある。)は90~100モル%であり、前記構成単位(Q1)の含有率(以下、「XQ1」と呼ばれる場合がある。)は0~10モル%である。
ここで、耐熱性の観点から、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A1)は、4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位(P1)を93モル%以上含むことが好ましい。
一方、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A1)は、炭素原子数2~20のオレフィン(4-メチル-1-ペンテンを除く)から導かれる構成単位(Q1)を10モル%以下、好ましくは7モル%以下含む。
4-メチル-1-ペンテン系重合体(A1)に含まれうる炭素原子数2~20のオレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン、1-エイコセンなどが好適な例として挙げられる。これらの炭素原子数2~20のオレフィンは、単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。適度な弾性率と柔軟性、可とう性を付与するという観点から、炭素原子数8以上18以下のオレフィン(たとえば1-オクテン、1-デセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン及び1-オクタデセン)が好ましく、1-デセン、1-ヘキサデセン、及び1-オクタデセンがより好ましい。
なお、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A1)は、本発明の目的を損なわない範囲で、4-メチル-1-ペンテンと炭素原子数2~20のオレフィン(4-メチル-1-ペンテンを除く)以外の重合性化合物(以下、重合性化合物ともいう)に由来する構造単位を含んでいてもよい。
このような前記重合性化合物としては、例えばスチレン、ビニルシクロペンテン、ビニルシクロヘキサン、ビニルノルボルナン等の環状構造を有するビニル化合物;酢酸ビニル等のビニルエステル類;無水マレイン酸等の不飽和有機酸またはその誘導体;ブタジエン、イソプレン、ペンタジエン、2,3-ジメチルブタジエン等の共役ジエン類;1,4-ヘキサジエン、1,6-オクタジエン、2-メチル-1,5-ヘキサジエン、6-メチル-1,5-ヘプタジエン、7-メチル-1,6-オクタジエン、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、ジシクロオクタジエン、メチレンノルボルネン、5-ビニルノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-メチレン-2-ノルボルネン、5-イソプロピリデン-2-ノルボルネン、6-クロロメチル-5-イソプロペンル-2-ノルボルネン、2,3-ジイソプロピリデン-5-ノルボルネン、2-エチリデン-3-イソプロピリデン-5-ノルボルネン、2-プロペニル-2,2-ノルボルナジエン等の非共役ポリエン類などが挙げられる。
本発明における4-メチル-1-ペンテン系重合体(A1)は、前記重合性化合物から導かれる単位を、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A1)に含まれる全ての重合性化合物構造単位に対して、10モル%以下、好ましくは5モル%以下、さらに好ましくは3モル%以下の量で含有していてもよい。
<要件(A1-II)>
本発明における4-メチル-1-ペンテン系重合体(A1)は、DSCで測定した融点(Tm)が、200~250℃、好ましくは200℃~245℃、より好ましくは200℃~240℃の範囲にある。上記、融点(Tm)の値は、重合体の立体規則性ならびに共に重合するα-オレフィン量に依存して変化する値であり、後述するオレフィン重合用触媒を用いて所望の組成に制御調整することが可能である。
融点(Tm)の値が上記範囲にある4-メチル-1-ペンテン系重合体(A1)を含む重合体組成物は耐熱性の観点から好ましい。
<要件(A1-III)>
本発明における4-メチル-1-ペンテン系重合体(A1)は、135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]が、0.5~5.0dL/gである。
ここで、前記極限粘度[η]は、1.0~4.0dL/gの範囲であることがより好ましく、1.2~3.5dL/gの範囲であることがさらに好ましい。
上記極限粘度[η]の値は、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A1)を製造する際の、重合時の水素の添加量により調整することが可能である。
極限粘度[η]の値が上記範囲にある4-メチル-1-ペンテン系重合体(A1)は、樹脂組成物製造時や各種成形時において良好な流動性を示し、延伸性に優れ、また4-メチル-1-ペンテン共重合体(A2)への分散性が良好となり、得られる多層二軸延伸フィルムの外観において好ましい。
<4-メチル-1-ペンテン系重合体(A1)の製造方法>
4-メチル-1-ペンテン系重合体(A1)は、オレフィン類を重合して製造してもよく、高分子量の4-メチル-1-ペンテン系重合体を、熱分解して製造してもよい。また、溶媒に対する溶解度の差で分別する溶媒分別、あるいは沸点の差で分取する分子蒸留などの方法で精製されていてもよい。
重合反応により製造する場合、例えば4-メチル-1-ペンテンおよび必要に応じて共重合させるα-オレフィンの仕込量、重合触媒の種類、重合温度、重合時の水素添加量等を調整することで、得られる4-メチル-1-ペンテン系重合体(A1)の融点、立体規則性および分子量等を制御する。重合反応により製造する方法は、公知の方法であってもよい。例えば、チーグラナッタ触媒、メタロセン系触媒等の公知の触媒を用い、気相法、溶液法、スラリー法等の方法により製造され得る。
重合体(A1)は、前述のように製造したもの以外にも、例えば三井化学株式会社製TPX等、市販の重合体であってもよい。
〔4-メチル-1-ペンテン共重合体(A2)〕
4-メチル-1-ペンテン共重合体(A2)は、以下の要件(A2-I)~(A2-III)を満たす。
<要件(A2-I)>
4-メチル-1-ペンテン共重合体(A2)は、4-メチル-1-ペンテンに由来する構成単位(P2)(以下、本明細書において、単に「構成単位(P2)」と呼ばれる場合もある。)を65モル%以上96モル%未満の割合で、及び4-メチル-1-ペンテン以外の炭素原子数2以上20以下のα-オレフィンに由来する構成単位(Q2)(以下、本明細書において、単に「構成単位(Q2)」と呼ばれる場合もある。)を、4モル%を超え35モル%以下の割合で有する。
言い換えると、4-メチル-1-ペンテン系共重合体(A2)における前記構成単位(P2)の含有率(以下、「XP2」と呼ばれる場合がある。)は65モル%以上96モル%未満であり、前記構成単位(Q2)の含有率(以下、「XQ2」と呼ばれる場合がある。)は4モル%を超え35モル%以下である。
前記構成単位(P2)の含有率は、65モル%以上96モル%未満であり、好ましくは68モル%以上92モル%未満であり、より好ましくは68モル%以上90モル%未満であり、特に好ましくは80モル%以上88モル%未満である。
前記構成単位(P2)の含有率が65モル%以上であることにより、耐熱性に優れ、また、重合体(A1)との相溶性に優れ、得られるフィルムのグロスに優れる。
構成単位(Q2)の含有率(構成単位(Q2)が2種以上である場合は当該2種以上の合計の含有率)は、4モル%を超え35モル%以下であり、好ましくは8モル%を超え32モル%以下であり、より好ましくは10モル%を超え30モル%以下であり、特に好ましくは12モル%を超え20モル%以下である。
4-メチル-1-ペンテン共重合体(A2) における構成単位(Q2)の含有率が4モル%を超えることにより、得られる積層フィルムの層間強度に優れデラミし難くなる。
構成単位(Q2)を形成する、4-メチル-1-ペンテン以外の炭素原子数2以上20以下のα-オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセンが好ましく、炭素原子数2~4のα-オレフィン、すなわちエチレン、プロピレン、1-ブテンが更に好ましく、プロピレンが特に好ましい。言い換えると、構成単位(Q2)は、炭素原子数2~4のα-オレフィンに由来する構成単位であることが好ましく、プロピレンに由来する構成単位であることが特に好ましい。
また、構成単位(Q2)は、前記重合体(A1)が構成単位(Q1)を含む場合、構成単位(Q1)と同じであってもよく、異なっていてもよい。
4-メチル-1-ペンテン共重合体(A2)は、本発明の効果を損なわない範囲で、4-メチル-1-ペンテンに由来する構成単位(P2)及び4-メチル-1-ペンテン以外の炭素原子数2以上20以下のα-オレフィンに由来する構成単位(Q2)以外のその他の構成単位を含んでいてもよい。その他の構成単位の含有率は、たとえば0~10モル%である。
上記その他の構成単位を形成するモノマーとしては、環状オレフィン、芳香族ビニル化合物、共役ジエン、非共役ポリエン、官能ビニル化合物、水酸基含有オレフィン、ハロゲン化オレフィン等が含まれる。
環状オレフィン、芳香族ビニル化合物、共役ジエン、非共役ポリエン、官能ビニル化合物、水酸基含有オレフィン、及びハロゲン化オレフィンとしては、例えば、特開2013-169685号公報の段落0034~0041に記載の化合物を用いることができる。
上記その他の構成単位を形成するモノマーとしては、ビニルシクロヘキサン、スチレンが特に好ましい。
4-メチル-1-ペンテン共重合体(A2)に、上記その他の構成単位が含まれる場合、上記その他の構成単位は、1種のみ含まれていてもよく、また、2種以上含まれていてもよい。
4-メチル-1-ペンテン共重合体(A2)における各構成単位の含有率(モル%)の値は、13C-NMRによる測定法により測定され、具体的な測定方法については実施例の項に記載の通りである。
<要件(A2-II)>
4-メチル-1-ペンテン共重合体(A2)の融点(Tm)は、観察されないか、又は100℃~199℃の範囲にあり、より好ましくは観察されないか、又は110℃~180℃の範囲にあり、さらに好ましくは110℃~160℃の範囲にあり、特に好ましくは125℃~150℃の範囲にある。すなわち、4-メチル-1-ペンテン共重合体(A2)と前記4-メチル-1-ペンテン系重合体(A1)との違いは、融点(Tm)にある。
4-メチル-1-ペンテン共重合体(A2)の融点(Tm)は、前記重合体(A1)の融点(Tm)と同様の方法により測定される値である。
<要件(A2-III)>
4-メチル-1-ペンテン共重合体(A2)の、デカリン溶媒中、135℃で測定される極限粘度[η]は、0.5~5.0dl/gであり、好ましくは0.5dl/g~3.5dl/gであり、より好ましくは1.0dl/g~3.5dl/gである。4-メチル-1-ペンテン共重合体(A2)の極限粘度[η]が上記範囲内であると、成形性の点で好ましい。
4-メチル-1-ペンテン共重合体(A2)の極限粘度[η]は、前記重合体(A1)の極限粘度[η]と同様の方法で測定される値である。
4-メチル-1-ペンテン共重合体(A2)は上記要件(A2-I)~(A2-III)に加えて、好ましくは下記要件のうち一つ以上を満たす。
<要件(A2-IV)>
4-メチル-1-ペンテン共重合体(A2)の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは1.0~3.5であり、より好ましくは1.1~3.0である。
4-メチル-1-ペンテン共重合体(A2)の重量平均分子量(Mw)は、組成物からなる層の成形性の観点から、好ましくは1×104~2×106であり、より好ましくは1×104~1×106である。
なお、4-メチル-1-ペンテン共重合体(A2)の重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)は、実施例記載の方法により算出される値である。
<要件(A2-V)>
4-メチル-1-ペンテン共重合体(A2)の、JIS K7210に準拠して230℃で2.16kgの荷重にて測定されるメルトフローレート(MFR)は、組成物の成形時の流動性の観点から、好ましくは0.1g/10分~100g/10分であり、より好ましくは0.5g/10分~50g/10分であり、さらに好ましくは0.5g/10分~30g/10分である。
<4-メチル-1-ペンテン共重合体(A2)の製造方法>
4-メチル-1-ペンテン共重合体(A2)は、従来知られているメタロセン触媒系により、例えば、国際公開第2005/121192号、国際公開第2011/055803号、国際公開第2014/050817号等に記載された方法により合成することができる。
〔A層の構成〕
上述したとおり、本発明の多層二軸延伸フィルムのA層を構成する樹脂組成物は、前記4-メチル-1-ペンテン系重合体(A1)と前記4-メチル-1-ペンテン共重合体(A2)とを特定の割合で含有する。
本発明においては、A層が前記4-メチル-1-ペンテン系重合体(A1)に加えて、特定量の前記4-メチル-1-ペンテン共重合体(A2)を含むことにより、多層二軸延伸フィルムとしたときに、柔軟で延伸性が良好となり、かつ耐熱性にも優れる。また、A層をこのような構成とすることにより、耐熱性が付与されることから、得られる多層二軸延伸フィルムをヒートシールに供したときのシール外観にも優れる。例えば、本発明の多層二軸延伸フィルムは、A層における前記4-メチル-1-ペンテン共重合体(A2)の量が一定以下であることにより、ヒートシールに供したときの収縮が少ない傾向にある。また、本発明の多層二軸延伸フィルムは、A層に代えて、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A1)とポリプロピレンとからなる層を用いてなる多層二軸延伸フィルムと比べて、ヒートシールに供したときの収縮が少なく、透明性も高い傾向にある。
<その他の成分>
A層を構成する樹脂組成物は、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A1)と4-メチル-1-ペンテン共重合体(A2)とのみからなるものであっても良い。ただ、前記樹脂組成物は、前記4-メチル-1-ペンテン系重合体(A1)にも前記4-メチル-1-ペンテン共重合体(A2)にも該当しないその他の成分(以下、「その他の成分」)をさらに含有していても良い。そのような「その他の成分」として、次述する「その他の樹脂」および後述する「添加剤」が挙げられる。
その他の樹脂
本発明の多層二軸延伸フィルムのA層を構成する樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲内において、上述の4-メチル-1-ペンテン系重合体(A1)にも4-メチル-1-ペンテン共重合体(A2)にも該当しない樹脂(以下、「A層」の項において「その他の樹脂」)を含有していてもよい。その他の樹脂としては例えば、ポリエチレン、ポリ1-ブテン、スチレン系樹脂、エチレン・α-オレフィン共重合体等のポリオレフィン系重合体を添加することも可能である。
A層を構成する樹脂組成物が「その他の樹脂」を含有する場合、当該「その他の樹脂」の量は、前記樹脂組成物100質量部に対して、0.01~5.0質量部であることが好ましい。
ここで、本発明においては、下記式Aで求められる換算含有率Yの値が、3.0モル%~11.0モル%であることが好ましく、3.5モル%~10.5モル%であることがより好ましく、4.0モル%~10.0モル%であることがさらに好ましく、4.5モル%~9.5モル%であることが特に好ましい:
Y=(XQ1×W1+XQ2×W2)/(W1+W2+WO)・・・式A
前記式A中、
1は、前記A層を構成する前記樹脂組成物における、前記4-メチル-1-ペンテン系重合体(A1)の含有質量;
2は、前記A層を構成する前記樹脂組成物における、前記4-メチル-1-ペンテン系共重合体(A2)の含有質量;
Oは、前記A層を構成する前記樹脂組成物における、前記4-メチル-1-ペンテン系重合体(A1)にも前記4-メチル-1-ペンテン共重合体(A2)にも該当しない樹脂の合計の含有質量;
Q1は、前記4-メチル-1-ペンテン系重合体(A1)における前記構成単位(Q1)の含有率(モル%);および、
Q2は、前記4-メチル-1-ペンテン系共重合体(A2)における前記構成単位(Q2)の含有率(モル%)である。
前記換算含有率Yの値が、前記数値範囲内にあると、延伸性とヒートシール後の外観に優れる。なお、本明細書において、前記換算コモノマー含有率Yは、「コモノマー含量(A1)+(A2)」とも呼ばれる場合がある。
ここで、前記A層を構成する前記樹脂組成物が樹脂成分のみからなる場合、当該樹脂組成物における、前記4-メチル-1-ペンテン系重合体(A1)の含有率(質量%)、および、前記4-メチル-1-ペンテン共重合体(A2)の含有率(質量%)を、それぞれ、C1、C2とすると、
1=W1/(W1+W2+WO)×100
2=W2/(W1+W2+WO)×100
であることから、前記式Aは、下記式B
Y=(XQ1×C1+XQ2×C2)/100・・・式B
として表すこともできる。
なお、A層を構成する樹脂組成物が「その他の樹脂」を含まない場合、前記WOは0となり、上記式Aは、
Y=(XQ1×W1+XQ2×W2)/(W1+W2)・・・式A'
として表されることになる。
添加剤
本発明の多層二軸延伸フィルムのA層を構成する樹脂組成物は、前記「その他の樹脂」に加えて、あるいは、前記「その他の樹脂」に代えて、更に、本発明の目的を損なわない範囲内において、各種添加剤を含有していても良い。
このような各種添加剤として、例えば、耐候安定剤、耐熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、スリップ防止剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、核剤、滑剤、顔料、染料、老化防止剤、塩酸吸収剤、無機又は有機の充填剤、有機系又は無機系の発泡剤、架橋剤、架橋助剤、粘着剤、軟化剤、難燃剤等が挙げられる。
前記酸化防止剤としては、公知の酸化防止剤が使用可能である。具体的には、ヒンダードフェノール化合物、イオウ系酸化防止剤、ラクトーン系酸化防止剤、有機ホスファイト化合物、有機ホスフォナイト化合物、あるいはこれらを数種類組み合わせたものが使用できる。
前記滑剤としては、例えばラウリル酸、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸などの飽和または不飽和脂肪酸およびそのナトリウム、カルシウム、マグネシウム塩などがあげられ、これらは単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。またかかる滑剤の配合量は、該樹脂組成物100質量部に対して通常0.1~3質量部が好ましく、0.1~2質量部がさらに好ましい。
本発明におけるA層を構成する樹脂組成物には、その成形性をさらに改善させる、すなわち結晶化温度を高め結晶化速度を速めるために、特定の任意成分である核剤が配合されていてもよい。この場合、例えば核剤はジベンジリデンソルビトール系核剤、リン酸エステル塩系核剤、ロジン系核剤、安息香酸金属塩系核剤、フッ素化ポリエチレン、2,2-メチレンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)リン酸ナトリウム、ピメリン酸やその塩、2,6-ナフタレン酸ジカルボン酸ジシクロヘキシルアミド等であり、配合量は特に制限されないが、該樹脂組成物100質量部に対して0.1~1質量部程度があることが好ましい。配合タイミングに特に制限は無く、重合中、重合後、あるいは成形加工時での添加が可能である。
上記に例示した各種添加剤のうちのその他の成分については、本発明の属する分野において一般的に用いられるものであっても良く、それらの配合量についても、適宜設定して良い。
該樹脂組成物には、上記に例示した各種添加剤に加えて、本発明の目的を損なわない範囲で、さらに必要に応じて、二次抗酸化剤、天然油、合成油、ワックスなどその他の添加剤などを配合することができる。当該その他の添加剤の配合量は特に制限されないが、該樹脂組成物100質量部に対して、通常0~50質量部であり、0~30質量部が好ましく、0~10質量部がさらに好ましく、0~1質量部が特に好ましい。
本発明に係るA層が、前記「その他の成分」を含んでなるときは、A層の全質量から当該「その他の成分」を差し引いた質量を100質量%として、前記成分(A1)含有量定義(5~95質量%)と成分(A2)含有量量(5~95質量%)定義が適用される。
≪B層≫
本発明の多層二軸延伸フィルムにおけるB層は、本発明の多層二軸延伸フィルムに優れた機械特性、例えば、優れたシール性、を付与するために設けられる層である。
本発明の典型的かつ好適な態様において、B層は、ポリプロピレン(B)を含む。ここで、B層が、ポリプロピレン(B)を含む場合、B層は、単一の層からなるものであっても良く、あるいは、2以上の層からなるものであっても良い。B層が2以上の層からなる場合、当該2以上の層は、同一の構成を有していても良く、あるいは、互いに異なっていても良い。
〔ポリプロピレン(B)〕
本発明におけるポリプロピレン(B)はプロピレンを主体とする公知の重合体であり、そのような例としては、プロピレン単独重合体、プロピレンとプロピレン以外のα-オレフィンとのプロピレン・α-オレフィン共重合体(プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・1-ブテン共重合体、プロピレン・エチレン・1-ブテン共重合体などのプロピレンランダム共重合体、プロピレンブロック共重合体又はこれらの混合物)等を挙げることができる。なお、本明細書において、重合体について、ある構成モノマーをXとしたときに「Xを主体とする」というときは、その重合体が、全構成単位の中で、Xに由来する構成単位を最も多く含有することを意味し、例えば、「プロピレンを主体とする重合体」とは、全構成単位の中で、プロピレンに由来する構成単位(すなわち、-CH2-CH(-CH3)-で表される構成単位)を最も多く含有する重合体をいう。ポリプロピレンとしてはアイソタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレンが好適に用いられ、立体規則性を示すアイソタクチックメソペンダッド分率(mmmm)またはシンジオタクチックメソペンダッド分率(rrrr)が90%以上であることが好ましく、92%以上であることがより好ましく、93%以上であることがさらに好ましい。立体規則性が高いと、樹脂の結晶性が向上し、高い熱安定性、機械特性を付与することができる。
プロピレン・α-オレフィン共重合体におけるα-オレフィンの共重合比率としては、5質量%以下であることが好ましい。また、プロピレン・α-オレフィン共重合体は、ランダム共重合体であってもブロック共重合体であってもよく、核剤(結晶化核剤)を含んでいても良い。核剤としては、特に限定されず、各種無機化合物、各種カルボン酸又はその金属塩、ジベンジリデンソルビトール系化合物、アリールフォスフェート系化合物、環状多価金属アリールフォスフェート系化合物と脂肪族モノカルボン酸アルカリ金属塩又は塩基性アルミニウム・リチウム・ヒドロキシ・カーボネート・ハイドレートとの混合物、各種高分子化合物等のα晶核剤等が挙げられる。これらの結晶化核剤は単独の材料でも使用でき、また二種以上の材料を併用することもできる。
上記ポリプロピレン(B)のMFRは、JIS K7210に準じて測定できる。具体的には、温度230℃、荷重2.16kg荷重の測定条件で、0.5~25g/10分であることが好ましく、1~15g/10分であることがより好ましく、2~10g/10分であることがさらに好ましい。ポリプロピレン(B)のMFRが前記範囲にあると、押出成形に好適である。
ポリプロピレン(B)に含まれる重合触媒残渣等に起因する灰分は、微小異物(フィッシュアイ)を低減するため、可能な限り少ないことが好ましく、50ppm以下であることが好ましい。さらに好ましくは、40ppm以下である。50ppm以下とすることにより、微小異物・欠点が顕著に低減され、電子部品用途に用いた際の汚染を低減できる。
B層が2以上の層からなる場合、当該2以上の層は、第1の層(以下、「B1層」ともいう。)と、前記A層から見て前記第1の層とは反対側にある第2の層(以下、「B2層」ともいう。)とを含んでいても良い。ここで、前記第1の層(B1層)を構成するポリプロピレン(B)(以下、「ポリプロピレン(B1)」)と、前記第2の層(B2層)を構成するポリプロピレン(B)(以下、「ポリプロピレン(B2)」)とは、同一であっても良く、あるいは、互いに異なっていても良い。
前記ポリプロピレン(B1)と前記ポリプロピレン(B2)とが互いに異なる場合、前記ポリプロピレン(B1)の融点は、前記ポリプロピレン(B2)の融点以上であることが好ましい。本発明の1つの態様において、前記ポリプロピレン(B1)の融点は、前記ポリプロピレン(B2)の融点と同じである。ただ、本発明の多層二軸延伸フィルムの用途によっては、前記ポリプロピレン(B1)の融点が、前記ポリプロピレン(B2)の融点よりも高いことがより好ましい場合もある。本発明の例示的な態様において、前記ポリプロピレン(B1)は、プロピレン単独重合体であり、前記ポリプロピレン(B2)は、前記プロピレンランダム共重合体である。ただし、前記ポリプロピレン(B1)は、前記ポリプロピレン(B2)の融点以上の融点を有する限りにおいて、プロピレン単独重合体に限定されるものでなく、プロピレンの共重合体であっても良い。
B層がポリプロピレン(B)を含む場合、B層は、ポリプロピレン(B)のみからなる層であっても良く、あるいは、ポリプロピレン(B)を含む樹脂組成物からなる層であっても良い。ここで、B層を形成する樹脂組成物には、前記「A層」の項において前記「添加剤」に列挙したものと同様の各種添加剤、例えば、耐熱安定剤、酸化防止剤、滑剤、塩素捕獲剤、帯電防止剤等が添加されていてもよい。B層が2以上の層からなる場合、当該2以上の層に含まれうる添加剤およびその配合は、同一であっても良く、あるいは、互いに異なっていても良い。
≪多層二軸延伸フィルム≫
本発明の多層二軸延伸フィルムは、上記A層と上記B層とを含み、その典型的な態様において、A層/B層からなる層構成を含んでいる。本発明の多層二軸延伸フィルムは、A層/B層からなる層構成のみを有していても良く、あるいは、A層及びB層のいずれとも異なるC層をさらに含んでいても良い。
ここで、前記B層は、単一の層からなるものであっても良く、あるいは、2以上の層からなるものであっても良い。
本発明の1つの好適な態様において、前記B層は単一の層(以下、「B0層」)からなる。この態様において、前記B0層は、シール層として機能する。この場合、本発明の多層二軸延伸フィルムは、A層/B0層からなる二層構成を含むことになる。
本発明のもう1つの好適な態様において、B層は2以上の層からなり、例えば、前記2以上の層は、上記「B層」の項で上述したように、前記B1層と、前記A層から見て前記B1層とは反対側にある前記B2層とを含んでいてもよい。つまり、本発明の多層二軸延伸フィルムは、A層/B1層/B2層の順に積層されてなる三層構成を有していても良いことになる。
この態様のうちの第1の態様において、B層を構成する前記2以上の層は、互いに同一の構成を有している。この第1の態様において、B層を構成する前記2以上の層は、シール層として機能する。なお、この第1の態様において、前記2以上の層は、全体として単一のB層を構成すると見なすことができ、例えば、前記B1層と前記B2層は、全体として前記B0層を構成すると見なしても良い。
また、第2の態様において、B層を構成する前記2以上の層は、互いに異なっている。例えば、前記B1層と前記B2層とは、前記ポリプロピレン(B)以外の成分の有無および種類によって、異なっていても良く、あるいは、前記ポリプロピレン(B)の種類によって異なっていても良い。本発明の好適な態様の1つにおいて、前記B1層を構成するポリプロピレン(B)(すなわち、前記ポリプロピレン(B1))の融点は、前記B2層を構成するポリプロピレン(B)(すなわち、前記ポリプロピレン(B2))の融点以上である。この態様において、前記B2層はシール層として機能する。なお、前記B1層が、互いに同一の構成を有する2以上の層からなる場合もありうるが、この場合も、前記B1層を構成しうる2以上の層は、全体として1つの前記B1層を構成すると見なしても良い。
また、本発明の多層二軸延伸フィルムがA層及びB層のいずれとも異なるC層をさらに含む場合、当該C層は、前記4-メチル-1-ペンテン系重合体(A1)にも、前記4-メチル-1-ペンテン共重合体(A2)にも、前記ポリプロピレン(B)にも該当しない成分であってシール層として適切に機能しうる成分、例えば、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、中密度ポリエチレン樹脂(MDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-α-オレフィン共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体などのエチレン系樹脂や、ポリエチレンとポリブテンのブレンド樹脂等からなるものとすることができる。この場合、本発明の多層二軸延伸フィルムは、通常、A層/B層/C層の順に積層されてなる三層構成を有することになる。
このような多層フィルムを得る方法については特に制限は無いが、通常、まず、A層とB層と、必要に応じてその他の層とが積層されてなる原反フィルム(原反シートともいう)を成形し、次に、その原反フィルムを二軸延伸することによって得られる。原反フィルムの成形方法は例えば、あらかじめT-ダイ成形またはインフレーション成形にて得られた表面層フィルム上に、押出ラミネーション、押出コーティング等の公知の積層法により積層する方法や、複数のフィルムを独立して成形した後、各々のフィルムをドライラミネーションにより積層する方法等が挙げられるが、生産性の点から、複数の成分を多層の押出機に供して成形する共押出成形が好ましい。
本発明に係る延伸前のフィルム、すなわち原反フィルムの厚みは特に限定されないが、通常100μm~1000μmであり、150~800μmが好ましく、更に好ましくは、200~500μmである。
前記原反フィルムにおけるA層1層の厚みは、B層の厚みに対し、0.1~250%であることが好ましく、より好ましくは0.5~100%である。本発明の多層二軸延伸フィルムが2つ以上のA層を含有する場合、各A層の厚みは同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。
本発明の多層二軸延伸フィルムの総厚みは、3~60μmであることが好ましく、より好ましくは10~50μm、さらに好ましくは10~30μmである。フィルムの総厚みが3~60μmであることにより、透明性、機械特性及び延伸性に優れたフィルムを得ることができる。
本発明の多層二軸延伸フィルムにおけるA層1層の厚みは、B層の厚みに対し、0.1~250%であることが好ましく、より好ましくは0.5~100%である。本発明の多層二軸延伸フィルムが2つ以上のA層を含有する場合、各A層の厚みは同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。
≪多層二軸延伸フィルムの製造方法≫
各成分を混合して、A層用またはB層用の樹脂組成物ペレットを調製する方法については、種々公知の方法、例えば、多段重合法、プラストミル、ヘンシェルミキサー、V-ブレンダー、リボンブレンダー、タンブラー、ブレンダー、ニーダールーダー等で混合する方法、あるいは混合後、一軸押出機、二軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサー等で、例えば180~300℃下で溶融混練後、造粒あるいは粉砕する方法を採用することができる。該方法により、各成分および添加剤が均一に分散混合された高品質の樹脂組成物ペレットを得ることができる。
本発明の多層二軸延伸フィルム用の原反シートは、上述した樹脂組成物ペレットを、シリンダー温度を通常180~300℃の範囲で溶融押出して得ることができる。
前記原反シートから多層二軸延伸フィルムを製造するには、バッチ式の二軸延伸でも、キャスト成形直後に逐次二軸延伸を施すこと、あるいは、同時二軸延伸することもできる。逐次二軸延伸ではキャスト原反シートを100~165℃に保ち、速度差を設けたロール間に通して流れ方向に2~5倍に延伸し、直ちに室温に冷却する。次いで、当該フィルムをテンターに導き、150℃以上の温度で幅方向に5~10倍に延伸した後、緩和、熱固定を施し巻き取ることにより得られる。
本発明の多層二軸延伸フィルムは、A層に、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A1)と、4-メチル-1-ペンテン共重合体(A2)とが、親和性高く存在していることから、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A1)や4-メチル-1-ペンテン共重合体(A2)が脱落していくことが少なく、長期間にわたり耐ブロッキング性に優れている。
≪用途≫
本発明の多層二軸延伸フィルムの具体的な用途としては、例えば下記のような一般的なフィルム用途を挙げることができる。
包装用フィルム;例えば、食品包装用フィルム、ストレッチフィルム、ラップフィルム、シュリンクフィルム、イージーピールフィルム、アルミ蒸着フィルム、PVDCコートフィルム、などが挙げられる。
通気性フィルム;例えば、紙おむつ、生理用品、手術衣、手術用手袋、サージカルダウン、ハウスラップ(透湿防水シート)、使い捨てカイロ、家庭用除湿剤、乾燥剤、脱酸素剤、鮮度保持剤、堆肥化シート、簡易ジャンバー、などとして用いられるフィルムが挙げられる。
防錆フィルム;例えば、自動車部品、ノックダウン用部品、機械・機械部品、鉄・クロム製品、鋼管、線材、ボルトナット、ベアリング、金型、工具、刃物、切削工具、建築用具などの輸送梱包、保管梱包、輸出梱包、などとして用いられるフィルムが挙げられる。
防曇フィルム;例えば、青果物用フィルム、加工食品用フィルム、などが挙げられる。
方向性フィルム;菓子類のひねり包装、農業資材、ラミネート基材、コイン包装、電線束ね材、果菜類包装、段ボールカットテープ、洗剤詰め替え容器、おにぎり包装、ピロー包装、スティック包装、ボイル・レトルト包装、水物食品包装、輸液バッグ、などとして用いられるフィルムが挙げられる。
セルフクリーニングフィルム;例えば、道路標識、一般標識、看板、窓ガラス、道路資材、サイドミラーなどとして用いられるフィルムが挙げられる。
セパレーター;例えば、バッテリーセパレーター、リチウムイオン電池用セパレーター、燃料電池用電解質膜、粘着・接着材セパレーター、などが挙げられる。
延伸フィルム;例えば、フィルムコンデンサ用フィルム、キャパシターフィルム、燃料電池用キャパシターフィルム、などが挙げられる。
半導体工程フィルム;例えば、ダイシングテープ・バックグラインドテープ・ダイボンディングフィルム、偏光板用フィルム、表面保護フィルム;例えば、偏光板用保護フィルム、液晶パネル用保護フィルム、光学部品用保護フィルム、レンズ用保護フィルム、電気部品・電化製品用保護フィルム、携帯電話用保護フィルム、パソコン用保護フィルム、マスキングフィルム、タッチパネル用保護フィルム、などが挙げられる。
電子部材用フィルム;例えば、拡散フィルム、反射フィルム、耐放射線フィルム、耐γ線フィルム、多孔フィルム、などが挙げられる。
建材フィルム;例えば、建材用ウインドウフィルム、合わせガラス用フィルム、防弾材、防弾ガラス用フィルム、遮熱シート、遮熱フィルム、などが挙げられる。
転写フィルム;例えば、自動車・産業用転写フィルム、包装用転写フィルム、などが挙げられる。
離型フィルム;例えば、フレキシブルプリント基板用離型フィルム(FPC)、ACM基板用離型フィルム、リジットフレキシブル基板用離型フィルム、先端複合材料用離型フィルム、炭素繊維複合材硬化用離型フィルム、ガラス繊維複合材硬化用離型フィルム、アラミド繊維複合材硬化用離型フィルム、ナノ複合材硬化用離型フィルム、フィラー充填材硬化用離型フィルム、半導体封止用離型フィルム、偏光板用離型フィルム、拡散シート用離型フィルム、プリズムシート用離型フィルム、反射シート用離型フィルム、離型フィルム用クッションフィルム、燃料電池用離型フィルム、各種ゴムシート用離型フィルム、ウレタン硬化用離型フィルム、エポキシ硬化用離型フィルム(金属バットやゴルフクラブなどの製造工程部材など)、などが挙げられる。
本発明の特に好適な態様において、本発明の多層二軸延伸フィルムは、包装用フィルムである。本発明の多層二軸延伸フィルムを包装用フィルムとして用いる場合、ヒートシール時におけるシート外観に優れる。
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、実施例において各物性は以下のように測定した。
〔組成〕
重合体中の4-メチル-1-ペンテン及びα-オレフィンの含有率(モル%)は、13C-NMRにより測定した。測定条件は、下記のとおりである。
・測定装置:核磁気共鳴装置(ECP500型、日本電子(株)製)
・観測核:13C(125MHz)
・シーケンス:シングルパルスプロトンデカップリング
・パルス幅:4.7μ秒(45°パルス)
・繰り返し時間:5.5秒
・積算回数:1万回以上
・溶媒:オルトジクロロベンゼン/重水素化ベンゼン(容量比:80/20)混合溶媒
・試料濃度:55mg/0.6mL
・測定温度:120℃
・ケミカルシフトの基準値:27.50ppm
〔極限粘度[η]〕
重合体の極限粘度[η]は、測定装置としてウベローデ粘度計を用い、デカリン溶媒中、135℃で測定した。具体的には、約20mgの粉末状の重合体をデカリン25mlに溶解させた後、ウベローデ粘度計を用い、135℃のオイルバス中で比粘度ηspを測定した。このデカリン溶液にデカリンを5ml加えて希釈した後、上記と同様にして比粘度ηspを測定した。この希釈操作を更に2回繰り返し、濃度(C)を0に外挿した時のηsp/Cの値を極限粘度[η](単位:dl/g)として求めた(下記の式1参照)。
[η]=lim(ηsp/C) (C→0)・・・式1
〔メルトフローレート(MFR)〕
重合体のメルトフローレート(MFR:Melt Flow Rate)は、JIS K7210に準拠し、下記調製例1で得られた重合体A1-1および、下記調製例2で得られた重合体A1-2については260℃、5.0kgの荷重条件にて、下記調製例3で得られた共重合体A2-1およびポリプロピレンについては230℃で2.16kgの荷重にてそれぞれ測定した。単位は、g/10min)である。
〔数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)〕
数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)は、Waters社製ゲル浸透クロマトグラフAlliance GPC-2000型を用い、以下のようにして測定した。分離カラムは、TSKgel GNH6-HTを2本およびTSKgel GNH6-HTLを2本であり、カラムサイズはいずれも直径7.5mm、長さ300mmであり、カラム温度は140℃とし、移動相にはo-ジクロロベンゼン(和光純薬工業)および酸化防止剤としてBHT(武田薬品)0.025重量%を用い、1.0ml/分で移動させ、試料濃度は15mg/10mLとし、試料注入量は500マイクロリットルとし、検出器として示差屈折計を用いた。標準ポリスチレンは、分子量がMw<1000およびMw>4×106については東ソー社製を用い、1000≦Mw≦4×106についてはプレッシャーケミカル社製を用いた。
〔密度〕
重合体の密度は、JIS K7112(密度勾配管法)に準拠して、測定した。この密度(kg/m3)を軽量性の指標とした。
〔融点(Tm)〕
重合体の融点(Tm)は、測定装置として示差走査熱量計(DSC220C型、セイコーインスツル(株)製)を用いて測定した。
約5mgの重合体を測定用アルミニウムパン中に密封し、室温から10℃/minで280℃まで加熱した。重合体を完全融解させるために、280℃で5分間保持し、次いで、10℃/minで-50℃まで冷却した。-50℃で5分間置いた後、10℃/minで280℃まで2度目の加熱を行なった。この2度目の加熱でのピーク温度(℃)を重合体の融点(Tm)とした。
[調製例1および2] 4-メチル-1-ペンテン系重合体A1-1およびA1-2の製造
調製例1および2として、重合体(A1)に該当する2種類の重合体を調製した。
国際公開第2006/054613号の比較例7や比較例9に記載の重合方法に準じて、4-メチル-1-ペンテン、1-デセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、水素の割合を変更することによって、重合体(A1)として、表1に示す物性を有する4-メチル-1-ペンテン重合体A1-1およびA1-2(以下、それぞれ「重合体A1-1」および「重合体A1-2」)をそれぞれ得た。
すなわち、重合体A1-1は、重合用触媒として、無水塩化マグネシウム、2-エチルヘキシルアルコ-ル、2-イソブチル-2-イソプロピル-1,3-ジメトキシプロパン(BPMP)および四塩化チタンを反応させることにより得られる固体状チタン触媒成分を用い、この固体状チタン触媒成分、トリエチルアルミニウムおよび水素の存在下で、4-メチル-1-ペンテンと1-デセンとを共重合させることにより得られた重合体である。
また、重合体A1-2は、重合用触媒として、無水塩化マグネシウム、2-エチルヘキシルアルコ-ル、2-イソブチル-2-イソプロピル-1,3-ジメトキシプロパン(BPMP)および四塩化チタンを反応させることにより得られる固体状チタン触媒成分を用い、この固体状チタン触媒成分、トリエチルアルミニウムおよび水素の存在下で、4-メチル-1-ペンテンと、1-ヘキサデセンと1-オクタデセンとの等質量の混合物とを共重合させることにより得られた重合体である。
[調製例3] 4-メチル-1-ペンテン系共重合体A2-1の製造
充分に窒素置換した容量1.5Lの攪拌翼付のSUS製オートクレーブに、300mlのn-ヘキサン(乾燥窒素雰囲気下、活性アルミナ上で乾燥したもの)、及び450mlの4-メチル-1-ペンテンを23℃で装入した後、トリイソブチルアルミニウム(TIBAL)の1.0mmol/mlトルエン溶液を0.75ml装入し、攪拌機を回した。
次に、オートクレーブを内温が60℃になるまで加熱し、全圧(ゲージ圧)が0.19MPaとなるようにプロピレンで加圧した。
続いて、予め調製しておいた、Al換算で1mmolのメチルアルミノキサン、及び0.01mmolのジフェニルメチレン(1-エチル-3-t-ブチル-シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-t-ブチル-フルオレニル)ジルコニウムジクロリドを含むトルエン溶液0.34mlをオートクレーブに窒素で圧入し、重合反応を開始させた。重合反応中は、オートクレーブの内温が60℃になるように温度調整した。
重合開始から60分後、オートクレーブにメタノール5mlを窒素で圧入し、重合反応を停止させた後、オートクレーブ内を大気圧まで脱圧した。脱圧後、反応溶液に、該反応溶液を攪拌しながらアセトンを添加し、溶媒を含む重合反応生成物を得た。次いで、得られた溶媒を含む重合反応生成物を減圧下、130℃で12時間乾燥させて、共重合体(A2)として、44.0gの粉末状の4-メチル-1-ペンテン共重合体A2-1(以下、「共重合体A2-1」)を得た。各種物性の測定結果を表1に示す。
Figure 2022150852000001
〔実施例1〕
A層/B1層/B2層の順に積層されてなる3層二軸延伸フィルムを成形した。
まず、A層を形成する樹脂組成物として、重合体A1-1:85質量部と、共重合体A2-1:15質量部とからなる樹脂組成物を調製した。具体的には、重合体A1-1と共重合体A2-1とを85質量部:15質量部の割合で、二軸押出機に供給し、270℃で混練して樹脂組成物を調製した。得られた樹脂組成物は、A層の原料とした。
また、B1層およびB2層を形成する樹脂として、プライムポリプロ(登録商標)F113G(プロピレンのホモポリマー、密度:910kg/m3、MFR(230℃、2.16kg荷重):3.0g/10min、(株)プライムポリマー製)を用いた。なお、以下の記載において、このプライムポリプロ(登録商標)F113Gを「重合体B」と呼ぶ場合がある。
得られた樹脂組成物および樹脂を、リップ幅330mmのTダイを設置し、3つのホッパー投入口と30mmφスクリューを設置した3種3層式Tダイシート成形機を用いて、A層のシリンダー温度は270℃、B1層およびB2層のシリンダー温度は230℃、ダイス温度を270℃に設定し、Tダイから溶融混練物を厚み250μm(A層45μm/B1層190μm/B2層15μm)で押し出し、キャスト成形することにより、実施例1の原反フィルムを得た。なお、各層の厚みは、押出量から算出した。
次いで、ブルックナー社製バッチ式二軸延伸機KARO IVを用いて、予熱温度160℃、予熱時間30秒、延伸温度160℃、延伸速度300%/秒の延伸条件、熱セット条件162℃、60秒にて、得られた原反フィルムを流れ方向(MD)に2.89倍、幅方向(TD)に5.2倍延伸し、フィルム総厚み17μmの多層二軸延伸フィルムを得た。
得られた多層二軸延伸フィルムの評価結果を下記表2-1に示した。具体的な試験方法は以下の通りである。
<延伸後の均一性>
多層二軸延伸した後に得られる多層二軸延伸フィルムを目視で確認し、表面が滑らかで均一なフィルムである場合は○、皺がよるなど不均一な部分がある場合は×とした。
<延伸時のデラミ>
多層二軸延伸した後に得られる多層二軸延伸フィルムにおける、A層とB1層の層間およびB1層とB2層の層間での剥離を目視で確認し、デラミの有無を確認した。デラミが無い場合は○、デラミがある場合は×とした。
<ヘイズおよび全光線透過率>
多層二軸延伸した後に得られる多層二軸延伸フィルムから、長さ80mm、幅50mmの試験片を採取し、ASTM D1003に準拠して、Haze Meter(日本電色工業製、モデル:NDH-20D、光源:D65)を用いて空気中でのヘイズ値(単位%)および全透過光量を測定した。この測定は多層二軸延伸フィルムにおける任意の3点においてそれぞれ行い、これら3点のデータの平均値を測定値とした。
なお、全光線透過率は下記式にて求めた。
全光線透過率(%)=100×(全透過光量)/(入射光量)
<グロス>
多層二軸延伸した後に得られる多層二軸延伸フィルムにつき、JIS Z8741に準拠し、入射角60°、受光角60°の条件でグロスを測定した。この測定は、多層二軸延伸フィルムにおける任意の5点においてそれぞれ行い、これら5点のデータの平均値を光沢度とした。
<ヒートシール後の収縮>
多層二軸延伸した後に得られる多層二軸延伸フィルムから、長さ170mm、幅50mmの試験片を採取した。フィルムの長さ方向は、フィルム製造工程における流れ方向に対応する方向とした。ヒートシール試験機(熱傾斜ヒートシールテスター TP-701-G、テスター産業(株)製)を用いて、上部温度180℃、下部温度70℃、シール幅5mm、シール圧力0.2MPa、及びシール時間1秒の条件で、ヒートシール試験機の上部(180℃設定箇所)が多層二軸延伸フィルムのA層と接するようにセットして、ヒートシールをした。このとき、前記ヒートシーラーのシールバーの向きは、試験片の幅方向に並行とし、当該シールバーによる加熱は、当該試験片の幅全体にわたって行った。
収縮率(%)は、ヒートシール前の試験片の幅をL0、ヒートシール後の試験片の幅をL1としたときに、下記式で算出した。
収縮率=(L0-L1)/L0×100(%)
〔実施例2~13、比較例1~8〕
A層を形成する樹脂組成物を構成する重合体の種類および配合比を、下記表2-1~表2-7に記載のものに変更するとともに、各層の厚みを下記表2-1~表2-7に記載のように変更したこと以外は、実施例1と同様の方法により、多層二軸延伸フィルムを得た。得られた多層二軸延伸フィルムの評価結果を下記表2-1~表2-7に示した。
ここで、下記表2-1~表2-7において、「コモノマー含量(A1)+(A2)」の欄に記載された値は、下記式B1に従って求めた換算コモノマー含有率Y(モル%)の値を表す:
Y=(XQ1×C1+XQ2×C2)/100・・・式B1
前記式B1中、
1は、上記A層を構成する前記樹脂組成物における、重合体A1-1と重合体A1-2との合計含有率(質量%)であり、
2は、共重合体A2-1の含有率(質量%)であり、
Q1は、重合体A1-1におけるコモノマーに由来する構成単位(Q1-1)の含有率(モル%)と重合体A1-2におけるコモノマーに由来する構成単位(Q1-2)の含有率(モル%)との合計であり、
Q2は、共重合体A2-1におけるコモノマーに由来する構成単位(Q2-1)の含有率(モル%)である。
Figure 2022150852000002
Figure 2022150852000003
Figure 2022150852000004
Figure 2022150852000005
Figure 2022150852000006
Figure 2022150852000007
Figure 2022150852000008

Claims (9)

  1. A層とB層とが積層されてなる多層二軸延伸フィルムであって、
    A層が4-メチル-1-ペンテン系重合体(A1)と4-メチル-1-ペンテン共重合体(A2)とを含む樹脂組成物から構成され、
    前記A層において4-メチル-1-ペンテン系重合体(A1)の含有量が、A層の全質量に対して40質量%以上85質量%以下であり、前記4-メチル-1-ペンテン共重合体(A2)の含有量がA層の全質量に対して15質量%以上60質量%以下であり、
    かつ前記4-メチル-1-ペンテン系重合体(A1)が下記要件(A1-I)~(A1-III)を満たし、前記4-メチル-1-ペンテン共重合体(A2)が下記要件(A2-I)~(A2-III)を満たす、多層二軸延伸フィルム:
    (A1-I)4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位(P1)の含有率が90~100モル%であり、炭素原子数2~20のα-オレフィン(4-メチル-1-ペンテンを除く)から導かれる構成単位(Q1)の含有率が0モル%~10モル%である。
    (A1-II)DSCで測定した融点(Tm)が200℃~250℃の範囲にある。
    (A1-III)135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]が0.5~5.0dl/gである。
    (A2-I)4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位(P2)の含有率が65モル%以上96モル%未満であり、炭素原子数2~20のα-オレフィン(4-メチル-1-ペンテンを除く)から導かれる構成単位(Q2)の含有率が4モル%を超え35モル%以下である。
    (A2-II)DSCで測定した融点(Tm)が観察されないか100℃~199℃の範囲にある。
    (A2-III)135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]が0.5~5.0dl/gである。
  2. 下記式Aで求められる換算含有率Yの値が、3.0モル%~11.0モル%である、請求項1に記載の多層二軸延伸フィルム:
    Y=(XQ1×W1+XQ2×W2)/(W1+W2+WO)・・・式A
    前記式A中、
    1は、前記A層を構成する前記樹脂組成物における、前記4-メチル-1-ペンテン系重合体(A1)の含有質量;
    2は、前記A層を構成する前記樹脂組成物における、前記4-メチル-1-ペンテン系共重合体(A2)の含有質量;
    Oは、前記A層を構成する前記樹脂組成物における、前記4-メチル-1-ペンテン系重合体(A1)にも前記4-メチル-1-ペンテン共重合体(A2)にも該当しない樹脂の合計の含有質量;
    Q1は、前記4-メチル-1-ペンテン系重合体(A1)における前記構成単位(Q1)の含有率(モル%);および、
    Q2は、前記4-メチル-1-ペンテン系共重合体(A2)における前記構成単位(Q2)の含有率(モル%)である。
  3. 前記構成単位(Q2)が炭素原子数2~4のα-オレフィンに由来する構成単位である請求項1または2に記載の多層二軸延伸フィルム。
  4. 前記B層が、ポリプロピレン(B)を含む請求項1~3のいずれか1項に記載の多層二軸延伸フィルム。
  5. 前記B層が、2以上の層からなる請求項4に記載の多層二軸延伸フィルム。
  6. 前記2以上の層が、同一の構成を有する請求項5に記載の多層二軸延伸フィルム。
  7. 前記2以上の層が、第1の層と、前記A層から見て前記第1の層とは反対側にある第2の層とを含み、前記第1の層を構成するポリプロピレン(B)の融点が、前記第2の層を構成するポリプロピレン(B)の融点以上である請求項5に記載の多層二軸延伸フィルム。
  8. A層/B層からなる層構成を含む請求項1~7のいずれか1項に記載の多層二軸延伸フィルム。
  9. 包装用フィルムである、請求項1~8のいずれか1項に記載の多層二軸延伸フィルム。
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