JP2022146457A - 自動走行システム - Google Patents

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Abstract

【課題】衛星測位とSLAMとを適切に使い分けて、種々の環境下において、安定した自動走行を実現させる自動走行システムを提供する。【解決手段】自動走行システムは、衛星信号に基づいて測位データを算出する衛星測位モジュール31と、測位データに基づいて第1機体位置を算出する第1機体位置算出部55と、距離計測センサ32から測距信号をSLAMアルゴリズムを用いて処理して、第2機体位置を算出する第2機体位置算出部50と、自動走行制御部60とを備える。自動走行制御部60は、第1機体位置に基づく自動走行制御を行う第1モードと第2機体位置に基づく自動走行制御を行う第2モードとを有し、かつ、走行機体が測位データの算出が不可能な第2領域から測位データの算出が可能な第1領域に移動する際に、第2領域では第2モードとなり、第1領域では第1モードとなる。【選択図】図4

Description

本発明は、作業装置を装備した走行機体を自動走行させる自動走行システムに関する。
自動走行する作業機の多くは、GNSSなどの衛星測位システムを用いた機体位置算出機能を備えている。算出された機体位置と予め設定された目標走行経路とに基づいて、自動走行が行われる。しかしながら、衛星信号の受信状態が悪い場合は、機体位置の算出ができない、あるいは、算出されても不正確であるという不都合が生じる。また、衛星測位においてRTKを用いている場合、RTK基地局の通信状態が悪い場合も、同様な不都合が生じる。
衛星測位システムを用いない機体位置算出技術として、SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)が知られている。この技術では、LIDAR等の距離計測センサによって得られる周囲環境の点群データである環境地図に基づいて機体位置が算出される。しかしながら、このSLAMにおいても、周囲環境に特徴点となる特定物が少ない場合、機体位置の算出ができない、あるいは、算出されても不正確であるという不都合が生じる。
特許文献1による自動走行台車では、SLAMを用いて算出された機体位置の確率分布(第1確率分布)と、衛星測位システムを用いて算出された機体位置の確率分布(第2確率分布)とを合成して作成された合成確率分布(第3確率分布)のピーク位置を機体位置と見なし、自動走行制御が行われる。
特開2018-206004号公報
特許文献1による自動走行台車では、SLAMを用いて算出された機体位置と衛星測位システムを用いて算出された機体位置との間で信頼確率の高い方の機体位置を利用することで、いずれか一方の機体位置算出機能が不都合な状態に陥っても、他方の機体位置算出機能がリカバリすることができる。しかしながら、両方の機体位置算出機能が常に動作していなければならないので、制御系の処理負荷や消費電力の増大という問題が生じる。
上記実情に鑑み、本発明の目的は、衛星測位とSLAMとを適切に使い分けて、種々の環境下において、安定した自動走行を実現させる自動走行システムを提供することである。
作業装置を装備した走行機体を自動走行させる本発明の自動走行システムは、測位衛星からの衛星信号に基づいて測位データを算出する衛星測位モジュールと、前記測位データに基づいて第1機体位置を算出する第1機体位置算出部と、機体周囲の少なくとも一部を測距する距離計測センサと、前記距離計測センサから測距信号をSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)アルゴリズムを用いて処理して、第2機体位置を算出する第2機体位置算出部と、前記走行機体を自動走行させる自動走行制御部とを備え、前記自動走行制御部は、前記第1機体位置に基づく自動走行制御を行う第1モードと前記第2機体位置に基づく自動走行制御を行う第2モードとを有し、かつ、前記走行機体が前記測位データの算出が不可能な第2領域から前記測位データの算出が可能な第1領域に移動する際に、前記第2領域では前記第2モードとなり、前記第1領域では前記第1モードとなる。
この自動走行システムでは、測位データの算出が不可能な領域、つまり衛星測位を用いて正確な自車位置が算出できないか、あるいは全く自車位置が算出できない領域では、SLAMアルゴリズムを用いて自車位置を算出して、自動走行が行われる。測位データの算出が可能な領域では、衛星測位を用いた自動走行が行われる。衛星測位とSLAMとが適切に使い分けられるので、自動走行制御系の処理負荷や消費電力の増大が抑制される。
作業装置を装備した走行機体を備えた作業機にとって、測位データの算出が不可能となる第2領域として、工場内、倉庫内、納屋内、駐車場内、大きな樹木が茂っている家の敷地内などが挙げられる。いずれも、作業機は、ゲート部を通じて出入りすることになる。このゲート部は、出入口や門や橋などの実体のあるものに限定されるわけでなく、地図座標によって規定される領域であってもよい。ゲート部またはゲート部を形付ける輪郭物は、SLAMアルゴリズムを用いて機体位置を算出する際に必要となる特徴標識(ランドマーク、特定物)として利用することも可能である。このことから、本発明の好適な実施形態では、前記第2領域に、前記走行機体が通過するゲート部が備えられており、前記自動走行制御部は、前記第2モードにおいて、前記ゲート部を目標とする自動走行制御を行う。
ゲート部を目標とする自動走行制御において、ゲート部の通過幅が、作業機の機体幅に比べてあまり余裕がない場合、ゲート部に対して正確に接近する自動走行制御が要求される。このためには、前記自動走行制御部が、前記第2モードにおいて、前記ゲート部の幅方向の中心点を走行目標点とする自動走行制御を行うことが好適である。
第2モードでゲート部に向かう際に行われる機体位置算出の最も重要な処理は、ゲート部を含むスキャン画像(点群データ、点群地図)を用いたスキャンマッチングである。このスキャン画像は距離計測センサを用いて取得される。スキャンマッチングの出発参照地図は、ゲート部を含むスキャン画像であることが好適である。つまり、スキャン画像にゲート部が含まれるような機体位置が走行機体の出発位置となっていることが好適である。このことから、本発明の好適な実施形態では、前記第2機体位置算出部は、前記ゲート部を含む前記第2領域における前記ゲート部周辺の特定物の点群地図であって前記第2領域における前記走行機体の出発点を基準として作成された出発参照地図を取得するとともに、前記出発参照地図を用いたスキャンマッチングにより前記第2機体位置を算出する。
より具体的な第2領域として、ゲート部としての出入口を通じて出入を繰り返す工場や倉庫や納屋などの施設内が挙げられる。そのような施設は屋根等を備えており、衛星電波状態は極めて悪いので、第1モードでの自動走行は不可能となる。したがって、第2モードでの自動走行が有利に使用される。ただし、ゲート部周辺では、ゲート部を示す点群データやゲート部付近の特徴標識を示す点群地図としての点群データにおける点群数が不足し、良好なスキャンマッチングが困難となる場合がある。そのような場合は、第1モード及び第2モードでの自動走行が不可能となるので、特別なモードでの自動走行が必要となる。このことから、本発明の好適な実施形態では、前記第2領域に、前記第1領域と離れ、前記ゲート部として出入口を有する屋内領域と、前記第1領域及び前記屋内領域に隣接し、前記屋内領域と前記第1領域とをつなぐ屋外領域と、が備えられており、前記自動走行制御部は、前記第1モードと、前記第2モードと、走行距離を計測しながら規定のタイミングで規定量の操舵をする自動走行を行うプログラミングモードと、を有し、かつ、前記第2領域のうちの前記屋内領域では、前記第2モードとなって前記出入口を目標とする自動走行制御を行い、前記第2領域のうちの前記屋外領域では、前記プログラミングモードとなって前記走行機体を前記出入口から前記第1領域へ規定の経路を辿るように走行させる。このプログラミングモードで用いられるプログラムに、例えば、左右の旋回走行プログラムやS字旋回走行プログラムを組み込むことで、走行機体1は、自動で、左旋回走行、右旋回走行、S字旋回走行を行うことができる。また、特に操舵を行わない純な直進走行であれば、直進用のプログラムによる走行、またはプログラミングなしの走行を用いると好適である。
本発明の好適な実施形態では、前記第2領域に、前記第1領域と離れ、前記ゲート部とし出入口を有する屋内領域と、前記第1領域及び前記屋内領域に隣接し、前記屋内領域と前記第1領域とをつなぐ屋外領域と、が備えられており、前記自動走行制御部は、前記第2領域のうちの前記屋内領域では、前記第2モードとなって前記出入口を目標とする自動走行制御を行い、前記第2領域のうちの前記屋外領域では、前記第2モードとなって前記屋内領域における屋内領域特定物を指標として前記屋内領域特定物から離れる自動走行制御を行う。本構成であれば、全体を通して第1モード及び第2モード以外のモードが不要であり、かつ、屋内領域の内外を通じて第2モードを使うことができ、モードの切り換えが不要とり、制御処理部の内部構成がシンプルになる。
上述した衛星測位とSLAMとの使い分けは、第1領域から第2領域への走行時、例えば、屋外領域から屋内領域への走行時にも利用可能である。このことから、本発明の好適な実施形態では、前記自動走行制御部は、前記走行機体が前記第1領域から前記第2領域に移動する際に、前記第1領域では前記第1モードとなり、前記第2領域では前記第2モードとなる。
コンバインの全体側面図である。 走行機体前部に装備されたLIDARによる有効測距範囲の一例を示す模式図である。 具体的な第1領域と第2領域との例を示す模式的な地図である。 コンバインに搭載された自動走行システムの機能部を示す機能ブロック図である。 LIDARを用いたスキャンによって取得された点群データを模式的に示す模式図である。 スキャンマッチングを説明するための模式的な説明図である。 第2モードでの自動走行制御を評価するグラフである。 駐車施設から圃場までの自動走行の一例を示すフローチャートである。
以下、本発明に係る自動走行システムを採用した作業機の一例として、農作業機であるコンバインを図面に基づいて説明する。コンバインは、作業装置として、小麦や稲などの穀稈を刈り取って、脱穀する収穫装置を装備している。この実施形態で、走行機体1の前後方向を定義するときは、作業状態における機体進行方向に沿って定義する。図1に符号(F)で示す方向が機体前側、図1に符号(B)で示す方向が機体後側である。走行機体1の左右方向を定義するときは、機体進行方向視で見た状態で左右を定義する。「上側(上方)」または「下側(下方)」は、走行機体1の鉛直方向(垂直方向)での位置関係であり、地上高さにおける関係を示す。
図1に示すように、コンバインでは、左右一対のクローラ走行装置10を備えた走行機体1の前部に横軸芯周りで昇降操作自在に、収穫装置の1つである刈取部2が連結されている。左右それぞれのクローラ走行装置10の速度差によって、走行機体1は左右旋回可能となる。さらなる作業装置として、走行機体1の後部には、機体横幅方向に並ぶ状態で脱穀装置11と、穀粒を貯留する穀粒タンク12とが備えられている。走行機体1の前部右側箇所に搭乗運転部14が備えられ、この搭乗運転部14の下方に図示されていないエンジンが備えられている。
図1に示すように、脱穀装置11は、刈取部2で刈り取られて後方に搬送されてきた刈取穀稈を内部に受け入れて、穀稈の株元をフィードチェーン111と挟持レール112とによって挟持して搬送しながら穂先側を扱胴113にて脱穀処理する。そして、扱胴113の下方に備えられた選別部にて脱穀処理物に対する穀粒選別処理が実行され、そこで選別された穀粒が穀粒タンク12へ搬送され、貯留される。また、詳述はしないが、穀粒タンク12にて貯留される穀粒を外部に排出する穀粒排出装置13が作業装置として備えられている。
刈取部2には、引起された植立穀稈の株元を切断するバリカン型の切断装置22、穀稈搬送装置23等が備えられている。穀稈搬送装置23は、株元が切断された縦姿勢の刈取穀稈を徐々に横倒れ姿勢に変更させながら、フィードチェーン111の始端部に向けて搬送する。
搭乗運転部14の天井部には、衛星測位モジュール31が設けられている。衛星測位モジュール31には、GNSS(global navigation satellite system)信号(衛星信号の一例)を受信するための衛星用アンテナが含まれている。
図2に示すように、走行機体1の前部の刈取部2を避けた位置に、前方に延びたブラケットを介して、機体周囲の少なくとも一部を測距する距離計測センサとしてのLIDAR(Light Detection and Ranging)32が装備されている。このLIDAR32は、水平全方位360°と垂直視野30°のスキャン仕様を有する3D-LIDARである。但し、走行機体1や刈取部2を検出する領域はマスキングされるので、このLIDAR32は、図2に示すように、実質的には、前方略180°の点群データを取得することになる。
図3に示されているように、この実施形態では、自動走行システムによる制御によって、納屋などの駐車施設PF(屋内領域)に駐車しているコンバインは、駐車位置を出発点として、そのゲート部としての出入口GAを通過し、私道及び公道(農道など)を経て、圃場まで自動走行することができる。この走行例では、私道の一部及び公道は測位データに基づく機体位置(第1機体位置)の算出が可能な第1領域A1であり、駐車施設PF及びその周辺は測位衛星からの測位データに基づく機体位置(第2機体位置)の算出が不可能な第2領域A2である。したがって、第1領域A1での自動走行(第1モード)は、測位衛星からの測位データに基づいて算出される機体位置を用いて行われる。第2領域A2での自動走行(第2モード)は、LIDAR32からの測距信号群である点群データをSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)アルゴリズムを用いて算出される機体位置を用いて行われる。なお、第2領域A2には、第1領域A1と離れ、ゲート部としての出入口GAを有する駐車施設PF(屋内領域)と、第1領域A1及び駐車施設PF(屋内領域)に隣接し、屋内領域と第1領域A1とをつなぐ屋外領域とが含まれている。
図4には、コンバインの制御系の機能ブロック図が示されている。この実施形態の制御系は、複数のECUと呼ばれる電子制御ユニットと、各種動作機器、センサ群やスイッチ群、それらの間のデータ伝送を行う車載LANなどの配線網から構成されている。
この機能ブロック図で示された制御系は、ECUで構成される第1制御ユニット5と第2制御ユニット6と障害物検出ユニット4とを備えている。
第1制御ユニット5は、機体位置を算出するユニットであり、第1機体位置算出部55と第2機体位置算出部50とを備えている。第1機体位置算出部55は、衛星測位モジュール31からの測位データに基づいて走行機体1の基準位置としての機体位置(第1機体位置)を算出する。走行機体1の基準位置として、例えば走行機体1の前後及び左右の中心位置、走行機体1の前部中心位置などが採用される。
この衛星測位モジュール31は、RTK(Real Time Kinematic)測位を用いているので、既知点である基地局で取得して転送されてくる信号と、未知点である走行機体1に装備された移動局としての衛星測位モジュール31で受信された信号とを解析して、測位データを算出する。RTK測位では、測位開始時に、搬送波の波数の候補を絞り込む処理での解であるFLOAT解、さらに波数を決定した解であるFIX解が求められる。この実施形態では、適正なFIX解が求められる走行領域を測位データの算出が可能な走行領域(第1領域A1)とし、適正なFIX解が求められない走行領域を測位データの算出が不可能な走行領域(第2領域A2)とする。
第2機体位置算出部50は、LIDAR32のスキャン操作によって生成される測距信号をSLAMアルゴリズムを用いて処理して、走行機体1の基準位置としての機体位置(第2機体位置)を算出する。第2機体位置算出部50は、参照地図記憶部51とSLAM実行部52を備えている。
このSLAMアルゴリズムでは、走行前のLIDARスキャンにより得られた点群データを参照点群データ(出発参照地図)とし、走行後のLIDARスキャンにより得られる点群データを入力点群データ(点群地図)とする。この点群データにおいて、出入口GAの周辺の特定物としての内壁面や農具や什器いなどが点群として示される。図5には、駐車施設PFに駐車したコンバインが出入口GAに向かう自動走行例での、参照点群データが示されている。参照点群データは、実際は、三次元の点群であるが、図5では、見易さのために、太い実線で示されており、出入口GAは実体のない空白として示されている。参照点群データは走行直前に取得してもよいし、さらに前に取得してもよい。参照点群データは参照地図記憶部51に記憶される。その記憶時に、出入口GAまたは出入口GAの中心点の座標(地図位置)または駐車位置をリンクさせる。
走行機体1の走行が開始されると、LIDARスキャンによって入力点群データが取得される。図6には、参照点群データと入力点群データが示されている。入力点群データは太い実線で示され、参照点群データは二点鎖線で示されている。この参照点群データに入力点群データが重なるように点群を並進・回転移動させることによって得られる移動ベクトルに基づいて、走行機体1の移動量(位置ずれ、方位ずれ)が算出され、その結果、走行後の走行機体1の機体位置(第2機体位置)が求められる。この処理はスキャンマッチングと呼ばれ、SLAM実行部52によって実行される。このスキャンマッチングを10fps程度で繰り返すことで、走行する走行機体1の第2機体位置が逐次算出される。
なお、通常のSLAMアルゴリズムでは、スキャンマッチングで機体位置を算出するごとに、その機体位置での入力点群データを参照点群データとして、順次参照点群データを書き換える(地図更新)。この実施形態では、ハードウェアの処理負荷を減らして処理速度を高めるため、地図更新を行わず、最初の参照点群データをそのまま使い続ける。
図7に、駐車施設PFの異なる位置に駐車したコンバインが出入口GAに向かう自動走行(第2モード)での各軌跡が模式的に示されている。図7では、出入口GAの幅方向で中心の点である走行目標点に符号CPが付与されている。駐車位置である出発点aは、走行目標点の延長線に対して右側にずれており、出発点bは左側にずれている。出発点aからの走行軌跡は細い実線で示され、出発点bからの走行軌跡は点線で示されている。この実験結果から、出発点a及びbからの走行では、最初は、左右に振れるが、途中でほぼ直進となり、最終的には、走行目標点に対して+-15cm以内に収まっていることが判明している。走行目標点の延長線上に位置する出発点c(走行目標点に対してずれがない位置)からの走行では、ほぼ直進して、正確に走行目標点に達する。
第2制御ユニット6は、このコンバインの制御系の中核ユニットであり、入出力インタフェースとして、入出力信号処理ユニット6Aを備えている。入出力信号処理ユニット6Aには、走行状態検出センサ群81や作業状態検出センサ群82を含む車両センサ群8A、車両走行機器群84や作業装置機器群85を含む動作機器群8Bが接続されている。走行状態検出センサ群81には、走行距離を検出する走行距離センサ、エンジン回転数調整具、アクセルペダル、ブレーキペダル、変速操作具などの状態を検出するセンサが含まれている。作業状態検出センサ群82には、刈取部2、脱穀装置11、穀粒排出装置13、穀稈搬送装置23における装置状態および穀稈や穀粒の状態を検出するセンサが含まれている。車両走行機器群84には、車両走行に関する制御機器、例えばエンジン制御機器、変速制御機器、制動制御機器、操舵制御機器などが含まれている。作業装置機器群85には、刈取部2、脱穀装置11、穀粒排出装置13、穀稈搬送装置23における動力制御機器などが含まれている。
第2制御ユニット6は、さらに自動走行制御部60、手動走行制御部61、作業装置制御部62を備えている。自動走行制御モードが選択されると、自動走行制御部60は、自動走行パラメータによって規定されたエンジン回転数や車速で走行機体1を走行させるように、車両走行機器群84に制御信号を与える。手動走行制御モードが選択されると、手動走行制御部61は、運転者によるアクセルペダルや変速レバーに対する操作に基づいて車両走行機器群84に走行制御信号を与える。手動走行制御モードと自動走行制御モードとの間のモード切換には、図示されていない自動/手動切換操作具が用いられるが、コンバインの作業走行状態に応じて、自動的にモード切換が行われることもある。
自動走行制御部60は、第1モード実行部60a、第2モード実行部60b、第3モード実行部60c、目標設定部60dを備えている。第1モード実行部60aは、第1機体位置算出部55によって算出された第1機体位置に基づく自動走行制御(第1モード)を行う。第2モード実行部60bは、第2機体位置算出部50によって算出された第2位置に基づく自動走行制御(第2モード)を行う。例えば、走行機体1が測位データの算出が不可能な第2領域A2から測位データの算出が可能な第1領域A1に移動する場合、第2領域A2では第2モードでの自動走行となり、第1領域A1では第1モードでの自動走行となる。
第3モード実行部60cは、走行距離を計測しながら規定のタイミングで規定量の操舵をするプログラミングモードを実行して、第1モードや第2モードとは異なる自動走行を行う。第3モード実行部60cは、衛星測位に基づく自動走行やSLAMアルゴリズムに基づく自動走行が不可能なときに、プログラミングモードを実行する。このプログラミングモードで使用されるプログラムには、左右の旋回走行プログラムやS字旋回走行プログラムなどが含まれており、これらのプログラムを実行することで、走行機体1は、自動で、左旋回走行、右旋回走行、S字旋回走行を行う。このプログラミングモードには、特に操舵を行わない単純な直進走行を行うプログラムも含まれている。
目標設定部60dは、自動走行時の走行目標を設定するものである。第1モードでの走行目標は目標走行経路であり、第2モードでは目標点または目標領域である。プログラミングモードでは、プログラムによって規定される走行方位と走行距離に基づいて走行するので、特別な走行目標を必要としないが、プログラムにおいて走行目標を設定してもよい。
作業装置制御部62は、予め設定されている自動作業パラメータに基づいて、または運転者による作業操作具に対する操作に基づいて作業装置機器群85に作業制御信号を与える。
障害物検出ユニット4は、LIDAR32から測距信号を利用して、障害物検出を行う。LIDAR32に代えて、あるいはLIDAR32とともに超音波センサや赤外線センサなどを用いるように構成されてもよい。障害物検出ユニット4によって、機体進行方向に障害物が検出された場合、走行機体1は、減速または停止する。
このコンバインには、図4に示すように、慣性測位ユニット33が備えられている。慣性測位ユニット33は、主に衛星測位モジュール31による衛星航法を補完するために、ジャイロ加速度センサや磁気方位センサを備えている。
次に、図3に示されたような地図における、駐車施設PFから圃場に到達するまでの自動走行の一例を、図8のフローチャートを用いて説明する。この形態では、少なくとも圃場まで続く公道と私道の一部とを含む領域が第1領域A1であり、少なくとも駐車施設PF(屋内領域)と私道の残りの一部とを含む第2領域A2である。
駐車施設PFでの駐車位置を出発点として走行を開始するので、出発点における点群データである出発参照地図を取得する(#01)。その際、走行目標として、駐車施設PFの出入口GAの幅方向の中心点CP(走行目標点、図7参照)が設定される(#02)。
駐車施設PF内は、衛星測位モジュール31での測位データの算出が不可能な第2領域A2であるので、第2モードでの自動走行が開始される(#04)。走行機体1が動き出すと、スキャンマッチング処理が開始され(#05)、走行機体1の機体位置(第2位置)が算出される(#06)。算出された機体位置が走行目標点に達しているかどうかチェックされる(#07)。機体位置が走行目標点に達していなければ(#07No分岐)、ステップ#04に戻り、算出された機体位置と走行目標点とに基づく第2モードでの自動走行が続行される。
ステップ#07のチェックで、機体位置が走行目標点に達していれば(#07Yes分岐)、衛星測位状態診断処理が行われる(#08)。この衛星測位状態診断処理は、先行して、第2モードでの自動走行中に行われてもよい。衛星測位状態診断処理における診断結果、つまり、衛星測位モジュール31において適正なFIX解が求められるかどうか、つまり現在位置が測位データの算出が可能な領域かどうかがチェックされる(#09)。衛星測位状態診断処理で測位データに基づく自動走行(第1モード)が不可能であるとする診断結果が出ていれば(#09「不可」分岐)、第3モード実行部60cによる自動走行(プログラミングモード)が行われる(#10)。プログラミングモードでの自動走行では、第2モードでの自動走行の走行目標点から直進で第1モードでの自動走行が行われる位置(本実施形態では私道の途中箇所)に到達する場合には、第3モード実行部60cで直進用のプログラムが選択され、走行機体1は直進する。また、第2モードでの自動走行の走行目標点から曲線軌跡を経て第1モードでの自動走行が行われる位置に到達する場合には、曲線走行用のプログラムが選択される。これにより走行機体1は、第2領域A2である駐車施設PFから第1領域A1である道路へ規定の経路を辿るように走行することができる。このプログラミングモードでの自動走行は、測位データに基づく自動走行(第1モード)が可能となるまで行われるので、ステップ#08に戻り、さらにステップ#09のチェックが行われる。
ステップ#08のチェックで、衛星測位状態診断処理で測位データに基づく自動走行(第1モード)が可能であるとする診断結果が出ていれば(#09「可能」分岐)、第1モードでの自動走行のための走行目標として、私道の一部及び公道(図3参照)に目標走行経路が設定される(#11)。この目標走行経路の設定は、このフローチャートのスタート時点などで、先行して行われてもよい。目標走行経路が設定されると、第1モードでの自動走行が行われる(#12)。この第1モードでの自動走行は、設定された目標走行経路の終点である圃場の入口まで行われる。したがって、走行機体1が圃場の入口に到達したかどうかチェックされる(#13)。走行機体1が圃場の入口に到達すれば(#13Yes分岐)、圃場作業(収穫作業)を行うための圃場作業走行経路が設定され(#14)、圃場作業が行われる(#15)。
〔別実施の形態〕
(1)上述した実施形態において、走行機体1が、駐車施設PFの出入口GAに設定された走行目標点にずれをもって達した場合、同所から出入口GAを出て駐車施設PFの外への自動走行において、慣性測位ユニット33を用いた慣性航法でそのずれを補正する補正走行処理が行われてもよい。この慣性航法では、慣性測位ユニット33によって算出される走行機体1の姿勢変化と走行状態検出センサ群81に含まれている走行距離センサによる走行距離とが操舵制御のために用いられる。この慣性航法による補正走行処理は、走行機体1が第2領域A2から第1領域A1へ移る際に生じるずれを補正するために利用することができる。この補正走行処理は、第3モード実行部60cにおけるオプションとして組み込むことができる。
(2)図4で示された機能ブロック図における各機能部の区分けは、説明を分かりやすくするための一例であり、種々の機能部を統合したり、単一の機能部を複数に分割したりすることは自由である。また、第1制御ユニット5と第2制御ユニット6とを部分的または全面的に統合してもよい。さらには、それらの機能部の一部または全てを、作業機から着脱可能で、車載LANに無線または有線で接続可能なパソコンやタブレットコンピュータに構築してもよい。
(3)上述の実施形態においては、分かりやすさのために、駐車施設PF内では、駐車位置から出入口GAまで第2モードで走行する例を示した。しかし、距離計測センサ(LIDAR32)の計測性能によっては、進行方向前方をスキャンして得られた点群データの様相は、走行機体が出入口GAに近づけば近づくほど急激に変化し、出入口近傍では、それまでのスキャンで得られていた点群データから、出入口自体や出入口付近の特徴標識(特定物など)を示す点群が欠損することがある。そうすると、スキャンマッチングが困難となる。しがたって、実際には駐車施設PFの内部であるが、物理的なシャッターなどの扉位置よりも少し手前で、第2モードを終了し、その後のプログラミングモードの移行することもあり得る。つまり、プログラミングモードが開始される屋外領域は、厳密に屋外である必要はなく、出入口GAが屋内領域の実際の扉よりも屋内側に少し入り込んだ位置に設定され、その出入口GAから外側の屋内部分から開始されていてもよい。
(4)上述した実施形態では、コンバインが駐車施設PFから圃場に向かうときの自動走行例を示した。しかし、これに加えて、圃場から公道や私道を通って駐車施設PFに戻ってくるときにも自動走行で戻るように構成してあっても良い。この場合、第1領域A1から第2領域A2への走行時に、第1領域(公道など)を衛星測位に基づく第1モードで走行し、第2領域のうちの私道の一部(屋外領域)をプログラミングモードで走行し、第2領域のうちの駐車施設PF内部(屋内領域)をSLAMに基づく第2モードによって走行すると良い。
(5)上述した実施形態では、屋外領域での自動走行について、プログラミングモードを用いる例をしめしたが、これに限られるものではない。例えば、LIDAR32が走行機体1の後方をスキャンできるように構成するか、あるいは走行機体1の後部にもLIDAR32を追加装備している場合、例えば、第2領域A2のうちの駐車施設PFの屋内領域では、第2モードで出入口GAを目標とする自動走行制御を行い、第2領域A2のうちの駐車施設PFの屋外領域でも、後方の駐車施設PFに属する特定物(屋内領域特定物)、例えば、出入口GAやその周辺物や駐車施設PFの外壁部のうちの特徴のある部分を指標として、第2モードで駐車施設PFから離れる自動走行制御を行うことも可能である。
(6)上述した実施形態では、距離計測センサとしてLIDAR32を用いた例を示したが、これに限られるものではない。距離計測センサとして、HDカメラやToF(Time OF Flight)カメラを用いも良い。
(7)上述した実施形態は、第2領域に屋内領域(駐車施設PF)と屋外領域とが含まれる例を示したが、これに限られるものではない。例えば、第1領域に駐車施設が横付けされているような形態、すなわち、第2領域として第1領域と隣り合う屋内領域だけを対象とする形態や、第2領域が屋外領域だけである形態にも本発明は適用できる。
なお、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
本発明は、コンバインだけでなく、コンバイン以外の作業機、例えば田植機やトラクタなどの農作業機、ショベルカーなどの建機、除雪機や散水機などの道路整備機などの自動走行システムに適用することができる。
1 :走行機体
5 :第1制御ユニット
6 :第2制御ユニット
31 :衛星測位モジュール
32 :LIDAR(距離計測センサ)
33 :慣性測位ユニット
50 :第2機体位置算出部
51 :参照地図記憶部
52 :SLAM実行部
55 :第1機体位置算出部
60 :自動走行制御部
60a :第1モード実行部
60b :第2モード実行部
60c :第3モード実行部
60d :目標設定部
A1 :第1領域
A2 :第2領域
a :出発点
b :出発点
c :出発点
GA :出入口(ゲート部,屋内領域特定物)
PF :駐車施設(屋内領域,第2領域)

Claims (7)

  1. 作業装置を装備した走行機体と、
    測位衛星からの衛星信号に基づいて測位データを算出する衛星測位モジュールと、
    前記測位データに基づいて第1機体位置を算出する第1機体位置算出部と、
    機体周囲の少なくとも一部を測距する距離計測センサと、
    前記距離計測センサから測距信号をSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)アルゴリズムを用いて処理して、第2機体位置を算出する第2機体位置算出部と、
    前記走行機体を自動走行させる自動走行制御部と、を備え、
    前記自動走行制御部は、前記第1機体位置に基づく自動走行制御を行う第1モードと前記第2機体位置に基づく自動走行制御を行う第2モードとを有し、かつ、前記走行機体が前記測位データの算出が不可能な第2領域から前記測位データの算出が可能な第1領域に移動する際に、前記第2領域では前記第2モードとなり、前記第1領域では前記第1モードとなる自動走行システム。
  2. 前記第2領域に、前記走行機体が通過するゲート部が備えられており、
    前記自動走行制御部は、前記第2モードにおいて、前記ゲート部を目標とする自動走行制御を行う請求項1に記載の自動走行システム。
  3. 前記自動走行制御部は、前記第2モードにおいて、前記ゲート部における幅方向の中心点を走行目標点とする自動走行制御を行う請求項2に記載の自動走行システム。
  4. 前記第2機体位置算出部は、前記ゲート部を含む前記第2領域における前記ゲート部周辺の特定物の点群地図であって前記第2領域における前記走行機体の出発点を基準として作成された出発参照地図を取得するとともに、前記出発参照地図を用いたスキャンマッチングにより前記第2機体位置を算出する請求項2または3に記載の自動走行システム。
  5. 前記第2領域に、前記第1領域と離れ、前記ゲート部として出入口を有する屋内領域と、前記第1領域及び前記屋内領域に隣接し、前記屋内領域と前記第1領域とをつなぐ屋外領域と、が備えられており、
    前記自動走行制御部は、前記第1モードと、前記第2モードと、走行距離を計測しながら規定のタイミングで規定量の操舵をする自動走行を行うプログラミングモードと、を有し、かつ、前記第2領域のうちの前記屋内領域では、前記第2モードとなって前記出入口を目標とする自動走行制御を行い、前記第2領域のうちの前記屋外領域では、前記プログラミングモードとなって前記走行機体を前記出入口から前記第1領域へ規定の経路を辿るように走行させる請求項2から4のいずれか一項に記載の自動走行システム。
  6. 前記第2領域に、前記第1領域と離れ、前記ゲート部として出入口を有する屋内領域と、前記第1領域及び前記屋内領域に隣接し、前記屋内領域と前記第1領域とをつなぐ屋外領域と、が備えられており、
    前記自動走行制御部は、前記第2領域のうちの前記屋内領域では、前記第2モードとなって前記出入口を目標とする自動走行制御を行い、前記第2領域のうちの前記屋外領域では、前記第2モードとなって前記屋内領域における屋内領域特定物を指標として前記屋内領域特定物から離れる自動走行制御を行う請求項2から4のいずれか一項に記載の自動走行システム。
  7. 前記自動走行制御部は、前記走行機体が前記第1領域から前記第2領域に移動する際に、前記第1領域では前記第1モードとなり、前記第2領域では前記第2モードとなる請求項1から6のいずれか一項に記載の自動走行システム。
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