JP2022146357A - リチウム二次電池用正極活物質の製造方法 - Google Patents

リチウム二次電池用正極活物質の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】高品質で高い生産性と低い生産コストを有するリチウム二次電池用正極活物質の製造方法を提供する。【解決手段】リチウム化合物と下記式(1)中のLi以外の金属元素を含む化合物とを混合する混合工程と、前記混合工程を経て得られた前駆体を焼成して下記(1)で表されるリチウム複合化合物を得る焼成工程と、を有し、前記焼成工程は、前記前駆体を焼成炉1の炉心管10内で転動させつつ熱処理を行う熱処理工程を少なくとも有し、前記炉心管において、接粉部の最表層にアルミニウム酸化物が形成されており、その下地層にはアルミニウムと前記炉心管母材との合金層が形成されている正極活物質の製造方法。Li1+aM1O2+α・・・(1)(但し、式(1)中、M1は、Li以外の金属元素であって少なくともNiを含み、M1における前記Niの割合が70原子%以上、a及びαは、-0.1≦a≦0.2、-0.2≦α≦0.2、を満たす数である。)【選択図】図2

Description

本発明は、リチウム二次電池の正極に用いられる正極活物質の製造方法に関する。
に関する。
高いエネルギー密度を有し、小型で軽量な二次電池として、広く普及しているリチウム二次電池では、その正極及び負極に用いられる活物質の高容量化が要求されている。
高い充放電容量を有する正極活物質としては、α-NaFeO型の層状構造を有するLiMO(Mは、Ni、Co、Mn等の金属元素を示す。)で表されるリチウム複合化合物が知られている。この正極活物質は、特にニッケルの比率が高くなるほど容量が高くなる傾向を示すことから、電池の高エネルギー密度化を実現する正極活物質として期待されている。
そして、高い生産性と低い生産コストを有するリチウム複合化合物が求められている。
正極活物質の製造過程において、リチウム複合化合物の形成反応を行う焼成炉として、ロータリーキルンを利用する技術が提案されている。ロータリーキルンは、特別な焼成容器を要さず、炉内を容易に酸化性雰囲気に保つことが可能であるといった特徴を有している。
例えば、特許文献1には、転動熱処理工程に用いる焼成炉の炉心管がセラミックス製、又は、ニッケル製、タングステン製、モリブテン製、チタン製、若しくは、これらの金属を主成分とする合金製であることが開示されている。
また、特許文献2には、内筒管を有する二重構造の炉心管において、炉心管の内層、または内筒管の外層の少なくともいずれか一方は、金属ニッケル材あるいはニッケル合金材からなることが開示されている。
国際公開第2017/213002号公報 特開2019-75253号公報
しかしながら、セラミックス製の炉心管では装置の大型化が困難で高い生産性を得るのが難しく、金属を主成分とする合金製では炉心管の長期に渡る使用に伴い金属成分が原料に混入してくる恐れがある。
そこで本発明では、高品質で高い生産性と低い生産コストを有するリチウム二次電池用正極活物質を提供することを目的とする。
本発明のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法は、リチウム化合物と下記式(1)中のLi以外の金属元素を含む化合物とを混合する混合工程と、前記混合工程を経て得られた前駆体を焼成して下記(1)で表されるリチウム複合化合物を得る焼成工程と、を有し、前記焼成工程は、前記前駆体を焼成炉の炉心管内で転動させつつ熱処理を行う熱処理工程を少なくとも有し、前記炉心管において、接粉部の最表層にアルミニウム酸化物が形成されており、その下地層にはアルミニウムと前記炉心管の母材との合金層が形成されていることを特徴とする。
Li1+a M1O2+α ・・・(1)
(但し、前記式(1)中、M1は、Li以外の金属元素であって少なくともNiを含み、M1における前記Niの割合が70原子%以上、a及びαは、-0.1≦a≦0.2、-0.2≦α≦0.2、を満たす数である。)
また、本発明のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法において、前記焼成炉は、前記炉心管の内周面側に向けて酸化性ガスを噴射する第1給気管と、当該炉心管の軸方向に向けて酸化性ガスを流す第2給気管とを備え、前記第1給気管には、前記第1給気管の円周方向を開口方向とする複数の噴射口を有することが好ましい。
また、本発明のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法は、前記炉心管において、前記第1給気管を保持する脚が、前記炉心管とは接合されていないことが好ましい。
また、本発明のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法は、前記熱処理工程において、700℃以上で2時間以上保持する工程を含むことが好ましい。
本発明によれば、高品質で高い生産性と低い生産コストを有するリチウム二次電池用正極活物質を提供することができる。
本発明の実施形態に係る正極活物質の製造方法のフロー図である。 本発明の実施形態に係る正極活物質の製造に使用するロータリーキルン1の概略構造を示す図である。 実施例で使用したロータリーキルン1Bの概略構造を示す図である。
以下、本発明の一実施形態に係るリチウム二次電池用正極活物質(以下、単に正極活物質と言うことがある。)とその製造方法について詳細に説明する。なお、以下の説明は、本発明の内容の具体例を示すものであり、本発明はこれらに限定されるものではない。本発明は、本明細書に開示される技術的思想の範囲内において当業者による様々な変更が可能である。
<正極活物質>
本実施形態に係る正極活物質は、リチウムと遷移金属とを含んで組成され、空間群R-3mに帰属される層状岩塩型の結晶構造(以下、層状構造ということがある。)を有するリチウム複合化合物である。この正極活物質は、電圧の印加によってリチウムイオンを可逆的に吸蔵及び放出することを可能としており、リチウム二次電池用(リチウムイオン二次電池用)の正極活物質として好適に用いられる。なお、リチウム複合化合物は、リチウム複合酸化物ともいう。
本実施形態に係る正極活物質は、次の式(1):
Li1+aM1O2+α・・・(1)
(但し、前記式(1)中、M1は、Li以外の金属元素であって少なくともNiを含み、M1当たりにおける前記Niの割合が70原子%を超え、a及びαは、-0.1≦a≦0.2、-0.2≦α≦0.2、を満たす数である。)で表される。
本実施形態に係る正極活物質は、リチウム(Li)以外の金属元素(M1)当たりにおけるニッケル(Ni)の割合が70原子%を超える組成を有することにより、高いエネルギー密度や高い充放電容量を実現することができる正極活物質である。なお、リチウム(Li)以外の金属元素(M1)当たりにおけるニッケル(Ni)の割合は、70原子%を超え100原子%未満の範囲で適宜の値を採ることが可能である。このようにニッケルを高い割合で含む正極活物質であるが故にNi2+をNi3+へと酸化させる酸化反応が効率的に行われることは重要である。
リチウム(Li)以外の金属元素(M1)としては、ニッケルの他に、遷移金属元素が含まれていてもよいし、非遷移金属元素が含まれていてもよいし、これらが組み合わされて含まれていてもよい。このような金属元素(M1)の具体例としては、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、タングステン(W)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、スズ(Sn)等が挙げられる。これらの中でも、層状構造を安定させる観点からは、アルミニウム(Al)及び/又はチタン(Ti)が含まれていることが好ましい。
本実施形態に係る正極活物質は、より好ましい具体的な組成が次の式(2):
Li1+aNiMnCoM22+α・・・(2)
(但し、前記式(2)中、M2は、Mg、Al、Ti、Zr、Mo及びNbからなる群より選択される少なくとも1種の元素であり、a、b、c、d、e及びαは、-0.1≦a≦0.2、0.7<b≦0.9、0≦c<0.3、0≦d<0.3、0≦e≦0.25、b+c+d+e=1、及び、-0.2≦α≦0.2、を満たす数である。)で表される。
<正極活物質の製造方法>
本実施形態に係る正極活物質の製造方法は、リチウム二次電池の正極に用いられる正極活物質であって、前記式(1)で表され、層状岩塩型の結晶構造を有するリチウム複合化合物を合成する方法に関する。
(製造方法フロー)
図1は、本発明の一実施形態に係る正極活物質の製造方法のフロー図である。
図1に示すように、本実施形態に係る正極活物質の製造方法は、混合工程S1と、焼成工程S2と、を有している。混合工程S1を経て原料の化合物から前駆体が調製され、前駆体が焼成工程S2で焼成されることにより、リチウム二次電池(リチウムイオン二次電池)の正極の材料となり得るリチウム複合化合物が合成される。本実施形態に係る製造方法は、焼成工程S2を構成する一工程として、焼成前のリチウム複合化合物の前駆体を焼成炉として用いるロータリーキルンで転動させつつ熱処理を行う熱処理工程を少なくとも有している。
混合工程S1では、リチウムを含む化合物(リチウム化合物)と、正極活物質を組成するLi以外の金属元素を含む化合物とを混合する。リチウムを含む化合物としては、炭酸リチウム、水酸化リチウムが挙げられる。炭酸リチウムは、酢酸リチウム、硝酸リチウム、水酸化リチウム、塩化リチウム、硫酸リチウム等と比較して、供給が安定していて調達性が良く、低廉である。また、融点が高いので、製造装置へのダメージが少なく、工業利用性及び実用性に優れている。
正極活物質を組成するLi以外の金属元素を含む化合物としては、ニッケルを含む化合物や、マンガンを含む化合物や、コバルトを含む化合物や、M2等の他の金属元素を含む化合物を混合する。
ニッケルを含む化合物としては、例えば、純ニッケル(便宜上化合物として含む)、酸化物、水酸化物、炭酸塩、酢酸塩等を用いることができる。これらの中でも、特に、酸化物又は水酸化物を用いることが好ましい。酸化物や水酸化物であれば、炭酸塩や酢酸塩等を用いる場合と異なり、焼成の過程で大量の炭酸ガスを発生することが無いので、ニッケルの割合が高く、高純度を有するリチウム複合化合物を安定的に製造することができる。
マンガンを含む化合物や、コバルトを含む化合物としては、例えば、酸化物、水酸化物、炭酸塩、酢酸塩等を用いることができる。これらの中でも、特に、酸化物、水酸化物、又は、炭酸塩を用いることが好ましい。また、M2等の他の金属元素を含む化合物としては、例えば、炭酸塩、酸化物、水酸化物、酢酸塩、硝酸塩等を用いることができる。これらの中でも、特に、炭酸塩、酸化物、又は、水酸化物を用いることが好ましい。
混合工程S1では、具体的には、前記式に対応する所定の元素組成比で原料の各化合物を秤量し、各化合物を粉砕及び混合して、各化合物が混和した粉末状の混合物を調製する。各化合物は、均一に混和すると共に粒度も揃える観点から、平均粒径が1μm未満となるまで粉砕することが好ましい。化合物を粉砕する粉砕機としては、例えば、ボールミル、ジェットミル、サンドミル等の一般的な精密粉砕機を用いることができる。
原料の化合物の粉砕は、湿式粉砕とすることが好ましく、工業的な観点からは、水を分散媒とした湿式粉砕が特に好ましい。湿式粉砕して得られる固液混合物は、例えば、乾燥機を用いて乾燥させてよい。乾燥機としては、例えば、噴霧乾燥機、流動床乾燥機、エバポレータ等を使用することができる。
焼成工程S2では、混合工程S1を経て得られた前駆体を焼成して層状構造を有するリチウム複合化合物を得る。焼成工程S2は、焼成前のリチウム複合化合物の前駆体を焼成炉として用いるロータリーキルンで転動させつつ熱処理を行う熱処理工程を少なくとも有している。ここで、焼成工程S2において使用するロータリーキルンについて説明する。
(ロータリーキルン/焼成炉)
図2は、リチウム二次電池用正極活物質の製造に使用するロータリーキルンの概略構造を示す図である。
図2に示すように、ロータリーキルン1は、炉心管10と、ヒータ20と、第1給気管30と、第2給気管40と、リフター50と、を備えている。
炉心管10は、中空の略円柱形状を有しており、長手方向の一端側に被処理物Maの投入部、他端側に熱処理物の回収部を有している。炉心管10は、被処理物Maの投入部が回収部よりも上方に位置するように、水平面に対し傾斜して設置される。リチウム複合化合物の前駆体は、投入部に設置される不図示の粉体投入装置から炉心管10の内部に投入され、炉心管10の内部を長手方向に流動して熱処理される。炉心管10の傾斜角度は、特に限定されないが、例えば、0.5~3°の範囲である。なお、本明細書においては、炉心管10の長手方向における投入部側を「上流」、回収部側を「下流」とする。
炉心管10は、不図示のモータ等の動力が駆動ギヤないしローラを介して連結される。炉心管10は、このようなモータ等の駆動により、円柱形状の中心軸を回転軸として回転するようになっている。そのため、投入部から炉心管10に投入された被処理物Maは、炉心管10が回転することにより、炉心管10の内部を転動しながら流下し、回収部において不図示の粉体回収装置により回収される。炉心管10の回転速度は、特に限定されないが、例えば、0.5~3rpmの範囲である。
炉心管10の母材は、クロムのような有害成分が排出されない、Ni、W、Mo、Ti等の金属、或いは、これらの金属を主成分とする合金製が好ましい。そして、炉心管において、前駆体(被処理物Ma)に接する部分である接粉部の最表層にアルミニウム酸化物が形成されており、その下地層にはアルミニウムと炉心管の母材との合金層が形成されている。
炉心管10の母材の最表層にアルミニウム酸化物が形成されていると、リチウム複合化合物の前駆体に含まれるリチウム成分と炉心管10とが反応し難くなるので、炉心管10の劣化や破損が生じる虞が低くなる。炉心管10の母材の最表層のアルミニウム酸化物は、アルミニウムで被膜した母材を空焼きし、被膜したアルミニウムを酸化させることで、容易に形成することができる。母材へアルミニウムを被膜させる方法は、例えば溶射でも良いし、例えば溶融メッキでもよい。炉心管10を製缶する前に、母材へアルミニウムを被膜すると、接合部分に母材が露出するため、製缶後に被膜することが好ましい。
ヒータ20は、炉心管10の胴周りに設置されている。ヒータ20は、炉心管10の長手方向の一部の区間であって、図2に一点鎖線で示される加熱帯域120を覆っており、加熱帯域120を目標温度まで昇温させることができる。また、ヒータ20は、加熱帯域120よりも上流側の区間であって、図2に二点鎖線で示される所定距離の予熱帯域110を、目標温度よりも低い温度に予熱する。そのため、ヒータ20が稼働している炉心管10にリチウム複合化合物の前駆体が投入されると、前駆体は、予熱帯域110で予熱された後に加熱帯域120で目標温度まで加熱されて転動しながら熱処理される。但し、ヒータ20は、加熱帯域120について均一な熱処理を行える限り、配置位置や機数は特に限定されない。ヒータ20は、急激な熱処理が進まないように予熱帯域110が確保されていれば、一個所に集約して配置してもよいし、複数個所に分けて配置してもよい。
第1給気管30は、炉心管10の内部に不図示のガス源から酸化性ガスを給気する第1給気系統を構成しており、被処理物Maを熱処理するときに、炉心管10の内周面側に向けて酸化性ガスを噴射する。第1給気管30は、炉心管10の内部に長手方向に沿って配置されており、炉心管10の下流側から上流側まで略全長にわたっている。第1給気管30は、炉心管10の長手方向に沿って配列され、第1給気管30から分岐し、分岐した先端で開口している複数の噴射口32を有している。噴射口32のそれぞれは、不図示のガス源から圧送される酸化性ガスを、炉心管10の内側に向かってシャワー状に噴射することができる。すなわち、第1給気系統により、転動しつつ熱処理されている前駆体に酸化性ガスが吹き付けられることで、前駆体に酸素が直接的に供給され、酸化反応が効率的に促進されるようになっている。また、前駆体から発生した炭酸ガスが酸化性ガスによって舞い上げられて、前駆体の近傍から迅速に排除されるようになっている。つまり、前駆体から発生して炉心管10内を滞留している炭酸ガスが前駆体と再反応し、炭酸リチウムが再び生成してリチウム複合化合物の生成を阻害するのが防止される。噴射口32の開口方向は、鉛直下方側(炉心管の径方向)でも良いし、第1給気管30の円周方向でも良いが、円周方向に噴射することで炉内の気流が旋回流となり、前駆体への酸素供給と、滞留している炭酸ガスの排出が効率的に行えるので、噴射口32の開口方向を第1給気管30の円周方向とすることが好ましい。
第1給気管30は、酸素の給気と炭酸ガスの排気とを効率的に行うと共に、被処理物の粉末の飛散を防止する観点から、酸化性ガスの吹き付け量や吹き付け角度や酸素濃度が調節可能に設けられることが好ましい。例えば、吹き付け量は、第1給気系統のガス流量を調整したり、噴射口32を開閉自在に設け、噴射口32の開口数を調整したりすることにより調節することができる。また、吹き付け角度は、第1給気管30を中心軸を回転軸として回動自在に設けることにより調節することができる。例えば、炉心管10の回転方向に対して順方向又は逆方向に0°を超え45°以下程度の角度にして噴射させてよい。また、吹き付け角度は、第1給気管30を炉心管10の内部で水平方向等に移動させることにより調節することができる。例えば、第1給気管30を炉心管10の中心軸から偏心した位置に静止させて噴射させてもよい。また、酸素濃度については、炉心管10の入口若しくは出口付近、或いは任意の場所に酸素濃度検知手段を設け、検知した酸素濃度が規定値になるように酸素量を監視制御することにより調節することができる。そして、これらの吹き付け量、吹き付け角度、酸素濃度を適宜組み合わせて調節することもできる。なお、酸素濃度検知手段に代えて、或いは併用して二酸化炭素濃度検知手段を設け、検知した二酸化炭素濃度が規定値になるように酸素量を監視制御することにより調節することもできる。
第1給気管30は炉心管10の内部で脚34により保持されている。脚34と炉心管10との接触部の円周側近傍に丸棒などを介在させ、脚34と炉心管10とを固着しないで周方向で拘束することもできる。これにより、炉心管10の駆動力を第1給気管30に伝達することができ、第1給気管と炉心管10とを同期して回転することができる。この丸棒などは脚34の炉心管の軸方向を拘束せず、円周方向のみを拘束し、なおかつ、脚34と炉心管10を接合しないことで、第1給気管30を炉心管10から容易に取り外すことが可能となり、炉心管10の内部の清掃やメンテナンス時の作業性を向上させ、ひいては生産性を向上させることができる。
第2給気管40は、炉心管10の内部に不図示のガス源から酸化性ガスを給気する第2給気系統を構成しており、被処理物Maを熱処理するときに、炉心管10の内部に炉心管10の軸方向に向けて酸化性ガスの気流を発生させる。酸化性ガスは、炉心管10の上流側から下流側に向けて流しても良いが、炉心管10の下流側から上流側に向けて流すことが好ましい。第2給気管40は、炉心管10の内部の加熱帯域120よりも下流側に配置されており、炉心管10の上流側に向かって開口している。また、第2給気管40は、軸方向から見て、第1給気管よりも径方向外側に位置しており、第1給気管30よりも径方向外側の空間に開口している。第2給気管40は、第1給気管30の径方向外側に略水平方向に酸化性ガスを流し、酸化性ガスは、加熱帯域120や予熱帯域110を通過した後に、炉心管10の上流側に設けられた不図示の排気口から外部に排気される。すなわち、第2給気系統により、炉心管10の内部に酸化性ガスの気流が形成されることで、熱処理によって前駆体から発生した炭酸ガスが酸化性ガスと共に気流に乗って排気されるようになっている。第2給気系統による酸化性ガスの気流が、前駆体が流下する方向に対向する流れであると、炭酸ガスの濃度が炉心管10の下流側ほど低くなるため、下流側で熱処理を終える被処理物Maの炭素混入量を確実に低減させることができる。なお、第2給気管40による酸化性ガスの給気量や給気方向等も適宜調節することができる。
第1給気系統や第2給気系統が給気する酸化性ガスとしては、酸素元素との反応を促進するガスであって酸素ガス、酸素濃縮空気等が用いられる。第1給気系統や第2給気系統が給気する酸化性ガスは、酸素濃度が90%以上であることが好ましく、酸素濃度が95%以上であることがより好ましく、酸素濃度が100%であることが好ましい。
リフター50は、炉心管10の内周面に設けられている。リフター50は、炉心管10の内周面の周方向の一部から内側に向けて突出しており、炉心管10の回転に伴って被処理物Maをかき上げて攪拌する。すなわち、リフター50によって攪拌されることにより、前駆体の粉末中の表面粉と底部粉とが入れ替わりながら流動し、酸素との接触確率やその均一性が高められると共に、前駆体から発生した炭酸ガスが粉末中の粒子間隙から効率的に排除される。そのため、第1給気系統や第2給気系統が給気する酸化性ガスの下でリフター50が前駆体を攪拌することにより、酸素の給気と炭酸ガスの排気とが効果的に進み、リチウム複合化合物を生成する固相反応が大きく促進される。
リフター50は、適宜の形状及び個数で設けることができる。リフター50は、例えば、炉心管10の長手方向に延びる羽根状、突条状、パイプ状、角柱状等に設け、炉心管10の周方向に対しては適宜の間隔で複数配設してよい。リフター50は、炉心管10の長手方向について、隙間無く連続していてもよいし、隙間を空けて断続していてもよい。
リフター50は、炉心管10の内部の全長にわたって設けられてもよいが、炉心管10の内周面のうち、熱処理においてヒータ20により目標熱処理温度で直接的に加熱される帯域(加熱帯域120)のみに備えられ、加熱帯域120よりも上流側や下流側には備えられないことが好ましい。加熱帯域120よりも上流側の予熱帯域110等では、炭酸ガスの発生が著しく、このような領域で前駆体の粉末を攪拌すると、前駆体と炭酸ガスとが反応して炭酸リチウムが生成し、リチウム複合化合物の形成反応が妨げられる虞がある。これに対して、リフター50を加熱帯域120のみに備えても、固相反応を十分に促進させることが可能である一方で、加熱帯域120よりも上流側や下流側に備えないことにより、必要以上に攪拌された前駆体の微粉が酸化性ガスの気流と共に排出されて回収率が低下する事態を抑制することができる。
ロータリーキルン1は、炉心管10内の雰囲気ガスを排気するための排気口を、炉心管10の上流側の側面に有することが好ましい。排気口が、炉心管10の上面側では無く、側面に設けられていると、比重が高い炭酸ガスを、酸化性ガスの気流に乗せて確実に炉心管10から排出させることができる。排気口を設ける位置は、より具体的には、炉心管10の内部の上流側の内側面であることが好ましく、内側面のうち炉心管10の回転軸よりも高さが低い下半部に位置することがより好ましい。
以上のロータリーキルン1によると、酸素の給気、炭酸ガスの排気及び前駆体の給粉が連続的に実施されるため、前駆体の熱処理を短時間で行うことができる。特に、酸素の給気は、閉鎖空間を形成している炉心管10に対して行われるため、開放空間で熱処理を行う搬送炉等と比較して、低コストで行うことができる。また、第1給気系統は、前駆体に直接的に酸化性ガスを吹き付けるため、高濃度の酸素を前駆体に供給することができるし、前駆体から発生した炭酸ガスを舞い上げて、流動している前駆体から確実に分離排除することができる。また、第2給気系統は、炉心管10の内部で上方に舞い上げられた炭酸ガスを速やかに炉外に排気するため、熱処理された前駆体が炭酸ガスに接触するのを防止することができる。すなわち、第1給気系統のみでは、前駆体から発生した炭酸ガスが炉心管10から排出されずに滞留し、第2給気系統のみでは、前駆体の粉末中の粒子間隙に滞留している炭酸ガスが排除され難い。第1給気系統と第2給気系統とを併用すると、酸素の給気と炭酸ガスの排気の循環が効率的に継続され、結晶の欠陥や不純物が少ない熱処理物を得ることができる。
(焼成工程)
次に、焼成工程S2の詳細について説明する。
焼成工程S2は、図1に示すように、第1前駆体を形成する第1熱処理工程S21と、第2前駆体を形成する第2熱処理工程S22と、仕上げの熱処理である第3熱処理工程S23と、を有することが好ましい。図2に示す構成のロータリーキルン1は、これらの熱処理工程のうち、いずれの熱処理工程において使用してもよいが、第2熱処理工程S22及び第3熱処理工程S23のうちの少なくとも一方において使用することが好ましく、第2熱処理工程S22において使用することがより好ましい。
[第1熱処理工程S21]
第1熱処理工程S21では、混合工程S1で得られた混合物を200℃以上かつ40℃以下の熱処理温度で、0.5時間以上かつ5時間以下にわたって熱処理することで第1前駆体を得る。第1熱処理工程S21は、混合工程S1で得られた混合物から、正極活物質の合成反応を妨げる水分等のような気化性が高い成分を除去することを主な目的として行われる。この工程では、炭酸リチウム等の原料の熱分解や不純物の燃焼等に伴って発生した炭酸ガス等が、水分と共に混合物から排除される。
第1熱処理工程S21は、適宜の熱処理装置を用いて実施することができる。具体的には、例えば、ローラーハースキルン、トンネル炉、プッシャー炉、ロータリーキルン、バッチ炉等を用いることができる。なお、第2熱処理工程S22、第3熱処理工程S23においてロータリーキルン1を用いない場合は、上記ローラーハースキルン、トンネル炉等を用いることができる。
[第2熱処理工程]
第2熱処理工程S22では、第1熱処理工程S21で得た第1前駆体を450℃以上かつ900℃以下の熱処理温度で、0.1時間以上かつ50時間以下にわたって熱処理することで第2前駆体を得る。第2熱処理工程S22は、第1前駆体中のニッケルを2価から3価へと酸化し、層状構造を有するリチウム複合化合物を結晶化させることを主な目的として行われる。すなわち、この工程は、炭酸リチウム(LiCO)と、M´の酸化物(M´O)とを反応物として、第1前駆体中のニッケルの酸化反応を伴って層状構造の形成を行う熱処理工程である。第2熱処理工程S22において、熱処理温度が450℃未満であると、固相反応の反応速度が遅くなって炭酸リチウムが過剰に残留し、第3熱処理工程S23において炭酸ガスの発生量が増大する虞がある。一方、熱処理温度が900℃を超えると、この工程でリチウム複合化合物の粒成長が過剰に進行し、高容量の正極活物質が得られなくなる虞が高い。これに対して、前記の熱処理温度であれば、固相反応が全体で進んでいながら、粗大な結晶粒が少ない第2前駆体を得ることができる。なお、第2熱処理工程S22で進行する炭酸リチウムの反応は、次の式(3)で表される。
LiCO+2M´O+0.5O→2LiM´O+CO・・・(3)
第2熱処理工程S22における熱処理温度は、600℃以上とすることがより好ましい。600℃以上であれば、前記式(3)の反応効率がより向上する。700℃以上であれば、反応効率がさらに向上し、さらに好ましい。また、第2熱処理工程S22における熱処理温度は、800℃以下とすることがより好ましい。800℃以下であれば、結晶粒がより粗大化し難くなる。
第2熱処理工程S22における熱処理時間は、0.1時間以上かつ5時間以下とすることがより好ましい。熱処理時間を5時間以下とすると、正極活物質の製造に要する時間が短縮され、生産性を向上させることができる。
ニッケルの割合が70原子%を超える正極活物質に高容量を発現させるためには、特に、ニッケルの価数を2価から3価へ十分に酸化させることが肝要である。2価のニッケルは、層状構造を有するLiM´Oにおいて容易にリチウムサイトに置換してしまい、正極活物質の容量を低下させる原因となるからである。そのため、第2熱処理工程S22では、第1前駆体を酸素が十分に給気される酸化性雰囲気下で熱処理し、ニッケルの価数を確実に2価から3価へ変化させることが好ましい。また、前記式(3)で発生する炭酸ガスは、式(3)の反応の進行を阻害し、正極活物質の容量を低下させる原因となる。そのため、第2熱処理工程S22では、炭酸ガスが滞留し難い気流下で熱処理することが好ましい。
第2熱処理工程S22は、具体的には、酸素濃度が90%以上の酸化性雰囲気とすることが好ましく、酸素濃度が95%以上の酸化性雰囲気とすることがより好ましく、酸素濃度が100%の酸化性雰囲気とすることがさらに好ましい。また、第2熱処理工程S2は、酸化性ガスによる気流下で行うことが好ましい。酸素濃度が高い酸化性ガスの気流下で熱処理を行うと、ニッケルを確実に酸化させることができるし、前記式(3)で発生する炭酸ガスを確実に排除することができる。
第2熱処理工程S22は、第1前駆体を転動させつつ熱処理を行うことが好ましい。第1前駆体を転動させながら熱処理することで、粉末状の第1前駆体と酸素との接触確率を高くすることができ、ニッケル等を十分に酸化させることができる。また、粉末状の第1前駆体が転動することにより、発生した炭酸ガスが粒子間隙に滞留し難くなり、炭酸ガスを効率的に排除して、固相反応を促進させることができる。
第2熱処理工程S22は、図2に示す構成のロータリーキルン1を用いて実施する場合、酸化性雰囲気に調整した炉心管10に第1前駆体を投入し、第1給気系統、第2給気系統及びヒータ20を作動させて、炉心管10を所定の回転速度で回転させながら行う。すなわち、酸素濃度90%以上の酸素雰囲気に調整したロータリーキルン1の炉心管10内で上流側から下流側に向けて転動しつつ流下する第1前駆体に第1給気系統により酸化性ガスを吹き付けると共に、第1前駆体から発生する炭酸ガスを第2給気系統による酸化性ガスの気流で排気しながら、所定の熱処理温度及び熱処理時間で熱処理を行う。第1前駆体から発生する炭酸ガスは、炉心管10内の上流側の側面に設けた排気口を通じて炉心管10の軸方向から排出することが好ましい。また、第1給気系統による酸化性ガスの吹き付け量、吹き付け角度及び酸素濃度のうちの少なくとも一つを、第1前駆体の投入量、熱処理温度、雰囲気の酸素濃度、炉心管10の回転速度等に応じて調節して熱処理を行うことが好ましい。但し、第2熱処理工程S22は、上述の通り第1前駆体から発生する大量の炭酸ガスが反応の阻害要因となることを抑制することを主な目的としている。出来るだけこの第2熱処理工程S22で炭酸ガスを出し切り、炉心管10内からも効率的に排出しておくことが、一連の工程を進める上で好ましい。このようなことから、第2熱処理工程S22は、炭酸ガスの排出を行う第2給気系統の重要性が高い工程である。よって、第2熱処理工程S22では、少なくとも第2給気管40による酸化性ガスの給気量、吹き出しの圧力等を調節することが好ましく、これら第2給気系統の調節と第1給気系統の調節の両方を行うことがより好ましい。
[第3熱処理工程]
第3熱処理工程S23では、第2熱処理工程S22で得た第2前駆体を700℃以上かつ900℃以下の熱処理温度で熱処理することで層状構造を有するリチウム複合化合物を得る。第3熱処理工程S23は、第2前駆体中のニッケルを2価から3価へと十分に酸化させると共に、層状構造を有するリチウム複合化合物の結晶粒を成長させることを主な目的として行われる。すなわち、この工程は、第2前駆体中のニッケルの酸化反応とリチウム複合化合物の結晶粒の粒成長を行う熱処理工程である。
第3熱処理工程S23は、第2前駆体を静置させて熱処理を行ってもよいし、転動させつつ熱処理を行ってもよい。第2前駆体を転動させながら熱処理することで、粉末状の第2前駆体と酸素との接触確率を高くすることができ、ニッケル等を十分に酸化させることができる。また、粉末状の第2前駆体が転動することにより、リチウム複合化合物がより均一に焼成される利点がある。
第3熱処理工程S23は、第2熱処理工程S22の終了後に、第2熱処理工程S22で使用した雰囲気ガスを完全に排気し、新たな雰囲気ガスを導入して行うことが好ましい。また、第2熱処理工程S22及び第3熱処理工程S23の両方を、図2に示す構成のロータリーキルン1を用いて実施する場合、単一機のロータリーキルン1を用いて第2熱処理工程S22を行った後、同一のロータリーキルン1を用いて第3熱処理工程S23を行ってもよいし、複数機のロータリーキルン1を用いて第2熱処理工程S22及び第3熱処理工程S23のそれぞれを順に行ってもよいし、単一機のロータリーキルン1において第2熱処理工程S22及び第3熱処理工程S23を一時に連続的に行ってもよい。
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれに限定されるものではない。
(実施例1)
正極活物質の出発原料として、炭酸リチウム、水酸化ニッケル、炭酸コバルト、炭酸マンガンを用意した。これら出発原料を、原子比でLi:Ni:Co:Mnが、1.04:0.80:0.15:0.05となるように秤量し、混合工程S1を実施した。具体的には、出発原料の総重量が20mass%となるようにイオン交換水を加えて混合し、ビーズミルにて粉砕混合を実施した。得られた固液混合物は、スプレードライヤを用いて乾燥し、原料混合粉を得た。
次に、得られた原料混合粉をアルミナ製の焼成容器に充填し、ローラーハースキルンにより大気雰囲気下において360℃で1時間の熱処理(第1熱処理工程S21)を行って第1前駆体を得た。この熱処理により、原料混合粉が吸湿した水分の除去だけでなく、水酸化ニッケルの熱分解と、各炭酸塩の部分的な熱分解とがなされ、ある程度の炭酸ガス(CO)が除去された。
次に、得られた第1前駆体を図2に示すロータリーキルン1に投入し、回転している炉心管10内で、第1給気管30と第2給気管40による給気を行いながら、650℃で0.9時間の熱処理を行った後に、700℃で3.5時間の熱処理を行った。即ち、第2熱処理工程S22を行い、第2前駆体を得た。この時、ロータリーキルン1では炉心管10の、管全長L1=3500mm、管内径D1=214mm、容積V1=0.126m、第1給気管30の管全長L2=3500mm、管外径D2=120mm、容積V2=0.04m、V2/V1=0.32(32%)、D2/D1=0.56とした。また炉心管10の内層(内殻)は金属ニッケル材製、外層(外殻)はステンレス材製とし、第1給気管30の内層をステンレス材製、外層を金属ニッケル材製とした。そして、炉心管10の内層と第1給気管30の外層に純アルミニウムを溶射した後に、アルゴンガス中で空焼きした後、酸素を導入して表面酸化させることで、被熱処理部Maの接粉部の最表層にアルミニウム酸化物を形成し、その下地層にはアルミニウムと母材であるニッケルとの合金層を形成させた。
次に、この第2前駆体を、図3に示すロータリーキルン1Bに投入して840℃で0.7時間の熱処理(第3熱処理工程S23)を行って、Li1.0Ni0.80Co0.15Mn0.05の組成を有するリチウム複合化合物(正極活物質)を得た。この時、ロータリーキルン1Bではアルミナ製の炉心管10Bを用いた。そして、得られた正極活物質中に残留している未反応の炭酸リチウム量及び水酸化リチウム量と、正極活物質の比表面積とを測定した。測定結果を表1に示す。
続いて、得られた正極活物質を正極材料として、以下の手順でリチウム二次電池を作製した。はじめに、正極活物質と、結着剤と、導電材とを混合し、正極合剤スラリーを調製した。そして、調製した正極合剤スラリーを、正極集電体である厚さ20μmのアルミ箔に塗布し、120℃で乾燥させた後、電極密度が2.0g/cmとなるようにプレスで圧縮成形し、これを直径15mmの円盤状に打ち抜いて正極を作製した。また、負極材料として金属リチウムを用いて負極を作製した。そして、作製した正極及び負極と、非水電解液とを用いて、リチウム二次電池を作製した。非水電解液としては、体積比が3:7となるようにエチレンカーボネートとジメチルカーボネートとを混合した溶媒に、濃度が1.0mol/LとなるようにLiPF6を溶解させた溶液を用いた。
次に、作製したリチウム二次電池について、以下の手順で初回の放電容量を測定した。はじめに、充電電流を0.2CAとして、充電終止電圧4.3Vまで定電流、定電圧で充電した。その後、放電電流を0.2CAとして、放電終止電圧2.5Vまで定電流で放電し、そのときの放電電流量から放電容量を求めた。その結果を表1に示す。
[炉心管重量の減少率の測定]
同様の要領で得られた第1前駆体を用いて、実施例1に示した第2熱処理工程S22の焼成を行った後、炉心管の重量を測定した。昇温と降温を含む工程を1サイクルとして繰り返し、各サイクル終了後の炉心管の重量を測定した。すなわち、サイクル終了後の炉心管の重量を使用前の炉心管の重量で除算した値を重量の減少率(減肉量)として耐久性の評価を行った。サイクル300回後と500回後の結果を表1に示す。
(比較例1)
同様の要領で得られた第1前駆体を図2に示すロータリーキルン1に投入し、650℃で3.5時間の熱処理、即ち、第2熱処理工程S22を行い、第2前駆体を得た。
次に、この第2前駆体を、ロータリーキルン1Bに投入して840℃で0.7時間の熱処理(第3熱処理工程S23)を行って、Li1.0Ni0.80Co0.15Mn0.05の組成を有するリチウム複合化合物(正極活物質)を得た。そして、得られた正極活物質中に残留している未反応の炭酸リチウム量及び水酸化リチウム量と、正極活物質の比表面積とを測定した。さらに、リチウム二次電池を作成し、放電容量を求めた。それら結果を表1に示す。
実施例1と比較例1の違いは、第2熱処理工程S22の温度と時間の違いである。
(比較例2)
同様に得られた第1前駆体を図2に示すロータリーキルン1’に投入し、650℃で0.9時間の熱処理を行った後に、700℃で3.5時間の熱処理を行った。この時、ロータリーキルン1’は実施例と同じ寸法であり、炉心管10の内層は金属ニッケル材製、外層はステンレス材製とし、第1給気管30の内層をステンレス材製、外層を金属ニッケル材製とし、被熱処理部Maの接粉部をニッケル材で占められる構成とした。同様に、昇温と降温を含めた工程を1サイクルとして繰り返し、炉心管の重量の減少率を測定した。サイクル300回後と500回後の結果を表1に示す。
Figure 2022146357000002
実施例1と比較例1では、実施例1の第2熱処理工程S22にて、700℃以上で2時間以上保持する工程(段階)が含まれることにより、残留未反応炭酸リチウムの量が少なく固相反応が進んでいることを示している。
また、実施例1では、炉心管の接粉部をアルミ酸化物で占める構造とすることで、リチウム複合化合物の前駆体に含まれるリチウム成分と炉心管とが反応し難くなって、炉心管の減肉量を軽減でき、耐久性を向上させていることがわかる。その結果、炉心管の長寿命化により低い生産コストに寄与することができる。
S1 混合工程
S2 焼成工程
S21 第1熱処理工程
S22 第2熱処理工程
S23 第3熱処理工程
1、1B ロータリーキルン(焼成炉)
10、10B 炉心管
20、20B ヒータ
30、30B 第1給気管
32 噴射口
34 脚
40、40B第2給気管
50、50B リフター
110、110B 予熱帯域
120、120B 加熱帯域
Ma 被処理物


Claims (4)

  1. リチウム化合物と下記式(1)中のLi以外の金属元素を含む化合物とを混合する混合工程と、
    前記混合工程を経て得られた前駆体を焼成して下記(1)で表されるリチウム複合化合物を得る焼成工程と、を有し、
    前記焼成工程は、前記前駆体を焼成炉の炉心管内で転動させつつ熱処理を行う熱処理工程を少なくとも有し、
    前記炉心管において、接粉部の最表層にアルミニウム酸化物が形成されており、その下地層にはアルミニウムと前記炉心管の母材との合金層が形成されている
    ことを特徴とするリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
    Li1+a M1O2+α ・・・(1)
    (但し、前記式(1)中、M1は、Li以外の金属元素であって少なくともNiを含み、M1における前記Niの割合が70原子%以上、a及びαは、-0.1≦a≦0.2、-0.2≦α≦0.2、を満たす数である。)
  2. 前記焼成炉は、前記炉心管の内周面側に向けて酸化性ガスを噴射する第1給気管と、当該炉心管の軸方向に向けて酸化性ガスを流す第2給気管とを備え、
    前記第1給気管には、前記第1給気管の円周方向を開口方向とする複数の噴射口を有することを特徴とする請求項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法
  3. 前記炉心管において、前記第1給気管を保持する脚が、前記炉心管とは接合されていないことを特徴とする請求項2に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
  4. 前記熱処理工程において、700℃以上で2時間以上保持する工程を含む
    ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。


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