以下に、本発明を実施するための形態について、図面を用いて説明する。
《第1の実施形態》
(ヘッドレスト装置20の概略構成について)
始めに、本発明の第1の実施形態に係るヘッドレスト装置20の構成について、図1~図14を用いて説明する。なお、以下の説明において、前後上下左右等の各方向を示す場合には、各図中に示されたそれぞれの方向を指すものとする。各図中における前方向は、自動車の進行方向を表している。また、以下の説明において、具体的な参照図を示さない場合、或いは参照図に符号がない場合には、図1~図14のいずれかの図を適宜参照するものとする。
図1に示すように、本実施形態に係るヘッドレスト装置20は、自動車の左後部側座席を成すシート1に適用されている。上記シート1は、着座乗員の背凭れ部となるシートバック10と、着座部となる不図示のシートクッションと、頭凭れ部となるヘッドレスト21を備えたヘッドレスト装置20と、を有する。
ヘッドレスト装置20は、上記ヘッドレスト21と、ヘッドレスト21を下方から支持する左右一対の丸棒状の脚部を備えるヘッドレストステー22と、を有する。また、ヘッドレスト装置20は、図2~図3に示すように、ヘッドレスト21をシートバック10の上部の使用位置から前に倒して格納することが可能な回転機構23を有する。上記ヘッドレスト21は、シートバック10の上面よりも低い位置まで前に倒される構成とされる。
また、ヘッドレスト装置20は、ヘッドレスト21の回転を図2に示す使用位置にロックすることが可能なロック機構24を有する。また、ヘッドレスト装置20は、図5~図6に示すように、ヘッドレストステー22の各脚部の基端に装着された箱形の各樹脂カバー25を有する。
また、ヘッドレスト装置20は、図7~図8に示すように、ヘッドレスト21を前に倒した際にシートバック10の上部に形成されるバックパッド12の各通し孔12Aを下方から覆う形に展開される左右一対の各樹脂プレート26を有する。上記バックパッド12の各通し孔12Aは、図2~図3に示すように、ヘッドレスト21がシートバック10の上部の使用位置から前に倒される際にヘッドレストステー22の各脚部が通る通り道となるものである。
各通し孔12Aは、それぞれ、シートバック10の上部から前部にかけて連続的に延びる長孔形状に開口して形成されている。そして、図5~図6に示すように、これら通し孔12Aを下方から覆う左右一対の各樹脂プレート26は、それぞれ、シートバック10の内部に設けられる樹脂パネル14に一体成形されている。
各樹脂プレート26は、図5に示すように、それぞれ、ヘッドレスト21がシートバック10の上部の使用位置にある時には、ヘッドレストステー22の各脚部の基端に装着された箱形の各樹脂カバー25により、上向きに観音開き状に押し上げられた押上位置P1の状態に保持される。しかし、各樹脂プレート26は、図6に示すように、ヘッドレスト21が前に倒されることにより、各樹脂カバー25による下支え状態から外されて重力作用により水平状に倒された倒伏位置P2の状態に切り替えられる。
そして、それと共に、各樹脂プレート26は、図7に示すように、ヘッドレストステー22の各脚部と共に前倒れ回転した各樹脂カバー25により再び下方から支えられる状態となる。それにより、各樹脂プレート26は、それぞれ、バックパッド12の各通し孔12Aを下方から覆う倒伏位置P2にて強固に下支えされた状態となる。
その結果、バックパッド12の各通し孔12A内に外部から異物が入り込んだとしても、各樹脂プレート26による遮蔽によりシートバック10の内部への異物の侵入を適切に抑制することができる。ここで、各樹脂カバー25が、本発明の「下支え部」に相当する。また、各樹脂プレート26が、本発明の「覆い部」に相当する。以下、ヘッドレスト装置20の各部の具体的な構成について、シートバック10の構成と併せて詳しく説明する。
(シートバック10の各部の構成について)
先ず、シートバック10の具体的な構成について説明する。図1、図4~図5、図9等に示すように、シートバック10は、その内部骨格を成す金属製のバックフレーム11を有する。また、シートバック10は、バックフレーム11の前部にセットされて着座乗員の荷重を弾性的に支持する発泡ウレタン製のバックパッド12と、を有する。
また、シートバック10は、バックパッド12の表面全体に被せられてシートバック10の意匠面を成すファブリック製のバックカバー13を有する。また、シートバック10は、バックフレーム11の前側上部に組み付けられてバックパッド12の上部を裏側から面状に支持する樹脂パネル14を有する。
また、図4~図5に示すように、シートバック10は、樹脂パネル14の上部から前部にかけて形成される左右一対の各開口部14Aをそれぞれ左右両側から張り出して被覆するゴム板製の各ひれカバー15を有する。樹脂パネル14に形成される各開口部14Aは、それぞれ、バックパッド12に形成された各通し孔12Aと同様、ヘッドレスト21がシートバック10の上部の使用位置から前に倒される際にヘッドレストステー22の各脚部が通る通り道となるものである。
バックフレーム11は、シートバック10の外周部に沿って延びる正面視逆U字状に組まれた構成とされる。バックフレーム11は、図示は省略されているが、その左右両サイドの基端部がそれぞれリクライナを介して車両のフロアパネルに連結されている。それにより、バックフレーム11は、常時はフロアパネルに対する回転がロックされた状態に保持される構成とされる。
また、バックフレーム11は、図1に示すシートバック10の右肩口に設けられた解除レバーS1がユーザにより操作されることで、フロアパネルに対するロックが解除される構成とされる。この解除により、バックフレーム11は、フロアパネルに対してシート幅方向に延びる軸まわりに前後方向に背凭れ角度を変えられる状態に切り替えられる。
また、バックフレーム11は、解除レバーS1の操作により背凭れ角度を変えた後、解除レバーS1の操作が戻されることで、その変えられた背凭れ角度にロックされる。このような操作により、バックフレーム11は、フロアパネルに対する背凭れ角度を前後方向に自由に調節することができる構成とされる。
また、バックフレーム11は、上記解除レバーS1の操作の後、前方に大きく倒し込むことで、シートバック10をシートクッションの上部に畳み込んだ大倒し状態に切り替えられるようになっている。バックパッド12は、バックフレーム11全体を前方から広く包み込むように覆うことが可能なクッション形状に形成されている。
上記バックパッド12は、バックフレーム11に対して前方から組み付けられることで、バックフレーム11全体を前方から広く覆った状態にセットされる。また、バックパッド12は、その外周部が、バックフレーム11の各枠部を外周側から背裏面にかけてそれぞれ包み込む形にセットされる。
バックパッド12には、その上部の左右2箇所に、前述したヘッドレストステー22の各脚部の通し部となる各通し孔12Aが形成されている。各通し孔12Aは、それぞれ、バックパッド12の厚さ方向に貫通してバックパッド12の上部から前部にかけて連続的に延びる長孔形状に形成されている。
バックカバー13は、バックパッド12全体を前方から広く包み込むように覆うことが可能な面形状に形成されている。上記バックカバー13は、バックフレーム11の前部にセットされたバックパッド12に対して前方から被せられる形にセットされる。そして、バックカバー13は、その外周部がバックフレーム11の背裏側へと引き込まれて止着されることで、バックパッド12の表面全体に広く密着した状態に張設されている。
上記バックカバー13には、そのバックパッド12の各通し孔12A上に被せられる各部分に、各通し孔12Aの延びる方向に沿って筋状に切り込まれた各スリット13Aが形成されている。各スリット13Aは、それぞれ、ヘッドレストステー22の各脚部の直径よりも狭い切り込み幅に形成されている。
これらスリット13Aにより、バックパッド12の各通し孔12Aを通って移動するヘッドレストステー22の各脚部の移動が阻害されないようになっている。これらスリット13Aを有するバックカバー13による被覆により、バックパッド12の各通し孔12Aが外部に対して広く被覆され、各通し孔12Aの内部が外部から見えにくくなっている。
図4~図5に示すように、樹脂パネル14は、バックフレーム11の上枠部と左右両側の枠部とに跨る上部領域に前方から組み付けられている。それにより、樹脂パネル14は、バックフレーム11の上部領域に組み付けられるヘッドレスト装置20の回転機構23やロック機構24を前方から面状に被覆した状態にセットされる。
上記樹脂パネル14は、バックフレーム11の上部領域に前方から組み付けられることで、バックフレーム11の上部領域を前方から広く覆った状態にセットされる。また、樹脂パネル14は、その上縁と左右両縁とが、それぞれ、後方に折れ曲がって延びる形状とされ、バックフレーム11の上部領域を外周側からも覆った状態にセットされる。
上記樹脂パネル14には、その上部の左右2箇所に、前述したバックパッド12の各通し孔12Aと共に、ヘッドレストステー22の各脚部の通し部となる各開口部14Aが形成されている。各開口部14Aは、それぞれ、樹脂パネル14の厚さ方向に貫通して樹脂パネル14の上部から前部にかけて連続的に延びる長孔形状に形成されている。
左右一対の各ひれカバー15は、それぞれ、樹脂パネル14に形成された各開口部14Aに沿って延びる形に設けられている。詳しくは、各ひれカバー15は、樹脂パネル14に形成された各開口部14Aの左右両縁にそれぞれ結合されて、各開口部14Aの左右両縁から各開口部14A内にそれぞれ面状に張り出す形に設けられている。
各開口部14A内に張り出す左右一対の各ひれカバー15は、互いの間がバックカバー13に形成された各スリット13Aと同程度の細長い切れ込みを形成するようにシート幅方向に詰められた状態で設けられている。それにより、各ひれカバー15は、樹脂パネル14に形成された各開口部14Aが外部から見えにくくなるように被覆する。
また、各ひれカバー15は、バックパッド12の各通し孔12A内に外部から異物が入り込んだとしても、それらの弾発力により、樹脂パネル14の各開口部14A内に異物が侵入することを適切に抑制する。各ひれカバー15は、ヘッドレストステー22の各脚部が樹脂パネル14の各開口部14Aを通る移動により内側から押圧されることで柔軟に撓む弾性を備える構成とされる。そのため、各ひれカバー15が設けられていても、ヘッドレストステー22の各脚部の移動が阻害されないようになっている。
(ヘッドレスト装置20の各部の構成について)
次に、ヘッドレスト装置20の具体的な構成について説明する。図1~図2等に示すように、ヘッドレスト21は、不図示の発泡ウレタン製のヘッドレストパッドと、ヘッドレストパッドの表面に被せられてヘッドレスト21の意匠面を成すファブリック製のヘッドレストカバーと、を有する。
ヘッドレストステー22は、1本の金属製の丸棒部材が正面視逆U字状に曲げられて形成されている。上記ヘッドレストステー22は、その上枠部と左右両側の枠部とに跨る上部領域がヘッドレストパッド内に一体成形されることで、ヘッドレスト21と一体に形成されている。
図9~図11に示すように、回転機構23は、ヘッドレストステー22の各脚部を、バックフレーム11の上枠部に対して前倒し可能なように連結する構成とされる。具体的には、回転機構23は、ベース23Aと、固定ブラケット23Bと、回転軸23Cと、左右一対の回転プレート23Dと、前倒しスプリング23Eと、を有する。
ベース23Aは、バックフレーム11の上枠部の前面に沿って延びる形にプレス成形された金属板のプレス成形品から成る。上記ベース23Aは、バックフレーム11の上枠部の前面に当てられて一体的に結合されている。上記ベース23Aの左右2箇所には、シート幅方向に面を向ける形に前方に折り曲げられた板状の軸支部が形成されている。
固定ブラケット23Bは、平面視U字状に折れ曲がる形にプレス成形された金属板のプレス成型品から成る。上記固定ブラケット23Bは、そのU字の繋ぎ板部分がベース23Aの前面に当てられて一体的に結合されている。
上記固定ブラケット23Bの左右の両側板部分には、高さ方向に延びる形に貫通形成された長孔23B1が形成されている。これら長孔23B1には、後述するロック機構24のロックピン24Bがシート幅方向に貫通して挿通される。それにより、ロックピン24Bが、固定ブラケット23Bの左右の両側板部分に対して、各長孔23B1に沿って高さ方向に移動可能なように設けられるようになっている。
回転軸23Cは、シート幅方向にストレートに延びる1本の金属製の丸棒部材から成る。上記回転軸23Cは、ベース23Aの各軸支部と固定ブラケット23Bの左右の各側板部分とにそれぞれシート幅方向に貫通するように差し込まれた状態にセットされる。
上記回転軸23Cは、ベース23Aの各軸支部と固定ブラケット23Bの左右の各側板部分とに対して、それぞれ、相対回転可能なように軸支された状態にセットされる。上記回転軸23Cは、ベース23Aの各軸支部に対して、シート幅方向に抜け止めされた状態に組み付けられている。
左右一対の回転プレート23Dは、ヘッドレストステー22の各脚部の基端にそれぞれ当てられて一体的に結合されている。各回転プレート23Dは、それぞれ、平面視U字状に折れ曲がる形にプレス成形された金属板のプレス成型品から成る。
各回転プレート23Dは、ベース23Aの各軸支部と固定ブラケット23Bの左右の各側板部分との間で、これらに貫通して差し込まれる回転軸23Cが両側板部分に貫通して差し込まれて、回転軸23Cと一体的に結合されている。上記結合により、ヘッドレストステー22が、ベース23Aに対して、回転軸23Cを中心に回転可能なように連結されている。
前倒しスプリング23Eは、コイル状に巻かれたトーションスプリングから成る。上記前倒しスプリング23Eは、固定ブラケット23Bの左右の各側板部分の間で、これらに貫通して差し込まれる回転軸23Cがそのコイル状の巻き部に通されてセットされている。
上記前倒しスプリング23Eは、その一端が固定ブラケット23Bに掛着され、他端が回転軸23Cと一体に結合される後述するロック機構24の右側の回転カム24Aに掛着されている。それにより、前倒しスプリング23Eは、右側の回転カム24Aを介して回転軸23Cに対し、常時、前回り方向の回転付勢力を掛けた状態とされる。そしてそれにより、ヘッドレスト21には、常時、ベース23Aに対して、回転軸23Cを中心に前倒れ回転する方向の付勢力が掛けられた状態とされる。
ロック機構24は、上記回転機構23によるヘッドレスト21の回転をロックする構成とされる。具体的には、ロック機構24は、左右一対の回転カム24Aと、ロックピン24Bと、左右一対のロックスプリング24Cと、操作ブラケット24Dと、を有する。
左右一対の回転カム24Aは、互いにシート幅方向に対向配置される金属板のプレス成型品から成る。各回転カム24Aは、上述した固定ブラケット23Bの左右の各側板部分の間で、これらに貫通して差し込まれる回転軸23Cがシート幅方向に貫通して差し込まれて、回転軸23Cと一体的に結合されている。上記結合により、各回転カム24Aは、ベース23Aに対して回転軸23Cを中心に回転可能なように連結されている。
すなわち、各回転カム24Aは、回転軸23C及びヘッドレストステー22と一体的となってベース23Aに対して回転軸23Cを中心に回転可能なように連結されている。各回転カム24Aは、それらの外周部に、半径方向の外側に突出する係止片24A1と内側に窪む凹部24A2とを回転方向に並んで有する。
各係止片24A1は、図12に示すように、ヘッドレスト21が使用位置(図2参照)にある際に、それらの図示反時計回り側の側面にロックピン24Bが下方から押し当てられる部位とされる。上記押し当てにより、各回転カム24Aの回転軸23Cを中心とする図示反時計回りの回転、すなわちヘッドレスト21の前倒れ回転が規制される。
上記ヘッドレスト21は、図2に示す使用位置では、ヘッドレストステー22の各脚部の基端に結合された各回転プレート23D(図11等参照)の背面が、それぞれ、ベース23Aの前面に当てられることにより、後倒し方向の回転が規制された状態とされる。図14に示すように、各回転カム24Aの凹部24A2は、ヘッドレスト21が前に倒されて格納位置(図3参照)の状態とされた際に、それらの窪みの内部にロックピン24Bが下方から押し込まれる部位とされる。
上記押し込みにより、各回転カム24Aの回転軸23Cを中心とする双方向の回転が規制される。それにより、ヘッドレスト21が前倒しされた格納位置にて保持される。上記各凹部24A2は、それらの窪みの斜面が、各係止片24A1のヘッドレスト21を使用位置(図2参照)に係止する反時計回り側の側面の立ち上がり勾配よりも緩やかな形状とされる。
上記構成により、各凹部24A2は、それらの内部に押し込まれたロックピン24Bを回転方向にガタ付かせないように保持する一方、ユーザがヘッドレスト21を手動で引き上げる操作によりロックピン24Bをそれらの内部から引き抜く操作を許容するようになっている。ロックピン24Bは、シート幅方向にストレートに延びる1本の金属製の丸棒部材から成る。
上記ロックピン24Bは、固定ブラケット23Bの左右の両側板部分に形成された各長孔23B1内にシート幅方向に貫通するように差し込まれた状態にセットされる。それにより、ロックピン24Bは、固定ブラケット23Bの左右の両側板部分に対して、各長孔23B1に沿って高さ方向に移動可能なように設けられる。
操作ブラケット24Dは、正面視U字状を成す金属板の左右両辺が後方に折り曲げられる形にプレス成形されたプレス成型品から成る。上記操作ブラケット24Dは、その左右両辺の各下部が、固定ブラケット23Bの左右の各側板部分の間で、各長孔23B1に貫通して差し込まれるロックピン24Bがシート幅方向に貫通して差し込まれた状態としてセットされている。
それにより、操作ブラケット24Dは、ロックピン24Bと一体的となって、固定ブラケット23Bに対して各長孔23B1に沿って高さ方向に移動可能なように設けられた状態とされる。上記操作ブラケット24Dは、固定ブラケット23Bとの間に掛着された左右一対のロックスプリング24Cにより、常時、固定ブラケット23Bに対して上方に向かって移動する付勢力が掛けられた状態とされる。
それにより、ロックスプリング24Cが、常時、固定ブラケット23Bに対して、各長孔23B1の上端に向かって移動する付勢力が掛けられて、各回転カム24Aの外周面に押し付けられた状態に保持される構成とされる。各ロックスプリング24Cは、それぞれ、コイル状に巻かれたトーションスプリングから成る。
各ロックスプリング24Cは、固定ブラケット23Bの左右の各側板部分の間にそれらのコイル状に巻かれた巻部が横並び状に並ぶようにセットされる。そして、各ロックスプリング24Cは、それらのシート幅方向の内側の端部が、固定ブラケット23Bにそれぞれ掛着され、外側の端部が、操作ブラケット24Dの左右各辺の上端に形成された各折曲げ部24D2にそれぞれ掛着されている。
上記各ロックスプリング24Cの付勢力により、ロックピン24Bは、ヘッドレスト21が使用位置(図2参照)にある際には、図12で前述した各回転カム24Aの係止片24A1の図示反時計回り側の側面に下方から押し当てられる。それにより、ロックピン24Bは、各回転カム24Aの図示反時計回りの回転を規制して、ヘッドレスト21を使用位置(図2参照)に保持する。
上記ロックピン24Bは、図1に示すシートバック10の左肩口に設けられた解除ストラップS2がユーザにより操作されることで、図12に示すロック状態から図13に示す状態へと引き下げられて解除される。具体的には、図11に示すように、ロックピン24Bと一体を成す操作ブラケット24Dの下辺中央の掛部24D1には、上記解除ストラップS2と繋がれた操作ケーブルCAが接続されている。
それにより、ロックピン24Bは、上記解除ストラップS2が引かれる操作により、図12~図13に示すように、操作ブラケット24Dを介して各ロックスプリング24Cの付勢力に抗して下方へと引かれるようになっている。また、ロックピン24Bは、ヘッドレスト21が前に倒された後、解除ストラップS2の操作が解かれることにより、図14に示すように、再び付勢により上方へと移動して、各回転カム24Aの凹部24A2内に入り込むようになっている。
図11に示すように、各樹脂カバー25は、それぞれ、ヘッドレストステー22の各脚部の基端に前後から挟み込み状に装着される2つのピースにより構成される。各樹脂カバー25は、ヘッドレストステー22の各脚部の基端を箱形に覆う構成とされる。詳しくは、各樹脂カバー25は、ヘッドレストステー22の各脚部の基端に結合される各回転プレート23Dとこれらに横から通される回転軸23Cとの連結部をそれぞれ外部に対して覆う構成とされる。
各樹脂カバー25は、各回転プレート23Dのベース23Aの前面に当てられる背面部分は覆わず、背面部分については周縁部のみを覆う構成とされる。それにより、各樹脂カバー25は、各回転プレート23Dのベース23Aの前面に当てられる背面部分を残して、ヘッドレストステー22の各脚部の回転軸23Cとの連結部を外部に対して覆うことができる構成とされる。
図5~図6に示すように、左右一対の各樹脂プレート26は、それぞれ、樹脂パネル14の各開口部14Aに臨む左右両側の縁部に一体成形されて形成されている。詳しくは、各樹脂プレート26は、各開口部14Aのうち、樹脂パネル14の上縁に沿って前後方向に延びる上部開口領域に臨む左右両側の縁部に一体成形されて形成されている。
より詳しくは、各樹脂プレート26は、各開口部14Aの上部開口領域に臨む左右両側の縁部の下縁部に対し、それぞれ、インテグラルヒンジ26Aを介して高さ方向に回転可能なように一体成形されて形成されている。各インテグラルヒンジ26Aは、各開口部14Aの上部開口領域の左右両側の縁部に沿って前後方向に連続的に延びる形に形成されている。
各樹脂プレート26は、ヘッドレスト21がシートバック10の上部の使用位置にある時には、ヘッドレストステー22の各脚部の基端に装着された箱形の各樹脂カバー25により、下方から観音開き状に押し上げられた押上位置P1の状態に保持される。この時、各樹脂プレート26は、各開口部14Aに臨む左右両側の縁部の下縁部にインテグラルヒンジ26Aが設定された構成により、樹脂パネル14の天板面14Bよりも低い位置までしか押し上げられない構成とされる。
したがって、各樹脂プレート26が押上位置P1へと押し上げられても、これらがバックカバー13を下方から突き上げて外部に露出することがないことから、シートバック10の見栄えの悪化を抑制することができる。各樹脂プレート26は、図7~図8に示すように、ヘッドレスト21が格納位置へと前に倒されることで、各樹脂カバー25による下支え状態から外されて、重力作用により水平状に倒された倒伏位置P2の状態に切り替えられる。
そして、それと共に、各樹脂プレート26は、ヘッドレストステー22の各脚部と共に前倒れ回転した各樹脂カバー25により再び下方から支えられる状態となる。それにより、各樹脂プレート26は、それぞれ、バックパッド12の各通し孔12Aを下方から覆う倒伏位置P2にて強固に下支えされた状態となる。
その際、各樹脂プレート26は、図8に示すように、その前後方向の一部領域のみが、各樹脂カバー25により下支えされた状態とされる。しかし、各樹脂プレート26は、それぞれがゴム等の軟質部材と比べて面剛性のある硬質な部材から成ると共に、インテグラルヒンジ26Aにより前後方向の全域が樹脂パネル14と繋がる構成とされている。したがって、各樹脂プレート26は、上記水平状に倒された倒伏位置P2にて、各樹脂カバー25による部分的な下支えを受ける状態であっても、重力方向に撓むことなく互いに平坦な水平面を成す状態に保持される。
(まとめ)
以上をまとめると、本実施形態に係るヘッドレスト装置20は、次のような構成となっている。なお、以下において括弧書きで付す符号は、上記実施形態で示した各構成に対応する符号である。
すなわち、ヘッドレスト装置(20)は、前倒し可能なヘッドレスト(21)を備えるヘッドレスト装置(20)であって、回転機構(23)と、覆い部(26)と、下支え部(25)と、を有する。回転機構(23)は、ヘッドレスト(21)を支持するヘッドレストステー(22)をシートバック(10)に前倒し可能なように連結する。覆い部(26)は、シートバック(10)に形成されるヘッドレストステー(22)の移動を許容する通し孔(12A)を覆う。
覆い部(26)は、ヘッドレスト(21)の使用状態では、ヘッドレストステー(22)により外方に押し退けられ、ヘッドレストステー(22)の前倒しにより通し孔(12A)を覆う状態に付勢復帰する。下支え部(25)は、ヘッドレストステー(22)に設けられ、ヘッドレストステー(22)の前倒しにより覆い部(26)を下支えする位置へと移動する。
上記構成によれば、下支え部(25)により下支えされる覆い部(26)により、通し孔(12A)からの中見えと異物の混入とを適切に抑制することができる。すなわち、覆い部(26)がヘッドレストステー(22)の移動を許容可能なフレキシブルな構成であっても、ヘッドレストステー(22)の前倒しにより通し孔(12A)を覆う時には、下支え部(25)による下支えにより外部からの異物の混入を適切に抑制することができる。
また、覆い部(26)が、シート前後方向に延びる軸回りの回転により、通し孔(12A)を覆う倒伏位置(P2)と、ヘッドレストステー(22)により上方に押し退けられる押上位置(P1)と、に切り替えられる。上記構成によれば、覆い部(26)を重力作用を利用した簡素な構成により、押上位置(P1)から倒伏位置(P2)へと付勢復帰させることができる。
また、覆い部(26)が、シートバック(10)の内部に設けられる樹脂パネル(14)にインテグラルヒンジ(26A)を介して一体成形された樹脂プレート(26)から成る。下支え部(25)が、ヘッドレストステー(22)の基部に被せられる樹脂カバー(25)から成る。
上記構成によれば、覆い部(26)と下支え部(25)との当たりを異音の発生しにくい樹脂同士の当たりとすることができる。また、覆い部(26)を、下支え部(25)により一部分が下支えされても全体が位置保持されやすい面剛性のある構成とすることができる。
また、覆い部(26)の押上位置(P1)が、樹脂パネル(14)の天板面(14B)より低い位置とされる。上記構成によれば、覆い部(26)がヘッドレストステー(22)により押上位置(P1)に押し退けられても、シートバック(10)の天板面(14B)から張り出さなくなるため、見栄えの悪化を抑制することができる。
《その他の実施形態について》
以上、本発明の実施形態を1つの実施形態を用いて説明したが、本発明は上記実施形態のほか、以下に示す様々な形態で実施することができるものである。
1.本発明のヘッドレスト装置は、自動車の前部側座席にも適用することができるものである。また、ヘッドレスト装置は、鉄道等の自動車以外の車両や、航空機、船舶等の車両以外の乗物の座席にも適用することができるものである。また、ヘッドレスト装置は、乗物の座席の他、スポーツ施設や劇場、映画館、コンサート会場、イベント会場等の各種施設に設置される座席や、マッサージシート等の乗物用以外の座席にも適用することができるものである。
2.覆い部は、樹脂プレートから成るものの他、ゴム製や金属製のプレートから成るものであっても良い。また、覆い部は、ヘッドレストの使用状態ではヘッドレストステーにより外方に押し退けられ、ヘッドレストステーの前倒しにより通し孔を覆う状態に付勢復帰するものであれば良く、ヒンジを介した高さ方向の回転の他、バネを介した水平方向のスライドにより動かされるものであっても良い。
覆い部の移動方向は、シート幅方向の他、シート前後方向であっても良い。また、覆い部は、インテグラルヒンジを介して樹脂パネルに一体成形されるものの他、別体のヒンジを介してシートバックのフレームやフレームに装着されるパネル材に回転可能なように連結される構成であっても良い。その場合、覆い部は、バネ力により倒伏位置へと付勢復帰するものであっても良いが、重力作用により倒伏位置へと付勢復帰するものであっても良い。また、覆い部は、必ずしも通し孔を2枚一組で覆う構成でなくても良く、1枚或いは3枚以上で覆う構成であっても良い。
3.ヘッドレストステーの前倒しにより覆い部を下支えする位置へと移動する下支え部は、ヘッドレストステー自体やヘッドレストステーの基端に結合される金属製の回転ブラケットから成るものであっても良い。